09/12/09 第12回高度医療評価会議議事録 第12回 高度医療評価会議 (1)日 時:平成21年12月9日(水) 10:30〜12:30 (2)場 所:経済産業省別館944会議室 (3)出席者:猿田座長、山口座長代理、飯沼構成員、伊藤構成員、        川上構成員、柴田構成員、竹内構成員、田島構成員、        藤原構成員、村上構成員、加藤技術委員、小川技術委員、        松山技術委員        (事務局)        医政局研究開発振興課長   他 (4)議 題 1 新規申請技術の評価結果について 2 試験計画を変更された技術について 3 条件付き適評価を受けた技術について (5)議事録:以下 ○猿田座長  時間になりましたので「第12回高度医療評価会議」を始めさせていただきます。委員の先生方にお かれましては、12月に入っていろいろお忙しいところ、また寒い中を本日の会議にご出席いただきま して、どうもありがとうございます。本日、お手元にはだいぶ分厚い資料もございますし、ご迷惑を かけますけれども、よろしくお願いいたします。  本日の構成員の出席状況です。金子構成員、関原構成員、佐藤構成員、田上構成員、堀田構成員、 山本構成員からはご欠席との連絡をいただいております。  本日の議事に入る前に、新しく追加でお入りいただいた技術委員の方々を紹介させていただきます。 まだお見えになっておりませんが、慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科学教室の教授であります小川郁先生 に、今日は特に人工内耳の案件を扱うということでご出席いただく予定です。国立成育医療センター の総長の加藤達夫先生でいらっしゃいます。財団法人先端医療振興財団先端医療センター研究所膵島 肝臓再生研究グループのグループリーダーの松山晃文先生です。本日はご欠席ですが、慶應義塾大学 大学院医学研究課生理系専攻薬剤学の教授の谷川原祐介先生にもお入りいただいております。谷川原 先生は今日コメントをいただいておりますが、会議には出られないということです。  なお、本日はいろいろなことで来られないということでしたが、金子構成員、佐藤構成員、関原構 成員、山本構成員、それから一色技術委員、谷川原技術委員からは、本日の案件に関しまして事前に 検証していただいておりますので、それを後ほど検証させていただきます。以上のとおりです。よろ しくお願いいたします。まず事務局から資料の配付そのほかについて確認していただきます。 ○事務局  配付資料について確認させていただきます。まず議事次第から始まって、座席表、開催要綱、構成 員名簿と続きます。その後に、新規申請技術について、資料1-1、資料1-2と続き、意見書が3通付い ております。続いて資料1-3と資料1-4があり、資料1-4には意見書が2通付いております。その後に、 「試験変更を計画された技術について」ということで資料2-1があり、めくっていただきますと、その 評価表として資料2-2があります。これには意見書が3通付いております。その次に「条件付き適評価 を受けた技術について」ということで資料3-1があり、その評価表として資料3-2を付けております。 そして、その後ろに参考資料の1〜4が差し入れられています。机上配付資料として、各申請案件の申 請書一式を付けてあります。本日の資料は以上です。過不足等がありましたら事務局までお知らせい ただきますようにお願いいたします。  利益相反の確認についてですが、検診対象となる医薬品及び医療機器の製造販売企業のことについ て、資料1-1、資料2-1および3-1に記載しております医薬品・医療機器情報をご覧ください。検診対 象となる製造販売企業又は競合企業に関して事前に確認をさせていただいております。事前の届出以 外に特別に関与するような事例はございませんか。なければ、該当なしということでよろしいでしょ うか。 ○猿田座長  資料がだいぶありますが、よろしいでしょうか。 ○事務局  審議に入る前に1つ提案があります。評価表の総評に「条件付き適」というのがいままでありました。 「条件付き」というものは今まで、事務局と構成員同士の確認で運用できたものと、次の会議で条件 が直ったかどうか確認する案件の2種類がございましたが、後者に関しては今後、継続審議という扱い にさせていただきたいと思いまして、今後は後者の「条件付き」を「継続審議」という形にさせてい ただきたいと存じます。 ○猿田座長  いま説明がありましたように、スパッと通るのはいいのですが、ちょっと条件が付いた場合に2つの ものがあるだろうということで、いまお話がありましたような形で進めさせていただきます。少しで も早くそういったものも整備していく必要があるだろうということです。  いま小川技術委員がお見えになりましたので、一言お話をいただきます。 ○小川技術委員  私は慶應の耳鼻科の小川と申します。初めてですので、よろしくお願いします。 ○猿田座長  早速議事に入ります。いまお話がありました議題の1「新規申請技術の評価結果」につきまして、事 務局からお願いいたします。 ○事務局  事務局より説明させていただきます。資料1-1をご覧ください。新規申請技術の評価結果としまして、 今回は3件上がっております。まず、整理番号007。高度医療名は、EAS(補聴器・人工内耳併用型) 人工内耳挿入術。適応症以下は、ご覧のとおりです。審査対応構成員は、川上構成員、山口座長代理、 佐藤構成員と小川技術委員です。 ○猿田座長  お手元の資料にございます、EAS(補聴器・人工内耳併用型)人工内耳挿入術です。これに関しまし ては川上構成員からよろしくお願いします。 ○川上構成員  整理番号は007、高度医療名が、EAS(補聴器・人工内耳併用型)人工内耳挿入術、申請医療機関が 信州大学医学部附属病院。その他協力機関として、虎ノ門病院、神戸市立医療センター中央市民病院、 岡山大学、長崎大学、宮崎大学となっています。  本案件は、低音部に残存聴力を有するが、高音域の聴取能が極めて悪い、高音域が特に聴こえが悪 いという患者さんに対しての両側性の高度感音難聴患者に対して、残存聴力を温存させるための新し い人工内耳を使用する医療技術です。  新しい技術とはいうものの、申請をされている医療機関は、人工内耳の手術あるいは医療行為に対 して実績がある所です。適格基準が難聴で、純音聴力検査をしっかりとした患者で、除外基準等も的 確に記載されておりました。  対象患者は24症例ということになっておりまして、この24症例の設定根拠や、施設間の比較の問題 等々に関しましても適切な記載がございました。実施体制については後ほど山口構成員から、また小 川技術委員からも技術に対してのコメントがあると思います。さらに、倫理的なことに関しては、佐 藤構成員が今日ご欠席ですので私からお話します。  佐藤構成員からは、これに関して補償の問題について確認をしたが、特に問題はないというご意見 を承っております。また、同意書、苦情や相談の連絡先の対応についてということでご指摘がござい ました。  山本晴子構成員と金子構成員からはそれぞれ、機器の不具合、有害事象に関して、もし何かあった 場合に、どういう対応をされるのかというご指摘。あるいは人工内耳が使われないような患者さんに 対しての代替医療はどういうものがあるのかという説明をしっかりすべきであるというご指摘、人工 内耳用のインプラントやサウンドプロセッサという医療機器が使われるのですが、その費用負担につ いてのご質問がありました。  これらに対しましては、別紙でお手元に配付されている修正案でそれぞれの回答がなされています。 なおかつ、もう1つの別紙で回答文書として、意見書の中でそれぞれのご質問に対する回答も承ってお ります。  全体としまして、評価に対して特段気になる点あるいは大きくコメントすべき点はございませんの で、これは「適」ということで判断をした次第です。 ○猿田座長  いま川上構成員からは、総合的に見て「適」ということですが、山口先生からは何かありますか。 ○山口座長代理  この術式は診療体制、それから施設の実績は特に問題はございません。かなり良い実績を残してい る施設だと思います。技術の有用性ですが、既に外国で行われていて有望なもののようですので、私 はすべて「適」といたしました。 ○猿田座長  技術面に関しまして小川先生から解説をお願いいたします。 ○小川技術委員  私も、実施責任医師等の体制あるいは実施医療機関の体制は、これまでの人工内耳の埋め込みの手 術実績あるいはその後のリハビリテーションの実績から、この組織で進めることには全く問題はない のではないかと思っております。医療技術の有用性ということでは、ここにコメントとして少しまと めて書きましたけれども、要は、いままでの人工内耳といいますのは、内耳の中に電極を挿入すると いうものです。  