10/04/22 第39回労働政策審議会安全衛生分科会議事録 第39回労働政策審議会安全衛生分科会 1.日時 平成22年4月22日(木)15:00〜 2.場所 経済産業省別館共用第827会議室 3.出席者 (委 員)  公益代表   相澤委員、今田委員、露木委員、中原委員、名古屋委員  労働者代表   市川委員、犬飼委員、谷口委員、古市委員、眞部委員、芳野委員  使用者代表   明石委員、伊藤委員、瀬戸委員、高橋委員、豊田委員、中村委員、三浦委員 (事務局)  金子労働基準局長、平野安全衛生部長、前田総務課長、高崎計画課長、  田中安全課長、鈴木労働衛生課長、半田化学物質対策課長、亀澤環境改善室長 4.議事録 ○分科会長 ただいまから第39回「労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いた します。本日は内藤委員、土橋委員、高橋孝行委員がご欠席です。なお、古市委 員につきましては少々遅れるとの連絡がございました。  本日の議題に入る前に、定足数について事務方からご説明をお願いします。 ○計画課長 定足数の確認について申し上げます。労働政策審議会令第9条第1 項により、委員全体の3分の2以上の出席又は公労使各側委員の3分の1以上の 出席が必要とされていますが、本日はいずれの数も上回っておりますので、定足 数は満たされています。 ○分科会長 それでは、議事を進めさせていただきます。本日の議題は「労働安 全衛生政策の戦略的な実施について」となっております。まず資料に沿って事務 局から説明をお願いいたします。 ○計画課長 まず、本日分科会を開催させていただいた背景及び経緯についてご 説明します。お手元にお配りしている資料2をご覧ください。昨年の12月30日 に、10年先の2020年を見据えた新成長戦略を策定するということで、「新成長戦 略(基本方針)」が閣議決定されています。この方針においては、資料の最後のペ ージをご覧いただければと思いますが、本年6月を目途に、工程表と併せた「新 成長戦略」を取りまとめることとされております。また、この基本方針の新成長 戦略の中に「雇用・人材戦略」を位置づけました。この雇用・人材戦略について は、総理の下に産業界、労働界の代表の方々、学識経験者の方々にご参集いただ き、雇用戦略対話を設けて、そこでの議論を踏まえて、2020年までの具体的な目 標を定めることとされたところです。  厚生労働省としては、この新成長戦略あるいは雇用・人材戦略の中に盛り込む べき施策と目標を6月目途に取りまとめるということですので、そのスケジュー ルに合わせて検討を進めていく必要があると考えています。  「雇用戦略対話」は、雇用戦略に関する重要事項について、総理主導の下で、 労働界・産業界をはじめ、各界のリーダーや有識者の方々が参加しまして、意見 交換と合意形成を図ることを目的として設けられているものです。昨年12月に行 われた第2回の会合において、有識者の方から雇用戦略については、「目標年次に おける数値目標を設定し、それを実現するための具体策を明記し、いわゆるPDCA サイクルに則り、整合性のとれた制度・政策を設計し、その運用実態を検証し実 施する必要がある」というご意見が出されたところです。  このようなご意見があったことを受けまして、厚生労働省としては、資料3に ありますように、労働政策の運用実績を検証・改善するPDCAサイクルの仕組み を設け、このPDCAサイクルを効果的に実施するために、労働政策審議会の下に、 点検評価部会を設置するとしたところです。これらにつきましては、4月1日に 開催されました労働政策審議会においてご審議、ご了解をいただいています。「労 働政策に係る点検評価部会の設置について」を見ていただければと思います。こ のPDCAサイクルにつきましては、スケジュール(案)に労働政策審議会の各分 科会が分野ごとに、各年度の目標について事務方より案をお示ししまして、ご審 議いただくという形になっています。このように、新成長戦略に盛り込む施策あ るいは2020年までの目標につきまして、PDCAサイクルにおいて、検証・改善 をするということで、平成22年度の分について、本日ご審議いただくべく、分科 会を開催させていただいています。単年度については、各年度の目標についてご 審議をいただくのですが、本年は初年ということですので、全体の政策目標と、 各年度の目標の両方を審議いただくという形になっています。  具体的な中身に移らせていただきたいと思いますが、この目標の設定について は、「雇用戦略対話」のメンバーでもあり、厚生労働省で雇用政策全般についての 学識的な見解をいただいている、雇用政策研究会の座長でもございます、慶應義 塾大学の樋口先生が、試案として「雇用政策の戦略的な実施について」を作られ まして、3月24日の雇用政策研究会に提出されたところです。お手元の参考資料 としてお配りしているものです。厚生労働省といたしましては、新成長戦略に盛 り込むべき施策と目標を検討するに際し、雇用戦略対話のメンバーでもあり、雇 用政策研究会の座長である樋口先生の試案を参考にしつつ、案を作成し、それを もって労働政策審議会の各分科会でご審議いただくことが適当ではないかと考え、 今月1日に労働政策審議会を開催して、そこでこの試案を説明させていただいて いるところです。その試案を踏まえまして、安全衛生分科会においては、安全衛 生分科会の担当部分につきまして、新成長戦略に盛り込む施策とその長期目標、2 つ目としてPDCAサイクルで検証する施策の年度の目標についてご提案をさせて いただきまして、ご審議をお願いいたします。以上、これまでの経緯です。  続きまして具体的に長期目標及び年度目標についてご説明いたします。お手元 の資料1-1と資料1-2をご覧ください。資料1-1ですが、樋口先生の試案を参考 に、安全衛生分科会でご審議いただく長期目標、年度目標を用意させていただい ています。資料1-2は、それぞれの項目についての説明資料となっています。  雇用・人材戦略のうちの労働安全衛生政策部分です。柱書きのところは、そこ に書いてあるとおりですが、雇用・人材戦略の中で、特に大きな項目としまして、 地域雇用創造と「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実 現を大きな項目として位置づけていくというように考えていまして、そのディー セント・ワークの実現という中に、労働安全衛生政策部分の3つの項目に、中身 として入れたらどうかと考えています。  1つ目ですが、労働災害防止対策の推進という項目を立てさせていただきたい と思います。この項目につきまして、資料1-2の1枚目の図をご覧ください。労 働災害防止対策の推進ですが、現状をご説明させていただきます。労働災害の発 生件数の推移という表ですが、我が国の労働災害は長期的には減少傾向にあるも のの、休業4日以上の死傷者数が1つの指標としてありまして、依然として平成 20年で約11万9,000人に上るという状況になっています。昭和40年代後半には、 40万人近い方々がお亡くなりになったり、怪我をされたりしていたということで す。現在、数は減少してきておりますが、依然として約12万人の方々が死傷をさ れているという状況です。このような状況において、厚生労働省としては、ご案 内のとおり、現在進行中の第11次労働災害防止計画に基づいて、死亡災害等の重 篤な労働災害の一層の減少を図るため、これら重篤な労働災害が多く発生してい る墜落・転落等の作業や、機械設備等について、労働災害防止対策の推進を図っ ているところです。