10/05/17 第57回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第57回厚生科学審議会科学技術部会議事録 ○日 時  平成22年5月17日(月)17:00〜19:00 ○場 所  中央合同庁舎第4号館12階 共用1214特別会議室 ○出席者   【委 員】 永井部会長          井部委員   今井委員   岩谷委員   金澤委員          川越委員   佐藤委員   西島委員   廣橋委員          福井委員   町野委員   南(裕)委員 南(砂)委員          宮村委員   望月委員   【議 題】  1. 今後の厚生労働科学研究について  2. 遺伝子治療臨床研究について  3. ヒト幹細胞臨床研究について  4. その他 【配布資料】  資料1−1. 今後の厚生労働科学研究について  資料1−2. 今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について  資料1−3. 前回の科学技術部会におけるご意見等  資 料 2. 総合科学技術会議の動向について  資 料 3. 遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に         係る生物多様性影響評価に関する申請について(千葉大学医学         部附属病院)  資 料 4. ヒト幹細胞臨床研究実施計画について  資 料 5. 遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について  資 料 6. 戦略研究新規課題フィージビリティ・スタディの公募について  参考資料1. 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  参考資料2. 遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に         係る生物多様性影響評価に関する参考資料  参考資料3. ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料  参考資料4. 「戦略研究に向けたフィージビリティ・スタディ」公募要項 ○坂本研究企画官  ただ今から第57回厚生科学審議会科学技術部会を開催させていただきます。 委員の皆様には、ご多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。  本日は木下委員、桐野委員、末松委員、橋本委員、松田委員、宮田委員、森 嶌委員からご欠席のご連絡をいただいております。少し遅れてみえる委員もい らっしゃいますが、ご連絡をいただいているところでは、委員22名のうち出席 委員が過半数を超える予定となっております。  委員の変更についてご報告させていただきます。これまで、こちらの部会に ご所属いただきました明治大学法学部教授の石井美智子委員が辞任をされてお ります。本日、新たに上智大学大学院法学研究科教授の町野朔先生に委員とし てご参加いただく予定になっておりますが、少し遅れてみえるようです。  資料の確認をお願いいたします。議事次第に配付資料一覧があります。資料 1-1は「今後の厚生労働科学研究について(案)」、資料1-2は「今後の厚生労働 科学研究における主な研究課題等について(案)」、資料1-3は「前回の科学技 術部会におけるご意見等」、資料2は「総合科学技術会議の動向について」、資 料3は「遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生 物多様性影響評価に関する申請について(千葉大学医学部附属病院)」、資料4 は「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」、資料5は「遺伝子治療臨床研究に 関する実施施設からの報告について」、資料6は「戦略研究新規課題フィージビ リティ・スタディの公募について」です。  参考資料1は名簿、参考資料2は遺伝子治療臨床研究関係の参考資料、参考 資料3はヒト幹細胞を用いる臨床研究関係の参考資料、参考資料4は「戦略研 究に向けたフィージビリティ・スタディ」公募要綱です。資料はよろしいでし ょうか。  では、以降の議事進行は永井部会長にお願いいたします。 ○永井部会長  議事に入ります。最初に、今後の厚生労働科学研究についての説明をお願い いたします。 ○坂本研究企画官  今後の厚生労働科学研究について、資料1-1から資料1-3、それから資料2の 4点の資料を用いてご説明させていただきます。  最初に資料2を用いて、総合科学技術会議の動向に関してご説明させていた だきます。4月27日に開催された総合科学技術会議の本会議の資料で、1頁か ら9頁までが「第4期科学技術基本計画策定に向けた検討状況」という資料で す。2頁に、第4期科学技術基本計画と新成長戦略との関係を示した図が出てお ります。上の左の方に、強みを活かす成長分野として、グリーン・イノベーシ ョンとライフ・イノベーションが規定されております。右の方に、成長を支え るプラットフォームとして「科学・技術」と「雇用・人材」が設定されていま す。これらの新成長戦略の目指すところについて、科学・技術が大きな役割を 果たすということで、下の左にあるように基本計画の策定が考えられておりま す。また右にありますように、その議論を反映して来年度の科学・技術関係予 算の編成も改革しようということです。  3頁、「科学技術基本政策策定の基本方針(素案)概要」です。「I.基本理念」 のところでは4点示されております。「ダイナミックな世界の変化と日本の危機」、 「第3期基本計画の実績と課題」、「国家戦略における基本計画の位置付け」、 「2020年に目指すべき国・社会のすがた」という事項が立てられております。 総合科学技術会議の方では「II.国家戦略の柱としての2大イノベーションの 推進」を大きな特徴と捉えているようです。グリーン・イノベーション及びラ イフ・イノベーションの2大イノベーションの推進を打ち出して、このイノベ ーションの創出を促す新たな仕組みの構築もこの下の方に記載されております。  4頁の「III.国家を支え新たな強みを生むプラットフォームの構築」というこ とで4点挙げています。「豊かな国民生活の基盤を支える研究開発」、「国家の基 盤を支える研究開発」、「産業の基盤を支える研究開発」、「共通基盤技術の研究 開発」という事項が示されています。「IV.我が国の基礎体力の抜本的強化」と いうことで、「基礎研究の抜本的強化」、「科学・技術を担う人材の強化」、「国際 水準の研究環境の形成」、「世界の活力と一体化する国際展開」といったものを 事項として示しております。「V.これからの新たな政策の展開」のところでは、 「科学・技術システムの改革」、「科学・技術コミュニケーションの抜本的強化」、 「研究開発投資の強化」というものが示されています。  5頁は参考となっていますが、第4期基本計画策定に向けた検討スケジュール です。6月に基本方針の取りまとめを行うということで、年内に答申を目指して いるというスケジュールが示されております。  7頁以降9頁までは、参考資料として総合科学技術会議の専門調査会やWG、 タスクフォースで検討されている内容について、基礎研究を支えるシステム改 革、大学院における高度科学人材の育成強化策、科学・技術国際戦略に関する 資料が添付されております。  10頁からは別の資料となっております。10頁は「資源配分方針の基本指針の 位置付け」で、新しい予算編成のプロセスについて図解されております。6月頃 に予定されております「資源配分方針」の策定の前に、「資源配分方針の基本指 針」を策定し、その下にあります「アクション・プラン」の策定を行うところ がポイントとなっております。「アクション・プラン」については、もうしばら くすると内閣府がパブリックコメントを実施するという情報があります。  11頁は、平成23年度の科学・技術に関する予算等の資源配分の方針の基本指 針について図解したものです。12頁にその本体があります。この「平成23年度 の科学・技術に関する予算等の資源配分の方針の基本指針(案)」という1枚紙 は、4月27日の総合科学技術会議で決定されております。この基本指針では、 1.の「課題解決型イノベーション推進への資源配分の最重点化」の二つ目の「○」 で「ライフ・イノベーションによる健康大国の実現、医療・介護・健康の質の 向上」が示されており、その下に記載されていますようにこの中の「重要な領 域の中から、対象を絞って、アクション・プランを先行的に策定する。」とされ ており、次年度以降も毎年策定対象の拡充も含めてプランを見直す方針が示さ れています。  資料1-3は、前回の科学技術部会でいただいたご意見を簡単にまとめたもの です。「行政意図の明確化」といった表現の再検討、基礎的な研究への取組みに ついて、PD/POの重要性、ソフトの側面の研究、評価に関する研究の重要性、成 果の公表等についていろいろご意見をいただきました。  そういうご意見も踏まえて作成したものが資料1-1です。こちらが、これま でのご議論も踏まえ、今後の厚生労働科学研究について、大きな方向性につい て取りまとめてみた(案)です。  前回までの資料では、最初に「前提」という表現でしたが、そこの内容を1. の「はじめに」のところで記載させていただいております。厚生労働科学研究 は、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関する行政施策上の 課題を解決する目的志向型の研究であることを最初に記載しております。幅広 い分野を対象としており、行政施策に資する研究が求められること、そして、 新成長戦略等の状況を踏まえると、健康長寿社会の実現へ向けた研究、及び少 子化・高齢化に対応し、活力あふれる社会の実現へ向けた研究等が、厚生労働 科学研究の今後の主な課題となることを記載しております。  厚生労働科学研究が対象とする分野は幅広く、ニーズの把握とシーズの創出 に向けた探索的な研究や基盤整備に取り組むとともに、選択と集中による有望 なシーズの迅速な社会還元を目指す必要があり、その際、ニーズの把握、シー ズの創出、及び成果の社会還元に向けた研究に、バランスよく取り組むことが 重要になるということを記載しております。  