10/02/18 第55回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第55回厚生科学審議会科学技術部会 ○ 日  時 平成22年2月18日(木)15:30〜17:30 ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階) ○ 出 席 者   【委  員】永井部会長         石井委員   今井委員   岩谷委員   金澤委員         川越委員   木下委員   桐野委員   西島委員         廣橋委員   福井委員   松田委員   南(砂)委員         宮田委員   宮村委員   望月委員   森嶌委員 ○ 議  題   1.平成22年度厚生労働省科学技術関係予算(案)について   2.ヒト幹細胞臨床研究について   3.戦略研究について   4.今後の厚生労働科学研究について   5.その他 ○ 配布資料   資料1. 平成22年度科学技術関係施策予算案の概要について   資料2. ヒト幹細胞臨床研究実施計画について   資料3. 新規戦略研究の課題候補(案)について   資料4−1.今後の厚生労働科学研究の論点整理に向けて   資料4−2.前回の科学技術部会(平成21年12月25日開催)におけるご意         見等   資料4−3.厚生労働科学研究に関するアンケート調査における主なご意         見の概要   資料5−1.総合科学技術会議の動向について−科学技術関係予算の重点         化・効率化に向けた取組について−   資料5−2.遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について 参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿   参考資料2.ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資         料   参考資料3.「新成長戦略(基本方針)」について(平成21年12月30日閣         議決定)   参考資料4.総合科学技術会議における科学技術関係施策の優先度判定等         の実施に関する意見募集(パブリックコメント)の概要   参考資料5.科学技術部会における厚生労働科学研究の方向性等に関する         主な意見(平成21年4月以降)(第54回科学技術部会資料) ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしており ます注意事項をお守りくださいますようお願いします。  定刻になりましたので、ただ今から第55回厚生科学審議会科学技術部会を開 催いたします。委員の皆様にはご多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げま す。  本日は、井部委員、佐藤委員、末松委員、橋本委員、南裕子委員からご欠席 のご連絡をいただいています。遅れてみえる先生もいらっしゃいますが、委員 22名のうち出席委員が過半数を超えていますので、会議が成立いたしますこと をご報告いたします。  続きまして、本日の会議資料の確認をお願いします。資料の欠落等ございま したらご指摘くださいますようお願いします。議事次第に配布資料の一覧がご ざいます。資料1が「平成22年度科学技術関係施策予算案の概要について」で す。資料2が「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」、資料3が「新規戦略研 究の課題候補(案)について」、資料4-1が「今後の厚生労働科学研究の論点整 理に向けて」、資料4-2が「前回の科学技術部会(平成21年12月25日開催) におけるご意見等」という資料です。資料4-3が「厚生労働科学研究に関する アンケート調査における主なご意見の概要」です。資料5-1が「総合科学技術 会議の動向について−科学技術関係予算の重点化・効率化に向けた取組につい て−」、資料5-2が「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、 参考資料として、5点、名簿等をお配りしています。資料の関係はよろしいでし ょうか。  それでは、部会長、議事の進行をよろしくお願いします。 ○永井部会長  早速、議事に入りたいと思います。最初に、平成22年度厚生労働省科学技術 関係予算(案)について、事務局よりご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  資料1をご覧ください。平成22年度科学技術関係施策予算案の概要につきま してご説明します。  1頁目は、科学技術研究の推進に係る基本的考え方というポンチ絵です。3本 の柱立てにつきまして記載しています。左から健康安心の推進ということで、 こちらにございますように、母性及び乳幼児の健康保持増進に係る研究、生活 習慣病に関する研究、こころの健康の推進に関する研究、がん予防・診断・治 療法の研究、介護予防の推進に関する研究、免疫・アレルギー疾患の克服に向 けた研究、障害・難病等のQOL向上のための研究等があります。真ん中は、先 端医療の実現として、そのための基盤技術の研究や治験・臨床研究の基盤整備 の推進、健康研究の推進等が含まれます。一番右には、健康安全の確保として、 新興・再興感染症等の研究、健康危機管理対策の研究、労働安全衛生の研究、 医療等の安全の研究、医薬品・医療機器等のレギュラトリーサイエンスの研究、 食品の安全の研究等がございます。これらの幅広い課題につきまして、下にあ りますように第3期科学技術基本計画等に基づいて推進し、上にあります安全・ 安心で質の高い健康生活を実現しようというのが基本的な考え方です。  2頁は、平成22年度科学技術関係予算案の概要を示しております。科学技術 関係予算につきましては、国立高度専門医療センターの独立行政法人化に伴う 科学技術関係予算の増がありまして、対前年度比14%の増ということになって います。総額としては、1,541億円です。そのうち、厚生労働科学研究費補助金 につきましては、472億円となっております。前年度から約11.5億円、率にし て2.4%の減額になっています。今回、非常に厳しい財政状況の中、かなり厳し いやり取り等があった上で予算編成がなされております。大規模な研究で終期 が来たものがある研究事業等につきましては、減額が大きいところもございま すが、総合科学技術会議の評価も踏まえまして、総額ではあまり大きな減額と はならず、このような形になっています。2頁の下の欄外ですが、研究類型につ いてですが、指定型と若手育成型については拡充を図りたいという考えがござ いまして、それぞれ来年度につきましては、20.3%、8.9%の増となっています。  3頁は、科学技術関係予算額(案)の概要ということで、少し詳しいものにな っています。厚生労働科学研究費補助金の他、関係する予算等もこの中で示し ております。なお、2番の健康安心の推進の中の(1)にあります難治性疾患克服 研究経費につきましては、要求から増査定がなされ、前年度と同額の100億円 ということになっております。拡充した施策としては、医薬品・医療機器等レ ギュラトリーサイエンス総合研究経費、新型インフルエンザ等新興・再興感染 症研究経費、肝炎等克服緊急対策研究経費、認知症対策総合研究経費、成育疾 患克服等次世代育成基盤研究経費、再生医療実用化研究経費がございます。  4頁には、平成22年度の厚生労働科学研究費補助金の予算額(案)の概要と いうことで、更に細かい数字の表を載せております。資料1の説明については 以上でございます。 ○永井部会長  ありがとうございました。ただ今のご説明につきましてご意見、ご質問ござ いますか。 ○廣橋部会長代理  厚生労働省の科学技術関係予算、平成22年度に向けて190億円増になってい る。この14%増というのは、特会にあったナショナルセンター経費が表に出た からこうなったと説明されたのですけれども、その次の頁を見ると特会のもの も含んだ総計になっているので、そういう説明でいいのかどうか。何にこの予 算が重点的に配分されたのかということをお聞きします。 ○坂本研究企画官  科学技術関係予算では、ナショナルセンターの関係は研究所関係の経費がこ れまで計上されておりましたが、運営費交付金化されるということで、総額が 科学技術関係予算という整理に変わったことがあります。 ○廣橋部会長代理  そういうものを除くと、実質的に増になったのはわりと少ないということな のですね。 ○坂本研究企画官  財政状況が非常に厳しい中でございますので、伸びているということにはな っておりません。 ○森嶌委員  大変厳しい中で予算を確保していただいているということは非常に理解をし ておりますけれども、国の基本的な方針として参考資料が配られておりますよ うに、医療分野を成長産業としてやっていこうではないかということになって おりますけれども、そういう大きな方針がある中で、実質は予算が減額になっ ていると。これは大方針と違う方向に行っているのではないかという気がしま すから、これからまだ復活折衝ができるのかどうかよく分かりませんけれども、 もう少し大方針を重要視して、その方針にあった予算配分に是非努力をしてい ただきたいと思います。 ○坂本研究企画官  今、おそらく新成長戦略の基本方針のことを言われているのだろうと思いま すが、タイミングとして、あちらは12月30日に決定ということですので、今 後我々もそれを踏まえて、いろいろなところで、科学技術や研究について必要 性の十分な説明をしていこうと考えております。 ○金澤委員  ちょっと伺いたいのですが、3頁の「2.健康安心の推進」、その中にかつて、 うつとかそういう心の病気のことがあったような気がするのだけれども、これ はどこに入っているのですか。全然出てこないのです。 ○坂本研究企画官  障害の研究の方にそういうものを統合しております。 ○金澤委員  「2.(9)」ですか。 ○坂本研究企画官  そうです。 ○金澤委員  間違いないね。 ○坂本研究企画官  今年度から新しく統合して、「(仮称)」がついているものでございます。 ○宮田委員  よろしいでしょうか。独法化等があって整理しにくくなっているのですけれ ども、例えば運営費交付金化したために増えた予算が370億円ぐらいあって、 一方で試験研究機関等のところで56億円減っていますよね。ちょっと整理して いただきたいのですけれども、今まで去年の段階で我々が認識していた厚生労 働省の科学技術関係予算に相当する数字というのは、どれぐらいで今回の予算 ですと、私の大雑把な計算だと160億円ぐらい減ったのかという誤解をしてし まうといけないので、去年のベースで比べていただけませんか。 ○坂本研究企画官  予算に仕切りがなくなったので、そういう計算が物理的にできないことにな るのですが。 ○宮田委員  それは、よくやる手なのですけれども、そこをあえてネットでどれぐらい。 少なくともパッと見た限りでは減っていますよね。10%ぐらい減ったのではな いかと思っていますが、それはどのようにお考えでしょうか。 ○坂本研究企画官  先ほど言いましたように、いろいろ財政状況が厳しい中、結果として今回は こういう形になったというご説明以上のことは、今の段階ではできないのです が、ご指摘のやり方では、いろいろ仮定を置かざるを得ませんし、我々の方で 予算としては出していない数字になってしまうので、そういうやり方の比較は 難しいというご説明にならざるを得ないと思います。 ○宮田委員  そういったことの上で、あえて言えば、少なくとも私の認識では減ったもの だと考えさせていただいて、企画官のご説明でも財政状況厳しき折りというこ とで、たぶんそれに関しては肯定的な答えが返ってきたという認識にさせてい ただきますが、先ほど、森嶌先生のご指摘にもありましたけれども、国の成長 戦略が打ち出された以上、次の年の予算になるかもしれませんし、補正になる のかもしれませんけれども、大変だと思いますけれども、その時はもっと頑張 って厚生労働関係の科学技術関係予算というものを、是非努力をして、今度は 上向きにしていただくようにご努力願いたいと申し上げたいと思います。 ○永井部会長  その他いかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしご意見がございません でしたら議事の2へ進ませていただきます。ヒト幹細胞臨床研究につきまして ご審議いただきたいと思います。事務局よりご説明をお願いします。 ○医政局研究開発振興課  ヒト幹細胞臨床研究につきましては、冊子となっております資料2を用いて ご説明させていただきます。  ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に基づいて申請されました、ヒト 幹細胞臨床研究実施計画について、専門委員会でありますヒト幹細胞臨床研究 に関する審査委員会で審議された結果、指針への適合性が了承されました申請4 件につきましてご報告申し上げます。  今回、ご報告申し上げますのは、表紙にございますように東京医科歯科大学 医学部、社団法人有隣厚生会東部病院、医療法人天神会新古賀病院、島根大学 医学部の多施設共同研究の報告でございます。これらの4課題は、すべて同じ プロトコールによる多施設共同研究に参加する研究機関でございます。実施計 画の概要と審査委員会での審議経過について、申請日の最も早かった東京医科 歯科大学医学部の資料を主に用いてご報告申し上げます。  1頁目は、東京医科歯科大学医学部からの申請です。末梢動脈疾患患者に対す るG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験に関してヒ ト幹細胞臨床研究に関する審査委員会永井委員長からの報告です。  2頁目は研究実施計画の概要です。研究責任者は、東京医科歯科大学医学部の 金子英司先生です。臨床研究の概要をご説明致します。また、同様に15頁目に ポンチ絵がございますので、そちらもご参照ください。この研究の対象は、既 存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患(慢性閉塞性動脈硬化症・バージャー病)と なっております。G-CSF皮下注射から4日目に自己末梢血を採取いたしまして、 アフェレシスにより単核球を採取いたします。末梢動脈疾患患肢に0.5mLずつ 70カ所から150カ所の筋肉内に注射をいたしまして、末梢血管の再生効果を見 る研究です。本研究は、計21施設が参加予定の多施設共同研究として計画され ておりまして、目標症例数は144例。無作為に割り付けて行うという治療の有 効性と安全性を比較評価するものです。本プロトコールについては、札幌北楡 病院の他、既に8施設で了承されております。審査委員会では、研究機関の倫 理審査の内容と研究機関における施設の基準につきまして中心に審査されてお ります。  3頁目からは、審査委員会の審議概要です。研究機関における審査委員の構成 が不十分でありまして、指針の要件を満たす委員の出席の上再審議を行ってい ただきまして、倫理審査委員会で承認されています。その訂正内容をヒト幹細 胞臨床研究の審査委員会で再審議いたしまして、了承されております。  5頁以降に申請書と実施計画書、被験者への説明文書と同意書がございます。 43頁目には、東部病院の審議概要がございます。また、83頁目には、新古賀病 院の審議概要がございます。123頁目には、島根大学医学部の審議概要がござい ます。それぞれ、倫理審査委員会の指針の適合性について問題点が指摘されて おりまして、最終的には適正に運営され、承認されたことを、審査委員会にて 確認しております。以上、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で指針への 適合性が確認されました四つの申請についてのご報告を終了いたします。 ○永井部会長  ありがとうございました。これは、前にもお諮りしております札幌北楡病院 が中心施設となって、全国約20カ所の病院で行う共同研究です。末梢血の単核 球を血液の巡りの悪い足に打って、血管新生を促し、末梢動脈疾患を改善させ ようということで、私が委員長を務めている委員会で検討いたしました。全体 的なプロトコールについては、どの施設もほとんど問題はございませんが、今 回共通の問題としましては、倫理委員会のあり方についてまだ必ずしも指針に マッチしていないのではないかという意見が出され、いずれも1回返されて、2 回目の審議で承認を受けております。  具体的には、例えば医科歯科大学では法律の専門家が要求されているのに、 その委員が欠席していたとか、厚生会東部病院の場合は、43頁で事務長が基本 的には病院側の人間であるのに、患者側の識見を有する立場で参加しているの は不適切ではないかとか、あるいは生命倫理の識見を有するものが明らかでな いとかいうことが指摘されております。新古賀病院については、83頁で、弁護 士が法律専門家と生命倫理に識見を有する者の双方に分類されていると。そこ が指針に合っていないとか、「ヘルシンキ宣言」、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究 に関する倫理指針」が改正されているものが十分対応できていない、研究スタ ッフが倫理委員会に入っている、当事者が入っているということで、倫理委員 会から外れるべきではないかということ、そういう倫理的な問題です。123頁の 島根大学の場合には、病院長が倫理委員長を務めている。これは、研究に対す る利益相反の問題が起こる。すべて今回の4件に共通なのは、倫理審査委員会 のあり方についてでありました。その他については、大体、指針がしっかり徹 底してきたと思います。この点につきましてご意見、ご質問ございますか。よ ろしいでしょうか。もしご異議ございませんでしたら、ただ今のご報告を科学 技術部会として了承するということで厚生科学審議会へ報告といたします。ど うもありがとうございました。  続いて、議事の3にまいります。戦略研究についてご審議をお願いしたいと 思います。事務局よりご説明をお願いいたします。 ○三浦厚生科学課長  資料3をご覧ください。「新規戦略研究の課題候補(案)について」という資 料です。ご案内のとおり戦略研究は、平成17年度に本部会において新たな厚生 科学研究の類型として創設されました。保健医療政策に関連するエビデンスを 検証する大型の特に臨床的な介入研究であることが特徴です。その後3年間、 新規の研究課題を選定し、併せて6課題が現在実施されているものです。この2 年間は既存の戦略研究のモニタリングを実施し、適切に研究が進捗するように 支援をする形で研究の推進を図ってきたところです。また、併せて研究の枠組 みの見直しに取り組んできたところです。現在まで進捗している研究の状況な どを踏まえ、今般は戦略研究を2段階にし、第1段階でフィージビリティ・ス タディを行う、第2段階で本研究を行う、という形で進めていきたいと考えて います。そのために今日お示し申し上げる新たな研究課題についてご検討をい ただく必要があるということです。  資料3の1番目、戦略研究の候補課題の選定ですが、先ほど申し上げたよう に、国の政策課題に的確に対応したテーマを選定する必要があるため、各担当 部局から行政課題とそれに対応して実施すべき研究テーマの提出を求めて、戦 略研究企画・調査専門検討会で検討を行ってまいりました。また、それぞれの 研究テーマについて、その領域の専門的な知識・経験をお持ちの有識者に対す るヒアリングを行い、どのような研究がすでに行われているのか、また研究テ ーマの中で優先すべきものはあるのか、などについて検討を行ってまいりまし た。その結果、これからお示しする二つの候補が選定されたということです。  2番目で戦略研究課題の方向性ですが、今回の戦略研究2課題は、いずれも「子 どもの健やかな成長を支えるための研究」に整理されるのではないかと考えて います。乳幼児の事故や周産期医療という子どもの健やかな成長に直結するテ ーマであるからです。  3番目、その課題のご紹介を申し上げたいと思いますが、1)として乳幼児の事 故を予防するための戦略研究です。