10/01/27 第3回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会議事録 第3回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 議事録 【日時】平成22年1月27日(水) 10:00〜12:00 【場所】独立行政法人医薬品医療機器総合機構21-24会議室 【出席委員】(50音順)   飯沼委員、今村委員、岩本委員、宇賀委員、岡部委員、加藤部会長、木田委員、北澤委 員、黒岩委員、坂谷委員、櫻井委員、澁谷委員、廣田委員、古木委員、宮崎委員、山 川委員 【行政関係出席者】 上田健康局長、中尾大臣官房審議官、鈴木健康局総務課長、福島健康局結核感染症課長、高 井医薬食品局長、岸田大臣官房審議官、亀井医薬食品局血液対策課長、森医薬食品局安全対 策課長、鈴木新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長、松岡健康局生活衛生課長、佐原 大臣官房企画官、土肥健康局健康対策調整官 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 ただいまから第3回厚生科学審議会感染 症分科会予防接種部会を開催いたします。本日の委員の出欠状況ですが、倉田委員から欠席 というご連絡をいただいております。また櫻井委員は所用により遅れるということで、17 名中16名ご参加いただけるということですので定足数に達しているということで報告いた します。それでは加藤部会長にお願いいたします。 ○加藤部会長 おはようございます。ただいまより、第3回厚生科学審議会感染症分科会予 防接種部会を開催させていただきます。ご多忙中のところ、ありがとうございます。まず事 務局より本日の資料の確認をお願いいたします。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 お手元の資料の確認をさせていただきま す。お手元には、まず座席表、議事次第、そして委員の先生方の名簿がございます。本日は 資料1と2がございます。資料1が「新型インフルエンザ対策として緊急に対応が必要であ ると考えられる事項について(案)」です。頭の1頁目では、全体の議論をいただくものを 3つのカテゴリーに分けまして、論点を10点挙げてあります。前回ももう少し論点を具体 的にして議論をしたいというご希望がありましたので、そのように整理いたしました。2頁 以降には、それぞれの論点ごとに、文章でそれについて記載をしてあります。  資料2はパワーポイントですが、これもやはり論点に沿いまして、文章では分かりにくい ところをパワーポイントで補足いたしましたので、後ほどの説明のときには、資料1と資料 2を行き来しながら説明をさせていただきます。  参考資料は1〜6まであります。参考資料の1は「予防接種に関する主要論点について」 ということで、上のほうが緊急に対応が必要と考えられる事項で、本日中心にご議論をいた だきたいものです。下のほうの「その他議論が必要と考えられる事項」は、その後本格的な 議論が必要だというものです。  参考資料2は、前回の議論のうち、先ほど申し上げた参考資料でいうと下の部分、議論が 必要と考えられる事項で緊急ではないものについて、委員の先生方からいただいた主なご意 見です。  参考資料3には「H1N1」とかいろいろなことが書いてあります。専門家の先生は十分ご 存知のことだと思うのですが、インフルエンザワクチンといっても実は1つのものではあり ません。そこで、全体のインフルエンザの型、それからインフルエンザの法律における位置 付け、そして、実際に感染症法で新型インフルエンザが発生した、もしくは終息したという 宣言の話、それから、インフルエンザについては予防接種法の附則で、二類の定期接種の対 象を高齢者に限定しておりますので、その旨が書かれています。  参考資料4(6〜7頁)は感染症法の関係条文です。参考資料5(8〜11頁)は、1月15 日に薬事・食品衛生審議会で輸入のワクチンについて特例承認を行ったというもの。また、 ワクチンについて健康成人に接種を開始するというものです。それ以前は特に重症化が懸念 される方に限定して接種を行っていたのですが、それを健康成人に開始するということにつ いてのプレスリリースです。関係の資料が10〜11頁に付いています。  参考資料6(12〜13頁)は、今回のH1N1のインフルエンザの接種で優先順位を決めま したが、その際どういうプロセスで、どのようなデータで決めたか。これは決めた当時のも のですので若干古いのですが、比較的若い方に多いということが当時の資料でも言われてい ます。以上が資料ですが、もし過不足があればおっしゃっていただければと思います。 ○加藤部会長 資料のほうはよろしいですか。それでは本日の議事に入ります。本日は「新 型インフルエンザ対策として緊急に対応が必要であると考えられる事項について」のみ議論 を深めたいと存じます。前回の部会で各委員の方々より、今後の対応案につきまして具体案 を示すようにとのご指摘が多く出されましたところから、今回は新型インフルエンザの予防 接種法上の位置付けや緊急時のワクチンの確保体制のあり方等の各論について、具体的な案 を事務局から提示してもらっております。したがいまして、本日はその各論について逸脱し ない方向、脇道に逸れない方向で集中的な審議を行っていただきたいと存じます。なお「そ の他」のところの時間を設けてありますので、逸脱しないようにと申し上げましたが、逸脱 する場合はそこのところでお話をしていただくことにしたいと思いますので、ご協力のほど お願いいたします。事務局より資料1、資料2について説明をお願いいたします。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 資料1、資料2を説明させていただきます。 資料1-1は、本日ご議論いただきたい事項を少し俯瞰的にチャートに書いたものです。3つ の課題群があると思っておりますが、1つは左上の所です。これは、今回のH1N1新型イン フルエンザと同様の感染症について、予防接種法では対応が難しかったわけで、それに法律 でも対応できるようにするためには対応する類型を作る必要があるのではないかというこ とで、性格、公的関与、健康被害が起こった場合の救済水準、実際に接種した場合の費用徴 収、この4点について論点があるのではないかと思っています。これは後ほど1-1から1-4 でそれぞれ説明を申し上げます。  2つ目は右上の所です。これはH1N1に限るわけではありませんが、新型インフルエンザ 等世界的な大流行(パンデミック)が起こった場合の対応としてこの4点ぐらいが必要では ないかということで、2-1から2-4まで4点書いてあります。1点目は、その場合にはどう してもワクチンの需給が逼迫するという中で、ワクチンを確保しなければいけないので、そ のためにどうするか。2つ目は、ある一時期ワクチンの量が限られているということであれ ば、一定の順番で、特に重症化が懸念される方から打つとかという優先付けの問題。3つ目 は、供給をしていく際にいろいろなご協力をいただく調整の問題。4つ目は、基本的に医療 機関で、きちっと打っていただくための手段。この4点が課題ではないかと思います。最後 の群ですが、もし臨時接種になっているものが一定の要件を満たせば、定期の接種に移行し ていくことが当然想定されるわけですが、臨時接種から定期接種に移行するにはどういう要 件があるか。また、定期接種にいくとすると、特に今回のH1N1に限らず、インフルエン ザについては一定の法律上の規定がありますので、その規定をどう考えるか、4+4+2で全 10点の課題があるということで縷々説明をしたいと思います。  資料1の2頁目は左のほうに「対応の方向性」と項目が書いてあります。項目で「1-1」 と数が書いてありますが、それが論点の1-1に当たる、すべてそういう整理になっています。  1-1は、「新たな臨時接種の類型の必要性及び性格」です。これは資料2、パワーポイント 編の2頁も併せてご覧ください。今回、H1N1新型インフルエンザのパンデミックが起こっ た際に、予防接種法ではなく、国の予算事業として予防接種事業を行いました。そして、特 別措置法で健康被害の救済や損失補償に対応いたしました。これは1つ目の○必要性に書い てありますが、今回のH1N1は、感染力は強いのですが、現行の臨時接種のように努力義 務を課すほどのものではないのではないかという議論がありまして、予算事業として実施し たのです。  2つ目の「○」で、国全体の事業として行うわけですから、単なる予算事業ということで はなくて、法律に基づいて接種を行うべきではないかということで、今回のH1N1に限ら ず、同様の疾病が今後発生した場合のことも考慮すれば、そういうものに対応できるような 新しい臨時接種の類型を創設することが必要ではないかという論点です。  少し分かりやすくするために、「予防接種体系図」というものを資料2の2頁目の上に書 いております。この図の中で右下のオレンジ色の所は現在法律に規定がありません。いま法 律に規定されているものは何かと申しますと、通常時に行う予防接種の一類定期と二類定期 です。一類のものは、ある意味で言うと、蔓延を防止しなければいけないもの、社会的に防 衛が必要なものが想定されておりますし、二類のほうは逆に、個人の重症化を防止すること を中心に考えるものでして、通常の季節性インフルエンザがここに入っております。  逆に、通常時にではなくて臨時に行う予防接種(左下のもの)は今の法律でもあります。 ただ、これは非常に社会経済機能に与える影響が大きい、病原性が高い、緊急性が高いとい うものに限定されていますので、それほどでもないけれども一定の緊急性があるようなもの については、残念ながら今の法律では対応していませんので、法的な手当てが必要ではない かと思います。  臨時接種の中で現行のもの、それから新たに考えられるものとしてどのような違いがある のかというのを文章編でも書いてありますが、資料2の下のパワーポイント「新たな臨時接 種を設ける場合の考え方」をご覧いただくと少し分かりやすいと思いますので、そちらで整 理させていただきます。左側が現行の臨時接種、右側が今回想定されている新たな臨時接種、 それぞれの違いです。もちろん重なっている部分と、そうではない部分と両方ございます。  いちばん上の「対象疾病」イメージを考えると、感染力が強いということは両方共通して いるわけですが、現行の法律で定めている臨時接種は病原性が極めて高いものであるのに対 して、新たな臨時接種の対象として想定されているものはそこまで病原性は高いものではな いと思います。また2番目の「想定される社会状況」について、感染の急激な拡大というの は感染力が強いわけですから当然考えられるわけですが、現行の臨時接種は毒性、病原性が 高いので死亡者や重症者が大量に出てくる、大規模に発生してしまうかもしれない、という ことがあって緊急性が高いわけですけれども、今度の新しい類型については、そこまではい かないということです。それから「接種の目的」でも同じように、社会的混乱や医療機関の 負担軽減というところは同様だと思いますけれども、社会機能の停止の防止というところは、 現在の臨時接種にはありますが、今回想定しているようなものでは必ずしも想定されません。 