09/10/15 第135回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第135回 労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 1 日時  平成21年10月15日(木)9:00〜 2 場所  厚生労働省省議室(9階) 3 出席者   委員   公益委員 :鎌田委員、柴田委員、清家委員        労働者代表:長谷川委員、古市委員、小山代理        使用者代表:市川(隆)委員、高橋委員、佐藤代理   事務局  森山職業安定局長、山田職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木派遣・請負労働企画官、浅野主任中央需給調整事業指導官、        大塚需給調整事業課長補佐、小園需給調整事業課長補佐、小野寺需給調整事業課長補佐、        高西需給調整事業課長補佐、鶴谷需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)今後の労働者派遣制度の在り方について       (2)その他 ○清家部会長 定刻になりましたので、ただいまから「第135回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制 度部会」を開催いたします。本日は、使用者代表の秋山委員、労働者代表の市川委員が所用のため、ご欠席さ れますが、秋山委員の代理として日本商工会議所産業政策部の佐藤副部長が、また市川委員の代理としてJAM の小山副書記長がそれぞれご出席されております。また古市委員は少し遅れてお見えになると伺っております。  それでは、まず議事に移ります前に、先般、委員の交代がございましたので、新しい委員をご紹介させてい ただきます。席上配付で新しい名簿をお配りしておりますので、ご覧ください。使用者側の委員として日本経 済団体連合会労働政策本部本部長の高橋委員がご着任されております。それでは、委員から一言ご挨拶をいた だきます。 ○高橋委員 日本経団連の高橋と申します。大変微力ではございますけれども、より良い制度の構築に向けま して、少しでも貢献できればと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。 ○清家部会長 それでは、本日の議事に移りたいと思います。10月7日に厚生労働大臣から、今後の労働者派 遣の在り方について、労働政策審議会の調査審議を求める旨の諮問が行われ、同日に開催されました職業安定 分科会において、具体的な議論について、当部会でこれを行うということとされました。これを受けて、今回 より今後の労働者派遣制度の在り方について、ご審議いただくことといたします。まずはこれまでの経緯等に ついて、事務局よりご説明をお願いします。  ○鈴木課長 資料は1から3までありますので、ご説明させていただきます。青いファイルには、派遣法の現 行法令、昨年度開催いたしました派遣の研究会の報告や、建議、3党案なども入れております。ご参考として お配りしておりますので、適宜ご参照いただきたいと思います。  まず資料のご説明をいたします。資料No.1ですが、長妻厚生労働大臣より10月7日付で、今後の労働者派遣 制度の在り方について、当審議会に対して検討の諮問が行われています。  内容は資料No.1のとおりです。これについては3パラ目以降に書いてあり、派遣切りなどの社会問題が多発し たことに伴い、製造業派遣の在り方、登録型派遣の在り方、違法派遣の場合の雇用契約の成立促進等々につい て、昨年提出した閣法以外についても措置する事項があるということで、法律案を提出することを前提に、そ の審議を依頼するというものです。  経緯について資料No.2-1から2-5でご説明しますが、まず資料No.2-1です。これまでの経緯をとりまとめてあ ります。昨年9月に、当審議会より派遣制度について法改正の建議をいただき、10月に要綱の答申をいただい て、11月4日に政府の改正法案を臨時国会に提出しております。  この内容については資料No.2-2ですが、日雇い派遣の禁止等々を内容とする法律案で、臨時国会で提案理由説 明を衆議院の厚生労働委員会で行ったものの、その後審議をせずに継続審議、通常国会になりましても審議を しないまま7月21日の衆議院解散に伴い、廃案となりました。  これと並行して昨年のリーマン・ショック以降、派遣切りなどの問題が多発したことを受けて、当時の国会 の野党の中でも、派遣法改正をめぐるいろいろな議論がなされ、6月26日に当時の野党3党、すなわち民主党、 社民党、国民新党の3党共同提出による派遣法の改正法案が衆議院に提出されています。  その内容は資料No.2-3です。これは衆議院の解散に伴い、政府提案の法律案と一緒に廃案になったわけですが、 これをベースに8月30日の衆議院選挙においては、民主、社民、国民新党各党が、この内容をマニフェストと して掲げて選挙を戦いました。この内容が資料No.2-4です。  そこに書いてありますが、製造業務派遣の禁止、登録型派遣の禁止、日雇い派遣については2か月以下を禁 止、均等待遇、みなし雇用、マージン率の公開等々がマニフェストとして掲げられたわけです。皆さんご存じ のように、この選挙においては、民主党、社民党、国民新党の3党が勝利して、現政権が樹立されたわけです。  その政権樹立に当たって、9月9日(資料No.5-5)、この3党において連立政権樹立に当たっての政策合意がさ れています。その中の6に、雇用対策の強化の一環として、労働者派遣法の抜本改正という項目があって、「日 雇い派遣」「スホット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派 遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の直接雇用みなし制度の創設、マージン率の情報公開など、派遣業法 から派遣労働者保護法に改めるという内容の政権合意がなされているところです。  これを受けて先ほどの資料No.1ですが、長妻大臣からの諮問については、こうした派遣切り等々の雇用情勢の 大きな変化、政権交代といった社会情況の変化に伴い、昨年一旦この審議会においては建議という形で派遣法 の改正案のとりまとめをいただいておりますが、その後の社会情勢等に鑑み、改めて内容を変更して、派遣法 の改正案を提出することについての是非についての審議依頼という趣旨です。  これについては10月7日に開催された職業安定分科会においてご説明し、ご審議いただいたわけですが、そ の中で労働力需給制度部会において審議することが適当であるとされたことを受けて、本日、皆様方にお諮り しているものです。  資料No.3です。当部会における具体的な審議の進め方ですが、労働政策審議会においては昨年度合意いただき、 国会に提出している政府提出の法案があります。それと長妻大臣より諮問されている案については内容的には ほぼ6月の3党案に沿った内容となっています。したがって、政府提出の法案に対して、3党案の内容をどれだ け新たに入れ込んで新しい法律案にしていくかというのが、この部会における具体的なご審議の流れになるの かと思っています。そこで資料No.3に従って、この3党案の内容をごく簡単にご説明したいと思います。  1点目は、法律名の変更があって「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に 関する法律」となっているところを「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法 律」ということで名称・目的を改正するという内容になっています。  2点目は、日雇派遣については、閣法が30日以内の日雇い派遣の禁止だったところを、2か月以下の労働者 派遣を禁止としています。2か月以下ですと社会保険等が適用にならないという趣旨から2か月とされている と伺っています。2か月以下の雇用契約については、雇用契約を2か月に1日を加えた雇用期間とみなすとい う、みなし規定が新たに設けられています。  登録型派遣については、政府提出の法案では禁止せずに、常用化をするという規定でしたが、これについて は、26専門業務等以外は常用雇用のみとするということで、いわゆる常用雇用以外の雇用形態の派遣は原則禁 止していくという内容になっています。  常用雇用の解釈ですが、特に定義はありませんので、現行法の常用雇用、すなわち無期又は1年超の有期 の反復更新、有期契約が反復更新して1年超となるという形の内容かと考えています。そこに「26業務等、 以外」とありますが、この「等」は育児休業、介護休業代替要員派遣などが3党案では規定されています。  次頁の製造業派遣は、政府提出では書いてありませんでしたが、3党案では「政令で定める専門業務等を除き、 製造業派遣を禁止する」という規定です。政令で定める専門業務については、この法律を審査した衆議院の法 制局にお聞きしたところ、製造業の中に、26業務的な専門業務を設けるイメージであるという回答でした。「等」 と書いてあるところは、同じように育児・介護派遣の関係です。  専ら派遣、グループ派遣については、政府提出の法案ではグループ内の派遣を8割以上にはしないという規 定ですが、これをさらに拡大して、グループのみならず、ある特定の派遣会社から、その派遣会社の派遣量の8 割を派遣することを禁止する。したがって、グループ外であっても、1つの所に8割以上派遣することを禁止す るという規定になっています。  均等待遇については「労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ、均等な待遇を確保するものとす る」という訓示規定が設けられています。  情報公開等ですが、まず1点目としては、マージン率などの公開を義務づける。マージン率については、昨 年度の部会でも個別の開示か、平均でいいのかという議論がありましたが、この案についても個別ではなく、 平均という趣旨と聞いております。  2つ目の○で、派遣元から派遣労働者に対する通知義務事項の拡大ということで、ここで賃金とか、社会保 険の適用に関する事項、さらに個別のマージンを個々の労働者に開示をするという規定ができています。  さらに、派遣元から派遣先に対する通知義務の拡大ということで、派遣労働者の賃金等とありますが、この あとに申し上げる派遣先の義務の強化という規定があって、その規定に必要な情報を派遣先に通知するという 趣旨かと考えています。さらに、派遣先から派遣先の労働組合へ派遣労働者の賃金や業務などを通知するとい う義務が新設されています。  3頁の1つ目は派遣先の責任強化ということで、11項目の新たな義務づけを派遣先に課しています。