10/04/20 第7回再生医療における制度的枠組みに関する検討会議事録 第7回再生医療における制度的枠組みに関する検討会議事録  日  時:平成22年4月20日(火)15:00〜17:00  場  所:はあといん乃木坂 312号室  出席委員:永井座長、阿曽沼委員、伊藤委員、稲垣委員、小澤委員、片倉委員、       神山委員、木村委員、澤委員、鈴木委員、土屋委員、花井委員、早川委員、       前川委員、毛利委員、森尾委員、大和委員  オブザーバー:       三宅内閣府参事官、山内文部科学省先端医科学研究企画官、       荒木経済産業省生物化学産業課長、       平山(独)医薬品医療機器総合機構上席審議役  行政庁出席者:       高井医薬食品局長、岸田大臣官房審議官、成田審査管理課長、宇津企画官、       関野医療機器審査管理室長、國枝監視指導・麻薬対策課長、       宿里監視指導室長、福本経済課長、池田医療機器政策室長、       岸本経済課長補佐、高山医療機器政策室長補佐、宮田高度医療専門官  参考人:       国立医薬品食品衛生研究所 佐藤遺伝子細胞医薬部第2室長 ○宇津企画官  一部委員、まだいらっしゃっておりませんけれども、定刻になりましたので、第7回再 生医療における制度的枠組みに関する検討会を開催させていただきます。  なお、今回より委員の変更がございましたので、ご報告申し上げます。  日本医師会から、木下委員に代わりまして高杉委員にご参加いただくことになっており ます。本日は所要のため欠席とのご連絡をいただいております。そのほか欠席の連絡をい ただいております委員の方は武藤委員でございます。木村委員は出席ということでござい ますが、ちょっと遅れていらっしゃるようでございます。それから、オブザーバーの文部 科学省研究振興局、渡辺研究振興戦略官は所要により欠席ということですが、山内企画官 のほうに代理出席をいただくという予定になっております。まだ遅れていらっしゃるよう でございます。  また、本日は参考人といたしまして、昨年度、欧米における再生医療製品の規制動向、 臨床研究、治験制度、事前相談、承認審査並びに研究開発支援等について海外調査をして いただきました国立医薬品食品衛生研究所遺伝子細胞医薬部、佐藤室長をお招きしており ます。後ほど説明をいただく予定にしております。よろしくお願いいたします。  続きまして、本日お配りいたしました資料の確認をさせていただきます。  まず、議事次第、座席表、委員名簿、検討会の設置要項でございます。それから、ナン バーを付けておりますのが、資料1として、検討会の議論の範囲。資料2−1として、現 行の規制について。資料2−2として、世界の再生医療製品の承認状況ということで、現 在の承認品目について。資料3、海外調査報告。資料4、論点のたたき台、検討事項につ いてです。それから資料5として、今後のスケジュールとなっております。  また、参考資料でございますけれども、参考資料1といたしまして、薬事法、薬事法施 行規則抜粋。参考資料2といたしまして、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令。 それから参考資料3、臨床研究に関する倫理指針。参考資料4、ヒト幹細胞を用いる臨床 研究に関する指針。参考資料5、治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準について。 参考資料6といたしまして、ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器 の品質及び安全性の確保について。参考資料7といたしまして、ヒト(同種)由来細胞や 組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について。参考資料8といた しまして、細胞・組織を利用した医療用具又は医薬品の品質及び安全性の確保について。 参考資料9といたしまして、平成21年度再生医療における制度的枠組みに関する検討会報 告書。参考資料10といたしまして、臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等 に係る薬事法の適用についてとなっております。  それから、本日発表いただきます佐藤室長のパワーポイントのハンドアウトをお配りし ております。  不足等がございましたら事務局の方までお知らせください。よろしいでしょうか。  カメラ撮りのほうはここまでとさせていただきますので、報道関係の方はご協力をお願 いいたします。  それでは、以後の進行につきましては永井座長にお願いいたします。よろしくお願いし ます。 ○永井座長  それでは、早速議事に入ります。  平成21年度におきましては、医療機関が患者から採取した細胞について、別の医療機関 において培養、加工を行った上で患者の診療に用いることが現行の医療法の下で可能であ ること及びその条件を明示し、周知徹底すること。これをテーマに検討事項とし、前回、 第6回の検討会でこれまでの議論を整理して取りまとめを行いました。これを受けまして、 3月30日付で厚生労働省医政局長通知が出されたところと伺っております。  22年度ですが、再生医療にふさわしい制度を実現するため、自家細胞と他家細胞の違い、 皮膚・角膜・軟骨・免疫細胞等、用途の違いを踏まえながら、現行の法制度にとらわれる ことなく、臨床研究から実用化への切れ目のない移行を可能とする。そういう最適な制度 的な枠組みについて結論を得るということを目標にして議論を進めてまいりたいというこ とであります。  本日は、お手元の議事次第に基づきまして、まず22年度の検討の範囲。再生医療製品に 関する現行の規制について事務局よりご説明をいただきまして、続いて、佐藤参考人より 海外調査結果の報告を行っていただきます。その後、検討の論点のたたき台の説明の後、 ご議論、意見交換を行うということで進めてまいりたいと思います。  では、議題1、検討の範囲ということでございます。事務局よりご説明をお願いいたし ます。 ○宇津企画官  それでは、検討の範囲についてご説明いたします。  資料1でございます。一番最初の上のところが再生・細胞医療についてとなっているパ ワーポイントのハンドアウトでございます。  まず、再生・細胞医療についてでございますけれども、その絵にございますように、自 分の細胞あるいは他人の細胞、これをとりまして、細胞培養技術等を用いて加工し、分化 をさせて一定の機能を持たせ、それでその機能を持ったものを患者の方に戻していくとい う医療でございます。例といたしましては、そこに掲げておりますが、培養皮膚あるいは 培養角膜であるとか、がん免疫療法、こういったものが再生医療、細胞治療というものに 当たるものでございます。  続いて、下のスライドでございますけれども、検討会の議論の範囲ということでお示し をしております。左のほうが21年度の検討の範囲で、これは一連の医療行為の中で行える 範囲ということで、1つの医療機関内、あるいは加工医療機関ということに細胞培養、加 工をお願いした場合の種々の条件等について検討したのが21年度でございます。  22年度でございますけれども、この加工する者が医療機関以外になった場合ということ であります。この場合は一連の業ということになり、製品化という形になりますので、現 在、薬事法における規制の対象ということで個別の承認が必要になっているということで ございます。医療機関から細胞培養、加工を第三者、医療機関以外の細胞を加工する業者 に渡して、それを加工し、製造し、それで戻すという行為について、現在は薬事法の個別 の承認になっているということでございますが、このような流れというのがどのような枠 組みで達成するのがよいのかというのが22年度の検討の範囲ということでございます。  裏にいっていただきまして、検討の議論の範囲(2)というものでございます。こちら は、ものとしてどういうものを対象とするかということをお示ししたものでございます。 縦の軸が他家、他人の細胞、それから自分の細胞。この両方を対象とするということ。下 の軸が処理の程度を示したものでございます。最低限のもの、それから一定以上の加工を したものというものがございます。今回の検討会の範囲といたしましては、一定以上の加 工を行ったものというものを考えております。逆に言いますと、血液製剤並びに移植の組 織、こういったものは加工の程度が低いということで除くということでございます。  対象とする細胞・組織の加工の考え方でございますが、下で囲ってございます。疾患の 治療や組織の修復または再建を目的として、細胞・組織の人為的な増殖、細胞・組織の活 性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変、非細胞・組織成分との組み合わせ又は 遺伝子工学的改変等を施すことということでございます。つまりは、自分の細胞、他人の 細胞に関わらず、一定以上の処理を行ったもの、細胞・組織に一定の処理を行ったものを 対象とするということでございます。  次に、下のスライドでございますけれども、本検討会における用語の取り扱いと言うこ とで、治験と臨床研究の定義について、この検討会における用語の取り扱いについて確認 をいただきたいと思っております。  まずは臨床研究でありますけれども、下の囲いにありますように、ヒトを対象とした医 学系研究で、研究目的で通常の診療を超えた医療行為を行う。あるいは、二群以上に分け て異なる医療行為の比較を行う研究、またはこれらの医療行為は行わないものの、ヒトの 試料等を用いる研究。こういうものを臨床研究ということ。それから、治験というのは、 医薬品・医療機器等の製造販売の承認のための資料の収集を目的とする臨床試験というこ とでございます。このような用語の定義で使っていただきたいということで、ご確認のた め示しております。  以上が本検討会の議論の範囲ということでございます。 ○永井座長  ありがとうございました。  それでは、ただ今のご説明にご質問をお願いいたします。いかがでしょうか。  よろしいでしょうか。ここまでのところは確認いただいたということでよろしいでしょ うか。もしご確認いただけたということであれば、続きまして、課題2、再生医療製品に 関する現行の規制について、事務局よりご説明をお願いいたします。 ○宇津企画官  それでは、資料2−1に基づきまして、現行の規制についてご説明をいたします。  資料2−1でございます。一番上のところが再生・細胞医療製品に対する現行制度の考 え方となっているものでございます。  まず、現行制度の考え方でございますが、製品の安全性等を確保するため品目ごとに承 認という形になってございます。再生・細胞医療製品については大きく4つの点について 考慮する必要があるということでございまして、まず1点目、ドナー由来の感染のリスク があるということ。これは自己細胞等は除きますが、他人の細胞等を用いた場合でござい ます。  続きまして、処理工程に付随するリスクということで、培養の際に他の動物の細胞を用 いたり、いろいろな薬剤を加える場合、あるいは細胞の性質の予期せぬ変化、腫瘍化とい う、特に最近注目されていますiPS細胞等においては、腫瘍化ということが一つの大き な課題となっておりますけれども、そのようなことが否定できないということ。  3点目といたしまして、製品そのものの有効性・安全性に関するリスクということで、 できたものが期待どおりの効果を発現するかどうかということを確認しなければならない ということ。  4点目といたしまして、品質の一定性のリスクということで、同じような製品が恒常的 につくれるかということでございます。特にこれは、自己細胞の場合というのは出発細胞 というのが一定の品質になっておらないわけでございまして、そのような自己細胞を用い た場合は、特に製品の品質というものについては確認をとる必要が出てくるということで ございます。  