そして、今後の厚生労働科学研究については以下の諸点に留意する必要があ るとして、以下、項目ごとの記載となっております。  「2.厚生労働科学研究の性格・役割について」の最初に「研究目的の明確化 について」という項目を設けております。こちらの最初の○では、「国民生活に 直結することが多い各種の課題を解決する目的志向型の研究であり、方針を明 確にして、個々の研究課題の設定について、研究者や国民にその意図するとこ ろが明確に伝わるようにする」ということを記載しております。3番目の○では、 公募要項関係についてまとめて記載しております。5番目の○では、公募課題の 設定について記載しており、最後に括弧書きの中に「パブリックコメントを行 うことも検討する」と、そういった検討課題もあるということを記載していま す。2頁、こちらの事項の最後の○では、指定研究の活用について記載しており ます。  2頁の「基礎的な研究への取組みについて」では、最初の○で「厚生労働行政 施策への反映が想定されないような基礎的な研究は、厚生労働科学研究の対象 外であるが、研究ニーズの把握や新たなシーズの開発等、行政施策への関連が 明らかな基礎的な研究は、厚生労働科学研究として必要である」という記載を させていただいています。そして括弧書きで「必要な情報交換に努め、他府省 の基礎的な研究と適切な連携を図ることとする」ということも記載しています。 これまでにPD/POについていろいろご議論いただきましたことを踏まえ、次の 項目は「PD/POの機能等について」という項目立てをさせていただいております。 今後、PD/POの拡充に努める必要があるということ、それからPD/POの役割につ いて、そして、研究支援に従事する人材の確保やインセンティブの向上につい て記載しています。  3.の「評価について」では、最初の「全般的事項について」の最初の○で、 より多くの専門家を評価委員とし、専門的見地から研究内容や成果を評価する ということを記載しております。2番目の○では、「外部専門家による行政的観 点からの評価については、中立性、公平性の確保に十分留意した上で、評価の 視点等を事前に明示する」ということを記載しております。次の○では、「評価 の透明性の確保に一層配慮するため、中間評価結果の公開や評価委員会の議事 概要等の開示も検討する」という検討課題を記載しています。その次の検討課 題として、患者等の当事者の評価の導入を検討することも記載しています。3頁 の一番上がこの事項の最後の○ですが、評価基準については、客観的かつ定量 的な評価指標を設定するということ、いろいろな形での評価が必要なのですが、 そういうものについても評価基準をより明確にするということを記載しており ます。  3頁、次の事項として、「事前評価について」という項目立てをしています。 こちらでは、事前評価者に、各公募課題における行政的意図を示した上で評価 を依頼するということ、それから、評価の視点・手順は事前に明確化してハン ドブック等により示すということ、二つ目の○にあるように、ハンドブック等 の作成が課題となるということです。三つ目の○は、申請金額についての査定 のあり方について検討するということ。その他こちらの事項の中では、過去の 実績を事前評価の参考とすること、評価を適正に実施する観点から研究課題数 を絞ることも検討課題であるということを記載しております。  その次の事項は「中間・事後評価について」です。最初の○では、「研究目的 を研究期間内にどこまで達成できたのか、評価時点で研究計画に沿って報告を 求め、計画変更の場合はその根拠も含めて、分かりやすい説明を求める」とい うことを記載しております。そして客観的に評価するため、専門外の評価者に も分かりやすい報告を求めるということ。その次のところでは、評価の結果の 研究者への伝達に関して、評価における議論等が関係する研究者全員に伝わる ように留意すべきという留意点を記載しております。また、それに対する研究 者の対応を必要に応じて調査する等、PDCAサイクルを回す観点にも留意すると いうことを記載しております。こちらの事項の最後から2つ目の○では、「研究 者が厚生労働科学研究の要望にどう応えたかの評価データを蓄積し、その後の 審査に活用することについて検討する」という検討課題も記載しております。 最後の○では、事後評価は行政施策に反映できる成果に重点を置くべきといっ た趣旨を記載しております。  4.の「広報等について」では、「広報及び成果の公表等について」という事項 を最初に起こしております。最後の4頁に移りまして、以前PD/POに関する記 載と並べて記載しておりました疑問点に対応する指導窓口といったことは、こ ちらの2番目の○のところにまとめて記載しております。3番目の○では、「成 果発表会の拡充や成果の周知のためのワークショップの開催や各課題に関係の 深い学会誌での公開等を行う。また、研究者へのインセンティブを高めるため、 特に優秀な成果については表彰すること等も検討する」という検討課題がある ことを記載しております。  その次の事項として、「成果データベースの改善について」を設けております。 こちらの3番目の○では、検索ソフトのヒット率を高める手法の活用も検討課 題という趣旨を記載しています。こちらについては、この次の「その他」とい う事項の2番目の○の研究課題名の英語記載というところの括弧書きとして「成 果報告書の概要部分の英文記載を求めることも検討する」という検討課題があ るということを記載していますが、こういうものを英文で記載することにより、 こういうところにも結び付く、そういう効果もあるのではないかと考えている ところです。  「その他」の項目についてですが、研究費に関する諸規定については、政府 全体でできるだけ統一しようという動きが現在あり、当省もそちらの動きに対 応していく予定であり、こちらの4番目の○で、「研究費に関する諸規定は、分 かりやすいことを第一とし、また、改訂により現場に混乱をもたらさないよう 留意する」ということを記載しておりますので、政府全体の動きに対応しつつ、 そういうことを留意点として今後気を付けて対応して行くということです。  最後に関係予算の拡充に努めるべきと記載しており、政策に結び付いた必要 性の説明能力の強化等に努めるという課題を記載しております。  資料1-1については、今までのご議論を踏まえ、こういう形で案を作成しま したので、このような形で取りまとめたらいかがかということです。  資料1-2は、「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等について(案)」 です。これまでのご議論を踏まえ、大きな方向性については資料1-1の方でま とめたわけですが、資料1-2は研究課題等についての議論のたたき台とするた めのペーパーになります。  1.の「はじめに」は、先ほどの資料と繰り返し的なことが記載されておりま すが、厚生労働科学研究が対象とする分野が幅広いということ、ニーズの把握、 シーズの創出に向けた探索的な研究や、基盤整備に取り組むとともに、選択と 集中による有望なシーズの迅速の社会還元を目指す必要があるということ。そ してバランスよく取り組むことが重要ということを記載しております。その上 で、今後の厚生労働科学研究における重点化すべき主な分野として2点、健康 長寿社会の実現に向けた研究、少子化・高齢化に対応し、活力あふれる社会の 実現に向けた研究等、が考えられるということをお示しさせていただいており ます。  2.の「今後の厚生労働科学研究における主な研究課題等」では、厚生労働科 学研究は、国民の健康と安全の向上に資する研究であり、重点化すべき分野以 外の分野についても着実な対応が必要な場合が多く、ニーズの把握やシーズと なる研究の状況等の確認を行いつつ、研究課題を適切に設定する必要があると いうことを記載しております。重点化を図り、メリハリをいろいろ付けたとし ても、厚生労働科学研究が国民生活に密着した幅広い分野を対象としているこ とから、ある分野の研究をやらないということは正直難しいということがあり ます。選択と集中を図りながらも、研究課題の設定においては、そういうこと も留意する必要があろうということを考えてこのような記載にしているところ です。  具体的な研究課題の設定においては、以下の点に留意するということとして、 ●で3点示しております。「取り組むべき課題について、パブリックコメントを 実施し、広く意見を聴取する。」、「QOLの向上に関する研究等、ソフト面の研究 (及び該当分野のPO)の拡充も図る。そのため、予め具体的評価基準を検討す る。」、それから、評価に関する研究も重要であるというご指摘を踏まえ、「「評 価研究」も重視する」という3点を記載しています。  2頁は参考ですが、総合科学技術会議のライフ・イノベーションタスクフォー スの方の動きについて、4月28日に開催された会議の資料から抜粋・改変した ものです。大目標としては、「心身健康活力社会の実現」、例として「アルツハ イマー・認知症の予防」、「心筋梗塞・脳卒中の予防」、「がんの早期発見と治癒 率の向上」、それから「高齢者・障がい者自立社会の実現」、こういうものが検 討されております。  そして主要推進項目及び主要政策項目として、「予防医学の推進による罹患率 の低下」及び「ゲノムコーホート研究と医療情報の統合による予防法の開発」。 そして、「革新的診断・治療法の開発による治癒率の向上」及び「早期診断・早 期治療を可能とする技術、医薬品、機器の開発」。「高齢者・障がい者の科学技 術による自立支援」及び「生活支援技術の開発」というものが示されておりま す。  これらに関連する厚生労働省関連の具体的施策案として、「(薬剤疫学)デー タ基盤等の整備や研究拠点の構築及び研究者の養成」、それから、「医薬品・医 療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業」、「第3次対がん総合戦略研 究」、「ブレインマシンインターフェイスによる障害者自立支援機器の開発」、「長 寿科学総合研究事業・認知症対策総合研究事業」、こういったものが関連すると いうことで、資料の中で示されているところです。  