09/10/27 第136回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録   第136回 労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成21年10月27日(火)14:00〜 2 場所  厚生労働省専用第21会議室(17階) 3 出席者   委員   公益委員 :鎌田委員、柴田委員、清家委員        労働者代表:市川(佳)委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表:秋山委員、市川(隆)委員、高橋委員   事務局  森山職業安定局長、山田職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木派遣・請負労働企画官、浅野主任中央需給調整事業指導官、        大塚需給調整事業課長補佐、小園需給調整事業課長補佐、小野寺需給調整事業課長補佐、        高西需給調整事業課長補佐、鶴谷需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)今後の労働者派遣制度の在り方について       (2)その他 ○清家部会長 委員の皆様方お揃いですので、ただいまから第136回労働政策審議会 職業安定 分科会労働力需給制度部会を開催します。本日は、最初の部分は公開で、今後の労働者派遣制度 の在り方についてご審議いただきます。その後、一般労働者派遣事業の許可の諮問、有料職業紹 介事業及び無料職業紹介事業の許可の諮問に関わる審議を行いますが、この許可の諮問の審査に ついては資産の状況と、個別の事業主に関する事項を取り扱いますことから、これについては公 開することにより、特定の者に不当な利益を与え、又は不利益を及ぼす恐れがある場合に該当し ますため、非公開とさせていただきます。傍聴されている方には、始まる前にご退席いただくこ とになりますことを予めご了解いただきたいと思います。  早速、審議に入ります。最初の議題は、今後の労働者派遣制度の在り方についてです。前回の 部会では、公労使各委員からそれぞれご意見をいただきましたが、今後各項目について個別に議 論していくための資料として、事務局に分科会で出された意見と合わせ、論点を整理していただ きました。まずは、これについて事務局から説明をお願いします。 ○大塚補佐 ご説明します。資料1は、平成20年政府提出の法律案において措置することとし ていた事項のほかに、追加的に措置すべき事項について網羅的に挙げたものです。1番目は、登 録型派遣についてです。登録型派遣を原則禁止すべきかどうかという論点、それと仮に原則禁止 とした場合に、禁止の例外をどのように設定すべきかということです。括弧書きにはその例を示 していますが、26専門業務、産前産後休業等の代替要員派遣については、3党案でも禁止の例外 とされていたところです。そのほか、前回の部会において、鎌田委員から紹介予定派遣や高齢者 派遣についてのご紹介もありました。なお、平成11年改正の前ですが、高齢者派遣と育児休業等 の代替要員派遣については、禁止の例外とされています。3は平成20年法案において、派遣元事 業主に対して常用化のための措置・努力義務が規定されていたところです。その対象労働者や措 置の度合、内容などが論点になってこようかと思います。  2番目の製造業務派遣についてです。これも同様に、原則禁止すべきかどうかという論点、そ れと仮に禁止した場合に、禁止の例外をどのように設定すべきかということで、登録型派遣と同 様に例を示していますが、一定の専門職が3党案では禁止の例外となっていますので、その在り 方等についても議論になろうかと思います。また、これまでの部会などにおきまして、製造業務 派遣については派遣切りの問題が指摘されていましたが、これに対応した安定雇用を実現するた めの方策についても論点になってこようかと思います。  3番目の日雇い派遣についてです。こちらは、そもそも禁止の対象となる雇用期間を平成20年 法案のとおり30日以内にするのか、あるいは3党案のように2か月以内にするのかという論点 があります。それと禁止の例外について、平成20年法案のとおりの例外を設けるのが適当かどう かという論点。それと、3党案においては禁止違反の場合に、2か月に1日を加えた契約期間と みなすといったような規定を設けて、こうした雇用期間のみなし規定を設けるべきかどうかが論 点になってこようかと思います。  4番目の専ら派遣・グループ企業派遣です。3党案においては、企業グループ以外の場合でも、 派遣元が労働者派遣の役務のうち、1つの派遣先について8割を超えて提供してはならないこと とするという規定が盛り込まれていまして、こういった規定を設けるべきかどうかといったこと が論点になろうかと思います。  5番目の均等(均衡)待遇です。そもそも、こういった規定を置くべきかどうかということと、 置く場合に均等なのか、均衡なのかが論点になってこようかと思います。  2頁です。6番目の情報公開です。1〜3は派遣元の義務です。一般的な情報公開のほか、派遣 労働者に対する通知事項、派遣先に対する通知事項として、*で示したような事項を追加すべき かどうかということが論点になります。4は派遣先の義務です。派遣先が派遣先の労働組合に、 *に示しているような事項を通知することを義務づけるかどうかが論点になってきます。  7番目の派遣先責任の強化です。1〜11に掲げている11項目それぞれについて、派遣先の責 任を強化するための規定を設けるべきかどうかが論点になってこようかと思います。  3頁です。8番目の違法派遣への対処です。1.直接雇用みなし制度は、3党案におきまして、 違法派遣の場合に派遣労働者が派遣先に対して、自己の雇用主とみなす旨を通告できるといった 規定があります。その場合に、派遣元、派遣労働者間の労働契約が、派遣先、派遣労働者間の労 働契約に移転するといったような民事上のみなし規定を置くこととなっていまして、こうした制 度を導入すべきかどうかということが論点になってきます。また、前回の部会において鎌田委員 からもご紹介がありましたが、昨年の研究会報告では違法派遣の是正措置として、みなし制度や 平成20年法案の内容となっていました行政勧告の制度のほかに、派遣先に直接雇用の申込み義務 を置くといったような手法も示されたところで、そういったことも考えられないかどうかが論点 になってこようかと思います。  9番目の罰則については、違法な労働者派遣事業を行った法人に対する罰則の強化と、派遣先 に対する罰則の導入が論点になってきます。  10番目の法律の名称等です。法律の名称及び目的に、派遣労働者の保護といったような文言趣 旨を加える必要があるかどうかといったことと、法律の施行期日は3党案では原則交付の日から 6か月以内に施行ですが、登録型派遣の禁止と製造業務派遣の禁止については交付の日から3年 以内とされていまして、そういったものを含めまして法律の施行期日をどのように設定すべきか が論点になってこようかと思います。論点メモについての説明は以上ですが、別途お手元に団体 から提出されました意見書を配付しています。今後、いろいろな団体から意見書が提出されるこ ともあろうかと思いますが、今回と同様にその都度机上に配付したいと思いますので、よろしく お願いします。以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。ただいま事務局よりご説明のありました論点について、 何か追加すべき事項等はありますか。いま論点を1から10まで挙げていただきましたが、この 際何か追加すべき論点というものがありましたらお願いします。長谷川委員どうぞ。 ○長谷川委員 今日は用意してこなかったのですが、長くやるのであれば、論点というのはまだ あると思いますが、もし限られた時間の中でこういう状況下の中で、これを優先してくれと言わ れればこの項目でいいかなと思います。例えば、事業所の許可要件などについても、もう少し見 直したほうがいいかなと思っています。それと、いまは届出と許可制度がありますが、そういう ものについても本来だったら検討したほうがいいかなと思っていますが、時間的に余裕があるか どうかです。 ○清家部会長 ただいま長谷川委員からご提案がありました届出許可要件等についての項目も付 加することにしますか。 ○鈴木課長 時間があればということだったかと思いますが、今回は大臣からの諮問に基づいて、 当部会でご議論いただいているということで、論点趣旨からしますと、まずは諮問事項をご審議 いただいた後に、時間的余裕があったらご審議いただくことを事務局としてお願いできたらと考 えています。 ○清家部会長 いま長谷川委員が提示された問題は、派遣制度の制度的な面から言うと非常に重 要なポイントだと思いますが、当面今回の諮問にお答えするという趣旨から、少し論点を絞りた いという事務局の意向もあるようです。その点はどうでしょうか。これは長期的には、必ず議論 したほうがいいと思いますが。 ○長谷川委員 そうですね。長期的に、このあとも改正後のフォローアップなどがあると思いま すが、そういう中の論点整理の項目に入れていただければいいので、私はこの期間中で是非とも やって欲しいと言うつもりはありません。次回でも結構です。 ○清家部会長 では、そのような扱いにさせていただきたいと思います。それでは、ここで挙げ た論点に基づいて、これから議論を進めてまいりたいと思います。前回の部会においては各項目 を議論するにあたり、参考資料の作成を事務局にお願いしました。論点が多岐にわたりますので、 本日はいま事務局から挙げていただいた論点のうち、登録型派遣、製造業務派遣、日雇い派遣、 専ら派遣・グループ企業派遣の4項目に関する参考資料を事務局に説明していただき、これらの 項目についてご審議いただくことにしたいと思います。  それでは、資料について、事務局から説明をお願いします。 ○大塚補佐 資料2です。1頁は派遣労働者の現状として、常用型、登録型、日雇い等の各種形 態について、労働者数、性別・年齢別の特徴、現在行っている仕事など、各種特徴を挙げたもの です。この数については2頁に、事業報告に基づく平成19年6月1日時点の労働者数を整理し ています。縦の列の左2つは常用雇用労働者、いちばん右の列は常用雇用以外の労働者です。横 の列のいちばん上が専門の26業務、真ん中が自由化業務、いちばん下が製造業務となっています。 これでいいますと、平成19年6月1日時点では製造業務は約47万人、登録型で専門業務を含め まして、約86万人となっています。  3頁は、派遣業務別の派遣労働者の割合を男女別に分けて示したものです。特徴としては、男 性は下段右から4つ目の「物の製造業務」が全体の42.4%を占めています。一方、女性は、その 3つ左の「一般事務」が39.5%、あるいは上の段の第5号の「事務用機器操作」が28.1%という ように、男女間で特徴が現れているかと思います。  4頁は、派遣労働者の就業形態に対する意識を問うたものです。今後の働き方に対する希望と しては、「現在の就業形態を続けたい」「他の就業形態に変わりたい」が概ねほぼ同程度と見受け られます。その下の現在の就業形態を選んだ理由でいちばん多いのは、下から4つ目の「正社員 として働ける会社がなかったから」が最も多くなっていますが、例えば上から3つ目の「自分の 都合のよい時間に働けるから」など、勤務時間や仕事の内容などによりまして、積極的に選択し ている方も相当数見受けられます。  5頁は、企業側に聞いた、派遣労働者を就業させる主な理由です。最も多いのが上から2つ目 の「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」です。  6頁の資料は、先ほどの論点1の2の禁止の例外に係るもので、紹介予定派遣の状況を見たも のです。真ん中の段は平成19年度の数値ですが、上から3段目が派遣先からの紹介予定派遣の 申込人数です。その下が、実際に紹介予定派遣により労働者派遣された労働者数で、5万3,000 人余となっています。結果的に、直接雇用に結び付いた労働者数はいちばん下の3万2,000人余 となっています。  7頁も、論点1の2の禁止の例外に係るもので、高年齢者派遣が平成11年まで設けられていま したが、その経緯を述べたものです。こちらの制度は、平成6年に高齢法の改正によりまして導 入されています。60歳以上の高年齢者が対象で、港湾運送業務、建設業務、警備業務、物の製造 業務以外の業務についての派遣が可能となったものです。平成11年には労働者派遣法が改正され まして、対象業務を原則自由化した関係で、こちらの高年齢者派遣については溶け込む形で解消 されています。  8頁も、論点1の2の禁止の例外に係るものです。育休代替派遣については、平成8年の育休 法の改正によりまして、港湾運送業務、建設業務、警備業務以外の業務についての派遣が可能と なったところです。したがいまして、高年齢者派遣で禁止されていた物の製造業務について、育 休代替については可能だったということです。こちらも、平成11年の労働者派遣法の改正により まして、解消されました。  9頁は、昨年の7月の研究会報告において、登録型派遣の在り方についての考え方を述べたも のです。いちばん上のパラグラフに、雇用の安定という観点から問題といったような指摘。それ と、その2つ下のパラグラフに能力開発の機会が得にくい。就業経験が評価されないといった問 題が指摘されていました。ただ、「しかしながら」のところに書いていますように、こうした働き 方を選んで働いている労働者も多くいることなど、登録型派遣のメリットも挙げていまして、結 論としてはこれを禁止することは適当でなく、むしろ登録型派遣のメリットを生かした事業形態 として位置づけていくことが適当としまして、最後のパラグラフの「具体的には」に書いてあり ますように、派遣元に対して常用化のための措置・努力義務を課すことが考えられるとされてい ました。  この措置の内容について、もう少し詳しく述べたのが10頁です。派遣労働者の常用化促進に 関してですが、措置の内容は上の枠の右側に書いてあります。登録型派遣労働者について、希望 に応じてこの3つのポツのいずれかの措置を努力義務として課するものです。この際、対象とな る派遣労働者について、下に参考条文の第30条を付けています。1行目の終わりから3行目にか けまして、厚生労働省令に定めるものに限るという条文にしていたところです。この厚生労働省 令に定めるものについては、昨年の建議では1年以上勤務している期間を定めて雇用する派遣労 働者ということになっていまして、この対象の労働者の範囲や措置の度合、内容などが論点にな ってこようかと思います。  製造業務派遣関係の実態資料です。11頁は、製造業務派遣の改正経緯と条文についてです。平 成11年の改正によりまして、対象業務が原則自由化されましたが、物の製造業務に関しては製造 業で働く労働者の割合の大きさ等を考慮して、附則において当分の間、労働者派遣事業を行って はならないとされていました。この物の製造業務の定義については、次の枠囲みに附則第4項を 付していまして、この1行目から2行目にかけて書いています。要は、製造業における生産工程 ラインに従事する業務を広く含む趣旨で、逆に言いますと製造業における事務職などは、ここに は含まれないことになっています。こうした当分の間禁止されていた物の製造業務については、 下にありますように平成15年改正で解禁されました。  12頁は、製造業の派遣先における派遣の活用に対する意識を聞いたものです。左側は派遣先に おいて、今後業務量が拡大した場合に、派遣の活用を希望するかどうかを聞いたものですが、「活 用したい」が84.3%にのぼっています。右側は、派遣の受入れができなくなった場合に困ること を問うたものですが、最も多いのは「業務量変動等に備え、調整弁を設けることができない」で すが、その下にあげているように「直接雇用で募集すると時間がかかる」「コストがかかる」ある いは「人が集まらない」といったような人員確保面での問題も、相当程度にのぼっています。  13頁は、労働災害の状況についてまとめたものです。左側は、派遣労働者の休業4日以上の死 傷者数の業種別の割合を見たものです。全体は平成20年において4,574人の死傷者数が生じて いますが、製造業はその64.8%の2,965人の死傷者数となっています。右側は、その製造業にお ける死傷者数を経験期間別に見たものです。最も多いのは1か月以上、3か月未満の27.7%です。  14頁は、派遣労働者の雇止め等の状況について述べたものです。業種計は、合計欄にあります ように14万1,000人余となっていますが、製造業は13万8,000人弱と、全体の97.4%を占めて います。  15頁は、派遣労働者の雇用調整の状況についてです。いちばん上の46万6,000人は、先ほど の2頁のマトリクスの表でご覧いただきました製造業務派遣の平成19年6月1日時点の人数で す。その下の13万8,000人というのは、前の頁でご覧いただきました製造業の雇止めの数です。 その下の枠囲みは、派遣先、派遣元それぞれに対して雇用調整の状況を聞いたものですが、派遣 先において就業機会が確保できたのは2.2%にとどまっていまして、結果的に就業機会の確保に 至らなかったのが86%を越えています。派遣元に関しても、雇用継続できたのは10.9%で、離職 に至った者が8割以上となっています。  16頁は、その前で見ました雇止め等の状況のうち、派遣元事業主から状況が把握できた3万 6,000人をもとに、その雇用の状況等を派遣の形態別に聞いたものです。常用型で見ますと、上 から2段目で雇用が継続できた割合が、12.4%となっています。常用型をさらに無期と有期で分 けてみますと、無期は22.4%、有期は10.3%となっています。一方で登録型に関してはその右側 ですが、8.1%が雇用が継続できたということとなっています。  17頁は、中途解除の状況と中途解除に伴う派遣元の雇用維持の状況を聞いたものです。製造業 務に関して見ますと上から2つ目ですが、5割未満しか雇用維持ができなかったというものが最 も多く、65.5%を占めます。さらに、一般と特定に分けてみますと、一般では5割未満しか雇用 維持ができなかった割合が、73.3%に広がっています。製造業務以外でいいますと、いちばん下 ですが、5割未満しか雇用維持できなかった割合は17.0%に止まっています。  18頁は、中途解除された場合に雇用維持ができなかった理由を問うたものです。製造業務で見 ますと、最も多いのは「休業手当等の工面ができず、損害賠償を断られた」が45.4%にのぼって いまして、一般と特定に分けてみますと、一般の場合にはその割合が50.9%に増えています。製 造業務以外で見ますと、こうした割合は相当程度減っていて、派遣労働者が希望しなかった割合 が最も多いことになっています。  日雇い派遣関係です。19頁です。2頁のマトリクスでは、平成19年7月の数値として、1日 あたり5万3,000人という数値を載せていましたが、日雇い派遣の実績の多い派遣元事業主から 聴取したところ、平成21年7月時点の数値は1か月未満の場合は7,420人、2か月未満まで加え てみますと8,789人となっています。2の調査ですが、有期雇用契約の契約期間を見たものです。 最も多いのは2か月超から3か月以内の35.5%で、今回の議論の対象となる1か月以内の場合に は8.1%、1か月超から2か月以内の場合には7.6%となっています。  20頁は、日雇い派遣規制の禁止の例外業務として、昨年法案を取りまとめたときの考え方を示 したものです。その際、26業務から真ん中の特別の雇用管理に係る業務、日雇い派遣の労働者が ほとんど存在しない業務を除いたものを禁止の例外とすることにしまして、逆に言えばこの真ん 中の部分は禁止という整理をしたものです。その禁止の例外の部分は、下の26業務で線を引っ張 っていないものが禁止の例外と整理したものです。  