10/02/03 第9回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員議事録 第9回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門 委員会 ○日時  平成22年2月3日(水)17:00〜 ○場所  厚生労働省5号館(17階)専用第21会議室 ○出席者 【委員】 永井委員長、位田委員、梅澤委員、高坂委員、佐藤委員、澤委員、鹿野委員、 中内委員、中畑委員、町野委員、山口委員 【事務局】田邊専門官、秦健一郎 ○議事 1.指針の見直しの論点について 2.ヒト幹細胞臨床研究のためのGood Tissue Practiceについて 3.その他 ○永井委員長 定刻となりましたので、「第9回ヒト幹細胞臨床研究指針の見直しに関する専門委員 会」を始めさせていただきます。まず、事務局より出席の確認をお願いいたします。 ○事務局 委員の先生方におかれましては、ご多忙なところご出席いただき誠にありがとうございま す。お手元の委員名簿をご覧ください。本日の出席を確認させていただきます。本日は、西川委員、 水澤委員、武藤委員、本田委員が欠席との連絡をいただいており、全委員15名のうち11名の委員にご 出席いただく予定となっております。過半数を超えまして、本会議は成立するものということをご報 告申し上げます。 ○永井委員長 続いて、配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 配付資料についてご説明いたします。議事次第にありますように、1枚目が議事次第、座席 表、委員名簿。資料1、資料2、資料3、資料4、それぞれ1枚紙として用意しております。また、ドッ チファイルにまとめられております参考資料1から参考資料10はこの水色のファイルにありますが、 過去の専門委員会の配付資料につきましてはこちらの青色の厚いドッチファイル、これらは机上にの みご用意しております。過不足等がありましたらお知らせいただきますようお願い申し上げます。 ○永井委員長 前回第8回の委員会では、新規の幹細胞を用いる臨床研究を開始するに当たって求めら れる要件ということでご議論いただきました。さらに、現行の指針の見直しについても着手をしてい ただいたというところでございます。特に、指針の対象となる臨床研究の範囲ということで、さまざ まなご意見をいただいております。まず、今日の議論の進め方について、事務局からご説明をお願い いたします。 ○事務局 前回の委員会の主な意見につきましては、資料1にまとめております。資料1をご覧くださ い。1番目としましては「新規の幹細胞について」です、ES細胞やiPS細胞をどのように含めていくか といった議論がなされ、指針の対象に含めていくことで確認しております。ただし、ES細胞や同種 (他家)のiPS細胞を用いて樹立・分配を行う場合には、株化やバンク化などで新たな問題点がありま すので、そちらのほうは別途改めて議論をしていこうということで了承を得ております。  次にご議論いただいた2番の「臨床研究の範囲について」は、いちばん意見が出ましたのは特にがん の免疫療法、細胞療法ですが、これにつきましては、それを含めたような包括的にするというような ご意見もありました。その場合は、ヒト幹細胞でなくても、ヒト細胞の臨床研究という指針に変わる 必要もあるのではないかということもありました。しかし、そういった研究自体はある程度医療行為 として行われているものが実際には多く、そういうものは指針の対象から外す必要があるというご意 見もありました。ただ、今回は指針の中に入らないとしても、そのような免疫細胞療法は審査しない という場合でも、これは人に投与するものなので最低限のルールは必要であろうというご議論もあり ました。臨床研究段階から治験に至るまで、包括的な構想は再生医療分野でも必要であろう。問題点 としては、臓器移植や組織移植などの幹細胞治療に類似のものが若干ありますので、本日整理をした 上で事務局から説明させていただきます。簡単にまとめますと、幹細胞の指針ですので、そこの前提 は外さない方向にとの意見でした。ただし、包括的な指針という観点の議論はもう少し必要であろう ということで、今回また引き続き議論をしていただきます。  次に、調製・加工という定義のことについても触れましたが、こちらのほうは分ける意味はないの ではないかというご議論がありまして、そのような方向で進めていきます。  最後は「インフォームドコンセントについて」です。インフォームドコンセントの説明者は、本来 は医師である必要はないと考えられておりますが、この再生医療分野で、また、想定される事態が正 確に予測できないため、現状では現行の指針のままでいきましょうという結論です。以上でございま す。 ○永井委員長 それでは、資料2について事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 資料2をご覧ください。前回の委員会にて議論された内容を確認していきたいと思います。 特に1番と2番については、本日はご確認いただきたいと考えております。1番ですが、参考資料1の 「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」をご覧ください。こちらの第1章の第3、ヒト幹指針の 2頁目に「適用範囲」という項目があります。この指針は「疾病の治療のための研究を目的として人の 体内に移植又は投与する臨床研究」と書いてあり、ご確認いただきます。また、ヒト幹指針の3頁目か らですが、いくつかの除外項目がヒト幹指針の中にはあります。その除外項目としては、薬事法によ る治験は含まれない。また、診断・治療を目的とした医療行為として一般に行われている医療行為は、 指針から外れるという整理をしております。さらに、胎児の幹細胞についても、その臨床研究に関し て指針の対象外であるとなっていまして、こちらのほうはそのままでよいかということをご確認いた だきます。  さらに、既に行われている臨床研究、既に研究として開始されているものについての項目として、3 頁目ですが、第3の2の「細則」という項目があります。この細則の1として、「この指針が施行され る前にすでに着手され、現在実施中のヒト幹細胞臨床研究については、この指針は適用しないが、で きる限り、この指針に沿って適正に実施しなければならない」という項目がありまして、指針では対 象外であると定めております。こちらのほうで特に変更がないということであれば、ご了解いただき たいということになります。  次に、2「本日議論すべき点」についてです。本日、前回に引き続き確認したいこととしましては、 対象疾患について第1章の第4が3頁目の下のほうにあります。こちらについても、指針の適用範囲を 目的に即した形で包括的にしていくべきであろうということで、本日はもう少し議論をしていただき たいと思います。そこで、この点につきまして、資料3を用いて追加で補足説明をさせていただきたい と思います。資料3は「再生医療と移植医療の比較」という図になっております。前回のご議論でも若 干混乱が生じるようなところがありましたが、再生医療として細胞を人に投与することと移植医療と して組織や臓器を投与することは大変似たようなものである、というところでどのように整理されて いるかということをご説明します。まず、再生医療と移植医療と大きく分かれていますが、この中で 法律に定められているものは臓器移植だけで、「臓器の移植に関する法律」というものがあります。 そちらのほうは原則的には臓器というものが定義されておりまして、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、 小腸、眼球というものだけが臓器に定義されているという、これはかなり狭い範囲の法律及び指針が 定められているという形になります。  一方、その隣にある組織移植に関しては、これは法律による規定ではありません。日本組織移植学 会からガイドラインがなされ実際に運用されている。こちらも心臓弁、血管、皮膚、骨、膵島という 組織だけが対象になっているという整理です。こちらの移植医療は、主には死者から組織や臓器を取 ったものを、ほかの人にそのまま1対1の形で移植を行うという形になっております。  一方、再生医療は人から得られた細胞、これは死体より生体のほうが多いと思いますが、これを用 いて培養や加工などの調製を行う。それを他人または自分に戻してあげて早期の再生を促すという医 療です。こちらの再生医療というのは、調製段階を経まして不特定多数に反復継続的に用いられると いうことがありまして、これが1つの治療のリスクとなっております。そういった不特定多数に広く分 配されるという問題点から、ヒト幹指針というものが実際には制定されているということです。  「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」と法令のところに書いてありますが、その隣に「医 療機関における再生・細胞医療における施設基準」という告示を現在作っているところです。これは 何度かご説明しておりますが、枠組み検討会と呼んでいますが、特に医政局と医薬食品局でやってい る検討会で、これは再生医療だけではなく細胞医療も含めた、つまりヒト細胞を対象としたかなり広 い指針を作っております。これは臨床研究だけでなくて、医療まで全般に広がる網羅的なものを作っ ていると聞いております。その指針では、主に施設基準について書いておりますが、治療の安全性を 担保するために、医療であっても倫理審査委員会を実際に立ち上げて審査をする。そのあとに、医療 を行ったあとはしっかりと評価をしていくということまで定めている指針です。これは今年度中に結 果が出て、とりあえず第一版という形で出ます。あとは、来年度も引き続き議論をして、さらに広範 囲の指針が出来上がってくるという形になっております。  それに対しまして、ヒト幹細胞の臨床研究の指針としては、今回は特にヒト幹細胞を用いた再生医 療分野を重点的に対象にしております。範囲が比較的狭い指針であるということと、厚生労働大臣の 申請が必要であるというところで大きな違いがあります。この表で主に言いたいこととしましては、 再生医療は移植医療とは明らかに違うものであるということが1つ。あとは、再生医療と書いています が、再生細胞医療というものは別途にガイドラインができているところで、特に規制もなくすべてや られているというわけではありません。特にヒト幹細胞を用いる再生医療に関する指針につきまして は、いまここで皆さんにご議論いただいているということです。そういうことを踏まえた上で、今回、 ヒト幹細胞の臨床研究の指針の範囲というところを是非ご議論いただきたいと考えております。 ○永井委員長 ただいまご説明いただきました資料1から資料3まででご質問、ご意見はありますか。 資料1は前回いただいた主な意見ということでまとめられたもの、資料2は今後議論すべき主な論点、 資料3は再生医療と移植医療の比較の図です。 ○梅澤委員 確認なのですが、資料3の左側で、再生医療でピンク色になっている部分なのですが、い ちばん上が薬事法ということで、その下に「法令・通知・ガイドライン」「移植・投与されるもの」 ということで、左側がヒト幹指針ですよね。そして、移植・投与されるもの、ヒト幹細胞と書いてあ りまして、その上側が「薬事法の対象となり得る」という記載なのです。