個別の研究課題等については、今後こういう観点に留意すべきといったご指 摘も含め、本日はフリーディスカッション的にご意見をいただきたく、資料1-1 と資料1-2と併せてよろしくご審議のほどお願い申し上げます。 ○永井部会長  ただいまの説明に対しご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。 ○廣橋部会長代理  今後の厚生労働科学研究についてですが、一つお聞きしたいのはPD/POの確 保のサポートを推進しなければいけないという中の、その下のところに研究費 の配分でもというところがあるのですけれども、PD/POの研究者に研究費用を 云々するとそういう意味ではなくて、研究予算を使って、こういう人たちの確 保を推進するという意味ではないのですか。研究費をというと、直接研究者に 研究のために渡すというものに私などは解してしまうので、誤解を生みやすい と思うのです。 ○坂本研究企画官  先生のご指摘は、もう少しふんわりした表現の方がよろしいということでし ょうか。 ○廣橋部会長代理  こういう人員をどのように確保するかとか、キャリアパスとか、そういうと ころも含めて使えるような予算を確保していただきたい。 ○坂本研究企画官  こちらの文章はPD/POも含めて、研究支援に従事する人材の確保という、ま さに研究に参加している人のことも一緒に書いてしまっているので、最初の文 案からこういう表現になってきた流れがあります。ご指摘を踏まえますと、「向 上が図られるよう、経費面」とか、もう少し良い表現を少し検討してみたいと 思います。 ○福井委員  言葉の定義について伺いたいのですが、資料1-2の1頁目の一番最後に「評 価研究」という言葉がありますけれども、評価という言葉はいろいろなところ で出てきていますが、ここでいう評価研究というのは、いわゆる日常的に行わ れている医療や看護を評価するという意味で使われているのでしょうか。臨床 疫学の分野では、ヘルス・サービス・リサーチという言葉を使います。それに 相当することを言っているのでしょうか。 ○坂本研究企画官  こちらについては、前回の御議論で、開発型の研究以外にも出来上がった技 術を評価するというところが大事であるというご指摘がありました。確かに公 募要項等では、今までそういう分野の表現がなかったので、鍵括弧で「評価研 究」という表現をしてみたもので、誤解を招くということであれば、この言葉 はカッチリ固まったというものではなく、むしろそういう趣旨がより伝わる表 現のほうがいいわけで、より良い表現があれば、当然直した方がいいと思いま す。 ○永井部会長  医療サービス全体、あるいは昔からある治療法にしても、新しい治療法にし ても検証しないといけないということです。 ○福井委員  これは、研究の結果を実際に現場に応用した場合に、本当に予期したような 効果があるかどうかを評価します。 ○永井部会長  例えば、薬の評価も当然入るわけですね。 ○福井委員  当然入ります。 ○永井部会長  手術であれ、あるいは看護であれ、ケアであれ、みんな評価が必要である。 要するに検証が必要だということですね。評価なのか。 ○福井委員  医療現場での評価というニュアンスだと思いますが。 ○永井部会長  そういう意図でよろしいのでしょうか。 ○坂本研究企画官  前回そういうご議論があったということで記載しております。ただし、そこ の範囲についてはもう少し広くした方がいいとか、そういうことがあれば、修 正はやぶさかではありません。 ○永井部会長  何かよい言葉があるといいですね。 ○福井委員  そうですね。 ○永井部会長  でも、従来になかった、新しい枠組みになる可能性はあるように思いますが、 いかがでしょうか。 ○金澤委員  いまの話ですが、できれば別の言葉の方がいいような気がいたします。最近、 私どもの総合科学技術会議でも、評価研究というよりも、むしろ評価科学とい う表現でレギュラトリーサイエンスをそのようにきちんと定義づけているもの ですから、評価研究と言われるともしかするとそちらの方のニュアンスが出て きてしまうので、ここではきちんと内容を絞ったほうがよろしいのではないか という気がします。 ○川越委員  いまのことと関連するのですが、2頁のいちばん上の「○」のところに、科学 研究の性格・役割についてのところを明確化するというところがあります。そ のガイドラインの作成云々というところです。このガイドラインの作成という のはある意味で標準化するということで大事な作業であることはよく分かりま す。それが行政施策に直接結び付く研究であるということもよく分かります。  ただ、実施できる研究者ということが限られているということ。ここが現場 の人間から言うと、例えば私どもの在宅の関係のことだったら、ガイドライン を作るのはこの人というような、決まっているところがあります。本当にそれ がいいのかなということを、時に疑問に思うことがあります。やはり現場の感 覚というものとかけ離れたようなガイドラインであっても、それができたら安 心して、また次のガイドラインを作るというようなことがしばしば行われます。 ですから、ここの研究者ということも、この人という指定席みたいなのを決め るのではなくて、もっと幅広く探していく作業をできるような形にしていただ けないかということを思います。  もう一つは、福井先生や金澤先生の評価の問題と関連するのですけれども、 この研究自体は政策をどうやって行えるかという研究が基本的になると思うの です。その研究自体が優れているか優れていないか、実際に役に立つかどうか ということだけではなくて、そういう施策として立てたものが本当にいいのか というような評価も、特にモデル事業などをやるときにはそういうことが必要 になるのではないか。それをどのように表現したらいいか私には分からないの ですけれども、そういう視点で検討していただければと思います。 ○永井部会長  いまの点はいかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  ご指摘の指定研究のところは、これまでのご議論でも、どちらかというと今 までは指定研究ではなくて、完全に競争的なというトーンであったものを、場 合によっては指定研究の枠もあるべきというご議論があったので、こういう形 で記載しております。こういうものであったら指定研究という意味ではなくて、 こういうときには指定研究もというトーンで記載しているつもりです。必ず指 定研究ではなくて、指定研究も行い得る余地を少しはっきりさせたいという趣 旨で記載しているところです。 ○金澤委員  別のことですが、資料2の10頁に、資源配分方針のうちの基本指針の位置付 けというのがあります。いま説明があったのですけれども、アクション・プラ ンというのをあっさり説明されました。これは、ある意味では総合科学技術会 議で相当力を入れていまやっているところなので、一言だけ言わせていただき ます。これは、今までは各省から出てくるものに評価を与えるだけだったので す。そうではなくて、総合科学技術会議の方から大まかなところを出して、各 省からそれに対してレスポンスをしていただいて、そして両方で良いものを作 っていこうではないかというのが趣旨なのです。  何と表現したらいいかは難しいのですけれども、共同作業プロセスだと言っ ているのです。そのようにきちんと受け取っていただく。しかも、片やライフ・ イノベーションということを言っているわけですので、ある意味では厚生労働 省関連の研究の出番なのです。そういう立場で、このアクション・プランとい うのはきちんと利用していただいた方がいいのではないかと思うのです。  そういう中でこれから出てくるのでしょうか、死亡率もがんの場合はいいの ですけれども、必ずしも日本の力を上げるためには、本当に死亡率だけでいい のかどうかというのは大変問題です。例えば、障がい者の数をこれ以上増やさ ないようにするとか、病気のために休職している人たちをできるだけ少なくす るという方法も含めた形で、このアクション・プランをきちんと利用していた だければと思っています。 ○廣橋部会長代理  関連して発言させていただきます。決してがんの指標が死亡率だけではない と思いますので、そこは発言しておきます。  バックグラウンドに関わるような重要な話になったので申し上げます。厚生 労働科学研究を推進するに当たり、その全体像を把握するという意味において もPD/POの役割は非常に重要だと思います。さらに今回は最後のところで、関 係予算の拡充に努めるべきで、その政策に結び付いた必要性の説明能力の強化 に努めるとあります。厚生労働省の科学技術を担当する所がもっと強化されて ということが必要なのだと思うのですが、具体的にどんな案を考えておられる のかをお伺いしたいと思います。  それと関連して資料1-2で、いま金澤先生からお話がありましたアクション・ プランなどの議論を受けて、どういうところを重点項目としようかという議論 と同時に、一方では重点化は大事だけれども、厚生労働科学研究というのは非 常に幅広い範囲をカバーしていて、その全体に対する配慮も必要であるという のは、そのとおりだと思うのです。我々にその全体像を、俯瞰図のようなもの をお示しいただいて、そして議論ができるような状況になっているのなら、も っと応援するような議論もできるし、あるいは全体を配慮し、ここには例とし てがんが入っておりますけれども、こういう課題が入っていると。他にはない のかということも含めて議論ができるのだと思うのです。そういう資料を準備 していただくことも、科学政策に取り組むことの強化につながることではない かと思うのです。  金澤先生も、総合科学技術会議は総合科学技術会議でアクション・プランを このように出されていると。それに対応して、厚生労働省の方もより積極的に 取組みになって、それが相互作用すべきだということをおっしゃったのかなと 私は理解しました。そういう面で、もっと科学技術に対する取組みの仕組みを 考えていただければと思います。何回か前の会議でこの議論が始まるときにも 申し上げたところですけれども、そこにもう一回戻ってきたというふうに私は 感じました。 ○坂本研究企画官  いまご指摘がありました何点かのうちのアクション・プランにつきましては、 まさに資料1-2の裏の方でご説明させていただいたように、総合科学技術会議 の方で、大目標、主要推進項目、主要政策項目というものはこのようにしたい ということで打ち出されております。これに関連したところで、当方として今 後どういう形のものをやっていくのかという具体案の作成作業になってくると 理解しております。正直なところ、こちらの方は内閣府としても初めての作業 で、スケジュールもかなりタイトですので、金澤先生ご指摘のように、内閣府 と連絡を取りながら、どういう打ち出しができるのかを今後検討し、色々な動 向をよくウォッチして対応していく必要があると認識しているところです。    それからPD/POの強化についての具体策につきましては、先ほど研究費予算 の議論もありましたが、どういう形がいいかというところは、いま内部で検討 中ですので、こちらで大きい枠組みの方向が出れば、当然それを次のステップ に向けて具体化するというところを考えていく課題と捉えております。申し訳 ございませんが、本日この場で、こういう形でという煮詰まった案はありませ ん。先ほどご指摘がありましたように、研究費の中なのか、別の予算とすべき なのか、その辺は来年度の予算要求がどういう雰囲気になるのか等々とも絡め て考えていくべき課題と考えておりまして、今後検討してまいります。 ○岩谷委員  「高齢者・障がい者自立社会の実現」がとりあげられています。現状を考え ると障がい者の定義が流動的になってきております。国連は医学的なレベルか ら障がいというのは定義されるのではなくて、社会的な面から障がいというの は定義されるべきと各国に求め、当事者はそのように捉えるよう求めています。 もし、障がいの定義が変わるとすれば、それに対してどれだけの支援をするか は、厚生労働省の施策に、大きなインパクトとなると思います。  先ほど金澤委員が、障がい者の数を減らすというのが一つの健康目標になる かというお話をされました。障がい者の定義そのものが国際的にコンセンサス が得られていません。国連のワシントン会議というパネルでは何年もかけて議 論していますが、世界的にどのような基準で障がい者の統計を取るかというと ころもまとまっていないのです。国の施策として障がいをどの範囲にするかの 議論を科学的なデータに基づいて行う必要があると思います。当事者側の要求 を、全部を国が支援することは、法律上・制度上困難であるでしょう。障がい 者自立ということを議論するのであれば、そこにも研究を向けるべきではない かと思っています。 ○坂本研究企画官  こちらについては、内閣府の方との非公式な意見交換ではありますが、その ときの向こうの説明としては、高齢者・障がい者の科学技術による自立支援と いう、この科学技術のところがポイントであって、ここはあくまで科学技術の 関係であるので、そういうことに役に立つ科学技術関係の芽があれば、そこに フォーカシングしたいということでした。いまご指摘の生活支援とか、そのよ うな厚生労働省の施策の話ではなくて、あくまで府省連携で実施するもので、 総合科学技術会議の方としては、この科学技術という言葉をポイントとして整 理しているのだということで、技術面という言葉がいいかどうかよく分かりま せんが、そういうところでテーマ設定を考えていこうということと理解してお ります。 ○岩谷委員  社会的な、福祉的なサービスとしてどういうサービスが必要かを決めるベー スは科学的なデータに基づくべきです。必要と求められるものすべてに応えら れる福祉サービスを国は作れないわけですから、基礎的な、学際的な研究が必 要と思います。 ○今井委員  資料1-1の2.の後ろから2番目の「○」のところに、「パブリックコメントを 行うことも検討する」というのがあります。資料1-2の1頁の「●」の1番目 のところに「パブリックコメントを実施し」云々とあります。事前に予備実験 みたいな形で実施してみたのかどうかというのをまずお聞きします。  こういう公募課題とか主な研究課題みたいなものに関しての、パブリックコ メントそのものの実効性というか、それ自身を評価できるのかどうかというと ころが、なんとなく私は今までのところ疑問もあるのではないかと思っており ます。  もう一つは、日本が諸外国に比べて厚生労働的というか、健康に関する面で はかなり優れた面はたくさん持っているとは思うのです。ただグローバルな中 で、例えば労働者に関して、いま日本人の人材市場価値がものすごく落ちてし まっている状況です。アメリカの大手派遣会社のデータによると、もちろんそ れは日本がやっているようなアルバイトの派遣みたいなものではなく、トップ の人たちからスペシャリストの派遣みたいなところも全部含めた形でなのです が、そういう所からしても大体2005年には中国に抜かれて、2008年にはインド に抜かれている、それも男性の話です。女性に関しては、日本が持っている価 値観がアラブ諸国並みで、ワースト5のうちワースト3ぐらいに価値観がなっ ているというデータが出ています。  その辺も含め、いま世の中全体がうつ状態みたいなことになっている。そこ で、国民の健康もどちらかというと精神面での不健康さが非常に目立っている ような状態です。そうすると、内輪だけでパブリックコメントのようなものを 求めていったことにより、何か新しいものが出てくるかというのがちょっと気 になるところです。やはりグローバルに全体像を見たときに、いま日本は先進 諸国の中にいると思っているけれども、中進国の方がアイディア的にもずっと 優れてきている面もあります。  日本に来て買物をする人たちが、例えば韓国人は日本の方が自国よりも、食 料の安全性が高いから買っているみたいな、外国人の評価の方が、日本の評価 が高かったりといろいろなことがあります。この辺をいろいろやってくるとき に、必ずパブリックコメントを求めるというのが一つの逃げ道になっていた部 分があります。今回は、もうちょっと根本的に、事前評価委員の方々の選出も そうなのですが、グローバルなものの見方とか、諸外国の方々だったら、この 日本にどういうものを置いたらいいと思われるかみたいなところまでちょっと 広げて意見を聞かれた方がいいのかと思います。 ○坂本研究企画官  パブリックコメントについては、内閣府の方でも今度作るアクション・プラ ンについてパブリックコメントをやる予定という説明を聞いております。そう いう大きい話の場合には、政府全体ではパブリックコメントをやる方向性にな っているというのは確かです。  本件についても、とにかく幅広く意見を聞くべきであろうというご議論があ ったときに、パブリックコメントというツールは考えざるを得ないかというこ とで、検討課題ということで記載しているところです。先生のご指摘に関して、 グローバルということで、仮に英語でパブリックコメントをするということに なると準備等々でフィージビリティ等について少し検討しなければいけないと ころが出てくると思います。  ご指摘の、研究課題のパブリックコメントをやったことはあるかということ については、たぶんこれまでそういうことはしていないと思います。思いつく 限りでこういうのがありましたというものはすぐ出てきません。資料中に検討 課題ということも記載していますように、具体的にどういう形で実施するのが 一番効率的なのか、一つひとつの課題を書いてどうですかというのはちょっと 違うのではないかという感じもありますので、実際にパブリックコメントを行 うにしても、現場のニーズというか、患者さんからのニーズをうまく吸い上げ るというか、そういう意見がきちんと吸い上げられる形というのは少し工夫し た上でないと、いきなり実施しても、おっしゃるとおりあまり効果的ではなく て、ただ労力だけかかる可能性もありますので、その辺は検討課題と思ってお ります。日本語以外について実施するということまでは、いま想定できており ません。これでお答えになっているでしょうか。 ○今井委員  あくまでパブリックコメントでやりたいというお答えですよね。 ○坂本研究企画官  やり方はともかく、広く意見を聞くときにそのツールを使わないで、より良 いやり方について思いついていないというのが正直なところです。こういうや り方で行っていれば、パブリックコメントをしなくても広く意見が集められる というようなことになるのであれば、すべての研究事業でパブリックコメント をしなければいけないのだろうかという問題は当然あると思っておりますので、 その辺も含めた検討課題だと思っています。  先ほど申しましたように、どういうレベルで行うかも含めて考えていく必要 はあるのですが、パブリックコメントというツールについて真面目に検討する 必要があるのではないかという意味の記載ということになると思います。 ○今井委員  たぶん今年度は間に合わないと思いますので、パブリックコメントをより良 くしていただくしかないかなとは思います。できれば、その研究課題の中に行 政課題として、研究課題そのものとして何を選ぶかという研究課題を行政課題 として次回に付けていただけるといいかなと思います。別の方向からの見方が できると思います。 ○坂本研究企画官  そういう研究を一つやってはいかがかというご指摘ですか。 ○今井委員  はい。 ○永井部会長  それも、一つの評価研究ということになるのでしょうね。 ○金澤委員  質問なのですが、パブリックコメントというのはいろいろな面でやらなけれ ばいけないような面もあって、それはそれでいいのですけれども、そういうも のに是非乗ってもらいたい団体というのはないわけではないと思うのです。こ の頃はちょっと変になってしまったかもしれないのですけれども、厚生労働省 関係でいえば、今までのセンターがあります。国としてきちんとした責任を持 っている専門家の集まりみたいな所があるわけですから、そういうものには必 ずコメントを求めるような形というのはあり得るのではないかという気がする のです。そういうことを考えられるかどうかです。私は、やった方がいいので はないかと思っています。 ○坂本研究企画官  先ほど来ご説明していますように、いま我々の方でこういうやり方という決 まっている案はなく、これから検討するということですので、いまのご指摘も 含めて検討したいと思います。 ○廣橋部会長代理  確かに、一般の方々からの意見を吸い上げているということを示すために、 いまパブリックコメントという手法がよく使われます。専門家に聞くところは 金澤先生がおっしゃるようにそれはそれで結構なのですけれども、一般の方に はこの研究内容、そしてそれを実施すればどういうことができるのか、どうい う成果が生まれるのかということに対する十分な説明がなければ、パブリック コメントの本当の意味は機能しないと思うのです。厚生科学研究でどういう研 究をしていて、その結果どういう成果が得られるということについての説明が 必要でしょう。  それで何らかの方法で情報を集める。その集めたものを整理して、それを議 論して、その中から適切な課題が選べるような作業を実施しなくてはいけない わけです。ただ単に意見を聞いて、それを並べただけでいいということではな くて、これは大変大きな取組みで、しかも非常に重要な取組みになるのだろう と思うのです。そういうものが、先ほど今井委員からお話がありましたように、 行政だけではなかなか大変だろうから研究班でもつくってやるべきか、それと も行政の中にそういう仕組みをきちんと取り込んでやっていただけるのか、や っていただく方がいいのかということも最初のときから議論してきたと思うの です。是非何らか現状を打開する方策を考えていただきたいと思います。 ○坂本研究企画官  いまご指摘のあった広報ということは、資料1-1でも一つ項目を起こしてい ますように、その重要性は認識しております。仮にパブリックコメントを実施 する際には、全体の活動も含めて内容等が分かりやすいように工夫を考えたい と思います。 ○川越委員  いまのパブリックコメントの件ですけれども、がん対策推進協議会では、そ の推進のための施策をどのようにするかを決めることをやっています。そのと きに、全国で6カ所の会場でパブリックコメントをいただきました。もちろん ネットで意見を言えるような格好にもしてあったのですけれども、それに私が 数カ所出て気づいたといいますか感じたことは、国民がどういうことを考えて いるか、どういうことを希望しているかを吸い上げることは非常に大事なツー ルだというのは間違いないということです。ただ、それを並べて、そこから抽 出して、施策とするのがいいのかということになると、廣橋委員のおっしゃっ たように、やはり整理していく作業は絶対に必要だということを感じました。  それから、2頁の評価についてなのですが、いつも私は現場の話しかできなく て恐縮なのですが、例えば3.の評価の「○」のいちばん最初のところに、「専 門家を評価委員とし」と書かれています。四つ目の「○」に「専門家だけでは なくて、患者等の当事者の評価の導入を検討する」というのは非常によろしい ことだと思うのです。ただ、現場で働く医療者あるいは福祉関係者の評価とい うものも是非反映していただきたい。これを一つの文言として入れるかどうか は、厚生労働省の方で検討していただきたいと思います。こういう研究成果が 現場に反映されるかどうかというのは、専門家だけではなくて、本当に現場で 働く者の評価が大切なので、そういうものが反映するようなシステムを是非作 っていただきたいと思います。 ○南(裕)委員  前回QOLの向上とか、ソフト面の研究のときに厚生科学の中でやっていただ きたいのでこれが入っているのは大変ありがたいと思います。内閣府の総合科 学技術会議のほうでは、大目標の高齢者・障がい者自立社会の実現に対し、推 進項目は先ほど説明された「科学技術による自立支援」、それを受けて「生活支 援技術の開発」という形で、いわゆる「科学技術」に特化しているのだという お話がありました。  一方QOLだとか、又は重点化すべき領域として少子化・高齢化に対して活力 あふれる社会の実現に向けた研究の中には、例えばメンタルヘルスというかな り大きな問題があると思うのです。そのメンタルヘルスでは、例えば自殺防止 の問題や鬱への働きかけ、またはパニック症候群等のことなど、さまざまなメ ンタルヘルスの問題があります。それは重点化すべき分野の中に含まれている のか、重点化すべき分野以外の中に含まれているのか、私は重点化のほうにメ ンタルヘルスまで入っていることを期待します。 ○金澤委員  1-2の2頁目の上に表になっているのをお出しいただきましたが、4月28日 以降、実は変わっています。いまの南委員の意見のようなことを私が言って、 例が少し変わりました。大体、「アルツハイマー・認知症」なんていう言葉は世 の中にないのです。「アルツハイマー病及びその他の認知症」ということになり ましたし、心筋梗塞と脳卒中を「・」でつなげるのはありませんから、「及び」 になると思います。その他に、アルツハイマーと心筋梗塞の間に鬱病が入ると 思います。私もその一員ですけれども非常に辛い立場で、どうしても科学技術 の方にこだわるのです。ですから、こうなるのはしようがないのですが、イノ ベーションというのは科学技術の革新ももちろんあるけれども、その他に制度 の革新があり、意識改革があるだろうと言っているわけです。そういう点から 見ますと鬱病に関しては明らかで、早期発見、早期治療が予防の最大の大事な ポイントなわけです。それを実は言ってあります。ですから、ここは少し変わ ると思います。  ただ、ここは誤解していただきたくないのですが、予算が付くとか付かない という話ではないのです。つまり厚労省が先ほど共同作業と言いました。厚労 省の方々はメンタルの問題も非常に大事であると見て、それに何かの施策を考 えてくださることが大事なのであって、そういうことを期待しています。 ○坂本研究企画官  いま、こちらにお示ししているものは内閣府の方で検討されているものです が、最近聞いている説明としては、今年度はモデル事業的にしっかりできると ころを対象にしたいということで、ここに入らなかったから駄目等の評価をす るものではないという説明も聞いています。あれもこれもと盛り込み過ぎたら、 うまくアクションプランもできないということで、内閣府の方から聞いている 説明としては、これに入らなかったからと言って内閣府側が駄目等の評価をす るわけではなく、モデル事業的に整理をしたいという説明ですので、今はそう いう状況ということで先方の作業を見守りつつ、対応しているところです。 ○永井部会長  時間の関係もあり、資料1-2の今後の主な研究課題等について(案)は、次 回も引き続き検討ということにさせていただきたいと思います。資料1-1の今 後の厚生労働科学研究について(案)は、今いただいたご意見も踏まえて事務 局で取りまとめ、(案)を取った形で取りまとめを行いたいと思います。その内 容につきましては私にご一任いただけますでしょうか。もしご意見がありまし たら事務局にお寄せいただきたいと思いますが、とりあえず今日のところで議 論はまとめとさせていただきたいと思います。ではそのように進めさせていた だきますので、よろしくお願いします。  次に議事の2の遺伝子治療臨床研究について、千葉大学医学部附属病院から 申請のあったもので、4月30日に厚生労働大臣から諮問され、同日付で当部会 に付議されています。事務局よりご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  資料3をご覧ください。千葉大学医学部附属病院からの申請です。遺伝子治 療臨床研究を行おうとする施設から意見を求められた場合には、「遺伝子治療臨 床研究に関する指針」に基づき、複数の有識者のご意見を踏まえて新規性を判 断した上で、厚生科学審議会に諮問させていただいています。1頁目が諮問書、 2頁目が付議書です。  3頁をご覧ください。遺伝子治療臨床研究の課題名は家族性LCAT(レシチン: コレステロールアシルトランスフェラーゼ)欠損症を対象としたLCAT遺伝子導 入ヒト前脂肪細胞の自家移植に関する臨床研究です。この臨床研究はLCATとい う酵素が欠損している病気、LCAT欠損症を対象としていて、これは稀な遺伝子 疾患ということです。  6頁の対象疾患及びその選定理由の欄の上の方に、この疾患に関する記載があ りますが、本邦で22家系報告されているということであり、低HDL血症、角膜 混濁、腎障害、溶血性貧血など多様な臨床症状を呈するということで、現在、 有効な治療方法は確立されていない状況です。この研究は、レトロウイルスベ クターを用いてLCATを作る遺伝子を導入した、自己の皮下脂肪組織由来のヒト 前脂肪細胞を培養調整して、それを患者の皮下脂肪組織に移植することにより LCATの補充を期待して行われるものです。この病気について、原因遺伝子の導 入による治療を試みる臨床研究は本邦初であり、遺伝子導入に際して自己前脂 肪細胞を用いる点も新規性があります。  8頁から遺伝子導入方法の概略や当該導入方法を選択した理由の記載があり、 9頁の上の方に用いるレトロウイルスベクターについての記載があります。増殖 性ウイルス出現の可能性は低く抑えているといった説明もございます。  22頁に実施計画という欄があり、遺伝子治療臨床研究概要があります。家族 性LCAT欠損症との確定診断を受けた患者さんに対して、ヒトLCAT遺伝子を導 入した自己の前脂肪細胞を皮下脂肪組織内に注射移植した場合の安全性と有効 性の評価を行う研究です。  23頁の上の方ですが、移植後6カ月間にわたって移植部位の所見や全身状態 についての観察を行い、血液検査、臨床症状の経過観察を行い、有効性につい ても評価する予定で、長期フォローの計画もあります。臨床研究の実施予定症 例数は、一番下にありますように3症例となっています。  前々回(第55回)の科学技術部会において、口頭で簡単にご説明しています が、本件はこれまでにない新しい分野の研究で、新たな作業委員会を設置する 必要があると考えられます。そのため、島田先生に委員長をお願いしている既 存の作業委員会を改編し、遺伝性疾患に関する遺伝子治療の臨床研究の作業委 員会を設けることを予定しており、部会長とご相談して、いま準備作業をして いるところです。この実施計画については本部会で本日ご審議いただき、それ を踏まえまして、今後は新しい作業委員会においてウイルスの安全性など、主 として科学的事項の論点整理を行っていただくことになります。  この資料にはもう一つ案件がありまして、53頁をご覧ください。