09/10/23 第40回労働政策審議会障害者雇用分科会議事録 第40回 労働政策審議会 障害者雇用分科会議事録 1.日時    平成21年10月23日(金)14:00〜16:00 2.場所   厚生労働省 省議室(9階) 3.出席者  ○ 委員 (公益代表) 今野委員、岩村委員、平木委員、松矢委員   (労働者代表) 高橋(睦)委員、花井委員、矢鳴委員   (使用者代表) 大島委員、新澤委員   (障害者代表) 川崎委員、鈴木委員、副島委員  ○ 事務局    熊谷高齢・障害者雇用対策部長、吉永企画課長、奈尾障害者雇用対策課長、藤井    地域就労支援室長、渡辺障害者雇用対策課調査官、佐藤障害者雇用対策課主任障    害者雇用専門官、吉田障害者雇用対策課長補佐、松崎障害者雇用対策課長補佐 4.議題 (1)労働・雇用分野における障害者権利条約への対応に関して検討すべき具体的論点   (「障害を理由とする差別の禁止」及び「職場における合理的配慮」)について (2)その他 5.資料  1 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(「障害を理由とする 差別の禁止」について中間整理の抜粋)【第39回資料3−2】 2 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(「職場における合理的 配慮」について中間整理の抜粋) 3 「障害者雇用職場改善好事例」(最優秀賞・優秀賞の事例)にみられる主な取組    参考資料 1 障害者雇用職場改善好事例の最優秀賞・優秀賞 2 障害者雇用納付金制度に基づく助成金 6. 議事録経過  ○今野会長  まだ松矢委員がいらしていないのですが、時間ですので始めたいと思います。ただ いまから「第40回労働政策審議会障害者雇用分科会」を開催いたします。本日は、菊 池委員、佐藤委員、中島委員、野村委員、飯ヶ谷委員、斉藤委員、高橋弘行委員、松 井委員がご欠席です。なお、高橋弘行委員の代理として日本経団連の遠藤さん、松井 委員の代理として日本身体障害者団体連合会の森さんにご出席をいただいております。 よろしくお願いします。  それでは議事に入ります。本日の議題は、「労働・雇用分野における障害者権利条 約の対応に関して検討すべき具体的論点」ということです。具体的には、「障害を理 由とする差別の禁止」と「職場における合理的配慮」についてご議論をいただくとい うのが第1番目の議題です。それ以外は「その他」となっています。まず、第1番目 の議題から入りたいと思いますので、事務局から資料の説明をしてください。  ○障害者雇用対策課長   それでは私からお手元の資料の説明をいたします。今日の資料は、1枚目に議事次 第があり、その3番目にある議題がありますが、(1)権利条約の対応に関して検討すべ き具体的論点ということで、前回に引き続き「差別禁止」と、「職場における合理的 配慮」ということで事案を紹介しながらご議論をいただきたいと思います。  資料1は、差別禁止についての中間整理の抜粋部分です。この概略のみ申し上げま すと、「第2 障害を理由とする差別の禁止」という中で、「1 差別の定義」があ り、間接差別をどうみるべきか。労働能力を評価した結果として差が生ずる場合はど うみるかといった話が出ていたわけです。  1頁の「2 差別が禁止される事項」として、具体的に実際の問題となる事項とし ては(1)から(5)が挙げられています。その上で、採用についてはどう考えるべきかとい った話が2頁の○で2つほど書かれております。  資料2は「合理的配慮」についての中間整理の抜粋です。資料3は「障害者雇用職 場改善好事例(最優秀賞・優秀賞の事例)に見られる主な取組」をご紹介しています。 参考資料1は「障害者雇用職場改善好事例の最優秀賞・優秀賞」、参考資料2は、前 回ご指摘があった助成金の実績の額を書いたものです。  前回、諸外国の例などにつきまして、若干ご指摘をいただきましたが、恐縮ですが 現在その作業をしているところです。  資料2は「労働・雇用分野における障害者権利条約の対応について」ということで、 「職場における合理的配慮」について中間整理の抜粋をそのままご紹介しております。 資料2の1頁、「第3 職場における合理的配慮」として、7月の中間整理を抜粋し たものです。「1 合理的配慮の内容」ですが、【基本的な考え方】として、合理的 配慮については、条約の規定上はそれを欠くことは障害を理由とする差別に当たるこ ととされている。即ち差別禁止の構成要件としての位置付けになっています。これを 実際に確保していくためには、関係者がコンセンサスを得ながら障害者の社会参加を 促すことができるようにするために必要な配慮、社会参加を促進するための方法・ア プローチとしての位置付けとして捉える必要があるとの意見が大勢であった。これは 前回ご紹介した「基本的枠組み」の中で出てきたものを再掲したものです。  「合理的配慮」は、個別の労働者との関係で問題となるので、個別の労働者はどの ような配慮が必要か主体的に要求する必要があり、行政が企業への指導や助成によっ て障害者の雇用を拡大してきた手法とは大きく異なることになるという意見があった。  3つ目は、また、具体的にどのような配慮が必要か、自ら説明・要求できない障害 者もいるので、本人の代わりに第3者が説明してくれるような仕組みが必要ではない か、という意見があった。  「合理的配慮」は、個別の労働者の障害や職場の状況に応じて、使用者側と障害者 側の話し合いにより適切な対応が図られるものであるので、本来的には、企業の十分 な理解の上で自主的に解決されるべきものであるとの意見が大勢であった、というこ とです。  障害者を採用する際に、企業と本人との間で必要な合理的配慮の内容について、一 定の合意をするようにしたり、又は、企業内に使用者・労働者・障害者からなる配慮 推進会議のようなものを設けて定期的に情報共有・意見交換をする場を設けてはどう か、という意見がありました。  合理的配慮について、労働者本人の要望を受けて、直ちに提供できるようにすべき ではないか、との意見がありました。  2頁、何が差別であり、どのような合理的配慮が必要であるかを明らかにする必要 があるとの意見が大勢であった。また、合理的配慮の内容は、個別の労働者の障害や 職場の状況によって多様であり、また、それに要する費用・負担も異なるので、合理 的配慮の概念は法律で定め、その具体的内容は指針で定めるのがよいのではないか、 との意見が大勢であったということです。  このような指針は、個別の企業において障害者が企業に合理的配慮を求めていく際 にも有効であるとの意見がありました。  「合理的配慮」義務を労働基準法等で位置付けるのは、刑罰法規であって、その範 囲を厳格・明確に定める必要があり、却って範囲が縮減されるのではないか。また、 制裁を背景にして合理的配慮を進めるのは適切かという問題があるのではないか、と の意見があったということです。以上が「基本的な考え方」です。  次に【基本的な内容】です。最初に、合理的配慮の内容としては、障害の種類ごと に重点は異なるが、おおまかに言えば、(1)通訳や介助者等の人的支援、(2)定期的通院 や休暇、休憩等の医療面での配慮、(3)施設や設備面での配慮が必要であるとの意見が 大勢であったということです。  次の○は、具体的に障害の種類別に書いてあります。障害の種類ごとに特に必要な 配慮としては、以下のようなものが重要ではないかという意見があったということで す。視覚障害者、聴覚障害者及び盲ろう者につきましては、点字、拡大文字、補聴シ ステム等の機器や通訳者、援助者等による情報保障・コミュニケーション支援、内部 障害者や難病のある人につきましては、定期的な通院への配慮や休憩・休暇・疾患管 理への配慮、フレックスタイム等の柔軟な勤務体制。知的障害者に関しては、身近に 気軽に相談でき、または苦情を訴えられるような窓口の配置。精神障害者については、 対人関係・コミュニケーションが苦手である、使いやすい等の特性を踏まえた、グルー プ就労や短時間労働等による仕事の確保や職場環境の整備、日常的な相談ができるよ うな窓口。発達障害者については、本人に代わって必要な配慮を代弁できるような、 身近な支援者(サポーター)の配置・支援。中途障害者については、勤め続けられる ための配置(ポスト・職務)の見直し。  3頁、障害者が合理的配慮の提供を求めたことを理由として、解雇、降格等の不利 益取扱いをすることを禁止すべきとの意見があったということです。  次からはいわば各論です。【採用試験】につきましては、採用試験の際に、コミュ ニケーション支援が必要との意見があった。また、採用基準を緩める必要はないが、 長時間の試験は避ける、休憩を間に入れる等、能力を正しく判定できるような環境を 整えることこそが合理的配慮ではないか、との意見があった。  次は、【通勤時の移動支援、身体介助】です。通勤時の移動支援や身体介助は、企 業の合理的配慮というよりむしろ福祉的サービスとして行うべきではないか、との意 見があった。また、労働災害では通勤も対象となっており、通勤も職務と連動するも のであるので、今後は労働政策として企業に義務付けたり、助成措置を設けたりする べきではないか、という意見があった。  【相談窓口】については、障害者が気軽に相談でき、苦情が訴えられる窓口が必要 ではないか、現行の障害者職業生活相談員の機能を見直したり、相談員が選任されな い中小企業でも相談・苦情処理の窓口を整備することが必要ではないか、との意見が あった。その際、職場内だけではなく、生活面での支援も重要であることから、障害 者就業・生活支援センター等による支援を充実させ、連携をしていくことが重要では ないか、との意見があった。