こういった観点から、製品の安全性等を確保するために1品目ごとの承認が必要である ということで、現行の規制があるということでございます。  下のスライドでございますけれども、再生・細胞医療製品の開発の流れをお示ししてお ります。左のほうから、まず基礎研究が行われまして、その次に品質、それから動物を用 いた非臨床試験で安全性等の確認を行うということでございます。それが終わりますと、 いよいよヒトを対象とした試験に移ってまいります。現在ですと大きく2つの流れに分か れております。1つは、そのまま薬事承認を目指すという形で確認申請、治験に流れる流 れ。もう一点が、上のピンクのルートでございますけれども、ヒト幹細胞臨床研究という 流れでございます。  まず、ダイレクトに治験のほうに行く場合には、確認申請という申請を上げていただく ことになります。その確認申請で品質、安全性について確認し、その後、治験届を提出し、 治験に入っていただくという流れになります。臨床研究のルート、上のルートでございま すけれども、これはヒト幹指針に基づいた、やはり確認申請と研究審査というものが必要 になってまいります。その審査が終わりますと、ヒト幹細胞臨床研究に従った臨床研究が 行われる。引き続いて先進医療に行く流れもあるということでございます。それで一定の 成果を得たものについて、治験に入っていくものもあるということで、その場合は確認申 請、それから治験に入っていくという場合があるということでございます。  このように臨床研究、治験を経て、ヒトのデータが集まってきますと、薬事の承認申請 ということになります。承認申請の後、承認をして差し支えないという判断が得られます と、製造・市販後の対策ということになってございます。関連するガイドライン等がここ に記載してございます。  ここに記載したものについての説明が、以降のスライド、数枚のスライドで説明をして おります。簡単にご紹介だけいたします。  まず、GCPでございますが、「臨床試験の実施に関する基準」ということで、治験が 倫理的な配慮の下に科学的で適正に実施されるための基準であり、日本の場合は、医薬品 ・医療機器等の製造販売の承認のための資料の収集を目的ということになってございます。 そのため、データの信頼性というのが重要な、より厳密な形になっております。  下のスライドでございますけれども、その他の各種基準ということで、GLP、これは 「動物を用いた非臨床試験の実施に関する基準」でございます。続いて、GMP/QMS ですが、GMPは医薬品の品質管理に関する基準、QMSが医療機器の品質管理に関する 基準ということで考えていただければ結構でございます。GVPでございますが、これは Good Vigilance Practiceということで、医薬品や医療機器等の製造販売後の安全管理に関 する基準でございます。GPSPというのは、Good Post-marketing Practiceということ で、ちょっとこれは英語が間違っていましたかもしれませんが、確認しますけれども、医 薬品や医療機器の製造販売後調査・試験の実施の基準でございます。  続きまして、生物由来製品・特定生物由来製品の取り扱いでございます。生物由来製品 ・特定生物由来製品につきましては、一般の化学薬品に比べて上乗せの規制をかけており ます。生物由来製品というのは、そこに書いてありますように、保健衛生上特別の注意を 要するものということでございます。特定生物由来製品というのは、生物由来製品のうち、 保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するための措置を講じることが必要なものとい うことになってございます。  具体的な上乗せ対策の例でございますが、1点目が、感染症について定期的に報告を上 げるという感染症定期報告。2点目が、記録を保存するということで、記録の内容につい て示しております。製品の製造番号でありますとか数量、それから製品の譲り受け等を行 った年月日等でございます。続いて3点目に、保存期間ということになっております。生 物由来製品の承認取得者は、出荷日から起算して10年間の記録の保存ということ。また、 薬局、病院等の管理者に関しましては、特定生物由来製品に関して使用した日から少なく とも記録を20年保存しなければならないということになってございます。  その次のスライドでございますが、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針でござい ます。この臨床研究が適正に実施・推進されるよう、有効性、安全性を確保するために遵 守すべき事項を定めたものでございます。この実施に当たっては、厚生労働大臣の意見を 聞く必要があるということでございます。なお、現在改定に向けた見直しが行われている ところでございます。  次に1枚めくっていただきまして、確認申請ということでございます。この確認申請は、 薬事法に基づく治験を実施する前に、治験届の提出をする前に厚生労働大臣に安全性及び 品質の確認を求めるということでございます。現在、ヒト幹細胞指針が見直しをしており ますけれども、この見直しが終わった時点で、同じようなヒト幹指針についても厚生労働 大臣に品質、安全性等の確認を求めるという行為でございますので、ものが同じ場合は、 この確認申請の手続を合理化する予定にしております。  次の点が、ヒト(自己・同種)由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に 関する指針ということでございます。これは上の確認申請の提出の際等に考慮する点等を 記載したものでございます。  最後の制度の説明でございますが、先進医療についてでございます。ここに書いてござ いますように、安全性、有効性等を確保するために一定の施設基準を設定し、施設基準に 該当する保険医療機関の届出により保険診療の併用を認めることとしたということでござ いまして、第3項先進医療としては、薬事法上未承認あるいは適応外の医薬品・医療機器 を用いることができるというものでございます。  続きまして、制度面から見た開発支援策ということで、主なものをご紹介しております。 1点目が、希少疾病用医薬品・医療機器支援制度でございます。これは対象患者が5万人 以下ということになっております。支援のメニューといたしましては、助成金の支給、そ れから医薬品医療機器総合機構によります優先的な助言、審査が受けられることになって おります。そのほか、治験の推進ということで、治験活性化5カ年計画を載せております。 また、医薬品医療機器総合機構による対面助言の内容、主なものを載せてございます。  その次のスライドが、医療機器開発における未承認品の提供についてということでござ います。薬事法に基づきますと、未承認の医療機器というものは、治験以外の目的におい ては提供できないということになっております。しかしながら、この3月に、これは本日 の参考資料10としてお配りしているものでございますけれども、臨床研究に使う場合は、 一定の考慮する点をクリアしていただくと、臨床研究において未承認の医療機器を提供で きるということとしその考え方をお示ししております。  考え方といたしまして、主なものを簡単にご紹介しますと、臨床研究に関する倫理指針 でありますとか、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針、これらを遵守していただく ということ。それから研究の内容、例えば症例数とか、適用する回数とか、その期間とか、 こういったものが合理的であるということ。こういう点を考慮いたしまして、適当と認め られる場合は臨床研究においても未承認の医療機器を提供できるということを考え方とし て示したものでございます。  次に、ページをめくっていただきまして、各国の再生・細胞医療製品に関する主な制度 比較を示しております。日本とアメリカ、それから欧州の制度でございます。  一番上のカラムでありますけれども、品目ごとの製造販売承認。これは自己細胞、同種 細胞も含めてでありますけれども、あるかどうかということでございます。見ていただき ますと、丸となっておりますように、全ての国、地域において品目ごとの製造販売承認と いうことになっております。日本の場合は、医薬品または医療機器という形で個別の承認。 アメリカFDAの場合は、生物製剤または医療機器のどちらかで、品目ごとの承認という ことでございます。生物製剤といいますのは、下に書いてございますが、ワクチン、それ から血液製剤、抗毒素、これらを含むカテゴリーでございます。欧州医薬品庁の場合であ りますけれども、これは医薬品の1つのカテゴリーとして、品目ごとの承認という形にな ってございます。これは下に注を入れておりますが、EUにおきましては、医療機器とい うのが国、行政機関の審査、承認という形ではなく、第三者認証となっているということ でございます。こういうことからかどうか明確ではございませんけれども、医薬品として 承認となっているということでございます。  また、2つ目のカラムでございますが、治験、臨床研究へのGCPへの適合ということ でございます。日本におきましては、薬事承認の申請に用いるもの、これがGCPの適合 を必要としていると。その他の臨床研究においては必ずしもGCPに適合ということには なってございません。アメリカ、欧州でございますが、日本における臨床研究も含めて、 全てGCPの適用を求められているということでございます。  最後のカラムでございますが、事前相談制度、開発支援制度についてでございます。各 国、地域ともいろいろなメニューを設けてございますが、日本と欧米と比べて違うと思わ れるのは、開発初期の段階からの相談制度というのが日本の場合は弱いのではないかと言 うことでございます。例えて申し上げますと、臨床研究、この段階での相談制度というの は、日本ではないということでございます。欧米では開発の初期の段階からも相談を受け 付けているということになっております。  下のスライドでございますが、日本の場合は、臨床研究においてはGCPへの適合は必 ずしも必要はないと申し上げましたけれども、それではGCPと、その他の研究指針と、 どこが違うのかということをお示しした表でございます。一言で申し上げますと、GCP と言うのは承認申請資料に関する基準であるためにデータの信頼性の確保がより厳密にな っているという点でございます。GCP省令、それからヒト幹指針、臨床研究指針を比べ てございますが、上の2つを見ていただきますと、被験者の保護という観点。倫理審査委 員会と、それからインフォームド・コンセント。こういった点につきましては、多少ので こぼこはありますけれども、ほぼ同一であるということでございます。赤枠でくくってお りますけれども、監査・モニタリング、それから資料の保存。この点がGCP省令と、ほ かの指針とで大きく違っているということでございます。監査・モニタリングについては GCP省令では必須ということになっております。また、資料の保存についても承認日ま での保存等を求めているということでございます。  次に移っていただきまして、再生・細胞医療製品の開発/承認状況でございます。これ は出典のところに書いてございますが、特許庁が平成20年度にまとめた報告書より抜粋を しております。それから、我々として得た情報があったものについては追加をしてありま す。  詳しい承認状況の品目リストは、資料2−2ということで1枚紙をお配りしております。 こちらを見ていただきますと、品目名、それから承認された年月日が分かったものは、そ の年月日を載せております。アメリカのところを見ていただきますと、備考欄を見ていた だきますと、培養皮膚の場合は医療機器の承認ということになっております。HDEとい うのがありますけれども、これも医療機器の1類型でございます。下の軟骨を見ていただ きますと、Carticelがありますけれども、バイオロジクス承認となっているのがお分かり いただけると思います。