09/11/10 第137回労働力需給制度部会議事録   第137回 労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成21年11月10日(火)9:00〜 2 場所  厚生労働省専用第21会議室(17階) 3 出席者   委員   公益委員 :鎌田委員、柴田委員        労働者代表:長谷川委員、古市委員、小山代理        使用者代表:秋山委員、市川(隆)委員、高橋委員   事務局  森山職業安定局長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木派遣・請負労働企画官、浅野主任中央需給調整事業指導官、        大塚需給調整事業課長補佐、小園需給調整事業課長補佐、        小野寺需給調整事業課長補佐、高西需給調整事業課長補佐、        鶴谷需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)今後の労働者派遣制度の在り方について ○鎌田部会長代理 ただいまから137回労働力需給制度部会を開催します。本日は清家部会長が ご欠席ですが、5月26日の第130回労働力需給制度部会において、部会長から私が代理のご指名 をいただいておりますので、本日の議事進行は私が務めさせていただきます。また、労働者代表 の市川委員もご欠席されますが、代理としてJAMの小山副書記長が出席されております。  議事に入ります。前回部会に引き続き、今後の労働者派遣制度のあり方についての審議を行い ます。前回部会では、製造業務派遣の議論の途中で審議が終了しましたので、本日は引き続き、 製造業務派遣の議論を続けますが、前回部会の資料2の製造派遣業務関係で資料の差し替えがあ るので、事務局から説明をお願いします。 ○大塚補佐 前回資料2の14、15頁について、10月速報の数値に従って数字をリバイスしまし たので、ご報告します。  全体の雇止め等が14万3,249人、うち製造業が13万9,390人、製造業の割合が97.3%で、前 回資料よりも0.1ポイント落ちています。それに伴い、次頁の「派遣労働者の雇用調整の状況に ついて」で、46万6,000人の下の数値を、13.8万人から13.9万人に差し替えています。 ○鎌田部会長代理 議事に入ります。前回資料の「今後の労働者派遣制度のあり方の論点につい て」の議論の小項目に沿って議事を進行します。まず、論点2-1「製造業務派遣を原則禁止すべ きか」についてです。前回部会では、労働者側から、製造業の派遣切りによって、派遣労働者に 対する雇用主責任が果たされなかったものであり、登録型派遣と一緒に考えていくべきとのご意 見がありました。使用者側からは、禁止により中小企業に実害が生じるとのご意見がありました。 そのほか事務局から、製造業に関しては技能の育成に支障があるのではないか、あるいは労働災 害の頻度なども指摘されています。これに追加してご意見がありましたら、お願いします。 ○市川(隆)委員 前回、事務局に用意していただいた資料から、私の申し上げている多くのこ とが読み取れるというご説明をしました。本日はそれを繰り返すつもりはありませんが、その統 計資料とは別途、数社ですが実際に製造派遣を活用している中小企業に対し、ヒアリングを行っ ています。その他いろいろなご意見も頂戴していますので、そうしたところから、前回申し上げ たことについて若干の追加をします。  1つは、働き方の多様化があることをご説明しました。その人の置かれた立場、例えば学生で あれば勉強、主婦なら子育てあるいは高齢者の介護をしながら働きたいということです。そうい った方々が製造派遣あるいは登録型派遣を活用するということは、1つのワーク・ライフ・バラ ンスを達成する手段として、派遣が有効に働いていると思っています。  例えば先ほど申し上げたような理由で、1日4時間しか働けないという方がハローワークに行 っても、4時間だけで働ける場所はなかなか探せないわけです。そういった方が派遣会社に登録 し、派遣会社がいろいろな組合せ、アレンジをすることによって、4時間だけ働ける働き口を見 つけることが可能となるということです。したがいまして、ワーク・ライフ・バランスの達成の 1つの手段として、派遣制度は非常に有効であるということです。  労働側から、派遣労働者は、一旦その中に入ると正社員になる道は閉ざされてしまうというご 指摘がありました。総務省の労働力調査の中に、正社員になった人の過去3年間の前職の統計が あります。それによると、20万人の派遣労働者が、正規の職員、従業員として雇われています。 つまり、3年の間に20万人の派遣労働者が正社員になっているという統計です。20万人が多いの か少ないのかという評価の議論はありますが、少なくとも派遣労働者から正社員に採用される人 が全くいないということはありません。これは統計上もはっきり出ています。  中小企業から話を聞くと、特定の派遣労働者を正社員に採用したいと声を掛けても、その労働 者が派遣のほうがいいということで辞退される方もいるということです。これは先ほどのワー ク・ライフ・バランスの観点、正社員になったときの残業あるいは転勤といったことを考えると、 正社員よりも派遣労働者の立場のほうがいいとお考えになる方もおられるということです。  この製造派遣あるいは登録型派遣の禁止についての議論が行われていることに対し、自分たち の将来はどうなるのか、もし禁止されたらどうしようということで、派遣労働者の間に動揺が広 がっているという報告もありました。こうした国民に動揺を与えることがいいのかどうかも、1 つの観点として頭に置いておく必要があるのではないかと思います。  中小企業の中には、製造派遣あるいは登録型派遣が禁止された場合にどうするのかということ で、禁止された場合にはできるだけ正社員で対応しようというところも結構あるようです。つま り、正社員の残業を増やして、できるだけ仕事を納期に間に合うように納めていこうと。という ことは、正社員の残業を増やすという点では、ワーク・ライフ・バランスの観点からいうと、ま さに逆行するような効果が結果として生まれてしまいます。さらに言えば、正社員の残業だけで は仕事は受け入れられないので、仕事を諦めるというところもありました。禁止をすることによ って、失業あるいは残業が増えるという悪い効果が生まれるということではないかと思っていま す。  仕事、職場には適正な人材ということがあるわけですが、登録型派遣の登録というのは、人材 派遣会社に膨大なデータベースを構築することになるわけです。派遣会社はそのデータベースの 中から、要望のあった企業に適正な人材を派遣することになっているわけです。  これは中小企業側からすると、ハローワークで求職をしても人の質までは選べないことがあり ます。それに対して、人材派遣会社にお願いすると、例えば食品会社であれば清潔感は求められ るわけで、それに欠ける人は食品会社には派遣しないといったことで、中小企業にとっては、登 録型派遣のデータベースによる適正人材の選択の機能は非常に有効であるということです。  実際にどのような仕事をしているかということについても、前回若干のご説明をしましたが、 中小企業の場合には、経験や勘に頼るロースキルのものがほとんどであるということです。例え ばゼリーの上に一つひとつフルーツの果肉を乗せていく、あるいはアイスクリームのコーンを機 械に一つひとつ並べていくというような作業です。こういう作業は中小企業であるが故に、機械 化は無理なのです。特にアイスクリームの場合には夏の期間に限られるので、その期間だけ例え ば派遣労働者が60人必要で、アイスクリームの製造のない月は10人くらいしか派遣労働者の必 要性はないというようなことで、毎月派遣労働者数は変えざるを得ないということです。また、 10、11月のリンゴの季節に、半分に割って芯を取るといった作業も集中しますが、その時期に必 要な人数の派遣労働者をお願いするということです。  下請で大企業からの発注を受け、アイスクリームの製造量を変えるわけですが、オーダーは大 体1カ月前にしかこないので、その1カ月の間に必要な人数を揃えるということです。そうした 仕事量の変動に即応できるということにおいては、派遣会社の機能は非常に重要であるというこ とです。自社で面接をしてアルバイトを採用することに対して、派遣会社にお願いするのでは、 コストは高くなるのだけれども、1カ月以内に必要な人材を揃えることにおいては、派遣会社に お願いをせざるを得ないということでした。  昨年末に派遣切り問題があったわけですが、そういったことについて特に地方の中小企業は、 派遣期間の中途解除はうちではとてもできないし、やる気もないということでした。というのは、 狭い地域の中で、あの会社は派遣切りをしたという風評があると、次にその会社でアルバイトや 派遣社員を雇おうとしても、できなくなる。したがって中小企業の場合には、中途解除のような、 いわゆる派遣切りはやらないし、とてもできるものではないということでした。以上、私どもの ヒアリングの結果から出てきたことの説明を、追加としてさせていただきました。 ○鎌田部会長代理 かなり登録型派遣の問題も含めてご議論していただいたのですが、できれば 製造業のほうに絞ってご議論していただきたいと思います。いまのご発言に対して労働側から何 かあれば、登録型について言及されても結構です。 ○小山代理 製造業の派遣については、前回も前々回も意見を申し上げていますし、これ以上あ まり言うことはないのですが、いまの市川委員のお話からいっても、派遣労働者は会社にとって とても都合がいい、必要な時だけ使って、要らない時は契約を切ればいい、あるいは契約満了で 雇止めができる存在だということはよくわかります。