10/03/08 平成21年度第4回雇用政策研究会議事録 第4回 雇用政策研究会(議事録)                       1 開催日時及び場所   開催日時:平成22年3月8日(月) 10時から12時まで   開催場所:厚生労働省・省議室(9階) 2 出席者   委 員:阿部委員、加藤委員、玄田委員、駒村委員、佐藤委員、白木委員、諏訪委員、 清家委員、鶴委員、橋本委員、樋口委員、宮本委員、山川委員 事務局:細川厚生労働副大臣、太田厚生労働審議官、森山職業安定局長、山田職業安定 局次長、前田労働基準局総務課長、尾田職業能力開発局総務課長補佐、吉本雇 用均等・児童家庭局雇用均等政策課長、伊奈川社会保障担当参事官、酒光労働 政策担当参事官、宮川職業安定局総務課長、小川雇用政策課長、里見雇用政策 課企画官、平嶋雇用政策課長補佐  他 ○樋口座長 定刻ですので、ただいまより第4回「雇用政策研究会」を開催いたします。皆 様におかれましては、ご多忙の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。ま ず、有期労働契約研究会の議論がだいぶ進んできているようですので、その状況および最低 賃金の現状について、労働基準局から説明をお願いいたします。 ○前田労働基準局総務課長 労働基準局総務課長の前田でございます。まず、有期労働契約 研究会の議論の状況ですが、資料1-1および資料1-2です。資料1-1ですが、有期労働契約 の在り方について、その政策の方向性を研究するために、昨年2月から学識経験者の方の参 集を求めて検討を行っているところです。参集者については8名の方で、この雇用政策研究 会の委員の中でも、阿部先生、橋本先生、山川先生に有期の研究会もお願いしているところ です。  検討の経過ですが、昨年2月から9月にかけて、労使からのヒアリング、あるいは外国法 制などの検討を行うとともに、有期労働契約に係る実態調査を行いました。そういった実態 を踏まえて、昨年10月から論点ごとにご議論いただいているところで、主な論点として、 いわゆる入口規制、契約締結時の規制をどうするか。出口の所で、更新・雇止めについての 問題。それから、ちょうどその間ということで、均衡待遇や正社員の転換などといった論点 ごとにご議論をいただいているところです。  当面の予定ですが、先月24日に開催した研究会で、これまでの議論をまとめた中間取り まとめの(案)を提示をして、ご議論をいただいたところです。本日お配りしているものは、 2月24日の研究会に提示された中間取りまとめ(案)ということです。これについては、 当日の研究会で委員の方から表現ぶりなどについて、いくつかご意見をいただいており、そ ういったことはまだ最終的に反映されていない状況です。前回の研究会の意見も反映して、 今後、最終的に中間取りまとめを確定するということです。ですので、恐縮ですが、これは あくまで2月24日の研究会に提示されたものということで、最終的な中間取りまとめ(案) として確定しているものではないです。今後、前回の議論を踏まえて確定した上で、労使団 体からヒアリングを行い、さらにそれも踏まえて研究を深めて、今年の夏ごろまでに最終取 りまとめを行いたいと考えています。その後、労働政策審議会で、労使を含めてご議論をい ただくように考えております。  中身ですが、2月24日の研究会に提出された「中間取りまとめ(案)」のポイントです。 まず、総論として<現状と課題>ですが、有期契約労働者については、労使の多様なニーズ により増加しているということで、企業にとっては需要変動等の場合の雇用調整を弾力的に 行う、あるいは人件費を削減するという目的、さらには、社内で得ることが困難な専門的な 人材を必要とされる期間受け入れるといったニーズがあろうかと思います。また、労働者の ほうでは、例えばパートの場合に典型的に見られるように、勤務地とか責任度合の点で、家 庭責任の状況など、自らの都合に合った多様な働き方の選択肢の1つとして使われていると いうことで、多様なニーズにより増加しており、またその内容も多様であるということです。 数的に申し上げると、昭和60年には有期の方が437万人であったわけですが、平成21年 には751万人ということで、量的にもかなり増えてきているということです。  一方、有期労働契約者について、実態調査の結果などを見ても、雇止めを行ったことがな いのが7割ぐらいありますし、契約更新回数が10回以上、あるいは勤続年数が10年を超 えるといった事業所も1割程度見られるということで、単に1次的、2次的でないような仕 事についても、有期労働契約の反復更新で対応している所も見られるということです。また、 特に一昨年以降の雇用情勢の急激な悪化の中で、いわゆる非正規など、雇用の不安の問題が あると。それから、労働条件についても、一般的には正社員よりも低位にあるということで、 待遇等の格差があるという課題があるということです。さらに、本来、正社員を希望しなが ら、やむを得ず有期労働契約で働いておられるような方については、働く意欲の向上、ある いは職業能力形成の面での取組みが不十分であるといった課題があるということです。基本 的には、こういった雇用の不安定さ、待遇等の格差、あるいは職業能力形成不十分というこ とに対応するために、雇用安定、あるいは公正な待遇等を確保するために、有期労働契約法 制の整備を含めて、有期労働契約のルールの在り方を検討し、今後その方向性を示すことが 課題であろうということです。  次に、<検討に当たっての基本的な考え方等>ですが、我が国の労働市場、あるいは雇用 システムが公正を確保しつつ機能するためのルール作りということで、先ほど来申し上げて おりますように、労働者の能力発揮等を図るために、雇用の安定、待遇の公正さ等を確保す ることが必要だろうと。企業側からは、需要変動等に伴うリスクへの対応、あるいは労働市 場における柔軟性への要請があるわけですが、そのリスクを専ら有期契約労働者の側に負わ せることは、公正との観点から問題だろうということで、労使間のリスク配分の公正さにも 配慮しつつ検討することが必要だろうということです。  「有期契約労働者の多様な実態を踏まえ対応することが必要」ということで、この研究会 においても実態調査を行ったわけですが、4つの職務タイプに区分して調査を行っておりま す。1つが正社員同様職務型、2つ目が高度技能活用型、3つ目が別職務・同水準型、4つ 目が軽易職務型ということで、4つのタイプに区分して、実態や意識などを調査したわけで すが、それぞれのタイプによってもかなり実態が異なっているということで、多様な実態を 踏まえた対応が必要だろうということです。  次は「労働契約の原則」ということで、労働契約法第3条の中で、5つの原則的な考え方 が規定されております。まず、第1項で労使が対等な立場における合意に基づいて締結また は変更すべきという労使対等。第2項で就業実態に応じて均衡を考慮しつつ、契約を締結ま たは変更すべきという均衡考慮。第3項で、仕事と生活の調和にも配慮しつつ、締結または 変更すべきという仕事と生活の調和。第4項で、契約を遵守し、信義に従い誠実に権利を行 使し、義務を履行しなければならないということで、契約遵守・信義誠実の原則。第5項で、 労働契約に基づく権利を濫用することがあってはならないという権利濫用の防止。こういっ た原則があるわけですが、こういった原則的な考え方をより機能するよう発展させることが 必要だろう。  さらに、検討するに当たって、1つは労使当事者の予測可能性の向上を旨として、紛争の 予防、迅速な解決に期することが必要だろうということ。それから、「施策の相互関係に留 意しつつ」ということで、これはいわゆる契約の締結時点である入口、それから更新・雇止 めの時点である出口、それから契約の途中にある処遇面、それぞれの局面における施策が考 えられるわけですが、それらの相互関係にも留意しながら、施策のあり方、組合せ等を検討 することが必要だろうということです。  次に、各論1、契約締結時および更新・雇止めです。これらの入口規制と出口規制はかな り連続的な部分もあるということで、セットでご議論いただくことが必要だろうということ です。(1)「締結事由の規制」は、有期労働契約の締結事由を規制するかどうかという論点で すが、例えばフランスの法制の場合には、労働法典において「労働契約は期間の定めなく締 結される」と規定しており、いわゆる無期限則があるわけです。我が国の現行法制において は、そういった無期労働契約を原則とする考え方は、現在は採用されていないということで す。  一方で、そういう中で長期雇用を補完するものとして、有期労働契約が活用されており、 雇用の中心は長期雇用であるという中で、そもそも締結事由の規制を導入することについて、 その合理性等について議論を尽くすことが必要だろうということです。仮に締結事由を規制 する場合には、その事由を具体的に列挙する、あるいは合理的な理由がある場合に限るとい ったことが考えられるわけです。そういった規制のやり方で、現実の紛争の発生に照らして 予測可能性が確保されるかどうか、それから迅速な解決に資するかということ。さらに、新 規雇用の抑制、あるいは労使のニーズをどう考えるかといったことについても十分考慮する 必要があろうということです。  次に(2)「更新回数・利用可能期間に係るルール」です。これについては、実際の実態を見 るとかなり更新を繰り返して、更新回数が相当に上っている、あるいは勤続年数が長期にな っているという例もあるわけですが、そういう場合に一定の年数、あるいは一定の更新回数 を超えた場合には、無期労働契約との公平、有期労働契約を濫用防止するという観点、ある いは雇用の安定、能力形成の促進、紛争防止の観点から、一定の上限を設定することが考え られる。この上限の設定の効果については、さまざまな選択肢が考えられるということで、 例えば一定の回数の更新を繰り返した場合、あるいは一定以上の期間継続して雇用した場合 に、無期労働契約とみなす、あるいは無期労働契約への変更の申込みがあったものとみなす、 あるいは無期労働契約の変更の申込み義務を使用者に義務付けるといったこと。さらには、 解雇権濫用法理と同様のルールが適用されるものとするといった、さまざまな選択肢が考え られるわけですが、いずれにしても一定の上限を設けるというのが1つ考えられることです。  ただ、これについては、一定の上限が更新回数とか利用している期間で、客観的な数字で 決められるということで、そこは明確で、労使双方にとっての予測可能性は非常に高くなる ということです。一方で、ある区切り、上限を設けた場合に、その手前で雇止めされるとい った副作用をもたらすことがあって、そういうことにも留意が必要だろうということです。  (3)ですが、「解雇権濫用法理の類推適用」です。これについては、有期労働契約が反復更 新を重ねたあとの雇止めについては、一定の場合について判例法理により、その雇止めに無 期労働契約における解雇について形成された解雇権濫用法理が類推適用されて、客観的理由 を欠き社会的に相当と認められない雇止めの場合には、その更新拒絶の効力が否定されて更 新されたものと扱われるという雇止め法理が、判例法理においては確立しているということ です。