内容と しては、派遣契約の遵守、年休取得時の不利益取扱いの禁止、育休取得の不利益取扱いの禁止、未払い賃金が あった場合の派遣先の連帯責任、社会保険料の未納に対する派遣先の連帯責任、派遣労働者に対する安全衛生 教育の義務づけ、定期健康診断等を派遣元がやらない場合の代行措置、労災保険の給付に関わる請求の便宜の 供与、性別を理由とする差別の禁止、派遣元に対する個人情報提供の要求の制限、派遣先組合との団体交渉の 応諾義務の11項目を新たに付け加えています。  違法派遣の対処については、政府提出の法律案が、派遣先に対して違法派遣があった場合には、労働契約を 申し込むことを勧告するという勧告制度を設けているのに対して、3党案では、直接雇用のみなし規定の創設と いうことです。すなわち、禁止業務派遣の受入れの場合、これは登録型禁止とセットですが、常時雇用ではな い労働者を受け入れた場合の違反、無許可・無届の場合の受入れ、期間制限を超えた派遣の受入れ。さらに等 とあり、この等のところは、省令落としになっており、ここで偽装請負を規定する予定だと推測しております。  この5つのケースについて違法があった場合には、労働者が派遣先に対して、派遣先が自己の雇用主とみな すという通告をした場合には、派遣元と労働者が結んでいる雇用契約の一方当事者である派遣元の地位が派遣 先に移って、派遣先と労働者の雇用契約とみなすという民事の規定を設けるという内容が入っています。その 場合に、派遣契約の期間制限超えの違反の場合については、雇用契約を期間の定めのないものに派遣労働者は 変更することができるという規定になっています。  4頁の罰則ですが、罰則については2種類あって、派遣元事業主が違反を行ったときの行為者などの法人に対 する両罰の部分の罰則を大幅に引き上げていることと、派遣先に対する罰則についても新設をしています。欠 格は政府案と同じです。施行日は公布の日から6カ月ありますが、登録派遣の禁止、製造派遣の禁止について は公布の日から3年以内で政令で定める日という形になっています。内容については以上です。これについて は、10月7日の職業安定分科会で審議されましたので、その状況を若干ご報告します。  いろいろな意見が出ましたが、例えば、昨年来の派遣切りについては、日本国民にとって大変なショックで あった。派遣というのはスキルが身に付かず、正社員にもなれず、ずっと派遣で働かなければ生きていけない ということで、このまま放置してよいのか。そういったことについては、これまで労働者派遣法が緩すぎたこ とに起因するものではないか、という意見がありました。  中小企業については、国際競争の中で非常に厳しい状況にあって、このような中で派遣法の見直しが行われ た場合には、海外へ製造部門を移転せざるを得ない状況にもなり得る。派遣切りについては再発防止の策が必 要だが、全体のバランスを見据えながら議論すべきというご意見もありました。  個々の中小企業ではなかなか人を集められないという問題があるので、派遣会社の役割が非常に大きいとい う意見もありました。一時的な業界需要があるときだけ派遣を活用する形で、派遣と正社員とは役割が違うと いうことも考えてほしい、という意見。厳しい雇用・失業情勢の中で、雇用の安定、雇用の創出がいちばん重 要であり、マッチング機能の強化が必要であって、そういう需給調整面でのメリットも踏まえて議論すべき、 という意見もありました。  登録型派遣については、ILO条約や憲法の職業選択の自由なども踏まえて議論すべき、という意見。規制強 化をするにしても、今がそのタイミングかどうかを考えるべき、というご意見。さらに、国際的な制度の相場 がある中で、日本だけ規制強化して、雇用がなくなるということは避けるべきではないか等々、ご意見があっ たことをご報告します。私からは以上です。 ○清家部会長 それでは、これから今後の労働者派遣制度の在り方について、当部会で議論を進めていただく わけですが、その前にそれに先立って、委員の皆様方に部会長として1つお願いを申し上げたいことがありま す。  それはご承知のとおり、労働者派遣制度については、ただいまの鈴木課長のご説明にもありましたが、昨年、 当部会でかなりの時間をかけて議論をした上で、一部少数意見はありましたが、労使各側とも合意ができる内 容について、これをとりまとめ、建議及び答申を行ったところです。これは当部会としての合意であると考え ておりますので、今回、新たに議論を行うに当たっても、まずこれを尊重していただきたいということです。  その上で今回の審議の方法としては、前回の答申後の雇用情勢の変化、あるいは政権交代などの社会情勢の 変化を踏まえて、昨年の法律案にどういう内容を追加していくべきかといったことをご審議いただくことが適 当ではないかと思っております。要するに、前回の私どもの答申をベースに、これからの議論を進めていただ きたいということですが、これについていかがでしょうか。そのような形でよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○清家部会長 ありがとうございます。それでは、今後の議論はそのような形でご議論いただきたいと思いま す。そこで、本日は、議論の第1回目ですので、まず今回の諮問内容全般にわたって自由に意見の交換をいた だきたいと思います。諮問内容についてのご質問も含めて、ご意見等がございましたら、ご自由にお願いした いと思います。 ○長谷川委員 この時期にこのような議論をすることは、いい時期だったのかなと思っています。したがって、 いま部会長が言われた第170回の臨時国会に提出された政府提出の法案を、もう一度きっちり出すということ と、それ以降、何が起きたのかを労使が真摯に分析しながら、冷静な議論をしていくことが非常に重要ではな いかと思います。  私の方からこの審議に当たっての基本的な考え方と、先ほど課長から報告がありましたように、分科会での いろいろな議論を踏まえて、これ以降の審議に臨む考え方について述べさせていただきたいと思います。  何度も出てくるわけですが、規制緩和という名の下に、労働者派遣法が何度か改正されましたし、その他の 労働関係諸法も改正されてきましたが、その結果、派遣労働者の急増と昨年秋の経済危機によって多くの問題 が顕在化したのではないかと考えております。そういう意味では、いま申し上げたように、今回の議論にあた っては、労使双方が初めて実際に起きたことを冷静に受け止めて、議論できることは、お互いに共有していき たいと思っています。  議論の上で2つの点について認識をしておいたほうがいいのではないかと思います。第1点目は、派遣労働 者の問題が社会問題化したという事実を、私どもが真摯に受け止めなければならないという点だと思います。 具体的には4点ぐらいあると思いますが、1つはこの10年強の間の多様な働き方への誘導についてであります。 私はこの言葉を聞いたときに、当時は、ああ、そうだな、これからは個の時代だし、多様な働き方というのが あるのだと思いましたが、多様な働き方ということで、結果的には若い人たちを中心に派遣という働き方に誘 導したのではないか。その結果として低処遇、低賃金、安易な切り捨て、ある意味では解雇とか、雇止めなど によって格差の拡大を招いたのではないかと思っています。  2つ目は、セーフティネットが非常に不十分であったことが明らかになったという点であります。我が国の雇 用のセーフティネットは長期安定雇用、ある意味では正社員に焦点を当てていたものですから、雇用・就労形 態の多様化や、非正規労働者に対するセーフティネットが非常に不十分だったことが明らかになったのではな いかと思います。  それから3点目は特に労働者派遣について、使用者責任が非常に曖昧になっていたという点であります。や はりこの間、派遣会社が、解雇や雇止めというときに、本当に使用者責任を果たしたのかどうかが結構問題に されました。そういう意味では使用者責任が非常に曖昧になっていることが明らかになったのではないかと思 います。  4点目は、労働者派遣を考えた場合に、特に登録型派遣が中心ですが、能力開発が不十分で、労働者個々人の スキルがアップしていなかったことも明らかになったのではないかと思います。そして認識すべき点の2つ目 は、今申し上げたポイントをきっちり踏まえながら、もっと言えば共有化しながら、グローバル化ということ が何度も分科会で言われましたが、今後のグローバル化への対応について、労使双方が中長期的な視点で建設 的に議論することが、社会から要請されているということです。  これ以降の議論のポイントと進め方について若干申し述べたいと思います。労働者代表という立場からいえ ば、いろいろな経験をした今こそ、持続可能な働き方を実現することが重要ではないかと思います。特に派遣 労働者については、安定した雇用の実現、信頼感が醸成できる職場環境の構築が必要ではないかと思います。 派遣という働き方が、ある意味では非常に職場の中で信頼感が持たれなかったと言われているわけですが、信 頼感が醸成できる職場環境の構築も考えなければならないのではないかと思います。  それと、これ以降の人事・労務施策をきっちりと作っていくことが必要ではないかと思います。先ほど課長 から、いろいろな使用者からの意見についても紹介されました。私も聞いていて、企業の立場について少し申 し上げたいと思うのは、環境変化というのは大変早いし、大変厳しいものがあると思います。グローバル競争 の対応ということが再三言われましたが、その環境変化の対応度を高めていくためにも、企業も努力しなけれ ばならない課題があるのではないかと思います。コストの問題、技術や商品開発の問題、マネジメントの実効 性などについても、企業もこれらの経験の中からグローバル化への環境といった中で、いろいろな観点から考 えていかなければならないのではないかと思います。  これらの点について、労使で意見の違いや、いろいろな考え方があると思いますが、お互いに意見交換をし ながら、我が国を豊かな社会にしていき、労働者が活き活きと働いていくことが、企業にとっても社会にとっ ても重要なのだということを踏まえながら、真摯に議論をしていきたいと思いますので、よろしくお願いした いと思います。 ○市川(隆)委員 全国中小企業団体中央会の市川です。先週7日の職業安定分科会においては、特に公益委 員の方々から大変大きな、重い視点が提供されたのではないかと考えております。先ほど鈴木課長からのご報 告の中にもありましたが、法律を改正して、製造派遣を原則禁止にすることによって、派遣なら働きたいとい う方々、子育てがあるとか、介護がある、高齢者などは正社員は無理だが派遣でなら是非働きたいという方々 の勤労の権利、あるいは職業選択の自由が侵害される可能性があるのではないか、というご意見がありました。 これは憲法上の問題にもなりますので、非常に大きな、重い論点ではないかと考えております。