しかし、少なくとも厚生労働省の審議会で 議論している時には、そこで働いている労働者の立場に立って、一体どうなのかということをき ちんと考えていただきたい。  特に、物の製造業務が、景気変動に伴って雇用の調整弁としてその機能が発揮されたというの は、昨年から今年にかけて明確です。本日配付された資料を見ても、圧倒的に物の製造業務の派 遣の雇用が失われたわけです。  物の製造業務で働く労働者にどのような方が多いのかというと、決して学生や主婦ではありま せん。自分の生活の糧を、すべてそこから得なければならない、あるいは住む所も、その派遣先 の場所の寮に入って働いている人たちです。そういう人たちの数十万の雇用が一気に失われてい く、そこで起こった問題というのは、これ以上申し上げるまでもないと思うのですが、まさに生 きていくこと自体が困難となるような状況に置かれてしまった。  さらに、将来の生活を一体どう考えていくのか。臨時的にそこで働いているというよりは、正 規の働き場所がないから、派遣で働くという例が多いということは、すでに報告されています。 そこからいって、物の製造業務の派遣を禁止することによって誰が困るのか。  私は経営側もそんなに困ることはないのではないかと考えています。それは、前々回も申し上 げましたが、2009年問題があったときに、これは正しい業務請負にするか、あるいは直接雇用に するかということで、みんな決意したわけです。いずれにしても、そういうことからいけば、経 営側としても人材の育成等や、きちんとした労働力の質も含めて、物の製造業務の派遣という制 度がなくなることによって、社会的に大変な痛手になることはあり得ない。  そこで働いている労働者の立場に立ってみたら、きちんと直接雇用をして、雇用の責任を負う 形で働いたほうがいいわけですし、将来への可能性も出てくるわけです。もうこれ以上は申し上 げませんが、今回3党案の中にある、物の製造業務への原則禁止ということについては、きちん とその方向で取りまとめていただきたいと思います。 ○市川(隆)委員 今のご発言の中に、「学生や主婦ではない」とありました。私が申し上げてい るのは、学生や主婦も、こうした製造派遣や登録型派遣で働いている方がおられるということで す。今回の禁止をするということは、そういった人たちの働くチャンスを奪うことになるのでは ないか、ということを申し上げているのです。  ですから、おっしゃっているようなことでは、雇用対策本部で進めている雇用対策ということ で、いろいろ手当てをされることは、大いにやっていただきたいと思うのです。しかし、禁止を することまでどうして議論が飛躍してしまうのか。禁止をすることによる副作用ということで、 学生や主婦の働くチャンスを奪うことにはならないか、そういうところは頭に置いておかなけれ ばいけないと思うわけです。  それから、請負というやり方もあるではないかということですが、請負には請負の課題があり ます。まさに数年前、偽装請負ということで問題になりました。請負でやるには、一定のまとま った仕事量が必要です。人数的には40人規模の仕事量があって、その指揮命令権は請負会社とい うことで、どんとお任せをすることになるわけです。中小企業の場合には、40人の仕事量のある まとまった業務というのは難しいのです。  だから、おっしゃっていることは、大企業を念頭に置いておっしゃっているのだと思うのです が、そうではなくて、中小企業は困るのですというところなのです。それですから、私が前回申 し上げた派遣禁止ということは、中小企業のいじめ法案になっていますよということなのです。 中小企業のことも、よくお考えになっていただきたいということです。 ○秋山委員 中小企業の立場から申し上げます。前回からヒアリングをした例を2例ばかりお話 させていただきます。  1つは、都内にある食品製造会社の場合です。やはり季節に合わせて、数カ月単位で生産する 時期がありまして、そのときにあらかじめアルバイトを雇えば済むということも言われますが、 特に中小企業の場合は知名度がないので、アルバイトやパートを募集しても、約1カ月間かかり ますし、その間の仕事はできるわけではありませんので、そうしたときに注文を受けて、はじめ て必要な人数が決まるので、そこから面接、採用するのでは間に合わないのです。そして仕事を 失っていくという例です。そして、この会社の場合は担当の部長が実質1人で全部こなしている ので、今のように派遣制度があれば、その仕組みを利用して、人材をスピーディーに確保できる ということです。  もう1つは群馬県の金属関連の製造会社です。こちらは50人ぐらいのところです。もし製造業 派遣が禁止されれば、注文を受けたくても受けられないケースが出てきて、その場合は正社員の 休日出勤や残業での対応になり、正社員の労働環境が悪くなります。今の中小企業には、派遣を やめたからといって正社員を雇えるだけの余力はなく、会社の倒産、会社を閉める、失業者が出 ることが懸念されます。  求職者にとっても、派遣がなくなれば、パート、アルバイトの求職のために毎日情報誌や新聞 を見なければなりませんし、面接を受けたからといって、すぐに採用されるものでもありません。 そのような不安感も出てきます。  そういうことで、中小企業にとっては、一時的な仕事が入ったときに人材を集められなくなる というのは、倒産、雇用の喪失につながる問題だと思っています。 ○鎌田部会長代理 いま原則禁止の是非を巡って、双方から議論がありましたが、そのほかの論 点として、禁止をした場合の例外をどのように設定するか。いわゆる派遣切りに対応して、安定 雇用を実現するための方策があれば、どのようにそれを別途措置すべきなのか。こういった論点 もあるので、双方、こういった論点も含みながら、ご発言いただければと思います。 ○高橋委員 本日提出のリバイスされた2枚ものの資料があります。1枚目の関係で、枠の上に ※があって、製造業の割合が97.3%とあります。どのような意味で97.3にしているのかについ ては、意味合いはいろいろあるのですが、何となく違和感を覚えます。  と申しますのは、これに期間満了を含んでいるということです。期間満了で雇止めをすること については、契約の内容如何だろうと思います。何を言いたいかというと、粛々と有期契約を設 定し、期間満了で雇用契約が終了するというパターンがあるわけで、現在東芝柳町事件のような、 自動更新のようなパターンはほとんど見られないと思うので、あとは一つひとつの雇用契約の中 身を見ながら、更新の合理的な期待がどの程度なのかも考える必要があろうかと思っているので、 この枠で製造業で6万8,624人のすべてが何らかの問題があるかのような印象となる表記の気が して、その辺に違和感を持っています。  さはさりながら、今回の世界同時不況下ではありましたが、中途解除という形で、これだけの 規模があったということについては、大変残念な思いでいっぱいですし、使用者側としても忸怩 たる思いがあると率直に言わざるを得ないと思っています。むしろこれを教訓として、製造現場 で働く労働者の雇用の安定に向けて、労使でいかに真摯に取り組んでいくのか、と捉えていく必 要があると感じています。  それに関して、資料の2頁です。そういう意味では13.9万人という数字を掲げていることにつ いては、若干の違和感はあるのですが、問題となっている6.1万人というのが問題であろうとい うことは、私もそのとおりだと思っています。他方で、派遣先で、点線の枠囲いです。2.2%で非 常にわずかですが、就業機会を確保したパターンと、あっせん等の努力を行った企業は45.5%、 全体で47.7%が何らかの努力をされたことは認識しておく必要がありますし、今回のいろいろな 事象を通じて、悪い例ばかりが報道されましたが、他方で退寮時期を延長するといった取組み、 労使が一緒になって努力しながら就職あっせんに取り組んだという例も少なからずありました。 確かに問題があったことはきちんと反省して、次につなげていかなければなりませんが、悪い例 だけを取り上げて、禁止なのだという形が、本当に我が国の労使関係にとっていいことなのかど うかを、十分に考えていく必要があると思っています。  また、前回事務局に提出していただいた資料集の18頁です。派遣元に聞いているのだと思いま すが、「派遣契約が中途解除された場合に雇用維持ができなかった理由」ということで、複数回答 のものです。それぞれ合計、うち製造業務とかあって、5本の棒グラフがあるのですが、右の枠 囲いの凡例は4つしか説明がないので、何で5本と4つなのかがわからないのですが、なぜなの ですか。 ○大塚補佐 申し訳ありません。5本目の記述が抜けておりますが、5本目は「その他」です。 ○高橋委員 そうしますと、「うち製造業務」という2番目の合計の下を見ていただくと、42.9% とあります。これは派遣労働者が希望しなかったことを理由に、雇用維持ができなかったとして いるわけです。こういうこともある、すなわち今回の中途解除の結果、雇用維持ができなかった 理由としては、労働者自身が希望しなかったことも、かなりの数に上っていることも現実として は理解をしておく必要はあると思っています。  前回もそうだったのですが、先ほど来直接雇用とか、請負でいいではないかというご意見も、 労働者側から出されています。他方で、2004年に製造業務への解禁がされて以降、一層経営環境 を巡る厳しさは、国際競争も激化していますし、大変厳しい状況になっています。その中で、製 品のライフサイクルも短期化しています。今般に見られるように、景気の振幅が大きい中にある のです。  