10/01/21 第9回チーム医療の推進に関する検討会議事録 第9回チーム医療の推進に関する検討会 日時 平成22年1月21日(木) 15:00〜17:00 場所 厚生労働省専用第18〜20会議室(17階) ○永井座長  ただいまから、「第9回チーム医療の推進に関する検討会」を始めます。ご 多忙のところ、委員の先生方にはお集まりいただきまして、ありがとうござ います。最初に事務局から、委員の出欠状況、資料の確認をお願いします。 ○野村看護課長  本日は、山本隆司委員が御欠席とのことです。ここでカメラは一旦退席を お願いします。  お手元の資料の確認をお願いします。議事次第、構成委員、配置図、資料1 として「主な論点の整理について」、それ以下は参考資料です。参考資料1は 「チーム医療の推進に関する検討会の団体要望一覧」で、4つの団体から出て いるものをまとめてあります。参考資料2が「チーム医療において薬剤師が行 う業務について」ということで、山本信夫委員から出されたものです。それ 以下は、チーム医療の推進に関する検討会の議事録で6回、7回があります。 不足資料等がありましたら、事務局にお申し付けください。 ○永井座長  本日は、各団体から要望書を頂いていますので、その内容について事務局 よりご紹介いただくということにします。その上で、事務局が提出された「主 な論点の整理について」、これを参考にしながらチーム医療の推進に関する論 点について、皆様方からご議論いただきたいと思います。早速、事務局から、 資料のご説明をお願いします。 ○石川(義)補佐  参考資料1をご覧ください。「チーム医療の推進に関する検討会 団体要望 一覧」という資料を用意しています。日本臨床衛生検査技師会、日本外科学 会、日本消化器科外科学会、日本心臓血管外科学会、日本胸部外科学会の連 名の要望書、それから日本NP協議会からの要望書、さらに日本看護系大学協 議会、高度実践看護師制度推進委員会からの要望書と4点の要望書があります。 これらについて、事務局が代わりに説明をいたします。  最初の頁ですが、日本臨床衛生検査技師会の要望書です。臨床検査技師制 度については、平成17年に法改正が行われ、衛生検査技師という制度から臨 床検査技師という制度になり、その際に診療の補助として、採血や生理医学 的検査といった業務が追加されているという経緯があります。  その後の経緯などを踏まえ、医師でなくても対応が十分な業務、あるいは これまでの検査に付随した業務など、医療の現場においてより効率的に、か つ、精度の高い検査業務の提供が行われるように、新たな臨床検査技師のフ ィールドを求めてまいりたいということで、具体的に4点の提案をいただいて おります。  1点目に、「臨床検査データの精度保障と標準化に関する事業」という要望 があり、臨床検査データの標準化による報告値と基準範囲の統一が不可欠で、 こういった試みが電子カルテシステムの普及、あるいは信頼される臨床検査 データの国民への提供に役立つことから、日本臨床衛生検査技師会でいま実 施されている公益事業である「臨床検査精度管理調査」、「臨床検査データ標 準化事業」について、予算化並びに評価いただきたく要望するということで す。  2点目は、「微生物学的検査の検体採取」です。医療の現場において、一部 の検体採取行為は採血と同様に、検査技師の一連の業務として認識されてお り、一定の条件の下で喀痰、表皮粘膜等の検体採取が可能となるよう検討さ れたいと、これが2点目です。  3点目は、「血圧測定」です。臨床検査技師の行う各種検査、これに付随す る「自動血圧測定器による血圧測定」の行為について、介護等の現場と同様 に一定の条件の下で行われるよう取り扱われたい、ということが書いてあり ます。  4点目は、「生理学的検査の項目追加」です。施行規則第1条に16項目ありま すが、現在、これが臨床検査技師等に関する法律施行規則の第1条で定めてい る生理学的検査の内容ということで、ここに新たに「嗅覚検査化」「電気味覚 検査」を加えたい、というご要望です。  続いて、日本外科学会、日本消化器外科学会、日本心臓血管外科学会、日 本胸部外科学会の連名の要望書です。外科医の不足といったことを背景とし て、外科医とともに周術期管理を協働する、医師と看護師の中間レベルの非 医師高度診療師であるnurse practitioner(NP)、およびphysician assistant(PA)の養成といったことを取り上げておられます。  周術期の医行為について、別表にA.絶対的医行為、B.条件付相対的医行為、 C.相対的医行為と3群に分類したということが書いてあります。事務局から、 第2回の資料の中で、医師が行う医業あるいは医行為といったものの中でも、 看護師が医師の指示のもとに診療の補助として担える部分と、診療の補助の 範囲を超え、医師しか担えない部分と2つあることを説明したところですが、 おそらく前者がCに相当し、後者の医師しか担えない部分がAに相当すると思 われるわけですが、新しくBというカテゴリーをつくり、特定の教育を受けた 非医師による別紙表Bの行為を承認する、あるいはそれに係る法整備を要請す る、非医師高度診療師の評価認定機構を設立してほしいというご要望です。 別紙に具体的な行為とA、B、Cのランク付けがされていますが、詳細な説明は 省略します。  続いて、日本NP協議会からの要望書です。要望書の中にも書いてあります が、第8回検討会で、12月でしたが、ヒアリングでお話をお願いした草間先生 からいただいているということです。日本においてNPの養成教育などが、平 成20年度から始まっており、平成22年度以降、さらに増加する予定と書いて あります。具体的には「記」という所に4点あります。[1]NPの制度化に向けた モデル事業を早急に開始する必要があること。[2]NPが実施可能な業務範囲を 明確にし、その実行を保証する方策(通知、通達の発信、あるいは法令改正) を講じてほしいというご要望。[3]医療安全の観点から、NPに対して必要とさ れる教育方法、教育内容等を明確にしてほしいというご要望。[4]所定の教育 を受けた者をNPとして認め、制度の中で活用してほしいという要望があると ころです。  13頁以降になりますが、簡単に紹介をします。Iの「NPの制度化に向けた モデル事業の必要性」ですが、NPの活動実態とその成果等が、国民にとって 可視的になる必要があるので、モデル事業を立ち上げてデータを蓄積してい く必要があるのではないか、といったことが書かれています。  さらに、IIの「NPの業務・裁量範囲の拡大の具体例」ということです。こ れはNP協議会で考えておられる例をご提示いただいているということです。 詳細な説明は省略します。  IIIの「NPの業務範囲の拡大と制度的な保証」です。17頁から続いています が、18頁の最初の段落改行の所ですが、NPの業務範囲の拡大を制度的に確立 する方法としては、次の2つの方法が考えられるということで、[1]通知等によ り現行法令の拡大解釈という方法、[2]法令等の改正あるいは新たな法令の制 定といった方法をご提案いただいています。さらに、(3)ですが、NPのそうし た活動を支える制度整備(診療報酬上の位置づけ)といったこともご提案さ れているということです。  最後に20頁ですが、IVに「NPの教育のあり方・やり方」が述べられていま す。高度な看護実践はもちろんのこと、とくに医学モデルに基づく科目につ いての教育を、系統的に実施する必要があるということと、また、NP協議会 で教育の標準化に努めている、ということをご主張されておられます。この 中で紹介されているのを見ると、大学院の修士課程2年以上、あるいは最小必 要修得単位数を43単位とし、その中でも実習単位を14単位以上含めるといっ たこと、あるいは修了までの学生評価の方法といったことが書いてあります。  さらに、V「NPを資格化するための方策」として、第三者機関を設置し、 認定や試験を行うべきではないか、ということを要望として書いておられる ということです。  その他、日本においてこのような制度を導入した際に、どのような形で、 どういう名称を与えてやっていくかが最後に記されています。  続いて、日本看護系大学協議会の高度実践看護師制度推進委員会からいた だいている声明があります。日本看護系大学協議会ですが、専門看護師制度 の創設当初から、日本看護協会、看護系学術団体等々と協力して、その定着・ 普及に努力をされてきたということで、中ほどにあるように、平成21年2月時 点で認定された専門看護師教育課程が11領域、43大学院の121課程に上ってい る。さらに、15年の歴史を積み重ね、451名を輩出している状況であるという ことです。  25頁の最後のほうにあるように、平成17年から高度実践看護師制度推進委 員会を設置されたということで、この中で裁量権の拡大によって新たな役割 を担うことができるよう、現行の専門看護師教育課程を26単位から38単位ま でに引き上げ、フィジカルアセスメント、生理学・病態生理学、薬理学、診 断学、治療学を強化し、診断治療にかかる実習時間を大幅に増やすことが提 案されているということです。  また、このような新しい教育課程を修了して、看護のアイデンティティと より高度な専門性を持ち、ケアとキュアを統合させて治療過程を管理・推進 する拡大した役割を担う看護師の名称を「高度専門看護師」と呼んではどう か、また、この新たな資格制度として創設することを提案されているという ことです。かいつまんでの説明でしたが、以上です。  続いて資料1の説明もします。ただいま説明したのは参考資料1の各種団体 からの要望と。 ○永井座長  待ってください。論点整理に入るのですが、その中に薬剤師のことも書い てあるので、参考資料2で山本委員から「チーム医療において薬剤師が行う業 務について」という説明書が出ているのですが、先にそれをお聞きした上で、 論点整理でよろしいですか。そうしたら山本先生、できるだけ短時間にお願 いします。 ○山本信夫委員  わかりました。主な論点整理、資料が出ていますので、後ほど事務局から ご説明があると思いますが、御時間を頂戴して私の提出資料を説明します。 資料1の3頁の「その他のメディカルスタッフの役割の拡大」の(1)で薬剤師を 特に挙げていただきありがとうございます。そこには3点論点として整理され ていますが、ここに書かれている認識について私も同様な認識を持っており ます。チーム医療において薬剤師はどのようなことを行っているのかという ことについて、これまで何度か発言をしてまいりました。座長の永井先生か らも、やれること、これからやることを少し整理したらどうかというご意見 を頂戴したがありましたので、参考資料2にまとめました。  現行、薬剤師が置かれている現状はどうなっているかですが、チーム医療 の議論では、薬剤師が、多職種からなる、患者治療のためのチームのメンバ ー間で十分にコミュニケーションを取れていることが大事であって、最新の 情報を共有するという観点がまず必要です。とりわけ薬物療法については、 長年、高度化が進んでいるので、薬の専門家である薬剤師が、医師あるいは 看護師の方々とチームを組みながら、医薬品適正使用を含め医療安全にかか わることが大変重要であると理解しています。  