10/02/18 第39回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録 第39回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会        日時:平成22年2月18日(木)         10:00〜11:00        場所:経済産業省別館 共用1111号会議室 ○岩村部会長  それでは、定刻になりましたので、ただ今から「第39回労働政策審議会労働条件分科会労災保 険部会」を開催いたします。  本日は稲葉委員、那須委員、田中伸一委員、林委員、田中恭代委員、萩尾委員がご欠席と承っ ております。  また、前回の部会以降、委員の交代がございましたので、ご紹介させていただきます。使用者側 委員として、これまでの筧公一郎委員に代わりまして、社団法人日本造船工業会の常務理事でい らっしゃいます桐明公男委員が就任されております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○桐明委員  桐明です。よろしくお願いします。 ○岩村部会長  それでは早速、本日の議事に入らせていただきます。お手元に議事次第がございますので、そ れに沿いまして進めていきたいと思います。第1の議題は「労働者派遣事業の適正な運営の確保 及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱(労働者災 害補償保険法の一部改正関係)」についてでございます。本件は、厚生労働大臣から労働政策審 議会長あての諮問案件となっております。そこで、まず事務局からこの議題につきまして説明をお 願いいたします。 ○小林労災管理課長  それでは、まず法律案要綱を読み上げさせていただいた上で、内容を説明申し上げます。 ○宮下労災管理課企画担当補佐  お手元の資料「参考1-2」をご覧ください。派遣法全体の諮問文の中に労災保険法の部分も含ま れておりますので、全体の諮問文について読み上げさせていただきます。  厚生労働省発職0217第1号  労働政策審議会 会長 諏訪康雄 殿   厚生労働省設置法第9条第1項第1号の規定に基づき、別紙「労働者派遣事業の適正な運 営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱」 について、貴会の意見を求める。   平成22年2月17日 厚生労働大臣 長妻 昭  お手元の資料1に戻っていただきたいと思います。労災保険法の部分でございます。  労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等 の一部を改正する法律案要綱(労働者災害補償保険法の一部改正関係) 第三 労働者災害補償保険法の一部改正  一 派遣先の事業主等に対する報告、文書の提出又は出頭の命令    行政庁は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法   律(二において「労働者派遣法」という。)に規定する派遣先の事業主及び船員職業安定法   に規定する船員派遣(二において「船員派遣」という。)の役務の提供を受ける者に対して、   労働者災害補償保険法の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることがで   きるものとすること。  二 派遣先の事業の事業場等への立入検査    行政庁は、労働者派遣法に規定する派遣先の事業の事業場及び船員派遣の役務の提   供を受ける者の事業場に立ち入り、関係者に質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査   させることができるものとすること。  三 罰則その他所要の規定の整備を行うものとすること。 第五 その他  一 施行期日    この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から   施行するものとすること。ただし、第二については、公布の日から起算して三年を超えない範   囲内において政令で定める日から施行するものとすること。  二 政府は、この法律の施行後三年を目途として、改正法の施行の状況等を勘案しつつ検   討を加え、必要があると認めるときは、この結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするこ   と。 ○小林労災管理課長  それでは、内容をご説明申し上げます。要綱の次に「参考1-1」がございますので、そちらをご覧 いただけますでしょうか。この法律案でございますが、ご案内のとおり派遣労働者につきましては災 害補償責任は派遣元の方にあるわけでございますが、一方で、労働安全衛生法等の災害防止の ための具体的な措置義務は派遣先に課されているところでございます。