また、労働災害全体を一層減少させるため、事業者による危 険性または有害性の特定、リスクの見積り、リスク低減措置の検討等を行い、そ れに基づく措置の実施を行うリスクアセスメント等を広く定着させることが必要 であり、その取組の促進を図っているところです。  このような現状を踏まえて、雇用・人材戦略の中の項目として、労働災害防止 対策の推進を掲げさせていただきました。目標としましては、資料1-1にありま す、「労働災害のない社会を目指しつつ、労働災害発生件数を2020年までに30% 引き下げる」を考えています。労働災害防止については、もちろん目指すべきは 労働災害がゼロであるということが良いので、当然「労働災害のない社会を目指 す」ということをまず掲げた上で、そうは言いましても直ちにゼロにするという ことは、難しいので、労働災害発生件数を2020年までに30%引き下げるという ようにさせていただいたところです。現状は、先ほど申し上げましたように、休 業4日以上の死傷災害は、11万9,291件となっております。10年で30%引き下 げるという考え方ですが、ご案内のとおり、過去の労働災害防止計画におきまし て、5年間で15%下げるという目標で政府として取り組んできたところです。そ れが10年間で倍の30%ということですが、まさにここにお集まりの労使の皆様 方のご協力も得まして減ってきておりますので、そこからさらにいままでと同じ ように下げていくということについては、困難が伴う部分もあると思います。単 に過去とのトレンドで引き直して30%ということではなく、より積極的な意味で、 30%引き下げていくことを目標として掲げさせていただきたいと考えています。  実現のための具体的な施策ですが、第11次の労働災害防止計画でまとめたもの を中心に、今日的な問題も踏まえてまとめたものを、「事業者による労働災害のリ スクの評価及びその低減措置(リスクアセスメント等)を促進し、墜落・転落災 害の防止、安全な機械設備の普及、労働者の健康確保のための取組の強化、化学 物質の管理の充実等の労働者の安全と健康の確保対策を推進する」とさせていた だいています。  なお、この点につきましては、補足説明として、本年度にどのような取組をす る予定であるかということを、口頭でご説明させていただきます。要するに、10 年で30%下げるということであれば、22年度についてはどのようにしていくの かという部分です。11万9,000件余の発生件数の内訳を業種別に見ますと、製造 業が2万8,259件ということで、23.7%です。次いで建設業が多く、2万4,382 件、20.4%、次に多いのが陸上貨物運送事業で、12.3%となっています。また、 事故の型で見ますと、墜落・転落が2万2,379件ということで多く、ついではさ まれ・巻き込まれというような形のものが1万8,439件となっております。そう しますと、労働災害を減らすとなれば、まず製造業、建設業、陸上貨物運送業に ついてどうしていくかということになりますし、事故の型で見ますと墜落・転落 あるいは、はさまれ・巻き込まれについてどのように対応していくのか考えてい かなければならないことになります。平成22年度は、対応としてまず1つに製造 業あるいは、はさまれ・巻き込まれの関係の対策として、機械災害について、新 たにプレスブレーキ用の安全装置を構造企画の中に盛り込むことを予定していま す。それらによりまして、プレス機械の安全対策を充実してまいりたいと考えて います。さらに、機械設備の製造等の事業者に対して、リスクアセスメントの実 施、残留リスクの提供等について指導をしていきたいと考えています。  次に、建設業あるいは墜落・転落防止の部分ですが、これにつきましては、昨 年度に改正されました省令によりまして、新たに下桟の設置等の措置が義務づけ られていますし、望ましいより安全な措置も通達等でお示しさせていただいてい ます。改正されました手すり先行工法等によるガイドラインの普及を行っていき たいと考えていますし、関係予算として、約4億4,000万円を計上しています。  3つ目として、陸上貨物運送事業の関係ですが、荷役作業中の墜落・転落災害 が全体の死亡災害の3割を占めるということで、荷役作業時における墜落・転落 災害防止のためのマニュアルを活用した災害防止指導に取り組んでまいりたいと 考えています。  それ以外に、集団指導、個別指導、安全衛生指導等の手法を選択し、事業者が 自主的にリスクアセスメントに取り組んでいただくことを推進するための予算と しまして、約1億2,000万円の予算を計上しています。厚生労働省安全衛生部と しては、これらの事業あるいは指導について、重点的に取り組むこととしまして、 関係皆様方のご協力も得ながら、労働災害の防止に取り組んでまいりたいと考え ています。長くなりましたが、労働災害防止対策推進の関係については以上です。  2つ目の項目としまして、今の項目の中に含まれてはいるのですが、特に最近 重要な、企業におけるメンタルヘルス対策の推進を掲げてはどうかと考えていま す。この点につきましては、お手元の資料1-2に、現状等を書いていますので、 こちらでご説明をさせていただきます。職場におけるメンタルヘルス対策の概要 です。メンタルヘルスをめぐる状況ですが、職業生活において強い不安、ストレ ス等を感じる労働者の割合は約6割に達しています。また、精神障害等に関する 労災支給決定件数は、平成20年度で269件と、過去最高となっています。さら に、すべて労災ということではありませんが、我が国における自殺者数は12年を 連続して3万人を超えていまして、うち約3割が被雇用者、勤め人、いわゆる労 働者の方々となっています。単純に3万人の3割ということでいいますと、9,000 人という状況です。製造業、建設業等でお亡くなりになられる方が、平成21年度 を見ますと、1,000人強ですので、それからしましても、自殺に関する労働者の 数は非常に大きな数となっており、まさにメンタルヘルスについての対策が必要 であろうということではないかと思います。もちろん、現在、企業でも取り組み いただいているところですが、平成19年の労働者健康状況調査によりますと、メ ンタルヘルス対策に取り組んでいるとお答えいただいた事業所の割合は、33.6% となっています。取り組んでいない理由としましては、「専門スタッフがいない」 というのが44.3%、あるいは「取り組み方がわからない」という回答が42.2%と いう状況です。  厚生労働省としては、下の[基本的な対策]にありますように、平成18年に労 働者の心の健康の保持増進のための指針を定めていまして、この指針を普及・定 着させていくべく、行政として努力をしています。労働衛生委員会等における調 査・審議、あるいは心の健康作り計画の策定、ケアとしては、セルフケア、ライ ンによるケア、産業保健スタッフによるケア、事業場外資源によるケアを4つの ケアと称しまして、4つのメンタルヘルスケアの推進を進めています。あと、教 育研修・情報提供、あるいはメンタルヘルス不調者がいた場合の対応、あるいは 休職後の職場復帰における支援等々ということを、この指針の中で定めています。  