09/10/17 第63回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第63回労働政策審議会職業安定分科会 1 日 時 平成21年10月7日(水)10:00〜12:00 2 場 所 厚生労働省議室 3 出席者 委 員(公益代表) 大橋分科会長、岩村委員、征矢委員、橋本(陽)委員、           宮本委員 (労働者代表) 石村委員、長谷川委員、古市委員 吉岡委員 (使用者代表) 荒委員、石井委員、市川委員、上野委員、高橋委員、           橋本(浩)委員 事務局 森山職業安定局長、山田職業安定局次長、森岡審議官、 宮川職業安定局総務課長、鈴木需給調整事業課長、           大塚需給調整事業課長補佐 4 議 題   (1)今後の労働者派遣制度のあり方について 5 議事内容 ○大橋分科会長 職業安定分科会を開催します。議事に先立ちまして、職業安定分科会及 び当分科会の下に置かれております部会に属する委員の交代がありましたので、ご報告し ます。当分科会の労働者代表委員として、案田委員に代わりまして、日本サービス・流通 労働組合連合副会長の吉岡委員が就任されています。  また、分科会に置かれる部会に属する臨時委員等については、労働政策審議会令第7条 第2項の規定により、分科会長である私が指名することになっています。雇用対策基本問 題部会の使用者代表委員について、木本委員に代わりまして、日本建設業団体連合会常勤顧 問の福田委員に、また、労働力需給制度部会の使用者代表委員について、遠藤委員に代わり まして、日本経済団体連合会労働政策本部本部長の高橋委員にお願いしています。  次に事務局である職業安定局の幹部に異動があり、森山局長、山田次長、森岡審議官が就 任されましたので、ご紹介させていただきます。  なお、本日の委員の出欠状況は次のようになっています。欠席委員、公益代表白木委員、 清家委員、労働者代表斉藤委員、徳茂委員、堀委員です。なお、使用者代表久保委員に代わ りまして、代理出席として深井様にご出席いただいております。宮本委員は追ってご出席さ れるとのことです。  それでは議事に入ります。本日の議題は、「今後の労働者派遣制度のあり方について」で す。本日付で厚生労働大臣より、今後の労働者派遣制度のあり方について、労働政策審議会 の調査審議が求められておりますので、本日はこれについてご審議いただきたいと思います。 それでは初めに事務局からご説明をお願いします。 ○需給調整事業課長 資料1をお開きください。長妻大臣より、今後の労働者派遣制度のあり 方について諮問をさせていただいておりますので、まずはこの文書を読み上げさせていただ きます。  労働者派遣制度については、労働力の需給調整を図るための制度として、我が国の労働 市場において一定の役割を果たす一方で、近年、日雇派遣など社会的に問題のある形態が出 てきているほか、やむを得ず労働者派遣を選択する者の存在や法違反事案の顕在化などが課 題となってきた。このような状況を踏まえ、貴会における調査審議を経て、昨年11月4日に 「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の 一部を改正する法律案」を国会に提出したところであるが、同法案は、本年7月21日、衆議 院の解散に伴い廃案となったところである。  同法案提出後、我が国の雇用情勢は急激に悪化し、いわゆる派遣切りが多く発生し、社会 問題化するなど、派遣労働者をめぐる雇用環境に大きな変化が生じたところである。このた め、上記の法律案において措置することとしていた事項のほか、製造業務への派遣や登録型 派遣の今後の在り方、違法派遣の場合の派遣先との雇用契約の成立促進等、派遣労働者の 雇用の 安定その他福祉の増進のために追加的に措置すべき事項についても検討を行い、改めて法律 案を提出すべき必要が生じている。  以上を踏まえ、厚生労働省設置法第9条第1項第1号の規定に基づき、今後の労働者派遣制度 の在り方について、貴会の調査審議を求める。  若干解説を持ちます。資料2-1をご覧ください。これが最近の派遣制度を巡る経過ですが、 いまの諮問文にもありましたとおり、昨年9月に当分科会より「派遣制度の改正について」と いうご建議をいただきまして、それを踏まえて10月には政府の法律案要綱を諮問して、当分 科会より答申をいただいています。11月4日に法律案を政府提案として国会に提出したわけで すが、これについては7月21日の衆議院解散に伴いまして、結局1回も審議されないまま廃案 となったわけです。  その間、大臣の諮問文にもありましたが、いわゆるリーマンショックの影響から景気が急 激に悪化しまして、具体的には派遣契約の中途解約、不更新に伴いまして、派遣労働者の解 雇、雇い止めという事案が大量に発生して、社会問題化しました。  こういったことを踏まえて、当審議会においては3月にまたご審議いただいて、その段階で は法律を国会に提出しているということもありまして、法律以外でできることをやろうとい うことで、派遣契約の中途解約に伴う損害賠償などを規定した派遣元・派遣先指針の改正や、 派遣元の体力強化ということで、許可基準の見直し等々を措置したわけです。  こういった状況に対応して、国会でもいろいろ議論が行われていまして、今年6月には民主 党・社民党・国民新党の3党で、議員立法という形で衆議院に派遣法改正案を提出いただいて、 これについても7月21日に衆議院解散に伴って廃案になったわけですが、その後、総選挙があ りまして、派遣法改正などをマニフェストに掲げた現与党の民主党・社民党・国民新党が勝利 して、連立政権を作っているという状況です。  資料2-3が、6月に提出された当時の野党、現与党の派遣法改正案です。私たちの法案と大き く違うところは、いちばん下の「その他」の欄、1つ目と2つ目の○、「専門業務を除き、製造 業派遣を禁止すること」、「26専門業務以外は常用雇用のみとすること」等々です。  これを踏まえて、選挙の際のマニフェストとして現与党が掲げていたのが資料2-4でして、 こちらについても同様に、「原則として製造現場への派遣を禁止する」、「専門業務以外の労 働者は常用雇用とし、派遣労働者の雇用の安定を図る」等々がマニフェストとして掲げられた わけです。  こうしたことを踏まえて、総選挙後、現連立政権が誕生したわけですが、資料2-5は連立政 権樹立後における9月9日付の3党の政策合意です。この中に雇用対策の強化ということで、 「労働者派遣法の抜本改正」という項目がありまして、日雇派遣、スポット派遣の禁止のみな らず、「登録型派遣は原則禁止して、安定した雇用とする」、「製造業派遣も原則的に禁止す る」、「違法派遣の場合の直接雇用みなし制度の創設」、「マージン率の情報公開」など、派 遣業法から派遣労働者保護法に改めるというのが政策合意とされています。  