従来の電極ですとどうしても、残聴(残存聴力)が残っていたとしても、これを犠牲にすることが 必要だった、あるいは温存できるかもしれませんけれども、犠牲になるということが前提でした。こ こにも書きましたように、低音域に残聴が残っている難聴者は結構いらっしゃるのです。カタツムリ 状になっている蝸牛の先端のほうが低音部を担当しています。低音部に残聴が残っているということ は、蝸牛の先端に有毛細胞が残存していると考えられます。  いままでの人工内耳の電極は蝸牛の大体1回転あるいは1回転半ぐらいしか入らないため、それより も先端の有毛細胞は有効活用できませんでしたが、今回の補聴器と併用型の人工内耳の場合には、蝸 牛を壊さないで、先端部の残っている有毛細胞は補聴器の機能として活用できるということで、残存 している能力を有効に活用するということができ、そういう意味では非常に良いのではないかという ことで、技術的にも特に問題はないと思っております。 ○猿田座長  事務局から何かございますか。 ○事務局  意見書は川上構成員から読んでいただいたので、特にございません。 ○猿田座長  皆様のご意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○伊藤構成員  医療機器なので、将来の薬事法への適応の道筋がどうなっているのかというのを教えていただきた いのです。医療機器ですので、今後のメンテナンスがどうしても必要になるだろうと思います。薬事 法がかかっていないのと、機器そのものが無償提供されており、かつ販売業者と独立して研究者のほ うがやられるということなので、今後のメンテナンスについての責任がどうなるのかを明確にする必 要があるのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。 ○猿田座長  川上先生あるいは事務局の方、その辺りはどうなのでしょうか。 ○事務局  承認に関しましては、医療機器ニーズ検討会が現在医薬食品局で開催されておりますが、その中の1 つとして挙げられております。  メンテナンスについては、本社が海外にあるのですが、日本にも代理店のようなものがございまし て、そこに協力していただくということです。 ○猿田座長  伊藤先生、いかがですか。 ○伊藤構成員  心配するのは、埋め込みをされた方がメンテナンスの補償もない状態で、研究者がすべて責任を持 ちますということなのでしょうか。それがはっきりしないでいいですかという話だと思うのです。研 究者に責任が、例えば経費などの全額を信州大学がお持ちになるというのであれば別に問題がないの だろうとは思いますが。 ○猿田座長  小川先生、何かありますか。 ○小川技術委員  それは、これまで行われてきた人工内耳のバックアップ体制としては同じだと思うのですが、そこ は今の人工内耳でも問題となっているところだと思います。 ○伊藤構成員  承認されているものであれば、最悪は国が責任をとるというオプションがあるのだろうと思うので す。でも、これはどこも責任をとらないままにここで承認されるリスクというのはあるのかなと思っ たのです。もちろん企業なり大学なりが担保するという道はあるのだろうと思います。とりわけ企業 に関しては、単に機器を提供するだけですと言い切っていますので、機器メーカーに責任を転嫁する のは難しいのではないかと思うので、どうされるのかなと思っています。 ○事務局  事前に申請医療機関とも相談しまして、そこは医療機関が責任を持って対応するとおっしゃってい ましたが。 ○猿田座長  その辺りは申請機関と業者のほうとしっかり話合いをして、厚労省側にも入っていただきます。前 の場合も同じような状況だということですが、ほかに大きな問題はないようです。構成員の皆様のほ うで特に問題がなければ、これは「適」とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 それではそういう形にいたします。川上先生、山口先生、小川先生、どうもありがとうございました。  次の議題に入ります。最初に事務局から説明していただきます。 ○事務局  次は、整理番号017、高度医療名は、胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈薬投与です。適応 症以下は資料1-1のとおりです。審査担当構成員は、竹内構成員、村上構成員、田島構成員、加藤技術 委員です。 ○猿田座長  それでは、胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈薬の投与ということで、竹内先生から説明 をお願いいたします。 ○竹内構成員  本申請は、「胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈薬投与」で、国立循環器病センターから の申請です。  概要といたしましては、重症で胎児水腫への進行が考えられる胎児頻脈性不整脈に対し、母体に抗 不整脈剤を投与することで、母体、胎児とも厳重にモニタリングしつつ、経胎盤的に胎児の不整脈を コントロールする方法です。  この申請に対しては3剤の薬を使用したいということで申請されておりますが、各薬剤については既 に「適応外」という縛りが付いております。そこで、実際に現在どのような形で国内外で使用されて いるかということを、この申請書以外に研発課の先生を通して申請者に問い合わせたところ回答が来 ており、国内外でも一応論文等も出ております。国内ではいくつかの医療機関におきまして使用され ており、非常に有効性があったという症例報告の形で報告されております。  ただ、この申請に関しては、ジゴキシン、ソタロール、フレカイニドという3剤で、ジゴキシンとソ タロールに対しては適応外使用、フレカイニドに対しては妊婦に対する禁忌という縛りが付いており ました。村上先生からは、実施体制の評価を、この3剤の使用に対して意見を伺っております。村上先 生からご報告をいただければと思います。 ○村上構成員  実施体制の評価をしましたので、私からコメントをさせていただきます。今回は国立循環器病セン ターからの単一の申請であるということですので、その観点で実施体制を評価させていただきました。 高度医療評価制度のことを考えますと、まずその医薬品に対する使用経験があるのか無いのかといっ たことが非常に大事なポイントになりますので、そういったことのデータもいただきました。コメン トにも書いてありますが、今回対象となっているジゴキシン、フレカイニド、ソタロールの中で、フ レカイニドに関しては、国立循環器病センターにでは使用経験がないということでした。本薬剤は、 後でも説明いたしますが、臨床上、大変必要なものであることから、他の実施経験のある施設との協 力体制を敷くことが前提であるならば、それだけで申請を否定するべきものではないと考えておりま す。しかしながら、単一施設の申請で、使用経験のないものが含まれていることに対しては如何なも のかと考え、事務的に、「不適」とさせていただいております。また、今回申請された先生方は胎児 不整脈に関しては十分な経験を持っておられますから、たとえ使用経験がないからと言って、不適切 な治療にはならないことも担保できると考えます。  次の実施医療機関の体制に関しては全く問題ないと考えております。  3番目は医療技術の有用性の件です。まず、3つの薬剤は分けて議論したほうがよいと考えます。胎 児の不整脈に対する医薬品については、非常に必要とされていながらも、現在承認された医薬品がな いという現状から早期適応拡大、早期薬事承認されることを強く望んでいます。特にジゴキシンに関 しては、古くから使われている薬であって、今回の適応以外でも使われている事例も多く、安全性の 面に関しても、また対象症例を限れば有効性についても十分なエビデンスが揃いつつあるので、本薬 剤に関しては特に問題はないと考えています。  一方で、フレカイニドとソタロールに関しては、いろいろな症例報告がございますが、使用方法、 使用量が異なったり、また、proarrhythmia(催不整脈)といったものを疑われるような状況で胎児が 死亡する(IUFD)といった症例の報告があるようですので、安全性の観点から注意しないといけなか ったりします。ですから、この2薬剤に関しては、評価が未だ定まっていない状況であると考え「不適」 としました。  ただ、妊娠週数との関係で、胎内での治療を優先しなければいけないような状況の中で、ジゴキシ ンで反応しなかった症例に対する2nd lineとしての医薬品は大変必要なものであることから、何とか 早期薬事承認に向けたプロセスを踏んでいただきたいと考えているところです。