09/11/19 第10回社会保障審議会医療部会議事録 第10回社会保障審議会医療部会          日時 平成21年11月19日(火)          9:30〜          場所 厚生労働省省議室(9階) ○医療制度調整官 定刻になりましたので、ただいまから第10回社会保障審議 会医療部会を開会いたします。本日は急な日程調整にもかかわらず、委員の皆 様方におかれましては、お忙しい中ご出席をいただき、誠にありがとうござい ます。急な日程調整になりまして、いろいろご迷惑、ご面倒をおかけいたしま した。  まず、初めに、委員の先生方の出欠についてご報告を申し上げます。本日、 代理の方にご出席をいただいておりますが、堤健吾委員、村上信乃委員がご欠 席です。また、上田清司委員、尾形裕也委員、邉見公雄委員、山本文男委員か らご欠席との連絡をいただいております。なお、大西委員については、若干遅 れて来られるとの連絡を事前にいただいております。  それでは議事に入ります前に、お手元の資料のご確認をいただきたいと思い ます。議事次第、座席表、委員の先生方の名簿のほか、資料1から資料7まで、 資料2と資料3については、それぞれ枝番号で2-1、2-2、3-1、3-2という形に なっています。それから、海辺委員、竹嶋委員、中川委員からご提出がありま した資料3点があります。そして参考資料1から5まで、配布資料としてイン フルエンザの流行状況という形になっています。審議の途中でも確認いただき まして、不足等ありましたらお知らせをいただければと思います。事務局から は以上です。以後の議事進行につきましては、齋藤部会長、よろしくお願いい たします。 ○部会長(齋藤) おはようございます。それでは、いまから12時まで時間は 十分ありますので、十分議論を尽したいと思います。まず、委員欠席の際に、 代わりに出席される方の扱いについては、事前に事務局を通じて部会長の了解 を得ること及び当日の部会において承認を得ることにより、参考人として参加 し発言をいただくことを認めることとしています。本日の会議について、堤健 吾委員の代理として、社団法人日本経済団体連合会経済政策本部長藤原清明参 考人、村上信乃委員の代理として、社団法人日本病院会常任理事石井暎禧参考 人のご出席をお認めいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。                (異議なし) ○部会長 ありがとうございました。それでは、議題に移りたいと思います。 本日も、平成22年度の診療報酬改定に向けた検討として、意見交換をするわけ ですが、その前に、最近、医療提供体制に関する状況について様々な出来事が ありました。それを、まず事務局から説明を受けたいと思います。あとの意見 交換に時間をかけたいので、説明はなるべく簡潔にお願いいたします。 ○医療制度調整官 本日は、参議院の厚生労働委員会で一般質議が行われてい まして、事務局から総務課長などが国会対応に行っていますので、私からご説 明をさせていただきます。  資料1「地域医療再生基金」をご覧ください。本年度の平成21年度の補正予 算で、総計3,100億円を計上しました地域医療再生基金ですが、ご案内のとお り、都道府県に基金を設置して、各医療県域で抱えている課題についてプラン を立て、複数年度で取り組むというようなスキームです。平成25年度までの5 年間ということでしたが、いろいろ見据えての財源捻出等もありまして、当初 100億を10箇所程度、25億を84箇所程度、都合各都道府県で2箇所ずつ程度 と考えていましたが、一率に25億円×各都道府県2箇所を目処に、94箇所と いうことで事業の中身の見直しを行いました。  各都道府県からは、11月6日までに計画原案をお出しいただいております。 その中で、地域医療再生基金を活用し行う事業の例ということで、2頁以降に いくつか代表的なもの、当然各都道府県でバリエーションはありますが、いろ いろな取組を盛り込まれた計画が出ていますので、代表的なものを書かせてい ただいています。  まず、医師確保の関係ですが、やはりどこでも医師の確保に取り組みたいと いうことですので、寄附講座を設置する、あるいは奨学金制度を設けるといっ たこと。さらには、地域医療連携ということで、医療支援センターを設置する、 あるいはそういったもののインフラといいましょうか、基盤整備としてのネッ トワークの整備といったところに取り組まれています。あるいは、分野ごとの 課題ということで、救急、周産期、さらには小児医療の関係での救急設備の整 備などに取り組まれたりといったことで、各地域においていろいろな計画が立 てられている状況です。今後中身を審査のうえ、なるべく早期に交付額、交付 決定等の段取りを進めてまいりたいと考えています。  続いて資料2ですが、連日報道されています行政刷新会議における「事業仕 分け」です。医療提供体制関係では、その中で2点議論の対象になったものが あります。資料2-1「医師確保、救急・周産期対策の補助金等」、資料2-2「8020 運動特別推進事業」の2つが対象となりました。詳しくどのような資料で当日 討議がなされたかというのは、私ども厚労省としての説明資料が、それぞれ2、 3頁に表を付けています。医師確保、救急については、例えば医師の派遣事業 や救急関係の補助金などが対象になったわけですが、議論がなされた結果、刷 新会議のワーキンググループの結論としては、医師確保、救急に関しては、予 算要求の縮減、半額目途ということです。  一方、8020は歯科の関係の運動ですが、こちらも資料の2、3頁に書いてあ りますが、どういう目的で事業を展開しているのか、さらにはそれに関連する データの動向、成果の動向はどうなっているのかなどをベースに議論を行いま した。その結果、事業の中身や使われ方といったものについて改めて考えると、 事業の中身を見直してはどうかというようなご提言をいただいています。いず れにしても、これから来年度予算編成に向けての作業が進んでいくことになり ますので、私どもとしても、中身について、政務三役としっかりご相談、ご指 示を仰ぎながら、予算編成作業に当たってまいりたいと考えています。  次に、医療提供体制に関する、前回8月26日以降にまとまりました新たなる レポートという意味では、精神保健福祉のあり方に関する検討会で報告書がま とまりましたので、精神・障害保健課長からご紹介申し上げたいと思います。 ○精神・障害保健課長 お手元の資料3-1と3-2をご覧ください。3-2が報告 書本体ですが、大部ですので、3-1の概要を用いて説明をさせていただきたい と思います。まず、今回報告されました「精神保健医療福祉の更なる改革に向 けて」というものの背景ですが、1頁の上をご覧ください。平成16年9月に、 精神保健医療福祉の推進ということで、厚生労働省の改革本部から「精神保健 福祉の改革ビジョン」が出されました。これは、平成16年9月から概ね10年 間を目途とする施策の目標と、その具体的な内容でした。ちょうどこの平成21 年が中間点に当たるということで、改革ビジョンと推進状況の評価と、今後の 取組について、有識者による検討を経て方向性を出していただこうということ で、検討会を設置をして検討していただいた、その報告書であります。具体的 には、その上に小さな字で書いてありますが、「今後の精神保健医療福祉のあり 方等に関する検討会」を昨年の4月より、計24回設けました。具体的なメンバ ーは、いわゆる精神障害の当事者、患者さんにもお入りいただき、それを支え ていらっしゃる家族の方や専門家の方、また支援者として病院関係者や福祉関 係者にお入りいただいて、検討したものです。それが、平成21年9月にまとめ られました。  具体的な内容に入る前に、1頁の下の「現状」をご覧いただきたいと思いま す。まず、精神疾患患者がどのような状況にあるかです。患者総数は303万人 ということですが、そのうち入院患者は平成11年と平成17年で、総数として は概ね大きな変りはなく32万人前後ということです。ただ、その内容について は若干の変化がありまして、統合失調症の患者が21万人から19万人強に減っ てきています。代りに高齢化等を反映しまして、認知症の患者が入院患者とし ても、37,000人から52,000人と増えてきています。  そういった背景で、同じスライドの右下をご覧いただきたいと思います。各 国の精神病床数の推移です。日本の場合は、1960年代から病床を拡大して量を 増やしてきた形で、人口1,000人当りの病床数は、欧米の諸外国に比べまして かなり多いということです。もちろん、病床の定義については各国でそれぞれ 違いがあります。そういった点も考慮する必要はありますが、入院患者さんの 動きはこのような状況です。  一方、外来の患者さんを見てまいりますと、この数年間でいわゆるうつ病を はじめとする気分障害の患者さんが相当増えてきていることが、実態として窺 われます。精神病床への入院患者さんの状況を見ますと、長期入院の状況が相 変わらず続いてします。在院期間をご覧いただきますと、10年以上入院してい らっしゃる方々が、相当数いらっしゃるということです。  また、入院患者さんの高齢化も進んでいまして、統合失調症による年齢別入 院患者数を見ても、現状でも60代以上の方がかなり増えていますが、平成26 年、要するに5年後を見ますと、半分以上の方が60代以上というような形の構 成になることが推定されています。  こういった各国の状況や現状までの推移を踏まえまして、近年の主な課題と して認識されている部分が、左下に書いてあります。統合失調症については、 歴史的な長期入院患者が存在をしているということで、地域移行と地域生活の 支援が課題になっています。また認知症については、高齢化に伴い急速に増加 している中で、精神科病院への入院患者が増えているとともに、長期化してい る傾向にあるというところが課題となります。  一方、気分障害の患者については、患者数が大きく増えていることや、この 11年間続いています3万人を超える自殺者対策とも関連してくる課題ではない かと思います。また、患者さんの高齢化等を踏まえまして、精神疾患の患者さ んの身体合併症への対応が大きな課題になってくるということです。  そういった現状等を踏まえまして、大きな方向性ということで、もう一度1 頁のスライドに戻っていただきたいと思います。上のほうの□で囲った部分に 3つ●があります。ここが基本的な方向性になります。「改革ビジョン」で掲げ られました、精神疾患患者さんの「入院医療中心から地域生活中心へ」という 基本理念については、引続き今後5年間、推進していくべきであるということ でした。また、精神疾患にかかった場合でも、質の高い医療と、症状や患者さ んの希望等に応じた、いわゆる患者さんの自己決定というようなところも含め まして、適切な医療・福祉サービスを受け、地域で安心して自立した生活を継 続できる社会を実現していくべきであるということでした。そして、精神保健 医療福祉の改革を基本的な方向性に沿って、更に加速していくべきであるとい うご意見をいただいたところです。  具体的な進め方の柱については、その下に書いてある4つの柱「精神保健医 療体系の再構築」、「精神医療の質の向上」、「地域生活支援体制の強化」、「普及 啓発の重点実施」と、それぞれのところに具体的な対策メニューが出てまいり ます。こういった4つの柱を実施することにより、入院医療中心から地域生活 中心へというところを更に発展させて、地域を拠点とする精神障害の患者さん と一般の方との共生社会の実現を図るべき形で、報告書がまとめられています。  なお、こういった施策を実施するに当たりまして、今回の検討会では統合失 調症の入院患者さんの数は現在約20万人弱ですが、平成26年までに15万人ま でに減少させようという新たな目標値についても、合意が得られたということ です。時間の関係もありますので、以下は簡単にご説明をさせていただきたい と思います。  2頁は1「精神保健医療体系の再構築」で、この部分が主に医療部分ですので、 少し追加的に説明をさせていただきたいと思います。基本的な考え方としまし ては、精神保健医療水準の向上と、医療機関の地域医療の機能充実を促進する と。先ほども申し上げましたが、急性期、身体合併等々、ニーズの高まってい る領域への重点化をしていこうということです。そういった中で、改革の具体 像としては、やはり地域生活をきちんと支援していく医療の観点から、在宅、 外来の観点からすると、訪問診療や訪問看護等の在宅、そしていわゆるアウト リーチといいましょうか、出前で出かけて行くといった診療の充実がさらに必 要であるということがまとめられました。  また地域で生活する患者さんが増えるということになりますと、特に質も含 めて一般の精神科救急の充実確保が重要になってきます。また、現在は主とし て、措置入院等の対応が中心になっていますが、一般の患者さん自身が自ら変 調を感じてかかっていく救急部分についての質的向上も含めて、対応が重要で あるというご指摘を受けたところです。  併せて入院医療については、患者さんが変調を来たして入ってくる場合の、 急性期への対応をさらに充実させていく必要があるのではないかということで、 救急・急性期医療の確保の点について、その必要性が強く謳われ、併せて安心 して患者さんが医療機関にかかれるようなことから、人員基準の充実も含めま して、より質の高い医療を求めたいというご意見でした。  一方、長期の療養についても非常に重要な部分ですが、この部分については 障害福祉の各種サービス、それから介護保険の各種サービスの充実と合わせて 連携をして、入院患者さんのうち地域移行の可能な方については、地域移行を 促進していくことを進めていくべきであるということでした。  そういった文脈の中で、先ほど冒頭でも申し上げましたが、統合失調症で入 院中の患者さんについては、その患者さんの病態等や将来的な推移なども踏ま えまして、現在196,000人の入院患者さんを平成26年頃までに15万人ぐらい まで減らして、地域移行を進めていくべきであるという方向性が示されたとこ ろです。