09/11/20 第138回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録   第138回 労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成21年11月20日(金)9:00〜 2 場所  厚生労働省共用第7会議室(5階) 3 出席者   委員   公益委員 :鎌田委員、柴田委員、清家委員        労働者代表:小山委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表:秋山委員、市川委員、高橋委員   事務局  森山職業安定局長、山田職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木派遣・請負労働企画官、浅野主任中央需給調整事業指導官、        大塚需給調整事業課長補佐、小園需給調整事業課長補佐、小野寺需給調整事業 課長補佐、        高西需給調整事業課長補佐、鶴谷需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)労働者派遣事業の適正な運用の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関 する法律施行規則の一部を改正する省令案について       (2)今後の労働者派遣制度の在り方について ○清家部会長 ただいまから、第138回労働力需給制度部会を開催します。本日は欠席のご予定 の委員はおられません。委員の皆様方全員ご出席と承っています。本日は最初に「労働者派遣事 業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則の一部を改正す る省令案」について、ご審議いただきます。その後、「今後の労働者派遣制度の在り方について」 をご審議いただく予定になっています。  まず議事に先立ちまして、本日付で委員の交代がございましたのでご報告いたします。本日よ り労働者代表委員として、JAM副書記長の小山委員が着任されています。小山委員より新任のご 挨拶を一言お願いします。 ○小山委員 JAMという機械金属産業の中小企業の労働組合を組織している、産別組織でござい ます。小山でございます。これまでも代理で出席させて意見を申し述べさせていただいていまし たけれども、引き続きよろしくお願いいたします。 ○清家部会長 よろしくお願いいたします。それでは議事に入らせていただきます。議題1の「労 働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則の一 部を改正する省令案」についてご審議いただきたいと思います。本日、議題としている省令案は、 11月26日に開催予定の職業安定分科会で、厚生労働大臣から労働政策審議会に対し諮問がなさ れる予定です。本来であれば職業安定分科会において先に議論が行われ、当部会において審議す ることとされるべきものですが、日程との兼ね合いから今回は例外として職業安定分科会に先立 ち、予め労働力需給制度部会において審議いただきたいということです。審議に先立ちまして、 資料について事務局より説明をお願いします。 ○大塚補佐 関係する資料としては1-1から1-3までです。来たる26日に分科会へ諮問予定の資 料は1-3の省令案要綱ですが、本部会においては資料1-1、1-2を照らし合わせながらご説明させ ていただきます。  この省令案の改正ですが、内容的には2つあります。1つは派遣元事業主が毎事業年度ごとに 報告する事業報告に関する事項、もう1つが新規の許可あるいは更新の際の事業計画書の内容等 です。  1つ目の事業報告に関してですが、資料1-2の1枚目で2の報告内容に書いているような内容、 すなわち(1)年度ごとの労働者派遣の状況、(2)6月1日現在で派遣されている派遣労働者の状況、 (3)収支決算の状況を、事業年度が終わってから3月以内に出すこととなっていますが、特に(1) と(2)の労働者派遣の状況等については早期に把握することが監督指導にも有益であるため、今般、 見直しを行うものです。その1つが、(2)の6月1日現在で派遣されている派遣労働者の数等の状 況ですが、これを別様式にした上で6月末までにご報告いただくことが1点、さらには(1)の年度 ごとの労働者派遣の状況についても、現行では事業年度終了後3月以内のところ、1月以内にご 報告いただくという内容になっています。  もう1つの改正内容の事業計画書等ですが、現行で申し上げると資料1-2の2枚目です。一般 労働者派遣事業の新規許可あるいは許可更新時、さらには特定労働者派遣事業の届出のいずれも 現行の確認内容としては、(1)にありますような雇用保険、健康保険及び厚生年金保険の加入の有 無、それと労働保険番号を確認することになっていますが、※に書いてありますように、事業所 の社会保険等への「加入の有無」を確認するのみであって、個々の派遣労働者を加入させている かまでは確認できていないのが現状です。  今回の改正内容ですが、資料1-1の2枚目に書いています。この部会でも派遣労働者の社会保 険の加入状況がたびたび問題として取り上げられていましたが、そういった個々の派遣労働者の 社会保険等の未加入状況を把握するために、事業計画書の様式に(i)の派遣労働者数と、(ii)にあ りますように健康保険、厚生年金保険、雇用保険の未加入者数、(iii)にある未加入者の氏名と未 加入の理由を記載していただいた上で、更新等をしていただきます。またその更新等を、現行で は有効期限が切れる30日前に出していただくことになっていますが、場合によっては実地調査等 を行う必要もあるため、今般、許可の有効期間が満了する前の3月前に提出いただく。そういっ た内容の改正をすることとしています。いずれについても平成22年3月1日から施行となってい ます。以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明について、ご質問、ご意 見がございましたらお願いします。 ○古市委員 社会保険の未加入者の氏名及び未加入の理由を記載させるという説明でしたけれど も、法令に違反していることが明らかになっている人の氏名を書いて提出しなさいというのは、 効果が上がるのでしょうかという疑問が1つです。もう1つ、社会保険の適用をこれまで以上に 進めることについては賛成ですが、平成14年に人材派遣健康保険組合というのが結成されていま す。これをもう少し活用するほうが、より適用が進むのではないかと私は思っています。調べた ところ、この人材派遣の健保組合が333事業所しか加入していないにもかかわらず、人材派遣会 社はもっとたくさんありますので、ここをもう少し活用したらどうかというのが私の意見です。  この派遣健保は、派遣労働者の適性に鑑みて、働いている期間は社会保険の適用ですが、一旦 切れて待機していて、2月後にまた違う所に派遣される。そういう派遣労働者の属性に合致して いて、社会保険の適用が切れて国民健康保険と国民年金に変わり、また派遣されたら社会保険に 入り直すということをしないですむ健康保険だと聞いています。派遣労働者の実態に合致した健 康保険だと思いますので、そこは活用してほしい。  協会健保への加入というのは、ある所を調べてみますと、事業所を設立してから3年以上経過 していないと、この人材派遣健康保険組合には加入できないと書いてあります。こういったこと 等、加入するための縛りが非常にたくさんあるようです。こういったことについてもう少し議論 していただいて、ここをしっかり活用すれば社会保険の適用はもう少しうまく進むのではないか と思いますが、いかがでしょうか。 ○清家部会長 それでは事務局から、お答えをお願いします。 ○鈴木課長 2点、ご質問がございました。  まず1点目、この改定は社会保険の個人管理ですが、これだけではございませんで、例えばこ れをもらうことによって、当然、これを踏まえて定期の監督指導等にまいります。ですから、も しこれで虚偽があればその時に調べる。さらに書きぶりがおかしいなというのが何となくわかる ケースもありますので、そういうのは特別に監督指導を行い、加入していないということは法違 反ですから、社会保険事務所や雇用保険部局とも連携しながら、こういったものを参考にしつつ、 加入を促進していきたいということです。これですべてうまくいくとは思っていませんけれども、 これまで事業所で加入しているかどうかのみで審査をしていたところを、個々のところまでやれ ば改善はある程度見込めるのではないか。さらにそれに合わせて、いろいろなことをやっていく ことにより、加入の促進を図っていきたいということです。  派遣の健保ですが、確かに派遣健保自体は、もともと5年から10年ぐらい前には、派遣労働者 が社会保険や雇用保険になかなか入っていないということから、業界主導でこういった健保組合 を作り、特に大手を中心に加入していると聞いています。ですから加入の企業数もそこそことい うことだと思いますが、これについて健保組合ですから国から強制して入れとか、ここの要件を こう直せというのは、なかなかできかねるところがあります。これを運営されている所と協議し て、できるだけ小さい所でも入りやすいように、またこういう所を知らないで入っていないこと があれば、そこはさらに周知をすることも含めて対応を考えていきたいと思っています。 ○清家部会長 古市委員、よろしいですか。ほかに何かご質問はありますか。 ○高橋委員 改正の趣旨については大変よく理解できるところですが、他方で、現実的にこうし た改正をした場合に、派遣業者の方が対応可能なのかどうかの点について、事務局としてどのよ うに見ているかというのが1点です。もう1点は、この改正の効果というか、6月1日現在の例 えば派遣労働者数でもいいかと思いますけれども、現行の最新時点のリリースがいつで、この改 正をしたことによって、そのリリースがどの程度早まるのか、効果についてお尋ねしたいと思い ます。 ○清家部会長 では事務局から。お願いします。 ○鈴木課長 2点、ご質問をいただきました。  1点目ですが、報告については、これまでも出していただいているものの時期を繰り上げると いうことです。これまで会計年度を締めてから3月としていたのは、特に貸借対照表等の財務諸 表については事業年度を締めてから株主総会等でご決議いただき、そこで1月、2月経つわけで すが、そうしたものを出していただく関係上、事業年度終了後3月としていたものですから、ほ かの数字について、実数については当然派遣会社ですからどのぐらい派遣されていて、どうなっ ているかは把握しながら営業されていますので、そうしたものについて、年度のものについては 年度を過ぎれば取りまとまるだろうし、6月1日現在のものについても6月1日にどうしている という状況ですから、当然、パソコン等を使って把握されているわけですので、6月30日までに 出していただくことについては、特段、大きな負担にはならないと思います。