09/10/28 第50回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録         第50回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会                   日時 平成21年10月28日(水)                      15:00〜                   場所 厚生労働省14階職業安定局第1会議室 ○清家部会長 ただいまから第50回の雇用保険部会を開催いたします。本日の出欠状況で ございますが、豊島委員、三木委員、塩野委員、坪田委員がご欠席でございます。また、坪 田委員の代理として、日本商工会議所佐藤産業政策第2副部長がご出席の予定でございます。  それでは、議事に移らせていただきます。本日の議題は「雇用保険制度について」でござ います。本日は、主な検討課題の最後にあたります「雇用保険の財政運営」についてご議論 いただきたいと思っております。事務局から資料1と2についてご説明いただきます。 ○篠崎雇用保険課課長補査 それでは事務局より資料を説明いたします。まず、資料の確認 をお願いいたします。本日の資料は2つございまして、資料1は雇用保険の財政運営関係と いうことで、21枚ある資料です。資料2が2枚だけですが、雇用保険の財政運営に関する 論点でございます。  では、資料に沿って説明をさせていただきます。まず、資料1、雇用保険の財政運営関係 資料の1頁です。失業等給付の関係の収支状況について、過去の推移を見ているもので、平 成5年度から用意させていただいております。21年度補正後というところに21年度の補正 後の状況があります。収入が1兆6,665億円、それに対して支出が2兆4,618億円という ことで、差引剰余−7,952億円となっています。21年度末の積立金残高の見込みが4兆7,868 億円となっています。  22年度の状況ですが、8月に概算要求をさせていただきましたが、その後、政府として 概算要求を10月に見直すということで、数字も若干変わっています。22年度8月の段階は、 2兆3,495億円の収入を見込んでおりましたが、概算要求10月の段階では、2兆6,496億 円と増えております。また、支出についても2兆9,174億円としていたのを、3兆円強とい うことで増加をしています。この関係について説明をさせていただきたいと思います。  恐縮ですが、資料19頁をお開きください。10月に厚生労働省として行った概算要求の省 全体の概要版ですが、その中の3頁、トータルの通し番号では21頁です。この中で3.雇用 保険制度の見直しという項目があります。(1)が雇用保険の適用範囲の見直しということで、 非正規労働者の雇用保険の適用範囲を拡大することに伴い増加する失業等給付に係る国庫 負担ということで、現在雇用保険の適用の範囲についても含めて皆さんにご議論いただいて いるところですが、民主党マニフェストに盛り込まれていることも踏まえ、概算要求をさせ ていただいているということです。  また、(2)としては国庫負担を法律の本則25%に戻すということで、現在、給付費の13.75% とされている雇用保険の国庫負担について、本来の負担割合である25%に戻すということ です。これはそれぞれ234億円、2,407億円ということで、国家負担の分として2,681億円 があるという状況です。  もう一度、資料1頁にお戻りください。いま申し上げましたように、概算要求の段階にお いては適用範囲を拡大する。国庫負担を戻すという形で要求させていただいていますので、 収入についても適用が拡大された効果を見込み、収入としては保険料収入が360億円ほど 増加するであろう。それから国庫負担が戻りますので、概算要求の段階では国庫負担2,942 億円としておりましたが、5,583億円ということで、収入が大幅に増えています。  それに対して支出も若干増えていますが、これは適用拡大した結果、受給される方も増え ますので、給付としては936億円ほどを見込んでいます。そういった形で収入と支出がそ れぞれ増加した形になっていまして、差引剰余としては3,663億円、22年度末の積立金残 高は4兆4,206億円というような見込みになっています。  2頁です。こちらは、いま1頁でご説明した収支についてグラフにしたものです。平成5 年5兆円弱ありましたが、景気の悪化に伴い、積立金が13年度、14年度と少なくなってい き、それに併せて当然受給者実人員も増えています。