10/02/15 第4回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会議事録 第4回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会                  日時 平成22年2月15日(月)                  17:00〜19:00                  場所 霞ヶ関ビル「富士の間」(35階) ○安全対策課長補佐 いま確認をしましたところ、座長がこれからこちらのほ うに向かうということでございますので、これから第4回「医薬品の安全対策 等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会」を開催いたしま す。本日の懇談会は公開ということで、カメラは議事に入るまでとさせていた だきますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、ご理解とご協力のほ どをよろしくお願いします。これより議事に入りますので、カメラ撮りはここ までということでよろしくお願いいたします。 ○副座長(山本(隆)) 永井先生がお見えになる間、座長の代行をさせてい ただきます。まず、事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。 ○安全対策課長補佐 事務局のほうから、本日の配付資料の確認をさせていた だきます。まず最初に、いちばん上が「座席表」でございまして、その次が 「議事次第」「配付資料一覧」「開催要綱」「構成員名簿」といつものもので ございます。資料1が前回の第3回の会議でお出しした「これまでの主要な議論」 の2カ所を修正したものがございまして、その修正版でございます。資料2が今 回のメインになりますが、提言の案ということで、全部で10頁強のものがござ います。  次に資料3が「今後の検討スケジュール(案)」、そして次に3つほど参考資 料というのがございまして、これは診療情報、電子カルテ、処方せん等々の資 料についての参考ということで、付けさせていただきました。もし、お手元の 資料で不足や乱丁等ございましたら、事務局までお知らせのほどお願いいたし ます。以上です。 ○副座長 よろしいでしょうか。それでは永井先生が間もなくお見えになるか と思いますが、最初は事務局からの説明が主体ですので、議事に入らせていた だきたいと思います。まず、議題1から3について、事務局からご説明をお願い いたします。 ○安全対策課長補佐 順を追って資料1、2、3、そして参考資料についてご説 明します。資料1の前回の主要な議論の修正が2カ所ありまして、1つが右下の 頁でいうと4頁、「データの種類・活用」をご覧いただきたいのですが、そこ の上から4つ目、佐藤構成員のコメントで「シグナルの検出・強化と仮説の検 証を区別すべき」というふうに修正をさせていただいております。次が7頁、 「データ連結等技術的手法の開発」、そこのいちばん下のところ、中尾構成員 のご指摘で、「歯科から医科へ紹介される場合等の双方向情報共有も必要」と いう形で修正をさせていただいております。資料1については今の2カ所につい て、修正をさせていただきたいと思います。  次に資料2、「医療関係データベースを活用した医薬品等安全対策に係る提言 案について」ということで、多少長いですが、ご説明いたします。1の医療関係 データベースを利用する目的と必要性について。(1)現在の課題ということで、 ここに書きますように、いま現在は企業からの副作用の自発報告が中心であり、 薬剤疫学的手法の活用が欧米諸国と比べて不十分であります。肝炎の検証検討 委員会の去年4月に出た第一次提言では、今後の我が国の安全対策において、 医療データベースや薬剤疫学の活用が求められているという指摘を受けており ます。また、その医薬品の安全対策以外の医学的処置についても、例えば合併 症の頻度等についても迅速に評価が行われるよう求められています。この本懇 談会の段階では、技術面と社会・制度面、こういった面での課題の解決の論点 を議論してきました。  (2)欧米主要諸国における活用の現状ですが、例えば米国では2008年5月にセ ンチネル・イニシアティブが立ち上げられまして、2010年7月までに2,500万人、 2012年7月までに1億人のデータへのアクセスを確立する目標を設定。その他EU、 カナダ、韓国、台湾においても、国家レベルの大きなデータベースの構築がな されているところです。  (3)我が国での必要性ですが、2004年に米国で、Vioxxといわれる関節炎の治 療薬の長期使用によって、心血管リスクの増加が確認されたという報告があり まして、全世界的に回収が行われました。ハーバードの研究によって、実際に 5年後に回収が行われたのですが、それより2年早く心血管リスクの増加を示唆 するデータが得られました。これによって、薬剤疫学的手法を用いた安全対策 の可能性が示されました。  次の頁です。新たな手技、デバイス、こういったものの有効性・安全性評価 が可能になっています。ただ、我が国においてはその実態調査データベースの 整備が未だに進んでいないという現状があります。そしてこの本懇談会では、 2011年に運用開始予定の電子レセプトのナショナルデータベース、こういった ものを含む医療関係データベースについて、この医薬品等に係る保健衛生の向 上のための研究に活用するための社会的・技術的な課題、あるべき姿や個人情 報の取扱い、こういったものに関する考え方を提言として取りまとめたいとし ています。  2の電子的な医療情報の活用の方向性ですが、(1)医療関係データベースの種 類について。現在明確な定義はありませんが、現在可能なものとしては、この レセプトデセータ、そして電子カルテシステムを含む医療情報システム、以下、 「電子カルテ」といいますが、これらの2つが挙げられます。レセプトデータ については2011年度までに、国家レベルのナショナルデータベースとして構築 されます。保険局のほうの「レセプト活用報告書」において、公益性の確保等 を要件とした利用の可能性が指摘されています。電子カルテに関しては、投薬 ・処置や検査などの診療行為に関する詳細なデータがあります。本懇談会にお いては、ほかにDPCであるとか、人口動態統計、予防接種、乳幼児検診等、ほか のデータの利用についても議論がされております。  (2)ICH-E2Eガイドライン、これは市販後早期の医薬品安全性監視活動の計画 立案を支援することを目的として作成されておりまして、市販開始後、使用症 例数が急速に増加し、患者背景も拡大されることに留意が必要であります。そ の段階でデータベース等のインフラが必要ですが、我が国では、十分活用され ているとは言えません。また、アカデミアによる研究の促進も薬剤疫学的研究 推進に不可欠であるとしています。  (3)レセプトと電子カルテのメリット・デメリットを表にしております。レセ プトについてはメリットとしては規模が大きいこと、網羅性、形式が比較的統 一化しやすいこと、デメリットに関しては転帰や病名等詳細な医療情報に欠け ることです。電子カルテについてはメリットは医療情報は正確で、詳細に書か れていることで、デメリットについては情報の標準化が進んでいないことです。  (4)安全対策における想定される調査・研究のメリットとデメリット。第1回 の懇談会の資料でもご説明したところですが、以下3つの事例があります。1つ は副作用の発生割合の正確なモニター、2つ目が副作用が本当に被疑薬によるも のなのか、疾患による症状自体によるものなのか。3つ目として、この緊急安全 性情報等の行政等の措置が副作用の低減に効果があったのかないのか、こうい ったことについて可能になると考えております。  こういった匿名化されたレセプトのデータベースでは発生頻度が非常に低い 副作用の検出であるとか、副作用のみならず、診療の根拠となる治療等の有効 性や有用性の客観的な検証、こういったものについての活用も期待されており ます。次に電子カルテについては規模の限界があります。そして、その情報の 標準化が必要でありますが、未だに進んでおりません。そのためにも医療機関 における協力であるとか、電子カルテデータ連結、そういった社会的、技術的 な課題があって、今後活用方策を含めて、要検討であるということです。  (5)が活用できるデータベースの利用と今後の期待ですが、まずナショナルデ ータベースについては膨大な件数のデータを適切に活用すれば、従来できなか ったことができるのではないか、今後、匿名性を担保しながらデータ連結を実 現させ、より高度な調査解析が可能になるのではないかということが考えられ ます。  (6)我が国において目指すべき方向、目標ですが、まず受動的なサーベイラン スについて、企業からの自発報告に基づく受動的なサーベイランスから、デー タベースを活用した積極的、定量的かつ迅速な安全対策を目指すべきであるこ と、データの提供者になる国民(患者)の理解と協力が得られ、社会全体とし て国民医療の質的向上や安全性確保のメリットを享受することを目指すべきで あること、そして医療従事者や薬剤疫学関係者が、その治療法の改善であると か、提供する医療の質の向上に繋がるメリットを享受するということを目指す べきであるとしております。  3のデータベース利用の社会的な意義と個人の決定権の現状ですが、(1)は諸 外国の状況についてです。データの利用や、個人情報の考え方は諸外国では相 当異なっています。例えば、北欧ではデータ活用は当然なのですが、米国では 警戒感があります。韓国は当初積極的に利用されていたのですが、社会情勢の 変化もあって、個人情報の保護に流れが強まっています。こういった外国のメ リット・デメリットを調査・研究をして、我が国における活用方策を検討すべ きであるということです。  (2)現状でできること、できないこと。できることとしてはナショナルデータ ベースの利用を想定したときに、集団としての安全対策に関する調査研究を行 えるのではないか、できないこととしては、個人情報がレセプトデータにはな いために患者一人一人に対する安全対策を行うことが困難であろうということ です。  (3)我が国における考え方及び国民的な理解を得るためには、この利用促進の ためには臨床疫学的、薬剤疫学的な研究の進展は必須ですが、同時に、国民あ るいは患者の理解と医療従事者の協力がきわめて重要であること、患者の情報 や患者の選択の権利が保護されている必要があること、そしてこの活用に関し ての目的であるとか、メリット・デメリットについて、研究者、個人情報保護 ・倫理、国民(患者団体)など幅広いステイクホルダーが認識を共有して、共 通な理解を得る必要があることを指摘しております。  4は技術的な課題です。(1)(2)を合わせておりますが、データの標準化と統一 的データベースの構築。現状としては、医療機関において、電子データを包括 的に一括管理する体制が整備不十分であること、情報システムの規格・設計が 医療機関毎、システムベンダー毎に異なることです。論点としましては、情報 システムの共通化、標準化、そして、診療情報、各種情報、各種データ様式の 標準化。そして諸外国のメリット・デメリットの調査研究。その方向として統 一的なデータベースを目指すのか、分散型のデータの活用を目指すのか、そし て医薬品に限らず医療における様々な検査・手技の安全確保が重要であって、 そうした情報のデータベース化を行う必要があるのではないかということです。  (3)レセプトと電子診療録等とのデータ連結ですが、現状としてはナショナル データベースが匿名化されているため、そのまま電子カルテから作成される情 報とデータ結合をさせることはできません。論点としてはデータの突合につい て、ハッシュ関数等の技術的課題に関する研究が必要であります。そのために は医療機関における連結化の協力が必要であり、その手法等検討が必要である ということです。  (4)長期間のデータ解析については、現状としては長期間のレトロスペクティ ブな調査研究、例えば、高血圧等の生活習慣病、こういったものについて実施 はよいですが、ブロスペクティブな研究は、例えば、そのレセプトデータが月 毎の集計となっていることから、現状では困難です。論点としては月毎のデー タ結合によって、データから個人が特定されやすくなる課題、プロスペクティ ブ調査に適したデータベースの設計が挙げられます。  (5)個人の特定、患者個人への通知ですが、この肝炎第一次提言において、 個々の患者に副作用等の発現について知り得るような方策を検討すべき、国民 情報の伝達のあり方について被害者に配慮した公表のあり方を検討すべき、そ してレセプト情報を活用した患者本人への通知等に関する方法・問題等を検討 する必要があるといった提言がなされております。論点としては現在レセプト データベース自体での患者本人への通知は困難、そのため医療機関に本人に対 する通知への協力を依頼することの検討が必要で、そのためには法整備が必要 ではないかといったことが挙げられます。  (6)情報のセキュリティーについて。現状としては懇談会の中で言及があった 統計法、これは情報の漏洩が生じた場合には、厳しい罰則規定が設けられてお ります。論点としては米国、英国、カナダ、ヨーロッパ諸国のケースの規定や 法整備、ガイドラインなどについて検討を行うべきで、日本でも個人情報保護 等の法制度・規定又はガイドラインの制定を検討すべきではないかといったこ とが挙げられます。  5はデータの活用の研究のあり方について。(1)現在できること、将来できる ことが期待されていること。現状としてはナショナルデータベースが2011年に 構築される予定であり、そのレセプトデータは共同研究等で医療機関から研究 者・研究機関に提供されて薬剤疫学に関する研究等が進められております。そ れと同時に、匿名化され統計処理された医科・薬科等のデータが一部の民間企 業から提供され活用されております。論点としては、公共性の高いデータベー スを利用する場合の研究のあり方をどうするか、そしてその個人情報の保護等 の倫理性確保の規則、又はガイドラインを整備すべきではないかといったこと が挙げられます。  (2)行政からの指示等については、製薬企業がこの調査研究を実施する場合で あっても、その研究の客観性・第三者性の確保が必要ではないかとしています。 初めから企業が利用することを拒むものではありませんが、商業目的の利用で は問題ではないか、そして企業がスポンサーとなる場合の利益相反のマネジメ ントについてのルールが必要ではないかといったことが挙げられます。  (3)大学・公的研究機関の役割は、臨床疫学的・薬剤疫学的手法を用いた調査 分析の実施、データ連結技術の研究などによって、よりレベルの高い調査・解 析を可能にするため、アカデミアの役割に期待したいとしています。論点とし ては、臨床疫学分野、薬剤疫学分野、情報セキュリティー、患者の個人情報保 護、リスクコミュニケーション、これらに係る分野の人材育成を図るべきでは ないかとしています。  (4)利益相反ですが、データの提供者と利用者ともに利益相反のマネジメント が必要ではないか、そして、この調査研究資金の透明性を高めるために、研究 成果の発表時、その他手続きやプロセスが必要なのか検討する必要があるとし ています。  (5)調査・研究の支援体制について。大規模な医療関係データベースの構築の ためには、予算と財源も大規模にする必要があるのではないか、そして従来の 枠組みに縛られずに省庁や部局を超えた協力・支援を行うべきではないかとし ています。  6のデータ活用の倫理方策ですが、これも(1)(2)重ねておりますが、データの 種類と範囲、そして患者等の事前同意の取得や自己決定権に関する必要な手続 きについてですが、まずデータベースについては公的なデータベースと企業か ら提供されるデータ(主にレセプトデータ)の両方があることに留意し、目的 としては医薬品等安全対策の向上、薬剤疫学等の調査研究、医療サービスの質 の向上や国民の健康の保持増進を想定しています。利用者としては、国、研究 機関、国民が考えられ、また医薬品等製造販売業者も一律に排除するものでは ないと考えるべきか、またレセプトデータについては、匿名化、統計処理が行 われて、提供されることを想定しており、これは商業データベース、ナショナ ルデータベースになります。そして電子カルテなどから作成されるデータベー スは、匿名化しても医療情報に係る記述から高い確度で患者の推定ができるケ ースが想定され、そのため患者が自分自身の医療情報を提供したくない場合、 提供を拒否する権利は確保されるべきで、その方法も事前に定めておくべきで、 同意の取得については個別か包括か、対応を検討すべきであるとしています。 そして、次に一覧表をお示ししておりまして、公的なデータ、医療機関からの 提供、企業等からの提供、各々についてレセプトと電子カルテが考えられると いうことで、例示と事前同意が必要か不要か、研究計画の審査かどうかといっ たことを書いております。この中で、企業の場合の電子カルテについては、現 在は想定されないということで、ここだけ省いております。  (3)個人情報の範囲と保護についてですが、この論点としては、情報の種類に よっては個人が特定される可能性が出てくることに留意する必要があり、以前 の懇談会の議論の中で、例えばアイスランドでは国民データベースで、対象と なる可能性の患者が10人以下になった場合には、それ以上の検索は停止する仕 組みになっているとの話があり、こういった事例を参考にして、個人情報の保 護を確保するためのシステムを整備すべきではないかとしています。  (4)データ保存期間、ここは疫学倫理指針との整合性をその研究計画書にあら かじめ保存期間を定めておいて、期間を過ぎた場合には、匿名化し廃棄しなけ ればならない、こういったものの整合性を図るべきではないかとしています。  (5)既に匿名化されている情報の二次利用での取扱いについてですが、この医 療関係データベースは当初は別の目的で集められております。レセプトについ ては診療報酬請求、電子カルテは患者の治療で、データについては、疫学の倫 理指針では、目的が国民の健康の保持増進への貢献で、連結不可能な匿名化が なされていれば患者の事前同意は不要としておりますが、いま言ったことに鑑 みて、データベースの利用に留意点があるかないか、患者の権利の尊重の観点 から、研究目的や内容の公表等、何らかの形で透明性が確保されるべきではな いかとしています。  (6)個人の特定情報の課題と個人への情報提供ですが、個人の特定には関係医 療機関の協力が不可欠であること、そしてデータ利用者と医療機関の両方で患 者情報保護の体制が構築されていなければならないとしています。患者の医療 情報の提供に係る事前同意の状態について留意すべきであること、そして患者 に情報提供を行う時のリスクコミュニケーションの重要性についても認識され て、人材育成も含めた必要な対策を講じるべきであるとしています。  (7)将来的にあるべき制度・法制化等について。米国、カナダ、イギリス、ヨ ーロッパ等における保健研究・調査と個人情報保護、こういった既定・制度な どを参考にして、法律又はガイドライン等によるルール面の整備を検討すべき ではないかとしています。  7は実証研究等調査研究の普及及び国民への周知の方策についてです。論点と しては、臨床疫学、薬剤疫学等の利用による成果について、メリットとデメリ ットの比較とともに、国民にわかりやすく説明されるべきであることであり、 行政は、広く関係者の意見を踏まえ、本懇談会を通じて幅広く意見を聴くべき であること、提言の最終案を作成した後については、パブリックコメントを行 い、国民の声を幅広く集め、それらを提言に反映させる必要があるとしていま す。  将来的なロードマップとしては、これは予想が一部入っておりますが、(1)と してはナショナルデータベースの運用開始が2011年で、想定として従来よりも 大幅に早い段階で副作用の検出ができるとしています。このメリットは国民の 方々へも周知されるようになることとしています。  (2)運用開始から2、3年後の予想図としては、データ連結技術等に関する革新 的な技術が開発され、薬剤疫学分野の研究がさらに進展、重大な副作用等発生 時の特定の個人への情報提供が可能になること、新薬等の市販直後の副作用の 発生を早期に探知し、情報提供が迅速にでき、それによって副作用の発生件数 が大幅に減少といったことが期待できるのではないかとしています。