09/12/08 第37回社会保障審議会医療保険部会議事録 第37回社会保障審議会医療保険部会  議事次第                                 日時 平成21年12月8日(火)13:57〜16:01                場所 はあといん乃木坂 ○糠谷部会長 それでは、大体定刻になりましたので、ただいまより第37回医療保険部会 を開催いたします。  委員の皆様には、本日は御多忙の折、お集まりをいただきまして御礼申し上げます。  本日の委員の出欠状況について申し上げます。本日は、大谷委員、岡崎委員、神田委員、 樋口委員、山本委員より御欠席の御連絡をいただいております。  また、岩村委員は若干遅れてお見えになるということでございます。  続きまして、欠席委員の代わりに出席される方についてお諮りいたします。大谷委員の代 理として、菅原参考人の御出席につき御承認をいただければと思いますが、いかがでしょう か。  御異議はないようでございますので、そのように取り図らせていただきます。ありがとう ございます。  それでは、議事に入らせていただきます。最初の議題といたしまして、「協会けんぽの財 政問題への対応策について」を議題といたします。本議題につきましては前回御議論いただ いたところでございますが、本日も引き続き御議論いただきたいと思います。  それでは、事務局より資料の説明をお願いします。その際、前回お求めのあった資料につ いての説明も合わせてお願いいたします。 ○吉田課長 保険課長でございます。お手元の資料の束の中、一番上にございます資料の1 と右肩に書かせていただいております資料と、資料の中ほどから後ろの方にかけまして、前 回提出させていただきました2つの資料、具体的には本日の資料番号では参考資料の1「協 会けんぽの財政問題への対応策について(案)」という資料と、参考資料の2「参考資料」 という形で前回出させていただいた資料の2種類、この3つの資料をもって、まず冒頭御説 明をさせていただきたいと思います。  本日、新しく用意をさせていただきましたのは資料1でございますが、この御説明に入る 前に2点、前回の資料に関して補足を申し上げたいと思います。  参考資料1、前回お示しを申し上げました「対応策(案)について」という資料の2ペー ジ目をごらんいただければと思います。前回、御議論をいただく際に、私ども事務方が提案 しております支援金を総報酬割にした場合、どのように各保険者間に財政影響が出るかとい うのをこの資料の2で御説明をさせていただきました。  表にございます一番下、負担額の変化ということで、協会けんぽに三角の2,500億等々書 いてございますが、これは注に書かせていただきましたように100億単位の端数処理という ことで単純な足し算が合いません。どういう形になっているのかという御照会がございます ので、若干口頭で補足をさせていただきます。  もう1けた取りますと、協会けんぽにつきましては医療保険そのほかに船員保険もござい ますが、合わせて三角の2,470、健保組合につきましてプラスの1,430、共済組合につきまし ては1,040、三角の2,470、プラスの1,430、プラスの1,040という数字が10億円までの数字 でございます。  ただ、重ねて申し上げますように、これは本来は計数全体として100億円単位ですので、 ここだけを10億単位までにするというのはいかがかと思いますけれども、端数が合わない 嫌らしさということもございましたので今般補足をさせていただきました。これが1点でご ざいます。  それから2点目、もう一つの参考資料の2、前回お配りをさせていただきました資料編の 方をめくっていただきまして2ページ目をごらんいただきたいと思います。今回提案させて いただいております支援金の総報酬割によって、それぞれの支援金に相当する所要保険料が 変わるということを御説明申し上げましたが、お手元の資料2ページ目、表題としては「協 会けんぽと組合健保と共済組合の比較」という表でございました。一番下に前回お示しした 表には付いてございませんでした、それぞれの制度の保険料の数字を今回書かせていただい ております。  協会けんぽにつきましては、全国平均が82‰、ただし県別になっておりますので高いと ころ、低いところ、そこにごらんいただきますような数字になっておりますし、健保組合に つきましては、1,497の単純平均が73.80、これは20年度の数字と承知をしております。共 済組合につきましては、平均70.45という数字になっているというのがまず1点でございま す。 ただ、特に真ん中の健保組合の数字につきましては、その下にばらつきがございますが、実 際には1,497の分布がどうなっているかということによって、この持つ数字の意味が変わっ てくるということでございまして、お手元の資料の4ページ目をごらんいただければと思い ます。 前回、このグラフも付けてございましたが、時間の関係上説明を省略させていただきました。 健保組合19年度、あるいは20年度の決算見込みの数字をここに整理させていただいており ますが、青い棒グラフ、20年度全体の単純平均が先ほど申しました73.80‰ということにな ってございますが、ここでごらんいただくようなばらつきになっているというのが1点。  特に右側の方に線が引いてございまして、注書きでいわゆる協会、政管の82‰を超えて いる部分について別掲してございます。20年度においてこのように健保組合が276ある、 というのが全体の健保組合の料率を見たところのばらつきだというふうに承知しておりま す。以上、2点が前回の補足でございます。  本日、提出させていただきました資料1について御説明をさせていただきたいと思います。 前回、種々の御議論を踏まえまして、私ども提案させていただいております支援金を総報酬 割制という形に改めるに当たって、具体的な論点として2点ほど本日挙げさせていただいて おります。  お手元の資料の1点目に書かせていただいておりますように、1つは総報酬割を行う期間 についてということでございます。丸が2つございますが、前回の御議論にもいろいろござ いましたように、私ども提案させていただいております趣旨といたしまして、1つ目の丸の 2行目に書かせていただいておりますように、現下、協会けんぽの非常に切迫した状況とい うことも私どもとしてはどうしても踏まえなければならないと思っておりますので、総報酬 割を実施させていただく場合には来年度からではないかと私どもとしては考えております。  2つ目の丸といたしまして、一方、前回も種々御議論ございましたように、そもそも総報 酬割という議論については高齢者医療制度との関係が非常に密接であるということがござ いました。今、改革会議において見直しを行っておりますけれども、前回のこの会議におい ても御報告を申し上げましたように、今その改革会議が念頭に置かれているスケジュールと いたしましては、議論があり、法律・制度改正ありということで、25年4月からの新制度 移行という形を念頭に置いた議論がされていると承知をしております。そういう意味では、 この総報酬割につきましても高齢者医療制度の見直しまでの間というのを一つの目途に、具 体的な在り方として検討することとしてはどうかというのが本日の論点として提示をした ところでございます。  2つ目につきましては「国庫財源(2,700億円)の活用について」ということで書かせて いただいております。先ほども御確認いただきました先回提出いたしました資料、具体的に は本日の資料の参考資料1をもう一度御確認いただければと思います。先ほど補足をさせて いただきました数字の表が載っていた資料でございます。  前回御説明いたしました参考資料、本日の参考資料1で今回提案させていただいておりま す総報酬割を実施することによる各保険者間への負担額の変化と合わせまして、現在、協会 けんぽの支援金相当に入っております2,700億円は、総報酬割に伴い廃止の見込みというこ とを御説明申し上げ、前回はそれを活用して協会けんぽに対する国庫補助を拡充するという 考え方をお示しいたしました。  本日の資料2、「国庫財源(2,700億円)の活用について」というところに書かせていただ いておりますのは、このような考え方の中、協会けんぽと同様に非常に財政的に苦しい健保 組合があるという御指摘もありますし、私どもも承知をしておりますので、この2,700億円 を協会けんぽへの13%相当分の国庫補助を拡充した上で、その一部をもって健保組合の支 援というものが考えられないかという御提案でございます。  支援は2つございます。1つは、負担増となる保険者の方々に対する負担軽減措置という ことでございますし、もう一つは前期の納付金の負担に着目した財政支援ということでござ います。  1つ目の負担増という点につきましては、そこに2つ、ポツとして2行書かせていただい ておりますが、今回の総報酬割の導入により特に上昇する負担が増える保険者の方々の緩和 という視点と、2つ目にございますように、一方で総報酬割という考え方は負担能力に応じ た負担をお願いするということでございますので、ある意味で負担能力に応じた負担で緩和 するということについてどう整理するかということがございますけれども、実際に負担増が 生じているということに着目しての緩和措置というものをここでは整理しております。  具体的には、お手元の資料の次のページにイメージを書かせていただいております。この 真ん中の図をごらんいただきますように、前回も御提案申し上げましたが、これは支援金に 相当するための必要保険料率が縦軸になっており、横軸はそれぞれの保険者の方々の加入者 1人当たりの報酬額という分布をグラフにしてございます。現在は点線になっておりますが、 斜めの右下がりの線、加入者割ということでございますので比較的報酬の高いところから低 いところに右下がりの直線として負担が生じているわけでございますが、今回提案させてい ただいております総報酬割というのはこれが報酬に応じてということになりますので、所要 保険料率という意味ではまっすぐの平行線に変えるということを前回も御報告を申し上げ ました。  そういうことになりますと、この図で言えば右側の比較的加入者1人当たりの報酬の高い 保険者さんにしてみれば、斜めのラインの下のところから平行線まで上がるということで、 右に注書きをさせていただいておりますが、一番高い上がり幅の保険者さんにしてみると、 このAという数字に書いておりますけれども、特に緩和を生じさせなければこれだけの上が り幅という御負担増を生じるということでございます。  これを、例えば一定の率という形にし、その最大保険者の方の増加の上限をここで言えば aという形にさせていただければ、このグラフの右側、斜め線が平行ラインになることによ って矢印が上に向く、負担が増える保険者の方々の負担を一番大きい保険者に着目した一定 の率を上限とするというような緩和の仕方があるのではないかということを考えた次第で あります。  具体的にその下にシミュレーションをさせていただいております。一番右側の上昇幅の大 きい保険者さんの上昇幅を例えば2分の1、この下のマトリックス表の一番右側の列でござ いますが、緩和前、A%の2分の1にさせていただく。あるいはそれを3分の2にする、4 分の3にするという選択肢をシミュレーション上仮置きさせていただいておりますが、21 年度の賦課ベースの推計に基づけば、2分の1に一番高いところをさせていただくことによ って、この三角の面積になる緩和措置の対象となります保険者さんが97、これに関しての 所要額、非常に機械的な計算ではございますが、88億円というふうに私どもとしては念頭 に置いてございます。  なお、一番上の箱に、後期支援金の総報酬割導入による影響を前提としてまず御紹介いた しますと、今回の措置により負担が増える保険者さんが925保険者、そのうち健保組合さん が852、逆に負担が軽くなる保険者さんが637、そのうち健保組合さんが633というふうに、 この21年度の賦課ベースでのシミュレーションでは見込んでいるところでございます。  なお、この表の注、このグラフの注にも書かせていただいておりますように、今回提案さ せていただいております総報酬割の導入による負担増の試算におきましては、いわゆる前期 高齢者の対象になります負担調整につきましても、支援金の負担は変更になるということで 試算をしていることを付言させていただきます。  手戻りしていただきまして、今の資料の1ページ目でございますが、2,700億円を活用し た負担の軽減措置、財政支援措置としての2つ目が(2)でございます。