10/03/12 第16回厚生科学審議会感染症分科会結核部会議事録 10/03/12 第16回厚生科学審議会感染症分科会結核部会 第16回 厚生科学審議会感染症分科会結核部会 議事録 日時 平成22年3月12日(金)10:00〜12:00 場所 厚生労働省中央合同庁舎5号館5階専用第12会議室 1.開会 2.議題 (1)今後の結核医療のあり方について (2)結核に関する特定感染症予防指針について (3)その他 3.閉会 ○水野専門官 これより第16回厚生科学審議会感染症分科会結核部会を開催いたします。委員の 皆様方にはご多忙中のところ、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。私は健康局結核 感染症課で専門官をしております水野と申します。しばらくの間、進行役を務めさせていただきま すのでよろしくお願いいたします。  それでは、本部会の開催に当たりまして、上田健康局長よりご挨拶を申し上げます。 ○上田局長 おはようございます。上田でございます。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中 にかかわらず、第16回の厚生科学審議会感染症分科会結核部会にご出席いただきましてありがと うございました。  まず初めに、昨年10月、本部会でご審議いただきました結核登録票に係る活動性分類等につき ましては、本部会のご意見を踏まえ、本年1月、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関 する法律施行規則の一部を改正する省令が施行され、併せて関係通知を発出することができました ことをご報告申し上げますとともに、貴重なご意見をいただきましたことに、改めて感謝を申し上 げます。  皆さんもご存じのように、近年、結核患者の減少による結核病床の利用率低下等に伴い、結核病 棟を閉鎖する医療機関が相次ぐなど、地域によっては結核病床の不足が懸念をされているところで ございます。これらの状況を踏まえ、今回の診療報酬改定におきましては、結核病棟入院基本料の 平均在院日数要件の廃止や、小規模な結核病棟を一般病棟の一部とする際の要件の緩和を行うなど、 結核医療の充実が図られることになったところでございます。  このほかにも多剤耐性の問題や若年者を中心とする集団発生の問題、さまざまな結核の問題がご ざいます。結核を取り巻く状況の変化、新たな課題に対処するために、地方自治体及び関係団体の 皆様方と連携を図りながら、結核対策を一層推進していきたいと考えております。  本日は、前回部会に引き続きまして、今後の結核医療のあり方についてご審議をいただくことに なっております。また、平成19年3月に策定されました、結核に関する特定感染症予防指針につ きまして、見直しの時期となっておりますので、その必要性や議論の進め方についてご審議をいた だきたいと考えております。これらの重要事項につきまして、先生方からの専門的かつ大局的見地 からのご意見を今日は賜ればと思っておりますのでよろしくお願いをしたいと思います。本日はど うもありがとうございます。 ○水野専門官 開会に先立ちまして、委員の出欠状況の報告をさせていただきます。本日の出欠状 況につきましては、東海林委員、高橋委員からご欠席の連絡をいただいております、重藤委員は少 し遅れるというご連絡をいただいております。現在の部会委員総数12名のうち、現在のところ9 名のご出席をいただいており、出席委員の過半数に達しておりますので、本日の部会は成立いたし ますことをご報告いたします。  次に事務局の職員を紹介いたします。福島結核感染症課長、中嶋感染症情報管理室長、江浪課長 補佐でございます。  ここでカメラ撮りは終了させていただきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。  続きまして、資料の確認をさせていただきます。初めに議事次第、座席図、委員名簿があります。 そのあとに資料1-1、資料1-2、資料1-3、資料2-1、資料2-2、参考資料1〜6まで、そのあとに 追加資料があります。不足等ありましたら事務局までお知らせください。  それでは進行を坂谷部会長、よろしくお願いいたします。 ○坂谷部会長 それでは皆さん、本日はよろしくお願いいたします。今日の会議の進行ですが、お 手元の議事次第に沿って進めてまいりますのでよろしくお願いいたします。円滑な議事進行にご協 力のほどをよろしくお願いします。  まず議題(1)「今後の結核医療のあり方について」です。事務局よりご説明をお願いいたします。 ○水野専門官 資料1-1をご覧ください。今後の医療のあり方に関するこれまでの議論について概 要をまとめさせていただいております。  1.「近年の結核医療の現状」について、結核病床についてと地域連携体制についての2つに分け てまとめております。これに関しましては、内容をご確認いただいて、認識に間違いがあればご指 摘いただければと思います。  2.「今後の結核医療のあり方について」です。初めに基本的な考え方について、次に今後の結核 医療の提供体制及び地域連携体制の強化について、これまでの議論に基づきましてまとめておりま す。(1)の今後の結核医療の提供体制については、結核医療提供体制モデルが前回の部会において提 示されましたので、資料1-1の最後に添付されています図1、表1もご参照ください。  3.は、2.の「今後の医療のあり方について」を踏まえまして、「今後の検討の進め方」について お示ししております。これらの各項目について、順次データ等を揃えつつ、今後本部会で検討を進 めていくことが必要ではないかと考えております。  結核患者・病床については、結核にかかる入院医療の実態の把握、具体的には合併症の割合、医 療従事者におけるDOTSにかかる作業負担等について、必要な調査を行っていくことが必要ではな いか。モデル病床、ユニット化病床等の課題を明確化しつつ、再整備の促進方法について、検討す ることが必要ではないか。具体的にはモデル病床については、一般患者が入院しているために、必 要時に結核患者が入院できないなどの理由で有効利用されていないことが多いとの指摘がありま す。今後、どのように病室調整を行っていくかについて検討が必要ではないか。結核病床(ユニッ ト化病床を含む)、モデル病床について、院内感染予防、療養環境を考慮した施設基準の検討が必 要ではないか。感染症病床と結核病床の今後のあり方について、引き続き、検討することが必要で はないか。  地域体制・広域連携につきまして、各都道府県が管内の事情を勘案できるような医療提供体制・ 地域連携モデルとなっているかの確認を行っていくことが必要ではないか。症例の相談体制確保の ため、結核研究所、高度専門施設を中心とした広域ネットワークの構築や、既存のネットワーク(NHO、 結核療法研究協議会など)の活性化の具体的な方法を検討していくことが必要ではないか。結核病 床、モデル病床があっても医療スタッフが不足し(医師不足、看護師の結核病床離れ)使用できな いことがあるとの指摘に対応するために、学会等との連携や、卒後教育との連携をどのように図っ ていくかについて、検討することが必要ではないか。地域連携が進むためには、それが当たり前に なる雰囲気作りが重要であることから、国・地方自治体等によるどのような普及啓発が有効か等に ついて検討を行っていくことが必要ではないかということです。  今後の部会では、地域体制・広域連携について、各都道府県が管内の事情を勘案できるような医 療提供体制、地域連携モデルとなっているかの確認を行っていくための資料を用意させていただい ております。  資料1-2をご覧ください。「医療提供体制のモデルの適用事例について」です。前回の部会にお いて議論いただいた医療提供体制モデルについて、地域における特性に十分対応できるモデルとな っているかどうかを検証することを目的として、下記の自治体のご協力を得まして、各地域におけ る今後の医療提供体制について検討を行った上で、現時点における医療体制モデルについての課題 をまとめてご報告いただきました。  全部で5県ですが、都市圏であり罹患率が高い県として大阪府、結核病床の集約化が進んでいる 県として青森県、山形県、A県。島嶼という地域特性のある県として沖縄県からいただいておりま す。これらの報告をもとに、医療提供体制モデルの課題を把握するために、下記の点についてどの ように考えるかです。具体的には、各都道府県が管内の事情を勘案できるような医療提供体制・地 域連携モデルとなっているか、地域の医療提供体制構築について、モデルに示された内容以外に検 討が必要な事項があるかということにつきまして議論いただければと思います。  この適用事例についてですが、資料1-3に、各自治体から出てきております報告がまとめてあり ますが、量も多いので、追加資料「ご協力をいただいた県から提出いただいた今後の結核医療提供 体制についての資料のまとめ」をご覧ください。こちらのほうを中心に説明させていただきます。 資料1-3にも各自治体の圏域図やその他の図表が付いておりまして、わかりやすいものがあります ので、適宜合わせてご覧ください。  それでは大阪府の(案)から説明させていただきます。罹患率32.8、死亡率2.5、高齢患者の割 合においては65歳以上が過半数ということです。結核患者の特徴ですが、あいりん地域の結核患 者、罹患率がとびぬけて高い。公衆衛生上の問題のほか、アルコールや薬物依存、就労や住宅など の様々な問題が複雑に関係する都市問題であること。経済的に困窮しているケースが多い、とあり ます。  二次医療圏の数が8ということですが、これは資料1-3の6頁の圏域図を見ていただければと思 います。結核病床を有する病院が8、モデル病床を有する病院が3です。病床利用率が約7割。保 健医療従事者の状況につきましては、一部の病院で専門医不足、経験豊富な看護師の減少、若い看 護師の結核病床の忌避がある。これに対し医師・看護師を対象とした結核研修会を開催していると いうことです。結核医療・地域連携の状況ですが、各保健所において、DOTS事例検討会やコホー ト会議を実施中である。結核病床を有する病院主催の研修会や連絡会に保健所が参加している。こ れによって病院と保健所間の連携を行う。広域連携の状況ですが、近隣県との府県境を越えた連携 がある。その他については結核病床の減少傾向があり、地域の基幹病院における一般病床を活用す ることが重要である、ということです。  次の頁にいきますと、今後の取り組みや再構築案におけるポイントや問題点なのですが、大阪府 では、案ですが、結核治療の基幹的病院である4病院を特に専門医療機関として再編成し、地域と の連携・コンサル体制を確立する。感染症病床・モデル病床を含む地域基幹病院においては、合併 症等のある自院の入院患者のみならず、新たな結核患者を受け入れてもらえる環境を作る。地域の 外来医療機関を、非排菌患者や退院後の治療の主体として再編成する。DOTSをキーワードにした 医療機関同士の連携を図る。具体的には指定医療機関研修会、症例検討会、病院連絡会議等の拡充 を図る。問題点として、結核合併症患者に対する広域連携については、患者家族の負担など検討す べき課題が多いということです。  これより説明します3県は、病床の集約化が進んでいる県です。まず青森県ですが、罹患率が 21.3、死亡率2.2、高齢者の割合については60歳以上が68.9%。特徴ですが、「発症から初診まで 2カ月以上の割合」が33.7%と全国で一番高く、発見の遅れがあるということです。入院期間の中 央値は90日と全国より1カ月ほど長い。