09/12/15 第1回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)議事録 第1回 有害性評価小検討会 日時 平成21年12月15日(火) 14:00〜 場所 経済産業省別館10階共用1031号会議室 (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部             化学物質対策課化学物質評価室 井上 〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2             TEL 03-5253-1111(内線5518)             FAX 03-3502-1598 ○長山室長補佐 ただいまより第1回有害性評価小検討会を開催します。私は、座長が決まるまで進行 を担当します化学物質評価室の長山と申します。よろしくお願いします。  開会に当たり、初めに化学物質対策課長より挨拶を申し上げる予定だったのですが、所用で遅れる ということですので、到着したときに改めて挨拶としたいと考えています。  出席者をご紹介します。資料1の別紙2に、この小検討会の参集者名簿がありますので、この順番に ご紹介します。まず、横浜薬科大学臨床薬学科教授の池田先生です。慶應義塾大学医学部衛生学公衆 衛生学教室教授の大前先生です。中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター所長の清水先生で す。国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部長の西川先生です。独立行政法人 労働安全衛生総合研究所健康障害予防研究グループ上席研究員の宮川先生です。聖マリアンナ医科大 学医学部予防医学教室准教授の高田先生はご欠席です。  事務局の紹介をします。化学物質対策課の課長及び調査官は遅れてきます。環境改善室長の亀澤で す。同じく環境改善室副主任中央労働衛生専門官の徳田です。化学物質評価室長の島田です。化学物 質対策課の有害性調査機関査察官の平川です。労働衛生専門官の井上です。  あと本日は、バイオアッセイ研究センターから所長の長野さんです。試験管理部長の西沢さんです。 病理検査部長の相磯さんです。中央労働災害防止協会から細田さんです。  次に座長の選出をお願いします。推薦はございますか。特にないようでしたら、事務局としては大 前先生にお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○長山室長補佐 大前先生に座長をお願いすることとします。大前先生から簡単にご挨拶をお願いし ます。 ○大前座長 おはようございます。この会の座長を務めさせていただきます。今日の資料はたくさん ありますので、できるだけうまい具合にやろうと思いますが、ご協力をお願いします。 ○長山室長補佐 以下の議事進行は大前先生にお願いします。 ○大前座長 資料の確認をお願いします。 ○長山室長補佐 1枚ものの「議事次第」があります。次に「配布資料一覧」として、資料1から資料 9、参考資料の一覧があります。資料1「化学物質のリスク評価検討会開催要綱及び参集者名簿」、資 料2「平成21年度のリスク評価の検討体制」、資料3「労働者の健康障害防止にかかる化学物質のリス ク評価方針(平成21年度)」、資料4「リスク評価の手法(改訂(案))」、資料5「平成21年度リ スク評価のスケジュール」、資料6「有害性評価書(8物質)」で、これは本日の議題の8物質分の評 価書で、それぞれ中に総合評価書、有害性評価書が付いています。資料7「平成21年度リスク評価対 象物質に係る有害性評価関係資料」、資料8-1「有害性評価小検討会におけるがん原性試験結果の評価 について」、資料8-2「酢酸イソプロピルの吸入ばく露によるがん原性試験結果」、資料8-3「酢酸イ ソプロピルのラットを用いた吸入によるがん原性試験結果報告書」と資料8-4のマウスを用いた試験報 告書は、詳細なもので、机上のみの配布です。資料8-5「安全衛生情報センターモデルMSDS酢酸イソ プロピル」、資料9「今後の予定」です。参考資料も机上配布としていますが、資料6の有害性評価書 8物質に係る各物質の提案理由書です。資料は以上です。 ○大前座長 議事に入ります。議題に入る前に、検討会の開催要綱あるいは検討体制について、事務 局から説明をお願いします。 ○長山室長補佐 資料1です。第1回目の開催ということで、趣旨・目的などについてご説明します。 こちらの検討会はリスク評価の関係ですが、職場における化学物質の取扱いによる健康障害の防止を 図るためには、事業者が自らの責務として個々の事業場でのばく露状況等を把握してリスク評価をし、 その結果に基づきばく露防止対策を講ずる等の自律的な化学物質管理を適切に実施することが基本で ある、ということです。ただ、中小企業等においては、そういったことが必ずしも十分でないという ことから、平成18年度から、国は重篤な健康障害のおそれのある有害化学物質について、労働者のば く露状況等の関係情報に基づきリスク評価を行い、健康障害の発生のリスクが高い作業等については、 リスクの程度に応じて、特別規則による規制を行う等のリスク管理を講じてきている、ということで 行ってきました。  そのリスク評価を適切に行うために、学識経験者からなる検討会を開いているということで、その 中の1つとして、本日の有害性評価小検討会が位置づけられています。  全体の検討会としての検討事項は、リスク評価対象物質の有害性の評価についてと、同じくばく露 の評価について、同じくリスクの判定についてということで、検討項目を考えているところです。  次の頁です。別紙1として、化学物質のリスク評価検討会ということで、検討会全体の参集者の名簿 が付いています。別紙2に、リスク評価の検討会の中にある小検討会として、有害性評価の小検討会、 別紙3には、ばく露評価の小検討会の名簿を付けています。  次にそれぞれの検討会の関係です。資料2「平成21年度のリスク評価の検討体制」です。検討会の 体制としては、3つあります。1つは、「化学物質のリスク評価に係る企画検討会」です。こちらは、 リスク評価の方針の検討、また、これはばく露作業報告の対象物質にもつながるものですが、毎年度 のリスク評価対象物質の選定、また、リスク評価結果の周知・徹底等の方策の検討という検討会を行 っています。  真ん中の「化学物質のリスク評価検討会」ということで、先ほど開催要綱を申し上げたとおりで、 その中に有害性評価の小検討会と、ばく露評価小検討会が入っています。  こちらの「有害性評価小検討会」においては、評価対象物質の有害性の評価、評価値の設定、国が 実施した試験結果の評価を含む形で、有害性の評価を行う検討会です。もう一方の「ばく露評価小検 討会」においては、評価対象物質の測定手法の決定、評価対象物質のばく露評価を行う体制となって います。  左下です。そういった中で、化学物質の健康障害防止措置に係る検討会で、規制措置等が必要とさ れた物質については、健康障害防止のためにどのような措置が必要かを、この3つ目の検討会で検討し ていく体制で、平成21年度は進めていきたいと考えています。  資料3は平成21年度化学物質のリスク評価方針です。先ほどの検討体制のいちばん上にもありまし たリスク評価に係る企画検討会において7月14日に第1回がありまして、その中で、平成21年度は各 検討会でこのようなことをやっていこうということを定めたものです。1のリスク評価の目的などは、 先ほど申し上げたことと重複しますし、2のリスク評価の現状は、平成18年から3年間にわたって行 ってきたことを書いています。  3は平成21年度リスク評価の方針です。(1)、検討体制の強化とあります。平成18年度から3年間 においては、「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」という、1つの検討会 において実施してきたところです。ただ、これらの実績を踏まえて、リスク評価の対象物質の選定手 順、基準の明確化、透明性の確保、2として科学的判断が求められるリスク評価と政策的判断が求めら れるリスク管理の分離、3番目としてリスク評価の2つの要素である有害性の評価とばく露評価の分離 による効率的推進、4番目として、そういったリスク評価を受けた健康障害防止措置の検討、こういっ た技術開発動向の導入が必要な事業場等の動向の検討の推進、5番目として、リスク評価の動向や評価 結果の情報提供の推進です。このような5点の観点から体制を見直し、資料2にあるように、さらに検 討会を分けて、それぞれで議論していただく形で考えています。  (2)は各検討会の関係です。企画検討会については、基本方針、物質の選定作業を行います。