09/12/04 第3回院内感染対策サーベイランス運営委員会議事録 (照会先)                厚生労働省医政局指導課 清     03−5253−1111(2556)           第3回 院内感染対策サーベイランス運営委員会          日時 平成21年12月4日(金)          15:00〜          場所 厚生労働省仮設第4会議室 ○医療放射線管理専門官 定刻となりましたので、ただいまより第3回「院内感染対策サ ーベイランス運営委員会」を開催いたします。厚生労働省医政局指導課の清と申します。 構成員の皆様方にはお忙しい中、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。開催 に当たりまして、指導課長の新村からご挨拶申し上げるところですが、別の会議が長引い ておりまして、先ほど定刻どおり始めておくよう申し伝えられましたので、課長に代わり まして冒頭に本事業のご紹介をいたします。  本事業は平成12年から開始されており、医療法の改正によって院内感染対策が医療機関 の法的義務事項となったことに合わせて、平成19年7月にシステムを一新しております。 この後の資料で紹介している様に、現在では800以上の医療機関がいずれかの部門に参加 しておりまして、国内の院内感染の発生状況を知る上で非常に重要な公的データを提供し ているものと考えております。システムを一新してからの期間はそれほど長くないのです が、今後この事業が継続していくことで、科学的証拠に基づいた院内感染の推進に資する 重要なデータを出し続けていくことが第1目標と考えておりますので、本日も報告事項や 討議事項に関して、いろいろな観点での活発なご討議をお願いしたいと思います。  それでは各構成員の方々を五十音順にご紹介いたします。国立感染症研究所細菌第二部 長の荒川宜親構成員です。東京医療保健大学医療情報学科科長の大久保憲構成員です。国 立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦構成員からはご欠席との連絡をいただい ております。東北大学大学院医学系研究科教授の賀来満夫構成員です。北里大学北里生命 科学研究所教授の砂川慶介構成員です。また、本日は説明者として国立感染症研究所細菌 第二部より山根一和主任研究官にご臨席いただいております。なお、写真撮影等はこれま でとさせていただきますので、ご協力をお願いいたします。これより荒川座長に進行をお 願いいたします。 ○荒川座長 皆様のご協力をいただきまして、今日も円滑な運営に努めていきたいと思い ますので、よろしくお願いいたします。議事に入る前に、事務局より資料の確認をお願い いたします。 ○医療放射線管理専門官 運営に関して、あらかじめお断りいたしますが、本委員会につ いては公開で行い、議事録については事務局でまとめたものを各構成員にお目通しいただ いた後、厚生労働省のホームページにて公表することといたしますのでご了解お願いいた します。  引き続き、資料の確認をいたします。本日の資料の構成は議事次第にあるとおりです。 資料1-1として参加医療機関数の推移、資料1-2としてデータ回収率の推移、資料2-1は 公開情報(2007年NICU部門のスプレッドシート)、資料2-2Aは公開情報(2006年年報の 全入院患者部門訂正版)、資料2-2Bは公開情報(2007年4〜6月報全入院患者部門訂正版)、 資料2-2Cは全入院患者部門年間感染率・罹患率の計算方法、資料2-3Aは院内感染対策サ ーベイランス実施マニュアルの改訂(新旧対照表)、資料2-3Bは院内感染対策サーベイラ ンス実施マニュアル(2008年11月版)、資料2-4は統計法の抜粋、資料2-5は公開情報作 成から承認までの流れ、資料3-1はSSI、ICU部門精度管理のための問合せ基準と問合せ結 果、資料3-2はNICU部門の体重別分類について(研究班回答)です。資料の欠落等があり ましたら、お申し出ください。 ○荒川座長 よろしいでしょうか。資料の種類がかなり多いのですが、欠落等があればお 申し出ください。それでは議事に入ります。本日の議題は大きく分けて3つありますが、 最初の議題である院内感染対策サーベイランス事業の現状報告について、事務局から説明 をお願いいたします。 ○医療放射線管理専門官 資料1-1は参加医療機関数の推移ですが、これは新システム移 行後のものです。表のいちばん上の2008年は2007年7月の間違いで、2007年7月、2008 年1月、2008年10月、2009年2月、2009年10月時点での全国の参加医療機関の総数、各 部門ごとの参加医療機関数の一覧となっております。参加募集をかけた直後の数字にも若 干の変動があるのは、2007年の年末に最初の再募集を行い、2008年の年末にも再募集を行 ったからです。また、この運営の中で1部門について3回以上連続してデータが出ていな い医療機関に対しては、事務局から問合せを行い、データの提出できない医療機関に関し ては脱退を促している関係などから数の増減が生じています。  なお、この数字の中には本年11月に追加募集で応募のあった2010年1月から参加予定 の医療機関のデータは入っておりませんが、医療機関数では70機関ほどの参加希望があり、 部門別では検査部門、手術部位感染部門ははそれぞれ40機関ほどの新たな参加希望を受け 付けており、全体として見ると、2009年2月の段階よりは、2010年1月時点の医療機関の 数のほうが上回る予定です。この正確なデータについては次回の委員会の際にお出しした いと思います。  資料1-2は医療機関側からどのぐらいデータを回収できているかということで、今回は じめて公表する情報です。新システムに移行された2007年下半期からのデータ、及び2008 年のデータは裏にあります。まず、2007年下半期では、検査部門と全入院患者部門では70% 半ばぐらいのデータ回収率であること、SSI、ICU等は50%台、NICUは40%ほどになって います。2008年上半期のデータでは、じりじりと上がっていますが、下半期の9月、10月 に大きく増加しております。この直前にデータ提出が悪かった医療機関に対して脱退を促 したため、数字が上がった結果です。SSI、ICU部門に関しては、回収率は2007年時点より も上向き傾向にあるという状態です。本事業は、参加医療機関のデータ提出について法的 根拠に基づくものではなく、ボランティアベースである以上100%は無理なのですが、SSI やICU部門に関してはもう少し頑張らないといけないかなというところがあります。