09/11/18 第1回腎臓移植の基準等に関する作業班議事録           第1回 腎臓移植の基準等に関する作業班 日時 平成21年11月18日(火) 15:00〜 場所 経済産業省別館1107号会議室 ○大竹補佐 ただいまより、第1回腎臓移植の基準等に関する作業班を開催いたします。 班員の先生方におかれましては、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうござ います。  本作業班につきましては、先般の国会で「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法 律」が成立したことを受け、改正法の施行に当たり、腎臓移植における移植希望者(レシ ピエント)選択基準、そして臓器提供者(ドナー)適応基準を検討することを目的として います。  本日は第1回目の会議となりますので、班員の先生方のご紹介をさせていただきます。 東邦大学教授の相川先生、日本医科大学教授の飯野先生、国立長寿医療センター総長の大 島先生、国立感染症研究所部長の佐多先生、東京女子医科大学教授の服部先生、名古屋第 二赤十字病院副院長の両角先生、国立病院機構水戸医療センター医長の湯沢先生です。続 きまして事務局の紹介をさせていただきます。臓器移植対策室長の峯村室長です。 ○峯村室長 室長の峯村です。お忙しいところ今日はありがとうございます。活発なご議 論、よろしくお願いいたします。 ○大竹補佐 同じく竹内補佐、長岡補佐、井原主佐、最後に私、大竹と申します。どうぞ よろしくお願いいたします。  当班は第1回目の会議ですので、班長を決めたいのですが、事務局としては、大島先生 にお願いしたいと思いますがよろしいでしょうか。               (異議なし) ○大竹補佐 では大島班長、班長席にお着きください。以降の議事進行を大島班長にお願 いいたします。カメラの方がいらっしゃいましたら、ご退席のほどをよろしくお願いいた します。 ○大島班長 班長を勤めさせていただきます。よろしくお願いいたします。まず最初に事 務局から資料の説明をお願いいたします。 ○大竹補佐 お手元の資料に沿いましてご説明させていただきます。配付資料は議事次第、 班員名簿、資料1「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律の概要」、資料2-1「厚 生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会について」、資料2-2「改正法の施行に向けた検 討課題及び検討体制について」、資料3-1「親族への優先提供について」、資料3-2「親族へ の優先提供とレシピエント選択基準の関係について」、資料4「腎臓移植希望者(レシピエ ント)選択基準(案)」、資料5「腎臓臓器提供者(ドナー)適応基準の法改正に係る主な ご意見」です。参考資料は、1から4まであります。ご確認いただきまして、過不足等あ りましたら事務局までお申し出ください。  また、お手元にあるファイルは、法律の条文等の資料です。大変恐縮ですが、お帰りの 際に机の上に置いていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○大島班長 ありがとうございました。早速議事に入ります。  本作業班におきましては、新しく法律が改正されまして、厚生審議会疾病対策部会臓器 移植委員会でもう既に審議が始まっていますが、そこで最終的には決まるわけですが、腎 臓移植に関連する専門的な見地から、特に選択の問題等についてここでご議論いただいて、 最終的に審議会で決めていただくというプロセスが必要になります。そこでまず、法改正 の概要とこの作業班の位置づけ、これから議論を行うに際しての留意点等。また、一方で 法律の専門家によって、特に親族優先という点について議論が始まっていますので、そう いった議論の中身等について、事務局から説明をお願いします。 ○大竹補佐 資料1に沿いまして改正法の概要をご説明します。資料1をご覧ください。1 頁目に法律の概要を箇条書きで示していますが、1枚おめくりいただきまして、表に沿い ましてご説明します。こちらは、臓器移植に関する法律の現行法と改正法を比較したもの です。今回の改正点ですが、第1点目。親族に対する優先提供が記載されました。現行法 では「当面見合わせる」とガイドラインに書かれているのですが、改正法におきましては、 「臓器の優先提供を認める」と記載されております。施行日が1月17日に迫っております ので、レシピエントの選択基準との関係についてご議論いただければと思っております。  2点目として、脳死判定・臓器摘出の要件です。これまでは「本人の生前の書面による 意思表示があり、家族が拒否しない又は家族がいないこと」とされておりました。今回の 改正点は、「本人の意思が不明である場合でも、家族の書面により承諾があること」。本人 が拒否をしていない場合であって、家族の書面による承諾があれば、摘出、脳死判定が可 能ということになります。ここが大きな変更点です。  3点目。小児の取扱いとしまして、これまでは「15歳以上の者の意思表示を有効とする」 と記載されておりました。逆に言えば15歳未満の意思表示は有効ではないということです が、今回は「年齢に関わりなし」ということになりました。  4点目として、被虐待児への対応ということで、これまでは規定はなかったのですが、 今後は「虐待を受けて死亡した児童からの臓器が提供されることのないように適切に対応」 という言葉が記載されています。  また、普及・啓発活動に関しても、これまでは規定はなかったのですが、今後は「運転 免許証等への意思表示の記載を可能にする等の施策があり、公的な書類への記載を可能に することによって、適切に臓器移植を推進していこうということが示されました。こちら は施行日が7月17日となっています。以上が法律の主な改正点のご説明でした。 ○相川班員 東邦大学の相川ですが、小児の取扱いのところで、これは脳死下の臓器提供 のことで、心停止下の臓器提供の場合は、いままでの年齢に関わりなく、臓器提供がされ ていた。これは脳死下の臓器提供ですね。 ○大竹補佐 はい。  続きまして資料2-1のご説明をさせていただきます。資料2に関しては、本作業班の位 置付けをご説明します。3頁の図をご覧ください。いまご説明した法律の改正点を受けま して、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会が開かれたところです。この審議会に おきまして、この法律改正の施行をどう決めていくかという枠組みが示されたところです。 左に主な検討課題がありますが、I.親族への優先提供をどうするのか、例えば親族の範囲、 親族への優先提供意思の取扱いについて、法律的事項を中心として、課題があるとされま した。  II.小児からの臓器提供をどうするか。小児の脳死判定基準、被虐待児の取扱い、15歳 未満の者による拒否の意思表示などの点が課題として挙げられました。  III.本人の意思が不明の場合、意思表示していないことの確認や、有効な意思表示ができ ない者の取扱い。  IV.普及啓発、臓器提供意思表示カードをどうするか、意思表示の登録システムをどのよ うにするか。さらには普及啓発の対象者とその方法、内容について課題が挙げられていま す。  V.臓器移植の実施に係る課題として、ドナーの適応基準、レシピエントの選択基準が挙 げられています。この部分を今日、腎臓に関してご議論いただければと考えています。  こうした課題を受けての検討体制も決められたところでございまして、意思表示・小児 からの臓器提供等に関する作業班で、主に法律の先生方に入っていただきまして、親族の 優先範囲やその他の事項についてご議論をすでに開始していただいています。  普及啓発に関する作業班において、ドナーカードや登録システムについて。また、7つ ある臓器毎の作業班を設置させていただきまして、レシピエント選択基準、ドナー適応基 準についてご議論いただければと考えています。  もう1点、研究班を設置しまして、山梨大学の貫井先生にお願いしているものですが、 小児の脳死判定基準や臓器提供施設の体制整備、虐待を受けた児童への対策取扱いについ て議論いただいています。  全体像の中で、スケジュールですが、1頁の下半分に、スケジュールが示されておりま して、先の通常国会で改正法が可決・成立したのが、本年7月17日公布ということです。 また、来年の1月の親族優先提供に係る部分から順次施行となります。具体的には1月17 日に親族優先提供に係る部分が施行され、公布から1年後の7月17日に、小児からの臓器 提供に係る部分が施行されます。改正法の施行に向けまして、まずは年内にも親族優先提 供の実施に必要な事項、ガイドラインについての改正が必要となってくるという状況です。 改正に当たりましては、先ほどご説明した臓器移植委員会等における専門家のご議論をい ただくとともに、パブリックコメントを経たあと、行うという予定になっています。 ○大島班長 改めて1月17とか7月17日という期日の設定は何か特別の意味があるので すか。 ○峯村室長 法律の条文の中で施行期日について規定がされておりまして、親族優先につ いては、公布の日から起算して6ヶ月を経過した日、また、それ以外の部分としては、公 布の日から1年を経過した日からとされております。