09/12/24 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録 1.日時及び場所    平成21年12月24日(木) 14:00〜    厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(13名)  五十音順   ○荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、 飯 沼 雅 朗、 石 井 明 子、    石 山 陽 事、 小 田   豊、◎笠 貫   宏、 北 村 惣一郎、    塩 川 芳 昭、 正 田 良 介、 勝 呂   徹、 寺 崎 浩 子、    松 岡 厚 子  (注) ◎部会長 ○部会長代理    他参考人3名   欠席委員(4名)五十音順    天 笠 光 雄、 川 上 正 舒、 倉 根 一 郎、 武 谷 雄 二 3.行政機関出席者    岸 田 修 一(大臣官房審議官)、    関 野 秀 人(医療機器審査管理室長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    平 山 佳 伸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、    重 藤 和 弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、他 4.備考    この会議は、個別案件は企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催され、   個別案件以外は公開で開催された。 ○医療機器審査管理室長 これより「医療機器・体外診断薬部会」を開会します。先生方 におかれましては、いつものことながら御多忙の中、しかも年末差し迫った時期の開催に もかかわらず、御出席いただきましてありがとうございます。  本日の委員の出欠状況ですが、部会の委員17名のうち、現時点で12名の先生に出席い ただいていますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数に達しておりますことを御 報告いたします。それから、本日は傍聴の方もおられます。本日の議題は全部で八つあり ますが、そのうち一つ目の議題に当たります「次世代医療機器評価指標について」、薬事 ・食品衛生審議会の決議に基づきまして、会議を公開という形にします。残りの議題に関 しては医療機器の審査に関する事項で、内容によっては企業情報に関する部分もあります ので、非公開ということで審議をさせていただきます。これより議事に入りますので、カ メラ撮りはここまでとさせていただきます。この先は傍聴のみということで、最初の議題 について公開で扱います。部会長、以後の進行をよろしくお願いします。 ○笠貫部会長 まず最初に、配付資料の確認をお願いします。 ○事務局 公開部分の資料の確認をします。公開案件の資料は、資料1-1〜資料1-5まで を事前に送らせていただきました。資料1-1「骨折整復支援装置等に関する次世代医療機 器評価指標について」、資料1-2「骨折整復支援装置に関する評価指標(案)」、資料1-3 「関節手術支援装置に関する評価指標(案)」、資料1-4「重症心不全細胞治療用細胞シー トに関する評価指標(案)」、資料1-5「角膜上皮細胞シートに関する評価指標(案)」です。 お手元にない先生がいらっしゃいましたら、事務局までお知らせをお願いします。 ○笠貫部会長 資料はお揃いですか。それでは議題に入ります。議題1「次世代医療機器 評価指標について」、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局 御説明申し上げます。資料1-1を御覧ください。厚生労働省では平成17年度 から医療ニーズが高く、実用可能性のある次世代、今後出てくるであろう医療機器の審査 の迅速化、さらには製品開発の円滑化を目的としまして検討分野を選定し、その評価に当 たってのポイントをまとめた評価指標を作ろうということで検討してまいりました。今 般、資料1-2〜資料1-5にあります骨折整復支援装置、関節手術支援装置、重症心不全細 胞治療用細胞シート及び角膜上皮細胞シートに関する評価指標の検討が終了しましたの で、御報告します。  評価指標の位置付けですが、いわゆる次世代医療機器に関しましては個別に試験が行わ れ、審査が行われるというのは通常の医療機器と変わらないわけですが、評価指標という ものを作りまして、その機器の開発段階さらには審査の段階が迅速化できないかと考えて います。開発審査の段階において重要なのは評価のポイントですので、その評価のポイン トを示すことをしています。なお、これは承認基準ではなく、あくまで評価のポイントと いうことになりますので、法令的な基準とは異なるものです。既に昨年、人工心臓及びD NAチップに関する評価指標を公表しており、引き続き角膜内皮、軟組織に対するコンピ ュータ手術装置といったところに関して、評価指標を作成しています。以上です。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。本件についての御意見、御質問等はありますか。 ○石井委員 資料1-4と資料1-5で、1点ずつ伺います。資料1-4の重症心不全細胞治療 用細胞シートの場合、製品が長期間にわたって残存性が期待されるものであるかどうかを 明らかにした方がよいということを、評価指標に盛り込む必要性については検討されたか どうかを伺いたいと思います。 ○笠貫部会長 事務局の方でいかがでしょうか。 ○医療機器審査管理室長 本日お諮りする四つの評価指標に関しては、少し時期が古いも ので一昨年になろうかと思います。経緯を少しさかのぼって1点目については調べてみた いと思いますので、今日この場ではお答えできる状況にはありません。申し訳ありません。 ○石井委員 資料1-5の角膜上皮細胞シートについて伺います。5の(1)の[2]の五つ目に 「フィーダー細胞を使用する場合」の「細胞シート製品内への残存の確認」という表現が あります。フィーダー細胞は残らない方が望ましいケースがほとんどかと思いますので、 「残存の確認」ではなく、「残存量の評価」といった表現がよいのではないかと思います が、いかがでしょうか。 ○事務局 こちらの趣旨ですが、必ずしも使うとも限らないですので、使う場合には配慮 をする形で記載しています。 ○石井委員 分かりました。読み手によっては確認と言われると、あることが望ましいよ うな印象が伝わることがあるというのを少し心配しました。 ○笠貫部会長 今の事務局の表現のままということでよろしいですか。 ○石井委員 はい。 ○笠貫部会長 ほかにございますか。荒川委員、どうぞ。 ○荒川委員 同じ資料1-4と資料1-5ですが、自家移植あるいは自家細胞を用いる観点か らしますと、細胞採取に関する何らかの考え方、基準というものがあっていいような気が しますが、その辺はいかがですか。 ○事務局 こちらは、平成20年2月及び9月だと思いますが、自己由来及び同種の指針 を既に発出していますので、採取にかかる共通部分についてはそちらを参照いただいて、 個別製品、角膜上皮細胞シート及び重症心不全細胞治療用細胞シートに特化した部分につ いて、今回お示しする形にしていますので、そちらの指針で説明している採取にかかる基 準というものは、同じようにかかってくることになっています。 ○荒川委員 ジェネラルな基準が、多分そこにあるだろうと思います。疾患固有のところ もあるかとは思いますが、それはいかがですか。 ○事務局 検討班の方で検討いただきまして、ジェネラルなものプラス追加で必要なもの についてはこのぐらいだろうということでお示ししていますが、例えば資料1-4の2ペー ジの5.の(1)の3行目で、当然のことながら審査や個別製品の特性に応じまして、必要 かつ適切であれば、別の試験項目や試験方法等も採用追加するということで、これが承認 基準のようにきちんと固まっているような形ではなくて、ある程度柔軟性も必要であろう と考えています。 ○笠貫部会長 今の最初の件については、この中の項目に、この製品についての特記すべ きこととしてはないと考えてよろしいですか。 ○事務局 はい。 ○笠貫部会長 荒川委員、それでよろしいですか。 ○荒川委員 個別の相談のところで、徐々に明らかにしていただければと思っています。 ○笠貫部会長 ほかにはありませんか。次世代の医療機器としては、大事なものが挙げら れていると思います。この開発の効率化、承認審査の迅速化ということで、こういった評 価指標を設けたということですが、特に御質問、御意見はありませんか。特にほかに御意 見がないようでしたら、議題1についてはこれをもちまして、本部会としての検討を終了 します。公開案件は以上です。 ○医療機器審査管理室長 先ほど申し上げましたとおり、公開の議題はここで終了です。 非常に短時間で恐縮でしたが、足を運んでいただきましてありがとうございました。傍聴 の方は、これにて退席をしていただきたいと思います。  引き続き、非公開案件の準備を整えますので、準備が出来次第議題2以降について開始 します。よろしくお願いします。 ○笠貫部会長 準備が整いましたので、これから非公開案件の審議報告に入ります。今日 は六つの審議項目がありますので、皆さんの御協力でこの会も効率化、迅速化を図れたら 有り難いと思いますが、十分な議論をしていただきたいと思います。  最初に、事務局から配付資料の確認をお願いします。 ○事務局 非公開案件部分の資料について、御確認をお願いします。資料2からですが、 右上に「平成21年12月24日」とある「配付資料一覧」と見比べながら、御確認をお願 いできればと思います。2の非公開案件ですが、当日配付資料の部分は下線を引いている ものです。資料2-2「諮問書」、資料2-3「迷走神経刺激装置 VNS システムの審査 報告」、資料3-2「諮問書」、資料3-3「コッドマン エンタープライズVRDの審査報告」。 こちらはクリップ止めになっているかと思いますが、中を御確認いただければと思いま す。資料4-2「諮問書」、資料4-3「デフラックスの審議報告」、資料5-2「諮問書」、 資料5-3「冷凍手術器 CryoHitの審査報告」、資料6-2「諮問書」、資料6-3「XIENCE V 薬物溶出ステント及びPROMUS薬剤溶出ステントの審査報告」、資料7-2「諮問書」、 資料7-3「アイシーエルの審査報告」、資料9-1「競合品目・競合企業リスト」です。今 申し上げましたもの以外の下線部がない資料2-1や資料3-1は、事前配付したものです。  恐縮ですが、それに二つ追加があります。一つは右上に「差し替え後」と書いてあり、 「高度管理医療機器」の題名の少し下に「有水晶体後房レンズ」というもので、1枚差し 替えの資料を配付しています。これは議題7の御審議のときに、御説明を申し上げるもの です。もう一つは、少し厚めで紐綴じになっている資料4-1、右側に「厳重管理」と入っ ているものがあります。こちらは、資料4-1のデフラックスの差し替えです。大変多くて 恐縮ですが、以上です。何か足りないもの等がありましたら、事務局までよろしくお願い します。 ○笠貫部会長 資料はお揃いでしょうか。続きまして、本日の審議事項に関与された委員 と利益相反に関する申出状況について、事務局から御報告をお願いします。 ○事務局 競合品目リストについて、資料9-1で申し上げます。それぞれ6品目ありまし て、全部で3枚になっています。本日は6品目ですが、これらの審議対象となっている品 目について、資料作成及び利用資料の作成に関与された委員の先生方はいらっしゃいませ んでした。  競合品目について、資料9-1を御覧ください。VNSシステム、一番上は類似品目はな しということで競合品なし。2ページのNeuroform Microdelivery Stent Systemが競合 品として選定されています。3ページのデフラックスについては、きちんと類似というも のではありませんが、バードコンティジェン、4ページの「冷凍手術器 CryoHit」に関す るものについては類似はありません。議題6の「XIENCE V 薬物溶出ステント」は、これ までに承認されましたステント3種類、「アイシーエル」については既存のもので類似の ものはありませんので、なしということです。以上です。したがいまして、本日の議題に ついてはすべての委員の先生方が審議及び議決に加わることができますことを御報告申 し上げます。 ○笠貫部会長 ただ今の事務局からの御説明について、特に御意見はありませんか。それ では、これより議題に入りたいと思います。議題2「迷走神経刺激装置 VNS システム」 の製造販売承認の可否等について、審議を行います。本品目の審議に当たりましては、参 考人として中の島診療所院長若井周治先生に御出席いただいています。よろしくお願いし ます。  審議品目の概要について、事務局から御説明をお願いします。 ○事務局 資料2-1の一番上のタブの審査報告をおめくりいただいて、4ページを御覧く ださい。こちらの品目は5ページに写真がありますが、体内に埋込型のパルス発生装置で す。この図1は少々拡大されていまして、実際のサイズは4.8cmで、これを鎖骨下あたり に埋め込むことと、図2にあるリード線を左の首のあたりの迷走神経にパルスジェネレー タと付けるような形で埋め込むものとなっています。使用目的ですが、薬剤抵抗性の難治 性てんかん発作を有するてんかん患者の発生頻度を軽減するというもので、先ほど申し上 げましたように迷走神経を刺激することによりまして、脳の発作を抑制していく装置とな っています。品目の審査の概要について、審査を行いました医薬品医療機器総合機構から 御報告申し上げます。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より説明いたします。資料2-1を御覧ください。医薬品 医療機器総合機構での審査に当たり、御覧の専門委員の御意見をいただきました。  審査報告書の4、5ページの品目概要をお示しします。本品は、薬剤抵抗性の難治性て んかん発作を有するてんかん患者の発作頻度を軽減する補助療法として、迷走神経を刺激 する電気刺激装置であり、図のように頚部から前胸部ジェネレーター埋込用ポケットまで 皮下を通してリードを留置し、左迷走神経の電気刺激を行います。