2)はリ スク評価検討会ということで、(1)として本小検討会ということで、国内外の疫学、毒性等にかかる情 報をもとに、平成21年度に新たにリスク評価を行う20物質の有害性評価を行うこととする。また、国 によるがん原性試験の結果について評価を実施することとされています。ばく露評価の小検討会は、 先ほど述べたとおりです。健康障害防止に係る検討会も、先ほど述べたとおりです。  (3)はリスク評価にかかる情報提供等の推進です。先週の金曜日にも行いましたが、リスクコミュニ ケーションを実施して、国民にわかりやすい情報提供に努める。そのような情報提供を行っていくと いう体制と考えています。ということですので、本日はこの検討会においても、有害性の評価、国に よるがん原性試験の結果の評価を実施していただこうと考えています。以上です。 ○大前座長 企画検討会の座長はどなたですか。 ○長山室長補佐 櫻井先生です。 ○大前座長 評価検討会はどなたが座長なのですか。 ○島田化学物質評価室長 評価検討会は2つになっていますので、合同でということで、大前先生か、 ばく露の名古屋先生のどちらかにやっていただく形になります。 ○大前座長 何かございますか。特にご質問がないようでしたら、次に進みます。リスク評価の手法 の改訂について、ご説明をお願いします。 ○島田化学物質評価室長 資料4についてご説明いたします。このリスク評価手法については、この場 でリスク評価を行っていただく際の手続きについて書かれたもので、今回はばく露関係の部分につい て、ばく露評価ガイドラインが作成された関係で、変更がなされています。したがいまして、こちら の有害性の関係の評価の手順については、基本的には同じですが、最終的なリスク評価の部分で多少 影響が出ていますので、それについてかい摘んでご説明します。  (1)リスク評価手法の概要です。このリスク評価の検討に先立って行った平成18年5月の検討の結果、 先ほどご説明申し上げました平成21年12月ということで、最近まとめられたばく露の評価ガイドライ ンの2つに基づいて、この手法ができています。その下にあるように、基本的には(1)から(4)の手続きに 基づき、リスク評価をお願いしたいということです。  (1)は有害性の種類及びその程度の把握です。対象となる化学物質について、有害性の種類、程度を できるだけ信頼性の高い資料ということで、信頼性についても併せてこの場でご検討いただいた上で、 その主要な文献から有害性を判断していただきます。また、国連から勧告されているGHSについても、 有害性に係るクラスなり区分が示されていますので、併せて把握をいただくということです。  (2)は量−反応関係の把握で、いわゆるドーズレスポンスに関する部分を見ていただきます。  (3)はばく露状況の把握です。これについては、食品、その他環境分野のばく露と少し変わっていま すが、直接ばく露を扱っていただくということで、厚生労働省から各事業場に、当該化学物質につい て、どのような作業を行っていますかという調査票をお送りし、それに対して回答をいただくところ から派生しデータを集めていきますので、その中でばく露レベルを判断していただくということです。 この部分については、ばく露評価検討会に係るものです。  (4)は、ばく露レベルと量−反応曲線等から算定していただいたばく露限界値、あるいは無毒性量と の比較によって、リスクがあるかを判定していただきます。ただ、昨年度提出されたガイドラインに 基づきまして、いままで評価を行って、ばく露レベルが許容内にあるかどうかを判断して、許容を超 えている場合には、そのまま規制措置の導入を検討していたわけですが、さらに丁寧な調査なり評価 をしていただくということで、次の年に規制の導入に係るものについては、詳細リスク評価というこ とで、もうワンステップ用意していますので、その部分が変わったことについて修正しています。  (2)のリスク評価の詳細ですが、これについては、特にこちらの有害性評価小検討会にかかわるもの です。2頁の頭、(1)は有害性の種類及びその程度の把握ということで、主要文献から、ご覧のような毒 性について把握していただき、その程度も併せて把握していただきます。その部分の毒性等について は2番に詳しく書いてあるので、そちらでご説明します。  (2)、量−反応関係等の把握で、先ほどご説明しましたようなデータから、その有害性の区分あるい はその程度を把握していただきます。アとして、臓器毒性・全身毒性又は生殖毒性ということで、こ れについては、ばく露限界値がある場合、閾値がある場合というものと閾値がない場合ということで、 これは事前に閾値が把握されている場合という意味です。ない場合というのは、無毒性量等を把握し た上で、その無毒性量から実際のばく露限界を計算していただくという作業になります。  (イ)の無毒性量の把握をする場合には、最小の無毒性量から、その値を採用することがiに書か れています。  2番目です。無毒性量の値の経口から吸入への変換です。これは労働ばく露の場合には、基本的には、 作業環境の中で、空気中にある対象物質を吸入することによって病気が起こることが一般的なばく露 経路ですので、それを中心に評価をいただきますので、経口ばく露を吸入ばく露に直す必要があると いうことです。  実際には、今日の評価の中、その辺りの細かなものが出てくるので、その場でご説明申し上げます が、基本的には体重、その作業者の呼吸量で、経口と吸入の比較をしていくことで変換するという作 業です。  iiiは不確実係数です。これは一般的に動物と人間の種差というものを基本として、この場合は不確 実係数は10を用いると書かれています。併せて、労働者の場合に、1年間に働く日数が決まっていま して、365日のうち240日ぐらい働いているということです。そのような労働規制をすることと、併せ て動物試験の場合、例えば6時間くらいの吸入試験をしますが、労働者の場合は8時間ぐらい働くのが 基本ですので、8時間をベースに変換する作業があります。  3頁です。急性毒性については、特にGHS等で、LD50なりLC50がある場合には、そういったものを把 握していただきます。  ウです。皮膚腐食性・刺激性、眼に対する重篤な損傷性・刺激性については、そういったものがあ るかどうかを確認していただきます。  エは、呼吸器感作性、皮膚感作性で、これについても同様で、アレルギー反応を誘発する性質があ るかどうかを確認していただきます。同様に、生殖細胞変異原性については、人の生殖細胞に遺伝す る可能性のある突然変異を誘発する可能性を確認していただきます。  それから、発がん性です。特に労働ばく露の場合は、発がん性を中心に評価をしていただいている 状況です。労働ばく露の場合は、0リスクを取るということではなくて、一定の過剰発がんを算定いた だいて、それを閾値として算定していくということで、後ほど出てきますが、ユニットリスクという 方式で、そこからリスクレベルを求めていただきます。閾値のあるがんについては、無毒性量等から 把握していただくということです。  その他、一般的な話ですが、キとしてデータの信頼性の検討をしていただきます。  (3)はばく露状況の把握です。直接はこの検討会の中での話ではありませんが、ばく露評価の場合に は、ばく露調査から出てくるデータを使いますが、その際には、ばく露リスクができるだけ高い作業 場を特定していって、それによっていちばん高いレベルのばく露がどのレベルにあるかを確認すると いうことです。  その下に、いままでいくつかのばく露要因を確認するためのファクターが書かれていましたが、ガ イドラインを定めたことにより、それに関する手法が改めて確認されたので、これについてはすべて 削除しました。  そのほか、ウにありますが、実際に測定を行うということです。現在は個人ばく露のばく露測定、 作業環境測定、その他作業に関する状況把握をしています。現在では、大体年間90事業場ぐらいの調 査をさせていただき、1物質について3から5、6の事業場に対して調査をいただいています。  4番はリスクの判定方法です。一次評価と二次評価に分かれています。一次評価については、発がん 性がないと見られる、閾値がないと見られる場合の部分で、先ほど申し上げたような過剰発がんが1万 人に1人、10-4に対応した濃度を一次評価値として設定をいただきます。これは、こちらの有害性の検 討の中で中心的に見ていただきたいものです。その場合には、一次評価値を超えるかどうかというこ とで、二次評価値に移行するということです。  そのあとに細かな手続きが書いてありますが、二次評価にいきますと、二次評価値の決定というこ とで、それについても、こちらの有害性小検討会で中心的にご検討いただく課題です。その場合には 二次評価値の決定で、これまでの手続きとして許容濃度またはTLVが設定されている場合ということで、 許容濃度というのは、日本産業衛生学会が勧告しているものです。2番目のTLVというのは、ACGIHと いう米国産業衛生専門家会議で提言しているものです。