アメリカの場合は、バイオロジクス、または医療機器ということ で承認になっているということでございます。  それから、国で見ていただきますと、ヨーロッパの国がかなり多いということに気付い ていただけるかと思いますけれども、これはヨーロッパで再生関係の製品について中央審 査となったのが2008年からでございまして、それ以前は各国の規制当局等が取り扱うとい うことでございました。また、先ほど若干触れましたけれども、ヨーロッパの場合は医療 機器となった場合は、第三者認証ということもございまして、承認番号等が確認できない ものは、もしかしたら医療機器として第三者認証で認められたものという可能性もござい ます。ということで、ちょっとヨーロッパについては、古いものについては、どのような 取り扱いになっていたかというのは、こちらでは調べ切れていないというところでござい ます。そういう点もあるということでご理解いただければと思います。  それでは、またスライドのほうに、パワーポイントのハンドアウトのほうに戻っていた だきまして、最後の2枚で、米国における自己細胞由来、再生・細胞医療製品の審査の事 例について簡単にご紹介いたします。  まず、1例目でございます。カーティセルというもので、これは承認されましたけれど も、自己細胞を用いた再生軟骨でございます。1997年に、生物製剤として承認をされてお ります。承認に際して、さらなる有効性、安全性のために臨床試験が課されております。 その結果を受けたというわけではございませんが、2000年3月に効能・効果が限定をされ ております。その内容が下に書いてございますが、当初の承認の内容ですと、重症の急性 あるいは反復外傷性ということで、重症であれば使えたということでございますけれども、 2000年3月に、効能・効果のところで関節鏡あるいは外科的措置、これらの措置によって 不応の患者さんということになっております。このように効能・効果が限定されるという 手続がとられたという例でございます。  最後の図でございますが、2品目挙げています。これはまだ承認になってございません。 自己細胞を用いた審査事例ということで、まず1点目はイソラゲン・セラピーということ で、これは自己細胞を用いたしわの治療製品でございます。2009年3月にFDAに申請が あり、10月にAdvisory Committeeで審議をされております。この審議において、追加のデ ータが要求されたということです。安全性のデータ等が必要だということであります。現 在、追加のデータを要求されている段階にございます。  もう一点が、プロベンジということで、これは自己細胞を用いた前立腺がんを目的とし た細胞免疫治療製品ということでございます。2006年に申請があり、2007年、Advisory Committeeで審議をされております。委員会において、決定的な有効性は確立していないと いうことで、追加のデータが必要であるという判断になってございます。現在そのデータ を集めていると聞いてございます。  以上が現行制度に関するご紹介でございます。 ○永井座長  ありがとうございました。  それでは、ただ今のご説明に対しましてご意見、ご質問等をお願いいたします。 ○澤委員  参考資料10にもございますが、医療機器開発における未承認品の提供についてというの は非常に私もすばらしい、ある意味、規制改革的なものかなというふうに思うんですけれ ども、このときに発生するコストとかはどんなふうな考え方になるんでしょうか。提供さ れる未承認の機器に対して、コストは臨床研究の中から払えるような、そんな感じなんで すか。それとも無償提供が基本なんですか。 ○國枝監視指導・麻薬対策課長  監視指導・麻薬対策課長ですけれども、参考資料10をご覧いただきたいと思いますけれ ども、一番最後のページをめくっていただいたところでございますけれども、澤先生のご 質問というのは費用のことだと思います。これについては、考え方の3の、留意事項の1 個手前になりますけれども、ここに記載のとおり、臨床研究に用いられた未承認医療機器 の提供等に際し発生した費用については、提供者側の営利目的とみなされない範囲という ことでございます。  それからあと、臨床研究において被験者の費用負担が生じるような場合についても同様 に、営利目的とみなされない範囲というような形で定義しております。 ○澤委員  その営利目的でない範囲ということ自身はなかなか微妙なニュアンスもあると思うので すけれども、それは例えばですけれども、個々に監麻課のほうにご相談してみたいな、そ んなイメージでよろしいんでしょうか。 ○國枝監視指導・麻薬対策課長  一応これについては、5のその他ということで、判然としない場合というのはなかなか この考え方だけでは整理できないということで、一番最後のページになってございますけ れども、監麻課のほうでこういった相談とか助言とかいうことを行うこととしております。  そのほか、Q&Aを現在作成中ということで、幾つかこの通知についてのご疑問とかも 出ておりますし、あと業界から、あるいは研究者の方からもご疑問が出ているので、その 中で画一的に回答できるようなものについては今作成を進めております。 ○澤委員  ありがとうございます。 ○永井座長  ほかにいかがでしょうか。 ○小澤委員  この資料2−1が、そもそも規制についてということであるんですが、3つほどちょっ と指摘したいと思うんですけれども、再生医療を現在、世の中で使うためには3つの出口 がありまして、1つは昨年度議論をしたように、先進医療、高度医療のほうに持っていく、 医療機関のほうで進めるのが1つ。それから2つ目が、我々のような企業が薬事法の下で というところの出口が1つ。3つ目が、医師法の下でという、自由診療のことがあると思 います。その3つ目の話をしていないのが、もうちょっといろいろ、私たちは余り知らな いものですから、医師法の中でのいろいろなルールがあるならば、その辺もまとめていた だけるとありがたいかなと思いました。  2つ目が、13ページでございますけれども、ちょっと言葉を整理したほうがいいかなと 思いまして、皆さんご存じだと思いますけれども、厚労省さんの資料でずっと自家という 言葉を使っておりまして、ここでは自己とあります。どちらでもいいんですが、同じであ ります。同種と他家のところです。この辺整理されたほうが、同種とは人間の細胞という ことで言葉を整理されたほうがいいかと思いました。ちなみに赤いところの1ですね、こ れが当社J−TECの自家培養表皮「ジェイス」でございます。  3つ目の指摘は、14ページ以降なんですが、この3つの製品を選ばれた、ここで説明さ れた理由を教えていただければと思います。  以上です。 ○永井座長  事務局、いかがでしょうか。 ○宇津企画官  まず、医師法の下という質問でございます。これは医師の行う医療行為の範囲でござい ますので、これは薬事法とか、そういうものと対象にできるものではないので、そういう 医師の医療行為というのは当然あるわけで、その行為の中で行われるものは、この検討会 では扱わないということでございます。  それと、第2点目の用語の点については、ご指摘ありがとうございました。自家、同種 等について、これは用語を統一させていただきたいと思います。  それから、3つ挙げた、この例示を選んだということですが、審査内容について明らか にすることは、なかなか難しいものでございます。それで、一番分かりやすいのは、承認 になったものは審査報告書等が出てございます。それからAdvisory Committeeに出てくる と、その資料が利用できます。そういう観点から選んだということでございます。 ○永井座長  今のご説明でよろしいでしょうか。 ○小澤委員  理由は分かりましたけれども、やはり網羅性というものが必要だと思いますので、やは り全部の地域をカバーするだとか、ルールがあったほうがいいかなと思いました。 ○鈴木委員  しわを治療する製品というのも取り上げていますよね、例として。こういうのは日本で は医師法、医療法みたいなことになってしまうのではないかという気がちょっとしたので すけれども、そういうことはないですか。一種の美容整形的な。 ○宇津企画官  これも、品目として第三者が行うような形であれば、これは製造行為を反復継続的にや るということになれば、薬事の対象になる。欧米では、そういうものについて品目ごとに 承認が必要ということでございます。 ○鈴木委員  ですから、この検討会は、医師法、医療法をタブーとして全然言及しないということで はなくて、場合によっては言及し得るといいますか、そういうふうに理解してもいいので はないでしょうか。 ○宇津企画官  1点申し上げますと、最初の検討の範囲ということで申し上げました資料1でございま す。資料1の2つ目のスライドでございますけれども、検討会の議論の範囲ということで ございます。21年度は共同の診療行為と、それから医療機関内のもの。これについての基 準等を示しております。これが、第三者が培養等の製造行為というのを行うことになると 薬事法の対象になりますということで申し上げました。ですので、今回この対象について 検討するということで、1つの医療機関で医師の裁量の下に行われるというのは、今回考 えていないということでございます。 ○永井座長  よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。 ○阿曽沼委員  これは確認ですけれども、資料2−1の下の部分ですが、ヒト幹指針で実施計画書を提 出して、意見を求めて、審査をして、大臣の確認をいただく、その後治験になれば、もう 一度、さらに通知に基づいて治験に入る前に上乗せで行われる確認審査を行うという事が 現状の制度だと理解しています。しかしこの表を見ていると、あたかもヒト幹指針で臨床 研究をやると治験のスピードがすごく早くなるような書き方がしてあります。この書き方 であればすごくうれしいんですが、この実施計画書の提出で、ヒト幹指針の臨床研究があ っても、また下のところ、つまり治験の最初のスタ?トにまた戻るわけで、この図示は少 し誤解を生むのではないかなと思いますので、ちょっとご指摘をさせていただきます。  それから、各制度の概要及び根拠等の(3)のことですが、私は法律の専門家ではないので 誤認があるかもしれませんが、また是非ご専門家の意見を頂きたいと思いますが、元来、 薬事法に書いてある生物由来製品のヒトという、このヒトとは万人を意味していて、特定 されたヒトを意味していないと解釈できるのではないでしょうか。法律上のヒトとは万人 であると解釈すれば、このヒトという表現は不特定多数のヒトであると解釈されます。あ くまでも不特定多数の人を対象とした現行の薬事法の規定で解釈すると、治療する対象を 特定したヒト、つまり特定された自分に使われるものであるという自家細胞の医療は、現 行の薬事法がもともと対象にしていないと判断されます。しかし、自家細胞の医療がこの 現行の薬事法の範囲であるという判断に基づいて、この委員会の議論が行われていくのか ということを確認したいと思います。  ただ、日本の場合は、規範としての法律はそういう判断であったとしても、行政指導と して、いや、これは自家細胞の医療も現行の薬事法に含むんだという、いわゆる行政指導 の解釈がもしあるのであるならば、それをキチンとお示しいただきたいと思います。  この点を、なぜそう申し上げるかというと、例えば某病院の例で、調剤を行って、倍量 処方、いわゆる慢性疾患の処方せんを、期間を超えて長期に処方せんを出して作り置きし ていたときに問題視され、いろいろ行政指導がありました。そのときの厚生労働省の指導 を見ると、あらかじめヒトを特定しなさいと指示しています。ヒトを特定して処方する事 に関しては薬事法外なので、患者を特定しなさいと。それは薬事法違反にならないという 行政指導があったというふうに記憶しています。そのこととの整合性をどうするかという ことを一度整理をしておくのがいいと思います。