10/04/12 第11回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録 第11回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専 門委員会 ○日 時 平成22年4月12日(月)15:00〜 ○場 所 合同庁舎4号館1階共用第108会議室 ○出席者 【委 員】 永井委員長、梅澤委員、佐藤委員、澤委員、鹿野委員、中内委員       中畑委員、西川委員、本田委員、山口委員 【事務局】 田邊専門官、宮田専門官 ○議 事 1.「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の改正案について  2.その他 ○永井委員長 時間になりましたので、第11回「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直し に関する専門委員会」を始めさせていただきます。事務局より、出席の確認をお願いいたします。 ○事務局 委員の先生方におかれましては、ご多忙なところご出席いただき、誠にありがとうござい ます。お手元の委員名簿をご覧ください。本日の出席をご確認いたします。本日は、位田委員、高坂 委員、町野委員、水澤委員、武藤委員からご欠席との連絡をいただいております。全委員15名のうち 10名の委員がご出席される予定になっております。過半数を超え、本会議は成立していることをご報 告申し上げます。また、本日、本田委員は中途退席されるとのご連絡をいただいております。以上で す。 ○永井委員長 次に、配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 配付資料について、説明いたします。議事次第にありますように、議事次第、座席表、委 員名簿、資料1、資料2、資料3、資料4を用意しております。そして、ドッチファイルにまとめられ ている参考資料1から10と、過去の専門委員会の配付資料は机上にのみ用意しております。過不足等 ありましたらお知らせいただきますよう、お願いいたします。 ○永井委員長 前回、第10回の委員会では、現行指針の見直しの個々の論点についてご議論いただき ました。今日は、前回の議論に続きまして、さらに議論を深めていただきたいと思います。議論の進 め方について、事務局よりご説明をお願いいたします。 ○事務局 前回の委員会の主な意見については、資料1にまとめております。資料1は、前回の会議で 大体まとまった内容について記載されております。1つ目としては、健康被害に対する補償について、 臨床研究指針に書かれている「保険その他の必要な措置」という記載を使っていくのがよいのではな いかといったご意見がありました。  次に、研究の公開の方法として、基本的にデータベース登録を臨床研究指針に準じて行っていきま しょうといったご議論です。そのほか、臨床研究の経過観察について、特にこういった再生医療とい うのは造腫瘍性が懸念されることなどもありますので、長期のフォローアップが必要である。さらに、 その症例の課題と蓄積として、情報を集積すること、今後どのように進めていくかということは、さ らに検討が必要だろうといったご意見です。  指針の対象となる幹細胞の範囲について、これは資料2で改めてご説明いたしますが、細胞の由来は 幹細胞、体細で、最終的にそれらは調製されて、最終調製品としては幹細胞、体細胞だけでなく、赤 血球などの血球なども広く含める必要があろうといったご意見でした。  最後に、特に幹細胞の安全性について、マウスの細胞を使った場合のレトロウイルスの混入が懸念 されるということで、特別な配慮はやはり必要だろうということは記すべきであるといったご意見が ありました。特に今回の指針の内容としては、1314号通知も本指針に書き込む。実際には、最低限の ミニマムリクワイアメントという形を示していくことで、ヒト幹の臨床研究が迅速かつ適切に進めら れることを期待すると、しっかりと示していくべきだろうといったことは意見が出されました。  次に資料2についても説明いたします。先ほど説明した幹細胞の範囲について、資料2を用いてまと めました。ヒト幹細胞を用いる臨床研究というのは、皆さんがいちばん典型的に想像されるものとし ては、幹細胞に何かしらの調製をして、臓器・組織と同じようなものを作って、移植投与をすると。 つまり、幹細胞からAという矢印で右のほうに移る。調製という段階を経て、最終調製物を作成して、 それを投与するというものが、いちばん典型的であることで理解は得られていると思います。現状と しては、Bの範囲にあるように、幹細胞、特に体性幹細胞のようなもの、もしくは幹細胞を豊富に含む 集団を直接、移植投与する場合も、今回の臨床研究に含まれるだろう。さらに、今回追加され明示さ れる要件としては、ある程度分化した細胞からでも培養などの調製工程を経て、最終調製物を作る、 そういうものが移植投与される。つまり、白抜きの矢印Cに当たるような幹細胞もあるだろうというこ とで、典型的な幹細胞とは言い切れないと思いますが、今回のヒト幹細胞指針の中には、そういった 分化細胞から調製するようなものも含めていくことになります。ただし、細胞移植のような、つまり 分化細胞をほとんど調製しない。あとで指針の中で説明しますが、最小限の操作という遠心などとい った操作だけをして投与するような場合は、今回の指針の対象からは外していきましょうというよう に、意見をまとめております。  次に、資料3、資料4の説明をいたします。資料3は、第8回の委員会で意見がまとめられた「新規 のヒト幹細胞を用いる臨床研究についての意見のまとめ」を示しております。こちらは、あとでまた 説明をいたします。  資料4として、いままでのさまざまな議論を基にして、事務局で作成しております、新旧対照表の (案)を提示いたします。先ほどの資料3の「新規のヒト幹細胞を用いる臨床研究について」の内容に ついても、資料4には書き込んでおります。資料3と資料4については、改めてあとで説明いたします。 以上です。 ○永井委員長 本日の議論の前に、事務局から提示のあった資料1および資料2について、ご確認をい ただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○中内委員 ちょっと確認したいのですが、補償について、「保険その他の」と書いてあるのは、こ れは保険に必ず入らなくてはいけないというわけではないですね。 ○事務局 これは臨床研究の倫理指針と横並びになりますので、保険があるようなときはもちろん保 険でということで、保険ができないようなものの場合には、それ以外の必要な措置を行っていただき たいという意味です。 ○中内委員 わかりました。資料2で、分化細胞、指針の対象外と書いてありますが、ここから矢印が 出ていて、幹細胞のほうに白い矢印があるのですが、これは何か意味があるのですか。 ○事務局 これは、左の上にiPS細胞とあるのですが、典型的なiPS細胞は多分化能があるものと定義 がされております。この分化細胞から幹細胞に矢印があるものは、ダイレクトに未分化性を獲得する ものです。多分化能を持たなくても増殖能を獲得するような細胞も、iPSのような細胞ということで、 最近作製されてきていると聞いております。そういう者を、この矢印は示しております。 ○中内委員 わかりました。そうすると、指針の対象外というのとは関係なく、矢印が付いていると いうことですね。 ○事務局 典型的な指針の対象外というのは、分化細胞をそのまま調製工程を経ないで、ただ投与を するものを明示しております。 ○中内委員 例えば骨髄細胞は、どちらに入る。幹細胞を豊富に含む集団に入るのですか、それとも 分化細胞。 ○事務局 幹細胞を豊富に含む集団に含まれると、これも明記するようにしております。 ○永井委員長 程度問題みたいなところがあるのですが、よろしいでしょうか。またあとで議論にな るかもしれませんが、とりあえずご確認いただいたということで、次に資料3と資料4について、事務 局からご説明いただけますか。 ○事務局 資料3から説明いたします。資料3は、「新規の幹細胞を用いる臨床研究についての意見の まとめ」として、第8回の委員会でまとめられたものです。これは主にES細胞やiPS細胞を想定して 議論していた段階で作られたもので、今回のES、iPS細胞を含む指針に書き込むことを想定しておりま す。  それぞれの内容について、簡単に説明します。ミニマムリクワイアメントとして、最低限の危険の 排除は現行の指針に従うと。さらに、調製工程でフィーダー細胞などを新たに使う場合について、配 慮が必要であることを書き込みましょうといったご議論がありました。また、新たな幹細胞を用いる ときには、現行の研究体制だけでは不十分なところがあるということで、いくつかの点についての記 載の追加が必要だろう。特に被験者、患者団体との意見交換などが必要だろうといったこともあり、 そういった内容もそれぞれの矢印に示す位置に書き込んでおります。  