そういった中で、派遣先の 災害防止責任が労災保険制度におきましても、より反映されるような措置を講じようということで、労 災保険法についても所要の改正を行おうというものでございます。  この改正法案でございますが、1の「経緯」にございますように、平成20年の10月24日に労働政 策審議会へ労災保険法の改正を含む労働派遣制度の改正法案要綱をお諮りいたしまして国会に 提出されたところでございますが、昨年7月21日の衆議院解散に伴いまして廃案となっております。 昨年10月にあらためまして諮問がなされ、昨年末に答申が出されたところでございまして、それを 踏まえた法律案要綱が昨日、労働政策審議会に諮問されたところでございます。  労災保険関係の改正の内容でございますが、基本的には前回と同様の内容でございます。ただ し、前回は船員保険と労災保険の統合前でございましたので、施行時期につきましては2段階に なっておりました。すなわち船員派遣の方の施行時期につきましては、統合時ということになって いたわけでございますが、今回1月から船員保険との統合がなされましたので、施行日が一本化さ れているということでございます。  内容でございますが、先ほど要綱のところで申し上げましたように、一つは「派遣先の事業主等に 対する報告、文書の提出又は出頭の命令」ということでございまして、これは労災保険法第46条に 事業主あるいは事務組合への運用の規定がございますが、派遣先の事業主をそれらに追加すると いうことでございます。  二つ目が「派遣先の事業の事業場等への立入検査」ということで、これも労災保険法第48条に 立入検査の規定がございますが、そこに派遣先の事業主を追加するというものでございます。  それから「その他」ということで、罰則が掲げてございますが、これらに対する罰則が労災保険法 第51条あるいは第53条に規定がございますが、罰則の対象もこれまでは事業主あるいは事務組 合でございましたので、派遣先の事業主を追加するというものでございます。  最後の「施行期日」でございますが、先ほど申し上げましたように船員保険との統合が既になされ ているということでございますので、いずれにつきましても公布の日から起算して6月を超えない範 囲内において政令で定める日ということになっております。  説明は、以上でございます。 ○岩村部会長  ありがとうございました。ただ今、ご説明いただきましたことにつきまして、ご意見・ご質問等がござ いましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。  輪島委員、どうぞ。 ○輪島委員  確認です。資料1の本日の諮問については、前回の平成20年のものと中身については変わりが ないということ。ただし、船員の関係のものにはずれがあるので、それは措置しているけれども、中 身については変更がないと理解してよろしいでしょうか。 ○岩村部会長  事務局、お願いします。 ○小林労災管理課長  おっしゃるとおりでございます。 ○輪島委員  それでいうと、第五の施行期日についても、今ご説明があったように「6月を超えない範囲内」とい うことと、第五の二のところですけれども、「施行後の施行状況を勘案して、必要があると認めるとき は」というのは、派遣法本体それから今度の労災保険法本体も含むと理解するのでしょうか。 ○小林労災管理課長  概念的には、そういうことになります。 ○岩村部会長  「必要があれば、」ですね。 ○輪島委員  ありがとうございました。 ○岩村部会長  他には、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、特にご意見もないようでございますので、諮問のありました本件につきましては、当部 会としては「妥当と認める」ということで労働条件分科会に報告したいと考えますが、よろしいでしょ うか。 (「異議なし」の声あり) ○岩村部会長  ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。  報告文につきましては私にご一任いただくということで、よろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○岩村部会長  ありがとうございます。それでは、そのように取り計らうことにいたします。  それでは、次に議題2でございます。「労働者災害補償保険法施行規則及び炭鉱災害による一 酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱(介護補償給付及 び介護給付の見直し関係)」についてでございます。本件につきましても、先ほどと同様に厚生労 働大臣から労働政策審議会長あての諮問案件となっております。  それでは、事務局より資料に基づきながら説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたし ます。 ○小林労災管理課長  それでは、まず省令案要綱につきまして読み上げた上で、内容をご説明申し上げます。 ○宮下労災管理課企画担当補佐  お手元の資料2をご覧ください。読み上げさせていただきます。  厚生労働省発基労0218第1号  労働政策審議会 会長 諏訪康雄殿   別紙「労働者災害補償保険法施行規則及び炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別  措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、貴会の意見を求める。   平成22年2月18日  厚生労働大臣 長妻 昭 「別紙」  労働者災害補償保険法施行規則及び炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法 施行規則の一部を改正する省令案要綱 第一 労働者災害補償保険法施行規則の一部改正  一 常時介護に係る介護補償給付及び介護給付について、介護に要する費用として支出し   た費用がその額を超えるときに支給する限度額を、月額十万四千七百三十円(現行十万四   千九百六十円)に、介護に要する費用を支出して介護を受けた日がない場合等であって、   親族又はこれに準ずる者による介護を受けた日があるときに支給する額を、月額五万六千   七百九十円(現行五万六千九百三十円)に改めること。  二 随時介護に係る介護補償給付及び介護給付について、介護に要する費用として支出し   た費用がその額を超えるときに支給する限度額を、月額五万二千三百七十円(現行五万二   千四百八十円)に、介護に要する費用を支出して介護を受けた日がない場合等であって、   親族又はこれに準ずる者による介護を受けた日があるときに支給する額を、月額二万人千   四百円(現行二万人千四百七十円)に改めること。 第二 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則の一部改正   炭鉱災害による一酸化炭素中毒症について労災保険の療養補償給付を受けている者で  あって常時介護を必要とするものに支給する介護料の額を、介護の程度に応じて月額五万  六千七百九十円、四万二千五百九十円又は二万人千四百円(現行五万六千九百三十円、四  万二千七百円又は二万人千四百七十円)に、介護に要する費用として支出した費用がこれを  超えるときに支給する限度額を、介護の程度に応じて月額十万四千七百三十円、七万人千五  百五十円又は五万二千三百七十円(現行十万四千九百六十円、七万人千七百二十円又は五  万二千四百八十円)に改めること。 第三 施行期日等   一 この省令は、平成二十二年四月一日から施行すること。   二 この省令の施行に関し、必要な経過措置を定めること。 ○小林労災管理課長  それでは、内容でございます。「参考2-1」をご覧いただきたいと思います。1の「趣旨」にございま すように、労災保険法におきましては、労働災害により介護を要する状態となった労働者につきま しては、介護に要した費用を介護(補償)給付として支給しているところでございます。今般、他の制 度の介護手当との均衡等を考慮して見直すものでございますが、具体的には原爆被爆者援護法 の介護手当との均衡を考慮して見直しを行うということでございます。  また、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法の規定に基づきまして支給する介 護料においても、同様の見直しを行うものでございます。これらの見直しにつきましては、具体的に は人事院勧告のアップ率・ダウン率によりまして毎年上げ下げを行っているものでございまして、平 成22年度につきましては人事院勧告の方がマイナス0.22%ということでございましたので、0.22% の引き下げを行うものでございます。具体的な額は2の表にあるとおりでございまして、施行日は平 成22年4月1日を予定しているところでございます。  説明は、以上でございます。 ○岩村部会長  ありがとうございました。ただ今、ご説明いただきましたことにつきまして、ご意見・ご質問等を伺い たいと思います。いかがでしょうか。  新谷委員、どうぞ。 ○新谷委員  1点、参考のために教えていただきたいのですが。今回の制度改正は、他の制度との均衡を考 慮してということは理解しましたが、おわかりになれば、対象となる方々が今、どれぐらいおられるの か。介護を要する方、随時介護を要する方が。おわかりになればで結構です。後でも構いません。 ○岩村部会長  事務局、いかがでしょうか。 ○小林労災管理課長  それでは、平成20年後の支給件数ということで申し上げます。まず、労災保険法に基づく介護 (補償)給付の支給件数でございますが、平成20年度におきまして常時介護を要する者は4万99 件、それから随時介護を要する者は1万4,846件ということで計5万4,945件となっております。  