09/10/13 第28回社会保障審議会少子化対策特別部会議事録 日時:2009年10月13日(火) 17:00〜19:00 場所:厚生労働省 省議室 出席者:  委員   大日向部会長、岩渕部会長代理、内海委員、大石委員、清原委員   駒村委員、佐藤委員、篠原委員、庄司委員、杉山委員、宮島委員   山縣委員、吉田委員  参考人(ヒアリング)   NPO法人わははネット 理事長            中橋恵美子参考人   財団法人児童健全育成推進財団 常務理事・事務局長  鈴木一光参考人  参考人(オブザーバー)      社団法人日本経済団体連合会経済政策本部長      藤原清明参考人                              (高尾委員代理)  事務局   伊岐雇用均等・児童家庭局長、香取審議官、堀井調査官   杉上虐待防止対策室長、朝川少子化対策企画室長   定塚職業家庭両立課長、真野育成環境課長、今里保育課長   宮嵜母子保健課長、藤原家庭福祉課長    議題:   次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について   ・すべての子育て家庭に対する支援について 等 配付資料:  資料1   中橋参考人提出資料  資料2-1  鈴木参考人提出資料(1)  資料2-2  鈴木参考人提出資料(2)  資料2-3  鈴木参考人提出資料(3)  資料3-1  すべての子育て家庭に対する支援について  資料3-2  すべての子育て家庭に対する支援について(参考資料)  参考資料1 放課後子どもプラン実施状況調査報告書(抜粋)(平成2 0年3月) 参考資料2 地方分権改革推進委員会第三次勧告(抄)(平成21年10月7日) 議事: ○大日向部会長  定刻になりました。ただ今から「第28回社会保障審議会少子化対策特別部会」を開催い たします。委員の皆さま方におかれましては、お忙しい中をお集まりくださいまして、誠に ありがとうございます。  会議に先立ちまして、事務局より資料確認と委員の出席状況に関してご報告をお願いいた します。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、お手元に配布させていただいております資料の確認をさせていただきます。最 初に議事次第がございまして、それから資料1としまして横紙のオレンジ色の中橋参考人の 提出資料、資料2-1、2-2、2-3と縦紙三つが鈴木参考人から提出していただいた資料、その 下に資料3-1として事務局からの「すべての子育て家庭に対する支援について」という資料、 その下に資料3-2としてその参考資料です。さらに参考資料1としまして放課後子どもプラ ン実施状況調査報告書平成20年3月というものがありまして、その下に参考資料2としま して地方分権改革推進委員会第3次勧告(概要)。これは先般10月7日に政府の地方分権改 革推進委員会から第3次勧告ということで勧告があったものです。当部会でご議論いただい ている保育などにもかかわる勧告がなされておりますので、参考に資料としてお付けしたも のです。もし、不足等がありましたら、事務局にお声を掛けていただければと思います。  委員の出席状況でございますが、本日は岩村委員、高尾委員、野呂委員、山本委員からご 都合により欠席とのご連絡をいただいております。駒村委員はご出席の予定ですが到着が遅 れるというご連絡をいただいております。なお、本日ご欠席の高尾委員の代理として、社団 法人日本経済団体連合会経済政策本部長の藤原清明参考人にご出席いただいております。ご 出席いただいております委員の皆さま方は定足数を超えておりますので、会議は成立してお ります。  次に、参考人として本部会にご出席いただいております有識者のご紹介をさせていただき ます。NPO法人わははネット理事長をされている中橋恵美子参考人でございます。 ○中橋参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  財団法人児童健全育成推進財団常務理事・事務局長をされている鈴木一光参考人でござい ます。 ○鈴木参考人  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。議事に入ります前に、本日ご欠席の高尾委員の代理としてご出 席いただいております社団法人日本経済団体連合会の藤原清明参考人のご出席についてお 諮りいたします。  ご異議はありませんでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、議事に入りたいと思います。本日は、最初にすべての 子育て家庭に対する支援について、参考人の方々からご説明いただきまして、次に事務局よ りご説明いただき、その後、皆さまにご議論をお願いいたします。  それでは、まずNPO法人わははネット理事長をされておられます中橋参考人より20分 程度でご説明をよろしくお願いいたします。 ○中橋参考人  お世話になります。NPO法人わははネットの中橋と申します。本日は香川県よりまいり ました。よろしくお願いいたします。  まず1ページ目で私どもの取組を簡単に説明いたします。今から11年前に私自身の出産 経験から子育てサークルを立ち上げました。地域の情報不足からくる育児不安を解消したい ということで、地域密着型の子育て情報誌を作りました。その後、携帯電話を活用した子育 て情報の配信サービスのシステムを作って、全国に先駆けて手掛けました。ただ、情報発信 だけでは一方通行でしかないということで、双方向のやり取りが自分たちには必要だという ことで、自主事業として商店街の空き店舗を活用して「わははひろば」という子育てひろば を開設しました。坂出市内、高松市内、それから大型スーパーの中、子育て応援マンション のモデルルーム等でひろばの展開をしています。今は拠点事業ということで委託を受けて行 っています。ひろばの中で毎日大勢の母親たち、子どもたち、あるいは父親たちが遊びに来 てくれますが、子育ての不満や愚痴などを聞く中で、移動に困っている人たちの話を聞いて 子育て応援タクシーの提案や子育て応援マンションなどをしてきました。また、子どもを少 し預けたい、少し見てほしい、誰かに聞いてほしいという方たちの声もたくさん聞きました ので、2年前に、たかまつファミリー・サポート・センター事業の立ち上げを行いました。 このような事業に私どもは取り組んでいます。  私たちの活動を通して、自分たちが今感じているすべての子育て家庭に対する必要なもの ということを稚拙ですけれど発表したいと思います。  次をお願いします。これは高松市の次世代育成支援の後期行動計画を作るに当たって取っ たアンケート調査の結果です。妊娠中や出産後のサポートとして特にどのようなものが必要 ですかという問いに対して「育児・家事などの支援(代行)」、それから「子育てに関する情 報の提供」「母親と赤ちゃんの健康面での相談」「子育て経験者から話を聞ける場の提供と交 流」などが上位を占めています。  次をおめくりください。その中でニーズの高かった家事・育児などを代行する支援につい てです。子どもを預けたことがありますかという問いに対しては「ない」と答えた方が7 割以上になっております。そのような中でも、ないけれども、年に1、2回預けたいと思っ た、あるいは預けたいと希望する人たちは、7〜8割にのぼっているということです。  次をおめくりください。この数字は、私たちが子育てひろばをする中で、あるいはひろば を卒業していった母親たちと話す中でも預かってほしいというニーズはよく聞きますので、 私たちが思っていることと、アンケートの数字が同じだと感じました。  そのような中で、高松市でファミリー・サポート・センターという事業を2年前に立ち上 げました。これは全国至る所にありますので、皆さまもご存じだと思います。たかまつファ ミリー・サポート・センターの現状を少しお話ししたいと思います。高松市は人口約41万 人の都市です。それまで香川県内に1か所もファミリー・サポート・センターがなく、非常 に遅れていたのですけれども、2年前にわははネットが全面的にかかわって立ち上げをしま した。今、雇用しているスタッフは3名で、そのうちの2人が必ず入るようにローテーショ ンを組んで行っております。9〜17時まで、火曜日のみ定休で土曜日も日曜日も運営してい る状況です。先週末現在までの数字で、「まかせて会員」という養成講座を受けて子どもを 預かりますという一般の方が453名です。0歳6か月から小学校6年生までの家庭の子ども を預かるのですけれども、お願いしたいという会員が637名。預けることもあるかもしれ ないけれども、預かることもできるという両方会員が91名で、合計1,181名の会員がいま す。お預かりする活動は、毎日いろいろな方々のお預かりのコーディネートをしますけれど も、今、少ない日で5組、多い日で15組程度が活動しています。平均して10組程度がど こかで活動しているということになっています。活動内容は、ファミリー・サポート・セン ターの場合は、「まかせて会員」か「おねがい会員」のどちらかの家でお預かりすることに なっています。預かりが2,317件、送迎が1,745件ということです。お迎えに行ってお預か りをするなど、両方が重なる部分もあるので、重なっている件数もありますけれども、現状 は大体このような形です。  次をお願いします。預かりの活動内容について少しお伝えしたいと思います。預かりの内 容は、0歳6か月から小学校6年までの子どもがいる家庭ですけれども、必ずしも働いてい る親だけの保育ではありませんが、共働き家庭のサポートが大体7割強程度です。学童保育 のお迎えの時間に間に合わないので、学童保育にお迎えに行ってから、家で夜19時、20 時まで見てくださいというケースが一番多いです。また、朝早くから仕事に行くので、朝お 迎えに来て保育所に連れて行ってください、朝迎えに来てしばらく「まかせて会員」の家で 見てから保育園が開く時間に保育所に連れて行ってくださいというケース。あるいは、月末 だけ仕事がどうしても忙しいので見てください、あるいは保育園や学校がお休みの土曜日、 日曜日に見てくださいという短期間の単発的な預かり。それから、専業主婦家庭での保育も 2〜3割ほどあります。多いのは産前産後のフォロー、あるいは産前産後のときの上の子ど もの保育園までの送迎と預かり、あるいは理由は細かくは聞かないのですけれどもリフレッ シュしたいというようなことのお預かりや、母親が独身のころからずっとしている習い事を やめたくないなど、さまざまなケースでのお預かりで毎日大体10組程度活動しているとい うことです。  今、私がとても問題に感じているのは、それ以外のお預かりしたいけれども預かれないケ ースが増えてきていることで、それを懸念しているところです。香川県の場合も、預かりは 保育園に併設している一時預かりがあるのですけれども、大体早くから予約が必要です。一 時預かりですが慣らし保育に来てくださいと言われる所が多く、パートで週1回、週2回の お勤めの方が定期で預ける方が優先になっていて、それで既に定員がいっぱいになっていま す。リフレッシュしたいなど、なかなか急なことで預かってもらいたいということに容易に 応えられないケースが多く、一時預かりでは受け入れてもらえないのでファミリー・サポー ト・センターを使いたいというご要望があるのです。母親が非常に子育てに疲れていて、や はり1日1時間でもよいから定期的に子どもと離れる時間をつくりたいという方も年々増 えてきているという感じを受けています。ただ、ファミリー・サポート・センターも1時間 で700〜800円のお金がかかりますので、頻繁になると経済的なものも影響してきます。ま かせて会員がその家庭から依頼がしばらくないと、かえってあそこの家の子どもは大丈夫か なと心配になるような、家庭の状況が不安定だったり親のメンタルが不安定なケースもあり ます。  