09/11/30 第38回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録 第38回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 日時 平成21年11月30日(月)    16:00〜 場所 厚生労働省16階労働基準局第1・第2会議室 ○岩村部会長   ただいまから、第38回労災保険部会を開催することにいたします。本日は、稲葉委員、 中窪委員、那須委員、小島委員、齋藤委員、伊丹委員、筧委員、萩尾委員がご欠席です。 定足数は満ちております。  また、前回の部会以降、委員の交代がありましたので、ご紹介させていただきます。労 働者側委員として、花井圭子委員に代わりまして、日本労働組合総連合会総合労働局長の 新谷信幸委員がご就任されていらっしゃいます。一言、ご挨拶をお願いいたします。 ○新谷委員   ご紹介いただきました連合の新谷と申します。前任の花井と同様、よろしくお願いいた します。 ○岩村部会長   どうぞよろしくお願いをいたします。  早速、今日の議事に入らせていただきます。お手元の議事次第にありますように、第1 の議題は「雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備及 び経過措置に関する省令案要綱(労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料の 徴収等に関する法律施行規則の一部改正関係)」についてです。本件は、厚生労働大臣から 労働政策審議会会長宛ての諮問案件となっております。  最初に、事務局から、この件についてご説明をいただきたいと思います。よろしくお願 いいたします。 ○労災管理課長   まず、省令案要綱について読み上げましたうえで、内容をご説明申し上げます。 ○労災管理課長補佐   資料1をご覧ください。厚生労働省発基労1130第1号。労働政策審議会会長諏訪康雄殿。 別紙「雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備及び経 過措置に関する省令案要綱(労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料の徴収 等に関する法律施行規則の一部改正関係)」について、貴会の意見を求める。平成21年11 月30日。厚生労働大臣長妻昭。  1枚めくっていただきまして、別紙です。雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に 伴う厚生労働省関係省令の整備及び経過措置に関する省令案(労働者災害補償保険法施行 規則及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部改正関係)要綱。  第1、労働者災害補償保険法施行規則の一部改正。  1、給付基礎日額の特例の改正。1年を通じて船員法(昭和22年法律第100号)第1条に 規定する船員として船舶所有者(船員保険法(昭和14年法律第73号)第3条に規定する場合 にあっては、同条の規定により船舶所有者とされる者)に使用される者の賃金について、 基本となるべき固定給のほか、船舶に乗り組むこと等により変動がある賃金が定められる 場合には、基本となるべき固定給に係る平均賃金に相当する額と変動がある賃金の額とを 基準とし、厚生労働省労働基準局長が定める基準に従って算定する額とすること。  2、特別加入の対象の追加。従事する者が特別加入の対象となる事業の種類として、船員 法第1条に規定する船員が行う事業を加えること。  3、業務災害防止措置に関する書類の作成及び提出の免除。船員法第1条に規定する船員 が行う事業に従事する者の団体については、特別加入の申請に当たり、業務災害防止措置 に関する書類の作成及び提出を免除すること。  第2、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部改正。第1の2の船員法 第1条に規定する船員が行う事業に係る第2種特別加入保険料率を、1.000分の50とする こと。  第3、施行期日。この省令は、平成22年1月1日から施行すること。以上です。 ○労災管理課長   引き続きまして、概要をご説明申し上げます。参考1-1の資料として概要をお付けして います。前回は政令改正事項についてご審議いただいたわけですが、今回は、前回申し上 げましたように、省令改正部分をお諮りするものです。なお、前回の政令あるいは今回の 省令とも、他の部分の改正と合わせて、整備政令あるいは整備省令の形でまとめて公布さ れる予定です。  今回の内容ですが、大きく2点あります。1つ目が「給付基礎日額の算定方法の特例に ついて」です。船員の場合、乗船時と下船時で大きく賃金が変動するケースが多いので、 そのための特例を設けるのが第1点です。  2つ目が「一人親方等である船員に係る労災保険の適用について」です。現行の船員保 険法は、法人組織の代表者等についても対象となっているわけで、これを労災保険におい ても引き続き適用対象とするために、特別加入の形で対象としたいということです。