それから、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法に基づく介護料支給人数で ございますが、平成20年度におきましては、まず常時監視及び介助を要する者が3名、それから 常時監視を要し、随時介助を必要とする者が6名、常時監視を要するが、通常は介助を要しない 者が23名で計32名となっております。 ○岩村部会長  よろしいでしょうか。その他、いかがでございますか。特にございませんでしょうか。  それでは、特にご意見もないようでございますので、諮問のあった本件につきましては、当部会と しては「妥当と認める」ということで労働条件分科会に報告したいと考えますが、それでよろしいで しょうか。 (「異議なし」の声あり) ○岩村部会長  ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。  報告文につきましては、先ほどと同様に私にご一任いただくということでよろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○岩村部会長  それでは、そのようにさせていただきます。  それでは、議事次第の3番目「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱」についてで す。この件につきましても、やはり厚生労働大臣から労働政策審議会長あての諮問案件となって おります。  それでは、資料が提出されておりますので、それに基づき事務局からご説明いただきたいと思い ます。 ○小林労災管理課長  それではまず省令案要綱を読み上げた上で、内容をご説明申し上げます。 ○宮下労災管理課企画担当補佐  それでは、資料3をご覧ください。  厚生労働省発基労0218第2号  労働政策審議会 会長 諏訪康雄 殿   別紙「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、貴会の意見を求める。  平成22年2月18日  厚生労働大臣 長妻 昭   労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱 第一 業務上の疾病の範囲の改正  一 労働基準法施行規則別表第一の二第二号4を、電子計算機への入力を反復して行う業   務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手   指の運動器障害とすること。  二 労働基準法施行規則別表第一の二に規定する業務上の疾病の範囲に、次に掲げる疾   病を追加するものとすること。  (一) 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚  (二) 塩化ビニルにさらされる業務による肝細胞がん  (三) 電離放射線にさらされる業務による多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫  (四) 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出     血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死      を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病  (五) 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業    務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病  三 労働基準法施行規則別表第一の二第六号1に規定する業務に、介護の業務を追加す   るものとすること。 第二 施行期日   この省令は、公布の日から施行するものとすること。 ○小林労災管理課長  それでは、参考3-1から参考3-4までお付けしておりますが、まず参考3-1をご覧いただきたい と思います。1の「趣旨」にございますが、労働基準法第75条第2項の規定に基づく業務上の疾病 の範囲につきましては、労働基準法施行規則別表第1の2において具体的に定められております。 これは参考3-2に「業務上疾病に関する法令等」ということで条文をお付けしておりますが、一番 上にございますように、労働基準法第75条第2項で「前項に規定する業務上の疾病及び療養の 範囲は、厚生労働省令で定める」とされております。また、労災保険法は、こうした労働基準法の 災害補償責任を担保するものでございますので、それによっているわけでございますが、一番下に ございますように「労働基準法施行規則第35条におきましてその業務上の疾病につきましては、 別表第1の2に掲げる疾病とする」とされているところでございます。  1枚おめくりいただきますと、別表第1の2がございまして、第1号が「業務上の負傷に起因する 疾病」、第2号が「物理的因子による次に掲げる疾病」というような形で、4ページまでございますが、 第9号「その他業務に起因することの明らかな疾病」ということで列挙されております。