また「目的達成の手段」についても、短期間に多くの方に接種をしていただくというところ は変わりませんが、非常に多くの方の予防接種の接種率を確保して死亡者や重症者の発生を 防止するというところは、今の臨時接種は想定していますが、新たな臨時接種ではそこまで は必要ないのではないか。このような違いがあるのではないかと思います。ですから1-1 の論点は、今回のH1N1の経験も踏まえて、また現行の予防接種法の規定ぶりを踏まえて、 2頁の上でいきますとオレンジ色に書いてあるような、いわば臨時接種の中でも現行のもの ほどではないようなものについても法律で対応できるようにすべきではないかということ です。  文章編ですと4頁、1-2の論点「接種の必要性に応じた公的関与のあり方」、またパワー ポイントですと2の上の所の体系図をご覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。 それぞれの接種のカテゴリーごとに2つの小さい四角が書いてあります。その上のほうをご 覧いただきますと「努力義務」と書いてあります。努力義務というのは、接種を受けていた だく努力義務が法律上でかかるか、かからないかということで書いてあるのですが、右下の 今回新たに作るものを除きますと、左の2つ、現行の臨時接種や、一類の定期接種について は努力義務があるということになりますが、右上の二類の定期接種については努力義務はな いということになります。努力義務をなぜかけるかということですが、一類の定期接種もし くは現在の臨時接種の考え方からすると、高い接種率を確保する必要があるということで努 力義務がかかっています。  翻って右下のオレンジの所が努力義務となっていますが、ここをどうするかという論点が 1-2です。これは左の2つほど高い接種率を確保して死亡者等の大量発生を抑制するという 必要性は必ずしもないかもしれません。ただ、医療提供体制の確保、それから社会的混乱を 回避するといった観点から、できるだけ多くの方に対して接種を受けていただく。そして、 その意義を徹底したり、ご理解をいただいたり、条件整備を行うということが必要なのでは ないかということです。この「努力義務」と書いてある所は、平たく言えば、努力義務「あ り」とするまではいかないけれども、「なし」というのも、短期間に多くの方に接種を受け ていただくという観点からなかなか難しい点もあるかもしれないので、できればその間の、 例えば「勧奨」という形でお勧めをする等の考え方があるかどうかについてご議論いただけ ればと思います。それが1-2の論点です。  次に1-3の論点です。残念ながら、予防接種はどうしても副反応という形で一定の健康被 害が生じてしまう場合があるわけです。その場合の健康被害についても法律で救済をするこ とになっていますが、その救済給付の水準を、分かりやすい例として、残念ながら亡くなっ てしまった場合を主に考えたいと思っています。これについては資料2の3頁の下の所をご 覧いただければと思います。これは「各種予防接種の法的位置付け」と書いてありますが、 下から2つ目の所に健康被害に係る給付金額が出ています。そこと3つ上の「接種の努力義 務の有無」の所を併せてご覧いただければと思います。ここはどういうことかといいますと、 予防接種法に基づく一類の定期接種、それから臨時接種、この2つについては、亡くなって しまった場合の死亡一時金は4,280万円。「高額」と書いてありますが、4,300万円程度に 設定されています。翻って二類の定期接種では、遺族一時金は714万円になっています。 その上の「努力義務」との関係を見ていただきますと、努力義務がある場合、一類の定期接 種なり臨時接種なりについては4,280万円になっているし、ないものについては714万円 になっているという整理です。  いちばん右の「新型インフルエンザの場合」というのをご覧いただきたいと思います。接 種そのものは予算事業として対応しましたが、健康被害の救済については特別措置法を作っ て対応いたしました。これもいろいろ議論がありましたが、今回は接種の努力義務がないと いうこともあって、実際に亡くなった場合の一時金は714万円になっています。この1-3 の論点は、もし新たな臨時接種の類型について、努力義務をかけるほどではないけれども、 何らかの形で短期間にできるだけ多くの方に接種をしていただけるような条件整備をする とすれば、それに対応した救済のレベルというものをどのように考えたらいいのか。、その 際1つどうしても考えるべきなのは既存の枠組み、つまり努力義務がかかっている場合には 4,280万円、全くない場合は714万円。そのバランス等を考慮しながら、もしその間に位置 する国の関与というものがあれば、救済のレベルをどの程度に考えたらいいのかということ についてご議論いただきたいというのが1-3です。  1についての最後の論点、1-4「接種費用に係る実費徴収の可否」です。これは資料2の2 頁目の上の所をご覧いただきます。オレンジの所を除くと3つの類型それぞれに小さい四角 が2つずつ書いてありますが、その下に「実費徴収」と書いてあります。それについて「可 能」とか「不可」とかと書いてあります。つまり、現行の臨時接種というのは、非常に短期 間に多くの方に接種を受けていただくということもありまして、接種に係る費用は公費負担 になっておりますので、実費徴収は不可ということになっています。しかしながら、上の定 期の2つのもの、一類にしろ二類にしろ、実費徴収は可能となっています。法律上の構成で 言いますと、市町村の支弁であり、実費徴収は可能だが、低所得の方については減免をする ということになっています。  1-4で是非ご意見を伺いたいと思っていますのは、右下のオレンジの類型を作ることにつ いてです。この実費徴収もクエスチョンになっていますが、ここの部分というのは、いまま での3つの類型の中で非常に短期間に高い接種率を確保しないといけないし、毒性が非常に 強いというものだけ実費徴収しないで公費ということになっております。そこで、このオレ ンジの所の実費徴収についてはその他の2つ、つまり一類、二類と同様に、市町村が支弁す るけれども実費徴収も可能、かつ低所得者に対しては減免をするという考え方でよろしいか どうかをおうかがいしたいというのが論点1-4です。以上の4点が論点1に関わる、いわば 今回のH1N1と同様の感染症が起こることを想定した場合の類型の創設に関わる論点です。  もう一度資料1の頭の所をご覧いただきたいと思います。青色で書いてある全体の俯瞰図 のような所です。いま左の上の所を1-1から1-4まで説明しましたけれども、次に2-1から 2-4について説明をしたいと思います。これは新型インフルエンザ等の世界的な大流行(パ ンデミック)が起こった場合の対応です。どのようにワクチンを確保するのか、どういう順 番で対象者に接種していくか、その場合のワクチン需給調整はどうか、それから、医療機関 における接種体制をどう確保していくのか、という4つの論点です。文章編では4頁の下の 所から5頁目にあたります。まず論点2-1、ワクチンの確保、文章編5頁の頭の所をご覧い ただきたいと思います。これは前回も説明したことだと思いますが、1つは世界的な大流行 (パンデミック)のときには、世界中でそのワクチンをめぐって需要と供給が非常に逼迫す るという状況が想定されるわけです。新しくワクチンを開発し、作っていくのですが、需要 は非常に多いということです。ですから一時的にはワクチンが非常に手に入りにくいという 状況になりますが、逆に、パンデミックですので、当然一定以上のワクチンを確保して国民 の方に打っていただく必要はあるのです。  2つ目の「○」です。他方ワクチンを作るメーカーの立場からしますと、通常ワクチンの 研究開発というのは一定の期間、3年なり5年なりをかけて行うわけですが、短期間にその ワクチンを開発して市場に出すということになりますと、通常のレベルを上回るリスクがメ ーカー側に発生するのではないか。また、健康被害等のリスクを恐れて上市しないおそれが あるのではないか。そして3つ目の「○」で、ワクチンを確保するためには、通常のレベル を上回るリスク、そこの部分については何らかの方法で、公的にその部分を支えるというこ とをしないとワクチンの製造業者の方もなかなか上市しようということにならないのでは ないか。いくつかやり方はあると思います。ワクチンを買い上げる、もしくは政府が損失補 償をするという契約を結ぶというようなことがあるわけです。  他方の観点としては、3つ目の「○」の最後の所に書いてありますが、もし政府が何らか の補償をするということになるのであれば、それは憲法なり財政法なり、国会の役割、それ から政府の役割を規定した現行の仕組みも無視するわけにはいかないということになりま すので、そこのところを少しご説明します。パワーポイントの5頁目の上になります。論点 2-1について3つの「○」が書いてありますが、いちばん上の「○」は先ほど申し上げたこ とですが、2つ目の「○」は、今回、A/H1N1カリフォルニア株のワクチンが国内産だけ では足りないのではないかということで、輸入ワクチンを手当するということを検討してい た中で、健康被害を起こして多大な損害を生じてしまうのではないかということで、メーカ ーが、日本だけではなく各国政府に対して、健康被害等の損失補償について無制限に政府が 補償するように求めたということです。実際6頁の頭に、各国というのはどういう国かとい うことが書いてあります。ワクチンの輸入をする国については、我が国と同様に損失補償の 条項がある。これは契約の守秘義務というのがあって詳細はなかなか難しいところがありま すが、少なくとも、こういう国々の契約には損失補償の条項があります。ということで、今 回の場合は、メーカー2社ですが、特例承認という形で薬事承認し輸入させていただく際に、 法的措置として損失補償契約をすることになり、それを特別措置法の中で位置付けたという のが経緯です。  関係条文は下の青い所に書いてあります。現行の憲法なり財政法上の規定ぶりなり一定の 制限については、パワーポイントの資料2の6頁の下に、日本国憲法第85条、それから財 政法第15条というのが2つ書いてありますが、国が債務を負担する際には国会で議決をす る必要がある。それから、法律に基づくもののほかは国会の議決を経なければいけないとい うことがあります。そういう制限がある中で、いわば無制限に、白紙委任的にそういうもの を認めるというのはなかなか難しい側面もありますので、そのバランスをどうするかという ことではないかと思います。  2-2、2-3、2-4についてはまとめて申し上げます。パワーポイントでいうと7頁に当たる ものです。7頁の上が現行の規定ぶり、下が今回こういうことが考えられるのではないかと いうことで整理しております。現行の臨時接種のスキームというのは第1項と第2項で若干 規定ぶりが異なります。都道府県が市町村を指導できるかどうか等々がありますが、いちば んのポイントは、国が対象疾病を指定する。これはいずれも共通です。それから、対象者を 都道府県が指定するというやり方が現在の臨時接種のやり方です。しかしながら、今回の H1N1であったように、いわば国が一定程度関与し、接種の順番や対象者の方を全国で一律 に決めて行うことが必要な場合もあるだろう、できれば下のようなスキームを確保する必要 があるのではないかということで、厚生労働省が、対象疾病だけではなくて対象者、もしく はそのうちの優先対象も決定した上で、都道府県または市町村に接種をお願いして接種を実 施していただく。これは2-2、ワクチンの優先順位づけの問題です。  