長妻大臣からの諮問については、こうした情勢の変化、政権の変化に伴いまして、昨年提出 した派遣法に加えて、こういったマニフェスト等に記載されている事項についても調査審議い ただいて、これについて国会に法律として提出することの是非をご審議いただきたいという趣 旨です。  それでは、具体的な内容としてはどういうことかと申しますと、資料3をお開きください。こ の資料は昨年、当審議会の答申を得て、政府提案として出させていただいた平成20年の法案を 左に掲げて、これに対して右側は、3党で6月に衆議院に提出された法案であり、マニフェス ト等の内容が反映されていると考えておりますので、この2つを対比させました。左の部分まで は当審議会でご了承いただいておりますので、それにその後の状況変化に応じて、この右側の 部分を足していくのかいかないのか、足す場合にはどのように足していくのかと、こういった ことについて具体的に審議をお願いするという趣旨です。  ざっとご説明しますと、まず法律の名称については「派遣労働者の保護」という文言を加え るというものです。それから日雇派遣については、政府提出法案では日雇派遣については30日 以内の雇用契約と定義していて、例外規定を設けていますが、3党案では、この30日を2カ月以 下ということにしていまして、2カ月以下の雇用契約の場合には、それを2カ月と1日の雇用契 約と見なすという規定を新たに設けているものです。  それから登録型派遣については、政府提出法案では登録型派遣の禁止というのは謳わずに、 登録型派遣で望まずしてやっていらっしゃる方についての常用化を図っていくという趣旨か ら、常用化の努力義務等々を定めていますが、これに対して3党案では、26専門業務以外は常 用雇用のみとすると。したがって常用以外が、いわゆる登録型と通称呼ばれているものですか ら、登録型は原則として禁止するというものです。  次は2頁、製造業派遣です。製造業派遣については、政府提出の法案では特に触れていませ んが、3党提出の法案では、政令で定める専門業務を除き、製造業派遣を禁止するとなってい ます。この政令に定める専門業務という趣旨は、いわゆる製造業の業務の中で26業務的なも のを設けて、そういった専門業務のみの派遣に製造業務は特化していくという趣旨と聞いて います。  次に専ら派遣、グループ派遣です。これについては政府提出法案とほぼ同じですが、1つ だけ違っているのは、政府提出はグループ派遣に限っていますが、3党提出の法案ではグル ープ派遣だけではなく、グループ外の派遣の場合であっても、1つの派遣先に対して、当該 派遣会社の8割以上の派遣労働者を派遣するということについて、禁止するということで、 これは昨年の審議会でも若干議論がありましたが、グループ以外のものについても雇用規制 を設けるという規定が入って いるところです。  それから均等待遇ですが、これについては政府提出法案では、賃金についての一般の水準 を考慮して定めることの努力義務を課していますが、これに対しては就業形態にかかわらず、 就業の実態に応じて均等な待遇を確保するという、訓示規定的なものが入っているところで す。  それから情報公開ですが、マージン率等の情報公開については同様ですが、これらに加え て、例えば派遣元から派遣労働者に対して、賃金や社会保険の適用に関する事項の通知義務。  それから、派遣元から派遣先に対して、これは次に設ける派遣先の義務の強化に対応した規 定かと思われますが、派遣労働者の賃金等を通知するという義務の拡大。それから、派遣先か ら派遣先の組合に対して、派遣労働者の賃金等を、派遣労働者の受入に当たたって通知すると いう義務が新たに記述されているところです。  次に3頁目ですが、派遣先責任の拡大ということで、政府提出法案においては、労災保険の 派遣先で災害が起きた場合、派遣元の労災保険が適用になるわけですが、その場合に派遣先の 責任、故意または重過失によって事故が起こった場合の、いわゆる第三者に対する弁償という ものについて、実行あらしめるための立入検査等の権限というのを規定したわけですが、3党 法案においては労働者派遣契約の遵守、年休取得の不利益取扱いの禁止、育休取得の不利益取 扱いの禁止、未払賃金が生じた場合は派遣先が連帯して支払う。それから社会保険料の滞納に 当たって、派遣先が連帯して支払う。派遣労働者の安全衛生教育について、派遣先が行うこと とする。定期検診が行われない場合に、派遣先が代行する。労災保険の給付請求に当たりまし て、派遣労働者に対して派遣先が便宜を供与する。性別を理由とする差別の禁止、派遣元事業 主に対する個人情報の要求の制限、労働組合と派遣先との団交応諾義務の設置という11項目に ついて、派遣先の責任を強化するという内容になっているところです。  それから違法派遣の対処については、政府提出法案においては禁止業務派遣等々について、 違法な派遣については派遣先に対して行政が労働契約を持ち込むことを勧告するという制度の 創設を謳っていますが、これに対して3党法案では、派遣先に対して派遣労働者が違法だとい うことを通告した場合には、派遣元と結ばれている労働契約が、派遣先との間の契約として派 遣先に移転するという形でのみなし規定を設けているところです。  次に4頁です。政府提出法案にはありませんが罰則の強化ということで、派遣元、派遣先、そ れぞれに対しての罰則の強化の規定があります。欠格事由云々については政府提出法案と同じ でして、施行日については3党法案では公布の日から6カ月以内ですが、登録型派遣、製造業派 遣に係る、いわゆる規制の強化について、公布の日から3年以内という内容です。  こういった内容の法案が出されている。それからマニフェスト、政権合意があるということ を前提に、当審議会での審議をお願いするというものです。私からは以上です。 ○大橋分科会長 ありがとうございました。それでは本件についてご質問等がありましたら、 ご発言をお願いします。  数値ですが、派遣労働者の数、有期雇用者の数等々は、いまわかりますか。 ○需給調整事業課長補佐 派遣労働者の数ですが、平成19年度の事業報告によりますと、総 数で381万人となっています。登録型派遣の登録者数の延べですが、平成19年度は280万人と なっています。 ○大橋分科会長 ご質問等はいかがでしょうか。 ○需給調整事業課長 補足いたしますが、いま申し上げた381万人というのは、事業報告におけ る有期・無期の合計の数です。いわゆる常用に対して、登録している方については、登録してい てその1年間の間に1度でも働いたものの数をカウントしています。