実は、この連休前に相談があったのですけれども、ファミリー・サポート・センターはま かせて会員という一般の市民の方とお願いする一般の市民の方をコーディネートして、そこ で預け合う仕組みですけれども、定期的にお預かりするとその家庭との関係ができてくるの で、一応預かっていますという報告は受けますが、直接連絡をし合ってお預かりするのです。 連休前に受けたケースは、ファミリー・サポート・センターではその都度お金を払うという ことになっているのですが、3回ほどお預かりしているのですけれどもお支払いをしてもら えなくて非常に困っていて、来週からの援助を断りたいと、まかせて会員が言ってきました。 おねがい会員の方は、事情があって父親が離れて暮らしていて、離れて暮らしている父親か ら「勝手に妻を1人きりにして、妻がどうにかなってしまったらどうするのだ」と叱られた と。連休中ずっとこちらの方で対応しました。経済的に困っていることがわかっている家庭 で、非常に子育てを不安定に思っている家庭が、連休前でたまたま最近なので印象に残って いますけれども、特異な例ではなく本当に増えてきています。市役所に連絡を取って対応を 考える場合もありますが、市役所の方では本人から相談がないと応えられない。あるいは本 当に心配なケースですけれども、市役所に相談してくださいと言うと、市役所は非常に敷居 が高いと感じている方が多いです。そのような所に行きたくないなどと言われる家庭も多く、 市の方と一緒に家を訪問するケースも増えてきているので、そのような家庭をこれからどの ようにフォローしていけばよいのかということを少し悩んでいるところです。  次をおめくりください。これも高松市のデータです。子育てに関する情報をどのように入 手していますかということで、相談は誰にしていますかと同じようなグラフなのですけれど も、「友人、知人から聞いている」が非常に多くなってきています。これも私たちが子育て をする中で感じていることと非常に近いデータです。  次をおめくりください。私たちは情報や気軽な相談をするために子育てのひろば事業もし ています。ファミリー・サポート・センター事業の課題と子育てのひろばの課題で似たよう なところが出てきます。子育てのひろばに来る家庭も一見非常に安定している家庭のように 見える方が多いです。ニコニコと子どもを連れてくる母親が大半ですけれども、実は私ども も子育ての相談日や相談のコーナー、あるいは専門家の方を呼んで相談する特別な日を設け ていますが、そうではなく何回か遊びに来るうちに、日中ずっと明るく振る舞っているけれ ども、帰り際にぐずぐず言う子どもの靴を履かせながら、みんなが帰っていなくなってから 「実は・・・」と相談されることがまれではなく、多くあります。ですから、私どもではス タッフに靴を履かせるときには必ずそばにいて、人数が少なくなったときこそ、きっと何か 話したいときだから話せる雰囲気をつくりましょうということで指導しています。そのよう な相談、子育てが本当につらくてたまらない、このようなことで非常に困って悩んでいる、 そのような話を聞くことが多く、本当に昼間は明るくお友達とひろばで話をしているのに、 このような悩みを抱えていたという方がたくさんいらっしゃるということを感じています。 もちろん聞くだけで解決することもありますけれども、そうではないケースも中にはありま した。DVのケースや虐待のケースというのも今までに幾つも出てきています。それも保健 センターや相談窓口にも行っているけれども気が付かれないケースがありますし、そのよう な短い時間での相談や健診のようなものでは見つけられないようなケースが非常に多いで す。子育てのひろばは1日一緒に過ごしますし、何回も通ってきているうちに人間関係がで きた中でようやく相談してくれる、人間関係ができてくる中で向こうから言わなくてもこち らが感じ取れることがたくさんあります。あるいは、私どもの子育てのひろばは商店街にあ りますが、子育てのひろばの表の掃除を毎朝しているのですけれども、掃除をしている時間 に地域の方や祖母が、娘が子どもにこんなことで当たっているけれども、よいのだろうかな ど、子どもに関することを相談してくるケースも多いです。  つい最近もひろばの向かい側をおむつがぱんぱんになっている子どもが通っていたので、 声を掛けて中に入ってきていただいて、おむつを替えてあげて、体も少し汚れていたので拭 いてあげたりしていると、そういう関係ができて少しずつ遊びに来てくれるようになって事 情を聞くと、訳があって住民票を市内に移していないので、市民でないので市役所に相談に 行っても相手にしてもらえない、夫が全く家にお金を入れてくれないし自分も働きに行けな いというような方が来ていました。非常に深刻なケースですけれども、自分の深刻さに気が 付いていないということで、そういった方は一緒に市役所に連れて行って何とかしてもらえ るように話を付けてきたり、あるいは保健センターの人と一緒に、産後うつになっている家 庭ですけれども、ここだけはということでひろばに来てくれている家庭につないでいく。で すから、申し送りのような形で、こちらからそちらへバトンを渡すようには簡単にはいきま せん。子育てひろばの人だから、あるいはファミリー・サポート・センターで長い関係があ るからこそ、用心深い心を開いてくれている方ですので、そのまま心を開いた形でつなげる というのは、やはり次につなぐ所とも同じように時間をかけて一緒にかかわる時間が非常に 大事だと感じています。そのようなケースはまれなケースではなくて、本当に増えてきてい る現状を知っていただきたいと思います。多分、今までどこにも把握されていなかったよう な家庭がそこに来てくれているのかなと思います。  最後になりますけれども、次のページをおめくりください。役所でも保育園でも把握でき ない非常に悩ましい家庭が増えています。親としての学びの場がないことも一つの原因かと 思いますけれども、ひろばの中でいろいろな親や子どもとのかかわりを見ながら、あるいは ファミリー・サポート・センターの一般の見てくださっている会員との話ややり取りの中で、 少しずつ食事のこと、発達のこと、子どもを育てること、暮らし方なども学んではきてくれ ていますけれども、そこでカバーしきれないぐらい心配な家庭が増えてきていると思います。 そのような中で、本人が自分が不安だ、悩んでいるとわかっていないけれども、客観的に見 てこの人はサポートが必要だろうと思う家庭も多いです。そのようなときにファミリー・サ ポート・センターを使ったらどうですか、ひろばに遊びに来たらどうですかということでご 案内しますけれども、そのように気軽に預けられる場所が非常に不足しているのも問題かと 思います。ファミリー・サポート・センターを自分でやっていて感じるのですけれども、ま だ預ける方はよいのですが他人に預けるということ、あるいは1時間700円ですけれども お金をかけて預けることに抵抗がある家庭もまだまだあります。ひろばで子育て仲間をつく って情報も収集しながら親としての育ちも少しずつ感じながらいっている人は、ひろばを卒 業した後、子どもが幼稚園に入って夏休みに自分が少しリフレッシュしたい、お互いの子ど もを預け合ってという関係性が育っているのです。ですから、お金を払って預かり合える地 域のファミリー・サポート・センターという仕組みも必要なのですけれども、同時にお金だ けではなくて仲間同士で預かり合えるような関係を子どもが小さいうちに築ける場、母親仲 間をつくれる場も必要なのだろうと思います。  あともう一つは、悩ましい家庭が多いですけれども、私たちだけではカバーしきれません。 専門機関と連携を取らないといけないのですけれども、ただ、こちらからそれぞれの児童相 談所や保健センターなどの機関につなぐケースは非常に多いのですが、その後どうなったか は向こうから教えてもらうことは、まずありません。こちらから情報提供をするのですけれ ども、その後がわからないということで、私たちは母親自身が何かアクションを起こして私 どもに連絡をくれないと、その後どうなったかわからないということで、聞いても教えても らえないのはまだまだ私たちの立場が認められていないのかなということで非常に残念で す。そうした連携機関と対等にパートナーとして、地域の子育てを見守っていくパートナー としてNPO法人である私たちの団体を認知していただきたいということ。これは私が思っ ているだけでなく、どこの地域でもあると思いますけれども、感じています。  時間が過ぎているのですけれども、先ほど言い忘れたので。ファミリー・サポート・セン ターも送迎のニーズが非常に高いのです。基本的には近隣の方を紹介しますので、自転車あ るいは徒歩で保育園にお迎えにいくのですが、そのようにできないケースもあります。直近 のケースでは、上の子どもがいて母親の出産で産前産後の3か月間だけ保育園の一時預かり の仕組みで毎日見てもらうというサービスを利用しているのですけれども、空き状況が悪く て遠い保育園の一時預かりに預けられてしまった。母親は産後少しうつ気味ですし、自動車 の免許も持っていないということで、家から遠方の保育園までの車での送迎だけをファミリ ー・サポート・センターがカバーしているのですが、本来ファミリー・サポート・センター は車での送迎を認めていません。それは全国どこでもそうですけれども、有償輸送というこ とで白タク行為になるということです。本来してはいけないですし、ファミリー・サポート・ センターの保険の中での適用にもなりません。ですから、何かあったときには会員の責任と いうことになってしまいます。そうした非常に危険なサポートもわかっていながらコーディ ネートしなければいけない悩ましさを日々はらんでいます。その状況もぜひ知っていただき たいです。子育て支援でいろいろなサポートがある中で、私は子育てタクシーをやっている からわかりますが、タクシーはお金が払える方はよいのですけれども、払えない家庭で困っ ている家庭が本当に数多くあるということ、子育て支援のサービスにすき間ができてしまっ ているということを非常に感じています。  本日は具体的な小さな事例を言いましたけれども、そうした小さな日々の出来事が本当に 数多くあるのです。行政に報告する日報にも書けないような実態を共有できるような仕組み をまずつくっていただきたいですし、他機関と連携して、日々の日報に書けないようなこと も、行政だけでなくサポートしていくいろいろな他機関との体制づくりが必要です。そのた めに私が思うのは、やはり顔が見えないと団体同士がつながることは非常に難しくて、あの 人だから話してもよいなど、私が母親たちに紹介するときも、保健センターの○○さんの所 に一緒に行こう、○○さんならば私がよく知っていて大丈夫だからという顔が見える関係づ くりが必要なのです。そのためには、やはりある程度自由に動ける、地域の中でコーディネ ーター的な役割でそれだけを仕事にして、各地で柔軟に動いて、それぞれの担当の仕事の内 容、やっている人たちの顔、性格やキャラクターがわかっているようなコーディネーター的 な役割の人が必要なのではないかと思っています。今、子育て支援がある程度進んでいる地 域では、役所の仕事としてというよりはNPO法人の人たちが必要に迫られてボランティア や非常に安価な中でサポートしているような地域もたくさん見受けられますので、そうした 身分の保障や重要性を認知していただけたらと思っております。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは続きまして、財団法人児童健全育成推進財団常務理 事・事務局長の鈴木参考人よりご説明をお願いいたします。同じく20分程度でよろしいで しょうか。よろしくお願いいたします。 ○鈴木参考人  最初に少し児童館を紹介するビデオを見ていただきますので、3、4分プラスしていただ けるとありがたいのですが。