以上が資 料2でございまして、資料3が今後の検討スケジュールということで、今回は第 4回で、次回以降第5回、第6回を今年の4月、5月で各論を議論して、7月に最終 案を確認して、パブリックコメントにかけたいと、こういったスケジュールで 考えております。  次が参考資料の1-1から1-2、1-3とございまして、これは浜松医科大学の木村 先生、あと川上構成員そして永井座長から資料を提供いただいたものでして、 まず参考資料1-1ですが、これは診療情報であるとか、レセプトのイメージ、そ して様々なパラメータを経時的に比較した場合、そして診療情報を連結したと きの医学知識の集積がどうなっているか、そして電子カルテのイメージ、これ が看護記録、医師の記録、検査値履歴等についてのイメージをお示ししており ます。 参考資料1-2、これは処方せんやレセプトで、このオーダー画面がどのようなも のであるかというイメージをお示ししたものです。最後の参考資料1-3、これが 心臓外科領域におけるデータベース事業の成り立ちということで、日本におけ るナショナルクリニカルデータベースがどうなるのか。そしてナショナルデー タベースとしての日本の現状を発信する意義がどのようなものがあるのか。ほ かにはフィードバックレポートがどのようなものであるのか、その外科手術の 全症例の地理分布がどのようなものであるのか、ベンチマークのリポート例で あるとか、リスク調整のアウトカムの把握がどのようなものであるのかといっ たものについてのイメージをお示ししたものです。今日お配りしている資料の 状況は以上でございます。 ○座長(永井) どうもありがとうございました。遅れまして申し訳ございま せんでした。それでは、ただいまの資料についてご質問、ご意見を承りたいと 思います。いかがでしょうか。もしよろしければ、参考資料の説明をさせてい ただいてもよろしいでしょうか。参考資料の1-1と1-3は、私が用意したもので す。これまで、医薬品安全ということでデータベースのことが検討されてきた わけですが、当然医薬品の有害事象等を迅速に把握することは、基本だと思い ます。それ以外にもいろいろなデータベースがあり、また既に動いているもの もありますし、現場にフィードバックをして、現場の医療者あるいは患者さん がメリットを受けるシステムもあるということで、ご紹介させていただきたい と思います。  参考資料の1-1は、私どもが10年ぐらいかけて作ってきたもので、心臓カテー テル検査の情報あるいはレポートをデータベース化して、いろいろな調査や管 理に使っているものです。心臓カテーテル検査は、私たちの病院ですと年間 2,000件ぐらい行っています。それが、全部1枚1枚別のCDになっている、あるい は昔ですとレポートも全部手書きで、どこかにファイルされているだけでした。 そうしますと、今年は何件いったぐらいはわかるのですが、どのような処置を してどのような問題点があって、どのような背景の人にそのような検査が必要 だったか。できれば、そのようなデータを複数施設で統合して、どのようなカ テーテル、デバイス、ステントを使ったときにどのような問題があるか、どち らが優れているかを、おおよそでいいので迅速にリアルタイムに分かるような ことが求められているわけです。  もしそれをデータベースなしにやりますと、ケースカードを作って前向きに 何年かかけて、おそらく何千万円も何億もかけて調査をしなければいけない。 そういう方法は厳密ではありますが迅速性がないということです。そのような ことができるような時代になったときは、もうそのデバイスは使われなくなっ ているというようなこともあります。レポートや画像をデータベースにしてい くと、日常の診療にも使いますが、同時にそこからさまざまな情報を引き出し ていく、集計していくという意味で、このカテーテル検査のデータベースが必 要なのだということです。  1-1の1頁をご覧いただきますと、このようなイメージで、実際にこれが使っ ているものですが、動画も入りますしお絵描きソフトも入っていて、どの部分 にどのようなことをしたか、あるいは手技、デバイスも右上に登録されていま す。さらに、フォローアップのときにステントを使った部分はどうなっていて、 新たな病変がどのような所に出てきたかというような情報です。  1枚目の裏をご覧いただきますと、今度は診療情報からレセプト情報をいただ いてくる、あるいは血液検査の所見もいただいてきて、それを1頁裏の下のよう に全部のデータを統合していきます。これは、現場任せではなかなかできなく て、情報の専門家の力も必要ですし、データを入力する人、あるいはそれを磨 いていく人も教室総がかりでやっていくわけです。そういうことができますと、 2頁の上のように、例えば今年は何件やったか、あるいは手技がどうだったか、 X線の照射がどうか、場合によっては術者によってどのように成績が違うのか。 さらに、2頁の下のように、いわゆる後ろ向きコホート試験といいますが、ある 検査値に注目して、この正規分布の中でXが100以上の人が何%いるかを、リア ルタイムに調べることができます。このようなデータをすべてエクセルに落と して統計ソフトに落としていくことができます。そうすると2頁の裏のように、 今度、患者さんがその後どうなったかという情報を入れますと、一見前向き試 験のようにfactorXがある人とない人でこのように生命予後や入院の予後が違っ てくる。当然、薬を使っている場合や使っていない場合で、おおよそバックグ ラウンドを揃えて統計データあるいは推測が可能になってきます。  これは、1つの病院の中でLANを使ってデータを集積しているわけで、カテー テルの検査室でないと見えないということではなくて、病棟でも見えますし、 私の部屋からでも見えるという情報システムになっています。これを3頁の上 のように、匿名化したうえで途中で匿名化するシステムを噛ませたような状態、 1つひとつの輪が各病院のLANだと思っていただいてよろしいのですが、そうい う情報を匿名化して集計していけば、数万件、数十万件のデータを集積して知 識を生み出す、あるいは何か問題があれば早く気がつく、仮説を立てることが 重要で、そのうえで今度前向きの試験をしていけばいいということになります。  この情報には、電子カルテとも今後連結していく必要があるわけです。3頁の 下の電子カルテのイメージは、実際にいま東大病院で使っている電子カルテで すが、このような情報をうまく統合していけばいいということで、電子カルテ の例が3頁の下あるいは裏、あるいは4頁の上などに掲載されています。このよ うなイメージだということです。ですから医薬品、特に処方を用いたデータベ ースだけではなくて、さまざまな治療、手技、レポートをデータベース化して いくことが、非常に重要だということをお分かりいただきたいです。  資料1-3をご覧ください。これは、かなり社会実装されているデータベースで す。何かといいますと、心臓血管外科の手術です。どういう患者さんにどうい う手術をして、どういう成績であったか、そしてそのデータベースを基にして 今度こういう患者さんにこういう手術をするのだけれども、その患者さんの手 術をした場合に、この施設では死亡率が何%で予後はどうなるかをネットで答 えてくれるということが、米国ではもう既に行われています。日本でも、心臓 血管外科で高本先生が非常に強いリーダーシップを発揮されて作られたシステ ムです。  私もこれは本当にできるのかなと思ったのですが、心臓カテーテルよりは各 施設で件数が少ない、東大病院でも300件ぐらいの心臓手術ですから、カテーテ ルの2,000件とは少しオーダーが違うので可能だったと思います。しかし全国の 協力がないと、とてもできないわけです。1頁の下のように、これが何年間かで 7万7,000件ですか、いまは全国で10万件を超えた心臓手術の成績が登録されて います。1頁の裏をご覧ください。日本のデータがありますが、ヨーロッパや米 国でもこのようなことが行われていて、分かったことは、1頁の裏の下ですが、 これは最近論文に出て世界的に驚かれたことです。日本はよく症例が少ないと 言われますが、世界的には少ない症例ながら非常にいい成績が実は出ていると いうことで、むしろ外国からこういうシステムあるいは日本に学べというよう なコメントが出たそうです。  具体的にどのような項目を入れているかといいますと、2頁の表ですが、上が いろいろなカテゴリで、その項目が2頁の下です。それから、こういうものを入 れるとどういうことがわかるかというものが、2頁の裏です。術前に、例えば30 日死亡率が0.4%、手術死亡が0.8%、合併症どうとか、その下、例2のフィード バックレポートで、その患者さんについてどういうリスクがあるかの回答が返 ってくるわけです。ですから、こういうものを見ながら外科と内科が一緒に検 討していって、手術したほうがいい、しないほうがいい、どこでしたほうがい いということがわかりますし、延いては患者さんも自分はどうしたらいいのか を、自分で決めるというのも難しいかもしれませんが参考にすることができる わけです。  それから、いまは病院など手術施設の集約化、機能分担が言われていますが、 日本全体でどういう所で何件ぐらい手術をしているかが、3頁の上の図です。ま た、集約化した場合には、アクセスがどのような影響が出るかということも、 下の図や表でだんだん明らかになってまいります。3頁の裏に四国の図がありま すが、何分以内に病院に駆け付けられるかというようなことも、このような地 図の上で表示することもできる。あるいは各施設の一定期間の術前リスク、ア ウトカムといったものも全体と対比してうちの施設はどういう成績なのかもわ かるということです。  4頁の表は、そのようなリスク調整を患者さんの視点で重要な指標をアウトカ ムとして定義していく。それから、それぞれの施設の特徴、例えばうちは高齢 者が多い、腎臓の悪い人が多い、合併症の人が多いということを、自分たちの 施設の患者さんの特徴を把握していくことができる。このような形でデータベ ースが作られ、また活用できます。こういうことをきちんとやろうと思うと、 いままでは全部前向き試験、コホート試験であったり介入試験が行われていた わけですが、正直なところそんなことはやっていられないということです。