10/03/24 平成21年度第5回雇用政策研究会議事録 第5回 雇用政策研究会(議事録)                       1 開催日時及び場所   開催日時:平成22年3月24日(水) 10時から12時まで   開催場所:厚生労働省・省議室(9階) 2 出席者   委 員:阿部委員、加藤委員、黒澤委員、小杉委員、駒村委員、佐藤委員、鶴委員、橋 本委員、樋口委員、宮本委員、森永委員、山川委員 事務局:細川厚生労働副大臣、太田厚生労働審議官、森山職業安定局長、中野政策統括 官(労働担当)、山田職業安定局次長、前田労働基準局総務課長、高橋職業能 力開発局総務課企画官、吉本雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長、酒光労 働政策担当参事官、間社会保障担当参事官室政策企画官、宮川職業安定局総務 課長、小川雇用政策課長、山田外国人雇用対策課長、田中若年者雇用対策室長、 里見雇用政策課企画官、平嶋雇用政策課長補佐  他 ○樋口座長 定刻になりましたので、ただいまより第5回「雇用政策研究会」を開催いたし ます。皆様におかれましては、ご多忙の中をお集まりいただきまして誠にありがとうござい ます。今回の議題は「就労促進と働き方の見直し」ということで、初めに、現在厚労省が取 り組んでおります各施策を中心に説明をしていただきます。まず事務局から、若者、高齢者、 障害者、外国人の就労支援についてまとめて説明をお願いいたします。 ○平嶋雇用政策課長補佐 資料1からご説明いたします。若者の就労支援については資料 1-1です。1頁に、新規高卒者の求人・求職状況の推移ということで内定率を載せています。 1月末現在の内定率が最新の数字になりますが、81.1%ということで昨年、一昨年に比べて 低下している状況です。2頁は大卒の内定率ですが、2月1日現在で80.0%になっています。 この統計は平成12年からのものになりますが、この中では過去最低です。  3頁は、大卒求人倍率の推移です。これは、リクルートワークス研究所の調べになります が、全体で1.62になります。ただ1,000人未満については3.63、1,000人以上については 0.55ということで、大企業のほうで特に倍率が低いことになります。  こうした状況を受け、4頁では就職支援を強化しています。高卒・大卒就職ジョブサポー ターを、以前の530人から928人まで増員しています。就職面接会を173回開催すること にしています。新卒者体験雇用事業ということで、1カ月間の体験雇用を受け入れた事業主 に対して奨励金を払うことで、未就職者の就職支援をしています。それから職業訓練、訓練・ 生活支援給付の拡充をやっています。  5頁は、若年者の失業率の推移です。15〜24歳のところは近年低下しておりましたが、 平成21年になって急に上昇しています。6頁はフリーター数です。フリーター数は平成15 年から減少していましたが、平成21年になって増加に転じています。15〜24歳のフリータ ーは減ってきていましたが、これについても増加しています。ニート数については60万人 台前半でほぼ安定している状況です。  7頁は、卒業後3年以内の離職率です。中卒、高卒、大卒ごとに載せています。それぞれ が概ね7割、5割、3割ということで、いわゆる七五三という状況が続いています。8頁は 意識調査で、若者が離職したことについて、概ね9割の方が離職してよかった、どちらかと いえば離職してよかったという評価をしています。離職の決め手になった理由としては、「仕 事上のストレスが大きい」「給与に不満」「労働時間が長い」「会社の将来性・安定性に期待 が持てない」となっています。  9頁はミスマッチの状況です。右の図の真ん中ほどの「希望する職種・内容の仕事がない」 が大変多くなっています。10頁は、非正規の割合です。特に20代で非正規の割合が高まっ ている状況です。11頁は以前にもお付けいたしましたが、非正規労働者の教育訓練の実施 状況で、正社員と比べてとても低くなっています。有配偶者の占める割合も低い状況です。  12頁は対策です。フリーター等正規雇用化プランということで、平成21年度は23万人 の正規雇用(速報値)を実現しています。ハローワークにおける就職支援事業、ジョブカフ ェ、トライアル雇用制度、ジョブ・カード制度という対策をとっています。13頁はニート 対策として、地域若者サポートステーション事業を行っています。これは各地域の機関、教 育機関やNPOの支援プログラムを紹介し、地域で一体的に取り組むものです。  14頁は、既卒者の募集の状況です。新卒者採用枠で既卒者を募集した企業は約5割とな っています。企業規模が大きいほど応募不可とする割合が高くなる傾向があります。15頁 の右側に、既卒者をなぜ募集採用対象としないかを載せています。「新卒者で十分人員が確 保できる」からという割合が高くなっています。16頁は、青少年の雇用機会の確保等に関 して、事業主が講ずる指針です。左側の□の2番目、既卒者についても、新規学卒者の採用 枠に応募できるような募集条件を設定する。3つ目の□で、新規学卒者等の採用時期につい て、通年採用や秋期採用の導入等を積極的に検討する。以上が若年者です。  資料1-2は高齢者の就労支援についてです。1頁は対策の全体像です。60歳台の雇用確 保ということで、65歳までの段階的な定年引上げ、継続雇用制度、70歳まで働ける企業の 普及促進。高齢者の再就職促進として、年齢制限の禁止、早期再就職の実現。多様な就業・ 社会参加の促進ということで、シルバー人材センター事業を行っています。  2頁は団塊世代の高齢化です。2007年、2012年、2017年に団塊世代の山が推移してい く状況です。現在は2010年ということで、団塊世代の山が60歳前半のところに来ていま す。3頁は高齢者の雇用失業情勢です。平成21年の平均ですが、完全失業率は年齢計で5.1% に対して、60〜64歳では5.4%と若干高いです。就業率については、男女年齢計で56.9%、 60〜64歳で57.0%ということで、ほぼ全体並みになります。  その就業率の推移を見たのが4頁です。下から2つを見ますと、60〜64歳、あるいは65 〜69歳のところで就業率が近年非常に高まってきている状況です。特に2006年に高齢法の 改正が施行され、これを境に上昇しています。5頁は各国の高齢者の労働力率です。日本は 欧米諸国と比べて労働力率が高いことになります。  6頁は就業意欲です。これは団塊の世代に対して、定年後も働きたいと回答した人につい て集計しています。65歳ぐらいまでというより右の人が9割以上です。65歳よりもっと働 きたいという方が9割以上になっています。7頁は就業についての引退時期です。これは先 ほどと違って、定年後も働きたいかどうかにかかわらず聞いています。65歳以上まで働き たい人の割合は男性で69%、女性で47%になっています。8頁は就業理由です。「経済上の 理由」が非常に多いです。この理由は年齢が高まるにつれて低下していきます。代わって「生 きがい、社会参加のため」「健康上の理由」というのも増えてきます。  9頁は定年の引上げ、継続雇用制度の導入です。年金支給開始年齢の引上げに合わせて3 年ごとに引き上げていますが、2009年度は現在63歳までとなっています。中身としては定 年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれかを採っていただくことが義 務づけられています。  10頁はその取組状況です。こうした雇用確保措置を実施しているのは、全企業で95.6% ということでかなり進んできています。図3がその内容で、定年の定めの廃止は2.9%、定 年の引上げは15.1%、継続雇用制度の導入は82%です。その82%の内訳が図4です。希望 者全員を対象にしているのが約4割、何からの基準を設けているのが約6割という状況です。  11頁は、希望者全員が65歳まで働ける企業及び70歳まで働ける企業の実現です。現在 は65歳まで働ける企業の割合は44.6%、70歳まで働ける企業が16.3%になっています。 これについてそれぞれ50%、20%に高めようということで取り組んでいます。12頁はシル バー人材センター事業で、約76万人が登録して、いろいろな活動に参加していただいてい ます。以上が高齢者です。  資料1-3は障害者の就労支援についてです。1頁は障害者雇用の状況です。現在の雇用率 は1.63%ということですが、ここのところ順調に上昇しています。人数的には現在33.3万 人ということで、こちらも増加してきています。2頁は企業規模別に見たものですが、56 〜99人のところが若干低下していますが、ほかの規模では近年上昇しています。  3頁は、ハローワークにおける就職件数の推移です。これについては近年増加していまし たが、足元ではリーマンショックの影響もあるのだと思いますが、若干減少しています。4 頁は職業紹介の状況です。上の段がハローワークにおける新規求職申込件数です。障害者計 は近年大幅に増加してきています。障害者の求職意欲が高まってきている状況です。  5頁は、障害者雇用促進法の概要です。雇用義務制度について、民間企業は1.8%の雇用 率を定めています。納付金・調整金制度は、1.8%に対して不足が出た場合は、1人月額5 万円を徴収します。逆に超過達成していただいている企業には、1人当たり2万7,000円を 支給します。施設の設置、介助者の配置等に対する助成金を支給しています。  6頁は、障害雇用率達成指導の流れです。雇用率の未達成企業には計画の作成、あるいは 指導を行いながら、それでも達成できない企業については企業名の公表をしています。7頁 と8頁には諸施策を載せています。トライアル雇用制度、ジョブコーチによる支援、就業面 と生活面の一体的な支援。8頁では、障害の特性に応じた、それぞれのプログラムを作って 対応している状況です。  9頁は障害者権利条約です。我が国は平成19年9月に署名しています。内容は2つ目の ところで、障害を理由とする差別の禁止、職場における合理的配慮の提供の確保、苦情に対 する救済についての権利の保護が求められていて、現在労政審の障害者雇用分科会において 検討中です。以上が障害者です。  資料1-4は外国人の就労支援についてです。1頁は対策の基本的な考え方です。現行法の 枠組みにおいて、「我が国の産業及び国民生活等に与える影響」を総合的に勘案して決定す ることになっています。雇対法では、国が講じるべき施策として、専門的・技術的分野の外 国人の就業促進や、外国人の雇用管理の改善、再就職の促進とともに、企業に対しては外国 人労働者の雇用管理の改善、再就職支援の努力義務を課しています。専門的・技術的分野の 外国人については、国際競争力強化の観点から、我が国での就業を積極的に促進しています。 「生活者としての外国人」に関する総合的対応策や、外国人指針に基づいて、外国人労働者 の就業環境の改善を図っていくことにしています。  将来の労働力不足の懸念に対し、外国人労働者の受入れ範囲を拡大したほうがいいという 意見もありますが、労働市場の二重構造化が強まるおそれがあることに加え、労働条件の改 善や、それを通じたマッチングの促進、人材の確保を阻害しないためにも、安易に外国人労 働者の受入れ範囲を拡大して対応するのではなく、まずは国内の若者、女性、高齢者、障害 者等の労働市場の参加を実現していくことが重要であると考えています。  