09/11/20 第58回中央医療社会保険協議会薬価専門部会議事録 1 日   時  平成21年11月20日(金)9:00〜10:13 2 場   所   グランドアーク半蔵門 華の間(3階)  3 出 席 者  遠藤久夫部会長 庄司洋子委員 牛丸聡委員 森田朗委員          小林剛委員 白川修二委員 中島圭子委員 北村光一委員           安達秀樹委員 邉見公雄委員 渡辺三雄委員 三浦洋嗣委員           長野明専門委員 禰宜寛治専門委員 松谷高顕専門委員            <事務局>          外口保険局長 唐澤審議官 佐藤医療課長 木下経済課長          迫井医療課企画官 磯部薬剤管理官 他                 4 議   題   ○特許期間中の新薬の薬価改定方式について           ○遠藤部会長  おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第58回中央社会保険医療 協議会薬価専門部会を開催いたします。  まず、委員の出欠状況でございますが、本日は森田委員が遅れて出席される旨の連絡を 受けております。  それでは、議事に移らせていただきます。  本日は、特許期間中の新薬の薬価改定方式についてを議題といたします。  日本製薬団体連合会――日薬連が提案しておられます特許期間中の新薬の薬価維持特例 については、その導入の必要性も含めまして、これまで何回か議論してまいりました。本 日は、新たに薬価専門部会の委員となられた方が何人かいらっしゃること、また前回9月 18日に議論いたしましたけれども、その際に事務局から提出された論点案につきまして 必ずしも網羅的な議論が行われたわけではなかったことを踏まえまして、まずは事務局か ら論点を再度説明していただきまして、続いて専門委員から、制度のポイント、これら各 論点に対する考え方などについて説明していただくことといたします。  では最初に、事務局から説明をお願いします。 ○事務局(磯部薬剤管理官)  薬剤管理官でございます。私のほうから中医協薬−1の資料に沿って簡潔に説明したい と思います。  論点については、以前より出させていただいておりますけれども、このような論点に従 って御議論をお願いしたいと思っております。  まず1ページ目、1番でございますが、薬価維持特例を導入する必要性についてどう考 えていくのかということでございます。  それから2番目といたしまして、薬価維持特例の導入による患者等へのメリットを確保 するための方策ということで、製薬業界は医療上必要性の高い未承認薬や未承認適応につ いてその開発・上市を目指すとしておりますけれども、その実効性を担保する方策として どう考えていくのかということでございます。また、ドラッグ・ラグを起こさないように 我が国での開発・上市を適切なタイミングで行っていることなど、また採算性が悪くなっ ているが医療上必要性の高い古い医薬品の安定供給などについてどう考えていくのかとい うことでございます。  3番でございますけれども、薬価維持特例の対象品目、期間等の考え方ということで、 薬価維持特例の対象となる医薬品の範囲をどう考えるか、特に製薬業界は加重平均乖離率 を超えないものを対象にするという主張でございますけれども、それについてどう考える のかということでございます。  裏のページへいっていただきまして、またその期間については、後発品が薬価収載され るまでということを話してございますけれども、後発品が出なくても最大15年としてお りますが、そういう点をどう考えるか。  それから、不採算品再算定品目も薬価維持特例の対象とすべきという主張もありますけ れども、そういう点もどう考えるかということでございます。  4番でございますけれども、後発品の使用促進との関係ということでございますが、薬 価維持特例の導入が後発品の使用促進にマイナスの影響を与えないかどうか、また後発品 が過度に安い薬価で収載され、供給不可能とならないかなどについて、薬価維持特例終了 後の後発品の薬価算定方法をどのように考えるのかということでございます。  (2)でございますけれども、後発品の使用促進が計画どおり進まない場合、製薬業界とし ては制度導入に伴う財政影響を補てんする方策として既収載品の薬価を引き下げることは やむを得ないというお話でございましたけれども、実際にどのような方法が考えられるの かということでございます。  その他でございますけれども、薬価維持特例を仮に導入するにしても、その財政影響の 程度や未承認薬・未承認適応の解消状況などのフォローを行い、試行的な実施というやり 方についても検討してはどうかということでございます。  そのほか種々の検討項目があるかと思いまして、それも挙げさせていただいております。  以上でございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  それでは、専門委員、よろしくお願いします。 ○禰宜専門委員  専門委員の禰宜でございます。  「日薬連提案の薬価制度改革と国内未承認薬・未承認適応問題」の資料を御参照いただ きたいと思います。  本日は、日薬連が提案しております、また御議論いただいております薬価制度改革案の 概要の説明と、現在の医療の重要な課題の一つでございます国内の未承認薬・未承認適応 問題の解決についての新制度導入の必要性について御説明いたします。  1ページをごらんください。本日の説明内容でございます。  それでは、2ページをごらんください。提案に至った背景でございます。保険医療を見 た際に、医薬品に係る課題はいろいろあると思いますが、中でもここに示しております2 点について、医薬品産業としての対応が強く求められているものと考えます。その1つが、 未充足の医療ニーズ、すなわちアンメット・メディカル・ニーズへの対応でございます。 もう1点が、未承認薬・未承認適応及びドラッグ・ラグの解消でございます。  これらの課題の解消には、収載時と特許期間の薬価において、革新性が適切に評価され ることにより、研究開発に投じられた費用ができるだけ早期に回収され、次の新薬の研究 開発投資に向けられることが必要でございます。すなわち、特許期間中であっても循環的 に価格が低下するという現行薬価制度の課題の改善が求められているわけでございます。  3ページをごらんいただきたいと思います。アンメット・メディカル・ニーズへの現在 の対応状況について示させていただいております。左下のピンク色のところに位置してお ります疾患が、治療の満足度が低く、かつ治療に対する薬剤の貢献度が低い疾患でござい ます。この領域における研究開発の加速が現在求められているところでございます。現在、 医療現場と連携しながら、ゲノム科学を応用し、病態解明に基づく創薬の進展、低分子化 合物に加えまして、抗体薬等のバイオ医薬品の開発を推し進めているところでございます。 この領域にも開発では42%のウエートをかけているような現状でございます。  次に、飛びますが、6ページをごらんいただきたいと思います。これが日薬連提案のコ ンセプトでございます。特許期間中の新薬の薬価改定方式を見直すことによりまして、前 倒しして回収した資金を研究開発に再投資することで、新薬創出を加速させようとするも のでございます。