またこういったことを進めるに当たりましては、地域医療再生の中で の枠組を、これから検討していく必要があるということで、地域医療体制の中 での精神科医療の位置づけ、特に精神科救急をはじめとする部分については、 四疾病五事業への位置づけについても、今後検討していくべきであるというご 意見をいただいたところです。  医療について、やはり患者さんの地域生活を確保する観点から、在宅の医療 の充実と、それに伴なっての救急医療、そして急性期の入院医療を充実させて いくべきであって、それに当たっては患者さんが安心してその医療にかかれる ように、質的な充実も併せて図っていく必要があるというような方向性がまと められたところです。以下、文字で書いてある所は説明をしたところですので 省略をさせていただきます。  3頁の下に2「精神医療の質の向上」と書かれています。この部分で特に議論 となったところは、日本の精神科医療の医薬品の使い方という所で、諸外国と 比べて薬の使い方ですが、多剤の併用療法の割合が非常に高いということです。 そういった部分については、診療の質の向上ということで、もちろんそこは医 療従事者のご判断による部分ですが、そういったより適切な使用方法、そして 地域移行に結びつくような処方というような形を考慮したうえで、促していく べきであるといった方向性がまとめられたところです。  4頁は、3「地域生活支援の体制の強化」です。こちらは、主に障害福祉サー ビスと医療サービスで連携して進めていくべきであるということです。今回の 意見の中では、特に医療と関係する部分については、障害福祉サービス等の枠 の中ですと、ちょうどその下ですが、サービス等の充実の中で、やはり在宅で 生活をしていく中では、ショートステイが使いやすくて、充実する必要がある と強く出されたところです。併せて、患者さんや家族の視点に立った支援の充 実ということで、特に家族支援の充実とピアサポートの推進というところを、 福祉的な相談支援においても十分に配慮すべきであるというご意見がありまし た。  一方医療サービスについては、先ほどと重なる部分もありますが、地域生活 を支援するということで、精神科救急医療体制の確保、それから地域に出てし まいますと、未治療や治療中断者等に対する課題が出てまいります。そういっ た部分について、どのように適切に対応するか、併せて精神科デイ・ケア、訪 問看護等について、その目的に沿った形での内容の充実というものが、必要に なってくるだろうということでした。  最後4の「普及啓発」ですが、精神疾患の患者さんについては、国民一般の 方に適切に理解していただくということが、地域に暮らしていくうえで重要な 柱になってくるということで、普及啓発についても引続き重点的に行うという ことです。いままでの評価をみますと、改革ビジョンで掲げられた「精神疾患 は誰もがかかりうるのだ」というところについては理解が進んでいるというデ ータが得られましたが、具体的な疾病についての理解はまだまだ大きく遅れて います。今後の方向性としては、国民一般への啓発からターゲットを明確にし た普及啓発をして、「だれに」「何を」「どのように」伝えていくかというような ことを重点的に明確にして詰めていくべきであるということで、改革の具体像 に書かれていることを進めるべきであると示されたところです。  5「目標値の設定」は、新たな目標値として地域移行の観点から、統合失調症 による入院患者数について新たに掲げられたというところが、今回の検討会の 報告書による新しいところです。概要は以上のとおりですが、基本的に今回の 報告書については、いままでの方向性をさらに加速していくべきであって、地 域移行に向けての様々な体制、特に医療については在宅、急性期、入院医療に ついても急性期の医療の充実を図っていくべきというような方向性が出された ところです。今後は、この検討会の結果を踏まえまして、私どもとしても施策 の充実に努めていきたいと考えています。以上、簡単ではございますが、報告 とさせていただきます。 ○渡辺保険医療企画調査室長 保険局医療課の保険医療企画調査室長の渡辺で ございます。医療課長が国会論議で遅れていますので、資料説明を私からさせ ていただきます。本日は平成22年度診療報酬改定の視点等について、基本的な ことについて説明しますが、お手元の資料4、5、6を参照いただければと思い ます。まず資料4ですが、これまで本部会におきまして7月9日、8月26日の 第8、第9回において、この診療報酬改定の基本的視点等についてご議論いた だきました。この結果については、参考資料3に、各委員の発言の要旨をそれ ぞれのテーマごとに再構成をし、整理をさせていただいています。本日お出し しています基本的視点、情報等については、この参考資料3の各委員の発言を 基に、事務局で整理をさせていただいたものです。  資料4は、「平成22年度診療報酬改定の視点等について」です。まず【基本 認識・重点課題等】ですが、前回の診療報酬改定においても、医師不足などの 課題が指摘される中で所要の改定を行ったところですが、こういった課題につ いては現状としましては、必ずしも解消しておらず、我が国の医療は、危機的 な状況に置かれているということが、基本的な認識です。このような基本的な 認識に立ちまして、次期平成22年度の診療報酬改定の重点課題としては、「救 急、産科、小児、外科等の医療の再建」及び「病院勤務医の負担の軽減」等を 改定の重点課題としていくこととしてはどうかということです。  また、診療報酬改定に当たりましては、補助金の役割との分担を十分に踏ま えるべきであることも、1つのポイントになっています。また、こうした基本 認識や重点課題を踏まえた上での基本的な方向という点については、これまで のご議論の中では、地域医療が危機的な状況にある中で、医療費全体の底上げ を行うことにより対応すべきとのご意見がある一方で、保険財政が非常に厳し い状況の中では、限られた財源の中で医療費の配分の大幅な見直しを行うこと により対応すべきという意見があったところです。こうした状況を踏まえまし て、次期診療報酬改定の基本的な方法について、本日はご議論いただきたいと 思います。  2頁目の【改定の視点】ですが、先ほど上げました重点課題以外にも、国民 の安心・安全を確保していく観点から、以下のような4つの視点に沿って改定 を行っていってはどうかということです。[1]「充実が求められる領域を適切に 評価していく視点」。[2]「患者から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で、 生活の質にも配慮した医療を実現する視点」。[3]「医療と介護の機能分化と連携 の推進等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点」。最後に[4]「効率化 の余地があると思われる領域を適正化する視点」、この4つの視点に沿って改定 を行ってみてはどうかということです。  続いて資料5ですが、いま申し上げましたような視点に沿いまして、具体的 な改定の「方向」です。まず1.「重点課題関係」としては、大きく2つの柱を 掲げています。(1)救急、産科、小児、外科等の医療の再建ということで、地域 連携による救急患者の受入の推進、あるいは小児や妊産婦を含めた救急患者を 受け入れる医療機関に対する評価、そのほか新生児等の救急搬送を担う医師の 活動の評価、後方病床・在宅療養の機能強化、手術の適正評価等々を、重点課 題関係の基本的な方向としてはどうかということです。  (2)病院勤務医の負担の軽減については、これも前回改定でいくつか行ってい ますが、医師以外の医療職が担う役割の評価、あるいは医療職以外の職員が担 う役割の評価、さらに前回改定では医療事務の補助を行う医療クラークの配置 の評価等を新たに行っています。こうした医師の業務そのものを減少させる取 組に対する評価といったことを、基本的な方向と考えてはどうかということで す。  また、先ほど説明しました2.「4つの視点関係」では、まず1点目の視点の 関係としては、質の高い精神科入院医療の推進、歯科医療の充実、イノベーシ ョンの評価等を方向としてはどうかということです。そのほか、これまでの医 療部会で必ずしも十分ご議論をいただいていないところですが、事務局として はがん医療の推進、認知症医療の推進、新型インフルエンザ対策等感染症等対 策の推進、肝炎対策の推進といった辺りを、1点目の視点の方向として位置づ けてはどうかということです。それぞれについての詳細な施策の現状等につい ては、参考資料1に掲げていますので、ご参照いただければと思います。  2点目の視点の関連としては、医療の透明化・分かりやすさの推進、医療安 全対策の推進、心身の特性や生活の質に配慮した医療の実現、重症化の予防等 といった辺りを、基本的な方向として位置づけてはどうかということです。  3点目の視点との関連では、質が高く効率的な急性期入院医療の推進、回復 期リハビリテーション等の機能強化、在宅医療・在宅歯科医療の推進、医療職 種間、医療職種・介護職種間の連携の推進といった辺りを基本的な方向として 位置づけてはということです。  それから最後の視点ですが、これに関連しては後発医薬品の使用促進、医薬 品、医療材料、検査等に関する市場実勢価格の反映といったことを、基本的な 方向として位置づけてはどうかということです。以上が、資料5の基本的な方 向関係です。  最後に資料6ですが、「後期高齢者医療制度に係る診療報酬について」です。 この資料6の最初のほうでは、いわゆる後期高齢者といいますか、老人診療報 酬に関する若干歴史的なことが書いてあります。ご案内のとおり昭和58年の老 人保健法に基づきまして、当初この「老人診療報酬点数表」というものが「医 科診療報酬点数表等」とは別建てで付けられていたわけですが、平成18年の診 療報酬改定において、これらについては基本的には1本化されたわけです。[3] その後ですが、ご案内のとおり、平成20年の後期高齢者医療制度の創設に伴い まして、新たにこの後期高齢者に当たります診療報酬体系を別建てで作りまし た。その中には、ご本人が選んだ高齢者担当医が継続して関わる仕組みとして の後期高齢者診療料等の仕組みというものも、新たに創設されたわけです。  しかしながら、その後これらの施行の後に、こうした診療報酬点数について は、1つは年齢による差別ではないかというようなご議論、あるいは必要な医 療が受けられなくなるのではないか等々のご指摘を受けたところもあります。 また一方で、中協で行った調査によりますと、例えばいま申し上げました後期 高齢者診療料については、届出期間のうち算定しているのが約1割弱というよ うなことで、なかなか活用が進んでいないという実態も明らかになったところ です。こうした点を踏まえまして、どうしていくかですが、後期高齢者医療制 度全体については、お手元の資料7にもありますように、今後こういった対策 会議等を設けまして、制度そのもののあり方については、改めて検討していく ことになっています。こういった本体の見直しに先行しまして、次期診療報酬 改定においては、75歳以上というこの年齢に着目した体系については、基本的 には廃止をしていくと。ただ廃止をするといいましても、個々の点数について は、もちろん廃止をするものもあれば、一方でこういった75歳以上という後期 高齢者に限らず、全年齢に適用すべきというようなものもあるかと思います。 こういった具体的な項目については、もちろんこれから中医協で検討してまい りますが、基本的な方向としては、この年齢に着目した体系というものについ ては、廃止をすることとした上で、個々あとは具体的なところを検討していく といった基本的な方向でどうかということです。以上が、診療報酬改定につい ての基本的な方針、あるいは視点についての事務局のたたき台ですが、本日は これに沿ってご議論いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたしま す。 ○部会長 ありがとうございました。以上の説明、資料を踏まえて、「平成22 年度の診療報酬改定に向けて」、委員の皆様からご意見を伺いたいと思います。  なお、予め資料を提出いただいている委員もありますが、ご指名は特にしま せんので、補足等の説明の必要な方があれば、併せてご発言いただきたいと思 います。また、委員会の活発な意見交換をお願いできれば、つまり、少なくと も1回は皆さんに発言していただきたいので、お1人当たりのご発言はできる だけ短く、簡潔にお願いいたします。 ○加藤委員 加藤です。前回も発言させていただきましたので、重複すること もあると思いますが、お許しいただきたいと思います。  重点課題に基づいて、主に小児、産科医療に関して発言させていただきます。 少子化に向けた現在、病院小児科医、病院小児科小児外科医、産科医、小児の 心の問題に対応する児童精神科医等が不足していることが指摘されている現在、 子供を健全に育成させるためには、何らかの努力が必要であると思います。  既に出ました、「救急」とありますが、やはり小児がすべからく抜けていると 思います。小児、産科を代表して発言しますので、本日はすべて小児が入りま す。  小児救急、小児外科、産科、児童精神等の医療の再建と病院勤務医の負担の 軽減を重大課題に位置づけることは、これまでの医療部会での議論の方向とも 一致していて、賛成できることですが、更なる評価がなされるべきであると考 えます。  5点について述べます。小児救急、産科、小児科全体、小児外科、小児・児 童精神科等の医療の再建には、次のようなことが肝要であると思います。  地域医療による小児救急患者の受入れの推進ですが、各地域の診療所の小児 科が連日大変多忙な診療を行っていることは高く評価するところです。しかし、 多くが休診となります土曜日午後、日曜日、祝日においては、24時間の診療を 継続する医療機関、特に一定以上の水準で診療できる医療機関を適正に評価し ていただかない限り、地方連携はなかなかうまく進まないのではないかと思い ます。一定の基準を満たす医療機関には、より高い評価がなされるべきで、平 たく評価するのは得策ではないと考えています。  土曜、祝日にかかわらず、一定の基準を満たした医療機関に対する小児救急、 小児科医療、特にPICUをより高く評価すべきであると考えて、小児外科に対し ても、難易度の高い手術や複雑な多臓器にわたる手術においては、それ相応の 評価が必要であると思います。  