また、専門家というよりも「適切な変更・調整」を行え る身近にいる支援者(いわゆるナチュナルサポーター)を支援していくことが必要で はないか、との意見があったということです。  「2 過度な負担」については、過度な負担の基準としては、企業規模、業種、従 業員数、環境の特性、地域の文化・慣習等を参考にして判断すべきではないか、との 意見があった。また、長期療養者に対する解雇に関する裁判例でも、事業規模を考慮 しており、過度の負担の判断に当たっても、事業規模はある程度考慮せざるを得ない のではないか、との意見があった。さらに、過度な負担の基準として、現行の障害者 雇用納付金制度の特別費用の額を参考にすると、即ち合理的配慮を行うための費用が、 特別費用の額と比べてどの程度かを斟酌することも考えられるのではないか、という 意見があった。  どのような場合に「過度な負担」に当たるのか、具体的な指針を定めるべきとの意 見があった。  【公的助成との関係】については3点ほどありました。1点目は、現行の納付金制 度に基づく助成金は、合理的配慮として行うこととなるものが対象となっており、適 宜この助成措置を見直すことにより、合理的配慮を実効あるものにしていくことがで きるとの意見があった。また、フランスのように、納付金制度に基づく助成金を活用 して、企業による合理的配慮に必要な経費をカバーするには、現行の納付金制度や法 定雇用率(1.8%)では足りないのではないかという意見があった。  雇用率制度の対象でない事業主も含めて、全事業主を対象とする場合、合理的配慮 に対する財政支援をどのような形で行うかが問題となるとの意見があった。  現行の雇用関係の助成金や支援には期限があるが、合理的配慮の前提となる仕組み として期限のない制度を確立すべきではないか、との意見があったということです。  前回、条約の「合理的配慮の概念」については、なかなかわかりにくい概念ではな いかというご指摘をいただきました。また、具体的なベストプラクティスといいます か、現在行われている取組みについてご紹介をいただきたいという話があり、資料3 と参考資料1は私どもで少し整理したものです。  参考資料1の横書きの表をご覧ください。これは独立行政法人高齢・障害者雇用支 援機構におきまして、平成16年度から平成21年度で発表した障害者雇用職場改善好事 例の最優秀賞・優秀賞を記載したものです。参考資料1の取組みを参考にして、縦書 きの資料3「障害者雇用職場改善好事例(最優秀賞・優秀賞)の事例にみられる主な 取組」と題して、先ほどの横書きの参考資料1の内容を、中間整理の合理的配慮の基 本的な内容の類型ごとに整理したものです。  参考資料1の横書きの表をご覧ください。最優秀賞・優秀賞については、最近にお きましては毎年度、障害種別にテーマを決めて、その中で特に優れたものを1つ最優 秀賞としてあげ、優秀賞として、概ね5社程度をピックアップして優秀賞にしている ものです。この後の事例は全国の事例です。平成16年度におきましては、視覚障害者 をテーマとして最優秀賞・優秀賞を選定しています。これは最優秀賞・優秀賞という 性格ですので、あくまで極めて優れた取組みをされている例、あるいは非常に特色が あって、先進的な事例といったものを最優秀賞・優秀賞としているものですので、必 ずしもこれが合理的配慮の内容とイコールにはならないと思っております。  平成16年度視覚障害者の最優秀賞は有限会社化成フロンティアサービスです。事業 内容、実際に障害者が行っている業務、従業員数、障害者数はご覧のとおりですので、 以下の説明は基本的には省略させていただきます。  平成16年度は視覚障害をテーマとします。化成フロンティアサービスは、視覚障害 の方は3人です。以後は「応募事例の概要」を中心にご説明いたします。最優秀賞に おきましては、施設・整備面、通勤面、社内のサポート体制等、ハード、ソフト両面 で改善している、例えば、施設整備では席を入口近くに置くとか、床は滑り止め素材 にする。トイレ、手洗い、エレベーター等は移動が容易になるように工夫する。ある いは「PCトーカー」、「XP READER」といった読み上げソフト、点字プリンタ等を配置 するといった取組です。ソフトとしては、会話の前に自分の名前を名乗るといったこ とで、視覚障害の方にも誰が言っているのかわかりやすくなるといった改善。あるい は2行目に「通勤面」と書いてありますが、大雨、積雪時にタクシーの利用を確保す る、といったことをやっているようです。  優秀賞については株式会社シー・エス・イーで、視覚障害の方は2名です。就労支 援機器の活用については、音声合成装置や点字ディスプレイといったものです。専任 の介助者の配置等によって、システムエンジニアとして継続雇用をしている例です。  3つ目は、株式会社テプコシステムズで、視覚障害の方は3人のヘルスキーパーの 方です。自社のノウハウとしては、例えば、ヘルスキーパーはカルテや問診票に記入 する場合、音声リーダーソフトが付いたパソコンで記入する。そういったノウハウの 支援策をマニュアル本にして、他社に提供している取組みをされているようです。  株式会社アンウィーブは、もともとITの事業をなさっている所で、視覚障害者の方 は1名です。自分の会社で在宅就労システムを開発して活用されているということで す。例えば、会社のパソコンで就労の状況を確認できるといった機能があるようです。 その在宅就労システムの活用によって在宅雇用を実現している、あるいは非常救援メ ールといったもので、非常時の対応の取組をしているようです。  社会福祉法人瑠璃光会は、視覚障害の方は1名です。これは介護支援専門員、いわ ゆるケアマネージャーとして働いている方です。平成16年当時におきましては九州で 第1号だったと資料では出ており、そこでケアマネとして活躍されている例です。基 本的にいろいろな機械等を活用されているのですが、例えばデータ化されないような 資料につきましては介助者に読んでもらう、例えばPDFファイルにしますと、自動的に 音声ファイルには変換されないので、そこは介助者に読んでいただいているようです。  熊本県商工会連合会は視覚障害の方は1名です。就労支援機器の導入、コミュニケー ション面への配慮等です。例えば、拡大読書器やデジタルルーペ、音声変換ソフト等 の機器の導入等をされているというものです。  平成17年度は肢体不自由者を障害種別のテーマとしています。株式会社沖ワークウ ェルは、肢体不自由の方が23名と過半数を占めております。ここは在宅雇用の推進を テーマにされており、例えば最新のIT技術の導入でインターネットやグループウェア、 テレビ電話等の活用によって在宅雇用を推進されております。在宅雇用の支援体制の 構築は、クライアントと在宅勤務者の間でコーディネーターの方が調整しているとい ったこともあるようです。  情報共同作業所アイ・コラボレーションは、肢体不自由者の方が55人です。滋賀県 の取組みとして、事業所型共同作業所の形をとって、雇用・福祉の連携モデルという ことでモデル的にやられています。「ITによるバリアフリー」というのは、ITを活 用して、例えば研修会の模様や資料につきまして、ストリーミング配信をして、自宅 と会社をネットで結んで、その間にIT技術を駆使しておられるというものです。  株式会社かんでんエルハートは、肢体不自由者の方が22人です。特色としては、各 種バリアフリーということで、通路を2m以上空けるとか、あるいは空調の機器を床 下に配置する。そのほかの特徴的なものは、スポーツやレクリエーションの導入等で す。特に肢体不自由の方につきましては、人間関係がどうも希薄になりやすいのでは ないかとお考えになりまして、スポーツやレクリエーションによって積極的に良い人 間関係を築くための取組をされているようです。  YKK六甲株式会社は、肢体不自由者の方が5人です。こちらもITを使った業務の効 率化、職務遂行能力の向上等です。例えば、業務の発注にVPN網や高速通信回線網の 整備をされています。通常のメールでは添付ファイルは数メガとか数十メガといった 容量が多いのですが、高速通信回線用のIT技術を使いますと、数ギガ単位で資料を送 れるということで、在宅雇用については非常にスムーズにいくようになったという例 です。  オムロン太陽株式会社は、肢体不自由の方は26人です。特徴としては、安全で快適 な職場作りということで、安全衛生面からみての職場改善が取り組まれている例です。 比較的軽い労働災害、この会社では「赤チン災害」と呼ばれているようですが、赤チ ン災害の防止のために危険の洗い出し作業をして、その危険についてどういうふうに 対応すべきかといったものを非常に積極的に話し合われています。あるいは安全快適 性の向上のために、改善提案で「ヒヤリ・ハット・シート」を社員から募って、一定 程度情報を共有するといった取組をされています。  ソニー・太陽株式会社は、障害者の自立を目標にハード面、ソフト面のバリアフリー 化等が行われています。これは工具の改善や各社員から改善の提案を募って、社内の ホームページで求めて掲示するといったことです。  3頁、平成18年度は、内部障害者の方についての取組です。最優秀賞は株式会社ス タッフサービス・ビジネスサポートで、内部障害の方が193人と多数おられます。取 組みとしては、ハード面、ソフト面からの支援体制が充実しており、ハード面として は、会社に看護師の方が常駐されているとか、あるいは血圧計、AEDなどが設置され ている部屋が備えられている。ソフト面としては、産業医が月1回健康相談に応じる とか、多様な取組みをされています。人工透析の方のために、人工透析の時間を確保 するような就業体制、業務体制を話し合って作っておられる。