次に、有効性の証明は以前のとおりです。特に最後の安全性に対する配慮が、かなり濃密な内容に なっていると理解しております。まず、造腫瘍性の懸念がある場合には、それを否定するための適切 な動物実験を用いて否定してください、といった内容も書き込んでおります。目的外の細胞の混入を 避ける。それぞれの細胞の特異性に応じた評価方法を定めてくださいといった内容。そういった内容 は、常々技術の進歩はありますので、それに従って反映させていってくださいといった内容を、それ ぞれ第2章が主になりますが、記載を追加しております。それは資料4のなかで説明させていただきま す。  資料4について説明いたします。だいぶ長くなりますが、もし途中ででも何か変だと思われることが あったら、発言していただいて構いませんので、よろしくお願いいたします。資料4ですが、「『ヒト 幹細胞を用いる臨床研究に関する指針』新旧対照表(案)」と提示しております。右側に、現行の指 針の内容が書いてあります。左側に、その指針の改正の案ということで、並べて記載しております。 下線部は特に変更のあった部分ということになります。1頁から説明しますと、1頁に目次が書いてあ ります。もともと1から4までありましたが、今回は第5として「対象となるヒト幹細胞等」というこ とで、幹細胞の種類をなるべく明らかにするように記載を追加しております。  次に、基本原則の順番について、一部変更があります。こちらの変更は、特にヘルシンキ宣言に基 づいて、初めには第1として序文から用いたもの、次に治療に結び付いた2、3といったものが順番に 並べられております。4、5、6、7は、すべての医学研究に共通な事項ということで、順番を一部改め ております。  第2章に入ると、4として研究責任者に加えて総括責任者を設けております。これは特に採取と調製、 それから移植投与という段階を、1つの臨床研究機関だけではなくて、複数の研究機関で行われるとき に、いくつかの多施設の共同研究になる。その時点で、すべての研究を総括する責任者、おそらくは 移植投与される機関になるのではないかと思いますが、そういった機関の責任者を総括責任者という ように明らかに明示をして、その責任者が全体の総括をすると。さらに、大臣への意見を求めるとき には、その方のその施設から意見を求めていただくような形になります。また、データベース登録と いった責務も、すべての機関でやる必要はなく、その総括責任者の責務というように改めております。  次に変更になっている場所は、第3章、第4章、第5章のヒト幹細胞の採取と調製と移植投与といっ た段階については、前回の澤委員の意見に基づいて、大幅に修正がなされて、かなり理解しやすいも のになっていると考えております。それぞれの項目について説明いたします。2頁の第1章総則、第1 には目的があります。目的については、このヒト幹細胞臨床研究は、臓器機能再生等を通じて、国民 の健康の維持並びに疾病の予防、診断及び治療に重要な役割を果たすものであるということで、特に 変更はありません。臓器の機能再生ということで、再生医療を目的としたものであることが明記され ていることを確認しております。特に再生医療という部分に関して、後のほうでまた追加の語句が一 部ありますので、第1章の第4の所で、また改めて説明いたします。  次に、用語の定義について、特にヒト幹細胞という所に変更があります。原則としては、ヒト幹細 胞は自己複製能と多分化能を有するヒト細胞をいうということで、典型的な語句が記載されておりま す。さらに、それぞれの幹細胞については、中畑委員の意見に基づいて、細則を用いてヒトの体性幹 細胞、ヒトES細胞、ヒトiPS細胞を十分に理解しやすい形で記載をしております。こちらをご確認い ただいて、わかりにくいところなどありましたら、是非ご意見をいただきたいと考えております。こ れは、原則のヒト幹細胞の定義をこちらに書いております。対象となるヒト幹細胞は、5頁の第5に 「対象となるヒト幹細胞等」ということで、別に設けて説明を記載しております。  また元に戻りまして3頁です。研究責任者の下の欄に、「総括責任者」という定義を付け加えており ます。「採取、調製及び移植又は投与の過程を複数の機関で実施するヒト幹細胞臨床研究において、 研究者及び研究責任者に必要な指示を行うほか、ヒト幹細胞臨床研究に係る業務を総括する研究責任 者をいう」ということで、これは採取から投与の過程を複数の機関で行うときだけに、特別な総括責 任者という定義を付け加えております。それ以外の1つの施設で行われるときは、従来どおり、研究責 任者に研究の総括責務をしていただきます。  次に、13の調製ですが、ここで「ヒト幹細胞等に対して、最小限の操作、ヒト幹細胞の人為的な増 殖、細胞・組織の活性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変操作、非細胞・組織成分との組 み合わせ又は遺伝子工学的改変操作等を施す行為をいう」というように、かなり具体的に記載をして おります。あえて「最小限の操作」と、なかなかわかりにくい言葉もありますので、最小限の操作に ついては細則に詳しく記載しております。原則、細胞本来の性質を改変しない操作のことを「最小限 の操作」と記載しております。  4頁に移ります。第3の適用範囲について、「この指針は、第4に規定する対象疾患等に関するもの であって、第5に規定するヒト幹細胞等を、疾病の治療を目的として人の体内に移植又は投与する臨床 研究を対象とする」と記載しております。「ただし、次のいずれかに該当するものは、この指針の対 象としない」ということで、現行の指針では細則がなかなか分かりにくいところがありましたので、 ここをなるべくクリアにするような形で、(1)としては「安全性及び有効性が確立されており、一般的 に行われている医療行為」を指針の対象外にする。(2)としては、「薬事法における治験」も指針の対 象外とするというように記載しております。現行の指針である[2]の「胎児から採取されたヒト幹細胞 を用いる臨床研究」は、場所を5頁の第5の2項に移動しているということです。  また戻って4頁の2ですが、細則です。現行の指針では2の細則の所に1と2があって、1は「指針 が施行される前にすでに着手され、現在実施中のヒト幹細胞臨床研究については、この指針は適用し ないが、できる限り、この指針に沿って適正に実施しなければならない」といった項目は、27頁の第6 章第2の施行期日に移動しているということです。  5頁の第4、対象疾患等です。いちばん初めの目的の所で臓器機能再生を謳っておりますが、ここで も改めて「ヒト幹細胞臨床研究の対象は、病気やけがで失われた臓器や組織の再生を目的とするもの である」ということで、この指針は再生医療が目的であることを明記しており、そういった疾患が対 象になることを記載しております。2番目として、今回ES、iPSなどの新規の幹細胞が含まれることを 特に考えて、「初めてヒトに投与されるヒト幹細胞を用いる臨床研究については次に掲げる要件のす べてに適合するものに限る」ということで、(1)、(2)、(3)は現行の指針にある内容と全く同じです。 ですから、今回のヒト幹細胞の指針は、対象自体は臨床研究が普及してきたことについて、かなり拡 大してきている。ただ、新しく投与される幹細胞の種類に従って、現行の指針と同じような対象疾患 がかなり細かく規定されているという内容になっております。  続きまして、第5は「対象となるヒト幹細胞等」ということで、「ヒト幹細胞臨床研究において被験 者に移植又は投与されるヒト幹細胞等は、次に掲げる細胞等とする」ということで、先ほど資料2で説 明した内容がそのまま書かれています。1つ目は、ヒト幹細胞及びこれを豊富に含む細胞集団といった もの。(1)、いまの細胞集団もしくはヒト幹細胞を調製して得られた細胞及び血球ということで、血球 も含まれるということにしております。(3)を先に説明します。「採取時に既に分化しているヒト細胞 を調製して得られた細胞及び血球」も、指針の対象に入る(ただし、最小限の操作のみによる調製は 除く)。ですから、細胞本来の性質が変わらないような分化した細胞を用いる研究、つまり細胞移植 と従来から言われているものは、今回のこの指針の中には入らないという記載になっております。  先ほどの(2)の細則ですが、ここのところは特にご意見をいただきたいと思います。1として、ヒト 胚の臨床利用に関する基準は現在まだ定められておらず、ワーキンググループでこれから検討してい きましょうということになっております。その基準が定められるまでは、ヒトES細胞を用いる臨床研 究は実施しないこととさせていただきたい。2番目としては、ヒトのiPS細胞を用いる臨床研究は、細 胞の提供者に移植または投与を行う場合に限り、実施されるものとする。つまり、自己のiPSのみが対 象となるであろうと記載しております。同種のiPSについては、その安全性をはっきりと確認する方法 などを明示した上で、研究を推進していくように考えております。  