10/03/25 第3回特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会議事録 『第3回特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会』 議事録 日時:平成22年3月25日(木)13:30〜15:30 場所:厚生労働省白金台分室 大会議室(3F) ○水津高齢者支援課長 第3回の「特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検 討会」を始めさせていただきたいと思います。 本日は、足元の悪い中、御参集いただきまして、ありがとうございます。 なお、樋口座長が、先週の段階で、今日の会議は御欠席という御連絡をいただいておりましたが、今 週になりまして、本日遅れて御出席をされる予定ということで伺っております。樋口座長がいらっしゃる までの間、樋口座長の方からのお話で、司会進行を木村光江委員にお願いしていただきたいというこ とでお話を賜っております。そういう形で進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと存じ ます。 それでは、木村先生、お願いいたします。 ○木村委員 それでは、御指名でございますので、私がしばらくの間、司会進行をさせていただきたいと存じます。 どうぞよろしくお願いいたします。 本日の議題ですが、「特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方 について」ということでございます。 では、初めに、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○川口高齢者支援課課長補佐 事務局でございます。 資料は、資料1から資料5まであると思います。ざっと資料全体の御紹介をさせていただいた後で、資 料1の方をまず御説明させていただきたいと思います。 まず、順に資料1から見ていただきますと、資料1は横長のポンチ絵でございますが、これはこれまで の検討会の検討の経緯を簡単にまとめたものでございます。後ほどまた御説明いたします。 資料2が、今回、報告書として取りまとめようとしている、実施についての概要を簡単にまとめたもの でございます。 資料3が、まさに今回御議論いただく報告、取りまとめの案でございます。 資料4が、今回取りまとめるに当たりまして、モデル事業を実施いたしました。その概要でございます。 資料5が、モデル事業全体の検証した結果といいますか、報告書でございます。 まず、資料1の方を私の方から御説明させていただきたいと思います。これまでの検討の経緯でござ いますが、これは御案内のとおりでございますが、この検討会ということで昨年の2月12日に立ち上 げまして第1回を開催、6月10日に第2回を開催したというところでございます。 この第2回の検討会におきまして、特別養護老人ホームにおける様々な医療行為、医療的ケアの中 で、行為の危険性、あるいは夜間に行う頻度、こういったものを考慮しまして、(1)口腔内たんの吸引、 それから(2)胃ろうによる経管栄養、これについて、看護職員と介護職員の役割分担をしっかり整理し た上で試行的に行うと、そういうモデル事業を実施することとされたところでございます。 それを受けまして、特別養護老人ホームにおける連携によるケアの在り方に関するモデル事業という ものを実施いたしております。やり方としては、以下に書いておりますように、まず、各特養の指導看護 師、指導的立場にある看護師に対して、集まっていただいて研修をし、その後、各施設におきまして、 指導看護師の方から介護職員に対して研修を行う。更に、その指導のもとで、介護職員が実際に口 腔内吸引、それから胃ろう、これを9月から3か月ほど実施した。最後に、その結果を検証するという 形で行ったということであります。 詳しいこのモデル事業の状況といいますか、結果につきましては、後ほど御説明、御報告いただくこと になっております。 以上でございます。 ○木村委員 ありがとうございました。 それでは、今、御紹介のあった特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケア の在り方に関するモデル事業の実施結果について、同事業の委員会の座長をされていた太田秀樹先 生にお越しいただいております。太田先生の方から御報告をお願いできますでしょうか。 ○太田秀樹氏 太田でございます。 ただいまより、特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する モデル事業委員会の報告をさせていただきます。 昨年の6月に第2回の本検討会の協議の結果を受けまして、7月と8月にモデル事業の委員会を開 催し、研修プログラムや教材等について検討いたしました。9月から全国125施設、ここで連携による ケアの試行を実施していただき、その結果を取りまとめましたので、御報告いたします。 モデル事業の概要につきましては資料4、詳細につきましては、この冊子でございますが資料5の報 告書をごらんになっていただきます。 まず、資料4に沿って御説明申し上げます。41都道府県の125か所の特別養護老人ホームにおいて 実施されたモデル事業につきましては、まず、主な要件といたしまして、特別養護老人ホームでの勤 務経験年数が通算概ね5年以上の常勤の指導看護師が連携によるケアを試行するものであります。 連携によるケアを試行する介護職員は、施設長、配置医等と相談の上で特定いたしまして、連携によ るケアの対象となる入所者には、施設長が説明し、同意(文書)を得ることとなっております。 実施方法でございます。指導看護師養成研修といたしまして、先ほど申し上げました指導看護師が東 京におきまして12時間の研修を受講し、その後、各施設に戻り、連携する介護職員と介護職員へ施 設内研修を14時間実施した後に、連携によるケアを試行するものであります。 連携によるケアの内容につきましては、口腔内の吸引については資料4の3ページ、そして、胃ろうに よる栄養管理につきましては資料4の4ページをごらんいただきます。こちらの内容につきましては、 本検討会、第2回の検討会でお諮りになったと伺っております。詳しくは割愛いたします。 検証方法につきましては、口腔内の吸引と胃ろうによる栄養管理を適切に実施できたか、そして研修 のプログラムや教材の適切さに関する課題を明らかにすることを目的で、全数調査を行い、様々な質 問票を回収し、施設訪問による実技評価やヒアリング、指導看護師の有志らとモデル事業委員5名ら による意見交換等も開催いたしました。 次に、2ページ目の結果についてごらんいただきます。実施状況につきましては、公募のあった全国 141施設のうち129施設が選定され、そのうちで125施設が事業を終了されました。先ほどの要件の ところで、指導看護師として、特養での勤務経験、通算概ね5年以上ということでございましたが、例 えば実際に2年7か月勤務であっても、その他の高齢者施設で1年6か月以上の勤務経験があるとい うような看護師も含めるなどして選定いたしております。詳細につきましては、資料5の7ページをごら んください。 また、連携によるケアを試行した介護職員は、一施設当たり平均3.5人でございます。この介護職員 の方々につきましては、選任の要件など特に規定はいたしておりません。回収いたしました調査票に よりますと、介護福祉士資格取得者が87%、約9割ですね。通算経験年数が5年以上という方が 66.5%、約3分の2を占めた結果でございました。おそらく、介護職員の選任に際しては、知識や経験 を加味して人選がなされたと推測されます。 一番問題の安全性でございますが、安全性に関しては、ヒヤリハット、アクシデントの発生時には報告 を求めておりました。救急救命処置を要するような事例の報告はございませんでした。報告の主な要 因は、忘れ、知識不足といった内容が大半を占めております。 具体的な事例などの詳細は、資料5の報告書の58ページからごらんいただければと思います。ここに はヒヤリハット、アクシデントの報告が具体的に掲載されております。非医療従事者である介護職員の 方々が3か月間に及ぶ連携によるケアの試行中に、報告なしの施設が3分の2を占めております。こ れは報告基準を各施設が従来からお使いになっている基準に則るとしたことから、施設側の判断に任 せたということで、ばらつきはございます。 これは施設ごとの安全性に対する認識の違いがあらわれたものであろうと推測いたしますし、何らか のリスクを予測する感受性に差があったということも言えるかと思います。したがいまして、ここら辺に 今回のモデル事業の課題は残るものでございます。 今後は、ヒヤリハットの事例の蓄積、分析など、配置医や施設長、看護師の参加のもとで、施設内委 員会を設置して、定期的に実施するような体制で、個々の事例の検討、評価、検証することが重要に なってくると考えられます。 プロセスの評価については、介護職員の自己評価、看護職員の他者評価両者によって、口腔内吸引 及び胃ろうによる経管栄養が「介護職員が1人でできる」という評価に至るには、研修後2か月で約 80%、研修後3か月を経て約90%以上と、月日の経過とともに向上していったとのことです。繰り返し ますが、本人の自己評価も、他者の評価も同様でございます。これは今回のモデル事業において、介 護職員のケアの習熟を図るために濃密な連携体制が構築されていたということではないかと思われ ます。一方で、濃密な連携体制の構築が必要であったということではないでしょうか。 指導看護師52名との意見交換会では、様々な課題が議論されました。従来、看護と介護の関係性が 乏しかったけれども、このモデル事業を契機によりよい関係性が構築できたというような意見も多数聞 かれましたし、看護、介護と職種を超えたチームとしての関係性が深まり、本モデル事業以外のケア において連携強化につながったという感想も寄せられております。 以上が報告の概要でございますが、私は臨床医でございまして、30年ちょっと臨床経験を持ちます。 現在、高齢者の在宅医療に力を入れて、みずからも老健の運営を行う、あるいは特別養護老人ホー ムの嘱託医を引き受けるなどしておりますけれども、現場では大変な混乱がございます。そもそも医師 法17条がつくられました頃には、胃ろうなど、チューブ栄養によって栄養管理が行われて、こういった 方々が長期に生存されているという、こういった事態は想定されていないと思います。胃ろうそのもの は、ここ10年で普及されているわけですね。そこで、おびただしい高齢者がチューブで栄養管理をさ れながら生活されているわけです。嚥下障害があっても、虚弱な要介護高齢者の食事介助は介護の 領域ですが、チューブフィーディングとなれば医療とみなされているわけで、利用者様の誤嚥のリスク や窒息のリスクを考えると、食事介助の方がはるかに危険なわけですね。食事介助が危険であるか らチューブを入れるわけですけれども、今度はチューブを入れると介護ではなくなってしまうということ では大変大きな問題でございまして、食事介助をする以上、こういった議論はここではなされてなかっ たように拝見しますが、食事介助をするということは、同時に吸引の習得というのは介護職が身につけ ておくべきスキルではないかと私は感じております。 法制度上の見直しが不要という話ではございませんが、明日の介護現場での最も現実的な課題の解 決方策を強く願うというものでございます。 以上でございます。 ○木村委員 どうもありがとうございました。モデル事業に当たって大変御尽力いただきまして、ありがとうございま した。何か御質問等あれば、ここで伺ってよろしいですか。よろしいでしょうか。 それでは次に、第1回、第2回検討会における検討やモデル事業の結果等も踏まえて、本検討会の 報告書案を事務局において作成しております。