それから、常用の中には有期 と無期がありますけれども、これについて、その割合は事業報告では出ませんが、他の調査など では有期と無期が大体半々くらいですので、それに近いということでご理解いただきたいと思い ます。 ○征矢委員 具体的には、これは関係部会で議論するということになるわけでしょうか。 ○大橋分科会長 はい。 ○征矢委員 それでしたら、そういう議論をされるということについて、若干意見を申し上げた いと思います。1点だけですが、登録型派遣についてどうするか、これは非常に重要な課題だと 思うのですが、基本的にこの政策を議論する際の出発点は、ILO条約あるいは憲法、そういうも のを踏まえてきちんと議論する必要があると考えています。そういう意味では、ILOの188号条約 を踏まえた議論が、後で行われるべきだと思います。  それから憲法の27条、「全て国民は勤労の権利を有し、義務を負う」という、国民については 非常に世の中が複雑多様化する中で、現実問題として家計補助的に働かなければならない方は 相当たくさんいる。具体的には家庭の主婦であるとか、あるいは年金だけでは生活できない高齢 者。 そうしますと、27条の勤労の権利というのは、当然そういう人々の権利も保障しているはずだ と考えます。そういう観点から、派遣事業の登録型派遣がどうかという議論の考え方の整理を されるべきではないか。  それから憲法22条、公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を有するわけですが、職業選 択の自由というのは、営業の自由も含めて、公共の福祉に反しない限り、社会的な問題がない 限りは自由であるということになっています。そうしますと登録型の派遣事業というのは、そ ういう事業を行う場合に、これが具体的にそういう公共の福祉に反する、どういう形で反して いるのか、どういう問題があるのか、そういうところもきちんと踏まえていく必要があると考 えます。  そういう観点で考えた場合、登録型派遣を仮に原則禁止するとした場合には、家庭の主婦や 高齢者については登録型派遣の制度が、たぶん非常に有効に活用している、有効に作用してい るのではないか、それが公共の福祉に反すると言えるのかどうか、そういう点についても検討 する必要があると考えます。 ○長谷川委員 派遣法のあり方について議論するということが、ちょうどいい時期だったので はないかと思っています。昨年の秋以降、我が国の中で、働く労働者の中で何が起きたのかと いうことを、私は公労使3者が真摯に受け止めながら、どういう姿が必要なのか、あるべき姿 なのかという議論をきちんとやることではないかと思っています。  去年の秋以降は、私たち日本の国民にとっては、やはりとても厳しい情勢だったと思います。 真面目に働けば豊かな暮らしを手に入れることができると思って、一生懸命働いてきたのに、 ある日突然契約が解除されて、住む家もない、1週間後には食べるものもない、お金もないと いう人たちが東京の日比谷に集まってきたという、この状況について、派遣で切られた人た ちだけではなくて、そのご家族たちも含めて、みんながびっくりしたというのが、特に去年 の10月、11月、12月、1月だったと思います。  政府はそういう状況に対して、多くの緊急の雇用対策を進めてきました。そういう中で、 いまここで派遣法の改正ということを考えるときに、間接雇用というのはどうあるべきなの かとか、雇用というのは基本的にどうあるべきなのかという議論を進めながら、我が国の国 民が本当に幸せに生きる、働くということを大きなテーマとしてとらえながら、この派遣法 の問題を議論していただきたいと思います。  それから今日、3野党の合意の中でいくつか指摘されていますが、やはり振り返ってみたと きに、この審議会でもいろいろ議論しましたけれども、時間が間に合わなくて急ぐということ もあって、議論を次の機会に送ったものもありますので、それらも今回の議論の中でしっかり やることではないかと思います。  派遣会社の中途解約というのをどう考えるか。それから雇用期間と使用期間、働く期間と契 約期間が一緒ということを、登録型の多くはそうなっているのですが、そういうことをどう考 えるかとか、あるいは雇用保険にほとんどの人が入っていなかったことをどう考えるか。本来 ですと失業給付で、最低でも90日、延長給付を含めると90+60日で150日と受給できれば、何と か過ごせるのに、そういう雇用保険も受給できなかったということは何だったのかとか、さら には、派遣会社の使用者責任というのは何だったのかとか、そういうことについてもう少しき ちんと議論をすることが必要ではないかと思います。  この間、やはり雇用就業形態の多様化ということがずっと言われてきました。雇用就業形態 の多様化ということで、派遣で働くという働き方、有期契約で働くという働き方、様々な働き 方のメニューがずいぶん用意されたわけでしたけれども、こうしたことに対して、結果的には、 雇用のセーフティネットが全然整っていなかった。雇用就業形態の多様化は進んだけれども、 雇用のセーフティネットが十分ではなかったということも露呈したわけですので、そういうも のについて、雇用就業形態の多様化と同時に、雇用のセーフティネットというのはどうあるべ きかだとか、そういう議論も必要ではないかと思います。  私はいまの状況は、本当に大変厳しい状況だと思います。失業率は今回5.5%になりました が、6%台にいくのではないかと言われているときで、働きたいという意思があっても仕事が ないという、この状況について、みんなが鬱々しているわけでありますので、こういう状況 の中で本当に私たちの働き方、雇用形態、使用者の責任とは何なのかということを、私は是 非真摯に議論しながら、派遣法の中で見直すべき点には大胆に見直しながら、国民みんなが 幸せになるような方向を示すべきではないかと思います。  私も労側の委員ですが、しっかりと向き合って議論をしてまいりたいと思います。よろしく お願いします。 ○石井委員 いま長谷川委員からお話がありましたように、中途解約、昨年のモラルなき契約 解除、ああいうものは確かに大きな問題でして、そういう意味では保険に入っていないとか、 あるいは中途解約が自由にできるとか、そういうものはやはり是正していかなければいけない とは思いますが、それを通り越して製造業の派遣禁止ということまで言われているのはどうか と思っています。  私は中小製造業の社長をやっておりますが、いまは大変な世界同時不況で、売上は大変減少 しております。そしてもう1つ問題なのは、こういう状況下ですが、絶えず国際競争をやって いるために、毎年価格に対して厳しい交渉があるのです。