09/10/21 第8回院内感染対策中央会議議事録              第8回 院内感染対策中央会議 日時 平成21年10月21日(水) 14:00〜 場所 中央合同庁舎第7号館(金融庁内)                       11F 共用会議室 1114 ○事務局(清) ただいまから第8回「院内感染対策中央会議」を開催します。私は厚生 労働省医政局指導課医療放射線管理専門官の清です。構成員の皆様方には、本日はお忙し い中ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。開催に当たりまして、最初に指 導課長の新村からご挨拶申し上げます。 ○新村指導課長 指導課長の新村と申します。本日はお集まりいただきましてありがとう ございます。院内感染対策につきましては、安全で安心な医療に関する重要な事項と考え ていまして、私どもとしましても、医療従事者に対する講習会ですとか、サーベイランス 事業あるいは地域の支援体制整備のための院内感染対策地域支援ネットワーク事業、こう いった事業など、いろいろな施策を講じてきております。また、平成19年に施行されまし た改正の医療法におきまして、医療安全対策の一環として、院内感染対策についても医療 機関の責務として明確化されたという経緯がございます。  しかしながら、一般の病院に限らず特定機能病院におきましても、まだ院内感染事例な どが散見されるというところで、今後、より一層の努力が必要という状況にございます。  今回は、特定機能病院で発生した多剤耐性アシネトバクターの集団感染事例を取り上げ て、感染研の先生方にご協力いただきまして、ご紹介いただき、またこういった事例の問 題点を検証なり、今後の対応についてご議論いただければと思っております。  限られた時間でありますけれども、活発なご議論を賜ればと思っておりますので、よろ しくお願いいたします。 ○事務局(清) 各構成員のご紹介をします。お名前を五十音順にご紹介します。国立感 染症研究所細菌第二部長の荒川宜親構成員です。京都大学医学部付属病院副病院長の一山 智構成員です。東京医療保健大学医療情報学科学科長の大久保憲構成員です。東京逓信病 院長の木村哲構成員です。国立国際医療センター研究所感染症制御研究部長の切替照雄構 成員です。富山県衛生研究所長の倉田毅構成員です。日本看護協会常任理事の洪愛子構成 員です。東京医療保健大学学長の小林寛伊構成員です。慶應義塾大学病院感染症看護専門 看護師の高野八百子構成員です。  本日、国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦構成員、東北大学大学院医学 系研究科教授賀来満夫構成員からは、ご欠席の連絡をいただいています。  また、参考人説明者として国立感染症研究所感染症情報センターより松井珠乃主任研究 官、山岸拓也研究員、国立感染症研究所細菌第2部より山根一和主任研究官、筒井敦子院 内感染担当サーベイランス担当官、松井真理研究員にご臨席いただいています。  写真撮影などはこれまでとさせていただきますので、ご協力をお願いします。  小林座長、よろしくお願いします。 ○小林座長 皆様、お忙しい中ありがとうございます。先ほどご紹介いただきました小林 です。本日は第8回です。構成員の皆様方のご協力により、検討を円滑に運営していきた いと思いますので、どうぞよろしくお願いします。  議事に入る前に、本日の議事並びに資料に関して、取扱いについてのルールを確認して おきますので、事務局からご説明をお願いします。 ○事務局(清) 運営に関して予めお断り申し上げますが、本会は公開で行い、議事録に ついても、事務局でまとめたものを各構成員にお目通しいただいた後、厚生労働省のHP で公開することとしますので、この点に関してご了解お願いします。  資料の確認です。本日ご用意した資料は、配付資料の一覧のとおりですが、印刷ミスが ありまして、一部の資料で大きな番号が抜けています。資料1-1と資料1-2はいいのです が、資料1-3に相当する5頁の「福岡大学病院での多剤耐性Acinetobacter baumannii分 離症例の集積における実地疫学調査報告書 要旨」です。それから、資料1-5に相当する 19頁で、「多剤耐性アシネトバクター国内発生状況概況資料」です。資料2-1、資料2-2、 資料2-3はそのとおりで、資料3-1Aは27頁の「院内感染対策地域支援ネットワーク事業 について」です。資料3-1Bが「ネットワーク相談事業採択都道府県一覧」です。資料3-2 は小林構成員の提出資料の「中小病院(300床以下)支援感染制御ネットワーク(案)」で す。欠落等がありましたらお申し出ください。 ○小林座長 事務局から、今日の議題についてご説明をお願いします。 ○事務局(清) 今日の本題になりますが、特定機能病院、福岡大学病院で発生した多剤 耐性アシネトバクター・バウマニによる院内感染事例についての説明です。 ○小林座長 これは議題1で、「特定機能病院で発生した多剤耐性アシネトバクター・バウ マニによる院内感染事例について」です。事務局から内容についてご説明をお願いします。 ○事務局(清) 資料1-1です。概要の資料です。医療機関の名前、集団発生の状況です。 昨年末から本年初頭にかけての事例です。多剤耐性アシネトバクターという、国内では比 較的稀とされている多剤耐性菌による集団発生26名が確認され、そのうちの4名がお亡く なりになりました。ただし、菌と死因の因果関係は不明ということです。  事案の経過です。イニシャルケースになる韓国での低血糖意識消失発作で入院した患者 が持ち込んだようです。その方が最初にあり、それから約1カ月半後の12月1日に、当該 病院で多剤耐性アシネトバクターの散発があることを病院は認識しました。病院で臨時会 議が開催されてはいるのですが、結果からいうと、この足並みが遅く、病院の対応が遅れ ているうちに広まってしまい、病院が所管の保健所に報告、立入検査になりました。それ から厚生労働省に報告が上がってきました。より詳しいことは、このあとの説明にお任せ します。  事後の対応です。福岡大学病院での調査、外部委員を含めた対策委員会が開催され、細 かい調査、指摘、改善が行われました。厚生労働省としては、本事案が報道された直後に、 事務連絡で情報提供を行うとともに、この菌による院内感染防止対策の徹底を図るよう、 注意喚起を行いました。資料1-2はそのときの事務連絡です。説明は省略します。 ○小林座長 いまご説明いただいた事例を受けて、現場の福岡大学で実地疫学調査を行っ た1人である、国立感染症研究所感染症情報センターのFETPの山岸研究員から、調査の概 要について説明をいただきます。 ○山岸研究員 国立感染症研究所のFETPの山岸です。プロジェクターを使ってご説明しま す。資料は1-4です。  背景です。発端は意識消失発作と、その後の遷延する昏睡で韓国で入院していた日本国 籍の66歳の男性が、2008年10月20日、福岡大学病院の人工呼吸器科でICUに入院されま した。入院した当日に提出された痰から、日本では珍しい薬剤感受性のパターンを示す多 剤耐性のアシネトバクター・バウマニが検出されたことから始まりました。12月に入って 7名の患者から菌が検出され、当院が集積を探知しました。  病院では、環境の調査等の対策が取られましたが、1月に入ってからも症例が続くとい うことで、病院は1月20日に保健所に報告し、事例が明るみになりました。そして、福岡 市から要請を受け、1月28日に我々が調査に入りました。  調査でわかったことです。今回の症例定義を、「2008年10月1日から2009年2月10日 までに、福岡大学病院の入院歴があり、カルバペネム(イミペネム・メロペネム)・アミカ シン・レボフロキサシンの3剤に耐性のAcinetobacter baumannii(MRAB)が福岡大学病 院細菌検査室にて、培養検体から検出された患者」としました。  そして、この症例は臨床検体を出された人以外に、ERのICUでは、週1回痰のスクリー ニング検査がされていました。そのスクリーニング検体と、今回の事例を受けて、痰、創、 便に関して、患者にスクリーニングが行われたので、その結果も含まれています。  合計で26名が症例として見つかりました。その基本情報です。性別は、男性17、女性9 です。年齢は、中央値が60歳、範囲は1歳から80歳に及んでいました。陽性検体を提出 されたときの入院の病棟はER・ICUが22で、最も多かったです。提出された検体は、痰が 20、創が7、尿が2、便が2でした。入院時の診療科は、ERが23、形成外科が3でした。  こちらが流行曲線です。これは横軸に初回の陽性検体が提出された日、縦軸に症例数が 示されています。青いバーが痰、黄色いバーが創、緑のバーが痰と創の両方から検体が出 されたものです。これを見ていくと、症例が急速に見つかってきているのがわかります。 最初の3例目までは、2週間置きぐらいに、ゆっくりとしたペースで症例が見つかってき ているのに対し、後半は発見がかなり密になってきています。そして、後半は特に創から の患者が目立っています。  症例の情報をもう少し詳しく見ていきます。2つのカラムになっています。いちばん左 に患者に関係した因子、真ん中が全体の26例の情報、右端がER、ICUに入院したER入室 歴のある21名の方の情報です。  これを見ていくと、ERに入った方、人工呼吸器管理、動脈ライン、尿道カテーテルの使 用、経管栄養などが目立っていました。ERに入った方は、多くは痰から菌が検出されてい ました。  ER、ICUに入っていない方が5名いたのですが、そのうち4名が形成外科の患者でした。 残りの1名の心臓血管の方も、ERから転棟してきたMRAB陽性の症例の方と1週間同室でし た。菌の検出の時期が、アウトブレイクの後半に集中しています。  環境調査、分子疫学的解析の結果を示します。環境調査の結果です。アシネトバクター 属菌は環境に非常に根強く存在するので、今回陽性症例が関係したと思われる器具あるい は環境というところから、広範囲に培養が行われました。患者の身の回りや包交車などが 検査されて、いちばん右端に菌が検出された部位あるいは物が示されています。ここで注 目すべきは、消毒済みのバイトブロックから菌が検出されたということです。  これが問題のバイトブロックで、緑のゴム系のものが再利用で使われていました。傷や 内腔から菌が検出されていました。また、聞き取り調査等から、口腔の吸引をするヤンカ ーカテーテルも、バイトブロックと同じように洗浄、消毒をされて再利用されていること がわかりました。  こちらがPFGEの結果です。全患者26名とバイトブロック、そして転出された方1人の 検体すべてのPFGEのパターンが、同一の遺伝的背景であることが、ここで確認できました。  対策です。対策を時系列で見ていきます。10月20日に最初の症例が見つかってから、 12月に病院が動き出すまでに、1カ月と少しかかっています。12月に入って集積が探知さ れ、会議が開かれ、1月に入って、原因と疑わしいバイトブロックの個別化、ヤンカーカ テーテルの個別化が行われ、1月後半にERの受入れ制限、形成外科の受入れの制限と手術 の中止が行われました。  