こういったものがある場合には、これを基本 として二次評価値を決定していただきます。  そういったものが設定されていない化学物質については、iiにあるように、その他の機関で設定さ れている許容濃度等について、それを参考に決定するということです。  そういったものも得られない場合には、iiの(ii)にありますが、一般の環境において使われてい る許容濃度についてご考慮いただき、それを採用するということです。  (iii)として、発がん性以外の毒性で得られた無毒性量についても、そういったものでしか閾値が 得られない場合には、そういったものを外挿した値を用いるということです。(iv)として、場合に よっては構造活性相関によって得られるような閾値を二次評価値として採用する場合もあるというこ とです。  それらがすべてない場合においては、実質的に管理できる濃度を現場で確認していただいて、そう いったものを二次評価値として採用する場合もあるということです。こういった二次評価値と一次評 価値を使って、評価をいただくということです。  いちばん最後に(イ)として評価及びそれに基づく行政措置とあります。これに関しては、今回か ら初期評価と詳細評価に分かれたので、初期評価において二次評価値を超えるような高いレベル、つ まりリスクが高いと判断される場合には、詳細リスク評価に移りましょうと書かれています。それ以 下の場合においては、それに相応する措置として、行政的な対応をするかどうかをご検討いただきま す。  詳細リスク評価という、最終的に規制に係る可能性のあるような物質については、ばく露レベルが 二次評価値を超える場合にはリスクが非常に高いと判断されますので、必要な行政措置あるいはその レベル、管理のあり方をご検討いただきます。  2番目としてばく露レベルが二次評価値を下回った場合については、そんなに高いリスクではないと 判断されるけれども、必要な措置を取るべきということで検討いただきます。  併せて最後に書かせていただいたのは、「なお」ということで、ばく露の場合に、個人なり各事業 所の中での取扱いが非常に問題があるという場合においては、一部の事業場、一部の個人に問題が起 きる可能性があるということについては、その作業全体にかかわるものとは別の扱いをしようという ことで、そのリスクの要因を併せて把握するという形で手続きを踏んでいただきたいと書かれていま す。  また、この検討会で必要なものがあれば併せてご意見をいただきまして、この改訂案に盛り込ませ ていただきたいと思いますので、どうぞご審議をお願いします。 ○大前座長 これはあくまでも改訂案なので、皆さんのほうで、追加あるいは修正等がありましたら、 この検討会でご意見をいただきまして、よいものに変えていきたいと思います。  1頁の32行目に「ばく露レベルとばく露限界」と書いていますが、「ばく露限界値」として、 「値」が入ったほうがいいと思います。5頁の31行目TLVの「ばく露限界」も「ばく露限界値」とし たほうがいいと思います。  2頁の22行目の「無毒性量等の値の経口から吸入への変換」のところで、これはこのままでいいの ですが、例外的に吸入ばく露による気道への影響がある場合は、経口から外挿すると、かえって大き めの値が出る可能性があるので、そこは注意する必要があると思います。例えば「吸入による無毒性 量等=」という式がありますが、その次に、「ただし、吸入ばく露による影響が主となるものについ ては、また別途考える」とか、「経口ばく露からの外挿はしない」とか、それは入れておかないとま ずいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。その場合は、経口のデータしかなければ、あえ て外挿しないと。  そのほかにご意見はいかがでしょうか。 ○長野所長(日本バイオアッセイ研究センター) 3頁の12行目の「人の生殖細胞に」云々、句読点 を入れていただかないと、生殖細胞に遺伝してしまうと読んでしまうと変な感じがします。 ○大前座長 どこに点を入れればいいですか。 ○長野所長 「生殖細胞に」のあとです。 ○大前座長 「人の生殖細胞に、遺伝する可能性がある」ですね。そのほかにいかがでしょうか。よ ろしゅうございますか。いま若干のご意見がありまして、それの一部修正をお願いして、今年度はこ のリスク評価の手法でやるということでよろしゅうございますか。 ○島田化学物質評価室長 大前先生、次回これを修正した上で、皆様にお諮りしたいと思いますので、 今日初めてご説明するような場合もありますので、後ほど必要があればご意見をいただければ、また 反映させていきたいと思います。 ○大前座長 そのほかによろしゅうこざいますか。  次にいきます。平成21年度リスク評価のスケジュールについて、事務局からご説明をお願いします。 ○長山室長補佐 資料5です。先ほど資料3で、企画検討会での決定事項ということで、平成21年度 の20物質の有害性評価を行うと書いてありました。1枚目にあるとおり、平成21年1月から3月の報 告対象物質というのが、20物質ありました。その中で、報告有りが18物質、報告無しが2物質となっ ていますので、当面は報告無しであったほうについては、有害性情報の収集を行っていきます。当面、 報告有りの18物質について、今年度は有害性の評価をやっていきたいと考えています。その中でも、 初期リスク評価着手の7物質については、平成21年度に有害性評価を行いつつ、ばく露調査も行って いこうと考えています。残りの11物質については、今年度は有害性評価のみを実施し、次年度以降に ばく露調査を予定していくと考えています。  今回、この18物質の有害性評価をそれぞれ行っていくのですが、有害性評価の資料となるものにつ いて、委託事業でそれぞれの物質について、有害性評価書、総合評価書を作っています。それらにつ いて、順次審議し、決定していくと考えています。  資料6に「有害性評価書(8物質)」とありますが、その委託事業で、平成20年度までに、評価書 の案が作られているものについて、色で書かれている8物質は揃っているので、それについて審議を始 めます。残りの赤になっていない10物質については、委託事業で平成21年度に実施中ということです ので、それが順次出来上がった段階で、こちらの委員会にもかけていく形で進めていきたいと考えて います。  裏側です。平成20年度の対象物質については、44物質となっています。そのうち24物質が報告有 りで、それぞれについてすでに有害性の評価も行い、それぞれの詳細リスク、それぞれの段階の評価 を行っている最中です。  平成20年度の中で、報告無しの20物質があります。今年、有害物質ばく露のガイドラインを作成し、 情報の把握のためには同じ物質について複数年度報告を求めてはどうかということで、ガイドライン がまとまろうとしています。そういったことを踏まえて、報告無しの20物質のうち、緑色で示してい るものについては、次回の有害物ばく露作業報告の対象物質として報告を求め、その中で報告があっ たものがあれば評価に移るという段取りで考えています。  表のほうでもそうですが、今回報告無しであった2物質と、報告有りの18物質の中で、20番のヘキ サクロロエタンの報告件数が少なかったので、これらの3物質についても、複数年度でばく露作業報告 を求めていくと考えています。  まず18物質、そのうち昨年度までである程度出来上がっている8物質からやっていき、あとは順次 出来上がったものから審議していただこうと考えています。以上です。 ○大前座長 ご質問、ご意見はいかがですか。特にないようでしたら、平成21年度のスケジュールは このように進めていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。 (異議なし) ○大前座長 ありがとうございました。  次が有害性評価書の検討ですが、これは8物質ありまして、これをやっていますと、次のがん原性試 験結果の評価が間に合わなくなるので、先にがん原性試験結果の評価をご議論いただきます。がん原 性試験結果の評価について、事務局からご説明をお願いします。 ○平川査察官 資料8-1です。有害性評価小検討会は、この度第1回ということで開催しています。こ れにおいて、今後国で実施するがん原性試験についての評価を行っていただきます。  国が実施するがん原性試験については、労働安全衛生法第57条の5に基づき、労働者の健康防止の ための国の援助等ということで実施されているものです。  当該試験の結果、対象化学物質が「がんを労働者に生ずるおそれのあるもの」と判断される場合に は、厚生労働大臣が、当該化学物質を製造し又は取り扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康 障害を防止するための指針を、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づいて公表することとなって います。  