この申請書類だけか ら判断すると、提案されているプロトコルは3剤をおしなべて使うといったものになっていて、プロト コル診療を行ってアウトカムを評価するというアウトカム・リサーチのような形態のプロトコルにな っておりますが、できましたらプロトコルを分解していただいて、まず1st lineのジゴキシンは早く 承認につなげていただきたい。そしてフレカイニド、ソタロールに関しては、プロトコルを分けてき っちりとした臨床評価をしていただくのがよろしいかと考えております。 ○竹内構成員  加藤先生からもご意見を頂戴したいと思います。 ○加藤技術委員  資料1-3の右側に私のコメントが書いてあります。村上先生は全部「不適」ですが、私はすべて「適」 でバッティングです。私のコメントはここにお書きしたとおりですが、これを読んでいただくと分か りますのでお読みいただきつつ、私の発言をお聞きいただきたいと存じます。  まず治療の基準ですが、妊婦の健診等で、一般的には胎児の心拍数が1分間に110〜160が180を超 えた場合、産科医は胎児頻脈性不整脈を疑いまして、妊婦は直ちに入院とすることに私どもはしてお ります。その上、胎児の頻脈が母体側に原因があるかどうか。例えば、母体が発熱した場合でも、当 然胎児は頻脈になりますので、まず第1に、母親側にその原因があるか否かを精査いたします。そして、 母親側に原因がないと判断された場合には、胎児の頻脈性不整脈と診断いたします。そして治療に入 るわけですが、もしその胎児の未熟性でありますとか、後に出てくる水腫のようなものがあれば、放 置すると胎児は心不全に陥って胎児死亡が起きる可能性が大です。先ほど村上先生がおっしゃったと おりです。  このような状況で入院した胎児に対しましてはドップラーを行いまして、心室・心房の伝達時間が 短い場合、すなわちVA shortが見られる場合には、まずジギタリスを母体に投与いたします。ジギタ リスが無効であった場合にはソタロールを使用することとしております。リエントリー(心室と心房 との間の伝達の異常)が生じて心室・心房伝導が短い場合、または早くなる場合には、ソタロールを 単独使用することとしております。そこでソタロールが無効になった場合の話ですが、そこで出てま いりますのが、先ほど来問題になっておりますフレカイニドの使用です。  5番目に、胎児水腫を認めた場合はジギタリスとソタロールを併用することとしております。ソタロ ールが無効の場合には、そこにフレカイニドを追加することになります。このような治療をしてすべ てが無効の場合には、胎児を分娩に導入することになりますが、胎児の週数が非常に早い場合や胎児 水腫がある場合には、死産につながる可能性が極めて高いのです。薬剤の使用用量は、あくまでも経 験的、文献的な考察に頼るよりも致し方がないのです。  施行施設に関して、産科のみでやっておられるところもあるようですが、新生児科、周産期科、小 児循環器専門医等が整っている施設でなければ、これをすることができません。  高度医療である必要については、従来種々の施設で異なったプロトコールで施行していますので、 一定のプロトコールでこれを行うべきであろうと私は考えます。胎児を治療いたしませんと死産に至 ることが経験上多いことは明らかです。国立成育医療センターでは、年間約1〜2例この処置を行って おります。研究班報告によりますと、本邦では3年間で約80例。きちんとしたデータがないものは約 40例と聞いております。  次に、投薬による母体への影響です。ソタロール、フレカイニドは母体のQT時間の延長を来たすこ とがあることが知られています。したがいまして、母体に関する厳密な観察が必要です。母体はQT時 間が延長いたしますと、母体のほうに頻脈が出たり、または心不全を来たすことも考えられますので、 厳重な母体の観察を行った上で、万が一母体が危険な場合には胎児は諦めて、分娩に至らざるを得ま せん。中止です。  次に、この治療を行うことに対するエビデンスですが、エビデンスを明確にすることはできません。 これからコントロールスタディーを行うということは、非倫理的で不可能です。すなわち、助かるで あろう方々をコントロールに置くわけにはいかない。したがって、これは治療をするしかないのです。 放置しますと胎児は死亡、治療をすることにより、胎児は成長、そのことによりまして、社会的に言 えば少子化に貢献できるのです。  先ほど出ている、フレカイニドが禁忌になっていることですが、それが禁忌になっている理由をは っきりさせていただきたい。聞いたところでは、動物実験によって器官形成期での投与で、器官の形 成異常が起きていたということでのみ禁忌になっているようです。先生方は既にご承知のように、い まの新型インフルエンザワクチンも、つい10月までは妊婦に禁忌でした。しかし私どもが論文を出し ました結果、10月に至って、新型インフルエンザ、それから季節性インフルエンザに対してもその 「禁忌」が取れている状況です。これは行政的な手腕を期待したいところです。十分にインフォーム ドコンセントを得た上で、フレカイニドも使うような方向に行っていただきたいというのが私の意見 です。以上が私の意見です。 ○村上構成員  私は、妊娠中の投与は禁忌であるからフレカイニドは不適切であるといったコメントはしておりま せん。必要な薬は、ベネフィットとリスクを評価した上で、妊婦での禁忌薬であっても臨床で使われ ているのが現状です。フレカイニドがそれに価するものであれば使うべきだと考えております。  ただ1つ大事なポイントは、フレカイニド、ソタロールに関しましては、QTの延長に伴って催不整 脈が発生する。これは母体だけでなく、胎児にも発生する可能性があって、胎内死亡といったことを 疑わせるような症例等も出ております。この安全性評価をきっちりとやれるようなプロトコルに基づ いて、つまり、プロトコルの質を向上していただいて、きっちりとやっていただきたい、慎重にやっ ていただきたいということでコメントいたしました。 ○猿田座長  いちばん重要なところは有効性と安全性ということで、確かにそうだと思います。 ○竹内構成員  私のプロトコール評価を先にさせていただいて、それから田島先生に倫理の面を評価していただき たいと思います。  いま両先生のお話を拝聴いたしました。私のほうは、プロトコールは治療計画の内容を除いてすべ て「適」です。治療計画の内容は「不適」と判断いたしました。その理由としましては、村上先生も おっしゃったように、提出されたプロトコールでは3剤を一括りにして有効性を検討するということに なっておりました。ジゴキシンに対しては既にエビデンスがあって、安全性もしっかりしている。と ころが有効性・安全性に関して論文は今のところ出ておりません。症例報告程度になっています。ジ ゴキシンに対しては1st lineの胎児水腫なし。short AFLに対してはエビデンスを確立していただく。 この1st lineとしては非常にいいお薬をエビデンスとして出していただきたいと思っております。  次はソタロールに関して胎児の水腫なしとありの場合についてです。まず胎児の水腫なしに対して は、ジゴキシンに対しての2nd line、いわゆる併用療法です。それに対して症例報告は一応出てきてい ます。ただしその症例報告の中でも、日本の医療施設の中で用法・用量が多少違っております。加藤 先生がおっしゃいましたように、この高度医療制度をもって同じ用法・用量で同一プロトコールでエ ビデンスを出していただければと私も思っております。  最後はフレカイニドです。この位置づけとしては、ジゴキシン、ソタロールを投与したが無効であ った患者さんに対してはどうしても使わなければいけない、という加藤先生、村上先生のご意見もご ざいました。その場合は、3rd lineでの使用という位置づけで私は捉えております。しかし、添付文書 上では禁忌となっておりますので、患者さんに対し、しっかりと、インフォームドコンセントを取っ ていただき、フレカイニドを使われる施設に対しては1例1例、用法・用量について、エビデンスを構 築していくことが高度医療制度を使って出していただければと考えております。1st line、2nd line、 3rd lineでジゴキシン+ソタロールの併用療法、またはジゴキシンの単剤、ソタロールの単剤、それが できなかった場合にはフレカイニドの単剤または併用療法とする、いままでは海外に対しても、国内 に対しても症例報告しか出ておりませんでしたが、高度医療制度を使って確固たるエビデンスを日本 から発信していただければと思っております。このプロトコールの、先ほど村上先生がおっしゃった 治療計画を少し改訂していただければと私は思っております。 ○加藤技術委員  竹内先生、ありがとうございました。まだ論文が出ていないというところがネックだと思います。 