10/05/12 第58回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録     第58回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会          日時 平成22年5月12日(水)          17:00〜          場所 厚生労働省14階職業安定局 第一会議室 ○清家部会長 それでは時間になりましたので、ただいまから第58回「雇用保険部会」を 開催いたします。  最初に委員の交代がございましたのでご紹介いたします。使用者代表の西馬委員が辞任 され、後任にJFEスチール株式会社労政人事部長の藤原委員がご就任になっております。 一言ご挨拶をいただきます。 ○藤原委員 JFEの藤原です。微力でございますけれども、よりよい制度をつくれるよう に頑張りたいと思いますのでよろしくお願いいたします。 ○清家部会長 こちらこそよろしくお願いいたします。  本日の出欠状況ですが、野川委員、栗田委員、古川委員がご欠席です。林委員が遅れて のご出席と伺っております。本日は資料の関連で、職業能力開発局総務課の高橋企画官、 職業能力開発局能力開発課の渡部補佐にご出席いただいております。  それでは議事に移ります。本日の議題は「求職者支援制度について」です。今回からは 求職者支援制度の創設に関わる論点の各項目についてご議論をいただきたいと考えており まして、本日は求職者支援制度の位置付け、対象者、給付要件についてご議論をお願いし たいと思っております。進め方は、位置付けについての資料の説明ののちに一度議論をい たしまして、次に対象者と給付要件について、資料の説明ののちに再び議論をするという ような形で進めたいと思っておりますので、よろしくお願いします。  それではまず事務局から資料についてご説明をお願いします。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 説明いたします。まず、資料の確認をお願いいたします。資 料1「求職者支援制度創設に係る論点」(素案)、資料2は「各論資料」でPART1、PART2と あります。資料3「緊急人材育成支援事業関係資料」、資料4「参考資料」ということで、 こちらの資料4のほうも適宜参照をしていただきたいというふうに思っております。  それでは早速ですが、資料1から説明をさせていただきます。これは以前ご提出した素 案について委員の皆さまからご意見をいただいておりますので、その素案の下に委員の皆 さまからの主な意見ということで記載をさせていただいております。簡単にご紹介いたし ます。まずI.位置付けについて、求職者支援制度の政策や目的をどこにおくのかを考える ことが必要。(1)給付の位置付けについては過渡的な給付と考えるか否かも1つのポイント、 ということでいただいております。II.訓練の部分については訓練実施機関に対する奨励金 のあり方をどのように考えるかについても論点として加えたほうがよいのではないかとい うこと。訓練の部分は職業能力開発分科会のほうで別途検討を進めるようになっています が、このような意見をいただいております。III.給付に関しましては、現行の緊急人材育成 支援事業において、学卒未就職者を対象とすることについては、緊急施策としてやむを得 ないが、恒久的な求職者支援制度を創設するにあたっては、学卒未就職者を対象とするこ とについては議論が必要。  1頁おめくりください。給付額についてです。委員の皆さまからの意見として、生活給 付だけではなく、訓練実施機関への交通費を支給する通所手当や訓練が始まる前までに手 当を支給する待機手当など、給付の種類についても考える必要があるのではないか。それ から給付額について地域差を認めるか否かということや、雇用保険の失業給付の金額との 関係をどのように考えるかということもポイント、というような意見をいただいておりま す。こういった形で意見を付記させていただいています。  資料2は、まずPART1位置付けについて、通し番号6頁をご覧ください。「雇用保険と緊 急人材育成支援事業、生活保護の比較について」を表にしているものです。雇用保険は、 労働者が失業した場合の所得を補償していくもので、生活の安定を支援するとともに、再 就職の促進を図るということが目的です。一方、真ん中の緊急人材育成支援事業について、 雇用保険が受給できない方等を対象として、安心して訓練を受けていただくために訓練中 の生活を支援する手当を給付するというようなものです。  生活保護につきましては、資産・能力とあらゆるものを活用した上でも、なお生活に困 窮する方に対して、年齢や世帯構成等を考慮した上で必要な給付を行うということを目的 としております。給付の種類や対象者、給付額についてここに記載をしております。緊急 人材育成支援事業について、年収要件や資産要件等がある、生活保護についてはその資産 や能力、あらゆるものを活用した上でということですので、当然そういった資産調査等が 行われているということです。給付額については、雇用保険の場合は人により異なるとい うことですが、日額で言うと1,640円〜7,685円で、月に5万円程度から20万円程度まで 幅がある形になります。緊急人材育成支援事業については、月額10万円または12万円。 生活保護は世帯構成等により異なりますが、例えばということで、東京都の都区部の3人 世帯で月額17万5,170円。単身世帯30歳の場合は8万4,990円となっています。  この生活保護の関係で詳しい資料は、資料4の通し番号29頁ですが、前回もご説明いた しました際にいくつか宿題をいただいておりましたので、資料を用意させていただいてお ります。まず29頁の被保護世帯数、被保護実人員数ということで、雇用情勢が悪化した 20年後半、秋以降見られるようにということで20年から付けておりますが、全体として 微増しております。  次の30頁は世帯類型について分けてみたものです。これも月ごとに取っておりますが、 構成としていちばん大きいのは左の「高齢者世帯」が上から見ても45%、20年2月も45% で22年1月でも43%ですので、構成比としてはこちらがいちばん多く、1月で57万人。 その他「母子世帯」「障害者世帯」「傷病者世帯」「その他の世帯」となっています。大きく は変わっていませんが、その他の世帯においていちばん上が10%だったのがいちばん下の 22年1月で15%になっていますので、その他の世帯が構成比としては大きくなっています。 例えば失業して生活困窮して生活保護を受ける方は、その他の世帯に含まれていると考え られますので、そういった影響もあるかと考えられます。  次に生活保護の開始の主な理由として、理由別に世帯数の構成割合を見たものです。い ちばん多いものは16年からありますが、「傷病による」というものがいちばん多くなって います。次いで「働きによる収入の減少・喪失」が20年で19.7%。続いて「貯金等の減 少・喪失」17.4%。構成比としては貯金等の減少・喪失が若干増えている傾向が見られる かと考えております。  次に32頁の保護の廃止の主な理由ですが、いちばん大きいものは下の20年度の「死亡」 によるものが31.1%。