福利厚生面で言います と、例えば社員食堂に減塩メニューを置くといった配慮もされています。  優秀賞は株式会社リクルートプラシスで、内部障害の方は20名です。取組としては、 フレックスタイムの導入、メンタルヘルスケア等の健康管理面の支援等をやっており、 労働時間、休暇等に関しては、定期的な通院をするための時間については特別休暇に して、回数制限を設けないといった取組をされています。月1回、産業医等が健康相 談をする体制を組まれています。仕事の内容についても、負荷の少ないデスクワーク に就けております 。  株式会社かんでんエルハートは、内部障害の方は4人です。産業医による健康相談、 救急時の対応に関する体制整備を行っています。救急時の対応については、社員の胸 にネームプレートを付けて、特に救急時の注意事項を記載しています。例えば心臓ペ ースメーカーを埋め込んでいるので、MRIは撮れないとか、そういったことが書かれ ていて、救急時の対応に役立っている。職員の名札等には「ハート・プラスマーク」 ということで、内部障害者であることがわかるように明示している。  松本技術コンサルタント株式会社は、内部障害の方は1名です。この会社には中途 で内部障害者となられた方がおられて、配置転換、研修体制、労働条件、メンタルヘ ルス対策等が整備されている。例えば、部屋の気温をコントロールしやすいように個 室で勤務していただくとか、あるいは治療時間が取りやすいような勤務体制にして、 時間外労働は基本的になくすといった整備をされているようです。  医療法人青仁会は、内部障害の方は4人です。ここはもともと外来の透析センター が併設されている病院で、そのセンターを利用した内部障害の方を職員として採用さ れています。病院ですので、もともと物理的にはバリアフリーが進んでおり、ソフト 面では、透析を受けられる時間はほかのスタッフがカバーしています。  平成19年度は知的障害の方に対する取組みです。最優秀賞は、大東コーポレートサ ービス株式会社で、知的障害の方は13名です。こちらの会社は、各業務における問題 点を的確に把握し、その上で作業の手順やチェック体制を見直して、一人ひとりの主 体性、個人に応じての目標設定を行う。本社や関連子会社からの受注業務の見直しを 複数回実施している。具体的な取組みとしては文書の廃棄もやっているようです。廃 棄文書を入れる箱をサイズ別に分類して、例えば、これについてはピンク色の紙を付 けておくとか、視覚に訴えるようなことでわかりやすい作業手順にして、その作業手 順をマニュアル化する。あるいは各支店に郵便物を発送する業務もあり、支店名にふ りがなを振る。支店名はカルタにして、「支店名カルタ」と呼んでいるようですが、 知的障害の方もよく覚えられるようになったということです。  優秀賞は株式会社美交工業で、知的障害の方は14名です。清掃業務について、職場 適用援助者(ジョブコーチ)の活用等の連携を行われている。特にジョブコーチの方 で、個々の方に応じて得意、不得意、作業の細分化等をすり合わせているということ です。  有限会社九州ヘラルドは、知的障害の方が7名です。この会社はクリーニング業で、 クリーニングの預り品を事前にチェックして、どこに不良箇所があるのかを絵文字で コンピュータに入力できるようにしたということです。これは手で入力すると、字が 読みづらいとか、あるいは誤解が生じやすいということで、コンピュータでタッチパ ネル方式で絵文字をいくつかパターン化して、どこの箇所にどういった留意点がある かをわかりやすくして、誤解が生じにくく、作業がスムーズになるようにしていると いうことです。  株式会社富士電機フロンティアは、知的障害の方は43名です。ここは10年以上勤続 している知的障害の方が半数と非常に多いわけです。キャリアアップのために業務目 標を設定する、新規業務への配置やリーダー制といった取組をされております。例え ば、朝、算数の応用問題をやっているのですが、これは買物とかの社会生活に適用、 役立てるといった意味もあるようです。知的障害の方をリーダーとして登用して、1 人で仕事上わからないときは、リーダーの方が中心となってグループ全体で解決して いるといった体制をとっているということで、責任を持って仕事に取り組むようにな ったと聞いております。  株式会社マルイキットセンターは、知的障害の方は19人です。知的障害の加齢に対 応した新たな職域開発や拡大を図るということで、主に検品・出荷等の印刷サービス 業務をやっているわけです。特に業務の細分化をして、それぞれの工程ごとに具体的 な作業手順表を作って、業務を10ほどに細分化した上でわかりやすく手順を書くとい ったことをされております。そのほかにも物理的にドアの改修や機器の設置等をやら れているということです。  株式会社かんでんエルハートは、知的障害の方が48人です。こちらは役職者を第2 号職場適用援助者(ジョブコーチ)として配置されている。その上で、支援機関等と 連携を図っているということです。例えば、項目別にどういう課題があるか、5つの 項目に分けて、それを6段階評価して、こういう点に個々に適性があるとか、課題が あるとかわかりやすくしているということです。  平成20年度は聴覚障害者への対応です。最優秀賞は株式会社マルイキットセンター で、聴覚障害の方は10人です。こちらでは全員参加型の作業マニュアルを作成し、あ るいは仕事をやっていくに当たって、専門用語的なものを手話用語辞典として、105 ほどピックアップして作成されています。聴覚障害の方はユニフォームをオレンジ色 にしてわかりやすくする、個人面談も月1回、手話通訳者を交じえてやられるといっ た取組をしているわけです。  優秀賞は社会福祉法人光道園で、聴覚障害の方は3人です。こちらでは従業員が簡 単な手話を覚える。情報量不足をカバーするということで、例えば業務の申し送りは 書面と手話でする。資格取得のための研修受講の際には、勤務日や出勤時間に配慮す る。こちらは介護や福祉事業をやられている所ですので、夜間の対応もありますが、 夜間は通常2人で対応するところを3人勤務体制にしている。  有限会社西山家具は、聴覚障害の方は2人です。こちらは婚礼家具を製造されてい る所で、30年以上と非常に長きに渡り継続雇用をされています。こちらの指導者の方 が手話講習、要訳筆記等の講習を受講する。聴覚障害の方が自ら講師になって、手話 講習会をされております。  株式会社リクルートオフィスサポートは、聴覚障害の方は12人です。業務量の変化 に伴う配置転換に当たって、業務の切り分けということで、従来、電話対応が必要で あった事務サービス部門で、電話による対応を必要としない業種を切り出して、メー ルによる伝達手段をとられているということです。情報、コミュニケーション支援と してパトライトを設置しています。これは警報を光で知らせる機器です。全社員に対 するアナウンスを行うときには、テレビで視聴ができるように、視覚で訴えられるよ うにするということです。  株式会社エルアイ武田は、聴覚障害の方は19人です。外部業者に委託していたビル 清掃について、知識や清掃機器の操作等を体系的に研修する、特に、作業の前に綿密 に打ち合わせて、作業のあとで反省会をして、その反省会の内容を次の事前打ち合わ せのときに役立てるといったサイクルをとられているという取組です。  千代三洋工業株式会社は、聴覚障害の方は12人です。こちらはさまざまな工程を担 当できるようなスキルアップをしているということです。多能工の推進というのは、 障害者以外の方全員ですが、仕事のスキルを一覧にしてわかりやすくするといった取 組をされています。手話通訳が可能な従業員を配置することに加えて、中途失聴者の 方向けには、第2号ジョブコーチを配置する。中途失聴者の方は必ずしも手話ができ ないので、こういった両方の取組をされているようです。  ソニー・太陽株式会社は、「聴覚障がい者受入マニュアル」を配布して理解を深め ている。朝礼の際には、要訳筆記を入れて機器の導入をしている。機器としては、IP トークやプレイステーションポータブルといったもので、これを配布することにより 文字で情報が保証されるといった取組のようです。  精神障害の方の取組については、最優秀賞は富士ソフト企画株式会社で、精神障害 の方は70人です。こちらではカウンセリング室へカウンセラー3名を配置、役職者に 対するメンタルヘルス研修、フレックスタイム制の導入等を行っている。こちらでは 70名と多数雇うことによって、精神障害の方が精神的にスムーズに就労できていると いった話です。  優秀賞は有限会社井上技建で、精神障害の方は2名です。こちらでは業務マニュア ルの作成、随時休憩、本人とのコミュニケーションを進めるための日々の振返りといっ た手段をとられている。朝のコーヒータイムを設けて、体調や日ごろ気付いた点等に ついてコミュニケーションを図っている。労働時間については、1日6時間といった 労働時間をとられている。  綾瀬市リサイクル協同組合は、精神障害の方は6名です。こちらでは事業所全体の 作業を見直して、職域拡大に取り組まれている。いわば業務の切り出し、切り出した 業務のマニュアル化をされているわけですが、最初はなかなか切り出しがうまくでき ず、試行錯誤されたと聞いております。うまくいかないときは、一般の健常の社員で もどういうふうに教えればいいか戸惑いがあったようです。業務の切り出し、マニュ アル化することによって、スムーズに進み出したといった取組です。  日本イーアイリリー株式会社は、精神障害の方は6名です。こちらは社長自らの訓 話や社内報による周知等の全社的な取組を行っている。ハローワーク職員や関係機関 の精神科医等を招いて、勉強会を開催して障害に対する理解を深めている。