研発課長にお聞きいたしますが、これは研究班が立ち上がっているはずですし、その研究班は研究班 の報告をしているはずです。研究班の役割は、国費を使っている関係上、その結果を政策に反映する、 結果を発信していくということがあります。科学的論文も重要ですけれども、国費を使っている研究 班である以上、研究班報告をかなり評価していただきませんと研究をしている意味がない。したがい まして、私は、村上先生がおっしゃったとおり、これは循環器病センターのプロトコールの問題であ ろうとは思いますが、審議を先延ばしにすると、このような胎児が出てきた場合に救命できなくなる ことを懸念します。 ○猿田座長  ご存じのとおり、特に妊婦に対する薬の投与というのは、ほとんどみんな禁忌になってしまってい るのです。いま加藤先生がおっしゃったように、例えば、かなり高血圧だと、妊娠中毒症の最後のと きに、使えない薬でも使って助けることがあり、実際カルシウム拮抗薬などを使ってやられることが あるわけですが、こういうものは非常に難しい問題です。実際に現場ではそれをやって助けているの です。しかしながら、そういったことで、ほとんど全部禁忌になっているのです。そこでどういうふ うにこういうものを扱ったらいいかということについて、事務局からご説明はございますか。私ども 臨床現場では非常に困ることがあるのです。しかしながら患者さんを助けなければいけない、胎児を 助けなければいけないということで薬を使ってしまうわけです。それで助かるわけですが、添付文書 上では「禁忌」と書いてあるのです。そういうものはどういうふうにこれから考えていったらいいか です。 ○事務局  添付文書上禁忌のことに関しましては、先ほど加藤技術委員からもおっしゃられたとおり、人間の 妊婦に対する禁忌としてエビデンスがあるかどうかというと、確かに不十分な部分もあろうかと思い ます。その部分に関しましては、先ほどインフルエンザの話にもあったとおり、禁忌外しということ を学界のほうから要請していただければ、それは非常に前向きに検討していく所存です。  研究班の結果に関しましても、申請医療機関に確認したところ、胎児に対する治療に関しては10年、 20年以上前から、いわゆる母体に保険病名を付けて救命していたということです。つまり、高度医療 評価制度が始まる前から、現場ではそのような治療を既に行っていたということです。では、今回な ぜ「高度医療」に出してきたかということになりますと、研究班の結果を踏まえて、前向きなプロト コールでちゃんとしたエビデンスを作る、こういうものは現在、欧米でもちゃんとしたエビデンスの あるものがないということです。それで、世界でも初めてのエビデンスを作っていきたいという国循 の意気込みを我々は聞きまして、今回高度医療評価会議にかけた次第です。 ○竹内構成員  いまの回答からこのプロトコールを見ますと、薬剤の1st line、2nd line、3rd lineとしての使用方 法が総合的に記載しておりますので、そこを明確にしていただきたいと判断しました。どのエビデン スを出していくかということをしっかりと明確に記載していただければ、それで問題はないと思いま す。 ○猿田座長  出されている施設の責任者の方にその辺りをしっかり分かっていただいて。 ○竹内構成員  実際にどの施設でフレカイニドが使われていますかというご質問を差し上げて、回答をいただきま した。用法・用量が医療機器によって少し違っているとかということがございました。高度医療制度 を使いまして、例えばフレカイニドを使用する場合はこういう具合に使っていくというプロトコール を立てていただき、日本からエビデンスを発信していくということであれば、高度医療制度の意義も 出てくると思います。統一のプロトコールで3剤の有効性・安全性に関するエビテンスを構築していた だきたいと思っております。 ○加藤技術委員  おっしゃるとおりで、各施設でやっていても、用量であるとか、1st line、2nd line、3rd lineのや り方がばらばらであるというところから高度医療に上がってきたものであろうと私は判断しておりま す。 ○猿田座長  加藤先生のおっしゃることもよく分かりますが、そこはよく相談させていただきます。大切なこと は安全性、それから、本当に有効な治療法であれば少しでも早く届ける。この2つのところをしっかり 考えながらやっていただくということで、いまの議論は非常に大切であります。特に提出してきてい る施設との関係で、そこはしっかりさせていただきたいと思います。 ○山口座長代理  私も専門ではないので教えていただきたいのですが、short VAのとき、水腫がない場合とある場合 の流れの中で、ジゴキシンとソタロールが効かなくなったときに、ジゴキシンとフレカイニドになる のと、ソタロールとフレカイニドになるという、選択肢が右と左で違うのは何か理由があるのですか。 ○加藤技術委員  経験的な問題です。 ○伊藤構成員  読んでいて気になったのが、補償はしませんというところです。妊婦に対する薬について、薬事法 上禁忌になっているというのはデータがないからという話だけだろうと思うので問題はないと思いま すが、ソタロールはQTがかなりの割合で延びるのです。そして、これは経口剤なので、外来でお使い になるのは危険なのではないかと思うのです。 ○加藤技術委員  外来では使えません。みんな入院ですから。 ○伊藤構成員  資料を見せていただくと、母体の心電図をモニターするか、しないかも書かれていないのです。そ れは当然されるのだろうと思いますが、そういう意味でプロトコールに書いたほうがいい。私はそう いったことが気になりました。 ○猿田座長  竹内先生、あとはどうですか。 ○竹内構成員  倫理の面から田島先生に説明していただきます。 ○猿田座長  では田島先生、お願いいたします。 ○田島構成員  同意に係る手続きと同意文書につきましては、本高度医療の対象となる胎児頻脈の分類に関する説 明が不十分で、当該胎児がどういう症状で、それをどういうふうに治療しようとしているのかが分か りにくいという問題点があります。それから、説明文書を本文と、高度医療制度に関する説明の別紙 の部分に分けておりますが、そういった必要はない。かえって別紙を付け忘れる可能性もあって不適 切という問題点がございますので「不適」といたしました。なお、患者相談の対応整備については一 応の整備がなされていると認められたのでコメントしておりませんが、問合せ先として事務局が設置 され、夜間・休日の連絡先とeメールアドレスも設けられておりますので、一応「整備が認められる」 と評価しております。  補償内容については「適」の評価です。  「不適」の評価につきましては、修正すれば「適」としてよいと考えております。修正点は、治療 方法の項目にある上室性頻拍のshortとlongの2種類、及び心房粗動のそれぞれについて、一般人に も分かりやすく説明していただくこと。それから、スケジュール表の縦軸、横軸が何を指すのかが分 からないということがございます。縦軸が評価項目であり、横軸が評価時期を表したものであるとい うことをこの表の中に明記していただきたい。また、別紙とされている高度医療制度については本文 に組み込んでいただくこと。  4番目は単なる要望の問題ですが、「医療保険が適応されない」あるいは「保険適応外」「高度医療 適応分」といった用語については「適応」でなく「適用」が正しいのではないかと考えておりますの で、もし不適切であれば修正していただきたいと考えています。 ○猿田座長  竹内先生、総括的にお願いします。 ○竹内構成員  総括としては、いま提出していただいた申請書類を見ていきますと、多少プロトコールに問題があ るということです。また倫理的な面からも、今ご指摘いただきましたように「不適」の項目がござい ます。そこを修正していただければ「適」ということになりますので、私としては条件付きという判 断をいたしたいと思います。ただ「条件付き適」には2つありますので、どちらを取られるかというの はちょっと。 ○加藤技術委員  専門官が最初におっしゃったところが非常に気になっておりまして、「条件付き」の定義をもう一 回言っていただけますか。 ○事務局  プロトコールの大幅な変更を必要とするような案件に関しては申請医療機関の再提出に時間がかか って、さらに各構成員との確認作業も大変なのです。ですので、できれば高度医療評価会議でしっか り確認した上で先進医療専門家会議に上げたいということで、そのような提案をさせていただきまし た。 ○加藤技術委員  了解しました。そうすると、またこれを高度医療評価会議でやるのではなくて、プロトコールを勘 案していただいて先進医療専門家会議のほうに提出する、という理解でよろしいですか。 ○事務局  微細な変更であればいいのですが、大きな枠組みで変更されるという場合には、次の高度医療評価 会議できっちり確認したほうがいいのではないかと思います。 ○加藤技術委員  いまの私の大体の判断では、どこにプロトコールミスがあるかということは大体判断できたと思っ ているので、それではいけないかということです。 ○事務局  もちろん、会議全体でそのような合議であれば結構です。 ○猿田座長  いちばん大切なことは、加藤先生は先進医療のメンバーになっていらっしゃいますから、高度医療 を通しても、先進医療に回ったときに、加藤先生はいちばんそこのところを。この前の先進医療の会 議では随分もめましたけれども、そこのところの橋渡しというか連携が非常に気になるということで すね。先生のお気持はよく分かります。  いまのようなことで、プロトコールに関しては、直せる範囲で私どもが直したところで、委員の先 生方にパッと見てもらって、OKであれば、スッと行く形をとってもらいます。大切なことは、この委 員会で決めたことを少しでも早く届けなければいけない。それがいちばんですから、もたもたしてい るのは良くないということで、事務局のほうもそれを考えているということですのでご了承いただき たいと思います。 ○山口座長代理  この案件がここに出る前に、もう少し学会としてきちっとご指導いただきたいと思います。先生の おっしゃるとおり、これには基本的なミスがたくさんありますから。 ○加藤技術委員  私の所には、もう出来上がった資料しか入ってきませんのでそれをもとに判断せざるを得ません。 ○山口座長代理  ですから、それをきちっと検討していただきたいと思います。ただ、先生のおっしゃるとおり、目 の前で死んでいく者を救うことは非常に大事だということはみんなが理解しています。ですから、そ ちらのほうにも努力していただくことも必要であって、こちらに、大事だからもっと早くしろという 議論はやめていただきたいと思います。 ○加藤技術委員  大変失礼いたしました。 ○猿田座長  よろしいでしょうか。 ○竹内構成員  先ほどプロトコールの内容ついて1st line、2nd line、3rd lineの明確化ということを申しました。 今回の申請書は循環器病センターからでしたが、中身を見てみますと、研究協力者として、加藤先生 の成育医療センター、久留米大、大阪母子健康総合医療センターが挙げられており、そういう所でフ レカイニド使用実績がありますので、そことの連携体制を書いていただければ村上先生もさほど問題 になさらなかったと思います。その連携体制をどうしていただくかということも重要かと思います。 ○藤原構成員  遅れていることに関連して、今後の流れも確認しておきたいのです。この申請用紙では、循環器病 センターの倫理審査委員会での条件付き承認というのは平成20年11月27日、かなり前の時点で条件 付き承認になっているので、そこでも遅れているのは、ここに上がってくるまでにだいぶ時間がかか っているのだなということは考えました。  それから、先ほど竹内先生もおっしゃったのですが、循環器病センターのプロトコールが承認され た後に、ほかの医療機関はどの時点で参加を始めるとかというスケジュールは、ある程度分かってい るのでしょうか。 ○事務局  ほかの施設に関しては、基本的に高度医療評価会議の結果を見て考えたいと聞いております。 ○藤原構成員  では、通ればすぐに粛々と進んでいくということになりますか。そこにまた追加施設として関わっ ていくと。 ○事務局  そういうことだと思います。特に今回は施設要件なども提出されてますので、そういう条件等に照 らし合わせて、追加協力医療機関の手続きをしていくことになります。 ○猿田座長  いま竹内先生にまとめていただいたとおり、プロトコールもその点でやっていただく。そこのとこ ろであまり大きな問題はないと思います。そして委員の先生に回して、それで検討していただくとい うことでよろしいでしょうか。それでは、いまは条件付き、というと言葉が悪いかもしれませんが、 そういう形で認めさせていただくことにしたいと思います。事務局のほうは、ほかに何かございます か。 ○研究開発振興課長  結構です。 ○猿田座長  今日はなかなか難しい問題が次のところでもございます。貴重なご意見をいただきまして、ありが とうございました。続いて、018の評価結果について、事務局から説明していただきます。 ○事務局  整理番号018、高度医療名、インスリン依存症状態糖尿病の治療としての心停止ドナー膵島移植です。 適応症以下は資料1-4のとおりです。担当構成員は、柴田構成員、猿田構成員、田島構成員、谷川原技 術委員、松山技術委員です。以上です。 ○猿田座長  今日は松山先生に来ていただいておりまして、後ほどお話をお願いしたいのですが、まず柴田先生 から概要だけ説明していただきます。 ○柴田構成員  主担当を仰せつかりました柴田と申します。こちらの医療技術の概要としましては、血糖不安定性 を有する重症インスリン依存性糖尿病に対し、心停止ドナーから得られた膵島を、経皮経肝門脈内カ テーテルにて投与する技術です。その後、術後に免疫抑制剤を投与することで、膵島の生着を維持し、 血糖の安定を持続させるというものです。  実施体制の評価については、猿田先生、松山先生にご評価いただいておりまして、医療技術の内容 については肯定的なご意見をいただいているかと思います。松山先生からは後ほどコメントをいただ きたいと思いますが、概略としましては、施設内での手技の責任の所在を明確にすること。もう1つは、 膵島を分離する際の実施者の手技によって、膵島分離の純度や回収率が変わり得ることもあるので、 その点について詰める必要があるだろうとのコメントをいただいております。  谷川原先生は本日ご欠席ですが、「医療技術の有用性」に関する部分で「不適」のマークが付いて おります。書いていただいた文章を全部読み上げるのは差し控えさせていただきますが、ポイントと しましては、本研究で計画されている免疫抑制剤について、薬剤の選択、組合せ、至適用量に関する 合理的な設定根拠が不足しているであろうということです。また、至適な用量を個別調整するのか明 示されたい等、特に免疫抑制剤の使い方に関する部分のコメントをいただいております。  田島先生からは、「同意に係る手続き、同意文書」に関して「不適」のマークが付いておりますが、 項目としましては、利益の内容の記述、副作用の説明が甘いこと、費用に関する説明が分かりにくい こと、並びに、利害の衝突および研究者等関連組織との関わりについての記述がないということにつ いて指摘をいただいています。また、担当医師の問合せ先に関する記載も不十分ではないかとのご指 摘をいただいていますが、これらについては、修正されれば「適」としてよいとのコメントをいただ いております。プロトコールの評価は私が担当いたしましたが、長く書いておりますので、概略だけ ご報告いたします。  全体としまして、本臨床試験プロトコールの骨子については許容できるものと考えていますが、有 効性及び安全性の評価方法ですとか、モニタリング体制、実施方法等については、臨床試験実施前に 改善を要する問題点が散見されます。データ収集方法であるとか解析方法は十分に詰められていませ んので、このまま臨床試験を実施しますと、運営ですとか結果の解析が困難となる可能性が大です。 改めてデータセンター並びに生物統計学専門家と相談をした上で別途記す問題点について修正してい ただく必要があると考えております。  長々と書いておりますが、趣旨としましては、本申請を「不適」とするためではなくて、「適」と して実施していただくために何が必要であるかという項目を書かせていただきました。申請者の先生 方におかれましては、不愉快に思われるところもあるかもしれませんが、これは、このような医療技 術をきちんと評価して将来的に医療現場で使えるようなものにするためにはどうしても必要な項目だ と考えておりますので、あえて厳しくコメントさせていただきました。  重要な問題点としましては、この試験で挙げられている主要エンドポイントは集計不可能であるこ とです。そこのところは、この結果をもって、将来、この医療技術を保険診療の中に入れていただく という判断をするときにこれが問題になりますので、きちんと詰めていただく必要があります。  その他の問題点についてはいろいろ挙げております。例えば「再移植、再々移植をされる」と書い てありますが、患者さんがどういう状態になったときに再移植をされるのか、再々移植をされている のかというところがきちんと明確にされておりません。これがなぜ重要かと言いますと、治療をする 対象を明確にしなければ、そのような患者さんに対する、現状、アベイラブルなベストな治療が何か が明らかになりません。ベストな治療が何かが明らかにならなければ、現状で患者さんが困っていら っしゃる状態が明らかになりません。