09/11/21 平成21年度第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び      第1回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会(第1回合同開催)議事録 平成21年度第4回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 及び第1回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会(第1回合同開催)             日時 平成21年11月21日(土)10:00〜             場所 中央合同庁舎5号館6階共用第8会議室 ○事務局  定刻となりましたので、ただ今より「平成21年度第4回薬事・食品衛生審議 会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」及び「第1回新型インフルエンザ予 防接種後副反応検討会」の合同検討会を開催いたします。本日の合同検討会は 公開で行うこととさせていただきますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせ ていただきますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協 力をよろしくお願いいたします。また、傍聴者の方々におかれましては、傍聴 に際しての留意事項である「静粛を旨とし、喧噪にわたる行為をしないこと」、 「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」などの厳守をお願 いいたします。  本日御出席の先生方におかれましてはお忙しい中、また休日のところをお集 まりいただきまして誠にありがとうございます。後ほど資料の御説明をいたし ますが、参考資料3にお示ししております新型インフルエンザワクチンの安全 対策について、接種事業を実施していく中で検討するために、本日は、薬事・ 食品衛生審議会安全対策調査会と健康局長の諮問機関である「新型インフルエ ンザ予防接種後副反応検討会」を合同開催させていただきます。本日は第1回 目の合同開催となりますので、各委員の先生方を五十音順で御紹介させていた だきます。  初めに、安全対策調査会委員の方からですが、常任の委員の先生方でござい ます。東京大学医学部小児科講座教授の五十嵐先生です。国立医薬品食品衛生 研究所副所長の大野先生です。東京医科歯科大学歯学部附属病院薬剤部長の土 屋先生です。獨協医科大学特任教授で、安全対策調査会の座長でもある松本先 生です。  次に、安全対策調査会の参考人として参加していただいております先生方の 御紹介です。独立行政法人国立病院機構本部医療部研究課長の伊藤先生です。 山口大学大学院医学系研究科神経内科教授の神田先生です。国立国際医療セン ター国際疾病センター長の工藤先生です。信州大学副学長の久保先生です。長 崎大学病院長の河野先生です。国立成育医療センター研究所研究所長の名取先 生です。国立成育医療センター妊娠と薬情報センター長の村島先生です。自治 医科大学小児科学教室教授の桃井先生です。  次に、新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の先生方ですが、東京都 健康・長寿医療センター感染症科・研究検査科部長の稲松先生です。国立感染 症研究所感染症情報センター長の岡部先生です。同じく国立感染症研究所感染 症情報センター第三室長の多屋先生です。なお、安全対策調査会の参考人とし てお願いしておりました庵原先生、内山先生、埜中先生、林先生、新型インフ ルエンザ予防接種後副反応検討会の川名先生、永井先生は本日御欠席です。  引き続き、事務局側を御紹介いたします。健康局結核感染症課長の福島です。 医薬食品局長の高井です。大臣官房審議官(医薬担当)の岸田です。安全対策課 長の森です。安全使用推進室長の佐藤です。安全対策課課長補佐の野村です。 また、独立行政法人医薬品医療機器総合機構については、安全管理監の松田で ございます。最後に、医薬食品局安全対策課課長補佐の、堀内でございます。 よろしくお願いいたします。それでは、第1回の開催に当たりまして、事務局 を代表いたしまして医薬食品局長の高井より御挨拶を申し上げます。 ○医薬食品局長  本日はお休みのところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。 新型インフルエンザワクチンの接種が進んでおりますが、本日はその副反応の 状況について御説明させていただきまして、御意見を賜りたいと思っておりま す。よろしくお願いいたします。 ○事務局  今回、新型インフルエンザワクチン接種事業の安全確保を図るため、本委員 会を合同開催するに当たりまして、第1回目ですので事務局より安全対策課長 の森から、本日の開催趣旨等について御説明させていただきます。 ○安全対策課長  本日は休日にもかかわらず、先生方にはお集まりいただきまして大変ありが とうございます。新型インフルエンザワクチンの接種が進む中、これらのワク チンの接種に伴って現れる副反応の報告を集めているわけですが、こうした情 報が収集されていく中で、ワクチンそのものの安全性、特に今回は新型インフ ルエンザ用のワクチンということで、少し新しいところもあることを考えまし て、接種が始まる前からできるだけの英知を集め、評価をしておこうと準備し ていたわけです。その中でも特に安全性の評価については、できる限りの英知 を集めて御評価をいただきたいということで、従来より医薬食品局の安全対策 調査会の先生方、健康局の予防接種の副反応の評価の先生方と、それぞれ御専 門の先生方にお知恵を拝借しようということでこのような仕組みの会議を設け るために準備を進めていたわけでございます。  今回、開催を少し早めさせていただきました理由は、10月19日から既にワク チンの接種は始まっており、当初はワクチンの接種による重篤な副作用・副反 応の報告はない状態で推移しておりましたが、先週の金曜日に第1例目の接種 後の死亡の報告がありまして、今週になってもその報告が続いているという状 況にあるからです。それら個々の評価については、報告をいただいてからすぐ さま専門の先生にお願いをして御意見をいただいているところですが、症例が ある程度集積してきている状況でもありますので、現時点において、これまで 得られた比較的健康と思われる医療従事者の方々に接種し、どのようであった かという初期2万例のコホートのデータ、初期段階の副反応報告の内容、先週 来の死亡例の報告といったものを整理し、先生方にも御覧いただき、御意見を 賜りたいと考えております。  基本的にこの場における御議論は、個々の症例の評価を基にして、ワクチン そのものの安全性、その全体像を議論していただくことをお願いしたいと思っ ております。今後のワクチン接種の進め方にも非常に大きな影響がありますの で、是非、忌憚のないところで御意見をいただきまして、私どもの今後のワク チン接種事業の判断の材料とさせていただきたいと考えているところでござい ます。どうかよろしくお願いいたします。 ○事務局  議事に入る前に、今回は第1回の合同検討会ですので、合同実施に当たって の座長、並びに座長代理の選出をお願いしたいと考えております。事務局の方 からで恐縮ですが、安全対策調査会の座長である松本先生に合同検討会の座長 を、新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会委員の稲松先生に座長代理を お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。御異議がないようですので、 本合同検討会の全体の座長を松本先生、座長代理を稲松先生にお願いいたしま す。これ以降議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきま す。恐縮ですが、松本先生、稲松先生は座長席、座長代理席へお移りください。 今後の議事進行は松本座長にお願いいたします。 ○松本座長 座長を務めさせていただきます松本和則と申します。どうぞよろ しくお願いいたします。まず、事務局から審議の際の参加規程について報告を お願いいたします。 ○事務局  まず、平成20年12月19日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会審議参加規程に ついてです。新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会の委員の方々には、 本日は薬食審のルールに準じた対応とさせていただきますことを御了承くださ い。本日、御出席の委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・ 契約金等の受取状況の報告をいたします。本日の議題は季節性及び新型インフ ルエンザワクチンに係るものですので、議題1に関しては、調査品目である新 型インフルエンザワクチンの製造販売業者である学校法人北里研究所、財団法 人化学及血清療法研究所、財団法人阪大微生物病研究会、デンカ生研株式会社。  競合品目として、新型インフルエンザワクチンの輸入が予定されているグラ クソ・スミスクライン株式会社、並びにノバルティスファーマ株式会社からの 過去3年度における寄附金等の受取りについて申告を頂戴しております。また、 競合品目・競合企業については、事前に各先生に送らせていただき、御確認い ただいております。各先生からの申し出状況により、今回審議への不参加の委 員はいらっしゃいませんでした。五十嵐委員がグラクソ・スミスクライン株式 会社から50万円を超え500万円以下の受取り、ノバルティスファーマ株式会社 から50万円以下の受取りとの申告がありましたので、議題1に関しての議決に は参加できませんとのことです。土屋委員からはノバルティスファーマ株式会 社から50万円以下の受取りとの申告がありました。  参考人においては、工藤先生がグラクソ・スミスクライン株式会社より50万 円以下の受取り、河野先生がノバルティスファーマ株式会社、グラクソ・スミ スクライン株式会社より50万円以下の受取りとの申告がありました。また、健 康局の新型インフルエンザワクチン予防接種後副反応検討会の先生方には直接 は適用されませんが、準じて対応するということで御参考までに報告いたしま すと、岡部委員より財団法人化学及血清療法研究所、財団法人阪大微生物病研 究会、デンカ生研株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社から50万円以 下の受取りとの申告がありました。以上です。 ○松本座長  ただ今事務局から説明があった競合品目・競合企業、審議の際の参加規程に ついてはよろしいですか。特にないようですので、競合品目・競合企業の妥当 性を含めて了解いただいたものといたします。ありがとうございました。次に、 事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。 ○事務局  お手元には座席表、議事次第及び委員名簿、さらに本日の配付資料一覧があ りますので、こちらを御参照いただきながら確認をお願いいたします。資料1 は国立病院機構において実施した2万人を対象とした中間報告です。資料2-1は 推定接種者数及び副反応報告頻度について、資料2-2は副反応症例の内訳、資 料2-3は重篤症例一覧、資料2-4は重篤症例の概要で、全部で14ページのもの、 資料2-5は死亡症例一覧、資料2-6は死亡症例の概要で19ページのもの、資料 2-7は季節性インフルエンザワクチンの副反応状況との比較の表で、全部で6ペ ージのものです。  参考資料1は新型インフルエンザワクチンの副反応報告の概要リスト、参考 資料2は諸外国の状況で、海外のワクチン関連死亡例、参考資料3はパワーポイ ントの打出し、参考資料4は新型インフルエンザ予防接種実施要領と委託契約 書、参考資料5は接種スケジュール、参考資料6は新型インフルエンザワクチン の添付文書、参考資料7は稲松委員より提出いただいた「副作用論2009」、参 考資料8は疾患別の年齢別死亡者数、参考資料9は季節性インフルエンザワクチ ン予防接種における死亡症例(70歳以上)の表、参考資料10は新型インフルエン ザ予防接種後副反応検討会の要綱、裏に構成員名簿があります。