10/05/17 第6回高齢者医療制度改革会議議事録 第6回 高齢者医療制度改革会議 (1)日 時 平成22年5月17日(月)17:20〜19:20 (2)場 所 中央合同庁舎5号館 厚生労働省内省議室(9階) (3)出席者 阿部委員、岩村委員(座長)、岡崎委員、小島委員、見坊委員、小林        委員、近藤委員、白川委員、堂本委員、野村部長(神田委員代理)、        樋口委員、藤原本部長(齊藤委員代理)、三上委員、横尾委員        一圓先生、加藤先生、関先生、土田先生、山崎先生        長妻厚生労働大臣、足立厚生労働大臣政務官、山井厚生労働大臣政務        官        <事務局>        水田厚生労働事務次官、外口保険局長、唐澤審議官、神田保険局総務        課長、吉岡保険局高齢者医療課長、伊藤保険局国民健康保険課長、吉        田保険局保険課長、村山保険局調査課長、佐藤保険局医療課長、岩渕        医政局総務課長 (4)議 事  有識者ヒアリング (5)議事内容 ○岩村座長  それでは、定刻でございますので、本日の改革会議を始めさせていただきたいと思 います。委員の皆様には御多忙の中をお集まりいただき、誠にありがとうございます。 第6回「高齢者医療制度改革会議」を開催することにいたします。  皆様お気づきのとおり、今日は大変暑うございますので、部屋の中もこれからまた 議論の熱気で暑くなるのではないかと思われますので、どうぞ皆様上着をお取りにな って楽になさっていただきたいと思います。申し訳ありません、私も失礼させていた だきます。  今日の委員の出席状況でございますけれども、池上委員、岩見委員、鎌田委員、藤 原委員が御欠席でいらっしゃいます。  今回新たに御就任いただいた委員がいらっしゃいますので、御紹介させていただき たいと思います。  健康保険組合連合会専務理事の白川委員でございます。どうぞよろしくお願いを申 し上げます。  また、今日は神田委員の代理として野村部長、齊藤委員の代理として藤原本部長に、 それぞれ御出席いただいております。よろしくお願いいたします。  先ほど申し上げましたように、今日は第6回目の改革会議でございます。前回まで は3回に分けまして個別の論点について御議論をいただいたところでございます。  今日は医療制度に見識のある5名の有識者の先生方に御出席いただいております。 これら5人の先生方から御意見を頂戴し、更に議論を深めてまいりたいと考えており ます。  なお、長妻大臣は国会の事情によりまして、到着が遅れていらっしゃいます。後ほ どお見えになったところでごあいさつをいただきたいと考えております。  それでは、まず事務局から今日御出席いただいております有識者の先生方を御紹介 いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○吉岡課長  それでは、五十音順に御紹介をさせていただきます。  関西大学政策創造学部教授の一圓様でございます。  北海道大学大学院法学研究科教授の加藤様でございます。  横浜国立大学大学院国際社会科学研究科准教授の関様でございます。  早稲田大学商学部教授の土田様でございます。  神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授の山崎様でございます。 ○岩村座長  それでは、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきたいと思います。カメラ の方は御退室等をお願いしたいと思います。 (カメラ退室) ○岩村座長  それでは、お配りしております資料の構成につきまして、事務局から簡単に御説明 をいただきたいと思います。 ○吉岡課長  お手元の資料のクリップを外していただきますと、次のページに座席図をお配りし ております。  その次は資料1と右上に付いている「有識者提出資料」でございます。5名の委員 の先生方のお名前と現職、資料の目次でございます。  資料1−(1)が一圓先生の資料。  資料1−(2)が加藤先生の提出資料。  資料1−(3)が関先生の提出資料  資料1−(4)が土田先生の提出資料。  資料1−(5)が山崎先生の提出資料でございます。それぞれ意見をお述べいただく際 に御活用されます。  資料2「参考資料」をお配りしております。これまで提出させていただいている資 料を改めて、その中の主要な資料だけを本日もヒアリング用の資料として整理し、お 配りしているものでございます。内容については説明を省略させていただきます。  資料3は前回までの各委員の主な意見の概要を、項目ごとに整理させていただいて いるものでございます。  資料4は「新たな高齢者医療制度に係る地方公聴会の開催について」であります。 前回意識調査につきまして御意見を頂戴したわけですが、意識調査に加えまして、こ うした地方公聴会も開催し、国民の方々の御意見を丁寧に伺いながら今回の検討を進 めていきたいと考えております。  具体的には8月上旬と10月上旬の2回に分けまして、きめ細かく催していきたい と考えております。  8月上旬につきましては(1)にありますように、厚生労働省の講堂におきまして 小規模なグループ討議方式の公聴会を行い、また、(2)のIにありますように、全 国3か所、福岡、仙台、大阪で大規模な公聴会を行います。  またIIにありますように、10月上旬には名古屋、広島、東京の3か所で公聴会を行 います。  資料については以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは、引き続きまして有識者の先生方から、それぞ れ10分程度お考えを御説明いただきたいと思います。一通り先生方から御説明をい ただいた後で、まとめて委員の皆様方との間で意見交換を行いたいと考えております ので、よろしくお願いいたします。  それでは、初めに一圓様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。 ○一圓先生  御紹介いただきました一圓でございます。本日は貴重な発表の機会を与えてくださ いまして、大変ありがとうございます。  お手元の資料1−(1)「2 新たな制度のあり方」を中心にお話をさせていただきた いと思います。そこでも書いておりますように、地域や職域の自立した保険者による 保険運営(これまでなされてきた保険運営)をできるだけ残すことが必要であるとい う観点から、新しい制度の枠組みを考えたいと思っています。  次のページの表1でございますが、これは私が住んでおります兵庫県の、比較的人 口規模や保険料の賦課方式が似ている2つの市の一人当たり医療費や、保険料の比較 をしたものでございます。下の方にわかりやすく抽出しておりますが、老人対象外の 若い人の一人当たり医療費では差が1.8万円、老健対象者で19万円の違いがございま す。これに対して保険料は8,000円程度の差になっております。もしそれぞれが独立 した保険を運営しているということであれば、この保険料の差はもっと大きくなるは ずでございます。  言い換えれば2つしか市がない状況を考えますと、B市は日ごろ住民の健康管理に 努め、医療費を下げる効果を果たしながら、実際には税金等を通してA市の高医療費 を支えているという構造になっています。助け合い機能がそういう形で働いているわ けです。実際にはお年寄りで医療費に大きな差があるわけですが、そういう医療費を できるだけ低く抑えられるように、住民の健康や従業員、家族の健康管理に力を注い で保険運営をしているという保険者は少なくないと思います。  そういう保険者の努力が今後とも強化されていくことが一番大切なことだと思っ ていますが、後期高齢者医療制度のことを考えますと、医療費で大きな差が出る75 歳以上を別枠の制度にしたということで、その医療費の差が本体の保険料に反映され ない、あるいは保険者の努力が保険料に反映されないという結果になってしまいまし た。これが後期高齢者医療制度の最大の問題ではないかと思います。  この制度改革の影響は制度が発足してそれほど経っておりませんので問題になっ ていませんが、こういうことが続きますと、保険者の努力がだんだん失われていくこ とになってしまわないかということを恐れています。  その下に表2がございますが、これは医療保険制度ごとで年齢調整をした上での一 人当たり医療費がどう違うかということについて、3つの時点で比べたものです。そ れぞれ保険制度ごとの給付率が違ったり、老健制度がある時もない時もありますので、 単純な比較はできないのですが、ここでは特に供給体制の影響が出にくい被用者保険 の中の政管健保と組合健保を比較していただきたいと思います。常時組合健保の方が 医療費適正化という点では成果を上げてきたことがわかります。2005年の場合は1回 限りのデータで比較しておりますので比較には注意が必要ですけれども、かなり組合 の医療費節約効果が大きく表れています。  特に家族の医療費でもかなりの差が出ていることがこれまでと違った点で注目さ れます。これは健保組合が政管健保に比べて家族の健康管理にも関心を持って保健教 育等を行っている結果ではないかと思います。実際、健保組合の特定健診の受診率な ども、家族の受診率は結構高い水準が維持されています。  新しい医療制度の枠組みとしては、こういう地域や職域の保険者が自主運営できる ような形を残すことが重要ではないかと思っています。  その観点に立ちますと、高齢者については、年齢に関係なく退職すれば地域が生活 の基盤になるわけですので、地域の国民健康保険に加入するというのが一番自然であ り、理にかなったものではないかと考えています。この考え方は宮武先生の案に非常 に近いと思っています。  宮武先生の案で国保の運営を都道府県単位で広域化することに関しては、私が強調 しています市町村の保健事業などの取り組みが、その市町村の保険料にきちんと反映 できるような枠組みは維持しながら、広域化を考えていく必要があると思います。  以上のように、制度体系として地域保険と職域保険の二大体系を残すとしますと、 両制度間のリスクを調整することが必要です。実質的に国保に対して、国庫負担及び 被用者保険からの拠出金でリスク構造調整をすることが必要になってきます。その場 合に国保に対するリスク、国保が必要とするリスク調整というのは2つの面がありま して、退職者、高齢者(世帯主の職業としては無職と言われている人たち)の所得の 不足と、高齢者の高い医療費を補てんしなければなりません。その他の職業について は、特に農林漁業者の所得が低くなっています。そのほか自営業者等については低所 得層のリスクを調整する必要があります。  実際に2006年度の制度間の財政調整の状況を調べてみますと、これまでの財政調 整は一旦制度に国庫負担が入った後に、その制度からまた高齢者に拠出金が支払われ るという非常に複雑な形になっていましたけれども、2006年度の実態を見ますと健保 組合から2.6兆円ぐらい、政管健保から2.3兆円ぐらいが老人医療と国保に拠出され た形になっています。この被用者保険の拠出金を保険料率に換算しますと、組合も政 管も総報酬の2.9%ぐらいになります。  こういう財源を、よりリスク構造調整を簡明なものとするために中央に基金を設け て、国庫負担とともに国保の財政調整に役立てることを考えてみたらどうかと思いま して、資料の3ページ目の最後に基金のイメージを示しています。勿論報酬の2.9% というのは仮の数字ではありますけれども、こういう形で被用者保険の保険料からの 拠出金と国庫で、国保に対して補助をするという形が望ましい。その場合に基金から の支払いは都道府県、それから、市町村国保へとリスク構造に応じて配分されること になります。