「前期納付金の負 担に対する財政支援」ということで書かせていただいております。総報酬割の導入により、 後期高齢者の支援金の負担が平準化される中で、その下の参考に書いてございますが、現在 被用者保険の拠出金負担に着目した財政支援として、高齢者医療運営円滑化等事業という支 援措置を講じておりますが、このようなものも念頭に置いて、結果、加入者割になっており ます前期納付金の負担に着目した支援策というものを拡充できないかというのが提案の2 つ目でございます。  これもイメージでごらんいただければと思いまして用意したのが3ページ目でございま す。現在、高齢者医療運営円滑化等事業という形で行っておりますものは、1つ目の箱の中 にございますように前期納付金、後期支援金、退職者給付拠出金など、保険者さんから見た ときの拠出金全体の負担が非常に当該保険者の総報酬から見たときの保険料率、私ども財源 率という言い方を使っておりますが、その拠出金を負担するに当たっての保険料所要分が非 常に重いということに着目した支援を実際行っております。  参考のところに21年度ベースで、細かいところは後ほど御高覧いただければと思います が、364の保険者さんに対して162億円程度の支援を行うということを行っております。 その下の図の左側をごらんいただければと思います。イメージでございますが、保険者のA、 B、C、Dという方がおられたときに、この保険者が御負担いただいております拠出金は3 種類、一番下に書いてございますのが退職拠出金、このグラフは拠出金部分の所要保険料率 というものを縦軸にさせていただいておりますので、既に総報酬割になっております退職拠 出金につきましては、どの保険者さんにつきましても0.3%というフラットな御負担をお願 いしている。 一方、加入者割になっております後期支援金と前期納付金がそれに加わりますと、結局、加 入者割になることによって、それぞれ保険者さんの間には所要の保険料率に対してのインパ クトが異なることになり、特にこの図で申し上げればDの保険者の方、あるいはCの保険者 の方にとってみれば、平均に比べて非常に重い拠出金負担をお願いしているという実態がご ざいます。 この重い部分に着目して、いわばこの左側の棒グラフの高いものに着目して支援を行ってい るというのが今の円滑化事業でございます。  これを、今般提案させていただいております総報酬割を導入した後の姿といたしまして、 箱は矢印の下に2つ書かせていただいておりますが、結果、総報酬割を導入することにより、 後期支援金の負担が平準化される。ということはばらつきは加入者割になっております前期 の納付金によるばらつきになるということなので、そこに着目した負担軽減策に特化する。 一方、1ページ前、先ほどのグラフで三角形の形での負担軽減ということを少し御提案申し 上げましたが、先ほど申し上げた部分も合わせてこの事業の中で対応していくということも 考えるということを、この資料は提案させていただいております。 イメージといたしましてはその下のグラフ、3ページ目のグラフの右側になりますが、総報 酬割を導入することにより、一番下、もう既にならされております退職拠出金0.3相当とい う形で各保険者均衡しておりますが、それに加えて後期支援金につきましても1.8でならさ れる、均衡するということになりますと、結果、差が出ますのは前期納付金の差ということ になりますので、引き続きこの拠出金の高さの高い保険者の方に支援をするという考え方は、 イコール前期の納付金が非常に重い負担をされている保険者の方に、そこに着目した支援を 行うという仕組みに改まるということだと私どもとしては考えております。  このような形に円滑化事業を位置づけとして変えると同時に、今後財政当局などとも相談 をさせていただき、政府内で調整をした上で、現在のこの162億という支援措置をより強化 する形で何らかの形の支援を講じたい。  以上、1つ前の2ページ目でごらんいただきました、今回の総報酬割の導入により直接的 に負担が増える保険者の方々に対する支援措置と、既存支援措置を拡充することにより、よ り前期の納付金の御負担の重い保険者の方々に対する支援措置を拡充するという2つの提 案をもって、本日説明をさせていただいております。  資料の説明は、以上でございます。 ○糠谷部会長 それでは、続いてお願いいたします。 ○伊藤課長 国民健康保険課長でございます。  資料の2をごらんいただきたいと思います。前回、対馬委員の方から、国民健康保険組合 の国庫補助につきまして御要望がございましたので、資料を説明させていただきたいと思い ます。  資料2の1ページでございます。まず国民健康保険組合とは何かということでございます が、国保組合とは同種の事業、または業務に従事する従業員を組合員として組織された国民 健康保険法上の公法人という位置づけでございまして、被保険者は組合員とその世帯に属す る者でございます。  平成19年度末において、医師、歯科医師、薬剤師関係の国保組合は被保険者が70万人、 建設関係は213万人、その他が101万人、計165組合で被保険者数は384万人となっており ます。  2ページをごらんいただきたいと思います。2ページは国民健康保険、それから政管健保 と、今は協会けんぽとなっておりますが、組合健保、これらを比較したものでございます。 1世帯当たり保険料調停額というところを見ていただきたいと思います。市町村国保が1世 帯当たり保険料調停額が14.3万円であるのに対しまして、国保組合は28.5万円、政管健保 が15.8万円ということで、国保組合の保険料は高い水準にあるということが言えるかと思 います。  その下でございますが、公費負担分でございます。この公費負担というのは、国、都道府 県、市町村による負担ということでございますが、市町村国保はおおむね給付費等の56% 程度でございますが、国保組合は給付費等の32%から55%、これは財政力に応じて負担さ れることになっておりまして、総じて言えば市町村国保よりは公費負担は低いということが 言えると思います。  それから、3ページをごらんいただきたいと思います。3ページは、国保組合に対する国 庫補助の現状、仕組みでございます。まず、真ん中に定率分がありますけれども、給付費等 に対しまして32%の定率国庫補助がなされている。これは原則でございますが、その下の ※印でございます。  しかしながら、平成9年9月以降、健康保険の適用除外承認を受けて加入した者にかかる 定率分の補助率は、協会けんぽの補助率を勘案して決まるということにされておりまして、 若人の医療給付費は13%、後期高齢者支援金及び介護納付金につきましては16.4%に引き 下げられております。この結果、下の注1の3行目に矢印がありますけれども、年々こうい った加入者が増えてきているため、国保組合に対する実際の定率分の補助率は年々低下して おりまして、現時点では平均的には32%ではなくて、30%程度になっているということで ございます。  それから、この国保組合のうち、一番左に全国土木建築国保組合というものがございます。 ここにつきましては、平成9年9月以前からの加入者の家族に対する補助率は32%でござ いますが、300人以上の事業所につきましては本人、家族とも今、補助はございません。  次に、定率分の上に組合普通調整補助金というのがございます。これにつきましては、組 合加入者の所得水準に応じて10段階の補助率に分かれておりまして、一番左の方は所得が 高い組合、右の方は所得が低い組合となっておりますけれども、一番所得の高い組合であり ます医師、歯科医師等の国保につきましては、この組合普通調整補助金の補助率はゼロとな っております。更に、その上に組合特別調整補助金というものがございますが、これは災害 とか、いろいろな国保組合の特別な事情に応じて配分されるものでございます。  4ページをごらんいただきたいと思います。4ページは参考でございますけれども、「平 成18年度における国保組合への国庫補助の見直し」についての資料でございます。国保組 合の財政力に応じて交付されます財政調整のための普通調整補助金の配分方法につきまし ては、より財政調整効果を高める方向で平成18年度に見直しを行われておりまして、補助 の区分が5段階から10段階へと増やされております。また、その際に矢印にありますよう に、所得の高い医師や弁護士等の国保組合の補助率はゼロとされたところでございます。以 上でございます。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。  それでは、ただいまの2人の御説明につきまして御質問、御意見等がございましたらお願 いいたします。どうぞ。  では、対馬委員。 ○対馬委員 3点ほど質問したいと思います。  1点目は、資料1の基本のところに絡むと思うんですが、冒頭でも協会けんぽに際しての 切迫した状況ということですけれども、具体的な対応策というのはこの総報酬割については かなり個別具体的に書かれているわけですが、前回の会議でも3つの方策があるという資料 が出されたと思うんです。国庫補助率の引上げについては、前回の会議では後期高齢者に対 する16.4%相当分のところから引きはがして若人の13.0%のところを増やすということで、 全体的に特に変わりはないんだというお話がありましたけれども、その後の状況はいかがな のか。やはり拡充ではなくて変わらないのか、ないしは減るということはないのかというの が1点です。  もう一つは、複数年度での準備金不足への対応を図っていくということでしたけれども、 これは一体どうなっているのかということであります。  それから、単年度についてのお話を伺いましたけれども、今後一体中期的にはどうなんだ ろうか。ここは全く見えない状況であります。協会けんぽとしての中期的な見通しをこの場 で議論することは必ずしも妥当とは思いません。例えば運営委員会とかいろいろありますの で、それはそういうことかと思うんですけれども、ただ、協会けんぽの財政が悪いと私ども の方にくるということであるならば、単年度の議論をしていてもしようがない。また来年度、 再来年度どうなんだということですので、そこの見通しもお示しいただければというのが1 点目です。  それから、2点目です。これも、資料1の丸の2つ目に関わるところで「高齢者医療制度 の見直しまでの間」と言われましたけれども、高齢者医療制度改革会議での議論をこれから やっていくわけですが、これまでの高齢者医療制度の議論、それから恐らくこれから行われ る改革会議での議論、この辺りにつきましても、恐らく高齢者というのは非常に医療費がか かりやすくて、しかも所得的には必ずしも恵まれていない方が多いわけですから、高齢者に 対する国庫補助をどうしていこうかというのが一つの争点になるんだろうと思うんですね。  そういう中で、今回の提案というのは高齢者医療そのものではありませんけれども、若人 の方から高齢者、特に後期高齢者に対して支援する。ここのところもちょっと負担が大変だ ろうということから、いわゆる老健制度、昔の老人保健制度でも特に16.4%にされていたと 思うんですね。若人は13.0です。そこの高齢者絡みの16.4%をやめてしまうというところ が、先ほど申し上げました高齢者医療制度に公費を投入していくべきではないかという議論 とどう絡むんだろうか。そこはやはりただ単に高齢者医療制度ができるまでの間の当面の対 応ということではなくて、全体の大きな枠組みの中で本当に損はないのかどうか。ここをき ちんと議論をするべきではないのかというのが2点目です。  最後は国保組合の問題になりますけれども、これの説明がありました2ページ目のところ で、国庫補助が市町村国保、それから国保組合等々書かれているんですが、市町村国保全体 2兆8,000億強ですね。これを4,600万人強で割りますと、1人当たり6万円ぐらいになる んですね。国保組合の方ですけれども、その隣に下から2番目で3,027億円とありますけれ ども、これは下の注の7にありますが、これ以外にも国庫補助があるということですから、 恐らく3,300億円ぐらいになるんだろうと思うんですけれども、仮に3,300億円を384万人 で割りますと8万円から9万円ぐらいになると思うんです。  確かに市町村国保に対しましては自治体の助成と言いますか、補助等もありますから、一 概に単純に比較はできませんけれども、しかし、市町村国保は非常に厳しく、無職の人たち が半分以上だといったようなところに対して今、計算しますと6万円だ。