中小 事業主については、既に労災保険法第34条に特別加入の対象になる旨の規定がありますの で、今般の省令の手当てが必要になるのは一人親方のケースです。詳細は次の参考1-2で ご説明申し上げます。  まず、参考1-2の労災保険法施行規則第9条ですが、給付基礎日額の特例です。労災保 険の給付基礎日額については、基本的には労災保険法第8条第1項で、原則、労働基準法 の平均賃金の考え方によるとのことになっていますが、ここの(注)にありますように、 労災保険法第8条第2項で、それによることが適当でないと認められるときは、前項の規 定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより、政府が算定する額を給付基礎日額 とするとの規定が置かれています。この「厚生労働省令で定めるところ」というのが、こ の労災保険法施行規則の第9条になります。  現在、労災保険法施行規則第9条第1項第1号、第2号というのがありまして、第3号 で、前2号に定めるほか、厚生労働省労働基準局長が定める基準に従って算定する額とす るということで、最終的には局長通達を発出する形になっています。下の矢印、吹出しの ところにありますように、新たに第3号に、船員の関係の基本的な規定を盛り込むという ことです。  具体的には先ほど要綱のところで申し上げましたように、1年を通じて乗船、下船時で 変動する場合、固定給及び変動給を、1年を均らして見ていこうというのが基本的な趣旨 です。その詳細については更に細かくなりますので、そこは労働基準局長が定める基準に 従って算定するとのことになるわけですが、基本的な部分をこの省令で手当てをしておこ うというのが、まず第1点目の趣旨です。  1枚めくっていただいて、労災保険法施行規則第46条の17です。こちらは、一人親方 等の特別加入の対象事業を列挙しています。先ほど申し上げましたように、中小企業の中 小事業主については、もともと労災保険法に特別加入の規定が置かれていますが、一人親 方等については、対象となる事業を省令で限定列挙する形になっています。現在第6号ま で規定がありますが、これを第7号として「船員法第1条に規定する船員が行う事業」と の形で事業を追加するということです。  もう1枚めくっていただいて、第46条の23で、一人親方等で特別加入をする場合には、 団体を経由して申請していただくとの取扱いをしています。ここの第2項、第3項にかか わってくるわけですが、特別加入の申請をしていただく団体については、第2項、第3項 にありますように、あらかじめ災害防止に関して講ずべき措置を定め、それを提出いただ く取扱いをしています。ただし、既に別の法令によって、そういった災害防止の措置が担 保されているものについては、それを免除する形をとっています。  具体的には、括弧書きのところに、これこれの団体を除くということになっていますが、 これは家内労働を指しています。家内労働者の場合については、家内労働法第17条以下で 安全衛生の義務が定められています。同様に、船員についても、船員労働安全衛生規則で 安全衛生のための措置が規定されていますので、これら書類の作成・提出は、ここの段階 では免除しようということです。具体的な免除の対象は、この括弧書きの中でこれこれを 除くという形で書かれていますので、この括弧書きの対象のところに、船員が行う事業に 従事する一人親方の団体ということを盛り込んでいくことになるわけです。  もう1枚めくっていただいて、これは労働保険の徴収等に関する法律施行規則です。一 人親方等に第2種特別加入の保険料を、事業または作業の種類ごとに定めています。船員 が行う事業について、料率を1,000分の50とする旨を、この別表に追加する必要があると いうことです。要点の説明は以上です。 ○岩村部会長   どうもありがとうございました。ただいまご説明いただきました点について、ご意見、 ご質問等があればお願いしたいと思います。 ○田中(伸)委員   何点かあるのですが、まず、給付基礎日額の算定方法の特例について、ちょっと質問を したいと思います。現行の船員保険法において用いられています標準報酬日額の算定方式 が、労災保険への統合後においても継承されて、統合による差異は生じないものと理解し ています。  すなわち、細かい話になりますが、労災保険法施行規則第9条に定められているのです が、給付基礎日額の特例に追加された、いわゆる諮問条文を根拠に押して、船員保険の汽 船方式、あるいは全内航方式、それ以外の方式ということで、別途通達で決められ、船員 保険の歩合金方式については、労災保険で既に適用されているということで、漁船の取扱 いに関しては既存通達で対応することになるという理解をしています。  特にこの中で、漁船の歩合金方式の場合、統合後、結果的に差が生じることになるのか、 ならないのかをちょっと1点質問したいと思います。この点についての質問をもう1点付 け加えますが、これは法の中で決められている「労働基準局長の定める基準」ということ で、そこで通達が出るということになろうかと思いますが、この通達についての手続きと スケジュールが決まっていれば教えていただきたいなと思います。以上です。 ○岩村部会長   2つご質問ということで、事務局のほうで回答をお願いいたします。 ○労災管理課長   今回、省令として措置させていただきますのは1つだけの表現ですが、現在の船員保険 の運用は、いわゆる、いまおっしゃいましたように、汽船告示という告示で定められてい るケースと、あと、実はいろいろな賃金形態がありますので、それ以外は通達という形で 整理されているかと思っています。今回の省令部分は、いわゆる汽船告示を想定して書い ていますが、それ以外については、現在の第9条第3号で「厚生労働省労働基準局長が定 める基準に従って算定する額とする」旨の規定がありますので、これをもとに詳細は局長 通達で整理をしていきたいと思っています。  その際、現在、船員保険でとられている賃金算定の方法が、基本的にはそのまま維持さ れるような形で通達を定めていきたいと思っていますので、もちろん「標準報酬」と「平 均賃金」という言葉の使い方が違う部分がありますが、基本的には、いまの取扱いが今後 とも同様な形で取り扱われるように、通達のほうで詳細を定めていこうと思っています。  1月1日からの施行ですので、当然ながら年内にこの通達を整備していくことになりま す。具体的に何日ということはいまの時点では申し上げられませんが、いずれにしまして も、年内の然るべき時期に定めて、1月からの施行に遺漏のないようにしていきたいと思 っています。 ○岩村部会長   田中委員、よろしいですか。 ○田中(伸)委員   質問もかなり難しいので、ちょっと分けて質問させていただきました。いまのご説明、 十分理解しました。1月1日から新制度に移行ということで、いろいろ、いまとどう変わ るのかとか、いろいろな質問とかがあるわけです。年内にこれらについては整理されると、 基本的に現行制度が維持される方向で整理をなされるということですので、そのように理 解いたします。ありがとうございました。  もう1点、質問です。特別加入対象の追加についてです。現行の船員保険法での強制適 用である法人組織の代表者などについては、統合後の労災保険では「特別加入により適用 対象とする」いうことで、第1種特別加入、第2種特別加入の2つのカテゴリーでカバー されると理解しています。このうち第2種特別加入については、対象となる事業を省令で 定める必要があるということで、今回の諮問がなされたという理解でよいのかどうかと、 諮問をされた理由をちょっと質問しておきたいと思います。  もう1点、本件ですが、実態的には第1種特別加入に該当するケース、すなわち、中小 企業の事業主がほとんどではないかと推察をしていますが、法の第33条第1項第1号の規 定で、第1種特別加入の場合は、労働保険事務組合に加入手続きを委託することが必要要 件となっていますが、船員を対象とした事務組合を新規に設立しなくても、既存の事務組 合でこれは取り扱うことができるのかどうかを、2点目として質問します。  もう1点、本件についてです。法人の代表者でなく、自営業者である船主、船長も、今 回の改正で第2種特別加入の対象に含まれ、適用が拡大されることになるのかどうかとい うことです。分かりやすく言いますと、家族船員です。お父ちゃんが船長で、乗組員は雇 用者でなくて家族というケースが、この適用の範囲になるのかどうなのかを質問したいと 思います。以上です。 ○岩村部会長   3点ご質問です。事務方のほうで回答をお願いいたします。 ○労災管理課長   まず、特別加入ですが、労災保険法の第33条の第1号が中小事業主、第3号が一人親方 です。今回、法人の代表者等を、これまで船員保険の対象になっていましたので、引き続 き労災保険の対象とするべく必要な措置をとろうということです。まず中小事業主ですが、 これはもともと第33条第1号あるいは第34条に規定がありますので、労働者が労災保険 の対象となれば、その既存の規定に従って中小事業主も対象となり、これは法令の手直し は要らないということです。ただ、一人親方のほうが漏れることになりますので、一人親 方については、対象事業を省令で列挙しないと対象にならないということですので、今回 それを新たに追加させていただくということです。これによって、いままで対象となって いた方については、労災保険でもカバーされることになるわけです。  一人親方については、先ほどお話がありましたように、船員の場合は法人に限っていま したが、労災保険でこういう規定をしますと、自営の場合も対象となってきますので、新 たにそういう方々については、労災保険では加入できる対象に加わるとお考えいただけれ ばいいと思っています。従来は船員保険の対象として取り扱われたということで、今回、 特別加入という扱いになりますから、そこは自ら進んで入っていただくことが必要になり ます。これまで対象となっていた方が労災保険の対象にきちんとなっていただけるように、 関係者の方々を通じてきちんと周知し、入っていただくようにしていきたいと思っていま す。 ○岩村部会長   事務組合の件がありましたが、中小企業の代表者の場合、事務組合は既存の事務組合で いいのかということですが。 ○労災管理課長   中小事業主の場合には、労働保険事務組合を経由して入っていただくことになっていま す。労働保険事務組合は業種を問いませんので、既存の労働保険事務組合を経由して特別 加入をしていただければいいということです。どのような事務組合があるかというリスト については、船員関係の方々に周知して、それを使って特別加入の手続きをきちんと取っ てもらえるようにしていきたいと思っています。  