「その他」とありますが、「失そう」によるもの13.6%、「働きによ る収入の増加」が13.5%となっています。一旦生活保護になったものが就労することによ って生活保護を受けなくなるということは、働きによる収入の増加という部分に入ってく ると思いますので、そちらの構成比としては20年は13.5%となっているというふうに考 えております。以上が生活保護で、いくつか宿題をいただいていたものです。  次に資料2の7頁、「現在の第二のセーフティネットについて」ということで、こちらに ついては今回緊急人材育成支援事業のほうをご紹介しておりますが、これ以外にも、いわ ゆる「第二のセーフティネット」と言われる施策がいろいろあり、それについて類型別に 分けています。  いちばん左の住宅がなく雇用保険の受給資格がある方について、利用できる制度として はということですが、雇用保険制度は当然給付を受けることができます。そのほかに就職 安定資金融資ということで、貸付を受けることができる仕組みがあります。そのほか住宅 手当というものを受けることができます。次に真ん中の、住宅がなく雇用保険受給資格が ない方の場合について、いまご議論している訓練を受ける場合については訓練・生活支援 給付が受けられるということがありますが、そのほかにも住宅手当とか、先ほどの就職安 定資金融資による貸付、就職活動困難者支援事業として、民間職業紹介事業による支援を 受けたり、総合支援資金貸付というものも受けることができるようになっております。  右の住宅がある場合では、住宅があり雇用保険の受給資格がない方についての支援を示 しています。こちらの場合も訓練・生活支援給付というものは当然受けられるわけですが、 そのほかにも長期失業者向けの長期失業者支援事業として、民間の職業紹介事業による支 援を受けることができます。そのほか、住宅手当、総合支援資金貸付ということも利用す ることができますので、いわゆる第二のセーフティネットという場合については、訓練中 の生活を安定させるための給付だけではなく、さまざまな施策が用意されているというこ とを示しております。以上で位置付けについての説明を終わります。 ○清家部会長 ありがとうございました。資料2の各論資料PART1、位置付けについて、7 頁のところまでご説明いただいたわけです。ただいままでのところに関して何かご質問、 ご意見等ありましたら、よろしくお願いします。 ○新谷委員 今日、論点に係る素案というのを整理していただいて、前回の意見も付記を していただきましたので、非常にいい資料が出てきたと思います。その中で、私は前回、 この制度の論議をするに当たって、位置付けのところで、この制度が雇用政策なのか社会 保障政策なのかということを申し上げ、それもきちんと書いていただいているのですが、 今後、論議を進めるに当たって、厚生労働省としてこの制度の位置付けをどのように捉え ているのか。もちろん恒久化の議論を雇用保険部会でやっているということ自体で、それ は大体わかるのですが、改めて、論議のスタートに当たって、事務局の見解をお伺いした いと思います。 ○坂口雇用保険課長 位置付けも含めて今後当部会でいろいろ幅広にご議論いただければ、 と思うのが基本的な部分ではあるのですが、今もご指摘、ご質問がありましたので、お答 えさせていただきます。先ほど補佐のほうから説明させていただいた資料2のPART1の6 頁、いろいろ今回のご議論の中でも、現行の緊急人材育成支援事業について非常にベース となる事業として参考にしていただきながらということでお願いしているわけですが、今 回の求職者支援制度の恒久化というお話も、前々回の雇用保険制度の見直し、改正の国会 の議論、あるいは従前からの労使の皆さんのご議論を受けてという形で出てきたわけです。 ここの緊急人材育成支援事業の給付の目的にもありますように、雇用保険を受給できない 方が安心して訓練を受講することができるように、訓練期間中の生活を支援する手当を給 付することにより、その就職を促進するということで、やはり雇用保険を受給できない方 が、生活が困窮していく中で安心して訓練を受けられて、就職にうまく持っていくという 形のものを目的としているということで、今後いろいろな訓練あるいは給付の内容等々に ついてもご議論いただく中で、この位置付けについてもさらなるご議論を深めていただく ことになろうかと思います。実際に失業されている方が、就職にどういう形で結び付いて いくかということについては、事務局としては非常にこの制度のご議論の中では重きを置 いた部分であろうということで考えているということは、お話申し上げることができると 思います。 ○清家部会長 そうすると、就職にかなりウエイトを置いているということは、雇用政策 的な部分を強調したいということですか。 ○坂口雇用保険課長 そこは従前、去年来も、いろいろ現行基金事業のフォローアップ等 の中でも委員のほうからもご指摘があったり、論点の中でも、繰返し受給とかこの制度だ けに寄りかかることがないようにというようなご意見もいろいろあったところでもありま す。ずっとこの給付に寄りかかるということではなくて、就職していただいてというとこ ろにつながるような制度設計ということをベースとして考えていくということは重要では ないかと、事務局としては考えるということです。 ○遠藤委員 この素案の太枠の囲みの中にある問いに対する直接の答えにはなっていない のかもしれないのですが、基本的にどのような制度であったとしても、制度構築に当って は、制度を持続可能性のあるものにしていかなければいけないといったようなことですと か、公平性あるいは納得性といったようなものは、重要な視点として位置付けていただけ ればと考えています。  それから、もう1点、第2のセーフティネットという位置付けであり、やはり保険料を 負担している雇用保険とは違うという視点も持つ必要があると考えます。例えば雇用保険 の中に、訓練受講までの待機の間に雇用保険を受給できる延長給付の仕組みがあるかと思 うのですが、こういったものまで新たな枠組みの中に入れてくるということについては、 正直、いかがなものかとは思っています。 ○清家部会長 ほかに、よろしいですか。それでは、またこちらに戻ることもありますの で、引き続きPART2について以降ご説明いただきたいと思います。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 それでは引き続きまして、「対象者及び給付要件について」の 説明をいたします。資料2の8頁以降になります。対象者及び給付要件について議論する のに参考となる資料を用意しています。資料としましては、具体的には9頁以降ですが、 ハローワークにおいて、来所者に対するアンケートを行っています。また、その基金の受 講者に対するアンケートがありますので、この2つ、「ハローワーク来所者に関するアンケ ート調査」と「基金訓練受講者向けアンケート調査」の紹介をしております。  それではまず、先にハローワークの来所者のアンケートのほうからご紹介をします。中 身としては、対象者、それから給付要件に資するようなことを抜粋して載せています。  10頁です。