一方、特許期間満了後は後発品への代替を進めるということであり、先 発企業にとりまして特許満了後での収益が期待できないこともあり、新薬創出に全力で取 り組まなければなりません。市場構造の変化は、先ほど説明いたしましたアンメット・メ ディカル・ニーズ、ドラッグ・ラグ、未承認薬・未承認適応の課題に対しましても、自然 な経済活動として解消されるものと考えます。  7ページをごらんいただきたいと思います。日薬連提案の対象はすべての新薬ではなく て、医療現場において高く評価される品目のみが対象となるわけでございます。過去の薬 価改定結果に基づき、対象となる領域を推定いたしました。特許期間中でも、市場が大き く、参入している製品が多く、市場競争が激しい領域、例えば降圧剤のARBあるいは高 脂血症のスタチン等、生活習慣病薬は対象にはなりにくいという現状でございます。一方、 ピンク色の部分の抗がん剤等、市場は大きいが、参入している製品が少ない領域、またH IV治療薬等、市場は小さいが、多くの製品が参入している領域、及びオーファン薬等の 領域が対象となることが考えられます。  次に8ページをごらんいただきたいと思います。日薬連提案の後発品のない特許期間中 の新薬の薬価改定方式の見直しの概要について御説明いたします。  現行の薬価改定方式は、市場実勢価格、すなわち実際に卸から医療機関、保険薬局に納 入された価格に基づきまして、2年に1回の薬価改定で薬価が引き下がっております。日 薬連提案は、後発品のない特許期間中の新薬のうち、当該品目の乖離率が収載全品目の加 重平均乖離率を超えないものにつきまして、薬価改定の対象外とする仕組みでございます。 この条件を照らし合わせた場合に想定されます3つのパターンの改定方式について御説明 いたします。  (2)のケースの場合です。収載直後から加重平均乖離率を超える品目につきましては、現 行の2年に1回の通常改定を受けることになります。  (2)のケースの場合です。収載後に改定の対象外となった後に、例えば競合品の参入等で 加重平均乖離率を超えた品目につきましては、次の薬価改定時に猶予された累積分とその 年の通常改定分を合計して引き下げます。  (3)のケースの場合です。対象品目は少ないと思われますが、初めての後発品が収載され るまで薬価改定の対象外となった品目につきましては、加重平均乖離率を超えない場合で あっても、初めての後発品が収載された直後の薬価改定におきまして、それまでの期間中 の累積分と通常の改定分を合算して引き下げるわけでございます。  次に、7月15日に事務局から出されました論点の一つといたしまして、日薬連提案の 導入による患者等へのメリットを確保するための方策が示されております。国民・患者に とりまして、現在の課題の一つでございます未承認薬・未承認適応問題の解消と日薬連提 案を絡めて考えることも重要だと考えます。9ページに取り組み状況をお示ししておりま す。  まず、国といたしまして、未承認薬使用問題検討会議で治験が開始されるべきとされた 44成分のうち、手つかずの14成分の中で、治験計画等検討中の12成分の開発費用に 対しまして、厚生労働省から対策基金100億円の交付が決定いたしております。  また、製薬業界は既に、本問題の解消に向けて自主的に、本年5月、未承認薬等開発支 援センターを設立し、取り組みを開始しております。国内未承認薬14成分のうち、12 成分が開発スタートに向け治験計画等検討中でございまして、残り2成分につきましても、 興味を示している企業と現在交渉中でもございます。本年8月の厚生労働省の意見募集で は未承認適応に約250件の応募がございました。現在、行政当局と各当該企業におきま して精査中でございます。また、同時に国内未承認薬につきましても100件弱の応募が ございました。今後も引き続き新たな要望が出てくることが予想され、同時にこれらの課 題に対応するためには、多くの費用が必要でもございます。  それでは、10ページをごらんいただきたいと思います。8月に応募のありました未承 認適応について、各社に打診された内容を整理してみました。悪性腫瘍が全体の24%、 がん性疼痛をはじめとした疼痛が16%、小児適応が16%、多剤耐性結核等の感染症が 11%程度になると推計されております。  それでは、11ページをごらんいただきたいと思います。これは既に9月の薬価専門部 会で御説明いたしましたが、対象疾患の非常に少ない未承認薬あるいは未承認適応の開発 におきましても、十数億円のコストが必要でございます。  最後に、12ページをごらんいただきたいと思います。薬価制度改革の必要性について 述べさせていただきます。本制度導入によって、医療上価値の高い新薬が高い評価を受け ることで、日本市場に新薬を投入する魅力が高まり、ドラッグ・ラグの解消に向かいます。 同時に、研究開発投資の回収サイクルが高められることによりまして、アンメット・メデ ィカル・ニーズに対応した新薬開発が一層推進されます。さらに、研究開発投資の増加は、 中長期的には我が国における医療技術の進歩や経済の活性化に大いに寄与いたします。ま た、国内未承認薬・未承認適応問題は早急に解決すべき課題でありますが、これらの中に は採算性に乏しいものが多く含まれていることから、医療上価値の高い新薬を創出する企 業に対してメリットのある仕組みとして日薬連提案を組み合わせて実施することは、本問 題の早期解決につながるものと考えます。  今後、学会、患者団体等から要望の上がった未承認薬・未承認適応につきましては、行 政と企業で精査した上で、最終的には有識者会議で必要と判断されたものにつきまして、 当該企業は未承認薬等開発支援センターの支援を受けながら真摯に対応するものと認識し ております。さらに、確実に未承認薬等の解消を進めるために、これに寄与している企業 を日薬連提案の対象とし、仮に正当な理由もなしに取り組まない企業は対象としないよう な仕組みも必要であるかと思われます。また、その際には、日薬連提案の対象品目がない にもかかわらず未承認薬・未承認適応の解消に取り組んだ企業に何らかのインセンティブ を付与することも必要と考えます。本提案の実現によりまして、医療への貢献、患者・国 民の皆さんへメリットを与えるものと考えます。  以上でございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。ただいま事務局と専門委員から御説明がありました。専門委 員は日薬連のお立場というところで今お話をいただいたと理解しております。  新しい委員の方もいらっしゃいますので、これまでの議論を簡単にまとめますと、従来 は既収載品の薬価につきましては2年に1回の薬価調査によりまして価格を変えてきたわ けであります。中身につきましては、あるときはバルクライン方式を入れたり、あるいは 加重平均をとるようになったりとか、R幅を縮小するといった方法を使っていろいろと調 整はしているわけですけれども、基本的には実勢価格に応じて2年に1回の薬価改定をや ってきたところです。今回の日薬連提案の中身は、ある程度価格が下がらないものについ ては、そのまま価格を維持して、ジェネリックが出てきた段階で一気にその差額分を下げ ましょうと。そうすることによって競争力のある薬については、投資の回収が早くできて、 結果的に早く上市するというインセンティブになるのではないか。こういう御趣旨の提案 だろうということであります。いろいろな議論がありましたが、基本的にドラッグ・ラグ あるいは未承認薬・未承認適応問題は重要だということにはほとんどの委員の方々は同意 されているわけであります。