事務局から説明をお願いいたします。 ○川口高齢者支援課課長補佐 事務局でございます。 まず、資料2と資料3でございますが、資料2の方で簡単に概略を御説明いたしまして、その後、資料 3についてちょっと御説明をいたします。 資料2をごらんいただきますと、今回の趣旨を、非常に簡単にではございますが記載しております。趣 旨としましては、この特別養護老人ホームにおきまして、たんの吸引でございますとか、胃ろうでありま すとか、そういう医療の処置が必要な入所者が増加していると。もともとはそうでなかったのに、加齢 に伴って必要になってこられたという方も含めて非常に増加しているという中で、たんの吸引が必要に なっても、引き続き同じ施設で生活を続けられる、あるいは、これから食事介助などが必要になって特 養に入所したいという場合に、それを理由に入所を拒まれないというようなことにしていくことが必要な のではないかということであります。 このたんの吸引と胃ろうでございますが、本来は、言うまでもなく、医師、それから看護職員のみが行 える医行為でございますが、実際、看護職員を多数配置することが困難である、とりわけ夜間におい ては困難であるということにかんがみ、医師、看護職員との連携・協働のもとで介護職員が行うことを 当面やむを得ないという形で許容するということでどうかということでございます。 したがって、この矢印で書いてありますように、法改正とかそういう形ではなくて、これまでもあった違 法性阻却という形による実施ということでございます。 その内容といいますか、実施の条件と言うべきでございますが、につきましては、対象はモデル事業と 同様でございますけれども、(1)口腔内の吸引、それから(2)胃ろうによる経管栄養でございます。 ただ、括弧で書いておりますけれども、胃ろうの全手順ということではありませんで、チューブを接続す るところにつきましては看護職員ということでございます。 それから2としまして実施条件でございますが、まずは、連携・協働ということでございます。まず、ある 入所者について、そもそもこの方に対しては、やはり看護職員でやるべきか、それとも連携する形で介 護職員が実施できるかどうかという判断を、看護職員との連携のもとで配置医が承認するという形で あります。それから実際にどの職員でもいいということではございませんで、実施する介護職員、だれ にするかということについて、これも配置医が承認していくという形で対象を特定するということがまず 1番目でございます。 それから(2)でございますが、すべての行為を介護職員が行うということではありませんで、定期的な状 態確認などなど、一定の行為は医師、看護職員が実施するという形で、連携・協働ということを図って いくというものでございます。 続いて、その右側の医行為の水準の確保というところでございますが、看護職員、それから介護職員 に対する研修をしっかり実施するということでございます。 ここで吹き出しをつけておりますが、モデル事業をやったときには、この水準の確保ということをかなり しっかりやろうということで、まず、指導看護師、その施設内で指導的立場にある看護師に対しては、 まず12時間の研修を行い、更に、その指導看護師が介護職員に対して14時間、施設内研修を行うと いう形でやっております。 今回、違法性阻却という形での実施を想定しますと、14時間だから違法でない、13時間だと違法と、 そういう形だと設定がなじまないということで、そういう条件は設定しておりませんけれども、やはり研 修の重要性ということは、これはこの検討会でもずっと指摘されておりますので、同等の研修実施が 望ましいと。これは非常に重要なことであろうということでございます。 それからもう一つ、上にも吹き出しをつけておりますが、モデル事業の際には、一施設当たり、指導的 な立場の看護師、指導看護師というものを確定していただいて、概ね5年以上、その施設で経験をと いうような形で実施したところでありますけれども、同じように、違法性阻却ということでやるとするなら ば、5年とか、そういった一律の要件ということは義務づけるものではありませんが、やはり介護職員 に指導する、研修をするということにかんがみて、同様の経験が望ましいということでございます。 それから左下の体制整備でございますが、安全性確保のための施設内委員会、その施設の中で定 期的に実施状況を検証するといったような施設内委員会を開催していただく。あるいは吸引などが必 要な方の記録、あるいは個々人ごとにそのやり方というのも変わってまいりますので、マニュアルの整 備というものが必要である。それから(3)としまして、連絡体制でありますとか、そういった緊急時対応 の手順の確認、それから訓練の実施という体制整備が必要であるということでございます。 最後、右下ですが、入所者本人、それから介護職員の同意ということであります。実際、入所者さんに 同意をしていただく。つまり、うちのこの施設では、夜間などの看護職員がこういう状況であるので、介 護職員がたんの吸引を行いますということについて、しっかり施設長の方から説明をしていただいて、 書面で本人が同意をするということでございます。 勿論、ちょっと本文で書いてはおりませんけれども、介護職員さん、本来、医療職ではございませんの で、介護職員に、あなたがやれというふうに押しつけることは当然望ましくないわけですから、介護職 員の方にも、同意といいますか、しっかり理解を求めるということも当然でございます。 以上が概要でございますが、ちょっと概要では押さえ切れていない点を中心に、資料3のほうで若干 の補足といいますか、説明をさせていただきます。 この資料3が報告書案ということで作成したものでございます。一部、事前に送らせていただいて御意 見をいただいて修正したところもございますが、完全には修正できていないかもしれませんのでこれか ら御議論いただきたいと思いますが、この報告書案につきましては、平成16年に盲・聾・養護学校の たんの吸引、経管栄養などを整理したものをかなりベースにして作成をしております。 第1の「はじめに」というところでありますが、ざっと御説明いたしますと、冒頭で特別養護老人ホーム の位置づけを簡単に記載しております。いわゆる「終の棲家」と生活をする施設という位置づけである。 したがって、医師の配置、あるいは看護職員の配置というものはある程度限られているという施設で ございます。 その上で、2つ目の○ですけれども、特養の中での医療的ケアを必要とする入所者が増加していると いう状況の中で、今回の検討ということでございます。 3つ目の○は、平成20年に特別養護老人ホームにおける医療的ケアの実態調査を行ったその数字 を列挙していることでございます。 これはちょっと省略いたしまして、2ページ目でございますが、その実態調査において、冒頭ありますよ うに、実態を見てみますと、夜間、看護職員が手薄という状況の中で、夜間でも特に多いのが口腔内 のたんの吸引、こういったものを初めとして一定の医療的ケアが実施されていたという状況でござい ました。 本検討会では、このような状況を踏まえまして、検討を2月、6月と行っていただき、昨年9月からモデ ル事業を実施したという状況で、そのモデル事業の検証結果も踏まえて今回検討を行ったということ でございます。 第2は、「これまでの経緯」ということであります。現行の法規制、すなわち、たんの吸引、経管栄養は 原則として医行為であるといった話。 それから2番、「学説・判例」としまして、無資格者がこういう吸引を行うことといいますのは、当然、医 師法等に違反するということでありますが、解釈上は違法性が阻却される場合があるということ。これ は判例や通説の認めるところであるということを簡単に記載しております。 続きまして、従来の実務的対応でございますが、過去に違法性阻却という形で対応した例を3つ記載 しております。1つ目が、平成15年、在宅でのALS患者に対するたんの吸引、2つ目が平成16年、特 別支援学校、当時は盲・聾・養護学校でございますが、教員によるたんの吸引等。3番目が、平成17 年になりますが、在宅でのALS以外の療養患者、障害者に対するたんの吸引ということで、いずれも、 分科会でありますとか研究会の場で御議論いただいて一定の整理をし、それを踏まえて行政が医政 局長通知という形で解釈を示した、そういう実務的対応の経緯でございます。 第3が、これからのケアの在り方についての検討結果ということで、まず1が「モデル事業の実施」とい うことでございます。これにつきましては、先ほど太田先生から御報告をいただいたような状況でござ います。大きな救命救急を要するような事故はなかったと。一方で、ヒヤリハット報告について、非常に ばらつきがあった等々の状況をここで記載しております。 総括いたしますと、このモデル事業につきましては、やはり施設ごとの安全性に対する認識、まさに先 ほどのヒヤリハットの認識の相違など、幾つかの課題も指摘されてはおりますものの、モデル事業に おきましては、口腔内のたんの吸引等が概ね安全に行うことができたと評価できるのではないかとい うことでございます。 続きまして、実施要件及び法律的整理ということでありまして、まず1番、今回、介護職員が実施する ケアの範囲ということですが、これは概要でお話ししたとおり、モデル事業と同じと。口腔内吸引、それ から胃ろうによる経管栄養で、ただし、経管栄養のうち、チューブの接続と、それから注入を開始する 部分、これは看護職員が行うということが適当ではないか。 ただし、その前提として、これらの行為について、やはり介護職員が行うということでございますから共 通理解が必要だということで、その標準的な手順、それから医師、看護職員、介護職員の役割分担に ついては、(別紙)という形で9ページ以降にお示ししております。後ほど触れます。 それから(2)としまして、必要な条件ということであります。医療関係者でない介護職員が行うというこ とですから、安全性を確保する方策、これを立てるとともに、責任の所在を明確にする必要がある。そ れから2つ目の○ですが、実施するに当たりましては、誰が実施するのか、どの介護職員が実施する のか、ある職員はどの行為をやるのかという範囲を明確にするとともに、介護職員に対して必要な研 修を行う。それから標準的な手順、それをしっかり踏まえて、医師の指示のもとで実施する必要がある ということでございます。 (3)が「法律的整理」ということでございますが、実質的違法性阻却ということでありますが、過去の判 例を見て、共通に掲げられている条件というのが5つあるということで列挙しております。(1)が目的の 正当性。これは単に個々のたんの吸引が、目的が正当だったかということだけではなくて、もう少し、 たんの吸引自体の客観的な価値を担っていること、そういったレベルまで求められていますが、その 目的の正当性。それから(2)として手段の相当性。続きまして(3)の法益衡量。吸引による、達成される ことになる法益と、それによって侵害される法益との比較ですね。それから(4)として法益侵害の相対 的軽微性。(5)として必要性・緊急性。こういった条件がありますので、今回も、実質的違法性阻却とい うことで説明する上では、これを確認するということが必要であります。 以下、このそれぞれの5つの条件について一個一個検証しているところであります。簡単に申し上げ ますと、1つ目の○で、目的の正当性ということにつきましては、この吸引等を行うことによりまして、そ の入所者の方が介護を受ける機会というものを保証するという意味で、客観的な価値を担っているの ではないか。 それから手段の相当性ということでいきますと、今回、配置医が一定の承認をする、あるいはその他 医療関係者の関与ということで、いろんな条件を守って行われている場合には、医療の安全が十分に 確保され、手段としても相当ではないか。 