2-3、ワクチンの供給調整の所ですが、これは、そういう優先順位の定めをしても、実際 に物(ワクチン)自体がそういうところを満たすように流れないと、それはなかなか意味が ありません。そこで7頁の上の協力要請、すなわち製造販売をされる方、卸売り業者の方な どに協力を要請ができる旨のことをきちっと法律上規定する必要があるのではないかとい うこと、これが2-3の論点です。  2-4の論点は、さらに臨時接種に近い段階にいきますと医療機関で接種をしていただくわ けですが、市町村もしくは都道府県から委託を受けて接種をするということになると思いま す。この場合、優先順位に従って接種するということを確保していただくという観点から、 例えば接種した場合の報告徴収もしくは調査をさせていただくこと等々の規定ぶりが必要 ではないか、これが論点2-4です。以上、パンデミックが起こった場合に供給を確保したり、 限られた供給を合理的に配分するための手立てとしては何がいいかということで4点申し 上げました。最後に文章編の6頁、パワーポイントの8頁の1つ目の所。これは、もし論点 1の所で予防接種法に新たな臨時接種の類型を設けるということになれば、新型インフルエ ンザ等が発生した場合に、必要な手続きをした後で臨時接種として定めるということが当然 あり得ると思います。臨時接種ですので、あくまで緊急性があって臨時に接種するというこ とですけれども、それがもし毎年流行するというようなことになれば、それは定期で接種す ることになると思います。それで、臨時接種から定期接種に移行するということになった場 合にどのような道筋や要件があるのかというのが論点3-1です。  これについてはパワーポイントの10頁をご覧いただきたいと思います。10頁の下の所は 私どもでとりあえずの案として、少なくともこういうことは考慮する必要があるのではない かということを3つのグループで考えたものです。1つは、病気そのものについてどのぐら い発生しているのか。発生しなくなってしまえばこれを入れる必要はないわけです。また、 その病気が重症化しやすい、亡くなりやすいという重大なものなのか、またその他の治療法 があるのかどうかという病気自体の特性がAです。  Bはワクチンそのものについての安全性です。臨時接種を開始するときには数千例の接種 から見た安全性ですが、定期接種をするということになれば対象がものすごく広くなります から、頻度の低い副反応についても、一定の見解が得られるということがあるのではないか と思います。ワクチンの有効性についても、薬事法上の承認なり、実際に臨時接種をした際 に抗体価が上がるかということが1つのメルクマールになるわけですが、実際に定期接種を する際には、接種した群としない群とで入院なり重症化にどういう防止効果があるか、また ワクチンがきちっと確保できるのか、流通できるのかという論点がBです。  最後Cは、一定の費用対効果があって、かつ国民の皆様にも理解をしていただけるかど うかという論点です。少なくともこれらA・B・Cの要件があって定期接種になっていくの ではないかと思います。3-1の論点は、こうした一定の要件が整えば臨時接種から定期接種 へという道筋があるということでよろしいかどうかをお伺いしたいと思います。  最後の3-2ですが、定期接種にする際にどういった法律的な論点があるのかです。パワー ポイントの11頁の下の所「現行のインフルエンザの定期接種の対象者について」に経緯を 書いてありますが、それまで予防接種法に載っていたインフルエンザに対する接種は、平成 6年の予防接種法改正のときに対象疾病から除外されました。これはいろいろな議論があり まして除外されたわけですが、その後、高齢者施設等でインフルエンザによる集団感染や死 亡等々の問題が出てきたということで、平成13年改正では、インフルエンザを二類疾病、 努力義務がないものとして位置付けるということで予防接種法の改正案を私どもが国会に 提出したわけです。通常どの病気に対して接種をするかということは法律で定めてあります が、どういう人に接種をするかということは、その下のレベルの政令で決まっているのです。 ただ、この平成13年改正のときは、インフルエンザに限って衆議院で法案の修正が行われ て、改正法の附則の中に、インフルエンザの二類の定期接種については高齢者に限定すると いう規定が入ったわけです。したがって、この規定がある限り、インフルエンザの定期接種 については高齢者に限定ということになります。具体的な条文は参考資料の5頁にあります ので、いま詳しくは申し上げませんが、ご覧いただければと思います。  さて、今回のH1N1、もしくは新型インフルエンザがそのような道筋をたどるとして何ら かの課題、論点があり得るのかということですが、資料2の9頁をご覧ください。これは今 回のA/H1N1カリフォルニア株について、上は入院した方について、年齢階層ごとの人口 100万人に対する数、下が入院された方の中でも呼吸器を付ける、もしくは脳症になる等さ らに重症になった方の年齢階層別の100万人の率です。青い所は基礎疾患がある場合、緑 の所が基礎疾患がない場合ですが、これをご覧いただくと、今回は明らかに低年齢層に入院 なり重症化が集中していることが分かります。残念ながら、季節性インフルエンザにはこの グラフがありませんので、比較できるものということで10頁の上のものを用意いたしまし た。これは左側が季節性インフルエンザ、右側が今回のH1N1の新型インフルエンザです。 右側は、まだシーズンの途中ですので、1月19日までのデータです。年齢別死亡者の実数 を左の季節性インフルエンザで見ますと、高齢者に非常に集中しています。ところが、右側 の新型インフルエンザについて見れば、そういうことは必ずしもなくて、むしろ若い層、も しくは中年層にも発生している。これは3月、4月になって見ると若干変更はあるかもしれ ませんが、現在までの姿です。  最後は資料2の12頁とも関係します。ここにも条文が書いてありますが、現在、先ほど 申し上げたようなさまざまな経緯があって、二類のインフルエンザの定期接種のみ法律で高 齢者に限定しています。今回のH1N1もしくは新型インフルエンザが当初は臨時接種にな ったとしても、毎年流行する、また有効性や安全性が一定程度落ちつくということになると、 臨時接種から定期接種に移行するということは当然考えられるわけです。その際に、この規 定が今のままだと、法律を改正しないと、このものについては法律に基づく定期接種が高齢 者以外にはできないということになってしまいます。具体的に委員の先生方にお聞きしたい 点は、高齢者に対する限定というものを全部無くしてしまうというのはなかなか難しいとは 思いますけれども、H1N1、もしくは大多数の方に免疫がないと想定される新型インフルエ ンザについては、法律上の規定に現段階でアナをあけておくことが必要なのかどうか、この ようなことについてご意見をいただければと思います。説明が長くて恐縮ですが、3つの課 題群について、それぞれ具体的な論点を示して説明を申し上げました。 ○加藤部会長 ただいま事務局から論点1、2、3を通してご説明をいただきました。資料 がパワーポイントと文章編の2つに分かれておりますので見にくくて、ご理解いただきにく いところもあると思います。各論点の枠を超えて必要な事項もあるとは思いますが、この際 論点を1つずつ区切りまして、その都度その都度ご意見を承っていきたいと存じます。まず 資料の3頁、今回の新型インフルエンザと同等の感染症が起きた際に、臨時接種の類型の創 設ということで具体案を提出していただきました。この件につきまして、各委員の方々から のご質問、ご意見を承りたいと存じます。どうぞ。 よろしいですか。いま資料の3頁目と4頁目にまたがった所で「新たな臨時接種の類型の必 要性及び性格」。これは分かりにくいと存じますが、ただいまの新型インフルエンザワクチ ンの対策は、法律上は特措法という枠でやっておりまして特例であり、予防接種法の下にお いて行っているものではないのです。したがいまして、新たにこのようなことが生じてきた 場合に、また特措法でやらなければいけないのか、まということが議論になるのです。した がいまして、何か新しい第三の道のようなものを、ここでは「臨時接種の類型」と書いてあ りますが、その言葉にこだわらず、そういう仕組みを作りたいということが事務局提案と部 会長は考えますが、それはよろしいですか。では、そのようなことを念頭に置きましてご質 問やご意見を伺います。 ○岩本委員 私は提案そのものには賛成です。ただ、言いぶりで、資料1の3頁のいちばん 上の「○」、必要性の所で「今回の新型インフルエンザA/H1N1については、感染力は強い が、病原性が季節性インフルエンザと同等のものであった」という言い切りようです。要す るに、想定していたH5N1の高病原性の鳥インフルエンザほどではなかったというのはい いのですが、「季節性インフルエンザと同程度であった」と今の時点で完全に断言する言い 方は避けたほうがいいのではないかと、そのことだけです。 ○加藤部会長 わかりました。部会長としてはあまり発言したくありませんけれども、部会 長も同じ意見を持っております。それは、先ほど図表に出ましたように、かなり低年齢層で 重篤化している者がいると。したがって、必ずしもそれほど軽いものではなかったのだとい うことが岩本委員の意見と承りますが、そうですね。 ○岩本委員 そうです。 ○加藤部会長 そういうことで、全体の枠としては賛成であるが、表現ぶりが少し。それほ ど弱いものであったという受け止め方はしていただきたくないというのが岩本委員のご意 見です。ほかに、委員のございますか。 ○北澤委員 基本的なところで教えていただきたいのですが、予防接種法第6条の条文を読 むと、「一類疾病及び一類疾病及び二類疾病のうち厚労大臣が定めるものの蔓延防止の必要 があると認めるときに臨時に予防接種を行う」ということで臨時の予防接種が決められてい るのですが、「一類疾病及び二類疾病のうち」と書いてあるということは、全然違う感染症 が来た場合は臨時になるのかどうか。 ○結核感染症課長 一類疾病につきましては、定義のところで、「その他政令で定める」と なっておりますので、その際には政令で追加するという対応をすれば対応できるということ になります。 ○加藤部会長 その都度の対応ということですか。 ○結核感染症課長 はい。 ○飯沼委員 これはH5N1・鳥インフルエンザを想定しているのではないですか。違うので すか。 ○加藤部会長 想定は想定でしょう。ただ、ここに書かれている中では、本当は天然痘が考 えられます。 ○結核感染症課長 インフルエンザに関しましては予防接種法の第二類で、そのインフルエ ンザの中に鳥インフルエンザも含まれるという解釈ですから既に法律で明示されていると 理解していただきたいと思います。 ○加藤部会長 法律上、対象疾病にインフルエンザが入っているからという意味ですね。 ○結核感染症課長 はい。天然痘(痘そう)については、天然痘が登録されたということで、 平成15年だったと思いますが、既に政令で定めております。それ以外で何か出てきた場合 は、対応し得るかどうか個別に判断していくということです。 ○岩本委員 病気として、今後の新型インフルエンザはすべて新たな臨時接種のところに行 くのか。たまたま今回のような低い病原性であったものが新たなところに行って、例えば高 病原性鳥インフルエンザのようなものが出たときには、インフルエンザであっても、それは 現行の臨時接種の枠組み、すなわち努力義務を伴う接種のことでやることもあり得るのか。 