一人親方は、「一人親方等」ということで、家族従業員の方も合わせて対象になり得る仕 組みになるわけです。一人親方については、先ほどご覧いただいたように、団体を通じて、 やはり申請していただくことですが、一人親方は事業ごとに列挙されているので、船員と しての団体を経由してやっていただく必要があることになると思います。その団体の設立 については、私どもモデル定款も作っていますので、団体の形をとっていただくのは非常 に簡易な形でできることになっておりますので、そういった形できちんと特別加入が図ら れるようにしていきたいと思います。詳細は労働基準監督署でいつでもご相談に応じてお りますので、ご相談にどんどん来ていただければということで周知をしたいと思っていま す。 ○田中(伸)委員   取扱いについては理解しました。ただ、これは意見ではあるのですが、我々の現場は、 いま言ったようなケースでも、海上に普段いるわけで、陸上のようにこの手続きにさっと 行けるような、まず、そういう環境ではないと。そもそも船員の職業環境はそういう状況 ではない、ということを十分配慮していただきたいことが1つです。  そもそも船員保険として強制加入であったものが、特別加入に改められることが、本質 的に問題であって、手続きはいま言ったような形で可能だということは分かりましたが、 こういった手続きについてきめ細かく周知を、いまいる人たちに、いま対象となる人たち に、こう制度が変わって、このような手続きを踏めば従来のものは担保される、カバーさ れるといった周知徹底はきめ細やかにやっていただきたい。必要であれば国交省も含めて、 関係当局と十分連携をとって、気が付かないまま無保険と言いますか、保険で担保されて なかったというようなことのないように、是非、お願いをしたいと思います。  この特別加入に加入ということと、いま事務組合のリストは提示されるということです が、ここら辺のところも、全くいままでは馴染みがないわけですから、何のリストで、自 分たちにどう関係があるのかということが、船員あるいは中小事業者、一人親方が見ても 分かるように、その辺は丁寧な対応をお願いしたいと思います。船員としての団体、一人 親方ですか、団体を経由してということで、この設立という話も、いま私が聞いて何とな く分かるのですが、これは図解をして、この辺は見たら、「お父ちゃん、こうしないと、こ れまずいよ」ということが分かるように、この辺は是非お願いしておきたいと思います。 以上です。 ○労災管理課長   周知活動は、先月から精力的に行っております。事業主団体だけではなくて、船舶所有 者の方全員に必要なリーフレットをお配りすることで、周知を図りつつあります。また、 併せて、対象事業場については、中小事業主に該当するのか、あるいは一人親方に該当す るのかということも、お聞きしながらやっています。私ども、本省だけでなくて出先もあ りますので、そういう所を通じて、引き続き万全を期したいと思っています。 ○岩村部会長   よろしいでしょうか。そのほかいかがですか。特にご意見がないようですので、諮問の ありました件については、当部会としては「妥当と認める」旨を労働条件分科会に報告し たいと考えますが、よろしいでしょうか。 (了承) ○岩村部会長   ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。報告文については、 私に一任させていただくことでお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。 (了承) ○岩村部会長   それでは、そのように取り計らうことにします。  次の議題に移ります。2番目の議題ですが、「平成22年度労働保険特別会計労災勘定概 算要求について」です。これについて、また資料がありますので、事務局からご説明いた だきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○労災管理課長   資料2をご覧いただきたいと存じます。資料2ですが「平成22年度労働保険特別会計労 災勘定要求概要」です。現在、平成22年度の概算要求を行っているところですが、歳入・ 歳出の状況は資料2でご覧のとおりとなっています。具体的に歳入ですが、平成22年度要 求額が1兆2,486億円余ということです。歳出が1兆1,249億円余ということであります。  まず歳入の内訳です。「他勘定より受入」が8,927億、これは労災保険だけでなく雇用保 険もそうですが、労働保険料は労働保険特別会計に「徴収勘定」との勘定がありますが、 徴収勘定に一旦入ってそのまま労災勘定、あるいは雇用勘定に流れてくる。それから、徴 収勘定で必要な額については一旦労災勘定に入ったあと、また徴収勘定に戻すという予算 の流れを取っています。予算上の表現ではこういう形になっています。「他勘定より受入」 というのは、要するに労災保険の保険料収入という意味で受け取っていただければと思っ ています。それから「一般会計より受入」ということで、金額は僅かですが3億7,000万 円ほど労災保険事業に対する国庫補助が行われています。  その下に「未経過保険料受入」「支払備金受入」と2つございます。