これは明確にする上でも 「医療法の対象」という書き振りのほうがいいのか、それともこの表の書き方、意味が違うのでしょ うか。 ○事務局 これは医療と薬事とが完全に分かれることはあり得ないものです。特に、こういった細胞 や組織などをヒトに投与するというのは、すべて医療法の範疇に当然含まれます。ヒト幹細胞の指針 も、万が一、薬事にかかるという話でも、それは医療法も当然かかります。さらにこの再生医療が広 がっていく段階で、薬事法にかかることがあり得るというような整理をしております。 ○梅澤委員 もう1回確認なのですが、ヒト幹指針は薬事法の対象となり得るということを記載したも のなのですか。 ○事務局 違います。 ○梅澤委員 そこの確認をしたいのですが、この表だとそう見えるという、私の解釈のミスなのか何 なのか教えてくれますか。 ○事務局 左側はいちばん上が「再生医療」と書いております。再生医療全体が将来的には薬事法の 対象になりうるということです。 ○梅澤委員 わかりました。いちばん上が再生医療の対象という意味ですね。 ○中畑委員 一般的に行われている造血幹細胞移植、骨髄移植とか臍帯血移植というのはもう既に一 般的に行われているからということで、実際は幹細胞を使った医療なのですが、この指針には含めな いということで前回の指針ができたわけです。この表の中にはその造血幹細胞を使った移植というの がどこにも入っていない。おそらくこの組織移植の中に入るか何か、一般的に行われている骨髄移植 や臍帯血移植はどこにこの図で落としたらいいか、それもはっきりしておいたほうがいいと思います。 ○事務局 これは典型的な例を表しただけですので、個別の具体的なものについては、この表のどこ というのを明らかに定義することはできないと思います。ただ、現在すでに行われている医療という のは、このヒト幹指針の第1章の第3の適用範囲にあるように、既に安全性・有効性が確立されており 一般的に行われている医療行為は指針の対象としない、というふうに明示されておりますので、その ような整理で間違いないのではないかと理解しております。 ○山口委員 臍帯血幹細胞移植と骨髄幹細胞移植などはもう一般的に行われている医療で、例えば臍 帯血を増幅して投与するとなると対象になるでしょうということですね。そういう理解でいいと思い ます。 ○位田委員 再生医療のほうのピンクの「法令・通知・ガイドライン」の部分なのですが、いまの幹 細胞指針もしくはこれから作っていく指針と、告示予定になっている施設基準との関係はどういうふ うになるでしょうか。 ○事務局 この図では確かにわかりづらいと思うのですが、完全には網羅していないのですが、「医 療機関における再生・細胞医療における施設基準」というのは比較的もっと広い範囲のガイドライン になります。臨床研究だけではなくて、実際には医療を行っている段階にもかかるものです。逆に、 その範囲については本委員会でもう一度詳しく議論していただきますが、現行の「ヒト幹細胞を用い る臨床研究に関する指針」というのは狭い範囲で場合によっては一部中に含まれるような形にもなる かもしれない。ですから、一方の施設基準とはもっと広いバスケットクローズ的なものと考えていた だいたほうがいいと思います。 ○位田委員 そうしますと、施設基準が大きくて、その中の特則として幹細胞指針が入るという趣旨 ですか。 ○事務局 そのとおりです。 ○位田委員 ということは、その下の「移植・投与されるもの」のヒト細胞の中には幹細胞も入って いるのだけれども、その幹細胞指針は抜き出すと。そうすると、その特則という場合に施設基準とは 異なる内容の規定をこの指針が置いた場合には、そちらのほうが優先されるという形ですよね。 ○事務局 基本的にはそういう理解でいいのですが、そちらのほうとの整合性をとっておりますので、 そうならないような形にはなっています。どちらをとっても内容は同じになるように作っております。 ○位田委員 それで、少し懸念するのは現場の先生が両方の指針を使うのか、ヒト幹細胞の指針に合 っていればそれでいいと考えるのか。 ○事務局 ヒト幹細胞の指針を見ていただけると、こちらのほうもそのまま従う形になる。ですから、 1つの指針だけを見ていただければよいというふうに作っていっております。 ○位田委員 もう1点ですが、先ほどおっしゃった施設基準のほうは事前の審査と事後の評価が入って いるというご趣旨だったかと思うのですが、それも幹細胞指針にかぶるということになると、幹細胞 指針も事後の評価をやるというふうに理解してよろしいですか。 ○事務局 本日、「その他」で1つあるのですが、資料2の「本日議論すべき点」の6に「情報の公 開」という形で評価のほうはしっかりしていくというふうな、これも同じ内容で進めていこうと考え ております。 ○位田委員 私、その告示予定の中身は全然わからないのですが、施設基準と書いてある以上はその 施設に関する基準で、この幹細胞指針は施設に関する基準も入っていますが、どちらかというと再生 医療に関連する行為に関する基準が結構多いと思うのですが、その辺りの関係がよくわからないとこ ろがある。材料がないところでどちらかというのは、なかなか難しいのですけど。 ○事務局 これはある程度形が出来上がり次第、皆様のほうに提示させていただいて、もしヒト幹指 針などで必要な変更があるということでしたらご意見をいただきますので、少々お待ちいただきたい と思います。 ○中畑委員 そうしますと、この施設基準についても、どこかでチェックをするシステムを作ろうと されているわけですね。 ○事務局 これ自体は委員会とかでチェックするわけではなくて、研究または医療を行う機関が立ち 上げる倫理審査委員会でやっていただく。最終的な評価は、ホームページや学会などで公開すること によって第三者評価を得ていただくという内容です。ですから、中央審査委員会ということではあり ません。 ○中畑委員 そういうことではないわけですね。ちょっとわかりにくいかもしれない。 ○永井委員長 まだ全貌がつかみ難いところがあるのですが、議論の中でもう少し進めてクリアにし ていきたいと思います。そういたしますと、今日の議論ですが、先ほどの指針の対象となる幹細胞に ついてというところがありますが、これについて事務局から説明をお願いできますか。 ○事務局 参考資料のヒト幹指針をご覧いただきたいのですが、第1章の第2、1頁目ですが、ここに 「用語の定義」とありまして、(1)ヒト幹細胞。ヒトから採取された細胞又は当該細胞の分裂により生 ずる細胞であって、多分化能を有し、かつ自己複製能力を維持しているもの又はそれに類する能力を 有することが推定されるもの及びこれらに由来する細胞のうち、下の細則に書かれているものだと。 そして、細則の中にもさらにいくつかの幹細胞の種類が書いてありまして、それらに加えて「これを 豊富に含む細胞集団」または「それら細胞を培養して得られた細胞」という、なかなかわかりづらい 表現をしておりますが、簡単に言うと、ほとんどすべての体細胞も含めるような意味合いでとられる ような内容になっています。  幹細胞という定義ですが、これは研究者にとってなかなかわかりづらい。サイエンティフィックな ものとは少し意味が違うのではないかというご意見をいただくことが多く、この辺をもう一度ご議論 いただきたいと思っております。特に、これは幹細胞というものについての臨床研究指針ですので、 幹細胞の定義がずれると臨床研究の範囲自体が不明瞭になりますので、ご議論いただきたいと考えて おります。場合によっては、この幹細胞の定義などを少し変えたほうがいいということであればその まま反映させていきたい、現行でいいということであればそのままでもいいと。その下のポツにある のですが、そのご議論が終わったあとに、今度は禁止するべき細胞というものがあれば特にご検討い ただきたい。今回、用語の定義から「ES細胞及びこれらに由来する細胞を除く」という一文が除かれ る形になりますので、その段階で、人クローン胚由来のES細胞、現在存在するものではないと理解し ていますが、そういうものも対象範囲になり得るので、そういった細胞を移植してはならないような ものを禁止すべきかどうか。それから、その範囲と除外項目をそれぞれ定めていただきたいというこ とです。以上でございます。 ○永井委員長 これは第1章総則の第2の(1)です。「用語の定義」の中にヒト幹細胞の定義が書かれ ていますが、これをどうするか。いまのサイエンスの常識からして、大体、このヒト幹細胞というの はこの表現でいいかどうかというところがいまの論点ですが、いかがでしょうか。 ○山口委員 この議論は前回もやった話なのであまり繰り返しませんが、これで字句どおり読んでし まうと、血球系の細胞まで入ってしまうところがあるのだろうと思うのです。がん細胞免疫療法など はそれだけのリソースがないから、ここで議論をするのは難しいだろうというのが大勢のような気が するのです。 ○永井委員長 前回までの議論の中の確認すべき事項について、先ほど十分に議論はなかったのです が、対象疾患等についてというところで免疫細胞治療をどうするかという話があるわけです。そのこ とと、この幹細胞治療というのがどういう関係にあるか少し整理が必要だと思うのです。いままでの 議論では、免疫療法は今回のヒト幹指針には入らないという理解でよろしいでしょうか。 ○山口委員 ただ、もう1つ、基本的ルールをどこかで明らかにしておくというのは、皆さんもあまり 反対がなかったような気がするのです。ここにも書かれているように、もう臨床研究がスタートして いてもできるだけこれに沿ってやってくださいという、その趣旨は生きているわけです。そういう意 味での基本ルールをどこかで明らかにしておく、それは審査をするしないとは別の話のような気がす るのです。そういう意味で、少し曖昧な言い方になりますが、今のままでここの部分を残しておくと いうのは、むしろ、そういう意味ではいいのかなという気がしてはいるのです。 ○永井委員長 この部分を残すというのは、どの部分ですか。 ○山口委員 この部分というのは、普通だと採取された細胞、多分化能を有し、かつそこから分裂あ るいは分化してきた細胞ということは、細胞が全部入るわけですね。ある意味ではこれはすごく幅広 く書いてあるのだろうと思うのです。ただ、趣旨としては、この審査をする委員の認識としては、も う1つに再生治療に用いるという規定がありますが、再生医療に用いる細胞ということで縛りがあり、 それほど広くとらないという。要するに、いまのがん細胞免疫などは入れないとか、そういう趣旨だ ろうと思うのですね。 ○永井委員長 多分化能を有しということになると、免疫療法がどういう位置づけになるかですね。 少し違うような気がするのです。 ○中畑委員 細則がないと幹細胞から由来するすべての細胞が含まれてしまうということもあって、 それでは赤血球まで含まれてしまうということになりますので、これはその細則に規定される幹細胞 由来細胞のうち、この細則に規定されるような幹細胞の性質をある程度持った細胞を使った医療、幹 細胞と呼べなくてもそれに近い細胞を使った医療ということで、前回は定義をしたわけです。だから、 この細則に含まれないような、ここだとリンパ球などはこの細則の範囲に入らないので、必然的にこ の趣旨にはリンパ球を使った免疫療法などは含まれないという形で前回は定義をやったわけです。  今回は、先ほどあった再生医療のうちの施設基準というものが作られるということですので、これ はこの指針とは別の範囲で、各施設の倫理委員会でそれを徹底していただくということになりますの で、変な所でリンパ球を培養して患者さんに戻すというようなことは、必然的に許されない事態にな っていくということでは、1つの歯止めがかかっていいことではないかと思うのです。 ○永井委員長 ほかにはいかがですか。 ○澤委員 少し細かいことですけれど、こういう細則の中で出てきていない幹細胞、例えば心筋幹細 胞ももう使われるような状況まできているのですが、そういうものは「等」という言葉の括りで、例 えばという括りであればいいという解釈でよろしいのですね。これではかなり詳しく肝幹細胞、骨格 筋幹細胞、腸管幹細胞とたくさん並べられている中で、出てきていないものは「等」という。 ○永井委員長 そうですね。「例えば」と書いてある。 ○澤委員 「例えば」「等」というような解釈の中に含まないと仕方がないですね。 ○永井委員長 組織幹細胞ということが書いてありますので、心筋幹細胞も当然入る。 ○澤委員 その「例えば」が詳しすぎるような気もするのですけれどね。 ○事務局 若干補足をさせていただきたいのですが、今回、ES細胞も含めていこう、iPS細胞も含めて いこうということになると、すべての細胞が指針に入り得るので、細則で細かく規定するのはかなり 狭めてしまう。ですから、この細則というのは一度省いていただいて、広い範囲の細胞という形で整 理をしていこうと考えているところですが如何でしょうか。 ○澤委員 私もそのほうがいいようには思います。 ○中畑委員 広い組織幹細胞という、やはり、項目を変えてES細胞とiPS細胞というのも何らかの定 義付けをして、できればその対象の中に入った指針になればと思うのです。いまの文章のヒト幹細胞 ということでは、ES細胞にしてもヒトから採取された細胞と言えないことはないけれども、こういう 単純な表現ではいかないわけです。ES細胞の由来に関するある程度の定義を入れたようなES細胞、あ るいはこのiPS細胞もそれなりの定義を入れたiPS細胞、あるいはそのiPS細胞に由来する、組織幹細 胞とは言えませんけれども、それに近いような状況の細胞とか、何かその辺の定義をこれから作って いく必要があると思います。 ○永井委員長 iPS細胞由来の多分化能を持つ細胞とか、そういう記載は必要だろうということですね。 そもそもiPS細胞の定義もきちっと書いておいたほうがよろしいですね。それから、ESをどのように するかですね。これについてのご議論はいかがでしょうか。これまでは「ヒトES細胞及びこれに由来 する細胞を除く」と書いてあるのです。 ○位田委員 ES細胞のほうは文部科学省のES細胞の指針に一応の定義があるので、それをここに移し てそのままいけるかどうかという問題があると思うのですね。iPSは、いまのところ何も定義がないの です。それで、全部の幹細胞をカバーするような定義が本当にできるのかどうか、もしくはそういう ESとかiPSという言葉を言わないで全部をカバーして、かつ、この臨床研究の指針にフィットするよ うな定義ができるのかどうか、ということがまず問題だと思うのです。現行のヒト幹細胞の臨床研究 指針は、組織幹細胞に限定するということから出発していますから、ESとかiPSはもともと省いてい るのでこういう規定の仕方になっていると思うのです。ですから、今度定義をするときに、いままで の組織幹細胞プラスES細胞、もしくはES細胞由来の幹細胞、iPS細胞及びiPS由来の幹細胞という形 に3つを並べて定義をするというのも1つの手かなと思います。それを全部含めて1つの定義というの は科学的に本当に可能なのかというのは少し疑問なのです。それで、それがあっても細則を付けてお く必要がおそらくあるだろうと思うのです。違うものを省いていくという必要がどこかで出てくると すると、例えば免疫療法などの問題があったりしたときに、何が具体的に入って何が除かれるかとい うことをある程度はっきりさせるために、細則で「例えば××の幹細胞」というのを入れておくほう が理解としてはしやすいかなという気はします。 ○永井委員長 特にiPS細胞はいろいろな作り方があり、由来もさまざまですので、その辺はきちんと 定義しておいたほうがいいかもしれませんね、いかがでしょうか。これは事務局がいろいろな委員の 先生方とも情報交換をして、いま位田委員がおっしゃったように、3つぐらいに分けて記載して、少し 細則も付けておくというところが妥当のような気がしますが、ここはそういうことでよろしいでしょ うか。 ○梅澤委員 委員長にお願いです。ESまたはiPSの議論をすることによって、ヒト幹指針の見直しが 遅れるということだけは避けていただきたいというか、もしESとiPSで時間がかかるようであれば、 アドホック委員会等のほうで、ご議論いただければと思っております。よろしくお願いいたします。 ○山口委員 ESに関しては倫理的な問題、インフォームドコンセントの問題まで含めて、別の要素が かかわってくると思うのですが、iPSは作り方によっては倫理的な問題はあまり出てこないわけです。 例えば、遺伝子改変をした場合には、厚生科研費の遺伝子治療、要するに遺伝子改変された細胞を用 いた治療ということに入ってくると、そことの兼ね合いが出てくるだけではないかという気がするの です。いまはiPSの中では、iPSまで行かないでモディフィケーションした細胞もひょっとしたら使わ れるかもしれません。そうすると、境目が非常にグレーになってくると思うのです。だから、ESを除 く話とiPSというのを、ES・iPSとつなげて考えるのか、そこはあまりESとiPSを並列していいのか どうか少し疑問に思うのです。 ○梅澤委員 ES、iPSの議論は非常に難しいので、もし可能であれば体細胞の見直しができるように進 めていただければと私は思っております。その方向で可能であればよろしくお願いいたします。 ○町野委員 初歩的な質問で非常に恐縮なのですが、この定義の書き方は法令用語のそれに従って読 むとかなりわからないのです。普通は「又は」で切れると、その前とあとが完全に切れてしまう話な のです。だけど、おそらくは、あとのほうの「又はそれに類する能力を有する」「及びこれらに由来 する細胞」となっていますが、こういうものもヒト由来であることは必要なのでしょうね。ですから、 書き方として一列の文章で書くのではなくて、いくつか分かれていて、ヒト由来であることが前提で あって、という具合に段階を踏んで書くとわかりやすいのではないか。そして、そこから除かれるも のを次に持ってくるという話だと思いますけれども、そういう理解でよろしいのでしょうか。いまの 議論を聞いていると私はわからなくなってきたので、初歩的なことで失礼ですけれど。 ○事務局 この文章はなかなか難しくて、文章だけですといまおっしゃった通りでございます。 ○町野委員 とにかく、ヒト由来のものでなければいけないということですよね。それは全部にかか るという話ですね。 ○事務局 その通りです。 ○町野委員 そして、次にあるのは多分化能を有し、かつ自己複製能力を維持しているというような タイプが1つであって、これは「かつ」ですから両方なければいけないという話ですね。そして、その 次に「又は」と書いてあるのはヒト由来であって、このような能力があるということが確定されてい ないけれどもそれが疑われるものということですね。その次にまたあるのが「これらに由来する」と いうのは、どこが「これら」なのかよくわからない。ですから、順番を整理して書いていただくとわ かりやすくなるのかなと。私は読んでいて非常に混乱しています。前にこれを作ったときも私はいた のですが、今ごろ申し上げて恐縮ですが。 ○事務局 正直、私もこれは混乱しますので、是非とも、わかりやすいように見直しをお願いします。 ○永井委員長 確かに、これは全部が1つの文章になっている。なおかつ、「かつ」とか「又は」が中 に入っていますから、少しわかりにくいですね。これは、できたら文章をきっちり分けましょう。た だ、大事なことが落ちないように気をつけないといけないと思います。先ほどのiPS細胞の議論なので すが、いろいろな種類があって、新しい文献も出ていますけれども、その辺は整理がつくのでしょう か。中畑先生、いかがですか。 ○中畑委員 おそらく、先ほども少しありましたiPSというと、要するにESレベルまで戻して、そこ から分化させた細胞を使うことになるのですが、ここ1、2年で盛んになってきたのはiPSのいちばん 元まで戻さなくても、例えば膵臓の外分泌の細胞か内分泌の細胞に転換させる、しかも自己複製能を ある程度持ったような細胞を作り出していくという、あるいはこの皮膚の細胞からいきなり何かの神 経の幹細胞を作ってしまうというような、iPSを通さないで作るという研究もだいぶ盛んになってきま したので、その辺も含めて全体を。要するに分化した細胞を初期化して作成した多能性と自己複製能 を保有するような細胞とか何か、そういうiPSに限定しないで、その辺も含めたような内容にしたほう がいいのではないかと思います。高坂先生がいちばん全体を取り仕切っていますので、その辺も。 ○永井委員長 ESのほうはいいわけですね。これはある程度発生学的な言葉ですよね。iPSはテクニカ ルな意味がありますから、どういうテクニックで誘導したかによって随分違うと思うのです。 ○高坂委員 おっしゃるとおり、そういう意味での技術的な進歩というのは凄まじくて、当初のレト ロバイラスから今はただプラスミドを入れてやる、あるいは化学修飾でやるという方法も出てくるか もしれないのですが、それ自身はこの指針のところで問題にはならないと思うのです。  最近よく議論をしているのですが、そもそものいろいろな方法で樹立をしたiPS細胞が、指針で問題 になってくる安全性とどうかかわるかということをすごく心配していたのです。その樹立した細胞の その時点での安全性を我々は気にしなければいけないのか、あるいは最後まで分化させた分化細胞の 安全性を、きちんとリクワイアメントミニマムを要求してやれば済むのではないかという、そういう 意味で議論が分かれてきているのです。だから、そのiPSの定義であるとかをあまり議論するのは得策 ではないというか、どんどん変わりますから。一言で言うならば、とにかくゲノムのリプログラミン グですね。理想的には、ゲノムに傷をつけないというか、そういう意味で傷をつけないでリプログラ ムさせてしまう、それがiPSという定義でいいと思うのです。  それよりも、この指針では、当初からの安全性を議論するのか、あるいは分化細胞の安全性を議論 するのか、という現実的なところを見ていったほうが、この指針の見直しについてはよろしいのでは ないかという気がしています。  それから、今後の進め方について1点お願いしておきたいことは、今日も議論すべき点がいくつか書 いてあるのですが、少し末端的な議論があって、本来この指針の改正というのが検討に上がったのは、 臨床研究に関する倫理指針の全面改訂が昨年度あったと、それとの齟齬があるかどうかという点をま ずやっていく。その次に、1314号ですね、こういったヒトまたは動物由来性の影響を受けて製造され る医薬品、これの見直しを行う。これとの整合性はどうかという点です。もう1つは、3番目として、 ヒト胚性幹細胞等の臨床研究の取扱い。特に、ES細胞由来細胞を使うのか、iPS細胞由来細胞を使うの かということです。大きくこの3点があると思うのです。例えばいまのES細胞とかiPS細胞を除外し てということもありましたが、私はこの3つを早く議論をしなければいけないと思います。