これはどちらが正しいとかいうことでは ありませんが、そう思います。  それからもう一点は、先ほど色々な事例の話しの中で、第三者が認証しているので情報 がはっきりしないというお話がありましたが、これは国際分類のクラス分けの議論で認証 のあり方が相違するといことだと思いますが。クラス1とか、クラス2とかのクラスの違 いで、例えば自己認証とか、第三者認証とか、国による承認が必要だということで、リス クによる分類で違いがあるので全てハッキリしないということですか。今おっしゃった第 三者認証というのは、例えばヨーロッパではこういった細胞というのはクラス幾つに分類 されて議論をされているのかというのをお教えいただけないでしょうか。 ○宇津企画官  まず、最初のご指摘は、再生・細胞医療製品の開発の流れということで、臨床研究から 治験に移るその図のところで、我々もこのようにあれば一番いいなと思った、まさにその とおりのことをおっしゃっていただきました。必ずしもこのようになっていないというと ころもございますので、変更できるとあれば、また今後検討したいと思います。  1点追加で申し上げますと、この図で、ヒト幹細胞臨床研究から確認審査に行く、その 確認審査のところが点線でなってございます。これは先ほど申し上げましたとおり、同じ ものであれば、この確認申請というのを合理化する予定になっているということで点線に してございます。  2点目は不特定多数というお話でございました。これは業と考えるかどうかということ になってくるかと思いますけれども、自己細胞を使ったものであっても、一定以上の加工 をし、それが恒常的になる場合は業と判断するというふうに私どもは答えてございますの で、これは薬事法の対象であるということでございます。  それから第3点目、クラス分類ということでございますが、ヨーロッパの場合は、クラ ス1、2、3と、これに関わらず全て第三者認証ということになっております。日本の場 合はクラス2までが第三者認証ということで、クラス3以上については国ということにな っております。  以上でございます。 ○永井座長  よろしいでしょうか。  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。  もしよろしければ、再生医療製品に関する現行の制度につきましてはご確認いただいた ということにしたいと思います。  続いて、議題(3)海外調査結果の報告につきまして、規制動向、臨床研究、治験制度、 事前相談、承認審査、研究開発支援、これらの点を中心にしまして、佐藤参考人より20分 ほどでご説明をお願いいたします。 ○佐藤参考人  佐藤でございます。  本日は、昨年度、厚労省の審査管理課からの依頼で実施した再生医療・細胞治療製品の 規制等に関する海外調査のご報告をいたします。  まず、目的ですが、再生医療・細胞治療製品に関する欧米の規制動向について、担当組 織と規制、臨床試験制度、事前相談制度、研究開発支援を中心に調査いたしました。  なお、今回は、臨床試験という言葉を、日本の治験と、治験以外の未承認医薬品、医療 機器を用いた臨床研究に相当するものと定義いたします。  調査対象は、米国食品医薬品局(FDA)と、欧州医薬品庁(EMA)、EMAは今年 になってから略称とロゴが変わっております。また、EUでは臨床試験と製造については 各国の管轄となっておりますので、イギリス医薬品庁(MHRA)、ドイツポール・エー ルリッヒ研究所(PEI)、フランス保健製品衛生安全庁(AFSSAPS)を訪問しま した。  まず、彼らの規制の原則というものについてお話いたします。  彼らの規制の原則は、リスクベースアプローチといいます。リスクベースアプローチと は、事後的な安全対策ではなく、審査対象となる各製品の性質に固有、かつその品質・安 全性・有効性に関連するリスク要因を探り当てることをベースにし、その影響の度合いを 科学的に評価することにより規制の方針・内容を定めるアプローチ方法とされています。  ちなみに、ここで言いますリスクとは、ある目的、一定の有効性なり安全性なり、を達 成しようとする際の阻害要因のことを指します。このアプローチ方法は、細胞組織製品に 特別な話ではありませんで、日米欧医薬品規制調和会議のガイダンスでも採用されていま すように、今日では医薬品規制の一般的な原則とされています。  なぜ細胞組織製品の規制でこれが重要かといいますと、それは製品の多様性にあります。 これは現在実用化されているもののうち、自己由来の皮膚製品という限られた領域の製品 を示したものですけれども、それでも製造に使用する原材料や製造方法が違っていたり、 最終製品の形態や使用法が違っていたりすることがお分かりいただけるかと思います。し たがって、製品の品質・安全性を確保するには、リスク分析を基礎にしたケース・バイ・ ケースの対応が必要だと彼らは考えているわけです。  次に、彼らの規制の中での線引きについてお話しいたします。  これは、第1回の検討会でも使われた規制の日米比較ですが、ご存じのように、日本で は業として行う場合であって、一定以上の処理を行うときにだけ薬事法の規制対象となり ます。医療機関の中で行う場合は薬事規制の対象ではありません。  一方、米国では、業として行うかどうかという背景に関わらず同じ規制がかかってきま す。製品のうち、一定以上の加工を行うものなどは全てFDAからの臨床試験の承認また は販売承認を受けなければなりません。これは斜線部の品目になっています。これらは根 拠となる法律の番号を基に、351ヒト細胞組織利用製品、略して351HCT/Pと呼ばれて います。アメリカのやり方は、「リスクが同様ならば同様の規制をかける」という彼らの 原則を反映したものですけれども、規制を医療機関の内外で同じ基準で行っていますので、 研究として行った成果をすぐに企業に技術移転できるというメリットも生み出されていま す。  話を細胞・組織製品に戻しますと、アメリカの薬事規制では、製品は医薬品、生物製剤、 医療機器のいずれかに分類され、それによって申請手続も異なってきます。ですから、開 発者にとっては、自分の製品がどの分類に属するのかというのは非常に重要なこととなり ますが、351HCT/Pの場合、生物製剤なのか医療機器なのか分からないというケースが 多々出てきます。分類が分からないという場合には、FDAの複合製品課(Office of Combination Products)に照会して判断を仰ぎます。複合製品課でも判断できないという 場合には、上部の部会であるTissue Reference Groupというところで判断します。  複合製品課でもTissue Reference Groupでも、判断するときの基準は「主作用の様式」 によります。すなわち、製品の主作用が細胞・組織の生化学的・免疫学的・代謝的機能に よるものならば生物製剤として規制され、製品の主作用が細胞・組織の物理的・構造的機 能によるものならば医療機器として規制されます。この仕組みによりまして、開発の早い 段階での判断並びに判断のプロセスに透明性や一貫性を持たせることができています。  次に、EUのお話をいたします。  EUでは、医薬品の1類型として先端医療医薬品(ATMP)というものがあります。 これには遺伝子治療薬、体細胞治療薬、組織工学製品が含まれます。細胞・組織を利用し た製品のうち、自己、同種、異種の生きた細胞を含み、その細胞に実質的な加工 (Substantial Manipulation)を施したもので、一定の工程で工業的(大規模・反復的) に製造したものであれば、体細胞治療薬または組織工学製品という分類がされます。しか しながら、アメリカとは違いまして、いずれにしましても、医薬品としての規制を受けま す。ちなみに、ここで言う実質的な加工といいますのは、細胞の機能・特性の改変、例え ば培養、活性化、機器、足場との複合化などを指します。  次に、ATMPの開発から使用までの概略を示しますと、細胞・組織の採取から上市ま ではこのようになっております。臨床試験では、大学などの研究機関で行われる非商業的 なものと、企業によります商業的なものとの間に規制上の区別はありません。この点はア メリカの場合と同じです。販売承認はEMAが中央審査を行っています。  ATMPの規制で特徴的な点の一つは、市販後安全対策の重視というものがあります。 すなわち、患者から製品・材料・ドナーまでの追跡可能性、いわゆるトレーサビリティの 確保。それから、ファーマコビジランスと呼ばれる有害事象の監視体制が要求されていま す。同時に、有効性のフォローアップ(事後評価)というものも求められています。さら にリスクマネジメントシステムの構築も求められておりまして、リスクの最小化の努力と いうものをしなければいけません。  次に、臨床試験制度についてお話しいたします。  アメリカ国内では製品化を目的とするかどうかに関わらず、351HCT/Pの臨床試験を 行う場合にはFDAに申請して承認を得る必要があります。生物製剤の場合には、これを IND申請と言います。医療機器の場合には、これをIDE申請と言います。いずれにし ましても、初回審査は30日以内です。また、臨床試験では、ICH−GCPを遵守する必 要があります。  次に、EUです。  EUにおけるATMPの臨床試験の場合も同様に、ICH−GCPに従う必要がありま す。また、EUの規定ではATMP向けの新しいGCPにも従うことになっていますが、 これは現在策定中ということです。  臨床試験に関する権限はEMAにはありませんので、臨床試験申請は各国の規制当局に 提出することになります。提出する先は、イギリスではMHRA、ドイツではPEI、フ ランスではAFSSAPSという機関になります。また、同時に地域の倫理委員会などで 倫理審査も並行して行われています。イギリス、ドイツ、フランスでの初回審査の期間は、 それぞれ30日、90日、90日です。全体の審査期間は、それぞれ90日、234日、180日となっ ています。  次に、事前相談制度等のお話をいたします。  このスライドでは、アメリカで351HCT/Pを開発するに当たって利用可能なFDAの 相談制度を示しています。大まかに見ますと、生物製剤の場合には、開発段階に応じて相 談がセットされておりまして、機器の場合には課題に応じてセットされているという形か と思います。  アメリカには、日本の確認申請と同等の制度はありません。その代わり、生物製剤でも 医療機器でも臨床試験の申請前に、非公式ではありますけれども、相談を無料で行ってお ります。アメリカの臨床試験には、治験と臨床研究という日本のような区別はありません ので、大学などの非商業目的の臨床試験でもこの相談制度は利用することができます。  こちらは、EUでATMPを開発する際の相談制度をまとめたものです。EMAの支援 制度としては科学的助言やATMP該当性の判断のほか、中小企業を対象に品質・非臨床 データの科学的評価をして証明書を発行するという検定制度というものがあります。この 検定制度というものは、大企業への技術移転が促進されることを期待して実施されていま す。イギリスやフランスでは、FDAのような細かい区分はないのですけれども、開発者 の要望に応じて随時相談を受け付けています。ドイツのPEIではイノベーションオフィ スという相談の一括窓口を設けておりまして、相談者と対応者のコーディネートをしてい ます。なお、アメリカと同様に、非商業目的の臨床試験でも、これらの相談制度は利用で きます。  EUでは、審査体制をATMPに特化させる方向に動いているということも非常に特徴 的です。それがEMAの先端医療委員会、CATと呼ばれるものです。  ATMPは、製品の特徴から多くの分野にわたる専門的な評価が必要となってきます。 そこで、EMAは通常のヒト用医薬品の審査を行う委員会(CHMP)の下に先端医療委 員会(CAT)を設置しています。製品への関与の仕方は、大体図示しますとこんな感じ になってきます。