当日配付とし て、今月19日付のWHO公表資料がございます。資料は以上ですが、不足、落 丁等ありましたらお申し出ください。 ○松本座長  資料の方はよろしいでしょうか。今回は第1回目ですので、改めて事務局か らこの委員会の位置づけ及び本日紹介するデータの位置づけについての説明を お願いいたします。 ○事務局  参考資料3、パワーポイント打出しの資料を御覧ください。参考資料4として 実施要領と契約書がありますが、先月19日から新型インフルエンザワクチンの 接種事業が開始されております。今回は順次、接種順位に従った接種が行われ ていく中、新型インフルエンザワクチンとしての使用経験がないということか ら、副反応への対応体制について予め検討すると。参考資料3の1枚目にある 「合同検討会(専門家による評価体制)」ということですが、重篤な副反応が発 生した際の安全対策、接種事業の継続の是非等について検討を行う必要があり、 副反応について迅速に助言・提言が行われるよう機動的に開催する必要がある ことから、下にあるように、初期2万例コホート調査や厚生労働科学研究も並 行して実施しながら、1枚目のポンチ絵に厚生労働省、自治体、医療機関、P MDAと四つのステークホルダーがありますが、医療機関から厚生労働省に副 作用・副反応報告を実施要領の報告書書式に従い、直接報告を頂戴することと しております。これらを定期的に評価するために合同検討会を開催し、専門評 価を踏まえて、厚生労働省の右側にあるように、「安全対策・接種継続・中止 等の判断」ということで状況に応じた情報提供や事業の見直しを行うこととし ております。  2枚目に、その仕組みについて大きく書いてあります。医療機関から厚生労 働省への直接報告は日々集計しておりまして、本日は現時点まで取りまとめた ものについて第1回目の評価をお願いしたいと考えております。3ページは「副 反応への対応体制のまとめ」ですが、今申し上げたような医療機関からの直接 報告による迅速な情報収集体制、評価体制並びに合同検討会での定期的評価を 実施するとともに、海外の状況の情報収集なども行うということです。4ペー ジは接種スケジュールと副反応報告、調査報告ですが、10月19日から開始され た医療従事者を皮切りに、11月に入ってからは基礎疾患の優先接種対象の方、 妊婦の方の接種が始まっており、先週末からの死亡例の報告などはこの基礎疾 患者の開始に合わせて報告が寄せられている状況です。  「参考資料」はインフルエンザワクチンによる副作用等について、その発生 状況をまとめているものや、今回の新型インフルエンザワクチンの副反応の報 告基準などを6、7ページに付けております。8ページは、参考として新型イン フルエンザワクチンと従来の季節性インフルエンザワクチンの報告体制の違い についてで、従来は接種医療機関から、高齢者の定期予防接種の場合は市町村、 自治体を通じて報告をいただいておりましたが、今回は国に直接行うことを事 業の実施契約の業務委託契約の中でも求めさせていただいております。また、 季節性インフルエンザワクチンの副作用報告は任意接種、定期接種に係わらず 薬事法の報告対象になりますが、「当該品目の副作用その他の事由によると疑 われる疾病」を報告対象としておりまして、今回の接種事業では疑い如何にか かわらず、死亡、臨床症状の重篤なものは報告対象としてお願いしております。  3つ目の○ですが、基礎疾患を有する患者を優先接種対象者としていること から、基礎疾患羅患者の死亡者数等から見て、ワクチン接種後に、基礎疾患に よる健康に影響を及ぼすイベント、死亡を含めた患者報告の可能性はあるとい うことで、季節性インフルエンザワクチンでは定期のII期では65歳以上で、疾 患による優先等は特に行われておりません。9ページについては、後ほど国病 機構の資料の説明がありますので省略いたします。10、11ページは、本日も御 出席いただいている国立成育医療センターなどの御協力を得て、新型インフル エンザワクチンの先天異常のモニタリングの実施についての資料です。 ○松本座長  よろしければ、議題1に移りたいと思います。資料1は「新型インフルエンザ ワクチンに関する2万人を対象とした安全性研究の中間報告について」という ことで、この研究を統括しておられる伊藤先生から説明をお願いしたいと思い ます。 ○伊藤参考人  国立病院機構本部の伊藤でございます。資料1に基づきまして御説明いたし ます。昨日、厚生労働省から報告させていただいておりますが、その内容につ いての説明です。国立病院機構では10月19日、20日を中心として、最初の3日 間で2万2,112名の医療関係者に新型インフルエンザワクチンを接種いたしまし た。その結果を主任研究者の東京医療センターの岩田先生に取りまとめていた だき、取りまとめの事務局を私ども国立病院機構本部が行いましたので、代わ りに報告しております。今回は16日までにデータベースに収集された2万2,002 例の結果です。昨日現在、データとしてほぼまとまってきておりますが、デー タクリーニングが完璧ではなく、次回はデータクリーニングの精度がもう少し 高く出たものでの報告をさせていただけるものと思っております。  データクリーニングの精度と申しますのは、重篤なものについてはほぼ確実 にこれでいくだろうと思っておりますが、副反応のじんましん、39℃以上の発 熱といったものがデータベースの中から新たに出てきたりしているものですか ら、そのような意味での精度が少しずれているということです。投与経路は皮 下接種で、15μgの1回接種です。中のパワーポイントのスライドを御覧いただ きますと、6、7ページに書いてあるとおり、このような基準を設け、被験者の 方に日誌を付けていただきました。7日目までの体温は必ず毎日測定してくだ さいということで、統一した体温計を渡し、体温の測定をしていただいており ます。体温測定と合わせて、局所の観察を毎日行い、チェックしていただいた のでかなり高い精度で情報が出ているものと思っております。  それ以外、14日目までに認められた有害事象について報告をいただいており ます。接種者ですが、医療機関の職員ですので女性の方が多く、特に若い女性 が多いのですが、男性が25.6%、女性が74.4%で、年齢分布は20代が多いとい うことです。「原疾患」と書いてありますが、当然、医療従事者でも病気を持 っている方がいらっしゃいますので、それもすべて把握しておりまして、治療 中の薬剤についても把握しておりますが、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病など で治療している方が12.9%、気管支喘息に関しては、前回調査したH5N1のと きも気になりましたので、喘息を既往として持っている方については、現在治 療中でない方も含めてマークをしていただきました。その結果、4.3%の方が 持っているということでした。  副反応についてはこの日誌に基づき、2cm以上の発赤を取っております。医 療関係者に発赤という形で聞くと、0.01cmの発赤といったものも返ってきてお りまして、一定程度のところにしないと取れないのではないかということがあ ったものですから、2cm以上ということで、○cm○mmと細かく書いていただい ておりますが、2cmを目安に区切って取りました。そのとき全体としては53.7 %、2cm以上の腫脹が31%となっておりますが、それについては9、10ページを 御覧ください。  9ページは発症日と最大の症状、消失日で、発赤の発症に関しては、打った 当日あるいは翌日に出ております。当然のことながら最大の症状もそのときに 出ており、消失日については3日ないし4日で消失するという状況です。この図 から、皮下接種での腫脹についてもほぼ同じ傾向を持っていることが分かると 思います。疼痛ですが、針を刺した後の痛みも含めて、人によって疼痛の程度 を取るのは大変難しく、治験のときには患者に戻り、かなり詳細にフィードバ ックしておりますが、2万人のそれを取るのは難しいので中等度以上の疼痛、 基準にあるように、痛み止めを用いる程度の痛みがあった方はどれぐらいか、 ということで数字をまとめております。軽度の痛みもすべて取っておりますが、 まとめとしてはこれぐらいの方が安定したデータであろうということで、3.4 %という数字を提示しているところです。  全身反応については、37.5℃以上の発熱で区切りました。37.5℃以上の発熱 で見たときに、全体の程度が3.1%という数字が出ております。同時に、厚生 労働省に報告する副反応の基準は39℃以上ですので、それについては個別に取 っておりますが、スライド8ページを御覧いただくと分かるように、37.5℃以 上の発現の日を見ると0日、つまり接種当日もしくは翌日に37.5℃以上の発熱 があった方がおり、2日後、3日後にも少し出ているかと思いますが、38℃以上、 39℃以上の発熱があった方については0日から7日ぐらいまでの発現頻度、特に 39℃以上の発熱に関しては出ていないようです。あとの方のスライドにまとめ ておりますが、実はこの時期には医療機関の中でも新型インフルエンザが既に 出ておりまして、39℃を超える発熱があった方の中には明らかにA型のウイル スが検出された方もおりました。12ページを御覧いただくとお分かりになるよ うに、特に発熱が2日以内に発生したのか、2日以降か、インフルエンザ検査後 測ったか、測らなかったかといったところまで含めて記載してあります。あと は先生方の御判断ですが、このような発熱の状況でした。  頭痛など他の全身反応として定型的なものですが、過去にワクチンの治験な どをやっておりますと、頭痛、倦怠感、因果関係があるかどうかは別にして鼻 水が高率に見られますので、それに関しては日誌の中で定型的なものとしてチ ェックをしていただきました。その結果、頭痛、倦怠感、鼻水については御覧 のような頻度となっております。それ以外の有害事象に関しては、16ページ以 降に付けている資料を御覧いただくとお分かりになると思いますが、通常の医 薬品の副作用と同じように件数で出しております。この件数は334名の件数で 総数として460何件という数字になっておりますので、1症例当たり複数出てい るものもあります。御覧のように、関節痛、下痢、咳嗽、筋肉痛、悪心、嘔吐、 口腔咽頭痛といったものが見られました。  新型インフルエンザワクチン副反応報告基準に該当するものに関しては、各 医療機関の方からこれに該当するものは全部出してくださいというお願いをし た結果出てきたのが90件です。重篤な有害事象としてはそこに記載のとおり、 動悸、両下肢の筋肉痛、嘔吐、発熱、意識レベルの低下、末梢性めまいといっ たもので、この6名が入院されましたので、これらは医薬品の有害事象から言 うと重篤な有害事象として挙がってきたものとなります。それ以外のもので副 反応基準に合致した症例数については隣のリストのとおりですが、39℃以上の 発熱が39件、3日以内のじんましんは28件で、あとは1件ずつ御覧のような形 で出ております。  私どもの施設で、特に16ページ以降のもので「高度以上」として報告のあっ た事例については14ページに記載いたしましたが、53歳の女性で接種して10分 後に手足のしびれ、呼吸苦を認め、ステロイドによる治療を行っております。 徐々に改善し、接種後4時間経ったときは点滴を中止、大丈夫とのことでその 日のうちにお帰りになりまして、入院には至りませんでしたので重篤な有害事 象としての報告はしておりませんが、ほぼそれに準じるものとしてあるのでは ないかと。記載のとおり、とりわけ、この方は血圧の低下なども見られました ので特段の報告をしているところです。もう1件は死亡事故です。これは交通 事故での死亡事例ですが、普通に勤務をし、夜お帰りになる途中、お子さんと 歩いているときに車に接触して転倒、不幸な転帰をとられたということです。 施設からは因果関係はなしということで報告をいただいておりますが、事例が 事例ですので特段の形での報告をさせていただいております。  15ページに現在進行しているH1N1の成人治験200例を参考として報告して おりますが、局所反応としての発赤、腫脹については基準が少し違っておりま すので直接の比較にはなりませんが、他のものについては同じ基準で取ってお りますので御覧いただけると思います。ただ、なにぶんこちらは200例ですし、 15μg皮下注については100例のデータですので精度と言いますか、信頼区間の 問題はあるのですが、ほぼ同様の形と思われます。ただ、発赤、腫脹の頻度に 関しては、2万例で調査をした方が同じ基準で見たときに比べて高くなるよう で、そこについては判断しかねているところです。