資料1-1にお戻りいただきたいと思いますが、このような状況を踏まえて、企 業におけるメンタルヘルスケア対策の推進ですが、目標としましては、2020年ま でに、必要な労働者すべてが、メンタルヘルスケアに関する措置が受けられる職 場にするとさせていただいています。もちろん、必要がない労働者についてする 必要はないわけですので、必要な労働者すべてとさせていただいています。この すべてがメンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場にするという目標は、 事業者が必要な労働者についてメンタルヘルスに関する措置を講ずるという捉え 方ではありませんので、結果的にすべて必要な労働者にメンタルヘルスのケアが 講じられることが必要だと思いますが、ただ、その実現の手段としては、事業者 自らがやる場合があるかもしれませんし、例えば小規模零細企業の場合に、なか なか難しいということであれば、国が支援する、あるいは国が肩代わりするとい うようなこともあろうかと思います。そういうものもすべて含めまして、2020年 までにすべての労働者がメンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場にし ましょうという考え方です。  現状につきましては、先ほどご説明しました、企業の割合が33.6%を掲げさせ ていただきました。  精神障害等による労災支給決定件数が増加していること、仕事や職業生活に関 して強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合が約6割であること等 を踏まえまして、一般健康診断時におけるメンタル不調の把握及び医師の意見に 基づく対応等、職場におけるメンタルヘルス対策のあり方を検討し、必要な対策 を行うとさせていただいたところです。ここの部分につきまして、どのような形 で2020年までにすべての労働者がメンタルヘルスケアを受けられるようにする かは、今後そのための手段等も含めて、そのあり方を十分検討していかなければ ならない段階だと考え、そういう意味で、私どもとしましては、一般健康診断時 における不調者の把握及びその後の対応は非常に有効ではないかと考えています。 それも含めまして、メンタルヘルスケア対策のあり方を検討し、具体的に言いま すと、この労働政策審議会安全衛生分科会におきましても、十分ご議論をしてい ただく必要があると考えています。  続きまして3点目です。職場における受動喫煙防止対策の推進を掲げさせてい ただいています。これは資料1-2の「職場における受動喫煙防止対策について」 をご覧ください。国際的な動向、WHOの関係をご説明させていただきますと、 たばこ規制枠組条約が平成16年6月に批准され、平成17年2月に発効していま す。条約第8条におきまして、たばこの煙にさらされることからの保護という条 文がございます。締結国は、たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害 を引き起こすことが科学的な証拠により明白に証明されていることを認識する。 屋内の職場、公共交通機関、屋内の公共の場所等におけるたばこの煙にさらされ ることからの保護について、効果的な措置をとるということになっています。要 するに、たばこの煙の障害については、科学的な証明がされていますということ と、屋内の職場については、有効な措置を取るということが、この条約です。我 が国もこれに批准していますので、そういう義務を負っているということです。  これを実施するための具体的な中身につきましては、法律ではなく、ガイドラ インを掲げていまして、そこでは、100%禁煙以外の措置は不完全だということ で、すべての屋内の職場、屋内の公共の場所及び公共交通機関は禁煙とすべきで あるという考え方が示されています。  我が国における受動喫煙防止対策の現状がどうなっているかということは、イ メージ図という形でご説明させていただきます。受動喫煙防止対策は、いわゆる 公衆衛生と、地域の政策と職域の政策という、いわば2本柱が、車の両輪という ような形で進んできています。公衆衛生につきましては、健康増進法の25条にお いて、受動喫煙防止のための努力義務が措置されています。この健康増進法の対 象は、多くの者が利用する施設ということになっており、対象者としましては、 住民、利用者、顧客等になります。  もう1つの柱の職域対策につきましては、当分科会所管の労働安全衛生法があ りまして、その中で受動喫煙防止という考え方は直接的には出てまいりませんが、 快適職場環境の形成の努力義務があり、その中に受動喫煙も含まれているという 考え方で整備をされています。健康増進法の25条については、新聞報道等にも出 ておりますので、皆様方、ご認識かと思いますが、本年の2月に健康局長通知が 出ていまして、この努力義務については、原則禁煙ということで、考え方が整備 されております。労働安全衛生法は、いま申し上げたような状況にあり、もう少 しこの対策について、充実する必要があるのではという問題意識のもとに昨年の 7月来、職場における受動喫煙防止対策に関する検討会を厚生労働省労働基準局 で行っています。  3点目として、職場における受動喫煙に対する現状についてご報告させていた だきますが、平成19年の労働者健康状況調査の結果になります。「全面禁煙」又 は「喫煙室を設けそれ以外を禁煙」という、いわゆる空間分煙のいずれかの措置 を講じている事業所の割合は、46%という状況です。その中に、職場で受動喫煙 を受けているとお答えになった労働者が、全体の65%、喫煙対策の改善を職場に 望むとお答えになった労働者が92%という現状です。  次に、それまでの検討状況及び議論の概要についてまとめさせていただきまし た。1点目として、今後の職場における受動喫煙防止に係る取組の基本的方向と いう点につきましては、現状の快適職場形成という観点ではなく、労働者の健康 障害防止という観点から取り組むことが必要なのではという議論になっています。  2点目ですが、受動喫煙防止措置に係る責務のあり方ということについては、 それぞれの職場の状況に応じた受動喫煙防止対策を取ることが必要であり、何ら かの対策を取ることによって、受動喫煙を受ける機会を低減させることは、事業 者の義務ではないかという考え方です。  3点目、具体的な措置ですが、一般の事務所や工場においては、全面禁煙又は 喫煙室の設置による空間分煙とすることが必要ではということです。  もう1点、顧客の喫煙によりまして、全面禁煙や空間分煙が困難な場合、飲食 店等、旅館業なども入るかもしれませんが、そうであっても何もしないでいいと いうことではありません。換気等による有害物質濃度の低減、保護具の着用等の 対策を取ることによって、可能な限り労働者の健康リスクを下げることが必要で はという議論になっています。  そのような状況を踏まて、資料1-1にお戻りいただきたいのですが、この目標 としましては、2020年までに受動喫煙のない職場にするという目標を掲げてはい かがかと考えています。2020年までに受動喫煙のない職場にするということで、 事業者が禁煙または空間分煙をするという言い方ではなく、受動喫煙のない職場 にするという表現になっています。受動喫煙のない職場というのがどういう職場 であるかということについては、議論がありますし、今後の社会全体の認識等の 中で変わってくる部分もあろうかと思いますので、いまの時点でこうだというこ とではなく、いろいろな可能性を含むという考え方のもとに、2020年までに受動 喫煙のない職場にするということとしたらどうかという考え方です。  