09/10/19 平成21年10月19日薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成21年10月19日(月)  16:00〜 厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(11名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 庵 原 俊 昭、 岡   慎 一、 守 殿 貞 夫、   清 水 秀 行、 田 村 友 秀、 土 屋 友 房、 早 川 堯 夫、   ○堀 内 龍 也、 前 崎 繁 文 ◎吉 田 茂 昭  (注)◎部会長 ○部会長代理    他参考人1名   欠席委員(6名)   新 井 洋 由、○池 田 康 夫、 竹 内 正 弘、 濱 口   功、    溝 口 昌 子、 山 添   康、    3.行政機関出席者    岸 田 修 一(大臣官房審議官) 成 田 昌 稔(審査管理課長)、 豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 松 田   勉(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 平 山 佳 伸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 赤 川 治 郎(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、 重 藤 和 弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開 催させていただきます。本日はお忙しい中を御参集いただきまして、ありがとうございま す。現在のところ、当部会委員数17名のうち10名の先生方においでいただいております ので、定足数に達しておりますことを御報告させていただきます。新井委員、池田委員、 竹内委員、濱口委員、山添委員より欠席との御連絡をいただいております。また、飯沼委 員より30分ほど遅れるとの御連絡をいただいております。溝口委員も遅れているようで す。  本日の議事の最後に、「その他」といたしまして「小児薬物療法検討会議」に関する説 明をさせていただきますので、国立成育医療センター・治験管理室長の中村秀文先生に参 考人として御出席いただくこととしております。それでは吉田先生、以後の進行をよろし くお願いいたします。 ○吉田部会長 それでは本日の審議に入りたいと存じます。まず事務局から、配付資料の 確認と審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」について報告をお願いいたします。 ○事務局 まず資料の確認をさせていただきます。本日は席上に議事次第、座席表、当部 会委員の名簿を配付しております。議事次第に記載のある資料1〜9をあらかじめ送付い たしました。これらのほか、資料8差し替え版「承認条件等に係る審査報告書」、資料No. 10「審議品目の薬事分科会における取り扱い等の案」、資料No.11「専門委員リスト」、資 料No.12「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。資料8の差し替えの経緯につ きましては後ほど御説明いたしますが、内容については変更はございません。  以上のほか、当日配付資料として新型インフルエンザワクチンに関する資料をお配りし ております。こちらに関しては「その他」の議題の最後に御説明させていただきます。  続いて、本日の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」について御報告いたし ます。資料No.12を御覧ください。各審議品目の競合品目選定理由は次のとおりです。  まず1ページです。審議議題1「テモダール点滴静注用100mg」です。本剤の有効成分 テモゾロミドは、悪性神経膠腫を効能・効果とする抗悪性腫瘍剤です。よって、本剤の効 能・効果、薬理作用等から見た競合品目の候補としてテモダールカプセル、注射用サイメ リン、ニドラン注射用、塩酸プロカルバジンカプセルが挙げられます。これらのもので売 上高上位3品目を挙げますと、テモダールカプセル、注射用サイメリン、ニドラン注射用、 塩酸プロカルバジンカプセルの順ですが、テモダールカプセルはこの申請者の品目ですの で、それを除いた上記3品目が競合品目として挙げられています。  続いて2ページです。審議議題2「メロペン」です。申請者から提出された競合企業リ ストによりますと、本剤の申請効能・効果は「発熱性好中球減少症」であり、現在国内に おいて、この効能・効果で承認されている品目はマキシピームのみであるため、この品目 を競合品目として選定したとあります。なお、申請者の資料にはこのような記載がござい ますが、抗真菌剤であるイトリゾール及びアンビゾームにおきまして、真菌感染が疑われ る発熱性好中球減少症という効能を持った品目でございます。ただ、これら2品目は「使 用上の注意」の中において「適切な抗菌剤投与を行っても解熱せず、抗真菌剤の投与が必 要と考えられる場合」との記載があることから、いずれにしても、本剤メロペンとの競合 は発生しないものと考えておりますので、競合品目・競合企業リストについては「マキシ ピーム」1品目で差し支えないものと考えております。  続いて3ページを御覧ください。本日の審議議題3「ベンダムスチン塩酸塩」の希少疾 病用医薬品の指定です。本剤は「再発または難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ 腫またはマントル細胞リンパ腫」を予定効能としております。これらの疾患に対して既に 承認された品目として汎用されている薬剤は、リツキサン注、ロイスタチン注、フルダラ 錠及びゼヴァリンイットリウム静注用セットの4製剤であり、この4製剤のうち売上高上 位3品目として、これら3品目が掲げられています。以上でございます。 ○吉田部会長 今の事務局からの説明に特段の意見等はございますか。それでは、本部会 の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」につきましては、皆さんの御了解を得 たものといたします。委員からの申出状況について報告をお願いいたします。 ○事務局 各委員からの申出状況は次のとおりです。審議議題1「テモダール」について は、退室委員はいらっしゃいません。議決には参加しない委員は、清水委員、田村委員、 堀内委員、前崎委員です。議題2「メロペン」については、退室委員はいらっしゃいませ ん。議決には参加しない委員は、前崎委員です。審議議題3「ベンダムスチン塩酸塩のオ ーファン指定」については、退室委員、議決には参加しない委員ともにいらっしゃいませ ん。以上です。 ○吉田部会長 本日は審議事項が3議題、報告事項が5議題、その他が1議題となってい ます。それでは議題1に入りたいと思います。議題1について、医薬品機構から概要説明 をお願いいたします。 ○機構 議題1、資料1、医薬品「テモダール点滴静注用100mg」の製造販売承認の可否 等について、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。  本剤の有効成分であるテモゾロミドは、アルキル化剤に分類される抗悪性腫瘍薬です。 テモゾロミドを含有するカプセル剤である「テモダールカプセル20mg、及び同100mg」(以 下、カプセル剤と略)は、本部会で御審議いただき、「悪性神経膠腫」を効能・効果とし て2006年7月に承認されています。  カプセル剤は初発及び再発の悪性神経膠腫に対して標準的に使用されていますが、悪性 神経膠腫患者の中には、頭蓋内圧上昇に伴う悪心・嘔吐や、脳幹への腫瘍の浸潤、外科的 処置による脳幹部の損傷等により、カプセル剤の投与が困難な患者が存在します。 本剤 は、カプセル剤が投与できない悪性神経膠腫患者に対して、カプセル剤の代替となる注射 用製剤として開発され、海外では33か国で承認されています。  本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料No.11に示されている3名 の委員です。  以下、本剤の臨床試験成績を中心に説明します。  本剤の臨床開発では、審査報告書12ページ23行目以降に記載した、テモゾロミドの薬 物動態学的な特徴を踏まえ、カプセル剤の臨床試験成績の利用を前提に、カプセル剤経口 投与時と本剤静脈内投与時の生物学的同等性が検討されました。臨床試験成績としては、 海外で実施された二つの第I相試験が提出されました。  生物学的同等性については、審査報告書10ページ1行目以降に示しますように、海外 第I相試験の結果、本剤を90分間かけて静脈内投与したときのテモゾロミド及び活性本 体のCmaxとAUCは、カプセル剤経口投与時と同程度の値を示し、生物学的同等性の判 定基準を満たしたことから、カプセル剤経口投与と本剤90分間静脈内投与の生物学的同 等性が示されたと判断いたしました。  有効性及び安全性については、審査報告書12ページ16行目以降に示しますように、カ プセル剤経口投与と本剤静脈内投与の生物学的同等性が示されたことから、本剤の有効性 及び安全性はカプセル剤での臨床試験成績を利用可能と判断いたしました。  安全性については、本剤とカプセル剤の投与経路の違いに基づく差異も検討した結果、 審査報告書12ページ下から6行目以降に示しますように、本剤の使用に当たっては、カ プセル剤と同様に、ニューモシスチス肺炎に対する適切な措置を講ずる必要があること、 二次性悪性腫瘍の発生の懸念があることに加え、注射部位の有害事象に注意すべきと判断 いたしました。  