背景をご覧いただきますと、わが国の母子 保健の水準は今でも世界最高水準にあるわけですが、残念ながら1歳〜19歳に おける死因の第1位、0歳における死因の第2位が不慮の事故であり、1〜4歳 における死亡率はOECD諸国の中で17位という低位に位置しているということ です。  特に我が国の1〜4歳の死因における不慮の事故の割合が18%を占めるという ことで、この分野で問題解決を図っていく必要があるのではないかということ です。「健やか親子21」という国全体の政策においても、不慮の事故による死亡 率を半減させる目標を立てているところです。  子どもの事故と家庭の社会経済学的な背景の関連が指摘されている状況もあ り、今回の研究においては事故を減少させるための手法として、普及啓発や訪 問指導等を通じて事故の予防を図っていこうというものです。  乳幼児の事故による医療機関受診・入院・死亡を減少させることを目的とし ています。  2番目は、周産期医療の質向上のための戦略研究です。この背景には近年の傾 向として、低出生体重児の割合が増えていることがあります。そのため周産期 医療には大きな負担がかかっていますが、一方で全国に整備されている総合周 産期母子医療センターあるいは地域周産期母子医療センターを通じて、それら の医療の体制が整えられているところであり、このようなセンターの整備とい うことで申し上げれば、量的な整備のみならず質的な整備、それに対する支援 が重要になっているところです。  今回の戦略研究の考え方として、総合周産期母子医療センターにおける医療 の質を評価し、抽出された問題点等を改善することを通じて、我が国の周産期 医療の質の向上を図りたいということです。  目的として資料にあるように、最終的には周産期医療の質の向上に資するこ とではありますが、今回、周産期医療の質の向上に取り組むことによって、そ れぞれの医療機関におけるPDCAサイクルを回し、それぞれの医療機関における 自主的な質の改善を進めていくというところに、この目的があるわけです。  3頁ですが、今後の進め方ということで、先ほど申し上げたように2段階の公 募方式を考えております。第1段階として課題を選定し、平成22年度はフィー ジビリティ・スタディを行うための研究計画、研究実施者を公募し、フィージ ビリティ・スタディを通じてフル・プロトコールの作成を行っていただく、こ こが今回の研究の第1段階になります。  第2段階は、策定されたフル・プロトコールに基づいて研究を実際に進めて いただくということです。スケジュールとしては、本日の内容、ご意見を踏ま えた上で3月15日(月)に説明会を開催し、フィージビリティ・スタディを行 いたいという方々に対する公募を開始し、4月下旬には締め切った上で5月上旬 に課題の採択、またスタディを開始していただくということで、以降10月下旬 にはフル・プロトコールの採択、来年度は戦略研究、本研究を進めていただく ということです。  4、5頁は、それぞれの戦略研究を行う流れです。簡単に申し上げれば、乳幼 児の家庭内・自宅付近における事故原因の分析について、先行研究などに基づ く分析を行い、それに基づいて事故を減少させるためのプログラムを策定する。 具体的には、例えば、ハイリスク家庭を対象とした訪問指導、健診機会におけ る事故防止教育、保育園・幼稚園などでの教育・指導などの対応をしていくと いうことです。多職種による介入を行うことになりますが、それを踏まえてエ ビデンスの蓄積・プログラムの評価を行うものです。  5頁は、周産期に関する戦略研究です。それぞれPDCAサイクルを行います。 課題の明確化、解決策の提案、実施、プログラムの評価をし、また地域での連 携状況等の評価を行っていく、というサイクルを進めていこうというものです。  介入プログラムとしては、診療内容から見てそれぞれの施設がどのような課 題を持っているのか、その課題を解決することを通じて質の向上を図っていた だこうというもので、いずれも相当の時間をかけながら積極的な介入を行って いくのです。  これらのフィージビリティ・スタディについても、しっかりとその成果を見 ていく必要があろうと考えており、フィージビリティ・スタディの結果、仮に もう少し準備が必要ではないかということになれば、あえて本研究に突入する ことなく、さらなる準備を重ねていくことなどによって、本研究をより充実し たものにしていきたいと考えているところです。 ○永井部会長  ただ今のご説明に、ご質問、ご意見はありますか。 ○廣橋部会長代理  戦略研究は大型の研究で、介入して、その結果本当に成果が出るかというア ウトカムを見るという、そういう性質の研究だと思うのです。これまでの中に 残念ながら途中で研究がうまく進まなくて、研究を中断させたという例もあり ました。そういうこともあって、今回いろいろなことを考えられたのだと思う のです。  最初の乳幼児の事故を予防するための戦略研究では、まず介入方法を検討す る。普通は初めの段階からこういう介入をして、その結果どうなるかを見るの かと思ったら、研究の中で介入方法を検討すると書いてあるのです。次の周産 期医療の質の向上のための戦略研究では、参加する母子医療センターが個別に それぞれ違った介入方法を検討するというのです。そういうことで本当に評価 できる結果が出るのかどうかが、正直言って非常に心配です。  さらに研究の進め方ですが、一番最初の採択のところは競争的だけれども、 フィージビリティ・スタディをいくつかやって、その中からいいのを選ぶとい うことではなくて、一つを選びそれを育成していくと。駄目でももう1回フィ ージビリティ・スタディをやらせて育てていくというご説明だったのですが、 本当にそれでいいのか疑問があります。むしろ最初も競争的、フィージビリテ ィ・スタディがうまくいかなかったら、むしろそこで研究は止めるぐらいの競 争性を持たせた方がいいのではないかと感じました。いかがですか。 ○三浦厚生科学課長  委員からご指摘がありましたように、今回の研究においては介入方法を最終 的に確定していく作業も含まれます。というのは、先行的な研究としてさまざ まな取組がありますが、最終的にどういう形の介入を行うのかは、言わばそれ ぞれ研究における最終的な調整の中で決められると理解しています。  その上でフィージビリティ・スタディを進めて、仮にまだ調整がなお必要だ ということになれば、先ほど申し上げたとおり育てていく方法もあれば、また 委員がご指摘のようにかなりまだゴールには遠いということになれば、例えば その段階でその研究は打ち切ることもあり得るのではないかと思います。そう いう意味でフィージビリティ・スタディは、本研究を必ずやることを約束する ものとは言えないと考えています。 ○松田委員  二つのテーマは、今日いただいている厚生労働科学研究に関するアンケート の中にも再三指摘されているように、非常にニーズマッチしたテーマであると は思います。しかし、今、廣橋委員からもご質問がありましたが、課題の設定 のところが一番ポイントではないかと思うのです。フィージビリティ・スタデ ィをやると、そこをもう少し具体的に、どういうやり方でフィージビリティ・ スタディを今お考えかをお伺いすると、進め方として納得感は出ると思うので すが、アイディアはどこまで具体的なやり方を今お持ちかどうか、その辺をお 聞かせいただければと思います。 ○三浦厚生科学課長  特に今回のフィージビリティ・スタディでは、フル・プロトコールがつくれ るかどうかが一番重要な部分ではないかと思います。フル・プロトコールがで きるのであれば、あとはプロトコールに従ってそれぞれの研究の現場で実際の 介入を行っていく段階に入れるのではないかと思っています。そういう意味で 今回のフィージビリティ・スタディを通じて得られるものは、フル・プロトコ ールが如何に効果的なものになるのか、あるいはそれが実際の研究を行うにふ さわしい内容に具体化できるかが重要な部分ではないかと思っており、そうい う意味でフル・プロトコールが確定するところまで持っていくのが来年度取り 組む研究の重要な部分だと考えているところです。 ○木下委員  周産期医療の質の向上ということ、周産期医療に光を当てるのは非常にあり がたいのですが、今お二人の先生方のお話、ご指摘のように、周産期の質の向 上ということで、いったいどういう仮説をもってこのようなことをしようとし ているのか、フィージビリティ・スタディの結果を見て、またどうするのか、 その辺のイメージがよく分からないのです。総合周産期母子医療センターだけ を対象としているとすれば、これは周産期医療すべてのことを対象にしている のか、総合周産期母子医療センターそのもののあり方だけを言っているのか、 そういうことも含めておよその仮説と申しますか、その辺のところはどういう ことをイメージしているのですか。 ○三浦厚生科学課長  今回の周産期医療の研究について申し上げますと、それぞれの総合周産期母 子医療センターで行われている具体の診療内容を細かく分析することを予定し ています。例えば、特定の症状を持つ患者に対して特定の診療行為がどの程度 行われているのか等々、言わば医療の内容に踏み込んで分析するものです。で は、本来であれば行われるべき診療行為が仮に行われていないとするならば、 その行為をその総合周産期母子医療センターで行っていただくところまで踏み 込んで、パフォーマンスを上げていっていただくことが具体的な介入のイメー ジです。そういう意味で、一般的なレディーメードの改善策というよりも、言 わば個別の母子医療センターが抱える課題に直結する介入方法を考えていくこ とになります。介入方法としては、医療機関ごとに違う介入にはなるわけです が、全体としてそういう手法を通じて医療機関の課題を克服していっていただ くための支援を今回のプロトコールの中に書き入れたいということです。 ○木下委員  そうなりますと、総合周産期母子医療センターは全体に77カ所あった時に、 およそどういうところの視点で動いているかはさまざまであるのが実態であり、 つまりそこだけに焦点を絞るのか。総合周産期センターは、周産期医療すべて の中での位置づけという視点はなくなってしまうわけです。