社会保険について は、当然、入っているか入っていないか把握されているわけですし、入っていない場合にはその 理由をしっかりつかんでいただいたうえで、入っていないということであろうということですか ら、そこも大きな負担にはならないと思っています。  効果ですが、平成21年6月の数字、製造業派遣などの業務別はこちらで出るわけですが、例え ば派遣切り後の製造業務派遣の状況というと、その数を取ることになるわけです。現行ですと平 成21年6月の数字については、その会計年度が3月締めの会社であれば、平成22年3月に会計 年度を締めて、それから3月以内ということは平成22年6月に出していただく。ですからちょう ど1年遅れになり、そこから私どもが集計してやりますので、通常でしたら平成22年11月か12 月に発表となりますから、ちょうど1年半遅れの数字になってきます。  今回、これに改正することにより、例えば来年度から適用ということになると、平成22年6月 からの数字については、平成22年6月30日までに出していただき、そこで集計すれば1、2月で 集計できるということで、平成22年6月末時点が平成22年7月か8月に集計できるので、だい ぶ改善されるのではないかと考えています。当部会でもいろいろ数字を出していますが、ご存じ のように派遣の実数については未だ平成19年度の数字で説明させていただいているところで、よ り新しい数字でご議論いただくことが可能になると考えています。 ○清家部会長 ほかに何かご意見はございますか。よろしいですか。それではこの件につきまし ては、当部会として本省令案について、これを妥当と認めることとし、その旨の報告を職業安定 分科会長宛、行うことといたしたいと思いますが、お認めいただけますか。                  (異議なし) ○清家部会長 ありがとうございます。ではそのようにさせていただきます。次の議題に移りま す。  次の議題は、「今後の労働者派遣制度の在り方について」です。前回の部会では、10月27日の 第136回部会で事務局に整理していただいた論点のうち、論点5までご議論いただいたところで す。本日は残りの論点6「情報公開」から論点10「法律の名称、施行期日その他の事項」までの 5つの論点について、ご議論いただきたいと思います。   本日は論点6以降の議論の参考となる資料と、前回の部会で長谷川委員から要求のあった均 等均衡待遇の欧州の事例に関する資料を、事務局に用意していただきましたので、まずそれらの 資料について事務局から簡単に内容をご説明いただきたいと思います。 ○大塚補佐 それでは私のほうから、資料2に基づいてご説明申し上げます。1頁をお開きくだ さい。情報公開についてですが、この資料は現行法、平成20年政府案、三党案を、それぞれ4つ の項目について比較しています。  1点目に、これは派遣元事業主に対する義務ですが、情報公開義務の事項について、現行法で は規定はありません。平成20年政府案については、第23条4項に設けていましたけれども、派 遣労働者の数、労働者派遣の役務の提供を受けた者の数、マージン率、教育訓練に関する事項に ついて、情報公開することとしていました。これに対して三党案においては、政府案と比べて異 なる点として、3つ目の○の派遣契約数、その期間別内訳とか、その下の派遣労働者の賃金、そ の下の派遣労働者一人当たりの派遣料金などを政府案に加える形となっています。  2つ目の派遣元事業主から派遣労働者に対する通知事項ですが、現行では第32条において雇入 れ時に派遣労働者として雇い入れる旨を、さらに34条において派遣開始時に労働者派遣をする旨 等について通知することとなっています。平成20年政府案では、雇入れ時に説明も義務付けると しており、賃金の額の見込み、その他労働者の待遇に関する事項について説明が義務付けられて いました。これに対して三党案においては、派遣開始時の通知事項、現行の第34条に一定の事項 を加える形で、派遣労働者の賃金等も通知すべきとなっています。  2頁をお開きください。派遣元事業主から派遣先に対する通知事項についてです。現行では第 35条において派遣労働者の氏名、健康保険、厚生年金等の資格取得届が提出されていることの有 無などが通知事項とされています。平成20年政府案においては、それに追加する形で、当該派遣 労働者が無期雇用であるか否かを通知すべきとされていました。それに対して三党案においては、 追加事項として派遣労働者の賃金、健康保険料、労災保険料の事業主負担分等、ここに書いてあ る事項について通知すべきこととされています。  次に、派遣先の義務です。派遣先から派遣先の労働組合に対する通知事項で、労働組合は過半 数組合、過半数組合がない場合には過半数代表者となっています。現行と平成20年政府案におい ては特に規定はありませんが、三党案においては、派遣労働者の業務内容、派遣元事業主の名称、 派遣料金等々について、派遣先の労働組合に派遣先が通知するとなっています。  3頁は、いわゆるマージン率の解説を加えています。マージンというのは派遣料金と派遣労働 者の賃金の差としていますが、一般労働者派遣事業については4,498円で、派遣料金の32,1%、 特定労働者派遣事業については7,731円で、派遣料金の37,3%となっています。右下の円グラフ は人材派遣協会がまとめているものですが、派遣料金と賃金の差額分について、具体的にどうい うことに使われているか列記しています。社会保険料、教育研修などの費用が相当部分を占めて いるところです。  4頁をお開きください。4頁は昨年の研究会報告において、いわゆるマージンなどの考え方につ いて整理したものです。上から3つ目のパラグラフで「この差額を規制することは」の部分です が、「他の事業についてはこうした規制はなく、労働者派遣事業についてのみ規制することについ ては、合理的理由はない」。さらにその下の段落の後ろ2行ですが、「これを規制した場合、教育 訓練費を減らすインセンティブになりかねない等、結果として逆に派遣労働者にとっての不利益 となるおそれがある」としています。結論としては次の行にありますように、『いわゆる「マージ ン」の上限規制を行うことは適当ではない』とされていました。  ただ、その2行後ろから書いていますように、「情報公開を通じて、良質な派遣元事業主が派遣 労働者から、さらには派遣先から選択されるようにすることにより、結果的にこれが実現される ことが適当である」とされていて、これを受けて昨年の平成20年法案においては、一定の事項に ついての情報公開が規定されたところです。  5頁には待遇の説明についての記載があります。派遣料金、派遣労働者の賃金等、事業運営に 関する情報は、個別の派遣労働者の待遇にも密接に関連するものであるとして、平成20年法案で は、これを受けて説明を義務付けることとしていたところです。  次に派遣先責任の強化関係に移ります。6頁をお開きください。6頁は労働基準法、労働安全衛 生法、男女雇用機会均等法について、現行の労働者派遣法第44条、45条、47条に、それぞれこ れらの法律の適用関係の特例が定められていますので、それを整理したものです。  表の左から2つ目、派遣元事業主と書いてあるのは、本来、雇用主である派遣元事業主が責任 を負うべきものですので、原則としては派遣元事業主がすべての責任を負うべきですけれども、 労働者派遣法においては就業の実態、指揮命令の形態等に照らして、右に派遣先、双方と書いて ありますように、責任を分担しているところです。労働基準法について見ると、賃金、年休等に ついては派遣元事業主固有の責任でそのままですが、労働時間、休憩、休日、時間外/休日労働 等については派遣先の責任に、また強制労働の禁止等については派遣元、派遣先双方の責任とさ れているところです。  いちばん右の備考のところに、これは現行第44条3項ですが、派遣契約に定める就業条件に従 って労働させたならば、労働基準法に定める労働時間等の規定に抵触することになる場合には、 労働者派遣をしてはならないという規定もあります。  次の労働安全衛生法についても、雇入れ時の安全衛生教育、一般健康診断は派遣元事業主固有 の責任ですが、安全管理者、危険防止等のための事業主の講ずべき措置等については派遣先の責 任に、統括安全衛生管理者、作業内容変更時の安全衛生教育などについては、派遣元、派遣先双 方の責任とされているところです。備考欄に書いているのは、先ほどの労基法と同様に労働者派 遣契約に定める就業条件に従って就業させたならば、これらの労働安全衛生法の各種規定に反す る場合には、労働者派遣をしてはならないといった規定を記載しています。  いちばん下の男女雇用機会均等法ですが、現行第47条の2においては、妊娠/出産等を理由と する不利益取扱いの禁止、セクシャルハラスメントに関する雇用管理上の措置等について、派遣 元、派遣先双方の責任と規定されているところです。それ以外の性別に基づく差別的取扱いの禁 止等については、現行では派遣元事業主のみの責任とされているところです。  7頁をお開きください。社会保険についてですが、社会保険は派遣元事業主のみが責任を負う となっています。備考欄に書いていますが、これは現行第35条第2項ですけれども、派遣元事業 主は、健康保険、厚生年金、雇用保険に係る被保険者資格取得の有無等について、派遣先に通知 しなければならないという規定があります。  次は団体交渉に関してですが、これも派遣元事業主は団体交渉義務を負うわけですけれども、 派遣先については特に法令上の規定はありません。これに関しては関連判例があって、10頁に朝 日放送事件の最高裁判決を添付しています。順番が前後して恐縮ですが10頁をお開きください。 この事案は派遣法ができる前の昭和49年に起こった事案ですが、請負契約に基づいて、テレビ番 組制作会社A、B、Cの3社から朝日放送が労働者を受け入れていた事案で、その労働者が賃上げ や一時金支給等を内容とする団交を、派遣先の朝日放送に対して申し入れ、朝日放送は、それら についての団交を応諾する義務があるかどうか。労働組合法第7条に基づく使用者としての地位 があるかどうかが争われた事案です。  判決要旨ですが、線を引いている部分に書いていますように、雇用主から労働者の派遣を受け て自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ 同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限 度において「使用者」に当たるということです。  