2010/01/13 第2回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)議事録 化学物質のリスク評価検討会の「第2回有害性評価小検討会」                   日時 平成22年1月13日(水)                      14:00〜                   場所 経済産業省別館10階1038号会議室 (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部             化学物質対策課化学物質評価室 井上 〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2             TEL 03-5253-1111(内線5518)             FAX 03-3502-1598 ○長山室長補佐 本日は大変お忙しい中、ご参集いただきまして誠にありがとうございま す。ただいまより「第2回有害性評価小検討会」を開催いたします。本日は委員の皆様、 全員の出席となっております。それでは議事進行については、大前先生にお願いいたしま す。 ○大前座長 議事次第にありますように、今日は4つの議事がありますので、できるだけ能率よくやっ ていきたいと思います。最初に事務局より、議事予定と資料の確認をよろしくお願いします。 ○長山室長補佐 「第2回有害性評価小検討会」の議事次第に、本日の議事が書いてあります。2番目 の「議事」にありますように、本日は(1)から(4)までの4つを予定しております。(1)として、「がん 原性試験(吸入試験)対象物質の選定について(フィージビリティーテスト終了物質からの選定)」 です。(2)として、「酢酸イソプロピルに係る今後のリスク評価の実施について(報告)」です。(3) として、「リスク評価の手法(改訂(案))」(修正版)についてです。(4)として、「有害性評価書、 評価値の検討」です。  資料の確認です。「配付資料一覧」ということで付けております。資料1-1として、「国が実施する がん原性試験について」です。資料1-2として、「平成22年度がん原性試験(吸入試験)着手候補物 質」です。資料2として、「酢酸イソプロピルのがん原性試験の評価結果について」です。資料3とし て、「リスク評価の手法(改訂(案))」です。資料4-1として、「有害性評価書(7物質)」という ことで、本日は7物質についての有害性総合評価書及び有害性評価書を付けております。資料4-2とし て、「平成21年度リスク評価対象物質に係る有害性評価関係資料」ということで、本日議論いただく 物質についての表が載っております。資料5として、「有害性評価小検討会の今後の予定」です。参考 資料として、机上配付のみとさせていただいておりますけれども、前回と同様に、「各物質の提案理 由書」を付けております。 ○大前座長 まず最初に1番目の議題、がん原性試験(吸入試験)対象物質の選定について、フィージ ビリティーテスト終了物質から選びます。事務局から、説明をよろしくお願いいたします。 ○平川査察官 それでは資料に基づき、説明させていただきます。まず資料1-1、「国が実施するがん 原性試験について」説明させていただきます。国が実施するがん原性試験は、労働安全衛生法第57条 の5の規定に基づき、化学物質による労働者の健康障害を防止するための国の援助等ということで実施 されているものです。試験の結果、対象化学物質が「がんが労働者に生ずるおそれがあるもの」と判 断される場合には、労働安全衛生法第28条第3項に基づいて厚生労働大臣が当該化学物質を製造し、 又は取扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を公表することにな ります。  このがん原性試験の実施にかかるスキームについては、別紙1に、平成21年度からフィージビリテ ィーテストを行うものに関するスケジュールを付けております。今般の有害性評価小検討会において、 物質の選定を行ってから、平成22年度から2週間試験、13週間試験、がん原性試験の順番で試験を実 施していきます。今回は吸入試験を行う1物質をこの検討会において選定していただきます。この試験 は104週間で行っているということで、試験結果の公表までには大体5年ぐらいを要する非常に長期の 試験ということですので、慎重な物質の選定を御願いするものです。基本的には、がんが出ないと指 針などにもつながりませんので、がんのおそれのある物質を選定してもらいたいというのが、当方の 基本的な考え方です。  そういったことで今般、物質の選定を行っていただくわけですが、その前に先月行った小検討会に おいて御評価いただきました酢酸イソプロピルを例として今後の流れについて申し上げます。試験が 終了した後の評価で、労働安全衛生法第28条第3項の指針を出すかどうかの判断をしていただきます。 おそれがあれば指針の作成や、リスク評価の対象物質とすることへの企画検討会の提案を行います。 おそれがなければ、指針は作らないということになります。最終的に指針案を作っていくという目的 で、これまでがん原性試験を行っていているということです。実績は別紙2に付けております。報告は 昭和62年度から行っております。以下、試験実施中の化学物質を含め、平成26年度報告予定分まであ るという状況です。  今までの実績は資料に示したとおりですが、平成22年度に着手する候補物質として、資料1-2を用 意しておりますのでご覧ください。この5物質については、いずれもフィージビリティーテストが、す べて終了しているものです。平成19年度に行ったものが酢酸エチルと2-エトキシエタノール、平成20 年度がメタクリル酸ブチル、平成21年度がアクロレインと酢酸ブチルです。  酢酸エチルは、常温で液体の化学物質で、変異原性についてはエームス試験で陰性、染色体異常及 び姉妹染色体交換試験においては陽性となっています。有機溶剤中毒予防則で第2種有機溶剤に指定さ れており、MSDSの対象となっています。GHSの発がん性分類では分類できないということになっており ます。また、この物質の類縁化学物質である酢酸イソプロピルについては、昨年12月15日の有害性評 価小検討会で評価をしております。   2番目の2-エトキシエタノールも常温で液体です。変異原性については、エームス試験で陰性、染 色体異常試験においては陽性となっています。有機溶剤中毒予防規則で第2種有機溶剤に指定されてお り、MSDSの対象となっています。GHSの発がん性分類では分類できないということになっております。 また、この物質の類縁化学物質であるエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートについては、 現在がん原性試験を日本バイオアッセイ研究センターで行っているところです。  3番目のメタクリル酸ブチルも、同じく常温で液体です。変異原性については、エームス試験で陰性 です。労働安全衛生法上の化学物質管理に係る法規制については今のところはありません。GHS分類も されていないという状況です。これについてもエステル化合物ということで、加水分解をすることが 想定されます。  4番目のアクロレインも常温で液体です。変異原性については、エームス試験で陽性となっておりま す。労働安全衛生法上の化学物質管理に係る法規制については、特定化学物質障害予防規則において 排ガス処理に関する規定があります。さらにMSDSの対象となっています。GHSの発がん性分類は区分 外となっています。この物質については平成16年の製造・輸入量で15,729トン、アクロレインの代謝 物については発がん性があるという報告がされているという状況です。  5番目の酢酸ブチルですが、変異原性については、エームス試験の結果は陰性です。有機溶剤中毒予 防規則で第2種有機溶剤に指定されており、MSDSの対象となっています。GHSの発がん性分類では分類 できないということになっております。また、この物質については、先ほどの酢酸エチルと同様に、 類縁化学物質の酢酸イソプロピルのがん原性試験を日本バイオアッセイ研究センターで行っており、 昨年の有害性評価小検討会で評価を行っているという状況です。  