審査報告書7、8ペー ジの本品の海外における承認、使用状況と副作用の概要について御説明します。本品は欧 州、米国などで承認を受け、全世界で約8万台以上の販売実績があり、スライドにお示し しますような副作用が報告されています。  続きまして、本品の論点となります臨床部分に関しまして、審査報告書12〜23ページ の概要を御説明します。本申請には、七つの海外臨床試験成績が提出されていますが、論 点となります4試験について御説明します。有効性評価については、海外ピボタル試験に おいて薬剤抵抗性の難治性部分てんかん発作を有する12歳以上の患者を対象に行われ、 審査報告書13ページに示す計算方法にて算出した発作頻度減少率において、両試験とも High刺激群の有効性が認められています。また、12歳未満及び全般発作を含む対象患者 に拡大して行われましたE04試験については、12歳未満の小児についてもベースライン と比較した発作頻度減少傾向が認められています。さらに、E05のLong Term試験の5 年間にわたる長期フォローアップにおいても、ベースラインと比較した発作頻度の減少率 において、統計学的優位差が認められています。なお、安全性評価についてはすべての試 験において嗄声、咳、咽頭炎、知覚異常等の迷走神経刺激特有の有害事象が認められてい ますが、低頻度で一過性であることを確認しています。  審査報告書23〜30ページの総合評価の概要を御説明します。論点の一つ目、海外臨床 試験から本品の臨床上の有効性及び安全性を担保できるとすることについて、海外ピボタ ル試験E03、E05試験においては、本品によるてんかん発作の発作頻度の軽減効果が確 認され、報告された有害事象は対象患者から見て、本品の有効性を損なうほどのものでは なく、リスクは許容範囲内であると判断しました。ただし、本品による迷走神経刺激は根 治療法ではなく、既存療法が奏効しない患者に対する補助療法であることから、その位置 付けを使用目的、効能又は効果において明確にすることが妥当であると判断しました。  論点の二つ目、本品の長期使用時の有効性及び安全性を担保できるとすることについて です。こちらは、E05Long Term試験における本品の長期的安全性について、現時点では 特筆すべき問題は認められていませんが、国内における使用実績がほとんどないことを踏 まえ、使用後により多くの症例の成績を長期予後とともに収集し、さらなる有効性及び安 全性の確保に努めることが重要と考え、より多くの症例において長期予後の観察を行う旨 を承認条件1に付すことが妥当であると判断しました。  論点の三つ目、適用に小児及び全般発作患者を含むとすることについてですが、添付さ れているE04臨床試験においては、12歳未満及び全般発作患者に対する本品の有効性及 び安全性を評価するために、十分な症例数で実施されたものではありませんが、小児や全 般発作に対し、本品を使用した文献報告においては、海外臨床試験と同程度の有効性が報 告されており、小児及び全般発作特有の有害事象や発生頻度の上昇等は報告されていませ ん。また、小児においては海外での20年以上の臨床使用における長期成績からも、成長 にかかる安全性上の懸念も特に報告されていないことを踏まえ、既存療法に奏効しない難 治性てんかん患者に治療選択肢を提供する臨床上のメリットが大きいことから、これらを 適用に含めることは妥当であると判断しました。ただし、本品の適用は適切に判断される べきであることから、慎重に使用すべき対象患者について添付文書において注意喚起をす るとともに、てんかん治療に対する十分な知識、経験を有する医師により、本品に関する 十分な知識を得た上で使用するよう、承認条件に付すことが妥当であると判断しました。 総合機構は、本品の位置付けを明確にするために、こちらにお示しする使用目的で承認す ることが妥当であると判断しました。なお、本品は新性能医療機器であり、再審査期間は 3年とし、生物由来製品に非該当と考えています。以上、審査の結果を踏まえ、御覧の承 認条件を付すことが妥当と判断しました。  なお、本品について勝呂委員から、「感染率1.5%というのは高いのではないか。特別 な原因があるのではないか」とのコメントをいただいています。本品において見られた感 染は、製品に由来する感染として報告されたものではなく、いずれも手技に由来すると考 えられていること及び同様の部位に埋植します類似医療機器として、ペースメーカーやI CGにおいて埋込交換の際の感染率は1.2〜4%とする大規模調査における文献報告がな されていることを考えますと、本品において見られた感染率については許容可能の範囲で あると考えています。以上、御審議のほどお願いします。 ○笠貫部会長 参考人の若井先生から、付け加えることはありませんか。 ○若井参考人 今の感染の件ですが、それは海外全部の例を通しての頻度ですね。恐らく VNSの手術は小手術ということで、アメリカは医療費の関係で、外来で手術するという ことをかなりやられているみたいです。日本では必ずオペ室で、普通の手術のようにやら れると思いますので、感染率はかなり低いと思います。特にVNSだから感染が高いとい うことは、とても考えられません。  てんかんの治療はもう御存じと思いますが、あくまでも薬剤治療が中心です。それでも 治らない人たちというのが、20〜30%いる。その中に、手術の適用の方がおられます。例 えば側頭葉に焦点があったり、皮質形成異常、腫瘍みたいなものは取れば、そのてんかん はよくなる。そのような手術の適用のある方々が、日本では年間500例ぐらいいると言わ れていますが、もっといると思います。しかし、一方で手術もできない、薬物も駄目とい う非常に困っている患者様がいるわけです。その人たちをなんとかしようということが大 きな問題です。特に子供に多く、一番有名なのは、Lennox症候群というバタバタと倒れ てけがをしたり骨折したり、どうしようもない状態に置かれている人たちがおられます。 このような状態に対して外科的手術の中で、脳梁離断とか半球切除というやり方もありま すが、それでも不完全です。もう一つはケトン食療法というやり方がありますが、日本で は余り普及されていないし、大変な手間が必要ということで、我々はcatastrophic epilepsyと呼んでいますが、子供の発達を非常に妨げるようなepilepsyに対しての新し い一つの選択肢として、VNSは非常に重要な治療上の位置付けができるのではないかと 思います。特に子供ではかなり良い成績も出ていますし、子供の発作を止めることによっ て発作の波というか、悪い脳波で妨げられる精神運動発達を促してあげることができるこ とが、一番大事なことだと思います。大人もかなり改善率はありますが、子供にとっても 大事な治療の選択肢の一つになると思います。以上です。 ○笠貫部会長 ありがとうございます。御質問にお答えする中で、先生にはまたお話いた だけたらと思います。委員の先生方から、御質問、御意見はありませんか。石山委員、ど うぞ。 ○石山委員 これは例えば先ほどのLennox-Gastaut症候群のようなものに効くというの ですが、迷走神経を刺激して、どこに刺激の効果があるのですか。例えばhippocampusと かthalamusとか、その辺がよく分からないのですが。 ○若井参考人 本当のことを言うと、メカニズムはまだ分かっていませんが、 hippocampus、temporal lobeのGABAの濃度が高まるという報告もありますし、もちろん 迷走神経ですから、皮質のあらゆるところに抑制性のprojectionがいっているというこ とで、恐らく小児の場合は抑制性のcircuitがだんだん出来上がってくるのではないかと 思います。その証拠に刺激を開始して、1年後、2年後、3年後とフォローすると、年を 追うごとに発作抑制率が高まってきます。ですから、まだはっきりは分かっていませんが、 持続的な刺激によるcfosみたいなものの発現というものが、動物実験的には実証され ているようですが、まだ明らかなものははっきりしていません。 ○石山委員 そうすると、結果的に治ると。 ○若井参考人 Epilepsyの発作というのは、先生も御存じだと思いますが tachycardia(頻脈)になりまして、瞳孔が開いて非常に交感神経が優位の状態から、もと もと迷走神経刺激の発想がありました。西暦200年ぐらいから迷走神経のligature(結紮) みたいなものをやったという歴史的な背景もあるようなので、基本的にはそういう経験的 なところから来ていると思います。 ○笠貫部会長 そうしますと、メカニズムは必ずしも分からないところがあるが、経験的 には、実際に入れると20〜30%よくなり、発作の増悪が3%ぐらいあるということです が、機械を使う前に、予測とか予防というのは、増悪に関してはあり得るのでしょうか。 ○若井参考人 これは、迷走神経をしなくても悪くなった人の可能性があると思います。 ただ、迷走神経で抑えきれなかったという説明もできるかと思いますが、てんかんは症状 が一定している場合もありますが、発症して間もなく、epileptogenesis(てんかん原性) という、てんかんを起こすエネルギーが体の中で増してくることもありますので、もしか したらその3%という数はそういう症例だったのかという私の推測ですが、症例に関して の詳細はそれを読んでいませんので、分かりません。 ○塩川委員 私は脳外科をやっていますので、これは今は国際標準治療になっている優れ た発作を抑える方法であるということで、非常に期待しています。質問は添付文書案でも、 いずれにしても認定を受けた医師が使いますということで、てんかん外科学会、脳外科学 会の合同のガイドラインがしっかりできていますが、患者の需要と、認定を受けた医師の 数とで、ほぼ現状の認定を受けた方なら、今の必要な患者を大体治療できるような、量的 な問題としては問題はないのですか。 ○若井参考人 その辺は推測に過ぎないとは思いますが、先生も御存じのようにEpilepsy Surgeryを日本では年間500例ほどやられているといいますが、本当は実際に必要な数は、 1,000例も2,000例も要ると言われています。しかし、てんかんの手術の適用という観点 から考慮すると、どうしても適用のない人たちもかなりいるわけです。それが、私のてん かん診療をやっている現実としては、手立てがなくて発作を度々起こしている人がかなり いるということなので、厳密な適用を決めて、しかも迷走神経を選択せざるを得ない症例 はかなりいると思います。 ○荒井部会長代理 この承認条件ですが、日本語として読ませていただくと「トレーニン グプログラム等の受講により」というところは、あってもなくても内容が変わりません。 本日検討される他の機器と比べても、この文言が入っているのはこの機器だけです。これ は、かなりauthorizeされたプログラムがすでにあることを踏まえて、あえてここに入れ られたのか、その辺の御判断をお聞きします。 ○機構 事務局よりお答えします。先生の御指摘のとおり、今日の品目を並べたらおそら くそういうことかもしれませんが、市販後に手技の習熟等のトレーニングプログラムを入 れる場合によく使う文言で、特にこれに特化して入れているわけではないことはそうです が、今回の場合は手技を含めて、特に適応の判断に対する講習等の受講とトレーニング等 を掛けてといいますか、そういう意味で付けました。 ○荒井部会長代理 これは企業に対しての投げかけでしょうか。それとも、学会等に対し てですか。 ○機構 すべて企業に対する投げかけになっていますので、企業の方でそういったことを きちんと受けた医師のみ使えるように、そこを企業に課していると御理解いただければと 思います。 ○荒井部会長代理 ありがとうございます。 ○北村委員 これを入れた場合、子供のてんかん患者は、頭のMRIは可能なのか、入る と難しくなるのか。刺激はContiniousにしているのですか。そうすると、バッテリーの 期間が限られてくるということですか。 ○若井参考人 刺激はintermittentで、30秒刺激して5分休むがスタンダードです。 ○北村委員 それを繰り返してやる。それから発作の有る、無しに関わらず、そういう形 で。 ○若井参考人 そうです。ただ、成人の場合は単純部分発作といいまして、自分で発作が 来るのが分かりそうなときに操作して、刺激を開始することができます。 ○北村委員 マグネットの部分でそれは書いてありますね。そういうのは持続的に、夜昼 関係なくですか。 ○若井参考人 そうです。intermittentです。 ○北村委員 バッテリーは、小さいものだったら何年ぐらい持ちますか。 ○若井参考人 10年間持ちます。今は、もう少し改良されています。 ○北村委員 MRIは可能ですか。 ○若井参考人 MRIは、恐らく撮れないです。 ○北村委員 それは、子供の頭も駄目ですか。 ○若井参考人 CTスキャンになってしまうと思います。ですから、例えば脳にbenign のtumorみたいなものがあって、それはCTで調べるしかないとなると思います。恐らく 撮っても大丈夫だとは思いますが、余り冒険はしていないようです。 ○北村委員 これを入れれば、薬剤がフリーにできるのですか。 ○若井参考人 それはなかなか難しいと思います。 ○北村委員 今までどおりに薬剤を使いながらですか。 ○若井参考人 そうですね。ですから、一応補助的療法という言葉で表現していますが、 例えばてんかんの焦点に何かものがあって、それを切除して、完全にてんかん原性がなく なった時にはそういうことが可能だと思いますが、あくまでも抑制性の電気刺激を持続的 にやっているだけの話ですので、そう簡単にEpilepsyは治らないと思います。特に適応 が難治性ということですので、ただでさえ治らない。薬を3剤以上やっても発作が続く状 況。しかも、てんかん外科適応、手術の適応がない、あるいは不明だというような非常に 難しい症例にやらなければならない療法ですので、もしVNSをやって発作が治まるとし たら、VNSをやる必要がなかったような症例かと思います。それは非常にまずいと思い ます。 ○北村委員 ありがとうございました。 ○勝呂委員 整形科領域で大きなインプラントを入れても、スウェーデンなど海外のレジ ストリーでいきますと、感染率が0.5〜0.6%です。それにしては、1.5%は高いというこ とが気になって質問をしたのです。私としては、固定性が悪くて動くから、感染率が高い のかと思いました。 ○若井参考人 私は、アメリカで5例経験していますが、クリーブランドで行ったのは全 例オペ室でした。