以上が私ども国立病院機構 に初期として提供していただいたワクチンの安全性情報の概略です。 ○松本座長  ただ今の伊藤先生の御説明について何か御質問、御意見等があればお願いい たします。重篤というのは、あくまでも入院したと判断してよろしいわけです ね。 ○伊藤参考人  治験に準じての重篤ということですので、この中で私どもが直接関係があり そうだと思っているのは、先ほど詳細に説明いたしましたアナフィラキシーの 1例と思っております。 ○松本座長  続きまして、受託医療機関における新型インフルエンザワクチン接種実施要 領に基づく新型インフルエンザワクチンの副反応状況について、事務局より説 明をお願いいたします。まず資料2-1から資料2-4まで一通り説明していただき、 一度御審議をいただいてから残りの資料の説明をしていただきたいと思います。 ○事務局  まず、資料2-1から資料2-4で副反応の発生状況並びに重篤症例について御説 明いたします。資料2-1は推定接種者数及び副反応報告頻度についてです。1. はこの事業に基づいた医療機関から厚生労働省への副反応報告の速報値です。 接種日は10月19〜25日、26日〜11月1日、2〜8日、9〜15日と分けております。 推定接種者数とは、前週の金曜日までにワクチンが医療機関に納入された数量 から、今回は1mLバイアルと10mLバイアルがありますが、それぞれ使用でき得 る回数が使われることを前提として、接種回数を記載しております。おそらく、 今の時点ではおおむね人数に相当するものと思っております。  次の欄は副反応報告数で、報告頻度は接種回数から割り出して記載しており ます。一番下は期間を通してのトータルですが、副反応報告頻度は0.02%、重 篤は0.002%、死亡は0.003%ですので、オーダーは1/10ずつ落ちている状況に あります。直近の11月9日から15日などで副反応報告頻度が低くなっているの は、現在報告が上がってきているところということです。2.の国立病院機構2 万人対象の安全性研究は、先ほど伊藤先生から御説明いただきましたとおり、 2万2,200余、417名の非重篤、6名の重篤でそれぞれ2%、0.03%となっており ます。  裏面は季節性インフルエンザワクチンの実績で、薬事法に基づく副作用報告 として、平成19、20年度の推定接種者数と副反応報告数を記載しております。 重篤報告は0.0002%ですから100万人に2、3名、死亡例としては平成19年度が 1,000万人に1名、平成20年度は1億人に4名という推計ですが、これについては 今回の接種事業の位置づけによる報告制度の違いですとか、伊藤先生の御説明 にもあったように、通常ならば、現在は季節性のインフルエンザワクチン接種 後に起きているインフルエンザの流行期に相当すると思われる状況に入ってい ることなどの要因があるのではないかと思われます。トータル877例の報告が 寄せられていますが、参考資料1に877番までの資料が付いており、そのライン リストとなっておりますので詳細な説明は省略させていただきます。  資料2-2は副反応症例の内訳で、性別、年齢別となっております。男女比で は女性が8割を超える報告数となっており、女性に多く出ているということで す。年齢別では20代から50代にかけての報告が多くなっておりますが、先ほど 申し上げたように、現在来ている報告の多くは医療従事者が対象の接種である ことが予想されることから、接種対象者の状況を反映しているのではないかと 考えております。  資料2-3が、いただいている報告書の中で報告医に重篤、非重篤の記載をし ていただいているのですが、こちらに重篤として報告されたものの一覧です。 左に年代、中程に副反応の内容、いちばん右は転帰となっております。おおよ そ重篤と判断された副反応の内容はアナフィラキシーショックを始めとした全 身反応が中心で、転帰については概ね軽快、回復となっておりますが、一部未 回復、あるいは不明の他、死亡もございます。  これら重篤例の、死亡例を除いたものを資料2-4に重篤症例の概要として添 付しております。資料2-4についてですが、厚生労働省では定期的に副反応報 告の状況を公表しており、最新の情報に基づいて更新しておりますので、公表 時点のものからは一部修正されているものもございます。それぞれの副反応の 概要、因果関係、評価についてもここにまとめております。  季節性インフルエンザワクチンとの比較ということで、資料2-1で頻度のこ とをお話いたしましたが、ここで資料2-7を御覧いただきたいと思います。資 料2-7はインフルエンザワクチンの副反応の報告状況について記載しておりま す。左側に2006年度から2008年度それぞれと、その合算の季節性インフルエン ザワクチンの副反応報告、それからA型インフルエンザ(H1N1)ワクチンにつ いては10月中と11月1日、11月2日から19日までと細かく刻みましたが、副反応 の種類別の発生状況を記載しております。左に*があるものは添付文書に記載 のない副作用、いわゆる未知の報告です。頻度の差については資料2-1で述べ たとおりであることと、報告数自体がそれぞれでそれほど多くないので、この ように分類すると1件、2件というものが多くなるのですが、副反応の種類につ いては、過去の季節性インフルエンザワクチンでも発生している内容に含まれ るものが現時点では見られているということです。資料2-1〜2-4、並びに資料 2-7の説明は以上です。 ○安全対策課長  これだけ多くの資料ですので、今後先生方に御議論いただく上では論点を少 し御用意しなければということで、安全評価のポイントというのを1枚作って おります。後ほどお手元に議論をいただきたいポイントというものをお配りい たしますので、そちらも御覧になりながら御意見を頂戴できればと考えており ます。事務局の不手際でちょっと準備が遅れておりますが、後ほどお配りいた しますので、よろしくお願いいたします。本日御議論いただく上でのここまで の資料について、初期医療従事者2万例コホートの健康状況調査が詳しく紹介 されましたので、それに基づく安全性について一定の御見解をいただければと 思います。ただ今お配りしておりますが、それの内容を御紹介しております。  ここまでの資料で紹介した部分が1に相当するところにありまして、一つ目 は医療従事者2万例コホートの健康状況調査によるワクチンの安全性について の御意見を賜りたいということです。二つ目は10月末までの医療従事者を中心 に行われた接種の際に報告された副反応、これの様子から見た安全性というこ とです。また、今回の新型インフルエンザワクチンの副反応報告の内容と頻度 について、従来の季節性インフルエンザウイルスワクチンとの比較でどのよう なことが見受けられるか、それを踏まえた現時点における新型インフルエンザ ワクチンの基本的な安全性の評価といった点について、まずは御意見をいただ けないかと考えております。この後、今日開催した理由のポイントである報告 された死亡例の評価について、御意見を賜りたいと思います。これについては 11月以降に報告された死亡例の特徴ということで、接種開始との関連で優先接 種対象者の報告が来ているのではないかということで1点。また、基礎疾患自 体で死亡した患者さんが報告されている可能性があるのではないかという点。 重度の基礎疾患を有する高齢者の個々の死亡事例とワクチン接種との関連とい うことでは、個々の評価を基にして全体のイメージをということだと思います ので、これについても御意見があればいただきたいと思います。  こうしたことを踏まえると、重度の基礎疾患を有する高齢者において、ワク チンの副反応が重篤な転帰につながるのではないかという可能性についてもお 伺いしたいと思いますし、そうした場合、接種するときや接種後にどのような 注意が必要かという点についても御意見をいただきたいと思います。そのよう なことを踏まえ、重度の基礎疾患を有する高齢者に対して、新型インフルエン ザワクチンの安全性をどのように考えるか、ここが論点と考えております。最 後に、今後の対応ということで、重度の基礎疾患を有する高齢者に対する接種 後の死亡報告がある程度続いておりますので、それについての取扱いはどのよ うにしていくのがよろしいかという点、それから、接種を進める上で重度の基 礎疾患を有する方々に対する接種はどのような注意が必要かという点、このよ うな点についてまとめて御意見を賜ることができればと考えております。この ほかにも先生方からの忌憚のない御意見をいただければと思いますし、あくま でもこれは私どもが気が付いたところをポイントとして用意したものですので、 これに捕らわれず、さまざまな御意見を頂戴したいと思っております。 ○松本座長  ただ今、森課長が言われたポイントについて御意見をいただきたいと思いま すが、死亡例についての説明がありませんので、まずはワクチンの基本的な安 全性について議論していただきましょうか。それとも、死亡例も一緒に説明し ていただいた上で、ただ今の意見を伺いますか。 ○安全対策課長  まず、比較的健康な状態の接種者を対象にして接種したデータの全体像につ いて御意見をいただきたいと思います。 ○松本座長  それでは最初に申し上げましたように、前半部分について御意見を伺いたい と思います。先ほどの事務局からの説明について御質問、御意見等があればお 願いいたします。先ほどの説明での重篤例の基準というのは何かありますか。 報告医の判断で重篤か、重篤でないかを分けているわけですね。 ○事務局  そうです。参考資料4に事業の実施要領がありますが、52ページに副反応報 告書の様式が載っております。副反応の重篤度については、52ページの下から 四つ目にありまして、報告時に重篤度を記載していただいております。現時点 での重篤、非重篤については、報告の際の記載に基づいて分類しております。 ○土屋委員  資料1の2ページですが、重篤な有害事象の嘔吐・吐気と吐気・嘔吐を1・1と 分けられていますが、これには何らかの意味があるのかということと、順番と いうことになると、データの集計の仕方ですが、たくさん集まってきたときに 相当欠けてしまうとカウントが減ってきたりということがありますので、その 辺はいかがでしょうか。 ○伊藤参考人  重篤な有害事象ということで報告させていただいたのは、ワクチン接種後2 週間の間に入院された方ということで御理解いただければと思っております。 ちなみに、先ほどはお話させていただいていませんが、因果関係の有無で言う と、うちの3例は、実際の現場の医師は因果関係があるだろう、3名について不 能ということで報告を受けてはおります。ただ、並べる順番については、たぶ ん、その6例に関しては発生した事例の順番で並べたのかなとは思っておりま す。発現順だと思っております。 ○土屋委員  それだったら、「発現順」とかと書いておいたほうが。おそらく、用語的に 見ると。 ○松本座長  伊藤先生、ついでと言うとあれですが、先ほどの課長のポイントからいくと、 先生の集められました医療従事者2万例のコホートの健康状況調査から見たワ クチンの安全性というのはどのようにお考えになっておられますか。 ○伊藤参考人  私個人としてこのデータを見せていただく限りにおきましては、1例目に、 私どもが接種の当日に、接種をやっている最中に緊急の携帯電話が鳴ったアナ フィラキシーを起こしたときにどうしようと思ったのが、現場から言うと大変 大きな問題だったと思っています。それ以外に発生したものについては、それ ほど強く危機感を持って対応したものはなかったと思っております。 ○松本座長  ということは、ある程度の安全性は確保できるということでよろしいですか。 ○伊藤参考人  メリットに比べれば、もちろんメリットについてどこまでというのは分かっ ているわけではありませんが、期待する利益に比べれば十分なものではないか と思います。ただ、中にはアナフィラキシーとか、その後のじんましんみたい なものもいらっしゃったりしますので、それについての対応はしなければいけ ないと思っております。 ○松本座長  ありがとうございました。そうしましたら、10月末までの医療従事者を中心 に行われた接種の際の副反応について事務局から説明を受けましたが、委員の 先生方からこの安全性について御意見を賜りたいと思いますが、いかがでしょ うか。 ○大野委員  この資料2-7の所で、季節性インフルエンザワクチンを打ったときの副作用 反応の報告が出ていますが、全体的な正確な数値が分かるかどうか分からない のですが、どのぐらいの出荷量になっているのか、それが分かったら教えてい ただきたいのです。