ただ、 こちらに関してもデータの回収頻度が半年に1回で、本年にはデータ提出が滞っている医 療機関に対して脱退を促したので、おそらく今後のデータ上は少し改善されてくるのでは ないかと思っております。以上がサーベイランス上の現況の説明です。 ○荒川座長 ただいまの説明に対してご質問、ご意見等があればお願いいたします。 ○賀来委員 検査部門などは検出菌に関する検査システムができ上がっていることから、 ある程度自動的に出ていて、それを送るということがシステム化されていると思うのです。 ただ、SSIやICUなどではサーベイランスをする方の、人が誰かとか労力の問題があって なかなか難しい点があるだろうと、このデータを拝見してそのように思いました。SSIサ ーベイランスでは研究会もありますが、大久保先生、SSIの研究会で何か統一したフォー マットのようなものはあるのですか。 ○大久保委員 SSIの会というのはSSIサーベイランス研究会のことですか。 ○賀来委員 そうです。 ○大久保委員 あれは同じフォーマットでやっていますから問題ないと思います。 ○賀来委員 そうすると、やはり集計する方のマンパワーの問題ですか。 ○医療放射線管理専門官 集計に際しかなり手作業が発生するので、ICUなど忙しい部門 の方々にあまり無理強いはできないというところがあるのです。診療報酬の改定作業中で 医療安全に関する評価を議題に挙げてもらっているのですが、保険でサーベイランスをや っていること自体、今のところ特に評価はされていません。院内感染対策加算という形で の評価については議論が始まったばかりで分からないのですが、サーベイランスは手作業 で一定の人件費がかかってしまうので、何らかのインセンティブを与えるようにしてあげ ればというところです。しかし、それを要望するにはエビデンスが求められます。つまり、 サーベイランスをしている所は感染が制御できているというデータがある程度出ていると 非常にやりやすいのですが、説得に関しては裏付けになるデータが要るということです。 ただ、この事業では院内感染対策をいろいろな側面から見ているので、データを出しやす い部門のデータを外挿することで、なんらかのサーベイランスをしていることに対して広 く、浅く、特に公的なサーベイランスに参加していることを評価の1項目に加えていただ けると、状況が少し変わるのではないかと思っております。 ○荒川座長 是非、その辺りに何らかの手厚い工夫をお願いできればと思います。次に、 今日の2つ目の議題である事業運営に関しては、先生方に承認していただきたい項目がい くつかありますので、まず事務局の山根説明者に一般向け公開情報に関する説明をしてい ただきたいと思います。 ○山根主任研究官 早速、資料2-1から説明いたします。これは2007年のNICU部門の公 開スプレッドシートの案です。具体的にスプレッドシートとはどのようなものかと言うと、 公開されている2007年のいろいろな図表の基となる数字をcsv形式でネットからダウン ロードできるというものです。要するにエクセルなどでこれを開き、興味のある人はその データを解析できるという仕組みですが、それの案です。現在公開されている2007年のデ ータは、この数字を基に作られております。このたびそのデータをこのような形でまとめ、 ホームページに公開したいということです。NICUのスプレッドシートに関する説明は以上 です。 ○荒川座長 資料2-1と2-2とは別々に説明をしていただいてから、質問という形にした いと思います。まず、資料2-1のNICUのスプレッドシートについて何かご質問があればお 願いいたします。これは各病院から出してもらうための、それぞれの施設のスプレッドシ ートの案ということですか。 ○山根主任研究官 これはホームページに公開している情報の基になる情報で、参加医療 機関すべてのデータをまとめたものです。ですから、個別の病院のデータというわけでは ないです。 ○荒川座長 全体集計の話ですか。 ○山根主任研究官 全体集計のデータです。 ○砂川委員 菌の種類は増やせないのですか。というのは、新生児ですとGBSが入ってく るのかなという気がするからです。ただ増やすと、また問題になるのでしょうが。 ○山根主任研究官 その辺は今後研究班の先生にご相談したいと思います。 ○荒川座長 GBSを加えるかどうかは研究班のほうで検討していただくということにいた します。 ○大久保委員 前回の会議のときに体重の区分けについて議論があり、今日の資料3-2に サーベイランスの結果が示されているのですが、当分この区分けでいくことになるのです か。 ○荒川座長 これについては最後にご説明することを考えておりましたが、関連しますの で、前倒しで少しご検討いただくことにしたいと思います。それでは、資料3-2について 説明をお願いいたします。 ○山根主任研究官 資料3-2について簡単に説明いたします。今ご指摘いただいたように、 日本は1000g未満、1000g〜1500g、1500g以上という分類にしております。実際のデー タの母数がどれぐらいになるかは次頁に出ております。これは2007年の年報のデータです が、例えば1000g未満の場合は300患児分ぐらいのデータしかないので、さらに細かく分 けることはなかなか難しく、それぞれのカテゴリーの患児数が確保できないだろうという のが研究班の回答です。現在1000g以下の体重群に当たる人数は何人かというデータの集 め方をしているのを、例えば体重をそのまま入力するといった仕組みにすれば、アメリカ で行われている区分と日本の区分が同じになるので比較が可能となりますから、次の改訂 がいつになるか分かりませんが、是非検討してもらおうと考えております。 ○大久保委員 アメリカのNHSNと同じ区分にする意義は分かっていただけたと思うので すが、症例が少ないから解析ができないということであれば、あとから分かるように何g 単位で報告していただくようにしてはいかがでしょうか。。 ○砂川委員 体重で出しておけば、あとで集計できるのです。 ○大久保委員 体重で出しておいたほうが。その後の集計が変更してもやりやすいと思い ます。 ○医療放射線管理専門官 いまは体重区分をメニューで選択するような形式ですか。 ○山根主任研究官 そうです。実数は入っていないのです。 ○医療放射線管理専門官 若干手間は増えるかもしれませんが、実際の計測値を直に入力 してしまうことにすれば、とりあえず集計はこの形で出しておいて、その後十分な症例数 が集まってきたら、そのとき細かい区分に切り替えるという対応ができるかもしれないと いうことですね。 ○賀来委員 そう思います。 ○荒川座長 次のシステム改正のときなどにつくり受けて、少し検討していただくという ことで、NICU部門の取りまとめをお願いしている大阪府立母子保健総合医療センターの北 島先生からのお返事は資料3-2のとおりですが、引き続き、検討課題として次のシステム 改善を想定して努力していくということでよろしいですか。  