ですから不採算部門でも、さらに値 段を下げていかなくては国際競争に勝てないという意識のもとに、価格交渉が行われるわけで す。そうすると、経営者は何を考えるかといったら、いかにコストを削減するかということの 1点に絞ってしまう。売上が減っている、かつ値段を下げている、そういう状況ですので、ど うやってコストを下げるかと。そういう状況の中で、いろいろ派遣法の見直しが行われている ということになりますと、我が社も3年くらいの間には海外へ製造部門を移転をせざるを得な いと考えているわけですが、それが3年ではもう駄目だと、早めていかなければいけないのでは ないかという、そういう拍車がかかっているような状態です。同業者、あるいは周りの仲間な どの声も、とにかくこういう状況では、国内に製造拠点を持っている余裕がなくなってきてい るのではないか、こういう声があります。  それからもう1つ問題点は、派遣法の見直しによって地方の製造業、小さい零細の会社は人 を雇えなくなってしまう。彼らは自前で人を雇う力がないわけですから、そういうところに頼 っている。そこには問題があるかもしれませんが、人を雇うにはコストもかかりますし、労力 もかかるということから考えると、やはり地方の製造業にとっては大変なダメージを受けると、 こういうのが現状です。  それで、先ほど言ったように、昨年の問題が再発しないような対策、セーフティネットは当然 考えていかなければいけないと思いますが、もう1つ、日本の製造業自体をどのように持ってい くのか、全体のバランスを考えた政策を考えた上での、いろいろご議論をお願いしたいと思っ ています。以上です。 ○市川委員 先ほど長谷川委員からご指摘がありました、昨年末の非常に悲惨な状況がありま した。私は、世界同時不況という、日本のあらゆる業種において、非常に悲惨な状況になった ということが原因ではないかと考えています。したがいまして、それをもって製造派遣を禁止 するというところに即繋がるのかどうか。私は相当そこには疑問を感じざるを得ないわけです。  先ほど征矢委員のご指摘にもありました、働き方が非常に多様化している、そういう方々の 働く権利、これも議論しなければいけないのではないかと、まさに私もそのとおりだと思って います。派遣で働く方々の中には、子育てなり介護なり、そういういろいろな事情があって、 派遣で働くほうがむしろいいのだという方々も相当程度おられます。もちろん本当は正社員に なりたいのだけれども、という方もおられます。そういう方々のために、正社員になるための 職業訓練等々、そうした1つのセーフティネットを、充実していく必要があると思います。た だ、そうではない方々も相当程度の割合でおられますので、こういった方々の働き方というも のも、やはり慎重に議論をしていく必要があると思います。  それから石井委員がおっしゃったように、やはり中小企業の経営者の立場から申しますと、 会社に知名度がないために、なかなか募集しても人が集まらない、こういう実態があります。 そのときに人材派遣会社の機能というのは、そういった個々の中小企業でなかなか募集・採用 ができないというときに、そこの業務を横串でブスッと刺して、募集・採用業務を専門的に、 1社だけのためではなくて、数社あるいは何十社のために、そこの部分をビジネスとして成り 立たせると、こういう機能があります。したがいまして、A社が景気が傾いた場合には、B社の ほうに人を回す。あるいは、B社も駄目ならC社に回す。こういう機能が本来、人材派遣企業 にはあるのではないかと思っています。  この年末の事態というのは、全ての業種で傾いたために、その機能が上手く発揮できなか ったということだと思います。その際には、やはり政府がセーフティネットで救っていくと、 こういうことになるのではないかと思っているわけです。  それから最後に、やはり国際的な視点というものも大いに議論をしていただきたいと思っ ています。欧米諸国において、製造派遣を禁止しているという例は、おそらくないと思いま す。日本だけが製造派遣を禁止するということは、世界の流れに逆行するわけでして、ひい ては日本の製造業の競争力を低める、こういう悪影響も出てくるのではないかと思いますし、 また、征矢委員も冒頭にご発言がありましたように、ILO条約の観点からいっても、特定の業 種について禁止するということは、条約上も認められておりますけれども、製造業一般につ いて禁止だという派遣法の改正のやり方が、ILO条約上認められているものなのかどうか、 その辺もよく議論をしていきたいと思っています。 ○古市委員 いま何人かの皆さんからお話がありましたが、この審議会は相当使用者側と労 働者側の意見の違いがあって、意見の一致を見るのが非常に難しかったわけですが、今日こ ういう事態になっているという様々なご指摘の中心は、派遣労働における労働者保護があま りにもゆるすぎる、こういうご指摘だと思います。したがって、十分議論をして、そういう 社会の要請にしっかり応えるような結論を出していかなければいけないのではないか、この ように思います。  使用者側と労働者側の意見があまりにも違って、合意を見ることができないというような ことになると、この労働政策審議会そのものが社会的に有効に機能していないのではないか という、そういう指摘を受けかねないわけでして、そこは使用者側の皆さんも是非真摯にお 考えをいただいて、この議論に参加をしていただくようにお願いをしたいと思います。 ○岩村委員 いま労側の古市委員のお話がありましたが、特に労働政策の場合はやはり、実 際の雇用あるいは労働の問題に現実にタッチしている労働組合と事業主との間で、できるだ けきちんと話し合ってコンセンサスを作ることによって、はじめて具体的な制度あるいは政 策が動くと私は認識しております。ですから大変難しい問題で、かつ労側は労側の立場と考 えがあり、また当然のことながら使側は使側で立場と考えがあるということですので、この テーマでコンセンサスを作るということ自体、なかなか難しいことだろうということは重々 承知しておりますが、先ほど申し上げたように、労使のコンセンサスに基づいて政策あるい は制度を築いて、それによってうまく動かしていくということが重要ですので、是非労使の 委員の方々もコンセンサスの成立に向けて十分ご議論いただいて、またご尽力をいただきた いと思います。何よりも、審議会の場合はどうしても事務局が、それに基づいてコンセンサ スの形成について果たしていただく役割も大きいと私は思っておりますので、そこは是非、 また事務局のほうにも、大変だとは思いますが、ご尽力をいただきたいとお願いをしておき たいと思います。  それから、今回のこの問題についてです。