国保組合は先般申 し上げましたけれども、医師、弁護士、それからゼネコン、こういった方々のところが8万 6,000円も出されているというのは、やはり国民感情的になかなか納得できかねるところで はないかということが1点です。  それからもう一点は、被用者保険内での費用負担の見直しという議論があるのであれば、 まさに国保制度の中の市町村と国保組合、この見直しというのはなぜ出てこないんだろうか。 この辺りの議論があってもおかしくないのではないか。これが3点目でございます。  以上、よろしくお願いいたします。 ○糠谷部会長 それでは、お2人から質問に答えてください。 ○吉田課長 保険課長でございます。まず、いただきました御質問の2つの点のうち1つ目、 協会けんぽの財政対策3本柱という形で前回提案したほかの2つがどうなっているかとい う御質問だったかと思います。  国庫補助の引上げ、現在当分の間という形で13%になっておりますものを引き上げると いうことにつきましては、私どもとして先回も申し上げましたが、別途政府内部において財 務省との間で年末の予算編成に向け、その必要な予算の確保に向けて交渉を行っているとこ ろでございます。  率直に申し上げて政府全体、極めて税収が当初見込んでおりました46兆円から38、37と いう数字もメディアには出ておりますが、厳しい中、この交渉は非常に厳しい状況にはござ いますが、政府全体の中での要求ということについても並行して行っております。  2つ目でございますけれども、中期的な財政運営という形によって単年度の財政均衡の特 例を設けようという点につきましては、現在協会健保につきましては5年間の収支見通しを 立てて運営をするという枠組みが法律上に盛り込まれております。 ただ、現実には昨年の10月に政管健保から公法人化したばかりでございまして、今後この 5年間の収支見通しに基づく運営というものを具体化せんとしていたときに、現下における 極めて厳しい収入の落ちをはじめとする財政悪化ということでございますので、今回提案さ せていただいております対策の1つとしては、5年間の財政期間をもってして収支均衡する、 単年度ではなくて、5年後において収支が均衡するような中期的な財政運営、保険料の引上 げというものを考えていくということを軸に私どもとして考え、また協会けんぽの中におけ る運営委員会の議論とも合わせながら今、検討を進めているところでございます。  まさに対馬委員からおっしゃっていただきましたように、中期的な見通しについては運営 委員会においてもいろいろと今後具体的な係数を持ってシミュレーションがされると承知 をしておりますが、私ども制度を担当しております立場において、これまでの経緯から承知 している範囲で申し上げれば、例えば16.4%に仮に国庫補助を来年度から引き上げる。5年 間の収支均衡という形で行うというような手はずを講じましても、5年後におきましては今 の法定上限による10%を超える料率が推計される。 その間、経済状況として、あるいは賃金の伸びをどう見込むかによっていろいろなバリエー ションが出てこようかと思いますが、例えば今後賃金が伸びないという場合には10%を超 えるというような料率まで段階的に引き上げることを前提に、5年間の収支均衡という中期 的な財政バランスを取っていくことが考えられるのではないかというふうに非常にラフに は考えておりますが、その辺りは当然ここでの御議論と並行しまして、協会内部における運 営委員会議論とも連携をしながら、制度所管部局として判断をしてまいりたいと思っており ます。  それから、大きな2つ目で、改革会議において今後高齢者医療制度における国庫補助が争 点の1つではないかという中で、今回の提案はという御趣旨の御質問があったかと思います。  私どもとしましては、まさに改革議論において高齢者医療の在り方もという御議論もあり ますが、基本的にはその費用の負担の分かち合い方について御議論がこれから始まる。それ も、今の後期高齢者医療制度を廃止した後の姿としてどのようなことがあり得るのかという 御議論が始まるというふうに承知をしておりますが、先回もこの場において御議論がありま したように、それまでの間においても足下の協会けんぽが揺らいでいる中で、被用者保険間 における負担の分かち合いについて総報酬というものを提案させていただいたところでご ざいます。  ですから、この場で私が申し上げるのが適当かどうかはありますけれども、今後改革議論 における議論においては、御指摘の公費の位置づけというものも議論の一つかという御指摘 かと思いますし、それ自身は私どもとしても論点として挙げ得ると思っておりますが、今般 提案させていただいておりますのは、その間においてもこのような支援金の持ち合い方につ いて総報酬割ができないかという御提案でございますので、そこについては御理解を賜れれ ばと思います。  まず、冒頭2点については以上でございます。 ○伊藤課長 国民健康保険課長でございます。国保組合の国庫補助でございますけれども、 先ほど資料2の2ページの資料に関しまして、国保組合については3,000億円にプラスして 若干まだ補助があるではないかということでございますが、80億円ほど補助がありますの で、3,100億円程度ということになります。  一方で、市町村国保には下の※印の6に書いてありますように、国、都道府県、市町村に よる法定の負担のほかに、市町村一般会計からの法定外の繰入れというのが3,800億円、そ れプラス地財措置で1,000億円というようなことで4,800億円以上のお金が入っております。 そういうことを考えますと、国保組合等、市町村国保では、1人当たりの公費負担額という のはそんなに変わらないのではないかなと考えております。  それから、国保の中で、市町村と国保組合でなぜ財政調整をやらないのかというお話でご ざいましたけれども、今回の被用者保険のグループにおきます財政調整は加入者数に応じて ということから総報酬制に変わるということでございますが、市町村国保あるいは国保組合 は基本的にはサラリーマンでございませんので、なかなか報酬で調整をやるというわけには いかない。一部、高額医療費などにつきましては再保険事業という形で財政調整が行われて おりますが、基本的には所得に応じた財政調整は国庫補助の増減によりまして行われている ということでございます。 ○対馬委員 簡単にさせていただきます。最初の2つ目の質問の話ですね。高齢者医療制度 改革会議の議論ですが、そこはおっしゃるようなことだろうと思うんですね。私はそのこと 自体を申し上げたのではなくて、今回高齢者、特に後期高齢者に対する国庫補助、協会けん ぽに対するものですね。そこをやめて若い方に回すというのは、全体的に弱い層に対して国 庫補助を付けていく考え方としてどうなんだろうかと、こういう質問をしたわけです。ここ にお答え願いたいというのが1点です。  それから、国保組合について今、説明がございましたけれども、調停額、総報酬ではなく て所得でやっていますのでということで、確かにこの資料にも所得の差が書いてありますが、 しかし、同じ国保ですからまさに所得でもって差を調整するという考え方があってもおかし くないんじゃないでしょうか。なぜ、我々だけが総報酬制をもってお互いに助け合いをやっ て、そして国保制度という大きな枠組みの中において、市町村と国保組合が全然違うんだと いうことはちょっと理解できないんです。 ○神田課長 公費負担の点のお尋ねでありますけれども、対馬委員がおっしゃられるように、 高齢者については所得が一般的には低くて医療費がかかるということから、そもそも制度の 本体におきましては公費を5割投入する。12分の4の国費、それから12分の1の県費と市 町村の公費負担が入っている。そういう意味では、5割の公費をまず投入しているというこ とかと思います。  今、議論になっておりますのは、若い世代からの仕送りにどれだけの公費を投入するかと いう観点の議論かと思っているんです。そういう意味では、委員御指摘の点については既に 制度本体に5割の公費を入れる形にしまして、これは老人保健制度においては当初3割の公 費負担であったわけでありますけれども、年齢層の引上げに応じまして5割に公費を重点化 するということで公費を引き上げてきたという経緯がございます。  ただ、若い世代から高齢者医療制度に仕送りをする公費についてどのように考えるのかと いうことでありますけれども、これは従前は16.4%という同じ割合で、その中に若い世代か らの仕送りと、それからその若い世代の給付そのものには同じ公費負担が入っていたわけで ございますが、平成4年当時、非常に積立金もあったということから、暫定的に若い世代の 部分の公費負担を引き下げたという経緯があるということかと思っております。  そういう意味で、今回その部分を被用者保険内の助け合いによって助成をすることによっ て、所得の差によって、一般的には協会けんぽの所得が低いということによってこの16.4% の公費が入っていたわけでありますので、若い世代の仕送りから入っていた所得の格差によ る補助部分については必要なくなるのではないか。その部分を若い世代に充当してはどうか ということでありますので、基本的に高齢者が医療費がかかりやすいことによる公費という のは、5割しっかり別個に入っておりますので、若い世代からの仕送りに関する議論かと思 っております。  それから、市町村国保のところであります。この加入者数は4,700万人でございますけれ ども、予算の方が21年度で加入者数が20年末ということになっておりますが、市町村国保 はここから1,000万人近くの方が後期高齢者医療制度に移行しておりますので、現状で言え ば3,800万人ぐらいということで分母が少し人数も違っておりますし、先ほど申し上げたよ うな公費負担部分で県費市町村の部分が入りますとこれはかなり変わってきますので、精査 をする必要があるかと思っております。  それから、お話のあった市町村と組合はどうして調整をしないのかということでございま す。市町村と国保組合というのは、基本的にはそれぞれの保険料の計算の仕方も違いますし、 国保組合の中では人数割りですとか、そういう形で保険料負担をしているところもございま す。したがいまして今、同質の保険者の中で財政調整をするということで、市町村国保の中 でも調整交付金というのがございますし、国保組合の中では先ほど説明のあった調整補助金 というものを使いまして、比較的所得の高い市町村、それから所得の高い組合についてはそ の調整補助金を出さない。  例えば、東京23区ですとか横浜市などについては普通調整交付金が出ておりませんし、 国保組合で言えば医師国保とか弁護士国保というところについては調整補助金が出ていな い。平均すればかなり、先ほどで言えば15%近い調整補助金が国保組合にもあるわけであ りますけれども、それを出さないことによって財政調整をしている。そういう意味では、同 じグループの中では財政調整をしているということかと思います。 ○対馬委員 一言だけ申し上げます。まさにそのことが私どもとしても同じように、被用者 保険の中で協会けんぽと我々健保組合の中、健保組合との関係ないしは健保組合同士での助 け合いということが言われておりますので、そこはいかがかと思います。  いずれにしても、私ども今、説明を受けたところで一部理解できたところもありますけれ ども、全体的にはとてもわかったという内容ではないということは改めて申し上げたいと思 います。 ○糠谷部会長 御意見は承りました。  それでは、藤原委員どうぞ。 ○藤原委員 3番目の対馬委員の質問についてですが、国保組合の中の医師国保について 少々誤解があるようにも見えますので、御説明したいと思います。  医師国保の負担状況については医療給付に対する定率補助率、これは資料2の3ページに なりますけれども、これは32%で従来分と言っております。それから、新規分については 協会けんぽと同じように補助率は13%となっております。この占める割合は31%です。  それから、4ページ目は先ほど御説明があったとおり普通調整補助金はゼロという状況に あります。  申し上げたいのは、医師国保イコール開業医ではなくて、開業医の大部分も入っておりま すが、全くイコールではないということと、基本的には小規模診療所の職員健康保険のよう なもので、財政基盤が非常に脆弱であります。今も説明申し上げましたように、最低ランク の補助金でやっていけているというのは、医師国保自体が自家診療を認めていない。これは、 家族もだめであります。つまり、そういった意味では保険者機能をある意味では十分発揮し ているとも言えるかと思っております。  