社会的な支援が必要な結核患者、例えば精神疾患患者、 高齢者、要介護者、単身の生活保護者等の増加がある、ということです。  資料1-3の11頁の青森県の圏域図を見ていただきますと、二次医療圏数が6で保健所数が7、 結核病床については、国立病院機構青森病院が60床、青森県立中央病院、これはユニット化して おりますが16床の2つがあります。モデル病床はございません。感染症指定医療機関は4施設あ ります。圏域図にも▲で載っております。平均病床利用率は37%ですが、26から53%の幅がある ということです。  保健医療従事者等の状況ですが、青森病院では専門医が退職しまして、退職後は2名の内科医で 対応しています。  結核医療・地域連携の状況ですが、青森病院では主たる結核患者、県立中央病院は合併症例また は対応困難例に対応しているという意味では医療連携がある。両病院でDOTSカンファレンスが開 かれ、保健所職員が参加している。これにより院内DOTSから地域DOTSへのスムーズな移行が可能 となる。入院中から退院後までの共通服薬手帳を試行的に使用している。患者早期発見のための地 域の内科における入院以外の診療が適切に進められるよう、県や保健所において研修会を開催して いる。保健所による老人福祉施設等における研究会を開催している。広域連携の状況ですが、遠隔 地である下北地域、県南地域においては、保健所でマニュアルを作成し、近隣県医療機関との連携 を行っているということです。その他として、不採算性や医師の確保が困難という理由で、今後の 結核病床不足が懸念される。結核病床のある病院まで、アクセスの悪い地域があるということです。  今後の取り組みや再構築案におけるポイントや問題点ですが、基準病床数を98床から平成22年 度に65床に変更予定である。病床数が不足した場合や、患者の利便性を考慮すると、感染症病床 を活用できるとよい。医療法上の整備が必要である。地域DOTSにおける薬局、福祉施設、市町村 保健師等の連携推進が必要である。これにより社会的支援が必要な結核患者に対応する。地域連携 パスの導入を検討しているということです。  山形県に移ります。山形県は罹患率11.9、死亡率1.4、60歳以上が68.8%、80歳以上が34.8% と80歳以上の超高齢者の割合が高い。高齢者の結核の診断の遅れがある。糖尿病や悪性腫瘍など の結核発病高危険因子が、菌陽性肺結核の5割弱に合併している。結核を疑って検査をする前から、 病院や各施設に入院・入所中の結核診断例の増加、介護保険サービス利用中の結核診断例の割合も 高い。単身者や認知症、老老介護などによる服薬継続困難者も増加傾向にあるという特徴がありま す。  資料1-3の28頁、29頁の山形県の圏域図を見ていただければと思います。二次医療圏数が4、 保健所数が4、結核病床は国立病院機構山形病院に50床です。モデル病床はございません。感染 症指定医療機関は第一種が1施設2床、第二種が4施設16床になります。病床利用率は48%です。 保健医療従事者等の状況ですが、山形病院では結核診療経験豊富な医師が2名勤務している。感染 症指定医療機関には第一種の結核診療経験豊富な医師が1名勤務、第二種では結核診療対応可能な 医師が合計6名勤務しているということです。  結核医療・地域連携の状況ですが、通常結核患者は山形病院に入院している。ただし合併症例、 妊婦、小児などの場合は、保健所の関与のもと、臨時応急の場合として、第一種感染症指定医療機 関や、特定機能病院の大学病院に入院している。結核医療連絡会は、結核専門病院医師及びスタッ フ、県及び各保健所の担当者が参加して開催している。結核対策研修会を、保健所ごとに結核指定 医療機関、医師会、福祉施設関係者等を対象に実施している。山形病院でDOTSカンファレンスを 開催しており、これには保健所職員や外部の関係者も参加している。その他として、結核病床のあ る病院が1か所のため、医療のアクセスが悪い。そのような地域の患者の場合は、患者及び患者の 家族の身体的・精神的負担が大きい。菌陰性化後の福祉施設の受入先の調整が困難な事例もあると いうことです。  今後の取り組みの再構築案におけるポイントや問題点ですが、特に結核の早期診断を促すという 意味で、(1)「かかりつけ医」が結核発病の高危険因子を念頭において、高齢患者に定期的な胸部 X線の検査を実施する方法の普及を行う、また、院内・施設内感染を防止するための研修会を保健 所単位で定期的に開催する。(2)に、結核拠点病院(山形病院)の確保と、機能向上、(3)に地域の 患者は地域で診ることができる体制へということで、感染症病床、または基幹病院の陰圧病床の活 用ができるとよい。(4)に、各二次医療圏で結核を含めた感染症の治療体制を整えた老人保健施設 を整備することを提案したい。これは制度面の支援が必要である。(5)として、地域における結核 診療コンサルト機能の構築が必要である。方法として、呼吸器専門医師等を結核研究所の医師研修 に派遣、呼吸器専門医等が主治医を交えて行う症例検討会の開催など提案したい。感染症診査協議 会の役割として、主治医に助言する機能を明確化することも重要。(6)として、地域連携の強化の ため、研修会の対象の拡充、福祉施設関係職員や薬局薬剤師を含める、連携パスのさらなる活用を 図るということです。  A県に移ります。罹患率が12.4、死亡率が1.6です。高齢者の割合としては60歳以上が67.5%、 特徴といたしまして、外国籍登録患者の割合が10.0%と、外国籍患者の割合が高くDOTSなどの服 薬指支援に苦慮しているという現状があります。  A県は資料1-3の41頁に医療機関の状況がございます。二次医療圏数10、保健所数10、結核病 床としまして、国立大学法人A病院が9床、国立病院機構B病院が50床、財団法人C病院が10床、 モデル病床として県立病院で精神病床が3床。第二種感染症指定医療機関が10施設あります。病 床利用は空床が増大しているということです。保健医療従事者等の状況ですが、専門医師または看 護師が不足状況にあるということです。  結核医療・地域連携の状況ですが、国立病院機構B病院には県内患者の7割が集中し、合併症例 など専門医療も行う拠点的な医療機関となっている。結核病床を有する医療機関とのDOTSカンフ ァレンスの実施をしている。感染症診査協議会は、4保健所で行っているが、そこにおけるコホー ト検討会も実施をしている。第2種感染症指定医療機関との連携もあるということです。広域連携 の状況ですが、結核病床減少に伴い、隣接する県外医療機関での患者受入れが必要となっていると いう現状です。その他ですが、結核病棟の不採算の拡大により、結核病床の削減及び廃止を行う、 または予定する医療機関が増加をしており、それには国立病院機構のB病院も含まれるということ です。また、集団感染等の発生時には、結核病床の不足も危惧される。医療アクセス面で不備な地 域があるということです。  今後の取り組みや再構築案におけるポイントや問題点ですが、国立病院機構B病院が拠点病院と して位置づけられる。一病棟単位で運営が困難な結核病床については、ユニット化を推奨する。第 二種感染症指定医療機関での受入れ体制を整備している。結核病床のない二次医療圏では、モデル 病床の設置を行う。しかし、結核病床のない二次医療圏では、結核病床の創設に係る費用や専門医 師の確保が困難であるうえに、結核医療の不採算性もあることから、地域の結核医療の体制整備が 進まない状況である。拠点病院を中心とした地域の診療所、病院及び社会福祉施設等が、結核医療 に係る地域連携ネットワークを構築していく。近隣の県外医療機関との広域連携ネットワークを構 築していく。また、専門医師の登録制度を構築、看護師の不足している状況から、奨励金等の制度 を設け、地域の看護協会と連携し人材を確保する。外国人の問題に関しましては、通訳者の登録制 度の構築、登録された通訳者は、結核に関する専門的教育を受ける。外国籍患者に対する適切な医 療提供のため、通訳が必要とされる医療機関への通訳者の派遣を行う、ということです。  沖縄県に移ります。罹患率20.1、死亡率2.0。70歳以上の高齢者の割合は54.5%。糖尿病患者 の割合は17.8、透析合併症患者数は15名でございます。  こちらのほうも圏域図がありまして、資料1-3の62頁を見ていただきますと、二次医療圏数が 5、結核病床が合計71床あります。基準病床数は44ということです。内訳は、国立病院機構沖縄 病院が50床、琉球大学医学部付属病院が4床、県立清和病院に4床、県立宮古病院が7床、県立 八重山病院が6床ということです。モデル病床はございません。感染症指定医療機関が6施設ござ います。病床利用については、稼働率が低下しているということです。  保健医療従事者等の状況ですが、マンパワーの不足がある。結核医療・地域連携の状況ですが、 沖縄病院以外の医療機関では、結核入院医療の経験が少なく、複数の病床を有していても一例に対 応するのが精一杯という状況が現実にはある。また、透析合併結核患者に結核病床で対応できず、 やむを得ず結核病床以外の病床で診療を行うことがあるということです。  対策例になりますが、感染症法の運用として、やむを得ない理由により感染症病床で診療するこ とについて、関係者で合意を図る。結核病床を持つ医療機関に対して、研修や情報提供等を行う。 場合によっては、医療機関に対して金銭的支援を行うということで、拠点となる医療機関の経験を ほかの医療機関にも共有するということです。適用事例についての説明は以上です。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。  まず、先生方に座長としてお詫び申し上げると、この種の審議会では、必ず十分前から、先生方 に議論の資料の提示をいたしまして、例えばインフルエンザの問題はオールジャパンの問題で大変 なことですので、予防接種部会が開かれておりまして、委員にマンツーマンでプレレクチャーをす るというようなことをやっているのですが、今日初めてこの資料をご覧になる方もあると思います けれども、ご容赦いただきたい。いま、水野さんが説明に使われたこの大きな資料、もちろんこれ は資料1-3をサマライズしてあるのですけれども、これも30分前に私が初めて見させていただい たという状況でありますので。  今日の進め方について一言申し上げますと、これからやろうとするのは「結核医療のあり方につ いて」です。後半に関しましては、「結核に関する特定感染症予防指針について」、国全体の予防を 含めた結核対策をどうするかについて。前半は医療のあり方についてです。それについての説明が、 水野さんからあったわけです。今回、具体的に細かいことを決めようということではありません。 いま、今年度の終わりにありまして、4月から来年度が始まりますが、今年1年かけてこの部会で 何をしっかり決めていこうか、そういうためのキックオフミーティングという位置づけです。そう いうことをご理解のうえ、議論を進めていっていただきたいと思います。  まず、いちばん最初に、これまでの議論の概要についてということで、資料1-1についてご説明 がありました。これは、いままで、この部会で審議したことをサマライズしてありますが、これは 非常によく書けていると私は座長として思います。  まず、今後の結核医療のあり方に関するこれまでの議論の概要について、委員の方々から何か抜 けているとか、そういうご議論、ご指摘がありましたら、簡単におっしゃっていただければと思い ますけれども、いかがでしょうか。特段ないと思いますけれども、特にご発言があったらよろしく お願いします。よろしいですか。