病棟において、薬剤師を常駐させることが業務をうまく進めること、すな わち、安全につながると他の医療職種の方々から評価されているわけですが、 現在、必ずしも十分に病棟に配置されているわけではなく、本来、薬剤師が 行うべき業務である注射薬の混合であったり、副作用のチェック、その他薬 全般にかかわることを、医師や看護師の方々に担っていただいているケース も多々あるようです。  一方、在宅医療については、入院と外来、あるいは入院医療と在宅医療と いう整理の中で、これまで以上に業務の拡大が望まれているわけです。医療 機関と違い、常に医師・看護師・薬剤師がそばに居るわけではない状況下で すと、ますますチームを組みながら医師・看護師・薬剤師といった医療職種 が相互に連携を取って、我々薬剤師は薬の専門家としてそのチームの中で働 いていくということが、重要であるという確信を持っています。  こうした中で薬剤師については、平成18年度から6年制の教育が始まり、こ れまでの4年制とは違い、具体的な現場の実習を含めたかなり専門的な経験を 積んだ薬剤師が社会に出てきます。そうした薬剤師と医師・看護師の方々と の連携は当然必要だろう思います。さらに言えば、6年制の薬剤師が修得した 知識を現場で使っていくことも大事だと思っています、加えて、薬剤師の持 つ資質をより専門領域にまで高めて、その専門領域ごとに十分な知識を持つ 「専門薬剤師」といったものも、すでに医療薬学会が認定する「がん専門薬 剤師」あるいは、日本病院薬剤師を中心として進められている、感染制御、 妊婦・授乳婦、精神科、HIVといった領域別に、それぞれ専門認定が少しずつ 進んでいます。  現在、議論の中で中心的になるのは、医師不足等による医療崩壊をどう防 ぐかといった問題で、それぞれの医療職が役割分担を見直し、それぞれの専 門性を発揮して仕事をしていくことが議論され、そうした中で薬剤師を一層 活用していただくことが、問題の解決につながるだろうという確信を持って おります。そうした意味で、これまでの仕事はどのようなことをしてきたか を整理しました。また、薬の専門家として存在している薬剤師に、一層活用 できる環境をつくっていただきたいということが願いであり、現行制度の中 で、すでに行われていることも含めて、可能な業務を2頁以降にまとめてあり ます。  薬剤師の責務である処方せんに対する必要な疑義照会、あるいはその疑義 照会に基づく処方提案、さらに言えば患者が安全に医薬品、薬物治療が進め られるように、何が起きているか、例えばTDMであったり、あるいは副作用の 発生のモニタリングといったことを確認しながら、その予防と有効性の確認 をしつつ、医師や看護師などの他のメンバーとともに情報を共有し合うこと がいま行われています。  さらに、入院患者の方々が入院の際にお持ちになる持参薬等については、 それをチェック、確認をし、かつ、それを含めた上での服薬計画を立てる、 あるいは在宅も含めて緩和医療のための医療用麻薬の供給や在宅患者への医 薬品や医療材料といった物の供給についても、現在でもその物に関する情報 提供を含めて提供を行っています。  外来化学療法においては、レジメンの作成に積極的にかかわりを持ってい ますし、さらに言えば、インフォームド・コンセントの立場からも十分な患 者への説明にも関わっています。外来の治療の後に、在宅に移ったあとも、 何か問題が起きないように薬学的管理やさらに、定期的に薬物療法の経過を 観察して、薬剤師が必要と判断した場合には、処方の内容等を見ながら処方 期間を分割して調剤すること、あるいは医療従事者を抗がん剤の被曝から防 ぐように、安全キャビネットの中で無菌調整を行うといったことが通常医療 機関で行われている業務です。3頁になりますが、さらに薬物療法の経過観察 をした上で、医師に対して現在の処方で特に問題が起きていないといった情 報の提供も実施しています。  資料に記載された項目の内10、11、12については、医師と薬剤師の間で、 事前の合意があった標準的な薬物治療の手順書、あるいは患者個々に決めら れた薬物療法の計画書に従って、それぞれ医師の方々、看護師の方々が協働 しながら、薬剤の投与量や投与方法、投与期間をあらかじめ決められた範囲 で変更するといったことも、すでに一部の病院では行われています。  さらに個別の薬物治療計画書に従って薬剤の種類の変更、あるいは変更の 条件が明示された処方を行っている場合には、その変更等といったことも行 われていますしさらに言えば、患者がその治療を進める上で必要な血中濃度 検査のオーダーすることも、医師と看護師の方々の協働の中で、つまりチー ム医療の中で現在進められていると理解をしています。  こうした、現在医療の現場で行われて進められていることを前提に置きな がら、将来、いったい薬剤師はどのような活動ができるのかを、「将来的な業 務の拡大」の中にまとめてみました。先ほど申しましたように、平成18年度 から6年制の薬学教育が導入されており、平成24年には新たな教育制度によっ て養成された薬剤師が社会に出てまいります。こうした薬剤師はすでに専門 的な知識を持ったものでありますが、そうした薬剤師がさらに知識をブラシ ュアップして、より高度な、より専門的な知識を持った薬剤師として増えて くるだろうという認識を持っています。こうした中で、例えば患者の体調と か、あるいは嚥下の状態等によって剤形を変える、あるいは一包化をすると いった行為は、現在は疑義照会の範囲になっていて、医師の了解のもとに行 われるのですが、こうした行為については、医師へは事後に報告するという ことで薬剤師の判断で可能としたいと考えています。  あるいは、これは外来慢性患者に対する長期の投薬については、在宅治療 も含めてですが、繰返し使用できる処方せんをうまく使って、当然、途中の 患者の状況のモニターは薬剤師がするわけですが、特に安全上問題がなく、 治療上問題がない場合には、そうした繰返し使える処方せんを使うことによ り、医師の負担を軽減しつつ、患者の負担も軽くすると。現在、繰り返し使 える、いわゆるリフィル処方せんは我が国では認められていませんが、今後 は繰返し使える処方せんの導入も是非行っていただきたいと思っています。  さらに、個々の患者に適合した薬物療法を提供するというのが、薬剤師の 一義的な目的であります。薬剤師がそういった意味から、主体的に治療に参 画することも望まれると思います。そのためには、薬物の血中濃度の測定・ 解析が必要と判断した場合の採血を行うことや、検査のオーダーを出すこと については、薬剤師がチーム医療の一員という形で行っていくことができる ように環境整備をしていただきたい。  最後の頁ですが、ここでは米国の例を挙げていますが、CDTMすなわち、医 師と薬剤師が患者のために一定のプロトコールをつくりその合意のもとに、 薬物治療を継続する上で必要な様々なマネジメントを薬剤師が行っていくと いう考え方です。薬剤師は、医師の指導監督の下で、医薬品の処方、あるい は患者の状態のモニター、処方変更、薬物療法の中止等の権限を持ち、その 責任を共有するというシステムはアメリカで導入されています。一方、我が 国において薬剤師は、処方全般に関して疑義があれば医師に確認を行い、そ の上で医師の処方変更に基づき調剤を行っているという実態があります。  チーム医療の将来を考えると、専門職種がその専門性を発揮することが求 められていると理解しています。地域あるいは医療機関内で実施されている チーム医療をより効果的に進める観点から、将来的には、患者の服用状況や 副作用・効果の発現の状況等を薬剤師がモニターする。その記録を取り、そ の記録に基づいて患者にとって最も安全な薬物治療を継続する、あるいは医 薬品の適正使用に努めることも、私どもの広い意味での疑義照会の範囲と捉 えており、基本的な処方に関しては、これは医師の権限・権能ですが、事前 に作られたプロトコールに従って、薬剤師がそのプロトコールのもとに、医 師への報告を条件として、処方せんに記載された指示内容を変更して調剤・ 投薬および服薬指導することが、これから薬剤師の業務範囲となるように進 めてまいりたいと思います。  こうした業務に関わるのはどのような薬剤師でもいいのかということにな りますが、それはそうではなしに、上記のような新たな体制を組む上では、 現在6年制課程での薬学教育に加えて、さらに高度な専門領域の教育・研修も 必要と考えますし、また、薬学教育の一環として専門課程を組む、あるいは6 年制にプラスされた大学院のカリキュラムをより臨床的な方向へ変えるとい った方法で、より知識、能力、経験の多い薬剤師が当然必要だと思います。 その上でただいま述べました様な仕組みを組み立てていくことも求められま す、さらに言えば、そうした体制を組めるような制度的な整備と同時に経済 的な支援が必要であると考えており、こうした考え方がこれから作成される 報告書の中に薬剤師の役割として盛り込まれることを是非お願いしたいと思 います。 ○永井座長  ありがとうございました。それではただいまのご説明を踏まえまして、事 務局から資料1「主な論点の整理について」のご説明をお願いいたします。 ○石川(義)補佐  それでは資料1をご覧ください。「主な論点の整理について」と題したペー パーです。まず1.「チーム医療の推進に係る基本的な考え方」について、論 点をまとめたものです。(1)なぜ、今、「チーム医療」なのかというところで す。質が高く、安心・安全な医療を求める「患者・家族の期待」の一層の高 まり。医療業務の飛躍的な増大・複雑化に伴う「医療現場(医師)の疲弊」。 医療専門職の知識・技量の高度化。ガイドライン・プロトコール等を活用し た「治療の標準化」の浸透などの背景があるのではないかということです。  (2)チーム医療の取組がもたらす効果を、どう考えるかです。例えば早期対 応・回復促進などの「医療の質の向上」。医療の効率性の向上による「医療従 事者の負担の軽減」。専門性の発揮等による「医療現場の活性化」。医療の標 準化等を通じた「医療の安全の向上」などが考えられます。  (3)チーム医療を推進する上で今後目指すべき方向性を、どう考えるのかと いうところです。各医療専門職の業務範囲の拡大と協働の推進。追加的教育・ 修練を受けた高度な医療専門職の活用。複数の医療専門職による医療チーム の領域の拡大といったことが考えられます。  次に具体的なところに入りますが、2.「看護師の役割の拡大」です。(1)基 本的な方針についてです。大学における看護師養成の急増等による教育水準 の全体的な高度化、あるいは専門看護師・認定看護師の増加、看護系大学院 の整備の拡大等を背景に、看護師の役割を拡大する。それは裁量の拡大とい う面と業務範囲の拡大といった面があるという指摘がありますが、その基本 的な方針についてどう考えるのか。  例えば[1]高度な能力(知識・技術等)を備えた看護師の役割を拡大する。 [2]一般の看護師の役割を拡大する。次頁の[3]は[1]・[2]を併せて拡大するとい う方策もあろうかと思います。あるいは[4]その他の方策といったことも考え られるかもしれません。  (2)高度な能力を備えた看護師についてです。