それから、他の国保組合も一緒でございますけれども、この医師国保には歴史的な経緯が あって、市町村国保の発足のとき、これは市町村の方からむしろ適用除外を受けたといいま すか、その理由というのが自家診療をやっているからだめだというようなことで、それ以来 この医師国保は自立してやっているという状況にありますので、そういった歴史的な経緯も 踏まえて、このことについては御議論いただければと思います。 ○齊藤委員 経団連の齊藤でございます。事務局の方で非常に苦慮されている中で、被保険 者相互で助け合うというのも致し方ないのかなと思いながら、でも意見としては2点ほど、 やはりそうは言いながら反対だということを申し述べたいと思います。  高齢者医療制度への拠出金が保険者にとって非常に大きな負担となるということは制度 発足の早い段階からわかっておりまして、前回も後期高齢者医療2割負担というようなこと も、我々この部会でも御提案したわけですけれども、皆さん方事務局は非常に苦慮されてい ると思うんですが、政府はこうなることを見込んでいたにもかかわらず、早い段階から公費 投入の道筋をつけるということを怠っていたのではないかと、こういうふうに思います。  今回の事務局案も、真水の追加的な公費投入ではない。できるだけの対処をしてきたけれ ども、想定以上の悪化が見られてしまって万策尽きたので助け合いでお願いしたいという状 況ではないと思うんです。やるべきことから逃げた。選挙があったのかどうかわかりません けれども、逃げておきながらこういうことはいかがなものかと思います。  今回のような、制度間で安易に負担を付け回す議論がまかり通るようであれば、個々の保 険者の医療費適正化等への努力を減退させまして、健康増進などに取り組む保険者としての 機能が弱体化すると考えます。これが1つの意見です。  2点目に、健康保険組合も協会けんぽと同様に拠出金負担に苦しんでいるということで、 拠出金負担については今後とも急速に増大するということで、今回暫定措置ということで御 提案を受けております。これも苦慮した挙句というのはよくわかるんですけれども、我々と しては暫定措置ということで受け入れられるような状況ではない。そういうことをすれば、 健康保険組合自体の存続も危うくなると感じておりますので、意見として言わせていただき ます。以上でございます。 ○糠谷部会長 それでは、高原委員どうぞ。 ○高原委員 藤原委員の医師国保のお話に付け加えて申し上げます。今までは私、開業医と いうことで診療側の立場の方から申し上げましたけれども、実際には諫早市医師会の会長と しまして長崎県医師会の運営委員でございまして保険者の立場も持っております。  この保険者の立場で昨日、長崎県の国保に行ってお話を聞いてきました。私の持っている 資料では平成16年以降、その前もそうですけれども、単年度赤字がずっと続いております。 昨年だけ、高齢者医療制度の方の問題でほかのところと同じく少し黒字になりましたけれど も、ずっと連続黒字でございまして、積立補助金も年々減らしておりまして、恐らくこの5、 6年で医師国保として消滅するのではないかという危惧を非常に持っております。  決して富裕な組合ではございません。ここに資料がございますので、もし後で必要であれ ば長崎県の医師国保の方から了解を取って差し上げますけれども、医者だから報酬が多いか らというような形ではございませんで、やはりどこでも富裕な組合員は高齢者の方にいって しまった。そして、その上でやはり拠出金もある。なおかつ、病気の組合員がいると一発で 補助金は飛ぶということを昨日、国保の事務方から相談をもらっております。  そのことだけ、付け加えて申し上げます。恐らく、ほかの国保組合も同じような状況では ないかと思います。 ○小林委員 協会けんぽの小林でございます。前回、今回と、協会けんぽの財政問題への対 応策ということで国庫補助率の引上げ、これは現在国庫補助の暫定的な補助率であります 13%を健康保険法の法則16.4ないしは20%に戻していただきたいということ。それから、 単年度の財政均衡の特例及び被用者保険内の費用負担の在り方を見直すということで御議 論いただいておりまして、特に今回はその被用者保険内の費用負担の在り方の見直しについ て具体的な提案があり、御議論いただいているわけであります。  当協会の財政状況、財政問題については、これまで繰り返し御説明させていただいており ますが、協会けんぽの運営委員会には各中小企業の関係の団体からの委員の方がおられます。 これらの委員の方からは、中小企業は今非常に厳しい経営環境にございますけれども、そう いった中小企業の皆さんの声として、経営環境が非常に厳しい中で保険料率の上げ幅をでき るだけ圧縮できるようにすべきだという強い意見をいただいております。  また、運営委員会の加入者側の代表の委員の方からも、加入者の方々の家計とか、あるい は中小企業への負担を考えますと、あらゆる手段を講じて緩和策を検討すべきだといった強 い意見をいただいております。  こうした中小企業の皆さんの大変厳しい実態を踏まえて、国庫補助率の本則の復帰を含め まして、この単年度の財政均衡の特例、それから被用者保険内の費用負担の在り方の見直し など、提案の項目については、いずれの案につきましても、前回と繰り返しになりますが、 関係者の皆さんの御理解をいただきながら更に検討を進めていただきたいと考えておりま す。よろしくお願いいたします。 ○糠谷部会長 横尾委員、どうぞ。    ○横尾委員 横尾でございますが、3点、お伺いさせていただきます。  まず、最初に、簡単に言うと、財政的にちょっとお困りになっている協会けんぽを救済す るというのが大きな趣旨で今回の手を打つと理解していいのかどうかということが1点目 であります。特にその場合、組合健保と共済組合の方の負担が1,400億円、あるいは1,000 億円増えるわけでございまして、この会議には共済組合の方はおられないのですけれども、 その辺の意見を聞かれたのかどうかが1点目です。  2つ目は、総報酬制の導入の件です。今いろいろな新政権の政策の中で、「1期4年」と いう言葉がよく出ているのですけれども、例えば1期4年、この4年の間に1,400億円プラ ス、1,000億円プラスという部分は変わるのかどうか。そのままいくのか。あるいは、場合 によっては今後の経済の低迷によっては増えることもあり得るのか、その辺はどのようにお 考えかということを教えていただきたいと思っております。要するに、協会けんぽのみなら ず、その他大きなところへの影響ということを教えていただきたいというのが2点目です。  そして、3点目はそれに関連しますけれども、ここで決める、決めない、あるいはその後、 国の施策として決める、決めないはあると思いますが、要はどのように理解していただくか というのが非常に重要だと思うのですが、その辺はどのように作戦をお持ちなのか、あるい はどのように理解を得るようにされようとしているのか。お考えがありましたら教えてくだ さい。 ○糠谷部会長 お答えを願います。 ○吉田課長 3点の1点目として、まさに協会けんぽの救済なのかという御質問、端的に言 えばそういうことと、共済関係者にお話をしているのかという2つがあったかと思います。  まず、今回、前回、前々回とお話申し上げているように、非常に協会けんぽの財政状況は 厳しい。もとより前々回でありましたでしょうか、健保組合の対馬委員からも苦しいんだと いうお話がございましたが、特に先ほどの保険料率などを見ていただきます中で協会けんぽ は非常に厳しい切迫した事態だということが、私どもの考え方の1つにはございます。  合わせて、そのような中、どういう形でこの医療費を持ち合っていただくか。そのために 納得をいただく公平というものを考えたときに、かねて課題であった高齢者支援金について の総報酬割という手法も私どもとしてはひとつ考えられるのではないか。もちろん切迫して いるというのが出発点ではありますが、合わせてこの支援金の在り方についてこれまでいた だきました議論をも念頭に置いて今回提案をさせていただいている。  その上で、共済組合の関係者につきましては今回のメンバーには入っておられませんけれ ども、私ども事務的に関係省庁の方にもお話をさせていただき、別途、意見を伺っていると いうのが1点目でございます。  それから2点目で、1,400という今回22年度の概算要求ベースで健保組合の方に御負担を お願いしている数字について変わるのかというお話につきましては、あくまでもこれは毎年、 毎年、全体の支援金の額がどのように変わっていくか。その支援金を分かち合うときのそれ ぞれの保険者の方々の報酬がどうなるかということがございますので、この1,400という数 字はその時々で変わっていこうかと思いますけれども、大きく経済環境が変わっていく中と はいえ、それぞれ中小企業を受け持っていただいております協会けんぽ、そして比較的大企 業を中心とされます健保組合などの報酬のシェアが変わらなければ、全体として若者制度が もっていかなければいけない高齢者の支援金におけるシェアというものは、この割合が維持 されるだろう。 ただ、実額につきましては、総枠の問題と報酬の比率によって当然多少変わっていくだろう と思います。ただ、それをどれぐらいのスパンで見るかということで言えば、そこについて は今、手元に係数を細かくシミュレーションしたものを持ち合わせておりませんけれども、 その中で考えていこうと思います。  それから3点目ですが、御理解をいただくのにどのような作戦があるのかという御質問で ございました。私どもとしましては、御負担いただく方々にできるだけの御理解をいただく。 また、私どもの提案で今回、前回として、特に具体的な論点としてどういう形で負担をお願 いする方々に負担軽減の方策があるかということも合わせて提案をさせていただいている わけでございますが、一連の私どもの主張、あるいは私どもの提案の中で少しでも御理解が いただけるように粘り強く、まず関係者の方々にはお話し合いをさせていただきたいと思い ますし、これが最終的に決まったときには、今日の会議も公開で行われておりますけれども、 広く世の中に対してこのような私どもの提案についての御評価をいただくということが必 要かと思っております。 ○横尾委員 関連でよろしいですか。今、聞かれたという1点目の共済組合側からのコメン トを教えてください。  それから、この議論で、この場で議論をやって、あとは報道を通じて分かるよという話で は多分通らないと思います。これまで、いろいろな施策はそういう形で決めたんだ、報じた んだ、それでいいんだということで、多くの方々の嫌悪感とか不信感も当然飛び回っている 訳ですので、そこはしっかりと対国民全般へのアプローチとか、それぞれの組織の機関への アプローチをしっかりしていかないと、また混乱を招いてしまうというふうに危惧しており ます。  それから、国民の目から見ると、医療とか年金については「先が見えない」というのが一 番不安な訳です。可処分所得もなかなか拡大しませんので、デフレスパイラルの中でますま す低迷していきます。でも、将来に向けて何とか自分の医療や年金は大丈夫だと思ったら、 孫におもちゃでも買おうかとか、家族でどこか行こうかということになりますけれども、そ ういったことをする意味でも、これはしっかりとした議論をしていかないと、とりあえず一 年一年の対症療法的な施策だけではなかなか多くの国民の方の理解も得られないし、その都 度その都度やっているだけでは今、何人かの方から御意見がありましたけれども、制度とし ても議論がその場その場で百出していく。だから、そこはしっかりとやるべきだと思います。 ○吉田課長 共済関係者の反応については、やはり御負担をお願いするという形になってお りますので厳しいという御意見をいただいておりますが、私どもとしては先ほどの参考資料 の2にございましたように、各被用者保険制度間において共済関係においての財政状況、あ るいは加入されている方々の所得状況、私どもも実は共済に加入しているわけでございます けれども、全体として中小企業あるいは大企業、企業の所得が非常に大幅な減少をしている 中で、私ども人事院勧告で決まっております公務員の給与につきましても、当然それを反映 しているとは言え、やはり実態の数字からすると、それ以上に中小企業を中心とする方々の 報酬の落ち込みが厳しい中で、この被用者保険間でどのような形での負担となるかというこ とについて御理解を求めているところでございます。  反応を端的に言えば、なかなか厳しい、渋い反応をいただいているというのが率直なとこ ろでございます。