これらを踏まえ、具体的な対応として、専門的・技術的分野の外国人に対しては、外国人 雇用サービスセンターを中心とした、全国ネットワークを活用した就職の促進。学卒部門や 大学の各部門と連携し、留学生の国内就職の促進などを行っています。事業主に対しては、 外国人雇用状況の届出制度の周知徹底、外国人指針の周知・啓発、事業所指導などの外国人 労働者の雇用管理の改善を促進している状況です。  2頁は、日系人に対する機動的な雇用対策についてです。雇用情勢の悪化に伴い、派遣・ 請負などの不安定な雇用形態にある外国人労働者の解雇が非常に増えました。外国人の新規 求職者数は、昨年の前半をピークに減少しておりますが、依然として厳しい状況にあります。 日系人については、日本語能力の不足や、我が国の雇用慣行の不案内に加え、職務経験も十 分でないことから、一旦離職すると再就職は極めて厳しい状況にあります。そうしたことか ら、これまでの対策に加え、外国人集住地域の市町村と連携したワンストップサービスコー ナーを全国31カ所に立ち上げること。日系人が特に多い地域においては、新たに外国人専 門の相談・援助センターを設置しています。  平成21年度からは新たに通訳や相談員の配置を増やしました。例えば、通訳を全国の4 分の1のハローワークに設置する。日本語能力の向上を図る就労準備研修を実施し、2月末 までに全国で約6,300人が受講しています。就労準備研修終了後は、公共職業訓練等のより 高度な訓練へ移行できるように配慮しています。  3頁は全体の数字です。労働者総数全体で56.2万人。内訳は、専門的・技術的分野で10 万人、日系人等の身分に基づき在留する者が25.3万人、企業実習生等の特定活動が11万人、 アルバイト等の資格外活動が約10万人となっています。4頁は国別です。中国が約44%、 ブラジルが18.5%です。以降、参考に外国人の登録者数の推移、ハローワークの状況等を 載せております。私からは以上です。 ○樋口座長 続いて、女性の就労支援について、雇用均等・児童家庭局から説明をお願いい たします。 ○吉本雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長 資料1-5に基づいてご説明いたします。1 頁は、働く女性の現状です。雇用者数に占める女性の割合は42.3%、2,311万人です。よく 言われるM字型カーブについては、その谷のところが少しずつ上がってきてはいますけれど も、依然としてM状形をしています。欧米諸国が台形なのに比べ、形状の違いが依然として あります。勤続年数も年々長くなってきていますけれども、男性と比較するとまだ短い状況 です。賃金格差については、長期的には縮小傾向ですが、最新のデータで男性に対して69.8% ということで、諸外国に比べると格差が大きいです。管理職の女性の割合もようやく1割を 超えるところまでまいりましたけれども、諸外国に比べると低い状況です。  そうした中で、いま私どもで力を入れている施策の1つとして、ポジティブ・アクション があります。ポジティブ・アクションは均等法に基づいて、過去からの雇用管理や職場慣行 が原因となり、事実上生じている差を縮めてもらうための、企業の自主的な取組みという位 置づけです。具体的には、昇進試験の受験を女性に奨励する、法を上回る育児制度等を導入 するといったさまざまな取組みがあり得ます。ただ現状を見ると、少しこの取組みの動きが 停滞しているような状況も窺えます。平成18年度の調査で「取り組んでいる」「今後、取り 組むこととしている」が約3割程度。大企業ではかなり進んできておりますが、中小企業で はまだまだという状況です。特に中小企業を重点に、きめ細かなコンサルティングなどの取 組みを来年度以降実施してまいりたいと思っています。  3頁は、男女雇用機会均等法の概要です。平成18年の改正で、女性に対するものだけで はなく、男女双方に対する性別を理由とする差別の禁止となりました。禁止の中身も、間接 差別という概念を新たに導入し、具体的には省令で定める3つの要件については禁止してい ます。妊娠・出産・産休取得等を理由とする不利益取扱いについても、解雇以外の、雇止め、 降格等の不利益取扱いについても禁止することにいたしました。以上が均等対策です。  4頁からは2つ目の柱となる、仕事と家庭の両立支援の関係です。現状として、女性の出 産後の継続就業、第1子出産前後の就業の状況を見ると、出産前有職だった方のうち、継続 している方が38%、そのほかの方は離職している状況です。退職した理由を聴くと、両立 が難しかったことが多く、勤務時間の問題、雰囲気の問題、体力の問題等が挙げられていま す。  5頁ですが、男性の育児休業のことが最近よく言われます。女性については、育児休業の 取得率は9割を超えるところまできていますが、男性については1.23%という状況です。 利用したい男性は3割を超えるとする調査結果もあるものの、現実的には職場において取り にくい雰囲気が強い。右下のグラフにもあるように、男性が取得する場合は、取得しにくい というのが、企業、従業員ともに8割以上といった状況です。  6頁で、こういう状況を踏まえた両立支援対策の概要をまとめています。法律に基づく両 立支援制度として、育休法に基づくものが中心となるわけですが、これは昨年法改正があり ましたが、次に紙を付けておりますので後でご説明いたします。真ん中のところで、利用し やすい職場環境づくりということで、次世代支援法に基づく、事業主の定める行動計画の策 定を推進するなどの取組みを行っています。そうした職場環境に取り組む事業主に対する助 成金制度であるとか表彰事業などを実施しています。  7頁に、育児・介護休業法、昨年改正になった改正法の概要を付けています。1〜4まで ありますが、4の部分は既に施行されていますが、1〜3についてはこの6月30日からの施 行を予定しています。1は子育て期間中の働き方の見直しです。育児休業を取得した後も両 立しやすいようにということで、3歳までの子を養育する労働者については、短時間勤務制 度を設けることを義務化しました。それに加え、請求があった場合には所定外労働の免除を 制度化する。この看護休暇制度についても、現行の年5日から、人数に応じて2人以上であ れば年10日という拡充を行っています。  2つ目に、父親の育児休業取得促進ということで、父母がともに取得する場合については、 1歳2カ月までの間に取得を可能とするという、いわゆるパパ・ママ育休プラスを設けてい ます。介護との両立支援ということで、介護のための短期の休暇制度を設ける。そのほか実 効性の確保として、紛争解決の援助及び調停の仕組み等を導入することとしています。  8頁で、次世代法に基づく企業の行動計画の策定です。平成17年から策定を始め、昨年 末までで301人以上の企業については98.3%まで策定が進んでいます。再来年度からは、 いま301人以上のところが101人以上の義務化になりますので、それに向けてさらに策定 の推進を進めてまいりたいと考えているところです。  最後に3つ目の柱として、パートタイム労働対策を実施しています。9頁はパートタイム 労働者の状況です。数は大変増えているのはご案内のとおりですが、雇用者総数のうち4 分の1を占めるに至っています。そのうち7割が女性で、男性のパートも増えている状況で す。企業規模別に見ますと、100人未満の比較的小さい所で働いている方が多いです。給与 は、パート労働者のカーブを見ますと、年齢にかかわらずほとんど水平的なカーブで一定の 状況です。  11頁はパート労働者の働く理由です。現在パートとして働いている理由を聴いたところ、 「自分の都合のよい時間に働けるから」「家計の補助、学費等を得たいから」という理由が 多くなっています。12頁は職場での満足度を聴いています。仕事内容、労働時間・休日等 の労働条件等、いわゆる働き方などの部分については比較的満足度が高いのですが、賃金、 福利厚生等の待遇面では不満を持つ方も多い状況です。  13頁は、パートタイム労働への対策です。改正パートタイム労働法を平成20年度より施 行しております。その内容としては、労働条件の明示ということで、労働基準法に加え、昇 給、退職金などに関する労働条件の明示を義務づけました。均衡確保ということで、それぞ れの働き方に応じて、均衡のとれた待遇を確保してもらうための措置を講じていただきます。 特に、通常の労働者と同視すべきパートの方については、差別的取扱いの禁止、いわゆる均 等待遇ということです。通常労働者への転換を推進するための何らかの措置をとることを義 務化しています。  そうした法の施行と併せ、14頁にあるような均衡待遇推進のための助成金制度、これは さまざまなメニューがあります。短時間正社員制度を導入したり、制度化を図って利用者が 出た場合に、そこにありますような助成金を支給し、取組みを推進しています。私からは以 上です。 ○樋口座長 労働時間について、労働基準局から説明をお願いいたします。 ○前田労働基準局総務課長 資料2です。1頁で、年間の総実労働時間の推移です。昭和 30年代は、戦後の経済拡大で労働時間が伸びてきたということで、このグラフの左から2 つ目の昭和35年は総実労働時間が2,426時間ということで、この辺りがピークでした。そ の後、週休2日制が徐々に普及するなどにより、所定内労働時間が短縮してきたということ で、昭和50年ぐらいまではそういう状況でした。昭和50年以降、所定内はほぼ短縮が進 まなくなり、所定外は若干増えるような状況になりました。昭和62年に労働基準法が改正 され、所定労働時間は本則では週40時間となり、段階的に法定労働時間の短縮が進み、昭 和62年から後は、所定労働時間がまず短縮することにより、総実労働時間も短縮しました。 平成9年に特例を除いて完全に週40時間制になりました。その後については、パートが増 えることもあり、総実労働時間は1,800時間前後まできています。  2頁ですが、平成に入って特にパートタイム労働者の比率が増えてきました。平成20年 では総実労働時間は1,810時間です。2頁の右のグラフを見ますと、一般労働者、パートタ イム労働者共、総実労働時間はほぼ横ばいです。パートタイム労働者の比率が、平成6年は 11.5%であったのが、平成20年には22%ということで、この比率が上がったことが全体の 平均の実労働時間の短縮にかなり影響しています。  3頁ですが、そういう中で一方で週60時間以上の労働者がかなり高い割合であります。 最近は経済情勢の悪化等で若干減っていますが、平成5年が10.6%、平成21年は9.2%と いうことで、依然として高い水準です。特に30代男性で、週60時間以上の者が、平成21 年においてもまだ18%いるということで、この辺が課題としてあります。  4頁で、年次有給休暇の取得率は近年5割弱という水準です。平成19年から調査対象が、 本社の常用労働者が30人以上から常用労働者が30人以上と変わっているので若干比較が 難しいところがあります。  5頁は、労働時間についてのこれまでの取組みです。