その後、雇用情勢の改善に伴い、受給 者実人員が減少する。それに伴い積立金残高も増えていますが、最近の傾向としては、積立 金がまた若干減っていく傾向が始まっているものです。  続いて3頁です。こちらは雇用保険二事業の関係の収支の状況です。雇用保険二事業につ いては、収入は18年度から掲載しておりますが、ほぼ5,000億円程度で推移しています。 これに対して支出は、18年度、19年度が3,000億円台、20年度は雇用情勢の悪化が始ま りましたので、5,649億円の支出。21年度の補正後予算としては1兆1,911億円というこ とで、21年度についての差引剰余は6,708億円のマイナスとなっております。安定資金残 高が3,552億円というのが21年の補正後の予算の姿です。  22年度の概算要求を含めた収支ですが、収入はほぼ同様ですが、支出については10月の 段階で7,640億円ということで、8月の段階でさらに精査させていただいています。結果と して、差引剰余が2,406億円のマイナスということで、安定資金残高の見込みが1,146億円 となっています。ただし、この数字は現在の段階なので、概算要求の中では事項要求という 形で緊急雇用対策を盛り込んでいます。この緊急雇用対策の内容、金額はこれから詰めてい くということなので、雇用保険二事業でそれを実施する場合は、若干変動があるものと考え ています。  続いて4頁です。今後雇用保険の収支も踏まえまして、雇用保険料率の弾力条項の率につ いてご議論していただくわけですが、弾力条項の概要です。基本的には雇用保険料率は、原 則19.5/1000ということで、失業等給付分が16/1000、二事業分が3.5/1000となっていま すが、財政状況に照らして一定の要件を満たす場合は、雇用保険料率を大臣が変更可能とな っています。  これがいわゆる弾力条項ですが、仕組みは2つあり、1つ目の失業等給付の弾力条項の仕 組みについては、失業等給付費が分母で、積立金に保険料収入と国庫負担から失業等給付費 を引いたものが2倍を超える場合については、保険料率を12/1000まで引き下げが可能と なっています。これに対して、この率が1を下回る場合については、保険料率の引上げが可 能となっており、20/1000まで引上げが可能というのが仕組みです。(※)ですが、20年度決 算額による計算をすると、この率が4.70となりますので、平成22年度の保険料率を12/1000 にまで引き下げができることとなっています。  2つ目が雇用保険二事業に係る弾力条項です。こちらは二事業に係る保険料収入が分母、 分子としては保険料収入から二事業に要する費用を引いて、これに当該年度末雇用安定資金 残高を加えるというものですが、これが1.5を上回る場合については、保険料率を3/1000 まで引き下がることとなっています。具体的には(※)ですが、20年度決算による決算額の計 算を行いますと、1.66ということなので、22年度の保険料率は3/1000まで引き下がると なっています。二事業のほうは引き下がるということですが、前半で説明した失業等給付に 係る弾力条項は引き下げが可能ということなので、これは12/1000までの範囲でご議論を いただくことになります。  資料5はこの条文を掲載したものですので省略させていただきます。  資料6です。雇用保険料率と国庫負担の推移を見たものです。国庫負担について説明しま すと、失業保険の創設のときには国庫負担は1/3が基本でしたが、その後1/4が基本となり ました。平成4年以降、ときどきで0.9掛け、0.8掛け、0.7掛けの時代がありまして、13 年以降はまた本来の1/4に戻っております。その後、19年ですが、13.75%、つまり本来の 率に0.55%を掛けるというような形で、いま引き下がった状態にあります。  続きまして、7頁以降を説明させていただきます。7頁以降については、失業等給付の財 政収支の試算ということで、21年度から26年度までの間の試算をさせていただいています。 まず7頁が総括表ですが、ケースを大きくA、B、Cの3つを用意させていただいています。 その上で、ケースそれぞれについて国庫負担が原則1/4に戻る場合、戻らない現行の1/4× 0.55の場合ということで、ケースAについて、ケースAとケースA-2という形で2パター ン用意しております。ケースAについては、支出については22年度の概算要求ベースで推 移をすると見込んだものです。ケースBについては、この22年度の概算要求で推移すると いうことに加え、さらに雇用情勢が悪化するということで、金額としては約3,000億円支出 が増加することを見込んだケースです。