この2つは前年度か ら繰り越されてくる分でして、「未経過保険料受入」というのは労災の場合、継続事業以外 に有期事業を持っており、建設現場等の有期事業については年度をまたがるものがありま す。前年度収納された保険料のうち、翌年度の保険料見込額というのは翌年度に繰り越さ れるということで、それが「未経過保険料受入」という意味です。「支払備金受入」は、前 年度の業務災害あるいは通勤災害で、翌年度に支払われるべき給付見込相当額が翌年度に 繰り越され、翌年度の歳入として受け入れられるとの意味です。  「運用収入」が1,300億円余、これは後ほどお話いたしますが、労災保険積立金を持っ ています。積立金は財政融資資金に予託するとの形で運用していますので、それの運用収 入という意味です。  「独立行政法人納付金」です。これはかつて、独立行政法人を通じて融資業務をやって いたことがあります。現在は既に融資業務は廃止されていますが、回収業務だけが残って おりまして、その回収金が労災勘定に戻されてきているとの意味です。  それから「雑収入」、これは文字どおり雑収入であります。例えば補助金が余って戻って くる分ですとか、あるいは第三者行為災害の場合に第三者求償をしますが、その第三者求 償で入ってくるお金等々です。  歳出のいちばん大きな内訳は「給付費」、9,163億円余です。その下に「年金特別会計へ 繰入」「職務上年金給付費等交付金」の2つありますが、これは船員保険統合に伴い新たに 設けられた項です。船員保険については、保険料は先ほどのように1000分の50との形で 労災勘定に入ってくるわけですが、現在受給しておられる方々については引き続き「日本 年金機構」、いまの社会保険庁が1月以降「日本年金機構」になります、あるいは、協会健 保を通じて支給されるとの取扱いですので、その必要額を労災勘定のほうからそちらに戻 してやるとの操作が必要になります。そのための繰入ということです。平成21年度は1月 以降の分ですが、平成22年度はそれが年間を通じて平年度化されますので額が増えています。  「社会復帰促進等事業費」が824億円余。これは社会復帰促進のために被災者に義肢・ 補装具を支給する、あるいは就学援護金、安全衛生の対策事業等々の経費とのことであり ます。  それから「業務取扱費等」ということで479億円余。「他勘定へ繰入」ということで515 億円余ということであります。これは先ほど申し上げましたように、徴収勘定から労災勘 定に入ってきて、また所要額を戻すとの予算上の流れがありますので、こういった項が設 けられております。以上が平成22年度の要求概要です。ご覧いただきますと、歳入のほう が歳出を1,000数百億ほど上回っているということです。  次の頁をご覧いただきたいのですが、労災保険はいま歳入のところでご覧いただきまし たように、「未経過保険料」と「支払備金」というのは前年度から繰り越される形をとって いますが、実は「繰り越します」というのが歳出のほうには書かれていない。この繰越の 部分は決算上の処理としてやっていますので、予算だけ見ますといかにも歳入が歳出を上 回っているということになるわけですが、実際には決算で繰越の手続きをとっているとい うことであります。したがって、最終的な決算上の収支というのは繰越も含めて見ていく 必要があるということです。  これまでは翌年度への未経過保険料、あるいは支払備金の繰越を差引きしてもなお収支 で黒字が出たということであります。その分は積立金に積み増す形で処理をしてまいりま した。その繰越が先ほどの収支差で賄えない場合には、積立金の取崩しをして賄う必要が ある。実は平成21年度からは、この取崩しが一部必要になってくるということです。  参考3をご覧ください。「労災保険経済概況」ということで、ここ5年間の状況をお付け しています。例えば、平成20年度のところをご覧いただきますと、収入と支出の差が中ほ どにありますが1,547億円ということであります。ここに前年度から繰り越されてくる分 と翌年度へ繰り越す分があり、そこを差引きして初めて決算上の収支が出るということで す。平成20年度は翌年度への繰越分を控除しても、なお1,571億円余の決算上の黒字が生 じたということであります。その分が平成19年度、7兆9,000億円余の積立金のところに 積増しをされるということで、8兆985億円ということであります。  平成21年度は、まず、いちばん右上の「収入」が大きく減っています。これは平成21 年度から労災保険料を引き下げたことによるものであります。その結果、中ほどの「単年 度収支過不足」ということですが、△755億円ということです。この中には前年度から繰 り越される分と翌年度へ繰り越す分が入っておりませんが、毎年ほぼ同額を繰越・繰入と いうことをやってきていますので、概ねここに書いてあるような数字が最終的な決算上の 収支になるのではないか。要するに、平成21年度からは積立金を取り崩すという形になる わけです。今後こうした状況が続くことを前提とすれば、大体こういう形で積立金を徐々 に取り崩していくという段階に入るのかなと思っています。  最後が「労災保険の積立金について」です。労災保険は積立金を保有しているわけです が、これは将来にわたって行う年金給付の原資を保有しているという趣旨であります。22 万人余の年金受給者の方に年金給付を行っています。  