そのほか にも、2か月ごとに指導医等の方が本人の状態を確認するといったことをされている ようです。  大東コーポレートサービス株式会社は、精神障害の方は8名です。こちらの就労サ ポーターとして、精神保健福祉士の方を採用しているということで、きめ細やかな対 応をされています。労働時間面についても短時間勤務からの就労、具体的には1日3 時間から徐々に労働時間を増やしている。ソーシャル・スキル・トレーニングによる 自己管理技術については、こんな時はどうすればいいかグループでトレーニングをす る、そういったことで自己管理技術の向上の取組をされています。  雑駁でしたが、参考資料1の取組についてでした。参考資料1の具体的な取組事例 について、少し整理し直したのが資料3です。  これは参考資料1の事例であることを、1頁の上の方に囲みで書いており、それか ら中間整理の抜粋がありまして、これに沿って少し整理し直したものです。先ほどと 重複して恐縮ですが、「合理的配慮の基本的内容として、障害の種類ごとに重点は異 なるが、大まかに言えば、(1)通訳や介助者等の人的支援、(2)定期的通院や休暇休憩等 の医療面での配慮、(3)施設や設備面での配慮が必要であるとの意見が大勢であった」 ということです。基本的に(1)(2)(3)に即して、先ほどの具体的な取組をあえて分類する とどういう形になるか、ということで資料3にて整理したものです。  1頁目に、「障害種別に関わらず、多くの事業主に共通して見られた事項」をまと めてあります。(1)人的支援については、例えば障害者個々人について、どういう仕事 が配慮しなくてもできるのか、配慮すればできる仕事は何か、そういったことを把握 する。業務の細分化については、障害者の特性に合わせて割り当てる。職業生活相談 員、ジョブコーチ等の配置・活用、障害者間の十分な情報交換、幹部、上司等との個 人面談、要配慮事項の共有、業務の細分化等とも絡みますが、業務マニュアルの作成、 障害者本人による振返りの支援、といったことが人的支援等で、各種の障害種別に共 通してみられたと思われる事項です。(3)施設や設備面の配慮については、バリアフリー 化の推進が共通して言えるかと思います。(4)その他については、リーダー制度の導入 とか、研修等の取組み、レクリエーションの実施等といったものがいくつかあったよ うです。  2頁目ですが、以下は障害の種別で整理しているものです。2頁の「1 視覚障害 者(平成16年度)」については、(1)人的支援としては、いろいろ例はありますが、話 しかける前に自分の名前を名乗ることを徹底する、メールを用いたコミュニケーション をとる、緊急連絡時の口頭伝達、職場介助者による補助等、専門書の点訳といった人 的支援があるわけです。(3)施設や設備面での配慮、バリアフリー化については、部屋 の入口近くに席を設ける、トイレ等の移動が直線的になるようにレイアウトを改善す る、床の材質も滑りにくくするとか、点字ブロック等を使用する、自動扉や点字表示 を行う、各種ソフトや点字ディスプレイ、点字プリンター等を活用する。(4)その他に ついては、通勤混雑時の特急列車使用に係る通勤手当支給、大雨、積雪時のタクシー 利用を可とする、本人が希望すれば、通勤、買物等に障害者職業生活相談員が同行す る、といった取組みをされているようです。  次に「2 肢体不自由者(平成17年度)」は、(2)定期的通院や休暇休憩等の医療面 の配慮として、通院時や体調不良時における休暇取得を容易にする、在宅雇用におき ましては、生活スタイルに合わせて労働時間が設定できるようにする、(3)施設や設備 面での配慮については、通路の幅を拡大して、2m以上等とする、空調機を床下に配置 したり、ロッカー等の配置については車いすの方も使用できるように、使いやすい仕 様にする、電動ラックや作業机の改修等、いわゆるIT技術を活用して、在宅雇用につ いても進めやすくする、ということが主にあるかと思います。3頁の(4)その他につい ては、職場の安全衛生の対応として、「ヒヤリ・ハット・シート」の導入をする。  3頁の「3 内部障害者(平成18年度)」については、(1)人的支援として、看護師 の常駐、グループ就労による業務負荷の分散、(2)定期的通院や休暇休憩等の医療面で の配慮として、ワークシェアリング、時間外勤務の見直しで労働時間等の配慮、優先 的な休暇等の配慮、職務の内容としては、デスクワークへの配置、そのほかに健康診 断や定期通院の許可、健康管理システムや社員食堂でのメニューの工夫等、非常時、 緊急時の引継カードといった危機管理的なものも書かれているわけです。(3)施設や設 備面の配慮については、健康管理ルームで血圧計、心電図、AED等の設置をする、名札 や執務室に「ハート・プラスマーク」といった内部障害の方であることをわかりやす くするための表示をする。  「4 知的障害者(平成19年度)」については、(1)人的支援として、ジョブコーチ の活用、作業手順のマニュアル化、簡易化。特に、絵や色による記号化や職務の細分 化、流れ作業システムといった職務の見直しに絡んだものもあります。(3)施設や設備 面の配慮については、タッチパネル式コンピュータの導入や、支店の名前にふりがな を振る、といった配慮がされています。(4)その他については、グループホームの世話 人、障害者職業カウンセラー等と連携して、ケース会議を実施する。ソーシャル・ス キル・トレーニングについては、こういう時にはこうしたらいいのではないかといっ たことを話し合う。身分証には緊急連絡先等が記載されたものを常備させる。  「5 聴覚障害者(平成20年度)」については、(1)通訳や介助者等への人的支援で は、ジョブコーチ、手話通訳士の配置、手話通訳者同席の下で個人面談を実施する、 特に業界用語、専門用語について手話を創作して、それを事前に配布するとか、ある いはメールやFAX等によるコミュニケーション、これは職務の切り分けとも関連します が、コミュニケーションを保証する、要約筆記による会議内容の伝達、要約筆記は(3) とも絡みますが、施設や設備面の配慮として、フラッシュライト、パトライト等を設 置する、テレビやOHC(オーバー・ヘッド・カメラ)で情報提供の手段を工夫する、要 訳筆記ソフトの導入、ユニフォームを統一してわかりやすくする。(4)その他について は、手話サークル活動や災害時の行動基準配布といったものが挙げられています。  最後に「6 精神障害者(平成21年度)」については、(1)通訳や介助者等の人的支 援では、精神保健福祉士、カウンセラー等の配置、ジョブコーチの活用、あるいはメ ンターの任命を中でやられている。グループ就労で業務負荷を分散する。(2)通院や休 暇休憩等の医療面での配慮として、短時間勤務からの就労を始める。例えば、1日3 時間からの就労を始めるとか、フレックスタイム制度の導入、休暇の配慮。例えば、 1時間ごとに5分から10分の休憩を入れる。通院の優先や定期通院をしているかどう かを確認する。指導医と就労チューターによる体調管理、体調に合わせた柔軟な業務 変更。(3)施設や設備面での配慮については、利用しやすい場所に休憩室を設置する。 (4)その他については、ソーシャル・スキル・トレーニングの導入。  参考資料1と資料3は、すべて1対1で厳密に対応していなくて非常に恐縮ですが、 こういった取組みがいわゆる好事例として見られるということです。それが中間整理 の内容として、資料3の1頁の(1)から(3)といった分類をした場合、どういったことで なりやすくなるかということで、これに関連した合理的配慮のイメージを少しでも持 っていただければと思います。以上です。  ○今野会長  ありがとうございました。お手元にピンクとグリーンの2つの資料があります。こ れは鈴木委員から提出していただいておりますので、鈴木委員からご説明いただいて から議論をしたいと思います。  ○鈴木委員  資料についてご説明いたします。あまり長く説明はできないので、要点を申し上げ ます。もともとこれは平成20年度におきまして、全国の市町村と社会福祉協議会を合 わせて大体3,640カ所に調査をさせていただいて集計したものです。障害者の公務員 および社会福祉協議会における人数が32頁に出ております。そこには全体として、身 体障害の方が9,402名、知的障害の方が136名、精神障害の方が133名という数字が出 ております。47頁の表8には障害別に出ております。視覚障害の方は604名です。私 どもが前々からお話している身体障害というのは一括りではなく、その中の障害別は こういった数字になるのではないかと思います。 41頁の表4−4、「採用試験」を見ますと、視覚障害のある方の試験に関しては、 拡大文字や点字という部分は、公務員でさえあまり採用されていない状況です。「今 後」のところを見ても、ほとんど採用のところでも閉ざされている状況がわかります。  48頁の問16「視覚障害者の業務」については、事務職というのが結構いまして、私 どもの予想では、専門職員が多いのかと思ったのですが、事務職がほぼ半分ぐらいい ます。これはきっと採用試験のところから考えていくと、中途視覚障害の人たちが事 務員として残っているのではないかという予想がされます。要するに、試験のところ では配慮されていないが、事務員としては、いままで雇用継続という形で入っている ケースが多い。専門職というのは中途障害というよりも、もともと学生のころからの 障害の方たちが多くて、理学療法士であったり、マッサージ師であったり、電話交換 手という形での専門職です。教職員、いわゆる県立ではなく市立の小中高などの教員 の中もそういったものがある。