第6の基本原則ですが、ここは多少順番が変わっているというところと、2番目の有効性・安全性の 確保で、適切な実験により得られた科学的知見に基づき、有効性・安全性が予測されるものを対象と して、治療により得られる利益が不利益を上回ると予測されるものでなければならないという説明に なっております。  6頁の「情報の公開」で、一部、変更があります。「ヒト幹細胞臨床研究はデータベースに登録され、 その情報は適切かつ正確に公開されるものとする」というように、基本原則として書いております。 この具体的な内容、詳細については、10頁の第2章3の「研究責任者の責務」の(8)です。「研究責任 者は、あらかじめ、登録された」から「この限りではない」までの文章と、細則の部分は臨床研究の 倫理指針の内容をそのまま記載しております。  7頁に戻ります。研究の体制で、一部順番が変わっているところがありますが、内容としては(2)、 「研究者等は、ヒト幹細胞臨床研究を実施するに当たっては、一般的に受け入れられた科学的原則に 従い、科学的文献その他の関連する情報及び十分な実験結果に基づかなければならない」。このあと に書いている所は、資料3の特に「安全性に対する配慮」という部分で検討されたところが多いのです が、「原則として、移植又は投与されるヒト幹細胞は、動物実験等を用いてその有効性が十分期待さ れ、かつ、その作用機序が明らかにされている」というところまでまとめている。「さらに、新規の 幹細胞を用いるヒト幹細胞臨床研究を実施するに当たっては、造腫瘍性を含む安全性に対する特別な 配慮をしなければならない」と、新規の幹細胞についてはさらに付加的な条件が書いてあります。  細則として、新規の幹細胞を用いるときの安全性に対する特別な配慮が細かく記載されております。 (1)として、有効性が期待されるヒト幹細胞以外の細胞の混入を避ける。(2)として、被験者に移植又 は投与する細胞の特異性に対応した、個別の評価方法を定める。(3)としては、造腫瘍性の懸念がある 場合には、適切な動物実験に基づいてそれを否定することが求められる。これは新規の幹細胞を用い るときの安全性の特別な配慮を細則に記載しております。また、(5)として、研究者等は、新規のヒト 幹細胞を用いる臨床研究を行うときには、多領域、複数の領域の研究者等との十分な検証を行い、さ らに患者団体等の意見に配慮しなければならないというところを付け加えております。  9頁の「研究責任者の責務」で、現行のヒト幹指針では、研究責任者というのは、1件のヒト幹細胞 臨床研究について1名の研究責任者という書き方でしたが、新たに複数の臨床研究機関が合わさること も考えると、それぞれの研究機関に1名の研究責任者が必要であるということになりますので、今回、 研究責任者はヒト幹細胞臨床研究について、研究機関ごとに1名、必要ですということで、体制をしっ かりと整備していただきたいということになります。  一部、変更がある所は、(3)の細則の部分です。研究責任者はヒト幹細胞臨床研究を終了するまでの 間、危険の予測、安全性の確保の十分な情報について把握し、さらに経過観察の方法やその危険の予 測や安全性に対する対処方法を定めなければならないということを追加しております。そのほかは、 研究責任者の責務としては大きな変更はありません。ただ、9頁の(6)に「研究責任者は、実施計画書 に次の事項を記載しなければならない」ということで、臨床研究の名称、役割等々は記載することに なっております。その中で、[16]として、現行の指針では「ヒト幹細胞臨床研究に伴う補償の有無」を 記載するということでしたが、改正案では「被験者に生じた健康被害の補償のための保険その他の必 要な措置」を研究計画書に記載してくださいということで、委員会の意見を反映しております。  また、(7)としては、実施計画書に資料を添付しなければいけない。その内容について[1]から[7]まで あります。「その他必要な資料」が(8)として、新たに設けてあります。その中で、「研究責任者は、 あらかじめ、登録された臨床研究計画の内容が公開されているデータベース」等々のこの書きぶりは、 臨床研究の倫理指針と同様の内容のものになっております。所々に研究機関の長、研究責任者以外に、 総括責任者の責務が追加されておりますので、語句が一部追加になっております。  11頁の(17)に、研究責任者は「治療による効果及び副作用について適当な期間の追跡調査その他必 要な措置を行うよう」という記載があり、その部分に「移植または投与されたヒト幹細胞に由来する 腫瘍の発生が懸念される場合には、長期の経過観察が求められる」ということです。この長期とはど のぐらいの期間か明示できませんので、「長期の」という記載にしております。  次は変更点として13頁に移ります。(22)として「採取、調製及び移植又は投与の過程を複数の機関 で」行う、つまり総括責任者がいるような場合は、総括責任者が研究責任者の一部の責務を担当する ことができるということで、(8)についてはデータベース登録の責務を研究責任者から総括責任者に委 任することができるということになります。総括責任者の責務としては、項目1に書かれておりますが、 原則としては研究機関の長に依頼して報告などをする。最終的には、それが厚生労働大臣に申請、報 告等が来るという部分の責務を担当することになります。また、先ほど説明したデータベース登録に ついても、総括責任者がその研究を総括するという形で記載しております。  次に、5「研究機関の長の責務」に移ります。あまり大きな変更はありませんが、15頁の(5)「重大 な事態における措置」で、大事なことですので、こちらは明らかに追加の部分があります。特に複数 の臨床研究機関で行われることも想定して、この辺は追加記載があります。重大な事態における措置 として、[1]は「研究機関の長は、3(11)の規定により研究責任者から重大な事態が報告された場合には、 原因の分析を含む対処方針につき、速やかに倫理審査委員会等の意見を聴き、研究責任者に対し、中 止その他の必要な措置を講ずるよう指示しなければならない」ということがあります。今回、複数の 機関で行われる場合、重大な事態が報告されたときには、それらの[1]の措置をすべて講じて、さらに 当該臨床研究等を実施するすべての研究機関の長に対して、こういった重大な事態の報告をして、ま た講じた措置についても周知しなければいけない。さらに、(6)以降の研究機関の長の責務は、複数の 医療機関で研究を行う場合には、共同でその責務を全うしなければいけないという記載がされており ます。どのようなことを共同でやらなければいけないかということは、(6)から(12)までということで す。研究責任者からの報告があったときには、適切な報告を受けて、それをすべて聴取する。または 倫理審査委員会の報告も、共同でやってくださいということ。厚生労働大臣への報告も、すべての研 究機関の長が共同でやっていただきたい等々の内容が記載されております。  (13)として、「厚生労働大臣への報告等の委任」は、先ほどの複数の医療機関で1つの研究をされる。 採取から調製と移植又は投与という過程が複数で行われる臨床研究の場合は、意見を聴く場合等々、 厚生労働大臣への報告をするなどのときは、総括責任者から申請を受けた研究機関の長がその責務を 全うしてなさればよろしいという内容にされております。  17頁の「研究機関の基準」は、一部変更があるだけです。採取を行う機関については、特に変更は ありません。調製機関については、現行の指針では(2)の[1]、「調製機関は、次に掲げる要件を満たす ものとする」という所で、「医薬品の臨床研究の実施の基準に関する省令」ということで、17条第1 項をそのまま書いております。わかりやすく記載をするということで、左のほうに「調製されるヒト 幹細胞調製品の特徴に応じ、ヒト幹細胞の生存能力を保ちつつ無菌的に調製できる構造及び設備を有 していること」という説明書きに、修正されております。そのほか、取り違えが起こらないような配 慮等々の追加事項があります。大きな変更はありませんので、第1章、第2章については、以上のとお りです。  3章、4章、5章は、ほとんど前回の澤委員からのご説明があったとおりになりますが、主に1314号 通知という「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保につい て」の通知を、文字で書き出して分かりやすくしている。場合によっては追加の記載があり修正され ている所は、下線を引いてある所の大きな変更です。特に4章では、かなり大きな追加事項が出てきて いるということになります。5章については、あまり大きな変更はありません。6章として、見直しと 施行期日という所があり、この辺は今回の指針ができ次第決定します。施行期日の下の細則は既に説 明しましたが、既に行われている臨床研究は、現行の指針が出てから行われたものはその指針に従っ ていただければよろしいですし、その以前のものは指針の適用ではないのですが、できる限り指針に 従って適正に実施していただきたいという内容が記載されております。