具体的な議論はたぶん労働力需給部会のほうで やるということなので、そちらの議論に委ねたいと思いますが、若干気になっているのは、 1つは派遣について、いま労側でもご指摘になったようにいろいろな問題もあり、使側のほ うも問題があったとおっしゃっているわけです。これはもう諮問文がきてしまっているの で仕方がないのですが、規制を強めることが必要であったとして、いまそれをやるのがい いタイミングなのかどうかということについては、私自身はやや不安を持っているという ことを申し上げたいと思います。  それから、私が今回の議論、非常に難しい部分があると思っているのは、そもそも派遣 労働というのをどう位置づけて整理するのかということが、今日の資料3の政府提出案と、 3党共同提出案との比較表を見ると問題になっているように思います。派遣というのをどう 位置づけていくのかというところの根本的な考え方が、3党案は政府案とちょっと違うので はないかという気がしているところでもあり、その辺の議論の整理というのも本当は必要 なのだろうと思っております。ただ、時間の制約があるので、部会なりでどこまでそうい う整理をした上で議論ができるかよくわかりませんが、少しその部分も含めて幅広い見地 からの議論というのが、この問題については必要なのかなと思っています。  製造業の派遣については、1つは、全面解禁になってまだそれほど日が経っていないとい うこともあり、そういう意味で、具体的に製造業の派遣でどういう問題が生じるかという ようなことについては、それほどデータや情報が必ずしも十分に集積されていないのだろ うと思います。本来であれば製造業派遣についても、実際にどういう問題が生じていて、 それに対してどういう対応策があるのかというところが、たぶん議論の出発点だろうと思 うのですが、そこを全部飛ばして、いきなり製造業派遣の禁止というところにいくのか、 そこはちょっと、やや議論が飛躍しすぎているのではないかという気がします。  最後に、これは派遣というのをどう見るかということと関係しますが、現在、例えば労 働法の中で見ても、育児休業とかさまざまな休業制度があって、その権利を行使するとそ の労働者がいなくなるので、その仕事を誰かがやらなければいけないといったようなとき に、あるいは長期の有給休暇でもいいのですが、普通の発想だと社内の人を回してという こともありますが、もう1つは、派遣で登録型の人を使うという発想があるのだろうと思 いますし、場合によっては、派遣はコストが高いから有期契約の人で誰か代替要員をとい うようになるだろうと思います。登録派遣というのをもう26業種ぐらいに限定してしまっ て、あとは全部常用にするということになると、有給休暇その他の理由によって一時的に 従業員が一定期間いなくなったときには、社内で融通をするか、有期契約の労働者を雇う かという選択しかなくなることになる。それでいいのかな、そうなのかなという気がしま す。派遣というのは英語だとテンポラリーワークですし、まさにそういう意味では、一時 的に労働をする者を雇うというものであって。登録型というのはもうどんどん限定的に絞 り込んでしまって、あとは常用だという制度設計で、現実に権利を行使していなくなって、 しばらくお休みするという人たちがいたときに、それで対応することができるのかなとい う気がします。これは結局のところ、先ほど申し上げた派遣というのをどう考えるかとい うことに帰ってくるのだろうと思います。  私自身は法律家なので当然のことながら、規制の緩和というのか、規制のあり方を変え るというのか、そこは議論があるでしょうが、規制をあまりにも緩める、あるいはいまま でのやり方と非常に大きく変えてしまうということは、それはそれで非常に問題があり、 派遣でもそういうようなことが現れてきたのだろうとは思っております。しかし他方で、 あまり行き過ぎた規制をかけるということも、それはそれで別の問題を引き起こすという ことでもあるので、結局のところ、そのバランスをどこで取るかという話だと思うのです。 そしてこれがいちばん最初のところに帰るのですが、そのバランスの点というのを是非、 労使の各委員の先生方にご議論いただいてコンセンサスで、その適切なバランス点を見出 していただくよう切にお願いする次第です。長くなりましたが以上です。 ○需給調整事業課長 すみません、補足です。いま岩村委員からありましたが、このNo.3の 資料の中で登録は縦の禁止の所は、「26専門業務等以外は常用雇用のみとする」と書いて 丸めておりますが、実はこの「等」の中に、3党案では、「育介の代替要員派遣は例外とし て認める」という規定がありますので、そこだけちょっと訂正させていただきます。  もう1点。セーフティネットの話題が先ほどから若干出ていまして、長谷川委員から、派 遣については雇用保険の適用がほとんどなかったというご発言がありましたが、ちょっと 数字だけ申し上げますと、私どもがハローワークを通じて非正規の雇い止めの状況等を調査 して、これが10月2日の発表分、9月の報告の速報発行値ですが、この中で、23万8,752人が 非正規の雇い止めの累計数で、そのうち14万1,619人が派遣。この中で12万2,307人の派遣労 働者について雇用保険の加入状況が判明しておりまして、この12万2,307人のうち、12万1,5 87人が雇用保険に加入しております。したがいまして加入率は99.4%という数字が、この調 査からは出ているということをご紹介いたします。 ○長谷川委員 その数字は取り方に問題があると思うのです。もともとのデータの取り方とか、 そういうところに問題があるわけで、そこはやはり実感と政府から出てくる数字の、なんとも 言えない奇妙なところだということは指摘しておきたいと思います。  もう1つ、公益委員の先生から言われたように、労使がいろいろな議論をどれだけ真摯に行 うかだと思っています。ただ、今回の派遣という問題が突きつけられたときに、派遣で働く 労働者を、さっき先生が主婦のことを言いましたが、今回の派遣の問題は主婦ではないですよ ね。むしろ大学を卒業した、高校を卒業した若い人たちを派遣会社が雇用したのですよ。そ して派遣会社がその人たちをいろいろな所に派遣していった。それがリーマンショック以降 の不景気の中で途中解約された。派遣というのはそういう問題を持っているということなの ですね。だから今回もおそらく、新卒、学卒者は就職できなくて、大きな世代がまた生まれ る、第2の氷河期世代が出ると言われる。その人たちが就職するとき、結局、企業は新卒と してを雇いませんからね。来年は来年の新卒を雇って、今年の新卒の人は絶対中途で雇いは しないわけですから、そうするとその人たちはまた、派遣があれば派遣の所に行く。そうす ると、2001年以降の就職氷河期の人たちと同様に今回の氷河期の人たちが派遣の所にきてし まう。