○○市立盲学校とか、そういった中での教職員も含め てこういった数字になるので、もっと事務員は少ないと思ってはいたのですが、そう いった状況です。  トータルで見て、公と准公務員といいましょうか、社会福祉協議会というような内 容で見ますと、公なのに何でこんなに閉ざされているのかということです。公がこん なになっていると、民間の人たちはなかなか広げられないのではないかという気はし ております。全体として、この中で足りないのがいくつか見られます。職場でのサポー トといったときに、職員がサポートをしていると結構言われます。私も公務員をやっ ておりましたが、周りが忙しく仕事をしていると、この文書を読んでほしいとか、な かなか言いにくいという気持ち的な部分がありますので、やはり、専門的な介助者は 必要なのではないかと思います。公務員でさえこうですから、民間へ行ったらなおさ らそういった必要性は高まるのではないかと考えているところです。  よく精神の方が通院であったり、体調不良での休みが認められるようですが、だん だん視力が落ちてきて、職場継続のために眼科的なリハビリテーションをするので職 業訓練へ行きたいといったことで、年次休暇になるのか特別休暇になるのかわからな いのですが、そういったサポート体制は就労継続という意味から言えば、必要になる のではないかということが読み取れます。全体的な流れで、公務員には職場介助者制 度がないので使えていません。しかし、本来はナチュラルサポートだけではなくて、 もう少しきちんと職場介助者を必要とするのだなというふうに思います。公務員とい うところでは、これも必要だろうと思っています。  あと、合理的な配慮をするというのですが、実際に見てみると、そこがされていな いのが現状です。ですので、これらを見ると、まだまだ合理的配慮は徹底していかな いと難しいのかと思っています。まだまだ細かくあるところですが、時間の都合もあ るので、後ほどまたお話をします。  ○今野会長  これから議論をしていただきます。今日の論点は、前回行った「障害を理由とする 差別の禁止」の問題と、今日説明していただいた「職場における合理的配慮」の2つ です。まず、今日の資料1で、前回も議論しました「障害を理由とする差別の禁止」 に関連してご意見をいただいてから、資料2に移りたいと思います。  ○岩村委員  資料1の「2 差別が禁止される事項」のすぐ上の○で、差別との関係で、合理的 配慮の否定をどう考えるかというところがあります。これは中間整理のときに私が言 ったことです。それを考えていると、その○の上から4行目で、「直接差別に組み込 んで考えるか」とありますが、これは直接差別と間接差別の両方だと思うので、後で ご検討いただければと思います。  ○今野会長  他になければ、2つ目の合理的な配慮について、何でも結構ですので、ご意見をい ただければと思います。  ○鈴木委員  先ほども出たのですが、視覚障害の場合に、就職するというか採用する段階でいろ いろと閉ざされてしまうことがあります。簡単に言うと、点字にする、パソコンを使 って試験を受ける、文字を拡大するというのは、過度な負担というどころではなくて、 ちょっとやればできる感じなので、これは一般の企業においても可能となるべき事項 だと思っています。そういったところは配慮として、具体例としてはそういったもの が必要かと思います。  ○今野会長  今日の資料の2頁の上から4行目ぐらいで、ここでどこまで議論するかにも関連す ると思いますが、「合理的配慮の概念は法律で定め、その具体的な内容は指針で」と いう案が出ています。そのときに、概念の方はいいかなと思うのですが、具体的な内 容についても、今、鈴木委員の言われたような個別の対応の前に、それを考えるため の基本的な考え方を整理しないといけないのではないかと思うのです。概念も含めて ですが、いいアイディアがあるかなと。  これまで中間整理で出てきた整理の仕方では、2頁の「具体的な内容」の1つ目に、 支援の内容として3類型があります。人的支援、医療面での配慮、施設面での配慮で す。これも切り方の1つの案なのですが、今のところはこれぐらいしか整理の仕方の 枠組みがないので、そういう面もいいアイディアを出していただければと思います。  ○平木委員  前回欠席したので、記録を読ませていただいて、少し抽象的になりますが、思った ことをお話しします。今のこととつながるのではないかと思っています。合理的配慮 というのは、差別ということ自身がそうなのですが、かなり倫理的なものが含まれて いて、具体的にはここにある3つのことになるのだろうと思います。この分科会で考 える必要のないことだとしたら申し訳ないのですが、別の見方をすると、キャリア発 達とか、生涯発達、ライフキャリアとも関わってきていて、「キャリア」という言葉 は、進路指導、リストラ対策ということで、ちょっと汚れた言葉になっているのです が、実際は一人ひとりが自己の能力を最大に活かして生きることを目指すのが、キャ リア開発、キャリア発達と呼ばれるものなので、キャリアの視点から考えたら、合理 的配慮はすべての人に行われるべきことなので、障害者だからといって合理的配慮と 言わなくてもいいぐらいのことなので、自己の潜在能力の開発をするために配慮しな ければならないこととして、考えていただきたいと思いました。  ○今野会長  今日は事例もいろいろありまして、今おっしゃられた点について考えてみて、何か 紛争が起きて、私が合理的配慮なのかを判定しろと言われたことを考えてみると、ま ずは、「何のための配慮なのか」という必要性の判定をすると思います。例えば今おっ しゃられた点というのは、障害者はキャリアが困難なのでそれに対する配慮をすると いうことで、もしそういうことがあったとしたら、「何のために」、となります。そ こで必要性の判定をして、必要性があると思ったら、今度はその手段が適切かどうか を判定すると思います。そうすると、今日の事例は、それが混乱しているのです。  中間整理がそのような形になってしまっているのですが、例えば、先ほど鈴木委員 がおっしゃられたのも、試験を受けるときに困難であるので、それを改善させるため が、「何のため」ですね。それに必要性があるかどうかを判断しますね。それが必要 であったら、何の手段を使うか。例えば、字を大きくするとか、いろいろな方法があっ たときに、その方法がAからZまであったとして、そのときに企業がBの手段を採っ たとすると、私はBが適切かどうかを判定します。その観点でもう少し整理できるか なという気がしました。  それと方法の面では、中間整理では、人的支援、医療面での配慮、設備面での配慮 と3類型にしましたが、きれいに整理できていない項目がたくさんあって、「その他」 に入ってしまったりといろいろあって、例えば資料3の1頁の「■ 障害種別に関わ らず、多くの事業主に共通して見られた事項」で、「通訳や介助者等の人的支援」と いう中に、下から2つ目に「業務マニュアルの作成」というのがあります。これはう まく整理できていないのです。  ずっと聞いていくと、必要性が決まったときに、それをどういうふうに対応するか というのは、設備で対応する場合と、人の支援で対応する場合と、仕事の管理で対応 する場合と、医療面で対応する場合の4類型があって、組み合わせると、ここに全部 きれいに入るのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。  これは1つの例ですが、そのような1つの整理の枠組みができれば、判定しろと言 われたときに、考えの基準になるかなと思ったのです。今、皆さんの意見を引き出す ために意見を言っているのですが、私は司会者なので整理をしなければなりません。 このような場合はこれが合理的配慮だ、この場合はこうだ、と個々はいろいろあると 思います。これをやるとここの議論は無限に拡散するので、できれば見方の枠組みの ようなものを出していただくといいかなと思っているのですが、いかがでしょうか。  ○岩村委員  今の分科会長の話との関係でいうと、いまおっしゃった資料2の2頁の真ん中の部 分ですが、1番目の○はある意味で総論なのです。おっしゃるように、合理的配慮と いうのは、条約の考え方などに照らして考えると、個々の障害者との関係で、何が合 理的配慮かという形で問題になります。したがって、個々の障害者の状態に着目して、 それではこういう仕事をするには、どのような措置が必要か、という形での判断にな ると思います。  ですから、「必要性」と、何をという「具体的な内容」と、さらにそれの「コスト」 が入ります。そのようにある程度整理できるというのは、おっしゃるとおりです。  後はそれを総論のところでどのように表現するというのが1つです。ただ、今、分 科会長がおっしゃったように、ここで個々の人についてどうするという話を全部は書 けないので、ある程度類型化して、何らかの例示などを考える。リストとか、法的に は指針などになるかもしれませんが、そういうものを考えます。  そうだとすると、私の持っているイメージとしては、【基本的な内容】のすぐ下に あるのが、合理的配慮の一般的な定義を法律上どこまで書くかという話であり、それ から次の○は、本来は個々人ごとに決めるが、それは書き込めないので、障害のタイ プごとに、どういったものが合理的配慮として考えられるかというのをリストアップ していくということで、必要性というのはその人ごとの判断なので、障害の中身、内 容、程度、やる仕事から、必要なのかどうか。それとの関係で、実際に行う仕事なり、 作業との関係で、どこまでの措置をしなければいけないのか。最後に、それが過度の 負担になるのかどうか。そういう枠組みになるのかなと思います。  ですから、必要性というのは、ここも「必要な配慮」と書いてあるので、そういう 意味で必要性はどこかで判断の枠組みの中には入っていることにはなっているのだと 思います。