雇用保険の受給者実人員としては、ケースAに加 え、約20万人程度増加することを想定したケースです。ケースCは、極端に雇用情勢が悪 化するということで、22年度の概算要求に加え、約6,000億円程度支出が増加するという ケースで、雇用保険の受給者実人員としては、Aのケースよりも40万人弱ぐらい増えると いうことを想定したケースです。これについてそれぞれ具体的に説明させていただきます。  資料8頁です。ケースAですが、これは適用拡大を織り込み、また国庫負担が原則1/4 に戻るというケースです。22年度の概算要求ベースで支出を見込んでいます。22年度の収 入が2兆6,496億円、これに対して支出が3兆159億円となっています。23年度以降は適 用拡大が平年度化しますので、支出が3兆1,000億円ということで、若干増えていますが、 その後は同じ形で支出が続くという形で見込んでいます。これについて積立金残高を見ます と、26年度末でも4兆1,733億円ということで、弾力倍率の1.47倍あるということで、財 政的には安定した推移ができるのではないかと思っています。  続いて9頁です。こちらは基本的な支出の見込みは同じですが、国庫負担が13.75%のま まのケースです。そういう意味で、収入が若干ケースAの場合よりも少なくなっています。 こちらについて26年度の時点を見ていただきますと、積立金残高が2兆8,749億円、弾力 倍率としては0.92倍ということですので、1倍を切ってしまうという状況になります。  続いて10頁です。こちらはケースBです。支出が22年度概算要求額からさらに悪化、 約3,000億円支出が増加するケースです。これについては支出が22年度は3兆3,000億円、 23年度以降は3兆4,000億円という形で推移していきます。26年度末の状況ですが、積立 金残高は3兆483億円ですが、弾力倍率は1倍を切り、0.90倍という状況になります。  続いて11頁です。ケースB-2です。こちらは支出は3,000億円増えるというままですが、 国庫負担が現行の13.75%のままというケースです。当然収入がケースBの場合よりも少な くなりますので、積立金残高がなくなっていくスピードが早くなっていきます。具体的には 24年度の積立金残高を見ますと2兆9,698億円で、24年度には弾力倍率が0.85倍になる。 また、このまま推移すればということですが、26年度末には弾力倍率が0.34倍という状況 になってしまうというものです。  続いて12頁、ケースCです。こちらはケースAの場合よりも極端に悪化をする。具体的 には約6,000億円支出が増加するというケースで、23年度以降の支出は3兆7,000億円で 推移するというものです。これについては、24年度末には積立金残高が3兆1,709億円に なり、弾力倍率が1倍を切ってしまうという状況です。  続いて13頁、ケースC-2です。支出はケースAに加え6,000億円増ということですが、 収入が国庫負担が戻らずに13.75%のまま推移ということで、悪化のスピードが当然早くな っています。この試算によりますと、22年度の積立金残高が3兆6,518億円ということで、 弾力倍率が0.82倍、1倍を切るのはもう22年度になってしまう。その後も単純に延ばせば ということですが、25年度の弾力倍率が0.18倍、26年度はマイナスという形になってい ます。ここまでが失業等給付の収支です。  14頁は雇用保険二事業の収支の試算です。二事業については本来義務的経費ということ ではないので、支出について見込むというのが難しい部分がありますが、一定の前提を置い て試算させていただいています。具体的な前提としては、支出については22年度は概算要 求の数字で、7,640億円ですが、23年度の支出は5,649億円で、以降も5,649億円で固定 しています。この5,649億円という数字は、20年度の実績の支出を使わさせていただいて います。そういう意味では、20年度雇用情勢は悪化が始まっていますので、雇用情勢がそ れなりに悪化しているケース、ただ、21年、22年ほどは支出しないというケースというこ とで見込んでいます。これによりますと、22年度の安定資金残高1,146億円だったものが、 増減はありますが、26年度末には273億円になるというものです。こちらは単純に計算を したものです。  続いて15頁、こちらは「失業等給付に係る国庫負担の考え方について」というものです。 