10/05/19 第6回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会議事録 第6回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会 日時 平成22年5月19日(水) 18:00〜20:00 場所 厚生労働省共用第8会議室 ○安全対策専門官 定刻になりましたので、第6回「医薬品の安全対策等にお ける医療関係データベースの活用方策に関する懇談会」を開催させていただき ます。本日はお忙しい中、また大変遅い時間にお集まりいただきましてありが とうございます。当懇談会の構成員15名のうち、12名の委員の先生のご出席を いただいております。川上先生、中尾先生、藤田先生からは欠席のご連絡をい ただいております。  本日の懇談会は公開で行うこととしておりますが、カメラ撮りは議事に入る 前までとさせていただいておりますので、メディア関係者の方々におかれまし てはご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。傍聴者は、傍聴に際し ての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧噪にわたる行為はしないこと」「座 長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」などの厳守をお願いい たします。これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていた だきます。  本日は、議題1「提言(案)について」、議題2「今後の検討スケジュール」 の2つの議題を予定しております。以後の議事進行については永井座長にお願 いいたします。 ○座長(永井) まず、事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。 ○安全対策専門官 配付資料の確認をさせていただきます。座席表、議事次第、 配付資料一覧、開催要綱、構成員名簿があります。資料1「(日本のセンチネ ル・プロジェクト)提言骨子」、資料2「電子化された医療情報データベース の活用による医薬品等の安全・安心に関する提言(案)」、資料3「提言作成 のための資料(案)」、資料4「今後の検討スケジュール(案)」です。  参考資料1「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提 言)」、参考資料2「新たな情報通信技術戦略(案)平成22年5月」、参考資料 3「疫学研究に関する倫理指針」、参考資料4「厚生労働科学研究における利益 相反の管理に関する指針」、参考資料5「レセプトの名寄せ技術について」で す。  各構成員の先生方には、事前に資料を送付させていただいておりますが、本 日追加で配付している資料等もありますので、お手元の資料でご確認をお願い いたします。配付資料の不足、乱丁等がありましたら事務局までお知らせくだ さい。 ○座長 議題に入ります。前回の懇談会では、第4回までの議論を取りまとめ る形で、提言骨子案を準備し、それについて議論を行ったところです。前回の 懇談会の議論を踏まえ、その骨子としてまとまったところについて、その骨子 に基づいて作成された提言(案)を中心に本日はご議論いただきます。議題1 について事務局から説明をお願いいたします。 ○安全対策専門官 議題1「提言(案)について」をご説明させていただきま す。 資料1「電子化された医療情報データベースの活用による医薬品等の安全・安 心に関する提言(日本のセンチネル・プロジェクト)骨子(コンセプト・ペー パー)」です。前回第5回の懇談会において(案)という形でお示しさせてい ただき、内容について活発なご議論をいただきました。そのご議論と、いただ きましたご意見を踏まえ、必要な修正を行い、骨子としてまとめさせていただ いたのがこの資料です。  前回の(案)からの修正点としては、データベースの解析等に必要な研究と しては、薬剤疫学のみでなく、情報学を含み広い分野、新しい分野の疫学等が 必要となるというご意見を踏まえ、「薬剤疫学」を「薬剤をはじめとした情報 疫学」という文言に変更したこと。2点目は、「電子カルテ」という用語は狭 い範囲を示すものと誤解されるものであるので、目指すものを適切に示してい ないというご意見を踏まえ、「電子カルテ」を「電子化された診療情報」に変 更したこと。個人情報の取扱い等に関してもご議論がありました。個人情報の 取扱いに関しては、「法整備も視野に入れて検討する」という文言を盛り込ん だこと。データの取扱いに関してのご議論と意見を踏まえ、将来的にデータの 一元化を視野に含め、データベースの拡張性についても盛り込んだこと。概ね 以上のような文言の変更を行いました。  資料2についてご説明させていただきます。前回の懇談会のご議論と、4月末 時点までのご意見を反映させて、資料1の骨子がまとまりましたので、資料2は 確定した骨子に肉付けをさせていただき、提言(案)という形で文章の形にし てご提示させていただいたものです。1頁に「もくじ」として章立てをお示し ております。1「プロジェクトに期待される成果と推進のための課題」、2「日 本のセンチネル・プロジェクトの推進」、3「インフラの整備と人材の育成」、 4「情報の取扱いのルールの整備」、5「プロジェクトの推進にあたり留意すべ き事項」と記載があります。  2頁で、1「プロジェクトに期待される成果と推進のための課題」については、 資料1の骨子のスライドでいうと2枚目の部分に対応するものですので、併せて ご覧いただければと思います。内容としては、(1)に「プロジェクトに期待さ れる成果」があります。3段落目に「本プロジェクトは、レセプトデータや電 子カルテ等の電子化された診療情報データについて、疫学的に利用可能な医療 データベースの基盤を整備すること」と記載し、成果についてはリスクの抽出、 疫学的な評価、安全対策の実施とその評価を通じた医薬品等の安全対策の向上、 エビデンスの創出と医療の標準化、医薬品等の医療技術の開発の迅速化と医療 の向上を挙げております。  (2)「プロジェクトを推進するための課題」として、[1]インフラの整備、[2] 人材の育成、[3]情報の取扱いのルールの整備の項目を立てております。[1]イ ンフラの整備においては、欧米等の諸外国において、データベース化された医 療関連情報のインフラを活用し、薬剤疫学的手法を活用した医薬品の安全対策 が模索されているところであるのに対し、我が国においては、現時点ではイン フラ整備が十分ではないため、インフラ整備を進めることが急務であると記載 されております。[2]人材の育成の部分においては、薬剤をはじめとする情報 疫学に関する人材の育成が課題であること。従来の研究の枠組みに縛られない 取組みや、研究機関個々の対応を超えた連携が必要となる可能性があること。 医薬品の規制当局との連携、人材交流、産・学・官の連携の強化についても考 慮する必要があることなどが記載されております。[3]情報の取扱いのルール の整備については、個人情報の取扱い、研究倫理の遵守、利益相反の考慮など について記載されております。  4頁の2「日本のセンチネル・プロジェクトの推進」です。文章の提言(案) の4頁ですが、こちらは資料1のパワーポイントのスライドの3枚目に対応して おります。前書きとして、医薬品は、有効性や品質のみならず、安全性の確保 が重要であること。安全性の評価は、治験や承認審査時に最新の科学的知見に より評価に当たるものの、制約もあることから、予防原則に立脚した迅速な対 応も必要であること。従来の医薬品等の安全対策としては、市販後調査が主流 であるが、これに加えて薬剤をはじめとする情報疫学の活用が必要になってき ていること。薬害肝炎事件の検証委員会の最終提言でも、このような取組みの 必要性が指摘されていることなどが挙げられています。  また、日本のセンチネル・プロジェクトを推進する上で実施されるよう努め ることとして、頁のいちばん下の部分で「日本国内に大規模な薬剤をはじめと する情報疫学に利用可能なデータベースを構築する目標の設定」「データの構 築・活用・情報発信において、学会、医療界、産業界、行政が協力(産学官の コンソーシアムを形成)」「国民に対する医療データの二次利用の倫理性、保 健医療の(安全・安心)向上に対する説明責任」が挙げられております。  5頁の(1)「利用可能なデータの目標」です。利用可能なデータの目標の部分 の記載については、こちらは資料1のスライドの4枚目、5枚目辺りに対応いた します。米国での状況、FDAのセンチネル・イニシアチブの状況、また最新の 安全対策上の課題について記載させていただき、レセプトデータベースと電子 化された診療情報データ由来のデータベースの特徴はそれぞれ異なるため、双 方のメリットを活かした相互補完的な活用/連結等を考慮する必要があるとし ております。  [1]レセプトデータベースの部分ですが、活用が期待される事項として、1つ 目は「明確な傷病名を指標とした、大規模集団の低頻度イベントの発生頻度の 把握」、2つ目は「安全対策措置の実施状況の把握」、3つ目は「患者集団の処 方、治療についての医薬品への曝露の把握」を挙げております。