そういう視点でということなのかなと思っています。  後は、法律の中身で、合理的な配慮の定義規定を書くとすると、その辺をきれいに 書き分けるのか、障害の種類ごとに、重点はここになるがということを、もう少し書 き換えるかというようなことで、(1)(2)(3)を整理できるかですが、あと最後に「その他」 というのが入るということだと思います。  あと、リストやガイドラインを作るとすると、2頁の【基本的内容】の2番目の○ 以下のところが、各障害タイプごとに、どのようなものが考えられるかという類型に なるのかと思います。整理の仕方の問題はあると思いますが、大まかなところでは、 イメージとしては、このようなことかと思っています。  ○花井委員  今野先生の話を聞いていて思ったのですが、(1)(2)(3)の類型を資料3と比較して見た ときに、何が欠けているかというと、業務遂行面と言うのでしょうか、仕事を遂行し ていく上での支援の仕方の観点です。仕事、障害種別、障害の程度もさまざまと考え たときに、1つの仕事を遂行していくために、それぞれの場面で、合理的配慮の中身 が変わってくるのではないかと思うのです。医療面が必要な人もいれば、必要ではな い人もいます。そう考えると、4つ目として業務遂行面、仕事を具体的に行っていく 上での必要な措置があるのかなと思いました。  ○今野会長  私が先ほど言った必要性を判定するときの枠組みは、いまおっしゃられた仕事遂行 の場面が整理できればいいと思っていたのです。  つまり、ここの例はいろいろ出てきますが、仕事を遂行する上で、ある場面では隣 の課とコミュニケーションを取ることが不可欠だとします。そうすると、コミュニケ ーションができないから、それを支援するための何かの方法がある。このような組合 せです。そうすると、仕事の場面というのはいろいろあります。例えば職場内で移動 することがあります。移動するのが困難だから、何か配慮しようと。  私の意見では、必要性のほうを整理する枠組みだと思っていたのです。極端に言う と、すべて仕事遂行なのです。これについての必要性なのです。だから、そこは通勤 から始まり、退勤までになるのです。その場でいろいろな仕事、コミュニケーション、 職場での移動、机に座ってコンピュータに向かうなどいろいろな場面があって、そこ についていろいろな困難が発生します。それが必要性かなと。  そのときに、先ほどありましたように、障害種別もありますし、程度も違います。 個々人によって困難が違うわけです。それを見る枠組みが必要性の方で決まれば、そ れに対してどのような対応をするかというときに、例えば、設備、人が行って直接支 援する、仕事の仕方を変える、マニュアルを作るというのは、全部マネージメントの 問題ですから、仕事の管理で対応します。疲れやすいというのは医療面です。そのよ うにすれば整理ができるかなと考えています。  ○岩村委員  私の感覚ですと、今、花井委員のおっしゃったことは、合理的な配慮を考える上で は当然の前提になっています。なぜかというと、これはあくまでも差別との関係で合 理的配慮ということを考えています。それはどうしてかというと、障害者を雇用の場、 仕事の場から、障害があるということで遠ざけてはいけないということなのです。逆 に言えば、雇用なり仕事を遂行していく上で、どのような合理的配慮をするかという のは、ある意味ではこの枠組みの中では、当然の前提になっているのではないかと思 っています。  何のために合理的配慮ということを議論するのかというのは、まさに障害者が仕事 の場から排除されないようにするためなので、それとの関係で言えば、仕事の場にイ ンテグレーションなり何なりするために、どのような配慮をするかです。そこで分科 会長がおっしゃっていたような必要性ということを、もし紛争が起こればその時に考 えてみましょうということですので、もちろん書いて悪いということではないのです が、ことさら何か言及しなければいけないのかな、という感覚を私は持ちます。そこ は当然の前提なのではないかという気がします。  ○高橋(睦)委員  今の必要性というところで、職場における業務遂行上でと限定した場合の合理的配 慮をどうするかといったら、今の議論になると思うのですが、先ほどの鈴木委員の調 査項目等にもあったように、募集採用の段階から合理的配慮が必要だというケースも あると思うし、当然そこも考えていかなければいけないので、この議論をどこまで広 げていくのかの基本で、合理的配慮を今からいろいろと検討していくところで、業務 遂行という観点で絞っていくのか、もう少し広い範囲の雇用ということに絞るのかで あれば、先ほどあった募集採用の時点でシャットアウトされている現状とか、合理的 配慮がなされておらず、そこに合理的配慮をすれば、本人のスキルが活かせるように なるだろうし、雇用が確保できるというところもあるので、その辺を整理する必要が あると思います。  ○岩村委員  もし、今回差別禁止というのを入れたときに、禁止とする差別の範囲をどこまでに するかの議論の方にいくのです。それは今日のペーパーでいうと資料1で、「差別が 禁止される事項」ということで、1、2頁に跨って書いてあります。そこに募集・採 用のものが挙がっています。  ただ、1番目の○にあるように、条約上は募集・採用も入っています。したがって、 当然禁止される差別の中には募集・採用が入り、それとの関係で言えば、合理的配慮 も当然そこに関わってくると思っています。  ○川崎委員  精神の立場で私がずっと申し上げていたのが、企業側にいつでも相談できるような 体制がほしいということでした。いまの資料2の2頁に、【基本的な内容】の(1)(2) (3)がありまして、3頁に【相談窓口】というものがあり、「メンタル的なケアを必 要とするところがある」とあります。このようなことを基本的な内容のどこに入れて いくのか。  それと、障害者雇用に関しては、私は障害者を理解することが必要なのではないか と思います。特に精神障害者は、なかなか企業で理解されていないということです。 やはり企業での啓発的な活動をしてもらえるようなことも、この辺の内容に入れてい ただけないのかなと感じました。  ○新澤委員  非常にいろいろ議論をすると難しくなっていきます。私は中小企業の立場から申し ますが、採用する側からいくと、現在もいろいろな身体障害者を雇っているわけです が、やる人間の人情的なもので、周辺の方々がそのような気持ちで支え合ってやって きている面があります。それで何年もつながっています。  そういう場合に、あまりいろいろと文書で縛ってしまって、面倒になってしまうと いうことが危惧されないかと思います。最低限、大事なものは大事だという意味もあ りますが、あまりに細かく条件を付けてしまうというのは、現実を見た場合にどうか なと。これは私の考えで、現実にそういう方々に働いていただいて、周囲の皆さんも 協力していただいていて、「こういうことがあるよ」なんていう話も持って来られた りすると、せっかくいい環境で共々やっているのが、水を差すことがないかなと危惧 しています。  ○今野会長  中間整理の意見にありましたが、強行法規では難しいということは、かなり合意が できています。ですから、使用者と障害者でお互いに理解し合いながらやっていくの が一番いいのだということです。我々がそれをプロモーションするような仕掛けをど う考えるかというところでは、中間整理ではそのような精神があるので、そこは心配 しなくても大丈夫です。  ○新澤委員  世の中には尾ひれを捕えて、現実にいろいろと言ってくる人がいますからね。  ○今野会長  ですから先ほど議論していたのも、現象がごちゃごちゃしているから整理をする枠 組みを用意して、こういうケースであれば、例示としてこのような手がありますでし ょうね、という意見だったわけですから、それを絶対にしろとは法律で書けるわけが ありませんので、障害者も職場も多様ですので、事態は非常に多様ですので、あまり 心配しないで、いいアイディアを出していただければと思います。  ○新澤委員  今、福島県も若年層の就職問題が大変です。この前は副知事が来て、今度は知事が 自ら来るということで、新卒、高卒が3分の1も決まらない状況にあるわけです。そ の中でこういう問題というと、私の頭はちょっと現実がわからないのですが、この問 題での合理的配慮というのは、当然コストがかかります。この問題はもちろん後から いろいろとご配慮いただくわけでしょうけれども、この点もこの問題の中である程度 時間を割いてやっていくのでしょうけれども、今日見たときになかったものですから。 やること全てにおいてコストがかかるということがあるので、その辺を心配しており ましたので一言付け加えさせていただきました。  ○平木委員  合理的配慮というのは、ここに「人的支援」と書いてありますが、私は大きく分け ると、人間がしなければならないこと、物理的なことでカバーできること、その両方 をしなければならないことだと思うのです。ここに「通訳や介助者等の人的支援」と いってしまうと、先ほど川崎委員がおっしゃったように、情緒的なものや相談とか、 苦労している人たちが支え合えるようなものに対する支援が抜けてしまうので、通訳 や介助者と具体的に言わないで、「人が支援しなければならないものと物理的なもの でカバーできるもの等」としておいて、もう少し内容を考えられないかと思います。  ○今野会長  今おっしゃる「物理的」というのは、ここの言葉でいうと「設備で」ということで すね。  ○平木委員  そうです。