また、本剤はカプセル剤の代替となる製剤であり、カプセル剤では使用全例を調査対象 とする全例調査が実施中であることから、審査報告書21ページ5行目以降に示しますよ うに、製造販売後には、カプセル剤と同様に全例調査による有害事象の収集、及び迅速な 情報提供等を行う必要があると考え、承認条件として設定することが適切であると判断し ました。  以上のような審査の結果、機構は、「悪性神経膠腫」を効能・効果として、本剤を承認 することは可能と判断しました。  本剤は、カプセル剤の代替となる製剤として開発されたことから、カプセル剤の再審査 期間満了日である平成28年7月25日までとすることが適当であり、製剤は毒薬に該当す ると判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと 判断しました。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。 ○堀内部会長代理 本剤の原薬は加水分解を受けやすく、不安定な物質である。安定性試 験を5℃でやっても、36か月外観はほとんど変化が認められないので、2〜8℃で36か 月が有効期限である。室温でやると、もっと短時間で色が付いてしまうということなので す。これは色だけで有効期限を36か月と規定しているように見えるのですが、成分はど のくらい変化をしているのでしょうか。 ○機構 室温で実施しました長期保存試験で色調の変化が認められておりますが、有効成 分に関しては、特に減量しているということはないということは確認できています。 ○堀内部会長代理 室温でも、有効成分については変化していないということですか。 ○機構 そのとおりです。 ○堀内部会長代理 保存は室温でも構わないということですか。 ○機構 色調の変化をもたらした化合物も分かりませんので、添付文書でも記載されてい ますが、保存条件に関しましては2〜8℃での保存で36か月と設定させていただきまし た。 ○堀内部会長代理 不純物の分析を何でやったか知りませんけれども、それでピークは出 てこないのですか。 ○機構 チャート上ピークは認められるようなのですが、含量として非常に少ないという ことで、構造の特定にまでは至っていない状況です。 ○堀内部会長代理 保存する立場から言うと、室温保存と冷蔵庫保存では大分違うので す。何でも冷蔵庫保存にすればいいというものではないのですが、安定性がどうなのかと いうのは、成分まで含めて、あるいは分解成分がどのくらいあるかということで規定され てくると思うのです。これは室温だと□年までよかったのでしたか。□か月で微紅色への 色素の変化があったと5ページに出ていますから、□年だとか、その辺だったら問題はな いと考えてよろしいのですか。  メーカーはできるだけ安全の方へと持っていくから、何でも冷蔵庫保存という形にな る。その方が安定性は高いだろうと思いますが、安全なものであれば、室温保存でやりた いというのがあると思いますので、その辺についての見解をお聞かせください。 ○機構 御指摘の点については理解するところはあるのですけれども、企業としまして も、本剤の保存条件に関しましては冷所での保存を設定しておりますし、機構としまして も2〜8℃での保存を推奨しているというところです。 ○堀内部会長代理 もう一点だけよろしいですか。これはカプセル剤と注射でバイオアベ イラビリティは同等である。ですから、100%カプセル剤でも吸収されるということです ね。添付文書案を見ますと、75mg/m2、1日1回、42日間投与する。4週間休薬して、そ の後更に5日間倍量に増量して投与するということで、かなり長期間毎日投与するという ことになっています。これは、患者からしてみると、バイオアベイラビリティが100%な のですから、カプセルで済めば、その方がはるかにいいだろうと思います。注射薬の場合 には、使用についてはかなり制限される。胃の調子が悪いとか、経口で投与しにくい場合 のみに限られると考えてよろしいのでしょうか。 ○機構 カプセル剤と本剤の使い分けに関しては、先生がおっしゃられましたように、基 本的にカプセル剤での治療が優先されます。カプセル剤の投与ができる方に関してはカプ セル剤が使われて、嚥下ができないような特定の集団に関して本剤が使われるということ になっております。 ○吉田部会長 そこのところは添付文書案の「本療法が適切と判断される症例についての み実施すること」という中に含まれていると考えていいわけですね。 ○機構 そのとおりです。 ○吉田部会長 審査報告書の13ページにもありますが、グレードはともかくとして、頻 度としては注射の方がいろいろな有害事象が出ていることは間違いないので、それが分か るように、少し細工してあげた方がいいかもしれませんね。ほかに御意見はございますか。 ○守殿委員 これは入院の上治療されるのでしょうか。それとも外来化学療法でしょう か。42日間という長期の連日投与が必要であれば、堀内先生が言われた代謝との関係が 気になります。外来投与としますと、週5日で、間が2日ずつ空いていくと8週間以上か かります。実際の臨床使用については添付文書に何も書いていないのですが、投与法につ いてはメーカーが指導するとかがあるのでしょうか。 ○機構 先ほどの話とも関連するのですが、本剤の投与対象があくまでカプセル剤が投与 できないような状態の患者になりますので、本剤が投与されるような状況としては、基本 的には入院管理下の患者になるものと考えております。投与の期間も含めて長期に及ぶ時 期もありますが、基本的には入院での管理がなされるものと考えております。 ○吉田部会長 いわゆるファーストチョイスでは来ないということですね。ほかにござい ますか。 ○清水委員 審査報告書の19ページになります。もしかしたら堀内先生からも御指摘が あったかもしれないのですが、専門委員の意見として、今の国内の医療現場の状況として、 クローズドシステムが必ずしも使用できるとは限らないという意見が出ております。そう いった中、「発がん性の考えられる本剤の調製を行う医療従事者に対して、本剤調製時の 曝露に関する明確な注意喚起が必要である」という意見が出ておりますが、この「明確な 注意喚起」というのを機構としてはどのようにとらえていらっしゃるのか、教えていただ ければと思います。 ○機構 調製者に対する注意喚起に関しましては、添付文書等とは別の資材を用いて、本 剤の調製に当たる医療従事者に対する注意をまとめた資材を作っていただくよう、現在、 申請者にお願いしているところです。 ○清水委員 この会議で保険の話をすると、好ましくないという御指摘を受けることが多 いのですが、これが現場で十分に使えないことの理由の一つに、クローズドシステムを十 分に使えるだけの診療報酬上の後ろ盾がない。コスト面でそういった問題も出ているかと 思いますので、そういったことを付帯意見として付するようなことは難しいということに なりますか。いかがでしょうか。 ○審査管理課長 御指摘いただいたところについては、担当課に、クローズドシステムに ついての御指摘がありましたということでお伝えさせていただこうとは思います。ただ、 それをどう配慮するかについては、またそちらの方でと思っております。 ○堀内部会長代理 この問題は大変重要だと我々は思っております。来年度の診療報酬で 重点項目として出してありますので、是非よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 この点については病院機能評価でも、かなりうるさく言われるようになり ました。特に、専門の薬剤師が調剤するということと、きちんとベンチが置いていなけれ ば落第というように、保険以外のところからもそういった方向での動きがでてきておりま す。ただ、注意喚起をうるさく言い出すと、抗がん剤を入れる度に必ず全部書かなければ いけないということになって大変なことになりかねませんが、その点もよろしくお願いし ます。 ○清水委員 ありがとうございました。  ○吉田部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入りたいと 思います。清水委員、田村委員、堀内委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関す る申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととしております。本議題につ いて、承認を可としてよろしいでしょうか。  御異論がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。  続きまして議題2に入りたいと思います。医薬品機構からの概要説明をお願いいたしま す。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。メロペネム水和物は、住友製 薬(現、大日本住友製薬)で開発されたカルバペネム系薬であります。国内では、1995年 6月に各種適応菌種及び適応症を効能・効果として承認を取得し、その後2004年4月に 小児の用法・用量及び化膿性髄膜炎の効能・効果の追加に係る承認を取得しております。  造血器腫瘍や再生不良性貧血などの血液疾患では、疾患自体又はがん化学療法などの治 療に伴い好中球数が減少し発熱を来すことが多いことが知られており、これまで、敗血症 疑いや不明熱とされてきました。このような好中球減少時の発熱の原因としては、病原性 微生物に対する生体反応、薬剤性発熱、腫瘍熱、輸血による発熱反応などが挙げられてい ますが、非感染性の発熱を除外したものが発熱性好中球減少症(以下、FN)と定義されて おります。現在では国内外においてFN治療に関するガイドライン等が報告されており、 カルバペネム系薬を含む抗菌薬や抗真菌薬によるFN治療が推奨されております。なお、 国内ではFNの適応を有する抗菌薬は、セフェピム塩酸塩水和物のみであります。  