21頁は、専ら派遣・グループ企業派遣関係です。専ら派遣は、派遣元事業主が特定の事業主に 対してのみ派遣を行うもので、専ら派遣については右側に書いてありますように、そもそも派遣 事業の許可がされないことになっています。事業開始後に専ら派遣であることが判明した場合に は、指導や許可の取消の対象となることとなっています。一方で、その下のグループ企業派遣は、 同一グループ内の特定の事業主が派遣先の大半を占めるもので、専ら派遣には該当しないため、 現行法上では適法とされています。昨年の法案においては右側に指摘される問題点、すなわち第 2人事部的なものであって、労働力の需給調整を行う労働者派遣事業としては、必ずしも適当と は言えないといったような問題点を踏まえまして、グループ内企業派遣が8割を越えてはならな いといった規制を設けることと整理したものです。  22頁は、いま申し上げたような考え方が研究会報告で示されていますので、それを参考に付け ています。説明は以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。それでは、先ほどご紹介いただきました資料1「今後 の労働者派遣制度の在り方」の論点の1〜4を今日は議論するということで、ただいまの資料の説 明も含めてご議論いただきたいと思いますが、最初に1つずつ項目ごとに議論してまいりたいと 思いますので、まず登録型派遣についてご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。 ○市川(佳)委員 1の論点について質問、意見を申し上げる前に、全体的な前提として前回私 は欠席したものですから、総論的な意見を述べさせてもらいたいと思います。  この論点でいきますと、いちばん最後になっていますが、私は長年労働組合の中で労働法改正 に当たって、職場でどうやってこの法律を生かしていくかという仕事をしてまいった中で、意外 といったら変ですが、大事なのは、この法律の趣旨は何か、この法律の目的は何かということを きちんと押さえることが一番大事だというのを、長年の経験の中で重要だと考えています。そう いう意味で、今回この派遣法の議論をするに当たって、各論の議論の前に総論としての私の意見 を申し上げるとすれば、論点では最後ですが、今日まで起きているさまざまな問題にどうやって 対処していくのかということであれば、派遣労働者の保護ということがこの法律のいちばん大切 な意義、趣旨ということを肝に据えて、各論、議論する必要があるのではないかと思いますし、 私ども労働側としてはここをいちばん大事にして、それを達成するために各論において、どうい う措置をしていけばいいのかという観点から、意見を申し上げたいと思っています。  それで、まず1の登録型の問題ですが、この審議会を何年かやらせていただいて未だにすっき りしないのですが、登録型とは何かというのがあまりすっきりと落ちていないのが正直なところ で、つまり、登録をしていて派遣契約が開始される時から雇用関係が生ずる。このことが、さま ざまなところである意味非常に大きな根源的な問題になっているような気がしまして、このこと があるから短期の細切れ雇用も多く見られますし、結果として非常に雇用が不安定であるという ことで、こうした働き方を選ぶ人もいるというご意見も多いわけですが、今日ご提示のあった様々 なアンケートを見ても、こういう働き方を余儀無くされている方たちも非常に多いわけですから、 雇用の安定ということを考えれば、この登録型というものは原則禁止をしていくべきであると労 働側としては考えています。セーフティネット等々で対処することもあるだろうというご意見も 当然あるわけですが、臨時的、一時的という名を借りて、長期にわたって繰り返されていること を見れば、原則禁止ということを主張したいと思います。以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。ほかに何かご意見はありますか。 ○高橋委員 1の1に関わる重要な質問だと認識しています。そもそもこの大臣の諮問の趣旨と いうものが、昨年閣法を国会に提出したあとに、その後生じました派遣労働者を巡る雇用環境に 大きな変化があった、そのことを踏まえての諮問であったと思います。それに関しての質問です が、昨年の閣法提出以降に生じたことで、特に登録型派遣に関して、何か具体的に問題が生じて いるのかどうかについて、もしおわかりであれば労働者側委員の方たちにも教えていただきたい と思いますし、事務局にもお尋ねしたいと思っています。 ○清家部会長 まず、事務局からお答えいただけますか。 ○鈴木課長 昨年の建議以降ということかと思いますが、登録型派遣について何か問題があった か。これは、先ほどの資料2の16頁を開けていただきますと、昨年来の派遣の中途解約に伴い まして、派遣元でどういう雇用がされているかがありますが、ここで見ますと本来は派遣元で雇 用していますので、ここで雇用が維持されることが派遣のメリットだと考えますときに、今回の 減少だけを見ますと、無期雇用でも約77%が離職。そのうちの94%が解雇。有期でも10%が雇 用継続で、89%が離職という中で、登録型の雇用の継続ができたのが8.1%に過ぎない。かつ、 離職が91.1%で、解雇率も83%ということで、無期、有期、有期の反復、登録型を見ましても、 登録型が雇用の維持という面ではいちばん力が弱かったというのが、私どもの把握している問題 点だと考えています。  ただ、これについてはその前の頁にもありますとおり、97.4%が今回の派遣の雇止めについて は製造業ということですので、これを製造業務派遣の問題として捉えるのか、雇用の維持という 面で登録型の問題として捉えるのかということで考えていくということで、それを登録型から見 たときに、登録型の問題点があるということで把握をしています。 ○清家部会長 労働側委員から何かありますか。 ○長谷川委員 登録型派遣の問題は、昨年のリーマンショック以降の我が国の経済状況の中で、 派遣問題が非常に社会的にクローズアップされましたが、それが登録か、常用かということでは、 いま言った事務局の説明の通り、数字的にはそういう話でしょう。ただ、この間の派遣の経過を 少し追ってみると、前回の派遣法の改正のときは日雇い派遣が大きな課題でした。あの当時は秋 葉原事件が起きて、雇用の不安が社会のいろいろなところに影響を及ぼす問題があって、日雇い 派遣について検討しなければならないというので、あのとき日雇い派遣について集中的に議論し ました。その前から2003年の改正があって、改正後のフォローアップをしなければいけないと いうことで派遣の調査をやったりとか、派遣の問題はどこにあるのかという意見交換をしてきた のですが、労側は比較的早い時期から派遣の問題は登録型派遣にあるのではないかという指摘を してきました。  ただ、社会の大きな変化の中で日雇い問題が大きくなってきて、日雇い問題を早く議論しなけ ればいけないというので、日雇いに議論を集中させた。そのとき、登録型派遣について議論した いけれども、この時間帯では少し無理があるので、登録型派遣については引き続き検討という整 理の仕方をしました。私も、ずっと登録型派遣について問題意識を持っていて、派遣の問題は、 どうも登録型ではないかと思った。今回は、リーマンショック以降の我が国の経済状況の中で、 物の製造業の派遣が大きな社会問題となった。したがって、物の製造業の派遣の在り方について 検討してくれという要請がされたというのが、今回ですよね。ただ、そのときの社会現象は日雇 いだったり、物の製造業だったりしますが、基本的に派遣の問題は何かということになれば、間 接雇用であることと、登録型派遣が大きな問題だと思っています。したがって、派遣という間接 雇用の雇用者と使用者が異なる雇用関係にある労働者をどのように保護していったらいいのかと いう議論と、派遣法の中で登録と常用という問題をどう扱うかというのは非常に重要なテーマだ と思っています。したがって、私どもは登録型派遣について、いつも議論してくれと主張してき ましたが、社会的にそれよりも優先すべき課題があって、いつもそちらが優先されてきた。した がって、私は今回も基本的な部分である登録型派遣の問題は、きちんと議論することが必要なの ではないかなと思います。おそらく、登録型派遣の問題をきちんと整理しない限り、また同じ問 題が出てくる。日雇いが出て、製造が出て、次に何かまた出てくるわけで、今回は登録型派遣の 在り方については、きちんと議論したほうがいいのかなと。派遣という働き方を考えたときに、 常用型派遣と登録型派遣というものをどう考えるかということは、やったほうがいいのではない かと思います。 ○清家部会長 ほかに何かご意見はありますか。市川委員どうぞ。 ○市川(隆)委員 事務局に整理をしていただいた資料によって、前回私が申し上げたことの多 くの部分が、これで裏付けられたのかなと思っています。最初は、4頁の現在の就業形態を続け たいという派遣労働者の方々が4割以上おられるということです。もちろん、本当は正社員にな りたかったけれども、正社員として働ける会社がなかったからという方々も大勢おられるという ことは、これによって読み取れるわけです。そういう方々が、正社員になるべくチャレンジして いただく、スキルを身に付ける方策は職業訓練とか、そういった形で十分に可能であると思うわ けですが、それ以外の方でここにありますように、「自分の都合のいい時間に働けるから」「勤務 時間や労働日数が短いから」「簡単な仕事で責任も少ないから」「家庭の事情や他の活動と両立し やすいから」登録型の派遣労働を選んでいるのだという方々がおられるわけです。そういった方々 がごく少数ということではなくて、4割以上の方がそういった考え方を持っておられるわけです。 今回提案されているのは原則禁止ということですので、こういう考え方の人も全部引っくるめて、 ごく僅かな例外以外は全部法律で禁止するということですので、こうした4割以上の方々の考え 方を全く無視してもよろしいものかどうかということだと思います。  