具体的な中身につきましては、まさに受動喫煙による労働者の健康障害を防止 するために、事業者による職場の全面禁煙又は空間分煙による受動喫煙防止に向 けた取組を強化していくということに尽きるわけで、このように書いています。 特にこの分野は、当然いろいろな支援も必要です。特に事業者に対して、効果的 な分煙対策のための技術的な指導、経済的基盤の弱い中小企業に対する分煙設備 の設置等に係る財政的支援も実施するということも掲げさせていただいています。 このように、職場における受動喫煙防止対策を推進してまいりたいと考えていま す。  続きまして、単年度の目標についてご説明させていただきます。資料1-1の最 後の頁をご覧ください。単年度目標は2010年の目標という形になります。1点目 の労働災害発生件数については、先ほどご説明しましたとおり、2020年で3割減 ということになっていますので、単純に10で割り、単年度目標としては、前年比 3%減を考えています。  次に、メンタルヘルス対策の措置を受けられる職場の割合を100%にするとい うことですが、この点につきましては、今後、検討していかなければならないと いう意味で、平成10年度の目標につきましては、メンタルヘルス対策について有 識者による検討を開始し、報告書を取りまとめ、その報告書を受けて労働政策審 議会での議論を開始するということで、目標として掲げてはどうかと考えていま す。  3点目の受動喫煙のない職場につきましては、同様に、今後ご議論いただかな くてはならないと考えています。検討会を行っていますので、職場における受動 喫煙防止対策に関する検討会の報告書を取りまとめ、その報告書を受けて労働政 策審議会での議論を行うという目標にさせていただければと考えています。これ らの施策及び平成20年度の目標につきましては、厚生労働省として、本年6月を 目処に取りまとめ、新成長戦略に盛り込まれるよう、努力してまいりたいと考え ています。以上、長くなりましたが、ご説明とさせていただきます。ご審議いた だき、ご了承いただければと存じますので、よろしくお願いいたします。なお、 これは、労使も交えた雇用戦略対話で最終的に議論し、確定していくというプロ セスがありますので、その点でまた別途変更等があり得るということは、あらか じめご承知おきくださいますようお願いいたします。以上です。 ○分科会長 ありがとうございました。大変細かくご説明いただきましたが、新 成長戦略の中の雇用・人材戦略の中で「ディーセント・ワーク(働きがいのある 人間らしい仕事)」の実現ということで3つの柱を提示していただいたわけです。  3つありますので、1つずつやっていったらどうかと思います。まず、労働災害 防止対策の推進ということで、2020年までに30%引き下げるということで、単 年度ではそれの10分の1の3%減ということです。いかがでしょうか。これにつ いて何かご意見ございませんでしょうか。 ○谷口委員 連合選出の谷口です。労災防止対策の推進の項目について一言発言 をさせていただきたいと思います。ここに記載の目標あるいは取組の強化につき まして特段異存はございません。その上で、この労災のない社会というのは我々 労働者にとって大変重要な社会ですので、ここに書いてあります2020年までに 30%引き下げるという目標を達成するための取組の強化を望んでいるところであ ります。ただし、先ほど計画課長からご説明がありましたように、労災の件数の 推移につきましては、近年横ばい又は微減という状態が続いておりまして、積極 的な施策を打っていただいているものと、あるいは事業者、労働組合もやってお りますが、なかなか10年で30%引き下げるというのは容易ではない。したがっ て、これまでの政策の延長ではなかなか難しいのかなと感じているところであり ます。  そこで、具体的な取組、施策の検討に当たって、是非考慮していただきたいこ とを申し上げたいと思います。特に、先ほど最初にありましたPDCAサイクルを 確実に効果的に実行するというのは非常に重要であると感じております。その中 で、Aの段階で災害の原因の分析をした上で施策の立案をすると思いますが、そ の要因をしっかりと分析をして、この施策を打てばこれぐらいの効果が見込まれ るというところまでしっかり掘り下げた要因分析と、それに基づく施策の立案と いうものが重要ではないかなと感じております。このAの段階で掘り下げた分析 と立案をすることによって、このDo、Checkのときに、より明確な評価を行うこ とができることにつながると考えていますので、是非具体的な施策の検討に当た りましては、繰り返しになりますが、Aの段階での要因の掘り下げた分析とそれ に基づく施策の立案、そしてその施策の立案によってどれぐらいの効果が見込ま れるのかというところまで是非掘り下げた検討をしていただきたいと思います。 以上です。 ○分科会長 ありがとうございました。谷口委員からのご要望ということでよろ しいですか。 ○谷口委員 はい、結構です。 ○分科会長 それでは、そういったことも十分考慮の上、Actionのところを検討 いただきたいと思います。ほかには何かございませんでしょうか。 ○瀬戸委員 全国中小企業団体中央会の瀬戸です。数値目標自体については特に 異論はございませんし、労災の減少・縮減については、中小企業の立場としても 努力をしていくところですが、これもお願いですが、まず数値ありきということ で中小企業、企業にとって、過度なノルマが課せられないようなことで、社会全 体で取組む体制作りというものを是非お願いしたいということです。これはお願 いです。 ○分科会長 瀬戸委員からの過度なノルマを課さないというご要望です。よろし くお願いします。 ○豊田委員 1点だけ質問なのですが。目標の下に4行コメントが書いてありま すが、この1行目の事業者による労働災害のリスク評価及びその低減措置という ところの、リスク評価というのは具体的には、いまの局長諮問で例えば化学物質 管理のあり方検討会をしております、あそこで言っていますコントロール・バン ディングのような、ああいう簡易なリスク評価のことを指しているのでしょうか。 そこの質問です。 ○化学物質対策課長 豊田委員にお願いしておりますが、あり方の検討は化学物 質の管理に関するものです。ここでは総括的に法28条の2で掲げておりますリス ク評価全体のことを述べているところです。当然その一部として化学物質のリス ク評価もこの中に組み込まれることになると考えております。 ○豊田委員 よくこういう審議会でリスクの評価ということを議論しますと、そ の定義はどうだとか、ピンからキリまでレベルがあるということがよく議論され ますので、こう1行唐突に出てきますと、リスクの評価というところが若干、人 によって受け取り方が違ってくるのではないかなと思うのです。いま、こういう 審議会でリスクの評価ということを、一般的には例えば厚労省でこういう議論を しますと、1つ、行政当局にやっていただいているリスク評価体制があります。 企画検討委員会でものを選定しまして、それを審議会にかけてリスク評価をやる と。重篤なものに関しては基本的には行政当局がリスク評価を行う。ただ簡易な ものについては、コントロール・バンディングのような、そういったものを事業 者側にも普及していこうという考えはあると思うのですね。それがいま進んでい ると思うのですけれども。