2つ目の●をご覧いただきたいと思います。「年金給付に要する経費については、労働災 害に伴う補償責任は、事故が発生した時点における事業主集団が負うべきであるという考 えから、事故が発生した時点において将来分も含めてそれを全額徴収し、これを積立てて いるもの」ということになります。平成元年からこういう考え方でやっています。  実は、平成元年以前は、いわゆるいまの厚生年金における賦課方式と同様の考えでやっ てきたわけです。その考えでやりますと、特に石炭から石油へのエネルギー政策への転換 に伴って石炭産業というのは非常に縮小した。しかし、年金ですので将来まで給付を引き ずるということで、ならば縮小した石炭産業から保険料を取れるのかというと取れないわ けです。結果的には、ほかの産業の方にご負担いただいたということになったわけです。 そういうことにならないようにということで、平成元年からはその時点で将来分を推計し て徴収しようという形に改めてやってきているところです。  したがって、矢印のところにありますが、積立金というのは使用用途のない余剰金とい うことではなくて、現在年金を受けている者の将来分の原資、責任準備金であり、あるい は一種の確定債務というように言えるものと思っています。  こういった方式をとることにより、3つ目の●にありますが、後世代の事業主集団にし わ寄せせずに済む。あるいは、産業構造の変化の中で他産業にしわ寄せせずに済むという、 2つの意味での公平が実現しているわけです。言い換えますと、その時々の災害の状況が 保険料に反映されるということで、これによって事業主の災害防止努力へのインセンティ ブが増し、ひいては労働者の保護にもつながると考えています。いずれにしても、積立金 の使途は法律で規定をされております。  それから、先ほどご覧いただいたように、積立金により運用収入約1,300億円が歳入と して入ってまいりますので、その分、保険料が軽減されるという形になるわけです。それ から、収支のところでご覧いただきましたが、これまでは平成元年以前の過去債務を解消 するという意味で積立金の積増しをしてきたわけですが、徐々に取崩しが始まるというこ とです。予算の関係の説明は以上です。 ○岩村部会長   ありがとうございました。ただいま、事務局からご説明をいただきました予算関係、労 災保険の積立金についてですけれども、何かご意見、ご質問等ありましたらお願いしたい と思います。 ○新谷委員   いま、労災管理課長から、平成22年度予算の概算と時系列にわたって労災保険の経済概 況ということでご報告をいただいたわけです。いささか古い話なのですが、この部会の過 去の議事録をめくってみますと、2003年当時、小泉内閣のときに「総合規制改革会議」の 第3次答申の中で、労災保険制度について「民間開放」ということが検討されたと聞いて います。そのときはこの部会の論議もそうですし、厚生労働省も頑張っていただいて、現 在のような国の直轄事業という形で残っていますので、我々も当然その方向を支持してい きたいと思います。国の運営という基本の枠組みは、不可欠の制度として残していただき たいと思っています。  また、今日ご報告いただいた中で、労災保険の積立金の残高が8兆円という巨額な残高 のご報告をいただいています。最近は市ヶ谷のほうでもいろいろな仕分けとかやられて、 埋蔵金探しで国の特会を探っている向きもあります。この積立金については、年金給付と いう長期にわたる給付に対する責任準備金である性格を有していますので、埋蔵金探しの 対象にならないように、是非適切な運営と情報公開をしていただければと思います。その 点についてご要望申し上げたいと思います。以上です。 ○岩村部会長   ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。 ○田中(伸)委員   ちょっと細かい話なのですが、診療報酬について2点ほど質問をさせていただきます。 概算要求全体については減額ということで、労災事故そのものが減少しているということ は当然喜ばしいことですので、この予算がそういうようになっていくということは基本的 に良いことだろうと思います。その中で、給付費のうち診療報酬が占めている割合がおよ そどの程度なのか、わかりましたら教えていただきたいと思います。  もう1点、診療報酬についての質問なのですが、診療報酬の単価について、我々の理解 では健康保険の場合は1点10円であるわけです。労災保険の場合は、1点で12円というよう に理解しています。これについて質問ですが、薬価についても同じように差があるのか どうなのか。  それから業務上、あるいは職務外であるかということで単価が違うということになりま すと、同じ内容の医療サービスを受けても差が出てくる。これは何か背景なり、過去に理 由があるのかないのか。もしないのであれば、こういう差についてはいかがなものかと考 えます。この辺、もし理由がはっきりしているのであればお教えいただきたいと思います。 ○岩村部会長   お願いします。 ○補償課長   3点についてお答えいたします。まず、診療報酬の割合ということです。平成19年度の 給付費の実績ですが、全体が特別支給金を含め8,931億円ございます。