と同時に、反対されている一部の委員の方は、むしろ財政上 の問題ということでありまして、価格が下がっていかない薬があるわけですから、当然薬 価がある期間はむしろ今よりもふえていくということになりますので、その問題を非常に 重視するということでした。あるいは、試行的であるならばいいのではないかといった御 意見も非常にあった。試行の内容がどういうものかということはまだはっきりしていない のですけれども、試行的に実施したらいいのではないかということであったわけです。  といったことがこれまで議論されてきて今に至っていますけれども、ただいまの御説明 につきまして何か御意見、御質問はございますでしょうか。安達委員、どうぞ。 ○安達委員  専門委員にお尋ねします。あるいは事務局にもお尋ねしたほうがいいのかもわかりませ んが、「日薬連提案の」という資料の5ページに、新薬薬価の継続的下落は日本独特の現 象であるということで、幾つかの品目の諸外国例を挙げていただいているのですが、この 前の薬価部会で事務局からお示しいただいた全体的な数字ですと、日本は確かに特許期間 中でも下がり方は一番大きかったと思いますが、諸外国においてもある程度は下がってい るというトータルでのデータがあったと思いますが、トータルの認識としてはどちらが正 しいのですか。 ○遠藤部会長  これは専門委員へのお尋ねですか。 ○安達委員  まず、事務局がそのデータをおつくりになっていたと思うので、事務局にお伺いいたし ます。 ○遠藤部会長  では、事務局、お願いいたします。 ○事務局(磯部薬剤管理官)  どちらにしても、私どもは前回の薬価専門部会でお示ししたものは、ちょうどドッチフ ァイルの中に入ってございますが、前回の薬−3−1の資料だと思いますけれども、この ときは、平成14年度から平成17年度に日本で初めて後発品が薬価収載された新薬の3 4成分について分析したものでございます。そのほか、同じときに薬−4の資料で、平成 20年4月〜平成21年9月収載分の新薬算定時の比較薬に関する直近5年間の価格の推 移をまとめたものもございます。ただ、この資料は、後発品の出る前、出た後という形を 入れておりませんので、それが少し入れ子になっているというものでございますが、こう いった分析の結果からは、今、安達委員がおっしゃるように、日本が一番大きく下がると いうことは言えるかと思っておりますけれども、諸外国、特に欧州の国では若干は下がる 傾向にあるということは読み取れるかと思っております。 ○遠藤部会長  安達委員、どうぞ。 ○安達委員  専門委員にお尋ねしますが、それが正しいという理解で議論を進めてよろしゅうござい ますでしょうか。ここに4つの品目だけを挙げていただいている限りにおいては、日本だ けの現象だということになっているのですけれども、より広くとると、いや、そうではな いという今のデータなんですけれども。 ○禰宜専門委員  ここでお示しさせていただいておりますのは、類似薬がなくて、日・英・米・独・仏の 5カ国すべてに上市されまして、日本以外の2カ国以上でリストプライスが存在して、各 国で同一の剤型及び規格が存在しているというもので、基本的に日・米・欧で比較したと きに状況が一番分かりやすい4成分につきましてリストして御説明させていただいている ということでございます。 ○安達委員  申しわけありませんが、都合のいいものだけを拾い上げられたとは申し上げませんけれ ども、そのところは日薬連としては今の事務局の認識の説明で大筋いいということですか。 それを確認しないと議論が進まないと思うんですが。 ○遠藤部会長  長野専門委員、どうぞ。 ○長野専門委員  それでは、長野のほうから御説明いたします。  基本的に、先ほど事務局のほうから御説明のあった価格の推移あるいは諸外国との比較 は正しいと思います。一方で、一つだけつけ加えさせていただきますと、日本の制度は当 然公定価格制度でありますから、一番上を薬価として決めまして、競合品もありますから、 そこで価格競争が起こる。そういう意味では、価格競争を諸外国よりも非常にうまく入れ た公定価格制度だと存じております。結果的にはそれは下がっていく制度であると認識い たしております。 ○遠藤部会長  安達委員、どうぞ。 ○安達委員  それは、要するに諸外国でも平均すれば下がることは下がるんだという理解で議論させ ていただきますけれども、そうしますと、今、特に対象品目にされようとしておられる薬 剤等々について、全般の数字が出るのかどうかは分からないんですけれども、その国内販 売と輸出の比率はどのぐらいなんですか。 ○遠藤部会長  長野専門委員、どうぞ。 ○長野専門委員  御質問をちょっと確認させていただきたいんですが、いわゆる製薬企業全体の売上高と いう言い方で認識すればよろしいでしょうか。それとも品目……。 ○安達委員  多分それしか分からないんでしょうね。 ○長野専門委員  はい。全体で見ていきますと、国内メーカーを事例に挙げますと、これは内資の大手の 集計になってしまいますけれども、今現在、2008年の決算結果から見ますと、海外の 売上高が50%を少し超えております。それから、御質問になくて恐縮ですけれども、利 益も追加いたしますと、利益もおおむねその売上比率に沿った形で分解できると思います。 大まかでございますけれども、お答えいたします。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  安達委員、どうぞ。 ○安達委員  お伺いした理由は、未承認薬の開発等々でおっしゃる理由はよく理解するのですけれど も、そうすると半分ぐらいが国外で、国外でも下がるのですが、国内をこのまま維持する ということは、国外で下がる分まで国内でカバーしようという話になりませんかというこ とで御質問したわけですが、それはどう考えておられますか。 ○遠藤部会長  長野専門委員、どうぞ。 ○長野専門委員  まずは、国内の薬剤費の年次推移を15〜16年間、20年近く見てまいりますと、こ の2〜3年前まで大体6兆数千億から7兆1〜2千億で推移しております。15年ぐらい です。ですから、メーカー全体の国内の売上は十数年間余り変化していない。御承知のよ うに、アメリカが格段に単価も含めまして市場がこの10年間ぐらいで2倍、3倍になり ました。多くの製薬企業はアメリカ中心で売上を伸ばしてきたのがこの数年来の実態でご ざいます。特に今度はそれに加えまして、いわゆるBRICsと称している各国で、ここ はまだ各社がほとんど出ていないところでございますが、ここでの急成長のもとで医薬品 の売上を確保していこうと。つまり、国内の伸びがとまっているところをこの10年ぐら いはアメリカあるいは一部ヨーロッパでやってまいりましたけれども、さらにそれに加え てBRICsなどでやっていこうと。客観的な立場で申し上げますと、日本の重視という のが、少しずつ優先度が下がってしまわないか、そのことを私自身もすごく懸念いたして おります。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  ほかに。邉見委員、どうぞ。 ○邉見委員  日薬連さんのお話はもう数回聞いて、私は3期目ですけれども、ずっとこの薬価専門部 会でもほとんど皆勤で聞いておりました。