公布が7月17日ですので、その日か ら起算いたしまして、6ヶ月を経過するのは来年の1月17日、1年経過するのは、来年の7 月17日です。 ○大島班長 その差をつけたことには、何か意味があるのかとか、特別なものは、そこは よくわかりませんが。 ○峯村室長 そこについては特段私どものほうでも把握はしておりませんし、国会等でも 議論されていないのですが、施行に係る事務作業等に関して、議員立法の際にそういう期 日設定がされたのではないかなと、推測はしていますが。 ○大島班長 特別な意味があったというわけではないのですね。 ○峯村室長 内容自体について意味づけがされているわけではございません。 ○大竹補佐 資料3のご説明をします。資料3につきましては、本日議論をしていただく のに先立ち、留意事項として親族への優先提供について、どのような議論があり、規定が あるのかご説明させていただきます。資料の3-1ですが、法律でどのように規定されてい るのか、条文を読ませていただきます。  第6条の2、移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により 表示している者又は表示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓 器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる。  またこの条文ができる過程において、どのような国会議論がされたのかというのを、代 表的なもの2点をご紹介させていただきました。まずは5月27日、衆議院の厚生労働委員 会での河野太郎議員の答弁です。後段から読ませていただきますが、「親子及び配偶者に対 しては親族の優先提供を認めることということで、かなり厳しい枠をはめて、その中に限 り優先提供をこれは心情を考えて認める」というような答弁をいただいています。同じく 7月7日、参議院の厚生労働委員会で、山内康一議員からの答弁です。「A案におきまして は、親族への優先提供の意思表示の規定を設けることとしておりますが、この場合におき ましても、その意思表示を踏まえた上で、最終的には血液型が適応するかなどの条件に照 らし合わせて順位が判定されることになると想定しており、決して順位の判定が恣意的に 行われることはないと認識しております」という答弁をいただいています。  続きまして資料3-2をご覧ください。こちらで親族優先提供と移植希望者の選択基準の 関係について、先立って行われている法律関係のワーキンググループの議論をご紹介しま す。本年10月1日に「臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班」 を開催させていただきました。参考人としまして、医師も加わり、親族優先のレシピエン ト選択基準における取扱いについて議論を行った。その結果として、「親族への優先提供の 意思がある場合、レシピエント選択において、優先順位の第一位として取り扱うこと」を 基本として、臓器毎の作業班において検討を行うこととされました。この結果を受け、10 月27日に肝臓移植の作業班が開催されまして、肺、心臓と順次開催されています。  この法律作業班の中の主な議論として6点あります。まずは優先提供を受ける親族は、 予めレシピエント登録されていることを前提とすべきというご議論をいただいています。 次に親族優先は、レシピエント選択基準の優先順位の第一位とするのが妥当ではないかと いうご意見をいただいています。3点目、法律に規定されているということであり、医学 的緊急度などよりも優先されると解釈されるというご議論をいただいています。4点目に、 同時移植希望者よりも単独での移植を希望する親族が優先されると解釈されるというご意 見をいただいています。5点目に、虚血許容時間の位置づけは、臓器毎の作業班において 検討を行ってはどうか。6点目として、移植を必要とする方の親族に対する心理的な影響 というのが議題として挙げられており、特に危惧されているのは、生体移植の行えない心 臓移植における、親族への自殺の誘発についてのご懸念がなされています。以上です。 ○大島班長 ありがとうございました。何かご質問等あれば。 ○峯村室長 補足ですが、親族の範囲等につきまして、本日0時から、パブリックコメン トにガイドラインの案を掛け、30日間ということで、ホームページ上で見られることにな っています。内容としては、親族の範囲、意思表示の方法、意思の確認内容、留意事項と いう形で大きく分かれておりまして、その中で親族の範囲につきましては、親子及び配偶 者と、これまでの議論を踏まえた形で、とりあえずパブリックコメントに掛ける案文とし て示しているところです。 ○大島班長 前回、法律の作業部会の意見を踏まえて、前回の移植委員会で議論された内 容をパブリックコメントに出したということですか。 ○峯村室長 ベースにして掛けているということです。 ○大島班長 という状況にあるということです。ご質問を含めてしばらくこの問題を、い ま説明いただいた部分について、ご議論いただければと思います。自由にどこからでもい いと思いますが、いずれにしましても、臓器提供の親族の範囲の問題については、全体の 大きな流れはできてきているということで、これに対して何か強い異論を出そうとすると、 よほどきちんとした論拠がたぶん必要だろうということが1つ。もう1つは、最後に説明 していただいた、選択基準の関係について、法律のほうから出されている、とにかく優先 順位の第一位だと。医学的な要件を担保した上で、親族の範囲については、先ほどご説明 があったとおりですが優先順位は、一位であると。その原則を腎臓にもそのままあてはめ てよろしいかどうかということが、今日特にご議論いただくいちばん大きなポイントかな と思います。いかがでしょうか。自由にご意見いただければと思います。 ○飯野班員 資料3-2の「親族」ですが、4番目の「同時移植希望者より単独での移植を 希望する親族がいる」、これはどういうことですか、具体的に膵臓と肝臓の。 ○大竹補佐 こちらは、例えば肝腎移植希望者がいた場合、いままでは肝臓で1位で腎臓 で3位だった場合、そうした場合でも肝腎同時移植者が優先されてやってきたということ です。ただ、今後、もし腎臓単独の希望者、その方が親族であった場合は、その方に腎臓 が行くということです。また、これは後ほど説明します。 ○両角班員 そうすると、原案は、肝腎と膵腎については、親族に関してはこういうルー ルだということですね。 ○大島班長 2つの臓器にわたる場合には、いままではそちらが優先されてきたという経 緯がありますが、それが親族の場合には外されるということです。 ○飯野班員 親族が肝腎同時移植や膵腎同時移植を希望していた場合、それをどう優先す るかですよね。 ○大竹補佐 そういった場合には、親族であることもあるので、第一位優先ということに なります。 ○両角班員 先生、これは腎臓の作業部会ですが、肝腎や膵腎の問題はここだけで論議さ れるのか、肝臓や膵臓のほうのグループではどういう論議になるのですか。 ○大島班長 これは私の判断ですが、個別に両方が会って話さなければ解決もできないと 判断される場合には、両者が集まると。そうでなければ、原則はここにあるので、原則が 了解されれば別に集まる必要はないということになるかと思います。 ○相川班員 問題は、肝腎、肝臓の場合には心停止下の臓器提供は、はっきり言って無理 ですから、脳死下でないとあり得ないわけです。だから、心停止下の場合には肝腎と優先 適応を希望していた方がいても、心停止下の提供になった場合には、腎臓しか提供されな いということになると思うのです。それでよろしいのでしょうかね、そこら辺は非常に細 かいところなので。 ○大島班長 それは医学的に可能であるということが優先されるから、医学的に確実であ るということが担保された上での話になります。具体的な細かいことについては触れてい ません。 ○井原主査 肝腎同時移植については肝臓の作業班をすでに開催しており、腎臓単独の方 が親族であった場合にはそちらが優先されるということについては、一応ご了解を得てい るということを申し添えます。 ○大島班長 提供したいという意思がとにかく実現されることが最も重要な要件になって くると思います。 ○飯野班員 これは親子、配偶者だけですよね。そうすると、親族というのは法律上は規 定が違いますよね。それをこういう言葉で使っていいのかどうかという意味で、了解を得 ないでいいのですか。いかがですか。法律上は親族と言った場合はもっと広いです。 ○峯村室長 親族優先規定の臓器移植法上の規定ぶりは、法律上、親族に対して優先的に 提供することができると書いてあるので、そのままですと民法の親族の範囲を準用する、 六親等以内の血族と三親等以内の姻族ということになるわけです。ただ、臓器移植委員会 および作業班では、議論としてあくまでも移植法の公平性の原則の特例的な扱いであると いうことから、その内容について民法の親族の範囲をそのまま準用するのではなくて、限 定的にその範囲を定めることが適当ではないかということがあり、それでガイドラインで 親族の範囲を規定するという形にされたわけです。 ○湯沢班員 基本的なことで確認しておきたいのですが、腎臓は2つありますが、これは 2つとも同じレベルでということは、どこかの臓器との流れからいって当然のことと考え ていいのですか。 ○大島班長 もう少しわかりやすくいいですか。 ○湯沢班員 1腎だけが優先提供されて1腎は配分されるなどという考えはないと思って いいのですね。 ○大竹補佐 もし優先すべき親族が2人いた場合、レアケースかもしれませんが、そうし た場合には親族に2つ行くということです。 ○湯沢班員 ということと思っていていいのですね。1個だけが優先提供されるべきで1 個は公平にということは全くないですね。 ○大竹補佐 はい。 ○湯沢班員 いま、たまたま出ましたが、腎臓は患者が多いわけで、親族に2人、3人、4 人といったときのその中での配分などということも問題としては、出てくることだと思う のです。 ○大竹補佐 もし2人であった場合には問題はないと思うのですが、1個ずつということ になろうかと思います。ただ、3人、4人という場合、こちらの優先順位については。 ○湯沢班員 優先度の第一位と親族をした場合に、親族の中でも優先をどうするかですが。 ○井原主査 それは原則としてレシピエント選択基準に基づいて優先順位づけがなされる と考えています。 ○湯沢班員 そう思っていいのですね。わかりました。 ○両角班員 実際に現行でも、提供された腎臓の能力が低い場合に2腎を同時に植える話 が現場で決まってくることがあるのです。そうすると、こういった場合に、もしも提供さ れた腎臓のポテンシャルファンクションがあまり高くない場合には、2腎提供も誰が決め るのかと。優先的にそれも認められるかどうかは、具体的には起きてくると思うのです。 ○湯沢班員 小児の場合などは出てくることはありますよね。小さい子どもからの提供。 ○大島班長 極めて具体的なことを言うと相当な議論になりそうですが、ただ原則的な考 え方としては、医学的な価値で判断をするという言い方が適切だと思うし、その都度、医 学的な判断を優先させると。 ○両角班員 ですから、そのときに判断する人が十分に客観性を持って判断したもので構 わないという理解でよろしいですね。 ○大島班長 もちろん、極めて正当な恣意のない形でもって判断をするということですよ ね。 ○両角班員 ということですね。 ○井原主査 それはこれまでと同様におそらく腎臓の機能を評価されて、2腎を同時に1 人の方に移植する必要があるかは、医学的な判断として、していただいていると思うので、 そちらを変更するという趣旨のものではないと考えています。 ○大島班長 先ほど湯沢先生が指摘された問題で、先ほどの説明だけでは少し十分に説明 しきれてないところがあると私自身は少し思っており、仮に親族の中で4人いた場合に、 提供者が順番をもし決めていたという場合、どうするかという議論が1つ可能性としては あるだろうという感じがするのです。そこについてははっきりとしたあり方の方向はまだ 決めてないのですよね。 ○峯村室長 いま考えているのは、法律作業班での議論として考えているのは、順位づけ については認めずに、例えばレシピエント登録をしていることが前提になりますから、レ シピエント登録をしている親族で該当する方が複数名、3人でも4人でもそこはあるので しょうが、いた場合については、一律に同順位という形で扱って、医学的な選択基準に基 づいて必要度の高い人から選定をすることになろうかと思います。細かい順位づけの話等 については、また具体的な検討をもう少ししなくてはいけないのかもしれませんが。いま 法律の作業班で示されている見解としては、いま申し上げたように、順位づけの場合であ っても同順位扱いにしたほうがいいのではないかという意見は出されています。 ○大島班長 臓器移植委員会ではそこが少し議論になったという経緯があって。 ○飯野班員 おっしゃったように何人かいて、ドナーの方が優先順位をつけた場合、今回、 こういうのが入ったのと同じだと思うのです。心情からして誰に上げたいというのはこれ で認められたわけですから、レシピエントが何人かいれば自分が上げたい人を優先させる べきではないかという気もします。 ○大島班長 その考え方はそれである一定部分には非常によく理解されて、しかしそれを やることがどういう問題を引き起こすかはまた一定にあって、そこのところでどういう選 択がいいのかは、必ずしも全体の中でコンセンサスがまだ得られている状況ではない。議 論があって、一応、パブリックコメントについては、いま提案された形でパブリックコメ ントを出したということですね。 ○長岡補佐 パブリックコメント案は本日公表しましたが、その中では特定の親族を指定 される場合、また親族の中で順位づけがあった場合、これも含めて親族全体のプールの中 で考えていただくという取扱いにしようと。いわゆる順位づけは認めない。特定の親族が いらっしゃっても、例えばいま先生方からご指摘の複数の方が移植を待っている状況で、 レシピエント登録されている場合と、その方はある程度平等に扱って、レシピエント選択 基準の中に落とし込むと、例えば4人いらっしゃると1から4まで数字が付くので、その 順位の上の方から医学的な基準で上げていきましょうということになるということで提案 を差し上げているということです。 ○飯野班員 その規定を決めたベースとしては、論理的にはいまの見方とは違うわけです よね。論理的には、これは親族を優先させるということは、いままでとは違う。平等から 少し離れているということを決めたわけだから、そこでまた平等性を持ってくるのは何か 違うかという気もしますが、私はこれは別にどちらでも、それほど複雑なところは起こる ことはあまりないと思いますので。 ○大島班長 ほかにいかがですか。この辺の議論は相当出てきているので、たぶん例外の 例外になるのでしょうが、しかし議論し始めるとなかなか尽きない部分があることも事実 ですね。この間、審議会でもこの辺のところは相当議論をされていたと記憶していますが、 ほかにいかがですか。選択基準との関係についての資料3-2についての考え方、法律の作 業部会のほうから出されてきた考え方については、これを腎臓のほうでも基本的に容認す ると。  念のために、これも非常にデリケートな話になるのですが、いちばん最後の項目、「特に 生体移植の行えない心臓移植における、親族の自殺の誘発について懸念が示された」とい うことがありますが、心臓の場合と腎臓の場合とは随分違うと思いますが、こういったこ とについて親族提供と自殺の関係の問題について何かご意見があれば。 ○相川班員 心臓においては生体移植はできないですが、腎臓移植においては生体腎移植 はできると、これは全く前提条件が違っています。自分の子どもに上げるために自殺をす ると、腎臓移植においては自殺をしたあと臓器を提供するという人は、まずいないと考え られます。というのは生体腎移植があるので、しかも生体腎と死体腎、心停止下の死体腎 では生体腎移植のほうがはるかに成績がいいですから、それを考えると、子どもや自分の 配偶者に上げるために自殺することは考えられないと私は思います。だから、ほかと関係 なく自殺をした場合に、実際、優先提供に当たる子どもや配偶者がいた場合、その区別を しないといけないと思うのですが、そういう意味では非常に難しいですね。 ○飯野班員 1つの方法は、これはこういう自殺をした場合には親族提供はできないと規 定してしまえば、これはそういった歯止めになると。 ○相川班員 そこら辺が心臓と腎臓では随分違うところなので。 ○大島班長 心臓の場合には直接死になるから、いま飯野先生が言われたように、心臓の 場合は決まったわけではないのですが、腎臓の場合も自殺をした場合に親族提供は駄目と いう規定を作ってしまうことが、いいのかいけないのかです。相川先生のいまの意見では、 その辺が微妙な発言に取れますが。 ○相川班員 そうですね。というのは、初めから網をかぶせて防止するといっても、親族 の気持を優先すると、心臓をほかの方に移植するよりも親族に移植したほうがいいのでは ないかと。ただ、そうはいってもそのために自殺をすることが蔓延するとこれは大変なこ とになるので、そこら辺をうまく規制する法律にしていただいたほうが私はいいと思うの です。端から網をかけてしまうと、これはなかなか難しいと思います。 ○両角班員 臓器移植のために自殺が起きては基本的にいけないと思うのです。腎臓病の 場合には明らかに遺伝性の疾患があって、若年でお子さんが末期腎不全になるという疾患 がいくつかあるわけです。そのときに親の思いとしてみると、二人に腎臓提供することは 通常の医学的判断では許可されないのだから自分が自殺すれば二人に提供できるというこ とがないとは言いきれないことが実際にはあるのです。ですから、それを考えると、一応 この問題を考えておかないとまずいと思うのです。たぶん成人になって発症した末期腎不 全に関しては、自殺はあまり考えなくてもいいのですが、逆に小さなお子さんが高率腎不 全になる疾患に関してみると、私はこれは考える必要があると思うのです。そのときに自 殺をしてもらっては困るのだ、というものがどこかで書かれないとまずいと思うのです。 ○相川班員 ということは、肝臓とかほかと同じように大体合わせるということですね。 ○両角班員 そのほうがいいと思うのです。 ○服部班員 確かに言われてみればそうですね。 ○峯村室長 ご議論の際に2つ観点があるのかと思っており、1つは抑止的なというので しょうか、そういう風潮ができるだけならないようにするという観点から、何らかのやり 方があるかという話です。もう1つ私どものほうで心配しているのは、実際に自殺をして しまった場合、要はやむにやまれず子どもへの臓器提供で悩んで自殺をしてしまったとき は、優先提供の標準も合っているし、レシピエント登録もしている子どもが目の前にいる のですが、ほかの人に上げるという選択をするかどうかまで考えないと、なかなか一律に 除外をすることについて、当然その場面は避けて通れないので、その点も含めてご意見を いただければと。 ○飯野班員 もし原則がこれで心臓移植にも通じるとしたら、それが一例起こったとした ら、次も起きます。規定があったとしても、1例目がそれで心臓移植には自殺は駄目だと 言っても、前例移植されたということになれば、そこはきちんとやらないと抑止力は発揮 できないと思うので、私はきちんとやるべきではないかと思うのですが。 ○大島班長 いかがですか、ご自由に。これは相当に難しいというか悩ましい部分が。 ○飯野班員 1つ、これは反対派の人がいらっしゃるわけですよね、こういうことを言わ れる方は。これで心臓、自殺する人がいるので、こういう法案にはあまり、ネガティブな 人がいるわけですよね。 ○相川班員 いや、先生、日本循環器学会ではこれはそうしないでほしいという提言が出 ている。 ○飯野班員 そうですね。ですから、それに対するある程度の表明はしておいたほうがい いと思います。 ○大島班長 心臓、肝臓ではダイレクトに言っているけれども、腎臓に関しても全くそう いった例を想定できないことはないということは念頭に置いて議論をしたほうがいいとい う状況かと思いますが。いかなる理由があれ自殺による臓器提供という意図は認めないと 言いきってしまうのは、これは簡単ですが、それで事が済むかどうか。子どもが2人とも 腎不全だから腎臓を両方とも取ってくれというのは、これはいかなる理由があれ認めない でしょう。生体では絶対、自分は透析を受けるからやってくれというのは、これは少なく ともあらゆる医療関係者は絶対拒否しますよね。そうすると、自殺しかないかというロジ ックは出てくるのかですね。 ○大竹補佐 なかなか非常に難しい問題であり、ご議論は尽きないかと思います。そうし たご意見をいただいたことは我々事務局としても預からせていただきまして、どういう文 面でどうなるかとか、そういうことは非常に難しい問題だと思うのですが、今日、いただ いたご議論は、ほかの委員会もあるので事務局として預かりたいと思っています。 ○大島班長 わかりました。これは相当悩ましい問題があって、いちばん直接になってい るのは心臓だと思います。心臓の所がどういう方向性を出してくるかも十分に見守りなが ら、次のステップで考えていきたいと。  次の「レシピエント選択基準について」の検討に移りたいと思いますが、よろしいです か。「現在の基準及び改正法の内容を踏まえた新しい基準案について」、事務局よりご説明 をお願いします。 ○大竹補佐 資料4に沿い説明します。資料4「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基 準(案)」としています。選択基準は2つの項目があります。1頁に2つ項目があり、2頁 に3があります。  1.前提条件は、(1)(2)とも変更はありません。また優先順位、(1)搬送時間、(2)HLAの 適合度、こちらも変更はありません。  2頁、(3)(4)は変更がないのですが、3.具体的選択方法の部分、この所に赤字で追加部 分を案として挙げました。具体的には、「適合条件に合致する移植希望者(レシピエント) が複数存在する場合には、優先順位は以下の順に勘案して決定する」という一文を入れ、 「(1)優先すべき親族を優先する」という記載にしました。また(2)として、「2.の(1)〜(4) の合計点数が高い順とする」という所は変わりはありません。また、「以下、PRA検査が可 能な場合にはPRA検査陰性を満たすこととする」ということも変わっていません。以上が 事務局案としてここを示しました。 ○大島班長 レシピエントの選択基準は、いま説明した部分だけではなくて、あと資料を 見ていただければ、これから先が少しありますが、とりあえず法の改正によって親族の問 題が出てきたと。その問題についてだけまず限定的にご議論いただいて、提案の形でいい のかどうか。HLAの問題などややこしい問題がいっぱい出てくるので、これは時間をかけ て議論したいと思います。いかがですか。いまのご説明について、親族の2頁の赤字です。 ○相川班員 私から確認をしますが、具体的な選択法の(1)「優先すべき親族を優先する」 というのは、しつこいようですがこの待機患者が登録されているのが原則になっていると 思うのですが、その文言は加えなくてよろしいのですか。 ○井原主査 原則としてレシピエント選択基準に基づいて優先順位を受けて決定する場合、 ネットワークに登録されていることが大前提となるので、その点は明記しない形でやって います。2点目として、先ほど湯沢先生からご指摘のあった点ですが、複数いた場合とい うことについては、1番目として優先すべき親族を優先する。ここに複数以上の該当があ った場合には、(2)に移るので、その後は2の優先順位ということで、搬送時間やHLAの適 合度などに基づいて優先順位づけがなされるということを想定しています。 ○大島班長 いままでの例で、もちろん親族の問題がなかった時代に、親族にやってくれ と指定が出て延びたことが何回かありましたよね。あのときは、レシピエント登録されて なかったのではないかな。なかった場合とあった場合とあったのですね。 ○井原主査 1度パブリックコメントをかけて現在のガイドラインという形になってから は、そういった形では1例も行われていません。 ○大島班長 いま相川委員が確認したことは、要するにレシピエント登録があるかないか は、ネットワークがコンピューター上出てこなかったらそれでおしまいということを、は っきり言いきってしまっていいと、どのような事情があれそれは対象にはならないと言い きっていいかどうかという問題だと思うのですが。 ○井原主査 それは大前提ということになります。 ○両角班員 腎臓の場合には、ポテンシャルドナーになってから実際に臓器提供までの期 間が1週間とか、場合によってはもっと長時間のことがあります。そうすると、そのとき に登録できないかという話が起きてくるのを考えておく必要があります。脳死下からの臓 器提供と違って、心停止下の場合には臓器提供までの時間が長い例出てくるから、すぐ登 録できないかという話は必ず起きてくるので、それが明確になっていないと、これはあと でまたきっと問題になると思うのです。 ○相川班員 時間軸の問題ですよね。 ○湯沢班員 24時間登録できて、駆け込み登録という可能性はありますよね。 ○両角班員 起きそうですよね。起き得ますよね。 ○相川班員 起きる可能性はあると思います。 ○両角班員 その状況下で登録を可能とするのであってもいいのではないかという気もす るけれども難しい判断です。 ○大竹補佐 亡くなる前に直前に登録をして。 ○大島班長 それこそ心臓が止まる直前に登録をすることは可能ですか。 ○相川班員 先生、その条件は提供者の方が文書で残しておかないといけないですよね、 優先適応をするということを文書に残してあったときの条件ですから。 ○大島班長 枠組が親子か夫婦だけですから、その枠組に入っているから、相当限定され ることは限定されますよね。 ○相川班員 いいのではないですか。 ○大島班長 極端なこと、1時間前に登録されても、このルールに乗っている限りそれは それでいいと。要するに、あとは事務的な問題と物理的な問題で、コンピューター上出て くるか出てこないかだけですよね。 ○湯沢班員 そうすると、ネットワークの登録がコンピューターで24時間動いていて、1 時間前に登録した人が順位として上がってくるのか、どうかというのは現実的には不可能 ですよね。 ○大島班長 現実的に不可能であった場合には、それはあきらめてもらうと。実際に選択 をするというときの選択が決定されるときにどうだったのかというのは。そこから何かト ラブルが起こる可能性はないとは言えないですが、それはどういう条件設定しても何か起 き得る可能性は常に残っているということになりますよね。パーフェクトにやろうと思え ば、起こった状況に合わせてルールを設定することしかない。それは不可能ですから。い かがですか。 ○飯野班員 前もってレシピエントの選択をある程度しているから、それで1時間前にパ ッと入ってくるというと、また混乱しますね。 ○相川班員 かなり混乱しますよね。 ○大島班長 例外のことばかり頭で議論していますから。 ○相川班員 本来はドナーになり得るポテンシャルドナーが発生して、コーディネーター が臓器提供の意思があるといった時点で、登録してるのかしていないのかという方法が、 私はすっきりしていていいのではないかと。 ○両角班員 最初のレシピエント選定検索をかけた段階で上がってくるものはOKという ことですかね。 ○相川班員 そうですね。そのときに登録をしてない方は、それはその時点で登録してな かったと判断していいのではないでしょうかね。そうでないと、現場のコーディネーター は非常に混乱をすると思います。 ○両角班員 困りますよね。大変だと思います。 ○湯沢班員 選択基準ですが、前提条件としてABO式血液型と一致というのがありますが、 これは親族として限った場合や生体腎移植の場合に不適合とは言いませんが、不一致でし ている例はいくらでもあると思うのです。そうすると、前提として一致と言っていていい のかという疑問があります。 ○大島班長 そこら辺がまた次の悩ましい問題に確かに結びつけていますが。 ○湯沢班員 とりあえず今回は親族だけですね。 ○相川班員 はい。そうですが、例えばドナーがO型で親族がA型だったと、そうですね。 ○湯沢班員 親族といったときは、結構そういう組合わせなどの移植はあり得ると思うの です。 ○相川班員 適合でいいっていう話で出てきますよね。 ○湯沢班員 はい。適合と広げておいたほうが親族によりいい。 ○相川班員 親族の場合には。 ○湯沢班員 優先的には行きますよね。 ○相川班員 そうですね。一致でなくても臓器移植できる血液型であればですね。 ○湯沢班員 不適合でないということもあり得るのだから。 ○相川班員 そうですね、不一致であっても許可というふうにしないと、これはまずいで すね。 ○湯沢班員 そうだと思います。生体腎で実際それで普通にやっているわけですからね。 ○大島班長 これは、私の個人的な意見をこのような所で言ってしまってはまだ早過ぎる と思うのですが、医学的な判断はそのときの医学判断は重視されるべきでということは、 いま先生が言われたけれども、生体移植でどこまで可能なのかというところが1つの基準 かとは私自身は思っているのですが、それでもなおかつ、例えば1年生着率10%ぐらいの 確率だと。それでもあなたはやりますかと言われて、いいと言った場合、どうするのだと いう議論は残るかもわからないけれども、一般的にはいま生体移植でやっているところぐ らいが1つの選択の基準になるのかと、ミスマッチであってもですね。というのは私の個 人的な感じですが、そこはいまはっきりと出せるかどうかというのは。とりあえずは優先 すべき親族を優先するという考えについては、これでよろしいですか。 ○相川班員 いま言った議論で、1が前提条件になっていますから、医学的な判断だけで 不一致を移植するわけにはいかなくなってしまいますよね。 ○飯野班員 外しておいたほうがいいですね。 ○井原主査 あくまでも前提条件を満たした患者に対して優先順位を付けるというのが、 レシピエント選択基準の場合の前提となるので、親族だけそこを緩めるというお考えと受 け止めてよろしいのでしょうか。 ○大島班長 そこが悩ましいところです。 ○井原主査 法律の作業班や臓器移植委員会でのご意見というのは、あくまでも医学的安 全性は親族に優先される場合でも担保されるべきだということで、前提条件を満たした患 者の中で優先順位づけをするので、前提条件を満していない方まで優先してやることが、 医学的に妥当なのかどうかという点から、ご意見いただければと思います。 ○飯野班員 親族への優先はそこの部分のレベルをある程度下げていると。親族優先だか らすべて同じだというわけではないです。それである程度優先して、少しリスクは高くな る、あるいは生着率が落ちるかもしれないけれども、親族に優先するという考え方ではな いでしょうか。 ○井原主査 その点は資料3-1で提案者の先生からもご意見はいただいておりまして、血 液型などが適合するか、医学的に緊急度が高いかなどで決められていると。下線の部分で、 「最終的には血液型が適応するかなどの条件に照らし合わせて順位が判定されることにな ると想定しており」という形で、あくまでも医学的な部分は踏まえた上で、親族の優先も 考えるべきであろうというのを立法府のご意見として受け止めておりまして、こういった 形で案として作っています。 ○飯野班員 医学というのは、一律でパーッと決めてしまうというものではなくて、ある 程度幅があるものです。 ○相川班員 そういう意味では、血液型が不一致であっても適応してしまうのですよね。 ○井原主査 その場合ですと、親族に限らず大前提として、一致と適合までと。他臓器で すとそういった取扱いになっております。ただ、適合と一致の場合には、一致を優先させ るということで、一致と適合の両方が優先順位づけに入ってくるという臓器は、ほかでも あります。 ○両角班員 そうすると、血液型の分布頻度が違うものですから、すごく分布が偏ってし まって、自分がどの血液型を持っているかによって移植のチャンスが変わってしまいます から、全体としての一致というのは変えられないと思うのです。これをもし適合にしてし まうと、O型のレシピエントにとっては大変な不公平になりますので、それは認められな いというのは大原則だと思うのです。  日本人の血液型が、ドナーもレシピエントも同一の割合であるというところで、公平性 から考えた結果が一致の原則になっているわけですから、それは変えてはいけないルール で、親族に関して適合にするかどうかを考えるかどうかなのです。そのときに、前提にな っている1番目の血液型一致の原則を変えないとなると、別の例外規定として触わる形に しないと無理だと思います。 ○大島班長 非常にわかりやすい言い方をすると、この死体腎移植の選択のあり方と、生 体移植における選択のあり方というのは、相当違うのです。死体移植の場合の選択基準を そのまま当てはめようと思うと、難しいと思います。  死体移植の場合には、患者不適合というのはありません。血液型が一致しているという 前提から動き出します。生体移植では、いまや血液型不一致というのをやっているという ことになります。だから、親族の場合にはどう考えるのか。それは生体移植の適応基準を 持ってくるほうが妥当かなというのが、私の個人的な感じです。 ○相川班員 日本ではあまりないのですが、O型のドナーの方が出られて、O型の待機患者 に移植するというのは一般的です。だけれども、待機患者が多いから、まず適応されるこ とがほとんどだと思うのですが、イギリスではもし適応者がいなかった場合には、ほかの 血液型に移植します。そういう規定になっています。 ○大島班長 脳死下ですか。 ○相川班員 脳死下であろうが、心停止下であろうが。でも、心停止というのは珍しいの で、普通は脳死下ですが。ネットワークの中でそういう規定になっているはずです。 ○両角班員 ネットワークは基準が違っていて、LOPAみたいな小さなエリアの中で選択し ていると、そういうことが起きます。日本全体を一つのプールとする全国規模のネットワ ークでは、日本人は人口が多いからそれが起きていないということで、選択のプールが小 さいと、そのようなことが起きてくるということです。 ○大島班長 医学的な判断の中身に少し議論があるという状況だと思います。医学的な判 断というだけで投げてしまうと、少し混乱が起こりそうだということを前提に置いて、こ の考え方を基本的に認めるということでよろしいですか。 (異議なし) ○大島班長 ありがとうございます。その次です。事務局案については、いま問題が明ら かになったということで、この案そのものはいいだろうということですので、ほかの臓器 との同時移植に関する親族優先の問題です。それについての説明をお願いします。 ○大竹補佐 冒頭にご議論いただいたところを簡単にご説明します。参考資料1です。先 ほど私からの説明で、同時移植希望者よりも、単独で移植を希望する、親族が優先される と解釈されるという、法的な解釈をご説明しました。その際のご説明です。  参考資料1は、前提として、肝腎同時移植希望者や膵腎同時移植希望者がおりまして、 その際の取扱いについての現状は、肝腎同時移植希望者あるいは膵腎同時移植希望者がい る場合には、そうした方々が優先されて腎臓を提供されるということで、「現状」という表 をお示ししています。  また、下段に「今後(案)」という表がありますが、(1)として、腎臓移植希望者が2名 とも優先すべき親族であった場合、これまでは同時移植希望者にいっていた腎臓が、親族 の該当が有の場合、腎臓移植基準の第一位の腎臓単独の方、また第二位の腎臓単独の方に、 それぞれ腎臓が1個ずついくということを示しています。また、腎臓が1つしかない場合 は、当然第一位の腎臓単独の方にいくだろうという案です。  (2)は、腎臓移植希望者(レシピエント)のうち1名が、優先すべき親族であった場合は、 まずは第一位の腎臓単独の方で、さらに親族の該当のある方に腎臓1つがいきまして、2 つ目は肝臓選択基準で一位だった肝腎同時移植希望者にいきます。また、腎臓が1つしか 提供されない場合には、親族である腎臓単独の方にいくだろうということです。また、本 案については、肝臓のワーキンググループでもご了承いただいていることを申し添えます。 以上です。 ○大島班長 すでに議論済みであるということですね。いかがでしょうか。話を聞いてい ると複雑ですが、見ていけばそうは難しい話ではないと思います。ご意見はありますか。 ○湯沢班員 肝臓のレシピエント選択基準を見ると、ABO血液型の不一致だけでなく、適 合も入っているのですね。そうすると、同時移植で腎臓は一致でなくてはいけないことに なっていて、肝臓が適合でいいとなったら、同時のときにはどちらになるのかと。臓器毎 に前提条件が変わってくることになってしまいますね。 ○井原主査 適合条件、優先順位づけについては、臓器毎にそれぞれ違いがございます。 ○湯沢班員 肝腎同時移植のときに、不一致であっても肝臓は大丈夫となってしまうと、 同時移植が成り立たないことになってしまいます。 ○相川班員 肝腎で、肝臓は適合ということで不一致であってもいいという場合に、移植 されてしまったら、腎臓も不一致になってしまうのです。 ○湯沢班員 そうですね。そうすると前提条件を崩して移植することになってしまいます。 ○井原主査 肝臓ではABO型は一致または適合までとなっております。 ○相川班員 だから、肝臓で適合ということで、肝腎同時移植を親族優先提供で移植され た方は、腎臓は一致していないから駄目だとなって。 ○湯沢班員 前提条件が崩れて移植することになってしまいます。 ○両角班員 従来、肝腎だった場合には肝臓が優先という形で動いている。 ○井原主査 その方は腎臓のレシピエント選択基準で選ばれた方ではなくて、肝臓の移植 希望者の基準で、ABO血液型が一致または適合というルールの中でやられておりますので、 完全に不一致なケースは移植はされておりません。 ○相川班員 腎臓だけほかの人にやると言われても困ってしまいますからね。成立しなく なってしまいますから。 ○井原主査 あくまでも同時移植の場合は、両方の臓器に登録されていることが前提で、 かつ肝腎であれば肝臓、膵腎であれば膵臓の選択基準によって、一位になった方に対して、 優先的に腎臓がいくという形になります。 ○飯野班員 親族の場合も一致でなくてもいいわけですよ。いまの考え方をすると、肝臓 がそうだから、親族だけは別にして、compatibleならいいと思います。 ○両角班員 ネットワークのオートマティカルなコンピュータセレクションができないだ けです。 ○相川班員 親族の優先提供で問題になった件が1件ありました。それは1年半後にお母 さんが子どもに生体腎移植をやる予定だったのですが、交通事故で脳死になったのです。 そのときに家族の方は、どうせ生体腎移植で子どもにあげる予定になっているのだから、1 腎だけでも子どもにあげてくださいと、要求したのです。しかし、いままでの規則ですと、 それができないと断わったのです。それで親族の心情を察すると、非常に苦しい。それは 大岡越前の裁きではないのではないかという意見が実務委員会で結構あったのです。その 場合、もし血液型が不一致だったから駄目だというと、かなり親族の方は怒ると思います。 ○飯野班員 移植医療は愛がないとできません。そういう観点からやっていくべきだと思 うのです。 ○相川班員 そういうことが実際に現場で起こってしまっているのです。だから、親族の 優先提供というのは、そういう人たちのために、ある程度恩恵を与えるという意味ででき ていると思うので、できれば親族の優先提供である場合には、血液型が不一致であっても、 それを優先させるとしてあげたほうが、私はいいように思うのです。 ○大竹補佐 それは親族の場合で、親族でない場合も適合を認めるということですか。 ○相川班員 違います。 ○大竹補佐 親族であった場合ですね。つまり、親族であった場合と、親族でない場合と、 レシピエントの基準の前提条件が異なるのではないかと。 ○相川班員 そうです。 ○飯野班員 肝腎移植はそのようになっているわけですものね。 ○大竹補佐 肝臓は、親族であってもなくても、適合を認めるということです。 ○井原主査 それであると、先ほど相川委員からご指摘がありましたが、一致する者が誰 もいなければ適合に回るということは、親族であってもなくても行われてよいということ ですか。そこは違うのですか。 ○両角班員 いまのネットワークのコンピュータシステムからいうと、挙がってこないで す。 ○井原主査 ですので、大前提として、腎臓移植を行う場合に血液型が一致した方で、移 植を必要とする方がいらっしゃらなかった場合、適合する方に移植を行ってもよいという 大前提になると解釈していいのか、それをやってもいいのは親族だけのことになるのでし ょうか。 ○両角班員 現実的にはそうだと思います。 ○井原主査 レシピエントの全体の登録をされている方を考えれば、そうなのですが。 ○大島班長 さっきも言ったように、実際に行われている生体間の移植と、死体移植で作 っているシステムとでは、相当違うのです。それですから、いまの親族指定というところ だけを取り上げて、そこから先は生体間で行われているものを適応させれば、そんなに矛 盾なくいくのですが、死体のこのルールの中の選択基準でやってしまうと、相当無理が出 てくるというのが、現実だろうと思います。 ○峯村室長 先生方のご意見を反映させますと、前提条件の(1)に書き込むということでし ょうか。例えばABO血液型HLAの適合度、優先提供の場合は不適合を認めるそういう書き 方にしたほうがよいのではないか。 ○大島班長 そうです。 ○相川班員 それだと簡単ですね。 ○大竹補佐 1つ心配なのが、それが親族の場合であろうがなかろうが、まずは前提条件 で判断するという提案者の趣旨があるので、腎臓に関してそこをどのように取り扱われる かというのは、また解釈を考えなければいけないと思っております。  参考資料2に、先ほど湯沢先生からお示ししていただきましたが、このような、「一致だ けではなくて、適合も候補者として考慮する」という書きぶりになっています。このよう な書きぶりであれば、全体にかかる話なのでいかがかなとは思うのです。 ○大島班長 参考資料2ですか。 ○大竹補佐 参考資料2が肝臓のレシピエントの選択基準に。 ○飯野班員 全部腎臓もしてしまうわけですか。 ○大竹補佐 そのような考え方です。 ○飯野班員 そうすると、先ほど言ったように、O型の人の、O型のレシピエントの人はで きない。 ○井原主査 他臓器と肝腎同時移植の関係ということであれば、前提条件の中で、いまABO 式の血液型の一致というだけになっておりますが、この点を、一致だけではなく、適合の 待機者も候補者としてまず考慮すると。次に、具体的選択方法の中で、まず優先すべき親 族が優先されます。2番目としては、血液型が一致する者を適合するものよりも優先する。 さらに、血液型で一致されたものについては、優先順位づけの(1)から(4)の地域性、待機 日数、HLA型で優先順位を決めるという考え方であれば、よろしいでしょうか。  それは現実的に、腎臓の場合は移植を待たれている方が非常に多いということで、おそ らく血液型が適合する方までは、回ってこないだろうということかもしれませんが、腎移 植の医療行為としての安全性を考えた場合に、適合と一致の両方が、候補者として選ばれ るという解釈でよろしいでしょうか。 ○相川班員 でも、死体腎移植と腎移植を一緒にしてしまうと、さっき言ったように、プ ールによって、血液型によって、かなり待機患者が違いますから。 ○井原主査 ですので、まず親族が優先されて、2段階目として、血液型が一致する方が 優先されると。その次に、待機日数などで、優先順位づけをすると。 ○飯野班員 そういうやり方はあると思いますが、最初に一致と適合が両方出てきますか ら、コンピュータ上は大変ではないでしょうか。 ○大島班長 例外の例外に近い話をしているので、それをコンピュータのシステムに乗せ るというのは、相当無理があるのではないかと思います。しかも、いままでの死体間での 臓器提供のルールというのは、もちろん医学的な問題は基本にあるのですが、単に医学的 な問題だけではなくて、公平性などが担保されているから、選択基準そのものが違うので す。  公平性とよりいい成績です。成績でも、単にやったからどれだけの成績が出るというだ けではなくて、よりいい成績のものを選ぼうという考え方できているものだから、基本的 に違うということが1つあります。ですから、無理が出てきます。 ○両角班員 親族優先にかかわるところだけを別立てにして、付記のルールでは駄目なの でしょうか。こういった案を作るときには、あってはいけないことなのですか。 ○峯村室長 そこは臓器毎の前提条件と優先順位づけの並びを考えながらですので、これ だけを別にして付記の形で作るのは難しいと思います。最初の前提条件を動かすのは難し いということなのでしょうか。これはO型の場合の話ですよね。O型はO型と一致なのだ けれども、それを適合にすると、O型が、A型、B型、AB型の方に振り分けられるので、O 型は待機患者に回る部分が不利になるという理解でいいわけですね。 ○相川班員 そうです。ただ、親族の場合には、生体腎移植のときに、O型の親で、子ど もがA型ということは、いくらでもあることです。それで血液型が一致しないから駄目だ と言われると、親族は絶対に納得しないと思います。 ○大島班長 本当に細かいことではなくて、スタートの血液型不一致、一致というところ から違っているものだから、要するに考え方のコンセプトそのものが全然違うのです。そ の付記が難しいとか、難しくないということで切り分けてしまうと、相当混乱が起こる可 能性があります。何とかうまくガイドラインに乗せる方法はないかという方向で考えたほ うがいいと思います。 ○飯野班員 井原さんの言うことでいいのですが、どちらがいいかをきちんと検討すれば いいのではないでしょうか。 ○湯沢班員 私自身はこのずれというか、1月17日で親族が出てきたときに、腎臓移植を 心臓死での提供といったときにも、優先提供が出てくる可能性はいくらでもあるわけです。 だから、できれば1月17日に間に合わせるようにやっておかなければならないことだと思 います。 ○大竹補佐 そうですね。非常に複雑な問題でもありますので、本日のご議論を我々で集 約しまして、まずは班長とご相談させていただくということでもよろしいでしょうか。 ○大島班長 よろしいですね。中身についての議論はほとんど尽くされていると思います。 ○峯村室長 知恵が出せないかということも含めて、また相談させていただきます。 ○大島班長 そうですね。あとは技術的にそれが可能かどうかの議論にいくだろうと思い ます。  この問題はこのくらいにしまして、次にいきます。ほかにレシピエント選択基準につい て、いままで行ってきた基準の見直し等もありますから、法律が変わったという意味で1 つのタイミングではありますが、いま一緒に一挙にいけるのかどうかは横に置いておいて、 この際というわけではないのですが、どのような問題があるのかということも含めて議論 をしていただきます。特にHLAの適合度、待機日数、ポイントの重み付け、意思表示の問 題について、しばらくご議論いただきます。