10/05/12 第101回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 第101回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2010年5月12日(水) 10:00〜11:40 場所:経済産業省 別館第1020号会議室 出席者:  公益代表委員   林分科会長、樋口委員、山川委員  労働者代表委員   石川委員、齊藤委員、冨高委員、山口委員  使用者代表委員   川崎委員、瀬戸委員、中西委員、布山委員、山本委員  厚生労働省   伊岐雇用均等・児童家庭局長、香取審議官、田河総務課長、堀井総務課調査官、   吉本雇用均等政策課長、森本均等業務指導室長、定塚職業家庭両立課長、   美濃短時間・在宅労働課長、大隈均衡待遇推進室長 議題:   1. 雇用均等政策の戦略的な実施について   2. その他 配付資料:   資料1  「新成長戦略(基本方針)」(平成21年12月30日閣議決定)について(抄)   資料2  労働政策におけるPDCAサイクルの流れ   資料3  雇用均等政策の政略的な実施について   資料4  職務分析・職務評価実施マニュアル   資料5  平成21年版 働く女性の実情 議事: ○林分科会長  定刻になりましたので、ただ今から「第101回労働政策審議会雇用均等分科会」を開催 いたします。  本日は、奥山委員、佐藤委員、田島委員、小林委員が欠席されています。  定足数について、事務方から説明をお願いいたします。 ○田河総務課長  それでは、議事に先立ちまして定足数の確認について申し上げます。労働政策審議会 令第9条第1項によりまして、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の 1以上の出席が必要とされておりますが、本日はいずれの数も上回っておりまして、定足 数は満たされております。  なお、局長は国会の関係で出席は難しいと思われますが、可能であれば遅れてでも出 席したいと申しておりました。申し訳ございませんが、ご報告させていただきます。 ○林分科会長  それでは、議事に入ります前に、事務局で異動がありましたのでご紹介いたします。 ○森本均等業務指導室長  均等業務指導室長を拝命しております森本でございます。よろしくお願いいたします。 ○林分科会長  ありがとうございました。  それでは、議事を進めます。本日の議題は「雇用均等政策の戦略的な実施について」 となっております。  まず、資料に沿って事務局から説明をお願いいたします。 ○堀井調査官  総務課調査官の堀井でございます。私から、本日の雇用均等分科会を開催させていた だいた背景と経緯について説明させていただきます。  お手元にございます資料1「新成長戦略(基本方針)」をご参照いただければと思います。 こちらは3月29日の雇用均等分科会におきまして、私から参考ということで説明させてい ただきました。昨年の12月30日に、10年先の2020年を見据えて新成長戦略を策定しよう ということで、その前段階となります「新成長戦略(基本方針)」が閣議決定されました。  この基本方針の中では、資料1の5ページの下から2行目にありますように、基本方針に 沿って有識者のご意見も踏まえる形で以下のような「肉づけ」を行い、その結果も踏ま えてということで、2010年6月を目途に「新成長戦略」を取りまとめることが定められて いるところでございます。  資料の5ページにお戻りいただければと思います。3「豊かな国民生活の実現を目指し た経済運営と今後の進め方」ということで、(1)として「マクロ経済運営」という項目を 立てております。この中で、「新成長戦略」の実行と並行して、豊かな国民生活の実現 を目指したマクロ経済運営行うという記載がございます。具体的には、その次のパラグ ラフの下から3行目にありますが、2020年度までの平均で、名目3%・実質2%を上回る成 長、2020年度における我が国の経済規模(名目GDP)650兆円程度を目指すと記載しており ます。  さらに、二つ下のパラグラフで失業率について記述しております。「新成長戦略」通 じた雇用創造等により、現在5%を超えている失業率については中期的に3%台への低下 を目指すと記載されておりまして、このようなマクロ経済運営を並行して行うことを前 提に書かれているということでございます。  そして、今回の分科会の関係でもございます雇用の人材戦略という部分につきまして は、今の資料の1ページでございますが、2「6つの戦略分野の基本方針と目標とする成 果」の(6)「雇用・人材戦略」で、その下の枠のところですが「2020年までの目標」とい うことで、以下の項目について雇用戦略対話等を踏まえ具体的目標を定めるという形で 記載されております。この中に幾つか項目が書いてありますが、当分科会の雇用均等行 政に関するものとしましては三つ目にございます「女性のM字カーブ解消」が代表的なも のかと思います。こちらに書いてあります「雇用戦略対話」についてでございますが、 前回の分科会のときも説明させていただきましたが、雇用戦略に関する重要事項につい て内閣総理大臣の主導の下、労働界や産業界をはじめ各界のリーダーや有識者の方々が 参加し意見交換と合意形成を図るということを目的として設けられているものでござい ます。そして、この分科会にご出席の樋口委員におかれましてもこちらのメンバーにな っておられます。この「雇用戦略対話」の昨年12月に行われた第2回会合におきまして、 有識者の方から雇用戦略については目標年次における数値目標を設定し、それを実現す るための具体策を明記して、PDCAサイクルに則り整合性のとれた制度・政策を設計し、 その運用実態の検証を実施する必要があるというご意見がございました。  これを受けまして、厚生労働省としましては、具体的には資料2の横表の図にござい ますように、まず、労働政策の運用実績を検証・改善するPDCAの仕組みを設ける。そし て、このPDCAのサイクルを効果的に実施するために労働政策審議会の下に「点検評価部 会」を設置させていただきたいということで去る4月1日の労働政策審議会の本審でこの 点についてご審議いただきご了承いただいたということでございます。「PDCAサイクル の流れ」と書いてある図に記載しておりますが、この点検評価部会は「Check」のとこ ろにも書いてありますけれども、それ以外の部分につきましても労働政策審議会の各分 科会で分野ごとに各年度の目標について決めていく。それは各分科会で事務方より案を お示しして審議していただくことになっております。  また、先ほど言及させていただきました「新成長戦略」に盛り込む施策、そして2020 年までの目標の設定等に関しましては、「雇用戦略対話」のメンバーでもあり、かつ厚 生労働省の雇用政策研究会の座長でもいらっしゃいます樋口委員が「雇用政策の戦略的 な実施について(試案)」ということで作成されましたものを本日の資料3-参考(1)として 配らせていただいております。この樋口委員が作成された試案につきましては、3月24日 の雇用政策研究会に提出され、議論されたということでございます。  このようなことから、厚生労働省としましては樋口委員が作成された「雇用政策の戦 略的な実施について(試案)」を参考に案を作成し、労働政策審議会の各分科会で施策と 目標をご審議いただくことが適当ではないかと考え、まず4月1日の労働政策審議会で樋 口委員の試案を説明させていただいたという状況でございます。本日の雇用均等分科会 におきましては、長期目標とPDCAサイクルで検証する施策の年度目標についてご議論を お願いしたいと考えております。  それでは、本分科会で本日ご議論いただく具体的な内容について説明させていただき ます。お手元の資料3「雇用均等政策の戦略的な実施について」をご覧いただければと思 います。  まず1ページ目は「雇用・人材戦略(雇用均等政策部分)」でございます。一つ目の黒丸 の「雇用による内需拡大と国民参加」という項目で女性の就業率の向上(女性M字カーブ の解消)と書かせていただいていますが、それを念頭に置いて「目標」ということで25〜 44歳の女性の就業率を現状2009年は66%ですが、2020年に73%と掲げさせていただいて います。  次に、女性の継続就業の促進ということで、目標を第1子出産前後の女性の継続就業 率を、現状2005年は38%ですが2020年に55%と掲げさせていただいています。そのため の関連施策として、まず(1)「保育サービス等の拡充」です。「子ども・子育てビジョ ン」は前回の分科会で参考資料ということで配付させていただきましたが、本年1月29日 に閣議決定したもので、平成26年度までの数値目標や施策について盛り込んでいる「子 ども・子育てビジョン」に基づき、保育所や放課後児童クラブの整備を図るなど保育サ ービス等の拡充を図ることとしています。