諮問書がご ざいます。遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価の関係資料が53頁か らになっています。いわゆるカルタヘナ法と呼ばれる、この諮問書の最初に書 いてある少し長い名前の法律がありまして、このカルタヘナ法では、開放系で 遺伝子組換え生物等を使用する場合を第一種使用等としていて、ウイルスベク ター等の遺伝子組換え生物等を使用する臨床研究については、第一種使用規程 の承認を受ける必要があります。遺伝子組換え生物等の生物多様性への影響を 評価し、第一種使用規程として、保管、運般、廃棄、実際の使用方法等につい て事前に主務大臣、この場合は厚生労働大臣と環境大臣の承認を得ることにな っています。第一種使用規程の承認に当たっては、主務大臣は学識経験者の意 見を聞かなければならないとされていて、その場として、この部会及び部会の 下に生物多様性影響評価に関する作業委員会を設置しています。  56頁、57頁が、この遺伝子組換え生物等の第一種使用等の方法の案です。58 頁からが、生物多様性影響に関する情報をまとめ、評価するための生物多様性 影響評価書です。本日、ご議論いただいた後は、既に設置されている遺伝子治 療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する作業委員会で、生物多様性影響 の観点から評価いただくことになっています。作業委員会の委員名簿は77頁に ありますが、委員長は小澤先生にお願いしています。この作業委員会で論点を 整理した上で、再度、この部会でのご議論をお願いすることを予定しています。 本件の説明は以上です。 ○永井部会長  ありがとうございます。ただいまのご説明、また倫理的な点も含めましてご 議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。これはレトロウイルスを使 う予定ですけれども、我が国でレトロウイルスによる遺伝子治療というのは、 今まで例があるのでしょうか。 ○坂本研究企画官  今、他の研究の実際の患者さんの登録状況等はご説明できませんが、前例は あったはずです。ただし、ウイルスベクター等についてはよく見る必要がある と作業委員会の先生からも既にご意見をいただいていますので、作業委員会の 方で十分ご議論していただく必要があると認識しています。 ○永井部会長  よろしいですか。 ○西島委員  非常に基本的な質問ですが、こういった細胞に遺伝子を入れて、それを皮下 に入れるということですけれども、その入れた結果、この細胞というのはどの くらい体の中で存在し続けるかは、かなりよく分かっているのでしょうか。 ○坂本研究企画官  動物実験のデータはいくつかあり、その上で計画を立てていますので、その 内容についても作業委員会でご議論いただくべき課題と思います。また、部会 長からのご指摘については、本日、お配りしている参考資料2の1頁に我が国 で実施されている遺伝子治療臨床研究の一欄があります。この1番はレトロウ イルスベクターで、2番、4番、13番、16番、17番等々、こういう実績はあり ます。ただし、当然、ウイルスの使い方等も違いますので、その臨床研究に即 して内容をよく議論していただく必要があると考えています。 ○永井部会長  よろしいでしょうか、そうしますと、安全性について十分ご審議いただきた いということを特に強調してお伝えいただければと思います。この件について はこの部会で了承したということで、各作業委員会での論点整理を行っていた だき、またその検討結果については当部会にご報告いただき、さらにこちらで ご議論いただくことにしたいと思います。  続きまして議事の3のヒト幹細胞臨床研究について、ご審議をいただきます。 これは慶應義塾大学医学部等4機関について、審査委員会の結果についての審 議です。今日は末松委員はご欠席ですが、慶應義塾大学医学部の審議において は、ご発言を控えていただくということになります。よろしくお願いします。 では事務局よりご説明をお願いします。 ○研究開発振興課  ヒト幹細胞臨床研究については、冊子となっている資料4を用いて説明させ ていただきます。「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づいて申請 された、ヒト幹細胞臨床研究実施計画について、専門委員会であるヒト幹細胞 臨床研究に関する審査委員会で審議された結果、指針への適合性が了承された4 件の申請について、ご報告申し上げます。  資料4をご覧ください。今回、ご報告申し上げますのは、表紙にありますよ うに慶應義塾大学医学部、財団法人住友病院、島根大学医学部、奈良県立医科 大学の研究実施計画の報告です。その実施計画の概要と審査委員会での審議経 過について、ご報告申し上げます。  1頁をご覧ください。慶應義塾大学医学部からの申請、末梢動脈疾患患者に対 するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験に関して、 ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会永井委員長からのご報告です。  2頁が研究実施計画の概要です。研究責任者は慶應義塾大学医学部の尾原秀明 先生です。臨床研究の概要をご説明します。また14頁にポンチ絵もありますの で、そちらもご参照ください。この研究の対象疾患は末梢動脈疾患で、既存の 治療に抵抗性の患者さんを対象としています。G-CSF皮下注射から4日目に自己 末梢血を採取し、アフェレシスにより単核球を採取します。末梢動脈疾患患肢 の筋肉内70〜150カ所に注射し、末梢血管の再生効果を見るという研究です。 本研究は、計21施設が参加予定の多施設の共同臨床研究として計画されていて、 目標症例数は144例、その半分ずつを無作為に割り付けることになります。推 奨治療法群、あるいはG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植併用治療群のいず れかに割り付けて、有効性と安全性を評価するものです。本件のプロトコール は、既に札幌北楡病院のほか、12機関の申請が了承されていて、審査委員会で は、主に施設における倫理審査の内容と研究機関の基準を中心に審査すること となりました。  3頁に審査委員会での審議概要があります。4月2日に行われた審査委員会に て審議を行い、了承されています。4頁以降は申請書、実施計画書、被験者への 説明文書、同意書となっています。  次の研究計画ですが、財団法人住友病院からの申請に関してご説明申し上げ ます。先ほどの慶應義塾大学からの多施設共同研究と同様のプロトコールとな っています。31頁に審査委員会永井委員長からの報告があります。32頁に概要 があります。実施施設は財団法人住友病院で、研究責任者は坂口勝彦先生です。 以下の内容については、慶應義塾大学医学部と同様のプロトコールのため省略 させていただきます。33頁に住友病院の審議概要があります。所属研究機関の 倫理審査委員会での審議と施設基準について、審査委員会にて審議を行った結 果、了承されています。  次は70頁をご覧ください。島根大学医学部からの申請です。重症低ホスファ ターゼ症に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植に関して、ヒト幹細胞臨 床研究に関する審査委員会永井委員長からの報告です。71頁に概要があります。 研究責任者は島根大学医学部の竹谷健先生です。  概要ですが、アルカリホスファターゼ欠損のため、骨を作ることが障害され る低ホスファターゼ症の中で、特に重症の経過を辿る乳幼児期の患者さんを対 象とした臨床研究です。重症型というのは呼吸障害をきたし、致死性の経過を 辿ることが多く、現在では呼吸管理や痙攣に対する抗けいれん薬などの対症療 法が行われているにとどまります。現在、海外では新規の薬剤の治験が始まっ たところと聞いていますが、本邦を含めて有効な治療法はまだ見つかっていな い状況です。  今回の臨床研究について、76頁からの実施計画書と112頁のポンチ絵で説明 させていただきます。重症低ホスファターゼ症の診断は島根大学にて行われま す。対象となるのは、生後6カ月以内に発症し呼吸障害を合併する、アルカリ ホスファターゼ活性の低いALP遺伝子変異を有する患者、さらに骨形成能も低 下していることのすべてが確認された患者が被験者となります。骨髄提供者は 二親等以内の患者家族となっていて、自己の細胞ではないものを用いることに なります。ドナーの適合性として、本疾患を発症していないなどの基準を本研 究では定めています。  研究内容ですが、初めに骨髄移植を被験者に対して行います。その一部の骨 髄細胞を島根大学の医師が産業技術総合研究所に運般し、セルプロセッシング センターで培養を行い、培養して得られた骨髄間葉系幹細胞を島根大学にて被 験者に投与するという研究になります。ドナーの間葉系幹細胞が骨髄に生着す ることでアルカリホスファターゼが産生され、呼吸状態などの症状が改善する ことが期待されるということになっています。  本研究の前臨床研究が行われていますが、適切な疾患モデルがないために、 間葉系細胞移植に関する動物実験がなされています。その概要は資料にはあり ませんが、系統の異なる数種のラットを用い、間葉系幹細胞の移植を行い、間 葉系幹細胞の生着の有無についての検討を行っています。系統が異なるため免 疫抑制剤を用いて幹細胞が骨に最終的に生着することが示されていて、同種の 骨髄間葉系細胞の移植のモデルを示しています。  本研究で用いられるセルプロセッシングセンターでは、既に80例以上のヒト 骨髄間葉系幹細胞の培養研究があり、主に整形外科領域の患者さんを対象とし て既に臨床研究が行われているところです。今回の臨床研究計画の実施が可能 であると判断した理由としては、明らかな動物モデルがありませんでしたが、 実際には既に本申請機関を含めて3カ所の機関から、3例のヒトでの症例報告が あります。重症の疾患患者様を対象として骨髄移植をまず初めに行い、その後、 2段階目として間葉系の幹細胞移植を行って、3例の呼吸状態が改善していると いう報告が既にあります。