一般の診療所から、 中小病院があって地域があって総合というふうな、そういう中で総合周産期だ けをどのようにいじくっても、これは他との関係において、そちらとの関係を きちんとしていかない限りは、おそらく、あまり成果としては上がらないので はないかということがあるだけに、総合周産期母子医療センターだけに特化し たやり方とすると、あり方についてのことであって、周産期医療の質の向上は もっと幅広い話であるはずなので、今のようなお話であれば、これは総合周産 期のいろいろな機能をどうしていくかに尽きてしまう話で、すごく視点が狭く なってしまって、本来の我が国の周産期医療のあり方という点では、このよう なスタディではあまり成果は上がらないのではないのかと、これは勝手にデー タもない段階で言うのはおかしいと思うのですが、非常にラフだというか、非 常に狭い範囲の仕事ではないかという気がします。そういった全体像を見た上 でのあり方でないと問題ではないかという気がするので、その辺の視点をまた 考えていただきたいと思います。 ○三浦厚生科学課長  ご指摘のように周産期医療は、総合周産期母子医療センターがあれば解決す るということではなくて、地域のネットワークで支えられているわけですが、 今回は、言わば総合周産期母子医療センターをモデルにして介入してみようと いうものです。もし、これが仮に手法として意味があるということになれば、 当然、地域のセンター、あるいはそれぞれの個々の医療機関にも対応ができる ものと考えられます。  問題は、その上でネットワークづくりや連携をどう進めるかが最後は入って くるのだと思います。そういう広がりを必要としていると思いますが、きっか けとして、まず総合周産期母子医療センターから手を付けていこうというとこ ろであろうと考えています。 ○木下委員  例えばこれは総合周産期母子医療センターだけの話ではなくてというのは、 そこで異常産であるとか、救急疾患であるとか、未熟児であるということだけ に特化した診療をしているわけではなくて、何とそこに正常産がかなりの数と して受けているのが実態です。それはどういう意味かというと、医療の仕組み からすると、その病院を成り立たせるためには、正常産を取らなければ成り立 たないというところがあって、それは医師にはものすごい負担になっている話 で、そういうことの問題を抜きにしては、どのようにお話になっても、これは 本当にデスクワークに過ぎなくなってしまう部分があると思うのです。つまり、 そういった仕組みの中もいじくらない限りは、総合周産期の機能は本当に成り 立たないのではないかという気がするだけに、視点を是非、今のような、内容 だけではなくて制度的なと申しますか、正常産を取るということは、経済的な ことも含めた話まで含めないと、これはなかなか機能しないのではないかとい う思いがあります。そのような視点を是非お考えいただきたいと思います。 ○川越委員  この種の研究、例えばモデル事業などもそうですが、今の三浦厚生科学課長 の話を伺っていると、フル・プロトコールをうまくつくったところを採用しま しょうというニュアンスが感じられ、現場の人間としては非常に腑に落ちない ところがあります。これは在宅でも同じことで、一生懸命やってきちんとでき ているところがあるのに、そういうところを選ばないで、わざわざできないと ころをモデル事業として選んでいって、結局、在宅は在宅のような緩和ケアは 無理だということで、そういうことがあるので、私は強く言いたいのです。  それは、作文がうまいからとか、プロトコールをうまくできるからという状 況ではないと思います。というのは、すでに総合周産期母子医療センターで77 カ所あるわけですよね。今回の政策の実行にアウトカムとしては、括弧で書い てある、つまり低出生体重児の死亡率・予後の改善をしていくことが目的であ るということでありましたら、すでに77カ所の施設でかなり違ったやり方で違 った結果を持っているはずです。そういうところをしっかり調べていただいて、 むしろ最初は、例えば、どうしてあるところは50%いく、あるところは20%し かいかない、そういうところをしっかり押さえられて、50%うまくいっている ところはどうしてかと、そういう介入の仕方を考えていただきたいということ を思っています。これは決して新しい分野ではなくて、これからどうしようと いうところではなくて、すでに試行錯誤をいろいろなところでやっているわけ ですから、それをどういう具合に評価していくかと、あるいは日本全体に広げ ていくかと、そういう視点をもって研究を組み立てていただきたいと感じてい ます。  もう一つ、これは木下委員からの発言とも関連するのですが、実はハイリス ク新生児の問題は、死亡率予後の改善ということだけではない。これは均てん 化・質向上ということで括れるわけですが、例えば質向上に関していえば、産 科医療・小児科医療が当然かかってくるわけで、総合周産期センターの一次救 命というか救命をどうすればいいかというだけの問題ではないと思うのです。 もっと広く周辺、例えばこういう低出生体重児を減らすためにどういうことを 工夫しているかも必要でしょう。それから、今現場で一番問題になっているの は、これは私が病院長をやっていた時に非常に苦労したことですが、私がいた ところは地域周産期母子医療センターだったのですが、NICUを卒業した、卒業 したというのは、つまりそこに入る子どもではない子の行く場所がないのです。 ですから、実は助かった、だけど行く場所がない。GCUももちろんあるのですが、 それはベッドが限られているし、そういう子どもがベッドをふさいでいるとい う問題が実はあるので、皆さんの方で考えていらっしゃるかもしれませんが、 総合周産期母子医療センターの中に後方支援のことをどうするかも含めた研究 に、一次的に救命したとか、そういうことだけではなくて、そういう評価も是 非お願いしたいと思います。 ○福井委員  コメントと質問です。一つは、ある仮説を検証するタイプの研究であれば分 かりやすいと思うのですが、あらかじめ作った指標を示して、これこれをした 方がいいということがどの程度行われているかを検証したり改善するというこ とであれば、ヘルスサービス・スタディという分野に入るものだと思いますが、 私自身は、特定の仮説検証だけでなくて、このようなタイプのものがあっても いいのではないかとは思っています。ただ、周産期医療の質向上のための戦略 研究については、例えばより質の高い医療体制ということですが、そもそも質 が低いということが、関係者の皆さんの認識でしょうか。つまり、日本の今の 周産期医療体制は、他の国などと比べてかなりレベルが低くて改善の余地があ る、というところからスタートしているものかどうかということを教えていた だきたい。それから、そのように改善する余地があるテーマについてPDCAサイ クルを回して改善しようとすることは、研究なのか単なるマネジメントの問題 なのか、そこのところの区別が曖昧ではないかと思います。川越委員がおっし ゃったように、研究プロトコールというか申請書を書くのが上手な研究者・施 設にお金が流れる、そういう危惧を抱いたのが正直なところです。 ○三浦厚生科学課長  川越委員からのご意見に対するこちらの考え方ですが、ご指摘があったよう に、今の総合周産期母子医療センターは、それぞれの施設によってかなり置か れた状況も違うので、それに応じて動き方も違ってきている。言わば一つひと つが違う形で動いております。  そういう意味でそれぞれの地域の特性なども当然踏まえる必要はありますが、 その上でパフォーマンスが高い施設の分析とそれらが十分に行われていない施 設の分析を併せて行い、そして底上げすることが今回の研究の取組です。そう いう意味で川越委員の言われた動きが、おそらくこの研究の中で進められるの ではないかと思っています。  そういう点から言うと、福井委員のご質問にありましたように、我が国の周 産期医療全体としては、非常に高い水準にあるとするのが総合的な評価ではあ ると思いますが、一方で、総合周産期母子医療センターの中には、それなりの パフォーマンスの高いところからそうなっていないところまで幅があると理解 しております。その幅を何とか上の方に引き上げていくための取組が必要にな っております。そのために今回、全体としてはいいかもしれないけれども、そ ういうところが改善されれば、さらに周産期医療の体制として高いものになっ てくるのではないかということです。  実際にPDCAサイクルを回すということが研究に馴染むのかどうかというご指 摘だと思いますが、これはPDCAが回らない理由ももし仮にあるのであれば、そ の分析も研究の対象になると思うし、またそれをどう克服していくのかがこの 研究を通じて解析され、それに対する対応が検討できるのであれば、大きな成 果ではないかと思っています。純粋にどこまで研究かということになれば、福 井委員の言われるような境界域的なものもあると思いますが、ただPDCAを回す ことが単にマネジメントの問題だけではなくて、研究の分野としても一定の馴 染むものがあるのではないかとも考えているところです。  いずれにせよ、介入研究で対応できるのであれば、それは戦略研究としての 価値があるのではないかと考えており、そのためにフィージビリティ・スタデ ィを置いて、しっかりとその可能性を見極めていく必要があります。それは最 初に廣橋委員からご指摘があったとおり、必ずこれは研究として実施すること が運命づけられているものではない、というところにつながってくるのだと思 います。 ○桐野委員  多くの委員からご発言があったのですが、厚生労働行政上の調査研究であれ ば、もともとこれは重要な課題ですから大変意義が深いと思いますが、戦略研 究は一定の介入を行った後に最初に立てた仮説が検証されるかどうかを見る、 そういうタイプの研究ではなかったかと私は思っているので、また、そういう ことを国の規模でやることの意義は非常に高いと思うので、調査研究ではなく、 あらかじめきちんとした仮説があって、その仮説を検証するだけのプロトコー ルが立てられて、そのプロトコールに沿ってアウトカムがきちんと測定できる、 そういう研究を今後フィージビリティ・スタディの中で選別するようにしてい ただかないと。