10/03/15 第10回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録 第10回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専 門委員会 ○日 時 平成22年3月15日(月)13:00〜 ○場 所 合同庁舎4号館1階共用第123会議室 ○出席者 【委 員】永井委員長、位田委員、梅澤委員、高坂委員、佐藤委員、澤委員、鹿野委員、中内委員、 中畑委員、西川委員、本田委員、松野委員、水澤委員、武藤委員、山口委員 【事務局】井本補佐、田邊専門官、秦健一郎 ○議 事 1.指針の見直しの論点について  2.ヒト幹細胞指針新GTP案について  3.指針改正の素案について  4.その他 ○永井委員長 第10回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直 しに関する専門委員会を開催します。まず事務局より出席の確認をお願いします。 ○事務局 委員の先生方におかれましては、ご多忙のところをご出席いただき、誠にありがとうござ います。お手元の委員名簿をご覧ください。本日は水澤委員、中畑委員、町野委員から、遅れて参加 されるとのご連絡をいただいております。本日は全委員がご出席の予定となっています。過半数を超 えまして、本会議は成立していることをご報告します。 ○永井委員長 配付資料の確認をお願いします。 ○事務局 配付資料についてご説明します。1枚目の議事次第をご覧ください。議事次第、座席表、委 員名簿、資料1、資料2、資料3、資料4、資料6が、一緒に束ねてありまして、資料5はB4判の大き なものとなっています。ドッチファイルにまとめられている参考資料1から参考資料10までと、過去 の専門委員会の配付資料は机上にのみご用意しています。過不足等がございましたら、お知らせいた だきますようお願いします。 ○永井委員長 前回第9回委員会では、現行指針の見直しを個々の論点に沿ってご議論いただいており ます。今回は前回に引き続いて、さらに議論を深めていただければと思います。本日の議論の進め方 について、事務局よりご説明をお願いします。 ○事務局 前回の委員会の主な意見については、資料1にまとめています。資料1をご覧ください。資 料1「第9回ヒト幹細胞を用いる臨床研究の指針の見直しに関する専門委員会の主な意見」です。指針 の対象となる範囲について、いろいろなご意見をいただいております。対象疾患については、臓器再 生を目的とする疾患を主に対象としていく、悪性腫瘍に対する免疫細胞療法などは今回はヒト幹指針 の対象外としていきましょう、などの意見がまとまりました。  指針の対象となる幹細胞の範囲についても、さまざまな意見がありました。広く組織幹細胞を対象 としながら、ES細胞やiPS細胞などの定義を加え幹細胞に含めていきましょうとの意見もありました。 この幹細胞の定義と範囲については、今回また詳しく議論をしていただきたいと考えております。  次に、ヒト幹細胞臨床研究の審査については、ほとんどいままでの現行の指針の審査の方法と同じ 形でいいのではないかといった議論があり、特に研究計画に何らかの新規の要素がある場合に、審査 を進めていこうという形に考えて、すでに行われている研究などはそういった審査は必要ないだろう というご意見でした。  研究体制については、医療機関と調整機関が別の場合でも、これは一緒の研究として行っていく形 につくっていく、現行の指針ですと、1つの機関ですべての研究を行う形になっていましたが、そうい ったいくつかの医療機関で連携していく形を作っていく、そのような場合には、それぞれの機関に研 究責任者というものが必要であろうというご意見がありました。臨床研究の倫理指針との比較を一部 行ってきたところです。これについては、今回また詳しく資料を作成しましたので、そちらでご議論 いただこうと考えています。  さらに、本日は指針の対象となる細胞について、事務局からまとめをお示しします。また、幹細胞 の定義については、中畑委員に「ヒト幹細胞の定義」を作成していただきました。それらの資料を用 いまして、引き続き指針の対象となる範囲についてのご議論をお願いします。  さらに資料4で、臨床研究の倫理指針の改正の要点について、ヒト幹指針との比較を提示します。そ の違いについて、特にご議論いただくことを考えています。資料5を用いまして、澤委員に「ヒト幹細 胞臨床研究におけるGTP案」を提示していただいていますので、そちらで特にヒト幹細胞の現行の指針 の第3章から第5章の部分、採取から調整と投与といった部分について、指針の見直し案を提示してい ただきました。いちばん最後に、いままでの議論を基にして、事務局で作成している素案を提示して、 説明させていただきます。以上です。 ○永井委員長 資料1をご覧ください。第9回でいただきました意見をまとめております。これに少し お目通しをいただきまして、全体の流れをご理解いただければと思います。大体整理していただいて いると思います。  よろしいでしょうか。議事に入ります。最初の議題では、指針の対象となる幹細胞について中畑委 員からご説明いただくことになっていたのですが、まだお見えではないので、臨床研究に関する倫理 指針との比較の議事から始めます。事務局から資料の説明をお願いします。 ○事務局 資料4です。左側に、臨床研究に関する倫理指針改正のポイントについて記載しています。 真ん中の項目は、現行のヒト幹指針で、臨床研究の指針の改正に当たる部分を抜粋しています。臨床 研究の倫理指針に関する指針の改正とヒト幹指針を比較しまして、事務局で表を作成しています。  (1)は、倫理審査委員会の設置者に、このような立場の者を加えると書いてあります。現行のヒト幹 指針の場合は、ヒト幹細胞の臨床研究を行う研究機関の長が、倫理審査委員会を立ち上げなければな らない」と定義されています。ですから、臨床研究の倫理指針の改正に当たっては、特にヒト幹指針 で改正は必要ないと考えられます。  実際の改定部分と現行のヒト幹指針を重ね合わせてみて、特に議論が必要だろうというところを、 述べさせていただきます。2頁の2.の「健康被害に対する補償について」です。臨床研究の倫理指針で は、「研究者等は、医薬品又は医療機器を用いた介入を伴う研究を実施する場合には、予め当該研究 の実施に伴い、被験者の生じた健康被害に対する補償のために、保険その他必要な措置を講じておか なければならない」と定めています。  一方、現行のヒト幹指針ですと「研究責任者は実施計画書に次の事項を記載しなければならない。 その内容として、ヒト幹細胞臨床研究に伴う補償の有無について記載しなければいけない」としてい ます。  前回の委員会でご議論いただきました内容は、補償はあったほうがいいのではないかという意見が 多数を占めていると考えています。その記載内容について、臨床研究の倫理指針と同等でよいかどう かということをご議論いただきたいと考えています。  そのほか、3.の「研究者等の教育の機会の確保について」は、現行の指針で十分に記載されている と考えています。  3頁の「研究の公開」について、臨床研究計画の事前登録をすべきだろう。現行の改正された倫理指 針ですと、データベースに当該臨床研究計画を登録しなければならないという改正がされています。 現行のヒト幹の指針ですと「研究機関の長は、実施計画書及びヒト幹細胞臨床研究の成果を公開する ように努める」という記載になっています。この記載方法の違い、データベースの登録についても、 ご議論いただきたいと考えています。  そのほか「臨床研究の適切な実施確保」などについては、臨床研究の倫理指針の見直しのポイント と、ヒト幹指針では特に差はない、場合によってはヒト幹指針のほうが厳密に規定されているところ が多いとまとめています。いまの変更が必要な補償の問題、データベースの問題について、ご議論を いただきたいと考えています。 ○永井委員長 論点は2つあるかと思います。補償とデータベース登録です。補償も、事前の計画を登 録する話と、成果を報告するという話と2つあるように思います。まずは補償についてのご意見をいた だきたいと思います。臨床研究に関する倫理指針では、「補償のために保険その他の必要な措置を講 じておかなければならないこと」としたということです。ただ、実際に、がんの臨床試験等ではどう なっているのでしょうか。どなたかご存じでしょうか。 ○事務局 事務局からご説明します。がんとか免疫抑制剤といったような、高頻度に死亡、重篤な症 例を導くような場合には除外になっていて、補償金の一時金を支給することを考えて、補償保険にな っていますが、補償保険が設定できないという領域のものが存在します。その場合には、次善策とし て、ほかの医療費、医療手当てを検討してもらうという形のスキームになっています。したがいまし て、すべての医薬品、医療機器が補償保険が成立できる状況ではないという現状です。 ○永井委員長 次善の策と言われるのは、見舞金とか、そのようなことを保険会社からということで すか。それとも実施機関がそれを負担するということですか。 ○事務局 補償保険は、基本的には一時金払いの補償金しか商品ができていませんので、次善策にな る場合には、医療費、医療手当てを当該医療機関で供給することになりますので、その実施の可能性 も含めて、倫理審査委員会でご検討いただく形になろうかと思います。ですから、必ずしもすべての 医薬品、医療機器で補償ができるというわけではないと。ただ、保険商品ができるぐらいの、低率で 重篤なものについては、補償保険商品が整備されたので、そちらでかなりカバーされるだろうと。こ ういうことが実際のところです。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○本田委員 前回の議論を休んでしまったので、ここについて意見を言わせていただきます。先ほど、 倫理指針では、がん等の重篤な疾病の臨床試験に関しては補償の対象になっていないということでし たが、このヒト幹指針もしくはこれから対象がどのように決まるかわかりませんが、この分野に関し ては、がんのように一般的というか、広範に広がっている臨床試験ではないと思いますし、これから どのように広がっていくかが、まだまだわからない分野だと思いますので、ここのところは一般の方 々にきっちりと理解を得るという意味でも、きっちりと補償を付けていただきたいと考えています。 保険の形が無理なのであれば、例えば基金を考えるとか、何らかの形で明確に補償を位置づけていた だいたほうが、一般の人の理解が得られるのではないかと考えます。 ○澤委員 考え方は確かに、一般的にはそうだと思うのですが、逆に言うと保険会社が対応できない という状況で、現段階では難しいです。そうした場合に、もちろん基金が最終的にできるという制度 を考えていただくまでは、すべての臨床試験はできないことになってしまって、これも困りますので、 その辺は同時に考えながらでしょうけれども、基本的には我々の中では、従来の考え方が研究施設で は理解されています。倫理指針に沿いながら議論を十分にして、最終的には、それを待っていたが故 に、患者さんにその治療が届かなくても、これも患者さんにとっては不利益になります。