可能な限り億 単位のデータを得ることが望ましいという記載がされております。  6頁の[2]電子化された診療情報データ由来のデータベースについては、活用 が期待される事項として、1つ目は「治療等のアウトカム/イベントの発生状 況・頻度及び比較」、2つ目は「時間経過を伴うイベントの発生動向及び比較」、 3つ目は「イベントと患者背景の分析」を挙げております。電子化された診療 情報データ由来のデータベースについては、まずは1,000万人規模を目指すこ となどが記載されております。  (2)「国民、関係者に対する医学・疫学研究利用への理解の促進」は、国民の 理解・協力を得て社会全体がメリットを享受できるように努めること。また医 療関係者の理解・協力が得られるよう、成果やその還元について十分な説明が 必要であることなどが記載されております。  (3)「医学・薬学・情報学、製薬・情報等関係産業、その他関係者の協力」 ですが、こちらには行政・研究機関及び研究者等が努めるべきことが記載され ております。関係分野や適切なリスクコミュニケーションを実施できるための 人材育成に努めることが課題であること等も記載されております。  7頁の(4)「医薬品の安全対策を含む医療の質向上に向けた取組と医療への還 元」においては、医療関係データベースが充実し、医薬品の安全対策等への活 用が進むことによって、医療従事者もメリットを享受できることを認識できる ような啓発に努めること。職能団体も積極的に取り組むこと等が記載されてお ります。  7頁の真ん中ほどの3「インフラの整備と人材の育成」です。この部分は資料 1のスライドの6枚目、7枚目に対応する部分です。前文として、日本の医療情 報インフラは進んでいるとは言えないこと。インフラの整備については、政府 のIT戦略などでも検討が進められており、それらのプロジェクトとも連携しつ つ、その上に医療情報のデータベースの構築や活用を進めるものであることを 記載しております。  8頁の(1)から10頁の(5)までの部分において、医療情報データベースのイン フラ整備に向けた短期的、中期的、長期的なロードマップについて記載されて おります。短期的な(2)の部分ですが、2011年度に構築される見込みのナショ ナルレセプトデータベースを活用し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)をはじめ とした、活用のための情報インフラの整備について進め、2013年度を目処とし てPMDAとも連携しながら、医薬品の安全対策に活用できる体制を整備すること 等が記載されております。  中期的な部分ですが、(3)及び(4)の部分において、関連分野の研究者や人材 の育成・養成を進めながら、国内に薬剤疫学をはじめとした情報疫学の研究を 実施するための、主要な大規模データ拠点を数カ所設置し、基盤整備を進める ことが記載されております。本検討会においては、現時点において、患者の情 報保護の観点等から、米国FDAと同様に複数拠点にデータを分散し、各拠点か らデータを抽出して統合する方法と、データの管理やセキュリティの確保等の コストといった観点から、一元的にデータを集約する方法と、両者についてご 議論がされておりますので、この部分については両論が併記されたような記載 となっております。  将来的には、メリットやデメリットを考慮し、社会的、技術的な課題を解決 しつつ、一元的なデータベースを目指すことも目標とするということを記載さ せていただいております。また、メディアによる客観的な質の高い報道などを 通じて、国民への理解を促進することや、関係産業界をはじめとした民間セク ターの協力を得て、プロジェクトを進めるべきことなどが記載されております。  長期的なロードマップは(5)の部分に該当します。「優秀な研究人材の確保 及び医学・薬剤をはじめとする情報疫学研究の普及」として、データベースの 活用や関係技術の開発が進み、この分野の研究が進展するとともに、500名程 度の疫学研究者が養成されることを目標とすること。医療機関同士の情報の相 互連携や人的ネットワーク、医療機関と拠点間の相互運用などが進むことから、 プロジェクトの開始に当たってはネットワーク化の推進の課題の整理、情報連 携に関する標準的なインターフェースの共有化に向けた取組みを考慮する必要 があること。統計情報の活用のための規制緩和についての対応が必要であるこ となどが記載されております。  10頁の中ほどの4「情報の取扱いのルールの整備」の部分の記載については、 資料1のスライドの8枚目に当たります。医薬品等の安全対策にデータベース を活用する際には、患者等の自己決定権や、意図せずに個人が特定できるよう な情報が流出すること等について、特段の注意を要するものです。一方で、さ まざまなメリットを通じて、国民全体の公益につながることも考えられますこ とから、個人情報という、いわゆるプライバシーと国民全体の公益という2つ の相反する問題の適正なバランスを確保しつつ、国民すべてにとって有益であ るという公正さの維持が必要であるということが前文に記載されております。  (1)には個人情報に対する指針の整備、(2)には利益相反の取扱いの明確化、 (3)には薬事に関する疫学研究の品質保証の明確化についての記載があります。  11頁の(1)個人情報に対する指針の整備の部分ですが、諸外国の例を、ルー ル整備の際の参考にすること。当面は「疫学研究に関する倫理指針」に沿った 対応が必要なこと。薬事法の下での指針を作成するか、あるいは法律等に規定 をするか。将来的には「国民ID制度」が活用される際の対応についてなどが記 載されております。  12頁の(2)利益相反の部分です。利益相反については、調査研究の客観性、 第三者性を確保すべきこと。適切な利益相反の管理が必要であること。また、 各種ガイドラインを参考にした対応を遵守することなどが記載されております。  (3)「薬事に関する疫学研究の品質保証の基準の明確化」においては、データ ベースを活用した研究については、倫理的な配慮のみならず、学術的にも科学 的にも、検証に耐えうる質のものとすべきであり、第三者による検証が可能な 記録の保管や、モニタリング等を可能な限り行うべきであるという記載がされ ております。  13頁の5「プロジェクトの推進にあたり留意すべき事項」として、(1)「医療 情報データベースの構築・利用に向けた法制度の整備も含めた検討」として、 個人情報の取扱いの指針の整備と同時に、安全対策等の目的で、医療情報デー タベースを構築・利用できるプロジェクトの推進が円滑に行えるような法制度 の整備も含め、将来的に検討すべきであると記載されております。  (2)「データの一元化も視野に入れた、データベースの拡張性を踏まえたプ ロジェクトの推進」では、データベース開発当初の拠点が、病院等を中心とし た複数となることは一定の合理性があるが、デメリットがあるということにも 留意することが必要であること。将来的にはデータの一元化・共通化が可能と なるように、さまざまな面に考慮し、拡張性にも十分配慮してデータベースを 設計することが重要であるという記載がされております。  資料3は、提言作成のための資料です。こちらの資料については、前回の懇 談会から特段変更されている点はありませんので、提言案についてご議論いた だく際のご参考に活用いただければと思います。  参考資料1でお示しいたしましたのは、平成22年4月28日に「薬害肝炎事件の 検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の最終提言が取り まとめられております。この文章は厚生労働大臣に答申されたものです。この 提言においては55頁に、「副作用等のシグナルの検出の迅速性、報告症例全体 に対する網羅性を向上するため、諸外国の例を参考に、データマイニングの実 装化を推進し、随時改善を図るべきである」という記載がされております。  57頁の部分では、エのいちばん上のポツの2行目「電子レセプト等のデータ ベースを活用し、副作用等の発生に関しての医薬品使用者母数の把握や投薬情 報と疾病(副作用等)発生情報の双方を含む頻度情報や安全対策措置の効果の 評価のための基盤情報の整備を進めるべきである」ということが記載されてお ります。  2つ目として、「このような、膨大で多様な安全性情報を医学・薬学・薬剤 疫学・生物統計学・情報工学等の専門家が効率的・効果的に活用できるよう、 組織・体制の強化を図るとともに、電子レセプト等の電子データベースから得 られた情報を活用し、薬剤疫学的な評価基盤を整備することが必要である」と いった記載がなされております。  こういう提言が出てきておりますので、これらを踏まえた医薬品の安全対策 を進めていく必要があるとされているところです。  参考資料2については、平成22年5月11日に内閣総理大臣官邸で開催され た、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)の会合 において決定された、新たな情報通信技術戦略です。この戦略においては、国 民本位の電子行政の実現、地域の絆の再生、新市場の創出と国際展開を3つの 柱としているものです。7頁の中ほど少し下の部分のiv)のところに「医療情 報データベースの活用による医薬品等安全対策の推進」という項目が盛り込ま れております。