その場合にどうしても必要なのは、市町村国保の保険料算定方式を、一 遍にはできませんけれども標準化していって、市町村国保間の保険料負担が公平にな るようにすることが必要だと思います。  そういう形で市町村国保(国保といっても小さいものがありますから広域化するこ とがあると思いますけれども)や健保組合のような保険者の機能が補強される構造、 制度の在り方が望ましいのではないかと思います。  以上でございます。 ○岩村座長  一圓様、大変ありがとうございました。  それでは、引き続きまして、加藤様どうぞよろしくお願いいたします。 ○加藤先生  北海道大学の加藤でございます。本日は貴重な意見発表の場を与えていただきまし て、ありがとうございます。私はパワーポイントの資料をもとにお話をしていきたい と思います。  3ページ、後期高齢者医療制度の問題点ということで4点挙げてございます。  1つは被保険者の保険料負担が財源の1割ということで、この点については財政規 律の手段を確保する道筋という点で評価できるんですが、この1割ということだけで 財政的な規律というものを発揮できるかというのは疑問であるということです。  2番目に広域連合の機能でございますが、これは保険料の徴収業務は市町村に委ね て、保険料率の決定は広域連合で行うという構図の中で、どこまで保険者機能を果た すことができるのかということです。  これとの関係で、広域連合の意思決定システムというのが、当事者自治のシステム として果たして適正なものなのかという問題があろうかと考えています。  支援金・拠出金につきましては、いわゆる保険料の租税化という考え方が出ており まして、保険給付と直接的関連のない負担が社会保険料と一体的に徴収されることを、 どのように考えるかという問題が提起されているんだろうと思います。  今後のあるべき姿というのは、後期高齢者医療制度が今まさに問題になっているわ けですが、これは恐らく日本の医療保険制度全体をどうすべきかという問題でござい まして、これについては従属人口指数の伸びというのが、大きな影響を与えるだろう と考えております。  もう一つは、いわゆる市町村国保の在り方をどう考えるかということです。5ペー ジのグラフは人口を年少人口、生産年齢人口、老年人口と3つに区分した上で従属人 口指数というものを見たものでございます。これは1990年をボトムとしまして一貫 して増えていく状況にあります。また、この表からは読みとれませんが、2030年には 総人口の約3分の1の高齢者が医療費の3分の2を消費するという試算もございま す。それとこの従属人口指数のグラフの中で、どういう形で負担をしていくかが問題 になっていくのだろうと考えております。  6ページは市町村国保の在り方の紹介、7ページはこの検討会議の議論を進めてい く中での基本的な考え方でございます。この基本的な考え方につきまして、私が考え ているところが8ページに書いてございます。  地域保険としての一元的な運用を行う、年齢で区分するという問題を解消すること については、一元的運用はいわゆる国民健康保険と被用者保険の部分を一元化するこ とについて、恐らく所得捕捉率の問題を抜きにして一元化というプロセスには移行で きないのではないか。  もう一つは、被用者保険と市町村国保との関係の中で、いわゆる非正社員というも のが市町村国保の中に組み込まれているという体制がございまして、この問題も非正 社員の処遇をどう考えるかというのも、重要な問題になってくるんだろうと思います。  4番目の市町村国保などの負担増などに十分配慮する、高齢者の保険料は急に増加 したり不公平なものにならないようにするという点につきましては、負担増も抑制し 高齢者の負担も緩和することが果たして実現可能なのか、強い疑問を抱かざるを得ま せん。  さらに、市町村国保の広域化につきましては、法律に基づき保険者を解体し得るの か。これは例えば法律によって健康保険組合を解散することが果たして可能かという ことを考えると、恐らくかなり無理なのではないかと思います。そこで、健保組合を 保険者ととらえますと市町村国保も市町村ごとに保険者という役割を担っているわ けですから、これを法律によって大きく組み替えていくことが可能か、慎重な検討が 必要と思います。法律に体現される国民の意思と市町村国保としてひとつの保険集団 を形成している市町村の住民の考え方が対立する場合、国民全体の意思の表明として の法律がつねに優先されるのか、社会保障制度あるいは地方自治の問題においては、 保険集団を形成している者達の意思を尊重する手続が別途、必要ではないか、など法 律の勉強をしている者としては十分検討する必要があるのではないかと考えており ます。  9ページも基本的に所得捕捉率の問題と正社員、非正社員の取扱いをどうするかと いうことで、一元的運用が問題になるということでございますし、運営主体の在り方 についても繰返しになります。効率的運営と民主的運営ということについては、やや 効率的な運営というのが重視され過ぎてはいないかということでございまして、当事 者で市町村、健康保険組合という枠あるいは都道府県別の協会けんぽという中で意思 決定をしていくことを、どのように評価するかという問題が重要であろう。  11ページ、市町村国保を広域化していくというのは、先ほど言ったように健保組合 を法律によって解散できないとすると、市町村国保もそう簡単に解体できないのでは ないか。ここの問題をじっくり議論しないと、保険者の設定のやり方をもしこの改革 でちょっと間違うと、医療保険制度全体に対する信頼感を大きく損ねると思われるの で、この問題については非常に慎重に考えていくべきではないかと考えております。  この問題は費用負担という問題とも密接に関係しておりまして、これが12ページ で簡単に図式化したものでございます。これは旭川市の国民健康保険料条例が、租税 法定主義に合致するかどうかということで争われた裁判例でございます。そこで最高 裁は、国民健康保険の保険料は税金とは違うけれども、租税法定主義の考え方は適用 されるべきなんだと言いました。  要するに、保険料を徴収するのは強制的な側面をもちますが、保険料には同時に一 定の対価性というものがあって、それに対する合意の上で強制的に保険料を徴収して いるということでございますから、保険料を徴収し、それに対して保険給付を提供す るということの機能というものを、十分考えていく必要があります。  保険料の租税化につきましては、対価性の極めて希薄な品目を徴収するという傾向 が強くなっておりまして、これはある意味保険料と租税というものを区別することな く、保険料という名目で徴収していることをどう評価するかということでございます。  各案に関する見解も述べよということでございますが、基本的には私は理念的に考 えておりまして、どの案がいいというような判断はしていません。しかし、簡単に各 案についてコメントすれば、リスク構造調整については、実質的に保険料算定基礎に なる所得構成に関して所得捕捉率の問題を解決しなければ、リスク構造調整の機能は 十分発揮されないのではないかと考えております。  いわゆる突き抜け方式につきましては、国民健康保険の構造をどう考えるかによっ て、一概に突き抜け方式がそのままいいということにはならないと考えております。 ここでは、先ほど指摘した非正社員の問題をどう考えるかということが密接に関連し てきます。  一応、私の見解は雑駁でございますが、以上です。 ○岩村座長  加藤様、どうもありがとうございました。  続きまして、関様にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○関先生  横浜国立大学の関です。若輩者ですが、こうした席に呼んでくださりまして、どう もありがとうございます。高齢者の医療制度ですが、若い者からの意見もあった方が いいのではないかと思いまして、いろいろとわからないことも多いのですが、考えを 述べたいと思います。  後期高齢者医療制度はPR不足でうまくいかなかったという批判がありますが、や はり一般的に国民に制度を理解してもらうためには、わかりやすい理念がないとなか なか伝わらないのではないかと思いまして、今日は制度の背景の理念について見解を 述べたいと思っています。  私自身は、若いときから安心して世の中で生活していくためには、高齢者、それを 65歳以上とは定義しませんが、一定年齢以上の者に対する保障をそれなりに充実させ るべきではないかと思っています。若いときには何とかなっても、歳をとったときに 悲惨な生活をするのはなかなか苦しいものがあるので、ある一定年齢以上については 社会で保障しようというのが安心な社会だと考えています。とはいえ、その一定の年 齢というのは何歳だろうということは、常に考えていかなければならないと思ってお りまして、そうした考えをベースに話をしたいと思っています。  そういう意味で、年齢を理由とした保障というのは必要に応じて提供する必要があ ると考えておりますが、他方で年齢ということで境界線を引いてしまいますと、年齢 差別が起こることも現実にあります。今回の後期高齢者医療制度は、その年齢差別の 観点から批判がいろいろ出てきたのだと思います。そこで、これについて長らく議論 をしていますアメリカについて少し紹介をさせていただきたいと思います。  アメリカは、この3月にオバマ政権が医療保障改革を成功させまして、今は全国民 が何らかの形で民間医療保険の購入も含めて、保険制度に入らなければならないこと になっております。それまではというと、公的医療保険という形で医療保険が保障さ れていたのは、高齢者、障害者、低所得者のみでした。アメリカはよく自立の国です とか、余り政府に頼りたがらない国と言われていますが、そうした国でさえ、なぜか 高齢者についての保障というのは1964年からありました。それが、メディケアとい う高齢者のための医療保険制度です。  1960年代、そうした特定の世代を対象とする制度を生んだ当時、同時に、アメリカ は差別禁止をなくそうということに対して、女性差別もそうですし、人種差別もそう ですし、長く議論をしてきている国ですので、年齢差別もなくさなくてはいけないと いう話があがりました。ある一定年齢を保障するということと、ある一定の年齢を理 由に差別するということは、どういう関係にあるのだろうかということが議論されて きております。  それがエイジズムの議論でして、エイジズムというのは高齢を理由とした差別に当 たるわけですが、1969年に初めてこの言葉が使用されました。ここで面白いのが、研 究の成果として、エイジズムにも2つあるということが言われております。  1つは否定的エイジズム。これは高齢者世代を役に立たない世代ですとか、働けな い世代だとか、そういったイメージによって差別をしたり偏見を持ったりする。そう いうものが否定的エイジズムだととらえられております。  一方、高齢者のみを対象としたメディケアですとか年金制度ですが、そうした社会 保障制度というのは高齢者に好意的な区別であって、これは肯定的なエイジズムとと らえています。さらに、年齢差別を禁止するということは、そのまま年齢による区別 を禁止するということではないのだと言われています。そこで、一体差別禁止と両立 する区別、保障というのは何だろうかということが議論されるわけです。  例えば後期高齢者医療制度におきましても、後期ということで区別するのはよくな いということで、それを廃止しようという議論になっていますが、年齢差別を撤廃し た場合に、ある一定の年齢を理由に公費を投入していいのだろうかという話になると、 それはいいのではないかというのがアメリカの議論から言えることだと思います。