また、ハイリスク出産は、NICUを含め、十分な機能が発揮できる医療機関に 特記して、いま以上に高い評価がなされるべきであると考えます。  更に、小児の心の医療は、診療所、病院とも、その仕事量に比べて評価が極 めて低く、充実した児童精神医療の診療機関、診察ができる機関においては、 心の健全な子供を育成できることから考えても、高い評価を与えるべきである ことは、当然なことであると考えます。  次に、「急性期後の受け皿」です。急性期後の受け皿としての後方病床、在宅 医療の強化に関してですが、在宅医療また入院、退院前後の在宅の歯科医療も それに加わりますが、これらを推進するためには、訪問看護の充実が必須です。  また、これには、重症心身障害児に関することですので、これらの方々に関 しては、国立医療機構、すなわち旧療養所等などの利用も活発に行われるべき ではなかろうかと思っています。特に小児の領域におきましては、高齢者の訪 問看護で手一杯でありますので、小児科領域までカバーできる状況ではありま せん。小児でのレスパイト、人工呼吸器を着けている患者についてのケアの知 識、技術をもつ人材、すなわち、これは看護師となりますが、これが少ないと ころから、小児在宅医療に関わるケアの知識、技術をもつ者の育成、これはナ ースです。ナースの人材育成を行い得る医療機関に対しても、高く評価させる ことが望ましいと考えます。  次のポイントは、病院勤務医の負担の軽減に関してです。勤務医の負担軽減 を実施している病院が更に診療報酬上高く評価されることも重要ではあります が、それだけでは激務の中での医療職種に直接的なメリットが反映されないと の議論もあります。  そこで、医療従事者間の役割分担、勤務体制などにより、システムの負担軽 減策を図る。このことによる実質、勤務医の負担軽減をとるよう、仕組みを評 価する必要があります。その意味からは、どのように評価するかが課題で、例 えば、病院小児科医師の負担を軽減させるためには、助産師、看護師、薬剤師、 各種技師の交替制勤務をできる機関に対しては、一定の評価をするのも一案で あろうかと考えています。  また、職種ごとの役割分担についてですが、これは既に平成19年12月医政 局長の通知が出されていますが、これが完全に行きわたっているとは考えてい ません。更に現状の変化等を見直していただき、内容の見直し、充実をお願い したい。すなわち、局長通達だけでは、少し弱過ぎるという考えを私はもって います。  次のポイントは、充実が求められる領域を適切に評価する視点についてです。 これを見る時に、がん推進が位置づけられています。がんと言いますと、どう しても大人のがんが念頭におかれ、対策評価が進められがちですが、小児がん は種類、治療方法も、大人のそれとは大きく異なることが多いので、白血病を 含めた子供のがんも忘れないでいただきたいと思います。我が国は、少子化が 進む中、子供の病死の死亡率の約40%は白血病を含む、いわゆる固形がんです。 これらの診断、治療、延命治療までの評価は、あまりにも低く、考慮されるこ とを願います。  次のポイントは、患者から見て分かりやすい・納得できる、安心・安全で生 活の質にも配慮した医療を実現する視点から見るところです。若干話はそれる ようですが、重大なことがあります。小児用医薬品について触れます。今世紀 に入りまして、承認された医薬品のうち、小児に使用できるのは若干2割以下 の調査結果が出ています。薬物動態等を考慮しますと、すべての医薬品が成人 と同等に使えないということは承知していますが、そのわずか数パーセントで あるという数字は、小児にとっては極めて少ないことは明らかです。  この状況の中で、小児医療の現場は、医師の判断で適応外として使用せざる を得ないのが現状です。都道府県により異なるものの、その適応外使用は、そ のレセプト上の査定は大変厳しく、小児病院運営には厳しい状況に陥られてい ます。したがって適応外使用について、既に医学上、医薬学上、効果が周知の 事実となっている医薬品については、厚生労働省として認めていくことも考え ていただきたいと思います。更に加えるに、小児薬剤の調剤は、成人の調剤と は全く異なり特殊ですから、一定の水準を保つ機関に対してはそれなりの評価 を期待します。  概略はこういうことですが、要約しますと、少子化が問題となっている現在 でもあるにもかかわらず、全体の議論は成人、老人に傾き過ぎていると私は考 えています。また、医療費が、予算が限定されている中で、広く評価すること は必ずしも正しい方向ではないと思います。十分な機能をもつ機関に対して高 く評価していただきたい、というのが私の個人的な見解です。また、時間があ りましたら発言させていただきます。発言の時間をいただきましてありがとう ございました。 ○部会長 ほかの方、いかがでしょうか。これは、やはり基本方針をまず議論 したほうが、時間の関係でいいと思いますが、あまり各論的な細かいことはな るべく簡潔にお願いできればと思います。 ○竹嶋委員 いま加藤委員が、小児科の現状についてお話しされましたが、全 く同感です。今日出されました討論の資料、「平成22年度診療報酬改定の視点 等について」の中で、【基本認識・重点課題等】というのが出ています。ここに 網羅されているものはすべて大事だと思いますが、もう一つ、その前により基 本的なということで、この社会保障審議会医療部会のあり方になると思います。 国の政策の中にどうこれを提言していくかにつながると思います。少し時間を いただいて発言をさせていただきます。  お手元に資料を届けさせていただいています。これを採択していただきまし た部会長、副部会長に感謝申し上げますし、説明の機会を与えていただいたこ とに併せて感謝申し上げます。10枚ほど出していますが、これは日本医師会の 私どもの見解であるとともに、一部私個人の今日ここに出ております委員とし ての見解も入っていることを、まず申し上げておきたいと思います。  新政権が発足しました。社会保障、とりわけ国民の生命の基盤であります我 が国の医療のあるべき方向に向けて、これまでの政権と違えて、どう進めてい くのか、大いに期待をしておりました。しかしながら、このところ、この新政 権あるいは政府のこの問題についての進め方を見ていますと、私どもが携って います医療においても、不安を禁じ得ないのが現実です。  新政権設立後、明らかに恣意的と考えられる決裁の中で、最も公正かつ重要 な中央社会保険医療協議会から、地域医療を担い、これを代表し真摯に医療現 場からの意見を述べ、何ら瑕疵のない委員を一方的に外したり、あるいは、こ れも恣意的なメンバー構成で、誰も医療関係者が入っていない、いわゆる歳出 削減、無駄な歳出を洗い出すということでの仕分け作業チームの中で、基本と なる医療の提供体制や、あるいは医療制度、そして、それを正しく担保するた めの財源確保の議論が然るべき会議の中でなされる前に次期診療報酬の中身の 見直しと言った個別的具体的な議論を行い、その結論を自らの政策立案の拠り 所として利用しようとしているかに見えますそのプロセスに、私は、極めて不 純なものを感じます。  医療は、言うまでもなく、人間の心身のみならず、その経済的背景も含めて の個別性と、病態の不確実性、治療の継続性を他の何よりも特性とします。そ れ故、医師あるいは医療関係職、医療経済学者も含めて慎重にこれを協議し、 医療提供のあり方や制度を決めていかなければならない分野です。  社会共通資本としての医療を説かれます東京大学名誉教授宇沢弘文氏がよく 強調されますが、医療を社会共通資本として考えるとき、すべての市民は保健 医療に関わる基本的なサービスの供与を享受できる権利を持ち、政府は、その ようなサービスを提供する責務を負う。そして、政府の役割は、医療機関が供 給する医療サービスが、医学的な観点から公正なものであり、更に経済的な観 点から効率的となるような制度的・財政的措置を講ずることでありまして、医 療の実質的内容に関わっての介入ないし管理は、決して行ってはならないと強 調して明言しておられます。  改めて新政権、新政府に国民の一人として、また医療人の一人として、これ らのことの確認を求めたいとこの席で思うわけです。  そこに資料を用意させていただきました頁1です。これは私がここで説明す るまでもありません。我が国が本当に世界に誇れる、どこの国もこれに追随で きない国民皆保険制度の理念であります。  次の頁ですが、去る11月3日、文化の日だったと思います。私は飛行機の中 である新聞を見ていました。その中に私は九州大学ですが、その後輩の精神科 医でしかも作家であります帚木医師が、ここにちょうど「提言」として述べた 文章を私は目を通したわけであります。  読みます。昨年、急性骨随性白血病で入院。医療費は1,000万円近くになっ たが、自己負担は80万円程度。地方都市でも最先端の治療を受けられ、仕事に 復帰できた。国民皆保険制度のすばらしさを改めて実感したが、このシステム を当り前と考えて、無理な医療費削減などでメンテナンスを怠ると、簡単に崩 壊してしまう。経済的格差が広がっても、医療の安全網だけは守るという強い 意思を国策として示し、そのために必要な費用を確保すべきという一文です。  私は感動してこの文章を読み、これこそ私どものいまの日本の公的皆保制度 を守っていくうえでの、極めて貴重な、立つべき基本的な視点だと考えます。  一口に地域医療と言いますが、一つの例として挙げても、東京のように人口 密集地で交通の便もよく、大学病院が16、最先端医療の集積地ですし、また、 病院だけでも600を超える所と、過疎で病院も数えるしかない地方では、地域 医療の実情は当然異なりますし、そのあり方を論ずる際にも、それは画一的に 論ずるべきではないと考えます。  それを示したのがこの3頁の資料です。岩手医科大学の学長で、現在、全国 医学部長病院長会議の座長を務めておられる小川彰教授が、私ども日本医師会 の医療政策会議でご講演いただいた資料をお借りしたものです。氏いわく、い ま問題になっている医師数にしても、圧倒的に多い東京では10万人対260人に 比べて、岩手県では170人、沿岸部では70人、そのうえ四国4県に匹敵する面 積の中に、9つの2次医療圏で救急センター3施設体制で全県をカバーしていま す。  次の資料で、更に、2次医療圏の中の最も面積が広い宮古医療圏を例にとり ますと、東京都区部の4.3倍の広さの中に、病院と名の付くのは4施設のみで あり、総合病院は1つしかない。したがって、岩手県では、救急患者は搬入拒 否、いわゆる世間で言うタライ回しはない。タライ回しするほど病院がないか らである。しかも、これらの病院に通うには、平均で2時間、遠い所で3時間 かかると言われる。これをカバーしているのは小病院や診療所で、岩手県では、 病病連携、病診連携がいかに行われているかお分かりでしょう。と吐き捨てる ように言われたのが大変印象的でした。  6頁は、私ども日本医師会が地域医療提供体制について、どういう考え方を もっているかを示したものです。私どもは、まず施設完結型の医療から地域完 結型の医療へと考えます。また、救急医療における医療従事者を含む医療機能 の「集約」とともに「分散」が必要である。これは先ほど申しました地域性に よって、そういうことが必要である。言い換えれば、点から面へということで す。  3番目は、「地域医療支援病院」です。「在宅医療支援診療所」の活性化によ る在宅療養支援体制の整備を行います。岩手県地域医療のところで述べました が、実際に医療現場では特に地方においては、高度先端医療、例えば大学病院 や救命救急病院が少ないため、地域全体に一般病院や有床診療所、無床診療所 が分散し、それぞれの医療機能を分担して、急性期現場の負担も軽減していま す。そのこと自体がまさに地域医療のその有り体です。それが壊れてきて、医 療危機、あるいは地方によっては医療崩壊を生じた原因は、9頁に示していま す。  あまりにも「小さな政府」に偏ってきました前政権ですが、政策の継続が一 部負担増による、受診抑制、在院日数の短縮をメドに早期退院を促す、保険診 療報酬での誘導、高齢者は文字通り、「医療難民」、「介護難民」化、そして極端 に抑制した財源の中での、医師不促、看護職不足等による、医療従事者の疲弊、 離職、診療科閉鎖、救急医療は産科、小児科、外科、内科医療の減少により、 医療提供体制も地域間格差の助長をもたらした。この事実をしっかり私どもは 認識したうえで、いろいろな地域医療の提供体制等についても、議論をやって いくべきであると思います。  繰り返します。あくまで所得格差、あるいは私ども国民はどこに住んていて も、その地域格差のない、理想的なことを言いますが、そういう、やはり医療 提供体制を、私は、この医療部会あるいは医療保健部会で、しっかり議論をし て、初めてそれが中医協に上がって、具体化していく、そういう国の施策のプ ロセスを、しっかり図っていくこと、この医療部会でお互いしっかり確認し合 っていくことが、まず、極めて大事ではないかと思いまして、今日は、このよ うな発言をさせていただきました。以上です。 ○部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○石井参考人 いま竹嶋先生が、地域医療の崩壊ということで全般的なお話を なさったのですが、今日、診療報酬改定の視点についてということで竹嶋先生 はおっしゃったのですが、そういう点に立って、今度出されたこの内容をちょ っと検討しますと、やはり、確かにここで資料5の重点課題関係の位置にあり 各々尤もだと思いますし、その中の小項目は、個別項目としてはそれなりに的 確点をついているだろうと思います。  しかし、全体としてどういう方向をとるのか。このような課題については、 これまでいろいろなところで言われてきました。中医協でも、この何回かの改 定はこういう視点で行われたと思います。にもかかわらず、いわゆる地域医療 の崩壊、特に地域病院の崩壊ということがなぜ言われるようになってきたのか というところを見ておかなければいけないのではないか。  そういう点から言いますと、先ほど加藤先生が産科、小児科の問題に関して は詳しく問題点をいろいろお話になったのですが、こういった問題点は、産科、 小児科だけではなくて、どの領域においてもその科の先生がお話になると、同 じような形で問題にされるような事態だと思います。