当部会におい ても、こうした論点についても、きちんと審議をし、回答を得ていくことが必要ではないかと思っております。  また、公益委員からは、国際相場というものがあって、それに沿って考えると、国際的には製造派遣は禁止 している国はないという中で、日本だけ製造派遣を禁止することが、国際相場から見ていかがなものかという 議論もありました。  また条約で言いますと、ILO条約上も製造一般について禁止するというやり方が、条約上、きちんと整合性 がとれるのかどうかといったところも議論としてあるのではないかと考えております。また製造派遣を原則禁 止することによって、その方々が正社員として雇われるのかどうかについては、非常に議論の飛躍があるので はないか、というご指摘もありました。  中小企業経営者から聞くところによりますと、派遣労働者に期待する資質と、正社員に期待する資質は異な っているのだということです。したがって、製造派遣がなくなったために、その派遣労働者が、直ちに正社員 として雇用されるかというと、別問題ということになろうかと思うわけです。  それからまた、このタイミングが適当かどうかという議論もありました。まさに有効求人倍率が過去最低と いう状況の中で、製造派遣を禁止した場合に、今まで派遣労働者として働いてこられた方々に、一体その後ど ういう処遇が待っているのかということも、きちんと考える必要があるのではないかと思っております。  以上、私なりに先週の職業安定分科会での公益委員の方々からのご指摘について復唱させていだたいたわけ です。長谷川委員のおっしゃるように、真摯に議論をしていこうと。労働者が活き活きと働ける環境づくりの ために真摯な議論をしていこうということについては、全く異論はありません。異論はありませんが、先ほど 申し上げたような大きな、重い論点についても、きちんと真摯に議論をさせていただきたいと思っております。  その上で私が先週申し上げたことですが、私どもは中小企業経営者の代表ですので、中小企業において、具 体的にどういう業種、どういう部門で製造派遣が特に活躍しているかというと、業種としては金属及び金属製 品、機械・器具、食料品といった業種が、いちばん製造派遣を活用している所ではないかと思っております。  もう少し具体的に申しますと、例えば、クリスマスケーキ、アイスクリーム、フルーツ加工、缶詰などは、 非常に一時期に大勢の人手が要るという状況です。そのシーズンがすぎると、パタッと仕事がなくなるという 業種です。したがって、一時的には需要に対して人材派遣事業が、個々の中小企業においては知名度がないた めに、なかなか思うように人が集められない。こういう中小企業にとっては、人材派遣事業の有効性が非常に あるわけです。  最近の事例ですと、新型インフルエンザのワクチン製造用の鶏卵は有精卵でなければいけないということで、 12日間、37℃を保って有精卵を育てるということですが、ちゃんと育成されたかどうかについては、光を当て て卵の成育状態を目視検査するということです。その目視検査にも、まさに製造派遣の方々が活躍されている 例があると聞いております。ワクチンを大量に製造しなければいけないときに、人手が欠かせないわけですが、 そういうところで製造派遣の労働者に活躍していただいている。あるいはデジカメとか携帯電話、ゲーム機な どは商品のライフサイクルが非常に短くなっておりますので、売れなくなったらそのラインはストップする。 したがって、そこの労働者は必要がなくなるという状況の中で、中小企業にとっては人材派遣事業の有効性は 非常に大きなものがあると考えております。  専門的な業務についてだけ認めるということでいいのではないか、というご議論もありますが、現状におい て、例えば製品の箱詰めだったり、製品のバリ取りだったり、ワクチン製造用の卵のように、目視検査だった りといったものが、果たして専門的と捉えられるのかどうか。私はそれぞれに専門性はあるのだと思っていま すが、専門的業務に限るという議論をされる方々には、例えば技能検定を受けて合格をした方とか、そういっ たことが念頭にあるのではないかと思います。もしそうだとすると、バリ取りなり、製品の箱詰めなりという 中小企業において、具体的に製造派遣が活躍している分野は、すべて禁止の対象になるわけで、まさにそうい う分野に季節的な需要、あるいはインフルエンザのような社会情勢によって大量の人手が要るという所が、人 材派遣を活用できなくなるということですので、冒頭申し上げた先週の議論にもありましたように、そういっ た方々の勤労の権利、あるいは職業選択の自由を侵害する可能性があるのではないかということ。それから中 小企業経営者側にとっても、非常にミゼラブルな状況になりかねないということを、よくご議論いただきたい と思っているわけです。  製造派遣以外にもいろいろな論点について、先ほど鈴木課長からご説明がありましたし、清家部会長からも ご指摘がありましたように、私ども昨年の閣法の提案において、この場で議論をし、とりまとめたのです。ま た、その前提として、鎌田委員を中心にまとめていただいた7月28日の研究会の報告書を前提に、昨年の閣法 をとりまとめたわけで、その考え方については、私どもは十分尊重するべきですし、また社会情勢の変化があ り、同時不況によって非常に多くの方々が派遣村、派遣切りという状況があったではないかというご議論があ りますが、それを是正するために制度を変えなければいけないものかどうかは、よくご議論いただきたいと思 います。  もちろん製造派遣について、昨年7月の報告書には触れられておりませんので、大いに審議をしたいと思っ ていますが、それ以外の部分は、この報告書で、学識経験者の方々の議論が十分尽くされているのではないか。 そしてまた、社会情勢の変化については、別の方法でこれを是正する道ももちろんあるわけで、セーフティネ ットを強化することについては、私どもも異論はありません。是非、強化すべきだと思っております。  また職業訓練の充実によって、派遣労働者も生活給付付きの職業訓練の制度を活用することによってスキル を身に付け、正社員にチャレンジをしていただく。こういった道は是非整備すべきだと思っております。  職業訓練の7,000億円の基金を削減するといったことについては、私はいまひとつ理解ができません。新政 権においても雇用対策本部を立ち上げ、職業訓練の充実を中心に、もっと制度を充実していこうという気運に あるように聞いておりますので、その部分については大いに期待をするところです。そうしたことは制度とい うよりも、むしろ予算措置ということで、多くの部分が救われるのではないかと思っておりますので、必ずし も法律上の制度をどうするかということではなくて、もっと有効な予算措置での対応もあるのだということも 念頭に入れていただきたいと思います。 ○清家部会長 ほかにご意見はいかがですか。 ○古市委員 遅れて申し訳ございません。冒頭の部会長のご発言について少しお尋ねします。先ほど課長から3 党の改正案の説明があって、その中で法律の名前及び目的を変えるという説明がありました。部会長からはこ れまで議論した経過があるので、そこをベースに何を付け加えていくかという議論をしてくださいというお話 がありました。私は法律の専門家ではないので正確にはよくわかりませんが、これまでの法律は派遣の事業法 だと私は理解しているのですが、その法律は派遣労働者の保護等に関する法律とするのだという3党のものの 考え方が示されているわけです。ここをどれほど意識して議論をするのかということが、少し気になるところ で、以前の議論の中で、諸外国の相場観という話もありましたが、外国の派遣の状況についてのヒアリングを したときに、私のほうから韓国の法律についても説明をしていただくようにというお願いをした経過がありま す。 韓国の法律には派遣法で3党が出しているような派遣事業で働く労働者の保護をする法律という位置づ けがされており、本来そういう法律がいいのではないかというのが、私のもともとの考え方です。そういうこ とを前提にするのであれば、労働者保護を強調していくという議論になっていくと思います。それは与党が言 っているだけで、ここの議論の踏み台ではありませんよということであれば、少し議論の仕方が違うのかと思 うのですが、その辺はどうでしょうか。 ○清家部会長 まず法律の名称については、少し専門的なことになりますので、事務局ないしは鎌田委員から お答えいただいたほうがいいかと思います。  私が先ほど申し上げた趣旨は、いずれにしても新しい法律が仮にできるとしても、こういう雇用のルールは 基本的には労使が合意して、できるだけ実効性が担保される形で法律が作られることが望ましいわけです。ま た、ご承知のとおり、ILO等の精神も労使が合意した上で雇用の規制を作る。  そういう意味からいって、まず大原則としては、前回の私どもの答申はいろいろ議論があり、また少数意見 等もあったわけですが、基本的には労使が合意されて、ここまでだったら双方納得できるということで答申を まとめましたので、私としては、まずそれをベースに考えるというのを大原則としてお願いしたいということ です。  その上で労働者保護という観点ですが、法律の名前あるいは目的等についての話は、私は法律家ではないの で他に譲りますが、基本的には前回、私どもがここで出した答申の中にも当然ですが、例えば派遣先の義務、 派遣元の義務、その他いろいろな所に労働者の保護の趣旨は織り込まれているわけです。ですから、そういう 観点から言いますと、法律の名前を変えるかどうかは、まさにこれからここでご議論いただくわけですが、従 来の私どもが議論した内容あるいは去年ここで出した答申も、派遣労働者の保護に関する内容もかなり含んで はおりますので、従来の私どもの答申と3党合意の内容が、労働者保護の項目があるかないかで大きく質的に 違うとは考えてはおりません。よろしいでしょうか。 ○古市委員 いまの部会長のお話を前提にしてですが、派遣をめぐる社会的批判を浴びていることについて、 言い方が適切かどうかわかりませんが、いわゆるこの法律が派遣業を行う自由をあまりにも野放図に認めすぎ ていることに問題があるのではないかと考えております。電話1つで手軽に事業ができて、なおかつ、利益を 上げることができるという事業の自由さを、あまりにも認めすぎて、そこで働く人々の方がおざなりにされて いるということで、社会的批判を浴びているということだろうと思います。  市川委員からお話がありましたが、派遣に適する事業というか、ものが世の中にあるということについては、 一部そういうこともあるのだとは思いますが、そのことをあまりにも針小棒大に強調されすぎているのではな いかと、私は非常に懸念します。  したがって、そういうことであると、現在批判されている派遣での労働者の保護のされなさというか、無権 利状態についての対処ができないのではないかと、非常に強く考えます。