以上の5物質から選定を行っていただくわけですが、これらが実際に試験を行うことができるかどう か、別紙1のとおり、フィージビリティーテストの実施を行っております。詳細はテストを実施した日 本バイオアッセイ研究センターのほうからご説明をいただきます。 ○日本バイオアッセイ研究センター長野副所長(以下「長野副所長」) フィージビリティーテスト を実施した、日本バイオアッセイ研究センターの長野です。ラット及びマウスの吸入投与による試験 が可能であるかどうか判断するために、吸入ばく露をする際のばく露条件及び濃度測定条件の検討を、 5物質について実施いたしました。フィージビリティーテストでは、ラットの2週間及び13週間の試 験に使用する吸入チャンバーを使用して、各被験物質のばく露条件について検討をいたしました。  まず酢酸エチルです。ばく露目標濃度を80ppmと8000ppmの2濃度に設定して、6時間のばく露時間 で発生検討試験を実施しました。その結果、被験物質を清浄空気でバブリングして蒸発させ、清浄空 気と混合する方法により79.1±8.8ppmと、7976±80ppmの精度でばく露できることがわかりました。 なお、最高濃度はラットのLC50値16000ppmの1/2である8000ppmに設定しました。また、最低濃度は 最高濃度の1/100を想定しております。  次に、2-エトキシエタノールです。ばく露目標濃度を10ppmと1000ppmの2濃度に設定して実施し、 6時間のばく露時間で発生検討試験を行いました。その結果、被験物質を清浄空気でバブリングして蒸 発させ、清浄空気と混合する方法により10.4±0.8ppmと、997±66ppmの精度でばく露できることがわ かりました。なお、最高濃度はラットのLC50値、2000ppmの1/2である1000ppmに設定いたしました。 最低濃度は最高濃度の1/100を想定いたしました。  3番目に、メタクリル酸ブチルです。ばく露目標濃度を10ppmと1000ppmの2濃度に設定し、6時間 のばく露時間で発生検討試験を行いました。その結果、被験物質を清浄空気でバブリングして蒸発さ せ、清浄空気と混合する方法により10.1±0.2ppmと、1006±36ppmの精度でばく露できることがわか りました。なお、最高濃度はラットの4週間ばく露試験で一般症状や鼻腔への影響が見られる952ppm に近い1000ppmを設定しております。最低濃度は最高濃度の1/100を想定いたしました。  4番目に、アクロレインです。ばく露目標濃度を0.1ppmと8ppmの2濃度に設定し、6時間のばく露 時間で発生検討試験を行いました。その結果、被験物質を清浄空気でバブリングして蒸発させ、清浄 空気と混合する方法により0.10±0.01ppmと、8.03±0.34ppmの精度でばく露することが可能でした。 なお、最高濃度は吸入試験での文献の中で最も高い濃度である8ppmを設定いたしました。最低濃度は 最高濃度の約1/100である0.1ppmを想定いたしました。  5番目に、酢酸ブチルです。酢酸ブチルに関しては短期試験用の吸入チャンバーとして、今回は1m3 を使っているのですが、ここでの技術的に可能な最高濃度は2000ppmでした。そこで、この2000ppmと 20ppmの2濃度を設定して、6時間のばく露時間で発生検討試験を行いました。その結果、被験物質を 清浄空気でバブリングして蒸発させ、清浄空気と混合する方法により19.7±1.3ppmと、1993±40ppm の精度でばく露が可能でした。なお、ラットの13週間吸入試験では、1500ppm以上で体重抑制等の変 化が報告されており、2000ppmの濃度は動物への影響が見られる濃度と考えられます。また、最低濃度 は最高濃度の1/100の20ppmを想定しました。 ○平川査察官 5物質のフィージビリティーテストからはいずれも試験自体は可能ということになろ うと思います。試験装置については資料の別紙2に書かれているような吸入チャンバーを用いて、フィ ージビリティーテストを実施したものです。よろしくお願いいたします。 ○大前座長 この5物質は、いずれもばく露が可能であることが確認されております。また、この5物 質の選定に当たっては、アメリカ等々で情報のないものを選定しておりますので、これをやること自 体、世界的にも十分意味のある物質が選定されております。いま5物質の説明をいただいたわけですけ れども、今日はこれらの5物質の中で1物質を選びたいということです。皆様から物質の選定に関して、 何かご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。これから始めて平成27年度ですから、5 年ぐらいかかる試験なので、ある程度しっかり選ばないと、折角やっても無駄になってしまう可能性 がありますから、慎重にご議論いただきたいと思います。 ○西川委員 生産量などはともかく、エームスポジティブのアクロレインはどうかと思います。 ○清水委員 プラスになっているものの変異原性の強さは、どのぐらいか分かりますか。それぞれプ ラスになっているものは、例えば2番目のクロモゾームですと、どのぐらいの強さなのでしょうか。 ○大前座長 クロモゾームは、今ありますか。 ○長野副所長 エームス試験ですが、ネズミチフス菌で、TA100で30、40、50μg/plateという数字が 出ておりますが、これはいかがでしょうか。 ○清水委員 これはエームスがネガティブですよね。 ○長野副所長 アクロレインではないのですか。 ○清水委員 順番にいきますと、2番目のクロモゾームアベレーションですと、D20値はいくつぐらい になっているのですか。 ○松本(バイオアッセイ) 最初の値はないですね。 ○清水委員 4番目のアクロレインは、サルモネラでポジティブということですが。 ○長野副所長 アクロレインがTA100で33、40、40μg/プレートという表現がしてあります。 ○清水委員 そんなに強くないということですね。 ○大前座長 そのほかにいかがでしょうか。2番目の物質は今、アセテートを現在進行形でやっている わけですか。 ○平川査察官 そうです。資料1の別紙2のほうに、「平成25年度報告予定」として、エチレングリ コールモノエチルエーテルアセテートを予定しているということです。 ○大前座長 そうすると、2番の物質はエステルの酢酸の部分はなく、前回もありましたように、アセ テートのほうが非常に分解しやすいだろうということで、アセテートを見れば大体わかるのではない かという推測ができるのですが、池田先生、そこら辺はいかがですか。 ○池田委員 私も同意見です。 ○大前座長 いま西川先生から、アクロレインはどうかというお話が出ましたが、そのほかの先生方 はいかがでしょうか。 ○池田委員 私も基本的に、アクロレインで賛成という意見です。というのは、酢酸エチルと酢酸ブ チルは、類縁物質の酢酸イソプロピルのがん原性によく似ているのではないかという予想ができるわ けです。ですから、やるのは構わないのですけれども、この中から選ぶならば、少し置いておいても いいのではないかという感じがします。残るのはメタクリル酸ブチルかアクロレインの2つになります。 化学構造から見ていちばん反応性が高いのは、やはりアクロレインになると思います。こういった反 応性の高い物質をずっとばく露した時にどうなるかというのは、やはり代謝的に見たほうがいいので はないかと思います。次を考えるとメタクリル酸ブチルが、代謝を受けて少し反応性のあるものに変 わるのではないだろうかという予測ができますので、定量的には言えませんけれども、4番のアクロレ インを最初にして、3番のメタクリル酸ブチルをその次にするのはどうだろうかと思いました。 ○大前座長 2人の先生方から、アクロレインでいいのではないかというご意見です。これはアクロレ インの場合、STELが0.1ppmで、フィージビリティーが0.1で計れるという報告でしたけれども、2年 間ばく露ですと、もっと低い所でも出る可能性があるわけですよね。0.1ppmより、もっと低い所での 濃度の測定ということに関してはどうですか。 ○長野副所長 これより低濃度も可能だと考えています。 ○大前座長 濃度を振る分には、たぶん問題はない、あるいは測定も問題はなさそうだということで すね。 ○清水委員 4番のアクロレインのいちばん右側、「留意事項」のいちばん最後に、アクロレインの代 謝物であるglycidaldehydeが、発がん性があるということですが、これがどこにできるのかは分かっ ていますか。 ○長野副所長 これは皮下投与あるいは皮膚塗布した場合、投与部位での使用でということです。 ○大前座長 吸入試験ではないのですね。 ○長野副所長 はい。 ○清水委員 そういう意味でもいちばん疑わしいということで、第1候補でいいかと思います。 ○大前座長 4番には生産量の情報がないのですけれども、アクロレイン自体は「留意事項」で、平成 16年度の製造・輸入量が15,729トンですから、このぐらいは日本でも実際に使っているだろう、ある いは作っているだろうということでよろしいわけですね。日本で使っていないとか作っていない物質 ですと、試験をしてみても意味がないと思います。そのようなことはないだろうということですね。 15,000トンですから、多いか少ないかと言われると、そんなに多くはないのかもしれませんね。いま までのご意見ですと、4番のアクロレインが第1番目だろうと、もし、これをやらないとしたら3番の メタクリル酸ブチルだろうというご意見が出ておりますが、よろしいですか。それでは、この小検討 会ではアクロレインを第1候補にしてはどうかということでよろしいですね。                  (異議なし) ○大前座長 ありがとうございました。それでは議事の2つ目、「酢酸イソプロピルに係る今後のリス ク評価の実施について」ということで、事務局からよろしくお願いします。 ○長山室長補佐 それでは資料2について説明いたします。酢酸イソプロピルのがん原性試験の評価結 果については、昨年の12月15日に本小検討会において評価をいただいたところです。その際も皆様か らいろいろなご意見をいただきまして、ありがとうございました。それをもって資料2という形で、雄 のラットに対して閾値のあるがん原性を有すると判断したことを、1番として小検討会の評価結果を書 かせていただきました。2番目として、評価結果を踏まえた意見です。管理濃度(100ppm)に比べて40 倍の高濃度のものではあるけれど、中皮腫の増加が認められたということ、一方、変異原性試験の結 果からは、遺伝毒性に基づく発がんではないと考えられたということを、昨年の12月15日においてご 議論いただきました。  これらを踏まえると、製造取扱いにおいてリスクが低いと考えられ、この試験結果をもって直ちに 健康障害を防止するための指針を発出するなど、新たな対応をとる必要性は低いと考えられました。 しかしながら、ここのがん原性試験の評価のみをもって、リスク管理を不要と判断することは早計で あり、当該物質について速やかにリスク評価対象物質として、発がん性等の有害性に関する情報を収 集し、これらを基に有害性評価を慎重に進める必要があるという形で、前回はご議論をいただいたと ころです。  これらを踏まえて、1月7日に開催されたリスク評価に係る企画検討会に結果を示しております。企 画検討会に示した結果、酢酸イソプロピルについてはリスク評価の対象物質として、その中で有害性 評価を実施していくということとなりました。ただしリスク評価を行うに当たっては、有害物ばく露 作業報告のスキームで行うと、告示を行い報告をいただいてからとなると、かなり時間が経ってしま うということもありますので、そのスキームで行うのではなく、平成22年度に有害性評価を先行して 実施し、リスク評価に着手することでどうかということで、企画検討会のほうで結論づけられたとこ ろです。また、酢酸イソプロピルについては、作業環境測定の対象物質となっております。このため 有害性評価を行うとともに、作業環境測定の実際の測定データが入手できるのではないかということ で、データの収集なども併せて行うこととして、企画検討会のほうで結論づけられたところです。 ○島田化学物質評価室長 それでは、説明の補足をさせていただきます。実は指針を出すことについ ては、12月15日の検討会で、私ども事務局からは出させていただきたいと申し上げたものですから、 たぶんフロアに来られている方は、この解釈が違うのではないかということになると思います。事務 局から改めて先生方にご相談をした結果、遺伝性の発がんが非常に薄いということと、発がん性が非 常に弱いということもあり、改めてリスク評価をして、情報を収集した上で判断しようというご結論 をいただきました。ですから前回、傍聴に来られている方のご意見とは、ちょっと違っているかもし れませんが、そういう経緯があったということです。 ○大前座長 これは報告事項です。そういう経緯で今日の報告になっております。次が議題の3つ目、 前回も少し修正案が出ました「リスク評価手法(改訂案)(修正版)」についてということで、よろ しくお願いします。 ○長山室長補佐 それでは資料3、「リスク評価の手法(改訂(案))」について説明します。前回、 こちらの改訂案を示して、その中で修正意見のあった部分について、赤で見消しで追加させていただ いております。追加した所ですけれども、まずは1頁の下から32行目、「ばく露レベルとばく露限 界」です。ここに「値」という文字を入れたほうがいいということで、「ばく露限界値」という形に いたしました。  2頁の下から31行目、「無毒性量等の経口から吸入への変換」の部分です。こちらについては、通 常はこれでいいのですが、例外的に吸入ばく露による気道への影響がある場合には、経口から外挿し てしまうと、かえって大き目の値が出る可能性があります。そこで、ここには注意をする必要がある だろうということで、計算式の後に「ただし、吸入ばく露による影響が主となるものについては別途 考慮する」といった形で入れておいたほうがいいのではないかということで、ただし書きの一文を追 加しております。  3頁の13行目のオ「生殖細胞変異原性」における「人の生殖細胞に遺伝する可能性のある」という 部分ですが、途中に句読点を入れないと、生殖細胞に遺伝してしまうというように読んでしまうおそ れがあるのではないかということで、意味の誤解がないように句読点を入れております。  5頁の15行目は先ほどと同じく、「ばく露限界値」という形で、「値」という文字を入れておりま す。前回からの修正意見のあった部分については以上です。 ○大前座長 前回、この会で出た修正意見を加えていただきました。いまの変わった部分、あるいは そのほかの部分で何かお気付きの点はありますか。2頁の31行目は、気道に影響のあるものに関して は、経口から外挿するのはまずいだろうということで、注意を促すという意味で、この一文が加わっ ております。 ○高田委員 その場合、部位を書いたほうが間違いがないのではないかと思うのです。「吸入ばく露 による影響」というと、どの臓器の影響を見ているかということがわからないのです。 ○大前座長 では「気道への影響」がいいですか。気道として鼻腔から肺まで全部、「呼吸器系への 影響」のほうがいいですか。そういうように部位を限定したほうがいいですね。では、そこは「呼吸 器系」にしますか。確かに「影響」ということになってしまいますと、どこでもありますから、そう いう意味では。限定したほうがよろしいでしょうね。では、「気道への影響」という言葉を入れまし ょうか。「呼吸器系への影響」でも、どちらでもよろしいと思うのですが。呼吸器系のほうが広いで すか。 ○高田委員 呼吸器系のほうが広いですね。 ○大前座長 では鼻腔から肺胞のリスクの所まで全部含めて、「呼吸器系への影響が主となるものに ついては」という形で、文を付け加えたほうがいいだろうということでよろしいですか。                  (異議なし) ○大前座長 そのほかにいかがでしょうか。では今回のこの修正は、今の部分を若干直していただい て、改訂案はOKということでよろしいですか。                  (異議なし) ○大前座長 ありがとうございました。 ○池田委員 1点追加で申し訳ないのですが、目への影響というのはないのでしょうか。例えば白内障 などを起こすようなものがあったときに、経口投与では出ないけれども、吸入ばく露だと出るという ことはないでしょうか。 ○大前座長 目の腐蝕とか、そういうものも起き得ますか。 ○池田委員 あり得るのだったら、それも入れてもいいのではないかという感じがします。 ○大前座長 呼吸器だけではなくて。 ○池田委員 直接ばく露というような感じでしょうね。 ○大前座長 そうしますと、この場合の部位としては呼吸器と、眼粘膜と、あとは皮膚もあり得ます か。