そして(2)ということで、こちらの分科会で ご議論いただきました「改正育児・介護休業法の着実な施行」と書かせていただいてい ます。また、(3)には「育児休業や短時間勤務等を利用しやすい職場環境の整備」とい うことで、いわゆる「育休切り」等のトラブル防止のための体制整備や関連施策を書か せていただいております。(4)は次世代育成支援に取り組む事業主への支援、(5)は「母 性健康管理の推進」とさせていただいております。  次の「男性の育児休業取得の促進」という項目につきましては、目標として男性の育 児休業の取得率について現状2008年は1.23%ですが、2020年度に13%とすると書かせて いただいております。このための施策としまして、(1)で改正育児・介護休業法に基づ いて新設されました「パパ・ママ育休プラス」の制度、あるいは(2)で育児に積極的にか かわる「イクメン」の周知・啓発等。  そして、次の項目としましては「男女雇用機会均等対策の推進」ということで、男女 雇用機会均等法の履行確保でございますとか、特に妊娠・出産等を理由とした解雇等の 不利益取扱いについての対応。あるいは、ポジティブ・アクションの推進といったこと を書かせていただいております。  次に、「同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進等」ということで、パ ートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保と正社員転換の推進ですが、これは後ほど出 てまいります。  そして「短時間正社員制度の導入・定着の促進」という項目も掲げさせていただいて おります。  次に、地域雇用創造と「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の 実現では、まず「同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進等」ということ で再掲させていただいております。具体的には、パートタイム労働法に基づきまして指 導を的確に行う。あるいは、事業主に対する助成措置の実施といったことを書かせてい ただいております。  また、「育児休業等の取得促進」ということで、(1)は再掲になりますが「改正育児・ 介護休業法の着実な施行」。次の(2)(3)も再掲ですが、いずれも関連施策を書かせてい ただいております。5ページの(4)につきましても再掲でございますが、母性健康管理の 推進ということで書かせていただいております。  次の「短時間正社員制度の導入・定着の促進」も再掲でございますが、※印のところ にございます短時間正社員制度の定義として「短時間正社員制度とは、所定労働時間(所 定労働日数)が短いながら、フルタイムの正社員と同等(時間比例)の待遇が得られる働き 方を、企業が就業規則等において制度化しているもの」としておりますが、このような 制度の導入・定着を促進するために、助成措置の実施あるいは企業に対してノウハウの 提供等を行っていくということでございます。  その下の※印のところですが、特に就業率のようなマクロの指標につきましては、経 済・社会情勢の変化等で大きく影響を受けることもございます。ここに掲げられた数値 目標につきましては、その変化に合わせて変更することはあり得るということで、注意 書きを書かせていただいております。  続きまして、6ページをご覧いただきたいと思います。「雇用戦略に係る目標一覧(雇 用均等政策関係)」ということで、まず、女性の就業促進ということで、上から三つ書か せていただいております項目と、それに対応する右側の2020年までの中長期目標ですが、 この数字につきましては樋口委員が書かれた試案の中に盛り込まれている内容でござい ます。  次に、PDCAサイクルに関連した単年度目標値(2010年度)をどのように設定するかとい うことでございます。この単年度目標値につきましては、まず女性の就業率、そして第1 子出産前後の女性の継続就業率につきましては、マクロの指標で経済要因による影響が 大きいということで、今回は設定いたしておりません。  そして男性の育児休業の取得率につきましては、樋口委員の試案の中にもございまし た2020年の13%を達成すべく、2008年の1.23%から順調に数字が伸びた場合に2010年度 はどれぐらいかということを念頭に置きまして3%という数字を置かせていただいており ます。  これ以外に、単年度の目標値ということで3歳までの育児のための短時間勤務制度の 制度普及率を掲げさせていただいております。こちらは改正育児・介護休業法の内容と して盛り込まれているもので、施行は平成22年6月30日から、ただし労働者100人以下の 企業規模の場合は平成24年7月1日から義務化されますが、このような状況も踏まえま して、2008年(平成20年)は38.9%という数字ですが、5年後には今の育児休業の規定の 整備率と同じぐらいの数字までもっていこうということで2010年度の目標を50%と設定 させていただいております。  次に、ポジティブ・アクションの取組企業割合についても単年度目標を設定してはど うかと考えております。このポジティブ・アクションの内容につきましては、お手元に 配布させていただいております横長の参考資料集で資料3-参考(2)の18ページをお開きい ただければと思います。まず「ポジティブ・アクションとは」という記載があります。 「男女の固定的な役割分担意識、過去の雇用管理における取扱い、男性中心の職場慣行 などがもとになって男女労働者の間に事実上生じている差の解消を目指した個々の企業 が進める積極的かつ自主的な取組」と定義付けております。  具体的にはその取組が「女性のみを対象とする又は女性を有利に扱う取組」と「男女 双方を対象とする取組」となる場合があると考えています。  具体例としましては、その下の項目にございますが、勤続年数も長く、仕事に対する 能力や意欲も高い女性労働者がいるのにもかかわらず、管理職になっている女性が少な いというような場合に、例えば「女性のみを対象として女性を有利に扱う取組」として 以下に書いてあるような項目を実施する。あるいは「男女双方を対象」に、公正な人事 考課を行うための評価者研修を行うといった内容が考えられます。「妊娠・出産や育児 などを理由として退職する女性が多い場合に、男女双方を対象とする取組として、こち らに書いてあるような具体的な取組を行うといったこともポジティブ・アクションの具 体的な例ということで考えられます。  そして、このポジティブ・アクションにつきましては、その下に書いておりますが、 先ほどお話しさせていただいた「子ども・子育てビジョン」の中で、平成26年度までの 目標ということで40%を超える企業においてポジティブ・アクションが取り組まれると いうことを記載しているところです。  このようなことを踏まえまして、先ほどご覧いただいておりました資料3の6ページに お戻りいただきたいと思います。このポジティブ・アクション取組企業割合を「子ども・ 子育てビジョン」の平成26年度までの目標40%を超えることを達成するべく、今把握し ている平成18年度の20.7%から順調に上昇した場合に2010年度時点では30%ぐらいにし ていく必要があるということで、目標値としては30%を設定することを考えているとこ ろでございます。この単年度の目標値につきましては、先ほどお話しさせていただいた PDCAサイクルで数字も含めてフォローしていくことになると思います。  そして、今申し上げましたこれらの施策と2020年度までの目標につきましては、「新 成長戦略」に盛り込まれるように努めていきたいと考えております。  以上、簡単ではございますが私からの説明ということでございます。ご審議いただい た上でご了承いただければと思います。  なお、冒頭でお話ししましたように、労使を交えた「雇用戦略対話」等の場でいろい ろな議論があるということで、まだ議論が終了しているわけではございませんので、目 標等で変更があるという点を、あらかじめご承知おきいただければと思います。以上で ございます。 ○林分科会長  中期および単年度の数値目標の設定およびその施策についてご説明いただきました。 ただ今の説明について、ご質問・ご意見がありますでしょうか。 ○冨高委員  私からは1点の質問と1点の意見ということで、お話しさせていただきたいと思います。 今ご説明いただいた資料No.3の「雇用均等政策の戦略的な実施について」の1ページ目、 「女性の継続就業の促進」の(3)「育児休業や短時間勤務等を利用しやすい職場環境の 整備について」の質問です。