あっ、失礼しました。書いてありますね。 ○事務局  はい。参考までに人数で言うと、資料2-1のほうですが、インフルエンザワ クチンは小児については接種用量が異なることと、小児には季節性をおおむね 2回、成人には1回接種ということから、推定されている接種者数としては平成 19年度は4,164万人、平成20年度が4,740万人となっております。 ○大野委員  これと比較して特に今回のインフルエンザワクチンが毒性を強く現わすとか、 そういうことはないと考えてよろしいですか。資料2-7の重篤な副作用の発生 頻度と比べて今回のワクチンが特に重篤な副作用を多く発生するというような ことはないと考えてよろしいのでしょうか。 ○松本座長  頻度並びに内容的に季節性のものと比べていかがでしょうか。 ○事務局  頻度につきましては、資料2-1で説明が足りませんでしたが、単純に、それ ぞれの季節性インフルエンザワクチンのこれまでの薬事法に基づく副作用報告 としましては0.0002あるいは0.0003ということですが、2-1の1枚目、資料No. が振ってある方が新型インフルエンザワクチンの医療機関からの報告で、推定 接種者数は、精度はまだそれほど正確なものではありませんが、これで割り返 したものでは0.002ということになっておりますので、報告頻度が10倍高いと いうことになっています。しかしながら、報告制度の違いとか現在の状況の違 いもありますので、この評価につきまして先生方から御意見を賜れればと思っ ております。 ○河野参考人  この資料2-1の450万は、これは医療従事者はここの中で100万ぐらいと考え てよろしいのですか。この450万のうちの医療従事者がどれぐらいで、実際に 基礎疾患等がある方がどのぐらいというふうに推定されているのか。 ○事務局  参考資料5を御覧いただければと思います。1枚紙でカラーのものです。ここ に標準的な接種スケジュールがありますが、今回、優先接種対象を定めて順次 接種を実施していくというような形になっております。この中で、10月の後半、 19日から接種が始まっていますが、まず、医療従事者が100万人程度、11月の 前半から妊婦さんと基礎疾患を有する方々が接種されているという状況です。 ○河野参考人  ですから、簡単に言うと、450万引く100万、この350万が妊婦を含めた基礎 疾患のある方と考えていいわけですね。 ○安全使用推進室長  概算としてはそういうことですが、これはあくまで出荷量から推計した数字 ですので、接種者がどういった方々でどういう割合かという正確なものについ てはまた後日報告させていただくような形になろうかと思います。 ○五十嵐委員  今回の新型の方は副反応の全てを報告しています。一方、季節性の方はその 原因がインフルエンザワクチンによるものと思われたものだけが出てきていま す。従って、単純に両者を比べて新型のワクチンの方が危険であるということ は言いにくいですね。制度上の問題といいますか、この二つを比べること自体 が難しいのではないかと思うのですが、このような解釈は私の間違いですか。 ○松本座長  そういう御意見もありますが、いかがでしょうか。頻度としては新型のほう が高いですが、実際上は。 ○岡部委員  季節性インフルエンザの場合の報告も、主治医はそんなに因果関係が強いと 思わなくても報告には入ってくると思うのです。ただし、その後で、「明らか な関連なし」というふうに書いてあるのがこの頻度になっているので、これは、 たしか、季節性インフルエンザに関しては専門家会議のような所で評価されて、 これは関連性が薄いのではないかというふうに断定したものではないかと思う のですが、それでいいですか。 ○安全使用推進室長  こちらの季節性インフルエンザは薬事法に基づく副作用報告の方で拾ってい る数字ですので、予防接種実施規則の下で行われているものの数字ではありま せん。ですから、こちらは、下の方に注釈で書いてありますが、薬事法の規定 に基づいて副作用その他の事由によると疑われる疾病が報告対象という形で数 字を拾っているものです。 ○岡部委員  伺いたかったのは、これは主治医の判断だけで明らかな関連なしとしている のか。あるいは、どこかで討議されて、明らかな関連なしとしているものなの か。この括弧書は、明らかな関連なしとしているのはどこで評価されたわけで すか。 ○安全使用推進室長  こちらは、季節性インフルエンザは薬事法に基づく報告ということですが、 この括弧書で書いている部分は薬事法の規定です。報告いただいたものに対し て、医薬品医療機器総合機構での評価とか、そういうものを踏まえた形でこち らの方に掲載させていただいているという数字です。 ○岡部委員  そうですよね。だから、これは機構などの議論を経て出ているのですが、一 方、新型インフルエンザに関してはまだその疑いも何もともかく、ある一定期 間に出たものについて報告をしただけなので評価がなされていないと思うので す。ですから、そこでは、いま五十嵐先生もおっしゃったように、比較しにく いけれども参考情報にはなると思うので、これをもって直ちに非常に頻度が高 いという結論は出さない方がむしろいいのではないかと思います。ただし、今 後、この症例についての同様のプロセスを経た評価は必要だろうと思います。 ○松本座長  単純に頻度だけを比較するのは問題があるかもしれないということでよろし いですね。 ○稲松座長代理  比較できないということなのですが、過去の季節性の報告は、例えば局所反 応は指示を超える重篤なものだけを挙げていて、今回のものには直径2cmのも のを全部含めて頻度を出しているのだと思うので、基準がかなり違うので、普 通の比較は全くできないというふうに考えた方がいいと思います。 ○松本座長  そうですね。それでよろしいと思います。そうすると、内容的にはいかがで しょうか。季節性と新型インフルエンザで副反応に差があると考えていいのか、 あまり差がないと考えていいのか、その辺についての御意見をいただけません か。伊藤先生、何かコメントありますか。 ○伊藤参考人  実は、小児のH1N1のワクチンの接種を現在しております。160人の方にお いては同時接種でやっております。季節性インフルエンザとH1N1を同時に右 と左に打っていることがあります。その結果を、あと1、2週間でまとめること なのですが、安全性のところのヒアリングをした限りにおいては両方とも同じ ように出ているという話を聞いておりますので、小児の極く限られた数ですが、 それで見る限りは大きな差はなさそうというのが印象です。 ○松本座長  稲松先生、この点について何か御意見ありますか。 ○稲松座長代理  実際に接種している印象だけから言えば、特に副作用が強いという意味はな いのですが、あまり学問的な根拠がないので。 ○多屋委員  1つ質問をさせていただきたいのですが、この資料2-1の裏の3.季節性イン フルエンザのワクチンの副反応の実績なのですが、これは薬事法に基づく報告 となっているのですが、通常、65歳以上の高齢者の方は予防接種法に基づく方 の予防接種後副反応報告で上がっていると思うので、普通はこちらの方にも両 方報告されているものなのかどうか。もし予防接種法に基づく接種については、 予防接種後副反応報告だけ報告されている場合、ここの部分に高齢者の方の報 告は含まれていないということになりますので、季節性インフルエンザワクチ ンの副反応の数が随分少なくなっているということではないのでしょうか。 ○安全使用推進室長  こちらの薬事法の方の報告におきましても、65歳以上の方々の報告も含まれ ていますし、薬事法の場合は特にメーカーから出てくる報告がかなり多いので、 そちらのルートで同じ報告がされるとかいうこともありますので、特段、こち らで65歳以上が少ないということではありません。 ○多屋委員  では、普通は二つ出されているという考えですか。 ○安全使用推進室長  大体、割合的に言うと30%ぐらいの方が65歳以上です。 ○岡部委員  先ほどの比較ができないということを、誤解があるといけないので、もう一 言加えておきたいと思うのですが、新型インフルエンザワクチンの接種の導入 その他に関して、諮問委員会でも議論をしたときに、最初の治験あるいは研究 レベルですべてがわかるわけではないけれども、数百人単位の規模で行い、そ の次に数千人あるいは数万人単位の規模で起こったときに、そのステップ、ス テップで評価していくことが必要だというようなことを意見として申し上げた と思います。ですから、今回、まだ出荷数が450万単位での現状ではこの程度 であると。つまり、あまり重篤な危険度等々については直ちに中止したり、そ ういうようなことではないけれども、さらにもっと規模を上げたときにも同様 に調査をしていくことが必要だというふうにも思うのです。というのは、季節 性インフルエンザの場合には年間で1,000万単位の接種をやっているので、そ ことの比較を持っていくというところまで言うならば、同じような母数でない といけないわけですが、現状での判断ということがそれで必要なのではないか と思います。 ○松本座長  先生、内容的にはいかがですか。 ○岡部委員  内容的には、現在、この新型インフルエンザとしてすべての有害事象という ことで登録されている限りでは、あまり極端なものはないのではないかと、私 はそのように考えています。 ○松本座長  前半の場面での御意見を伺っていると、発生頻度には若干差はありますが、 これは単純に比較はできないとしても、参考とするべき価値はある。内容的に は大きな差はないという御意見が多いかと思うのですが、そのようなことでよ ろしいでしょうか。 ○桃井参考人  基本的な安全性というその言葉の定義が私も明確ではないのですが、資料2-7 を拝見していると、いくつかの病態においてまだ接種の少ないA型インフルエ ンザH1N1ワクチンと季節性とを比べると、やや新型の方に率としては高いの ではないかと推定されるような症例が、それぞれについては極めて少数例の病 態ではありますが、散見されますので、それも含めて基本的な安全性と言うの か、極めて少数例の関連が否定できない病態を含めずに基本的な安全性と言う のか、ということを明確にしていただかないと、それでオーケーというふうな ことにはならないのではないかと思います。 ○松本座長  安全対策課長、この辺に関しましてはいかがですか。 ○安全対策課長  先生の御指摘はそのとおりだと思います。現時点はデータが収集され続けて いる状況ですし、ここまで集まっているデータもある程度の量にはなっていま すが、頻度的なことを細かな副反応についてまできちんと分析できるような量 になっていないのは御覧のとおりです。したがって、この段階で安全性につい て結論のようなことを出せるというものではありません。ただ、ワクチン接種 を進めながら、振り返りながら、その道行きを慎重にやっていくという観点で すので、あくまでこの時点における所見からして、どのような安全性上の懸念 があるのかというふうな視点で御意見を賜ればと思っております。重大な懸念 があるかどうかというところはポイントにはなるかと思いますし、細かな、頻 度の非常に低いものは、それは精度のある議論ができるわけではありませんの で、そこについてまで安全であるというふうに断言するのは不可能だと。その ような無理なことをお願いしようとは事務局も思っておりませんし、その点は まだこれからさらに見ていく必要があるというお考えは当然あるかと思います。 その部分は置いて、全体として今の時点に入手できているデータで特に懸念さ れるところがあるかどうか、というところを御意見賜ればと思っております。 ○松本座長  ただ今森課長が言われたような観点からどうかということに関しまして、桃 井先生、いかがですか。 ○桃井参考人  つまり、申し上げたことは、その何%以上の重篤な問題がなければ基本的な 安全性と言うのかというところが分からないと、印象としては安全ですね、と いうことでは、それぞれの持っている方の印象が違いますので、その辺を数字 を一つ出せというのは疫学の方にも無理でしょうが、ワクチン行政として重篤 な副作用は大体このレベル以下であるということをもって、基本的な安全性は いまのところ大丈夫ですね、という科学的な言葉がないと、「印象として」と いうのでは医者としてはなかなか納得しにくいかなと思います。 ○松本座長  その辺の基準値はいまのところないと思うのですが、ありますか。 ○結核感染症課長  明確な基準というものは私どもは示しておりませんが、ほかの予防接種にお ける副反応の状況からしても、定性的な言い方で恐縮ですが、これが非常に高 いものではないと考えております。 ○岡部委員  前提として今日はまだ御説明いただいていないのですが、私は一応存じてい るつもりですが、このA型インフルエンザHAワクチンH1N1というのは、添 付文書の説明などでも分かるとは思いますが、製造法としては従来の季節性イ ンフルエンザとどこが違うかと。もし違ったとすれば、もし副反応を考えると きにそこが非常にポイントになるのですが、私が了解している限りでは、ワク チン株が違っただけであって、その製造法は全く変わらないから、そこが季節 性インフルエンザと同等のものであろうということでスタートしたのではない かと思うのですが、その製造と、それから検定は感染研でやっているわけです が、それについて季節性インフルエンザと何か変化があったかどうか、これは 私はないと思っているのですが、ちょっと確認したいのですけど。 ○事務局  岡部先生御指摘の点は、参考資料6に新型インフルエンザワクチンの添付文 書を御用意しておりまして、こちらの資料の御説明が遅れておりまして恐縮で ございます。1枚めくっていただくと、添付文書になりますが、A型インフル エンザHAワクチン(H1N1株)の下の箇所に四角枠囲みで、本剤はA型H1N1 ソ連型、香港型、B型の3株混合で製造されている季節性インフルエンザワク チンと同じ生物学的製剤基準に準拠して、新型インフルエンザA型H1N1ウイ ルス単抗原、季節性は3価ですが、1価のワクチンとして製造されたものですと 書かれております。こちらにつきましては、季節性と同一の承認に基づきまし て製造されておりますもので、したがいまして、同一の内容で国家検定を感染 研において受けていただいております。検定につきましては、当然、すべて合 格しておりますので、出荷をさせていただいているということで、大きな変化 がある等のお話は頂戴しておりません。したがいまして、岡部先生より御指摘 のありましたように、物としての相違というのは、「組成」にある「有効成分 (製造株)」として使われているA/カリフォルニア/7の2009(H1N1)という 株の部分が入れ替わっている。従来のインフルエンザワクチンにおきましても、 30年余使用されておりますが、インフルエンザウイルスの変異に応じまして、 同じソ連型、香港B型であっても、その際の流行状況に応じた株に変更されて いるという状況にあります。 ○松本座長  ほかにございませんか、工藤先生、どうぞ。 ○工藤参考人  いまの議論で安全かどうかということのそういう結論はまだ出せないのだろ うと思います。なぜならば、今までの季節性のインフルエンザのワクチンとの 比較というふうに言われていますが、明らかに母集団が違うわけです。そして、 今の過程では、健康な比較的若い成人の方に打って、それで安全だと。それは 確かにそうである。次の段階は、高齢者で合併症のある基礎疾患を持っている 人。従来、副作用が出やすい人たちが重点に打たれている。こういう段階で、 途中経過です。それをこれまでの通常インフルエンザに対するワクチン、これ は押し並べてヨーイドンでそういう制限を入れないで打っているわけで、この 時点でどうこうというのは、議論として次の第2の点を説明していただいて、 それから今の段階である程度の判断をされたらよろしいのではないかという気 がします。ただ、ざっと見た限りでは、そういうリスクのある方に打っている ので、従来よりは少し多いのかなという印象は持ちます。 ○松本座長  それでは、次の残りを説明していただけますか。事務局、よろしくお願いし ます。 ○事務局  続きまして、資料の後半、資料2-5と資料2-6を御覧ください。こちらにつ きましては、受託医療機関からの副反応報告の中で、転帰が死亡ということで 御報告いただいたものの一覧を付けております。資料2-5が報告をいただいた 症例の一覧となっていまして、これに対応するそれぞれの概要、専門家の先生 方に評価していただいておりまして、この御意見について症例ごとにまとめた ものが資料2-6となっております。併せて御覧いただければと思います。  まず、資料2-5ですが、死亡症例一覧ということで、今回、表裏になってい ますが、21例の報告をいただいている状況です。先ほど、資料2-1におきまし て、副反応の報告数877のうち、重篤が68、うち死亡が13というふうに申し上 げておりますが、こちらにつきましては19日の報告分までということで、全体 の副反応報告における状況をこの同じ尺度の中でお示ししたものです。一方、 資料2-5、資料2-6につきましては、直近、昨日夕刻ぐらいまでということにな りますが、こちらのほうにファクシミリで届けていただいたものの概要を示し ております。そういう意味で、まだ一部調査中のものなどもありまして、そう いうものについては詳細までは付けていないというような状況となっておりま す。  資料2-5の裏を御覧ください。今回、死亡症例について簡単な内訳を整理し ました。性別、年齢別ですが、男女の比はこういうふうになっておりまして、 年齢別としては50歳未満の報告はありませんでした。50〜59歳の間の方が1例、 60歳代の方が1例、70歳代の方が5例、80歳代・90歳代の方も一部いました が、そういった方が14例、全体の約67%を占めているというような状況になっ ております。また、それぞれ基礎疾患をお持ちの状況でありまして、後ほど御 説明するように、そのあたりとの因果関係も専門家の評価の中で言及いただい ているものです。また、使用されているロットですが、製造販売業者、それか らロットにつきましても今の段階は必ずしも出荷がそれぞれの製造状況に応じ て均一ではありませんが、特に何か大きな傾向があるというようなものではな いということがこの症例一覧の概況です。  続きまして、資料2-6に従いまして、それぞれの症例について簡単に御説明 させていただきます。まず1例目は、70歳の男性、肺気腫による慢性呼吸不全 をお持ちの患者さんということでした。接種後、当日は特に変わった様子はな かったようですが、翌日の午後7時半ぐらいに御家族の方が、亡くなっている のを発見されたということで、その後、検死により急性呼吸不全による死亡と いうことで診断をされています。報告をいただいた主治医からは、もともとの 原疾患が原因の死亡であって、本剤との因果関係はなしというようなことにな っております。  この症例につきまして専門家に御意見を伺っております。御意見を伺った専 門家ですが、資料2-6のいちばん裏を御覧ください。今回、個別症例の評価を いただいております専門の先生方を一覧にしてお示ししております。それぞれ の症例の内容に応じてご専門の分野の中からお願いをするという形で、1症例 につき複数の先生方から御意見をいただいているところです。  1症例目につきまして、まず主治医については因果関係はなしというような 判断でしたが、専門の先生にそれぞれ御意見をいただいていますが、死亡に至 るまでの経過などについて情報が不足しているというようなこともありまして、 評価が、判定が不能であるとか、あるいは主治医のコメントが重要な情報とい った御意見をいただいております。  2症例目、2ページの上のほうですが、こちらの方も80歳男性、肺気腫によ る慢性呼吸不全をお持ちの患者でした。接種をした後、これは2日後ぐらいに なりますが、動くのが苦しいというような訴えがありまして、その後、食欲が ない、熱はないものの、というようなことでした。4日目の未明ですが、ポー タブルトイレで用を済ませた後、ベッドに戻ろうとして倒れたということで、 その後、午前8時半ごろに死亡を発見されたということで、検死によれば、同 日4時ごろ、ポータブルトイレに行った後ぐらいに亡くなられているようであ りまして、死因は呼吸不全ということでした。  報告をいただいた主治医につきましては、もともとの原疾患の可能性が高い ということですが、ワクチン接種との明らかな関連についても否定できないた め、評価不能ということで御意見がありました。続きまして、専門家に評価を いただいていますが、こちらにつきましては死亡までの時間、また、その間の 症状の状況などから、ワクチンの関連を考えるには無理がある。また、情報と しては不足しているところもありますので、因果関係が判定できない、主治医 との検死結果が重要な情報といった御意見をいただいております。  3例目、3ページ目の下のほうですが、70歳の男性で、糖尿病、高血圧、心筋 梗塞、低血糖性脳症を基礎疾患ということでお持ちの患者さんでした。この方 につきましては、入院中ということで接種をしていますが、3時15分ぐらいに 接種をなさっていて、その段階では意識がはっきりしておられたと。同日の夕 刻6時ぐらいに夕食を7割ほどとられたということです。車椅子で夕食をとら れて、そのまま夕食後、個室のほうに移動されたようですが、その夕食から戻 られる途中に心肺停止をされたというようなことでした。主治医の因果関係に つきましては、死因は心筋梗塞ということですが、ワクチンとの明らかな関連 があるとは言えないものの全く否定もできないため、評価不能ということで御 報告をいただいたということです。専門家に評価を伺っていますが、ワクチン と急性心肺停止との因果関係は考えにくい。また、主治医の心筋梗塞の可能性 の指摘の評価でよい、という御意見をいただいております。  4例目は、80歳代の女性で、間質性肺炎、心不全、肺性心を基礎疾患とする 患者さんでした。10日の午後1時に接種をしておりますが、当日深夜0時ぐらい にお手洗に行く途中の廊下で転倒されているところを発見し、救急搬送されて おります。その後、呼吸は一旦改善したものの、間質性肺炎の悪化により死亡 されたということでして、5ページの上のほうに主治医の因果関係評価があり ますが、ワクチン接種が原因で死亡したものとは考えていないものの、接種後 に起きたことなので報告をした、というような御意見をいただいております。 専門家に御意見をいただいていますが、接種後14時間後の死亡ということがあ るので因果関係を否定することはできない。また、情報不足ということで、因 果関係がはっきりとしないという御意見をいただいております。  5例目は、80歳代の男性、脳梗塞、えん下性肺炎を基礎疾患とする患者さん です。2日の午前11時に新型インフルエンザワクチンを接種しておりまして、 特にその後異常は認められておりませんでした。その後10日になりますが、こ のときには季節性のインフルエンザワクチンを接種し、当日夜から発熱が見ら れております。呼吸頻回、そして2日後には喘鳴が見られて、翌日午前に呼吸 停止をし死亡なさったという症例です。こちらにつきまして、ワクチン接種と の因果関係、主治医におかれましては、もともとの肺炎を繰り返すというよう なところもあって、ワクチンとの関連性は低い。また、時間的には季節性イン フルエンザワクチンを後に打っておりまして、その当日から発熱をしていると いうことで、季節性ワクチンによる可能性が高いものの、念のため御報告いた だいたということです。こちらにつきましては、専門家の評価として、新型ワ クチンについての副作用ではないのではないか。また、呼吸器の専門家に御意 見を伺ってくださいというコメントをいただいております。  6例目は、80歳代の男性、肺気腫と胃がんを基礎疾患とする患者さんで、21 日の午後4時過ぎにワクチンを接種しました。その3日後から発熱を来たして おります。解熱剤などを服用されていますが、また念のため抗インフルエンザ ウイルス薬の服用などもなさったようです。その後、肺炎を認め入院をされま したが、徐々に状態が悪化したということで、最終的には間質性肺炎の急激な 悪化、転院の後にお亡くなりになったということです。この方につきましては、 今年の10月の検診で胃がんが判明したということと、もともとの軽度の肺気腫 線維化をお持ちだったということです。ワクチン接種との因果関係につきまし て、接種をされたドクターにつきましては、接種後の発熱についてはワクチン によるもので、それが引金になった可能性があるものの、胃がんの可能性も考 えられる。両方あり得るという御意見がありました。また、入院先の病院の主 治医の見解ですが、間質性肺炎の病状が悪化した可能性もあり、評価不能とい う御意見でした。専門家の意見ですが、ワクチン接種直後からの発熱、続いて 肺線維症の増悪が見られているということで、この発熱の因果関係については 否定できないのではないかという御意見をお二人からいただいております。ま た、間質性肺炎の事実が明らかになれば、間質性肺炎と死亡との因果関係は否 定できないという御意見でした。  7例目です。60歳代の男性で、肝硬変、肝細胞癌がありまして、破裂の危険 を指摘されているというような状況でした。