製品によっては需要予想が困難で、市場に出してみないと、どの程度の販売数量が見込めるか も難しいものもあるわけで、そうしたものを生産していく際に、どのような対応が求められるか が問われています。  そうした中で、企業としても最大生産量に合わせて、雇用を直接雇用で維持していくことが非 常に難しいと思いますし、いつ最大生産量がくるのか自体が、非常に難しいわけです。  そうした中で、経営の選択肢の1つとして、こうした制度を禁止することになると、結局経営 に対するリスクが高まり、最大生産量に適応する生産体制が組めないことに対して、機会費用が 大きくなるわけですから、その機会費用を甘んじて受けようという経営では、生き残りはできな いわけです。  そうしますと、もちろん直接雇用に切り替える部分もあるかもしれませんし、請負に変えてい く部分もあると思いますが、海外に生産を移していくことも、経営の選択肢としては出てこざる を得ないと言えます。大変厳しい競争の中に柔軟な生産体制を構築していくということから鑑み て、一律に禁止をすることが本当にいいかどうかを、是非お考えいただきたいと思います。  また、日本生産技能労務協会で、今年の6月から7月にかけて、3,405人の派遣スタッフに対 して行ったアンケート調査では、製造業派遣禁止に反対する派遣スタッフが67%に上っていて、 禁止に賛成のスタッフは10%でした。6月中旬に派遣労働者で構成される労働組合で同じような アンケート調査を実施していて、59%の労働者が製造業派遣禁止に反対ということで、禁止に賛 成は5%にとどまっている実態もあることも、十分に踏まえていく必要があると思います。  前回、今日もそうでしたが、労働側から製造業派遣を禁止して何が問題なのか、仕事がなくな るわけではないのではないか、というご指摘もありました。それに関しては厚生労働省の資料の 2頁で、あっせんの努力を行った等の調査と同じ調査が、今年の5月に「労働者派遣契約の中途 解除に係る対象労働者の雇用状況について」という調査の中の1項目として、「雇用調整の対象と なった非正規労働者(派遣労働者、請負労働者)が従事していた業務に係る今後の対応について」 という設問があります。その際に派遣労働者に係る設問で、「パート、アルバイト、期間従業員を 新たに採用する」という選択肢はどの程度あったのかというと、100%のうちわずか1%です。「労 働者が従事していた業務は縮小し、当面労働力の補充の必要はなし」としたのが、57.2%でした。 「従来からの従業員により対応する」が33.1%でした。全体の90%は補充をしないか、業務を縮 小して労働力の補充の必要はなしと考えるか、従来からの従業員により対応するとしています。 もちろん実施の時期によってで、大変厳しい状況の中でアンケートを行ったのでしょうから、ま た景気が上がってくれば、回答も変わってくるかもしれませんが、必ずしも製造業派遣を禁止す れば、新たな派遣でない形の雇用が生み出されるという、1対1対応の関係は必ずしも確認され ないのではないかと思っています。  昨年来のいろいろな問題を受けて、何も対応されてこなかったのかというのは、そうではない と思います。この部会で労側の委員と議論をしながら、本年3月に、派遣元指針と派遣先指針の 改正がなされていることはご承知のとおりです。その際に、中途解除にかかわる対応等も指針に 盛り込まれていて、こうした対応がこれで十分なのかどうかということも踏まえて、検討してい く必要があると思っています。以上です。 ○長谷川委員 登録派遣と製造業の派遣、一般業務の中に製造業務も入っているので、業務で禁 止するというのは、どのような意味合いを持つのかは何回か質問しているのですが、ここの議論 は必要だと思っています。  座長からこの問題も議論してくれと言われているのですが、2の3で書いていることで、「いわ ゆる派遣切りに対して安定雇用を実現するための方策を別途措置すべき」とありますが、別途措 置するのは何があるのかをむしろ聞きたいのです。今回の派遣切りで問題になったのは何かとい うと、間接雇用の問題です。派遣というのは雇用と使用の分離が行われていて、派遣先企業が雇 用主の責任を果たさなかったことが大きな問題だったわけです。  本来の直接雇用であれば、例えば期間の定めのない雇用であれば、労働契約法が効いてくるし、 直接雇用の有期であれば、労働契約法の途中解除、使用者側からも東芝事件の話が出ましたが、 雇止めの問題、法理の問題があるわけです。そういう意味では労働契約法なり判例の中で、直接 雇用の労働者の雇用の安定に対するさまざまな法律とか判例はあるわけですが、問題は派遣とい う間接雇用で、雇用と使用が分離されているときの雇止めをどう考えるかだと思うのです。  昨年秋の経済危機のときに、使用者は耳が痛いと思いますが、直接雇用の労働者ならば、解雇 権濫用法理や雇止め法理、労働契約法の途中解除の問題があるなと思って、解雇には慎重になる と思うのです。しかし、間接雇用の派遣であったが故に、直ちに派遣契約を途中解除して、派遣 元は損害賠償請求もできずに、契約解除されると同時に派遣労働者を切ってしまったという構造 で、この部会は派遣法の見直しですから、この雇用と使用の分離をどう考えるかだと思うのです。  派遣労働は、職安法第44条の特例だったわけです。なぜ職安法第44条で労働者供給を禁止し てきたかといったら、戦後そのような働き方をした労働者が、雇用が不安定だったり、いろいろ なことがあったために禁止してきたわけです。ところが、1985年にその44条の特例で派遣法を 制定したわけです。だから、1985年には26業務ではなかったわけですが、すごく業務を狭く取 っていたわけです。それはいろいろな意味合いでそのような制度だったと思うのです。  去年の秋に起きたのは、派遣法の持つ構造的な問題によって、派遣労働者の雇用不安を起こし てしまった。この結果をどう見るかだと思います。使用者の方たちの言い分はいろいろわかりま す。ケーキを作っているところであれば、12月のクリスマスは確かに繁忙期です。でも、ケーキ を作っているところはケーキだけを作っているわけではなくて、冬はケーキを作るけれども夏は アイスクリーム、秋はお彼岸のお菓子を作るから、ある意味でサイクルはできていると思うので す。  それはさて置いたとしても、そういう意味では、派遣労働者の雇用の安定をどう考えるかとい うときに、間接雇用の問題と、雇用と使用の分離があって、そういう意味では解雇権濫用法理も、 雇止め法理も、途中契約の解除についても労働契約法にあるわけですが、そういうものが全然効 かなかったということが第1点です。  もう1つは、派遣元が雇用責任を負わなかったわけです。一般企業は雇用の維持のために、雇 調金などを使ってぎりぎり維持しているのです。私は中小企業で立派なところを知っていまして、 社長でものすごく頑張っている人がいます。内部留保を取り崩して、雇用の維持をぎりぎり頑張 っています。だから、中小企業一般を言っても駄目なのです。中小企業でも、まっとうな、もの すごく頑張っているところと、中間ぐらいのところ、すぐに人様に頼るところと、3つの種類が あるわけですから、中小企業一般では言えないと私は思います。  でも、秋山委員のところはすごく頑張っていると思いますし、社長ですごく頑張っている人が いるというのは私も知っています。そういう人は別にして、中小企業だけではなくて、全体的に、 派遣を切るときに、あまりにも間接雇用であったがために、雇用者としての責任が果たせなかっ たことが原因だったのではないかと思っているのです。  そうすると、今回の派遣法の改正のときに、この問題をきちんと議論しないと、また二の舞を 起こすと思います。登録型派遣と製造派遣はある意味では、いったりきたりの議論になるわけで すが、本当に派遣労働というのはどうあるべきなのか。職安法第44条の特例としての派遣労働と いうのはどうあるべきなのか。派遣労働で働くということがどのようなことなのか。派遣で働く 人たちの雇用の安定と、労働条件の確保をどうするのかという視点で議論しないと、自分たちの 苦しさ、辛さだけを言ってもしようがないと思います。ぜひ間接雇用の持つ雇用と使用の分離に よって、お互いに責任のなすり合いをしている派遣元と派遣先をどうするかということを、きち んと議論しないといけないのではないかと思っています。 ○鎌田部会長代理 双方のご意見をそれぞれの立場でおっしゃっておられて、歩み寄りがなかな かない状態だと思います。使用者側が強く主張されているのは、特に中小企業を例に挙げて、一 時的、臨時的な労働需要に、人員的に対応するのは非常に困難であって、その意味で派遣は有意 義であったということです。  労働側は、雇止めの問題を含めて、雇用の安定をどう考えるのか。雇用の安定、労働者側の安 定をどう図っていくのかの視点について、もっとしっかり考えて議論すべきである。もう1つは、 職安法第44条の労働者供給事業の禁止を抜き出して認めていったことを、もっと厳格に考えてい ったらどうなのかというお話もありました。  雇用の安定、派遣元の責任を強化しつつ、しかし労働力の臨時的、一時的な需要に対して応え るということは、必ずしも常に対立するわけではなくて、派遣元の常用雇用を前提に考えれば、 それですべて解決するわけではないのですが、労働需要はもちろん一時的、臨時的ですが、派遣 元の責任というのは雇用の安定を含めた、雇用主の責任をしっかりと常用雇用の中で確保してい くということであれば、1つの歩み寄りのきっかけになるのではないかと思うのです。もしよけ れば、そういう考え方に対するご意見も含めて、禁止の例外をどうするのか、安定雇用を実現す るための方策についても、ご議論いただければと思います。