いまの臨床 研究に対するものの齟齬がないか、1314号の発令に伴う齟齬がないか、ES細胞を使うかiPS細胞を使 うかという論点を、きちんと分けて1つずつ解決していっていただかないと、随分時間がかかるのでは ないかと思って心配をしております。  というのは、iPS細胞の進展についても、実はもっと時間がかかるのではないかと思っていたのです が、意外と早く例えば網膜色素細胞を使った臨床研究がここ2、3年のうちに本当にやられる可能性が あるのです。これは、別に、冗談を言っているわけではなくて、そういう気運が本当に進捗状況にな ってきています。それはなぜかというと、例えば網膜色素細胞で言えば、その最終産物である分化細 胞は非常に安全性が担保されている。それはiPS細胞の樹立方法とは関係なく、安全性が担保されてい る。もし何かあったときにもそれのモニタリングが可能であると。私たちが非常に心配していた点に ついてかなりクリアされてきているので、あとは下手をすると機関の責任で臨床研究が行われる段階 に到達しつつあるのです。したがって、これは、我々としてはこの指針の改正というのは、周りがそ ういう環境が整ってきているのだということを踏まえて、もう少し早く論点整理をしてやっていく必 要があるのではないかと思いますので、今日の議論すべき点はこれでいいのですけれども、次回以降、 冒頭に申し上げた3点の論点に分けて一つひとつやっていただきたいと思います。希望します。 ○永井委員長 3点と言われるのは、安全性の問題ですか。 ○高坂委員 安全性というのは、要するに臨床研究の全面改訂に伴った齟齬があるかどうかという点 と、1314号ですね、自己と他家といった問題です。最後はESとiPSを取り上げるかどうかと。取り上 げる方向になっていると思うのですが、当然、iPSとESでは倫理性が違いますので、それは観点が違 ってくると思うのです。 ○永井委員長 安全性の問題ももちろんあるわけですね。高坂委員によく論点を整理していただきま したが、いかがでしょうか。いままでも少しずつは議論をしていると思うのですが、少し分散してし まうところがあるかと思いますが。 ○町野委員 私も非常に明確に理解してきたところがありますが、日本が指針を作るときのやり方と いうのは、特に厚生労働省とかいろいろなところの指針というのはモグラ叩き方式で、何か出てくる と上を叩くという感じでやっていますから、かなりいろいろなところの訳がわからなくなっているの です。やり方はそれでしょうがないのですが、いまのようなご議論で、とにかく安全性について何か やらなければいけないところはどの範囲かということが1つあるわけです。これは、ともすれば多分化 能を有するとか、それは1つの安全性について影響を持っていることなのですが、それ自体が倫理的に 問題があるという見方でやられることがありますので、おそらくそうではないだろうと思うのです。 だから、いまのような安全性ということで頭の中に置きながら議論をしてやっていって、その中にモ グラ叩きのような格好になるだろうという話だろうと思います。  あとは、薬事法との関係とか、そういうのは別の観点ですし、そこからどの範囲をこれから進めた ほうがいいかということでiPSとESの問題が出てくる。おそらく、そんなことではないかと思います。 いずれにせよ、これは定義のところからいちばん最初に入らざるを得ないところがありますから、そ の定義のところをどういう具合にするかということはいろいろ議論がありますが、いまのようなこと を頭の中に置いて定義規定を作るという話ではないかと思います。 ○山口委員 町野先生がおっしゃられるとおりで、今回は定義の話をして、次回以降は澤先生のその 1314号の引用部分とかは実質的な議論ができていくのだろうと思います。前に、1314号の改訂部分を 紹介させていただきましたが、2つあると思うのです。1つは、1314号が引用している部分がどう変わ っているか。そのことによってその書き方をどう変えたらいいか。もう1つの点は、最初のところで議 論になりましたが、臨床研究から有用なものが広く使われるのだったら薬事法に入っていかなければ いけない。そのときにスムーズにいける。この2点で考えていけばいいのかなと思います。 ○永井委員長 時間の関係で先に進ませていただきますが、ただいまの幹細胞の定義のところは事務 局からまた各委員のほうに意見をお聞きしていただいて、次回に文章として出していただけますか。 基本的にはiPSとかESということを含むわけですが、書き振りがかなり難しいような気もします。た だ、その辺は中畑先生、高坂先生に相談に乗っていただければと思います。そのことに関係してです が、禁止項目を定めるかどうかですが、これはいかがでしょうか。具体的に、ヒトES細胞及びこれに 由来する細胞を除くという文がありましたが、今回はES細胞については取り上げる方向だという議論 だと思います。 ○位田委員 ESの指針を改正して、クローン胚由来という言葉を使うのではなくて第1種・第2種と いう形で由来を分けたのですが、どちらも使用については特に区別をしていません。ただし、人クロ ーン胚を作成するという段階で、例の平成16年の総合科学技術会議の「ヒト胚の取扱いに関する基本 的考え方」の報告書の中で、人クローン胚を作ることができるのは他に治療法が存在しない難病に関 してのみという制限が加わっていますので、禁止するのではなくて、他に治療法がなくて幹細胞治療 をするという場合にはクローン胚由来のES細胞を使う。しかし、それ以外の、つまり他に治療法があ るという場合にはクローン胚を作ること自体ができないので、そこはもともと樹立のところで限制が かかっていますから、それをそのままここに入れればいいのだろうと思います。 ○永井委員長 それは文科省のガイドラインですか。 ○位田委員 参考資料の10ですが、総合科学技術会議の12頁です。3「人クローン胚の取扱いの検 討」の(2)で、例外的に人クローン胚の作成・利用が認められる研究の検討。「現在、他に治療法が存 在しない難病等に対するヒトES細胞」云々ということで、人クローン胚の作成・利用を認めるという 趣旨のものです。 ○町野委員 おっしゃるとおり。ここでの問題はそれではなくて、ES指針のほうは研究のためにこれ を作るということで制限をしているという話ですが、その制限の範囲内で作られたものを臨床に使っ ていいか、それを禁止するかどうかの問題ということでしょう。 ○事務局 いいえ、そっちのほうではないです。そちらのほうは解決されているものと思われます。 ○町野委員 要するに、使ってはいけないということで解決しているということですか。 ○事務局 これは、現実的に既にクローン胚ができたとして、それを使用することを可能にするかし ないかという内容です。 ○町野委員 すみません、ちょっとわからなかったのですが、どういうことですか。 ○事務局 インフォームドコンセントの問題ではなくて、科学的にこれを扱うことができるかという 議論が先と思います。 ○町野委員 私が聞いたのは、例えば第2種樹立か何かでクローン胚を作って、そこから研究して、例 えば神経とかそういう細胞を作るということは今はできるという話になっているわけですよね。ES指 針の改訂のほうでそのようになっていまして、ESと特定胚指針の改正を含めてそうなっている。だか ら、問題はこちらのほうでそれを臨床に使うことができるかという話ですよね。 ○事務局 それはできないということです。インフォームドコンセントで明らかに臨床使用という内 容がなければ。 ○町野委員 もしインフォームドコンセントの問題をクリアしたとして、これは臨床に使えますよと いうことでクローン胚を作って、クローン胚から何か細胞を作る、分化細胞を作って、それを臨床に 使うことができるかという問題ですね。 ○事務局 そうです。 ○町野委員 つまり、どの範囲の樹立ができるかと。どのような目的での樹立ができるかという問題 については、ES指針だとか、その前の科学技術庁の報告書が触れているところですけれども、その問 題をこちらで決めなければいけないという話ですね、簡単に言いますと。 ○事務局 そうです。 ○町野委員 それが、例えば括弧の中で人クローン胚由来ES細胞の移植を認めるかということになっ て出ている、そういう理解で進むということですか。 ○事務局 はい。 ○町野委員 私は、結論的に禁止規定は作ったほうがいいと思います。現在の段階で、禁止すべきだ と思います。現在のところ、もしそれをしたら意味がないと言うかどうかです。だから、そのご意見 があるかどうかということが非常に大きな問題だろうと思います。折角クローン胚研究というのをオ ープンにしたのに、当面の間これを臨床に使うのはよくないということにしてしまうかどうかという 話ですね。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○梅澤委員 禁止とすることに強く賛成します。 ○町野委員 どのような理由でしょうか、私としてはちょっと意外だったので。 ○梅澤委員 とりあえずは直近のことをまず議論しませんかということで、クローン胚については将 来の課題にするのはいかがでしょうか。 ○中内委員 私は全く逆で、必要がなければ禁止する必要はないと。まして、その先が見えていなか ったら研究もやる意欲が出てきません。すぐにはできなくても将来的に臨床に応用できるということ があるからこそ、クローン胚を作ろうという意見もあるわけですから、いまの段階で最初から全く道 を閉ざす、そういうことをわざわざ加える必要はないのではないかと私は思いますけれど。 ○位田委員 要するに、総合科学技術会議がいちばん上に傘としてかぶっていると思うのです。総合 科学技術会議としては、研究のためだけに他に治療法がない難病についてということではなくて、実 際にそれを使うということを念頭に置きながら議論をした結果、クローン胚由来のES細胞については、 他に治療法のない難病に関して使えるような、そういう研究のみを認めるという形だったと思うので す。この臨床研究指針の問題は、要するに安全性が担保できるかどうかという話なので、安全性が担 保できないのにやっていいとは誰も思わないでしょう。実際にこれを動かす場合には、どこかで安全 性が本当に担保できるかというのを、臨床研究の計画が出てきたときに当然審査をしますので、安全 性が担保されないのにクローン胚由来のES細胞が使われるということは、おそらくストップできる。  そうであるとすると、私は中内先生の意見には賛成ですけれども、もともと第2種樹立でクローン胚 を使っていいし、かつそこからのES細胞もいいのだということの延長線上でいくと、いま禁止をする ということの合理的な理由があまりないように思われます。安全性のところを担保できれば、臨床研 究の基準はクリアできるのです。安全性が担保できないのにクローン胚由来のES細胞を使えという意 味での「やっていい」という話ではありませんから、そこは別の基準でいけるのだろうと思うのです。 ○町野委員 もちろん、そのとおりだろうと思います。私が言おうとしたのは、これを臨床のほうに 使えるかどうかということについて、総合科学技術会議の報告書は何も言っていない。ここで決めな ければいけないという話です。ですから、ES細胞の樹立と研究については既に前から認められていた けれども、それを臨床に使うことについてはやらなかったわけですね。これを今度解禁しようという 話に次になっている。その先にもう1つ、クローン胚からのES細胞の臨床研究もやるかどうかという 話だろうと思います。  そのときに、もちろん安全性を考慮すればストップできますけれども、その前にすべて止めてしま おうかというのが禁止規定ですね。