そういった意味では、丁寧に表現しますと、事業者に よるということを謳いますと、簡易なリスク評価だと思うのですね。ですから、 そこのところをもう少し丁寧に表現したほうがいいのではないかなと思うのです が。 ○化学物質対策課長 申し訳ございません、ここで申し上げていますのは、化学 物質のリスクアセスメントに限った話ではなくて、法28条の2に基づきまして、 危険有害性の評価を行うという包括的な規定がありまして、そこのことを謳って いるのです。 ○豊田委員 それは承知の上なのですけれど、そこでもやはりリスクの評価とい うところをもう少し丁寧に言わないと、一般的にはやはり行政当局がリスク評価 を行うと、改正化審法でもそうですよね、ということに取られかねないのではな いかなという気がします。例えば、これはご提案ですけれども、この低減措置の 後のほうに、(リスクアセスメント等)とありますけれども、ここに例えば、簡易 なリスク評価等を含めてとか、そんな言葉を入れたらより分かりやすいのではな いかという気がします。 ○計画課長 化学物質管理については多分そういったことで、対策課長もご説明 しましたとおり、そういう考え方を基に検討会でもご議論いただいていると思い ます。ただ、ここに書いておりますのは、労動災害防止という場合に、行政でそ れを指導することも大事なのですけれども、やはり何よりも、特に今日的には事 業者自らが、事業場について一番詳しいのは事業者なわけですので、事業者の方 が自ら自分のところの労働災害が起こるリスクというものを評価していただいて、 リスクを下げていただければ災害が起こる率が下がることになるので、そのリス クを低減することを促進してくださいということで、それをこの安全性分野では リスクアセスメントという言い方でこれまでも説明してきたところであります。 いわばそういう包括的かつ一般的な意味で、事業者の方が自ら事業場のリスクを 評価して下げることを書いている、以上でも以下でもないわけですので、丁寧に 書くという考え方もあるかもしれませんが、そこは一般的なことで。先ほど来言 っております、一般的な意味として書いているということで、具体的な中身につ いては、それぞれの分野でそれぞれのご議論をしていただくということかと思い ます。 ○豊田委員 何度も言うようですけれども、やはりリスク評価というのは定義が 人によって捉え方がものすごく違うと思うのです。そこのところがちょっと、こ の文章をそのまま読みますと人によってはいろんな捉え方をするのではないかな、 というのが非常に懸念されるというところです。 ○分科会長 ここで書いてあるのは、いろいろな化学物質も含まれるし、安全も 含まれるし、腰痛等も含まれるわけですので、それぞれのところでどういう方法 でリスク評価するかということも、これもこれからやるわけですね。ですから、 文章では少し包括的な表現ということでいかがでしょうか。 ○豊田委員 これでしょうがないですね。 ○分科会長 そういう要望がありましたので、その辺の定義とリスク評価の方法 ですね、それもきちっとやっていただければということでお願いします。 ○三浦委員 1つ聞きたいのですが、労働災害防止対策の推進という中で、11万 9,291件となっているのですが、これは人数なのですか、件数なのですか。 ○安全課長 人数です。 ○三浦委員 人数ですよね、件数ではないですよね。それともう1つ、先ほどか ら、横ばいという中で死傷病災害が言われていますけれども、平成9年の15万 6,000を基準にすると約10年間で約22%の減少をしている。恐らく21年度はい ろんな問題もあったのかもしれませんけれど、非常に減ってきているのではない かという形の中で、単に横ばいということではなくて、やはり労使、それと官と 三位一体となって努力した結果が20何%、10年間で下がってきているというこ とをお互いに知ることも必要なのではないかと。横ばいと単純に言われてしまう と減っていないのではないかなと取られることもありますけれども、減っていな いわけではなくて、順調に減ってきているわけですから。その辺も明確にしてい ただきたいと思っています。 ○安全課長 安全課長です。三浦委員がおっしゃるとおり、労働災害の減少、微 減ではありますが減っているということにつきましては、おっしゃるとおり、労 使の安全衛生活動の取組によるという効果が高かったというのは、我々はそれは 評価しているところです。例えば今回のような、先ほどおっしゃいましたように、 昨年につきましては恐らく大きく減るであろうということにつきましては、一方 では景気の影響というものもあるであろうと。したがいまして、もちろん景気の 変動による増減というものもあるわけですが、それはそれとして、我々としては、 いままでの安全衛生活動というものを引き続き強化し、皆様のご協力のもとに更 なる低減を進めて行きたいというスタンスです。以上です。 ○分科会長 ありがとうございます。ほかには何かございませんでしょうか。こ れはパーセントで表すとなかなか計算しなければならないのですが、件数で何件 とか何人とかとやるともっとはっきりしますけれども。  ほかによろしければ、次の、企業におけるメンタルヘルス対策の推進について ご議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○中村委員 メンタルヘルス対策について3点ほどご質問させていただきます。 まず1つ目は、目標のところに「必要な労働者全てがメンタルヘルスに関する措 置を受けられる職場にする」と書いてありますが、この「メンタルヘルスに関す る措置」というのは具体的にはどういったことを指すのでしょうか。効果的な対 応が必要だと思うのですけれども、一次予防に重きを置くのか、あるいはケース・ マネジメントに重きを置くのでしょうか。  二つ目は、「一般健康診断におけるメンタルヘルス不調の把握及び医師の意見に 基づく対応等」と書いてありますが、現状では、一般健康診断を、外部医療機関 に委託しているような状況もあり、必ずしも産業医が行っているわけではありま せんので、このまま持ち込んでいくと、ちょっと現場は混乱するのではないかな と考えます。今後何かこれに関して新たな法的な規制を設けられる予定でしょう か。  最後に、メンタルヘルス対策を実施している企業が33.6%なのですが、これは 事業所規模でかなり差がありまして、小さな事業所においてはなかなかそこまで 手が回っていないという現状があります。ですから、現状の支援に加えて何か新 たな支援を考えておられるのでしょうか。この3点をお願いいたします。 ○計画課長 目標に書いてありますメンタルヘルスケアに関する措置の中身です が、予防なり、気付きなり、その後の事後措置あるいは治療、職場復帰、様々あ ると思います。目標というのは、そういう意味では特に何かということを限定的 に考えるということではありません。要するに、いろいろなものがあるとは思い ますが、そういうものを含めまして、メンタルヘルスケアに関する措置と書いて ありまして、必要な労働者すべてが受けられる、受けられない労働者がいてはか わいそうだということです。ただ、どこまで、それをどういう形で実現していく かということについては、それは今後のメンタルヘルスケア対策のあり方に絡む 話であると思いますので、その点は、この分科会の場でも十分ご議論いただいた 上で、必要な対策をしていきたいと考えているところです。  