解析は、ERで痰を中心に広がったリスクを検討する症例対象研究を行いましたが、今回 は省略します。  次に考察です。まずは、ER、ICUでなぜ菌が広まったのかです。1つには、海外からの持 込みがあったことがあります。そして、人工呼吸器の装着に関連した伝播が起こっていっ たと思われます。バイトブロックやヤンカーカテーテルなど、口腔ケアに用いられていた 器具の消毒や洗浄に問題があった可能性もあります。また、口腔ケア自体が、何かしら誤 嚥をしていた可能性があります。  ERでは、MRABが接触予防策を取るべき菌だという認知がされていませんでした。また、 対応の遅れも否定できません。菌の分離菌の解析が遅れていたり、初期段階での症例情報 の解析が、マンパワーの問題もあってか、十分にはされていませんでした。  次に、ERを越えてなぜほかの病棟で広まったかです。1つには、ERから医師、患者自身 が原因で菌がほかの病棟に持ち込まれた。また、ほかの病棟でも、包交時を中心に、予防 策が不十分だったせいか広まってしまったという問題があります。また、ERと同様に、MRAB の認識がされていませんでした。そして、MRABがERで広がっているという情報が、院内 で十分に共有されていませんでした。  全体像に関してですが、今回は発症というより保菌であったために、症例数は過小評価 されている可能性があります。また、発症の有無、予後に関しては、検討していません。  リスク因子の検討については、定着や保菌の問題ですが、菌を獲得したタイミングが不 明です。創に関しては、十分にリスク因子の検討ができませんでした。環境は、疑わしい 器材等もあったのですが、培養からは菌が見つかっていませんでした。  ここからは参考です。福岡市では、転出した方に対しての地域での調査が行われました。 ERから他院へ転院した人が94名、そのうち82名に調査が行われて、培養は50名で採られ ました。このうちMRABが検出された人はいませんでした。  また、福岡大学病院では、これらを受けて院内感染対策組織の強化、多剤耐性菌の監視 体制の強化、器材の洗浄・消毒などの取扱いの改善及びその責任の明確化などが、いまも 行われています。以上です。 ○小林座長 続いて、多剤耐性アシネトバクターの国内発生の状況について、筒井研究員 からお願いします。 ○筒井担当官 これまで多剤耐性アシネトバクターがどれだけ稀かというデータは限られ てはいるのですが、我々が事務局となって行っている厚生労働省の院内感染対策サーベイ ランス事業で、2008年の多剤耐性アシネトバクター属の分離患者の割合を見ています。資 料1-5の「結果」の下のほうにありますが、0.24%で、かなり低い割合でした。その中で、 小規模のアウトブレイクがあったと想定されたのは、1医療機関のみとなっていました。 ○小林座長 ご質問、ご意見があればお願いします。 ○切替構成員 多剤耐性アシネトバクター・バウマニの定義は国内で決まっているのでし ょうか。  もう1つは、環境の調査をするときに、いろいろな雑菌があると思うのですが、多剤耐 性アシネトバクター・バウマニを有効に分離するような工夫をされたと思うのですが、ど のような選択培地で採ってきたのでしょうか。 ○筒井担当官 まず、多剤耐性アシネトバクターの定義についてです。世界的にはいろい ろな基準があるようなのですが、私ども院内感染対策サーベイランス事業では、資料1-5 の「集計方法」にあるように、微量液体希釈法で、カルバペネム(イミペネム・メロペネ ム)のウイルスのいずれかに耐性で、あとはアミノグリコシド(アミカシン)が耐性、フ ルオロキノロン(レボフロキサシン、シプロフロキサシン)のいずれかに耐性と定めてい ます。 ○切替構成員 これはMICも決まっているのですか。 ○小林座長 資料1-5の19頁にあるものですか。 ○筒井担当官 はい。MICは載せてはいないのですが、CLSIの2007の基準に則って見てい ます。 ○切替構成員 そうすると、普通の病院の検査室でも、一定の定義をきちんと持っておら れて、検査技師が、ある病院でアシネトバクター・バウマニが出て、うちで分離されたと いうことが言える状況になっているのでしょうか。 ○筒井担当官 結果のところに書いていますが、我々のサーベイランスの参加医療機関の ほとんどにおいて、アシネトバクター属の分離が見られています。ただ、同定に関しては 難しい面もあるので、属としては同定できているところはほとんどだと思います。 ○切替構成員 多剤耐性緑膿菌の場合は、かなり細かく検査技師が、「このような基準で検 査した場合に多剤耐性緑膿菌ですよ」と言えるのですが、いまの現状で、病院の検査室で、 多剤耐性アシネトバクターはこうだということが言える状況になっているのかを知りたか ったのです。 ○小林座長 一山先生、荒川先生からはございますか。 ○一山構成員 それぞれの感受性同定はまず間違いないと思います。その定義が、多剤耐 性として院内感染対策上、警鐘を鳴らすべきという認識が、この基準をそれぞれ持ってい るかというと、それは難しいと思います。  臨床で、これも耐性だなと。例えばカルバペネムとか、こういうのは厄介だと遭遇した ら思うでしょうけれども、それが、検査室から直ちに感染対策の警鐘を鳴らす基準として 浸透しているかは不明だということだと思います。 ○小林座長 それは保菌状態か、感染症が多剤耐性菌で起こっているかを含めての意味で すか。 ○一山構成員 含めてというよりも、検査室から見た場合、これは多剤耐性のアシネトバ クターだという条件。それぞれの感受性検査は同定も問題ないのでしょうけれども。 ○小林座長 現場の判断が必要だということですね。 ○荒川構成員 いくつかの病院から、アシネトバクターで多剤耐性のものが見つかったと いう相談はあります。どのような基準でその病院が多剤耐性と判定しているかは、多少ぶ れがありますけれども、一般的には緑膿菌と同じように、カルバペネム系とアミノグリコ シドとフルオロキノロン系に、耐性を獲得したものが出た場合は、多剤耐性と理解してい ます。  ただ、2剤耐性とか、カルバペネム耐性のアシネトバクターということでも、それは単 剤耐性とかありますので、病院によっては、そういうものが出た場合にも相談があって、 解析をしてほしいという依頼はかなりの数が来ています。 ○山岸研究員 検査はすべて福岡大学病院の検査室でやってもらったのですが、自分が伺 った話では、滅菌棒を生理食塩水に入れて、環境を拭って、拭ったものを血液寒天培地と DHL寒天培地に溶く。そしてその綿棒をDHIVで3日間増菌させて、増菌によっての培養の 確認もされていたと。それをまた血液寒天培地にという形でやっていたそうです。 ○小林座長 さっきご説明いただいたパルスフィールドは、お持ち帰りになって感染研で おやりになったのですか。 ○山岸研究員 はい。PFGのほうは、検査室から菌タブを細菌第二部に送っていただいて、 細菌第二部でやっていただきました。 ○小林座長 検査室の同定と、アウトブレイクかどうか。感染ではなくて、今回は保菌が かなりあるというお話でしたが、クロスコンタミネーションが起こっているかどうかの判 断が、あとでどうアウトブレイクを評価していくかということの今後の課題になっている と思うので、この問題について何かあれば。 ○切替構成員 私が質問した意図は、私たちも環境調査をしたことがあるのですが、ほか のいろいろな環境菌が分離株から出てきます。特にアシネトバクターをターゲットとした 場合に、よほど工夫しないと、いろいろな菌が混じっている環境からアシネトバクター・ バウマニを分離するのは、かなり難しいのではないかという危惧がありました。  結論として、滅菌したバイトブロックから出た理由は、バイトブロックにはたまたまほ かの菌がいなくて、アシネトバクターだけが選択的に残っていたので出たのではないか。 つまり、本当の環境中のソースがどこかについて、少し疑問を感じたので質問しました。 ○小林座長 それもどのようなルートかいろいろな可能性をご説明いただいて、かなりい ろいろな可能性があると思いますが、それも議論の対象になると思います。  いまバイトブロックの話が出ましたが、リユースアブルのものはどう処理されていたの でしょうか。それがコンタミネーションがあったのではないかという話がありましたが。 洗浄などが不十分で、バイトブロックから出たのではないかという。 ○山岸研究員 福岡大学病院のほうでは、1次洗浄をしたあとに0.01%の次亜塩素酸ナト リウム。少しお待ちください。 ○小林座長 またあとでお願いします。少し先に進めます。 ○大久保構成員 もうすでに座長も触れておられましたが、全体の症例26例の中で、定着 か感染症なのかが明らかになっていれば、その比率や数を教えていただきたいと思います。  もう1つは、このアシネトバクター・バウマニが、どのようなところに生息するかです。 それを考えるときに思い出すのは、たしか2002年に英国のバーミンガムの病院のICUでア ウトブレイクの報告があり、12名の患者から分離されて5名がなくなりました。環境表面、 ベッドリネン、カーテンなどから分離されたという報告があります。カーテンという、人 は触れるけれども、そんなに湿潤していない場所に、アシネトバクター・バウマニが長期 間生息しているか。乾燥した場所での生息について、ご存じでしたら教えていただきたい のです。 ○小林座長 1例目はコロナリゼーションですか。 ○山岸研究員 定着と感染の検討はしていないので不明です。 ○松井研究員 評価がなされていませんでした。 ○大久保構成員 ほかにもいくつかの菌は出ていたわけですか。 ○山岸研究員 はい。緑膿菌等が出ていました。 ○大久保構成員 微生物学的な性質についてご存じであれば、お伺いしたいのですが。 ○荒川構成員 アシネトバクターはブドウ糖非発酵菌の仲間になりますが、緑膿菌と比べ て、概して乾燥した状態で強いと言われています。増殖や生息は湿った環境でしますが、 乾いた状況でもかなり長く生き延びると文献的には報告されています。ただ、うちの研究 所で、どのくらい乾いた状態で生きているかの実験はしたことはありません。 ○切替構成員 アシネトバクター・バウマニは熱に強いと言われています。緑膿菌よりも 至適温度が広く、例えば44度くらいでも生き延びます。 ○小林座長 この結果でも、ナースコール、テーブル、ベッド柵など、ドライな周辺の表 面からかなり分離されているのですね。 ○大久保構成員 ブドウ糖非発酵菌の場合には、アウトブレイクが起きた場合にはウエッ トなところを中心に調べるのですが、この場合にはそういうことではなくて、あらゆる環 境表面が対象となると考えられるのですね。 ○小林座長 荒川先生もご指摘のように、ドライな環境でMDRP以上、長く生きるという報 告も最近なされていますし、かつて製氷器の氷から、クロスコンタミネーションが起こっ たという報告もあったと思うので、かなり広範囲に患者環境にいると考えられるわけです ね。一山先生、どうですか。 ○一山構成員 そうでしょうね。 ○荒川構成員 もともと環境菌ですから、かなり過酷な条件に耐えている菌です。 ○一山構成員 ご存じのように、肺炎、呼吸器の感染、あとはカテーテル関係も重篤なも のがあります。 ○小林座長 環境に広く居る。 ○大久保構成員 そういう菌であればこそ、コロナリゼーションかインフェクションかを きちんと区別しないと、判断を混同するのではないかと思います。 ○倉田構成員 この26例で亡くなった方はいるのでしょうか。いたならば、きちんとした 解剖がされているのでしょうか。いまのインフルエンザでも、鼻から出たからインフルエ ンザで死んだと。こういう感染の診断というのは、開けてみたら実は全然違う病気だった ということはいくつも経験しています。  インフルで死んだのであれば、インフルで死ぬだけの原因がないと、そう言わないので す。がんもそうです。日本はそういうところが非常いい加減なのです。鼻から出たらイン フルで死んだという話ではないので、そこはどうなっているのでしょうか。みんな治って しまったのか、亡くなってしまったのか。亡くなったとしたら、どのような侵され方をし ていたかの追及はされているか。これは基本的な問題なのですが、もしわかれば教えてい ただけますか。 ○山岸研究員 いまのご質問ですが、転帰がどうなったかということです。26名のうち4 名は亡くなられていて、解剖はされていません。そして、感染と定着との区別は臨床で難 しかったというのはありまして、我々は検討ができなかったということもありました。果 たして、それが原因だったのかどうかは、我々の調査からは検討できませんでした。 ○倉田構成員 退院された方はいるのですか。 ○山岸研究員 退院された方もいます。 ○倉田構成員 まだ入っている方もいるのですか。 ○山岸研究員 数週間前に、全員が病院からいなくなりました。 ○小林座長 いまのことと関連して、保菌者として、エリミネーションはどのような対策 を取られたのですか。除菌に対する対策は。 ○山岸研究員 対策はなかったです。 ○小林座長 自然に任せると。 ○山岸研究員 伝播予防だけです。 ○小林座長 特別な対応は取られていない。 ○山岸研究員 はい。 ○小林座長 アイソレーションはしているわけですか。 ○山岸研究員 はい。 ○小林座長 数が多いですから、コフォートアイソレーションですか。 ○山岸研究員 はい。そうです。最後までコフォートされていました。 ○小林座長 感染とコロナリゼーションと、今年の厚生科学研究の中で、菌株別の特定を どうするかを課題としているのですが、アシネトバクターの場合には非常に難しいので悩 んでいるところです。 ○一山構成員 臨床的にいちばん重要なのは、26名のうちの喀痰の方です。この方は肺炎 があったか否か、レントゲン写真を含めての臨床症状です。それがあったら、果たしてそ れが起炎菌かという、2つの順番でいけばいいのかなと思います。 ○小林座長 例えばMRSAであれば、MRSAが単独で分離されたとか、ドミナントで分離さ れて、それで呼吸器の症状があれば、MRSAが原因となっている呼吸器疾患だという判断で よろしいのですか。 ○一山構成員 そういうことになるのでしょうね。培養の結果、レントゲン写真、そして 治療経過との矛盾しない菌量、写真等の変化です。  もう1点ですが、除菌は有効された条件ですか。 ○小林座長 臨床の立場から高野構成員からいかがですか。 ○高野構成員 ちょっと違うかもしれないのですが、多剤耐性ではない一般的なアシネト バクターの検出と、多剤耐性の占める割合の変化というのは、何かあったのでしょうか。 ○山岸研究員 福岡大学病院での過去のアシネトバクターの状況ですが、毎年病院全体で はアシネトバクター・バウマニは50件から70件検出されていました。このうち、1剤耐 性と2剤耐性が、30〜40%の割合で見られてはいたのですが、3剤の耐性の菌は極めて珍 しい状況で、2006年から見ると0件でした。 ○小林座長 荒川構成員、厚生労働省の検査室側から見たサーベイランスでは、かなりあ りますか。 ○荒川構成員 そうですね。全体の中の占める割合は、前述する事業がいちばん数が多い ので、それで見ますと、先ほど筒井から紹介しましたように、全体の1万4,558人の患者 から出る中で、35名が多剤耐性アシネトバクターです。19頁の下のほうにあります。 ○小林座長 これが全国的な分離頻度と考えていいわけですね。nが非常に多いわけです から。 ○荒川構成員 平成13年に私のほうで、250株ぐらい調べたところでも、0.38ぐらいでし たので、この平成13年から比べて、平均的にはそんなに増えてはいませんが、一部の地域 や施設では増えているところがあるという理解です。 ○高野構成員 それで、この問題の期間の検出率というのは、全国平均と比較しても異常 な数字ということですか。 ○山岸研究員 全国平均は、先ほどの0.2とか0.3なので、今回、2008年を見ると1年だ けでも61件だったのですが、そのうちの20何件というだけでも、かなりの割合になって います。 ○高野構成員 もう1つは、環境調査をいろいろされているのですが、清拭車とか、患者 の使う濡れたタオルなどの検査はしているのでしょうか。清拭車が冷めかかっているとき に培養採取したところアシネトバクターが検出されました。他のグラム陰性桿菌に比べる と温度変化や環境に強いのかなと思っています。 ○山岸研究員 今回、患者の回りはやっていますが、病院から出た環境調査報告では、清 拭後のタオルと清拭前のタオルとの検査は行われていません。 ○高野構成員 消毒薬も耐性だと思うのですが、患者のベッド回りにあるような手指消毒 薬、患者に直接使用する消毒薬などで、濃度を薄めたような状態で使われているものはあ ったのでしょうか。 ○山岸研究員 患者の回りにあるようなものではありませんでした。手指消毒薬も一般の 市販剤が置かれていまして、普通に使われていたと思います。 ○小林座長 高野構成員のところでは、感染症として問題になったことはありますか。 ○高野構成員 ありません。ただ、清拭車の管理方法が問題ではないかと思い、対策の一 つとして培養採取したところ、検出したのですが、予想していませんでした。 ○小林座長 木村先生から何かありますか。 ○木村構成員 この大学でどのような調査をされたのか、よく理解できていないのですが、 普通は内部調査委員会で、個々の症例について、それが感染症だったのか、保菌だったの かを検討したり、死因と関係していたのかを厳密に検討するはずだと思うのですが、その 辺の状況がどうだったのかがよくわからなくて、福岡大学はどのような対応を取られたの でしょうか。 ○小林座長 その辺の情報はお持ちですか。 ○山岸研究員 死因の検討はされてはいません。そして、我々の入ったあとには、先ほど 示したような対策を一緒に取っていく形で、対策を取られていました。 ○洪構成員 死亡された方が4名いたということですが、その方たちは検体としてはどこ から分離されたのですか。 ○山岸研究員 全員痰からです。 ○洪構成員 肺炎を併発していたかまでの診断はされていないのでしょうか。 ○山岸研究員 我々がカルテの記載から見た感じでは、積極的に肺炎だと思われるものは それほど確認できませんでした。ただ、感染と清拭は臨床の先生たちがその場でやったも のをあとから見ることしかできなかったので、定かではありません。 ○小林座長 一緒にご検討いただきたいと思うのですが、資料の1-2ですが、厚労省がこ れを踏まえてすぐに通知を出しています。これに関してご説明はありますか。 ○事務局(清) これに関しては、そんなに情報が多くない中での話だったので、あまり 詳しいことは言えていません。保健所の報告も別添で付けましたが、その段階では、国内 で少し変わったものが出たので、こういうものは感染症法の報告義務のないものですから、 潜んでいたらよくないということで、まずは世間に向けて声を出したというところです。  そのあとで、何施設からか、うちでも出ましたという連絡が直接きたり、厚生局経由で きたりしました。合計で4件くらいあったと思います。 ○小林座長 木村先生の先ほどのご発言は、いくつかのアウトブレイクに関連しておられ て、その原因追及にかなりご苦労されてルート等を究明されてきたので、今回のことに関 しても、あのようなご意見をおっしゃったのだと思います。  この通知の消毒については、低水準にも適用があると書いてあります。高野さんが先ほ ど消毒薬について言及されましたが、何かありますか。 ○山岸研究員 消毒薬の現状ですが、バイトブロックは救命救急センターの中で、水道水 で1次洗浄を助手がやって、そのあとに複数に加えているものを1つのトレーに入れて、 それが0.01%の次亜塩酸ナトリウムで、時間は30分から60分間の処理をして、乾燥させ て、個人の特定をしないで再利用をしていたということです。 ○小林座長 それだけの処理をしていれば、それでちょっと残っているというのは考えに くいので、あとでどのような扱いをしたか、ハンドリングの際にクロスコンタミネーショ ンが起こった危険性も考えなければいけないかと思うのですが、大久保先生、いかがです か。 ○大久保構成員 次亜塩素酸の濃度が100ppmで30分というと、これは哺乳瓶の消毒とほ ぼ変わらない対応ですから、濃度的には少し問題があると思います。もし有機物が十分に 取れていなければ効果はなくなってしまう可能性があるので、消毒薬の濃度から考えると、 少し濃度不足という気がします。 ○高野構成員 水道水の洗浄のときに、例えばブラシで内腔を洗ったとか、外側を手で洗 ったのか、ただ水道水で流したのか、その辺の状況はどうだったのでしょうか。 ○山岸研究員 水道水でブラシで洗ったと伺っています。ただ、先ほどお伝えした緑のバ イトブロッカーは傷があって、ブラシで内腔を完全にはなかなか難しいのかなという印象 がありました。 ○大久保構成員 粘膜に触れますので、セミクリティカルとなると高水準消毒薬もしくは 80℃で10分以上の熱、最低そこまではやる必要がありますね。 ○一山構成員 バイトブロックというのはリユースなのですか。 ○小林座長 例えば大阪大学の朝野先生から報告のあった経食道エコーも通常のことをし ているのですが、決められた。いわゆる傷が付いて、そこに菌が迷入してしまうと、なか なか取れないことがあるので。 ○大久保構成員 熱を使うしかないですね。 ○小林座長 これはそんなに値段が高いものなのでしょうか。ディスポにしてしまうとい うことはないのですか。 ○一山構成員 私もディスポのものがどのくらいするのかわかりませんが、先生がご指摘 のように、リユースしていれば傷は付くと思うのです。 ○小林座長 硬質ゴム的なものでできていますから、どうでしょうか。シングルユースの バイトブロックは使われていますか。 ○高野構成員 シングルで使っています。過去に同じ患者に何回か使う際に、繰り返し使 っていたことはあるようです。シングルにしている理由は、これはシングルユースだから ということよりも、現場で消毒をしたり、洗ったりする管理のほうが手間がかかるから、 捨てているということです。 ○小林座長 そうですね。比較してですね。洪先生、全体的にどうですか。 ○洪構成員 バイトブロックはシングルユースのものもあれば、リユース可能なものも多 く使用されています。実際に現場で、見た目はそんなに汚れていないということで、たぶ ん傷が付いて汚染が除去しにくいということがあるのですが、そこを十分に理解して使っ ているようにようには思えないです。ただ、リユース製品を繰り返し使う場合も、先ほど 大久保先生がおっしゃったように、適切に熱処理を加えるとかしていれば、そんなに問題 にはならなかったのだと思います。 ○大久保構成員 構造的には簡単なものだから、洗うのもそう難しくないです。  洗い方ですが、漬けてあるときに動かし、中を液が移動するようにブラッシングしない と適切に洗えないのです。いろいろな培養のものを洗うことを考えたらそうです。まず浸 漬しただけでは駄目です。 ○洪構成員 例えば酵素系洗浄剤に浸漬した後、内腔といってもかなり大きな内腔なので、 洗えないことはないのかなと思います。 ○大久保構成員 そうではなくて、事前に消毒薬の入っているところで、中が動いている 状態でないと取れないと思うのです。 ○小林座長 いずれにしても、実際にどのような洗い方をしているのかを見ないと、ただ 洗って乾燥させただけだと、いいときも悪いときもあるだろうと思うのです。いままでの 議論も踏まえて、その対応というか、議題2の「事例を受けた今後の院内感染の施策に関 して」を、この問題を中心としてとなるのでしょうか。事務局からご説明をお願いします。 ○事務局(清) そういう器材の消毒の辺りで、小林先生がかつて監修されて作られたよ うなガイドラインがあるとは思うのですが、うちに入ってくるいろいろな感染の事例につ いて、器材に対する考え方は、医療従事者によって差があります。やはり気をつけるべき ものに関しては、行政側から出すのがいいのかどうかは別問題として、特にこういうもの には注意されたいとか、こういう病原体には注意されたいといった注意喚起については、 専門家の先生でおまとめいただけると、非常にありがたいと思います。 ○小林座長 資料は特にないのですか。 ○事務局(清) ないです。 ○小林座長 これに関して荒川先生から何かありますか。 ○事務局(清) 小林先生、もう議題2に入られていますか。 ○小林座長 はい。 ○事務局(清) 失礼しました。器材の話は置いておきまして、もう1つの感染拡大の原 因になっているのは、報告の遅れです。初期に気づいてはいても、内部で、もぞもぞして いるうちに気がついたら広がっているケースが実際に多いです。そして、いま法令上での この辺の院内感染に対する報告義務は、もちろん感染症法に則った形での報告義務はある わけですが、それ未満のものに関しては、そういう重大な院内感染が起こった際には行政 機関に相談するよう努められたいという、いまはそういう努力目標みたいな形でしかなく て、明示がされていないということになっています。それを2-2の資料です。 ○小林座長 ちょっと議題が混ざったような形になりましたが、いま議論をしていまして、 どこまでが本当に感染になっているのか、単なる保菌で問題がないのかということが、か なり大きな問題になっている。それをどう判断していくかというのは、やはり外部の組織 を作らなければいけないかもしれませんし、地域の行政にお願いして早急に対応してもら うような姿勢を、場合によっては感染研のような専門家にさっと出ていただかないと、諸 外国のようにその判断がつかないというような問題が、いまの事例は絡んでいると思いま すので、その辺が一緒になっている問題かと思いますので、少し一緒に論じさせていただ いて、あとでもう少し整理させていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。 ○事務局(清) よろしくお願いいたします。 ○小林座長 この資料の案に関しては、先生、何かほかに。 ○荒川構成員 資料の案というのは資料2の話でしょうか。これは事務局でお作りいただ いたのですね。 ○事務局(清) 私のほうから補足が必要であればいたします。少し話を戻しますが、資 料2-1のところで、「適時行政機関に相談し、技術的支援を得るよう努めること」という記 載はあるのですが、ただし、その基準は何もない、本当にボヤッとしている形でしかない というわけで、いま、どこの段階で感染を判断するか、感染か保菌かという問題もありま すし、それから医療機関の特性も非常に多様であるので、画一化したものはやはり難しい とは思うのです。  ただ、そうはいっても、早目にこれは相談したほうがいいのではないか、特に難しいの ではないかという辺りを、少し案として考えられないだろうかということで、これは2-1 の「(院内感染について行政への連絡を行うべき状況)(案)」で、荒川先生にご助言をいた だいたのですがa、b、cとして、特定薬剤耐性菌が一週間以内に3名以上の患者から分離 された、あるいは、特定の薬剤耐性菌による感染症の主たる原因で患者が死亡した、ある いは特定の薬剤耐性菌による感染症が主たる死亡原因ではないが、複数の死亡患者から分 離されたような場合。比較的これであったら短期間に集積はしている、あるいは深刻なも のかもしれないというような状況に関しては、やはり早目に詳しい調査あるいは詳しい助 言を求めるような、要するにある程度公開された形で調べられたほうがよろしいのではな いかというような案で、これは全くの叩き台ですので少しご議論をいただきたいというと ころです。 ○小林座長 ありがとうございます。と申しますのは、まず特定は現場でやらなければな らないことになると思うのですが、どうやったら特定できるかということを集めてもらっ たバウマニの場合はちょっと難しいのでいろいろ議論がありましたが、それをやった上で どこまでいったら行政にお願いして、さらにそれから進んだサーベイランスをやってもら うのか。そのときにどういうふうにシステムを、直接全部感染研にいったら大変なことに なるかとは思うのですが、その辺をどうするかという行政的なものとの現場での特定と、 私は二通りあると思っているのですが、その両方を絡ませながら、今後の有効な対策をご 議論いただいて、そのためのこの中央会議というのは、そもそもそういうことに対応する ために全国にネットワークを作ろうといって、これは議題の3になるわけですが、それで スタートをしたのですが、それがなかなか進まずに地域としてできているのは、各先生を 中心に東北と北九州と、それが違う意味でもありますが動いているけれども、なかなか全 国的には展開していかない。それを含めまして議論をしていただければと思います。一山 先生は国立大学をおまとめになっていていかがでしょうか。 ○一山構成員 大変重要な問題だと思います。要するに気づきが遅れるというのは、ある 意味、専門のどなたかがいないとやむを得ないところがあるので、非常に厳密ではないの だけれども、わりと緩やかで、まずどこかに気軽に相談できるような地域でというところ を作り、その人たちが見てこれはもう少しハイレベルだよと思ったらというステップを踏 んでいけるようなシステムが好ましいかなと思います。  福岡大学の場合はおそらく専門家もナースもおられたので、もう少し早くてもよかった のかと思いますが、そうではない施設もありますので、その整備は大切かなと思います。 それと、ここのa、b、cと書いてある基準が、例えばこれは病院で3名なのか、病棟で3 名なのか、あるいは菌によってこれでいいのかというのは議論が必要かと思うのです。例 えばこういう建物をということで捉えて、もう少しブラッシュアップしていって作ってい けばいいのではないでしょうか。 ○小林座長 ありがとうございました。切替先生何か。 ○切替構成員 一山先生と全く同意見です。もう1つ危惧するのは、患者さんが死亡した 場合にというところで、むしろこれはいまのバウマニの話ではないですが、MRSAでも、MRSA は確かに分離されたけれども死亡原因は違うよというようなエクスキューズになってしま って、かえって、いわゆる院内感染事例が埋没してしまうのではないかという危惧もあり ますので、医療機関の現場の先生方、看護師さんの方が、自由に相談できるというか、ア クセスできるような地域のシステムみたいなものが、うまい具合に作れないかなと考えて います。 ○一山構成員 自分のところのことを言って申し訳ありませんが、国立大学の中でそうい ったところが発揮できる都道府県もあるでしょうし、いやいやそうではなくてほかの病院 にというのもあるでしょうから、例えば私の案としては、そういったことを担える所が、 気軽に相談できるところをいくつかリストアップして、話を進めていくことがいいかなと 思います。  もう1つ、VREに関して京都ではネットワークを作っていて、保菌調査等々を毎年やっ ているのですが、それで出たときに、京都大学、府立、京都市立病院と3病院の人たちが そこの施設に行って指導をしていくことをやっているのです。そういったものをほかの菌 種にも広げていけるのであればよろしいかなと思います。 ○小林座長 ありがとうございます。一山先生も先ほどおっしゃいましたように、大きな 所はかなり自分のところで人材を抱えていますが、今日3番目の議題としてご議論いただ きたいのは、中小でそういう専門家を抱えておられない所で何か起こったときに、ネット ワークが非常に重要になってくると思うのですね。その辺の提案と議論をあとでさせてい ただきたいと思いますが、木村先生いまのような問題ではいかがでしょうか。 ○木村構成員 いまの事例を見ていて、単に今回の資料に上がっていないだけかもしれま せんが、先ほどの話と重なるのですが、病院自体がわかったときに、どういう調査をした り、どういう対応をしたかというところが見えません。何かその辺の対応に鈍さがあって、 今回の事例においては後手後手に回っているのではないかというふうな気がしますので、 行政に連絡という状況になる以前に、何かもう少し院内での調査なり外部員を入れて調査 ですね。わかったとき非常に早期の段階で何かもう少し手を打てるようにするような指導 が必要なのではないか。手を打つというよりも、どう対処するかですね。そういうリスク マネージメント的なものができるようにするのがまず先かなという気がいたします。 ○小林座長 倉田先生、直接地域のこういった感染症にご関係はないかもしれませんが、 地域の行政におられて何かいまのようなことで。 ○倉田構成員 こういう問題が起きるか起きないかは病院によりますが、いま荒川さんに しごかれて、「衛生研究所でもそういう対応ができるようにしろ」といって、研修会を来週 やったりいろいろその対応を。ほとんどの場合これはやらない限りこの問題はこないので すね。もう1つは病院の施設があります。松山の場合は非常に病院が積極的で、必ずポジ ティブのものをやるという、あらゆることがそうですが、そこは皆さんの考え方も非常に いいシステムだと思うのです。だからいまのところはその問題は非常に少ないけれども、 先はどうなるかはわかりません。  そういう意味ではもう1つ、先ほどの消耗品の話もあるのですが、多少の問題だったら、 あとのことを考えたら全部使い捨てにしてしまうとか、そういうふうにしないとこの問題 は解決しないですね。 ○小林座長 洪先生、認定看護師等をご指導されて、大きい所はある程度カバーされてい ると思うのですが、その辺のお立場からいかがですか。 ○洪構成員 実際、福岡にも認定看護師はいるのですが、規模がこのように大きいと細か く配慮が行き届かないところがあるのだろうと思います。分離されてそれを報告すること も大事だけれども、その分離されたことがいままさにその患者さんにとって問題が最小限 でおさまるように、本当に保菌なのか感染なのかというところをしっかり判断することを、 1人の職員だけではなくてチーム等で行っていくようなシステムが重要なのだと思うので す。 ○小林座長 大体皆さんがおっしゃっていることは、表現は違っても、お考えいただいて いることは同じだと思うのです。高野さん、日本で唯一の専門看護師としていかがですか。 ○高野構成員 中小病院もそうなのですが、異常を察知できるICNがいても、一人では対 応するにも限界があります。洪先生が言われたように、病院の構造として仕組みになって いるという問題があると思うのです。一山先生が先ほどおっしゃったように、段階的で報 告とか相談ができる場所というのは、どのような病院であっても、あったほうがいいので はないかと思っています。たとえば、重症の患者さんは確実に耐性菌が出てくる人も多い ですし、死亡の原因が原疾患によると現場が判断しても数日の中に、耐性菌の感染症で亡 くるということも起こり得ます。その病院で感染症ではないと判断していない事例に関し ても、第三者の目が入るといいのかなと思いますので、いろいろな相談を段階的に報告が できて、しかも本当にいいのは、その担当者の判断で相談ができて、病院管理者の許可を もらわなくても相談ができるという守秘義務も守られているようなところがいいのかなと 思います。 ○小林座長 ありがとうございました。先ほど申し上げたように2つの対応システムがあ ると思うのですが、比較的そういう専門家がいない小さな所での特定をどうするかという のは、非常に大きな問題だと思います。これは清先生のご指導もあおぎながら、今年の厚 生労働科学研究の中の課題として取り上げていますので、この辺はもしあれでしたら、こ のメンバーの皆さまのご意見も伺って修正して、何かお役に立つものにしていければと思 いますが、荒川先生、それが現場では処理できなくなったときに、どういうふうに先生の 所のような専門施設にお願いするか。今日の遺伝子的な解析にしてもそうですが、どのレ ベルでどういうふうにそれをしていいのか。全部感染研にいったらパンクしてしまうでし ょうし。 ○荒川構成員 まず最初のほうのお話で、病院が当事者として感染症の予防に努めなけれ ばいけないということは、医療法と医療施行規則が変わりまして、日常的にそういう活動 を医療業務の中でしなければいけないことは法令的にも定められています。私は役人では ないのですが、役人的な観点からいいますと、病院ではそういうことをやっていて当たり まえだと認識、たぶん行政的にも思っていると思います。ただ、実際に病院の中ではなか なかそこまではまだいっていない。それをいかに外からサポートしていくかということに ついては、先ほどの地域支援のネットワークとか、あるいは第三者が監査とか指導とかい う観点ではなくて、協力して支援をするという観点で協力できるような、地域ごとの組織 を作らないと、なかなかうまくいかない。特に小さい病院では専門家が不足していますか ら。  私のところにも職務上いろいろな菌の解析依頼とか、こういう菌が出たけれどもどうし たらいいかという相談はきていますが、これがたくさんきますと、実際対応できないので、 それで先ほど倉田先生がおっしゃったように、自治体で菌の検査も含めてきちんと対応で きるようなシステムを作っていただかないと、我々もパンクをしてしまいます。  まず技術的に耐性菌も非常に数も多いし、種類も多いので、それが全部対応するのは大 変と思います。特に問題となるようなものについては、少なくとも地方衛生研究所で、あ るいは保健所等で、技術的な面はある程度の対応ができると思うのです。それと併せて感 染制御の観点からは、やはりきちんと教育支援できるようなチームを地域ごとに、大きな 大学のあるところは大学をコアにして作っていただくとか、あるいは自治体病院とか国立 病院機構とか地域の特性に応じて、そういうネットワークといいますか、支援組織を本当 は作らないといけない状況になっているのかなと考えています。 ○小林座長 わかりました。貴重なご意見を。あと、その上のステップをどうするかとい うことは、あとで議論をしていただくとして、3番目の議題に。この中央会議がネットワ ークをサポートしていくために作られて現状がどうであるか、それがある意味でなかなか 進まないので、今日提案をさせていただこうと思ったのですが、現状のご説明をいただけ ますでしょうか。 ○事務局(清) 最初にご案内したとおり資料番号が抜け落ちていますが、27頁が3-1で、 現在まで行ってきた「院内感染対策地域支援ネットワーク事業について」ということで、 一応概要を説明させていただきます。  これは平成16年からモデル事業として始めたものなのですが、まさにいまの議題のとお りで、院内感染対策の取組みが遅れている中小病院等に対して、地域における支援体制の 整備を図るため、地域の専門家からなるネットワークの構築等により、中小医療機関が速 やかに相談・助言できる体制を整備する事業を実施するということで、事業内容としまし ては、地域の医療機関から寄せられた院内感染の予防、発生時の対処方法に関して、各地 域支援ネットワークが日常的に対応する。各地域支援ネットワークは、地域の医療機関か らの相談事例について解析・評価を行い、その結果を各医療機関に還元することにより、 地域における院内感染予防対策に反映させる。より高度な技術的支援が要求される相談が 生じた場合については、各地域支援ネットワークからの要請に基づいて、厚生労働科学研 究班が専門的なアドバイスを行う。これらの他、院内感染対策として地域の中小医療機関 を支援するための施策を行うということです。  16年以降のこれが採択された都道府県の一覧になります。初回だけで終わったところも あるし、ずっと継続しているところもある。この中で、例えば私のところに届いた知らせ の中では、鹿児島県は16年、17年で一応この補助金のほうは終わっているのですが、そ のあともこの組織がちゃんと生きていて、それでその地域のネットワークで作られたQ&A 集みたいなものが、きれいな冊子になって送られてきたという経緯もありまして、一定の 成果を見て自立した組織になった所もあるし、それがどうも根づかずに消えてしまった所 もあるとも一部聞いています。  ただ、見ていただけたように、47都道府県からいたしますと、かなり寂しい状況である ということで、この辺、どこが音頭をとるかというところだと思うのですが、結局行政の 側で、ある程度この音頭とりができるような、感染症に理解ができる担当部署、担当官が いればいいけれども、そこに依存してしまうとなかなか先に進まないというのがいまの現 実ではなかろうかと思っています。以上です。 ○小林座長 どうもありがとうございました。そのような状況で第8回を迎えたわけです が、現実的な問題は今日の事例のように、いろいろあちこちで起こっていますので、なん とかしなければいけないということは前から思っています。特にこの何年間か中小の病院 を対象にして、なんとかガイドラインなりマニュアルみたいなもので参考をお示ししてお 役に立てないかとか。チェックリスト、ケアバンドルというようなことを提案させていた だいてまいりましたが、今回お手元の資料の3-2にありますように、「中小病院(300床以 下)支援感染制御ネットワーク(案)」のようなものをお示しさせていただいて、これは日 本環境感染学会とも絡みますので、理事長である大久保先生とも事前に検討をさせていた だきましたが、簡単に読ませていただきます。  中小病院における感染制御策の向上策を図るため、日本病院会では、2002年より土日2 日間年3回、6日間の感染制御講習会、インフェクション・コントロール・スタッフ(ICS) 講習会を開催して、中小病院を主たる対象としてインフェクション・コントロール・チー ム(ICT)の活動の中心となれるようなICS養成に努めてきています。今回、この講習会修 了者は3,120人になっています。調査の結果でも、現場でかなり活躍しています。ただ、 常に悩みをもっていろいろ疑問・質問がある状態なのですが、こういう方たちを中心に、 中小病院の感染制御ネットワークを構築することが、特に比較的規模の小さい病院を対象 にこういうことができないかということで、概略を考えて提案させていただくのです。  まずそのネットワークの中心になるのは、日本環境感染学会教育認定施設(以下教育認 定施設)を中心として作っていく。これはあらかじめそのガイドライン等でも了解を得て、 そのガイドラインの相談窓口になってくれることを了解してもらっている病院が30頁か ら32頁までに31施設書いてありますが、その後3施設増えて34施設、多少地域によって バラつきがございますが、中核的な病院が34施設できていますので、こういうところを中 心にネットワークを構築できないかということです。  ICS講習会修了者の連絡網を作成することによって、ID、パスワードみたいなものを作 るかどうかということが今後の検討ですが、これでネットワークを作っていく。  基盤事業として考えたことは、感染制御策上困ったことに関するQ&Aをメールで行う。 今日の事例みたいなことも早く問題としてつかめば、それをメールで相談してもらって、 何らかの回答を行う。その然るべき窓口を設置して、Qはどこかで振り分けをして、なる べく地域の中核病院に振り分ける。その仕事は事務局といいますか、認定または講習会に 関係している所でやることを原則とする。  要請があった場合は、施設内ラウンドとか医療関連感染症サーベイランス等の現場にお ける実践援助も行う。場合によっては飛んで行けるようなことも考えなければいけないと 思うのですが、原則として当該地域の教育認定施設がその近辺を担当する。同時にQ&Aは ホームページに保存して、ICSネットワーク・メンバーは自由に閲覧することができる、 または学会メンバーが自由に閲覧できるようにする。その上で次のステップにどう進むか はこれからの検討事項だと思うのです。同時に重要情報等の連絡網を作って、本日のよう な問題が上がって通知があれば、そういったものもなるべく早く、ダブってもそういうメ ンバーに回して情報として提供をする。その他、有効な活動をする。  資金に関しては、既に日本環境感染学会で、ある部分予算化してもらっていまして、今 後このメンバーに学会員になってもらうことで、その学会費の中から何らかの経費を生み 出していくということで、できれば日本病院会の援助とか、厚生労働省の援助があれば、 よりこの組織は動きやすくなると思います。  さらに詳細は、今後検討を進めるということで、必要に応じて関連各団体/関係者と協 議を行う。  