NICUに関してのスプレッドシートは資料2-1の表の1、2、3、4ですが、これについて ご指摘、ご質問があればお願いいたします。菌の種類は先ほどGBSでご指摘いただきまし たが、感染症のほうの敗血症、肺炎、髄膜炎、腸炎、皮膚炎、その他といった病名につい ては、大体このぐらいの切り分けでよろしいですか。 ○砂川委員 このぐらいでいいと思います。 ○賀来委員 いまの病名についての切り分けについてですが、例えば、敗血症の診断の場 合は血液培養からの陽性が必須項目などといった診断基準を明記することはなかなか難し いと思いますが、それに関しての議論は以前にありましたか。 ○山根主任研究官 一応の診断基準は研究班で作っていただいて、少なくとも参加医療機 関はそれを見てやることになっております。 ○荒川座長 たしか、それはマニュアルに書いてあったように。 ○山根主任研究官 記憶が定かでないのですが、もしかすると参加していない方々は見る ことができないところにあるかもしれないです。 (※JANISホームページ、NICU部門の説明ページ http://www.nih-janis.jp/section/nicu.htmlに記載あり) ○賀来委員 情報公開すると、肺炎の診断定義や敗血症の診断は血液培養陽性を基本とす るなどどのような診断基準かという問合せがある可能性があると思いますので、もし診断 基準がある程度決められているのであれば、それも載せておいたほうが理解しやすいと思 います。 ○山根主任研究官 わかりました。 ○荒川座長 スプレッドシートに載せるということですか。 ○賀来委員 どちらに載せることにしたら良いのか、私も現時点では判断しかねます。 ○荒川座長 サーベイランスマニュアルにはいろいろな基準の全文が載っておりますので、 参加する施設には大体了解いただいているものと理解しております。次に、資料2-2の説 明をお願いいたします。 ○山根主任研究官 57頁の資料2-2Cをご覧ください。資料2-2A及び2-2Bは訂正をした結 果ですので、まず、どのような訂正をしたかということをお話いたします。事務局で罹患 率と感染率の計算方法を再度確認していたところ、算出方法が間違っていることがわかり ました。そこで、年間の罹患率・感染率の正しい算出方法を説明いたしますと、まず年間 の感染率の計算方法ですが、その年にある病気にかかった患者を総入院患者数で割って、 それに1000を掛けてパーセンタイル値で表します。この表をご覧いただくとわかるように、 分母は、2008年1月時点で前年から入院している患者と2008年に入院した患者を足した ものです。  感染症の患者の数は、その年に新しく感染した患者プラス、2008年1月時点で前年から 継続して感染症を発症している患者が分母になります。この表で見ると、分母は青色の部 分を足したものとなり、分子は12、分母は青色を足した854人となり、それに1000を掛 けてパーセンタイル値で表すことによって年間感染率が出ます。次に、年間の罹患率です が、分子はその年に新しく感染症を起こした患者の数ですから、茶色の部分の合計で、そ の合計は8人です。分母は前年からの繰越しの患者を含め、その年に新しく入った患者の 数をすべて足したものから、感染症で継続して入院している患者を引いた数です。その数 を分母として計算すると、年間の罹患率は9.39となるわけです。  いままでどのような計算をしていたかというのは次頁にあります。感染率を計算する場 合、分母と分子はどちらも間違っていることが分かりました。分母はその年に新しく入院 した患者の合計+前年からの繰越患者数ですから、1月時点での患者の数を足すべきとこ ろ、前月の繰越患者数をすべて合計してしまい、余分に足していたことがわかりました。 そのため、分母の数が非常に大きくなっていることがおわかりになると思います。分子の ほうも、新しく感染症を起こした患者と継続で感染症を起こしている患者の数をすべて足 してしまっているので、分母、分子とも数が非常に大きくなっているのですが、分母の数 がより大きくなっていて、おそらく感染率は正しい数の半分ぐらいになっていたと思われ ます。  罹患率のほうですが、分子の計算方法は合っていたのですが、分母は先ほど年間感染率 のところで説明した形の計算方法となっていたため、約半分以下の値となっていることが 分かりましたので、過去のデータを順次差し換えているところです。現在、差換えが終了 したのは資料2-2A及び資料2-2Bにある2006年度のデータ、2007年4〜6月のデータで、 今回この委員会にかけさせていただいたということです。以上が全入院患者部門の差換え についての説明です。 ○荒川座長 集計の計算式が正しくプログラムに反映されていなかったため、間違った計 算をしていたということですが、問題点が発覚した時点ですぐ訂正する作業を始めまして、 いま山根主任研究官から紹介があったように、おおむね正しい数値に置き換わり、順次差 換えが行われているということです。これに関して何かご質問があればお願いいたします。 ○大久保委員 計算の仕方は改めていただきたいのですが、感染率と罹患率について、罹 患率も結局は一種の感染率になるわけですから、上に書いてある11.71という数字は年間 の有病率としたほうがいいのではないかと思うのです。罹患率も感染率の中に入るのでは ないでしょうか。 ○山根主任研究官 言葉の定義に関しては、英語だと確実に分かれているのですが、日本 語の場合は曖昧なところがありまして、2000年から感染率と罹患率という言葉をずっと使 ってきたという経緯があり、現在も使っているという状態ですが、急に変更すると混乱す ると思いますので、その辺はちょっと検討が必要と考えております。 ○大久保委員 罹患率と言っても感染率に入るわけです。 ○荒川座長 最初の言い方として出ているのです。感染率というのは、いつ発症したかは 別にして、その期間内にMRSAの感染症を発症したということで、罹患率というのはその期 間に新たにMRSAの感染症を発症したということでスタートしたものですから、結局それら の言葉が残っているということです。ただ、誤解とか理解しづらいということであれば、 言葉の説明をきちっとして、有病率に移行をすると。 ○大久保委員 本来はそうですね。 ○医療放射線管理専門官 公衆衛生学の標準用語にある程度揃えるか、それができなかっ たとしても、よく分かるところに断り書きを入れるぐらいの対応はしてもいいかなと。確 かに、わかっている人はわかっていると思うのですが、感染症や公衆衛生にさほど詳しく ない人から見ると、これは何だと、この言葉のニュアンスが今ひとつ分かりにくいという 感じはご指摘のとおりだと思います。 ○荒川座長 これについては全入院患者部門の研究グループに再度検討していただくこと をお願いしましょう。その他、何かあればお願いいたします。計算を間違えるという非常 に初歩的な、あってはならないことがあったわけですが、貴重な情報ですので、問題点が 発覚した時点できちっと訂正し、再度集計し直したものをホームページに随時アップロー ドし、皆様のところへお返しする、この事実をお伝えしていくということで進めていきた いと思います。計算する件数や項目が非常に多く、ひょっとすると計算間違いがまだある かもしれませんが、わかり次第、適宜修正等をしていきたいと考えております。資料2-1、 2-2に関して、その他何かあればお願いいたします。 ○山根主任研究官 この間違いが見つかりましたので、公開予定の数字、各医療機関への 還元情報の中にある数字について、現在提出したデータのどの部分を使って計算している かという仕様をまとめているところです。まとめた時点で、誰でも見ることができるとこ ろに公開し、ご覧いただいた上で、これは間違っているのではないかといったご意見があ りましたら、その時点でまた検討することとしたいと考えております。 ○荒川座長 それぞれの数値がどのような計算根拠、計算式に基づいて行われたかという のを、今すべての数値について洗い出しの作業をしておりますので、完了しましたら皆様 にご提供したいと考えております。資料2-1、2-2に関して、他にご指摘、ご質問があれば お願いいたします。 ○賀来委員 ベッド数別に分けて報告されているのですが、例えば大規模病院、あるいは 中規模、小規模での違いがどうかとか、すなわち大規模病院になるほど基礎疾患の重篤な 方が多いので、当然敗血症など重篤な感染症の発生頻度が高まるなどといったデータとい うのは結構重要だと思うのですが、そのようなデータは解析できますか。 ○山根主任研究官 まさに今、研究班でその辺を検討しているところです。その辺は研究 班の成果として公開させていただければと考えております。 ○医療放射線管理専門官 病院の機能という因子が、必ずしもベッド数とリンクしていな い所があったりするのです。規模は大きいが感染症患者があまり生じない精神科病床が多 かったりという病院もあるので、いろいろ難しいのかもしれません。 ○山根主任研究官 例えば、大学の附属病院だけに特化しても非常に差があったりといっ たことは、どうもあるようです。まだ十分に解析が行われておりませんので、今後は必要 だと思います。 ○荒川座長 一応事業ベースでの集計はできるだけ基本的な集計にとどめて、より詳しい 集計については研究班が。 ○賀来委員 ここは研究班に。 ○荒川座長 そうですね。そこは研究班などでやっていただくという切り分けをしており ますので、病床規模別、機能別などのデータが出ましたら、研究班から随時報告させてい ただくことになると思います。 ○大久保委員 例えば35頁には感染症患者の体温の分布がありまして、続いて白血球の分 布、CRPの値の分布があります。これらは実数からの比率が出ていると思いますから間違 いではないのですが、見る側からすると、熱とCRPが高い患者の割合とか、熱などの感染 徴候が1つもない患者の割合などの組合せで熱と白血球が高いとか、熱はないがCRPのみ 高いなどといった分け方をすると、この疾患別の特徴が出てくると思うのです。少しやや こしくなりますが、見るほうとすれば、例えばMRSA疾患の場合はこのような特徴があると いうことが分かりやすいと思います。 ○荒川座長 そのような意味では体温などといったものを相関というか。 ○大久保委員 単独に比率を見るのではなくて、合わせてということです。 ○荒川座長 事業ベースではできるだけシンプルな集計ということで、先ほどと同じよう な形にさせていただいて、より詳細な解析については、提案していただければ研究班のほ うで集計し、報告することは可能だと思います。 ○大久保委員 少しややこしくなりますが、見る側としてはそのほうが分かりやすいです。 ○荒川座長 わかりやすいでしょうし、いろいろ得られるでしょうね。 ○医療放射線管理専門官 得られるということは、多変量の情報という話で。 ○大久保委員 組み合わせた解析ですね。 ○医療放射線管理専門官 多変量解析の手法で検討していただくと、感染症の診断に関す る寄与率に多少差が出る可能性があると思います。 ○荒川座長 例えば、お年寄などは熱が出にくいとか、場合によってはこの3つのファク ターだけではなく、年齢などといったものと合わせて比較してみるとか、少し詳しい解析 は研究班のほうに提案して、そちらで。 ○大久保委員 それは研究班の方で行っていただきたいと思います。 ○荒川座長 そうですね。いまの件は研究班に提案して検討していただくことにいたしま す。引き続き、院内感染対策実施マニュアル改訂について、事務局から説明をお願いいた します。 ○医療放射線管理専門官 資料2-3A、2-3B、資料2-4についての説明をいたします。まず、 資料2-3Aは新旧対照表で、現行公開している2008年11月版に対して、改訂する項目を対 照表にしております。細かい事項についての説明は省略しつつ説明します。いちばん上で すが、旧版では3頁の下から10行目、運営委員会の作業についての記載ですが、一般公開 用の季報の作成等に関して、「季報」を改め「半期・四半期報」と変更しております。2項 目目は6頁の上から12行目ですが、「感染症発症患者」を「感染症患者」と変更します。 6/11の頁で突き合わせてください。8頁の上から13行目、旧版では「入力された全データ を対象として」を改め、「患者の入室日を基準として1月〜12月分は」、8頁の下から12行 目の「運営委員会は」、8頁の下から5行目の「運営委員会での決定に基づき」は削除。8 頁の下から4行目の「除外することができる」は、細かい集計業務は事務局の判断でやっ ていて、かなり細かい内容に関することも多く、全部を運営委員会の決定に基づいて行う ことは現実的ではないだろうということで削除しております。  8頁の下から1行目のデータの集積と解析結果の最後の部分の「集計・解析の項目は、 別添『院内感染対策サーベイランス解析評価情報一覧』に示す」とありますが、これはこ のような形での出し方はしないということで削除。9頁の上から7行目は最初にあったも のと同じですが、「季報」を改めて「半期・四半期報」の作成とします。9頁の下から10 行目及び7行目はどちらも同じものに相当するのですが、問合せについてです。従来は電 子メール形式で問い合わせを受け付けていたのですが、この専用アドレスに大量のスパム メールが届くようになってしまったことから、メール方式をやめてweb上のお問合せフォ ームから送信する形で事務局に連絡を取る形式に改めております。