以上です。 ○永井委員長 いまの資料について、またご説明について、ご質問・ご意見をお願いいたします。中 内委員どうぞ。 ○中内委員 第1章の5頁で、「ヒトiPS細胞を用いる臨床研究は、提供者の移植又は投与を行う場合 に限り実施される」と書いてありますが、これはガイドラインの安全性とか、そういうことはいいの ですか。これはかなり研究内容に踏み込んだ細則だと思うのですが、何かここに理由があるのでしょ うか。要するに、ドナーに対してだけ移植できるということを決めなくてはいけない理由はあるので しょうか。 ○事務局 どうして自己だけが対象になるのかという内容です。これは、今回自己と限定させていた だいているのは、これが同種となって、複数の医療機関、複数の患者に提供されるというときには、 かなりリスクが大きくなってくるというところです。特にイメージしているのは、ほかの人にかなり 広く分配されるようなものの場合は、おそらくマスター・セル・バンクの設定が必要だろうと。そう いった調製物の以前の段階で、ある程度の評価が必要になるのではないかと考えており、その段階で の評価基準を検討しなければいけないと考えております。したがって、その部分の評価をどのように してやりましょう、どのようにして多くの施設に分配しましょうというところを定めていかなければ、 その辺は使うのはリスクも多いと理解されるということで、合意をいただいていると考えています。 もちろん、これはすぐ駄目だということではなくて、そこの部分ができ、その内容についての検討が 終わって、このような指針に従っていけばいいだろうというものが出来上がり次第、この細則は1、2、 両方ともに外れていくだろうと考えております。ですから、これはあえて細則という形で書いており ます。 ○西川委員 中内先生の話で言えば、マスター・セル・バンクとMHCマッチのalloを使うというのと を同一視しないほうがいいのではないか。例えば自分の細胞を使うように、いま臍帯血バンクなどで、 これから大量な廃棄が行われようとしていますが、ああいう細胞を1人の患者さんだけに使うというこ とはあるわけですね。マスター・セル・バンクの場合は、確かにいま事務局がおっしゃるように、か なりしっかりとしたバンクとしてのクオリティというか、要件を精査する必要があると思いますが、 普通の例えばautoの細胞をalloから作るというケースもあるというのは、やはり議論しておかれるほ うがいいかなという感じはしました。それは先生のほうで何かいろいろ考えたのですか。どうなので すか。 ○中畑委員 確かに、いま事務局のご心配は、マスター・セル・バンクを通じて作ったiPS細胞を不特 定多数というか、非常にたくさんの方に投与するという場合には、いまのこの指針以上のかなり厳格 な安全性が担保される必要があると。もしその細胞が問題のある細胞であるとすると、いろいろな問 題が多くの患者さんに生じてしまう危険性があるということで、その場合は今回の議論に加えての新 しい、さらにもう少しどういうところをクリアすればいいかということも、いま議論が必要だろうと いったことだと思うのです。  いま西川先生が言われた、ある限定された患者さんに対して、alloの他人の細胞なのだけれども、 その細胞を使って、ある限定された1人の患者さんにそれを作って投与する場合には、マスター・セル ・バンクでの考え方と、その場合は1人の患者さんに投与しますので、別に区別して、今回のこの指針 に含めるかどうかを議論する必要があるのではないかというご指摘だったと思うのです。非常に重要 な点で、確かにその点についてはここで議論する必要があると思います。 ○中内委員 iPS細胞の利用ということには、本質的な理解が欠けているのではないかと思うのですが、 例えば遺伝性の疾患を持っている人がiPS細胞を作っても、そのiPS細胞では遺伝子矯正しない限りは 治療できないわけです。そのように考えると、このようなルールが最初から生きてしまうと、本当に 限定された利用しかできないです。例えば我々が考えている血液細胞を作るということも、本人しか 投与できないので、最初から全く意味がなくなってしまいます。確かにルールができるまではという ことは分からないではないですが、臨床治験をやるわけではないので、臨床研究レベルですから、こ こまで細かなルールを書かなくても、これは当然国の審査があるわけですので、その段階だって十分 に止めることはできるはずです。このような細則は要らないのではないかと私は思うのですが、どう でしょうか。 ○西川委員 これは書きぶりを変えることが大事で、たぶん先ほどの説明だと、事務局はマスター・ セル・バンクのことを考えられていますから、そこに関してはやはりかなりきちんと品質が、たくさ んの方に提供できるだけのものがあるのかどうかというのは、当然の要件として調べる必要があると。 ただ、いま中内先生がおっしゃったような、1つのalloの細胞を限られた人間というか、ほとんど1 対1で使われるようなケースに関しては除外しないような書きぶりがいいのかなという感じはしますけ れども。 ○永井委員長 具体的にはどのような書き方でしょうか。 ○西川委員 ヒトiPSを用いる臨床研究は、多くの治療に用いるバンクを必要とする場合に云々という 感じですかね。その場合は、現時点では除外する。マスター・セル・バンクを別に定めるというのは、 この辺はちょっと。 ○永井委員長 多くの患者さんに使うときは、了解できるということですね。 ○西川委員 これはバンキングを含まないという話にしたほうがいいと思うのですよね。ですから、 バンキングが必要なケースに関してはということですかね。 ○事務局 基本的には、いまマスター・セル・バンクの議論もあったわけですが、この辺に関しては、 iPS細胞というものが京都大学でできて、これをいかに臨床研究において開始していただくかという観 点に関して、我々事務局でも相当の議論をしました。まず1つに関しては、患者さんがいて、重篤な疾 患で代替治療がないという状況において、自分の細胞を取り出してiPS細胞を作ってですね。ただ、こ れに関してはやはり造腫瘍性等、なかなか評価が難しいという場合が残ると思います。iPS細胞を用い る臨床研究というのは、実際にはなかなか開始されないだろうとは推測しております。ただ、それに 関して患者さんが造腫瘍性等のリスクをある程度受け入れた上で、自己に関して臨床研究を開始する ことに関してはどうだろうということで、このような記載にしているという状況です。 ○中内委員 いまマスター・セル・バンクを作ったというか、大量に使うので、そのリスクがいろい ろな人に及ぶというところが1つリスクで挙げられているのだと思うのです。もう1つは、マスター・ セル・バンクを作るというのは、ある意味で非常に解析ができるという、別のメリットもあるわけで すね。例えば1人の個人で投与するときの造腫瘍性の評価はものすごく大変な話になってしまって、実 際に使うときまでに造腫瘍性の評価ができないかもしれない。そういう意味では、マスター・セル・ バンクを作るというのは、ウイルス安全性も含めて、評価ができる可能性があるわけです。そういう 片一方だけで評価をしてしまうと、マスター・セル・バンクを作ったら、安全性が本当に悪いのかと いう話は、私はこれは別の話だと思うのですね。別段セルバンクを作るからといって、安全性が急に 悪くなる話ではないと思うのです。大量に投与されるという一面はもちろんあるのですが、それなり の評価はマスター・セル・バンクでできるわけですから。 ○中畑委員 おそらく将来的にはそういう方向になると思うのですが、いまのうちは例えばあるiPS細 胞が作られて、その時点で造腫瘍性もこういった方法で評価したら安全だということで、そこで一旦 クリアすれば、そのことをもってして、多くの患者さんにその細胞が使われるということは、まだそ の段階まではいくべきではないのではないかということなのです。いまの間は、どうしても必要な症 例があった場合に、その患者さんの状態とか緊急性とか、いろいろなことを配慮して、マスター・セ ル・バンクに相当するものであったとしても、その都度評価をして、安全性を確かめて、他人のもの であっても使ってもいいというところまで踏み込んでいくか。私自身は1つずつの症例について、きっ ちり検討して使うのであれば、他人の細胞であっても使ってもいいのではないかという考えですけれ ども。1回そういうことをやれば、多くの人に普遍的に使ってしまうという事態は、現時点では避ける べきだと。そういうことではないかと私自身は考えますが、いかがでしょうか。 ○中内委員 造腫瘍性ということを言うのであれば、我々がやっている血小板とか赤血球はラディエ ーションしてから投与しますので、問題にならないですね。一方で、autoのほうがalloよりも安全だ と考えておられるようですが、造腫瘍性を考えれば、私はalloの投与を最初にやったほうが、最初の うちは安全であって、そこで安全性を確かめてからautoでやらないと、免疫が全く拒絶しない状況で 腫瘍性のある可能性がある細胞を投与するというのは、むしろ危険であると考えることもできると。 