幸いにして市川委員も労働者のセー フティネットの強化については賛成をするとおっしゃっていただきましたので、そういう方向で社会から要請 をされている項目、懸念についての合意形成ができる議論が進められればありがたいと思います。 ○小山代理 私は市川委員の代理で出席しておりますが、私どもの労働組合は製造業の、特に機械金属産業の 製造業の、それも中小企業を多く組織している労働組合ですので、この1年間の大きな変化といいますか、非 常に痛ましい現実を目の当たりに見てきた者として、今回この審議に参加させていただきたいと思います。  昨年この議論をしていた時期が9月でしたから、その直後のリーマン・ショック以降、11月、12月、1月と 大変厳しい雇用情勢の激変があったわけです。とりわけ製造現場での雇用調整が大変激烈なスピードで行われ たというのが、今回の大きな問題、特に年末・年始の派遣村等の社会的な問題として明らかになったわけです。  その本質は一体何だったのか。実は今までも景気変動は多くありましたし、かつて1970年代のオイルショッ クの時代、円高不況の時代、また最近では2001年秋からITバブルが崩壊して以降、製造業が3つの過剰と言 われて、大変激しいリストラが行われたわけです。  でも今回は今までとは、いわゆる雇用調整のやり方が違ったのです。それはどういうことかというと、極め て速いスピードで雇用が打ち切られ、なおかつ、切られた人たちの保障が十分されていないという問題が起こ ったのです。そこの本質は何かというと、直接雇用と間接雇用の違いにその本質があったのではないか。なぜ かというと、私どもJAMの労働組合がある経営者の皆さんとよく話をしますが、結局安易に人を切れる。手を 汚さずに生クビを飛ばすことができる。これが派遣という今の1つの雇用形態というか、つまり雇用責任を負 わずに、人を使うことができるという、この制度そのものの本質がそこにあったのではないか。だから急激に 人員整理が行われたのです。  しかし、昨年度の各企業の業績を見ると、上期は過去最高の生産量や利益を誇っていた。そして下期は一気 に赤字に転落する。そのときに真っ先に、そこで働いている人を切る、そこで賃金をもらって生きている人の 生活を奪うということが行われたわけです。ここに制度の本質があることを、私たちは昨年来起こった事実の 中でしっかり認識しなければいけないことだと思います。結局仕事を失うだけではなく、住む場所も失う。そ して雇用保険の失業給付も十分に手当てされていない。ましてや退職金もない。そういう働き方をしている労 働者が数多く製造現場にいたということです。  特に昨年の審議のときには、いわゆる日雇い派遣の問題が大きな議論の中心になっていて、私ども労働側が 強く主張していた登録型派遣の規制については、十分な議論の時間がなかった。これは1年前の審議会での議 事録を見れば労働側委員はそのように主張しているわけです。ですから、今回、こうした1年間の大きな事実、 現実の上に立って、この派遣法の抜本的な改正の議論をこの場でしなければならないというのがこの部会に課 せられた責任だろうと思います。  それと同時に、これまでいわゆる規制緩和ということで、何か自由な市場の競争に任せれば世の中が良くな るというイデオロギーに基づく政策が進められましたが、先の総選挙で、そうした政策のやり方は駄目なのだ ということは、国民の判断として明らかにされたわけですから、そうした世論の状況もきちんと反映して議論 をしていくのも、この部会に課せられた責任だろうと思います。  そういうことで考えてみれば、派遣法自体1999年改正が本当に良かったのか。あるいは2003年改正も、さ らにその中で製造業務に対する派遣の解禁が良かったのかどうか、そこに立ち戻ったきちんとした本格的な議 論をしっかりとやるべきではないかということを、まず1つ目に申し上げておきたいと思います。 ○高橋委員 長谷川委員から、冒頭にこういう時期にこそ冷静に労使が建設的な議論をしていくべきだという ご指摘をいただきまして、私どももまさしくそのとおりであると思っております。  まず総論的に申し上げたいと思います。今回の検討に当たっての留意点として、昨年来、起きたことは100 年に1度と修飾されるように、通常の景気サイクルの幅をはるかに超えた景気後退が生じたということは、十 分に踏まえておく必要があろうかと思っております。昨年来のいろいろな報道で雇用調整のスピードが速かっ たり、まず雇用が切られたりという形の報道が先行しましたが、その背後にあったのは、大幅な受注減という 事実も、後々わかったことでしたが、それが進行していたことも十分考えておく必要があろうと思います。  その意味において、今後の制度改正に当たっては、もちろんそうした事態を踏まえて起きたことに対応する 対策を講じる必要もありますが、基本的には平時における制度の在り方も十分に考慮していく必要があるので はないかと思っております。  私は前回の安定分科会でも申し上げましたが、やはり少子高齢化が加速しておりまして、労働力人口も減少 しております。そうした中で、いわゆる全員参加型社会の構築なくして、我が国の経済の発展はないというこ とも、十分踏まえておかなければならないのではないかと思っております。  その上で、昨年来、何もしていなかったのかということではないとも思っております。即ちこの制度におき ましては、本年の3月に指針改正が行われて、中途解約時の対応等が規定されております。また、許可基準の 見直しなども行われているところです。  また、雇用保険法が改正されまして、適用の拡大、あるいは給付の拡大といった対応もなされておりますし、 先ほどご指摘もありましたが、現在、緊急人材育成就職支援基金に基づきます給付付きの職業訓練といった第2 のセーフティネットの強化もなされている。そういうことも十分に踏まえて、念頭におきながら、果たしてど ういう制度がよろしいのかということについて、検討をしていく必要があろうと思います。  また、これからいろいろな項目についてそれぞれ検討をしてまいるわけですが、当然、現在、派遣という働 き方を選択されて働いておられる方もいらっしゃるわけでして、そういう方々への影響がどのようなものにな るのかということも、十分に検討をしていく必要がありますので、次回以降でも結構ですが、検討に当たりま して、現在、登録型派遣にしても、製造業派遣にしても、あるいは常用型にしてでもよろしいのですが、一体 どの程度の人数の方がそれぞれの働き方を選んで働いておられるのかといった数字などもお出しいただきなが ら、検討を進めていければと考えております。  具体的な論点については後ほどまた述べたいと思いますが、最初に質問の形でいくつかお伺いしたいのは、 先ほどの課長によるご説明では、資料3について、それぞれ具体的にご説明をいただいたところですが、その 目的というのは一体何なのかということが、私自身よくわかりません。例えば登録型派遣についても常用型の みで、それ以外は原則禁止するその目的とか理由とか、あるいは製造業派遣にしてもそうなのですが、今回、 提案の背後にあるその考え方といったようなものについての、ご説明をいただければと思っております。私か らは以上です。 ○清家部会長 ご質問の件につきまして、事務局からお答えいただけますか。 ○鈴木課長 3党案の趣旨ということですが、これについては政府提案ではありませんのでしたので、私どもの 作成ではありませんので詳細なところはわかりません。これについて審査をしました法制局であるとか、作成 しました現与党からいくつか説明が出ていますので、それに足して条文から読みとれる内容から推察されると ころを織り交ぜて申し上げますと、基本的には今回の提案が出てきた契機は、昨年来のいわゆる派遣労働者の 大量の解雇、雇い止めが入っているということです。  その中でこの派遣という制度自体が雇用があまり安定していないという趣旨でして、特にそこについて、雇 用の安定をより図れるように、常用雇用という形を別としまして、それ以外の、いわゆる登録型の派遣を禁止 していくという形が、登録型派遣の禁止の趣旨かと思っています。  製造業派遣につきましては、例えば労災の事故なども製造業派遣では、派遣の中でも非常に多い。それから、 安全衛生や安全衛生教育が十分だったかということも含めまして、製造業派遣については派遣労働者の技能訓 練を派遣元が行うことによって、高度熟練技術の継承の一助となるということを目的として、基本的にはいろ いろ製造業派遣で問題が起きましたので、そこは禁止するけれども、技能の継承という形で製造業派遣を組み 換えてそこだけ残していく。要は製造業派遣の意味を変えて、技能の継承の1つの制度としていくという趣旨 から、製造業派遣については専門業務を除いて禁止する形の法律構成をするという趣旨で、この2つのところ は禁止をする形と理解しています。  例えば日雇い派遣については2か月という形ですが、2か月というのは社会保険の適用とか、解雇予告の規定 の適用といったものが、2か月以下は適用がないということで、社会保険や解雇の制度の適用がないということ については、保護に欠けるであろう。したがってそれ以上の期間の雇用のみを認めることによりまして、就業 上の確保を図っていくという趣旨から2か月以下の派遣の禁止。これは昨年度の日雇い派遣の禁止の議論の中 では、派遣元での雇用に欠けるということから1か月という案を出しましたが、趣旨が異って、いろいろな制 度の適用がないということを、1つの契機としてこの2か月というラインを出しています。大きなところは大体 そのような感じです。 ○清家部会長 ほかに何かご意見がありますか。 ○佐藤代理 秋山委員の代理でまいりました日本商工会議所の佐藤と申します。先ほど来出ているお話に、少 し私も付け加えさせていただきたいと思います。  今後の審議についてということで、前提といたしましては、もちろん派遣労働をめぐるセーフティネットが 必要だということは、これまでもお話があったとおりであると思いますし、また、今日のお話の中にあったも のの1つとして、働く方の技能、教育訓練のお話もございました。これにつきましても、派遣で働く方もそう ですし、その方だけではありませんが、例えば商工会議所でも協力をさせていただいている仕組みで、ジョブ・ カード制度がございます。まさに仕事をする機会がこれまでいろいろな経緯でなかった。あるいはその仕事に 必要な能力を身につける機会がこれまでなかった方に、企業で研修をしていただいたりすることで、そういっ た技能を身につけていただくことを通じて、働く方の技能の向上についても、大変厳しい状況ではありますが、 中小企業でもそういった方に来ていただいて、能力アップに協力をさせていただいている事柄を、冒頭ご紹介 させていただきたいと思います。  その上でですか、1点だけ申し上げたかったことは、中小企業でなぜいま派遣労働の仕組みを利用する会社が あるのかということです。市川委員からのお話にも重なりますが、自分の会社で必要なときに、必要な人材を 確保するのがどうしても難しいという実態があります。