今回、この分科会でも論議して6月から施行される改正法 による短時間勤務制度の義務化をもって制度の普及率がアップしていくところは我々も 期待しているところですけれども、今、ご説明いただいた単年度の目標値の50%という ところを見たときに、やはりもう少し具体的な施策や実効性のある取組が求められるの ではないかと考えております。今、ご説明いただいた中小企業における導入促進に向け た助成制度以外に、今もし何か具体的に検討されている施策等があれば伺いたいという のが1点です。  それから、少し内容が変わりますけれども、同じ2ページ目に「男女雇用機会均等対 策の推進」がございますけれども、ポジティブ・アクションの実践というのは、男女間 の格差解消のためには非常に重要で不可欠なものであると我々も考えておりますけれど も、そのためには、ここに書いてありますようなポジティブ・アクションの周知とノウ ハウの提供ということだけでは不十分であると考えております。やはり実効性のあるポ ジティブ・アクションの導入が重要であると考えていますので、女子差別撤廃委員会か らの勧告も踏まえまして、もう少し拘束力があるポジティブ・アクションの強化策が必 要ではないかと考えております。以上です。 ○定塚職業家庭両立課長  ただ今の1点目は、短時間勤務制度の普及についての方策ということで質問をいただ きました。この点につきましては、まず企業の就業規則で短時間勤務制度を規定して制 度化していただくことが第一に重要でございます。  第二に、その制度を実際に利用できるような職場環境を整備することが重要でござい ますけれども、就業規則の規定整備・制度導入については現在、各雇用均等室で施行に 向けて集中的に説明会を開催する、また、各企業の就業規則の規定整備ということで、 詳しい規定例と中小企業等向けの簡易な規定例を2種類作り、これをお配りして周知を 図ると同時に、就業規則の規定についての助言等も求められておりますので、これを的 確に指導することもいたしております。  こうしたことは育児休業制度の規定整備とともに雇用均等室の基本的な業務であると 思っておりますので、まずここをきちんとやる。それと同時に、先ほど冨高委員からも ご紹介がありました企業に対する助成金等も併用してまいりたいと考えております。 ○吉本雇用均等政策課長  ポジティブ・アクションについて、ご意見を賜りました。ポジティブ・アクションを、 より実効性のあるものにするための措置ということで、法制度に関しましては将来に向 けた課題ということで承りたいと思います。  現在のところは、まず「ポジティブ・アクションとは何か」といったところの周知が 十分に行き届いていない状況でございます。恐縮ですが、先ほど堀井調査官よりご紹介 申し上げました参考資料集をあらためてご覧いただきたいと思います。19ページにポジ ティブ・アクションの推進のために実施している施策を書かせていただいております。 ポジティブ・アクションのシンボルマークといったようなものをつくって、周知・広報 に役立ててまいりたいということや、各経済団体や企業のトップの方々のご協力を得て 協議会をやって、今年度はここに書いておりませんけれども、メンバー企業の方々にポ ジティブ・アクションを進めていくための宣言のようなものをしていただきまして、社 会的にそういった気運をできる限り高めていくことも考えているところです。  特にポジティブ・アクションについては、やっている所とそうでない所の差の二極化 が進んできてしまっているという感じもしております。それにつきましては、特に中小 企業ではまだまだ取組が少ないということで、2の(3)に書いてありますように、きめ細か く中小企業の中に入っていってコンサルティングを行う。そして、その結果を普及して いくという取組も今年度から始めるところです。 ○林分科会長  よろしいですか。その他に、ご質問・ご意見はありますか。齊藤委員。 ○齊藤委員  1点の質問と1点の要望をお願いしたいのですが、まず要望です。「女性の継続就業の 促進」の(3)育児休業、短時間勤務等を利用しやすい職場環境の整備の中で幼保一元化 の推進や利用者本位の保育制度に向けた抜本的な改革等の施策についてですが、やはり 希望する誰もが安心して保育を受けられる待機児童解消に向けた基盤整備が重要になっ てくると思いますので、保育の質と量の両方の拡充がないままの幼保一元化や利用者本 位の制度改革にならないような施策を推進していただきたいということ。  それから、もう1点の質問ですが、同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡処遇の 推進等について、パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保に向けた施策についての 部分ですが、2008年4月の改正法施行によるパートタイム労働者の労働条件改善状況に ついて事務局で把握されていれば教えていただきたいと思いますので、よろしくお願い いたします。 ○林分科会長  事務局、お願いいたします。 ○美濃短時間・在宅労働課長  ご質問のありましたパートタイム労働法の施行状況ですけれども、まず、パートタイ ム労働に関する相談件数ですが、合計が1万3,647件となっております。これを法律の 条文ごとに見てまいりますと、その中でも多いのは、労働条件の文書交付の関係で2,136 件です。それから、第8条の関係の差別的取扱いの禁止が1,516件、さらに、賃金の均衡 待遇が1,304件、また、資料3の中にもありますけれども、第12条の転換推進措置関係が 1,614件の相談状況となっております。  それから、行政指導の状況ですが、是正指導件数としましては、合計で8,900件となっ ております。是正指導を受けての是正・改善率は、90%を超える状況です。 ○林分科会長  その他にご質問は。石川委員。 ○石川委員  男性の育児休業取得率の推進の目標値について意見させていただきます。まず、単年 度目標の3%という数値ですが、これについては樋口委員の試案の2020年の中間目標値 13%に対して、直線補完をして、その近似値で3%を取ったと理解したのですけれども、 実際に実情として職場は取っていない、もしくは取れていないのが実態ですので、もち ろん施策の実効性を担保すべき目標でないといけないのは理解しておりますが、少し低 いのではないかということが率直な感想です。  それから、男性の育児参画に向けた施策としては男女間の賃金格差を解消することと 長時間労働の抑制など、働きの変革をより一層進めていくことが重要であるということ も申し伝えておきます。以上です。 ○林分科会長  事務局、お願いします。 ○定塚職業家庭両立課長  男性の育児休業取得率ですけれども、現状で1.23%と大変低い中で、まずは10%、そ れから長期的には2020年に13%という目標値を置きまして、単年度については今、石川 委員からご指摘をいただいたようにそれを直線的に伸ばしていって、平成22年は3%とい う目標数値を置かせていただいております。今までの動向から見て、3%、10%、13% という数字は難しいかと思われる側面もありますけれども、やはり今回の育児・介護休 業法改正の中で皆さま方にご審議いただきまして、せっかく男性の育児休業取得促進と いう項目を入れておりますので、ぜひ労使共にご協力をいただきつつ、我々も最大限意 識改革や周知等を図って、育児休業率アップに向けて努力してまいりたいと思っており ます。  また、その他の施策も併せて重要であるという点はおっしゃるとおりかと思います。 ○林分科会長  育児休業取得率は年度によって前年度を下回ったりするような実態も今まで統計的に はあったように思いますので、3%というのは低いというご意見もあるでしょうし、実 態からするとかなり達成もどうなのか、難しい面もあるという気もしますけれども、何 かその点について、ご意見はありますか。瀬戸委員。 ○瀬戸委員  ただ今の男性の育児休業取得率の件ですけれども、私どもがこれを拝見したときに、 直近の2008年が1.23%に対して3%で、中期目標が13%とすれば、これぐらい伸びてい かないと最終目標に達成しないということはわかるのですが、かなりハードルの高い数 値ではないかということを感じるわけです。やはり、単にその数値目標として数字を置 くだけでは意味がない。その具体的な目安といいますか、目標値として設定する以上は 何らかの目安があってされるのであろうと思いますが、厚生労働省として本当に3%が この単年度における実現可能な数値として置かれたのかどうかを私どもは確認しておき たいところではありますというのが1点です。  