よ ほど研究費があって、スポンサーでもついて限られた問題であれば、そのよう なことにチャレンジできるわけですが、現実には現在動いている足下の症例を 整理して、そして自分たちの成績を整理して、後ろ向き試験にはなります。し かし、非常にたくさんの症例を登録すれば、かなりリアルワールドに近いとよ く言いますが、方法としては科学的には多少前向き介入試験よりは劣ることは 事実です。しかし、リアルワールドを反映してリアルタイムにおおよその傾向 が出てくる。そして、またそこからいろいろな科学的な仮説を立てることがで きるという意味では、多くのメリットがあると思います。しかし、これには現 場の人たちだけではなくて、患者さんたちの協力あるいは個人情報をもちろん 匿名化したうえでですが、協力が必要になってくる。場合によっては、これが 連結していないと予後がわからなくなってきますので、そのようなところの理 解も必要になるというような例として、ご紹介させていただきました。  1-2はどなたからでしたか。これは事務局からですか。 ○川上委員 参考資料1-2は、事務局より私と本学の医療情報部の木村教授に、 何か参考資料になるものはありますかということでご連絡をいただきまして、 木村教授に用意していただいたものです。実際の処方せんやレセプト、あとは オーダー画面などのイメージとしてご覧いただければいいかと思います。  具体的には、内科にかかったことのある患者さんの処方せんとその方のレセ プト、そしてそれらに対応する種々のオーダー画面という構成になっているか と思います。例えば、参考資料1-2の1頁目の処方せんを見ていただきますと、 いくつかの薬剤名が書かれていて、この処方せんに対応するものが1枚めくっ ていただいたオーダー画面の3になります。ですから、実際には処方をされる 医師は、このオーダー画面3を開いてここで処方せんを作成する。これを紙ベ ースで出力したものが、この1頁目の処方せんになる、ということです。  同じように、このレセプトの1や2を見ていただきますと、傷病名や投薬が あったこと、具体的にどういった検査をしたかということが、請求として載っ ています。これらが、オーダー画面1や2を通じて、2には検査をした結果がも う出ていますが、実際に診療の場面では見ているということです。本日も先ほ ど、レセプトと電子カルテとの比較の説明が事務局からありましたが、浜松医 科大学ではまだ電子カルテは導入されていません。そのためここでは、レセプ ト情報とこういったオーダー情報との比較として見ていただいてもよろしいの ですが、レセプトを見ると投薬があったことはわかるけれども、院外処方せん の具体的な内容は載っていません。そこで、投薬内容を病院レベルで必要とな れば、処方オーダーエントリーシステムからデータを出さなければいけません し、逆にレセプトベースで調べるのであれば、調剤薬局から出てくる調剤レセ プトとの突き合わせが必要になると思います。  また、このレセプトの1などを見ていただきますと、検査があったことはわ かるのですが、その結果が載っていません。そのため、病院ではこのオーダー 画面2にあるような検査結果の数値そのものが情報としてありますので、我々 は通常それを使っていることがおわかりいただけるかと思います。  それから一般的な病院では、処方、病名、検査等に関する情報がそれぞれ別 のオーダーシステムのデータとして取り扱われているのですが、浜松医科大学 の場合は検索機能をもったデータベースにこれらを毎日送り込んでいます。そ れを利用して、薬剤と検査との関係などを調べる業務調査やチェック等ができ る体制にあることは、前回の懇談会で木村教授がご紹介したとおりです。以上 です。 ○座長 ありがとうございました。どこからでも結構ですのでご意見、ご質問 をいただけますでしょうか。 ○山本(尚)委員 今日の会議の目的を確認しておきたいのですが、今日は個 々の議論をする場ではなくて、方向性としてここに列挙されているものが網羅 されているかということでよろしいですか。 ○安全使用推進室長 事務局から、本日の趣旨等を補足させていただきます。 本日は、今後の検討スケジュールにもありますように、これまで過去都合4回 分の勉強会を含めた議論をさせていただいた中での、先生方からいただいた論 点を抽出したものを、提言の案として一度まとめ直した形で、本日資料2を提 案させていただいています。これは、まだ第1回目の案ですので、これで決ま りというものではなくて、今後この検討会の場で先生方からいただいたご意見 や、またさらにこういう部分について情報が欲しいというものを情報を集めな がら議論をしていって、全体的に肉付けをしていく、そして中身を修正してい くという作業をお願いするための第1回目だと思っています。  ただ、実際に先ほど永井先生も川上先生もそうなのですが、事務局から事前 に少し材料のお願いをさせていただいた部分があります。それには2つ目的が ありまして、こういった提言を考えるうえで、特にこれまで過去4回の議論を 整理していきますと、やはり診療情報やレセプト情報の中身において、どのぐ らい個人情報における取扱いの注意が必要かといった議論を、日米の比較やい ろいろなデータを示して議論させていただきました。そのような中で、実際に どのぐらいの情報量のものが処方せんに書かれているのか、レセプトに書かれ ているのか、それから実際に医療機関の中でのオーダー画面など、永井先生の 所では非常にすばらしいデータベースがありますが、このような診療情報で先 生方が目にするものとして、現状どのぐらいの情報量のものが先生方の目に触 れながら使われているのかといった部分について、一度具体的なイメージをご 覧いただいたほうが、おそらく個人情報の議論をするうえでわかりやすいので はないかということで、本日こういう形で2つの医療機関からサンプルとして 情報の提供をお願いした部分があります。  それと、実際、本日の資料2の提言においても、例えば2頁のいちばん上に ありますが「新たな手技、デバイス、手術法の有効性・安全性評価が可能とな っているが、我が国においてはこうした分野の実態調査データベースの整備が 未だ進んでおらず、全体的な評価が不十分となっている。有効性・安全性の評 価は、国民が安心して医療を受けられるようにするうえで重要であるのは勿論 のこと、今後の医療リソース配分を考えていくうえでも重要であり、実態調査 を行う必要がある」といった記載が入っています。それから4頁は、本検討会 でも是非議論をお願いしたいと思っている部分ではありますが、(6)に「我が国 において目指すべき方向、目標」があり、この中で「データの提供者となる国 民の理解・協力が得られ、社会全体として国民医療の質的向上や安全性確保の メリットを享受することを目的とすべき」や医療従事者や薬剤疫学関係者が、 データを自ら提供されることによって、またそのフィードバックとして治療法 の改善や提供する医療の質の向上に繋がるようなメリットを享受することも、 同時に目標とすべきということを案に書かせていただいています。  こういったことを書かせていただく中で、それに当たってやはり何らかの診 療情報が診療科の先生方、またその患者さんに対して、提示する情報としてメ リットのあるものとして示せる具体的な事例はないだろうかということで、永 井先生の所にもご協力をいただいて、実際に運用しておられるデータベースの 事例を出させていただきました。このデータベースは、例えば因子Xのような ところでうまくコホートを分割したりというような解析もされているわけです。 これは、単に手技や検査値だけではなくて、医薬品の使用や使用していないな ど、医薬品の副作用に着目してこういった解析をするといったことも当然可能 なシステムです。そういった意味では、この会議で検討いただくうえで、単に 副作用だけに頭を限定せずに、少し広い可能性の中でこういったシステムを考 えていただく参考になるかなと思い、情報提供をさせていただいた次第です。 ○山本(尚)委員 その前提でなのですが、我々は各業界から代表して出てき ていますので、今日の目的としては、ここに書いてあることで不明な点は明ら かにして明確な定義をしておいて、例えば次回以降第5、6回で具体的に議論が されていくと思います。ここで不明確な点を明確にしておくことと、不足して いる点がないかどうかのコンセンサスを得るのが、会議の目的だと理解してよ ろしいですか。 ○安全使用推進室長 それは、いま私から申し上げたとおりかと思います。 ○山本(尚)委員 そのうえで、いくつか質問があるのですが、先ほど佐藤さ んからおっしゃっていただいた「国民の皆様の理解を得るために」という所な のですが、我々がここで議論していることでは、二次的な目的で活用すること によって、どのようなメリットがあるか、いま永井先生がご説明いただいたこ ともたぶんそのような観点だと思います。しかし、一次的なメリット、つまり 電子化されることによって、患者さんが一次的にどのようなメリットを得られ るか、を考えることが基盤整備のきっかけになる。以前に川上先生もおっしゃ っていただいたと思うのですが、患者さん一人ひとりにとってのメリットが、 どのようなものが具体的に見えてくるかというような点を示していくことによ って、これが国民の皆様に受け入れられるものになるのではないかと思います。  具体的に言うと、例えばいまは病院で受ける診療と診療所で受ける内容がリ ンクすることがなかなか難しいのであれば、病診連携のためにこの電子化が例 えばメリットの1つとなるのではないかと思うのです。そういったことが患者 さんの観点も、実際の医療従事者の先生方でも(木下先生などは実際に実務で 詳しいと思うのですが)、どういった点がメリットとして感じられるからこう いうことを推進していくべきかというような所を挙げていくと、基盤整備もよ り理解が得られやすいのではないかと思います。 ○座長 その病診連携のための電子カルテというのは、データベースとは違う 話ですよね。 ○山本(尚)委員 少し違うところはあります。 ○座長 単なる電子カルテの話で、それは今回の議論の範疇ではないのではな いかと思います。データベースを作ることによって、どうやって知識を生んで、 それが患者さんにどういうメリットが起こるかということを作れるかだと思う のですが。 ○山本(尚)委員 実際に、その電子的なインフラ整備拡充が議論の中にあっ たかと思うのですが、実際にいま標準化が進んでない中、電子的なインフラの 整備をこれからどうしていくかというところは、この懇談会のスコープではな いのですか。 ○座長 ちょっと違うと思うのですが。それは、一人ひとりの患者さんの医療 情報をどうするかです。これはあくまでもデータベースですね。ですから、集 合体を作って、それをどうするかだと思うのですが。もちろん標準化してあれ ばやりやすいかもしれませんが、標準化してなくてもデータを集めることは可 能ですから、それをどのように考えるかだと思います。 ○山本(尚)委員 では、現存のものからどのようにステップアップするかを 話し合うことをスコープとするというところですね。 ○座長 そうですね。 ○山本(尚)委員 わかりました。それから、6頁に「長期間のデータ解析につ いて」とありますが、「レトロスペクティブな調査実施研究はよいが、プロス ペクティブな研究は現状では困難」と書いてあります。レセプトデータが月ご との集計になっていることから現状では困難というのは、レトロスペクティブ 研究も同様ではないでしょうか。 ○安全使用推進室長 おそらくここの趣旨は、プロスペクティブなものの研究 の部分においてリアルタイム性を追求すると、月ごとの集計は非常に不利であ るということを主張しようとしたのではないかなとは考えられます。 ○座長 しかし、これはレトロスペクティブでも大体月ごとや何カ月間ごとの データを使っているわけですから、月ごとかどうかというのは論旨から外れる ように思うのですが。プロスペクティブがなぜ難しいのかというのは、もっと 別の話だと思いますが。統計的な解析や当然同意を得る、あるいは受診をしな ければドロップアウトなのかデータがないだけなのか分かりませんから、統計 ではなかなか使えないとかそういうことではないかと思います。ここは、もう 少し整理が必要だろうと思います。 ○山本(尚)委員 次に(6)の「情報のセキュリティー」なのですが、これは 個別の議論なのかもしれませんが、統計法の話が書いてあると思います。統計 法に関して、例えばなかなか厚生労働統計を申請しても、リソースの問題等で 1年近くの時間が利用許可までにかかる現状があると思います。それから統計 委員会の先生方の中には、医療や福祉関係の先生方が入っていらっしゃらない と思いますので、これからこういった利用申請していくことになれば、当然そ のような方々の公衆衛生的な観点で、研究申請が妥当かどうかの判断が必要に なると思いますので、その辺りを少し考慮いただければと思います。 ○座長 いかがでしょうか。 ○安全使用推進室長 いまのことは、事務局に対し考慮をしてほしいというこ とでしょうか。 ○山本(尚)委員 いや、これからの議論ということでいいです。あと、最後 にまとめていただいている表がありますが、レセプトと電子カルテの区別をさ れて、それぞれに対しての適応するデータベースの種類と対応すべき課題とが あると思いますが、このレセプトと電子カルテの分けに関しては、例えばレセ プトに検査データがリンケージしているデータベースなどが提供されている場 合は、それはどちらに適合されると捉えたらよろしいですか。 ○安全使用推進室長 いまの山本(尚)構成員からの質問ですが、これはまだ 叩き台の段階の中で粗々のイメージとして、レセプト等を参考資料1-2で提供し ていただきましたが、その具合の情報の粒度のものでのデータベースと電子カ ルテということで、今日いろいろな形で、参考資料1-3や参考資料1-1で提供し ていただいたようなレベルのものという大まかな括りで書かれているものです ので、何か個々に考慮しなければならない点があれば、そういうところについ てはご指摘をいただいて、またこの中で議論をしていくことかと思います。 ○山本(尚)委員 ありがとうございます。 ○座長 ほかにいかがですか。 ○副座長 いまの表に関して言いますと、まずレセプトは、レセプトの前に匿 名化されたレセプトといってもいい限定詞がいるのだと思うのですね。それか ら、もう1つ事前同意という言葉もかなり曖昧な言葉で、いわゆる臨床研究の指 針のように、研究計画をきちんと示したうえで文書で同意を得るというのも事 前同意ですし、「将来公益のために使うかもしれませんが構いませんか」とい う事前同意も、たぶんあり得る話だと思います。この辺りは、もう少し細かい 記載をしないと、あとで議論を縛ってしまうようなことになるかと思います。 ○座長 この言葉の定義を明確にするということですね。 ○副座長 そうですね。 ○丸山委員 細かいところはいろいろあるのですが、この懇談会の提言案、資 料2の対象となるデータあるいはデータベースに関してですが、先ほど永井先生 からの説明にもあったのですが、参考資料1-1あるいは1-3は、この資料2の提言 案の3頁のレセプトや電子カルテには含まれないデータですね。この提言案の3 頁を見ていますと、この懇談会の取扱っている問題は、レセプトデータなり電 子カルテデータを二次利用して作られるデータベースから、第1には医薬品等の 安全情報を得ようというところにあるのかなと思っていました。それが、先ほ どの参考資料1-1、1-3はすばらしいデータだと思うのですが、かなり対象が広 がっていて。 ○座長 これは、一応電子カルテには盛り込まれてくるわけです。PDFであった りダイレクトに記入され、全部電子カルテには反映されているデータです。 ○丸山委員 反映されているのですね。 ○座長 はい。 ○丸山委員 その点はよくわかりました。それで、医薬品ではないのですね。 ○座長 手技であると同時に、医薬品も関係してくるわけですね。 ○丸山委員 手技も取り込んで、広く医学、調査・研究に役立てようと。 ○座長 調査・研究というか、ある意味でのクオリティコントロール。 ○丸山委員 医療に反映させる。 ○座長 医療もそうですし、患者さんの判断にも反映させると。患者さんが手 術を受けるかどうかというのは、こういうところから出てくるわけです。 ○丸山委員 質の向上を目指す。 ○座長 判断の基準を作る。 ○丸山委員 ですから当初のいちばん狭い安全性情報を得るという目的よりは、 幅広い。 ○座長 安全性情報なのです。これで合併症がどのくらい起こっているかなど。 全部絡んできます。 ○丸山委員 有効性までは。 ○座長 有効性も関係してきます。 ○丸山委員 広がるのですね。 ○座長 広がります。 ○丸山委員 ですから薬の有害事象というよりは、もう少し幅広の機能を目的 としているように思うのですが。 ○座長 薬というものも絡んできますし、治療のデバイス、道具であるとか、 医療機器の安全性も絡んでくるわけです。個人的にはそういうところまでしっ かり押えていかないと、薬だけでは議論が狭いのではないかということで、ご 提案させていただいているのです。たぶんいままでもこういう議論は前にもさ れていたとは思うのですが。 ○安全使用推進室長 少し補足をさせていただいてよろしいでしょうか。永井 先生からご提供いただいたこの電子カルテのイメージですが、この中にはいろ いろな情報が入っております。おそらくこれは投薬情報などもこの中には入っ ておりますね。こういったデータベースなり、電子カルテから構成されるよう なデータを活用する際に、安全対策をやっているサイドからすると、その全体、 あるデータのうちの薬の安全対策という切り口でこういうものを活用させてい たただくという、おそらくそういうやり方になるのだろうと思っております。 したがってデータの中に当然これは電子カルテベースですので、いろいろな手 技でどのようなことをやったか、実際どのような転帰だったかなど、いろいろ な患者さんの情報なり医療情報が入っている中で、それを安全対策なら安全対 策という目的で、どのような部分を切り出して使うかという観点になるのだろ うという視点で見ております。一応全体として電子カルテにはどこまで情報が 入っているかは、いろいろな形で情報共有をこの場でもしておいたほうがよろ しいかと思いまして、こういうフルの形のものを今日はご提供いただいたとい うことでもございます。 ○座長 私がお示しした1-1、1-3は電子カルテに入っている中からある部分を ピックアップしているだけです。 ○丸山委員 もう1つよろしいですか、資料2の提言案ですが、先ほどの3頁の表 のレセプトのところでデメリットとして、3、4行目に副作用情報は全く含まれ ていないと書かれているのですが、1頁のハーバード大学のレセプトデータを用 いた解析の所で、1頁の下3行、これはレセプトで心血管リスクの増加を示唆す るデータが得られたということなのですが、素人にはどうもこの3頁の表では副 作用情報がないと書かれていて、それでも研究の仕方が上手であったというこ となのでしょうか。1頁ではデータが得られたということなのですが、この辺り をもう少しご説明いただければありがたいのですが。 ○座長 これはどうやって副作用だと認定されたのでしょうか。 ○安全使用推進室長 専門家の先生にいろいろと補足をいただきたいと思いま すが、例えばレセプト情報の中で、その患者さんに対してどのような治療をさ れたか、レセプトの中での病名などが書いてあるわけですが、ある方のレセプ ト情報を時系列的につないでいくと、ある投薬をされた後に、どのようなイベ ントが起こっていて、そのイベントに対してどういう治療をされたかがわかっ てくるわけです。そうしたときに副作用名という形では明確には書いていない のだけれども、ある投薬を行った後に発生しているイベントというものを、レ セプトを時系列的につなげていったときに、出てくるイベントを捉えて、いま いろいろな解析をされたものの結果というように我々も解釈をしているのです。 そういう意味では明確な副作用という形で、そういう診断名なりレセプト上の 病名が上がっているということではないものをつなぎ合わせてということかと 思います。 ○座長 例えばある薬を使っていて、そのうちCCU管理のレセプトが大量に出て きたら、この人はこういう薬を使っていると、心臓発作でCCUに担ぎ込まれてい る確率が高いのではないかなど、そのようなことだろうと思うのですが、どな たか追加はございますか。 ○川上委員 薬剤・疫学研究で、こういうレセプトベースで副作用を検出する 手法はいくつかございます。