できれば互譲の精神で、使側につい ては、労働需要が変動して予測できない中で、労働者の雇用の安定を図るために、どのようなこ とが使用者サイドとしては考えられるのかという、言いづらいことではあるかと思うのですが、 そういった観点でご意見もいただきたいですし、労働側にしてみれば、企業の置かれたいろいろ な事情、グローバル化の中の厳しい競争にさらされている事情も考えた上で、そういった需要に 対して何らかの形で応えられるような、かつ労働者の立場、労働者の雇用の安定などを確保する 方策として、どのようなものがあるのか。このような観点で、是非ご意見をいただければと思い ます。 ○小山代理 いま鎌田部会長代理のおっしゃられた、「常用」といった場合の常用の定義をどう考 えるかというのが、1つ大事な点になると思います。普通に常用と言われると、期間の定めのな い労働契約が結ばれていることだろうと考えます。しかし現実は、いわゆる常用型と言われてい ても、有期契約の反復更新も常用とカウントしていて、本当の実態がよくわからないのです。そ ういう意味で、問題としてはその辺が大きな焦点になるのではないかと思います。  いずれにしても、そこで働いている労働者の立場に立って、どう考えられるかというところで、 ご議論をお願いしたいと思います。 ○長谷川委員 先ほど高橋委員がアンケートの話をしていましたが、そこは常用だと思うのです。 派遣元が常用で、自ら雇用している正規の労働者を、派遣で出している。そういうところは全く ないわけではなくて、事実あります。そういうところは雇用の安定もしています。だから今回の 雇用危機でも、雇調金なども活用したりとか、いろいろな工夫をして雇用を維持しているのです。  ただ、派遣全体を見たときに、そういうところはわずかであり、今回そういう意味では、常用 が主たるところではなくて、登録型をたくさんやっているところはバッと切ったし、常用と登録 が入り混ざっているところもあります。そこはアンケートの中でも、おそらく言っている人たち は常用を主体とするところではないかと思います。  前回も申し上げましたが、もともと派遣法を見ると、自ら雇用する労働者を派遣先に出して、 指揮命令の下にというのが派遣法ですが、今回は派遣元が雇用責任を果たさなければいけないの だと思うのですが、そうするといま小山代理が言ったように、派遣元の労働者だから、期間の定 めのない雇用ということになると思うのです。しかし、実際、多くはそうなっていません。派遣 先はどういう責任を取るのか、という問題もあるかと思うのです。  雇用の安定といったときに、鎌田部会長代理からいろいろありましたが、基本は常用で、常用 の原則は期間の定めのない雇用というのは、労働組合とすればそれはいつも言っていますし、有 期というのは臨時的、一時的などうしても必要な時、有期で活用するというのは合理的な理由の ある時だと思うのです。派遣の問題は、間接雇用の問題と、有期の問題の2つが混在している背 景があって、その2つの問題を少し考えなければいけないと思います。 ○高橋委員 アンケート調査の件は私も結果しか知りませんので、また関係の方にお伺いして、 次回もしわかればご紹介させていただきます。  いま鎌田部会長代理からも、一種のご提案を示していただいたのは、大変ありがたいと思って います。その際に、まず間接雇用はいけないのだという主張なのですが、本当に実態として、間 接雇用で働いている方がいるということと、さらにこれは人材サービスユニオンという派遣労働 者で構成される組合のHPにも、このような記述があるのでご紹介します。  「このところ格差社会を論じる際に、間接雇用である派遣がその元凶であるという意見が度々 出てきます。私たちは、マスコミや一部の労働会、政党から出されている派遣イコールワーキン グプア、派遣イコール不本意な働き方という見方には強く違和感を覚えます。組合員の話を聞き、 さらに厚生労働省の調査結果を見ると、こうした見方が一方的であることも浮かび上がってきま す。間接雇用であるがために不安定である、かわいそう、ひどい働き方だなどと言われ、信念、 プライドを持って派遣労働者として働く仲間は傷付いています。職業選択の自由の下、間接雇用 も直接雇用も、同等に労働であることの評価がされるべきです」ということが示されていまして、 そういった声も十分に踏まえて、議論をさせていただいたほうがいいのではないかと思っていま す。  他方で、労働者の保護、雇用の安定という観点から、常用に寄せていくという考え方は、十分 に検討の余地はあるのではないかと思いますが、他方で、先ほど小山代理がおっしゃられたよう に、無期雇用だけに限定するという形になると、それが本当に現実を踏まえると対応可能なのか どうかは、十分に検討していく必要があると思います。 ○鎌田部会長代理 まだまだ議論を尽くしたいところですが、ここで一旦日雇い派遣に議論を移 します。論点3の日雇い派遣、1.「禁止の対象となる雇用期間は30日以内か、2か月以内か」、 2.「禁止の例外は20年法案どおりとしてよいか」、3.「禁止違反の場合の雇用期間のみなし規 定を設けるべきかどうか」が挙がっています。この1から3を含めてご意見をいただければと思 います。 ○長谷川委員 前回申し上げましたが、2か月は着目すべき数字だと思います。解雇予告、健康 保険の加入を考えると、2か月を考えてもいいのではないかと思っています。2で、禁止の例外 は20年法案どおりという点について、あのとき議論した経過がありますので、これでよいのでは ないかと私は思います。 ○鎌田部会長代理 長谷川委員から追加のご意見がありましたら後で述べていただくことにして、 その他の委員から何かありましたらどうぞ。 ○市川(隆)委員 日雇い派遣の原則禁止については、鎌田部会長代理に座長になっていただい た研究会報告、そして昨年、閣法ということで法案を出しているわけですが、その時の議論を超 えて何か手当てをしなければいけないのかというところは、日雇い派遣についてはもう十分議論 をして結論を出したところです。1についても30日の範囲でいいと思っていますし、2について も20年法案どおりでいい。それを変える必要性はないと私は思っております。 ○高橋委員 ちょっとテクニカルな話になるかもしれませんが、なぜ2か月以下は禁止なのかと いう理由として、解雇予告手当のことをおっしゃられておりますが、私の理解に間違いがなけれ ば、解雇予告手当をもって2か月以下は禁止だというのは、やや無理があるのではないかと理解 しています。解雇予告手当の性格について、これは菅野和夫先生の労働法の本からのそのままの 引用に近いのですが、「契約期間満了にも予告義務が適用され、30日前の予告を要するかである が、これを肯定する説もあるが、労基法20条は解雇に関する規定なので解釈上無理がある」とお っしゃられているわけです。  私が何を申し上げたいかというと、今は告示があって、有期でも、1年以上あるいは3回以上 更新でしたら解雇予告はしなければなりません。逆に言えば、1年未満ないし3回未満で契約を 設定して期間が満了するような場合は、明らかに解雇ではないわけです。それに対して、解雇予 告は2か月以上だから2か月以下の禁止の理由となるのかというと、かなり疑問ありと考えてお ります。  社会保険の適用につきましては、皆さんご承知だと思いますが、2か月以上であっても、その 働き方が労働時間その他の条件があってこその適用になりますので、必ずしも2か月以下は禁止 なのだというふうに自動的にはならないのではないかという気がしております。仮に2か月以下 は禁止という形になった場合でも、論点の2にあるとおり、前回の閣法で想定した例外規定は必 ず設ける必要はあろうかと思います。閣法の時は30日でしたが、それを2か月に延ばすのであれ ば、閣法のときに想定してきた禁止の業務よりももう少し広げるという考え方もあるのではない か。その辺は十分議論をしていく必要があるのではないかと思います。  この関係でいちばん私が気になっておりますのが3のみなしの話です。2か月以下の雇用契約 を結んだ場合に、なぜ2か月プラス1日の雇用契約とみなされてしまうのかというのは非常に理 解に苦しむわけです。「契約自由の原則」はどこに行ってしまったのかと思いますし、もしみなさ れた場合に、その労働契約の内容は一体どういう内容になるのか。  例えば、1か月の労働契約を結んで、それが2か月プラス1日とみなされた場合に、残りの1 か月プラス1日の労働契約の内容というのは、労働条件も含めて、一体どういうものなのかとい うことは全く明らかでないわけです。労働契約は、労働契約法にあるとおり、合意の原則によっ て結ばれるべきものでありますので、そのようなみなし規定を設けることには反対です。なぜ派 遣就労だけ2か月プラス1日とみなされる規定が入るのかというのは全く理解に苦しむと申し上 げざるを得ないのです。 ○鎌田部会長代理 今みなしの話が出まして、ややテクニカルな問題で、みなしたらどうなるか というお話でした。これについては私も、どういうふうになるのかと、2か月プラス1日にみな すという規定を置いた場合に想定されるような状態というのはどういうことになるのか、事務局 からご説明をお願いしたいと思います。 ○鈴木課長 その前に「2か月」の意味です。5月13日に出している民主党の派遣法の改正案の 解説的なものの中に、労働契約が2か月以下の派遣は禁止するとあります。ここを読み上げます と、「2か月を超える労働契約を結ぶことにより、厚生年金や組合健保への加入資格が生じる。解 雇予告の通告も適用される。これにより影響を受ける最大22万人については、派遣先の会社が直 接雇用するか、派遣会社が2か月を超える労働契約を結んで派遣することとなる」ということで、 2か月以上の契約を結んで、厚生年金や健保が適用ある状態で派遣をするということを重視して いるようです。  