年間の目標設定というのがあり、昭 和61年11月に「1980年代経済社会の展望と指針」ということで、昭和65年度までに年 間総実労働時間2,000時間へ向けて短縮ということ。さらに昭和63年5月に「世界と共に 生きる日本」ということで、新前川レポートを受けて、年間総労働時間1,800時間程度に向 けて、できる限り短縮するという目標が設定され、その後、政府経済計画(平成4年、7年、 11年)においても、この1,800時間という目標が政府の目標として明記されたということ です。  一方で平成4年7月に「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」が制定され、労働時 間短縮推進計画でも、同じく1,800時間の目標を明記し、労使の取組みにより労働時間の短 縮を進めていこうということでやってきました。平成17年にこの時短法は改正され、1,800 時間という計画も廃止されました。  6頁で法制面の問題ですが、基準法で、法定労働時間について、昭和63年4月に本則で 週40時間制が明記され、段階的に46時間、44時間に移行していくことになりました。平 成6年4月に一部の規模・業種を除いて週40時間制ということで、一部の規模・業種につ いては猶予措置がありました。それが平成9年4月になくなり、全面的に週40時間制にな りました。特例対象事業場ということで、10人未満の商業や飲食店等については特例が残 っています。平成22年4月、これはこの前の労働基準法改正で1カ月60時間を超える時 間外労働についての割増賃金率を50%に引き上げるということでこの4月から施行されま す。  年次有給休暇の関係では、もともと1年間継続勤務して、8割以上出勤した場合に、6日 の年次有給休暇が発生するということでしたが、昭和63年4月にまずその最低付与日数が 6日から10日に引き上げられたということと、一定の部分については計画的付与制度が導 入されました。さらに平成6年4月に、継続勤務要件が1年から6カ月に短縮されました。 平成11年4月までは継続1年ごとに1日の増加が、2日ずつの増加に改められました。な お、平成20年の基準法改正で、5日分を限度として、時間単位での取得が労使協定によっ て可能となり、平成22年4月1日から施行されます。  7頁は、先ほど申し上げました時短法から労働時間等の設定改善へということで、特にパ ートが増えたということで、労働時間の短縮が進んだ面もあるわけですが、そういう単なる 労働時間の短縮だけではなくて、労働者の健康と生活に配慮しつつ、多様な働き方への対応 ということで、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」に改正され、指針が策定さ れています。それについて、平成20年4月にワーク・ライフ・バランス憲章、あるいは行 動指針を踏まえて改正が行われ、さらにこの3月に年次有給休暇の取得促進を目指して、環 境整備に向けて一部指針を改正しました。  労働時間についての課題ですが、8頁で総論としては労働者が心身の健康を保持できるこ とはもとより、職業生活の各段階において、家庭生活、あるいは能力開発、地域活動等に必 要とされる時間と、労働時間とを柔軟に組み合わせ、心身ともに充実した状態で意欲と能力 を十分に発揮できる環境を整備していく。これは指針に書かれていることです。  特に問題としてその下ですが、正社員等長時間労働者、これは最初のほうに出てきた週 60時間以上働く方と、パートタイム労働者等短時間労働者で労働時間の「長短二極化」の 傾向にあるということ。特に30代男性で、5人に1人ぐらいが週60時間を超えて働いてい ます。子育て世代のところで特に長くなっています。年次有給休暇については取得率が5 割を下回っている状況です。  9頁で、労働時間等設定改善法です。先ほど申し上げましたように、平成18年4月に施 行され、9頁の右側にその指針のポイントを書いておきましたが、下の2番のところで、労 働時間について労使での話合いの機会を整備する、年次有給休暇の取得しやすい環境整備、 所定外労働削減、あるいは各人の健康や生活への配慮といったことを指針に掲げて取り組ん でいます。  10頁で、今回年次有給休暇の取得促進ということで指針の改正が行われています。10頁 の下のところで、昨年12月の「明日の安心と成長のための緊急経済対策」において、「休暇 取得促進への支援措置」として、この指針を見直して年休を取得しやすい環境の整備に向け た取組みの促進を図るということが明記されました。具体的には、年次有給休暇の取得状況 を確認する制度を設定改善委員会など、労使の話合いの中で導入する。年次有給休暇の取得 率の目標設定を検討する、あるいは計画的付与制度の活用により、連続した休暇の取得促進 に配慮する。特に2週間程度の連続した休暇の取得促進について、全労働者が取得できるよ うな制度の導入に向けて検討するという形で改正し、4月から適用されるということです。  11頁以下に、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」における数値目標が設定されて います。2012年と2017年のそれぞれの目標値が設定されています。  最後に13頁で、平成20年の基準法改正ですが、先ほど申し上げましたように、法定割 増賃金率1カ月60時間を超える者については50%以上引き上げるとか、年次有給休暇の時 間単位の取得を盛り込んだものが、この4月1日から施行されます。私からは以上です。 ○樋口座長 最後に職業能力開発について、能開局から説明をお願いいたします。 ○高橋職業能力開発局総務課企画官 資料3の1頁に施策の概要がありますが、まず、2頁 から9頁まで、これは毎年私どもで実施しております能力開発基本調査の結果をご紹介いた します。一つひとつの資料の説明は時間の都合で割愛させていただきますが、2頁から9頁 までの資料でわかることを要約しますと、OJT、それから座学(OFF-JT)、自己啓発への企 業による支援としては、正規労働者は非正規労働者よりも、対象になっている割合が高い。 企業規模別には、大規模企業で中小企業よりもその割合が高い。正社員の方が、非正規社員 よりもOJT、OFF-JT、自己啓発への支援の対象の割合が高いと申し上げましたが、その正 社員の中でも、最近は対象となる方の絞り込みが進行しています。  最近は前年よりも景気の影響もあるかと思いますが、教育訓練の実施割合が低下する傾向 にあります。能力開発が生産性に与える影響というのは、肯定的な見方をする方が比較的多 いわけですが、最近は企業も労働者も能力開発に対する時間的、あるいはコスト的な余裕が なくなってきていることが見て取れます。そうした中で能力開発についても、非正規労働者 への対応、あるいは中小企業へのきめ細かい配慮が課題になっています。  こうした中での施策の状況ですが、1頁で私ども職業能力開発局では、いちばん冒頭にあ ります「職業能力開発基本計画」に基づき、5年間の中期計画を立てて施策を実施しており ますが、いまの大きな柱としては「職業能力の開発・向上」「職業能力評価・技能振興」と いう2つの大きな柱に基づいて実施しているところです。その中で1つ目の柱の「職業能力 の開発・向上」は、3つの体系に分かれています。1つ目の「労働者のキャリア形成支援」 については、労働者の自発的な能力開発を支援するということで、教育訓練給付制度、ある いはキャリア形成促進助成金ということです。教育訓練給付制度については、雇用保険の被 保険者、あるいはそうであった方で、一定の年数を掛けた方が、厚生労働大臣が指定する講 座を受けた場合にその2割、10万円を上限としてその費用を給付させていただく制度です。 キャリア形成促進助成金については、事業主が雇用する労働者に対し、計画的な職業訓練を 実施した場合に、その内容あるいはその規模に応じて助成金を支給するものです。  キャリア・コンサルティングの普及・促進については、専門的なキャリア・コンサルタン トによるきめ細かい相談指導ということで、ハローワーク等において、最近はジョブ・カー ドを用いたキャリア・コンサルティングを進めているほか、社会的インフラ整備としての専 門資格、キャリア・コンサルタントの養成の促進を実施しています。  2つ目の体系は、「職業訓練の実施」ということで、ご案内のように公共職業訓練です。 これは主に離職者を対象とするもの、それから在職者、学卒者を対象とするものがあり、国 あるいは都道府県それぞれで実施しています。また、昨年7月からは、特に雇用保険の受給 資格のない方を対象とした職業訓練、その期間中の生活支援のために給付を支給する緊急人 材育成支援事業を実施しています。  3つ目の体系としては、先ほどのキャリア形成促進助成金を活用した、社内での教育訓練 の推進ということ。それから認定職業訓練の制度、これは事業主が職業訓練で一定の基準を 満たす場合に、それを都道府県知事等が認定し、その中でとりわけ中小企業等が実施してい ただける場合に、その費用の一定割合を補助する制度ですが、そうしたものを実施していま す。  この3つの体系の中間的なものという位置づけの施策も行っています。地域若者サポート ステーションであるとか、ジョブ・カード制度、これは後ほど出てまいります。  2つ目の柱の「職業能力評価・技能の振興」については、技能検定であるとか、技能五輪 等のいろいろな競技大会を行っています。  これらの施策の中で主なものだけ簡単にご紹介いたします。資料の10頁ですが、これは 離職者等を対象とした職業訓練です。先ほど公共職業訓練と緊急人材育成支援事業における 職業訓練ということで2つご紹介させていただきました。若干詳しく申し上げますと、公共 職業訓練のうちの施設内訓練は、国・都道府県が有する職業能力開発施設の中で行う、主と してものづくり系を中心とした訓練です。国では標準6カ月ですが、都道府県ではさらに1 年ぐらいまで実施しています。就職率は、この不況期で若干前年に比べて低下する傾向があ りますが、概ね7〜8割近くを保っています。また委託訓練ということで、職業能力開発施 設から、民間の教育訓練機関に訓練を委託して実施しています。標準3カ月のものが多いわ けですが、中には介護福祉士のように最長2年のコースなども設定しています。平成21年 度と平成22年度の目標数として22万人程度を計画しています。平成21年度の途中経過で すが、1月末で右側の上に書いてありますように約15万人ということで堅調に推移してい ます。  下半分は緊急人材育成支援事業です。これは雇用保険受給資格のない方を主として対象と していますが、内容的には成長や雇用吸収が見込める分野における基本的な能力の形成から、 さらに就職可能な実践的能力の習得までを図るための、概ね3カ月から6カ月の訓練を実施 しています。そのほか再就職に必要なITスキルなどを習得するための短い3カ月のコース なども併せて実施しています。  こういう訓練を受講する方は、雇用保険の受給資格のない方を念頭に置いておりますので、 そうした方が安心して訓練を受講していただけますように、一定の所得、あるいは資産要件 等はありますけれども、それを満たす方について、扶養家族のない方は月10万円、扶養家 族のある方は月12万円、さらに大都市圏等で、これではなかなか生活が厳しいという方の ためには貸付制度も用意しています。