この概要のまとめは、非常によくまとめられていると私は理解を しています。  では、今後の検討の進め方については、事務局から説明がありましたように、順次データを基に、 検討していくという進め方でよいかと思います。水野さんから「医療提供体制モデルの地方への適 用事例について」の資料をご説明いただきました。そういう事例についての議論を進めてまいりた いと思っておりますが、それでよろしいですか。  まず、医療提供体制モデルが各都道府県の管内の事情を勘案できるような医療提供体制地域基準 モデルとなっているかどうか、また、地域の医療提供体制構築について、モデルに示された内容以 外に検討が必要な事項があるかについて、順番に議論を進めてまいりたいと思います。その叩き台 になるのは、先般、前回までにまとめた資料1-1の最後の頁に図が書かれていますね。医療提供体 制モデル、その下の表1に書かれていますが、これを医療提供体制モデルとして示そうではないか。 それに関係して、各地域、すなわち自治体で現状がどうなっているか、今後どうしていけばいいか ということが、5つの自治体について示されたわけです。  まず、医療体制モデルが各都道府県の管内の事情を勘案できるような医療提供体制、地域連携モ デルになっているかどうかということであります。いま、簡単にサマライズされたものがご披露さ れましたが、実際はこの資料の1-3を一つひとつ見ないとわからないわけですけれども、水野さん の説明を基にして、何か各地域の都道府県の体制モデルがどうかという説明に対して、ご意見を求 めたいと思います。何か、特段のご意見がありましたら、お願いいたします。大阪府、青森県、山 形県、それからA県というのは、その自治体さんのご意見によって、具体的な名称を伏せていただ きたいというご要望があったようなので、A県となっています。それから、結核対策に対しては、 沖縄県は先進県かもしれません。このような5つの自治体、地域の数値、及び最終的には我々が提 示したモデルに関して、今後の取り組みをどうしたらよいか、3頁に縷々書かれているわけですけ れども、いかがでしょうか。  ご質問があろうかと思いますけれども、自治体からの参考人がお出でになっておられませんので、 事務局が代理をしてお答えをいただくわけで、十分なご返答ができないかもしれませんけれども、 どうぞ忌憚のないご意見をいただきたいと思います。  今日は、参考人として下内先生にお出でいただいておりますけれども、委員ではないのですが、 市としてお出でになっていただいていまして、大阪府の案に対して何かご意見はありますでしょう か。 ○下内参考人 私も大阪府から意見を聞かれまして、大阪府というのは、資料1-3で、公立病院で 結核病院が十分あります。病床数は十分なのですが、いまの問題は、やはり地域における総合病院、 そのようなところで患者さんが出た場合に重症とか腎透析が必要なときに(結核を)起こすと、結 核専門病院が必ずしもそういった施設が十分ではないということです。私として、また、大阪市の 意見としては、地域基幹病院を強化してほしいということを提案しました。ですから、再構築案3 頁、「結核病床以外の地域基幹病院においても、合併症対策を含め、地域の結核入院医療の基礎を 担う主体として、新たに編成する。排菌していても、他の感染者同様に、一般の陰圧病室で、治療 を行う枠組を新たに構築する」ということで、名前は上げませんけれども、民間病院4つぐらい市 内に十分な総合病院がありまして、そこでは十分治療できるのだけれども、塗抹陽性なので結核病 院に送りますと。ただ状況から見ると、非常に重症なので、それはもう、どうぞその病院でという のが、ときどき37条を適用して、その病院に治療していただくということで、その病院に居たほ うが呼吸器内科としては塗抹陽性の患者も自分のところの病院で見るのだと。陰圧個室を確保して ということでやれば、いまどんどん専門医が減るというときに、それは菌が陰性化すれば外来に戻 ってきますけれども、塗抹陽性のときから病院で治療していただく。そうすると、もとから合併症 があったわけですから、そこで治療を完成したほうが、患者さんとしてもいいし、結核病棟に送ら れて、そのときに元の病気をどうするのかという問題がありますよね。ということで、やはり、か かりつけ病院で治療をしている時にたまたま、結核が発症したからといって、遠くまで行くのは、 よくないということを大阪市ではお願いしようとしていますので、今回医療体制が変わるときには、 ぜひ普通の患者さんが、普通の市内(の病院)で治療できるようにしてほしいということを大阪市 としてはお願いして、それを入れていただけたらと思います。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。それぞれの5つの県からの代表という形で委員の方がお 出でになっているわけではないのですけれども、今回の5つの自治体の様相について、他にいかが でしょうか。隣の県だから知っているというような方がありましたら、何かご意見をお願いします。 医療提供体制について、いろいろいままでご意見をお出しいただいています。それから、数年先で すけれども、結核病学会会長におなりになる重藤先生、何かありますか。現状のことについて、こ ういう現状だと示されたのですけれども、それに対する意見をお願いします。 ○重藤委員 意見というのは、そうだろうなという、本当に現場にいて感じることばかりです。い ま、下内先生が言われた、総合病院でも合併症の患者さんを診てほしいというのは、本当に切実な 問題だと思いますし、非常に遠方に搬送される方もいらっしゃると思うのですよ。結核そのもので 重症であれば、例えばより広域の都道府県単位を超えた協力、連携体制もあっていいのではないか と思いますけれども、合併症に関しては、やはりその地区、その患者さんのいらっしゃるところで なんとか診ていただきたいということですよね。ですから、それぞれの県、それぞれ苦労していら っしゃる、それを何とかしなきゃというと、やはりいまの下内先生のようなことになるのではない かと思います。今週も実は、神戸の方が広島まで探したけれども、透析をしている患者さんで結核 性髄膜炎肺結核で、非常に感染性の高い方が探し回って、とうとう広島までたどり着いた方がいら っしゃいます。空けば受け入れるという近くの病院のお言葉はあったようなのですけれども、とり あえず、いまどうしても動かさなければいけないというような、塗抹陽性の方だから動かさなけれ ばいけない。重症の方をというのは、非常によくないと言っては語弊があるかもしれませんけれど も、気の毒だし、やはり体制を整えるべきだと思います。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。加藤先生、国全体をにらんで、あるいは諸外国との比較 なども含めて、先生からのご感想というか、現状の分析に対するご意見はいかがでしょうか。 ○加藤委員 まず、5つのモデルが示されたのですけれども、非常に地域によって状況が大きく違 うというのが、感想の1つです。それぞれに応じて各県が工夫されて、現状の問題、新しい方向を 考えられているというのが、この資料からよくわかったと思います。1つ、私の作ったモデルの中 で足りないと思われたのは、山形県の資料の36頁にありますけれども、特定機能病院で非常に重 症、あるいはケアの大変な患者さんを受け入れていることです。ここは結核病床を持っていないこ とになっていますので、応急的対応ということで、法に基づく緊急の指定を使ってやっているよう ですが、そこら辺はそれぞれの県に応じて、こういった病院も組み入れる必要があるところもある のではないかというのが1つ。同時に、山形県の中で、介護保険施設を結核体制にどう組み入れる かといったことが提案に書かれております。これは非常に高齢化が進んでいて、介護の手間がかか るということで、当然そういったことも必要になると思われます。感染性がなくなった後を想定し ていますけれども、場合によっては微量排菌で対応できるようなことも今後検討する価値があるか なといったことを感じました。非常に、現実的で、まさに今後の検討の課題になっている内容が含 まれていると思いますので、結核対策特別促進費等で国からサポートで、実際試行できる分をして いただいて、その成果をきちんと検証していただくといったことも対策を進めるのに有用だと思い ました。  もう1つ、いままで,結核対策とか体制という視点を中心に考えているのですけれども、患者中 心ということを一つ頭に置きながら進めてはいかがかと思いました。実際には患者さんは結核とい う疾患があって、それに加えて合併症を持っているとか、いろいろな生活基盤の問題、地域におけ る問題とか様々な問題を抱えているわけですから、そういった視点が私どもの議論から少し抜けて いたので、そこを意識しながらもう少し考えたらどうかということを思いました。以上です。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。他の先生方、いかがでしょうか。現状の分析、現状につ いてのご意見でございますね。 ○菅沼委員 質問も含めてなのですが、やはり合併症も増えた高齢者の方の多くなることと、受け 入れてくれる病院がやはり数が減ってきていて、結核専門病院に連れて行くのは非常に遠方になる ということから、できたら一般病院の陰圧個室のところで、受け入れられるような方向がよろしい と思うのですが、こちらの資料の中にありました、「もしかしたら他の患者さんに移してしまう可 能性があって、訴訟をされる心配がある」という文言がありまして、それは他の感染症でも一緒で はないかと思うのですが、しかし、結核については、それぞれ偏見がありますので、やはりその恐 れは無きにしもあらずです。これを何とかいろいろな法律、体制で防止するようにしていかないと、 それぞれの一般病院が受入れをますます断わるということになると思うので、そこのところはどう したらいいかということも委員の先生方にお聞きしたいと思います。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。将来のモデルをどうするかということと関係がありますけ れども、もと療養所でお働きになって、いま一般病院でご活躍されている川城先生、いかがですか、 一般病院さんとして。 ○川城委員 いま、会長が言われたように、私は少し前まで国立病院機構の結核病床がたくさんあ る病院で働いていて、約2、3年前から一般の急性期病院で働いているので、両方の立場からこの 問題を眺めています。いま現在も、結核患者さんと接触することは、ほとんどなくなってきている のですね。それはどういうことかというと、うちの病院でも塗抹陽性の患者さんが出るのですけれ ども、院内に呼吸器の先生はたくさんいますけれども、全員が陽性というだけで、直ぐに1泊2日 ぐらいで次の病院を探して、治療するというのが医者の常識になって、常識というと語弊があるか もしれませんが観念になってしまっている状況なのですね。  私が思うのは、そこのところ、合併症ありの患者さんとか、標準治療ができて、単期に退院でき そうな人、合併症なしで初回治療というような患者さんは、やはり先ほど来話が出ていますし、モ デルにもあちこちに出てきますけど、一般病院の中の陰圧個室で病床単位の運用でできるような体 制にしていくことが、まず大事なのではないかとつくづく思います。特にその中でも、お医者さん のほうの観念の問題なのだけれども、加藤先生がおっしゃられた特定機能病院をしっかり教育して おかないと、そこから育って世の中全体に出ていく呼吸器系の先生方が、結核というのは、とにか く外に出せばいい患者さんだと思っているわけですから、そこの観念を変えない限り、一般病床、 個室運用というのは、成立しないと思うのですよ。