まずハローワークの調査ですが、ハローワークに来所される方は、当然雇用 保険を受給されている方、それから在職者の方であるとか、65歳以上の方もいますので、 この基金訓練の求職者支援制度との関係では、雇用保険が受給できない方ということです ので、雇用保険受給中である方、65歳以上の方、在職者は除いた形で集計をしています。 そのアンケートとして、除いたものの分析の結果です。性別です。性別としては、男性が 61.8%、女性が38.2%ということで、大体6対4になっていました。  11頁です。属性の部分です。年齢としては、ハローワークに来所した求職者のうち最も 多かったのは、31歳から35歳層で、13.7%となっていますが、その他20代後半から40代 にかけましても高くなっています。それから問3、家族構成についてです。ハローワーク に来所した求職者のうち最も多かった者は、世帯主等と同居している方、30.9%がいちばん 多くなっています。その次に多いのが、「世帯主(家計の主たる担い手)」という方が25.6%、 いちばん上、「単身(一人暮らし)」の方が24.5%となっています。  12頁です。「現在の状況は」ということで聞いています。雇用保険をもらっていない方 という中でのアンケートです。来所する方のうち「失業中」の者が99.2%。失業中の状態 の内訳としましては、いちばん多い者が46.8%で、雇用保険の受給終了者。続きまして26.0% で、雇用保険に未加入だった方。その他、加入していたが加入期間が足りず未支給という 方。その他、自営業を廃業、就業経験なしという方がいます。その下、問5、「前職を離職 した後どの程度の期間仕事を探していますか」。いちばん多いのは、「6カ月以上1年未満」 の方が23%。それから1年以上続けているという方も下のほうの3つ足しあげますと21.3% となっています。ただ一方で多いのは、「1カ月未満」の方も20.8%ということで多くなっ ています。  13頁、「離職前の直近の仕事の雇用形態は」という質問です。直近の離職前の雇用形態 が、「正社員」だった方が44.4%でいちばん多くなっています。その次が、「パート・アル バイト」の方で26.0%となっています。こういったパート、それから「契約社員」等、い わゆる非正規社員ということで足しあげますと、全体で49.3%となっています。その他、「自 営業」だった方は3.6%となっています。また、求職者支援制度の基金訓練の受講者のアン ケートを紹介しますが、そちらと比べますと、ハローワーク全体の調査のほうが正社員の 割合が高くなっているのかなというのが特徴だと考えています。下の問11。「現在、ご自 身、あるいは家族も含めた生活費をどのような収入でまかなっていますか」というもので す。複数回答で聞いています。最も多かったものが22.4%で、「預貯金、配当などの収入」。 続きまして、17.4%で、「配偶者の給与・収入」という形で多くなっています。  14頁です。問12、「家計を共にする家族全体で見た1年間のボーナスを含めた現在の年 収総額は」というものです。いちばん多いものが、「100万円未満」で25.8%となっていま す。その他、ほぼ上から順番ですが、「100万円以上200万円未満」が20.2%、「200万円以 上300万円未満」が19.7%となっています。続きまして問13、「家計全体の資産はどの程度 ですか」というものです。こちらも、いちばん多いものは「100万円未満」で50.0%となっ ています。なお、現行の緊急人材育成支援事業では、要件としまして、世帯の金融資産が 800万円となっていますので、この800万円未満の方という形で計算をしますと、800万円 未満の方は92.4%になるということです。  15頁をご覧ください。これ以降が「基金訓練受講者向けのアンケート調査」です。  16頁です。基金訓練受講者の属性等についてということです。まず属性、男女比につい ては、ほぼ同数というアンケートになっています。  17頁。年齢構成ですが、これも各世代、各層、それなりに満遍なくということですが、 20、30、40代と回答したものがそれぞれ2割から3割を占めているという状況です。それ から、(4)「家計に関するあなたの現在の状況は」ということで、家計の主な担い手である と回答した者が過半数を占めています。緊急人材育成支援事業の給付を受ける条件として は、「家計の主な担い手」というものがありますので、それもあって高くなっているのだと 思われます。一方、「家計の主な担い手と同居」というものが35.2%となっています。  18頁です。「あなたの訓練の受講前の直近の就業・生活形態は」ということです。いち ばん多いものが、30.4%で、「パートタイム労働者・アルバイト」となっています。2番目 としては、いちばん上、「常用労働者」が25.8%となっています。3番目としては、「就業し ていない」という方が19.6%となっています。全く同じ聞き方ではないのですが、先ほど ハローワークのアンケートでは、正社員が49.3%だったのに比べまして、こちらの基金訓 練の受講者の就業形態は、常用労働者というのは25.8%に留まっているという状況です。 それから、就業していないという方も大分多くなっているというのが特徴だと思われます。 続きまして(10)、「訓練申込時の雇用保険受給状況は」ということです。雇用保険に加入し ていなかったり、加入していても被保険者期間が足りずに受給資格が得られなかったりし たケースが約5割となっています。一方、雇用保険の受給期間が終了していたり、訓練の 途中で終了したケースが約4割となっています。  19頁の付問1です。「雇用保険の受給期間が終わって、どれくらい経過していますか」 という問いです。これにつきましては、雇用保険の受給期間が終了していたと回答した者 のうち、約5割あまりが受給期間終了後6カ月未満である一方、1年以上経過している方 も約3割に上るという結果になっています。続きまして(11)、「前職を離職した後、どの程 度の期間仕事を探していますかという問いです。これにつきましては、枠内ですが、前職 の離職後6カ月未満」の者が約5割を占める一方で、1年以上の長期失業者も3割近くを占 めているという結果になっています。  20頁です。(14)ご自身の現在の収入総額について聞いているものです。無収入の方が約 6割となっています。この無収入の方を含めまして、年収が200万円以下と回答した方が9 割以上に上ります。(15)家計全体で見た年収総額ということです。こちらも、緊急人材育 成支援事業の給付を受ける要件として、世帯全体で見た年収が300万というものがありま すので、300万というものを基準に見てみますと、「無収入」を含めまして家計全体で年収 300万円以下という回答が約7割以上を占めるという状況になっています。  21頁です。(16)「現在、ご自身あるいは家族も含めた生活費を、どのような収入でまか なっていますか」というものです。いちばん多いものは30.0%で、「本人の訓練・生活支援 給付」というものです。続きまして、25.4%で「預貯金、配当などの収入」となっています。 (17)「家計全体の現在の金融資産はどの程度ですか」という問いです。これについては、 「なし」が3割ありますが、この、なしを含めまして、家計全体の金融資産が100万円以 下と回答した者が約6割を占めるという状況になっています。