私は、それを前回声なき声を私どものほうから申し上げているのだという言い方をしました。 弱い立場の人々の視点を尊重するというのが政治だということであれば、是非こうした方々の声 をきちんとこの部会においても、反映をさせるべきではないかと思うわけです。  5頁は、企業側が派遣労働者を就業させる主な理由ということです。「一時的、季節的な業務量 の変動に対処するため」ということで、これはまさに私が前回いくつかの例を申し上げたわけで すが、いまの時期ですと、例えばクリスマスケーキを僅かの期間に大量に生産をする必要がある。 あるいはゲーム機とか携帯電話という、流行り廃りの多いものは商品のライフサイクルが非常に 短くなっていますので、売れなくなったらその生産ラインはストップするようなものがあるので、 派遣労働者というのは必要なのだということです。  下のほうに「軽作業、補助的業務を行うため」というのがあります。これは、前回申し上げま した箱詰めとかバリ取りに、特に中小企業の場合には派遣労働者を活用させていただいていると いうことを申し上げました。前回、それに対して労働側からは、「そういうのはパートとかアルバ イトでやっているのではないか」というご指摘でした。半分は合っていると思います。当初は、 そういう直接雇用のやり方で、バリ取りや箱詰めといった軽作業はやってもらっていた。これも 前回申し上げましたように、その中小企業が残念ながら知名度がないために、募集をしてもなか なか人を集められないのです。それがゆえに、例えば10人のパートでやっていたところを5人 しか集まらない。あとの5人は、派遣会社にお願いをしているのですというのが、現在の中小企 業の実態です。そういう中小企業の実態を是非踏まえた議論をしていただきたいというわけです。 もちろん箱詰め、バリ取りといったものは、これは製造派遣でしょうけれども、専門業務は認め て、あとは認めないという場合の、専門業務にはとても入らないものなのです。しかしながら、 そこは経験とか勘といったものが重要なのです。そういったものを無視するようなことは、是非 慎重にお願いしたいと思っています。  私としては9頁の、昨年7月の研究会の報告書にありますように、真ん中より下の「しかしな がら」以下のこうした働き方を選んでいる労働者も多くいる。それから、迅速な労働力需給調整 の仕組みとしてメリットがある。それから、就業機会の確保を迅速にでき、これを通じて安定し た雇用につなげることも可能であるのだというご指摘は非常に賛同するところで、これを踏まえ て登録型派遣のこうした形を是非維持していただきたいと思っています。  最後に、2頁に表があります。これが常用雇用、登録型についての大体の人数を把握したもの であると思うわけです。製造派遣というのは、下3つを足しまして47万人です。登録型派遣は いちばん右の縦の列になるわけですが、その中で26業務は例外だということですので、40万人 は除くとしても、自由化業務、これは主に一般事務ということになろうかと思いますが、一般事 務で登録型の方は28万人おられるわけですから、今回の製造派遣原則禁止かつ登録型派遣原則禁 止にした場合に、製造業務の47万人に加えて28万人の合計75万人の派遣労働者が禁止の対象 になるということで、おそらく失業者にならざるを得ない状況に置かれるのだろうと思うわけで す。もちろん、一部例外を認めるのだということですが、その例外については専門業務という非 常に幅の狭いものを想定されておられるようですので、概ね75万人が禁止対象となり、失業者と ならざるを得ない境遇に陥るということです。法律名に「派遣労働者の保護」という文言を加え るどころか、75万人の派遣労働者を法律でもって派遣切りをするという法案になっているのでは ないかなと考えるわけです。もちろん、立法者はそういったことを目的として、こうした法案を 出されているものではないと私としては解釈をしたいと思うわけですが、結果として75万人が派 遣という形で職業選択ができない、勤労できないことにつながるわけですので、おそらく先ほど のアンケートからいえば、75万人のうちの4割以上の方々が、私は派遣のほうがいいのだという 選択をされている方々ですので、そういったところもよく踏まえて、慎重にご議論をいただきた いと思うわけです。 ○清家部会長 ありがとうございました。 ○市川(佳)委員 4頁の先ほどの市川(隆)委員がご指摘になられた意識調査ですが、これは 平成19年10月1日現在ですよね。これより新しいのはないのでしょうか。要するに、今回こう いう諮問が出たという自体が、起こったあとの意識というのでしょうか。例えば、次の頁だと平 成20年10月1日です。そうそう毎年やっておられないかもしれないですが、大臣からこういう 諮問があったということは、去年以降のさまざまな社会的問題を受けてどうするかということで、 それでだいぶ変わっていると思います。急激な経済の落ち込みという言葉では表せないデザース ター的なことが起きたときに、派遣という立場の労働者たちが、保護がなかった。非常に大変な いろいろな悲惨な目に遭ったということが明らかになった現在でも、果たしてこうなのかという のは大変疑問に感じます。ただ、もちろんどんな状況であっても、自分の都合で働きたいと思っ ていらっしゃる方が当然いらっしゃるということは理解しますが、派遣という形態が保護に非常 に欠けるものだということが今回わかって、それに対して法改正でどうしていこうかということ なのではないかなと思いますが、この資料的にはいかがでしょうか。 ○鈴木課長 資料の時期の問題だと思いますが、こういった項目の調査は平成19年と平成20年 のリーマンショックより前の調査しかありませんので、それ以降の意識というのは当方では把握 していない状況です。 ○秋山委員 全国商工会議所女性会連合会の秋山です。私は、商工会議所の会員の95%は中小企 業で、中小企業の視点からの派遣という制度がなぜ必要なのか。そして、なくなるとなぜ困るの かということをお話させていただきたいと思います。ちなみに、全国に591万事業所があります が、その97%が中小零細企業です。そして、従業者数5,863万人のうち、70%は中小零細企業で 働いている方々です。そういう方々の視点です。  いちばん問題になるのは、必要なときに必要な人材を確保できないということです。仕事には 波がありまして、通常の時期と忙しいとき、仕事量が異なりますので、その忙しいときにどうや って会社を運営させていくかがいちばん問題です。このときに、自社内で職場異動したりして乗 り切ることもありますが、いま市川委員がおっしゃったように中小企業の場合、募集してもなか なか知名度がなく、人員の採用ができない例も多々あります。そして、パートやアルバイトを募 集すれば良いというお声があるようですが、それがいかに大変なのかというのを私の例でお話を させていただきたいと思います。  製造派遣業が認められなかった2004年以前に、パート・アルバイトを募集するときには求人 誌ないしは新聞に掲載をお願いしますが、求人誌というのはご存じのように1週間単位ですので、 求人会社に電話をかけても、そこからまたどんなに早くても1週間後になります。そして、その 求人誌に掲載されてから、電話の問合せに対しては、また1週間かかります。その電話の応対の ときでも、電話は複数かかってまいりますから、社内で2、3人でその電話に応対しなければいけ ませんし、その電話を応対して予定が組まれてから、面接にまた1週間、時間がかかるわけです。 それも2人、3人という要員が必要となってまいります。そのあと決定するわけですが、このよ うに時間もコストもかかるわけです。こういうコストを考えた場合に、いまの派遣制度で派遣会 社がそういうのをまとめてやってくださって、その負担を軽くできるということは、中小企業に とっては大変メリットであります。それが1回で決まるとは限りませんし、1回で適当な人がい なかったときに、2回、3回とそれをやらなければいけないわけですが、今のように派遣会社があ れば、その会社に応じた人を派遣していただけるというメリットもありますので、いまの中小企 業にとって、派遣制度というのは迅速に供給できるという点で、是非存続していただきたいと思 います。  ご存じのように、今の中小企業は去年の受注量から2、3割少ないのは当たり前で、酷い所は5 割、7割と仕事がなくなっている所が多々あります。そういうときに、発注側はコストと納期を 提示して、これでやってくれという仕事が入ってくるわけですが、そのときにその場で仕事がで きなければもう仕事がなくなってしまうわけですので、すぐに人を掻き集めて仕事をやっていき たいというのが、いまの中小企業の現実です。そして、いまのコストは大変シビアですから、1 円でも安いやり方を考えてやっていかなければいけない現状です。  仕事を探す立場の方から、うちにも派遣で来ていらっしゃる方がいますので、そういう方々に 話を聞きましても、いま派遣を禁止してもらうのは困るということはおっしゃっています。それ は、ゆくゆくは正社員になりたいと考えてはいるけれども、自分はどんな仕事が適しているのか。 そして、この仕事を続けていかれるのかを考えたときに、自分も簡単に雇われた会社をやめたく はないし、会社に迷惑がかかるのが悪いと考えています。そして、女性の場合は短期で働きたい、 3か月で働きたいという要望もありますので、そういうのが登録型派遣でなくなってしまうのは、 気楽に仕事ができない、仕事が見つからないことになることを懸念しています。そして若い方た ちですが、視野を広げてきちんとした仕事に就きたいと考え、むしろ派遣で就業されている方の ほうが前向きに制度を捉えられている印象を持っています。 ○清家部会長 ありがとうございました。ほかにご意見はありますか。 ○長谷川委員 使用者委員の言い分もわからないわけではないですが、市川委員がおっしゃる登 録型派遣がなくなるから失業するというのは、全然理論的には成立しないです。