これはかなり定着しているということで、それを法律で明確化してルール化するのが 1つ考えられるということです。その場合には、個々の事案に応じた妥当な処理が可能とな るということではありますが、一方でその具体的な当てはめについては、個別の事案ごとに、 客観的な要素だけではなくて、使用者側の言動とか期待、認識など、労使の主観的な対応な ども勘案して、最終的に個々の事案ごとに裁判所で判断されるということで、労使にとって の予測可能性は欠ける面があり、そういうことをいかに補足するかに留意が必要であるとい うことです。  次の頁に移って、各論2、「均衡待遇及び正社員への転換等」です。特に公正な待遇の実 現ということから、均衡待遇が1つの課題ですが、その場合にパートタイム労働法を参考に して、正社員と同視し得る場合には、厳格な均等待遇、あるいは差別的取扱いの禁止としつ つ、その他の有期労働契約者についても、正社員との均衡を考慮しつつ待遇を決定する、あ るいはその待遇についての説明責任を課すという仕組みが、多様な労働者を対象とすること ができ、また実情に即した対応が可能になるのではないかということです。一方で、EU諸 国のように差別禁止のみという形になると、特に職務給体系となっておらない我が国におい て、その判断に困難を来すのではないかという懸念が示されたということです。  それから、<正社員への転換等>ということで、特に労働者の雇用の安定、あるいは能力 形成の観点から、正社員への転換の措置を義務付ける、あるいは正社員への転換を進めるた めに、転換制度導入のために何らかのインセンティブを付与するという、さまざまな選択肢 が考えられるということです。正社員への転換という場合には、現在の正社員の待遇そのま までは処遇がかなり格差があるということで、ハードルが高いということから、一方、職種 や勤務地が限定されていることを志向するような労働者もあるということで、まず無期契約 にしつつ、勤務地限定、あるいは職種限定など、さまざま多様な雇用モデルの提供も視野に 入れることが必要だろうということです。  各論3、「その他の課題」です。1つは、いま有期労働契約の締結・更新および雇止めに関 する基準ということで、厚生労働大臣の告示がありました。その告示には、有期労働契約の 締結に際して、更新の有無を明示しなければならない、あるいは更新する場合があると明示 したときには、その判断基準を明示しなければならないとされております。これについては、 特に判断基準の明示が、実態調査などでも必ずしも十分守られておらないところがあり、こ れについては告示から法律に格上げすることによって、規範性を高めるというのが1つの方 向性としてあるのではないかということです。  もう1つ、契約期間については、当然、契約締結時に明示すべきということで、労働基準 法上の義務が係るわけですが、契約期間の明示がない場合に、民事的にどういう効果を与え るかということです。1つは、契約期間の明示がなかった場合に、無期労働契約とみなす、 あるいは無期労働契約と推定する、あるいは無期労働契約の申込み義務を課すといった一定 の効果を与えることも検討に値するのではないかということです。  各論3の2つ目、雇止め予告についても、大臣告示で雇止めの際の予告、一定以上の回数、 あるいは期間を超えて更新された場合に、雇止め予告を行うことを義務付けているわけです。 これについても、その対象を含め見直した上で、法律に基づくものにするのが1つ考えられ るのではないかということです。それに関連する生活安定等の措置ということで、雇止め予 告の検討に合わせて、現在、解雇予告の場合には、予告に代えて予告手当があるわけですが、 雇止め予告についても、そういう手当を合わせて導入することも考えられるということ。フ ランスにおいては、雇止めの際に、一定の手当の支払いを事業主に求めることになっており、 そういった点についても、さらに研究が必要であろうということです。  最後に、契約期間の上限の問題ですが、平成15年の労働基準法改正において、有期労働 契約について、1回の契約期間の上限が原則1年から3年に延長されたということです。こ れについて、今回、実態調査などで見た場合に、1年を超える有期契約の利用は総じて低調 であったということ。特に高度の専門的知識等を有する者については、例外的に3年を超え るものもあるわけですが、それについても非常に利用は少ない状況にあるということです。 また、研究会で行った労使からのヒアリングにおいても、この上限を延長することについて、 具体的なニーズは必ずしも把握されなかったということです。そういうことで、基本的には 契約期間の上限については、いまの原則3年を基本としつつ、検討していくのが1つの方法 ということです。  暫定措置は、この平成15年の法改正の際に、附則で労働基準法第137条があるわけです が、当分の間の措置として、「1年を超える期間の有期労働契約を締結した労働者について、 契約期間の初日から1年を経過した日以後においては、使用者に申し出ることにより退職す ることができる」という暫定措置があります。これについては、労働者が意に反して拘束さ れる事態の懸念から、こういう措置が設けられているわけですが、今回、実態調査、ヒアリ ングにおいて、途中で退職を希望する労働者が意に反して拘束されるような事態が頻繁に生 じていることは把握されなかったところです。一方、この暫定措置は、労働者からは一切予 告なく退職できるという、やや片務的な形になっており、この役割が現時点においてどう評 価されるべきか、さらに議論すべきということです。有期労働契約については以上です。  次に、資料2「最低賃金の現状です」。まず、最低賃金制度の概要です。これはご案内の とおりですが、国が法律によって賃金の最低額を定めて、使用者に対してその金額未満での 労働者の雇用を禁止するということで、基本的にはパートを含め、すべての労働者および使 用者に適用されるということです。  最低賃金の種類ですが、大きく2つあります。地域別最低賃金が、各都道府県ごとにすべ ての労働者に対象として決められているということです。基本的には、適用労働者はすべて の労働者で、約5,000万人で、全国加重平均が現在713円ということです。次の特定最低 賃金(産業別)最低賃金は、基本的には都道府県内で特定の産業について決定するというこ とです。その下の※にあるように、主な設定産業として、現在においては電気機械器具製造 業、輸送機械器具製造業、あるいは各種商品小売業、鉄鋼業などについて設けられておりま す。基本的には労使のイニシアチブにより、労働条件の向上、あるいは事業の公正競争の確 保の観点から、地域別最低賃金よりも高い金額水準が必要と認められたものについて設定す るということです。現在、設定されているのは全国で250件ですが、カバーされる労働者 が約382万人で、1割弱ということです。加重平均が789円ということで、地域別最低賃 金よりも70数円高いレベルということです。  2頁の最低賃金額の改定についてです。地域別最低賃金については、毎年まず中央最低賃 金審議会で引上げ額の目安を審議いただいて、それを答申すると。それを基に、各都道府県 労働局にある地方最低賃金審議会において、地域の実情を踏まえて調査審議を経て決定する ということです。決定の手順については、8頁です。これは最近の実績として、中央最低賃 金審議会に大臣から6月下旬ぐらいに引上げ額の目安についての諮問が行われ、7月下旬か ら8月上旬に答申が出される。地方では、6、7月に諮問した上で、中賃における答申も参 考にしながら審議した上で、大体10月ぐらいに毎年改定が発効をするという流れになって おります。  2頁に戻って、産業別最低賃金については、労使が申出をした上で、地方最低賃金審議会 で、まず必要性審議があり、そこで必要と認めた場合に、地方最低賃金審議会で金額改定の 審議を行うという形になっております。地域別最低賃金については、決定基準ということで、 その下に3つ書いてあります。その地域における労働者の生計費、賃金、それから通常事業 賃金支払能力を総合的に勘案して定めることになっています。このうち、生計費については、 前回、平成20年の法改正により、「健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、 生活保護に係る施策の整合性に配慮する」という条項が入れられて、現在それを基に審議が 行われているということです。  3頁の最低賃金の効力についてです。地域別最低賃金については、最低賃金額以上の賃金 を払わなかった場合には50万円以下の罰金ということです。産業別最低賃金については、 最低賃金法上の罰則はないわけですが、基準法の24条で賃金全額払いの違反となりますの で、30万円以下の罰金になるということです。民事的には、最低賃金額に達しない賃金を 定める労働契約は無効とされ、無効とされた部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみな されるということです。  前回の法改正で、生活保護に係る施策との整合性も配慮しつつ、生計費を見ていくという ことですが、生活保護については扶助別に8つの種類に分かれております。その中で、さら に第1類が食費等個人単位の経費、第2類が光熱費等世帯単位の経費になっております。そ の他、各種加算などが行われるということです。  5頁の生活保護と最低賃金との比較についてです。このグラフで、三角の点線が平成19 年のデータによる生活扶助の各都道府県ごとのものです。これは1類費、2類費、12歳か ら19歳の単身を基にしております。それに期末一時扶助費を加えて、都道府県内において も級地によって水準が違ってきますので、その人口加重平均で都道府県の平均を出しており ます。住宅扶助についても、都道府県の実績値を加えたものです。そうした場合に、月単位 で見ると、東京・神奈川辺りだと12万5,000円弱といったレベルになります。  一方で、最低賃金について、四角が平成21年度の都道府県の地域別最低賃金で、縦の四 角になっているのが平成19年度です。生活扶助のデータが平成19年度のものですので、 平成19年度同士で見る場合には縦の四角ということになります。いちばん下に都道府県名 を四角で囲っているところがあるわけですが、その12都道府県については、現状において 生活扶助基準のほうが最低賃金で1カ月働いた場合よりも上回っているということで、逆転 現象が生じているということです。  6頁で、最近の地域別最低賃金の年次推移ということで、全国過重平均です。特に平成16 年辺りまでは経済情勢も非常に厳しかったということもあり、0・1という形で、引上げが なかなか進まなかったところですが、平成19年度、これは後ほど出てくる成長力底上げ円 卓会議などでの議論もあり、上がっております。平成20年度以降については、先ほどの生 活保護との整合性の考慮も含めて、2桁の伸びになっているということです。  