だから、インフルエンザは両方にまたがる可能性があるのかというのが飯沼先生の質問だと 思ったので、そこははっきりしてもらいたいのです。 ○加藤部会長 わかりました。これについては事務局で答えますか。 ○結核感染症課長 これは後者のことです。つまり、インフルエンザでも高病原性のように 既存の臨時接種で扱うものもありますが、今回のものについては既存の臨時接種としては扱 えなかったということで、別の領域を作るべきではないかというご提案をしているところで す。 ○岡部委員 考え方はそれでいいと思うのです。ただ、仮に新しい感染症あるいはH5N1 もどきがやってきて、それの病原性が強いかどうかというのは、多少時間を置かないと分か ってこないのです。それで、ウイルスが出たときには製造に取りかからないと間に合わない。 したがって、今いろいろ工夫はして、今まで半年かかるものが3か月でできるにせよ、製造 の段階と実際の実施の段階で少し考え方が違ってくることがあると思うのです。それを今回 の反省で言えば、実際に接種するときは最初に全部規定してしまうと、途中から切り替える のが非常に難しくなるということがあるので、その部分は何かしらの考え方で、いくつかの ポイントで再度見直しができるか、あるいはディスカッションをするかという場を設けてお いたほうがいいと思います。 ○加藤部会長 いま岡部先生がおっしゃったとおりで、今回の新型インフルエンザについて は、いきなり「臨時」のところに入れられなかったというところは多少反省点があろうかと いう気はしますが、いきなり入れるのも、なかなか難しいというところで、再びこのような ことが起きたときに、それではどうしましょうかということを決めましょうと、それがまさ に今日決めることです。したがいまして、委員の意見をもう少しお聞きしたいのです。 ○宮崎委員 質問になりますが、今新たな臨時を作った場合に、接種義務を課すか課さない かというところの判断を、どの時点で国がやっていくかという点について、加藤先生は、ワ クチンだけ先に準備しながら、事態の推移を見ながら国がそれなりに対応されたほうがいい というご意見のようですが、そういうことも国は想定されているということですか。 ○結核感染症課長 実際、今回の経験から見ましてもそういうふうになると思います。ただ、 いちばん問題になるのはワクチンの確保です。それが先に来るわけですので、その時点と実 際に接種をするという時点にかなりタイムラグがあることについてどのように考えていく か。先ほどご指摘いただいたことを踏まえ、まずワクチンを確保するという判断があって、 その後で接種をしなくても妥当であったということの担保ができるような考え方をとるべ きというご趣旨だと理解いたしました。 ○今村委員 私も、流れとしては臨時接種に賛成です。ただし、臨時接種をもう1つ創設す ることにはこだわらないということでしたけれども、先ほど岡部先生がおっしゃったように、 今回の新型インフルエンザの場合、途中で取り替え、やり替えたという汎用とか弾力的対応、 これが都道府県としては非常に助かりました。そういう意味で今回のワクチンも、臨時接種 という枠がどのように設けられるかは別として、臨時接種という中でタイムラグを設けた運 用をしていただきたいと思うのです。新型と言うからには誰もかかっていないということを 前提とするので、基本的には短時間で接種率を上げるということが原理原則だと思うのです。 重症であろうが、軽症であろうが、基本はそこだろうと思います。そこで、その実態を見な がら、子供たちが多くかかっているとか、重症化の問題等を論議するためには、基本的に臨 時接種というところの内容はあまり複雑にしないで、汎用や弾力的運用という形ができれば、 そのほうがシンプルでいいのではないかと思うのです。このことは追って話になる定期接種 の問題も一類、二類の問題にかかわると思いますので。 ○加藤部会長 ありがとうございます。岡部先生のご意見をもう少しファジーな方向もあっ てもいいのではないかというご意見と承ります。ほかにご意見はございますか。 ○飯沼委員 先ほどの続きになるかもしれませんが、ウイルス側が変異すると、この右から 左、オレンジから網掛けのほうに行くという状況もあるのです。そういうこともあるので、 運用はかなり複雑になるけれども、基本的にはいまの方向でいいのではないですか。 ○岩本委員 私がちょっと分からないのは、運用であまりやると、一般の国民の目には「ま た、ぶれた」という話になるので、枠は「これで行けよ」というのと、少し緩い臨時と、そ れをどこで定期に移さなければいけないと、そういう枠があったほうがいい。 ○加藤部会長 1つ枠をはめておいたほうがいいだろうということですね。 ○岩本委員 そういう気がします。 ○加藤部会長 意見が2つに分かれていますが、どちらも正しいということで、この部会で ある程度の共通見解を得たいと思います。意見が両論出ておりますけれども、部会長といた しましては、おおよそのことは確認できたと考えます。その1点は、予防接種法の上に、名 目は別といたしまして、現在ある臨時接種というものとは異なった意味での、今のものを1 とすれば、2でも構いません。頭の中での想定の中で臨時接種の類型を、今のものが1だと すれば新たなものとして2を創設するということで、おおかたの委員の方々の了解を得たと 考えました。しかし、いまお話した新たな臨時接種を創設するためには、いくつかの条件の 整備も必要であるというのがここに書いてある論点の2です。したがいまして、事務局から の説明にありましたように、中間的なものはできるということになりますので、言葉で言う ところの、新たな臨時接種に関わる費用負担に関しては、まだ枠組みは決められませんが、 ある程度実費徴収をすることができるようにするということで先ほど説明がありました。そ の辺のところはご異論がないと認めましたので、そのような形で確認させていただきますが、 よろしいですか。 ○飯沼委員 費用をどうするかというのはすべての予防接種の問題で、これに限ったことで はないのですが、当面そういうことの議論もしなければいけないので、インフルエンザはそ ういうことも可能だ、ぐらいに書いておいていただいたほうがいいかと思います。 ○加藤部会長 補足資料の3頁目をご覧ください。現在の新型インフルエンザの場合には自 己負担です。そして臨時接種の場合には、実施の徴収不可ということになっておりまして、 仮付けの「臨時接種2」と仮にいたしますと、その中間点に入りますので、ある程度の実費 を徴収することができるという中間案ということです。そのように理解していただきたいと 思います。よろしいですか。 ○古木委員 私の町は山口県のいちばん東の果てなのです。すぐ隣が広島県ということで、 県境なのです。だから、費用関係についても、あるいは取扱いにしても、できるだけ県が異 なったら取扱いも異なるというような中身でないほうが、非常にいいのです。現実に住民と しては、町内の医者にかかっている人もいるし、また1つ川を挟んで他県、県外の医者にか かっている方も随分おられるのです。ですから、こういったものについては統一的にものご とが捉えられるような仕組みで何か考えていただいたら、行政のほうからも指導もしやすい と思います。 ○加藤部会長 それは、今回の仮の臨時接種にかかわらず、現行のワクチンに関しても同じ ようなことが言えますね。 ○古木委員 はい。 ○加藤部会長 したがって、そのようなことも事務局としては十分考慮の上、皆様方がこの 件に関しては了解した、というように捉えてよろしいですか。いま古木委員がおっしゃった ように、現在、定期接種で行っているものでもそういう問題が実際に起きていることは事実 です。 ○古木委員 そうです。あります。 ○岡部委員 いまのは全くそのとおりだと思うのですが、もう1つ、いまのを了承したとす ることは、次の救済、あるいは補償の問題にリンクしてのことですね。 ○加藤部会長 救済と補償に関しては、若干議論を要すると思います。事務局側としては、 まだ十分に整備できていないというように、先ほどの説明から読めますので、おそらく来月 にこの部会が開かれると思いますが、その段階において、今日のご説明よりもうちょっと深 く突っ込んだ内容が用意されると、座長としては想定しております。いまの岡部先生のご質 問については、少し緩めに考えておいていただいて、次回のところで整理をさせていただき たいと存じますが、よろしいですか。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 ちょっと確認をさせていただくと、いま古 木委員がからおっしゃった 費用徴収、もしくは費用負担についての論点ですが、今回は H1N1、もしくはそれに類するようなものについて、とりあえずちょっと言葉は悪いのです が、臨時応急的にパッチを当てて、それが予防接種法の中でできるようにして、それに付随 する、限定された問題について、とりあえずはやろうということになっているわけです。お 聞きしている範囲で、おそらく定期接種も含めて、かなり幅広い論点だと思いますから、今 回のものに限らず、先ほどちょっと申し上げた緊急以外のところに関係する費用負担の問題 とも関係します。そういう理解でよろしいですね。 ○古木委員 はい。 ○岩本委員 費用負担の問題です。これはいわゆる疫学の話で、岡部先生の感染症情報セン ターからどういうデータがでてくるかにかかわると思うのですが、去年の流行を見ていると、 5月ごろの関西方面、夏休みごろの全国的なもの、やはり学校がインフルエンザにはかなり 大事だということがあったように思うのです。私は実費徴収というのはやるべきだと思って いるのですが、学童期の子供たちにできるだけたくさん打つこととか、高齢者は一見、重症 化は少ないような一方で、高齢者と子供たちへの重点的な配慮というのは、ワクチンを進め るという意味では必要ではないかと思うのですけれども。 ○加藤部会長 実費徴収については、どういうご意見ですか。ここで取ってもよろしいでし ょうと。 ○岩本委員 子供たちと取り方をファジーにするのではなくて、どこかである程度明確にし て、そのときの重点性は年齢だろうと私は思うのですけれども。 ○加藤部会長 了解しました。 ○木田委員 ダブるところがあると思うのですが、先ほど言われたように、今回の場合は若 い人たちがたくさんかかるということで、例えば私の市では妊婦さんから中学生までに市が 補助をするという形にしたわけですが、季節性インフルエンザの場合は高齢者に補助をする ようになっているわけです。先ほどの古木委員とも重なるわけですが、これは前回にも言わ れたように、全国的なテーマですので、市・町によってあまり差の出ないような、国とか県 が中心となって、補助とか料金を決めていただくことは大事だと思います。努力義務の所に クエスチョンマークが付いていますが、努力義務が加えられたときには、さらに補助などと いう方法が必要ではないかなと思うのです。 ○加藤部会長 わかりました。努力義務というのは一類疾病ですので、それはできる限りの 市区町村でお支払いいただくということになっており、支払えない所もごく一部にはあると いうことですが、今回の場合は、その一類疾病の中には入れないということですね。 ○結核感染症課長 努力義務がかかっておりますのは、定期の一類と臨時接種の全部という ことになっておりますので、これは一類とか二類とかいう分け方ではなくてということです。 