よろしくお願いします。 (DVD放映中)  これは東京都港区台場の児童館の去年の活動です。「絵で見る児童館」という事例集を作 ったものの一つですので、興味のある方には貸し出します。10分ずつ、全部で6館の児童 館を紹介しています。一般的な地域活動を今、見ていただきました。先ほどの中橋参考人の 活動を聞いて、いろいろすき間を埋められるのにご苦労されている。児童館が地域にたくさ んあれば、その補てん、ネットワークの核になれるのかなという思いでお話を聞いていまし た。今、見ていただいたビデオに、児童館ならではの特徴は全部網羅されていたと思います けれど、私は児童館の特徴は「多機能性」と「拠点性」と「地域性」だと考えています。多 機能性というのは、公序良俗に反しない限りどんな活動をやってもよい。それから拠点性は、 子どもにとっての居場所、それと地域で子どものことを考える人たちにとっては集会場所、 活動の準備の場所というものを屋根付きで持っている。そして地域性というのは、身近にあ るということ。身近にある子どものことを中心にした拠点施設が大事だということが前提で す。 今日は20分でお話をさせていただきますが、この中身は、平成19年、20年と、2年かけ て「児童館のあり方研究」という研究をした成果を織り交ぜて発表させていただこうと考え ています。20分という極めて限られた時間ですので、皆さまにお配りしたお手元の資料1 の4ページ目に、時間のないときにいつも説明をさせていただく児童館のマンダラ図を添付 させていただきました。マンダラ発想法はカール・ユングも取り入れていまして、基本的に は真ん中に大事な目標を軸として置いて、上下左右・斜め前後左右に8つの具体的思いつき を書き込んで、それを編集しながら思考する方法ですけれども、少し変えて考えてみました。 児童館の機能は法律的にも子どもの健全育成が真ん中にありまして、それをどうやって達成 するのかというと、遊び性と、親とともに大人がかかわって子どもを支援していく、支援し なければいけない状況を下の段に書きました。その結果、何を求めていくかというと、子ど もの福祉の増進であり、それを達成するために子どもの発達課題、今日は「すべての子育て 家庭に対する」ということですので、子どもの発達課題を100歳までの生涯発達の中の18 歳までを直接支援するという視点が大事ではないかと。それで、一番右側はその時代時代の 社会のニーズに合ったトレンドをプログラムとして組んでいく。その結果、「ふだんのくら しのしあわせ」と書いてありますけれども、私は基本的に福祉を学生に教えるときに、遊び 心で「ふ」と「く」と「し」を頭文字に取って「ふだんのくらしのしあわせ」、すべての国 民が普段の暮らしの中で幸せだなと感じられるような状況をつくること、これが福祉だとま ず伝えます。恐らく目的概念としての福祉としては、間違いないと先輩諸氏たちにも言われ ております。それを一つ一つ逐条的に説明する時間がないのですが、育児の最終目的は子ど もの「自立」と「社会との調和」であるという心理学者や精神医学者が大勢を占めています。 自立というのは、大事なことは自己決定する、それから自己決定してうまくいかなかったと きには我慢する自律、そういう意味を含んだ自立。さらに自分が助けを望んでいるときには 「助けて」と言えることも含んでいます。社会との調和というと少し言葉が大げさになりま すが、わかりやすく考えれば、周囲にいる人たちとうまく人間関係が取れるということだろ うと思います。この人間関係が取れるということを、子どもの発達支援と私は考えているの ですが、この人間関係の調整ができるようにするのが恐らく大人の役割なのだろう。そして、 子どもが発達するには家庭と仲間と学校を必要とするのではないだろうか。この家庭と仲間 と学校を検証しますと、よく言われるように家庭の教育力が低下している。それから学校は 国民の能力開発の機能と選別の機能があるわけですが、その能力開発の人格陶冶の部分は数 値で表せないために、どうしても選別が主になってきている。そこから、昨今の学校を「成 績工場」と批判する学者が海外も含めて存在します。その意味は学校の中での人間関係の交 流が途絶えている。先生との間も子ども同士の間でも。その雰囲気の上にいじめが社会問題 になるほど恒常化してきた。そんなことも含め、子どもを発達させる家庭と学校の機能が少 し落ちているのかなと。また、子どもは仲間によって人間関係という社会性を身につけるわ けですけれど、私は、この家庭と仲間と学校をどうサポートしていくかが、今のすべての子 育て家庭に対する支援のあり方になると考えています。  それではレジュメに沿って説明させていただきます。福祉と教育それぞれの領域での基本 目標は福祉の実現です。教育も教育基本法前文では、世界の福祉に貢献するために教育をす る旨謳っていますし、福祉はもちろんそのまま福祉です。この中で、学校教育というのは科 学的概念、いわゆる客観的にものごとを人に説明する技術を使えるようにするために大なり 小なり子どもたちに圧力をかけるようなところがあります。この場所としての学校と、それ から学校での課業終了後の放課後と、私たち大人で言うと仕事が終わった後の自由時間です が、子どもも大人もリラックスして過ごすことが大切です。この環境の変化というのは、子 どもを見るときにきちんと付けてあげなければいけないのではないかと。北欧等においても、 学校の中で放課後児童クラブをやるときには、家の応接間のような室内装飾にしつらえてい るところがかなりありました。教育と福祉の機能はともかくとして、今までこの部会の中で のお話を伺っていますと、放課後児童クラブいわゆる学童保育につきましても、ナショナル ガイドラインというものが出されましたので、これを守って実施すればよいと思っておりま した。たとえば、児童館でもずっと放課後児童クラブをサポートしてきています。今も6 割近くの児童館の中に放課後児童クラブを設置していますし、家庭的に親たちがやっている 形から、NPOの実施など、いろいろな形でやっている。どこでやられてももちろん構わな いし、学校の中でも空き教室が開放されていくのはとても良いことだと思いますが、基本的 にガイドラインを遵守して、子どもの発達を支援する方向でやることに力を注げばよいと考 えています。 「すべての子どもの発達」となりますと、一つ基本的に大事だと思う視点は、委員の方々の 図に付けさせていただきました資料2です。まずカラー図版ですけれども、いろいろな児童 福祉施設があって、その活動があって、事業がある。ただ、妊娠の時期から18歳までを継 続してきちんと見られる児童福祉施設は児童館だけではなかろうか。専門性の高い職員が子 どもの育ち、発展を見続けながら様々なプログラムの効果が、その子どもにどう表れたのか と検証もできます。先ほど、連絡はするけれど後で報告がないと中橋参考人が言われました けれど、その結果の確認も児童館ではできるようなところがあり、そのような児童館の機能 は児童福祉法上特異な存在だろうと考えます。  これは東京都の児童館での話ですけれども、ある大学生が小学校時期に児童館に通ってい ました。中学生になって部活が忙しくて児童館に通うのが途絶えた。ある日、いつも通って いた児童館の前を通ったら明かりがついていて、顔なじみの児童館の職員がいた。その職員 に「なんだ、遅いな。今帰りか」と声をかけられて、「茶でも飲んでいくか」と言われて上 がった。小学生の時好きだったプログラムの準備を児童館の先生がやっていて、「手伝って くれるか」「いいよ」とう感じで30分ぐらい手伝った。そうしたら児童厚生員が帰る道す がら「悪いな遅くまで、ありがとうな、ラーメン食べてかないか」と誘ってくれた。その中 学生が、児童厚生員がラーメン屋の代金を支払う時に領収書をもらわなかったところをしっ かり見ているのです。「これは仕事で付き合ってくれたのではない、人間として付き合って くれたのだ」と、そう思ってから児童館のボランティアとして大学生になってもずっと通っ ているのだと、ある会合で話してくれました。その辺の人間的交流が児童館では長く見られ る良さがあるのかなという事例を紹介しました。  次に、縦長の円柱の形で作らせていただきましたが、これは「子どもの成長と社会関係」 ということで、誕生から18歳ぐらいまでを見たときに、子どもにとって家庭に親がいて兄 弟姉妹がいて祖父母がいて(今は核家族が多いですが)、それに家庭の向う三軒両隣に親同 士の隣近所付き合いがあって、そこの家庭の子どもたちと遊びあってというように、子ども の社会はだんだん広がっていくわけです。家庭が安定して、ここで乳幼児期にきちんとした 愛情を受けることによって、だんだん大人になったときに、家を基地として地域社会に行動 を広げていくことができる。ここが引きこもりのケースなどでは、基本的に子どもの社会が だんだん狭くなって、いつも家庭に閉じこもっているという方向になっていくわけです。こ の分かれ目は自尊感情や被愛情欲求を満たされて育てられるかどうかに非常に左右される と思うのです。コロラド大学のロバート・エムディという教授が、乳幼児期に「社会的な参 照」が大切だと心理学的な実験の結果の知見を披歴しています。子どもは世の中に出て初め てのときに、公園で小さな犬が近づいてきた、知らないおじさんが近づいてきた、そのまま 対応してよいのか逃げるべきなのか、教えてもらうために必ず親を見る。その親を見たとき に、親がうなずいたり笑顔になると、安心して活動を続けたり親の胸元に飛び込んでいくの だが、こういうときに子どもを見ていなかったり、それから今で言うと携帯をいじっていて 子どもを見ていない親も結構いる。そうすると他人のすることを参照できない子どもたちが 輩出されると言っています。大事なのは観察学習、他者を見習うことです。観察して学習す る能力を子どもに育てることだと。  その発達をベースにしながら、次のMRIのような断面図ですが、これは小学校時期を輪 切りにすると、ここに家庭と、地域社会のいろいろなものがある。家庭の周辺には人間関係 の濃い近隣があって、その外側に地域関係があるのですが、どうも隣近所付き合いが衰退す ることで、地域社会自身も形骸化してきている。煩わしい近隣関係を避けるようになった。 地域社会はいろいろな公的役割などがあるために形骸化して残っているけれども、人間関係 に裏打ちされた地域の引き受け手はいなくなってきた。その地域の中で、子どもは多様な人 間関係と労働を見て成長していくことが大切という視点をきちんと検証し、地域再生の仕掛 けを考えていかなければならないのではないでしょうか。  それから、次の図は扇形になっていますけれど、0歳から18歳まで、それから縦に書い てある課題は、後でゆっくり見ていただきたいのですが、その年代ごとの課題です。斜線部 分は児童館がどういう時期を得意として関われるかという図式です。乳幼児期、小さいとき ほど子どもは保護を必要としており、18歳に近づくほど成長していきますから、養護とい う視点は縮小していくわけです。ただ、逆に言うと思春期の時期にこそ必要とされる支援も 増えてくるという図式です。そういうことで、子どもの全体の発達を地域の中でどう見てい くかというのが、今すべての子育てにとって大事なのではないでしょうか。  レジュメの1ページ目に戻っていただきますが、3番目は「現行法令による児童館の機能」 ということで、法令上、児童館は遊びを通して子どもの成長発達を促す機能があります。そ れから4番目は今日的課題です。現行法令を拡大解釈して、時代の変化に応じてすべての子 どもの育成機能をしている。これも遊びを通した援助機能なのです。遊びというのは内発的 に動機づけられていますので、遊ぶことによって自分の好きな活動を推進して、そこには友 達がいる。友達との人間関係をつかめることが遊びに内在した非常に大きな力だと思うので す。  少し飛びますが5番、6番で遊びについて説明させていただいています。