仮に、高度な能力を備えた看 護師の役割を拡大する場合には、例えば、次のような論点が想定されるので はないかということで、いくつか提示をしています。まず、高度な能力を備 えた看護師に対して業務範囲の拡大を認める場合、具体的にどういった業務 が考えられるか。例えば、急性期の(外来・入院)、あるいは慢性期、在宅医 療といった分野について、それぞれどういった行為が考えられるか。  次に高度な能力を備えた看護師が業務を実施する際の医師との関係につい て、どう考えるか。4つありますが、[1]医師の指示無く、医師から独立して実 施する。[2]医師の包括的指示を受けて実施する。[3]当面は医師の包括的指示 を受けて実施することとし、実績を積んだ上で、医師から独立して実施する ことの是非について検討する、といった方法も考えられるのではないかを提 示しています。  続いて高度な能力を備えた看護師の要件について、どのように考えるかで す。[1]臨床経験[2]養成課程、ここには大学院の修士課程とか、研修機関が考 えられます。[3]認定試験[4]その他が考えられるのではないかということです。  その他、関連する以下の事項について、どのように考えるかということで、 例えば高度な能力を備えた看護師の認定主体等、認定制度のあり方、あるい は「高度な能力を備えた看護師」の名称といったことも提示しています。  続いて(3)一般の看護師についてです。仮に、一般の看護師の役割を拡大す る場合に、一定の業務範囲の拡大が想定されるが、例えば、どういった行為 が考えられるのかといったことが、当然論点になるということです。(4)その 他関連する課題として、上記に関連して、外科関係者の間で、米国の「フィ ジシャン・アシスタント」いわゆるPAですが、これを参考に、医師の監督下 において、手術室内の医療行為、例えば開閉胸等を含めて、主として周術期 における外科医の診療の補助を実施する職種を導入すべきとの指摘がありま したが、このような指摘についてどう考えるかといったことも、論点として あります。  続きまして3.「その他のメディカルスタッフの役割の拡大」についてです。 まず(1)薬剤師です。医療安全の確保、医師・看護師の薬剤管理等に関する業 務負担の軽減の観点から、薬剤の専門家である薬剤師の活用は非常に有益で あるとの指摘がある一方で、病棟等において十分に活用されていないという ご指摘もあったところです。このような状況を踏まえて、チーム医療の観点 から、例えば、どういった業務を実施することが有益か。また、薬剤師の活 用の促進に向けた具体策について、どのように考えるかといった論点があり ます。  さらに、平成18年度からご紹介がありましたように、薬学教育6年制が導入 されているが、今後、薬剤師が担い得る役割についてどのように考えるのか ということもあります。  (2)その他のメディカルスタッフについて。医療技術の高度化に伴い、医療 安全の確保や医師・看護師の業務負担の軽減の観点から、各種治療や検査の 実施に当たり、専門的な知識を有するメディカルスタッフがかかわることの 重要性が指摘されています。その一方で、医療現場においてメディカルスタ ッフが十分に活用されていないというご指摘もあります。このような状況を 踏まえ、例えば、検討会で指摘された管理栄養士、言語聴覚士、作業療法士、 診療放射線技師、理学療法士、臨床検査技師、臨床工学技士、さらには医療 ソーシャルワーカー、医療リンパドレナージセラピスト、あるいは細胞検査 士等ですが、このような職種に関する役割の拡大について、それぞれどのよ うに考えるかといった論点がございます。  さらに(3)医療クラーク等の事務職員を想定していますが、書類作成の事務 作業が多い関係で、医師が疲弊しているという現状があります。また、患者 としては書類が渡されるまでの待ち時間が長くなるといったことで、患者へ のサービスが低下しているのではないかといったご指摘があったわけです。 こうしたご指摘について、例えば医療関係事務に関する処理能力の高い事務 職員(いわゆる医療クラーク)を積極的に導入することも想定されるわけで すが、導入の促進に向けた具体策についてどのように考えるかという論点が ございます。  さらに(4)介護職員についてです。在宅医療を推進するためにも、看護師の 負担軽減、あるいはその患者・家族へのサービス向上の観点から、例えば、 介護職員も一定の医療的ケアを実施できるように検討すべきとの指摘があり ました。このようなご指摘についてどう考えるかといった論点があります。  4.「多職種の連携の推進」についてです。院内を横断的に患者の治療に当 たるチームとして、例えば、現在でも栄養サポート、感染制御、緩和ケア、 口腔ケア、呼吸サポート、摂食嚥下、あるいは褥瘡対策といったチームの活 用が進められているわけですが、こういったチームのより一層の推進に向け た具体策について、どのように考えるかといった論点があります。  さらに院内助産所の設置等、助産師の専門性を活かした産科医との連携が 進められているところですが、より一層の連携の推進に向けた具体策につい て、どのように考えるか。あるいは在宅医療の場面においては、医師、看護 師、薬剤師、歯科医師等の連携が重要との指摘がございましたが、連携の推 進に向けた具体策として、どのように考えるか。あるいは多職種の連携を推 進している医療機関が、医療現場(患者や他の医療機関等)において認知さ れるための具体策について、どのように考えるか、といった論点があろうか ということです。 ○永井座長  ありがとうございました。それでは資料1の1頁目に戻りまして、順番にご 議論いただきたいと思います。最初に「チーム医療の推進にかかわる基本的 な考え方」、なぜ、今、「チーム医療」なのか。その効果をどう考えるか。今 後目指すべき方向をどう考えるか。どこからでも結構ですので、委員の皆様 からお願いします。 ○有賀委員  なぜ、今、「チーム医療」なのかというところは、ここに○がいくつもあり ます。どれも全くそのとおりなのですが、救急医療のお話を私がさせていた だいたときに言ったように思いますが、質が高く、安心・安全な医療を行お うとする医療者そのもののモチベーションの高まりがあるように思います。 そもそも患者さんが求めているからのみでそうなっているのではなくて、私 たちの側も患者・家族を含めた一緒のチームだという観点ですから、医療者 そのものも、こういうようなことをやろうとしている。それによって、チー ム医療そのものが成り立たせていこうとしている。そういう歴史があると感 じますので、○の中に、医療者の能動的な動きを是非入れてください。 ○永井座長 是非お入れしていただきたいと思います。それから標準化の中 に入るかもしれませんけれども、確かにいまの状況でも、頑張っておられる 所は、かなりやっておられるし、いまのままでもできるのだけれども、広く 日本全体にチーム医療を普及するという意味では、こういう活動は必要なの だろうという、そんな考え方があってもいいかなと思います。 ○島崎委員  (1)の各○については背景事情としてそのとおりだと思うのですが、ス トレートに言えば、何が問題になっているかというと、結局医療が高度化を する、急性期で言えば日進月歩でまさに技術革進が進んでいる。医療の量的 な拡大、それは技術の進歩もそうだし、高齢化その他の事情によって、ある いは患者の要求の高まりというようなこともあるかもしれません。医療事情 が量的に拡大していると、そういう背景の中で一方で人的資源が一定の制約 があるということを、書き方はともかくとして、ストレートに言うべきなの ではないかと私は思います。  つまり、そういう中で、医師を何倍にもするということが困難、あるいは 看護師さんもいまも5万人の養成の規模を10万人に移行していくことが、本当 に今後の少子・高齢化、消費社会を考えてみたときに、現実的かというと、 やはりそこはそうではない。一定の制約がある。しかし医療の高度と加療的 な拡大に対応していかなければいけない。そうなると、基本的には分業を興 し、あるいは生産性の向上というと抵抗感があるかもしれませんけれども、 より格差もしくはより高度なものを目指し、他人に譲れるところは任せてい くという、そういうシステムを作っていかざるを得ないのだということを、 私はストレートに言ったほうがいいのではないかと思います。 ○永井座長  人手が足りないからとか、誰かが代わってやってくれたらというと、ちょ っと後ろ向きな感じがします。背景としては医療ニーズの高まりがあって、 なおかつ医療行為が効率的に行えるようになるということでしょうか。それ はあっていいと思うのです。案外仕事は楽になるかもしれないわけですね。 医療業務の効率化みたいなこと。 ○島崎委員  もう1つ言えば、医療政策の目標は突き詰めて言えば質とアクセスとコスト ですよね。結局、医療の質とアクセスをコストで割ったものが効率性だと考 えれば、そこをどうやって向上させていくかどうかというのが避けられない。 もちろん質は当然のこととして向上させていかなければいけないけれども、 考えてみれば医療の安全にしたって、何にしたって、そこも広い意味では質 になりますよね。  もう1つ、医療の現場がかなり拡大してしまっているという面もあるのでは ないかと思います。どちらかというと、ここまで急性期医療を中心に議論が されてきたと思います。それはそれで確かにこの議論が当てはまるところが ありますが、もう1つ、例えば高齢化が進んでくる、在宅の医療みたいなもの を考えてみると、それは単にいいとこだけで、閉鎖されるわけではなくて、 生活の中の一部として医療があるという存在だと考えれば、当然多職種連携 ということが必然的になってくる。そういう面からいくと、急性期、慢性期、 後から出てくるかもしれませんが、在宅等の場面では、多少そこのチーム医 療といっても、本質は同じかもしれませんけれども、そこに現れてくる形態 は多少違うのかもしれないと、そういう感じがします。 ○永井座長  そこはかなり我々も重点的に議論したつもりなのですが、鹿児島から現場 で頑張っている先生においでいただいたり、太田委員にお話を伺いました。 当然在宅、慢性期疾患というのは視野に入っているということだと思います が。 ○川嶋委員  いまの島崎委員のお話と連動するのですが、鶏か卵かどちらが先かという ことになるのですが、マンパワーのことを解決できないからといって放置す るのではなくて、いまのチーム医療がなぜチーム医療なのかを考える大前提 が質を担保するマンパワーがそれだけ十分ではないために、それぞれの専門 職が自分の専門性を発揮しきれないところがあって、チーム医療全体が歪ん できているというか、捻れていて、自分の仕事でないのに手を出さなければ ならないとか、本来の専門職の職能を発揮できないといったような矛盾がす ごく根底にあると思うのです。それを踏まえた上で、なぜ、今、チーム医療 なのかとしないと、限られた状況の下での現状のチーム医療から考え方を発 していくと、やはり問題ではないか。これは後にもつながっていくのですが。 ○永井座長  それは私も全く同感でして、単に業務拡大とか労働強化にならないように するというのは、これからの新しい制度を考える上で非常に重要だと思いま す。