平成21年度の目標ですが、右の下半分に書いてある ように、定員ベースで10万人を目標にしていましたが、3月16日現在でそれを達成してい ます。訓練の受講者ということで、申込者ベースでカウントさせていただいておりますが、 年度内の目標8万人も達成していて、平成22年度においてはさらにこの受講者数ベースで 15万人を目標に設定して取り組んでいきたいと考えています。  なお、この緊急人材育成支援事業については、基金で平成22年度までの2年間の事業と なっていますが、その後平成23年度からは求職者支援制度として恒久化するための検討を 労働政策審議会でしていただいているところです。11頁は就職率の状況です。後ほどご参 照いただければと思います。  12頁は、先ほど基金訓練ということで緊急人材育成支援事業についてご説明いたしまし たが、その訓練の基礎的なコースと実践的なコースを組み合わせて受講できることをイメー ジとして書かせていただきました。実践演習コースの主な分野として、情報通信、介護・福 祉、医療、農業等に重点的に取り組んでいます。  13頁は別の施策ですが、ジョブ・カード制度を平成20年度から実施しています。最初に ハローワーク等における専門のキャリア・コンサルタントによるきめ細かい相談支援を経て、 適切な訓練に誘導します。その訓練の内容としては、真ん中の緑の四角にありますように、 企業に直接雇用してもらい、それで訓練を受ける雇用型訓練と、民間の教育訓練機関等に国 から委託をして実施する委託型訓練があります。いずれも、企業が直接現場で指導するOJT と、座学(OFF-JT)の両方を組み合わせた訓練の内容にしていただくというものです。事前 に国で訓練実施計画の認定をさせていただきます。いまの非常に厳しい雇用情勢の中でも、 特に雇用型訓練では就職率が9割に達しているなど、堅調に推移しているところです。  14頁には、実際にジョブ・カード制度の訓練、とりわけ雇用型訓練に取り組まれた企業 から寄せられた声、あるいは訓練生から寄せられた声です。ほかの訓練に比較しても大変肯 定的な意見が多いと存じております。  職業能力評価制度が15頁にありますが、これは技能検定制度、それから職業能力評価基 準です。技能検定制度については、現在136職種で取り組んでいます。平成11年度に比べ て申請者数ベースでも18万人から、平成20年度では67万人と非常に増えております。最 近はこの制度を活用した能力評価を実施する方が増えているということです。職業能力評価 基準についても、現在42業種で、4つのレベルに設定した評価基準を作りました。これは 業界団体と行政が連携して作成し、現場レベルでもいろいろ活用していただいているところ です。  いままで申し上げたようなところですが、新成長戦略においても、能力開発の重要性とい うことで、今後新しい職業能力、あるいは技術を身に付けるための対策を重点的に実施して いくというようなことが盛り込まれました。今後これに基づいて、私どもも新しい施策を検 討していきたいと考えております。  あとは参考ですが、キャリア形成促進助成金については、企業に対する助成金制度で冒頭 に申し上げたものです。18頁は、キャリア・コンサルティングということで、専門のキャ リア・コンサルタントの養成の推進を引き続き実施していきたいということ。19頁は地域 若者サポートステーション、これもニート対策ということで、冒頭に若年対策の資料の中に ありましたので割愛させていただきます。職業能力開発局の施策は以上です。 ○樋口座長 皆さんにご議論いただきたいと思いますが、その前に資料を用意しております ので、私から試案を申し上げます。資料4の背景については、昨年12月に雇用戦略対話が 政労使で開催されてまいりました。宮本先生と私も参加させていただきまして、労使の代表 も出席されておりました。その中で雇用対策を戦略的に実施していくべきではないかという 提言もありました。  その後、年末に閣議が決定され、新成長戦略基本方針にも、雇用人材戦略が含まれており ます。これらを踏まえて事務方に作業を手伝ってもらうという形で、あくまでも私の試案を、 雇用政策の戦略的な実施についてまとめたのが、この資料4です。  ここで戦略ということを掲げたのは、ヨーロッパでもいろいろこういった雇用戦略が行わ れているわけですが、我が国においても、今後の厳しい状況を考えた場合に雇用戦略といっ たものが必要になっていくのではないか。足元における厳しい状況を見定めながら、将来に 向かってビジョンを作り、それに向かって政策をパッケージとして進めていくことが必要で はないかと考えています。  そのビジョンとして、資料4に書いてありますように、雇用の「量」の拡大と「質」の向 上を図り、誰もが意欲と能力を発揮できる働きやすい高質な労働市場を作っていく。このた めに一体何をやったらいいのかということです。政府のほうも2020年に向けてということ ですので、ここでも2020年までの間を想定し、政策パッケージをどのように作っていくの か。これは労使の意見を踏まえつつ、戦略的に進めていく必要があるだろうと思います。し かもその運用実績について、毎年検証、改善を進めていくPDCAサイクルという形で、こ れを回していく必要があるのではないかという提言です。  柱は大きく3つあるいは4つになっています。1つは人々の働きやすい環境をいかに作り 出し、働く意欲と能力を発揮してもらうか、言うなれば供給サイドに着目した政策です。2 番目はプラットフォームとしての科学・技術の発展により、新しい雇用・産業を創造してい く。同時に、生活に密着したニーズを満たすことによって地域再生のための雇用を創出して いく。そういった雇用創出、言うなれば労働需要側に対するアプローチをいかに進めていく かです。3番目として、その需要と供給の橋渡しをするような就職支援のあり方を考え、ま た外部労働市場を整備していくことが必要ではないか。4番目として、安心して働き、能力 が発揮できるようなものを具体的にするためのセーフティネットや、それに該当するような 均等、均衡の促進を考えていく必要がある。こういった柱になっています。  具体的に作業を手伝っていただきました事務方から、中身についてご説明いただければと 思います。お願いします。 ○酒光労働政策担当参事官 お手伝いしました酒光から、ご説明させていただきます。いま 座長から概要についてご説明がありましたけれども、資料に基づいてご説明申し上げます。 4点、いまお話がありました。目次をご確認いただくと、1つがワーク・ライフ・バランス の推進等による労働市場の参加促進、2番目が3頁で雇用創出、3番目が職業能力開発の推 進等による就職の支援、橋渡しです。セーフティネットもここに入っています。4番目が安 心して働くことのできる環境の整備ということです。  いま、お話がありましたように、新成長戦略の基本方針が12月にでき、6月に向けて作 業中ですけれども、そこでの目標年次が2020年ということですので、目標設定に当たって は2020年ということで統一されているものです。順次ご説明申し上げます。  ワーク・ライフ・バランスの推進等による労働市場への参加促進ですが、ディーセント・ ワークあるいはワーク・ライフ・バランスの推進等により、働きやすい職業環境を作る。「出 番」と「居場所」のある社会を実現し、労働市場への参加を促進するということです。2020 年の目標としては、20〜64歳の就業率を80%と、いまと比べて5ポイントぐらい引き上げ る。15歳以上全体の就業率については57%です。20〜64歳については、いまお話があり ましたEUの雇用戦略でも新しい雇用戦略を策定中ですが、20〜64歳ということで就業率 の目標設定をする方針で進められていますので、それとも符合するものです。  なお、15歳以上の就業率ですが、横ばいということですけれども、高齢化が進んでいま すので、何もしない状況ですと2020年には53.4%になるので、実質的には3.5ポイントぐ らい引き上げる推計になります。  特に戦略的な分野として、若者、女性、高齢者、障がい者の就業環境を整備して、就業率 の向上を図る。特にこの層については税・社会保障制度の影響が大きいので、給付付き税額 控除制度の導入の検討を含めて、働くことが損にならないようにするということです。  個別具体的には、(1)が若者の就業促進で、フリーターの正規雇用化、新卒者の就職支援 を進めていく。2020年にフリーター数を124万人と、ピーク時の約半分程度に縮減すると いうものです。文科省においてもキャリア教育の推進等を図っていただくことは、若者対策 として非常に重要なことです。ニートについても減少に向けて取り組むということです。こ こでは目標として、個別ですが、地域若者サポートステーションの説明が先ほどありました。 そこでの今後10年間の就職決定の目標を10万人として設定しています。そのほか合宿型 若者自立プログラムの推進等を図っていく。あるいは内閣府、文科省におけるキャリア教育 の推進等を図っていくことにしています。後でも出てきますが、ジョブ・カードの取得促進、 日本版NVQ制度への発展を図るということです。これらにより、20〜34歳の若者の就業 率は2020年に77%、3ポイント強引き上げるという推計です。  (2)の女性の就業促進ですが、M字型カーブを是正し、継続就業の促進を図るということ です。対策は先ほどご説明があった対策ですが、女性の継続就業率については2020年に 55%としています。両立支援で辞めている方が全部就業できるようにすると、このぐらいの パーセンテージにいくだろうということで目標に設定しています。女性の固定的な役割分担 を前提とした税・社会保障制度を見直す。また先ほどご説明があった育休法に基づくいろい ろな対策を推進して、男性の育児休業の取得率については2020年度に13%としています。 毎年、1ポイントずつ上げていく形です。その他、女性の再就職の促進を図り、25歳〜44 歳の就業率を2020年に73%、7ポイントぐらい引き上げるとして、かなり大幅な引上げを 図ろうということです。  (3)の高齢者の就業促進ですが、政策については先ほど説明があったとおりで、65歳まで の雇用の促進、年齢にかかわりなく働ける社会等を進めていくということです。目標として は60〜64歳の就業率を2020年に63%とする。現在は57%ですが、年金の支給開始年齢 や高齢法の施行により、就業率はトレンドでも上がっていますので、このぐらいは十分達成 可能だろうということです。当然、年金の問題が非常に大きな問題ですので、働くことが損 にならないような制度の再検討をする。  (4)の障がい者の就業促進ですが、法定雇用率あるいは障害者権利条約の批准に併せて障 害者雇用促進法の見直し検討ということで、実雇用率としていまの法定雇用率の1.8%を実 現する。  3頁の2.雇用創出ですが、ここは具体的な数字はありませんけれども、経済のグローバル 化が進展する中、良質な雇用機会を創出するためには、需要サイドをきちんとやっていくと いうことで、科学・技術の発展に裏付けられた競争力のある産業の振興を図り、それを支え る人材を育成する。