安全性を確認するまでもなく、今はやらないことにしようとして おくかどうかという問題です。これはかなり大きな問題だと思うので、私は、今はそこまでやらなく てもいいのではないかというので禁止規定だということを言ったのです。おそらく反対があるだろう、 中内先生辺りからはそうすぐに言われるだろうということを予測して申し上げたのです。梅澤先生の おっしゃられるのは、要するに、こういうことで時間を使うよりは、もうちょっと早くできる、そう いうことですから、動機がかなり違うという感じはしました。 ○永井委員長 でも一応議論しておかないと、将来にわたって、これがいろいろな制約になってもい けないと思うのです。それから、この総合科学技術会議の考え方は、一応そういう利用はあり得ると いうことの前提で書かれていまして、それとどういうふうに整合性をとるかということになるわけで す。 ○山口委員 クローン胚に関しては、安全性のハードルはさらに、かなり高くなっていくとは思うの です。それで、ハードルの高さはあるということを前提の上で、もし研究そのものを否定してしまえ ば、先ほど中内先生もおっしゃったように、そこで止まってしまう、そこのところに行けなくなって しまう、研究そのものがストップしてしまうような気がするのです。そういう意味で、将来について は、例えば安全性が担保されるまでという原則を付けて当面というのはあるかもしれませんが、将来 やれるような形も残しておくべきであろうと思います。 ○永井委員長 むしろ安全性という理由から、しばらくは見合わせようというご意見ですが。 ○山口委員 議論があるのかもしれませんけれども、そこは将来やれるという前提でやらないといけ ないと思います。 ○位田委員 私もいまの意見には大賛成です。将来何が起こるか分かりませんけれども、少なくとも 使える道を残しておくということは大事で、現時点で禁止するという必然性はないと思うのです。そ れから、いま安全性とおっしゃったけれども、クローン胚由来だから危険だというのは、どういう意 味があるのですか。 ○山口委員 いろいろな作り方がありますが、クローン胚の中にはいくつか。これは耳学問でしかな いのですが、例えばプライベートの卵の中に入れてやるというようなやり方もあるかもしれません。 その辺はいろいろな操作法によって違ってくるだろうと思うのですが。 ○位田委員 それはIPSの樹立法による危険性の違いと一緒の話であって、それはまたいつかご議論い ただこうと思っているのですが、分化細胞のレベルでやればいいのか、樹立した細胞の安全性を見れ ばいいのかというところに落ちつくと思うので、そのときに議論したらいいと思います。 ○澤委員 全体を考えると2つ。要するに、いまの時点でもう禁止しておいて、その時期が来たら今回 のように変えるか。それとも今、少なくともESやiPSを入れるという議論で進めている中で、人クロ ーンも同じような形で今回は禁止項目を作らないで、開発の状況を見ながら、もちろん安全性等は十 分確保された上で、最終的には認めていくような道を残す、いまの議論はそういう2つですね。私は後 者だと思っていまして、認めていく。あまり書かないで、むしろ全体を見ながら。もちろん将来的に、 最終的に申請があった時点でも議論は十分されると思っているので、そういう形で今回この見直しが あったのではないかと思っているのですが。 ○永井委員長 ほかに治療法がないということが1つ前提にありますね、安全性ということもあると思 うのですが。そうすると、人クローン胚由来のESを使うときに、iPSでの検討は十分にされたのかと いうような議論もあり得るということでしょうか。 ○町野委員 私はその議論で結構だと思います。確認いたしますと、次の表にありますね。もしクロ ーン胚由来のES細胞の禁止ということを設けないということになると、このルートに全部載る。許可 するかどうかは厚生労働大臣のところのそれで決まる。そういう対象を最初から広げておくかという 問題ですね。  それはそれで結構だと思うのですが、先ほどのように申し上げたのは、いまの議論の仕方としては いくつかあって。要するに、クローン胚を作るということについてもあれだけの議論があった。だか ら、そのときにこれをどんどんやるということでいいのかと。まず研究のところでやっておいて、も しかしたらこれは実用になるというところで、そちらの道を開くということも1つの選択肢ではないだ ろうかと。生殖細胞から胚を作るということについて、一応やらないということにしたのは、いまの ような考え方なのです。そういうやり方のほうが賢明なのか、あるいは皆様方がおっしゃるような、 要するに道は最初から広く開いておいたほうがいいという考え方を採るということになると、ある意 味でいままでの議論とはかなり違うので、私は実はそれが非常に好きなのですが、それで結構なのか という話です。 ○永井委員長 いかがですか。 ○町野委員 もしそうしても、あまり遅れることはないと思います。 ○中内委員 私は、生殖医療でも今のやり方に全く反対なのです。研究とか医療の産業化というのは インセンティブが非常に大事であって、あまり先が見えていない段階で本当にそういった研究を始め るか。生殖医療で言えば、本当に精子であるかということを受精させることによって証明できない状 況で、そういった研究に優れた研究者がいっぱい入り込んでくるかというと、それはきっと入り込ん でこないのではないかというのが私の考えです。逆にビジネスで言えば、将来的に特許が取れないよ うな状況でそういった研究に企業が参入するかというと、きっとそういうことはないと思いますので、 できるかできないかは分からないけれども、とにかく道は開けておいてチャレンジしていただく。そ ういうほうがきっと将来性はあるのではないかと思います。 ○永井委員長 特にiPSとの関係がありますので、すぐに研究者がそちらへみんな走っていくというこ とは、今の時点ではないように思うのですが、中畑委員、いかがでしょうか。 ○中畑委員 特にクローンで作ったES細胞を特別扱いして禁止するとかということは、理論的に考え てもないのではないか。もし唯一あるとすれば、そのクローンを作ることに伴う安全性が非常に損な われている可能性があるというような、安全性にかかわる問題があるとすれば、それは今の時点では ストップする必要があると思いますけれども、いまのところ、そういうことではっきりしたものがな いとすれば、特にそれを特別禁止してスタートするということはあり得ないのではないかと、私自身 は考えています。  むしろES細胞を日本でも実際に医療に使うというところの合意が得られれば、ES細胞に伴ういろい ろな問題、特に倫理的な問題というのはあるわけですので、それにプラスしてクローン胚というとこ ろ、そこの違いというのはそれほど大きな問題ではないと思います。全体としては、安全性をどう担 保するかという議論の中で解決できることではないかと思います。 ○永井委員長 そうすると、安全性を十分に担保するということが前提になると言っているのだから、 禁止項目としてあえて書かない。町野委員、そういうことでよろしいですか。 ○町野委員 はい。 ○位田委員 先ほど高坂委員のおっしゃった3つ目の、ES・iPSを入れるかという話なのですが。おそ らくESについてはその由来が技術的にははっきり分かっている、iPSについてはいろいろな由来から iPSが出来ると思うのです。そういうことになると、ES・iPを入れるかというときに、両方一緒に入れ て議論をするのか、まずESについて議論して次にiPSについて議論をするという形にするのか。これ は議論の仕方だけの話なのですが、区別したほうがいいのか、しないほうがいいのか。その辺は、科 学的にはいかがなのでしょうか。 ○高坂委員 おそらく安全性から言うと、ESのほうが若干クリアするのが易しいのではないかという 気がしています。ただ、それは先ほど言いましたように、樹立法はどんどん変わってきていますし、 またiPSも間もなくESとかなり同等のものが出てくる可能性が高いわけです。したがって、そういう 意味では同列に議論していっていいのではないかと思うのですが、これはインフォームドコンセント のところで若干それぞれが独特なものを持っていますので、最終的には1つにしたいのですが、議論と しては分けていったほうがいいと思います、いまのは倫理性の問題のところでの話ですが。 ○永井委員長 そういうことでよろしいでしょうか。 ○事務局 すみません、1つだけよろしいでしょうか。ES・iPSについて議論が少し戻っているところ もあると思いますので、説明いたしたいと思うのです。基本的にはES・iPSをこういった研究に入れて いくということは、もうご了解を得ている。ES・iPSの違いについて既に議論をされていて、特にiPS については、安全性についてESとは格段に違うという議論もされていて、それをどのように担保して いくかというのを、前々回の委員会の中で項目を定めていただいたので、それを指針に入れていきま しょうという結論になっております。  問題点であるところは、先ほどの倫理の問題がまだ残っているのと、樹立に伴う安全性の問題がま だ残っている。そういったところにつきましては別にワーキングショップを、皆様方も加えた上で開 いて、そちらのほうで集中的に議論をしていくという整理をしております。  今回はクローンのお話が出たのですが、クローンESについての安全性というのをいままでに議論し たことが全然ない。お話をしたことがないのに入れる、入れないというのを議論するのはちょっと強 引なこともありました。特に樹立の安全性が問題だというふうなことをおっしゃいましたので、樹立 のところでプレゼンとか、参考人を呼んでいただいて説明をした上でさらに深く議論をしていくよう に考えておりますが、いかがでしょうか。今回禁止はとりあえずしないという皆さんのご意見は、も ちろんそのとおりでございます。 ○永井委員長 参考人から意見を聞くということでよろしいでしょうか。またどなたかプレゼンして いただくということですね。  次へまいります。資料2の2の4「厚生労働大臣の意見について」(第2章第2の1の(2))。「新規 のヒト幹細胞、移植又は投与方法、疾患、等に該当する時に限り審査するか」、これはどういう意図 だったのでしょうか。事務局からご説明いただけますか。 ○事務局 資料3の裏側を見ていただきたいのですが、現行の審査がどうなっているかというのを簡単 に説明させていただきます。研究責任者が研究を立ち上げた内容を「研究計画書」という形で研究機 関の長に提出して、その研究内容が所属の倫理審査委員会で第一段階審査をされる。そこで了承され たものを厚生労働大臣に申請が上がってくる。厚生労働省ではその新規性の判断をして、(1)(2)(3)とあ りますが、新規のヒト幹細胞又は移植若しくは投与方法を用いているか、または新規の疾患を対象と しているか、その他厚生労働大臣が必要と認めているか、といったものに関して審査を行っている。 審査の形態は下のほうに書いてありますが、部会や審査委員会を経て最終的に了承されるという形態 になっております。  特に議論をいただきたいのは、新規性の判断をされる対象となる(1)(2)(3)というものに限り審査をし て継続していくというので、実際によろしいかどうかということです。現行の審査としましては、全 く新規のものというわけではなくて、プロトコール自体が新しいとか、施設基準が新しいといったも のも(3)に含めて行っているという経緯がございます。