各号のそれ ぞれ終わりのところをご覧いただきますと、例えば第2号ですと13番目に「1から12までに掲げるも ののほか、これらの疾病に付随する疾病その他物理的因子にさらされる業務に起因することの明ら かな疾病」というような包括的な条項がございまして、一番最後の第9号のところに「その他業務に 起因することの明らかな疾病」という条項があるというような形になっております。例示列挙されてい ないものにつきましては、そういった包括的な条項の解釈という形で対処してきているわけでござい ますが、医学的に因果関係が確立したと認められるものにつきましては順次、例示列挙していくと いう形がこれまでも取られてきたところでございます。  参考3-4に「労働基準法施行規則第35条専門検討会報告書」を付けておりますが、業務上の 疾病の範囲につきましては、かつて中央労働基準審議会あるいは労災保険審議会の答申におき まして医学専門家による検討の場を設けて検討すべしということを指摘された経緯がございます。 そういったことを踏まえて、必要が認められる際にこの検討を開催してきたところでございますが、今 般この報告書が新たに取りまとめられたということでございますので、これを踏まえて先ほどの別表 の改正を行うものでございます。この報告書の一番最後の8ページ、9ページをご覧いただきますと、 「以上の検討結果のとおり」ということで、「本検討会としては以下のものについて結論を得たので、 行政においては速やかに労基則を改正することを望むものである」という形で取りまとめがなされた ところでございます。  これを踏まえまして今般、別表の改正を行いたいということでございまして、参考3-1に再びお戻 りいただきたいと存じます。まず、趣旨のところは今申し上げたとおりでございまして、具体的な改 正の内容でございますが、これは先ほどの別表第1の2と適宜照らし合わせてご覧いただきたいと 思いますが、まず「対象業務等を見直すもの」ということで[1]労基則別表第1の2第3号4(上肢障 害関係)についてということでございます。これは別表の3号の4には現在「せん孔、印書、電話交 換又は速記の業務、金銭登録機を使用する業務」といった形で書かれておりまして、いわゆるキー パンチャーの定義の紹介というようなところに偏った記述となっていたわけでございますので、これ を時代に即応した形に改める必要があろうということで、先ほど要綱のところで申し上げましたが 「電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、 頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害とする」というものでございます。次に、要綱と若 干順番がずれますが、[2]でございます。労基則別表第1の2第6号1(伝染性疾患関係)ということ でございまして、これは第6号の1で、現在はこの感染症につきましては、患者の診療若しくは看 護の業務等による伝染性疾患という形になっておりますが、ここの業務の対象として介護の業務を 追加するというものでございます。  それから、(2)は「業務上の疾病の範囲を見直すもの」ということでございまして、以下の五つの疾 病を業務上の疾病の範囲に追加するというものでございます。[1]が石綿関係でございまして、[2]が 塩化ビニルの関係、[3]が電離放射線の関係、それから[4]は、いわゆる脳・心疾患あるいは過労死 の類型でございます。[5]がいわゆる精神障害等の関係でございまして、この[4][5]につきましては、 いずれも先ほどご覧いただきました9号の「その他業務に起因することの明らかな疾病」というとこ ろの解釈としてそれぞれ認定基準あるいは判断指針というものを設けて認定を行ってきているとこ ろでございます。それに基づきます行政判断が相当程度積み上げられまして、裁判実務におきま しても概ねそれが定着しているということの中で、因果関係というのが医学経験則上確立したと認 められるということで、別表に列挙しようということでございます。今までは、9号の「業務に起因する ことが明らかな疾病」ということで読んでおりましたものを、今回こういった形で具体的に症例に列挙 するということでございますが、これは9号にございますように「業務に起因することが明らかな疾病」 ということの趣旨は全く変わるものではございません。それを今回は明確化すなわち具体的に列挙 するという趣旨でございます。  説明は以上でございますが、今後の手続きといたしまして、労働基準法第113条におきまして労 働基準法に基づく命令につきましては公聴会の手続きを経るということが書かれておりますので、 今後、公聴会の手続きを経ていく必要がございます。それから、パブリック・コメントに付す必要があ ると考えておりますので、今後パブリックコメントに掛けることを予定しております。  説明は以上でございます。 ○岩村部会長  ありがとうございました。