いろいろな考えがあるのでしょうけれども、こういったことはルールとして書くよりは、折角、委員 会をやるのですから、その場で検討すればいいことであって、安全性も含めて、そうすればいいこと ではないかと私は考えます。 ○事務局 基本的には、我々もそこのところが駄目であるという話ではなくて、そこの他人の細胞か らまた違う人に投与するというところに関して、どのようなルールを使ってやったらいいかという部 分を、またワーキンググループ等で議論していただきたいと考えております。同種と自分の細胞と、 リスクに関してはどっちがいいとか悪いとかいうのではなくて、自分の細胞を用いて自分の体に返す という状況においては、そのリスクに関してある程度重篤な疾患とか、その疾患のところを考慮して 受け入れられ得るのではないかといった意味で、そういった記載にしていると。 ○永井委員長 いかがでしょうか。ただ、他家をどうするかということですね。澤委員どうぞ。 ○澤委員 やはり考え方としては、alloのiPSはESと近い考え方の扱いでいいのかなと思うのです。 これは「限り」という言葉は結構強いので、ヒトiPS細胞は自己しか使えなくて、他家は全く使えない ような印象になりすぎている。そこは強すぎると思いますので、1にヒトES細胞の用いる基準と同等 に、他家のiPSも含めるような表現で、2は自己のiPSという表現にしておけば、どちらにも可能性を もたせて、こういう細則としてもふさわしいように思うのです。文言はそこで考えればいいと思うの ですけれども。 ○永井委員長 ちょっとわかりにくいようですが。 ○澤委員 alloのiPSとヒトESは、1のほうでまとめて表現する。2は自己のiPSについての表現にす るということでどうかと思うのです。 ○西川委員 ついこの前、文部科学省、経済産業省の方と山中さんの所で議論したいろいろなケース で言うと、臍帯血から、例えばある方のためだけにiPSを作って、マスターバンクも何も経ずに治療に 使うというケースが、やはりあるのではないかと。それはこの前議論したのですが、そういうケース に関して言えばautoとあまり変わらない。安全衛生確認から何から、緊急のスケールに至るまでauto とあまり変わらない。しかも、基本的にはツーミスマッチまでであれば、ほとんど現在日本である臍 帯血でカバーされているということから考えると、実際にはあるかなという議論をしたので、こうい うものが排除されていいのかどうかは、一度議論されたほうがいいのかなと思いましたけれども。 ○中内委員 このallo細胞のほうは、単純に理解すると自分のiPS以外を使った多能性幹細胞の治療 はできないということになりますので、これはおかしいなと思いますけど。 ○西川委員 それは書きぶりですよ。 ○中内委員 もう少し内容をよく理解していただいて、いろいろな人が納得がいくような書き方にす るべきでしょう。言おうとしていることは大体わかりますので、書きぶりを考えていただければと思 います。 ○永井委員長 何かいいアイディアがありますでしょうか。 ○鹿野委員 例えば、その時点で得られているリスクに関する情報及び、使用される対象の範囲等を 考慮してとか、使用を検討するとか、そのような感じでいかがですか。 ○事務局 書きぶりに関しましては、皆さんの意見を参考にさせていただきまして、また検討をさせ ていただきます。 ○永井委員長 どなたか具体的に文章を言っていただきますか。 ○事務局 はじめ事務局で一応提示させていただいたのは、研究の段階は「自己」「同種」、「同 種」になってもマンツーマン、あとは複数にどんどん広がっていくというので、いちばんわかりやす いところというところで分けました。「自己」と「同種」であるというところは、もう皆さんご存じ だと思いますので、ただ、もうマンツーマンしかいかないという定義をここできちんときれいに入れ ていただいて、そこまでは許容できるだろうというご意見は理解できます。できましたら書きぶりも 示していただきたいというふうに考えております。 ○西川委員 実際に国の大きな方針として、その標準化とバンキングというものがかなりお金もかけ て議論されているわけです。それは厚生労働省も文部科学省も、経済産業省も同じですから、そうい う特別たくさんの方に使っていただくという標準化のあり方と、それから、1回ずつの臨床研究に使う というものを、もう少しうまく言葉で表わすというのができれば。それはいつもそういう議論を文部 科学省などともしていますから、当然その中でやっても全然問題はない。 ○永井委員長 具体的な文章を言っていただけるとありがたいのです。 ○西川委員 私、いろいろエグザンブルを挙げて、中内先生も是非、何かこの書きぶりだろうと思い ます。でも、何も入れないというのはちょっと。 ○事務局 例えば基本的にとか、原則とかという言葉を入れさせていただいてということでは、いか がでしょう。例えば原則として提供者に移植または投与を行う場合というふうな書き方では。それに 類似するようなものは、対象に含める様に。 ○西川委員 それも難しいでしょう。 ○事務局 基本的に鹿野委員をはじめ、いただいた文言を少し盛り込みまして、例えばヒトiPS細胞を 用いる臨床研究は提供者に移植または投与を行う場合等、現在用いられる情報や資料等を鑑みという ような形の記載を少し加えさせていただいて、このような記載ぶりを、あまり限定にならないような 形で書くと。そのような感じでさせていただきたいと思いますけど。 ○西川委員 クエスチョン・アンド・アンサーでいくという。  ○永井委員長 いかがですか。現在得られる情報に則りとか何か入れるということですね。それで大 丈夫でしょうか。少し曖昧な感じがしますが、少しファジーにしておいたほうがいいのか。 ○中畑委員 例えば当該患者に限定して作成された他人由来のiPS細胞も可能というような感じの文章 にしてもいいかとは思うのですけれども。ある特定の患者さん用に作ったiPS細胞は、自分から作った のとほとんど変わらないというような議論がいまありましたが、そのiPS細胞が非常にたくさんの患者 さんにも使われてしまうということは、まだ現時点ではストップするということですので、当該患者 に対して作成された他人由来のiPS細胞は可能とするというような感じのことにしておけば、一定の限 定された範囲の他人の細胞も使えるということになると思うのですけれども、どうですか。 ○事務局 基本的に中畑委員のその辺のことも踏まえながらと考えますが、先ほど山口委員からも出 ましたように、要は他人の細胞を用いるときに、誰か違う他人に投与する場合に、何人までいいのか といったときに、結局それがまた不特定多数にまで至るような状況もございますので、結局そこまで いきますと、マスター・セル・バンクというような話も出てきて、その辺の基準というか境目が難し いものですから、基本的には先ほど鹿野委員がおっしゃってくださったのは、私は非常にいい表現だ なと思ったのですが、いまある基本的な情報をすべて総合して、それに鑑みて考えるという形で、基 本的にはもちろんいまのこの文言で、提供者に移植または投与を行う場合等というところに、また鹿 野委員の文言を少し混ぜまして、その投与部分に関してはいまの情報を総合して考えるという記載に させていただこうかと思っています。 ○西川委員 具体的なケースに関しても、いくつかその例としておくって、こういうものをたぶん想 定できるだろうと。しかし、あまり複雑なことを考えなくても、実際には個人の治療として、1つの細 胞が使われるというケースは、実際に行われているのですね。例えば骨髄移植も何も含めて。実際に ドナーになる方がどういう方がおられるかという話になると、たぶん骨髄移植のように登録制がしっ かりしているもの以外は家族であったりあるいは臍帯血で、その枠の中でやることと、それからいま おっしゃったように、大量の血液、輸血ですね。ああいう事業とは区別するということで、どこで線 を引くかという引き方だけではないかと思いますので、いくらでも協力します。 ○永井委員長 それでしたら、その文章を事務局に送っていただいて、私と事務局で少し整理させて いただいてよろしいですか。先生方何人かにお伺いすることがあると思いますが、そしてパブリック コメントへ持っていくということにしたいと思います。 ○西川委員 これ、たまたま読んでいてずっと気がついていたのですが、これも書きぶりで、すぐ下 の基本原則なのですが、有効性及び安全性の確保に関して、原則であるのでいいとは思うのですが、 治療により得られる利益が不利益を上回ると予想されなければならないというのは、医療ではその治 療全体、いわゆる一般的な治療の内容に関してはそうだろうと思うのです。ただし、例えばフェーズ1 であるとか、それからダブルブラインドであるとか、そういう問題も全部含まれてきますから、この 原則が例えばいろいろなトライアルに参加される一人ひとりの個人の利益という話に転換してしまう と、かなり難しい問題になるのではないか。  例えば例を言いますと、ずっと昔、中畑先生のところのお手伝いをしたときに、臍帯血増殖させて 治療に使う。