例えば、先生がおっしゃるように、ある薬剤を投 与した患者において、一定の期間後に何か別の診断病名、症病名がついてくる。 そういった現象が、特定の薬剤を投与した群と投与していない別の群とを比較 したときに、薬剤投与群の方が後から別の病気の発生率が高くなることを調べ るのは、1つの検出手法だと思います。またほかの手法としては、これは抗菌薬 などによる不整脈誘発などの場合にあるのですが、ある薬剤を投与後に抗不整 脈薬の投与が始まるなどというように、薬剤による副作用に対して処置薬とし て使っている薬の投与が増えてくるかどうかを調べる方法もあります。このよ うな方法はレセプトから見ることができる副作用検出だと思います。 ○座長 ただ間違えることがありますね。もともと心臓発作を起こしやすい方 が、そういう薬を使っていれば心臓発作が多いからといって、因果関係がある わけではなくて、実は薬とは関係ないという可能性がある。 ○川上委員 おっしゃる通りでして、適切な対照群を置くことと、そういう交 絡因子を除くような研究デザインが必要だと思います。 ○座長 どうぞ。 ○山本(尚)委員 ハーバード大学のものは、i3 Aperioというシステムを作っ ていらして、ユナイテッドヘルスケアという保険者のデータと臨検値がリンケ ージされているので、その部分からもアウトカムの特定が可能だと思うのです。 それを含めて副作用情報が特定できるという特性があると思うのです。我々の 国のレセプトはそこまでは臨検値などは当然リンケージしていないので、その 辺の違いでこういう記載をされているのかなと思います。 ○副座長 いずれにしてもこのレセプトのデメリットの所で、病名が欠けてい るというのは、一応レセプトに病名は入っているので、「病名が欠けている」 というのはちょっと誤解を呼ぶ表現だろうと思います。「正確な病名」などと いうのであればいいと思うのですが。 ○安全対策課長 表現的に少し言葉足らずな所があるのだと思うのです。副作 用情報が全く含まれていないというように言ってしまうと言い過ぎになってい るということが、いまのご議論でもわかります。確かに副作用という明示的な 情報はレセプトには書かれていない。しかし副作用としてよく発生するような イベントはレセプト病名上も確認できるものは明らかにあって、バイオックス のケースの場合は、急性心筋梗塞というものをバイオックスの処方と結びつけ られるイベントとして、評価をすると明らかに増えているというのがわかった というのが、ハーバードの研究だったと記憶していますので、検査データがな くても急性心筋梗塞の診断がついているものが、バイオックスを処方されてい るグループに明らかに多くなっていくのが、経時的にわかってきたというよう なことで、それが副作用として認知されたというようになった、そういう関係 にあります。  急性心筋梗塞という病名は、これはあくまで病名ですので、それが何かの薬 の副作用であるかどうかはレセプト上は全く書いてありません。  しかし、ある仮説があって、その薬の副作用としてどうも心血管系疾患、例 えば心筋梗塞も心臓の血管の問題ですので、それが起きたというように、副作 用というようにある特定の疾患を見立てるのであれば、それと薬剤との関係が データベースを分析するとわかるということで、バイオックスはこれだという 話ができたのではないかというような話になっています。そういう関係ですの で、ここでレセプトのほうに副作用情報が全く含まれていないというように言 うと、言い過ぎになってしまうので、この点は表現をもう少し工夫させていた だいて、明示的に副作用と特定できる情報というのは含まれていない。しかし ある方法、ある仮説を立てれば、それは副作用ではないかと考えられるような 情報が、レセプトの中から抽出できることも1つの可能性として明らかに示さ れているので、そこは今後の工夫として、いろいろな試みの中でできる部分も 一部あるということかと思います。 ○座長 また先ほどのカテーテルの検査にも関係するのですが、Aという薬とB という薬を両方同時に飲むと実はあまりよろしくない、心臓の発作を起こしや すいという、そういう論文がある所から出ているのですが、それを我々のデー タベースで調べると、確かに言われているようにAという薬とBという薬を同時 に飲んでいる人は、バックグラウンドはほとんど同じ人に比べて、病気の進行 が早いというようなことも最近わかりまして、こういういろいろな手技と今度 は薬を組み合わせていくと、副作用というか、ある意味での有害事象というの は、1,000人、2,000人の単位で見れば、見えてくるのです。そういう意味でも データベースをしっかり作っておくということが必要だろうと思うのです。 ○山本(尚)委員 単純な疑問なのですが、10頁の表に先ほどのレセプト電子 カルテの表があるのですが、公的なデータの所は研究計画の審査とあって、医 療機関からの提供の所は研究計画の審査・公表と書いてあるのですが、ここを 区別された理由は何かあるのですか。 ○安全使用推進室長 私もこの辺りは不案内な部分があるのですが、いわゆる 2011年に向けたいろいろなナショナルデータベースの整備作業等が行われてお りますが、実際にその計画の審査については、おそらくいまいろいろな案がナ ショナルデータベースのサイドからも出てきていることかと思いますが、実際 にそれを公表するかどうかの辺りについては、私どもでも現状でこれからどう いう方針で運用するのかという部分が見えないところもありますので、今日の 段階では一応そこは書いていない形で提供しております。それだけのことで特 段意図はございません。 ○宮田委員 よろしいですか、今日のナショナルデータベースに対する集団訴 訟が、先週取り下げられているのです。これは去年の段階で全部電子化しなく てもいいよというような、ナショナルデータベースそのもののいままで言って いるものと、少し腰くだけになったような感じの施策の柔軟性が加わったとい うのでしょうか、そうするとここで前提にしているナショナルデータベースが 将来活用できるという見通しに関しても、割と部分的なデータから始まるとい うようなイメージを持っておいたほうがいいのではないかと思っています。い ろいろな議論を反映していただいて、将来的ロードマップのようなものも作っ ていただきましたが、これを我々が議論するときに、もう少し3年後、2年後な ど実際に予算を組むような作業プロセスが見えた上で、もう少し客観的に日本 はどの方向に向かっているのかをお示しいただくと、議論が少しまとまってく るかなと思っています。  それからよくわからないのですが、これを何回読んでも実は頭に入らないの は、私のボケが進んできたのだと思うのですが、そうではなくて何かこれ、目 次をもう少し見ていただきたい。論理構成がダブっていたり、いろいろしてい るのです。ですからもう少し整理していただいたほうがいい。特に6番と5番は 実は内包関係にあるような気もしますし、あるいはもしそうだとするならば、 6番で特に取り出して、個人情報保護が重要だから議論するのような、断わり 書きが必要になってくるだろうと思います。オーバーラップの所をもう少し整 理しないと、議論が行ったり来たりするかなと考えています。データの活用と いうときに、主語が誰かを常に考えながら論述をしないと、我々のいままでの 懇談会の議論では、医療関係者、国、製薬企業、あるいは患者個人が自分たち の健康を守るためにも資するようなデータベースをイメージしたときに、やは り主語が明確にされたような形の論述がどうしても必要になってくる。それが どうも何回読んでも頭の中に入ってこないので、申し訳ありませんが、もう少 し整理をしていただきたいと思っています。それから永井先生にご質問なので すが、このカテーテルのあれは素晴らしいのですが、これはこういうように誰 が入力しているのですか。 ○座長 これは現場で実施した人が、まず入れ、それからサポートしている人 が補い、さらに研究日雇いのデータマネージャーが入れ、最終的にはそれから データを引き出す人が入れということで、三重四重にいろいろな人が入れて作 っていくものです。 ○宮田委員 バベルの塔が建つ喩えを言ってしまうといけませんが、そのよう に何人もが共同で入れるようなものがたぶん大きなデータベースの特徴になる と思うのですが、そのときにあるポイントで入力のミス、ノイズなどを排除す るような仕組みはないのですか。 ○座長 データマネージャーであったり、最終的な研究者であったり、そうい う人たちがトリプルチェックをしているわけです。 ○宮田委員 それをしないと規模を追及すればするだけノイジーになってしま うのです。 ○座長 そうです。ですからそういうものであれば、集められるし、すでに我 々の施設ではもうそこまで自律性が出てきたということです。 ○宮田委員 そうするとレセプトに関しては、どれくらいノイジーかという抽 出試験も含めてなのですが、要するに今回ここではデータのクオリティーコン トロールはあまり議論されていません。つまりセキュリティは議論されている のですが、やはりこれだけ巨大データをやっているときには必ずノイズが入っ てきますので、そのノイズなどもしっかりマネージメントする仕組みとモニタ リングする仕組みを作るべきだと思います。ノイズがないというのは意味がな いので、本当にどれぐらいのノイズで我々はこれを判断すべきなのかというよ うな情報も入れて、わかるように協力したいと思っています。だからそのデー タは何というのですか。マネージメントのようなところも是非付け加えていた だきたいと思います。そうでないと膨大なお金を使って、使えないデータを作 ってしまう可能性があると思います。 ○座長 ではレセプト病名を質していくという意味ではないのですね。 ○宮田委員 たぶん教育、環境整備、あるいはソフトウエアの開発などで、例 えばレセプト病名を実名に近づけるなど、よくわかりませんが、いろいろな制 度的な改変、社会的な改変、教育などによってその辺のノイズを減らしていく ような方向で、実は私たちの人材、使い方の改善などもやっていかなければい けないのです。だから何でもかんでもデータベースのせいにするのではなくて、 データベースを使う人たち、解釈する人たちの教育、システム開発も含めてや らないと、クオリティーを維持できないと思います。