この事案については、賃上げや一時金支給等についての朝日放送の権限が認められたわけでは なく、その下の部分に書いていますように、勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境に ついては朝日放送が固有に決定していたと認定され、この限度において労働組合法第七条に言う 「使用者」に当たる。すなわち割り振り等に関して団交応諾の義務があると認定した事案と理解 しています。  戻って8頁をお開きください。8頁は派遣先責任の強化に係る項目として、論点にも掲げてい た(1)〜(11)までの11項目にわたり、三党案と関係法令等現行の規定・運用等の整理をしたものです。 (1)の労働者派遣契約の遵守等に関しては、三党案では派遣契約の定めに反する行為をしてはなら ないといった規定がありますが、現行法では特に規定はないというか、労働契約に関しては労基 法の第2条2項、労働契約法の第3条4項において、労働契約の誠実な履行を求める総則的な規 定が置かれているというのが、類似例かと思われます。  (2)の年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いの禁止に関しても、三党案では派遣先にも これを求めているところですが、現行の関連法令では労働基準法の附則第136条において、使用 者は年次有給休暇を取得した労働者に対して、不利益な取扱いをしないようにしなければならな いといった規定があります。  (3)の育休等の不利益取扱いの禁止等についても、三党案は派遣先に対して責任を求めています が、現行法では、育介法の第10条において育児休業を取得した労働者に対する不利益取扱いを禁 止しているところです。また第16条でも第10条を準用して、介護休業に関する不利益取扱いの 禁止も規定されているところです。さらに派遣労働者が請求した場合には、派遣元事業主は所定 外労働の免除、時間外労働の制限といった勤務時間面の配慮もしなければいけないとされていま す。  (4)の未払い賃金に関する派遣先の連帯責任についても、三党案に規定されているところですが、 現行法では、派遣元事業主が賃金を支払わない場合には、労基法24条違反の責めを負うとなって いるほか、派遣元事業主が倒産した場合に賃金未払いのまま退職した労働者に関しては、未払い 賃金の立替払制度の利用が可能となっています。また倒産した派遣元事業主の総財産に関しては、 派遣労働者が有する賃金債権は税金等に次いで優先する先取特権が認められているところです。  9頁をお開きください。(5)の社会保険料についてです。三党案では、派遣元事業主が法令に違 反して社会保険の保険料等を納付しないときには、派遣元事業主と派遣先が連帯して保険料延滞 金を納付する責任を負うことが規定されています。右側で、社会保険に関しては仮に派遣元事業 主が保険料を納付しなかったとしても、適用になってさえいれば給付を受けることができる仕組 みになっています。また派遣元事業主が保険料を納付しない場合には、それぞれの法律に基づき 滞納処分等を行うこととなっています。  (6)の派遣労働者に対する安全衛生教育ですが、三党案では、これも派遣先に対して責任を求め ています。現行法では、雇い入れ時、一定の危険有害業務の場合、作業内容変更時のそれぞれに おいて、責任、実施主体が分担されているところです。  (7)の定期健康診断等の代行に関して、三党案では、派遣元事業主が労働安全衛生法に違反して 健康診断を行わなかった場合には、派遣先は健康診断を受けさせなければいけないという規定が 置かれているところです。  (8)の労災保険に関してですが、派遣先は、派遣労働者等が労災保険法に基づく保険給付を請求 する場合に必要な便宜を提供しなければいけない、という規定があります。昨年出した政府法案 においては、労災保険法の改正も併せて行うことになっていて、行政庁による派遣先の事業場へ の立入検査等の規定を創設していたところです。  (9)の性別を理由とする差別の禁止ですが、三党案においては、労働者の配置及び教育訓練につ いても、性別を理由とした差別的取扱いをしてはいけないと、責任を派遣先に対して求めている ところです。現行法においては、派遣先が性別によって派遣労働者を予め限定することは、26条 7項により禁止されているところです。  (10)ですが、三党案においては、派遣先は、派遣労働者の業務遂行に関しない個人情報の提供を、 本人の同意がある場合等を除き、派遣元に求めてはならないとされています。  (11)の団交応諾については、これも三党案では、派遣先は派遣労働者の代表者と団体交渉するこ とを正当な理由なく拒んではならないとなっていて、関係法令があることについては先ほど10頁 でご説明したとおりです。  次に違法派遣への対処関係です。11頁をお開きください。11頁の一覧は、12頁以降に書いて いる昨年の研究会報告で示された、違法派遣の場合の是正措置の手法を4つ並べたものです。(1) が雇用関係の成立そのものをみなす方法です。三党案はこれに似た構成となっています。すなわ ち違法派遣の場合、派遣労働者が派遣先に対して、自己の雇用主とみなす旨を通告することがで きる。その場合に派遣元・派遣労働者間の労働契約が、派遣先・派遣労働者間に移転するものと みなす、という規定が置かれていたところです。  (2)が雇用契約の申込みがあったものとみなす方法です。違法派遣があった場合に、派遣先から 派遣労働者に対して、こうした申込みがあったものとみなすという民事上の規定を設けるもので す。  (3)が派遣先に対して雇用契約申込義務を発生させる方法です。研究会報告では、申込義務に民 事効を付与する方法と、付与しない双方の場合が考えられる。さらに(4)との組み合わせも考えら れると指摘されていたところです。  (4)が行政による勧告の方法です。昨年度の政府法案においては、違法派遣の場合には行政が派 遣先に対して、従前以上の労働条件で労働契約を申し込むことを勧告することができる、といっ た仕組みが設けられていたところです。  12頁では、昨年の研究会報告での結論が書かれています。いま、前の頁でご説明申し上げたこ とは13頁あたりに書いています。12頁のところでは下に「まず」という段落があり、対象とす べき違法派遣の範囲について書かれていますのでご紹介申し上げます。その2行後に「具体的に は」とあり、適用除外業務への派遣、すなわち建設や港湾といったものへの派遣とか、期間制限 違反、無許可・無届出派遣、それといわゆる偽装請負といったものが対象とすべき違法派遣の範 囲とされていました。  15頁をお開きください。これはドイツとフランスにおいても「みなし雇用」が規定されていま すので、それをご紹介するものです。ドイツにおいては、無許可の事業主が派遣した場合にこう いった仕組みが認められていて、その場合の労働条件としては下に2つ書いてありますように、 派遣元/先との間で予定されていた労働時間についてはそれによる。その他については派遣先の 諸規定によるというのが原則となっているようです。備考欄に書いていますように、要件では無 許可の事業主が派遣した場合ですから、許可事業主が違法派遣を行った場合には、みなし雇用規 定は発動しないとなっているようです。  これに対してフランスですが、フランスの場合の要件は、派遣期間終了後、派遣先企業で労働 者派遣契約を結ばずに引き続き派遣労働者を就労させた場合、あるいは派遣先企業が利用事由、 派遣期間に関する諸規定に違反して派遣労働者を利用した場合です。その場合の労働条件として、 期間の定めのない労働契約とされるとなっています。ただし、備考欄に書いていますように、結 局は解雇扱いにして保証金を支払って解決する事案が多いようです。  16頁は罰則関係です。細かい説明は割愛しますが、それぞれの法違反の内容において行為者と 法人に整理しています。それぞれの欄の左側が現行、右側が三党案です。網が掛かっている部分 については三党案で罰則が強化される部分です。例えば2つ目の適用除外業務への派遣を行った 場合、無許可での派遣を行った場合に、法人に対する罰則が、現行では1年以下の懲役又は100 万円以下の罰金であるところ、三党案では1億円以下の罰金とすると罰則が強化されています。  18頁ですが、こちらは派遣先に対する罰則です。上の2段で、適用除外業務と知りながら労働 者派遣を受け入れた場合、あるいは無届の派遣元から無届と知りながら、労働者派遣を受け入れ た場合には、現行では特に派遣先に対する罰則規定はありませんが、三党案では網が掛かってい ますように、それぞれ罰則を作るとなっているところです。  最後に法律の名称等についてです。19頁をお開きください。現行の法律は、「労働者派遣事業 の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」ということで、その下の 構成を見るとおわかりのように、第二章と第三章の内容と題名がリンクしている形になっていま す。派遣労働者の就業条件の整備等に関する事項は第三章に規定されていますが、三党案では、 ここが派遣労働者の保護等に関する措置という内容になっていて、それが名称にも跳ね返って、 「派遣労働者の保護等」という言葉が題名に盛り込まれているところです。  資料2の説明は以上です。次に、前回、長谷川委員からご指摘のあった均等に関するEU指令等 の規定についても、簡単にご紹介申し上げます。参考資料をお開きください。こちらに書いてあ るEU指令は2008年10月22日付で発効し、発効3年後までの間に必要な法整備を行うこととさ れていますので、加盟国は2011年10月21日までに必要な法整備を行うことが求められていると ころです。  内容についてですが、賃金、休暇、労働時間、休憩時間、出産休暇等の基本的な労働条件に関 して、派遣先の正規労働者と同等の取扱いを受けられること。あるいはその下の・にありますよ うに、設備的な面についても正規労働者と同等の権利が認められること。さらには教育訓練の機 会をより多く受けられることといったことが規定されています。なお、加盟国は労使団体との協 議の後に、必要な適用除外規定を設けることができるともされているところです。  ドイツやフランスですが、現時点においては、このEU指令を受けて必要な法改正が行われたと は聞いていません。ドイツの今の状況ですが、派遣先の労働者に適用される労働条件を下回る労 働条件を定める場合には、労働者派遣の許可がなされない。また、その下回った部分については 無効とされるという仕組みになっています。フランスは、派遣労働者の報酬は派遣先労働者の報 酬を下回ってはならない。また派遣労働者は派遣先の労働者が利用できる福利厚生施設を利用す ることができる。こういうことが規定されていると聞いています。以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。