09/10/14 第39回労働政策審議会障害者雇用分科会議事録 第39回 労働政策審議会 障害者雇用分科会議事録 1.日時    平成21年10月14日(水)14:00〜16:00 2.場所   厚生労働省 共用第8会議室(6階) 3.出席者  ○ 委員 (公益代表) 今野委員、岩村委員、松矢委員   (労働者代表) 高橋(睦)委員、花井委員   (使用者代表) 飯ヶ谷委員、大島委員、新澤委員、高橋(弘)委員   (障害者代表) 川崎委員、鈴木委員、副島委員  ○ 事務局  熊谷高齢・障害者雇用対策部長、吉永企画課長、奈尾障害者雇用対策課長、 藤井地域就労支援室長、渡辺障害者雇用対策課調査官、 佐藤障害者雇用対策課主任障害者雇用専門官、吉田障害者雇用対策課長補佐、 松崎障害者雇用対策課長補佐 4.議題 (1)労働・雇用分野における障害者権利条約への対応に関して検討すべき具体的論点 (「基本的枠組み」及び「障害を理由とする差別の禁止」)について (2)障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱等につい て(諮問) (3)その他 5.資料  1 労働政策審議会障害者雇用分科会における検討項目(案)  2 労働政策審議会障害者雇用分科会の検討スケジュール(案)  3−1 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(「基本的枠組 み」 について中間整理の抜粋)  3−2 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(「障害を理由 とする差別の禁止」について中間整理の抜粋)  4 障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱等(諮 問文)  参考資料 1 障害者の権利に関する条約の仮訳(抜粋)及び批准国一覧 2 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(中間整理) 3 研究会における主な意見 4 障害者雇用をめぐる現状 5−1 身体障害者福祉法における身体障害者の範囲の拡大(肝機能障害への対応) に伴う障害者雇用促進法における身体障害者等の範囲の拡大について(案)   5−2 肝機能障害の評価に関する検討会報告書 6.議事録経過  ○今野会長  ただ今より第39回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。本日は、菊 池委員、佐藤委員、平木委員、中島委員、野村委員、矢鳴委員、斉藤委員、松井委員 がご欠席です。なお、中島委員の代理として石上さんが出席されておりますので、よ ろしくお願いします。  それでは、議事に入る前に、熊谷高齢・障害者雇用対策部長から一言ご挨拶をいた だきます。  ○高齢・障害者雇用対策部長  本年の7月24日付で高齢・障害者雇用対策部長を拝命いたしました熊谷でございま す。よろしくお願いいたします。本分科会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し 上げたいと思います。委員の皆様方には日頃から障害者雇用対策の推進につきまして 貴重なご意見を賜り、あるいはいろいろとご協力をいただき、この場を借り厚く感謝 を申し上げたいと思います。  障害者の雇用状況でございますけれども、昨年6月1日の報告によりますと、民間 企業の障害者雇用率は1.59%ということで、前年に比べまして0.04%ポイント増とい うことで、ここ近年は上昇基調で来ておるわけでございます。ただ、皆様ご案内のよ うに、昨年の秋以降経済状況が厳しくなりまして、雇用情勢も現在戦後最悪の水準と いうふうに言われております。失業率5.5%ということでございます。そういう中で、 障害者の雇用状況を見ましても、新規の就職件数がやはり昨年を大きく下回って来て いる、あるいは解雇数も昨年を上回って増えてしまっているというような状況でござ います。私ども厚生労働省といたしましては、全般的な求人開拓を行っていく、これ は経済団体等の方にお伺いするわけでございますけれども、そういう中で障害者の方 々の雇用の維持・拡大についても併せて要請を行うというような取組を行っておると ころでございます。  一方で、平成18年12月に国連総会で権利条約が採択されたところでございます。ご 案内のように平成19年に我が国は署名をしたところでございます。この条約のうち労 働・雇用分野につきましては、昨年の4月から労使あるいは障害者団体等の方々を含 めまして研究会を開催させていただきまして、ご検討をいただいてきているところで ございます。ご案内のように本年7月に中間整理をおまとめいただきまして、本分科 会にもご報告を前回させていただいているところでございます。今後、この研究会に おきます成果を前提といたしまして、条約の批准に対応した障害者雇用に関する法制 上の措置に関しまして、本分科会においてご検討をいただき、条約の批准が行われる 場合には、これに合わせて障害者雇用促進法の改正を含めて必要な対応を諮っていき たいというふうに考えておりますので、委員の皆様方におかれましては活発な議論を 賜りますようお願いを申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。  ○今野会長  ありがとうございました。それでは、事務局で異動がありましたので、ご紹介をし ていただきたいと思います。  ○障害者雇用対策課長  それでは、新たに着任いたしました事務局メンバーをご紹介いたします。先ず、企 画課長の吉永でございます。7月まで障害者雇用対策課長として出席いたしておりま した。私は障害者雇用対策課長に着任しました奈尾と申します。どうぞよろしくお願 い申しあげます。それから、障害者雇用対策課長補佐の吉田でございます。同じく、 課長補佐の松崎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  ○今野会長  それでは、議事に入りますが、本日は3点あります。1つは労働・雇用分野におけ る障害者権利条約の対応に関して検討すべき具体的論点について、2番目は障害者の 雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱等について、3番目が その他ということになっております。議事に入る前に、障害者権利条約の対応に関す るここでの検討事項と検討スケジュール案について、参考資料4なども使いながら事 務局から説明をしていただきたいと思います。  ○障害者雇用対策課長  それでは、本日お配りしている資料でございますが、ダブルクリップ等をまず外し ていただきまして、資料につきましては、資料1から資料4までございます。それか ら、参考資料といたしまして、参考資料1から参考資料5−2までございます。この うちの資料4、参考資料5−1と5−2、こちらの方が議題でいきますと、議題2の 政令案等の諮問関係の資料でございます。  まず最初でございますが、参考資料4をご覧いただきたいと思います。条約関係の ご説明に入ります前に、まず障害者雇用を巡ります現状につきまして、参考資料4で 概略をご説明したいと思っております。  まず1ページを開いていただきたいと思います。障害者雇用施策の対象となる障害 者数でございますが、障害者総数は約724万人、うち18〜64歳が約325万人でございま して、障害種別内訳は表の数字のとおりでございます。次に2ページでございますが、 障害者の雇用者数が表になってございます。このうち(2)の56人以上企業、これは20 年の障害者雇用状況報告(6−1調査)ベースでございますが、計32.6万人、この数 字は重度障害者の方はダブルカウントした人数となってございます。32.6万人の内訳 といたしまして、身体障害者26.6万人、知的障害者5.4万人、精神障害者0.6万人とい う内訳でございます。  次に3ページでございます。障害者雇用の状況でございまして、障害者の数が棒グ ラフで、実雇用率の推移が折線グラフでございます。直近の平成20年は1.59という数 字でございます。それから、4ページに企業規模別の状況、それから5ページに障害 者の就職件数の数字がございます。5ページの就職件数でございますが、平成19年度 の就職件数は45,565件と非常に高い数字であったわけでございますが、これが20年度 になりますと、2.4%減で44,463件ということでございます。雇用情勢の影響等を受け まして、21年度におきましては、現在判明している数字で、20年度に比べて約8%と ほどの減というところでございます。  次に6ページでございますが、障害種類別の職業紹介状況でございます。特に新規 求職申込件数、上の表でございますが、障害者計で見てもかなりの伸びがこのところ 見てとれるわけでございます。就職件数につきましては、先ほどの5ページのグラフ のとおりでございます。  