これを見ますと、単に適用云々というよりも、昨年度当審議会でご議論がありました日雇い派 遣の原則禁止の趣旨として、派遣元での雇用責任が果たされるかどうかということが、審議会に おきましては、日雇い雇用保険の適用の可否というところから30日というところを導きましたけ れども、それを2か月と見て健保とか厚年に加入できるかどうかで雇用管理がしっかり果たされ るかどうかを判断しているともうかがえますので、そういう見方もあるということを、まず付言 いたします。  鎌田部会長代理ご指摘のみなしでありますが、おそらく2つのパターンがあると思います。1 つは、日雇い派遣で同じ派遣先に同じ派遣会社から繰り返し派遣されていて、1か月とか2か月 働いている場合に日雇い派遣のみなし規定が働きますと、毎日毎日行っていたのが細切れの契約 ではなく、2か月と1日は最低の雇用期間として整理する。そうなると、2か月プラス1日の雇 用契約期間内にちゃんと就労日がありますから、これを評価されて厚生年金や組合健保の加入資 格が自動的に生じることになる。多分そういう効果を狙った規定かと思います。  ただし、違う場合があります。日雇い派遣というのは、毎日毎日同じ派遣会社から同じところ に行くわけではなく、ある日はA派遣会社からB事業所に派遣されて、次の日はC派遣会社から D事業所に派遣されていくというのを毎日繰り返しているというケースがあります。その場合に、 このみなし規定をそのまま直接に適用してしまうと、2か月プラス1日の契約が毎日毎日重複し て、いわゆるマルチジョブみたいな格好が1日ずつ日をずらして生じてしまう。さらに言います と、1日だけ派遣されているというケースが多いので、それだと2か月プラス1日の間の就労日 が契約内容で特定できない。また、就労時間や就業内容等も特定できないのです。このケースに ついては単純に2か月プラス1日とみなして調整規定を全く置かないとなると、どういう契約が されているのかということについての混乱が出る可能性がある。事務局として想定するとすれば、 そのぐらいのところが予想できるかなと考えています。 ○鎌田部会長代理 高橋委員のご質問の中にもう1つ、日々雇用で1日の雇用契約を派遣元との 間で結んで、それが2か月プラス1日になるといった場合に、普通、派遣というのは派遣契約と の関係で業務の内容だとか、さまざまな特定がされますが、そういった雇用条件もそのまま2か 月ポンと広がるという格好になるのですか。それとも、期間だけだったら確かに2か月プラス1 日延びるということは分かるのですが、雇用契約というのは雇用のさまざまな条件も入っていま すので、それは一体どうなるのだろうという感じがするのです。 ○鈴木課長 それはおそらく、この規定だけでは解釈しきれないかと思いますので、合理的に解 釈できるような就労実態があれば、その就労実態を前提としてみなしの内容が決まる。それが決 まらない場合には、法律を作るときにもう少し補足するような規定を設けないと、うまく機能し ないのかなと考えています。 ○鎌田部会長代理 法律などで少し補足をした上で、みなしをするということになるようです。 ○高橋委員 この際ですから、部会長代理ということではなくて鎌田委員個人の見解を是非お聞 きしたいと思います。後ほどの項目として、直接雇用みなし規定も出てまいりますので、この際、 みなしの第一弾という形だと思いますが、一般的にみなし規定ということについて、我が国には そういう制度はないわけですが、これはどう理解したらいいか、私としてはよく分からないので すが、現時点での委員のお考えを教えていただければと思います。 ○鎌田部会長代理 後ほどみなしについてご議論いただいて、双方のご意見を伺いながら、私も 少し考えていきたいと思っておりますので、冒頭に私が何か意見を述べるということは差し控え たいのです。別に言わないということではなくて、双方の主体的なご意見を聞いた上で進めてい きたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○長谷川委員 「使用者とみなす」というような規定をもつ法律もあるので、みなし規定が全く ないわけとは言い切れないないと思います。 ○鎌田部会長代理 44条で特定している。 ○長谷川委員 そうです、労働者派遣法第44条と45条と47条の2項ですか。労働基準法の「使 用者とみなす」、労働安全衛生法の「使用者とみなす」、男女雇用機会均等法の「雇用主とみなす」 というのがあります。 ○鎌田部会長代理 それが今回の直接雇用みなし規定と同じ質のものかどうかというのは議論が あると思いますが、「みなし」という言葉はあるということです。日雇い派遣のところで追加のご 意見がありますか。みなしについては後ほど、違法な派遣に関する対処というところで議論にな ると思いますので、再度議論していただくことになろうかと思います。  それでは、専ら派遣、グループ企業派遣に移りたいと思います。3党案においては、グループ 企業外も含め、特定の派遣先との間の派遣が全体の8割を超えないようにするという規定を設け ることにしておりますが、これについてご意見を伺いたいと思います。労使の双方はご存じだと 思うのですが、いわゆる専ら派遣とグループ企業派遣の趣旨について、似ているようで少し違っ ていますので、もう一度復習をいたしましょうか。 ○鈴木課長 前回提出した資料の21頁に、専ら派遣とグループ企業派遣の資料を入れております。 もともと専ら派遣というのは、いわゆる派遣というのが全体の需給調整機能を担うことを条件と して、職業安定法第44条の労働者供給事業から切り出して、そのうちの派遣元が雇用するものの み認めてきました。そうしますと、需給調整機能を果たしていないものはそもそも派遣として認 めるべきではないということがございます。  まず、専ら派遣といいますのは、専ら特定の者に労働者派遣の役務を提供することを目的とし て設立する派遣元事業主については許可をしない。これはどうしてかといいますと、特定の所の みに派遣するということは、要は企業の人事部を外に出したというだけの話であって、これは全 体の需給調整の何の役にも立っていないということですので、こういったものについてはそもそ も許可を認めない。こういう趣旨で、専ら派遣は許可要件に規定されています。許可をして、事 業が始まってからそういう状態に陥った場合には、指導等を行って、専ら特定の所に派遣すると いうような形を改めなさいとした上で、それでも改めない場合には許可を取り消していく、これ が現行法の専ら派遣です。  グループ内派遣は昨年の議論の中で出てきたものでありまして、趣旨は2つございます。1つ は、専ら派遣と同じように、グループ会社の中のみで派遣を行うというものです。もともとグル ープ会社というのは、1つの大きな会社が分社化して複数の会社になってグループ化したという ケースもありますので、要は、もともとは同じ会社の中で人事部が無償でやっていたものを、分 社化したことによって派遣会社が有料で行う。こういったことについては、グループ外での需給 調整という面からすると、需給調整機能を果たしていないのではないか。こういうことから、一 定程度外に対しても需給調整機能を果たすべきであるということで、グループ内については8割 を超えてはならないという規定を設けるべきだということで昨年議論がございました。  もう1つは、現象面としまして、製造なんかをやっている大きな親会社をリストラされた労働 者がグループの派遣会社に再就職する。そして、そこからさらにもう一度元の親会社に派遣され る過程で労働条件の切り下げがあるというような事態が若干見られたことから、一旦退職をさせ て同じ会社に派遣し戻すといったことについては、本来の派遣の使い方とは趣旨が合うものでは ないということから、1年以内に退職した者について同じ派遣先に派遣し戻すことを禁止する。 この2つを昨年、グループ派遣の禁止という中で行ったところです。 ○鎌田部会長代理 ご意見をお願いします。 ○秋山委員 確認なのですが、その場合、定年退職者は除くのですね。 ○鈴木課長 それは昨年議論がございまして、定年退職者というのは、人事的に通常の労働者と 別の扱いをしているケースも多いし、それが適当だというケースもあるということから、定年退 職者につきましては、もともとの専ら派遣でも特例として認められているところがありましたの で、グループ派遣においても、8割のカウント等において例外を設けるという合意が昨年なされ ております。 ○秋山委員 商工会議所の会員の事業所の中でも定年退職者をグループ企業に派遣しているとい う例もございますので、禁止されると困るという意見がございます。 ○鎌田部会長代理 その他には、いかがですか。 ○高橋委員 本来、昨年の閣法の事項については発言してはならないとは思いますが、そもそも グループ企業派遣自身がすべて悪なのか、ということではなかろうと思っております。派遣元が 保有する特定の業務に関する専門性を有効かつ効率的に使うことができる派遣ですし、技術とか 技能の秘密保持といったことを考えますと、こうしたグループ派遣は本来否定されるべきのもの ではないだろうと考えております。これが結果として派遣労働者の技能の向上にもつながる面が あります。  本来、そういう面は評価すべきであるという思いはあるのですが、それはさておきまして、今 回はグループ企業以外の場合にも対象となるというところが非常に気になっております。前回資 料の21頁についての鈴木課長のご説明ですと、もともと閣法で定められたグループ企業派遣の規 制の趣旨は、課長が説明された2点に対応するもの。第二人事部的なものではないか、あるいは、 本来直用すべきとか、労働条件の切り下げにつながっているのではないかという指摘を踏まえた 規制だったわけですが、資本関係にない派遣会社の場合は、いずれもこの問題点の指摘と本来関 係のない話です。