緊急人材育成支援事業の給 付の要件としては、資産要件800万というものがありますので、例えば800万円のライン ということになりますと、約8割ぐらいの方がこの800万円以下にはなっているという状 況です。  22頁、(18)「現在、訓練・生活支援給付を受けていますか」という問いにつきましては、 訓練生活支援給付を「受けている」という回答が57.2%で約6割。「受けていない」が32.0%、 「希望したが受けられなかった」が8.6%となっています。希望したが受けられなかった方 についてさらに詳しく聞いているものです。付問の7、「訓練・生活支援給付が受けられな かった理由は、次のうちどの要件に該当したためですか」というものです。これについて は、いちばん多いものが38.3%で、世帯の年収300万円以下という要件がかかったという 方がいちばん多くなっています。続きまして23.4%で、世帯の主な生計者ではなかったと いうことでこの要件がひっかかったという方が多くなっています。以上が資料2の説明で す。  引き続きまして、資料3、「緊急人材育成支援事業関係資料」で、基金訓練の受講者向け のアンケートについて特別集計したものについて説明をします。この特別集計につきまし ては、有効回答数3,625人のうち、生活費をまかなう手段として「本人の雇用保険」を選 択しなかった3,184人の者につきまして、内容を抽出したものです。  25頁1つ目が、年齢の分布を全体と男女比に分けたものです。その下、男女別の年齢構 成につきましてやっているものです。このマルを付けていますのが、いちばん多い部分を 示しているものです。年齢構成はさほど大きな違いはなくて、全体でも31歳〜40歳が多 くなっていますが、男女別に見ても31歳〜40歳の部分がいちばん多いというようになっ ています。  26頁です。基金訓練につきまして、男女別、年齢別の訓練の受講分野を見ているもので す。これにつきましては、男女別に見ますと、特徴としてはいちばん左ですが、「IT基礎」 については男女それぞれたくさんの方が受講していますが、基礎ではない「IT」について は、若干倍ぐらいですが男性のほうが多くなっています。1つ飛びまして「医療事務」に つきましては、男性5人に対して女性163人ということで、医療事務は女性のほうが多い と。その右、「介護福祉」につきましては、男女ほぼ同数となっています。それから特徴的 なもので言うと、右側のほうにいきますが、「電気関連」「機械関連」「建設関連」につきま しては、男性のほうが多くなっています。いちばん右、「理容・美容関連」につきましては、 女性が60人ということで、男性に比べて多いとなっています。受講分野としては、男女別 ではこういった傾向が見られるということです。それからその下段、受講分野について年 齢別に見ているものです。これもいちばん多い年齢層についてマルを付けています。31歳 〜40歳層がもともと多いということで、そこにマルがその辺を中心に付いています。傾向 としては、1つ、ITについては113の所にマルを付けていますが、ITについては21歳〜30 歳の層がいちばん多いとなっています。それから真ん中の「農業」です。農業については、 51歳〜60歳の層が17人といちばん多くなっています。あとは、31歳〜40歳を中心に前後 に分かれているという状況です。  27頁です。訓練の受講分野について、男女別と年齢別を入れたものですが、これもいち ばん多いものにマルを付けていますが、それほど全体の傾向とは変化はないのかなと考え ています。それから下段です。訓練生活支援給付を希望したのに受給できなかった理由に ついて、全体と男女を分けています。こちらにつきましては、全体でいちばん多いものと しては38.3%で「世帯年収300万円以下要件」、2番目が、23.4%で「世帯の主な生計者要件」 ということでしたが、順番としては男女とも同じになっています。具体的には、男性のほ うでいちばん多いのが33.6%で「世帯年収300万円以下要件」。それから、19.7%で「世帯 の主な生計者要件」。女性につきましてもいちばん多いのは、やはり同じく「世帯年収300 万円以下要件」というもので41.7%、2番目としては、「世帯の主な生計者要件」でひっか かったという者が26.5%というようなアンケート結果になっています。以上が資料の説明 です。 ○清家部会長 ありがとうございました。資料3のところまでご説明いただきました。こ の部分について皆様方からご意見、ご質問がございましたらよろしくお願いします。 ○豊島委員 いま、2つのアンケートの結果をご紹介いただいて大変参考になりました。 それを聞きながら「知は現場にあり」という、どこかの詩集に書いてあったのが浮かんだ のですが、ひとつ思うのは、先ほど遠藤委員が言われた公平性、説得性、持続可能性とい う言葉も併せて浮かびながらですけれども、現場の実施者と言いますか、教えておられる 皆さん方がこの間、どのように訓練を担って感じておられるかというのも、これから制度 を考えるときに大変いい参考になるのではないかという思いがしました。そういうことは もう考えておられるのかもしれませんが、そういうことも是非、ここでいろいろと今後の ことを判断する材料としてあればという思いがありました。そういう思いでございます。  1つは初歩的なことですが、給付の対象者は雇用保険では年齢の上限があるわけですけ れども、この基金訓練は上限があったでしょうか。これは質問です。  もう1つは、いまアンケートの結果で世帯収入のことがあったりしますが、求職者支援 制度における給付要件で、世帯の主たる生計者であるということで外されることもありま す。個人単位ということで主たる生計者というのは、給付要件から外すことも考えていい のではないか。そういう意見を持ちましたので、それも申し上げておきたいと思います。 ○清家部会長 わかりました。事務局からご質問の部分についてお答えいただきます。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 基金訓練の年齢制限は設けていません。ハロ ーワークのほうで斡旋をする際に、その訓練を受けることが就職につながるものかどうか を判断した上で、受講の斡旋をすることになりますので、その点で難しい方が出てくる可 能性はありますが、年齢制限自体は設けていません。 ○清家部会長 アンケート等は取っておられないでしょうけど、実施者のほうから常に感 想とか意見とか上がってきているのでしょうか。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 実施者のほうの意見も聞くようにはしていま すが、今後、この制度の検討に向けてということですと、またどういう形で取れるかとい うのは検討したいと思っています。 ○清家部会長 豊島委員、よろしいですか。 ○豊島委員 はい。 ○清家部会長 ほかに、いかがでしょうか。 ○三木委員 これから議論する上でも、少しわかりやすいように資料のお願いなのですが、 給付要件と訓練の受給要件についても、それぞれ少し整理した上で議論したほうがしやす いのではないかという意味で、是非、お願いできればと思っています。 ○清家部会長 資料をそのような形で。 ○坂口雇用保険課長 いまの点は論点の素案の2頁のIII.給付で、(1)は対象者についてどの ように考えるか、(2)は給付要件についてどのように考えるかを書いています。