派遣業というの は個々に企業があって、例えばこの仕事に人が欲しいから、派遣会社に10人だったら10人欲し い。この仕事があるから10人欲しいですよね。派遣がなくなったら、この仕事もなくなるのか、 というのは違いますよね。仕事は仕事です。失業するというのは、仕事がなくなって雇う力がな くなってきて、解雇されたり雇止めされたりして失業するわけであって、この仕事がある限りは 失業しないと思います。だから、私はそれは派遣の話ではないと思います。違うなと思います。  もう1つは、もう少し振り返ってみたときに、1999年の改正まではどういう制度だったかとい えば、1985年の創設当時は、26ではないですが専門だけで、それは常用と登録でした。では、 そのときはどういうふうにしていたのかというのがあるわけです。その次は私は改悪だったと思 っていますが、1999年の改正後に、専門と一般で常用と登録というものが出てきたわけです。そ のあと、2003年までは製造業は禁止していましたが、製造業の禁止も解除されて以降、派遣とい う働き方は本当にどうなのかというのは議論されてきたのです。審議会でのフォローアップの中 でも、本当に2003年改正がよかったのかどうかというのはずっと議論されてきて、それは続い てきたのだと思います。  なぜ、派遣はそういうふうに問題になるかといえば、先ほども申し上げた間接雇用です。雇用 と使用が違うことと、もう1つは雇用の不安定さは登録にあるのだと思います。派遣会社で常用 雇用されていれば、何らかのセーフティネットもある。常用雇用の場合は大体は雇用保険にも入 っているし、社会保険にも入っている。何かあれば、それが発動されていくという、常用雇用が 登録型派遣の人たちよりは、比較的労働者の保護がされていると思っています。ところが登録は、 実際に聞いてみると分かりますが、派遣で働く人たちはどこの登録会社に登録すれば、いちばん マッチング率がいいかということを考えて登録するわけです。名前さえ登録しておけばいいので す。でも、登録したからといって、必ずしも仕事が見つかるわけではないのです。派遣労働者に 聞くと、いくら登録しても全然仕事が見つからないということもあるわけです。これが派遣の特 徴で、登録型派遣の特徴だと思うのです。登録しておいて見つかったときに初めて派遣会社もそ の人を雇用する。派遣法では、自分のところで雇用した労働者を相手方にとなっているから、相 手方のところにマッチングしたときに初めてその労働者が雇用されているわけで、本来の派遣法 とは違う仕組みになっているのが登録派遣だと思うのです。  派遣法を何度読んでも私は理解できないのですが、派遣法の2条は、「自己の雇用する労働者を、 当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること をいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないも のとする」とありますから、雇用しているということになるのです。ここの問題をどう考えるか。 だから、85年に制度設計したときから、派遣法をどうするかというところで非常に日本的な派遣 法を作ったのは、雇用の安定に着目したものを作ってきたからだと思うのです。常用雇用は登録 型派遣に比べれば雇用の安定性があると思うのですが、登録型が本当にそうなのか、ここはきっ ちりと冷静に議論したほうがいいと思うのです。  私たちは今までいろいろな労働相談も受けたし、過去のヒアリングで、派遣で働いた人からも 聞いたと思うのですが、登録型派遣の人に対する能力開発は、ゼロとは言いませんが、限りなく 無いのです。常用型の人に対しては、派遣元は一生懸命に訓練します。スキルアップもします。 でも、登録はそこが後回しにされてきたし、派遣会社もそこには力を入れていません。そんなと ころを一生懸命にやったら、儲かるはずがない。人材派遣業が成り立つはずはないのです。雇用 するときに本当にスキルを持っていた人を雇ってこっちに出したいだけの話であって、それ以上 でも、それ以下でもない。今日も少し派遣労働者の常用化のための方策ということを言われてい るのですが、登録型派遣で働いた人は、常用にもなかなかなれない。まして、正規で働きたいと 思っても、そこから脱出できないというところに派遣の問題点があるのだと思うのです。これか らもまだ派遣労働者を活用するとすれば、常用と登録とあるとすれば、どれがいいのかというこ とは、お互いに客観的に議論したほうがいいと私は思うのです。  私は、派遣は駄目だと言っているのではないのです。でも、働くほうも、派遣会社も、派遣先 も、みんながどうやったらいいのかということを少し議論したほうがいいのではないか。そして、 大胆に割り切るところは割り切る。直すところは直すということをしながら、派遣という人材ビ ジネスも成長させていくことが必要なのではないかと思います。 ○秋山委員 いま登録型は仕事がないと言いましたが、逆に、登録型でたくさんのところに登録 しているからこそ仕事が来るということも考えられるのではないかと思うのです。常用型になっ た場合には、人材派遣会社が持っているお客さんのところにしか行かれないわけです。そうする と、登録している人にとってそれが合っているかどうかも分かりません。それから、人材会社に してみれば、常用しているわけですから、どうしてもそこに当て込もうとするわけで、無理が出 てきて、結局辞めてしまう。縛られて選択の自由がなくなるということも考えられるのではない かと思うのです。  それから、派遣をやめた場合に企業が正社員として雇えるかと言ったら、今とても厳しい状態 で、人を雇える状態ではございません。会員から、派遣ができなくなったらどうなるのだという ことに対しては、今いる社員を日曜出勤させるなり、残業させるなりして乗り切っていくという 声もあります。また、1人を雇えば、生涯賃金が2億とか3億と言われているところで、今の中 小企業にそれだけの余力はないと思います。 ○市川(隆)委員 仕事がないのが問題だというのは、まさにそのとおりです。ですから景気対 策、これは私どもも力説しております。是非、景気対策をまずやって、仕事をつくってください とお願いしております。事業の仕分けで無駄を省く、これも必要なのでしょうが、そういうこと をやっている時期なのでしょうか。もっと景気対策に本腰を入れてやってくれというのが私ども 中小企業の願いでございます。そういった意味で、その部分の長谷川委員のご指摘は、まさにそ のとおりだと思うのです。ですから、まず景気対策をやるということ。それから、緊急雇用対策 本部を作られて、ここにその概要の紙を持ってきたのですが、貧困困窮者、新卒者への支援を最 優先する。経済的、社会的に弱い立場にある人々への支援は緊急を要しており、最優先課題とし て全力で取り組むと。これは私も賛同します。この緊急雇用対策としての取組み、セーフティネ ットを拡充・強化するといったアプローチ、これは私も賛同いたしまして、大いにやっていただ きたいと思うわけです。つまり、こういう予算的な措置によって派遣労働者、不幸にも仕事がな くなって失業状態に陥った方々を救う、あるいは能力開発のための職業訓練を充実する。仕事の ない派遣労働者も、そういう所へ行って生活給付を受けながら、かつ、能力開発をしていただく。 こういうことは是非やってほしいと思うのです。  しかしながら、法律で登録型派遣を原則禁止すればいいではないかということについては、先 ほども数字を挙げましたように、4割以上の方々がこういう働き方がいいのだという選択をされ ておられる。そういう現状の中でそれを禁止するということが本当によろしいのだろうか。  確かに社会的な課題はある。昨年末の派遣村騒動のような、そういう課題はあるのですが、そ の課題を解決するのには、いろいろなやり方があるはずなのです。ですから、登録型派遣を禁止 するというやり方が本当にいいのかどうか。そこには、その課題に対する解決方策に至るまでの 論理的なものすごい飛躍がある。かえって法律で禁止するという劇薬であるがゆえに、副作用が 非常に大きく出てくるということではないかと思うのです。私は、むしろそれよりも、緊急雇用 対策本部でやろうとしておられる対策、そちらのほうが的を得ていると思うわけです。 ○高橋委員 登録型派遣の問題は製造業派遣の問題にもつながる問題、非常に重要な論点だと思 います。少し時間がかかっておりますが、十分に議論をしておく必要があると思います。  前回の部会で公益委員の先生からもご指摘がありましたとおり、労使の意見を聞いている1人 としても、想定している労働者として、異なる方を想像している部分もあるのではないかという 気がしているわけです。  例えば、これが適切なのかどうか分かりませんが、私が今日の会議に来るに当たってたまたま 見た資料で、日本人材派遣協会が今年の4月に「派遣スタッフ・Webアンケート調査」という、 1万人を超える方々を対象にした調査をしております。ほとんどが女性労働者が回答しているの ですが、年齢別の属性を見ても、ほとんどの年齢層で6割以上、場合によっては8割近くの方々 が家計の主たる担い手ではないとお答えになっていらっしゃるわけです。そういう方々が実際に 働いていらっしゃるという現実を十分踏まえる必要があるのです。すなわち、非常に幅広い労働 者の方々が登録型派遣で就労されていらっしゃいます。ある特定の層、と言ったら語聘があるか もしれませんが、そこの問題なので禁止をするのだというロジックに果たして達するのかどうか というところが大きな論点だろうと思っているわけです。特にビジネス側のニーズについては、 かねてこちら側から説明しております。他方で、労側の委員からも一部ご指摘があると思います が、臨時的、一時的に働きたい、就労したいというニーズがあることも事実でありまして、それ らがマッチしている部分があるわけです。  登録型派遣を禁止した場合、労働者側の選択肢は確実に減るわけです。他方で、もちろん何ら かの見直しはするとしても、登録型派遣を残した場合に、当然、選択肢は残るわけです。