患者さんは当然いろいろな骨髄アブレーションしているわけですから危険なのですね。 それがうまく起こらなかったら危険ですから、その場合に普通なら有効量とはまるきり違う低いドー ズをほかの臍帯血と一緒に混ぜるというプロトコールが考えられたことがあって、そういう場合も基 本的に細胞自体は有効性を期待していなくて、その安全性を調べるということになるので、これ自身 がジェネラルなものですよ、いわゆる一般的な概念の問題ですよ、あるいはデベロップされた治療方 法自体が当然科学性あるいは科学的な妥当性をもっていなければならないですよというふうに読んで いただくようにしないと、あらゆる安全性のとかいうのはできなくなるのではないかという心配をし ます。 ○永井委員長 個々のケースについては全くわからないわけですね。これはあくまでも全体の統計学 的な話だということですね。 ○事務局 西川委員のご指摘も非常にごもっともだと思います。いわゆる治療に得られる利益が不利 益を上回ると予測されなければならないという文面に関しましては、今回はそれに関しては盛り込ま ないという形、いわゆるその誤解が生じないようにという形でさせていただこうかと思いますが、い かがでしょうか。 ○永井委員長 除くということですか。 ○事務局 はい。 ○中内委員 もう1点、今回これまであまり議論をしていなかったのですが、対象疾患等でヒト・胎児 から再生型幹細胞を用いる臨床研究がこの指針の対象としていないというふうにありますが、一応、 日本再生医療学会からも声明を出したのですが、最近、海外では死亡胎児由来の幹細胞を用いた臨床 研究が非常に進んでいて、もうフェーズ1が終わっているところもあります。  これまで非常に稀な遺伝性の疾患を対象としていたのですが、最近ではALSとか脳卒中とか、かなり 一般的な病気に対しても、死亡胎児由来の幹細胞を投与するという治療も始まっている。そういうこ とを考えますと、やはりいつまでもこれをタブー視せずに、特に胎児からは非常に質のいい幹細胞が とれるということもありますので、もう少し積極的にこういった細胞を対象にすることも考えてはい いのではないかなというふうに私は考えます。 ○永井委員長 いかがですか。 ○事務局 ご意見があったところですが、この件に関しましては倫理的な問題があってこの委員会だ けでは決めることはできないので、もう少し大きな枠で決めないといけない、もっと法整備などの議 論をしなければいけない問題です。今回、先生からご意見をいただきましたので、そういった内容で 議論が必要であるということを、報告書にしっかりと記載させていただきたいと思いますので、是非 そういった形で進めさせていただければと思います。ご理解いただきたいと思います。 ○西川委員 中畑先生もおられますけれども、実際には前回の委員会で、この問題1点で少なくとも2 年以上、いろいろな問題が議論をされざるを得なかったということがあるので、やはり事務局がおっ しゃるように、かなり慎重に進めるしかないと私は思いますし、実際にそれを文部科学省もほかの省 庁も一応遵守しているという状況にありますので、当然、議論は進めていただかなければならないと 思いますが、簡単に文言で済むという問題では絶対ないとは、実感として思います。 ○中畑委員 いま西川委員が言われたように、この問題でもう2年ずっとかかっています。この死亡胎 児の問題は、一応切り離して指針を作るということで、最終的にそういう方向には進んでしまいまし た。その2年間の議論というのは、宗教論から始まってさまざまな生命観に関わる問題もありますので、 いますぐこの場でこれをまた議論をしてというと、ある程度の期間が必要になりますので、それは今 回切り離して議論をして、今回はこの対象の幹細胞の範囲を広げるとか、あるいは多施設でもできる ようにするとか、いろいろな面がありますので、それを先行させて指針として早く出すべきではない かというのが私の意見です。 ○山口委員 これが遅れるのを避けるという意味ではそのとおりかもしれません。ただ、先ほど中内 先生がおっしゃった死亡胎児の件に関して、本当に海外でやられていて日本だけがやらないというこ とをあらかじめ宣言してしまうのもどうかと思います。また並行してやっていただければいちばんあ りがたいなと思います。 ○永井委員長 そういうことでよろしいでしょうか。 ○鹿野委員 同じ5頁の第4の1です。過去に議論をされていたのかもしれませんが、確認をさせてい ただきたいのです。病気やけがで失われた臓器や組織の再生を目的とするものであることと一応規定 されておりますけれども、例えば骨髄の間葉系幹細胞を骨髄移植のGVHDの治療に用いるとかという例 がございまして、そういう場合は再生というよりは生体機能のモジュレーションみたいなものを目的 としたものもあるのですが、そういうものは含まれなくなってしまうということでよろしいのでしょ うか。 ○事務局 確認ですが、再生医療のモジュレーションとして用いるということは具体的にどのような 内容でしょうか。 ○鹿野委員 生体機能のモジュレーション。例えば免疫機能とかそういうところです。 ○事務局 これは病気やけがで失われた臓器や組織の機能の再生も一応この中に含めると考えており ます。例えば間葉系細胞の移植をする人が、間葉系機能が喪失しているというような場合ですと、も ちろん再生医療という形にも入れ得るのかなと思いますが。 ○鹿野委員 そのケースは同種のものなのですが、メカニズムもちょっとよくわかっていないもので、 そういうものもあるので、この記載だとあてはまらない場合も出てきてしまうかなと思ったのですが、 基本的には含まれるということであれば、文言の整理で対応いただければいいのかなと思います。  ○西川委員 実際にご指摘の点は重要だと思います。再生ではなくて例えば免疫寛容であるとか、さ まざまな、ちょっと想像もできないような間葉系の幹細胞の使われ方というのが諸外国ではどんどん なされていくという現状があるので、特に間葉系に関しては梅澤先生もご専門ですが、何か再生だけ に絞るというのは、若干問題があるのではないかなという感じが強くします。 ○永井委員長 例えば再生や機能回復ということでしょうか。 ○西川委員 そうですね。機能回復あるいは生体機能の回復とかそういうのでしょうね。 ○永井委員長 それでよろしいでしょうか。 ○事務局 基本的には鹿野委員のおっしゃるとおりでございまして、再生医療の範囲というのは、何 かしらフワフワとしたような、そんなような言葉なのですよね。基本的にはこれに関しましては、我 々もQ&Aで是非ともその辺は対応したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。 ○澤委員 6頁の情報の公開のところで、データベースに登録されと、ヒト幹細胞臨床研究はというデ ータベースは、10頁にも同じ記載、(8)の研究責任者は、あらかじめ、登録された臨床研究計画の内容 が公開されているデータベースに当該研究に係る云々とありますが、このデータベースは一緒のこと ですかね。前のほうと同じような記載にしたほうが親切かな、もしくはQ&Aでもいいのですが、ここだ け突出して括弧で書かれているというのが、ちょっと奇異に感じるので、統一していただけるか、Q&A で書いていただけたらというふうに思います。  10頁の赤字で書かれた補償のところなのですが、ヒト幹細胞臨床研究での補償というのは、特に保 険というのが難しいのは事実で、この記載も「その他の」というところで保険以外のことでもいいと いうふうなニュアンスでというのは、この前の議論でもあって、臨床研究の指針のとおりに記載とい うことだと思うのですが、これも是非Q&Aでその辺りしっかり解説をしていただけたらと思います。ま あ、保険ということを残すなら、そこはしっかり書いていただきたい。ほとんどのヒト幹細胞のファ ースト・イン・マン的な臨床研究には保険は難しいというのが現状だと思います。 ○永井委員長 保険その他のという書きぶりを除いてしまっていいかというところですね。 ○澤委員 除いていいかどうかという議論もあるとは思うのですが、これは、前回もして、指針どお りに表現するということであれば、Q&Aがかなり必要だろうと思います。  ○永井委員長 事務局よろしいでしょうか。 ○事務局 この辺は佐藤委員の意見も聞きたいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○佐藤委員 前回、私この点については黙っていたのですが、さらに前の回に一般の臨床研究の場合 と、ヒト幹細胞の臨床研究の場合と、少し性質が違うのではないかということを申し上げ、それは一 般の臨床研究の場合には被験者というのは手段として用いられるという性質が強いのですが、この場 合にはまさにそのヒトの治療を目的とするという意味では手段性がそれほどないので、臨床研究の指 針で書くほどは補償等の措置を強く求めなくてもいいのではないかというのが1つと。  もう1つはヒト幹の場合には、いま澤委員もおっしゃったように保険がおそらく組めないだろう。