今度の新類型の臨時接種について、具体的に言うと、努力義務を課すまでのものなのかどう かということが1つと、それと費用徴収をどう考えるかというのはリンクするというご発言 だったと理解しています。 ○加藤部会長 繰り返すようですが、補足資料の3頁の「接種費用の負担」という所を見る とわかりますが、一類疾病の所は実費徴収可能と、一応なっているのですね。でも、ない所 が多いと。二類疾病に関しては、ご承知のようにこれは高齢者のインフルエンザですから、 それも市区町村によって値段が違いますが、払っている。臨時接種というのは実費徴収不可 となっており、これは実際にはいまのところこれに当てはまる病気はないということなので、 いままさにこの問題になっているということです。新型については自己負担だということで すので、今度新しく作るかもしれない、例えば「臨時接種2」とした場合には、その間をと ってある程度の実費徴収をすることができると書いたらどうかということで、先ほど来お話 しております。 ○澁谷委員 いまの1-4の所の実費徴収にかかる部分ですが、確かに臨時接種ほどではない にしても、社会機能、インフラにかかることが通常の予防接種よりも高いと考えれば、自治 体間の財政基盤の差が影響しないよう、ペーパーには経済困窮者を除くということも書かれ ているのですが、何らかのそういう配慮も必要ではないか、社会機能の維持ということも少 し考慮する必要があるのではないかと思います。だから、いままでの実費徴収可能というこ とと全く同じということではなくて、多少その部分の自治体間の財政基盤の差が影響しない ようなことも、配慮する必要があるのではないかと思います。 ○加藤部会長 その件に関して、事務局からお願いします。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 くどいようですが、もう1回確認させてい ただきます。先ほど古木委員、いま澁谷委員からおっしゃっていただいた、費用徴収すると した場合の自治体間の差の問題と、岩本委員がおっしゃった児童もしくは子供に接種する場 合の費用徴収をどう考えるかということですが、特に後者について、いまの対象疾病をご覧 いただくと、ほとんどが子供に接種するワクチンです。その問題は、やはり全体のワクチン、 定期接種にしろ、臨時接種にしろ、費用徴収をどう考えていくのかという問題、これをきち んと整理をしないと、ある所だけ手当をして、ほかはしないというわけにはいかないと思い ます。ちょっとくどい話になりますが、今回の臨時応急的な、とりあえずこの類型を作ると いうところは、現行と同様に徴収可能。しかし、低所得者については減免するということで、 とりあえずは整理させていただいた上で、この問題に課題があるというのは我々も重々承知 しております。それは全体の費用徴収をどう考えるかというところと同時に考えさせていた だく、という理解でよろしいかということです。 ○加藤部会長 わかりました。 ○廣田委員 実費徴収可能というのは、私も賛成です。それとの関連で、先ほどの事務局か らのご説明で、努力義務がありとなしとの中間ぐらいと、ちょっとおっしゃったのですが、 具体的にはそのの中間みたいなものというのは、どういうイメージなのでしょうかね。 ○結核感染症課長 努力義務がかかっているのは定期の一類と臨時です。それ以外では、公 告、このように予防接種をやりますよというのは、施行令の第5条で決まっていますし、第 6条で対象者に周知するのは定期接種についてはやりますよというようになっています。あ とは通知で、定期の一類、二類ごとに書き分けており、二類でも「積極的勧奨に当たること がないように留意する」というように書いてあるわけです。これは予防接種の性格から見て ということです。  もう1つ言うと、今回、新型インフルエンザの予防接種について、努力義務を課すまでの ものではないということで、私どもは現行の法体系の中での臨時接種を行うことをしなかっ たわけですし、そういう面で努力義務に代わる何かというものを。努力義務というのは受け る側、被接種者側の問題ですが、行政側のかかわりについて、もう少し濃厚に。これは先ほ どもお話がありましたように、一時期にたくさんの接種率を上げていくことも必要なわけで すから、そういう面での行政側のもう少し積極的なかかわりというものを、書き込むべきで はないかなと思っているということです。 ○生活衛生課長 補足資料の2頁の下にありますが、現行の臨時接種との対比で挙げており ます。まさに今回の臨時接種、H1N1のようなものについて申しますと、相対的な話では ありますが、死亡者、重症者が大規模に発生するというところまでではないだろうといった ことがあります。そういう意味で、接種率を高めていっていただいて、個人にも打っていた だくという意味での接種の努力義務を課すというところまではないでしょう。ただ、「(1)」 にありますように、短期間に接種の機会を確保して、円滑な接種を実施することが必要であ り、こういう観点から、行政で積極的にお知らせをして、勧奨をしていくといったことが想 定されるのではないかということが考えられます。今回の行っている予防接種について、そ このところについてはかなり情報提供をやらせていただいていますので、さらにそれを進め て勧奨といったものが考えられるのではないかと考えています。 ○加藤部会長 言葉は勧奨で、努力義務を課すと、まさにいまの臨時接種そのものになって しまうというところで、その中間系という意味で、先ほどから申し上げていますようにイメ ージの中で2なのですけれども。 ○宮崎委員 確認なのですが、いま議論になっている新しい臨時接種の実施主体はどこにな るのですか。 ○加藤部会長 事務局、お願いします。 ○結核感染症課長 実施主体をどこにするかという問題は、1つ議論があろうかと思います。 現行は、第6条第1項は、都道府県知事が行う場合には、都道府県知事が自ら行うか、また は市町村長に行うよう指示をすることができる。第6条第2項では、厚生労働大臣が都道府 県知事に指示して行わせることができるとなっております。従来の類型も若干の整理が必要 かと思いますが、実際には予防接種事務は市町村がやっているわけで、その辺のノウハウは 市町村のほうが持っているわけです。県は広域調整という観点で言いますと、実際に実施を どこでやるのかということになると、我々が想定するのは非常に広範にやるときには市町村 ということを考えなければいけないのだろうと思っております。ただ、現行の法律もそこは 若干明確になっておりませんし、現行の仕組みだと、厚生労働大臣が行う、指示する場合に は、都道府県に行わせる場合には都道府県知事が行うとなっておりますので、その辺の整理 をどうしていくのか、逆にここでご議論いただければと思っております。 ○加藤部会長 これは補足資料の7頁にポンチ絵が描いてあります。そこに”OR”と書いて あるのは、いままさに宮崎先生にご指摘していただいたとおりですので、この辺のところは 深く議論する必要があるかどうかは別として、国がこのような形で都道府県に行わせるのか、 市町村に行わせるのかと。 ○今村委員 臨時接種ということは、先ほどOKしました。そして、実費徴収も可能という ことに賛成です。努力義務の問題なのですが、臨時接種という枠に入れるからには、私は基 本的には努力義務という形でと思います。もちろん補償の問題はこれからありますので、そ の問題はある程度またもう1つの枠として議論するとしても、臨時接種だからこそ努力義務 にすべきだと思います。 ○加藤部会長 わかりました。努力義務にしたいということですね。努力義務にいたします と、今度は先ほど岡部先生から出てきました、いろいろな救済制度、その他の点が入ってま いりますので、その点は少しペンディングにさせてください。それが絡んでまいります。 ○黒岩委員 ウイルスというのはまさに生き物であって、先ほどの話を聞いても、一類、二 類というのは行ったり来たりすることもあるみたいな話なのですね。このような分け方の中 で、非常に疑問を持つことが実はあります。私は前回、前回の反省に基づくべきだというこ とは申し上げましたが、前は一類のようなものだったのが実は二類だったという話。いまは 専門家のご意見を聞いたら、二類だったものが一類に行く可能性もある。制度を作るときに は、なるべくシンプルに作るべきだと思いますが、いまのままでいくと、実費徴収が一類の ほうの臨時接種であるならば不可、新たなほうは可能となったときに、現実問題として金を 取ったり取らなかったりということがあると、非常に煩雑になるのではないかと思います。 だから、私は新たな臨時接種の所の実費徴収も、不可にすべきだと思います。 ○加藤部会長 そういうご意見もあります。 ○山川委員 私も新しいタイプの臨時接種、「臨時接種2」を設けるのは基本的に賛成なの ですが、1と2の違いを考えたときに、それによって国の公的関与の仕方、したがってまた 被害が起こった場合、給付水準をどうするかという問題、費用徴収をどのようにするかとい う問題、全部関連してくると思います。あるインフルエンザ、新型が上陸してきたときに、 これを従来の臨時接種でいくのか、新型の「臨時接種2」でいくのか、その振り分けが国民 の目から見てよく納得できるように、いつどういう手続でやるのかということは、やはりき ちんと決めておく必要があるのではないかと思うのですね。それがあると、国民の納得も得 られるであろうし、ある時点であるインフルエンザが上陸してきたときに、あるいは危険が あるときに、できるだけ右往左往しないように、客観的な手続、手順を決めておくのは必要 かなと思います。 ○加藤部会長 いまの山川先生のご意見で、大体収束できているというように座長は考えま すので。 ○生活衛生課長 先ほどのご意見で実費徴収の件です。臨時接種の性格は、ご説明しました ように、現在想定しているのはH5N1といったような、極めて病原性が強いようなもので すので、そういったものはまさに努力義務を課すということになります。努力義務を課すと いうことで、短期間で接種をしていくということになりますので、費用負担についても、実 費徴収をせずに行政の責任でやっていくという形になっていきます。  今回の新型インフルエンザについては、病源性などから見て、当初の見立てということで 言えば、季節性に近いのではないかといったことから考えると、努力義務を課してやること については不自然さがあるということでしたので、努力義務を課さないことになります。す ると、他の二類の類型のものなどとのバランスなどを考えると、実費徴収をやるのはバラン ス上よいという整理になってくると思います。したがって、そういう類型ごとのことを考え て、費用の徴収なりを考えていく必要があります。臨時からいろいろ移行するというのがあ りますので、移行するときに判断基準、あるいは手続なりをはっきりさせて、混乱が生じな いように移行させていくといったものは必要だと思います。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務次長 くどくなりますが、補足的に特に黒岩先生が いま最後におっしゃった論点です。資料2の2頁の上、2×2テーブルのオレンジ色の所で す。今回の問題設定は、オレンジ色を作るべきかどうかというところなわけです。もし黒岩 先生がおっしゃるように、やはり努力義務をかけるべきなのだ、もしくはいくつかご議論が あったように、実費徴収を不可能とすべきなのだということであれば、それは現行の臨時接 種で十分対応できているわけなのです。