実は遊びなど無 駄なものではないかとか、遊んで何の役に立つのだという質問が、児童館を推進していく上 で一番多く寄せられる質問なのです。平成17年に「こどもの城」に愛子さまが遊びに来ら れたときに、テレビ朝日の取材を受けディレクターが私にいろいろ質問を繰り出しました。 一番目は、愛子さまは「こどもの城」でお仲間と遊ばれるそうですが、愛子さまほどの人は 有能な大人に囲まれているのだから、友達と遊ぶよりもそういう大人たちにいろいろ教わっ た方が良いのではないか、なぜ子ども同士で遊ばなければいけないのですか、というもので した。これはもう簡単に、大人は親もそうですが、子どもの甘えを許したり子どもに譲った りしますが、子ども同士は譲りません。それからルール違反は非常に厳しく断罪します。ま た泣いても「泣けばいいと思っている」と、かなり痛烈な人間関係がございまして、そこで 自立というもの、自立しなければいけないということを覚えていきます、と。古今東西、諸 外国から日本まで王様や殿様たちは必ず幼少時代にご学友グループがおかれて、そこでまず 人間関係を学ぶというルートがありますよね。それから二番目は、皇太子殿下がお手玉をや らせたいとおっしゃっていましたが、お手玉は何の役に立つのですか、お手玉をするとしな いで人生に影響が出てくるのですか、という質問でした。これも、お手玉は左右の手の動き が違います。左右の手の動きが違うことを脳で統括する作業をしているのです。そのこと自 体が非常に脳も手先も発達させますが、同時に成長して働くと言う場面では、事務仕事をす るにもパソコンを打つにもピアノを弾くにも左右の手の動きが違う。タクシーの運転手にな るにはこれにブレーキ、アクセルと足の動きが加わるわけです。そうすると縄跳びというの は、足は跳ねて手は回す。こういう将来役に立つ機能が遊びの中には非常に埋もれているの です、と。次は、皇室の歌会などで詠う短歌は何の役に立つのかと。これを私はコミュニケ ーションだと説明しました。五七五七七で自分が見た景色を人に伝える、自分の熱い思いを 人に伝える力です。それをその場にいないのに歌から汲み取る能力も育てます。そのような 問答が幾つかありました。何も遊びに効果的な機能があるなどと言う必要もないほど遊びは 人間存在の当為だと思いますが、勉強のみを強調する人たち向けに、遊びにはそういう機能 がある、と説明しています。 そもそも、人間はなぜ遊ぶのか、ということをいろいろ調べてみると、人間の脳の構造は大 人も含めて退屈に耐えられないように作られているから遊ぶのだ、というのが現在の通説の ようです。これはアメリカ海軍の悩み事から発見されたようです。どんな優秀な人にレーダ ーを見せておいても、何も起こらないのが日常ですから1時間も経過するとぼうっとして神 経が弛緩してくるのだそうです。それをどうやって防ぐかという命題が心理学チームに依頼 されまして、この脳の神経構造が発見されたということです。だから私たち大人も退屈する。 この遊びを日常の鼻歌やペン回しなど、細かいものまで48時間にわたり全部禁止したチク セントミハイの実験がありまして、この実験によると被験者には統合失調症の初期症状が出 てくると研究発表しています。そこまではともかく、そういった遊びを通じて子どもが仲間 関係と機能を発達させるところが児童館の遊びの特徴であります。  それから次に、児童館の機能自体がもう子育て家庭支援なのですが、あえて子育て家庭支 援の時代に、多機能性がある。遊びを前面に出しているので気楽に感じられるプログラムで 児童館は親子に声をかけています。これは2ページの一番上の(2)の(1)です。それから、児 童館そのものが子どもを対象として建てられていますから、子育て支援に適した設備・空間 が既にある。それから地域の幼稚園・保育園と比べると、基本的に対象児が特定されており ませんので、親の参画が容易な柔らかい敷居が低い施設であるということで、子育て支援に は向いているのです。それと同時に、地域の活動を促進する拠点性があって、集会室等が常 備されている。これはなぜ地域性かということですが、学校で成績の悪い子どもたちが、自 分には能力がない、自分には価値がない、自分は所詮こんなものだということで、一回落ち こぼれになるとなかなかそこから這い上がるのに苦労して、ニートになったり引きこもりに なったりする。これに対する方策として、小さいときから学校で教わる勉強や仕事以外に、 身の回りにいろいろな仕事があって、そのうちのどれか一つに自分は頑張れるかもしれない という気持ちをもつには、昔の地域の教育力を再生させる必要があるのではなかろうか。こ れはまさに子どもがそういう状態になったときに、地域社会で多様な大人、多様な生き方、 多様な仕事を知り、それにまつわる雰囲気を教えることが、子どもを次の課題へと押し上げ られるのだという、エリクソンの研究などにも出てくることなのです。そういう意味で、地 域のいろいろな大人に児童館に出入りしてもらう。児童館は「遊びを通じて」となっていま すけれど、児童館の職員はむしろコーディネーターであって、自ら遊ぶ技術に精通している 必要はないのです。法が設定された60年前を見ると、地域が全部児童館なのだと。地域を 面としての活動なので館内活動ではないのだと。雨が降ったときだけ館に戻ってくるように 機能するような児童館を構想して児童福祉法第40条を作ったと当時の設置者たちに聞かさ れました。そのときに地域全部が遊び場だから、漫画の『ヒカルの碁』が流行ったときには、 児童館の職員は碁を学んで子どもの相手をするために給料をもらっているのではなくて、地 域の碁会所へ行って碁や将棋の好きな老人を探してくるのが仕事なのです。活動ごとにそう いう特技のある方を探してきて子どもの相手をしてもらいながら、同時にその方の人生も語 ってもらう。こういうところが児童館の地域を機能させる一つの意味だと思います。  そういう視点で7番に飛びますが、「あり方研究会」で今大事だと指摘した、乳幼児とそ の保護者を対象としたプログラム。小学生を直接対象としたプログラム。中高生を対象とし たプログラム。それから地域コミュニティの中で今言ったような機能を生かすプログラムと 四つに分け、実際にやっているプログラムで代表的なものを五つずつ挙げさせていただきま した。例えば7番の(1)の(3)に「中高生と赤ちゃんのふれあい」というものがあります。こ れは全国の児童館で今8割方、午前中に実施しているのです。この活動で母親にとってどう いう効果があるかというと、中高生で突っ張りの髪の毛を染めた怖いお兄さんだと思ってい た子も含めて児童館に彼らが実際に来てくれた。その子たちが自分の赤ちゃんを大事そうに 扱っている。それによって赤ちゃんの母親は、今、育児は大変なこともあるけれど、あと少 しするとこの中学生・高校生ぐらいに育つのかと実感して、子育ての出口が見える。その子 どもたちの優しさも感じられる。子育てで大事なのは、「つのつくまでは気をつけよう」と いう諺がありますが、一つ二つと勘定して、九つまでは「つ」が付きます。この九つまで、 なぜ「つ」が付くまで気をつけようと昔の人たちも言い続けたかというと、環境が変わると 人格が変わる年代なのです。そういうことが今の心理学で言われています。10歳を過ぎる と、私も含めて皆さま方ぐらいになるとちょっとやそっとのことではなかなか性格は変わら ない。テレビなどを見ていて「酒の飲み過ぎはよくない」とお医者が言っても、酒をすぐや める人はなかなかいない。そういうことで、この人格の柔らかい時代が、実は子育てで大変 気を使うべきときで、もう中学生・高校生になって、遊び相手になってくれと言っても、子 どもの方で断られる。ですから「子どもが遊んでくれるうちに遊んでもらおう」などという のも、子育ての時によく言われる俗諺です。  同じ課題を次の3ページの(3)に「中高生と赤ちゃんのふれあい」ということで置いていま す。では、これを中高生から見るとどうなのかというと、小さな命というのはもろそうだな と。赤ちゃんをからかって相手して自分が後を追われたりすると、小さい子というのは面倒 くさいけれども可愛いいなという気持ちが湧いてくるのです。ペットではないのだ。それと 同時に自分もこうやって親に心配して育てられたのだなというところで、初めて親子関係を もう一度振り返る。中高生の作文を見ると「早く結婚したくなった」とか、「早く赤ちゃん がほしくなった」という作文が結構出てきました。まだ、ちょっと待っとけと言ってるんで すが、そういう心境の変化もあります。このようなプログラムをたくさんやりながら児童館 をもう一頑張らせたいというのが私どもの想いです。地域における子育て支援の拠点として、 児童館というのは多彩なプログラムを地域を面として展開させられます。少なくともただ子 どもと遊ぶのが児童館の使命ではなくて、遊びを通して子どもの発達を保障する。 そのため財団としては、(1)どのような専門性がなぜ必要とされるのかということを中心にし たガイドラインを作成して全国に配りたい。それから、(2)地域の子育て支援拠点事業という のは児童館でもかなりやっているので、子育て支援というような地域の活動を全国に報じる ときに、児童館でやっている活動を、子育て広場という補助金をもらっていなくても、カウ ントしてほしい。さらに(3)放課後子どもプラン、今後連携して展開するのであれば児童館の プログラムや児童館の職員を有効に活用されたらどうだろうかという感じがしています。最 終的にこの研究では児童館の発展のために、児童福祉法第40条を以上の機能をはっきり読 み込めるように少し直していただけたらと考えています。  今、心理学者や教育学者、子どものことを考えている人たちは、これからの子どもの育ち を考えたときに、こういう施設が地域の中にあったら子どもは元気になるだろうというもの を発信しています。まとめてみますと、1番目に子どもが自らの興味で集まれるような空間、 場、施設。それから2番目に、遊びに充実感をもって活動している行動モデルというかっこ いい大人がそこにいること。3番目に受容的・親和的な生活空間、実践がそこで展開されて いること。それから4番目におじいさん・おばあさんまで含めた異年齢の人間が集う場所が あること。最後に、その人々の集いや実践、発表会というものが周期的に開催されている。 このようなことを備えた場があれば、子どもは元気になれるのではないか。それこそはまさ に児童館だと、私は考えていまして、そこでまず、そういう児童館が今後すべての自治体に センター機能を備えて1館設置するような働きかけをしていただけないでしょうか。現在、 全国の市町村の60%、市部に特定すると70%に児童館が設置されています。あともう一息 という感じです。  加えて、今まで、説明をさせていただいたような機能を身に付けたスーパーバイザーが1 名児童館にいて欲しい。「福祉は人なり」で、市町村でもそうですが、有能な志のある方が いなくなったとたんに元気がなくなる、という児童館も実際にかなりあるのです。ですから、 スーパーバイザー的に児童ソーシャルワーカー的な機能を持った専門職の確保。  最後に、一つ一つのプログラムの助成以上に、包括的な活動支援の助成がほしい、と念 じています。以上、三つのお願いをして締めくくりたいと思います。  少し時間が超過して失礼致しました。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。続きまして事務局よりご説明をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは資料3-1をご覧ください、参考資料の3-2を脇に置きながら見ていただければと 思います。簡潔に説明しますが、1ページ目では第1次報告でのこの分野についてのまとめ の概要を抜粋しています。下半分のところにアンダーラインを引いています通り、新しい制 度体系における方向性としては、まずは子育ての不安感や孤立感などの解消に向けて、子育 て支援事業の充実。