むしろ外部の人材の需給調整をされているパターンと考えられますので、グル ープ企業以外まで広げるのは問題があるのではないかと思う次第です。  非常に分かりやすい例で言えば、企業城下町のような所を想定して、非常に大きな企業があっ て、いろいろな関連会社が多く立地しているような所で派遣事業を行う、ただし資本関係はあり ません、といったような場合に、結果として、そうした特定の企業グループに派遣するというパ ターンは当然考えられるわけで、そういった活動に対しても規制をかけていくのはかなり無理が あるのではないかと思っております。もともとの閣法で示されたグループ派遣の規制という形が 適当ではないかと思う次第です。 ○鎌田部会長代理 元に戻ってご発言されても結構ですが、次の「均等(均衡)待遇」に議題を 移したいと思います。これにつきましては議論の参考となる資料を事務局に用意してもらってお りますので、まずは事務局から簡単にその内容の説明をお願いしたいと思います。 ○大塚補佐 本日の配付資料No.1に従って説明いたします。  1頁は、均等待遇の主たるものは賃金ではないかと考えまして、賃金の実態について就業形態 ごとに見たものです。左の2つが「派遣労働者実態調査」に基づく登録型派遣と常用型派遣の時 間給、右側は「賃金構造基本統計調査」による常用正社員ほか、他の就業形態の時間給等です。 これで見ますと、登録型派遣は1,246円、常用型は1,322円であるのに対して、常用の正社員は 1,918円と推計されます。  同じ常用であっても、正社員以外の場合には1,195円で、派遣労働者よりも低くなっています。 また、短時間労働者についても999円と、同様に派遣労働者の時間給よりは低くなっているとい う実態がございます。なお、いちばん右の臨時労働者については1,699円と高くなっております が、これについては、いちばん下の※に書いてありますように、医療機関や大学講師等、給与額 が高いものが母数に多く見られるため、このようになっております。  2頁は、均等待遇に関する諸規定について並べております。まず、現行の労働者派遣法の規定 です。第30条では「均等」ないし「均衡」という言葉は使っておりませんが、派遣労働者等の福 祉の増進を図る派遣元事業主の努力義務の規定があり、2〜3行目に書いてありますように、各自 の希望及び能力に応じた就業の機会及び教育訓練の機会の確保、労働条件の向上、その他雇用の 安定を図るために必要な措置を講ずる努力義務が課されています。  その下の指針の規定ですが、具体的に講ずべき福祉の増進に係る措置ということで、(1)には福 利厚生等の措置に係る派遣先労働者との均衡に配慮した取扱いということで、「均衡」という言葉 を用いて努力義務的な規定を設けています。  3頁の上の段は、昨年提出した労働者派遣法改正案の規定です。第30条の2は、「均衡」とい った言葉は使っておりませんが、派遣元事業主が賃金を決定する際の考慮要素を書いてございま す。2〜3行目にあるように、一般の賃金水準その他の事情を考慮しつつ、雇用する派遣労働者の 職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案するとなっております。  これに対しまして3党提出の労働者派遣法の改正案では、総則の部分におきまして「均等な待 遇の確保」という規定がございます。「労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ均等な 待遇の確保が図られるべきものとする」と、「均等」という言葉を用いた訓示的な規定が設けられ ています。  4頁では、昨年の研究会報告において一定の整理がなされておりますので、そちらを参考まで に載せております。該当部分をかいつまんで説明しますと、上から3つ目と4つ目のパラグラフ において、賃金の決定方法が派遣労働者と正規労働者では違うということが書いてあります。正 規社員の待遇は当該企業の内部労働市場にて決定される。派遣労働者については、一般には外部 労働市場における賃金を反映して待遇が決定されることが多いと指摘し、検討課題としてその下 の2つのポツを挙げております。1つが、派遣先で比較し得る労働者や業務が位置づけにくい。 それから、同じ派遣元に雇用されて異なる派遣先に派遣されているが職種が同じ派遣労働者間に おいて待遇が異なること等の不均衡、という問題を挙げております。結論として、「現状において 課題が多い均等・均衡待遇を導入するのでなく、むしろ派遣元事業主に派遣労働者の待遇改善に 関する努力義務を課すといったことが書いてあります。そういったことで先ほどの、賃金決定の 努力義務、あるいは説明責任の規定を設けていたところです。  6頁目からは他法の例を挙げてあります。「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パ ートタイム労働法)」は、まず1条の「目的」と3条の「事業主等の責務」において、通常の労働 者との均衡のとれた待遇の確保を図ることが規定されております。8条以下に具体的な労働条件 と、それに応じて、差別的取扱いないし均衡を配慮すべきといった規定が並んでいるわけですが、 これを簡単に整理したものは8頁にあります。  まず、8頁の表にある1の部分は、条文でいいますと第8条に該当するものですが、業務の内 容と、業務に伴う責任の程度が同じである。それと、人材活用の仕組みや運用等が雇用の終了ま での全期間を通じて同じである。さらに、契約期間が無期であるといった場合には、賃金の決定 方法、それと教育訓練、福利厚生、いずれについても差別的取扱いが禁止となっております。  2以降は若干その度合いが違うので、その度合いに応じて均衡を考慮すべき労働条件も変わっ てくるわけです。職務の内容等については一緒ですが、人材活用の仕組みについては、一定期間 は同じということにとどまる場合、「賃金の決定方法」については同一の方法で決定する努力義務 が、教育訓練のうち「職務遂行に必要な能力を付与するもの」、福利厚生のうち「給食施設等の施 設利用」については実施義務と配慮義務が、残りの「キャリアアップのための訓練等」につきま しては△、努力義務となっています。さらに3,4も、それぞれの職務の内容等が同じか、違う かに応じて、考慮すべき労働条件や均衡の度合いなども異なってくる。このように、色合いに応 じて「均衡」といったバランスをとった規定が置かれています。  さらに7頁の最後の部分で、労働契約法の総則規定において、就業の実態に応じて「均衡」を 考慮しつつ労働契約を締結し、または変更すべきといった規定が設けられています。説明は以上 です。 ○鎌田部会長代理 いまご説明いただいたことに関して、少しテクニカルな内容も含まれている と思いますが、何かご質問はあるでしょうか。 ○高橋委員 いまの資料の3頁に、3党提出の労働者派遣法改正案の第3条の2の条文が出され ておりますけれども、その2行目から最後にかけて「就業の実態に応じ均等な待遇の確保」と書 いてあります。通常、就業の実態を勘案するのでしたら「均等」という言葉が出てこないのでは ないかという感じがするのですが、「就業の実態に応じ均等」という意味はどういうことなのかと いうのをご説明いただけないでしょうか。 ○鈴木課長 これは私どもが作った条文ではありませんので詳細なところは分かりかねますけれ ども、世の中で「同一価値労働・同一賃金の原則」のことを意識しますと、主として賃金のこと を念頭に置いている条文かなと。それで見ますと、この条文の解釈としましては、「就業形態にか かわらず」というのは、派遣か直用かという違い、「就業の実態に応じ」というのは、業務とか、 役職とか、責任とかの度合いに応じてという意味です。ですから、派遣か正社員かにかかわらず、 仕事の内容とか程度に応じて同じ形で賃金を払いなさいという意味かと解釈しております。逆に、 就業の実態に応じて賃金に差がつくことは合理的な格差だけれども、就業形態で、例えば派遣だ から低いのだとかということはあってはならない、こういう規定かと解釈しております。 ○鎌田部会長代理 別の解釈もあるということであれば、ご意見をいただければと思いますが、 質問も含めて、これについてのご意見、ご発言があればお願いいたします。 ○小山代理 同じ職場で同じ仕事をしているにもかかわらず、賃金の実態に大きな差があるとし たら、それは何を根拠に差が生まれるのかと思わざるを得ないことは世の中にいっぱいあります。 要するに就業形態が、先ほどの話のとおり、直接雇用であっても、有期契約であったり、あるい は派遣であったりする。仕事に対する賃金というよりも、何か身分差別的な賃金の決定があるの ではないかということが懸念されるわけです。ですから、就業の実態に応じて均等な待遇を確保 していくことを目指していくべきであろうと思います。  現実には、具体的に業務の内容によって賃金決定がどのようになされているのかというのを量 るというのは、技術的に大変難しいと思いますけれども、ここで訓示的にそういう考え方をきち んと示しておくということは大事なことではないかと思います。そういう中で具体的な均等待遇 のあり方についての議論は、今後の課題としてしっかりと議論していくべきことだろうと思いま す。 ○長谷川委員 派遣労働者の均等待遇は、ヨーロッパ、ドイツ、フランス、EU指令が規定してい ると思います。パートタイマーの均等待遇についてはこの間我が国でも議論されて、やっと一歩 を踏み出した形です。今日も資料の中の8頁に出ていまして大体分かってきたのですが、間接雇 用の派遣労働者の均等と言うときに、「均等」というのは誰かとの均等であるのですが、この時に EU指令だとか、ドイツとかフランスはどう規定しているのか。