メロペネムは、カルバペネム系薬の特徴である広域な抗菌スペクトラムを有し、FNの 原因菌として重要なグラム陰性菌及びグラム陽性菌の臨床分離株に対して優れた抗菌力 を示すと申請者は説明しています。また、セフェピムは小児適応を有しておりませんが、 メロペネムは国内で一般感染症に対する小児用法・用量を取得しております。したがって、 メロペネムは成人FN患者のみならず、小児FN患者に対する効能・効果の追加が可能と 考えられたことから、申請者は今般の開発に至ったと説明しています。なお、海外におい て、本剤は、2009年8月現在、94か国以上でFNの承認を取得しています。  本品目に関する専門協議に際し、本剤の専門委員としては、資料No.11にあるとおり4 名の委員を指名し、御意見を賜りました。  機構における主な審査内容のうち、臨床評価について御説明させていただきます。成人 FN患者におけるメロペネムの有効性の評価については、海外において、メロペネムは成 人FNの適応症の承認を取得していること、並びに国内外のガイドライン及び教科書等に おいて、メロペネムがFNに対する標準的な治療薬の一つとして位置付けられていること を確認し、その上で、審査報告書19ページ下から8行目及び26ページ中段の表に記載し ていますように、国内第III相臨床試験の解熱効果の有効率は、海外での成績と大きく異な らないことが確認されたことを踏まえ、本邦においても成人FNに対するメロペネムの有 効性は確認できたと判断して差し支えないと考えました。  また、安全性については、FN患者を対象として実施された国内外の臨床試験及び国内 の製造販売後調査の安全性情報をもとに評価を行った結果、成人におけるメロペネム1日 3g及び小児におけるメロペネム1日120mg/kgは忍容可能であると判断しました。 た だし、審査報告書35ページ下から12行目に記載してありますように、成人については、 メロペネムの投与量増加に伴い、肝機能異常、下痢及び発疹の発現頻度が高くなる傾向が 認められたことから、製造販売後に引き続き情報収集を行うとともに、臨床現場に対して 適切に情報提供を行う必要があると判断しました。  小児については、審査報告書36ページ下段の表に記載していますように、これまでに 実施した小児の国内臨床試験成績からは、メロペネムの投与量増加に伴い、AST及びA LT上昇の発現頻度が高くなることが示唆されていること、製造販売後の特定使用成績調 査では肝機能異常の発現頻度が高く、使用成績調査との比較では、成人より小児の方が肝 機能異常の発現頻度が高かったことから、小児FNに対するメロペネムの申請用法・用量 は既承認用法・用量の範囲内ではあるものの、肝機能異常の発現については留意する必要 があると判断しました。  機構は以上のような審査を行いました結果、FN患者における本剤の有効性は認めら れ、また安全性は忍容可能と判断しました。したがって、審査報告書3ページの効能・効 果、用法・用量にて承認して差し支えないと判断しました。  ただし、既承認の用法・用量に比べて1日投与量が増加し、肝機能異常などについては 発現頻度が高くなる可能性があること、小児への投与症例数は限られていることから、本 剤の安全性については引き続き情報収集を行い、得られた結果は適切に医療現場に情報提 供する必要があると考えます。  なお、本剤は、再審査期間を4年と設定することが適切であると判断しております。薬 事分科会では報告を予定しております。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。 ○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたしたいと思います。適応 拡大のように見えますが、重症のFNということで審議をお願いするということのようで す。御意見はございますか。 ○前崎委員 time above MICは3g3回にすると伸びると思うのですが、点滴時間によ って大分変わってきます。添付文書には30分以上かけてと書いてありますが、30分と1 時間の点滴時間ですと、大分50%達成率が違うと思うのですが、点滴時間に関する記載 はどのように考えていますか。  理論的には、点滴時間を長くするとtime above MICは、達成率が高くなるのです。た だ現場では、抗生物質なので、30分で点滴する場合と1時間ぐらいかけて点滴する場合 があります。投与回数と投与量を増やすと、time above MICの伸びるのが分かるのです が、その差は余り考慮しなくてもいいというか、添付文書では30分以上となっています。 これは多分安全性のことを考えて、30分より短いと安全性に問題があるということだと 思いますけれども、有効性を考えて今回用法・用量を変えたのであれば、点滴時間に関し ても、より有効性を高めるには少し長くした方がいいような印象を受けるのですが、いか がでしょうか。 ○機構 先生が御指摘のとおり、点滴時間を延長することでtime above MICの達成率が 高くなるということは理論上は事実なのです。ただ、点滴時間を長くすることで血中の薬 物濃度が低く抑えられることによって耐性菌の発現を助長するのではないかという考え もございまして、その点についてはまだ議論されているところではないかと理解しており ます。  今回につきましては、あくまで臨床試験の中で有効性、安全性が確認された点滴時間は、 30分以上かけてということで、それ以上の上限については記載しない方向で我々として は推奨したいと思っております。点滴時間を長くして、より高い有効性が得られるかどう かは今後の薬剤の開発かと理解しております。御指摘どうもありがとうございました。 ○前崎委員 もう一点ございます。最近特に米国や欧州のガイドラインを基に、若い先生 方がよくその用法・用量でお使いになることが多いのです。今回は1日3gまで認められ たということになりますが、一般感染症では、基本的に2gまでとなっております。FN はすべてが重症ではなくて、敗血症や肺炎の一般感染症はより重症の疾患があるわけで、 それに対して安易に3gを投与するという考えになると、添付文書上はかなり違反的な行 為になります。有効性はFNで確認されているからいいではないかと、一般感染症も考え られると非常に困るところはありますので、FNに関しては、こういう用法・用量でいい のだけれども、それ以外の重症感染症は基本的に2gまでということをきちんと情報伝達 しないといけないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○機構 御指摘ありがとうございます。我々としましてもそのように理解しております。 ただ、一方で□□□□□□□□□□□□□□□□□臨床的な意義があるのではないかとい うご意見も、専門協議の中で先生方からいただきました。□□□□□□□□□□、適切な 臨床試験をする、その他情報を収集するなりして、□□□□□□□□□□□□□使えるよ うにしていくのがいいのではないかと考えております。 ○吉田部会長 庵原先生、小児に対する新しい用法・用量に関して、何かコメントはござ いますか。 ○庵原委員 これはFNですので、重症感染症と同じ扱いで小児でも使っています。ただ 小児の場合、これは胆汁排泄の割合が高い薬で、比較的肝機能障害を起こしやすいのです。 それから、子供では、量を増やすと胆石を合併しやすい頻度が出てくるようですので、そ の辺は注意事項として注意喚起すべきではないかと思います。 ○吉田部会長 「ただし、成人における1日用量3gを超えないこと」と書いてあるので すが、それは多過ぎるというような懸念はないのですか。 ○庵原委員 一般的には子供の方が抗生剤の使用量が多いです。体重当たりで使いますの で、上限の3gで止めるということを守っていただく必要があると思います。この薬剤は、 体重当たり40mgを3回、1日で120mgで使う形になりますので、そうすると簡単に3g いってしまう場合がありますから、その辺の注意事項は要るかと思います。 ○機構 御指摘ありがとうございます。小児につきましては、国内の臨床試験での症例数 も非常に少ないということです。また、今回FNの効能追加をすることにはなるのですが、 用法・用量につきましては既承認の範囲内です。ただ、これまでに得られた情報から、投 与量の増加に伴って肝機能検査値異常等が高頻度に見られるという傾向がございますの で、その点は十分注意喚起した上で、引き続き製造販売後の情報収集をしていただきたい と考えております。 ○堀内部会長代理 小児について治験を行ったのは6症例ですが、これは治験を行ったと 考え得るのですか。例えば薬価をつける場合、小児の治験というのはそれなりの評価をす ることになっているのですが、この6症例はどう考えたらいいのでしょうか。ここで議論 することではないのかもしれませんが。 ○機構 その点は、審査側としましてもいろいろ悩んだ点ではございますが、まず、用法 ・用量が既承認の用法・用量の範囲内であるということ。また、海外におきましてメロペ ネムが小児のFNに対する標準的な治療薬として教科書等で記載されていること。また、 国内特有の問題ですが、小児のFNの適応を有する抗菌薬はほかになく、6症例と非常に 少ないのですが、本剤を使用できることによる臨床的な意義は非常に高いのではないかと 総合的に判断しました。確かに、先生が御指摘のように、症例数は少ないのですが、情報 収集とそのフィードバックをしながら慎重に使っていくということで、承認して差し支え ないのではないかと判断いたしました。 ○堀内部会長代理 それは基本的には適応拡大と考えていいのですね。 ○機構 それで結構です。 ○吉田部会長 FNの市販後調査のようなことは行われるのですか。 ○機構 概略ですが、一応1,000例を対象に情報収集するように計画しておりまして、そ のうち、小児については100例ほど収集することを考えております。 ○吉田部会長 ほかに御意見はございますか。特に御意見もないようですので議決に入り たいと存じます。