しかし吸入ばく露で皮膚というのはあまり聞かないですね。直接塗布だったら特別ですけれども、 吸入ばく露はあまり考えなくてもいいと思うのです。 ○高田委員 そこまでの刺激性のあるものは、どうするかということになりますよね。 ○大前座長 ここは、あくまでも経口のデータを吸入に外挿する所の部位だけの話ですので。 ○宮川委員 「呼吸器等」にしておいて、必要であれば後から読み込めるようにというのが、よろし いかと思います。ちょっと気になるのは、肺実質よりも、もうちょっと先のほうまで考えますと、 「等」でうやむやにしておいたほうがいいというのもあると思うのです。 ○大前座長 先生、肺実質と言いますと、例えば。 ○宮川委員 粉じん等の場合で、胸膜胸腔まで行くようなものを後からどうするかということになっ たときに、呼吸器等を入れる入れないという部分が出てくる可能性があるということです。 ○大前座長 そうしますと「呼吸器等」ということで、その中に例えば先ほどのようなものがあった 場合、胸膜等も含み、眼粘膜も含む。場合によっては皮膚もあるものはあるかもしれませんが、それ はあまり想定できないのです。では「呼吸器等」ということで、そういうことをまとめて入れている という解釈でよろしいですか。                  (異議なし) ○大前座長 ありがとうございます。あと1時間半弱あります。7物質ありますので、できるだけたく さんやっていきたいと思います。それでは有害性評価書、評価値、一次評価値、二次評価値の検討に ついて、順番にやっていきたいと思います。最初にアセトアルデヒドについて、事務局から説明をよ ろしくお願いします。 ○長山室長補佐 本日は7物質ということで、資料4-1にアセトアルデヒドから、7つ付けております。 あとは資料4-2のほうにも、本日ご議論いただく7物質があります。1番のアクリル酸エチルは前回終 わっており、網掛けをして評価済みとしておりますので、2番から始めたいと考えております。ここに 今の評価値の候補という形で、表を書かせていただいておりますので、基本的には資料4-1、4-2を参 照していただきながら、必要に応じて机上配付している「提案理由書」も、参照していただきながら 進めたいと思います。あと、資料3の中に一次評価の値の決め方、二次評価値の決め方も書いてありま すので、資料3も使いながら説明したいと思っております。  まず、アセトアルデヒドについて説明いたします。「有害性評価書」から説明いたします。2番の 「物理的化学的性状」としては気体又は無色の液体で、沸点は20.2℃です。3番の「生産・輸入量、用 途」ですが、生産量は36万トンという形で、広く使われております。用途は製造の原料ということで、 さまざまな原料として用いられております。また、中間原料としても、さまざまな用途で用いられて いるものとなっております。  有害性の部分については、「有害性総合評価表」に移って説明させていただきます。まず1頁のオの 生殖細胞変異原性については、やや疑われるという状況になっております。  カの発がん性はIARC:2Bという形で、発がん性ありとなっております。その中で閾値の有無としては、 閾値なしとなっております。閾値なしの場合の一次評価値の決め方は、資料3の4頁(4)のリスクの判定 方法等のアの一次評価のa、発がん性の閾値がないと見なされる場合に当たります。この場合、ユニッ トリスクを用いたがんの過剰発生率が算定できる場合があります。こちらについてはがんの過剰発生 率、10-4に対応する濃度という値が出ており、その辺りの吸入発がん試験で算出された根拠の値を使っ て算出していこうと考えております。  その中に、ユニットリスクとして0.028ppmと書かれております。それについてリスク評価事業にお ける前提条件の呼吸量、ばく露日数、労働生涯といった形での換算をして労働補正を行ったところ、 計算式として出た値は0.14ppmと出ておりますので、こちらが補正後の値と考えられます。  その他の毒性としてはクの全身毒性の単回ばく露の中で、刺激性で眼や気道が標的でありと書いて おります。こちらの濃度や不確実性係数などから、LOAELから求めても、評価レベルは13.5ppmという ことで、先ほどの値よりは大きい値です。  また、ケの反復ばく露についても計算しますと、約30ppmという大きな値なので、特にここら辺は考 慮せずに、0.14ppmを一次評価値としてよろしいのではないかと考えております。  3頁のコの許容濃度の設定は、二次評価値の決定に当たっての材料となるものです。こちらについて は2009年の7月に確認した値ということで、ACGIHは天井値として25ppmと書かれております。あと は下に書いてありますとおり、日本産衛学会についても最大許容濃度という形で、50ppmと書かれてお ります。  資料3の5頁の6行目からが、イの二次評価となります。(ア)が二次評価値の決定です。この場合 はiの許容濃度又はTLVが設定されている場合ということで、このパターンに該当します。原則として 産衛学会の許容濃度やACGIHのばく露限界値のいずれかから選定いたします。両者の値があって一致し ている場合は、一致している値を取ります。両者が異なっている場合は最新の知見を考慮して、いず れかの値とするという形になっております。  こちらについてACGIHの部分で見ますと、Documentation(2001)要旨と書いております。「有害性評 価書」の4頁から5頁にかけて、コとして許容濃度の設定と書いてあります。5頁のいちばん上に ACGIH(1992年)ということで、天井値が25ppmと書かれております。産衛学会では50ppmということ で、2005と書かれております。資料4-2の表にも(2005年の設定)と書いてしまったのですが、確認 したところ、この2005というのは文献の年度で、提案があったのが1990年でした。  「提案理由書」は机上配付させていただいておりますけれども、そこにアセトアルデヒドについて の、ACGIHと産衛学会の「提案理由書」が付いております。「提案理由書」の7頁から、産衛学会の提 案理由が書いてあります。提案としては1990年(平成2年)に提案されておりますので、おそらくそ のぐらいの時期の設定ではなかろうかと思われます。それを2005年度の文献年度で書いて、2009年に 確認したと考えられます。そういうことですので、ACGIHと産衛学会は大体同時期ぐらい、もしくは産 衛学会のほうが若干古いのではないかと思われます。そして25ppmと50ppmの両者があって、大体同時 期ですので新しく、もしくは若干安全側の低い値のほうを取ってはどうかということで、ACGIHのほう がよろしいのではないかと思われます。  以上のことから、アセトアルデヒドについては一次評価値はユニットリスクから求めた0.14ppm、二 次評価値はACGIHの天井値25ppmが、候補として考えられるのではないかということです。 ○大前座長 二次評価値のACGIHのほうは、参考資料の4頁の右側に、「Historical TLVs」というの が書いてあります。1992年にプロポーズドをして、1993年に25ppm、シーリングで確定しております。 産衛の場合は1990年に提案をしました。ルール上は1年間提案をした状態で特にご異論がなければ、 翌年にOKということになりますので、正式な決定は実は1991年ということで2年の差があります。提 案理由の中身はそれぞれ書いてありますが、いずれも刺激で、両方の機関ともシーリングで25ppmもし くは50ppmと提案しております。  一次評価値あるいは二次評価値は、それぞれ0.14ppmと25ppmでどうかということですが、いかがで しょうか。二次評価値はいずれも天井値で、時間荷重平均値ではありません。したがって許容濃度あ るいはばく露限界値とは違うタイプの数字ですが、ターゲットとしている影響は刺激ですから、25ppm あるいは50ppmということで防ぐべき影響も刺激で、これをこのまま使って二次評価値にしたらどうか ということです。この実例は昨年か一昨年に、ホルムアルデヒドで同じようにシーリングを使って二 次評価値を決めておりますので、前例はあります。ご意見はいかがでしょうか。特になければ、両方 ともいちばん低い数字で決めているということでよろしいですか。                  (異議なし) ○大前座長 ありがとうございました。