ですので、これをそのまま出して、審査が必要 ないというような誤解を与え得るのではないかという懸念が若干ありますので、ここで提示しており ます。 ○永井委員長 これは指針の17頁の下、「厚生労働大臣の意見等」というところです。(1)(2)(3)、この 体制をどうするか。新規のときだけに限って審査をするかどうかですが、これはいかがでしょうか。 いままでに何か問題があったことはありますか。 ○事務局 臨床研究または治験で言いますと、いちばん多いのは、フェーズI、フェーズII、フェー ズIIIといったような段階があると思うのですが、例えば安全性を見る次の段階。有効性を見るフェー ズIIでは既にヒトに投与されている、疾患も同じく投与されているものがフェーズIIの段階として臨 床研究が行われる。そういったものも審査を今は行っていることになります。ですから、文字どおり いくと、これは審査の必要がないのではないかという誤解を研究者に与えかねないということです。 全く新規の細胞や新規の疾患でなくても、審査を現実にしているというところが現状であることも、 指針の中に含めていただきたいという点です。 ○山口委員 初期投与は安全性だけ確認するので、例えば10^5投与する。しかも、このルートでしか やりません。それで一応安全性は確認できましたと。その後、投与量を増大させていって、例えば 10^7まで投与して、その治療効果を見るという段階になったら、もう一度審査をしようということに しているわけです。その現状はそれでいいのだろうと思うのです。  もう1つ全然違うケースとして、全く同じプロトコールを複数の研究機関で同時に申請する、まあ、 ずれて申請してくるのですが。その場合に、それぞれが新規で、施設が違うだけ、中身のプロトコー ルは全く一緒のときに新規と考えるべきかどうかというのは少しく違うような気がしてきていて、そ れはひょっとしたら新規でないという整理もできるのではないかと思うのです。例えば施設の倫理委 員会の問題とか、その辺がちょっとあると思うのですが、ある意味では、そこは事務局審査でもいい のかなという気がしております。 ○永井委員長 ただ、まだ有効性が明らかでないときは。規模を拡大したとか。 ○山口委員 はい、投与量をものすごく増大させるとか。 ○永井委員長 そういうときは審査の対象になる。だから、かなり普及してきた場合はよいのではな いかと。 ○事務局 どのぐらいの段階が普及という認識が一般的か、というところもご意見をいただけたらと 思います。もちろん、薬事承認されているとか保険収載されているものが入ることは当然ありません。 例えば、先進医療程度、高度医療の段階もあります。ですから、どのぐらいの段階まで審査をすべき か、どのぐらいの段階で審査は必要ないだろうという判断をすべきか、というところを詳しく明示し たほうがいいのか、それとも現行でいいのかといったところのご意見をいただければと思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。最低限有効性が確立していないといけないと思うのです。いまま での幹細胞研究でも、必ずしもそういうところまでいっていないのが現実ですので、それでプロトコ ールがどんどん変わっていく段階であれば、これはやはり審査が必要だと。ですから、まず条件とし ては有効性の確立、その上で、さらに必要かどうかです。もうプロトコールが確立していて有効性が 確立しているような場合には、規模にかかわらず、いいような気もしますが、いかがでしょうか。 ○山口委員 それはケース・バイ・ケースになるような気もするのです。確立したというのが、例え ば薬事法上のクロスオーバー試験をやって有効性がきちんと担保されているとか、そういうデータも。 ここでやれるのかどうかという問題を含めてですが、そういうことになれば、十分確立されていると 言えると思います。臨床の先生方にご意見をいただきたいのですが。 ○位田委員 科学的なところはよく分かりませんが、いまのやり方は、プロトコールが全く同じであ れば、最初にそれが承認されれば、あとから続いてくるプロトコールは厚生労働大臣の意見は必要で はない。ただ、ちょっとでも違うところがあれば、そこの部分は新規だということで、ずっと審査を してきている。それがある程度パターン化したようなプロトコールでいけるということになれば、そ れは確立した、もしくは有効性が担保されたという形になる。そういうふうに考えると現状では、ほ とんどの体性幹細胞の臨床研究は審査の対象になる可能性があると考えざるを得ないのではないでし ょうか。  そうすると、これが本当に新規かどうかというのは、ある程度事務局と話をしていただいて「いま までもこれと全く同じことはやっているから、これは要りませんよ」という判断をするか、投与方法 にしろ投与量にしろ、いままでのではない何か新しいポイントがあれば、「やっぱりそこは新規です よ」ということで審査委員会に持ってきていただくということで、まさにケース・バイ・ケースで判 断するしかないのではないでしょうか。新規性というのは置いておかざるを得ないですね。 ○永井委員長 そうすると、あえて17頁の第2「厚生労働大臣の意見等」というところは変える必要 はないということでしょうか。あるいは「新規」という言葉をもっと強くするかどうか。 ○位田委員 条文の書き方として「研究計画に何らかの新規な要素がある場合には」という言い方で、 全部カバーできるとは思うのですが。 ○高坂委員 要するに、新規性あり・新規性なしの違いというのは事務局が判断されるのでしょうが、 結局ヒト幹に関する審査委員会にかかるかどうかという違いですね。そのあと厚生労働大臣に行くの は同じことですから。事務の段階で新規性あり・新規性なしというものを現実に判断しているのでし ょうか。それともすべてを、いまのところは審査会のほうに落としているのでしょうか。 ○事務局 現状では申請が来たときに、もちろん私では判断ができませんので、審査委員会の委員の 先生皆様に配布して、新規であるかどうかという評価をしていただいた上で、新規であるという評価 が出たら審査をしていただくということです。 ○高坂委員 であれば、いちばん簡単なのは、ESの基礎研究の場合もそうなのですが、一応、倫理審 査委員会の委員に送っておいて、全員が「これは新規性がない、いいですよ」というのはそのまま通 せばいいし、1人か2人でも「これはこういう点が新規だから、やはり全体でやったほうがいいよ」と いうときにはやって、それで結果を厚生科学審議会に諮る、そして更に厚生労働大臣にと、そういう システムを作れば済む話ではないでしょうか。 ○永井委員長 そうですね、現実にはそうやって運用しているのです。 ○高坂委員 ですから、この文章を特に変える必要はないと思います。 ○永井委員長 この書き振りだと、まず新規性あり・なしで分けて委員会にかけられるのですが、現 実にはもう少しフレキシブルな対応をしていると思うので、その辺の書き振りで対応されたらいかが でしょうか。今やっているような方向でいいのだろうと思いますが、よろしいでしょうか。  では次にまいります。「研究体制について」。これは資料3の裏側の右の絵、ガイドラインでは第2 章の第1、5頁になります。この辺の論点について、事務局で説明していただけますか。 ○事務局 これは確認事項になるため、ご了解をいただければと思います。いままでのヒト幹の臨床 研究では、ほとんどが1施設で閉じられている。ほかの施設でやる場合は、研究責任者等がそれぞれの 細胞をほかの施設に持っていって、そこで調製をし、それを自分でまた持っていって被験者に投与す るという形になっています。ですから、研究機関は2つであっても、場所を借りて調製を行っていると いうだけのものが認められておりました。ですが、研究を拡大していくという内容から、徐々に枠を 広げていく必要があろうということで、複数の研究機関を用いて臨床研究を行っていくことも考えな ければいけないという状況になってきております。  そこでこの図を見ていただきますと、A研究機関とB研究機関というのがあります。現行のヒト幹指 針の中のそのままの文字でいきますと、1つの臨床研究の内容に研究責任者が1人と書いておりますが、 研究責任者は、もし複数の機関でやる場合にはそれぞれの施設に1人ずつは必要であろう、というふう に書き換えたほうがよかろうということでこの図を書いております。  そこで確認したいのは、申請を実際に出すというときには、研究責任者が研究機関の長に提出した ものが出てきますが、このままいくと、A機関とB機関、両方から出てくるような形になりかねないの で、実際にこれは1カ所から、A期間の研究責任者、主任研究者とか総括責任者の名前を書いて、そち らのほうから申請書を大臣に提出していただく形にするべきか、それとも、A機関とB機関それぞれか ら全部申請を出していただいたほうがいいのか。1カ所から出るか、2カ所から申請が出るかというと ころについて、ご意見をいただきたいと思います。 ○永井委員長 これは例の枠組み検討会で議論しているところですね。医療機関と調製機関が別の場 合に、調製機関側も一緒の研究として行うという体制で考えている。そうすると、調製機関側にも研 究責任者というものがあっていいだろう。1プロジェクトに1人の研究代表者ではなくて、医療機関側 と調製機関側それぞれに人を立てる。そしてまた、全体を統括する代表者が必要だと、そういうこと ですね。 ○位田委員 これは前に指針を作ったときに議論になったのですが、こういう形だと、臨床研究指針 ではなくて、薬事法の範囲に入るという話で説明を受けていたと思うのです。この臨床研究指針は、 先ほど事務局がご説明になったように、研究者が自分で向こうへ行って調製して持って帰るのだった ら薬事法に引っかからないので、できますよ。そして、別々になった場合には薬事法に引っかかるの で、それは薬事法で判断しますと、そういう話だと思うのです。今のこの形だと、薬事法ではなくて、 臨床研究指針で2つの機関を1つの研究計画としてやっていいのかという問題ですよね。それは我々が いいと言っても、薬事法のほうで駄目だと言われる可能性はあるのではないでしょうか。そこはどう なのでしょうか。 ○事務局 私は前回の議事録も読ませていただきましたが、かなり曖昧な表現をしているところがご ざいまして、なかなかはっきりとは解釈できないようです。どのような表現がされたかというと、複 数の機関で研究を行う場合には薬事法に抵触され得ると説明されました。そこで、絶対大丈夫だとい う例を委員会の中で述べて、それが現行の指針に入ったと。それにしたがっているときは絶対に大丈 夫ですという例を現行の指針に示しています。ちょっと微妙なものは個々に判断をしますということ でまとめていました。そして、今度実際に運用してきて、複数の機関で研究を行う時には薬事法に抵 触し得るけれども、実際には個々の評価で大丈夫であるという見解が出されている例があります。 ○永井委員長 つまり、医療の一環として行う場合には、調製機関が別であってもいいのだ、かつ研 究の一環であるという理解だったと思いますが。 ○澤委員 その流れの中でいま永井委員長がもう1つの委員会、枠組みの委員会をされていて、そこで この議論をされていますので、整合性という意味では、両方の機関が責任者を持って統合する。そし て倫理委員会同士もお互いにコンセンサスを得合う。それが臨床研究の基本だろうという話で進んで いますので、そことの整合性をとっていただいたら、それでクリアではないかと思います。経緯でこ うなってきているということですので。 ○高坂委員 薬事法との関係はどうなるのですか。 ○澤委員 それは必ず薬事法というわけではなくて、その話を詰めながら体制を整えようと、そうい うコンセンサスでやっているのです。これは絶対に薬事法でアウトとかという話ではないのです。診 療の一環であれば、そういう形であれば今はいい。そして、薬事法云々は、来年度にその枠組みを委 員会で検討しようという話です。 ○永井委員長 共同の診療みたいな位置づけだということですね。 ○澤委員 そうです。だから、臨床研究としての診療行為として。薬事法がかかる・かからないとい うのは解釈の仕方で、あり得るという話だったのです。それならば、あり得るのだったらやめておこ うという感じで、医療機関の人が行った場合だけいけるだろうという、いちばんの安全策をとって話 をしたのです。 ○永井委員長 Bが、調製機関が業としてやっている場合には薬事法になる、そういうことで整理して いるところなのです。 ○町野委員 これは非常に初歩的で恥ずかしいのですけれども、診療行為の一環であるから薬事法の 適用がないという理屈は、法的にはおそらくあり得ない議論ですね。したがって、普通は中で調剤す るのに、外に調剤に出す。それで薬事法の適用が生ずるかどうかということは、反復継続といいます か、一般的にそれが使われるようになって危険性が外に伝播するということなのであって、中でやっ ているときは、当該の患者にしかやらないだろうということでそうだったのです。中でやったとして も、仮にこれからずっと同じことをやるということになると、理屈としては同じ問題が生ずる。だか ら、外へ出るということは、反復継続性が高い。先ほどの表現で「業としてやっている」と言われま したが、それは反復継続性というのが法律の文言上の表現として「業」という言葉になっているから です。そう考えますと、外でやったからといって直ちに薬事法の適用が形式的にガチャンとあるわけ ではない。それを先ほどケース・バイ・ケースと言って、どの範囲でそれが広範にやられるかという ことにかかっている、そういうことですね。 ○澤委員 そういうことです。臨床研究として症例数がまだそんなに多くない範囲で「業」というの かどうかという話で、いま枠組みの委員会が進んでいますけれども、これから症例数が増えたりして いくという段階は次の段階で、薬事法に関係してくるという話で、2年間で段階を追って議論をしてい ます。そことの整合性がないと、これは逆におかしいと私は思います。 ○永井委員長 ということでよろしいでしょうか。 ○位田委員 私がお尋ねしました施設基準とこちらの指針と、どちらが先で、どちらが後かというの は議論の仕方がよく分からないのですが。今の薬事法をどう解釈するかという形で処理する。枠組み の委員会ではそういう形で進んでいるので、それでけりがつけば、それをこちらに持ってくればいい。 それはおっしゃるとおりだと思いました。 ○澤委員 そうでないと整合性が立たないので。 ○永井委員長 「その他」ですが、「データベース登録による情報の公開を求めるか」「提供者や被 験者に対する補償を義務化するか」「提供者の同意撤回ができる時期の制限は必要か」、この3点につ いてご意見を伺いたいと思います。データベース登録の情報公開は参考資料15頁の上から4行目、第 2章第1の4の(11)です。「実施計画書等の公開」。研究機関の長は、実施計画書及びヒト幹細胞臨床 研究の成果を公開するよう努めるものとする。いま特にデータベースがあるわけではないので、デー タベースを作ろうという動きがあるわけですか。 ○事務局 これは既にデータベースがございます。詳細が「臨床研究に関する倫理指針」の中で定義 がされております。 ○永井委員長 それに従って、こちらも登録する。それは当然ということでいいですね。これはあま り議論がないと思いますので、これはそのままでいいですね。むしろ、その次の補償の義務化という のが結構議論のあるところではないかと思います。これは19頁のいちばん上、第3章第1の3(7)です。 ○高坂委員 これも臨床研究指針の改正に伴って、もう向こうで明文化されているのです。だから、 その下にこれがぶら下がるといいますか臨床研究指針に従う義務がありますので、これは文章として 書く必要はあります。 ○永井委員長 内容はこの程度でいいという、もう少し細かく踏み込みこんだ御意見はいかがでしょ うか。 ○高坂委員 はい。ただ、例外規定を設けるか等の考慮は必要かもしれません。 ○山口委員 細胞治療、再生医療の臨床研究の補償について、甲斐班でしたか、で一応議論をさせて いただいたのです。そのときに保険会社の人にも来ていただいて、対応できるかどうかと。要するに、 いわゆる補償とまではいかない。ちょっと違う意味があって金銭的な補償をする場合ということで保 険会社が適用できるかといったら、ほとんどの保険会社は、これだけ新規のものについて、保険会社 は対応できないというのが結論だったと思うのです。ただ、過失はまた別として、無過失で有害事象 が起きたときの話は、例えば大学の中とか病院で治療を提供するとか、そういうことが1つの対応であ るのかなという気がするのです。たぶん金銭的なものはほとんど無理、保険そのものが効かないこと になると思います。 ○佐藤委員 この点なのですが、1つは「臨床研究に関する倫理指針」のほうで、保険商品等の購入を 含む補償の措置が必要なものというのが「医薬品・医療機器を用いた介入研究」と限定されているの で、果たしてヒト幹細胞を用いた臨床研究というのが医薬品若しくは医療機器を用いた介入研究に当 たるのかどうか、という議論がまず1つ形式的にはあり得ると思うのです。  もう1つは、「臨床研究に関する倫理指針」のほうで、どうして補償が必要となったかという議論を 少し見ておかないといけないのかなと思うのです。これも前のことになってしまいましたので私も記 憶があまり定かでないところもあるのですが、基本的に私が念頭に置いていたのは、医療機器や医薬 品あるいは技術というものが一般に用いられるようになる過程で、たまたま1人の患者さんあるいは被 験者さんに不利益が生じてしまったら、それはみんなで補償していこうということが、少なくとも私 の中では大きかったという認識です。では幹細胞の場合はどうかというと、むしろこれはもちろん技 術を確立していくということもあるのですが、メインとしてはその患者さんの治療のためにという性 質が強いので、この場合には必ずしも補償が必要ないのではないかという気もする、ということがコ メントです。 ○永井委員長 現実に可能かということもあるのですね。 ○佐藤委員 例えば抗がん剤を用いた比較臨床試験をやろうとすると、これは保険商品が組めないと いう話があるわけです。幹細胞の場合も同じように、あらかじめのリスク計算が難しいとなると、保 険会社としても、いくらの保険料を設定したらいいか分からないという問題が出そうですね。 ○永井委員長 ここでは義務化するかどうかが論点なわけです。状況を説明するということは当然必 要ですが、補償の義務化というところまでだと少し書きすぎだというご意見でしょうか。 ○佐藤委員 例えば「可能な限り治療を行う」というようにインフォームドコンセントに書くのであ れば、それを記載しておいてほしい。 ○永井委員長 そうですね。これも状況が見えてくると保険も可能になってくるのだと思うのです。 いまの時点ではほとんど例がないので難しいのですが、大体の成功率だとか合併症等が見えてくれば、 その時点でもう一度、補償の義務の問題を議論すればいいように思いますが、そういうことでよろし いですか。 ○町野委員 先ほど佐藤さんが言われたのは、「臨床研究に関する倫理指針」のどこの条文ですか。 私は、義務化だけの問題ではないように思いますので、どのような範囲でやらなければいけないのか と。しかし、現在の「臨床研究に関する倫理指針」よりも基準を下げるわけにはいかないという話で すね。ですから、これがどうなっているかということとすり合わせて決めていかなければいけない。 ある場合には義務化する場面も出てくるだろうと、全部をするかどうかはこちらとの関係が出てきま すので。どこの頁にあるのか、それが見つからないという非常に情けない話です。 ○佐藤委員 ごめんなさい。参考資料2の8頁の「研究責任者の責務等」の中の細則のチで、第1の 3(1)(1)が医薬品・医療機器を用いた介入研究になっていたと思うのです。そして、ここの場合には 「保険等必要な措置」をとらなければならない。それ以外の場合には、補償の有無については説明す るようにという形です。私も、こちらのほうだけを緩くということはできないと思うのですが、それ は研究の性質等を考えた上で、違った取扱いということも許される余地はあるだろうと考えました。 ○町野委員 あの書き方で、この範囲だけは義務ですね。 ○佐藤委員 そうです。 ○町野委員 だから「義務」の範囲のものに倣うかどうか。先ほどおっしゃられたとおり、医薬品と か医療機器を使った場合に当たるかどうかはかなり疑問なので、どうするかという話ですね。 ○佐藤委員 そうですね。まず、一般に誤解があるのは、必ず保険と言われているのは誤解です。 「保険その他」と書いてありますので、保険以外の補償の方法もありだということです。それと先ほ どお話が出ましたように、補償というのは必ずしも金銭的な補償に限られずに、現物給付として医療 給付をするということもあり得るという理解であったと思います。 ○位田委員 細かな話ですが、先ほどの話は「医薬品だけ」ではなくて「医薬品」、英語でいえば “Medical and pharmaceutical products”ですね。幹細胞は“medical products”に当然入るのだろ うと私は理解していますが。 ○佐藤委員 難しいですね。“drug”と“medical devices”の2つかなと思っていたのですが。もう 1つ、ヒト幹細胞を用いる臨床研究が薬事法の対象にならないとなると、薬事法でいう医薬品ではない というのをどう考えたらいいか、細胞由来のものというのをどう考えたらいいのかというのがよく分 からないということがあります。 ○位田委員 「臨床研究に関する倫理指針」で、補償については保険でないといけないとは私も思い ませんが、補償の義務はあるという前提で、それに対する例外を仮にここで認めるなり規定するとす れば、なぜそうなのか、その場合にはどのようにするのかということは明らかにしておかないと、例 外としては認めにくいと思いますね。 ○永井委員長 一応同じ書き振りにしておいて、現実的に「等」のところで対応していただくという ことのように思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。 ○事務局 参考資料3の最後に表がございまして、こちらのほうがクリアになるかと思います。「臨床 研究に関する倫理指針」はかなり広いものですので、介入研究と観察研究に分かれます。介入研究に もいろいろあるのですが、一部として、いちばん上に、医薬品・医療機器を用いる介入研究に関して は、補償のための措置が必要であるということが明記されています。また、医薬品・医療機器を用い ないものは、補償の有無をしっかり書いてくださいとなっております。ヒト幹細胞を用いる臨床研究 がどこと横並びになるかはご検討いただきたいと思いますが、そういった補償をどうすべきかという ところが1つあります。  あとは、補償を義務化するという意見が多いと思いますが、その場合に、どこまでの補償が必要で あろうか。これは保険商品で、保険会社がやらなければいけないかどうか。