できたら、次の部会で構いません ので、何か資料を用意していただけないでしょうか。鎌田部会長代理のご専門で、ドイツはお詳 しいと思いますが。 ○鎌田部会長代理 では、事務局より次回の部会に資料の提出をお願いします。 ○秋山委員 派遣労働者と正社員とは、そもそも役割とか責任などが違うと思います。現場に来 たから、そこで同じ労働をしているからといって、一律にそれを適用するというのは無理がある と思います。日本の企業の場合、賃金体系というのは年功を重視しているケースも多くございま す。また、賃金は企業が定めているわけですから、各企業でそれぞれ、賃金体系は異なると思い ます。いま長谷川委員がおっしゃったように、その度ごとに、どの社員との均等を図るのか、ま た、同じ派遣先から派遣されているのに、行く場所によってそれぞれ違うとか、そういう矛盾が いろいろ出てきますので、均等待遇というのは無理があるという意見が多数ございます。 ○高橋委員 派遣法で均等待遇を措置するというのは非常に難しいのではないかと思っておりま す。もし同一労働・同一賃金のようなものを検討するのであるならば、それは派遣労働者だけに 限定する話でもありませんし、もう少し広い位置付けの法律で議論をしていくほうが、そもそも はよろしいのではないかと思っております。その上で、もしこのところで議論をするということ であるならば、では誰と誰の均等を図るのだろうかということになるかと思うので、この辺は非 常に難しいわけです。正社員同士でありましても職能給的な所が多いわけですが、年功的な要素 が非常に強いので、実際同じような仕事をしている正社員の中でも、具体的に賃金は違うわけで す。そうした職場にもし派遣労働者の方が入った場合に、例えば5人ぐらいの正社員の方がいて 同じような労働をされている、それぞれ入社年次が違うという場合に、一体誰との均等を図った らいいのか、というのは非常に難しい問題だろうと思います。  逆の話として、先ほど資料でご説明がありましたが、ある職場で、基本的にリーダーの方は正 社員ですが、その他は全部有期の方のような事業所の中で先ほどの時給を比べれば、派遣労働者 の方の時給のほうが高いということが事実だとするならば、では低い有期の方の時給に合わせて 低めていくのかという問題も出てきてしまうと思うのです。我が国の場合、皆さん既にご承知の とおり、産業別の職種別賃金というものが実際上ないわけでありまして、均等待遇を図るという ことは非常に難しい。その意味において、鎌田部会長代理の研究会でまとめていただいた報告書 を今日ご紹介いただきましたけれども、いろいろなところに目配りをしていただきながらまとめ られた報告書だということを感じております。「均等」ということではなくて、就業の実態に応じ て「均衡」処遇を図っていく、そのことが我が国の実態を踏まえて最も適切な考え方ではないか と考えている次第です。 ○長谷川委員 いまの高橋委員のお考えについて、これをどう見るかで、おそらく、均等待遇の 議論が非常に活発になると思います。まず1つは、パートタイマーの均等待遇ができたというこ とがある。その次は、おそらく有期契約労働者の均等待遇はどうあるべきか、ということが議論 になっていくのです。そして、その次に、派遣労働者の均等待遇はどうあるべきか、というのが 必ず議論になる。今回も「均等待遇」がテーマになっているので、これからテーマになっていく のは避けて通れないので、議論していかなければいけない課題だと思います。  この1頁も、例えば派遣労働者の賃金を下げるのかという話ですが、これをどう見るかだと思 うのです。例えば、登録とか常用は、確かに短時間労働者や常用の正社員以外と比較すれば高い と見えるかもしれませんが、実は、派遣労働者のところは福利厚生が直接雇用の労働者より悪い のです。派遣で交通費をもらっている人は少なくて、交通費をもらっていない人が意外と多い。 それから、食堂を使えるか使えないかというのはすごく重要で、私も若いころ、働いていたとき に、食堂のない所と食堂のある所の違いは非常に感じたことがあります。だから、諸々で派遣労 働者の時間当たり賃金は確かに高く見えるようなのですが、いろいろな福利厚生を見ると、おそ らく違うと思うのです。  8頁で賃金を見た場合に、基本給、賞与、役付手当、それ以外に退職金や家族手当、通勤手当 等があります。だから、賃金の見方というのはそう単純に比較はできないのです。パート研やも のさし研で長い時間をかけて、こういうものを作り上げたわけですが、非正規で働くと、賃金や 労働条件がどうしても悪くなる。そして、結果的に格差が拡大していると言われるわけです。そ ういうものを是正するものとして、均等待遇、均衡処遇というのはいつも出てくるのですが、均 等待遇だとか均衡処遇というものを派遣労働者についても、そろそろきちんと検討していかなけ ればいけない時期なのかなと私は思います。先ほど資料請求したのは、ではヨーロッパはどうし ているのか。賃金決定の仕方は違いますので、ヨーロッパが全部は当てはまりません。しかし、 ヨーロッパはどうしているのか。パートタイマーでできたとすれば、派遣でのようにできるのか ということについては、いろいろな人たちの力をお借りしながら検討することが必要なのではな いかと思ったからです。単純な比較は意外とできないのではないかと思います。 ○高橋委員 いま長谷川委員がおっしゃられて、今日事務局からもご説明をいただいたパート労 働法による均等・均衡処遇の考え方というのは、おそらく1つの参考にはなっていくだろうとい うことは理解いたします。しかし、パート労働法の場合は雇用主が同一であるということです。 賃金決定を考えていくときに、職務の内容、人材活用の仕組みや運用、契約期間という3要素が 参考になると思うのですが、いわゆる人材活用の仕組みや運用というのは、雇用主が違えば違う のです。契約期間だって当然違ってくるわけです。だから、パート法は確かに参考になると思い ますが、これがそのまま適用されることもなかなか難しかろうと思うので、そういう意味では非 常に難しい議論です。検討することを否定しているわけではないのですが、この12月までの段階 で検討が終わるのかというのは。パート法の審議も長年かかって、やっとここまできたことを考 えれば、短期間でこのあり方を検討し尽くすのは非常に難しいのではないかと思います。 ○鎌田部会長代理 少しテクニカルな話にはなるかと思うのですが、いま「均等」についての双 方のご意見がありました。「均衡」というのも、分かったようでよく分からなくてというようなと ころです。派遣法で「均衡に配慮して」という条文もあるのですが、そういったものが盛り込ま れた趣旨といいますか、意図といいますか、それが分かれば、事務局のほうでご説明いただける とよいのですが。「均衡」ということの意味を知りたいという観点です。 ○鈴木課長 「均等」と「均衡」というのは、特にパート法を作ったときに非常に議論された概 念です。まず「均等」の意味は、同じものを同じようにということです。資料の8頁で見ていた だきますと、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」ということで、時間数以外は通常の労働 者とすべて同じという場合には、賃金、教育訓練、福利厚生で全部同じにしようということです。 男女機会均等法の「均等」も同じです。男女という性差以外は、同じものは同じに扱えという趣 旨です。  「均衡」というのは、一部違うものがあっても、そこはバランスをとって扱えという概念かと 考えています。パート法の例でいきますと「通常労働者と職務の内容や人材活用の仕組みや運用 等が同じ」の中で、人材活用の仕組みは、一定期間は同じ、例えばパート店長みたいなのをつく るときに、普通のパートタイマーから引き上げて店長にするのですが、正社員だったらそこから 先に役員というのがあり、そこまでは行かないが、パートの方も店長までは昇格する、といった 場合に、店長をやっている期間においては、少なくとも賃金の計算方法は合わせましょうという わけです。「賃金」が「同一の方法で決定する努力義務」となっているのはそういう意味なのです が、要は、一部同じというときには、違う部分があることは認めて、違うことで差をつけるのは 構わないけれども、その差が目茶苦茶大きくならないようにという趣旨です。この場合は、職務 関連賃金については計算方法を同じにしろということでそのバランスをとっている、そういう趣 旨です。  これが派遣法になりますと、同じ資料の2頁に派遣元の指針があり、物品の貸与や教育訓練の 実施、その他の福利厚生等の措置について、「派遣先に雇用され、派遣労働者と同種の業務に従事 している労働者等の福利厚生の状況を把握して、その均衡に配慮して必要な措置を」となってい ます。これは元と先の労働者は雇用主が違うというのがまず大前提としています。ただし、同種 の業務に従事しているのだから、例えば備品や作業着、ロッカー等業務関連のものは、同じ業務 に就いている以上同じものが必要だろう。雇い主が違いますから全く同じにすることはできない わけですが、少なくともその業務の遂行に必要なものについては同じものを与えるよう配慮する。 このような感じで、違うことを前提としてバランスをとって措置してくださいと。こういう意味 で「均衡」という概念を出して指針に書いています。 ○鎌田部会長代理 ありがとうございました。実は、いわゆるパート法で言うところの「均等・ 均衡」と派遣法でいう「均衡」というのはちょっと違っておりまして、いま課長から説明があり ましたように、パート法などでは、一部違っていてもバランスをとりましょうということだった のですが、先ほどから使用者委員がおっしゃっているように、派遣は企業が違うのに、どのよう な均衡があるのかという議論があったのです。