ここでは、医薬品等をより安全・安心に利用できる社会を目指 し、医薬品の副作用情報等をリアルタイムでモニターし、安全対策の充実・強 化を図ることができるよう、レセプト情報や電子カルテ情報のデータベースを 活用できる体制の整備を行うと記載されております。今後、IT戦略本部におい ても、医療のデータベースの活用による医薬品等の安全対策の推進の動きが進 んでいくものと考えております。  参考資料3は「疫学研究に関する倫理指針」です。この倫理指針については、 最初のものが平成14年6月17日に策定されております。以後何度か改正されて いるものです。文部科学省及び厚生労働省の告示としてお示しされているもの です。現時点におきましては、疫学研究を行う際には、本指針に規定されてお ります倫理審査、個人情報の保護等を遵守して行うことが必要とされておりま す。今回の提言案においては、将来的には新たな指針やガイドラインを策定す ることが盛り込まれておりますが、当面については個人情報保護等については、 この指針に沿った対応が必要であるという記載をさせていただいております。  参考資料4は、「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest :COI)の管理に関する指針」です。この指針については、平成20年3月31日に厚 生労働省大臣官房厚生科学課長により通知されたものです。公的な性質を帯び ている研究を行う際の公正性、信頼性を確保するために、利益相反について透 明性が確保され、適正に管理されることを目的に策定された指針です。  今回、資料2でお示しさせていただいております提言(案)においては、「研 究に関する利益相反の取扱いの明確化」という項目があります。その中でデー タベース研究を行う施設等において、本参考資料でお示しさせていただいてい るような利益相反のガイドライン等各種ガイドラインを参考にした対応を遵守 すべきであると記載されております。  参考資料5は、前回第5回懇談会において、丸山先生より名寄せの方法につい てご質問いただきましたので、事務局よりJMDC(株式会社日本医療データセン ター)に、その方法について照会し、その回答をいただきましたのがこの資料 です。この内容については、科学雑誌『公衆衛生』2007年Vol.71No.11において、 「レセプトにおける匿名化名寄せ技術と傷病名辞書」という論文が公表されて おり、その中に詳細な記載がされております。今回、この検討会で論文を参考 資料として活用させていただこうとしたところ、著作権者である医学書院の意 向により無償での配付は許可できないということでした。そこで、原著者であ るJMDCにお願いし、本資料を作成していただいたものです。  ごく簡単にご説明させていただきますと、匿名化した後の名寄せ技術という ことになるかと思います。個人情報としてセンシティブな扱いを要する項目に は氏名・生年月日・性別・保険証記号番号などがありますが、これらを匿名化 処理を行った後で、サーバー内にて突合(名寄せ)をするということです。基 本技術の中にハッシュ関数は用いているということですが、最近議論されてい る個人情報をハッシュ関数を用いて、ハッシュ値を生成するという方法論とは やや異なっているということです。ハッシュ値の重複作成を防止し、セキュリ ティもより強化されたものと伺っております。これを複数の回路に増加させる ことにより、名寄せ率が極めて高くなっているということです。  今回お配りいたしました資料の、事務局からの説明については以上です。 ○座長 それでは、提言(案)についてディスカッションをお願いいたします。 ご質問、ご意見がありましたらご発言をお願いいたします。 ○生出委員 資料1のコンセプト・ペーパーの「プロジェクトに期待される成 果」の4ポツ目と、資料2の2頁の(1)の2ポツの「電子的な医療情報データの二 次利用によるエビデンスの創出と医療の標準化」という言葉があります。ここ は、最終的には医療の標準化に使おうと思うのですけれども、現時点では「二 次利用によるエビデンスの創出と、より有効な治療法を探し当てる」というか、 「より有効な治療法の探査」という言葉のほうがふさわしいような気がするの ですが、いかがでしょうか。 ○座長 「より有効な治療法の探査」ですか。 ○生出委員 その後には、それが基になって「標準化」という言葉になるかと 思うのです。 ○座長 その点はいかがでしょうか。 ○副座長(山本(隆)) 「医療の標準化」というのは若干刺激的な言葉なの です。それが、本当に公平原則に基づいて正しいプロセスが確立された場合は それに従うのは当然でしょうけれども、それまでの間は、やはり現在の医療は それなりに創意工夫をしながらやっているところが大きいと思うので、「標準 化」といきなり書いてしまうのは確かに問題ではないかと思います。 ○座長 私が気になりますのは、エビデンスの創出まで本当にこれでできるか ということです。そのエビデンス創出のためのツールにはなると思うのですが、 多くはクロスセクシュナルあるいはレトロスペクティブな研究になると思いま すので、どのぐらい強力なエビデンスになるかどうかはわかりません。しかし、 このツールを使って、しっかりしたものを作ることは非常に容易になります。 それから、有効な治療法の探索までいけるかどうかということも気になります。 こういう方法でわかるのは、現在の治療法の評価・検証ぐらいの段階ではない か。しかし、これを上手に使って、前向きにデザインして研究すれば、かなり 強いエビデンスと、有効な治療法の探索も可能になります。その辺の書きぶり をどうするかです。一定の限界はあるわけです。しかし、これがないと、なか なか研究をするということは、あるいは評価するということも非常に難しくな ってしまう。その辺のところはいかがでしょうか。 ○副座長 エビデンスの創出と、有効な医療の探策というのは、直接の成果で はなくて、それに資することがその成果ということですよね。 ○座長 そうです。 ○副座長 そう書いたほうが誤解は少ないのではないでしょうか。 ○安全使用推進室長 いまのご意見を大体まとめますと、こういう感じかなと いうのを読み上げさせていただきます。「二次利用によるエビデンスの活用に より」ぐらいのところにして、「治療法の評価・検証を行う。また、より有効 な治療法の探索を目指す」というぐらいの感じかと思いますが、いかがでしょ うか。 ○座長 よろしいでしょうか。 ○辻委員 言葉の話なのですが、前回私は欠席しましたのでわからなかったの ですが、「薬剤をはじめとする情報疫学」という言葉が今回出ています。先ほ どの説明を伺ってわかるような気もするのですが、ただ、これが実際にこの検 討会を離れていろいろな所に出てくるときに、やはり世の中は忙しいですから 言葉を短縮します。そうすると、どうしても「情報疫学」という言葉になって しまって、何が何だかわからなくなってしまう可能性があることをかなり懸念 します。一定の限界はありますが、前に使っていた「薬剤疫学」という言葉で、 多少注釈を付ける程度のほうがむしろ誤解は少ないのかと思うのですが、いか がでしょうか。これが1点です。 ○座長 いまのは、具体的に何頁のどこでしょうか。 ○辻委員 例えば、資料1のパワーポイントの3枚目です。「日本のセンチネル ・プロジェクトの推進」のところの最初のポツで「日本国内に大規模な薬剤を はじめとする情報疫学に利用可能なデータベース」とあります。この「薬剤を はじめとする情報疫学」という言葉がこれからはずっと対応されています。ち ゃんと聞くとわかるのですが、たぶん外に出ると言葉は略語にされてしまいま すので、「情報疫学」と略されてしまうと何がなんだかわからない。もう1つ は、たぶんほかのメディアの方などは「薬剤疫学」に戻ってしまうのだろうな と思います。 ○座長 ただ、薬剤だけではないということです。 ○辻委員 そこのところに何か注釈を付けるとか、あるいは「薬剤をはじめと する医療情報に関する」とか何かあってもいいのかなと思います。ただ「情報」 とだけ書かれてしまうと、何のことだろうかという疑問を持つ方が多いのでは ないかということです。 ○座長 確かに「情報疫学」というと、意味がダブッている可能性があります。 ○辻委員 本文を見ますと、「情報疫学情報」などという言葉はちょっとわか りにくくなってしまいます。ですから「診療情報に関する疫学」とか、何か具 体的なところでもいいのかと思いますが、いかがでしょうか。 ○佐藤委員 いまのことなのですけれども、広い意味で「臨床疫学」という言 葉が全体を包含する言葉になるのかと思います。通常、がんなどの原因を生活 習慣との関連で調べるような疫学に対して、医療の評価を行うようなものを広 く臨床疫学と呼んでおりますので、その中におそらく薬剤疫学もその一部分と して含まれるのではないかと思います。例えば「薬剤疫学を含む臨床疫学」と いうような言い方であれば、比較的座りがいいかなという感じがいたします。 ○座長 これは、すべて医療機関を受診した方のデータを基にした疫学という と、臨床疫学ということでよろしいのでしょうか。 ○高杉委員 医師会の高杉ですが、私は資料2のいわゆる政府が考えているこ と、いろいろなことをツールとして、システムとして構築した場合に、制御で きないような使われ方をしないかなというのがちょっと心配になります。