一般健康診断時における対応の部分についても、例えばそういう外部機関がや っているような場合とかあるいは産業医がいない場合にどうするというようなこ とも含めて、いろんなことを対応として考えていかなければならないと思います。 そういう意味では、単純にこれをやれば終わりという話ではありません。様々な 政策をパッケージにしたような総合的な対応というのはたぶん求められるのでは ないかと思います。それについてはもちろん私ども行政としても検討し、時期が くればご提案なりご説明もさせていただきたいと思います。そういうことを我々 として当然対応していくべく、現在準備をしているというところで、この時点で 具体的にどうするということまでご説明するという段階ではないと考えていると ころです。ご指摘の趣旨は十分理解し、問題意識も共有しておりますので、それ も含めて検討して参ります。またご議論をいただければと思います。  小さな事業所については、おっしゃるとおりです。先ほどもご説明も若干申し 上げましたが、具体的にどういう形で受け入れるのかということは、事業者自ら がやる場合もありますし、国が代わってやるということもあるかもしれませんし、 あるいは外部、外にいる機関が助けるとか支援するという、様々な組み合わせも あると思います。そういうものも含めまして、2020年までにすべての必要な労働 者が受けられるような形を目指していこうと、そのため、繰り返しになりますが、 職場におけるメンタルヘルスケア対策のあり方を今後検討し、その検討結果を踏 まえて対応していきたいと考えているところです。 ○委員 心の問題については、社会情勢とか時代と共にどんどん状況が変わって いっている状態でありますので、きめ細かい分析をしていただいて、的確な対策 が行なわれるといいかと思います。短い期間でも随分と状況は変わってきている なという印象を持ちながらやっていますので、これから10年の話ですから状況に 応じてうまい対応を取っていただけたらと思います。 ○分科会長 労働衛生課長、何か追加がありますか。よろしいですか。ではご要 望ということで。 ○伊藤委員 メンタルヘルスに関してですが、先ほど資料1-2の報告の中でも背 景・課題の中で書かれている取り組み方、下のほうなのですけれども、「取り組み 方がわからない、42.2%」と書かれております。私ども商工会議所として、これ は東京の場合なのですけれど、本部支部の労働中小企業懇談会というものが開催 されて、複数の経営者の方から、どのように取り組んだらいいかよくわからない、 取組み方を明示してほしいという声が上がりました。基本的な対策として示され ている資料1-2なのですけれども、3として、4つのメンタルヘルスケアの推進と いうことが書かれています。この中にもそれらしいことは書かれているのですけ れど、実はメンタルヘルス対策支援センターというものが2008年から都道府県 にあるのですよね。ここを労働者や企業が利用できる外部機関として周知徹底を 図っていただくとか、これを積極的に活用するということを大きく盛り込んでい ただきたいと思います。  それから、全般に対して言えることなのですが、資料1-1の終りに付いている 各目標ですが、先ほど労災の話もありましたし、メンタルヘルスに関しては2020 年に100となっています。こういう取組みに関して私どもすごく評価をするので すけれども、仮に目標が達成できなかったとしても、先ほど中央会の方もおっし ゃっていましたけれど、この数値で企業に責任があるということはしないでいた だきたい。国が自らやるべきことなのかなと思っています。今後の社会情勢とい うことが非常によく見えませんので、是非その辺の目標値についてはその見直し も含めて柔軟な対応をしていただけないかなと思います。  それと、多少関連があるのですけれど、私どもは企業として従業員の健康管理 ということは非常に大きな経営問題として考えております。大切であるという認 識の下に、東京商工会議所の中では今年の2月にwebサイトの中で気軽に健康知 識を身に付けることができる「健康知識測定テスト」というものを開催させてい ただいています。多くの方が正しく総合的な知識を身に付けていただけるよう取 り組んでいるところであります。以上です。 ○分科会長 ありがとうございます。メンタルヘルス支援センターというのは、 県の産業保健推進センターで行われているものですね。 ○伊藤委員 それとは別にある、メンタルヘルス対策支援センターと呼んでよろ しいのですね。それが47都道府県に1ヵ所ずつ設置されています。何となくここ に書いてあるのですよ。3のところに、4つのメンタルヘルスケア推進のいちばん 下のところがたぶんそういう意味なのですよね。もう少し具体的に、こういう立 派な名前があるので、使えるように周知徹底を図るということは重要なことかな と思います。 ○分科会長 はい。具体的なやり方について伊藤委員から進めてほしいというご 要望でした。ありがとうございました。 ○瀬戸委員 ちょっとお聞きしたいのですが、先般、厚生労働省の中で事業仕分 けがされていまして、独法の労働者健康福祉機構についても改革案が検討された とお聞きしているところで、その改革案の中でメンタルヘルスに関する相談や研 修、情報提供等の支援を行う、いまのお話の中の産業保健推進センター、これが 将来的に3分の1程度に集約していくというような改革案も検討されているとお 聞きしているのですが、このメンタルヘルスケアを充実していくという観点から すると何かちょっと逆行していくような感じもしないではないのですが。この辺 の実態的なものをお聞きしたいと思います。 ○計画課長 私は直接機構を担当しておりませんので、あくまで側聞している範 囲内でお答えしますが、機構の産業保健推進センターの事業仕分けにおきまして そのような議論があったということは承知しております。ただ、同じ事業仕分け の中においてメンタルヘルス対策という部分についてはむしろ積極的にやってい くべきだというご意見もあったということです。それに対しまして、労働者健康 福祉機構の理事長からは、現実に個々の事業所なり労働者に対していろいろなサ ービスを提供したりする機能というのは推進センターではなくて都道府県医師会 のほうでお願いしている、地区の地産保のほうでやっていく。そこのネットワー クということが今後ともきちっと維持されるということであれば、その部分のサ ービスは今までと同様、あるいは今まで以上に強化していく、そういう前提に立 ってそれを支援する。いわゆる間接で、直接事業者・労働者ということではなく、 地区のセンターに医師なりあるいは企業の産業医の方を支援する機能を推進セン ターに担わせる。そういうところにいわば重点化していくという考え方が事業仕 分けの中に示されていて、支援に重点化していくのであれば、それは都道府県す べてに推進センターがなくても、ある程度集約する形で、そこが現場でネットを 張っている300、400という地区センターの活動をバックアップすればいいわけ ですので、大丈夫ですと答えていたように承知しています。たぶんそういう考え 方に立てば、いま瀬戸委員が言われたようなご心配はなく、事業仕分けがあって もメンタルヘルス対策についてはこれまでと同様あるいはこれまで以上に展開し ていけることになるのではないかと考えます。 ○分科会長 よろしいでしょうか。 ○高橋(信)委員 先ほど中村委員から質問がありました第1点に関して要望で す。お答えでは予防から治療まで幅広く含みますということだったと思います。 