それは基本的な考え方の中に入れておくべきだと思います。 ○太田委員  島崎委員のご意見に私も賛成している1人です。後ろ向きの話をするわけで はないのですが、求められる医療の質が変わったということは、求められる 医療の質が高くなったわけでもないような気がするのです。といいますのは、 例えば現実問題として、食事が取れなくなって、食事介助が厄介だからチュ ーブを入れるわけです。チューブを入れたほうが栄養管理は楽なのです。食 事介助は介護士がやってもいいけれども、チューブが入るとナースしかかか わってはいけないというような、そういったところが非常に矛盾しているわ けで、実際に特別養護老人ホームなどでは、介護職がそういったところも現 実はやっているというわけです。本来、ナースがやるべきと言われている仕 事もやっているからこそ、療養者が質の高い生活を送れているわけですから、 160万人が死ぬ時代に80万人しか子どもが生まれないときに、業務の拡大をし ていかない限り、いつまでも自分たちの業務を守っていると、立ち行かなく なるだろうと思います。 ○永井座長  そういう背景の中に少子・高齢化というか、とにかく多死化社会です。患 者の急増が予想されるということは、背景の中に謳っておいていいだろうと 思います。 ○宮村委員  川嶋委員、島崎委員に賛成なのですが、いろいろ勉強させていただきまし た。冒頭チーム医療がどうして必要なのかというのは、もちろん医師不足だ からというのがどこかにあるのでしょうけれども、やはり私は歯科医として 医科の部分を見たときに、あまりにも細分化、専門化されている医療があっ て、それぞれが専門性を持つ以上は、それが統合されないと全体が見られな い。従って、宿命的にこのチーム医療は求められていると思うのです。  だから、専門家が細分化されていく状況の中で、それぞれの専門家がチー ムを組まなければできないということでチーム医療が必要だと感じました。 それに対しての少なくとも業務的な拡大、あるいは権限は別にしても、医療 の現場の中で看護師さんが、接着剤なりあるいは全体状況を把握という意味 では、看護師さんの役割はものすごく大きいなという気がいたしました。  最後に、これは団体エゴと取っていただいてもいいですけれども、つまり 専門化されていることを統合するというときに、チーム医療が要るとすれば、 身体全体の中でさすがに歯科では、口とか歯というものが身体に関係ないと は思わないし、専門の中の一分野ですので、これが厚労省の見解だと思わな いけれども、ごっそり歯科というのがないというのは変だと思う。私は井上 委員の学校で昔、大学にいたのです。医科の人も歯科の人間も一緒に勉強し ました。ほとんど全く同じことを教えられたけれども、その気になっていな いし、いまになっても何もわからない。だから、慢性期だとか回復期、ある いは在宅の中で歯科が要るとすれば、歯科もそこの部分の勉強もしなければ いけないし、教育もしなければならないとは思います。この状況ではとても という気はするけれども、医科の人間が同級生ですけれども、歯科のことな ど馬鹿かと思うくらい知りませんよ。さすがに歯科も専門という面はあるも のだから、専門分化がゆえにチーム医療があるとすれば、もう少し歯科とい う文言が入ってもらわないと、団体としてはちょっと立つ瀬がないという気 がします。座長すみません、脱線しまして。 ○永井座長  おっしゃるとおりで、その点については今回、薬剤師会からもどういう形 でコミットできるかというステートメントを山本委員から出していただきま した。是非、宮村委員からも、お願いします。 ○海辺委員  (2)のチーム医療の取組がもたらす効果の部分にちょっと加わってくるか なという感じなのですが、いまの宮村先生のお話のように、患者の立場にお りますと、口から物を食べるということは本当に大事なことでして、先ほど 太田先生がおっしゃったようなチューブにしてしまえば、管理が簡単という ことはあろうかと思うのですけれども、ただ、誤嚥性肺炎などの危険性があ るからといって、口で噛んで食べるということをどんどんしなくなってしま う状態というのは、やはり患者や家族の視点からすれば、できるだけ遠くに 先延ばしにしてほしいなという部分がございまして、ですので、この(2)を見 ていて思ったのが、[1]が早期対応・回復促進など「医療の質の向上」とあっ たのですが、ここにあと重症化の予防を加えた上で、これは医療の質という か、患者や家族の生活の質の向上という効果につながっていくことかなと感 じました。  [3]の専門性の発揮によって医療の質が向上するというのは、こういうこと ではないかと思ったのですが。 ○朔委員  高度専門医療を担当していた病院を運営していた経験から申し上げます。 医療が複雑化、高度化すればするほどそれに携わる人も高度化、専門化しな ければいけないのですが、その専門家の特徴として、ほかのことをやりたが らないという現象がどうしても起こってまいります。例えば私の病院の例で 申し上げますと、内科を細分化したのですが、それなりに医療の質はグッと 上がるのですが、医師が自分は高血圧の専門だから、高血圧の患者以外は診 ないという、そういう現象が起こってくるのです。そうすると、莫大な数の 医師が要る。看護職でも高度化すればするほど、人材のボリュームという問 題がどうしてもついてくると思います。その辺をないがしろにしながら、高 度専門領域のチーム医療と言っても、かなり苦しい場面が現実には出てくる ように思います。 ○永井座長  それについては私は意見があります。ここで言うチーム医療というのは分 担と連携の問題であるということを、常々私は話してきました。急性期医療 であれ、慢性期、在宅、介護、救急という切り口と、病院の機能分担、病院 のある意味では分担と連携であるということと、いまお話になられたような 分担といったときに蛸壷的な専門医をたくさん作ることが分担ではなくて、 その中にジェネラリストをおくというのも分担だと私は思うのです。いまの 日本の医師養成の中でも、専門医ばかりになっていて、この前の脳外科の桐 野先生の資料からわかりますが、人口当たりでみるとアメリカの5倍の脳外科 医がいますが、1人当たりの脳外科医の手術件数は25分の1です。それはまさ にジェネラリストと専門医の分担、あるいは配分の問題があるのだと思うの です。その辺まで視野に入れて、できたらそれを背景の中に書き込む必要が あります。分担と連携といっても、単に専門化するということではないので す。ジェネラリストの養成と専門医とのバランスの問題ということをここに 謳わないと、後でもPAの話が出てきますけれども、そちらとの連携にもかか わります。その意味でも朔先生がおっしゃるとおりだと思うのです。ですか ら分担とか専門分化とか、仕事をしやすいようにというのは、私は狭い範囲 のことでは必ずしもない。広い範囲の専門化というものが必要だと思うので す。それはたぶん医師だけではなくて、看護師さんについても他の医療職に ついてもみんな同じだと思うのです。  もしよろしければ、戻りつつご議論をいただきたいと思います。それでは2 番目の「看護師の役割の拡大」についてご議論をいただきたいと思います。 ○坂本委員  いろいろな団体がいろいろな要望書を出されていますが、私も日本看護協 会の代表として出ておりますので、その点からお話をさせていただきたいと 思います。1つは高度実践看護師、看護系大学協議会から出されている高度専 門看護師、日本NP協議会から出されている診療看護師、非医師の高度実践、 臨床というような言葉がいろいろ出されています。これらを日本でどのよう に呼ぶのか、まだ名前はわからないのですが、アメリカなどではナースプラ クティショナーやPAと呼ばれています。私はそれを総括して日本型NPと呼ば せていただきます。これから日本型NPという仮称で呼びますが、これは決ま ったわけではなく、何らかの名前を呼ばないと分かりにくいので、その様に 呼ばせていただきます。これに関しては法的体制を含めた検討に、直ちに入 っていく必要性があると考えます。  その理由としては3点あります。1つは患者さんのため、患者さんのニーズ ということ。次に、一緒に働いている医療チームからの強い要望、そして、 やりがいも含めたナースのキャリアパスなどの観点から、法改正を超えた高 度な実践ができるナースについて、直ちに検討に入っていただきたいと思い ます。  次に現状の課題から4つの事を申し上げたいのですが、近々の課題があり ます。いままでの調査で得られた結果をみると、大変多くの看護師が包括的 指示で仕事をしている現状があるわけです。それに関しては要件を整備して ほしいのです。どのような状況でやられているかということを整備していた だきたい。  さらに日本看護協会から出されている認定看護師や専門看護師の今後のこ と、教育のこと、既に複数の大学院で教育が始まっているいわゆるナースプ ラクティショナーのこと、看護協会などで行っている研修をもって認定され た資格を持つ看護師をどのようにしていくかということに着手してほしいの です。  先ほどから話題になっている高度な専門性を持つ看護師といわゆるジェネ ラリストの看護師の関係です。認定などの資格を持たないで働いている看護 師をジェネラリスト呼ばせていただきますと、患者のそばに居て働いている 看護師の具体的な業務拡大についても整備をしてほしい。それはニーズとい うことから応じて、おこなっていくべきだと思っております。包括的な指示 の下で要件を整備し、評価をしていただきたい。日本型ナースプラクティシ ョナーについても、法改正の中にその評価を基に議論し、整備をしていって いただきたいと考えております。  さらに、ナースの役割として、先ほど介護のほうなどのいろいろな施設、 連携の話が出てきましたが、介護老人保健施設等においてもナースの役割に ついて議論していただきたい。例えば介護老人保健施設設の施設長等も含め て、ナースが行っていけるような形とし、介護と看護とそれぞれ区分けを完 璧にしていくのではなく、どのようにすれば在宅の人たちが発展的にケアさ れていくかということについても、検討していただきたいと思っております。 ○西澤委員  論点の整理ですが、2.看護師の役割の拡大の(2)と(3)は議論の順序が逆で はないかという気がしております。まず、今の看護師がどこまでできるかと いうことです。例えばこの委員会でも資料が提出されましたが、いまの法の 解釈の中で、まだできることがあるのではないかという話題が出たと思うの です。その辺りを整理していただいて、現在の看護師が現在の法の、あるい は一部拡大になるかもしれませんが、その中でどこまでできるかということ をまず、基盤として押さえないと、さらにその上で何ができるかという議論 はできないのではないかと思います。坂本委員がおっしゃったような議論は、 今後していくとしても、その基盤の現行法で看護師がどこまでできるか、あ るいは現状として本当にそこまでやっているか、そういうことを踏まえて(2) の議論のほうだと思うのです。ということで、議論の順序、書き方を論点(2) のほうに一般看護師についての現在のできる職種の範囲、していることを明 確にすることをまず書いていただいて、一般の看護師がさらにいまの法の中 でどこまで拡大できるか。