この方につきましては、ワクチン を13日午後4時に接種しておりますが、2日目の午前3時に腹痛、そして血圧低 下、腹部膨満が出現し、腹腔内出血と診断されておりまして、同日の8時にお 亡くなりになっているということです。報告医からは、もともと癌の破裂の危 険性があったということで関連はなし。専門家からも同様の御意見をいただい ております。  8例目につきましては、70歳代の女性で、慢性腎不全による透析、胃癌、転 移性肺癌、高血圧、糖尿病をお持ちの患者さんということでした。透析中の検 査入院の中でワクチンを接種しておりまして、当日の午後に老健施設のほうに お戻りになっているようですが、特に症状がなかったものの、3日目の朝5時に おむつ交換のときに心肺停止で発見されたということで死亡を確認されており ます。もともとの病気により死亡したものではないかという報告医の見解です が、接種4日後の死亡のため報告をいただいたものです。専門家の意見を伺っ ていますが、こちらにつきましては報告医の見解に妥当ということで、ワクチ ン接種との関連性は低い。また、経過が不明というような御意見もいただいて おります。  9例目です。80歳代の男性で、慢性腎不全、心不全、消化管出血をお持ちの 患者さんでした。16日の午前に新型インフルエンザワクチンを打っております が、翌朝の7時45分ぐらいに血圧低下、意識障害等がありまして、11時ごろ死 亡されたということでした。また、もともと慢性腎不全のほか、吐血性腸炎に よる下血などで輸血なども実施されていたようです。報告医からは、もともと の全身状態が悪かったため原病による死亡であり、ワクチン接種との因果関係 はないというふうに御意見が出ております。専門家からは、明確に断言できな いものの、否定的であるといった御意見をいただいております。  10例目です。70歳代の女性で、慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧症を基礎疾患と する患者さんです。この方は16日の午後2時ごろにワクチンを接種し、その2 日後の2時半ぐらいに容態が急変し心肺停止、死亡なさったということです。 途中の経過が不明ですが、ワクチン接種との因果関係につきまして、報告医は、 原病による死亡の可能性が高いが全く否定もできないので評価不能として報告 をいただいたということです。こちらにつきましては一部意見を伺っていると ころかと思いますが、病歴からは原病の死亡の可能性が高いものの、接種3日 後であり、影響を除外することができないが、評価は困難という御意見をいた だいております。  11例目です。80歳代の女性で、膵炎をお持ちの患者さんです。11日の午後5 時ぐらいにインフルエンザワクチンを接種し、同日の30分後ですが、体温が 38.5℃まで上がったということで、解熱剤の筋注、それから酸素吸入を実施さ れております。その後、翌日午前0時に呼吸停止で発見され、救急措置を施行 されるものの死亡されたという症例です。この方につきましては、治療のため の中心静脈カテーテル施行中で、同時期に敗血症を起こしていたということが 血液検査により確認され、因果関係はなしというような御意見をいただいてお ります。こちらにつきましては、発熱との因果関係は否定できないのではない かという御意見がありました。  12例目です。80歳代の女性で、慢性関節リウマチを基礎疾患、それから脳出 血の既往もお持ちの患者さんでした。この方は16日の午後3時ごろにワクチン を接種し、特にその後異常も認められていませんが、2日目の午前0時に心肺停 止、呼吸停止で発見されたという方です。報告医からは原病の可能性が高いも のの、評価不能として報告をいただいております。専門医からは、一定の頻度 でこのような形の突然死が無関係に起こり得るものであるということでありま して、この辺りにつきましては疫学、統計学的な検証をするしかないという御 意見がありました。また、主治医の評価を支持する御意見もいただいておりま す。  13例目です。90歳代の男性で、脳出血の既往がありまして、胃ろう設置術を 受けておりまして、脳出血の後遺症、誤嚥性肺炎を繰り返すような状況でした。 18日の午後2時ぐらいにワクチンを接種しておりますが、当日接種5時間後ぐら いから嘔吐が出ておりまして、翌日、大量の嘔吐があり窒息、死亡に至った症 例です。14ページですが、ワクチン接種との因果関係につきまして、報告医は、 死因につきましては嘔吐による窒息による呼吸停止ということですが、嘔吐と ワクチンの接種の関連は否定できないという御意見でした。専門家にも御意見 を伺っております。嘔吐につきましては便秘症-腸閉そく、胆石発作、急性胃 炎-胃潰瘍などの症状でしばしば見られるということで、嘔吐の情報が今の段 階では不足しているという御意見がありましたが、タイミングを見るとワクチ ン接種との関係は否定できないということで御意見をいただいております。  14例目です。80歳代の男性で、肺がん患者、扁平上皮癌IV期ということです。 18日の午後3時ごろワクチンを接種して、同日11時ごろに起き上がれずに座り 込んでいたということで、酸素飽和度が80から90%ということで酸素吸入を増 加しております。翌日午前5時ぐらいに心電図の乱れが見られ、その後、心拍 数の低下、呼吸停止に至って亡くなられているということですが、酸素飽和度 につきましてはワクチン接種前後を通じてこのような状態であったということ が報告されております。報告医からは、関連性はないという御意見をいただい ております。専門家のほうからは、情報が不足しているので評価が難しいが、 因果関係はなさそう。また、主治医のコメントが重要であるといった御意見を いただいております。  15例目は、70歳代の女性で、16年前から血液透析を実施された患者さんです。 19日、血液透析をなさった後に反対側の腕にワクチンを接種し帰宅されており ます。当日の午後5時過ぎに倒れているところを発見され救急搬送されました が、死亡が確認されたということです。報告医からは、当日の接種後30分の状 況などからは特に反応がなかったことは確認しており、基礎疾患による可能性 が高いものの、接種後の急性心不全による死亡であるため評価不能として報告 をいただいております。こちらにつきましては、専門家の先生方より、情報量 が少ないので評価困難、判定困難という御意見でした。  16例目は、80歳代の男性で、慢性腎不全により血液透析治療中の患者さんで す。こちらは17日11時半ぐらいにワクチンを接種し、夕食まで特に異常は見ら れなかったものの、翌日午前に死亡されているのを発見されました。検死で虚 血性心疾患が疑われるということでありまして、報告医からは関連なしという ことです。専門家ですが、検死の結果が重要な情報であろうという御意見です。  17例目です。50歳代の男性で、糖尿病、高血圧症、甲状腺機能亢進症をお持 ちの患者です。18日の午後4時ぐらいに接種をしておりますが、2日後の午前1 時ごろに異常な呼吸音で発見され、数分後に心肺停止状態ということで同日に お亡くなりになっております。剖検所見では閉塞性の所見を見られ、直接死因 は急性心不全ということで、報告医からは、ワクチンとの関連はなしというこ とで報告をいただいております。専門家からは、原病が疑われるということで す。  18例目、19例目は詳細を調査中ですので省略させていただきます。  20症例目です。80歳代の男性で、糖尿病を基礎疾患とする患者さんでありま して、この方は18日の3時ごろに接種をしております。そして、2日後の膝の低 周波治療中に意識がもうろうとして倒れたということで、血糖が160ぐらい、 脳血管障害の状況が見られ、意識が昏迷し、その後、心肺停止ということです。 報告医からは、1週間前にも意識を消失したことがあるので原病との関連が疑 われるものの、評価不能ということで報告をいただいております。専門家から は、60時間は異常のないことが確かめられているというような点も踏まえて、 因果関係はなさそうであるという御意見がありました。  最後、21症例目です。こちらは90歳代の男性で、気管支喘息、認知症をお持 ちの患者さんです。気管支喘息については落ち着いた状況の中でワクチンを接 種しておりますが、接種を3時ごろ、そして約5時間後の7時55分ぐらいより 喘鳴が発生し、呼吸機能の急激な増悪を認め亡くなっているということです。 こちらにつきましては、もともとの呼吸状態は悪かったものの、接種前の状態 が安定してきたことから、因果関係は不能ということです。専門家からは、ワ クチン接種2時間後の死亡であり、因果関係を考慮すべきという御意見をいた だいております。  症例の一覧につきましては以上ですが、これに関連して添付した資料の御紹 介を簡単にさせていただきます。参考資料9ですが、こちらは季節性のインフ ルエンザワクチン予防接種における死亡例について御紹介したものです。特に、 今回御報告いただいたものと年齢が類似しております。70歳以上のものについ てまとめたものということで、既に「医薬品・医療機器等安全性情報」に掲載 したものからの抜粋です。こちらにつきましても高齢の方の死亡という報告を いただいておりますが、基礎疾患などをお持ちの中で接種をしているというこ とで、ワクチンとの因果関係については、限られた情報の中で評価ができない、 あるいは因果関係が確かめられないといった報告が多くあります。特に、原疾 患をお持ちの中で打っているという辺りについて、こちらも参考にしていただ ければと思います。  それから、海外の情報につきまして、参考資料2、それから当日配付をした WHOの19日付の資料があります。まず、参考資料2ですが、海外でも新型イ ンフルエンザワクチンの接種が始まっておりまして、この中で一部情報が得ら れている死亡症例の状況について御紹介したものです。そして、当日配付でお 配りしているものはWHOからのbriefing noteということで、11月19日に出 てきたものですが、こちらには今回の新型インフルエンザワクチンの安全性に ついて大まかに出ております。そして、この中の3つ目、Investigations of Deathsという所で死亡に関する各国の報告をまとめた段階での評価ということ で出ておりますが、死亡との直接の因果関係はないのではないかといった指摘 がなされているところです。  最後になりますが、基礎疾患をお持ちの患者さんということで、参考資料8 ですが、これはもともとの疾患ごとの年齢別死亡者数というものを御紹介した 資料です。平成20年度の人口動態統計から取ったものですが、いちばん下にそ れぞれの年齢層の人口が出ておりまして、これは掛ける1,000人という人数に なっております。そして、それぞれの疾患ごとに年齢死亡者数、平均の週間死 亡者数というものが出ておりまして、特に実際の経過の中でこういった数の 方々がお亡くなりになっているというような状況があります。御説明について は以上でございます。 ○松本座長  ただいまの事務局の説明に対して御質問、御意見を伺いたいのですが、森課 長が先ほど提案されたポイントを考慮した御意見、御質問をお願いいたします。 ○稲松座長代理  今回の死亡例についてコメントということでメールでコメントを送っており ますが、実は、数時間以内に返事をしろというのを診療中に言われて、そうい う状態がずっと続いておりまして、それから、ほんの数行の主治医からの報告 書に基づいて判断しているわけで、あれもこれも気になって聞こうと思っても 聞く時間も何もない状況での判断だということを御理解いただきたいと思いま す。そういう意味で、もっといろいろな可能性もたくさんありますし、もう少 し経過を見ないと何とも言えないこととか、付けられていないデータもたくさ んあるので、そういう意味では主治医の見解というのは非常に重要視するべき だと思いますし、もう少し死亡例についてだけでももっと小グループで時間を かけてゆっくり検討する必要があるので、現時点で因果関係が有る無しはなか なか言えないだろうというのが現実です。  そして、実際に、私自身が判定して思うことは、これは大部分は原疾患によ る死亡であろうということです。ただ、その中でいくつか気になるのが間質性 肺炎、喘息の患者、この辺の患者さんはちょっと注意して見ていかなければい けないかなというのが私の現時点での印象です。ともかく、言いたいことは、 亡くなったということの情報をもう少しフィードバックした上でのきちっとし た判断が今後必要だということです。 ○久保参考人  基礎疾患が肺気腫とか慢性閉塞性肺疾患と、それから間質性肺炎と肺線維症 というのは急に増悪する病気なのです。そのきっかけとしてこの接種が否定は できないというような状況なので、先ほどおっしゃったように、しっかりと検 証する必要があるかなと思います。酸素を吸っているような状況の方にわざわ ざ往診までしてワクチンを打って、その結果がこうなっているのかなと非常に 心配はするのですが、もともと肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎とい うのは1つのCOPDという病気で大きく括れますし、慢性間質性肺炎あるい は肺線維症というのも1つの大きなグループですし、この二つは経過中に急に 増悪する。それは普通の風邪などでも急性に増悪しますので、そういうきっか けの一つになっている可能性はある。重篤な基礎疾患のある方でこういうこと になっているのかなというような気がします。その因果関係は、繰り返します が、今後しっかりと検証する必要があろうかと思います。 ○稲松座長代理  そこが大変気になるところで、そういう意味では今回は非常にいい機会です から、例えば在宅酸素療法をやっている人だけに絞って、ワクチンを打った打 たない、突然死の割合がどうの、生存率がどうのということを少しグループで 検証してみると、そこら辺のところがかなり明確に言えるような気がします。 有用性も含めて評価が可能なような気がします。 ○工藤参考人  私も呼吸器専門にして全く同感であります。若い人にこのワクチンを打つと 発熱という副作用があって、サイトカインとかが出てくるわけですが、そうい うものが間質性肺炎とかに悪さをしていないかというのは吟味する必要がある のではないかと思います。発熱のことを、是非とも、打った後どうなったかと いうようなことを聞いていただければという気がします。それが1点です。  それから、少し気になるのが80歳、90歳の基礎疾患を持っている方にワクチ ンを打つというのが、打つべきではないということは私は申し上げないのです が、今までアメリカ等の報告で、基礎免疫といいますか、交叉反応があるとい うようなことがあって、日本のデータも高齢者に圧倒的に少ない、若年者に多 い疾患だと。特に小児医療期においてですね。そういう中でこのワクチンを強 迫的に打つような雰囲気がちょっとあるようなので、ここはどうかなという、 この会の主題ではないかと思いますが、その辺を全体的に考えていただければ と思います。 ○松本座長  おっしゃるとおりだと思います。河野先生、どうぞ。 ○河野参考人  私も呼吸器をやっているのですが、久保先生や工藤先生と少し考え方が違う のです。インフルエンザは、もちろん子どもにたくさん起こりますが、従来も 亡くなるのは高齢の方です。今回も、厚労省の入院患者数の11月10日に出た ものを見ると、入院している人は若い人に多いのですが、死亡は高齢者に多く なっているわけです。ですから、ワクチンというのは、もともと感染予防とい うよりも、重篤化を防ぐのだというのがワクチンの目的ですから、そこを忘れ てはならないのだろうと思うのです。今は、この打った方は高齢で、リスクの ある方に打たれているわけですが、本来は、ワクチンというのはそういった方 にこそ必要なわけで、もちろん検討をするというのは正しいことですが、アメ リカのCDCなどのワクチンのガイドラインでも、優先順位で上がってくるのが 妊婦、喘息の患者さんということで、呼吸器の疾患を持っている人が優先順位 で上がってきているわけですから、死亡が出たということで、そこにリスクの ある方を制限するという方向はまずいのではないか、むしろ必要とされている と。  あと、先ほどの死亡の統計が出ていますが、私自身も、例えば人口統計で1 億2,000万の人口がいるわけですね。毎年100万人ちょっとが亡くなられている わけです。そうしますと、人口の大体0.86%が1年間に亡くなって、1日当り 0.0024%が亡くなる。そして、呼吸器で亡くなられた方は16万人いますので、 例えば1日当り0.00037%亡くなるというわけですね。そうすると、先ほど450 万打ったと。そのうち、例えば100万人が医療従事者だとすると、引き算をす ると、それは11月15日までですが、そのころまで10人ちょっとが亡くなってい るというと、統計だけのデータからすると、その期間にそれだけの方で呼吸器 の疾患で亡くなる率というのはほとんど一緒ぐらいなのです。ですから、それ を即ワクチンを打ったからその方が亡くなっていると。もちろん、その可能性 はしっかりと検証すべきなのですが、いちばん必要が方がどんな方かというこ とをしっかり議論して、そして統計的なことも十分に吟味して、もちろん今後 精査すべきだろうと思います。 ○松本座長  その辺がディレンマですね。 ○久保参考人  私が言ったのは在宅療法をやっていて、ほとんど外に出ないような方にとい う意味で言ったわけですから、もちろん呼吸器の病気を持っていて、日常的に 過ごしている方はたくさんいますので、そういう方に打つべきだと思いますが、 あえて在宅医療でやっている方にまで打つ必要があるのかという意味です。 ○河野参考人  わかりました。 ○岡部委員  疫学的状況について確認しておきたいと思うのですが、いま河野先生もおっ しゃいましたように、入院数と例えば急性脳症等々の重症者数に関しては、小 児科領域のほうが圧倒的に多いのですが、入院数が少ない、あるいは罹患数が 少ないけれども、高齢者の場合は発症した場合の危険率がかなり高いというの が今の状況です。つまり、それは死亡数から言うと、いずれも数は少ないわけ ですが、小児と同等の数が出ているということは、罹患した場合の危険度は高 くなっているというのが今の日本のH1N1の疫学状況で、外国とちょっと違う ところだと思います。  それから、抗体の保有については、私の隣にいる多屋室長の所が中心でやっ た血清疫学情報ですが、日本人においてHI抗体、中和抗体で多くの人が持っ ているだろうと言えるのは90歳、100歳の年代ですので、60歳、70歳ぐらいで はほとんど有していないと言ったほうが正確です。ただし、ここはリンパ球の 議論とか、そういう議論は全く別です。それから、私の意見ですが、優先接種 順位というのは優先的に接種ができるということで、優先的に接種すべしとい うことではないと思うのです。そこの判断あるいはセンスは、ワクチン接種に あたって必要なことではないかと思います。 ○工藤参考人  今、久保先生が言われたことと全く同じなのですが、打つべきではないと言 っているわけではないのです。そこだけは誤解しないようにしてください。そ れから、高齢者が発症が少ないのですが、入院してくる率も高いし、相対的に 死亡者も多い。これは事実なのですが、従来の通常のインフルエンザに比べて どうかというと、圧倒的にワクチンが少ないという状況、絶対数が全く不足し ているという状況の中で、そういう感染の可能性がない方に強迫的に打たなけ ればいけないという雰囲気がちょっとあるようなので、ここだけは是正したほ うがよろしいのではないかということです。 ○稲松座長代理  岡部先生の免疫の話なのですが、HA抗体に対しては確かにそのようだと思 うのですが、臨床的な経験というか、少なくとも、今回の流行については、現 在流行中の新型インフルエンザに関しては高齢者はほとんど罹らない。我々の 所は病院でベッドを空けといたけれども、経営上問題だから閉めろと、今、閉 めたところです。それから、同じ家族の中で小さい子どもたちが罹って、お母 さんたちも30歳代か40歳代かどうかですが、50歳代とか60歳代の同居の家族は ほとんど罹らない。そういう臨床的経験があります。そのことはそのことで別 の話ではありますが、現在、インフルエンザワクチン戦略を考えていく上で、 特に新しいものをどんどん定義づけていくときにそういうことも若干考慮して いく必要があるかと思います。 ○松本座長  現実と若干乖離しているところがあるようなのですが。桃井先生、どうぞ。 ○桃井参考人  私は小児科医ですので、ご老人の病態についてはコメントできないのですが、 資料9と資料2-5を比べさせていただくと、死亡例というのは全例挙がってくる ものと、関係が否定できない死亡例はこの資料9にあるものを考えると、資料 2-5のほうが圧倒的に多いなという印象があり、そして接種から3日目までに限 定していますので、こういうものはどういうふうに科学的に評価したらいいの か、いま資料を見ながら考えていたのです。接種をどうすべきかという議論と は別に、新型インフルエンザのワクチンがこういう慢性肺疾患の基礎疾患を持 った方に、突然死を起こすリスクは季節性より高いかもしれない、あるいは高 くないということを検証するにはどういうデザインでしたらいいかということ を、是非、科学的な検証ができるようなスタイルを御検討いただきたいと思い ます。  小児にも慢性肺疾患という病態がありますので、それらはインフルエンザに 罹ると非常に重症になるものですから接種して予防したい状況はありますが、 呼吸器系に問題があると有害事象が出易いということはない、といえる科学的 なデータが是非欲しいところです。例えば、資料2-5のような例でこれらが0日 から3日までに集中していますので、それでは打たれた方の2週間後の突然死の 割合はどうかということを比べて科学的に何か検証できるものかどうか等々の 科学的な検証のデザインを、是非、早急にお考えいただきたいと思います。 ○松本座長  死亡症例の頻度に関しましても、季節性と今回の新型を単純に比較するのは かなり無理があろうかと思います。それからまた、もう1つ、症例詳記を見る とかなり情報不足が多いので、ここで白黒をつけろというのはかなり厳しいの ですが、今のこの時点である程度の取りまとめ案をつくるのは必要ですよね。 そうしますと、これをいつまでも討論していてもなかなからちがあかないので、 ここで取りまとめ案のたたき台をつくってお示しして、それに対して御意見を いただこうと思いますがよろしいでしょうか。もしよろしいようでしたら、た だ今から隣におります稲松先生と事務局とで取りまとめ案を作成しますので、 しばらく休憩とさせていただきます。 ○事務局  それでは、10分程度お時間をいただければと思いますが、念のためにこちら の時計で20分に再びお集まりいただければと思いますので、よろしくお願いい たします。 (休憩) ○事務局  取りまとめの案は事務局のほうから読み上げさせていただきます。新型イン フルエンザワクチンに関する安全性評価について(案)。検討会、調査会名は 省略させていただきます。新型インフルエンザワクチンの接種が10月19日より 開始され、実施医療機関より厚生労働省に副反応について報告されている。11 月19日までに877例が報告され、うち重篤な症例が68例(13例の死亡を含む) であった。また、20日までの死亡例の報告は21例である。現時点で得られた情 報に基づき、新型インフルエンザワクチン自体の安全性、接種事業の継続及び ワクチン接種に当たって注意すべき点等の安全対策についての検討を行い、次 のような意見として取りまとめるものである。  1.ワクチンの基本的な安全性。○医療従事者2万例コホートの健康状況調査 による安全性の特性から見て、季節性インフルエンザと差はなく、期待する利 益からみて十分であったと考えられる。重篤な副反応発生についても死亡や後 遺障害に至る転帰のものはなかった。○医療従事者を中心に接種が行われた10 月中の接種の現状においても2万例コホートの調査と同様に発生している副反 応の特徴に現時点では重大な懸念は示されていない。○新型インフルエンザワ クチンは副反応報告頻度が季節性ワクチンに比較して高い傾向にあることは次 の点に留意が必要である。1つ目が、新型インフルエンザワクチンの接種事業 は予防接種実施要領等に基づき、死亡臨床症状の重篤な者、後遺症を残す可能 性のある者に該当すると判断されるものは因果関係の如何にかかわらず報告対 象とし、契約により接種医療機関に対して報告を求めていること。2つ目が、 季節性インフルエンザワクチンの副反応データは副反応によると疑われる疾病 を報告する薬事法の下での数値であること。3つ目が、社会的な関心が高いな どの理由。○以上からみて、現時点で医療従事者への接種を中心とした評価に おいてはワクチンの安全性において重大な懸念を有するものではないが、今後 接種希望を広げた場合での評価を継続すべきである。裏にまいりまして、2.基 礎疾患を有する高齢者の死亡について。○11月以降の接種者において、死亡症 例の報告が増加している傾向にあるのは、優先接種対象者として呼吸器、心臓、 腎臓などの基礎疾患(重度の基礎疾患)を有する患者への接種が11月から開始 していることと関連した事象であると考えられる。