そのうち、療養の 給付にかかった費用が2,058億円、全体の23%を診療費が占めている状況にあります。  診療報酬単価についてはご指摘のとおり、労災の場合は健康保険の1点10円に対し、1 点12円で計算をするということになっています。薬価については現在の医療機関、病院・ 診療所の場合は1点12円相当で算定させていただいていますけれども、医薬分業で薬局の ほうでいただく場合には1点10円という形で処理しています。医薬分業が進んでいくに連 れて、1点10円での対応になってこようかと思っています。  業務上と業務外で単価が異なる理由ということであります。これは労災保険と健康保険 の趣旨の違い、補償の性質、考え方の違いから来るものと考えています。労災保険につい ては、業務上の傷病に対する事業主の災害補償責任を担当する公的保険制度であり、療養・ 医療補償の水準、内容については、事業主の責任範囲という観点から定められているもの であります。したがって標準的、一般的な療養費を定める健康保険とは考え方が少し異な るということになると思います。  労災保険の療養補償の目的として、被災労働者の労働能力の回復、早期の職場復帰とい うものが特に重要となっており、形としては同じ傷病であっても、健康保険と異なる医療 対応が必要とされる場合も多いことから、これに要するコストを適正に評価することが求 められるという観点でこのような違いになっていると考えています。  具体的に診療費を算定する場合、健康保険の診療報酬点数表をベースとしている部分も かなり多いのですが、いま申し上げた観点から、例えば、リハビリテーションといった労 災の特性のある項目についてはさらに独自に定めをしています。それも含め、労災保険の 目的を踏まえた診療費となるように措置しているところです。 ○岩村部会長   よろしゅうございますか。 ○田中(伸)委員   理由はわかりました。ただ、同じ内容で同じ治療、同じサービスを受けて医療機関に支 払われる金額が業務上であるか業務外であるかによって変わるというのは、若干、それだ けの理由であれば少し説明不足だろうなと考えています。これは意見ですけれども、もし 同じ内容の医療・診療に対して健康保険と同じものが支払われるのであれば、労災保険の 支出、給付の削減につながるということにもなろうかと考えます。この辺については保険 料の負担軽減、これは本来事業主が言う話かもしれませんが、合理的な説明が付くように するということは今後においても必要だろうと考えます。これは意見です。以上です。 ○補償課長   繰り返しになりますが、労災保険の場合、個々の事業主の災害補償責任というものをど のような範囲で定めていくか。労働基準法由来の責任範囲を定めるという観点から、療養 の補償の範囲も定まってくるという性質があります。一方、健康保険の場合、もちろん個 人の負担部分の算定に影響するということはあるのですが、一般的・標準的な療養の水準 を定めて医療機関等に対してどのような支出をするか、健康保険で措置していくかという 観点で定まるところがございます。したがって、健康保険では十分ではない部分を労災保 険で措置しなければならないことがあるということです。  あと、細かい話ですが、労災の指定医療機関制度というものがあります。労災というこ とで病院に来られた場合、労災独自のさまざまな事務や医療機関としての指導、対応とい ったものがあります。そういったものも含めて評価をさせていただいているということも ございます。 ○岩村部会長   ありがとうございました。そのほか、いかがでございましょうか。 ○輪島委員   資料2ですが、先ほど新谷委員がおっしゃった点、私どもも同様に考えています。むし ろ、参考4に書いてある1つひとつを私どもも同じように考えています。そういう観点か ら言うと、参考4ではなくて資料3に格上げをしていただいて、きちんと審議会の資料と して位置づけていただく。かつ、もし可能であれば、労使で確認するということも含めて 今後検討していただきたいと思います。以上です。 ○岩村部会長   それはちょっと事務方とご相談させていただいて、考えさせていただきたいと思います。 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか、よろしゅうございますか。  他に特段ないということですので、本日予定していました議題については終了でござい ます。次回以降の日程ですが、現在、労働力需給制度部会において「今後の労働者派遣制 度の在り方について」ということで議論が行われています。皆様もご承知のとおりだと思 います。この案件で、我々の部会にかかわるような議論の動きについて、事務局のほうで 何か把握しておられればお話をいただければと思います。 ○労災管理課長   労働者派遣制度の在り方については、先般、「労働者派遣法等の一部を改正する法律案」 ということで、国会に政府提出の形で提出させていただきました。しかし、衆議院の解散 とともに廃案になったという経緯がございます。併せて民主党、社民党、国民新党の3党 案というのも提出されておりましたが、これも同様に廃案になったという経緯があります。 現在、改めて10月に労働政策審議会に諮問するとの形で、具体的には需給調整部会で検討 が行われているというように承知しています。  