次は7ページでございますが、障害者の解雇数を棒グラフで書いてございます。20 年度は景気の動向を反映いたしまして、19年度に比べてかなり高い数字になったわけ でございますが、21年度、4月から8月分について、濃い網掛けで棒グラフにしてご ざいますが、8月までで1,173人ということで、既に20年度上半期の787人をかなり上 回っているという状況でございます。 それから、8ページが障害者雇用促進法の概要で、これはもうご案内のとおりでご ざいますので、この説明は割愛させていただきます。8ページ、9ページは現在の制 度、それから10ページに障害者雇用納付金制度に基づく助成金の概略、それから11ペ ージに前回に改正いたしました法律の概要を書いてございます。  それから、12ページでございますが、前回の20年改正におきます附帯決議のうち、 権利条約関係のところを抜粋してございます。12ページをご覧いただきますと、11と いたしまして、障害者批准に向けての国内法の整備として、雇用分野における合理的 配慮規定等について検討を行い、障害者の労働者としての権利を確立するため、必要 な措置を講ずること。合わせて、これらの観点から、障害者差別禁止に係る法整備に ついても、速やかに検討すること、といった附帯決議が付いてございます。  それから、13ページでございますが、これはもうご案内とは思いますが、19年12月 の労働政策審議会の意見書におきまして、障害者権利条約の締結に向けた検討という のが1つ入っているわけでございます。  それから、最後14ページでございますが、障害者雇用を支援するための施策、これ は主なものについて実績等を含めまして書いているわけでございます。以上が参考資 料4におきます現状の概略でございます。  続きまして、資料に戻っていただきまして、資料1、資料2のご説明でございます。 まず、最初に資料1をご覧いただきたいと思います。労働政策審議会障害者雇用分科 会における検討項目案ということでございまして、これは私どもの方で条約の批准に 関しまして、主な検討項目になりそうなものをおおよその事項別に書いたものでござ います。4つほど分けて書いてございますが、最初に「基本的枠組みについて」とい うことで、これは主には枠組みの全体像と、差別禁止と枠組みの対象範囲というのを 考えてございます。  それから、2つ目は「障害を理由とする差別の禁止について」ということで、これ は内容はいろいろあろうかと思いますが、主なものといたしまして、差別の禁止、差 別の定義、それから差別が禁止される事項というのを中心にご検討をいただく必要が あるかと思います。  それから、大きな3点目でございますが、「職場における合理的配慮について」と いうことで、合理的配慮の内容、それから過度な負担とはどのようなものか。それか ら、合理的配慮に対する支援についてということで、大きな3点をまとめさせていた だいております。そして、最後に「権利保護(紛争解決)の在り方について」という ことで、企業内における紛争解決手続き、外部機関等における紛争解決手続き、この 辺りを中心にご検討をいただければと思ってございます。この項目を前提にいたしま して、次に資料2でございます。労働政策審議会障害者雇用分科会の検討スケジュー ルということで、案として書かせていただいております。  本日10月14日でございますが、先ず第1回といたしまして、検討項目案とスケジュ ール案の提示、それから基本的枠組み、差別禁止について議論をいただければと思っ てございます。2回目の10月23日についても差別禁止についてご議論いただきたいと 思っております。それから、3回目の11月11日に合理的配慮についてご検討をいただ く。それから、第4回の25日に権利保護、紛争解決の在り方についてのご議論、そし て、第5回以後の具体的な議題は未定でございますが、差し当たり第5回といたしま して、要検討項目の整理、それから12月下旬以降に6、7、8回と3回ほど一応書か せていただいております。  条約の批准につきましては、先ほど部長の方からご挨拶がございましたが、条約の 批准が行われる場合には、これに併せて障害者雇用促進法の改正も含めて対応を図る ということで、このようなスケジュールを考えているところでございます。以上でご ざいます。  ○今野会長  ありがとうございました。それでは、障害者権利条約への対応に関して、ここで検 討する検討項目と議論のスケジュール案について、資料1と資料2で案として出して いただきましたので、これについてまずご議論いただきたいと思います。特に、検討 項目について、ここに案がありますけれども、これ以外にこういうのがあるぞという ことがあれば、出していただきたいと思います。スケジュールについては、一応こう いう原案ですけれども、ガイドラインがないとやり難いと思いますので、一応これで やりたいと思います。もっと早くなるかもしれませんし、遅くなるかもしれません。 そういうことで、私としては、検討項目について、これ以外に何かあったら出してい ただきたいと思っておりますので、お願いいたします。  いかがですか。よろしいですか。とりあえずこれで始めるということで、この案は 一応ご承認いただいたということで、やりながらまたあったら考えるということにさ せていただきたいと思います。どうぞ。  ○鈴木委員  このスケジュール案で特に問題はないと思います。先ほどご説明のあった参考資料 のところの、多分2ページ辺りのところで、障害別の就労率というか、人数とか出て いたと思います。あればですけれども、今後、障害別というと、身体と知的と精神と いう形になるかと思うのですが、どうしても身体障害の場合、視覚障害とか聴覚障害 とか、内部障害とか、いくつかに分かれると思います。大雑把に障害者の差別といろ いろ言っていても、その中で、どこがどうなっているかという比較ができないので、 できればそういう数字があると有り難いので、今日でなくて、今後で結構ですが、出 していただくようにお願いしたいと思います。  ○今野会長  どうぞ。ありますよね。  ○障害者雇用対策課長  これは確か、前の研究会だったか前回の分科会だったかで、そういったご質問をい ただいたかと思っております。これは、雇用状況報告等のとり方におきまして、身体、 知的、精神の三障害別の数字は把握してございますが、それより詳細な分類となると 把握してございませんので、少なくとも現在は恐縮でございますが、手元にはないと いうところでございます。  ○今野会長  紹介の数字はあるのでしょう。  ○障害者雇用対策課長  そうですね。紹介等の数字はございますので、少し手配いたします。  ○今野会長  いずれにしても、そういうことが分かる一番いい資料を用意していただければいい ということですね。他にございますか。よろしいですか。  それでは、今日の議題に入りたいと思います。先ほど言いましたように、最初の議 題1です。議題1の中で、今日は先ほどの検討項目案の中にもありましたように、最 初、基本的な枠組みについて、先ず議論したいと思いますので、事務局から説明をお 願いして、議論に入りたいと思います。  ○障害者雇用対策課長  それでは、資料3−1をご覧いただきたいと思います。資料3−1でございますが、 「労働・雇用分野における障害者権利条約の対応について」ということで、これは基 本的枠組みについて、中間整理の抜粋でございます。ご案内のとおり、研究会の方に おきまして、昨年度からご議論いただきまして、7月に中間整理がまとまったという のがございますが、資料3−1におきましては、その中の第1の基本的枠組みの部分 を抜粋させていただいたものでございます。基本的枠組みにおきましては、まず枠組 みの全体像と差別禁止等枠組みの対象範囲ということで記載してございます。  まず1ページでございますが、第1の基本的枠組みでございまして、枠組みの全体 像が1番に書いてございます。これも意見をご紹介いたしますと、枠組みの全体像と いたしまして、労働・雇用分野において障害を理由とする差別の禁止や職場における 合理的配慮の提供について実効性を担保するための仕組みを含めて、国内法制に位置 付けることが必要であるという意見が大勢であったということがまず書かれてござい ます。次に、合理的配慮につきましては、条約の規定上はそれを欠くことは障害を理 由とする差別に当たることとされている、即ち、差別禁止の構成要件として位置付け るとなっているが、これを実際に確保していくためには、関係者のコンセンサスを得 ながら障害者の社会参加を促すことができるようにするための必要な配慮、社会参加 を促進するための方法・アプローチとしての位置付けとして捉える必要がある、との 意見が大勢であった。また、このような観点から、障害者が社会参加していく上で合 理的配慮がなされることの重要性や、合理的配慮としてどのような配慮が求められる か等について理解を深め、これを定着させていくことが重要である、との意見が大勢 であった、といった意見がございました。  