なお、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまし て、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題につきまして承認を可とし てよろしいでしょうか。  特に御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきま す。  それでは議題3に入りたいと思います。議題3につきまして、事務局からの概要説明を お願いいたします。 ○事務局 それでは「ベンダムスチン塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可 否」につきまして、資料3に基づいて御説明いたします。医薬品医療機器総合機構が事前 報告を取りまとめておりますので、指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の 可能性の三点について御説明申し上げます。  品目の名称は、「ベンダムスチン塩酸塩」。予定される効能・効果は、「再発又は難治 性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫」。申請者は、シンバ イオ製薬株式会社です。  悪性リンパ腫は、病理組織学的にはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別され ております。非ホジキンリンパ腫は、さらにB細胞性、T細胞性、T/NK細胞性から構 成されております。本邦の非ホジキンリンパ腫(以下、NHL)は、厚生労働省大臣官房統 計情報部平成17年患者調査におきますと、約4万1,000人という患者数です。このうち 低悪性度B細胞性NHL患者数は約7,800人(NHLの19%)、マントル細胞リンパ腫(以 下、MCL)患者数は約1,200人(NHLの3%)であり、対象疾患患者数は約9,000人と 推定されます。本剤の投与対象患者は再発又は難治性とされており、本剤における対象患 者数は約9,000人をさらに下回ることが考えられ、希少疾病用医薬品の指定要件である5 万人以下を満たすものと考えております。  次に「医療上の必要性について」説明いたします。低悪性度B細胞性NHL及びMCL の治療方法は、病理組織分類と臨床病期に基づいて決定されています。初発の低悪性度B 細胞性NHLに対しては、限局期では局所への放射線照射、進行期におきましては、抗C D20モノクローナル抗体(リツキシマブ)を含む併用化学療法が実施されています。再発 又は難治性の低悪性度B細胞性NHLに対しては、救援療法としてリツキシマブを含む併 用化学療法、塩化イットリウム(ゼヴァリン)等を用いた様々な治療が実施されています が、標準的治療は確立されておりません。  MCLに対しても、初発例ではリツキシマブを含む併用化学療法や、それに続く自家造 血幹細胞移植併用大量化学療法が行われておりますが、一時的な寛解のみで、ほとんどの 症例が再発しています。再発又は難治性のMCLに対しても、低悪性度B細胞性NHLと 同様の救援療法が行われておりますが、標準的な治療は確立されておりません。再発又は 難治性の低悪性度B細胞性NHL及びMCLに対して、既存の治療法での奏効率はそれぞ れ約50〜80%、及び15〜50%と報告されています。  本剤は、ベンズイミダゾール環とメクロメタミンナイトロジェンマスタードの構造を有 するアルキル化剤です。海外で実施された、再発又は難治性の低悪性度B細胞性NHL及 びMCL66例を対象にした本剤とリツキシマブ併用の第II相試験では、主要評価項目で ある奏効率は、低悪性度B細胞性NHLで92.6%、MCLで91.7%でした。また、リツ キシマブに抵抗性の低悪性度B細胞性NHL患者に対しても、75%と高い奏効率が認めら れました。  また、本邦におきまして、再発性又は難治性の低悪性度B細胞性NHL患者及びMCL 患者を対象にした第II相試験として、本剤単独での有効性及び安全性が検討され、主要評 価項目である奏効率は、低悪性度B細胞性NHLでは89.7%、MCLでは100%であり、 海外臨床試験と同程度の奏効率が確認されております。以上のことから、本剤の医療上の 必要性は高いと考えられます。  本剤はドイツで開発され、NHL、多発性骨髄腫に対する適応で承認されております。 また、米国においても「リツキシマブ又はリツキシマブを含む処方で治療中に、又は治療 6か月以内に増悪した低悪性度NHL」を効能・効果として承認され、また、国内でも第 II相試験が実施されていることから、開発の可能性はあると判断しております。  以上より、本剤は希少疾病用医薬品としての要件を満たすと判断しております。御審議 のほどよろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見を伺いたいと思います。いかがでしょ うか。まず、非ホジキンリンパ腫の中から低悪性度B細胞性リンパ腫とマントル細胞リン パ腫を引き出して、それを対象疾患として希少疾病用医薬品に指定したいというお話なの ですが、何か御意見はございますか。これでいいということでよろしいでしょうか。対象 疾患が希少疾病であるということに関して、理論的には余り問題がないということでよい ようです。ほかにございますか。 ○吉田部会長 この対象疾患に対してはリツキサンという分子標的薬の有効性が非常に 期待されていますが、治療抵抗になってしまうということもあって、それが補われるとい う意味では大変有意義な薬ではないかと私も思っております。特段御意見がないようでし たら議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、本議題につきまして指定 を可としてよろしいでしょうか。  御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。 続いて報告事項に移ります。報告事項につきまして、事務局より御説明をお願いします。 ○機構 「報告事項」について報告いたします。議題1「医薬品フルダラ錠10mgの製造 販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。フルダラ錠10mgはアデニンヌク レオシド誘導体であり、DNA及びRNA合成を阻害することにより腫瘍増殖を抑制する と考えられている抗悪性腫瘍剤です。現在は、「再発又は難治性の下記疾患(低悪性度B 細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫)」の効能・効果で承認されておりま す。  今般バイエル薬品株式会社から、本剤と同一有効成分を含有する注射剤であるフルダラ 静注用50mgで承認されている「貧血又は血小板減少症を伴う慢性リンパ性白血病」の効 能・効果を本剤に追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされ、医薬品医療機 器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。  続いて議題2「医薬品フルダラ静注用50mgの製造販売承認事項一部変更承認について」 報告いたします。フルダラ静注用50mgは、議題1のフルダラ錠10mgと同一有効成分を含 有する注射剤であり、現在は、「貧血又は血小板減少症を伴う慢性リンパ性白血病」及び 「下記疾患における同種造血幹細胞移植の前治療、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、 慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫」の効能・効果で 承認されております。  今般、バイエル薬品株式会社から、フルダラ錠で承認されている「再発又は難治性の下 記疾患 低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫」の効能・効果及 び用法・用量を本剤に追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医 薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしま した。  次は議題3「医薬品アバスチン点滴静注用100mg/4mL及び同点滴静注用400mg/16mLの 製造販売承認事項一部変更承認について」御報告いたします。アバスチン点滴静注用 100mg/4mL及び同400mg/16mLは、ヒトの血管内皮増殖因子(VEGF)に対するヒト化モ ノクローナル抗体であり、VEGFの受容体への結合を阻害することにより血管新生を抑 制し、腫瘍増殖を抑制すると考えられている抗悪性腫瘍剤です。現在は、「治癒切除不能 な進行・再発の結腸・直腸癌」の効能・効果で承認されております。  今般、中外製薬株式会社から、「扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺 癌」の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなさ れました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、アバスチン点滴静注用100mg/ 4mL及び同400mg/16mLを承認して差し支えないと判断いたしました。  続いて議題4「医療用医薬品の再審査結果について」報告いたします。資料7は、一般 的名称は「ザナミビル水和物」、販売名は「リレンザ」の医薬品再審査確認等結果通知書 です。