やはり中小企業にとって従業員も少ないということでなかなか取りづらい面もあるの は確かで、私どもも職場にいて、うぬぼれではありませんけれども、自分がいなくなる とこの仕事が進まないので取れないという意識もありますし、そこは上司や経営者、同 僚等の理解不足もあるのかもしれません。そういったものをなくしていかなければいけ ないということかと思いますが、政策的に中小企業、特に従業員の少ない所で取ってお られるような好事例といいますか、このような方法や手法で取得を促進しているという 好事例をお示しする。あるいは、やはり代替要員というものが中小企業にとっては財政 的な面でも負担がかかりますのでなかなか取りづらい。そういった面での国の支援策も、 ある意味で取っていただければ、中小企業の経営者としてもその従業員に対して「取っ てください」と勧められるのではないかという感じがあります。  この間、文京区役所の区長自ら取得宣言をされて、職員に向かってぜひ男性にも育児 休業を取得するようにという訓示もされたような報道も聞いております。ただ、それに 対しても役所だから官庁だからできることだろうというご意見もあったと聞いておりま す。やはり中小企業はなかなか人がいない、財政的にも余裕がないという面もあります ので、ぜひその辺も配慮しながら進めていただければありがたいと思います。以上です。 ○定塚職業家庭両立課長  貴重なご意見をありがとうございました。ご参考までに参考資料の3ページをご覧い ただきたいと思います。既にご紹介したことがあるデータですけれども、育児休業取得 率の推移が左側にあります。平成14年度は0.33%、平成17年度は0.50%、それからグラ フに入っておりませんけれども平成19年度に1.56%ということで一挙に3倍になったと いうことがありまして、その後1.56%から1.23%に少し落ちてしまっているという経緯 をたどっております。平成17〜19年度にかけて一挙に0.50%から1.56%と、非常に低レ ベルではありますが3倍になったということに鑑みますと、今後の目標値として3%とい うのも達成可能ではないかとは思っています。  ただ、達成のためには今ご指摘がありましたとおり、我々としてもまだまだ中小企業、 それから従業員の方は、そもそも育児休業を取れるということもご存じない方もいらっ しゃいますし、男性の育児休業というと、1年間の育児休業をイメージされる方も多い ですが、1年間ということではなくてもまずは2か月、2週間といった期間でも第一歩か と思いますので、中小企業の好事例なども提供しながら努力してまいりたいと思ってお ります。  また、資料3の2ページのところにも書かせていただいておりますけれども、育児に積 極的にかかわる「イクメン」の周知・啓発という事業を今年度は開始したいと考えてお りまして、イクメンの方、男性の育児休業を取得されている方などのご本人の事例、企 業の事例などもご指摘を踏まえてホームページなどで十分に提供しながら、周知を図っ ていきたいと思います。  また、代替要員の確保については、現行での助成金もありますので、そうした助成金 も利用しながら取得促進を図っていきたいと考えております。以上です。 ○林分科会長  山本委員。 ○山本委員  ご説明いただきまして、ありがとうございます。確かにこれからの男女がともに社会 で仕事をしていかないと、これからの日本の経済がもたないということを十分に承知し た上で申し上げることです。一つの数値目標が出ていますけれども、それぞれの会社な りで、これを従業者が納得して進めていく場合に、樋口委員のリポートの中の最終のデ ィスティネーションの73%、55%、13%という数字が持っている意味というのですか。 要するに、例えば国際的水準に合わせるためにこのようにしないと世界から見劣りしま すということなのか、それとももう一つ先ほどのマクロな視点から経済成長がある程度 見込めてこれぐらいにボリュームを上げていかないと日本の経済はもたないという一方 の視点があり、それを支えるために雇用を均等化していくことがどれほどの労働力を支 えるパワーになるのかという見通しの中で、この73%、55%、13%が出てきているなど、 そのような目標数値の設定の内容が説得性のあるものであれば、かなり人々もそれに納 得して動こうという気持ちになるという気もするのですけれども、この数値が設定され た根拠のようなところをご質問したかったということが一つです。  それから、もう1点です。少し話は違うのですが、ポジティブ・アクションというこ とです。これも良いことだと思っておりますけれども、私どもは中小企業ですけれども、 実際に担当者にポジティブ・アクションを知っているのかと聞きますと「何のことです か」という反応です。これは私どもの企業の不勉強ということにもなろうかと思います が、ポジティブ・アクションがあまり広報されていないので浸透していないということ が一つと、私はどうも「ポジティブ・アクション」というのは一般用語のような気がす るのです。この問題を解決していくためのアクションとは、どうしても思えない。いろ いろなビジネスの面であろうと、あらゆるフィールドでポジティブなアクションは求め られるものですので、ポジティブ・アクションを推進しましょうといっても、このこと をやろうとするという特定性が生まれないような気がしてならないので、この頭にもう 少し何か気の利いたフレーズを付けるなど、このことを解決するポジティブ・アクショ ンなのだということがもう少し鮮明に生まれるような形づくりが何か必要ではないかと。 これは意見ですけれども、申し上げたいと思います。以上です。 ○林分科会長  事務局から、まずお願いします。 ○堀井調査官  基本的に樋口委員の書かれた試案についてということですが、この考え方は私もお伺 いしましたので、その伺っている範囲でまず山本委員の1点目についてお答えさせてい ただき、内容が間違っている、あるいは補足の必要があるときに樋口委員にお答えいた だくということにさせていただこうと思います。  まず1点目は2020年までの目標値の考え方と背景というご質問であると受け止めました。 細かい数字についての説明は省略させていただきますが、例えば25〜44歳までの女性の 就業率につきましても、失業率に関して、その時点で一定の失業率を仮定して、さらに 例えば現在家事や育児あるいは勤務時間といったことを理由として仕事に就けていない方。 また、知識や能力面で不安を持つ女性が一定割合いる、その方々が就業希望を実現した 場合に、どれぐらい就業率が上がっていくかということで推計されたと聞いております。 第1子の出産前後の女性の継続就業率に関しましても、例えば出産前には雇用者でした けれども、無職になったような女性で、仕事と育児の両立の環境が整わなくて出産後に 退職された方が一定割合いらっしゃいます。そのような方が就業継続できた場合という ことで数値を推計したと考えております。  男性の育児休業の取得率につきましても、13%の前提として10%という数値目標があ りましたが、それも推計の仕方としては、男性で希望はしているけれども育児休業が取 れない方がいる。そういった方が取った場合に割合がどうなるかということで推計した と聞いております。ただ、その前提として、樋口委員の試案にも「新成長戦略」にもき ちんと書かれているのですが、基本的にはマクロの経済運営、我が国の経済成長といっ たものがどのようになっていくか。それがひいては企業活動あるいは労働者の雇用の場 につながっていきますので、適切な形でマクロの経済運営ということで、先ほど説明さ せていただきましたので詳細は省略させていただきますが、例えば名目・実質といった 部分でのGDPの成長率や、名目のGDPの経済規模といったことについても、ある程度の目 安を置いて、それと並行して雇用・人材戦略もやっていくという考え方に立っているも のと理解しております。 ○林分科会長  樋口委員、補足をお願いいたします。 ○樋口委員  詳細な推計方法といったものについては今、堀井調査官からお話がありました。また、 どのような方法でやったかということについては別途お話しした方がよろしいかと思い ます。むしろフィロソフィーです。どのような考え方で「雇用戦略対話」を始めたのか ということについては私の思いを少しお話しさせていただきたいと思います。それによ ってご理解いただけるかと思います。  もともと、なぜ雇用戦略対話といったものが必要なのだろうか。将来を考えれば、や はり大きな問題として少子高齢化の問題がある、あるいは国際化、競争激化の中におい て、日本の国民が豊かな生活をしていく上でどうしたらよいのだろうということがあり ます。そこでは、やはり働くということが非常に重要な社会的な意義もありますし、個 人にとっての意義もある。また、そういったことを考えていくと社会全体としての安定 性や持続可能性といったところでも必要になってくるのではないか。では、厚生労働省 でその政策をやればよいではないかと。