もう1つは地域の雇用創出ということで、NPO、社会的企業など「新 しい公共」による地域における雇用創造を推進することと、こうした企業には就職支援も手 伝っていただく。そのほか現行、行っている各種の地域雇用対策を推進していくということ です。  3.職業能力開発の推進等による就職の支援です。大きく分けて能力開発の関係とセーフテ ィネットの関係等が含まれています。(1)のジョブ・カード制度について先ほど説明があり ましたが、そのジョブ・カード制度の普及促進を図るということです。企業実習と座学を組 み合わせた実践的な職業訓練の機会の提供のほか、公共職業訓練の受講者・一般求職者・学 生等の就職にも役立つ、外部労働市場での能力評価に役立つということで取得の勧奨を行う。 ジョブ・カードの取得者を2020年度までに300万人として、年間25万人ぐらい新規に取 得していくことを想定しています。また、職業能力評価基準の策定・活用の推進等を行い、 日本版NVQへの発展に向けて取り組んでいきます。  3頁のいちばん下の(2)公共職業訓練の推進ですが、成長分野、ものづくりを中心に職業能 力開発を推進する。就職率について施設内訓練で80%、委託訓練で65%を目指す。(3)の自 発的な能力開発は、自己啓発を行っている労働者の割合を正社員で70%、非正社員で50% の目標を設定しています。大体このぐらいの方々が自分で職業生活設計を考えているので、 そうした方が自己啓発を行えるように環境を整備していく目標設定です。(4)が求職者支援 制度の創設で、これは民主党のマニフェストにありますが、現行の緊急人材育成支援事業を 発展させるもので、いまの緊急人材育成支援事業についてきちんとコース設定をしていくと ともに、2011年度に「求職者支援制度」を創設するものです。(5)は雇用保険です。いま雇 用保険法の審議を行っていただいていますが、雇用保険の適用の範囲の拡大を図るとともに、 国庫負担割合の原則復帰を図る。(6)は主に福祉分野で行っている就職支援ですが、住宅手 当制度の拡充、恒久化、あるいは生活保護受給者の就労支援等を推進していくということで す。  4.安心して働くことのできる環境の整備は、主に労働条件面をまとめています。やや今ま でと重なる部分もありますが、(1)は均衡・均等待遇の推進等で、パートや有期労働者の均 衡・均等待遇の確保と正社員転換の推進をしていく。有期労働契約についても、いま研究を 進めていますので必要な対応を行う。改正労働者派遣法が閣議決定されていますけれども、 今後、それをご審議いただいて、その成立後は着実な推進を図るというものです。  (2)が最低賃金の引上げです。生活保護と地域別最低賃金の乖離の解消を進める。現在、 最低賃金引上げの課題等の調査・検討を進めていますので、これをきちんとやっていくとい うことです。なお、最賃の引上げとなると景気の回復が重要な鍵になるわけで、中小企業の 生産性向上の支援等について、関係省庁による財政上、金融上の措置が不可欠です。  (3)が労働時間短縮の促進等です。目標としては年次有給休暇の取得率が現在は半分弱で すが、これを2020年に70%まで引き上げるということです。それと併せて働く方の希望に 応じた柔軟な働き方を進めるなど、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた働き方の見直 しを促進する。特に健康の問題を考慮すると長時間労働は非常に問題ですので、長時間労働 の抑制を図り、60時間以上の雇用者の割合を半減させる。いま1割ぐらいいますので、そ れを半減させるという目標です。  (4)の育児休業の取得促進は、概ね先ほどと重なりますので説明を省略します。(5)が短時 間正社員制度の導入・定着、あるいは適正な労働条件下でのテレワークの普及で、柔軟な働 き方を進めていく。(6)が労働安全衛生対策の推進で、災害の防止、メンタルヘルス対策、 受動喫煙防止です。労働災害については発生件数を30%引き下げる目標を設定しています。 メンタルヘルスについては、それが必要な労働者すべてが、メンタルヘルスに関する措置を 受けられるようにしていく。あるいは受動喫煙のない職場にしていくことについて取り組ん でいくということです。(7)が、労働関係法令の履行確保及び個別労働紛争の予防と解決に 向けて取り組む、ということが書かれています。  6頁に、いま申し上げたもので、特に数値目標に関わる部分を一覧で出ていますので、ご 参考にしていただければと思います。数値目標を作る上で根拠となるデータの計算方法を7 頁、8頁に分けて記載しています。  以上ですが、厚生労働省としては、先ほど座長からお話がありましたけれども、雇用政策 を戦略的に実施するということですので、このペーパーをたたき台として、関係審議会等に おいて労使の意見をよくお聞きして、今後、雇用政策を戦略的に実施していきたいと考えて います。よろしくお願いします。 ○樋口座長 ただいまの事務局からの説明を踏まえ、自由討議に移りたいと思います。冒頭、 男性、女性、年齢等々についての紹介もありましたので、それを含めてご議論いただけたら と思います。よろしくお願いします。 ○佐藤委員 資料のことで2つと、3つ目は最後の資料4です。資料1-1の14頁ですが、 前回、最後のほうで新卒のところの就業できない、あるいは企業の新卒一括採用だというお 話がありました。14頁のことは非常に大事で、新卒採用のときに既卒者も採っているとい うのは意外に知られていない。説明は「企業規模が大きいほど応募不可とする割合が高くな る」と書いていますが、逆に言えば5割弱は受け付けているということで、実はそっちが伝 わっていないということです。勤続や年齢が高い層も、実は企業は新卒採用のときに採って いることが意外と知られていない。  これは高卒と大卒を分けていないのでわかりませんが、大卒について言うと、以前、小杉 さんと若年雇用対策室で大卒の就職活動の調査をしたときに、ある中堅私大で企業から新卒 の募集が来るのですが、そのうちの5割か6割は既卒者も採りますというのが来ているので す。ただ、大学の就職部は在学している学生だけが対象ですから、その情報はそこにあるだ けなのです。企業は新卒の募集を大学に出すときに、既卒者も採りますというのを出してい るのですが、そこで終わってしまっているのです。  例えば、卒業してから3年での離職者が増えているとありますが、1つは大学の就職部が、 そういう卒業して転職した人についても、求人の情報を出すことは実は可能なのです。です から、新卒だけでなく既卒者も企業は採っていますから、そこに既卒者が行ける仕組みを整 備することが大事です。大卒について言えば、既卒者も採りますという求人が来ているけれ ど、卒業して転職した人、卒業して就職しなかった人に伝わっていないから、例えば就職部 に卒業生が行くこともひとつのやり方だということが1つです。  もう1つは高齢者のことで、これは資料4にも関わるのですが、資料1-2の4頁に男女 計の就業率推移があります。資料4でも高齢者の就業率を上げることが基本になっています が、ご存じのように例えば女性の場合、もともと就業率が低いだけでなく、特に50歳代に なると女性の就業率はどんどん落ちていってしまいます。60〜64歳を見ても男性は71.4%、 女性が42.9%で、確かに男性だけ比較すると国際的に高いです。たぶん高齢期の就業率の ところを議論するときに、女性なのです。ところが、資料4は男女計が目標になっていて、 この目標は男性は超えているわけです。  なぜ女性は50歳代になると急激に落ちていくのか。日本はM字を描くというので、一度 辞めて再就業するとパートが多い。パートですから家計補助的で、そうすると例えばひとつ の仮説は、子どもが大きくなって必要ないというのでリタイアする。正社員でずっと勤めて いる人であれば続くのかもしれませんが、パート等が多いために早く辞めていく。ここを上 げるとすると、実は前のほうの政策がすごく大事になってくると思います。  高齢者の就業率を高めるというのは、男女別に立てることにしないとほとんど意味がなく て、合計の比率だけでいくと男性はクリアしてしまっていますから、もし立てるとすれば女 性の高齢者で、もちろんM字の下のほうも大事です。おそらく政策は高齢期だけやっても 駄目なのです。前のほうの政策の積み重ねで、女性の高齢者の就業率となるということです。 これは資料4に関わる点です。  資料4ですが、1頁で外部労働市場の整備が大事だと言いながら、後ろのほうはどうなの か。外部労働市場整備はどうするかというと、能力開発、ジョブ・カードぐらいなのかもし れませんが、職安はいま非常に忙しくなってきていて、ほかの仕事がどんどん増えていく中 で外部労働市場整備と言ったときに、キャリア・カウンセリングみたいなことをやれる人材 があるのか。その辺をどうするかがいちばん大きな点です。  あとは数値目標のところで、先ほどの高齢者の目標とか有休取得70%というのは、ワー ク・ライフ・バランス憲章だと100%ですね。ただし、もちろん労働者の留保分を残してで す。ですから完全取得と言っているのと70%というのをどうするのか。60時間以上のとこ ろも前に議論になりましたが、フルタイムの人について60時間以上としなくて、これは全 部ですね。ワーク・ライフ・バランス憲章のときに問題になったのですが、フルタイムをベ ースにしなくて、60時間以上を半減は確かに大事なのです。フルタイムの人の長時間労働 をどうなくすか明確に打ち出すということ。  先ほどの高齢者もそうですが、本当のターゲットがどこかわかるような形で、政策目標を ということです。高齢者では女性高齢者、長時間労働ならフルタイムの長時間労働を減らす という形で、明確に立てるようにする。フリーターも、これはしようがないのですが、フリ ーターの数値目標はアルバイトで働きたいのも入っていますね。いま既に働いている人のフ リーターを減らすとか、もう少しターゲットをはっきりしたほうがいい。政策とのリンケー ジを高めるということであれば、過去にあまり引きずられずに目標を立てることも、ご検討 いただければと思います。 ○小杉委員 4点申し上げます。2つは佐藤先生と被っています。1つは新卒の就職支援と いうことで、樋口ペーパーにも大きく書かれていますが、この仕組みは、文科省に対してキ ャリア教育の推進のところだけにとどまっていますけれども、就職支援体制そのものも、学 校と労働政策をうまく噛み合わせてやっていく必要があるのではないか。先ほどおっしゃっ た卒業後についての支援というのは、大学に対して期待するところもあるのですが、既に労 働政策が持っている学生向けの職業支援の部分と、つなぎのところがまだ十分ではないと思 っています。  今回、緊急措置でジョブサポーターが大学にも配置され、それでやっていることの1つが ジョブサポーターが大学に行くようになり、大学でむしろ学生職業センターについて教える とか、そういうことも含まれていると言いますが、社会の仕組みとしてばらばらになりすぎ ているのではないかと思います。特に大卒については就職活動が個人化していますので、イ ンターネットを通じて、サイトに出ていた求人だけが大卒求人だと思い込んでしまって活動 していますから、それをどういうふうにするか。実は学生職業センターなどに行けば自由に 求人があるのに知らない。そういうことが起こっています。  