「設備で」といったり、それから、例えば時間を差し上げれば通院でき るということだったら、物理的に入れてもいいのだろうけれども、それに誰かが助け ないとそれができないときには、「人が」が要るのかなとか、その両方が要る場合と、 どちらかでいい場合があるのかなということをイメージしました。どこかに精神的な ものが入るといいので、「人が必要」というつもりで言いました。  ○松矢委員  先ほど分科会長の出された施設・設備面、人、いろいろなマネジメントの点、医療 面というまとめ方はいいと思います。それから、いま平木委員の出された一般的な倫 理的なものです。例えば「事業主は合理的配慮を行うに当たっては、こういったこと に努めるべきだ」という倫理面のことも入れておいたほうがいいと思います。従業員 を啓発するとか、障害者理解という一般的なことは押さえておかないといけないと思 います。  それから、これはマネジメントですが、報告・連絡・相談で「ほうれんそう」と言 われていますが、これは知的障害者が働く場合でも、具体的にそのようなことを押さ えておくと、非常に働きやすいので、そういったことはマネジメントに入ってくると 思うのですが、一般的な精神は、前書き的に「事業主の責任等」という感じで押さえ ておけばいいのではないかと思います。  あと、差別が禁止される事項があるわけで、その事項に伴ってくる合理的配慮とい うのはあるのです。それは整理の仕方でありそうです。募集とか採用をして、採用し たら働きやすい環境ということになります。  ところが、昇進とか教育訓練のところは、先ほど平木委員からあったキャリアの問 題に関係するのです。この辺については、今日というわけではありませんが、差別の 事項と併せて議論をしておく必要があると思います。これをやると広くなりそうなの ですが、例えば昇進や教育訓練のところでは、具体的にあるのです。昇進も、正規雇 用と嘱託雇用ということで、昇進や配置も決まってきているので、これは契約の段階 で済むこともありますが、割合単純な仕事がずっとあって、そのことでもう少しやり 甲斐のある仕事をしたいという希望を持ってくるのです。知的障害者も一生懸命働い ていくのですが、割合単純な仕事が多いですから、もう少しやり甲斐のある仕事をやっ てみたいと。それはパートでも、短時間労働でもあると思います。そういった気持ち に対して、どう配慮するかということはありそうで、その辺の配慮は、長期的、継続 的に働いていくときには、必要な合理的配慮の観点かと思います。そういうことでお 辞めになる方もいるのです。不適応ということではなくて、もう少しやり甲斐のある 仕事がしたいというところでです。それは本人がそのように判断して、仕事を離れる というのは本人の自由なのかもしれませんが、その辺のキャリアのところではそのよ うに思います。  そうすると、議論が少し拡大してしまうので、とりあえず、今、分科会長のおっしゃ ったところと、前置きを入れるような形でまとめて、差別の各事項について、合理的 配慮としてそのようなものを掲げるようなことがあれば、少し議論しておくという進 め方はいかがでしょうか。  ○今野会長  私はその点については、このように考えています。例でいくと、昇進賃金というの は、働いたことに対するアウトプットです。報酬と言ってもいいです。働いた方は合 理的配慮をして、障害であることの困難を克服して、健常者と同じような条件にしま しょう。そしたら、本当は後は何もしなくていいのです。  そうすると、出口に対して一切配慮する必要はないのです。そうすると、昇進も、 配置も、賃金も、我々は何の議論もする必要はなくて、合理的配慮をしたにもかかわ らず、賃金が違ったら問題だという話になるだけです。だから、そこはあまり議論に ならないように思います。ただ、教育訓練は難しいと思って聞いていました。あとキャ リアもそうだと思います。このように思うのですが、いかがでしょうか。  ○副島委員  知的の部分で先ほど言われた昇進の問題がぶつかっています。仕事はマニュアル的 なもので、決められたものはできます。でも、例えば公務員になった場合に、必ず賃 金が上がっていくのです。賃金が上がっていったときにどのようなことを言われるか というと、「1つも仕事の内容は増えないのに、年数を経ただけで昇給していく。あ なたの給料だったら2人は雇える。」ということです。親とすれば、もう昇給はしな くてもいいという気持ちもあります。  ○今野会長  そういう差別なのですか。  ○副島委員  そうなのです。楽しく働いていくことが最優先であるのに、賃金が増えていくこと によって、周りから変な見方が起こってしまう現状があります。  ○岩村委員  難しい議論になってくるのですが、いまおっしゃったのは、どちらかというとハラ スメントなのです。結局のところ、そういうハラスメントを差別に入れるかどうかと いう、少し別の議論になります。  それと、いま分科会長がおっしゃったことで、差別との関係でいうと、教育訓練に ついては合理的配慮はあり得る気がします。つまり、あなたは身体障害者で、このよ うな訓練についてはそもそもできません。しかし、例えば何か工夫をすればできます ということであれば、それは合理的配慮をしないことによって、教育訓練へのアクセ スを阻害していることになるので、そこはあり得るのだと思うのです。  昇進はイメージしにくいのですが、昇進との関係で、何か新しい職責などが加わる ことについて、もし何か合理的配慮をすれば可能だけれども、しないと。イメージが すごく難しいのですが、論理的にはあり得るのかなと思います。では、どのようなも のがあるのかと言われると、具体的にはイメージしにくいのですが。  ○今野会長  今思い付いたのですが、昇進で合理的配慮があり得るとしたら、今まで1人作業を していて、今度は課長になったとします。課長になると部下が増えるので、コミュニ ケーションが発生します。そうすると、コミュニケーション手段さえ与えてあげれば、 課長の仕事ができる。そういうことであれば、合理的配慮ですね。よろしいですか。  ○岩村委員  そうです。  ○今野会長  でも、そういう例示というのは、我々の考えた作業遂行の範囲内で収まってしまう かなと考えるのですが、そういうことはあり得ますね。  ○花井委員  昇進で転勤というのは入りますか。  ○今野会長  ああ、転勤ね。  ○花井委員  転勤をすることが昇進のステップということで。  ○岩村委員  それは間接差別です。まさに男女雇用均等法と同じことで、昇進のためには転勤を しなければいけないということだと、本来は関係ないのかもしれないということで、 間接差別のほうの議論だということです。  ○遠藤氏(高橋(弘)委員代理)  皆さんほど知識が蓄積されていないもので、誤解があるようでしたらお許しいただ きたいと思います。合理的な配慮を考える場合に、当該労働者がどのような仕事をさ れるのかを前提に考えます。これは皆さん異口同音におっしゃっていまして、私もそ うだと思っています。ただ、そのときの仕事の提供の仕方が、個々の事業所、企業に よって、どのような形でマッチングさせるものを提供できるのかという部分について は、自ずと差があるのではないかと思うのです。  そうなったときに、あるところで与えられた仕事のルールについて、この方につい ては合理的な配慮の高さがここまでだったとして、しかしあるところで与えられた配 慮の高さについていうと、仕事の切出しがうまくできなかった部分もあって、もう少 し高めの合理的な配慮を与えないとできないという状況もあると思うのです。これは いずれの場合も、募集採用のところで事業主サイドに対して十分な情報が入ってきて、 それに対してどこまで対応できるかも公的なサポートも含めてでき得る手段があって、 初めて成り立つものだと思っているのです。  大きな流れの中で、差別か差別でないかという議論がある一方、ケース・バイ・ケ ースだということを考えていくと、これは強行法規的なものでない部分も含めて、ど う推進させていくのかを議論の中で考えるということであったとしても、事業主サイ ドからすると、萎縮的な部分は抱えざるを得ないということがあるのです。  そういったことの中で、先ほどこちら側の委員からあったように、時間軸というか、 継続的、段階的に柔軟にやっていくことを、どこまで法体系の中で許すような仕組作 りをしていくかが、キーポイントになるのかなと思っているのです。  今日紹介されている事例の中で、もう少し中身を見る機会があったのですが、推薦 されている企業が必ずしも最初からうまくいっているわけではないのです。その途中 の過程で、思ったとおりにいかないような場合があって、そのときには創意工夫をし て、皆さんで知恵を出し合って、もう1回やってみようというようなところから始め ているのです。  そういうところでいうと、段階的にどこまでやっていくのかという部分については、 もう少し広い目で見るような法体系を作ることが必要ではないかと思っています。  ○今野会長  それとの関係です。今日の資料2の1頁の「1 合理的配慮の内容の【基本的な考 え方】」に○が5つあります。特に前段の方はそうかなと思うのですが、経営でいう とやらなければいけないマネジメントプロセスが書いてあるのです。  どういうことかというと、合理的配慮をするとして、職場の状況も障害者もいろい ろで、個別性が非常に強い。したがって、どのような配慮が必要かを本人が要求して、 説明しましょう。それに対して本人が言えない場合があれば、第三者による支援の仕 掛けも作りましょう。それをベースにして、使用者と障害者が話し合いましょう。こ ういう仕事をしたらどうでしょうか。そのときに合理的配慮もこうしたらいいのでは ないか、そこの配慮の部分だけは、今議論したのです。うまくいかなかったら、そこ でもう一度フィードバックをかけて、今の体制がうまく回るような、相談体制も含め た推進システムのような仕掛けを作っておきましょうと。  