なかんずく、一時預かりの保障強化。その際にどういう制度上の位置付 けをしていくかが今後の課題であるということ。三つ目は子育て支援のコーディネート機能 や地域の子育て支援拠点事業あるいはその担い手の育成といったことについて検討してい く必要があり、制度上の位置付けもさらに検討していく必要があるとしているところです。  2ページ目以降は、すべての子育て家庭の支援についての総論として基本的な考え方の再 確認をしている部分ですが、一つ目はこういう核家族化や地域のつながりの希薄化、児童数 の減少の環境の変化がありますので、二つの視点で。一つは子どもの側から見て、子どもが 同年齢・異年齢、あるいは多様な大人や社会とかかわり合う機会が減少しているので、そう いう機会を積極的に提供していくということ。もう一つは、保護者の側から見ても、負担感 の軽減を図る必要がある。そういった観点から子育ては保護者が第一義的に責任を有するも のですが、社会全体での支援も求められているだろうという基本的な考え方ができるのでは ないかということです。  従って、二つ目の丸ですが、親が働いている、働いていないにかかわらず、すべての子育 て家庭の支援を推進していくことが必要である。併せて、6月の部会で社会的養護を取り上 げてご議論いただきましたが、特別な支援が必要な子どもに対する取組の支援の推進も必要 ということです。この審議会の議論の発端になっています「子どもと家族を応援する日本」 重点戦略においても、このすべての子育て家庭対策につきましては、一時預かりなど各種の 基盤整備系のサービスの充実について、必要性が挙げられているところです。  3〜5ページ目ですが、まず3ページ目は各種子育て支援関係のサービスの体系を少し整 理をしてみたもので、右側にいきますと両立支援としての保育ニーズ、保育サービスについ て整理してみているもので、これは保育第二専門委員会でこの資料を出したときに、公的保 育サービスについて今後充実していくときに、どのようにしていくかというときに使った資 料ですが、右側はニーズの多様化などに応じてサービスメニューの多様化も図っていく必要 があるということで、ご議論をいただいている最中のものです。今回は、その中で特に左側 の「地域子育て支援」ということで、家庭における子育て支援、これはすべての子育て家庭 に共通のものとしていろいろな取組が既にありますし、今後新しい制度でどのようにこれら のサービスを位置付けていくかという部分をご議論いただくということです。  4ページ目は一昨年、重点戦略検討会議を開いているときに、事務局から提出した資料を 抜粋していますが、大きく分ければ、まず共働き家庭に対する両立支援といったものが大き い一つのくくりとして。もう一つは、すべての子育て家庭対策として、横割りで一つは社会 基盤サービスとしての母子保健サービスなど各種の子育て支援。もう一つは個人給付的なも の。そういったものに大きく分けると、体系としては、このような体系組みができるのでは ないかという議論をしていただいたところです。5ページ目はそれが最終報告でも確認され ているということです。  6、7ページ目は各種政府関係の過去の報告書あるいは大綱などで社会全体で子育て支援 をしていく必要がある。すべての子育て家庭対策を念頭に置きながらしていく必要があると いう関連の抜粋です。  8ページ目以降の数ページは関連データを付けていますが、8ページ目は就学前の幼児が 一緒に遊ぶ相手というのを少しデータがありましたので取り上げてみましたが、ここから伺 えますのは、この10年間くらいの間に一緒に遊ぶ相手として「母親」と遊ぶというのが増 えている一方、「きょうだい」「友だち」と遊ぶ割合は減っている。あるいは「祖母」「父親」 「祖父」が少し増えている。そういった傾向が見てとれます。  次の9ページ目は一時預かりで預かった場合、そこでのプラス面についてアンケート調査 をしたものですが、当然のことながら右側の方で親がリフレッシュできたとか、育児不安か ら保護されるという評価もあるわけですが、左側の方にいきますと「友達ができる」「遊び の体験ができる」「集団保育を体験できる」という子どもの面から見たプラス面も多かった というデータです。  10、11ページ目は保護者、特に乳幼児期の小さい子どもを育てている保護者の負担感、 孤立感に関するデータを付けています。  そこで12ページ目の「一時預かりについて」ですが、現状はこれまでは保育所における 一時保育ということで、そこを中心に助成をしてきていまして、現状7,651か所、のべ利用 で378万人ある。二つ目の丸で、昨年の法律改正で今年度から法律上の事業になりました が、市町村に事業実施の義務付けまではしていない状況です。三つ目の丸で、今年度から保 育所以外のNPO等も補助金の対象にしている。さらに国の助成以外にも自治体単独あるい はNPO独自で一時預かりをされている実例もあるということ。さらに、一時預かりについ ては待機児童の問題もありますので、先ほどの中橋参考人の話もありましたが、短時間労働 者の規則的な利用の受け皿となっている場合があるという現状です。  1枚おめくりいただいて13ページ目の「課題・視点」につきましては、一時預かりサー ビスは親のリフレッシュあるいは冠婚葬祭、就労などさまざまな理由でのニーズをもって、 そのニーズに即して個人がサービスを選択して利用しているという性格を有するサービス だと思います。また、提供側からみても多様な主体、保育所で行われていたりNPOで行わ れていたり、あるいは提供方法も施設型のものがあったり訪問型のものがあったりと、さま ざまな形でサービスが提供されているという形です。これらを踏まえ、すべての子ども子育 て家庭に対する支援として、このような多様なニーズに対応できる仕組みが必要ですので、 その仕組み。括弧書きですが、実施責任、利用方式、給付方式等を総合的にどのように設計 していくかが、この新制度体系を検討する上での課題です。その際多様なニーズのうち、就 労ニーズに対応する部分につきましては公的保育サービスということで、その枠組みでまず 対応することが基本だと思いますし、それで拾いきれない、あるいはもう少しプラスアルフ ァがほしいといったいろいろな部分については、こういった一時預かり。すべての子育て家 庭対策としての一時預かり。その両面で考えていく必要があるだろうということです。  ※印は需要が大きく膨らんでいくところですので、受け皿も大きく拡大していく必要があ るということと、もう一つは制度を位置付けていく際に、ファミリー・サポート・センター 事業あるいはベビーシッターなどの訪問系サービスを他の施設型の代替サービスとしてど のように位置付けていくかも課題となっています。  次に「児童館について」ですが、現状は鈴木参考人にも紹介いただきましたが、児童に健 全な遊びを与えることを通じて、児童の健全育成を図るという福祉施設です。設置状況は全 国でいきますと4,700か所ということです。この運営費につきましては下の最後のポツに書 いていますが、基本的には公立は一般財源化されていまして、民間の児童館も人件費部分は 一般財源化されていて、事業活動経費について一部国からの助成金がある形になっています。 歴史的には昭和40年代から50年代にかけて増えていきましたが、近年は数としては横ば い状況ということです。児童館の活動につきましては、先ほど鈴木参考人からご紹介があっ たとおりです。  1枚おめくりいただいて15ページ目ですが、国からの助成金がどういったものに出てい るかにつきましては(1)〜(4)にあるような、児童館として、こういう事業に二つ以上取り組 めば国からの助成金、これも児童育成事業としての事業主財源を活用した補助金ですが、現 在補助が行われています。  16ページ目の「課題・視点」ですが、一つ目の丸は、国・地方公共団体はそもそも児童 福祉法上も児童の保護者とともに、児童の健全育成に責任を有するとされていまして、次世 代法の行動計画策定指針では、市町村にもこういうすべての子どもを対象に自主的に自由に 遊べ、あるいは安全・安心な居場所づくりを推進する役割があるとされています。二つ目の 丸は、近年の状況として核家族化あるいは地域のつながりの希薄化、子どもの多様な活動の 機会の減少、安全に遊べる場所の減少等々、いろいろ子どもを取り巻く環境は変化してきて いまして、そういったことを背景に遊びを通じた人格発達支援など、児童の健全育成を社会 的に支援する必要性が高まってきているといえるのではないかと思います。三つ目の丸は、 これも鈴木参考人からご紹介がありましたとおり、遊びは子どもの発達にとって非常に大き な価値があるということです。児童館はそういった児童に健全な遊びを与えることを目的と した施設で、主に学齢期の子どもを対象にして、遊びを通じて子どもの育成あるいは日常の 自由な遊び活動といったことを行う。そのような趣旨に適った専門的な施設として位置付け られていまして、今後は活用の促進、事業内容の充実も期待されるところです。次のページ ですが、こういう遊びの支援以外にも近年、児童館は中高生を対象にした事業や地域の子育 て支援、障害児への対応といった多様な活動にも取り組んできていまして、さらに今後は地 域コミュニティの核としての機能も果たしていくことが期待されるとしています。最後に 「新制度への位置付け」としまして、遊びを通じた子どもの育成を中核としたこれら児童館 が担っていくべき事業や機能、そのために欠かせない担い手の資質の向上を支援していくこ とを、新制度においてどのように位置付けていくべきかが課題です。  18ページ目以降は参考資料です。今回、事務局から用意したのは一時預かりと児童館の 資料のみですが、当部会として昨年、2回ほどすべての子育て家庭対策を扱っていただいて いる中で、それ以外の事業についてもご議論いただいていますので、そのときの資料を一部 抜粋しています。特に24ページで、多様なすべての子育て家庭対策に当たる事業を支援し ていくに当たって、主に市町村の事業になるわけですが、市町村の事業の財政的に国として どのように支援していくかといったときに、現在であれば一番右側にありますソフト交付金 という包括的な交付金の仕組みがありますが、他制度でもこれは必須事業、これは任意事業 と仕分けしながら、それらを包括的・財政的に支援する枠組みがありますので、新しい制度 体系の議論の中でも、そういう支援の仕組みも一つの選択肢としてあるという議論を昨年も 行っていますので、参考に付けています。  参考資料1をご覧いただいて、今日付けていますのは、児童館が少し関係しますが、9月 1日に放課後児童クラブの議論をしたときに、この部会での議論で、子どもの放課後の過ご し方について、学校内で過ごすのが適当なのかどうかという議論がありまして、保護者の声 ではなくて子どもの声を聞いたデータがないのかというご意見・ご質問がありました。その 関係で、文部科学省の委託調査ですが、平成20年3月に結果が出ているものを付けていま すので、ご参照いただければと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。本日はすべての子育て家庭の支援につきまして、お二方の参考 人、そして事務局からご説明をいただきました。ここからはご質問も含めまして、委員の皆 さまにご議論をお願いしたいと思います。どうぞ、どなたからでも。清原委員、お願いいた します。 ○清原委員  ありがとうございます。三鷹市長の清原と申します。本日は参考人の皆さま、貴重なご報 告をありがとうございました。