そこ のところだけ押さえてほしいと思います。 ○座長 事務局はいかがでしょうか。 ○安全使用推進室長 いまのご指摘は全くおっしゃるとおりです。目的として、 薬害肝炎の経緯もありますし、ここで一義的に考えている部分というのは医薬 品の安全とか、医療における安全の質的な向上のところがいちばん根っこにあ る話であります。やはり、パブリックにこういうシステムを構築するというこ とは、おそらくいろいろな方がパブリックであるがゆえに使いたいということ を言って来られることが想定されます。  その場合に、意図しない形でこれが悪用されるという言い方はよくないかも しれませんけれどもそのように使われるとか、そういうパブリックに集められ たものが営利目的に何か使われるとか、そういうことに対する社会的な懸念と いうものはおそらくあるだろうと思っております。本日は、その辺りの情報を 活用する上でのルールといった部分が書かれています。事務局だけでは少し力 不足の部分がありますので、先生方からご覧になられて、こういう部分は注意 したほうがいいのではないかとか、こういう仕組みで審査をしたほうがいいの ではないかとか、いろいろなご意見があれば、先生方からいただいたものをこ の中に盛り込んで、いま高杉委員からご指摘いただいたような懸念に対して何 か答えられるような形にしたいと思います。 ○座長 当然これは利用委員会というのか、運営委員会のようなものが必要に なってきます。相当きちんとしたプロトコールが出されて、倫理的にも問題が なくて、研究費の支援もあってという、かなりオフィシャルな研究計画のため に使うというものではないかと思うのです。 ○副座長 そういう意味で、資料2の11頁に、個人情報に対する指針の整備の ところで、現状は「疫学研究に関する倫理指針」に従わざるを得ないという記 載があります。現状はそのとおりだと思うのですけれども、疫学研究の倫理指 針を読んでいただくとわかるように、ここにはいわゆる情報の取扱いに関して、 あまり特別なことは書かれていないです。それから、データベースをどう管理 するか。資料1のスライド番号7のように、インフラ整備の展開イメージでこの ようにデータベースをネットワークにしたら、今度はネットワークの管理まで 研究者が患者さんの個人情報を守るためには責務として入ってくるわけです。 いまの倫理委員会で審査できる人がいるのかという問題があると思うのです。 私は、いまはいないと思うのです。  したがって、もしこれをやるのだったら、倫理委員会に情報セキュリティの 専門家を入れないといけないとか、そういうことが入ってくるということは、 ちょっと述べておいたほうがいいのではないかと思うのです。大量の情報を扱 うためには、データベースのサブセットはどうしても作らざるを得ない。そう するとそれの管理という問題がどうしても出てくると思います。現状はそうな のだけれども、その辺を少し強化する視点が要るのではないかと思います。 ○山本(尚)委員 昨年11月にArnold Chan先生が来られて、治験でいうIRBに 代わる倫理審査委員会(ERB)が必要だと言われました。治験は患者への介入 があり、その妥当性を審査すべき委員会が必要であります。一方、観察研究で はそれは必要ないが、日常診療下で得られたデータを使っていいかどうかの倫 理的な委員会が必要でしょうとコメントされました。医療DBプロバイダーにも その委員会が必要になってくると考えられます。  IRBにも委員構成の定義が定められているように、この倫理審査委員会でも、 二次利用に適した研究目的の妥当性について公衆衛生専門家が検討することや、 解析手法の妥当性を判定する生物統計専門家による審査が必要なのではないか と思います。 ○安全使用推進室長 いまお二人の構成員からご指摘のあった部分は、例えば 参考資料3「疫学研究に関する倫理指針」で申し上げますと、これは非常にジェ ネラルな指針ですが、この7頁の第2「倫理審査委員会等」に1「倫理審査委員 会」とありまして、この[2]のちょっと下辺りに、倫理審査委員会の構成に関す る細則が書いてあります。これはジェネラルな指針という観点で見ていただけ ればと思います。ここでの要件は「医学・医療の専門家、法律学の専門家等人 文・社会科学の有識者及び一般の立場を代表する者から構成され、外部委員を 含まなければならない。男女両性で構成されなければならない」というのが現 行の規定です。やはり、こういう部分に対して、こういうデータベースの特性 を踏まえた形での情報管理の専門家を、こういう研究を行う場合には、これプ ラスアルファという形で入れるべきだというご意見と捉えてよろしいでしょう か。 ○座長 いかがでしょうか。 ○丸山委員 各機関の倫理委員会の中で、自前の倫理委員会で処理するのであ れば、いまおっしゃったようなところなのですが、この指針を作ったときにも う1つ議論があって、一定の専門的な、あるいは特殊な研究については、それ を扱うのにふさわしい倫理委員会に外注することが望ましい場合があるのでは ないかと。そのときに念頭にあったのは、大規模ゲノムコホート研究などでし た。  いまご覧いただいた7頁の前の5頁の下から12行目以降に「研究機関の長の責 務」があって、そこの下から6行目の(2)に「倫理審査委員会の設置」が、研究 機関の長の責務として求められています。下から3行目に「研究機関が小規模 であること等により当該研究機関内に倫理審査委員会を設置できない場合その 他の必要がある場合」と。この「その他の必要がある場合」というところで、 大規模ゲノムコホートなどの審査には、専門の疫学研究者・公衆衛生専門家が 入っている、また、遺伝にも詳しい人が入っているようなものを用意して、そ こに審査を委ねることも考えたのです。  その前提として、機関の長が、外部の機関に設置された倫理審査委員会に委 ねる、委託するということを手続として求めました。それは、組織の仕組みと したら当然なのですが、機関の長としては、あるいは機関としては自前の倫理 委員会があるのに外へ出すのは沽券にかかわるというような感覚もあってか、 なかなか活用されないのです。いまおっしゃったように、中でこういう研究が 出てきたら、むしろその度に特別に委員を補充するほうがいいのかと思って伺 っておりました。ですから、佐藤さんがおっしゃったようなところになるのか なという感じです。 ○安全使用推進室長 いまの点は、情報の活用という意味で重要な部分ですの で、次のドラフトのバージョンでそこは少しハイライトして、きちんとデータ ベースが公益的な利用の目的で使われるような形で、そういう審査を経ると。 その場合の委員の構成等については、いまここで議論されたような要件を指針 にプラスアルファして満たすような形で適切に行うべきである、という趣旨の ことを少し明記した形で再ドラフトさせていただこうと思います。 ○丸山委員 重箱の隅をつつくような質問ですけれども、資料2の10頁の人材 の確保が必要というのは当然なのですが、その9行目の「500人」の数字の根 拠はどの辺りにあるのでしょうか。 ○安全使用推進室長 500人の根拠ですが、これは非常に単純な計算をしてお ります。現在、日本薬剤疫学会という学会がありまして、佐藤先生がご所属で す。そちらのいまの会員数が大体500人という数字です。10年かけて人材育成 をするのであれば、やはり2倍ぐらいの人材育成をすべきだろうということで、 単純に2倍になる数字で500人程度という根拠で書かせていただいております。 ○丸山委員 こう書いて、新たに500人養成されて、その人たちのキャリアパ スが用意できなかったときに責任を取れるかというのがちょっと心配になって お尋ねした次第です。 ○安全使用推進室長 ロードマップの中に、こういう人材を養成した場合のキ ャリアパスのようなことを記載していくほうがいいという感じでしょうか。い ま他の局で作っているようなこういう戦略とかというもの。例えば治験の活性 化5カ年戦略というものですと、5,000人のクリニカルリサーチ・コーディネー ターを3年間で養成する。その人たちが病院内でのキャリアパスの形成のため にこういうことをする、こういうことをするということを書いております。  この提言においても、それと同じような形で養成した方のキャリアパスの目 指すべき方向を書いていくことはできるかと思うのです。私もその分野が専門 というわけではありませんので、先生方からご覧いただいて、あるべきキャリ アパスがこうだというところをいろいろとお知恵をいただくと、そういう部分 も書きやすくなるかと思うのです。 ○福原委員 疫学研究者というと、本当にキャリアパスが用意できるかという ことになると思います。こういうリテラシーとスキルを持った臨床家、もう少 し広い自分の職業を持っていながら、さらにそういう技術や知識・スキルを持 っているという意味で書けば実現可能性は十分あると思います。 ○座長 これは、なかなか議論が尽きないと思いますが、よろしいでしょうか。 私から1つ質問させていただきます。5頁にレセプトデータベースのことが書い てあります。ここに「明確な傷病名を指標とした」という言葉があります。