いまのところはできない のですが、将来的に出来るかもしれませんので、どこまでの補償が必要であるかと。もちろん保険に もいろいろあると思いますが、医療費、医療手当、補償金を払うといった形がございます。あとは現 物の医療給付ということもありまして、その辺はどのぐらいまでやるべきであろうかという二段階で 今日ご意見をいただきたいのです。結論が出るとは思いませんが、皆さん、なるべくご意見をお願い いたします。 ○永井委員長 補償のための措置は求められている。介入の医薬品・医療機器に準ずる細胞治療なの で、やはり措置は必要であろう。単に説明しただけでは駄目だ。しかし、現実には保険は難しいだろ うということになると、保険と医療の現物給付、あるいは病院それぞれで対応していただく。ただ、 そこを明確に記載できるか、どこまでするかということがあります。いかがですか。 ○位田委員 実際に保険をかけることができるかどうかというのは、保険会社の判断なのです。要す るに、リスクをどの程度と考えて、どのぐらいの保険料でどの程度の保険金を払うか、そこの計算だ と思うのです。現状ではあまりよく分からないから、保険会社としてはおそらく引き受けたくないと 思うのです。だからできないと言うのは、保険会社としては当たり前の反応です。しかし、もしこれ が義務化されて、いろいろなニーズがあれば、保険会社としては、ある程度対応しないといけなくな るのだろうと思うのです。  若干乱暴な議論をして申し訳ないのですが、そういう意味で言えば、保険会社ができないから保険 がかけられないという話では本来ないのだろうと思うのです。かなり高いリスクを計算して、保険会 社が非常に高い保険料で保険金を設定して、というのは可能性としてはあり得ると思います。保険会 社としては損をしないように計算するわけですから。ですから、理論的に保険がかけられないという 話ではなくて、実際上保険会社としてはそれはやりたくない、私はそちらのほうだろうと現実には思 っているのです。 ○中内委員 患者さんの保護とか権利ということを考えると、補償をしてあげるというのは当然だと 思うのです。しかし、もし一方でハードルをすごく高くすると、むしろ臨床研究自体が進まなくなっ てしまって、患者さんのベネフィットが無くなってしまうわけですので、そこの判断をどうするかと いうところがすごく難しいところではないでしょうか。 ○位田委員 逆に、どういう副作用とか有害事象が生じ得るかということがある程度予想できれば分 かりやすいかなと思うのですが、まだそこまでよく分からないわけですか。 ○中内委員 臨床研究指針に書いてあることは義務化されているわけです。しかし、いま先生がおっ しゃっておられるように、比較的もう予測がつくものに関してはある程度できると思いますが、本当 の先端医療になってくると非常に難しいと思いますし、患者さんのほうもある程度のリスクを了解し てくれると思いますので。義務化というのはなかなか難しいかな。 ○永井委員長 規定ぐらいにしておくかですね。 ○高坂委員 先ほどの町野委員の発言ですが、この臨床研究指針に書かれていることよりもハードル を下げるというのは、いかがなものかなという議論もあるかと思うのです。これをもう一遍見直して みると、義務とは書いてないのですね、臨床研究指針も。しかも「補償のための保険等必要な措置」 と書いてあるだけで。私は現時点においてはここの文章で汎用しておけばよろしいかなと思います。 ○永井委員長 そのままでいいのではないかということですね。 ○澤委員 私もいまの話に賛成です。この議論は臨床現場ではかなり消化されていまして。倫理指針 が出てきて、一時、本当に保険に入らないといけないかということがかなり議論になって、保険会社 に問い合わせたらとてつもない額、計算できないと。アウトオブオーダーという感じになってしまっ た。ですからその辺りは個々に応じてICの問い方、例えば学内で私たちは逆にそういう委員会を設け て、そこにかけてそこでコンセンサスを得てとか、いろいろなやり方をたぶん工夫していると思うの です。全部の大学がものすごい、とてつもない保険に入れないので、その辺りはリーズナブルに。確 かに臨床研究のフェーズ、フェーズで変わってくる、たぶん保険の値段も変わってくるので、この文 章のままで素直にいけば、この議論は大体落ち着いてきているのかなと思っているのです。 ○永井委員長 ということでよろしいでしょうか。臨床研究ガイドラインの記載にしたがうというこ とで。 ○町野委員 先ほど義務ではないということですが、書き方を見ると確かにこれはよくわからないで すよね。何かの措置をとって、そのことを書かなければいけない、その措置についてはというような 書き方になっているから。これを作ったときは、必ず措置をとらなければいけないということになっ ているのでしょうか。とるときは書けというだけの話ですか。そこが1つ。もう1つは、このときに問 題になるのは事務局が整理してくれたとおり、当該臨床研究の対象者である患者さんばかりではなく て、その幹細胞の提供者のほうにも補償が入っています。もちろんガイドラインの意味では前のほう、 提供者のほうも臨床研究の対象になりますが、その2つはかなり性質が違うだろうと思うのです。いま 議論されているのはあとのほうの、あとと言いますか、患者さんに使ったときの話ですよね。前のほ うについてはおそらく臨床研究の倫理指針と同じ考えでいけるのではないかと思いますが、あとのほ うについては議論があるということはよくわかります。  とにかくスタートのところで、義務化はしていないということでよろしいのですか、臨床研究の倫 理指針というのは。読むとよくわからないので、これを作られた責任者は誰ですかという話ですが、 佐藤委員がもしそうなら。 ○佐藤委員 いや、責任は全く。確かにここは、研究責任者がプロトコールに書けという中身なので、 被験者に対する義務というのはおそらく13頁のほうで出てくるだけではないかと思います。13頁の3 「臨床研究機関の長の責務等」の(2)でしょうか。実質的にここで、きちんと「適切に講じられること を確保しなければならない」となっているし。プロトコールに書けというのは義務だが、実際に提供 しなくていいというのはやはりちょっと詭弁で、やはりそれは、被験者に提供しなければいけないと いう趣旨だろうと思います。  私は、臨床研究指針と合わせて、現場が混乱しなければそれで全く差し支えないと思うのですが、1 つだけ違うかもしれないと思うのは、医薬品や医療機器の場合には、それによる健康被害が出ても、 それはしばらくするとおそらく比較的治るのだろう。例えば薬だったら代謝されて排泄されればいい わけですし、医療機器だったら取り外せばいいわけですが、幹細胞の場合に果たしてそういくか。体 内に1回入ってしまって、しかも体内で増えるかもしれないというものが、どのようにしたら健康被害 というのが治るのか、あるいは治らないのかというのは、一般の医療機器や医薬品を用いた臨床研究 とは少し違った性質があるのかもしれないというのを、ちょっと気にしていますということですね。  町野委員がおっしゃった2番目はまさにそのとおりで、提供者のほうは全く、これはボランティアで 提供しているので、その人にはやはり金銭的な補償も含めた補償が必要だと思います。 ○永井委員長 この補償というのは、臨床研究ガイドラインではもう義務になっているのではないで しょうか。どの程度までというのは別として、補償するということは義務だと思うのです。ただ、ど の程度までというのは書ききれないと思いますので、そういう意味でこの同じ記載でいいのではない かということだと思うのです。ということでよろしいでしょうか。次回、まとめて対照表をお出しし ますので、そこでさらにご議論いただきたいと思います。  ちょっと遅れましたが最後に、澤委員に「ヒト幹細胞臨床研究におけるGood Tissue Practice案」 ということで案を作っていただいておりますので、簡単にご説明いただけますでしょうか。 ○澤委員 もう時間も押し迫っておりますので、実はこれは非常に重要な議論なので、また今後事務 局と相談しながら、各先生方にご意見をいただくということにします。  先ほどの議論のように安全性の担保というのが最も重要だということと、1314号が改訂されまして、 その中でもiPSとESへの対応を念頭に置いた改訂を行っております。このヒト幹細胞の指針は1314号 を援用するというような書き方だったのですが、特にこの第3章から第5章において、細胞の採取、調 製、投与、移植の各段階で安全対策ということを、GTPですね、これをしっかり分かりやすい形で明記 するということを、私ども再生医療学会の臨床研究ガイドライン委員会で議論させていただいており ます。特に臨床研究への応用に際して、硬直的な解釈というのが起こり得ますので、それがないよう に、より臨床研究に即した柔軟な指針運用が可能になるように表現に配慮するという形で、いま加筆 させていただいております。  その委員会での議論で最も出てきた重要な話は、このGTPの基本的な考え方というのは、必ずしもこ の指針の、特に第1章の第1の目的に十分には盛り込まれていないのではないかということです。ガイ ドライン委員会の素案の意見ですが、それは裏の頁に載っております。ちょっと文章が長いのでもう 少し簡潔にすべきだと思いますが、書いている内容は安全性とか、要は細胞の取り違いも含めて、調 製や加工の過程でそれをきちんと厳守する。特に重症な人にはリスクを排除しながら、科学的妥当性 を明らかにすることが重要であるというような文言なのです。そういうことを目的でももう少し明記 していただいて、このヒト幹細胞の指針はGTPを基本的な考えに持っていっていただきたいというよう な趣旨で、いまこういうような形で進めさせていただいている次第です。以上です。 ○永井委員長 ありがとうございました。何かご質問、ご意見がありますか。 ○中畑委員 他の学会でもいろいろ、このGTPという形ではなくて、例えば造血細胞移植学会とか、前 の輸血学会と合同でいま細胞を使った研究と行っています。GTPだとむしろ細胞の取り違いとか、ある いはウイルスのコンタミネーションとか、細胞を取り扱う場合の大事なことを規定しているわけです が、細胞を処理するときに必要な、例えば標準作業手順書というのはどういう形で作るべきとか、あ るいは、それぞれがSOPにしたがってやるとか、その辺はむしろGMPの中に入ってくるので、そこの GMPの要素というのも少し取り込まないといけないと思います。GTPの要素だけだと多少問題があるの ではないかということがありますので、他の学会で作っているガイドラインの検討が行われています ので、そういうのも参考にしていただけたらと思います。私からもちょっと言っておきますので、よ ろしくお願いします。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。 ○澤委員 はい。 ○永井委員長 そうしましたら、また逐次ご報告いただくということでお願いしたいと思います。予 定した議事は以上ですが、事務局から連絡事項がありますか。 ○事務局 本日はお忙しい中、ご参加いただきまして大変ありがとうございました。次回は平成22年 3月15日の13時からの開催を予定しております。詳細については追ってご連絡いたします。 ○永井委員長 本日はお忙しいところありがとうございました。これで終了させていただきます。 照会先:医政局研究開発振興課 田邊 03(5253)1111(内線2545)