そこは十分 に議論した上で、難しい場合には患者さんにご理解いただいて、完全に補償を付けるのではなくて、 医療内容について対応する形が妥当と、我々現場では、そのような形で理解しているのですが。 ○西川委員 例えばPhase1を考えていただくと、基本的に安全かどうかを確かめるためにあるわけで す。Phase1の対象そのものが補償の対象になるということではないと思うのです。ただし、患者さん と話合いの上で行われていくのだけれども、病院で何かをすることは間違いないですから、それとは 無関係の有害事象が発生することは当然あるわけです。そこに関しては、当然のことながら補償して いくということであれば、保険ですね。例えば研究対象そのものに関して評価はできず、保険として は当然対象にできないけれども、有害事象だといままでどおりできます。ここは患者さんの団体ある いは患者さんたちと話をしながら、せっかく参加していただく方に不利益がもたらされないような最 大限の努力をするべきと思います。ですから、現実的には、十分保険会社も対応できるような形であ り得るのかなと、私自身は思っていました。 ○位田委員 必ずしも保険を付けろとは書いていないですし、国際的にも、コンペンセーションはし ろというのが基準だと思います。それが、必ず保険会社がやるような補償保険でなければならないと は、何も書いていませんし、どの国でもそうだと思うのです。補償保険が付けられるところは、それ でいいと思いますし、そうでなければ先ほど事務局がご紹介になったように、さまざまなその他の補 償の方法がある。補償がないと書いてもいいという話ではないと思うのです。基本的には補償はやり ますが、補償の仕方がそれぞれ事象によって違うので、例えばこのヒト幹細胞の臨床研究の場合には、 こういう形で補償しますということが明らかにされていればいい。それも含めて、患者さんが、それ なら研究に参加します。もしくは、そんな補償だったら参加しませんということがあっても、それは 当然あり得るわけです。保険が付く、付かないというのは、補償をするしないの基準には必ずしもな らないと思います。 ○本田委員 私も必ず保険を付けろとか、必ず基金ができるまではやってはいけないとか、そういう 意味合いで言ったつもりはないので、言い方が未熟だった部分は申し訳ありませんでした。ただ、補 償はこのような形で、いま西川先生、位田先生がおっしゃったような部分で、こういう部分ではちゃ んと保険から可能性もある、もしくはこういう部分はまだ保険はないけれども、こういう手当てをし ているということを、きっちりと明記していただければと思っています。  さらに、ただ気持ちとしては、例えばiPSとか、今後この分野でさらに臨床試験を広めていって、1 つの大きな新しい医療の分野をつくっていくということであれば、国を挙げて取り組むということで あれば、そういう基金を設けてもいいのではないかということを、意見として言わせていただきまし た。 ○永井委員長 それについてはどなたも異論はないと思います。その様な意見があったということで すね。まずは、位田委員がおっしゃったように、補償の仕方を明記する。その様に書いておけば、何 もないということはないわけですね。具体的にどのような書きぶりにするかというのは、いかがでし ょうか。どこまで指針の中に書くのか、あるいは申合わせ的にするか。具体的には医療給付であった り、治療の責任を持ちますというようなことだと思うのですが、それはそれぞれの倫理審査委員会で、 きちんと審査をいただくということだと思うのですが。 ○中内委員 保険というと非常に大きな重みを持ってしまうように思いますので、保険ということを 書かずに、「補償のために必要な措置を講じておかなければならない」とすれば、保険がなくては駄 目だとは取られにくいのではないかと思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。補償のために必要な措置を講じておかなければならないという書 き方ではどうかということです。 ○高坂委員 要するに臨床研究指針においては、「保険その他の必要な措置を講じておかなければな らない」と記載されていて、このヒト幹指針でそれ以上厳しい表現をするかどうかという点は、1つあ ると思います。  厳しい点というのは、iPS等はまだ安全性について確立されていないということがありますが、一方 では対象疾患で、どのような種類のiPSから分化した細胞を入れるかによって、だいぶ危険度が違って きていて、全部を統一した形で指針に入れるということは、現状では極めて難しいことだと思うので す。将来的にはいま本田委員がおっしゃったような制度が出来上がれば素晴らしいのですが、それま での間は、ある程度共通した文言で入れざるを得ないだろうとなりますと。  ただ、保険については、おそらく近未来的には、そのような制度が少しずつ出てくるのではないか とも予想していますので、「保険」という言葉は外す必要はないのかなという気がします。  したがって、臨床研究指針に書かれている「保険その他の必要な措置」、もう少し突っ込めば「保 険またはその他の必要な措置」という「または」を入れるとか、そのような形でしか現状では共通項 としてまとめられないのではないかと思います。 ○永井委員長 確かに「保険またはその他」というのが、非常に妥当な表現のような気がいたします が。 ○位田委員 これは法律上の文言だけの話なのですが、「保険その他」というのが、一括りで必要な、 それが全部必要な措置ですとなっています。いろいろな必要な措置がありますという中に入っていま すので、「保険その他」というのは「保険やそのほかさまざまな」という表現ですので、「保険また は」といってしまうと、保険かその他の必要な措置かということになってしまう。そうではなくて、 全部必要な措置で、その中には保険もあり得る、そのほかのいろいろな措置もあり得るということで す。言いたいことは、そんなに文言に拘泥するのではないのですが、臨床研究指針と異なる文言を使 うということは、やはりそれなりの理由が必要で、例えば保険を外して書けば、保険は付けなくても いいのだと逆に解釈される可能性があります。臨床研究指針と取り立てて変えないといけないという ことでなければこのままがよいと思います。保険を付けるほうが難しいということであれば、それは 現実の話なので、特にこれを変える必要はないかなと思いますが。 ○永井委員長 保険プラス医療給付ということもあるわけですね。 ○位田委員 はい。 ○永井委員長 「保険または」になると、どちらかになってしまう。 ○位田委員 いろいろな形があります。 ○永井委員長 ここは同じ書き方にすることにしたいと思います。よろしいでしょうか。 (異議なし) ○永井委員長 ありがとうございます。  もう1つの論点がテータベース登録について、記載内容を確認しておく必要があります。これは3頁 です。私が気付いたのは、臨床研究の指針は、研究計画をあらかじめ登録しておきなさいというのが 趣旨と読めるのですが、ヒト幹指針は成果を公開するように努めると、もちろん計画も登録する必要 があるのでしょうが、もう1つは結果をこちらでなるべく公開しなさいと言っているわけです。一部オ ーバーラップしますが、多少趣旨が違う部分がある気がします。その上で、今後どうしましょうかと いうことになるわけですが、いかがでしょうか。  いま一流雑誌に論文を投稿するためには、事前に研究計画を公開しておかないといけないわけです。 これはほとんどの研究機関でしていると思います。そうでないと論文にならないという可能性があり ますので、そこはあまり心配は要らないのですが、成果をどこまでデータベース化するか、あるいは 公開を義務づけていくのかというところが議論になるかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○位田委員 おそらく2つのことが一緒になっているので、研究計画をデータベースに登録するという のは、秘密でとんでもない計画をやられては困るというのが、もともとのヘルシンキ宣言の基本だと 思うのです。ヘルシンキ宣言にはデータベースに登録という話が入っています。 ○永井委員長 もう1つは、ネガティブな結果が出たときに、また別の人が繰り返す可能性があります ので、ネガティブはネガティブで非常に貴重なのです。 ○位田委員 ですから、やるときにまず計画の内容を登録するのが1つです。やったあとの成果につい ては、登録しろとは必ずしも書いていないですし、うまくいかない場合もあり得ます。つまり、成果 をどのような形で公開するかということは、またもう1つ別の問題なのだろうと思うのです。成果もデ ータベースに登録するのであれば、そういう制度をヒト幹細胞の指針で作ればいいですが、臨床研究 は必ずしも成果まで登録するという形にはなっていない。どのような研究をやっているかというのは、 透明性を確保しましょうという話なのです。 ○永井委員長 ただ、結果が分散していて、本当に有効なのかどうかさっぱりわからないということ もあり得るのです。そうすると、こういうルールに則って、いろいろな公的な研究費も使ってやるの であれば、ある程度状況がわかるようにシステムを作ったほうがいいかなという気はするのです。い かがでしょうか。 ○本田委員 データベース登録の部分は、臨床研究の倫理指針のときに結構話題になって、議論され たのですが、一般人の立場から、もちろん計画をできるだけわかりやすくということは、要するに日 本語で登録していただく、そういうデータベースを設けていただくというのが1つで、そのときにも一 部議論になったかと思っているのですが、結局その結果がどうなっているのか、同じようなことをあ ちこちでやっていても、それは意味があるからあちこちでやられているのか、まだわからないからあ ちこちでやっているのか、意味がないのだけれども好きだからやっているのかが、まるでわからない ので、そういうこともわかるようにしてほしいという議論が、一部あったかと思います。私は永井委 員長がおっしゃったような形のものを考えていっていただければと感じています。 ○永井委員長 おそらく臨床研究のほうは、いろいろなものが何千あるいは何万と行われて、それを すべてデータベース化するのは無理かもしれません。こういう幹細胞を用いた研究というのは、何千 というケースが行われるわけではないと思うのです。そういう意味では、きちんと研究を登録して結 果もわかるようにする、あるいは届けを出す。しかも、そのときの予後に、本当に効果があったかど うかもある程度判断できるようにするほうがよいと思うのです。何年にもわたる予後調査というのは、 難しいかもしれませんが、1年後、2年後にどうだったかぐらいはわかるほうが、いろいろな意味で前 向きに考えられるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○武藤委員 私も永井委員長のお考えには賛成です。これからこの分野は新しく始まるということで、 しっかりと始めているのだということを国民にわかっていただくためにも、ある種まとまった結果を 報告する場があるほうがよろしいと思うので、ここの文言については、事前の計画の登録については、 私は臨床研究指針と、あまり変える必要はないのではないかと思うのですが、1点そこでわからないの が、たしか代表的なデータベースを3つぐらい指定してあったと思うのですが、それと同じでよいのか どうかということがわからないので、委員の先生方がご存じでしたら、教えていただきたいと思いま す。  