言ってみれば戦略研究というものの信頼性というか、こういう ことが我が国の保健医療の増進のために非常に重要であり、役に立つのだとい うことが大切であり、私は信頼性が薄れていくことになるのではないかが少し 心配ですが、多くの委員がおっしゃっているので、私は同じことを繰り返して いるだけだと思うのですが、そう感じました。 ○岩谷委員  私は単純で、周産期医療の予後の改善に、今一番大きな問題は、先ほど重症 児の方がどこに行くのか、行き場所がないというお話もあったのですが、実は 1,000gぐらいの低出生体重児のお子さんたちの本当の意味での機能的な予後 が非常によくない。これは私はある方から聞いた話ですが、先進国の中で一番 悪いのだそうです。ですから、そうなると研究期間の問題で、3年間ぐらいのと ころでそういう発達上の予後のことまで問題にできるのかが疑問に思うし、そ れが問題にできる研究をしていただきたいと、これは希望です。 ○宮田委員  かつてAIDSの問題で戦略研究が一度中断されたことがあります。そういった ことの反省を考えると、課題の立て方はすごく重要です。それから何を目的に するのか。そういう意味では、今回の課題は重要なところをご指摘はしている のですが、戦略研究というところに持っていくまでに十分課題設定ができてな い、というふうに皆さんが思っていると思うのです。ですから、そういう意味 では、フィージビリティ・スタディという言い方をもう少し変えていただいて、 こういうことを、例えば周産期はずっと難しそうなので、乳幼児の事故を2014 年まで半減させるという目標の時に、どういうアイディアを提案できるかとい うところから募集してみて、担当課が、あるいはそういう人たちを選考する委 員会があって、きちんとそこの中からやった方がいいような気がします。だか ら、たぶん今の課題の抽出の仕方と設定の仕方に対してもう少し丁寧に、それ から皆さんに伺うというところの方が、何か重要な気が今しています。それが1 個。  もう一つは、戦略研究の仕組みの問題で、きちんとどういう形で担当課がコ ミットするのかを明確にすることと、それから昔、黒川委員会という言い方を していたような気がしますが、戦略研究の研究管理をする委員会がありました。 そういった委員会がどの段階で研究のマネジメントに参加するのかとか、そう いうことも含めてきちっとした整理をしていただかないといけないと思います。  前のAIDSの例ですと、ある極めて特定の課題を設定してしまうと、日本にそ の人しかいないという状況が生まれてしまって、結局その人のところに行くよ うになってしまって、なかなかいろいろの忙しさもあり、課題が十分できなか ったということがあります。つまり、日本における研究が可能なポテンシャル を持っているのかということも含めて、募集する時にある程度の瀬踏みをしな いといけないのではないかと思っています。ですから、そういう意味ではある 政策目標を開示した上で、誰かこれを解決できるようなアイディアを持ってい ないかという、アイディア募集の段階からやられて、厚労省が持っている政策 的な課題とすり合せて、フィージビリティ・スタディの対象を決めるようなス テップを入れた方がいいと思います。  もう一つ言わせてもらうと、フィージビリティ・スタディ1個というのはち ょっとおかしくて、やはり複数のフィージビリティ・スタディを走らせてみて、 どちらかがいいというわけではなくて、両方いいとこ取りすればいいと思うの ですが、何らかの形で競わせるような研究選択の設定をしないと、なかなかう まくいかないのではないかと思います。以上です。 ○永井部会長  委員の先生方のご意見をまとめますと、全体としてテーマとしては悪くはな いということで、よろしいでしょうか。具体的な課題の設定であったり、アプ ローチについてもう少し具体性がほしいというようなご意見に感じました。も し、そういうことであれば、取りあえずの研究テーマとしてはこれはお認めい ただいて、次回もう少し具体的なアプローチあるいはフィージビリティ・スタ ディの実施の方法なり、あるいはテーマ、各研究のセレクションの仕方とか、 あるいはできればやはり課題の設定、そういうところを煮詰めた形でご報告い ただくことにしたいと思いますが、よろしいですか。では、そういうことでま た次回お願いいたします。  議事の4、「今後の厚生労働科学研究について」ご説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  それでは他の資料も適宜見ていただくことになりますが、資料4-1「今後の厚 生労働科学研究の論点整理に向けて」が中心ですので、そちらに基づいてご説 明いたします。  まず1.の背景として、厚生労働科学研究の性格について整理しています。厚 生労働科学研究は、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関す る行政施策上の課題を解決する目的志向型の研究ということで、幅広い分野を 対象としており、行政施策に資する研究が求められ、年次計画等により計画的 に研究が進めることが適当な分野がある一方で、時々の行政的課題に対応する 研究が必要となることも多く、各分野毎に、必要に応じて、適切な年次計画を 立案するとともに、機動的な対応も必要と、整理しております。  2.最近の状況です。先ほどお話しが出ましたが、昨年12月30日に「新成長 戦略(基本方針)」が閣議決定されております。本日、参考資料3として、閣議 決定されたものをお配りしております。その中に「グリーン・イノベーション による環境・エネルギー大国戦略」、「ライフ・イノベーションによる健康大国 戦略」、それから「科学・技術立国戦略」が盛り込まれています。「ライフ・イ ノベーションによる健康大国戦略」では2020年までの目標として、「医療・介 護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出、新規市場約45 兆円、新規雇用約280万人」が示され、また、主な施策としては「医療・介護・ 健康関連産業の成長産業化」、「日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研 究開発推進」、「医療・介護・健康関連産業のアジア等海外市場への展開促進」、 「バリアフリー住宅の供給促進」、「医療・介護サービスの基盤強化」が示され ております。ライフ・イノベーションについては、(医療・介護分野革新)とい った表現も使われております。  「科学・技術立国戦略」では、2020年までの目標として、「世界をリードする グリーン・イノベーションとライフ・イノベーション」、「独自の分野で世界ト ップに立つ大学・研究機関の数の増」、「官民合わせた研究開発投資をGDP比4% 以上」等が示され、主な施策としては「イノベーション創出のための制度・規 制改革」、「行政のワンストップ化、情報通信技術の利活用を促進するための規 制改革」等が示されております。  そして「新成長戦略」では、「雇用・人材戦略」も示され、その中に「子ども の笑顔あふれる国・日本」として少子化対策も含まれています。  次に、総合科学技術会議の動向です。平成22年度の科学技術関係施策の優先 度判定に関してはパブリックコメントが行われております。本日、参考資料4 として、1枚紙で、そのパブリックコメントで我が省の関連についてどの案件に 何件あったかという概略をお配りしております。  資料5-1「総合科学技術会議の動向について」は、総合科学技術会議で使われ た資料です。1枚めくった1頁の見出しにありますように「科学・技術関係予算 の重点化・効率化に向けた取組について」ということで、新しい方針を総合科 学技術会議は示されております。そのスケジュール的なところですが、資料4-1 にありますように、平成22年2月末頃に総合科学技術会議有識者議員が、「科 学・技術政策上の当面の重要課題」を策定することが予定されており、4月頃に、 科学技術政策担当大臣と総合科学技術会議有識者議員が、「科学・技術重要施策 アクション・プラン」を策定することが予定されております。  総合科学技術会議では、平成23年度概算要求に向けて先行的に対象を絞ると いうことで、課題解決型の研究開発の例示としてグリーン・イノベーション、 ライフ・イノベーションを、それから制度改革の例示として競争的資金の使用 ルール等統一化を示し、施策の達成目標、そのための実施方法、年次計画とい ったものを、このアクション・プランに記載するとの方針を示されています。  総合科学技術会議は、今までは6月に資源配分方針を策定していたのですが、 4月頃には資源配分方針の基本指針を策定することを予定しています。6月頃に は例年どおり、資源配分方針を策定するということで、いろいろな作業を一種 前倒しすることを検討されているということです。  資料4-1の2頁の参考として、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベ ーションについて、総合科学技術会議で例示されているものを示しています。  また、最近の動きと致しましては、今国会における内閣総理大臣の施政方針 演説において、統合医療につきまして、積極的な推進について検討を進めると 言及されたということもございます。統合医療につきましては、省内に政務官 をヘッドとするプロジェクトチームが設けられております。  資料4-1の3頁の上の方ですが、以上のような、新成長戦略等の状況を踏ま えると、厚生労働科学研究の今後の主な課題といたしましては、健康長寿社会 の実現に向けた研究、それから少子化・高齢化に対応し、活力あふれる社会の 実現に向けた研究等があるという整理をしております。  前回の部会では、厚生労働科学研究の在り方、人材の育成、今後推進すべき 研究分野、電子カルテ、介護や医療の提供体制、検討方法等についてご意見を 頂戴しましたが、その概略をまとめたものを資料4-2としてお配りしておりま す。  また、前回もお配りしておりますが、これまでの部会審議でいただいたご意 見については、本日は参考資料5としてお配りしております。  4.ですが、前回の部会以降、厚生労働科学研究費補助金の事前、及び中間・ 事後評価の委員の先生方を対象として、厚生労働科学研究に関するアンケート 調査を実施いたしました。  