組 めないことを書いておくということの意味ですね。それがどの程度の意味をもつかということと、も う1つは、この書きぶりの場合にやはり保険が第一選択であって、保険が使えない場合にその他という ふうに読まれてしまうと、保険がないということが実質的に障害になるというおそれがあるのではな いかなという懸念を私はもっているのですが。 ○永井委員長 むしろ保険という言葉を除き、何らかの方法でなどと記載した方がいいかもしれない ということですか。 ○澤委員 必要な措置とか、何らかの必要な措置。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○事務局 ヒト幹細胞の臨床研究に関しましては、実際なかなか民間の保険が組みにくいという現状 があろうかと思います。実際それが問題になって、なかなか臨床研究が開始されないことも懸念され るという状況でございまして、澤委員、佐藤委員の意見にありますとおり、もし保険という言葉を削 除ということであれば、削除するというふうに考えていますが、いかがでしょうか。 ○梅澤委員 法律の専門家に教えていただきたいのですが、ヒト幹は臨床指針の中にありますよね。 臨床指針のほうで保険を規定しているのに中にあるほうが緩いというのは、法令的に大丈夫ですかと いう質問でございます。 ○佐藤委員 私が法律の専門家かどうかと言われると。基本的に臨床研究指針というのは原則を定め ているもので、これは改正前のいちばん最初にできた臨床研究指針を見ると明らかなのですが、あく までも原則を定めるものだと。臨床研究にはいろいろなタイプのものがあるので、それに応じて多少 は変えていいというスタンスであったと思うのですね。ですから、このヒト幹はもちろん臨床研究指 針の中にあるものですけれども、特殊性に応じて性質が変わるということは、私は説明ができるので はないかなという気がいたしますが。 ○梅澤委員 どうもありがとうございます。第6章の雑則のところで、第1の見直しについて事務局に 教えていただきたいのです。Q&Aにつきましての手続というのは、どのようになるのかということです。 また、この本文の見直しについてはまた改めてこの同じ手続が必要なのでしょうけれども、細則の変 更については同じような手続が必要なのかどうか。一般事務手続に関する質問でございます。 ○事務局 まずこの指針の大枠のところは、皆さんご存じのように、省の告示となります。細則につ きましては局長通知という形で提出されます。Q&Aに関しては研究開発振興課長の通知でございます。 ○梅澤委員 ありがとうございます。 ○事務局 先ほどの順番に少し脱けてしまったところですが、澤委員の意見から全部説明させていた だきたいと考えております。データベース登録のほうから順番に説明させていただきます。データベ ースのいちばん初めに出てくるのは5頁から6頁にかけての部分です。これは5頁を見ていただけばわ かるように、第6、基本原則と書いておりまして、基本原則の内容について、ここには簡略化して書い ている。その内容が具体的に詳しく10頁に書かれています。なお、その10頁の記載の内容については 前回の委員会の中では臨床研究の倫理指針と同じくデータベースまで詳しく書くほうがいいだろうと いうことで、これも皆さんのご意見だというふうに理解していますので、このまま記載しております。 これがもしある程度必要がないのではないかということでしたら一部を削除することも、確かに検討 はできるというふうに考えています。  次に補償の問題につきましては、これもやはり大変難しい問題だというふうには理解はしておりま す。原則として前回の委員会の中でのご意見としては、先ほど法令的にというか、臨床研究の指針の 大枠にあってということのご意見で、そのままにしておりました。今回の委員会でそういったご意見 であるということでしたら、また調整することは可能だと考えております。ここである程度の意見の まとめをしていただければ、それをまたメールなどで今回ご欠席の先生にもご連絡をしたうえで、ご 相談をさせていただきます。また個別にこちらから相談をすることももちろん可能であります。  最終的にはこれはまたパブリックコメントをいただいたあとに、委員会でもう一度議論をしていた だいて、結論を出すことになりますので、どうしてもこの委員会で決めなければいけないというわけ ではもちろんございません。ですから、ご意見を皆さんにいただければ調整いたします。 ○永井委員長 そういうことでよろしいでしょうか。今日、全部決める必要はないのですが、大体の とりまとめをしてパブリックコメントを受けて、さらにもう一度確定することにしましょう。 ○山口委員 5頁のところ、先ほど少し議論になっていたその下なのですが、第5の対象となるヒト幹 細胞等の(3)ですが、「採取時に既に分化しているヒト細胞を調製して得られた細胞及び血球」になっ てしまっているのです。これが対象になるとすると、資料2で書かれているいわゆる分化細胞が対象に なるように見えてしまうのですけれども。いろいろ議論があって、こういうふうになったものは対象 外にするというふうになっていたかと思うのですが、この部分はかなり限定した分化細胞でしょうか。 ○事務局 分化細胞を更に調製して得られた細胞や血球は対象です。加工のプロセスがあるものは含 まれるという前回のご意見だったと思います。 ○山口委員 例えばリンパ球をエクスパンジョンしたりしたら、それはたぶん調製にはなると思うの ですけれども、そういうのは前回対象にしないという話。 ○事務局 リンパ球の話はまたちょっと別の話になります。対象となる細胞とはまた別の部分で、対 象疾患のところでそれは外れるという話でございます。 ○永井委員長 培養して継代しているような場合には、それは対象になるというふうに理解していま す。 ○山口委員 次に、27頁のいちばん上のところの細則の部分なのですが、前回のまとめでここの部分 を少し議論したことを書いていただいて、ここの部分がそのままにはなっています。もとの書きぶり になっているのですが、もし可能であればその前回の議論を受けて、例えば「共培養を実施する場合 には、そのウイルスの伝播等のリスクを十分把握しなければならない」というような文言を入れてい ただければありがたいなと思うのです。 ○永井委員長 あとはいかがでしょうか。 ○鹿野委員 7頁の上の第2章、研究の体制等の第1(2)です。赤字の最初のほうですが、2行目の後ろ から「その作用機序が明らかにされていること」と、明記されているのですが、先ほどの間葉系幹細 胞などもそうですが、作用機序がわからないけれども効くという場合もあるので、なかなか難しい部 分もあるかと思いますので、例えば「有効性が十分期待されること、かつ、その作用機序が可能なか ぎり明らかにされていることが望ましい」と、そのような感じでいかがでしょうか。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。ほかにご意見がございませんか。 ○西川委員 いまのご質問についてなのですが、例えばこの上のほうで、「作用機序が明らかにされ ている」という、その機序といったときの含みの難しさというのがありますね。例えば作用が明らか にされているということと、機序と言うとかなりいろいろなことがしっかり分かっていないと駄目に なってしまうので、いま鹿野委員がおっしゃった部分に関しても、作用機序まで分かっていなくても、 作用が動物実験でしっかりと分かっているということであれば、たぶんいいわけですよね。 ○鹿野委員 もしかすると動物でも難しい場合はあるかもしれませんが、可能なかぎり明らかにされ ていることが望ましいと、全体でいってもいいのかなと思うのですが。 ○中畑委員 その作用機序について十分検討されているとか、明らかにというと全部でないと駄目な ので、十分検討されているぐらいの言葉にしておいたほうがいいのではないかと思います。 ○永井委員長 合理的な説明があるかどうかということですね。そのほかはいかがでしょうか。もし よろしければいまのご意見を踏まえて、一部はご発言いただいた先生方にもう一度確認のメールはお 送りいたしますが、最終的なとりまとめは事務局と私のほうでさせていただいて、パブリックコメン トにかけ、その上でまたこちらの委員会でご議論をいただくというふうにしたいと思います。 ○澤委員 前も最後に議論をさせていただいたのですが、資料1の最後のところに書いています「その こころ」というものですね。どこに明示していただけるかというのは、もう一度検討をしていただい たのかどうかを、ちょっと確認させてください。  いちばん最後の「幹細胞の安全性について」ということで、「1314号通知を本指針に書き下し」云 々というところで、「迅速かつ適正に臨床研究を推進されることが期待される」という、そのことを 前文に書くのか、前文は相応しくないとしても、改正の趣旨としてどう示していただけるのか。もし くはこの本文の中にその表現等を散りばめていただけるかどうかですね。   ○永井委員長 事務局いかがですか、これはどこに現時点では入っているか。 ○事務局 これは記載場所を探したのですが、現時点ではなかなか適切な場所がなくて、まだ入れて はおりません。いちばん書きやすい所は改正の趣旨として書くのがいちばんいいのではないか。どう いったことかといいますと、今回指針を改正するに当たって1314号通知を引いていた部分を、そうい った内容でしっかりと書き下すことで、臨床研究が推進されると。ですから改正をしたことで研究が 推進されるということを改正の趣旨として記載をしていきたい。  改正指針が出されるときに、改正指針のはじめの所に、通常ですと局長通知として、こういった趣 旨で改正がなされておりますという解説が付きます。その中でそういった今回の指針の改正のところ では、こういった趣旨が取り込まれて改正されたものであるということが明文化するように、いま整 理をしていたところでございます。 ○澤委員 この前と同じご回答ですが。 ○事務局 基本的に個々に関しましては、皆さんの意見が非常に参考になりまして、迅速かつ適正に ということで、いわゆる章にわたって散りばめられている言葉で、例えば患者団体等に配慮してやる とか、あるいは重篤な疾患において、まず新しい臨床研究は開始されるべきであるとか、そういうと ころに盛り込まれておりますので、そういったところでまず「こころ」が入っているのかなというふ うに理解をしています。 ○澤委員 いまのその辺りの表現について、もう少し強く表現していただけると、適正とか迅速とか そういう表現。 ○事務局 おっしゃるとおりです。その辺の記載の表現ぶりに関しましては、また検討をさせていた だきたいと思います。 ○澤委員 では、可能でしたら、そういう文章の中にもそういう表現を入れていただきながら、局長 通知の最初のところにも強くそのことを明記していただければありがたいと思います。 ○事務局 具体的に本文中ではどこのところを想定されているか。 ○澤委員 対象疾患の表現とか、それから研究体制ですか。5頁の対象疾患等の表現の辺りとか、それ から7頁の研究体制等、この辺りで、その辺りを明記していただいたらどうかと思いますが、私もまだ 具体的には検討しておりませんので、また相談をしていただければと思います。 ○永井委員長 文章の中に入れるよりは、全体をカバーするような形で書いたほうがいいのではない かというのが、前回の議論だと思いますが、そういうことでよろしいですか。それではそのようにご 意見をいただいて、少しメールでやりとりさせていただき、最終的には委員長にご一任いただければ ということにさせていただきたいと思います。その他、事務局から何かありますか。 ○事務局 最後になりますが、今回指針の改正に当たりまして、指針の名称について事務局からご相 談させていただきたいと考えております。現行の指針は「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指 針」として策定されておりますが、今回指針の対象範囲なども明らかにするといった作業をしており まして、できれば指針の名称の中に再生医療の語句を是非組み込めればと考えております。確かに再 生医療という語句が曖昧かもしれませんが、曖昧の中でもできる限り具体的にするということで、例 えばですが「ヒト幹細胞を用いる再生医療臨床研究に関する指針」などというふうに、そういった対 象を明らかにその指針の名称の中に組み込んでいきたいと考えているのですが、皆さまご意見をいた だけましたらと思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。先ほど機能回復という話も出てきましたね、いかがでしょうか。 ○澤委員 再生医療に限定してしまうほうがいいということですか。 ○事務局 そうですね。 ○鹿野委員 先ほどお尋ねした生体機能の回復とかも含めようとすると、タイトルで再生医療とあま り限定してしまうと、ちょっと違うかなという気はしたのですが。 ○事務局 再生医療というのは臓器や組織の構造または機能を回復するというふうに通常は言われて いると理解しています。ですから、もし機能が失われたものを戻すという考え方は、再生医療にその まま入るのではないかというように考えています。 ○山口委員 再生幹細胞でいまやられようとしているのは、造血幹細胞の定着を促進するとか、そう いうのはどこか機能がないわけです。基はそうなのですけれどもNSCの役割はそれではないわけですね。 例えばクローン病に適用するという場合などは、全くそういうのは違うので、もしそれを入れるとし たら、再生という言葉で括るのはあまり適切ではないなという気がするのです。 ○事務局 基本的にその再生医療という言葉が非常にフワフワしているということは事務局でも認識 しているところですが、要は何を意識しているかというと、例えば癌の細胞免疫療法であるとかいっ たものを対象にするのかというようなこともありまして、基本的には再生医療に係るものを推進して いくという形で、もちろん鹿野委員のおっしゃること、山口委員のおっしゃることも、もちろんQ&Aに 反映していきながら考えていきたいと思いますので、このような題名とさせていただいているところ でございます。 ○永井委員長 しかし、中の条文では生体機能回復ということは謳っているわけですね。これが英語 のリジェネレ−ションにそういう生体機能回復という意味が入るかどうか。 ○山口委員 たぶんセル・セラピーと言わないとわかりにくいとは思うのですね。それで再生医療の 意味でも使うと向こうは限定して受け取るとは思う。 ○永井委員長 そうすると、あえてリジェネレーションと言っているわけではないということですね。 ○山口委員 中身的には違いますよね。 ○事務局 ですから、逆にいうと、セル・セラピーと思ってしまうと、今度はまた一部、これは入ら ない対象疾患とか出てくるわけですね。ここを明示したいということが本意なのですが。 ○山口委員 もう1つはセル・セラピーの、もう1つ括弧書きでかかるのは、ステムセルを使うという ところがかかってきて、それで免疫療法は入らないということになっているのだろうと私は理解をし ているのです。 ○事務局 ステムセル・ベイスト・セラピーでしたら、もっと狭い範囲、かなり限定される。今回の 議論ですと本当のステムセルではなくて、もう少し広い範囲にしましょうということですので、そこ を明らかにしたい。さらに全細胞すべてを対象とするわけではございません。対象に入れることには あまり意味がないとか、逆に入れることでわかりづらくなるとかということでしたら、もちろん入れ ないように検討いたします。 ○西川委員 苦労のほどはよくわかります。即ち癌の免疫療法がこれほど普及しているわけですから、 それ自身を含めてしまうことの混乱というのは確かにわかります。ただ、将来的に考えると、例えば いま鹿野委員がおっしゃった間葉系の細胞とリンパ球とか、そういうものをみんなミックスして入れ たりとかということが、どんどん行われていくのではないかなという話になってきますから、そのど ちらも歩み寄ってくるのではないかなと。ですから、サイトカインで組織再生をきたすというよりも、 さらにもっと高いレベルの研究は結構進んでいることを考えると、あまり再生医療に絞らなくてもい いというのが私の感覚で、今すぐにではないけれども、必ず寄ってくると思いますよ。  ○事務局 基本的にはその辺も重々理解していまして、将来的には厚生労働省全体として、その辺り について対応していく必要はあるというふうに我々も考えております。 ○永井委員長 そうすると、いまのままでもいいかという感じですが、事務局よろしいですか。中に はかなり明確に規定していますから、誤解はいままでよりは少なくなるのではないかと思います。  ご意見ありがとうございました。それではただいまのご意見を反映させまして、ご欠席の委員にも ご意見をいただいた上で、改正指針案を事務局で作成いただいて、これからどうするかですが、事務 局からご説明をお願いします。 ○事務局 ありがとうございました。本日のご意見を基にして、改正指針案を作成し、その後、メー ル等にてご確認をさせていただきます。また、ホームページ上でパブリックコメントを募集いたしま して、さまざまなご意見を広く頂戴いたしたいと考えております。その後、その内容をまとめた上で、 再度、本委員会で委員の先生方の日程調整をした上で次回の開催を予定いたしますので、追ってご連 絡を申し上げます。 ○澤委員 そのパブリックコメントの期限というのは、大体の日程はいつごろですか。 ○事務局 今回メールとかで意見が回った後から、1カ月間パブリックコメントをすることになります。 ○澤委員 では、4月後半ぐらいから。 ○事務局 4月後半ぐらいからというふうに。 ○澤委員 1カ月間のパブリックコメントになり、その次の委員会はその以後になるということですか。 ○事務局 そうです。 ○永井委員長 それでは本日の委員会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。 照会先:医政局研究開発振興課 田邊(2545)