ところが、cyberonics社というのはテキサスにあって南の方でも行っ ているみたいですが、南だから悪いというわけではないでしょうけれども、外来で行って いるのが結構感染を起こしているようです。例えばVNSの電極は左の迷走神経に埋め込 むのですね。そうすると求心性というか、皮質にいくprojectionを刺激できて、右側は 心臓の方にいくのでやめた方がいいという話なのですが、Epilepsiaという雑誌から査読 依頼が来まして、左に膿瘍ができて失敗して右に埋め込んで、うまくいったというような 内容でしたが化膿したことに関してオペ室でやったのかどうかを問いただしたのです。返 事は来なかったのですが、噂を聞くと外来で、Outpatient clinicで手術を行っていると いうのが一つの原因ではないかと。私は、そう考えています。 ○笠貫部会長 勝呂先生の御指摘になったペースメーカーもそうですが、無菌性というこ とは非常に頻度は少ないですから、多分若井先生の言われたday surgeryの問題はあると いう感じはしました。 ○勝呂委員 day surgeryでも、今後これが同じようになってきた場合、感染率が上がる かというと、本来ならばそれほど上がらないはずです。インプラントの手術をやっても、 プレートとかを入れても、日本の統計だと大体early infectionというのは0.5%ぐらい です。使用者に明確にすることが必要になるのではないかと思います。てんかんがあって、 感染を起こしていると可哀想ですよね。 ○笠貫部会長 海外のデータを外挿してということでの認可の話になると思いますが、先 ほどの説明の中にも国内における使用実績がほとんどないという書き方は、逆にあるとい うことですが、前にこの機械については別な会社がこれを治験として進めたと聞いていま すが、これについては何かコメントはありますか。 ○機構 こちらに関しては、製造元から前回申請した会社に治験を入手することを試みた のですが、入手できなかったとお答えをいただいています。 ○笠貫部会長 前の会社ではありますが、日本の患者のためにということであれば、本来 は会社も協力すべきかと思います。引き続きPMDAの方が介入すれば可能な感じます が、その辺は御検討いただけたらと思います。何例ぐらいやっていますか。その情報もな いですか。 ○機構 国内に関しては、34例の患者を対象にしています。 ○笠貫部会長 少なくとも国内での34例について重篤な問題があったかについてそこも 分からないということですか。 ○機構 そちらに関しては文献ベースですが、一応資料として御提出いただいていまし て、内容の方は把握しています。 ○笠貫部会長 それに重篤な合併症はなかったということですか。 ○機構 重篤なところの副作用に関してはありませんでした。 ○笠貫部会長 ほかにはありますか。 ○石山委員 教えていただきたいのですが、臨床症状の場合に発作は一応抑制されるけれ ども、例えば記録上、spikeは一緒に改善されるのですか。難治性の点倒てんかんみたい なのは、すごくspikeが出てきますが、ああいうものも臨床症状とは別に改善されるので すか。 ○若井参考人 点倒てんかんの場合は、恐らく今の段階では適用にはならないと思いま す。Lennoxはなるかと思います。Lennoxは、かなり改善します。 ○石山委員 spikeはどうですか。 ○若井参考人 特に全般てんかんではspikeは、発作改善と同時に減少します。 ○石山委員 ありがとうございます。 ○笠貫部会長 ほかにありませんでしたら、議決に入りたいと思います。 ○医療機器審査管理室長 国内の34例についてですが、文献で確認しているということ でPMDAを含めて内容を見ていますが、もう少し詳細に説明すると、34例中25例で副 作用が認められていない状況で、残りの9例の不具合に関しては咽頭違和感とか腹部不快 感とかいろいろありますが、それほど重篤なものがないことが確認されていまして、加え てすべて転帰は回復の状態にもなっています。ただ、別に死亡例もこの中には2例あるこ とが文献にも載っているようですが、いずれも本製品との因果関係は否定的という扱いで まとめられていますので、御懸念の部分は今確認できている文献の範囲内では、さほどな いのではないかと言えるかと思います。 ○笠貫部会長 ありがとうございます。それでは「迷走神経刺激装置 VNS システム」 については、本部会として審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えない ものとし、再審査期間は3年間として、また生物由来製品及び特定生物由来製品への使用 は不要ということでよろしいでしょうか。  御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につい ては、次回の薬事分科会において御報告することにします。それでは、これで本議題は終 了しますので、若井先生には御退室をお願いします。貴重な御意見をどうもありがとうご ざいました。 ── 若井参考人退室 ── ○笠貫部会長 続きまして議題3「コッドマン エンタープライズ VRD」の製造販売承 認の可否等について、審議を行います。本品目の審議に当たりましては、参考人として虎 の門病院脳神経血管内治療科部長の松丸祐司先生に御出席いただきました。よろしくお願 いします。審議品目の概要について、事務局から御説明をお願いします。 ○事務局 資料3-1に基づいて、簡単に御説明を申し上げます。4ページの審査報告書の 概要の部分を御覧ください。こちらは、血管内に経皮的に留置するものです。メッシュ状 の血管再建デバイスと言われていますが、図1の拡張後はこのような形になりまして、血 管内にこのように留置されて血管の形を保持します。5ページの図3で血管が下から右に カーブしていまして、上にポコッと膨らんだワイドネック型の動脈瘤ができた際に、血管 の本品目の網の部分で、できた部分の動脈瘤にコイルを詰めるときに、コイルが血管内に 落ちてこないように支える役割として使用されるものです。承認申請者は、ジョンソン・ エンド・ジョンソン株式会社です。審査の詳細については、総合機構より御説明申し上げ ます。よろしくお願いします。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より説明いたします。資料3-1を御覧ください。総合機 構での審査に当たり、御覧の専門委員の御意見をいただきました。  審査報告書4及び5ページに示す本品目の概要について御説明申し上げます。本品は、 ニッケルチタニウム合金製の自己拡張型のステント様メッシュ及びデリバリーシステム であり、ステント様メッシュを外科的治療が困難なワイドネック型の脳動脈瘤のネック頸 部の親動脈に留置し、コイル塞栓術時にコイル塊が親動脈に突出又は逸脱することを防止 します。審査報告書6及び7ページに示す、本品目の海外における使用状況について御説 明申し上げます。本品は2006年に欧州でCEマークを取得し、2008年に米国でHDE承 認を取得しています。2009年10月までに40か国において約□□本が販売されており、 1.89%の不具合及び有害事象が報告されています。そのうち、本品に関連する又は関連す る可能性を否定し得ない主要な有害事象として、血栓症、脳梗塞、神経障害系事象などが 報告されています。  審査報告書12〜15ページに記しました臨床試験について御説明申し上げます。本品の 有効性及び安全性を確認することを目的に米国臨床試験が行われ、米国臨床試験との橋渡 し並びに本邦の医療環境への手技適合性の確認のために、国内臨床試験が行われました。 米国臨床試験では、長さ20mmサイズのみ30例、国内試験では22mmサイズが6例、他の サイズと合わせて15例に本品の留置が行われました。いずれの試験においても、主要評 価項目は本品が適切な位置に留置され、内腔を開存させつつ、コイル塊を動脈瘤内に維持 させることに成功し、かつ手技中に重篤な有害事象を認めないことと定義した手技的成功 であり、その他副次的評価項目として御覧のような項目を評価しました。  手技的成功は米国試験で95.5%、国内試験で100%であり、ともに高い確率で手技を成 功しており、その他の項目においても日米間での差は認められず、高い確率でコイル塞栓 術を実施できました。また、国内試験においてはすべてのサイズにおいて良好な成績が得 られており、サイズによるばらつきは認められませんでした。  報告書16〜21ページに記しました、本品の審査における論点について御説明申し上げ ます。論点の一つ目は、本品による治療対象となる動脈瘤サイズの妥当性についてです。 本品は、希少疾病用医療機器の指定に従い、対象を最大形10mm以上の未破裂脳動脈瘤と して申請されました。しかし、未破裂脳動脈瘤に対する国際的大規模試験において、動脈 瘤形7mmを境に優位な破裂率の上昇が認められていること。並びに、本邦における当該疾 患の治療指針が改定され、7mm以上の動脈瘤に対して治療が推奨されていることをかんが み、臨床試験において瘤サイズの違いで、有効性及び安全性に大きな差が認められていな いことから、最大形7mm以上の未破裂脳動脈瘤を治療対象とすることが妥当と判断しまし た。  論点の二つ目は、本品による介入治療の妥当性についてです。本品はコイル塞栓術に対 する補助的デバイスであり、破裂を予防するために用いることから、本品による介入治療 のリスクが対象疾患の経過観察のリスクを上回らないことが肝要であると考えました。本 品の有効性に関しては、良好な手技的成功を収めており、高い成功率でコイル塞栓術を施 行できています。また、安全性に関しても本品の使用そのものに起因する有害事象は少な く、後遺障害につながった有害事象の発生率は、本品の適応となる外科的治療が困難なワ イドネック型脳動脈瘤を治療せずに経過観察した場合の潜在的リスクを下回っており、本 品を使用したコイル塞栓術の安全性はコイル単独での塞栓術と同程度であることから、本 品による介入治療はおおむね妥当であると判断しました。  しかしながら、介入治療を正当化するためには、本品の使用に伴うリスクを少なくとも 臨床試験同様、低い条件に保つことが必要であることから、本品の適正使用を遂行するた めに教育講習等により、手技及び合併症等に関する十分な知識、経験を有する医師が、適 応を遵守して使用することが重要と考え、その旨を承認条件1として付すことが妥当と判 断しました。また、本品の使用に伴う合併症を重症化させないために、必要な体制が整っ た医療機関で本品が使用されることが重要であることから、その旨を承認条件2として付 すことが妥当と判断しました。  論点の三つ目は、長期的な有効性及び安全性についてです。本品の臨床試験における追 跡調査では、最長12か月の経過観察が行われており、12か月時において瘤の再疎通など は認められていません。しかし、本品使用時の長期的な予後について十分なエビデンスが 確立していないことから、長期的な成績について、より多くの症例での評価が必要と考え、 使用成績調査の経年解析結果報告を承認条件3として付すことが妥当と判断しました。以 上の審査での論点を踏まえ、総合機構は先に申し上げた三つの承認条件を付した上で、御 覧の使用目的にて本品を承認して差し支えないと判断しました。なお、本品は新性能医療 機器であり、希少疾病用医療機器であるため、再審査期間は7年、生物由来製品、特定生 物由来製品には非該当と判断しました。以上です。よろしくお願いします。 ○笠貫部会長 参考人の松丸先生から何かありましたら、追加をお願いしたいと思いま す。 ○松丸参考人 特別ありませんが、この製品は未破裂脳動脈瘤に使われます。ごく最近出 ました脳卒中ガイドライン2009で、機構から7mm以上という話がありましたが、今回の 脳卒中ガイドラインでは5〜7mm以上というのが未破裂脳動脈瘤の治療適応であるとい うことが発表されました。5mmは広めの適応で、7mmは厳しめの適応ですが、臨床の立場 からすれば、5mmの動脈瘤でも、この製品を使って治療をしなければいけないケースが あって、治療したいという希望もあります。ただ、オーファンデバイスということもあり ますし、厳しめの7mm以上の動脈瘤に適用になるというのは妥当なところかと思います。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。本品目について、有効性、安全性を含めて、委 員の先生方から、御質問、御意見はありますでしょうか。 ○荒井部会長代理 領域は専門外ですが、「審査における論点」の所の「本品を使用した コイル塞栓術の安全性は、コイル単独での塞栓術と同程度」という表現について、ある程 度機器のことを知っている人間としては非常に違和感を感じます。確かに比較試験による ものではないでしょうが、ここであえて「同程度」という表現を用いた理由があるのでし ょうか。言い替えれば、こういった補助器はなしに、コイルのみで塞栓することは技術的 にはるかに難しい。これは、同じ血管を扱う領域の人なら誰でも理解できることです。に もかかわらず、あえて安全に行うためのデバイスに対して「同程度」という表現をされた 訳で、何をもって「同程度」という表現になったのか、伺いたいと思います。 ○機構 総合機構から説明申し上げます。この「同程度」ということに関してなのですが、 この判断、比較した対象が一般的にコイル単独で治療が可能である脳動脈瘤に対するコイ ル治療における有害事象等の発生率の文献報告をまとめて、その発生率と本品の治験での 有害事象の発生率を比べ、その発生率が同程度ということで、このような記載をしており ます。ですので、本品の治療対象となる脳動脈瘤に対して、コイル単独で行った場合との 比較ということではありません。 ○荒井部会長代理 そういう意味で、理解させていただきます。 ○笠貫部会長 今の御質問と関係するのですが、先ほどの臨床試験成績の中で、成功とい う有効性の話が具体的にあったのですが。副次評価項目の不具合、安全性の問題ですね。 この数値については、先ほどのスライドには載っていなかったと思うのですが、この中で 具体的には何ページに書いてあるのでしょうか。先ほどの手技の問題というのは同程度だ という根拠として、安全性として手技上の問題を含めて、頻度としてはそう高くないとお っしゃるのかどうか。そこについて、御説明をいただけたらと思います。 ○機構 各臨床試験において認められた主要な有害事象に関しては、報告書の14ページ 〜15ページにかけて記載してある表2の15ページに書いてあります。こちらが米国試験、 国内試験で認められた有害事象の発生率です。また、15ページの表3において、同様に 国内臨床試験で認められた主要な有害事象が記載されております。  また、他の治療法と比較したことに関してですが、審査の論点において、16ページか ら17ページに記載されている論点の2番目の所、16ページの下に65例中54例において 197件の有害事象が認められています。その有害事象に関しては、本品の基礎的疾患、脳 動脈瘤において認められると考えられる浮遊物などの動脈瘤によると思われる有害事象 とか、一般的なコイル塞栓術等で認められる穿刺部の出血等が認められております。  本品そのものに由来する有害事象としては、報告書17ページの一番上の行に記載して あるVRDの血栓症が2例及びVRDの離脱失敗1例及びVRDの内腔狭窄1例のみで、 本品そのものに起因するという有害事象は以上4例、4件が認められております。 ○笠貫部会長 15ページの国内6症例中、脳神経麻痺が1例、脳卒中の血管障害が2症 例、一過性の虚血が1症例というと、かなり高いようにも思いますが、これはいかがでし ょうか。 ○塩川委員 私は脳外科の特に動脈瘤をやっております。この数字を見ると、動脈瘤は脳 の場合は25mm、28mmというと非常に大きい。大きいものは破けやすいので、治療の必要 度が高いのですが、血管内治療と、もう一つ相対する治療法の直達手術は、20数mmとい う巨大動脈瘤は、技術的に非常に難しいのです。ですから、今、現在のステントなし、こ の申請器具のない中にコイルを入れるだけだと根治性が悪いので、親血管に戻ってこない ようなステントを入れて、そしてコイルを入れるというのは非常に期待されているところ が大きいものがあります。この数字だけ見て、治療に伴うリスクが、確かに一般的なこう いう器具の申請だと多いように見えるかもしれないのですが、これは大型動脈瘤の治療の ジレンマというのがありまして、大きいものほど破れやすいのに、治療に伴う現時点での 脳外科の水準がまだまだ低いところがあります。そういう背景を御了解いただければ、こ の示されている数字、日本の臨床試験の成績は非常によろしいのです。  私は今の背景の御説明と、特に米国の臨床試験は破裂瘤も対象にしているのですが、日 本の臨床試験は未破裂だけに限られている。これはやはり治療に伴う安全性を高くしよう としたことかと思うのです。これはPMDAの質問にもなるのですが、破裂例と未破裂例 というのは、米国の28例の中だと、どのぐらいの比率があったのでしょうか。それは分 からないのですか。 ○機構 米国試験28例のうち、破裂に関しては1例のみとなっております。 ○塩川委員 これは当然、大きな瘤も破けますので、将来的には日本もそういう方向にな ると思うのです。動脈瘤が破裂すると、半分生命をとられる非常に危険な病気です。そう いう背景を先生方に御了解いただければと思い、発言いたしました。 ○笠貫部会長 有害事象を超える疾患への利益、この機器のベネフィットがあるというお 話だったと思うのですが、ほかには御質問はありますでしょうか。 ○北村委員 今の話でもあったように、当然役に立つデバイスであれば、破裂性という診 断の下での使用ということも、実際の現場ではあり得ることですね。しかし、こう書いて あると駄目だと。これをやった場合はどう考えるのですか。これは非適用外使用とお考え になられるのか、それは心臓の場合と同じように、まあまあまあという形でいくのか。 ○機構 総合機構からお答え申し上げます。実は破裂脳動脈瘤を入れるか入れないかとい うのは、この前のオーファンデバイスの指定のときにも議論があったところがあります。 そのときに、予防的治療というところの側面と、本品におけるリスクはどのように上がる のか、どうなのかという議論の中で、少々厳しめに決めたところもあり、最初は未破裂の 中で適用をとった後に、いろいろなエビデンスを積み重ねてから、破裂については検討し ていきたいと考えております。  今、添付文書の改定を考えており、今回の資料では間に合っていないのですが、ジョン ソン・エンド・ジョンソン(株)は適用禁忌の中に入れるという考えを持っているところも あったのですが、ここについては適用禁忌にするのか、原則禁忌として扱うべきなのかと いうところも含めて考える。と言いますか、今の時点で適用外になっていますので、基本 的には使わないということなのですが、使った場合に先生方もおっしゃるように、予防の リスクと、そのときに止めなければいけなかったということとの関連は考えていかなけれ ばいけない部分ですので、そこについては継続的にジョンソン・エンド・ジョンソン(株) と一緒に検討していきたいと思います。 ○北村委員 後で出てくる心臓のステントの場合も一緒のことなのですけれども、添付文 書集という所にも、「禁忌」と書いてあります。これに一応こう書いてあって、もし使っ たら、厳格に言うと、それは適用外使用ということになるのですね。それを本当にやろう と思えば、高度医療制度でも使わないと、できないわけですね。正式にやろうとしたら。 ○機構 そうです。 ○北村委員 例えばどこかの大学でデバイスを使って、破裂性動脈瘤と手術療法とを比較 してみるということは、研究なら別かもしれないけれども、一応それに使うということに する場合は適用外使用という形になるわけですね。 ○機構 はい、そういう理解です。 ○北村委員 ですから、本質的には高度医療制度をとってもらわないと駄目だとなるわけ ですね。 ○機構 そうですね。承認を受けない形で使われるとなるとそういうことになります。 ○北村委員 ですから、是非とも現実の場と、ある程度即すように考えていかないと、後 の心臓の場合も、また同じですね。 ○機構 はい、おっしゃるとおりだと思います。そこについては、今、本当に禁忌・禁止 の文言を見直しているところで、そこは今の先生の御意見を。 ○北村委員 ですから、議論をするように皆さん言って決めていることと、実際の現場で 医者たちが努力してやっていることとの違いを言っているのです。ある機械は適用外使用 したら、保険支払金を全部返せという罰則もかかるのです。ところが、ステントならば、 適用外使用を、皆ほったらかしなのです。その辺の適用外使用という言葉を同じようにお 使いになりながら、場合によって、そちらの罰則の適用の仕方も違っているわけです。そ の辺をよく考えていただきたいと思います。 ○笠貫部会長 今の問題は非常に大きな問題で、議論されているところなのですが、私は もう一つ、禁忌でも、いわゆるリスクベネフィットの緊急性のときに、症状詳記をきちん と書けば、それがどうなのか、別な運用の仕方があるかとは思うのです。ここで決める禁 忌の場合にはそういう解釈で進めないと、臨床の現場の今のニーズには応えられないとい うお答えだったかと思います。そういう解釈でよろしいですか。 特にありませんでした ら、議決に入りたいと思います。「コッドマン エンタープライズ VRD」について、本 部会として審査報告書にある条件を付した上で、承認を与え差し支えないものとして、再 審査期間は7年間とし、また生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要というこ とで、よろしいでしょうか。  御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。審議結果については、 次回の薬事分科会において報告することといたします。これで本議題は終了としますの で、参考人の松丸先生におかれましては、御退室をお願いします。どうもありがとうござ いました。 ── 松丸参考人退室 ── ○笠貫部会長 続きまして、議題4「医療機器 デフラックス」の製造販売承認の可否等 について、議事・審理を行いたいと思います。本品目の審議に当たっては、参考人として 自治医科大学小児泌尿器科の教授であられます中井秀郎先生に御出席いただいておりま す。よろしくお願いいたします。審議品目の概要について、事務局の方から御説明をお願 いします。 ○事務局 資料4-1に基づいて、説明申し上げます。品目名デフラックス、申請者はキュ ーメッド社です。まず、「一般的名称、クラス分類等」というタブが右上に付いておりま す。こちらの品目は全く新しいタイプになりますので、今までの一般的名称があてはまる ものがありません。既存のものがありません。こちらの品目について、どのような一般名 を作成するかということで、案として出したものです。まず、一般的名称ですが、こちら の品目は膀胱鏡を用いて、膀胱の粘膜下に注入するものです。デキストラノマービーズ、 ヒアルロン酸を含有している注入材です。一番下に表のようになっておりますが、一般的 名称は「膀胱尿管逆流症治療用注入材」という形で、一般的名称(案)とさせていただいて おります。クラス分類としては、体内に残るものですので、クラス分類III。これは1回使 用ですので、特定保守は非該当。生物由来及び特定生物に由来する原料として製造される ものではありませんので、こちらのいずれにも非該当という案とさせていただいておりま す。  品目の概要ですが、今度は審査報告書の緑のタブの4ページです。現在、サンプルをお 回ししておりますが、4ページに図1があり、これが申請された品目です。注射器のよう な形ですが、デフラックス1mLと書いている部分の中に、デキストラノマービーズと粘 度を上げるためのヒアルロン酸ナトリウムが充填されたものとなっており、膀胱鏡で膀胱 の中をのぞいて、逆流を起こしている尿管の付け根の部分にこのゲルを注入して、逆流し ないようにするという形で使われるものです。本品目の審査の概要については、総合機構 の方より御説明申し上げます。 ○機構 御報告に先立ちまして、変更点がありますので、お知らせいたします。別添の資 料4-1の差替え資料です。添付文書(案)の操作方法又は使用方法などの段をより詳しい記 載に変更したことから、申請書、別紙5、別紙10及び添付資料概要の関連箇所を変更い たしました。添付資料概要はページ数も多いため、新旧対照表として提出しております。 御迷惑をおかけしまして申し訳ございませんでした。  デフラックスの審査報告について医薬品医療機器総合機構より説明申し上げます。資料 4-1です。本品の審査に当たり、御覧の専門委員の先生方に御意見をいただきました。品 目の概要ですが、本品は膀胱尿管逆流症(VUR)の治療を目的とした、デキストラノマー ビーズ及び安定化ヒアルロン酸ナトリウムを主成分とする注入材がシリンジに充填され た機器です。膀胱内の尿管口近傍又は壁内尿管の粘膜下に、経内視鏡的に注入材を注入し、 長期の膨隆効果を供与することで、VURが改善することを目的としております。  外国における使用状況ですが、CEマークを1998年12月に取得しており、FDA承認 を2001年9月に受けております。販売開始されて以来、2009年10月までに、世界で約 □□本が販売されております。不具合発生状況は、有害事象0.02%で、スライドにお示 しした重篤な有害事象が0.01%と、非常にわずかです。保存的治療、あるいは経過観察 にて経過しており、臨床的には問題ありませんでした。  国内臨床試験ですが、対象は審査報告書13ページからです。逆流グレードII〜IVの小 児VUR患者を対象としております。症例数は9施設、73症例、119尿管です。有効性評 価に関しては、グレード0を治癒、グレードIを改善とし、治癒と改善の割合を改善率と しております。主要評価項目を治療あるいは再治療後、12か月の尿管単位の改善率とし ております。  グレードに関して簡単に説明申し上げますと、逆流のないものをグレード0、尿管に逆 流が限られているものをグレードI、尿管腎盂腎杯まで逆流はあるものの拡張が認められ ないものをグレードII、中等度の拡張は認められるが、円蓋の鈍化は認められないものを グレードIII、円蓋の鈍化が認められるものをグレードIV、円蓋の鈍化及び腎杯乳頭圧痕も 消失したものをグレードVと定義されております。  国内臨床試験成績ですが、審査報告書14ページからの臨床試験の結果です。主要評価 項目である治療、再治療、12か月後の尿管単位の改善率は97尿管に対して67尿管が有 効で、改善率69.1%でした。また、副次評価項目ですが、治療、再治療、3か月後の尿 管単位の改善率は109尿管に対して71尿管が有効で、改善率65.1%でした。同じ副次評 価項目ですが、治療、再治療、12か月後の症例単位の改善率も見ております。71例で評 価されており、44例に改善が認められ、改善率62%でした。  安全性に関しては、登録症例全例73症例、110尿管に対して評価されました。審査報 告書15ページの表5にまとめておりますが、手技関連の重篤な有害事象として、膿尿、 尿管狭窄、発熱が報告されております。また、手技又は注入材に関する有害事象として、 腎盂拡張、尿管拡張などが報告されております。以上の有害事象の転帰は、全例軽快で、 安全性上特段の問題は認められませんでした。  審査における主な論点が四つありました。論点1ですが、本治療の臨床上の位置付けで す。VURは小児に多く、自然治癒の可能性もあることから、通常、保存治療を行ってお ります。しかし、保存治療では感染症などを繰り返し、病態をコントロールできない患者 も認められます。そのような患者に対して、外科治療よりも低侵襲である本品を使用した 注入治療を、治療の選択肢として医療現場に提供することは意義のあるものと考えており ます。論点2ですが、本治療の対象患者は、臨床試験ではグレードII〜IVの小児を対象と しております。海外文献においては、1歳未満で、あるいは成人における本治療の有効性 及び安全性上の大きな懸念は認められておりません。また、先に述べた本治療の臨床上の 位置付けを考慮すると、年齢制限を設けず、グレードII〜IVのVUR患者を適用患者とし ております。なお、成人、1歳未満の患者への適用に関しては、添付文書で注意喚起を行 うこととしております。  論点3です。本治療のリスク低減化に関してですが、臨床試験では安全性上特段の問題 は認められておりませんが、重大な有害事象として尿管閉塞が考えられます。適切な位置 に適量の注入材を注入することが、リスク低減化と有効性の向上に重要であると考えてい ることから、承認条件1、「トレーニングを受けた医師が適切に本品を使用すること」と しました。