それではまず最初に、いまご説明いただいた追加で提 出いただいている均等均衡待遇の部分について、何かご質問がございましたらお願いします。長 谷川委員、よろしいですか。  それでは論点ごとに少し議論をしてまいりたいと思います。最初に論点6にございます情報公 開について、ご意見を伺いたいと思います。 ○高橋委員 大変申し訳ないのですが、本日の検討項目に入る前に、前回の部会で私は、製造業 界に関連して、日本生産技能労務協会のアンケート調査をご紹介申し上げました。派遣スタッフ の中では3,400人余りの方にお尋ねをされたそうで、製造業派遣の反対が67%、製造業派遣の禁 止に賛成は10%だというご紹介を前回しました。それに関連して長谷川委員から、その対象はも っぱら常用型の方に対するアンケート調査ではないでしょうかというお尋ねをいただき、そのと きは私はお答えができなかったものですから、その後、この調査のご担当にお尋ねした、その結 果をご報告させていただきたいと思います。お尋ねをさせていただいたところ、常用の方は大体 2、3割程度で、もっぱら登録型派遣の方を対象とするアンケート調査であった、というご説明を いただいております。以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。それではご意見をお願いします。 ○小山委員 マージン率の問題ですが、当然、そこで派遣労働者として働こうとしたときに、自 分の賃金がいくらになるか、派遣契約の料金が一体いくらなのかを知ることによって、適正な派 遣が行われているかどうかの判断の大きな材料になるわけです。いわゆるピンはねをするような 業者の所で、派遣労働者として働くことはやめておこうという判断もできるわけですが、そうい う情報がないまま、とにかく一体いくらの派遣契約でやっているのかもわからないまま働くのは、 労働者にとっては非常に不利益が生じる可能性もあるわけです。ですから、自分の賃金、そこの 派遣の料金がどうなっているかというのは、その労働者が知る権利は当然あるだろうと思います。  そこで、ここの三党案の中で「一人当たりの派遣料金、マージン率」と言っている、この「一 人当たり」という意味合いを事務局にお尋ねしたいのですが、当該労働者がという意味で理解し てよろしいのでしょうか。 ○清家部会長 事務局からお願いいたします。 ○鈴木課長 これも、いろいろお聞きした中でわかったことですが、情報公開の一般の公開と、 派遣労働者個々人に対する通知で分かれているようで、まず情報公開のほうは、一人当たり派遣 料金とかマージン率について、例えば業務などでは平均値を公開しているという趣旨だと聞いて います。個々の労働者に対しては、当該その人が実際に派遣されている派遣料金や賃金です。た だ、この場合、派遣料金については10人でいくらみたいな料金設定があります。その場合にはお そらく10で割って、一人当たり単価ということになろうかと思いますが、これは個別の料金とお 聞きしています。 ○小山委員 当然、個別に個々の労働者が知るべきであると思いますので、そのことは明確にし ていくべきだろうと思います。一般への情報公開において、どの範囲までというのは一人ひとり のところまでは、誰がいくらというわけにいかないと思いますので、そこのところは個々の労働 者の賃金との差が明確になるように、これだけでは意味がよくわからないものですから、実際上、 明確になるような形がとられるべきだろうと思います。 ○清家部会長 ほかに、ご意見はございますか。 ○長谷川委員 次の派遣労働者に対する通知事項のところですが、ある意味で今回のこの三党案 は非常に具体的でわかりやすいと思います。情報公開の中身というのは、そういう意味では具体 的なほうがずっといいのではないかと私は思います。  それから、これもあまり書いていないのですが、優良派遣業者はどういうところが優良か検討 しているところなのです。例えば派遣労働者が派遣会社を選ぶときに、その会社がマージンを50 取っているのか、35なのか40なのかというのはすごく関心が高いと思います。マージンをいっ ぱい取っている所はどうも怪しげだなと。マージンが低い所は比較的健全に事業経営しているの ではないかということで、そういう所に労働者は流れて行きますし、そういう情報を労働者が得 ることはとても重要だと思います。  そのほかに、かつて派遣労働者からヒアリングしたときに、交通費や食堂の利用なども話題に なったことがあります。三党案にも入っていないのですが、個々の労働者に交通費をちゃんと支 払っているとか、食堂が利用できるとかも情報公開したほうがいいのではないかと思いました。  次に派遣元から派遣先に行う通知ですが、派遣元で把握すべき労働者の労務管理や能力開発の 状況で、個人情報などもありますから、それは本人の承諾を得てからやったほうがいいと思いま す。三党案を見ても、健康診断の実施状況について検討項目の中に入れていったらどうなのかと いう気もします。  次に派遣先から派遣先の労働組合に対する通知ですが、これはすごく重要なのです。いま言わ れているのは、とにかく派遣労働者がどれぐらいいるか本当によくわからない。労使協議をやっ ても労使協議の場に派遣労働者の数は出てこないと言われています。派遣労働者の数がどのぐら いなのか、どういうところから入れているのか、派遣料金はどれぐらいか、派遣労働者の賃金は どのぐらいなのか、そういう情報公開を組合にする。その理由は何かと言ったら、もともと派遣 は常用代替には使わないということがあったわけで、派遣労働者を何で活用するのかという事業 主アンケートのときに、人件費が安いということがあったわけです。そうすると人件費の安い派 遣労働者がいっぱいいるということは、もともとの社員の賃金も下がっていくこともあるわけで、 そういう意味でここに三党案で書いているようなことについて、労働組合も把握する必要がある のではないか。これは前から私どもはずっと主張していたことであり、重要だと思っています。 ○清家部会長 秋山委員、どうぞ。 ○秋山委員 マージン率の公開と、派遣元から派遣先への賃金の通知、派遣先への労働組合の通 知のいずれもですが、去年の7月にまとめられた研究会報告で指摘されていますように、労働者 一人ひとりの経費まで分析することが難しいという点、個人情報の観点、また営業秘密の観点か ら見て、いずれも問題があるのではないかと思いますので、もう少し時間をかけて検討したほう が、よろしいのではないかと思っています。 ○清家部会長 長谷川委員、どうぞ。 ○長谷川委員 この研究会報告はなかなかいいことを書いているのですが、4頁の下のほうで、「以 上を考えるとマージン」云々と書いてきて、「情報公開を通じて良質の派遣元事業者が派遣労働者 から、さらには派遣先から選択されるようにすることにより、結果的にこれが実現されることが 適当である」とありますが、私はこれはすごく重要だと思います。情報公開することによって、 派遣先企業も変な派遣会社でなく、非常に質のいい派遣会社から派遣労働者を受け入れることが できる。派遣労働者も情報公開されることによって、いい派遣会社を選んでいき、お互いに働く ほうも企業も幸せになれる。そういう意味でこの情報公開というのは非常に重要なので、前回の ときはああいうまとめでしたが、今回、三党案が具体的に書いてきています。これを今回の中で 取り入れることは私はやってもいいのではないかと思います。ここはすごく重要だと思います。 ○清家部会長 ほかに、ご意見はございますか。 ○高橋委員 マージン率関係ですが、今日、お出しいただいた資料の3頁でも明らかにされてい るように、マージンというものを単に派遣料金と労働者の賃金の差だけで捉えて議論し、その数 字を出すことにどれだけの意味があるのかと感じているのが、まさにこの具体的な円グラフで出 ているところだと思います。要するに単純に派遣料金と賃金の差額をマージンとして、この場合 でしたら3割はマージンだと、3割も取られてけしからんということになってしまうと思われま すが、ここにまさに書いているように、必要な経費が含まれているわけで、そのマージン率を公 開してどういう意味、効果があるのかなかなかわかりにくい。むしろ無用な混乱を招きかねない のではないか。その辺を十分考慮していく必要があるのではないかと思っています。  今回、一連の情報公開だけでなく、いろいろな通知関係でもそうなのですが、先ほど長谷川委 員もご指摘されましたけれども、個人情報に関わる問題が非常に多くなっています。個人情報の 保護は十分に心していかなければならない。ご本人の了解が全くないまま、ご自身のいろいろな 労働条件に係る情報が各方面に知らしめられる形は、絶対避けねばならないのではないか。その あたりを十分に注意していく必要があるのではないかと思っています。  先ほど長谷川委員から、派遣先から派遣先の労働組合に関する通知事項等に関連して、常用代 替に絡んでのご指摘をいただきました。基本的に事業主の判断で、事業主の会社から事業主の先 の労働組合に情報を提供することはよろしいかと思いますが、それを法定化するということは、 労使自治の原則から言ってどうなのかという感じを持っています。むしろ、そういったことを伝 えられた労働組合としては、それを知って一体どういうことをし得るのかが非常に見えにくい感 じを持っています。  また、派元から派先に対する通知事項に関しても、その情報を得た派先の企業としては、一体、 それを知ってどういうふうになるのか。どういう義務が発生し得るのかといった点を考えると、 何でもかんでも情報を得ることが、果たしていいのかどうかという論点があるのではないかと思 っています。 ○清家部会長 秋山委員、どうぞ。 ○秋山委員 高橋委員の補足ですが、マージン率というのは本当にその額だけを示してしまうと、 教育、有給休暇、保険を正当にやっている派遣会社のほうが、かえってマージン率が高くなって、 そういうのをやっていない所が低いと、短絡的に解されてしまう危険があるのではないかと思っ ています。派遣会社からそういうご意見も多くございました。 ○清家部会長 長谷川委員、どうぞ。 ○長谷川委員 2つ話します。1つはマージンの話です。マージンは派遣料金から自分の賃金を引 いた残りがマージンかと言ったら、それは違うと思います。だから派遣契約はこの金額ですよと、 それと賃金はこれですよと、あと当社はいろいろな教育訓練費だとか、社会保険料だとか、そう いうものに対してこれぐらいですよと。何もマージン率50%とか30で出せと言っているわけで はなくて、そういうことが出れば、大体この会社はこのぐらいのマージンかなと。大体この業界 で普段言われているのは、「あそこはマージン、どのぐらい取っているのかな」。「35、なかなかだ ね」、「50、取り過ぎだよ」、これはいつも言われる話であって、それは自分で何となくわかればい いのだと思うのです。