それから、実効性を担保するための仕組みとしては、差別があったか否か、合理的 配慮が適切に提供されたか否かを、いわゆる準司法的手続き、例えば、行政委員会に よる命令のような形で判定的に行うというよりは、むしろどのような配慮がなされる ことが適当か、何らかの差別が生じていた場合はどのような措置を講ずることが適当 か等について、第三者が間に入って、斡旋や調停など、調整的に解決を図ることが適 当でないか、という意見が大勢であった。それから、差別禁止等を法律上位置付ける 場合、その形式としては、労働・雇用分野における差別を禁止するための法律が必要 である、との意見があった。また、労働・雇用分野に限らず、分野横断的に一つの差 別禁止法を制定する必要がある、との意見があった。さらに差別を禁止するための法 律には、障害を理由とした差別は無効である等の効果を持たせるべきである、との意 見があったと、そういった全体像に係るご意見をいただいております。  それから、次に、障害者雇用率制度の位置付けでございますが、まず差別禁止の枠 組みと現行の障害者雇用率制度との関係については、実際問題として雇用率制度は障 害者の雇用の促進に有効であり、差別禁止の枠組みと矛盾しない、積極的差別是正措 置、ポジティブアクションに当たる、との意見が大勢であった。それから、なお雇用 率制度について、ポジティブアクションとして位置付けられるとしても、採用段階で 差別禁止を与えるのであれば、将来的にはなくすこともあり得るのではないか、との 意見があった。これに対して、採用段階での差別禁止が確保されても、障害者の雇用 の促進のためには雇用率制度が必要であるとの意見もあったということが、大体の雇 用率制度に係る意見でございます。  次に、2ページの2番でございますが、差別禁止等枠組みの対象範囲の話でござい ます。まず、障害者の範囲でございますが、1つ目といたしまして、差別禁止及び合 理的配慮の枠組みの対象となる障害者の範囲については、雇用率制度の対象となる障 害者に限定せず、広範な障害者を対象とすべきとの意見が大勢であった、ということ が書かれてございます。それから、雇用率制度が積極的差別是正措置として対象を限 定するとしても、差別禁止については、条約上全ての障害者を対象としていることを 考えれば、対象を特定の障害者に限定することは適当でないのではないか、との意見 があった。それから、広範な障害者を対象とする場合、その対象に該当するか否か、 手帳等により客観的に判断することができないため、どのように対象者を確定するの か検討すべきではないか、との意見があった。それから、条約上障害者の定義には、 いわゆる機能障害だけではなく、社会的バリアや環境上のバリア等、様々な障壁との 相互作用によって問題が生じているものも含まれるとされており、過去に障害があっ たことにより差別的取扱いを受けている者や、家族の中に障害者がいるような者につ いても、合理的配慮の対象となるのではないか、との意見があったというのが、主な 障害者の範囲に係る意見でございます。  事業主の範囲につきましては、事業主の範囲はフランス、ドイツと同様、全ての事 業主を対象とすべき、との意見がございました。それから、雇用の範囲におきまして は、条約上は「あらゆる雇用」に関する差別禁止を定めており、一般就労と福祉的就 労の垣根をなくすことが条約上の方向性ではないか、との意見がございました。これ に対しまして、現実として、雇用ということで最低賃金の支払い等労働関係法令の適 用を前提とすると、事業そのものができなくなり、福祉的就労の場がなくなってしま うおそれがある場合もあるのではないか、との意見がございました。以上が基本的枠 組みに係る中間整理の関係部分でございます。  ○今野会長  それでは、ご意見なりご質問をいただければと思います。はい、どうぞ。  ○新澤委員  まず最初に、この合理的配慮というのは、具体的にどういうことを意味するのか、 ちょっと作ってもらえるといいんですけれども、あと、この言葉ですけれども、差別 というのか、どちらかというと、障害者と健常者の「差別」ではなくて、「区別」で はないかということが、我々の事務局の方から話が出たんですが、私もなるほどなと 思いました。その点、言葉上のことですが、合理的配慮といっても非常に分かりにく い面がありますので、その辺について、もっと具体的に示すような、あるいは、何か そういうような、これが合理的だという意味から使われているのか。その辺の言葉上 で大変恐縮ですけれども、ちょっと分かり難い面があるので、ご質問させていただき たいと思います。  ○障害者雇用対策課長  合理的配慮につきましては、今日、参考資料1としてお付けしております条約の仮 訳の中にも言葉として出てまいります。これは研究会の方でもご議論いただいたこと でございますが、第2条、定義というところがございまして、参考資料1−1の1ペ ージ目の5行目をご覧いただきますと、合理的配慮という言葉が出てまいります。障 害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確 保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされ るものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいうとされてご ざいます。これにおきましても、やや抽象的でございまして、これを具体的にどうい うふうにブレイクダウンしていくのかということで、しかも、この合理的配慮という 言葉自体がこれまで我が国になかなかなかったという面もございますので、まさにこ の辺を問題意識といたしまして、研究会の方で中身をご議論いただいているわけでご ざいます。雇用につきましては、27条の労働及び雇用のところでも、そこの(i)項 というのがございます。そこで、職場において合理的配慮が障害者に提供されること を確保することということが書かれているわけでございます。合理的配慮の定義につ きましては、先ほどの2条にございますが、ポイントといたしましては、必要かつ適 当な変更及び調整ということと、特定の場合において必要とされるということで、い わば非常に個別性が高い概念ではないかと思っています。障害者の方々というのは、 障害も非常に様々でございますので、この特定の場合に具体的にどういった変更調整 が必要なのかということを、これまで研究会の方でもいろいろご議論いただいたとこ ろでございます。確かに、これまでない概念でございますので、これをどのように法 律上位置づけていくのかというのは、今後の分科会の場でもいろいろご検討は必要で あろうと思っております。  それから、2点目の、差別あるいは区別といいますか、そういった言葉でございま すが、これは後ほどまた出てまいりますが、典型的には労働能力を評価した結果とし て差がある場合、あるいは、その障害があることについて何らかの配慮をする場合等 で、そういった差を設けることが果たして適切かどうかという場面で出てくるのでは ないかと思われます。いずれにいたしましても、これは今後のご議論でもございます が、何か健常者なりと障害者の方に差を設ける場合、それが合理的かどうかといった 観点を含めて検討する必要があるかと思っております。  ○今野会長  よろしいでしょうか。合理的配慮については、これからということです。  ○新澤委員  そうですね。区別と差別ですね。どちらかというと区別に近いような、日本語的に はどうなのでしょうかね。差別だったら、できる・できないの差別があるから、やは り障害者と健常者の区別みたいな印象がありますけどね。まあ、これはいいですよ。 これは言葉の使い方ですから。その辺は国語的な話で、日本語で言うと、英語で言う と、あるいは外国語で言うと、その辺がどうなってくるのだろうと。一応そういうこ とです。  ○今野会長  他にいかがでしょうか。どうぞ。  ○大島委員  今ご説明いただいた合理的配慮のところなのですが、かなり概念としては分かりづ らいと思うのですね。やっぱり、スケジュールによると、改めて議論が行われる予定 と書いてありますが、その際には是非企業とりわけ経営資源に乏しい中小企業にとっ て、現場の混乱を避けるという意味からも、予見の可能性が持てるように明確な判断 基準とか、分かりやすい例を示していただいて、その上で議論を進めたいというふう に思っております。企業として合理的配慮が何を示すとかというのは、あんまり散漫 なままでは対応が考えられないので、是非よろしくお願いいたします。  それと、2ページの2番の差別禁止等枠組みの対象範囲、障害者の範囲ですが、広 範囲な障害者を対象にするというふうになりますので、具体的などんな障害者が想定 されるのかをちょっとお尋ねしたいと思います。これが質問です。  もうちょっとあるのですが、あと、2ページの2番、同じ差別禁止等の枠組みの対 象範囲の中の事業主の範囲ですが、参考資料3の4ページの参考に書いてありますけ れども、フランスとドイツは全事業主が対象となっていますが、アメリカでは週20 時間の労働者を15人以上採用する企業のみとあります。