論点4ですが、本治療の長期的成績に関して、海外の報告などではある程度の 長期成績は評価されておりますが、現時点では十分な実績のないことから、承認条件2、 「使用成績調査により、長期予後の情報を収集する」としました。  総合機構は、次の承認条件を付した上で、以下の使用目的で本品を承認して差し支えな いと判断いたしました。承認条件です。以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたし ます。 ○笠貫部会長 参考人の中井先生の方から何かありますでしょうか。 ○中井参考人 臨床の現場にいる立場から、もう少しイメージがつくような説明が必要と いう立場で、付け加えさせていただきたいと思います。まず、膀胱尿管逆流症は、小児の 尿路の先天奇形で最も多いものの一つ、ベスト3の中には入ると思います。それで、有病 率に関しては、比較的高いと言った方がいい。健康の乳児で調べてみると、1%弱ぐらい にあるのではないかと思います。それから、尿路感染症を起こした乳児の3割〜5割ぐら いに、原疾患としてこの病気があるということで、比較的、有病率が高いことはあるかと 思います。この治療に関しては、従来から尿路感染がコントロールできない場合は手術治 療、観血的な手術ということがスタンダードに行われております。ただ、これに対してこ ういった内視鏡注入療法がどういう位置付けになるかということが問題になっておりま すが、明らかにモビディティというのでしょうか、通常の観血的手術では1時間ないし2 時間の手術で、もちろん開腹して膀胱を切開しますので、多少痛みとか、あるいは術後も 麻酔が必要であると。局所麻酔が必要であったり、血尿が著しいということで、4、5日、 あるいは1週間ぐらいの入院期間が必要なことがあります。  こういった内視鏡治療になりますと、恐らくは術後の尿管閉塞等のないことが確認でき れば、術後1日、2日以内に退院できて、しかも痛みのペインコントロールは必要ないと いうことです。ただ、問題点は治癒率が手術では98〜100%ぐらいのところにいっており ますものが、この治療方法では6〜7割というところです。モビディティは低いけれども、 ゴールの成績が少し劣るということで、どちらの選択かという最終的には患者さんの選択 というところがあろうかと思います。以上です。 ○笠貫部会長 本件について、各委員の先生方から御意見・御質問はありますでしょうか。 ○荒井部会長代理 ほかの議題でも承認条件について係っておりますが、これも「トレー ニングを受けた医師が」という表現がなされています。私はこれを全く使ったことがあり ませんし、この領域は知りませんが、泌尿器の先生で膀胱鏡を通常やっておられる先生方 に、これは本当にトレーニングが必要で、そういうことを義務付ける必要性があるほど、 危険性が高い難しいものなのでしょうか。要するに、何でも承認条件の中に、「きちんと したトレーニングを受けてプログラムを組んで」と、言うのは簡単なのですが、結局、現 場の医師がそれを本当に必要と感じるかどうかというところをきちんと把握していかな いと、文言だけが遊んでしまって、逆に意味のない言葉になってしまう可能性があります。 先ほど北村先生がおっしゃられたように、文言で縛ろうとすると逆に適用をかえって狭め てしまう可能性があると思われます。実際の現場の状況については、中井先生にお伺いす べきかと思いますが、いかがなものなのでしょうか。 ○中井参考人 内視鏡の手技的には、高い成績を達成するための工夫では、技術、ラーニ ングカーブはあると思いますが、コンプリケーションを回避するという意味での最低限の 技術レベルということになると、泌尿器科の一般的な医師は、それほど困難なこととは感 じておりません。 ○荒井部会長代理 そういう専門家の意見をお伺いして、改めてPMDAの方にお聞きし たいと思います。なぜこの製品に関して、トレーニングを要求することが承認要件に入っ てくるのかについて判断の根拠をお聞きしたいのですが。 ○機構 お答えいたします。通常、承認条件というようにしない場合は、性善説に基づい てやっていただくことを約束として取り決めるわけですが、なかなかできない場合が多い ということが一つです。もう一つは、泌尿器科のある程度熟練された先生であれば、今、 中井教授がおっしゃったように簡単である部分かと思いますが、やはり若手の医師も育て なければならないところから、例えばすぐに先輩のいないような施設で従事している医者 の場合は、学会等での講習を受けたり、講演を聞くということが非常に重要になってくる かと思います。やはり小児ですので、成長等も関係ありますから、粘膜下に注入するとい う点においては、熟達された先生には難しいことではありませんが、ともしますと筋層に 注入するということもありますので、やはり粘膜下を適切に捉えるということは、ある程 度専門でない、これから泌尿器科を目指そう、あるいは泌尿器科医になったけれどもとい うような医師には、必要なことかと理解しております。 ○荒井部会長代理 それは医師の教育システムの範疇の話であって、本当に機器の承認要 件として、そういったトレーニングをしなさいということをそこまで厳密に入れるべきで しょうか。非常に危険度の高いステントクラフトや、先ほどの脳血管に使うようなものは もちろん私も理解できますが、本品のように極端に危険度の高い訳ではない機器について 本当にそこまで臨床現場の教育制度に介入するような文言を承認要件で付ける必要があ るのでしょうか。お考えをお聞きかせ下さい。 ○機構 おっしゃるとおりでございます。しかしながら、機構で検討して、承認条件を付 けることが妥当である、というような判断を行っております。 ○医療機器審査管理室長 当初、本製品に関しては、差替えの資料等もありましたとおり、 最後の最後まで審査について評価をしたわけです。一般論として、承認条件については、 とりあえず付けておけばいいというものではないことは間違いないことで、先生が御指摘 のとおり、これだけは企業、申請者に対してやっていただかなければならないことを特化 して、積極的な理由、背景をもってして付けるべきという考え方でやっていきたいと思っ ています。  今回のこの製品に対する承認条件のトレーニングの部分に関しては、今PMDAの方か ら説明があったことに加えて、審査報告書の21ページ辺りにも少し書いてあるのですが、 先ほど中井先生からもお話があったように、観血型のオペをするのとこちらを選択するか というところの判断を含めて、21ページの上から10行目あたり、年齢制限などを設ける ことなく現場に提供することは意味があると言いながらも、一方で適切に対象となる患者 さんを選択することが重要になるということで、本品の特性と本治療法を十分理解した医 師が使っていただくことがいいだろうと。この辺りが少し今回、承認条件を付した背景と してあるのではないかと我々も思いまして、今日こういう内容でお諮りしたということだ ろうと思います。 ○笠貫部会長 条件を、新効能医療機器は基本的にはメーカーの責任は明らかにしておい て医師の研修制度と、基本的に分けながらも、これを一体にしなくてはいけないのは学会 のガイドラインという形にして、きつい条件にしていますね。そういうことで、承認条件 についてほかに御意見がなければ、事務局の考え方で進めていただけたらと思います。も し荒井委員の考え方に御賛成の方がいたら、また御意見をいただきます。むしろ今のお話 でいくと、手技上の問題よりも適用の問題ですね。先ほど中井参考人も言われましたよう に、成功率は低いけれども、侵襲度が低い。そのどちらを選びますかという話と、長期の データはまだない。適用患者が子供さんだと言った場合に、かなり適用の問題が大事にな りますね。そこの適用についての学会のガイドラインなどというのはあるのでしょうか。 ○中井参考人 基本的には、観血的手術の適用と変わらないと思います。ただ、世界的趨 勢としては、先ほど説明がありましたように、この病気は保存的に治っていく傾向が強い ので、その間、予防的抗菌療法、少量の抗生剤をずっと飲んでいただくなりということで 経過を見ていくと、確かに治っていくものもあります。ただ、世界的に見ると、その治療 法とこのleast invasive、less invasiveの治療方法とどちらを選ぶというような議論に 変わっていく傾向はあるかとは思います。ただ、学会の中でガイドラインがあるわけでは ないのですが、恐らく基本的な考え方としては、観血的手術と内視鏡手術は同レベルの選 択肢であるのではないか、というように考えております。 ○笠貫部会長 こういった非観血的な治療法というのが出てまいりますと、逆にオーバー に施行されないかというのが、常に問題として裏腹に存在するわけです。そういう意味で は、先ほど保存的な治療でも治癒していくケースもあるのだとすると、是非、学会でガイ ドライン的なものを考えていただいたらどうかという感じはします。観血的な手術と非観 血的な比較ということだけでなくて、本治療法と薬物治療ということですね。多分2段構 えのガイドラインが必要かというようには感じました。これはこの製品条件とはまた別か と思いますが。ほかにはありませんでしょうか。特にありませんでしたら、議決に入りた いと思います。 デフラックスについては、本部会として審査報告書にある条件を付した 上で、承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は3年間といたします。また、高 度管理医療機器として指定し、特殊保守管理医療機器への指定は不要として、生物由来製 品及び特定生物由来製品への指定は不要ということで、よろしいでしょうか。  御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につい ては、次回の薬事分科会において報告することにいたします。これで本議題は終了いたし ますので、参考人の中井先生におかれましては、御退席をお願いいたします。貴重な御意 見をどうもありがとうございました。 ── 中井参考人退室 ── ○笠貫部会長 続きまして、議題5「冷凍手術器 Cryohit」の製造販売承認の可否等につ いて、審議を行います。審議品目の概要について、事務局から御説明をお願いします。 ○事務局 資料5-1に基づいて説明申し上げます。資料5-1の4ページ、審査報告書の1 枚目です。2の審議品目の概要ですが、本品目はMRを撮りながら右にあるプローブを患 者さんの腫瘍の部分、腎腫瘍に挿入します。左側の装置ですが、こちらを作動させますと、 先ほどのプローブの先が−100℃と、ごく低温になる構造となっております。それによっ て、腎腫瘍を壊死させるというものです。GMDNに基づき汎用冷凍手術ユニットという 一般的名称があり、これに該当するものです。承認申請者は株式会社日立メディコです。 詳細については、総合機構より御説明申し上げます。よろしくお願いします。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より説明申し上げます。資料5-1です。本品の審査に当 たり、御覧の専門委員の先生方に御意見をいただきました。品目の概要ですが、本品は核 磁気共鳴画像(MR装置)ガイド下に、プローブ、あるいはニードルを低温にし、凍結・解 凍を繰り返すことによって、急激な温度変化による物理的細胞破壊を行い、小径腎悪性腫 瘍を死滅させるように設計されております。  外国における使用状況ですが、審査報告書7ページからです。外国における使用状況で は、本品の前世代品、1998年にCEマークを取得しており、2001年に510Kを取得して おります。本品は2004年1月にCEマークを取得し、2005年に510Kを取得しておりま す。販売数は1998年に前世代品と合わせて、2009年6月現在で□台です。不具合発生状 況は、腎腫瘍に対する有害事象として、皮膚ろうが1件、報告されておりますが、特別な 処置の必要なく同日に退院しており、臨床的には問題ありませんでした。  国内臨床試験ですが、審査報告書12ページからです。2施設、22例の腎細胞がん患者 に対して行われております。有効性の主要評価項目は、治療後6週の腫瘍完全消失率でし た。臨床試験成績です。有効性はプロトコール逸脱例の2例を除いた20例で行われ、17 例に腫瘍の完全消失が確認され、85%の完全消失率でした。PRでありました3例に関し ては、隣接臓器の影響と考えられる凍結領域不足が2例、4.8mmの腫瘍に対するマージン 不足が1例の計3例でした。安全性に関しては、全22例に一過性の発熱及び臨床検査値 の変動が認められましたが、全例軽快しております。また、膿瘍1例、血腫2例及び軽度 の胸水が3例認められておりますが、いずれも保存的処置にて改善しております。  論点です。審査報告書18〜19ページ、治療上の臨床上の位置付けですが、腎腫瘍に対 する標準治療は、腎摘出術、あるいは部分切除が行われております。しかし、外科手術の ため侵襲性の高い治療法で、NCCNガイドラインなどを参考にすると、外科治療法が適 用できない、あるいはハイリスク患者に対して、この治療法は医療現場に提供する意義は あると考えております。そういうところから、臨床上の位置付けは、外科的治療適用又は ハイリスク患者適用外又はハイリスク患者の小径腎悪性腫瘍の治療としております。  安全性評価とトレーニングの必要性ですが、海外文献において、大きな安全性上の問題 は認められておりません。経皮的にプローブ又はニードルを穿刺するために、技術的に熟 達が重要となります。また、冷凍手術特有のクライオショックなどに緊急対応できる施設 が必要と考えます。したがって、安全性評価とトレーニングの必要性に関しては、医師の 訓練、承認条件1及び合併症対策として承認条件2を付すこととしました。  長期有効性及び安全性についてですが、長期予後に関しては、確立されたエビデンスが ないことから、本品の長期有効性及び安全性に関しては、より多くの症例の蓄積が必要で あると考えております。したがって、長期的有効性及び安全性に関しては、使用成績調査 など、承認条件3を付すこととしました。  総合機構は、次の承認条件を付した上で、以下の使用目的で本品を承認して差し支えな いと判断いたしました。川上先生よりコメントをいただいており、2点あります。1点は、 「添付文書に反復使用についての記載が不明である」。2点目は、「腎がんは外科手術が 原則であり、本治療法にはハイリスクで手術適用のない場合に用いられるという部分が読 み取れない」、という御指摘を受けております。