それとマージンが少ない所というのは、やはりそれはいろいろなことに努 力しているのだと思うのですね。それは会社の規模によっても違うわけですが、ざっと見るとき に、そういうのは見えたほうがいいのではないかというようになっています。これはなぜかとい えば、派遣というのは間接雇用だという特徴があって、ある意味ではどのようにして決められて いるのかわからないということに対して、いろいろな声もあったので、だとするとこういうやり 方がいいのかなと思います。  もう1つは、日常的に労働組合は現場で何をやっているかというと、私もそうでしたが、今回 この事業に対して、こういう一時的なアルバイトを入れたいとか、パートタイマーを入れたいと か、派遣を入れたいというのは労使交渉で大体行う。真っ当な組合と企業であれば、そういうこ とをやるはずなのです。ところが、よく言われているのは、派遣の場合はなかなか人事部が何人 いるか把握していなくて、労使協議とか労使交渉の中に、それが載っからないと言われているの です。直接雇用のパートタイマーとか有期は載るのですが、そこは載らないと。それと、まるご と間接で派遣に出したとか、請負だとかというのは、この業務は派遣でやらせたとか、この業務 は請負でやらせたというのはわかるのですが、何人かというのはわからない。  ところが、職場の中にはこの派遣もそうですが、労働安全だとか、いろいろ事業主としてやら なければいけないことがあって、それはそこの会社の社員と混在して行われているわけですね。 「あなた、どこの人」となるようなことがあるので、本来はそれはそれぞれの組合と会社の中の 労使協議の項目にそういうのが入っていれば、それでいいとは思うのですが、まさに高橋委員の いう労使自治の話だと思うのです。ただ、派遣の場合そうならず、わからないのだという話にな って、なかなか交渉にも労使協議にも乗らないというのです。だから、私はある意味ではそうい うのを通知するということで、もともと前回の改正のときに、派遣先労働組合の通知というのが あったわけですから、そういうのを活用しながら、ここは通知をするということで、ある意味で は労使協議ですよ。団体交渉でなくてもいいから、労使協議の中に乗せていくことはいいのでは ないか。だから、これは労使協議事項にしろとか、団体交渉事項にしろと言っているのではなく て通知なので、合図の話だから通知ぐらいはしてもいいのではないかなとは思います。 ○高橋委員 通知を一切するなということは言っているわけではありません。1例として、例え ば賃金の関係、先ほど長谷川委員が人件費を安く使うという理由が多いから、それはひいては正 社員の賃金の低下を招くおそれがあるというご指摘もありました。でも、それはやはり不利益変 更は絶対できないわけで、それを理由に社員の賃金を下げるということはあり得ないわけです。 通知事項については、何が本当に必要なのか。これだけの事項を果たして本当に知らせる必要が あるのかということについては、十分検討していく必要があるのではないかと思います。 ○小山委員 こうした情報公開に関連する事項なども、結局、良い会社ばかりだったら法律はい ろいろ規制する必要はないわけです。しかし、良い会社ばかりではないという現実が多いもので すから、法律がきちんと規制を明記していかなければいけないと思うのですね。労働基準法にし てもそうなのですが、平気で法違反をする企業があとを断たない実態があるわけです。ですから、 確かに立派に経営されているところで、何でここまでという疑問は出るのかもしれないですが、 実はそれこそ過剰なマージンを得て利益を得ようという企業も、これはまたあるわけです。です から、そういう情報はきちんと明らかにしていかないと、具体的な規制はなかなか進んでいかな いのではないか。そして、この法律自体は、やはり労働者を保護する観点を持たなければいけな いわけですから、事業主側が派遣元も派遣先も、都合のいいことばかり、どうやったら都合よく 経営できるかではなくて、どうやったらそこの働く人の雇用や権利を守ることができるのかを念 頭に置いて、法整備をしていかなければいけないということをまず申し上げておきたいと思いま す。  その上で、派遣先から派遣先の労働組合に対する通知の事項で、いま議論になった点なのです が、例えばちょうど昨年から、いわゆる派遣切りということが製造業の多くの職場で起こりまし た。そのときに、会社はその派遣契約を切っていく。業務請負の場合もありますが、それをどう 交渉のテーブルに乗せるかということで、それぞれ苦心をして、事業主、経営者によっては、具 体的にどう対処すべきかということを労働組合と相談しながらやられたところもあるわけですが、 そうではなくて、これはあなた方とは関係ないのだという。これは派遣会社との派遣契約の問題 であって、当該労使関係とは関係ない問題だということで、交渉のテーブルに一切乗せないとい う経営者も、これまた多くいたわけです。  現実にそこで解雇されていくという事態が起こったわけですが、通常ですと、どうしても整理 解雇が必要だとすれば、その解雇される労働者の今後の生活を配慮して、経営側も一定の割増し の退職金等を支払うわけです。しかし、今回この派遣切りというときは、そういう交渉が一切で きなかった。仮にそこで良心的な経営者として、確かに急に雇用を失うのは忍びないから、一定 の割増しを付けようとして、派遣料金の引上げをしたにもかかわらず、派遣会社はその労働者に 払っていなかったとか、そのような事案もいっぱい起こっているわけです。ですから、やはり情 報が的確に派遣会社から派遣先に行かなければいけませんし、派遣先企業からそこの当該労働組 合に的確に行ったところで、高橋委員がおっしゃるとおり、労使自治としてそこで話合いが行わ れるわけであって、逆に労使自治というのは、話合いの課題を限定してしまうことではなくて、 より広げていくことに意味があるだろうと思うのですね。  ですから、法律に何の規定もないことを理由にして、直接の雇用主とそこの労働者との団体交 渉、あるいは労使協議の直接の事項しか扱わないという実態が多くあるわけですから、法律上き ちんとそうした情報を労働組合に通知をし、そして交渉のテーブルに乗せるということは、これ は是非必要なことだろうと思います。 ○清家部会長 ほかにご意見はありますか。またあとでこの論点に戻ることも当然ありますが、 今日はいくつか課題がありますので、次に7番目の論点である「派遣先責任の強化について」も、 ご意見を伺いたいと思います。 ○高橋委員 11項目と非常に多くにわたっておりますので、全部の項目にメンションしますと、 私だけがこの時間いっぱいを使い切ってしまう可能性がありますので、まずは最も懸念するべき 3点について述べさせていただいて、後ほどもし時間があれば、また追加的に述べさせていただ きたいと思います。本日の資料の8頁・9頁の所が、派遣先責任の強化にかかわる項目として、 事務局で整理をしていただいたところではないかと思っております。  最初に、冒頭3点は、どうしても申し上げたいと思っております。それは4番の未払い賃金に 関する派遣先の連帯責任と、社会保険料に関する派遣先の連帯責任、まずこの2点について述べ させていただきたいと思います。そもそもこちらの資料でも書いておりますが、三党案では「派 遣先は派遣元事業主が賃金を支払っていないときは」となっておりますし、社会保険料も「派遣 元事業主が法令に違反して社会保険の保険料を納付しないときは」ということで、違法を前提と した建て付けになっている。このようなことが本当にいいのかという、そもそもの疑問を抱かざ るを得ない。違法前提の派先の責任を強化するというような建て付けは、非常に違和感があると 思っています。  むしろこのようなことをすれば、派元としては、どうせ連帯責任化されたのだから、払わなく ていいのではないか。むしろ違法を助長するような規定ではないかと思うわけです。そうすると、 悪質な業者が蔓延するという結果。本来、おそらく三党の皆さん方が願っていることと、全く違 う効果が表れてしまうのではないかと思います。  そもそも派遣先としては、派遣労働者の賃金と社会保険料を込みで、既に派遣料金のお支払い をさせていただいているわけです。さらにそれは本来派元が責任を持って、派遣労働者にお支払 いをしなければならないところ、それを払わず、だからといって、連帯責任でまたさらに派遣先 の企業が未払い分を払うというのは、あまりにも過酷な規定と言わざるを得ないのではないかと 思っております。  既に先ほど事務局からご説明がありましたが、(4)にしても賃金を支払わない場合の基準法違反 を問われるわけですし、倒産の場合の立替払い制度も整備されております。また、社会保険につ いても、たとえ派元が保険料を納付しなくても、適用に当たって支障が生じるということはない わけで、やはりこれら2つの規定はあまりにも酷だろうと言わざるを得ないわけです。  3点目のもう1点は、9頁の「団体交渉の応諾」という所です。現行の労組法の建て付けという ものは、あくまでも団交の対象、雇用主と雇用される労働者の間で行うべきものです。先ほど事 務局のほうから、朝日放送事件のご紹介をいただいたところですが、もちろん現行でもこの最高 裁の判例のように、部分的とはいえ同視できる程度に、現実的かつ具体的に労働条件の意思を決 定する地位にある場合は、現在においても団交の応諾義務を負うという判例がなされているとこ ろです。  ところが、そういうことではなくて、部分的には同視しない派先に対しても、団交の応諾を課 すというのは、これまでの判例等を踏まえても、建て付けは無理なのではないかと言わざるを得 ないということです。また、仮にという設定をしていいかどうかわからないのですが、団交した としても労働条件を決定し得ない派先としては、いったい何を議論するのかということにもなろ うかと思いますが、実務的には大変困難を伴うのではないかと言わざるを得ないと思っておりま す。  そもそも現行の派遣法の40条に、適正な派遣就業の確保という形で、「派先は派遣労働者から 苦情の申し出を受けたときは、当該苦情の内容を派元に通知するとともに、派元との密接な連携 の下に、整理をもって遅滞なく当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない」という 条項が既に規定されているところです。派遣労働者の方のいろいろな苦情に対する処理が既に現 行規定にあることを鑑みれば、このような団交の範囲を拡大するというのは、是非やめていただ きたいと思うところです。 ○清家部会長 ほかにご意見がありましたらどうぞ。 ○長谷川委員 1つは、例えば労災保険の給付の請求に係る便宜供与が定義されていますが、こ れは比較的可能なはずだと思うのです。だから、労災保険の請求で、保険給付を請求する場合に は、必要な便宜を提供しなければならないと。