例えば労働政策審議会はまさにそれをやってき たわけですが、それではなく、なぜ「雇用戦略対話」という形で官邸に設ける必要があ るのだろうかということを考えますと、私も長い間この雇用政策をいろいろと勉強して まいりましたが、どうしても一省庁の中でこの問題をやる上ではいろいろな限界がある のではないか。例えば本日示しました配布されている資料3-参考(1)は雇用政策研究会の 中で配布した資料ですが、これはあくまでも雇用政策研究会という厚生労働省の中での 議論で、私は別途雇用戦略対話について別のペーパーを出しております。そこにつきま しては雇用政策といったものが重要であることは間違いないのですが、雇用政策だけで は解決できない問題、例えば産業政策といったものも重要な問題ですし、あるいは税・ 社会保障制度、ときには文部科学省の行っている学校教育の問題まで含めて、やはり日 本社会としてどのようにこれに取り組んでいくかといったものが必要ではないか。そう 考えてみますと、政策をパッケージとしてとらえていく発想が重要であって、これは縦 割りではなかなかできない問題である。そこで政治力も必要になってくるのではないか と考え、そういった提言をさせていただいたということがあります。  同時に、これは政府が考えればよいという問題ではなく、ご指摘のとおり、まさにそ れぞれの職場や現場においてどう理解されていくのか、合意されていくのかということ が重要であって、一方的に政策を立案すればよいという話ではなく、そこには国民の理 解、企業の理解がどうしても必要なのだということから、これは成長戦略とは別途「対 話」という形で政労使で考えていく問題なのだということ。これは北海道大学の宮本先 生と私がそこに入るような形でそれを進めていったらどうでしょうかということになっ たかと思います。やはり政労使が自分たちの考えとは全く別のものが社会で展開されて いくことは、少なくとも雇用問題について、働くという問題についてはあり得ないのだ という認識からそれをやるべきだということになりました。 もう一つ、雇用戦略が重 要だと考えているのは、従来から雇用対策はあったわけですが、往々にして緊急避難的 な、ある意味ではビジネスサイクルに対する対応、失業問題などという形で景気が悪化 して失業率が上がった。そこにどのような手当をするのかというところでやってきたわ けですが、やはり10年、20年というビジョンに基づいてやっていく必要があるのではな いか。しかし、10年、20年といいますと、数字は並べたものの忘れられてしまう。つく ったことですべてが終わってしまったようなことがこれまでもあったわけです。それに ついては随時チェックしていくことができるような仕組みをつくるべきだということか ら、PDCAサイクルという、どこの企業でもそれはやっていて当然のことですが、政策の 評価についてもそういったものをやっていくべきだろうと。もし、この10年後というこ とだけでは不十分であれば、単年度なり、あるいは複数年で評価できるような仕組みを つくっていってはどうでしょうかという提案をさせていただきましたら、厚生労働省大 臣がすぐにそのとおりということで、このような仕組みをつくっていくべきであるとい うことになったということです。  このことは政策の評価と同時に、予算の配分の問題にもつながってくるわけです。こ こについては例えば本日から雇用戦略対話のワーキンググループの中で議論が始まりま すが、最低賃金の引上げの問題を考えても最低賃金だけを議論しても仕方がないわけで、 同時に中小企業における生産性の向上支援と組み合わせて考えていかなければいけない。 そのことがまさに政策をパッケージとして、省庁を越えた形で展開していく必要がある のではないかということがあります。  私が「雇用戦略対話」で出しましたペーパーは副題が付いていまして、そこにつきま しては「持続可能な活力あふれる労働市場構築のために今何をやるべきか」ということ です。山本委員のご指摘のとおり、少子高齢化の中で今後を考えたときにやはり労働力 が不足してくる。それは量的な問題だけでなく質の問題がないと、質の向上、要するに 生産性の向上といったものがなければならないわけです。それに対する科学技術、ある いは学校教育などの果たす役割は非常に重要なのです。そういったところまで含めて議 論しましょうということになりました。  本日、こちらで示されましたのは、その中のある意味では一部分ということで、均等 に関するところだけが今回、この部会の議題としてふさわしいということで示されたわ けで、これ以外のものがたくさんあります。厚生労働省関係だけでもたくさんあります。 年金問題についても、あるいは税・社会保障、在老の問題あるいは第3号被保険者の問題 までセットで考えていくということで国家戦略室が中心になってそこについては議論を 進めていきますというような形で入っているわけです。その一部分が本日ご紹介された ということだろうと思います。  背景については前回に私が欠席しましたので事務局から多分ご説明があったと思いま すが、そのような思いで私どもは臨んでいるということです。個別の具体的な施策とい ったものについては、まさにそれぞれの部会といいますか、労働政策審議会の中で議論 していただくのがふさわしいテーマではないかと思いますので、それを積み上げていく ような形をとりたいと思っております。説明になりましたでしょうか。 ○林分科会長  ありがとうございました。山本委員。 ○山本委員  全体のお話が大変よくわかりました。その中の切り取られたものがここにあるという ことはよく理解できました。  多分、民間はこのような数字が出ますと、なぜこの数字を我々に押し付けてくるのだ というようなとらえ方をする場合が多分にあると思います。そこで今おっしゃるような フレームの話や、先ほどの実際には働きたいけれども働けない人がフルに働いたらこの 数字になるのですということが、これをあまり面倒でない、わかりやすい言い方で浸透 させていかないと、そこでいつも十分な対話がなされて数字だけが課されてくる場合で はないことが多いのです。その場合にそこのところをうまくというのか、本当に納得が いくような、理解ができるような手段、プロセスをこの中にどううまく組み込むのかと いうところも併せて十分に考えないと、なかなか本当の浸透にはならずに、また上から このようなものを言われてきたというだけの話で事が進められようとするような危惧を 感じますので、その辺も十分にご配慮いただけたらと思っております。以上です。 ○林分科会長  山口委員。 ○山口委員  先ほど山本委員もおっしゃっていましたが、雇用均等行政を強力的に推進するために 目標を設定することは非常に重要なことだと思います。そこで山本委員がおっしゃった ように具体的に進めるための手段ということも明確にしなければいけない。全く同じ意 見です。そういった中で、現状と目標に掲げている数値のギャップを埋めることが具体 的な均等推進だと思いますが、そのキャップを埋めるためには法整備ももちろんですが、 あとは企業に対する指導であるとか、そのようなものと同様に労働者支援も非常に重要 だと思いますが、その労働者に対しての支援について少し懸念があります。  一つは、具体的に行政刷新会議の俎上に載っているのですが、女性と仕事の未来館が 事業仕分けのやり玉に挙がっているということですが、先ほど申し上げたように多くの 女性労働者が抱えている課題というのは大変多岐にわたって山積しているのが実態で、 これをどこによりどころとして持っていくかということで考えると、この女性と仕事の 未来館は大変重要な役割を果たしているわけです。ただ、無駄のないように効率的な運 営といったものは当然議論する必要はあると思いますが、存在そのものをなくすとか、 どうするかという議論に至っているようなことを漏れ聞いていて、大変懸念を持ってい ます。このようなことに対してもきちんと目標を達成するためには、さまざまな施策の 中でこういった拠点を設定することが必要なのだということをきちんとアピールするだ けではなくて、拠点として守っていただきたいと思います。  同じように懸念というところで申し上げますと、地域主権の議論の中で、これも国の 出先機関について議論されているわけですが、これは親審議会である労働政策審議会の 中で具体的に意見書を出しているわけですが、特に先ほどから申し上げているような労 働者のよりどころ、これは労働者だけではなくて企業にとっても非常に重要なよりどこ ろである雇用均等室についても地方に委ねるということが、特に具体的な諸会議等で議 論されているわけですが、私は均等行政に対してのサポートとしての雇用均等室という のは、ナショナルミニマムを維持しなくてはいけないと思っています。