それに関して、総合機構としては、申請 者も腎摘出術、あるいは部分切除が第1選択となっていることは理解しており、全身状態 が不良な場合、腎摘出術あるいは部分切除などの侵襲性の高い治療ができない場合、適用 のない場合、あるいは手術を拒否する場合には、この治療法が行い得るのではないか、と いう回答をもらっており、その趣旨を添付文書に記載する、盛り込むというように考えて おります。以上承認条件です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 本件について、委員の先生方から御意見・御質問はありますでしょうか。 ○北村委員 今の御説明で分かりにくかったので、もう少し教えてください。結局、ここ に書いてある総合評価の適応症は、小径、小さな腎悪性腫瘍であるというのはもう変える ということですか。 ○機構 総合機構の方から説明させていただきます。あくまでも使用目的については、小 径腎悪性腫瘍ということで、小径ということについては、様々な専門家の先生方の御意見 をいただいても、4cm以下であるというところについては、共通した認識でいるという ことです。 ○北村委員 今の「文書による御質問」という中で、外科侵襲に堪えない重症例に対して も使用適用があるということで、考え直すと今御説明があったではないですか。 ○機構 説明が足りなかったようで、改めて説明をさせていただきますと、使用目的につ いては変わりません。今、説明のあった手術を拒否される方がいらっしゃって、本来の使 用目的に照らし合わせて逸脱するものでない方については、本品の適用が代替療法として 適用され得る、という理解で申請者の方もいるというように。 ○北村委員 それは、小さくなくてもいいわけですか。 ○機構 小さくなるというのは。 ○北村委員 手術を拒否した患者さんに対しては、小径でなくてもいいと。 ○機構 いえ、小径でなければいけないという、そこの部分は外れないという理解でおり ます。 ○北村委員 どういうことですか。なぜ手術を断った人と断わらない人とを区別をしなく てはいけないのですか。 ○審議役 小径がんだと、第1選択として外科手術になります。 ○北村委員 それが全部占めているわけですね。 ○審議役 要するに外科手術が第1選択であると。それができない方について、これをす るということです。要するに小径がん。小径がんについての適用だということです。ただ、 それが外科手術が第1選択で。 ○北村委員 それは患者の選択ですから、すべての場合にあり得るのではないですか。手 術が嫌だとおっしゃる方に。 ○審議役 ですから、それは基本的な考え方だということです。ですから、拒否した場合 というのは、これは選択になりますよね。 ○機構 説明させていただきますと、基本的には4cm以下の小さな腫瘍に対して、悪性 腫瘍に対して治療を行うというものなのですが、一般的には部分切除が行われているとこ ろだと思います。 ○北村委員 それはそれでよろしい。こういう新しい機器が薬事承認されて、利用される ようになったときに、「小さい腫瘍ですよ、4cm以下ですよ」ということですから、これ も結構です。しかし、それがなぜ「手術を拒否した場合は」云々ということを付け加える 必要があるのかということです。 ○審議役 それは、要するに外科的手術が第1選択であるというのを明確にするためで す。 ○機構 選択肢の一つとしてありますよ、という意味なのです。 ○北村委員 それを言い出したら、切りがないぐらいありますね。手術をするか、ステン トするかというのと一緒で、そのようなものはバイパス手術の適用と考えられるものが適 用でないと書いてあるけれども、どんどんやられているのが現状なのですよ。おそらくそ うでしょう。 ○審議役 基本的考え方を押さえたということなのです。 ○笠貫部会長 適応症は小径腎悪性腫瘍であって、それにもっと縛りを付けますかという 話になるのですね。例えば今までも新しいものが出たとき、前の治療法が駄目なこういう もの、という条件を付けるわけですね。そこまでこれを付けますか。第1選択、第2選択 ではなくて、最初に適用として小径腎悪性腫瘍でも手術を拒否したり、手術ができない、 無効とか、そういうものだけに絞りますか、という御質問だと思うのです。それはしない のですね。 ○機構 そもそもなのですが、日本泌尿器科学会のお示しになっているガイドラインでは グレードC1ということになっておりますが、こちらではあくまでも部分切除であり、腎 摘出術が第1選択であるというように示されている。 ○北村委員 なぜ今日は参考人が来ていないのですか。このデバイスに対しての参考人だ けかどうか知りませんけれども、来られていない。これは医者に聞くのが一番分かりやす い点だろうし、そういうところで例えばまたこれは適用外使用をしたらどうするのか。こ れを決めてやった場合、現場というのは適用外使用が起こるものですね。こういうデバイ スで適用外使用した場合は、皆さんの罰則はかなり厳しいことは、歴史上いくらでもあり ましたね。ですから、その辺の適用というものをどうしていくのかということです。 ○笠貫部会長 ここに小径腎悪性腫瘍に「部分切除が困難な」という修飾語を入れるかど うかです。入れないのですね。適応症をはっきりするということです。 ○医療機器審査第二部長 現状としては、そこで制限をかけるつもりはありません。ただ し、使用上の注意の中で、適切に使っていただけるようにハイリスク患者にはこれを使っ ていただくという考え方で、手術を拒否する云々というのは、少々別の次元の話かと考え ております。 ○医療機器審査管理室長 関連ですが、厚生労働省としても、現場での使い方というのは いろいろな判断、当然、診断、あるいは患者さんの容体によって、いろいろな選択肢の選 択が厳密になされてよろしいかと思うのです。審査に当たっての考え方なのですが、本品 に関しては一応そういった外科的な治療を選択するか否かにかかわらず、一定の、今回で あれば小径の腎悪性腫瘍に関して有用性が確認できているわけですので、必ずしも外科治 療が困難なところに限定する必要はないということで、このような適応にしているという ことです。 ○北村委員 すべての治療で二つの方法がある場合、どちらを選ぶかということは、いわ ゆるインフォームド・コンセント、患者さんとの情報を提供した上で決定されることです から、従来行われてきた手術療法を取るのか凍結療法を取るのかはその中で決定されるべ きものであって、手術を拒否した人がこの適用に入りますよという項目を付け加える必要 は、私はないのではないかと思います。 ○笠貫部会長 基本的にはないということでいいですね。結局適応症は変わらないと。た だ、これは新効能機器で、あるいは薬もそうですが、従前のものが無効なものとか、それ ができないものとかというのは言外に示されていることなので、新効能医療機器としては 小径腎悪性腫瘍という形で適応症をクリアにするということでよろしいでしょうか。ほか にはございませんか。 ○北村委員 もう一つだけ、「MRIガイド下に」と書いてあるのですが、一方では「M RIの検査室に本体を入れないこと」と書いてあります。これはどうするのですか。 ○機構 こちらにつきましては、本体はあくまでもMRI室外に置かれて、そこから「M RIキット」というものを介してプローブの部分のみがMRI室で使用されるということ です。MRI室の中で使われる構成品については、すべてMRI対応の非磁性体が使われ た材料で構成されています。 ○北村委員 何か長いものでつなぐのですか。 ○機構 はい。 ○北村委員 先ほどのに付いていましたか。 ○機構 はい。 ○笠貫部会長 それでは、MRIがあるということ、あるいは医師の問題、外科手術もで きるという前提の承認条件等を付けて、厳しくこの機器を活用していただくことになるか と思います。  ほかに御意見がなければ、議決に入りたいと思います。「冷凍手術器 CryoHit」につい ては、本部会として審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えないものと し、最審査期間は3年間、生物由来製品及び特定生物由来製品の指定は不要ということで よろしいでしょうか。  御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につき ましては、次の薬事分科会において報告することといたします。  続きまして、議題6「XIENCE V 薬物溶出ステント及びPROMUS 薬剤溶出ステント」の 製造販売承認の可否等について審議を行います。審議品目の概要について事務局から御報 告をお願いします。 ○事務局 資料6-1、「XIENCE V 薬剤溶出ステント」、「PROMUS 薬剤溶出ステント」で す。製造販売業者はアボット バスキュラー ジャパン株式会社で、こちらは5番目の薬剤 溶出性ステントとなっております。薬剤溶出ステントの薬剤として、エベロリムスがコー ティングされているものです。構造的には今までのものと大きく変わるものではありませ んが、薬剤として指定されているのが心移植の拒絶反応の抑制を適応して、すでにサーカ イン錠として承認をもっているエベロリムスが使われているものです。審査の概要につき ましては、審査を行った総合機構より御説明申し上げます。よろしくお願いします。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より説明いたします。資料6-1を御覧ください。総合機 構での審査にあたり、御覧の専門医の先生の御意見をいただきました。  審査報告書4及び5ページに示す本品の概要について御説明申し上げます。本品は、既 承認のコバルト・クロム合金性のマルチリンクビジョンステントをプラットフォームに用 い、ステント表面には新生内膜の増殖を局所的に抑制する目的で、免疫抑制剤であるエベ ロリムスがコーティングされた薬剤溶出ステントです。薬剤溶出性ステントに関しては、 以下「DES」と略させていただきます。なお、エベロリムスは本邦において心臓移植後 の免疫抑制の適用に承認を取得しております。  審査報告書6及び7ページに示す本品目の海外における使用条件について御説明申し 上げます。本品は2006年に欧州でCEマークを取得し、2008年に米国でPMA承認を取 得しております。2009年10月までに、87か国において95万本以上が販売されておりま す。0.115%の不具合及び有害事象が報告されており、本品に関係する又は関連性を否定 し得ない重篤な有害事象として、死亡及びステント血栓症が報告されております。コーテ ィングされている薬剤に起因すると考えられる有害事象は報告されておりません。  報告書12〜15ページに示した臨床試験について御説明申し上げます。本品の有効性及 び安全性を確認することを目的に、SPIRITIII臨床試験が米国及び本邦において実施されま した。SPIRITIII臨床試験は、既承認のDESであるタキサスステントを対照群に持ち、比 較試験である米国RCT試験において血管造影評価項目である8か月セグメント内レー トロス、及び臨床的評価項目である9か月TVFにおいて対照群に対する非劣性検証を行 い、レジストリー試験である日本レジストリーにおいて日本人での、4mmレジストリー において4mm径DESでの8か月セグメント内レートロスにおいて、米国RCT試験の 対照群に対する非劣性を検証するデザインとなっております。8か月セグメント内レート ロスについては、RCT及び両レジストリーにて対照群に対する非劣性が示され、9か月 TVFについては米国RCTで非劣性が示されました。また、ポストホック解析では、日 本レジストリーの9か月TVFにおける対照群に対する非劣性も示されております。各試 験において特異的な有害事象は認められず、ステント血栓症に関しても既存のDESと大 きく異なるものではありませんでした。  審査報告書16〜19ページに示した本品の審査における論点について御説明申し上げま す。論点の一つ目は、4mm径DESの有効性及び安全性についてです。4mm径のステン トに関しては、薬剤の塗られていないベアメタルステントにおいても良好な治療成績が得 られていることから、4mm径を申請に含めることの妥当性について申請者の見解を求め たところ、4mm径DESについて同じ径のBMS(ベアメタルステント)を上回る有用性 を示すことができないこと、及び遅発血栓症などDES特有のリスクを考えると、4mm 径DESを本邦に導入する妥当性が説明できないとし、4mm径を申請から除外し、対象 血管径を2.5〜3.75mmとするとの回答を得ました。総合機構はこれを了承いたしました。  論点の二つ目は、SPIRITIII臨床試験から本邦における本品の有効性及び安全性を担保す ることについてです。本品の有効性及び安全性に関し、米国におけるRCT試験で、血管 造影評価項目及び臨床的評価項目で、対照群のDESに対する非劣性が証明されました。 また、本邦におけるレジストリー試験では、血管造影評価項目にて米国RCT試験の対照 群に対する非劣性が証明され、臨床的評価項目においても同等の結果が得られておりま す。また、本日スライドにはお示ししておりませんが、日米で行われた薬物動態試験にお いて日米間で差が認められていないこと、並びに本邦で独自の有害事象も認められていな いことから、SPIRITIII臨床試験の結果をもって日本人における有効性及び安全性を担保で きるものと判断しました。  論点の三つ目は、本品の長期的な有効性及び安全性についてです。現時点において、臨 床試験の追跡調査では大きな安全性上の問題は認められておらず、既存のDESと比較 し、本品に特有な有害事象は観察されていません。しかし、遅発血栓症に対する懸念など、 DES全般における長期的な安全性上の懸念が払拭されていない現状をかんがみ、本品の 長期的な有効性及び安全性についてより多くの症例を長期的に評価することが必要であ ると考え、承認条件1として本品を用いた臨床試験の長期成績に関する経年解析結果報 告、及び承認条件2として使用成績調査の経年解析結果報告を付すことが妥当と判断しま した。  四つ目の論点は、遅発性を含めたステント血栓症のリスク、並びに本品使用時の抗血小 板療法についてです。国内臨床試験では、83%の患者が6か月以上の2剤併用抗血小板療 法を受けており、術後6か月未満で中止した場合の安全性が確認できていないことから、 本品使用時の抗血小板療法として、無期限のアスピリン投与に加え、少なくとも6か月の クロピドグレル硫酸塩又はチクロピジン塩酸塩の投与を推奨することが妥当と判断しま した。