ご自由にどうぞ。 ○相川班員 日本臓器移植ネットワークが、今年、2007年までのデータを『臓器移植デー タブック』という形で出版しました。そのプロダクトを見ると、HLAが全部合っている方 は徹底的にいいのです。ただ、HLAが、1つ合っていなくても、2つ合っていなくても、3 つ合っていなくても、あとの成績の有意差は全く出ていないのです。  HLA-DRに関して、以前は免疫抑制剤等が古かったので、以前のデータによると、DRが2 つ一致したものはよかったのですが、そのデータブックをよく見ると、2つ一致したもの と、1つ違うものは、全く成績が変わりない、有意差がないというデータが出てしまいま した。これに関連して、日本の臓器移植のネットワークのデータ自身が、このようなデー タになっているので、それに即したようなスコアリングをしないといけないと思います。  ただ、問題は待機期間であって、あまりにもHLAの適合度を簡単にすると、待機期間の ファクターが非常に大きくなってしまって、いままで以上に待機期間の長い方だけが選ば れてしまうという状況になりかねませんので、そこら辺はよく作業をしないといけないと 思います。  もう1つの欠点は、誰が何と言おうが、圧倒的に待機期間の長い人が選ばれることが多 いのです。それで、いまいちばん問題になっているのは透析の患者数は毎年増えているに もかかわらず、献腎移植の登録をする患者は増加していないのです。そのような国は、日 本以外にあり得ません。  それはどうしてかというと、ネットワークに登録するときに、待機期間がどのくらいか を聞かれると、平均で14〜16年です。そうすると、そんなに長いなら登録は嫌だというこ とで、やめる方がすごく多いのです。  だから、私が先ほど言ったように、ある程度期間を持たないと、まず当たる確率はない ではないかということではなくて、たとえ近々に登録した患者でも、HLAが全部当ってい るというような条件が揃えば、ある意味では、待機期間を無視してでもその方にいくよう にしてあげないと、登録する人がいなくなってしまうと思います。実際に新規で登録して いる患者さんは少なくなっています。だから、そういうチャンスを与えるということでな いといけないのではないかと、私自身は思っています。 ○大島班長 これの選択基準というのは、公平性と医学的な問題のバランスをどう取るの かは、常に大変な議論です。前回もそこにいちばん大きな議論があって、点数1点、1点 をどうするかも詰めに詰めて、小児は多少ポイントを高くするということで決めてきたわ けです。  いま相川委員から、現実から乖離しているのではないかということで、2点ありました。 1つは、HLAの医学的意味が完全に変わった点です。変わった基準をさらに利用していくこ とに限界があるという点が1点です。それから、公平性の問題、移植の機会を全体として も考えていく考え方の問題でした。いかがでしょうか。 ○湯沢班員 HLAですが、日本で臓器移植ネットワークに登録されている血清学的な2桁 のタイピングでは、日本の統計では、確かに有意差は全くありませんが、UNOSの統計だと、 4桁のDNA型のタイピングだと有意差は出ています。  いまのタイピングならそうなるのですが、4桁のDNAタイピングの時代になると、HLAタ イピングの生着率に及ぼす影響が出てくるので、いまの血清学的な2桁のタイピングを見 て、それだから意味がないというのは危険があるかもしれません。 ○両角班員 いまあまり選定プロセスに反映されていないのですが、抗HLA抗体(PRA)に ついて問題があります。現在はダイレクトクロスマッチの結果しか応用していないのです が、移植の成績を決めるときには、どれだけの抗体を持っているか(PRA)の問題が、非常 に大きくなってきています。それからいうと、現在はこの問題が反映されているルールで はないわけです。  短期も含めて、長期の成績も含めて見直そうと思うと、PRAについて検査し、どれだけ の抗体を持っているかが勘案されたルールの存在もの、欧米ですと、多くの抗HLA抗体を 持っている人のほうが優先度が高い形でやっています。そういったことを含めて、HLAを もう1回ちゃんと見直しをしないと駄目だと思います。いまのデータで成績は悪くないか ら、誰も問題にしていないから、だから変えなくてもいいという論議だと、上滑りになっ てしまって、本質から離れていくことが、医学的には懸念されます。  それから現場の人たちの声は、どうしてこの若い人の腎臓が、高齢の透析を20何年して いる人に提供されて行くのだという疑問があることです。臓器配分決定のレシピエント選 定ルール作成の基本となる公平性を担保する中で、HLAと地域性については、医学的な成 績を考えて、移送期間を短くすることに配慮し、そこに待機期間という3つのファクタを 対等に取り入れて出来上がった、ポイント制という概念はわかります。しかし、適正なポ イント制のあり方と現在の問題を再検討し、今後についてどうするかという根本方針を1 度見直さないといけないと思います。各ポイントを何点にしたらいいだろうかという技術 的な問題ではない気がします。1回、2回の会議で拙速に決めてしまうという話ではなく、 もう少しきちんとディスカッションをしないと、提供する側からも、本当にこれでいいの かという声が出てきます。いま患者さんもディスカレッジする、提供側もディスカレッジ するような議論をしていたら駄目だと思います。 ○飯野班員 前の作業班でも言ったように、若い人に優先的にやることは絶対に必要だと 思います。そういう意味では、点数を小児だけではなく、若い人に多く付ける、そのよう に段階制にすることは必要だと思います。 ○相川班員 両角先生が言われたエイジマッチングの問題ですが、ユーロトランスプラン トではスタンダードに行われています。彼らは非常に効率を考えるので、お年寄りからい ただいた腎臓はお年寄り、若い方の腎臓はそれだけ生着期間が長いですから、若い方に移 植をするということで、実際にエイジマッチングをやっているのです。アメリカはやって いないのですが、結果的にエイジマッチングになっています。  もう1つ両角先生の言われたPRAの問題です。私は実際にイギリスにいて、20年前にや っていたわけですが、その頃のイギリスの待機患者のコンピュータを見るとPRAはみんな 出ています。PRAが高い方は35%以上、または65%以上というように区切って、その方の 塊ができていて、合った腎臓があれば、その方に優先的に提供されるように、地域を超え てそれをやっていました。すでに20年前に、すべての患者さんにおいて、PRAは出ていた のです。  ただ、日本は組織上、そういうことがまだなされていないので、いまはHLAはクロスマ ッチで、非常に微妙な抗体が関係しているものが成績を左右する時代ですから、私もPRA のポイントは必要だと思います。 ○飯野班員 私が言ったのは、エイジマッチングもそうですが、若い人に点数を付けるこ とは主張したいです。 ○両角班員 私が懸念しているのは、今回親族への優先提供ということでルールを作ると いうことで、デッドラインがすぐ目の前にある話で、基準を見直そうという話をしている わけです。そうすると、先般来お話に出ている臓器移植ネットワークの中で行われている 死体からの臓器提供の腎臓に関する問題が解決されず、本質に何も手を付けないで、現行 どおりという話で動いていってしまうことに対する、忸怩たる思いがあるわけです。そこ は何とかしなければいけないのではないかと。 ○大島班長 ほかにいかがですか。親族問題というのは、ある意味では医学的な判断の問 題ではないので、医学的判断ではない問題が優先されたということが、1つの事実として あるわけです。これは国民の心情の問題とか、いわゆる一般の人の情感の問題とか、文化 の問題も含めて、そういったようなものが、国民目線で決められてきたと考えていいと思 います。  この適応基準というのは、医学の専門家だけで決めているのですか。これを医学の専門 家だけで決めていいのかどうかという議論も、いま出てきているような感じがするのです が、その点が1つです。現場ではこのような声があるという話も、患者さんの声、周囲の 声も含めてです。  我々専門家は、専門的なフィールドに関しては、こうですという判断を出すけれども、 それ以上のことまで決めろというのは、ある部分で困った話で、それを我々が決めてしま っていいのかどうかというのは、本来であれば違うのではないかという感じがすることが、 皆さんの中から提起されたというのが1つです。  もう1つはっきりしているのは、医学的な判断の基準が、この10年で全然変わっている ことです。それをそのまま踏襲するというのは、非常に大きな問題だということです。  もう1つは、ここの議論とは全然別なところで、大枠を決めていくことがあるので、ル ールとして、システムとして動き始めてしまうと、半年や1年でころころ変わっては困る わけです。莫大なお金がかかるし、一旦動き始めたら、最低でも5年や10年はきちんと動 いてくれないと、大幅な手直しで、少なくとも新しく制度、システムが変われば、それに 慣れるために1年間ぐらいはかかるわけです。慣れた頃にまた変わるという話になると、 お金も大変だし、実際の制度を運用する上でも、非常に大変なことです。  だから、これは完全に古いということになるのは、時間が経てばしようがないわけです が、それでも5年先、10年先を見据えた上でのものにしていかないと、できるだけ無駄も 少なくしてということも考えていかなければいけません。