09/10/06 子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議議事録 子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議 第3回議事録 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 第3回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議 議事録 日時:2009年10月6日(金) 14:00〜16:30 場所:中央合同庁舎第7号館9階 共用会議室-1 出席者:  委員   柳澤座長、奥山委員、神尾委員、澁谷委員、丸山委員、南委員  事務局   宮嵜母子保健課長、今村母子保健課長補佐、森岡母子保健課長補佐   杉上虐待防止対策室長、成重精神・障害保健課心の健康づくり対策官   日詰精神・障害保健課 発達障害対策専門官     議題:   1.開会   2.議事     (1)都道府県が実施する事業についてヒアリング      (1)静岡県(静岡県立こども病院 こどもと家族のこころの診療センター            山崎透センター長)      (2)三重県(三重県立小児心療センターあすなろ学園医療部診療科 中島弘道医長)          (三重県健康福祉部こども局こども家庭室 山本和美主査)      (3)大阪府(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立精神医療センター            松心園 柴田真理子副園長)          (大阪府健康医療部保健医療室地域保健感染症課精神保健グループ            釘田妙子課長補佐)      (4)長崎県(長崎県福祉保健部 障害福祉課精神保健福祉班 中林和弘課長補佐)     (2)事業評価・報告について     (3)その他   3.閉会 配布資料:   資料1 第2回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」議事録(案)   資料2 (静岡県)静岡県における子どもの心の診療拠点病院機構推進事業   資料3 (三重県)子どもの心の診療拠点病院機構推進事業   資料4 (大阪府)大阪府における事業展開       〜平成20年度『子どものこころの診療拠点事業』報告。        平成21年度事業計画〜   資料5 子どもの心の診療拠点病院整備機構推進事業に関するアンケート調査(案)   資料6 自治体調査(案)   資料7 医療機関調査(案)   資料8 患者調査について       〜患者ニーズに合った子どもの心の診療体制の在り方および        その効果判定の方法に関する研究〜   ※(長崎県)長崎県子どもの心の診療拠点病院機構推進事業      参考1 「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」開催要綱   参考2 母子保健医療対策等総合支援事業実施要綱(抄) 議事: ○柳澤座長  定刻になりましたので、ただ今から第3回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有 識者会議」を開催したいと存じます。本日は、お忙しい中、また雨で足元の悪い中をお集ま りいただきまして、大変ありがとうございます。第1回、第2回に引き続いて座長を務めさ せていただきますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。  本日の会議には青山委員、今村委員、齋藤委員より欠席のご連絡をいただいております。 また、南委員におかれましては、所用のため30分ほど遅れておみえになり、なおかつ、16 時前に早退されるという連絡をいただいておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、議事を進めさせていただきます。まず、本日の議題に入ります前に、事務局か らお手元にお配りしております資料の確認をお願いいたします。 ○森岡課長補佐  それではお手元にお配りしております資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第 の1枚紙がございます。次に資料1として第2回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関す る有識者会議」議事録(案)がございます。資料2として静岡県の「静岡県における子どもの 心の診療拠点病院機構推進事業」の資料、資料3として、三重県から「子どもの心の診療拠 点病院機構推進事業」の資料、資料4として、大阪府から「大阪府におけるで事業展開」の 資料がございます。次に3枚の長崎県からの追加資料を机上に置かせていただいております。 資料5として「子どもの心の診療拠点病院整備機構推進事業に関するアンケート調査(案)」、 資料6として「自治体調査(案)」、資料7として「医療機関調査(案)」、資料8として「患者 調査について」という資料、それから参考1、参考2という資料がございます。以上でござ います。  過不足等がございましたら、事務局までお願いいたします。 ○柳澤座長  ありがとうございました。資料は、おそろいでしょうか。  それでは、議事次第に沿って進めていきたいと存じます。資料1として前回の会議の議事 録案を配布しています。これは事前に各委員からのご意見をいただいているところですが、 ご確認いただいて、もし修正などがありましたら、1週間を目途に事務局にお伝えください。 それで最終版を作ってホームページにアップするということだそうでございます。  それでは、本日の議題に入りたいと存じます。