この品目につきまして市販後の使用成績調査、市販後臨床試験の成績等に基づいて 再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒 否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項につ いて変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。  議題1〜4まで、PMDAからの報告は以上です。 ○事務局 引き続いて報告事項、議題5、医療用医薬品の承認条件解除について御説明い たします。本日差し替え版として席上配付しております資料8を御覧ください。冒頭にも 御説明いたしましたが、事務処理に少し不備がございまして、通知の右上の通知番号が変 更となっております。なお、事前送付した資料8と、報告内容としては変更がございませ んので、その旨申し添えます。  1ページです。販売名「レイアタッツカプセル150mg、同200mg」。一般名「アタザナ ビル硫酸塩」。承認取得者ブリストル・マイヤーズ株式会社の承認条件解除について、御 報告いたします。  本剤は、平成15年12月に「HIV-1感染症」の効能・効果で承認された薬剤です。承認 申請時には米国での申請資料を基に審査が行われた結果、日本人を対象とした薬物動態試 験は実施されていないことなどから、1ページにある1〜5の承認条件が付帯された上で 承認されました。今般申請者から、日本人を対象とした反復投与時の薬物動態に関する試 験結果が提出されたことから、下線の承認条件1につきまして医薬品医療機器総合機構に おいて審査が行われました。  5ページの3.「総合評価」を御覧ください。審査の結果、日本人健康成人における本 剤の薬物動態は、これまでに得られている外国人における薬物動態と同様であることを確 認いたしました。そのため、国内における薬物動態試験の結果の報告等を求めた、先ほど の下線の承認条件1を解除することが適切であると判断いたしました。以上御報告いたし ます。 ○吉田部会長 委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。 ○堀内部会長代理 アバスチンですが、「扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小 細胞肺癌」という適応を新たにとなっていますが、扁平上皮癌を除くというのは、どうい う根拠によるものですか。 ○機構 今回提出された臨床試験の経緯で、扁平上皮癌の患者は喀血のリスク因子として 同定され、試験の過程で除外基準と設定された試験が提出されたということで、今回の効 能・効果から「扁平上皮癌」は除外されているということです。 ○吉田部会長 末梢ではなくて気管に近い方のがんが多くなると喀血のリスクが高くな りますが、扁平上皮癌ではそういうところに好発しますので喀血のリスクが高い。したが って除いたという話です。田村先生、喀血の話ですが、欧米では特に除外まではいってい ないように聞いておりますが、我が国として喀血の患者を適応除外するということに関し ては何かコメントがございますか。 ○田村委員 多分、海外の試験も、ほとんど除外して行われていると思います。 ○吉田部会長 適応から外れてはいないけれども、基本的に、臨床試験はみんな外して行 っていると。 ○田村委員 はい、外しているはずです。 ○機構 提出された試験では除外されています。 ○吉田部会長 喀血のリスクというものを考えて除外していて、その喀血の患者も適応除 外、禁忌にしているということだそうです。2.5mL以上の鮮血喀血の既往があるものとい う言い方は大丈夫ですか。スプーンに半分ぐらいとかの方が。 ○田村委員 海外でもそういう形で臨床試験を行って、日本もそのままの言葉を持ってき た。 ○吉田部会長 ということは、2.5mLの喀血というのはグローバルに理解されていると考 えてよろしいでしょうか。 ○田村委員 はい。かなり大雑把な表現ですが。 ○吉田部会長 ほかにございますか。 ○清水委員 アバスチンのところで一つ意見があるのですが、添付文書の2ページを開く と、上から「効能・効果に関する使用上の注意」にまず「臨床成績の項の内容を熟知し」 とあり、その下の「用法・用量に関連する使用上の注意」のところで「臨床成績の項を参 照」「臨床成績の項を参照」「臨床成績の項の内容を熟知した上で」「臨床成績の項の内 容を熟知した上で」となっていますが、臨床成績をきちんと先生方に御理解いただくため の努力が別途必要ではないかと思います。添付文書の記載だけではなく、ここの解説用の 資材などの提供も、是非開発メーカーに御指導いただければと思うのですが、いかがでし ょうか。 ○機構 ありがとうございます。そのように申請者側にも伝えまして、了承いただいてい ます。臨床現場で理解していただけるような適切な資材を提供できるように、申請者の方 にも改めて協力を求めたいと思います。 ○清水委員 是非、よろしくお願いします。 ○吉田部会長 よろしくお願いします。もし必要であれば、どこの、表いくつなどという ことを書いていただくと、なお良いかもしれません。ほかにございますか。 ○清水委員 もう一つ、フルダラの件について教えていただきたいのです。審査報告書の 4ページにこういうことになった経緯として、「同一有効成分である注射剤と錠剤で取得 している適応が異なっており、剤型による当該差異が適応外使用や誤投与等の医療現場で の混乱を生じさせ、安全性上の問題が懸念されることから」ということが書かれておりま すが、これはその上の段落ではその開発の経緯が書かれていて、日本で審査をしたときに そういう適応を持っている、あるいは今後取るであろう可能性は、当然予測できたのでは ないかと感じられたのですが、その辺は、機構としてはどうだったのでしょうか。 ○機構 今の件に関しましては、フルダラ錠の初回の審査のときにも議論があった点で す。開発段階の中からも、この件に関しては指導していったところなのですが、国内では CLLよりも非ホジキンリンパ腫の方が数が多かったこともあって、錠剤では非ホジキン リンパ腫の方の開発を優先してきた結果として、このような効能・効果のずれということ が生じてしまったわけです。この件に関しては、前回の審査の中でも、指導した結果、今 回このような申請に至ってきたということです。 ○清水委員 ありがとうございました。 ○吉田部会長 先ほど議論がありました低悪性度B細胞性ホジキンリンパ腫とマントル 細胞リンパ腫はやはり希少疾病です。ですから、薬の適応を取っていくときにあれもこれ も一度にできないということもあったのだろうと思います。 ○清水委員 ただ、ここに書かれている理由が、安全上の問題が懸念されて医療現場での 混乱が生じかねないというようなことは、余りよろしい理由ではないと感じたものですか ら、発言させていただきました。 ○吉田部会長 分かりました。何か適切なアドバイスはございますか。清水先生、このよ うにしたらなどという御意見はございますか。 ○清水委員 今回の場合には、開発の経緯を見ると、注射ではこちらの適応しか取る予定 がないという開発メーカーの都合というのは当然あるわけでしょうから、あらかじめ適応 が剤型によって違っていることも含めて、情報提供をメーカーにきちんとしていただくよ うな指導、あるいは、そういう資材の作成ということも考えていただければ有り難いと思 います。 ○吉田部会長 ほかに御意見はございませんか。ないようですので、報告事項につきまし ては、御確認いただいたものといたしたいと思います。  次は、「その他」です。小児薬物療法検討会議を踏まえた事前評価につきまして御報告 させていただきます。事務局から説明をお願いします。 ○事務局 事務局から、お手元の資料9に基づきまして御説明をさせていただきます。本 議題は、小児薬物療法検討会議で検討された品目についての事前評価のお願いです。小児 薬物療法検討会議と薬事・食品衛生審議会による事前評価の概略について御説明します。  まず、資料9の1枚目の裏を御覧ください。小児の疾病を治療いたします医薬品に関し ましては、治験の実施の困難などの理由によりデータの集積が少ないといったようなこと を含め、小児における標準的な用法・用量あるいは使用上の注意における小児の欄におき まして、小児の使用経験が乏しいというような記載が多く認められます。小児の薬物療法 に関しまして、医療現場の先生方の使用経験に負うところが非常に大きい分野であること が言えようかと思います。このような小児医療における問題点を解決するために、平成 18年3月に「小児薬物療法検討会議」を立ち上げております。  この会議の目的としましては、既に日本で承認を受けている医薬品を対象として、諸外 国において効能・効果、用法・用量が認められている療法に関しまして、小児薬物療法の 有効性・安全性に関する文献等のエビデンスを収集、評価し、さらには、国内における小 児への医薬品の処方実態などを把握いたしまして、これらの用法・用量、効能・効果につ いて、エビデンスに基づいた情報提供を通じて、適切な小児薬物療法が行われるよう環境 整備を進めることが目的です。この情報提供につきまして、承認条項の一部変更あるいは 使用上の注意の改訂といったことを含め、行うこととしております。  この会議につきましては、2枚目ですが、御覧の17名の小児領域における医学的、薬 学的な学識経験を有する先生方にお集まりいただきまして、検討を進めているところで す。この会議の座長は、国立成育医療センター名誉総長の秦先生にお願いしております。  次は、2枚目の裏です。この会議の中では、個別の医薬品としてエビデンスのレベルや 報告書の記載振りを統一的な観点で検討することを目的に、ワーキンググループを設けて おります。このワーキンググループのメンバーとしまして、御覧の4名の先生に御参画い ただいております。さらには、報告書作成に携わっていただいた各小児学会の先生にも御 参画いただきながら議論を進めているところです。このワーキンググループの座長は、本 日、参考人としてお越しいただいております国立成育医療センターの中村先生にお願いし ております。  