次に高度な能力を備えた看護師と、そのような順 序で議論していただければと思います。 ○永井座長  いままでの議論の中でもどこまでできるかというのは、実はなかなか書け ないのだということだったと思いまです。そういう意味では要件ということ をどうすればどこまでできるのだという話ですので、どっちが先でもよいか というのが私の印象です。いずれにしても要件ということが非常に重要にな ります。看護師免許を持っていれば、何でもできるのだということ、あるい は可能性は全部追求してよいのだということではないのだと思うのです。 ○朔委員  現行法でどこまで許されるのかというのを、一度きちんと整理しておかな いといけないのかなとも思います。現実にやっている事が、厳密に法律を解 釈すれば法律に触れているということもあります。現行法でどこまでやって いいのかというのをきちんと整理していただくことも大事ではないでしょう か。 ○永井座長  それは要件があっての上ではないのですか。要件を決めた上でどこまでや れるかということではないのですか。 ○坂本委員  どどちらが先かというのは大変難しいのです。私が気になっているのは、 いまナースプラクティショナーの話など高度な話に議論が進んでいますが、 既に、離島にしろ、あまり大きな規模でない病院にしろ、日本全国では、多 くの看護師が医療行為を包括的な指示に基づきやっているのです。ですから ジェネラリストの看護師がどれだけできるかということに目を向けておくこ とも重要です。医師の疲弊の問題や、患者さんのニーズに応じることを考え ても、高度な専門性を持つ看護師の話だけでは済まないと思っています。現 状を把握しつつ、要件も整えていくことになるので、どちらが先かはわかり ませんが、要件は明確にしてほしいとは思います。 ○川嶋委員  どちらが先かという問題ではなくて、私が最初から違和感を感じているの は、チーム医療のときに登場する看護師という名称です。看護師は診療の補 助と療養の世話の2つの仕事をきちんとしなければならない職種であるにも かかわらず、診療の補助の面だけが非常に強調されています。それは、そも そも医師の不足から始まったからかと理解はしているのですが、この中でも、 高度な医療に適応できるナースといったときに、それはごく一部の看護師で す。120万人いるナースのほとんどが一般の看護師で、患者さんも高度な医療 を受けている人が何パーセントいるかといったら、全体では普通の病気の人 が圧倒的に多くて、高度な医療を受けている人は数少ないと思うのです。  そういうことを考えたときに、診療の補助の面だけにナースたちが目を奪 われていて、少しでも医師の仕事を肩代わりしたり、代わりにすることで、 自分たちの社会的ステータスが上がったかのような錯覚を持っているのでは ないかというのが気になるのです。  先ほどおっしゃったように、本当は患者さんは咀嚼して嚥下して口から食 べるのがいちばんいいのに、そこができなくてチューブの栄養の管理だけを するようになっているのは、決して高度ではないのです。その辺をきちんと 基本から見直して、高度なことはやってもいいけれども、法律を変えたりし なくても考えることはたくさんあるのではないかと思います。 ○井上委員  私は、川嶋先生の高度な看護師が高度実践のところというのとは意見を異 にします。行われている治療が高度であろうと、看護師はその人たちの離床 とか、日常生活の世話にもかかわっていきます。決してICUとかだけを想定し ているのではなく、チューブ栄養をしている人がいればこれを抜いても(チ ューブ栄養を止めても)いいのではないかという判断、そういう権限を持た せてもらえたら、もっと違う広がりがある。例えばたくさんのジェネラルの ナースの中でそういう人が1人でもいれば、そこの医療施設は随分変わってく ると思うのです。法改正をした上で高度実践を行う人が現れても、その人は 決して高度医療だけに関わるのではないと私は理解しています。  それから、どちらが先かという話ですが、これは両方一緒でないと、ジェ ネラルなほうからの話だけしていたら、また逆戻りです。また、高度なもの だけを論じていても、川嶋先生が懸念されるようなことになると、医師不足 のための単なる代替者みたいなことになってしまいます。診療の補助も療養 生活の視点も、同時にやってほしいと思います。 ○竹股委員  いまの看護職としての議論は、大変悩ましいところなのです。私は現場の 過疎地域の医療を担っているので、先ほど来の生産性の向上の部分というの は、喫緊の課題として、専門職でありながら、そこを突き付けられながら働 いてまいりました。  その中で大事なことといま思っているのは、診療という言葉が、医師だと か看護、そういう考え方ではなく、医療サービスそのものという視点で捉え たときに、それが患者様にとって急性期であれば、命を救うところ、つまり 治療に特化したところに力がかかるわけであり、慢性期であれば生活の部分 に力がかかります。そのステージによって違うのです。  しかし、私たち看護職が看護の専門職としてかかわるところというのは、 あらゆるところにかかわるのであって、例えば患者様の生き死に直結したと ころ、診療の近いところにナースがかかわる。いわゆる高度なとおっしゃっ ていますが、私はそれを高度とは思っていないのですが、そこにはナースが かかわるにしても、そのプロセスのあらゆるところで看護があるのです。こ れは私たちの自己研鑽であるわけです。ドクターのやっている部分の肩代わ りに見えるのは、それは本来私どものせいであって、私どもがそこを看護と してきちんと捉えてないせいなのではないかと私はそう思いたいのです。  ですから、川嶋みどり先生のおっしゃることも、私も随分考えてきました。 20年ぐらい前にICUのナースが非常に重んじられた時代がありました。それは、 ICUにいると、より医師に近いところの知識、技術が得られて、ナースたちも それを非常に誇りに思っていました。  しかし、いまはそのようなことは全くないのです。なぜかというと、ICUも 慢性期の看護も、ある意味で我々は同じだと考えています。でも、ICUの看護 はICUの中に看護があるから、そこに伴う知識的なこと、技術的なことはある レベルであるかもしれません。その中で、一見医師がやるようなことでも、 私どもはある程度の完結性を持つ、セルフコントロールという自律の部分を 持っていないと、看護が発揮できなかったりするのです。そういう意味にお いて、「高度な」という言葉が、診療、医師に近付くことだとは思っていない のです。 ○川嶋委員  でも、ここに書かれていることはそうですよ。 ○永井座長  高度か低度かではなくて、特定の機能を果たせる看護師の業務、役割拡大 ということです。何かスペシファイして、それをどうしましょうかというこ とだと思うのです。 ○羽生田委員  (1)の「なぜ、今、チーム医療か」にもかかわってくる話です。いま現在、 チーム医療と言われるもの自体の普及が少ないです。もっとチーム医療が行 われる場面を広げていかなければいけません。専門性を活かしながら、連携 してチーム医療というものをつくっていくには、まず一番は絶対数が足りま せん。これは看護師も全く足りないし、医師も足りません。そういう中でも、 チーム医療をどのようにつくっていったらいいかを考えていかなければいけ ません。  いままでヒアリングした人たちのところは、非常にいい条件の中で、いい チーム医療をしてきたものでした。そうでない部分でのチーム医療をもっと 拡大していかなければいけません。  いま現在やられている中でも、先ほど西澤先生が言われましたが、いまの 法律の中でできることが十分にあります。それがきちんとされていないと思 うのです。ですから、いまあるものを検証した上で、本当に法律改正が必要 なのかを検証した上でないと、法律改正にいくべきではないと思います。私 は、いまあることで実際にはもっとできることを検証した上で、これは法律 改正しなければならないのかなということを、もう一歩先で検証するという 順番があるべきだと思います。 ○永井座長  確かに4月から法律改正というのは、とても無理な話ですし、法律改正とい うのは、もう少し中長期的な課題だと思います。しかし、まず、いまの体系 の中で何ができるか、あるいはもし現実以上に何か特定の技能を担ってもら うということであれば、どのような要件が必要なのか。その上で、様子を見 ながら、法律改正をどう考えるかということ、順番としてはこのようなこと だと思うのですが、そこは皆さんよろしいですよね。 ○太田委員  いまおっしゃられたことですが、なぜチーム医療なのかというときにわか りやすいのは、いまの人材で最高の質のケアをするには、どうしたらいいか ということです。いまニーズに応じて人を養成していったら、やがて人がい なくなるわけですから、いまの人間でどうするかということを考える上で、 チーム医療の重要性があるのだということも、是非入れていただきたいと思 います。 ○坂本委員  先程から看護のことが語られていますが、チーム医療を考えたときに、い ろいろな職種があっても、果たすゴールは一緒だという捉え方をしながら、 どのようにしていくかを考えることが重要と思います。看護というところだ けで語っていくのではなく、チームというのは、ゴールは同じで、それぞれ の職種が役割を果たしながら、それぞれのずれを発見し、議論していきなが ら、良い方向に持っていくというスタンスが前提として必要です。医師の疲 弊など、いろいろなことが起こったときに、本当にいままでやっているチー ム医療ができなくなっているのか、それともさらに何らかに変化させなけれ ばいけないのかという議論の中で、この様な看護師に関する話が出てきたわ けですので、そこはちゃんと押さえておくべきだと思います。 ○永井座長  話は戻りますが、どこまでできるかについては、法律の読み方次第でかな りできるのだというのはよろしいですね。ただ、明日からすべての看護師が やっていいということではないわけです。そうすると、教育のこと、いまの 体系の中で拡大するにしても、場合によっては認定の話にもなります。(2)の 最後の○の辺りですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。私は「高度 な能力」というよりも、「特定の技能」といったほうがよいのではないかと思 うのですが。 ○瀬尾委員  医療的な職種で、資格を持っていて働いていない人が多い職種は、ナース だと聞いています。看護協会の方に聞きたいのは、なぜ資格を持っているの に働いていないのでしょうか、その理由は把握しているのでしょうか。つま り、ナースの資格を拡大するという一方で、ナースの資格を持っていながら 働いていない潜在的なナースがいることの矛盾点、それを解釈して、より働 きやすい条件を整えることも、ソースとして持っているものを有効にするの は重要だと思うのです。 ○坂本委員  離職する原因が4つあります。結婚、子育て、夜勤時間の長さ、勤務時間の 長さ、です。女性の多い職業ですから、ワーク・ライフ・バランスを考えた ときに、自分の生活と職業を両立していくことは、いままでの状況では難し いものがあったのではないかと思います。