私は大阪より西のほうから来ているのですが、 お話を聞いて、静岡、名古屋ぐらいまではおっしゃるとおりだなと思うんですが、名古屋 過ぎぐらいからちょっとおかしいのではないかといつも思うんです。まず、5番目の「薬 価制度改革の必要性」に「ドラッグ・ラグの解消やアンメット・メディカル・ニーズに対 応した新薬の開発促進」と、これは本来製薬企業の使命ではないんでしょうか。だから、 ちょっと失礼な言い方になるかも分かりませんが、私たち医師であれば、応招義務という のがあって、医師は患者の診療が乞われれば必ず診なければいけないというのと同じぐら いの社会的使命があるのだろうと思うんです。それをやるから薬価維持特例を認めてくれ というのは、変な例えですが、子供が宿題をやるからお小遣いをくれというのに等しくて、 本来やらなければいけないことでやっているのではないかと。これは中川前委員もいつも おっしゃっていましたけれども、私は彼の意見がよく分かるような気がするのですが、い かがでしょうか。 ○遠藤部会長  長野専門委員。 ○長野専門委員  お答え申し上げます。以前も同じ御指摘を中川前委員がおっしゃられました。今、邉見 先生からも伺いました。少なくとも各社とも、自社でやるべき課題、未承認薬、指摘のも のは、必ずやるという姿勢で取り組んできていますが、余りにもスケジュールが長過ぎる、 それが今日の問題だと思っております。それを、時間を切ってすべて解決しようというの が今回の各社の意識のあらわれでございまして、もともと社会的義務を感じ、とらえてお りましたけれども、それが例えば10年先とか8年先という設定をしている。ですから、 ドラッグ・ラグの解消ができない。今回必ずスケジュール化し、工程表をつくって、すべ て解決するという不退転の決意を各企業のトップが持っていることを承知しております。 ○遠藤部会長  どうもありがとうございました。  邉見委員、どうぞ。 ○邉見委員  それからもう一つは、テクニカルな、財政的なものかも分かりませんが、6ページの後 発品上市までの面積と、後発品が上市されて後発品への代替で下げるときの面積ですが、 AイコールBみたいな話をいつもされますが、これももう一つ腑に落ちないんですけれど も。 ○遠藤部会長  ここもよく議論になったところでありますが、後発品の代替と、それからこの金額の問 題ですね。長野専門委員、どうぞ。 ○長野専門委員  御説明します。まず、今回日薬連が提案しているところで、ドラッグ・ラグあるいはア ンメット・メディカル・ニーズの解消で望まれているいい薬が出れば、特許期間中は緑の 点線まで上がる。特許が切れて後発品が出れば、一挙に緑の点線まで落ちる。いわゆる売 上でございます。ですから、もともと赤いラインで後ろで稼いでいたものを前倒しさせる。 トータルは変わらない。一方で、すべての企業が緑のラインを実現できるとは残念ながら 思えません。そうしますと、そうでない企業は、今までのいわゆる長期収載品、後発品の 使用促進策の中の長期収載品での売上になりますから、特許期間中、左側は赤のラインで、 特許満了後の後発品使用促進で緑の点線になる。こういう図柄が描けるのではないかと私 は感じております。 ○遠藤部会長  邉見委員、どうぞ。 ○邉見委員  半分分かったような、なかなか全体的には100%は理解できませんけれども、意味は 大体分かりました。  それからもう一つ、なぜ今の時期かなというのがあるんです。今、医療費は大変で、例 えば手術料などは全然上がらないで、我々外科系は疲弊しているわけです。先輩の医師な どから聞きますと、その先生は昔から言っているのですが、苦悩する病院と繁栄する周辺 産業という論文も書かれているのですけれども、このトライアルぐらいならまだしも、こ れをやったら、しばらくの間は医療費は減りませんね。この後発品が出るところから下が るのですけれども、その間、今このようなタイトな医療財政の中で、財源がないとか、い ろいろなときに、なぜ今なのでしょうか。 ○遠藤部会長  長野専門委員、どうぞ。 ○長野専門委員  2つでお答えいたします。1つは、今の新政権のもとで、未承認薬・未承認適応につい ては必ず解決するという政府方針を国会で示されたことを承知しております。私どもはこ の5月より、まさに不退転の決意で、時間軸を区切って、この未承認薬問題にはきちんと 対応し、完全に解決するということをまず考えております。そのためにも、内資、外資を 問わず、そのことをきちんとやっていただくために、ぜひ特許期間中の薬価の見直しの在 り方をぜひ御議論いただきたいというのが今回の提案であり、かつ、2つ目でございます けれども、企業経営者の皆様は、経営が成り立たなくなるということを非常に心配され、 市場が、いわゆる医薬品のマーケットが伸びているところ、伸びるところを期待して、そ ちらにいろいろな投資をしてしまう。そうしますと、日本の優先度が上がらないのではな いかという危惧を持っております。この2点から、ぜひこの際、いろいろな財政事情の中 で御検討いただき、御判断をいただければというのが、今御提案しているところでござい ます。 ○遠藤部会長  邉見委員、よろしいでしょうか。  それでは、薬剤管理官、どうぞ。 ○事務局(磯部薬剤管理官)  すみません、先ほど安達委員と邉見委員から御質問があった件で、ちょっと事務局のほ うから補足的に説明させていただきたいと思います。  最初に安達委員のほうから、特に欧州でも若干は下がっている、日本でこの制度を導入 したら欧州よりも下がらなくなるではないかという御指摘だと思います。先ほどの前回の 薬価専門部会のものは34成分の平均でございまして、中には欧州でも全く下がらないも のがあり、下がるものもあり、それはいろいろなものがあって、その平均としてあの結果 になっているということでございます。この日薬連提案のものもすべての特許期間中の新 薬が対象になるわけではございませんので、平均をとりますと、多分今よりも下げ率が若 干緩和されるという形でございまして、もし仮にこれをフルに導入しても、特許期間中の 新薬は全く下がらないということには多分ならないだろうと思っております。  それから、邉見委員の未承認薬の問題で申し上げますと、なぜ未承認薬・適応外が起こ るのかということを考えますと、企業論理から考えて、それは採算性が悪いから開発しな いと考えざるを得ないと思います。逆に言えば、一つの仕組みとして、こういう採算性が 悪いものに取り組んだら企業のメリットがあると、ある意味でインセンティブでありディ スインセンティブであると思いますけれども、そういった何らかの強いインセンティブを 導入しないと、企業の論理を考えますと、この問題はなかなか解決しにくいのではないか と思います。当然ながら、本来企業の責務はそうだと思いますけれども、企業が株式会社 経営であることを考えますと、何らかのそういったものを考えないと、現実に起こってい る問題を仕組みとしては解決するのは難しいのではないかなという気がしているわけでご ざいます。  それからもう一つは、今回の提案に関しましては、実は論点にも少し書いてございます。 論点の薬−1をちょっとごらんいただきたいと思うんですが、その裏の2ページ目でござ いますが、4番の「後発品の使用促進との関係」の(2)で、後発品の使用促進が計画どおり 進まない場合の対応を書いてございます。現実問題、実はこの日薬連の提案は、後発品の 使用促進が進むという前提で、それで浮いた財源を当初の若干財源を食う部分に充ててい くということでございましたので、今までのデータ的には後発品の使用促進が計画どおり 進んでいないという状況がございます。