基本的考え方とありますが、雇用保険の保険事故である失業については、政府の経済政策、 雇用政策と関係が深く、政府もその責任を担うべきであることから、単に労使双方のみの拠 出に委ねることなく、国庫も失業等給付に要する費用の一部を負担することが必要というこ とで、具体的には給付により負担割合が若干異なっています。求職者給付が、基本的なもの については費用の1/4となっておりますが、日雇労働求職者給付については1/3、高年齢求 職者については国庫負担なし、雇用継続給付については育児休業、介護休業給付は1/8の国 庫負担、高年齢雇用継続給付は国庫負担なし、就職促進給付、教育訓練給付については国庫 負担なしというような原則になっています。これに加えて(※)ですが、この原則について当 分の間、本来の負担額の55%に引き下げということに平成19年度以降なっています。  この背景ですが、16頁、当分の間、国庫負担割合が引き下げられたのは19年の法改正に よりますが、1-(1)「行革推進法に沿った見直し」ということで、失業等給付に係る国庫負 担の在り方の見直しをしています。この19年の際に、高年齢雇用継続給付に係る国庫負担 を廃止するとともに、当分の間、国庫負担の本来の負担額を55%に引き下げというような 改正を行っています。  17頁はこの法改正に至る経緯で、行政改革の重要方針閣議決定、18年の簡素で効率的な 政府を実現するための行政改革の推進に関する法律、こういったものの中で雇用保険の国庫 負担について検討するとされたことを踏まえ、19年の法改正に至ったものです。  18頁です。諸外国の失業保険制度の概要です。この中に財源もあるので参考で付けさせ ていただいています。19頁以降は、冒頭少し説明させていただきました概算要求の概要で す。資料1の説明は以上です。  続いて資料2「雇用保険の財政運営に関する論点」です。1つ目の「失業等給付に係る財 政運営について」ということで、4つ提示させていただきました。1つ目が厳しさを増して いる雇用失業情勢の中、失業等給付費が増加している現状について、どのように考えるか。 2つ目が失業等給付積立金の今後の推移について、どのように考えるか。これについては現 在の状況といくつかパターン、シュミレーションを今回提示させていただいています。3つ 目、弾力条項により引き下げが可能である平成22年度の失業等給付に係る保険料率につい て、どのように考えるか。4つ目が平成19年の雇用保険法改正により暫定的に引き下げら れている失業等給付に係る国庫負担割合についてどのように考えるか。   2つ目の大きな論点として「雇用保険二事業に係る財政運営について」です。こちらは3 つ掲げさせていただいています。1つ目、厳しさを増している雇用失業情勢の中、支出が増 加している現状について、どのように考えるか。2つ目、雇用安定資金の今後の推移につい て、どのように考えるか。3つ目、雇用保険二事業の安定的な財政運営を確保するための方 策について、どのように考えるか。以上を論点として記載させていただいています。資料の 説明は以上です。 ○清家部会長 ただいまのご説明に関してご意見、ご質問等がありましたら、どうぞよろし くお願いいたします。 ○小林委員 事務局のほうからいくつかの論点を出していただいたものについて、私なりの 考え方を言わせていただきます。最初の「失業等給付が増加している現状について、どのよ うに考えるか」ということですが、これも過去の数値を見ていくと、後を追いかけるような 形で、失業給付が増えてきているのです。過去の例に倣うわけではないのですが、いま景気 が一応底から上がったような形になっています。しかし、今後の失業等給付というのは、ま だ増加するのではないかというのは、若干否めない状況にあるのではないかと思います。  いくつか思いついたことだけを申し上げます。私どもの傘下企業からは、雇用保険料率に ついて、引き続き下げていただきたいという要求がかなり出ておりますので、弾力条項によ り引き下げをお願いしたいというのが1つです。  国庫負担割合については本則に基づいて、25%に戻すような形でお願いしたいと思います。 今回の概算要求の中でも3つ目の柱に、「雇用保険制度の見直し」ということで入っている ことに非常に感謝申し上げるとともに、是非ともこの実現方をお願いしたいと思います。  雇用保険の二事業関係については、この非常に厳しい状況で、雇調金が非常に有効に働い たと思います。その意味でも雇調金の見直しも含めた予算化というのも、いろいろ考えられ ているところではあると思うのですが、引き続きその辺をしっかりやっていただきたいとい うのがあります。  