区 別してはいけない、年齢差別をやめようと言うと、ほかの保障も全部やめてしまわな ければ、ほかの区別もやめてしまわなければいけないのではないかと簡単に考えがち なんですが、そうではないということを、明確に整理しておきたいと考えています。  次に、ある一定年齢以上の人に対する保障は充実した方がいいのではないかと最初 に述べましたが、年齢による区分が問題である場合もあるとも考えております。その 第一が、先ほども話が出てきましたが、保険者自治が機能しなくなるという点ではな いかと思っています。  やはり医療というのは、生涯にわたる健康管理ですとか、予防の努力が、若いとき から努力した点が制度に反映し、頑張ったから保険料が安くなるといった制度でない と、なかなか機能しづらいところがあると思います。そういった意味で、区分するの はよくないのではないかと考えています。ほかにもいろいろとあります。  ほかにも、区分するとどういった問題があるかというと、例えば、高齢者医療制度 が創設された当時、高齢者については、医療費にキャップを設けたらいいのではない かという発言が政治家からあったと思います。このように、区分をすると、そこに対 する保障をほかと変えようという議論もしやすくなります。  アメリカの制度は日本と異なっておりますので、直接参考になるわけではありませ んけれども、アメリカでメディケアをめぐってどういったことが起きているかという 例を紹介します。現在、医療制度改革の後も大きく議論されているのですが、メディ ケアの診療報酬を引き下げることがしばらく前から決まっているにもかかわらず、そ れが凍結されているという課題があります。なぜ凍結されているかというと、医師の 多くが、診療報酬を引き下げるのであれば、高齢者を診ることはできないと述べてい るからです。これは、高齢者と若い人の制度とが別の制度となっており、若い人は公 的な保険の対象ではないのでそういった発言が出てくるわけです。実際に低所得者の 医療扶助では、既に、診療報酬が低いことを理由に、低所得者の受診を拒否している 医師が多くおります。そのように、制度を区分すると課題も出てくる可能性があるの ではないかと考えています。  そうすると、医療サービスについては一生にわたって同じ制度に加入できる方がよ いのではないかと考えるわけですが、他方で、一定の年齢以上については公費を投入 して、財政的にはほかの年齢で支えていくべきであると考えています。ただ、そこの 年齢を何歳とするかについては検討していかねばならないかと思っています。  これについて詳しくは、2ページ目以降に『高齢者と年齢』という論文をつけてお りますので、もしお時間がありましたら、後ほど読んでいただきたいと思います。い つ高齢者は65歳以上と定義されたかというのは、余り資料がしっかり残っていない んですけれども、国連は、65歳以上の人口が7%を超えたというときに、高齢化した という言葉を最初に使っています。  1959年に国連はそうした高齢化という言葉を使いましたが、その当時は日本では 65歳以上の人口は5.7%でした。5.7%程度の人口であれば、それぐらいだったらみん なで支えるというのは非常に納得がしやすい割合だなと思います。学生などから、65 歳だったらまだ元気な人もいるのではないかということをよく聞きます。勿論、60 歳を超えると人によって差はあるものの、今は人生80歳、90歳まで生きる時代にな っており、これだけ寿命が延びてくると、一体どれぐらいの人たちを社会で支えるの かということは、医療だけではなくて年金制度もそうですが、改めて考えていかなけ ればならないと思っております。  例えばその当時のパーセンテージを今に当てはめますと、大体75歳以上となり、 これが社会で支える年齢としては適切なのかなと考えております。  もちろん、一体どの世代を支えたいかという社会の合意形成というのは、誰がこう だと言えるような問題ではないので、統計調査を行ったり、いろいろな形で一体どれ ぐらいの年齢であれば若い人たちは支えていいと考えているのかということを、調査 などに基づいて考えて、そして公費を投入する年齢というのを検討するとよいのでは ないかと思います。  こうした理念に基づくと、新たな制度の在り方としては、年齢で区分しない制度、 他方で年齢を理由とした保障に公費を投入する制度。さらに今は65歳と言ってもい ろいろな方がいるので、世代内でもお互いに負担し合って扶養し合うということが可 能となるような制度が、その話は余り時間もなくてしていませんが、よいのではない かと考えております。そこで、私自身は4案の中では宮武委員の案に賛同したいと思 っております。 ○岩村座長  関さん、どうもありがとうございました。  次に土田様、どうぞよろしくお願いをいたします。 ○土田先生  早稲田大学の土田です。今日はこういう席にお招きいただきまして、どうもありが とうございます。私は制度改革における基本的な視点というものを最初に示しまして、 その視点から幾つかコメントを申し上げたいと思います。  最初に基本的な視点ですが、5点挙げてあります。第1番目は公平性の確保という ことですけれども、この場合、公平性と言ってもいろいろな対象や基準がありますが、 ここでは特に保険者間のリスク構造格差を是正していくこと、負担の公平性を確保し たいということであります。  2つ目は財政上の安定ということですが、これについて特に説明は要らないかと思 います。  3つ目の連帯の維持・強化ですが、一般的には保険組織内の加入者連帯ということ がよく言われますが、それに加えて世代間の連帯も確保していく必要があろうと思っ ています。  4番目は当事者自治ですが、これは先ほどから幾つか話が出ております保険者機能 の強化という点を特に重視していきたいと思います。  5番目は制度のわかりやすさ。これはいろんな受け取り方があるわけですが、具体 的にはある程度の国民の納得を得られるような、制度の仕組みというものが大切だろ うということであります。  そういう視点から見た場合に、現行制度の改革を行うということが既に決まってい るわけですけれども、そうである以上は少なくとも現在の制度はよくする必要があろ うということになるわけですが、その場合に現在の制度というのは、前の老人保健制 度の幾つかの問題点を是正することで行われてきましたので、したがって今回の制度 改正に当たっても現在の問題点だけではなくて、その前の老健制度の問題点もある程 度視野に入れながら考えていく必要があろうと思います。  老人保健制度の問題点ですが、これはここの審議会でもいろいろと検討されており ましたので繰り返す必要はないと思いますけれども、4点挙げておきます。  1つは高齢世代と若年世代の費用負担が不明確であるということ。  2つ目は市町村が運営しているわけですが、その場合の財政運営の責任が不明確で あった。  3つ目は市町村単位で財政運営を行うことが非常に難しいこと。  4点目は高齢者間の保険料負担に格差があるということでありまして、それに対し て幾つかの改正が行われたと理解しております。  2006年改正で高齢者医療制度を含めて幾つかの改革が行われましたが、その場合、 高齢者医療制度というのは、保険者の再編統合あるいは診療報酬体系の改革とセット で行われましたので、そういうものを視野に入れながら評価していく必要があろうと 思います。詳しくは省略します。  その結果、現在幾つかの問題を抱えているわけですが、現在の問題点としては4点 指摘してあります。  第1番目は先ほどから挙げられています年齢差別という問題であります。  2つ目は高齢者の保険料及び患者負担が増大したということに対して対応が必要 である。  3つ目は後期高齢者に対する健康診査あるいは診療報酬体系に対する不満が非常 に大きいという問題。  4番目は新しい高齢者医療制度が発足したのに伴って、被用者保険の負担が増大し てきたという問題が指摘できると思います。  そういう点から今度新しい制度を検討する場合に、新しい制度に求められているも のとして先ほど挙げました5つの視点から幾つか書いてみました。  1つは公平性の確保という点では4つの問題を挙げてあります。  年齢差別、これは長妻6原則の3番目に挙げられていますが、そこは省略します。  2つ目は高齢者負担の軽減化。  3つ目は医療給付及び診療報酬体系の改定。  4つ目は保険者間のリスク構造格差の是正、特にこの場合は国保のリスク構造格差 が一番大きな課題になって出てくるだろうと思います。  第2は財政の安定化ということですが、この場合に財政調整と保険者間のリスク構 造調整を区別して書いてありますのは、財政調整という場合には高齢者医療費の負担 をどう分配するかということに中心課題が置かれているということですが、保険者間 のリスク構造調整という場合には、リスク格差をどうやって平準化するかということ なので、言わば財政調整が事後的な対応策だとすれば、リスク構造調整は事前的な対 応策ととらえていただいてもよろしいかと思います。  しかしながら、先ほども出ておりましたが、実際には国保被保険者の所得把握とい うのが非常に難しいわけですから、したがって、そういう場合の財政調整の1つ在り 方として国庫負担があると理解できますので、そういうことを含めて何らかの財政安 定化のための財政的な対応策が必要であろうということであります。  次は市町村国保の負担増の回避ということが、長妻6原則の4番目に挙げられてお りますので、やはりこれも1つの課題であろうと思います。  3つ目は保険者組織の改編です。これは長妻6原則の2つ目に関連していますが、 一元化というのがよく分かりません。それについて1つだけ関連して言えば、組合方 式を余り評価していないように見受けられますが、組合方式における健保組合あるい は国保における国保組合というものの保険者機能も含めて、組合方式に対する評価は 私自身は非常に高いものがありますので、そういうことも考えていく必要があろうと 思っています。  第3の世代間連帯の強化ですが、これは高齢者医療制度の支援金の見直しを通じて 何らかの対応策が必要であろうと思います。  第4は既に申し上げてきたことですが、当事者自治(保険者機能の強化)というこ とが長妻6原則には入っていないと私は思いますけれども、そこはやはりどうしても 考慮していく必要があろうと思います。  5番目の制度のわかりやすさ。例えば財政調整などの場合は非常に緻密な計算が必 要ですので、そういうことが幾ら詳しくても、幾ら難しくても、複雑であっても構わ ないと思うんですが、ただ、そういうことをやる場合の基本的な仕組みや理念は、な るべく単純明快でわかりやすいものにしていくことが必要だろうと思っております。  そういう面から、4つの案に対するコメントを申し上げます。  池上案については、公平性の確保あるいは世代間連帯という点では非常に高く評価 できますけれども、各都道府県に健保組合を区分するということになると、それは保 険者機能を損なうという点では非常にマイナスだろうと思います。  また、国庫負担が少なくなりますので、財政的な安定性にも不安があります。一元 的制度と言うと単純でわかりやすいように見えますけれども、実際の制度移行の過程 を含めて、実際の運営制度というものを想像してみると非常に複雑でわかりづらい。 それほど簡単ではないと思っております。  対馬案については、年齢区分をいろいろ言われておりますけれども、そこには一定 の合理性が認められると思います。しかしながら、その場合には高齢者医療の整備等 に関連して差別論が再燃する危険性もある。また、世代間の負担というものが明確で ありまして、高齢者間の負担の公平化についても評価できますが、ただ、決定的に問 題なのは被用者保険・国保・高齢者医療制度のリスク構造格差については、明確では ないという点だろうと思います。  