それでは、この検討会ではアセトアルデヒドは一次評価値が 0.14ppm、二次評価値が25ppmとさせていただきます。  2物質目は、インジウム及びその化合物です。説明をよろしくお願いします。 ○長山室長補佐 まずは「有害性評価書」から進めたいと思います。インジウム及びその化合物とい うことで、化学物質としてはインジウム、リン化インジウム、酸化インジウム、三塩化インジウム、 水酸化インジウムといったものが挙げられております。2番の「物理化学情報」としては、2枚目のい ちばん上に表があります。いずれも固体の金属あるいは結晶という形での物性となっております。3番 の「生産・輸入量/使用量/用途」ですが、インジウムとしての生産量は大体50トン、リサイクルの ほうでかなり回収されており、543トンという形で使われております。インジウムの用途としては、各 種合金の原料などとなっております。また、リン化インジウムは半導体関係の材料、三塩化インジウ ムは透明電極用原料など、さまざまな原料に使われております。  それでは、「有害性総合評価表」で説明したいと思います。特に毒性として挙げられるのは、エに ありますように(生殖・発生毒性/発がん性を除く)反復投与の部分について、ラットにおいても認 められました。こちらにLOAELなど書かれております。こちらは2枚目のキの発がん性に比べると、濃 度は低いということで、特に一次評価値で考慮する必要はないかと考えております。  キの発がん性の有無としては、おそらくヒトに対して発がん性があるということで、リン化インジ ウムは2A、その他は2Bとなっております。閾値の有無については「あり」と書かれております。この ように閾値ありの場合、資料3の4頁の30行目のbの発がん性の閾値があると見なされる場合のパタ ーンになります。この場合、試験で得られた無毒性量に不確実性係数を考慮して求めた評価レベルを 一次評価にする、という形で算出することとなります。  こちらのデータとしては、NTP(米国国家毒性プログラム)のほうで、リン化インジウムで試験をし た結果があります。その閾値がある場合、LOAELとしてリン化インジウムとすると0.03ng/m3、インジ ウムが0.024ng/m3ということで、LOAELのほうが出てきております。その中でインジウムとして、肺 の腺がん及び腺腫発生率がラットとマウスに増加しており、LOAELとして、インジウムとして0.024ng /m3となっております。不確実性係数は1000で、LOAELからNOAELへの変換で10、種差で10、がんの 重大性で10ということで1/1000と、先ほどと同じように労働補正を行っていくと、いちばん下にあり ますように、最終的には3.0×10-5ng/m3となります。ですから一次評価値としては、閾値ありのパタ ーンで3.0×10-5ng/m3をインジウムの値ということで設定することが妥当でないかと考えられます。  コの許容濃度の設定の部分ですが、ACGIHのTWAとして0.1mg/m3ということで、こちらは2008年に 設定されております。こちらの値は根拠の中にも書いてあるとおり、さまざまな悪影響の可能性を最 小限とする意図で設定されたということで0.1mg/m3のほうが設定されております。ちなみに産衛学会 のほうでの許容濃度の設定はないということですので、いずれかということで設定されているACGIHの 0.1mg/m3のほうが二次評価値の候補となるのではないかと考えております。 ○大前座長 ACGIHの提案理由の2頁を見ますと、やはり同じように右側にHistoricalTLVsというの があります。これを見ますと1969年のデータです。ACGIHの0.1というのは1969年のデータです。も う40年ぐらい前のデータで、それ以降ACGIHでは改定していないことになります。発がん実験で閾値 があるというタイプで、不確実性係数1000で計算して、一次評価値は3×10-5。二次評価値は産業衛生 学会は、インジウムの許容濃度はありませんので、ACGIHが0.1を使っておりますから、これを使った らどうかということです。  いまのACGIHの提案理由の次の頁の3頁から、インジウム及びその化合物ということで産業衛生学会 の提案理由が載っております。これは血清の中のインジウムの量の提案理由です。環境のいわゆる許 容濃度は提案されておりません。したがって、いままでのルールでいきますと、産業衛生学会の数字 はないという形になります。1969年の数字を採るのはなんとなく気が引けますけれども、これしかな いのでやむを得ないかなというところですがいかがでしょうか。 ○西川委員 発がん性がありというのはいいのでしょうが、「遺伝毒性は判断できない」とあり、発 がん性のところにも、「遺伝毒性は疑われるが確定的ではない」とあります。この段階で閾値ありと いう判断をしていいかどうかは議論したほうがいいと思います。 ○大前座長 具体的には評価書の6頁のカ遺伝毒性(変異原性)のところで、これはリン化インジウム と、それから三塩化インジウムの2つの遺伝毒性に関する試験が載っております。三塩化インジウムの ほうはIn vitroではネガティブである。リン化インジウムのほうは小核試験、マウスの雄と、体細胞 突然変異試験で陽性ということで確定的ではないという結論になったのではないかと思います。清水 先生のご意見はいかがですか。 ○清水委員 In vitroの試験で非水溶性の物質は非常に扱いにくいのです。私どもも水溶性の三塩化 インジウムについて小核試験をやって、多少陽性には出ています。いまペーパーにまとめている最中 です。だから「なし」というのはちょっと気にかかります。 ○大前座長 まだ灰色の段階で、ちょっと判断しかねるということですか。 ○清水委員 そうです。非水溶性のインジウム化合物は非常に軽くて、In vitroでは細胞と接触しな いのです。それから、沈殿して固まってしまうとか、非常に扱いにくい物質です。 ○大前座長 ほとんど溶けないのですか。 ○清水委員 物質、化合物によって溶けないのもあります。 ○大前座長 リン化インジウムはほとんど溶けないですね。 ○清水委員 ですから、小核試験のほうはお腹の中に入れますので。 ○大前座長 いかがでしょうか、とにかく情報がこれだけしかないということと、いま清水先生が三 塩化インジウムについては投稿中だというお話で、その結果だと弱い陽性ですか。 ○清水委員 小核(試験)では少し陽性です。 ○大前座長 少し陽性という、弱い陽性だという情報です。 ○清水委員 そんなに強くは出ないです。 ○大前座長 そうしますと、遺伝毒性があるとはちょっと言えないと。でも、ないかと言われるとま だよくわからないという微妙なところですが、今回はいかがいたしましょうか。これは待っていても、 清水先生の所からの情報が出されるだけだと思います。先ほどの6頁の表に、清水先生の所の情報が小 核でプラスというのが1つ加わる。このときはリン化インジウムですか。 ○清水委員 たしか溶けるタイプのほうですから三塩化インジウムです。 ○大前座長 三塩化インジウムですか。 ○清水委員 溶けるほうでやっていたと思いますから、三塩化インジウムです。 ○大前座長 もしそこで変異原性陽性ですと、これは公的にはまだユニットリスクは出ていないわけ ですね。 ○棗田(中災防) はい。 ○大前座長 0.3でポジティブな結果が出ているので、なかなかユニットリスクは求めようがないです か。入れてしまえばなんとか入るか。 ○細田(中災防) 原案を事務局として悩んでいるのは、インジウム及びその化合物というタイトル で、一次評価値はリン化インジウムの値を使い、もう1つのTLVのほうは必ずしもリン化インジウムだ けど考慮していないというのがあって、ちょっとはすになっているのです。その辺でこれを迷ってい るところがあります。 ○大前座長 実際に金属化合物の場合は、そういう問題は常にありますよね。だから、本当は個々の 化合物ごとに毒性情報があればベストなのでしょうけれども、そういうことはいままでの金属でもあ り得ないので、タスキ掛けみたいな、根拠の違うもので数字を別に作っているというのは、そういう 意味では矛盾していることではあります。明らかに特定の化合物でポジティブな結果が出てくれば、 それはそれで別枠でやるような形になるのではないかと思います。  例えばヒ素の場合には、ヒ素及びその化合物(アルシンは除く)というのがよくあります。