問題設定としてはそれでは対応できないものについ て、やはり法で受け止められるような形をすべきではないかということで、とりあえずこの オレンジ色を今回、緊急臨時的には作らせていただくのはどうかという論点が1つです。  2点目は、我々もこれが完全なもの、未来永劫このままでいくべきだというように考えて いるわけではなくて、むしろ黒岩先生、岩本先生、もしくは岡部先生からご指摘いただいた ように、流行した緒端のときには、具体的にどこに行くのかわからない場合があるというこ ともあり得るので、将来的にこの一類/二類、もしくは臨時/定期という全体の枠組みをどう 組み直すべきなのかということについては、少し腰を据えて、しっかり議論させてもらいた い。ただ、緊急応時的に、この右下の部分だけ穴が開いているままということで、1年、2 年そのまま放っておくというのもなかなか難しいので、とりあえずこのオレンジ色の所はパ ッチを当てさせていただいて、そこは左のもの、つまり努力義務がかかっているもの、もし くは徴収が不可のものとは違うものとして整理をさせていただいて、大改正の大議論につい ては、是非我々としてもやらせていただきたいと、こんな理解です。 ○加藤部会長 議論が行ったり来たりしておりますので、部会長としてまとめます。先ほど からお話しているように、特措法でずっとこのままやっていって、また新たなものが出てき て、また特措法でやるということになりましたので、新たな臨時接種として、現在あるもの のほかに、先ほどお話したように1と2を設けましょうということでは、各委員が意見が一 致しているところです。そこは確認させていただきましたので、そのフレームワークはもう これから先、話題を広げないでいただきたいと存じます。  それに基づいてくる努力義務を課すか、課さないかということについては、先ほどお話し たように救済制度であるとか、ワクチンの確保とか、ワクチンに対する補償とか、そういう ことが絡んでまいりますので、それは次回までに事務局に用意させますから、その辺のとこ ろは次回までお待ちくださいと、こういうことで取りまとめさせていただきたいのですが、 よろしいでしょうか。  ありがとうございます。続きまして、論点の2に入らせていただきます。 ○岩本委員 質問ですが、この部分は終わりですか。 ○加藤部会長 時間があったら最後のところでやると、先ほどからお話しております。私は 少し話題が逸れているような感じがしますので。続きまして、2つ目の論点です。資料4番、 5番、「新型インフルエンザ等の世界的流行(パンデミック)の対応」という所で、パワー ポイントの別添のスライドでいくと4頁です。この点について、各委員のご意見・ご質問が ありましたらいただきたいと存じます。 ○岩本委員 実際私は先ほどの点とも関係あると思うのですが、予防接種法に規定されてい る疾患は、基本的にはワクチンで予防する以外治療法がないというのがほとんどですが、中 には治療薬があるものもある。インフルエンザの場合、治療薬は既に存在し、いま開発途中 の薬もある。一方でワクチンに関しては、先ほど黒岩委員から質問のあったように、昔は一 類疾患だったインフルエンザを二類に移したという経緯もあるように、いまのインフルエン ザワクチンはベストなものではないという認識があるわけですね。企業に全く新しいものを 作っていただくので、国が非常に弱い立場にあると考える必要はないと思います。治療薬も あるのだし、新型のインフルエンザのワクチンは、現行法では季節性のワクチンと抗原性を 変えたものだけなので、そこは是々非々で、しっかりと行政のほうで企業といくらで補償す るとかいう議論をしていただけば、企業に対する補償はあっていいと、私は思います。 ○加藤部会長 いまお話になったのは、ワクチン等確保するときの法的な対応を講じるとき には、損失補填等のことを考案して、メーカー側または製造業者側との、そういうことです ね。 ○岩本委員 2-1ですね。 ○加藤部会長 そういうことが関わっておりますが、その点についても冒頭に申し上げまし たとおり、種々検討する事項が入っておりますので、論点の2-1の所は次回、より正確なス キームが出されるものと思います。ほかではいかがでしょうか。国が優先順位を定めるとい うことに関して、先ほどの宮崎先生の話と同じになってきますが、都道府県または市町村に、 国が接種の優先順位を定めて、県または市町村の方々に指示をして、優先順位の仕組みを導 入することができる。すなわち、資料1の論点の2-2です。従来は都道府県が定めていたと ころですが、これはまた一定のルールが厚生労働省内だけではなく、何らかの手続が必要で ある可能性もあるとは想像いたしますが、とりあえずは国が接種の優先順位を定めて、そし て県または市町村にその優先接種の仕組みの導入等を指示することができるということが、 資料1の論点の2-2です。そのことに関しては市町村如何でしょうか。 ○岩本委員 やはりインフルエンザウイルスの特殊性を考えるべきだと思います。季節性ウ イルスになってしまえば、わりと皆さんが安心する一方、新型となると、誰も経験がないも のが来るわけですが、その新型も、新型ウイルスの種類によって病原性がどのぐらいすごい のか、実際誰にもわからない。従って、私は初期は国としてこういう方針でやりますという のはあっていいと思うのです。 ○古木委員 行政の立場から言えば、新しい形のものですから、国の指示でやっていただく ほうがいいのではないかと思います。私は県境という境の町なのですが、広島県と山口県の 取扱いが違うとか、県境にある部分の町はたくさんあると思うのです。だから、国が指示し ていただくほうが、我々は対応しやすいと思います。 ○岡部委員 今回もそうですが、やはり当初に限られた量で限られたワクチンを使うには、 当然、接種順位を決めなくてはならないわけですね。それはH5N1も含んだ新型インフル エンザガイドラインのときにも、そういう場合には優先接種を付けるということが決めてあ ったにもかかわらず、結局、最終的にはワクチン問題が動き出してからその順番が決まって きたり、あるいは現場でもそんなこと本当にやるのかといったような声があったわけで、そ のような仕組みを前々から決めておくということの意思決定を明らかにしておくことが必 要だろうと思うのです。決まってから市区町村が大変になったのは、それから書類を作った り、どういうものが要るか、あるいは値段がどうかということが決まってきたので、やはり これも反省点から立てば、十分こういうことはあり得るので、これに対して行政も、一般の 医療機関も含めて、通常の予防接種と違うのだということは、きちんとアナウンスをしてお いたほうがいいのではないかと思います。それは一種のリスクコミュニケーションであった り、クライシスコミュニケーションということにも結び付くことだと思うのです。ですから、 基本的にはこれは最初の段階では優先順位付けは十分に必要であるということではないか と思います。 ○今村委員 今回の優先順位ということには賛成です。ただ、直接接種したい人にいくまで の間の介入の仕方が、都道府県が入ってきたことによってタイムラグというか、非常に複雑 になりました。また、医療機関からの申請で特に問題だったのは、基礎疾患です。この前に 議論もあったように、ほかのものは人口等でわかりますが。だから、その辺りは次回からは もう少し工夫と簡素化が必要だと思います。 ○加藤部会長 いずれにしても、とりあえずのところは、国が優先順位をつけるということ で、県、市区町村の何らかの関与を国が与えるというようなスキームでしょうか。事務局は そんなスキームで提案されたと思うのですが、それでよろしいですか。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 先ほどおっしゃっていただいたとおり、資 料2の7頁の下の所で、厚生労働省が疾患だけではなくて対象者、もしくは優先対象者も決 めた上でお願いするということです。都道府県にお願いするにしろ、市町村にお願いするに しろ、順番はきちんと決めたほうがいいとは思うのですが、例えば具体的な開始日みたいな ものについては、県内のそういう対象の人の数と、それから供給との関係とかいろいろなも のがあって、国で日にちまで決めてしまうとなかなか難しいという声が今回もありました。 その辺の具体的な、細かく言うと国でどこまで決めて、都道府県なりにどこまで柔軟性を持 っていただくかというのは、ご議論いただく中で我々としても決めていきたいと思います。 ○加藤部会長 次は、資料1の論点の2-3です。ワクチンの供給調整という所ですが、これ は起きるかわからないパンデミックの話ですので、これも今後の話合いになろうかと思いま す。今回は比較的ボランティア的にメーカーに依頼していたところで、このワクチンの供給 調整というものは、法の下での支配にはなかったということで、法で協力をするような規定 というものがうまくできる仕組みが必要ではなかろうかと考えます。これはメーカーまたは 業者側との話合いが必要かとも思いますが、今後こういうことが起きたときに、あまりボラ ンティア的にやっていただくというよりも、ある程度何らかの規定を設けておいたほうがよ ろしいのではないかな、という先ほどの提案であったかと思いますが、この件に関してはい かがでしょうか。山川委員、何かありますか。 ○山川委員 仕組みの問題だと思いますが、リーズナブルな案を1、2考えていただいて、 次回に諮っていただくのがよろしいかなと思います。 ○加藤部会長 というご意見が出ましたので、事務局、用意できますか。そのようにさせま す。ほかに、この件についてよろしいですか。もう1つ、医療機関に対して、論点の2-4 です。医療機関における適正な接種実施の確保と先ほど説明がされましたが、これは医療機 関等との話合いも、今後詰めていく必要があると思います。例えばこれは聞いた噂ですが、 今回は対象者外の者にも接種をしていたという事実もある、ということが漏れ伝わっている ことなどもあります。これから飯沼先生に一言話していただきますが、そういうことが正し く行われているかどうかという調査を行うような権限的なもの。権限と言うとちょっときつ いですが、本当にそのように行われているか。優先順位を付けても、優先順位に従わない方 も中にはいたらしいという噂を私は聞いております。そうすると、優先順位を付けても意味 がないのではないかということになりますから、きちんと優先順位を付けたからには、優先 順位を付けたようにやっていっていただけているのかどうか、すなわち何らかの規定を策定 しておくべきか否かです。言葉はきついけれども、そのような調査権限の規定のようなもの を今後、医師会レベルでご相談していただいて、進めていったらどうかというのが論点の意 であろうと思いますが、飯沼委員のお答えを求めます。 ○飯沼委員 先ほどから言いたくてうずうずしていたので、ちょうどよかったです。加藤先 生がおっしゃるような事実も、私は聞いております。皆無とは申しませんけれども、大多数 の先生方は、この忙しいのに自分のことも顧みず投げ打って努力されるということは、これ はまずご報告しておかなければいけないということです。若干ある不心得者は、我々が自浄 作用でそれはきっちりやるということがいちばん正しいと思います。  それから、いま座長が逆のことをおっしゃられましたが、最近は重複予約。私は初めて聞 いた言葉で、これはびっくりしたのですが、そういうことがあって、各優先順位の高い人た ちが、いくつもの医療機関にワクチンを予約すると。したがって、その分は打たなかった所 では余るということ。