そこで、粘り強く御理解をいただくよう努力をしてまいります。  それと同じように、より広くの方々に対して御理解を求めるような努力をすべきかという 話については全くそのとおりだと私どもは思っております。やり方についてはもう少し私ど もとしてのアプローチがないか。もとより、このような御提案を本日申し上げ、前回以来申 し上げているだけでなく、最終的に政府として政務三役にも御判断を仰ぎ、やると政府とし て決めた場合には法律改正という形になってまいりますので、そういう場においての更に幅 広い御議論をいただく機会もあろうかと思いますが、私ども事務方としても提案していると ころにおいて、まずは関係者の方々に御理解をいただくよう、関係者の御意見も聞きながら アプローチしてまいりたいと思っております。 ○糠谷部会長 それでは、逢見委員どうぞ。 ○逢見委員 逢見です。協会健保の財政問題が非常に逼迫しているという点については、こ れまでいろいろ資料も示されたところであって、その対応策として3点、国庫補助率の引上 げと単年度財政均衡の特例、健全化、それから被用者保険内の費用負担の在り方、この3点 はいずれも協会けんぽの9.9という大幅な保険料率をできるだけ抑制するという意味で取 り組まなければいけない事柄だと思います。  ただ、その順番として、まずは国庫補助率の引上げということが見えてこないと、確かに 国の財政事情が非常に厳しいという中で、なかなか難しいということはわかりますけれども、 しかし、ここがやはり見えてこないと2番、3番というところが先へ進んでいかないんじゃ ないかと思いますので、関係者の理解を得るためにもできるだけ早くこの国庫補助率の引上 げを政府において決断することが必要だろうと思います。  論点になっている被用者保険内の費用負担の在り方について、今回具体的な提案がござい ました。総報酬制に移行するという点については、連合としてもかねてから後期高齢者の支 援金の負担が加入者割であるということに問題があると思っておりましたので、この際、総 報酬制の実施という点については方向としては支持するものでございますし、それから高齢 者医療制度の見直しまでの間のいわゆる暫定的な取扱いという点についても、高齢者医療の 改革会議での議論の方向を見るという意味でも、こういう扱いでよろしいのではないかと思 います。  「国庫財源(2,700億円)の活用について」もいろいろ出ましたけれども、これも最初の 論点である、要するに政府がいわば国庫財源をネットで増やすという方向がないと、これは 今までの補助金の迂回ではないかと見られるところがございまして、そういう意味でも拡充 というのであれば国自らの財政のやり繰りという中で、この国庫財源についてもう少し数字 で拡充させるということが必要だろう。その上でいろいろな負担軽減措置とか、あるいは前 期納付金のような対応について検討するということで、いずれにしてもこの辺は関係者の理 解を十分に得た上で進めなければいけないことですので、まず政府が一歩前へ出て、こうし た対応について積極的に対応するということをお願いしたいと思います。 ○糠谷部会長 ほかにいかがでございますか。  岩本委員、岩村委員、何かございませんか。よろしゅうございますか。  ほかに御意見等はよろしゅうございますか。どうぞ。 ○対馬委員 先ほど、少し理解が進んだと申し上げましたのは、国保組合とか、ここに書い てある事柄自体の理解が進んだということでして、全体として我々に対して負担転換につい ての理解が進んだというわけでは決してございませんので、その点、改めて申し上げておき たいと思います。  また、今回負担増の緩和策みたいなところが提示されましたけれども、この辺りは私ども 共済健保と合わせて2,500億円の負担増の提案になっているんですが、それに対して例えば 1点目で先ほど説明しているところですと88億でしょうか。もう一つのところでは、今162 億をもう少し強化したいということで、ちょっとささやか過ぎて意見を言う気力もわかない ということでございますので、その点を申し上げておきたいと思います。 ○糠谷部会長 大体、御議論はよろしゅうございますでしょうか。  それでは、本議題につきましての御議論はこれまでとさせていただきたいと思います。事 務局におかれましては、本日いただいた御意見を踏まえまして、政務三役とも御相談をいた だきながら、予算編成過程において関係者との調整や検討等を行っていただきたいと思いま す。  本部会の議論の状況でございますが、事務方のシナリオでは「議論の状況を総括しますと」 と書いてあるんですけれども、総括をする立場ではございませんが、これまでの御議論を大 体伺いまして、こんな感じかなということを申し上げさせていただきます。  後期高齢者支援金にかかる被用者保険間の費用負担の在り方の見直しでございますけれ ども、全体として負担増となる健康保険組合サイドからは強い反対が示されておりますし、 また、高齢者医療制度の見直しと合わせて議論するべきだという意見があったと理解をいた しております。  一方で、当事者である協会けんぽや、その運営委員である委員等からは、協会けんぽの切 迫した財政状況をかんがみますと、保険料率の引上げ幅を抑えるため、後期高齢者支援金の 負担の見直しを含めてあらゆる努力をすべきではないか。  また、有識者の委員の方々からは、利用者保険内部で負担を公平に分かち合う観点から、 総報酬制について検討すべきではないかというような意見が出されていたと、こういうふう に理解をいたしております。  そういうことで、大臣を始め政務三役には今、申し上げたような委員の方々の御意見と合 わせて、仮にこの見直しを実施するのであれば、国庫負担の拡充の姿を示すべきという意見 があったことについても重要な点としてお伝えいただき、今後の予算編成過程における検討 等に当たっていただくよう、私からもお願いをしておきたいと思います。  こういうことが大体、私が受け取りました皆様方の御意見の取りまとめと言うと言い過ぎ でございますけれども、そういうような受け取り方をしているということで御理解をいただ ければと思います。  それでは、次に「傷病手当金・出産手当金について」を議題といたします。本議題につき ましては、前回の本部会におきまして小林委員より、制度改正検討要望事項として提出され た内容について、事務局において論点を整理いただいたものでございます。  事務局より、資料の説明をお願いいたします。 ○吉田課長 保険課長でございます。お手元の資料の束の中、本日用意をさせていただきま した右肩資料の3「傷病手当金・出産手当金の給付の見直しに当たっての論点」という資料 と、後ろの方に参考資料の3でございます、前回小林委員が御提出になった資料、この2つ を用意させていただいております。小林委員御提出の資料につきましては、時間の関係もご ざいますので再度御紹介することは割愛させていただき、御高覧いただければと思います。  前回の御提案を、資料の3、事務局として論点として3つに整理をさせていただいており ます。1つは、現在の傷病手当金及び出産手当金の支給額に上下限の設定という考え方で、 現行制度につきましては設けられておりません。標準報酬の3分の2という形で法定されて いるところでございます。これを論点としては、この上下限など一定の幅や基準を定めると いうことをどう考えるか。  2つ目でございますが、現行制度におきましては、健康保険の加入期間に関わらず、被保 険者であれば即、傷病手当金が支給されるという仕組みでございますが、論点といたしまし ては加入の期間を一定要件とするような形で一定の加入期間を設定して、その期間に満たな い方については支給割合を下げたり、あるいは支給期間1年6か月、あるいは出産について はその出産に当たっての一定日が支給期間でございますが、短縮するという考え方はどうか。  3つ目でございますが、現行の仕組みにおきまして、法定給付といたしましては被用者保 険、協会けんぽ、組合健保、共済、それぞれ共通のものとして行われておりますが、これに ついて上下限あるいは加入要件としての期間などについて、一定の範囲や基準を法律で定め た上で保険者単位で設定できるという仕組みについて考えられないか。  いずれにつきましても、留意点として3点挙げさせていただいております。  支給割合につきましては直近改正の考え方、実は本日もお配りしております前回配布をい たしました参考資料の中にもございますように、19年4月から傷病手当及び出産手当につ きましては、一方で支給割合を標準報酬の3分の2に引き上げますと同時に、任意継続被保 険者の方につきましては支給対象から外すという改正を行っておりますが、そのときの考え 方や、その後2年しかたっていないということをどう考えるか。  2つ目としまして、現金給付という意味では傷病手当、出産手当、同列の議論になってお りますけれども、それぞれの位置づけを考えて、本当に一緒の扱いでいいのかということで す。  3つ目に、労災保険など既にあります他制度における休業補償的な給付、あるいはILO 条約において幾つか決まっている水準について留意する必要があるのではないかというこ とについて掲げさせていただいております。  若干、付言をさせていただきますと、ILOにつきましては2つの条約が関係しておりま す。資料を用意してございませんので、恐縮でございますが口頭で御説明申し上げますが、 社会保障の最低基準に関する条約、いわゆる102号条約。これは我が国は批准してございま すけれども、これにおきましては傷病あるいは母性給付にかかる定期金として男子の熟練労 働者の賃金、条約は非常に細かく決まっておりますけれども、ざっくり申し上げればその約 45%というものがひとつ示されております。  もう一つは母性保護条約、183項条約。これは我が国は未批准でございますが、この条約 におきましては出産に関わる母性給付につきまして所得の3分の2という水準が定められ ているということもございますが、このようなことなどを含めまして、全体をどのように考 えるかというのを留意点として挙げさせていただいております。  資料は、以上でございます。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。  それでは今の件につきまして御質問、御意見等がございましたら御自由にどうぞ。  逢見委員、どうぞ。 ○逢見委員 私は協会けんぽの運営委員で、協会けんぽの中でこうした議論にも関わってき たわけでございます。  今日は医療保険部会の委員として発言させていただきますが、論点として考えられたうち、 傷病・出産手当金の上下限の設定については前回小林委員から出された資料にありますよう に、協会けんぽの中では最高支給額が81万円となっておりまして、いわゆる所得保障とい う部分で言うとちょっと高いんじゃないかという印象がございまして、上限についてはもう 少し一定の水準ということを考えてもいいんじゃないか。  下限については、やはりセーフティネットという部分がありますから、その数字について はそれが所得保障として必要不可欠な水準は維持しなければいけない。そういう中で一定の 幅を設けることについては、おおむね協会けんぽの中ではそういった議論が多かったのでは ないかと思います。  それから、傷病・出産手当金に関わる加入要件の設定でございますが、これは意見が分か れておりまして、私はどちらかと言うとセーフティネットとしての機能から言うと、保険の 加入期間を設定して、加入して短い人は支給されないというようなことがあると、病気とか 出産ということについて制限されることによる不利益、あるいはセーフティネットとしての 欠落という点を心配しておりまして、これについては消極的な意見を申し上げました。  ただ、中には、財政事情から言ってこういうことも検討すべきではないかという意見もご ざいました。  それから、保険者単位での設定については、たまたま自分が勤めたところが中小企業だっ たとか、たまたま大企業だったとか、そういうことによって得られるサービスの中身が保険 者単位で違ってくるということがあれば、医療保険というのは国民皆保険の中の一つとして やっているわけですから、そこに違いが出てくることは、必要なサービスの水準ということ を考えても、こういうことは余り検討すべきではないんだろうと思います。  4番に留意点としてございますのは、もし見直すとしても十分慎重に検討すべきだと思い ますのは、今回の制度はまだ実施して2年しかたっていない。