7頁に平成21年度の地域別最低賃金の改定がありますが、特に生活保護との逆転現象が 生じているような都道府県において、かなり大幅な引上げになっており、東京では25円、 神奈川23円となっております。ただ、昨年度については、生活保護との逆転現象が生じて いない所については、基本的には引上げ額の目安は示さないという形になっており、0の所、 新潟、岐阜などは引上げが行われなかったということです。  9頁・10頁で、連立政権の合意、あるいは各党の最低賃金についてのマニフェスト等の 概要です。特に民主党のマニフェストにおいて、「すべての労働者に適用される『全国最低 賃金』を設定(800円を想定)」とか、「景気状況に配慮しつつ、最低賃金の全国平均1,000 円を目指す」といった内容になっております。  10頁です。最低賃金の引上げについて、厚生労働省と経済産業省で現在、「検討チーム」 を設置して検討を行っているということです。特に最低賃金の引上げについて、どういった 課題があるか、来年度、調査を予定しており、その調査を具体的にどう進めるか。最低賃金 引上げに当たって、中小企業支援策のあり方、これは民主党マニフェストでも、「中小企業 における円滑な実施を図るための財政上・金融上の措置を実施する」ということになってい るわけですが、課題との関係で、具体的にどういった支援策が効果的であるかといったこと を検討する。さらに、最低賃金引上げが経済雇用に及ぼす影響等を検討するということで、 細川副大臣、経済産業省の増子副大臣をトップに、現在、「検討チーム」を行っているとい うことです。  11頁がそのスケジュールで、1月28日に第1回の検討チームを行って、現在ワーキング チームで調査の進め方などについて検討を行っているところです。今月中には第2回で検討 結果を報告し、4月以降、その引上げの課題についての調査を行った上で、来年度の概算要 求において支援策などを要求していきたいと考えております。  次に、12頁以下で現在の賃金実態を若干付けておりますが、民主党マニフェストで特に 800円という数字がありますので、それとの関連でしております。12頁で就業形態別に見 ると、特にパートで800円未満の賃金が現実にはかなり多いということ。これは平成20年 の賃構を基にしていますので5人以上のデータしかないわけですが、5〜9人レベルで見る と、パートの34.1%は800円未満であると。一般労働者についても、5〜9人規模では10% が800円未満ということで、トータルでは5〜9人では16%が800円未満というのが現状 ということです。  次に、13頁で地域別に見た場合ですが、特に800円未満の割合が高い所として、沖縄、 宮崎、青森、長崎、秋田ということで、九州とか東北など、一般的に雇用情勢が厳しい地域 において、800円未満の割合が高いということです。特に沖縄のパートなどで見ると74.7% ということで、4分の3は800円未満であるということです。一方、大都市圏においては、 地域別最低賃金の水準自体が800円に近付いているという状況にあって、影響はかなり限 定的であると。東京の場合、現在、地域別最賃が791円であるわけですが、トータルで見 て1.3%が800円未満ということで、非常にウエイトは小さい。神奈川についても同様です。 それをグラフで見たのが14頁です。15頁も同様です。  16頁で、業種別に見た場合に、800円未満がどういう所に多いかということで、人数ベ ースで見た場合には、小売業、特に飲食品小売業、その他小売業、各種商品小売業といった 所です。製造業の中では、食料品製造業、さらに一般飲食店、医療・福祉といった所で、人 数ベースではかなり影響が大きいということです。製造業の中では、繊維なども影響を受け る割合が高いということですが、人数は限定的であるということです。以上です。 ○樋口座長 詳細な説明をいただきまして、ありがとうございます。有期労働契約研究会に は阿部先生、橋本先生、山川先生がご参加されているということですが、先生方から何かあ りますでしょうか。なければフリーディスカッションに移りたいと思います。どなたからで も、ご質問・ご意見をお願いいたします。 ○佐藤委員 有期労働契約研究会の報告を読ませていただいて、論点は非常によく整理され ていると思うのです。人事管理をやっている立場から、大事なことが2つあるかと思ってい ます。1つは、報告書の中で無期化イコール正社員化ではない、つまり従来型の正社員にな るわけではないというのを何カ所か触れられていることです。他方で、事実上有期雇用なの ですが、テンポラリーではなくて、かなり長期に活用されている人たちが多いというお話が あって、そのことがすごく大事だと思っています。ですから、契約更新しているのですが、 企業側がなぜ無期化しないかというと、社会的には無期化イコール正社員というイメージが、 まだまだ強いからではないかと思っています。  ですから、会社としては、例えば業務限定で活用している社員で、この方はこの業務、あ るいはこの事業所のこの業務で長く使いたいと思って更新しているわけですが、従来型の正 社員という意味での無期にしてしまうと、業務を限定しないで雇用している社員と同じよう な扱いを期待されるのではないかと、ここが企業家としてなかなか無期に踏み込めないとこ ろかなと思っていて、そこの整理ができるかどうかだと思うのですね。例えば有期から転換 して無期の社員がいたときに、片方は業務限定で有期で長く活用していて、どこかの段階で 無期契約に転換したと。他方、業務を限定しないで雇用して、いろいろな業務を経験してい るのがいたときに、同じ無期だから、例えば雇用調整するとき、同じような雇用保障責任が 事業所側にあるということを考えると、なかなか事業所側が無期契約を結べないのではない かと理解しています。  この中では、解雇権濫用法理とか雇用調整に対するルールについては、あまり言及しない という形になっているかと思うのですが、たぶんそこのところをきちんと整理しないといけ ない。この中では職種限定とか、事業所限定の多様な正社員ということが議論されているの です。実際には人材活用は多元化しているのですが、雇用保障なり雇用調整ルールのほうが その実態に合ったルールと読めないというか、なっていないところがたぶん問題だと思うの です。  そこを議論しないと、多様な正社員になかなか企業は踏み込めないのではないか。もちろ ん労働契約法などのほうで、業務限定をきちんとして、いわゆる特約付きの無期契約みたい な形にすれば、そうでない正社員と違ったような雇用保障なり雇用調整ルールができるとい う理解もあるわけですが、そういう事態になったときにどうなのか。特に企業側はそう思っ ていても、働く人たちは、同じ無期であれば、従来の無期の人と同じ雇用保障があるのでは ないかと思っているわけです。労働組合もたぶんそう思っていると思うので、ルール上平気 だといくら言っても、労使関係上、そのルールがある程度コンセンサスになっていかないと、 なかなか企業は踏み込めないのではないかなというのが1つです。  2つ目は、そのように考えたとき、今度は派遣法の議論があるのですが、派遣の場合も大 体業務を限定して派遣されるわけですね。事業所も契約したときに、派遣元に契約されたと き、どこどこの派遣先の事業所のどこどこの仕事で、というところまで契約されて派遣され ているわけです。今度、常用雇用、特に製造業務の原則になるわけです。常用雇用になった ときにこれがどうなるかですね。  常用雇用でもいろいろあるわけですが、無期契約で派遣としたときに、派遣先がないとか、 仕事がなくなったときの派遣元の雇用保障責任はどうなのか、というのは実は同じような話 です。有期契約のほうの議論、つまり新しいタイプの無期契約の雇用保障なり、雇用調整ル ールがきちんと整理できると、実は派遣のほうの正社員化がある面ではやりやすくなる。き ちんと正社員派遣という形にして、ある派遣先の仕事がなくなって、非常に経験を積んだと ころで次の派遣先が見つからないとき、これはどうなるかですね。ここがはっきりしないと、 常用雇用の派遣が望ましいというのは確かにそうだと思うのですが、そこになかなか踏み込 めない、そこが進まないのかなと思います。いま言ったお話を整理すると、派遣の常用雇用 化、正社員化ということの整理も付いてくるのではないかと思いました。以上です。 ○樋口座長 ご指摘ということで、事務局で何かありますか。 ○前田労働基準局総務課長 資料1-2が中間取りまとめのより詳しい内容になっておりま すが、その5頁で正社員に適用されるルールと問題があるわけです。この研究会としては、 正社員に適用されるルール自体を論ずる場ではないので、いわゆる正社員のことについての 解雇規制のあり方については議論しておらないということです。一方で、23頁で先生がご 指摘のいわゆる正社員でない、無期化の中でさまざまな、職種限定とか勤務地限定というの があるわけですが、その場合にその職種自体がなくなったらどうなるのかということは、雇 用保障の面でもまた別の議論としてあろうかと思います。いわゆる正社員のことは論じてい ないということです。 ○清家委員 最賃の説明が大変興味深かったのですが、どのように考えておられるのか、あ るいはどのような議論があったか伺いたいのです。ご説明がありましたように、最近の1 つの最賃法の大きなトピックスとして、労働者の生計費に関して、5頁に示されたような生 活保護との逆転を意識して、生活保護費を下回らないような形に最賃を決めていくという基 準が設けられたと思うのです。その際に、13頁の賃金が800円未満の労働者および割合を 見ると、これは地域別の最賃ですが、5頁で生活保護と最低賃金の比較を見たときに、生活 保護費のほうが上回っている県が、影響率が高い県と低い県、両方に出ているわけですね。  例えば影響率の高い都道府県ですと、青森、秋田、北海道ですね。影響率の低い県だと上 のほうの東京、大阪、神奈川、千葉、埼玉、兵庫だと思うのです。たぶんこの影響率の低い 県のほうの話が、確かに生活保護費に比べて最賃が低すぎたので、これを引き上げるのはそ んなには問題がないというか、市場にも影響を与えないし、雇用にもあまり影響を与えない かもしれない。そういう面で非常に納得しやすい、労使双方とも納得いくと思うのですが、 一方、影響率の高いほうは、もともと労働市場があまりよろしくなくて、しかも需給バラン スが悪くて賃金が低い、あるいは最賃も低く設定されていたわけです。例えば北海道みたい な所で、いきなりグンと最賃を上げたりすると、おそらく労働市場とか雇用にも影響が出て くるのではないかということが予想されるのです。  そういうときに、こういうのを見ると、確かに生活保護費と最賃の逆転は避けるべきなの で、今回のような考慮は非常に重要だと思うのです。そのとき、一律に逆転を是正しなけれ ばいけないのか、それともやはりそれぞれの地域の労働市場の状況、あるいは雇用状況など を考えてそれをやるべきなのか。そういうものを考えるのだったら、そもそも最低の所得、 文化的な生活ができる最低の所得という考え方自体が、市場の需給バランスに影響されてし まっておかしいではないかという議論もあると思うのです。