これは東京都内のように労働力の多いところもそうで すし、それ以外の地域でも共通して経営者の方からお聞きする話です。例えば中小企業が新聞広告を出して、 地域の方ら来ていただく方を募って、必要な方に本当に来ていただければいいですが、来ていただける保証は ありません。  派遣会社にお願いをすれば当然、手数料を払わなければいけないのですが、やはりその手数料をお支払いし てでも、どうしても仕事を確保するためには、人材が必要な場合が出てまいります。仮に派遣の仕組みを通じ て人材確保ができないと、その仕事をあきらめざるを得ないか、海外にすでに拠点を持っている会社であれば、 海外にいままで以上に仕事を移すということを、はっきり経営者の方々はおっしゃられています。  この派遣の問題を今後議論していただくに当たりまして、どうして派遣という仕組みを企業が使うのかとい う観点も合わせて議論の中に入れていただきたいと思います。以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。それでほかに何かございますか。 ○長谷川委員 労使が総論を一通りしたので。資料3の前回閣法で出したのが左で右が3党なのですが、3党案 について私どもの現時点での考えといいますか、どう見ているのか、どう評価しているのかということを少し 述べたいと思います。  まず法律名及び目的ですが、私はこの3党案を見てなるほどなと思ったのです。私もずいぶん長いこと審議 会に関わっていますが、例えば男女雇用機会均等法は、昔は勤労者婦人福祉法だったわけですが、法の名称も 勤労者婦人福祉法で婦人の福祉と、やはり時代の流れで名称も目的が変わっていったわけです。  私もこの派遣法の作りというのは、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等 に関する法律ということで、第1章から第5章までの作りになっていて、第1章が総論で、第2章が事業に関 すること、第3章が労働者のことなのです。去年の秋以降にいろいろな派遣の問題が出てきたわけですから、 そのときにこの事業法を、古市委員が事業法と言ったのもそうだと思うのですが、この名称を派遣労働者の就 業条件の整備等ではなくて、労働者の保護等に関する法律にするというのは、私からみれば全然不自然ではな い。こういうことはあり得る。だから、なるほどと、むしろ私は評価したい。  目的もそうです。目的は1条ですが、目的の中で、派遣労働者の就業に対する条件の整備で、派遣労働者の 雇用の安定とその他福祉の増進に資することを目的とするというところを、労働者の保護と書くことは法律的 にはなんら問題がないわけで、私はこの法律名と目的というのは見てみてなるほどと思いまして、これは駄目 だという理由はない、むしろなるほどと思いまして、これは評価できるのではないかなとは思いました。むし ろ私どもが気づかなかったことを気づかせていただきました。  その次に日雇い派遣だとか派遣労働者の雇用契約についてですが、これ2か月ですよね。この2か月の議論 というのは、前回のときも議論をしたと思うのですが、2か月って非常に面白いというか、非常に興味のある数 字なのです。雇用契約期間が日々または30日前の派遣は原則禁止するというのは日雇いのときにした話です。 3党案は、これで2か月以内の労災等を禁止するとしているのですが、要するに、雇用契約期間が2か月以内と いうことは、これは私は一考に値すると思うのです。これは駄目だというのではなくて考えることができるの ではないかと思います。特に2か月以下を考えたときのものは何かといいますと、例えば労働基準法の20条の 解雇予告、若しくは21条の2号で解雇予告手当が適用されない場合の条項があるわけです。ここは2か月なの です。したがって、そういう意味では2か月以下の雇用形態を考えるときに、基準法の20条とか基準法の21 条の2号は、適用の関係で非常に重要なのです。だから2か月という数字が出てくるのです。  もう1つは健康保険です。健康保険及び厚生年金保険は、2か月以下の期間を定めて使用される者は、所定の 期間を超えて引き続き使用された場合を除き、被保険者になることができないとなっています。これをクリア するためにこの2か月ということが出てくるわけで、2か月1日だとか2か月以下の労働者派遣を禁止するとい うのは、そこに解雇と解雇予告手当と、健保と厚生年金、ここをクリアさせるために安定ということを考えた ときに、この2か月というのは非常に大きな意味合いを持つということを読むことができる。これをどう考え るかを議論したほうがいいなと私は思います。そういう意味では、労働者側から見ればなるほどな、これ妥当 だなという評価はできるのではないか。取り入れるかどうかは議論をすればいいが、妥当だなとは思います。 こういうものをどう考えるかは皆さんの意見を聞いてからだと思っています。  登録型派遣ですが、登録型派遣は私はもう少し議論をしたほうがいいと思います。要するに、そもそも1985 年に派遣法ができたときに、この登録型派遣というものを本当に想定していたのかどうか、こういうものが先 に入っていたのかどうかということです。登録型派遣という言い方を私たちはするわけですが、法律の中に出 てくるのではなくて、要綱か何かに出てくる話で、要するに派遣法の中では例えば一般労働者派遣事業だとか、 特定労働者派遣事業だとかという言い方はあるわけですが、登録型派遣というのはここでは規定していないの で、これは要綱の話です。  かつ登録型派遣の非常な難しさは、例えば2条の1号で労働者派遣というのは、「自己の雇用する労働者を当 該雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい」となって いるわけです。自己の雇用する労働者なのです。登録型派遣労働者が果たして、本当に自己の雇用する労働者 なのかどうなのかというところは、いろいろな見方があるのではないか。  いろいろな派遣の問題は、登録型派遣にある大きな問題の故にあるのです。だからこの登録型派遣をどう扱 っていくのか、本当に登録型派遣という働き方が労働者にとってもみんなにとっても幸せなのかどうなのかに ついては、私は議論をしたほうがいいと思う。ある意味で派遣元と派遣先の契約期間と、雇用期間が一緒だと いうことは、本来あり得るのかどうなのか。自己の雇用するとは何なのかという話になってくると、ここは大 きな矛盾を抱えているのではないかと思います。そういう意味では3党案のところで常用雇用のみとするとい うのは、常用雇用については自己の雇用する労働者みなすことができるからだと思うのですが、ここは次に議 論をしたほうがいいのではないかなと思います。  製造業の派遣の話は小山代理にしてもらおうと思います。「専ら派遣」を禁止している趣旨はなんなのか聞き たいのです。それから「インハウス派遣」。3党案の場合はインハウス派遣のことをどう考えているのか、それ もお聞きしたいと思います。  均等待遇ですが、やはり均等待遇という考え方は必要なのだと思うのです。雇用・就業形態の多様化とかい ろいろなことを言われていますが、均等待遇という考え方は私は必要なのではないかなと思います。いろいろ な法律を作るときに、格差だとか、労働条件が非常に劣悪だとかというのはなぜかというと、均等とか、均衡 だとかという考え方がないからだと思うのです。したがって、いろいろな政策を立てるときに均等待遇原則を きっちりと打ち立てないと、これは難しいのではないかなと思います。ある意味では均衡待遇は難しいとは思 いますが、しかし、この問題を放置しておけば、ますます格差は拡大するわけで、私は均衡・均等待遇という のは重要なのではないかなと思います。  情報公開についてです。前回のときの議論もですが、特にマージンなんかのことが問題になったわけですか ら、やはり個々のものを情報開示することが必要なのではないかと思います。自分が今度派遣で行くのだけれ ども、どのような派遣契約をされているのか、賃金はどうなのかとか、社会保険はどうなのかということを把 握するためには、派遣労働者個々人の情報公開が必要ではないか。平均だとか丸めたのでは自分のことがよく わからないので、やはりここはなるほどなというふうに私は思いました。  派遣労働者の受入れに当たって、業務内容だとか派遣料金、派遣労働者の賃金を労働組合に通知することも、 それは私たちも前回に言っていた話なので、同じようなことだなと思います。  派遣先の労使で協議するということは前から言っていましたが、労働者のことだとかいろいろなことをチェ ックする上でも、労働組合にそういうことを知らせることは必要なのではないかなと思います。ある意味では 派遣先労働組合の関与の仕方を、もう少し広げていいのではないか。そういう意味ではこの3党案の言ってい ることは、私どもがこの間言ってきたことと共通するものがあるのではないかなと思います。  派遣先責任の強化ですがたくさん書いてあって、今日は時間もないでしょうから一つひとつ精査できません が、ただ、派遣先を強化するということは必要なのではないかと思います。したがってこれらについて、この 委員会の中でもきちんと精査したらどうかなと思います。先ほど使側の人が言いましたが、結構雇用保険に入 っていなかったとか、社会保険に入っていなかったとかいうことがあるので、そういうものをチェックできる ようなものが必要なのではないかと思います。派遣先に少し責任を持たせることなども必要なのではないかと 思います。  違法派遣の対処では、私たちも前回の審議会でも言いましたが、違法派遣などがあったときはみなし規定を 入れるということなので、そういう意味では同じようなことが取り入れられているなと思います。以上です。 製造派遣については小山代理から。  ○小山代理 この3党の法案では、政令で定める専門業務等を除き、製造業派遣を禁止をするということで明 確にしております。先ほども少し申し上げましたが、昨年からの派遣切りを通じて多くの問題がはっきりして きたのです。それともう1つは冷静に過去を振り返ることができる状況に今あるわけです。  そうすると我々、ものづくり産業、これは中小企業から大企業までありますが、その中で物の製造業務への 派遣が解禁されたのは、ついつい5、6年前の話です。それ以前は一部業務請負、ここで違法な行為が行われて いたということも明らかになってきているわけです、期間工や臨時工という形、あるいはパートタイムの形で、 直接雇用の、いわゆる非正規といわれる働き方での雇用の確保も、現実に数十年間行われてきていたわけです。 こういう派遣という形で使われたのはつい5、6年の話だということを、まず冷静に考えなければいけないと思 います。  そこでこの間起こってきた問題でいいますと、実は2001年から2002年にかけて物の製造業務の分野では、 正規従業員を中心にして大量の人員整理が行われた時期です。