まず中橋委員に質問したいのですが、三鷹市は人口が約18 万人、そして16.5平方キロと高松市とは規模も人口も違うのですが、NPOの皆さまにご活 躍いただいて、このような地域子育て支援拠点の運営をしていただいているケースもあるの ですが、最後の問題提起の中で、こうした活動を多様な担い手で進めていくときに、現時点 まで進めている中で問題提起をされたのが、例えば子育てに大変困っている保護者、あるい は子どもに何らかの課題がある場合に、それを十分に行政と共有しながら対応していく部分 については「やや不安がある」という問題提起をいただきました。多くの自治体では、いわ ゆる要保護児童支援ネットワークという組織を必置でつくっていまして、三鷹市の場合でも この取組の中では、いわゆるひろば事業でありますとか、在宅子育て支援をしている施設と 保健所や保育所、専門家とネットワークして対応しています。そういう意味で取組を模索さ れながら、中橋参考人の方で要保護児童支援ネットワークを活用されているのか。あるいは もしそれが不十分であれば、どのような連携を取ることがより有効であるとお感じなのか。 そのことについて課題解決の方向性を、具体的に言っていただければありがたいと思います。  鈴木参考人にも1点だけ質問させていただきたいのですが、三鷹市は残念ながら人口約 18万人ですので、二つしか児童館がありません。ただ、顕著に見られるのは、年長児であ る中高生がボランティアとして参加してくれていまして、さまざまな事業を日常的に応援し てくれていることが定着しつつあることです。それから館祭り等の行事については小学生を 実行委員長とする組織を、指導員が促しながら継続していることがありまして、ご指摘があ りましたように、いろいろな取組をする拠点性、地域性、多機能性という点が児童館では大 変重要です。けれども、併せて私が感じているのは、児童は受身で遊びを教えてもらおうと か保護されているとかということではなくて、むしろ積極的に子どもたちは活動の担い手と しての学びを児童館を通じてしているのではないかと感じていまして、そうであるならば、 年長児の来館促進事業や子どもボランティアの育成事業などが強化されると、さらに児童館 の可能性が深まっていくのではないかと感じます。その辺りの担い手の面で、児童そのもの が担い手となるような可能性について、お考えをいただければと思います。  最後に事務局に可能な限りお答えいただければ幸いなのですが、今、三鷹市のような基礎 自治体では、来年度の予算編成に向けて準備をしており、併せて次世代育成支援行動計画に ついても、策定準備をしているところが多くあります。現金給付の面で、子ども手当て等に ついて、全く情報がないものですから、報道だけではどう対応してよいかわからずにいます。 現時点でおわかりのことを、お話いただける点がありましたら、一言で結構ですのでいただ ければと思います。以上、お願いします。 ○大日向部会長  ありがとうございました。いつもはご質問を幾つかまとめていただいていますが、ただ今 の清原委員のご質問は内容がたくさんですから、ここでまずお答えいただきましょうか。中 橋参考人、鈴木参考人、そして事務局の順にお願いいたします。 ○中橋参考人  要保護家庭の支援のネットワークのケースに挙げることがないかというと、ケースに挙が るケースもあります。ケースにもっていって事例だけ私が言って、その後席を外すというこ とで、一緒に中には入れてもらえません。入れてくださいとかなり言っているのですが、そ こには入れていただけない状況です。ただ、本当にどこから見ても心配なケースは入れてく れるのですが、そうではないことがままあります。私たち自身も子育てのひろばであるとか、 例えばファミリー・サポート・センターの「まかせて会員」さんから挙がってきた事例をお 伝えして、例えば「もう少し様子を見てください」「もう少し心配になった状況で言ってく ださい」と言われた場合、保育所などと違って、子育てのひろばは毎日定期的に通ってくる ものではないので、ずっとその家庭の様子が見られるかどうかの保証がないのです。ファミ リー・サポート・センターも向こうから依頼があった日に伺うということなので、その中で 非常に不安定で、依頼がなくなる、あるいはひろばに遊びに来なくなってしまうと、どうな ったのかなと気になったままになっているケースもあります。あるいは、私たちが少し気に なる家庭だなと思って、保健センターのこういう日にこういう相談の日があるから行ってみ たらということで、そこに行ったのだけれども、10〜15分間の相談でかえって傷ついて戻 ってくるというケースもあって。私たちは相談に行けるところまでの気持ちを高めるのに結 構手を尽くすのです。ここだけではない。わかってくれるよ。専門家の話もちょっと聞いて みたらどうかな。入り口まで一緒に行ってあげるよというので、この日にあるよと予約まで 取って行っても、そこで駄目になってしまうケースと、逆に心配なのに5〜10分間だけ見 て、「大丈夫、大丈夫」と言ってしまわれたこともあるのです。だからこそ、機関と機関を簡 単に結ぶ。連携ができるからよいのではないかではなくて、誰と誰が顔がわかって、見知っ て、信用ができて、この人だったら「この人を見てね」と言えば本当に丁寧に見てくれる。 立ち入った話までできる。紙に書いては渡せないけれどもという関係づくりができるだけの コーディネーターが必要なのではないかと思っています。 ○鈴木参考人  おっしゃるとおり、年長児童のボランティアや地域貢献は児童福祉の地域福祉の考え方で すが、もらうだけではなくて同時に地域福祉の担い手になるという意味で、老人施設の慰問 とか、いろいろなことをやっている年長児の活動があります。彼らに話を聞いて分析すると、 自分たち中学生・高校生が直に行って遊ぶ場所は意外とないのです。杉並の「ゆう杉並」と いう中高生のセンターがつくられるときには、彼らを事前に委員にして、何をしたいのかを 聞き取ったのです。そうするとバスケットがしたいと。「体育館があるではないか」と議員さ んたちは言うのですが、中高生の意見も「おっしゃるとおりにあるけれども、私たちが試験 が終わってほっとして使いたい時には、大人がもう予約を入れて使えません。自分たちがふ らりとしたときに使えるような自分たち自身のたまり場もほしいのだ」と同時に「そこでそ ういう場を提供してくだされば、時々はガキの面倒も見ましょう」という発言もあって、自 分たちの居場所と同時に、自分たちよりもちょっと小さい子どもの面倒も見させるのが発達 にとって非常に良いと思います。例えば、お化粧の仕方で資生堂の花椿会から専門の方を呼 んで、中高生がその気になってちゃんとお化粧をするとか、ダンスをきちんと教わるとか、 そういうプログラムをしながら、同時に地域に自分たちのしたことを返していくという方向 性があれば非常に良いと思います。  基本的に遊びは自発的なものなので、それを指導する児童館の職員の技量は非常に難しい のですが、遊びの専門家に言わせると、野球のキャッチャーだと。つまりキャッチャーはダ イヤモンドの外に座っている。一緒に遊んでいるけれども全体を見ている。事実上身近にい る監督も兼ねている。今は子どもの伝承が途切れたので、その有能な遊びを子どもたちに教 えなければいけないけれども、その伝承者を大人がやらないと遊びが途切れたままになる。 その遊びの指導の仕方は徒弟制度だということです。観察させて勿体を付けて、「○○をや るから集まれ」ではなくて、まず大人が楽しそうにやってみせる。「教えて」と言われたとき に初めて勿体を付けながら教えるというかかわり方で地域に還元するということも含めて、 私どもも取り入れて頑張っていきたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。子ども手当てに関しましては、局長からお願いします。 ○伊岐雇用均等・児童家庭局長  子ども手当てにつきましてご質問をいただきましたが、ご案内のとおり概算要求の締め切 りが15日ということで、私どもが慌ただしく出入していますのも、最後の詰めをしている という状況ですので、15日には一定の姿をお示しできるかと思います。ただ、最終的にど のような姿になるかという詳細については、恐らく概算要求をした後もいろいろな議論も出 てくるかと思いますし、そういう意味では恐らく年末までいろいろなご議論をいただきなが らということになるのではないかと思います。 ○清原委員  ありがとうございました。中橋参考人に1点だけ。多様な担い手を奨励しておきながら、 行政と連携できなければ意味がありませんので、私たちもその点はしっかり努力したいと思 います。ありがとうございます。 ○大日向部会長  ただ今のご指摘は、大変大事な点と思います。地域の人たちは一生懸命にグレーゾーンの 隙間を埋める活動をしています。でも行政に情報提供はしても、一緒に取り組めない、対等 に扱ってもらえないという話は、考えさせられます。行政と地域の人の協働がもっとうまく 運べるような仕組みづくりを検討しなくてはいけないと思います。ありがとうございます。  何人かのお手が挙がっていました。佐藤委員、篠原委員の順でよろしいですか。では、佐 藤委員からどうぞ。 ○佐藤委員  二つあります。一つは事務局にです。児童館がこのような多彩な活動をしていると伺うと、 なるほどと思うようなことをやっておられて、勉強になりました。伺いたいのは、児童館が 今やられていることは規模によっても多少領域が違うようですけれども、いろいろ他と重な る部分がありますね。その関係で、一つは重なるものがあってもそれぞれで調整すればよい ということですが、一つは、あるところは児童館に集約して、児童館にお金を付けてサービ スを提供するというようなこともあると思います。かなり他のものとも重なる部分があると 思うので、その辺をどのように考えておられるのかということが一つです。  もう一つは、人の面はよくわからないのですが、これだけ多彩なものをやりながら、かな りボランティアで重なっているのか、一応専門的な方を置くようにというお話でした。「福 祉は人」という話がありましたけれども、人の面での課題が何かということを伺いたいとい うのが質問です。  それから、事務局から子ども手当の話があったのですが、内閣府の福島消費者・少子化担 当大臣のところでワーキングチームができるのですか。今日、「子ども・子育てビジョン検 討ワーキングチーム」ができると記者発表をしたようなので、保育サービスやワーク・ライ フ・バランスや子ども手当なども、そこで検討するというような。数値目標も出すというよ うな記者会見をして、資料が出ているようなので、こちらとどのようになるのかということ を、この後ででも結構ですので、わかる範囲で教えていただきたいと思います。 ○大日向部会長  それでは、鈴木参考人に先に答えていただいた後、審議官の方から。 ○鈴木参考人  重なりはたくさんあると思います。私どもは基本的に地域で遊びを通して子どもを育成す るということをやっていますので、できれば児童館に集約していただいて、やらせていただ くことが予算面でも削減になるかと思います。言い忘れましたけれども、私が考えている児 童館というのは、医療でいうと町医者なのです。ですから、小児科という看板を立てても実 情はその他のものも来る。けれども、自分で対応できることはするけれども、それ以外は専 門医療機関に任せるとか。それから、大して悪くはないけれども、愚痴を言いにくる老人も いる、その対応もする。そのようにして、敷居の低い間口の広い児童館が基本的にあるのだ と。その人の専門性というのは、基本的にソーシャルワークの能力を備えた、子どもの能力 を備えたコーディネーターがいれば一番良いと思います。ですから、ホテルのフロントマン のような、サービスを体現できるような専門性を育てながら、それぞれ発達障害の問題にし ろ、虐待の問題にしろ、それらが来たときにどの段階でどの専門機関に渡すかということを 有効にできる専門性は最低でも欲しいと思います。調べてみると、今の最低基準では保育士 で足りるということになっているものですから、保育士の勉強をしてきた人が、保育の状態 は詳しいのだけれども思春期の子どもに対してのことは学業で習ってきていない。