もう1つ、「概算要求の事項要求」をみると、緊急雇用対策というのが事項要求になって しまったのが残念なところです。いま現在、雇用対策の方式で一般財源の基金もつくられて いるところですので、それを含めた一般財源をもってのセーフティネットの仕組みというも のを、是非とも確立していただきたいことをお願い申し上げたいと思います。  もう1つ付け加えますと、前回の部会の中で長谷川委員のほうから、「育児休業給付とい うのは一般財源化」というお話がありました。この間帰ってからじっくり考えたら、確かに そうだと思いましたし、雇用保険二事業の中でも同類の形で、育児関係や高齢者のものも含 めて、いろいろな助成事業が組まれているところです。雇用保険自体を考えてみますと、失 業等給付も雇用保険の二事業についても、本来の雇用の維持や失業のための仕組みに見直し ていくことも必要かと思います。その削減をもってもなかなか難しい面があるので、国の負 担も本則に戻しながら、しっかりした失業対策というものを組んでいく必要があるのではな いかと思いますので、意見を述べさせていただきます。 ○清家部会長 ほかにご意見はありますか。 ○西馬委員 資料の内容確認というか質問です。先ほどご説明いただいた1頁の「失業等給 付関係収支状況」で、保険料収入の欄と6頁の「保険料率の推移」とを見比べていたのです。 もちろん料率が上がったところで収入が増える時と減る時というのが大きく出ているので すが、私がよくわからないのは、平成16年度と17年度の保険料収入が、この2年だけで 3,000億円ぐらい飛び跳ねているのです。国庫を除いた保険料収入は2兆435億円から、2 兆3,856億円ということで、この2年間だけがポッと上がっています。私の理解が正しけれ ば、平成19年度に料率が12/1000に下がったときには落ちるのですが、この2年間だけが 16のままで行ってポッと上がっているというのは、読んでいて気になったのです。それ以 外のところは非常に料率とリンクしています。 ○宮川職業安定局総務課長 「保険料率の推移」の注2をご覧いただきますと、おわかりに なりますように、保険料率は平成15年から19.5になったのですが、注2にありますよう に、平成15年度の法改正により失業等給付の保険料率が16/1000とされたが、法律の附則 により平成15年度及び16年度は暫定的に14とされたという経緯があります。それにより 千分率が平成15年度と16年度は下がって、17年度、18年度とまた上がって、19年度に 下がったという状況です。 ○西馬委員 そうしますと、この後の改定にもつながってきますが、この4月の改定におい ても、今回も収支の状況について、6パターンのシミュレーションをいただいているわけで す。この失業等給付関係の収支のときは、収入の面では料率と国庫負担との関係が非常に大 きいのです。そこで私が何を思ったかというと、今回はものすごく収入が下がって、それと リンクして勤労者の所得が下がっているので、ちょうど景気の影響によって収入がすごく大 きく振れるのかと思って見ていたのです。ただ、この表を見る限りアバウトに捉えると、料 率とか国庫負担をどういじるかというリンクが強くて、収入の面というのはそんなに大きく 振れないという見方でよろしいのですか。 ○坂口雇用保険課長 いまのご質問の点は、総務課長から申しましたとおりです。平成15、 16、17年辺りの動きというのは、実質的に料率が16/1000に戻ったのが、経過措置を終え て平成17年度だったという部分が大きいのです。ただ、景気が悪くなると全体的に賃金の 多寡であったり、全体の被保険者の動向であったりということもありますので、同じ保険料 率でも結果的に収入が減るということは、西馬委員のご指摘のとおりです。  いま巷間でも、今年も税収の見込みが減収するのではないかと言われております。今年度 においていくらというのは、我々もまだなかなか分からないのですが、今後の景気の状況に よっては歳入の保険料の収入も、やはり予算で見ているより落ちるのではないかということ があります。そういった面では料率や国庫負担率のウエイトが大きいのは確かですが、やは り景気の動向での収入減もあろうということは、ご指摘のとおりです。 ○西馬委員 加えてご質問させていただきます。まだ1年も経っていないのですが、前回の 何パターンかのシミュレーションで、財政はこうなりますよという議論を出していただいた 上で、この4月からの措置を採っているわけです。あれは今のところ、前のシミュレーショ ンの中で、想定のかなり確からしい範囲内に入っているというように見ていらっしゃるかど うかというのをお聞きしたいのです。 ○坂口雇用保険課長 前回も今後の見込みという動向で、シミュレーションを3パターンほ ど出させていただいたのですが、残念ながら雇用情勢が悪くなっていて、あのときお出しし たいちばん悪いと見込んでいたパターンを、今たどっているという形になっています。悪い パターンも想定して、ご議論いただいたということです。 ○西馬委員 わかりました。 ○清家部会長 ほかに何かご意見、ご質問はありますか。 ○古川委員 小林委員からも出た雇用調整助成金については、やはり要件の緩和を早急にお 願いしたいと思います。要件が前年度の生産量や販売料の5%というのは、ちょっとは上が ってきて良くなってきてはいるのです。しかし、やはりまだ雇用の状態は厳しいので、今度 また新たに申請する場合に、要件に沿わなくて給付金がもらえなくなるのです。それでもそ の給付金をもらわないと、なかなか大変なので、その要件の緩和を早急にやっていただきた いと思います。それから日額の上限額というのがあります。これまでも雇調金はいろいろと 緩和されているのですが、その上限額があるために、結局使えなくなってしまっています。 ですから、その上限額をもう少し引き上げる。それも併せて早急にお願いしたいと思います。 ○宮川職業安定局総務課長 雇用調整助成金の支給要件については、緩和等のご要望がある ことは十分承知しているところです。先週の金曜日に出た緊急雇用対策の中では、出向元へ の復帰後6カ月を経ずに行われた再度の出向についても、雇用調整助成金の支給が可能とな るような支給要件の緩和をする、という内容が盛り込まれております。併せて今後の経済雇 用情勢の推移を踏まえ、雇用調整助成金の生産量要件の緩和について、早急に検討するとい う趣旨が入っております。これらと経済雇用情勢の推移を適切に踏まえて検討してまいりた いと思っております。  あと、上限の話ですが、ご承知のように雇用調整助成金は、雇用保険の二事業でやってい るわけです。その上限の考え方は、一応本体給付の失業給付の上限額に合わせるという思想、 つまり給付での上限額を支給し、雇用調成助成金の上限額を考えるという発想になっており ます。これは二事業という性格上、上限をそれ以上にするのはなかなか困難な面があるかと 思いますが、ご要望として承ったということにさせていただきたいと思います。 ○長谷川委員 1つは、あのときにいろいろなことを言われて、昨年1年限りとはいえ、保 険料率を引き下げたのですが、賃金に跳ね返っているとは到底思えないのです。私は、やは りあのときに下げるべきではなかったと、今日あえて言わせていただきたいと思います。そ ういう意味で16/1000に戻すということは、そのとおりだと思っていますし、やはり今回 も弾力条項は発動すべきだと思っています。  国庫負担というのは、いつも議論になるところです。私の基本的な考えは、昭和22年の 1/3がいちばんいいのではないかと思っています。政府が1/3、使用者が1/3、労働者が1/3 というのが、いちばんの理想です。いろいろな経過があって1/4になってきたわけですが、 6頁の国庫負担の推移を見たときに、これまでも財政審などで国庫負担を削減すべきだとか、 改正すべきだとか、赤字になったときにだけ国庫負担を入れればいいのではないかとか、さ まざまな意見があったのです。  私は、雇用政策に対してはやはり政府もお互いに負担をするということで、原則1/3とい うことで。現状は1/4なので1/4ですが、保険料率を上げたり、積立金がどれぐらいかによ って、国庫負担を1/4×0.55などとしてきたわけです。ある意味では今のように必要がす ごく多くて、給付が増えているときには、この逆もあるのではないかと思うのです。今まで は国庫負担を下げてきたけれども、1/4をベースに国庫負担を1.9にするとか、1.8にする とか、1.3にするという逆の考え方もあるわけです。国庫負担の在り方がどうなのかという ことについては、もう少し議論が必要かと思います。今回1/4に戻すのは当然だと思います が、1/4だけがパターンではないということは、ここで少し述べておきたいと思います。  もう1つは、古川さんからも言われた雇調金のことです。今まではある1つの産業が雇調 金を使っていたのですが、今回、これぐらい雇調金が雇用維持に役立っているというのをみ んなが実感したことがないほど、いろいろな産業で使われました。今回は本当にすべての産 業で使いながら雇用を維持して、それで企業もすごく努力をして、いろいろな工夫を現場で やっているようです。