骨髄移植というのは単独では造血系の幹細胞を移植 するため、骨髄移植単独で呼吸状態の改善までは、至ることがないとされてい て、本症に対する治療にはなり得ません。そこで、その後に間葉系の幹細胞の 移植を併用する2段階治療を行うことで、治療効果をきたすということが考え られています。  今回の審議経過ですが、72頁に審議経過があります。当初は幹細胞だけの移 植術の単独治療を想定していましたが、今までの3例の既報に従い、1段目に骨 髄移植を、2段階目の治療として間葉系幹細胞移植を行うということで、2段階 の治療を行うように研究内容を変更しています。  次の論点ですが、大変難しい論点として未成年者がドナーになり得るという 問題がありました。今回は自己の幹細胞を用いずに家族が骨髄のドナーとなる ことがあり、したがって特に同胞である若年の未成年者がドナーとなる可能性 が十分あります。そういった場合について十分な配慮が必要であるという意見 がありました。未成年者のドナーの選定に当たっては、個々の研究について学 内で倫理審査委員会の審査を行い、さらに病院のコーディネーターやソーシャ ルワーカーから説明をする形で、慎重な対処をするようにという修正がなされ ています。これらの変更内容について審査委員会にて審議を行った結果、本臨 床研究は承認されています。  最後の研究ですが、奈良県立医科大学からの申請で、113頁に永井委員長から の報告があります。顎骨嚢胞摘出後の骨欠損を対象とした自己骨髄培養細胞由 来再生培養骨の有用性を検証する研究です。114頁に概要があります。研究責任 者は奈良県立医科大学の桐田忠昭先生です。対象疾患は顎骨嚢胞で、培養骨移 植10例と自家骨移植10例の非ランダム化比較試験を行うとなっています。本 研究は自家骨移植が必要となる大きな顎骨嚢胞に対し、自己骨髄培養細胞由来 再生培養骨を用いて、手術後の骨欠損部への補填を行う治療法の開発を予定し ています。骨髄細胞から分離・培養して得られた骨芽細胞と、セラミックを複 合化することで得られる培養骨移植法が、現在、行われている自家骨移植法の 代替法となり得るかどうかを検討する研究計画です。  136頁、137頁にポンチ絵がありますので、こちらのほうで補足させていただ きます。顎骨嚢胞の患者さんに対して、初めに自家骨移植または再生培養骨移 植法をインフォームドコンセントして、患者さんの自由意思により治療法を選 択していただきます。自己骨髄培養細胞由来再生培養骨移植手術に対しては、 術前に骨髄採取を行い、産業技術総合研究所にて間葉系細胞を培養します。人 工骨の中身はβTCPと言われるものですが、それを混合培養して再生培養骨を作 成します。奈良医科大学附属病院にて顎骨嚢胞に対する摘出術を施行する際に、 同時に移植術を行うという研究です。評価としては、自家骨移植法と培養骨移 植法を比較することで、安全性と有効性を評価する研究ということになります。  115頁から審査委員会での審議概要があります。当初、申請時の計画では、顎 骨良性腫瘍、顎骨腫瘍類似疾患を幅広く対象として計画されていましたが、審 査委員会での意見として、高頻度に再発する疾患というのは除外基準にいれる べきであろう、という意見がありました。もしくは術後一定期間後に再発を除 外した上で、培養骨の移植を行うなどの再発に対する配慮を十分にするべきで あろう、といった意見もありました。それに対して申請者側からは、まず顎骨 嚢胞を対象疾患として臨床研究を開始するように変更しています。ほかの論点 としては、産業技術総合研究所への搬送について、もしくは調整工程で感染に 対する評価・対策についての疑義が委員会からなされていて、申請者からは適 切な回答をいただいています。審査委員会にて本研究計画は了承されています。  以上、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で、指針への適合性が確認さ れた四つの申請についての報告を終わります。 ○永井部会長  ありがとうございます。私が委員長を務めていますので少し追加させていた だきますが、1番目と2番目の末梢動脈疾患患者に対する、G-CSF動員自家末梢 血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験というのは、この委員会でも度々 出てきましたけれども、札幌北楡病院が中心となって行っている多施設共同ラ ンダム化試験で、これについてはあまり問題がありませんでした。  一番議論されたのは、3番目の島根大学医学部からの重症低ホスファターゼ症 に対する骨髄移植併用同種間葉系幹細胞移植です。致命的な疾患であることと、 ドナーが場合によっては兄弟から行われる可能性があるということで、15歳以 上であれば代諾者の同意と本人からも同意を得ることになりますが、15歳未満 の場合には代諾者の同意のみが必須となります。そこの説明のあり方、あるい は本人にどれだけ理解させることができるのかというところが議論になりまし た。もとの疾患が致命的であるというところで、委員会としては十分に未成年 者に対する説明を行うことを条件に、この申請を認めたわけです。最後の奈良 県立医科大学のプロジェクトについては、当初、良性腫瘍も適応症に入ってい ましたけれども、再発を起こす場合があって非常に判断が紛らわしいというこ とで、顎骨嚢胞のみを対象として、まず研究を行うことにしていただきました。 以上ですが、ご質問、ご意見がございましたらお願いします。よろしいでしょ うか。 ○川越委員  委員を1年していて、まだこんなことを言っているかと怒られそうですが、 例えば何番目の研究でしたか、自己の末梢血を使ってG-CSFを培養してという ことで、それを戻すという末梢血管の疾患の研究ですかね。個人的には本当に それが効いたかどうかに非常に興味がいくのですが、その研究のここでの審議 のポイントは、この安全性と、研究の体裁をちゃんととっているかの説明と、 倫理的な問題があるかどうかということで、それは、たぶん委員会の方で十分 議論されていると思いますけれども、結論を聞きながら分からないので恐縮で すが、お願いします。 ○永井部会長  例えば、このG-CSFのプロジェクトに関しては繰り返し出ていて、おおよそ のところはご了解いただけていると思いますが、新たな問題はあまり出ていま せん。むしろこれは本当に有効かどうかを、きちっと評価しないといけない段 階にある研究というふうにご覧いただければと思います。こちらの部会でご意 見をいただきたいのは、先ほど私が追加してご説明したように、致死性疾患で 未成年者からの骨髄提供をどう考えるか。あるいは最後の顎骨嚢胞適出後の骨 欠損に対して自家骨髄培養細胞を使うときの適応症とか、その辺のところにつ いてご意見をいただければと思います。特に倫理的な問題については、いろい ろな角度から検討が必要だろうと考えています。 ○川越委員  そういう点から言いましたら、やはりフェーズIというか、人体に適用する 前に動物実験が十分なされているか、その辺の問題がどうしてもあると思いま す。先ほどのアルカリホスファターゼですか、欠損症についての動物モデルな り動物実験は何か記載がありましたか。 ○研究開発振興課  動物モデルは、間葉系幹細胞をラットに対して移植するというモデルがあっ て、特に同種移植の評価ということで、3系統ほどの違う系のラットを使い、免 疫抑制剤の併用と非併用で、間葉系の幹細胞を移植し移植率を検討していると いうものです。実際に同種移植で行うときには免疫抑制剤を使わないと、なか なか生着しないというデータが出されています。通常の場合ですと疾患モデル があるケースが多いのですが、今回の低ホスファターゼ症については疾患モデ ルがないということで、疾患モデルに対しての検討は行っていないということ です。 ○南(裕)委員  この研究自体についてというよりは、若年者がドナーである場合の研究倫理 の問題ですが、兄弟にそれを求めていくときに、「ノー」と言う権利をちゃんと 保証することが必要だと考えます。きちんとケースワーカーやコーディネータ ーがインフォームドコンセントを取ることが大切です。私の経験からいくと、 こういうことが成功しなかった場合のドナーの辛さというのがあります。そこ までケースワーカーや看護職、また誰かが「あなたの責任ではない」とフォロ ーする必要がある。子どもは生着しなかったら自分の責任だと、いくら説明さ れてもそう思ってしまう特徴があるので、そこら辺のことも含めて(事前の倫 理的な問題はクリアできるのですが)、事後のことへの影響に関して何か考えて 配慮されているのかについて、質問させていただきます。 ○永井部会長  事務局からお願いします。 ○研究開発振興課  今回、申請者に対してお願いしたのは、特に治療の前だけでなく後の方に対 しても、そういったフォローアップをしっかりするように、今回はケースワー カーという形で特別な研究者のみでなく、周りのバックアップ体制をしてくだ さいということを、お願いしていますので、こういった表現になってきている と思います。特に今回の部会でそういったご意見があったことを、申請者の方 には強く返答しておきますので、ありがとうございました。 ○永井部会長  他に、いかがでしょうか。 ○佐藤委員  いま南先生がおっしゃった、未成年者に対して、「ノー」と言えるんですよと いうことを十分にお話することは、大事だろうと思いますが、それがどれくら い理解されて実効性を持つのかというのは、かなり疑問のような気がします。 子どもの頭の中で兄弟を救いたい、みたいな考え方もあるでしょうし、「ノー」 と言ったときの親の反応とかを考えることがあったりして、それはいくら言っ ても、たぶんかなりのプレッシャーがかかるだろうということで、何かもう少 し外側からそれを守ってやれるようなことができないか。それが何かというの は私の頭の中にはないのですが、そういう仕掛けが必要なような気がします。 その辺はどう考えたらいいのか自分でもよく分かりませんけれども。 ○永井部会長  なかなか重い問題で、いかがでしょうか。むしろ委員の先生方から何かご提 案があればと思います。 ○川越委員  ざっといま、どういう説明をして同意書をいただいたのか見たのですが、子 どもにこれをそのまま渡しても分からないと思うので、たぶん子ども用のは別 の説明が準備されていると思いますので、それを知りたいというのが一つです。 