ただ今、ご説明いただきました「労働基準法施行規則の一部を改正する 省令案要綱」につきまして、ご意見・ご質問があればお願いしたいと思います。  新谷委員、どうぞ。 ○新谷委員  2点、質問させていただきたいと思います。今回の省令の改正につきましては、これまで通達レベ ルとされていた内容が規則の中に取り込まれて明確化されるということについては評価したいと思 っております。  その上で2点、確認のための質問をさせていただきたいと思います。まず1点目は、資料3の要 綱案の第一の(五)のところです。ここに「人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に」と書 いてありますけれども、「人の生命にかかわる事故への遭遇」というのはPTSD等の後遺障害だと思 いますけれども、これは例示列挙だと思いますが、これに限定されるようなことがないような従来ど おりの通達レベルの運用どおりの内容と変わっていないということを、まず確認させていただきた い。  もう1点は、今付けていただいています資料の労働基準法施行規則第35条についての専門委 員会の報告書「参考3-4」の9ページの一番最後に、今回、省令の要綱案に取り込まれたものの 他に積残しの課題として、理美容における接触皮膚炎やインジウムの健康への影響、それから製 造業における新物質の利用等について、分科会を設けて検討を進めることを望むと書いてありま すので、この分科会の設置の見込みなり、検討の開始についての見通しなどがありましたら、お聞 かせいただきたいと思います。  以上です。 ○岩村部会長  ありがとうございました。2点、おたずねだと思いますので、事務局からお願いします。 ○渡辺職業病認定対策室長  職業病認定対策室長でございます。ただ今のご質問ですが、精神障害の関係につきましては、 ただ今お話がありましたとおり、判断指針という労働基準局長通達でこれまでも運用してきておりま して、この省令の改正後も判断指針で運用することは変わりません。なお、今回の省令の規定に当 たりましては、心理的負荷のある業務というだけでは漠然としている部分もあるということで、典型的 なものが例示として掲げられたという理解をしていただければと思います。  それから、報告書末尾の分科会の関係ですが、一応私どもとしては来年度にその分科会のため のいろいろな準備作業を進めて、できれば分科会も来年度にできればと考えております。 ○岩村部会長  新谷委員、よろしいでしょうか。 ○新谷委員  はい。速やかな設置をお願いしたいと思います。 ○岩村部会長  その他、いかがでしょうか。  野寺委員、どうぞ。 ○野寺委員  新たに明文化する業務上の疾病の範囲の書き方ですが、大変技術的なことですけれども、現在 の別表第1の2の9号のところに書くか、それとも別の方法として、例えば9号に各疾病を書いて、 10号に「その他業務に起因することの明らかな疾病」について書くのですか。 ○小林労災管理課長  まず、今回追加するものは五つございますが、参考3-1の2の(2)[1]〜[5]でご覧いただきますと、 [1]〜[3]につきましては、例えば[1]の石綿につきましては、これは4号に「化学物質等による次に掲 げる疾病」ということで現在八つ掲げておりますが、その中に一つ番号を追加する形でこの「石綿に さらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚」を加える。それから、塩化ビニルと電 離放射線でございますが、これは7号に「がん原性物質」等ということで9番目が塩化ビニル、10番 目が電離放射線ということで既にございますので、ここにその疾病の種類を加える形になろうかと思 います。  次に[4][5]でございますが、これは新たに8号、9号という形で号を立てたいと思っております。従 って、現在の8号、9号は二つ間に入りますので10号、11号という形で後ろにずれるという改正を 考えております。 ○岩村部会長  そうすると、石綿の新しいものは結局7号ではなくて、4号のところに新たに立てて入れるというこ とですか。 ○小林労災管理課長  7号はがんの関係ですので、この石綿につきましては4号の化学物質等の疾病の方へ分類する ことが適当であるということで、4号の中に立てることを考えております。 ○岩村部会長  わかりました。7号のところへ入れると、がんなので合わないと思いましたので。  他は、いかがでしょうか。中窪委員、どうぞ。 ○中窪委員  3点ですけれど。まず基本的には、専門検討会で検討していただいて付け加えてはどうかという ご提案ですので、大変結構なことではないかと思います。特に脳・心疾患と精神疾患について、今 までは9号でやっていたのを、今回、明示して出すということは、意義のあることだと思います。  それから、2点目は技術的なことですけれども、8号に「前各号に掲げるもののほか、厚生労働大 臣の指定する疾病」とありますけれども、これと普通に列挙しているものとの使い分けといいますか、 それはどのように考えておられるのかというところを教えていただければと思います。  