そのよ うに特定の化合物で、特定の毒性がわかっているものは別個でやるというのは当然だと思うのです。 そこの棲み分けができないものは、どうしても現段階では「及びその化合物」という形でやらざるを 得ないです。  現段階では、十分な遺伝毒性に関する情報が得られない、あるいはあったとしても弱いだろうとい うことで、閾値があるという計算でやりました3×10-5でよろしいですか。計算のしようがない、デー タの持ってきようがないというのはあります。もちろんデータの持ってきようがないから、なし、作 らないという手もないことはないのですけれども。一般論としては、ないよりあったほうがいい、少 なくとも評価値ですから、そのときにある最大のデータで作ったほうがいいというのが一般だと思い ます。これは一次評価値の3×10-5、それから二次評価値は1969年という古いデータではありますけれ どもこれしかないので、とりあえず0.1にしておくということでよろしいでしょうか。続きましてエチ ルベンゼンをお願いいたします。 ○長山室長補佐 エチルベンゼンについて、有害性評価書のほうでご説明いたします。2番の「物理的 化学的性状」ということでは、液体沸点136℃、融点-95℃というものです。  3番の「生産・輸入、使用量、用途」ですが、輸入量は218トン、製造量は36万トンということで、 国内でかなり製造されているものです。用途は、スチレンモノマーの中間原料や溶剤、希釈剤に使わ れているものです。  有害性総合評価表に移ります。エチルベンゼンについて1頁のオの部分で、生殖細胞変異原性につい ては、いまのところはおそらくなしという結果になっております。次の頁のカの発がん性はありとい うことで、IARCは「2B:ヒトに対して発がん性があるかもしれない」ということで分類しています。そ の中で閾値の有無のところでは閾値ありということで報告されています。  先ほどのインジウムと同じように閾値ありで、不確実性係数を用いながら算出していく形になって きます。こちらの算出方法は、試験で得られたNOAEL250ppmと書いておりますが、根拠にありますNTP、 先ほどの米国のプログラムの1999年のデータになりますが、ばく露条件は吸入ばく露で0、75、250、 750ppmという濃度で行ったところ、750ppmについては影響があったということで、250ppmをNOAELと して算出いたしまして、先ほどと同じように不確実性係数として100、種差の10と、発がん性の重大 性ということで10ということで、1/100を掛けて、また労働補正などを行ったところ、最終的にはい ちばん下にあるとおり、14.2mg/m3(3.2ppm)という形で算出されております。原則としてはこちらの値 を一次評価値として考えるのが妥当ではないかと考えております。  ただ、キの生殖毒性のところで、生殖毒性ありということで、こちらについては試験の中で NOAEL100ppmで不確実性係数10ということで、8.1ppmという値があります。こちらについては原則ど おり一次評価値の先ほどのパターンでいくのか。後でご説明いたしますけれども、許容濃度よりは小 さく、一次と二次の中間の値であるということだけお示ししたいと思います。  3頁のコの許容濃度の設定の部分で二次評価値を考えたいと思います。許容濃度としては、2009年7 月の確認で、ACGIHについては2008年にTWAが100ppmということで設定されております。ただし、 2009年の提案において、このTWAを50ppmにということで提案中と聞いております。産衛学会のほう では、2004年に50ppmと設定されております。こちらは異なる濃度のパターンになりますけれども、4 年のずれがあって、新しいほうはACGIHのほうである。ただACGIHのほうも、産衛学会と同じ50ppmに いま提案中になっておりますので、その辺りを踏まえてどちらがよろしいかご議論いただければと思 います。 ○大前座長 ACGIHは現在提案中で、産業衛生学会と同じ50ppmを提案中であるそうです。産業衛生学 会のほうは2001年に50ppmを提案しております。発がんに関しては、NOAELが250ppm、NTPの実験で 250ppmですので、閾値があるタイプの計算方式をやり、労働補正して3.2ppm、即ち評価値として妥当 ではないか。二次評価値としては先ほどの50ppmは妥当ではないかということですがいかがでしょうか。 随分大量に使われている物質で、ごくありふれた物質です。そんなに珍しい物質ではないです。 ○西川委員 評価そのものに異論はないのですけれども、評価表の2頁の発がん性の真ん中から下のと ころに腫瘍のタイプとして、「尿細管肉腫」と書いてありますが、これは何かの間違いではないかと 思うので確認をしていただければと思います。念のために提案理由書を見ますと、当該物質の2頁に、 フィッシャーラットでは腎腺腫+腎がんと書いてあります。おそらくこれのほうが正しいと思います。 確認の上必要であれば訂正をお願いいたします。 ○大前座長 尿細管の肉腫というのは聞いたことがないです。 ○西川委員 あり得ないと思います。 ○大前座長 これは文章のほうが間違っていると思いますので、ここのところは確認をしていただい て、修正をよろしくお願いいたします。 ○長山室長補佐 NPTの文献を当たって確認してみます。 ○大前座長 そのほかにはいかがでしょうか。いまの部分の確認は数値には影響のない部分ですけれ ども、確認をしていただいて一次評価値が3.2ppm、二次評価値が50ppmということでよろしいでしょ うか。次はカテコールをお願いいたします。 ○長山室長補佐 有害性評価書のほうからご説明いたします。カテコールについて、「物理的化学的 性状」としては、常温であれば無色の結晶、融点は105℃で固体の状態で使われております。  3番目の「生産・輸入量、使用量、用途」ですが、生産量としては約1,600トン、輸入量は約500ト ンです。用途としては各種重合防止剤、医薬、香料などいろいろな原料として使われています。  有害性総合評価表に移りまして、カテコールについてポイントをご説明いたします。1枚目のオの生 殖細胞変異原性については、やや疑われる結果となっております。2頁のカの発がん性の部分ですが、 IARC:2Bということで「あり」ということです。閾値の有無のところについては判断できないというこ とで書かれています。陽性を示しているものや、一部試験は陰性であったということで判断できない という形でまとめられております。  資料3の一次評価値の求め方として、5頁の上から2行目、cの発がん性の閾値の有無が不明である 場合ということで、こちらの場合はイの二次評価に移行することになりますので、前回行ったアクリ ル酸エチルと同じように、判断できない場合には評価値なしという形で設定いたしますので、こちら についても同様に評価値なしという形で妥当なのではないかと考えております。  二次評価値に移ります。3頁のコの許容濃度の設定のところですが、許容濃度としてはACGIHが2004 年にTWAで5ppmという形で設定しております。産衛学会のほうは特に値がないということです。この ことから二次評価値としては、ACGIHの5ppmということで設定してはどうかということで考えたいと 思っております。 ○大前座長 この物質の場合は、評価書の2頁に変異原性の試験結果がずっと載っております。労安法 に基づく試験では陰性でしたけれども、2頁の表を見ると結構たくさん陽性が載っています。清水先生 何かございますか。 ○清水委員 陽性でよさそうですね。サルモネラだけが非常に感度が弱いのか、ほかのものですと特 にin vivoの小核試験ですとほとんどみんな陽性ですから、変異原性ありと見ていいのではないですか。 ○大前座長 そういたしますと、変異原性のところはありという形にしても、閾値がない場合にして もユニットリスクに関する情報がないので、数字としては一次評価値としては、いまは挙げようがな いわけですが、変異原性は陽性ということでよろしいですか。 ○細田(中災防) はい。 ○大前座長 ここのところは少し変更させていただきまして、変異原性は陽性である。しかしユニッ トリスクの情報がないということで、一次評価値は現在決めることができない。二次評価値は2001年 まで、1977年に提案された5ppmが有効の状態です。したがって二次評価値は産業衛生学会にはありま せんので、5ppmではどうかというのが今回の案ですがいかがでしょうか。