現在得られている臨床成績から見て、本品のステント血栓症のリスクは既存のDE Sを上回るものではないと考えますが、血栓症の頻度は低く、より多くの症例で検討すべ きものであることから、他のDESと同様、再審査期間中に発生したステント血栓症に関 する報告を承認条件3として付すことが妥当と判断しました。  以上の審査での論点を踏まえ、総合機構は、先に申し上げた三つの承認条件を付した上 で、御覧の使用目的にて本品を承認して差し支えないと判断いたしました。なお、本品は 新性能医療機器であり、再審査期間は3年、生物由来製品、特定生物由来製品には非該当 と判断いたしました。  本品に関しまして、勝呂委員から、すでに4品目DESがある中で、そのコーティング について、有効性及び安全性に関して何らかの報告はあるかという御質問をいただいてお りますが、現状でコーティング及び薬剤の違いでどのコーティングが優れている、薬剤が 優れているという報告はなされていません。というのは、DESに関してはステントのデ ザイン、金属のストラットのデザインや金属の厚さ、及びコーティングの特性、また薬剤 という項目が複合的に絡んでおり、どれが優れているというのは現状ではまだ知見が得ら れておりません。以上です。よろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 どうもありがとうございました。それでは、本件について委員の先生方か らの御質問、御意見はございますか。北村委員、いかがでしょうか。 ○北村委員 参考人をお呼びする場合とお呼びしない場合の違いはどこにあるのですか。 ○医療機器審査管理室長 私自身も悩んでいたところで、余り今の段階では必要に応じて ということぐらいしか言えませんので、今後整理をさせていただきます。ただ、恐らく審 議にあたっては、何らかの格好で参考人というか、専門的な先生がいていただいた方がい いのではないかと思っていますので、原則来ていただく方向でもいいかとは思っておりま すが、現時点でいらっしゃる場合とそうでない場合は明確ではありません。 ○北村委員 専門委員の方が、笠貫先生や私がいるからいやだと言っているとか、そうい う理由ではないのですか。 ○医療機器審査管理室長 そう思われてもおかしくないので、これからできるだけ早く整 理したいと思います。 ○北村委員 それなら方針は統一していただきたいと思うし、ここは現場の人の意見も是 非汲み上げるべきものだと思います。審査の紙はあるので、皆さんがやられていたのはよ く分かりますが。それから、最新型のステントでも同じことが書いてあるでしょう。皆さ ん御存じでしょう。ここにも書いてある28mm以下というのは、1病変長のこと、1患者 のことですか。そうしたら、3・4病変になったら、足算したら10cm超えてもいいとい うことですね。 ○機構 原則として1病変当たりでしか定めておりませんので、通常の患者さんの中には たくさん入れられた場合に10cm超える場合も、存在することは存じております。 ○北村委員 それはかまわないのですか。 ○機構 決まりはないので。 ○北村委員 そうしたら、この添付書類に書いてある、例えば左冠動脈主幹部、急性心筋 梗塞というのは以前のままなのですね。これをどうしてあげるのですか。現場で、急性心 筋梗塞はこの方法が命を助けていることがあるのです。私も学会で自分が心筋梗塞になっ たらステントを入れてくれと言っているわけです。ただ、待機時間のある急がないケース においてはバイパスとの関連がありますが、急性心筋梗塞は駄目と書いてあるわけです。 これを前から何度も話し合ってくれと言っているのですが、また最新型のものでも同じこ とをやっている。進歩がないな。どう考えているのかな。 ○機構 審査部の方から申し上げますと、これについては正に今、総合機構の安全部を含 めて、議論している最中です。その間に出すものについては過去を踏襲するというか、前 と同じ書き方にせざるを得なかったという部分があります。それについては、先生方から 何度もお叱りをいただいているように改善すべき点ですので、議論は進めている最中で す。ただ、その進捗状況等については、今私から申し上げられることはありません。 ○北村委員 問題は、これがアメリカ製であるために、2007年にFDAがこれを書いて いるわけです。全部のいくつまでとか、患者のクライテリアとディバイスのクライテリア から適用範囲を決めているわけです。2007年では変えるエビデンスがないと、FDAは 言っているわけです。これはみんなアメリカの製品ですから、それを踏襲して企業が書い てくるわけですが、現実は随分違う。先ほど聞いたように、急性心筋梗塞にXIENCEを使 えば適応外使用ですね。そうしたら、それは高度医療でないとやってもらっては困ります ね。皆さんはそれをきちんと指導しますか。 ○機構 今の議論としましては、薬剤溶出ステントに対しては2007年のFDAの会議に も置かれたように、まだ今の時点でAMI等について使ったものという話ではないと思い ます。 ○北村委員 そのようなことを聞いているのではありません。それを使った場合には、 「皆さんは駄目です、適応外使用です」と言って、医療機関に指導されるのですか、と聞 いているのです。「高度医療を取ってください」と言うのですか、と聞いているのです。 そうしたら、適応外使用のディバイスの使用をこれだけに限るという型ではなくて、広く、 内視鏡にしても汎用型の凍結組織にしても、腎臓以外に、例えば肝臓に使ったらたちまち 金を返却せよという罰則をかけるのを、どう考えますか、ということです。 ○審議役 その部分については少しタイムラグが出てきますが、こちらとしてはデータを 揃えて、きちとんしたものであれば。 ○北村委員 それは数か月前にも同じ返事をいただいているのです、検討しますと。 ○審議役 そこは本当にサイエンスベースとして、きちんと評価をしてせざるを得ないと いうのが審査のところですから。 ○北村委員 審議役もそうですが、場合場合によって整合が取れていない。今の参考人を 呼ぶ場合も呼ばない場合もあるというのも、何か裏があるのかと考えざるを得ないような 気もしないでもないですね。その辺をもう少し透明性を上げていただきたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○審議役 そこはデータを取りつつ、きちんと検討をしていきたいと思います。 ○笠貫部会長 この問題は、ここで議論をされている中で、日本循環器学会にエビデンス を基にしてどうするかという意見を求めているところだと聞いていますが、いずれにして もその整合性を取らざるを得ない。しかし、今のとこの添付文書の違いは、早晩何らかの 解決をしないといけないという御指摘だと思いますので、引き続きよろしくお願いしま す。ほかにはございませんか。  御意見がないようでしたら、議決に入ります。「XIENCE V 薬剤溶出ステント及びPROMUS 薬剤溶出ステント」については、本部会として審査報告書にある条件を付した上で承認を 与えて差し支えないものとし、最審査期間は3年間とし、また生物由来製品及び特定生物 由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。 ○北村委員 もう一つ言わせていただきたい。58ページの構文をどうするかを明確にし ていただきたい。私はそういう形でしたら、承認で結構ですと言いたくないですね。 ○笠貫部会長 これはほかのステントも同じだと思うのですが、今の検討がされたときは こちらにも報告されるし、その後の添付文書の改訂もあり得る。あり得るではなくある、 ということでよろしいでしょうか。できるだけ早くそれを進めていただきたいということ で、北村委員、よろしいでしょうか。 ○北村委員 日本では少ないし、分かりにくいかもしれませんが、アメリカではオンラベ ルユースとオフラベルユースの比較研究は山ほど論文が出ているのです。FDAも頭が固 いからなかなか変えないけれど、医療現場ではオフラベルとオンラベルの差が余りない と。急性心筋梗塞についてもそういうスタイルがたくさんやられているので、米国の資料 を参考にして認めるのか、日本でも治験をやりなさいとおっしゃるのか、その辺を検討し てください。いつまでもこんなことでは。よろしくお願いします。 ○笠貫部会長 それでは、そのように議決させていただいて、議題7に移りたいと思いま す。議題7「アイシーエル」の輸入承認の可否等について審議を行います。審議品目の概 要について、事務局から御説明をお願いします。 ○事務局 資料7-1、差し替え後の資料です。一番下に「有水晶体後房レンズ」という表 が付いている1枚紙を御覧ください。資料7-1の黄色いラベルですが、「新一般的名称・ クラス分類等」というものがあって、こちらに先ほどの差し替えの元のものが入っており ます。差し替え後の方を御覧ください。  有水晶体後房レンズは、水晶体をそのままにして、虹彩と水晶体の間にレンズを入れる ことによって近視を補正するというものです。これまでこのような品目がなかったことか ら、新たに一般的名称を定めるということで、この資料を準備させていただきました。こ ちらの品目ですが、1番〜3番まで高度管理医療機器等の指定についてということです が、こちらは体内に埋め込まれるものですので、高度管理医療機器クラスIIIという案とし ております。  2の「特定保守管理医療機器の指定」ですが、こちらは保守管理ではなく一人ひとりの 患者さんに埋め込むものですので、特定保守管理には該当しないとしております。  3番ですが、「生物由来製品又は特定生物由来製品の指定」です。資料7-1ですと、「ヒ トその他生物に由来するものを原料として製造されるものではないため」と記載しており ますが、間違いがありまして、差し替えとなっております。実は、こちらの品目につきま しては、□%という低濃度ではありますが、ブタ□□由来のコラーゲンを使用しておりま す。ただ、このコラーゲンにつきましては、非常に厳しい条件での殺菌措置を何度も経て おりまして、保健衛生上特別の注意を要するものとは考えられませんので、生物由来製品 及び特定由来製品として指定しないという結論としております。元の資料ですと、生物由 来のものが入っていないと記載しておりますが、こちらは間違いで、実はコラーゲンが□ %配合されておりますが、そちらについてはウイルス対策等が行われておりますので、非 該当という結論は変わりませんが、そこの部分を変更させていただいております。こちら の概要につきましては、審査を行いました総合機構より御説明申し上げます。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より説明いたします。資料7-1を御覧ください。本品の 審査にあたりまして、御覧の専門委員の先生方に御意見をいただきました。  本品は屈折異常眼の視力補正を目的とした眼内レンズで、有水晶体眼の後房に留置され るように設計されております。海外での使用状況としましては、欧州で1997年にCEマ ークを、米国で2005年にPMA承認を取得しており、その他の国々も含めてこれまでに 約□□枚の販売実績があります。  審査報告書10ページからの臨床試験の概要をこちらにお示ししました。3Dを超える屈 折異常眼の患者を対象として、国内2施設にて臨床試験が実施されております。近視、遠 視、乱視のいずれの屈折異常眼も対象としておりましたが、評価症例73眼のうち近視用 レンズが68眼、近視性乱視用レンズが5眼使用され、遠視用レンズの使用はありません でした。また、観察期間は当初術後最長1年までとなっておりましたが、眼内に半永久的 に留置するという本品の特性から、審査の過程で観察期間の妥当性が問題となり、術後3 年以上のフォローアップ成績が追加で提出されております。  主な臨床試験結果をお示しいたします。有効性については、審査報告書11ページの評 価基準に従って、著効から無効までの4段階で評価を行いました。その結果、著効が95 %以上となり、良好な結果が得られております。  安全性に関しては、術後所見として高眼圧が1眼に認められましたが、一過性のもので あり、無処置にて治癒しております。水晶体混濁は、術後3年以上の経過観察で14眼に 認められました。そのうち2段階以上の矯正視力低下が3眼に認められ、うち2眼は本品 を摘出し、水晶体再建術を施行しておりますが、そのほかの多くは軽度なもので、視力へ の影響はありませんでした。  臨床試験結果を踏まえ、審査報告書15ページからの審査における主な論点について御 説明いたします。安全性に関しては、水晶体混濁の発生と本品との因果関係について検討 を行いました。本品は水晶体近くに留置されることから、本品の影響を否定できるもので はないと考えております。しかし、加齢や強度近視が要因である可能性もあり、患者の年 齢が高くなるほど水晶体混濁の発生率が上昇したことから、適用年齢を制限することとし ました。適用範囲に関しましては、遠視用レンズ、近視性乱視用レンズは臨床試験での症 例数が少なく、評価が十分ではなかったことから、本申請から削除することといたしまし た。また、比較的軽度の近視眼については、他の屈折矯正法と比較してベネフィットが大 きいとは言えないと判断し、適用度数を制限することといたしました。  以上を踏まえ、使用目的にお示ししますように、適用範囲を設定した上で本品を承認し て差し支えないと判断いたしました。本品は新性能医療機器でありますことから、再審査 期間は3年が適当であると考えております。また、先ほど説明がありましたが、本品の原 材料にはブタ由来のコラーゲンが約□%含まれておりますが、製造工程中において過酷な 加熱処理を含む強度な処理がなされていることから、保健衛生上特別の注意を要するもの とは考えられないため、生物由来製品、特定生物由来製品の該当性につきましては非該当 と考えております。  部会の委員からいただいたコメントについて御説明させていただきます。寺崎先生から 大きく3点ほどコメントをいただいております。1点目につきましては、レーザー虹彩切 開術についてです。「レーザー虹彩切開術が全例に行われているが、添付文書等で触れら れていない。レーザー虹彩切開術を行うことが最も問題がある事項の一つと考える。