院長がいくらやれと言ったって、アレルギーば かり出てくるわけで、その辺のところが、外枠からやんわりとそういうものだということ、それか ら今度学会で認定のあれが出てきたのですよね。抗酸菌の感染症の治療の、ああいうことも、私は すごくいいと思うのですね。ああいうことをして、クオリファイして、そういう人が特定機能病院 で研修して、病院の中から育って、世の中全体に出て行って、一般病室個室運用で、難しい症例、 例えば多剤耐性だとか、手術を必要とするとか、そういう患者さんももちろんそのときに出さなき ゃいけないかもしれないというのが、私の全体的なイメージで、そうすると、患者さんの視点に立 った治療もできるのではないかと思っています。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。砂川先生がおっしゃったのは、感染者としてほかの伝染 病と一緒なのに、なぜ結核が特別嫌われているのかという話もあったと思うし、前回も、この部会 でそういう話がありまして、私は座長としてではなく、個人的には、やはりマスコミに頑張ってい ただいて、偏見をなくすこと、正確な知識を敷衍していただくことが大事ではなかろうかと思った りしたのですけれども、今日は南委員がお出でになっていまして、何かご意見はありませんでしょ うか。 ○南委員 そうですね。最近、公共広告機構の広告をテレビなどで見ますが、結核を北野武さんが 話していて、、ああいうのはすごく見られています。私どものような活字メディアよりも、むしろ 影響が大きいのではないかという印象です。実はあれを見て、人々とはどういうイメージを持つか ということが問題で、コミュニケーションというのは発信する側ではなくて、受ける側が何を理解 するかということが大事なのです。あの広告で結核の問題をリマインドはできても、もう1歩踏み 込んだ理解をというのは、そのまたさらに先のことで、ある程度戦略的にメディアミックスという か複合的な仕掛けが必要ではないか。関心を持ってもらい、活字でさらに踏み込んで示すなどの工 夫が必要であることを痛切に感じます。  前にも申し上げたように、どうしても新聞は事件・事故にならないと、なかなか取り上げません。 例えばこういう調査が出ますと、例えばA県というのは患者さんは10人に1人は外国人なわけで すね。かなり特異な例ではないのかという気がするのですが、こういう問題がそのまま公表されろ と、また外国人に対する地域で偏見を生んだりしかねない。そういうこともあって名前をマスクし ておられるのかなと思うのですが、伝え方にも工夫が必要だと思います。「正しい理解」というの は簡単ですが、感染症の本質が「感染する」「うつる」とうことなのですからその意味では、「恐い」 というのもその通りです。感染症の報道に限りませんが、ものごとの正しい理解にはものごとの光 と影の両面の周知というのが不可欠であるということを折にふれて感じます。  必ずしも危いものではないということばかり言っても駄目で、怖さも含めた正しい理解が根底に は必要で、その上でどのように対応すべきかといったことが必要なのです。そのためにも広報戦略 に、学会などの協力が不可欠だと思います。 ○坂谷部会長 ありがとうございました。北野武さんのポスターも、結核に目を向けるという意味 では意義があると思うのですよね。ですけれども、それの理解を深めるために、もう一歩違う手段 がいるとおっしゃったように聞こえました。確かに、結核がまだ問題になるということは、あのポ スターを見たらわかるのですけれども、それで短絡して恐いと走ってしまわれる危険性もあるので はなかろうかと思ったりしています。 ○菅沼委員 あのポスター自身、後ろの色は暗くて恐いイメージなのですよね。 ○坂谷部会長 飯沼先生にいま振ろうかと思ったのですけれども、医療従事者でも東京の例とか刀 根山の例とがあるのですけれども、医療従事者でもちょっと偏見が出てきたり、結核を扱っている にもかかわらず、他の感染症より伝染病より恐いというような印象を持たれ始めているやに危惧す るのですけれども、医師会を代表して来ていただいている飯沼先生、一般の開業医の先生方、クリ ニックの先生方での結核の理解というのは、昔はコモンディジーズで誰でもできたわけですけれど も、現在は違うわけですが、何か地域の敷衍、過不足ない理解ということでは、いかがでしょう。 ○飯沼委員 大変難しいご質問で、医師会でそういう議論をしたことがないので、個人的な意見に なりますが、たくさん考えていることはあるのですけれども、感染症の立場からすると、やはり人 に移り易さについては、別に偏見ではなくて、やはり移ったら困る、空気感染というか、飛沫で移 るわけですから、やはり、そのための警戒というのは、国民みんなに教えなければいけないことだ と思います。他の感染症、例えば肝炎とどう違うかというと、やはり違うのですよね、これは。そ の違いを同じだとはとても私には考え切れない。だから、やはり結核と同等のものの他の感染症が あるかと言われると、非常にみなさん答えに困ると思いますし、私も困ります。そういう一面があ るので、患者さんの権利とか個人的なあれを守るということは非常に大事なのだけれども、それの ほうが優先して病気の本質を見誤ってはいけない。  それからもう1つ、先ほどと違うお話になりますが、これだけ医療提供体制が昔と変わってきて、 どこでも診てあげようという基本的な考え方はいいのだろうけれども、技術が集約してきて、もう 1つは医者の仲間、大学を卒業した子どもたちも含めて、医者の中で内科医で呼吸器をやるという 人は、非常に減っています。昔と全然違います。呼吸器の中で、結核をやるという人は、また非常 に少ないわけです。だから、どこでも結核を見られる先生がいるという前提でものを考えては、こ れは間違いを起こすと思いますので、ある程度、例えば医療圏なら医療圏で集約するという考え方 は、これは絶対必要だと私は思います。だから、そのところで合併症やご老人の対応をどうするか ということの問題になるのだろうと思うので、そこら辺のところを間違えて議論してしまうと、患 者さんの権利だけという話になってしまうとやはりまずいので、診られる体制で診られる先生が診 るという格好にしないと、一方ではいけないような気がします。 ○坂谷部会長 ありがとうございます。まさにいま飯沼先生がおっしゃいましたように、先般のデ ィスカッションではということで、先般のこの部会までの案として資料1-1の最後の頁に書かれて いるような医療提供体制モデル、それからそれを表にした表1を案出しているわけですけれども、 前回以降の先生方のご経験やお考えでもって、提供体制モデル図1、表1はこれでよいかどうか、 少しこのように変更したほうがいいのではなかろうか、追加したほうがいいのではなかろうかとい うような点がありましたら、ご披露をいただきたいということなのですよね。 ○川城委員 非常に単純な質問なのですけれども、この図1の地域/二次医療圏の箱の中に、白い スペースが作ってありますね。この白い箱の意味は何ですか。 ○坂谷部会長 右下のところですか。 ○川城委員 各箱の右下のところです。これは何の意味があるのかと思って。 ○加藤委員 これは、もともと黄色いのです。黄色で結核病床をその中に入れるというつもりです。 ○川城委員 結核病床ですか、この黄色いところは。わかりました。 ○加藤委員 実は、特定施設も黄色くなっているのです。 ○坂谷部会長 ですから、川城先生、その3つのところには、文字が入っていませんけれども、そ の中間に拠点施設<NHO病院等>と、これも元の図は黄色なのです。その上に高度専門施設(多剤 耐性)、これも黄色なのです。それから、その左、拘束下治療施設、これも黄色なのです。 ○川城委員 そうですか。それが、結核病床という図なのですね。わかりました。 ○坂谷部会長 いかがでしょうか。この体制モデルに何か大きな間違いがあるとか、このように訂 正したほうがいいのではないかというようなご意見はないですか。加藤先生から以後何か変えたい という話はないですか。 ○加藤委員 先ほど申し上げましたけれども、特定機能病院をどのように使うかということが抜け ていたかと思ったのですけれども、おそらく、県に1つしかないというような所も多分あると思い ますので、そういった場合レベルから言ってどこかに位置付ける必要があると思いました。 ○坂谷部会長 保健所のほうから何かご意見はないですか。 ○丹野委員 皆様方のお話を聞いて、まさしくそのとおりかなと。実は昨年、新型インフルエンザ の関係でも、特定機能病院の先生方はやはり感染症は現実受けられないと。というのは、がんであ るとか心臓病、そういうかなりリスクの高い方を扱う病院だから、逆に排除してほしいというお話 が現実にはありました。ですから、陰圧病床を作ってそこというのは、なかなか難しいのかなとい う気はしております。  あとは、埼玉県の中でも川口保健所管内は、実は結核の病院が減りました。満床だったのですが 減ったというのは、先生がおっしゃったように呼吸器のドクターがいないということと、保険点数 の関係もあって、どんどん大変にはなるのに、病院側とすると抱える問題が大きすぎるということ が現実にありました。実際残った病院が、いま管内に20床あるのですが、そこもほぼ満床の状況 です。でも、そこは新型インフルエンザのときに何とか1床確保するということだったのですが、 インフルエンザと結核を考えたときに、やはり感染。逆にインフルエンザの患者さんを入れたこと によって、結核患者さんに感染させたら困るということで、そこはかなりきちんと1床だけは別の 状況で確保していただいたということはあります。  そのときに結核病院のほうでは、逆に自分の所の一般を、満床の場合には患者さんを移すような 体制を整えて対応しようということは考えていただきました。外国人の話も出ましたが、地域によ って外国人の方がいらっしゃると、別に偏見ということではなくて、わからないうちに行ったり来 たりされていると、知らないうちにまん延してしまうということは現実にはあります。それから、 医療体制が日本と外国でちょっと違うという部分で、外国の方は自国で治療したほうが楽という考 えもおありのようで、その辺の指導が大変難しい場合があります。  現在、当管内で減った分は、逆にちょっと遠い所にお願いして、現実には先ほど川城先生がお話 されたように、埼玉県の岩槻のほうまで入院させていた。そうすると、逆にそこもだんだんいっぱ いになってくると、「よその管内から来られると」という話もちょっとされて、保健師のほうは対 応に困っています。しかも、菌陽性者は3日以内に勧告ということがあると、その辺も苦労してい るところではあります。あと、結核を扱っている先生は先ほど腎透析の話とか、精神疾患、合併症 があるとどうしようかというので保健所に相談されるのですが、そこは何とかお願いをという形で、 病院と一緒にいろいろなところを探しているという状況で、実際に圏外ということもありました。  このような形で、開業の先生がまずは診てくださって、最近は結構菌検査もしてくださっていま すので、そこで塗抹陽性になると、一応、地域の病院に送っていただいて、できるだけ早くPCRを 確認して、PCR陰性であれば元の病院、先生方で大丈夫ですよというお話をさせていただいていま す。こういう体系ができればありがたいかなと、保健所としても思います。特定機能病院について は、理解を得るのはなかなか難しいかなと。