ですから、ワーク・ライフ・バラ ンスを考えながら、できるだけ働くことができるようにしていく必要があり ます。統計的なデータは持っていませんが、地方では潜在的な看護師の中か ら現場に復帰をする人が、若干増えているという話を聞いていますので、そ こは積極的にやっていきます。 ○島崎委員  今年の4月1日から法律改正することは改正作業が日程的・物理的に無理な だけではなくて、そのコンテンツ(内容)が決まっていない以上無理なのは 当然だと思います。  ただ、通知で解釈を明確化することはできます。看護の業務の関係でいう と、診療の包括的な指示というより、保助看法上の診療上の補助に該当する かどうかが、特に問題になってくるわけです。医療の本質的な行為と診療の 補助行為というのは、法律上の概念としては2つにきれいに分けられますが、 医療の実態は、いわば墨絵のように、白い近い灰色から、黒に近い灰色まで、 グラデーションがついているわけです。そうすると、本当にどこで実態的に 線が切れているのかは当然の疑問です。言いたいことは、すぐに4月1日に通 知を出すべきであるかどうかはともかく、これまでの検討の中でも、ここま では大丈夫ということが、あるのではないかということです。それはちょう ど、静脈注射について解釈を変更し、それが医療現場において一定の意味を 持ったことと同じです。これが言いたいことの1つです。  もう1つは、いきなり日本型のナースプラクティショナーまでいくかはとも かくとして、そこは一定の医学的コントロールに置かなければいけないとい う領域もあるかもしれません。さらに言うと、モデル事業がいいかどうかは 別にして、本当にできるかどうかをやりながら、検証していかないと、かな りデリケートな問題を抱えている部分もあるかもしれません。そこの「仕分 け」は必要な気がします。具体的にその作業をこの検討会でやるわけではな いと思いますが、頭の中の整理としては、そのようになるのかと思います。 ○永井座長  モデル事業と言ってしまうと、予算が付いて、先にレールが敷かれたよう に思いますが、トライアル、何か試行的なことはしないと表面化しましたが、 影響が大きいと思うのです。現行法の中でいろいろなことを考えるにしても、 トライアルは必要だと思うのです。  それから、名前についても、日本型NPもいいのですが、アメリカのNPは、 州によっても病院によっても実にさまざまで、ついイメージが先行して、日 本にそれをそのまま持ってくると、あとでいろいろな弊害が出る可能性があ ります。もっと日本なりのよい名前をつくって、将来的にはアメリカに似る のかもしれませんが、日本は日本の歩みをしていくのがよいのではないかと 思います。 ○海辺委員  これまで検討を重ねた中では、話として出てきたのは、質の担保の問題と、 やる方のそこを目指すモチベーションみたいなことでした。結局、法整備、 資格要件というのは、どのやり方でもいいのですが、今回のまとめだとわか りづらいので作り方を変えていただきたいと思った部分がありました。  それは、いろいろな論点が出たときに、根拠となるようなデータも出てい たのに、ここに上がっている書き方ですと、主観的なイメージになっている ので、ここをこうしなくてはいけない理由としては、このようなデータがあ るということとセットになっているほうが、見たときにわかりやすいと思い ます。そのような工夫があるとありがたいと思います。それが1点です。  先ほども申しましたように、いろいろな業務が拡大することはいいのです が、実際にあなたはやりますかといったら、私はやりたくありませんという データが出てきた会もあったと思います。それが法的なものではなくてもい いのですが、目指したい人がやり甲斐を感じて目指していかれるような制度 にならない限り、いつまで経っても現状がグルグル回るだけで変わらないか なと感じました。その辺を工夫していただけたらと思います。 ○永井座長  その辺が要件であったり、教育であったり、資格認定の問題であったり、 そういうことをしている方への評価、病院や診療所への評価の問題になって いくのだと思います。そういうことがセットで議論されないと動かないでし ょうね。 ○瀬尾委員  労働環境整備が大前提にあって、我々医師が疲弊しているのもそうですが、 オーバーワークなのです。そういう意味では、労働環境整備も平行してやら ないと、いろいろなことをしても、仕事量が増えるだけでは、結局はできな いと思います。平行してやる必要があると思います。 ○永井座長  医師の場合には絶対数の問題もあるのですが、診療科の偏在があります。 これまでの資料でも、診療科で医師数は随分違います。しかしながら一方で、 国際的に見てかなり人が多い科でも足りないという現状があります。そこを どう考えるかですが、これは医療システムの問題と考えられます。労働環境 の整備をすれば診療科の偏在も改善されてくると思うのですが。 ○坂本委員  先ほど西澤先生がおっしゃったようなところで、私も地方と都会で、現状 をいろいろ聞いたりしているのですが、看護師の実施している行為には地域 によって大きな差があります。例えば輸血や人工透析の穿刺などは、地方に いくと看護師がかなり積極的に実施しているにもかかわらず、大変レベルの 高い急性期病院でも看護師が実施していない病院もあります。  要件という話を出したのはそのような意味もあります。ジェネラリストの 看護師に要件をどんどん出していくと、実施していた行為なのに実施できな くなる可能性もあるので、要件は慎重に、既に実施していることも困らない ような状況に整備していただきたいと思います。 ○永井座長  そうですね。要件というのは、その地域の状況も踏まえた要件ですね。都 会でないと研修が受けられないと、今度は弊害が起こってきます。 ○秋山委員  在宅は究極のジェネラリストの状態で、何でもありの状態の中で、実際は 結構ぎりぎりのところまでやっています。ちょっとひやひやしながらやって いるところを、それは法の解釈上、包括指示の中でやって大丈夫なものか、 これは法改正が要るのかというぎりぎりというか、結構際どいところまでや らざるを得ない状況もあってやっています。そこを、先ほど坂本委員が、要 件整備をした上で、中身を評価した上で、そういった条件の下で法改正にと いう前の段階で、いまやられていることがやれなくなるのも困るし、そこら 辺をきちんとしてほしいと思います。 ○永井座長  いままでの厚生労働省の説明でも、実はかなりできるのだということです。 それを安心してできるようにするにはどうするかということと、日本で普く できるようにするにはどうしたらいいか。そういう意味で、教育、認定が必 要です。ただ、それをあまり厳しくすると、受講もできないという話になっ てもいけませんので、その要件の作り方ではないかと思います。 ○羽生田委員  いま認定等の話がありました。いわゆる資格というものを作ったときには、 資格だけでは済まなくなります。資格がないとチーム医療ができなくなると いうような弊害も心配するところです。  労働安全衛生法に産業医の規定というのがあります。これは「産業医は医 師であること」という一言だったのですが、もう1つ項目が増えまして、「研 修を受けた者」というものが増えました。それができるだけで、医師が産業 医をするための条件は変わってきます。  そういったことで、認定試験を受けて資格を取るのではなく、取りやすい 場所、取りにくい場所、取れるかどうかは個人個人で違いますので、こうい った資格として縛るよりは、チーム医療の中で、この人はここまでできる人 なのだという評価を実際にしながら、チーム医療はやられているわけですか ら、そういった中で、研修を受けて資質を上げていくことは当然必要なこと で、自己研鑽にもなってくるわけですが、チーム医療の中でいかにどう評価 され、その人はどこまで全体としてやっていかれるかという評価で、いまの チーム医療は回っていくのだと思います。将来的には、認定資格が必要だと いう議論にはなってくるかもしれませんが、いま認定試験の資格という形に なると、いまのチーム医療の拡大には弊害になる危険のほうが高いのではな いかという心配をしています。 ○永井座長  非常に重要なところだと思います。 ○坂本委員  そのお考えは十分にわかります。しかし、看護協会が認定制度をつくって やってきたのですが、認定看護師や専門看護師たちの活動を見ていると、肺 炎の発生が減少するなど、そのような成果が数字で出ているので、きちんと 教育をすることが必要なのだと思います。  その病院の中で認めていくことも大事なのですが、ではどれだけの教育を その病院の中でできるかという問題もあります。認定という意味では、看護 協会の職能団体がつくったものですが、医療の質を上げることに貢献してい ると思います。 ○永井座長  これまでの専門看護師の教育と違って、今度は特定の技能によっては、内 容によるとは思いますが、医師による教育も必要になってくる話ですね。そ の辺も考えておく必要があると思います。 ○海辺委員  現場が回らなくなるからグレーゾーンを残すとか、現状のままでというの は、いま回っているものが回らなくなることを懸念すれば、当然そうなって いかざるを得ない部分があるのですが、そうなってくると、地域による格差 ややっている方々の志の高さに非常に影響を受けてしまう問題が解消されな くなります。この4月からという話ではなく、ここでは将来的なビジョンも示 していかないといけないのではないかと思います。そうでないと、2年後ぐら いにまた同じような検討会が開かれているのではないかと思います。 ○永井座長  短期的にどうするかということと、中長期的にどうするかということです ね。  (4)にフィジシャン・アシスタントの話があります。これについての私の意 見を言わせていただきますと、これは単に看護師さん、コメディカルスタッ フの話だけではなく、医師の専門性、専門医制度の話ともリンクしてくるの ではないかと思います。つまり、先ほどもお話をしましたように、脳神経外 科医が人口当たり、アメリカの5倍いて、1人の手術件数が25分の1で、それで も足りないという状況があるわけです。これをどう考えるのか。そこを各外 科系が専門医制度なり病院での機能分担をすることと抱き合わせで、新しい 医療職種のことも考えたほうがいいのではないか。そうしないと、全体のバ ランスが取れないように思うのです。  それと、将来的にフィジシャン・アシスタントのことを考えておく必要は あると思うのですが、法改正が必要な内容であるなら、まずは現行法の中で やれるところで、要件整備がまず妥当かと思います。必ず将来的にはこのよ うな制度が必要であるという認識は、おそらく多くの方が考えていると思い ますが、背景には専門医制度の推進がないと、人口当たり5倍いても足りない という状況が説明できないと思うのです。有賀先生、いかがですか。 ○有賀委員  私は5倍か3倍かは忘れてしまったのですが、いわゆる脳神経外科専門医の 資格を持った人たちが、急性期から慢性期に至るまで、相当程度にたくさん の仕事をしていることは間違いない。