つまり、unmet medical needsが明らかになりません。そのよう な状態で新しい治療法の開発をすると、当該要件を満たす患者さんに対して本プロトコール治療を実 施することのリスク・ベネフィット評価はできませんし、この新しい治療法がどのぐらいのハードル を越えれば日常診療の中に持っていっていいと考えられるのかという議論ができません。そういうこ とはきちんと詰めた上でやらなければ、本技術の有用性を逆に社会的に受け入れられないようにして しまう危険性があるので、そこは、詰めた上でやっていただく必要があると思います。  主要エンドポイントですとかその他のエンドポイントについては省略させていただきます。  プロトコール治療については、谷川原先生からコメントいただいておりますところと同様です。例 えば、エタネルセプトが7剤ある適応外の医薬品のうちエタネルセプトだけは、移植領域での使用とい うのは既存の効能の中からかなり外れるものになりますので、少し詳細な検討が必要な部分であろう かと思います。関節リウマチを対象とした使用においても重篤な感染症が発生するリスクが報告され ているとか、あるいは、B型肝炎ウイルスキャリアの方においてウイルスの再活性化が報告されている などということもありますので、その際、多くの報告は、免疫抑制剤を持つ薬剤併用時にあるという 話なども報告されていますので、安全性の観点からもきちんと詰めておいた上で、それが妥当であれ ばいいと思いますが、きちんと確認は必要であろうと思います。  臨床試験の実施方法等についてはいろいろ書いておりますが、ここは省略させていただきます。  最終的な結論ですが、「条件付き適」としております。本申請の技術は、これまでのデータを見る 限り臨床的に有用な治療法になり得ると期待されますが、現在の臨床試験実施計画のまま高度医療と して臨床試験を実施した場合、本申請技術の有用性を十分に評価できずに、逆に実用化の足かせにな ることが懸念されます。そのため、各評価者からの指摘を踏まえた臨床試験実施計画の改訂を条件と して、条件付き適と判断したいと思っております。それぞれ、委員の先生方からのコメントをお願い いたします。 ○猿田座長  ありがとうございました。柴田先生が非常に詳細にご説明いただきました。この技術は非常に大切 で、一応私もこの技術の必要性とポイントのところだけを見せていただきました。先生方ご存じのと おり、いま糖尿病の場合、特にインスリンが出てこないI型糖尿病を中心とする非常に重篤な糖尿の 場合にはインスリン療法をやってもなかなかコントロールできない、非常に危険性もあるということ で、それに対する治療としてこれまでは膵臓の移植療法がやられていたわけですが、これはやはりド ナーの問題もありますし、手術も非常に大変です。ですから、腎臓の移植の場合と併せてやったりと いう形で非常に侵襲も大きいということで、そういったことをもう少し改善させなければということ です。  この方法は、もともとは、2000年にカナダのアルバータ大学から7例の報告が出まして、これは、 いわゆる膵島の細胞を門脈から入れてやっていくというやり方です。危険性も非常に少なくて、しか しながら、効果がかなり得られるということで出て、そのあと、そこの大学でもかなりの検討をなさ って、日本も、2002年か2003年でしたか、そのころから、千葉東病院、京都大学、いろいろなところ で始めたということです。実際にうまくいった症例を見ますと、ものすごく効果的で、侵襲も少ない 上に、さらに見ていくと、完全にインスリンを使わなくて済むような状況にもなっているというよう な形で、非常に有用である。  要は、この手技で大切なことは、まずその膵臓のドナーがなければいけないだろうということで、 そこがポイントと、それから、もう1つ重要なことは、これは細胞を門脈のほうから注入するという、 それを入れたことによって肝臓にくっついてそこで生着して効果を出すというので、そこでいかに細 胞を分離するかという酵素処理の問題、ここがまずポイントとして1つです。3番目は、やはり移植で す。そういったことでいかに免疫療法かと。そこの薬剤の使い方、いまの細胞の処理するところ、そ の辺りが重要なポイントですが、私、免疫抑制剤の使い方に関しては、この細かいところがわからな いので、特に谷川原先生からのコメントをいただいております。そういったことで、この治療法はか なり画期的であり、うまくいけば、患者さんも非常に助かるということで、方向としてはいいのでは ないだろうかということで、一応技術面はいいという形にさせていただいた次第です。柴田先生、そ ういうことで。では松山先生、よろしくお願いします。 ○松山技術委員  よろしくお願いします。本案件に関しまして主に大きな論点としましては、膵臓から膵島を分離し てくる部分の手技の問題並びにそれを移植したあとに免疫抑制剤でいかに長く機能させるかという、 この2つの論点に尽きると思います。  1974年に世界で初めて膵島移植が行われて以来、2000年までにほぼ500例行われており、今現在で は1,000例を優に超えている。2000年前後でそのエポックメーキングであったのはまさにエドモント ン・プロトコールで、ステロイドフリーの免疫抑制剤のプロトコールということで、以後、非常にい い成績が得られてきました。  エドモントン・プロトコールがなぜあそこで評価されたかと言うと、アイレット・トランスプラン テーションは既に技術として確立したものであって、それを前提として免疫抑制剤でステロイドフリ ーに持っていったということなので、あくまでもあの論文の主眼点は免疫抑制剤のプロトコールです。 ですから、あの時点で、手技として膵島の分離自身はもう確立されていたと考えるべきであろうと思 います。今回申請していただいた先生方も、向こうでされている機関に行って留学したり勉強したり しておられて、技術は十二分にあるであろう。ということを考えると、概ね問題はないのではないか と考えているところです。ただ、アメリカと若干違いますのは、日本の場合、脳死の患者さんから膵 島を採れないということがあって、採ったときのその膵島の品質がどうなのかという議論が常にあり ます。  これに関しては、京都大学を中心にその保存液がかなり改善されてきまして、それは、膵・膵島移 植研究会の中で情報がシェアされているということを前提に置けば、この技術というものはもうほぼ 確立されたものだろうと思います。  もう1つは、実際に分離される先生方の手技ということです。実際、この先生方は、ブタの膵臓など を採ってきて、どのくらい純度があるかということをトレーニングされているとお伺いしているとこ ろなのですが、それに加えて、全くやっていないところで最初から高度医療評価制度に乗せると、ア ウトカムが悪かったときに、それが膵島分離が悪かったのか、それとも本来評価すべき免疫抑制剤の プロトコールが悪かったのか。結局、何もわからないということになるのです。ですから、最初はや はり3例程度。やったことのないところ、特に第1術者としてご経験のない施設においては、概ね3例 程度やっていただいた上で入っていただく。残りのところは、既に第1術者としてご経験があるという ことですので、技術としてはもう概ね良好と認めるべきではないかと考える次第です。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。これは日本の膵島移植研究会が組んで出てきて、そういったこと でいろいろな施設が入っているということは、いま松山先生からご指摘があったとおりです。また、 柴田先生どうぞ。 ○柴田構成員  谷川原先生のコメントについては別紙が付いていますが、事務局からご説明いただいてよろしいで すか。 ○猿田座長  いま柴田先生がおっしゃっていただいたとおりなのですが、もう1回事務局から。 ○事務局  谷川原先生から意見書を預かっておりまして、簡単に説明させていただきます。  まず、膵島移植はI型糖尿病患者に対する有用性が高く、新規の医療技術として今後の発展を期待 する。移植した膵島の機能維持のために適切な免疫抑制療法が必須となるが、過剰な免疫抑制は、感 染、発がんリスクをはじめ種々の副作用を伴うことから、免疫抑制薬の組合せと用法・用量の設定に ついては、臨床的エビデンスに基づくべきである、となっています。  以下に関しましては、基本的には柴田構成員あるいは松山技術委員から話があったとおりで、今回 の薬剤の一つ一つに関してきちんとしたエビデンスなりを出してくるべきであろうというコメントが 書かれています。 ○猿田座長  ありがとうございました。それでは田島先生、お願いします。 ○田島構成員  この高度医療につきましては、費用の面で患者さんの負担が大変大きくなる可能性があります。