それから、法益衡量ということについて見ますと、今の手段の相当性、あるいは法益侵害が相対的に 軽微ということと併せて考えれば、バランスという意味でも、法益侵害よりも得られる法益の方が大き いのではないかということ。 4つ目が、法益侵害の相対的軽微性ということでいきますと、今回の措置というのが特別養護老人ホ ームという限定された場所で、しかも、その限定された行為について、医師や看護師さんが、この人な ら大丈夫という形で判断したその介護職員、指定された一定の介護職員が研修を受けた上で行うと いうことでございますので、個々の危険性も少ないということでもありますし、医師法がもともと、法益と いいますか、目指していた、あるいは守ろうとしていた無資格者、本来資格を持ってない方が医業を行 うのを助長するということは、相対的にその危険性は少ないのではないかということでございます。 最後、必要性・緊急性につきましては、まさに、特に夜間を中心に介護職員が行うという、緊急的な必 要性があるということでございます。 以上、5つの条件に照らしますと、医師法17条との関係でも違法性が阻却されるものと考えられるの ではないかということでございます。 第4の「今後の課題」、ここが色々と御議論、あるいは御意見をかなりいただいている部分でございま す。まず1つ目としては、大きな課題としまして、「『医行為』概念の再整理」と書いております。この検 討会では、現行の法規制、法解釈を踏まえまして、口腔内のたんの吸引、胃ろう、こういったものが医 行為であるという前提に立って取りまとめを行っております。 しかし、一方で、口腔内のたんの吸引について、医行為であるけれども、違法性阻却でやむを得ない という整理ですと、(1)として、常に違法性が阻却されるのかと。別に法的に措置しているわけでも全く ないので、違法性が阻却される保証というものがない。介護職員が安心して行うことができないので はないか。(2)としまして、在宅などで行うのと違いまして、特別養護老人ホームというところで、より組 織的に、継続的に、いわば事業として行われるということですから、本来の違法性阻却、個々のケー ス・バイ・ケースで、この場合には違法性が阻却されるというような法律構成と比べると非常に不自然 ではないかということから、不十分ではないかというご意見。 更に、こういうことを踏まえますと、むしろ、たんの吸引については、ある程度研修を受ければ、技術的 には、医師、看護師等でなくても実施できると考えられるということから、こういった行為を医行為から 除外して、ただ、除外しつつ、実施する人には研修を行うという仕組みの方がよいのではないかという 見解がございました。 この見解に対しましては、吸引、胃ろうにつきましては、モデル事業においても一定のヒヤリハット、ア クシデント事例がありましたように、一連の手順の中には実質的な侵襲性を伴うものがある、あるいは 感染予防、緊急時の連絡対応も重要であるということから、技術面だけではなくて、人体の仕組み、病 態、感染予防、緊急時対応についても知識が必要である。したがって、医行為から除外してしまうとい うことになりますと、法制度的には、特段の資格、あるいは研修もなく実施が許されると、そういう制度 設計になってしまうということから、妥当ではないのではないかという御意見がございました。 また、別の御意見としましては、医行為のうち、たんの吸引のような、医療と生活援助の要素を併せ持 つような行為というものについては、一定の条件のもとでは、ある程度の安全性が確保できるというこ とで、従来の医行為とは少し分けて、ちょっと医行為の中のランクを下げるといいますか、区分して、も う少し柔軟な規制によるということ、そういう形での法制度的な対応とすべきではないかといった御意 見もございました。 それから2番目、「実施状況の検証及び必要な見直し」ということでございます。今回のこの整理という ものは、現状、あるいはこれまでの知見を念頭に置いてやってきたということでありますが、特養にお ける吸引などの状況、あるいは高齢者の状況などに応じて、今後、適宜見直す必要があるのではな いかということでございます。 特に、かなり御指摘いただきましたのが、今回の特養のケースといいますのは、かつて、養護学校、特 別支援学校について取り組みを行ったときとは違いまして、養護学校のときにはモデル事業という形 で6年ぐらいやって、学校内の研修とか連携体制等々についてある程度モデルが十分に確立したとい うところがありましたけれども、今回はそこまではいってないのではないかということで、当面の間は、 ある程度の施設内研修を行う看護師に対してモデル事業と同じような形で統一的カリキュラムを用い た研修を行ったり、あるいは全国の実施施設でのアクシデント事例、ヒヤリハット事例を収集するとか、 そういう実施状況の検証、それから各施設で手順を整備するという、そのためのマニュアルとかガイド ライン、これを国や関係団体で協力して整備する、そういう取り組みが必要ではないかということでご ざいます。 最後、3番、「その他」としまして、そこにおさまらなかった幾つかの御意見を記載しております。 1つ目の・でございますが、これは全体的な話としまして、今回は特養で介護職員が実施するというこ とでありますが、施設内で介護職員に研修を行ったり、それから緊急時対応ということを考えますと、 看護職員が果たすべき役割というのは重要で、一方で、看護職員の配置を充実させるような施策、こ れを併せて行うことが必要ではないか。 それから実施面ですが、施設内で介護職員に研修をするということからしますと、安全性を確保する 観点からは、やはり指導的な看護師ということで、その施設で一定の勤務年数がある、そういう看護 師に限定するという方がよいのではないか。 それから介護職員のサイドについても、実施する介護職員について、安全性ということから、ある程度 の実務経験があって、一定の研修を更に受講した介護福祉士に限定することが望ましいのではない か。 それから最後の御意見ですが、これは留意点と言うべきものですが、今回の措置によりまして、今回 は特養を対象に検討しましたけれども、その他の施設、あるいは口腔内以外のその他の医療的ケア について、逆に、すべて違法性が阻却され得ないと全部バツという印象を与えかねないので、本検討 会では、まさに特養という場で、この口腔内吸引、あるいは胃ろうということに絞って検討したと。違法 性が阻却されるための条件は整理したということを明確にすべきではないか、こういう御意見でござい ました。 次に、(別紙)という形で、今回の吸引、それから胃ろうの標準的な手順、それから医師、看護師、介護 職員の役割分担について記載をしております。これは冒頭申し上げた概要でお話ししたとおりでござ いますので割愛いたしますが、ちょっと2点ほど注釈をつけております。注が実は2か所ついていまし て、9ページの1の(1)の[1]の看護職員というところに1つ注がついております。この注は11ページに 書いておりますけれども、特別養護老人ホームにおける業務にかんがみると、その特養での高齢者の 看護に経験を有する看護師が配置されていることが望ましいということを書いております。 ただ、今回のモデル事業でありましたように、その他の高齢者関係施設、あるいは訪問看護、こういっ たところも含めて、経験のある保健師、助産師、看護師、准看護師も含めてではありますが、そういう 経験を有する看護師が望ましいということを書いております。 それから10ページのところで、また注の2というのがございます。IIの3の(5)というところです。ここは、 看護、それから実施に当たる介護職員が必要な知識・技術に関する研修を受けているという条件です が、それに対する注釈を(※2)として11ページに記載しています。 これは条件としては「研修を受けている」と書いていますが、どの程度の研修かということにつきまして は、モデル事業においては、12時間の指導看護師研修、それから施設内で14時間の研修というふう にやっておりましたので、やはり、介護職員の経験年数、個別差もありますが、同等の研修であること が望ましいということを強調しております。 ちょっと長くなってしまいましたが、以上でございます。 ○木村委員 どうもありがとうございました。 それでは、ただいまの報告書案及び本日提出された資料について、御質問でも御意見でも結構です けれども、御議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○三上委員 太田先生のモデル事業について、詳細な御報告、ありがとうございました。よくわかったのですが、こ の取りまとめ(案)の中で幾つかちょっと気になったことがありますので、少しお伺いしたいと思います。 法律的整理の中で、法益性が大きいので違法性が阻却されるという文言ですけれども、6ページの上 から2つ目の○の、法益衡量について見ると、口腔内のたんの吸引等が必要になっても、要介護者が 特別養護老人ホームに入所するということが書いてあって、これが法益というか、利益であるというこ となのですが、介護保険の中ではケアマネジメントという、ケアマネージャーがケアプランを立てるとい う行為があるわけですけれども、その際に、こういった医行為の必要な人を特養に入所させるというプ ランを立てること自体が法益なのかと、ケアマネジメントというのは要らないのかというのが1つ伺いた いことがございます。 それから3つ目の○のところで、この措置が特別養護老人ホームという限定された場でモデル事業も やっているわけで、それ以外のところには広げないということが前提だと思いますが、実際には、高齢 者、色んなところで生活をしておられて、その中には喀たん吸引が必要な人たちも沢山おられるという ことで、有料老人ホームでありますとか、グループホームでありますとか、特定施設においても、こうい った高齢者の方、沢山おられるわけで、特養にだけ限定するということの合理性というのがないため に、恐らく、他の施設でも必要になってくる。したがって、無資格医療を助長するのではないということ ですけれども、その根拠も少しどうなのかと思います。 そして、違法性の阻却を限定的にするということなのですけれども、そうなれば阻却されないところも はっきり決められるという、違法性が阻却されない領域というのはここであるということが決まるのでは ないかと。 8ページの3番のところの一番最後の・に、他の施設で、「逆に全て違法性が阻却され得ないという印 象を与えかねない」と書いているのですが、これは「与えかねない」ではなくて、必ず与えるのではな いかと、そういうものではないかと思いますので、書きぶりが少しどうなのだろうという気がいたしま す。 違法性の阻却ということですけれども、阻却されても違法は違法なのだろうなということを1つお伺いし ておきたいのと、できれば、合法の中で、合法になるような形を取れないものだろうかと。この検討会 でそれを検討していただきたい。方法としては、前回、私が言いましたように、医行為から外してはどう か。あるいは、ここの中にもありましたけれども、準医行為という形で新たな枠組みにするということも、 医行為から外すということの文言になりますし、また、新たな資格をつくってこういった行為ができるよ うにするという、医行為ができるということであれば、保助看法を変える必要がありますし、準医行為と いうことであれば、それは要らないということになります。 もう一つは、特養等で必要な人がたくさんいるということであれば、看護職を配置するということで、施 設基準についてさわっていくというふうな3つの方法があろうかと思いますけれども、できれば、違法性 阻却というような将来禍根を残すようなやり方ではなくて、合法になるような方法を考えていただけれ ばと思います。 ○木村委員 どうもありがとうございました。