10/02/05 平成21年度第3回雇用政策研究会議事録 第3回 雇用政策研究会(議事録)                       1 開催日時及び場所   開催日時:平成22年2月5日(金) 17時から19時まで   開催場所:厚生労働省・省議室(9階) 2 出席者   委 員:阿部委員、玄田委員、小杉委員、駒村委員、諏訪委員、鶴委員、橋本委員、 樋口委員、宮本委員 事務局:細川厚生労働副大臣、太田厚生労働審議官、森山職業安定局長、山田職業安定 局次長、青山労働基準局総務課労働契約室長、尾田職業能力開発局総務課長 補佐、吉本雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長、伊奈川社会保障担当参 事官、酒光労働政策担当参事官、小川雇用政策課長、坂口雇用保険課長、里 見雇用政策課企画官、平嶋雇用政策課長補佐  他 ○樋口座長 それでは定刻を過ぎましたので、ただいまより第3回雇用政策研究会を開催い たします。委員の皆様におかれましては、ご多忙の中お集まりいただきまして誠にありがと うございます。  前回から「目指すべき雇用システムとセーフティネット」というテーマでご議論いただい ておりますが、今回は、前回までの議論を踏まえまして、事務局から、参考資料を作成いた だいておりますので、まず、説明をいただきたいと思います。お願いします。 ○平嶋雇用政策課長補佐 まず資料1のほうからご説明いたします。  最初は「非正規雇用の現状と課題」ということで、3頁目ですが、これは以前もお付けし ておりましたが、自営業者、正社員が減って、非正規労働者が趨勢的に増加しているという 状況です。  非正規労働者の内訳が4頁目ですが、調査区分の変更もございますが、このところ、上の ほうの派遣社員、それから契約社員・嘱託という部分で増加しております。  5頁目ですが、その中で非正規社員が増加しているということなのですが、これを「常雇」、 1年超の雇用契約で雇われている者、又は期間の定めのない者ということで見ると、常雇の 非正規社員が増加しているという状況がございます。  6頁目は、男女別、年齢別、雇用形態別の割合で、男性では85%が正社員、女性では49% が正社員、35%がパートとで、合わせて85%ぐらいという状況です。  7頁目ですが、年齢別に見ると、特にこの20代のところで非正規割合が高まっていると いうことです。  8頁目は、産業別の動きですが、建設業を除く各産業で、非正規労働者の割合は上昇傾向 にあります。  9頁目は、より細かく見たものですが、特に目立つのは、製造業で正社員が減少して、派 遣あるいは契約・嘱託というところが増加しています。それから、医療・福祉では、いずれ の雇用形態でも増加しているということです。  10頁目は、職業別に見たものですが、管理的職業以外で上昇傾向にございます。  11頁目は、賃金カーブ。時給ベースで換算したものですが、非正規労働者の給与は、ほ ぼすべての年代で正社員の給与を下回っておりまして、年齢による変化がほとんどないとい う状況です。  12頁目は、勤続年数で見たものですが、これも勤続年数が長くなるにつれて差が広がっ ている。特に女性については、ほとんど勤続による傾斜が見られないという状況です。  13頁目は、年間所得の所得階級別の分布ですが、正社員、パートと両端に山がありまし て、真ん中に派遣・契約の山がきているということです。特にパート・アルバイトについて は、9割が年間所得200万円未満という状況です。  14頁目は、生活を主に何によってまかなっているかと、誰の収入でまかなっているかと いう質問で、自分自身の収入でまかなっていると答えている労働者が、このところ派遣労働 者、臨時的雇用者で上昇しているという状況です。  15頁目です。左の(1)のものが、年収200万円未満か、それ以上かというので労働者を区 分したものですが、200万円未満の労働者数、割合ともに上昇しております。200万円以上 については1997年が人数的にはピークで、その後は、足元若干減少しているというところ です。右の図は、1年を通じて勤務した給与所得者の中での200万円未満の割合ですが、直 近は23.3%ということになっています。  16頁目ですが、これは小杉先生の研究で、15歳から44歳の労働者を雇用形態別・性別・ 続柄別に見たものです。いちばん下のところ、(1)と書いていますが、この年代層の中では就 業者に占める200万円未満労働者の割合は28%ということです。男女別に見ますと、227 万人が男性、689万人が女性ということで、年収200万円未満の労働者に占める割合は、女 性が約4分の3ということです。(3)のところですが、男性の中では12.3%が200万円未満、 女性の中では約半分、49.7%が200万円未満ということです。それから、(4)のところが世 帯主ですが、世帯主の中で年収200万円未満という割合は11.2%ということです。特に、 女性の世帯主ということになりますと32.6%が200万円未満ということになっております。  17頁も同じ研究ですが、200万円未満労働者の構成割合を、(1)は続柄別に見たものです。 続柄別には、世帯主が18.1%いるということです。(2)の雇用形態別の分類では、200万円 未満の内訳として、正社員が22%、いちばん多いのはパート・アルバイトで51%というこ とになっております。  18頁が、適用される制度を正社員、非正社員で比べておりますが、全体として非正社員 に適用される制度は少ないということになっております。  19頁が就業時間の分布ですが、正社員は49〜59のところに山がありまして、パート・ア ルバイトは22〜29のところにコブがあるということです。  20頁の雇用形態別に、同じ期よりどれだけの期間働いているかというものですが、非正 規就業者は2年以内というのが約5割というようになっておりますが、一方で、10年以上 という方も約2割いるということです。2年以内が5割で、10年以上が2割ということで す。  21頁は、以前類似の資料をお出ししておりましたが、既婚率で、非正社員の既婚率は正 社員に比べてかなり低くなっているという状況です。  22頁は、訓練についてです。以前、黒沢先生からちょっとお話がありましたが、Off-JT、 OJT、自己啓発への支援ということで、概ね非正社員は正社員の半分ぐらいということにな っております。  23頁です。非正規労働者の活用に関する企業の意識ということで、労務コストの削減の ために非正規労働者を活用している企業が多い。いちばん上の、賃金の節約、あるいはそれ 以外の労務コストの節約ということです。  24頁は、ほとんど同じ仕事をしている正社員と非正社員で給料は、この70〜80%という ところが多くなっております。理由については、「責任の重さが違うから」、あるいは「長期 間の勤続が見込めない」というようなものが多くなっております。  25頁は、労働者に、なぜ非正社員を選んだかというものですが、「自分の都合の良い時間 に働けるから」、「家計の補助、学費を得たいから」というものが多くなっております。それ から、真ん中ほど、「正社員として働ける機会がなかったから」というのも、このところ上 昇しております。  これについて、26頁目で見ますと、特に契約社員、派遣労働者で、正社員として働ける 機会がなかったという割合が高くなっており、このところ上昇しております。この2つの、 契約社員、派遣労働者については、他の就業形態に変わりたいという者の割合が半分を超え ているということです。中でも約9割は、正社員になりたいとしております。  27頁ですが、非正規労働者の転職の状況です。左の図は、前職が非正規労働者であった 人が5年以内に転職した場合、その後どうなったかというものですが、正規に転換したのが 4分の1ということです。転職の理由としては、収入が少ない、あるいは、一時的に就いた 仕事だからというものが多くなっています。  28頁目、現在非正規労働者の前職の状況です。まず、就業継続期間については、5年以 内に転職した人が約3分の1、5年以上継続して同じ職場で働いている人が約3分の1、そ の他、もともと働いていなかったという人が3分の1という状況です。転職した人の前職の 状況は、正規雇用者だった人が約3分の1ということになっております。その他約3分の2 は、非正規から非正規という状況です。  29頁は、正社員の登用制度の導入状況ということで、正社員転換制度が、まず、ありま すかということについては、約半分が「ある」ということです。実際に、運用実績はどうか ということで、「ある程度ある」というのが、また、半分ということで、全体として見ると、 制度があって機能しているというのが4分の1という感じになります。正社員登用制度を検 討していない理由は何でしょうかということで聞きますと、やはり、コストが上昇するとい うのがいちばん多くなっております。  30頁目は、非正社員の登用・活用をしている企業の事例ですが、左のロフトについては、 パート、正社員の区分を徹廃してほとんど無期雇用社員に転換しているという取組みをして おります。イズミヤですが、パートのリーダー職というのを設定して、リーダー職からの正 社員登用制度というものを設けていると。吉野家は「エリア社員」ということで取組みを進 めているというふうに聞いております。  次は、雇用調整の状況です。32頁目は、正規・非正規別に見た雇用者の増減ですが、こ れまでは景気後退期に正社員は減少しながら非正規社員は増加するという状況がありまし たが、今回の足元では、正規・非正規ともに減少しているという状況です。  33頁、派遣、非正規のところで調整が多かったというものです。  34頁は、前年比で、雇用者、労働時間、賃金がどうなっているかというものですが、今 回特に、賃金、労働時間のところで減少が大きかったという状況です。  賃金ということで、36頁ですが、世帯主の勤労収入と消費支出を比べてみますと、59歳 までは概ねパラレルな動きになっているということです。  労働費用総額は37頁。38頁目は法定福利費ですが、上昇傾向にあるということです。労 働保険料については、2002年までは低下傾向、2006年には上昇という状況です。  39頁、法定外福利費については、99年のピーク以降は低下傾向にあるということです。  40頁目ですが、賃金改定に当たり最も重視した要素は何かというものです。上の、企業 業績というところが、長期的に見ると上昇しております。それから、世間相場というのは、 このところ低下してきているということです。