レ セプトはご承知のように、レセプト病名という言葉があるぐらいで、レセプト の傷病名の統一、あるいは明確化というのは、これだけで非常に大きな作業に なると思うのですが、何か方策はお考えでしょうか。 ○安全使用推進室長 特段私どものほうで、何か具体的に安全対策課でできる かというとそういう部分ではありません。むしろナショナルレセプトデータベ ースを構築する中でのデータの品質管理という中で対応していただく話なのだ ろうという前提で「明確な」ということを書かせていただきました。ここは筆 が走りすぎているということであれば、そこは訂正させていただきます。 ○座長 むしろ、走って実現していただいたほうがよろしいのです。例えばレ セプト病名でも、担当医がこれは確実というものから、少し疑いレベルのもの から、除外のためというような、いろいろなレベルがあるのだと思うのです。 そういうルール作りを是非進めていただければと思うのです。 ○佐藤委員 いまのことに関連してですけれども、まだ実際にレセプト病名の 正確性をきちんと評価した研究というのは日本には非常に少ないわけです。私 自身のざっくりとした感触なのですが、入院に限れば外来に比べればかなり正 確だと思うのです。心筋梗塞という病名が付いたときに、それと同時にレセプ ト上で、それが入院のレセプトであれば比較的いける。病名と実際に入院した かどうかという情報組合せで、さらに心臓手術のようなことを一緒にプロシー ジャーとしてやったかどうか、その3つを組み合わせることでかなり精度を高 めることができるのではないか。  特に薬剤疫学でいうと、そういうことのアウトカムの指標になりそうな病名 について、一つひとつ丹念にこういう形で組み合わせれば使えるのでないかと いうスタディを地道に重ねていくしかないと思うのです。それがまさにバリデ ーションスタディなのです。それをやっていけるようにすることはとても大事 なことだろうと思います。そういう意味では、レセプトデータから病院のカル テに戻れることがいちばんいいのですが、ハッシュ関数のようなもので合わせ るしかないということであればやむを得ないのかもしれませんが、何らかの形 で最終的には病院の実際のカルテに戻って、それを確認する手段ができる道筋 を何とか残しておいていただけると、そういうことができるのではないかと思 います。 ○山本(尚)委員 レセプト診断名の妥当性をバリデーションスタディで検証 することは、私も賛成です。また、ここで述べられているレセプトDBの特徴 は、現状で診療年月日がすべて月でまとめられているというナショナルデータ ベースが前提になっています。しかしながら、4月30日の規制改革会議 ライフ イノベーションWGの提言として、コードの簡略化、診療報酬年月日を明確に することになっており、次回の診療報酬の改訂時期には、これらの特徴が一変 します。そのようなことを想定して、議論を進めていくことが必要だと思いま す。既存のレセプトDBではレセプトデータの元データが使われていますし、 ナショナルデータベースについても以上の制度変改革に伴い、曝露とアウトカ ムの時間関係が明らかになる時代が、これから訪れるというコメントです。 ○座長 ほかにいかがですか。 ○望月委員 いちばん最初の資料1で言うと、「プロジェクトに期待される成 果」についてのお話ですが、提言のほうでいくと2頁の(1)の3つポツがある所 で、先ほどエビデンスの創出のところが議論になった部分の1つ目のポツです。 これは医療情報のデータベースを使って、そのデータを二次的に利用して何が 得られるかという成果をリストしていると思うのですが、ちょっと気になった のが、1つ目のポツの注釈のところで、リスクの抽出はできると思うのです。 疫学的な評価もデータを使ってできると思うのですが、次の「安全対策の実施 とその評価」については、意味的には実施した安全対策が本当に有効であった かどうかを評価するという意味だと思うので、「実施した安全対策の評価を通 じた」みたいな書き方なのかなと思ったのです。そうでなければ、「安全対策 の立案にリスクの抽出をして、疫学的な評価をしたものを使う」というニュア ンスか、どっちかなと思ったのです。このままだと少し変かなと思いました。 ○安全使用推進室長 いま望月先生がご指摘をいただいたところは、確かに少 し言葉が曖昧なところかと思います。この文章を書いたときの意図は、先生が 最初におっしゃった「実施した安全対策とその評価を通じた」というほうが正 確だろうと思います。 ○望月委員 もう1点は、「医療データベース」という言い方と「医療情報デ ータベース」、「医療関係データベース」という言い方が出てきて、使い分け をしているような感じもするのですが、医療情報データベースはもしかしたら 使い分けているのかなと。医療データベースと医療関係データベースはあまり 使い分けていないのかなと思いながら読ませていただいて、そこは少し整理が 必要ではないかと思います。  文言のことで申し訳ありません。あとは電子カルテと電子診療情報とか、電 子診療録とか、いくつか混在しておりますので、それは少し整理をして使って いただいたほうがいいかと思います。 ○座長 いかがでしょうか。これは使い分けはされているのですか。 ○安全使用推進室長 広い意味での医療の中での電子情報という場合には、 「医療関係データベース」とか、そういう言い方をしていたように思いますが、 先生がご指摘のように、そこのロジックを少し整理した形で文言を整理させて いただきたいと思います。 ○宮田委員 随分違うことを申し上げますが、いま山本委員もご指摘になりま したが、これはデータベースを作ったところで、例えば電子カルテの内容が変 わったり、あるいはクラウドコンピューティングみたいな新しい技術革新が来 たり、いろいろなことがあるような気がするのです。国民IDも入っています。 それをあらかじめ全部盛り込むことは不可能だと思っていますので、この報告 書の中に新たな事態に対応するという案文を入れておけば、かなり柔軟に対応 できるのではないかと考えます。いま予測できるものは全部盛るべきだと思い ますが、予測できないことのほうが多いと思いますので、そういう柔軟性をこ の報告書には入れておいたほうがいいと思います。  たぶんこれをどんどん活用するための技術、知識、ソフトウエアとか、いろ いろなものが開発されるだろうと思いますので、開発する要素をこのプロジェ クトの中に包含しておいたほうがいいと思います。いまあるのは、あるものを とにかく利用しようみたいなことだけが書いてありますが、このデータベース を安全に国民のためにうまく活用するための技術開発の要素というのも、この プロジェクトの中には入れておいたほうがいいと考えます。  資料2の6頁の(2)「国民、関係者に対する医学・疫学研究利用への理解の促 進」については、これは役に立つという前提のまま、とにかく事情を話せば理 解できるのではないかという構図になっていますが、たぶん国民はそんな甘い ものではなく、本当に役に立った事例を早く出すことも重要だと思うのですが、 実はこういう国民の全部の情報の共有財産を使ったときに、論文とか学会発表 という形だと、どちらかというとポジティブデータしか出ないのです。この場 合には危険だという関連性が出てくるようなことしか出てこないと思います。 この間のタミフルの事件のことを考えると、危険とはあまり関係ないというネ ガティブデータをどうやって集めて、それを国民が閲覧できる形にするのか。  先ほど永井先生からご説明がありましたが、きちんとしたプロトコールでや った結果、関連がないという研究成果というのは、国民にとっても重要だと思 うのです。ところがいまの科学論文とか、そういった科学という立場からの成 果発表は、どうしてもいいデータというか、くっきりとした成果が出たデータ にしか、偏ってないという、メディアの場合には大騒ぎするものしか報道しな いという問題がありますが、科学の場合は良いことしか言わないということで、 共に問題があります。折角、こんな良いデータベースを作って、優秀な研究者 が、これは有意差がたぶん出るだろうといったようなプロトコールでやって、 有意差が出なかったというのは私は意味のあるデータだと思います。そういっ た成果を実は国民に返す仕組みを入れてほしいのです。つまり、こういうよう な研究が行われたのだけれども、有意差がなかったとか、こういうような見解 をしたところ、ちょっとこれは何か関連性がありそうなのでなお研究を進めて いるみたいなことを公開することが、実は国民の理解、医療関係者の理解を促 進すると思っています。その分がなかったので、そこは付け加えます。 ○座長 これはいちばん最後の法制化の話にも関係してきます。いかにこれを 利用するかということ、あるいは利用者に対する制限というのもあると思いま す。得られた成果をいかに公開していくかというのも、ある意味では法制化の 中できちんとしておかないといけないのではないかと、いまお聞きして思った のです。  例えば、申し込まれたいろいろな活用プロジェクトが出てきたときに、実施 した結果がどうだったか。もちろん、それですべて断言できるわけではないで す。統計解析ですから、スタディのリミテーション、言えることと言えないこ とがあると思うのです。例えばホームページに入ると、循環器疾患のいろいろ なリストがあって、その内容がわかるというふうに、そういうことは義務づけ てよろしいのではないでしょうか。