それと開業の先生も、必ず例えば風邪とかインフルエ ンザでも、いま結構、結核菌の検査もしてくださるようになっていますので、その辺も浸透してい くことによって、先生方も少し安心されるのかなという気はしております。 ○坂谷部会長 細かい具体的な話になりますが、インフルエンザのときには問題なかったのですが、 結核に関して立派な地域の自治体病院などで感染症病床があるのに、結核の患者は通常は入れられ ませんね。それから、結核患者を入れるためにモデル病床を作ったのに、扱えるドクターやナース がいないために、ほかの所に転院して結核の患者は入れないとかいう話。それについて、どなたか 代表してご意見とかご議論をいただけませんか。 ○重藤委員 支援という矢印がこの表にありますね。いままで経験のない病床で、感染の問題が解 決されてそこで診るとしたら、相談というのではなくて、結核診療チームがいて、直接1例1例、 相談に乗るというぐらいの支援体制がないと無理ではないかなと思います。 ○菅沼委員 質問です。いまの話に関して、インターネットで相談というのではなくて、やはり患 者さんを診て、直接医師に指導をするというほうがよろしいのでしょうか。 ○重藤委員 それで済むような方なら、それでいいと思います。ただ、地元で治療をしているので、 あとから診て「こんな治療をしてくださって」という。 ○菅沼委員 悪い意味ですか。 ○重藤委員 そうです。標準的な治療をしているつもりでも、やはり外れた治療になっているとか、 用量が非常に少なくしてあったりとかいうこともありますから、やはり実際に患者さんを一度は診 て、医師と保健師と両方いて、退院後の服薬支援まで全部、一応、道筋を付けるというのも必要で はないかなと思います。慣れてこられれば、相談が必要なときだけ受けるということでいいと思う のですけれども。 ○坂谷部会長 重藤委員がおっしゃいましたのは、モデル病床は結核患者もそこに入れるというこ とで、入れられる病床として補助があって作ったのですが、実際出た場合に診れるドクターがおら ないというような話。そういうことに関しては、重藤先生がおっしゃったように支援、実際に人、 専門家が出かけていって、その病院で結核のことに関しては責任を持って治療をやるということで す。  それから、感染症病床のほうは、かなり大きな規模の総合病院辺りにあるのが普通で、診れるド クターは何とかいるのだけれども、法上であれは一般病床であるから結核患者が入れられない、と いう問題だと理解をしております。だから、これは法のほうで解決をしてということが必要なのか なと考えております。とにかくいろいろなカードがあるほうがいいだろうということになると思い ますけれども。 ○加藤委員 技術支援の問題で、重藤委員がおっしゃったように、現場に行くというのはあまり想 定していなかったのですが、去年の秋に視察をしたアメリカのニュージャージー州のグローバル TBセンターは、CDCの地域研修センターの1つになっていて、24時間いつでも、必要があれば医 療従事者の相談を受けるという体制をとっています。実際、年間数100件の相談がある中で、同じ 症例で毎週、相談を受けている症例もあるということなのです。ですから、いま飯沼委員がおっし ゃった部分を含めて、オンデマンドでいつでも相談を受ける体制を構築していく必要がだんだん出 てくるのではないかと思っています。 ○坂谷部会長 飯沼委員がおっしゃった結核を診るドクターは、呼吸器を専門とするドクターの中 のサブスペシャリティと、このようなお話です。日本の歴史的な状況はそれで来たのです。諸外国 にも例はないわけではないのですが、いまグローバルには感染症全体を扱うドクター、感染症ドク ターというのがあって、その中のサブスペシャリティとしてTBが得意であるという方向が普通で はなかろうかと、このように感じております。呼吸器も少ない、さらに結核を診るドクターは少な いということを解決するために、感染症を全般的に扱うドクターをつくって、それの1つのサブス ペシャリティとして結核にも強い、結核がいちばん強いというドクターを育てていくのがいいので はなかろうかと、私的には考えていたりするのです。 ○飯沼委員 何か良い方法はありますか。それは先生がお考えのように、いまずっと来ていますよ ね。そういうドクターを育てようと。ところが、現実的には結核を主たることでやろうというお医 者さんは、まずいないと思ったほうがいいです。だから、いちばん得意でなくてもいいけれども、 2番目か3番目でもいいから、そういう所に行ってほしいなということは、若い人たちにインパル スを送るのはいいと思いますが、本当にやろうという昔の内科の教授は、TBはみんな診れたので すからね、いまはそんな教授はほとんどいないわけだから、そこの差は大きいと思いますよ。 ○坂谷部会長 大きな問題であることは間違いないことです。今日何か具体的な方策を決めるとい うことではなくて、このことに関しては継続してみんなで考えていくということで。 ○深山委員 いま話題になっている感染症全般をやって、TBも診れる医者なのですが、私は第二 種感染症指定医療機関に数年前まで勤めていて、当然TBだけの偏見ではなくて、感染症に対する 偏見で、TBが特に大きいとも思わないのですね。SARSが発生したときには、もうSARS、SARSだっ たし、新型インフルのときにはそうだったのです。ただ、第二種医療指定機関の先生たちは、そう いうことを受け入れるのにあまり抵抗を示さないで、東京都の場合などは、SARSが出たらどこで 受け取りましょうかということは、あっという間にできたし、その機構を持って、新型インフルエ ンザのときも、どうぞ、どうぞという体系がとれましたので、是非まず第二種指定医療機関でTB が診れるように。一般医療機関よりずっと早いと思うのです。そこに感染症の専門医がいっぱいい るのですが、TBを診たことはあるけれども、そんな専門的には診ていないと。私も100例とか200 例ぐらいしか診ていないのですが、やはりずっと診るチャンスがなければ、能力も何も全然開発さ れないし、維持もされない。なので、まずここで診れるような機構を作るのが大事なのではないか なと思います。  SARSのときの逸話なのですが、ここの病院ではSARSを受け入れますよと。実際にSARS疑い例 が入ったのですが、そのときに患者さんに、「入りますよ。嫌だったら、別の病棟に移る手配をし ます」、あるいは「別の病院に行くことを手配します」という情報をお渡ししたのですが、どなた も動かれないのです。「ここは専門病院だから、ちゃんとやっているはずで、大丈夫です」と、入 院されている方はおっしゃってくださいました。だから、本当に私は第二種でというか、感染症専 門医がいっぱいいるような所で、どんどん診始めたらいいのではないかなと感じています。 ○坂谷部会長 後半でどっと出てまいりましたが、事務局にいまの議論を整理していただいて、次 回の部会で報告をお願いします。医療提供体制については、本部会で引き続き議論ができますよう に、議論の概要の最後に列挙された項目、資料1-1の最後の項目について、既存のデータがあるも のなどについて、次回、資料を用意していただくことにしたいと思います。  続きまして、議題(2)に移りたいと思います。「結核に関する特定感染症予防指針について」です。 水野さんのほうからご説明を願います。 ○水野専門官 資料2-1、「『結核に関する特定感染症予防指針』に関する検討の進め方について」 です。まず、1.概要を説明いたします。結核対策の基本的な枠組みとして、平成に入ってから、国 内の結核罹患率の減少の停滞、平成8年の罹患率の上昇傾向を受けて、平成11年6月に公衆衛生 審議会結核予防部会において、「21世紀に向けての結核対策(意見)」が取りまとめられました。 さらに、平成11年の結核緊急事態宣言を受けて、平成14年3月に本部会において、「結核対策の 包括的見直しに関する提言」が取りまとめられております。この提言において、国の基本指針、(結 核制圧5カ年計画)の策定の必要性が指摘されたことを受けて、平成16年に結核予防法を改正し、 国の基本指針の策定に関する条文を追加し、同年10月に当該規定に基づいて厚生科学審議会の意 見を踏まえ、「結核の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針」(旧指針)が策定されており ます。  感染症法においては、特に総合的に予防のために施策を推進する必要がある感染症に対しては、 原因の究明、発生の予防及びまん延の防止、医療の提供、研究開発の推進、国際的な連携その他当 該感染症に応じた予防の総合的な推進を図るための指針を策定することが、第11条に規定されて おります。平成18年に結核予防法が感染症法に統合されたために、感染症法施行規則第2条にお いて、結核を当該指針を作成する感染症に規定して、平成19年3月、厚生科学審議会の意見を踏 まえて、国、地方公共団体、医療関係者、民間団体等が連携して、取り組んでいくべき課題につい て、発生の予防及びまん延の防止、良質かつ適切な医療の提供、正しい知識の普及等の観点から、 新たな取り組みの方向性を示すことを目的とした「結核に関する特定感染症予防指針」(新指針) が、旧指針の内容を引き継ぐ形で策定されております。  新指針においては、下記のとおり、平成22年までの具体的な目標が設定されており、専門家等 の意見を聴きながら評価を行うこととされております。また、本指針については、結核の発生動向、 結核の治療などに関する科学的知見、本指針の進捗状況の評価などを勘案して、少なくとも5年ご とに再検討を加え、必要があると認めるときは変更していくこととされておりますから、本指針に 基づき施策の進捗状況について確認を行うとともに、本指針の見直しの必要について議論をしてい ただくことが必要であります。  具体的な目標については、喀痰塗抹陽性肺結核患者に関する直接服薬確認治療率を95%以上、 治療失敗・脱落率を5%以下、人口10万人対罹患率を18以下とされております。  次の頁で、2.今後の進め方についてですが、今後、本部会で5回〜8回程度、自治体ヒアリング 等により、各地域の結核対策の進捗状況について、現状の課題の把握を行った上で、指針に示され た項目毎に検討を行い、指針の見直しの方向性と具体的な目標について、本年中をめどとして議論 を取りまとめることとしてはどうかということについて審議いただきたいと思います。。イメージ としては、第1回議論は今回ですが、指針に関する検討、進め方などについて自由議論を行ってい ただき、次回以降は自治体ヒアリング、項目ごとの検討、指針の見直しの方向性と具体的目標の項 目について、それぞれ1回から2回程度検討し、本年中を目途として、最後に議論の取りまとめを 行うという進め方はどうかということです。  参考1として、指針における2010年(平成22年)までの具体的な目標について、現時点である データを挙げております。参考2に結核に関する特定感染症予防指針について、概要と構成と主な 内容が付けてあります。参考3には、感染症法に基づく基本指針等の体系図があります。参考4に、 感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律の抜粋と、法律施行規則の抜粋が載せ てあります。ご参照ください。参考資料1に、新指針の全文が載っておりますので、適宜ご参照く ださい。以上になります。 ○坂谷部会長 いまご説明がありましたように、我が国において結核の対策を進めていくに当たっ て、過去10年間、今年がその10年目に当たるわけですが、参考1、3頁に書かれているような数 値目標があるわけですね。こういう目標を立てて、それを到達するためにどうしたらいいかという ことで進めていくのがオーソドックスなやり方であると考えられます。