特に、このバブル期については、企業業績よ りも世間相場を重視する傾向が非常に強かったということです。  41頁は、賃金制度の現状と今後の見込みということで、過去の賃金体系のところを見る と、個人属性重視型というのが最も多かったわけです。これは、年齢・勤続・学歴等、個人 の属性を重視することということですが、現状あるいは今後については、この割合が減って 職能を重視するというところが増えております。以上、雇用システムのほうです。  それから、資料2のほうですが、セーフティネット編ということで、2頁目です。諸外国 の失業率、雇用保険、失業補償等の状況を一覧にしております。概ねドイツ、フランス等の 大陸ヨーロッパのほうでは、雇用保険の給付期間が長くて、イギリスも含めて失業扶助制度 というものがございます。こちらのほうが、長期失業者の割合は高いということになってお ります。  それから3頁目です。失業給付と失業に関する先行研究ということで、日本国内のもの、 それから海外のものを見ておりますが、全体としては、失業給付の給付期間を延長すると失 業期間を長くするという推計が多くなっております。  4頁は、機能別の社会支出でございます。各国比較で、上がGDP比、下が社会支出の中 での比率ということになりますが、アメリカを除きますと、ヨーロッパ諸国と比べて「積極 的労働市場政策」、あるいは「失業」に対する支出は、日本の割合は低くなっているという 状況です。  5頁目ですが、長期失業の割合というものを載せております。6ケ月以上、1年以上の割 合ということで、長期的に見ると上昇してきている、我が国においても上昇してきていると いうことです。  6頁は、雇用保険受給者実人員の推移ということで、景気後退期に増加するわけですが、 今回特に急激に増加しているという状況です。7頁、8頁は、現在の雇用保険制度概要をお 付けしております。  9頁、現在、通常国会で改正法案を提出しておりますが、非正規労働者のセーフティネッ トを強化しようということで、雇用保険の適用基準、加入の基準を「6か月以上の雇用見込 み」から「31日以上の見込み」に拡大するということを出しております。  10頁、11頁目、現在やっている、緊急人材育成支援事業をお付けしております。  12頁目の「求職者支援制度」の創設を、いま検討しているところです。緊急人材育成支 援事業で、雇用保険を受給できない方を対象として、訓練と生活給付を合わせて行うという ことをやっております。これについて、制度化していこうということで検討を進めていると ころです。駆け足の説明になりましたが、以上です。 ○樋口座長 ありがとうございました。フリーディスカッションに移りたいと思いますが、 いま資料1と資料2について説明していただきましたので、まず資料1の「雇用システム 編」から、ご質問なりご意見がありましたらお願いいたします。  小杉先生、いま説明していただいたものに引用されていらっしゃいましたが、何か補足な りありましたらお願いします。 ○小杉委員 これは44歳までと若い世代に限定させていただいて、主にフリーターとニー ト問題を分析しました。その中で今回は特に、非正規から正規への移動というのに注目して 分析して、その過程で出た、この副産物をここで使っていただいたのですが、今回のデータ と関連して申し上げたいのは、雇用形態と言いますか名称ですが、パート・アルバイトと契 約・嘱託・派遣とありますが、この名称によってかなり実態が違っているということです。 非正規から正規への移行ということについても、パートは移行しにくいが契約社員はかなり 移行しているとかそういう実態があります。今回労働時間等少し分解されていますが、名称 でわかる範囲でも働き方がかなり違っていて、働いている人たちの層が違って、実際に安定 に向けて移動しやすい人と、しにくい人、あるいは安定ということはあまり考えない人とか いろいろなタイプがいると思うのです。それを少し綿密に分析する必要があるのではないか と思います。  もう1つだけ言わせていただくと、非正規から正規への移行というところで、今回私が分 析したことの中でとてもはっきりしたことの1つは、これは玄田先生が、非正規でどのぐら いの期間、継続的に雇用されているか、2〜5年という期間がいちばんベストで、そのくら いの期間雇用されていることが、正社員に移行しやすいという分析を2002年の就調からや っていらっしゃっているのですが、私も2007年の就調からの分析で同じ結果が出ました。 ただ、それに交差項として年齢段階というのを組み合わせてみたら、それがはっきり有効な のは20代前半層あるいは20代後半までで、30代には有効ではなかったという結果がある のです。そういうことを考えてみますと先ほどの雇用形態別という話と、年齢の段階別で雇 用の安定への入り口がかなり違っていて、いま年長フリーターという層で、20代後半から 30代にかかって、30代にかかったあとというのは、20代の間とはかなり違う条件が生まれ ているのではないかと思いますので、分析をもう少し詳しくやったほうが事実というか、誰 に対して何をすればいいかということがもっとはっきりするのではないかと思います。 ○樋口座長 ありがとうございました。いまの点で何かありますか。 ○鶴委員 いまの小杉先生のお話の点なのですが、非正規でどのくらいの期間働いているの かというところで、1つは、シグナリングみたいな役割というのがたぶんあると思うのです。 非正規で働いていてもその人が非常に優秀だと思えば、大体2年ちょっとぐらい働いている とわかるので、そうなると正規化していく。それ以上非正規を続けている人に対して企業は、 例えば2年、3年を上回って5年ぐらい働いているとなると、この人はそれほど力がなく、 正規になるきっかけがつかめなかったのだなあ、というような評価をしてしまうというか、 それは統計的差別ということになるのかもしれませんが、そういうところが非常に強く働い ているのかなあということです。玄田先生とも一度議論させていただいたのですが、そうい うことは考えられるのではないかと思いました。 ○小杉委員 そういうところはあると思いますが、それがもう1つ、若いか若くないかとい うことでかなり。若い層ならそれが安定へのシグナルと言いますか、この人は定着するなと いうのがシグナルとして出たと思うのですが、若くなくなると、定着していることが決して プラスに評価されないというところが、非常に難しいところではないかなと思います。  もう1つ、いまのお話の中だと、今回の就調で分析できるのは企業間移動しているタイプ で、登用ではないのです。いまの事業主が登用するというのではなくて、前の、このぐらい の経験が比較的そのシグナルになりやすいということだと思うのです。この調査とは別にい まやっている最中の調査で、これは4,000人ぐらいの人にこれまでのキャリアを聞いて、そ の中で非正規から正規にどのぐらいの人が移動したかということを分析しました。そこで出 た結果、4,000人ぐらいのうち800人ぐらいにそういう移動の経験があるのですが、そのう ちの5分の1は同じ企業の中の登用だったのですね。5分の4が企業間移動で、登用の場合 は2年よりもっと短いのです。という結果が出ていまして、登用のシグナルになるところと 労働市場の中のシグナルになるのはたぶん違うものがあると思います。 ○樋口座長 確認ですが、いま、5分の1が登用とおっしゃいましたが、非正規から正規に 移った者の5分の1が登用で、5分の4が外部労働市場を通じてということですか。 ○小杉委員 はい。 ○樋口座長 実は我々も駒村さんたちと一緒にパネル調査をやっているのですが、男性の場 合はむしろ内部昇進が過半数、非正規から正規に移った場合に、転職なしに同じ企業の中で 非正規から移ったというのが過半数で、女性の場合はイーブンぐらいで、転職を通じて非正 規から正規になった。残りの半分が同じ会社の中で転換制度とかいろいろ使って非正規から 正規になったというような結果が出ているのです。年齢とか何か違うのかも。 ○小杉委員 私たちの場合は25歳から44歳までという範囲に限って。パネルではなく回 顧型でこれまでの経歴を聞くというタイプだったので。パネルのほうが正確なところがある と思いますが。 ○樋口座長 要は、一度非正規になっても、非正規から正規に転換できる制度をどう作って いくかというようなことで、ひとつシグナルという話があったけれど、一方でジョブカード とかそういったものも、そのシグナルを打ち消すというようなことで、その人の職歴とか、 どういうことができるかを示す、そういったものを作ってシグナリングをなるべく働かない ようにというようなことだろうと思うのですけどね。 ○小杉委員 若い層は比較的、そういうジョブカードのようなものがなくても、経験年数で 評価してもらえることがあるのですが、30代になってしまうとかなり難しいので、そうい うところこそジョブカードみたいなものが有効ではないかと思うのです。 ○阿部委員 いまの話を聞いて、ジョブカードが有効かどうかは別として、日本の企業の雇 用の実態として、入り口が20代にしかないというのが大きな問題ではないかと思うのです。 先ほど小杉さんが30歳以上はなかなか難しいというお話をされていましたが、30歳のとこ ろで入り口を持っている企業は、たぶん多くないというのがいちばん大きくて、そこには内 部労働市場のさまざまな問題がある、特に賃金だと思うのですけどね。賃金決定のところが、 その30歳の入り口というのに適した賃金制度になっていないというのが大きな問題で、こ このところはたぶん、政策的にどうするかというのは難しいところかもしれないので、その 辺りをどのように考えていくかというのが大きな問題ではないかと思います。  そういう意味でその日本的雇用慣行というのが、今後どのように変わるか、あるいは変え ていかなければいけないのかというところまでいくのかもしれませんが、その辺りは大事な 議論になるのではないかと思いました。 ○樋口座長 何かアイディアはありますか。要は外部労働市場がないということですよね。 そこが、職業能力を評価するところに立っていない。そうすると、属性というようなところ で判断してしまう。大学みたいに論文の評価とかいう形で、准教授を採用しますとか教授を 採用しますというようには、企業はなりにくいのですかね。 ○阿部委員 外部労働市場が発達しない背景は、内部労働市場がその裏側にあるのではない かと思うのです。だから日本的雇用慣行と言われる終身雇用、あるいは解雇が難しいとか、 そういうところがある限りは外部労働市場の発達というのは、もしかしたら難しいのかもし れないという気はしますが、鶴さんのほうが詳しいかもしれません。 ○鶴委員 30代のところでエントリーズして入る場合に、日本の場合だと年功賃金という のがあるので、そこでは、同じような仕事であったら、年長の人が来るとやはりそれなりに 高い賃金を払わなければいけないということで、そこが相当なネックになってしまう。それ ならば30代でも、例えば20代の人たちよりも何年間かほかで働いて、必ずこれだけ技能 が高いとか能力があるとか、企業のほうでもそれがはっきりわかって最初からこういう仕事 ができるとか、こういう仕事をやってもらえるというような状況になっていれば非常に入り やすいと思うのですが、はっきりそれを指し示すものがないのだったらやはりどうしても、 若くてもちょっと年齢をくっている人は遠慮したいなあ、という形になってしまう。だから そこになるとどうしてもその評価の仕組みという話と、外部労働市場というのはくっつかざ るを得ないのですが、それをどのように組み立てるのかということには、いま樋口先生がお っしゃったように非常に難しい課題があるのだと思います。 ○小杉委員 内部労働市場というのはたぶん大企業に発達したもので、日本のほとんどを占 める中小、特に零細とかいう話になってくると全くそうではないと思うのです。そういう所 でもなぜ。実際には移動しているのに、そこで的確な評価される外部労働市場ができていな いということなのか、そこが何か。実際には移動しているのだから何らかの評価があって、 それが明示化されていないだけではないかという気もするのですね。となると、そういう所 にターゲットを当てて今回のジョブカードのように、現場でやっていることをちゃんと明示 化する、見える化するような、そういう仕組みを入れてくることでそこに、実はある市場を 顕在化させるということになりませんか。 ○樋口座長 そうなってほしいと思うのですが、前に阿部さんたちと書いた本の中で、外部 労働市場も職種によってだいぶ違うというのがあって、例えばその転職コストをどうはかる か。1つは、前の企業を辞めてから再就職するまでの期間がどのくらい長いか。これが長い ほどオポチュニティ・コストが高いわけだから、その転職コストは高い。もう1つは、前の 企業を辞めるときの給与と今度採用された後の給与がどのくらい上がっているのか下がっ ているのか、こういうものではかってみるわけですね。  はかってみた結果は、専門職はこの転職コストがかなり低い。期間も短いし、中には賃金 が上がっている人もいる。ところが管理職ということになると今度は逆に、転職期間は短い のだけれど給与は下がる。大体が大企業から中小へ移動という形で出る。ルート別に見ると かなり下がって、ハローワークを通じて転職した人の転職コストが安いのか。それとも、民 間の職業紹介を通じて移動した人のほうが安いのか。いちばん安かったのは、前の企業の紹 介で再就職した場合で、これはもう、圧倒的に期間も短いし給与の下がり方、これは下がっ ていることはあるのだけれど総じてコストが安い。前の企業がその人の特性や技能を知って いるわけですから、その前の企業がどれだけ紹介できるかという、そのフォーマルなネット ワークではなくて、インフォーマルネットワークを通じての再就職というのが、かなり効果 があるというのが我々の結論だった。  そうしたらアメリカで同じことが。アメリカで管理職が辞めるときには、上司が推薦状を 書いて次の企業へ持っていくというのが多いわけですね。だから喧嘩して辞めるのではなく て仲良く会社を辞める。前の会社の上司が推薦状を書いてくれれば、それがいちばん有効だ ということですが、そこは似ているようなところがあって。 ○小杉委員 それは、職業能力は明示化できない。 ○樋口座長 明示化できないのですが、前の企業の管理職が示さなくても、オフィシャルに そういったものを示すものがあったら有効なのかもしれない。要するに保証書が付くわけで すよね。そういう保証書として私たちが考えたのが、ジョブカードというのもそういったも のに代わり得るのかどうかということですね。 ○小杉委員 ジョブカードの中では一応、キャリア・コンサルタントが添え状を書くという ような仕組みは入っているのですが、その点をちょっと。どれだけうまく機能するかという ところにかかわってくるのでしょうか。 ○阿部委員 小杉さんが先ほど、5分の1が自社内登用で正社員に転換する、それは比較的 期間が短くてなっているとおっしゃっていましたよね。これはもしかしたらこういうことで はないでしょうか。つまり非正規社員で会社に入ってきて、非常に優秀だとわかった人には、 会社がつばをつけて、比較的短期間で登用される。残った人たちがいてその人たちは、一生 懸命頑張って長い期間働くと、あの会社に長い期間いたのだから、たぶん優秀だろうという シグナルを外に出して、その人だけはいける。それで、中途半端な人たちはどうかというと ころが大きな問題になっているというようにはなりませんかね。もちろん30歳以上のとこ ろはわかりませんが。 ○小杉委員 かなり近いような認識があります。企業ヒアリングもしているのですが、早い 段階で見極めるという話もありまして、正社員希望だけれども、登用できないタイプの人に は、むしろ早く教えてあげないと本人に悪いから、企業が早め早めに見切りをつけるなんて いう話もありまして、そういういくつかの条件の中で、いろいろなタイプの企業があります が、比較的早い段階ということもあるのですね。 ○阿部委員 そうすると例えば政策的に、どうかわかりませんよ。私の勝手ないい加減な話 なのですが、有期雇用の期間は短くしておいて、早く正社員に登用できるようなインセンテ ィブを企業に与える、駄目だったらその非正社員の人は違う企業に動いて、そこでもう1 回見極めをしてもらってというのを繰り返す。そこに入らない人たちをジョブカードで救う というようなやり方をするというのはどうですか。そうすると、ジョブカードに必要なもの は何かというのが見えてくるのではないですか。ということはないですか、小杉さん。私は いい加減なことを言っているのだけど。 ○小杉委員 例えば登用されるのが誰かということをもう少し詳しく見ないと。その期間だ けなのか、もっと属性的なものが影響するとか、はっきり言って学歴は効果がありますし、 高学歴の人は登用されやすく、そうでない人は登用されにくいとか。ですから、短い期間で 早く見切りをつければそれでいいか、いろいろな組合せがあるので、そう簡単には言えない ような気がします。 ○阿部委員 前回、荻野さんが言っていたところで。これはよく言われることなのですが、 有期雇用の雇用期間を短くしたほうがOJTやOff-JTがあって、能力開発されて、結果とし ていいのだというように言うのですよね。けれど果たして、2、3年いると正社員に動ける ということがシグナルなのか、それともそうではなくて、その期間が長ければ長いほど能力 開発につながっているのか、そこの見極めは大事なような気がする。その有期雇用の雇用期 間を長くすべきなのか、そうではないのか。正社員登用というのが比較的短期で見出される のだったら、それほど長くする必要もなくて、むしろ流動的な市場を作っていったほうがい いし、いや、能力開発だということになれば、むしろ雇用期間を長くしたほうがプラスの効 果になってきますよね。そのあたりがシグナルなのか能力開発なのか、そこがどうなのかと いうのが大事なポイントでしょうね。 ○樋口座長 前に小池先生とお話をしたことですが、1960年代の自動車産業における期間 工と、いまの非正規というか、特に派遣の議論で、どこがどう違うのか。あるいは全く同じ なのかと言ったときに、60年代の期間工というのは、転換制度が用意されていて、ちゃん と働けば、一定期間が経つと正規に登用されていく人たちがかなり多かった。だから夢を持 って働けたし、会社のほうも、正社員にする可能性があるからということで能力開発に力を 入れるし、働くほうもそれを前提に頑張った。だけど例えば一般の派遣だと、そこが別の会 社になってしまっているから、その職場でどんなに一生懸命働いてもなかなか正規のほうに 登用されない。その道が残っているのか、作られているのか、作られていないのかというの がやはり違うのではないか。作っていくことによって、例えば採用時は有期雇用であっても それが転換されていく、トライアル雇用みたいなものを拡充していく道を作ることができれ ば。入り口では、ともかく雇用機会を増やすためには有期雇用であってもいい、その後に転 換できる仕組みを作っていく。トライアル雇用もそうだし、紹介予定派遣もそういった形で やっていってるわけですが、これを普及させるというのはどうなのですかね。最初から正社 員でなくては駄目だという。 ○小杉委員 登用が5分の1なのか半分なのかでそれは随分違うような気がしますね。いま 既に登用が半分あるのだったら、そちらのほうが圧倒的に。もう既にそれだけできるのだっ たら、そこをもっと促進するというのは十分大切なのですが、よほど優秀な人でなければ登 用されないという条件だと結局難しい。企業にとって正社員にするだけの、つまり、正社員 のハードルが非常に高くて、そこを下げるというのも、生半可なことでは下がらないような 気もします。 ○樋口座長 サルコジが最初にやったのはそこのところの着手だったわけですよね。有期雇 用、ノンレギュラーワーカーでという。その分析結果は何か、どういう評価になっているの ですかね。 ○鶴委員 いろいろ反対もされましたけど。でも、ヨーロッパの有期雇用というのを見ると、 ほかの国の実証分析なんかもあるのですが、やはりそのスクリーニング。まず有期で雇って、 その人たちがどれぐらい出来るのかをスクリーニングして、それで正規にしていくための、 1つのやり方として位置づけている。スペインとか南欧系の国などは、そういう考え方はわ りとはっきりしているみたいですね。ただ1つ、先ほど樋口先生がおっしゃられたように、 昔の期間工のあの時代は右肩上がりの経済成長というのがあって、ある程度、正規に転換し ていくということを約束できるような状況があったと思うのです。そこがいま、時代の状況 が相当異なっているわけです。そういった中でどうあるべきなのかということです。  先ほどの阿部先生の議論だと、最初に、その人が本当に使い物になるのかならないのかと いうか、わりと最初のところの判断というのはあると思うのです。そしてその次に、それな りに使い物があっても本当に正規にできるのか。それもやはりいまの状況だとなかなか難し い。そうなると次のステップとして、この人はそれなりなのだけど、能力開発していくとち ゃんとそれなりのものができていくのかというところで、やるかどうかの判断が出てくると いうことで、たぶん、何段階かの判断というのを企業がいろいろ考えながら見極めていく。 