資料4-3をご覧ください。いただきました主なご意見の概要です。延べ743 名の先生方を対象として1月にアンケート調査を行いました。質問の内容につ いては、この資料4-3の最後にあります。129名、複数の委員会にご所属の先生 もいらっしゃいまして、延べ133名の先生方からご回答いただきました。厚生 労働科学研究の性格・役割、行政側の意図の明確化、研究課題の設定の方法、 評価方法等々、多岐にわたるご意見、コメントをいただきました。本日は、論 点整理に向けて骨太のご議論をお願いしたいため、1頁の上の※に書いてありま すように、いただいたご意見の中から主に大きな方向性等の提言の内容を整理 しており、個別課題の提案等のご意見は含めておりません。また、非常にたく さんのご意見をいただきましたので、同様の趣旨と思われるものはまとめて、 表現等についても事務局でポイントを抜き出して整理しております。かなり整 理したつもりですが、ご意見も多岐にわたりまして、多数のご意見を載せてお り、いくつかピックアップする形で説明いたします。  まず、「厚生労働科学研究の性格・役割について」に関係するご意見を整理し まして、厚労科研費と他の研究費の相違という整理をしています。文科省の研 究費による基礎研究に比べ、より現実の国民生活の向上につながる研究が厚生 労働科学研究の対象となるべきという、文科省の研究費との相違に関するコメ ントをいくつかいただいております。三つ目のマルに、基本的にはトップダウ ンの予算とすべき、というご意見があり、他方その二つ下には、ボトムアップ 的な研究とトップダウン的な研究を適切に組み合わせた施策決定が望ましい、 というご意見もあります。  次の厚労科研の役割では、下から2番目では、研究テーマに、厚労行政の現 場における実践との温度差を感じることがある、医師を中軸としていない、現 場の問題にも対応する研究領域が必要、というご意見もあります。  2頁の上の方では、必要な研究領域は刻々変わるので、有識者等から必要な分 野の提案を募る等、対応する必要がある、というご意見もあります。  「研究の性格・独自性」という整理の1番目では、scopeを疾患の研究に必要 な研究とすれば、応用研究だけではなく、生命科学の基礎研究も弾力的に取り 組むようにすることが大切、というご意見、日本では、文科省と厚労省の狭間 になる部分の研究の行き場がはっきりしないという問題がある、というご意見 もありました。他方、基礎研究の関係については、この5番目のように、基礎 研究は文科省に任せTR、臨床研究に集中すべき、というご意見もありました。  今の五つ下に、独自性に関連して、厚労科研はより早く国民が利益が得られ る研究を大切にすべきであり、他府省の研究費とは明確に一線を画し、独自色 を持て、というご意見もいただきました。その二つ下には、もっと行政研究に 特化する等、厚労省の研究でなければできない研究に重点化する方が良い、行 政側の意向をより強く反映させ、行政主導の指定研究を増やすべき、というご 意見もありました。2頁の下から4番目では、米国NIHのfunding policyが望 ましい、政策決定のために必要な検討、討議を深いレベルでしっかり行う必要 がある、何かトレンドを探すのではなく、どうしたら疾病の克服・予防ができ るのか、そのために日本は何を為すべきかという点を徹底的に考えるべき、と いったご意見など、多数のご意見をいただきました。  3頁です。行政側の意図を明確化しようということで、公募要項の改善等に取 り組んでいますが、改善すべき点のご意見をいただいております。最初は、行 政側の意図するところが理解できない場合が多い、より広範で詳細な情報の提 示が必要、というご意見です。その二つ下には、国の方針を明確化する必要が ある。研究課題毎の要望、留意事項は全体として理解できるが、具体性に欠け る、記載内容が包括的かつ総花的であることは、課題が意図することを網羅す るには適しているが、行政の要求を強調する方が応募研究者にとっては的を絞 りやすいし、評価しやすい、というご意見です。その二つ下に、最も重要なこ とは公募の真の目的は何かということを明確に具体的に記載すること、文科省 の科究費との区別がついてない応募者が依然としてみられ、公募する側にも検 討の余地がある、というご指摘もありました。  4頁、「その他」ですが、公募のテーマ選定の関係では、テーマ選定に関与し た一部の研究者以外には、本来の趣旨やねらいがよく分からないことがある、 というご意見をいただいています。  その下の「厚生労働科学研究課題の設定の方法について」の「課題設定の方 向性」では、領域内であれば研究課題はかなり自由に設定できるようにし、留 意事項はあまり絞りすぎない方が応募しやすく、評価者がその中から優れた研 究を拾い上げればよい、といったご意見がありました。あるいは、その下では 公募分野の絞り込みと重点政策化を行うべき、というご意見もありました。二 つ下では、公募の在り方も抜本的に検討すべき時期、というご指摘もありまし た。  「課題設定の具体案」ですが、下から2番目では、問題点を明らかにしてい く探索的研究と、問題点を踏まえて対応策を作り上げる構築型研究が混在して いるが、いずれであるか明確にすべき、というご意見がありました。5頁の一番 上は、どこでこのような課題が出てきたのか、省内では常識であっても一般的 には分かりにくいので、公募課題の決定プロセス等をオープンにすべきとのご 意見です。  5頁の真ん中から、「課題設定の問題点とその改善策」という整理をしていま す。最初は、厚労科研の一般公募型研究の枠内で、本来厚労省の業務として実 施する“研究”が行われている、というご指摘です。二つ目に、行政研究は公 募研究とは分けるべき、三つ目に、公募の形ではあるが、明らかに特定の組織 の特定の研究を支援というふうに見えるものがあるので、特定のものは公募で なくともよい、という趣旨のご意見もありました。  6頁、大型研究と小型研究について、4番目で、大型研究は小型の探索的研究 から生まれるため、小型の研究を育成するシステムを用意する、現在、パイロ ット的研究は行いにくい、というご指摘がありました。一方、5番目では、重点 課題を選定し、もっと大型の予算配分にすべき、というご指摘もありました。  6頁の下の方、「評価について」です。評価委員の先生方にお聞きしたことも あり、最も多くご意見をいただいたところです。「公募要項と事前評価」では、 最初に、評価者は留意事項を考慮しているが、基本的には、良い計画、業績が あり実現性の高い申請を選ぶ方が多いと思う、良い申請を選びやすくするため にはどうするかが重要、というご意見をいただいています。  7頁の最初では、評価者は専門家であるので、行政的意図もほぼ理解できる、 というご意見。一方で二つ目に、公募課題名とその行政側の意図を明記して応 募課題を分類し、事前評価者に評価を依頼すると伝わりやすいのではないか、 というご指摘。その二つ下の四つ目では、文科省科研費では詳しい評価マニュ アルが配布されている、というご指摘もあります。三つ下は、評価基準につい て、公募要項の記載では明確にならず、評価者の主観になってしまう、評価尺 度を予め数種類用意しては如何か、というご指摘です。二つ下では、最終のア ウトプットとして期待する作業仮説を具体的に記すべき、それにより評価のス タンスが明確になる、というご意見です。六つ下では、厚労科研は、他省の研 究と比較して行政に資するものを重視することを明記すべき、基礎科学的な新 知見を見出すことは学術上重要であるが、該当しがたいことを知らしめるべき、 というご指摘もありました。  「問題点等」の項目では、下から二つ目で、2期ぐらいで完結しない研究は認 めるべきでない、そのためにいろいろ工夫すべき、というご指摘もありました。  8頁、評価の在り方の関係ですが、行政の評価関係でいくつかコメントがあり ました。2番目の項では、行政の評価も加える必要がある、というご指摘で、成 果を行政に反映するための研究事業で、行政の評価は不可欠で、不都合なこと はそのことを改めるべきで、不可欠な行政の評価を除くことで解決するのは姑 息的、といったご意見です。その下では、かつて行政評価は行政で行っていた が、現在では専門家がやっているということで、行政評価を専門家が行なうの は困難であり、専門家の行政評価を止めるべき、というご意見です。逆にその 下では、行政点の意義を再検討せよ、というご意見もあります。行政の視点か らの評価が重要な研究テーマ以外の総てに行政点が必要とは思えず、偏った見 方かもしれないが、国立研究所に利するような仕組みになりかねない、という ご指摘です。8頁の下から8番目では、審査がどのように行われているか公知す べき、審査の公開は極めて難しいが、透明性の確保にも配慮せよ、というご意 見です。  9頁、最初に、評価に投入される時間と費用があまりに少ない、評価は評価者 の選定を含め、極めて困難を伴うものだが、できる限り改善の努力を、という ご意見がありました。三つ下では、行政的な要求から選ばれるような研究では、 具体的な到達目標を明確にしないと評価が困難、というご趣旨で、「純」研究レ ベルとしては、低評価になりがち、というご指摘でした。  9頁の真ん中ぐらいから、「中間・事後評価」の関係です。下から6番目、費 用対効果を無視する研究者を排除するために、研究開始前後の研究状況の比較 表を作成し、研究費を明示して公表しては、というご指摘です。その下は、中 間評価で、研究者にロードマップを提出させ、自己評価をさせては、というご 意見もありました。その下では、研究に参加した研究者全員へ、必ずしも中間・ 事後評価結果が周知されていないように感じる、研究代表者に対して班員全員 に周知を図るように徹底すべき、といったご意見です。その下では、評価の結 果がどのように活かされたのか見えない、手間を考えると現状のままでよい、 というご意見もありました。9頁の一番下では、中間・事後評価の結果を広く一 般に周知し、厚労科研で達成すべきものを明示しては、というご意見がありま した。 10頁の下から10番目、審査システムの中に患者さんが入ることが必要、とい うご指摘。