3点目としまして、他にも今後いろいろと知見が進めば明らかになる疾病もあると思います。特に 最近は安全衛生との関係で職場の禁煙を進めるという報道があり、私は遅過ぎたけれども大変結 構であると思っていますが、労災の方でもこれについて、認定がどのようになされているのか。多分 この9号ではないかと思いますけれども、たばこの煙による病気について、どのような基準でどれぐ らい認定があるのかということが、もしわかれば教えていただきたいと思います。 ○岩村部会長  ただ今、ご質問があったことについて、事務局からお願いします。 ○小林労災管理課長  まず、一つ目のおたずねにつきまして、お答え申し上げます。なかなか回答が難しいのですが、 現在は1号から9号までございます。当初、この別表が作成されたときは恐らく8号の「厚生労働大 臣の指定する疾病」というところで対象疾病を追加するという考えがあり、むしろ9号というのは実際 にはあまり起こらないものを最後に包括的に読むという考え方があったのだと思います。そういった 中で、現在8号の「厚生労働大臣の指定する疾病」というのは告示という形で三つの疾病が告示さ れているという扱いになっています。  今回は9号で読み込んでいたものを省令に列挙することになりますので、8号で告示やっている ものと、9号で今回省令になるものとがうまく整理されているのかという部分は確かにあるかと思いま すが、一方で先ほど報告書の末尾のところにございましたが、新たな化学物質による疾病につきま しては、今後さらに検討していくことになっておりまして、現在は告示でやっておりますものにつきま しても、そのときに省令の方の具体的な規定に移すのが適当であれば移す。その際に併せて整理 をしたいと思っております。 ○渡辺職業病認定対策室長  喫煙の関係についてのご質問でございますが、現在能動的な喫煙あるいは受動的、両方を含め まして労災で業務上と認定したものはないと承知しております。実際にこれまでその関係について 本省で検討した経緯もありませんので、当然認定基準のようなものも設けておりません。今後、もし 請求というようなことがあれば別表での関係で申しますと9号の「その他業務に起因することの明ら かな疾病」に該当するか否かという観点でどういう状況・事実があったのかというようなこと、さらに医 学的な観点から検討していくことになるだろうと思います。 ○中窪委員  なかったことは、初めて知りました。 ○岩村部会長  よろしいですね。  その他、いかがでしょうか。 ○小島委員  先ほど出た意見と重複するかもしれないのですが、(2)の業務上の疾病の範囲のところで、[4][5] で新たに心疾患と精神疾患が加わるということですが、今般4月からの労働基準法の改正で過重 労働による心疾患、あるいは精神疾患の予防という趣旨がある中で、[4]には「長期間にわたる長時 間の業務」が明確にあるのですが、精神疾患の方でPTSDより長時間過重労働の方が事例として は多いと思うのですが、それがすべて「その他」と言ってしまうということからすると、[4]にはせっかく 項が起こしてあるのですから、[5]にもそのような長期間にわたる長時間の業務というのが入らないか なと思ったのです。これは「その他」でくくるのはあまりにも大きいと思いますから。いかがでしょうか。 ○岩村部会長  では、補償課長にお願いします。 ○田中補償課長  脳・心、精神疾患両方共通して、ご指摘のとおり発症に影響を与える要因として長時間労働があ ることは、行政実務上もあるいは裁判実務上も明らかに認められているところでございます。そのう ち、脳・心疾患につきましては、特に認定基準をつくりますときの考え方として、睡眠時間が短くな ることの影響が、長時間労働との関連で明確に報告され、それに基づいて労働時間をかなり大き な要素として業務上か業務外かを判断してきた実績が積み上がっており、今回、典型例として掲 げるにふさわしいと考えております。  一方、精神疾患につきましては長時間労働が一つの大きな要素であることは間違いないのです けれども、ご存じのとおり精神疾患の発症の仕組みといいますのは、かなり長時間労働のような事 例であっても、その他の内的要因・外的要因を総合・勘案して判断するということでございまして、 現在も心理的負荷評価表を判断指針の中に入れることで、できるだけわかりやすく判断はしており ますけれども、総合評価という前提がございまして、長時間労働を単体で取り出して要因とするに は未だ至らないと考えております。  今回の例示につきましては、明確さの観点から単体で精神障害の要因となり得るものを例示する ことがわかりやすいのではないかという考え方のもとで、「人の生命にかかわる事故への遭遇」とさ せていただきました。  繰り返しますけれども、これまでの判断指針に基づく判断ということに何ら変わりはございません ので、その趣旨をぜひご理解いただきたいと思います。 ○岩村部会長  よろしいでしょうか。その他、いかがでしょうか。  