いま三木委 員がおっしゃったとおり、訓練も含めての対象者をどう考えるのかということと、給付ま で支給するのかどうか、その部分のワンクッションがあるというご指摘だと思います。そ の意味では「II.訓練」が、どういう訓練をあり方として、あるいは実施体制として考える のかという形で、「II.訓練」と書いていますから、ちょっとややこしいかもしれませんが、 「III.給付」の(1)が、ここでは端折って書いていますけれども、例えば現行の雇用保険の受 給ができない方ということで適用がなかった方、受給が終了した方、自営廃業者を主たる 対象者としているので、そこをひとつの目安としてご議論をという形で出しています。下 の小さな字のところにあるような学卒未就職の問題であったり、あるいは先ほど豊島委員 からお話が出た一定の年齢というのを、どういったところに置くのかも、まさしくそうい ったところの議論だと思います。今日、こういう形でありますけれども、今回あるいは次 回以降もご議論していただく中で、またご議論を踏まえて事務局でさらに整理しながら、 議論が深まるように工夫したいと思います。 ○豊島委員 先ほど年齢のことでも運用でお話していただきましたが、きちんと制度とし て生まれるのであれば、制度としてはっきりわかるようにしなければいけない。まさに、 いま課長がおっしゃったことにつながると思いますが、そういうふうにしたほうがいいと いうことです。  もう1点、先ほど実際のアンケートという話をしたのですが、実はいま、訓練に8割以 上出席することが給付を受ける要件になっていますけれども、聞こえてくることというか、 その給付が目的で朝来て、1個1個の単位があるのですが、全部出ないで給付をもらうた めだけに来ているとしか見えないような方もおられるのではないか、というのが聞こえて くるのです。先ほど、いちばん最初の位置付けのところでお話がありましたように、訓練、 そして就職促進というのが、今回作ろうとしている制度のキーワードなわけです。積極的 に労働市場に関わって就職に結び付ける目的にも劣るわけで、その辺のところについて既 にいま、いろいろな所でたぶん上がってきていると思いますが、何か対応はされているの でしょうか。それを現場の担当に伺っておきたいと思います。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 そういった声ですが、こちらのほうでも聞い ているところはあります。すべてがそうだということではないと思いますが、一部、そう いう方がいて、その訓練全体がうまくいかないというのではいけないと思っていますので、 具体的には今後ということになってくると思いますが、例えば送り出しの段階で何かもう 少し絞るようなことができないか。実際にそういう方が生じたときに、どういうふうに指 導していくか。そこは現行制度の中でも考えて対応していきたいと思っているところです。 ○清家部会長 その辺も含めて実施者のほうからの情報も、また後日、少し教えていただ けたらと思います。よろしくお願いします。 ○豊島委員 そうですね。 ○新谷委員 関連して、もう既に何万人も受講されていると思うのですが、途中でリタイ アした方ですね、要するに8割要件に引っかかって途中で対象から外れていく方の数も、 最新の情報として併せて教えていただきたいと思っています。  続けて質問させていただきます。私の読み方が間違っているのかもしれませんが、いた だいている資料で去年の資料もひっくり返してみたのですが、あまり細かなことが書いて いなくて、これでいくと資料2の6頁に要件が書いてあり、給付の要件、対象者要件があ ります。雇用保険を受給できない者で、括弧して資格がないとか、満了とか、自営廃業者 と書いてあるのですが、雇用保険の失業手当の受給要件は、たしか就職しようとする意欲 と能力を求められると思います。この制度においては、それはどういう扱いになっている のか教えていただきたいのが1点です。  もう1点は、このアンケートの20頁に、ご自身の現在の年収総額を換算してということ で、無収入も含めて200万円以下が9割以上と書いてあります。200万円超という方がお られるということと、先ほどの要件のところの本人の年収が200万円以下というところと の関係を、どう見たらいいのか。関係あるのか関係ないのかも含めて私が誤解している部 分があるのかもしれませんが、教えていただきたいと思います。 ○清家部会長 2点だったかと思いますが、能開局からお願いします。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 最初の途中でリタイアした人の数ですが、い ま最新の数字がありませんので改めてお示しさせていただきたいと思います。2点目の就 職の能力と意欲の関係のところの給付との関係ですが、この資料に出ていた要件の雇用保 険の受給資格のない方という部分については、給付のほうの要件になっていて、一方で基 金訓練を受講する要件としては、1つはハローワークに求職登録している方と、もう1つ はハローワークのキャリア・コンサルタントを通じて就職の意欲等を見て、この訓練が適 切と判断される方について、ハローワークの所長が斡旋した方というのが条件になってい ますので、ここで担保していると考えています。  3点目の200万円以下の部分ですが、今回、お示ししているアンケートの結果では、訓 練・生活支援給付を受けている方と受けていない方についても、併せて対象としているア ンケートになりますので、200万円以上の個人の収入がある方は、訓練・生活支援給付を 受けずに訓練を受けている方が入っているのではないかと思っています。 ○岩村委員 私も最初、どうなっているのかと思ったのですが、16頁のところで「基金訓 練受講者の属性等について」と書いてしまってあるので、以下のデータというのは基金訓 練を受けている人のデータかと、これを見た人は思ってしまうと思います。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 基金訓練を受けている人です。 ○岩村委員 受けている人なのですか。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 はい、そうです。 ○岩村委員 でもそうすると、その後、付問だからというところで22頁の付問7ですが、 これは訓練・生活支援給付が受けられなかった理由ですね。わかりました。 ○岩村委員 そこのところが、このデータの見方が難しいかなという気がします。 ○清家部会長 そうですね。訓練を受けている人と、給付を受けている人というのが一致 していないわけですからね。 ○岩村委員 一致していないのです。 ○坂口雇用保険課長 そこが、先ほども三木委員がおっしゃった点に相通ずる部分ですけ れども、先ほどの論点の2頁のIIIの(1)のところで、訓練の対象となる層がいて、さらに無 料で訓練は受けられるけれども、その中で10万円なりの給付をする方については、また主 たる生計要件であったり、個人世帯の年収要件等をかけているので、そこの段階で受給要 件に至らず給付が出ていない方がおられる。その対象者が2つのスクリーニングになって いるということです。 ○岩村委員 そうすると、16頁のタイトルのところに少し説明を付けてもらわないと、た ぶんパッと見た人には、このデータの意味がよくわからない可能性があるような気がしま す。何となくみんな、基金訓練受講者イコール給付受講者というイメージを持っている可 能性があるので、そこがそもそもズレているということを書いておかないと、たぶんデー タを正しく読めないかもしれない気がします。 ○遠藤委員 いま、ご説明いただいたことに関連して確認とお尋ねです。資料2の18頁に 「訓練申込時の雇用保険受給状況は」という問いに対し、それぞれ色分けしてあるのです が、そのうちの1つに、「雇用保険に加入し受給可能だが自分の意思により受給せず」とい う答えが2.0%ということで、一定割合いて、この方々について訓練は受講しているけれ ども、生活支援給付は受けていないという理解でよろしいのかどうか。もっと端的にお尋 ねすれば、雇用保険が受給できる方については雇用保険をまず受給して、受給が終わった 後に生活支援給付を受けるという理解で、よろしいのかどうかというのが1点目です。  また、金融資産に関わることですが、800万円という数字を置くにあたって何か根拠と されたものがあるのでしたら、教えていただきたい。さらには、貸付制度も含めていただ いて結構なのですが、このような仕組みの中で、金融資産要件を付けている類似の制度が もしあるということであれば、ご紹介いただければと思っています。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 最初のご質問ですが、雇用保険加入し受給可 能だという方については、本人が受給をしなかっただけということですと、雇用保険の受 給資格がある方と同じように扱い、訓練・生活支援給付の対象にはならないということに しています。ただ、このアンケートについては訓練申込時の状況ということで聞いていま すので、仮にその訓練を開始してから雇用保険の受給期間がもう切れてしまったというこ とになると、そこからは給付が可能ということになります。  2点目の800万円という話ですが、制度を設計したときは平成20年度の国民生活基礎調 査を参考にして、標準的な世帯の年間所得は中央値が448万円でしたので、その2倍近く 金融資産を持っている方についてまで、この支援を行う必要性は薄いのではないかという ことで考えて、800万円というのを設定しています。3点目のほかに類似のものがあるかと いうことですが、これは整理をさせていただいて、また提示させていただきたいと思いま す。 ○清家部会長 ほかに、いかがでしょうか。 ○三木委員 先ほど遠藤委員からのお話で資産要件の関係等ですが、要するに給付で単身 者は月10万円、被扶養者が12万円という水準の問題、さらには年収要件なんかについて も前に説明があったかもしれませんが、もう一度参考までにお聞かせいただければと思い ます。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 10万円と12万円ですが、現行の制度を作っ たときの考え方ですけれども、10万円のものについては似たような制度を参考にすると、 例えば、技能者育成資金貸付の貸付額が1人当たり10万円です。また最低賃金ぐらいで働 いている方、時給が大体700円ぐらいで働いている方が、1日8時間で月22日ぐらい稼働 した場合にもらえる、失業した場合の失業給付が大体10万円になるので、10万円という 設定をしています。扶養家族がある場合に12万円ということについては、扶養手当が大体 1万2,000円ぐらい出ていることも踏まえ、扶養家族を有する場合には、さらに2万円増 額して12万円という設定にしているところです。  個人の年収の要件の200万円について、いわゆるワーキングプアと言われるような方の 年収要件としては、200万円未満と整理されることが多いことがありますので、これらを 勘案して200万円以下の方については、この制度の対象にしていこうということ。またワ ーキングプアということと併せて、高卒の非正規労働者の平均の月給が大体20万円程度で あることも併せて設定したものです。 ○清家部会長 三木委員、よろしいですか。ほかに何かご質問はありますか。 ○岩村委員 いまと同じような要件の話で、前にも伺ったことがあるのかもしれませんが、 1つは世帯の主たる生計者であるというのを、どういうことで認定するのか。それから年 収要件があるのですが、その年収要件というのは申請時というか、給付を申請した時点か ら遡っての1年という意味なのか、それとも年度なり歴年という意味での年収と見るのか。 あるいは給付申請時の例えば月収なら月収から換算してみて、これから1年で200万円と 見るのか、そこのところはどういうふうに実務上はやっておられるのか、お聞かせいただ ければと思います。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 世帯の主たる生計者の認定ですが、これは世 帯を構成するそれぞれの方の年収を見て、いちばん年収の高い方を主たる生計者としてい るのが、いちばんオーソドックスな形になります。判断時期ですけれども、年収のほうに つきましては、申請をした前月の所得を12倍したもので年収と判断しているのが、いちば んオーソドックスな形です。とは言いましても、年収についても世帯についても流動して いくものですので、前月が仮に常態ではないというか、たまたま前月にパートとかをして 月の収入が高くなっている等の事情がある方については、その前の月の月収を12倍すると いうやり方で、この要件に当てはまるかどうかを判断しているところです。 ○岩村委員 これはいま緊急の措置でやっているので、まだ恒常的ではないからあれです けれども、この年収200万円とか300万円というのは給付の支給存続要件なのか、それと も支給開始要件なのか、そこはどうなっているのですか。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 存続のほうもかかってきます。途中で200万 円を超えるということがありましたら、支給申請については毎月、支給の申請をしていた だくのですが、この要件変動があって満たさなくなったというときには、そこで打切りと いう形になります。 ○岩村委員 そうすると毎月、書類を出してもらっているわけですか。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 はい。 ○岩村委員 月々に請求していくという、そういうスタイルを取っているということ。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 そうです。 ○新谷委員 併せて、いま年収要件の話が出ているので、新卒未就職者を緊急避難的にこ の制度の中に組み込んだわけですね。そのときに世帯主要件を外して組み込んだと思うの ですが、そうすると、例えば1つの世帯で父親が受給していて、子どもさんがこれを受給 するといったときの年収の換算について、ここの手当の給付枠というのは年収とみなすの ですか。どういうふうに扱うのでしょうか。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 この学卒未就職者の方につきましては、世帯 の主たる生計者という要件を判断しないことにしていますので、例えば父親が先にこの給 付をもらっていたとしても、それは判断の対象にはしていないです。 ○新谷委員 世帯総年収が300万円という要件が、かかってきますね。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 この給付金自体は、学卒未就職者に限らず、 ほかの場合はあまり想定できないですけれども、年収の中から除外して考えています。 ○遠藤委員 この4月から始まった新しい枠組みの中で、既卒の未就職者の方が生活支援 給付を受けているような場合にあって、その世帯の主たる生計者だった人が離職してしま い、基金訓練を受けるようになっても、生活支援給付の申請ができないという理解でよろ しいのですか。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 そこは整理が若干必要なのかもしれませんが、 新卒の方につきましては、世帯の主たる生計者と見ないということにしていますので、そ の後、家族の中で申請が出たときに、その方が対象にならないというのは適切ではないと 思いますが、そこは整理をさせていただきたいと思います。 ○岩村委員 ものすごく単純に言うと、学卒、新卒未就職者を除くと、世帯でこの給付を 受けられるのは端的に言えば1人だと、要するにそういうことですね。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 はい。 ○岩村委員 ということは、いま現在は世帯に着目した給付ですよね。個人給付ではなく て結局は世帯ですよね。 ○小林委員 給付の部分と訓練とは分かれるのです。だから訓練は個人が受けられるとい う考え方になるでしょうけれども、生活給付については生計という形で世帯の考え方が入 ってくると捉えて、いま現在やられているのですよね。 ○豊島委員 個人でいいのではないか、世帯要件は要るのか。 ○岩村委員 正確には世帯要件ではないのですが、主たる生計者となってしまっているの で、そうすると少なくとも年収で比較して、いちばん多い人が主たる生計者だという認定 を、もしするのだとすると、論理的にはその世帯では1人しか受けられないとなります。 その理解が間違っていれば別なのですが。 ○坂口雇用保険課長 そこはそのとおりで、いまの学卒の関係は、いま能開局の説明があ った点も含めて整理をしなければいけないのですが、お手元のバインダーで2月4日の第 56回資料の13頁です。給付の関係でもう少し丁寧に、主な要件ということで(1)〜(6)を書 かせていただいています。 ○清家部会長 13頁。 ○坂口雇用保険課長 2月4日の第56回資料1で、PART3 訓練・生活支援給付関係の1枚 目の13頁です。主な要件のところの(1)で[1]〜[6]と書いていて、あと下の段に先ほどの年 収要件とか、どの時点でというのは前月の12カ月というのもあるのですが、例えば年収の ところだったら申請時点とその後の離職との関係が※3であったりします。いまの世帯で1 人という意味では(3)の要件がかかっていて、※2のような形で相当弾力的な運用を図って きていることはあります。「また」というところでも最終的には「ただし、1世帯1名」と いう形で、その意味では主たる生計者であるという要件が、学卒以外は貫かれて1世帯1 人ということが、現行の基金事業の給付制度としては、なっているということです。 ○清家部会長 この辺が冒頭、新谷委員が提起された雇用政策なのか社会保障なのかとい うことで、雇用政策だったらやはり個人に。 ○坂口雇用保険課長 そこは、新谷委員や豊島委員からもご議論が出たりしているように、 先ほどの資料の中で雇用保険と生活保護の間に基金事業が出ていますが、当然、雇用保険 はご本人の保険料負担があるという前提があるわけですし、それは世帯に1人ということ はないことも含めて、給付をどういう位置付けにし、どういう形で給付要件を設定するの かは、まさしくご議論いただく点だろうと思います。 ○清家部会長 これは保険ではなくて一般財源を使っているわけだから、まず1つ、収入 要件や資産要件があるというのはいいですね。そのことと、もう1つ個人単位なのか世帯 単位なのかというのは、またちょっと別のことですね。 ○坂口雇用保険課長 そこは今後、位置付けと、いま申し上げたような給付要件、給付の 額、給付期間など、全体を通じてどういう狙いで、どういう給付設計にするのか。一方で 論点のいちばん最後にもありますように、一定の財源が必要なわけですから、保険者でな いにしても税負担だとすると、税負担をしていただいている国民の皆さんの理解が得られ るものとして、どういう位置付け、内容が考えられるかをご議論いただく必要があると思 います。 ○清家部会長 ほかに何かございますか。 ○新谷委員 今日、実は午前中、私は連合総研の研究会(「日本の職業訓練・職業教育事業 に関する研究委員会」)に出ていたのですが、その研究会では職業訓練の研究をやっていて、 諸外国の訓練制度の研究資料を眺めてきたのです。雇用保険部会でも一度、ドイツの生活 扶助2の事例の資料をいただいたことがありますが、いまの給付要件の話もそうですけれ ども、諸外国の事例というのが参考になると思うのです。前回の資料をアップデートした ものを今一度提出していただくと、また論議の参考になるのではないかと思いますので、 よろしくお願いしたいと思います。 ○清家部会長 それは、いちばん新しいものをということですね。また出していただけれ ばと思います。ほかにはよろしいですか。 ○遠藤委員 可能かどうかですが、まず論点に挙がっている対象者をどう見るのかという 議論の中で、いま話題に上っている既卒の未就職者の方々をどうするのかを議論するに際 し、データがこのままでは、どう議論していけばいいのかというところが正直あります。 確かに既卒で未就職者の方を、どう支援していくのかは重要な課題として、誰しも認めて いると思いますけれども、これを新たな枠組みの中で位置付けていけるのかどうか。その ために有効な組み方をどうしていけばいいのかについては、もう少し何か資料をいただく ことでないと、これから議論が深まっていかないと思っています。  4月から東京都下においてはこのコースが始まっているということも聞いています。何 か大々的なアンケートでなくてもいいと思うのですが、既に始まっているコースの状況に ついて、こちらにお知らせいただけるものがあれば是非お願いしたいと思っています。 ○清家部会長 これも資料を、可能な範囲で集めていただきたいと思います。ほかに何か ございますか。よろしいですか。 ○新谷委員 論点ペーパーの論点の最後に財源の問題が書かれています。いまは緊急人材 育成事業の基金を造成してやっていますので、金額を一般会計から投入してやっているわ けですけれども、今後の財源のあり方を考えたときに財源の性格というのを考える必要が あると思います。一方で公共職業訓練の財源は雇用保険二事業でやっている。それはそれ で、諸外国との比較において国費の投入が少なくて、雇用保険二事業に大きく依存してい る職業訓練のあり方というのは、いかがなものかというところもあるのですが、財源論と いうか財源の性格論というのを、どこかで議論しておいたほうがいいのではないか。