何点かにわたると思うのですけれども、まず最初に、このような医行為 が必要となるような患者さんを特養に入れること自体の是非なのですけれども、これについては事務 局からお答えいただけますか。よろしくお願いいたします。 ○川口高齢者支援課課長補佐 事務局でございます。6ページのその記載でございますが、おっしゃるように、例えば非常に頻繁に吸 引をしなければ、夜間にも頻繁に吸引をしなければいけないという方、これを特養に入れるのが、まさ に吸引のために特養に入れるというのが法益かというと、それは確かにご指摘のとおりではないかと 思いますが、例えば心身の要介護度が上がって、ただ、一方で吸引も伴うというような場合に、例えば うちの施設だと、吸引、あるいは胃ろうの管理体制が弱いので、介護自体はやりたいのだけれどもで きないというような方まで入れないと。そういう方が入所できるようにするというものは、その方が介護 を受けたい、ただ吸引も必要であるということもありますので、それは一つの法益だという整理もある のではなかろうかと考えております。 ○三上委員 今のことについて、いいですか。 ○木村委員 どうぞ。 ○三上委員 喀たん吸引につきましては、1日8回以上、喀たん吸引が必要な患者さんについては、医療が常に必 要だということで、長期入院も許されるような形になっているのですね。医療の中でですね。そういった 方を夜間の医療がないと思われる特別養護老人ホームに入るということは非常に大きな問題ではな いかと思いますので、この法益ということの書きっぷりは、やむを得ず入っているとか、その方が徐々 に悪くなってそういう状態になるという場合はよく理解できますけれども、入所することが利用者の利 益であるとは私はもう全然思えなくて、そういう方はやはり病院というか、医療施設の方に入れていた だきたいなと思います。 ○木村委員 その点はどうでしょう。この書きぶりだと、かなり広過ぎてしまって、あらゆる人が入ってしまうのではな いかという議論ですけれども。現状としてはいかがなのでしょうか。現にそういう方がいらっしゃるとい う現実はあるということでよろしいのですか。 ○三上委員 いいえ、もともとそういう方は多分、ケアマネージャーがきちんとされておればこういうことは起こらない と思うのですが、実際には、もともと入っておられた方が徐々に介護度が上がってきて、そういった状 態になるということだろうと思います。 ○木村委員 であるとすると、その整理はちょっとこことは別の場面になるのかもしれないのですけれども。済みま せん。どうぞお答えあれば。 ○川口高齢者支援課課長補佐 まさに御指摘のこと、6ページではやや簡略に書いていた面がございます。1ページなどでは、「重度 化に伴い」でありますとか、少し厚めに書いておったのですが、6ページでは確かに、入所し続けること ができるとちょっと簡略に書いていたところがございますので、おっしゃった、「重度化に伴い」でありま すとか、そういった表現を工夫したいなと思います。 ○木村委員 その点は、三上先生、よろしいでしょうか。 ○三上委員 はい。 ○木村委員 2点目なのですけれども、特養以外の施設に広げないという前提になっているのだけれども、特養に 限定するという理由は何かということでよろしかったですか。 ○三上委員 といいますのは、例えばグループホームであっても、他の有料老人ホームであっても、徐々に悪くなる というのはもう当然のことで、いつかはそういう状態というのが起こってくるわけですから、その場でそ ういう介護者が、介護職員が喀たんの吸引をしなければならないという状況は多分生まれると思うの ですね。そうすると、そういった場合にも研修を受ければ、そこでもやらせてもいいのではないかという 発想というのは当然出てくるはずなので、その辺が、助長するというのですか、これを1つ認めれば無 資格医療を助長するということにならないかなと私は思いますけれども。 ○木村委員 ありがとうございます。今の点は、いかがでしょうか。 ○川口高齢者支援課課長補佐 まさに御指摘のとおり、他の施設はどうなのかという問題は常にあり得るということでございます。ただ、 今回、他の施設でも何でもという前提ではなくて、一定のニーズが勿論あるということ。それから、や はり連携をすれば、つまり、医師、あるいは看護師がその施設内にいて連携体制が取り得るという条 件がそろった施設として、今回、特養という形で限定して議論をしたということでございますが、確かに、 今後の課題ということでは、他の施設どうなのだということは常にあるのかなと考えております。 ただし、今回は、そういう条件のそろった特養について検討したということでございます。 ○木村委員 その点はやはりモデル事業を前提にここまで進めていただいたということもあるので、それを前提にす ると、今回は特養と限定するのは意味があるかなと私は思うのですけれども、今の点はいかがでしょ うか、三上先生。 ○三上委員 私も、モデル事業は非常に有意義な事業だと思うのですけれども、これが違法性の阻却を目的とした モデル事業なので、非常に大きな問題だと。これが一般の方でもできるということを証明するためのモ デル事業であれば、他のところでも、有料老人ホーム等でも、いざとなればそういったことがちゃんと 検証すれば、資格のない方でもできるということを証明できるのでいいのですけれども、逆に、これが 違法性阻却を目的としているので、これをやることによって他のところでは全部違法だと限定されてし まう。業務独占するということですよね、これは。特養のいわゆる正規の職員が、何時間以上研修した 人がやれば阻却されるけれども、それ以外は少し危ないぞということになるわけなので、それは非常 に問題があるのではないかなと感じていますけれども。 ○木村委員 ありがとうございます。確かにそういう面あるかもしれませんけれども、ほかの施設について別に排除 しているというわけではないので、それについての懸念があったので、8ページですか、一番最後の文 言が入っているのかなあとは思います。ですので、一般的に広げるというのではなくて、やはりモデル 事業のようなものがあって、きちんと仕組みがつくれるようなところから進めていくという趣旨なのかな とは思いますけれども、他の先生方。 ○三上委員 ということは、限定しないということですね。 ○木村委員 限定しないといいますか。 ○三上委員 他のところも、順番にモデル事業をやって徐々に広げていくということであれば、そういう。 ○木村委員 それを否定していないということではないでしょうかね。どちらとも、ニュートラルに書いてあるのだと思 いますけれども。それを否定するものではないというのがこのまとめなのかなとは思いますけれども。 そうしますと、3番目が一番大きくて、違法阻却でいつまでもやるのかという御指摘で、これは前回か らも三上先生から御指摘いただいている点なのですけれども。 ちょうど樋口座長がお見えですので、ここからは交代して、樋口先生、よろしいですか、お願いして。お 願いします。 ○桝田委員 モデル事業が行われて、次に、今度、特養全体で実施すると。その段階はやはり違法性の阻却という ことでスタートかかりますよね。ですから、それで実施した内容を調査して、検証をかけて、それが違 法性の阻却の問題でなくて、医療外行為にするのか、それとも実施しているものに一つの資格的なも のの考え方に変えるのか、そこは、次のステップをここの中に書きこんで、やはり違法性の阻却という のは中途半端な扱いですので、確実に介護を実際に行う方が何の心配もないという意味ではないで すので、次のステップをどうするかという部分を入れた方がいいのではないかと。 モデル事業の次がいわゆる本番でなくて、違法性阻却の中で実施するという話でいいと思うのです。 そうしないと、やはり違法性の阻却というのはいつまでも続けるべきものではないと思っていますし、 当然、研修というもの、そこらが十分に行われて、安全性が保てたかという部分が非常に重要ではな いかと思っていますので。 それと、ちょっと話が変わってしまいますけれども、モデル事業で実施したときに、いわゆる施設長、管 理者の方が実際に行う方の選定に関わってしている、いわゆる管理者責任という部分がきちっと入っ ていたものですから、今回の部分もやはり、みんながするのではなくて、きっちり選ばれた者に指導を して、それで研修を受けて実施するというステップで、やはり施設長のいわゆる選定のもとに配置医師 の承認という形で考えていただけたらと思いますので、その点よろしくお願いします。 ○木村委員 ありがとうございました。お願いいたします。 ○水津高齢者支援課長 6ページ、「今後の課題」ということで、本検討会、特別養護老人ホームについての検討をするというこ とが本旨ではあるのですけれども、そういう中で、限界はありますが、今後の課題ということで、まず第 一に医行為の概念を再整理すべきではないかと、こういう位置づけをしているという点は大事なのか なと思っています。 先ほども触れました、例えばこの特養の前の一番新しいものが在宅のALS以外なのですが、このとき も若干こういう記述はあるのですが、今回みたいな明確な書き方はしてないということもございます。 ただ、冒頭申し上げましたように、あくまで今回は特養での在り方を問う、検討する場でございますの で、こういうプロセスでこれがいいのだというところまでは決め打ち的には書けないので、主に4つの ○ということで整理をさせていただいたというところが、1つ、本研究会ではその辺りまでなのかなとい う感じがしております。 それからもう一点、三上委員の方から最初にお話があった5ページの一番下の目的の正当性のところ なのですが、私も事前に文章の見方がやや雑だったのかもしれませんが、この文章の中で下から2行 目の、それが必要であるために、在宅生活に困難になった要介護者が特別養護老人ホームに入ると。 それというのは、たんの吸引等にやはり普通に読むと読めると思うので、それはちょっと余りにストレ ートな書き方なのかなと。要するに、ほかの、当然、特養に入るべき事情ですね。身体介護が非常に 必要になって、重篤な要介護者だと。そういう事情があって入るので、そのときに、たんの吸引等がそ れに伴う措置として必要になることがあると。そういうところは、確かにちょっとこれは文章がおかしい ので、そこは御了解をいただいた上で書きかえるべきものなのかなと思っております。 ○樋口座長 遅れてきましたので、多分、私はうまくフォローが、議論に乗ることができないと思いますので、また木 村さんからも助けていただきながら進めていきたいと思いますけれども、2点、早速、やってきて、しか も、今言ったように、前置きが長くて申しわけありませんが、もう既に全部終わっているような話なのか もしれませんが、三上先生の御意見は、その前からたくさんのことをおっしゃっているのでしょうけれど も、賛成で、例えば8ページ目の一番最後の部分ですね。 つまり、特別養護老人ホームだけにこういうものを認めるという話になってくると、他の施設では、逆に 反対解釈でだめだという話を考える人がいるのですね、やはり実際に。そういう趣旨はないと私自身 も考えていて、ここでは、そういう趣旨ではないということを明確にすべきではないかと、何か非常にあ いまいな言い方でありますが、それはもうはっきり明確にしたいというか、条件を整理したものである。 つまり、これはとりあえず特別養護老人ホームという場において、そこに絞って検討したものであって、 他のところについて何らかの、それは悪影響というか、反対解釈とか、そのような趣旨は一切ないもの であるという趣旨をもっとはっきり書いていいのではないかなと思っておりますけれども、もし他の委員 の方でもその点について異論がなければ、そこは少し、もう一歩だけ踏み込んでもよろしいのではな いだろうかなと思うのですけれども、まずその点いかがでしょうか。 