2001年以降変化していると いうことはないですね。 ○細田(中災防) これは、去年オリジナルのを確認しています。 ○大前座長 2009年に確認しておりますので、1977年の5ppmがまだ生きていることになります。変異 原性のところについて評価書、総合評価表を若干書き直していただくということで、この委員会とし ては変異原性あり。しかしユニットリスクに関する情報がないので一次評価値は現在設定できない。 二次評価値は、ACGIHが1977年に5ppmを提案していて、それが現在の段階でもまだ生きておりますの で、二次評価値は5ppmを使うということでよろしいでしょうか。 ○宮川委員 いまのところですけれども、閾値の有無を書く欄は発がん性の欄にあるわけですが、そ このところを閾値はなしにするということですね。 ○大前座長 閾値なしです。 ○宮川委員 変異原性を書く欄は、この辺りの評価表にはないのですよね。 ○大前座長 このときにはないものだったのですね。 ○宮川委員 この辺りの評価表から後は、生殖細胞変異原性は書くところがあって、やや疑われると かになっています。エイムス試験だけで判断するほうのものを、直に直接書くところはこの発がん性 の欄の閾値の有無のところということで、言葉としては閾値がないということを書くということです ね。 ○大前座長 そうです。カのところの閾値の有無のところにいまは判断できないと書いてありますが、 ここになしと書いていただいて、それから先ほどの試験の結果を少しここに入れていただきます。次 のコバルト及びその化合物をお願いいたします。 ○長山室長補佐 コバルト及びその化合物について、有害性評価書のほうからご説明いたします。2の 物理的化学的性状ですけれども、コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルトといったも のが挙げられます。輸入量・生産量等についてですが、生産量は47万kg、輸入量としては1万kgです。 塩化コバルト、硫酸コバルトについてですが、塩化コバルトは2枚目のとおり情報はないのですけれど も、硫酸コバルトについては生産量は推定4,000トンと書かれています。コバルトの用途としても、さ まざまな材料やメッキなどに使われています。  有害性総合評価表でご説明いたします。それぞれについて書いてあるので頁数が多くなっておりま すが、6枚目のところからがキの発がん性の部分です。発がん性についてはIARC:2Bに分類しています。 閾値の有無については、閾値なしということで報告されています。閾値なしの場合の評価ですが、通 常であればユニットリスクの情報を基に算出していくのですが、こちらについてはユニットリスクに 関していろいろな検索を行ったところですけれども、コバルトに関する記載は見つからなかったとい うことで、情報がなかったパターンになりますので、評価値は設定できないので、評価値なしという 形になります。  次の頁のコの許容濃度の設定のところについては、ACGIHと産衛学会のほうで異なる値になっており ます。ACGIHのほうは、TWAが0.02mg/m3となっています。こちらは1993年の設定になっております。 最後の頁にありますとおり、産衛学会のほうは0.05mg/m3になっていて、こちらは1992年の設定です。  今年からコバルト全体に広げて評価を行っていくということです。塩化コバルト及び硫酸コバルト に限るということで、昨年初期リスク評価書を作り、昨年6月に報告書を出しております。昨年、塩化 コバルト及び硫酸コバルトに限ると言ったときに、先ほどと同様一次評価値は設定値なしになってい ます。許容濃度は、ACGIH1993年のTWA、コバルトとして0.02mg/m3、日本産衛学会1992年にコバルト として0.05mg/m3、どちらもコバルト及び化合物としてという形で昨年も許容濃度が2つ出ています。  昨年は最終的に、時期はほぼ同じですので、その中でも低いほうの値を採ってということで、ACGIH の0.02mg/m3のほうを二次評価値として設定しました。今回、コバルト全体についても同様の考え方で よいのかをご議論いただければと思います。 ○大前座長 前回の硫酸コバルト及び塩化コバルトで二次評価値0.02、今回はそれにコバルト全体を 含めて同じような数字でいってはどうかという提案です。コバルトは文章が長いので、時間をかけて ゆっくり見ていただきたいと思います。前回、硫酸コバルト及び塩化コバルトに限った理由は何かあ ったのですか。 ○島田化学物質評価室長 当初の物質選定が、IARCなりの2B、それからEUの2以上という形で物質を 選定させていただきました。そのときにEUなりIARCのほうでリスト化していたものが塩化コバルトな り硫酸コバルトだったということです。 ○大前座長 この物質も本来は物質ごとに、化合物ごとに情報があればよろしいのでしょうけれども、 これもそういうものではありません。コバルトと炭化タングステン合金については2A、それ以外につ いては2Bという分類があり、閾値に関してはない、遺伝毒性はある。しかしながらユニットリスクの 情報は残念ながらないということで、一次評価値は現在のところ設定できない。二次評価値に関して は、ACGIHが0.02、産業衛生学会が0.05、提案年度はACGIHが1994年、産業衛生学会が1992年ですか らあまり変わらない時期の提案です。いままでのルールでいくと、特に理由がなければ小さいほうの 数字を採るのがよろしいだろうということで0.02を採用してはどうかという提案です。 ○宮川委員 質問です。このようにたくさんの化合物がある場合には、これで実際にリスク評価をし て問題になったときに、いくつかの化合物では問題があったかもしれないけれども、ほかのものは問 題がないというのも出てくると思うのです。そのときの対応は化合物ごとにするのですか、それとも 一旦どこかで出てくれば、最終的な対応としては、コバルト及びその化合物全般として対応する形に なるのですか。 ○島田化学物質評価室長 基本的には化合物の中で化学種ごとに毒性が違う状況があれば、それは分 けていただいて規制をかけるほうが適当だと思っております。可能な限りそういう対応をさせていた だければと思っております。 ○宮川委員 前段としては、リスク評価を一律でやるかもしれないけれども、何らかの情報が出てき たときには細かな対応はする、というように考えておけばよろしいということですか。 ○島田化学物質評価室長 この後、ばく露のデータが出てまいりますので、その段階で閾値とばく露 量との関係を審議していただくことになります。その結果、それが規制の必要なり対策をとる必要が あるという場合には、さらに丁寧に見ていただく必要があるかと思います。 ○宮川委員 がんのところでIARCとかEUとか金属可溶性のものとそれ以外で対応が違うのが気になっ ていました。一応リスク評価はして、その上で個別対応できるということであればよろしいかと思い ます。 ○大前座長 特別な化合物に対して影響があるというデータ、あるいはないというデータの両方が出 てきた場合、その化合物種は別個に考えるというのは先ほど申し上げたとおりですが、現在のところ コバルトに関しては、そこまでしっかり分けるだけの情報が足りないということで、現段階ではコバ ルト及びその化合物という形で評価値を決めるということですがよろしいですか。一次評価値に関し ては設定できない、二次評価値に関してはACGIHの数字を採って0.02、コバルトとしてということで よいということにさせていただきます。それでは7番目、酢酸ビニルをお願いいたします。 ○長山室長補佐 酢酸ビニルについて、有害性評価書のほうからご説明いたします。2番の「物理的化 学的性状」ということですが、常温では無色流動性液体です。3番の生産・輸入量等についてですが、 生産量は11万トン、輸入は約9,000トンです。用途としては、酢酸ビニル樹脂用のモノマーなどや、 各種溶媒などと組み合わせてポリマーを作っていくといったものに使われています。  有害性総合評価表でご説明いたします。1頁のいちばん下にカの発がん性部分があります。発がん性 ありということで、IARC:2Bになっています。閾値ありと設定されております。閾値ありの場合ですの で、不確実性係数を用いた形で算出していきます。  