大学も既につかんでいない人たちがいます。つまりインターネットを通じて自分で個人活 動するので、大学の就職部あるいは、いまキャリアセンターと名前を変えましたが、そうい う所も頼られていないことも多い。そこで大学では1年生からキャリアセンター化して、入 学当初からキャリア相談に乗る形で、囲い込みをしようとしているのですが、その延長上に 大学だけでなく、更にその外側にある私たちが既に持っている資源に、うまくつなげていく ところを仕組み化する必要があると思います。就職支援については、学校教育で教育しなが ら、社会としての仕組みをちゃんと体系化することが大事ではないかと思います。それが第 1点目です。  第2点目は、ニート対策のところで地域若者サポートステーション等々を挙げていますが、 ここにおいても私は社会的企業の役割みたいなものを、きちんと書き込んだほうがいいので はいなかと思います。と申しますのは、社会的企業がここでは地域の雇用創造のほうにウエ イトが置かれていますけれども、大きく言って社会的企業の中には新しい業を起こすことに ウエイトがある部分と、就業経験が十分になく能力が十分でない人たちを、社会に一体化す るための仕組みとして、いわゆる労働統合型ですね、そういう役割も持っています。  私どもは昨年の研究の一環として、企業の中で、そういう労働統合型の社会的企業の役割 を果たしている機関のヒアリング調査をやりました。そういう所が既にいくつも出てきてい て、なかなか就業が難しい若者たちに就業機会を提供し、さらにそこで育てて、場合によっ ては数年かかるのですが、一般労働市場に送り出して、ステッピングボードの役割をしてい るような所も出てきています。そういう所をどうやって行政のパートナーとしてきちんと育 て、役割をちゃんと果たしていけるようにするか、その考え方を入れることが必要ではない かと思います。  ヒアリングをしていると、財政基盤が貧弱であり、その中でもちゃんと食べていけるだけ の賃金を払えるかどうかわからない状況の中で、志を持ってやられている方々がたくさんい ます。そういう人たちをどうやって継続的なパートナーとして育てていけるか。ニート支援 だけに限らず、社会的企業はこれからあちこちで大事な役割を果たすと思いますが、新しい 業を起こすだけでなく、社会への参入の糸口になるような役割も、十分書き込んでおいたほ うがいいのではないかと思います。これが2点目です。  3点目は、これも佐藤先生と被ったところですが、訓練とハローワークの関係です。ハロ ーワークの体制強化とともに、その関係をもっと明示化できないかということです。ハロー ワークにおける受講指示を得て訓練に入る。あるいはジョブ・カード制度も含めて、そうい う訓練に流れる構図になっていますが、一体誰をそこで受講に回するのかという仕組みです。 例えば求職活動を登録して3カ月経ち、まだ就職が決まらない場合には、そこで必ずどれか 1つを選ぶ仕組みにするとか、そういう体系化がまだ十分ではないと思います。そういう仕 組みを作らなければ、誰を訓練に流すかといったことがシステマティックにならないのでは ないか。十分に訓練の機会が活かされない可能性もあるので、ハローワークと訓練との関係 を、きちんとシステム化しほうがいいのではないかと思ったのが4点目です。  5点目が自己啓発の促進です。私どもで就業構造基本調査特別集計をして、自己啓発を誰 がやっているかというときに、たとえ非正規であっても高等教育卒業者というのは自己啓発 もしているのです。これは学歴とすごく相関がありました。学校教育での訓練で得たものと いうこともあるかもしれないし、彼らが比較的専門的な仕事に近いところで就いているので、 能力開発の必要があってしているとか、そういういろいろな要件があると思いますが、誰が 能力開発を自発的にするかと学校教育は非常に関係がある。学校教育における教育の側では、 いま職業的レリバンスという話がいろいろ話題にされてきているところで、学校教育との連 携は、こういう能力開発においても必要です。  ここで具体的に言うなれば、能力開発の機会を誰が提供するかということも含めたほうが いいと思います。いまは大学や専門学校も生き残りをかけて生涯学習を展開しようと、いろ いろ模索しているところですが、そういう動きとも合わせて生涯職業能力開発という発想か ら、能力開発の機会を提供する機関の組織化も、これから考えていくべきではないかと思い ます。以上です。 ○酒光労働政策担当参事官 そうですね。数字のところですが、特に佐藤先生からいくつか ございました。有給休暇の取得率で正確にお話がありましたけれども、ワーク・ライフ・バ ランスの行動指針のところでも、要するに労働者の方が取りたくないという部分を除いて 100%という書き方になったのですが、それは統計的に検証が難しいのです。PDCAという 形からすると統計的に検証できないと意味がないということで、そういうことを考えて現実 的な数字も考慮し、今回、70%という数字を設定したということです。  60時間以上の長時間労働者についても、同じような形で労働力調査からこれは取ってい ますので、どこでフルタイマーと区別するかもあると思います。それが取れれば取れるとい うこともあるのかもしれませんが、今までこの前のほうでもありましたけれども、長時間労 働というときの指標として、ずっと60時間以上ということでいろいろな所で説明をしてい ましたので、それを目標設定したということです。  フリーターについても、まさにご指摘がありましたけれども、いまアルバイトで働いてい る方のほかに、アルバイトで働きたいと言っている方もフリーターの定義に入れていますの で、正社員化ということであれば、そのフリーターのいま働いている方も正社員化するでし ょうし、働いていない方もなるべく正社員として就職を促進するということで、目標の設定 の仕方もいろいろとあるかと思います。フリーターの数は、こういう定義でずっとやってい るものですから、目標設定として、いまのフリーターの定義をいじらない形で設定したほう がいいかなということで、推計をさせていただいたということです。 ○樋口座長 資料4についていろいろご指摘をいただきまして、ありがとうございます。皆 さんのご意見を参考にさせていただいて、少しブラッシュアップしたいと思います。特にこ の雇用政策で戦略的と書いたとき、私の思いとしては、従来の雇用政策が一体何を雇用政策 と言うのか、定義自身がすごく難しいところがあります。例えばマクロ政策まで含めて言う のか、あるいは厚労省がやっていた、特に労働省サイドがこれまでやってきた、狭義の意味 での雇用政策に限定するのかを考えていくと、今度は内閣として取り扱うということですか ら、厚労省に限定せず、あるいは厚生省サイドも含めて、さらには他の文部科学あるいは産 業政策といったところと関連しながら、進めていくことが重要でしょうということで、この 試案を作らせていただきました。  その中で、佐藤先生、小杉先生からご指摘いただいた点は、もっともなところが多々ござ います。例えば外部労働市場をどう作っていくのか。これは政府だけでは作れないわけであ り、労使の議論も当然出てくる。いくつか取組みとして、例えば職種別最賃の産別に作ると いう話も最近動きがあって、そういったものも視野に入れることになると思います。横断的 な賃金体系をどう作っていくかになるわけですが、今回についてはまずは政府の取組みとい う形で、そこに限定させていただいていて、この後、労使が議論していくことになると思い ます。  さらに、ニート対策の中で社会的企業の就職支援が必要ではないかと、これは私もまさに そういう実感を持っていて、この間、補正予算で地域社会雇用創造事業が3年間で70億円 ということですが、ここで具体的に雇用を創り出し、そしてまた能力開発をして就職支援ま でつなげていく。その1つのパッケージとして、このNPOであるとか、あるいは社会的企 業といったものを促進しようということです。そこでの具体的な取組みに対する中間組織に 対して、この支援を行うということで始めたわけですが、こういったところも必要になって くるのかなと思います。  あそこでは、たしかインターンシップも入っていたかと思いますし、さらには能力開発や 他のところも入っていたということで、そういうことを進めていく必要もありますし、私の 思いとしては、3頁に雇用創出となっていますが、5行目に「就職支援にも活用する」とあ る、この1行で片付けてしまっているので、むしろこれを少し強調して書きたいと思ってい ます。  あと、訓練と就職支援の仕組みの明確化も、厚労省だけでなく文部科学省、さらには先ほ どご指摘のあった既卒者の学校における就職支援という話も、そういったところと関連して くるかと思います。参考にさせていただきたいと思います。  1つだけ事務局に質問ですが、大学、学校における既卒者の就職支援です。無料職業紹介 のところでの話になるかと思いますが、かつては届けを出してとか、私がやっているころは そんな規定があったように思います。最近は、これはどういうふうになっていますか。 ○宮川総務課長 当時と同じです。 ○樋口座長 ということは、申請というか。 ○宮川総務課長 届出をいただいて。 ○樋口座長 届出を行って、やってもらうということですか。 ○宮川総務課長 はい。 ○樋口座長 そういう状況で、最近増えてきているとは思いますが、そこをどういうふうに 進めていくかということで、文部科学省と、また能力開発についても生涯教育についても入 れているのですが、もう少し明確に書く形が必要かと思います。 ○阿部委員 まず1点目が先ほどの佐藤さんへの反論ですが、佐藤さんがご指摘したのはそ のとおりだと思います。何に反論するかと言うと、第2新卒の話についてです。既卒者を募 集する企業は確かにこのとおりだと思いますが、何を言いたいかというと、募集はしますけ れども採用に至らないというのが問題で、何が違うかというと、見ているところが違うので す。私は人材のスペックということをよく言うのですが、見ているスペックが全然違うとい うところなのです。そこが何とかならないのかというのがひとつの思いです。  だから、前回だったか前々回、ジョブ・カードがうまく機能できれば、そのスペックをも う少し企業のほうも見てくれるようになるのではないかということで、募集はしているので す。それは間違いない。だけど見ている中身が全然違う。見ているけれども、それが採用に はうまく有効活用されていないところが全然違うということです。それが反論というか、ち ょっと違うということです。  次に、もう1つは能力開発のことです。能力開発をやってかなり就職率が上がっている事 実はあるのですが、ただ、一部の人間であるのは事実で、長期失業者のうち、この能力開発 に移行して就職できる人の割合は、まだまだ絶対的に少ないと思います。どうして少ないか というと、能力開発の枠に閉じ込めているのではないか。枠というのは何かというと、ここ に出てきていますけれども、訓練コースの内容という枠にはめているのではないか。例えば 雇用・能力開発機構がやっている訓練コースは、ここに載っているようなものだと思います が、そこに当てはまる人はここに行ってくださいということですが、ここにないのはどうす るのか。