それと別に、こちらの右側にある情報の公開に当たる部分で、これと同じでよろしいのかどうかわ かりませんが、その場をきちんと統一したところを設けて、網羅的に把握できるようにするという仕 組みは、大変望ましいと思います。 ○永井委員長 登録の場としてはいかがでしょうか。 ○澤委員 実施計画書については、永井委員長がおっしゃったように、各施設はすでにやっていて、 それは全く一緒だと思います。この部分については指針と一緒でいいのですが、後半の部分は、デー タベース化するシステムが確立していないのは事実です。これは再生医療学会のほうでやらなければ いけないのではないかという意見もあり、一部整形外科領域の骨の再生については、日本中からデー タを集めて、自主的にはやりつつあるということがあります。したがって、どこに登録するかという ことはあります。この文言だけを見ると、「成果を公開するよう努めるものとする」ですから、論文 を書けばいいという話にもなるのですが、委員長がおっしゃったように、ネガティブデータの場合に は論文にならない部分が出てくるので、そこは何らかのシステムづくりが必要です。そこを学会でで きるかどうかを準備していきたいと思っています。 ○永井委員長 著作権との兼ね合いも出てきますね。非常に重要な結果が出てきて、論文がアクセプ トされるまで黙っていたい、あるいは黙っていないといけない場合もあります。そういうときに、期 限だから早く登録しなさいと言われても困る、という研究者は出てくると思います。 ○西川委員 ずっと昔にNEDOで調査をしたときに、まとめたことがあるのですが、細胞を注射すると いうことは、皆さんがいちばん懸念されるのは造腫瘍性の問題があって、最終的に効いたか効いてい ないかだけではなくて、例えばいまおっしゃった間葉系の細胞治療だと、100例近く行われているわけ です。そうすると、この細胞に造腫瘍性がないことが、少なくとも5年経過すればわかるわけです。で すから、どこかでそういうレジストレーションの機会があって、新しい細胞を入れたときに腫瘍性を 持つ持たないというスコアがきちんと日本で出るという仕組みが、絶対に必要であると報告しました。 そのあと一切取り組んでいただいていないのですが、それも成果だけではなくて、それ自身がものす ごく重要な、次の段階の保障になっていく、科学的な保障になっていきますから、是非やっていただ きたいと思います。 ○永井委員長 有効性と有害事象の両方を、しっかりとフォローするということですね。 ○西川委員 腫瘍性ですね。これは動物実験や、例えば試験管の中の実験だけで尽くせるものではな いということがあるのです。そういう意味で、ボランティアになっていただいて、治療を受けられた 方のフォローというのは、次の段階のステップにも絶対に必要である。 ○永井委員長 そうすると、ここの書きぶりはどういたしましょうか。「研究の有効性と有害事象を 登録する」と書けば明快ですが、どこへ登録するかという話になります。 ○中内委員 総論としてはいいのですが、具体的にはいろいろな問題があるので、いま学会でも検討 しています。実際には、なかなか難しい問題も入ってくるのではないかと思います。 ○西川委員 入口はバリアブルなのですよね。結構難しいのですが、きちんと統一フォームを作って、 すべてがコントロールされた臨床実験とは私も思っていなくて、それ自身がさまざまな入口で行われ たとしても、例えばこういう条件で入れたものが腫瘍性を持たないとか、持つという問題に関しては、 みんな集まっていただいたら、かなり新しい知見が出てくるのではないかと私は思っています。 ○位田委員 反対するわけではなくて、私は賛成ですが、実際に特許とか研究発表をするということ がありますので、そこへ行き着くまでは発表できない。特に成功した場合です。失敗した場合は登録 できると思うのですが、どのような形で登録するようになるのかサイエンティストではないので知ら ないのですが、例えば様式を作るにしても、何を入れるのかというのは、現実になかなか難しいと思 います。有害事象については、たぶん登録できる。つまりネガティブなエフェクトの部分については、 あまり問題なく登録できると思うのですが、うまくいった場合の登録というのが、例えば終了した時 点で必ず登録しろというのか、1年以内とか、フォローしながら新しい論文ができるということであれ ば、またその登録する時期などをうまく考えないと、現場の方がお困りになるかなという気がします。 ○西川委員 有効かどうかについては、医療統計学なり、いま私たちが使えるきちんとしたツールは たくさんあります。ですから、皆さんが利用できるような医療として立ち上げていきたいと思われる 方が、少なくともプロトコールに従って、その成果は公開しないと、その診療室だけで終わる治療と してはあったとしても、次の段階には絶対にいかないです。  ですから、そこに関しては次の段階に持っていくために、このようなことをしなければならないと いうところはしっかりしているので。ただ、臨床研究を受けられた対象に有害事象が発生しなかった ことが書かれているだけでも、ものすごく意味があるのです。 ○永井委員長 現在、先進医療で、このような細胞移植医療は行われていますが、あれも登録されて いませんので、本当に有効なのかどうかよくわからないのです。改めて試験を組み直して、多施設共 同研究で何年もかけてやりましょうという状況なのです。もう少しそこに関して、完璧に科学的でな いにしても、概要がわかるようなシステムを作っておく必要があると思います。 ○位田委員 現場とすれば、論文を書くほうが先なのか、登録をするほうが先なのかという判断に迫 られるのではないかと思うのですが、それはいかがですか。それが問題がなければ。 ○永井委員長 論文を書いたあとで登録することでもよろしいでしょう。 ○山口委員 もう1つは、指針の中で長期フォローアップというか、その辺をどう担保していっていた だくか。有効性に関しては、そのとおりだと思うのですが、安全性に関しては、長期フォローアップ をどのようにやっていくか。要するに、最終的な有効性の結果が出る前でも、有害事象に問題のある ものがあれば、当然報告していただかないといけないわけです。そのようなフォローアップをどのよ うに書くかということのほうが、まず有害事象については、それを書いておかないといけないのでは ないかと思います。  例えば遺伝子治療などだと、有害事象が出れば、報告しないといけません。その上で、その治験を 継続するかどうかも、その時点で判断しないといけない。そのような仕組みを作っておく必要がある のではないかと思います。 ○永井委員長 いまは全く何も報告の義務はないのでしょうか。こういう委員会を通ったものは、み んな有害事象は把握できるようなシステムになっていますね。研究期間が終わったあとに有害事象が 出てきたときは、どうなのでしょうか。例えば5年後とか。学会では、このような問題の検討は進んで いるのでしょうか。 ○澤委員 少なくとも再生医療の領域では無理で、おそらく世の中でいちばんレジストリーが進んで いるのは、私たちの心臓血管外科の領域がレジストリーをずっとやっていまして、いまの登録は全国 の半分ぐらいです。それも、お金といろいろな手間暇がかかるのと、長期のフォローがなかなか難し いのです。ですから、心臓血管の手術ですら、そういう状況ですので、ましてほかの領域では難しい のが事実です。 ○永井委員長 心臓血管手術というのは、外科手術は数万まではいっていないと思うのです。この研 究は年に数百例規模ではないでしょうか。 ○澤委員 そういうことをシステム化するにおいては、再生医療学会では考え方としてはあるのです が、それを実際に具体的に動かすような努力なり、また競争資金的なものも踏まえて体制づくりをす る必要はありますけれども、長期というのは、なかなか難しい。私が言いたいのは、いくら進んでい る心臓血管でも、手術から1カ月ぐらいの時点での登録しかできていないのが事実です。亡くなられた か、亡くなられていないかという。 ○高坂委員 いまの論議はヒト幹指針の10頁に載っていまして、(16)「研究責任者は、ヒト幹細胞臨 床研究終了後においても、有効性及び安全性の確保の観点から、治療による効果及び副作用について 適当な期間の追跡調査」とあります。長期フォローを何年ということは明確に記載されていません。 「追跡調査その他の必要な措置を行うよう努めなければならない。その結果については、機関長に報 告しなければならない」というまでの記載はあります。有害事象の場合には、倫理審査委員会、責任 者、機関の長、厚生労働大臣ということが義務化されています。 ○永井委員長 ナショナルデータベースにはなっていないわけですね。事務局、そういう対応につい てはいかがでしょうか。 ○事務局 いまの答えになるわけではなくて、補足なのですが、先ほどのもので、(14)にも議論に関 係することがあります。終了後にも総括報告書を研究機関の長に提出して、研究機関の長は総括報告 書を審査委員会宛てに提出する形になっています。そういった報告部分を、うまく使っていただけれ ば、審査委員会に内容が報告されるように、現行指針ではなっています。 ○永井委員長 例えば半年あるいは3カ月の研究で、細胞を3カ月間、月に1回入れてというのが終了 すると、そこで報告書ということになりますね。 ○事務局 はい。 ○永井委員長 もう少し長期の経過観察が必要ですね。 ○事務局 あとは先ほどの(16)の「適当な期間」というのが、記載方法としてこれでいいのかどうか というになるのかもしれません。 ○永井委員長 ここでフォーマットを決めて、紙1枚でもいいから出していただければ、随分違います ね。腫瘍が発生したか、臨床的に有効と認められるか、イエス、ノーというようなものでも蓄積して おけば、長期経過も含めて状況が把握しやすいのではないかと思います。そうすると、それほど大幅 な改定にならずに情報を集めることができるように思うのですが、いかがでしょうか。 ○事務局 確認ですが、造腫瘍性が疑われるものということなのでしょうか、それとも。 ○永井委員長 あとその他の有害事象があったら記載しておいてくださいとか、有効性があったと思 われる場合には、その根拠を書いておいてくださいとか、紙1枚でもいいように思うのです。それを1 例ずつについて出しておいてくださいとか。 ○西川委員 そこはしっかりとする理由はあると思うのです。それは報告だけなのでしょうか。とい うのは、いま日本でも世界中でも問題になっている、メディカル・ツーリズムなどは基本的にレジス トレーションがなくて、受けて来られたという事実だけがあります。あとの追跡は全くなされていな くて、しかし治療を施している側ではいろいろな宣伝が行われているということの問題が、いまもの すごく指摘されているわけです。少なくとも国がしっかりやるということに関しては、患者さんも望 んでおられるわけですから、1枚紙の調査票がくるとかの形でできるのが、最終的には、安心も含めて コストがいちばん安いエバリュエーションの方法になるのではないかと思います。 ○位田委員 私も制度として結果も登録するというのはいいと思うのですが、現状の制度として、臨 床研究指針のほうでは、3種類のデータベースのどれかに、計画を登録しろというのが1つあって、そ こに登録をして、終わったときに、終了した報告を同じところに登録をする。 ○永井委員長 Webベースでするかどうかです。今度はちょっと個人情報との関係が出てきます。つま り、1例ごとの情報でないと、あまり意味がないわけです。どのような形でやっていくか、実際の制度 を作るのには、ちょっと考える必要があると思います。原則は、適当な時期、ある意味では定期的に 状況を報告していただいて、それが1枚でもいいですから、情報が蓄積されることは、非常に重要だと 思います。研究の期間と、終わってから何年間フォローするかということも、現実に制度を作るとき には考えておかないといけません。データベースを全部持っているところがそれを管理しないといけ ないので、どのような制度にするか気になるところです。 ○武藤委員 先ほど澤委員がおっしゃっていた、学会のほうで少しご検討いただいているというのは、 いまのような把握の仕方をどうするかというスキームのことなのですか。 ○澤委員 まだ具体的なところはないのですが、一応その方向です。エビデンス・ベースト・メディ スンにつなげていかないといけないというのは、学会の基本的精神ですので、それに対して学会はや っていくべきだという意見を申しておりますが、具体的にまだ進められてはいません。  ただ、先ほど申しましたように、整形外科領域は、自主的にその方向を進めようと、いま100例か 200例の整形外科の治療の結果を集められているということですので、それを基に検討していこうと思 っています。 ○武藤委員 再生医療学会での方向と、ここでの委員会での認識も、あまり違わないというか、何ら かの把握があったほうがいいということは、今日一致できたということだと思うのです。あとは制度 的なところで、移植などはそうだと思いますが、ほかの医療の領域でも、学会のほうに把握を任せて いるというものはありますよね。 ○澤委員 そうです。移植もそうですし、先ほどの心臓血管外科の手術も、すべてデータベース化し つつあります。 ○武藤委員 ここでそこまで定めるかどうかというのは、今日は難しいようにも思いますが。 ○永井委員長 この辺の書きぶりをどうするかということになるのですが、どうでしょうか。事務局 としては、どこまで書いてほしいか。 ○事務局 開始のときの段階では、臨床研究の倫理指針にそのまま従っていただければいいのかなと いうことは間違いないと思います。あとは途中の経過の段階とか、終了時の段階については、これは 随時やりながら検討していただかないと無理なところもあろうと思いますので、すぐに定めることは 難しいと思います。 ○中内委員 学会では総論としては賛成なのですが、再生医療というと疾患の幅が非常に広くて、あ る特定領域ですと比較的データベースを作りやすいかもしれませんが、網膜があったり、筋肉があっ たり、骨があったりと、具体的にデータをどのように集めていくか、そこをどこまでこれに盛り込む かは、なかなか難しいと思います。学会としても、もう少し時間をかけて検討しないと、簡単にはお 引き受けできないと、私は考えています。 ○西川委員 1つの機関のみで答えを出せるという感覚は持っていません。それから、学会がすべてや るかどうかもわからないということで、テクニカルにはちょっと議論していく。ただ、将来にわたっ てフォローできている仕組みがあるかどうかということについては、委員会としては懸念していると いうことを明確に出す。  いま議論されませんでしたが、例えばアメリカなどの状況を見たときに、いちばん信頼できるレジ ストレーションというのは学会ではなくて、例えば患者さんの団体であったりします。日本でも、1型 糖尿病友の会とか、脊損のほうとか、そのようなところはしっかりと経済基盤を持っているから、そ れが治療対象になっていけば、しっかりとレジストレーションが患者さんの側でできるだろうと、私 は思います。しかし、そうでない疾患もたくさんあるわけです。ですから、一つひとつに関してはテ クニカルに議論していくしかないことはたしかだと思います。そういうことをきちんとフォローする ことが、次の細胞治療に大変大きな情報をもたらしてくれるということは、どこかに明瞭に書いて、 審査のときにも、実施者に対して常にお願いしていくということが大事と思います。 ○永井委員長 研究者は研究機関の長に報告するわけです。その報告書を、そのまま委員会に出して いただくというだけでも、随分違うのではないかと思うのですが、その辺は少し事務局と打合せをさ せていただいて、単に研究機関の長に報告するだけではなく、もう少し踏み込んだ書き方をしたほう がいいと思うのです。 ○位田委員 現行の指針でも、1年に1回は総括報告書だけではなくて、報告書を研究機関に出せとな っていますから、それが蓄積されれば。 ○永井委員長 そうすると、個別のケースカードを出さなくても、10例行ったところ何例にこういう ことがあったという、そういう形の報告書でもよろしいですね。ということで、事務局はいかがでし ょうか。 ○事務局 最後に14頁について、補足させていただきます。先ほどのものは研究責任者の責務で、今 度は研究機関の長の責務になります。(5)と(6)です。重大な事態があった場合には、先ほどの責任者 から上げられたような資料が委員会に上がるということと、終了時に総括報告書が出されたら、それ も委員会に上げていく形に、修正していくと。 ○永井委員長 その辺が無難かもしれませんね。そういうことで案を作らせていただきます。 ○本田委員 各登録例の長期フォローとか、データベース化というのは、今後議論されないと急遽は 難しいと思うのですが、患者登録は海外にとても遅れてしまった部分もある一方で、いま拠点病院制 度などで巻き返そうとしているので、何らかの制度を検討していただければありがたいと思います。  研究の計画を登録した上で、その成果も登録するという部分で、長期フォローアップの部分は別と して、今後考えていくという意味ですね。研究期間が終わったら報告されて、これは意味があった、 意味がなかったというようなことは報告されるわけですよね。そういうような、論文にアクセプトさ れるか、されないかというのは、その期限は必ずしも常に1年以内でなければいけないとかいうことで はなくていいと思うのですが、そういう成果という部分も登録していくということで。 ○永井委員長 いま議論になったのは、研究機関の長には、いまでも報告していますから、それをさ らにこの委員会宛てに、長から報告してもらったらどうかという提案です。 ○本田委員 それは公開されるという前提なのですか。 ○事務局 議論の一部は公開されて、審査委員会の上の部会でも、報告されることになりますので、 ある程度公開が可能な内容について公開する形にしていきたいと思います。 ○永井委員長 中畑先生がお見えですので、指針の見直しの幹細胞の定義について、先生からお話を 伺います。 ○中畑委員 すでに委員会で議論がなされてきましたので、それを文書にしたところがあります。お 手元にあるようなことを案として考えましたので、ご議論いただきたいと思います。ヒト幹細胞の定 義ということで、資料3をご覧いただきたいと思います。ヒト幹細胞の定義としては、「自己複製能 (自分と同じ能力を持った細胞を複製する能力)と多分化能(異なる系列の細胞に分化する能力)を 持ったヒト細胞である。別に厚生労働省医政局長が定める細則(以下、「細則」という)に規定する ヒト体性幹細胞、ヒト胚性幹細胞(ヒトES細胞)及び人工多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)が含まれ る」と。ここでは全体を幹細胞の中に含めるということで、ES細胞とiPS細胞をすべて含んだものを ヒト幹細胞として定義すると。その細則の中でそれぞれの幹細胞を定義するという形を取ったわけで すが、細則としては「ヒト体性幹細胞とはヒトの身体の中に存在する幹細胞で、限定した分化能を保 有する。例えば、造血幹細胞(各種血液細胞)、神経幹細胞(神経細胞やグリア細胞)、間葉系幹細 胞(骨、軟骨、脂肪細胞)などが含まれる。本指針では、体性幹細胞を含んだ組織(骨髄、臍帯血な ど)を用いた臨床研究も含まれる。  2番目は、「ヒトES細胞とは受精卵を培養して得られる胚盤胞の内部細胞塊から樹立された細胞で、 未分化な状態でほぼ無限に自己複製する能力と生殖細胞を含むすべての組織・細胞に分化しうる能力 を持つ細胞である。本指針ではES細胞を分化培養して得られる限定した分化能を有する幹細胞を用い た研究が対象となる」。すなわち、ES細胞をそのまま再生医療として用いるのではなくて、ES細胞か らある程度分化してできた、かなり限定された分化の保有するような幹細胞を用いた研究が対象とな るということにしたわけです。  3番目は、「ヒトiPS細胞とは人工的に多能性を誘導された幹細胞であり、ES細胞とほぼ同様の能力 を持つ細胞である。本指針ではiPS細胞を分化培養して得られる限定した分化能を有する幹細胞を用い た研究が対象となる」。ここはES細胞と同じような文章で作ってありますが、「一方、人工的に限定 された分化能を誘導された幹細胞も作製されており」と、iPS細胞は多能性を持った細胞としているの ですが、最近限定した能力しか持たない幹細胞が同じような技術で誘導されておりますので、そこの 文章を入れているわけです。「一方、人工的に限定された分化能を誘導された幹細胞も作製されてお り(例えば皮膚の線維芽細胞からiPS細胞を経ずに直接神経幹細胞を作製するなど)、この細胞はiPS とは呼ばれないがこれも本指針に含める」ということで、全体を括ったわけです。これは私が考えた 文章ですので、ご意見をいただきたいと思います。 ○永井委員長 ありがとうございます。ご意見はいかがでしょうか。 ○西川委員 いちばん最後のダイレクト・リプログラミングに関しては、ダイレクトにリプログラム されたかどうかは結構難しい問題があるのではないかなと。というのは、ほとんどのケースでは、導 入した遺伝子がそのまま働いていますよね。とすると、いままでも遺伝子導入で分化を誘導維持する というパターンの仕事は普通にあると思います。山中さんのiPSの最大の特徴は、入れた遺伝子は消え ているということなのです。たぶん、将来ゲノム指針とのすり合わせという話になってきたときに、 同じふうに扱っていくと難しい問題があって、本当に入れた遺伝子がなくても神経細胞になって、神 経細胞としての性質を維持していることが証明されない限りは、あまり「リプログラミング」という 言葉を提言に使わないほうがいいのではないかというのが、私自身の考え方です。 ○中畑委員 そういう意味で、「リプログラミング」という言葉はわざと使わないようにして、人工 的に多能性が誘導された、誘導するときにトランスジーンに導入した遺伝子が残っているか残ってい ないかを問題にしないで、残っていなかったとしても、誘導されたことには関わりがないわけですね。 