こ の膵島移植の部分に関してのみですが、最大で1,300万円ないし1,400万円の負担がかかりますし、そ の後、生涯、免疫抑制剤を使っていくということで、その後の費用もかかるということ、それから、 免疫抑制剤を使うことによる副作用もいろいろ危惧されることから、患者さんのほうで慎重に選択さ れる必要のあるケースだろうと思われます。それで、この高度医療を受けることの効果について、よ り具体的に、これまでの18症例につきまして、それぞれの患者さんについての移植の回数が1回、2 回、3回、どのような形で行われていたのか、その結果、どういった、数値的なものが具体的に得られ て効果が認められているのか、その辺の説明を丁寧にしていただく必要があると思います。  それから、副作用についての説明がかなり危険性について回避したような書かれ方になっています ので、こういった免疫抑制剤を生涯使い続ける症例につきましては、膵島移植手術はうまくいったけ れどもインフルエンザにかかって患者さんが亡くなってしまったというようなことも起こり得るケー スだと思いますので、そういったことについても、より正確に記載していただく必要があろうと思い ます。  それから、費用につきましては、国の補助金あるいは施設の研究費による手当が期待されるといっ たことや、あるいは、製薬会社が無償提供をしてくれるといったような表現もあるわけですが、その ようにうまくいった場合は、患者さんの負担は少なく済むと思いますが、もしそれがうまくいかない 場合、例えば事業仕分けが厳しく行われる最近の国庫の厳しい情勢からしますと、今後、来年、再来 年、どれだけ補助金を付けていただけるかもわかりませんので、甘い期待の下に医療費の説明をなさ るのではなくて、もし患者さんが全額負担することになった場合は、最大でいくらになるかといった ようなことについてきちんと表していただきたいと思います。  それから、患者相談等の対応につきましては、担当医のご連絡先が書かれているのみでは不十分で、 事務局体制をきちんとつくっていただいて、休日、夜間等でも必ずどなたかと連絡がつき、そこで、 難しい費用の問題や副作用の問題といったようなこともある事例ですので、丁寧なご説明を受けられ るように整えていただく必要があると思います。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。それでは柴田先生、もう1回総括的に、先ほども先生からプロトコ ールのご指摘を聞きましたが、まとめていただきたいと思います。 ○柴田構成員  先ほど申し上げましたように、結論としましては、臨床試験実施の計画の改訂が必要であると考え ております。その改訂がどのぐらい重いものになるのかというのは二通りあると思います。谷川原先 生からは、現在提示されている免疫抑制剤の使い方自体も根本から見直すべきではないかというご意 見をいただいております。一方で、このままやってもいいのではないかという考え方もあり得ると思 います。免疫抑制剤の使用の方法を大幅に変えるのであれば、高度医療として、これが先進医療では なくて、高度医療に係っている本質は適応外使用の部分ですので、そこの免疫抑制剤の使用方法が大 幅に変わるようであれば、ここにもう一度出していただいて、再度、この場で議論していただく必要 があるかと思っておりますが、いかがでしょうか。 ○猿田座長  ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思うのです。非常に有用な技術ですので、先ほど 柴田先生からお話がありましたように、プロトコールの問題でかえって逆方向にいくことはよくない ということです。そういったことでこれに関しては、いま言ったところを直していただいて、それか ら、谷川原先生のご意見もいただいて、できれば、また谷川原先生にもいらっしゃっていただいて、 そこで正式に議論させていただくということで、ともかくは、いま柴田先生からご指摘いただいたプ ロトコールの点を戻していただいて、よく検討していただくということです。それでは、先生方から ご意見を伺いたいと思いますが、どなたか。 ○村上構成員  免疫抑制剤の件です。膵島移植をされている専門家の先生方が、やはりシロリムスに関しては非常 に副作用が強いと判断され、そこから今回のMMFを使う新たな免疫抑制剤の治療法がいろいろな専門家 の皆様方との検討の下に生まれたのだと私は理解しております。当然ながら、いま指摘されているこ とに関しましてはきちんとしたご説明をいただくということになろうかと思いますが、これでもって 再審議というような話ではなく、早く進めていただくほうがよろしいかと思っております。 ○猿田座長  ありがとうございました。そうすると、プロトコールのその変更といま言った点をしっかり示して いただいてという形で。ここは、早急にこっちに戻していただいてということになるかと思うのです が、ここでもう1回検討させていただくということかもしれません。 ○藤原構成員  いくつか気づいたところなのですが。膵島細胞の調整のところが、標準手順書が入っていなかった のでよくわからなかったのですが、以前、この膵島のセパレーションのところで、クロイツフェルト ・ヤコブですか、狂牛病のリスクがあったとなっていて、海外でも登録が一旦止まったりしている実 情がある中で、そこがどういうふうに落し前がついたのかというのがよくわからなかったので、教え ていただきたいのです。 ○松山技術委員  以前のリベレースは、実は、牛の脳の抽出物を使っていたと。平成15年第2回伝達性牛海綿状脳症 の検討委員会の別添資料にリスク評価というものがありまして、そのリスク評価をしたところ、完全 にはリスクがなかなか、概ねよしとは言えないという話で、ご使用をお控えいただきたいということ になったと了解しています。その後に、リベレースを作るときの培養液の中で牛の脳の抽出物を使わ ずに培養できるという技術が作られて、それが米国ではもう使われています。  日本でも、数本サンプルバイヤルが入ってきまして、京都大学で実際にそれを使って良好な成績を 得たと伺っておりますので、現在、残念ながら、そういうことで一時的に止まりましたが、コラゲナ ーゼ問題は解決がついたとお考えいただければよろしいかと思います。 ○藤原構成員  このプロトコールは、ネットでも入手可能な米国NIH傘下のNIAIDとNIDDKのプロトコールと同じよ うな内容なので、たぶんそのプロトコールをたたき台に作られたなという印象を持ちました。この9月 にFDAが膵島移植の臨床研究のガイドラインを出しているのですが、それをざっと見てみると、向こう は企業も含めての対象のガイドラインなのですが、ロングターム・フォローアップというのが非常に 重視されていて、こういう免疫抑制剤を使用する場合、長期の、5年とか10年経ったところで2次が んとか、ほかの関節リウマチでもそうですが、みんなが忘れたころに起きてくるのです。  このプロトコールでは、2年しか経過観察期間がないので、その辺りについては。昔、G-CSFを使っ たアロの造血幹細胞移植の承認を厚労省がした時には、日本造血細胞移植学会ですか、学会が、登録 ドナーをずっとフォローしていきますというように、大変協力されていました。今回の場合は、膵島 移植の研究会などがそういう長期のフォローアップをするとしておかないと、短期については、たぶ ん全然問題ないと思いますが、みんなが忘れたころに何か起きる準備をしておくほうがいいのかなと 感じました。 ○猿田座長  おっしゃるとおりで、いまFDAの特に問題になりました免疫抑制剤を皮膚へ塗り込む形での治療でも、 かなり使って起こっています。ですから、よほどその点に注意していこうということで、先生がおっ しゃったとおりです。いま、これを見ると、2年ぐらいのところになっていますから、そこのところも もっとよく観察していただくということで。 ○藤原構成員  FDAのガイダンスでは、シングルプロトコールというか、免疫抑制剤のレジュメは1つにしなさいと 書いていますが、その辺は、皆さんがしっかり検討していただければいいかなと思います。  最後の1点は、施設のクオリティのところ、後ろのほうの手技などのところを見たのですが、阪大病 院では、経験者でも、1年しか経験がないとかと記載してあって、膵島移植研究会のメジャーメンバー ではないようなのに、どうして入っているのかなと。 ○猿田座長  松山先生がおっしゃったとおりですね。温度差がかなりあるのです。ですから、それは やはり指摘していただいて、ありがとうございました。ほかにございませんか。いま先生 方からご指摘いただいたとおりで、その辺りを、柴田先生には大変ご迷惑をおかけしまし たが、そこのところでもう1回よろしくお願いしたいと思うのですが。では、そういった 形でここは条件付き、という形でしっかりとしたプロトコールにしていただいて動かすと いうようにしたいと思います。