今おっしゃられることは、そういうことをきちんとやっていれば、うまくいかなく てもフィードバックをかけられるように、きちんと推進体制をやっているということ であればいいかなという視点もあるかなと思います。  そういう点では、おっしゃられたことは、資料2の1頁の前半が、実質上関係して いるかなと思います。法律にするかはわかりませんが、その辺も少し観点に入れなが ら考えればいいかなと思うのです。  ○大島委員  確認です。資料2の1頁の4つ目の○に、「「合理的配慮」は、個別の労働者の障 害や職場の状況に応じて、使用者側と障害者側の話し合いにより、適切な対応が図ら れるものであるので、本来的には、企業の十分な理解の上で自主的に解決されるべき ものであるとの意見が大勢であった」とあります。これは男女雇用機会均等法の苦情 の自主的解決のような、努力義務をイメージしているのか。例えば苦情の自主的解決 というのは、男女雇用機会均等法の第15条にあるのですが、苦情処理機関等に当該苦 情の処理を委ねるとか、企業側としては、そのようなスタンスを考えておけばいいと いうことですか。  ○今野会長  まだ決まっていないですよ。  ○大島委員  大体そういったイメージなのですよね。  ○岩村委員  企業の規模によっていろいろだと思うので一概には言えないと思いますが、基本的 にここに書いてあることは、まず当事者間で、意見の交換と意思疎通を図ってもらい、 その上で合理的配慮としてどのようなことができるかを、その障害者、障害の状態、 職場の状況に応じてコンセンサスを作る努力をして進めてくれ、ということをいって いるに留まると理解しています。  ただ、これを法律に書いたときにどうなるかは、またちょっとあるのですが、もち ろん男女雇用機会均等法のようなメカニズムを作るということもあるでしょうけれど も、こちらは仕事なり作業ができるようにするにはどうしたらいいかという、話し合 いなりの場をもって、そこで話し合った上で、当事者間でやってくださいという趣旨 で、苦情処理というものまで作るかどうかというのは、そこはオープンだと思います。  苦情処理ということになると、合理的配慮ということで約束してやってみたけれど も、話が違うとか、やってみたらこれではできないので、もっとしてくれというよう なときが、苦情処理の問題かなというイメージです。  ここにもありますように、中間整理のときは、ある意味では柔かなステップを取り ながらやってきましょうと、法律家がこのようなことを言うと変なのですが、がちが ちの権利義務関係の中で最初から議論するのではないということが、1頁に書いてあ るとご理解いただければいいのだと思います。  それから、先ほどの議論にあったのですが、精神的な理念や倫理的な側面というの は、合理的配慮の中に書き込んでしまうと差別とリンクしてしまいます。相談や支援 もその面がやや微妙ですので、もし入れるとしても、合理的配慮の中に入れると差別 とリンクしてしまうので、そこは切り離して考えたほうがいいと思います。  ○今野会長  先ほどの使用者側委員のご心配と関係しますが、必ず障害者の要求や説明は聞く、 障害者ができなかったら第三者に言ってもらう、その次に話し合う。話し合って仕事 を決めて、お互いに配慮の中身を決める。これは一種のステップで、マネージメント ステップのようなものです。これがうまく回るように労使が話し合うように、配慮推 進会議のようなものを設けなければいけない。 つまり、そういう1つの仕組みがないと、これも合理的配慮に欠けると言われるの かどうか。そこはすごく心配されていると思います。この辺の論点というのはどうな のでしょうか。我々が合理的配慮というと、個々の職務の遂行を考えて、ここに設備 を入れなければ、配慮が足りないというような話なのですが、障害者の活用のための 仕組みも合理的配慮の範囲内に入るのでしょうか。  ○岩村委員  私のイメージでは、それは合理的配慮とは何かを決めていく上での手順なりの問題 で、論理的に詰めろと言われても困るのですが、直感的にはそれ自体は合理的配慮と いうことではないような気がします。  ○今野会長  でも、資料2の1頁はそういうことが書いてあるのです。どうするかは別にして、 少なくとも論点として挙がっているのは事実です。  ○鈴木委員  先ほど、使用者側の方がおっしゃったように、がちがちに決めてやらなければいけ ないのだということではなくて、本来は、「最近体の具合が悪くなってきたので病院 に行ってみたら、障害者になってしまった」と。「わかった、お前のいいように工夫 してやるからなみたいな」、そういう話の中で自然とできているのではないかと思う のです。それを固く言うと、通院するときは年休をくださいとか、それを給与に反映 するとかしないになってきてしまうだけのことで、中小という言い方がいいのかわか らないのですが、そういう日本人的な徒弟制度ではないですが、使用者と労働者の中 で人間味のある交流があったような気がするのですが、それがなくなってきて、ぎす ぎすしてくると、決めてくれないとできないでしょうということになってくるような 気がするのです。そこを一応話としては押さえておくけれども、そこまでぎすぎすし なくてということだと思うのです。  ここでいう合理的配慮というのは、「ちょっと工夫してみようか」とか、「こうい うことをやってみたらうまくいくのではないか」、というところから始まるのではな いかと思っているのです。  ○森氏(松井委員代理)  先ほど出たとおり、合理的配慮の問題の出発点は、障害者が会社でこういう仕事を やったときに、「こういうことをやっていただけませんか、一般の人と一緒にできな いのです」、という申し出をします。そうすると会社のほうで、まず拒否するか、受 け入れるかという形になります。拒否したときに、それが差別になるかどうか、私は そうではなくて、結果としてその障害者がやめざるを得なくなったとき、そこに初め て出てくるのだと思います。  だから、拒否する場合においても、過大な費用がかかるかどうかなど、いろいろと そこの点が入ってくるのです。そこはまず押えなければいけないのではないかと思い ます。  ○鈴木委員  私もそこが重要だと思います。費用がかかるから拒否されたというのであれば、公 が補償すべきだと思うのです。過度な金額負担というけれども、いろいろな補助制度 があるということだとか。でも、Aさんを雇用継続したり、採用するために、こうい う設備投資をしたいとか、このような人的配慮をしたいというときに、お金が無くて できないから、あなたは辞めてくださいというのは、違うと思うのです。それを補償 するのが公のような気がするのです。そういった助成金、補助金の制度はつくってい かなければいけないような気がします。  ○森氏(松井委員代理)  私が言ったのはそういうことではありません。助成は、国からの助成で、この中で も出すとなっています。それはそのとおりだと思うのです。だから、その会社だけが やるのではなくて、国の助成制度があるとすれば、それは当然考えた上での話です。  ○鈴木委員  いま助成の話が出たので、もう1つ加えて申し上げます。今後、納付金のプラス・ マイナスだけではいけないのではないかと思うのです。財源をどこに確保するかは別 として、合理的配慮にかかる部分の財源をどう確保するかは、今後の課題だと思って います。  ○今野会長  合理的配慮問題は難しいので、ブレインストーミング、勝手なことを言い合う、と いうことでやらせていただきました。これは事務局で議論を整理していただいて、今 日は費用の問題はあまりやっていませんので、次回はそれも含めてもう一度議論をし ます。  ○鈴木委員  調べてもらいたいことがあります。参考資料の中に、手話通訳が1回6,000円、点字 と違うので何頁と言えないのですが、1万7,000件という数字があります。そこに手話 通訳を1回派遣してとか、いろいろ書いてあるのですが、1万7,000件はトータルでこ のような内容だと思うのですが、この内容がどのようなものかを知りたいなと。  ○今野会長  事務局に聞いてみましょう。  ○障害者雇用対策課長  平成20年度の障害者介助等助成金は、実績ベースで1万7,182件です。多いほうから 順番に言いますと、業務遂行援助者の配置が大半で、1万4,880件です。次が職業コン サルタントの配置で709件です。職場介助者の配置は560件です。重度中途障害者等職 場適応助成金が400件です。多いものは以上で、ほとんどが業務遂行援助者の配置です。  ○鈴木委員  そうすると、いちばん多い項目については、障害別にいうと、あらゆる障害が含ま れるのですか。  ○障害者雇用対策課長  すみません。障害種別のデータはないので、これは全障害を含んだ件数です。  ○鈴木委員  そうなんだというふうに、もっと何か…。  ○今野会長  整理して次回質問してください。  ○鈴木委員  はい。  ○今野会長  この辺で終わりにさせていただきます。次回について事務局からお願いします。  ○障害者雇用対策課長  次回は11月11日(水)の10時から12時までで、厚生労働省省議室で開催します。 よろしくお願いします。  ○今野会長  本日の議事録署名は、労働者代表は花井委員、使用者代表は大島委員、障害者代表 は副島委員にお願いします。終わります。ありがとうございました。 〈照会先〉 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 調整係 〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2 TEL 03(5253)1111 (内線5783) FAX 03(3502)5394