これ は国の責任でやるべきものなのか、雇用保険二事業のような使用者の負担に偏ったものを、 こういう方々に投入すべきかといった論議を、どこかでやっておいたほうがよくはないか という気がします。 ○坂口雇用保険課長 そこは、まさにおっしゃるとおり必要な論点であることは間違いな いので、当然、論点ペーパーも、3頁のIVのその他のいちばん下の(2)に掲げています。い ずれにしても重要な論点であることは間違いないということです。ただ、そこはいろいろ 議論していく過程で、先ほどの位置付けのお話と同じだと思いますが、どういう性格で、 どういう負担者の理解を得ながらということを念頭に置いていただきながら、ご議論いた だくことかと思います。改めてこういった点について位置付けと同じく財源のお話も、ま たしていただく必要があるということは、事務局としてもお願い申し上げたいと思います。 ○岩村委員 質問なのですが、むしろ訓練のほうの話ですけれども、この緊急人材育成支 援事業でやっている基金訓練というのは、1日とか週で見たときに拘束時間はどのくらい ですか。コースによって違うというのはあるのかもしれないけれども。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 基金訓練認定の基準があり、3カ月の訓練で すと300時間以上の訓練時間だったと思います。それを3カ月の間でどのように割り振る かという形は、その訓練がどういう狙いの訓練かによって、さまざまになってくるかと思 いますが、大体、午前と午後で5〜6時間というのが多いのではないかと思っています。 ○岩村委員 なぜ、そういうことを聞いたかというと、要するにこれで給付を受けつつ、 例えばアルバイトをすることも時間的には可能ではあるわけですね。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 はい。 ○岩村委員 あと、もう1つは世帯年収もかけているので、他の世帯員がアルバイトなり 何なりの収入を得ることも、当然、あり得るということですよね。そうすると、これは難 しいなと思っていま考えていたのは、特に本人は訓練を受けているからいいけれど、他の 世帯員は下手すると300万円を超えないように、就労調整してしまう可能性がありますよ ね。本人も本当は何か仕事があって増やせるのかもしれないけれど、200万円を超えない ように調整してしまう可能性も、ないわけではないという気がします。つまり労働のイン センティブを、そこの200万円なり300万円のラインのところで弱めてしまう危険性があ ると思います。それは問題として認識しているかと言われても、たぶんわからないという ことかもしれませんが、いまお話を伺って、そういう気がしなくはないなと思いました。  さらに考えてみると、何となくもやもやとしていたのが、今日、お話を伺っていてわか って、実は前の資料には書いてあったので、気がついてないほうがおかしかったのかもし れませんけれども、結局、世帯について1人なので、要するに世帯給付に事実上はなって います。そういう意味では、給付だけを切り離して見ると一種の最低所得保障なのです。 ただ、それが訓練と結び付いているところにこの仕組みの特徴があって、最初に課長がお っしゃったように主たる目的は訓練なんだと。ただ、訓練中、一定の要件を満たす人につ いては最低の生活保障をやりましょうと、結局、世帯についてそういうものをやりましょ うというのが、いまの現行制度になるということですね。  制度設計の1つの問題として、それを今後、恒久化していくに当たっていまの制度設計 でいくのか、それとも別の制度設計ということで発想を考えていくのか。例えば世帯と見 ないで個人と見るとか、少なくとも現行制度は個人給付のような形を取りつつ、実は世帯 に対する給付だと、世帯の最低所得保障みたいなものを訓練と結び付ける形で支給してい る。そうすると1つの大きな問題は、先ほど来議論があったように、要は訓練が終わった 後にちゃんと就職に結び付くかというのと、もう1つは、この年収要件を作ってしまって いることにより一種の壁ができてしまっているので、そこで労働のインセンティブを損な わないようにするにはどうするかも、実は考えなければいけないことなのかなという気が します。少なくともぎりぎりいっぱいまでは、むしろもらっていたほうがいいと考えると 就職のインセンティブは非常に落ちてしまうので、もらえる限りはできるだけこれで引っ 張ってもらおうとなると、その200万円の内容も超えないようにやっていきましょうとい う話になってしまう。世帯で見ると300万円ということになってしまう気がするので、そ このところを恒久化していこうとすると、考える必要が出てくる気がしました。 ○林委員 世帯で見る形になるということですが、世帯の年収というものである程度しな いと、それこそインセンティブを損なう可能性が、むしろ出てくるのではないかという気 がします。もう1つ、いまの基金の給付が10万円とか12万円というのは、今日のご説明 で現在、ほかに第二のセーフティネットの制度があり、住宅手当という問題が別にあると いうことで、そういう形で考えられた金額という理解でよろしいのでしょうか。  また現在、この制度の基金の給付を受けている方で住宅のない方は、ほとんど住宅手当 を併給されているのでしょうか。そういう形で、これはハローワークではなく区だという こともあるかもしれませんが、指導はどのようになされているのかをお伺いしたいと思い ます。 ○渡部職業能力開発局能力開発課課長補佐 ご質問のうち、他の住宅手当等の金額を参考 に10万円、12万円という金額かということですが、いろいろな制度を参考にさせていた だきましたけれども、住宅手当と直接関係しているということではありません。ただ、ど の制度もほかの制度の状況を見ながら設定していきますので、額として大体似たようなと ころになっていくのかなと思います。  また訓練生活給付を受けている方で住宅がない方ですが、第二のセーフティネットも含 めていろいろな支援が準備されていて、基本的に同じような状況で2つのものを併給する ようなことはできない。併給調整がかかっていて、訓練生活給付を受けながら住宅手当を 受けることはできない仕組みになっています。住宅が本当になくて住宅手当を取るという ことであれば、訓練を受けながら給付は受けない形とか、訓練生活給付を受けて10万円が 足りない場合には貸付もありますので、10万円に貸付の5万円を利用していただき、その 中で住宅を確保していただくなど、そういう形でやっていただくということで、両方一緒 に受ける形ではやっていません。 ○清家部会長 よろしいですか。それでは引き続きこの問題は議論してまいりますけれど も、本日の議論はこのあたりにさせていただきたいと思います。本日の署名委員は、雇用 主代表は、今日から御就任ですけれども藤原委員にお願いします。労働者代表は三木委員 にお願いします。委員の皆様にはお忙しい中、ありがとうございました。次回の日程につ きましては、また事務局において改めて各委員にご連絡させていただきます。ありがとう ございました。 照会先:厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係     03−5253−1111(内線5763)