それで、 保育士プラスオンした資格の有効性ということで、今日の資料5に、私どもが独自に児童館 の職員というのはこれだけの専門性が必要だと、年間30回ほど行っている研修会のグレー ド分けをした科目をそろえています。こういうものを修めた方が、できれば市町村に1人ほ しいというのが願いです。 ○香取審議官  福島消費者・少子化担当大臣の話ですが、今日発表されているものの詳細は、私どもはつ まびらかではありませんが、この間、福島消費者・少子化担当大臣からは少子化対策全体の まとめについて厚生労働大臣と相談したいということで申し入れがあり、大臣、副大臣レベ ルでのお話もされていますし、事務的にも何度かお話しさせていただいています。恐らく、 福島消費者・少子化担当大臣が今お考えになっているのは、少子化対策がこの年末で期限が くる。そして新しい大綱を作る、「子ども・子育て応援プラン」のバージョンアップがある、 そこで数値目標全体の見直しをしていかなければいけないというお考えがあって、これまで のさまざまな政府の取組あるいは連立政権としての新しい方向性を来年1月以降に新しく 策定される大綱なりプランに盛り込んでいくということのようで、そのための新政権として の場をつくるということです。お話のプロジェクトチームというのは、そのようなお考えで はないかと思います。関係閣僚での会議ということもおっしゃっていますし、有識者の方々 を集めての場というものもお考えのようです。その中で、これは新聞等でも報道されていま すが、福島消費者・少子化担当大臣は子ども手当、いわゆる現金給付形のサービスは連立合 意にもあるので、それはそれとしてやっていくということです。それと併せて、さまざまな いわゆる現物サービスや基盤整備についても検討していく必要があるだろうと。特に、プラ ンは何年かの長期のプランになりますので、当面の緊急の課題としての現金給付と併せた体 系的な取組をきちんと位置付けていくことが必要なのではないかと思います。当然、重点戦 略以降の議論あるいは財源も含めた新しい制度設計の議論が政府部内で進んでいる。あるい は労使も入った形で、ワーク・ライフ・バランスの憲章等が作られているということは福島 消費者・少子化担当大臣もご承知なので、その辺のことも含めて議論していきたいので厚生 労働省の議論、あるいはこういった審議会での議論については逐次ご自身の方にも情報を入 れてほしいというご指示をいただいています。 ○大日向部会長  お待たせしました。篠原委員、お願いいたします。 ○篠原委員  本日は、ありがとうございました。中橋参考人と鈴木参考人に1点ずつ質問したいのと、 事務局に1点質問をしたいので、3点申し述べたいと思います。  まず、中橋参考人、ありがとうございました。はじめに「わははネット」と聞いたときは 豪快な母親というイメージがあったのですが、このような字を書くのだということが初めて わかりました。ありがとうございました。今日いただいた資料の6ページですが、「まかせ て会員」と「おねがい会員」ということで、非常に面白いネーミングだと思ったのですが、 例えばそのニーズがお互いにマッチしなかったときに、どのような形で対応されているのか をお伺いしたいと思います。  それから、鈴木参考人には、私はまだ児童館がない時代に育ちましたし、なかなか児童館 を見学する機会がないので教えていただきたいのですが、事務局からの資料で今はなかなか 児童館が増えない状況であるという報告があったわけですが、どうして増えないのかという ことをお聞きしたいと思います。事務局の資料3-1の15ページの(1)〜(4)のうち二つ以上 を実施すれば補助金が出るということで、四つ挙げてありますが、これ以外に何かこういう ものを追加すれば可能性としてもっと児童館が増えるのではないかというようなアドバイ スがあればお聞かせいただきたいと思います。  3点目は事務局にお伺いしたいと思います。今日は資料のご説明がなかったのですが、そ れでもよろしいでしょうか。参考資料2の地方分権のところです。参考資料2の1-23に児 童福祉法関係の部分があり、例えば1-23ページに最低基準の部分や児童福祉法設備運営基 準のところで最低基準の遵守のところを廃止または条例委任などという部分など、それぞれ 細かい部分が書いてあるのですが、まさに少子化特別部会の中で今、審議をしているもので あるにもかかわらず、このような形で出ているということで、この部会としてこの内容をど のように取り扱うのかというような見解があればお聞かせいただきたいと思います。 ○大日向部会長  それでは、中橋参考人から順にお願いいたします。 ○中橋参考人  ファミリー・サポート・センターの「まかせて会員」と「おねがい会員」のニーズがマッ チしないときはどうするのかというご質問ですけれども、基本的に今の約束事の中に条件が 合っている方はマッチするまでパートナーを探します。どのように急なときでも探すように しています。マッチしないケースも多々ありますけれども、それは私どもがもともと提示し ている条件外のことです。ですから、できないことは致し方ないのですけれども。どのよう なケースが多いかというと、子どもが病気なのにどうしても仕事にいかなければならないと き、あるいは母親も病気になってしまって子どもも病気なので離して見てほしいというとき などです。病気の子どもはお預かりしないということは最初のルールとしてありますので、 お預かりできないのですけれども、非常に切ないというか断ってしまったらどうなるのかと いうことで、非常に悩ましいこともあります。あるいは、基本的にマッチしないことはない のですけれども、どうしても近隣でマッチングが成立せずに見てあげたいという方が遠くに しかいない場合も、非常に難しいのですがコーディネートします。けれども、車での送迎は 原則として適さないのですが、このような場で言うのは良くないかもしれませんが、全国ど こを見ても会員もグレーゾーンのまま致し方なく車での送迎をしてくれているような現状 があり、そこは非常に問題であると私自身認識しています。  それから、ファミリー・サポート・センターは先ほど言いましたように、0歳6か月〜小 学校6年生までの子どもなので、6か月未満の新生児の預かりをしてほしいということもあ ります。昨日も2か月の双子の子どもの母親から問合せがありましたが、どうしても責任を 持ってお預かりすることができないとお断りして、民間のベビーシッターを紹介することも ありますけれども、高松市には民間のベビーシッターが2か所しかなくて、1時間で1,600 円ぐらいするので、紹介してもそちらには流れずに我慢してしまうケースが多くて、課題で あると感じています。 ○鈴木参考人  私自身もこんなに良い活動をしているのに、なぜ増えないのかと不思議なのですが、一つ には児童福祉法で児童館が置かれたときに理念先行で、食うに食えない時代に子どもの施設 どころではないだろうということで、民間で増え始めるのですが、国庫補助が付き始めた昭 和38年までは、このような施設があればいいねという抽象概念で終わっていたような要素 が結構あります。昭和23年に港区芝に土建会社が余剰の金銭で民間の児童館を建ててくれ たのが第1号なのですが、そのときには1日に1,000人以上の子どもが来ているのです。そ の状況の中から、昭和38年に国庫補助が付いて児童福祉法第24条但し書きで保育所の足 りないところは保育の代替機能を行っても違法ではないし、児童福祉法ですべての子どもに 開かれていますから、誰がどのようなニーズで来ても構わなかったのです。そのために、保 育所の代替として中国地方や東北地方では進んでいたいという経緯もあって、今度は時代が 豊かになって保育所がつくれる時代になったとたんに、児童館はもう要らないとか、転用し ようという機運が出てきたというようなことが背景にあります。  もう1点は、今、時間をいただいて説明させていただけたことに非常に感謝申し上げるの は、遊びを通して子どもを健全に育成する意味をじっくり聞いてくれる方々がいないのです。 私もいろいろな企業に補助をもらいにいくのですが、大抵企業のトップの方が言うのは、「遊 んでいて偉くなったためしはない」、「遊びは飲む、打つ、買うだ」、「二宮金次郎を見ろ」と いうことで、二宮金次郎は遊んでいたのですということを説明するのに苦労しました。遊び と教育、ないしは仕事が敵対するという捉え方が非常に長くて、これが理解されるのに時間 が掛かりました。けれども、遊びも仕事も没入して集中したときには楽しいのです。仕事も うまくいったときには。そのうまく仕事ができる能力を子ども時代や働かない時代にどのよ うに身に付けさせるかというと、好きなことに熱中する遊びしかないということで、遊びの 効力についてじっくり聞いてくれる方がいればわかっていただけるのですが、なかなかその 時間をいただけないということと、現状は保育士が多いものですから、実際にどうして遊ん でいるのかと聞かれても子どもが好きで遊んでいますというようなことで、この遊びがどの ような効果があるとか、どのような意味があって子どもと歌を歌ったり昔話をしたりしてい るのかという説明責任が果たせていないのではないかということは、私どもも忸怩たる思い があります。  それから、15ページですが、基本的に児童館がやるプログラムに助成金を付けていただ くのは大変ありがたいのです。ところが、私どもが一番欲しいのは、こういった多機能な児 童館をやるための人の確保です。そこに自由に使える助成金を付けていただくことが一番良 いですし、特にこれから市町村の時代になった場合に、そのように意味のある助成金を付け てもらえれば、市町村でも児童館が伸びると思います。一つ一つがあまり細かすぎると、そ れは学校が全部やればよいだろうとか、今はNPOもたくさん頑張ってくださっているので、 そこに分化させればよいだろうと、埋没してしまうということがあるのかと思います。です から、多機能な、特にスーパーバイザーのような職員にきちんと人件費が付くような助成金 が一番ありがたいと思っています。 ○大日向部会長  地方分権のことに関してのお答えを、今里保育課長、お願いたいします。 ○今里保育課長  本日はご説明をいたしませんでしたけれども、地方分権改革推進委員会の第3次勧告が出 されまして、今、篠原委員からもご指摘がありましたように、児童福祉法にある規定の保育 所の利用者基準でありますとか、児童福祉施設最低基準について条例に委任する、あるいは 国としての規定を廃止するべしという講ずべき措置の方針として、この委員会の勧告として そういうものがなされたわけでございます。これは、今後、この事柄だけではなくて、全体 について地方分権という大きな観点の中から政府としてどのように取り組むかということ を決めていくことになるわけですけれども、そのときに、当然それぞれの所管官庁としての 考えというものもあるということになるかと思います。そして、当然ここでは次世代育成支 援の制度という枠組全体をご検討いただいているわけですけれども、今まで検討してきた積 み重ねというものもございまして、第1次報告という形で出ておりますし、そういったもの は地方分権という観点と並行して、同時に視野に入れてこの全体の方針を決めていくときに は考えるべきではないかと思っております。なお、一部の報道では、保育所の設置基準の緩 和の方針を決めたというようなことがありましたけれども、私どもとしましては、まだ厚生 労働省あるいは政府の中で何か具体的な方針が決まったということは承知しておりません。 ○大日向部会長  杉山委員、お願いいたします。 ○杉山委員  私が課題と思っていることがあって、それにお答えいただけたらと思います。鈴木参考人 か事務局にお願いします。児童館でこれだけの機能が実践できれば、日本は素晴らしいこと になっていただろうと思いますが、なかなかそうはなっていない。