しかも、いまやかつての氷河期の人たちも30代半ばになっている。  派遣の問題は何かと言うと、石井委員が言うこともわからないわけではないのですが、 派遣で働いた人を企業が正規社員で雇うかどうかということなのです。現実は雇わなかった。 だからスキルもつかなかった。ずっと同じ仕事しかしなかった。このことが問題なわけです ね。派遣という働き方が、確かに臨時的・一時的で産休代替、育休代替、病気の代替のとき、 そういうときは必要ですよ。しかし、派遣で働いている人はずっと派遣なのです。そういう ことで本当にいいのかどうか、私は、使用者と労働者はもう少し議論をしたほうがいい。使 用者にとっても不幸だと思うのです、ずっとスキルのつかない非正規だけがいていいのか、 それで本当に良い製品、国際競争に勝てるような良質な品質を確保できるのか。そういう問 題もあるわけですから、派遣という働き方、派遣という働かせ方、そういうのが本当にどう なのかという議論も含めて、働く側、若い青年層をどう見るのかということについて議論し てほしいと思います。  あと、日本の産業は国際の中でどのように活躍するのか。企業の方々にも是非ご発言して いただきたいと思いますが、やはり日本人の働き方というのは勤勉に、一生懸命働いて、高 品質なものをつくっていく、これが日本人の働き方だったわけです。それが世界で冠たる日 本をつくってきたと思うのです。それはやはり人材があったからです。日本は人材育成をや ってきたのですね。企業は一生懸命やってきた。そういうことを今後どう考えていくのかと いうこととセットで、派遣の問題というのを議論していただきたいと思います。 ○高橋委員 先ほど労働政策審議会について、意見が対立するとその結果として、形骸化と いうように見られてしまうというご指摘もありましたが、私はそうではないと思っています。 やはり労使ともに、経営の実態や現場の実態を十分に踏まえて、その制度改正を行った場合 に、それがどういう影響を及ぼすのかということを考えるが故に真剣な議論をしているので あって、それをもって対立をしているから形骸化だということにはならないと強く思ってお りますし、今回、大臣の諮問をいただいて、大変難しいテーマではありますが、この審議会 の場で検討が始められるということについては、大変よいことだと思っております。必ずこ うした手続を経ていただくことはとても重要ではないかと思っております。その上で具体的 な検討については今後、部会の審議に落ちるのではないかと思いますが、その検討に当たり 基本的な、留意していただきたい考え方を少し、視点を3つほど挙げさせていただきたいと 思います。  第1はやはり、現在、雇用失業情勢は大変厳しい状況です。そうした中で何よりも重要な のは雇用の安定であり、雇用の創出ということではないか。これについては誰も異論がない のではないかと思っております。その観点からはやはり、労働者派遣制度を通じたマッチン グ機能の強化こそ、求められるのではないかと思っております。本日、資料No.1で大臣の諮 問文を頂戴しました。その1行目から2行目にかけて労働者派遣制度については、労働力の需 給調整をはかるための制度として、我が国の労働市場において一定の役割を果たすとありま すとおり、まさにこれ自身は事実ではないかと思っておりまして、過去にこの制度が果たし てきた役割というのを十分踏まえた検討を行う必要があろうと思っています。その意味では、 この派遣制度が持つもの、先ほど何人かの委員の方からもご指摘がありましたが、需給調整 機能のメリットは維持、確保していくという視点が欠かせないのではないかと思っておりま す。  第2の視点としては、派遣先はもとより、派遣労働者の雇用にどのような影響を及ぼして いくのかということについて、十分に留意をしていく必要があろうかと思っておりまして、 やはり重要なことは、先ほどとも関連しますが、派遣労働者自身の雇用の安定ということ を考えなければなりません。何らかの規制をもし課していった場合でも、その雇用の安定 に向けた施策を総合的に勘案して、何よりも労働市場に混乱を招かないように、現場でも 無理なく実施ができるような、適切な解を模索していく必要があるのではないかと思って おります。先ほど来、製造業派遣の禁止をめぐって議論が闘わされておりますが、製造業 務への派遣解禁になってから、今回はじめて迎えた不景気という事態で起きたことです。 しかも世界的な同時不況という、想像を絶する事態の中で起きたことです。そうした混乱 から生じた問題について議論をする、これは当然だと思いますが、そうしただけの議論で はなくて、やはり中長期的な労働市場のあり方といったものを見据えた議論が必要ではな いかと思っております。  やはり少子高齢化が進行しており、労働力人口は減少しております。多様な労働力を活 用していく、あるいは全員参加型社会の構築を目指すということが、我が国に課せられた 課題ですので、労働市場の活性化という観点から、この労働者派遣制度をどう位置づけて いくのかという問題についても、十分に議論を深めていただきたいと思います。私からは 以上です。 ○岩村委員 先ほど、育休などの代替の場合について、3党案にもそこは入っているとい うことを事務局のほうから教えていただきどうもありがとうございました。長谷川委員が 先ほどおっしゃったことですが、おそらく、先進諸国にほぼ共通して存在する問題です。 つまり、日本の正規従業員とちょっと観念が違いますが、ヨーロッパ的に考えたとすれば、 期間の定めのない契約で雇ってほしいと思っているけれども、結局のところ、そういう働 き口がないので、したがって有期契約であったり、派遣で働くという人たちがかなり存在 するというのが、これは日本に限ったことではなくて、ほかの先進諸国でも同じように存 在するのですね。問題は、実はここから先がよくわからないところで、仮に製造業派遣を 禁止していったときに、企業はいままで派遣労働で働いていた人たちを正社員で雇うよう になるのか、おそらくそれがいちばんの根本的な問題だろうと思う。そういう構図が描け ればいいのですが。他方で、企業なりがどういう行動を取るかよくわかりませんが、製造 業派遣が禁止されれば、今度はまた別の形態の雇い方なり使い方に変わっていくようにな るということも、十分に予想されるところです。そうなったときには、また別にそれにつ いて規制を加えればいいという考え方もあるので、いたちごっこ的な議論にはなるのです が。確かに長谷川委員のおっしゃることはよくわかる、そのとおりではあるのですが、製 造業派遣を禁止することが、例えば若い人なりが、正社員として雇ってもらうというとこ ろにつながるのかどうか。そこが私は今一つよく見えてこないなあという気がしています。 