このような案を提示させていただきましたので、ご指導・ご意見をいただければと思い ますが、まさに先ほどいただいたご意見に沿える部分があるのではないかと思うのですが、 大久保先生、学会の理事長としてまずお願いします。 ○大久保構成員 少し補足をさせていただきたいと思います。日本環境感染学会が行って います教育認定施設というのは、2001年からスタートをしていまして、現在36施設が認 定されているのですが、そのうちの34施設に相談窓口を設置していただいて、その担当者 も連絡先もわかるようにする。これらの34施設に対して今年度から予算化をしました。1 施設当たりにすれば10万円に満たないお金なのですが、そういうものを予算化して、その 地域のコアとなっていただけるような病院に対して、そこに少し学会として援助をさせて いただこうという形での予算化なのです。  こういうものを有効に利用することによって、遠い所に質問をするわけではなくて、自 分の近くの病院のコアとなるところとの結びつきを強くして、こういう問題を早く解決し て、実際的にお互いに行き来できるような形での解決ができるのではないかということで 考えているのですが、今回こういう議題が中央会議で出されましたので、まさに一緒にな って活動していけるいいシステムとなるのではないかと思っています。 ○小林座長 ありがとうございます。委員の先生方いかがでしょうか。一山先生は既にも う活動をしておられて。 ○一山構成員 こういうのがワークすればいいなと思います。京都でもいろいろな相談窓 口で受け付けていけるのですが、積極的に聞いてくるのがあまりないのですね。だから皆 さんに、この世の中にこういうものがあって、フリーアクセスで大変有効なという宣伝を、 いかに浸透させるかというところが重要かなと思います。あと、こういう30何施設で、さ らに多くの施設に参加いただくことと同時に、広く国民への啓発というかそういったとこ ろが大事なのです。ワークすれば大変いいと思います。 ○小林座長 私もそれを心配していたのですが、講習会をやりますと200〜300人集まるの です。3回やっても3回とも大体1回で100問ぐらい出てくるのです。かなり細かいことを 皆さん聞いてくるのですが、改まってメールでやったときはどうなるか。ただ、MRSAに関 して感染症学会が中心になってQ&Aシステムを作ってもまだ続いているわけですが、あの 辺の経緯を木村先生お願いいたします。 ○木村構成員 感染症学会の最近のものを私はきちんと見ていませんが、大体100問ぐら い、もっと質問は多いのですが重なるのもあるので、まとめると100問ぐらいになって、 それを毎年Q&A集として出してきたという経緯があります。 ○小林座長 いちばん最初のQ&Aの振り分けは私がやりまして、それから木村先生にお願 いして、5日以内に回答を寄せるようにという条件つきで質問を振り分けていたのですが、 それをネットワークにMRSAに限らずもう少し全般的な問題で振り分けていけた、場合によ ってはそれからもう少し専門家の方にお願いしなければならない場合も出てくるかと思う のです。その感染症学会での実績もありますので、あれをうまく活かせるような形で、感 染制御全般に関するネットワークが作れないかなと思っているのですが、でも心配はあり ます。 ○一山構成員 質問の中身が、学術的な知識を教えてくださいという感じのものが多くて、 本来、いまの議論を聞いていると、例えばそういったこと以外に、福岡大学の事例は「み んなで早く見つけようよ」という、もう少し現場のあれをというところをどう拾い上げる か、そういうネットワークを目指すのが目的にあっているかなという気がします。もちろ ん知識を提供するQ&Aでもいいのですが、今日の福岡大学のような事例があった場合にど うするか。 ○小林座長 情報として指導的な情報を流す。 ○一山構成員 相談を受けて、そして。 ○小林座長 気軽に現場に指導に行ける。 ○一山構成員 例えばの話、私の病院で多剤耐性緑膿菌がICUで3例出たのです、これに ついて「相談に乗ってください」というQがきて、そして、例えばここに載っている施設 のICNあるいはICDがそこに電話なりして、「どうなのですか」と、こういうQ&Aですね。 知識の提供というよりもそちらのほうが有難いかなという気がします。  ○大久保構成員 これは社会構造といいますか、日本はどうしても縦型社会ですから、こ この病院の人が隣の病院のことに口出しをするのはなかなか難しいわけです。先ほどのよ うにあらかじめコアとなる病院と常にネットワークを作って行き来できる。それはこうい うQ&Aだけではなくて日常のラウンドに少し来てみないかとか、中小病院ではラウンドも きちんとやれていない状況の人をラウンドに来てもらう。サーベイランスをこうしてやっ ているのだというところも見ていただくような交流を続けていると、非常に相談しやすく なりますから、そういう縦型の構造から横に広がる仕組みが望まれます。環境感染学会の 認定施設にはICDが必ずいることが条件ですしICNも存在していますので、そういう既に 出来上がっている組織もうまく利用することが必要ではないかと思います。 ○洪構成員 とてもいいと思うのですが、広範囲になりすぎると、おっしゃるようになか なか質問が出てこないのではないかということ等もあると思うのです。例えば今回問題に なっている多剤耐性菌というところにフォーカスして、少しずつそれを拡大していくとい うことでも、もしかしたらいいのかなと。国立大学病院などで相互的に施設に訪問してラ ウンドの形でやっておられるのは非常に効果があると聞いていますので、そういったこと も地域の中で広げていけるといいのではないかなと思います。 ○一山構成員 やはり相互チェック。 ○小林座長 確かに重要なことなのですが、中小の病院になりますと、自分の所で検査室 も持っていないような所が結構あって、外に検査を頼んで、その情報でやっている所があ るものですから、その辺を管理して、もう少し水準を下げるといったら変ですが、必要が あるかなという感じもするのですが、木村先生いかがですか。 ○木村構成員 私はつい先日、一山先生に呼ばれて長崎で、国立大学附属病院の感染対策 協議会でお話させていただいたのですが、洪さんがおっしゃるように協議会では非常にい いことがたくさんされている。この環境感染の計画とうまく調整できるかどうかはわかり ませんが、ジョイントでやる。現在の案では地域的にはあまり相談できる所が少ないよう なところもある。大学病院のメンバーと合わせるとだいぶいろいろな地域で可能になって いくのかなと思ったりして、そういう可能性も探ってみたらいいかなと思うのです。中小 の病院のいろいろなクエスチョンにも対応できるような体力がつくかなという気が少しし たのです。 ○一山構成員 大変いいと思います。それが可能であれば是非。それはこの間、木村先生 との話で、本当にみんなやるという気にあとでなっています。たぶんこういう提案は受け 入れられるというのが私の感じです。 ○大久保構成員 それはお互いに行き来して、日常的にピュアレビューをするということ ですか。 ○一山構成員 いま国立大学で相互チェックで1日半、年に1回行っている。それは問題 があって。 ○小林座長 それは交互にやっておられるのでしたね。先生、あれを説明してください。 ○一山構成員 例えばそれぞれの大学病院だとしますと、ペアで受ける側、行く側が毎年 1回アトランダムにやりあうのです。今年からもう少し内容を深めて1日半で現場に実際 に入っていってみる。行った経験のある病院と未経験がそれぞれ混在しているので、今年 からとにかくどこの大学病院でも行けるようにということで、経験者と未経験大学がペア になって、それぞれお互いにやりあう、これが1年に1回です。 ○小林座長 それはすごいですね。ずいぶん続いているのですね。 ○一山構成員 もうずいぶん続いていますね。医療安全と。 ○小林座長 10年ぐらい続いている。 ○一山構成員 続いています。いまは医療安全と一緒にやっているのです。それで手術室 の現場を見せていただいたり、ICTがどのようなメンバーだとかいったことを、そして、 いま困っている問題はないかとか。するとポロッと言ってくれたりします。 ○高野構成員 私立医科大学も国立に見習ってやろうということで、感染に関しては去年 から始めました。 ○小林座長 全体でですか。 ○高野構成員 全体で始めるという動きですが、全国で実施しているかはわかりません。、 少なくとも東京は去年から開始しました。 ○小林座長 洪先生、2つお願いというか、1つは認定ICNは大きい所は多いでしょうが、 やっていくなら、そういう方たちのご協力もあおがなければならないことは絶対に出てく ると思うのです。これもまた是非お願いしたいことだと思うのです。  その前に先ほどのご指摘の、あまり広げないで耐性菌に絞り込むかどうかは別として、 あまり広げないでやらないと何もできないで終わってしまいそうなのです、一山先生の質 問がどうしたらくるかということを含めて、これは真剣に考えて、ある程度質問が出やす いように、相談が出やすいような分野を選んでアプローチしていかないと、特に中小の病 院で、しかもICNという現場担当者が病院長の了解を得て、そういうことがどうしたらで きるかという辺りは、うまく考えなければいけない問題だと思うのです。先ほどの洪先生 のご指摘の絞り込むということが非常に大事だと思うのです。どこに絞り込むかというこ とは検討をしなければならないと思うのですが、その2つの点はいかがでしょうか。 ○荒川構成員 確かに大学病院のような大きな病院はマンパワーもあって、そういう専門 家の方もたくさんおられますので、比較的いろいろな感染対策がうまくいっている所が多 いと思うのです。  先生が先ほどおっしゃったように中小の病院、200床、300床という病院だと、どうして もそういう専門家もいないしマンパワーもないと。実は、以前の私の研究班で小さい病院 の異常事象をいかにうまく検出するかという検討を山口恵三先生のグループにやっていた だいて、そこで小さい病院のデータはほとんど検査センターに依頼をして、そこから紙ベ ースで書いていただいています。  ただ、紙ベースが帰ってくるのではなくて、それをデータベース化して、いつもと違う 事象が何か起きていないかを自動的にプログラム上でチェックをして、できれば特定の耐 性菌とか特定の細菌の感染症とか、血液培養から出ていくとか、そういうものがある。そ ういうものが通常のベースよりも少し高くなったようなときは、プログラム上でアラート が出るようなシステムを作って、そのアラートが出た時点で病院で対応できる人は対応し ていただくのですが、できない場合には近隣のそういうことがわかる所に相談して、小さ い病院でも院内感染のアウトブレイクを検出して対応できないかなということで、トライ アル的にそういうプログラムを作って、いまそのプログラムももうかなり完成版が、今度、 東海大学に行かれた藤本先生がシステムの専門家ですので、その辺の仕組みをしっかり。  ですから検査センターと病院の間のデータをうまく活用して、データベース化をして異 常の発生を検出して、それによって気がつかないとか、頼む最初の手がかりとなるような システムを実は作っているのです。