小島案につきましては被用者保険、特に健保組合内部の連帯が強化されますし、保 険者機能も強化されるという点では評価できますし、突き抜け方式のメリットだと思 いますが、しかしながら国保等のリスク構造格差が依然と残存し、そこについては何 ら対案を設けておりません。個々の財政や保険者機能をめぐる問題も従来と同じです から、依然として問題は残るであろう。したがって制度間あるいは保険者間のリスク 構造調整、財政調整による対応が必要であろうと思います。  制度的にはわかりやすいんですが、現在非常に雇用の流動化あるいは就業形態の変 化等々がありますので、25年加入を前提するといった場合にどういうことになるのか、 そういう退職者健康保険制度の詳細が依然と不明ですので、この点については大きな 不安が残ると思います。  最後の宮武案ですが、ここで医療制度の推移をどうしていくかという点から見れば 制度が非常にわかりやすいですし、世代間連帯の確保あるいは高齢者の負担の公平化、 年齢差別の解消といった点でも評価できると思います。  都道府県単位、広域連合というものが非常に強い保険者機能を保持する可能性はあ りますけれども、その仕組みがどうであるかということがまだ不明確ですので、場合 によっては現在の市町村よりも保険者機能が落ちることもあり得ますから、そこは課 題として残るだろうと思います。  財政の安定と公平性の確保のためには、被用者保険とのリスク構造格差の是正、財 政格差の是正、国庫負担の在り方の検討がありますが、そういうものの検討が必要で あろうと思います。  被用者保険における連帯強化という視点からは、高齢者でなおかつ被用者保険に残 っている者は突き抜けでいった方が私は連帯という点からもスムーズだろうと思い ます。  以上でございます。 ○岩村座長  土田様、どうもありがとうございました。  引き続きまして、一番最後になりますけれども、山崎様、どうぞよろしくお願いい たします。 ○山崎先生  神奈川県立保健福祉大学の山崎でございます。よろしくお願いいたします。私は改 革私案として4枚のペーパーにまとめてあります。その後に参考資料がありますが、 基本的に今まであちこちで発言してきたものとほとんど変わらないということでご ざいます。今日は新たに意見として申し述べるのは、最後の代替案と留意事項だけで ございます。  改革の基本理念でありますが「保険者機能の発揮を促しつつ、社会連帯との調和を 図ること」と私は考えております。ここで保険者機能の発揮とはとありますが、保険 者機能とは「良質な医療を効率的に提供するために、保険者が自立して活動できる能 力」そして社会連帯とは「保険者機能の発揮に制約がかかる構造的な要因に着目した 調整措置」として理解しておきたいと思います。  このような基本理念に照らして、当面の課題である新たな高齢者医療制度をどのよ うに構築するかということに関してまとめたものでございます。  次に私案の考え方でございますけれども、私案は年齢リスク構造調整を基本原理と しております。それを高齢者層に適用したものであります。また、これまでの改革の 流れからいいますと、平成18年改正の前に一旦戻します。つまり一旦かつての老健 制度に戻した上で、それを今日の課題に照らして発展強化させようとすると、どうな るかということでございます。  旧老健制度との対比では、年齢を75歳から65歳に下げています。また、運営責任 等を明確にする観点から、保険料の徴収と給付の主体を一致させています。そして高 齢者一人ひとりに応分の負担をお願いするということであります。  現在の制度との対比で言いますと、前期高齢者医療制度の仕組みを75歳以降にま で拡大する。そういう意味で後期高齢者医療制度の対象年齢を65歳まで下げる案を しりぞけております。しかし、その一方で保険者の軸足を地域に置き、高齢者一人ひ とりに応分の負担を求め、更に少なくとも現在程度の公費は投入してほしいと考えて おりますから、現在の後期高齢者医療制度の特質を組み込むものであります。  次のページでございますが、私案の具体的な中身についてお話します。新制度の枠 組みというのは新たな高齢者医療制度の対象を、年金、介護保険等と合わせて65歳 とし「前期」「後期」の区分を解消します。  国民健康保険を高齢者医療制度の一般制度としての役割を担う保険者として位置 づけたいと思います。現役世代は難しいし問題があると思うんですが、地域保険への 一元化という方向を志向すれば、高齢世代にはそれがなじむのかな。しかも国保を基 盤にするというのが将来の姿かなと思います。  しかしながら、被用者保険に現実に加入しておられる方がいるわけですから、その 被用者保険の加入者については各被用者保険の保険者が、一般制度である国保の高齢 者医療制度の事業を代行することができることとして、被用者保険の加入者は被用者 保険と高齢者医療制度の二重に加入する。そしてこれにより年齢を理由とする強制的 な移動はなくなり、被用者保険独自の現金給付等も継続して受けることができるとい うことでございます。  差し当たっての移行期でございますが、既に75歳の被用者の方は後期高齢者医療 制度に移っているわけでございます。この人たちを大量に戻すというのはまた大混乱 の原因になろうかと思いますので、原則として住所地の国保にそのまま戻っていただ く。これは容易だと思います。そういうふうに考えております。  高齢世代内の負担の公平性を確保するために、被用者保険の高齢加入者についても、 一般制度である国保の事業を代行するわけですから、国保と同様な保険料負担を求め、 ここに公費負担を行うこととしてはどうかと思います。  そして高齢者医療勘定を設けて高齢者医療費について保険者間で財政を共同化す る。これは今と同じでございます。  結果的に後期高齢者の広域連合は廃止されますが、せっかくつくったのにという声 もありますので、例えば事務の共同化等に活用されることもあるのかなと思います。  給付と負担でございますが、年齢のみを基準にした過度な一部負担の軽減や保険料 負担の軽減はやめてほしいと思います。本当は過度なという表現は取りたいのでござ いますけれども、いろいろ経緯もあって無理だと思います。いずれにしても、過度な 軽減はやめるということを決断してほしい。政治的には非常に難しいと思いますが、 残念ながら大臣がおられるところで話したいと思っていたのですけれども、おられな いので空振りでございます。  この方式のメリットは、一般制度である国保については医療と介護の保険者の単位 が一致する、両者の連携がとりやすくなるということでございます。今後は更にそれ を促進する観点から患者負担、保険料負担、公費の負担割合等を整合性のとれるもの にしていただきたいと思います。1つの仮の姿ですが、こうしておけば将来、地域保 険として介護保険と高齢者医療を融合させる、あるいはドッキングさせる可能性も開 けてくるということでございます。  財政調整でございますが、構造的要因、所得と年齢は主な要因でございますが、そ れに着目したリスク構造調整を行う。調整基準は制度間では年齢、各制度内では所得 ということでございます。当面65歳以上に限定してこれを当てるということでござ います。  調整方法でございますが、年齢調整を基本にした上で、被用者保険内部については 所得調整を組み合わせるということです。国保制度内は公費でやっておりますから、 それをきちんとやっていただくということでございます。そして、少なくとも公費は 現在導入している程度のものは投入していただかないと合意が得られないだろうと 思います。  補足説明というのは、実は先ほど来いろいろ各先生方から報告がありますが、今の 支援金というのは保険者努力がなかなか反映し難い仕組みになっておりまして、それ はやはり問題だと思います。したがって、年齢リスク構造調整と応能負担の要素をそ れぞれ組み合わせるというのが、被用者保険のグループでの拠出金の決め方かなと思 います。  この会議で国保の広域化についていろいろ議論があるようでございますが、当面は 今回法律が通りましたけれども、広域化方針の方向でうんと努力していただきたいと 思います。つまり軸足は市町村に置いた上で、広域化の努力を一層するということで あります。  もう一つ、一部には都道府県が保険者になるべきだという提案がありますが、いき なりは無理なんだろうと思いますけれども、関係者の合意が得られるところから法律 改正をして、都道府県が保険者になる道も開いたらどうかと思います。ただし、その 場合には具体的には市町村ということでございますが、地域の努力が反映されるよう な分権的な運営を行うことが望ましいと思います。これは特に強調しておきたいと思 います。全県一区の給付と負担はいけないということでございます。  代替案でございますが、この検討会議の報告書がまとまって来春には法案をお出し になるということでございますけれども、平成25年に施行という極めて制約された スケジュールでございまして、普通に考えれば極めて困難でございます。しかし、そ れでも困難の中で合意形成を図り、スムーズな施行に結び付けるとすれば、当面高齢 者医療制度を廃止し年齢で区分するという問題を解消すること、この1点に改革のタ ーゲットを絞るという見方もあるように思います。  そのような観点からすると、75歳未満の調整はそのまま残しておいて、75歳以降 も国保か被用者保険に継続加入させて、各保険者が現在の後期高齢者医療制度の事業 を代行する形で継承する。そして高齢者の医療費について財政の共同化を図るという 案が考えられるのではないかと思います。  最後に改革に当たっての留意事項でございますが、恐らく今日の発言者すべてでご ざいますけれども、現在の皆保険体制の上にどういうことができるかなということを 考えているわけです。実は平成25年に年金制度改革の法案と歳入庁法案が国会に提 出されます。それに向けて本格的な検討が始まろうとしているわけですが、この改革 は医療保険制度の全面的な見直しを必然化させるのではないかと思っております。  そうすると今、私が提案していることもまた白紙に戻さなければいけない事態が、 そう遠くない時期に来るのかなということで、私は発言の自由を確保したいもので、 現在の皆保険体制を前提にして高齢者医療制度の在り方を考えると、このようになり ますということでございます。  以上でございます。 ○岩村座長  山崎さん、どうもありがとうございました。  それでは、ただいまお忙しい中を長妻大臣がお見えになりました。また、山井政務 官もお見えになりました。そこで、長妻大臣から一言ごあいさつをいただきたいと思 います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○長妻大臣  途中になりまして大変恐縮でございます。今まで国会で質問を受けておりました。 そして、この後も宮中に行く予定がございまして、また中座をさせていただきますけ れども、本当に皆様方、大変お忙しい中、毎回精力的な御議論をいただきまして、議 事録を拝見させていただいているところであります。国会でも大変関心が深く、国民 の多くがこの議論を注視しているところでございますので、皆様方にさらなる御議論 をいただければありがたいと考えております。  国民との対話が重要だということで、一定の調査手法を使った調査も予定をして、 粗々中間とりまとめが出た後もまた御意見を聞くような仕組みも考えておりますの で、一旦ある程度決まったことについても途中で皆様方から、これはこういうふうに 変えた方がいいのではないか、こちらの方が適正にできるのではないかという御意見 も、どしどしお寄せをいただければ大変ありがたいと思っております。  