おそらくその根底にあるのは、産業構造とか技術とかそういったものがこの十数年で非常 に大きく変わってしまって。日本の場合について言えば、製造業などでの正社員の占める 地位というのが、従来とは大きく変わってしまったというところに、1つの原因があるの かなあという気がしています。製造業派遣についていろいろ問題があるので、それをなん とかしましょうという議論自体はよくわかるのですが。私は別に派遣に全面賛成とかそう いうことではないので、誤解のないように申し上げますが、達成しようとする目的との関 係で、一体何をすべきかというところについては、もう少しよく考えないと結局、やった ところがまた別のところに移ってしまってという話になりかねないなという気がします。 ちょっとした感想です。 ○宮本委員 今回は製造業務派遣というように議論の課題を限定して、この問題をどうす るかということでやろうとしているわけで、それ自体、こういう緊急な事態の中で、焦点 を絞って議論するということは重要なことだと思われるわけですが。実際のところは、派 遣でなければ非正規雇用採用ですから、この間の流れを見れば、正規雇用の口がない若い 人たちが、派遣の会社に入って行くか、そうでなければ非正規雇用で採用されたというよ うなことになっているわけで、そういう点で言うと、やはり中長期的に見て、単に製造業 の派遣をどうするかという問題だけでこの議論はできない。いまもお話がありましたが、 製造業の正規雇用という形にいくのか。そうすれば、この割合の数字ももちろんあると思 いますが、非正規雇用採用のほうが量的にはもっと多いわけで、その辺のところとの関係 はどうなるのかという問題があるかと思います。中長期的にはこの派遣、非正規雇用とい うのは製造業にとどまらず、あらゆる産業に関わっている共通する現象ですので、単に期 間の定めのない正規雇用にしていくことが現実性があるのか、正しいのかというようなこ とも念頭に置いた上での、製造業務派遣についての検討というスタンスでいかないと、こ こをやればあちらが悪くなるという関係になる可能性があると思います。 ○市川委員 先ほど、日本の製造業はまさに人材でもっているというご指摘がありました。 私はそのとおりだと思っております。私ども中央会においても技術開発のための補助金、 あるいは人材育成のための補助金といったものの執行をお手伝いさせていただいておりま すが、そうした努力によって技能者あるいは、私は「たくみ」と呼んでおりますが、そう したたくみがまさに日本のものづくりを支えている。これはおっしゃるとおりです。しか し、そういうところ、たくみに期待するのは、やはり正社員なわけです。  経営者の立場からいって、製造業の派遣労働者を一体どういう所で使っているのかと言 いますと、自動車部品、デジカメ、携帯電話、ゲーム機、こうしたものはいま製品のライ フサイクルが非常に短かくなっています。売れなくなってしまえばそのラインをストップ する。こういう状況にあるわけで、そのために長期に働いていただく正社員を採用すると いうのは、中小企業の立場にとっては非常に難しいことです。また、季節需要のあるもの、 例えばクリスマスケーキ、アイスクリーム、こうしたものは一時だけなのですね。そこに 人が必要だというときに、やはりその製造業派遣の方々にお願いしている、あるいは、 フルーツの加工業。フルーツが旬の時期に一度期に缶詰にしなければいけない。こういう ときに派遣労働者に活躍してもらっているということです。また、最近の非常に有用なも のとしては、新型インフルエンザのワクチン製造用の鶏卵。これは有精卵でなければいけ ないということで、12日間ほど37℃で温めて有精卵を育成する。そのときに光を当てて、 その有精卵がちゃんと育成されたかどうかをチェックする。目視検査と言っておりますが、 これも派遣の方々にお願いしている例があるようです。たまたま昨日『産経新聞』の1面に、 光を当てて鶏卵をチェックする写真が出ておりましたが、インフルエンザのような例は、 直ちにワクチンを大量に用意しなければいけない。そういうときに派遣の方々にお願いを している。こういう状況です。そこのところは、やはり正社員に期待するものと派遣の方 々に期待するところ、これが違っているのだということを是非ご認識いただきたいと思い ます。 ○大橋分科会長 いかがでしょうか。私はまとめ役として、どのようにまとまるのだろう かということを心配しておりますが、労使の委員の方のお話を聞いていますと、総論とし ては、真摯に議論しましょうというところでは一致するのですね。しかし個々の、具体的 に登録派遣をどうするのかというような議論になりますと、かなり議論が大きく分かれて いるような気がします。議論をまとめるためにはもう少し、システマティックと言います か、一つひとつの案件をギシギシ詰めていくよりも、例えばセーフティネットさえしっか りしていれば、登録派遣であっても問題はないわけですが、今回はセーフティネットもし っかりしていない、登録派遣もということです。ですから、そういう全体のシステムとし て見ていくような目があったらいいかと思います。  もう1つは、制度の国際相場のようなものがあるわけで、そういうのをひとつ基準にし ながら、案を詰めていっていただきたいなあと思います。と言いますのは、例えば製造業 であれば、これは国際競争がすごく厳しいところでやっているわけですが、逆に、厳しい 規制が雇用をなくしてしまうようなことになっては、これも困りますので、そういう意味 では国際競争をしているという前提で、国際的にどうなっているのかというところを見な がら、まとめていただければなあとは思っています。国際的には現在、アメリカとヨーロ ッパではかなり違う。アメリカは非常に規制が緩く、その代わり格差が大きくなっている。 ヨーロッパのほうは規制はきっちりしているのだけれど、失業は高くなっているというよ うな論争があります。それで、ヨーロッパは少し規制緩和しましょうという議論があるの ですが、ヨーロッパはヨーロッパで、福祉国家観に基づいて制度設計をしていますので、 ヨーロッパも簡単に規制緩和というわけにはいかないということになっていますね。その 辺少し、国際的にどうなっているかという1つの相場を見ながらまとめていっていただけれ ば、まとまるかなあという気もするのです。すみません、余分なことを申し上げました。  ほかにご意見いかがでしょうか。それでは、本件につきましては本日の議論も踏まえま して、その具体的な内容については、当分科会の労働力需給制度部会でご審議いただくの が適当かと存じます。そのように取り計らうこととしてよろしいでしょうか。 (異議なし) ○大橋分科会長 それではそのようにさせていただきます。