その中で、現行法の中で均衡に配慮してという趣 旨は何かというと、具体的には、先ほど課長が説明しましたし、審議会の中でも議論したのです が、派遣先の社員の方については新しいソフトが導入されて、それについての教育訓練が派遣先 の責任で行われているのですが、全く同じ仕事をしている派遣労働者についてはない、というこ とがあり得ます。そうすると、同じ業務を遂行している中で、派遣労働者にとって非常に納得が いかないだろうし、また、派遣先の生産性ということから考えてもおかしいのではないかと。た だ、費用の問題もありますので、それは派遣元がちゃんとそういったことにも配慮しながら、教 育訓練も派遣労働者にしてあげたらどうかと。要は、業務の性質、必要性に応じてバランスをと りましょうという考え方なのです。  いま均等・均衡といった議論をしている場合、少なくとも現行の派遣法の「均衡」というのは、 そういった意味で、やや違った考え方で導入されているということを踏まえて議論をしていただ ければと思います。次回、ヨーロッパの例も引かれると思うのですが、ヨーロッパの場合は、い ま私が申しました現行の日本の派遣法での「均衡」の考え方に立っているかどうかというのは、 ちょっと違うと思うのです。まさに、パートだとか有期だとかという方たちと同じような土俵の 上で「均等」ということを考えているかもしれない。それは次回またご報告があろうかと思いま す。 ○小山代理 その違いというのは派遣法の本質的な問題に関わってくるわけですが、それは先ほ どの議論でもあった間接雇用の持っている弊害であるということから、逆に比較しにくくなって いるのです。常用型と登録型とはまた違ってくるのではないかと思うのですが、まずは、ものの 考え方の原則として、同じ所で同じ仕事をしていて、賃金に格差がある合理的な理由があるのか を、あるならある、ないならない、ということをはっきりさせなければいけないと思うのです。 確かに今の日本の賃金制度から言って、必ずしもイコールで、そう単純に比較できるものではな いことは私もよく分かります。ただ、そこで働く者の立場から考えて、たまたま同じ職場で働い ていて、ほかの人と同じような仕事をしていて何でこんなに差があるのかという実態は正してい かないといけない、という方向性だけはしっかり持った上で議論をしていただきたいと思います。 ○長谷川委員 いま鎌田部会長代理がおっしゃったように、2003年の派遣法改正のときに「均等・ 均衡」を議論したときに、賃金はさておいて、福利厚生、例えばユニフォームだとか、食堂だと か、そういう福利厚生については努力しましょうという話があったのです。2003年改正でいろい ろな議論をしたときに、社宅はどうするのだという質問があって、社宅は無理ではないかという 議論はしました。パートの場合は直接雇用で、あとは期間の定めがあるか無いかで見ていけたの ですが、派遣のときに、間接雇用の要素を持つがゆえに、均等・均衡処遇のあり方というのは難 しいということは、私どもも十分に存じ上げています。それでも、どういうものを均等・均衡に していくのかということをこのまま放っておいていいのかということについて、私は疑問に思う のです。使用者の方が、間接雇用も直接雇用も一緒だと言うのです。私たち労働側は、雇用の基 本は直接雇用で、期間の定めのない雇用であると考えていますが、その時に使用者の人たちが、 間接雇用も直接雇用も、みんな一緒だ、並列であるということだとすれば、処遇だとか福利厚生 だって、どうやって格差を是正していくのかという努力は必要ではないかと思います。今回の派 遣法で、この短い時間でどこまでできるかは分かりませんが、均等・均衡処遇ということについ ても一歩踏み出した意見交換ができればいいのではないか。ヨーロッパと違うということも、私 どもは十分に承知の上で提起させていただきます。 ○鎌田部会長代理 ほかにご意見、ご発言はありませんか。 ○市川(隆)委員 製造派遣のところで1点。鎌田部会長代理から、論点ペーパー2の2,3辺 りはどうですかというお話がございました。1で、製造派遣は原則禁止すべきではないという立 場ですので、例外をどうするのだという議論は、むしろしなくてもいいのですが、しかし、ここ で言っている、一定の専門職は例外にするという考え方は、専門職のどういう範囲なのかという のはよく分かりませんが、少なくとも私どもが接している中小企業は非常にロースキルの軽作業 で派遣の方を活用させていただいている関係上、どう考えても、この「専門職」という所には当 てはまらないということになります。私ども中小企業の立場からしますと、一定の専門職に限っ て例外を認めるというのでは禁止と全く同じことだと考えておりますので、こういう考え方には 反対です。  3の安定雇用のための方策というのは、まず第1に景気対策なのです。景気をよくして、そう することによって仕事を増やせば、いわゆる派遣切りや雇止めのような問題は起こらないわけで すので、景気対策をまず第1にやっていただく、そして、残念ながら、そこから漏れてくる方々 を救うためのセーフティネットをちゃんとやっていただく。雇用対策本部でお考えになっている ようですが、そうしたところをちゃんとやって、それから、職業訓練、生活給付付きの職業訓練 も充実させるということですが、そういったところは是非やってほしいのです。  長谷川委員から、雇用と使用が分離していてかなり難しいのだということでしたが、難しいか らと言って、原則禁止するというところには相当論理の飛躍があって、難しいところに手直しを しながらというところは、相当知恵の出しようがあるのではないか。例えば、元・先がきちっと 共同責任をとる、そういうための法律改正なり指針改正なりをする。先ほど高橋委員がおっしゃ られたように、まさにこの3月に元・先の指針を改正して、損害賠償もきちっとやりなさいとい う指針にしたわけですが、そういった手直しをする。あるいは、必要に応じて法律条項の改正と いうこともあるかもしれませんが、そういったことで対応すべきであって、いきなり派遣は禁止 だというのは、いかにも論理の飛躍があると私は思っております。  鎌田部会長代理から、常用雇用をもう少し広げるという点についてどう考えるかという発言が ありましたが、私どもが聞いている中小企業はロースキルであって、かつ登録型派遣に非常に頼 っています。それを常用に変えられないのかということについては、相当なギャップがあるので はないかと思います。今日お出しいただいた均等・均衡のところの資料の1頁のいちばん左にも あるように、登録型と常用型では時間給にかなりの開きがあるということで、常用にするために は相当程度のスキルのある人、それで時間給を上乗せして、大きくしてと、こういうことになっ ているのではないかと思っておりまして、それを登録型の製造派遣に頼っている中小企業から見 ますと、登録型ではなくて常用型のほうに寄せられるということになりますと、コストが相当上 がるという懸念があるわけです。  外国との相場観ということも職業安定分科会でご指摘があったところですが、外国においては 登録型派遣が主流であるということです。また、一般の事務よりも製造派遣のほうが主流である という国のほうが多いと聞いております。また、いわゆるブルーカラーの軽作業、ロースキルの ところを製造派遣として活用しているのだという所が多いと聞いております。外国との相場観か ら言っても、登録型の製造派遣を禁止するような形は相当問題があるような気がしております。 ○長谷川委員 いま市川委員の考えを聞きました。外国との派遣の違いと言うのだったら、そも そも論から議論しなければいけない。外国の派遣は、期間のない定めのない雇用で働くための前 段なのです。そこは本当にもう一回制度設計をガラガラポンでやるのかという問題提起をしてい らっしゃるので、1985年のそもそも論からやらないと、これは決着がつかないのではないかとい う気がしています。 ○高橋委員 今日の論点と関連するということで申し上げたいのです。前回と今回2回にわたり まして、基本的には禁止型と言うのが正しいのかもしれませんが、登録型とか、製造業務への派 遣の禁止、日雇いは2か月とか、要するに禁止型をずっと議論したわけですが、1つ抜け落ちて いるというか、我々が考慮しなければいけない点が1つあると思うのです。それは、これは2年 前の統計ですが、いま47万人近くが製造業務に派遣就労されていて、登録型の製造以外のところ で28万人という雇用者が確認されているのです。もし何らかの形で、禁止という形でかなり厳し い規制を課していくということになりますと、その方々の就業がどうなるか。それはまた議論が あるわけですが、私が申し上げたいのは、派遣会社の内勤社員の雇用にも影響してくるだろうと いう点です。したがって、それは我が国全体の雇用の安定という観点からどう考えるのかという ことも十分に考えていく必要があるのではないか。そのことを一言だけ申し上げます。 ○鎌田部会長代理 ありがとうございました。予定の時間がまいりましたので、本日はここまで としたいと思います。事務局から何かありますか。 ○大塚補佐 次回の部会については現在日程を調整中ですので、決まり次第追ってご連絡させて いただきます。よろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長代理 本日の署名委員は、使用者代表が高橋委員、労働者代表は古市委員にお願い いたします。  以上をもちまして、第137回労働政策審議会労働力需給制度部会を終了いたします。皆さん、 本日はどうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)