これが非常に増えていて、それが都道府県医師会長から日医の唐澤会 長に直接の要望書が来るぐらいあるのです。したがって、これは何とかしなければいけない。  もっとあるのです。例えば先ほど費用のところで言いかけて、私はやめましたが、要する に子供の医療費は無料ですから、このぐらい軽い疾患なら、かかったほうがワクチンを打つ より安いと。そういうことを平然とおっしゃる親御さんがいるわけです。こういうことは、 そういうことを全部含めて、それから私は昔から言っていますが、ワクチン・プリベンタブ ル・デジーズに、こういうのがあってという教育を、お母様たちから、国民みんなにしなけ ればいけないというのが、行政も医師会も当然の責任・義務ですので、そういう機会はちゃ んとやりたいと。  もう1つ、我々のほうの責務としては、季節性インフルエンザのワクチンの在庫を調べて おりまして、かなり改善をしてきました。それでも数パーセントの先生方は返却ができると いう商習慣、薬と同じようなことをやっていて、こういう生物製剤の返品ができるなどとい う、そういう愚かしいものの考え方でしている人もいるわけです。それも我々は一生懸命や って、返品率が非常に少なくなったという事実もあります。ありますので、それもまた努力 しようと思います。今度の新型でも、1回納入して、返さなければいけないという状況に追 い込まれそうなのです。  その裏返しといいますか、もっとはっきりしたエビデンスは、新型に対して全国にアンケ ート調査したところ、全国でわずか1県、200人分だけの予約があったということで、オー ルないのです。ということは、いろいろなことでだぼついているわけです。先生方は、返品 不能だという話になって、確実に来られる人をセレクトして打つという状況になっています ので、多重予約とか、キャンセルするという人がどんどん増えている。それはアジュバント の説明が不十分だということはあると思いますが、そういうことがいろいろな複合でありま すので、我々ができるところはそれでやらさせていただきます。以上です。 ○加藤部会長 力強いお言葉で、ありがとうございます。重複予約というのは、ご承知でな いかもしれませんけれども、ワクチンが不足しているという事態を鑑みた親御さんたちが、 ある方が自分の子供がワクチンほしさに、いろいろな先生の所に予約を取ってしまったとい うことですね。したがって、余ってしまったということですね。実際に、いまのところはワ クチンが間に合っているからいいけれども、間に合わないと、とんでもないことになります よと、こういうことです。  もう1つVPDの話。ワクチン・プリベンタブル・デジーズに関しては、インフルエンザ に限ったことではありません。したがって、今後これが片付いたあと、積極的な論議をした いと存じます。それから、季節性ではうまくいっているということですので、今後も是非、 医師会に周知徹底していただいて、全国の医師に教育をしていただくということを望みます。 ほかにご意見はよろしいですか。 ○宮崎委員 悪質なものはやはり監視していかないといけないのですが、例えば20人分1 瓶を開封してハイリスク者1名に打って、19人分余る。これを捨てるのかという時に、捨 てるよりは優先順位が低い人に打ったほうが国民のためにはなるので、優先順位を付けなが らも運用は柔軟にやっていくというようなことでないと、足りないワクチンをみすみす捨て てしまうということになりますので、お考えいただきたいと思います。 ○加藤部会長 わかりました。よろしいですか。確認しますと、先ほど法的なことについて は、損失補償等のことが岩本先生から出ましたが、その点については若干まだ考慮しなけれ ばならないことがありますので、今回は明確な答えが出せません。それから、優先順位を決 めることに関しては、皆さん、国がまず優先順位を決めていただくと。細かいところに関し てまでは決められませんので、そのところは県または市区町村にお任せすることになるであ ろうということ。  それから、販売業者や卸業者に対する論点の2-3ですが、これは協力をできるような仕組 みが必要だろうということ。それから、先ほど医師会から出ましたように、医療機関に対し て適切な判定をしていただくということに関しては、医師会と綿密な協力体制をとっていた だいて、解決をしていただくということでまとめておいてよろしいですね。  次にまいります。3つ目の論点です。臨時接種として接種してまいります場合に、今後そ の定期の接種化について進めていくということが、先ほど事務局から出てまいりました。資 料1の最後の頁、それからパワーポイントの8頁からです。これは主に定期接種にもってい く必要性があるところにおいて、現在の特措法においては、実際、救済のところと補填・補 償のところは決まっているだけです。論点の3-1を見るとわかるのですが、定期接種化の要 件や道筋です。そのところをどのようにもっていくかということです。もう一度事務局から、 臨時接種からおいて定期にもっていく必要性といいますか、そのところをお話してください。 委員の方々、疲れてきて忘れていると思います。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 今回のH1N1、それから新型インフルエン ザのようなものについて、先ほど1の論点にありましたように、新しい類型で、仮に新臨時 接種と呼ぶこととして、それで対応することにした場合に、永久にそこに置くということに はなかなかいかないだろうと。そこはパワーポイントの10頁の下にあるような一定の要件、 病気の要件、ワクチンの要件、その他の要件、こういう要件が整えば定期に移っていくこと は、当然あり得るのではないかというその中身の話が1つ。それから、山川先生がおっしゃ ったような、そのときにデュー・プロセスとして、中身はこうであるとしても、どういう仕 掛けでそれを決めるのかというのも、確かに他の論点としてはあるとは思いますけれども、 ここでご議論いただきたいのは2つの点。3-1については、まさに定期接種化していく道筋 として、要件として10頁の下に書いてあるようなものを主に考えて、臨時もしくは新臨時 から定期に移っていくというこのおおむねの考え方、これは先生方のおおむねのご了解をい ただけるかどうかということだと思います。もちろん、もともと定期に入っているものは、 必ずしもそうではないかもしれませんが。  もう1つ、3-2ですが、これはインフルエンザに特化した問題です。インフルエンザにつ いては、過去の法改正の経緯から、平成13年法改正のときに、通常は対象者は法律で規定 しない、対象疾病だけ規定して、対象者は政令という下のレベルで決めるのが通常ですが、 インフルエンザの定期のみについては、高齢者に限定することが法律の附則に書いてありま す。例えば国会が開かれていない時期に、臨時から定期に移さないといけないときに、これ は我々として往生してしまう、もしくは法律に基づかない接種にしなければいけないような、 少し大変な事態になってしまいますので、そういうことが一定の蓋然性をもって考えられる。 先ほど図をお示ししましたが、今回のH1N1なり新型が、高齢者だけではなくて子供とか、 それ以外の基礎疾患を持っておられる方にも、やはり接種をする必要性があることに一定の 蓋然性があるのであれば、いまこの段階でそこの部分だけは、法律上の限定を少し緩和をし ておくと、全体ではなくてですね。 ○加藤部会長 わかりました。要するにインフルエンザで絡んでくるのは、定期に持ってい った場合に、法律でもっていまお話がありましたとおり、平成13年のときになりましたが、 そのときに私も関与しておりました。従来であると政令でいくところが、それが国会を経な ければならないということになって、法律の中に名称がインフルエンザというだけではなく、 その中に年齢も入ってきたというのが、ほかのワクチンとちょっと違う定義です。したがっ て、これから飯沼先生、岩本先生、岡部先生、廣田先生、宮崎先生の順番でお聞きします。 高齢者以外にも接種を行う可能性があることを、医学的な根拠付けですね。要するにパワー ポイントの10等をご覧になりつつ。 ○岩本委員 何頁ですか。 ○加藤部会長 パワーポイントの10頁。岡部先生からお願いします。 ○岡部委員 今回はインフルエンザに特化した議論ということなので、インフルエンザに集 中しますが、例えばパワーポイントの10頁の下の定期接種として位置づけるに当たっての 評価については、考える項目については疾病がどういうものかを理解しないと、切替えがで きないわけですね。重症度、予後、あるいはワクチンの接種率とかですね。ところが、イン フルエンザをとっても、現在のサーベイランスシステムでは重症例がわからない、経過がわ からない、治療の結果がわからない。つまり、患者さんがどの年齢層でどのぐらいいるとい うしか、サーベイランスができていない。そういうことをしっかりとれることを含めて、サ ーベイランスの強化をしないといけないだろうと思います。  今回の新型インフルエンザの動きでも、かなりこれまでもサーベイランスの強化と、国の ほうでも臨時にいくつかの方法をとって、急遽サーベイランスを行ったものもあり、ある程 度のデータは出ましたが、それは不十分なところも多いし、バイアスもかかっているし、ま た急にシステムを切り替えることによって現場はさらに混乱したということがあると思い ますから、これは是非検討をお願いいたします。もう1つ、ワクチンについてもいいですか。 ○加藤部会長 ちょっと待ってください。いまサーベイランスの話が出ましたので、疫学的 な観点から廣田委員、如何でしょうか。 ○廣田委員 当然のことながら、ほかの年齢グループ等、あるいは基礎疾患を持つグループ 等で、きちんとした調査をすれば接種を推進すべきだと、そういうグループが現れる。 ○加藤部会長 高齢者にかかわらず。 ○廣田委員 当然考えられると思います。 ○加藤部会長 この件はよろしいですか。岡部先生どうぞ。 ○岡部委員 もう1つはワクチンについて、これも効果・安全性を見ていくためには、疾病 の動きだけではなくて、原因の病原体の動きであるとか、あるいは本来であれば血清疫学調 査が非常に重要な意味を持っているのですが、現在、血清疫学調査をやると、効果であった り保有率がわかるのですが、これはすべて研究事業でやらないといけないので、臨時に研究 システムを組み立ててやっても、非常に膨大な時間と費用がかかるわけで、この仕組みを事 業としてあらかじめ作っておかないと、切替えに必要なヒント・データーなどがうまくでて こないだろうと思います。  それから、ワクチンを接種した場合に、例えば副反応がどういう病気が起こるか、ギラン・ バレー症候群とか、ADEMとか、あるいは急性脳症、そういう疾患が問題になるのですが、 これもきちんとした情報として、通常からベースラインをとる仕組みがないということで、 サーベイランスの改善が必要だろうと思います。しかし、それをやるためには、ある程度の 人と費用が要るわけですが、それをきちんと確保しておくことが必要ではないかと思います。 ○加藤部会長 大変貴重なご意見です。事務局もノートオンしておいてください。岩本先生 お願いします。 ○岩本委員 新型インフルエンザも、何シーズンかたてば必ず季節性になるわけです。今回 のような新型インフルエンザウイルスに対して新しい臨時接種の枠をつくって、新しい臨時 接種では接種年齢を広げよう、という議論だと思います。それには賛成です。現在季節性の インフルエンザワクチンは、二類定期接種対象となっているわけですが、歴史的な経過を振 り返ると、その接種対象年齢まで今回変更するのは慎重であった方がいいと思います。