そのようなとこ ろでは議論が今真っただ中ということで行き先は見えませんが、これもきちんとナショ ナルミニマムの維持という視点で、雇用均等室が各現状の状況にあるようにぜひしてい ただきたいということです。  併せて、多くが女性である非正規労働者の問題があるわけですが、このような方たち も均等待遇等の問題については雇用均等室の所管になるわけですが、そこだけではなく て、例えば具体的な休暇の問題など、いわゆる労働条件や労働基準の問題は、必ずしも 均等の部分だけではないという意味では、ぜひ労働基準行政と均等行政が一体となった 取組ができるようにということで別記して、仲が悪いとか縦割りになっているというこ とではありませんが、より一層連携を密にすることが、この行政推進強化になると思い ますので、そこについても意見を申し上げておきたいと思いました。  最後に、石川委員も申し上げましたが、男性の育児休業取得に関して使用者側からも ご懸念がありましたが、こういった父親たちがどこに相談に行くのでしょうか。具体的 に育児休業を取りたいと思っていても、企業の中では未だ事例がなくて、具体的に取っ た人のモデルも見えないというときに、相談する所というのも今回の育児・介護休業法 の大きな目玉でありますので、そのようなサポートにもきちんと対応していただきたい と思います。長くなりましたが、私としては非常に重要だと思っていますので、意見と して申し上げます。 ○林分科会長  他に、ご意見はございますか。川崎委員。 ○川崎委員  先ほどの樋口委員のご説明で、今回の女性のM字カーブの解消というのが、この雇用均 等分科会でかかわるもの以外にもいろいろな要素がかかわってくるという話があって、 非常にそのとおりだと思ったのですが、その一つの大きいものはこの資料にも書かれて います「保育サービスの拡充」が非常に大きいと思っています。これは今、保育の部分 だけではなくて、小学校に入ったときの「小1の壁」というものもいろいろなところで出 てきて最近は取り上げられていますが、そういったものも含めて、どれだけ拡充してい くのかといったところは雇用均等分科会のマターではないかもしれませんが、M字カーブ の解消といったことを目的にするのならば非常に大きいものだと考えられますので、そ ういった進捗も数値目標を立てておられると伺っていますが、このような場でも共有し ていく必要があると思っていますので、今回立てた目標に直接的に分科会にかかわるも の以外でも、要素として達成していかないと進まない項目については、この場で共有で きるような仕組みもご検討いただきたいと思います。  もう一つ、では数値をどのように把握していくのかといったところで、先ほど男性の 育児休職の取得率ということもお話がありましたが、企業の現実をお話ししますと、実 は育児休職を取ると賃金が雇用保険から半分保障される仕組みになっています。そのよ うな意味では半分カットされることになるわけですが、現実的に男性の場合も長期お休 みをされる、1か月を超えて休まれる方は少ないのですが、特に出産のタイミング、ない しは上の子どもがいて下の子どもが生まれるときに、上の子どもの面倒を見るためにと いうことで、ある一定の期間は年休を取って対応する例が結構見受けられるようになっ てきています。それは数とすると3%より多いのではないかという感触を持っているので すが、この育児休業の取得率だと育児休業の法律に則った取得になるので、もう少し 「男性の育児参加」と幅広くとらえているのであれば、数値の把握の仕方ももう少し工 夫する余地も検討するところがあれば、考慮していただければと思います。以上です。 ○定塚職業家庭両立課長  男性の育児休業について、先ほど山口委員からどこへ相談に行くのか、サポートを、 というご意見がありました。もちろん雇用均等室で相談を受けますし、またイクメン プロジェクトということでホームページも立ち上げる予定ですので、そのようなとこ ろできちんと支援ができるように図っていきたいと思います。  それから、川崎委員から男性の育児休業について、実際に年休を取る方もいらっし ゃるというご指摘がありました。企業によっては配偶者出産休暇ということで取られ ているところもあり、そのような休暇についても育児休業としてカウントしてもらえ ないのかという声を以前から私どもも伺っているところです。しかしながら、ある程 度の期間を育児休業という形でしっかり取っていただくことを数値目標として置いて おきたいということで、現在の目標値にはあくまでも法律上の育児休業制度を利用し ての育児休業という前提で数字を置いているところです。ただ、もちろんご指摘のよ うに育児休業だけではなくて短い休暇でもさらに取っていただきたいということはあ りますので、そのようなことはこの目標値とは別に、いろいろな形でPRし普及させて いただきたいと思います。 ○堀井調査官  今、川崎委員からご質問があった点で1点目の関係です。非常にいろいろな要素、 特に保育・就学前それから就学期の対策が重要ではないかというご指摘がありまして、 先ほどの説明では省略したのですが、資料1の「新成長戦略(基本方針)」の中にも3 ページの「子どもの笑顔あふれる国・日本」という項目の中に、2020年までの目標と 主な施策ということで、さまざまな関連する施策が盛り込まれているという状況になっ ています。  また、先ほどから出ていますが、既に閣議決定して数値目標なども盛り込んでいる 「子ども・子育てビジョン」に基づいて具体的に取組を進めている部分もありまして、 雇用均等分科会の所掌自体は労働政策審議会令の中で本審から分掌して所管として行っ ているものがあるのですが、「子ども・子育てビジョン」のときのように私どもとして も関連するデータや状況につきましては適宜ご報告させていただきながら、この分科会 の議論に資するようにという形で考えております。以上です。 ○林分科会長  他に、ご意見はありませんか。山川委員。 ○山川委員  1点は質問でありまして、細かいことですが資料No.3の2ページ目、公共調達において ワーク・ライフ・バランスに積極的に取り組む企業を評価する仕組みを普及するという ことで、資料3-参考(2)では具体的な説明が書かれていますが、ワーク・ライフ・バラン スに取り組む企業を公共調達において評価する仕組みを普及するというのは、具体的に 現在に比べてどのように普及させていくのかを1点お伺いしたい。  もう一つは、感想といいますか漠然とした意見のようなものですが、労使の委員の方 々から共通して目標が設定された場合の手段のあり方についてのご指摘があったところ でありまして、例えば公共調達の中の仕組みも一種の手段で、先ほどポジティブ・アク ションのお話がありましたが、アメリカではご承知のとおり雇用平等の一般的ないわゆ るアファーマティブ・アクションということで政府契約の条件としてこれを実施すると いう仕組みが採られているわけでありまして、先ほど富高委員からもご指摘のあったと ころですが、女子差別撤廃委員会からも履行確保の方策についての勧告があるところで、 今日の目標ないしここに書かれていることに、直ちにどうということではもちろんない のですが、目標が決まってこれが政策点検評価部会でいろいろ検討されるとなりますと、 もし目標の達成が不十分である場合には、一つは目標自体を見直すこともあるかもしれ ませんが、目標自体が合理性があるとすれば、政策手段を見直すことになるわけで、手 段ということについて、労働政策全分野において、あまり体系的な整理がなされていな いように感じております。先ほども申しましたように、均等政策についても諸外国の状 況等も参考にしつつ、どのような目的にはどのような手段があって、それがどれほど有 効なのかということを基礎的な部分から検討していく必要があるのではないかと思って います。以上です。 ○林分科会長  ありがとうございました。事務局、お願いします。 ○定塚職業家庭両立課長  まず公共調達におけるワーク・ライフ・バランス推進企業の評価について、ご指摘の 資料3-参考(2)の8ページをご覧いただきたいと思います。このワーク・ライフ・バランス 推進企業を公共調達において評価しようという仕組みにつきましては、内閣府の仕事と 生活の調和連携推進評価部会という樋口委員が座長で労使、有識者、団体、各省庁が参 加している会議の中で、今年度から内閣府および関係各省のワーク・ライフ・バランス 関連の施策の中でなるべく工夫をして、このような取組を進めていきましょうという話 が提案されています。具体的には内閣府でワーク・ライフ・バランスの調査研究でまず この評価項目を入れるという取組をしておりまして、私ども厚生労働省でも、ここの8 ページでご紹介していますとおり、先般男性の育児休業取得促進事業を公募する中で、 この評価を取り入れています。