ですから、手術場での仕事だけで言う なら、全く先生の言われるとおりなので、そういう意味では脳神経外科医を 巡るその他の専門医なり、ジェネラリストなりが、十分に配されるような医 療提供体制になっていかないと、話の筋が通らない。だから、病院の中であ れ、外であれ、役割分担と上手な連携のやり方という話が、今後も重要な課 題となっていくと思います。  順番からすると、最初にナースの話が上がってきたのでナースの話になっ ているのだと思いますが、一緒に働いている人たちで議論をするときに、救 急認定の看護師資格を採ったほうがいいのではないかという話はいくらでも 出ます。現場においては、確かに私たちの中での教育ということで、Aさんや Bさんにいろいろなことをやってもらおうという話もあります。それから、せ っかくだから資格も取ってこいという話になって、看護部のローテーション の中で、上手にどこかの学校へ行って勉強をしてくると、資格ももらってく るということもあります。  現状においては、基本的なストラクチャの部分、羽生田先生が言われるよ うに、絶対数が足りないという、基本骨格をなす足りない部分は何とかしな くてはいけませんし、それをどうにかするためには、場合によっては富の流 れをコントロールしなくてはいけないのかもしれませんが、私たちの現場の 医療そのものは、座長が言われるような形で、じわじわと進んでいます。そ の延長線上で、医療提供体制全体をどうするかという話になってくるのだと 思います。急に4月にどうこうするなんていう話は、さらさらあり得ないと思 います。現場をきちんと評価していただければ、それはそれでいくのではな いかと思います。  ここにおられる先生方、ナースの方もみんなそうですが、現実にその現場 を背負っています。薬剤師さんも背負っているわけです。その背負っている 状況を突然端から何かによって変えることはないわけで、そのような形の議 論だと思います。  だから、2年後もまた似たような議論をするという話が今ありましたが、こ のままだらだらしていれば、全く同じことが起きるのではないかと私も危惧 します。ただ、突然資格だけが輝くような美しい話というのはないのではな いかと思う次第です。 ○島崎委員  先ほどの話に関して言うと、あまりに資格を強調するとかえって医療現場 が詰まってしまい、柔軟性がなくなることは、私も一面では危惧をします。 しかし、資格制度というのは、この資格を持っていれば最低限この程度はで きるだろうという、「認定コストの節約」と言う語弊があるかもしれませんが、 そのような面があります。また、教育の中身を評価し一定のレベルアップを 図っていく目標が定められるという面もあり、資格の議論は避けられないの かなという感じがします。それが1つです。  それから、永井先生のおっしゃったPAの議論に関していうと、先ほどの脳 外科の問題というのは、医療の効率性、生産性という観点からみると、そも そも本質的な問題を数多く抱えているように思います。  そうすると、むしろここのチーム医療検討会の中でPAの議論を突き詰めて 行うというより、むしろ別途具体的な内容に即し議論したほうが、性格とし ては馴染むのかなという印象をもちます。 ○海辺委員  法整備とか資格がキラキラ輝いて、それができたらすぐに変わるというこ とは全く考えていません。現場が回っていくこと、患者にとってベストな医 療が受けられることが患者の願いです。  私ががんの患者団体の活動を通じて体験したのは、そうは言っても、がん 対策基本法ができたことによって、現場が変わったということではないので すが、がんの医療はだいぶ整備が進んだので、これから5年後には、私が這い 蹲っていた頃と比べると、随分いい環境で化学療法が受けられたり、法射線 治療が受けられるのかなと思います。その代わり、あんな法律ができたせい で現場はもっと大変になったというご批判もいただくのですが、それでもそ の当時と10年後を比べたら、確実に10年後は私たちが感謝できるようになっ ているかなと思うので、2、3年後はすごく大変になるかもしれないけれども、 そのあとの10年後にはもう少しよくなっているかもしれないというものは、 必要なのではないかと感じました。  あとフィジシャン・アシスタントのことは私は勉強不足でわからないので すが、日本は屋根瓦方式で外科の先生なんかがどんどんステップアップされ ていく中で、開胸するところだけを別の人がやってなんていうものが、日本 のやり方に馴染むのかどうかとすごく思います。日本はアメリカと比べると、 手術で亡くなる人の数が10分の1とかで、非常にいい手術を行っていただいて いると思うので、わざわざアメリカの真似をして、万が一質を違えることが あったら怖いなと思うので、患者の立場からも、こういうことはもっと慎重 にしていただけたらなと思いました。 ○竹股委員  いま資格の話が出ていますが、現場のナースたちを見ていても、資格取得 者というのはもともと資格を取るのが好きなのです。なぜかというと、自分 の専門の資格をもっと高めたい、広げたいと。そういう意識を持っていて当 然だし、そこを目指させることで、さらにモチベーションも上がっていくこ とがありますから、質の担保、モチベーションの意味で、資格は大事だと思 っています。  ただ、現場の状況から申し上げると、資格、資格という形になると、いま まで資格はないけれども、実践的に非常に高いレベルの看護実践を持ってい る人たちの立場なり、状況が発揮できなくなってしまうのは困るので、いま の海辺委員の話ではありませんが、資格があることで、目指すという意味に おいては、それをつくっていくべきなのですが、その移行措置としては、い まやっている人たちの力量をどう評価するかはありますが、それについては 保障していくと。ただ、将来的には質の保証、担保は絶対に必要ではないか と思います。 ○永井座長  特に、普及、普遍化、標準化という切口で考えたときにですね。ただ、い きなり新しい制度を入れて、全国的に展開というのは、いくら何でも無理で す。そういう意味で、先ほど議論のあったトライアルを始めて、その中で問 題点を洗い直して、2年後に議論してもよいと思うのです。やはり実験してみ ないとわからないのではないかと思うのです。 ○有賀委員  そういう意味では、「その他のメディカルスタッフ」と書いてありますが、 今がん対策基本法の話が出ました。診療情報管理士といいますが、ああいう 人も現場のナースやドクターがやっていることを後ろから支える重要な職種 です。あの方たちがそれなりに情報を整理整頓しながら、私たちに情報を提 供してくれたりという話があります。だから、がん対策基本法そのものは、 全体の医療の提供の様をある程度整理整頓したという話になります。そうい う意味では、チーム医療はどの職種がどうだという話も面白いのですが、全 体としてどうするかという話も、基本的にはとても大事なのではないかと思 います。 ○朔委員  資格と法律と現場の姿という面で、一言だけネガティブな発言をさせてい ただきます。申し上げておきたいのは、ここにいらっしゃる皆さんは非常に モチベーションが高くて、頑張って仕事された方ばかりですが、組織の中に は仕事をしたくない、給料だけをもらいたいという方もいらっしゃいます。 そういう方が、法律に触れるということで、文句を言われたり、提訴をされ たりすると、非常に困ったことになるわけです。  皆様はどのくらいの車間距離を取らないと法律違反かご存じでしょうか。 25mなのです。ところが、25mで走ったら割り込まれてしまうのが現実で、 その法律は交通量の少ないときに作られた法律なのです。我々の急性期医療 も、看護師さんには車間距離2〜3mで仕事をしてもらっているようなもので す。それを25mの車間距離を取らないと法律違反だと言って、院長が正面か らせめられると、院長は非常に困る。国立病院だけの話かもしれませんが、 いわゆる順法闘争というものが過去にあったということを認識しておいてい ただきたいと思います。 ○瀬尾委員  先ほど海辺さんが言われたように、がん基本法ができて、いろいろなとこ ろがダイナミックにどんどん変わってきています。例えばチーム医療基本法 ということで、大きな概念として、このようなことをやるのだ、つまりそれ は患者のQOLを高めるためには、このようなことが必要である。逆に、我々働 く者のQOLを高めるためにも、チーム医療が必要であって、そういうことを基 本的に邁進していくのだという法律的なものができれば、基本骨格に沿って、 個々のものは個々のもので違うと思うのですが、大きな概念として、医療と いうのはこういうことをやっていくのだという1つとしていいのかなという 思いもします。 ○大熊委員  海辺さんの話に関連してです。リチャード・ブラウンという人が書いた『ア メリカの医療と資本主義』という本があって、その中に、次々に高度で新し い治療法が開発されると、医師たちはもはや面白味がなくなったり、利益を 上げられなくなった仕事を配下の技師や看護師やコメディカルに下請として 回してきました。今日のアメリカの多様で多数の医療従事者は、このように してつくられていったというようなことが、ブラウンさんの本には書いてあ ります。  どうもフィジシャン・アシスタントなどは、胸を開けるところはやってよ という感じは、面白味がないから下請というのにピッタリな感じがしてしま い、ここではアメリカが暫々引かれてはいますが、アメリカの医療はあらゆ る意味で日本の手本というわけではないので、瀬尾先生が頷いてくださって いますが、中身を吟味する必要があると思います。  それと、同じナースについて、NPとフィジシャン・アシスタントというの は、かなり違った概念で語られているので、この整理を当事者の皆さんにし ていただきたいです。  それから、看護師の資格の上にある資格としては、保健師、助産師がいる わけで、とりわけ助産師は、いま考えているナースプラクティショナーなど と、かなり相似的なところがあるので、助産師とNPも関連付けながら考えて いただけたらと思います。 ○永井座長  3.の「その他のメディカルスタッフの役割の拡大」のご意見も伺いたいと 思います。先ほど山本委員から薬剤師の話を伺いました。そのほかにも、管 理栄養士から臨床工学技士、ソーシャルワーカーといろいろな職種がありま す。この辺の役割としてどう考えるか、あるいは教育をどうするか。 ○有賀委員  私も朝のカンファレンスは、必ず薬剤師と一緒にやっています。山本先生 がお書きになったことに類似したことをしてくれている薬剤師さんたちと議 論しています。教育に関係すると思いますが、先ほど採血の話が出たり、オ ーダーを出したりする話が出ました。これは薬学部の教育かも知れませんが、 しかし、採血の問題や処方せんの問題をある程度揉んでいけば、ここでの話 でいう、包括的な指示という感じでやっていけるのではないかという気がす るのです。そこら辺については、薬剤師の方たちはどう考えているのかを教 えていただきたいのです。私はやらなければいけないとは思うのですが。 ○山本信夫委員  まさにご指摘のとおりでして、いまできることの中に、採血も検査オーダ ーも含まれていないわけですが、そこは薬剤師の教育をよほど変えないと、 採血にまで至るのは、容易ではないと思います。