その辺はどうなのかなと、ちょ っと興味というか。つまり、最賃を引き上げた場合、特に生活保護との関係で引き上げた場 合に、労働市場とか雇用に大きく影響がありそうなところと、そうでないところ。あるいは、 むしろもともと生活保護費に比べて最賃が低すぎたので、思いっきり上げるべきだと考えら れるような影響率の低い都道府県と、それをかなり慎重に考えないと、雇用とか労働市場に 影響を与えそうな影響率の高い都道府県は分けて考えるべきなのか、あるいはそういうもの はやはりもともと分けて考えるべきではないのか、その辺はどう考えるか。あるいは、最賃 審議会ですか、その辺りで何かそんな議論があったのか、教えていただければと思います。 ○樋口座長 はい、お願いします。 ○前田労働基準局総務課長 この5頁で、特に北海道とか青森、秋田、宮城といった辺りが 逆転現象が起きているということです。それについては、1つの要因として、生活保護のほ うで冬期加算があって、暖房のための費用のようなものですが、それがかなり影響するとい うこと。基本的に法律の考え方からすると、それは生活保護との整合性を考慮するというこ とですので、逆転現象はできる限り速やかに解消すべきということであるのです。  昨年の中央最低賃金審議会での議論においても、特に地域の経済や雇用に影響を及ぼすか どうかというのが、議論の1つとしてありました。例えば東京とか、影響率の少ない所は、 地域経済や雇用に及ぼす影響が少ないであろうということで、そういう場合には解消期間を できる限り短い年数で解消するということ。一方、北海道など、地域経済、雇用に影響を及 ぼすような所については、ある程度の期間をかけて解消を目指していくということで、まず 中央最低賃金審議会の目安の中でも、そういう考え方が盛り込まれております。  具体的には、各都道府県の労働局の地方最低賃金審議会において、さらにそういった地域 の状況も踏まえながら、具体的に引上げ額を審議して引上げ額を決めているということで、 そういう地域経済とか雇用への影響は考慮すべきということでやっているところです。 ○白木委員 1点、確認させていただきます。5頁の図は非常に重要な図だと思いますが、 働いている場合にはいろいろな諸手当があろうかと思うのですが、最賃の場合のグラフの高 さ、ここにはこれは入っていないわけですよね。それに対して、先ほどのご説明で、前の頁 でも同じことなのですが、さまざまな手当といいますか、第2類費、ここに冬期加算とかい ろいろなものが入っていますが、これが含まれていると。それとの差はどのぐらいあるか、 何か推計がありましたら教えていただければ、もうちょっと正確なグラフになるのではない かなという感じがするのです。以上です。 ○樋口座長 お願いします。 ○前田労働基準局総務課長 ちょっといま手元に具体的な差というのがないわけなのです が、特に都市部においては住宅扶助の部分が、生活保護の場合にはかなりウエイトが出てく るかと思います。ただ、最低賃金について、そういう各種手当は本来除いて、まず最低賃金 を決めて、それで衣食住を賄うだろうということですので、基本的には賃金のほうにそうい う手当を入れることは、必ずしも適切ではないと考えています。 ○加藤委員 2点ほどあります。最低賃金についてなのですが、生活保護と最低賃金を比較 することは、ナショナルミニマム等の議論では大事だと思うのですが、現実に1つの研究を 見た中で、最低賃金でカバーされている労働者が世帯主であるのかどうなのかということを 考えると、実はそうではないという議論があります。生活保護というのは世帯の生活を維持 することになるのだと思うのですが、最低賃金がカバーしている労働者が、果たしてそれに 対応しているのかどうなのかということが重要ではないか、というのが1点目です。  2つ目は、もし最低賃金を上げていくとすると、その負担をどうするのか。既にワーキン グ・グループができて、研究をされているということなのですが、例えば企業がそれを負担 するということであればいいのでしょうが、企業が負担することによって、雇用に対してさ まざまな問題が起きるということになると、ここにも書いてありましたが、財政金融上の何 らかの補助をしなければいけない。そうなってくると、果たしてそれは賃金として、最低賃 金が低いから、その賃金を上げるための財政的、あるいは金融的な支援を行うことが必要な のだろうか。逆に言えば、直接的な所得保障であるとか、あるいは給付つき税額控除である とか、そのようなもうちょっと違う面でサポートする必要があるということで、必ずしも最 低賃金の引上げにこだわる必要はないのではないかという見方もあると思うのですが、フリ ーディスカッションということで、一応考え方として述べさせていただきました。 ○鶴委員 私も5頁の図なのですが、これを見てちょっとびっくりしたのは、生活保護が最 低賃金を上回っているのが、この図上からはやや特殊な場合という言い方はちょっとおかし いのですが、かなり最低賃金が生活保護を上回っているというのが、どうも通常の形になっ ているのですね。こういうのを見ると、最低賃金と生活保護の上か下かを議論するというの が、どれぐらい意味があって、先ほどご説明があったように、冬期、非常に寒いなどという ことで加算があるかもしれませんが、政治的な問題とか、地域的な問題とか、ほかの所に比 べて突出して結果として高くなっているような所は、たぶんあるのだろうなという感じがし ます。  それで、都道府県別の生計費との関係を考えると、これを見ると、たぶん生活保護の動き のほうが、格差みたいなものはわりと追っているのかなと。むしろ最低賃金のレベルのほう が、実際よりも圧縮されている。最初にレベルをいつ決められたのかは私も全然知らないの ですが、結局その後の動きは毎年ごとの伸びで決めているわけですよね。だから、もともと の水準が生計費と合っていたかどうかというところは、なかなかわからない。  ただ、このグラフを見る限りは、相当最初のレベルで地域別に圧縮された形になっている なという印象を受けるのですね。こういう状況だと、本当に生活保護と最低賃金の上下で考 えて政策を考えるとか、最低賃金のほうは低いような所も、本来あるべき姿よりも、もしか したらこれはやや高いのかもしれないという議論もあって、東京などのほうがむしろ低いの かもしれないという議論だって、この図を単に見るという立場からすれば、そういう発想も あり得るのだと思うのですね。だから、議論をやっていくときに、素直に見たときにこれを 本当にどう評価されるのかをきちんと考えないと、政策がどうあるべきかはなかなか出てこ ないのではないか。私もこれを見て非常にびっくりしたので、ちょっと問題提起ということ で申し上げました。 ○駒村委員 いまの議論は、労働経済をやっている方と社会保障をやっている方で、必ず議 論になる部分で、マーケットの所を見るか、ナショナルミニマム的な所を見るかという話な のです。1つ先ほどの加算という所ですが、生活保護の中で、2類部分と冬期加算は地方に いては基本部分ですので、手当に相当するというよりはやはり本体部分を見るべきだと思い ます。この冬期加算は意外に大きい部分で、特にこれを改めて見ると、寒い所が大きく出て いるのはこの冬期加算の影響はかなり出ていると。ただ、この冬期加算を簡単に動かすわけ にいかないと。これはヒアリング調査をしていると、現場からは、そうそう上げたり下げた りというレベルの問題ではないという話です。  もう1つは、どのぐらい影響度があるのか、世帯主なのかどうなのかというところも大変 重要な論点だと思います。資料の12頁のパートの所で未満の所を見ていくと、24.9%が最 賃です。この人たちが世帯主ではないということであれば、8.8%の人が影響を受けると。  ただ、前回の資料でもありましたように、パートタイム等と言われているのが、前回の資 料のパワーポイントの14枚目の想定をしていくならば、パートタイマーの方でも3割ぐら いの方が自分の収入がメインの収入である、世帯主であると。そうすると、この24.9%の 方も、人数単位で見ると50万人ぐらいの方がこの影響を受けているということです。単純 に足していくと、これで影響を受けるのは労働者の10〜10数パーセント。つまり、ワーキ ングプアと言われている人たちのレベルに相当するのかなという感じはいたします。  それから、生活保護の水準ですが、このメンバーの中では樋口先生と私が生活扶助の検討 会、レベルの検討会をやりました。いまの生活保護の水準は、絶対貧困ラインではなくて、 つまり生計費を積み上げる方法ではなくて、標準的な世帯に対して、モデル世帯が何パーセ ント程度の生活水準を保っているかというのは、大体いま6割をターゲットにしていると。 大体いま6割相当になっているという検証が行われていると。確かに都市間別の問題は、ま だいくつか議論という点は残っているのだろうと。生活保護のほうの厚生省のこれまでの議 論は、そういう議論だと思います。 ○宮本委員 生活保護と最低賃金の比較の問題は大変大事で、また国民の関心も高いと思う のですが、それだけにこの問題を契機に政策論議を深めていく場合は、前提となるこの2 つのタイプの生計のあり方について、少し丁寧な説明が必要なのではないかと思います。生 活保護需給世帯、ことの是非は別として、最近の言葉で言えばためのない状態で暮らしてい る場合が多いわけで、最賃を需給している世帯と単純に比較できない。その辺り少し言葉を 足して、議論の前提となっている事柄について説明をしていって、そのこと自体の改善・改 良についても、考えていく必要があるのではないかと思います。非常に政治的な反響が大き い問題だけに、少し丁寧な説明が必要だろうと思います。  2番目に、先ほど加藤先生のほうからも少しお話がありましたが、政権マニフェストのも う1つの大きな柱、最賃と並んで大きな柱である給付つき税額控除のお話があるわけです。 おそらく最賃に関するシミュレーションは、給付つき税額控除の導入のシミュレーションと 合わせて行っていかなければならないのではないか。例えばクリントン政権の1996年の福 祉改革のときに、アーンド・インカム・タックス・クレジット、給付つき税額控除の控除率 の改革が行われたわけです。その場合は、最賃と合わせて最賃を水準の世帯の給付つき税額 控除込みの所得を、貧困率を脱却できる水準にもっていくことが目標であったと理解してい ますので、おそらくその2つを合わせて検討していく必要があるのではないかということで、 その辺り検討をお願いしたいということです。 ○樋口座長 私も1つ、皆さんから出ていますように、地域によって生活費も違っているし、 あるいは労働需給の状況も違っていると。そこに今度新たに、例えば清家さんのおっしゃっ たのと関連しているのですが、全国一律の最低賃金800円が、いくらの額というのかわか りませんが、そこにそういった制度を新たに導入しよう。この制度の目的は、たぶん最低賃 金の低い所を押し上げようといった考え方で出てきていると思うのですね。この全国一律と いうものをどう考えたらいいのかということで、これは所得関連でいうと、全国一律になっ ているのは所得税なのです。