そういった状況を考えますと、現実にはここにあ りますような何らかの既収載品の薬価の引き下げを入れ込んで、言うなればめり張りをつ けた薬価にしていくという形になろうかと思っております。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  北村委員、どうぞ。 ○北村(光)委員  今、事務局のほうから御説明がございましたけれども、企業の経営という立場からちょ っと意見を言わせていただきます。企業は社会の公器でございますので、社会的責任を第 一生命として対応しなければいけないのはもちろんでございますけれども、何しろ資本を 預かって利益を上げる株主への責任などを考える、利益を求める集団でもございます。し たがって、アンメット・メディカル・ニーズの問題などにつきまして、私は業界が違いま すが、なかなか企業のあれでは対応できないのかなという印象を受けます。結局、企業の ビジネスライフ、ビジネスパターンというのは業界によって変わっておりまして、私は今 原子力ですが、自動車とか、薬価とか、それぞれ特色があるのだろうと思いますが、その 中でも医薬品業界というのは、私はよく分かりませんけれども、その中でも大変インター ナショナルなグローバルな企業だろうと思います。したがって、ドラッグ・ラグあるいは 未承認・適応外というのはきっと、既にある症状は承認されているのだけれども、それ以 外の症状で効能が出てきたというのが承認されていない。ですから、日本の国内に日本の 企業あるいは外国の企業が入ってきて既に対応している問題。一方、国内未承認薬という のは、海外の企業が持っていて、それが全く日本では対応されていない。ですから、いず れにしろこれは外国企業が相当綿密に絡んできます。したがって、そのときの外国企業の 考えというのは、ほかの業界でもそうだと思いますけれども、日本の市場に魅力を感じな いとなかなか出てきていただけないというのが、私は率直なところだろうと思います。恐 らくそのようなことも含めて、今回対応してくれるような計画を立てていただいているの ですけれども、私は逆に日薬連の方に伺いたいのは、本当にこのとおりやっていただける のかどうか。大体何社ぐらいの方がセンターにおられるのか、そしてこのセンターの仕事 に余り積極的に携わらない企業については対象外にしてもいいとまで、かなり激しいこと をおっしゃっているので、本当にそういうことが業界の対応として可能なのかどうか、そ ういうことを逆に私は伺いたいと思います。 ○遠藤部会長  禰宜専門委員。 ○禰宜専門委員  今御指摘のございました未承認薬等開発支援センターには今69社ぐらいが参画してお ります。それと、業界の意見陳述のときにも代表の者が発言しておりますように、業界と して必ずこれを解決していくという強い意見も出しておりますので、これは必ず実行でき るのではないかと思います。そして、資金援助だけではなくて、開発に対するもの、ライ センスに対するもの、また将来的な承認に関するもの、約款に関するもの、そういうもの も業界を挙げて支援していくということで、これを開発することを取り上げたメーカーに とっては非常に心強い支援が得られるのではないかと思っております。  そして、正当な理由がないところにつきましては、先ほど御指摘がありましたように、 非常に厳しい対応になるかもしれないんですけれども、基本的には要請が諸外国でも承認 されていないというものにつきましては調整する必要がございますでしょうし、有識者会 議で正式に開発が必要と決定されていないようなものにつきましては検討の余地もあると 思っております。また、会社によりましては、複数の要請が来ている、例えば未承認薬・ 未承認適応で数品目持っているようなところもございますので、そういうところにつきま しては優先順位を決めるといった、そういう意味での時間的な余裕というものもいただく 必要があるのではないかと思っております。また、いろいろ詰めていきますとライセンス 等で問題があるところもございますが、今申しましたように、それ以外のところについて は真摯に対応して、国民の期待にこたえていきたいと考えております。 ○遠藤部会長  北村委員、どうぞ。 ○北村(光)委員  ありがとうございました。国民・患者の方々のドラッグ・ラグ問題の解消というのは大 変重要なことだと思いますので、ぜひそれを進めていただきたいんです。ただ、外国の企 業が日本の市場に魅力を感じるかどうかということを私は非常に懸念しておりまして、あ と日本の企業の意欲が薄れるのも大変困る話なんですが、もしこの薬価特例を導入するこ とになりますと、外国の企業としては日本の市場に新たな魅力を感じるようになるのでし ょうか。 ○遠藤部会長  長野専門委員、どうぞ。 ○長野専門委員  お願いがございます。ぜひ、タイトなお時間の中、最終的にこの中医協で結論の御議論 をいただく前に、今のような御質問に対する業界代表の明確な回答の場というものをおつ くりいただきたいと思います。専門委員の立場から言えば、海外の企業・団体の皆様にも 今日までいろいろ御意見を伺ってきました。その中では、今回の日薬連提案の薬価維持特 例の導入によってそういうものにきっちり対応していきたいというお話を受けております ので、ぜひお話し合いの機会を設けていただきたいと思います。  以上でございます。 ○遠藤部会長  その問題につきましては、スケジュール的にも非常にタイトでありますので、どのよう に対応するか、ひとまず私が預からせていただきたいと思います。  ほかに。安達委員、どうぞ。 ○安達委員  2つ、3つ意見があるのですけれども、まず最初の意見について、2つの質問をさせて いただきたい。日薬連がお出しいただいた資料の9ページの上の四角の囲みの下に、「国 内未承認薬12成分を開発する企業への厚労省からの対策基金100億円の交付が決定」 とございます。これと10ページの現場から要望のある悪性腫瘍24%から感染症11% まで、この対象にした12成分とその振り分けた内訳は対応しているのかどうかというこ とをまずお聞きしたい。もう1点は、その12成分についての対策基金100億円は開発 経費としては足りるのか、足りないのか。この2点を教えていただきたいと思います。 ○遠藤部会長  禰宜専門委員、どうぞ。 ○禰宜専門委員  1点目の件に答えさせていただきます。10ページの医療現場より求められている国内 未承認につきましては、適応でございます。8月に交付されました未承認適応というのは、 先ほどお話ししたように、大体250成分が出ております。そういう中で、現在メーカー と行政との間でその精査中でございますが、その要望がございましたものを分析した結果 がこのような、例えば悪性腫瘍が24%といった数字でございますので、12成分とこれ とは違います。  もう一つ、この100億円はまだ正式に交付されたわけではございません。一応は試算 されて、12品目につきましてそれぞれで、均一ではございません。そしてまた、足りな いところにつきましては、業界がつくっております未承認薬等開発支援センターの中で一 部支援するといったことも考えております。  以上でございます。 ○遠藤部会長  安達委員、どうぞ。 ○安達委員  私が申し上げたかった意見は、ドラッグ・ラグについては分かります。