今度は本当に国民の皆様の一定の理解が得られる制度にしなければならないとい うことで、鳩山総理もこの内閣も、非常に大きな力を入れて取り組む課題であると考 えておりますので、今後ともよろしく御指導をいただきますよう、お願い申し上げま す。どうもありがとうございます。 ○岩村座長  大臣、ありがとうございました。  それでは、今日おいでいただいている有識者の先生方からの御説明というのが一当 たり終わりましたので、ここからは改革会議の委員の皆様から、各有識者の先生方に 対する御意見あるいは御質問などをいただきたいと思います。どなたからでも結構で ございますので、よろしくお願いいたします。横尾委員、どうぞ。 ○横尾委員  委員の横尾といいますが、質問をさせていただきます。  まず加藤先生から御提起がございましたけれども、大変気になったのは「法律によ り保険者を解体できるのかどうか非常に疑問である」という御意見なんですが、そも そもいろんな制度を人間が知恵を出してつくり、時代とともに改めていく、地域の事 情に応じて改善をしていくというのが基本だと思うのです。そういった意味からすれ ば、課題があれば課題を抽出して、すべてトラブルシューティングして変えていくべ きだと私は思いますけれども、どうお感じになるか教えてください。  併せて所得捕捉の問題点を指摘されたのですが、今、政府でも一部検討が始まった ようでありますけれども、名称はともかく、「社会保障番号」なのか「背番号制」な のかはともかく、そういった形で捕捉すれば可能かと思いますが、いかがでしょうか。  山崎先生が広域連合について「事務の共同化に活用したらどうか」ということでし たけれども、その前提は「一度今の制度をもとに戻して、また新たにつくる」という のが、大きな流れでございますよね。スタンスとしては。我々から見れば、戻すこと 自体にお金がかかり、またつくること自体にお金がかかります。  それと広域連合で事務処理をするといっても、一人ひとりの事務員が一々保険証等 についてチェックするなど、かなり電算化しているわけです。その電算化は過去に岡 崎委員から問題提起があったのですけれども、かなりの検証をしてやっていかないと、 またトラブルとなりますが、そういった現場の対応を含めてのところはどのようにお 感じになっているかを教えていただければありがたいと思います。 ○岩村座長  もう2、3の方からお話を伺った上でお答えをいただこうと思いますが、いかがで ございましょうか。樋口委員、どうぞ。 ○樋口委員  山崎委員にお伺いいたしますけれども、年齢を理由とした保険料の大幅な軽減とか、 そうしたことはやめるとはっきりおっしゃいまして、実は大臣の言う前で言いたかっ たとおっしゃっておりますので、是非そのチャンスをと思っております。 ○岩村座長  そうしますと、大臣はまたお忙しくて先ほどお話があったように御退室される予定 ですので、その点を山崎先生、お答えいただければと思います。 ○山崎先生  75歳という年齢で切ったことに対する批判があるんですが、その一方で高齢者であ るから、例えば樋口委員が年齢的に高齢者であるから、樋口委員の保険料は下げる、 あるいは一部負担を軽くするというのは、またこれも考え方によっては差別ではない かと思いまして、同じ所得、同じ収入なら20歳の人、30歳の人、50歳の人、80歳の 人みんな同じ負担をすべきではないかと思います。  高齢者は一般的に相当医療を要しますから、一部負担はある程度軽減してもいいと 思うんですが、過度の軽減というのはやはりよくないのではないかという気がしてお ります。  これはとても大事なことで高齢化が進んでいって、高齢者がみんな御神輿の上に乗 るという社会をつくってはいけない。年金も相当あるわけでございますから、きちん と社会を支える側に入っていただくような枠組みにしないといけないと思います。  もう一つ、事務の共同化として残すこともあるのではないかという私の提案に対し て、いやいや現場は大変だとおっしゃったので、私はむしろ現場の方が、せっかくつ くったのにもったいないとおっしゃるのであれば、保険者としてはなくなっても、せ っかくつくったものを活用することもあるのかなと思ったのですが、その必要もない とおっしゃるんだったら、すべて解散されたらいいと思います。  以上でございます。 ○岩村座長  横尾委員、どうぞ。 ○横尾委員  大臣の前で大事な情報発信があったと思いますけれども、私はもったいないからど うこうではなくて、実際これまでの間、スタートするときもそうですし、スタートし て数か月おきにもそうですし、減額・軽減措置がとられたときもそうですけれども、 その都度電算処理でものすごい、いろいろコンピュータトラブルが発生したりして、 それを一つひとつ解決しながらやっていかないと、苦情がどんどん殺到してくるわけ です。  そういったことで、また戻すときにも起こり、また新たにつくるときにも起こって はいけませんので、そこら辺はきちんとすべきだということだけです。何も今、現場 から見て組織が要るとか要らないという議論ではありません。 ○山崎先生  私も発言させてください。私が去年こういったことを発言しているときに、地方分 権の有力な論者、神奈川県の開成町長の露木さんが一人で電車を乗り継いで私の大学 にいらっしゃったんです。話しておきたいと。実は電算にものすごくお金がかかって いるんだと。本当にこれは何とかしてくれということを言って帰られました。これも この場を借りて発言させていただきます。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。宮武委員、お願いいたします。 ○宮武委員  一圓先生、割合好意的な評価をいただきまして恐縮です。おっしゃるとおり都道府 県化をするということは、本来は住民と最も向き合っている市町村が保険者であるの が望ましいのですが、これから先の少子高齢化を考えると、ちょっと保険者としてリ スク分散ができない市町村が極めて多くなってくる時代を考えると、都道府県による 運営を考えざるを得ない。その際に一番身近な市町村の役割をどうやって担保してい くのかが大きな課題だと思って、御指摘のとおりであります。  ただ、65歳以上という形でのくくりで新しい制度をつくっていくというか、別勘定 をしていくことになりますと、介護保険との連携を一番密接に市町村でやっていく。 幸い介護保険、市町村が保険者ですので、そういう方策はないのかなと考えておりま す。  質問なんですけれども、国保に対するリスク構造に応じて交付金を払うために、財 政調整基金をつくるとおっしゃいました。この財政調整基金が国保に交付金を払う場 合、リスク構造というのは年齢と所得くらいを考えておられるのでしょうか。それが 1つお聞きしたいことです。  次でございますが、土田先生がおっしゃったように、これも都道府県が強い保険者 機能を発揮する可能性はあるけれども、その仕組みづくりが課題だと御指摘を受けま した。何かいいアイデアをお持ちかどうか、できたら教えていただきたいと思います。 先生、ドイツの保険者疾病金庫については大変研究をなさっていて、いつも拝読して おりますので、ドイツの疾病金庫の保険者機能などを考えたときに、どんな方策があ るのか教えていただければありがたいと思います。  山崎先生、大変頑固な市町村保険の論者であるのに、本日は都道府県単位を認める ような発言をしていただきまして、大変救われたんですけれども、ただ、今、私が読 みとれなかったんですが、前期高齢者医療制度の仕組みを75歳以上にまで拡大する ということですから、65歳以上の方については現在の前期高齢者、つまりは老人保健 制度の年齢調整を拡大していくと考えているんです。そうすると、その際は当然なが ら公費は5割という形の想定で考えておられるのでしょうか。  以上であります。 ○岩村座長  それでは、一当たり御質問を頂戴したと思いますので、それぞれお答えを頂戴した いと思います。別にこれは口頭諮問ではございませんので、気楽にお答えいただけれ ばと思いますが、順番にまず最初に加藤先生、お願いをいたします。 ○加藤先生  横尾委員、どうもありがとうございます。実は私も非常に変なことを言ったという のは自覚していますが、やはり医療保険の場合は要するに今までは政府管掌健康保険 と組合健保組合と市町村国保と国保組合と共済組合という、多様なものでやってきた。 そのときにある意味、都道府県一元化みたいな議論があるときに、私も実は社会保険 でいきたいとずっと思っている人間なものですから、例えば健保組合を法律によって 解散させるということは、いかにも乱暴な議論のように思うんです。  この図式を市町村国保に当てはめた場合、それを市町村国保について、健保組合と 同じようなものと考えるべきではないかと思っているものですから、市町村国保を法 律によって、要するに国会の審議によって市町村の住民の考え方を参考にしないまま、 ある意味トップダウンで変えていくことが、果たして例えば地方分権という考え方か ら言っても、可能なのかをここで考えたい。保険集団の意思決定はどうあるべきかと いうことなどを、ばかではないのかと言われるのは覚悟の上で、検討すべきではない かと考えています。  ある意味自治的な機能ということを保険者に委ねるのであれば、要するに制度的な 危機状況の中で何とかしていかなければいけなくて、そのツールの最終的な段階とし て法律があるというのは重々わかりますが、それも必要な場面というのはありますが、 要するに市町村国保の被保険者の考え方というのを全く抜きに、法律によって市町村 国保の被保険者資格を、都道府県単位に拡大することが果たして可能なのかというこ とを考えてみたいなと思っています。  これについてはそういうことを考え始めただけなので、明確な結論を持ち合わせて おりません。  所得捕捉の問題についてでございますが、これは番号制等々の問題で議論になって くるでしょうし、私は公平性の問題が非常に重要で、そこで国民全体が所得捕捉の点 について同じような状況になっているということを認識できれば、逆に言うと国民健 康保険と被用者保険の区分け自体、新たなシャッフルが可能になってくるのかなと思 っております。  答えになっていないかもしれませんが、以上です。 ○岩村座長  ありがとうございました。  先ほど一圓先生に宮武委員から御質問がありましたので、よろしくお願いいたしま す。 ○一圓先生  宮武委員、ありがとうございます。リスク構造調整をうまくやっていくためには、 それぞれの保険者が、ドイツなんかもそうですけれども、ある程度規模を大きくする ことが必要で、そうすることで、合理的なリスク構造調整ができたと思います。しか し、今の日本の状況でそれをすぐに期待することはなかなかできないと思いますので、 まず大きく制度に分けて制度間でリスク構造調整をすることから考えました。  山崎さんが言われたように、個々の市町村保険者がちゃんとリスク構造調整されて 自立すれば一番いいと思っておりますけれども、せっかく都道府県単位で広域化しよ うという流れが起こっていることも考慮し、個々の小さな保険者でできない、例えば 医療費の分析であるとか供給との絡みなんかに関しましては、より大きな保険者が機 能を果たすべきで、都道府県単位の保険者機能の発揮は絶対に必要なことではあると 思っています。  そういう意味で基金をつくって、リスクの調整の仕方は年齢と所得、医療費と所得 両方となりますが、基金から都道府県に調整交付金を下ろしていって、更に都道府県 から市町村に交付していくような形になるわけです。例えばイギリスでサッチャーさ んの時代ですが、一人で開業する診療所が住民の医療費を全部預かって、住民の医療 を担当するような制度ができました。ブレア政権で一時なくなりましたが、現在は診 療所単位で、複数の一般医が共同で診療所を運営し、その住民のための医療費を預か るという制度ができています。