これが今年まとめの年であ ると。それを検証して、次期5年、10年はどういう目標を立てていったらいいかということを、 我々は考えないといけないということなのです。  地域、特に大阪で同様な手法で、明確な目標を立てて、それを実現するのにどうしたらいいかと いうことを綿密に考えられて、達成してこられた事例があるわけです。今回は、特定感染症予防指 針の見直しについての議論の第1回目になりますので、各委員のご意見をフリーディスカッション の形でいただきたいと考えますが、それの叩き台になるといいますか、結研の下内参考人から、大 阪市における結核対策の例および米国のCDCの例についてご紹介をいただきます。それを踏まえて、 我々が国の目標としてどういうことを考えたらいいかと、こういう議論に進めていきたいと思うの です。下内参考人、大阪の事例をご披露いただきますように、どうぞよろしくお願いします。 ○下内参考人 資料2-2を説明いたします。過去を振り返ると、現在、人口10万対19という罹患 率ですが、40未満から半減するのに15年かかったと。それから、低まん延に近付けば近付くほど、 罹患率減少が鈍化するのではないかということで、10にいくには15年あるいは20年かかるとい う予測もあります。しかし、感染症対策というのは、しっかりと効果的対策をして、感染の連鎖を 断ち切れば、十分罹患率減少速度を促進できるということは、国際的にも理解されています。特に 我が国では小児結核が非常に少なくて、14歳以下は人口10万対0.55と低いので、さらに減少さ せる可能性もあります。ということで、今後とも各地域、疫学分析および対策の評価に基づいて、 対策を推進していくことは重要であると思います。  大阪市は戦後、全国が罹患率600ぐらいのときに、大阪は1,200という、住民の1、2%は結核 という時代がありましたから、過去の負の遺産を持っていました。1970年まではどんどん減った のですが、1980年代、1990年代というのは、全国が減っているときですが、全く横這いでした。 そのときは、いまから思えばなぜ何もしなかったのかというか、全然対策、モダナイゼーションが できていなかったと。いろいろなことがありまして、実際には市長宛、助役宛に島尾先生が手紙を 書いたところから始まりますが、それが助役に届きました。そして、対策を何とかしようというこ とで、2001年からの基本指針を森前所長が準備委員として作りました。私は2002年から7年間、 去年の3月まで、この対策の実施に当たることができましたので、報告します。  当時、1980年代、1990年代は、罹患率が人口10万対100、全国の3倍でしたが、2008年は50.6、 そして去年が概数値で49.8ということで、ぎりぎり9年目に成功しました。罹患率半減というの は難しいと思いましたが、やるべきことをやればできると。それから、乳幼児、4歳以下0を目指 していたのですが、患者さんが1,300人いるうち、14歳以下は何と2人。しかも、4歳以下は0と か1とか、非常に少なくなりました。その成功要因は、効果目標、英語でoutcomeというのは罹患 率というコントロールできないところですが、それを達成するためには事業で、英語ではinput、 throughput、outputといいますが、例えば培養検査把握しましょうとか、保健師が面会に来まし ょうとか、DOTSをしましょうと。それで、DOTSが実施できる率、それから治療成功率と。そうい う事業にいちばん近いところから評価はどんどん出てきますが、その経過を入力して、常に評価し て進捗状況を確認し、必要に応じて事業方針を修正してきたということに尽きます。実際に客観的 評価は非常に多くて24個ありますが、保健師が活動したことをコンピューターで、保健師とか事 務の方がそこで入力したものを大阪市では毎月、結核発生動向調査委員会、あるいは解析評価委員 会といいまして、そこに統計数値と、さらに個別の19歳以下の患者については事例報告があって、 なぜうつったか。15歳以下で大体感染源はわかりますが、例えば10年前に化学予防をしていなか った、中断したといった事例が挙がってきますと、もっと化学予防をしっかりしようなどというこ とで、非常に事例検討を重要視しました。それから、これは坂谷先生にも評価委員長になっていた だきましたが、年1回の評価委員会で外から来た先生方から厳しく助言いただくことが重要でした。  その実際の資料が4頁以降にあります。「STOP結核」作戦ということで、項目が5頁の適正な治 療、早期発見、予防・普及啓発、情報の収集・分析、そして6頁以降、細かく書かれております。 例えば7頁の下から2つ目、「適切な患者管理の実施」ということで、2週間以内に喀痰塗抹陽性 患者本人に面接を行う。これはいま3日以内になりました。治療開始時の塗抹・培養・感受性を確 実に把握する。  そして、8頁でDOTS。DOTSの中にはあいりんDOTSといって、あいりん地域におけるDOTS。ホー ムレスの場合は、2000年以前は治療中断率が30%以上でした。入院してどこかにいなくなるとい うのがごく普通でしたが、そのころは病院に任せっぱなしで何もしていなかった時代ですから当然 です。それを実際には早期退院をしていただいてDOTSをするということで、大阪社会センターで 実施しました。そして、院内感染対策を強化して、定期健診、接触者検診、10頁では特にあいり ん健診です。年間4,000人以上、(毎週)火曜日、月3回して、大体ここでも患者発見率は1%以 上です。100人すれば必ず1人見つかるということで、年間40〜50人、健診で見つかっておりま す。ですから、ホームレスの患者自体が200人ちょっとですから、かなりの割合で健診で見つかっ ています。  あとはBCGの接種率を97%にする。12頁では研修もしております。13頁では、先ほども言いま したように、とにかく情報はコンピューターに入れて、毎月フィードバックしなければいけないと。 それから、随時入力であると。以前は年1回ということでしたから、必ず抜けが出ます。それを四 半期ごと、月1回と、だんだんと厳しくしてきて、具体的に各区の数字が出てきますね。そのとき に、この数字が間違いか正しいかというのは聞かれますから、そうするとフィードバックして訂正 するということで、中断者が何人と。そういったことで、厳しく評価するために、入力については 98%ぐらいに上がりました。  15頁が具体的な数字です。2001年から短期、中期、長期目標として、それに達成しているかど うかを確認します。そして添付資料で18頁ぐらいになりますが、非常に細かくしています。これ が実際に先ほど言いました、11月ぐらいに年1回行われる外部評価委員会に提出する資料です。 これは数字は非常に細かいのですが、元の数字は夏ごろから事務と保健師でこれを全部作り上げて きました。例えば3段目のDOTS実施というのは、具体的には数字を挙げてみんなで計算して、現 在は死亡を除けば80%達成しているということでしておりますが、もちろんDOTSを実施するため の検討会も四半期ごとにしております。その下は、あいりん健診の実施率で、これは全部あいりん 関係で合計すると年間4,000人以上実施されています。こういったことで、大阪市では成功できま した。  次に、1頁に戻って米国CDCの結核対策指標ということです。米国は既に人口10万対4.2と罹 患率が下がっており、米国生まれの患者は2.0ですから、患者数減少ということで、かつて予算と か人員を削った時代がありました。そのときに1980年代半ばからエイズ、移民、多剤耐性菌によ って、院内感染増加で一挙に罹患率が上がったということがあり、米国CDCではもう一度それから 結核対策を強化しました。そのときに何百万ドルという負担があったので、それを思えば決して予 算は削ってはいけないということで、現在続けております。  昨年の夏に、日本でいうブロック講習会に当たりますが、各地域でCDCがしています、それの南 太平洋地域です。実際には米国の影響を受けている国々が集まっているのですが、その会議に出席 しました。そこで勉強したものを今日提示しますが、3日間ぐらいの会議で、医師、保健師、検査 技師の研修ですが、その前後に各指標をチェックします。指標が15項目もありまして、それを21 頁に付けています。添付資料3に1〜15まであります。特に日本から見て新しいところは、3番目 にContact Investigationとあります。この3、4というのは、潜在性結核感染症と認めた場合に、 治療開始率が88%を目指す。これは2015年までです。それから、治療完了率を79%ぐらいにしよ うと。ちなみに、大阪市で調べたところ、化学予防の完了率は80%ぐらいでしたから、このぐら いはいけるだろうと思いますが、それを指標にしていると。  そして、22頁の7番、Data Reportingとありますが、先ほど言いましたように、いくら良い評 価指標を作っても入力しないと意味がありませんので、ここは99で100%化を目指していると。  9番目はUniversal Genotypingといいまして、培養陽性菌を遺伝子分析すると。日本ではいま VNTRを使ってしており、結核研究所を中心に研修をしてしておりますが、これをやろうというこ とが出ました。  2頁に戻って、そういった両方を見て結論として、高まん延であった大阪市で対策が成功したの は、明確な目標を定めて、各事業の目標を達成したことである。例えば臨床家であれば、患者さん が来て治るということがもう立派な指標で、名医ということがわかるのですが、公衆衛生のほうは 過去の大阪市みたいに20年間全く成果が上がっていなくても、事業はあったわけですね。だから、 成果が上がっていなくて事業していたこと、その事業というのは意味があったのかと。そういうこ とから考えれば、結果が出なくても、公衆衛生のほうは法律があって予算があれば、それを消化す ればいいという考えもなり得るのです。そうではなくて、やはり結果を出さないと意味がないとい うのが結核対策の非常に重要なところですから、やはりそういったことを意識していくと。  ですから、アメリカでも低まん延に向かっていけば行くほど、これだけ指標を使っているのだか ら、日本も今後は同じように厳密に目標と指標を決めるべきではないかと。過去10年間、DOTSと かPZAはやってきましたが、これは大体飽和になってきましたから、アメリカのほうから言えば接 触者検診の強化、潜在結核感染者の治療、多剤耐性結核の患者管理・予防がいまは非常に問題とな っております。それから、地域ごとのハイリスクグループも、最近オランダ結核予防会の元所長の ブルという方に、あいりん、大阪に来ていただきましたが、もっと頑張れと。いまだに健診をしま すと1%見つかるのです。これだけ高まん延であれば、もっとレントゲンをしなさいということで、 レントゲンの集団健診はもう意味がないと言われていると思ったのですが、オランダでもそういう ハイリスクが見つかればどんどんやるのだということですから、もう古くなったと思われた手法も やはり要る所には要ると。  これからは日本では、先ほどありましたが外国人対策というのはもっと頑張るべきであると。そ れから、米国、オランダで実施されている、低まん延だからこそ菌遺伝子分析による感染経路解明 が重要になってくるということです。これは大体、保健師の疫学調査で見つかるのですが、例えば 堺市で最初関連がわからなかったのですが、3人の菌が一緒になって、その株を見ると駅前の飲み 屋だったということがわかったので、そこへ行ってその関係者をもっと調査したということですか ら、保健師の努力ではわからないところが本当に合致すれば、新しい感染経路に行って、新しいと ころで対策ができるということで、これは是非要ると言われました。