誘導されたことには間違いないので、そういったことで導入した遺伝子が残っている、あるいは残っ ていない、いろいろな方法がありますので、それを全部包括して誘導されたという文章にしたわけで す。何かもっと適当な文章があれば直していただければと思います。 ○西川委員 できたら、同じ項目立てで扱わないほうがいいのではないかと思います。遺伝子導入に よって、いろいろなことが誘導されるということはあると思うのです。例えば、増殖を維持するだけ の遺伝子を入れることがあってもいいわけですから、そういうものを本当に使うかどうかは別として、 入れた遺伝子が最後は必要ないと、はっきり言うとゲノムが変わらなくても、iPSあるいは幹細胞の性 質が獲得されるというものと分ける意味で、遺伝子導入による、例えば幹細胞とか少し変わった扱い にしておいたほうがいいかなと、私自身は思います。どこかで同じようにマスコミの人も考えておら れますから、その辺の間違いを正す意味でも。 ○永井委員長 別項目にしたほうがいいかもしれないですね。 ○西川委員 そう思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○高坂委員 中畑委員のおっしゃることは当然なのですが、「一方では、多能性を誘導された幹細 胞」の多能性というのは、いくつ以上を多能性と言うかという問題もあると思うのです。そういう観 点からすると、リプログラミングかどうかわからないですが、定義としてはダイレクト・リプログラ ミングも人工的に誘導された多能性幹細胞と言っていいわけですよね。例えば、神経幹細胞なども神 経細胞とグリア細胞だけではなくて、神経細胞からさらに多様性のニューロンに分化していくわけで すから。 ○西川委員 ただ、生物学的にはどこかで区別してものを考えたほうが、これからの科学にとっても そこを厳しく区別しないで、同じようにずっと研究をやる人たちが進めていくのは、何か大きな間違 いになるのではないかという危惧を若干持っているということです。また、いま高坂委員がおっしゃ った話だと、あらゆるものは試験管の中で幹細胞であり多能性を有していればいいと。逆に言うと、 神経幹細胞が最終的にはできるわけですから、神経幹細胞の作り方がいろいろなやり方があるという 話になってしまうので、結構区別が難しい。  もう1つ、全能性かどうかというのは、本当はものすごく重要な問題が隠れているのです。この前、 イギリスでアメリカのどこだかの特許が成立した云々というのは、私が知っている限り、イギリスの 法律では全能性の細胞は特許を認めないという話になっているのです。ですから、たぶん多能性かそ ういう話で特許が認められたりしているとか、結構難しい問題があるかなという感じがします。 ○中内委員 中畑委員の定義で、「ES細胞を分化培養して得られる限定した分化能を有する幹細胞を 用いた研究」となっていますが、ES細胞とかiPS細胞が赤血球を作って投与するというのは入らなか ったのではないですか。 ○中畑委員 そこも事務局との議論があったのですが、体性幹細胞から作り出した赤血球や血小板は、 いまのところ輸血の形で一般医療に行われていますので、それは幹細胞の中に含められていないわけ ですね。それと同じように、ES細胞やiPS細胞から作り出した赤血球や血小板を同じような扱いにす るのか、あるいはES細胞、iPS細胞は特別扱いの形で、そこから出来てきたプロダクトとしての赤血 球や血小板もこの指針の中に含めるかということは、ここで皆さんの議論で決めようということにし て、この文書の中には入れていないのです。それも当然に議論になったのですが、もし皆さんがそれ も含めたほうがいいというご意見であれば、それを含めたものも対象にすると。そうすると、ES細胞 とかiPS細胞から作り出した細胞はすべて含まれることになりますので、そういった形の定義のほうが よければそういう形にします。  そうすると、幹細胞を用いた臨床研究ということに、実際医療として行われるのは幹細胞を用いた 医療でなくても、その最終産物である核のない赤血球や血小板を使った医療ということになるので、 それは幹細胞を用いた指針の中に含めるというのが論理的に合っているのかどうかということも1つの 問題で、これもここで議論していただきたいと思います。 ○永井委員長 定義をどうするかという問題と、この指針がどこまでカバーするかという問題と、2つ あるのです。まず、定義をしっかりしておいたほうがいいかなと思うのですが。 ○中畑委員 幹細胞の定義としたこの範囲に留めたほうがいいのではないかと、私は思っています。 ○永井委員長 その上で範囲をどうするかとしたほうが、簡単なような気がしますね。とりあえずこ れを少し頭に入れて、この指針の対象となる範囲、特に細胞の由来を幹細胞、体細胞とするのか、調 製物の範囲を幹細胞、体細胞までにするか、いわゆる赤血球、血小板のような血球も調製物として含 むかどうか、この辺のご議論をいただけますか。それで全体として調和がとれると思います。 ○高坂委員 幹細胞の定義はそれでよろしいと思いますが、実際指針が取り扱う対象としては、分化 細胞に由来して分化した細胞といったところまで入れておかないと、先ほどの話の血小板とか、そう いったものが対象外になってしまいますので、iPSからの血小板なども現実にやられていますし、そう いう範囲に入れておいたほうがよいと思います。以前の指針もそういう書き方になっています。 ○永井委員長 そこはよろしいですか。赤血球、血小板は含むと、血球が調製物の中に含まれること になります。 ○高坂委員 要するに、最終分化細胞も含むということですね。 ○中畑委員 それは別に赤血球、血小板だけではなくて、神経幹細胞、自身からずっと最終的に出て きたドーパミン陽性の神経細胞を用いた医療ということも含まれることになりますので。 ○永井委員長 そういうことになりますね。由来は、幹細胞と体細胞由来ということでよろしいでし ょうか。事務局は、もう少し何か論点はありますか。 ○事務局 そこがいちばん大きなところだと思います。 ○永井委員長 よろしいですか。そういうことで、取りまとめの方向とさせていただきます。  次に、いわゆる1314号通知、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び 安全性確保について」という通知がありますが、これを基にして澤委員がGTP案を作ってくださいまし た。また、山口委員からも追加のご意見をいただいておりますので、まず澤委員からご説明をお願い します。 ○澤委員 それでは、横向きのExcelで作った表をご覧ください。左端が現行のヒト幹細胞の指針、真 ん中がこのたび提案する内容、右が1314号通知です。これまでご説明しましたように、この臨床研究 の中でGTPを中心にということがヒト幹細胞の指針では重要だろうという中で、1314号を引用する形 でたくさん書かれていたのですが、そこをより具体的に書き込むということで今回提案させていただ いています。これは再生学会の臨床研究委員会、再生医療学会を経て提案させていただきます。ブル ーのカラムは、現状のヒト幹細胞の指針に、赤い字の部分が手を加えた所、黄色の部分は、逆に1314 号から持ってきた部分とご理解いただければと思います。これ全部を説明するとかなり時間がかかり ますので、非常に重要な点をご説明します。  1頁ですが、基本のコンセプトはGTPということを考えますと、現在のヒト幹指針の3〜5章に当た る「幹細胞の採取・調製・投与」「安全性確保のための要件」の内容が中心になります。それは2頁以 降になるのですが、1頁にもGTPに関することがありまして、その部分をここに抜粋していますので、 第1章、第2章も一部含むということです。第1章の「総則の目的」のいちばん最初のところで、今回 GTPを盛り込んだ基本的な考え方を盛り込ませていただければということです。3つ文章がありますが、 特に3つ目の文章、全部赤字になっていますが、「治療法のない致死性もしくは障害性の高い疾患等に 対して、新規性の高いヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画については、用いられるヒト幹細胞の特 性や有用性の評価に関してその時点での学問・技術の限界はあるものの、本指針に従って迅速かつ適 正に臨床研究が推進されることが期待される」。これが基本的考え方で、今回GTPに絞り込んで提案し たい基本的な考え方、これを盛り込んではどうかということで赤字で示しております。  次のカラムの「用語の定義」のところで、1314号では製造、製品という形になっているわけですが、 製造という形では製品を目指すGMPレベルの話になりますので、ヒト幹の場合は「調製」という言葉が 的確ではないかと。また、のちほど出てきますが、「ドナー」という言葉が1314号では出てきます。 右側にも「ドナー」というのが出てきますが、こちらでは「提供者」という言葉で、臨床研究を意識 した表現にしてはどうかと考えております。それが1章、2章で、1頁の説明です。  2頁以降の3〜5章までが、GTPの実際のところですが、基本的には従来のヒト幹細胞をそのまま並べ ておりますので、ブルーの部分、全く変えていない部分はいちばん上です。そのあと、先ほど言いま した提供者、いちばん下の黄色い所は1314号から取ってきていて、「提供者からのヒト幹細胞、もし くはヒト幹細胞を含む細胞・組織の提供は無対価で行われるものとする。ただし、ヒト幹細胞の提供 により生じる提供者の負担につき、交通費等実際にかかった費用を勘案しつつ、倫理審査委員会の了 承を得た上で、適切な補填がなされることはこの限りではない」と。これは、右側の1314号に合わせ て書いていますが、先ほどの倫理審とも関係しますので、この辺りはまたのちほどご議論いただけれ ばと思います。  次の頁の「採取段階における安全対策等」についても、いままでの現行のヒト幹細胞では、左にあ りますように「1314号の規定するところによるものとする」としか書いていませんでしたので、それ を右側の1314号から、実際に臨床研究ということを踏まえた形で具体的に書いたものです。ですから、 4行しかなかったものが、このように具体的にどのような検査をすべきということを書いております。  いちばん下のカラムですが、第2章については調製機関ということで、「調製機関は、次に掲げる要 件を満たすものとする」と。これについても、従来のものに合わせつつ少し改正しており、特に[1]は 「調製されるヒト幹細胞調製品の特徴に応じ、ヒト幹細胞の生存能力を保ちつつ無菌的に調製できる 構造及び設備を有していること」、これが調製機関の要件です。[2]は従来のとおりですが、[3]はこれ までのヒト幹のところで抜けていた部分で、「取り違えが起こらないような設備・取り扱いの配慮が なされていること」。[4]は左と一緒ですが、[5]は「不適切な調製がないよう、調製に従事する研究者 への教育・訓練がなされていること」。このようなことがGTPの基本として必要ではないかということ で、このように明記しました。  4頁のいちばん上のカラムですが、第4章1「品質管理システムについて」です。