日本ではどういうふうにす べきか、在り方に関する研究会であまり議論がされてなかったとのことでしたが、十 分に議論をしていただきたいと思います。とりあえずは、以上でございます。  ○今野会長  ご質問があったのは、広範な障害者を対象とすべきであるというけれども広範とい うのはどの辺までなのか。そこの範囲についてはご質問でしたね。あとはご要望だと 思います。  ○障害者雇用対策課長  資料3−1の2ページの2番のところに障害者の範囲の話がございますが、研究会 の方におきましては、障害者の範囲の一番上の○に書いてございますけれども、雇用 率制度の対象となる障害者に限定せず、広範な障害者を対象とすべきであるとの意見 が大勢であったというふうにまとめさせていただいているところでございます。権利 条約におきましては、基本的には全ての障害者を対象にするとされておりますので、 私どもといたしまして、労働・雇用分野における対応を図るに当たりましても、実効 性、必要性を踏まえながら、その条約の趣旨も十分踏まえて、範囲を設けていく必要 があるのではないかと考えてございます。  一方で、今回の議論におきましては、差別禁止でありますとか、あるいは合理的配 慮の提供といったことで、これは事業主さんにつきましては、いわば義務を課すとい う形になるわけでございますので、その義務を課すとなりますと、障害者の範囲とし ては明確なものである必要があるというふうに考えてございます。こういったことか ら考えますと、そもそも現行の障害者雇用促進法において、第2条に障害者の一定の 範囲がございますが、例えば雇用率制度の対象とする障害者に限定すべきかとなりま すと、これまでの議論でも広範な障害者を対象とすべきだという意見が大勢であった わけでございますので、それを踏まえながら考えていく必要があるということで、例 えば、1つの例といたしましては、法律第2条1号にあります障害者を対象にすると いったことも1つの考え方ではないかと思っております。この辺りにつきましては、 いろいろご議論があろうかと思いますので、ご意見を頂戴できればと思ってございま す。  ○今野会長  まず、大島さん、これでいかがですか。  ○大島委員  ちょっと分かったような、分からないような。とにかく具体的に出していただきた い。  ○今野会長  検討するのはここなんですけどね。では、どうぞ。  ○新澤委員  今の障害者の範囲なのですが、現状では手帳というのがあるわけですね。これから 全ての障害者というのは、どのような方法で対象者を、いろんな障害者がいますよね。 私も障害者の一人で、手がちょっと痺れて握力がなくなってきたわけだけれども、例 えばそういう問題ですね。眼なんかもいろいろあるでしょうけれども、その辺の問題 がしっくりいかない面があるので、その辺を今後どのように検討されるのかちょっと 教えてください。  ○今野会長  一般論でいうと、決まっていればここで検討しなくていいのですが。ですから、そ れをどうしようかと、これから考えようということだと思いますので。  ○新澤委員  だから、考えるにしても、ちょっと引っかかるものがないと。  ○今野会長  何か案とか、例えばこういうことですとか。  ○新澤委員  そうそう。その例は一つのそういう疑問もあるということですから。もし、差し当 たり何かあるなら教えていただきたいなということです。  ○今野会長  差し当たり、いいアイディアがあったら教えろということですかね。  ○障害者雇用対策課長  私ども障害者雇用の促進等に関する法律の第2条で障害等の範囲を書いているわけ でございます。ここで、大きく障害者とかあるいは種別ごとの障害者が書かれていま すが、1つといたしましては、職業リハビリテーションの対象になる障害者、これは 法律第2条の1号というところにございます。1号といたしまして、「障害者」とい う定義がございますが、これは身体障害、知的障害、精神障害を全て含んでいるので すが、「長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著 しく困難な者をいう」とあり、これが現在運用されている職業リハビリテーションの 対象になる障害者でございます。  次に、それより狭い範囲といたしまして、同じ法律の第2条の2号以下にそれぞれ 規定がございますが、身体障害者、それから重度身体障害者、知的障害者、重度知的 障害者、精神障害者等ということで、それぞれ1号ずつ書いてございますが、簡単に 言いますと、身体、知的、精神の三障害につきまして、雇用率の対象になる障害者を 書いてございます。これは、先ほどの第2条1号の職業リハビリテーションの対象に なる障害者より狭いわけでございまして、この狭い範囲でやるというのは、確かに範 囲は明確になるわけでございますが、少し範囲が限定されているのではないかという ことは、これまでの研究会の議論でございました。      そこで、あえて1つのアイディアとして原案を出しますと、第2条の1号の障害者 というのは、現在でも運用されてございますので、その範囲として行ってはどうかと いうのが、事務局としては1つの案としては考えられるのかなと思っています。  ○今野会長  よろしいですか。1つのアイディアとしてはあり得るということです。他にござい ますか。どうぞ。  ○副島委員  2ページ目の最後に雇用の範囲というのが書かれていました。条約上はあらゆる雇 用に関する差別と定めてあって、一般就労と福祉的就労の垣根を外すということが書 かれているのですが、これができるのかどうか。特にこれはスウェーデン型なんかで いわれるのは、月の収入30万は保障する、そこの中で、仕事で5万もらったから、 国が25万補填するんだという方法なんですね。実際、向こうの様子を調べると、そ ういう補填をされることによって、本人の就労意欲がなくなっているのです。やはり 仕事をするということは、就労意欲が伴わないといけないと思うので、そのところは まず垣根を取り払うということ自体の問題点がすごく大きいのではないかと思います ので、ここは十分に議論しなければいけないと思います。以上です。  ○今野会長  今の点について、特に何かコメントありますか。  ○障害者雇用対策課長  この中間整理案につきましては、出されたご意見をまとめたものでございまして、 研究会の場でも少しご説明したかも知れませんが、基本的にいわゆる保護雇用、福祉 的就労につきましては、雇用関係の有無によって基本的に適用が決まるのではないか と思ってございます。従いまして、現段階での考え方といたしましては、簡単に申し ますと、雇用関係があるいわゆるA型の施設については適用されるのではないかと考 えています。B型につきましては、これは訓練等給付ということでございますので、 基本的に適用されないのではないかとのご説明になるかと思います。  ○今野会長  いずれにしても、難しい問題だということなんですね。ですから、これはワーキン ググループでも結局両論併記になっています。どうぞ。  ○岩村委員  先ほど適用範囲について、企業の規模の話がありましたけれども、もし私がちゃん と理解していればの話なのですが、アメリカの場合、企業の規模の規定があるという のは、あれは連邦法なので、連邦の立法管轄権との関係で、企業の規模というのを定 める必要があるということからきているだろうというふうに思います。私が正しく理 解をしていればの話ですが。何れにしても、そこはちょっと事務局の方でお確かめい ただければというふうに思います。  ○今野会長  今のは宿題ですね。  ○障害者雇用対策課長  調べられる範囲で少し調べてみようと思っています。  ○今野会長  ということは、もしかしたら州法では全部外れているという可能性があるというこ とですね。  ○岩村委員  州法があるかどうかは分かりませんけれども、いずれにしろ法律自体が連邦法なの で、それとの関係で、立法管轄権の問題があるものですから、多分企業規模が入って いるのだと思います。  ○今野会長  もし、そうであれば、全ての事業主というのが大体世界の相場ということになるわ けですね。先進国なんかは。  ○岩村委員  何とも断言できませんが、少なくともフランスとドイツについてはそうだというこ とは言えると思います。  ○今野会長  他にいかがでしょうか。どうぞ。  ○高橋(弘)委員  つ質問があります。参考資料3、「研究会における主な意見」です。そこの4ペー ジの「参考」の出だしのところなんですが、差別禁止の対象の範囲は、まず障害者の 範囲は各国において異なり、フランス及びドイツにおいては雇用率制度と連動させて いるという記述があるんですけれども、これに関連して、フランス及びドイツでは、 雇用率制度の対象の範囲と、それから法律上の対象の範囲というものが、同じなのか 違うのか。その辺りについて、もし今お分かりならば教えていただきたいですし、も し分からなければ、次回の会合でもご紹介いただきたいということでございます。  ○今野会長  どうですか。宿題にした方がいいですか。  ○事務局  今お尋ねになりましたフランス、ドイツにおける差別禁止と雇用率制度の対象とな る障害者の範囲でございますが、まずドイツにつきましては、雇用率制度につきまし ては重度障害者が対象となっておりますが、差別禁止につきましては、障害程度によ らず障害者全般を対象としているように理解されていると聞いております。フランス につきましては、法律上の規定のみからはわかりにくい部分があるのですが、ドイツ のような違いというものは大きくないように思われるところでございますが、詳細に つきましては、正確には把握しておりません。  ○今野会長  それは、フランスについては、もう少し待っていただければ分かるよということで すか。それとも、全く分からないということですか。  ○事務局  法律上の規定のみからは分からない部分もありますので、どの程度まで調べられる ということも含めて検討させていただければと思います。  ○岩村委員  今は分かりませんけれども、調べてはありますので、後でまたそれはちょっと。  ○今野会長  では、そういうことで。他にございますか。よろしいですか。どうぞ。  ○花井委員  検討項目に沿いまして考え方を述べたいと思います。今回の障害者雇用分科会がこ のように行われたというのは、中間整理を受けてのことであり、その中間整理が国連 の障害者権利条約を批准するために、国内法の整備の一つとして、雇用・労働分野に おいてどういうことが可能なのかということの検討がスタートだったかと思いますの で、今回の検討項目に沿いまして考え方を述べておきたいと思います。  まず、基本的枠組みについてです。雇用の全ステージにおいて全ての労働者が障害 を理由とする差別的な取扱いがされないよう、全ての事業主に対して差別の禁止及び 障害を持つ労働者に対する合理的配慮の提供を義務付けるという枠組みとすべきです。 さらに、障害を理由とする解雇であるとか、あるいは雇止めなどは無効とするといっ た、私法上の効果を規定すべきです。  2つ目は、障害者雇用率制度の位置付けですが、以前も述べたかと思うのですが、 権利条約の中には積極的差別是正措置をとるべきだということが盛り込まれておりま すので、我が国におきます今の雇用率制度は成果を上げてきており、引き続きこの制 度は積極的差別是正措置として残すべきではないかと考えておりま す。  それから、障害者の範囲について先ほどから意見が出されておりますが、これにつ きましては、私たち連合の中でも、様々な議論がありました。ただ、やっぱり一定の 範囲を明確にしなければいけないのではないかということで、全ての労働者に対して、 障害を理由とする差別的取扱いを禁止する場合の、その障害とは何かということです が、それは障害者雇用促進法の第2条に規定する障害者が有する障害というふうにし てはどうか。さらに、発達障害者支援法の第2条に規定されております発達障害につ いても障害の範囲に入れてはどうかというふうに、今の段階では考えております。広 範囲に考えるべきだという意見と、雇用率と連動させるとすれば、一定の制限が必要 ではないかという、両方ありますが、今の段階では促進法の第2条でいう障害という ことで、スタートしてはどうかというふうに考えております。  それから、事業主の範囲は、やはり全ての事業主とすべきではないかと。ドイツ、 フランスがそうだということもありますが、やっぱり障害者の差別ということであれ ば、そこで従来設けられている企業規模による猶予措置といった考え方ではなくて、 全ての事業主というところから出発して、その後に何らかの措置を講じていくような こともあるかと思いますが、一応全ての事業主とすべきであると考えます。以上です。  ○今野会長  ご意見として伺っておけばよろしいですね。他にございますか。どうぞ。  ○新澤委員  全ての事業主とすれば、我々中小企業の場合は、やはりいろいろ段階を踏まないと、 我々この日本の中小企業というのは非常にそういうものに対応しやすい、いろんなも のを持っていますが、差別までいきなり全ての事業主という考えはむしろ今のお話で すと、その辺はご配慮いただければと思います。今後、いろんな会議の中で、いま我 々としては要望していきます。  ○今野会長  片方で合理的配慮というのがあります。極端なことを言うと、全ての事業主を対象 に合理的配慮をしていただくということですけれども、その事業主が今お金が0円だ ったら、できないですよね。  ○新澤委員  はい。お金がないですから。  ○今野会長  お金が0円だったら、お金が全くなかったらできないですよね。ですから、そうい うことも含めて合理的配慮というのは、どういうふうにやっていこうかということを ここで議論しようということですね。先ず、花井委員が今おっしゃったのは、その時 の議論の出発点は全ての事業主から出発しようということだと思います。  ○新澤委員  そういう趣旨は我々としても理解しておりますけれども、一応早いうちに要望して おく必要がある。そういうことのないように。  ○今野会長  他にいかがですか。それでは、もう1点検討していただく項目を用意してあります ので、資料の3−2になります。「障害を理由とする差別の禁止」について事務局か ら説明していただいて、議論したいと思います。ではお願いします。  ○障害者雇用対策課長  それでは、資料3−2をご覧いただきたいと思います。資料3−2は2枚でござい ますが、「労働・雇用分野における障害者権利条約の対応について」ということで、 これも中間整理の抜粋でございますけれども、「障害を理由とする差別の禁止」につ いての部分でございます。資料の中の第2に、障害を理由とする差別の禁止といたし まして、まず1番に、差別の定義がございます。障害を理由とする差別には直接的な 差別的取扱いのほか、条約上、合理的配慮の否定がこれに含まれることが明記されて いるということ、ここで「間接差別」や「労働能力に基づく差異」が差別に当たるの かどうかが問題になる。また、合理的配慮の否定をどのように法制度に位置づけるか という論点もあるということでございまして、具体的には3つ○をつけて意見を紹介 してございます。まず1点目といたしまして、外見上は中立的でも、職務とは関連が ない等合理性のない条件を設定し、実質的に障害者を差別するようないわゆる間接差 別については、条約上明文の規定はないが、差別の定義として、「他の者と平等に全 ての人権・・・行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するもの」であっ て、「あらゆる形態の差別を含む」こととされている。これは2条でございますが、 差別に該当するのではないか、との意見があったということでございます。また、間 接差別については、男女雇用機会均等法改正の際にも議論されたが、何が間接差別に 該当するのかの基準など、実際にはかなり難しい問題があるのではないか、との意見 があったというのが第1点でございます。  次に、労働能力を評価した結果として、賃金等に差が生ずるといった労働能力に基 づく差異については、合理的配慮が提供された上で、労働能力が適切に評価されたも のであるならば、結果として差が生じても差別には該当しないのではないか、との意 見があった。最後に、なお合理的配慮の否定について、我が国の法制上、それ自体を 第3の類型の差別と構成するのか、即ち合理的配慮が提供されないこと自体をもって、 実際に差が生じていなくても差別と捉えるのか。直接差別に組み込んで考えるか、実 際に差が生じていることについて、合理的配慮が提供されていないことに起因してい る場合には、当該差は差別であると捉えるのかについても検討すべきではないか、と の意見があった、というのが、大きく3点ほど差別の定義関係でご紹介しております。  それから2番でございますが、差別が禁止される事項として、条約におきましては、 雇用に係るすべての事項を対象としており、実際に問題となる主な事項としては、以 下のものがあるということで、2ページの(1)から(5)まで、(1)募集・採用、(2)賃金その 他の労働条件、(3)昇進・配置(人事)その他の処遇、(4)教育訓練、(5)雇用の継続・終 了(解雇・雇止め等)といったものがあり得るということでございます。  2ページの○は2つございますが、まず1つ目といたしまして、採用について、事 業主に広範な裁量があること、他の応募者がいること等、立証が難しい、差別があっ た場合の対応が難しい等の問題はあるが、条約でも明記されており、立証できるもの まで除外することは適当ではないので、差別禁止の対象から除外すべきではないので はないか、との意見があった。それから、採用差別についても1点ございまして、採 用差別については、裁判所は採用の自由を重視しており、また、企業も採用の制限に 関しては抵抗があると考えられ、例えば採用命令等を設けることなどを考えるのであ れば、難しい問題なのではないか、との意見があった、ということで、これは主に採 用差別について意見を書いているわけでございます。