もちろん必要で あることも十分分かりますが、政策的には、それを薬価の削減の仕方の改定とかで補おう という考え方が本当に正しいのかどうかという根本的な話でございます。つまり、それは 今その疾患の治療が必要な人たちが負担することなんです。ですけれども、ドラッグ・ラ グというのは、すべての今健康である人たちもその疾患にかかる可能性を皆一定の確率で 持っているわけで、それを今治療が必要な人たちだけの負担で補うのが正しいのかどうか ということでありまして、そういう意味ではむしろ国策的にこの対策基金等々でやるほう が正しいのではないのかなと思っているということが一つでございます。  それからもう一つは、先ほど後発品が出ない場合には先発品の値段を下げよう、だから 余り大きな全体での医療費の中の薬剤費が高騰することにはならない方策をとろうという お話が事務局からあったと思うんです。ただ、特許期間が切れたからといって先発品の値 段を下げるといっても、今の後発品ほどには下げられない経済的要因が先発品メーカーに はおありではないか。前から議論していますが、基本的にはMRの方々の数とか、そうい った経費の問題があって、今の後発品ほどまでは下げられないのではないかと基本的には 私は理解しておりますけれども、違っていたら指摘していただきたいんですが、そうする と、そこで補うということには必ずしもならないと思っている。この2つをまず申し上げ ます。 ○遠藤部会長  最初のは御意見ということでありますので……。2つとも意見として承っておけばよろ しいですか。 ○安達委員  はい。 ○遠藤部会長  わかりました。ありがとうございました。  牛丸委員、どうぞ。 ○牛丸委員  2つお伺いいたします。まず第1点です。アンメット・メディカル・ニーズへの対応、 それから未承認薬・未承認適応及びドラッグ・ラグの解消、これは非常に重要なことだと 思います。それから、製薬会社が研究開発を促進していくこと、これも重要なことだと思 っております。実は確認させていただきたいことがあります。というのは、この改革案が 最初に出てきたときには、私としては、もちろん今日お出しになっているような点も入っ ていたかと思いますが、一般的な研究開発ということが前面に出ていたような気がしたん です。それが今は、研究開発も特に今申し上げたアンメット・メディカル・ニーズ、それ から未承認薬といった問題に限定されてきた。この辺はどうなのかと、一般的な研究開発 のためにそうなのか、それとも限定されたこういうことのために今回提案されているのか、 これが第1点です。  それから2点目は、公益委員ですから、それぞれの立場のことを考える必要があります。 ただ、今ここだけは患者という立場に限定させて伺わせていただきたいんです。前にも申 し上げたと思いますけれども、この改革によって特許期間中の価格が引き下がらないこと になれば、当然その薬を利用している患者の負担がふえることになります。それに関して は、既に前にもそのとおりだとおっしゃったと思います。ただ、それ以上にというか、今 回、国民・患者にメリットがあるということは、一方でそういうことでありながらも、最 終的には患者一般というか国民に対してそれ以上のメリットがあるということをもう一度 確認させていただきたいと思います。お願いいたします。 ○遠藤部会長  長野専門委員、どうぞ。 ○長野専門委員  お答え申し上げます。今の牛丸先生からの御指摘は、この提案のルールを入れる意義と いう先ほどの安達先生の御指摘と共通するところがあると私は今理解いたしております。 そういう意味でお答え申し上げますと、少なくとも中長期的に薬価制度というものを運営 していただく中で、今回の特許期間中の改定方式の見直し提案を最終的に御議論いただき、 導入していただいた場合には、中長期的な日本の研究開発あるいは成果としてのさまざま な医薬品が少なくとも米欧と同時に出る体制になること、これがこの終局の目的だと思っ ております。  よろしいでしょうか。 ○遠藤部会長  牛丸委員、よろしいですか。 ○牛丸委員  それが今の2つの質問に対する答えということですか。 ○長野専門委員  少なくとも、研究開発あるいはアンメット・メディカル・ニーズもそれに含まれたそれ ぞれの切り口でございますので、中長期的に日本で米欧と同じ時期にすぐれた薬を国民の 皆様、医療現場の先生方が活用できること、それが今回の制度導入のゴールだと思ってお ります。 ○遠藤部会長  ほかに。薬剤管理官、どうぞ。 ○事務局(磯部薬剤管理官)  先ほどの安達委員の、そもそもこういう問題を薬価政策でやるのか、それともいわゆる 一般財源でやるのかということでございますけれども、これまでの事実関係をちょっと御 説明したいと思います。少なくとも、いわゆる採算性の乏しい新薬をどのようにして早く 開発して上市してもらうかという問題については、薬価部会でもこれまでずっと議論がさ れておりまして、結果的に、例えば市場性加算という形でオーファン・ドラッグについて は加算するとか、小児科の薬は小児加算という形で加算するとか、言ってみれば、なかな か採算性は乏しいけれども医療上必要性が高いという薬については、薬価の中でそういっ た加算制度をとりまして、なるべくそういったインセンティブをつけてその開発・上市を 支援してきたという側面があるのは事実でございます。今回の対策基金については、未承 認薬・適応外の問題は非常に重大な問題だということで補正予算で緊急的に措置されたも ので、これまでのことからいうと非常にイレギュラーな形での支援の政策ではないかと思 っているところでございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  邉見委員、どうぞ。 ○邉見委員  これはなかなか、意見の集約というか、一致は見ない問題かもわかりません。それで、 結局改定率がどうなるかによって、優先順位だと思うんです。例えば今、勤務医の問題と か、手術、ハイリスク・ローリターンのところとか、そういうものとこれとの優先順位だ と思うんです。だから、最終的には改定率が幾らになるかによるのではないかと私は思い ます。 ○遠藤部会長  優先順位の問題は、すべてそうなんですね。これだけではなくて、改定率が分からない 段階でそうやっているということで、でもそれが重要な要因になるということですね。  邉見委員、どうぞ。 ○邉見委員  すみません。それから、9ページ、イレギュラーと言いますけれども、国内未承認薬1 2成分に100億円ついたというのは画期的なことだと思うんです。今まで農業とか、そ ういうものにはついてきたわけですけれども、製薬業界が農業みたいに衰退しているとは 私は全く思っていませんけれども、これから発展するところにもつけようと、これから大 事なところにもつけようと、創薬産業として、国家の一つの基盤としてです。だから、経 産省がもっともっとつけてくれれば、我々はこの財源の取り合いみたいなことにはならな くていいのではないかなと思います。これは感想です。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  白川委員、どうぞ。 ○白川委員  先ほど公益委員からも御質問があって、私も同じような感じがしているんです。要は、 先発品の製薬会社がこれで得た利益を新薬開発に投資する、したがって国際競争力を高め たいんだとする一方、未承認薬とかアンメット・メディカル・ニーズへの対応に使うとい う御説明で、概念としては非常に分かるのですけれども、ではそれは担保できるのかとい うところが私どももよく理解できません。