特にそのうちの2 番ですが、「ヒト幹細胞調製品の調製に当たって」というところですが、赤で書いている所で「ただ し、手術室等、研究目的に適う清浄度が保たれた区域において、例えば自己(被験者)に由来するヒ ト幹細胞を採取後、最小限の操作のみによる無菌的な調製工程を経て、かつ直ちに被験者に投与又は 移植されるような場合等については、必ずしも専用の作業区域を設ける必要はない」。これは、すで に現状のヒト幹の審議でもある程度こういう議論がなされていることを踏まえて、すべてをCPCで、例 えば骨髄細胞をそのまま閉鎖回路でアイソレーションするようなことをCPCでやるかどうかということ も意識しつつ、このような形で書いております。  そこから5つ下がって項目ですが、「最終調製物に関して、臨床研究に用いる細胞の特性を明らかに するための試験を行うこと。細胞特性解析により得られたデータに基づいて、臨床研究に用いる細胞 の品質基準を設け、試験検査を実施すること。また、調製工程中のヒト幹細胞調製物についても、必 要に応じて品質基準を設け、試験検査を実施すること」。この辺りはかなり1314号を意識して記入し ておりますが、従来は1314号に準ずる形で、特に安全性の確保の意味での細胞の調製については具体 的に明記がなかったので、このように品質基準、調製について記入したということです。  そのあとの最終製品の試験については、山口委員から補足をいただいている部分です。山口委員か らご説明をお願いします。 ○山口委員 青字で追加したのは、ヒト幹指針で引用しているのは1314号の別添1という基本的な指 針と、関連する別添2の同種・自己指針の部分があると考えられるところから、それらを反映したもの となっております。これらの参考指針の部分で細かく書かれている部分をこのような形で書いておく ほうが、具体的にどのような試験をやったほうがいいかわかりやすく書くべきではないかと思って意 見を出させていただきました。特に、少なくとも無菌性試験、エンドトキシン試験、あるいはマイコ プラズマ試験について、ヒトへの適用の前までどのような試験を実施するかは検討しておくべきでし ょうと考えられます。もう1つ、その下のカラムの最終製品の試験の書いてあるその下のカラムに青を 付けましたが、いまのヒト幹の臨床研究でもいろいろなスキャホールドと混ぜて投与されるケースが 多々あります。その辺については、こういうところを検討してくださいということで、スキャホール ドとかがある場合に「品質及び安全性に関する知見を明らかにすること」という言葉を案として追加 させていただきました。 ○永井委員長 ありがとうございます。ただいまのご説明に対してご意見、ご質問はございますか。 ○澤委員 もう少しだけありまして、最後の頁の第5章の第2の「移植又は投与段階における安全対策 等」のところで、これは現状のヒト幹をほぼそのまま使っているのですが、青字の部分は山口委員の ご意見ですね。 ○山口委員 はい。 ○澤委員 「リスクを十分把握して、適切に管理された細胞の使用を検討すること」という細則があ ります。もう1つは、赤で書いていますように、最終調製物について、細胞組織以外との複合体を長期 にわたって保存するのは不可能ですので、最終段階は幹細胞調製物でもよいと、それならフローズン して保存ができるだろうということです。例えば、人工骨に細胞を入れたものを最終的に調製物とし て投与する、そういうものをフローズンして保存できないと、無理な部分が考えられることから、こ ういうことでもよいと明記しております。 ○永井委員長 それでは、ご質問、ご意見をお願いします。 ○梅澤委員 6頁の青字のところの山口委員の意見で、ヒトES、iPS細胞を作るときに、MEFを使うな という指示ですか。 ○山口委員 この前のES細胞のときにも議論になったと思うのですが、もともとプライマリのフィー ダーセルを使った場合には、特にマウスの細胞なのですが、ほとんどのマウスの細胞はレトロウイル スを持っていますので、そういうものの混入を避けるために、プライマリのセルを使うのをできるだ け避けたほうがいいという意図で書きました。 ○梅澤委員 代替物は何を想定しているのですか。何を使っているか私はよくわからないのですが、 山口委員の所で何かほかの細胞が使われていますか。初期培養の(プライマリー)の細胞(セル)で ないものをいま検討されていると聞いています。 ○中内委員 具体的に、現実には、使ったときにプライマリが最高ではない。最近の傾向としては、 最終産物で安全性がチェックできれば、そのほうが現実的だとは思うのですが、最初からMEFを使うと、 全く駄目だと言われてしまうと、いまアメリカで使っているESなども使用できなくなってしまうので はないかと思うのです。あまり入口を狭くすると、それでなくともちっとも増えない幹細胞研究が全 然進まなくなってしまうので、これだけで完全にアウトではないということをお考えいただけると助 かるのですが、どうでしょうか。 ○山口委員 気になっているのは、そのようなご意見をお聞きしたかったのですが、レトロウイルス が入ってしまうと、あとの検査で検出できなくなってしまうのではないかというのがいちばん気にな っていて、もし最終産物でそれが検出できるのであれば問題ないと思うのですが。 ○中内委員 例えば、幹細胞としてクローニングされてしまえば、今ではゲノムの解析も簡単にでき ますので、それはこれからの技術で十分対応できるのではないかと思うのです。全くアンノウンなも のだとわからないですが、知られているものに関しては検出できる可能性はあるのではないかと思い ます。 ○梅澤委員 現存する世界中のESを排除している形になります。代替物のようなものを念頭に置いて 書かれているのであれば理解することができるのですが、そうでない以上すべての研究を止めると読 めるのです。いま、現時点でどのように書いたらいいのかわからないのですが。 ○山口委員 懸念すべきであるということを書きたかったのです。 ○梅澤委員 コンサーン(懸念)が非常に重大なコンサーンだということです。これは言い方が非常 に厳しいように読める。おっしゃりたい意図はよくわかるのですが、いまの世界中のES細胞について も原則として駄目だと、あるいはジェロンのES細胞も駄目だということであり、どうしたらいいのか。 次の開発を待てという指示のようにも読めると。 ○鹿野委員 教えていただきたいのですが、フィーダーは基本的にプライマリでなくてはいけないと いうことではないのでしょうか。 ○中内委員 一般的にはプライマリを使っていますから。 ○鹿野委員 確かに従来は、一般的にはプライマリが使われているのだと思うのですが、今後新たに 作られるときには、適切なものが使えるのであればそちらを検討していただきたいという意図かなと、 私は理解したのですが。 ○中内委員 もちろん、それは当然だと思いますが、一方でいろいろわかってきたことの中に、例え ばフィーダーフリーでできるとか血清フリーでやるとか、確かにそのほうが安全ですが、そのために 細胞のゲノムの安定性が失なわれて、かえって危険な細胞になってしまうと、せっかく作ったES細胞 が駄目になってしまうという問題もあると思います。そこは慎重に、どのように進めばいいかは検討 する必要があるのですが、いま現存しているES細胞は使えないとかいうことになると、非常に大きな 問題になってくると思いますので、そこは配慮したほうがいいかなと思います。  先ほどのメジャー・コンサーンというのは、マウスのレトロウイルスは距離が非常に違いますので、 そんなに大きな問題になるとは思いません。そこはそんなに大きなメジャー・コンサーンではないの ではないかと私は理解しています。 ○山口委員 もう1つは、「異種移植ガイドライン」というのが出ています。その場合、想定されてい るのはほとんど3T3細胞などの株化された、ウイルス等についても十分な解析がされたものが使われる ケースを想定されています。これらの細胞では、ウイルスについての評価がされているわけです。そ の場合には、一定の安定性・安全性は担保されているだろうと考えられてます。  もう1つは、プライマリのときはウイルス検査ができていないものを使っているというところのコン サーンが、すごく強くなっているのだろうと思うのです。 ○中内委員 私は専門家ではありませんが、マウスのレトロウイルス自体がそんなに危険なものなの ですか。我々はブタの研究をしていまして、ブタとヒトの間ではインフルエンザの関係もあって、多 くの人はみんな内在性ウイルスとかいろいろ言われるのです。しかし、調べた限りはいままで一例も そういう報告がないのです。 ○山口委員 ヒトに直接入れば、もちろんヒト血清がもつα1-3Gal抗体によってウイルスは不活化さ れるのですが、コカルチャーしてしまうとそこのバリアはなくなってしまうわけです。 ○中内委員 そうすると、マウスのレトロウイルスにもそういった感染はあり得ますね。 ○山口委員 ヒトに感染することは、一応in vitroでは知られています。 ○中内委員 それが実際に何か起こすのですか。 ○山口委員 有害事象を起こしているとかについては、実際そういってものが臨床で使用されている わけではありませんので不明です。単に、in vitroで感染することがわかっているということです。 ○西川委員 これは現実に合わせていろいろ議論していくことが必要だと。というのは、この間FDAの 人とお話をしていたら、ジェロンの問題で言うと、先ほど梅澤委員がおっしゃったように、フレッシ ュなMEFをずっと使うのはかなり抵抗があるみたいですね。それはチェックできない。しかし、代替品 がないかというと、たぶん山中さんの所などはiPSをヒトフィーダー細胞で作られていますね。エスタ ブリッシュされたセルラインでやっていくということがすでに行われているので、割といくつかの問 題は解決できるだろうと。  ただ、初めから門戸を閉ざしてやるのは問題なので、どういう問題点があるだろうか、最終的に指 針だけではなくて、最終産物として保険収載までされるかどうかわかりませんが、そういう方向まで 目指すのであれば、かなり早めからいろいろな形の議論は集めておいたほうがいい。そのときにはか なり厳しい議論もしながら、前に早川先生がおっしゃったように受けないという問題、実施できない という問題は常に念頭に置いていただいて、代替品がない場合にはここに堂々と持ってきて議論して いくことが大事で、代替品があるかないかの議論をいくらやっても、いまは難しい問題がたくさんあ ります。割と整理がされつつあるので、是非具体的な問題について、一度専門委員会か何かでやって いただくのがいいかなと思うのですが。 ○山口委員 これは検討することではなくて、検証するつもりは全然ないのですが、コンサーンが強 いことのメッセージは出したいなというのが私の意図です。 ○鹿野委員 結構気にされる先生方も多いようですので、もしQ&Aなどを作られるのなら、そこで具体 的な説明を入れていただくのがよろしいのではないかと思います。 ○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。この総則の3番目はどうでしょうか。