このことは非常に評価したいと思います。それで少しはよくなってき たのですが、やはりもうちょっと頑張って。このまま雇調金で雇用を維持したほうがいいの か、それとも別の方策がいいのかというのは、企業も迷っていると思うのです。ある意味で は雇用を維持させるために、今の要件の5%というのは少しきついので、ここは是非見直し てほしいと思うのです。  前回の政府の緊急雇用対策の中で、出向の生産量の所が「検討」という表現になっていた と思うのです。私は検討ではなくて、直ちにやってもらわなければ困ります。我が構成組織 ではこの大合唱なので、この弾力条項の要件についてはきっちりと早めに。もう少し言うと、 構成組織は「早くやってくれ」と言っているのです。去年だと12月9日ぐらいに緊急雇用 対策をやったわけですから、今回も早くやってほしいと思います。  あと、小林委員が言われた育児休業のことは、私もかねてから言っているのです。育児休 業に対する対応は、私は雇用保険ではないと思っているのです。やはり別なものをつくって、 そこで産休と育児休業をトータルで見て、ちゃんと手当てをするべきだと思いますので、小 林委員の言われたことに全く同じ意見を持っているということだけは言っておきたいと思 います。 ○遠藤委員 いまも各委員から異口同音に出ておりますように、雇用情勢は予断を許さない 状況です。私どもとしても、今後とも安定的な財政運営は必要だと思っておりますので、本 則に基づいて国庫負担を1/4に戻すべきだと考えております。  雇用調整助成金の要件緩和についても、早急のご対応が当然必要かと思っております。た だ、どういう形で要件を緩和していくのか、いろいろお考えはあろうかと思っております。 私どもも大至急、いろいろな形でヒアリング等を含めて対応してまいりたいと思っておりま す。当然、大企業のパターンと中小企業のパターンとそれぞれあるかと思っておりますから、 その辺の声も聞いていただくようお願い申し上げたく存じます。  料率については、経営状況が大変厳しいだけではなくて、労働者の方々の状況も厳しいと いったことがあります。是非とも弾力条項に則って、1.2%に引き下げるべきだと思ってお ります。 ○長谷川委員 二事業の収支状況について14頁を見ていくと、二事業の安定資金の残高も 若干気になります。失業給付のところは、いま1/4の国庫に戻せと言っていて、国庫が入っ ているわけです。いままで二事業は一般財源に入ったことがないわけですが、今回の雇用情 勢から見て二事業の積立金を使って、雇用調整金で雇用が維持されているわけです。そうい う意味では、資金が非常に不足した場合は、一般財源から投入するということもあり得るの ではないかと思うのです。それが全体的に政府から見た場合に雇用対策になると思うので、 資金の残高の状況を見ながら、政府が一般財源も投下して雇用を維持するということも是非 検討していただければと思います。 ○佐藤委員(代理) まず料率については、ほかの委員の方からも出ておりますように、是 非とも弾力条項を発動して、本来よりも引き下げということでお願いしたいと思います。  また、国庫負担については商工会議所もかねてから、失業の予防対策は政府にも責任を持 っていただきたいということで、25%に戻していただきたいと思っております。  それから小林委員のお話にもありましたように、雇用保険ももちろん、基金のお話もあり ましたが、一般会計を活用した対策という点は全く同感です。そうした観点で私どもも、今 後も議論に参加させていただきたいと思っています。 ○岩村委員 国庫負担の件ですが、1/4に戻すというのは私もそうだろうと思っています。 ただ、ちょっと気になったのは先ほど長谷川委員のおっしゃった、1/4を超えて増やせばい いのではないかというお話です。これは諸刃の刃で、普通は入れないで危なくなったら、そ のときだけ国庫負担を入れればいいではないかというような議論と同じになってしまいま すので、そこは要検討ではないかという気がいたします。  雇調金についてはおっしゃるとおり、雇用を維持するという点では非常に重要です。ただ、 根底として本当に必要なのは景気対策です。もちろん雇用維持のために、雇調金をなるべく 緩やかにしてということはわかるのです。他方で、労使揃って経済対策、景気対策をもっと ちゃんとやってほしいということは、是非、声を高くして言っていただければと思います。 そうしないと、雇調金がただ出ていくだけということになってしまいます。