これも一種の保険者で、小規模でも可能です。  なぜそんなことができるのかということを聞きますと、事務的な仕事、高額の医療 の支払とか、日本で言えば再保険の機能みたいなものは全部大きな保険者が行ってい るようでした。市町村国保は、限られた、一番大切なところで、先ほど言われました ように介護保険とも連携して、保険者機能を発揮できる余地を残していくことが必要 ではないかと思っています。  以上でございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。  それでは、土田先生にもやはり宮武委員から御質問がありましたので、お願いをい たします。 ○土田先生  宮武先生、どうもありがとうございます。保険者機能を都道府県単位にした場合、 現在は広域連合とか、あるいは協会けんぽが都道府県にまとまっておりますけれども、 そこで本当に保険者機能が発揮されているかどうかというと、私は詳しくはわからな い上で言うわけですが、どうも発揮しているようには見えない。  確かに財政上で見れば、都道府県単位にまとめていかざるを得ないという状況はわ かりますけれども、その場合もやはり保険者機能を発揮する何らかの仕組みが必要だ ろうということで申し上げました。具体的にどうかと言われると困るんですけれども、 私は基本的に医療保険というのは、目に見える保険者というところが機能するのが望 ましいと思っております。  ですから、同じ都道府県内でも例えば高齢者比率が大分違うわけですから、そうい う高齢者比率の違うところに対して、きめ細かなニーズに応じた対応ができるという ことで、ある意味で市町村の機能を活かすことになろうかと思いますけれども、そう いうきめ細かな対応策が講じられればと思っています。  ドイツの件ですが、これは今、一圓先生がおっしゃったリスク調整にも関連してき ますけれども、ドイツの場合はすべて組合方式ですし、保険者選択という競争方式が 入っていますから、日本とは余り比較にはならないだろうと思います。  ただ、リスクファクターをできるだけ公平化していくという点では、ドイツのリス ク構造調整の場合、性別と年齢に加えて、以前は所得を入れておりましたが、今は所 得を外して疾病率を入れています。私は疾病率を入れることについてはちょっと疑問 がありますけれども、できるだけリスクを平準化するための努力は必要だろうと思い ます。  日本の場合は所得把握が難しいですから、先ほど申しましたように、それに代わっ て国庫負担の在り方をリスク調整に代わるやり方として、当分の間続けていくことが 十分考えられると思っております。  どうも雑駁な答えで恐縮です。 ○岩村座長  ありがとうございました。  山崎先生に対して宮武委員から御質問がありましたので、お願いをいたします。 ○山崎先生  今日は宮武さんがおられるから、考えを変えたわけでは全くございません。しかし、 都道府県によっては県と市町村が合意して全県の保険をつくる、つまり保険者が県に なるということがあっていいんだろうと思うんですが、どの県においても相当市町村 によって医療費の差があります。それから、収納率の差があります。ですから、その 差というのは実は地域の努力によるところが相当ありますから、したがって、その差 がきちんと保険料に反映する仕組みにしていただきたいということでございます。  これは一圓さんと全く同じ考え方でございまして、保険者というのは保険料を決め て、保険料を徴収して必要な給付を払う主体でございます。都道府県保険者になると 都道府県が保険料を決めるんですが、今、言ったような実績に応じて医療費が高いと ころ、保険料収納率が低いところは保険料が上がる仕組みにしていただきたい。でな いと保健活動に力を入れているところ、収納率引き上げを努力しているところの努力 が報われないということでございます。そういうことで、余り私の考えは変わってい ないのでございます。  それから、かつての老健法に戻るんだ、しかし、かつての老健法は75歳以上であ ったけれども、65歳に下げるということは公費を5割付けるのかと言われたんですが、 ここに書いてありますのは、現在程度の公費負担を投入するということですから、一 応制度的には外から公費負担を入れているのは75歳以上ですから、75歳以上に投入 している公費負担は最低必要だろう。年齢リスク構造調整、つまり前期高齢者医療の 仕組みをそのまま延ばしますと、明らかに公費が相当減るわけでございますが、政府 としてはすぐそれに乗りたいんでしょうけれども、それはいけませんよと釘を刺して いるつもりでございます。よろしいでしょうか。 ○岩村座長  ありがとうございました。それでは、三上委員、どうぞ。 ○三上委員  日本医師会の三上でございます。ありがとうございます。  5人の先生方の共通したお考えというのは、保険者機能の強化、要は保険者が医療 費を抑制するという適正化について、効果があれば保険料を安くできるんだ。それを 反映してもらいたいということだったんですけれども、私もグループ内の連帯という 考えで皆保険制度を考えれば、そういうことはいけるだろうと思うんですが、国民皆 保険というのが国民全体の連帯だと考えると、保険者間の差をそれほど明らかにつけ ることが果たしていいのかというのは、非常に問題ではないかと考えます。  長妻6原則で、1つは保険者の一元的運用ということがございましたし、広域化と いうのもございましたけれども、これはそういった保険者間の格差をなくしていくん だという考えではないかと思いますけれども、先生方の御意見を聞きたいと思います。  宮武案が非常に評判がよくて、3人ほどの先生方が支持をしていただいたんですが、 私も一番自然な案ではないかと考えますけれども、国保と被用者保険の調整というの はなかなか難しいと思いますが、被用者保険間、共済健保でありますとか、組合健保 の中でもさまざまな保険料の違いがあり、裕福なところ、非常に苦しいところがある わけですけれども、その間の負担の公平化というのがどのようにして図られるのか、 被用者保険間の一元化はどのようにして図られるのかを少し伺いたいと思いますし、 私はこの中では池上案がそういう意味では長妻6原則には一番近い案ではないかと 思いますが、その辺のところについても先生方の意見をそれぞれお伺いしたいと思い ます。 ○岩村座長  それぞれにという御要望なので、ちょっと。 ○三上委員  一圓先生と山崎先生。 ○岩村座長  ということで絞っていただきましたので、今、岡崎委員からお手が挙がりましたか ら、岡崎委員の御質問を聞いた上で三上委員の御質問に対してもまとめてお答えいた だくことにしたいと思います。では、岡崎委員、どうぞ。 ○岡崎委員  山崎先生のところになりますが、山崎先生の資料の3ページは我々も問題だなと思 っているんですけれども、我々は権限移譲の場合、国保の場合はずっと前から自分自 身も都道府県へ逆移譲をすべきだというのが自分の主張でして、市町村国保はいずれ 人口減少で行き詰る。やはり都道府県に権限を逆移譲すべきだというのが若いときか らの持論でして、現実的に人口減少の中で高知県内でも一番人口が最小の村というの は500人を切りました。保険は成り立ちません。人口1,000人ぐらいの村がまだ大分 残っていますし、数千人の町が多いので、いずれにしても国保は行き詰っております ので、広域化すべきだというのが市長会の論点です。  課題は広域化については財政の確立、やはりそこに進むべきだと考えておりますが、 3ページの中にありますように、合意形成ができたところの都道府県から順次という ことになりますと、恐らく進みません。国保の広域化の課題は随分前から論議されて おりますが、広域化が法律上きちんと規定されていなかったこともあって広域化が進 んでいないのです。我々は都道府県に広域化するということで、一定期限を切りなが ら広域化すべきだ。そうでないと広域化は進まないと考えておりますが、そこをどう していくかというのは1つの課題でありますので、先生から何か論点があればお伺い したいと思います。 ○岩村座長  ありがとうございました。  それでは、ここで先ほどの三上委員の御質問も含めてお答えをいただければと思い ます。まず最初に一圓先生、お願いいたします。 ○一圓先生  三上委員、質問どうもありがとうございます。保険者機能を発揮して医療費の適正 化に努力した報いが、その保険者に入るということだけを強調しましたけれども、実 際に例えば病院等医療施設がたくさんあって、たくさん医療費がかかっている地域も ありますし、残念ながらそれだけ医療資源が豊富でなくて、医療費が低いところもあ ります。  単純な一元化ということにしますと、低い保険料で済んでいたところが高い保険料 を払って、非常に医療が便利で医療費が高くなっているところを助けることになりま す。これはやはり不公平で、そういう意味では基本的に年齢とか所得で調整した上で はありますけれども、保険料に差を設ける必要があるのではないかと思っています。  池上先生のリスク構造調整というのは、私自身も先ほどから言っていますように非 常に大切なことで、それが公平な負担となると思うのですけれども、それはそもそも 保険者が独立していて、多元的な保険制度を残すための1つの考え方であって、一元 化するのであれば最終的には保険料率も等しくすればいいし、医療給付も一定にすれ ばいいということではないかと思います。リスク構造調整は多元的な保険組織と矛盾 しないといいますか、むしろそのためのものであると私自身は考えております。よろ しいでしょうか。 ○岩村座長  それでは、山崎先生に大分御質問が。 ○山崎先生  三上委員からの御質問ですが、座長は少し遠慮されているんでしょうけれども、医 療保険を専門に勉強してきた者は、ほとんどみんなリスク構造調整を基本にすべきだ という考え方は同じだと思うんです。  リスク構造調整をした場合、健康保険組合、共済組合がどうなるかと言うんですが、 恐らく富裕な健康保険組合、共済組合は一番こたえると思います。つまり保険料率に 相当大きな格差がありますが、そのかなりの部分は年齢構成が若い、所得が高いとい う要因によって説明ができるんです。ただ、一部は確かに一圓さんがおっしゃったよ うに保険者努力による成果もありますけれども、給与水準が高いだとか、年齢構成が 若いという部分を全部はき出すことになりますから、非常に厳しい結果になるのでは ないかと思います。それも白川委員が本当によく御存じのはずでございます。それが 1つです。  岡崎委員のおっしゃったことでございますが、今、特に高知はまさにそういう零細 な市町村がたくさんあるのは十分承知しておりますけれども、宮武委員もよくおっし ゃるんですが、将来の市町村別の人口の移動を見ていて、とてもじゃないけれどもは っきりしている。国保は多くの市町村で破たんするということなんですが、実は国保 が破たんする前に市町村が破たんするんだろうと思っております。ここで整理しなけ ればいけないのは、将来の自治体の在り方と国保の在り方は、ちょっと距離を置いて 考えなければいけないのではないか。  自治体の在り方論としては道州制の問題もあり、国と地方で役割分担の話もあり、 別途協議の場は幾らでもあるわけでございますから、自治体である限りは最低限しな ければいけないことがあって、それは介護であったり高齢者のプライマリーケアに関 わることであると私は思っております。  もう一つ、リスク分散という話なんですが、実は保険局にも是非考えていただきた いんですけれども、高額医療費等の共同事業を随分強化してきました。かつては確か に透析の患者が1人出ただけで、私は昔、高知に行ったことがありますが、小さな町 や村の保険年金課長は大変なことであったわけであります。できたら高知市に転出し ていただきたいという話を、保険年金課長から直に聞いたことがあります。  