その他何かご意見等あります でしょうか。 ○征矢委員 若干の心配事です。先ほど長谷川委員から、厳しい雇用情勢の中で若者の雇 用対策が心配だという話がありました。それに関連して、特に、当面厳しい雇用情勢が続 く中で、来年の話ですが、公務員の雇用、地域雇用問題がどうなるかというところについ て、政府部内でどういう議論があるのかないのか、マスコミ等では出てきていませんので。 天下りを全面禁止して勧奨退職をしないということ。そういう方針で対応した場合の問題 点と言いますか、いわば、給与の高い高齢公務員を温存して、新規採用をしないという人 事になるわけですね。そうなった場合にどういう問題点があるか。  具体的には例えば幹部職員、これは現状では、定年退職までいる人はほとんどいないわ けです。勧奨退職で途中で退職しているわけですから、それを禁止すれば全員定年まで、 どういう形かでいることになるわけですね。そうなった場合、例えば具体的に来年度につ いては、幹部職員候補の新規採用はほとんどできない、やれないということになるわけで すか。非常に厳しい雇用情勢の中で学卒の新規雇用、重要なのですが、国家公務員の場合 そういうことになってしまう。これをどう考えるか。政府部内で、雇用対策本部を作って 若者の雇用も含めていろいろ検討するということですが、そういう中でこういう問題をど うするのか、あるいは現在検討しているのか。そういう質問です。 ○職業安定局長 難しいご質問ですが。もちろんいま、一般に言う若年者雇用問題。高校、 求人倍率なんかも非常に低いわけです。新規の求人も非常に低くて、私どもはそういう若 年者雇用対策、来年度の新卒者の分も含めて、いろいろな対策を組んでいかなければいけ ないということでいまやっております。それは全般的な話ですが、公務員につきましては、 ご案内のとおり10月1日に各府省、独立行政法人も含めて一定の方針が出されました。そ れに基づいて新規の採用にあたっては基本的に、例えば公務員の多くの場合には公募を前 提にするとか、そういう形で、一定の考え方を示したわけですが、そのあと、現職をどの ようにしていくのかということは、いま征矢委員のほうからお話がありましたようにいろ いろな問題点があります。例えばそこをストップした場合に、定年延長をどうしていくの か、人件費をどうしていくのか。そういう問題がありまして、この問題点は私どもも、共 有していますと言うか、そういう問題点は考えておりますが、いま具体的にそれを。問題 点はみんな共有しながらも、どこのところでどのように進めていくのかということについ ては、まだ具体的には進んでいないという状況です。問題点につきましてはまさに委員ご 指摘のような形で私どもは、問題点の共有はしているということです。 ○征矢委員 もう一言だけ申し上げますと、具体的に来年度の、大学を卒業する方で、一 生懸命公務員試験の勉強をして努力している方について、現状から、公務員試験に合格は しても、ほとんど採用されないという事態があるとしたら、やはりそれは情報公開して、 きちんとそういうことを周知するという問題があるのではないか。現状の天下りを禁止し て勧奨退職も禁止したら、これはどう考えてもそういう事態になることははっきりしてい るわけです、来年の夏になれば。そういうことについてどう対処するかということは、こ れは考える必要があるのではないか。 ○岩村委員 いまの問題に関連して。この部会の議論とは直接的には関係しないのですが、 参考までにということで申し上げます。この分科会の委員である清家先生が座長になった 人事院で、公務員の高齢者雇用の問題についての報告書を、6月か7月に出しておりまして、 その中でいま征矢委員が触れられたような問題についても検討しておりますので、もし参 考になればと思います。来年度の動向がどうなのか、公務員についてはよくわかりません が、少なくとも一種については、いい人は受けにこないだろうというのははっきりしてい ると思います。 ○長谷川委員 この分科会は雇用安定分科会なので、雇用の問題について議論していいと 思うのですが、このあいだ公表になった失業率が5.5%です。5.7%のときはみんなびっく りしたような感じだったのですが、5.5%がこれからどうなるかわからないわけですし、 失業率5.5%が事実あるわけです。そうするともっと雇用対策を打たなくてはいけないわ けですよ。問題は雇用創出なのですね。やはり雇用の受け皿は雇用創出しない限りないわ けですので、そのことに向かって政府は、もう少し横の連絡を取りながら、何らかの対策 が必要ではないかと思うのです。だから、例えば介護とか農業とか林業とか、環境に対す る事業展開をやるとなると、厚労省だけではできないわけで、政府の中に首相を中心とす る所に雇用対策本部をちゃんと作って、雇用の受け皿をきっちり確保するような政策を打 たない限りは、いくら、雇用保険の延長給付をやりましょうと言っても、受け皿がない限 りはそこにいかないわけですから、是非そういうことを政府はきちんとやってほしい、要 するに雇用の受け皿の問題について、政府間できっちりやってほしいということが1つ。 いま企業はぎりぎり踏ん張っていると思うのです、雇調金で。そういうことに対して、踏 ん張っている企業に対してはもうちょっと頑張ってくれと、そういうメッセージも必要だ と思いますので、雇用の維持と雇用の創出に対して、政府は全力をあげているというメッ セージを国民に向けてやってほしいと思います。  2つ目は外国人です。ペルーとかブラジル、日本は政策の中で日系人を呼んだわけです ね。彼らの生活もいろいろ大変なわけです。問題は日本語がよくできない、理解できない ので、いろいろな施策が打ち出されているのですが、なかなかそこはうまく伝わっていな いようなのです。緊急対策の中で通訳の人を配置したりしているようですが、それでもま だ不十分なようです。特に日本語がうまくいかないようなところに対してですね。いろい ろなところで理解ができなかったりとか。いろいろな支援などもあるのだけれども、そう いう支援も受けられなかったりという状況があるようですので、通訳を十分に配備したり NPOと連携しながら、そういう人たちの対策も十分やっていただきたいと思います。 ○大橋分科会長 よろしいですか。随分問題が膨れてきましたので、どうなることかと心 配しておりますが、本日はこれで終了させていただきます。本日の会議の議事録につきま しては、労働政策審議会運営規定第6条により、会長のほか2名の委員に署名をいただくこ とになっています。つきましては労働者代表の長谷川委員、使用者代表の市川委員にお願 いいたします。どうもありがとうございました。 (照会窓口) 厚生労働省職業安定局総務課総務係 TEL:03-5253-1111(内線 5711)