それはどうしてかといい ますと、日本の医療というものが、疾病構造もそうですし、疾病に対する治療 の内容がだんだん高度化して変わってきているというところを見ておかなけれ ばいけない。診療報酬体系はそういった大きな流れに立ち遅れてきたというと ころが問題で、それが具体的に、個々にこういう形で出てきている。それを個 別対応でこの10年間ぐらいやってきたと思いますが、もはや、そういった個別 対応では不可能になってきているのではないか。それは総枠の問題もそうです し、仕組みもそうだろうと思います。一方を良くしていこうとすると、別の所 にひずみが出る。  救急の問題についても、ここでは救急全般についてどうするかということは 書かれておりませんが、救急医療をやればやるほど赤字になるという診療報酬 体系を作ってあるということがまず問題です。それはDPCで極端に表れている わけですが、DPCの場合には1日包括ですから、その日に救急で来て入院する 人も、前もっていろいろ検査をやって、これは手術だということで入ってくる 人も同じ扱いですから、救急で入ってきた人はその日、特にその晩は、大勢の 人が夜中に起きて検査をしたり、処置をしたりしなければいけない。また、そ のときに薬剤も多く使うわけですが、これは全部特別に払われるわけではあり ません。こういったことがDPCの分科会で問題になっています。  では、こういったことを一つひとつ直していくだけでいいのだろうか。これ については今、機能係数の議論もなされているのですが、このような形で、夜 間について言えば、初診料、再診料は多少の割り増しがあるかもしれませんが、 それ以外についてどうかというと、そういうものはないものがたくさんある。 こういうことで、元々の診療報酬体系が救急とか、そういったものについて対 応できていないということがまずあります。  産科の問題について言えば、そもそも産科の全体数が少なくなる。産科の機 関が少なくなり、産科医も少なくなるということがいちばんの問題で、地域格 差問題も出てくるわけですが、産科はそもそも診療報酬体系の中に含まれてい ない、ということがまずあります。そういう意味で、基本構造についてもう一 回考えていかないと。その仕組みの転換がすぐにできるとは思いませんし、こ こで結論がすぐ出るとも思いませんが、そういった観点で見ていかないと。個々 の問題についてはそれなりに言っていっても、それはこの間ほとんど変わって いないのです。  病院経営の状況についても毎年いろいろ調査が出ておりますが、それを見て みますと、ある類型の病院に関して言うと、いくらこういう手直しでここが大 変だと言ってそこに重点的配分と言われても、全く変わらないで、やはりそう いった所は悪い。大きな意味では、精神科の問題もそうです。また、特に急性 期がこの間は言われているのですが、相変わらず、急性期については重点配分 をしたと言って病院全体は少し改善したというような報告をこの間もされたの ですが、やはり、急性期が経営的にはいちばん悪い。そもそも大きな仕組みは、 こういった疾病構造及び病院の構造の大きな変化に基づいているのだという認 識がないと、個別対応だけではいけないのだろうと。そういう意味で個別では ない、大きな意味での、例えば点数の問題等についても考えなければいけない と思っています。  私たち病院団体については、病院団体全部が集まって日病協というのを作っ ているのです。各々の病院は、その病院類型によってみんな同じようないろい ろな問題を抱えています。しかし、あえて統一要求として「入院基本料の見直 し」ということを出したのは、病院医療そのものが全体に変わってきて、昔と 比べたら、どういう領域であっても、1人当たりの患者さんに対して多くの人 員と資材を投入しないとできない。こういった大きな変化に対応してほしいと いうことで今度出しているわけです。個別の問題では、どの先生がおっしゃっ たことも全部尤もだと私も思うのです。しかし、大きな枠組みをもう少し考え て、変えていかないとですね、そこのターゲットでこっちを重点配分したら、 今度はこっちが残されて、という形で矛盾が現れてくるということについて考 えていただきたいと思います。以上です。 ○部会長 では、そちらの方、どうぞ。 ○海辺委員 それでは、いまの竹嶋先生のご意見や村上先生のご意見なども踏 まえて。いまおっしゃっていたご意見は素晴らしく分かりやすいと思いました。 いろいろと伺っていると、例えば厚労省から、安全性の面から手厚くしなさい ということで小児のICUの夜勤は2人にしなさいなどと言われると、あてがっ た部分が診療報酬が増えないせいでマイナスになるばかりで大変になるばかり などというお話はよく伺うので、それに見合う手当てをするのは当たり前だと 思います。診れば診るほど赤字になるということは誰が聞いても非常におかし いことだと思うので、そういうところから積み上げなければいけないだろうと 思います。  私は、ここで、この部会の位置づけというのが今どうなっているのかという のを非常に疑問に感じております。いま中医協での議論もかなり進んでいるよ うに伺っておりますけれども、そこでの議論でもう一回、どちらかというと診 療報酬だけではない問題に関しても、いろいろ激論が交わされているように伺 っていますので、そういうものがここ、医療部会に上がってこないというのは どうしてなのかなと感じております。  先ほどいろいろな委員の先生が劇的に変わったという部分に関しては、私が 一般的な国民の視点から考えると、今までがあまりに膠着していて、国民の側 にも不満がありましたから、それなりに国民の側も見守る用意があるのではな いかと感じております。委員の先生方もそれ相応の覚悟と使命感で臨まれてい らっしゃると思いますから、それなりに、そこで出来上がったものに対して、 どういう結果が出るのかということを見守る用意は、国民の側もある程度はあ ると思います。ただ、郵政解散・民営化選挙のときのような、勢いだけで何だ か中身がないみたいなことに関しては、国民の側もうんざりしている部分があ るので、やはり、きちんと中身を積み上げて、積み上げていった結果、どうし ても増やす以外に方法がないということになったときには、国民の側も、きち んとした説明があれば、受け入れる用意はあるだろうなと思っております。  私はこの「改定の視点」のところで、「患者から見て分かりやすく納得でき、 安心・安全で」という文言はもちろん当たり前で素晴らしいと思うのですが、 本当の意味でどういうところを指しているのかというところが、非常に分かり にくいと感じております。例えば前回改定のときに、レセプト並みの領収書の 無料発行というようなことも結局見送られたりした部分があると、何をもって 「患者から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で」ということになるのか なというのが非常に分かりにくい。ここにこう出ているということは、それ相 応の覚悟の現れなのかどうかというところを確認したいとも思いました。  あとは減り張りも必要だと思います。地域医療の崩壊というのもありますが、 地域医療の崩壊だけではなくて、今はもう地域社会自体が崩壊してしまってい るようなところもある中で、社会が崩壊しているから医療が成り立たないとい うようなところもあると思いますので、だからこそ、そこの部分はもう少し「選 択と集中」の部分も踏まえながらやっていかなくてはいけないと思います。高 齢化が進んでいるような地域でしたら、当然のことながら、求められている医 療は在宅の介護ですとか、その地域に帰っていけるとか。重症の患者さんが最 後に地域に帰っていって看取りを受けるような体制という部分は今立ち遅れて いる部分があると思います。今まで地域医療を請け負っている先生方は、その 地域が若かった時代には感染症中心だったかもしれませんが、今は看取りであ るとか、褥瘡の管理であるとか、そういう部分に関してどんどんできるように なっていかなければいけないというところがあるのに、地域のほうで受入れ体 制が必ずしもできていないからこそ崩壊が進むという部分もあろうかと感じて おります。  小児の部分も、例えば人工呼吸器を付けている小児がどうしてそうなってし まったのかという検証も、これからはきちんとしていかなくてはいけないので はないか。分娩の部分が今まで自由診療でしたから、分娩での事故による障害 児の発生というようなものの調査が進んでいない部分もあるのではないかと、 国民の視点から感じる部分がありますので、正常分娩を今後どうしていくのか ということも、そろそろ考えなければいけない時期なのではないかと感じてお ります。  長くなって恐縮なのですが、最後に、私が提出させていただいた資料には、 がんの医療の推進の追加をお願いしたいというのがあります。がん対策推進協 議会できちんと上がってきた議論を私がここで個別のことを長々とお話しする よりは、中医協の中などで参考人として委員を呼んでいただいて説明をするな ど、折角の協議会の議論が無駄にならないような活用の仕方を考えていただけ たらいいと思っております。以上です。 ○鮫島委員 先ほど石井委員がおっしゃったことに関連して申し上げたいので すが、病院団体の多くは入院基本料の引き上げを要望しているわけです。その 理由は、石井参考人が若干話されたことでもありますが、実情を言うと、度々 診療報酬の引き下げが行われた結果、入院基本料がかなり抑制される、部分的 には切り下げられている。既に入院基本料自体、人件費の多くをこれで賄って いるわけですから、その部分で既に採算割れをしている。それを何とかカバー するために、各病院がいろいろな加算を取ったり、特定診療料を上げたりとい う形でかなり無理をしているというのが実情だと思うのです。その結果、医師 や看護師の疲弊とか、そういうことにつながっていると思うのです。したがっ て、入院基本料を引き下げてくれというのは、そういった意味では極めて重要 なことではないかと思っております。特に精神科の場合は、入院基本料が診療 報酬の約8割を占めています。しかし、ここを抑えられると、全体的に二進も 三進もいかない。特に精神科の場合は、技術料の評価が非常に低い。認知症に 関してもそうですし、今後考えられる発達障害とか、いわゆる行動障害に対す る医療とかというものはほとんど評価されていないのです。  先ほど重症心身障害児の話が出ましたが、重症心身障害児も、寝たきり重症 心身障害児と動き回る重症心身障害児がいるのです。この「動く重心」の場合、 寝たきりには付く超重症小児加算というのがあるのですが、これは経過措置で、 たぶん無くなるのではないかと危惧されているのです。そういった意味で、精 神科領域の場合には様々な技術料の評価が低い。それから、行動障害に対応し ている部分に対する評価が低い。こういったことは全体として言えるわけです が、そういったことも含めて、入院基本料とその他の診療報酬との構造を全体 的に見直していただきたい。そういうことが我々の希望です。 ○水田委員 皆さんがそれぞれに、各論と総論が錯誤しているようなことをお っしゃるわけですが、それは尤もな意見です。みんな、そうです。私も小児関 係をやっておりましたので、加藤委員がおっしゃったように、小児医療という のは大変です。それから、いろいろなことをしなければいけないということは あるのですが、まず、いろいろな科がいろいろなことを言って、言うだけに終 わったのではどうしようもないではないか。前回も同じようなご意見がたくさ ん出ました。それで、この委員会で何をするのかということです。先ほど海辺 さんがおっしゃったように、この委員会の役割というのをもう少しきちんとす る。それから、取り上げるべき問題を決めて、みんなの意見を聞いたほうがい いのではないかと思います。  竹嶋先生がいつも、日本医師会が一生懸命頑張っていらっしゃると。確かに 頑張っているのは私も認めるのですけれども、ずっとやってきたら、その効果 がどうだったのかということをこういう所で言っていただいたら、結果として、 さらにこうなっていくのではないかということが、分かるのではないかと思う のです。今まで毎年、保険料が変わる度に2年ごとに皆さん同じようなことが 出てくるわけですが、では変わったことによって、どういう結果が出たのかと いうことが検証されないままで、次から次に常にみんなの不満になっていく。 この会が不満のはけ口だけに終わってしまったら、何にもならないのではない かと思いますので、この部会で何をすべきかということを、もう少しはっきり させていただけたらと思っております。 ○西澤委員 今いろいろな意見がありました。今回の基本方針とか視点を見て みますと、前回の改定のときとあまり変わっていないと感じております。前回 も同じような重点項目であったのですけれども、結果としてどうだったかとい うと、あまり現場は変わっていない。医療の崩壊はより進んでいると考えられ ます。では、どうして効果がなかったのかというと、ここでいろいろな良い意 見が出ているのですが、全体としての改定率が微々たるものだったので十分手 当てできなかったということです。こういうところを評価すべきだというので あれば、それに対して十分な報酬を付けていただけるようなことも、是非ここ で出していただければと思います。  今回の中に、資料4の中の[4]でしょうか、イとロということで2つの意見が あります。イの意見がおそらく私たちだと思いますが、危機的な状況にあるか ら、医療費の配分の見直しではなくて底上げを行うことを対応すべきとしてい る。しかしながらロの意見としては、相変わらず厳しいから全体を引き上げる 状況にないという意見がございます。これだけのことをやると言っておきなが ら引き上げられないと言うのであれば、もう検討する意味はない、そのことを まず認識していただきたいと思います。  前回も、小児、救急、産科に重点的に付けました。でも、結果として効果が なかったのはどうしてかということを見ますと、それを支えるような医療機関 全部が疲弊しているのです。ですから、全体の引き上げがベースにあって、そ の上で重点的にという二重構造でなければ駄目だと思うのです。そういうこと で、全体の引き上げ、その中でも今の病院の医療ですね。病院が疲弊している ということであれば、この基本方針と申しましょうか、基本認識の中の1項目 として、例えば病院医療全体の評価とか底上げとか、そのような文言も1行入 れていただいたほうがよろしいかと思います。 ○大西委員 高松市長の大西です。私は全国市長会を代表して来させていただ いていますが、市長という立場は、それぞれの地域の医療を確保するというの はもとよりでありますが、国保の保険者としての立場、また後期高齢者医療で は、私も香川県の広域連合長をやっておりますが、そういう保険者としての立 場、また、多くの自治体で病院を抱えておりますので、その病院を経営すると いう立場もございまして、それぞれの立場でいろいろな局面があるわけです。 ただ、地域におりまして、市長として見ていて、今の地域医療の危機あるいは 崩壊の状況は、とてもではないけれども大変なところまで来ているという現状 認識を持っております。したがいまして、それをどうにか再構築する。その1 つの大きな足がかりとして、この診療報酬の改定みたいなものをきちっと位置 づけていただきたいというのが私どもの願いです。  そういう意味で、今回の重点課題として2項目、これは前回とも同じだった というお話も出ていましたが、私から見ても特に喫緊の課題だと思われる2項 目というものを選び出していただいて、それを基に報酬改定をしていこうとい う方向自体は非常に評価できると考えているわけです。特に救急の問題は、自 治体という立場で消防を持っている関係もございまして、非常に喫緊の課題で あるというのは十分認識しております。また、医師不足から来る産科、小児科 の問題、あるいは病院勤務医の負担が非常に重いという問題は、香川県高松市 という立場は全国的に見たら恵まれているほうかなとは思っておりますが、そ れでも非常に深刻な問題になっております。したがいまして、この重点課題を 掲げたのであれば、是非それを具体的な診療報酬改定できちっと表していただ いて、それを各地域あるいは国民に説明できるような解答を是非お願いしたい のです。と申しますのは各地域ともそうでしょうけれども、地域医療の崩壊を どうにか食い止めなければいけないということで、医師会あるいは病院関係者、 また、1つの市だけではなくて周りの町も含んだ形でいろいろな協議を始めて おります。  地方公共団体という意味では、今「定住自立圏構想」というものが出ており ます。高松ですと高松が中心市となって、離島も含んだ周辺の5町と同時にそ れぞれの役割分担で協定を結んだ上で広域的な行政をやっていこうと。それの 中心となる分野が地域医療の問題です。お互いに協力をしながら、どうにか広 域的に地域医療を確保していこうということで話合いを始めておりますので、 是非とも、その話合いをより促すような、地域医療を再構築していけるような 改定であってほしいと思っております。よろしくお願いいたします。 ○中川委員 資料4に関連して発言させていただきます。我々は一貫して、医 療費の全体的な底上げをし、かつ減り張りをつけるべきだと主張してまいりま した。今年6月の財政審では、診療所の財源を病院の勤務医に持っていけばす べての問題は解決するなどという極論まで出ましたが、ご存じのように、行政 刷新会議の事業仕分け第2グループでは、財務省が提出した不完全で不十分な 資料に基づいて評価が誘導されたのではないかという懸念を持っています。  そこで、私が提出させていただいた資料をご覧ください。これは「TKC医業 経営指標に基づく動態分析の概要」というものです。これはTKC全国会の資料 なのですが、この全国会は、会員数約1万名の税理士・公認会計士のネットワ ークです。このTKCの開発した会計システムを利用して集積した関与先医療機 関の決算データとして集計しているものでありますが、日本医師会は、平成15 年版からこの提供を受けて、それを分析して公表してまいりました。  このTKCの指標には3つの長所があります。まず、定点観測であること。同 じ医療機関を母集団として前年との比較を掲載しています。2番目は、客体数 が多いことです。病院が823、診療所が6,494でありまして、民間病院の約11%、 診療所の7%をカバーしています。ただし、TKCは国公立は含んでおりません。 3番目として、会計事務所が月次監査を実施している医療機関が対象であるの で、財務会計システムと直結した年間データを集計したもので、信頼性が非常 に高いという特徴があります。中医協の医療経済実態調査(実調)は隔年実施 ですので、2年前との比較になりますが、TKCは前年との比較です。  3頁に、TKCの指標及び実調の損益計算書を示しました。ここで注意したいの は、個人立の病院及び診療所では給与費に院長報酬が含まれていないことです。 個人の場合には、税引前当期利益の中から事業に係る税金を支払って借入金の 返済を行うなどして、その残りが退職金相当額を含む院長所得になります。こ のように、法人と個人では給与費の意味合いが異なりますので、給与費を用い て計算する損益分岐点比率、経常利益率、費用構成については法人間のみで比 較を行いました。  4頁をご覧ください。まず、病院及び診療所の医業収益について申し上げた いと思います。図2.1.1で、医業収益は医療機関の収入のことです。利益と混 同されやすいので、一般には「医業収入」とも呼ばれますが、この医業収益は 法人、個人ともに定義は同じであることから、ここでは合算して分析しました。 この収益の前年比は、病院が+1.7%、診療所が+1.1%でした。このうち保険診 療収益は、病院が+1.5%、診療所は+0.3%でした。  5頁の図を見ますと、厚労省の「メディアス」(全国実績)で1施設当たりの 医療費の伸び率は、病院が+2.0%、診療所が+0.2%です。TKCの指標の保険診 療収益は介護保険収益も含むのですが、病院の前年比は+1.5%、メディアスよ り0.5%低いものの、大きな乖離はありません。診療所は、TKCでは+0.3%で、 メディアスとほぼ合致していました。  一方、中医協の実調から医業収益の伸び率を年換算すると、一般病院では +7.3%、診療所が+4.0%でメディアスを大幅に上回っています。このことから、 実調に比べてTKCの指標は非常に信頼性が高いことが分かると思います。  6頁には病院の診療系統別の分析を示しております。このカテゴリーはTKC が長い間使っているカテゴリーによりますので、「総合病院」という今は使われ なくなった分類があるのをご容赦ください。ここの医業収益の前年比は病院全 体で+1.7%、一般病院が+1.8%、精神科病院が+1.5%でありました。保険診療 収益の全体は、一般病院が+1.5%、精神科病院が+1.3%です。そして、病院全 体(一般病院と精神科病院)では、医業収益、保険診療収益とも、前年比は+1% 台に止どまっています。医業収益の前年度比が保険診療収益をやや上回ってい ますが、保険診療収益の抑制を自由診療収益で補っていることがうかがえます。  8頁では診療所の診療科別を示していますが、医業収益の前年比がマイナス であったのは、小児科の-0.8%でした。保険診療収益の前年比がマイナスであ ったのは、内科、産婦人科、小児科、皮膚科でした。産婦人科は保険診療収益 の落ち込みを医業収益の61.1%を占める自由診療収益で補っていることがう かがえます。  10頁は法人の損益分岐点比率です。個人病院と個人の診療所は給与費に院長 報酬が含まれていないので、法人についてのみ分析いたしました。10頁の図 2.2.1の損益分岐点比率は、医業収益の変化にどのぐらい耐えることができる かを示す資料です。95%であれば、5%超の収益減少で赤字に転落します。この 比率は、病院では2007年度に94.8が2008年度は94.9%と改善されませんで した。診療所では94.0%から95.0%でした。診療所では1.0%悪化し、病院よ りも高い水準になっています。また診療所では有床・無床とも悪化しておりま す。特に無床診療所では1.1%悪化しています。  11頁は病院の診療系統別の損益分岐点比率を示しております。  12頁は、診療所の主たる診療科別の損益分岐点比率を示しておりますので、 後でご覧ください。  16〜17頁に表がありますが、損益分岐点比率をまとめますと、病院及び診療 所の損益分岐点比率は平均的に90%を超えておりまして、一般的にはかなり危 険な状態にあります。ここでは損益分岐点比率95%超を特に「危機的状況」と しました。そして、2008年度の損益分岐点比率が95%を超え、かつ2007〜2008 年度にかけて悪化したカテゴリーを抽出しました。それが17頁のいちばん右側 の欄でチェックが付いているところです。その結果、特に深刻な状態にあるの は、病院では総合病院、診療所では有床・無床、院内・院外処方のバラツキは ありますが、整形外科、小児科、精神科で危機的状態という結果が出ました。  法人の経常利益率を18頁に示しておりますが、この経常利益率は、医業経営 を行うための再投資が可能かどうかを示す指標であるとも言えます。これは病 院では2007年度に4.2%、2008年度も4.2%でした。診療所では5.3%から4.7% になりました。病院は横ばい、診療所では0.6%低下です。  20頁からは病院の診療系統別と診療所の主たる診療科別を示しております。  30頁です。給与費について若干申し上げたいと思います。31頁のグラフをご 覧ください。給与費の前年比は病院が+2.3%、診療所が+2.0%でした。病院で は、一般病院が+2.6%、精神科病院が+1.5%で、診療所では有床診療所が+2.8%、 無床診療所では+1.6%でした。  31頁の図2.4.5をご覧いただけば分かりますが、病院全体で役員報酬の伸び は+1.1%、従事者の給与賞与の伸びは+2.5%。この傾向は診療所でも同じです。  42頁からまとめをさせていただきます。まず1つ目なのですが、受療行動の 変化を踏まえた診療報酬の見直しが求められると思います。2008年度の保険診 療収益の前年比は、病院が+1.5%、診療所は+0.3%でした。これまで厚労省が、 医療費は年に3%伸びるとされてきましたが、診療報酬プラス改定分が重点投 入された病院ですら、+1.5%の伸びに止どまっています。これは厚労省、「メデ ィアス」等の分析を通じて、受診日数が減少しているためであることが明らか になっています。診療報酬は受療行動に変化がない前提で財源が配分されます が、今日のように受診日数が大幅に減少すれば、たとえ診療報酬が引き上げら れても、医業収益は減少します。受診日数の変化や、平均在院日数の短縮化な ど、診療報酬改定以外の制度改革の進捗状況も踏まえて診療報酬を検討すべき です。  2番目として、小児科の再生は引き続き重要課題だと思います。小児科の診 療所は、保険診療収益が減少しておりまして、小児科は損益分岐点比率から見 ても危機的状況にあります。2008年4月改定では、小児の外来医療が評価され ましたが、少子化の影響などで受診日数が減少していることもあって、収益増 に寄与していません。引き続き診療報酬改定上の重点課題とするとともに、補 助金などの政策的支援も必要だと思います。  3番目として、病院も診療所も危機的状況であり、全体的な底上げが必要だ と改めて申し上げます。損益分岐点比率は病院が94.9%、診療所が95.0%です。 医業収益が5%超減少すれば赤字に転落しますが、患者数が5%程度減少するこ とは十分あり得ます。病院も、診療所も事業環境の変化にきわめて弱い経営実 態になっています。損益分岐点比率の悪化については、固定費を見直すべきだ という指摘も中医協ではあります。医療機関において、固定費の大部分を給与 費が占めますが、役員報酬はほとんど伸びていません。その一方で、従事者給 与賞与の前年比は、病院で+2.5%、診療所でも+2.5%でした。医師不足、看護 師不足等により、給与費を上げざるを得ない実態があるものと推察されます。 日本医師会の調査でも、従業員の給与を「引き上げた」というところは、診療 所も病院も約4割でした。一方で、院長給与は、診療所では半数以上、病院で も4割強で減少しておりました。それについては、このグラフをご覧ください。  医療経済実態調査の結果の取扱いにはきわめて注意が必要だ、極めて慎重に するべきだと申し上げたいと思います。中医協の実調が一部の医療施設を対象 にした非定点調査であり、経年比較に耐えられないものであることは、日本医 師会がこれまで指摘してきたとおりです。2009年11月11日に行われた行政刷 新会議ワーキンググループの「事業仕分け」に財務省が「眼科・耳鼻科等は診 療所の平均よりも2割以上高い収支差額」との資料を提示しましたが、個人診 療所の損益差額は、そのまま院長給与に相当するものではありません。  さらに、医療経済実態調査を用いて診療科間の比較を行うことにも問題があ ります。同調査の個人診療所の客体数は、全体で510、診療科別では眼科44、 耳鼻科32、整形外科42等と非常に少なくなっています。TKC医業経営指標にお ける個人診療所の客体数は2,789ですが、それでも診療科別にカテゴライズし た場合、客体数が少ないために、必ずしも平均像とはいえない結果を示したも のがありました。医業経済実態調査は、経年変化、診療科間比較のいずれにも 適切とは言いがたく、取扱いには注意が必要であることを再度申し上げて終わ ります。長時間ありがとうございました。 ○齋藤(訓)委員 医療部会では中医協の診療報酬の改定の基本方針を定める のだと私は認識しておりますので、その認識に基づいて発言をさせていただき ます。基本認識、重点課題につきましては事務局提示の2本の柱が挙がってお りますが、これは18年度の医療制度改革で非常に顕在化した問題が、解決され ないまま挙がっていると認識しておりますので、現状に鑑みれば、この2本は 妥当であろうと考えております。  また、4つの視点につきましても、中身が少し曖昧なところもあるなという ことはあるのですが、若干長文になっているので、そういう長いタイトルだな という印象は持ちますが、意図していることは理解ができるのかなと考えてい ます。  この4つの視点の中で、(2)でしょうか、見て分かりやすくて、納得で、安心・ 安全で、そしてクォリティーにも配慮した医療という辺りで今回この資料を拝 見したときに1つだけすごく画期的だなと考えましたのは、重症化予防という ことが明確に打ち出されたということは、大変意義のあることではないかと考 えております。