そういった形で認めていただくということでよろしいでし ょうか。どうもありがとうございました。ご協力いただきありがとうございました。柴田 先生、どうもありがとうございました。  それでは、次の議題に移りたいと思います。事務局から次をお願いいたします。 ○事務局  事務局よりご説明させていただきます。では、資料2-1をご覧ください。「試験計画を変更された技 術について」。整理番号010、高度医療名、経カテーテル大動脈弁留置術です。審査担当の構成員は、 山本構成員、山口構成員、佐藤構成員、一色技術委員、以上です。 ○猿田座長  それで今日は、山本先生はお休みですね。 ○事務局  はい。山本構成員より意見書をお預りしておりますので読ませていただきます。意見書としまして。  「経カテーテル大動脈弁留置術」に関する研究計画書変更申請について、別紙評価表のごとく評価 した。研究計画の大きな変更点は、被験者の選択除外基準の変更であり、その他は軽微な変更であっ たため、実施体制、倫理的観点への影響は特段ないと考えられた。プロトコールの内容については、 治療計画、有効性・安全性の評価方法、モニタリング体制、有害事象への対処、記録の管理・保存、 COI、個人情報保護への影響は特段ないと考えられた。症例数の設定への影響について、申請者に尋ね たところ、評価表「総評」コメント欄に記載した内容の回答を得たため、症例数の変更は不要と考え、 「適」と評価した。なお、研究実施前に変更後の研究計画書に対する施設の倫理審査委員会の承認が 必要であるが、既に審議予定があるとの回答であったため、本会議で「適」と判断した後に倫理審査 委員会で承認されることで特段の問題はなく、本会議の席上での確認は不要と考えます。 ○猿田座長  ありがとうございました。あと、山口先生。 ○山口座長代理  山本先生のこの書かれたとおりで、選択除外基準が変更されましたが、総評のところに向こうのコ メントがございますが、症例数は特に変わらないということで、このままでよろしいということでい いかと思います。 ○猿田座長  ありがとうございました。あと、お手元に佐藤雄一郎先生からのコメントと一色先生からのコメン トがあります。事務局の方、これを読んでいただけますか。 ○事務局  はい。では読ませていただきます。まず、佐藤構成員からの意見書です。  経カテーテル大動脈弁留置術について。本申請は、既に承認済みのものについて対象となる患者の 範囲を拡大するものですが、特に倫理的に問題はないものと考えます。とりわけ、本変更によって、 同意書及び同意取得手続、補償内容、苦情相談には、影響はないものと考えました。  佐藤先生については以上です。続いて、一色技術委員の意見書を読ませていただきます。  本再評価では被験者の選択除外基準の変更が加えられたが、この変更が実施体制に与える影響は、 ほとんどないものと考えられる。本医療技術の有用性については、既に海外にて確立しているところ であり、また、実施医療機関の体制についても、特段の問題点を認めない。実施責任医師等の体制に ついては、前回の申請時には当該手術の経験症例が皆無であったが、再申請までの間に2症例が実施責 任医師等によって施行された。これらを総合的に考慮して、実施体制として問題はないものと判断す る。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。ただいま各先生方のご意見、それから、今日は山口先生にもおい でいただいており、ご意見をいただきましたが、そういったことで「適」でいいだろうということで すが、どなたか委員の先生方、ご意見はございますか。そのあと、あれから2例の症例が増えたという ことで??先生、何かございますか。 ○猿田座長  ご意見がないようでしたら、この技術に関しましては、本日で高度医療としてお認めいただいたと いうことにさせていただきます。どうもありがとうございました。  続きまして、条件付き適評価を受けた技術ということで、やはり事務局からご説明いただけますか。 ○事務局  では、資料3-1をご覧ください。「条件付き適評価を受けた技術について」ということで、整理番号 006番、HLA-A24陽性のドセタキセル不適格再燃前立腺がんに対するテーラーメイドがんペプチドワク チン療法についてです。審査担当構成員ですが、伊藤構成員、猿田構成員、田島構成員。以上です。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。これも、この間いろいろ議論させていただいて、そのあと、特に こういった治療法の効果をどう読むかという形で、この委員会としてもいろいろな議論をさせていた だきました。伊藤先生、まとめて説明していただけますでしょうか。 ○伊藤構成員  再提出された資料を見る限りにおいて、随分よくなっていると拝見いたしました。統計を見ていた だいている柴田先生から、もう少し明確にしたほうがいいのではないかという点はいくつかいただい ていると思っておりますが、それは、プロトコール上少し直していただければ、この場で審議をする ほどの案件ではないのではないかと思ったような次第です。 ○猿田座長  適応はどうしますか、前立腺がんと。 ○伊藤構成員  やはり前立腺がんだけでまずはやっていただいてというところだと思います。いまのままでは、脳 腫瘍に関して提出された資料で評価するのがちょっと難しいのではないか、と思います。 ○猿田座長  ありがとうございました。この間のときも実はその議論をさせていただいて、この提出されてきた 施設におきましては、前立腺がんに関しましてはもう100例を超えた検討がなされているということと、 それから、特にそのあといろいろな、この施設の検討で、前立腺がんに対する効果の評価はなかなか 難しいのですが、1つの指標として、PSAは確かにかなりの例数でうまくいった例で減っています。こ れに対して神経膠芽腫のほうは症例数がまだそんなに多くないということで、実際にその効果を見る 判定がなかなか難しいということで、まずは前立腺がんのほうだけを認めてやっていくのはどうだろ うかと。この前のときもそうだったのですが、それを今度こちらのほうでプロトコールを直して出し ていただいてということで伊藤先生からいまご意見をいただいたということです。一応前立腺がんだ けを認めていこうということです。どなたか、ご意見はございますか。これも前に議論をさせていた だいたとおりということで。それでは、そういう形でお認めいただいたということにさせていただき ます。委員の先生方、よろしいでしょうか。それでは、事務局のほうから。 ○事務局  ご連絡いたします。次回の日程ですが、1月29日を予定しております。詳細等が決まりましたら、 追ってご連絡いたします。そして、過去の高度医療評価会議につきまして、条件付き適となった技術 がまだ3件残っていますので、ご連絡させていただきます。重症性虚血性心疾患に対する低出力体外衝 撃波治療法、大腸がんに対するセプチドワクチン療法、進行食道がんに対するペプチドワクチン療法、 以上の3点がまだ条件が修正されず、残っている状態です。 ○猿田座長  ありがとうございました。特にペプチドワクチン療法に関しましては、その効果の判定ということ でだいぶ議論をさせていただきました。この会議でもその取扱いをどうしようかということで議論を させていただいたときに、最先端の医療ですからどうしてもファーストインマンに近いものがあるけ れども、大切なことは実施機関でしっかりやってもらう、実施機関が非常に重要であると。一方、こ ういったことをここできちんと議論しておかないと、民間でいろいろな形でやられているものがある ということもありまして、ここの委員会としては、そういったところを特定の機関でしっかりやるな ら安全だろうということと、非常にしっかりした審査をしてやっていこうということなどを議論させ ていただきました。そういったことを踏まえて、これからまたいくつか出てきたら今のように検討さ せていただきたいと思うのですが、事務局で、ペプチドのことに関して何かご意見があれば。よろし いでしょうか。 ○事務局  特にございません。 ○猿田座長  よろしいでしょうか。委員の先生方、どなたか、ほかにご意見はございますか。今日は非常に貴重 なご意見をいただきまして、新しい技術に関しましてもお認めいただいたということですが、もしご 意見がなければ、これで終わりたいと思います。技術委員の先生方、お忙しいところ、ありがとうご ざいました。だんだん難しい症例が出てくるかと思うのですが、委員の先生方、どうかよろしくお願 いいたします。本日はご協力、どうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 TEL 03−5253−1111 高度医療係 松本 内線2589