労災が起きる、事故が起きるのは派先で起きてく るわけだから、そのときのそういう請求などは便宜供与しても、私はそんなに負担はかからない のではないかなと思いますね。  それと連帯責任、賃金、それから社会保険、労働保険等の連帯責任のあり方について、どのよ うに連帯責任を負うのか、ここは少し検討しなければいけないと思うのです。私は連帯責任でい いと思っているのですが、連帯責任をどのように負うのかという負い方だとか、そういうのは検 討しなければならないのかなとは思います。  団交の話ですが、先週、全国の労働委員会の会議があったのですが、今回、各地方労働委員会 での派遣労働者の誠実団交が結構、地労委に持ち込まれているみたいなのですね。やはり去年の リーマンショック以降、数が増えていると報告しました。結局、この団体交渉は、先ほど事務局 も説明したように、派遣法ができる前の話なのですが、朝日放送事件ーの判決が結局、引用され ているわけですね。だから、一部、勤務割、時間割、そういうのに関しては団交応諾を認めてい るわけです。ただ、やはり地位確認のものが出てきたり、時間外の支払いなどの誠実団交の申入 れが結構、地労委に持ち込まれているわけで、現在、朝日放送事件をはかりにすると、もう前進 ができないのです。一応あっせんするのですが、最終的にはいくら地労委があっせんを出しても、 それは全然駄目と。今回、本当にそれでいいのかということが非常に言われていました。だから、 朝日放送事件をいつまでも盾にしている限りは、派遣労働者が労働組合に入って、派遣先との団 体交渉をやろうと思っても、全部はねられてしまうわけで、私はここに対して派遣労働者と派遣 先の団体交渉のあり方はどうあるべきかということについて、もう少し積極的に取り組む必要が あるのかなと思います。現在の労組法の中でできるのか、それとも労組法を改正しなければでき ないのかも含めて、これは検討の余地はあるのではないかなとは思います。 ○秋山委員 確認ですが、6の「派遣労働者に対する安全衛生教育」と、7の「定期健康診断の代 行」ですが、これは具体的にはどのような内容を想定されているのでしょうか。 ○清家部会長 事務局からお願いします。 ○鈴木課長 この点について、例えば製造業などを想定いただくと、いちばんわかりやすいかと 思いますが、派遣先で実際には就労しているわけですから、事故が起こるのも派遣先ですし、健 康診断も派遣元まで戻ってやるのかと。こうなると、非常に煩雑だということもありますので、 派遣労働者が就業している、いちばん近い所が派遣先ですから、派遣先が安全衛生教育を行った り、健康診断については派遣元に受けに戻るのはなかなか難しいということで、この場合は違反 した場合ですが、派遣先で受けたいと。たまたま派遣先の健康診断があるので、そこで一緒に受 けたいという希望がありましたら、派遣先で受けると。こういう、ある意味派遣先での安全衛生 であるとか、派遣労働者の便宜を考慮して、派遣先に義務を課すという趣旨かと聞いております。 ○秋山委員 労災防止の観点から、それは派遣先としても無理のない内容でしたら反対いたしま せん。 ○長谷川委員 6頁のこの表で見ると、要するに派遣先と双方と、かかっている項目があります よね。やはりこの項目については、もう少し労働者を保護するとか、強化するとかということを 強めてもいいのではないかなと思います。そういう観点から見れば、例えば育児休業だとか、そ ういうものについても、三党案では不利益取扱いについて言っているわけですが、それが全く考 えられないということではなくて、この労働基準法で言えば、労働時間とか、休憩とか、休息と か、時間外とか、安全衛生ではこういうものがあるし、男女雇用機会均等法では先と双方にかか っているものがあるので、これらについてはもう少し何らかの強化をしてもいいのではないかな という気はします。 ○高橋委員 そもそもこれら11項目の中には、どういうものなのか具体的なものがないとわから ないものが多いです。いまおっしゃられた、例えば育児休業を理由とする不利益取扱い。育児休 業を理由とする不利益取扱いはどういうものなのだというのが、ちょっとイメージができないの ですね。あるいは、先ほど「労災の便宜、問題ないのではないですか」というように言われまし たが、その便宜はどういう便宜なのかというものがわからないのですね。だから、なかなか判断 のしようがないなという感じをいたしております。あるいは、性別を理由とする差別の禁止にし ても、業務を特定して受け入れますので、そういうもので何か性差が出るというのは、どういう ことを想定されているのかということが基本的にわからなくて、本当になかなか意見が言いにく いところがあります。事務局で各項目について、どういう具体的なイメージが推定され得るのか ということについてお教えいただいたらと思いますが。 ○鈴木需給調整事業課長 あくまでも推定ということで申し上げます。1からいきますと、派遣 契約の遵守については、派遣契約は当然、民法に定める契約ですから遵守いただくことになりま すが、派遣元と派遣先では、派遣先のほうがクライアントということで、企業の力関係に格差が あるということで、派遣先の無理が通ってしまうというケースもありますので、それを法定する ことによって誠実に守らせるという趣旨かなというように考えております。  年休については、年休を取った場合に、取るのだったら次からほかの人に代わってくれという 交代を求めるとか、これは特定目的行為との関係が出てまいりますが、そういう「あなた、もう 来なくていいよ」という不利益が生じることが想定されます。  育児休業はもうちょっと長期ですので、これについては年休とは同列に扱えませんが、例えば 前に育児休業を取ったことがある人は派遣しないでくれみたいな、これも特定目的行為とセット になりますが、そういう育児休業を取るような方については派遣の対象から外すという不利益が 考えられるかと思います。  未払い賃金は、賃金払いのケース。社会保険も、これは社会保険の未払いのケースです。6と7 は、先ほど申し上げたとおり、派遣先で便宜をできるだけはかってくるという趣旨かと思います。  労災保険については、これも事故が派遣先で起きますから、労災の税金のときに詳細な状況等 のものについて、派遣先は「うちはあなたを雇っているわけではないから、それについては適用 しませんよ」と言われることがあったとすると、なかなか請求もしづらくなるので、そういう場 合は通常、派遣元から資料をもらって出すということになろうかと思いますが、派遣先がいろい ろ事情がわかっているケースについては、派遣先から直接、労働者が資料をもらって、それで労 災請求をすると、こういう便宜かなと考えております。  性別の差別の禁止については、配置とか教育訓練が挙がっているかと思います。これはもとも と配置とか教育訓練は派遣元が行うと、こういう整理で、均等法のこの2つについては派遣先の 義務としてかけていないわけですが、最近、均等法が変わりまして、配置の中でも特に明示をし て、業務の配分も配置に含むということに先の改正で明確化したわけです。例えば10人、営業職 か何かで派遣されたときに、男性と女性で営業の出され方の内容が違うと、よく言われるのは、 男性は外勤で、女性は内勤のみみたいな形の差別があった場合は、それを排除すべきということ とか、教育訓練についても、OJTで教育訓練するケースが派遣先では結構ありますので、そうい ったときに男女で差別が起こる可能性があると。こういった例が実際あるかどうか、ちょっと私 どもは不明ですが、可能性としてはあるからここに書いてあるということかと考えております。  10番目は、この部会でも何度か出ておりますが、派遣先が派遣労働者の必要もないような履歴 書を取って、個人情報を不必要に収集すると。こういうことについては防止をすべきだというご 議論かと思います。団交は、先ほど長谷川委員がおっしゃられたとおりです。以上です。 ○清家部会長 これは三党案ですから、あくまでもそのようなことではないかということで、確 たるお答えはなかなか難しいかと思います。 ○長谷川委員 前も言ったのですが、ここにも書いてあるのですけれども、新潟の例を出したと 思うのですが、新潟である派遣会社が倒産したときに、派遣労働者は賃金がどうしても必要だっ たので、そのとき派遣先が賃金を払っておいて、あとは未払い賃金立替え払い制度でくるので、 それで確保できると派遣先も思っていて、そのようにしたみたいなのです。そういうのぐらいや ったっていいのかなという気はしないでもないです。だから、そのぐらい法律の中に、派遣先が 責任を負うというか、そういうところで派遣先がそのことで困るわけでもないし、未払い賃金立 替え制度でくるわけで、労働者は一時的にお金がほしいわけですから、そういうときに代行して 払ってやるという共同責任の1つだと思うのですが、そういう方法は全く考えられないとは言え ないのではないか。実際にやっている所があるので、その辺は検討してみたらどうかなと思いま す。 ○高橋委員 時間の関係もありますので、全部は避けますが、残りのものについて、9頁でいく つか述べさせていただきたいと思います。今回の件について、派先の責任強化について、一切、 派先の責任強化には反対だという意味では全くありません。当然、必要な派先の責任強化という のは、必要なものはしていくべきだろうとは思いますが、例えば6の安全衛生教育にしても、先 ほどちょっと秋山委員からもご質問がありましたが、どのような安全衛生教育を行うのかが不明 なまま、こうした責任強化をするのは非常に難しいかなとは思っております。先ほど事務局から ご説明いただいた、現在の仕組みの中で、何ができなくて、何が問題でということを、しっかり と課題をあぶり出した上で、派遣先にどのような安全衛生教育を求めるのかという具体的なとこ ろまで、詰めていく必要があろうと思います。  7の定期健診は、これも連帯責任と同じなのですが、ここに書いてありますとおり、派元が安 衛法に違反して健診を行わなかった場合と、違反前提の規定なのですね。このように違反前提の 規定というのは非常に問題が多くて、結局、派元の責任をますます薄れさせる。やらなくてもい いのだ、うちがやらなければ当然派先がやってくれるからということを助長しかねない。こうい う規定はやはり問題が多いのではないか。先ほど鈴木課長がおっしゃられたように、派遣労働者 の方は専ら派先で労働されますので、派元の会社に行くことはない。したがって、派先で健診を 受けたいということがあれば、その旨を派元に伝えて派元の会社から派先の会社に言っていただ ければ、派先の会社としてもそれを拒むという会社はおそらくないのではないかと思いますし、 むしろそのほうが実態を踏まえた対応ではないかなという感じもしております。以上です。 ○清家部会長 ほかにはよろしいですか。