以上でございます。  ○今野会長  それではまた、ご質問でもご意見でもお願いいたします。どうぞ。  ○大島委員  今ご説明した資料3−2の1ページの1番の差別の定義で、1つ目の○の間接差別 なのですけれども、これも先ほどの合理的配慮と一緒にちょっと分かりにくい概念な ので、先ほど申しましたことと重複しますけれども、こちらもやっぱり明確な判断基 準とか、分かりやすい例を示していただいて、それで議論していただければなと思い ます。  あとは、1ページの2つ目の○のところですが、労働能力等に基づく差異というと ころですが、労働能力に基づく勤務状況や賃金の差異について、中間整理においては、 合理的配慮が適切になされた場合については、差異は差別に当たらないという意見が 書いてございました。もとより企業においては、労働能力に基づいて労働条件とか賃 金に差異が生ずるというのは、これは自然なことでありまして、この意見については 妥当というふうに考えております。以上でございます。  ○今野会長  間接差別というのは分かりにくいですが、誰向けに説明するかなんですよね。です から、一般の皆さんに説明する言い方と、この我々の中で共有するために説明するの とは、ちょっと違うので。  ○大島委員  もともと企業が判断する上で。  ○今野会長  そういう意味ですか。じゃあ、将来的にですね。ここではなくて。それは最終的に はそうですよね。難しくてね、これは。ここにもちょっと意見が書いてありますけれ ども。すごく分かりやすい例を言うのは簡単なんですが、グレーゾーンを言うのはい くらでも簡単で、片方で非常に難しいのですが。では、ご要望ということでお伺いし ます。  この中間整理は、難しい問題がこんなにありますというふうに、みんな提示したと いうことですよね。いかがでしょうか。いや、この点については、こう考えた方がい いのではないかとかいうのがあれば、前に少し進んでいくのですが。はい、どうぞ。  ○高橋(弘)委員  間接差別に関してなんですが、私は前回のこの会合で、やはり間接差別を含めるの は非常に難しいのではないかというご指摘をさせていただいたんですが、やはり今、 大島委員がご指摘になったように、何が間接差別なのかという基準がある程度明確に ならない限りにおいて、間接差別を含めるべきか、含めるべきではないかという議論 はできないというふうに思っております。間接差別について、まずどういう法律的な 判断基準が示せるのかということの議論なしには、ちょっとくどくなるのですが、間 接差別を差別の中に入れるということについてはちょっと異論があるということを繰 り返し申し上げておきたいと思います。  ○今野会長  ただ、我々は議論の前提にしなければいけないのは、今おっしゃられたことは1つ の論点としてあると思いますけれども、前提としなければいけないのは、権利条約に おいて間接差別は想定しているということなのですよね。  ○障害者雇用対策課長  権利条約の中に間接差別という直接的な文言はございませんが、差別の定義として は、あらゆる形態の差別を含むという文言がございまして、この中で間接差別を含む という考え方がございます。  ○今野会長  そうすると、1つの考え方としては、理念的には権利条約に書いてあるのだから間 接差別を考える。でも、先ほどのご意見は、それをオペレーションしておこうとする 時に難しいから、実質上難しいのではないかと、そういうふうに考えればいいという ことですね。  ○障害者雇用対策課長  理念としてはそういった考え方もあるかと思います。しかし、確かに間接差別とい うのは非常に分かりにくい概念であることは確かでございます。もう1つまた分かり にくいのが、今回、合理的配慮の提供というのがございまして、この合理的配慮の提 供と間接差別の関係は、もう一つ議論になろうかと思っております。間接差別は、1 つ私の思いついた例で言うと、例えば、事務職の採用に当たって、必ず電話の受け応 えがスムーズにできないといけないといった条件をつけると、例えば、聴覚障害者の 方に対して間接差別的な影響を及ぼすというようなことはあり得るかと思うのですが、 例えば、そういう場合には、その募集採用に当たって、電話ではなくて、例えばメー ルやファックスでコミュニケーションをとるといった、そういった配慮をすべきでは ないかという意見が一方にあるとすると、その間接差別と合理的配慮をどう整理する かといった問題は、実際上は出てくるだろうと思っております。  ○今野会長  多分、間接差別の定義でいうと、事務職をやっていただく時に、電話で受け応えが ないにもかかわらず、聴覚障害を理由に採用しないといったら間接差別ですね。でも、 電話による受け応えがあるとなると、それを代替するコンピュータを使えるようにす れば合理的配慮になる。今、課長がおっしゃられたことは、両方混みになっている話 ですね。いずれにしてもややこしいですね。他にどうぞ。  ○高橋(睦)委員  この段階での意見ですけれども、先ほどから間接差別の問題が議論されているので すが、やはり男女雇用機会均等法の改正においても、間接差別というのは非常に難し いというような議論がされたかと思いますけれども、結果として差別を生み出すとい うことがあれば、非常にグレーゾーンではありますけれども、やはりそれも差別であ るということとして考えた方がいいのではないかと思いますので、ここの差別の定義 の中に当然含まれるべきではないかというふうに思います。  もう1つ、合理的配慮が提供された上で、労働能力が適切に評価されたもので、結 果としてこれは差別に該当しないというようなところもあるのではないかということ は、それもそうだと思いますが、この合理的配慮自体がどんなものであったかどうか というところも、大いに議論されるべきでありますし、その辺のところもきちっと含 めていくべきではないかなというふうに思います。  ○今野会長  それでは、私がちょっとコメントさせていただいたのは、間接差別、それが理念的 に考えなくていいということにはなっていないですよね。そこは合意されており、あ とは、オペレーションの問題でという話だったので。これが理念的に要らないとなる と、条約無視ということになりますね。はい、どうぞ。  ○松矢委員  その間接差別と合理的配慮ですね。特に間接差別の場合には、アプリオリにこの仕 事はこういう障害者には向いていないというようなことになりますよね。でも、最近 は、例えば知的障害者が実際に接客をするというのは、今は当たり前になってきまし たね。昔はそういうことは不得手で、合っていないというふうにされていました。あ るいは市民の差別観が優先していたかもしれませんね。今は何ともなく。それから、 聴覚障害者もお菓子を販売するという、そういうところにも進出していますから、こ の議論はかなり就業規模を含めて、合理的配慮をこういうふうにやればできるんだと いうような事例をたくさん出してもらって、それで、間接差別がどうやったらなくな るのかということを、今、既に行われている先進的な事例、そういうものをやはり我 々はちゃんと知っておかないと、議論がすごく抽象的になって、分からなくなります ので、例えば、こういう努力で間接差別がなくなる。それがイコール合理的配慮だと かそういう議論を具体的に進めた方が早いのではないかなと思いました。  ○今野会長  そういう何か具体的に進める時に、具体的な例を綺麗に整理できるフレームワーク というのはないですか。そうすると、先ほどの話になるのですよ。綺麗なフレームワ ークがあれば。  ○松矢委員  例えば、中小企業ですと、全国重度障害者多数雇用事業所協会とかありますね。そ ういったところで努力していることなどを少しまとめてもらって、審議会に出しても らうとかですね。そのようなことが必要かなと思います。それから、特例子会社でも、 特例子会社そのものは中小企業ですよね。親会社はありますけれども、形としては中 小企業なので、その中でかなりいい事例を構築しているのではないかと思いますので、 そういった特例子会社等の企業組織の方から出してもらうようにして、我々がここで そういう議論を具体的に展開する、例えばこういう形で議論した方が分かりやすいと 思うので、そういう進め方を提案したいと思います。  ○今野会長  どうぞ。  ○川崎委員  私は精神障害者の立場で少しお話させていただきたいのですが、先ほどの課長のデ ータからも、大変に精神障害者の就労が少ないということで、今この合理的配慮を精 神の人にどのような、先ほどの具体的な、このようなことが配慮されればいいのかと か、そういうデータが実はなかなか私どもの団体でも出ていないというのが現状です。 それで、実際合理的配慮がなされれば、精神の人も就労にもっともっといくのではな いかと思うのです。この合理的配慮は本当にこれから話していかなくてはいけないと ころなんですけれども、やっぱり具体的にいろんな事例を出していきながら、その中 である程度の企業の方にも、私ども利用者さんにも分かるような、そういうような定 義付けといいますか、条件をやっていただけたらなと思っております。