非常に急性期でも、高濃度な治療をしてご自宅に帰るといった ときに、病は治ったのだけれども、なかなかご自宅での暮らしができないとい うことになってしまっては、何のための医療だったのかという医療の効果性と いうことに鑑みれば、きちんとご自宅で暮らせるだけの体力を持って帰すとい うことがすごく大事だと思うのですが、従来診療報酬の世界では、食べられな くなったら点滴をする、あるいは管を入れる。自分で呼吸ができなくなったら 人工呼吸器を入れる、そういう何らかの行為はきちんと評価はされているので すが、その管を抜いて食べられるようになった、あるいは早く呼吸器から抜管 して、自分で自分の体調をきちんと整えられるようになった、といった辺りに ついてはなかなか評価がない、ということが従来はあったのではないかと考え ています。  どんな治療でも、合併症のリスクや副作用が出るとかということについては、 それをいかに回避していくかということが大変重要だと思っております。医師 を含めて、看護師、薬剤師、理学療法士等々がチームでケアに関わっていくと いうことが大変重要で、それがまさしく重症化予防につながったり、医療の質 といったものに非常に貢献していくのだろうと考えております。医療関係職種 がお互いの専門性を発揮しながら、チームを組んで患者さんのケアに関わって いくといったことを考えますと、チーム医療の推進といった辺りが役割分担な のか、どこなのかは分からないのですが、そこは1本明記していくべきではな いかと考えております。中医協の中でも、NSTのチームの活躍であるとか、呼 吸器ケアチームでのいろいろなケアのあり方などが議論になっていますので、 チーム医療の推進といった辺りはもう少し明確にあってもいいのではないかと 考えております。  効率的な医療といった辺りでは、在宅医療でしっかり受け皿が整備されてい ないと、急性期がなかなか機能しないということは前にも申し上げたところで す。患者さんが自分の暮らす街で暮らし続けていかれるといったことを目指し ていくのであれば、まさしく在宅医療、在宅歯科医療が盛り込まれたことは大 変意義のあることだと考えております。先ほど加藤委員からも出ましたように、 歯科医療につなげていく、あるいは介護サービスにつなげていくといった辺り で患者さんの暮らしをしっかり見ているのは訪問看護ですので、ここには「訪 問看護」も明記していただきたいと思っております。訪問看護は、介護サービ スと医療保険からのサービス、両方にまたがるサービスを展開しておりますの で、介護との連携というところを打ち出すのであれば、暮らしを見守る、ある いは、訪問看護を使って患者さんの暮らしを支える訪問看護を是非強化してい ただくことが必要になるのではないかと考えております。  事務局に確認したいのですが、勤務医の負担の軽減のところで、括弧以降に、 (医療従事者の増員に努める医療機関への支援)と明記されているのです。中 身を見ますと、役割分担のこと、補助者の活用、そして医療クラークといった ものが出ているのですが、医師や看護師も含めたメディカルワーカーを増やし ていけるようにする。きちんと採用ができるように報酬上評価をしていく、そ ういうことの理解でよろしいのかどうか。先ほどから、医療全体の医療費を引 き上げと出ているのですが、片方できっちりこういう明文化がされているので あれば、いわゆる人材を確保していくところについては手当てをしますという ような解釈ができるのかなと勝手に理解しているのですが、その辺りを事務局 はどうお考えなのか、伺いたいと思います。 ○保険局医療課長 いまのご質問ですが、結論はそのとおりです。ちょっと補 足をしておきますと、現行の診療報酬というのは、保険医療機関と保険医(保 険歯科医を含む)に着目して診療報酬を支払うという仕組みになっておりまし て、看護師の病院・病棟における配置や外来における医療法に基づく配置を除 けば、基本的には医師に着目して診療報酬を支払う。看護師も、いま申しまし たような配置に着目して支払うという構造になっておりました。ご存じのよう に、ここ10〜20年の間には理学療法士とか作業療法士といったような方の配置 や活動についても、徐々に点数がつくようになってまいりました。ここ数年に 関して言うと、医師が医師らしく働けるという言い方が妥当かどうか分かりま せんが、医師の診療の補助を特に一生懸命やってくださる方に着目をして、診 療報酬を付けるという構造になりつつありますし、ここでも、そういうことを 狙ったものです。ただし、[3]にあります医療クラークのところでもそうですが、 診療報酬の財源が限られている中で、そうした方の採用に満額準備できるよう な診療報酬というのはなかなか付けられません。言ってみれば、呼び水的なイ ンセンティブ、管理者や院長と呼ばれる人が雇用してみようかというような呼 び水になるような形の、その程度の報酬が付いているという状況にあります。 ○近藤委員 今日は、平成22年度の診療報酬改定の基本方針、「視点等」と「方 向性」について議論をすると部会長からお話がありましたので、そういう視点 で話をさせていただきます。前回海辺委員から、20年度診療報酬改定の中では、 医療部会と医療保険部会、あるいは中医協との並行論議になっていたではない かという指摘もありました。今回は、そういう意味では早くから始まったわけ ですが、外的要因で2か月間医療部会と医療保険部会が開催されなかったとい う意味で、今回も平行議論にならざるを得なかったことについてはやむを得な いと判断しております。  もう1点、今回の基本的な考え方で、医療が危機的な状況にあるという基本 認識は、我々も同様です。地域医療体制の一翼を担う歯科医療としては、その 考え方は全く同じです。先ほど中川委員から、中医協の医療経済実態調査の話 が出ました。少し問題点もあるというお話もありましたが、歯科の部分につい て言いますと、歯科は個人診療所中心ですが、診療所の診療の施設規模は毎回 ほとんど同じです。ユニット数といいますが、治療台の数はほとんど同じなの で経年的な経過を見られるということが重要だと考えているわけです。今回の 中医協の医業経済実態調査の内容を見ても、歯科医療機関の疲弊の状況という のは極限に達しています。  今回資料として出ている「視点等」と「方向」の4つの視点の中で「充実が 求められる領域を適切に評価していく視点」という中に歯科医療の充実が入っ ております。我々はこれを評価したいと思いますし、この中で、国民・患者に 良質な歯科医療を提供するための更なる方策を今後考えていかなければいけな いと思っております。  もう1点は先ほどお話がありましたが、在宅歯科医療の推進のためには、ど うしても医科あるいは看護職との連携が重要だということも、是非よろしくお 願いを申し上げたいと思います。  本日出ている資料2-2をご覧いただきたいと思います。行政刷新会議のワー キンググループで「8020特別推進事業」が見直しということになりました。8020 運動というのはもう20年経過しておりますし、この推進特別事業も平成12年 からスタートした事業です。開いて2頁のちょうど真ん中に「事業制度内容」 というのがございますが、8020推進特別事業は、特に高齢者中心の施策ではあ りません。幼児期、成人期、高齢期、それぞれに対応した各都道府県における 事業を行っているものです。  今回の事業仕分けの中で見直しということになりましたが、内容的には理解 されたと我々としては考えております。歯を残すことが健康寿命の延伸につな がるということは十分ご理解いただきつつある、国民の間にいま広がりつつあ ると思っているわけですが、私どもは若い世代にも8020運動の重要性をお話し ていきたい。そして、歯を残すことの大切さ、歯を失ったときにどのような形 で口腔機能を回復するか。食べること、発音することの機能を回復するように、 歯科としては努力をしてまいりたいと考えているわけです。  今回民主党の政策集の中に、こういう文章がありました。ちょっと読ませて いただきますと、「寝たきりの高齢者や障害者も含め、すべての国民が歯科検診 を受けられるようにし、歯科疾患の予防法や治療について調査研究を推進すべ き」という提言がなされております。私どもとしては、今後法律上義務づけら れていないような検診あるいは在宅歯科医療などを通じて、高齢者に対する取 組を一層推進していくことが重要である。介護との連携も重要であると考えて おります。そのために、次期診療報酬改定におきましても、在宅歯科医療を推 進するとともに、ライフステージに合った診療特性のある歯科医療の充実、QOL に配慮した歯科医療の充実を図ることが重要だという考えでおります。そのた めには、先ほどから議論がありますように、前提となる歯科医療技術を適切に 評価することが重要だと考えております。 ○小島委員 石井参考人から出されました診療報酬改定の基本方針を考える上 での前提条件として、大きな枠組みをどうするのか、それが必要だという発言 をされました。まさにそうだと思っております。これからの日本の医療をどう 再構築、再建するのかということが必要だと思いますが、そのためには議論と 合意形成が必要である。そこは引き続き医療部会で議論していくことが必要で はないかと思います。そうは言っても、来年度の診療報酬改定をどうするかと いうこともありますので、そういう中で出されたのが今日出された論点です。  資料4に関わるところで中川委員からは、医療費の全体的な底上げが必要だ、 そこを明記しろという発言がありました。潤沢な財源がある中であれば一律的 な底上げというのも必要だと思います。一方、診療報酬の引き上げということ になれば、その財政を支える医療保険の財政ということがあります。いま医療 保険状況は極めて財政的にも厳しい。とりわけ私が被保険者になっております 協会けんぽは、今年度の決算では、積立金を全部取り崩しても4,500億円ぐら いの赤字になるという状況です。来年度にそれを全部保険料で賄うということ になれば、1.6〜1.7%ぐらい保険料を引き上げなければならない。いわば現在 の保険料率8.2%の2割分を一挙に上げないと赤字分が解消できないという状 況になっております。診療報酬がアップすれば、その分さらに保険料率を押し 上げる要因になってくる。そういう厳しい医療保険財政の中で、しかも加入者 は賃金が目減りしているという中での保険料大幅アップなので、そういう状況 も踏まえた上での診療報酬改定である。もし中川委員がおっしゃるように、全 体的な医療費の底上げが必要だということであれば、それは厳しい状況にある 医療保険の財政状況も勘案する。そういうことも踏まえて、その中での検討が 必要ではないかということです。  潤沢な財源がなく、限られた財源の中でどう必要なところに手当てするかと いうことで、これまで2回ほどの診療報酬改定の中で強調されているようなこ と、前回であれば緊急課題、そして4つの視点が示されているのだと思います。 これも今回示されている基本的な重点課題という項目、それから4つの視点と いうことでは、ほぼ妥当な内容ではないかと思っております。  特に重点的課題、資料5で出されている救急、産科、小児、外科等の医療の 再建ということが言われています。ここで「再建」という意味合いで使ってい るということは、医療崩壊という状況をどう再構築、再建するかということで 前向きな表現になっているのではないかと思います。具体的には、そこに出さ れているような課題です。これもおっしゃるように、この間、2回同じような 視点で取り組んできたけれども、医療現場は一向に改善しない。その大きな理 由としては、財源が不十分だったということ、それに尽きるのだろうと思いま す。そういう中でも緊急的な手当てが必要なところを重点的に対応してきた。 今の限られた条件の中では、ここで出されている重点課題、あるいは病院勤務 医の負担軽減といった視点は、引き続き追求することが必要なのではないか。 それを踏まえて、4つの視点ということで示されておりますが、これも引き続 きの課題で、今回はここのところをさらに、財源対策も含めて、どう前向きに 対応していくかだと思っております。それは全体的な枠組みという視点という ところです。  それともう1つは、後期高齢者医療制度に係る診療報酬の問題、これについ ても資料6では年齢で区切るような後期高齢者に関わる診療報酬の見直しとい う視点も出されています。資料7でも出されている「高齢者医療制度改革会議」 がスタートする。そこには後期高齢者医療制度の廃止を前提に、年齢で区切ら ないという制度をこれから検討することになっている。そのため、年齢で区切 らないような報酬に見直すことが必要ではないかと思っております。具体的に 言いますと、後期高齢者の相談支援料等がいまストップされていますが、終末 期医療については高齢者に限らないので、そこは年齢で区切らないという見直 しは必要ではないかと思っております。  もう1つ、先ほど加藤委員から小児医療のところで、小児用の薬がなかなか 使いづらい、使えないというのがあるという発言がありました。そこは未承認 あるいは保険未適用、そういう問題の解消という視点からも、見直すというこ とで、薬の未承認・未適用薬の早期解消に資するような薬価のあり方という視 点も前回発言したのですが、そういう視点も是非入れるべきではないかと思っ ています。以上です。 ○山本(信)委員 薬を扱っている者から見まして、今回の提案にいくつか意 見を述べたいと思います。先ほど竹嶋先生がおっしゃられた全体の枠を決めろ というお話、これはまさにそのとおりだと思います。そうは言いつつも無駄を 排除して、一体、これからの日本の医療、日本の医療費はどうするのかという 議論は大切な議論ですので、それはそれなりにきちんとしなければいけないと 思います。  その一方で先ほど膠着化した中医協だというご指摘がありました。一面的に 見ると膠着化したように見えますが、かなり長い時間をかけて議論をし、その 議論の結果作られてきた点数でありますので、それを一刀両断の形で要るか要 らないかという形の仕分けをするということにつきまして、いささか乱暴にす ぎるという感じを私は持っています。それをまず申し上げた上で、今回提出さ れています資料、見直しと言われた22年度改定の視点と方向性ということにつ いて意見を述べます。  