専門委員の方も、製薬会社のトップはそういう 意識ですとおっしゃるのですけれども、仕組みとして担保されているわけではないですか ら、言い方は大変失礼ですけれども、株主の配当に回すのかと疑われてもしようがないと 思うんです。ですから、一つには、そこのところで何か、本当にニーズの高い薬のドラッ グ・ラグの解消とか、そういったところに使う仕組みをあわせて御提案いただくことが必 要なのではないかという気がしております。  もう一つは、ジェネリックが出た後に薬価をかなり下げるという御提案になっておりま す。これは、ここにも一部書かれておりますけれども、逆にジェネリックの製薬業界にと っては相当な影響があるわけでございます。何といっても先発品のほうが名前も売れてお りますし、医療関係者の方々も当然そちらを勧めるわけですから、ジェネリックとの薬価 差が余りに小さければ、ジェネリックは使わずに先発品を使うということになるわけです から、そちらへの影響もかなり大きいと私は思っているんです。そのジェネリックを中心 とした製薬会社に対する影響、これは中医協でやる議論ではないかもしれませんが、それ については専門委員の方々はどのようにお考えでございますか。 ○遠藤部会長  今、白川委員がおっしゃられた2点については、これまでも出てきた議論でありまして、 非常に重要な観点であります。この制度を用いたからといって、それが当初の目的をどれ ほど達成するのかということに対しては、もう少しきちんとした担保が必要なのではない かということでありますが、それについてのお考えが一つ。もう一つは、ジェネリックの 問題であります。これもまた随分議論がありまして、結局、新薬が安くなるわけですから、 ジェネリックに対しては非常に影響を与えるのではないか。この2つの議論は従来からも やられているのですけれども、お考えをお聞かせください。 ○長野専門委員  企業行動がお約束どおりきちんと実効が上がっているかどうかの保証をどういう形で見 るか、そういうルールをどうするかということにつきましては、少なくとも企業活動、経 済活動を中医協のこの場でどういう形で議論できるか、あるいは検証できるかということ をぜひ私どもも企業の立場で検討させていただきますし、この場でもいろいろ材料をそろ えさせていただいた上で御議論いただきたい、方向性を出していただきたいと思っており ます。  それから、2点目の後発品と先発品の薬価関連の後発品使用促進への影響でございます けれども、少なくとも一定程度対応という先ほど御紹介の論点につきまして、6月の業界 代表の意見陳述のときに、この制度導入当初に薬剤費が膨らむ可能性がある。その場合、 その分をどうやって業界で補うのかということで、一定程度対応の発言があったわけでご ざいます。その方法については、さまざまなトータルな御検討の中で結論を出していただ ければというのがあのときの業界代表の返答だったと承知しておりますので、その線でぜ ひ御議論、御検討いただきたいと思います。  最後でございますが、先発品と後発品の薬価が近づいた場合に、後発品がなかなか使わ れないというのは、そのとおりだと思います。ですから、そこの後発品の使用促進の状況、 数量の状況と、先発品と後発品の薬価の差の在り方、ここはぜひ全体を絡めながら最終決 定をしていただきたいと思っております。 ○遠藤部会長  白川委員、今の御発言はよろしいですか。 ○白川委員  申し上げたかったのは、最初のほうの担保というのは、実績を見てというお話も若干ご ざいましたけれども、そうではなくて、これで得た利益といいますか、この制度によって 得た利益を何も中医協でこのように使いましたということを言ってくれという話ではござ いませんで、これは国の政策とも絡んだ話でございますので、国との制度とか仕組みの中 で何か担保できるようなことは御提案できないかという趣旨でございます。私どもは別に 製薬会社さんの個々の利益について云々する気は全然ございませんので。 ○遠藤部会長  薬剤管理官、どうぞ。 ○事務局(磯部薬剤管理官)  今の白川委員の御質問に対して事務局のほうからお答えできる部分としては、現実に本 当に医療現場のニーズの高い、また学会や患者団体のニーズの高い、例えばそれが未承認 薬・適応外とかアンメット・メディカル・ニーズといったものにちゃんと使われているか どうかを確認する方法が一つあるとすれば、まずどういう品目が必要なのかということを 特定する必要がございます。実は今の専門委員の資料で申し上げると、9ページの下から 2つ目の○でございますが、「国内未承認適応については、本年8月に厚労省の意見募集 に応募があった」云々と書いてございます。これについては、今医薬食品局のほうで関係 の学会・患者団体からどのような薬の適応外、それから未承認薬について開発の要望があ るかということで、ここで合わせて大体350件ぐらいの応募が出ておりまして、これに ついては有識者会議の検討を経て、厚労省から関係の企業に対して、この医薬品を開発し ていただきたいという形で、医薬品を特定してそういう要請がなされる予定でございます。 その特定がなされたものについては、それはどの程度開発が進んでいるかということは検 証可能な形になろうかと思っておりますので、これまでの専門委員の御説明では、そうい ったものがどのような進捗状況にあるかということについては逐次報告もしていただける というお話も聞いておりますので、お金がどのくらいかは別としましても、そういった形 で少なくとも医療現場から必要性の高いものにどのくらい開発が実際に進捗したのかとい うことは確認するような方策はとれようかと思っております。  それからもう一つ、後発品の使用促進につきましては、先ほどの論点の薬−1の資料の 2ページの4の(1)でございますけれども、まさしく今の白川委員のお話の、薬価維持特例 の導入が後発品の使用促進にマイナスの影響を与えないかどうか、これは非常に大事な点 でございますので、事務局のほうも論点として挙げさせていただいております。ここで案 1と案2と書いてございますが、少なくとも収載時の薬価につきましては、現行の後発品 の薬価のレベルより下がることはないという前提でございますので、そういう意味では非 常に安い価格になってとても太刀打ちできないということは多分この制度上はあり得ない だろうと思っております。  それから、大事なことは、後発品が出た後に急速に先発品の薬価が下がる形になります ので、どちらかというと、先発メーカーではそういった後発品が出た後の先発品の販売意 欲が大分損なわれるだろうということもあります。逆に後発品は、そういった先発メーカ ーのほうの薬価が大分下がりますので、どうしてもそれよりは特許期間中の新薬に開発や 販売の活動の重点を置いていくであろうといったことを一つの要素として見ております。 そういう意味では、現時点ではマイナスの要素は感じにくいのではないかというのが私ど もの考えでございます。ただ、それにしても、制度を変えたときには検証していくことは 当然でございますので、どうなるかということについてはきちんと検証していく必要はあ るだろうと思っているところでございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  松谷専門委員、どうぞ。 ○松谷専門委員  すみません。