もし、そういうものが活用できるのであれば、こうい うところに言っていただいて、それでもしその担当者が自分で判断できない場合は、地域 支援ネットワークといいますか、環境感染学会の認定病院の専門の先生方に相談して支援 を受けるようなスキームが、もう少し考えられるかなという気はします。 ○大久保構成員 もう1つは小林先生の3-2の資料にも書いてありますように、ホームペ ージを利用して、誰でもいつでも閲覧できるようにしておけば、質問もそこにしやすくな ります。そうなると的を絞るのもいいですが、ホームページ対応でQ&Aをやれば、かなり 広い範囲のことが対応できるのではないかと思います。 ○荒川構成員 いま実はJANISのシステムでもホームページを介して、参加施設とのやり とりをいろいろしているのです。やはり専従のスタッフがいないと、とても回らないので す。うちの場合は、そこにいる筒井とそれ以外に2人臨時職員を雇って、それで何とか毎 日何十とくる質問に対して対応をしたりしているのです。ですから事務局機能をきちんと しないとうまくいかないです。そのためには予算がどうしても必要になってきますので、 その予算をどうするか。環境感染学会から予算的な支援をされるということですが、かな りの額が実際には必要になってくるかなという気がします。 ○小林座長 例えばですが、これ1,000人会員数が増えたとすると、メンバーになること によって、そういう情報提供をするとすれば、かなりの年会費としての予算が増えますの で、そういうところから予算化してもらって、そのアウトソーシングでもそういった事務 をやってくれるところを作らなければ、おっしゃるとおりホームページの管理はできない と思うのです。  ただ、いままでのお話の全部を一気にやるのは無理だと思いますので、そこで終わって しまっては困るのですが、どこかできるところから手をかけて厚生労働省にもご指導をい ただきながら、そういうシステムを何とか学会中心に洪先生の「広げすぎるな」というの は非常に大事なことです。いまの荒川先生のシステムを含めまして、どこから取り組んで、 どういうふうにしていくかということを、もう少し時間がありますからご意見をいただき ながら学会中心に考えさせていただいて、また日本病院会の協力も得なければいけなくな るだろうと思います。 ○切替構成員 私も日本環境学会の会員として10年間ぐらいずっと参加させていただい て、勉強をさせていただいているのですが、この学会の特徴は医師だけではなく、若しく は看護師だけではなく、いろいろ病院で働いているスタッフが会員になっています。特に この5年間ぐらいの会員数の増加は大変なものだということを肌で感じています。総合的 に院内感染のことを考える学会としては本当に唯一の学会で、是非これからも私たち会員 は一生懸命に頑張って勉強をしていきたいと思うのです。  いまの議論の中でもう1つだけ、ではゴールは何かなと、一山先生のお話にもあったよ うに、メールの相談事業だと質のいい人だというのはおかしいですが、来ないというよう なお話もあったのです。今日来られていない賀来先生たちの活動を賀来先生に代わって少 し紹介させていただきます。青森県ですが、先ほど清先生がご紹介になったように、青森 は途中で消えてしまったのですが、青森は当時、産婦人科を一生懸命にやっておられる医 師会の先生が窓口になって、地域支援ネットワークを作られている。青森県自体の医療関 係者のマンパワーがあまりないということで、賀来先生が支援に入るということで、たぶ ん引き受けてやられたのだと思います。  どういうやり方をしたかというと、もちろん賀来先生の所から青森までは遠いものです から、やれることといったらラウンドだろうということで、医師会を窓口に希望の中小の 病院を募りまして、ラウンドしてほしいところはどこかということで、希望をしている病 院に賀来先生たちのグループがラウンドしに行くことをずっとやられています。ラウンド というのは、地域の支援ネットワークを作る上でいちばん大事なことの1つではないかと 私は思いました。  一度ラウンドして相手の顔が見えますと相談の質が非常に高まるのではないか。実は私 自身も経験をしています。これは欲張りかもしれませんが、何らかの地域支援ネットワー クのファイナルゴールでも目標でもいいと思うのですが、地域でお互いに中小病院の中で 病棟ラウンドができるようなシステムが最終的に見えてきたらいいのではないかなという ように私は感じました。 ○小林座長 ありがとうございます。そのことでラウンドというのはあまり大きく最初か ら上げてしまうと、駄目だとは思ったのですが、1つの大きな目標に私は考えています。  実際にこれまでに病院会の中小病院を対象にして、試行的に何回かラウンドをやりまし た。それは東京に限らず全国に展開したのですが、実際に病院の方たちと同人数でディス カッションをして、何をどうするかというようなこと、またコメントを出すということも やってまいりました。これは機能評価のほうの絡みとも一緒になってやったりしたことも あるのですが、おっしゃるとおりだと思うのです。やはり自主的にラウンドができるよう になればいいと思っています。  そのためにこの2年ぐらいかけて、ラウンドのためのチェックリストを作りまして、い まホームページから消えてしまったので、私の東京医療保健大学の大学院に入っていただ くと、そこにチェックリストが載せてあります。これもご意見をいただきながら、いま100 項目にまとめましたが、少しダブったようなところもありますので、まだ改訂しなければ いけない。これも厚生労働科学研究の成果として報告させていただいている2008年度の最 終版をいまのホームページに載せていますが、そういうものを参考にしながら、可能な範 囲でラウンドをしていくということは、先生のおっしゃるように私も非常に重要なことだ と思います。それがある程度究極の目的であって、ラウンドを有効にすることによって中 小の病院が早くアウトブレイクを特定できることにつながると思いますので、ごもっとも なご意見だと思うのです。ただ、すべてすぐにでもやりたいことなのですが、なかなかそ うもいかないと思いますので、どういうふうに進めたらいいでしょう。 ○一山構成員 京都で中小の病院協会がありまして、そこで毎年いくつかラウンドしてい るのです。それは病院協会が集まって院内感染対策に取り組もうという自発的にできたも のですからやりやすかったのです。そうでないことのほうが多いでしょうから、それを手 初めに、まず各都道府県で一度、手を挙げていただいて、いくところと、1回こうしてこ うなったという結果であったということを、何かの形で都道府県単位で広報していただい て、こういう仕組みをこれから作っていきたいということを、都道府県の衛生部等に一緒 になって、これはあくまでボランタリーなことでしょうから、規則でやることではないで しょうし、だから行政と一緒になって取り組んでいこうという姿勢をまず1回やってみる と、悪いところが乗ってくる施設があるのではないかなと思います。  こういうことをしていいのかはわかりませんが、そうすると今回は環境感染学会あるい は、この我々の定めた事業に参加して、いろいろ評価をいただいたという認定書みたいな ものを渡せば、病院長としてはそれは大変有難い。認定書というか受けたということです ね。合格という意味ではなくて、受けているということは病院にとっては1つのメリット にはなるかなと思います。 ○小林座長 実は先生、それを日本病院会の中小が多いところで、関東地区を対象にして、 まずそこでモデルの認定システムを作り上げて、そこからネットワークを作ろうという糸 口を考えたのですが、必ずしもすぐにまとまらないのです。それでむしろ講習会出身者の ICS担当者を中心に、熱心ですから、そこにまずやって、それは絶対必要だと思うのです。 私も将来の目標として認定し、何らかの例で認定書をお渡しして、それがプラスになるよ うな形、経済的な問題と、診療報酬だとか何かと絡んでいろいろな意見が出てきてしまう ものですから。 ○一山構成員 京都でもそれは合格という意味ではないので、見ていただいたというもの を、私は提案したのですが、やはりそれは難しかったです。反対する病院長がやはりあり ました。やはり病院それぞれなのだなと思いました。 ○小林座長 だから非常に努力しているというような形の表彰をお渡しするような形でで きないかと思って、何か月かやったのです。いまのところ頓挫している ○大久保構成員 いま提案された県単位とか、行政の単位でやると、例えば保健所だとか 地衛研も入ってくると、どうしても一般病院、特に中小病院は報告をすると何か指導をさ れるという概念があります。その中で切替先生を中心に地域支援ネットワークのことをい ろいろ進めてきたと思います。これは報告ではなくて、相談して支援をもらう。報告をし て指導ではなくて、報告・相談して支援という細やかな対応ができるようにする方向が私 は好ましいと思います。  そうすると、いまの病院会がやっておられるインフェクション・コントロール・スタッ フと、環境感染学会の認定教育施設、そこに厚生労働省も入っていただければ三つどもえ でかなりいい組織化が出てくるのではないかと思います。ですから今後そういう意味で病 院のほうにも協力をお願いしたいと思っています。 ○小林座長 時間がだんだん迫ってまいりましたので、議論も尽きないですが、ただ、ご 意見をいただきました方向性は1つの方向を向いているかと思うのですが、どれからやっ ていくかというのは難しいところもありますので、環境感染学会の理事長である大久保先 生とご相談させていただきながら、どこから取り組んでいき、その経過に関してはできる だけご報告申し上げるようにしたいと思います。ご報告すべきメールリストがいただけれ ばそのメールリストにまとめてその経過を何らかの形でご報告させていただくようにした いと思いますが、全体的なこととして何か、これだけはというご意見があれば、また事務 局として何か今日、積み残しているものがございましたらご指摘いただきたいと思います。 ○事務局(清) ありがとうございます。まず、この地域支援ネットワークのことは平成 22年度に関しては、もう概算要求も出してしまっていますし、とりあえず従来のものを続 ける予定でいきますが、その次に向けて、これもモデル事業を10年もやるわけにもいきま せんので、これはいまそれほど大した額ではないのですが、そこをも付け替えてしまうと いうか、こちらのほうに振り向けてしまうという形のものは可能であろうと思います。案 さえしっかりまとまって、あとはその事務方と折衝が済めばそれはありますので、是非こ れは話を進めていただきたいと思います。既存のいろいろな組織がありますし、あるいは 既にやっているところに対しては説明もありますので、少し時間は要することだろうとは 思うのですが、基本的にはより広い範囲に手が差し伸べられるほうをやるべきではないか と思いますのでよろしくお願いいたします。 ○小林座長 大久保先生そのご意見を踏まえながら、できる範囲でなるべく早い時期にス タートしていくということで、学会にもご協力をいただくことでよろしいでしょうか。 ○大久保構成員 わかりました。 ○小林座長 皆さんそういうことで。 ○洪構成員 先ほど小林先生からありましたが、こうした教育認定施設が中心になるとい うことでもちろんいいと思うのですが、どの施設にとっても、人材は限られているので、 学会等を通して個人も募って、その中にICDであるとか、薬剤師の専門資格であるとか、 認定看護師であるとか、精通している方たちに手を挙げていただいて、積極的に係わって いただくというのもよろしいのではないかと思います。 ○小林座長 ありがとうございます。そういう意味では人手が足りないと思っていますの で、私の大学院の感染制御コースの大学院生を、ある意味でそういうボランティアに使っ て少し勉強をしながらラウンドをやるということは、もしそのようになれば協力してくれ という内諾は得ておりますので、差し当たってのマンパワーにはなると思うのです。そう いう意味で広がっていけば絶対に足りなくなると思いますので、いまのご意見は貴重なこ ととして参考にさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。ほかに 何かございますか。 ○木村構成員 少し遡り感染事例が発生したときの報告基準に絡む、そしていまの地域ネ ットワークとも絡むことだと思うのですが、例えば新型インフルエンザの対応でフェーズ 1、2、3とかとありましたが、そういう形でまず新しい多剤耐性のものの第1例目が見つ かったときに、中小病院なり大病院も同じですがどうすべきか、さらに第2ステップとし て、ではどういうときに支援ネットワークにお願いするなり行政に報告するのかといった、 何かそういった段階をおった指針というと大げさですが、そういうガイドがあるといろい ろな病院が対応しやすいのかなと思います。 ○小林座長 先生にはいずれ見ていただかなければいけないと思っていたのですが、先ほ ど申しましたように、今年の厚生労働科学研究の中で、うんと卑近な現場でどういうふう に、菌別にアウトブレークをどう提示していくか、特定していくかという第1次案はいま 出来ているのですが、これももしよろしければ、皆様方のご意見を頂戴しながらなるべく いいものにして、膨らんではいけないと思うのですね。うんと簡単なものにして中小の病 院でもいま木村先生がおっしゃったような特定に使えるような形でのマニュアルができれ ばと思っています。おそらくいろいろ問題は最初はあると思いますが、また委員の先生方 のご指導を仰げればと思っています。いまご指摘のことは非常に重要なことかと思います。 ほかにはいかがですか。それでは時間になりますので、今後のことを含めまして事務局と して。 ○事務局(清) 今日は本当に貴重なご議論をいただき誠にありがとうございました。い ろいろ積み残しというか宿題がたくさん出てしまいましたし、この会自体がかなり長い休 憩時間があったので、またここで新しい気持で今後の国内の施策につながるような方向に 向かってまた、次回はあまり間があかないようにいいタイミングでやりたいと思いますの で、よろしくお願いをします。  1つ番外というか、これは新型インフルエンザに関してのことなのですが、結構病院の 待合所とか外来等とかに、抗ウイルス効果を謳ったような空気清浄器、プラズマクラスタ ーとかいうのがあるのです。一応私も新型インフルエンザの推進本部にいる手前、いろい ろ質問を受けるわけですが、国として推奨するものでは決してないと思っていまして、基 本的には換気がまず第一であると思うのですが、ただ、その部屋の構造によっては換気が 難しいような場所であれば、ああいうものを置くのも気慰み程度のものなのかなというふ うには思うのですが、その辺に関して専門家の先生方のご意見を少しご頂戴いただければ と思います。 ○小林座長 いかがでしょうか。 ○倉田構成員 何の役にも立ちません。あれは全然ナンセンスなのです。どうしてああい うものがね。この間、ある所でやっているという話で、パンフレットを持ってきて、どう ですかというから見て。もう一方、マスクにしても何にしてもそうですが、通常の空気を きれいにするという発想のところに出てくる基準がいろいろあるのですが、そういうもの はまるきり関係がない。なんでこんなものがというようなものがいろいろあるのですが、 ああいうものは空気をきれいにするという、マスクもそうですが、あらゆるもので、そう いうものが使われているのは、業者が勝手に作っているもので基準も何も。だからはっき りしたものはフィルターはどうであるとか、急性のフィルターの性能とかは、はっきりし た国際的なものは動きはあるのですが、いま言われているインフルエンザに関連してボロ 儲けしようとしている人たちがあるので何もないですよ。  だからあれナンセンスで、むしろきちんとした……背中にあって座っていると、そこの 後ろに全部吸収されていくシステムとか、それはずいぶん前から使われているいいのがあ ります。これは小児科の外来でなどよく置いている先生はずいぶんおられますが、そうい うのは性能が非常にはっきりしているのです。マスクさせて座っている後ろに空気を引っ 張っていってしまう。それだと循環しませんから、それでフィルターを通してきれいなの がまた部屋に戻ってくるというのは、まだわかるのですが、あの変なやつ、あれは誰も専 門家が基準がどうだというものに沿って調べて確かにきれいになったという証拠は1つも ないのです。  ですから、厚生労働省が推薦とか何か地方に出したものの中に、例えば外来テントをは じめ、あのテントの空気を動かすためについているものを私はチェックしました。富山県 にそういうものすごい値段のものを半分負担で買わされたと。なんでこんなものを、卸の ものでいったら数十万で買えるのに、もっと性能のいいフィルターを付けたらよほどいい というようなものがずいぶん出ているのです。あれは誰がどういう格好で推薦したかは知 らないけれども、厚生労働省がという。あれはあまりいいことではないですね。そういう ことを担当している業界のきちんとした人に聞いても、そんなもの何も知らない、相談も 受けていない。だからちょっと違うのではないですかね。だからああいうのは気をつけら れたほうがいいですね。 ○事務局(清) ご意見ありがとうございます。とりあえず内部的にはご指摘のとおりで、 いくら効果があるかと内心は思っているのですが、なにせ商魂たくましい方々の声に押さ れてしまうところがあるので、内部的には気をつけるようにさせていただきます。ありが とうございます。 ○小林座長 うっかりしていて時間が過ぎましたが、ちょっと皆さんの意見をお聞きにな ったほうがいいでしょうか。 ○切替構成員 一言だけなのですが、全くおっしゃるとおりだと思うのです。ただし、そ ういう機材に関して、きちんとした科学的根拠を例えば臨床の現場とか、病院の現場でや るのだったらそれはまた別の話で、そういうのをおそらく否定しているお話ではないと思 うのです。いまのところそういう……は作られていないです。 ○洪構成員 何とかスプレーというのも結構あったりしますので、問題がある気もしてい ます。 ○高野構成員 空気清浄機以外もそうですが、効果はないと私たちは思っていても、一般 の人が受ける印象が、重要になってしまう場合があります。例えば病院としては外来の患 者さん用に手指消毒剤を設置する必要がないと考えていても、患者さんの要望というか手 指消毒薬も置いていないというお叱りを受けたり、何か根拠がなくてもどう社会の人が、 患者さんが印象を持つかというところがすごく重要な判断にいま私たちはなっている。そ れがまたかえって恐怖というか、科学的根拠からずれていくのかなというのは気をつけな ければいけないと思います。 ○荒川構成員 そうですね。うちも来週実習をやろうと思っていますが、ウエルパスが手 に入らないのです。もうそういう状態なのです。要するに銀行に行っても置いてあるし、 いろいろな所にあれが置いてあるのです。別にウエルパスを宣伝をするわけでもないし効 果があると言っているわけでもないですが、非常に変なことがいま起きているのです。ビ ジネスはビジネスでやっていただくのは自由なのですが、それに対して何らかの評価をす るようなものも、本当は作ったほうがいいのかもしれませんね。 ○倉田構成員 手洗いでインフルエンザが防げるという話は、私は日本で初めて聞きまし た。世界で誰もそんなことを言っていません。もう1つ、あれで非常にいい効果がありま す。衛生教育としてはいい。ですからノロウイルスの感染とか、要するに便に関する感染 症というのはガタッとこの夏、検査の数が少ないのですね。どの……も同じです。そうい う意味での効果はありますが、手を洗っていればインフルエンザが防げるという話は、誰 が言い出した話かは知りませんが、これは誤解を生みますね。 ○小林座長 おそらくイギリスで呼吸器感染と学童のハンドハイジーンが関係するという エビデンスを出しているのですね。その辺が呼吸器感染の粘膜への感染、それとB型肝炎 が粘膜から感染する、目から感染するというあたりは動物実験で証明されていますし、そ の辺が元になっての話で、うがいはちょっとわかりませんけど。 ○倉田構成員 ウイルスは粘膜に付きますと、すうっと中に入ってしまいますからね。 ○小林座長 はい、ですから、そういう意味ではうがいは。 ○倉田構成員 ただ、うがい薬を使うことが問題で、粘膜を非常に痛めます。水はいいで すけど。そういうことがあるので気をつけないと。 ○荒川構成員 今回のインフルエンザの効果で、百日咳が今年は調べてもなかなか出てこ ないという、非常に効果が上がっています。 ○大久保構成員 そういういろいろな抗菌製品等に関して、抗菌性能と感染制御とは意味 が違います。きちんと科学的な根拠があるかどうかによって評価が決まります。差し当た ってお困りであれば一言声をかけていただければ評価させて頂きます。 ○倉田構成員 日本には空気清浄協会とか、そういうものの性能を見るちゃんとしたのが あるのです。ところが、そこに持ち込まれたかと聞いてみると何も持ち込まれていないの です。ですから、本当にきちんとした科学系のテストはやられていないのです。ああいう のを厚生労働省は推薦というのは気をつけないと。 ○一山構成員 本当に皆さんのおっしゃるとおりだと思います。 ○小林座長 木村先生まとめてください。 ○木村構成員 ご意見が出たとおりだと思うのです。やはり第三者の評価による一定の基 準をクリアしたものでないと駄目なのではないかというふうに思います。 ○小林座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。時間もまいりましたので特 別のご発言がなければ第8回の会議をこれで終了させていただきたいと思います。不手際 から時間が過ぎてしまいました。ご協力、また大変実り多いディスカッションをありがと うございました。またよろしくお願いいたします。事務局どうもありがとうございました 。 (以上) 照会先:厚生労働省医政局指導課     院内感染対策担当(清) 電話 :03-5253-1111(内線2556)