それはいまのような不確実性の高い状況だと非常に難しいところがあるのではないかとい う気がするのですけどね。 ○樋口座長 ヨーロッパはそこをソーシャル・エンタープライズとかNPOがやっている機 能を持っていますよね。 ○鶴委員 だから、企業だけに任せることもできないし、やはり、働き手と雇う側の間に入 ってあげる人たちが必要なのですよね。 ○樋口座長 諏訪先生、どうでしょうか。 ○諏訪委員 皆さんのご意見のとおりだろうと思いますが、1つは30代で難しくなるのは 先ほど樋口先生がおっしゃられたとおり、あるいはほかの先生方もおっしゃられているとお り、日本の雇用慣行とか賃金や処遇制度というのもあると思いますが、もう1つは、その間 の能力開発の機会というのが大きいと思いますね。これまでも少しずつ出ていたと思います が、一体誰が責任を持ってそこをやっていくのかという辺りが伴っていないとやはりなかな か難しいのではないか。それがセーフティネットの議論をするとき最も重要なポイントの1 つではないかと感じております。  もう1つは、ある年代層、あるいは雇用労働者全体でもそうなのですが、転職を経験して いる人がどのくらいいるかというのは非常に重要で、我々が普通議論するときに意識する以 上にたくさんいるのではないか。私どもの研究室でも去年の10月に5,357ほどのサンプル をウェブ調査でしましたら、驚いたことに正規でも非正規でも、20代でも30代でも転職経 験をしている人がものすごくたくさんいて、正社員でも半分以上が転職を経験しているわけ です。当然、年齢が上がればそれがどんどん上がるのですが。仮に、働く人の大部分が転職 を経験する社会にもう既になっているとしたら、我々はそれを前提とした能力開発やその他 の制度を作らなければいけないのに、転職をしないことが前提に、そのために企業その他が 頑張ってくださいというような制度にいつまでも頼っているばかりだというのでは、このギ ャップはかなりの問題があるのではないかという気がしました。  我々の調査では、男性の大卒の非正規の人が、短大とか専門学校とか中高校卒の非正規の 人たちに比べて、過去に仕事上の不満、フラストレーションを抱えているらしいということ、 それを東京周辺や京阪神のような都市圏と地方で比べると地方のほうが高いらしいという ことが注目されました。地方で大卒の人が不満を抱えてきている。それは正社員もそうなの です。逆に言えば、地方は高学歴者をうまく活用できていないのではないか、ひょっとした ら地方の元気がないのは、こういういま伸び盛りの、知的創造その他に本来活用できる人た ちを活用できないようなシステムというか障害となる壁ができているのかなあという感じ がしております。  もう1つ、これは社会人学生がやった別の調査でわかったのですが、地方に行くと契約社 員がかなりいる点です。東京や大阪に本社がある大企業の契約社員の求人広告というのが目 立つことがあります。これは東京だけでなく地方の求人誌をかなり定期的に集めて分析する という丁寧な仕事をしてもらったのですが、契約社員の求人が地方の中堅企業などの正社員 と拮抗できて契約社員になったりしている。つまり昔は地元採用の、地元限りと言っていた 層が、だんだん正社員採用ではなくなってしまって、正社員採用はいわば全国とか、あるい は地域社員になって、それ以外は契約社員とか派遣とかいろいろなものになっているのかな と思われます。こういう構造も我々が政策を考える上で重要と感じております。 ○小杉委員 いまのことに触発されて。私どもでも地方と都市の若い人たちのキャリアがど う違うかという調査をしているのですが、やはりそれは地方の産業構造にすごくかかってい て、大卒が不満というお話ですが、大卒をうまく使えない産業構造、あるいは先ほどの地方 は支店経済、本店がなくて支店だけの経済というところで、実は札幌で調査をしたのですが、 四大卒が不安定な状態にかなり長い間いるというのが札幌で調査した特徴だった。東京で同 じ調査をしたときには、学歴間格差がものすごく大きくて、高学歴の人はすぐ安定できるけ れど低学歴の人は安定できない。これは学歴だと思っていたら札幌の調査では、みんな不安 定だという結果になって。やはり地方の産業構造がその支店経済という話と、非常にサービ スに特化したような構造になっていて、そこで契約社員あるいはアルバイト・パートという 需要が中心になってしまうと若い人、たとえ大学を卒業していても正社員になっていない人 がかなりいた。それは学校での専攻も非常に関係があって、理系の専攻の人はかなり安定し ているのですが、人文社会科学系の人は安定していない。たぶん教育とのミスマッチもある し、産業構造そのものの問題もあるし、かなり難しい話ではないかなと思います。 ○樋口座長 諏訪先生がご指摘になったのは、いままでは企業が能力開発の、ある意味では 責任を持ったし、またコストパフォーマンスからしてもそれがペイできた。ところが流動的 になったり、あるいは非正社員では能力開発がされていないというような問題があって、そ れに代わるような仕組みというか、それを補完するような仕組みが必要だというご指摘だと 思うのですが、では、どう補完しますかと。何かアイディアがありますか。 ○諏訪委員 いまいろいろ行っている、例えば能力開発支援の事業その他は、1つの、それ 以上前に進もうとすることだと思いますし、ジョブカードと訓練を結びつけるというのも非 常に重要だと思います。ただ問題は原資をどこから得るかでして、考え方によっては例えば、 フランスなどがとっているように、賃金にある一定の比率でこういう訓練のための、一種の 訓練税みたいな形、目的税みたいな形ですが、そういう形で取って、それを非正規を含めた 全従業員の能力開発に充てていくやり方というのは1つの考え方だろうと思います。ただ、 そういうのが日本で通るかどうか。言葉を換えて言えば、この場合は例えば労災保険と一緒 ですから、例えばアルバイトなど含めてすべてにかけてしまいますから、誰に対してでも、 逆に言えば、相応に訓練ができるという意味では、いまの雇用保険制度よりはずっと出しや すくなります。もっとも、こういう制度がいま世間から評価されるかどうかというのはちょ っとわかりませんが、どこかで原資を得ない限りは、能力開発をやろうと言ってもできませ んので、それとカップリングできるようにしなければいけないなというように感じておりま す。 ○樋口座長 ありがとうございました。公的能力開発、国か自治体かわかりませんが、そう いうところも補強していく、充実させていくことも重要だと思いますが、鶴さん、OECDに いろいろ出していますよね。その辺について、何かご意見はありますか。 ○鶴委員 今日事務局のほうからも、積極的な労働政策を国際比較してみると、日本の支出 割合は非常に低いという話があったと思いますが、OECDなどが評価をしているのを見ると、 公的な訓練をやったり積極労働政策にお金を使ったからと言って政策的にうまくいってい るかというと、そこはなかなか難しいという評価で、これは単にお金を使えばうまくいくと いうことではないという、1つの典型例なのだろうという感じがします。むしろお金を使う ことよりも失業者のインセンティブを、アメとムチを使ってどういうふうに高めていくか。 アクティベーションということを言われますが、そういうもののほうがむしろ着目されて、 単にその金額とかそういう問題ではないだろうという話が、私は1つコンセンサスになって いるのかなあと思います。積極労働政策の予算の高い国というのは、一方で、失業保険とか そういうところをものすごく手厚くしている国でもあるのですね。そういうところを手厚く するのだったら、逆にその積極労働政策は相当活性化をしないと仕事を見つけるインセンテ ィブがなくなってしまう。そういう裏腹でもあるのですけどね。  日本がどういうようにやっていこうかと考えるときには、やはりヨーロッパの例なども見 ながら。ただ、同じにやればいいという話ではない。そんな単純な話ではないのかなあと思 っています。 ○樋口座長 駒村さん、何かありますか。 ○駒村委員 この話になっていくと次のセーフティネットの話に。 ○樋口座長 また何かあったら資料1に戻っていただくことにして、資料2のセーフティネ ットのところまで。 ○駒村委員 2頁の失業給付と扶助の給付の受給者数と失業者というのは、これはどういう ふうに見ていいのかよくわからなかったのですが、日本の場合は265万人と57万人、ドイ ツの場合は失業者が314万人で、失業扶助を入れると、それよりも人数が多くなる。これ は家族単位か何かで見ているのか、時点が違うだけなのか。これの見方を教えてもらえませ んか。 ○平嶋雇用政策課長補佐 この失業給付制度は部分失業といいますか、フルに働かないよう な形の働き方であれば支給される場合があると聞いています。 ○駒村委員 所得保障政策をやっていると、今回の緊急対策で導入された求職者支援制度を どういう制度に組んでいくのかというのが非常に難しくて、先ほど鶴さんがおっしゃったよ うな議論が出てくると思うのです。どういうふうに組むかによって、ずっともらい続けてい るようなことになりかねないわけですから。だから、できましたら事務局には諸外国の失業 扶助と言われている制度にどういう問題があり、どういう特徴があるのか、どういうインセ ンティブが入っているのかというのは一度整理していただきたいと思います。  その上で、12頁に書いてある「実績」の所にあるデータについてもいろいろ教えてもら いたかったのです。これは訓練を受けるだけと、訓練費と生活費給付と両方のオプションが あって、上のほうの6万9,000人というのは訓練のみの方で、下のほうが給付と訓練とをセ ットでという感じの意味でいいのでしょうか、詳しく知らないので。また、これは申込みが 来た人に対して何か振り分けがされているのか。申込み状況に対して、どういうふうにこの 人たちがそれを受けているのかという数字はいただけるのでしょうか。 ○平嶋雇用政策課長補佐 6万9,000というのは、いま設定されている訓練コースの定員で す。それで上のほうが、実際に訓練をしている人ですとか訓練が決まっている人が5万2,000 人。下のほうが給付を受けることが認定されている人で、それが2万人という状況です。 ○駒村委員 これは来た人みんなが受けているのですか。 ○平嶋雇用政策課長補佐 これはまずハローワークのほうで、訓練を受けることが有効であ るかどうかということで判断をしまして、認定しています。 ○駒村委員 すると、母数はもっとたくさんあって、何かセレクションをかけてこの人数に なっているという理解でいいのですか。 ○尾田職業能力開発局総務課長補佐 10頁にあるのが全体の流れなのですが、まず求職者 の方にハローワークに来ていただいて求職登録をしていただきます。その過程で職業相談を していただいて、訓練の受講が必要となれば訓練に誘導するという流れになっております。 訓練の受講以外にもいろいろな雇用政策がありますので、この方はそちらのほうをご活用い ただいたほうがいいとか、すぐに求人に登録していただいたほうがいいということであれば そちらに誘導いたしますし、訓練で能力を身に付けていただいたほうがいいということであ れば、そちらのほうにすぐ誘導するという流れになっております。 ○駒村委員 その辺は現場の方がマニュアルか何かで判断されていくという形になってい るのですか。 ○尾田職業能力開発局総務課長補佐 そうです、職業相談の過程でその方の適性等を見まし て判断することになります。 ○駒村委員 この仕組みを今後どういう制度に組んでいくのかというのは大変重要なとこ ろです。先ほどの話を聞いていると、12頁のいちばん下の所に書いてある「トランポリン 型の『第2のセーフティネット』の確立」。これは先ほども出た話ですが、外部労働市場が なければ、ずっとトランポリンのように跳ねているだけになってしまうと思います。こうい う制度を作るというのは、外部労働市場を何らかの形でちゃんと組んでいくというのとセッ トで議論されていくわけで、そこで初めて厚生労働的な発想なのかな。これからはそれが議 論の中心になっていくのかなと思っています。  もう1つ。先ほどの資料に戻りますが、社会保障をやっていてわりと飛び交う言葉ですが、 労働の中にはあまりない言葉として「ワーキングプア」があるのです。システム編の16頁、 小杉先生が作られた資料では、まさに世帯主であるが200万というのはどういう数字かと いう見方はあるかもしれませんが、どう評価するかは分かりません。これは雇用の研究者に お聞きしたいのですが、「ワーキングプア」というのは、日本では「ワーキング」の定義と 「プア」の定義が大変難しいから、労働の世界では「ワーキングプア」という言葉はあまり 使わない。定義調整した上での「ワーキングプア」の国際比較は社会保障のほうでよく見る のです。このようなところまで来ると、これはまさにワーキングプアではないかと思って見 ていたのですが、これは労働政策の中ではこれまで認めてこなかった、定義も統計も存在し なかったという感想を持ってよろしいでしょうか。 ○小杉委員 少なくとも、この表はそういう関心の下に作られているわけです。 ○駒村委員 日本の労働をやっている方のほうでは「プア」の定義は何だとかということで は結構いろいろな定義があると思うのです。「ワーキング」も、どのぐらいをワーキングな のか。3時間でもワーキングなのか、20時間以上を指すのか。労働時間と世帯収入をクロ スして、かなり貧困・不安定状態の労働者が増えているのか、減っているのかという研究は あまり出ていないということでよろしいのですか。 ○小杉委員 そう思いますが、どうでしょうか。 ○樋口座長 これは先ほど駒村さんが言った部分失業に対する給付の問題と関連している ところがあって、日本では、ともかく少しでも働いて給与所得が発生すると、失業保険は受 給できないわけです。そうですよね、誰も「うん」と言ってくれませんが。 ○坂口雇用保険課長 1日4時間までということになると、実際上は失業認定の際に内職控 除をしたりということはあります。全くもってオール・オア・ナッシングという世界ではな い部分はありますが、いわゆる部分失業を認めているかという形になると、それは認めてい ないということになります。 ○樋口座長 逆に、今は認めていない国がすごく少ないのではないですか。OECDの何年か のものでその特集をやっています。雇用保険の各国の比較などをやっていて、間違っていた ら訂正してほしいのですが、私の記憶では、多くの国は、ともかくアクティベーションを進 めるために、働いたら失業給付は一切出ませんよというふうになると、失業給付を受けてい たほうが所得が高い、いまのワーキングプアとの関連で言うと、そういうことが発生し得る わけです。それで、それが逆にモティベーションを下げてしまって、「再就職よりは失業保 険」ということで、給付期間は目一杯もらったほうがいいというような判断がしばしば起こ り得る。それを回避するための仕組みというのは、いろいろな所でいろいろな工夫が最近な されるようになってきているわけで、そこを議論していくということはありかなと思います。  具体的には、例えば失業してすぐのころは給付率(replacement rate)が高いのですが、給 付期間が延びるに従ってその率が下がってくるのだそうです。それで、ある意味ではプッシ ュする。働くようにというようなことを設けるようになっている国がかなり多くなってきて いるのではないかと思いますが。 ○鶴委員 あとは訓練とリンクさせて、訓練をやらないと給付をやらないとか。あと、いま 樋口先生がおっしゃられた関連では給付付き税額控除というのがあって、イギリスとかアメ リカが有名です。イギリスなどは労働時間として何時間働いたらということで、働けば働く ほどインセンティブを持っていくような給付の仕方になるような形を考えているのです。だ から、働くインセンティブを少しでも高めようということはやっています。  ただ、日本の問題だとヨーロッパと相当違うのです。先ほども少し議論があったように、 ワーキングプア、働いても賃金が低いというような状況が多くて、みんな働かなくなってし まって、それで非常に困窮しているということとは、ヨーロッパなどと比べても日本の場合 は違うのです。だから、あまり就労インセンティブというところに力を入れたやり方という ことでヨーロッパと同じような形にしてしまうと、日本の実情とは変わってくるのです。か と言って、ヨーロッパ型の非常に手厚いセーフティネットを敷いてしまうと、樋口先生がお っしゃった問題も当然これから出てくる可能性がありまして、そこを見極めるのは非常に難 しいのだと思います。 ○樋口座長 駒村さん、そこのところは何かありますか。 ○駒村委員 所得保障の中でもどんどん難しい問題が出てきて、これは失業扶助に絡む問題 です。失業扶助という名前を最終的に張り付けるかどうかは分かりませんが、もしかしたら 何らかの失業扶助的な制度になるかもしれない。それで、今これを出す方法が実はなくて生 活保護のほうに来るのですが、水際作戦というのは生活保護で事実上できなくなってきてい ます。統計を見ていると、実数の中で占める割合はわずかですが、いわゆる「その他世帯」 が生活保護受給者の中で今どんどん増えてきています。出すのはいいのだけれども、今度は どうやって自立してもらおうかというツールがなくて、ただ受けているだけという状態が福 祉の現場のような感じで取っています。私はどちらかと言うと、働く意欲を高めるためには、 給付付き税額控除もあるでしょうが、もう1つは、最賃というのが本当にこの水準でいいの か。社会保障のほうから見ていると、もう少し上げてもいいのではないか。せめて手取りベ ースの最賃が生活保護と逆転する地域が存在しないようにしなくてはいけない。せめて、そ れは最低かなとは思っています。それが1つワーキングプアを多少とも解消できる最低限か なと。あまり上げすぎるとまた雇用の問題が出ると思いますが、これはもう少し上げてもい いかなと私は思っています。 ○樋口座長 現在の取組みはどうなっていますか。最賃と生活保護の逆転のところについて は解消するということでしたね。 ○青山労働基準局総務課労働契約室長 生活保護との整合性をとるような法改正が少し前 にされております。 ○吉本雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長 すみません、半年ほど前まで担当していた ものですから申し上げたいのですが。その差が大きい場合にはすぐにできないものもありま すが、どのぐらい乖離があるのかを明確にしつつ、それを何年かけて解消していくかという ことをうちのほうの審議会で決めて、今対処している最中です。 ○駒村委員 「最中」ですね。まあ様子を見たいと思います。 ○樋口座長 宮本先生、ここら辺の社会保障の点はどうでしょう。 ○宮本委員 議論の流れにようやく追いついてきたところなのですが、完全に追いつけたか どうかは分からないのですが。先ほど諏訪先生からお話のあった公的職業訓練の件について は、公的職業訓練のメッカとも言うべきスウェーデンでも、新政権の下でスタートした新し いプログラム“New Start Job Program”というのがあります。ご存じのように、スウェー デンのペイロール・タックスは32%ぐらいですが、それを全額あるいは半額免除する代わ りに、ある種のトライアル雇用を各企業にお願いするというものです。雇調金がやや後ろ向 きのプログラムになってしまうことに対して、どちらかというと前向きのトライアル雇用を かなり制度的に拡張して、これは存外、社民党サイドからも評判がいいように思います。で すから、こうした前向きの雇調金とでもいいますか、そうした方向というのは検討に価する のかなと思います。  いま駒村先生から話題に出た話ですが、雇用とセーフティネットを分けて議論することは だんだん難しくなっているわけです。セーフティネットという比喩は、言うまでもなく、綱 が張ってあって、その下に網が張ってあるという絵柄であったわけなのですが、これは鶴先 生からお話があったように、いくらトランポリンを強化して跳ね戻しても、綱が細すぎて体 重を支え切れないとか、綱が途中で途切れてしまっているとか、綱の数がそもそも足りない とか、そういう状況の中でセーフティネットを論じる難しさがあるわけです。つまり、新し いパラダイムの中で議論していかなければいけないと。そうなってくると、すべて合わせ技 になっているわけです。つまり、駒村先生がおっしゃった最賃の話があるのですが、最賃だ けだと中小企業は潰れてしまうから、子ども手当だとか、給付付き税額控除だとかいったも のを加えて、いわばセーフティネットで綱をコーティングして、それである程度体重を支え られるものにしていく。つまり、セーフティネットというのは代替型の所得保障です。何か の事情で綱から落っこちてしまった場合にその期間の生活を支えるということなのだけれ ど、綱がそもそも細すぎるとか、途中で切れてしまっているということを前提にして、それ を補完していくようなセーフティネットにパラダイム転換していかなければいけない、そう いう新しい場面であると思うのです。  