所得税の課税限度額については、最低賃金が低いからといって、 その地域は低く設定されたのではなくて、全国一律103万円とか、あるいは厚生年金につ いても一律年収130万円となっている。  そうすると、賃金の低いとか、生活費の低い県では、わりと103万円に達しない人が多 い、あるいは130万円に達しない人が多いです。この差というのはすごく大きいのです。 微妙な数字なのですけれども非常に多い。税・社会保障制度では、全国一律という考え方を 持ちながら、一方で最低賃金とか、生活保護についてはそれぞれの地域性でいう独自性を考 えていく。理論武装をどう考えたらいいのかというところを用意していったほうがいいので はないか。どちらを採るのがいいということではなくて、というようなことが1つあるのか と思います。  もう1つ生活保護制度のほうは別の審議会だと思いますが、最低生活費の中に勤労控除と いうのがあります。勤労控除というのは、本来生活保護で100万円貰えるところを、勤労 をして90万円の所得があり、足りない部分が10万円だと。90万円だったのを今度は95 万円分働きましたというときに、5万円減らされてしまうかというとそうではなくて、そこ に一定の額を乗せますというインセンティブを失わせないような方法として入っています。 この勤労控除というのが実態として非常に低くて、就業インセンティブになっていないので はないかと思われるぐらいのところがあります。  ここでの議論というのは、たぶんインセンティブをどうするかということで、逆転現象 云々という議論が出てきました。そういう点は別の所だと思いますが、議論をしていく必要 があるのではないかと思います。逆転現象のもともとの問題点というのは、働かないほうが、 働いている人よりも給与が高いのはおかしいではないか。その結果として働くインセンティ ブを失わせてしまっているのではないかというところから出てきた根本的な問題ですから、 そこのところは両方で考えていくことが必要なのではないかと思います。 ○佐藤委員 直接この生活保護と最初の話ではないのですけれども、いまの樋口先生のとも かかわるのですけれども、12頁のところはパートについてもすごく影響が大きいです。い ま出たような103万円とか130万円という制度との関係でいうと、ご存じのようにパート の場合は就業調整をする人がまだまだ相当多いので、これを800円まで動かすと、どうい う行動をとるかというと働く時間を減らす人が相当増える可能性があります。  雇用政策研究会としては、特に就業率を高める、特に女性のところで働きたい人は働きた いようにということを考えると、800円に上げるということと、ほかの制度を同時にやらな いと極端な就業調整を起こす。これは労働時間がどうなっているかですけれども、さらに働 く時間を減らすという行動をとりかねないので、そちらも併せてご検討いただくといいと思 います。 ○樋口座長 有期労働契約研究会についてはどうですか。 ○鶴委員 非常に詳細な論点整理をしていただきましてありがとうございます。一つひとつ の考え方が非常によくわかりました。私が気になっているのは、有期雇用の場合に日本の状 況を世界の中で見るとやや特殊な状況なのかという感じを持っています。ここで各国の比較 を挙げていますが、アングロサクソンの国というのは基本的に規制がないです。規制はない のですが、正規のほうの雇用保護はそれなりに強くないので、有期というのはそれほど多く ない、非常に割合が低いです。  一方、大陸・ヨーロッパというのは入口で規制しています。正当な客観的な理由がなけれ ば有期雇用を使えない状況です。日本は、もともと有期の規制が非常に弱いです。もちろん それから規制緩和があったのですけれども、私はもともと低かったと思っています。現状は というと、アングロサクソンの国を除くと、日本はいちばん低いぐらいのグループの所の状 況でいます。こういう中から、いまの日本、有期雇用という雇用の不安定な問題が出てきた 中で、どういう制度設計をやるのかというのは、どこかの国の真似をしたらいいとか、何か の制度を摘まみ食いでやればいいということで、簡単に解決する問題ではないのです。  ちょっと心配になったのは、入口規制のところで、最初に客観的な理由と、あとは回数の 制限とか期間の話があります。私はその2つというのは非常に補完的で、ある程度客観的理 由でグッと縛るから、2番目として期間とか回数で縛るという、その2つは補完的になりま す。最初のところで全然制限しなくて、有期雇用を使ってもいいですよということをやりな がら、後で回数とか期間を非常に強い制限を入れてしまうと、これはたぶん混乱します。制 度として整合的なものをやらないとたぶん駄目だろうと。  ヨーロッパ型みたいなやり方なのか、もう1つは日本のほうで入口規制をあまり強めずに 現状維持となると、先ほど説明のあった、フランスがやっているように出口のところで金銭 的な保障をいろいろ考える。金銭解決の話も含めてだと思うのですが、たぶんそういうこと をやる必要があります。労使の相互信頼があれば、それはどんどん期間を更新していっても いいというような考え方があって、それは雇用とほぼ同等に目指していきましょうと。これ は、いろいろな判例でそういうのが出ています。  ただこれについても、あまりきちんとしたルールを定めるのは難しいと思うのです。単純 にこれは経済学で言う繰り返しゲーム、レピュテーションを入れた繰り返しゲームと同じで、 相互信頼の中で初めて成立する。それに裏切りが起こると、それは何らかの介入をしなけれ ばいけないのですけれども、実はその介入の仕方というのは非常に難しいということです。 ここも摘まみ食い的に入れていくと非常に混乱していくことになるのではないか。  今後議論されていく中で、いろいろな制度というのはそれぞれ非常に補完的になっている ので、その1つの仕組みとして日本を考える場合に、整合的な仕組み、有期雇用の規制のあ り方として、整合的な仕組みを考えていただければと、これを拝読させていただいてそうい う印象を持ちました。 ○樋口座長 私は法律が専門ではないので教えていただきたいのですが、この中間取りまと めに正規労働者とか正社員というのがしばしば登場してきます。正規社員とは何かというと、 資料1-2の2頁に括弧書きがあって、ここでは「使用者から」云々となっていて「受ける者 などのいわゆる正規型の労働者」ということなのです。この「いわゆる」という前と後ろと が必ずしも一致しないというのがあって、通常は契約期間とか、労働時間の長さの2つで考 えていくのかと思うのです。ここでいう、企業における呼称の正規、非正規というようなこ とが、この研究会ではなんとなく容認されてるように思えるのです。  最初から総論で「正規労働者と有期契約労働者は」というふうに対立用語として出てきて います。こういう点はどうなのでしょうか。単純に有期なのか無期なのか、労働時間がフル タイムであるのかパートタイムであるのかと分けて、パート法などの短時間労働法のほうは、 いわゆるパートというのは正規というかフルタイムと同じように扱うということをしてい るわけです。こういうのは一般に登場するものなのですか。 ○前田労働基準局総務課長 「いわゆる正規型」というのは、必ずしも呼称で正社員という ことで、この研究会で言っているのではないので、その表現がどうかというのはあります。 例えば、パートタイム労働法で、正社員との差別取扱い禁止という場合には、単に無期とい うだけではなくて、処遇面とか人材活用面で、長期を前提にやっているということで、そう いうのをここでは正社員ということで定義したつもりです。呼称で定義したつもりではない です。 ○樋口座長 いわゆるというのは呼称ではないのですか。 ○前田労働基準局総務課長 はい。ここは世間一般で言っているという程度の話です。 ○山川委員 いまおっしゃられたとおりで、この研究会の中でも正社員という用語をどうす るかということは始終議論があります。中間取りまとめの(案)の中でも、なお修正する必 要がある部分があるかもしれません。2頁に書きましたような、「いわゆる正社員」という のは属性で考えているということです。したがって、無期というだけで、必ずしも正社員と も言えないし、フルタイムということだけでも正社員とは言えないということで、若干属性 に限定をかけています。それをもって評価的な要素は極力入れないというような意識ではお ります。いまのところそのぐらいでしょうか。 ○佐藤委員 パート労働法も通常の労働者、いわゆる正規型の労働者と言っているのは、い わゆる無期というだけではないというのは解釈で書いてあります。人事管理でいうと、企業 からすると普通は正社員という言葉も使わないです。就業規則も、正社員就業規則などとい うのはなくて、職員就業規則とか社員就業規則です。うちは正社員ではなくて社員を活用し ている。社員と言ったときに、通常雇用契約は定年までの雇用。だけど企業からすると、単 に定年までの無期契約だというだけではなくて、普通長期に雇用するときに、当然職務、職 種限定では長期雇用は難しいわけですから、職種は限定しませんとか、複数事業場があれば 異動もあります。従来であれば、残業があるときには残業をしてくださいというように、職 種、配属先、時間についてもある程度フレキシブルに活用できる、あるいはそれを受け入れ る人が社員と考えている。  これは法律で定められているわけではありません。企業が社員として雇う人にどういうも のを期待しているかというといまみたいなこと。そういうものを想定して人事制度はできて いますし、いままでの日本の解雇についてのルールもそういう社員を前提にしてできてきた のだと思います。ただ実態としてみると、そういう社員も変わってきています。職種限定の 正社員とか、勤務地制限の正社員が出てきた。あるいは有期の人でも、長くてそれに近い人 が出てきている。いまの実態はそうだと思います。いろいろな雇用調整とかルール自体、あ るいは世の中の認識としては従来型の正社員を前提に出てきているということが難しくし ています。 ○樋口座長 ほかにはよろしいでしょうか、よろしければ次の議題として、雇用システムに ついての論点を少し整理しておこうということです。前回の研究会において、皆様から事務 局にいくつか質問がありましたので、まず事務局から資料の説明をお願いいたします。また、 これまで各委員からのご意見と、今回の研究会の論点について、事務局に整理をお願いして おりますので、これも併せて説明をお願いいたします。 ○平嶋雇用政策課長補佐 資料3です。前回までにいただきました宿題のうち、雇用システ ムに関係する部分について資料を出しております。3頁は、同じ企業でどれぐらいの方が今 ずっと働き続けているのかという質問がありました。賃金構造基本統計調査で、標準労働者、 いわゆる学校卒業年齢から数えて、勤続年数からみて、その後同一企業でずっと働いている だろうと見られる労働者の数を一般労働者、無期又は1カ月以上働いている労働者の中で、 単時間労働者を除く者の占める割合を出しております。  2008年のところを見ますと、若者では25〜30%、その後は20%、15%と低下していき ます。