○人口動態統計から見ても、 基礎疾患を有する高齢者の死亡は高い頻度でみられるものであり、今回報告さ れた事例は何れも重度の基礎疾患を有する者であり、ワクチン接種と死亡が偶 発的に重なった可能性は否定できない。○個々の死亡事例についても、限られ た情報の中で因果関係は評価できないものもあるが、大部分は基礎疾患の悪化 や再発による死亡の可能性が高いと考えられ、現時点では死亡とワクチン接種 との直接の明確な関連は認められない。○これらのことと健康な医療従事者に おける実績を合わせて考えれば、ワクチン自体に安全性上の明確な問題がある とは考えにくい。○しかしながら、重度の基礎疾患を有する患者においては、 ワクチンの副反応が重篤な転帰につながる可能性も完全には否定できないこと から、接種時及び接種後の処置等において留意する必要がある。○また、感染 リスクは低いものの、高齢者で基礎疾患を有する者はインフルエンザに罹患し た場合に重篤な転帰を辿る可能性が高く、新型インフルエンザワクチンにおい て見られているリスクと比較して相対的に接種のメリットは大きいと考えられ る。3.今後の対応について。○重度の基礎疾患を有する高齢者におけるワクチ ン接種後の死亡であって、ワクチンと明らかな関連がないものとして主治医等 が報告したものについては、個別事例の評価以外に、集積した情報の中から問 題や注意を要する情報を抽出することに重点をおいて評価すること。○実施要 領において心臓、腎臓又は呼吸器の機能に、自己の身辺の日常生活が極度に制 限される程度の障害を有する者などへの接種に当たっては、接種を行うことが できるか否かを慎重に判断するよう、接種を担当する医師に求めているが、こ れを徹底すること。また、そのような者に接種した場合には接種後、短時間の 内に被接種者の体調に異変が起きた場合でも適切に対応できるよう、接種後、 一定時間、被接種者の状態を観察することなどについて行政は医療関係者に注 意喚起するべきこと。また、ワクチン接種は個々人の判断により行うべきもの であることを考慮し、現在の感染状況やワクチンの安全性情報の提供を行政は 徹底させること。以上でございます。 ○松本座長  ありがとうございました。ただ今、事務局が読み上げました取りまとめ案に ついて御意見をお伺いしたいと思います。御意見、ございませんでしょうか。 ○稲松座長代理  今後は輸入ワクチンとか、それから世界的には他のワクチンの問題とかも出 てくるので、今回の検討案は全て国産ワクチンであることをどこかにきちっと 書いておかないと後から混乱するような気がします。 ○松本座長  その点は事務局、いかがですか。よろしいですか。 ○安全使用推進室長  そうしましたら、この柱書きの部分ですが、2パラグラフ目の「現時点で得 られた情報に基づき」という部分がありますが、ここは「現時点で国産ワクチ ンにおいて得られた情報に基づき」と明記させていただくことにします。 ○松本座長  よろしいですか、稲松先生。 ○稲松座長代理  はい。 ○松本座長  他に御意見ございませんでしょうか。 ○名取参考人  ワクチンの基本的な安全性の最初の○の文章なのですが、医療従事者2万例 コホートの健康状況調査による安全性の特性からみてどうこう、というと、何 かこれが全体の調査結果を何か示すような誤解をちょっと与えやすいような気 がするのですよ。ですからここは、医療従事者2万例コホートの健康状況調査 ではとか、何かそのデータではということで、その問題がなかったと言ったよ うなニュアンスが伝わるほうが、何か誤解されるとまずいなという感じがしま した。 ○松本座長  季節性、健康状況調査では。 ○名取参考人  「安全性の特性から見て」の方が誤解されにくいかなと。 ○松本座長  「安全性の特性から見て」までをカットしないわけですね。それはよろしい ですね。他にございませんか。 ○名取参考人  今度、2.の方の3個目の○「個々の死亡事例についても」という文章ですが、 この最後の「現時点では死亡とワクチン接種との直接の明確な関連は認められ ない」と。先ほどの議論からいくと、単純にそう言い切っていいかどうかとい うのが、ここでまた誤解を与えやすいと思いますので、例えば、「死亡の可能 性が高いと考えられ、死亡とワクチン接種との直接の明確な関連が認められた 症例は現時点ではない」と言ったぐらいの表現が誤解が少なくなるかなという 気がしますが。もうちょっと言えば、それでも言い過ぎという御意見があるか なという気がします。 ○松本座長  その辺は委員の先生方、御意見ありますか。そのような形でよろしいですか。 ○桃井参考人  この文章の目的ですけれども、単に医学的、科学的に正確を期するのが目的 の文章なのか、それともワクチンに対する安全性に関して行政的な意味合いも 含めた文章なのかによって書き振りは随分変わってくるのだろうと思うのです。 医学的にみますと、ここの文章は先ほどの御発言のとおり、こういう議論では なかったのだろうと思うのです。認められないとも認められるとも何ともこれ では情報が不十分ですと、つまり解析できない状況が多々あり、より一層の医 学的な解析を必要とするということであったので、この文章は、「大部分は」 ということも何をもって大部分かなと私も思います。この文章は行政的にその ワクチン接種を回避する方向を強く引き起こさないための文章であれば納得で きますが、単にこの検討会の科学的なことを重視する文章であれば明らかに言 い過ぎだろうと思います。 ○松本座長  事務局、いかがですか。 ○安全対策課長  大変難しいところをご指摘いただいていると思います。科学的な、厳密なと いうところで判断をいただくには材料としてまだ十分ではないということは、 これは明らかでございます。ただ一方で、現在ワクチン接種が日本全国で進ん でいる最中であるということを考慮しまして、最終的には行政の判断は大臣を 含む政務三役のほうできちんと下すという意思決定をしますけれども、ただそ こにはやはり科学的な厳密さと、プラス実際上の現場の医療における対応に対 しての御意見も込められた形で是非お願いできないかと考えております。そう いう意味で、現在進めているワクチン接種を直ぐにも止めなければいけないよ うな、そういう重大な懸念をお持ちであるかどうかをできるだけ明確にしてい ただきたいと、そういうお願いをしているところです。したがいまして、完全 な科学的な観点だけのまとめということでいきますと、なかなか何も分からな いというような恰好になってしまいますが、そこはやはり現実の医療というと ころに直結をしている、こういう案件ですので、その部分も含めて御意見を賜 りたいと考えております。ただ、行政の責任はあくまでも行政にある、取らせ ていただくということですので、その点ははっきりはさせておきたいと思いま す。 ○松本座長  現時点で得られている正確な情報を提供するというのがいちばん主ではない かと思いますので、その点からいきますと桃井先生、この部分はいかがですか。 先ほどの名取先生のおっしゃったような変更が、より先生のご意向に近いとい うことでよろしいですか。ではそのようにまた後で書き直しておきます。他に 御意見、ございますか。 ○名取参考人  3.の二つ目の○の3行目ですが、「接種を行うことができるか否か」という のはちょっと変かなと思います。要するにここはリスク・ベネフィットという か、患者さんにとってのメリット・デメリットをちゃんと判断してください、 とこういう趣旨ですよね。ですから、そういう言葉のほうがよろしいのではな いかという気がするのです。接種を行うことのリスク・ベネフィットについて 慎重に判断するようにというのは良くないですか。いや、専門の方がいっぱい いらっしゃるので。 ○久保参考人  接種を行うことが有効かどうかということですか。そういう重篤で在宅医療 をされている方にということですか。 ○事務局  この点、実施要領を引用しておりますが、実施要領では「接種の適否を慎重 に判断する」というふうになっておりますので、そちらの。 ○名取参考人  それで、できるか否かという言葉になっているわけですね。 ○結核感染症課長  元々の参考資料4の9ページですが、その前のページで予防接種を受けるの が適当でない方について記載されておりまして、その次に予防接種要注意者と いうことで、ここにございますように、予防接種を行うに際して注意を要する 者についてと書いてありますが、健康状態及び体質を勘案し、慎重に予防接種 の適否を判断するとともに、接種を行うに際しては、接種を希望する意思を確 認した上で、説明に基づく同意を確実に得ると。その際、積極的な接種勧奨に わたることのないよう、特に留意すると、こう述べておりました。更にその次 に書いておりますが、心臓、腎臓等について更に注意書きをしておりますので、 文章とすると、心臓、腎臓又は呼吸器の機能云々とは限定せずに、基礎疾患を 有する者等については被接種者の健康とかいうこの文章をそのまま生かせば、 こういうふうに求めているので、被接種者の健康状態及び体質を勘案し、慎重 に予防接種の適否を判断するとともに、接種を行うに際しては、希望する意思 を確認した上で、説明に基づく同意を確実に得ること。その際、積極的な接種 勧奨にわたることのないよう、特に留意することを徹底させること、とさせて いただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○松本座長  いかがですか。 ○名取参考人  「できるか否か」という言葉がちょっと何か誤解されやすいかと思いました ので、むしろおっしゃられるように、この言葉より「接種を行うことの適否を 慎重に」というほうがより少ないと思います。もうちょっといい表現があれば また。 ○松本座長  それでいいですかね。 ○工藤参考人  いま、名取先生が言われたことに賛成いたします。 ○松本座長  他にありませんか。それでは訂正したものをもう一度読み上げてください。 ○安全使用推進室長  それでは読み上げます。最初のパラグラフはございません。2つ目のパラグ ラフ、現時点のところです。現時点で国産ワクチンにおいて得られた情報に基 づき新型インフルエンザワクチン自体の安全性、接種事業の継続及びワクチン 接種に当たって注意すべき点等の安全対策について検討を行い、次のような意 見として取りまとめるものである。  次に1.の○の1個目です。医療従事者2万例コホートの健康状況調査では、 安全性の特性からみて季節性インフルエンザ、ここ、ワクチンが抜けておりま した、インフルエンザワクチンと差はなく期待する利益からみて十分であった と考えられる。重篤な副反応発生についても死亡や後遺障害に至る転帰のもの はなかった。  その次が2頁目です。2.の3つ目の○のパラグラフ。個々の死亡事例につい ても限られた情報の中で因果関係は評価できないものもあるが、大部分は基礎 疾患の悪化や再発による死亡の可能性が高いと考えられ、死亡とワクチン接種 との直接の明確な関連が認められた症例は現時点ではない。  その次が、今後の対応の部分ですが、現在お配りしているテキストを最大限 生かす形でいきますと、3.の2つ目の○です。実施要領において、心臓、腎臓 又は呼吸器の機能に、自己の身辺の日常生活が極度に制限される程度の障害を 有する者等への接種に当たっては、接種を行うことの適否を慎重に判断するよ う、接種を担当する医師に求めているが、これを徹底すること。修正は以上で ございます。 ○松本座長  ありがとうございました。今度はどうでしょうか。よろしいでしょうか。今 度はよろしいですか、これで。特に桃井先生はよろしいですか。ご異論がなけ れば、これを合同検討会の報告の取りまとめとさせていただきます。どうもあ りがとうございました。  それでは議題2の「その他」について。事務局、何かありますか。 ○事務局  「その他」については、今日お集まりいただきましたが、次回につきまして は、11月30日の月曜日の14時からということで予定をさせていただきたいと 思っておりますのでよろしくお願いいたします。また、今回の合同検討会の報 告取りまとめ、配付資料とともに厚生労働省のホームページに掲載させていた だきたいと存じます。以上でございます。 ○松本座長  全体を通じて何かございませんでしょうか。ないようでしたらこれで本日の 第1回の合同検討会を終了とさせていただきます。長い時間、活発なご議論、 ありがとうございました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111