以上です。  ○障害者雇用対策課長  複数ご意見をいただいたところでございます。合理的配慮につきましては次回以降 ということで基本的に考えておるわけでございますが、確かにこの分野におきまして は、いろいろな取組みがこれまで重ねられてまいりまして、その中で先進的な事例で ありますとか、いわゆる好事例的なものはある程度集積はされているところではない かと思ってございますので、やはり合理的配慮という概念自体がなかなか新しい概念 でございますので、少し具体的なものをご紹介しながら議論していくのは確かに有効 かなと思いますので、少しその辺の整理は考えてみたいと思ってございます。  それで、一言だけ精神障害者についてコメントいたしますと、昨年度から若干の事 業を創設いたしまして、少しでも精神障害者の雇用が進むようにということで、例え ば、ステップアップ雇用奨励金を創設したり、あるいは今年度新規で精神障害者雇用 促進モデル事業といったものを開始したところでございます。このモデル事業は約10 社を対象にいたしまして、精神障害者の特性に応じた職域開発とか、それから、支援 体制といったものを少しモデル的にやっていただこうということでございますので、 こういったところで、できるだけ事例が集積されて、少しでもこの雇用促進に資する ように、取組みがご紹介できればと思ってます。  ○今野会長 合理的配慮については、次回か次々回ぐらいでやっていきましょう。はい、どうぞ。   ○岩村委員  ワーキングなどとか、そういったところでもちょっと合理的配慮についてはやった ような気がするのですが、例えば、アメリカの合理的配慮の実例であるとか、そうい ったものは既に論文その他で紹介されているものもございます。あと、フランスの合 理的配慮といったものについても、やはり論文などでも紹介されておるところがあり ますし、それから、確か、ガイドラインがフランスにはあったのではないかと思いま すので、そういったところをちょっと調べていただいて、ご紹介いただけると、少し イメージが具体化するのではないかと思います。  あと、間接差別についても、多分、アメリカとかは、私もあまり詳しくないのです が、ガイドライン的なものとか、あるいは実例等があるのではないかというふうに思 いますので、ちょっとそれもご調査いただいて、ご紹介いただけると、少しイメージ がつかめるのではないかというふうに思います。  ○障害者雇用対策課長  今のお話でございますが、実例でありますとかガイドライン等について整理できる ものがあれば、少し私どもの方でもそういうのがあるかどうか見てみたいと思ってお ります。  ○今野会長  他にございますか。合理的配慮というのは変数が多いから大変ですね。つまり、職 業能力を発揮できるようにサポートするという変数と、お金はあまり無理させてはい けないという変数と、両方の変数があるので、これが片方の変数だけだったら、意外 にすっきりするのかも知れないのですけれども、なかなか難しいところですね。  ○岩村委員  それについては、今日の資料の中とか、あるいは中間整理の中でありましたように、 合理的配慮に関して言えば、これはもう基本的に個々の障害者の方ごとの配慮という 部分になる。従って今、座長がおっしゃったように非常に変数がそういう意味では複 雑であるということ。費用の問題については、これは条約上も要するに過度の負担に ならないで、ということが入っているので、そこをどう考えるか。その過度の負担と の関係でいうと、その合理的配慮を行うに当たって、例えば公的な助成といったのを 考慮して過度な負担かどうかというのを考えるのかという、もう1つのステップが入 ります。従って、合理的配慮というのを考える上では公的な助成というのをどうする かというのも、実はもう1つの論点として入ってくる。だから、公的助成を考えると いうことは、その財源をどこから持ってくるのかという、もう1つの問題がさらに関 係してくるという、そういう構造になっているということだけ、ちょっとコメントさ せていただきます。  ○今野会長  では、合理的配慮の本番は次回以降に楽しみにするということで、他にございます か。よろしいでしょうか。それでは、今日は1番目の議題については2つのポイント についてご議論いただきましたので、先ほどのスケジュールに従って次回以降も進め ていきたいと思います。  今日はもう1つございます。冒頭申しましたように、議題2の障害者雇用の促進等 に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱等についてでございます。まず事務 局から説明をお願いします。  ○障害者雇用対策課長  資料としましては、資料4、それから参考資料5−1、5−2でご説明したいと思 います。  まず資料4の方をご覧いただきたいと思います。資料4は3枚ほどからなっており ますが、この審議会としての意見を求めるという形でございまして、政令案と省令案 について意見を求める形でございます。1枚めくっていただきますと、障害者の雇用 の促進等に関する法律施行令の一部改正で、肝臓の機能の障害を政令で定める障害に 加え、施行は22年4月1日からということです。もう1枚めくっていただきますと、 施行規則の方で同様の省令案となっているところでございます。この内容はどういう ことかと申しますと、参考資料5−1をご覧いただきたいと思います。資料4は先ほ どのとおりでございますので、主に参考資料の5−1と参考資料5−2でご説明いた します。  まず参考資料5−1でございますが、身体障害者福祉法における身体障害者の範囲 の拡大、肝機能障害への対応に伴う障害者雇用促進法における身体障害者等の範囲の 拡大について(案)でございます。5−1の1ページでございますが、まず1番で制 度の現状を書いてございます。障害者雇用促進法におきましては、雇用義務等の対象 となる身体障害者の範囲を同法別表にて、障害の範囲ということで、各障害別に列挙 しているところでございます。このうち、内部障害につきましては、この表の中で、 第5号の「心臓、腎臓または呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し かつ日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの」となり、政令即ち 障害者雇用促進法施行令第27条各号で具体的にその対象を定めているところでござい ます。  それから、2つ目の○の「また」以下でございますが、雇用率制度におけるダブル カウントになります重度の方の対象となる障害、それから、一部の助成金の対象にな る障害につきましては、それぞれ障害者雇用促進法施行規則別表の第1、  第3に 定められています。こちらは省令でございます。  今回の改正の経緯、対応の経緯は2番でございますが、1つ目の○で申しますと、 いわゆる薬害肝炎訴訟がございます。今般、薬害肝炎全国原告団・弁護団と厚生労働 大臣との間の協議が複数開催されたわけでございますが、この決定、それからそれに 基づきまして、肝機能障害の評価に関する検討会というのが設けられまして、この検 討が7回ほど行われてきたわけでございます。昨年10月から、今年8月まで検討が行 われまして、8月にまとまった報告書を踏まえまして、疾病・障害認定審査会身体障 害認定分科会というところにおきまして、一定程度の肝機能障害を有する者について は、身体障害者福祉法に基づく身体障害者福祉手帳の対象となる身体障害者の範囲に 含めることが決定されたわけでございます。  これまでも、障害者雇用促進法と身体障害者福祉法の関係で申しますと、障害者雇 用促進法に基づく身体障害者等の範囲については、身体障害者の範囲として、身体障 害者福祉法別表に掲げる障害を有する者と、それから、重度身体障害者につきまして は、身体障害者福祉法施行規則別表第5号の1級、2級に掲げる障害を有する者と、 それから、障害者雇用促進法施行規則別表第3に掲げる者、これを身体障害者の福祉 法施行規則の別表の内容に合わせるということで、一言で申しますと、身体障害者福 祉法における身体障害者の範囲と障害者雇用促進法の身体障害者の範囲を合わせると いったことで改正をしているわけでございます。  今回も、雇用と福祉の制度の整合性ということから見ますと、福祉制度において障 害の対象に肝機能障害が追加されること。これと合わせまして、雇用分野においても 同様の対応を図る必要があるというふうに考えております。  3で、改正案でございますが、政令改正といたしまして、障害者雇用促進法施行令 第27条に新たな1号を加えまして、「肝臓の機能の障害」を規定する。これは身体障 害者の範囲自体の拡大でございます。省令の改正でございますが、法律施行規則の別 表第1第4号、それから別表第3第4号に「肝臓」を加える。これは、重度身体障害 者あるいは助成金の対象の範囲の拡大でございます。