私どもJAMの組織も47万人の組合員がいたの ですが、4年間で10万人減少いたしました。その多くは「3つの過剰」と言われる中の雇用の過剰の中で、希 望退職や早期退職優遇制度という形で、職場を離れざるを得なかったということです。しかし、その後、景気 が急激に回復をしていく、あるいは回復をしないまでも、ついこの間人員整理をしたはずなのに工場に行って みると、同じだけの人が働いている、この人たちはなんなのかと聞いたら、「いや、派遣さんなのですよ」とい うことで、まさに正規従業員の代替機能を果たしたわけです。  それがさらに業務請負からいわゆる3年、業務請負の違法派遣ということが摘発された中で、むしろ派遣に いけば直接指揮命令ができるからそちらにしようといって、大きく切り換えていって、それが今度3年という 期限の中で、2009年問題を目の前にしたわけです。その間に2009年問題を解決するためにどうしたらいいか ということを、みんな真剣に考えたわけです。そして、直接雇用にしようという決断。もう1つは正しい業務 請負に移行ということで、これは行政指導も相まって、それぞれの経営者の皆さんも真剣にそのことを考えて、 その方向に転換をしていったのです。現実に派遣や請負の方から正規への登用、あるいは有期の直接雇用への 登用が中堅以上の企業では多く行われてきました。  結局それはもう1つの反省があったからなのです。急激に拡大をした製造現場への派遣あるいは業務請負の 中で何が起こったかというと、もの作りの現場力がどんどん低下をしていったということです。品質が落ちる、 不良品が多く出ることが続発をして、また、新しく来た人に仕事を教えなければいけない、その負担もまた大 きい。決して長く続かずに交替をしていく中で、いつも新しい人に仕事を教えていなければいけない、という さまざまな問題の中で、もの作り現場の現場力が落ちていた。コストは確かに軽減できたかもしれない、けれ ども、本質的にもの作りの産業が持つべき技術力、あるいはそういう技能力が低下をしていったという現実が あったわけです。  もう1つ大きな問題は労働災害の発生なのです。労働災害は大きな災害から本当に指先を切ったという小さ な災害まで含めてどの分野で多いかというと、実は派遣や請負の人たち、熟練していない労働者の皆さんに、 その被害がどんどん及んでいったわけです。こうしたことから、これからのあり方を一体どう考えるべきなの かということを冷静に考えなければいけないのではないか。先ほど申し上げましたが本質はやはり直接雇用な のだ。やはり間接はおかしいのではないか。誰も責任をとらないではないかということがあるわけです。  もう1つ、これは日本の中小企業のあり方も含めて、国際競争ということを言われるけれども、コスト競争 で日本は国際競争を打ち勝ってきたわけではないわけです。やはり技術力なのです。製品の品質なのです。そ のことをないがしろにして、コストだけで競争をしても、それはアジアの各国の賃金と日本の賃金をどう比較 してもコストで競争できるような話ではないわけです。けれどもなぜ日本の企業がしっかりと国際競争の中で 生きていられるかといったら、やはりいい製品をきちんと作ってきたからです。そのことをこれからの大きく 産業構造が変換をしていくこの時代に、物の製造という分野で求められている企業として、あるいはそこで働 く者としてどういうあり方を求めていくのかといったら、きちんと責任をもって雇用をし、そこで教育訓練も し、そして技術・技能をきちんと次の労働者に伝承をしていく機能をきちんと持っていかなければいけない。  しかし、残念ながら、臨時的・一時的に派遣の形でいったら、一時的な生産量の増加に対しては対応できる かもしれませんが、基本的な技術や技能の継承がその現場から失われていくという問題を、いま真剣にそれぞ れ経営者の皆さんも考えていらっしゃるのが今の現実です。  そこから物の製造業務での派遣を禁止することは、決して国際競争を失わせることにはならず、むしろしっ かりとしたものづくりの産業としての競争力を付けていく方向にもっていけるのだという視点を是非しっかり 持っていただきたいと思います。  もう1つ、1週間前の分科会の議論がどういう議論であったか存じ上げませんが、派遣って職業ではないので すよね。では、派遣でどういう事業の下で働くのか、どういう仕事をするのか、それが職業ではないのではな いですか。それを何か派遣という形の働き方をあたかも職業選択とかいうことは、私はそういうことは欺瞞と しか言いようがないと思います。  もう1つは、臨時的・一時的労働が全く必要がない、全くあり得ないというふうには私は思いません。景気 変動もあります。日常、仕事が急に増えるということもあります。これは直接雇用で有期契約の労働者を雇う ことはなんら妨げはないわけです。現に日本の企業は戦後、何十年間もそういうやり方をやってきた。派遣と いうのはわずか5、6年の話なのです。それは中小企業であっても、むしろそこにいい人材がきちんとなかなか 来てもらえないとしたら、それはむしろ職安行政の大きなお仕事なわけで、そういう分野をどうしっかりして いくのかということが求められるのです。あくまでも間接雇用というのは雇っている側の責任を曖昧にし、そ こで働く人の不安定さを増進することにしかならないわけです。冒頭に申し上げたとおり、手を汚さずに人の 首を切れるという、これはある意味経営者にとっては麻薬のようなものだとおっしゃる方もいるわけです。そ んな楽なことをしては駄目なのです。  私は何度も何度もそういう人員整理の場所を経験してきました。これは労使ともに辛いわけですよ。しかし、 そこで希望退職の募集をしたり、人員整理をするのです。産業構造が変わっていくときにはせざるを得ないの です。あるいは企業業績が落ちたときにはどうしてもそうせざるを得ないことがあるわけです。その苦労をす ればいいではないですか。苦労をしてはじめてそこで働いている人の有難味やその人たちの今後の生活を考え るのです。それを、手を汚さずに簡単に首が切れるから便利だなんていう制度のあり方をきちんと見直してい くことが今求められているのであって、そういう意味では物の製造業への派遣は最も景気変動に左右されやす い製造の分野ですから、この部分についてきちんと禁止をし、そして有期労働契約は決して禁止はしていない わけですから、必要な労働力の確保のためにどういうふうにあるべきなのか。先ほど例えば、ばり取りだけと か、梱包という例示がありましたが、これは多くの職場では業務請負でやっている分野が非常に多い分野です。 あるいは有期契約のパート労働者で対応するという分野が非常に多い分野なのです。派遣でなければならない なんていうことはこれっぽっちもありません。そこからいけば製造業の派遣禁止がどれほど社会的な影響を与 えるのかというのは、よくよく考えてみればきちんと苦労を覚悟し、そしてやるべきことをやっていったら十 分対応できることです。そういうことでこの3党案の方向で是非ご論議をいただきたいと思います。 ○清家部会長 ありがとうございました。先ほど長谷川委員より「専ら派遣」についてご質問がございました ので、事務局からお答をいただきます。 ○鈴木課長 専ら派遣とインハウス派遣とおっしゃられましたが、その趣旨ということです。まず専ら派遣に ついては現行法で許可がされないという形です。元々これは昨年の鎌田先生の研究会でおまとめいただいたも のがより詳しいわけですが、派遣というのはご存じのように、労働者供給事業から分離いたしまして、特に派 遣という形態については需給調整機能が期待できるということで認められたものです。  したがいまして、適切な需給調整機能を果たさないものまで派遣として認めることは適切ではないという趣 旨から鑑みまして、専ら派遣につきましては、特定の者に対して労働者派遣を専ら行うために設立されるもの ということで、これは要は第2人事部であろうということから、これは適切な需給調整機能を果たすものでは ないということで、そういったものが、まず設立の許可から認めない。もしそういった形のことをやっている 場合には、許可の取消し等の対象になるという趣旨で禁止がされているものです。  昨年度の政府案のグループ派遣につきましても同じような理由でして、グループ内の雇用調整につきまして は、グループ内である意味で一体的に労務管理がされていることが多いであろうといったところについて、グ ループ内だけで派遣を行っていることについては、これは一般の労働市場に対する適切な労働力需給調整の機 能を果たしているといえるのかどうかということで、それはいえないのではないかという前提から、それであ れば全く禁止するというわけではないけれども、少なくとも2割は外部に対して需給調整機能を果たしている ということが必要なのではないかということで、グループ派遣については8割という形の線を出して、それ以 外のものについては禁止するという趣旨だったかというふうに考えています。 ○市川委員 先ほどの鈴木課長のご説明の中に、あるいはこれは推測なのかもしれませんが、製造派遣のうち 専門業務のところは認めるというところの理屈が、技能の継承の1つの制度として認めるのだというお話でし た。これは全く驚きとしか申し上げようがないわけです。私も先ほど正社員の期待する資質と派遣労働者に期 待する資質は違うのだということを申し上げました。先ほどのご発言の中にも技能の継承ということが日本の ものづくりの基盤であって非常に重要だというお話がありました。それは全くそのとおりなのですね。ただ、 それを製造派遣の派遣労働者に期待するのかどうかということについては、私は違うと思います。それは正社 員に期待するものなのです。中堅企業より上のところは違うかもしれません。中小企業にとってはもの作りの 技術、匠、それは企業の存続にとって命取りなのです。そういうものを派遣労働者には経営者としては期待を しないと思います。それは正社員に期待するものです。先ほどの鈴木課長のご説明がもしそういうことである とすれば、そういうふうに派遣労働者を技能の承継のために使っていくのだということについては、私は全く 矛盾しているとしか言いようがない。現実を踏まえていない議論ではないかなと思うわけです。  働き方の多様化について、針小棒大な議論であるとか、あるいは欺瞞であると、このようなご議論がござい ましたが、ここで議論をしているのは、現行法律でもって認められている製造派遣という働き方を法律で禁止 をするかどうかということなのです。法律で禁止をするということは、非常に大きなことで、極端に言えば、 お一人方でもそのことによって派遣労働の道が閉ざされ、勤労の権利が侵害されたとすれば、その方は憲法違 反として訴えることだってできるわけなのですね。それを針小棒大あるいは欺瞞というふうには捉えないでい ただきたいと思うわけです。そうした方々、おそらく声なき声なのです。