それは あくまでも選択肢であって、そのエージェント機能を活用するかどうかは労働者の決断に委ねら れている部分もあるのではないか。それは重要なことではないかと思っております。  先ほど来、また前回も長谷川委員から、登録型派遣については教育もままならず、キャリア形 成もままならないという指摘はいただいているところですが、だから一律禁止なのかというのは どうなのか。つまり、そこは十分議論していく必要もあろうかと思っております。労働者派遣制 度の持つ違う機能として、職業紹介とか、職業訓練機能が挙げられるのではないかと思います。 したがいまして、もし長谷川委員のような問題点を克服していこうとするならば、すぐにどうい う形になるかは分かりませんけれども、派遣元に対してキャリア・コンサルティングをもっと強 化していただくような形、あるいは能力開発プログラムをもっと強化していただくような方策と いうものも検討に価するのではないかと思っております。  登録型派遣というのはこれまでも相当程度の需給調整機能を発揮してきたことは紛れもない事 実でありまして、もし、これを今経済が非常に厳しいときに、その機能自体を停止してしまうと いうことですと、それで他の制度で今担っている機能が担い切れるのか。ハローワークが今のす べての登録型派遣の機能を担い切れるのかといった問題も十分考慮していかなければならないと 思います。  私は世界がどうだという話はあまり好きではないのですが、世界的に見れば、登録型派遣が主 流なわけで、何で日本だけ登録型派遣を禁止できるのか。職業安定分科会長の大橋さんから、国 際的な視点も十分踏まえて当部会で十分審議をしてくださいというご依頼もありましたので、そ の点も十分踏まえて検討していく必要があると思っています。  登録型派遣には非常にいろいろな問題もありますが、直ちに禁止というのがいいのかどうかと いうことについても疑義があるわけです。私の冒頭の質問にも関係いたしますが、リーマン・シ ョック以降ものすごく大きな問題が登録型派遣のところで発生しているということでないのであ るならば、そのことについて十分に時間をかけて検討していくという方向性も考えられるのでは ないかと思っているのです。 ○長谷川委員 いま高橋委員が指摘されましたように、日本の派遣法は、ヨーロッパとかアメリ カと比べた場合に若干異なる趣きを持っています。それは1985年に派遣法を作るときの経過で す。日本の派遣法を作ることのもともとの経過は、自社で専門的な能力のない人たちを育成でき ないので、早く欲しかった。そしてSEだとか、専門的な業務の人たちを派遣で雇うということ でした。そういうときに議論したのは、雇用の安定だとか、そういうことが中心だったわけです。 だから、そもそもの出発点が他の国とは違う。この派遣法の持つ課題があるわけなので、ある意 味でヨーロッパとかアメリカの派遣と違うのです。現時点のところだけを述べられると、そもそ もの85年のときの議論は何だったのかということだとか、それ以降の変遷をどうするのかという 議論になってくるので、これはなかなか難しい話です。  もう1つ、これは中小の皆さんにも、企業の皆さんにも考えていただきたいのですが、今回の 派遣のことで昨年の秋以降を見て、派遣先企業は自分たちの雇用関連のリスクをあまりにも派遣 に求めすぎたのではないでしょうか。派遣契約の費用を、ほとんどの所は、人件費でなくて物件 費でやられている。要するに「物」扱いなわけです。本来、人を雇うということはものすごいリ スクを負うわけですが、私は、企業はそのリスクを派遣元にかなり負わせてしまったのではない かという気がするのです。雇用管理のそういう問題を派遣元と派遣先がどのように負担していく のかというのは、企業としてももう少し考えなければならないのではないか。欲しいものは今す ぐ欲しい。しかし、物品の調達と人間の調達は違うということが1つあると思います。  もう1つは、フィラデルフィア宣言ではありませんが、労働力は商品ではないのだ。生身の人 間なので、その人間をマッチングさせるという問題、単なる物品とは違うということは考えなけ ればいけないと私は思うのです。そういう意味では、いままで登録型派遣の問題は次にしましょ う、次にしましょうと先延ばしにしてきたのですが、派遣を考えるときの非常に重要なテーマな ので、ここはお互いに真摯に議論をすべきです。労働者が派遣で働きたいというのは、すぐに仕 事が見つかる、パパッと見つかるからです。労働者のほうだって、すぐ見つかるというのはいい から使うのだと思うのです。でも、見つかった後には地獄が待っているわけです。なかなか派遣 から抜け出してこられない。派遣から抜け出していける人はいいのだけれど抜け出せない。これ をどうするか、育成をどうするかということも是非合わせて議論していただきたいと思います。 ○市川(隆)委員 いまの物扱いというところです。前回も派遣事業を「麻薬」という比喩をさ れた方もおられるのですが、これを麻薬と言った瞬間に、例外を設けるというのはおかしな話な ので、比喩としては非常にまずいということがあるのです。  それは別にして、人材派遣事業というのは、サービス業として非常にメリットがあるわけなの で、先ほど秋山委員から縷々ご説明があったところです。サービス業というのは、煩雑な手続き を代わってやってあげるとか、便利さを追究するとか、そういったところがまさに新しいサービ ス業なのです。そういった市場を切り開いて新しくビジネスを育成していく。人材派遣事業もサ ービス業の1つだと思います。そういった利便性、メリットを「いや、これは麻薬だ」とか「そ んなことに騙されて、あとは地獄だ」とかと言ってしまったら、日本のサービス業は発展しない のです。もちろん、サービス業のいろいろな欠点も出てくるかもしれません。ですが、人材派遣 会社のほうも育成しなければいけないのだと。欠点があれば、そういう欠点を補強するような、 そういう策をとるべきであって、その策が緊急雇用対策本部で練られてもいいのではないかと私 は思うわけです。 ○秋山委員 私は、もとより物品だと考えたことはございませんし、大切な人材だと思っていつ もお願いしております。派遣の問題というのは、最初に市川委員がおっしゃったように、セーフ ティネット、健康保険や年金の問題、雇用保険、そういうところがあまりにも正社員だけのセー フティネットで今まで来て、派遣の社員にそういうものがないということが問題です。私たちが 忙しくて大変なときにお手伝いをするサービスの人たちがいて、そういうことをやっていただく。 そして、その人たちがまた違うところに行ってそういうお手伝いをしていくというのは本当に理 想的なことであって、物品扱いをしているなどとは、もとより思ったことはございません。 ○長谷川委員 派遣労働者も、正規であろうが非正規であろうが、誰であろうが、雇用保険にも、 健康保険にも入れるのです。ところがこの秋明らかになったのは、派遣元が雇用保険だとか健康 保険に入っていないことだったので、それはなぜかということをきっちり探らなければいけない のです。本来入らなければいけないものになぜ入っていなかったのかということです。自社の社 員であれば、みんな入ったと思うのですが、何で派遣元は派遣労働者の分もちゃんと健康保険や 雇用保険に入らなかったのですか。何でですか。入ればいいではないですか、法律で入ることに なっているのだから。そのことを言っているのです。本来入るべきものに入っていなかった。法 律を守っていなかったことが大きな犠牲を強いたではないですか。そのことを冷静に見ながら、 だから派遣先も、派遣元もお互いにちゃんとリスクを背負ってくださいと言っているのです。 ○市川(隆)委員 資料の1頁に保険に加入している率というのが出ておりますが、常用型で、 雇用保険の場合は86%です。それから、登録型で、雇用保険の場合は79%だと。若干パーセン テージは落ちることは落ちますが、ほぼ8割の派遣労働者が雇用保険に加入している。こういう 数字がございますので、派遣労働者は保険にも入っていないというご指摘は、ちょっと当たらな いのではないかと思うのですが。 ○長谷川委員 では、何で第2のセーフティネットを作ることになったのですか。雇用保険にも 入っていない人がいて、能力開発も受けられなかった。そういう人たちがいたので、今度第2の セーフティネットを作りましょうということになったのでしょう。雇用保険に入っていれば、最 低90日は雇用保険がもらえたわけです。そして、延長給付が60日で、150日はもらえたわけで す。能力開発もできた。ところが開いてみたらば、雇用保険にも入っていない。健康保険にも入 っていない人がいることが明らかになったので、第2のセーフティネットを作ろうという話なの です。この数字は本当の実態なのかと私が前から言っていたのは、それだったのです。みんなが 雇用保険に入って、セーフティネットが完備していたら、第2のセーフティネットなんか作る必 要はなかったのです。何で経済界の皆さんは第2のセーフティネットを作れと要請したのですか。 ○市川(隆)委員 この数字は厚生労働省から頂戴している数字なのですが、いまのご指摘はど ういうことでしょうか。 ○鈴木課長 この数字自体は、雇用保険にも、健康保険にも、厚年にも加入できるか、できない かとありまして、できなくて入っていない方というのも含まれた数字です。したがいまして、加 入条件に合致して入っている方、それから、加入条件に合致しているけれども入っていない方、 これは違法の場合ということで、結果として、派遣労働者で常用型は雇用保険に86%入っている ということです。登録型などでは、この条件に合致しないで入っていない方も多いかなと思いま す。  第2のセーフティネットの問題もありますが、あれは加入要件で漏れた場合に、そういった人 たちも放っておいていいのかという議論も踏まえて設けるという趣旨で伺っておりますので、保 険に入るべきなのに入っていなかったから、そこに第2のセーフティネットを作るというばかり ではないと私どもは理解しております。 ○市川(佳)委員 先ほどから中小企業の皆さんのお話を伺っていたわけですが、私が所属して いる産業別労働組合も、半分以上が300人以下、100人以下、10人以下という所の労働組合が加 盟している組織です。中小の経営者団体の皆さんのおっしゃることは私どももよく労使会議で伺 うところです。けれども、先ほどから伺っておりますと、労務のさまざまな手続きである募集、 採用、面接、これを「煩雑な手続」とおっしゃいましたね、「煩雑なサービスを提供してくれる人 材派遣会社」と。人を雇うのが煩雑な手続きだというのは当たり前なのです。そういうことを前 回私の代理で来た者が「麻薬」と言ったというご指摘がありました。確かに例えとしては大変不 適切な表現だったかもしれませんけれども、やはり人を雇って、日本では企業の中で育てていく わけですよ、正社員の場合は。そして、自分の所が強い企業になれる。中小企業であろうと、大 企業であろうと、自分たちの所が作っている製品なりサービスなりをより良くして、生産性を上 げていくわけです。そのためにいちばん大事なのは従業員だと思うのです。そして、そういうこ とを育てていくうちには、先ほど長谷川委員が言ったように、リスクもあるし、煩雑さもあるの です。ところが、これを一旦人に預けてやってもらってしまうと、煩雑さが本当に煩雑になって しまって、自ら人を育てていくという力が失われてしまう。自分のところの経営側、人事の方と 話していて、本当にそう思います。人事力が落ちてしまうのです。そして、そのことが結果とし ては会社を弱くしていくのです。大体、皆さん方だって、急激な業務のときは派遣ですぐ雇える とおっしゃるけれども、正社員だってお採りになるわけですね。正社員はゼロではないわけです ね、どんな中小だって。そうではない所もあるかもしれませんが。それで、どうしてそこで選別 するのですか。繁閑に応じたところは派遣、どうしても必要なところは正社員と言いますが、大 昔、派遣法が出来る前はみんなアルバイト、パート、期間工でやっていたわけです。しかし、そ のときの手数を忘れた人事担当者は人事力を失って、正社員自体の育成も非常に危うくなってい る。それが私が最近労使会議で経営側の皆さんの話を聞いての大きな印象です。このことと直接 何が関係あるのだと言われますけど。ただ私は、長谷川委員も言ったように、派遣労働者の話を しているときに、煩雑だとか、便利だとか、要るときに要るだけすぐ手に入るとか、そういう言 い方をされるのは非常によくないのではないかと思います。 ○市川(隆)委員 前回も申し上げましたように、正社員に期待する資質と派遣労働者に期待す る資質、これは違うのです。ご心配いただきましたように、日本はものづくりで世界に号してお り、そこのところは日本の経済力の源泉でございまして、そういったところを派遣労働者に任せ るのか。そんなことでいいのか。そこは正社員にお願いをしているのです。技術をきちっと蓄積 し、さらに発展させ、また次世代に承継していく、それは正社員に期待する資質なのです。派遣 労働者には、そこまでは期待をいたしておりません。正社員をきちっと育成することによって、 日本のものづくりは磐石になっていると思うわけです。  それから「ちょっと便利だからと言って」ということですが、緊急雇用対策本部でやろうとし ていることは、ワンストップサービスをやりましょうということなのですが、これもまさに、い ろいろな手続きが煩雑である。ハローワークに行って、次にどこそこに行って、次にどこそこに 行ってというのが煩雑なので、ハローワークで一遍に事が済むようにワンストップサービスをや りましょうということなのです。ですから、煩雑だということをいかに解消するかが雇用対策本 部のメインの政策になっている、ということを是非頭の隅に置いていただければと思うわけです。 ○古市委員 いま議論になっているところですが。先程来、必要なときに必要な人材をというよ うなこと、それから便利さというようなことが話されているわけですが、私たちの側から言うと、 そこにもう1つあるのです。必要なときに必要な人材を、便利に、手軽に、責任を負わずにとい うのがあって、そこが今社会的に批判をされているわけです。社会的に批判をされているという 自覚を、この産業で仕事をする人たちは持ってもらわなければいけないと強く思います。  事業者の皆さんが法律を守るという精神が非常に希薄なのではないか。今日示された資料の中 で建設業は除外されているのですが、派遣現場での労災事故で建設業の数字が出てきたりするの を見ると、これは全く違法派遣が行われているという証拠です。  先ほど市川さんからお話のあった資料で「派遣労働者を就業させる主な理由」という表が5頁 にありまして、その上から2番目に「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」と書いて あります。だから、これもそういうことなのだろうと思うのです。しかも、私たちの立場から見 ると、責任を負わずに、迅速に確保できるのです。  その下に、もっと由々しき項目がありまして「常用労働者を抑制するため」というのが17.8% もあります。派遣は常用労働の代替をしてはいけないとなっていると思うのですが、こういうこ とを堂々とお答えされる。  それから16頁に「雇用契約別の対象労働者の雇用状況」という表がありますが、いちばん右側 の欄に、常用型か、登録型か不明だという方が4.8%いる。派遣をしている派遣元が、自分が派 遣している労働者が常用なのか、登録なのかも分からないなどということを堂々と言いながら事 業をしている、こういう由々しき事態が社会的に批判を浴びているのだということについて、も う少し深刻に受け止めていただく必要があるのではないか。使用者側委員の皆さんは、そこにも う少し真剣に耳を傾けていただく必要があると強く思います。 ○市川(佳)委員 先ほど私が申し上げたことについて市川(隆)委員からお話があったわけで すが、正社員は大事に育てるけれども、派遣社員はいいのかと、そういうことなのでしょう。で は派遣社員はどうなってしまうのか。ましてや、家事の都合などで補助的に働きたいという人だ けではなくて、自分が家計を担っているような男性の方でも、そういう働き方しかできない。男 女で言っては差別的ではありますが、そういう方たちが増えているのです。正社員ではないから 大事にされないし、教育もされないというようなことであったならば、この問題は、悪化するこ とはあっても良くなることは全くあり得ない。派遣社員は必要なときだけちょこっといてくれれ ばいいというような扱いをしている人がすごく増えてしまって、新卒からそういう状況しかない。 大学を卒業しても、行く場がなくて派遣労働者になって、ずっと30いくつまで来てしまって全然 スキルが上がらなくてという人たちの層が非常に増えてしまった。それぞれの皆さんの会社に今 いる正社員の方たちはスキルをつなげていけるのでしょうけれども、社会にこれだけスキルのな い方が増えてしまったときに、果たしてこれでいいのか。そこを何とかしなくてはいけないとい うことから、今回この議論が必要なのではないかと思っています。 ○長谷川委員 いま市川委員が言ったのですが、派遣のことは本当に冷静に議論をしようと思っ ているのです。それはなぜかというと、私たちは10年前に経済的に大変な時期を経験したのです。 そのときに、高校を卒業した人や大学を卒業した人が就職ができなくて、みんな一時派遣で働い たのです。その若者たちがいま32歳になって、なかなか正規の社員になれないということで、い ろいろな社会的な問題を抱えている。将来の財政上の問題にもなっている。これがまず大きなこ とです。  だから今回は、政府も、大学新卒者の就職が決まらないということに危機感を持っている。今 回は前回の二の舞をしないという決意を表しているのはそのことだと思うのです。それは何かと いうと、あのときは、いろいろな派遣会社が集めてきて派遣で一時的に働いたのです。アメリカ やヨーロッパは、派遣で働いて正規になっていく。派遣はそういうふうに使われているのですけ れども、日本の場合は、登録型派遣で働いたときに、なかなか正規になっていけないということ がこの10年の中でも明らかになってきたのです。だから私は、登録型派遣というのが我が国の国 民にとって本当にいいのか。企業も、派遣元も、派遣先も本当にいいのか。会社としてもいいの か。国としてもいいのかということをちゃんと議論しましょうと、そういう意味で言っています。 ニーズがあることも分かっています。企業は臨時的に派遣を使って仕事を処理したい。仕事が忙 しいときと暇なときがあるから、それは事実そうだと思うのです。でもそのときに、では何が派 遣のところで問題なのかと言ったら、いま明らかになっているのは、登録と常用という働き方が あるけれども、そこはどうなのだろうかという議論をしてほしいのです。派遣で働いたとしても、 ちゃんとスキルがアップできる。雇用のセーフティネットも確立している。処遇もちゃんとあっ て、それで暮らせる。普通に生活ができ、スキルアップもしていく。派遣がそういうものになっ ていくのかどうかということを、労使は今の時期に真摯に議論すべきだと思います。 ○清家部会長 今日は4つの項目を議論することになっているのですが、それは無理かと思いま すので、もう1つぐらいは今日のうちに議論しておければと思うのです。時間の許す限りであり ますが、製造業務派遣について、登録型派遣の中でも重なる議論があるかと思いますが、皆さん のご意見を伺いたいと思います。どなたからでも、どうぞ。 ○市川(隆)委員 派遣労働者が正社員になれるようにということですが、そういう例もあると 聞いています。派遣労働者が企業側からその能力を非常に認められ、正社員として雇用を受ける、 そういう例も現にあると聞いております。ですから、全くその道が閉ざされているというわけで はないと思っております。それから、6頁にありますように、紹介予定派遣という派遣のあり方 もあるわけです。