それと南委員の意見とも関連するのですが、自分が提供した骨髄がどういう使 われ方かというよりも、その兄弟の命にどういう影響を与えるのか。提供する ことによって苦しみが少なくなるという説明があれば、それで納得できるとい うところもありますから、そういうことも含めて、子どもに対してどういう説 明をしているか、先生がお分かりでしたら教えてください。 ○永井部会長  子ども用の説明書というのは、どうだったでしょうか。 ○研究開発振興課  今回、申請者からのそういった説明書はいただいていません。おそらく適時、 そういったコーディネーターの方などの手腕によるところもあると思います。 もし参考までに是非ということであれば申請者に伝えることは可能で、後日、 メール等でご返答させていただきたいと考えています。 ○井部委員  94頁に研究体制が示されています。これを見る限り、例えば先ほど出ました 臨床研究コーディネーターのような人が研究体制に入っていないようです。子 どもへの説明やケアをする役割を持った人が、研究組織の中に入っていてもい いのではないかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。 ○永井部会長  今までの例ですと、研究者中心に構成されていたということだと思いますが、 コーディネーターに入っていただくのは問題ないと思いますので、事務局から その旨、島根大学に伝えていただくことにしたいと思いますが、いかがでしょ うか。 ○研究開発振興課  御意見ありがとうございます。コーディネーターはどなたが担当になるか研 究計画書に記載していただくように、こちらから連絡致します。 ○福井委員  研究体制の中に入るということが、どういう意味か分かりませんけれども、 インフォームドコンセントは研究者が取るのに加えて、第三者が確認しないと 駄目なわけです。私は、かつて京都大学で生体肝移植を行うときに、全く別個 のグループでインフォームドコンセントを取る委員をしたことがあります。確 か3〜4回インフォームドコンセントを取っていたように思います。こういう ソーシャルワーカーやコーディネーターが研究グループの一員になることが、 かえってバイアスがかかって研究を促進する方向にいくことも、ちょっと問題 かなと思います。 ○永井部会長  確かに研究体制の一貫ではあるけれども、研究者ではないということは明確 にしておかないといけないですね。 ○福井委員  そこのところを確認していただければ。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。今いただいたご意見を島根大学の方にお伝えして、そ して研究を進めていただくことにしたいと思います。ありがとうございました。 続きまして議事の4の報告事項です。遺伝子治療臨床研究に関する実施施設か らの報告について、事務局よりご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  資料5について、ご説明します。遺伝子治療臨床研究に関して報告が2件あ りました。1頁、1件目は東京大学医学部附属病院からの重大事態等報告書です。 研究の課題名は、進行性膠芽腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペス ウイルスG47Δを用いた遺伝子治療(ウイルス療法)の臨床研究です。3頁の真 ん中より少し上に重大事態等の内容及びその原因という欄があり、ここに経過 等が書いてありますが、この臨床研究の被験者の患者さんが、原病である膠芽 腫の増悪によりお亡くなりになったという報告です。  経過としては、この遺伝子治療(ウイルス療法)が実施されましたが、標的 病変の増大が認められ、治療は中止となったということです。その後退院され、 一旦別の病院に入院されたりしていたということですが、遺伝子治療後約3カ 月でお亡くなりになったということです。第2回の投与がなされた7日後に、 治療前に比べて原病変の増大が認められており、1回目と2回目のウイルス投与 時に行った生検組織のいずれも増殖能の高い腫瘍組織が観察されていたという こと、2回目の生検で炎症所見は観察されず、臨床経過は再発膠芽腫の進行に伴 うものとして矛盾しないということです。また、3頁の下の方にありますように、 投与したウイルスに起因すると考えられる重篤な有害事象も認められていない ということです。その後の対応状況のところでは、投与後時の血液、尿、唾液 の検査で、投与したウイルスのDNAは検出されていないという情報も報告され ています。2頁の下の方には施設の審査委員会の意見があり、今回の死亡につい ては、遺伝子治療による直接の因果関係は認められないということです。本件 が対象としている疾患は、予後が不良で、増殖速度も速いことが知られている ものです。本件の速報をいただいた段階から作業委員会の先生方にこの内容に ついてのご確認をお願いしています。  4頁からが2件目です。財団法人癌研究会有明病院からの臨床研究実施計画変 更報告書です。6頁に変更内容がありますが、症例の経過観察を行うための研究 期間の延長と研究者の変更の報告です。7頁の今後の研究計画にありますように、 第1症例の患者さんに関して経過観察を今後も行うということでの変更です。 この研究では3人の方に遺伝子治療を行い、これまでの研究結果及び研究結果 の公表状況の欄に、その概要が記載されていますが、第1症例の患者さんにつ いては経過観察をまだ継続して行っていますので、今後も経過観察を行うため、 研究期間の延長を行うということです。本件の内容についても作業委員会の先 生方にご確認していただいています。説明は以上です。 ○永井部会長  ありがとうございます。いかがでしょうか。 ○川越委員  癌研の方の研究ですが、鶴尾先生にご不幸があって研究者名の変更があった ということですけれども、これは誰か代わりの先生が入られるのですか。それ とも欠けても大丈夫な研究なのでしょうか。 ○坂本研究企画官  本件につきましては、既にこの1例の方の経過観察しか行っていない状況で、 特に追加の症例登録なども考えていない状況と聞いています。体制としては、 お亡くなりになった先生は名簿から除きますが、その他の変更はないと聞いて います。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。それではこの件につきましてはご了承いただいたとい うことにしたいと思います。その議事の戦略研究について、事務局よりご報告 をお願いしたいと思います。 ○三浦厚生科学課長  資料6に基づきまして、ご報告申し上げます。戦略研究は介入を行って、そ の結果を見ることを特徴とする研究ですが、その新しいテーマについて本部会 においても2回にわたり、ご議論いただきました。その結果を踏まえて本格的 な研究に入るかどうかを見極めるためにも、フィージビリティ・スタディを実 施することになっていて、以下のとおりの公募を行いました。「1.公募の概要」 ですが、課題は二つで、一つは乳幼児の事故予防、二つ目が周産期医療の質と 安全の向上です。研究報告書ですが、通常と異なって早目に成果を確認したい ということもあり、8月31日までに中間報告書を提出いただくということ、ま た最終報告書についても3月1日までとして、来年度の本格実施を行うかどう かを検討するための時間を得ることになっています。公募期間は既に始まって いて5月20日までです。2.に公募に関する情報提供等がありますが、公募要項 などについては厚生労働省ホームページに掲載しているとともに、4月27日に 公募説明会を開催し、多くの研究者の方にお出でいただきました。以上、報告 です。 ○永井部会長  ありがとうございます。何かご質問、ご意見はございますか。 ○佐藤委員  最後に関係ないことで申し訳ないのですが、You Tubeで説明会を流されたと か、ときどき大きなファイルを業者を利用して送ってよこすので、政府が発信 していることが分かるようなものを作るという考え方はないのですかね。別に You Tubeでもいいのかもしれませんが、いろいろなものが流れているところに、 いかに公式サイトとはいえ何となく違和感を覚えるのです。IT立国を宣言して いるのだろうと思いますが、もうちょっとガバメントが作ったものを置いても いいような気がしますけれども、中身に関係ない話ですみません。 ○永井部会長  いかがでしょうか。 ○三浦厚生科学課長  なかなか答えに窮するご指摘ですが、先般の事業仕分けでも民間のプロバイ ダーによる中継が行われていて、いまの状況では何もかも政府がやるのではな く、民間でできることは民間にやっていただくという基本的な考え方があるの かもしれません。先生のご意見は検討させていただきたいと思います。 ○永井部会長  これは外国の政府機関も、You Tubeというのは使っているのですか。 ○三浦厚生科学課長  あまり確認したことはありませんが、おそらく自ら実施しようと思うと大き な容量のサーバーが必要になるとか、コスト的にもそれなりにかかることだろ うと思います。You Tubeの場合であれば、お金はほとんどかかっていませんの で、そういう意味では新たな負担を生じずに速かに情報を提供できるという意 味で、現在は使わせていただいているということです。 ○永井部会長  ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたらこれで議 事はすべて終了です。事務局から連絡事項をお願いします。 ○坂本研究企画官  次回については、別途日程調整をさせていただいていますけれども、7月8日 (木)17時〜19時に開催を予定しています。正式なご案内につきましては詳細 が決まり次第、送付させていただきますので、よろしくお願いします。事務局 からは以上です。 ○永井部会長  それでは、これで終了させていただきます。ありがとうございました。                                 −了− 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:情報企画係(内線3808)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171