都道府県あるいは委託訓練などいろいろな枠はあるのですが、その枠外になってい る人たちは、どういう手当をされているのかよくわからない。  これは以前から職業訓練について言われていることだと思いますが、労働市場のいまそこ にあるニーズが、必ずしも訓練に反映されていないところが、もしかしたらある。よく民間 の職業紹介会社の人に聞くと、いま足りない人材というのはある。ところが、労働市場には そういう人たちはいない。ここの穴を埋めるのが訓練だと思いますが、そこがうまくいって いないのではないか。  以前、経済産業省が人材ニーズ調査というのをやって、労働市場にどういう人材のニーズ があるか、きめ細かく調べたと思います。5年前か6年前ぐらいですが、それ以降、たぶん やられていません。だから今の労働市場のニーズがどういうところにあるのかを本当に把握 して、職業訓練のコースがうまく開発されているのか。私が民間の職業紹介会社の人に聞く 限りは、そこがうまくいっていないのではないかと思います。したがって雇用創出がされて も、そこに埋まる人がいない。その結果、空席のまま、なかなか成長に至らないという中小 企業があると言われています。是非、その辺りの労働市場の需給を、うまく職業訓練に結び 付ける情報伝達のあり方を、ご検討されるべきではないかと思います。したがって求人調査 といったものをうまく使えないか。あるいはハローワークで持っている人材ニーズを、うま くフィードバックできるような仕組みができないかと思います。  これは障害者雇用についても同じことが言えて、2週間前に京都の職業紹介会社を訪問し、 障害者の職業紹介についてヒアリングをしてきました。驚くべきことに障害者雇用へのニー ズは非常に多い。ところが、そこにはめる人材が労働市場にいない。なぜいないのか。それ はもちろん健康上の問題もあるのですが、いちばんの問題は能力的な問題です。障害者の能 力開発をしている場が少ないということと、現実の企業が求めているニーズにかなりギャッ プがあるとおっしゃっていました。ニーズはあるのにそこを空席のままにしておくというの は問題だと思うので、その辺りを何かうまくできないかなと思いました。  最後に、樋口先生のところでPDCAサイクルということが出てきました。PDCAサイク ルは非常に大事だと思います。ただ、いまやられている政策評価における評価の手法なりを 考えてみると、政策評価をするために十分な情報が揃っていないのではないか。統計情報を もう少しうまく整備していくことが、PDCAをやる上でも大事なことだろうと思います。雇 用政策の戦略を考える上でも、現状がどうなっているかを認識するためにも、ここではなか なか議論されませんけれども、そういった統計情報の整備についても考えていただければと 思います。 ○加藤委員 短く3点だけ申し上げます。阿部先生と同じことなのですが、既卒者の募集状 況として既に既卒者の募集があるということですけれども、しかしながら現実問題、例えば 私の大学でも今年の4年生は相当留年が多いのです。何人が就職浪人かわからないところは ありますが、現実に新卒の内定率が減ってきた。これは景気循環によって必ずこういうこと は起きてくるわけです。もしそこで入れない人たちがいたとすると、それは最初の入口でシ ャットアウトされれば、その後の人材育成等々の話は今まで出てきたとおりだと思います。  そういう意味で、新卒の一括採用ということ自体が大きな位置づけを持っていることは間 違いないわけです。例えば昔の日本であれば、大学を卒業してから仕事を探すのが当たり前 だった時代もあったと聞いていますが、そういう意味で言うと、2年、3年といったロング タームの中で新しい人材を供給できるシステムを作っていかないと、なかなか難しいのでは ないかというのが1つ目です。  2つ目は、樋口先生の案の中で、これはすべて言い尽くされているところもあると思いま すが、その中で1点だけ、安心して働くことのできる環境の整備の中でディーセント・ワー クの話が入ってきています。それと同時に、最低賃金の引上げなどがあるのですが、ディー セント・ワークと例えばナショナルミニマム、あるいはディーセント・ワークと最低、どれ だけの所得があったときに働くことの喜びがあるか。そういう非常に概念的なところなので すが、ディーセント・ワークと最賃とか生活保護といったところの関係性について、もう少 しはっきりと書かれるといいのではないかというのが、2つ目です。  最後に3点目ですが、先日、資料を送っていただいた時にびっくりしたのです。高齢者や 若者といった方々の就労支援はいくらでもありますが、外国人に対する就労支援はあるとは 思えないのでびっくりしたのです。外国人の就労支援をすること自体、どこまで本当に考え ていくのか問われている気がします。もし支援をして外国人が働きやすくなると、外国人は プルとプッシュで国際人口移動を考えれば、プルの力が入って来るわけで、そのときに外国 人を受け入れるのか、受け入れないのかの議論は当然出てきます。そこについても考えてい かなければいけない。大ざっぱですが以上です。 ○鶴委員 これまでの議論とも重なるのですが、阿部先生はPDCAサイクルの重要性とい うことを指摘され、全くお話は私もそのとおりだと思います。経済学者がもっと使えるよう なデータが政策関連でもっと増えないと、ちゃんとした政策評価はできない。私はもう少し そこのレベルに行く前の段階の話として、PDCAサイクルは一頃は非常に強調されたのです が、最近はあまり聞かなくなったと思います。政策も割とやりっ放しで、その後、どういう ふうにその効果が出てきているのか、どれぐらい政策の成果が出ているのか、あまり情報が きちっと出ていないのではないかという思いを結構持っています。そういう意味でも、この サイクルはしっかりさせていかなければいけないという思いをしています。  中期目標の件ですが、どういう目標を作るか、どういう全体のパッケージにするのかは非 常に重要な話ですけれども、はっきり言って、どういう目標を作っても、どういうものを選 んでもいいのではないかと思います。ポイントはたぶん2つあって、1つはPDCAに関連す るのですが、例えば毎年とか2年に1回、いま現状が作った目標に対してどれぐらいのとこ ろにいるのか。それを評価していく仕組みがちゃんとあれば、私は逆に言うと、どういう目 標でもいいのではないかと達観しています。  労働時間のほうの資料2の11頁に、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」とありま す。これも作った目標は画期的だったと思います。これ自体は非常に正しいと思いますが、 例えば5年後の2012年というと間近に迫ってきています。いまの現状はどうなっているの か。2012年はいけそうなのか、もしいけないのだったら何が問題だったのか、そういうこ とを検証していかないと、目標設定が一体何なのかわからなくなる。むしろどんな目標であ れ生かすも殺すも、このPDCAサイクルというところがポイントになっているのではない かという感じがします。  目標の点で、佐藤先生がターゲットを絞って考えなければいけないと言われました。私は 今日のお話を聞いていて、若者の就業促進、女性の就業促進、高齢者の就業促進、障害者の 就業促進、それぞれ政策的にいろいろなことをやられている。それはそれで私は素晴らしい ことだと思っていますが、これから人口減少社会となる日本で、いまは景気が悪いから人手 不足という話はなくなっている。ただ、また景気が良くなってくると必ずこの問題に直面す るわけです。労働供給の問題を何とか乗り越えていくために、どこの就業促進というか労働 供給力を高めるのが、ある意味でいちばん効率的でコストが低いのか。それぞれの部局の 方々が、皆さんばらばらにやっているので、なかなかそういう発想がないと思うのですが、 そういう考え方でやっていくのがひとつの雇用戦略になっていくと私は思っています。  ちょっと心配しているのは、例えば高齢者の就業促進は非常に重要だと思います。ただ、 同じ企業の中で、これまでだったら定年で引退されて企業から離れていたのに、その方々が 残っている。これは賃金がどれぐらい減少するかにもよりますけれども、ある意味で若い人 が入りにくくなる状況は変わらないわけです。若い人が入りにくくなる状況が同じであれば、 年功賃金というか賃金カーブは、かつてよりもずっと緩やかな形になる。そうした場合に、 こういったものがすべて整合的に考えることができるのか。日本のこれまでの雇用システム の中でどれもこれも大事で、その大事さは変わりはないのですが、ひとつのシステムとして 整合的になっているかどうかを、少し考える必要があると思います。  最後に1点ですが、これも公的職業訓練の問題です。先ほどお話を伺っていると、ものづ くり、成長分野というところでやっていくということで、これも確かにそういう分野で就職 率が高くなっていますから、私はそれに対して異論を挟むつもりはないですが、先ほどの議 論の中で人材ニーズや経済環境が相当変わってきているわけです。ひとつ言われるのは、要 はルーティン的な仕事は通常は企業の事務とか、また工場労働者ということになるのですが、 IT化や技術革新の流れで、世界的にそういう仕事に対する需要が減ってきている。これは MITの人たちが中心になって、世界的にそういう実証分析の結果が出ています。  そういうことを考えていくと、本当にどういう職業訓練をしなければいけないのか。むし ろ非典型的と言っても、実は接客業とか対人関係でやるような仕事も含まれるわけです。何 か抜本的な発想の転換も、頭の体操として少しずつ考えていかないと、新たな展開は開いて いかないのではないかという印象を持ちました。 ○宮本委員 3点ほど申し上げたいと思います。樋口座長が非常にご苦労されて、質の高い 試案をまとめられたことに大変感謝したいと思います。1つは、この試案がどういうコンテ クストの中で活きていくのかと考えてみると、いま成長戦略の取りまとめが進んでいて、そ の中に位置づけられていくのだろうと思います。いま、新しい政権での成長戦略のひとつの 可能性というのは、これまでのように成長か再分配かという二律背反ではなく、その接点を 追求していこうという強い流れがあって、その中にこの樋口試案が活きていくことが、大変 大事なポイントだろうと思っています。  その場合、第1点目として、いまから申し上げるのは、この樋口試案に対するコメントと いう形を取らざるを得ませんが、極めて外在的な議論になってしまうことをお断りしておき たいと思います。この試案そのものは当然のことながら、どちらかと言えばサプライサイド の試案であって、ディマンドサイドについては、この試案の性格上、十分言及できないでい る。もちろん雇用創造という話はあるのですが、去年10月の緊急雇用政策に出てきたよう なグリーン雇用創造、地域社会雇用創造、介護雇用創造などは、どちらかというと厚生労働 省的な枠内での雇用創造になっているわけです。  このままいってしまうと、再分配陣営のプランにとどまらざるを得なくて、やはりもっと もっと経済産業省的な再生可能エネルギーとか、環境技術関連に関わる雇用創造や、国交省 的な公共事業改革などが創り出す雇用創造とリンクしていって、初めて従来の枠組みが突破 できる。