私も今日の取りまとめ(案)というのを読んでまいりましたので、ちょっとコメントだけもう一点追加いたし ますけれども、その点まず、よろしいでしょうか。それは枡田さんがおっしゃったこととも同じ趣旨でもあ りますしね。何か御異論があれば、勿論、強制的に取りまとめるというのは座長の仕事ではないので。 よろしいですか、それは。 では、その上で、ですが、医行為問題というのはなかなか、あらゆるところで問題になっている。ただ、 この間、我々のこの検討会の話題だけではなくて、大きな動きがありましたね。私は新聞だけで見て いるだけなので、もしかしたら不正確な部分があるのかもしれませんけれども、いわゆる医療職の業 務範囲について、いろんな形で柔軟な対応をしていこうという動きがはっきりあらわれている。つまり、 医師不足というので、簡単にお医者さんはつくれないわけですよね。だから、やはりもっと長期的な視 野に立って、お医者さんが不足しないように考えないといけないというのが一本の柱ですが、とりあえ ずはというのかな、とりあえずという考え方でなくてもいいと思いますけれども、お医者さんを助けるよ うな職業の人にもう少しいろんな形でやってもらったらどうかという話で、看護師さんの、特定看護師と いうのですか、あるいは名前は何でもいいのですけれども、やろうとする人、やりたいという人、そうい う意欲のある、是非ともやはり支援してあげようということですよね。 それだけではなくて、たんの吸引についてだけで言っても、臨床工学士とか、理学療法士とか、ほか の医療職の方にも、当然、それも訓練の上で、でしょうけれども、やっていいような方向性が出てきて いる。そういう流れの上にこれも多分乗っているような話なのではないかと思うのです。 それを今後どのように解決していったらいいのかというのは、そうは、しかし、簡単な問題ではなくて、 それから簡単にどんどんいけばいいという問題でもない。だから、それがなかなか難しいとは思うので すけれども、そう言いながら、基本的な考え方は、これはちょっと私の座長としての意見ではなくて、こ の後は個人的な意見なのです。それについて議論を今回膨らませようということではないのですけれ ども、例えば英語では、できるとかできないという言い方をしたときに、だから、一番簡単な英語で言う と、You can’t swim.という言い方をして、あなたはここでは泳ぐことはできないよということですけれど も、その場合に2つの意味があって、例えばその場所が水泳禁止みたいになっているような場所であ れば、You can’t swim.というのは、してはいけないという意味なのですね。しかし、普通にYou can’t swim.と言えば、あなたはカナヅチだ、泳ぐ能力がないという意味もあって、やはり2つの意味がある。 できないということを言う場合にも、あるいはできる、できないということを言う。大きな点は、一番この 問題で重要なのは、一番初めに、できないというのが禁止という意味だと、絶対カナヅチは直らないと いうことなのですね。だから、今、You can’t swim.というのが、カナヅチの人がとにかくできるようにな るためにはどうしたらいいかというと、この入り口のところで、あなたしちゃいけないよと言うと、もう絶 対できるようにならないわけです。それが望まれていても、あるいは意欲があっても、あるいは家族が 頼んでいても。 禁止規定というのが必要な場合もたくさんあって、それがそもそも規制ということの本質なのだろうと 思いますけれども、特にこのたんの吸引等では、それはやむを得ないことだから、ある意味では当たり 前のことですけれども、いわば素人である家族がまずやれている、あるいはやっている、やらざるを得 ないという状況があって、逆に業としてやっている人はもう絶対できなくなる、素人はできるけれども、 業としてやるとできなくなるという話が非常にやはりおかしいような感じが私はしていましてね。 そのおかしいというのはどういうことかというと、つまり、2段目のできない、できるという話、つまり、能 力を陶冶して伸ばそうという、そういう動きを一切シャットアウトしてしまうような話になるので、やはり 初めの入り口はとにかくできるだけ緩めておいて、そうかといって、素人に、盲腸の手術をしていいか というと、それは絶対できないわけですよ。家族でも何でも。それはやはり禁止というわけなので、医 行為だっていろんな種別があって、やはり濃淡があるということですよね。淡いところは、実際に素人 がやっているところなら、それはほかの、まさに業としてやっているような、医師や看護師さん以外で、 さっき出たような臨床工学士であれ、理学療法士であれ、あるいはそれがホームヘルパーであれ、介 護福祉士であれ、そういう人たちも、そういうことを必要とする職場にいるときに、何とかやってあげた いという気持ちが出てきたら、その能力をやはり陶冶してあげるような話をつくっていけるようなシステ ムというのか、結局それは私の専門とする法制度ということになるのだと、法制度の在り方だと思いま すけれども、そういう方向にやはり向かっていった方がよろしいのではないだろうかと。 それは、もしかしたら規制官庁としての、この後はちょっと大げさなことを言うのですけれども、厚生労 働省の基盤を揺るがしかねないと考える人もいるかもしれませんけれども、そんなもので揺らぐような ものではないですね、厚生労働省って。だって、やることはいっぱいありましてね。そういう規制以外に も。だから、ちゃんとしたことをやっておられるわけですから、こういう部分では少し、一番初めの基本 的な発想をそろそろ変えていくような時期に到達しているのではないだろうかという気がいたします。 ちょっと長口舌で、遅れて来て勝手なことをしゃべっているのでは全く仕様がないなという、座長として の資格もないようなことなのですが、あとはちょっと黙りますので。今、この取りまとめ(案)についての 議論ですよね。これについて、このままでいいかどうか、こういう点について改善したらどうかというよう な御示唆を続けていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○島崎委員 2つばかりあります。まず、三上委員がおっしゃったことに関連していえば、この検討会のミッションが 何なのかということです。この検討会は2回やって、その後しばらく開かれず、これが3回目ですね。こ の時期に開催されるのは、できるだけ早く通知を出したいということなのかもしれませんが、それはと もかく、この検討会は、医師法上の問題、つまり、医療行為の範囲をどうするかとか、それを緩めた場 合どうするかということに検討の主眼があったわけではない。よい悪いは別にして、土俵の設定という ことで言えば、もしそれが主眼だとすれば、当然、医政局が主宰すべきだと思いますけれども、そうで はありません。当面、特養においてどういう条件であれば、それほど危険性を伴わずにたんの吸引等 ができるのかといった条件等を議論することが主眼であり、そのためにモデル事業を行ったのだと思 います。そうだとすれば、先ほど樋口座長や木村委員がおっしゃったように、それ以外のことについて 何か言っているかというと、そういう議論を行うことを前提に委員が必ずしも選定されたわけでもない のでしょうし、それ以外のことはイエスともノーとも言ってないというのが一番正確なところかもしれな いという気がいたします。 その上で申し上げれば、先ほどの樋口座長の提案である、最後のところをもうちょっと強めた方がよ いのではないかということについては、それはそのとおりだと思います。これは2回目の会議のとき、 あるいは1回目のときだったかもしれませんが、私も、反対解釈が行われ、通知が出た途端に業務が 停滞してしまう、あるいは支障を来してしまうということがないようにしなければいけないと申し上げた と思います。報告書の具体的な書きぶりをどうするかということはあるかもしれませんけれども、以上 が申し上げたいことの1点目です。 2つ目は、三上委員が先ほどおっしゃった、医療行為から外すということ、つまり、違法性阻却論でい つまでもやっていてよいのかということについては、たしか2回目の検討会で、私もそれについて趣旨 はわかるということを申し上げたと思います。この報告書案にも書いてあるように、そもそも、よくも悪く も、在宅のALSの患者さんのたんの吸引の検討会のときから、そういう議論で今日まで来ているわけ です。樋口先生が座長を務められた、ALS以外の在宅の患者さんのたんの吸引等の検討会の議論 でも、いつまでも違法性阻却論でいくのかという議論は、実際の臨床に携わっておられる方であります とか、福祉関係の立場の方から非常に強い意見が出たのを覚えています。それから、その際、名前は 失念しましたけれども、医師会の代表の方も、こういうやり方をいつまでも続けていいのか、ある程度 の一定の枠の中で何かきちっとした法制的な対応ができるようにすべきではないかということを、必ず しも正確ではないかもしれませんが、そういう趣旨のことをおっしゃったことも記憶をしています。 何を申し上げたいかというと、医師法あるいは保助看法ができたときの医療の実態、あるいは医療関 係者や福祉関係者の実態と、その当時の法制的なその仕組みは合っていたけれども、今日では仕組 みと実態が齟齬を来しているのだろうと思います。保助看法なり医師法なりができたときの状態という のは、医療の水準も低かったし、付添看護等も、病院の中に家族が来て看護し、煮炊きをするような、 そういう時代でありましたし、医療レベル・医学レベルが全然今とは違う。先ほど太田先生がおっしゃっ たように、胃ろうは何十年前からやっているかといえば、たかだか10年ちょっとくらい前から始まり今 日急速に広まっているというわけです。 要するに、実態と法制が合ってないのです。合ってないときどうするかといえば、法制に合わせて実態 を変えるか、実態に合わせて法制を変えるか、いずれかしかありませんが、やはり実態に合わせて法 制的な在り方を見直す議論をするというのが真っ当なやり方だろうと思います。 ただし、そのことについて、この後何回かこの検討会で議論を重ねるということなのかといえば、そこ はそうではない。先ほどのミッションとの関係で言えば、6ページから7ページに書いてあるようなまと め方だろうと思います。つまり、多分、最初の○は三上委員の御主張だと思うのですけれども、そうい うものが1つある。2つ目は、今の法制度のもとで、たんの吸引等は医療行為ではないと言い切ってし まったときに、一方で、前回木村委員も御指摘されたと思いますけれども、医療行為でないものについ て、研修の義務づけ等とかをやらなくて、それで大丈夫なのかと言えば、そこはそうではない。多分、 研修の義務づけ等の必要性は三上委員も同調されると思いますけれども、そういう考え方が2つ目と してある。それから3つ目の○というのは、多分、これも私の意見に比較的近いのかもしれません。特 定医療行為の話を持ち出すとちょっと話はややこしくなると思いますけれども、一般の看護師が行うこ とは困難な高度な医療行為、それから一般の看護師ができる医療行為があり、それから医療行為と 医療行為でないものの間に、必ずしもそこは医療職ではなくてもいいが、全くフリーにするわけにはい かないという領域が恐らくあって、そういう領域のあり方について法制的な議論をしていくべきではな いかという意見があったことは、やはりこの報告書の中できちんと書きとめるべきだと思います。しかし、 それ以上の議論をこの後この委員会でやるべきかというと、そこはそうではない。 申し上げたいことは、この検討会のミッションは何かということをわきまえた上で書くべきだということ が1つ。2つ目は、さりとて、今後の方向性について何も言及しないというのもおかしい。それは三上委 員がおっしゃるとおりでありまして、結論的としていえば、こういうまとめ方になるのかなというのが私 の意見です。ちょっと長くなり失礼しました。 ○樋口座長 ほかの方、どうぞお願いします。齋藤さん。 ○齋藤委員 これからの超高齢化社会を見据えていったときに、今のままではやはり制度疲労が起きているという のは、どの委員も異論のないところではないかなと思うのですね。ですので、今後どうするかということ の言及もある意味必要なのかなとは思っています。 ただ、何よりも、さりとて一番大事なのは、やはり入所者の安全性の担保であるということも、この委員 のメンバーの中では多分異論がないことだと思いますので、今回のモデル事業でのヒヤリハットの報 告が、施設の判断に任されていたがために非常に格差があったというこの事実はしっかり受けとめな ければいけないだろうと思うのですね。 なので、私は、この実施の検証及び必要な見直しのところに、ある意味書かれているかなとは思うの ですけれども、やはりこういうヒヤリハットの報告の基準といったものをきっちり明示していく作業を早 急にしていただきたいなと思うことと、それから、今回まずは特養から始めようということなのかなと思 いますので、きちんと、私としては、実はモデル事業をもう少し長い間やっていく中で体制を整えていく ということも1つあると思って提案もしましたけれども、なかなかそういうことは厳しいという厚生労働省 の方からも意見をいただいているので、このモデル事業をもって走りながら体制を整えていくということ でしたら、やはりきちっとそのあたりの実施状況がどうであったり、検証していくという作業を必ず行っ ていただきたいということを約束していただきたいなと思っているところです。 それから、その安全性のところもそうですけれども、私、1つわからないことがございまして、これはモ デル事業の太田先生にお伺いした方がいいのか、それとも事務局がいいのかということがわからない のですけれども、この標準的な手順のところと、それから資料2の連携・協働のところなのですが、実 際にたんの吸引なり経管栄養なりを介護職と連携しながらやってもいい状態なのかどうなのかという ことを入所者に対して判断するということと、それから特定の介護職の方々にそれはやるのですよと 言ったときのその選定の判断ですね。その判断は一体だれがやっていて、そして最終的にそれが医 師で、配置医というのですか、これは嘱託医と配置医と同じだと思っていいのかなと思うのですけれど も、最終的にそれを承認するというのがドクターになると思うのですけれども、モデルの中でその選定 をしたのは誰、施設長がするのか、それとも何かそういうケアの責任者という形がするのか、そこはモ デルの中ではどなたがしていたのでしょうか。 もし、それが出ているのであれば、この書き方ですね。「実施する介護職員について、看護職員との連 携の下、配置医が承認」というふうに、これがポーンと出ていったときに、それが他の特養の方々とか にわかるのだろうかと。だから、この報告の中で責任をそれぞれ明確にしようということがあったので すけれども、やる際には、だれがどの責任において選定をして、ドクターに報告をして承認を得るのか というそこのプロセスを何かわかりやすく明示した方が、混乱がないのではないかなと考えるのですけ れども、そこはいかがだったのでしょうか。 ○太田秀樹氏 御存じのように、特養には医師は常勤で配置されておらず、嘱託でいるだけですので、この事業にア プライされたのは施設の管理者なのですね。医療的な行為は包括的指示のもとにナースに任されて、 ナースが請け負っているという解釈です。したがいまして、責任は包括的指示を出した医師にはある わけですけれども、本事業にアプライした管理者の責任は大きいという考え方ですね。対象者を施設 が選んだということに対して、それは医師の許可を得て実施したということではありますが、ケースを 選択したのは施設側ということです。 ○齋藤委員 そうしますと、仮に今回は緊急、事故に陥ったことはなかったという報告でしたけれども、仮に何かトラ ブルが出たとかアクシデントがあったといったときに誰が、最終的な責任は施設長にあると考えていい のですかね。それぞれ実施行為ごとの責任というのは当然伴うと思うのですね。危険を予測できてい たかとか、あるいは危険を回避するだけの技術が自分にあったのか、あるいはちゃんと注意を払って やれたのかという、それぞれの行為についてのそういう責任は問われるかと思うのですけれども、こう いうことをやっていて、最終的な責任というのはやはり施設長にあると考えていいのですか。 ○太田秀樹氏 道義的な責任と法的な責任とあると思いますが、起こった事故の内容によって責任の比重は変わって くるでしょう。少なくとも施設で起こった問題は、当然、施設長にまず責任はあるわけですね。そして、 医療系の問題であれば、包括的指示を出した医師も道義的責任が及ぶでしょう。現場での事故の当 事者、実施者には、当然責任が問われるでしょう。これ以上はちょっと、私、法律的解釈はわかりませ んので、どのような解釈が妥当なのか、厚労省の方で説明いただければと思います。 ○桝田委員 先ほど、管理者責任という部分でお話ししたというのはやはりそこの部分になるのですよね。やはり介 護職員すべてがオーケーという話でないですからね。ちゃんとした研修を受けた前提となる、その前段 階が、大丈夫な者を選定する。その作業というのは、やはり管理者である施設長責任でその人を選ん で、研修をかけて、順番にオーケーすると。その過程の中に、やはり配置医師の先生に相談するなり、 承認を得るという行為はあってもいいと思うのですけれども、ただ、介護職員一人ひとりについて、配 置医師の先生が、技術力とかそういう部分がわかりませんので、やはり選任作業というのは管理者責 任においてきちっと責任を持って行うというのが一番ではないかと。そういう意味で、その部分を書き 込んだらどうですかというお話をしています。 ○川口高齢者支援課課長補佐 齋藤委員の御意見と今の桝田委員の御意見に関連して、確かに今の(別紙)の表現、ちょっとわかり にくいのですが、現状の書き方はこういう考え方で書いております。9ページの、まさに「看護職員との 連携の下、配置医が承認する」と。誰がやるかという部分、あるいはこの人は看護職員に任せるべき、 この人は介護職員でやれるというそこの判断の部分ですが、これはどちらかというと医学的判断につ いて、できる、できないという能力面といいますか、そういうところでは誰が判断するかという意味で、 最終的には、養護学校の場合と同じように、医師というところに係らしめておりますが、一方で、施設 長、管理者の責任という部分では、この場面では明記していないですが、例えば10ページの方に行 きますと、一番典型的なのは(8)のところですけれども、特に施設内でどういう連携体制を構築するか、 そういった体制整備に関しては「施設長が最終的な責任を持って」というようなところ、あるいは、(1)の 同意を取るところにつきましても、この人について介護職員がやりましょうという同意については、その 施設長が御本人に説明して同意を取るというところでは明記しておるのですが、先ほどの範囲を決め るというところでは、医学的判断といいますか、そういう観点でちょっと書いていましたので、今こういう 記述になっています。 ○樋口座長 ありがとうございました。 ○田中委員 実際私どもの施設でモデル事業という形でやらせていただいて、私が指導看護師ということで2日間 研修を受け、14時間の介護職員に対する研修を実施したのですね。14時間は最低限必要かなという 印象を受けました。受講した介護職員の選定に当たっては、勿論、施設長とも相談をしたのですけれ ども、やはりユニットリーダー以上ですね。そういった職員に限定していきました。理解力があるである とか、あるいは実際やっていくときに判断力があるとか、そういったことを条件に選定していったのです けれども、この取りまとめのところで、入所者の同意ということを、今お話を伺って、私もこれは絶対必 要だなと思いましたし、モデル事業の中でも家族の方の同意を得たりしていったのですね。 この資料2のところで、「入所者本人・介護職員の同意」というところがありまして、「介護職員が実施 することについて書面による本人の同意」と書いてあるのですけれども、これは入所者本人ということ ですよね。 その辺ですごく気になるのは、私どもも、今回モデル事業の中で御家族に対して説明するときに、認 知症の重度の方で吸引を必要とする方がいらっしゃったので、御家族の方にお話をして書面での同 意をいただくということをしていったのですね。この辺のことを少し書き加えて詳細に書いた方がいい のかなと思いました。 ○川口高齢者支援課課長補佐 そうですね。今まさに本人とだけ書いてしまっておりますので、そこのところは記述が足らないかなと思 います。 ○樋口座長 そうですね。さっきと同じで、下手な反対解釈をされて、本当に必要だけれども、自分で同意もすること ができない人にはできないというのはおかしいですからね。他にどうぞ。 ○三上委員 11ページの※2ですが、これも最終的には、介護職員の経験等も考慮して同等の知識・技能に関する 研修であることが望ましい、「望ましい」という表現になっているというのは、14時間とか13時間とかい う区切りもないと。あるいは、なくてもいいぐらいのぼんやりした書き方と考えていいのですか。「望まし い」ということは。 ○川口高齢者支援課課長補佐 すみません。ここは、まさに14時間必要だと書いてしまいますと、注ではなくて、本文に昇格させなけ ればいけないのかなと思うのですが、そこまでやってしまうと、結局、14時間だったら違法性は阻却さ れるけれども、12時間だったらという、ちょっと奇妙な議論になってしまいますので少し抑制的に書きま したが、研修の必要性ということに関しては非常に多くの委員から御意見をいただいていて、気持ちと してはもう少し強く書きたいのですけれども、ちょっと、必要とか適当とか書き切れなかったものですか ら、「望ましい」という形で表現しております。もっと強く書けという御意見がありましたら、ちょっと。 ○三上委員 よくわからないのですけれども、こういう書き方だと努力義務なので、法的な意味合いというのはどう なのですか、全く出てこないというのか、どうなのでしょうか、教えていただきたいのです。 ○樋口座長 何かありますか。 川口さんの御懸念も私は共感するところもありますが、ここは、だって「同等の知識・技能に関する研 修であること」なのですから、そちらの方なので、当然、研修は必要だよとはっきり書いた方がよろしい のではないでしょうか。 ○川口高齢者支援課課長補佐 研修自体が不可欠であることは本文の方に書いていまして、この注はその程度をちょっと書いている と。今回、実施する場合に、例えば施設によっては、吸引はやるけれども胃ろうはやりませんということ も、いけないわけではない、モデル事業ではフルセットでしたが、そこはできないわけではない。そうい う場合に、でも、14時間ですよとまでもなかなか言えませんので、ちょっと限定は難しいかなと。 ○樋口座長 いやいや、私も、形式的に、逆に、14時間やればもう大丈夫で、13時間だったらもうだめなんていうの は、本当は現場の感覚とは絶対合わないはずなのですよ。ただ、今、田中さんがおっしゃったように、 やはり相当程度、今、14時間とおっしゃいましたけれども、そのぐらいはやはり必要だという感覚は大 事なもので、それは伝えておく必要が。だから、ここへこのような研修はちゃんとやった、しかも、それ は非常に有用であったということまで書き加えて、それであと、しかし、介護職員だっていろんな経験 者の違いがあるわけですから、介護職員の経験等も考慮しつつ柔軟にという意味ですよね、これね。 だから、余り型式的にとらわれないでくださいということなので、それで、その趣旨で望ましいということ なのですが、とにかく必要なものは必要だと書いても、今ちょっとうまく言葉で言えないけれども、「望ま しい」ではちょっとね、という感覚は、非常に私もわかるので、それは一緒だと思うのですよね。