その中の視点で、予防、それから復職した場合、治療が終って戻ったときの対応 というときに、大変大事な機能が人事・労務と思います。、配置や就業管理を考え る人。それと職場の上司ということですね。今回の資料の中でも、どちらかと言 うと医師という専門職や産業保健スタッフの話が出ていますが、それに加えてい ま申し上げたような方の対応ということが大変大事だと思います。今後の検討に なると思いますけれども、そういう視点を忘れずに進めていただきたいと思いま す。 ○分科会長 ありがとうございます。人事・労務の役割もきちっとやってほしい ということですね。 ○市川委員 先ほど地産保の話等々ありました事業仕分け、いまの計画課長のお 話で一定の理解はするのですが、なかなか知られていなくて、我々の地方組織等々 からもメンタルヘルスの後退ではないかとか、断片的な報道のようなことでしか どうも一般的には知られていないので、是非これを機会にその手の支援センター 等々の体制についての情報を分かりやすく流していただければと1つ要望したい と思います。  それともう1点、先ほど商工会議所の委員だったと思いますが、目標が仮に達 成されなかったときにこれはすべて企業の責任にはしないでいただきたいという ご発言がありまして、私もそのことはその通りであろうとは、これは国の施策で すから、そのご発言は一定の理解はいたします。とは言え、やはり事業所内の労 使による取組みがなければ目標はすべて、労働側も経営側も取り組まなければ目 標は達成できませんし、例えば仮に目標が達成されなかったとした場合の分析、 先ほど労働側の谷口委員も申し上げましたけれども、この施策がどうして有効で なかったか、あるいはこの施策によって企業や労働者が求められること等々がや りにくい、とても実現不可能なことだったのか、あるいは過重な負担だったのか というようなことを、やはり細かく分析をしまして、目標を下げるとかハードル を下げるとかではなくて、あくまでこの目標を達成するためにより効果的に何を したらいいのかということを掘り下げることが大事ではないかと思いますので、 余分なことかもしれませんが申し添えたいと思います。 ○分科会長 ありがとうございます。中間で評価するとか、5年ぐらいで評価す るとかをやったほうがいいかもしれませんね。ほかには何かございませんでしょ うか。よろしいでしょうか。  それでは、最後の3つ目の、受動喫煙対策の推進についてご意見をいただきた いと思いますがいかがでしょうか。ご意見ございませんでしょうか。 ○瀬戸委員 この資料1-1の一番最後の目標一覧の中で、受動喫煙のところに 2020年の「実現」と書いています。細かいことで恐縮なのですが、実現という言 葉と100%というのはどう違うのでしょうか。表現の仕方ですね。 ○計画課長 メンタルヘルス対策につきまして、要するにすべての必要な労働者 が措置を受けられる職場にするということです。結局そのメンタルヘルス対策措 置というものを具体的にどのように捉えていくかということは今後議論がありま すが、いずれにしても何らかの措置を講じていただくということで押さえていく ということになれば、当然それをフォローアップしていく中でその時点での達成 状況が数字で把握されていくことになりますので、そういう意味では10年後にそ の数字が100%になるということをもって達成されたことになると思い、100%と 書いています。他方、受動喫煙のない職場については、先ほど申し上げましたと おり、結局、受動喫煙に関しまして、いわば我が国の社会のあり方のようなもの が今後問われていくという部分があるのだと思います。何をもって受動喫煙がな いという評価をする職場になるのかということについても、例えば、先ほど言い ましたような、飲食店の取り扱いをどうするのかも含めて、今後の議論なり、10 年のその時点の認識なり状況が動いていくでしょうから、それによって変わって いくので、そういう職場を作りましょうという、やはり社会の実現のような捉え 方になると思います。ここで100%と言ってしまいますと、なぜ100%になるか という話になり、非常に具体的な話になるので、ここはやや幅広い目標設定にさ せていただいたほうがいいのではないかと思い、実現と書いています。何をもっ て実現と言うかということについては、今後労使の皆様方も含めていろいろな議 論させていただきますし、場合によっては労使に限らず国民の皆様方等にもいろ いろな意見を聞かなければならない場合もあると考えています。 ○分科会長 ということでよろしいでしょうか。 ○伊藤委員 この中に、「経済的基盤の弱い中小企業に対する分煙設備の設置に係 る財政的支援を実施」と書かれているのですけれども、具体的にどのぐらいのイ メージで考えていらっしゃるのか教えていただきたいのですけれども。 ○計画課長 具体的な中身につきましては、具体的に予算が伴うものですから、 予算を編成していく過程でいろいろな議論もありますので、現時点でこれという ことを申し上げるということではありません。その規模についても同様です。た だ、考え方としましては、禁煙と空間分煙があるとすると、禁煙というのは吸わ ないと決めてしまえばいいわけですから、ある意味では1銭もかからないと言え ば1銭もかからないということだとすると、空間分煙のほうを行うときにはやは りお金がかかる。しっかりと間仕切りして、その中の換気等をするとなると、あ る程度のお金が必要になってきます。  それをしていただくのは、たぶん多いのは飲食店等ではないかとなると、規模 が小さい事業者が非常に多いということになれば、そこは技術的な指導も必要で すが財政的支援が必要になるので、中小企業に対する、いま申し上げた意味での 分煙設備の設置にかかる財政的支援ということになります。財政的支援となれば 何らかのコストを見るという形になりますが、その見方については様々なやり方 がありますが、そこはいまの時点でこれだということではなく、そのあり方も含 めてまた審議会の場でご議論いただければと思います。 ○伊藤委員 金額が高いのかなと、完全に実施するために。パーテーションで仕 切って、吸引するテーブルとか、すごく高いではないですか。機器が高過ぎると いう場合もあるのでしょうけれども。それから、中に入ると暑いからエアコンを つけなければならないとか、意外と高いような気がするのです。だからちょっと 大変なのかなと。「経済的基盤の弱い」というのがどの辺なのか、意外と支援され るのもすごい予算になってしまうのかなと心配して聞いたのですけれど。 ○計画課長 それなりにコストがかかることについては、私どもも認識しており ますが、実状につきましては、是非ともご教示いただければと思います。 ○分科会長 これから決めるということで、よろしいですか。 ○中村委員 受動喫煙対策と禁煙を進めるというのは両輪でありまして、いくら 受動喫煙対策をしても喫煙者が多いと完全な対策にはなっていかないですし、コ ストもものすごくかかっていくと思います。明らかに健康に害があるたばこです ので、管轄が違うとは思いますが、一緒にやって行くことが必要だと思います。 分煙だけでは十分な効果がないだろうと考えますし、分煙しているから安心する というのもよくないのではないかなと考えます。 ○環境改善室長 環境改善室の亀澤です。いま検討会の事務局をやっていますが、 その検討会の中においても対策を進めるためには労働者、それから使用者両方と も受動喫煙の有害性について十分認識する必要があるだろうと、そういう意味で 教育を十分にやっていかなければ、この対策は継続的かつ着実には進んでいかな いだろうという議論をいただいています。