厚生労働省におきましては、ワーク・ライフ・バランス 関連の部局の関連の施策におきまして、このような取組を一般競争入札の総合評価落札 方式の中で極力取り入れていこうと各局とも検討しているところです。  こちらの8ページを具体的に見ていただきますと、ワーク・ライフ・バランス実現の ための取組の状況ということで3点。1点目は係長相当職に占める女性の割合が15%以上、 2点目が「くるみんマーク」の取得、3点目がその他のワーク・ライフ・バランスの取組 を明示して進めていることという項目を置きまして、これを評価基準の一つに加えてい るという取組をしているところです。 ○樋口委員  ちょっとよろしいですか。今の説明のとおりです。自治体ではもう幾つかの自治体が それをやっているわけです。県単位であるとか市町村で公共入札のときに、このワーク ・ライフ・バランスを考慮して、そういった建設会社に対して発注するというような点 数化してやり始めている。それはかなり効果を持ってきているということで、従来の補 助金制度に変わって、このようなことを取り入れたらどうかと。  ただ、国の方は従来かなりガードが堅くて、あくまでも価格入札ですということでや ってきたわけですが、その質について評価していくことが必要ではないか。内閣府でま ず始めようということで、ワーク・ライフ・バランスについての研究委託について、こ れを実際にシンクタンクがどの程度進めているかを考慮して入札を行うことを既に始め ました。これを各省庁へ広げていきたいということで、厚生労働省が手を挙げて下さっ たということに流れとしてはなるのではないかと思います。 ○林分科会長  他に、この件についてご質問・ご意見はありませんか。それではご意見も出たという ことで、これらの数値目標・施策については納得する手段も尽くすように努めながら、 当分科会としてはこの方針について了承するということでよろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○林分科会長  ありがとうございました。それでは事務局におかれましては、その旨を労働政策審議 会本審の事務局にお伝えいただくとともに、厚生労働省には政府で取りまとめていく「 新成長戦略」が、これらの施策と目標と整合性のあるものになっていくように、ご尽力 いただきたいと思います。  では、本日は「その他」としまして、報告案件があるということで。 ○布山委員  この目標値がフィックスされたところで意見を言いたかったことが1点あるので申し上 げたいと思います。先ほど山本委員や川崎委員からもご指摘があったのですが、この目 標値、数字だけが独り歩きしないような形の政策をとっていただきたいということが1点 と、これは均等分科会というよりも労働政策審議会の中に点検評価部会をつくられると いうことで、この点検を単年度で回していくような形になっていくと思っていますが、 その際に先ほどこちらから幾つかご指摘したような、例えば育児休業の取得率は育児休 業法上の育児休業ということなので、これは理解をしていますのでこの数字をとってい ただいて結構ですが、同時に先ほど川崎委員からも意見がありましたように、育児休業 を取らせるだけが男性の育児参加ではないと思っていますので、何らかの形で育児参加 していることの統計も一緒に取っていただければと思っています。  また、ポジティブ・アクションに関しては、私はポジティブ・アクションの推進協議 会にもかかわってきたので、いまだ浸透していないことにがっくりきているのですが、 この中でポジティブ・アクションをしているかどうか、取り組んでいるかと聞かれれば、 何かよくわからなくて「やっていません」と答えている企業が、実は参考資料にあるよ うな中身を踏まえて取り組んでいらっしゃる企業が幾つかあると思うので、それもきち んと把握できるような調査なり何なりを評価するときにはしていただきたいと思ってい ます。  また、女性だけという問題ではなくて、この雇用均等を進めていく中では、企業側で どれだけこのような均等について進めていくかだけではなくて、同時に預ける所がなけ れば就業継続もできないことも踏まえて、この辺もこの分科会の話ではありませんが、 この雇用均等・児童家庭局の中での一つのテーマだと思っていますので、その辺も進め ていただくようにお願いします。以上です。 ○山本委員  審議の最後になりまして誠に時間を取りまして恐縮です。くれぐれもこれはあくまで もこれだけの労働力を供給するためには、その仕事がなくてはいけないということだと 思いますので、ここでもマクロ経済運営の政権ご担当の方々が名目3%実質2%に向けて 進めるということも非常に大きな前提というか、一つの大きなファクターだと思います ので、ここが大きく振れてきますと、多分雇用の方の実際に置かれている数字も変化を 余儀なくされるということが十分あろうかと思いますので、必ず従業者の環境改善は全 体の経済の成長とともにあるということを、一言申し添えて、それで了解したいと思っ ています。以上です。 ○定塚職業家庭両立課長  今の布山委員からのご指摘がありました育児休業取得率の他に何らかの育児参加して いるという統計も取ってPDCAを行ってほしいという点は、ご要望ということで受け止め させていただきます。今年度の統計につきましては、既にどのような統計を取るかは大 方決まっていますので、その中で統計としてできるものかどうかということを必ずしも お約束はできないので、今後どうするかということを含めてのご要望ということで、受 け止めさせていただきたいと思います。 ○樋口委員  今の山本委員の最後のところは非常に重要な点でありまして、もちろんGDPの話もあり ますが、議論の中では例えば開業率についての数値目標、あるいは労働生産性について の数値目標についても議論をしているところで、それに対する支援をいかにしていくの か。これは直接厚生労働省というよりも他の省庁と関連するようなところでありまして、 それについても経営側からも意見が出ていますので、よろしくお願いします。 ○林分科会長  それでは、報告の方に移ってよろしいでしょうか。では事務局より資料に沿って報告 案件の説明をお願いします。 ○美濃短時間・在宅労働課長  それでは資料4の職務分析・職務評価実施マニュアルの関係です。まず、お手元にお配 りしています「資料4-参考」という1枚の資料をご覧いただければと存じます。こちらは 平成19年のパートタイム労働法改正のときの附帯決議です。内容としましては、「短時 間労働者と通常の労働者との均等・均衡待遇の確保を更に進めるため、職務分析の手法 や比較を行うための指標(モノサシ)について情報を収集するとともに、事業主に対し、 それらを提供することにより、その取組を支援すること」とあります。この附帯決議を 受けまして、職務評価手法の種類、あるいは我が国の職務評価事例等について調査をし たところです。  マニュアルの表紙をおめくりいただきまして、目次をご覧いただければと存じます。 平成21年度におきましては、「パートタイム労働者の能力をより有効に発揮してもらう ために」ということで、職務分析・職務評価実施マニュアルを作成したところです。職 務分析・職務評価の実施方法につきましては、様々な方法がありますが、このマニュア ルにおきましては、パートタイム労働法に則したものを中心に解説させていただいてい ます。例えば職務評価の手法につきましては、マニュアルの29ページをご覧いただけれ ばと存じます。ここにもありますとおり、様々なものがあります。ただ、このマニュア ルの第2章におきましては、パートタイム労働法に則しまして、職務全体としてとらえ て比較する単純比較法というもので説明しています。なお、ご参考までに要素比較法に つきましては、次の30ページ以下で説明しています。  それでは戻っていただきまして、マニュアルの2ページをご覧いただければと存じま す。「こんな問題ありませんか」ということで、正社員との例えば待遇の違いに疑問を 感じているパート社員の方などがいる、事業主として、そういった問題にどのように対 応したらよいのかということがあるかと思います。そうした中におきまして、マニュア ルの7ページをご覧いただければと存じます。職務分析・職務評価のメリットですが、 パート社員と正社員の職務が同じか異なるかを明確にできる。2点目として、職務の内 容に応じた待遇になっているか、パート社員と正社員で均衡(バランス)が取れているか を確かめることができる。さらに3点目として、パート社員に、正社員と職務の異同を 分かりやすく説明でき、パート社員の納得性を高めることができるといったことがあり ます。  具体的なパートタイム労働法に則した職務分析・職務評価のプロセスにつきましては、 10〜11ページをご覧いただければと存じます。職務分析・職務評価のステップですが、 まず情報の収集・整理(職務分析)を行って、その上で職務の比較(職務評価)を行って、 最終的に職務評価表を完成させるというものになります。