考えて いるところは一緒で、それをもう少し適切な表現があるかもしれないというので、ちょっと、もしかしたら、 これは先取りしてはいかんのかもしれませんが、今日のこの取りまとめ(案)をそのまま一字一句、こ のままでとにかく御承認ということにはなかなかならなくて、今日いろんな議論が出ているのでしょうし ね。それで、それを少し改善した上で、最後、取りまとめ(案)としてするというところで、ちょっと工夫を させていただくということにしておきたいと思いますけれども。 ほかに、どのような点でも、どうぞ御意見をお願いいたしたいと思います。 ○三上委員 教えていただきたいのですけれども、7ページの2つ目の○の、別の柔軟な規制にすることということ が書かれています。「法制的に対応すべきではないかとの意見があった」ということ。これは可能なの でしょうか。いわゆる法律改正をしなくても、何らかの形で可能なのかどうかをちょっと教えていただき たいのですけれども。 ○川口高齢者支援課課長補佐 事務局でございますが、恐らく、普通の法律的な感覚でいくと、まあ難しい、法律を改正しないと、やは り今は医行為はこうという形で、医師法において縛っていますので、このやり方にするにもやはり法改 正が必要なのだろうなと思います。法令改正なのかもしれませんが、必要だと思われますし、先ほど 三上委員から御提案のあった3つのうちの、外した上で、プラス研修を義務づけるというやり方をする ような場合でも、やはり何らかの法的な、法改正なり何なりが必要なのかなとは感じております。 ○三上委員 先ほどから特定看護師の話が出ておりまして、医師会の方の意見もかなりいろいろ出ていたと思うの ですけれども、基本的に、新たなものをつくるというのは非常にリスクもあるのですよね、逆に。窮屈に なってしまうという。ですから、その辺のところをうまくできないかなあと。それが法律改正ではなくて、 局長通知なり、会長通知なり、そういったものでうまく乗り切れればなあと思うのですけれども、そうい う例はあるような気がしているのですが、できないとおっしゃっているものでもやはりできないですか。 ○水津高齢者支援課長 済みません。ここ、「柔軟な規制」と書きましたのは、第2回のときの議事とか、それから事前にお話は させていただいた中で事務局としてこういう案を書いたのですが、「別の柔軟な規制」とは書いていま すが、医師法、保助看法、それに比べれば柔軟な規制という趣旨で、書いた方としては書いておりま す。したがって、柔軟な規制とは言いつつも、法制的に対応すべきではないかと。したがって、局長通 知なり課長通知なりと、そこまで柔軟なものは、この文案を書いた事務方としては考えておらないとい うのが正直なところです。 ○樋口座長 私は行政法の専攻者でもないので、一応法学部にはおるのですけれども、少し考え方が違うのかもし れません。川口さんがおっしゃったように、一種、法律というのは、きちんとしたものですからね。医行 為といったら、この人だけ。それ以外は全部バツという話。医行為から外れると、今度は、そうすると、 厚生労働省には何ら規制権限がなくなって、何ら研修を義務づけることも一切できなくなるのですね。 全部マルになるという。バツかマルかというのがもしかしたら普通の法律論なのかもしれませんけれど も、しかし、翻って考えると、とりわけ今回は特別養護老人ホームというのを対象としていて、特別養 護老人ホームに対する指導権限というのは、そもそも厚生労働省はあるわけですよね。そうするとこ の法律はある。しかし、もちろん法にのっとって指導というのもあるのでしょうけれども、法で全部書き 込んでいるわけがないわけですよ。指導というのをするときに。 そうだとすると、通知まで出さなくても、指導という形でそれぞれのところに、ヘルパーさんであれ何で あれ、とにかくお手伝いという形でやってもらいたい。しかし、それをすぐいきなり明日からやれという のは、幾ら何だって無茶な話ですから、やはりそれ相応の研修プログラムを立てて、ちゃんとやっても らいたいという指導をすることが本当にできないのだろうか。厚生労働省の指導権限の範囲内であっ て、それをおかしいとか、法による指導支配、行政法の支配がないというように考える必要はないので はないかなと私は思いますけれども。私が法律学者の代表でもないので。 ○三上委員 私も、指導権限についてはずっと思っておりまして、こういうことをするのであれば、きちっと本当に指 導しないと、どういう状況かがわからなくなりますので、指導していただきたいのですけれども、基本的 に業務独占をするようなものについては明らかなのですが、介護というのか、療養のお世話について は、業務独占でなくて、介護職員というか、介護福祉士の配置とか、そういったものについては幾つか の基準というのがあるわけですけれども、そういうものについては指導ができるわけですよね。厚生労 働省としても。ですから、同じように、こういう行為をする人が多いところについては、こういう研修をす る介護職の方を何人以上は置いてくださいというようなことを書くことは可能ではないかなあとは思う のですけれども、どうでしょうか。 ○川口高齢者支援課課長補佐 恐らく可能性としては確かにあり得るだろうなと思うのですが、今、頭の中で設備運営基準の規定を 思い浮かべていたのですが、今、違法性阻却という形で研修を受けて吸引をやるというのを前提とし て、そういう職員を何人置きなさい、あるいは介護職員のうちの吸引をする人についてはしっかり研修 をしなさいと基準で書いて、基準に書くと、そのペナルティというのは、つまり、やってなかった場合の ペナルティというのは指定の取り消しという形になるのですね。だから、技術的に絶対できないかとい うのはともかくとして、指定とのバランス、整合性はちょっとじっくり考えないといけないのかなと、今感 じたこととしてはそう思いました。 ○島崎委員 この7ページの最後の○の、三上委員が御指摘された部分の議論は、6ページの「今後の課題」の 「『医行為』概念の再整理」のところから始まっているわけです。つまり、最初の○に書いてあるように、 この検討会は検討の枠組みとして、たんの吸引なり等については医行為であるという前提で議論をし たということだと思います。その枠組みというのは、違法性阻却論であり、便法という言葉が適当かど うかわかりませんけれども、要するに、これまでの流れの延長線上で議論をしてきたということです。 ただし、そもそも振り返ってみると、その枠組み自体がいいのかということについては議論があり、1つ は、三上委員が2回目の検討会でもおっしゃったように、そもそも違法性阻却論という形でやっていく のがよいのかということに関して、医行為から外すなら外すというようにきちんとやるべきではないかと、 そういう主張があった。2つ目は、それに対して、医療行為から外してしまうと、先ほど樋口座長もおっ しゃったように、途端にすべてがフリーになってしまうのは危ないため、医行為からの除外は妥当とは いえないという意見があった。3番目の考え方としては、中間的な形態というか、従来の医行為とは区 分するという対応があるのではないかという意見があった、ということだろうと思います。 3番目の考え方については、恐らく先ほど事務方が言われたように、従来の医行為とは区分するとい う枠組みの話だから、素直に考えると、法律改正なのだろうと思いますが、そこまでこの検討会で詰め たわけでもないので、私は、「法制的に対応すべきではないか」という程度の表現なのかなという感じ がします。 それから、こういう枠組みの下でもいろんな指導ができるというのは、それはそのとおりだと思うので すけれども、そもそも医行為であるということを前提にするということは、医療職以外の者はやっては いけないというのが現行法制度の基本的枠組みなわけです。したがって、それに対して真っ正面から、 例えばたんの吸引を行う介護職員については、かくかくしかじかの配置をするというようなことを議論 するのであれば、それは制度改正が必要となる。そのやり方はいろいろあるかもしれませんけれども、 それが素直な解釈ではないかという気がいたします。 要するに言いたいことは、報告書案の流れの中で見ていくと、たんの吸引等は医療行為から外すべき ではないかという意見があり、それに対して、反対の意見があり、その中間的な形も考えられるので はないかという意見があったということを紹介しておけば、この報告書としてはよろしいのではないか なということです。それ以上、たとえば法制的な在り方の議論を詰める場ではこの検討会はないような 気がいたします。以上が私の意見です。 ○樋口座長 ありがとうございました。その他いかがでしょうか。齋藤さん、どうぞ。 ○齋藤委員 ここに、報告の中にある程度書かれているのですけれども、今後こういう方々が施設の中で重度化が 高くなって、ある程度の医学的な管理が非常に大事になってくるということでしたら、ここに書いてある とおり、今の人員基準で果たして今後やっていけるのかという、そういうことは当然あろうかと思います。 先ほど三上委員からも、もうちょっとその辺は今後を考えるべきなのではないかという御意見はあった かと思うのですが、今の特別養護老人ホームに勤務されているナースを見たときに、これからこういう 指導も始まる、重度化してくる、非常に業務が多いといったようないろんな不安を抱えて勤務している というのが実態なのですね。 先日も、私どものところで特別養護老人ホームに勤める方々の集まりをいたしまして、委員会も立ち上 げまして、何に困っているかといったようなことをお伺いしますと、やはり嘱託医の連携がすごく難しい とか、それから教育としては、同じ医療職で話すことに慣れているような人たちが、いわゆる介護をベ ースとした方々と協働してやらなければいけない、そして更にその方々を指導していかなければいけ ないといった場合に、非常にコミュニケーションの取り方等々に不安を感じているような方々もいっぱ いおりましたので、看護職の労働環境等々問題はあろうかと思いますけれども、これ以上の疲労がな いような、負担が大きくなるということにかんがみれば、看護職の配置をきちんともう少し充実をさせて いくようなことを是非検討していただきたいなと思います。 それから、指導看護師の要件については、モデル事業のように一律の要件はここには記さないという ことではございましたけれども、モデル事業の検討会というか、報告にもありましたように、介護職の 方々の実力とか力の加減の判断をしながら指導するのは非常に困難だったと。それで目的が達成で きたのかというと6割ぐらいにとどまっているという実態もございますので、指導看護師の選定につきま しては、これは施設長に是非お願いをしたいのですけれども、やはり力のあるナースを是非活用して いただきたいなと考えております。 ○樋口座長 ありがとうございました。だんだん時間も迫ってきたのですが、どうぞ。 ○内田千恵子氏 済みません。代理の出席者が発言をさせていただきます。今、齋藤委員がおっしゃるとおり、特別養護 老人ホームの状況としては、御利用者が重度化して、介護職の方も、例えば定着しないとか、そうい ったような事態を引き起こしている部分もありますので、たんの吸引であるとか、あるいは胃ろうの注 入といったようなことで労働が強化されていくだけというのではやはり困りますので、やはり体制の整 備というものをかなり求めていただきたいなということ。 それから、この報告書の中にもありますけれども、例えば同じ介護福祉士といっても一定の教育を受 けてなった者、あるいは一定の経験を積んで、その後国家試験を受けてなった者ということで、一定以 上の知識があるというのは、それは確かなのだと思いますが、ただ、こういう胃ろうとか、あるいは吸 引といったことについて、あるいは医学的な知識について、全員が、知識が本当にあって技術もある かというとそんなことはないわけですので、そういう点では、研修というのは絶対に不可欠なわけです ね。