我々もキージーデータベ ースでやって、さんざん無駄をしていますから、そういう意味では本当に検索 できなくなってしまうので、シソーラスみたいなもの、例えば膨大なシソーラ スを作っていくようなことが必要なのか。それともそうではないような技術開 発をしていく。これはGoogleにお願いするようなことになってしまうかもしれ ませんが、本当にそういう意味では規模で何とかしようというときには、デー タマネージメントを入れていかないと使えないものになると思います。 ○山本(尚)委員 確かに分析するところには、たぶんそういう人が必ず必要 になってくるはずで、それでもおそらくたぶんレセプト病名は必要な病名であ って。 ○宮田委員 そうです。 ○山本(尚)委員 それがどのような病態を実際に表現しているかを確認がで きるスキルは必ず要るはずです。 ○宮田委員 1つはそうでしょうが、逆に言えばアラートとして使って、例え ば詳細な研究は浜松医科大学、東大など実際に紐づけられるような、そこを使 うべきだと。 ○山本(尚)委員 そうです。 ○宮田委員 それを分けて議論しないといけない。アラートのためのデータベ ースと検証のためのデータベースを分けて使わないといけないのではないか。 ○山本(尚)委員 検証する前にある程度アウトカムの定義が、明確になるよ うな前研究が必ず要るのは事実だと。 ○宮田委員 そうですよね。 ○座長 木下先生どうぞ。 ○木下委員 まず最初にデータをお見せいただきましたが、これは東大病院で 永井先生の教室であれ、クオリティーの高い所では診療内容を全部入力して、 分析するようなことをすでに始めていると思います。次に診療所の結合を考え るとどれだけの施設でそのことができるかというと、まだ難しいと思います。 従って、心臓外科学会で全国レベルでよくおやりになったと思いますが、それ もかなり限られた項目に限っているのではないかなと思います。  今回議論しているナショナルデータベースという視点からすると、電子カル テとレセプトということになれば、おそらく電子カルテはそれぞれの施設で内 容も違うこともあり、現実的ではないと思います。従って、おそらくレセプト が対象になると思います。これも全国とは言っても診療所から、大病院からす べてのレセプトを対象とするのではなく、クオリティーのことを考えれば、DPC が多くの急性期病院には採用されており、そこでは診断名はコーディングされ ていますのでクオリティー比較的高いと思います。  できる範囲から、いろいろなご議論がありましたが、やっていくというよう なことであれば、現実的には動き始めるのではないでしょうか。このまとめら れた内容を見ても、一歩進められるように思います。  先に、お示しいただいたような電子カルテの問題は次のステップで考えれば よく、現実的にはレセプトも、DPCに絞っていくということになれば、ある目 的を持ってやる限り現実的な対応ができるように思います。 ○座長 外科学会もこれは限られた所ではなくて、すでに全国の6、7割ともう ほとんどナショナルに近い数です。 ○木下委員 そうですか、それは素晴らしいことだと思います。診療機関はす べてそのくらいの姿勢でいくことが望ましいのですが、すぐには実現できない でしょう。しかし、これが1つのモデルとすれば、ほかの学会等で絞られた内 容に関しては出来ると思います。 ○座長 ナショナルと言ったときに、オールナショナルである必要はないのだ と思うのです。 ○木下委員 そうですね。 ○座長 もう半分、50%入ればもう素晴らしい規模になってくるわけで、そう 堅く捉える必要はないのではないかと思います。 ○副座長 そういう意味ではいま以下のレセプトは、電算化率は50%をはるか に越えているので、支払基金にお聞きしてもそれぐらいはもう電子レセプトの 形で審査が行われると言っていました。だから50%を越えているという意味で はもうナショナルなデータベースはたぶん構築可能なのでしょう。 ○望月委員 レセプトデータベースがいちばん短期的に見ると、具体的に利用 できるデータベースであるというのは、私もそうだろうと思います。そのとき に先ほどの3頁の表のメリット・デメリットはまだまだブラッシュアップして 整理をしていかないといけない部分ではあると思うのですが、レセプトをもっ と使える情報にブラッシュアップしていくというようなことは、ここの中から 提案していくということは不可能なのですか。例えば、先ほど少し議論になっ ていた研究をプロスペクティブなのか、レトロなのかは別にして、月ごと集計 になっている所で私たちが本当にアットリスクなのかどうかをきちんと見極め るためには、いつから投与していたのかを知りたい場合があるのですが、ある いはいつから併用していたのかなど、そういうところがいまのレセプトではよ くわからない形になってしまって、いつその病名が付いたのかも月ごとになっ ているのでわからないなど、その辺りの工夫ができるものなのでしょうかとい うのが1つです。レセプトのブラッシュアップということをもう少しすると、 折角もうすでにかなりの形になってきているので、もっと精度の高い解析に使 っていけるのかなと思うのですが。 ○座長 そうですね、ただあまり最初から細かいことを望んでも難しいように 思うのです。どうでしょうか、まず何かプロトタイプを作って、どう使えるの かという検証が最初は必要のように思いますが。 ○川上委員 それに関してですが、例えば、有害事象の発生が何人中何人、こ れはレセプトからでも調べられますが、1,000人年当たりいくつ、これは無理 だと思うのです。したがいまして、そのデータベースで何を知りたいのか、ど こまで知りたいのかということによるかと思います。現実的に、まずはソース を使い分けなければいけないのでしょうし、さらにそのレセプトデータベース を用いて先生がおっしゃるレベルまで調べるのであれば、集めてくる情報の質 やより詳細な内容を集めることを将来的には考えなければいけないのかなと思 います。 ○望月委員 あとは発生割合で出すか、発生率で出すかということだと思うの です。それは私もいまの時点のレセプトを使う分には、発生割合までしか出な いだろうなと思いますが、やはり突き詰めたときにはせめて処方せんが出され た日ぐらいが特定できるといいなという、そのレベルなのですけれども。 ○副座長 2006年にレセプトオンラインが打ち出されたときに、ある所の委員 会でオンラインにする以上は月次ではなくて、診察機会ごとに請求したらいい ではないかというようなことをかなり議論した覚えがあるのですが、やはり相 当実現は難しいようで、不可能ではないと思うのですが、相当難しいようで、 いまのようなことをもし進めるのであれば、そうすることによるメリットが、 デメリットを相当上回るということをたぶん示さないといけないと思うのです。 そのためにはいまのレセプトデータベースでも取りあえずここまで出来て、こ れ以上踏み込むためには、何が必要なのだということを明確に示す必要がおそ らくあるのだろうと思います。 ○座長 ほかにご意見はいかがでしょうか。 ○丸山委員 何回か話題になっている10頁の表ですが、なかなかイメージが描 けないのですが、民間企業がレセプトデータを持っているというのはどういう 場合を考えればよろしいのですか。ナショナルデータベースの方とか医療機関 ごとのレセプトデータというのは、かろうじて頭に描くことはできるのですが、 民間企業がというのは、これは製薬メーカーではないのですね。違うのですね。 ○安全使用推進室長 例えば、処方せんに関連するような形で調剤のレセプト などを例えば、チェーンの薬局さんなどから個々に収集されて、もちろん匿名 のデータの形でデータベース化をされているような民間の企業があったり、ま た保険組合さんと個々に契約をされて、そこからレセプトを実際にデータとし ていただきデータベース化しているような民間企業があります。そういう所か らデータを使わせていただくような形で、こういう薬剤疫学的な研究をすると いうようなことを想定したものが、この一番右側のカラムということかと思い ます。 ○丸山委員 薬局のほうは少しわかるのですが、保険者からというのは民間企 業が委託を受けてなのですか。民間企業が保険者あるいは支払基金からレセプ トデータの提供を受けるというのが、よくわからないのですが。 ○安全使用推進室長 その辺りの形態については、少しまたこちらで宿題とし て調べさせていただきます。 ○我妻委員 非常に初歩的な質問をさせていただきます。9頁の所で、レセプト データについて匿名化した場合についてということで、10頁の図では患者の事 前同意は不要であると指摘されているのですが、この論点の9頁の下から4行 目、「患者が自分自身の医療情報を提供したくない場合に、提供を拒否する権 利が確保されるべき」である。ここの所の医療情報というのはレセプトも含ま れているのでしょうか。それともレセプトは含まれていないということを明確 にされているのでしょうか。つまり医療情報とした場合に、永井先生からお出 しになったように、非常に先端的な医療機関であれば非常に多数の情報を持っ ているという場合について、そうすると同意は必要なのだけれども、同意をす る際にどこまで情報を持っていますというのが、かなり医療機関によって違う ことを想定していると、実質的にはなかなか難しいのかなと思います。先ほど 木下先生がおっしゃられたように、ある程度現実的なところに絞って「こうい うものです」ということをイメージとして持っていないと、議論がかなり拡散 してしまうのではないかという気はしています。 ○安全使用推進室長 いまのご指摘の点ですが、例えば10頁の表で見ると、レ セプトという部分については当初想定しているという部分での整理の表で、こ うあるべきだ、まではおそらく難しいかとは思っていますが、この表の考え方 でいくと、レセプトには9頁で言うところの、おそらく医療情報は入っていな いという前提で書かれているのだろうと思います。したがってそこは少し定義 をご指摘のように明確にすべきだと思いますが、おそらく今日も参考資料1-3、 1-2で見ているような、電子カルテから構築されるようなデータベースという、 個々人の患者さんの診療情報が入っているものをここでは医療情報という形で、 おそらく想定して書いているのではないかなと思います。 ○座長 私がお示ししたのは、例えば手術報告、あるいはカテーテル検査報告、 おそらく内視鏡検査報告書など、そういうものが全部電子カルテに入っている のです。