そういったことを盛り込んで はどうかと。そうすれば、今後10年間で10万対10以下も可能であろうと。同時に、小児罹患も 0.2まで減少するであろうということで、これは一応、結核研究所内部で議論して、頑張れば可能 であると、10年間で減少も可能であるということを言われました。  最後に、3頁に掲げてあるのは、私がちょっと書いただけですから、全くの叩き台で、ゼロから 皆さんで議論していただいて、今後10年間、あるいは5年で中間評価が要ると思いますが、どう いった指標を作ってやれば減るだろうかということを議論していただければと思います。 ○坂谷部会長 日本の結核を減らしていかないといけない。そのためには、まず具体的な到達可能 な目標の項目を決めないといけない。それから、到達可能な数値を決めないといけない。それを実 現するための事業、戦略を考えなければいけないということです。いままでも何もやってこなかっ たわけではなくて、指針が既に出来上がっていて今年が5年目の検証の年になるのです。大阪市に たとえて言うと、国全体がまだ下内先生が行かれる前の状況にあるのではなかろうか、という感じ がするのです。本腰を入れて、いま言いました目標項目を設定し、数値を決定し、戦略を具体的に 考えるということを今日この場で決めるわけではないのですが、進めていこうではなかろうかとい うことなのです。  この件についての議論は3つに分けて、まず下内参考人からご紹介いただきました大阪の事例に ついて、ご質疑を受けたいと思います。2番目に、事務局からご提案のありました特定感染症予防 指針、事務局からのご提案は感染症予防指針に関する検討の進め方という提案ですが、それについ てのご意見。最後に、特定感染症予防指針の見直しや必要性や方向性に関する先生方の忌憚のない ご意見をいただくと。残りの時間で、こういう3つのことについてやりたいと思うのです。  まず、下内参考人からご紹介いただいた大阪の事例について、ご質問を適宜お願いしたいと思い ます。大阪は、下内先生のお力でうまいこといったと感じるわけですが、ご質問をお願いいたしま す。いかがでしょうか。項目はあれですが、いままでのやり方でも自然に減っていっているわけで すが、それで5年後、こういう数値になるだろうと。ですけれども、それを目標に掲げても意味が ないのですよね。だから、ある程度努力をして、自然に到達する数値をさらに下げることを目標に しないと意味がないわけです。それから、現状の半分であるとか、数値の設定の仕方のこつという か、下内先生、何かありますか。 ○下内参考人 最初に掲げたように、過去、半減に15年かかったと。ですから、今後、半減する のに10年から20年ぐらいの幅があるのですが、頑張れば10年は可能であろうという専門家の意 見です。その頑張ればというところがミソですが、頑張るというところは、先ほど言いましたよう にDOTSだけでなくて、接触者検診と化学予防です。それと、まだまだ広がっていませんが、菌株 を全部同定して、感染経路というのはいままでは空気感染なので、濃厚接触はわかったはずなので すが、例えば最近問題になったインターネットカフェとか、大阪ではパチンコ屋が多いのですが、 そういう特定の地域があってもなかなか入っていけません。ただ、いまですと、わからなかったの が同じ人が同じ所で使った、あるいはそこのインターネットカフェに行って、そこの人たちの従業 員の健診とか、環境をよくするとか、それは新しいことです。  基本的には、私はいまやっているDOTSが十分できていれば、まず問題ないと思うのです。それ から、少しずれていますが、多剤耐性というのは現場では非常に振り回されていますので、これを しっかりとできれば。多剤耐性というのは、必ずインフェクション・コントロール、感染制御です から、これは世界的に、途上国でも多剤耐性の、インフェクション・コントロールを言い出してい ます。そうすると、先ほど院内感染を怖がるという話がありましたが、大阪では毎年、大体200あ る病院の3分の1の病院で結核患者が発生しているのです。だから、別に外から入れなくても自分 の所で患者が発生しているのです。そこはもっとしないと、看護師の罹患率が3倍であると。そこ と比べても、院内感染から始めて、まだ十分できていないところがあるので、そこを強化していけ ば10には下がると。ですから、新しい対策をどんどんやっていかないと、10年で10に下げると いうのは難しいのではないかと思うのです。だから、評価を拡大しないといけないという考えです。 ○坂谷部会長 委員の方々、いかがでしょうか。 ○菅沼委員 いまのことで、あいりん地区などを一生懸命やってらっしゃるというのはわかったの ですが、A県ほどではないとは思うのですが、外国人も結構入ってきておられると思うので、それ に対しては具体的にどのようにやっていらっしゃるのですか。 ○下内参考人 外国人は、調査は2年間して、20代の20%です。大阪の場合はほとんどが中国、 韓国の方です。ただ、その中には多剤耐性の方もおられるのですね。そして、黙って帰ってしまう。 だから、いま問題になっているのは治療中断が起こり得ると。それから、ベトナムなどから来られ た方が、来られて10月に健診がある。それまでに入国して発病してしまったということで、入国 時健診がいるのではないか。日本語学校がいちばん多いので、これはもう大体健診していただいて いて、毎年何人か見つかっていますね。  2011年から新しい目標を作りますので、それをいま準備していて、その中では徹底的に外国人 が来る学校と職場に対しては、健康教育と集団定期健診をしてくださいと。それから、先ほどあり ましたが、通訳です。通訳サービスをもっと強化しなければいけないということで、いま原案は作 っています。 ○坂谷部会長 ほかの方はいかがでしょうか。大阪のモデルを叩き台にして、国も同様の方向性、 目標をしっかり定め、それからそれを実現するための戦略を考え作業していこうと、こういうこと です。戦略も、いま外国人の結核対策が挙げられましたが、戦略の中の何番目ぐらいに位置するか ということも考えないといけないと思うのですね。だから、効果目標を、まず早期発見、それでそ れを完全に治療していくのを一義に置くのか。そうではなくて、潜在性の人をたくさん早く見つけ て、発病を予防するのを主にしてやっていくかとか、そういうことを考えていかないといけないの だろうと思います。もちろん、それで最終的な数値を何に設定するかということになるのです。  下内先生へのご質問はいま出たものとして、特定感染症予防指針に関する議論の進め方にいきま す。水野さんからご説明があったわけですが、それについてのご意見はありますか。よろしくお願 いします。 ○加藤委員 前回の指針の策定に際しても、資料2-1の最初にあるとおり、包括的見直し案に関す る提言ということで、全体をよく見た上で方向は決められたわけです。今後の課題として、特に罹 患率が国全体として20を切るということになると、いままでのやり方では根本的に不十分な部分 が当然出てきますから、その辺については十分議論して、全体の方向をもう一度、確認するという か、検討し直す時期にあるのではないかなと思います。  ざっと考えただけで、低まん延に関して非常に重要なポイントとしては、1つは中央政府の関与 といいますか、罹患率が低くなればなるほど、中央が頑張らなければいけない。これはアメリカと かイギリスの対策を見てくると、技術的にも財政的にも、地方だけでは支えきれない問題がありま す。先ほどからいろいろ議論がありますように、技術的な適正性,すなわち,専門家をどうやって 確保するか、という問題が非常に大きいわけです。  低まん延に向けた対策の見直しはいろいろ考えなければいけないことがあって、患者発見につい ても定期健康診断をどうするかといった、感染症法、あるいは今回改正になった労安法の健診対策、 今後、学校健診のことも検討にあるのですが、その辺はもう一旦考える必要があるのかなと思いま す。接触検診の一層の充実,これはいまお話があった潜在性結核感染症に対する治療の拡大も検討 事項ですし、何よりも有症状者が早く見つかるというのが大事ですので、ここはより一層、充実し なければいけない。  BCGについても、副反応の報告について小児科の先生たちが今まとめられていて、少し増えてい るのではないかという疑いがあり、その辺も踏まえてしっかりと検討する必要があります。DOTS については、当然、多剤耐性を防止するために必要ですし、ハイリスクの対策として必要です。  それから、先ほどから議論している医療提供体制も大事なことですし、新たな対策として外国人 の問題。それから、いまお話があった分析疫学的な研究だけではなくて、薬剤耐性についても含め た病原体サーベイランスは、先進諸国の多くの所で確立されているところですから、そういったこ とも視野に入れて進める必要があります。以前にも議論があった入院勧告に従わない患者、感染性 患者の対応。さらに、これからいろいろ新しい技術が入ってきますから、積極的に導入という方向 で、少し示したらといったことも考えます。  指標については、技術的にいろいろ問題があって、将来予測というのは非常に難しいものです。 特に今後は外国人の流入が罹患率に影響してくると思いますので、そういった観点から適正な数値 を決めるというのが意外と簡単でない。それから、地域差が非常にありますから、実際、ある程度 国としての目標を作った上で、地方に下ろして、地方は今度、各都道府県の予防計画を策定してい くことになります。そういったことも配慮した上で、どのような指標を選ぶかは大きな課題です。 実は指標については、私どもも厚生科学研究の課題として研究をしている途中ですし、全国保健所 長会のほうでも、検討をされています。その際には指標を作った上で、現場に下ろして確認すると いう検証作業をしていますので、技術的にもしっかりしたものを作るには、ある程度時間が必要と いったことも考える必要があります。  もう1つ、非常に大事なのは、指標を作ってどう使うかということなのです。大阪の場合は定期 的にチェックされる機構があったというのが非常に大事で、実際に作っても5年終わって「はい、 できました」というのでは意味がなくて、定期的にちゃんとレビューする機会をどうやって確保す るかが必要です。アイディアの1つとして、いま厚生労働省が各都道府県に対して監査を行ってい ます。これはどちらかというと、法律に基づく部分の監査だと思うのですが、そういったときにこ ういった技術面に関することも各指導の形でできるかどうかということを、少し検討していただけ ればということを思っている次第です。 ○坂谷部会長 おまとめいただいたのですが、現実に平成16年10月に定められた指針があるわけ です。それを結果として、今年が最終年度ですが、3頁に載っているような数値が出ているわけで す。いま加藤先生がおっしゃったように、それを評価をしてやってこなければならなかったのを、 最終年度に「えいやっ」ということで、数値を見ていただくともうちょっとというところで止まっ ているわけです。引き続いて新バージョンの結核に関する特定感染症予防指針を定めようというこ とについては、ご異論がないだろうと思います。  その項目として何を上げるべきか。数値として、どういう数値を上げるべきか。それを実現する ために、どんな戦略をとるか。何をしていかないといけないか。治療の面、予防の面、調査の面、 諸々のことを今年1年しっかり考えていこうということなのです。こういうやり方について、ご意 見を賜りたいと思います。