当部会との関係で申しますと、前回の政府提出法案の際に当部会でご審議をいただいた という経緯があります。その中に、労災保険法の一部改正部分も含まれていたということ です。具体的には、派遣先の災害防止責任を徹底すべきだとの観点から、行政庁が派遣先 に対して立入検査ができるとか、あるいは報告徴収等を求めることができるといった規定 を労災保険法の中に新たに設けるべきだということで、当部会のご了解をいただいて政府 提出法案に盛り込ませていただいたということです。それがいま申し上げましたように、 廃案になったということであります。  私どもが聞いておりますところによると、需給調整部会のほうは政府提出に対して3党 案のほうが併せて提出をされ、いまこういう政権の枠組みになっている中で、3党案のと ころで盛り込まれた内容をどういうように考えていくかという観点から、議論されておる やに承知しています。基本的に政府提出の部分に関して申し上げますと、いまのところ、 以前ご議論いただきました立入検査、あるいは報告徴取ということについては、別段の議 論は特になされていないというように聞いています。  これから年末に向けて、需給調整部会のほうで報告を取りまとめていくということでご 議論いただいているところです。その報告は、政府提出で1回議論したことに新たに加え るものをどうしていくかとの視点から、整理していこうという状況と聞いています。一方 で、以前労災保険の改正に盛り込まれたものについては、特段の議論なく推移していると いうことです。今後の議論次第ですが、そういうことから考えれば、このまま行けば以前 の労災保険法の改正にかかわる部分については、引き続き全体を取りまとめられた法案要 綱の中に同様の形で盛り込まれるという流れで、いま議論が推移しているのかなというよ うに私どもとしては認識しているところです。 ○岩村部会長   ありがとうございました。いまご説明をいただいたとおりですけれども、それをもとに 考えてみますと、今後の労働力需給制度部会での議論の動きにもよるわけではありますが、 立入検査規定などについては廃案となった政府提出法案と同内容の範囲内ということであ れば、既に昨年この部会でこれについてはご了承いただいているということでもあります ので、どうもその報告だけのために、わざわざまた年内にこの部会を開催するということ までもないのかなと考えています。ですので、年明けに法案要綱の諮問の段階にてこの部 会でご審議いただくということに、この件についてはしたいと思います。よろしゅうござ いますか。 ○輪島委員   この部会としては諮問答申をしていて、それが廃案になっているものについて、もう一 度政府が提出をするときに、こちらの部会にも要綱については同内容でも再度諮問される という意味ですか。 ○岩村部会長   おそらく、手続き的には新しい法案を出すという話になるので、労災保険法上、たぶん 諮問しなければいけないのでしょうか。 ○輪島委員   同内容であっても。 ○労災管理課長   例えば国会に出したあとどうなるかというのは、国会次第のところがあるわけで、出し たものが廃案になってまた出し直しということは、過去にも例はあると思います。そのと きに、全く国会の話だということで、ご報告すらしないケースももちろんあります。それ から、報告としては、こういう状況になっていますということをやったケースもあったよ うです。今回の場合、仮にその部分の内容は同じだとしても、一応政府提出法案としては、 もう少し付加される部分というのはおそらく出てくると思います。改めて、同じ内容であ ってもお諮りしたほうがいいのかなというように事務的には思いますが、そこはまたご相 談させていただきたいと思います。 ○岩村部会長   そうですね。形としてはたぶん内容が付加されたものになるのかなと思いますので。 ○輪島委員   付加されるのは、労災保険法の改正部分ではないところでしょうね。 ○岩村部会長   そうだと思いますが、法案としてはそういう意味ではちょっと形が変わっているという こともありますので、やや慎重を期してご審議いただいたほうがよろしいかと現段階では 私もそう思っています。また、実際、どういう要綱になるかというところも踏まえて、事 務方とご相談させていただいた上で、部会としての審議の可否というのは考えさせていた だくことにしたいと思います。ただ、いずれにしても、年内に改めてご意見を伺うという 形での部会の開催はせず、法案要綱の段階で必要があればご審議をお願いするということ でよろしいでしょうか。                   (承認) ○岩村部会長   ありがとうございます、そのようにさせていただきたいと思います。次回の開催ですが、 これについては改めて事務局から皆様にご連絡をしたいと思います。ほかに何か、特段ご 発言はありますでしょうか。よろしゅうございましょうか。  それでは、これをもちまして本日の部会は終了とさせていただきたいと思います。本日 の議事録の署名委員ですが、労働者代表については林委員、使用者代表については輪島委 員にそれぞれお願いしたいと思います。今日はお忙しいところ、皆様、ありがとうござい ました。 照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係             03−5253−1111(内線5436)