またこの論点に戻ることもありますので、少しその先 の所に進みたいと思います。次は論点8にある「違法派遣への対処について」です。ここについ ては、過去の部会では具体的に直接雇用みなし制度を導入すべきか、あるいはみなし制度ではな く、派遣先の労働契約申込み義務を創設することは考えられないかといった論点がありました。 これについて、ご意見を伺いたいと思います。 ○高橋委員 私ばかり独占しまして、本当に申し訳ございません。直接雇用みなしに関しては、 我が国には契約の自由、あるいは採用の自由の原則というものがあるわけで、その観点に立ちま すと、こうした直接雇用みなし規定の創設には、おおむね問題があるというように言わざるを得 ないのではないかと思う次第です。また、そもそもこの建て付けは、例えば無許可派遣とか、期 間制限違反といったような場合が、もちろん事情を知ってということで、悪質なケースだという ようには認識はしておりますが、労働者が通知をして、特段非がなければ雇用転嫁する、移転す るというような建て付けですが、たとえ何らかの制度を作ろうとしても、それが本当に無許可・ 無届け派遣であったのか、あるいは期間制限を超えていたものであったのか、あるいは禁止業務 で出してしまったのかという判定は、当事者だけではなくて第三者による判定というものが必ず 必要不可欠だろうと思うわけです。  そうしたものがない中で、例えば労働者の方等がそういう通告を行ってという形になりますと、 必ず係争に発展いたします。労働裁判は非常に長期化しますし、裁判に行くことは労使双方にと って決して好ましいことではありません。そういう意味では、これは安定性を欠くような制度に なる可能性が非常に高い、と言わざるを得ないと思います。  さらに、これも仮定の話で、別に容認しているわけではないのですが、もし労働契約関係が転 嫁したとした場合でも、移転後の労働条件といったものは、いったいどういうものなのか全くわ かりませんし、これはなかなか難しい問題ではないかと思っております。  ちょっと細かい話になるかもしれませんが、もともと派遣元と派遣労働者の方の雇用契約の労 働条件が、例えば派先の会社の就業規則にはない労働条件であったような場合、いったいどうい う取扱いをしたらいいのかということも、おそらく技術的には議論になっていくことであろうと 思います。そういった点を十分詰めた上で、判断をしていく必要があろうかと思います。  また、期間制限違反については、無期雇用に契約内容が転化するということについては、もと もとの契約が有期契約であっても無期になってしまう建て付けですよね。要するに労働契約その ものの中身ががらっと変わってしまうと。しかも、それは事業主と労働者の方の合意がないまま、 契約の内容そのものが変わってしまうというのは非常に問題が大きいのではないかと言わざるを 得ないと思います。以上です。 ○長谷川委員 まず、なぜみなし規定を導入するかということについてです。違法な派遣が非常 に起きたわけですが、これをこのまま放置しておいていいのかと。行政が罰則をかけるとか、指 導するだけでいいのかということだと思いますね。労働者から言えば、違法な労働者派遣だとか、 労働者供給をなくして、労働者の雇用だとか労働条件を保証するためには、刑事制裁、罰金とか 行政指導だけでは不十分だということは、いま述べたようにこの間のいろいろな経過からも明ら かだと思います。  そうすると、やはり労働者自身が民事訴訟で労働契約上の権利を有する地位にあるという地位 確認だとか、損害賠償を請求するということがあるわけで、それの法的根拠とするような民事上 の権利・義務関係を定める規定が私は必要なのではないかなと思います。例えば高齢者雇用安定 法の継続雇用については、民事効果がないということが指摘されております。私は今回のこの派 遣法を見直すに当たっては、いままでのような行政指導とか罰則だけではなくて、民事効果を付 ける法律を作ることが必要なのではないかと思います。最近、労働者の権利意識も非常に高まっ てきまして、労働審判にも案件が持ち込まれるようになりましたし、労働審判だけでなくて、通 常訴訟も増えていると聞いています。それは、一方の見方をすれば、労働者が自分たちの権利を 実現するために、訴訟に訴えるということが起きてきたのだと。泣き寝入りしない、自分の権利 は民事訴訟でちゃんと取るということが、我が国の中でも起きてきたのだと思います。そうする と、やはり実体法の整理が必要なわけですから、民事効を付ける法律整備をやるべきだと。これ は、ちょっとくどくどと言いました。  その場合に、今日この11頁に(1)から(4)が提起されています。前回のときは行政の指導勧告で整 理したのですが、従来から私どもは違法な派遣があった場合にはみなし規定を作るべきだと思っ ていました。今回、そういう意味では三党案からもみなしを出されておりますが、こういう機会 ですので、雇用のみなしの規定を入れるべきではないかなと思います。違法があった場合には、 その労働者の地位が派遣先に移転するという、その法律の作り方はいろいろあると思いますので、 みなし雇用を入れるということを前提にすれば、いろいろな法律の作り方はある。いま高橋委員 が言ったように、契約の内容をどうするのだとか、いつから効力を発生させるかとか、それは法 律の作りの中で検討すればいいことなので、そもそもみなしを入れるかどうかということだと思 います。  それから、研究会報告です。今日、鎌田委員がいらっしゃいますが、派遣先の雇用契約の申込 みが(1)、(2)、(3)に書かれているので、そういうのが提起されたと思うのですね。私がよくわから ないのは、派遣先が労働者に雇用契約の申込みをするときに、派遣先が既にもう違法な派遣を受 け入れているのに、こっちから雇用契約の申込みというのは事実上はできないので、訴訟をやっ たときに、それがどのように使えるのかなというのを少し鎌田委員にお聞きしたいと思います。 雇用契約の申込みを労働者がやるか、派遣先がやるかでも、労働契約の申込みよりは、違法が起 きているということで、事実上、雇用が派遣先にあるというみなし規定のほうが、むしろいいの ではないかなとは思っています。鎌田委員から、前回の研究会の派先からの雇用申込みについて、 少し教えていただければと思います。 ○清家部会長 鎌田委員、よろしいですか。 ○鎌田委員 研究会は、私だけではなくてほかの委員の先生方も入っていますので、必ずしも私 が代表して話すというわけではないのですが、私の理解をお話したいと思います。2つほどご質 問があったと思います。1つは雇用契約申込み義務を発生させて、民事効を付与するという前提 ですね。民事効を付与することを前提にした場合に、どのような効果が考えられるか、あるいは どのような救済手段が考えられるかということではないかと思うのです。1つは、これは通常の 民事訴訟で労働者のほうに債権があるということになりますので、その履行、つまり申込みをす ることの履行を請求するということになりますので、それは雇い入れなさいということの請求を するということになります。どのように強制的に実現するかという事実論は、研究会の中でも細 かく議論したのですが、そこはちょっとカットさせていただきます。いずれにせよ、債権の内容 の実現ということは、通常の債権の場合と全く同じ。それがどうしてもうまくいかないという場 合には、いわゆる債務不履行の問題で、損害賠償ということになろうかと思います。いずれにし ても、第1段は強制的に内容の実現ということになります。  もう1つ、いわゆるみなしとの関係で、研究会報告では特に(1)のような立場をとらなかったと いうことなのですが、これは研究会の考え方の基本は、やはり労働者にとってそれが本当にいい ことなのかどうかと、ちょっと考えたのですね。例えば雇用関係の成立みなしということを言っ た場合に、これは長谷川委員もよくご存じのように、労働者の意思にかかわりなく、みなすとい うことになります。それが果たしていいのか。三党案はそこのところは工夫されているといいま すか、要するに労働者のほうで通告をするということですから、労働者の意思が介在しているわ けですね。そういう意味では、少し研究会で危惧した点が解消されていると思います。しかし、 前回ちょっとお話しましたように、そうすると法違反の効果が個々の労働者の意思にかかわって 発生するとか、しないとかいうことになって、それはそれでいいのだろうかということをまだ思 っています。  もう1つ、研究会のほうで、とりわけ(3)の発生させるということと、(4)の行政勧告を組み合わ せるということもちょっと議論していたのですね。どういうことかといいますと、行政勧告だけ ではなくて、要するに民事効と行政と、両方でいくというのですかね。それはなぜかというと、 労働者の立場からいうと、裁判を起こす人は裁判を起こすかもしれませんが、かなり負担と言え ば負担なのです。それに対して、行政勧告と組み合わせたりすると、より容易にアクセスすると いう方式も考えられるのではないか。ただ、いま長谷川委員がおっしゃったように、民事的な効 果を発生するという方法は、労働者の権利意識から言って1つの考え方ではないかと思っていま す。以上です。 ○長谷川委員 三党案が出してきた、労働者のほうから強制的に雇用契約が派遣先にいくという、 会社分割のときの労働契約承継法と同じようなものは、労働者の意思が反映されないということ で、それで作ったのだと思うのですが、私はそれは鎌田委員がおっしゃったように、労働者から というのはちょっと問題があるなと思っています。例えば労働者の意思でなくて、違法があった ときに、雇用契約があったとみなすとした場合に、労働者の意思は退職の自由で担保できるので はないか。だから、嫌だったら退職すればいい話だから、そうしたら退職の自由でその労働者の 意思は反映できるのではないかと思ったのですね。  もう1つは、行政の指導勧告と雇用契約の申込み義務です。このときに労働者がどっちを選ん でもいいという並列なのかどうなのか。要するに、こっちでも、こっちでもということが、でき るのかどうなのか。そういう並列があり得るのかどうなのかということです。それと雇用契約申 込み義務を発生させたときの法的効果ですが、これは民事効果が損害賠償だけですか。それとも、 地位も同時に発生するのかどうなのか。 ○鎌田委員 3つほどご質問をいただきました。まず3つ目について、申込み義務を発生させた 場合、損害賠償だけなのか。そうではなくて、あくまでも雇用申込みということを求める地位の 確定を求める、そのような訴えができると考えています。  2番目に、雇用申込み義務と行政勧告並存について、これは行政のほうにお考えをお聞きした いと思います。  いちばん最初の質問で、みなした上で退職すればいいのではないか。退職の自由という、これ は1つの考え方なのですが、例えば有期で雇われている人が有期で移転したとします。