フリーのディスカッション、関係することすべてで構いません。何でも ご意見をいただきたいと思います。  例えば外国人結核の重みというか、罹患率が5以下に下がったような国では、逆に流入外国人の 結核の問題というのは非常に比重が重たいですね。ところが、日本ではまだ19までになっていま すが、20に近いような所では、その比率としてはそんなに重いものではないかもしれませんね。 ということでありますから、カンカンになって外国人結核の問題に取り組むべきなのか、それより ほかにすべきことがあるのではなかろうかとか、そういうことですね。ということで、こういう点 も大事ではなかろうかと。疫学研究のこと、各委員からご意見がありました。やりっぱなしではな くて、できたら5年間、最後に検証するだけでなくて、年々評価委員会を開いて、今年はここまで 行った、ですけれども、ちょっと歩みが遅いなどということで、検証もしていかないといけないの ではなかろうかというご意見などがあるのですが、いかがでしょうか。こういう方向性、こういう ことも大事でなかろうかということ。菅沼先生、何かご意見がありますか。 ○菅沼委員 検証などに関してはちょっと、現場にはいないのでわからないのですが、一般的な印 象から見ると、日本は確かに昔、感染した高齢者の方々の発病が多いということで、それは絶対押 さえるべき大事なことなのです。やはり東南アジアなどからいらした方から移るというケースをよ く耳にして、中国の方を雇った途端に、その方が結核だということがわかったという会社も知って おります。そちらのほうを頑張って、まずブロックするのも大事ではないかなという気がします。 日本語学校などの発病とかもたくさんニュースになっておりますので、そちらをブロックするには どうしたらいいかなと、いつもつらつらとは考えているのですが、何かどんどん入ってきて、なか なかうまくいかない。ただ、考えてみればアメリカも、非常にたくさんの移民や留学生や働きに来 る方も同じような状態なのに、低まん延まで持っていったということで、私たちが留学などの証明 書を書くときに、結核などの感染症に対してちゃんとチェックをしてから入ってこいというような、 非常にきっちりした書類をたくさん書かされたりしますので、やればできるのではないかなという 気はしております。ただ、それは国を挙げてとか、それぞれの地域とか、いろいろと工夫をしなが らやっていっていただかなければいけないかなと思っておりますけれども。 ○坂谷部会長 外国人結核の話が続いていますが、日本の結核罹患率が某かあるわけです。外国人 結核の部分が何パーセント、それを底上げしているかということから計算していかないといけない と思います。 ○菅沼委員 そうしますと、やはり高齢者の比率が、いまいちばん大きいわけですね。 ○坂谷部会長 比率としてはそうですね。昔、感染した人が、いま発症しているわけで、それを発 病した時点で見つけて退治するのか、予防的にドルマントである人を見つけて何か対応するのかと か、そういうことを考えていかないといけないということだと思います。 ○菅沼委員 港区などで見ますと、区の健診がしっかり毎年やられており、費用は只ですので、そ の受診率は非常にいいと思うのです。ただ、施設に入られているとか、そこまでいった方の発病な ども、しっかり施設ごとに抑えるといいかなと思うのですが、それがどのぐらいのレベルでなされ ているか、ちょっと把握できていないので、はっきりわからないのですが、高齢者から出る結核を 抑えるにはやはりそれも要るのかなと思います。 ○坂谷部会長 高齢者結核の問題は、確かに重たいというか、大きな部分を占めると思います。外 国人結核の問題ですが、アメリカの場合には私たちの先輩たちが留学するときに、必ず1枚、胸部 のレントゲンを引っ提げていかないといけない時代があって、菌陰性であろうが、もちろん活動性 はそうですが、影があるとはねられたと。入れないという水際作戦をとられた時代があって、それ が非常に功を奏したらしいという話は聞いたことがあります。ですけれども、それは今はもうやっ たらいけないので、アメリカではもういまはそういうことはしないわけですけれども。 ○菅沼委員 ただ、かなりは書かせられますね。 ○坂谷委員 はい。ということも、日本もそういうようにするのかとか、これは戦略の問題ですか ら、そういうことも考えていかないといけないということなのです。ですから、どういう項目を採 用するか、対策の軽重をどのようにするか、それは今日、意見が出尽くしはしないと思いますが、 継続してご意見をいただいて、事務局で取りまとめて、数値目標の立て方、その戦略でどういうも のを戦略として取り入れるか。具体的にそのためにどういうことをしないといけないのか。そうい うことを続けて調査と議論をしていくべきだと、このように考えます。ほかにいかがでしょうか。 フリーディスカッションなのですが、とにかく国家目標をちゃんと定めましょう。具体的にどうい うことをやっていきましょうか。食い付きやすい項目がありますが、実はみんなが気が付かないけ れども、もっと大事な点がありますよと、そういう話だと思うのですけれども。 ○下内参考人 1点だけ、CDCのほうは、国家目標と地方目標と、両方分けているみたいです。例 えばいちばん下のハイリスクは、むしろ高齢者で要らない所もあると思うのですね。ですから、こ れは国の基本的な指針とか、地方のどっちのというのは、両方要ると思うのです。 ○坂谷部会長 それは自明のことというか、当たり前のこととして、言わなかったのですが、大目 標は国が立てると。実際は各地域が独自性もありますし、具体的には地域が地域の目標を立てて、 それについて地域特性のある戦略を立ててやると、こういうことです。この構図は崩れないと思う のです。しかし、地域によっては思いきり少なくなっているから、もう地方は手を引くと、国が直 接関与してくれというご意見が出てくるかもしれませんね。そういうことです。 ○菅沼委員 議題(1)に関する提案ということでも、よろしいでしょうか。本当に若い医師が専門 を選ぶときに、感染症が少ないということは確かだと思います。それより前に、内科医になる医師 のほうが減ってきていると思うのですね。昔は皮膚科、眼科、耳鼻科は女性医師が行くような、子 育てと両立できるかなという科として存在していた時期があるのですが、いま男性医師がつらいと ころは嫌だということで、結構そちらに流れたりしております。これは本当に由々しきことだと思 いますので、入院を受け入れるのは医者がいないし困るということもあるのですが、やはり入院ベ ッドはユニットで陰圧の所を、できるだけ地域の病院に増やしたいという気はしております。そう いう結核患者を受け入れた場合には、保険点数を上げると。難しいとは思うのですが、そういうこ とを働きかける。それから、長期入院で3カ月の枠がありますが、やはりそれがあると、どんどん 採算が合わなくなって、中核病院自体などはどんどん閉鎖をしていく方向に行くと思うので、結核 だけは枠を外すとか、ちょっと延ばすなどということを働きかけるとか、そういうことができない かなというのが提案です。 ○坂谷部会長 後半の部分については、上田局長から最初のご挨拶にありましたように、今回の診 療報酬改正で、期間の制限は撤廃されましたので、看護基準だけで点数をいただけることになりま した。ですから、結核病棟に関しては、それでいいと思うのです。ですけれども、一般病棟で。 ○菅沼委員 結核を受け入れた場合には点数を上げるという。例えば糖尿病のフットケアをやった だけで、点数が上がるのですね。看護師がそのための研修をやれば、その看護師がいる病院は点数 が上がっております。講習会をやると、いろいろな地方から、新幹線に乗ったりしてでもやってき ます。でも、糖尿病フットケアなんかよりも、結核を受け入れてくれたほうがよっぽど大事かなと 思いますので、学会も含めて是非頑張っていただきたいと思います。 ○坂谷部会長 記録にとどめておいていただきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。 ○川城委員 議題を戻して(2)の議論の進め方ということです。いまここで議題(2)に関して、いく つかの話題が出ました。例えば外国人結核、高齢者というのも大切ですが、考え落としがないよう に。先生がかなり総括的に最初にお話されたけれども、全体をルックスルーする、いまの日本にお いて何が課題なのだということを、専門的見地からピックアップしていただいて、それを提示して いただかないと、ここでこういうことが問題だね、こういうことが問題だねと局所的なことだけを 取り上げていても、考え落としとか、総括的な視点が落ちてしまうのではないかというのが、ちょ っと議論を聞いていて心配だったのです。是非、そういう意味での総括的な視点からの現時点の日 本における課題を、網羅的に一度はピックアップして、その中でいろいろ順位を付けてとか、私は 順番、やり方はそんなことかなと思いましたので、ちょっと最後に言わせていただきました。 ○坂谷部会長 そのとおりだと思います。事務局で取りまとめていただいて、叩き台を作っていた だくということが必要なのだと思うのです。叩き台の叩き台というか、骨子についてはやはり加藤 先生。目標の項目、それから数値。数値に関しては慎重にやっていかないといけないと思います。 それから、戦略について。戦略の軽重について、みんなで議論するための叩き台を事務局と加藤先 生で用意していただく、ということになろうかと思います。ほかにご意見はありませんか。事務局 で、いまの議論を整理の上に、次回の部会でご報告いただく、ご提案をいただくということにした いと思います。その他の議事について、事務局からご報告をいただきます。 ○水野専門官 参考資料2です。前回の部会で、活動性分類等についてのご意見をいただきました。 それに基づいて、感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律の施行規則の一部を 改正する省令が、平成22年1月に公布されました。  また、参考資料3ですが、同様に「活動性分類等について」の通知も行っております。  参考資料4ですが、もう1つの通知として、「結核登録票に登録されている者の病状把握の適正 な実施について」も行っております。  参考資料5ですが、QFT検査の不適正な実施事例がありましたので、それについて対応等しまし た。こちらに報告させていただきます。  参考資料6ですが、中学校における結核集団感染事例の発生がありました。それを踏まえて、結 核の早期発見および早期診断に関する関係機関への情報提供について、引き続き努めていただくよ う、改めて周知しております。報告は以上です。 ○坂谷部会長 ただいまの事務局からのご報告について、何かご意見はありますでしょうか。QFT というのは固有名詞というか、営業上の名前で、一般的にはIGRA(interferon gamma release assay) と、このごろグローバルにはIGRAという検査に統一されております。報告について、ご意見はあ りませんか。本日の議題は、これですべて終えることができました。事務局から、今後のことにつ いて何か伝達事項がありましたら、よろしくお願いします。 ○水野専門官 今後の部会の日時、議題等については、追って事務局より連絡させていただきます。 ○坂谷部会長 時間がまいりました。これで本日の部会は閉会にいたしたいと思います。本日は、 皆様方お忙しい中、誠にありがとうございました。充実した会だったと思います。 (照会先) 厚生労働省健康局結核感染症課 TEL:03-5253-1111(内線2931、2381)