今後の予定でございますが、22 年4月1日施行、これは身体障害者の福祉法の対応と同時でございます。  1枚めくっていただきまして、内部障害の範囲拡大の定義がございまして、簡単に 申し上げますと、昭和50年12月の身体障害者雇用審議会の答申におきまして、「身体 障害者雇用促進法の身体障害者の範囲を身体障害者福祉法のそれに合致させることが 妥当」とされておりまして、そのため、下の方の表でご覧いただきますと、昭和50年 より後のものについては基本的には同様の改正となっておるところでございます。そ れから、参考資料5−1の3ページ、4ページに、身体障害者に対する制度の適用範 囲、それから、助成金の支給対象となる身体障害者の表が掲げられているわけでござ います。  次に、参考資料5−2でございますが、肝機能障害の評価に関する検討会の報告書 をつけてございます。これは今年の8月24日に出された報告書でございまして、この 検討会の構成員の方々に関しましては、参考資料5−2の一番最後の11ページに書か れている方々が構成員になっているわけでございます。検討の経緯は参考資料5−2 の10ページに表でまとめてございます。この報告書の内容を概略だけご説明いたしま すと、4ページに「肝機能障害の範囲について」という記載がございますが、まず1 つ目の○といたしまして、身体障害者福祉法における身体障害は、一定の機能障害が あり、その障害が永続することが見込まれる状態であって、日常生活に支障を来たし ているものを対象としている。肝機能障害につきましては、初期においては無症状で あって、また慢性肝炎や肝硬変に移行した場合であっても治療によって治癒又は改善 するけれども、重症化すると症状の進行は不可逆性となる、ということが書いてある わけでございます。従いまして、肝機能障害が重症化して、治療による症状の改善が 見込めず回復困難になっているものについては身体障害の対象になる、といったのが 今回の検討会の主な考え方でございます。  具体的には、そこの表が書かれてございますが、肝機能障害の重症度分類といたし まして、国際的にChild−Pugh分類といったものがあるわけでございまずか、ここで グレードCの状態に一定期間あって、回復困難なものを対象にするということで、4 ページの参考となっている表をご覧いただきますと、例えば、肝性脳症や腹水等でそ れぞれ度合いによって1点から3点まで点数化されるわけでございます。このそれぞ れの項目ごとに点数をつけまして、この点数を全て足し上げまして、10点以上のもの をグレードCにするということで、この10点以上のものが基本的に福祉法の対象とな るというものでございます。  4ページの一番下でございますが、肝機能障害の原因といたしましては、ウイルス 性肝炎、自己免疫性肝炎、代謝性肝炎疾患等がございますが、身体障害者福祉法にお ける身体障害者は身体障害といたしましては原則としてその原因を問わないというこ とで、肝機能障害につきましても同様に原因を問わないという取扱にするということ でございます。そこで5ページの1番上の「また」以下でございますが、肝機能障害 にはアルコール性のものがございまして、アルコール性のものはアルコールの摂取を 止めれば改善が見込まれる場合もある。特にアルコールに起因するものについては、 生活習慣に依存するものでございまして、一定期間の断酒を確認した上で認定すると いったふうにしているわけでございます。  5ページの2番でございますが、認定基準でございまして、肝機能の検査所見、そ れから日常生活活動の制限の状況等を評価いたしまして、具体的には先ほどの4ペー ジのChild−Pugh分類の表におきまして1級から4級にするということでございます。 具体的にどういうものが1級から4級にそれぞれなるのかが6ページ以降でございま して、6ページをご覧いただきますと、肝機能障害認定基準(案)というのが掲げら れているわけでございます。そこで1級から4級までの記載が1番にございまして、 具体的には2番の認定基準でどういった場合に1級、2級等に該当するかといった記 載がございます。詳細はちょっと割愛させていただきますが、先ほど4ページにあり ました表1のChild−Pugh分類、それから7ページの表2で日常生活活動の制限等とい った表がございまして、この表1と表2を合わせましてそれぞれ何点以上になるか、 あるいは何項目以上どういったものが該当するかによりまして、1級から4級を決め ていくというものでございます。それから、7ページの(2)がございまして、肝臓移 植を行った者については、抗免疫療法を必要としなくなるまでは、1級として認定す るという扱いがございます。8ページは留意事項等を書いてございます。アルコール 性のものにつきましては、6カ月以上アルコールを摂取しないことを条件とする、そ ういったことがございます。  これが報告書の概略でございまして、これを元に肝機能障害を別表に位置づけると いうことで、私どもの方でも同様の改正を政省令でさせていただきたいと思っており ます。以上でございます。  ○今野会長  ありがとうございました。それでは、ご意見ご質問をお願いします。よろしいでし ょうか。それでは当分科会としては厚生労働省案を妥当と認め、その旨、私から労働 政策審議会会長に報告を申し上げて、会長から大臣に答申がなされるということにし たいと思いますので、よろしくお願いします。 (異議なし)  それでは、事務局から案を配っていただけますか。よろしいでしょうか。 (異議なし)  よろしいですか。ありがとうございます。それでは、この案で認めていただいたと いうことにさせていただきます。  それでは、今日はこれで終わりですが、何かご意見はございますか。どうぞ。  ○花井委員  すみません。最初に聞けばよかよかったのですが、参考資料4のところなんですが、 7ページで障害者の解雇数の推移というのがありまして、もう既に上半期で前年度を 超えているというグラフがあるのですが、大変これからもどうなるのか危惧している ところなのですが、その後に、様々な障害者雇用納付金制度に基づく助成金の制度が あると思うのですが、これの実績がどうなっているのか。何が不足しているのか、あ るいは何が十分なのかも含めまして、何か分かるような資料があれば是非お示しいた だければと思います。よろしくお願いいたします。  ○障害者雇用対策課長  助成金につきましては、例えば昨年度等の実績があれば、それを少しお示ししたい と思ってございます。それで、解雇者数の推移でございますが、確か7ページの棒グ ラフを見ますと、今年度に入りまして、昨年度よりもかなり大きな数で推移している ところでございます。この月別状況をご覧いただきますと、4月の345から8月の162 までございまして、若干ここ1,2カ月は少しそれまでよりも数字は多少落ちついた みたいでございますが、やはり絶対数で見ると、昨年度の上半期を上回っているとい う状況でございますので、この辺につきましては、是非ともいろんな対策を導入しな がら障害者の方の職場定着、雇用促進に努めていきたいと思ってございます。  ○今野会長  よろしいですか。他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、本日は この辺にいたしますが、先ほど一番最初にスケジュール案というのがございましたね。 次回は10月23日で、今日後半でやった障害を理由とする差別の禁止についてというこ とがテーマになっているのですが、今日の議論の進行を見させていただくと、合理的 配慮も時間があったら一緒にやってしまった方がいいと思います。ですから、事務局 に対しては、合理的配慮も議論できるように準備をしていただいて、効率的にいきた いと思います。そういう形ですすめさせていただきますが、よろしいでしょうか。そ れではこれで終わりますが、事務局から日程をお願いします。  ○障害者雇用対策課長  次回の分科会でございますが、資料2にございましたとおり、10月23日金曜日の14 時から16時までで予定してございます。場所は、厚生労働省省議室でございます。こ の建物の9階でございます。後ほどメールまたはファックスにて出欠確認の用紙を送 付させていただきますので、できれば今週の金曜日16日までにご返信をお願いできれ ばと思ってございます。以上でございます。  ○今野会長  それでは、議事録の署名ですが、今日は労働者代表では高橋睦子委員でお願いしま す。使用者側は飯ヶ谷委員でお願いします。障害者代表は鈴木委員でお願いします。 よろしくお願いします。それでは、今日は終わります。ありがとうございました。 〈照会先〉 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 調整係 〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2 TEL 03(5253)1111 (内線5783) FAX 03(3502)5394