新型 インフルエンザを新しい臨時接種の対象から定期接種の対象に変更する時には、接種対象年 齢もそれに応じて変更されると考える方が筋が立つように考えます。また、海外メーカーは じめ、次のシーズンには、現在いう新型インフルエンザワクチンと季節性のワクチンが同じ バイアルにまとめられたものも出てくる可能性があります。こういう製剤をどう扱うのか、 混乱も生じえます。 ○加藤部会長 わかりました。飯沼先生お願いします。 ○飯沼委員 ほとんど言い尽くされてしまったようですけれども、間もなく季節性になると いう現実があるということと、インフルエンザの薬の開発は、これから夏に向かって、とて つもない議論が出ます。それから、もしおやりになるなら、エビデンスに基づいて年齢を区 切って定期化するということがいいのではないかと思います。以上です。 ○加藤部会長 定期接種にもっていく場合においては、いくつかの議論があると思います。 1つは、いまはインフルエンザという名前だけではなくて、法律上、そこに年齢の縛りがあ るわけですが、そのハードルを取り払うのは、かなり高い可能性も十分に推察できる。した がって、先ほど岩本先生がおっしゃったけれども、季節性になってしまったときにはどうす るのという話ですが、発熱度のパーセントは20数パーセントぐらいであると言いますが、 これは座長として発言していいかどうか、申し訳ありません。小児科医として見てみますと、 パワーポイント10の新型インフルエンザによる年齢別死亡者数が、やはり低年齢層に傾い ていること。高齢者のみにこれを特化することに関しては、これは部会長としてはではなく て、小児科医としては、如何かなという感じを私は受けます。それは単なる感想です。  そういう意味で、すべての年齢者層を外して定期化にもっていくという方法も、1つある でしょう。もう1つは、何も変えないで、そのまま定期、それは岩本委員が言ったとおりで すね。何も変えず、いままでのものを高齢者だけに限るというわけだから、それを定期化に 持っていくということは、たぶん岩本委員はそういうことをおっしゃったのだと私は思いま す。 ○岩本委員 先生のご説明を必ずしも了解したとは思わないので、完全に同意かどうかわか らないですが。 ○加藤部会長 2番目としては、例えばH1N1のみの高齢者層にはまっているところを取り 外していただこうかなという考え方もあろうかと思うし、新型全体に対して、今回出てくる かもしれないことも、すべてに対して高年齢者を法律上、定期化するときには取り外してい こうかなと。4種類ぐらいのことが、部会長としては頭にありますが、なかなかここでは決 めにくいこととは思いますけれども、何かご意見はありますか。 ○廣田委員 定期接種化のときは、やはり疾病の重篤度ということが、まず真っ先にくるも のだと思います。ここでちょっと気になるのは、ワクチンの安全性とか有効性について、ど こまで堅固な論拠を必要とするかということ、これは非常に問題になると思います。例えば 2002年に米国で24カ月未満の小児に接種をするように勧告したときは、データはほとん どありませんでした。この年齢層で入院リスクが高いから勧告したと。その接種の効果はゼ ロ以上だということで、とにかく接種すべきだと言っています。  それから、2005年に神経・筋疾患の患者も勧告しましたが、いまだに有効性を示すデー タはありません。神経・筋疾患を持っている患者が重篤化するということだけで言っており ます。それから、高齢者についても、ほとんどのデータは高齢者施設のデータです。そうい った所はスタディをやりやすいからです。地域住民を対象とした高齢者の有効性研究は、世 界で堅固な論文は5つあるかないかぐらいですね。そのぐらいですから、あまり有効性・安 全性に堅固な論拠を求めると難しくなると。 ○加藤部会長 ということは、具体的に言いますと、廣田先生はどういうことを提案されて いるのですか。 ○廣田委員 だから、疾病の重篤度です。 ○加藤部会長 わかりました。 ○岩本委員 加藤先生が誤解されているといけないので、あくまで想像ですけれども、おそ らく外国メーカーがいま新型と言っているH1N1をいままでの季節性ワクチンと混合した ような製剤を作るだろうと私は予測します。そういうときに、一本の中に新型インフルエン ザワクチンと季節性のワクチンが入っているような製剤の年齢対象を広げるのか。すなわち、 いまのインフルエンザとしての定期ワクチンの年齢層を広げるのか、それとも新しく出てき たインフルエンザが病原性の高い間の数年間のみ接種年齢枠を広げるのかという議論だと 私は思っています。今日もし新しい臨時接種の枠を作るのであれば、その枠で独立した製剤 の接種対象年齢を広げるのは、私は賛成です。子供たちに打つ必要があると思います。  ただ、10数年前に、子供たちに打っていたのを一旦中止し、その後高齢者だけを対象に 復活したインフルエンザワクチンをこの際一挙に接種年齢を広げるという議論は、私はちょ っと納得できないですけれども。これはもっとインフルエンザをやっている先生の意見を聞 かないと、私はインフルエンザの専門家ではないから。 ○加藤部会長 それは、私もそのときの議論に関わっておりましたから、詳しいことは存じ 上げておりますが、この場では申し上げません。高齢者以外の接種が可能となるようにして おくことが必要かどうかという、この論点2について、ほかにご意見があったら伺います。 ○澁谷委員 私も子供に打てるように、高齢者という縛りは外すほうがいいと考えます。年 齢だけではなくて、もともと高齢者のときにも、腎疾患とか心臓疾患という慢性疾患の人に も、ということであったわけですが、今回のことも考えますと、合併症のある人なども考慮 しなければいけないと思います。そこを柔軟に対応できるようにということを考えると、い まのこのままの定期で縛りがあるのはやりにくい、ということを思います。  先ほど定期に位置づけるときに重篤度ということが重要だ、とおっしゃっていました。そ して、エビデンスということのデータがなくても決められた例のこともおっしゃっていまし た。ですので、何より速やかに定期に移すということが重要ではないかと思いますので、例 えば抗体価が上がれば、それは効果があったと見るとか、先ほどの子供の入院が多いから子 どもに必要とか、何かそういうわかりやすいもので決めても良いということにしていただい たほうがいいと思います。 ○加藤部会長 最後に、宮崎委員お願いします。 ○宮崎委員 個別問題と一般論がごちゃごちゃになっているような感じがしていますが、定 期接種への道筋というのは、臨時接種から定期接種への移行にしろ、任意接種を定期化する ときにしろ、同じ議論が必要で、ワクチンの効果と疾患の蔓延度や重症度を天秤にかけてや っていくことになるだろうと思います。  それから、もともとインフルエンザの高齢者がなぜ定期かといえば、それは高齢者がハイ リスクだからだと思うのです。高齢者以外にも、今回の新型インフルエンザワクチン接種で は重症心身障害の方とか、透析の方たちなどのハイリスク者に優先接種したわけですから、 年齢にこだわらず接種できるようにしたほうがいいだろうと思います。もともと対象者を法 のレベルで縛るということには違和感があります。  子供にどうするか、岩本先生が言われましたが、今流行中のインフルエンザの重症度と、 現行のインフルエンザワクチンの有効性など、いろいろなことがあるので、本当に全小児に 勧奨するのかどうかというのは、また別の議論をやっていったほうがいいだろうと思ってい ます。 ○加藤部会長 だいぶ白熱した議論が入ってきましたが、前回と変わりまして、かなりフォ ーカスが絞られたディスカッションができたのではなかろうかと思っております。一部の委 員にはご不満な点もあろうかと思いますが、大体、事務局が用意した提案に各位がご賛成な さったというように部会長としては判断させていただきます。実は参考資料集が配られてお り、その下の「新型インフルエンザ対策」の下に「議論が必要と考えられる事項」というこ とが、いくつか書かれております。これらについては、今回の今日まさにやっていただいた ことがすべて片付きましたあとの部会で討論をしていただきますので、そのようなことはあ らかじめ各委員の方々はご意見をお持ちの上、事務局で用意した線に沿って議論を深めてい っていただきたいと思います。残念ながら本日はここのところの議論は行わないことにいた しますので、よろしくお願いいたします。  次回に関しては、本日、各委員の皆様からご意見をいただきましたので、予防接種部会と しての取りまとめ案を提示させます。それを叩き台にして、次回は議論を行っていただきた いと存じます。 ○山川委員 部会長がまさにおっしゃっていることですが、次回の議論のために、事務局か らいろいろご用意いただくのだと思うのです。その中で、特に留意していただきたいことを 2つ、主として法律家的な観点から申し上げたいのです。1つは、新しい臨時接種のカテゴ リーを設ける。努力義務はないけれども、国が情報提供した上で、一定の勧奨をするという ことだと思うのです。努力義務を国民に課すということと、それを課さないで国が勧奨する ということは、実質的にどういう違いがあるのか。いま努力義務を課しているときに、国が どういうことをやっているのか。第二類になったときに、国が関与して勧奨するという場合 と、どういう違いがあるのかということを整理して説明していただきたいという点。  それから、ワクチンメーカーに対する損失補償ですが、これは外国企業と国内企業と、両 方あるわけです。損失の範囲をどのように考えていて、どういう要件が満たされたときに、 いつ国がメーカーに対して補償するのか。典型的には、接種による被害が起こったときに、 被害者がメーカーに対して製造物責任を追求して、裁判所で一定の金額の支払いを命じられ たときに、その上で国にいってくるのかなと思います。これは多国籍企業との取引も含まれ るわけで、国際的なそういう場合の取引の際の標準的な契約条項もあるわけなのですが、損 失補償の内容はどういう要件を満たして、どういう内容になるのか。特に財政法との関係も あると思いますので、そこをもうちょっと具体的に説明していただければと思います。 ○加藤部会長 今日のディスカッションの中で、その議論がなされましたので、おそらく事 務局のほうの頭には入っていると思いますが、いま念押しのご要望ですので、是非よろしく お願いいたします。以上で、本日の会議は終了でございます。最後に、事務局から次回の予 定について、ご説明をお願いいたします。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 最後に山川委員からいただいた2点も含 めて、もう少し具体案をまとめた叩き台という形で、次回提出させていただきます。次回は 2月9日14時から開催いたします。場所等はまたご案内いたします。これに引き続いて、 日本脳炎の小委員会を開催させていただきますので、小委員会の委員の先生方におかれまし ては残っていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。 ○加藤部会長 本日は、長い時間にわたりまして、十分かどうかわかりませんでしたが、ご 議論いただきまして誠にありがとうございました。これをもちまして、第3回の予防接種部 会を終了いたします。ありがとうございました。 照会先:健康局結核感染症課(03−5253−1111 内線:2077)