子育てをされている方、介護をされ ている方、高齢者の方で、派遣なら労働できるけれども、正社員は無理だという方々の声は、声なき声でして、 これは最近の労働組合の組織率から見ても、そういった方々の声が本当に労働側から反映されているのかとい うことについては、私はクエスチョンマークです。ですから、あえて使用者側のこの席から、そういった労働 者の声なき声も十分斟酌してご審議を賜りたいという発言を申し上げている次第です。 ○長谷川委員 1999年までは、労働者派遣法の付則の4で、「何人もものの製造の業務(物の溶融、鋳造、加 工、組立て、洗浄、塗装、運搬等物を製造する工程における作業に係る業務をいう)であって、その業務に従 事する労働者の就業の実態並びに当該業務に係る派遣労働者の就業条件の確保及び労働力の需給の適正な調整 に与える影響を勘案して労働省令で定めるものについては、当分の間、労働者派遣業を行ってはならない」と いう法律が現存していたのですが、これは憲法違反ですか。99年まで現存していたのですよ。それは憲法違反 だと言えますか。 ○市川委員 その後、解禁をしたわけですね、解禁をして現行法では、そういった製造の分野にも、製造派遣 として働くことを認められているのです。それを今回、禁止をするかどうかという議論なのです。禁止をする ことによっていままで認められた権利を狭めるわけですから、そこは憲法問題というふうに、可能性があると 申し上げてもおかしくはないと思います。 ○長谷川委員 それはもう少し慎重におっしゃったほうがいいと思います。  もう1つ、ちょっと心外なのですが、私たちの組合員の中に介護で働いている労働者も組織していますし、 いろいろな労働者を組織しています。47の都道府県に地域ユニオンだとかもありまして、そういうところには いろいろな労働者がいます。それからクラフトユニオンもあります。だからそういうふうな一方的な物言いは、 このような審議会の時には相応しくないと思います。私たちはそういういろいろな労働者を組織した労働組合 にいますので、私たちのバックにいるのはどのような労働者かということを十分、腹と頭の中に入れてご発言 していただきたいと思います。 ○高橋委員 時間も限られてまいりまして、駆け足になるかもしれませんが、資料3に基づきまして各項目に ついて、私から述べさせていただければと思います。まず日雇い派遣等に関する規制ですが、昨年提出の政府 案では、日雇い派遣労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認める業務に関しては除外をされ ておりました。こちらの表でも例外はポジティブ・リスト化と書いています。今回の検討に当たりましても、 昨年と同様の措置は講じられて然るべきではないかと思っています。是非検討をしていただければと思ってい ます。  2か月以下の労働者派遣を原則禁止することに関する理由は理解をさせていただいたところですが、他方で、 平成11年改正で常用代替のおそれの少ない臨時的・一時的労働力の需給調整に関する対策であると位置づけら れたこととの整合性を、どのように考えていくのかという議論が、当然出てくるのであろうと思っているとこ ろです。  続きまして登録型派遣に関連して、専門26業務以外でもこうした働き方に対する一定のニーズはあると思っ ております。例を挙げるまでもありませんが、例えば公的年金を受給されていらっしゃる高齢者の方で、少し の期間であるとか、週あたり何日間という形で働きたいというニーズも当然あろうと思いますし、家計補助的 な働き方が、最近少し薄れているかのような印象を報道ぶりでは見ますが、決してそのようなことはございま せんし、非常に景気が後退している中で、家計補助的な働き方に対するニーズは、ますます高くなっておりま す。  そうしたニーズに対して、こういう形で原則禁止をしていくことは、果たしていいのかどうかということに ついて、十分に議論を尽くしていく必要があるのではないかと思っておりますし、現に登録型で働いておられ る方々をもし禁止をした場合、どのような形で、どういう働き方に誘導していくのかということも、十分考え ていかなければいけない。それは禁止に関わる問題がすべてそうだと思っています。  製造業はいろいろやりとりがありましたが、使用者側として申し上げて、是非ご理解いただきたいことは、 中小企業というのは、直傭したくても人が集まらない、これは厳然たる事実があるということについては、是 非ご理解をしていただきたいと思っております。  もう既に論点は尽されていますが、我が国だけがこういう形で禁止をしていくことになりますと、では、対 内直接投資にも影響を及ぼしかねないのではないかという論点もあるのではないかと思っているところです。  専ら派遣やグループ企業派遣の関連ですが、グループ外でも8割禁止をするというご説明を鈴木課長からい ただきましたが、これについては、頭の中の例なのであれですが、例えば企業城下町のような所で、そのグル ープだけが主たる企業で、そういうところに全然グループとは関係ない派遣事業者の方がいらっしゃるような 場合を想定した場合で、結果として8割になってしまうというものまでも禁止されてしまうことについて、ど う考えるのかという項目があろうと思っています。  均等待遇については理念としては理解される部分もあると思いますが、やはり企業を越えた職種別賃金制度 が我が国にはありませんので、現実問題としては非常に難しいことではないかと思っています。やはり、我が 国が目指すべきは均衡待遇という方向ではないかと思っているところです。  情報公開につきましては最後の○のところに、派遣先から派遣先労働組合の通知義務が謳われているわけで すが、これは果たしてどのような効果を狙っているのか、私にはよくわかりません。組合としても通知を受け て何らかの義務が発生し得るのかどうかということです。これを法定することが果たして労使自治の原則に照 らしてどうなのかという議論はあろうかと思っています。  派遣先責任の強化ですが、これは労働者派遣契約の遵守という、当然課すべきものもありますが、それらに 関してどういうものなのか、内容が非常にわからないものなので、なかなかコメントがしにくい。派遣先とし てどの程度の責任を負うのかが、全くわからないということです。  ただし、いくつかコメントをしたいと思います。未払賃金に関する派遣先の連帯責任、あるいは社会保険料 に関する派遣先の連帯責任、こうした賃金とか社会保険料の支払いというのは、本来雇用主である派遣元の責 任でして、こうしたものまで派遣先に連帯責任を押し付けるのは、雇用主責任を非常に曖昧模糊とするもので はないかと思います。未払賃金にしても、派遣先企業は既に派遣料金を支払いしているわけで、さらにまた未 払いであればそれをお支払いするということは、一体どういうことなのかがよくわからない。そういうわから ないことがたくさん並んでいるなという印象があって、これは後日議論をさせていただきたい。団交応諾義務 にしても、なぜ義務があるのかということが全くわからない。わからない項目だらけだということを申し上げ ておきます。  直接雇用、みなし規定の創設です。これについては企業の採用の自由であるとか、契約の自由といったよう なものは、やはり憲法の22条、29条から起きてくる基本的人権の尊重から由来するものです。こうしたもの を課すことが、企業の採用の自由とか、契約自由の原則を少し侵害するのではないかと思われるので、これは 後ほど是非議論をしていただければと思っております。  また、期間制限を越えて受け入れた場合に、それが期間の定めのないものに転換するということ、あるいは それについても、元々がもし有期契約であった場合でも、無期雇用に転換する、契約内容そのものが変わって しまうことについても、なぜそうなるのかがよくわかりませんし、この規定は非常に問題が多いのではないか と思っております。  罰則に関しては、現存するほかの法律等との整合性を十分図るべきではないかなと思っております。私から は以上でございます。   ○清家部会長 ありがとうございました。もう時間がきておりまして、今日は11時までということですが、初 回でございますので、できればすべての委員にご発言をいただきたいと思います。公益側の柴田委員、鎌田委 員がまだご発言がございませんが、何かご意見がございますか。 ○柴田委員 労使それぞれのご意見が、それぞれ説得力があり、大変難しい問題だなとまた改めて思ったので すが、とりあえず論点はかなり明確になってきたのです。最初に長谷川委員から事実を冷静に受け止め議論を していきましょうというお言葉がありましたように、それぞれおっしゃっている対象が違っている。議論の対 象が違っている部分もあるかなと思いましたので、先ほど高橋委員がおっしゃったように、実態がどうなって いるかを、次回はきちんと整理していただきたいと思っています。それは常用型とそれ以外の労働者の状況が どうなのか。あるいは26専門業種と製造業務と、それ以外の自由化業務というのが、それぞれどういう状態な のかなのですが、人数だけではなくて、もしできれば、その構成みたいなものがわかっていれば有難いなと思 っています。  いまワーキングプアと言っている若い人たちの問題は、派遣法に限らず日本の将来に大きな問題を残すわけ で、その人たちが派遣という形でスキルを磨かないでそのままいってしまうのは問題なので、基本的にはどう いう年齢構成の人が製造業で働き、あるいは26業種以外の製造業でもなく26業種でもないところで、主婦の 人とか働きたいときに働きたいという人がいるというところが、それぞれ違った議論のベースで話しておられ るようなところが若干あると思いますので、そこのところを少し整理していただきたいなと、できる限りそう いう感じでいきたいと思っています。そして、その時に、仮に製造業派遣が禁止された場合に、どういう影響 が出るのかというところも、少しずつその対象等を決めながら労使の方々で話していっていただければ、もう 少し論点が明確になるのかなと思います。  常用雇用のみとするというところも、大変大きな問題をはらんでいて、議論の中には派遣元と派遣先という ところで、派遣先にプレッシャーがたくさんかかっているような感じがしますが、では、派遣元が需給調整機 能を果たすために、本当にこのままでいいのかというところの議論も、少し整理していっていただいたらいい かなという感じがします。まだいろいろあるのですが、このぐらいにしておきます。 ○清家部会長 ありがとうございました。鎌田委員お願いします。 ○鎌田委員 まず冒頭、清家部会長から平成20年度政府案をベースに、追加的にさらに労働者保護を強化する ような施策について考えていくという方針が示されまして、私そのとおりだなと思っています。なぜかと申し ますと、先般の政府案はいろいろと労使の中でご意見もあったでしょうが、合意をして出したわけですね。  