次のページを御覧ください。小児科学会の御意見なども踏まえまして、8つの医薬品の 療法に関しまして検討を進めてまいりました。これまで、4.メトトレキサート、6.アセ トアミノフェン、7.A型ボツリヌス毒素に関しましては、小児薬物療法検討会議におい て作成されたレポートに基づき、医薬品第一部会において議論が行われ、用法・用量、効 能・効果などの一部変更の方向性が必要であるといったような結論をいただき、既に当該 一部変更は承認されております。  資料9の表紙にお戻りください。このような小児薬物療法検討会議における検討を踏ま えまして、本日、薬事・食品衛生審議会におきまして、報告書の内容あるいは一部変更の 方向性といったことに関して、事前の評価をお願いしたいと考えております。この評価を 踏まえまして、よろしければ、私どもの方から当該医薬品の製造販売業者に対して一部変 更承認の申請を行うよう要請し、申請された後には、機構におきまして迅速審査を経て、 また、薬事・食品衛生審議会における御審議をいただきまして、一部変更の承認というよ うな方向へ進みたいと考えております。  本日は、資料としまして、本年7月の第6回小児薬物療法検討会議でまとまりましたア シクロビルの報告書を提出しております。こちらは、日本未熟児新生児学会の大久保先生、 日本小児感染症学会の新庄先生におまとめいただいております。この内容につきまして、 ワーキンググループ座長の中村先生から御紹介をいただければと考えております。 ○吉田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは、アシクロビル の報告書の内容につきまして、参考人としてお越しいただいております中村先生から御説 明をお願いしたいと思います。 ○中村参考人 国立成育医療センターの中村でございます。お手元の資料9になります が、アシクロビルについての小児薬物療法検討会議での検討結果について御説明いたしま す。この検討では注射剤と経口剤の両方について検討いたしました。まず、静注剤につい て説明いたします。少し資料が前後しますが、まず静注剤です。  資料の2〜3ページにありますように、追加予定の効能は、注射剤につきましては、「新 生児単純ヘルペス感染症」を追加し、「アシクロビルとして1回体重1kg当たり10mgを 1日3回、8時間ごとに1時間以上かけて、10日間点滴静注する。また、必要に応じて 投与期間の延長もしくは増量ができる。ただし、上限は1回体重1kg当たり20mgまでと する」、とすることがまず第一です。それから、既存の適応につきましても、「小児では 必要に応じて増量ができるが、上限は1回体重1kg当たり20mgまでとすること」。さら に、脳炎・髄膜炎につきましては、「必要に応じて投与期間の延長もしくは増量ができる」。 成人では、上限は1回体重1kg当たり10mgまでとされておりますが、「小児では、上限 は1回体重1kg当たり20mgまで」とするとしております。  これらについての医療上の必要性につきましては、1ページに記載されております。適 切な治療が行われなければ致死的もしくは後遺症を残すことが多い。また、がんなどの治 療が困難になる等の理由で今回の効能・効果と用法・用量が必要不可欠と判断されました。  4ページに欧米4か国の承認状況があります。また、そのあとに、文献、成書、ガイド ラインなどの記載をまとめております。最大、1回体重1kg当たり20mgを1日3回投与 は、既存の添付文書の用量の2倍となりますが、6か月〜7歳でこの程度の投与量ですと、 よりAUCが低い経口剤の800mg、1日4回の経口投与と安全性に差がないとした報告が あります。それから、腎機能が未熟な新生児では、腎機能障害や好中球抑制というものが 既に知られておりまして、それに対する十分な留意は必要ですが、投与量不足による感染 症の重篤な後遺症というものを考えまして、リスク・ベネフィットを勘案し、必要な最大 用量として、1回体重1kg当たり20mgが必要であると判断いたしました。ここまでが静 注剤についての説明です。  次に経口剤について説明いたします。3ページにお戻りください。効能・効果としまし ては、性器ヘルペスの再発抑制の追加を予定しております。また、「骨髄移植」という表 現につきましては、現時点でのより適切な用語として「造血幹細胞移植」と改めさせてい ただきたいと考えました。用法・用量につきましては、小児の通常用量の記載が水痘以外 なかったものを、すべての適応について、通常、小児には、体重1kg当たり1回アシクロ ビルとして20mgを1日4回経口投与するとしておりまして、1日の最高用量は、帯状疱 疹と水痘では1回800mg、その他のもので1回200mgとしております。  「医療上の必要性について」は1〜2ページに記載しております。性器ヘルペスの再発 抑制につきましては、性感染症の低年齢化が危惧される中、特にティーンエージャー、10 代のお子様を中心にやはり標準的な再発抑制療法というものが適正に行われるように、日 本でもしておくべきであるということです。また、他の効能・効果につきましては、いず れも、成人同様、重篤な疾患に対する世界的な標準治療であるということで、小児の用法 ・用量の適切な記載が必要であると判断しました。  4ページの下の表に欧米4か国での承認状況、その後に文献情報、9ページから成書の 情報がまとめてあります。国によって、また、成書によって用法・用量の記載振りが異な っている点もありますが、これらを参考に、また、我が国における既存の承認用法・用量 を踏まえて、今回の記載とさせていただきました。新たに追加する適応について十分なA UCが得られることが望ましいことより、我が国の既存の小児水痘の用法・用量を他の適 応に用いることが適切であると判断しました。この用量での安全性につきましては、既に 小児水痘の適応で承認されていること、また、アシクロビルの曝露量としてより高くなる アシクロビルのプロドラッグでありますバラシクロビルの小児の承認用量で忍容性も良 好であるとされていることから、大きな問題はないと判断いたしました。ここまでが経口 剤です。  以上、アシクロビルの静注剤及び経口剤についての検討結果を説明させていただきまし た。 ○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がございましたらお 願いいたします。小児薬物療法検討会議というのは未承認薬使用問題検討会議と似たよう なもので、欧米でかなり標準的に使われている用法・用量に関して、日本でも積極的に導 入していこうということで対応されていると伺っております。特段、問題はございません でしょうか。 ○堀内部会長代理 効能・効果は、主として発症抑制というような感じになっていると思 うのです。これは、免疫力が落ちた場合に、残っていたウイルスが増えてきて帯状疱疹に なるというような話がよくあるわけですが、ウイルスが完全になくなるということではな くて、症状が抑えられる、症状がなくなるというところまでを目標にしているのでしょう か。 ○中村参考人 すみません。私も感染症の専門ではないもので、即答できかねる面がござ います。 ○吉田部会長 事務局の方でどなたかお答えできますか。いなければ結構なのですが。 ○庵原委員 造血幹細胞移植後の単純ヘルペスの発症抑制は成人で期間が決まっていま すが、それに対する小児適応がないということです。ですから成人の療法に応じて小児に 適応が行われているのが、実際の臨床の現場の事情です。  ただ、問題になりますのは、今回これが認められましても、保険などのいろいろな縛り で再発抑制の期間が決められていまして、止めた瞬間に再発してくるというのが臨床の現 場の実情です。ですから、あくまでも、薬の適応という意味ではこれでいいかと思うので すが、問題なのは、期間をどうするかというのが次回の検討課題として出てくるかと思っ ております。 ○吉田部会長 ありがとうございました。 ○飯沼委員 堀内先生のお話ですが、私の知っている限りでは、サイミジンカイネースが あるところでアシクロビルが活性化して、それでウイルスの増殖を止めるわけですが、も ともとのウイルスのジェノムをやっつけるわけではないので、それは相変わらず残るわけ です。ですから、再発はあり得るということです。 ○吉田部会長 資料9の一番前の図表にありますように、今は事前評価の段階です。今の ような御指摘も含めて、いろいろなご注文をつけていただき、そのあと、迅速審査に入っ て、再度、薬事・食品衛生審議会に上がってまいります。再度、御議論いただくというこ とにもなりますので、注文はたくさん出してあげた方が、あとが楽になるという気もしま す。 ○庵原委員 これはついでですが、バラシクロビルも一緒に入れるというわけにはいかな いか、ということを御検討お願いいたします。アシクロビルとバラシクロビルというのは、 結局、本物のドラッグとプロドラッグの関係です。実際は、臨床の現場は、今、使用がバ ラシクロビルにシフトしています。ですから、これが通った瞬間に、次にバラシクロビル が出てくるのは目に見えています。検討をお願いしたいというのが目に見えていますの で、それをするのならば一緒にやってしまった方がいいのではないかと思います。御検討 をお願いします。 ○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにございますでしょうか。 ○中村参考人 今のバラシクロビルの件は、ワーキンググループの中でも、実は学会の代 表の先生方は強く希望されていましたが、今回の枠組みの中では、海外の適応がない領域 までのバラシクロビルに一気にいくというものは、小児薬物療法検討会議の枠を越えてい るのではないかという審査管理課側の判断でやったと理解しております。 ○吉田部会長 対象の枠外になってしまうということですね。 ○中村参考人 基本的なものが米、英、独、仏で承認されているというものを前提に、未 承認薬使用問題検討会議と一緒で動いていますので。 ○吉田部会長 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、アシクロ ビルの報告書の内容については御確認いただいたものといたします。ありがとうございま した。  今後、厚生労働省から関係企業に対しまして、報告書の内容に基づいた承認申請の要請 を行うことになります。その際には、本日、先生方からのコメント等も併せて伝えるとい うことになっているそうです。承認申請があれば、総合機構で審査の後、いずれ、当部会 に御報告をいたしますので、その際にはよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。 事務局からほかに何かありますか。 ○審査管理課長 本日、当日配付資料として配付させていただきました資料に基づきまし て、新型インフルエンザ対策の状況、新型インフルエンザワクチン、これは特例承認とい う形で検討させていただいておりますが、それについて御説明させていただきたいと思っ ております。当日配付資料ですが、「今後の新型インフルエンザ対策について」というこ とで、パワーポイントの資料でまず簡単に御説明させていただきたいと思います。これは 今月の1日ですが、政府のインフルエンザ対策本部におきましてワクチン接種の基本方針 が定められましたが、その際、厚生労働大臣から説明させていただいた資料です。  パワーポイントの資料の1ページです。「新型インフルエンザの特徴について」は、季 節性インフルエンザと類似した点が多い。しかしながら、基礎疾患を有する者あるいは妊 婦等は重症化する可能性が高い。国民の大多数に免疫がなくて、感染が拡大するおそれが ある。  パワーポイントの2ページは、接種の目的です。重症化を防止するについては、一定の 効果は期待。感染防止に関しては、保証されていない。そういうことで今回は、死亡者や 重症者の発生をできるだけ減らす。患者が集中発生することによる医療機関の混乱を防い で、必要な医療提供体制を確保する。このような目的で優先的にワクチンを接種しようと いうことです。それに関しては、具体的には3ページですが、優先接種対象者としまして は、(1)(2)(3)(4)の順番で優先ということです。  4ページです。その際、ワクチンの確保ということで、国内産ワクチンについては年度 内に2,700万人分を確保するということ。国内産ワクチンでは足りないので、保健衛生上 の観点から緊急に輸入するということが決定しておりまして、本年度中には5,000万人分 ぐらいを確保する予定です。また、国内ワクチンについては、本日から23の都道府県で 接種を開始することになっております。  5ページは、接種のスケジュールの目安です。医療従事者から優先的に開始いたしまし て、今このようなところを予定しているところです。輸入ワクチンについては、承認が必 要ですので、特例承認というような手続を想定させていただいております。  6ページです。ワクチンの接種事業のスキームということで、国から医療機関に契約を 結んで接種していただくことを予定しています。  接種の費用については7ページです。  ワクチンの有効性等につきましては8ページです。インフルエンザワクチンについて は、先ほど御説明しましたように、限界があります。しかし、一定の効果は期待できると いうことです。それから、まれにではあるが、重篤な副作用が起こり得る。国内産ワクチ ンについては、季節性インフルエンザワクチンと同程度ではないかと考えられます。また、 先週ですが、国産ワクチンについての第1回目の接種の概要について、庵原先生のところ でやっていただいた結果が報告されておりますが、健康成人では1回でもかなりの有効性 が認められるというような御報告をいただいているところです。  輸入ワクチンについてですが、国産ワクチンとは違うところがあるということです。現 在、2社からの輸入を想定しておりますが、それぞれ、アジュバントがありますとか、鶏 卵培養法以外に組織培養法を用いているとか、用時調製でありますとかそういうところ、 また、小児用量が違う、あるいは筋注であるというようなところの違いがあります。  最後に大臣の方から、「一定の効果は期待できるのだけれども、リスクは存在する」と いうことで、御判断いただいてお使いいただくということで御説明させていただいており ます。ということで、国産ワクチンについては本日から接種を開始いたしますが、輸入ワ クチンにつきましては、これから検討させていただくことになります。  次のホチキス留めにいたしました「医薬品の開発と特例承認までの流れ」について御紹 介させていただきたいと思います。今現在、輸入を予定しています2社の品目については、 外国でまだ承認を受けていないものです。国内において、外国での情報等については適宜 入手しているところですが、並行的に事実上の審査を行っているという状況です。申請が ありましてから通常の審査のやり方をしますと、国内での治験のデータの確認等を踏まえ ますと、最低でも半年〜1年はかかるというようなところですので、政府決定の事項で緊 急に輸入するということに基づきますと、薬事法上、特例承認という制度がありますので、 それを利用した形で輸入の承認の手続を行おうということで検討させていただいている ものです。  この流れで申し上げますと、前提条件としまして、まず、日本と同等の製造販売承認制 度を有する国において承認されているということが前提です。一般的には、日本とヨーロ ッパでICHということで規制当局の会議をやっておりますので、日本、ヨーロッパ諸国 等ということが想定されております。日本と同等以上の審査組織等を持っている国を想定 して数か国を指定するということで考えておりますが、その国が条件になります。それか ら、通常ですと、フルセットの承認申請データをいただくわけですが、特例承認という制 度的には、臨床試験成績の提出は必須ですが、その他の資料については、「申請資料に添 付できない場合は提出を猶予することができる」という規定がございます。それから、審 議会でお諮りするということは同じということの流れになっております。  2ページです。これは、薬事法上の第14条の3の特例承認の規定をそのまま挙げさせ ていただいたものです。第14条の3にありますように、第1項第一号、国民の生命及び 健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止す るため緊急に使用されることが必要な医薬品又は医療機器であり、かつ、当該医薬品又は 医療機器の使用以外に適当な方法がないこと。第二号としまして、その用途に関し、外国 (本邦と同等の水準の承認制度のある国)で販売し、授与し、又は、認められている医薬品 であるということになっております。そういう前提で、特例承認を受けることができると いうことになっております。  3ページを御覧いただきますと、添付書の関係です。基本的には、制度的には、イロハ ニホヘトということで、通常ですと全部出てまいるのですが、ト以外、つまり、臨床試験 のデータについては省略することができる規定になっております。今回の件に関しまして は、冒頭で御説明しましたように、ヨーロッパ等で承認申請の手続が進められているとこ ろですので、それらについては逐次できる限りのデータはいただくということで考えてお ります。ただし、また、邦文訳、日本語訳等につきましては時間もかかりますので、その 辺をどうするかにつきましては、省略するようなことも検討させていただくことになるか もしれないと考えております。  また、臨床試験の最終結果を待ちますと、外国でも来年の3月とか4月ぐらいに最終報 告というようなデータもあります。国内で治験も開始されていますが、それも3月ぐらい までかかるということで、中間的な取扱いでも対応することが必要ではないかと考えてお ります。  4ページ以降が具体的な製品についての概要です。4ページがA社となっております が、具体的にはグラクソ・スミスクライン社のものです。抗原的には、HA抗原というこ とです。抗原の作り方は鶏卵培養ということですので、作り方については国産のワクチン と同じような作り方です。ただし、アジュバントが国産ワクチンには入っていませんが、 アジュバントが入っているということです。  当該品目の使用実績ですが、同じ品目については現在開発中ですので、使用実績はござ いません。臨床試験中ですが、使用実績はない。ただし、(4)の[2]にありますが、鶏卵培 養なのですが、H5N1で同じアジュバント入りのものについては、1万例以上の臨床試 験の成績があるというような状況です。(5)にありますが、臨床試験については、日本、 アメリカ、ヨーロッパ等で実施中である。それから、アジュバントということですが、ス クワレン等の入った油性のワクチンで、H5N1ワクチンについては、先ほど申し上げま したように、1万例を超える使用実績があるというようなことですが、H1N1、今回の 新型インフルエンザに関しましては、新しい組合せということです。  5ページです。B社とありますが、これはノバルティス社のものです。これは、抗原に ついては同じウイルス抗原でHA抗原ですが、抗原の作り方につきましては、国産のワク チン、あるいは先ほどのGSKのものにつきましては鶏卵培養でしたが、このノバルティ ス社のものにつきましては、MDCK細胞を用いた細胞培養による抗原の作り方というこ とです。アジュバントにつきましても、新しいアジュバントを使っているということです。 当該品目の使用実績につきましては、同じくヨーロッパで治験中です。  季節性インフルエンザに、組織培養でない季節性インフルエンザのHA抗原と、今回開 発中のアジュバント入りのものにつきましては、ヨーロッパ等で既に4,000万ドーズの出 荷実績があるということです。  