それに伴い、問合せ時 の医療機関名、参加部門及び責任者の明記は削除しております。  10頁の上から13行目の8-4は重要な変更となるので、少し詳しく説明いたします。8-4-1 の「参加医療機関による自施設データの使用」ですが、本年に総務省に対し本事業の統計 法の承認を受けるための申請を行った際に、統計法に則う2次利用を行っているかに関す る項目でいくつか指摘を受けました。8-4-1の項目が統計の目的外使用に当たるのではな いか、目的外使用に当たる危険性があるので削除したほうがいいのではと指摘されました。 自分の施設のデータは自施設のデータとして持っているはずなので、わざわざそれを引っ 張り出して使うことは基本的にはないだろうし、万が一、PCの故障や紛失などといった場 合は、このような運営マニュアルではなく、個別対応により行うということで、この項目 は削除することにしました。  次に、8-4-2の「参加医療機関により構成される研究班のデータベースの利用」がいち ばん重要な改正事項です。従前は参加医療機関の自施設データも含めて、複数の医療機関 から構成された研究班を想定し、旧マニュアルの記載のルールでやりましょうということ を謳っていたのですが、統計法に沿った二次利用にはいろいろ規定があり、総務省よりそ れに沿った形にマニュアルを改めてくださいと指摘されています。関係する法令は資料 2-4の統計法抜粋になります。調査票情報の提供、すなわち個別の医療機関からの調査結 果をどのような相手に対して提供できるか。提供を受けた統計のデータを新たに別の解析 方法で解析しなおすなどといったことが相当するのですが、研究者の場合は行政機関等で はないので、第33条2項の「前号に掲げる者が行う統計の作成等と同等の公益性を有する 統計の作成等として総務省令で定めるものを行う者」という記載事項に相当します。  さらに、統計法に関係する総務省令は裏の73頁、統計法施行規則第9条、「法第33条第 2号の総務省令で定める統計の作成等は、次に掲げる統計作成等である」として、研究者 が行うのは第9条第2項で、「その実施に要する費用の全部又は一部を公的機関が公募の方 法により補助する調査研究に係る統計の作成等」、すなわち厚生科学研究や文部科学省の科 研費など、公募の方法で行われている研究費を受けた研究者に対しての提供というものが 謳われております。ただし、これに関してはさらに内部規則が定められており、審査を経 た上で行うことになります。2次利用の可否を決める審査については基本的に指導課が窓 口として受け付け、それが公益性に則っているかどうか、適正な研究が行われるかどうか、 セキュリティ対策は十分かなど、データ利用についての確認事項の審査と承認を書面で取 り交わし、データを提供することになります。データ利用が終了した際には、必ず最後に はデータを抹消ないしは処分するという、最終的な結果が出たときも書面で報告を受けき っちり管理して、記録を残しておくことが求められております。  従来の8-4-2のルールに則ってやると、データを提出している個別医療機関に対して、 逐次研究者が同意を求めなければデータが使えないことになっておりました。例えば検査 部門で参加機関が何百もある対象に対してデータを使うために同意を取るという作業は、 研究者にとって大変な負担になっていたと思うので、その同意のプロセスが省略できるこ とになります。研究者にとって科研費を受けるということは公的審査を伴いますしハード ルは高いわけですが、そのハードルを越えた研究者の申請については、より融通の利くデ ータの利用ができるようになるだろうというのがこの改正の趣旨です。  60頁に戻りまして、8-4-1と改めて、「サーベイランスデータの研究利用」というところ では「本サーベイランスシステムの改善や院内感染の要因分析に関する研究等、公益性の ある研究計画が統計法33条に基づき承認された場合は、データベースより参加医療機関の サーベイランスデータが抽出され、研究利用されることがある。本サーベイランスデータ の研究利用申請を行う者は、統計法33条に基づく手続きをとるにあたり、事前に院内感染 対策サーベイランスホームページの『お問い合わせ』より指導課まで連絡する」としてお ります。申請の書式は個別に細かいことが結構ありますので、現時点で全部を文章化する ことはなかなか難しく、かつ頻繁にあることでもないので、申請を受けた際その都度研究 者と直接やり取りをしながら確認していくという作業で当分は対応していきたいと思って おります。  統計法二次利用に関しては既にいろいろなパターンでの問合せがあるので、具体的にど のような場合が許されていて、どのような場合が許されないかということを手持ちの資料 で説明いたします。  許される場合の代表は今説明したとおり、公的審査を通過し研究費の助成を受けた研究 者がサーベイランスのデータを基に院内感染の発生の早期見知のための新たな解析方法を 検討することであったり、あるいはその研究者がサーベイランスデータを基に特定の地域 の院内感染の発生状況を比較検討し、その背景因子を評価することであったり、研究者が サーベイランスデータを基に特定の手術手技に関わる感染リスクを、病院の規模や手術室 と比較検討するなどといった項目でサーベイランスデータを使いたいという場合が相当し、 このような目的で申請すれば基本的に認めることができます。また、申請してきた相手が 自治体というケースについては、統計法第33条1項に相当します。資料2-4の統計法33 条1項の「行政機関等その他これに準ずる者として総務省令で定める者 統計の作成等又は 統計を作成するための調査に係る名簿の作成」云々となっているのですが、どのような場 合が相当するかと言うと、例えばある県がサーベイランスデータから所管内の薬剤耐性菌 の統計を切り出して作りたいといった申し出があった場合、それは認められることになり ます。しかし、これは自治体の職員という個人の申出には相当せず、自治体の代表者の承 認を受けた者に対して認められるという意味です。自治体であっても職員個人の場合は、 個人の研究者という扱いになるので、先ほどのような公費の助成を受けた研究者でないと 認められないということです。  ただ、自治体はデータを自由に閲覧し、何でもできるということにはなりません。例え ば自治体が特定の医療機関のサーベイランスデータを確認したいという問合せがあった場 合があります。基本的に利用が認められるのは統計の作成ということで、個別医療機関の データを見るということは統計の作成にならないですから、これに関しては認められませ ん。