そのような技術的、財政的な問 題が、どうしてもかかわってくるので、簡単な話ではないです。  いまいくつかの法律を受けて、親族問題あるいは15歳以下の意思決定の問題の話で、適 応基準を変えようとなってきているのですが、それだけでは済まなそうなことが明らかに なりましたが、簡単な話ではないので、どのように扱えばいいのか事務局から。 ○峯村室長 先ほど両角先生からご懸念の話がありましたが、今回優先提供の関係で、レ シピエント及びドナー選択基準について、その部分についての手当はしないといけないわ けですが、そもそもこのレシピエント選択基準なり、ドナーの適応基準について、医学の 進歩、いろいろな現場の問題点を踏まえて、何らかの見直しが必要ではないか。そういっ た点も、優先提供の施行に合わせて、見送るということではなくて、その部分については 引き続きご議論いただくという形で、進めていけばよろしいのではないかと思っています。  その際、いまいろいろと論点が先生方から寄せられていますし、その論点について、医 学的、科学的な知見も踏まえて、資料の提供等をお願いすることになると思いますが、そ の点についての議論は継続してやっていく形で、よろしいのではないかと思っております。 ○大島班長 というようなことですので、当面はデッドラインが決められていることにつ いて、まずきちんと答えを出して、いま議論していることも7月までに整理が付くかにつ いても、直感的には相当時間がかかりそうに思うのですが、いずれにしても、法で求めら れているデッドラインについての話だけは、きちんと答えを出していかなければまずいの で、そこを優先的に議論しながら、いま室長から提案があったように、相当大きな問題が ありますから、別途じっくりと腰を据えて考えていかざるを得ないと思います。別途タイ ムスケジュールを作りながら考えていくということで、今日はそのようなことでいきます。  続いて、ドナーの適応基準について検討します。事務局から説明をお願いします。 ○大竹補佐 資料5です。今般、15歳未満の小児から脳死下の臓器提供が可能になったこ とがありますが、事前にご提供いただいている件等も踏まえて、特に大きな改正の必要性 のあるところは、事務局としては見受けられませんでした。資料5、1.疾患の状態を伴わ ないこと、2.慎重に適応を決定する事項、3.年齢とあります。この点について、ご議論い ただければと思います。 ○大島班長 いかがでしょうか。この点に関しては、今回の法律改正とは直接に関連して いませんが、いろいろと議論があるところだとは思います。 ○飯野班員 イギリスに何カ月いたら駄目とか、あのようなものはまだ活きているのです か。 ○相川班員 その点については、リスクを説明した上で待機患者さんが納得した場合には、 提供していいということです。 ○飯野班員 まだあることはあるのですね。 ○井原主査 原則的に輸血や血液行政に合わせた取扱いということでやらさせていただい ています。 ○飯野班員 日本でも発生がたくさんありますよね。 ○井原主査 変更が必要だということであれば、これは移植医療全体にかかわる感染症の リスクの問題ですので、新しい科学的なデータを基に、ご議論いただければと思っており ます。 ○大島班長 いかがでしょうか。 ○飯野班員 問題はHCVをどうするかというのが、東日本でも問題になっています。HCV 抗体を適応から外すかどうかとか、そういうものも。私はこのままでいいとは思うのです が。 ○相川班員 2007年の日本臓器移植学会が出したデータブックでは、HCV抗体陽性のドナ ーから、陽性のレシピエントにやった成績は、実はそれほど悪くなっていないのです。  これはいろいろと細かい議論がありまして、HCVといっても1つの型だけではないので、 違う型のウイルスが入ってしまう可能性があるではないかという議論があります。それか ら、実際に東日本のネットワークの委員会では、小委員会をつくってこの点について検討 しています。いまは、できるだけドナーのPCRを測定する。ただ、短期間にこれを全部測 定するのは非常に難しいことで、いまのところは何とかPCRを測定していただいて、その ウイルス量を東日本ではそのようなことまで気にするようにやっております。ただ、いま の時点では、これを大幅に変える必要はないのではないかと思っています。 ○両角班員 私もそう思います。肝炎ウイルスのサブタイプのものもありますし、PCRで 見ていくのがいちばんいいと思うのです。それが、まだ日本全体に均質に同じ検査方法で 即時性を持って取り扱われていないものですから、慎重に対処するというのが現状ではい いと思います。 ○相川班員 あと1つの議論としては、HTLV-1の抗体です。これもHCV抗体陽性と同じよ うに扱ったほうがいいではないかという意見があります。つまり、HTLV-1の抗体を持って いるドナーから、HTLV-1の抗体を持っているレシピエントに移植をしてあげればいいので はないかという議論もありますが、いまのところ、それについても、どちらかというと、 このままでいいのではないかという意見が大勢だと思います。  ただ、沖縄、九州はHTLV-1の抗体を持っている待機患者さんは多いですから、そういう ことから考えると、今後はデータを取った上で考慮していかなければいけないのではない かと考えます。 ○大島班長 いまの議論を踏まえていかがですか。 ○佐多班員 この3つについては常に問題になっていたわけで、それでエビデンスはまだ はっきりしないということと、体制が整わない点もあるわけです。その辺でコンセンサス が得られた段階で変えるということで、よろしいのではないでしょうか。いまのところは 若干無理があるようなご議論だったと思います。 ○大島班長 海外渡航の問題はいかがでしょうか。あの当時から、現実的ではないのでは ないかという話はあったのですが。 ○佐多班員 ただ、これを変えるという根拠は、逆に何ですかとなります。あまりないと 思うのです。というのは、リスクを考えると、臓器移植、輸血、バンクもそうだと思うの ですが、みんなバリアのないところに入っていきますので、普通の感染症と全く違うわけ で、その辺のリスクを考慮しても、外してもいいということにはならない。その論理の説 明が難しいと思うので、できれば合わせていっていただきたいというのが、私の希望です。 ○大島班長 いかがでしょうか。 ○佐多班員 あと意見の中には、HCVを絶対禁忌に上げるというご意見があったように思 いますが。 ○飯野班員 意見として、HCVを除くという。 ○佐多班員 要するに、1、2、3の1の(2)の中に、逆にHCVを入れたほうがいいと。この 理由は何ですか。 ○飯野班員 感染するリスクがあるということです。 ○佐多班員 レシピエントにHCVの抗体の陽性者が多いことがあったり、長期予後にあま り影響を与えないと。そういう理由で逆に下げたのですが、上げたほうがいいとなると。 ○飯野班員 ですから、タイプの違う方に移植した場合は、感染する可能性があると、そ ういう危惧をしている方もいらっしゃるのです。 ○佐多班員 そういうエビデンスもあるのですか。 ○相川班員 日本臓器移植ネットワークのデータでは、それで駄目になった方はいないで す。それから、成績もすごく悪いわけではないのです。  ただ、個々の事例を見ますと、そういうことだけではなくて、もともとHCVの抗体を陽 性に持っていた待機患者さんが、慢性肝障害で出血傾向があって、そのために手術で亡く なった方が、私の知る限りで2名います。この論議とはちょっと違うと思います。 ○佐多班員 このままでもよろしいですね。 ○大島班長 ほかにいかがですか。感染症の先生方は非常に厳しいのです。 ○佐多班員 本末転倒にならないようにとお願いしているだけです。 ○大島班長 よろしいですか。そうすると、従来のドナーの適応基準に関しては、大きな 変更点はなくていい、変えるほどのエビデンスもないと。悪性腫瘍についてもいいですね。 封じ込めたりはしませんから。それでは適応基準については、基本的にこのままでいいだ ろうとします。  今日議論するのはこのようなところです。今日の議論で、どうしても結論まで持ってい くことのできないことがいくつか残りました。繰り返しになりますが、法律改正によって ガイドラインを変えなくてはいけないという、極めて緊急的な要請がある部分については、 どうしても答えを出さなければいけないので、その部分でまだ完全に煮詰っていないとこ ろもありましたが、議論がほとんど出尽くしていると理解できますので、ほかの作業班と の作業と併せて、事務局である程度まとめていただいて、私と相談をさせていただくとい うことで、そこで最終的な案をまとめたいと思いますが、それでよろしいですか。 (異議なし) ○大島班長 事務局から終わりに当たって。 ○峯村室長 長時間ご議論いただきましてありがとうございました。先ほど来いろいろと ご議論が出て、検討を要すべき内容については、事務局で案を作りまして、大島班長と相 談の上、班員の先生方にもご相談をして、考えていきたいと思っておりますので、よろし くお願いします。  また、引き続きいろいろな内容について、適宜、科学的な知見等について教えていただ ければと思います。次回も含めて、今後の段取りについては、またご相談させていただき ます。本日は誠にありがとうございました。 ○大島班長 これで終わります。どうもありがとうございました。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365