そういう場をどこに求めていくのかわからないのですが、例えば雇用戦略対話など の場面で、そういう舞台づくりをしていくことで、この雇用戦略が活きていくのだろうと思 います。  2番目は、これは先ほど来、先生方が議論されているPDCAの議論とも重なるのだと思い ますが、非常にバランスの取れた、満遍なく質の高いメニューですけれども、これがいいア イディアであるからこそ、これを実行していく足腰というか、インプリメンテーションの体 制というか、ここがどうなるのだろうか。もっと言うなれば、ここをどこで議論するのか気 になるわけです。足腰というのは、要するに財政リソースの話もありますし、あるいは地域 における政策の執行体制の話もあります。  それから先ほど来、労働力のニーズの話と供給体制のずれの話が、何人かの委員の方から 発言がありましたけれども、もう一歩立ち入って、例えば職業訓練のプログラムの成立の仕 方を見てみると、在職者、離職者、新卒者それぞれを巡って、国、都道府県、民間の役割が 非常に複雑に分かれ、相互に見合っている。誰がディマンドに果敢に応えて、そこを広げて いくのか、そこができないでいるわけです。そうした執行体制の問題に、もうちょっと分け 入って議論がされなければいけない。もちろん評価もあるのですが、例えば去年、アビリテ ィガーデンと言うのでしょうか、ホワイトカラー向けの訓練センターが廃止になりましたが、 その評価に出てきたのは、市場志向の強い市場化テストがポンときて、それで評価されてし まうところがあって、かなりそこが飛躍があるわけです。その足腰問題をもう少しきちっと 議論していかないと、せっかくいい切り口、アプローチであるが故に、これが転けたとき、 アプローチや切り口そのものが否定されてしまうと困るわけです。そこをどう一体的に議論 するのかが気になります。  3番目、4番目はごく簡単に申し上げます。3番目は、労働市場の質というか雇用の質の 問題が後景に退く傾向があって、ここについては例えば高齢者雇用も先ほど説明がありまし たが、日本は諸外国の中でも非常に高い水準を持っている。ところが、どちらかというと不 本意雇用と言うと言いすぎかもしれませんが、必ずしも就きたい仕事に就いていないわけで す。高齢者こそ、そこで能力が活かされなければいけないのですが、ちょっとそこがずれて いる。その質の問題をもう少し見ていく必要があります。  最後は、小杉先生、その他ご議論があったところですが、「新しい公共」絡みで社会的企 業の役割は、雇用創造より雇用支援であることは明らかだろうと思います。日本で見るなら ば、社会的企業の平均的な雇用者の数は3人を切っていると思いますので、それを拡大して いくことも大事ですが、当面は雇用支援です。やや「新しい公共」が万能的に議論される傾 向があるので、それに対しては、この研究会として何ができて何ができないのか。できるた めには何が必要なのか。そういうメッセージを送っていくことも必要ではないかと思います。 ○森永委員 私は樋口座長の試案には全面的に賛成なのですが、もう1つ、私はこれをやる と完全雇用の達成と、ワーク・ライフ・バランスの改善と、それから新産業の芽を育てると いうのに同時に効果があると思うのは、隔週で週休3日制を入れてしまえばいいと思ってい るのです。実はヒューレット・パッカードという会社が不況に陥ったときに、週5日出て4 日出てというのを繰り返し、これで労働投入量を1割落したのです。  そんな馬鹿なことをしたら、日本が潰れるだろうと思われるかもしれませんが、実は私、 「1980年代経済社会の展望と指針」という昭和61年の経済計画を作ったときに経済企画庁 にいて、2000時間労働にしましょうと言ったら、通産省に「お前は企業を潰す気か」と脅 され、労働省にも呼び出されて「お前は労働現場がわかっていない。2000時間労働なんか できるはずがないだろう」と言われたのです。でも5年後、ほぼ達成したわけです。やる気 になればできるし、実は1割カットというのはヨーロッパの労働時間の水準で、1割カット しても国際競争力の問題はないわけです。  私は、はっきり打ち出すべきだと思うのは、要するに中長期的な労働投入の問題もあるの で高齢者は働けと、若者と中年は休めというのを明確に打ち出せば、国民に伝わるのではな いかなと思います。 ○山川委員 ごく簡単に申し上げます。先ほどパートタイムの説明があって、前回、有期契 約の説明があり、樋口先生の試案では4頁にパート・有期とまとめて取り上げられています けれども、両者に共通しているのは3つの目標があることで、公正な処遇、雇用の安定化、 キャリアアップです。例えば正社員転換などは、ある意味では有期契約の問題で、ここでも 議論されている無期化にするというのは雇用安定の側面から、そういう無期化転換と言いま すか、そういうことも選択肢に入れようという趣旨です。  しかし、それで足りなければ更なるキャリアアップということで、この公正処遇、安定化、 キャリアアップという観点からすると、パート・有期というのは割と両者の問題が混在して いる領域です。パート労働法は改正されて、その効果をまず見るということはありますけれ ども、今後は非正規の中で一緒に検討することも考えられるのではないかと思うので、不整 合のないようにと思います。  先ほどの3つは、いずれも難しいところですが、企業の中でどうやってパートないし有期 雇用を活用していくか、話合いを促進することは重要だと思っています。今日の説明の中で も、例えばワーク・ライフ・バランスの中では次世代法の行動計画の議論があり、労働時間 の点では改善指針、改善実施計画という話がありましたので、思い付きですけれども、例え ば非正規の改善計画みたいなことを労使に考えてもらう。それを法的にどう扱うかというの はまた別の考えです。  2点目ですが、いまと関連してPDCAを考える場合、例えば目標に達していない年があっ た場合に目標自体を見直すか、あるいは目標達成の手法を考えるか、2つの選択肢があると 思います。そういった政策実現のための手法の工夫みたいなことを、この10年というある 程度の長期で考えると、検討に値するのではないか。いまのお話では、いろいろ計画を労使 で立ててもらうこともひとつですし、いろいろインセンティブを高めたりする形で、履行確 保というのは書いてありますけれども、その一環で調査レベルも含め、政策の実現手法の調 査・検討を深めることも、たぶんある程度長期的な目標を掲げる以上は、メタ政策レベルと 言いますかロジステイックスレベルとのいますか、それも1つ視野に入れる必要があると思 います。 ○駒村委員 2点ほど、先ほど宮本先生が少しお話されたのですが、考え方としては、この 雇用戦略を政府を上げて、他省庁、部局内の連携も含めて、出していこうという樋口先生の 考え方に賛成です。宮本先生が少し触れられた地域における執行体制の話ですが、保育所の 話や「新しい公共」の話、政府との連携というのがあります。これは地方自治体が付いて来 てくれなければいけないので、いま地方分権の話が議論で出ていますけれども、地方自治体 ともこの目的を共有して、片方でアクセルを踏んでも、片方が全然付いて来ないのではまず いと思いますから、地方自治体との連携にも触れていただければと思います。  各論になるのですが、障害者のところは先ほど阿部さんも少し触れられました。これはデ ータの癖の問題なのか、実際に実行ベースで落ちているのか、教えてもらいたいのですが、 この目標を掲げるのは非常にいいと思います。資料1-3の2頁を見ると、56〜99のところ がずいぶん落ちているようにも見えて、100〜299もあまり上がっていない。特に56〜99 の落ちぶりというのは何か統計の癖なのか、それとも実行ベースで落ちているのか。ここは 足元の落ちているグループをどうするかというのも、少し考えていただきたいと思います。 ○樋口座長 ありがとうございました。皆さんにご意見をいただき、この後をどうするのか 実は私も悩んでいるところです。1つは、皆さんからいただいた中で能力開発の中身をどう するか。特に市場のニーズに合った能力開発のプログラミングと言いますか、それをいかに していくのか。具体的な仕組みをどう作っていくかは非常に重要になってくると思います。  2番目は、PDCAサイクルを作るのはいいとして、具体的にどうするかということです。 これについては、まさに私の手の届かないところにいくこともあるわけですが、お願いした いのは、常設の検討委員会なり評価委員会といったものを、どういう形にしろ作っていく必 要があるのではないか。これは厚労省の中に作るのか、それとも内閣府というか官邸という か、そこに作るのかは議論がありますが、私は両方必要かなと思います。  PDCAサイクルの中で、数値目標を掲げても掲げなくてもいいのではないか、というお話 もありましたが、この間、ILOの研究員の人と話す機会があって、やはり数値目標というの は非常に難しいという話がありました。ただ、私の印象としては、どこまでこの目標が達成 されてきているのか。それは単なる評価だけでなく、その後の政策展開につながっていくわ けです。特に毎年の予算配分のところにつなげていくことが必要で、言っただけでは意味が ないと思いますから、そこでは何らかの数値目標なりが必要になってくると思います。これ はあくまで私の感想としてそう思っています。  行動指針で掲げているワーク・ライフ・バランスの数値目標については、内閣府の中で検 証評価委員会という部会が設けられ、これについては常設の形で今も佐藤先生にもご参加い ただいて進めているわけです。どういう形がいいか全く白紙で申し上げるのですが、何らか の形が必要ではないかと思います。  ディマンドサイドが弱いというのは、まさにご指摘のとおりです。これについてはどこで 議論するのがいいのかは私にもわかりませんが、産業政策とか科学技術政策との連携といっ たところになってくるかと思います。おそらく来週以降に始まるであろう雇用戦略対話の中 で、議論されていくものではないかということで、むしろ宮本先生によろしくお願いしたい と思います。そういった中でディマンドサイドの強化を議論していくことになるのではない かと思います。  あと皆さんからいろいろ貴重なご意見をいただきました。少し考えさせていただきたいと 思います。時間もオーバーしていますし、これにつきましてはこの後も議論が続いていくと 思いますので、その際、よろしくお願いします。  それでは、次回は今後の産業構造の変化、ディマンドサイドについて議論いただき、雇用 者の伸びが期待できる分野とは何かという、ストレートなテーマで議論させていただきたい と考えています。次回の日程について事務局からお願いします。 ○平嶋雇用政策課長補佐 次回の第6回研究会は4月16日(土)、17時30分から、この 省議室で開催したいと思います。ご案内は後日お送りしますので、よろしくお願いします。 今後の開催スケジュールについては資料5にお付けしています。 ○樋口座長 本日は以上で終了いたします。ありがとうございました。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係  〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2  電話 03−5253−1111(内線:5732)