ですから、本当にやりましょうと言われるのはちょっと、いきなりというのは困りますので、ですから、 単に「望ましい」ぐらいの研修というのではちょっと困るなと感じていたところで、委員の皆様からも言っ ていただいて本当によかったなと思うのですが。 ですから、ここら辺はもう少し厳し目の感じで、必ず研修をしなければいけないというようなことと、そ れから看護師さんも、今、特養で確保するのが非常に大変な状況というのはやはり続いているように 思うのですね。本当にうまく経験が非常に長い方が確保できればよいのですけれども、そうとばかりも 言えなかったりということもありますので、看護師さんの研修というのもどこかでやっていただくのがよ ろしいのではないかという気がするのですね。単に経験のある人を配置しておくことみたいな条件だけ でなくて、やはり研修といったようなこともありますし、それから、さっき、ヒヤリハットの基準というのは 各施設によって相当違うというのがありましたけれども、実際に教育、看護師から介護職に対しての研 修というものに関しても、レベルがどの程度のものなのかというのがよくわからないところもありますの で、どこかで、例えば県単位で一度は介護職を集めて何か教育するとかといったようなことも本当は 必要なのではないかなあと。そうでないと、その施設、施設で本当にばらばらなことになっていきはし ないかといったような心配を私はしておりますので、その辺なんかもちょっとどうかなあと。 それと、今の特別養護老人ホームでは、介護福祉士の実際に状況を見ると3割4割というところです ので、介護福祉士に限定するとかいうことは確かに厳しい状況であるとは思いますけれども、ただ、い わゆる介護士という、何の資格かわからないですけれども、そういうふうな一括りのされ方で、誰でも いいですよ、みたいなことで吸引なり胃ろうへの栄養注入なりがされていくのであれば、御利用者に迷 惑がかかっていくのではないかというのもやはりありますので、そのあたりは本当にそれこそ施設側の、 実際の実施者の選定というあたりでは、相当考えてやるようにといったようなことが私は必要かなと思 っております。 ○樋口座長 ありがとうございました。その他いかがでしょうか。桝田さんどうぞ。 ○桝田委員 今の研修の話ですけれども、一応全国老施協の考え方としましては、今日の会議で決まりまして実行 するようになった場合に、一応125施設で行って、東京へ集まって研修を受けた人を指導的立場で各 県の研修会の講師的な役割に入ってもらおうと。県単位で各特養の看護師さん、看護職員さんに伝 達研修をする。勿論、モデル事業とほぼ同じ状況の部分で、順番に下におろしていって、施設側も14 時間必ず守って頑張ってくださいと。適当でないのですよ、ちゃんとしなければいけないのですよ、とい う伝達の部分と、その方法論をちゃんとおろしていきたいと思っています。昨日の総会でもそういうふう な動きで取り組みますということは、総会の場でも各県に伝達しています。そうしなかったら、それこそ、 先ほどの「望ましい」という部分の拡大解釈で進んでいってしまうというのが一番怖いですので。 それと、モデル事業で実際に受けた介護職員さんの感覚というのは、そういう医療的な部分について 研修を今まで具体的に受けたことはなかったと。それを聞いて、教わって、確かによかった、自分のス キルアップにつながっていって、喀たんの部分について、今までしてなくても、自分が取り組んだ場合 どういうところが一番問題があるのか、怖いのかというのがよくわかったと。法的な問題をひっくるめて、 これらの研修というのは、今まで受けている研修以外の問題として非常に幅が広くなる部分が出てく ると。違法性の問題という部分で、その中身に触れた研修というのはもうほとんどどこもやってないの ですよね。介護職員さんは介護の分野だけの話をしていって、他の分野、医療分野については、もっ と一般論的な研修会に参加するぐらいの話であって、やってなかったと。 ですから、ここでそういう全体におろしていくというのは、特別養護老人ホーム全体から言うと、喀たん とか胃ろうの方のお世話以外に、やはり介護職への技能アップ的な部分にすべてつながっていく、特 養のいわゆるレベルアップにつないでいける部分になっていくのではないかなと。そういう取り組みで、 やはり伝達研修と、次の講師の養成というのも要ると思うのですよね。各施設から東京なりに行ってす べての職員が研修を受けることは不可能ですので、できるだけ県単位、地区単位までおろしていきた いと。ですから、指導的な立場の看護師さんなりの養成というのも、できればこれから続けていって、 現場の方に100%、介護職員ができるまで続けていける体制というのが組んでいただけたらなと。全 国老施協ではその取り組みをこれから実施したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○川口高齢者支援課課長補佐 今の研修の点について1点だけ。おっしゃるような指導的な看護師さんというのを育て、それを地域レ ベルで広げていただくということなのですが、その指導的な看護師、今回、モデル事業ということで、2 日間、12時間でやりましたけれども、来年度も予算的にちょっと工夫しまして、何とかそういう看護師を、 指導的な看護師を養成するというような研修をやっていきたいなと厚生労働省としても考えております。 それから、研修プラス状況の検証ですね。これも何とか来年度やっていけるような形でやりたいと考え ております。 ○樋口座長 ありがとうございます。その他いかがでしょうか。どうぞ、田中さん。 ○田中委員 先ほど齋藤委員の方から、看護職の特別養護老人ホームにおける人員配置についてお話がありまし た。私も10年ほど、特別養護老人ホームで看護職として仕事をしておりますけれども、特養の看護職 の人員配置基準が、ここにも、取りまとめのところで冒頭に書いてありましたけれども、利用者の方 100人に対して常勤換算で3人という人員配置では、確かに本当に厳しいなあということを日々感じて おりました。今、実際も感じているのですけれども、今回、モデル事業をさせていただいて、『月刊介護 保険』の2010年の2月号のインタビューがございまして、それに答えさせていただいたのですけれども、 そこで一緒に協力したナースがおりまして、その彼女も言っていたのですけれども、実際利用者の方 が重度化してきておりまして、医療ニーズを、かなり抱えていらっしゃる利用者の方が増えてきている と。そういった中で、本来の看護職の役割というのは、重度化してきている利用者の方がいかに重症 化しないという状況をつくっていくかが看護職だと考えて仕事をしているのですけれども、今の特養の 看護職の人員配置基準ではかなり厳しい現状があるということをそのインタビューのときにも申してお りました。 是非そういったことを考えていただきたいなあということと、内田委員の方からお話がありました研修 のことであるとか、あるいはヒヤリハットのこととかがモデル事業の中でも出てきたのですけれども、実 際、ヒヤリハット、かなり施設によって格差があるというお話でした。私どもの施設でもヒヤリハット報告 書を出していただいたりしていまして、その後に、そのヒヤリハットの報告書をもとにカンファレンスをし ているのですね。事例検討会という形でやっているのですけれども、それがかなり効果的でした。だか ら、是非これからヒヤリハット報告書がでてきた場合にそれぞれ事例検討会をしていただけたらなおい いかなと思います。以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。その他いかがでしょうか。 それでは、一応予定していた時間にほぼなりつつあるのですが、これはどういう形で取りまとめたらい いかというのが、遅参しているような座長がどういうことも言えないような感じもするのですけれども、 ちょっと全体を把握できていないのですが、第一案は、私が参ってからでも重要な御指摘が幾つもあ りましたけれども、とりあえず、この取りまとめ(案)の大まかな方向性が否定されているところはない のではないかなと感じて、そうであれば、木村さんと私と事務局の方で、今日出た御意見を入れて、 字句の修正等、あるいは表現の修正等はやらせていただいて最終的な報告書としてまとめさせてい ただきたい。そういう意味で、一任していただきたいというのが第一案です。 しかし、第二案は、念のため、そのまとまるであろう次の案をメール等で各委員の方にお知らせして、 一応チェックしていただくという手順を踏んだらどうかというのが第二案ですが、どちらにいたしますか。 それを皆様にお聞きしたいということなのですけれども。 三上さんからどうぞ。一人ひとり聞く必要もないのですけれども。 ○三上委員 メールで送っていただいて結構です。直していただいた上で。 ○樋口座長 一応チェックしていただいた方がよろしいですかね、やはり委員として参加していただいて。 それでは、そういう形で、できるだけ速やかに。それから、一応あらかじめ申し上げておきますけれど も、もう一回開くということはやはりできないと思いますのでね。そうすると、メールでということになると、 お一人の意見でそれをまた変えてということになるとどんどんということもありますので、大道につくと いうか、ある程度不満なところがあっても、御寛容である、これはちょっとどうしてもというところは勿論 幾らでも御指摘いただきたいのですが、そういう形で何とか取りまとめて報告書という形にして出した いと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、最後に老健局長からコメントをいただきたいと思いますが。 ○宮島老健局長 昨年2月から3回御検討いただきまして、ありがとうございます。この問題というのは、特別養護老人 ホームでたんの吸引が必要な方とか、それから胃ろうによる経管栄養の必要な方が増加してきたとい う実態を踏まえた中で、じゃあそのことを夜間も含めてどうやっていくかと。特別養護老人ホームとして この問題をどのように対応するかということを、実態を踏まえた上での御検討をいただいたというよう なことだったわけで、幸い嘱託医と看護師さんがいるので、その方たちと連携してやっていく。それも 違法だということが一方で言われるものですから、そこを何とか、そういう実態に合わせたようなことで の御検討をいただいたので、今日の議論も出ていましたが、もう少し本格的に考えるのだったら医行 為から外したらどうだとか、あるいは厚労省の中の解釈でいいというふうにできないかとか、あるいは もう少し本格的な法律できちんと検討すべきではないかという、確かにそういうごもっともな意見をい ただいたと今日のところの話は受けとめましたけれども、とりあえずこういう今の状況を一日も早く何と かしていただきたいということについて、このような大変いろいろ議論、難しい議論をおまとめいただき まして、誠にありがとうございます。 今日の議論の中でも、制度的な対応みたいな話とか、研修ですね。しっかりした研修をやるべきだと。 それから継続的な検証が必要だと。特にヒヤリハットの事例なんかの分析のようなことといったような 重大な御指摘をいただいておりますので、そういった面については、私どもも今後ともしっかり対応で きるようなことを考えていきたいと思っております。今日のこの会議については、今日で一定の結論を 得たということで受けとめさせていただきます。 今までいろいろとどうもありがとうございました。 ○樋口座長 それでは、本日の検討会はこれで閉じたいと思います。どうも長い時間ありがとうございました。 《照会先》 厚生労働省 老健局 高齢者支援課 梶原 03-5253-1111(内3922)