しかし、その後、国保連を中心に共同事業を始めて、今は法定の事業になっており ます。それはどんどん拡大されているわけでございまして、それをうまく活用してい ただきたい。ただ、今までの共同事業に問題があるかどうかという検証をしていただ きたい。私は今までの事業には問題があるのではないかと思うんですが、検証はして おりません。つまり、高額医療費というのはどの保険者であっても同じように発生す るのかというと、どうも都市部の大病院のあるところに多く発生するのではないかと いう気がします。  これは検証しておりませんが、是非それを確かめていただいて、そういうことにな ると、これは本当の再保険的な共同事業になっていないということでございますから、 これを拡大することには問題があると思います。  それから、期限を決めないと都道府県保険者にならないと言うんですが、どうなん でしょうか。1つはある意味で私はここに県と市町村の合意ができれば、都道府県が 保険者になる道を法改正して開くべきだという、実験をしてはどうかということでご ざいます。ですから、うまくいけばどんどん自然に広がっていくことだと思います。 ○岩村座長  ありがとうございます。それでは、白川委員、どうぞ。 ○白川委員  山崎先生から名前を名指しされたものですから、質問ではないんですが、議論を整 理した方がいいかなということで御意見を述べさせていただきたいと思います。  この会議は高齢者医療制度について、どうするかということがメインテーマでござ いますので、ちょっと御質問の中には被用者保険間の公平性云々のお話も出てきまし たけれども、要は被用者保険はどういう思想で高齢者の財政を支援するんだ、支える んだという話。  それから、地域保険は勿論広域化ということをもしも議論されるのであれば、これ は高齢者だけではなくて若年層も含めてという議論になるかと思いますが、被用者の 方はとりあえず若年層、現役世代のところは支援の方法について議論するということ で、集約をしていった方が議論が進むと思いますので、一言コメントさせていただき たいと思います。 ○岩村座長  ありがとうございます。ほかの委員の方、いかがでしょうか。岡崎委員、どうぞ。 ○岡崎委員  法律でもって市町村国保が解体できるかという話がありましたので、我々も専門家 ではございませんが意見を申し上げます。  医療保険制度というのは国民皆保険が始まったときも、政管健保が始まったときも、 基本的には国が枠組みを決めながら、それを法律で制定して、保険者を設立し、被保 険者を設定するという形で成り立ってきたという認識がありますので、市町村国保を 例えば都道府県国保に広域化するという場合でも、我々の認識としては法律で合意が できれば、いわゆる保険者の組み替え、広域化は十分可能であり、できると一般的に は考えております。  恐らく、そうやって戦後60年間、保険というものは成り立ってきたという認識が ありますので、そこは法律の中で、国民の合意は当然要るわけでございますが、国会 審議等を通じてできるものと認識しておりますので、これは意見として申し上げてお きます。 ○岩村座長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。樋口委員、どうぞ。 ○樋口委員  山崎先生の先ほどのお話でございますけれども、年齢のみを区分とした保険料の減 免はない方がよいのではないかという御意見で、私自身はかなりそれに賛成なのです けれども、そこで関先生に伺いたいのですが、関先生はエイジズムを肯定的なエイジ ズムと否定的なエイジズム、例えばアメリカのメディケア、高齢者の医療保険などは 肯定的なエイジズムとおっしゃいまして、肯定的なエイジズムならあってよいのでは ないかという御意見でしょうか。それとも山崎さんがおっしゃいましたように、年齢 を区分の理由としたものは、肯定的であれ否定的であれ、ない方がよいとお考えでし ょうか。 ○岩村座長  関先生、お答えいただけますでしょうか。 ○関先生  何が肯定的、否定的エイジズムにあたるのかというのはわかりにくいかと思います が、女性差別のことを例に考えるとわかりやすいかと思います。つまり、内容によっ て、これについては区分した方がいいというものもありますし、内容によって、それ は反対に差別をなくすためには、できるだけ区分をしない方がいい。大切なのは、エ イジズムには2つの側面がありうるという点です。そうすると、高齢者内の世代内分 配に意義を見いだすと、高齢者であっても保険料を払える人は払った方がいいという 考え方に、つながるのではないかと思っています。そこで私自身は保険料負担につい ては、年齢にかかわらず、負担できる者は負担をした方がいいのではないかと考えて います。  ただ、難しいのは、所得の捕捉が難しいところもありますし、それに加えて資産と いうものが高齢者については、ある意味ほかの年代に比べて差が出てきますので、そ れをどう考えていくかという点を悩んでおります。 ○岩村座長  ありがとうございました。そのほかいかがでございましょうか。  では皆様に質問をお考えいただいている間に、私の方でちょっと1、2質問をさせ ていただきたいのが、加藤先生になんですけれども、法律家議論になるので余りどう しようかと思っていたんですが、ちょっとだけ簡単で結構ですから教えていただきた いんですけれども、保険料の中に例えば支援金とか、そういったものを現在は含めて 取っている。  そうすると、むしろ保険料の租税化ということになるのではないかということで、 最高裁の判例を引いてお話になられたわけですが、加藤先生のお考えとしてはむしろ 保険料は保険料として純化させた方がいいということでいらっしゃるのか、そうする と支援金とか、その辺に相当する部分はどういう形で徴収することになるのだろうか。  そもそも支援金とかそういったものはやめてしまって、保険料は保険料として取り つつ、それ以外のものとして何か別の徴収法、租税でも取ってしまうとかいうことで 考えるのか、あるいはいっそのこと全部租税にしてしまえということになるのか、そ の辺についてのお考えがもしあれば、教えていただきたいというのが1点でございま す。  関先生についてはエイジズムの関係で、例えばメディケアに関して高齢者について 言ったときに、そういう制度ができる、あるいはエイジズムの考えというのは高齢者 の政治力というもの、例えば投票における高齢者の存在というようなこととの関連と いうのがあるのかどうか、特にアメリカについてですけれども、それについて教えて いただければと思います。  済みませんが、まずお答えいただいて、その後もしほかの方の御質問があるかと思 いますので、お願いいたします。 ○加藤先生  岩村座長、どうもありがとうございます。非常に難しい質問でございますが、保険 料の租税化ということでやや否定的なニュアンスで発言させていただきました。した がって、そこから保険料だけに純化すべきかという議論が直ちに出てくるんだろうと 思いますが、さりとて支援金の部分を租税でということになりますと、保険料と租税 との区分けの問題が出てくるんだろうなと思います。  したがって、そこは非常にあいまいな言い方になるのかもしれませんけれども、む しろ高齢者医療に対する財源的な支援ということであれば、それは保険料の中ではな くて、むしろ税金ということで対応することが、1つの筋なのではないかと考えてお ります。  それでよろしいでしょうか。 ○岩村座長  ありがとうございます。続いて関先生、お願いできますでしょうか。 ○関先生  御指摘があったように、高齢者の政治力というのは、特にアメリカにおいて考えね ばならない点です。差別の問題を考えるとき、高齢者差別が、性差別、人種差別とど う違うのだろうかというところが難しい点でありますし、面白い点なのですが、それ を検討するうえで考慮すべき点に、高齢者の政治力ということがあるかと思います。  メディケアも成立した当初は、高齢者はか弱い存在、特に高齢女性はか弱い存在だ ということで、全国民に対する医療保険が無理でも高齢者だけの医療保障制度はでき ました。しかし、果たしてその後どうしてメディケアが存在し続けたのかということ を検討すると、それは単に、ある意味特別な保障を高齢者に対して提供することがよ いという考えのみからではなく、やはり高齢者に政治力があったために、その制度を 維持してきたという側面があるかと思います。  今回アメリカで医療保障改革を見ていて面白かったことがあります。アメリカであ れだけ医療が崩壊している中で、どう改革をするかというときに、メディケアの対象 範囲を広げようといった話などがいろいろとありました。こうして全国民に対する医 療保障制度をつくると、割を食うのは高齢者ではないかということで、高齢者の反対 が高まるのかなと思ったわけです。ところが、これだけ世代間の不公平というものが 高まると、アメリカでも高齢者の中にも、自分たちに対する保障が少なくなっても、 若い人たちに対する医療保障をもう少し充実した方がいいのではないかという声が 出てきておりました。そういう意味では、これから日本も世代間の不公平が高まるに 当たっては、高齢者に政治力があるとしても、そういったことも高齢者も含めて考え られていく余地はあるのではないかと思っています。 ○岩村座長  ありがとうございました。  堂本委員、三上委員、小島委員のお三方で、時間の都合もありますので申し訳あり ませんが、ほかにも御質問されたい方がいらっしゃるかもしれませんけれども、今日 はこのお三方の御質問までを質疑応答ということで終わらせていただければと思い ます。  それでは、まず堂本委員、それから三上委員、小島委員ということでお願いをいた します。 ○堂本委員  関先生に伺いたいのですが、1の(3)で生涯にわたる健康管理、予防の努力を反 映する制度と書いていらっしゃるのですが、その点をもう少し御説明いただきたいと 思います。  新しい制度の在り方についても、同じように生涯にわたる健康管理と公平という観 点から、私は保険制度の中でも、各段階で加入した保険を、反映するような保険制度 を主張してきました。そうしたことと関連があるのか、知りたいと思います。 ○岩村座長  三上委員、お願いいたします。 ○三上委員  土田先生にお伺いしたいんですけれども、新たな制度に求められるものの財政の安 定化のところで、財政調整と保険者のリスク構造調整が、それぞれ事後の調整と事前 の調整だ、残りの足らない部分を国庫負担でやるんだというお話があったと思うんで すが、先ほどありましたように裕福なところが財政調整をきちんとやる、完璧にやる ということになりますと、恐らく相当支出が大きくなるというか、一元化されたもの とほとんど同じような形になるのではないかと思うんです。  そうなりますと、保険者のインセンティブがなくなるのではないかという気がする んですけれども、その辺のところはある程度の部分を、100%ではなくて少し残しな がらインセンティブを付けるという考え方なのかどうかをお伺いしたい。 ○岩村座長  ありがとうございます。最後に小島委員、どうぞ。 ○小島委員  私も土田先生に質問です。私が主張しているのは土田先生も指摘されております、 当事者自治を最大限発揮できる制度という観点から、被用者グループが退職した後も 引き続き被用者グループで支えるという仕組みです。退職しても引き続き現職時代と 同じ保険に入り続けるという、ドイツの疾病金庫を参考にした制度です。  退職した後は被用者グループ全体で支えるという考え方です。けれども、制度間あ るいは特に国保と被用者グループのリスク構造調整の問題が、最大の問題と指摘され ています。  宮武案については退職者が国保に移って、その国保が現役と退職者も含めて一体的 に運営するという考え方ですが、そちらについても被用者グループと国保の財政調整 という問題が残る。