その下では、福祉機器開発に関する研究は、対象となっている当事 者の評価を加えるべき、というご指摘。あるいは産業界からもっと多くの意見 を求めるべき、というご意見もいただいています。  11頁、この項目の下から4番目、問題は事後評価ということで、報告書だけ でなく、論文にも研究助成を受けた旨の記載を徹底して、更にその別冊の提出 がない場合は研究成果は上がっていないとして、次回の評価の参考にすべき、 というご意見です。その下では、事前、中間・事後と評価が多くなって、対応 がついていけない状況、低い評価のものでも研究は区切りまで継続するし、良 い評価でも年度途中で予算増額も難しい、長い目でみての評価にならざるを得 ない、というご指摘もありました。  広報関係のご意見です。最初に、文科省の科研費のように各大学の事務局や 研究機関に周知すべき。2番目では、応募者がかなり限られた集団のように見受 けられる、工学系等でも、人に関わる諸問題を取り扱う講座等が増えているの で、広く人材を発掘するため、公募自体をもっと広報すべき、というご意見で す。  12頁の上から3番目は、最初から応募しても採用されないとして応募しない 研究者が多い、というご指摘で、広報と透明性の確保をというご意見です。  次は「研究成果の公表」についてです。4番目では、研究代表者が発表した論 文のうちベストと思われるものを一般市民向けに判り易く紹介してもらうとか、 5番目では、各研究班に分かり易い内容でHPや冊子あるいは商業誌、学会誌等 への公表を推奨し、公表内容も評価点にしたらどうか、というご提案です。  13頁、成果データベースについてのご意見が中ほどからあります。最初のご 意見では、公表されている報告書が多くの場合、国民に向かって書かれていな い、とあります。一方、簡便な記載にして、国民に、特に患者に過度な期待を 持たせるような記載は慎しむべきであり、その案配が難しい、というご指摘で す。二つ下には、成果データベースで研究報告書の全文が見られることが余り 知られていないので、工夫が要るのではないか、というご指摘です。  14頁の2番目では、厚労省であるので、統計等を通じて治癒率や健康寿命の 向上等を示すことが出来ればベストではないか、というご指摘がありました。  「その他」の項目、分類が難しいもので多くなっています。3番目は、専門家 による評価結果を政策に翻訳する作業を担当する専門部門がない、というご指 摘です。行政官は片手間になりがちで、審議会メンバーだけでは実務を遂行で きない、それらをきちっとすべき、というご指摘もありました。  15頁の最初のマルは、政府全体の「過度の重複を避ける」指針の運用は弾力 的に行うべき、というご指摘です。その二つ下では、厚労省は研究費の適正使 用にあまりに過敏に反応しているように思う、というご指摘です。研究費の適 正使用は機関経理をしっかり行えば機能すると思われ、間接経費が機関経理に 十分流れるようにすべき、というご指摘です。その下に、手引についてのご指 摘があります。さらにその二つ及び三つ下は、多くの研究をやり過ぎている場 合もあるのではないか、といったご指摘です。15頁の下から2番目では、申請 書の記載に関して、課題名を英語で記入するという工夫もしたらどうか、とい うご指摘。16頁の最初は、従来より厚労省関係施設の採択率が高いという評判 があり、現在では採択に関して行政の評点は無いがこのような考え方が根強く 残っている印象があるので、漸次解決していく努力が必要、というご指摘です。 その次は、研究テーマや申請機関が偏っている傾向があるのではないか、大学 等の研究グループへの助成も重要だが、ニーズに直面した現場を持っている機 関への助成がもう少しあっても良いのではないか、というご指摘もあります。 非常に多岐なご指摘をいただいたわけでございます。  資料4-1に戻って頂いて、5.今後の短期的なスケジュールについてです。先 ほど申しましたようにいろいろな動きもありますので、まずは4月頃までに、 総合科学技術会議の方でアクション・プラン策定に向けた動きがありますので、 それに向けての検討が必要というのが1点です。8月頃までに、平成23年度概 算要求に向けた検討が必要です。11月頃には研究費補助金の公募を行いますの で、公募要項の作成があります。そうした節目の時期を意識して、検討を行っ てまいりたいと考えております。資料の説明については以上です。 ○永井部会長  大変大量の資料のご説明で、全部議論が尽くせるかどうか分かりませんが、 ご質問、ご意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。 ○廣橋部会長代理  課題を整理していただいて前よりは分かりやすくなったと思うのですが、そ の課題の項目の中にも意見の違う人がおられますので、そういうものも整理さ れて、同じものだけクラスターにされるともっと分かりやすくなると思いまし た。  そういう意見の違いの中で、私が一番気になったのは、以下のことです。厚 労省で支援すべき研究はミッションオリエンテッドの出口、あるいは現場に近 い研究であると。このことに関しては皆さん共通しているのですが、しかしそ れにつながる基礎研究も大事であり、そこをつなげて支援しなければ出口にも つながらないという考えのある方もある一方、そういう基礎研究は文科省の研 究に任せればいいというふうに言い切ってしまっている方も多いのです。でも、 私はライフサイエンスを基盤としたいろいろな研究だけではなくて、実際の医 療の現場に基づくような基礎研究が重要という視点に、もっと理解が広がると いいなと思いながら読ませていただきました。  もう一つ、4月ぐらいですか、総合科学技術会議で行われるアクション・プラ ンという評価が重要で、どういう領域が選ばれるのか分からないのです。是非 ともきちんと厚生科学の重要性を説明して、金澤先生もいらっしゃいますが、 きちんとここで議論される重要な課題がファンディングされるようにというこ とで、どういうことが我々にできることがあるのかどうかも含めて、考えなく てはいけないのではないかと思いました。 ○金澤委員  今、実はその第4期の基本計画に向けての議論がなされているところです。 その中で、むしろ応用といいますか、一般的にいえば出口に近い、社会にすぐ 結果が返っていくような研究、あるいは産業界ですぐ利用できるような成果、 そういうものを求めることはある意味では当然なのですが、そのまま行くとそ の種がなくなってしまうということは多くの人たちが気がついております。基 礎研究という言葉ではなくて、「基礎体力」という言葉を使おうという方向にあ ります。  実は、23年度の概算要求に向けての場合も、「基礎体力」という言葉を使おう ではないかという方向に今少し来ておりまして、その中に「基礎研究」あるい は「基礎的研究」、応用研究の中の基礎的な性質ですね。そういうものももちろ ん入りますし、人材の育成も入るという方向に、今少し来ています。ただ、ま だ確定ではありませんので、そういう方向にあるということだけお伝えしてお きます。 ○永井部会長  他にいかがでしょうか。 ○桐野委員  金澤先生もお見えになっているので、いろいろな意見が出ているのですが、 良い研究、それは基礎的研究でも、臨床応用を目指した研究でもいいのですが、 どのような研究費であれば良い研究が出るのかということに関して、クリティ カルな批判というかクリティカルな研究、メタ研究みたいなものかもしれませ んが、それが少ないのです。場合によっては競争的な研究よりも、目的など指 定しない基盤的な研究費を配分した方がいい研究が出るかもしれないというパ ラドキシカルな面もあるわけです。  評価についても、非常に詳細に詳しく毎年のように評価した方がいいかどう かも、これは検証された仮説ではないです。むしろ放ったらかしの方が、いい 研究が出るのかもしれない。その辺のところはやはり総合科学技術会議とかそ ういうところでご議論いただければと思います。  特に、競争的研究費の中にそれぞれの分野の生活基盤的な研究をサポートす るために参入してこられるということが結構ありまして、それが全部いけない と言うことができるのか最近疑問に思うのは、やはり各大学とも基盤的研究経 費がすごく減っているのです。すべて競争だけで、もう基盤的な研究費は全部 やめて、全部競争にするという方がいいのだという、そうなのかもしれないで す、それは私には分からないです。そこのところをご検討いただければと思い ます。 ○金澤委員  難しいご質問です。ただ、議論しているということだけ申し上げた方がいい と思います。大学あるいは研究独法というところでの研究成果というものがも ちろん大事であることは分かっているわけですが、それに対しての評価が今非 常にやりにくい状況にあるのです。なぜかといいますと、大学はともかくとし て、研究独法その他ですが、今の政府の方針で、いわゆる独法全部を見直せと 言っているのです。大変難しい状況にありまして。ただ、まともにその議論を する余地は残っております。ただ、今はむしろ第4期の計画に向けて、大学の 位置づけ、これは研究独法も含めてですが、研究組織に対しての力が少し発揮 できていないのではないかということに関しては、議論を始めたところです。 それが一つです。  それと評価ということに関しては実は非常に大きなテーマで、これからやる ことになっています。今日私が提案をしたのですが、やることになっておりま すので、いろいろまたご意見を伺うことがあろうかと思います。 ○松田委員  膨大な意見を議論したらきりがない話だとは思いますが、2点ほどコメントさ せていただきたいのです。まず最初は、やはり文部科学省と厚生労働省との役 割分担のようなことが少し話題になっておりました。私は製薬メーカーですが、 よく産業界との連携ということでいろいろなテーマを応募する場合に、正直申 し上げて、要するに予算を申請する時に、急に体裁を整えるようなテーマの設 定というのも実はあるわけです。そういうことを、いくら連携をしても、やは り実際的な成果というのはなかなか出にくいわけです。その基盤とかそういう ことがもう少し厚くならないと、オリジナリティとか研究者独自の発想という か、そういうものが、体力という言葉ありましたけれど、しっかりしていない と、産業界との本当の連携はうまくいかないのです。