まず1点はこの視点に書かれました従来から言われている、勤務医の負担軽 減という観点からしますと、そこには医師や薬剤師等医師以外の医療職がとも に役割を担うのだという視点ですが、これまで病院の薬剤師は比較的顔が見え ないというか、物の管理を中心にしていました。しかし、最近はそうではなし に、薬品の管理という基本的な役割に加えて医師の方々の処方のサポートをし たり、あるいは薬物治療のプロトコールを作ったり、患者さんに服薬説明をし たり、インフォームド・コンセントをとったりといったような、調剤の周辺作 業にまで業務を広げています。いわば医師の方々がなさっておられる業務を支 援する業務が、かなり重要な役割になってきています。こうした連携はむしろ 安全性と同時に質の担保にもつながることでして、現在、抗菌化学療法であっ たり、精神科であったり、がんであったりという8つほどの専門領域の専門薬 剤師がそれぞれ養成されつつありますので、そうした者をうまく活用すること も重要なのだと思います。  1例ですが、病棟の中で大変有名な抗凝固剤のワーファリンというお薬があ りますが、これは結構投与量の調節が難しいのですが、その投与量の調整に薬 剤師が関わることによって、その後の副作用として出てきます出血傾向がほぼ ゼロになったという事例もありますので、そういった意味でいくと、薬剤師が 病棟に常駐していて常にチームの中にいて、医師あるいは看護師の方々とうま く話し合い、連携しながら医薬品がどう使われているか、薬物療法がどう進む かということをきちんとサポートすることが安全につながり、かつ、医師の負 担経減にもつながることですので、むしろそうしたチームで対応する体制をき ちんと評価するような方向性を是非お示しいただきたいと思います。  併せて、この資料5の2.の所に(1)の[3]イノベーションの評価と、(4)の[1]後 発医薬品の使用促進が出ていますが、イノベーションの評価はここではおそら く医療技術のことを指しているのかと想像しますが、現在の医療の中では医薬 品そのものが、単なる道具ではなしに手段になっていますので、どれほど新し い薬が、画期性のあるものあるいは効果の高いものが医療現場に投入されるか ということも、大変大きな問題です。先ほど加藤先生がご指摘になりました小 児の問題がそうですが、そういう中でイノベーションをどう評価するかとすれ ば、片方でイノベーションをしなさい、片方で例えば仕分けチームがおっしゃ るように値段を下げろということでは、実際にメーカーは何をもって開発に進 んだらいいのか、進みようがないと思います。  その一方でドラック・ラグがあるのだ、あるいは未承認があるのだと、効能 追加をしてもらわなければ困るのだということになりますと、両手を縛られて 何かをしろという状態になりますので、その辺りは先ほど小島委員もおっしゃ ったように、薬価基準制度そのものや価格の付け方に様々議論があるのかもし れませんが、少なくとも後発品を使っていこうという、それを支援しながらか つ新しい医薬品を作っていくのだ、そのための費用をうまく捻出するのだとい う新しい提案については、この中でも薬価の問題として同時にご理解を願いた いと思います。   併せて資料の5の中に重点的な項目の中に(1)とさらに言えば(3)のところに、 例えば急性期の受け皿としての後方支援の在宅医療あるいは在宅歯科医療の推 進という項目があります。これは先ほど斎藤委員がおっしゃったようにインフ ラの整備と同じですが、その中で看護の方々が、看護がまさに我々の出番だと おっしゃったわけですが、看護の方々がなさることは看護の方にしかできない もっと重要なことがあると思います。例えば、入院中の医薬品は誰が供給する のが、そこはやはり薬剤師になるはずです。となれば、在宅に移りましても医 薬品が要らないということにはならないわけです。先ほどもおっしゃったよう に、経管から口で食べられるようになったという評価はもちろんありますが、 それに至るまでの医薬品の供給については、是非薬局、薬剤師がそのチームの 一員として、地域の中で活躍できる、あるいは活用される仕組みとか、あるい は制度とか、そうしたものを評価することが必要なのだろうという思いがしま す。  結論といいますか、そういった意味で言えば、前回の仕分けチームの中で、 中川先生のお言葉には多少反するかもしれませんが、我々はいままで医療経済 実態調査を中心にして診療報酬改定を行ってきました。その参考的な資料ある いはそれを補強する資料としてTKCの調査であったり、あるいは年間データを 使っているわけです。単に表面的に出る数字はプラスマイナスでしか出てまい りません。実際に起こっていることは、何があるかということも十分に検討を する必要があると思いますので、期待される役割は何があって、果たすべき任 務は何なのだといったようなことを、きちんと実態とか事実を把握した上で、 その評価に基づいて、もし適正な配分をなさるのであれば、配分なり改定をし ていただくことが本来、医療崩壊あるいは必要な医療提供体制を確保する上で も最大の手段だと思っておりますので、是非そうしたことをここに盛り込んで、 仮に中医協に示すとしたら、そうした方向性を出すような答申をお作りいただ きたいと思います。 ○渡辺委員 手短に申し上げます。私は、まず民主党が政権を取って、民主党 のマニフェストで、国民医療費をGDPの8.1から8.9%にもっていくという目 標を掲げたことは評価しております。安定的な財源を確保しながら医療費を OECD平均並にもっていくという姿勢は是非実現してもらいたいと私は思って います。  当面の問題として来年の診療報酬改定は、先ほど話があったように、できる ならば、かなりのアップを望みたいところですが、現実問題としてそうはいか ない。といって、いままでのような医療費抑制といったことはしないというこ とを信じておりますが、そういった中でも重点的にどこにするかということは、 当然必要な議論で、それが我々医療部会の役割だと認識しております。そうい った意味で具体的に2点申し上げたいと思います。  まず「病院勤務医の負担の軽減」、これも当然なわけですが、ここに書いてあ るのは医療従事者の増員に努めるという、つまり医療従事者のマンパワーを増 やすという視点で病院勤務医の負担軽減の視点です。私はそれも大事ですが、 それプラス病院勤務医の負担軽減としては診療所の役割をもっと活発にしても らいたい。  特に私は8月の末の医療部会で申し上げましたが、なかんずく、有床診療所、 ベッドを持った身近な地域の診療所ですね。この有床診療所の役割についても、 ここでも盛り込んでいただきたい。有床診がその上の救急等々に入っています が、有床診のことについては8月の専門会で竹嶋委員も有床診の活用というこ とをおっしゃいましたが、ここに有床診の活用ということも盛り込んではいか がかと思っています。  もう1点は「充実が求められる領域を適切に」というところで、これも非常 にうなずける精神、歯科あるいはがん医療、認知症等とありまして、この裏を 返したところで、新型インフルエンザ、肝炎対策これも当然だと思うのですが、 私はもう1点感染症絡みで言いますと結核ですね。結核については確かにいま 患者数、罹患者は減っていますが、それでも1年間に2万5,000人近い人が罹 患し、特に若年層がいろいろそういった接する所、立ち入っている所が不衛生 な所もあるのでしょうが増えている。  現実問題、私もいま国立病院機構の評価委員をやっていますが、国立病院で も結核を扱っている所はありますが、残念ながら大変な赤字でやめざるを得な いといった所もあって、これはいまや結核は減っているといっても深刻な疾病 である、感染症であるといっても過言ではないので、ここにもやはり拡大すべ き領域として結核対策の推進といいましょうか、そういったことも盛り込んで いただきたいと思います。以上です。 ○辻本委員 この社会保障審議会医療部会の議論の役割が、国民の側から見た ときに、国が今後どういう方向性を示していくのかということを明確にしてい ただくところと、それを知った上で、私たち患者が自分たちは何を引き受ける べきかを学習する場であって欲しい。それを、基本にお話をさせていただきた いと思います。  改定の視点の4つ、これはもうすべて患者としては、妥当でもあり必要なこ とが示されていると、高く評価をさせていただきたいと思います。ただ、もし やこの文章のままに、例えば新聞などで発表されたときに、患者はやはり今よ りも医療の期待値を上げるに違いありません。それでなくても今、患者のニー ズはどんどん果てしを知らないほどに、高まっていく現実があるなかで、まず 大枠としては、引き上げを大前提に考えていただくしかないと思います。  もしそうなったときには、やはり国民、患者、私たちは、その限界と痛みを 引き受けつつ、その負担をどう共有していくかという覚悟が必要になってまい ります。その議論の中で欠落しているのが、いわゆる患者の諦観というのでし ょうか、患者が医療の限界と不確実性をどう引き受けるべきかを、見える形で お示していただくことが不可欠だということを感じます。  実は、いま私どもの電話相談の数がピーク時の半分に減ってきています。こ れは単に漠然とした不信感が少し減ったということであって、残念ながら患者 が冷静になったわけでも成熟したわけでもありません。むしろ、にもかかわら ず届くご相談の患者の期待値は驚くべき高まりを見せ、さらに多様化というか 広がりを見せているという現実がございます。  社会保障としての医療が、すべて100%完璧ではない現実を患者の私たちが どう引き受けていくか、その覚悟と本気が試されていることだということを、 もう少し議論の前面に出していただきたいと感じながら考えていました。  例えば私もそうですが、700万人の団塊の世代がこの先、5年、10年、患者 の層の、いってみれば最も厚い部分を占めていくわけです。その人たちがただ ただああしてくれ、こうしてくれという高いニーズを声高に叫ぶことが次の世 代に残すべきものであるのかどうか。私は違うと思います。我々の親の世代が 残してくれたはずのものを私たち団塊の世代がどう引き継ぐべきか。どう生き るか、どう死ぬかという、いわば生き様、死に様、そうした問題がすでに目の 前に迫っているだけに、これからの医療の中でどう伝えていくか。[2]の改定の 視点の中で、「患者から見てわかりやすく納得でき安心・安全で生活の質にも配 慮した医療を実現する視点」、ここがまさにそこにつながる問題だと思います。 国民や患者が何を引き受けるかといったことが見える形ということを、是非こ の議論のあとに深めていただきたいと思います。  今日の議論をお聞きしておりましても、やはり各科それぞれの診療がこうし てほしい、ああしてほしい、私たちはこういう理想的な医療を提供したいのだ と、本当に熱い想いをアピールしてくださるのですが、そういうことだけを聞 いていたら、当然に患者のニーズを高めるだけです。そこのところをもう少し 冷静に、私たちが覚悟と本気ということを踏まえられるように方向を示してい ただきたいと思います。  実は私が患者の自覚とか患者の覚悟という言葉を言うと、正直、あちこちか ら非常に厳しい批判を受けます。バッシングも受けています。しかし、やはり 私たちはこの覚悟と本気をもつことが必要です。最近は覚悟という言葉を使う ことの危険性を感じて、今日はあえて諦観ということを申し上げましたが、患 者の特に団塊の世代の、これから老病死と対峙する700万人がどう医療と向き 合っていくか、そこのところにはっきりと見える形、そうしたものをお示しく ださい。そのために1つの提案をさせていただきます。  今日ここで各診療科目ごとにそれぞれの熱い想いを語ってくださったことを もっと見える形の作業部会を設けていただきたいという提案です。患者にその 内容が一つひとつ見えるような、それこそ医療現場の覚悟のほどをお示しいた だいて、その中で冷静に患者、国民が医療をもう少し自分の問題として考えら れるような、そうした作業部会を是非とも開いていただきたい、そのことを事 務局にもお願いしたいと思います。 ○藤原参考人 簡潔に申し上げます。まず次期の診療報酬改定の基本的な方向 につきまして、我々も医療の崩壊とか綻びとかいう問題がいろいろあると認識 しておりますが、やはり医療といえども国民生活の一部であるということを十 分に考えますと、いま失業率が非常に上がっているとか、賃金が下がっている、 日銀の展望レポートを見れば、3年連続の物価下落という状況にあるというこ とも、十分に踏まえながら議論をしていく必要があるかなと思っています。  そういう中で重点を置くべき考え方もあると思います。その中でいままで何 回も出てきましたように、医療機関同士の連携とか、医療と介護の連携、チー ム医療、こういうものを推進していくよう重点を置くように診療報酬を見直し ていくのが大事ではないかなと思っています。  その中で、いちばん大事だなと思っていますのは、先ほど竹嶋先生がおっし ゃった施設完結型の医療から地域完結型の医療へという、ここの考え方は非常 に大事だと思っております。そういうものを推進していくためには、実は診療 報酬だけを見直せばいいということではないと思っています。診療報酬体系を 見直せばそれが必ず実現できるとはなかなか思えない。端的に言えば地域の中 の病院同士の連携を深めていくためには、やはりその地域なり国なりの助成な り補助がどうしても必要になってくるのではないかと思います。そういうとこ ろを今回、補正予算の見直し等で削られてしまったのが非常に残念なのですが、 そこを診療報酬と公費との適切な役割分担なり、両方で支えていくという考え 方を是非示していただきたいと思っています。あと技術的なところですが、薬 剤に関して先ほど何回もご議論がありましたが、私も同じでして、イノベーシ ョンの評価と後発医薬品の利用促進はセットで考えていただきたいと思います。 以上です。 ○樋口委員 私はここへ参加していろいろなことを教えていただくだけでもい いかなと本当は思っていて、今日も加藤総長から始まって、そうか、小児の死 亡の中でがんの割合がそんなに大きいのかとか知らないことばかりで、医薬品 のほうも小児用の医薬品という形ではなかなか認可が下りていなくて、そこで 苦労をされている実態であるとか、ほかの委員の方からもいろいろなことで教 えられて、それだけで十分なようなものですが、あえて一言、二言申し上げま す。  