ヒト用のCHMPの委員会とCATはこういうふうに連携をしていると いう形になります。  CATは非常に多くの分野の専門家から構成されておりまして、加盟国代表は22カ国か ら正副1名ずつ、CHMPとの兼任が5名、患者団体が正副2名ずつ、医師団体の委員が 正副2名ずつとなっています。これだけの人数での審議をロンドンのEMAの本部で毎月 開催しておりまして、販売承認や科学的助言、中小企業向け品質・非臨床データの検定、 ガイドラインの策定などについて討議を行っています。  最後に、研究開発支援のお話をいたします。  医療機関にとって治験並みの規制というのは結構大変そうなのですけれども、どうして 彼らにそんなことができるのかというのが疑問になります。その大きな原因の一つには、 よく言われることですけれども、研究者支援体制、審査体制、臨床試験支援体制、いわゆ るインフラの充実が挙げられます。その背景には、これもよく言われることですけれども、 研究予算、規制当局や医療機関内・機関間ネットワークの人員などが多いということがあ ります。  アメリカでは、FDAや通常のNIHの研究費以外の研究開発支援の例として、国立心 肺血液研究所(NHLBI)における細胞治療製品生産支援グループ、PACTというも のがあります。これはCPCを持っている国内4カ所の大学と連携しまして、そのCPC を使って全米の研究者の細胞治療製品の生産を支援すると同時に、IND申請の支援、I RB審査の支援及びトランスレーショナル研究の支援を行うというものです。  また、連邦政府だけではなくて、州レベルでの研究支援も活発に行われております。例 えばカリフォルニア州では再生医療研究所を設立しまして、そこを拠点として、ヒトES 細胞、iPS細胞の研究を推進しています。その予算は10年間で30億ドルという巨額なも のとなっています。ニュージャージー州やマサチューセッツ州でも多額の研究費を出して 再生医療の研究支援に乗り出しています。  EUでは、非商業目的の臨床試験にも薬事規制がかかりますが、それでも臨床試験が着 実に進んで行くという大きな理由の一つには、臨床試験の支援体制、インフラの充実と言 うものがあります。つまり、大学病院などの治験センターが充実していまして、臨床医を バックアップしています。また、ご覧いただけますように、それがしっかりとした臨床研 究ネットワークを形成しています。それぞれのネットワークにおきまして、経験の共有、 共同研究等の実施、臨床プロトコールあるいは規制・ガバナンスに関する相談やデータマ ネジメントの支援などを行っています。さらに、これらのネットワークが連携しまして、 欧州臨床研究基盤ネットワーク(ECRIN)が形成されています。  次に、彼らの審査体制と日本の体制を比較しています。  まず、規制の人員を比較してみますと、FDAの職員は総勢3,000人程度おりますけれど も、この中で細胞・組織製品の審査に関わる生物製剤審査担当部署(CBER)だけで800 人以上、医療機器審査担当部署(CDRH)だけで1,130名おります。これに対しまして、 日本の厚生労働省と総合機構(PMDA)の審査関連の人員は全て合わせても500人程度し かいません。ヨーロッパのEMAの職員は500名弱ですけれども、加盟各国の規制当局にそ れなりの人員がおりますので、やはり日本は少ないと言わざるを得ません。  年間予算についても、日本のPMDAは152億円なのに対しまして、FDAは2,088億円 あります。EUのEMAの予算は243億円ですけれども、加盟国の一つであるフランスだけ とっても、そこでの予算が137億円ありますので、加盟国全てを合わせますと非常に大きな 額になっております。このデータには厚労省の関連予算が入っていませんし、FDAは研 究も行っていますから単純比較はできないですが、日本の予算が見劣りするというのは確 かかと思います。  また、再生医療に限った話ではないですけれども、ライフサイエンスへの公的研究費支 援制度について日本とアメリカを比較してみますと、アメリカのNIHは2兆円を超える、 あるいは3兆円近い研究費を出していますけれども、日本では3省合わせても2,300億円で す。データの解釈の仕方で3,000億円以上というのもありますけれども、その程度でありま す。また、アメリカではキャリア開発奨学金とか研究トレーニング、フェローシップなど が充実しているというのが特徴的です。  今度は国際共同治験のコストという面で見てみますと、日本では患者1人当たり270万円 かかるのに対し、EUでは60万円ほどで済んでしまうというデータがあります。これらか ら考えますと、日本は公的研究費、インセンティブが低く、治験コストが高いというふう に考えざるを得ないというわけです。  以上をまとめますと、まず米国、欧州各国とも再生医療・細胞治療製品の規制の原則は、 製品固有のリスク評価に基づくリスクベースアプローチです。この原則と、再生医療・細 胞治療製品の多様性から、自家細胞・他家細胞に関わらず、原則的には薬事関連法に基づ いて、臨床試験も販売承認も品目ごとの承認となっています。  なお、臨床試験を行うに当たってはICH−GCPに従うことが原則です。  また、製品開発に関する規制当局の相談制度が充実していまして、これを非商業的臨床 試験でも利用することができます。さらに、研究開発を支える要素としまして、研究者支 援体制、規制当局の人員・予算及び医療機関内・機関間の臨床試験支援体制も充実してい ると言えます。  最後になりましたけれども、本調査において、温かい歓迎と丁寧なご対応並びに多くの 経験に基づいた貴重なご指導をくださいました各規制当局の職員・関係者の皆様方に、こ の場をお借りして改めて深く御礼申し上げます。  以上です。ご清聴ありがとうございました。 ○永井座長  どうもありがとうございました。  それでは、ただ今のご発表に質問、ご意見等、ご発言のある方はよろしくお願いいたし ます。 ○前川委員  京都大学の前川です。非常に要領よくまとめていただいて、よかったと思います。有り 難うございます。私は各国の状況を全部知っているわけではありませんが、知っているい くつかのところはそうだろうと思います。  ただ、2点ちょっと質問がありまして、1つは、ATMP開発で利用可能な相談制度、 EUの場合ですけれども、多くが例えば無料とか、相談内容に関することが、ぱっと見る 限りにおいて安いというふうなイメージを持つのでありますけれども、日本の場合は費用 もかかり、例えばPMDAに相談に行くにも結構お金が要りますが、恐らくこれはEU各 国の政府がかなり援助をしているわけですよね。それはどの程度の費用を援助していると か、かなり丸抱えに近いような格好で援助をしているために、これは無料化にできるとい うことですか。 ○佐藤参考人  ご質問のご趣旨は分かりますけれども、具体的な、幾らほど各加盟国から入ってきてい るかというのはちょっと分からないところです。特に加盟国の側の相談制度では、かなり フェース・トゥー・フェースの相談で突っ込んだ話ができるということで、加盟国はそっ ちの相談制度を推奨していますけれども、EMAとしてもCATというのを設けまして、 専門家集団を集めまして、きちんと対応していこうというふうになっています。  もちろん無料で行っているというのは、ATMPを開発する会社というのは非常に小さ い企業が多いので、その負担にならないようにということが理由ですけれども、その財源 がどの程度なのかといった具体的なところについては、ちょっと私には分かりません。申 しわけございません。 ○前川委員  分かりました。  それと、あともう一つは、医薬品の規制当局の人員の国際比較で、これは前から言われ ていることで、欧米ではかなり多いということですが、その人材の育成のシステムに関し てです。ただ単に人を増やしても、その人に能力がなければ増やしても仕方がないので、 そういうシステムが日本にはなかなかなくて、ただ人数を増やしただけで一朝一夕に有効 な人材が増えるわけではないと思いますが、その辺はどういうふうになっているのでしょ うか。 ○佐藤参考人  ここは非常に大事なところでございまして、日本の文化と欧米の文化の違いというのが、 まず一つ大きなところがあります。どういうことかと言いますと、会社と規制当局の間を 人々が行ったり来たりするという文化がございまして、それによって、会社で経験を持っ た人間が規制当局に入り込んでこられるということがあります。ですので、経験者が規制 当局に入り込めるので、割と現場を知っている人が多いということがあります。  ですから、実際にFDAでもCBERは教育制度を持っていませんし、ヨーロッパの規 制当局の方々というのはオフィシャルな教育プログラムというのは持っていません。ただ し、いろいろと会社を渡り歩いた経歴がある職員が多いということがあります。  ただ、CDRHは職員向けの教育制度、教育プログラムというものを持っていまして、 CDRHの中では専門家の教育あるいは治験のアップデートなどを行うシステムがござい ます。 ○前川委員  そうすると、日本では今はどうなっているんですかね、企業におられた方は、PMDA のほうに入るとすると、3年間でしたか、その企業で働いていない期間がない人でないと 採用できないとか、そういう規制がありますね。それは今もそうですか。 ○平山オブザーバー  PMDAの平山ですけれども、一応ルールとしては、過去5年間に従事した部門に2年 間は従事できない。だから、開発部門でやられていたのだったら、ちょっと審査には2年 間は関与できないというふうになります。 ○成田審査管理課長  補足させていただきますと、新規に採用をする場合には、基本的には自社の品目に関わ らないと。それからその品目のチーム審査には当たらないとか、幾つかありますけれども、 一部緩和させていただいております。  それからまた、PMDAから外に出るときは、また別途制限がございます。 ○前川委員  最後の質問ですが、研究開発支援の例で、アメリカのPACT―Production Assistance for Cellular Therapiesという略ですが、これはたしか4つで、中心になって やっているのがヒューストンのベイラー大学のGee教授がやっているんです。それとミネソ タ大学と、あと2つは忘れましたけれども、そこが全米をカバーしているわけでは決して なくて、いくつかのものはそこが支援をして、教えてほしいという人があったら、PACTへ 行って勉強するという、そんなシステムだったと思いますが。 ○佐藤参考人  おっしゃるとおりでして、ちょっと説明不足だったんですけれども、PACTにはグラ ント申請のような審査制度がありまして、そこで計画を提出して、受理されたものだけが PACTの施設を使えるという形になっています。ですから、申請はアイデアがあれば、 経験がなくても申請はできますけれども、そこで審査をして受理されたものだけ、その施 設を使って調製できるということになっています。 ○宇津企画官  1点補足をさせていただきます。  前川委員のほうからEMEAの予算のことのご質問がございました。私どもも手元に資 料等がないので、次回までに分かる範囲で調べてご報告できればと思います。 ○永井座長  私から1つ。  アメリカでも、ヨーロッパでも、医療機関で行う臨床研究は全てアメリカですとPHS 法ですか、かなりきちんとした規制を受けているわけです。それを可能にしているのはど ういうことでしょうか。医療機関の側のシステムがかなり整備されて、マンパワーとか研 究費がないとできないと思うんですけれども、そこはどういうことでしょうか。 ○佐藤参考人  おっしゃるとおり、やはり医療機関の治験センターが充実しているということが1つと、 それからあとは審査体制も充実していること、あとは研究予算、人を雇える予算が付いて いるということです。あともう一つは、審査する側にかなり経験のある人がいるので、ど こまでデータをとらせたらいいかというノウハウが蓄積されているというのも重要かと思 います。 ○永井座長  ほかにご意見ございますでしょうか。 ○大和委員  大変よくまとまっていて、大変ありがたいなと思うんですけれども、ちょっと不満とい うか、1点だけコメントさせていただくと、前半のところで臨床研究も治験も区別があり ませんというのは、結構多くの人が日本でも知っていると思うんです。ご指摘のとおりだ けれども、しかし、そう言いながらも、インベスティゲーターINDだったり、エマージ ェンシーINDだったり、そういうサブのやつがいっぱいあって、実際に数で数えると、 物の本によると、いわゆる企業治験というのは全体の3分の1しかなくて、3分の2はそ ういうインベスティゲーターとか、そういうものですよというのがアメリカの実態ですよ ね。  そうであるにもかかわらず、後段で再生医療の話と、今度は臨床研究という言葉が前に 出てきて、再生医療の臨床研究なのかそうでないのかというのがあいまいになってしまう のだけれども、実際にはアメリカの再生医療の臨床研究というのは非常に限局されている んです。非常に数が少ないんですね。それは、それなりのサポーターが付いてくれるよう な、非常にマーケットが大きかったり、それから動物レベルではプロミシングだと思われ るものが、ばっと上がってきて、すごい規模で、日本の臨床研究とは比較にならないよう な規模でやるんですけれども、数そのものは実はすごく少ない。  実はアメリカとかヨーロッパのシステムでさえ、再生医療みたいな新しいものの臨床研 究というのは非常に難しくなっているんです。ほかのお薬とかデバイスのやつはばっとや っていますから、数で見るとそういうふうに、臨床研究が頑張っているように見えるけれ ども、再生医療とか、もしかしたら遺伝子治療なんかも、実はそんなに言うほどやれてい ないと。  そういうことを踏まえた上で、じゃ、日本ではどういうふうにしましょうかと。もちろ ん、早川先生がいつもおっしゃるように、大学病院であったり、公的な病院のマンパワー の不足であったり、それからもともと何よりもお金が圧倒的に不足していたり、経験がな いところで、アメリカとかヨーロッパ並みの同じことをしようとしても、大体そもそもで きるのでしょうかと。それが国益になるのでしょうかみたいな話がこの次のステップで議 論できたらと思うんですけれども、特に後段に関しては、非常に僕らが海外で、日本でや っている臨床研究の話をすると、どうして日本ではそんなに一生懸命臨床研究ができるん だというふうにみんなに聞かれるぐらい、アメリカでもヨーロッパでもフラストレーショ ンがたまっていて、困っているんですよね。だから、そのことだけは議事録に残していた だければと思って発言させていただきました。 ○佐藤参考人  どうもありがとうございました。  実際、大和先生がおっしゃるように、非商業的な臨床試験の場合に、特例のような制度 というのは設けてあります。FDAの場合には設けてはありますけれども、基本的な規制 の枠というのは同じということです。時間がなかったので細かいことはご説明できなかっ たのですけれども。  あとEMAのほうですと、非商業的な臨床試験の場合には、規制の枠は変わらないし、 データの質も落としてほしくはないけれども、例えば非商業的なものだから例数は少なく ても目をつぶりましょうといった、さじ加減はあるようなことを担当者は言っていました。 ○大和委員  もう一個、我々ベンチャーでヨーロッパで治験をやっているので、大変いろいろ恵まれ ているというか、ここにも中小企業なら90%割引というふうに書かれていますけれども、 こういうのが充実していて、日本には全くないんです。日本はもう全部、零細企業だろう とベンチャーだろうと同じ金額で相談料を取られちゃうんですけれども、事実上、ヨーロ ッパでやると余りお金がかからない。だけど、逆に言うと、僕らはフランスをベースにや っているんですけれども、フランスの中に支店がないと駄目で、僕らはオフィスを1個借 りて、それを支店だと称してやらせていただいているんですけれども、育てるのが目標の 検討会だというふうに認識しておりますので、ぜひその方面もご検討いただければと思い ます。 ○永井座長  よろしいでしょうか。 ○小澤委員  大和先生、取られるんじゃなくて、納める。私どもはちゃんと納めていまして。  先ほどの冒頭の審査管理課さんのプレゼンにも通じるところですが……。佐藤室長、も のすごくまとまっていて、私はすごく感銘を受けて、新幹線の中で読んできたんですけれ ども、審査管理課さんのプレゼンともやっぱり通じるところがあって、「なぜ欧米に行っ ちゃうの?」というのがあるんです。もちろん欧米は学ぶべきですけれども。  だから、苦労をしている実際はどうかと言うと、ほかの国にも成功例があって、審査管 理課さんの中にもありましたけれども、韓国なんていうのは非常に見るべきところ、学ぶ べきところがあるし、それから多分、文部科学省さんはインドをものすごく最近フォーカ スされていて、リサーチをされていらっしゃる。トランスレーショナルリサーチとかがあ って、ちょっとアジアを甘く見ているんじゃないかなという気が正直しました。そういう 対地のバランス感というところが、やっぱり我々が学ぶのは欧米だけというのとは違うん だろうなというふうに私は思っているというのがまず1つ。  2つ目が、大和先生もおっしゃったように、じゃ、実際に企業はどうなっているんだと いうところを見ないと駄目で、それはこれ以降、多分、次回以降出てくるのかもしれませ んけれども、やはり企業は何を悩んでいるのかというところをもうちょっと掘り下げたい なと思いました。  ありがとうございます。 ○佐藤参考人  コメントありがとうございます。 ○森尾委員  ちょっと関連した質問ですけれども、欧米の方々というのは、再生医療・細胞治療製品 というのは最終的に商品になると思って取り組んでいらっしゃるという方が多いのかどう かということをお伺いしたいと思います。  というのは、フランスでやはり遺伝子治療にかなり力を入れていらっしゃって、どうし ても患者さんが少ない、どう見ても少ない患者さんに対して遺伝子治療製剤を開発されて いて、それで企業はしっかりやっているんです。そういう企業というのはどういうスタン スでそういう開発をして、どういうふうな形で国から支えられ、あるいは経済的なビジョ ンをどういうふうに持っていらっしゃるのかという点で分かることがありましたら教えて いただければと思います。 ○佐藤参考人  中小のスモールスケールでやる場合、どうなっているのかということですけれども、予 備スライドがございまして、特にフランスの場合はATMPに該当しない細胞・組織利用 製品という枠の中で、先生のご質問にあったので、フランスを中心に紹介をさせていただ きますけれども、cell therapy preparationという枠組みがあります。その定義ですけれ ども、公的機関や非営利団体によって非工業的に製造される細胞・組織利用製品という範 疇でありまして、これは臨床試験、製造試験、使用について、医薬品・医療機器として国 内承認が必要というふうにされています。ですので、こういった枠組みの中でフランスで は、先生がおっしゃったようなものはおさまっているということになります。  イギリス、ドイツ、フランスの3カ国の中ではフランスは非常に厳しくて、非営利目的 で、非工業的な製造でも国内承認という形で薬事承認を取らなければいけないので、非常 に厳しい枠になっています。さらに製造時に細胞に接する全ての付随的製品というものも、 これも全て国内販売承認が必要となってきて、フランスというのは非常にそういった面で は厳しい。建前上だけかどうかは存じ上げないですけれども、非常に厳しい形になってい ます。 ○森尾委員  でも、企業が参画していますね、実際に。ですから、そういう方々というのは、商品化 になると思ってやっていらっしゃるのかどうか。これはほかの細胞治療製剤も同じ、再生 医療製剤も同じだと思うんですけれども、どのくらい営利があるのかという点は、やっぱ り企業の方が入っていくに当たって、やはり非常にためらわれるところだと思うんです。 開発に比べて、どのくらい営利があるか。その点に関して、何かビジョンがあって皆さん 進んでいらっしゃるのかどうか。どうなんでしょうか。 ○佐藤参考人  この辺は私の個人的な見解になってしまうんですけれども、恐らくビジョンがなければ やらないか、あるいはcell therapy preparationの枠、あるいはほかの国のこういった枠 組みに落としていくか、あるいはもう一つ、実はATMPの例外規定というのがございま して、病院除外規定(hospital exemption)というものがあります。これは1)特定の一患 者向けの特注品の処方に従って、2)固有の品質基準に基づき、3)非反復的に製造され、4) 医療従事者の職務責任の下、5)同一加盟国内で、6)単一病院において使用される、という 条件を全て満たしたATMPはEMAの中央審査の対象外であるという規定があります。 これを利用していこうかなという病院、医師の方もいらっしゃいます。  ただし、日本の自由診療とは違いまして、製造・品質に関する国内承認を受けなければ いけないということと、ファーマコビジランスとトレーサビリティを確保しなければいけ ないというのが条件です。  この3番の「非反復的」の解釈ですけれども、同一製品であることと、製造スケールと 頻度というものを考慮して判断しているということです。ここで自己由来の細胞・組織を 用いたATMPというものは、個々の患者向けのオーダーメードだから、じゃ、これは1 つずつ非反復的なんじゃないかというふうな意見が出てくるんですけれども、ECの見解 としましては、一定の標準化された製造工程で工業的(大規模)に製造される場合には、 患者ごとに互いに別個の製品とはならず、反復的製造とみなされる。つまり中央審査の対 象となるということになります。  スモールスケールで病院の中あるいは国内でつくるATMPに関しては、この枠組みで おさめようというのもEUの一つのやり方となっています。 ○永井座長  よろしいでしょうか。ほかに。 ○宇津企画官  先ほど小澤委員のほうから、なぜ欧米だけ調べたのかと。韓国とかという例がございま したので。欧米を調査したというのは、欧米のほうが進んでいるからという話がよくある ものですから、欧米を調査したということでございますけれども、韓国についても若干調 べております。  韓国においても、やはり臨床研究も含めてGCPは全て適用と。それから、臨床試験を 行う施設というのは国が指定をして、そこで行っているという形になっているそうでござ います。それから、再生医療製品に関して、2000年当初はどうも市販後を重視し、治験成 績は市販後に提出することも認められていたようです。ところが、最近は、検証的試験を 原則求めるようなことになっておりまして、例外は自家由来細胞軟骨、それから皮膚、こ れに関しては検証的な試験については市販後でいいと。その他については原則、検証的試 験まで求めるという取り扱いになっておるというふうに聞いております。  以上でございます。 ○永井座長  ありがとうございました。  それでは、海外調査報告はここまでといたしまして、議題(4)検討の議論のたたき台 につきまして、事務局よりご説明をお願いいたします。 ○宇津企画官  それでは、資料4でございます。検討のたたき台と言うことで、22年度検討事項につい てという紙でございます。  ここを見ていただきますと、上のスライドのほうが模式的に書いたものでございますが、 最初に説明をしましたリスクというものがある。その一方で、社会的要請として、先端技 術の早期実用化、それから質の高い再生医療製品の承認の迅速化、あるいは日本のすぐれ た技術の国際的展開を図っていくと、こういった社会的要請がある。こういうもののバラ ンスをとりながら、どのような規制・制度により達成することが適切かということで、最 適な制度を現行の法規制にとらわれずに検討するということです。いろんなご意見をいた だきたいと思ってございます。  