このため、今般開催する有害性評価小検討会においては、国が実施するということで、日本バイオ アッセイ研究センターにおいて実施していただいているわけですが、そのがん原性試験が適切に実施 されていることの評価、また当該試験対象物質が「がんを労働者に生ずるおそれがあるもの」又は 「そのおそれのないもの」であることの判断を、この小検討会にお願いするものです。  この検討会での検討を受け指針を公表することとなった場合においては、「化学物質による労働者 の健康障害防止措置に係る検討会」において、保護具の使用などを含む健康障害防止措置にかかる指 針を検討いただくということになります。  併せて、当該物質について、規制措置等の導入を検討する必要があると考えられる場合においては、 「化学物質のリスク評価に係る企画検討会」に対して、リスク評価候補物質として提案することが可 能であり、その要否についても検討するものです。  いま申し上げた流れについては、参考1で示しています。まず57条の5において、がん原性試験の 実施をして、その結果をこの場で試験結果の評価をいただき、さらに法第28条第3項第2号の指針を 出すかどうかの判断をいただき、その判断の中で、がんを労働者に生ずるおそれのあるものであるか どうかを判断いただきまして、おそれがあれば指針を作る、おそれがなければ指針を作らないという ような検討をいただき、また、おそれのある場合については、リスク評価の対象物質とすることの企 画検討会への提案を検討をしていただき、その結果により提案していただくといったような流れを、 この小検討会において考えているところです。  資料8-2です。この資料8-1の流れで、「酢酸イソプロピルの吸入ばく露によるがん原性試験結果」 ということで、今般ご審議をお願いしたいと思います。まず、この物質の概要を説明します。  被験物質については、酢酸イソプロピル、CASNo.:108-21-4の物質です。構造式、分子量については、 構造式は資料のとおりで、分子量は102.13となっています。また、物理化学的性状については、無色 透明の液体で、沸点が88.6℃、蒸気圧が60.37mmHg(25℃)、比重が0.8718、溶解性はアセトン、エタ ノールに溶けます。保管条件は、室温で暗所に保管ということです。用途については、塗料用溶剤、 印刷用インキ用溶剤、反応用溶剤、医薬用抽出剤となっています。生産量、製造業者については、文 献から、生産量は400t、酢酸プロピルとして1,000t〜1万t、これは経済産業省、平成16年度化学物 質の製造・輸入量に関する実態調査から、この数字が出てきています。製造業者については、そちら に書かれているとおりです。  許容濃度等については、日本産業衛生学会においては定められていません。ACGIHにおいては、TWA が100ppm、STELが200ppmです。IARCについては区分がなされておりません。労働安全衛生法におい ては、労働安全衛生法施行令別表第1危険物、同18条の名称等を表示すべき危険物及び有害物、施行 令第18条の2で同じく名称等を通知すべき危険物及び有害物、施行令別表第6の2において第2種有 機溶剤ということで指定をされています。なお、変異原性については、日本バイオアッセイ研究セン ターで行った微生物を用いた変異原性試験の結果、全5菌株で陰性の結果を示しています。  なお、この結果については、日本バイオアッセイ研究センターで実験を行っているので、詳細につ いては日本バイオアッセイ研究センターからご説明をお願いします。 ○西沢試験管理部長(日本バイオアッセイ研究センター) 動物実験のご説明をします。目的として、 酢酸イソプロピルのがん原性を検索する目的で、ラットとマウスを用いた吸入による長期試験を実施 しました。試験方法としては、F344ラットと、B6D2F1マウスを用い、被験物質投与群3群と対照群1 群の計4群の構成で、ラット、マウスとも、雌雄各群とも50匹、合計ラット400匹、マウス400匹を 使用しました。  被験物質の投与は、酢酸イソプロピルを1日6時間、1週5日間で、104週間(2年間)、動物に全身 ばく露することにより行いました。投与濃度は、ラットは雌雄とも1,000、2,000及び4,000です。マ ウスも雌雄とも、1,000、2,000、4,000です。  観察、検査として、一般状態の観察、体重、摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿 検査、剖検、臓器重量の測定及び病理組織学的検査を行いました。  続いて結果をご説明します。ラットでは、酢酸イソプロピルのばく露の結果、動物の生存率及び一 般状態に酢酸イソプロピルの影響は見られませんでした。体重では、雄では投与群と対照群は同様の 推移を示しましたが、4,000ppm群は投与期間の終期、98週以降、対照群に比べて低値を示しました。 最終体重は94%でした。雌は4,000ppm群で、投与期間の後半、74週以降に増加抑制が見られ、最終体 重は対照群の92%でした。摂餌量は、雌雄とも4,000ppm群で、投与期間の後半にやや低値でした。  生存率と体重に関しては図を掲載しています。6頁をご覧ください。ここに酢酸イソプロピルのラッ トを用いたがん原性試験の生存率、上段に雄、下段に雌を示しています。上段の雄ですが、グラフの 中でいちばん下にいるのが対照群です。対照群がいちばん生存率が低いということになりまして、投 与群のほうが高いです。投与群に生存率の低下は認められておりません。  ちなみに、対照群の生存率は66%、1,000ppm群が84%、2,000ppm群が76%、4,000ppm群が84%で す。  下段は雌ですが、こちらは下のほうに○と△がありますが、対照群と1,000ppm群です。上の2つが、 2,000ppm群と4,000ppm群で、投与群に生存率の低下は認められておりません。雌の対照群の生存率は 68%、1,000ppm群が70%、2,000ppm群が86%、4,000ppm群が88%です。  7頁です。ラットの体重の変化を示しています。上段が雄、下段が雌です。ご覧のように、雄は対照 群も投与群もほとんど同じように推移しています。ただ、◇の4,000ppm群のいちばん最後の3つはほ とんど同じところにあるのですが、統計学的には有意な低値を示しています。対照群に比べて最終体 重は、1,000ppm群は97%、2,000ppm群が96%、4,000ppm群が94%となっています。  雌に関しては、下で推移しているのが最高投与の4,000ppm群で、体重増加に抑制が見られています。 最終体重は対照群に対して1,000ppm群が105%、2,000ppm群が101%、4,000ppm群が92%です。  これから腫瘍の説明に入ります。4頁に腫瘍の表があります。ラットの主な腫瘍の発生を示しました。 上段が雄で、下段が雌です。当センターでは、腫瘍の発生に関し、統計検定に2群間の発生率の比較で あるFisher検定と、経口検定であるPeto検定と、Cochran-Armitage検定の組合せを用いています。 この組合せは、米国のNTPでがん原性試験における腫瘍の発生の統計検定として、長く利用されていた 方法に準じています。複数の統計検定を行うことにより、発がん性の見落としを防ぐという思想に立 っています。さらに、これらの検定のいずれかで有意になった場合、当センターのヒストリカルコン トローデータの情報を加え、発がん性を総合的に評価しています。当センターのヒストリカルコント ロールデータは、当センターで実施したF344ラットを用いた、長期発がん性試験45試験の対照群のデ ータを使用しています。1試験当たりの対照群での各腫瘍の平均の発生率及び最小の発生率と最大の発 生率を算出して用いています。  ラットの腫瘍の発生状況です。雄では腹膜の中皮腫が、Peto検定とCochran-Armitage検定で、有意 な増加傾向を示しています。Peto検定は死亡率層と死亡率プラス有病率層で有意となっています。こ の4,000ppm群の腹膜の中皮腫の発生は、50分の7匹で14%でしたが、当センターのヒストリカルコン トロールデータ、45試験での1試験当たりの対照群の最大発生率は、50分の4匹の8%ですので、 4,000ppm群の腹膜の中皮腫の発生率は、ヒストリカルコントロールデータの最大発生率を超えていま す。  それ以外に、雄で検定で有意の増加となったものはありませんでした。下段ですが、雌の状況です。 雌では、各検定とも有意な増加となったものはありませんでした。  2頁のいちばん下の行にお戻りください。腫瘍性病変としましては、雄の腹膜の中皮腫の発生が増加 傾向を示し、4,000ppm群の発生率はヒストリカルコントロールデータの範囲を超えておりました。雌 では、ばく露に関連した腫瘍発生の増加は認められませんでした。