それに関して、全体のこれからの議論の流れといいますか、落としどころと言うとおかし いのかもしれないのですが、それを樋口先生に伺いたいのです。一つひとつの議論は私のよ うな者には大変勉強になるのです、それは私だけが享受しているのかもしれませんが。ただ、 最終的にこの研究会の報告書が明らかにすべき問題といいますか、何かそこがそろそろ見え てきたほうがいい。おそらく、それをたぐり出すために議論を重ねていらっしゃると思うの ですが、そういうものがそろそろ見えてくると、議論の力点の置き方みたいなものも分かり やすくなってくるかと思うのですが、その辺りをどういうふうに考えればいいのだろうかと 思うわけです。民主党のマニフェストにも、いま申し上げた最賃だとか、給付付き税額控除 だとか、第2のセーフティネットだとかという合わせ技がいろいろちりばめられているわけ で、それをある程度より合わせて統一的なビジョンを見せていくというのも1つ大事なテー マかなと思います。  もう1つは、各国がこういう状況の中で、例えば雇用政策のセンターと呼んでいいのかど うか分からないのですが、雇用・能力開発機構を無くしてしまう。それはおそらく、一つフ ェーズが前の段階での決定であったのであって、その辺りをもう一度見直すとか、雇用行政 のありようにも踏み込んだ、少し大胆な議論が必要なのかなと思っているのです。何をどれ ぐらい議論して、どれぐらいアンビシャスだというのかという辺りを少しご示唆いただける とありがたいと思います。 ○樋口座長 これは私がどうこうということではなくて、皆さんでご議論いただいて、皆さ んで落としどころを決めていただければいいかと思います。ただ、この雇用政策研究会は今 回初めてではなくて、これまでもやっていたわけです。そこでの流れというのは、従来は狭 い意味での雇用政策、労働政策に限定していた。それが、社会全体として雇用の持つ意味と いうのが非常に大きくなり、また、そこが不安定になってきているということから、税であ るとか他の分野、例えば学校教育もありますし、職業教育もありますし、そういったところ まで含めて議論しましょうというような流れはあると私は理解していまして、そういった意 味では、社会全体にとって雇用に関する政策を狭い意味での、旧労働省がやっていた政策に 限定しないというようなことは合意があるのかなと思っています。あとは事務局がどう考え るかですが、何か補うことはございますか。 ○小川雇用政策課長 基本的には先生方にいろいろご議論いただければと思うのですが、事 務局の問題意識としては、第1回でもご説明しましたように、基本的には、現在日本的雇用 システムが今後も継続可能なものかどうかというところが出発点です。ですから、正規・非 正規の問題、また若者の雇用の問題を含めて、幅広くご議論いただければと思います。もち ろん玄田委員のおっしゃるように、日本の雇用システムは意外としぶといということになる かもしれませんし、そこはなかなか先生方もいろいろとご議論があろうかと思いますけれど も、基本的に、日本的な雇用システムが今後どうあるべきかということについての議論の整 理をお願いしたいということがございます。その中でセーフティネットをうまく回していく ためのサポートとしての社会的システムをどう考えていくのかということもまた議論にな ってくるだろうと思います。そういう意味で、野心的にできるかどうか、事務局としてはや や不安はございますけれども、幅広に考えていただければと考えています。 ○宮本委員 社会保障の分野まで、セーフティネットの領域まで侵犯しつつ報告書を作って しまう、そんな気持でよろしいのでしょうか。 ○小川雇用政策課長 社会保障とか、年金とか、健康保険とかという狭義の社会保険分野の 個別制度論まで踏み込むのはやや踏み込みすぎかな、我が研究会のマンデートを越えるかな と思いますが、一般論としての言及はあるかなと。前回の研究会でも「雇用に中立的な税・ 社会保障制度」ということも一部入っておりますので、そういった範囲での領空侵犯程度は 行ってもいいのではと思います。ただ、さすがに個別制度のあり方までというのはやや踏み 込みすぎかなと考えています。 ○小杉委員 領空侵犯はどこまでという話なのですが、日本的雇用というのを考えるとした ら、侵犯しなければどうしようもない所というのはあると思うのです。私は、教育と住宅と いう問題が賃金の中に入っている、だから正社員でなければ食べていけないという世界だと 思っていますので、その辺をこれから誰が持つのかというところを少し侵犯しないと、日本 型雇用システムはどうなるか。これが、子どもの教育費が無くなって住宅ローンが無くなれ ば、正社員でなければ食べていけないという状態ではなくなる可能性もかなり高いので、そ のぐらいまでは言及しないと、日本型雇用システムの話はできないのではないかと思ってい るのです。 ○樋口座長 日本型というものが何を意味するのかというのもありますけれど。ただ、この あとの予定ですと、産業社会全体とか、企業に限らずNPOの問題であるとか、ソーシャル・ エンタープライズの問題、そういったところも議論の対象になっていくのかなと私は思って いますので、そういう意味では幅広のご議論をいただいたほうがいいと思います。また、雇 用が真ん中に来て、そのために社会はいかにあるべきかというようなことを議論していただ く、そういうことでよろしいのではないかと思います。ただ、それが報告書に書けるかどう かはまた後のご相談になるかと思いますが、事務局はそれでよろしいですね。 ○平嶋雇用政策課長補佐 はい。 ○樋口座長 では議論を戻していただきましょう。どうでしょうか。 ○諏訪委員 先ほど小杉先生が大変良い問題提起をされたと思います。非正規従業員とか非 正規社員というものの定義がはっきりしていないこともありますが、その中でいろいろなタ イプがあって、それを分けて議論しませんとよろしくないので、そこの部分に関して皆さん のご意見をもう少しいただけたらと思います。  我々の調査でも、非正規社員という中でいちばん年収だとか処遇が高いのは契約社員。そ の次が派遣で、そしてパート・アルバイトというふうに階層的になっていく。ところが、仕 事上の満足感みたいなもので見ると、実は男性契約社員というのはかなり不満が強いのです。 先ほども、正社員になりたいというのがありました。ところが、女性はかなり違うわけです。 例えば、女性のパートタイマーは、調査してみると、いつも正社員よりかえって満足感が高 く出るというところがあります。あるいは小杉先生もかねてからご指摘されているように、 結婚率や子どもがいる率は非正規の人たちは下がるのです。だけれども、女性のパートは逆 に、女性の正社員より高くなるのです。これは今までの流れからすると当然なのかもしれま せんが。だとすると、我々が対策を取るときに、うまくピンポイントでツボをつきませんと、 がん細胞を取ろうとして関係のない所までえぐってしまうという手術問題のようなことに なりかねない。場合によってはそういうことも必要かもしれませんが、できるだけピンポイ ントに、いちばん重要な部分に届くためには、先ほど小杉先生がおっしゃられていたように、 そういう中における違いを丁寧に見た議論をしたほうがいいのではないかと思います。  細かな指摘ですけれども、契約社員と嘱託をワンセットで統計を取っていますが、嘱託と いうのはすごく違うのです。例えば先ほどの所で、世帯主として主な所得を得ているとか何 とかという例がありました。我々の調査でも、嘱託の人たちは、正社員が一定年齢後につく ような場合、むしろやり切ったという満足感が強いようです。今までの仕事を正社員でやっ た後にというのと、契約社員のままで、なかなか次へ転換できないというところとでは、も のすごく意識が違いますし、現実も違いますので、こういうところは統計的にもできるだけ 分けていくような工夫が必要ではないかという気がしております。 ○樋口座長 何かありますか。 ○小杉委員 おっしゃるとおりだと思います。いまの嘱託の話は年齢によって違うところが 結構あって、いまおっしゃっている嘱託というのは、一番よくイメージされる嘱託だと思い ます。若い世代の嘱託というのは、この調査の場合は呼称なので、契約社員とあまり変わら ないタイプの人たちもいるので、そこはそれぞれの個人のキャリアみたいなものと絡み合わ せたものなのではないか。名称とか、年齢とか、経歴、そういうものをできるだけ一緒にし ないと、いまおっしゃったピンポイントというのは難しいのではないかと思います。  外形的にピンポイントという話をしてしまうと、女性の場合は比較的非正規を選んでいる というタイプの人もいるのではないかという議論がよくされるのです。ところが一方で、16 頁の図にあるように、世帯主の女性の3分の1が200万円未満だとか、そういう事実があ る。女性の話はちょっと置いておいて話をすると、そういうことになってしまうと思うので す。日本は世帯の中心になっている労働者に対しては重視している、という話を事業主の方 はよくされるのですが、では何で母子世帯はこんなに貧困なのかという話になるのです。で すから、ピンポイントに絞るというときにかなり条件を絞らないと。外形的なもので絞って しまうと、女性の母子世帯の母がこれまで置かれてきたようなことを見過ごしてきてしまう ことになりかねないので、これも結構注意深くやらなければならないのではないかと思いま す。 ○樋口座長 いまは年間所得で分布とかを見ているわけですが、その背景には何があるかと いうと、この所得で生活を維持できるのだろうか、生活にとって十分な所得なのだろうかと いうように、生活面から賃金を見ているわけです。その一方で、労働サービスに対する対価 であるというようなことであれば、労働時間が違ってくると所得が違っても当たり前ではな いか。むしろ年間所得ではなくて、そのときには時間当たりの賃金に換算して考えていくべ きだと。だから「同一労働同一賃金」と言っても、そこで言うのは時間換算での話というこ とになってくるかなと思うのです。  日本ではパートと正社員の間の賃金格差は大きい、それはずっと昔から言われていること です。しかしそこで問題視されてこなかった、ある意味では社会が容認してきたところは、 世帯主は正社員で働いていて、主婦パートが多いのだと。生活する上で、パートの人たちは 足りない所得を補う仕事であるのだから差があってもしょうがないではないかというふう に、生活と結びつけて考えてきたのだろうと思うのです。