しかも景気が悪 い中、下手をすると雇調金が足りなくなるので、そこの部分を上げなければいけないとか、 保険料を上げなければいけないという議論になりかねません。そこは是非、労使揃って景気 対策をということを、声高に言っていただくほうがよろしいのではないかという気がいたし ます。 ○林委員 私も二事業についてです。財政的に非常に厳しくなりそうだということが予定さ れております。この二事業の雇調金というのは、ある産業が駄目なときに保険全体で二事業 でやる、助け合うという意味では非常に有効だと思うのです。ただ、いまのように全般が駄 目になってきた時に、これだけに頼るというのは、直ちに残高が減少するという状況がすぐ に発生してきます。やはりいま岩村委員がおっしゃった、こういう時には景気対策とか、要 するに一般財源を使ったものを考えていかなければいけないという意見には私もそう思い ます。 ○小林委員 岩村委員に文句を言うわけではないのですが、そもそも景気対策をしっかりや ってくれというのは、ずっと言い続けていたところです。とはいえ、これは100年に1回 というような異常な状況になってしまったわけです。そのときに、まさに、中小企業の緊急 対策のような形で雇調金の見直しが行われ、企業での雇用維持に大変役立てることができ、 本当に大きな効果があったというのは、やはり記憶にとどめておくことが必要かと思います。  ただ、根本的にはこのような100年に一度の不況下において、いろいろな問題が出たわ けです。それに当たって雇用保険の制度の中でできる範囲と、それ以外で対応しなくてはな らない部分が随分あったというところで、本当の緊急事態への備えができていないところが、 制度的にはいろいろあったのではないかというのが実感するところです。雇用保険自体、本 来の雇用保険の形に戻すべきではないかと。  昨年の雇用保険部会で雇用保険料率、国庫の負担額の問題など、いろいろな議論がありま した。去年や一昨年までは、財政当局からの国庫の負担割合が多いのではないかとの指摘に 対し、労使双方からは政府ももっと国としての責任を考えるべきだとの意見がありました。 やはりいまの現状を見ると、安定資金残高をかなり積んでおいてよかったというのが本音で す。とはいえ事務局で作っていただいたいろいろなシミュレーションをみると、非常に厳し い財政状況に雇用保険財政がなっているわけですから、長谷川委員の1/3というのも、一つ の考え方ですが、せめて1/4の本則条項に戻していただくことが重要です。それとともに、 本当の景気対策をやっていただきたい。それと、雇用保険でできないセーフティネットの部 分のいろいろな仕組みづくりというのも、必要があるのではないかと思います。雇用保険だ けを考えて見るのではなく、いろいろな面で広く考えていただきたいということをお願いし たいと思います。 ○長谷川委員 私も岩村先生がおっしゃるように、私が言ったことが、ある意味で危険性を はらんでいると思います。積立金があるときは国庫負担を下げて、赤字になってきたら国庫 を入れればいいではないか、という議論なのです。ですから、そこは非常に危ないと思って います。しかし今まで積立金がある中で、平成4年からずっと25%下げてきたので、今回 はこのぐらい大変なのだから、まずは直ちに1/4に戻してもらわなければ困ります。そこは きっちりと強調しておきたい。この事態はもう看過できない状況なので、原則1/4に戻して ほしいと思います。 ○清家部会長 ほかにいかがですか。よろしゅうございますか。確かに100年に一度とい う異常事態の中で1/4に戻っていないのは、少しおかしいのではないかというのは、労使あ るいは公益委員共通の認識だと思います。その辺は、財政当局との調整になるかと思います。 事務局、厚生労働省のほうで是非頑張っていただきたいことだろうと思います。  よろしければ、今回の議論はこのあたりにさせていただきます。次回は私のほうで事務局 とご相談して、これまでの議論を踏まえて取り急ぎ検討いただかなければいけない課題と、 じっくりと検討すべき課題とを整理しながら、皆様の議論を深められる資料をご用意いただ いて、議論を進めてまいりたいと思っております。  次回の日程については事務局において、改めて各委員にご連絡をお願いしたいと思います。 以上をもちまして、第50回雇用保険部会を終了いたします。本日の署名委員は、雇用主代 表を遠藤委員に、労働者代表を栗田委員にお願いいたします。 照会先:厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係     03−5253−1111(内線5763