その中で感じるのは、例 えば学童保育の機能と児童館の機能は恐らく違うと思いますが、その辺りのすみ分けはどう しているのかということと、最近は「つどいの広場」事業のようなことを児童館でもやるよ うになったという話があって、鈴木参考人としてはそういったこともどんどん児童館でやっ ていきたいとおっしゃってくださったのですが、地域子育て支援センターというものが既に あるわけで、そことのすみ分けはどうするのかということの2点をお聞かせいただきたいと 思います。  もう1点は少し細かいのですが、資料3-1の15ページに「民間児童館・児童センター活 動事業」としてこのように補助金が付くという事例が出ているのですが、これは公立の児童 館もあるのに公立の児童館はどうなっているのかと素朴に思って、恐らく一般財源化されて しまったので見えなくなっている。ということは、その公立児童館がどのような姿になって いるのかということが、私たちにはなかなかわからなくなっているのかと思います。鈴木参 考人がこんなにいろいろおっしゃってくださったことが、本当に実践できているのかという ところが少し気になるので、教えていただければと思います。  最後に、事務局にお願いですが、できれば一度いろいろな事業を、子どもの年齢に合わせ てこのようなものがあるというように整理をしていただけたらと思います。やはり乳幼児期 の子どもと学童期の子どもでは必要なものというか専門性も機能も全く違ってくると思い ますし、それを全部一緒にというのは難しいと思うので、いつも注文ばかりで申し訳ないの ですが、お願いできればと思います。 ○大日向部会長  それでは、鈴木参考人、お願いいたします。 ○鈴木参考人  ありがとうございます。学童保育とのすみ分けということですが、児童館は基本的に地域 のことすべてを対象にしていますので、私としては児童館ですべて学童保育ができるように したいと思っています。ただ、ガイドラインを守りつつ児童館でやるには狭すぎる場所もあ りますので、ブランチ化といいますか、お寺の境内であろうが、公民館であろうが、児童館 のスーパーバイズの下に場所を選定しながら、あらゆる所で学童保育ができていけばよいと 思います。広い場所を持っている児童館では、既にかなりやっているところもありますし、 それはいろいろなところと重複してもニーズに応えていった方が良いだろうと考えていま す。  「つどいの広場」事業についてですが、これも助成をいただいたのですが、正直言うとそ の割には伸びなくて、いろいろ懸念されているところです。児童館の機能そのものが、午前 中に「乳幼児のひろば」事業をやっているのです。ですから、あえて助成金をもらっていろ いろな制約が付いて面倒になるのであれば、今までやっているのだから、何らもとるところ はないと手を挙げない児童館もかなりあったのだろうと考えています。ですから、そこで実 際にやっている子育て支援事業をカウントしてくださいということです。先ほどの児童館の 有効性を社会に訴えるために、私たちとしては遠慮なくカウントしてほしいということなの です。これもいろいろなところでやられれば、ニーズが吸収できますので、重複はその施設 の特徴を出してしっかりやっていけばよいのかと考えています。  それから、今、私は良い児童館をお見せして、人がいて児童館が有効に機能するとこのよ うなことができますという理念に基づいて割りと理想的なことを申し上げました。こういう 児童館が全国に蔓延することを期待しているので、現状はまだここまでいっていない所です とか、子どもと一緒に遊ぶことが福祉機能であるということが理解できていない児童館があ ったり、同和事業として建てられた児童館もかなりの数があったりしますので、すべての児 童館がここまでいっているという話ではなくて、ここまで引っ張り上げてほしいという話を させていただきました。以上で、よろしいですか。 ○杉山委員  一般財源化について。 ○鈴木参考人  一般財源化は昭和61年でしたか、地方交付税に算入されて見えなくなったのです。人口 10万人当たり2館の児童館にA職員、B職員で補助金が出されているのですが、これは市 町村の担当課長や係長に言わせますと「絵に描いた餅」で使いにくいと。実際に地方交付税 というのは、算定の基礎にはなっているが道路であろうと何であろうと首長判断で何にでも 自由に使えますから、そこからいったん表に出していただきたいという思いもありますが、 これは難しそうです。それから、私どもも特別地方交付税のように、ここで算定されたもの が児童館以外に使えないようにしてほしいとお願いしようかと思ったこともあるのですが、 これは事実上無理なようで諦めております。要するに、地方で児童館のためにこのような予 算が確保されているのだと、はっきりとした意味がわかるような助成がされればずいぶん違 うのではないかと考えています。以上で、よろしいですか。 ○大日向部会長  駒村委員、どうぞ。 ○駒村委員  先ほどの篠原委員のご質問にも関係するのですが、事務局に何が背景にあるのか、見方を 教えていただきたいのですが、資料3-2の36ページには児童館の動きが出ているのですが、 参考人のお話も聞いて非常に重要な施設であることはわかったのですけれども、平成19年 に至っては増えるどころか減っているということですし、確かに記述にあるように平成7 年をピークに公立は減っているわけですけれども、34ページを見ますと平成9年に一般財 源化をしていると書いてあります。平成7年と平成12年の間にまさに平成9年があるわけ ですけれども、一般財源化の影響で公立が減っているのかどうなのか、その辺の見方を教え ていただきたいと思います。  それから、先ほどもスタッフのことがたびたびお話に出ていますが、児童館にいるスタッ フの身分や処遇や資格についての調査というものは存在するのか。この2点について、事務 局にお願いしたいと思います。 ○大日向部会長  真野育成環境課長、お願いいたします。 ○真野育成環境課長  一般財源化の状況ですが、平成9年度に公立の運営費の事業費部分が一般財源化されまし た。この事業が整備費と運営費の中でも人件費と事業費に分けていまして、現在は整備費に ついては公立も民営も補助金の対象になっております。一般財源化されているのは公立の運 営費の人件費、事業費、それから民営の人件費です。平成9年に公立の事業費部分が一般財 源化されました。ですから、分析はしていないのですけれども影響はあったと思います。 ○香取審議官  今の説明でお分かりになったかと思いますが、36ページの表の見方についてです。今お 話があったように整備費は残っていて、運営費は人件費部分については民間も公立も一般財 源化されているということになるので、この表の見方としては、全体の児童館の数はほぼ横 ばいで、恐らくは民間委託や民営化という形で運営形態を民間に移しているという形で公立 が減って、民間や社会福祉法人等が増えているということだと思います。恐らく全体の子ど もの数との関係で、数自体はなかなか増えないということで、ただ、これは当然ながら都市 部は保育所待機にもみられるように、日本全体の子どもの数が減っていても、必ずしも横浜 市の子どもの数が減っているわけではないので、全体的に考えれば先ほど鈴木参考人からお 話があったように児童館自体の全体の整備をどう考えるかという議論はしておかなければ ならないということだと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。 ○真野育成環境課長  すみません。もう一つですが、職員の調査はまだございません。 ○大日向部会長  時間もそろそろ尽きかけておりますが。では山縣委員、最後によろしくお願いします。 ○山縣委員  時間が限られていますので、一つだけ中橋参考人に聞かせていただきたいのです。今日は ファミリー・サポート・センター事業中心のお話でしたけど「ひろば型」のことについて教 えてほしいのですが、センター型・児童館型は公営・社会福祉法人等で、ある程度そこで中 心になっている方々の生活が保障されていると思いますが、特にNPO法人系のひろば型の 場合は中心的なスタッフの生活はどの程度保障されているのかを教えてください。 ○中橋参考人  生活の保障と言われると非常に困るのですが、全然されていません。本当に人の数が足り ないのです、ファミリー・サポート・センターもそうですけれど、子育てのひろばもそうで すけれど、請け負っている団体あるいは地域によって、やっている内容が少しばらつきがあ ると思います。ファミリー・サポート・センターなどは特にそう感じます。手を尽くせば尽 くすだけ、問題を解決しようと思えば思うだけ手もかかりますし、人の数も要る。それを素 直に困っているからやりましょうと、私は人が好いので言ってしまいがちなのですが、そう なるとなかなか。拠点のスタッフは扶養の範囲内で働いている者がほとんどです。以上です。 ○大日向部会長  他に、よろしゅうございますか。ありがとうございます。本日は「すべての子育て家庭へ の支援」ということで、中橋参考人・鈴木参考人から、大変貴重なお話をいただきまして、 ありがとうございました。  先ほど篠原委員が「輪母」はこういう字を書くとは思わなかったとおっしゃって、私は中 橋さんのご活動はかなり前から存知あげておりますが、私も「輪母」という字を書くとは知 りませんでした。実は中橋さんが豪快に笑っていらっしゃるから、「わはは」なのかと思い ました。いつも、とても楽しく愉快そうに笑っていらっしゃるのですが、今日伺った話を改 めて考えますと、地域でNPOとして本当にきめ細かな支援を届けてくださっているご苦労 が偲ばれますね。災害の時もいち早く立ち上がって、お母さんたちと子どもの支援に立ち上 がってくださったNPOでいらっしゃいます。それでもなお行政との協働にこれだけ大きな 課題を感じていらっしゃるということは、行政と市民の協働の難しさを改めて考えさせられ るところです。  また、鈴木参考人からは「遊び」ということがどれだけ子どもにとって大事かということ を、改めて今日はじっくりお話を伺いました。有り難うございました。お忙しい中、またご 遠方から、お二方には本部会に、いらして下さいまして、ありがとうございました。  また、事務局には多くの委員の方からご質問が出されました。新政権になって一体ここま での議論はどうなるのかというのは、私たちの共通の思いだと思います。この部会は2007 年の12月に重点戦略が策定されてすぐに立ち上げていただいた部会で、それ以来、次世代 育成支援に向けて、保育について、あるいは地域の子育て支援について、いろいろなことを 各領域の専門職の方々にヒアリングさせていただき、議論してまいりました。そして、委員 が、それぞれの立場で、真剣に1年10か月に及んで議論をしてきました。これまで1年10 か月、真摯に積み重ねてきた議論ですから、ここまでの議論は、ぜひとも何らかの形で世の 中に訴え、とりわけ新政権には届けていきたいと思っておりますので、なおこれからも引き 続き委員の皆さまのご協力をお願いしたいと思います。  それでは、今日も本当に貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。最後 に、事務局から次回の日程について説明をお願いしたいと思います。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は、誠にありがとうございました、次回の日程につきましては、改めて事務局からご 連絡申し上げます。引き続き、新たな制度体系の設計についてのご議論をお願いしたいと考 えております。お忙しいところ恐縮でございますが、ご出席いただきますよう、よろしくお 願いいたします。 ○大日向部会長  それでは、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省  雇用均等・児童家庭局総務課  少子化対策企画室  (内線7944)