本当に国民全体の財産ですから、得られた 知識は国民に還元するということだと思います。法制化のイメージというのは、 もう少し詳しくお話をいただけますか。スタートするときにはこれができてい ないといけないわけです。 ○安全使用推進室長 法制化のイメージというところがなかなか難しい部分で はあります。スタートするにあたって、実際に法整備が必要かどうかというと ころも1点議論があろうかと思います。少なくとも、個人情報の保護や、ここ に書いてあるような事項については、現行の指針を基盤としながら、対応でき る部分があるのかなと思っています。  一方、プラスアルファとして、よりこの研究をやりやすくしていくとか、こ ういったプロジェクトに対するいろいろな支援が受けられるとか、また、国民 IDとか新しい制度的なものが入ってきたときに対応できるような形での法整備 というものを、将来的にもいまから引き続き検討していくというイメージで思 っておりましたが、それで問題がないかどうかは多少我々も気にはしておりま す。 ○座長 法制化の必要性についても、もう少し議論が必要だということですか。 ○安全使用推進室長 現状のこの案は、取りあえず、こういったプロジェクト をいま現在進めるにあたっては、現行の指針をベースにそれをしっかり遵守し ていただいて、そのプロジェクトの中できちんと管理をしていくことで対応で きるのではないか、ということを一応基本にはしております。 ○座長 数千万人単位のデータベースですので、セキュリティから教育までか なりきちんとしておかないといけないだろうと思うのですが。 ○丸山委員 よくわからないところもありますが、個人情報のところは法律に 規定がありますので、そこに関係するようになると法制化も必要になると思い ます。匿名情報であれば、個人情報でないということで法律を設けるまでもな い。ですから、いま提言の内容とされているところは、匿名化の方法を用いる ところですから、佐藤さんがおっしゃったように、法制化することは必ずしも 必要ではないという整理でいけるかと思います。  もう1つは、それを用いた研究倫理の問題については適用されるのが指針で すから、それに対応するのも指針で行うことが可能ではないかと思います。  指針の関係で質問させていただきます。前回、こちら側が言って、遺伝子解 析研究に関する倫理指針を入れていただいたのですが、今回外されたのは、当 面といって、2011年とか2013年の話が出てくるので、近い将来は遺伝子研究 倫理指針の対象となるようなところは扱わないだろうという想定のもとに、遺 伝子の指針を外されたという理解でよろしいですか。 ○安全使用推進室長 そのとおりでございます。ただ、いまおっしゃったよう に、将来的な課題ということで、それを否定するものではございませんので、 そこの記載をまた復活することは全然問題はないかと思います。 ○山本(尚)委員 先ほど望月先生がご指摘された資料2の2頁の安全対策の評 価に関連して、7頁の上から2行目から4行目に、リスクコミュニケーションの 話が出てきます。たしかに人材としては大切な分野ではあると思うのですが、 本懇談会のスコープには、医療データベースを用いたリスクコミュニケーショ ンは含まれないと理解していました。現在、議論されているデータベースは、 実際に患者さんや医療従事者に、適正使用情報として配信される構造を念頭に は置いていないと思います。そういったことを実現しようとするならば、医薬 品ごとのデータマスターが必要になってくると思います。現状では、リスクコ ミュニケーションは直接関係ないかと思っていたのですが、その点はいかがで すか。 ○安全使用推進室長 実はこの7頁の「また」以降の1文は、先ほど宮田構成員 がおっしゃったことと関係しています。どうしても人目を引かないようなデー タが出た場合には、なかなかマスコミの方も通常は目を向けていただけない。 「死亡」とかいう言葉があると、それだけで何でも記事になってしまうことも 現実としてあります。ただ、こういう情報というのは非常に客観的に、冷静に 伝えていく必要があるので、そういう意味での適切なリスクコミュニケーター のような方を増やしていく必要があるのではないか。それは情報公開という部 分も当然セットですが、そういう説明を一般に対してもしていただけるような 方々を養成していくことも重要だという趣旨で、実はこの文章は書いておりま す。ですから、山本委員がご指摘の部分だと、別途文章を書き加えるような感 じかと思います。 ○山本(尚)委員 情報公開のルートもなかなか難しいと思います。例えば、 結果が得られると学会にまず発表します。それまでは、研究内容を公表しづら いというのが現在の実情であります。それ以降にメディアを活用しての一般の 皆さんへの情報提供することがルートになっているようで、いち早く結果を享 受しなければならない理想とのバランスが難しいような気がしています。 ○宮田委員 それはあとで追々考えればいいことです。そんなことよりも原則 を決めるほうが、このレポートでは重要だと思います。したがって、どうやっ て国民に活用した成果をお返しするか、ということをきちんと考えますよとい うことを明言するべきだと思います。もちろん、それにはリスクとバランスが あります。  こういうような基盤があることは、実は製薬企業にとっても非常に良いこと だと思います。なぜかと言うと、我々がメディアに取り上げられることは、悪 い事しか取り上げられませんから、そういう意味ではきちんとした一般市民が 自ら調べて、こういうことなんだということが、国からきちんと正しい情報が 提供できるソースがあることは非常に重要だと私は思っています。 ○座長 データベースの一元化についてはいかがですか。地域ごとにデータを 管理するのか、1カ所に全部まとめてそこで管理するのがいいのか。テクニカ ルな問題もいろいろあるだろうとは思うのですが。山本先生、いかがですか。 ○副座長 分散、集中という今のクラウドの世界で、データベースが1カ所か 数カ所かというのは、あまり意味のない話になりつつあるのです。データは時 を経ると読めなくなってくるのです。つまり、コードが違ってきたりするもの ですから、それをメインテナンスしていく必要がある。あるいはそのデータベ ース自体に何かリスクが生じていないか常に確認をして、観察をするという管 理の業務があるのです。そういったものは、私は同じレベルでやられるべきと いうことは、たぶん間違いないだろうと思います。  そうすると、管理自体をあまり分散してしまうと、当然ながらそこに差が生 じてくるので、差が生じた状態でそれをネットワークでつないでいると、いち ばん低い所が全体のいちばん低い所になってしまいますので、そういう意味で はあまり分散することは得策ではないと思います。ただ、実際にデータのある 場所がどうのこうのということではなくて、理論上管理の問題はあまり分散し ないほうがいい。  国民からしても何か問題があったときに、誰にその文句を言うのか、誰に意 見を聞けばいいのかというのが明確であるほうがいい。例えばそれが1,000も 2,000もあると、一体どこに聞いたらいいのかわからない。特に一応匿名化さ れている前提に入ると、自分の情報がどこにあるか自分でもわからないわけで す。しかし、何となく自分の情報がばく露しているような気がするみたいなと きに、1,000いくつのデータベースを全部に聞いて回るのかというのは、これ は非現実的な話で、それは窓口という意味でもあまり多くないほうが適切では ないだろうか。 ○望月委員 いまのご議論を聞いていて、実際にデータベースができたときに、 疫学的な研究を行うのにどうそれにアクセスして、どう使わせていただけるか を考えたときに、資料1の7枚目のパワーポイントですと、「薬剤疫学等情報収 集拠点」というのが複数存在してますが、それを結んだ形のデータが1カ所か 何かで管理をされるのか、複数のそれぞれのデポごとで管理をされるのか。そ こが、まず1つイメージできなかったことです。  もし私がデータベースを使って研究をしたいと申し入れる場合、一体、自分 が所属する機関に研究計画を出して、申請を出して許可を取るのか、それとも データベースを管理している所に出して許可を取るのか、どんな形になるのか イメージできません。  いま臨床試験の場合は、研究計画を全部公開して、登録をするような方向に なっていると思うのです。例えば、疫学研究もそういう形で登録して公開すれ ば、ネガティブ情報もどうしてもオープンせざるを得なくなっていくのかなと。 ネガティブではないのですが、ポジティブなネガティブみたいな、そういうこ ともできるようになるのかなとか、具体的にそこのイメージをお話いただけた らありがたいと思います。 ○安全使用推進室長 おそらくその辺をまた具体的に詰めなければいけない論 点だろうと思っておりました。分散的な絵が7頁に描いてありますが、本当に 最終的にプロジェクトを進めていくときに、データベースは5カ所に分散なの か、それとも1カ所なのかというところは、まだ議論が必要だろうと思ってい ます。ただ利用者側からすると、5カ所なり何カ所なりのコーディネートをし ているような、窓口のような機関があって、そちらにこういう研究をやりたい と申し込んでいただく。