非腫瘍性病変としましては、鼻腔 に変化が見られました。雄では呼吸上皮と嗅上皮に、雌では呼吸上皮にエオジン好性変化を呈する動 物数の増加が見られました。以上のように、F344ラットを用いて酢酸イソプロピルの2年間にわたる 吸入によるがん原性試験を行った結果、雄に腹膜の中皮腫の発生増加が認められ、腹膜における悪性 腫瘍の発生増加は雄ラットに対するがん原性を示す証拠と考えました。雌では、腫瘍の発生増加は認 められませんでした。  マウスの結果のほうもご説明します。マウスでは、ばく露の結果、動物の生存率及び一般状態に酢 酸イソプロピルの影響は見られませんでした。体重は雌雄の4,000ppm群で増加の抑制が見られました。 最終体重は、雄では対照群の89%、雌は対照群の91%です。摂餌量は雌雄とも、4,000ppm群は投与期 間を通じて、2,000ppm群は投与期間前半、やや低値でした。  同じように、マウスのほうも生存率と体重の図を載せております。8頁にマウスの生存率を載せてお ります。上段が雄で、下段が雌です。雄のほうは、ご覧のように各群ともほぼ同じような推移を示し ており、最終の生存率は対照群が65%、1,000ppm群が72%、2,000ppm群が74%、4,000ppm群が70% です。  下段は雌ですが、いちばん上にいるのが最高の4,000ppm群で、対照群と1,000、2,000ppm群は下の ほうで同じような数値となっております。最終の生存率は、対照群が50%、1,000ppm群が52%、 2,000ppm群が50%、4,000ppm群が74%となっており、雌雄とも投与群に生存率の低下は見られており ません。  9頁にマウスの体重の変化を示しました。上段の雄ですが、いちばん下の◇は4,000ppm群で、体重 増加に抑制が見られております。最終の体重は、コントロールに対して1,000ppm群で100%、 2,000ppm群で101%、4,000ppm群で89%です。  下段の雌ですが、雌の◇、いちばん下のラインですが、4,000ppm群で増加抑制が見られております。 最終体重は対照群に比べて1,000ppm群98%、2,000ppm群99%、4,000ppm群91%です。  次に、腫瘍の発生状況をご説明します。先に表をご覧いただきます。5頁にマウスの雄と雌の主な腫 瘍の発生状況を示しました。上段が雄で下段が雌ですが、雌雄とも増加を示した腫瘍はありませんで した。検定で☆が付いたのは肝臓の2,000ppmで、Fisher検定で減少を示したと、これ1つでした。  本文の3頁のマウスの所をご覧ください。途中の病理変化のところから行います。病理組織学的検査 の結果、雌雄とも酢酸イソプロピルに関連した腫瘍の発生増加は認められませんでした。非腫瘍性病 変としましては、雌雄とも鼻腔に嗅上皮の萎縮と呼吸上皮化生及び粘膜下の腺組織の呼吸上皮化生の 増加が見られました。特に、嗅上皮の萎縮は雌雄とも最低濃度群の1,000ppm群まで見られました。ま た、本試験における酢酸イソプロピルのマウスに対する2年間吸入ばく露による最小毒性量は、鼻腔へ の影響をエンドポイントとして1,000ppmであると考えました。  以上のように、B6D2F1マウスを用いて酢酸イソプロピルの2年間にわたる吸入によるがん原性試験 を行った結果、雌雄とも腫瘍の発生増加は認められず、酢酸イソプロピルのマウスに対するがん原性 は認められませんでした。  まとめとして、ラットでは雄に腹膜の中皮腫の発生増加が認められ、腹膜における悪性腫瘍の発生 増加は雄ラットに対するがん原性を示す証拠と考えました。雌では腫瘍の発生増加は認められません でした。マウスは雌雄とも腫瘍の発生増加は認められませんでした。以上です。 ○大前座長 ありがとうございました。いまのようなご報告をいただきました。この小検討会のミッ ションは、資料8-1の図にありますように、労働者に対して発がん性があるかないかを判断するという のが1つです。2つ目は、もし発がん性があると認められた場合には、指針の作成、あるいはリスク評 価の対象物質とすることの企画検討会への提案というのがこの委員会のミッションなわけですが、い まのご報告を受けてご意見をいただきたいと思います。酢酸イソプロピルに対する発がん性の有無、 ヒトに対する発がんの可能性という点でご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○西川委員 バイオアッセイで実施されたがん原性試験を評価するのは初めてではないのですが、こ の報告書を見ると、傾向だけでどうしてがん原性の証拠と言えるのかという疑問が湧きました。その 前に、明らかな証拠という分け方をされているのですが、がん原性を評価される判定基準が示されな いと、何度評価しても「あれ?」ということになってしまいますので、少しその辺りを説明していた だきたいと思います。 ○長野所長 当センターでは、がん原性試験の結果が出ますと、それに基づいてその証拠について判 定をします。この方法は、NTPで実施している判定基準に近い方法です。すなわち、証拠の確かさとい う面から示す明らかな証拠が1つ目です。次に本会には示す証拠、3番目に示唆する証拠という分け方 をしております。示す明らかな証拠は、NTPですとクリアエビデンスに相当します。次に示す証拠です が、これはサムエビデンスに相当します。示唆する証拠はエクイボーカルエビデンスに相当します。  まず、示す明らかな証拠ですが、これは悪性腫瘍を含む腫瘍の発生に統計学的に有意、かつヒスト リカルコントロールデータの範囲を超える増加がある場合です。  次に示す証拠ですが、2つあります。1つは、悪性腫瘍を含む腫瘍の発生に、先ほどの明らかな証拠 と同じように統計学的に有意、かつヒストリカルコントロールデータの範囲を超える増加がある。し かし増加の程度は、示す明らかな証拠とするには不十分である場合です。今回のように、Fisher検定 で陰性という場合に、示す明らかな証拠にするには不十分ということで、示す証拠に下げるようにし ております。2番目に、良性腫瘍の発生に統計学的に有意、かつヒストリカルコントロールデータの範 囲を超える増加がある場合です。このような2つのケースのときに示す証拠にしております。  3番目に示唆する証拠ですが、これについては主に3つのタイプがあります。1つ目は、良性腫瘍の 発生の増加に統計学的に有意、かつ背景データを超える増加がある場合。ただし、示す証拠にするに は不十分である場合。先ほどのがんの場合の1つ下げたような状態です。2番目に、極めて希な腫瘍の 発生増加があり、投与による発生と考えられる場合。特に、極めて希な腫瘍の発生の場合に相当しま す。3番目に、示す証拠に相当する発生増加があるが、腫瘍の種類で発生する臓器あるいは発生するメ カニズムを考慮して、示す証拠とするには不十分である場合。例えば、腎臓の腫瘍、慢性腎症に伴っ て増えたような場合、これに相当するようにしております。以上3つの分類を使っております。 ○西川委員 そうすると、基本的にNTPのクライテリアに準じていると考えてよろしいということです ね。それとは別に、通常我が国ではがん原性試験の評価として「ある」か「ないか」という判断をす ることが多いわけですが、そのクライテリアに当てはめると、このケースはどちらになるのですか。 ○長野所長 実験的には、あると言わざるを得ないと考えております。少なくとも、ラットの雄の腹 膜の中皮腫については、あると言うのが正しいと思っております。 ○西川委員 私としては、「がん原性を否定できない」というような結論になるのかなと思うのです が、証拠があると言い切ってよろしいかどうかをお伺いしたいのですが。 ○長野所長 今回のケースの場合、先ほど西沢が説明しましたように、統計学的検定の中で経口検定 が陽性です。ただし、Fisher検定だけは有意にある。しかし、今回のいちばん高い濃度、4,000ppmの 腹膜の中皮腫の発生率が50分の7です。そうしますと、これまでの45試験の背景データを集計します と、いちばん高いものでも50分の4です。そうすると、この45試験の最大でも50分の4であるにも かかわらず、今回出た50分の7というのを否定することは無理だと判断しております。 ○西川委員 ですから、最後におっしゃった「否定はできない」ということが結論だと思うのです。 要するに、NTPのクライテリアではサムエビデンスに落ち着くと思うのですが、1つ確認したいのは、 投与群のほうが死亡率が高いですね。ラットの場合。 ○長野所長 わずかですね。 ○西川委員 そうすると、その影響が出ている可能性はどうなのでしょうか。 ○長野所長 逆に死亡時期が、今回中皮腫が原因で死んだ動物が対照群は1で、それに対して投与群の ほうは4例です。その3匹分がやや多いということもあって、少し高くなっています。ただし、死亡率 が高くなったことによってマスクされるケースはありますが、逆にそれが増えるケースはないと思い ます。 ○西川委員 長生きをすればするほど腫瘍の発生率は高くなりますね。ですから、その影響はないか と。 ○長野所長 雄のラットに関しては、死亡率は対照群よりも投与群のほうがやや高くなっています。 先に死んだのは投与群ですから、したがって、それによって増えることは。 ○西川委員 確認しますが、投与群のほうが生存率が高いですね。 ○長野所長 はい。投与群のほうが生存率が高いです。 ○西川委員 投与群はいちばん下ですか。 ○長野所長 対照群がいちばん下です。 ○西川委員 ですから、投与群のほうが長く生きたから、腫瘍の発生率が高くなっているということ ではないのですか。 ○長野所長 それに関しましては、Peto検定ではそこを含めた検定になっております。いわゆるライ フテストですので、死亡時期を加味した状態で検定しております。 ○西川委員 私はがん原性試験の解剖を結構やっていますが、腹膜のメゾテリオーマ(mesothelioma) はしょっちゅう見ます。だから、珍しい腫瘍とは思えないのですが、そちらの施設では対照群でこれ まで発生率が非常に低かったということだと思うのですが、それを決め手にするのはどうかと思うの です。試験全体として対照群を置いているわけですから、それとFisher検定をして差がなかったとい うことがいちばん重視すべきところだと思うのですが、その辺もお考えを教えていただきたいと思い ます。 ○長野所長 今回確かに2群間の検定では出ていませんが、傾向検定として出ております。その意味で は、投与による影響が統計学的に示されていると考えております。 ○西川委員 傾向検定を重視するのは、私は間違いだと思います。例えば、対照群がゼロで次が1、1 で、高用量群が例えば3だったら、傾向検定は有意ですね。偶然にそういうことになる可能性はないで すか。 ○長野所長 そういう意味で、出たデータについて総合的に検討すると。そのときに、いま背景デー タを一般的に材料にしております。これはNTPでも同様なタイプを使っておりまして、傾向検定だけが プラス、しかしFisher検定がマイナスの場合でも背景データを超える場合については、サムエビデン スという評価をしております。 ○西川委員 私だけ質問するのもあれですから、最後の質問にしますが、事前コメントした回答に、 NTPでソヂウムクロレイトと2-メチルイミダゾールにおいて同様のケースがあったということですが、 2-メチルイミダゾールはFisher検定で雄雌どちらかポジティブ(有意)です。ソヂウムクロレイトは 確かに頻度の有意差はないのでサムエビデンスと言っているわけです。ですから、サムエビデンスを がん原性の証拠という和訳に置き換えていいかどうかということになると思うのです。ほかにも、お そらく同じような意見を持っておられる方がいると思いますので。 ○大前座長 その他の先生方はどうでしょうか。先ほどの話ですと、中皮腫で死んだラットは、104週 で8匹死んでいますが、そのうち3匹は中皮腫が原因で死んだということでいいですか。 ○長野所長 はい。 ○大前座長 84%の生存率で16%死亡、8匹の死亡だと思うのですが、そのうち3匹が中皮腫。 ○長野所長 中皮腫では4匹死んでおります。 ○大前座長 それは全体、群として見たときには生存率には差がない。むしろ高濃度ばく露群のほう が2割方多く生きていると。  西川さんは先ほど比較的頻繁に見るとおっしゃいましたが、バイオアッセイのヒストリカルコント ロールが50分の4がマックスだというお話でしたが、先生の所ですとどれぐらいになるのですか。 ○西川委員 厳密に集計したわけではないので数値的なことまでは申し上げられませんが、印象では 10%を超えるときもそんなに稀ではないような気がします。 ○大前座長 50分4ですと8%ですね。 ○西沢試験管理部長 当センターのヒストリカルコントロールデータは、いま最大が50分の4匹と申 しましたが、この4匹というのは1試験しかないのです。平均が2.6%ですので、平均としては1匹で、 ほとんどが0か1か2か3で、4匹いたのはバイオアッセイが始まったいちばん最初の年の1試験しか ないのです。ですから、バイオアッセイとしましては、この7匹は見た感じでは結構多いと。バイオア ッセイとしましては平均1匹、たまに見ても3匹ということで、4匹は1試験しかありません。 ○大前座長 雌のほうは、ヒストリカルコントロールではどれぐらいなのですか。雌はもっと少ない。 ○西沢試験管理部長 雌はほとんどないです。 ○大前座長 ほとんどゼロに近いと。これは雄に特有というか、F344ラットの雄に比較的特有な腫瘍 が増えたと。  変異原性の試験は5株で陰性ということですが、これはin vivoとか真核細胞などのデータはないの ですか。これは原核細胞、微生物のAmes試験ですよね、変異原性がネガティブだという。 ○西沢試験管理部長 はい、変異原性のネズミチフス菌と大腸菌だけがバイオアッセイで行った試験 であると。 ○大前座長 そのほかの情報としては、in vivoでの情報などは、そちらでもネガティブなのですか。 ○西沢試験管理部長 すみません、確認しておりません。 ○大前座長 少なくとも、Amesではネガティブであるということは間違いないと。 ○清水委員 この物質の蒸気圧は少し高いので、シャーレ内で十分曝露しているか気になります。通 常のプレインキュベーション法 ですか、それとも改良型のプレインキュベーション法、あるいはガスばく露法でやっているのですか。 ○西沢試験管理部長 通常のAmesです。 ○清水委員 通常のですか。ほかのin vitro系の試験の報告はないのでしょうか。 ○西沢試験管理部長 申し訳ありません、確認してまいりませんでした。 ○大前座長 酢酸エステルとか、こういう類のエステルというのは、我々の認識ですと直ちに体内に 入ったらあっと言う間に加水分解されるという認識なのですが、その辺はイソプロピルになると少し 違うのですか。 ○池田委員 私も同様の認識でして、多少程度の差はあるかもしれませんが、多くの流れはよく吸収 されてすぐ加水分解されるであろうと。おそらく、動物種を超えて、あるいは雌雄差も超えて、多く は加水分解であろうと思います。ただ、大量にやったときに、加水分解される前に若干の酸化反能が 起きる可能性はゼロではないわけですね。それは、もしかしてin vitroではなかなかできにくいのだ けれど、長期の試験では少しずつあちこちできているというばく露があるのかもしれなくて、それは よくわからないという感じがするのです。雄のラットと雌のラットでは代謝経路が違うものが結構あ るのです。それも、もしかすると少しは関係するかもしれないけれど、大きな流れとしてはおっしゃ ったように加水分解。これがメインと考えていいと思います。 ○大前座長 4,000というと0.4%ですから、結構な濃度でばく露しているわけですね。相当高濃度ば く露ですから、一部は。 ○池田委員 本当にわずかなところが最初に水酸化を受けると、例えばアルデヒドを含んだものがで きてきてもおかしくはないわけです。イソプロピルアルコールですと、そのまま代謝を受けるとアセ トンに変わりますが、アセトンはアルデヒドとは言いませんがケトン性の化合物ですので、反応は全 くゼロではないわけです。末端にOHが入ってさらに代謝を受けると、その部分はアルデヒドになりま すので、量的にはおそらく少ないと思いますが、vitroではあまりできにくいと思いますが、これも反 応性がないわけではないということで、長い時間、それこそ2年間という期間の間にわずかながらでも ばく露すると、何か起きる可能性はあるかなと、推察ですが思います。 ○大前座長 そのほかご意見はいかがでしょうか。 ○西川委員 腹膜の中皮腫が出ているのですが、前腫瘍性病変と思われるような過形成的な病変は何 かあったのですか。 ○長野所長 今回の実験では出てきておりません。 ○西川委員 全くないわけですね。 ○長野所長 1例ね。 ○西沢試験管理部長 数例あった。 ○長野所長 いま確認します。 ○西川委員 その発生部位は、ほとんど陰嚢の所ですよね。 ○西沢試験管理部長 ラットの腹膜の中皮過形成ですが、4,000ppm群に2匹認められております。 ○大前座長 それは7匹とは別に2匹ということですか。 ○西沢試験管理部長 そういうことです。 ○宮川委員 生存率のグラフですが、コントロール群の生存率の曲線はほぼ背景と一致する、大体こ のようなもので、この物質では、ばく露群が背景データを加味しても生存率が高くなると考えてよろ しいでしょうか。 ○西沢試験管理部長 そうですね。ラットの雄は、最近10年間の生存率が最終的には78%ぐらいあり ますので、この試験は少しバイオアッセイとしては低かったかなと思います。ラットの雌のこの10年 間の最終生存率は78%ですので、ラットは雌雄ともこの試験では、バイオアッセイでは少し低かった かなと感じております。 ○清水委員 4,000ppmの中皮腫7匹というのは、大体何週ぐらいから出始めているのですか。かなり 早いのですか。 ○長野所長 いま具体表が入っておりませんので、時期がわかりません。 ○西沢試験管理部長 いま手持ちのデータでは確認は。 ○大前座長 途中で死んだ4匹については、データは当然またほかにあるのでしょうけれど、残りの3 匹は最後に。 ○長野所長 はい。ちなみに、50匹のうち4匹死んで、最終まで生き残ったのは42匹なのですが、そ の中で3匹ということです。 ○大前座長 いまの中皮腫のヒストリカルデータなのですが、F344以外の種のラットがありますね。 ウィスターとかいろいろラットがあると思うのですが、別の種のラットですとどれぐらいのヒストリ カルコントロールに。バイオアッセイは持っていないかもしれませんが、どこかの文献などで見ると どれぐらいのものなのですか。 ○長野所長 西川先生、いかがですか。 ○西川委員 SDとかですか。記憶にはっきりしたものはないのですが、非常に少ないものもあります が。 ○大前座長 これはF344に比較的特異的に見られる現象なのか、ほかのラットでも、先ほど先生は印 象として10%ぐらいとおっしゃったので。 ○西川委員 うちでもFisherラットをいちばんよく使っているのですが、Fisherラットではそれほど 珍らしくないなという印象があります。 ○池田委員 1つ質問なのですが、Fisherラットのときも雄のほうに出ていて、雌は出ていないという 傾向ですか。 ○西川委員 先ほど質問しましたように、腹膜のメゾテリオーマと言っても陰嚢のところに出るもの が多いのです。したがって、雄に多いということになるのです。 ○池田委員 場所がそこだけに限定というのは、何か理由があるのですか。 ○西川委員 あったような気がするのですが、理由までは覚えておりませんが、ご存じでしたら。 ○長野所長 よくわかりません。ただ、必ず陰嚢の場所ですね。 ○大前座長 いまの中皮腫と良性腫瘍では下垂体腺腫とか褐色細胞腫がむしろCochran-Armitageでは 下がっている方向に行っているのですが、これとの関連は何か考えられるのですか。特に陰嚢付近だ けというのは。 ○長野所長 今回、何で減っているのかという原因なのですが、結論としてはよくわかりません。し ばしば下垂体腫瘍等は体重が下がると発生が減ったりする。ただし、今回雄のラットに関しては、最 終的にわずかに体重の有意差が出ますが、普通腫瘍の発生が減るような体重の減少とは考えておりま せん。そういう意味では、原因はよくわかりません。 ○清水委員 先ほど、4,000ppmで過形成が2匹とおっしゃいましたね。2,000ppmでは過形成は起こっ ていますか。 ○西沢試験管理部長 ありません。 ○清水委員 全くないですか。 ○大前座長 このがん以外のところでは、鼻腔に対する影響がマウスでは出ていまして、エンドポイ ントとしてLOAELが1,000とあります。ラットのほうでは、今回の実験では鼻腔でLOAELもしくは NOAELが得られるようなデータはあったのですか。 ○西沢試験管理部長 一応腫瘍増加ということが結論になりましたので、LOAELとしては特に結論には 出しておりません。 ○大前座長 これを見ると、変異原性はなしということなので、閾値があるタイプの発がんかなと思 ったのです。そうすると、LOAELなりNOAELが求められるのかなと思ったのですが。 ○西沢バイオエッセイ研究センター 結論としては述べておりませんが、鼻腔の変化は2,000ppmまで 見られたことになりますので、それをもってすればNOAELが1,000、LOAELが2,000という数字になっ ております。 ○大前座長 ラットの場合だと、NOAELは1,000ぐらい。マウスの場合はLOAELなので、NOAELではあ りませんが。 ○西沢試験管理部長 申し訳ありません、いまのは雄の結果です。雌のラットは鼻腔の変化は投与群 全部に認められておりますので、同じように雌のLOAELは1,000ということです。 ○西川委員 あと、背景データの考え方なのですが、45試験というと相当遡って集計されていると思 うのです。おそらく、同時期に購入したロットでの比較が可能であれば、というのは、ブリーディン グしているうちに少しずつ変わってきますから、そういうものはブリーダーから入手できないですよ ね。 ○長野所長 実際的には、これはチャージバーがかかっておりますが、チャージバーのほうにヒスト リカルデータを求めましても、これは全く出てこないですね。いま我々も心配なのは、時期によって だんだん変わってくるのではないかということです。特に下垂体腫瘍。 ○相磯病理検査部長(日本バイオアッセイ研究センター) いま問題になっている腹膜の中皮腫につ いて、ある時期に非常に好発していて、あるときから少なくなったのではないかという印象を持って いまして、数年前毒性学会で過去のデータを全部洗い直して調べてみたのです。報告したのです。そ うすると、ほとんど動きがないです。大体一定の、1試験に1つか2つ。そのとき、なぜ私たちが腹膜 中皮腫がかつて多いのかなという印象を受けたのかなと考えたのですが、おそらくは腹膜中皮腫はも のすごく派手な病変として、お腹がパンパンに張って、褐色の汚い腹水がたまって、数の子のような 状態で、がんの小さいな結節がお腹一杯に広がってくると。これが対照群だけではなくて投与群まで いきますと、それの数の4倍、被験物質の影響によって投与群の発生率が上がるともう少し増えます。 そういった意味で、非常にインプレッションが強い。1つの試験としたら、こんなにたくさん中皮腫が 出たのだなという印象を持っていたのではないかということを考えたのですが。 ○西川委員 私も実際に解剖をやっていてそういう印象があるのかもしれませんが、ともかく使った ラットのロットが、たまたま中皮腫が発生しやすい系であるかどうかを評価するには、同時期に同じ ブリーダーから出た動物で、2年間無処置の状態でどうだったかがわからないと、大昔のデータに遡っ ても、ラットの性質も違ってきているでしょうから。 ○相磯病理検査部長 おっしゃるとおりだと思います。ただ、今回のものについては対照群でいつも と同じですね。いつもよりは少し多めかなという、いつもよりも、ない試験もありますし、1匹のとき もあるし。 ○西沢試験管理部長 バイオアッセイは、経口試験を、がん原性試験を1試験と吸入試験を1試験ずつ 厚労省から受けておりますので、ちょうど400匹ずつを1年に2回購入するわけです。見ていると、最 近の10年間は対照群は0か1か2で変わっておりません。ただ、私個人的には、Fisherはどうも最近、 種が違っているのではないかと思っておりますので、個人的にはうちの病理部でヒストリカルコント ロールの見直しをお願いしたいと思っております。 ○西川委員 ちなみに、同時期にスタートした経口投与試験の対照群ではどうなのですか。 ○西沢試験管理部長 1匹です。平均値ということです。 ○大前座長 そのほかご意見はいかがでしょうか。検定法としてFisherは出ない、経口検定でPetoの ほうでも生存曲線も含めたPeto、一応出ている。ヒストリカルコントロールよりも多いというのはそ ういうことで、酢酸イソプロピルの発がん性は、ラットの雄に関してはサムエビデンスだというバイ オアッセイの結論ですが、それでよろしいですか。  ということになると、これは動物に対する発がん実験ですので、ヒトに対する発がん性がある可能 性があるということも想定しなければいけないわけですが、資料8-1のおそれのある場合の所に矢印が 2本書いてあります。右に行く矢印がリスク評価の対象物質とすることの「企画検討会」への提案とい うことですが、この企画検討会というのは資料2の最初に説明された「21年度のリスク評価検討体 制」のいちばん上の櫻井検討会のことですね。「化学物質のリスク評価に係る企画検討会」がこの小 委員会の上にあるわけですが、そこにリスク評価の対象物質かどうかを提案したほうがいいかどうか ということになりますが。これは提案したほうが良いということでよろしいですか。  もう1つ、それがある場合、指針の作成ということで、この場合は労働者の健康障害を防止するため の指針案の作成に関してはリスク評価が終わったあとでよろしいのですね。 ○島田化学物質評価室長 これは発がんですので、リスク評価とは別に、とりあえず適正な取扱いを していただくための行政指導をすることにしたらどうかと思っております。 ○大前座長 リスク評価結果が出る前に、指針という形で出そうかということですが、よろしいです か。  それでは、この小検討会のミッションは3つです。1つは、ヒトに対するがん原性があるかどうかに 関しては現段階では、ラットの雄のみですがサムエビデンスということで、否定はできないというこ とです。2つ目は、リスク評価の対象物質として検討してはどうかということを企画検討会に提案する ことです。