国民の1人当たりの薬剤費という意味でいいますと、ジェネリックがたく さん使われているフランスやドイツと比べて日本の1人当たりの薬剤費はどうなっている かというと、OECDの中の資料がありまして、日本では国民1人当たり年間506ドル の使用金額なんですけれども、アメリカは878ドル、フランスが588ドル、ドイツが 542ドルということです。私はこのOECDの調査表を見て、これだけ多くのジェネリ ックを使っているドイツやフランスよりも日本の1人当たりの薬剤費が少ないということ は、新薬の下がりが非常に大きいからこういう結果になるのではないかと思っております ので、日本の新薬の在り方というのは、ぜひ重要に考えていただきたいと思っております。 ○遠藤部会長  それでは、安達委員、どうぞ。 ○安達委員  言いたいことがいっぱい出てくるので困るんですが、ちょっと今のお話にも意見はあり ますが、その前に、例えば米国などは、特許期間が切れて後発品が出てくると、むしろ価 格を上げていくという先発品の薬剤もけっこうあるのではないんですか。つまり、切れた のだけれども、この銘柄を信用してくれる人は多少高くても買ってくださいというスタン スです。だから、当然売上は減るのですが、価格は上がっているから、ある程度回収はで きる。そうしておいて、後発品のほうをドスンと下げている。そういう格好だから後発品 の使用促進が進むのではないのか。先ほどから皆さん方の御懸念の先発品のほうを中途半 端に下げるという格好になると、ブランドに対する信用力、もちろんこれは患者さんもあ るいは医師にもあるかもしれませんが、それで後発品ほどはしっかり下がらないとすると、 総体の医療費の枠の中でそれを節約しようとしている考え方、それで我々も総体の中で技 術料を随分削られたり、いろいろするわけですが、その全体の流れの中では一体その考え 方が正しいのかどうか。  それから、今専門委員がおっしゃいました件は、これはそうなんですけれども、OEC D先進国に比べて日本の総枠としての医療費はGDP比で非常に安いわけです。それは薬 剤費だけではなくて、我々医療の技術料も全部削られている中の総枠の政策的な流れなの で、そこで薬剤費のことだけおっしゃられると、私どもはちょっと違和感を感じてしまい ますけれどもということでございます。 ○遠藤部会長  邉見委員、どうぞ。 ○邉見委員  私は先ほどの白川委員の意見に近いんですけれども、入ってから後で検証とか、対応を 見守るというのでなく、これは我々が決めたら、もうそれで決まってしまうわけです。そ れであれば、何か見えるものを担保としていないと、株主優遇というのが製薬会社の一番 のものですね、株主のための株式会社ですから。そうすれば、ここでいろいろなことを言 っていても、株主総会でそういうことはしないとかということになってしまえば、それは もうそれで、法治国家ですから、法律とか、そっちのほうが優先するわけです。我々であ れば、医師の応招義務とかいろいろなものを抱えている。救急車は遠いところから来れば すぐ帰るから、損失は分かっていても救急車は受けるわけです。そのように損することが 分かっていることをやるわけですから、何か歯どめといいますか、そういうものがなかっ たらいけないのではないかということで、白川委員と同じような意見が一つ。  もう一つは、この問題では、先発品の薬価維持特例の論議の中で、後発品メーカーの意 見を聞いたことがないように思います。後発品の使用促進のときには沢井さん以下後発品 メーカーが来られましたけれども、先発品の薬価維持特例の中で後発品メーカーとしての 御意見も聞きたいと思います。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  まだ御意見はあるかと思いますけれども、議論が非常に積極的に行われたと思います。 事務局から幾つか論点が挙がっておりましたけれども、この細かなことよりも、もう少し 全体のフレームについてもう一度しっかり議論しようとする御意見だったと承っておりま す。そういう意味では非常に生産的だったと思います。そこで、こういうことでまだ意見 はまとまっておりませんので、今後、継続審議ということになります。  その際に、今お話に出たことで、次の2つの資料といいますか、データをぜひ出してい ただきたいと思います。一つは、なぜ今なのかということで、この費用の問題であります。 費用につきましては、一回薬剤費のシミュレーションが出されておりますけれども、その 後またいろいろと議論の過程で新しい仕組みを入れたらどうかといったことが再提案され ておりますので、その辺を含めまして、この薬剤費の推移のシミュレーションはぜひいた だかないと、どのぐらいのボリュームの議論なのかということがよく分からないというこ とが一つありますので、それをぜひつくっていただきたいと思います。もう一つは、複数 の委員から出ておりますように、この制度を導入したことによって当初の目的をどれほど 達成できるのか、その制度上の担保となるような案を出していただかないとやや不確実性 が高過ぎるということなので、考えられる制度上の案を提出していただきたいと思います。  委員の皆さん、大体そのような資料をいただくということでよろしゅうございますでし ょうか。  それでは、そのような資料をまた新たに出していただく中で議論を進めていきたいと思 います。  それから、トップの意見あるいはジェネリックメーカーの意見を知りたいというお話も ございました。ジェネリックメーカーについては、どういうお考えをしているのかという ことがもしはっきりしているのであるならば、それは文書でも結構ですので、お聞きした いと私も思いますので、その辺についても御検討をよろしくお願いします。  ありがとうございました。それでは、本日いただきました御意見を踏まえまして、今後、 継続審議していきたいと思います。本日の薬価専門部会はこれぐらいにしたいと思います。  次回の日程等につきまして、事務局、何かございますか。 ○事務局(磯部薬剤管理官)  追ってまた連絡させていただきたいと思います。 ○遠藤部会長  それと、事務局に確認しませんでしたが、今私が申し上げました2つの資料というのは、 ある程度つくることは可能だと考えていいですか。 ○事務局(磯部薬剤管理官)  すみません。1番目について、将来的にどのぐらいかかるかという算出は事務局ではな かなか難しいと思っておりますが、直近、例えば今回の改定で導入するとした場合、どの ぐらい経費がかかるかということについては、出すことは可能だと思っております。 ○遠藤部会長  なるほど。業界団体としては、かなり先までのシミュレーションを出されておりますね。 あれはある程度の条件を置いてやっているということなわけですけれども、あれからまた いろいろ議論して少し変わってきているということはありますか。では、その辺も含めて ちょっと検討していただいて、事務局としては、直近のことについては責任を持った議論 ができるということだと思いますが、確かにシミュレーションですと、先の話になります から、どういう前提を置くかによりますので、しかしその辺も一応日薬連としてもお考え いただきたいと思いますので、御検討ください。  それでは、これをもちまして薬価専門部会は終了したいと思います。どうもありがとう ございました。 【照会先】 厚生労働省保険局医療課企画法令第二係 代表 03−5253−1111(内線3276)