ここは私の案でも宮武案でも、今の三上委員が指摘されたように リスク構造調整をどこまで徹底するかという話があります。  宮武案については、都道府県単位に国保を拡大するとして、保険者機能がどこまで 発揮できるかという指摘があります。土田先生の考え方は、退職者は国保に移って、 そこで一体的に運営して保険者機能を発揮させる。保険者機能を発揮させつつ広域化 することが課題としてあると理解できます。しかし国保と被用者グループのリスク構 造調整、財政調整をどこまで徹底するかということが質問です。 ○岩村座長  ありがとうございました。  それでは、まず最初に堂本委員から関委員に御質問がありましたので、関委員にお 答えいただき、その上で土田先生に、三上委員と小島委員の御質問にお答いただきた いと思います。関先生、お願いします。 ○関先生  御質問ありがとうございます。私がここで言いたかった話は、今まで出てきており ます保険者自治を強化した方がいいのではないかという方の話です。どうしても医療 費は高齢期にかかって、どれぐらいかかるかということは、若いころにそれなりに健 康管理なり努力をした点が反映します。若いときにある保険に入っているところ、高 齢期になったら別の保険に移ってしまうのでは、若いころに努力をするインセンティ ブがなくなります。そこで、やはり若いころに食事なり運動なりに気をつけたならば、 その分その保険者の保険料が減るといった工夫が、少しでもある方がいいと考えてい ます。  ただ、これは三上委員からもあったようにバランスで、財政調整をする必要があり つつも、でも連帯をする。そこをどうバランスをとっていくのかという話だと思って います。この点、シンプルに考えると、例えば4案の中では池上委員の案がわかりや すいですし、今回ここに来る前に学部生と大学院生に4案どれがいいかと聞いてみた のですが、最初はみんな1番がいいと言いました。その後、よくよくいろいろと話を してみると、例えば3番の小島委員の案がいいという声も結構ありました。ただ、若 いときの努力を反映するという意味ではいいのですけれども、今こうやって制度間で 移動が多い中では、結局4案のような形でそれなりに財政調整をしつつ、かつ、それ ぞれの保険者の努力も何らかの形で反映される方がいいのではないかということを、 理解してくれた学生さんが多かったです。 ○岩村座長  それでは、土田先生、よろしくお願いいたします。 ○土田先生  三上委員、小島委員、どうもありがとうございます。お答えになるかどうかわかり ませんが、併せてお答えしたいと思います。  これは小島委員の方から先に答えることになると思いますが、当事者自治という点 から考えれば、確かに突き抜け方式というのが一番スムーズにいくので、私は基本的 に突き抜け方式は、例の2000年改革のときからずっと支持しております。しかし先 ほど言いましたように、今のように雇用の流動化などがあった場合に、ドイツみたい に全部組合方式で一律の保険組織であれば、多少動いたとしても一番最後に所属した ところで退職後もそのまま突き抜けるということも可能でしょうが、日本はそうなっ た場合に高齢者を雇用しなくなります。  そういう危険性が非常にありますので、したがって突き抜け方式は確かにスムーズ で理想形だけれども、日本のように制度が違う場合にはなかなか難しいだろうという ことで、小島案では退職者をグループで支える仕組みにしたものと思います。しかし、 その場合には国保とリスク構造格差が大きいままに残りますので、そこは国保として 一括してまとめ、せめて被用者でいる間は突き抜けでいく方が、現実的ではないかと 思ったということであります。  その場合の財政の仕組みについては、今お話がありましたように高齢者の医療費は 非常にかかりますから、どこの国も高齢者の医療費を幾ら医療保険であっても、高齢 者自身だけで賄っていくという国はないわけです。必ず若い人がそこに拠出して世代 間扶養という仕組みを設けていくということは、これは当たり前のことなんですが、 その場合のやり方として3つある。  足りないところを国庫負担でという意味ではありませんで、1つは財政調整という 考え方、つまり老人医療費をお互いにどう分担するか。分担者の一つに国も入ってく るというのが昔の老人保健制度だと思いますが、そういうやり方があります。2つ目 は、基本的には所得と高齢者比率だと思いますが、それらのリスクの差異を最初に平 準化してしまうというやり方があります。標準化した上で用意ドンして、それである 疾病金庫が赤字を出したら、それは経営責任とするものです。明らかに財政調整で出 てきた老人医療費を全部平等に分配するというやり方と違うわけです。そこには保険 者機能というものが入ってくる。  そういうリスク構造調整が望ましいんだけれども、その場合には先ほど言ったよう に年齢だけではまだ不十分なので、所得を加えることが必要です。しかし所得把握は 現在日本では非常に難しいので、国保と被用者保険と調整という場合は、国庫負担を もって調整せざるを得ないだろうという意味で言ったわけですので、三上委員がそう いうことをふまえたうえで質問されたのかもわかりませんが、一応そういうことを繰 り返し申し上げたいと思います。  リスク構造調整の場合は、先ほど一圓先生がおっしゃったように、一生懸命疾病予 防対策の方でやったところとそうでないところと格差が出てくるわけですから、そこ は保険者の責任として自分で対応していくというシステムが必要だろうという意味 で言ったわけです。 ○三上委員  財政調整は。 ○土田先生  財政調整する場合は、出てきた老人医療費を分配するだけの話ですから、従来の財 政調整というやり方は私は決していいとは思わないです。  もう一つついでに申し上げておきますが、保険者機能の発揮という場合、先ほど三 上先生が全部医療費の削減ではないかという話をしたんですけれども、これはある意 味で医師会の誤解でありまして、保険者機能というのは全部医療費を削減するという わけではなくて、私は基本的に日本の医療費の不足というのは、医療費を上げて十分 な医療活動ができるように引き上げていくべきであるということで、無駄な医療費を 削減していく。少なくとも保険者機能を発揮させながら、費用の調整をしていくこと について言っているわけですから、そこは誤解のないようにお願いをしたいと思いま す。 ○岩村座長  どうもありがとうございました。今日は5人の有識者の先生方に御出席をいただい て、多角的な角度からいろいろ御意見を頂戴し、大変熱の入った御議論をいただいた ように思います。それぞれ先生方いろいろお考えをお持ちでいらっしゃることがよく わかりましたけれども、他方で幾つか先生方を通してある程度の共通点というのはあ るのかなと思っております。  1つは保険者、特に財政面で広域化するという方向を考えたとしても、やはり基礎 的な自治体あるいは健康保険組合などに保険者としての機能、とりわけ保健活動、健 診活動といった予防の面も含めた活動に取り組むような、インセンティブを持たせる べきだという点で、ほぼ5人の先生方の意見というのは一致していたのではないかと 思います。  高齢者の医療費については65歳にするのかとか、そういう問題はありますけれど も、いずれにしても財政調整といったものがどうしても必要である。そして、それに ついても大体皆様の御意見は、勿論細かく立ち入れば異同はありますけれども、大体 所得の面での調整とリスクの面での調整が必要であろうということも、大体同じ考え だったのではないかと思います。それでも調整し切れない部分ということについては、 やはり国費でもって最終的には調整することが必要だろうという御意見で、細かいと ころはともかくとしても、大まかな線では一致しているのかなと承りました。  そのほかにもいろいろ御指摘はいただいておりまして、例えば所得捕捉の難しい中 で所得面での完全な調整というのはできにくいのではないか。特に国保と被用者保険 との間での完全な調整というのは非常に難しいであろうという御意見であるとか、あ るいは高齢者の方々についても同じ世代内での負担ということも考えるべきではな いか。特にこれは山崎先生が非常に強く言われましたけれども、高齢者ということで 過度の負担の軽減はしない方がいいのではないかという御意見もあったように思い ます。  比較的5人の有識者の先生の中では、宮武案が結構人気を博していたという気もい たしました。  今日は本当にお忙しいところ、5人の先生方にはわざわざおいでいただきまして、 貴重な御意見を頂戴しまして、本当にありがとうございました。厚く御礼を申し上げ たいと思います。  改革会議の今後の予定でございますけれども、次回の第7回では今日までの議論を 踏まえまして、総括的な議論を行うことを考えております。その上で第8回が7月と なりますが、そこでは中間とりまとめのたたき台をお示しして、とりまとめに向けた 議論をお願いすることになろうと思いますので、どうぞ委員の皆様方におかれまして は、よろしくお願いをしたいと思います。  それでは、お忙しい中、足立政務官に来ていただいておりますので、最後に一言ご あいさつを頂戴したいと思います。政務官、よろしくお願いいたします。 ○足立政務官  政務官の足立信也でございます。5人の先生方、委員の先生方、事務方の皆さん、 そして傍聴されている皆さん、暑い中本当にお疲れ様でございます。  いつものことながら国会運営の関係上、なかなか出席することがかないません。ま た、ほかの検討会との関係もありまして、全部出席することはできませんが、毎回の ことながら岩村座長が最後にまとめられるお話を参考にしながら、その後、事務方か らの報告を受けながら、私なりに考えているところでございます。  そんな中でざっと資料から拝見させていただきますと、一圓先生が、いわゆる宮武 案というのが一番自然である。しかしながら、保険者機能をどう考えていくのかが問 題であるとおっしゃっておられます。これは国会審議でもまさにそのことが問題にな っております。協会けんぽは全国1つでありますけれども、都道府県単位でやった場 合に、そこの保険者機能の発揮というのは極めて弱い。これをどう解決していくかと いう問題だろうと思います。  関先生も国保との一体的運営を図る案に賛成であるとおっしゃっておられますし、 土田先生は高齢な被用者の方々については、被用者保険に加入が必要であろうとおっ しゃっておられます。そんな中で支援金は保険料というよりは租税化すべきであると いう加藤先生の御指摘もございました。  最終的にはこれは山崎先生の御指摘でありますけれども、年金制度改革、医療保険 の一元的運用、その第一段階が今回の会議でございますが、しかし、このことが23 年度の法案提出、25年度の法律施行を束縛するような形になってはいけない。まさに その御指摘のとおりだと思います。  ただ、国会の審議等を考え合わせておりますと、ほとんど問題点というか検討すべ き事項は共通しているのだろうという認識を更に新たにいたしましたので、次回から は本日のヒアリングを踏まえて、夏の中間とりまとめに向けて活発な議論を引き続き お願いいたしたいと思いました。  本日はどうもありがとうございます。 ○岩村座長  足立政務官、どうもありがとうございました。  次回の日程でございますけれども、第7回は6月23日水曜日、午後3時から5時 までを予定しております。詳細につきましては事務局から改めて御連絡を差し上げま すので、どうぞよろしくお願いをいたします。  本日はどうもお忙しい中、また部屋がお暑い中を長時間にわたり、ありがとうござ いました。これにて散会いたします。 照会先 保険局高齢者医療課 企画法令係     (代)03−5253−1111(内線)3199