3つ目は、リスク評価結果が出る前に、健康障害を防止するための指針案を作られたらどう かという提案ということで、この小検討会の結論はよろしいでしょうか。 (異議なし) ○大前座長 どうもありがとうございました。それでは、がん原性試験結果に関する検討はこれで終 わりたいと思います。  この後、各物質の提案は8つあるのですが、8つはとても無理ですので、できる範囲で進めていきた いと思います。その前に何かございますか。 ○島田化学物質評価室長 私どもの化学物質対策課長が参りましたので、ご挨拶だけさせていただけ ればと思います。 ○半田化学物質対策課長 急な事態が起こりまして、遅れて参りました。あと10分足らずなのですが、 お話が済みましたらまた急ぎ戻りますので、お許しいただきたいと思います。  くだくだしいことは申し上げませんが、島田室長からご説明があったと思いますが、このリスク評 価は平成18年度から実施されており、ホルムアルデヒドやニッケル化合物、ヒ素化合物などの規制の 見直しなどをやっていただいております。私事ですが、私自身この対策課、昔は調査課と言っており ましたが、その時代の20数年前にも勤務しておりまして、出たり入ったりで合計4回目の勤務なので すが、リスク評価をやって予防的に措置を講じていこうというある意味積極的な対策を講ずるように なってきており、これは20年前とはだいぶ違うなと思っています。そういう意味で、このリスク評価 の検討は非常に重要な位置を持っております。平成18年度から始まって4年目ですが、この間のいろ いろな問題・課題を踏まえて、また大きく見直しをして、本日の有害性評価小検討会となったところ です。  大きな流れとしてはそういうことですので、私どもも重要なご検討をお願いしていると考えており ます。先生方には引き続きよろしくご指導・ご示唆を賜りますようにお願い申し上げます。ただいま 申し上げましたようにあとわずかですが、急ぎ戻る必要がありますので、これで中座させていただき ますが、どうぞお許しいただきたいと思います。 (半田化学物質対策課長退席) ○大前座長 もう少し早めに気がつけば、もっと早く中座できたと思いますが、申し訳ありませんで した。  有害性評価書の物質は8物質ありますが、資料の順番で、時間的に1物質しかできないと思いますが、 いちばん最初のアクリル酸エチルについて事務局からご説明をお願いします。 ○長山室長補佐 有害性評価書になりますが、資料6に8物質それぞれ付しております。今日はいちば ん上の「アクリル酸エチル」ということで、その中に上2つとして有害性総合評価表と有害性評価書と、 1物質について2つのものが付けられております。  また、資料7を同時にご覧ください。こちらは平成21年度のリスク評価対象物質に係る関係資料で すが、まず今回評価書がある8物質について取りまとめたものです。  次の頁ですが、1番とあるものについては平成21年度の評価値のいまのところの候補ということで、 各8物質に対して一次評価値の候補、二次評価値の候補という形で書いております。2番ですが、許容 濃度、TLV、ばく露限界値における発がん性の考慮についてということで、左側にACGIHや日本産衛学 会の許容濃度。右側に提案理由書等における発がん性の考え方という形で取りまとめております。こ れを順次やっていって、追加でどんどん出てきたものを含めて、18物質まで表を埋めていく形で作業 を進めていきたいと考えております。  アクリル酸エチルについてご説明します。先に有害性評価書をご覧ください。名称としては、別名 「2-プロペン酸エチル」ということです。2番の物理的化学的性状としては、常温であれば刺激臭のあ る無色の液体です。3番として、生産・輸入ですが、平成5年度で生産量としては約40万t、輸入量と しては約2,000tということで、ある程度の取扱量があるものとなっております。用途としても、接着 剤の原料、塗料の原料などさまざまな原料等に使われているものです。  一次評価値、二次評価値の関係については、総合評価表をご覧ください。それぞれに有害性データ が区分に応じて書かれております。今回、その中でも一次評価値、二次評価値にダイレクトに関わる 部分だけかい摘んで説明します。2頁目のカ「発がん性:あり」と書いてあり、1頁から2頁にかけて発 がん性そのもののことが書かれております。発がん性について「あり」ということで、根拠がIARCは 2Bということが書かれております。ただ、閾値の有無としては「不明」と書かれており、ここにも書 かれているとおり、実験をin vitroにおいて行ったところ、陰性という報告がある一方で、代謝活性 化物を添加した場合だと陽性との報告もあるということで、両方の報告もあるということで不明と。 ただし、変異原性の有無については評価が分かれているので、将来的には結論が変わる可能性がある という形で示しておりますが、現段階では不明となっております。  また、少し関係する所として、下のほうのキの「生殖毒性」の部分ですが、こちらについては特に ラットに対してさまざな濃度で投与したところ、体重増加の抑制が見られるということで、試験で得 られたNOAELについていちばん下の25mgについて、また、その不確実性係数、種差の関係と、LOAEL の勘算の10ということで、不確実性係数100ということでそれを評価したレベルとして、生殖毒性と してはいちばん右側にある1.5mg/m3、ppmに直すと0.37ppmが値としてあるという状況になっておりま す。  3頁に移ります。コの「許容濃度の設定」としては、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)のばく露限界 値TWAにおいて、5ppmという濃度が書かれております。こちらについて、設定としては文献を見ると 1986年に設定されて、要旨として2001年にドキュメントが出ており、2009年7月31日で確認したと いうことです。  これらの状況を踏まえて、4頁の最後に結論ということで取りまとめられております。選択した評価 レベルは発がん性ということで、今回閾値の有無については不明ということで結論されておりますの で、一次評価値としては不明の場合となりますので、評価値なしとさせていただければと思います。  真ん中にもありますとおり評価レベル、許容濃度の中で二次評価値としては、候補値としてはACGIH のTWAの5ppmというところが、二次評価値としての候補となるのかなということで考えております。 ただ、参考値として、生殖毒性としては0.37ppmもあるということで、その中でこちらを原則どおりに するのか、どちらを採るかも含めてご議論いただければと思っております。 ○大前座長 ありがとうございました。いまのようなことで、発がんを指標としますと一次評価値が 設定できないと。変異原性があるかないかの情報が非常に不十分で、閾値があるかどうかわからない ので設定できないということです。ただし、生殖毒性の0.37を、いままでこういう形で一次評価値を 作ったことはないですね。したがって、この0.37を当面一次評価値にするのか、あるいはいままでど おり二次評価値後一次評価値は設定できないという形にするのかということですが、皆さん、ご意見 はいかがでしょうか。いままで一次評価値を設定できない物質もありましたっけ。 ○長山室長補佐 そうですね。いままでも不明のものは評価値なしでやっておりましたので。 ○大前座長 いままでもそういう物質があるのですね。そうしましたら、今回の場合もそれでよろし いですか。取り立てて今回に限って生殖毒性を取り上げることはしないと、いままでのやり方を当面 は踏襲するということで、よろしいですか。 (異議なし) ○大前座長 そのほかにご意見はいかがでしょうか。ないようでしたら、アクリル酸エチルに関して はいまのような結論を出したいと思います。ちょうど時間が来ましたので、次回以降また大変なわけ ですが、今日の段階では1物質だけということで、有害性の評価に関しては終了したいと思います。  それでは、今後の予定について事務局からよろしくお願いします。 ○長山室長補佐 今後の予定につきましては、いちばん最後に付いている資料9でご説明します。  今後の予定としては、第2回の有害性評価小検討会は平成22年1月13日(水)14時〜16時、議事 としては有害性評価書、評価値の検討ということで、今日は1物質できましたので、残り7物質プラス アルファできればと考えております。第3回が2月25日、第4回がばく露のほうとの合同を考えてお りますが、3月31日ということで考えております。場所等詳細につきましては追ってご連絡したいと 考えております。 ○大前座長 いまの予定につきまして何かございますか。予定に入れておいていただきたいと思いま す。  そのほか、事務局から何かありますか。 ○長山室長補佐 ございません。 ○大前座長 それでは、今日は第1回目ですが、有害性評価小検討会を終わりたいと思います。どうも ありがとうございました。