そういうものもきっちり統合すると、いろいろと新しい知識が生まれ る。そういう意味でレセプトの副作用というよりは、こちらのほうがもっと少 ない数ですね。件数ははるかに少ない数百万などというそういう件数ではない です。数千から数万規模です。 ○副座長 10頁のこの表で、レセプトの所は匿名化されているレセプトでしょ うが、「レセプトのところは事前同意が不要」と書いているのは、これは別に 結論ではなくて、現状はこのように扱われているという意味ですよね。その下 の電子カルテデータというのは、いまのところはそう扱われていないのだけれ ども、おそらく同意が必要だというような意味ですよね。だから少し意味の違 うことが両方に入っているので、たぶんこの表を見るとかなり混乱をするのだ ろうと思うのです。この辺は明記しておいたほうがいいのではないでしょうか。  それから医療情報が入っていないといっても、いまはそのようなことはまだ ないのですが、例えば20年間のレセプトを個人で紐付けてしまえば、何年何月、 何年何月に医療機関を受診したという履歴はわかるわけで、そうするとその近 くにいる人にとってはかなりの確率で特定できてしまう可能性もありますし、 そこにはレセプト病名とはいえ、病名が入っているわけで、そういう意味では 一概に言ってしまうというのは少し危ないかなという気はしました。確かに現 状はこうなっているという意味です。 ○安全使用推進室長 いまの山本先生からご指摘いただいた点についても、レ セプトデータだからといって絶対大丈夫かということではなく、私もいま具体 的にどこに書いたかをすぐに出てこなくて申し訳ないのですが、やはりレセプ トデータでも連結をすることによって、その方の要するにメディカルヒストリ ーがわかってしまう。それによって個人の特定につながる恐れがあるという部 分は、当然配慮しなければならない問題ということで、一応論点には挙げてお ります。何かこれに対していい解決法があれば、先生方からもいろいろとご提 案をいただければと思っております。 ○宮田委員 いまのところで後ろ向きのコホートをやるときに、いまの問題は 相当議論しなければいけない問題で、できれば皆さんの心持ちとしては事前同 意しなくても、いいような形でデータを扱いたいとなっているのではないかと 推測します。特に20年前のデータなど、もしそういう蓄積データを考えたとき に、いまのフローと蓄積を分けて考えると、フローは事前どおり増える可能性 はあります。コストベネフィットを考えなければいけませんが、取れる可能性 はありますが、ストックになると取る可能性はどんどん減るだろうと思うので、 実現可能性のことを考えて、やはりリスクとベネフィットを測った上で、事前 同意のやり方を皆さんで詰めていく必要があると思います。あまり必要だ、必 要だということを言っていると、研究そのものが進まないという状況にあるし、 これだけの国民皆保険でありながら、このデータを活用していないほうが私の 立場からすると、国民にとって損益を与えているというように考えております ので、なるべく国民の個人情報などを保護しつつ、適切に利用できる方策を考 えたほうがいいのではないかという気がします。 ○副座長 おっしゃるとおりですね。ただ、とは言え、全く考慮していないと いう印象を与えるほうがかえってまずいと思いますので。 ○宮田委員 それはわかります。ですからこの表は明らかに手を入れなければ いけない。 ○副座長 そうですね。そういうことを十分に考えられた上で、なおかつ現実 的に十分利用が進む道を探すべきだろうと思うのです。もう観察研究で20年ぐ らいまでのデータを扱うときに、個別に目的を示して同意などというのはもう 不可能なわけですから、そういう意味では非常に緩やかな事前同意をベースに 進めていく、いまでも大学病院では研究のために用いますということが書いて あるわけです。そこで何も文句を言われていなければ、そもそも同意をいただ いたものとみなすということでも、それほど大きな問題はないだろうとは私は 思うのですが、ただここで書かれているようなオプトアウトの仕組み。 ○宮田委員 そう、そうです。 ○副座長 これをどう作るかが、たぶん最も深刻な問題、大きな問題だろうと 思うのです。そこがうまくできればおそらく説明はつくのだろうと思うのです。 ○宮田委員 もう少し事務局よりナショナルデータベースという仮想上のもの が、どのようなものになるのかを伺いたいと思っていて、例えばレセプトを支 払基金に送って、レセプト委員会が一生懸命バサバサやっているではないです か。一体このナショナルデータベースというのは、どの段階のデータが入るの ですか。というのはなぜかと言うと、先ほどのデータマネージメントのときの クリアリングハウスという存在が要るかどうかを考えたときに、あれだけ膨大 なテーマをやって、皆さんがこう、めくっているという努力を無駄にするのも もったいないかなと思っていて、レセプト委員会なるものが例えば、データマ ネージメントに機能できるかどうかも含めて検証しなければいけないなと思っ ております。どうでしょうか、粗々なイメージで、どの段階でデータベースに 格納されるのですか。 ○安全使用推進室長 大変ごもっともなご指摘だと思います。当懇談会におい ても、レセプトデータベースがどのようなものかについてのいろいろな活用例 は、これまでもいろいろな研究者の先生方からご紹介させていただいておりま すが、実際にどのようなデータのエレメントが入っているか、先ほどのご指摘 にもあったように月ベースでしか情報は出てこないなど、そういう部分も含め て、いまのいわゆるデータマネージメントとしてのクオリティーコントロール の部分も含めて、少し情報をこちらでも収集させていただいて、また次回ここ の検討の場に持って来られるようにしたいと思いますので、本会議が終わった 後でも構いませんので、こういった部分が知りたいということがあれば、事務 局におっしゃっていただければと思っております。 ○座長 そうですね、使い方の例などを出されて、もう少し明確にイメージが できるようにしたほうがよろしいですね。ほかにご意見、ご質問ございますか。 ○丸山委員 先生にお示しいただいた参考資料1-3、いまは各診療機関が学会を 経由してカルテデータを提供しているという。 ○座長 自分たちで入力して、ネットで入力しているわけです。 ○丸山委員 Webでなのですね。 ○座長 Webでです。 ○丸山委員 それで先ほどの1-1の複数の診療機関の情報統合システムなどで、 将来的には自動的に電子カルテから吸い上げるようにできればいいなというよ うな。 ○座長 自動、やはりある程度、元データは診療情報から入ってきて、それを 目で見ながら簡便に、なるべく労力をかけずに一部をフィルターをかけて入れ ていくという、そういうシステムです。 ○丸山委員 やはりそこで人手で提出するというプロセスは踏んだほうがいい ということですか。 ○座長 もちろんそうです。そうしないともうグチャグチャになってしまいま すから。 ○丸山委員 データがきれいであることを確認して提出するということですか。 ○座長 いま行っているのはそういうシステムです。 ○宮田委員 永井先生、1-3のデータベースというのは患者さんもアクセスでき るのですか。それとオプトアウトでしょうか。 ○座長 患者さんはどうだったでしょうか。たぶんオプトアウトにはなってい ると思うのですが。たぶん患者さんも見られるはずですが。 ○宮田委員 そうするとこの病院の手術のリスクなどというのも。 ○座長 そこは確認しておきます。患者さんを前にして議論はしているようで す。 ○宮田委員 そうですか。 ○座長 だからずいぶん進歩してきている。 ○宮田委員 すごいですね。 ○座長 ただヨーロッパ、外国では日本からも誰でもアクセスできます。この 手術でもし自分が受けるとしたら、何パーセントかということは、もうすぐ直 ちに返事が返ってきますから。それにならって日本でも作っているという段階 です。 ○宮田委員 なるほど。 ○座長 よろしいですか。そうするとこれからの進め方ですが、まず事務局で 今日の議論を踏まえて修正案を作っていただくことかと思いますが、いつまで にまとめるのでしょうか。2月いっぱいぐらいにまとめたいということでしょう か。 ○安全対策課長補佐 まずもし追加でコメント、質問等がございましたら、で きれば2月いっぱいを目途に事務局に送っていただければと思います。 ○座長 これは提言というよりはまだ論点整理というぐらいの資料だと思うの ですが、提言なのでしょうか、それとも論点整理なのでしょうか。論点という のがたくさん出てきますので、まだ提言にはなっていないと思うのですが。 ○安全使用推進室長 これは提言にする上での論点ということになってまいり ますので、この論点部分を解決する形での中身になるのではないかといってい る部分が、どうである、どうすべきという形に変わっていくなど、そういう方 向で少しずつ整備をしていこうと思っております。ただ今回は第1回ですので、 事務局から出す案を決め打ち的に書くのはいかがなものかということもあり、 論点という形で今回は出させていただいております。今日はさまざまなご質問 を頂いたり、ここはもう少しこういう部分を深めるべきといういろいろなご指 摘をいただきましたので、それを踏まえながら次回、4月の議論に持っていく 資料をもう少し提言らしい形の案にしたいとは思っております。 ○座長 箇条書きよりはきちんと文章としてまとめていただければと思います。 それでは本日は大体時間になりましたので、今日の議論は終了したいと思いま す。事務局から追加はよろしいでしょうか。 ○安全対策課長補佐 では次回はもう少し提言のような形でお示ししたいと考 えており、日程的なことでは次回は4月ぐらいを予定しております。すでに日 程調整には入らせていただいておりますが、次回は座長の永井先生とも相談を しながら修正案を作成して、次回の懇談会に皆様にお示したいと考えておりま す。よろしくお願いします。 ○座長 それでは今日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうご ざいました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111