そのときには、従来から言う と不利益変更に当たる部分もあり、改善すべき部分もあり、両方いわば抱合せのような形で 制度改正をした中で、この傷病・出産手当金などは改善というふうになったわけです。  しかし、それをもし戻すということがあれば、3分の2を6割に戻すということがあれば、 あのときにセットで考えた議論が反古されてしまうという懸念がございますので、そういう 点は十分留意すべきだと思います。  それから、他の制度ですね、労災保険あるいはILO条約について、先ほど保険課長から 紹介がございましたけれども、そういうことも考慮して前回設定した部分がございますので、 見直しの議論に当たってもそうした国際基準などへの留意ということは十分考えた上で検 討すべきだと思います。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見をどうぞ。 ○岩村委員 すみませんが、今日も途中で退席しなければいけないので、意見だけ申し上げ させていただきます。  まず、傷病・出産手当金の支給額の上下限の設定ですが、若干気になるのは、もともとこ の傷病手当金、出産手当金というのは報酬比例なわけで、保険料を報酬比例で取っていると いうこととこれらの現金給付というのは結び付いてきたものではないかと思います。そうい う意味で、上下限を設定するということについては、報酬比例で保険料をかけてきたという ことと、どう整合性を説明するかということを少し検討する必要があるように思います。  ただ、そうは言っても、病気や出産時の休業に伴う賃金の喪失というものに代わる所得を 保障するといった観点から、社会的に見て相当なレベルまでで上を切るということは、多分 外国の立法例もあるのではないかと思いますので、報酬比例だから常に上限の設定が許され ないということではないと思いますけれども、そこは考えておく必要があるかと思います。  それから、もう一つは全く別の観点ですけれども、出産手当金の場合はよく考えないと出 産行動に影響を及ぼしかねないので、現在の少子化の状況の中では別途考慮が必要ではない かと思います。  それから、加入要件の設定です。これも微妙な問題かなと思うのは、例えば病気やけがの 場合、特に病気の場合だと傷病手当金がもらえるまで頑張ってしまうということになって、 かえって病気が悪化して回復が遅くなるというようなリバーカッションが発生しないかと いう気もしますし、それから出産手当金についてもやはり同じように出産行動に加入要件が 影響を及ぼすということも考えられるので、そこの点は政策的に少子化対策との関係での整 合性を考えておく必要があるのではないかという気がします。  それから、保険者単位での設定です。私はよくは考えていませんが、直感的には逢見委員 が言った考え方が筋なのかなと思います。あとは、余力のあるところが付加給付でもって上 乗せをするというのが本則の考え方かなという気はいたします。以上でございます。 ○糠谷部会長 ほかにございますか。どうぞ。 ○横尾委員 確認させていただきたいのですが、先ほど説明があったILO条約185条を日 本は批准していないのですよね。内容は、出産に伴うでしたか。もう一度教えていただいて よろしいですか。 ○吉田課長 まず、御質問は183号でございますが、母性保護条約と通称されておりまして、 出産に関わる所得保障の部分以外にも、多くの母性保護に関わる内容が規定された条約と承 知をしております。  この条約全体としては未批准でございますが、少なくとも今回話題になっております出産 に伴う休業補償のところにつきましては、先ほども少し申しましたように条約が求める水準 が所得の3分の2ということでございますので、ここの要件が引っ掛かっているわけではな いと承知しておりますが、全体としては母性保護に関する労働法制、あるいはそれに関わる 生活支援を含めた全体について、日本はまだ未批准であるというふうに承知をしております。 ○横尾委員 先ほどの岩村委員の御発言とも若干絡むのですけれども、そういったところの 支援というのがやはり出産行動とかに影響してくると思いますし、北欧諸国とか、あるいは フランスの少子化が一度改善したことなどにも関係しますけれども、183号はこれまでの間、 国会などで真正面から議論されたことはあるのでしょうか。 ○吉田課長 申し訳ございません。つぶさには承知をしておりませんが、かつてILO条約 についての批准、未批准状況につきましては幾つか取り上げられたところがあろうと思いま す。183号がそれにおいてどのような議論だったか、今日は資料を用意してございませんの で、必要があればまたお手元に届けるようにさせていただきますが、私どもとしては現時点 では承知をしておりません。 ○横尾委員 ありがとうございました。 ○糠谷部会長 藤原委員、どうぞ。 ○藤原委員 先ほどの(2)のところですが、傷病と出産手当金に係る加入期間要件の設定 についてですが、これは出産も合わせて、この加入要件設定ということなんですか。傷病手 当金の方は、あるいはモラルハザードが起こる可能性はあることは否定できないかと思うん ですが、出産に関してはそんなことは起こらないと思うので、これをセットで議論するのは ややおかしいかと私は思いますけれども。 ○糠谷部会長 何かお答えありますか。 ○吉田課長 私どもとして、まず前回協会健保の方から御提案のあった際には、両者が区別 されていなかったと承知をしておりますが、本日その留意点に掲げさせていただいておりま すように、私ども事務局としては今、藤原委員の御指摘のような問題意識を共有しておりま して、ここについては、よりきめ細かな議論が要るのではないかと思っております。 ○糠谷部会長 どうぞ、岩本委員。 ○岩本委員 こちらの論点については余り賛成できないものが多いんですけれども、まずI LO条約との関係です。ここで出された論点がILO条約と抵触する場合にどちらを採るか という選択肢であれば、これはやはりILO条約に沿った形のものを考えることによって、 こちらの論点の提案を退けるという判断が適切ではないかと私は考えます。  傷病手当金の加入期間要件についても岩村委員と同じような意見でありまして、不正受給 が生じるというモラルハザードをどう防ぐかとことで、こういうやり方で防ぐことに関して はさまざまな弊害も生じますので、これはむしろ不正受給の対策ですね。不正を断つという ことに真剣に取り組むという、そちらの方をしっかり手当てすることが大事かと私は考えま す。以上、2点です。 ○糠谷部会長 ほかに御意見、ございませんか。よろしゅうございますか。  それでは、本議題につきましてはこれまでとさせていただきます。本日いただきました御 意見も踏まえまして、関係者との調整を進めていただきたいと思います。今後の本部会での 取扱いにつきましては、私の方で事務局より検討の進捗状況を確認し、判断したいと考えて おります。  それでは、次の議題といたしまして「行政刷新会議のからの指摘事項について」を議題と いたします。本議題につきましては、同ワーキンググループの評決結果の段階で、11月25 日の部会におきまして事務局より報告をいただきましたけれども、この会議としての結論が 11月30日に示され、12月2日に厚生労働省としてその時点での考え方を発表したと承知を いたしております。  これらのことに関し、事務局より論点を含めた資料を用意していただいておりますので、 まず事務局より資料の説明をお願いいたします。 ○吉田課長 保険課長でございます。お手元の資料の4「行政刷新会議「事業仕分け」への 対応について(抄)」という資料を御確認いただければと思います。  今、部会長の方よりございましたように、この資料そのものは右肩のクレジットがござい ますように、先日12月2日に省としてまとめて公表させていただきました。この中で2つ 網掛けになってございますが、上が「市販類似薬は保険外」という見直しの評決結果に対し て、私どもとしてはバツ、困難というか、議論として患者負担増、健保法改正が必要だとい う認識を示しております。  また、下の網掛けでございますが「入院時の食費・居住費の見直し」につきましては、審 議会の御議論などを勘案して検討すべきではないか。その際には患者負担増という話、ある いは健保法の改正が必要だということが問題ではないかという問題意識を持ってございま す。  その上で、先にこの審議会でも御説明させていただいたものに若干補足して2ページ目以 降を説明させていただきます。  2ページ目につきましては食費・居住費について、先にも同じような資料を持って御説明 をさせていただきましたので詳細は割愛させていただきますが、現在の食費につきましては (3)標準負担額(例)というところで書かせていただいておりますように、療養病床に入院し ておられる65歳以上の方の部分において介護保険とのバランス上、食費で申し上げれば1 食460円という御負担をお願いしておりますが、それ以外につきましてはここに書いてござ いますように260円という食材費相当の御負担お願いしております。 また、今の仕組みにおきましても、その2行目、3行目になりますが、市町村民税非課税の 方、あるいは所得の水準がより低い方につきましては、それぞれ低所得者配慮という形でそ れぞれの金額を負担として下げる形により、配慮をさせていただいているところでございま す。 欄外、特に※印の1でございますが、現在御負担を460円という形でお願いしております療 養病床に入院されている65歳以上の方であっても、難病等の入院医療の必要性の高い方に つきましては460円ではなく、他の食材費と並びの260円という御負担をいただいているこ と。  あるいは、※印の3、4でございますが、ここに例として書かせていただいております金 額以外にも、例えば過去1年間の入院日数が長い方、あるいは老齢福祉年金受給者の方につ きましては、それぞれさらなる負担軽減という形での設定がされているということを御報告 したいと思います。  その上で3ページ目でございますが、この問題を考えていくときの論点として、本日まと めさせていただきました。内閣として事業仕分けによる評価結果をいただいたわけでありま すけれども、1つは評価結果に従い、この標準負担額の引上げを行うことにするかどうか。 もとより、評価結果というものは私ども基本的に尊重すべきと思っておりますけれども、こ れが患者負担につながることをどのように考えるかというのが1つ目でございます。  その上で、仮に見直しを行う場合といたしまして、3つほど論点を整理させていただきま した。  1つは、見直しの対象として食費のみなのか、あるいは居住費なのかという点がございま す。先ほど1ページ前でもごらんいただきましたように、療養病床に入院されている方につ きましては居住費という形で、いわゆる光熱水費に相当する部分が介護保険とのバランス、 あるいは高齢者の方々につきましては基礎的な生活については年金給付が行われていると いうこととの二重給付問題というものから、居住費についても御負担をお願いしているとこ ろでございますけれども、それについて今回一般病床、あるいは65歳未満の方に対しての 御負担ということを考える場合にどうするかというのが1つ目でございます。  2つ目として、標準負担額を何に着目するか、引上げ幅をどの程度とするかというところ が論点になろうかと思っております。現在、460円御負担いただいております療養病床の 方々につきましては、先ほども申しましたように家計における御負担額とは別に、合わせて 介護保険における利用者負担額ということで、そのようなものを勘案して御負担をいただい ております。そういう意味では単純に家計で、それぞれの御家庭でいただいている負担額だ けではなくて、実際に施設などでかかっております費用も勘案して負担額が設定されている ということになっております。  一方、今の一般病床における食費につきましては平均的な家計における食費ということで、 家で御負担いただいている額をベースに260円という額が決まっている。若干、そこで考慮 事項が違っております。この辺りをどのように考えるかというのが(2)でございます。  また(3)で、仮に全体の枠組みの中で引き上げる場合にはどのような方を引上げ対象とする かというのが論点になろうかと思います。先ほども御確認いただきましたように、療養病床 におきましても既に難病等の医療必要度の高い方につきましては、460円ではなく260円と いう御負担をいただいているという仕組みがございますけれども、一般病床あるいは65歳 未満の方に御負担を新たにお願いする場合におきまして入院必要性の高い方というふうに 絞る、あるいはその対象とするということが考え方として、あるいは実務的にどのようにな るかというのが1つ目です。  