時系列で見ると、1998年、1988年辺りと比べて、若者ではこうした割合が低下して いる一方で、45歳以上では逆に割合が高まっているという結果になっています。  4頁は男女別に出しております。基本的には全体と同じことで、若者では同じ企業で働く 割合が下がっておりますが、中高年になると高まっている状況です。  5頁ですが、先ほどはそういうことで生え抜き社員について、中高年になってくると割合 が高まっているということですが、労働者全体で見ると、各年齢層で1年間に転職する割合 は高まっています。  6頁は玄田先生の研究を拝借いたしました。非正規労働者の属性別に正社員への移行率が どうかというものです。全体については、非正規から正社員、離職した非正規社員がその後 どうなるかということで、全体の約半数はその後は非就業という形になりますが、4割の方 が非正規から非正規に移行。それでこの10.3%の方が非正規から正規に移行ということで す。  これを見ていくと、雇用形態別にはパートが低く、ほかの形態はそれほど大きな差はない ということです。年齢別に見ると、年齢が低い人ほど正社員に移行しやすいということ。家 事・通学の傍らに仕事、あるいは配偶者がありという方は割合が低い。出生時と同一の地域 に現在居住という取り方をされていますが、これは非常に高いということ。学歴別に見ると、 学歴が高い人ほど正社員に移行しやすいということ。継続就業年数については、3年未満の 辺りで高くなっていて、特に5年以上を過ぎると急激に低くなる。産業別に見ると、建設業、 運輸業、医療・福祉、教育・学習支援等々で高くなっています。特に医療・福祉で最も高く なっています。前職の企業規模別に見ますと、企業規模による差はそれほど大きくはないで す。  7頁は正規労働者の前職等の状況です。5年以内に転職してきた人が15%、その前職を見 ると、7割が正規労働者、3割が非正規労働者です。ただ元の母数が違いますので、括弧内 に母数を入れております。  8頁は、他の就業形態に変わりたいとする者の割合です。性別では男性が39.5%、女性が 26%ということで男性のほうが高くなっています。これを雇用形態別に見ていくと契約社員、 派遣労働者で概ね5割の方が変わりたいということで、男女別には大きな違いはないです。 一方、女性のパート労働者で非常に低くなっているということで、この影響がその全体の男 女にも出ているのではないかと思います。  9頁は年齢別です。年齢別に見ると、若年層ほど高くなっています。特に男性の20代、 30代では7〜8割の方が他の就業形態に変わりたいということです。  10頁は、雇用形態別の時間給です。正社員に比べて、他の形態では時間給が上がってい かないということです。男女間ではその水準に差があるかという感じがします。  11頁は、単身者の状況について少し見てはどうかというお話をいただきました。ご覧の ように単身者の数は増加しております。人数的には高齢者が増加しているわけですが、これ は人口の構成比の問題もありますので、各年齢層の中での単身者の割合を括弧書きで書いて おります。これを見ていくと25〜54歳の辺りで割合が概ね倍程度になっています。晩婚化、 非婚化等の影響があるのではないかと思います。  12頁は、単身者のうち非正規に絞って推移を見ております。前の資料とは年次が違いま すが、2007年ぐらいまでは年率2%ぐらいの増加ということで、ほぼ全体と同じぐらいの 減り方になっております。足元で大きく減少しています。特に15〜34歳で11万人の減少 という状況です。  13頁は、雇用形態別の収入です。左が雇用形態別ですが、括弧内が単身に限らず、全体 の構成比です。パートのところで単身者の構成比は低いです。ほかの形態は、それをそれぞ れ若干上回っています。収入別に見ると、約3割が200万円未満、約半数が300万円未満 という状況です。  資料4と資料5です。本日の論点ということで、これまでの各委員のご意見を参考に作ら せていただきました。雇用システム全般についてですが、雇用システムは変化に対するモー ドチェンジを繰り返してきたのではないか。あるいは安定成長の中で、雇用システムが機能 したが、今後は不確実性が増すのではないか。企業に責任を求めるだけでは難しいのではな いか。このようなご意見がありました。日本の長期雇用慣行は、途中からは学卒者にとって 参入しやすい環境になっているのではないか。  1点目として、不確実性が増している中、長期雇用慣行や新卒一括採用システムについて どのように考えるか。非正規労働者の現状と対応ということで、非正規といってもいろいろ なタイプがいるので、世帯主なのか非世帯主なのかということも含めて考えていくべきだと いうこと。世帯主で年収200万円未満の労働者が少なからず存在している現状に対してど う考えるか。これを含めて非正規労働者の保護についてどう考えるか。3点目の複線型雇用 管理の整備ということで、非正社員の正社員化についてはたくさんのご意見をいただいてお ります。非正規労働者から正社員への移動を可能とする複線型雇用管理の整備に当たっては どのような方法が考えられるか。  中間的な雇用形態としておりますが、常用非正規労働者が増えている現状を踏まえて、正 社員ほどではないがある程度安定している働き方を考えるべきではないか。そうしたことで、 正規労働者と非正規労働者の中間的な雇用形態を位置づけることについてどう考えるか。賃 金については、ディーセント・ワークの実現に向け、賃金面ではどのような水準をイメージ すべきか。これまで企業が担ってきた生活給要素をもつ賃金体系をどう考えるか。正規・非 正規の賃金のあり方についてどう考えるか。現に働いている労働者に対する生活保障として の最低賃金の引き上げについてどう考えるか。先ほどのご議論ともオーバーラップする部分 があるかと思いますが、このように設定させていただいております。  雇用調整手段については、不景気のときには賃金を下げてでも雇用を守るほうがいいので はないか。こういう手段として人員、賃金、時間の調整があるが、それぞれどう考えるか。 このほかにセーフティネットとか、能力開発を含む各種の就労促進については次回以降でご 議論いただこうと考えております。 ○樋口座長 それでは皆様からご意見をいただきます。 ○玄田委員 3点ぐらいあります。先ほどのに遡ることもあるのですが、全部勘なので違っ ていたらごめんなさい。補足資料の単身世帯の12頁辺りのところですが、2009年に単身の 非正規が減ったということをどう考えるかですけれども、3つぐらい可能性があると思いま す。単身だった非正規が結婚したケース、単身だった非正規が正規になったケースはあまり 多くないと思うのです。いちばん多いのは、2009年に単身だった非正規が、非正規から無 業になってしまったケースがすごく多いのではないか。失業と非労働力。特に派遣から雇止 め、契約満了のケースが多いのではないかと思うのです。これは自分で調べればいいのです けれども、これをもって単身の非正規の問題というか、単身の問題が解消したということは 最近は考えにくいかなと思っています。  13頁もそうですけれども、雇用形態別ということで、あくまで就業者なので、もしかし たら問題は単身の無業、非労働力、失業者、場合によっては単身のいわゆる自営部門。農業 も含めて結婚するチャンスのない自営業みたいなケース。単身の部分というのは、もう少し 細かく見たほうがいいのではないか。単身で無業になってしまったというのは、先ほどの生 活保護の話ともすごくかかわってくるので、この辺はもう一踏ん張りデータがあるほうが、 大事なセーフティネットの議論があるのかというのが1点目です。  2点目は、先ほどの座長のときに勇気を振り絞って言えばよかったのですけれども、最低 賃金の決定のところで気になるのは、先ほど皆さんから出た論点と同じです。生活保護と最 低賃金が、正確な比較のもとに議論されているかということを考えたときに、先ほどの資料 の中で、生計費とか、賃金とか、支払い能力を見て決めるということでしたが、賃金は何を 見て決めているのだろうと思っています。いままでの話を聞いていると、ある程度地域別の しっかりした賃金分布のデータが必要で、しかもできれば労働者の世帯構造みたいなものも 知りたくて、それなりの標本数があるなどというデータが日本にあったかと思うと、ないよ うな気がするのです。もちろん所得再分配調査を使えばいいかもしれないけれども、そうす ると標本数が少なくなってしまうのであまり信頼できないのではないかと思うと、全然デー タがないところで議論しているのではないかという気がしています。  勘なのですけれども、たぶんいちばん良いのは、雇用保険業務統計と社会保障の統計をな んとかうまく併せてやらないと、信頼できるものはできないだろうと思います。今はそのシ ステムがないだろうから無理かと思ったりしています。将来、納税者番号とか社会保障番号 を議論するときに、そういう賃金データと世帯構造が結び付いて、しかも地域別で分布が出 るようなデータがない限り、何を言っても勘でやっているという、私と同じことをやってい るという感じがするというのが2点目です。  3点目は先ほどの有期研のもので、私は12頁のその区切りというところがポイントかな と思います。雇止めとか利用期間の更新回数、区切りというところはどうするのだろうとい うので、是非皆さんの素晴らしいアイディアを期待しています。更新回数なのか、利用期間 なのか。これは勘ですけれども、区切りという言葉はなんとなく最初から辞めるという感じ がして、私の好きな日本語として節目ということで、ちゃんと節目を作ることをしたほうが いいのではないかと思います。  どこが違うのかと言われたら勘でしゃべっているので言えないのですけれども、ポイント はやはり予測可能性と雇止めに関するモラルハザードの回避だから、ちゃんと節目を作って、 そこで対話をするという制度をある程度強制ではないけれども、かなり強くインプットする。 雇用契約に節目を、特に有期については設けましょうという感じのほうが、なんとなく未来 の希望があるような感じがします。区切りというのは、なんとなく終わりかみたいな感じが します。先ほどの正社員もそうですけれども、言葉の問題というのは誤解などを考えると意 外に大事なのです。勘ですけれども、そんなことを思いました。 ○樋口座長 事務局から何かありますか。 ○平嶋雇用政策課長補佐 資料3の12頁で、年齢別非正規単身者の推移ですが、15〜34 歳で11万人減少していると。その行き先を2008年、2009年を比べると、完全失業者がこ の年代層で5万人増加、非労働力が5万人増加ということで、合わせて非就業者が10万人 増加している状況です。 ○前田労働基準局総務課長 最後の区切りという表現については研究会の中でも、この区切 りという表現はいかがかというご議論がありました。ほかに良い表現が思いつきませんでし たので、現時点ではこういう表現になっております。  最低賃金については、先ほどの鶴先生のご議論ともかかわるわけですが、何を基に賃金デ ータを見ているかということです。