当然それをやるに当たっては、研究機関側の倫理審査 も通すでしょうし、先生が所属している機関の倫理審査も通して、双方がオー ケーということであれば、具体的にそのデータをいじって研究を進めてレポー トにしていただくという流れになるのだろうと思います。たぶん個々の拠点に 分散して申請を出さなければいけないのは現実的ではないだろうと思います。  情報の公開につきましては、現状、WHOをはじめとして、国際的な取組みと して、臨床試験、いわゆるクリニカル・トライアルについては、公開のデータ を作って、国内ではUMINのデータベースやJAPICのデータベースがありますが、 そういうものに登録をしていただいて、介入的なクリニカル・トライアルにつ いては事前に計画を公表した上で実施をする。それはレポーティング・バイア スを防ぐという観点から、それが妥当という形になっておりまして、臨床研究 倫理指針もそういう構成になっております。  疫学研究については、まだそういった議論が国際的に熟しているかどうかに ついては、私も特段情報はつかんでおりません。ただ、おっしゃるようにこう いうプロジェクトで、または公的な資金を投入して、こういった拠点を作って いくことであれば、このプロジェクトで実際にご利用いただく計画については 公表をしていくことは、こういった提言の中にも書いておいたほうがいいのか なという感じがしておりますが、いかがでしょうか。 ○座長 よろしいですか。山本先生、これは技術的にはどのくらい難しいプロ ジェクトなのでしょうか。いまある技術でほとんど解決できるのか。もちろん、 これからクラウドコンピューティングとか、いろいろ浸透する面はあると思い ますが、大量の情報を扱うという意味では、情報技術者の人材育成ということ も必要になるのでしょうか。 ○副座長 たくさんのデータベースを作ろうと思うと人手は足りないです。で すから、できるだけ集約すれば、わが国の人材でもたぶん作れるとは思います。 ○座長 いろいろな活用の希望が出てくるわけです。例えば、望月先生のプロ ジェクトに対応するためにデータを引き出してくることは、多様な要望に応え るのはなかなか大変ではないかなという気がするのです。 ○副座長 そうですね。データベースを構築するほうは何とかなるかもしれま せんが、運用するのは運用の頻度が高くなれば高くなるほど、これはいまの人 材ではおそらく間に合わない。それなりに人材育成をしていかなければいけな いです。 ○座長 この辺り、アメリカはどういう政策を考えているのでしょうか。 ○安全使用推進室長 アメリカでの人材育成がどのぐらい進んでいるか、そも そも科学分野とか、広い意味での臨床疫学分野での人材というものが、どのぐ らいの層の厚さなのかということについては、私どものほうで情報を持ち合わ せているわけではございません。むしろ、先生方のほうで何かご存じのことが あればと思います。 ○副座長 困っているみたいですよ。 ○座長 アメリカも困っていると。 ○安全使用推進室長 こういう機会は、先ほど宮田委員がご指摘のように、1 つの成長のチャンスではありますので、こういったものを契機にして、そうい う人材を育成する。また、そういった方々の新しい雇用を促進するような戦略 も一方で必要なのだろうと思います。 ○佐藤委員 全然違うことで非常に細かいことで恐縮ですが、資料1の2頁目の 「プロジェクトの規模」のところで、「最近の副作用の課題」に「10,000分の 1程度の頻度で発生する重篤な副作用の迅速な検出とリスクの精密な比較評価」 と書かれていますが、薬剤疫学をやっている立場からしますと、10,000分の1 の頻度の副作用を検出するということと、リスクの精密な比較評価というのは 全然別の次元のことなのです。それが「と」で結ばれていると、10,000分の1 の頻度のものを精密に比較するというふうにも読めてしまうので、いくら何で もそれはたぶんデータベースができても無理ではないかと思うのです。  そういう意味で、そこが全然違うものであるというのがわかるために、例え ば、「[1]10,000分の1の何とかの検出、及び[2]リスクの精密な比較評価」とか 書いていただくと、一応違うものなのだなというのはわかるのではないかと思 います。  確かに1億人あればと思われるかもしれませんが、実際にリスクの精密な比 較評価を10,000人分の1程度で発生するものでやろうとすると、1群100万人ぐ らい必要ですが、それはその薬を飲んでいる人たちが100万人いないと駄目な のです。いくら日本人の人口が1億人いても、例えば、100万人が薬を飲んでい るということは、人口の1%が飲んでいるような薬ということですが、実はそ んなにたくさんはないものです。通常の医薬品では、人口が1億人いてもそう いうことができる薬というのはそんなに多くないという意味では、そこまでの 低頻度になると比較の評価は難しいということでもあります。 ○座長 そうですね。あまり過度に期待を持たせてもいけないだろうと思うの です。 ○望月委員 資料2の10頁の(5)のいちばん最後の3行のところですが、たまた ま、ここは人口動態統計等の診療情報データ以外の保健統計も併せて活用でき るように、こちらのほうの利用も緩和していくことが必要ではないかという文 章ですが、データベースを使って研究をしようとしたときに、人口動態だけで なく、用語集や医薬品のリストデータなど色々と必要になります。その辺りの 情報へのアクセスをどう簡便にしていけるかというところも担保しておかない と、利用性が高まっていかないのではないかと思いました。 ○安全使用推進室長 実際、この辺りはどういったデータとか、そういったも のにニーズがあるのかというところが、実はあまり掴めていないまま、いまの 文章が書かれているという部分もあります。おそらく福原先生もいろいろ研究 をされる中で、こういうところが困っているとか、そういう部分はいろいろあ るのではないかと思います。実際、こういった研究をされる中で、こういう部 分が困っているということがあれば、むしろ具体的に先生方から言っていただ いたり、意見を出していただいたほうが、ここはよりわかりやすい提言になろ うかと思います。 ○座長 福原先生、何かご意見ありますか。 ○安全使用推進室長 10頁の4.のすぐ上の「また」の3行分です。 ○副座長 全薬品のリストであるとか、補助的なデータがたくさん必要ではな いか。それのアクセスをどう改善していったらいいか。 ○福原委員 これは持ち帰って、また整理してお送りします。 ○座長 そのほかに、いかがでしょうか。 ○我妻委員 ここもやや細かい点ですが、10頁から始まる4の「情報の取扱い のルールの整備」という話で、11頁の上から3行目、「個人情報というプライ バシーと国民の公益という2つの相反する問題が存在する」と記載されており ますが、おそらく、ここで強調しているのはいちばん最後に書いてありますが、 (1)の「データ化された診療情報云々」の上のところに、医薬品等の安全対策 に資するという形で、国民の公益を尊重するのであり、ただ、個人情報という プライバシー等についても配慮するということですので、趣旨としては2つの 権利をどのようにして対峙させるかというよりは、むしろ国民の医療安全等に ついて資するために、その目的のために個人情報をきちんと整備するというお 話だと思います。ですから、そこのところは分かるように書かれたほうがいい のかなと思います。  先ほど丸山先生がおっしゃられたように、枝葉という形でプライバシー等に ついて、個人情報保護等の整備に十分配慮していることにつながると思います。 ○安全使用推進室長 承知いたしました。ありがとうございます。 ○山本(尚)委員 確認ですが、8頁のロードマップが書いてある(2)のナショ ナルレセプトデータベースに関して、PMDAが情報インフラ整備について進める ということが書かれているのですが、これはもうすでに決まっている事項です か。 ○安全使用推進室長 今日はPMDAの方もいらっしゃるのですが、私のほうでお 話をします。PMDAの平成21年度からの5カ年の中期計画がありまして、その中 で言ってみれば、レセプトのデータベースをはじめとして、そういったものを 活用するためのPMDAにおけるインフラ整備を行う、ということが5カ年間のス ケジュールで定義されております。そういう意味で、PMDAにおいては、こうい う形でのインフラ整備を進めますし、またPMDAのほうでは具体的にこれを進め るための検討会を作って、実際、副座長の山本先生にもご参画いただいて、そ ちらのほうで現在進めているという状況です。ただ、ここはPMDAをはじめとし ておりますので、PMDAだけに限定したものではなくて、やはりこういった情報 をお使いいただく方々のインフラ整備を全体について底上げをしていかなけれ ばならないという問題意識で書いております。 ○山本(尚)委員 データの主管者、保有者が特定されて、我々も安全対策を 中心に、このデータベースの利活用を検討させていただきたいので、PMDAが主 管者として、研究申請の許可を行うかどうかをお聞きしたかったのです。  私の理解では、PMDAはあくまでこういったナショナルレセプトデータベース を使っての安全対策というものをこれから強く推進されていくという理解でも あったのですが、そういうことではないのですか。 ○安全使用推進室長 そこはPMDAのほうでどういう形で今後進められるかとい うことにもかかわってきますし、向こうの検討状況にもよるかと思います。