2つ目に、療養病床に入院されている方の御負担と合わせるべしというのが今回の事業仕 分けにおける議論の流れだったというふうに思いますと、入院期間が長い方という切り口で の対象者があるのかどうか。  3つ目に、現行制度でございますとか、あるいは介護保険における同じような負担と同様 に、低所得の方々についての負担額をどのように抑えて配慮をさせていただくかということ が実際に、仮に見直しを行う場合の論点だと考えております。  資料についての前半は以上でございます。続いて、対象薬について御説明をさせていただ きたいと思います。 ○磯部管理官 医療課薬剤管理官でございます。私の方からは、市販品に類似した医薬品の 保険給付の問題でございます。  まず、5ページをごらんいただきたいと思いますが、「市販薬と類似した医療用医薬品に ついて」ということでございます。この市販薬と言いますのは、患者さんが自ら薬局ですと かドラッグストアで購入できる医薬品のことを申しておりまして、ほかにも大衆薬ですとか、 一般用医薬品ですとか、OTCというふうに呼んでいるものでございます。今回の論点につ きましては、それと類似した成分が医療用医薬品、保険薬価に乗りまして保険診療の中で使 える医薬品ということでございますけれども、これと類似したものがあり、その類似したも のについては保険給付外にすべきではないかという御指摘でございます。  4ページに戻っていただきます。これにつきまして、私どもが考える論点、メモをまとめ させていただいてございます。  まず1番目でございますけれども、こういった市販品に類似した医薬品について保険給付 外とした場合には、これらの医薬品を実際に治療に用いられている患者さんの御負担は当然 増えることになるわけでございますけれども、こういった患者さんの負担が増えることにつ いてどういうふうに考えていくのかということでございます。  また、その険給付外とする市販品類似薬の範囲ですが、実際に事業仕分けの中では、特に ここに書いてございます湿布薬やうがい薬、それから漢方薬、こういったものが例示として 挙げられていたわけでございますけれども、こういった薬ごとに使用される場面が、また対 象の患者さんが違いますので、そういった薬ごとにどのような患者さんにどの程度の負担が 生じるのか、そういったものをきちんと吟味していく必要があるのではないかということで ございます。  例えば、実際にお使いになっているのはいろいろな方がおられると思いますけれども、湿 布薬の場合ですと主としては関節痛などを訴えられます高齢者の方、それからうがい薬や風 邪薬の場合については主として小児の方、またその場合には現在大体小児の医療費につきま して自治体の方の助成がございますので、そうした自治体の負担というものをどう考えるの かということもございます。また、漢方薬につきましては不定愁訴ですとか更年期障害、自 律神経失調症などの中高年の方が多く治療に用いられているという状況でございます。  また、実際に3番でございますけれども、市販品類似薬の中には市販品と異なるような重 篤な疾患の効能を有しているものがございます。ここの注に書いてございますけれども、例 えばビタミンB1の場合でも、ビタミンB1の欠乏症という単純な疾病のほかにも、そこか ら生じ得るウェルニッケ脳炎という運動障害などを特徴とした重篤な疾患、こういったもの に対する効能も有しているものがあるということでございます。  また、その場合、そういった効能によりまして保険給付と給付外の効能をどのように整理 していくのか、また、例えば漢方薬の場合でも、医療用医薬品と市販品の場合については成 分が類似しているといっても、必ずしも全く成分や含量が同じであるものだけでもないとい うことがございます。そういった場合について、保険給付と給付外の切り分けの考え方につ いての整理をどう考えるかということもあろうかと思っております。  また、実際に市販品類似薬を保険給付外とすることによりまして、スイッチOTCという 言い方もされておりますけれども、製薬企業が医療用医薬品に使われているものにつきまし て、実際に市販薬として発売する動向に影響を与えるのではないか、その躊躇があるのでは ないかということですとか、例えば特定の分野の医薬品の安定供給に大きな影響を与えたり する場合があるのではないか。こういったことについても、どう考えるのかということでご ざいます。  また、仮に実施するにいたしましても、事業仕分けの中でもその対象範囲は十分に議論す べきということが記載されているわけでございますけれども、そういった範囲の選定に当た りましてはどういう形で整理をしていくのか。その基準を策定し、またこの分野はいろいろ な専門家の方々や、実際に負担増になる患者さんの御意見を聞くなどして、透明性を確保し た形で行う必要があるのではないかと思っております。そういったことを考えますと、仮に 実施するといたしましても一定程度の時間が必要ではないか。  こういった種々の論点があろうかと思いまして、資料にまとめさせていただきました。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの件につきまして御質問、御 意見等がございましたら、どうぞ御自由に。 ○磯部管理官 1つ言い忘れて申し訳ございませんでした。  本日、御机上に山本文男委員の方から本件に関しての意見について資料が提出されており ますので、御紹介をさせていただきたいと思います。長妻昭厚生労働大臣あての文書でござ いまして、今回の行政刷新会議ワーキンググループによります漢方薬などの市販品類似薬を 保険適用外とする方向の結論が出されたことに対しまして、この2枚の紙でございますけれ ども、東洋医学会の御意見もございますけれども、こういった意見に賛同するとしまして、 漢方薬については従前どおり保険適用されたい。こういった御意見、意見書が提出されてい ることを付言させていただきます。以上でございます。 ○糠谷部会長 それでは、何か御意見、御質問等がございましたらどうぞ。 ○横尾委員 今、報道でこれが出ていますけれども、確認をしたいのですが、仕分け会議に おいては漢方薬に特定した市販薬類似品だったかのどうかというのが1点でございます。  2点目は、どちらかわかりませんが、市販品類似医薬として非常にその薬が効くためには、 すべての国民が同じ体重で同じ体躯でなければならないですね。ある想定をされてつくられ ていますので。通常、ドクターが処方される場合には体重を量ったり、体調を管理したり、 食事とかいろいろなことを勘案して細かくミリグラム単位で処方されるわけですけれども、 その辺についてはその仕分け会議で厚生労働省から御説明、反論はされなかったのですか。 ○磯部管理官 今の御質問について、まず1点目の漢方薬に特化した意見であったのかとい うことでございます。この事業仕分けの中では、実際に財務省から提出された論点の中で湿 布薬、うがい薬、漢方薬、こういったものを例示として挙げられておりまして、事業仕分け の会議の中では特にこれという議論ではなく、漢方薬に特化した議論ではございませんでし た。  なお、その事業仕分けワーキンググループの中でお1人の委員からは、漢方薬は外してほ しいという御意見もあったところでございます。そういう意味では、全般的な市販品類似薬 の扱いということでの御意見というふうに私どもは理解をしてございます。  それから、私どもの方からの説明としては、非常に時間が限られていたこともございます けれども、特に私どもの方からいけばお使いになっている方々が実際に負担増になりますし、 薬によって先ほど申し上げたように対象の患者さんも違いますので、そういった患者さんの 御負担についてよく吟味をして慎重な検討が必要ではないか。こういうふうに御説明させて いただきました。時間の関係もありまして、私どもの方からはそれを中心に御説明させてい ただいた次第でございます。  それから、すみません。漢方薬については二重否定のようになってわかりにくくなって恐 縮ですが、委員の1人の方の御意見は、漢方薬は保険給付内にしていただきたいという御意 見でございます。保険給付外という議論について、その外にしてほしいということでござい ますので、保険給付のそのままにしてほしいという御意見を1人の委員が表明されたという ことが記憶に残ってございます。 ○横尾委員 確認でございますが、そうすると場合によってはすべての薬にこのことが及ぶ ということですね。 ○磯部管理官 すべての薬と言いますか、類似の成分、つまり市販品と類似の成分を含む医 療用医薬品という意味でございますので、それはおのずから限られたものになってこようか と思います。 ○糠谷部会長 よろしゅうございますか。 ○横尾委員 このことについては、薬剤師か医師の方がコメントされた方がいいと思います。 ○糠谷部会長 ほかにどうぞ。 ○岩月委員 御指名をいただきましたので、薬剤師の岩月でございます。  今の論点のところに書かれていた問題点は、それぞれがもっともな意見、論点だと思いま す。例えば、入院中の患者さんに湿布が必要になった場合、この理屈ですと、医師が処方箋 を書いて、その方は湿布を薬局に買いにいかなければいけないということになります。これ はそもそもいわゆる国民皆保険制度が始まったときの今の混合診療の問題ですとか、いろい ろな問題に多分再び火をつけることになるのか。  あるいは、その患者さんの負担だけではなくて、市販類似薬といいますと、例えばアスピ リンという簡単な薬がありまして、これもいろいろな使われ方をしていますけれども、医療 の実際の現場の中ではいろいろな使い方と市販薬で使われるいろいろな使い方が違います ので、これについても例えばほかの薬と一緒に使うことによって効果のあるものが、これだ けが保険の外から出てしまうというような弊害も出てしまいますので、もちろん負担増とい うのは大変な問題でありますけれども、実際にその現場としてどういうふうに対応できるの かということを考えますと、市販薬と類似のものを一律に保険適用から外すということに関 しては、大変問題が大きいと思っております。 ○高原委員 また開業医の立場に戻ってお話しをいたします。  1つ御質問ですけれども、湿布薬のことに関しては成分がしっかり入っている湿布薬のこ とを言っておられるのか、それとも、ただ、いわゆるすっとするという意味の湿布もござい ますので、そこのところを仕分けの方たちはどう考えておられたのか。湿布を私たちが使う 場合には、当然ながら痛みの成分の入っているものを使います。  なぜかと言いますと、御高齢の方の場合は非常にたくさん薬を飲んでおられます。ここで、 また1つ内服薬で鎮痛剤を出しますと、1つは薬を飲む量が多いということと同時に、やは り消化器症状を非常に訴える場合があって、それで湿布を投与していることが多うございま す。そこのところまで仕分けの方たちは考えておられて、湿布と言われたのでしょうか。 ○磯部管理官 心の中までは読めませんのであれでございますが、私、直接そのときに出さ せていただいて議論をさせていただきましたけれども、多くの方々はいわゆる薬局やドラッ グストアで買える薬は自費で買うんだけれども、同じようなものが保険で給付されているこ とをどこまでこのような保険の給付でやるのかということで、実際にはどちらも医薬品とい う認識はあろうかと思います。  ですから、医薬品である以上、それは市販品のいわゆるOTC、一般用医薬品であっても、 それから医療で使われる医薬品であっても、ある一定の効能・効果を持っているというもの はあろうかと思いますし、消炎鎮痛剤が当然含まれている、有効成分が入っているものとい うことは多分理解をされていたのではないかと思いますが、余り時間もないこともございま して、たくさんの方が御発言されますので確認まではできませんけれども、その点は御理解 されているような発言が多かったかのように私は思っております。 ○和田委員 今ずっとお話を伺っていて、恐らくうがいとか、あるいは湿布のようなものが 挙げられているということは、要するに不要不急のそういう薬が保険からどんどんお金が出 ていくというふうな形を抑えることで全体としての保険の給付額を抑えたいというのが、多 分事業仕分けをする側の御意見だと思うんです。  ただ、これ先ほどの傷病手当などの問題と同様の構造だと思うんですけれども、そういう いわばややモラルハザード的な、フリーライダー的なものを抑えるために、実際に本当に必 要とされる方がいらっしゃると思うんです。