従来もともとあった賃金に対して、その年度でどれだけ 賃金が上がっていたかという引上額で見るところが非常に大きなウエイトを占めていたと ころがあります。それが小規模企業の賃金の毎年の引上げ状況の調査で、それを前の年から 引上げ分を上乗せしていく。それも、割合がほぼ全国一律であったので、元にあった水準を 基に積み上げていく方式が中心でありました。それだけではということで、絶対水準の議論 として、この生活保護の議論などが出てきたというのが1つの経過としてあります。 ○佐藤委員 論点整理のほうなのですが、前半の議論でも正規、非正規ということで、正規 とは何なのかという話がありました。論点整理を見ていても正規、非正規の議論が2つあっ て、有期か無期かを想定している議論と、いわゆる正社員。例えば非正規と正社員の賃金の 均衡、均等をどう考えるか。それは、従来型の職種を限定していない正社員と、職種を限定 している非正規の賃金をどうするのか。そのときには、単に無期の人とではなくて、それに くっついているところと、職種限定の有期との賃金の制度なり水準の比較は難しいかなとい う議論をしていると思うのです。これは、整理していったほうがいいのではないか。  できるだけ無期と有期の議論と、無期の中に従来型の正社員と、新しく生まれつつある中 間型の正社員と。無期の中に無期A、無期B、無期Cで、無期Aは従来型の正社員、無期B は新しく生まれつつある。それとの議論の論点というふうにしないと、賃金制度についても、 正社員の中でも職種限定の正社員みたいなものを考えれば、職種限定の有期の人と、賃金水 準の均衡というのはやりやすいです。  そうではなくて従来型の正社員で、職種限定で移動しながらというのは職能給が賃金制度 上適応できないわけです。他方有期の中でも、勤続が長くなると仕事範囲が広がって、職能 給部分が増えてくる有期の人もいます。これは従来から議論になっていたのですけれども、 論点としては有期、無期での議論なのか、いわゆる正社員というところを想定しながら議論 しているのかを区分けしていくことがすごく大事なのではないかと思いますので、ご検討い ただければと思います。 ○白木委員 いまのに関連してですが、これから中間的な正社員のあり方がキーポイントに なろうかと思います。そのときに、中間的な正社員というのが、非正規と呼ばれているこれ までの言葉を使うというのは、やはり議論を狭める。私の個人的な見解では正規、非正規と いうのは、極端には差別用語的な表現だと思うのです。  私も、10〜15年前ぐらいに非正規従業員の調査で企業に行ったことがあります。そうす ると「我が社にはいません」という企業が多いです。「パートタイマーも、期間限定の人も すべて正規なのだと。したがって、あなた方が調査しようというのは我が社にはいません」 と言われてハッと気づいたことがあります。いま非常に重要な議論をしているわけですので、 それをうかつに正規、非正規という言葉を固定化させるのはやや慎重であるべきだと思いま す。 ○鶴委員 私もいまの形態での、中間的な雇用形態の関連なのですが、論点のところを見て びっくりしたのは、常用非正規労働者というのはあまり聞いたことのない名前です。ポイン トは、非正規という言葉はおっしゃるように言い方としてよくないかということもあります。 私は4つの軸と言っているのですが、フルタイムかパートか、有期か無期か、働いている会 社と雇われている会社が同じかどうか、あとは指揮命令です。その4つの軸の組合せで非正 規がどれぐらい強いかというのも変わりますし、組合せも変わってくる。だから、そのどの 軸で考えるか。  その中をもう少し詳しく言うと、職種とか地域、佐藤さんがおっしゃるようなものも付け 加えていくことはできると思うのです。そうした場合に、有期の話をしているときに、常用 という言葉は前に国会でも問題になったときがあったようですけれども問題になります。本 来ならば、無期ということを常用で表しているのですが、実際上は1年以上雇用されていた ら常用にカウントされるし、1年以上雇用されることが見込まれる場合だと常用になってい ます。  こうした場合に、契約コントラクトの世界で実態はどうなっているのかというと、常用の ところは全部ごちゃ混ぜになってグシャグシャになっています。こういう言葉を使いながら、 政策をどのようにしていこうか、いま有期の研究会でご議論されているようなことというの は、こういう言葉を使い出した瞬間に非常に曖昧になってしまいます。やはり、ここはもう 少し厳密にやる必要があるのではないか。  先ほどの説明では、研究会で3年以上の契約期間をやる需要がないのですと。これは確か にそういう話を私も聞きます。1つは民法で、これまで日本の有期の規制の仕方として、長 期の人身拘束を防ぐということがあります。こうした問題というのは、時代的な背景などを 考えると、本当にどのように考えたらいいのかというのは、中間取りまとめのところでもあ まり議論されていないようです。そういうことを議論していかないと、もう少し長めのもの を導入していく是非も議論できないのだろうし、更新回数との関係で、どっちが安定的な雇 用に資するのかということになっていくと、またちょっと違った議論が出てくるのではない かと思いました。 ○山川委員 有期労働契約研究会での用語の問題もそうですし、いわゆる非正規という雇用 形態はパートもある、派遣もある、有期契約もあるということで意識して議論していると思 うのです。その中でいろいろ項目別に整理していくと、逆に浮かび上がってくるのは、それ ぞれの相互関係といいますか、有期だけで解決できる問題とパートにも関係する問題があっ て、これを総合的にというか、一括して議論する必要がある。例えば立法を考えるときにも、 パートの問題を考えているようでも、実は有期の問題がかなり含まれていることがあります ので総合的に考える必要があります。  もう1つは先ほど玄田さんが言われたことでもありますけれども、労使の対話を促進する 方向で考えるということが論点としてあるのではないか。雇止めを誘発してしまうような区 切りのあり方に対して、どうやってその企業の労使で対応していくか。中間的な雇用形態と か人事管理のあり方も、法律だけできっちり決めるのは難しいものですから、企業の労使で 考えて工夫していただきたい。逆に法律としてそれを促進するためのインセンティブがどれ だけあるか。論点の中には、これを進めるための手法、特に労使の工夫を促進するようなこ とがあり得ないかということが考えられると思います。 ○清家委員 私は結構休んでいたのでもう議論されたのかもしれないのですが、法的制度と 雇用のあり方の関係は是非押さえておく必要があると思います。1つは大きい問題、1つは 非常にマイナーな私の個人的表現で申し上げます。  今回も雇用保険法が改正されて、ずっと前は1年以上の雇用見込みの者だったものを、去 年、半年以上の雇用見込みの者にしました。今回の法律が通れば、これが31日以上の雇用 見込みの者が雇用保険に加入することになりました。これは、とても正しい方向の変化だと 思います。それでも、まだ労働時間については20時間という規定があります。これは、前 から経済学者が言っているのですが、こういう働き方をさせている企業に対して補助金を与 えているのです。つまり、20時間未満で働かせるとお得ですよ、あるいは30日未満の契約 にするとお得ですよと、そういう補助金を与えておきながら、格差がどうのこうのと政府が 言うのはちょっとおかしいです。  まず、そういうのは全部改める。1日1時間以上働いた人はみんな雇用保険に入ってもら う。そうすると、すぐモラルハザードが起きるではないかと言うのですけれども、実はモラ ルハザードは加入のところでは起きないので、給付のところでルールを決めればいいのです。 一定の加入期間がない者には給付しない。だけど、期間に限らず人を雇ったら雇用保険に加 入させなければいけないとしても、別に給付に関するモラルハザードは起きないので、その 辺は三者構成の審議会で決めることですから、使用者側はかなり抵抗するかもしれません。 少なくとも雇用の問題を考えるときに、雇用保険がある種の働き方がお得、お勧めみたいに なっているのはやはり長期的には改めていかなければいけないと思います。  もう1つは非常にマイナーな問題ですけれども、これは前に1度ここで発言したことがあ ると思います。年金制度との関係で言うと、2013年度から報酬比例部分の支給開始年齢が 61歳になります。そうすると、1953年4月2日以降に生まれた人は1年間、定額部分も報 酬比例部分も貰えない状態が60歳から61歳の間に出てきます。いまの改正高齢法では、 もちろん65歳までの雇用確保措置を講じる義務は雇い主にあるのですが、それは定年延長 でなくて、継続雇用制度でもよくて、なおかついまは一定の基準を設けて、継続雇用の対象 にするものを決めてもいいことになっていますので、理論的に言うと、そこではじかれた場 合に1年間雇用機会もないし、年金もない人が出てきてしまいます。  もちろん雇用保険はあるわけですが、私の理解が正しければ、定年の場合は自己都合扱い だけれども、すぐに支給されます。60歳から64歳のところで150日ぐらいだと思います。 そうすると、やはり空白の期間が出てきてしまいます。これは、今回の雇用政策研究会で、 当面の雇用を考える際にはちょっと議論しておかないといけないのではないか。これは非常 に個人的な関心で、あまり大きなトピックではないかもしれませんが指摘しておきます。 ○樋口座長 これまでのところで事務局から何かありますか。 ○小川雇用政策課長 正社員の定義とか、その正社員を多様に考えたほうがいいのではない かということのご指摘が皆さんからありました。我々の論点としては、中間的な雇用形態に ついてどのように考えるかということです。この議論については必ずしもコンセンサスがで きていないのではないかということで、ある意味ではそういうものをちゃんと位置づけたほ うがいいという会議としてのコンセンサスがあれば、そのように分けて考えていこうかとは 考えております。  清家先生の高齢者の問題については、次回に就労促進の問題がありますので、その場で議 論しようと思っております。 ○樋口座長 有期というと労働基準局だし、パートというと均等局だし、それぞれでやって いるのだろうと思いますが、ここはある意味で全般的にその相互関係も含めて考えていくと いうことで、どういう分類がいいのかはわかりませんが、そこについては一律に非正規とい うことではなくて議論していく必要があるというのは全くそのとおりだと思います。 ○諏訪委員 資料4の論点ペーパーを拝読しますと、いちばん下のその他の論点については 次回以降ということでありますのでいいのかなという感じはするのですが、私はこのペーパ ーに載っている、括弧内に入っているテーマの上から5番目ぐらいまでは全部能力開発、教 育訓練と裏表の問題だろうと思っておりますので、そのような発言はこれまでもさせていた だきました。  ウェルフェア・トゥ・ワークという場合でも、あるいは正規、非正規問題でも、エンプロ イアビリティとか、市場で評価される付加価値の高い仕事ができる能力をどう付けていくか というのが、最も重要な問題の1つだろうと思います。  