それで、具体的な論点のたたき台でございますが、これは当然、検討会の先生方のご意 見でまとめるものでございますが、事務局として、その議論のためにということで、たた き台として示したものでございます。  大きく2つに分けてございます。1つが、有効性・安全性の評価、管理の在り方という ことでございます。個別品目の承認審査・市販後安全対策が必要であるかどうかと。また それが必要という場合に、行政が行うべきか、あるいは例えば医療機関等の中で行えばい いのかどうか。そういったこと。  もう一点、質の高い製品を迅速に開発する方策についてということで、そのメニューと してどういうことが考えられるかということで、開発初期からの助言・相談について。例 として、開発初期からの研究者、ベンチャー企業等へのきめ細かな助言・相談体制など。 それから、2点目が確認申請の在り方と言うことで、先ほどご説明がありましたけれども、 確認申請というのは日本独自の制度でございます。そういうことから、その必要性の有無、 あるいは必要という場合は、改善策というのはどういうものがあるだろうかという点。そ れから、臨床研究・治験促進策ということで、研究者を支援する方策ということで、欧米 では研究者を支援する方策が種々あるということでございます。それから、審査の迅速化 ・質の向上、評価の指針の明確化等ということで、例としまして、先ほど前川委員のほう からご指摘もありましたが、審査員のトレーニングの在り方といったようなこと。それか ら相談審査体制の整備、必要なガイドラインを迅速に整備していくといったこと。その他 必要な事項といたしまして、海外規制当局や、それから学会等との情報交換等の在り方と か、そういった点を論点のたたき台としてお示ししております。  この辺についてご意見をいただければと思っております。 ○永井座長  ありがとうございます。  ただ今ご説明をいただきました事項を踏まえまして、委員の皆様のご意見を伺いたいと 思います。いかがでしょうか。 ○早川委員  言葉の定義ということを、ちょっと予め議論をする前にしっかりしておいたほうがいい と思うんですけれども、先ほど佐藤室長からの報告にも、リスクが同様なら同様の規制を かけると、こういうお話がございました。リスクという場合の言葉を少しきちんとしてお いたほうがいいだろうというふうに思っております。  それで、今ご説明いただいた論点のたたき台の上のほうに、バランスシートみたいな感 じのリスクvs社会的要請というのがございます。この中の、例えばリスクのほうの(1)と か(2)というのは我々が一般に思っているリスクですね。つまりそれが人の健康に悪影響を 及ぼすような、そういういろんなハザードがあるわけですが、そういうハザードの中から、 人の健康に悪影響を及ぼす、そういうリスクだろうと。ですから、感染リスクだとか、2 番の処理工程に付随するリスクというのが、とりわけ、例えばウイルスに汚染された血清 を使ったとか、試薬を使ったとか、そういう明らかなリスクが(1)とか(2)というもので、(3) とか(4)のリスクというのは、一種の不適切さ。要するに目的に向かって、こういうことを やると不都合だねとか不適切だねというような、広い概念でのリスクだと思うんです。  先ほど、リスクベースのアプローチをやるという、EU、アメリカのリスクというのも、 そういうリスクを含んでいるというか、目的に対するリスクの不適切さ、不都合さ。佐藤 室長は阻害要因というふうにおっしゃったんですが、目的に対する阻害要因。そこら辺を ちょっと明確にしておかないと、議論がばらばらになるんだろうと思います。  それからもう一つ、社会的要請の中で、先端技術の早期実用化。多分この中に別の意味 でのリスクというか、なぜ先端技術を早期に実用化しなければいけないかということで、 ほかに治療法のない患者さんとか、QOLが非常に損なわれている人にとっては、毎日毎 日がその方にとってはリスクなわけです。そういう、逆に先ほどのリスクと挙げられてい るほうは精神側から見たリスクですが、一方では、じゃ、なぜ先端技術の早期実用化とい うのは、ほかにない方法で患者さんのリスクを救おうと。患者さんにとっては毎日毎日が リスクが高まっていくと。そういう概念がこの2つの中に入っているんでしょうかという ことを確認しておきたいと思います。 ○永井座長  いかがでしょうか。  患者さん側の負うリスクが解決できれば、それはある意味では社会的要請ということに もなるわけですね。  何かご意見ございますか。 ○阿曽沼委員  こういった先進医療というのは、リスクをゼロにする、そのために努力をするというこ とは非常に重要なことだと思いますし、それはやっていく必要があると思いますが、患者 さんに対してのベネフィットというのをどう評価していくか。リスクとベネフィットのバ ランスをどう評価していくのか。それを制度でどう担保していくのか。これが再生医療に は強く求められていることだと思います。その折り合いを、最適な規制・制度を現行の法 規制にとらわれず検討するこの委員会で、議論をしていく必要があるのではないかなと思 います。  例えば医療機器分野でのデバイスの薬事審査で、ベンダーが担当官の方に何を言われる かといえば、未知のウイルスが入らないことを証明してください等と言われるわけです。 未知のウイルスが入らないことを証明しろと言われて証明のしようが無い訳で、そんなや り取りで審査にどんどん時間がかかってしまいます。そのような現実があるときに、どう 解決していくのかというような、非常にクリエーティブな議論も当然出てくるだろうと思 います。患者さんのベネフィットというものをどう評価していくのかという点も特に重要 な論点ではないかと思います。 ○宇津企画官  一言だけ申し上げますけれども、医薬品の審査、医療機器も含めてでございますけれど も、この検討会では部会等での審議にご参加いただいている先生方もいらっしゃいますけ れども、品目ごとにリスク・アンド・ベネフィットというのを考えています。当然ながら、 患者数が多いものというのは、数百人、数千人規模の検証試験を行って、統計的な有意差 というのを求めます。  その一方で、オーファンドラッグ、数十人とか患者さんの数が少ないものについては、 当然ながら対象を置いて統計的な有意差を出すのはなかなか難しい場合がございます。そ の点から、個別の医薬品、医療機器に従って、リスク・アンド・ベネフィット、エビデン スレベルというのは当然変わってまいりますけれども、それは医薬品、医療機器の置かれ た状況において個別に判断をしているというのが現状でございます。 ○永井座長  ほかにいかがでしょうか。 ○前川委員  やはり今のリスクとベネフィットの考え方は非常に重要で、将来的にはiPS細胞の臨 床応用の際にも考慮することが必要になると思います。やっぱり患者さんにとってベネフ ィットがかなりあるようであれば、リスクはある程度相殺されてくるものだろうと、私は 考えています。  それと、少しここに書いてあるこの表を見まして、先ほど審査員のトレーニングの在り 方というのがありましたけれども、先ほど企業の方を入れればある程度いいというふうな 話でしたけれども、企業にも細胞治療の開発に携わった方がなかなかおられないというこ とで、また細胞治療の開発を手がけている企業も数は多くありません。むしろ、ベンチャ ーの方が細胞治療のほうにかなり関わってきておられるので、そういうところのノウハウ もかなり入れられたほうがいいと思います。  それから、韓国、あるいはインドの話がありましたけれども、韓国、あるいはインドも、 これはもう完全にアメリカンですよ。それで、病院のシステムもアメリカンになっていま す。韓国なんか、Severance Hospital、延世大学なんかも、もう完全に英語です。だから、 そういうシステムになっていますし、この間インドからも訪問を受けましたが、インドの 方々もみんなアメリカンのシステムです。すべて英語でできるので、インドネシアをはじ めとする国々と連携して再生治療の開発を進めています。  日本で治験が進まない原因の一つに、英語でキャプチャーができないじゃないかと、電 子システムによるキャプチャーが非常に遅いとか、いろんな問題があって、これはもう既 に数年前の日本の血液学会のシンポジウムで取り上げて、これはブリストル・マイヤーズ の開発部長の芹生先生から話してもらったところであります。したがって、そういうふう なところも含めて考えないといけませんので、なかなかこの再生医療の実現を目指すには、 再生医療特有のシステムや、日本における先端医療開発のシステムの隘路がどこにあるか というふうなことをもう一度議論し合う必要があるんじゃないかなと、私はそういうふう に思います。 ○毛利委員  私ども企業の立場から言いまして、今ここに挙げられました特に確認申請に関して、こ れが非常に日本での独自の制度だということは先ほど調査結果でも出てきましたけれども、 私どもも経験いたしまして、それなりにといっては失礼ですけれども、その中でもんでき たことは非常に役に立っている。特に品質・安全性に関しまして、初期の段階ですけれど も、いろいろ議論をすることは大事かなというふうには感じております。  しかしながら、せっかくそういう独自の制度があっても、それ以降での開発に関しまし て言いますと、それが生かされているかどうかというところが、ちょっと疑問に思ってお ります。と申しますのは、やはり確認申請のために時間とコストがかかります。先ほど申 しましたように、早期開発の面から言いますと、やはり一つ時間をとってしまいますので、 せっかくここでやったことは、次の段階において有効に生かせないのかなというふうには 考えたりします。  特に、やはり先ほど申しましたように、ターゲットが非常にオーファン的なケースが多 いものですから、そういった面で言いますと、大規模な統計的な臨床試験ができない以上 は、ある程度は大胆な踏み込み方も必要かなというふうにも思ったりしますので、そうし ますと、品質・安全性をできるだけ早い段階で見きわめた上で、もう少し有効性・安全性 のバランスをとった上で、今申しましたように、有効性の面で科学的になかなか立証でき ない面であっても、安全性の面でクリアできていれば、ある程度、例えば市場に出してい って、市販後臨床等のフォローアップをもっと強化するとか、何かしら手だてを考えない と、なかなかこのブレークスルーはできないのかなと考えております。 ○片倉委員  先ほどの早川先生のリスクの考え方について、今のお話も取り入れて、やはり新しい医 療というのは、どうしてもリスクが必ずあると。そこでのリスクベネフィットのバランス ということはもちろんあると思うのですけれども、やっぱり新しい医療を要求している患 者さんへの早い時期での治療の機会を損なうリスクというのは、やっぱり一つのリスクフ ァクター。早くそういう治療ができる環境にしてあげるということが、今のお話もそうだ と思うのですけれども、やっぱり必要じゃないかなと。  どうしてもルール、今全体、佐藤先生のお話を伺って、いわゆる規制上は多分、日本が 一番緩いのかなというような解釈ですね。極端な言い方をしますと、薬事法の外に出てし まえば何でもできてしまう可能性がある。そこへ逃げていかないようなやり方は何かとい うのが1つ。そのために、患者さんに早くそういう治療ができるような環境にしてあげな いと、どうしようもないなというようなことを、いろいろお話を伺っていて感じました。  ですから、やっぱり患者さんに早く治療を提供できることも、治療が遅れるということ は一つの大きなリスクファクターであるという認識も必要じゃないのかなと。 ○花井委員  患者の立場なので、リスクとベネフィットの議論というのは、様々な方面でいろいろ議 論をしていて、てんびんに乗せるものによって議論というのはすれ違っていくと。  早川先生が先ほど指摘された整理の中で、資料4の上のリスクに載っているほうです。 (1)から(4)までございますけれども、1つは、患者が必要なのかどうか。