そういう点で、いま検討会の中では受 動喫煙の有害性、それから更には国民一般に対する周知としてたばこの煙につい て、そのものの健康影響について教育や周知を行うことが必要だというふうにい われていまして、禁煙支援という言葉は検討会の中で出てきませんでしたけれど も、いまご指摘のあった禁煙支援に関してはそういうものも関連するのかなと思 っています。それから、厚生労働省の中では健康局、先ほどの健康増進法を所管 しております健康局が「健康日本21」の中で喫煙対策を進めておりまして、私ど もも健康局と十分連携を図りながら進めていきたいと思っていますので、ただい まのご指摘をいただいて、よく連携をして詰めていきたいと思っています。 ○分科会長 よろしいでしょうか。 ○高橋(信)委員 すみません、受動喫煙ですね、私も個人的にたばこの臭いが 嫌いで、なるべくなくしていただきたいと思っているのですけれども、世の中の 実態を鑑みますと、お話に出ていたように、例えば飲食店等ですね、経営者がど う対応するかと困る部分があると思います。そういう意味では、10年という長い スパンでいろいろ着実に取り組んでいかれるということなので、そこで検討して いただければよいと思うのですが、にわかに法制化して一律に規制を課すという ようなことを考えずに、実状を見ながら順次実施に移していくという進め方をし ていただけたらと思います。これも要望です。 ○分科会長 いかがでしょうか、ほかにはありませんでしょうか。それでは、3 つのテーマについて言い損なったなどありましたら。 ○瀬戸委員 前に戻って申し訳ないのですが、メンタルヘルスのところなのです が、資料1-1の、先ほどどなたかがおっしゃったかもしれませんが、下から3行 目の、「一般健康診断時におけるメンタル不調の把握」と書いてあるのですけれど も、一般健康診断においてメンタル不調の把握というのが可能なのかどうかとい うのが、どうも私どもが実際に健康診断を毎年1回実施しておりますけれども、 そういう中における健康診断でメンタル不調というものが把握可能なのかどうか というのがどうもよく分からないというか、把握できるのかなということなので すけれども。その辺はどうなのでしょうか。 ○労働衛生課長 もちろん健康診断時に、健康状況調査などでも6割が強い不 安・ストレスということですから、そういう面で広く引っかかってこられる労働 者の方もいらっしゃると思いますけれども、年間を通じて、別にその時期じゃな くても起こりますので、いわゆるセルフケア、ラインによるケアというのも重要 だと思います。ここで言うのは、実際に既にいくつかの健康診断機関において、 企業と契約を結んで一般健康診断時に簡易調査表を用いて、これは委託事業で厚 生労働省が作成したものですけれども、これを活用して行っている事例がありま すので、その実施の仕方、それからその後のフォローをどうやっているかという ことについて、また調査した上で具体的にはどういうことができるのか、どうい うふうにやったら有用であるかということについても検討の上またご提示したい と思っています。 ○分科会長 ほかにはございませんか。 ○局長 労働基準局長です。今日は大変いろいろご議論いただきましてありがと うございました。私どものほうから、非常に抽象度の高いご提案をさせていただ いて、議論がなかなか難しかったのではないかと思います。申し訳なく思ってい ます。1つ、労使の委員の皆さんからご懸念がありましたけれども、事業仕分け との関係ですが、これは先週省内の事業仕分けが行われました。その場で、産業 保健センター、それと地域産業保健の推進事業ですね、地産保といわれている、 この事業の重複が問題になりまして、一定の見直しをしていこうという方向にな ったわけです。省内の仕分けといいますのは、当省が独自に大臣の指示の下で進 めているものでして、実は明日行政刷新会議のほうの事業仕分けがあります。そ この中で仕分け作業の結果というものが出てくるのだろうと思います。したがっ てまだ中途の段階であるということですので、その辺はお含み置きをいただきた いと思いますが、私どもとしてはメンタルヘルスへの対応というのは大変重要な 課題だと、これは省内でも実は自殺対策という観点からも大変重要なのではない かということで、これは当局だけではなくて厚生労働省の関係部局挙げていま取 組みをしています。その中で、職域の仕事の1つの位置付けとして考えていると いう部分もあります。いずれにしましても、メンタルヘルス対策の間違っても後 退につながることはないようにしていくということは、当然それを前提にして考 えていかなければならないというのが私どものスタンスでありまして、そうは言 いましても、事業の中で事業の重複がないかとか、もう少し効率的なやり方がで きないかということは、これはまた経費の予算が大変厳しい折ですから、それは それで知恵は出さなければいけないものです。そういったことで、決して後退に つながることがないような形で、効率化を工夫して対応を考えて、明日の仕分け 作業にも臨みたいと考えています。私も出席しまして、そういった観点からの説 明をさせていただこうと思っています。  それから、受動喫煙の問題ですが、これはいろいろご意見もございましたけれ ども、私どもも、職場だけの問題として理解するというのはなかなか難しい側面 もあります。しかし、働く場所というのは、私はたばこの煙が苦手でだから仕事 を辞めますという簡単なことではいかないわけで、その人の仕事がかかっている という分野もあります。そういったことで、職場の受動喫煙対策ということで是 非取り組みを進めさせていただけたらと考えています。いずれにしましても大変 大きな課題でして、具体的な検討に当たりましては、冒頭に計画課長のほうから も申し上げましたが、これは労使で構成していただいているこの分科会できちん と議論をしていただいて、その上で成案を得て対策は進めてまいりたいと思って いますので、この分科会で重ねていろいろ議論していただくことになるかと思い ますが、どうぞその辺の趣旨を踏まえていただきましてご審議、ご協力方お願い できたらと思います。私どものほうからお願いでございます。よろしくお願いい たします。 ○分科会長 どうもありがとうございました。それではほかにご意見なければ、 いろいろご要望をいただきましたので、それを入れた上でこの目標を政府目標と して設定することを本分科会として了承したいと思いますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○分科会長 それでは、事務局におかれましては、その旨を労働政策審議会本審 の事務局にお伝えいただくとともに、厚生労働省には政府で取りまとめていく「新 成長戦略」がこれらの施策・目標と整合性のあるものとなるようにご尽力願いた いと思います。  それでは、大変貴重なまたご熱心なご議論をいただきましてありがとうござい ました。これで本分科会を終了させていただきます。議事録の署名につきまして は、労働者代表は谷口委員よろしくお願いします。使用者代表は瀬戸委員にお願 いいたします。  本日はお忙しいところをありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省労働基準局安全衛生部計画課 03−5253−1111(内線5476)