その基本的な考え方は私などの理解でいいますと、やはり派遣については経済的な効率性というよりは、社 会的に許容される派遣制度というものは何か、そしてその中で労働者保護をどう強化していくか、こういった ことから各論ではさまざまでしょうが、そういった方向性においてこの労使の方が虚心坦懐に議論を進め、そ して互譲の精神で少しでも前進させようということで決まったものだと思います。そういったものをベースに してさらにその後のいろいろな経済情勢を踏まえながら、新たな工夫をしていくことが非常に大切だと思いま すので、政府案も廃案になりましたので、現行法の、かつてのままなのですね。このまま失敗しますと、その ままになってしまいます。それでいいかという問題だと思うのです。ですから、そういうことで、是非とも労 使の方には互譲の精神で、それぞれの不満もあろうかと思いますが、この点についてはより積極的にまとめる ような方向で議論を進めていただければありがたいと思います。  特に意見というよりはいくつか今後議論をする上で、検討をしていただきたいというようなこと、気づいた ことだけを申し上げますが、まず法律名ですが、これはちょっと議論になりましたが、やや技術的な問題も絡 んでいると思うのです。つまり、「派遣労働者の保護」という名称がつくのがいいか悪いかという、これは目的 をそのまま法律名として書き込む形なのですが、現行法においても就業条件の整備で、いわば保護を実現する ための措置について書いてあるというようなことですので、やや技術的な問題もありますので、そういったこ とを含めながら、事務局にもお願いをしたいのですが、いくつか技術的な点も踏まえてご議論をいただければ と思います。  次に日雇い派遣ですが、これは政府案では日々雇用と30日以内ということで、それを原則禁止にしたわけで す。これは雇用保険法の42条でそのような定義がありますので、こういうふうにしたわけです。2か月という ことでその趣旨も健康保険だとか、あと労基法20条解雇予告制度の適用の制度で考える。その制度の適用を確 保するためということで、そういう趣旨はわかりましたが、研究会の中で議論をしたときには、使用者として の責任を果たす雇用期間というものがあるのだろうか。使用者性というのですか、雇用主の責任というのです か、そういったこともちょっと考えたので、こういったことも議論の中に検討素材として入れていただければ ありがたいなと思っています。  登録型の派遣ですが、これは政府案、研究会の考え方もそうであったのですが、登録型を禁止するかどうか という問題ももちろん重要な問題ですが、とりあえず登録型で働いている方たちには社会的に許容される派遣 として、常用型にどう移っていただくか。反復更新して長く働いている派遣労働者の方たちは正社員の道を、 派遣元ではあっても、それをどういうふうに促していくのかということを考えていたわけです。そうしますと、 この26専門業務以外の常用雇用のみと、例えば紹介予定派遣とか、いわゆる派遣先への社員への転換促進とい うことはどうなるのか、これは登録型の場合は認めないということなのかなと。あるいは高齢者派遣も入って いますので、そうしたような、いわば常用化の促進を促す制度について、どう位置づければいいのかなという のは考えています。  製造業派遣ですが、これもいま言いましたように、紹介予定派遣とか高齢者の方たちの派遣について、登録 型は製造業についてもあると思うのですが、こういったようなことをどうするのか。政令で定める専門業務等 ということで、高度の技能を育成するような派遣労働者について、そういったような業務について、製造業派 遣の中で例外的に認めたらどうかというような議論がありまして、市川委員から、正社員に期待して、その派 遣労働者に期待しないというようなご発言、ちょっとそれでは寂しいかなという感じが私はしています。  現に派遣労働者が製造業の中で働いて、そして、例えば常用雇用という形で長く働いていて、そして、高度 な技能、スキルを修得していくということは、実際にやっている方もおられるのであれば、非常にそれは促進 して考えてみたらどうかなという感じがしておりましたので、そういったような観点も含めて、この専門業務 を考えていただくといいのかなというふうに思っています。  均等待遇の話ですが、先ほど来、均等待遇理念・総論としてはいいのだけれども、現実問題として、正社員 の賃金体系と派遣の賃金というのは違っているので難しいのではないかと。要するに困難の問題ということだ と思うのです。これは研究会でも同じでして、総論としてこういった方向を目指すことについては異論はない のですが、現実にどのようにして日本の社会の中でやっていくのか。だから、均等待遇というと、同一業務、 同一賃金ですから、そこまでいかなくても、同じ仕事、業務をしているのであれば近づける、バランスをとる という観点の均衡ですね。こういったことも考えて、できることをいろいろと工夫していくことが大切ではな いかと思っています。  派遣先責任ですが、これもいろいろありまして、私もよくわからないところもあって質問をしたいところな のですが、時間もありませんので簡単に要点だけ申し上げます。必ずしも法律にしなくても、現行法の中で工 夫してできるようなこともあるのではないか。例えば定期健康診断の代行ということを、派遣法の中で書き込 む必要があるのかなと。何が言いたいかというと、現行法で対応できるものがあるかもしれない。だから、現 行法の中での整理を一応していただければいいのではないか。  それから団交応諾義務の問題も、労働法を私は専門にしていますので知っているのですが、有名な事件があ りまして、一定の要件の下、派遣先の団交応諾義務を認めた判例もあります。もちろんそれはすべてというわ けではなくて、一定の要件ですが、こういったようなことも紹介をしていただいて、整理をしていただいて議 論をしてみたらどうかなと思います。  未払賃金については、派遣先の連帯責任はおかしいのではないかというような議論もあったわけで、労働組 合側の気持としてはわかりますが、いわば常用型の派遣制度で、ベースで考えているときに、つまり、正社員 として派遣元が雇っているときに、未払いの場合に派遣先が責任を負いますよというようなことになるのかど うなのか。これはおそらく登録型とか日雇いとか非常に不安定なものを前提にしたような法制度を考えている のかなと、よくわかりませんが。ですから、この辺のところは理屈も含めて少し、あるいはどういう状況を想 定して考えているのか、少し教えていただければと思います。  次、違法派遣への対処ですが、これは実は研究会でも相当苦労をしたところでして、いくつか申し上げたい のです。まず、この3党案ですが、いわゆる偽装請負が省例落としといいますか、法案に正面から出てこない。 これよくわかるのです。研究会でも法律の専門家は侃々諤々で、相当難しい問題だったのです。無理を承知と いうか、かなり知恵を尽くして法律案として偽装請負の規制を打ち出したわけです。それが等という形で落ち ちゃったのですね。これはどういうことなのかなという、自分たちの知恵がやはり足りなかったのかなと私な ども思うのです。ただ、あのとき偽装請負の問題というのは、非常に大きな問題で、この偽装請負の下で働い ている労働者をどのように救済するかというのが、まさに最も大きな課題というふうに認識していましたので、 この点について議論をしていきたいと思っています。  もう1つ、いわゆる「みなし」ということなのですが、研究会では行政勧告制度のほかに、派遣先の契約申 込義務という民事的な義務を発生させるという仕組みも考えていました。これも苦労の果てですが、結構これ いろいろ工夫したのだなと自分では思っています。この3党共同提出案の細かいことになってしまうのですが、 これですと、私も十分わかっていないのですが、違法行為を行った派遣先に対して、要するに労働者の主観で 一定の効果を発生させるということですよね。つまり、違法行為があったとしても、労働者が通告しないと、 そのまま違法行為のままでいいということになるのですか。もしかしたら、私の読み方が間違っているのかも しれません。  研究会報告とか政府案のほうでは、研究会報告では義務づけ条項というのは、違法状態になったら即申込義 務というのは発生しますので、それはないのですね。ですから、こういったようなことも少し検討をしていた だければと思います。  最後になりますが、罰則については他の法令との均衡を考慮して、少し検討をしていただければと思います。 以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。少し時間が過ぎていますので、短くお願いいたします。 ○小山代理 常用雇用の定義が曖昧のまま議論をされている傾向がありまして、常用というと私たちは普通の 期間の定めのない労働契約というふうに認識するのですが、統計上その他では、1か月や3か月の有期契約でも 常用といわれているという、ここのところの区別だけは、今後の審議の中でしっかりと議論をしていただきた いと思います。 ○清家部会長 わかりました。本日はさまざまご議論をいただきましたが、方向性につきましては、今日のご 議論からもわかりますように、労使でかなり大きな意見の食い違う部分があったと思っております。これにつ きましては次回以降問題の所在、あるいは規制の必要性、規制を行った場合の労働者への影響や、法律制度全 般の整合性、そういったことをさまざまな面から、より掘り下げて検討をする必要があると思っております。 また、3党案の内容について、これを法制化することの是非を検討することになりますと、検討項目はかなり、 今日ここに出ているものを見ましても多岐にわたることとなります。  そこで、本日と先般開催されました分科会で出されました意見も踏まえまして、できれば事務局で論点を整 理していただいて、各項目の検討の参考となる資料も取りまとめた上で、次回の部会にご提示いただき、次回 以降、その論点にしたがって各項目について個別に議論をするというのが建設的かつ効率的ではないかと思う のですが、そのような取り計らいでよろしいでしょうか。゙                  (了承) ○清家部会長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。ほかに事務局より何かござい ますか。 ○大塚課長補佐 次回の部会についてのお知らせです。次回の部会は10月27日(火)14時から、場所は17 階の専用第21会議室です。よろしくお願いいたします。  ○清家部会長 ありがとうございました。次回は10月27日の火曜日、14時から開催といたします。以上をも ちまして第135回労働力需給制度部会を終了いたします。本日の署名委員は使用者代表市川委員、労働者代表 長谷川委員にお願いいたします。それでは委員の皆さまどうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)