これは私から、あくまでも後学のために少し伺いたいのですが。今回は医学の検証が進んで、新 しい疾病を加えるということなのですが、その逆は起こり得るのかどうか。起こったことはあるのか。あ るいは理論的にはあるいうことなのか。そこを教えていただければと思います。今までは、こういう有 害物質があって、そこからこういう疾病が発生すると考えていたのだけれど、医学が発達して細かく 調べていったら、どうも違うようだということになって、逆にリストから外れるというような実例はあった のかどうか。理論的にはあり得るのかということを教えていただければと思います。 ○渡辺職業病認定対策室長  昭和53年に今の別表の形になっていますが、リストから外れた例は少なくともそれ以降はないと いうことでございます。 ○田中補償課長  理論的に言いますと、医学も万全ではありませんので、岩村部会長がおっしゃるとおり、医学的 知見が新たに生じて、これまで有害因子とされていたものが、そうではないということが仮に明らか になった場合には、そういう医学的知見を前提に認定基準を考えていく必要があります。労災の因 果関係については最新の医学的知見を踏まえ判断するという原則を変えない限り、理論的には起 こり得るということでございます。 ○岩村部会長  ありがとうございます。単なる好奇心からのおたずねですので。特に深い意味があったということで はありません。  他に、いかがでしょうか。伊丹委員、どうぞ。 ○伊丹委員  今回の専門検討会の方で出されていますが、海外の国際機関からの、1964年のILOからの職業 病一覧表での勧告はないということのようですが、例えばグローバル企業の立場でいうと、こういっ た問題というのは一つの問題になり得るわけで、そうした中で、日本のこういった決め事がILOとの 関係においては、それで通ると思いますけれども、世界的に見て、どういうレベルなのか。あるいは 世界で見て何か懸案になっているような問題というのはILOの勧告の中にはないにしても、潜在的 に何かあり得るものがあるのかどうか。それを教えていただきたい。 ○渡辺職業病認定対策室長  今私どもの方で具体的に何か問題になっているといったようなものがあるとは理解しておりません。 この職業病リストですが、ILOが一応決めているものがありますけれども、具体的なものにつきまし ては、各国それぞれかなりばらつきがあります。その理由としてはそれぞれの国の産業事情が異な るということや、労災制度の違いによっても、やはりリストの作り方が違っていますので、そういう意味 では各国かなりばらつきがありまして、なかなか同列にはできないということです。 ○伊丹委員  提案もないということですか。 ○渡辺職業病認定対策室長  そうですね。今現在、直ちに検討しなければいけないというようなものはありません。 ○岩村部会長  その他、いかがでございますか。  それでは、特に今日の段階ではこれ以上は、ご意見あるいはご質問等はないということだと思い ます。ただ、本件につきましては、先ほど小林労災管理課長からも説明がありましたように、この後 公聴会やパブリック・コメントという手続きも予定されておりますので、それらの状況も踏まえまして、 この案件につきましては、次回の部会においてご議論いただきたいと思います。 それで、よろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○岩村部会長  ありがとうございます。  それでは、この際ということで何かご意見等がございますでしょうか。労災保険の運営その他につ いて。  よろしいですか。それでは、特にないということでございますので、以上で、今日の部会は終了さ せていただきます。  次回の開催につきまして、事務局からご案内があると思いますので、よろしくお願いいたします。 ○小林労災管理課長  お手元に日程調整表を置かせていただいております。次回の部会の日程調整をできるだけ早く したいと考えております。大変恐縮でございますが、お手元の日程調整表にご都合の悪い時間帯 をご記入いただければ、後ほど事務局で回収させていただきたいと思いますので、何とぞよろしく お願い申し上げます。  いただいたものを基に調整させていただきまして、あらためて日程をご連絡申し上げる形にさせて いただければと思っております。 ○岩村部会長  そういうことでございますので、日程調整表のご記入にご協力のほど、お願いいたします。  以上をもちまして、今日の部会は終了させていただきたいと思います。本日の議事録の署名委 員でございますけれども、労働者代表の藤田委員、使用者代表の佐々木委員にお願いいたしま す。  本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。それでは、今日はこれで終了いたします。 照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係             03−5253−1111(内線5436)