例えば3 月契約、3月契約の有期の場合は、労働者もやむを得ない場合以外は辞められないのでしたか。 ○長谷川委員 そうですね。 ○鎌田委員 だから、つまり退職の自由はないと思うのですね。3月という形で移転したら、3月 は働かなければいけない。そうでないのかもしれませんが、その辺のところは退職の自由で処理 できるかどうかというのは、私はやや疑問があるかなということです。以上です。 ○長谷川委員 そうですね。例えば有期でも、長く有期をとっていたら、それはもっと拘束され ることになりますよね。 ○鎌田委員 半年とか1年とかだったら、本当にそれだけ働かなければいけないということです か。 ○長谷川委員 これは強制的に雇用主が移転するので、そのときにあのときの労働契約承継法み たいになる可能性はあるなと。そこはどうクリアするかというときに、退職の自由があるではな いかとなったのですが、今日、鎌田委員にまたご指摘されたので、それは次回までもうちょっと 考えてみたいと思います。 ○清家部会長 事務局からお願いします。 ○鈴木課長 雇用申込み義務と行政の勧告と訴訟の関係です。これは条文の立て方によりますが、 例えば両方を並列するというケースでしたら、雇用申込み義務を実体規定として、民事効ありの 規定を1つ立てた上で、それと別の条文で、その義務を履行しない場合には、行政は勧告できる という形をとるケースが考えられると思います。その場合は、行政のほうに申告をしていただけ れば勧告を行いますし、またその実体規定のみで行政の勧告を前置せずに、労働者が自ら訴訟を 起こして判決を得ることも可能、という建て付けもできるかと存じます。 ○長谷川委員 いま並存させているという話のときに、必ずしも訴訟にいく場合に、指導、勧告 については、前置だとか、そういうことではないですよね。 ○鈴木課長 前置ではなくて、実体規定から直、民事効を与えておけば、裁判のほうにいけると いうことも可能だと思います。 ○高橋委員 先ほどの繰り返しになってしまいますが、鎌田委員に研究会のときの議論で、どん な議論、それがあったかどうかだけでもご紹介いただきたいと思います。先ほど申し上げたとお り、この規定について議論するときは、テクニカルな話以前の問題として、採用の自由の原則と か、契約の自由の原則といったものを十分に考慮しなければならないと思うのです。研究会でこ のご検討をされたときに、その原則の観点からのご議論はどのようなものがあったのか、ご紹介 いただけたらと思います。 ○清家部会長 鎌田委員、お願いします。 ○鎌田委員 採用の自由については、それがこういったような違法派遣に対する労働者の救済措 置を導入するためにすることの否定的な理由になるかどうかということで、どのような議論をさ れていたのか。もし事務局でご存じなら補っていただきたいのですが、私の理解ですと、要する に違法な状態が前提になっているわけですね。つまり、やってはいけないことをやっているわけ です。そのときに採用の自由ということを、例えばこういった雇用責任を受け入れるわけですが、 派先のほうに採用の自由ということを第一義的に考える必要はないのではないかと考えたのでは ないかと記憶しておりますが、当時、研究会の中でどのような議論が行われたのかというのは、 いま詳細には覚えていません。 ○清家部会長 事務局からお願いします。 ○鈴木課長 大体、鎌田委員がおっしゃったとおりですが、もともとは違法な派遣を指導する際 に、派遣自体がなくなるという可能性があるので、派遣労働者にメリットがあるような違法の解 決方法を模索しようと、ここがスタート地点だったかと思います。それで、ヨーロッパ型のみな し雇用も考えられるということで、違法のペナルティということが前提で議論されていたので、 確かに採用の自由という話は若干、話題にはなりましたが、そこが大きなネックとなって、例え ばみなしは駄目だという議論ではなかったかと存じます。 ○高橋委員 それに関連して、そういう議論があったかどうかの照会なのですが、違法な状態が あるのだから、それを労働者救済の観点からということだったという議論のことはわかったので すが、素朴な疑問として、そういう違法なことをやっている企業に労働契約関係を発生させる、 要するに悪い企業なのです。悪い企業に労働契約関係を移転する。なぜ悪い企業に移転させるの かというのが、ちょっとよくわからなかった。そういう議論は何かあったのでしょうか。 ○鈴木課長 その辺りは、最終的には労働者の意思の問題だろうということで、研究会報告の中 でも、労働者の意思ということをかなり重視して書いてありますが、最終的にはそこに収斂させ て、この報告書はできている。要は、労働者の意思をできる限り反映させて、望む場合にはそう いった企業に就職、直接雇用させると。ただし、望まないケースもあろうから、そういうケース には強制的に発生するのはいかがなものかという建て付けで、この報告書はできているかと思い ます。 ○秋山委員 昨年の部会にありましたように、不法行為があった場合は罰則の強化と、それにと どめておくのでよろしいのではないかと思っております。 ○清家部会長 罰則の強化については、次の論点に及ぶわけですが、今日はもうだいぶ時間がき ております。しかしもしお許しいただければ、論点の9の「罰則」の所と、論点の10の「法律の 名称および法の目的」の所も、議論をしたいとは思っているのですが、少し時間が押しておりま すので、これは次回にいたしましょうか。9「罰則」の所、あるいは「名称および法の目的」の所 も、時間をとって議論したほうがよろしいかとは思いますが。 ○長谷川委員 私は罰則強化をしても、そんなに効果があるのかと思います、はっきり言えば。 だから、罰則金を多くするというのはいいですよ。罰則を強化するというのはいいのですが、私 はそれよりは違法があった場合はみなし規定のほうが、非常に効果があるのではないかと思いま す。だから、どちらかというと、罰則を強化するよりは、みなし規定の導入のほうがベターだと 思っています。  それと法律の名称ですが、前のときもお話しましたように、変えてもそんなに何か問題がある ようでもないのではないかと。したがって、名称と法の目的は三党案の言うように直してもいい のではないかなとは思います。 ○清家部会長 罰則と名称について、もし使用者側からも何か一言ありましたら。 ○高橋委員 今回、派遣先への罰則の導入ということが謳われております。例えば資料で申し上 げたら18頁の派遣先に対する罰則の導入ということです。これを見させていただくと、左側の法 違反の内容として、例えば最初の「適用除外業務と知りながら労働者派遣を受け入れた場合」、あ るいは3番目の「無許可の派遣元から無許可と知りながら労働者派遣を受け入れた場合」、あるい は2番目の四角の中にある「無届けの派遣元から無届けと知りながら労働者派遣を受け入れた場 合」、これらは先ほど熱い議論があった直接雇用みなし規定の対象となる行為です。そうすると、 先ほどのご議論では直接雇用みなし規定は一種のペナルティ的なものなのだという議論がありま したが、そこでペナルティを課して、さらにまた罰金を掛けるという、二重のペナルティという 建て付けになっているのは、過酷すぎるのではないかという印象を持ちます。 ○長谷川委員 三党が出してきたのが、他のいろいろな法律で罰則の書き方があると思うのです が、他の法律などとの関係を見た場合どうなのでしょうか。次回でいいですが、その辺はちょっ と事務局から教えていただきたいと思います。 ○鈴木課長 次回資料をお出ししますが、最近、経済関係の法律違反について、特に罰金を引き 上げて、その制裁を有効化するというケースがありますが、どうもそういった例を参考にこの額 は決められているようです。ただ、法律全体から見ると、どちらかと言えばそれはマイナーな規 定ですので、バランス的にいいかどうかというのは、また皆さんにご判断いただけたらと思いま す。 ○清家部会長 大変申し訳ないのですが、そろそろ終了の時刻が近付いてまいりましたので、次 回はまず本日積み残しの論点について、ご審議いただきたいと思います。さらに、特に意見の隔 たりが大きかった登録型派遣のあり方、あるいはこれは前回議論したところですが、製造業務の 派遣のあり方等を中心に、各論点について、再度労使のご意見を伺いたいと思っております。だ んだん詰めの段階に入ってまいりますので、今後の審議の進め方について、労使の委員の方から ご意見等がありましたら、この際、ご発言をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○高橋委員 本日も含めて、10月15日以来、各論点項目に従って議論させていただいて、かな り労使で意見を述べ合ったのではないかと思います。次回以降の審議に当たっては、もし可能で あるならばですが、公益の委員の先生方に、労使のこれまでの主張等を一度整理をしていただい て、どのような資料なのかというのは、ちょっと私もいま具体的なイメージを持っているわけで はありませんが、とりあえず想定されている答申に向けてのより建設的な議論が可能となるよう な工夫をしていただきながら、お考えをいただければというお願いです。 ○清家部会長 労働側はよろしいですか。 ○長谷川委員 よろしいです。 ○清家部会長 それでは、ただいま高橋委員からご発言がありましたような形で、労使の特に意 見の隔たりの大きな論点については、何か議論の参考になるような資料を、次回私ども公益委員 のほうから準備させていただきたいと思います。これについては、これまでの議論を整理すると いう意味ですので、あくまでも議論は次回、労使で深めていただきたいと思いますが、そういう 意味で資料を用意して、次回の部会で再度ご議論いただくという取扱いにさせていただきたいと 思いますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○清家部会長 それでは、そのようにさせていただきます。予定の時間となりましたので、本日 はここまでとしたいと思います。事務局より、何かありますか。 ○大塚補佐 次回のご連絡です。次回第139回労働力需給調整部会については、11月26日(木) 午前9時から、場所は厚生労働省17階の専用第21会議室で開催いたしますので、よろしくお願 いいたします。 ○清家部会長 ただいま事務局からお話がありましたように、次回の部会は来週の木曜日、午前 9時からの開催となります。よろしくお願いいたします。以上をもちまして、第138回の労働力 需給制度部会を終了いたします。なお、本日の署名委員としては、使用者代表は市川(隆)委員、 労働者代表は長谷川委員にお願いいたします。それでは、委員の皆様、お忙しいところありがと うございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)