レー ザー虹彩切開術による角膜内皮障害の原因はまだ分かっておらず、緑内障の患者において もこの合併症のために予防的な処置としては、ためらわれるほどであり、健常者で、しか も若年者に行うことについて慎重な対応が必要」とのコメントをいただいております。こ の点に関しましては、御指摘のとおり添付文書での注意喚起が不足しておりましたので、 対応させていただきたいと思います。レーザー虹彩切開術は、本品挿入後の眼圧上昇を回 避するために実施しておりますが、角膜内皮への影響については審査においても論点にな りました。原因は明確にはなっておりませんが、特にリスクが高いと言われている浅前房 眼や原発閉塞隅角緑内障については本品では禁忌となっておりますので、ある程度リスク は抑えられると考えております。また、申請者にレーザーの種類など照射方法について海 外での状況等を調査させ、角膜内皮細胞への影響が低く抑えられるような方法について、 術者へのトレーニング等で情報提供することとしております。  以上を踏まえまして、添付文書の「使用上の注意」にレーザー虹彩切開術の実施に関し てや内皮細胞障害のおそれについて注意喚起をするとともに、角膜内皮細胞の減少による 将来的なリスクも踏まえて適用を慎重に検討することを記載するように、申請者に指導を したいと考えております。なお、具体的な照射方法としましては、前処理として虹彩周辺 の斜め上方にアルゴンレーザーを照射後、YAGレーザーにて穿孔するといった2段階に 分かれた手順で行います。初めからYAGレーザーを使用するよりも、アルゴンレーザー で第1段階照射を行ってからの方が虹彩穿孔が容易であること、YAGレーザーは総エネ ルギーが少なくなるため、角膜内皮への障害が少なく、術後の炎症も少ないという報告が なされております。  続きまして2点目についてですが、角膜内皮細胞の減少についてコメントをいただきま した。「強度近視眼では、正常の老化による角膜内皮細胞の減少率がそうでない人と同じ かどうか。4年で2%の角膜内皮減少があるとすれば、40年では20%になる可能性があ り、若年者に入れることが問題である。ISOでは72歳で1,000cells/mm2を基準として おりますが、この値では水疱性角膜症の可能性からほかの手術ができないおそれがある。 強度近視は網膜剥離手術など、その後いくつかの手術を受ける可能性もあり、角膜内皮は とても重要である」とのコメントをいただいております。こちらに関しまして、まず強度 近視眼とそうでない場合で、老化による角膜内皮細胞の減少率に違いがあるかどうか文献 等を検索しましたが、確認できておりません。ISOの基準については、手術時10%減、 1年当たり2%減の減少率を想定して算出しており、これは国内臨床試験での手術時の減 少も含めた4年経過で平均2.0%減よりも十分に大きいことから、実際に1,000cells/mm2 まで内皮細胞が減少する可能性は低いと考えております。しかし、御懸念されている強度 近視眼であることなど、種々の要因が角膜内皮細胞の減少率に影響する可能性があります ので、先ほどと同様に角膜内皮細胞の減少による将来的なリスクを十分に踏まえて、適用 を慎重に検討することを添付文書に記載するように指導したいと考えております。  3点目として、フレア値についてコメントをいただいております。「眼内炎症の持続に ついては、3年経っても若干フレア値が高いのが気になる。レンズを入れただけの手術で あれば1年経てば元に戻るのではないかと思われ、長く続くのはその病態が持続している ことを意味しているように思われる」とコメントをいただいております。この点につきま しては、御指摘のとおり、毛様体などへの刺激によって何らかの炎症が持続している可能 性は否定できません。ただし、値自体は高いものではないことと、細隙灯顕微鏡所見で前 後房内ともに炎症や異常は見られていないことから、現時点では大きな問題となるような 程度ではないと判断しております。ただし、より多くの症例数での経過観察の情報を収集 すべきと考えておりますので、市販後の使用成績調査の重点調査項目として盛り込むこと としております。  以上を踏まえまして、本部会での指摘事項として、添付文書への対応などについて申請 者に指導したいと考えております。以上よろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見、御 質問ございますか。寺崎委員、いくつか御指摘をしていらっしゃいましたが、いかがでし ょうか。 ○寺崎委員 これは近視の方が裸眼視力を向上させるための方法であります。強度近視の 方はコンタクトレンズを入れれば視力は出るわけですが、眼鏡では視力が十分に出ない方 がいらっしゃいます。また、近年のQOLの向上というか、主に若い人たちだと思います が、眼鏡がなくて生活をしたいとか、水泳やスポーツにコンタクトレンズより便利である 点でこのような方法が考えられた訳です。同様の目的でLASIKという角膜を削る方法があ ります。あるいは先日認可されたOrthokeratologyという、夜間のコンタクトレンズ装用 で、裸眼視力が良くなるという方法があります。  今回のは、「アイシーエル」、人工レンズを瞳孔と水晶体の間という非常に狭い場所に、 水晶体に触らずに入れるという新しい方法です。  まず角膜内皮についてですが、レンズを入れる場所は眼内の房水という水が通る狭い場 所で、そこをブロックしてしまうと緑内障になる可能性があるので、あらかじめ瞳孔に小 さな穴を開けることが、手技として必ず追加されるようになっております。瞳孔に穴を開 けてそこから水を通すことについては、随分分からない議論がありまして、緑内障の方に やむを得ず汎用されていますが、小さい穴から水が通っていくことによって、角膜の細胞 が長年で減少し、角膜移植が必要になるような、水疱性角膜症、角膜混濁を来すというこ とがしばしば報告されております。なぜ穴があると角膜が障害されるかについては、実は まだ分かっておりませんので、炎症の持続あるいは小さい穴から通っていく機械的メカニ ズムで障害されると言われております。原因が分かっておりませんので、緑内障の失明患 者ではやむを得ないとしても、このような健康な眼にやってよいかということについては 私は非常に疑問があったわけですが、十分に角膜を経過観察すればいいのではないかとい うのがお答えだったと思います。  もう一つの問題点は白内障です。長期観察の症例は42.5歳が平均ですから、年齢を考 えると、65眼の長期経過観察で、3眼が手術が必要な白内障になっております。若干多 いかと思います。白内障の手術をすれば近視は治るということで、それほど大きな問題で もないのかもしれません。  先ほどの角膜内皮の問題、白内障の発生の問題につづき、もう1点は、眼圧観察の制限 であります。強度近視は眼底の病気として今失明原因の第5位です。つまり、将来網膜剥 離の発生、網膜の萎縮の発生、血管の発生などが原因で、いろいろな手術や眼底の経過観 察、治療を受ける可能性が十分にあるということです。多分、このレンズを取り出さない と手術はできないと思うのですが、術前に光干渉断層計、(OCT)といったもので詳細に 検査をして、網膜剥離になり易い症例を除くことを、一つコメントとして付けたらどうか と思っております。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。今の寺崎委員のお話を聞いていると、申請の機 器は先ほどのデフラックスと同じように、適用の問題と技術の問題と手技の問題が非常に 大事だと思うのですが、そういう意味の条件として、これは記載として付けた方がよろし いでしょうか。特に手技の問題です。また、添付文書でいくと、これほど禁忌がたくさん ありますと、このガイドラインを学会で作られているのかどうか、特にコンタクトかLASIK にするか、この新しいものにするかについて、寺崎先生と事務局にお聞きしたいのですが、 施設基準というか、医師の条件についてはどうでしょうか。十分技術を学ぶという条件を 付けるかどうかなのですが。 ○寺崎委員 例えば、LASIKについては眼科専門医ということになっておりまして、これ は当然のことかと思います。手技については、勉強は必要ですが、白内障の手術に熟練し た医師であればできる可能性がありますので、もしかしたらそれほど難しくないかもしれ ません。このレンズを使うかどうか、つまり若い人がLASIKと同じように、眼鏡では視力 が出にくいということではなく、ただ眼鏡をかけたくないだけでこれだけのことをするよ うに推奨されるといけないのではないかと思うのです。したがって、眼鏡では視力が不十 分で、コンタクトレンズでは視力がよく出る症例が適用になると思います。LASIKの状況 などを見ますと、ただ近視があるというだけでやられているわけですが、眼鏡がないとい うことで、現代社会を生きる上でQOLが非常に良いということもひょっとしたら重要な ことかもしれませんので、その辺の見解がなかなか難しいところかと思っております。困 っている人には重要な方法だと思います。ガイドラインは必要だと思います。 ○笠貫部会長 眼科領域でガイドラインを作るという動きはあるのですか。 ○寺崎委員 今のところはありません。ガイドラインは必要かもしれませんが、ガイドラ インを作ると、使用を積極的に推進するように思われ、なかなか難しいところかと思いま す。ただ、認可するのであれば、それは必要になると思います。 ○笠貫部会長 ガイドラインを学会で検討していただくことを伝えるかどうかはお任せ しますが、できたら作られるということと、先ほどの医師に研修をするかについては、入 れましょうと。この場合に必要かどうかということはどうでしょうか。先ほどのものとの 整合性で気になるのですが。 ○寺崎委員 特殊な技術の部分もあると思いますので、入れた方がいいと思います。 ○笠貫委員 事務局はこの点についてはいかがでしょうか。デフラックスとの整合性とい うか、難易度の話を含めてなのですが、そこは御検討いただくということで、今日はこの 場での議論は済ませるかですが、事務局でその点を十分検討していただくということでよ ろしいでしょうか。 ○医療機器審査第二部長 検討させていただいて、また御報告させていただきます。 ○笠貫部会長 ほかに御意見はございませんか。特に御意見がなければ、議決に入ります。 「アイシーエル」については、本部会として承認を与えて差し支えないものとし、再審査 期間は3年間とする。また、高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への 指定は不要とし、生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要とするということで よろしいでしょうか。  御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につき ましては、次回の薬事分科会において報告することにいたします。  それでは、審議事項は終わりまして、次に報告事項に入ります。議題8「部会報告品目」 について、事務局より御報告をお願いします。 ○事務局 資料8-1です。3枚ほどの資料ですが、こちらに平成21年9月1日〜10月31 日の2か月間に、事務局審査品目として承認させていただいた品目を並べております。す べてで9品目、新規として七つ、一部変更承認申請で二つとなっております。事前送付を している関係で、この場での詳細な説明は割愛させていただきたいと思います。よろしく お願いいたします。 ○笠貫部会長 報告事項ですので、了解しましたということになると思いますが、何か御 質問、御意見はございますか。ありませんでしょうか。  それでは、本議題は終了とさせていただきます。お陰さまで、審議はたくさんありまし たが、無事に時間内に終えることができました。できましたら私からもお願いですが、参 考人の方が非常に重要なのだろうと思います。臨床の現場からのいろいろな条件、あるい は適応の問題になると、参考人の専門の方々がどういうお考えをお持ちになっているか、 直接ここで議論することは意味があると思いますので、原則はそういうことにして、あと は適宜事務局の方で御判断いただくということにしたいと思いますが、そういうことでよ ろしいでしょうか。今日全体を通して、参考人の先生方の御意見は私どもには大変有意義 だったと思いますので、御検討をいただけたらと思います。  それでは、これで議題は終わりましたので、事務局から何か御報告事項はございますか。 ○医療機器審査管理室長 本日は、長時間にわたりまして御審議ありがとうございます。 通常に比べて審議品目が多く、時間も長くかかりましたので、先生方には御負担をかけた 部分も多いのではないかと思います。いくつか御指摘がありましたが、今後できるだけ部 会終了後速やかに承認に向けて様々な作業を継続していきたいと思います。それによっ て、今日御審議いただいた品目がいずれ患者・国民のためになるということであれば、今 日はたまたまクリスマスイブですが、クリスマスプレゼントになるのではないかと思いま すので、このあとの作業はできるだけ速やかに進めていきたいと思います。  また、ほかにも参考人の問題など御指摘がありましたので、この点については事務局と して前向きに考えていきたいと思いますが、今年最後の部会にもなりますので、改めて何 か御指摘、御意見がありましたらいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○荒川委員 資料が非常に多いこともあって、先ほど参考人のこともありましたが、当日 配られる審査報告、パワーポイントのようなものをできたら少し事前にいただけると、私 どもの理解が非常に進むので、間に合わない分は仕方がないとして、可能な範囲で事前に いただければと思っています。 ○笠貫部会長 御検討いただくということで。物理的に難しいことでしたらそれで結構で すが、可能な場合にはということで御検討いただくということで荒川委員よろしいです か。 ○荒川委員 はい。 ○笠貫部会長 全体の宿題としては、北村委員の大変難しい課題がありまして、来年に持 ち越しますが、来年はこれに対してある方向性が出せたらと思っております。全体を通し て何かあればという、事務局からの問合せですが、ございませんか。 ○医療機器審査管理室長 また、随時こちらにいただければと思います。よろしければ、 本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 江原(内線 2912)