要するに、病院の情報は個人情報と考え、保護するという考え方に則って、興味本位 の閲覧は認められないということです。また、例えば研究者が特定の趣旨で参加医療機関 に対しアンケート調査を行うために、調査票の住所情報がほしいという場合があります。 住所から一覧を作るというのは、名簿を作るという行為に相当するのですが、名簿を作る ことは研究者には認められていません。統計法33条の1の記載の様に、自治体であれば調 査のための名簿を作ることが認められていますが、研究者に対しては認められていません。 ただし、本事業に関しては、参加医療機関のリストは公開しております。非公開としてい る医療機関については分からないですが、9割以上の参加医療機関が病院名を公開してお りますので、研究者自身が公開されている情報をベースにして参加医療機関に対して個別 に調査票を送り、アンケート調査をする行為は制約を受けません。要するに、調査票の中 の情報は使わないわけですので、特に申請手続は要らないのです。いままで問合せがあっ た件に関しての可否を説明させて頂きました。以上が今回いちばん大きな二次利用に関わ るマニュアル改正の項目です。  最後に、条文が一部変わったために番号が変わったということで、11頁の8-4-3の「免 責事項等」が、8-4-2に差し換えられ、あとは語句の訂正になりますので説明は省略いた します。以上です。 ○荒川座長 いまの実施マニュアルの変更点の説明について、語句の単純な置換えはよろ しいと思いますが、運営委員会をとるとか、データの二次利用についてなどは、たぶんご 意見等をお持ちの先生方がいらっしゃると思いますので、お聞かせいただきたいと思いま す。 ○大久保委員 SSIサーベイランスに関しては、元データが同じものをJANISとSSIサー ベイランス研究会の両方に出していますから、国のデータの一部をSSIサーベイランス研 究会が研究会として持っているような状況になっています。そのことはこの文章には何も 触れられていないようですね。 ○医療放射線管理専門官 抵触するものではないと思います。民間の団体が独自にやって いる調査に関して、生じる法的な制約ではないのです。これはあくまでも統計法の承認を 受けて実施している統計調査に関してのみ生ずる制約といったことになりますので、それ は問題ないと思います。 ○大久保委員 従来どおりでいいということですか。 ○医療放射線管理専門官 そうです。そちらに関しては特に影響いたしません。 ○大久保委員 わかりました。 ○荒川座長 いまの大久保先生のご質問は、各参加施設、JANISが厚生労働省に出したサ ーバーの中にあるデータを用いて研究するときはこれに関わってきますが、それと同じデ ータを研究会で皆さんに持ち寄っていただき、独自のデータベースを作り、利用する分に は、今回の規制はかからないという理解でおります。それとよく似た事例は他にもありま すが、あくまでもデータとして厚生労働省に出していただき、その中のサーバーにデータ ベースとして入ったものから抜き出したり、加工して何かさらに研究をされたいというと きに、これが掛かってくるという理解でいいですか。それでよろしいですか。 ○医療放射線管理専門官 はい。 ○荒川座長 ほかはいかがでしょうか。あとは、先ほど少しご説明ありましたが、各病院 で持っていたデータが、そちらのパソコンが壊れてなくなってしまった。それをもう1回 欲しいというようなときについてはケースバイケースで対応していくということです。こ れまでもそういう事例が少しありましたけれども。 ○医療放射線管理専門官 そのような場合、基本的にはデータ管理会社に対する費用負担 が発生してしまうので、過去に相談があった際にもお金がかかるのだったらいいですとい うことになってしまった場合が多くて。少なくとも新規に参加されてくる医療機関に対し ては、データの管理は自前できちっとやってくださいとお願いするしかないかなとは思っ ています。 ○荒川座長 いま課長が来られましたので、少しお話はよろしいでしょうか。 ○指導課長 いえいえ、もう今日は十分です。 ○荒川座長 いまのこのマニュアルの修正等に関して、ほかにいかがでしょうか。このマ ニュアルは、いまホームページから、すべての人が見られる所に置いてありますね、参加 施設以外はね。  それでは、いま事務局から紹介いただいた改正点について特段のご意見等ございません ようでしたら、お認めいただいたということでよろしくお願いいたします。ありがとうご ざいました。 ○医療放射線管理専門官 すみません、もう1点補足事項があります。統計法に沿った二 次利用は、実はほかのパターンもあります。最近の統計法の改正で、「匿名データの作成と 提供」という項目が加えられています。実は、これが一部誤解を生んでいるらしく、先ほ どの33条に基づく2次利用は、基本的に科研費を受けた研究者に対してのみなのですが、 「匿名データの作成と提供」に関しては、そういう公的助成を受けてない方に対しても認 められ得るという制度になっています。ただし、その匿名化というものが、いわゆる名前 と住所だけを削除したというデータではないのです。例えば病院の事業に関するデータ提 供を受けた際に、病院のベッド数が出てしまったら、個別医療機関名がわかってしまうこ とがあり得ますね。既に公表されているデータと組み合わせて、特定につながるような情 報についても、それを不可能にするよう匿名化するということで、かなり複雑な匿名化の 処理プロセスを受けた加工されたデータが提供されるということです。  この制度による申請にあたっては、申請に対するハードルは低いのですが、実際に承認 を受けるまでのハードルがかなり高いのです。それから、得られるデータについては、33 条に基づくデータはいわゆる生データ自体なのですが、35条、36条に基づく匿名データの 提供に際しては生データが一部変わってしまう可能性があるデータなので、かなり制約も 大きい。例えば、病院の個人情報を含む情報のデータにはあまり向かないのではないかな というところです。制度自体が出来て日が浅く、まだ統計部のほうがそれの実際の運用の マニュアルを作成している段階だと聞いています。いまのところ、それに則ったやり方で、 この感染症対策サーベイランスのデータに適用するのはまだ時期尚早なのかなと思ってい ます。だから、いずれ厚生労働省内でルールがある程度出てきた段階で、場合によっては そういう提供の方法もあるのですがという、そういうことが将来的に起こるかもしれない ことだけは一応頭の片隅に置いてもらえればと思います。以上です。 ○荒川座長 こういった公的に集めたデータをいかに活用し得るかというと、いまいろい ろな約束事がありますので、この辺はそのルールが固まり次第、また皆さんに提供させて いただくことといたします。 ○医療放射線管理専門官 統計法が求めるデータの管理は結構厳しくて、その適正管理で すね。データの流出など不適正な管理が行われた場合の罰則が付いていたりしますので、 やはり結構、資料の統計法抜粋の中には出してないのですが、その他にも使い方に関する 規定はいろいろ細かいものがあります。 ○荒川座長 ほかに、この資料2-3A〜資料2-4に関して、何かご質問、ご指摘等ございま すか。よろしいですか。では、ありがとうございました。  続きまして、公開情報作成から承認の流れについてということで、資料2-5について、 ご説明をお願いいたします。 ○医療放射線管理専門官 資料2-5、表ページが新しく改正したもの、裏のページにある のが、公開情報作成から承認までの古いバージョンです。古いバージョンは、実は前回の 第2回目の運営委員会で出していたものです。今回、内容を差替えになった最大の理由は、 公開情報を作成する際に重要な役割を担われ、熱心に関わられていた感染研の森兼先生が 外部の施設に出られてしまったということで、それに代わる役割を果たせる方がいなくな ったということがありました。今後は、感染研の中での公開情報の確認作業を省略し、出 来上がったデータを事務局から各部門の研究班に対して確認していただいて、該当する研 究班の方々が主体になって修正確認等に関して事務局とデータ管理会社と連絡を取り、そ こで出来上がってきたものを厚生労働省に出していただく。今回の運営委員会でもそうさ せてもらいましたが、運営委員会開催の前にメール等で、予め確認いただいて、運営委員 会開催によって承認していくと、そういうやり方になります。  年報に関しては運営委員会で確認して、承認をする。半期及び四半期報に関しては暫定 版で、しかも早く出すほうがいいであろうということで、メールで確認し、運営委員会を 経ずにメールで承認を得るという形で、ホームページに公開していくという流れになりま す。結果として、全体的な承認の流れが少し圧縮された格好となりますので、公開情報が 出来上がってから実際に公開するまでの時間は若干短くなるのかなと思います。以上です。 ○荒川座長 これまで森兼先生にとりまとめ役のようなことをしていただいておりまして、 そのステップを事務局に移して、少し簡略化をさせていただくということになります。何 かご質問等ございますか。  現在5つのサーベイランス部門グループがありますので、それぞれの研究班の方々のお 仕事も少し増えるかもしれませんが、この新しい方式で今後進めていくことについて、お 認めいただいたということで、よろしくお願いいたします。  次に、今日の議題の3番目、「精度管理について」、資料3を準備しています。これにつ いて、事務局からご説明をお願いいたします。 ○山根主任研究官 ご説明いたします。資料3-1をご覧ください。サーベイランスのデー タの精度を担保するために、いままでは検査部門、それから全入院患者部門においては定 期的にデータの精度管理をしてまいりました。ほかの部門もやる必要があるということで、 今回2008年のSSI部門、2008年のICU部門について、ある一定の基準を設け、それに引っ 掛かる病院に関して連絡を取って、データが本当に正しいものかどうかというのを確認い たしました。  まず最初にSSI部門のデータの問い合わせに関してです。SSI部門でデータが本当に正 しいものが送られてきているかどうかは、基準を作るというのは非常に難しいのですが、 ある程度SSIが発生し得る手術手技で、ある程度の手術を行っているにもかかわらず、SSI の発生がない所を中心に今回は問い合わせをいたしました。いちばん上の手術手技に関し ては主にお腹の手術がメインですが、SSIの発生率が全国平均ですと10%を超えるような 手術手技ですが、それに対して参加医療機関で、20回以上の手術を行っているにもかかわ らずSSIの発生がないというような所に関して問い合わせをまず行っています。  そうしますと、全体で19件、こういう発生数がゼロという病院がありまして、それに対 して現在も問い合わせを行っているところです。その内訳が、右側のデータの修正進捗に 書いてあります。8件に関しては、実際に正しいデータでしたというところです。その下 は、データは間違っているのですが、まだ訂正していただいていない所です。あとは、医 療機関によってはデータはどうも間違っているのだが、元のデータがないということで、 データの修正ができない所もありました。  このような結果を踏まえて、正しいデータを出している病院に関しては、そのデータを 全国データとして集計に反映させることにしています。間違っているデータとか、修正が できないというようなデータを出してきている所に関しては、全国のデータからは外す処 置をしたいと考えています。  下の部分は、少し基準を変えてしている手術手技です。いちばん下は、できればこのSSI を起こした時点で、培養検査をしてほしいという考えがこちらにはありますので、培養検 査をあまりしていない病院に関しては、やってくださいという意味で、これもご連絡させ ていただいています。このような形で、SSIに関しては問い合わせを現在行っているとこ ろです。  ICU部門に関しても、問い合わせを行いました。大きく2つの基準があるのですが、1つ は、感染症の発生が非常に高い病院に関して、データは本当に正しいのかというところを 問い合わせしています。その基準が、この5つある中の真ん中の3つです。  それからICU部門の感染症の発生の定義、前提となる条件として48時間以上ICUに、最 低48時間ICUに入室しているという条件があるのですが、実際のデータは、ICUに入室し た患者を対象としてすべての患者のデータを入力していただく必要があります。ですけれ ども病院によっては48時間以上ICUに入室している患者さんのみデータを入れているよ うな病院がありますので、そのような病院を引っ掛けるために、今回のいちばん上の条件 ですが、解析対象患者数とICUに入室した患者の数が非常に近い病院に関しては問い合わ せを行っています。実際に問い合わせをしますと、そういう病院はすべて、48時間以上入 室した患者のデータのみを入れていたということが分かりました。これも、1つ精度管理 として良かった点ではないかと考えています。いちばん最後のところですが、ICUでの感 染症が全くないという報告をしてきた病院に関しても、データの問い合わせをしています。 これに関しては、多くの病院からは、正しいデータですという返事をいただいています。 今後この基準をさらに続けてやっていくかどうかというのは、また検討したいと考えてい ます。説明は以上です。 ○荒川座長 いまの精度管理のためのサーベイランス事務局の取組みのご報告ですが、何 かご質問等ございますか。 ○大久保委員 これは精度管理のために大分ご努力されて、非常に質を高める上では大切 なことだとは思うのですが、例えばSSIで考えた場合に、それが感染かどうかという判定 をどういう形でやっているかということが大切だと思うのです。例えば、カルテだけで報 告しているもの、これは最も質が低いわけです。臨床データなり、検査室のデータを基に して、抽出した患者を直接ICTなり、あるいはICDがラウンドをして判定をしているとい うような、どういう形で判定しているかということが実際報告書からわかるといいと思い ます。報告は、いまはそれは求めてないのですが、それでかなり感染率というのが変わっ てきてしまうと思うのです。 ○荒川座長 そうですね。どなたか一言。 ○山根主任研究官 こちらからそういうデータは集めていないものですから、そういうこ とは本当に検査部門以外の部門ではすべて関わってくることであると思います。ですから 一部の部門ではやっていますが、研究班の先生方がその辺は気にされていて。全入院部門 などではアンケート調査をして、どのような人がどういうデータを集めているかというよ うなことを調べて、あまりにもひどい病院には、ちょっとどうなっていますかという問い 合わせをやりつつあります。今後は是非SSIに関しても、SSIのこの問い合わせ基準を含 めて、どういう基準で精度管理をしていくかとか、どういう人がSSIに関わってどのよう な形でやっていくかというようなことは、是非研究班の先生方にご協力いただいて、精度 を高めていく必要があると考えています。 ○荒川座長 感染症の審査基準に大事なカッターだと思うのです。SSIの場合は、以前の NNISですね、あれのSSIサーベイランスの感染症の診断基準なんかも一応参考にされなが ら、かなり多くの病院がそれで出ると思います。SSIサーベイランス研究会ではその辺の 診断については、これについては先生が前に研究班でご紹介いただいた場合、このJANIS のデータとSSIサーベイランス研究会のデータと大体よく似ていて、かなりよく一致する ということで、たしかご紹介いただいたと思うのです。このサーベイランス検討会のほう ではその辺の診断の辺りは。 ○大久保委員 SSIに限って述べているわけではありません。感染かどうかをどのように 判定しているかということが大切です。 ○荒川座長 感染症の診断というのは、これは担当。 ○大久保委員 診断といいますか、判定の仕方でしょうね、病院によって。 ○荒川座長 それはやはり実際にラウンドして、誰がやるという判定をする担当の方を決 めていただいてということ。 ○大久保委員 そう、だから極端なことを言えば、主治医判定がいちばん感染率が低く出 ます。 ○荒川座長 すみません、どうしても主観が入りますから。 ○荒川座長 第三者に客観的な判断。今回、SSIサーベイランスの中のマニュアル上では、 この判定については。 ○山根主任研究官 判定に関しては、いわゆるNNISの基準に準ずるというようなことしか 書いてないです。 ○荒川座長 あとは、誰がそれを行うかということですね。 ○大久保委員 どういう判定をしているかということを問い合わせるのは、1つの参考に はなると思いますね。 ○荒川座長 そうですね。それについては、小西先生の研究班でやっていただくような形 でお願いしてみます。ほかはいかがですか。何かご質問、ご指摘ございますか。精度管理 というのはサーベイランスの信頼性を高める上で非常に重要なことですので、サーベイラ ンス事務局のほうも非常に力を入れて続けてきています。今後も、一生懸命やっていくつ もりでやっていますので、またお気づきの点がありましたら、おっしゃっていただきたい と思います。精度管理については、ほかはいかがですか。ご質問等ございますか。よろし いですか。  それでは議題4ということで、その他について何かございますか。厚労省のほうの事務 局はいかがですか。 ○医療放射線管理専門官 その他ということで、山根先生と先ほど話をしていたのですが、 一般向けの公開データが、特に新システムになってからの公開データについてはまだ出て いないということで、2010年になろうとしている時期にかかわらず、まだ2008年が出て いないというのは、既にいろいろな所から問い合わせがあり、大分プレッシャーがかかっ てきているところなので、作成作業はできるだけ早めていただいて、できれば本年度中に 2008年のデータの公開が全部でなくともせめて半分など、一部であってもできるようにし ていただければと思っています。  もう1つは、この運営委員会、この度第3回ということで、第1回が2008年7月に始ま っているわけなのですが、基本的に年報に関しては必ず承認をしていただくというプロセ スが必要になりますから、回数で考えるよりは、回数付きの会ということになると、いつ か終わりが来るようなイメージが出てしまいます。事業の性格からすると、基本的には定 例的にやっていくような運営委員会ですので、今後は、例えば2009年下半期とかいうよう な形で年2回ぐらいを目安にしてやっていくのがよろしいのかなと。おそらく承認が年1 回では必ず少ないですし、いろいろ検討事項が出てきますから、年2回ぐらいを今後は目 安に定例的に開催していくということを考えています。先生方も皆様お忙しいので、あま り頻繁にやるのは負担でしょうから、そのぐらいではいかがかと思っています。 ○荒川座長 そういった年報のまとまった時点と、節目節目で年に2回ぐらいということ で計画されているということですから、それでよろしいですか。  年報が少し遅れておりますが、先ほど集計データ、集計の式に間違いがあるといけない ということで、すべての数値について、いま洗い直しをしておりまして、それが完了した 時点で計算に入りますので、少し予定より遅れていますが、ご容赦いただければと思いま す。できるだけ早く公開できるように、サーベイランス事務局のほうも努力しております ので、よろしくお願いいたします。ほかはいかがでしょうか。何か補足的なご質問とか、 ご指摘があればですが、よろしいでしょうか。  それでは、今日は皆さんお忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとう ございました。課長がおいでいただいているので、もし何かありましたら是非叱咤激励を いただければと思っています。 ○指導課長 あまり注目されないというか、最後に何かアウトブレイクみたいなのは最近 ないですけれども、やはり継続的に精度管理とか、情報の取扱いも含めて、是非引き続き よろしくお願いいたします。 ○荒川座長 よろしくお願いします。それでは、今日はどうもありがとうございました。