ところが、世帯主まで非正規に組 み込まれたり、若者も入っているということになって、この所得では生活に耐えられないで はないかという話で200万円とかという話が出てきている。そこの二面性ですかね。給与 と言ったものの、生活のサイドから考えるのか、それとも労働サービスの価格、対価という ことで考えるのか。  従来生活給だとかというのは、正社員については前者の、生活面から考えることが強かっ たわけですが、それがそうではなくすべきだとかというような議論がすごく多くなってきた。 そして、生活できないところは、企業が面倒をみるのではなくて、社会とか国が何とかする のだというように、企業に対する考え方がだいぶ変わってきているのです。そのことから、 企業の給与支払いでは何を重視するのかということになると、生活ではなくて、むしろ職業 能力だというようなことになってきているのかなと思うのです。ここの分布についても、年 間収入、年間所得で見るというのも重要かもしれませんが、パートと正社員で労働時間が違 うのだから、それに比例的に、時間当たり賃金が同じだったら差が出てくるのは当たり前ね と。時間賃金で分布を見たら、かなり違ったものになってくるのかなと思うのですが、どう なのでしょうか。そういったものというのは統計としては今はない、みんな年間所得という ことですか。 ○小杉委員 私もこの分析の中で、時間当たり賃金という形にして年齢、性別、学歴とかで やっているのですが、パートは時間当たり賃金にしても正社員の半分とか、そのぐらいの水 準という感じで出てきています。そして、雇用形態によって賃金の形はかなり違って、パー トであるか、アルバイトであるか、あるいは契約社員であるかで時間賃金はかなり違うとい うのが出ています。何年かのトレンドで見ているのですが、正社員に対して、アルバイト・ パートは半分ぐらいというのは大体そうなのですが、その率がアルバイト・パートのほうが だんだん下がってきた。新しく契約派遣が出てきて、その間に契約派遣が入るような形です。 時間当たり賃金にしても三層みたいな感じで、正社員があって、アルバイト・パートがあっ て、間に契約がある、そんな感じに出てきている。それが労・就調の時間当たり賃金を作っ てみた結果なのです。差はもちろんありますが、むしろ雇用形態の多様化みたいな形で、層 によって違いがくっきりしてきているという感じを持っています。 ○鶴委員 樋口先生がおっしゃったように、マーケットのほうから見て時間当たりの賃金を 見るということ、それから、生活という視点からどう見るのか。ただ、そこは状況が変わっ てきているので大きな変化がある。昔と同じようにいかないのだけれども、今の状況に照ら し合わせて両方を見ていかなければいけないという感じがしているのです。  というのは、前回もちょっと引用させていただいたのですが、一橋大学の川口先生の研究 では、最低賃金に当たっている労働者の5割が世帯所得は500万円以上の非世帯主である。 そして、そういう人たちが半分だということです。実は1982年でその割合は23%なので、 割合は非常に高まっているのです。逆に世帯主で200万円以下というのは9%ぐらいの数字 だったと思うのです。そうなっていくと、先ほど諏訪先生がおっしゃったように、最低賃金 でピンポイントのことまでできるかというと、そこはなかなか難しい面もあるのです。私が いちばん思っているのは、非正規が自発的非正規であったのか、非自発的なのか、正社員希 望があるか無いかという分け方、それから世帯主なのか、そうではないのか。主婦のパート の方々なのか、自分で家族を養っていかなければいけない方なのか。あとは雇用の契約期間 だと思うのです。これも1年未満でもいろいろなタイプがあります。また1年以上でも、1 年なのか、もっと長いのか、期間の定めがないのか。  こういうところの軸でしっかり見ていかないと、どういう人たちがいちばんそういう対策 を必要としているのかという議論が出てこないのだと思うのです。私も研究所で諏訪先生と 同じようなウェブ調査をやっているのですが、まさしく正社員になりたいという希望みたい なところが、それなりの所得はあっても、幸福度、また不満とかそういうものに非常に影響 を与えるという結果が出ていますので、その辺は非常に注意深く見て政策のあり方というも のを考える必要があると思っています。 ○樋口座長 資料1の26頁に「不本意就業者」というのがありましたが、これで何を取ろ うとしたのか、これをもう一回説明していただけますか。 ○平嶋雇用政策課長補佐 正社員として働ける機会がなかったために非正規雇用で働いて いるという人を雇用形態別に見たところ、非正規社員の全体では18.9%なのですが、特に 契約社員、派遣労働者では3割を超える人がそういう状況にある。臨時とかパートは比較的 そういう人が少ないということです。そして右の図ですが、ほかの就業形態に変わりたいと いう人も、契約社員、派遣は5割を超えているという状況です。 ○樋口座長 これを見ると、特に1999年と2007年、2つの棒グラフを比較すると、派遣 のところの「不本意派遣」が増えているように見えるわけですね。 ○平嶋雇用政策課長補佐 この派遣のところは8ポイントほど増えておりますので、特に上 昇が大きいということです。 ○小杉委員 それは派遣の人たちの中身が変わった、要するに法律の変化の中で製造業派遣 とか、そういうことの影響なのでしょうか。その辺は、産業で分析すると全般に、事務派遣 は比較的満足感が高いというような話がよくありますが。 ○樋口座長 これは出ている数字を書いたのでしょうから、もし可能であれば、例えば男女 別で見てもらうとかということですね。「不本意就業」というのは玄田さんから何か一言あ るのではないですか。 ○玄田委員 遅れて参りまして、ちゃんと議論に付いていっている自信がありませんで申し 訳ないのですが、あまり本意・不本意とか自発・非自発という概念で非正規とかの類型化を することについては、やや懐疑的なのです。非常に区分けが難しいので議論がしにくいかな と、これまでの経済学の議論を見ていて思います。むしろ、先ほど鶴さんがおっしゃったよ うないくつかの区分けかと。セーフティネットの議論をするときに私自身がとても大事では ないかと思っているのは、単身世帯の非正規もしくは無業が抱えている問題を、JILPTを含 めたあらゆるデータも含めて、厚生労働省がもう少しその姿を浮き彫りにする必要があるの ではないかということです。上野千鶴子さん的に言えば「おひとりさま非正規」「おひとり さま無業」のあり方については、いま非常に喫緊の課題を抱えている可能性があるのではな いか。  単身世帯の話はいま高齢者にとって非常に大きな問題でありますが、統計を見ますと、単 身世帯は高齢者に限らず非常に増えています。特に、こういう概念があるかどうか分かりま せんが、「長期単身世帯」みたいな、ずっと一人というのがあります。つまり、単身世帯の 中には、世帯は一人で独立していますが、比較的近くに家族等々の庇護があるケースと、さ まざまな理由で家族的なものから長く乖離しているようなケースがあって、セーフティネッ トが必要とされているのはむしろそういう、非常に長く家庭的な庇護から離れている単身世 帯の中に大きな問題が、今回の雇い止めの問題等を含めてあり得るだろうと。これは私自身 の勉強不足によることかもしれませんが、単身の非正規ということに注目して、そこがいか なる厳しい経済状況なり就業状況にあるかということについては、必ずしも十分に浮き彫り にされてはいないのではないか。先ほど言った「家族」というものと「世帯」というのがな かなかうまく切れないものですから。ただ、いま本当のセーフティネットを考えるべきは、 企業もそうですし、国もそうですが、最もベースになっていた家族というものからも乖離し ている人たちがおそらく相当増えているという概念から考えていかないと、ちょっと難しい のではないかというのが1点です。  この際もう1つだけ言わせていただきたいのですが、セーフティネットの議論で、ピンポ イントで問題を解決していくという諏訪先生の提起を受けてのことなのですが、がん細胞に ピンポイントで対抗するためにガンマーナイフという技術があって、放射線治療をしていく というのです。それはそれで非常に大きな成果を上げているわけですが、そういう技術的な ものをより改善していってピンポイント部分の精度を高めていくというのと、もう1つ、素 晴らしい外科医の方に手術をしていただくという治療法があります。  セーフティネットの議論のときに、制度設計をいかに的確にデザインするかという技術的 な問題はもちろん大事なのですが、セーフティネットを支える人、そういう言葉があるかど うか知りませんが「セーフティネッター」はどうなっているのだろうと。これは私の見落と しかもしれませんが、セーフティネットを下から支えてくれている人の議論というのは、今 日の資料からはあまり見えない気がします。  先ほどの“Active Labour Market Policy”の対GDP比というのは大変大事な概念だと思 いますが、労働者に対してセーフティネットを支える人材は、日本では一体どのくらい足り ているのだろうか。ハローワークもそうですし、さまざまな労基署関係もそうですし。セー フティネットを支える人たちというのが、いま圧倒的に足りなければきめ細かい議論はでき ないのですが、そういうデータは、頑張れば出せるのだと思うのです。まずは「人」でしょ う。技術の精度を高めると同時に、セーフティネットが支える人たちがいま足りているかど うかという議論がもう少しあると、デザイン設計の議論と両輪となって何かのメッセージに なるのではないかと思いました。 ○樋口座長 後者については、失業者1万人当たりのそれをサポートする人たちの人数とい う国際比較があって、日本は圧倒的に低いというのが出ているのです。たしかヨーロッパに 比べて半分どころか、ずっと低いというのが出ていますね。 ○玄田委員 それは私も若干見たことがあります。何かもう少し細かく、どの分野にどのぐ らい足りないのかということを国際比較の概念と過去の趨勢に照らし合わせて今どうなの かということで、世界の観点と歴史の観点から見ると、どこがどれだけ足りないのかという 今の問題点がよりクリアになるような気がします。 ○宮本委員 いま玄田先生がおっしゃったことに触発されたようなことなのですが、この研 究会であるがゆえに発言できることというのはたぶんあるだろうと思っております。いま 「セーフティネッター」という言い方をされましたが、その問題というのは、いま政治のサ イドでも、脱官僚という観点から、そこの補強だとか拡大ということは言いにくい事情があ るだろうと思います。