職務評価につきましては、11 ページにありますように、まずは業務の内容を比較しまして、次に責任の程度を比較す ることになります。これはパートタイム労働法に則したものとなっています。具体的な 職務評価・職務比較表の例を19〜21ページに載せています。さらに24ページ以下におき ましては、実際の事例ということで載せています。このマニュアルにつきましては、先 ほど山口委員からもご指摘がありました都道府県労働局の各雇用均等室の均衡待遇・正 社員化推進プランナーにおきまして、ご関心を持っていただいた事業主の方に対しまし て、情報提供を行っていくこととしています。パート社員と正社員の職務内容を明らか にすることを契機として、パートタイム労働者の働き・貢献に見合った公正な待遇の確 保が促進されることになればと期待しているところです。以上です。 ○林分科会長  それでは、次の報告をお願いします。 ○吉本雇用均等政策課長  資料5です。「平成21年版 働く女性の実情」について、ご説明申し上げたいと思い ます。まず、1部ですが、「平成21年の働く女性の状況」ということで、労働力人口に ついては前年に比べ9万人増加で、過去最多の2,771万人となっています。また生産年齢 人口における労働力で絞りますと、その労働力率が62.9%で、これも過去最高です。本 日も話題になりましたが、これは労働力率で見ていますけれども、M字型カーブです。 現在一番谷のところは「35〜39歳」層ですが、前年に比べ0.6%ポイント上昇しまして 65.5%ということで、これは過去最高のところまで来ているということです。それから、 M字型カーブを次のページで配偶関係別にブレイクダウンして見ています。有配偶者と 未婚者ということで、有配偶者については徐々にその年齢とともに高まっていくような カーブで、未婚者はかなり高い水準での台形のカーブです。これは10年前と比較して見 ています。グラフをご覧いただくとわかりますとおり、未婚者についてはカーブの形状 があまり変わっていませんけれども、有配偶者についてはかなり上方にシフトしていま す。特に、25〜34歳の辺りがそうで、上昇していることをご覧いただけると思います。 かつては、むしろ逆の傾向で、ここの労働力率がなかなか上がらないということがあり ましたが、この10年間を見るとむしろ逆の現象が見て取れます。  少し細かくなりますが、3ページでその労働力率の変化について、さらに要因分解を しています。要因の一つは配偶関係別、要するに未婚者と有配偶者の比率です。だんだ んと未婚者が増えている状況にあるわけですけれども、その比率が変わることによる影 響と、労働力率それ自体が変わることによる影響とに分けていまして、「30〜34歳」の ところをご覧いただきますと、この10年間で黒い方が労働力率そのものが上昇したこと による影響ということで、これが配偶関係の比率が変わったことよりも、より大きく影 響しているということがわかります。特に、一番下のグラフですが、最近5年間につい ては黒色のところが非常に大きくなっているということで、労働力率自体が上がってい る効果が大きいということが確認できるわけです。  次のページで「就業者及び完全失業者」ですが、完全失業率については男女ともこう した状況の中で上がっているわけです。女性については4.8%という状況です。  「雇用者」については、数としましては7年ぶりに女性の雇用者数が減少していると ころです。ただ、男性がそれよりももっと大きく減少しているということですので、雇 用者に占める女性の割合で見ると42.3%で、過去最高の水準となっています。  5ページで雇用形態別の雇用者数を見ています。これもグラフでご覧いただきたいと 思いますが、女性と男性で、白色が非正規、緑色が正規で、それぞれ前年と比較した増 減を見ているわけです。このところは、ずっと白色の非正規が増えてきたわけですが、 平成21年についてはこれが減少に転じています。一方で、緑色の正規の職員は増加にな っています。なお、男性は正規・非正規とも大幅な減少になっているということがご覧 いただけると思います。  次に「賃金」です。女性の一般労働者の賃金については、4年連続で増加していると ころです。一方で、男性は減少しているということで、その比率で見ると年々高くなっ てきているところで、6ページのグラフをご覧いただきたいと思いますが、一般労働者 全体で見ます。パートタイム労働者の方々が入っていませんが、一般労働者で見ますと 69.8です。さらに、その内の正社員で絞りますと、72.6という状況になっています。  続きまして、第2部として「今回の景気後退下での女性労働者の動き」を調査してい ます。まず、雇用者の動きということで7ページのグラフをご覧いただきたいと思いま す。少しわかりにくいかもしれませんが、景気後退期、一番直近の景気の山を0の起点 としまして、その後の雇用者の状況を追っているものです。緑色が今回の景気後退期で、 それを参考に前回、前々回も付けています。これをご覧いただくと、男性については長 期にわたり横ばいの期間がかなり続いた後に、大きく減少しているということです。一 方、女性については横ばいからやや増加という動きが見て取れるということです。どう してこういう違いがあるのかというところで、一つ分析を試みましたのが、その後に出 てまいります「産業別の動き」です。これもグラフでご覧いただいた方がわかりやすい と思いますので、8ページの図の9をご覧いただきますと、男性と女性それぞれの前年に 比べての増減を産業別に見たものです。男性についてはずっと減少が続いてきているわ けですが、特に青色の「製造業」や縦縞の「建設業」が連続してマイナスの要因になっ ている。一方で、女性については、今回の景気後退期でやや減少に転じているところが あるとはいえ、また製造業等のマイナスの影響は同様ですが、一方ドットの「医療、福 祉」が、かなり大きくプラスに働いているということがご覧いただけると思います。以 下、関連する産業別の動向について分析させていただいています。  10ページをご覧いただきますと、「雇用の過不足感」で見ても、産業別の過不足の状 況は同様の傾向がありまして、11ページの直近の第14循環のグラフでご覧いただきます と、「製造業」または「建設業」というものは起点近くの時期では、不足感がまだあっ たのが急速に過剰感が高まっています。一方で「サービス業」については、その後過剰 感が出てまいりましたが、比較的水準が低いということがご覧いただけます。さらに、 サービス業の中で「対事業所サービス」と「対個人サービス」に分けてみたのが下のグ ラフで、対個人サービスについては、なお不足感が続いていて、これは福祉や介護の分 野です。一方で、対事業所サービスは労働者派遣やビルメンテナンスというところで、 こちらは比較しますと過剰感が高いということがご覧いただけます。  さらに12ページですが、「完全失業率」の動きを見ています。男性、女性とも今回は 比較的横ばいの期間が長く続いた後、急速に高まるという動きですが、水準としては女 性は男性に比べますと少し低い状況です。  それから最後に、「求職理由別の完全失業者」で、これも13ページのグラフをご覧い ただければと思いますが、求職理由をお尋ねしていまして、「構成比」でご覧いただき ますと、前々回、前回、今回の景気後退期ということで見ていますけれども、男女とも この濃い青色のところの割合はやや少なくなっていて、これは自発的な離職の部分です。 一方で、この薄い青色の部分の非自発的な離職の部分は増えています。これは、男女と もの傾向です。やや特徴的なのはこの白色の部分で「その他の者」というのが女性につ いては増えている。「その他の者」といいますのは、新たにこの労働市場に参入してき て、求職活動を始めたというようなことで、その理由を聞きますとやはり家計補助を理 由とする人が大半で、こうしたことでかつて言われていました景気後退期の女性の就業 意欲喪失効果というものは、少し変容が見られるのではないかという結果かと思います。 以上です。 ○林分科会長  ありがとうございました。今の二つの報告について、何かご質問・ご意見があります でしょうか。特にないようでしたら、本日の分科会はこれで終了いたします。  なお、議事録の署名については、労働者代表は齊藤委員、使用者代表は山本委員にお 願いします。  本日はお忙しい中をありがとうございました。 <照会先> 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 総務課企画調整係 〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2 電話(代表)03−5253−1111(内線7826)