お そらく現状では、外部にあるデータとかそういったものをPMDAで活用するため のいろいろなツールや、情報のインフラという趣旨であれば、何かPMDAに大き なデータベースを作って、それを皆さんと共用して活用するという形ではない のだろうと思います。 ○座長 具体的なプロジェクトを考えたときに、いろいろな提案が出てくると 思います。例えば、ある学会である疾患のこういう治療法についての適否をこ れから5年間見たいと。副作用ももちろんそうですし、できれば有効性の評価 もしたいとか、いろいろな提案があると思います。そのときに、これをどうい うふうに整理していくのか、ソフトの構築から運用、いろいろな疾患というこ とになると経費も膨大になりますが、どんなイメージで捉えたらよろしいので しょうか。例えば、ある学会ではこういうフォーマットでやりますから、各病 院でデータベースシステムを使ってもらって、それを国が一括管理して、そこ に申し込んで解析をするとか、そんなようなイメージでよろしいのでしょうか。 ○安全使用推進室長 イメージも先生方がどのようなご要望を持ち得るかとい うところを少し聞いてみたほうがいいと思うのです。そういう意味でこういっ た提言の案を実際にご覧いただいて、関係する方がどういう期待を描くかとか、 また、この案に対してはどのようにお考えになるかということで、次回ぐらい に有識者のヒアリングなどをしてみて、実際、ここで考えている部分が現実的 に実施可能なのかというところも含めて、またここでご議論をいただくのはど うかなというふうにも思っています。私どもだけでそこを一辺倒に想像できる ものでもございませんので、次回はそういった機会を作りたいと思いますが、 いかがでしょうか。 ○座長 たぶんこういう基盤ができてきますと、各学会がいろいろ提案してく ると思います。ですから、その要望にできるだけ応えられるように、また経費 等についても国のプロジェクトということで、研究費が取れたプロジェクトに ついては優先するとか、そういう運用になるのではないかと思います。例えば、 薬の切り口というのはもちろんあるわけですが、病気の切り口ということもあ るわけです。あるいは手術であるとか、いろいろな切り口から解析ができるよ うになると非常に素晴らしいのではないかと思います。 ○安全使用推進室長 1点、それに関連してよろしいですか。ここはこの本文 の中でも、いまの話と関連して、こういう書きぶりでいいのかどうか、委員会 の先生方に検証をいただきたいと思っているのは9頁のところです。9頁の(4)、 永井先生がご指摘のように、いろいろな学会を含めて、こういうデータベース を公益的に適切な目的で使いたいと、いろいろな方が実際に発生してくるだろ うということは想像ができます。そのときに本当に国の文科省の科研費なり、 厚労省の科研費なりで、すべての研究が賄えるかどうかというところは正直よ くわからない部分もあるといった場合、「研究資金や基金の重点的な投入」と いう言葉が書いてあるのですが、こういう公益的な研究のために研究資金をい ろいろな方々から集めるような仕組みも一方で作っておかないと、ただ公益的 な研究だということで、公費の研究費だけでできるかどうかというところは実 行可能性を考えても難しい部分はあるのかなと思います。  実際、薬害肝炎の提言の中でもそういう基金を作るべきではないかという件 もございまして、9頁に試しにこういう文章を書いてみたのですが、この辺り も含めて先生方はどのようにお考えかなと思います。 ○座長 いかがでしょうか。医療費の0.5%でも回せば、随分素晴らしいもの ができるのではないかと思うのですが。あるいは製薬団体連合会でも、まさに 薬の問題となれば、利益相反が生じてはいけませんが、こういうことにコミッ トしていただくというのもいいのではないかと思います。どうでしょうか。 ○山本(尚)委員 我々も、より効果的な安全対策をやっていかなければなり ません。現在は、新薬承認後、何千例の前向き調査を実施することになってい ますが、今後リスクに応じた研究が行われるように徐々に移行されるにつれて、 当然業界内でも議論されると思いますので、そういったこととの兼ね合いも少 し考えながら検討させていただきたいと思います。 ○宮田委員 私はそろそろ失礼しなければいけないので。頭が大混乱しており まして、9頁の上のほうの、1つのデータにするのか、拠点間でのデータと。先 ほど山本先生がおっしゃったように、Web上のテクノロジーを使うとどっちに あっても同じように扱うというのはわかったのですが、例えば、これをレセプ トデータからアノニマスにして抽出して、その結果というのはどこかが保持す るのですか。それとも毎回抽出するのですか。それがもしどこかに保持される としたら、アノニマスを溜めておくということです。それは誰が所有するのか という議論を少しここの中に書いておかないといけなくて、先ほどから一生懸 命読んでいたのですが、よくわかりません。山本さんから、PMDAが所有するの かという疑問もあり、これはちゃんと考えておいたほうがいいのではないか。 例えばあるプロトコールが承認されて、拠点から全部もう1回アノニマスにし て抽出して調べるのか、仮に抽出しておいてアノニマスにしておいて、それを 対象にデータサーチをするのか。そういった場合にはどこが持つのか。これは 議論しておいたほうがいいのではないかなという気がしております。 ○副座長 いまの疫学研究倫理指針では、データの保持期間を明確にするとい うことがたぶん入っているかと思います。ですから、一旦手に入れたものはず っと持っておいていいというものではなくて、やはり、処理をしたあとの研究 成果としてはいいのでしょうが、もとのデータは一定期間できちんと廃棄をす るというルールにはなっていると思います。 ○宮田委員 研究停止後というものですよね。研究終了後というものでね。 ○副座長 初めに期間を定めることになっていたと思いますので。なかなか本 当の匿名情報というのは難しいのです。例えば、ブログやツイッターで、ずっ と自分がいつ医者に行ったかを書いている人がいて、レセプトを見ると、この 月この月この月というのが、例えば10年分溜まってしまうと、これはあの人で はないかということが容易に推測されるわけです。したがって、ずっと持って おいていいというものでは私はないと思うのです。やはり目的に応じて、目的 に応じた期間はきちんと保持をして、そのあとは、もとのデータはやはり責任 を持ってライフサイクル管理をするということがルールで定められていないと いけない。それがいまの指針でもそれは認めると思うのです。ですから、そこ が厳格に適用されれば、そう心配はいらないと思います。 ○宮田委員 そうしますと、ライフサイクル管理をやるような統一体を作って おけばいいということですか。先ほど管理する所は1つのほうが望ましいとお っしゃっていましたが。 ○副座長 データベース自体の管理はそのほうがいいと思うのですが、研究プ ロジェクトがライフサイクル管理をちゃんとできるかどうかというのは、倫理 委員会で審査しなければいけないわけです。先ほど申し上げたのは、その審査 をいまの倫理委員会で可能かどうかというのが、若干懸念があるので、その点 はリマークしておくほうがいいということで申し上げました。 ○安全使用推進室長 いま宮田委員からご指摘をいただいた部分は、たぶんこ のレポートを読む人は指針のもとまで全部辿って読むわけではないので、そこ は明確にルールの中に書き加えた案にしたいと思います。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。大体、議論も出尽く したようですので、このあとはご意見がありましたら、事務局のほうへお寄せ いただきまして、このとりまとめは今月末までにご意見をいただければ、次の 会までに事務局でとりまとめるということでよろしいでしょうか。それでは、 議題2の「今後の検討スケジュール」についてご説明をお願いいたします。 ○安全対策専門官 議題2「今後の検討スケジュール」についてご説明をいた します。資料4をご覧ください。これまでに勉強会を間に挟みまして、第1回か ら第5回まで検討が行われてきており、本日は第6回の懇談会です。今後はあと 2回、第7回と第8回とありますが、7月のとりまとめに向けて、次回は第7回の 懇談会を6月16日に開催し、本日ご議論をいただいた内容を反映させた提言案 につきまして、本日ご議論がありましたように、有識者の方にヒアリングを行 うことを考えております。またその後にパブリックコメントの募集を経て、第 8回の懇談会を7月22日に開催して、ここで提言を最終的にとりまとめるという スケジュールを予定しております。  本日につきましては、活発なご議論をいただきましてありがとうございまし た。議事録につきましては、ご出席の皆様から了解を得た上で、公表をさせて いただくという取扱いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い いたします。 ○座長 よろしいでしょうか。それではこれで本日の懇談会を閉会させていた だきます。どうもありがとうございました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111