ましてや、今お役所のサイドからは言いにくい。しかし、事実は事実 であるという問題があると思うのです。  そこで、それをかなり具体的なプログラム設計に沿って、例えばこれまでの流れから言う ならば、「緊急人材育成支援事業」で言うところの第2のセーフティネットをこれから恒常 化させていくというのは1つの流れとしてあるわけですから、これを素材にする。  例えば、いま中央職業能力開発協会がある種、行政関連団体として、天下り先であるとい ったような問題視もされている。でも他方において、それはまさにセーフティネッターであ るわけですので、それだけでも関連的な問題がたくさんあるわけです。例えば、前政権の 2009年度補正で付いていた7,000億円規模の予算は到底捌き切れないセーフティネッター だったわけです。だから3,200億円に減らされて、ひょっとしたら、ホッと一息ついている のかもしれないのですが、むしろ「第2のセーフティネット」を必要としている側はホッと 一息つけない状況ですね。何が言いたいかというと、雇用行政、これは狭い意味の公務員で ある必要はない。セーフティネッターであるならば、これはまさに社会的企業でもいいし、 広く考えていいと思うのですが、ともかく、政策の正しさだけでは解決できない問題がある のです。インプレメンテーションの問題がいま非常に肝要になっているし、急を要してもい ると思うわけで、それは研究者でしか言えないような問題になりつつあるのかもしれないの です。だから、この辺りは先ほどの落としどころの問題にも絡むのですが、この研究会がこ の「第2のセーフティネット」の設計について何も言わないわけにはいかないだろうし、そ の場合は、何がどこまで足りないのかと。雇用行政関連団体の問題は問題として指摘すると 同時に、場合によってはそれを統合して強固な雇用行政のセンターのようなものの必要性に ついて言及する必要もあるかもしれない、そのようなことをどこか念頭に置いて議論をする べきではないかと、玄田先生のお話を伺って思いました。 ○平嶋雇用政策課長補佐 先ほどお尋ねのあった件ですが、「他の就業形態に変わりたい」 とする者の割合で、全体が30.6%となっていますが、男性では39.5%、女性では26%と男 性が高いことが分かります。年代別には年齢が低い層が非常に高いということで、20代だ と6割です。これについては次回に資料をまたお出しいたします。 ○阿部委員 諏訪先生もおっしゃるとおり、個人がどういう状況にあるのかというのを把握 していかないと。「非正規社員だから」だけでは問題解決の糸口が見えてこないと思うので す。先ほど先生は呼称でおっしゃっていたと思うのですが、実は働き方、正社員と同等の仕 事をしているのか、そうではないのかとか、そこにまたいろいろな軸が加わってきて、結局 個人の問題に返ってくると思うのです。今「第2のセーフティネッター」と言われているの は、私の理解では雇用政策かなと思ったのです。第2のセーフティネッターのところが、従 来は企業を中心に配分されてきた面が強かったのではないか。ところが、問題は、いま個人 で起きているというところを考えると、企業から個人へという流れをどう考えていくかとい うのは大事なポイントなのではないかと思ったのです。そしてそれは、しぶといかどうかは 知りませんが、日本的雇用慣行と大きく関連するし、もちろん労働法制とも大きく関連する のではないかと思います。「そもそも」と言うと隣で怒る人もいるのですが、やはり、そこ に話が立ち戻るのではないかという気はするのです。感想です。 ○橋本委員 先ほどから、非正社員にもいろいろな人がいて、なかなか一括りにできないと ころが問題ではないかという議論がありました。日本で特に複雑だと私が思っているのが、 いろいろ統計にも出てくる、日常用語としての契約社員、パート、派遣、嘱託といった呼称 と、非正規雇用の法制とが必ずしも対応しておらず、法制上は、短時間労働、すなわちパー トタイム労働と労働者派遣、それと有期労働契約、法律上はこの3つのいずれしかなく、多 様な呼称とずれがあるところです。あるいは、日本だとパートの大半は有期であるというふ うに組み合わされているところが難しい問題なのかなと個人的には思っています。  ヨーロッパでは非正社員にいろいろな呼称があるということはたぶんないです。有期、パ ート、派遣のどれかで区分されていて、それぞれの属性も、わりと明確に理解されているよ うに感じています。パートは、育児中の女性が短時間勤務するということで特に問題ない形 態と位置づけられていますし、有期契約、そして派遣もおそらくそうだと思うのですが、そ れは若年労働者が正社員になりたかったけれども無期雇用がなくてやむを得ず選択した形 態だから望ましくないので、そもそもこのような雇用が増加しないようにする、あるいは、 正社員化の義務付けといった規制はないのですが、正社員、正規雇用に移行できるように法 制が設計されていると思います。  最初のほうで阿部委員や小杉先生の議論があり、鶴先生からも既にご指摘がありましたが、 ヨーロッパには、有期契約の期間を2年間ぐらいで上限を制限する規制がなされています。 その期間は実態として試用期間として位置づけられていて、同じ会社で働くかどうか分から ないのですが、ドイツでは、半分以上がその後無期雇用に転換しているというデータが出て いいるそうで、有期雇用の問題はあまりない、という認識が政府の文書からはうかがえます。 ただ、これは本当にそうなのかよくわかりません。最近のドイツでは、非典型雇用から典型 雇用への移行は難しいということを聞いたこともありますので、そう単純ではないとも思い ます。日本でも、阿部先生ほか先生方がご示唆されましたように、有期契約の契約期間を2 年間に絞れば正社員化が進むのではないかということは十分言えると思います。しかし、属 性が雇用形態で割り切れない面があるのかなと感じました。これが感想です。  あとはセーフティネットに関連してお尋ねします。事務局のご説明にはなかったのですが、 今日の資料の最後にフレキシキュリティ(Frexicurity)の資料が付いています。宮本先生から も問題提起がありましたが、この研究会の目的として、日本型フレキシキュリティとは何か とかというのを示すとか、そういうことがあるのでしょうか。これは単なる質問です。 ○樋口座長 13頁にフレキクシキュリティの資料が付いているが、どういう趣旨かという ことですが。 ○平嶋雇用政策課長補佐 日本型フレキシキュリティというところまで行くかどうかは分 かりませんが、いろいろなあり方が問われている中で、いちばん典型的なデンマークの例を 参考にご覧いただいて、議論の1つの題材にしていただこうということです。 ○樋口座長 前回、労使の代表ではなくて個人的な立場として来て議論をしていただいたの ですが、わりとスタティックな、静的な議論が多くて、ダイナミックにどう転換していくか、 いまので言うと非正規から正規への転換をどう進めるかというようなことがあまり出なか ったので、今回は特にそこを集中的に出してもらったということはあります。  もう1つ今日出てこなかったのは、労働時間の問題をどう考えるのかというところです。 フレキシキュリティの話もあるかと思いますが、そこを雇用形態とかの議論の中で今後議論 していく必要があるのではないかと私も思いました。  ちょうど時間も来ておりますので今日はこれぐらいにしたいと思いますが、もし何か発言 しておきたいという方がいらっしゃいましたらお願いします。 ○諏訪委員 先ほど玄田先生が大変興味深いことをおっしゃったと思うのです。単身世帯の 非正規あるいは無業というのをきちんと捉えておくべきだというのは全く同感です。「家族 から離れて長期に単身の」という部分の特色なのですが、住宅とか教育というのが正社員型 の雇用形態の中でカバーされるような仕組みの中にいると、ここから外れると住宅だとか教 育などからも外れていくということが問題だということは、小杉先生がおっしゃられるとお りなのです。  そしてもう1つ、我々が今度調査をしてみてハッと思ったことは、友達・知人の数です。 正社員と非正社員では、はっきりと差が出るので、「なるほどね」と思いました。そして、 その友達を「職場の友達」と「職場外の友達」と分けていきますと、どちらも人数が落ちる のです。女性のパートは違います。でも、男性のパート、アルバイトも、それから派遣も、 契約社員もそうなのですが、落ちるのです。つまり、こういう雇用のコミュニティーの外縁 に置かれて、そして職場に長くいません形態ですと、自然にはなかなか友達が出来ない。ま して、家から遠く離れた所で寮などに入って、そして短期ですと。簡単に言えば「公助、共 助、自助」と言われるうちの共助が働きづらい人たちなのです。自助能力が弱くて、公助が セーフティネットを張っていなかったら、それは当然いろいろな問題が起きてしまうので、 「共助」の部分を再生させるというのは非常に重要な部分です。これを公共政策でどこまで できるかはいろいろ議論があろうかと思いますが、こういう視点も、セーフティネットとか 社会政策的に考えていこうとするときには大事ではないかということで申し添えさせてい ただきます。 ○樋口座長 ありがとうございます。地域のネットワークの問題も含めて、これから議論し ていきたいと思います。今日はこれぐらいにしまして、次回も引き続き「目指すべき雇用シ ステムとセーフティネット」というテーマで検討を進めてまいりたいと思います。では事務 局から連絡をお願いします。 ○平嶋雇用政策課長補佐 次回ですが、3月8日(月)午後3時から、こちらの省議室で開 催したいと思います。ご案内は後日お送りしたいと思いますので、よろしくお願いいたしま す。 ○樋口座長 資料3が今後のスケジュールですね。 ○平嶋雇用政策課長補佐 はい、次回が3月8日、その後第5回は3月24日(水)を予定 しております。4月以降につきましては来週にでも日程調整をさせていただきますので、よ ろしくお願いいたします。 ○樋口座長 委員の皆さんにはお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうござ います。以上で終わります。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係  〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2  電話 03−5253−1111(内線:5732)     03−3502−6770(夜間)