現在の教育の中で、さまざ まな採血方法があるので、指先をポチンとするような、いわゆる自己採血方 式のように誰でもできるものがありますが、静脈からの採血となると、そこ は容易なことではないと思います。そこまでいくにはかなり時間がかかると いう気はしています。  ただ、将来的にそういう方向があるのであれば、薬学教育そのものを変え ていって、そうしたところにかかわれる薬剤師ができても良いと思います。 一方、採血について言えば、血中濃度を測定するために検体がほしいと思っ ても、そもそもの採血のオーダーができない。その辺は拡大をしてもいいの ではないかと考えています。  いまお話の中で教育の問題がありましたが、教育期間が6年制に変わったか らといって、すぐにできるものではありません。当然それなりの6年制の教育 を受けたあとに、さらに専門の教育を受けて、質を上げることがあった上で、 かつそこまでできるかなということについても、当然関係者間の合意も要る と思います。  その中で、将来的な業務としては、採血も念頭にはありますが、現在はま ず、いまできることをきちんと踏まえ、できることをきちんと明示した上で、 さらにそれから伸ばしていくほうが、いちばん現場での混乱がありません。 先ほどジェネラリストとスペシャリストの話がありましたが、外から見ると 薬剤師は薬のスペシャリストですが、薬剤師が集まるとその中ではジェネラ リストとスペシャリストが存在しています。したがって、ジェネラルな部分 でさまざまな分野をカバーしつつ、特化的に特別な知識を持った、あるいは 技能を持った者が出てくることは、将来的にはあると思っていますが、まず はここ示した1番から12番までの事項を、現在でもできるということで明示し た上で、さらに将来拡大すべき方向としては、包括の意味はさまざまですが、 必要な教育を進めながら、あるいは訓練もしながら、実際に医師、看護師と 協働する中で、我々の分担はどの範囲であって、その中ではしっかりと責任 を持って役割を果たすことが必要と思います。責任を持って仕事をするとい う意味で言えば、アメリカで進んでいるCDTMになるのでしょうけれども、日 本版CDTMというと混乱するので、日本で定着するようなCDTMの考え方を、医 療機関の中、地域の中、さらには医療全体に進めていければというのが、我々 の思いです。その点をご理解いただきたいと思います。 ○有賀委員  追加です。したがって、病院の薬剤師さんたちに関してのみ言っても、病 棟に足繁く上がって来れる薬剤師と、ほとんど病棟の面倒を見れない人がい ます。これは病院医療全体をどう考えるのかという院長なり、病院の執行部 の考え方によるのかもしれませんが、そういう意味ではジェネラルな水準と は病棟には薬剤師さんがいるんだよねというところまでやれるような、そう いう状況にしていくことが必要だと思います。それなしに、アメリカのこれ がどうだという話は、ナーシングスタッフと同じような議論になってしまう のではないかと思うのです。 ○山本信夫委員  おっしゃるとおりです。ですから、私どもが考えているのは、今回まとめ の中に記載したように、薬剤師の業務はいまどうなっているか、将来どうす るか、どう考えるかということです。今後どうするかの問題は、まさに上の 現状が整理された上で、将来の方向は出しますが、まずは現状がきちんと整 理されることで、それぞれの専門家の専門職種間での有効活用、医療の現場 で効果的に利用・活用することが、チーム医療の目的と考えれば、薬剤師の 担うべき役割があるだろうと思います。  繰り返しになりますが、現在できていることをきちんと進めた上で、その ベースに乗って伸びていくことがあるべき姿で、薬剤師の何々薬剤師という 別の尺度を作るのではなく、認定あるいは研修、といったもので区別差別す べきであって、薬剤師を3つも4つも作るのは好ましいことではないと思いま す。将来の方向性は打ち出した上で、いまできることを整えることが、いま 我々がいちばん考えなければいけない問題です。  先ほど在宅の話がありましたが、在宅もそうですし、医療機関も同様です が、そういったことができるような、あるいはできる環境があるので、そこ をまず明確に明示していただきたいと思います。 ○海辺委員  がんの患者会をやっていて、がんとともに生きる会はドラッグラグの問題 をいちばん最初にやっておりましたので、薬剤師さんの資格拡大だったら、 ベッドサイドに進出することより、そちらのほうからの患者とのアプローチ を考えていただけたらと思いました。  というのは、治験を請負っている先生や医療者が非常に忙しく、患者数が 多くて比較的何とかなるような治験はよく進むのですが、患者数の少ない治 験などは進まなくて、ドラッグラグが未だに深刻です。是非そちらの方面で、 この辺が拡大すると、もっとどんどんできるというところも考えていただけ ればと思いました。 ○山本信夫委員  ありがとうございました。それは私どもの仕事だと思っています。ただ、 治験を行う際の治験のグループはチームになるので、どのような治験の組み 方をするか、あるいはチームを組むかにかかってくると思います。  今回薬価制度の中で、ドラッグラグがなくなるような仕組みもつくられて いるので、我々は積極的にそこにかかわっていって、対象が少ない患者さん であっても、この治験によって何が起きるのか十分にインフォームド・コン セントを取るような方法も含めて、効果的で良質な薬が早く現場に出せるよ うに努力することも、我々の仕事だと思っているので、よろしくお願いしま す。 ○加藤委員  役割の拡大のところで薬剤師のところで出されていましたが、助産師もこ の辺で入れていただきたいと思っています。  助産師の場合、役割拡大ではなく助産に付随する業務を公的に認めいくこ とを臨みます。例えば、緊急時の会陰切開や縫合、会陰裂傷後の縫合などは、 業務の延長線上にあります。出産の現場で、助産師の判断で切開や縫合は、 当然の業務として早期に認めて頂きたいと考えています。 ○永井座長  薬剤師さんと同じように、こういう書類を出していただきたいです。 ○加藤委員  この次に出させていただきます。 ○永井座長  そのほかの職種、例えば臨床心理師ももっと病院の中に入ってきていただ いてよいのではないかと思います。臨床工学技士の場合には、術後の呼吸循 環管理はすでに法律に書いてあるのです。こういうところの問題にもハイラ イトを当てたよいと思います。あとクラークさん、介護職員、最後の「多職 種の連携の推進」も含めて、何かご意見をいただければと思います。 ○有賀委員  いまいろいろな職種が出てきました。法律を変えるという話があるとすれ ば、救急救命士に病院の中で一緒に働いてもらおうという話は、以前座長も ちらっとおっしゃっていたように思います。これは救急救命士のみに関して 法改正を言うとするなら、病院でも仕事ができるようにするような法律へと 変えるのだと思います。いろいろな可能性を秘めた形で、いろいろな職種を 議論の全体の中に入れていかないと、ここにいないから自分たちの職種は蔑 ろにされたのではないかという誤解が起こるといけないと思います。どうぞ よろしくお願いしたいと思います。 ○永井座長  課題としては挙げておく必要がありますね。 ○竹股委員  生産性の問題になるのですが、コメディカルの方たちはそれぞれの業界で、 どのくらいの要員の計画を立てているのか。これは全くわからないですね。 と申しますのが、診療報酬制度の中で、看護師の数で当然7対1になれば、10 対1になれば、これだけ診療報酬が得られるということで、病院はやっぱり看 護職を集めようとする。医師もそうかもしれない。しかし、コメディカルの 方たちも一定職種としての要員数は、例えば臨床検査技師さんの場合、仕事 が得られないとも聞くのです。数字として実際にどうかは知りません。たぶ んほかの職種も、そうあり得る。ということは、医療職全体としては非常に 不効率なのです。  なぜ病院がそういう方たちを使えないかというと、経済的なインセンティ ブがないからです。自分たちの医療の質を高めようとすれば、そこにより多 く他職種を採用するけれども、経済的にはそれはそれ以外の何ものでもない ということになってしまいます。もっとコメディカルの方たちの活用を評価 していただけば、看護職にしても医師にしても、彼らがいることによる業務 上の分担が進みますし、もちろん質も高くなりますので、その辺をこの際で すから考えて、制度が変わることになると大変になるかもしれませんが、現 場の考え方としてお伝えしておきたいと思います。 ○太田委員  病院と地域の連携が必要で、病院のコメディカルと地域のコメディカルと の連携が取りづらいのが現実なのです。PTはPTに紹介状を書くのですが、ソ ーシャルワーカーは、診療所のソーシャルワーカーはいないので書けないと いう状況です。薬剤師は地域の薬局とはなかなかつながっていないという問 題があります。  情報共有ツール、電子カルテが共有できれば問題ないわけですから、将来 的にはそういう方法になると思うのですが、当面は同種間の連携をもっと強 化できるように、何らかの形で、診療報酬制度でもいいですが、例えば訪問 看護師が薬剤師と話ができるとか、何かあったほうがいいように、私は感じ ます。 ○井上委員  法改正の話について申し上げておきます。先ほどのPAと、「日本版」NPとい うものになるなら、法改正が必要でしょう。また、現行法の中で、いま何を やれるかをまずやってからというのは、一面そのとおりなのですが、新しい 職種だから法律が必要というのではなくて、有賀先生がおっしゃったように、 救急救命士が院内で働くなどと同様に、看護師がいまの状況からでもう一歩 踏み出すには、ひょっとしたら法改正が必要なことがあるかもしれない。最 初に法改正があるなしかで決めるのではなくて、少し長期的視点を持つので あるなら、なおさら結論を急がずに、いろいろな可能性を検討していただき たいと思うのです。そうしないと、とにかく法改正のない中で、さらに大学 院教育を充実しろというのでは、これまでの議論は一体何だったのかと。  静脈注射の例のように、通達で180度返ることもあるのに、実施する看護職 にとっては何の報酬も付かなければ、何のインセンティブもないということ を繰り返してきたのです。ここまで話が進んで、これだけ看護師教育を高度 化し、これだけのことがやれる、実際にやらされている。でも、いまの法律 のままで考えてみましょうと言うのでしょうか。60年経過した法律を根拠に 現実を放置しないでほしいと思うのです。新職種だから必要という発想では なくて、必要なところはそこ(法改正)も踏み込むというところを、是非幅 の中に入れておいていただければと思います。 ○永井座長  よろしいでしょうか。今日のご意見をいただいて、次回にまとめのたたき 台をお出ししたいと思います。事務局から連絡事項はありますか。 ○石川(義)補佐  次回の日程についてお知らせします。2月18日(木)の13時から15時、場所 は未定です。正式に決まりましたらご連絡させていただきます。 ○永井座長  次回以降もよろしくお願いします。本日はこれで終了します。ありがとう ございました。 -了- (照会先) 厚生労働省医政局医事課 石川義浩、石川典子 (代表)03−5253−1111(内線2564、内線2563)