先ほど座長が何とか局、何とか局と言わないで、全体を見ていくと言われましたが、国際 的に見ても、いま積極的労働市場政策のうちの最も重要な部分が能力開発の部分になってお ります。日本の場合はそれがいろいろな所で問題があったことは、いまさら指摘する必要も ないわけです。したがって、是非こういう側面があるということをどこかで指摘していただ く、あるいはそういう面を盛り込みながらこれから議論していっていただければと思います。  もう1つは、これまで日本の人口構造がそうだったせいもあるのでしょうけれども、どう しても雇用における入口とか、入ってしばらくの人のことばかり気にします。そこが非常に 重要だし大事なのですが、いつも申し上げておりますように、これからいちばんボリューム ゾーンになるのは40代、50代の労働力になっていきますから、その職業能力開発、継続的 に生涯学習というシステムをどう作るかというのは喫緊の課題ではないかと思います。  中間的な雇用形態とかいろいろなものを作っていったとき、複線型の雇用形態を作ってい ったときにも、実は40歳を過ぎた辺りから急速にモラールが落ちていくという問題にどう 対応するか。若いところだけ見ればこれでいいのですが、あるところから先ですと、自分は 天井が非常に低い職種にいる、あるいはそういう雇用形態に位置づけられている人が、40 歳を過ぎて、50歳を過ぎて、本来持っている潜在的能力をしっかりと発揮できるかという とかなり疑問です。この点のシステムが、いままで日本では弱かったのではないか。  長期雇用で、1社の中で抱え込んでいて、もともとは55歳定年ぐらいでした。今も、多 くの人が50歳から55歳で第一線を離れるシステムが、60歳あるいは65歳をにらんでい る会社の中でもあることはご存じのとおりです。国全体の政策として、これは非常にもった いないことをしているわけです。女性のM字型カーブの問題ももったいないことをしている わけです。あるいは非正規という形で、十分に能力開発の機会を与えていないというのもも ったいないことをしているわけです。その点については、この研究会でしかるべく端緒にな る議論でもいいですからしていただければと思います。 ○阿部委員 前回の資料だったと思うのですけれども、今回の不況期における雇用調整が、 正社員ではなくて非正社員で主に行われてきたというのがあったと思います。2001年、2002 年という、いちばん大変な就職氷河期と言われた時期は、正社員の雇用調整はあったのです けれども、非正社員の雇用調整はありませんでした。  そこで大卒者は、正社員にはなれなくても、非正社員にはなれました。そこで玄田さんの 論文にもあるような形で、正社員になれる人は正社員に転職できていたのです。今年卒業す る学生とか来年卒業する学生は、正社員の仕事もないのだけれども、非正社員の仕事ももし かしたらなかなか見つからないかもしれないということが起こり得るのではないかと思い ます。  そうだとすると、長期雇用慣行と新卒一括採用システムを悠長に考えている暇はあまりな くて、すぐにでも考えなければいけない問題だろうと思うのです。ただこうした問題という のは、特に長期雇用慣行とか新卒一括採用システムというのは、そんなにすぐに簡単に変わ るようなものではないです。そうすると考えなければいけないのは雇用の創出というところ にいくのではないかと思います。  本日は第4回ですけれども、第1回から第4回まで、雇用創出というキーワードはなか なか出てこなかったのではないかと思います。どちらかというと安定とか、ナショナルミニ マムでもいいのですけれども、生活を守るという、どちらかというと受け身になっているよ うなところがあったのではないかと思います。4月16日は第6回と書いてありますけれど も、ここで雇用創出を含めてどういう政策が必要になるのかというところを併せてやってい かないと、教育訓練のあり方も、どういう方向に経済が向かっていって、それを政策的に後 押しできるのかという議論になっていかないとうまくつながらないような気がします。第6 回辺りで、いま取り組んでいる雇用創出に関する政策、特に最近は開業率もそんなに高くな いですし、その辺りの政策はどうなっているか。中小企業に対する支援策はどうなっている か。これは厚生労働省の枠を離れる部分もあるかもしれませんが、そういうところの情報も いただければと思います。 ○樋口座長 その点は私も前からお願いしていて、これは厚生労働省の研究会ではあります が、ほかの省庁にもかかわるところが非常に大きいと思いますので、雇用の立場から見て、 産業政策はいかにあるべきかということの資料も用意していただきたいと思います。 ○加藤委員 阿部先生と同じようなところの議論で、私はどうしてもこれだけは言いたいと 思って来たのが1つあります。それは、新卒一括採用システムです。私の大学でいま卒業の 認定をしているのですが、今年は多くが自主留年といいますか、そのような人が出てきてい ます。これを見ると、一括採用システムであるからこそいつ生まれたのか、あるいはいつ卒 業するのかということが一生の間に大きな影響を与え続けるのではないのだろうかという のが、最初の論点の中でいう一括採用システムを考える上で重要な点だと思います。  もう1点どうしても主張しておきたいのは、一括採用システムがあるからこそ、修士であ るとか博士であるという課程を出た学生の就業が非常に難しくなっている面があるのでは ないかと思います。これから日本の労働力人口は減少していく中で、労働力の質的な担保を していくためには教育が大事で、マスターを出た、あるいはドクターを出たということが、 就職を難しくしていくような1つの条件としてこの新卒一括採用システムがあるのではな いかということがあります。  短期的に見た場合の大学生、高校生の就業支援、長期的に見た場合の労働力政策において も一括採用システムを十分に議論していく必要があるのではないかと考えます。 ○白木委員 加藤先生のおっしゃられた、新卒一括採用という場合に、新卒というのは高卒 と学部卒だけを日本の企業は指しています。原則それ以外は新卒一括採用の中には入ってい ないのは問題かと思います。それは私も同感です。  もう1つは就職協定などでも関係すると思うのですが、これがなくなったときの議論は、 1990年代の半ばから後半なのですが、要するに学生と企業が長期的に時間をかけて、お互 いに見合うことによって、双方に納得のいくような就職ができるのではないかという期待の 下に始まったと思うのです。現状はご存じのとおり3割の離職が起こると言われていて、実 際に起こっています。これは、双方の見合いの期間が長かったからといって、的確なマッチ ングをした就職が可能であるということは必ずしも言えません。  ちょっと荒っぽいのですが、私はここでの2つの議論に結び付くと思っております。1つ は、一括採用するという場合に、従来型の正社員の枠を考えると、この不確実の中では躊躇 してしまう。したがって、本日の論点とものすごく結び付きますが、従来型の正社員の枠を 緩めながら、どういう形があり得るかを考えていくのが本日の流れと非常に整合的でありま す。そういうのが非常に重要だと思います。  もう1つの提案も荒っぽいのですが、インターンシップをもう少し幅広く活用できないか。 インターンシップと言っても、日本のインターンシップは1週間とか2週間で、これも見合 いの1つとして考えられているわけですが、1週間や2週間では到底見合いにならないわけ です。単に来て、お邪魔して、帰るというだけの形です。したがって半年とか1年、しかも 卒業してからもできるようなインターンシップを入れることにより、これも正社員の形を緩 めるということと一貫性があると思うのですが、そういうことを入れることにより、若い人 が入ってからすぐに辞めるとか、思ったのと全然違ったとかいろいろな話があります。それ を若干なりとも解消できる可能性があるのではないか。そういう意味で長期のインターンシ ップというのは、制度的にいろいろ工夫する必要があるのではないかと思っています。 ○佐藤委員 新卒の一括採用、これはたぶん高卒と大卒は分けて考えなければいけないと思 っています。大卒の新卒一括採用については、特に企業規模によっても違いますけれども、 正社員は新卒しか採っていないという意味で伝わってしまうのがすごく問題です。ご存じの ように、大卒でも3年で3割ぐらい辞めているということは、そういう人はちゃんと転職先 があるのです。ですから、20歳代の中途採用がすごく多いのです。新卒で、卒業したとき に正社員にならないと企業が採ってくれないという意味で伝わるのはマイナスだと思って います。企業は中途採用が非常に多いですし、前職が正社員のみを採っているわけではなく て、玄田さんのように、非正規の人も採っています。  確かに阿部さんが言われるように、卒業して無業になってしまう人が増えるのはすごく問 題だと思います。ただし、有期の仕事に就くとその先は正社員になれないというようなイメ ージで伝わるのはすごく問題だろうと思います。実態を正確に学生に伝えることがすごく大 事なのです。大企業でも中小企業でも、とりあえず働くということがすごく大事なのです。 そうすれば、次に移っていく可能性はすごく大きいと思います。新卒一括採用というのは問 題ないとは言いませんけれども、これがあまりにも過大に学生に伝わることのマイナスもす ごく大きいのではないかと思っています。 ○樋口座長 この雇用政策研究会の枠をどこまで広げるかという議論も重要かと思うので す。ここでは雇用関係にある労働者についてということで先ほどから無業という話も出てき たし、中にはインデペンデント・コントラクターとか、雇用契約にはないのだけれども、あ る意味では従属関係が企業と発生しているという働き方についてどう考えていくのか。  あるいはボランティアの問題ですが、今度の政権で社会活動参加率の引上げというのが出 てきて、そこには有償ボランティア・無償ボランティアの両方が入るのかどうかわかりませ んけれども、特に有償ボランティアのところの、ある意味ではグレーゾーンのところについ て、例えば雇用保険はもちろん適用されていないし、年金も別ですと。職域制度の下での議 論もあるのかと思いますので、ご検討いただけたらと思います。  いろいろ議論もあるかと思いますが、時間の関係もありますので、本日の議論はここまで とさせていただきます。次回は「就労促進と働き方の見直し」というテーマで検討を進めて まいります。また、現在政府で取りまとめている成長戦略の状況について報告を受けたいと 思います。 ○平嶋雇用政策課長補佐 次回第5回研究会は、3月24日の10時からこちらの省議室で開 催いたします。4月以降の日程についても、資料6に掲載しておりますのでご参照いただけ ればと思います。 ○樋口座長 本日は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係  〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2  電話 03−5253−1111(内線:5732)