下のとおり閾値がある場合ですが、試験の中で50、200、600ppmこちらの吸入ばく露試験を行ったと ころ、200、600ppmについては影響があったということで、NOAELは50ppmで出しております。次の頁 で、その中で不確実性係数として種差、発がんの重大性を掛けて100、あとは労働補正を行い、最終的 に出た値は0.63ppmが一次評価値の候補と考えられます。  3頁の二次評価値で、コの許容濃度の設定の部分ですが、許容濃度については2009年7月に確認し たところ、ACGIHについてはTWAが10ppmになっております。酢酸ビニルについてTWAの提案が1969年 に10ppmで提案され、1971年に10ppmとして出された状況です。  以上のことから、一次評価値としては閾値ありで、労働補正等を行って0.63ppm、二次評価値とした ACGIHのほうの10ppmという値が候補となるのではないかと考えております。 ○大前座長 これは、閾値があるかないかというところが議論になるかと思います。評価書の2頁の生 殖変異原性/発がん性/遺伝毒性のところですが、2段目にIn vitro試験ではということでずっと見 ていきますと、「陽性」と書いてあるところが結構あります。清水先生はいかがですか。 ○清水委員 はっきりとは言いにくいところです。陽性が出るのは、小核試験でも腹腔内投与だけな のです。あとは飲水投与、吸入ばく露では、かなりばく露させていても出てこない。In vitroのほう でも出たり出なかったりしていますので難しいところです。なんとも言い難いですが、否定はできな いです。完全に変異原性ネガティブとは言えないと思います。あとは閾値をどうするかです。 ○大前座長 これは変異原性がないということで、ユニットリスクは探しているのですか。 ○棗田(中災防) はい、アイリスにあります。有害性評価書のほうにあります。 ○大前座長 これで労働補正すると、もし閾値がないとした場合は0.14ppmですね。 ○棗田(中災防) はい。有害性評価書を作っていた事務局からなのですけれども、この辺の酢酸ビ ニルとかカテコールは古い時代に作った有害性評価書で、たぶん先生方もお気づきだと思うのですけ れども、有害性の区分を見ていただくと、現状とはちょっと違っています。昔はGHSの区分に当てはめ てやっていたので、生殖細胞変異原性のところは本当に純粋に生殖細胞変異原性のデータがないもの は疑われるとか、ないという評価になっています。ですから、必ずしも発がん性の閾値の有り無しの ところとは評価が違います。新しい有害性評価書はそこが遺伝毒性と違う形になって、すべてを総合 的に評価する形になっています。そこのところが今回は古いものと新しいものが一緒に出ているので 見にくいかと思います。その辺は昔のものと評価している部分が違うので、若干評価の書きぶりも違 うのかということがあると思います。 ○大前座長 このユニットリスクの根拠がアイリスだということは、アイリスは閾値なしと見て計算 したということなのでしょうね。 ○棗田(中災防) はい。 ○清水委員 変異原性のほうから見ても、これは完全に異性体と判断するにはちょっと問題がありま すから、閾値なしで見ておいたほうが無難かと思います。 ○大前座長 酢酸ビニルに関しては変異原性がありということで、閾値がないという計算で、アイリ スの計算からいくと労働補正して0.14ですか。0.14を一次評価値としたほうがいいのではないかとい うご意見のようですがいかがでしょうか。 ○松本(バイオアッセイ) 後ろのほうの下半分は、代謝物のアセトアルデヒドの話で、2頁の評価表 の上半分までが酢酸ビニルですから、これはアセトアルデヒドの数値だと思うのです。 ○大前座長 アセトアルデヒドの評価を参考として下記に示したということですか。 ○松本(バイオアッセイ) ええ、そういう制限がなされています。 ○細田(中災防) たしかそうだったと思います。酢酸とアセトアルデヒドがあるので、代謝物とし て評価するとこうなるという書き方になっていると思います。 ○大前座長 そうすると、この数字は酢酸ビニルの数字ではないのですね。 ○細田(中災防) はい。そういうことを思い出しました。 ○大前座長 そうすると、酢酸ビニルとしてはユニットリスクがあるかないかは、現段階ではわから ないということですか。 ○細田(中災防) そういうことです。 ○大前座長 そういたしますと、酢酸ビニルとしてのユニットリスクがあるかないかもう一度検索し ていただくほうがよろしいですか。変異原性に関してはなしとは言えなさそうだということなので、 一次評価値を作るに当たり、ユニットリスクがあるかないかもう一度調べたほうがいいだろうという ことでよろしいですか。一次評価値はペンディングで、二次評価値に関してはいかがでしょうか。 ACGIHが10ppmという数字を1993年に出していて、現在もこの数字が生きております。したがって二 次評価値は10ppmでよろしいですね。そうすると一次評価値に関してはペンディングで調べていただく ことにいたします。そういうことでよろしいですか。 ○長山室長補佐 はい。 ○大前座長 最後の物質のナフタレンをお願いいたします。 ○長山室長補佐 ナフタレンについて、有害評価書のほうからご説明いたします。2の「物理的化学的 性状」としては固体ということで取り扱われております。生産量は約20万トン、用途はさまざまな関 係に使われています。  有害性総合評価表のほうをご説明いたします。1頁の生殖細胞変異原性については陽性と陰性と両方 出ていて判断できないという結果になっております。2頁の発がん性の部分についてですが、発がん性 はありということでIARC:2Bです。閾値の有無については判断できないという形で出されております。 陽性を示すものもあれば、一方、陰性も報告されていて、いまの段階では評価が分かれています。将 来的には結論が変わる可能性があるとしても、いまは分かれているということで判断できないとされ ております。そうなると一次評価値は評価値なしになります。  3頁の二次評価値です。コの許容濃度についてはACGIHが設定していて、TWAとしては10ppmという ことで設定されております。こちらの提案は1963年ということでかなり前にされています。候補とし ては、一次評価値として評価値なし、二次評価値としてはACGIHの10ppmというのが候補になるのでは ないかと考えられます。 ○大前座長 発がんのNOAELが10ppm、これはNTPの実験では10ppmを基にして閾値があると考えた場 合には0.075、閾値がないと考えた場合はユニットリスクの情報がないので設定できないということで すが、この閾値に関してはいかがですか。 ○清水委員 変異原性に関しては情報が不足していて、これだけでは判断できないと言わざるを得な いです。 ○大前座長 一次評価値に関しては設定できない。現段階では閾値そのものが判断できないので設定 できない。もちろんユニットリスクを探してもないということでしょう。二次評価値は、ACGIHが 10ppmを1996年に提案していて、それがまだ生きているということで、二次評価値としてはACGIHの 10ppmでよいのではないかということです。NTPも1992年ぐらいまでは、3濃度でやっていたのですか ね、2濃度+コントロールですか。  それでは、この物質に関しては一次評価値に関しては判断できない。したがって評価値なし。2次評 価値に関してはACGIHの10ppmということでよろしいですか。幸い予定内に7物質を終わることができ ました。これ以降の日程について事務局からお願いいたします。 ○長山室長補佐 今後の予定として資料5「有害性評価小検討会の今後の予定」でご説明させていただ きます。次回第3回は2月25日(木)の14〜16時に行わせていただきます。今回ペンディングも1物 質ありますけれども終わりましたので、あとはほかの物質の評価書等がまいりますので、それをご審 議いただくことを予定しております。第4回は3月31日(水)の14〜16時ということで、ばく露評価 小検討会との合同開催を予定しております。議事としては、有害性評価書、評価値の検討と併せて発 がん原性試験結果の評価について等という形で設定させていただいております。 ○大前座長 今年度はあと2回、2月25日と3月31日が予定されておりますのでよろしくお願いいた します。本日は7物質についてどうもありがとうございました。これで終わらせていただきます。