患者の病状が重く て、その製品がある程度未知である。つまり先見性が不足していても、その治療行為を行 うメリットがあると考えるかという問題系は、やはりこのリスクの中の(3)の中に一応取り 込む。ないしは社会的要請、総合的判断、もしくは先ほど行政から説明があった個々の製 品ごと、疾病ごとという理解で、やはりそこは議論を進めていただいたらいいじゃないか と思うんですが、まず、今回の議論の中で、(1)と(2)です。そのものが安全性と、これは価 値観の入りようのないクライテリアであるから、これについては妥協する必要はどこにも ないわけです。妥協をしない中で、どうやって早く導入するかという問題です。  (4)は、早川先生は社会的な方面にも整理されたのですが、これはいわゆるプロダクトが 一定かですね。血液製剤で言えば、輸血用血液製剤はワンロット、ワンドナーですよね。 分画については血漿をワンプールにする。そうすると、ほとんど血漿分画については、こ れは普通の医薬品に近いワンロットのものはほとんど、ロットが違っても、ほぼ同じよう なものだというふうに今は理解されていると思うんですが、輸血用血液に関しては、実は B型のMAPと言っても、これは全部ドナーが違う、ばらばらのものであると。それは品 質の一定性と言う意味では、輸血用血液製剤はいまだに一定かどうかというのは分からな いレベルであるけれども、しかし、今のリスクマネジメントのいわゆる生物由来、特生物 という基準でやりましょうと。採血基準をやりましょう、スクリーニングをやりましょう というルールで決まっているわけです。  だから、品質をやっぱり確保するということ。つまり、その存在の意味ではなくて、(1)、 (2)、(4)ですね。これについては、ある種、コンセンサスを得て議論をしていただいて、ど のようなレギュレートがいいのかということは、リスクベネフィットの議論の中とはちょ っと余りごちゃごちゃしないで議論をしていただきたい。  それから、それを進める上で、患者がというときには、またそれはいろんな論点で議論 をしていただいたらいいと思うのですけど、1つちょっと、実例になるかどうか分からな いですが、僕は血液製剤が安全じゃなかったころに血漿分画を使ってしまって、僕もウイ ルスのデパートみたいになっちゃったわけですけれども、当時例えばHIVが入っている リスクのある、もしくは明らかに入っているとして、今、目の前で脳出血で重篤であれば それは必要かという議論がよくされるんです。これは、やっぱり医師が医療行為でその場 にいれば、これは多分使うと思うんです。  その議論は、どこまでいっても医療行為の中であり得る議論だと思うのですが、そうい った議論と混同すると、そのプロダクトそのものを市場に上市していいかという議論にそ こまでの議論を入れると、これは非常にぶれた議論になりかねないので、やっぱりそこは ある程度整理して、患者のためという名の下に、ある程度レギュレートが緩いプロダクト を市場に出していいというようなな議論にされるのは、ちょっと患者の立場からすると違 うということで、そこは分けていただきたい。まず、製品の安定性、統一性、もしくはク オリティー、そういったもののレギュレートについてはちょっと議論をして、その後にそ の他の進め方とか、さらに応援打をどうするかとか、そういう議論をしたほうが整理され るのではないかと私は思います。 ○永井座長  ありがとうございます。  いかがでしょうか。 ○澤委員  リスクベネフィットの考え方は、私たちは医療者として、特に重症な患者さんをいつも 治療させていただいている立場としても大変重要でして、皆さんが今議論をされた論点と ほぼ一致しています。特にこの図の中で、どのような規制・制度により達成することが適 切かというこの文言は、非常に私も前向きな文言だと評価するのですが、ここに書いてあ る意味をいろいろ考えると、どのような規制・制度をはめるかという意味ではなくて、私 はお願いしたいのは、やはり規制・制度が合わなければ改革や緩和をしていただけるのか というところまで入っているのかなというふうに非常に強く期待して読んでいるんですけ れども、その辺りはいかがですか。 ○宇津企画官  そのとおりです。改善とか、そういうことも当然。 ○澤委員  ですから、その辺りの規制制度についての問題点を今回1年で議論を明確にして、そこ の規制制度についてどのように変えていけるかどうかということを議論していただけると いうふうな、大変期待感のある形でよろしいんですね、考え方として。 ○宇津企画官  そのとおりです。 ○永井座長  ほかにご意見ございますか。 ○阿曽沼委員  1つちょっとご質問ですが、先生方にもお聞きしたいのですけれども、同一製品である ということを自家細胞というカテゴリーの中で、自家細胞の加工、調整というカテゴリー の中で、それが同一製品であるということの定義はどうするのでしょうか。どういう定義 をもって同一製品と同定するのか、認定するのかという点については、何か今までキチン とした議論があったのでしょうか。この点についてご質問したいのですが。 ○永井座長  いかがでしょうか。 ○大和委員  一応、ヨーロッパでやっている治験も、国内でやらせていただいた臨床研究も、出荷基 準というのが設けられていて、我々の場合では、角膜でも、食道でも、2週間ぐらい培養 をして、前日に10項目ぐらいの検査をして、合格であれば出荷するというようなプロトコ ールでやっています。治験の場合にはそれがもう少し厳しくなっていて、項目が増えてい たりしますけれども、基本的には前の日にパラレルでつくったものです。だから移植する ものではないですけれども、パラレルでつくったものを検査して出荷するということで、 その検査に合格するという意味において同一であるというふうに考えております。 ○阿曽沼委員  そういう意味では、品目ごとの承認ということになってきたときに、例えば前年度の議 論の中で、早川先生がミニマム・リクワイアメントというような文言をお使いになったと 思いますが、この10項目の合格基準というのは、それが皮膚であろうが、軟骨であろうが、 心筋であろうが、基本的にハード的な加工のプロセスや、最終的な出荷基準というのは、 これは同一のものなのでしょうか。 ○大和委員  いえ、違います。プロセスに関してはもちろん、例えば何日目にウイルス検査をして、 何日目にマイコプラズマのあれを見るとか、そういうのもありますけれども、今言った出 荷検査というのは、プロダクトごとに、例えば角膜なら角膜、食道なら食道、あるいは澤 先生のところでされた拡張型心筋症の治療ならこういう筋芽細胞シートということで、物 に合わせて10項目ぐらいのものを立てて、それを必ずやると。それで合格したものを出す という仕組みになっております。 ○阿曽沼委員  ありがとうございます。 ○森尾委員  追加ですけれども、文書体系の中で必ず製品標準書というのがあると思うんですが、そ こで規定されるものが恐らく品質の均一化ということだと思います。何々陽性細胞が何% とか、何々が何%以下とか、そういう規定の仕方じゃないかと思います。 ○永井座長  ほかにご意見、ご質問は。 ○小澤委員  すみません、ちょっと議論を戻らせてください。  毛利委員は、やっぱり企業側なので、私も非常に賛同するところでありまして、確認申 請その他は勉強になりますけれども、時間がかかり過ぎているという毛利委員のメッセー ジに、私も賛成でございます。やはり有効性・安全性、その辺のバランスのところの意見 も、私も同意でございます。  たたき台の最初の有効性・安全性の評価、管理の在り方、これは議論の余地があるんで すか。なぜここに挙げているのかなと思いまして。明らかに代替案はないというふうに思 ってはいるし、行政が承認審査を行うべきか、この代替案はあるでしょうかというのが1 つ目の質問。2つ目は、何か目標をつくりませんでしょうか。というのは、厚生労働省の ほうで、世界の再生医療製品の3分の1を我が国製品で牛耳るという目標があるわけであ って、例えばかなり前のベンチャーを1,000社つくるぞみたいな感じで、例えば何年以内に 幾つ出すみたいな、それは可能かどうかは別にして、やっぱり目標をつくらないと、この 質の高い製品を迅速に開発する方策、いつも議論をしているようなところなので、やっぱ り定性的な議論に入ってくるような気がしまして、運用がどうのこうのという話になって くるので、やっぱりぱちっと何か目標をつくると、私はありがたいなと思います。  以上2点です。 ○永井座長  いかがでしょうか。 ○花井委員  先ほどの議論とも若干関係ありますけれども、この委員会でそういう目標をつくってや るのは、この委員会のアジェンダなんですかね。というのは、つまりレギュレートは、こ れは基準なのだから、定まったらそれは、審査とかが遅い責任まで、基準に責任を負わさ れるのは、基準がかわいそうなわけですよね。基準を定める話と、その基準に合った製品 を日本国でちゃんと出せるような環境を整える話をここで両方一緒にやるのか、分けてや るのかというのをはっきりしておかないと、もちろん商品が流通する形が望ましければ、 質は下げるのかとか、そういう議論になっちゃうのではないですか。そこがちょっと僕は 分からないです、さっきから聞いていて。  つまり、さっきのお話も、プレゼンテーションを聞いたのですが、論点があるのかとい うと、やっぱり(1)は個別承認が要るに決まっていると普通に考えて思うし、それは承認審 査を行うに決まっていると思うんです。ただ、今のままやっていったら、それは先ほど企 業の方が言っているように、いわゆる大臣にそれを認可される必要があるのかという話で しょう。そこで何を確認しているのかと。必要なのかどうかと。それによって何を担保し ているのかということが明らかであれば、何かを担保しているのであれば、それは簡略化 のしょうがないじゃないですか、最初から。そういう話だと思うんです。  だから、まず何を担保するのかということを明らかにするのがここのアジェンダかなと は思ったのですが、そこのところは現場からすれば一緒なのかもしれませんが、僕の考え 方だとちょっとぐちゃぐちゃな感じがします。 ○宇津企画官  なかなか整理は難しいんですけれども、考えとして、安全性・有効性、品質、これを維 持した上で、例えば審査なら審査が必要であるという判断であれば、現行のものをうまく 運用とかを改善することによって、うまくそれが回っていくと。迅速化に資すると。そう いうような方向性があるのであれば、質を維持した上で、物として早く世の中に出ていく と。そういったことについてもこの検討会でご議論いただければということでございます。 ○永井座長  いろいろご意見がある確認申請についても、まさに花井委員が言われる何を確認してい るのか、どういう理由で必要なのかということ、もう少しご説明が必要だと思います。ま た次回でもその資料を。 ○宇津企画官  分かりました。 ○永井座長  よろしいでしょうか。  そうしましたら、今日お出しいただいた議論を少し整理して、何を議論するのかと。そ れから、どこがゴールだということを、ちょっと次回、最初に整理した上で議論したいと 思います。  それでは、事務局から連絡事項をお願いします。 ○宇津企画官  どうも活発な議論をありがとうございました。  今後の予定ということで資料5としてお配りしておりますけれども、次回は6月24日、 木曜日を予定しております。次回の内容でございますが、再生医療学会、それから、この 検討会の委員である阿曽沼委員、それから小澤委員、並びに先ほどの確認審査の話もござ いましたが、その実務をやっております医薬品医療機器総合機構、こちらのほうから説明 をいただき、またご議論をいただきたいと考えております。  以上でございます。 ○永井座長  それでは、本日はこれで終了させていただきます。  どうもありがとうございました。 (了) (照会先)03-3595-2431(直通)      03-5253-1111(代表) 医薬食品局審査管理課 企画官 宇津(内線4223)