倫理の先生にご意見を お伺いしたいのですが、1頁の○の3つ目の「治療法のない致死性もしくは障害性の高い疾患等に対し て、新規性の高いヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画については、用いられるヒト幹細胞の特性や 有用性の評価に関してその時点での学問・技術の限界はあるものの、本指針に従って迅速かつ適正に 臨床研究が推進されることが期待される」と、少し範囲が広いかなという気がするのです。もう少し きちんと詰めたほうがいいかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○山口委員 この新規性という意図は、新たな治療法が開発された場合に有用であるということを意 図されているのかなと思ったのですが。 ○永井委員長 新たな研究が推進された。 ○山口委員 そうです。研究した結果としてということだと思うのですが、試験を開始する時点では、 まだ有効性はわからないわけですよね。 ○永井委員長 研究的治療が行われてもいいという意味なのか、治療研究を推進すべきだという意味 なのか。 ○高坂委員 ここに書かれている第1の目的、あるいは第5の基本原則に書かれていることは、たぶん 別々の項目にこれを入れなさいという趣旨で書かれているのだろうと思うのです。例えば、いま議論 になっているところは、対象疾患等のところの議論だろうと思うのですが、いま現行指針で規定して いる対象疾患等と特に大きく変える必要があるのかどうかという点はいかがでしょうか。 ○中畑委員 何回か前に1回議論になったと思いますが。 ○澤委員 ですから、対象疾患を変えるという意味ではなくて、この3番目の文章については特にとい う意味合いなのです。特にこのような疾患に対しても迅速な研究を推進させることが、本来のヒト幹 細胞指針の目的であるという意味を謳っておりまして、これをしろとか、ここだけをしろという意味 ではありません。ヒト幹は、むしろもっと広い範囲でやるということだと思います。だからと言って、 これ以外のことがゆっくりしたらいいというわけではないのですが。 ○永井委員長 例えば、アルツハイマーを考えたときに、いまはあまり治療法がないと。そうすると、 新しい治療研究計画が出されたときには、それは推進されてしかるべきであると、そのような読み方 になるわけですね。 ○澤委員 はい。 ○位田委員 だから、そういうことを別に指針に書かなくても、つまり、だからどうしろというのか という問題ですよね。例えば、前書きのところにこういうことは推進されるべきであると書くのは、 あまり問題ないと思いますが、「期待される」と書くと、特に規則という感じではないので。 ○中畑委員 位田委員の言われる趣旨はよく理解できるのですが、迅速に審査をしろということを目 的に謳うのは、指針というものからすると合わないのではないかという気もします。位田委員がおっ しゃるように、特に新しい医療は迅速に進める必要があるという趣旨はよく理解できますが、特に目 的に挙げることではないと思います。 ○梅澤委員 法律とか指針の心(こころ)の部分というのは、どこかに入れることはできないのです か。例えば、憲法の前文みたいな形で、もしプロ(法令の専門家)の方々で何か工夫の仕方を教えて いただければと思います。 ○永井委員長 そうですね。 ○澤委員 いまのご意見のとおりで、確かに目的に入れるのは、違うかもしれません。これが精神だ ということはわかると思います。今回なぜGTP案で出すかというと、いままでの1314号を援用しろと いう書きぶりだけでは、何をどこまでやればいいかがわかりにくいことがあり、そもそも申請者も審 査する側も非常に難渋する点であった。そのように難渋することが、連続性や切れ目のない臨床試験 をと謳われている中で障害となっているがゆえに、迅速にするためにGTPを作って制度をクリアにした。 その精神が、今回改正するにあたって是非盛り込めたらというのがこの趣旨ですので、おっしゃると おり目的でなくても前文にはっきり明記していただいたら、それはそれで私たちとしても非常に嬉し いと思います。前文はあるのですか。 ○位田員 いまのところないです。 ○澤委員 いまのところないのですね。そのような形を取っていただけるなら、GTPをなぜ作ったかを 今回クリアにしたいというか、GTPを盛り込んだ基本的な考えです。 ○永井委員長 それは書いてもよろしいわけですね。この委員会でもだいぶ精神というのが議論され ていると思いますが。 ○事務局 必要があれば、様式については適宜考えたいと思います。 ○位田委員 臨床研究指針の前文がありますので、ものによって書こうと思えば書けると思います。 第1章総則第1の目的というのは、このヒト幹細胞臨床研究指針の目的なので、臨床研究の目的ではな くて、だから書く場所が違うかなと。 ○澤委員 この倫理指針にあるような形の前文を付けていただければ。確かに、こちらには前文がな くて、指針のほうは前文があるようですが。 ○位田委員 前文に書く書かないとは別に、治療法のない致死性もしくは障害性の高い疾患というの を、対象疾患に書き入れるかどうかという問題も1つあると思うのです。3頁の第1章第4に「対象疾 患等」という所があって、第4の(1)には「重篤で生命を脅かす疾患、身体の機能を著しく損なう疾患、 又は一定程度身体の機能もしくは形態を損なうことによりQOLを著しく損なう疾患」と疾患の分類が書 いてありますので、それに加えて治療法のない致死性もしくは障害性の高い疾患を新たに書き加える か、もしくはこれは入っているということであればこのままで、精神は前文で、これについては特に 推進しましょうと書けると思います。 ○永井委員長 確かに、内容は第4の対象疾患の中に含まれていますね。むしろ精神を表に出したほう が、メッセージとしては伝わるかもしれません。という扱いでよろしいでしょうか。そうしますと、 今日ご提案された意見は、多少の修正を含めて改定案に盛り込むということで、次回までに事務局で 整理させていただきたいと思います。 ○中畑委員 前の指針では、1314号通知をいちいち文章に入れない形で来たのですが、これは指針な ので、当然新しい臨床研究をやろうとする人は1314号通知ぐらい読まなければいけないと、それを前 提にしてわざと入れなかったということで、いちいち1314号を引用する形を取らなかったのです。今 回の指針は、1314号通知をすべてここに引用する形で作るということでよろしいかどうか、その合意 だけは取っておいたほうがいいかと思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○山口委員 冒頭の1314号というのは、承認申請までかかるような内容だったのです。そういう意味 では、ヒト幹指針はこれから臨床研究をスタートするところですので、むしろ臨床研究に入るところ だけに絞って書き込んだほうがいいのではないかという気がしています。もう1つは、引用しているの は1314の別添1ですので、基本的な考え方だけで、同種指針とか自己指針とか、そういうところは全 然引用していないのです。その辺は適切に、利用できるところがあれば利用してもいいのではないか と考えております。 ○永井委員長 澤委員、そういう形でよろしいですか。 ○澤委員 そういう考え方だと思います。前にも申しましたように、1314号は中畑委員がおっしゃる とおりヒト幹ができたころそれがいちばん中心だったのですが、1314号も変化している中で、1314号 を実際読んでみると、加工であったり製品であったり製造であったりするのです。そこは臨床試験の ファーストインマンをいま行うレベルでそこまで要求するかというところから、ミニマムリクワイア メントをこちらに持ってきたということで、これのほうが迅速に進むと私たちは考えたのです。 ○永井委員長 そのようなことで、よろしいですか。 ○高坂委員 実際、研究者にとっては、たぶんこのように抜粋してあげたほうが丁寧というか、使い やすい指針になるかと思うのですが、一方では1314号はまた改正される可能性があるのですか。 ○山口委員 たぶん、同種と自己と作ってしまいましたので。ただ、iPSとかESの指針はいま作ろう としているので、それが最終的にどうなるかはまだわからない状況です。少なくとも、いま使われて いる体細胞とかMSCとか、そういうものについては一応出来上がっていると考えていいと思います。 ○高坂委員 次々に1314号を改正されるなら、1314号に従うと書いておいたほうが、抜粋したのをま た全部変えるという対応になると。 ○澤委員 一応その部分を踏まえて、iPSやESのことも想定した形でこちらに切り出しました。1314 号が変われば全部変わって、裏返って全部違うことになるということはまずなくて、ミニマムリクワ イアメントですので、この部分を逆に1314号が参考にしていただけるぐらいのほうがいいかなと考え ております。それが連続性を持てるということになるかなと。いきなりは無理かもしれませんが、考 え方としてはそちらかなと思っております。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○位田委員 1314号というのは、基本的に薬事法にベースがあるのです。ヒト幹細胞臨床研究は薬事 法から外れたところでやるというのがこれまでの議論だったので、1314号がどう変わるかはわかりま せんし、いまの1314号がどうなのかとは別に、これに定めれば、これでやるということがはっきりす るのだと思うのです。薬事法は外れますということをここまで細かく書けば、よりはっきりわかると いうことではないでしょうか。 ○永井委員長 そういう整理でいかがでしょうか。 ○町野委員 若干そういうことにはならないので、もしかしたら、食い違ったときに実際に薬事法の 適用がある領域かどうか、それは薬事法の概念に従って決められることで、実際にこちらでこう規定 したから外れるということは、法律の上ではないだろうと思います。だけど、私はこれで結構だと思 います。 ○中畑委員 前回の指針でも、1314号はすべてこの指針に適用されるということではなくて、それぞ れ項目だけひいてあって、そこの項目については1314号通知に従うと。例えば、細胞を無菌的に操作 しなければいけないような項目については1314号通知にと、1314号通知の中の必要な所だけを取り出 した形で指針が作られたわけです。 ○町野委員 先ほどの精神を前文に付けるということですが、どういう精神ですか。つまり、臨床研 究の倫理指針の前文を読みますと、ヘルシンキ宣言から出てきていて、被験者の権利・自由を守るこ とが中心になって作られているわけです。今回の場合、この指針が作られたのは、1314号通知並みに しようということで、臨床研究の中でも特にこういうことについて、安全性についてセンシティブで なければいけないということがあるので、その精神を書くことになるのでしょうね。臨床研究の倫理 指針がすでにありますから、これは特別の規定ですから、それがいまのことだろうと思います。  もう1つ先ほど出ていたのは、とにかく早く審査して研究を推進すべきだということがありますが、 そのことが先ほど言われた精神ということなのでしょうか。そのことを書き込むということなのでし ょうか。 ○梅澤委員 精神というのは重要なことで、私は先ほど前文という例を出したのであって、Excelの表 の1頁のいちばん上のカラムの赤い部分をどこかにきちんと明記するような部分が指針の中にあるので あれば、私が知っているのが前文しかなかったので前文と申し上げただけで、プロの方々に適切な場 所があるのかなと思ってお聞きした次第です。 ○澤委員 間違われたくないのは、迅速の審査イコールディスカウントではないのです。レベルを下 げてほしいから簡単にしてくれなどということは一言も言っていない。むしろ、これを読んだら臨床 研究者はびっくりするかもしれないのです。初めて見ると、1314号なんてとんでもなく考えたことの ない人がヒト幹を申請するときに、「1314号って何」と、まずそれを探し出すことが必要なわけです。 そういうタイムラグをできるだけここに盛り込むことで、ディスカウントではなくて、レベルを落と さないで早く進めたいというのがこの精神です。その精神をもっと全面に謳って、日本の臨床研究を 進めようというのが、今回のGTPに盛り込んだ基本なので、そういうことを私たちは謳っていきたいわ けです。ですから期待されるという文章で、確かにこれは目的と言われると違和感があるかもしれま せんので、できるだけそういう精神を全面に出してほしいと。そういうつもりでやっております。 ○町野委員 私もそう理解しましたが、書き方がかなり難しいなと。要するに、早くしろと書くわけ にいかないので、重要なのは。 ○澤委員 抜け道を探してとか、そういうことではなくて。 ○町野委員 とにかく、安全性を考慮してきちんとこれでやってくださいと、それをやった以上は、 それに従って着々と進めてくださいという趣旨ですね。 ○澤委員 そういう趣旨です。 ○町野委員 わかりました。ですから、前文は別にプロではなくても、プロもアマもないですから。 ○武藤委員 いまのお話は、改正の趣旨みたいな文章では反映できないのでしょうか。改正されてこ れを出すときに、こういう意図でこういう趣旨で改正しましたと、たぶん通知しますね。それはどう なのでしょうか。 ○事務局 いまどうしようかなと悩んでいたのですが、お答えを自ら先生方が出されたような気がし ます。例えば、委員会報告として最終的なレポートを部会等に上げていただくときに、こういった議 論がなされて、こういう観点に着目して改正した、あるいはこういった観点について引き続き検討す べきだった、こういったことは今後対応すべきであるということは、各指針の見直し検討会でよくな されることですので、答申という言葉が馴染むかどうかわかりませんが、そういったところには非常 に馴染むところですし、前文に絶対書かなければいけないということであれば頭をひねったところな のですが、どこかにこの委員会の結論として書くことができるということであれば、たぶんいろいろ な手法があると思っています。そういうところでお話いただければと思っています。 ○澤委員 逆に前文には書いてはいけないということはないと、武藤委員がおっしゃったことはわか るのですが、両方に書いてもいいと。 ○事務局 それは先ほど町野先生がおっしゃったところの全体の並びというか、1つ気にしていたのは、 指針を定めるときの前文は趣旨説明としてあるのは普通なのですが、前文がなくスタートして、改正 告示から前文が出てくると、この差は何だとか、役人根性的にはすごく心配なところはドキドキしな がら聞いておりました。書いてはいけないという規定はないので、馴染む文章になるのであれば馴染 む文章として起こすことは可能だと思っています。そこは柔軟に考えたいと思っていたのですが、最 もしっくりする、作業スケジュールからすると、先ほど武藤委員がおっしゃったようなことであれば すっきりはするなと、いまは思っております。 ○澤委員 馴染む文章であればいいわけですね。しつこいようですが。 ○永井委員長 わかりました。これは事務局と一緒に検討したいと思います。  最後に、いままでのご議論の内容を基にして、改正の素案を事務局で作成しておりますので、これ についてご説明をお願いします。 ○事務局 いままでの議論をまとめて、資料2と資料6について若干のご説明をします。  資料2ですが、「指針の対象となる細胞について」ということで、今回議論していただいた幹細胞以 外の細胞までも含めるかといった内容についてです。上の表は、現行のヒト幹指針の細胞の範囲です。 というのは、体細胞が一部入っているのと、体性の幹細胞が含まれており、あとは自己、同種ともに 臨床研究に含まれているということです。原則は、現行の指針ですと、採取されたものが調製され、 移植投与まで1つの機関でなされるのが原則となっているというのが指針の形でした。実際に、今回い ろいろな細胞を含めていくことを考えた上で、かなり細胞の種類も広がります。考えなければならな いことも広がってきます。特に増えてくるのが「樹立」、もしくは「樹立・分配」といった概念を懸 念しなければいけないと。  体細胞、体性幹細胞について「樹立」という言葉があるかどうかわかりませんが、それに加えてiPS 細胞が入ってくるとなると、下の図になりますが、iPSを入れるという検討であれば、樹立の部分を検 討しなければいけない形になります。いまのは自己の話ですが、さらに同種の話になると、もう少し 話が複雑になっていくことはあります。特に採取・樹立されたものをほかの施設やほかの患者に分配 することができ、特に樹立・分配されることによる汚染の拡大、ウイルス全般のリスクなどが高くな ると、危険性はかなり広範囲に広がってくるということがあります。いままでES・iPS細胞などを含め ていくような議論がなされてきておりますが、現行の指針の形ですんなりと入るようなものと考えま すと、体細胞、体性幹細胞はもちろん入りますが、iPS細胞の自己の部分までは入り得るかなと、事務 局では考えております。ただ、iPS細胞を樹立することの安全性については、今後若干議論は必要と考 えております。  いままでの議論で、ピンクとオレンジで書いている部分までは現行の指針に当てはめて、指針を改 正することは比較的速やかにできるであろうと考えます。残る部分、例えば体細胞、体性幹細胞、iPS 細胞といった細胞の同種の部分について、これを樹立して分配するといったリスクの高い部分につい ては、特別にWGを設置して、そちらで素案を作っていただいて、さらにこの委員会に上げて議論をし ていただきたいと考えております。ES細胞になると、胚を使うという問題点があって、その倫理的な 課題を、特に文部科学省の指針等とも照らし合わせながら考えなければいけないということで、さら にそれはWGの1番、2番という追加の形で検討していく必要があると思います。前回若干議論が出ま したが、クローンESについては、未受精卵を使うという問題点も追加されるということで、それぞれ のリスク、それぞれ懸念しなければいけないことを1度WGで議論していただいて、それを委員会に上 げていただくのがよいであろうと考えております。早急に指針の改正を見直すということであれば、 このピンク、オレンジが付いているところなどを含めて指針を出すのが大丈夫でないかと考えており ます。いままでの議論では、こういったことを口頭で説明はしてきたつもりですが、このまま皆さん の了解が得られれば、そういった形で進めていきたいと考えております。 ○永井委員長 いかがでしょうか。WGはこれから作るわけですね。 ○事務局 これからです。 ○永井委員長 どのぐらいの期間で取りまとめを行う必要がありますか。 ○事務局 時間をなるべく濃縮するため、3時間とかで詰めて、大体1つの項目について2、3回ぐら いの会議を想定しています。 ○永井委員長 作業としてはまだまだありそうですが、今日はあまり議論する時間がありませんので、 委員の先生方から事務局にご意見等をお寄せいただいて、次回さらに議論を深めたいと思います。資 料6についてご説明をお願いします。 ○事務局 いままで議論された内容を反映して、左側の現行版から右側の素案へ移した部分がありま す。変更した部分は赤で修正しております。まだ、ほかにここは議論すべきだというところはもちろ んあると思いますし、この議論はまだまだ足りないというところもあると思います。そういったとこ ろのご意見をなるべく寄せていただいて、次回の委員会で議論をしていただきたいと考えております。 ○梅澤委員 第6章のいちばん最後の細則に、「できる限りこの指針に沿って適正に実施されなくては いけない」とございます。これは非常に重要な課題で、先ほどから心(こころ)の部分にあるのは、 この指針で今されていないものがあるとしたら、医療法の下でこの指針できちんとされようというこ とです。これがいちばん最後に来てしまったのかと思うと残念です。そういうところも、少し工夫を お願いします。 ○事務局 精神論でという意味ではなく、これはよくある適用の移行期間などの移行措置に当たるも のなので、特段そのようなご意見はございません。 ○梅澤委員 おっしゃっていることはよくわかるのですが、この指針でやりましょうということで、 最初のほうにあれば嬉しいです。  法律の専門の方々に、4頁の「初めてヒトに投与されるヒト幹細胞を用いる臨床研究については」と いう日本語が、法律の言葉として、かかるのは「初めて投与する」のところですね。言葉について、 プロもアマもないとおっしゃいますが、プロの方に、意味が読み換えられないように適切にお願いし ます。おそらく、「初めて投与される」と読んでいますが。 ○高坂委員 これからWGで検討していくというのはよろしいと思うのですが、資料2で配っていただ いた中で、ピンクとかオレンジとかグループがありますね。これは、次回iPS細胞、ES細胞、特に同 種由来のところのiPS・ESは除外されていますが、除外すべきかどうかという基本的なところは議論を お願いしたいと思います。  それから、自己由来のところの体細胞、体性幹細胞の樹立というのは、どういう意味なのでしょう か。 ○事務局 現在のサイエンスでは、そういったものはおそらくできていないと考えます。例えば、皮 膚の分化細胞を採取して培養し、それが株化細胞のような形で保存されるといったことも起こり得る のではないかということで、枠を設けております。iPS細胞は脱分化させて株化細胞を作ります。そこ までいかない段階で、中途半端なものもあるだろうと。さらに、分化したものでもそういった株がで き得るだろうということで、あまりサイエンティフィックには馴染まないかもしれませんが、可能性 として枠を作ったということです。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。  それでは、大体時間になりましたので、事務局から連絡事項をお願いします。 ○事務局 今回いろいろな資料を提示しましたが、さまざまなご意見があろうと思いますので、是非 メール等にてご意見をいただいて、なるべく委員会の時間短縮を図っていきたいと考えております。 よろしくお願いします。  今後指針の見直し案を作成し、将来的にはホームページ等で公開して、パブリックコメントを募集 して、さらにいろいろな意見について引き続き委員会で議論をしていただきたいと考えております。  次回の日程ですが、4月12日(月)15時からの開催を予定しております。詳細については追ってご 連絡いたします。以上です。 ○永井委員長 それでは、以上で終了させていただきます。どうもありがとうございました。 照会先:医政局研究開発振興課 田邊(2545)