それから細胞培養ですが、MDCK細胞を用いた季節性インフルエンザとアジュバント なしのものにつきましては、2007年にEUで承認されており、4,800人以上の臨床試験の 成績があるという状況です。  当該品目の実施中又は実施予定の臨床試験ですが、ヨーロッパ等では7月から実施して おりまして、日本でも9月から実施しているというような状況です。  アジュバントの関係です。アジュバントは、先ほどのグラクソ・スミスクライン社のも のと同じようにスクワレンですが、アジュバントの種類としては微妙に違っているという ようなものです。局所反応性につきましては、季節性インフルエンザのものですが、一応 報告はされているところです。  6ページを開いていただきますと、「細胞培養によるワクチンの安全性」についてです。 こちらにもありますように、海外の試験では、1回の接種でも有効性はかなり上がってい るという報告があるというようなことです。季節性インフルエンザワクチン(アジュバン トなし)、細胞培養の季節性インフルエンザワクチンなどと同等程度の副反応というよう なところです。  ただし、細胞培養につきましては、MDCK細胞を用いるということで安全性について どうかという御指摘がありましたが、EMEAの評価において、当該ワクチンにつきまし て、腫瘍原性、細胞そのものが投与された場合の動物体内で増殖するという、腫瘍を形成 するという性質についてはあるのだけれども、がん原性は示されていないというような報 告をされておりまして、2007年に、アジュバントなしの季節性インフルエンザワクチン については承認されているというような状況です。  MDCK細胞を用いた細胞培養につきまして御指摘をいただいておりますので、7ペー ジ、8ページに、「米国における状況」「欧州における状況」「WHOにおける状況」に ついて、簡単にまとめさせていただいております。基本的には、がん原性がないというこ とによって承認されているという状況です。  以上のようなことで、これから承認申請が上がってくると思いますので、緊急に対応さ せていただくことになろうかと思います。この医薬品第二部会でも、場合によっては臨時 に開催させていただいて、御審議を賜るというようなことも生じるかと思いますので、そ の際にはよろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 委員の先生方から御質問等はございますか。 ○庵原委員 コメントが一つございます。配付されました資料の1枚目の下のところです が、「国民の大多数に免疫がなく」という表現が少々誤解を招いています。CSL、オー ストラリアのワクチンのデータとかノバルティスのワクチンのデータ、今回私たちが行っ た日本のワクチンのデータからしますと、多くの方は、H1N1のAソ連型にかかること によって免疫の基礎はできているのです。「現在の2009年版のH1N1に対する発症を 予防するだけの免疫の抗体力がない」、というようなニュアンスに表現を改めないと、も ともとの免疫の基礎もないというようなニュアンスでとらえられてしまいます。それは、 今回のいろいろなワクチンの追加接種のデータからすると、その考え方は間違っていると いうことが明らかになりましたので、この辺の表現を改めていただく必要があるだろうと 思います。要するに、多くの方は、基礎は持っているけれども発症を予防するレベルの免 疫力がないとか、何かその辺の表現に変えていただく必要があるだろうと思います。御検 討をお願いします。 ○吉田部会長 ざっと言うと、「不十分で」ということですか。 ○庵原委員 免疫の基礎はあるのですが、発症を予防するレベルの抗体が低いのです。ワ クチンをすることによってそのレベルの抗体が7割〜8割の人が達成できる。それは、ア メリカとかヨーロッパのインフルエンザワクチンの基準を満たすレベルに達していると いう、そういうことです。 ○吉田部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。  私も前から疑問に思っているのでここで質問させてもらいたいのですが、優先接種の話 です。庵原先生たちの御努力で1回投与でいいということになりました。そうすると、か なりの人が接種を受けられるという状況になった。そういうときに大事なことは、優先順 位よりも、若い人たちを中心にできるだけたくさんの人にこのワクチンを受けてもらっ て、集団免疫を付けるということだろうと思うのです。ですから、優先順位をどうこう議 論しているよりも、むしろそういう人たちを中心に、希望者にどんどん配った方が集団免 疫が早く完成して、結局、病気の治まりも早いのではないかと思うのですが、その辺はど うなのですか。 ○審査管理課長 実は、国内産ワクチンは取りあえず2,700万人分を年度内にということ なのですが、12月末までには、今のところ予定としては1,300万人分しか確保できない というような状況です。言ってみれば、その1,300万人の順番をどうするかというのが先 にくるのではなかろうかと思っております。 ○吉田部会長 1回投与でもそれしかないということですか。 ○審査管理課長 ×2ですから、2,600万人分です。 ○吉田部会長 テレビでは予防接種に貧富の差を持ち込むのかというような話をよくす るものですから。 ○審査管理課長 それから、1回接種、2回接種につきましては、先週の金曜日に庵原先 生のところで行われた1回接種までのデータに基づきまして、あるいは海外データに基づ きまして御議論いただいたところです。どういう形にするかについては、できれば今週中 には決めさせていただくということで聞いております。 ○吉田部会長 分かりました。 ○審議官 先ほどは、庵原先生からこの表現について修正すべしという御提案がありまし た。先生がやられた試験データを見てみますと、ワクチン接種をする前においては抗体産 生はほとんどないというところを見ると、言うなれば、免疫がないということは事実なの ではないかと私は理解しました。なおかつ、1回接種をした際にその相当の抗体価が上が るというところで、その基となるプライミング効果と言いますか、そういう表現をされて いたかと思うのですが、そういう効果があると理解しましたが。 ○庵原委員 そうではなくて、H1N1にかかっていることで免疫のプライミングができ ています。しかし、2009年型のH1N1は、現在流行しているH1N1と抗原性が非常 に離れています。ですから、現在、皆さんが持っておられるソ連型にかかってできた抗体 では、そこまでカバーできない。要するに、スペクトラムが狭いということなのです。今 回、2009年版のワクチンを打つことによって2009年版の抗体が誘導されてきたという結 果です。  ですから、普通、最初からのプライミングをスプリットワクチンで行いますと、1回で は絶対に出てこないです。さらに、H5N1のデータから言いますと、スプリットワクチ ンの15μ2回でも、誘導されるのは10%か20%です。今回、1回であれだけ誘導されて いることは、免疫の基礎がないと、あのようなデータは出てこないということです。です から、免疫の基礎はあるけれども発症予防レベルだけの免疫力がないという表現の方が正 しく、厳密に言いますと適切だと私は思います。 ○吉田部会長 そういうことだそうですが、よろしいでしょうか。ほかに御意見はござい ますか。 ○清水委員 審査管理課の範疇で、分かる範囲で結構なのですが、妊婦の接種が11月か らというスケジュールで書かれています。製剤の供給として保存剤フリーのものが11月 後半からの供給と、必ずしも保存剤フリーでなければいけないということはないかとは思 うのですが、そこのところに少しラグがありそうなのですが、その辺はどのようにカバー することをお考えになっているのでしょうか。 ○審査管理課長 妊婦さんに関しまして、国産ワクチンについては、保存剤としましてチ メロサール入りのものが大部分です。一部チメロサールではなくて、ほかの保存剤を使っ ているものはございます。チメロサールに関しましては、大分昔にいろいろと御指摘があ ったということで、それに関しては問題ないのではないかというのが今の見解、学説であ ろうかと思うのです。そうは言っても、関心というか、気にされる妊婦さんもおられるだ ろうということで、チメロサール・フリーに関しても、あるいはチメロサール以外のもの について使って供給できるというか、選択できるような形での供給を考えさせていただい ています。ただ、保存剤フリーにつきましては、今のところ11月に入らないと供給でき ないという状況ですので、その辺は妊婦さんに情報提供をさせていただいて対応させてい ただくというような状況です。 ○清水委員 ありがとうございました。 ○吉田部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。よろしいでしょうか。こ の部会が新型インフルエンザワクチンの特例承認の審議を担当するということは決まっ ているようですので、委員の先生方には、くれぐれもよろしくお願いしたいと思います。 本日は以上ですが、事務局から何か御報告はありますか。 ○審査管理課長 新型インフルエンザワクチンだけでなくて、新型インフルエンザ対策で いろいろお願いする場合には、臨時でまたほかにもあるかもしれませんので、そのときは またよろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 分かりました。よろしくお願いします。ほかに連絡事項はございますか。 ○事務局 次回の部会ですが、既に御案内のように、11月30日(月)、午後4時から開催 させていただく予定です。よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 ほかにございませんか。本日は、これにて終了とさせていただきたいと思 います。ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 中山(内線2746)