それはどのぐらいの割合か、私にはわかりませ んけれども、それを本来必要なところにまでネガティブな影響を与えて、そしてモラルハザ ードを防ぐというやり方は非常にまずいのではないか。  そういう観点から見たときにも、やはりこれはどの薬にしてもちょっと問題が多いのでは ないかと思います。 ○藤原委員 今の4ページの4番目の市販品類似薬のアンダーラインがしてあるところで すが、「製薬企業が新規成分の市販品の発売を躊躇したり」という文言がありますけれども、 逆のことも考えられると思います。  と言いますのは、この間も言ったと思うんですけれども、薬価収載を載せることを第一に 製薬企業は考えると思うんですが、しかし、こういった形になりますと、むしろ医薬品の薬 価収載を載せるというインセンティブが働かなくなって、医薬品の価格を自由に製薬メーカ ーが決めるということが起こって、あまねくある一定の価格の決まった医薬品を国民に提供 できないということが起こってくることも考えられますので、これはやはり大きな問題とし てとらえないといけないと思っております。  それから、その前の3ページですけれども、やはり食費を療養病床に入院する方と同じよ うに考えるのはかなり無理があるんじゃないか。居住費もそうなんですけれども、どう考え てもこれは治療の一環でやっているわけですから、その負担を強いるというのはおかしいと 思います。それから、若人について一般病室が生活の場という考え方は全くなじまないと思 いますので、この理屈は私には全く受け入れられません。 ○見坊委員 高齢者サイドからの意見として申し上げます。  薬関係については、今いろいろ御議論があったとおり、私どもも従前どおりにやっていた だきたいと思っております。今回の事業仕分け一般に公開したという点では高い評価を得て いるようでありますが、関係者にとりましては寝耳に水の話が突然起こって、それにどう対 応していいかわからないというのが実態だろうと思います。せっかく各審議会、部会等も設 けられて議論している。しかし、それを全く無視したかのごとく、こういう問題が今日出て きているわけであります。    老人保健制度が始まった1983年、そのときから既に30年近くたっておりますが、この間、 この医療保険の制度、特に高齢者の医療制度というものは介護保険制度の発足とあいまって 非常に財政が厳しくなり、その負担をどこに求めるかという議論に終始してきたように思い ます。大幅な負担増は反対というのが、私ども患者サイドの意見でありました。  しかし、大きく改革をしなくては、制度自体が崩壊しかねないというような議論になって いることも十分承知しております。  そういう中で私ども、この老人保健制度、老人医療の無料化制度時代から数えて30年、 40年たっている間、どういうことが患者サイドに求められてきたのかということですが、 高齢者自身も健康に気をつけて、学習・実践を通じて、病気にならないような方向で努力す る。このことを基本としながら、保険制度というものを活用していくということでありまし た。  この間の高齢者に対します働きかけとして、制度改革のたびにいろいろなパンフレットが 配られてきています。特にこの数年間はっきりしておりますのは、保険料の負担がこう変わ る、自己負担額がこう変わる、そういう点ばかりが強調されているということであります。 最近は、在宅であってもかかる費用であるから、施設へ入ったならば、当然食費、居住費を 負担すべきであるというような議論になっております。それが介護保険、今度は医療保険と、 バランスが取れないということで、高い方に引き上げられていくということが繰り返し行わ れております。    年金で給付されているのだから二重給付ではないかという議論もありますが、居住費など というものは、終の住処の特別養護老人ホームならば別でありますが、そうでないところは すぐにまた帰ってくるわけであります。その間、賃貸であれば賃料が無料になるということ はありません。また、残っている家族がいる場合もあります。そうしたことを非常に疑問に 思っております。特に低所得者については配慮をしてもらいたい。  平成18年10月から療養病床に入院する人に対し食材費に調理費を加えた食費、居住費、 こういう負担が導入されたわけであります。食費が1日1,380円ということ自体、高過ぎる と考える高齢者はかなり多いというのが実態です。  居住費は1日320円で、月にして約1万円であります。介護保険でみると、これは大部屋 に入った場合で、いわゆるユニット型と称する個室になりますと、負担額が月に6万円ぐら いになる。そういたしますと、食費、居住費などを足しまして平均的なところは幾らぐらい かというと、大体月に5万1,000円から10万2,000円かかる。  介護保険施設の利用者の中の低所得者の方々、特に軽減されている方はまずまずと言われ るかもしれませんが、貧困率から考えるとそれ以上の方々が利用しにくくなった。老人医療 も同じような方向になっていく。  医療と介護、私どもは緊密な連携が必要だと申し上げてきておりますが、それは一体化す るということではありません。医療は医療としての考え方があり、またサービスの在り方が あります。患者サイドも、それをしっかりと認識しております。今回のこの事業仕分けの食 費、居住費の負担というものについては私ども反対であります。是非、十分な議論をした上 でやっていただきたいと思います。  以上、意見として申し上げます。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。何かございますか。 ○吉田課長 先ほどの藤原委員からの御意見で、事実関係を事務局から補足させていただき たいと思います。  本日の資料の3ページ目、先ほど御紹介いたしました論点の(2)の中に、その御負担をお願 いする場合、何に着目するかということを挙げさせていただいておりますが、手戻りしてい ただきまして2ページ目、前回もごらんいただきました白と黒の図を少し御確認いただけれ ばと思います。  今の仕組みは標準負担という形、全体として今回食費に限って御説明させていただきたい と思いますが、食費にかかる部分には、例えば栄養士さんの管理費用、調理師さんの人件費、 あるいは委託の費用、そして食材費と、それぞれ食事を提供するに当たって幾つかのコスト が発生しております。  現在、療養病床におきましてはこの白い部分、保険で給付される部分というものにつきま しては、栄養管理という意味では栄養士さんの人件費というものが念頭に置かれております し、逆に療養病床における御負担の中、標準負担額の方には調理人さんの人件費ですとか、 その委託費用、あるいは光熱水費というものが入っていると思います。  そういう意味では、今回一般病床におきまして、この保険給付の部分と標準負担の部分を 療養病床と同じように見直すという場合の考え方として、これはまさに今日御議論として提 示しているところではございますが、療養病床と同じような考え方をとる場合には、少なく ともその保険給付には栄養管理をはじめとする専門家の方々のコストの部分は引き続き保 険給付とし、現在一般病床においては保険給付の対象に入ってございます調理人の方々の人 件費、あるいはその光熱水費というものが標準負担という形で患者さんの御負担に回るとい うようなことが念頭に置かれる。  その場合において、先ほど来おっしゃっておられます医療機関の中に提供される食費とい うものにかかっているコストの中で、どこまでを保険給付とし、どこからが患者さんの御負 担とするかという御議論だと受け止めておりますので、若干補足をさせていただきました。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。それでは、この議題につきましてはこれまでとさ せていただきたいと思います。  本議題につきましても、今後、予算編成過程で検討が進むと思いますが、その結果につき ましては必要に応じこの部会、または委員の方々に御報告をいただければと思います。  また、11月25日の部会におきまして私に御一任をいただきました平成22年度診療報酬改 定の基本方針についてでございますが、私の方で医療部会の部会長とも調整をいたしまして、 最終的に取りまとめたものを資料5として配布させていただいております。時間の関係上、 説明は省略をいたしますが、御確認をいただければと思います。 ○横尾委員 1点よろしいですか。いただいた資料5の3ページですけれども、まとめてい ただいて誠にありがとうございました。多岐な議論ございましたが、3ページの下から2行 目に「医師の業務そのものを減少させる」という文言がございます。印象としては、ちょっ とネガティブだなと個人的には感じるのですね。むしろここは、「医師本来の医療業務専念 を充実させる」とか、そういうふうなトーンにされた方がいいのではないかと感じたのです が。 ○糠谷部会長 事務方、どうですか。 ○佐藤課長 確かに、表現ぶりとしては横尾委員のおっしゃるとおりかもしれません。  ただし、大変、申し訳ありません、もう医療部会ともども調整が終わった後のものでござ いまして、そういう趣旨であるということは折を見て関係者には伝えたいと思います。 ○横尾委員 と言いますのが、この内容は一般国民も見ます。せっかくのトーンが多分ぼけ てしまうのではないかと感じましたので、一言申し上げました。是非、ポジティブにやって いることを終始訴えていただかないといけないのではないかと思います。 ○糠谷部会長 では、説明のときは今の御意見を十分に留意してやっていただくように、私 からもお願いをいたします。 ○藤原委員 今、吉田課長が言われたことなんですけれども、確かにその医療、治療部分に ついては分けて考えているんだという言い方だと思うんですが、医療保険制度に対してのこ れまでの国の一貫した方針として、若人についてはやはり国を支えているんだからそれにつ いて支援しましょうということが基本にあったと思うんです。しかし、このように若人の方 にもどんどん負担が増えるということ自体、問題だと思います。こんなに厳しく中味を分け た議論をしてぎゅうぎゅうしめつけるということがいかがなものかなと私は思っておりま す。 ○糠谷部会長 それでは、国民健康保険課長さんから何かございますか。 ○伊藤課長 国民健康保険課長でございます。  お手元の配布資料の最後かと思いますけれども、本日御欠席の山本委員の方から「医療保 険制度の一本化の実現等に関する意見」という文書をいただいておりますので、そのポイン トを簡単に御紹介したいと思います。  資料は1枚紙で表裏となっているものでございますけれども、その1枚目の「1.後期高 齢者医療制度及び医療保険制度の一本化について」という部分でございます。その裏の2ペ ージ目ですが、最初の行でございます。国民皆保険を堅持するため、都道府県を軸とした保 険者の再編統合を推進し、最終的には医療保険制度の一本化を図ること。  その次の「現行制度の円滑な運営について」、これは後期高齢者医療制度のことでござい ますが、制度施行後に講じられた保険料の低所得者対策等については、平成22年度以降も 国の責任において万全の措置を講じること。  (2)平成22年度の保険料改定に当たっては、保険料の上昇抑制対策の財源を国において十 分確保するとともに、万一、地方の事務負担や財政負担が生じる制度見直しを行う場合は、 地方と十分協議を行うこと。  2の「国民健康保険について」でございます。(2)のところでございますが、高額医療 費共同事業など、国民健康保険制度の財政基盤の強化策については平成22年度以降も継続 して実施すること。  以上でございます。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。  それでは、予定の時間がまいりましたので、よろしければ本日はこれまでとさせていただ きます。今後の開催時期は未定でございますが、開催が決まり次第、事務局より御連絡をす ることとしたいと思います。  本日は御多忙の折、若干時間が過ぎて申し訳ございませんでしたが、お集まりをいただき ましてありがとうございました。これで散会といたします。                                       (了)                               【照会先】                                保険局総務課企画調査係                                   TEL:03(5253)1111                                     (内線3218)