これはまさに正社員を志望している方が使う派遣制度でありまして、そういっ たものも立派にこの日本でワークをしていると言えると思います。  スキルが身につかないということについては、少なくとも大手の派遣会社はパソコンの扱い、 その他基本的なところのスキルを身につけさせる、そういう能力開発の努力はしていると聞いて おります。そして、さらに足らざるところを補うために、まさに今回の緊急雇用対策本部でいろ いろなセーフティネットの拡充、あるいは職業能力制度の拡充ということを検討しておられるよ うです。そういった形で派遣労働者の方も、一部いろいろな要件はあるのでしょうが、生活給付 を受けながらスキルを研ぐ道、それは是非作っていただきたいと思っております。そういう意味 で、緊急雇用対策本部の今後の活動に非常に関心を持って見守っているのです。  製造派遣につきましては資料の12頁にございます。右側に、派遣の受け入れができなかった場 合に何が困るのかということについては、先ほどからも議論が出ておりますが、時間がかかる、 コストがかかる、募集しても人が集まらない。いちばん下は私が前から申し上げておりますよう に、中小企業は知名度がないので、募集しても集まらない。これを何とかしたいというときに派 遣会社にお願いをするということが出てきているわけです。実際に製造派遣を禁止することによ って、中小企業にとっては実害が出てくるわけなのです。どういうものが実害を受けるのかとい うことについては前回も申し上げましたが、例えばワクチン製造のための有精卵の目視検査、こ ういったところにも派遣労働者が活躍していただいている。もしこれが無くなった場合に、緊急 を要する新型インフルエンザのワクチン製造にマイナスの影響が出るのではないかということを 懸念するわけです。また、これから本格的な季節を迎えるクリスマスケーキが、数が少なくなっ て値段が上がるのではないかというような懸念も出てくるわけです。あるいは、フルーツ缶詰が、 果物はどんどん旬を迎えているにもかかわらず、缶詰にするところの労働力がないために腐らせ てしまうとか、そういった実害が出てくるわけです。製造派遣が禁止ということによって中小企 業がいちばん影響を被るわけですので、今回の製造派遣禁止を目指す法案は、結果として「中小 企業いじめ法案」になっている、私はそういうことを力説したいと思います。 ○市川(佳)委員 まず事務局に1つ質問をさせていただきたいのです。そもそも1999年改正 のときに、物の製造業務について当面の間禁止と。なぜそのときの議論で物の製造業務を禁止に したのか。そのときの議論経過なり、実情なりを教えていただきたいと思うのです。 ○鈴木課長 資料2の11頁にもございますが、平成11年改正のときには、確かに原則自由化に して、改正の付則の4項の中で、製造業務は当分の間は禁止という形になりました。この趣旨は 「内容」と書いてあるところの但し書きに書いてあるとおり、製造業で働く労働者の割合の大き さ等を考慮して、激変緩和の視点からということです。特にこの当時は製造業の偽装請負問題等 もありまして、一気にこれを緩和してしまうと雇用に与える影響が大きすぎるということで、自 由化するにしても、様子を見て段階的にやっていこうということから、改正後の附則4項が入っ たという経緯と承知しております。 ○市川(佳)委員 偽装請負が多かったのですか。そこをもう少し説明していただけますか。 ○鈴木課長 要は、製造業で請負形態でいろいろ作業をやっておりますし、当時から、請負の形 態で実質は派遣ではないかというようなこともございましたので、一気に製造業の派遣を合法化 してしまうと雇用の面で混乱が起こるだろうということから、自由化は本則でするということに なっていたのですが、製造業については時間を置いて、様子を見てから激変緩和をして認めてい こうという趣旨と聞いております。 ○長谷川委員 今般、物の製造業務は原則禁止、表でいくとそういう案が出ているのですが、今 日的に物の製造業務を原則的に禁止するというのはどういう趣旨なのですか。 ○鈴木課長 趣旨は当審議会でご審議いただいて、こういう趣旨で禁止するというふうに決めて いただくことになろうかと思いますが、製造業務禁止を主張される方は何種類か禁止の理由を挙 げておられます。1つは、昨年来問題が起こった。実際に、昨年からの派遣業務の97.4%は製造 業務でありましたので、実際そこで問題が起こっている。したがって、それはやはり禁止すべき だというようなことです。  それから、この議論の中でも出ましたけれども、派遣先があまりにも契約を切りすぎた。これ は実態面と同じ形かもしれませんが、例えば、大企業で内部留保がたくさんあるにもかかわらず、 派遣契約を中途であまりにも簡単に解約した。そのように、直接雇用ではないから切りやすかっ たというのはあるだろうということで、切りやすいというものについては、現象面として問題も 起こったので禁止していくという考え方です。  さらには、製造業務全体として、そもそも製造業務というのは長く働いて技能を育成し、そこ で労災などによる事故を減らしていって、それで我が国の基幹産業として相応しい労働者を育成 していくべきところ、派遣を使うことによって技能形成ができなくなっている。そういった弊害 が起こってきているということも踏まえて、我が国のものづくりという観点から、製造には派遣 は相応しくない。最長3年ですから、短期しか使えない派遣というのはそもそも使うべきではな いというご主張の方もいらっしゃいます。  こういったいくつかのものを組み合わせて、それで禁止をするのかどうか。そのときは逆に、 それに伴って例外というのがあります。例えば技能の話からいたしますと、専門業務などは、前 回私がご説明し、所によっては若干異論もございましたけれども、専門業務的なものは例外とし て認めるとか、そういう中身が出てくるのかなということでございまして、この趣旨、それから 禁止の範囲、禁止するかどうかも含めましてご議論いただきたいと思っております。 ○清家部会長 もしこれを何らかの形で制限するとした場合も、その理由は当部会で考える、と いうことですね。 ○高橋委員 当然です。 ○市川(隆)委員 昨年来のリーマン・ショック以降の、百年に一度と言われている世界同時不 況、これが非常に異常な事態だったという中で、派遣村等々が社会的な問題となってきたという ことだと思うのです。そのときに、派遣の労働者だけではないのです。期間工であれ、正社員で あれ、クビを切られている方が実際におられるわけなのです。ですから、それを派遣の制度の問 題として、それで製造派遣を禁止すべきだというところの論理的な飛躍というところ、これは否 めないと思うのです。  私は先ほど申し上げましたように、劇薬であるがゆえに副作用がものすごくあります。中小企 業が非常に影響を受けます。こういう副作用のある法律で製造派遣を禁止するというようなやり 方、これは非常に慎重にお考えをいただきたいと思うわけです。 ○長谷川委員 労働者が働いているわけですが、派遣先はまずいちばん先に自分たちの正社員、 そして、期間の定めのある労働者は、雇調金を使いながら雇用維持に努力してきたと思うのです。 今回の特徴は、企業が雇調金を活用しながら雇用維持にすごく努力したというのが今回の状況だ と思います。ところが、派遣については自社の従業員ではないから、すぐ契約を解除してしまっ たわけです。解除してしまって、ドーンと派遣労働者がある意味で路頭に迷ってしまったという のが特徴なのです。そういう意味では派遣元ももう少し使用者責任を果たさなければいけなかっ たと思うのですが、派遣元も使用者としての意識が欠如していたこと、それから、派遣先も、自 社の直接雇用の従業員でなくて派遣契約であるということですぐ契約を解除した。やはり、ここ は商取引なわけです。何と言われても、商取引で派遣契約をパッと解除した。派遣というのは独 特の仕組みだということをどう認識するかだと思うのです。これは人材ビジネスも反省している と思うのですが、雇調金なども使いながら派遣会社が雇用を維持するということも必要なのだと 思うのです。私の聞くところによると、私は珍しい会社だと思っているのですが、中小企業の派 遣会社の社長がすごく頑張って雇用を維持している所があると聞いて、すごく優良な人だなと思 ったのですが、そういう人たちはほとんどいなかったのだと思うのです。そういう意味で、この 派遣というのが派遣で働く労働者にとってみれば、直接雇用の労働者よりも非常に雇用の負担が あるということ。また、登録派遣と常用派遣でも、雇用の不安では格差があるということを認識 した上でどう制度設計していくのか。この議論は登録と一緒にしなければならないのではないか と思います。 ○清家部会長 大変申し訳ないのですが、今日はこの後許可の諮問の案件を委員の皆様方がご出 席中に執り行いたいと思います。今の製造業の派遣の問題は非常に重要な問題ですから、次回も 引き続き議論させていただく、それから、いま長谷川委員からもお話がございましたように、論 点ではこのように分けてはありますが、もちろん登録型派遣の問題でもあるし、また日雇い派遣 等の問題とも関わってくると思いますので、その辺も含めて、次回引き続き議論をさせていただ きます。  ここから許可の諮問の議論に移りたいと思いますので、冒頭に申し上げましたように、傍聴さ れておられる方につきましてはここでご退席いただきますようにお願いいたします。また、山田 職業安定局次長につきましても、ここでご退席いただくことになります。 (傍聴人、山田職業安定局次長退席) ○清家部会長 本日は非常に活発に議論をしていただきまして大変ありがたく思っております。 議論がいろいろ出てまいりましたので、今後の日程の進め方について、もう一回事務局で日程調 整をしていただければと思います。本日の署名委員は、使用者の代表が秋山委員、労働者の代表 が市川(佳)委員にお願いします。本日はこれにて終了いたします。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)