まず水田先生がおっしゃったように、この部会の位置づけというのが一体何 なのだろうかというのは、ずうっと昔から問題になっていて、きっとおそらく それぞれの背景にある専門家を代表している人が、それぞれの専門のところで はこういうところがあるのですよということを、とにかくこういう場で伝える という役割が1つ。しかし、それだけではなくて、もう少し全体の大きな枠組 みをみんなで考えてみたいということもあるのだけれども、そこがなかなかう まくいかないので、いま辻本さんがおっしゃったように作業部会であれ、何で あれ、何か仕組みも作っていただけないだろうかというお話が出てきたのだろ うと思います。私自身は一体自分がここに何でいるのだろうかということのほ うが問題ですがそれは余計なことなのです。  患者とか国民という立場で、辻本さんとか海辺さんは発言しておられるわけ ですから、もう十分なのかもしれませんが、どういう話をここにいて聞きたい のだろうかということを考えてみました。先ほど言ったようにいろいろな話が 聞けてそれで有難いということもあるのですが、全体としてのトーンは何であ れ暗いですよね。それから難しくてこれを聞いて嬉しいのかということですよ ね。どうしようもないじゃないかという感じもある。  例えば1つの例なのですが、いちばん初めに厚労省の方から精神科医療に関 する検討会の報告書が比較的詳しく紹介されています。私はたまたま東京大学 に勤めているのですが、東大の学生でも精神科の治療でなかなか治らなくて大 変なという、本当に気の毒です。  今日わかったのは10年のプランがあって、ちょうどその半分の5年のところ で、こういうことなのですよというお話をいただいたのですが、それに加えて もし可能であれば、私が患者であれ国民であれば、この5年間で精神科医療は 少なくともここはこういう形で進歩しましたよという話をやはり聞きたいです ね。それが今日の資料の中にも研究開発の推進とかそういうことは、ちゃんと 触れてあるので、もちろん忘れておられるわけではないのですが、そういうと ころが必ずしもうまくいかなくて、特に精神科については、標準的治療という のが何なのだろうかというのは、なかなか難しいのだろうと本当は思うのです。  そういうものがなかなか進まないとしても、こういういい話がある。認知症 については新しい薬がこうやって出てきましたよと。だって、あんな本当に賢 そうな女優の方だってああいう形になるのだという、本当に誰でもなり得る精 神科の疾患だということは、私の身の回りだってたくさんあるのですね。みん な身にしみて感じているはずなので、それは一体どうやったら予防できるのだ ろうか、あるいは、それについてかかったときには、どういうふうな治療の研 究開発が進んでいるのだろうかという話はやはり聞きたい。そういう話が出て くるような、それがそう簡単な問題ではないでしょうから、進んでいないとし たら、それはなぜかということを分析していただけるような話があるといいと 思うのです。  今日の診療報酬改定だけで物事が全部進むわけではないという話は、本当に そのとおりだと思うのですが、今日の話との関連でいうと、例えば私が認知症 だとしますと、認知症だとそのこと自体がわからないかもしれないけれども、 自分が受けている診療が自分のためだけではなくてほかの人、あるいはこれか ら認知症になる人のためにもなるという話であることが、必要だと思うのです。 実際にそうだと思うのです。だから診療と研究開発の連携を強化するような診 療体系の作り方、これはちょっと違う性質かもしれませんが、小児用で適応外 使用であれば、一種の後出しの研究開発をやっているわけです。  そうだとすると、そこには何かプラスアルファーを付けてあげる。そういう ことを推進するような形で、そういう枠組みを何かこの診療体系の中に入れら れないだろうか。もちろん治験という制度はあるのですが、ああいう大仰なも のではなくて日常診療のデータを私が精神科の患者であれば私は提供します。 自分の精神的な状況がこういう形で進行していますとか、あるいは少しずつ良 くなっているということのデータが共用されて、活用されているのだったら、 ここの診療報酬のところでも、そういうことをお医者さんにも反映させるよう な仕組みを作っていただけると、患者にとって自分が診療を受けているだけで はなくて、もう少し大きな枠組みの中で、自分たちも生きているという感じが 出るような話が出てくるのではないかなということを、思いつきですが感じて います。 ○高智委員 健康保険組合の関係から一言述べたいと思います。本日はその域 を越えまして健康保険、医療保険者を束ねる団体、それよりもむしろ国民的な 視点に立って町のお兄さんお姉さんでもわかるような分りやすい話に徹したい と思います。多少繰り返しになりますが、私ども健保連といたしましては、現 在の医療保険制度のスキーム、7割給付、3割負担、これ以上劣化させては決し て公的な医療保険制度スキームとは言えないという基本的な認識を持っており ます。これは政権が変わっても全然変わらない基本的な認識でございます。  先ほども日本経団連の委員の方からご発言がありましたが、現在、経済のフ ァンダメンタルズは長期にわたって、これ以上の悪さを経験したことのない、 まさに100年に一度あるかないかの状況にあるわけです。そして有効求人倍率 等を見ましても、来年の高校卒業生は0.4台ということです。高校生の半分以 下が就職できない、給料袋を1回も貰うことなく、また5月の社会保険料の支 払いということも経験せずに、就職浪人になろうとしているという状況の中に あって、前回のこの場におきましては、底上げなど、無い袖は振れないという ようなことを申し上げましたが、やはりここは1つ時間の推移とともに多少工 夫した言い方をしなければいけないと思っています。先ほど西澤委員からもこ ういう特定の部分についてノミネートされたけれども、うまくいかなかったで はないかというお話もございましたが、やはりここは国民誰の目から見ても納 得のいく線で言えば、小児、産科、救急といったところ、そして病院の疲弊し た部分につきましては、とことん大胆かつ重点的にフォローしていく必要があ るのではないかと思っております。  実は話がちょっと変わりますが、一昨日ドイツ連邦保健省の保険局長、この 方は介護保険局長も兼務されていまして、以前はドイツ最大の一般地区疾病金 庫の組織政治部長もお務めになった方ですが、この方にお会いする機会がござ いました。そして、疾病金庫、向こうの健康保険組合ですね。あちらでは疾病 金庫と呼んでいますが、20世紀の最後の段階では1,200を数えたけれど、自分 がベルリンを出てくるときにはもう180だよと、これもしかも有意に縮小とい いますか合併が進んだ結果だということを誇らしげに語っておられました。こ の有意とは何かといいますと、単純に保険料率の低い保険者に移り渡るのでは なくて、質の良いサービスを提供してくれる保険者、これを国民は望んでいる のだよというお話をされました。非常に説得力のあるお話だったと思っていま す。  片や我が健康保険組合は、平成4年度におきまして1,827を数えました。こ れがピークでした。現在は1,484、この間343の健康保険組合がなくなりまし た。中には有意な吸収合併という例もありましたが、最近の例は殆どあっては ならない形で消滅していっています。京樽健保、西濃運輸健保然りでございま して、こうした事例はこれで終わっていないという状況にあります。極めて悲 惨な状況です。片や最後のセーフティネットと言われてまいりまして、私ども で解散した組合がお世話になっています協会けんぽも、一昨日の医療保険部会 で数字が出たとおりでして、このままいくと共倒れという状況も想定外としな いと、私自身はそのような最悪の状況も視野に入れておくべきではないかと考 えております。  そういうわけでして、この時期におきましては、経済のファンダメンタルズ 全体、特に雇用の状況については極めて厳しい。中医協の国民健康保険の委員 の方にもお尋ねしましたところ、収納率が目に見えて落ちてきているというよ うなことも伺っていますので、サラリーマン健保、国保両方とも未曾有の状況 になっていることをしかと確認した上で、今回の診療報酬改定に臨むべきだと 思います。もちろん引上げ絶対反対とかを合唱的に言うつもりは毛頭ございま せん。最大限の工夫をこらしたのか、その検証がまず必要だと思っています。  それから先ほど来出ていますが、国民にとっては情報の非対称性の問題もご ざいますので非常に難しい問題ですが、これを噛み砕いて発信して差し上げる、 報告提供をして差し上げる、また見える化して差し上げるということは、我々 の大きな使命、保険者の使命、保険者機能を発揮する上でもとても大きな仕事 だと思っております。具体的にはジェネリックの関係も然りですが、もちろん この横でイノベーションについて考慮することについては大賛成でございます。  それから最近あまり芽を出していませんが、私どもは「見える化」の一環と しても非常に大きな関心を抱いていますが、レセプトのオンライン化。あのよ うな形になっていますが、やはり保険者は代理人、エイジェントとしての役割 をきちんと果たしていく上で、加入者に対してきちんとものを還元していく、 見える形で返していくという意味でいきますと、レセプトのオンライン化に基 づく分析の強化、健康な方はより健康に、病んでいる方は一刻も早く治ってい ただく、保健指導の強化につなげることが非常に重要だと思っています。これ らも含めまして、今回の診療報酬改定に臨んでいきたいと思っておりますが、 是非皆様方のご理解も頂戴いたしたいと思います。ありがとうございました。 ○田中部会長代理 ありがとうございます。私も発言させていただきます。も ちろん個別のいろいろな分野への対応策は論じなければならないとは思います が、その前に本部会としての基本方針、基本の方向を論じる、その上であとで 個別分野に下り、更に中医協でもう1つ細部に立って論議していただく、この 順番だと考えます。となると、まずは両者、支払い側、それから診療側が言わ れたように総枠の話がありますし、石井委員が言われたように重点分野の課題 に対応するには、どうしたらいいかという仕組みベースの話があって、その上 でもう少し細かい話になるのだと思います。前提の認識としては、前回も重点 分野への配分を点数ベースで行ったけれども、全体の疲弊感は解消されなかっ たという事実、実態から出発すべきだと私も考えます。  医療、特に急性期医療、急性期医療提供体制、取分け救急医療を維持させた り発展させたりする、つまり社会的共通資本を持たせる方法は、必ずしも個別 の点数、個別の評価、加算等の手立てだけでよいかという問題意識があります。 また同じく急性期病院を支える地域医療の体制を支える方式もすべて、何事も 個別の事後的出来高払だけでいいかということも、仕組みベースで考えなけれ ばいけない。もちろん技術料の部分は出来高でもいいのかもしれませんが、社 会的共通資本を支える費用の持ち方とは、当然固定費ベースをどう補っていく かにもかかわります。小児を含む急性期医療の構造変化は著しいものがありま す。先生方がおっしゃったとおりです。技術進歩は著しいものがありますし、 病床当たりの人員数はこの10年間で大変増えました。また病床当たりの有形個 定資産額も増えています。つまり固定費が増えているわけです。すると、固定 費の賄い方としては必ずしも出来高診療報酬だけではなくて公費の使い方もあ るでしょうし、基本料といった形の払い方もあります。この仕組みベースでの 考え方をまとめた上で、個別の分野の話に入っていく方向性を、今日皆様方の 言ってくださったことを見て、私はまとめとして申し上げたいと思います。 ○部会長 それでは、まだまだご発言があると思いますが、予定の時間になり ました。最後に事務局からインフルエンザの流行状況の報告をお願いします。 ○医政局指導課長 机上配付資料インフルエンザ関係の資料がございます。ポ イントだけご説明いたします。定点当たりの報告数推移41週から45週分まで ありますが、45週は先々週の数字でして、全国値としては32.76、前の週より 若干減ったように見えますが、祝日が1日ありましたので、もう少し推移を見 る必要があります。北海道につきましては43週をピークに下がってきたと思わ れます。高い所は45週で50を超えている所として秋田県、愛知県、滋賀県、 こういった所があります。しかし、全国的に流行しているというところで、41 週当たりまでは都市部に多かったのですが、今では全国的に流行しています。  次の頁です。入院患者の概況です。11月17日までに入院した患者の累計が 7,708人となっています。年齢構成では5歳から9歳が最も多く、1歳から4 歳、10歳から14歳が次いでおりまして、小児科が非常に多くなっています。 基礎疾患を有する方が2,755人で入院患者の約3分の1程度、慢性呼吸器疾患 が多くなっています。それから急性脳症とか人工呼吸器を利用された方は492 人ということで入院患者の6%あまりとなっています。  3頁、上は基礎疾患を有する方の年齢別内訳、中は急性脳症、人工呼吸器を 利用した方の年齢別内訳です。下の入院患者の推移をご覧いただきますと、い ちばん最近の週は、まだ報告遅れがありますが、11月4日の週あるいはその前 の週をご覧いただきますと、1,300人前後になっております。定点報告による 推計発生患者数が150万人程度ということですので、入院率としては0.1%弱 ということで、いまのところ幸い低く推移しています。  次の頁は外来病体制に関する調査、それからもう1枚めくっていただきます と透析・小児・妊婦の重症者の入院体制の確保、これは8月末以来、各都道府 県に体制の確保をお願いしておりまして順次進んできております。この10月末 時点の調査ですので、その後も進んできていると思います。以上でございます。  ○部会長 ありがとうございました。今日の部会はこれまでですが、次回の日 程をお願いします。 ○医療制度調整官 次回の医療部会ですが、12月3日の木曜日15時30分から 18時までということで予定をいたしております。よろしくお願いいたします。 ○部会長 これで終わります。ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省医政局総務課企画法令係 吉田、荒木(2519)