やはりそれぞれの役割分 担とか強味というのを優遇して、シナジーが出るような共同研究でないと意味 がない。まず、形から入ってはいけないと思いますので、やはりこういういろ いろな意見を見ておりますと、その辺のもう少しアカデミアというか、公的な 研究機関の体力をもう少しつけるような方向で考えないといけないのではない かということが第1点です。  2点目は、冒頭予算の話が出ました。私は、こういう厳しい経済状況下で予算 が、トータルが増えた、減ったという議論はすべきではないと思います。やは り中身で、どれだけどの分野に配分をしたか、また、どの分野を減らしたかと いう、予算で政策というのをきちんとフォローして説明していただくと、これ からいろいろな配分があると思うのですが、どの分野に今までと比べてどれだ け配分をしたか、それから止めたかというような説明で政策を語っていただき たい。絶対額が増えた減ったというのは、あまりに今の時勢に合わない議論だ と思います。以上です。 ○永井部会長  他にいかがでしょうか。金澤先生、総合科学技術会議で配られた資料の、ラ イフ・イノベーションの推進というのは、これはまだ総合科学技術会議として もこういう方向でというわけではないのですね。単なる参考資料ということで しょうか。 ○金澤委員  資料5-1のことですか。 ○永井部会長  失礼しました、資料4-1の2頁です。 ○金澤委員  ライフ・イノベーションですか。「新成長戦略」というのは、これは閣議決定 されたものなのです。ですから、これをどうこうすることはもうできないわけ でして、それをいかに具体化していくかという、相互関係づけるというのは内 閣府の一画ですから、政府の一画なわけです。それを具体的にどうしていくか という議論を、今しているわけです。 ○永井部会長  大きな枠としては、これはもう一応アプルーブと、国の方針になって。 ○金澤委員  アプルーブも何も、これはもう上から落っこちてきているのです。  ちょっと一言だけいいですか、さっき松田委員のおっしゃったことの最初の ポイントは、大変ありがたいご議論です。そういう議論が、実は総合科学技術 会議で主流ではないのです、お分かりとは思いますが。 ○松田委員  そうなのです。私もいろいろなところで言いますと、マイナーな意見だと言 われます。 ○金澤委員  大変ありがたい議論で、ありがとうございました。 ○永井部会長  その他いかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  今ご質問がありましたので、金澤先生がおっしゃいましたように、本日お配 りしている参考資料3が、「新成長戦略(基本方針)」ということで、これは既 に閣議決定されております。この中にライフ・イノベーションということはご ざいますので、大枠はもうすでに決まっているということです。資料4-1の2 頁にあります、この参考というところは、総合科学技術会議の方で使われてい た資料で、例示がありましたので、ただライフ・イノベーションと書くよりは、 こういうものを見ていただいた方がイメージがわきやすいかなということで、 あえて引用したということです。 ○金澤委員  さっきかなり消極的なことを申しましたけれども、この新成長戦略の中で、 ライフ・イノベーションという言葉を使って、特に人間の健康をということを 言ってもらったということは、大変いいことだと思うのです。厚生労働省とし ては、ある意味ではこれはいいチャンスですから、それこそ百年に一度のチャ ンスだと思いますので、いい提案を、これからアクション・プランを作る中で 提案していただきたい。それを受けて、こちらの意見も言うかもしれませんが、 いいものを作っていくための操作だと思っていただきたいと思っています。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。そういたしますと、この件はまた次回もさらにご検討 いただくという整理でよろしいでしょうか。では、そういうことでまた次回も よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。  議事の5の報告事項、「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告につ いて」、事務局よりご説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料5-2についてご説明いたします。遺伝子治療臨床研究について、財団法 人癌研究会有明病院から報告がございました。1頁からが、重大事態等報告書と なっております。研究の課題名は、「乳癌に対する癌化学療法の有効性と安全性 を高めるための耐性遺伝子治療の臨床研究」です。この臨床研究で、8年ほど前 に遺伝子治療を受けられた患者さんが転移性脳腫瘍、癌性髄膜炎でお亡くなり になったという報告をいただいたものです。  3頁の「重大事態等の内容及びその原因」に、経過等が書いてあります。2001 年10月に大量化学療法後、遺伝子治療を行い、大量化学療法による通常の副作 用の他に急性毒性はなく、病変も消失したということですが、その後再発され、 小脳への転移等があり、手術等の処置も行われましたが、他院に、これは緩和 ケア病院と聞いておりますが、そちらに入院された後、永眠されたということ の報告です。  死亡直前までの血液検査で、芽球細胞の増加は認められず、また遺伝子解析 では、数カ月で末梢白血球中に導入した遺伝子陽性細胞はほとんど検出されず、 PCRでも組換え遺伝子は検出されていないということです。  遺伝子治療後5年以上経過して、他院での外科手術、緩和ケア病院への入院 等によって、施設側も死亡という事態の把握や対応に時間がかかった案件です が、3頁の下の方の「総括責任者、担当医師の見解」にありますように、臨床経 過から転移、進行による癌死と考えられたということ、遺伝子治療から5年以 上経過し、末梢血に異型細胞の増加は認められていないことから、遺伝子治療 との因果関係はないものと考えられたということです。  2頁の下の方に、施設の審査委員会の意見もありますが、死亡原因については 原病の進行によるもので、遺伝子治療との因果関係は認められないと判断した ということです。  公式報告をいただく前から、作業委員会の先生方に本件の内容を確認してい ただいており、実施施設での最終採血が死亡2カ月前にあり、そちらで陽性細 胞が検出されていないことなどの報告を受け、データの再確認等も行っていた だいております。なお、本件は報告まで時間がかかっておりまして、委員から もご指摘ございまして、施設に対しましてはできるだけ迅速に対応するよう、 改めて連絡することを予定しております。本件の説明は以上です。 ○永井部会長  何かご質問、ご意見ございますか。介護施設に入っておられて、状況の把握 がちょっと遅れたということでしょうか。 ○坂本研究企画官  緩和ケア病院に入院されていて、そちらで死亡されたのを把握するのに2カ 月ぐらいかかり、その後患者さんのデータをそちらの病院の方からいただいて 解析したりとか、施設での検討に時間がかかったと聞いております。その点の 詳細については、改めて確認をいたします。  ただし、この患者さんの状態につきましては作業委員会の先生からも、因果 関係的にはこの説明は妥当であろうというコメントをいただいております。 ○川越委員  今のコメントにちょっと関連するのですが、こういう治療を受けられた方が 最終的にどうなったかということの把握が非常に大事で、たぶんこういう登録 している方が例えば亡くなっている、生きているということについての報告は 必ずあると思いますが、今のように報告が遅くなるというようなことと、やは りできるだけないようにしていただきたいなということを思っています。 ○石井委員  重大事態と因果関係なしというご説明は分かったような気がするのですが、 この研究の成果についての評価はどうなっているのでしょうか。 ○永井部会長  これについていかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  研究が終了したという最終的な報告がまだなされておりませんで、1例の患者 さんのフォローをしていると聞いておりますので、研究成果についてのコメン トはまだ避けた方がよろしいかと思います。通常の副作用の他に急性の毒性と かはなかったということですので、この遺伝子治療の安全性に関して、この症 例について一定のデータは取れていたと思います。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。もし、他にございませんでしたら、予定した議事は、 以上すべて終了しました。事務局から連絡事項等をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  遺伝子治療臨床研究の関係について1点、予めご説明させていただきたいこ とがございます。新しい遺伝子治療の臨床研究が申請される動きがありまして、 詳細な説明は申請前なので控えさせて頂きますが、新しい分野の研究というこ とで、新たな作業委員会を立ち上げる必要があると考えられます。申請のタイ ミングによりましては、もしかしたら部会長と御相談の上、次の部会の前に作 業委員会を立ち上げることになるかもしれませんので、予めそういう状況があ ることを説明させていただきます。  また、次回の当部会については日程調整をさせていただいているとおり、3月 25日木曜日の15時から開催を予定しています。正式なご案内については、詳細 が決まり次第送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。事務 局からは以上です。 ○永井部会長  これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。                               −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171