前回の会議におきましては、中央拠点病院 すなわち国立成育医療センターと三つの都県、東京都と石川県、岡山県の事業について取組 の具体的な状況を発表いただきました。そして、今後の事業のあり方について、ご意見をい ただきました。今回の会議では、さらに四つの府県の事業について、ご発表いただくという ことになります。  それでは、都道府県が実施している事業について、静岡県、三重県、大阪府、長崎県から、 現時点での取組状況について、それぞれ10分程度でご発表をお願いしたいと存じます。  今回も特に形式等は指定せずに発表の準備をお願いいたしました。今年度から新しく事業 を始めた県も含めて、さらにその他四つの県の事業については、第4回の会議においてご発 表いただくことになります。  それでは、まず静岡県から発表していただきます。ご担当の方、お願いできますでしょう か。 ○山崎氏  静岡県立こども病院こどもと家族のこころの診療センターの山崎と申します。静岡県の発 表をさせていただきます。今回はパワーポイントを使えないということでしたので、少し無 味乾燥な文章で失礼いたします。静岡県は児童精神科部門として、平成20年度に静岡県立 こども病院内に「こどもと家族の心の診療センター」を開設いたしました。この平成21年 度4月から入院部門を開設いたしまして、解放ユニット、閉鎖ユニット、それからハイケア ユニットという、かなり集中的な治療を行えるユニットを備えた複合型の病棟を開設したと ころでございます。この事業の拠点病院として、昨年度と今年度は、この県立こども病院の 児童精神科部門の機能強化を中心に事業を展開してまいりました。  まず、2の「事業実績と今後の計画」ですけれども、「診療支援」に関しましては、従来 は皆さまご存じのとおり、なかなかこの子どもの心の診療の部門については医療機関が非常 に少ないことで待機期間が長いということが、いろいろな地域で問題になっております。今 回は、この待機期間をできるだけ短くしようということと、緊急の受入れ枠で即日診察可能 な体制を整備しようということを診療支援の中核にしております。今年度の紹介患者の受入 れ人数は、8月段階で228件、新入院患者数は16件で、そのうち緊急即日入院が2件とな っております。これは平成22年度も引き続きこの体制をさらに充実させていきたいと思っ ております。なお、現段階での待機日数は大体2週間ぐらいで何とか患者さまを見ることが できております。何とか1か月以内を守っていきたいと思っております。  次に「医学的支援」ですが、実は静岡県は非常に横に長い地域でございまして、この心の 診療部門の充実度にもかなり差があります。西部地域は大学を中心として、かなり充実して いますが、東京に近い東部地域・伊豆地域は、一次医療機関が少ないということで、かなり 遠くから私どもの拠点病院を受診される方が非常に多いのです。したがって、東部地域で 我々が親御さんのための相談会を開くことで、少しトリアージをしていくことと、その地域 の医療機関や他機関につないでいくことで、少しずつネットワークをつくっていこうという ことで、東部地域での保護者のための相談会を行っております。8月までの時点では15件 の件数が上がっております。  それから、実は医療機関というのは、患者さまがいらっしゃらないと、それを支えている 学校の先生や保育士さんとお会いすることはできないわけですが、県内の養護教諭の先生た ちの調査から、我々に望みたいこととして、受診していない子どもについてのコンサルテー ションを、ぜひやってほしいという声がありましたので、それを受けて、そのような教師や 保育士のための相談会を開催しております。これは今、静岡県は思ったより少ないのですが、 実は学校側で守秘義務の問題等で事例を相談することに抵抗感があったり、どうしても日中 の開催になりますので、時間的な問題もあろうかと思いますが、その辺も踏まえて、もう少 し教育だけではなくて、保健師などのいろいろな福祉の方々のための相談会を来年度は拡大 していこうと考えております。  それから、来年度の医学的支援の一つとして、先週行われました日本児童青年精神医学会 でも話題になりました養護施設の中の子どもたちのケアは、やはり我々もこれから介入して いかなければいけない課題ですけれども、どこまでやれるかわかりませんけれども、来年は 少しそのような児童養護施設等の巡回相談というものに取り組んでみようと今、計画してい るところです。  それから、「医師等の派遣」についてですが、これは今年度、実は静岡県は精神保健福祉 センターを中心にCRTのチームが機能しておりまして、そこと連携する形で増員のスタッ フを派遣しましたが、直接的な要請はありませんでした。これも来年度も継続していく予定 です。  続きまして「連携会議の開催」ですが、静岡県は今、静岡市・浜松市という政令指定都市 が二つございます。その二つと東部・中央・西部・賀茂の計六つの児童相談所があるのです けれども、そこのスタッフとの連絡会議を今週の金曜日に開催します。実は大分虐待を受け た子どもの医学的な支援や、逆に我々から依頼をするケースが増えておりまして、精神保健 福祉法や児童福祉法、虐待防止法といった法律について、お互いに理解を深めたり、スムー ズな子どものケアにもっていけるための会議をこの事業でスタートしたいと考えておりま す。  その他、児童相談所や教育相談機関へのアドバイザーとして出かけております。  続きまして、2の「子どもの心の診療関係者研修事業」ですが、平成21年度は入院治療 の中でなかなか治療困難を極めます「強迫性障害の入院治療について」ということで、有名 な成田善弘先生に来ていただきまして、ケース検討及びレクチャーをお願いしました。今後 は全国児童青年精神科医療施設協議会の研修への出席を予定しております。その他の研修会 でも研鑽を積ませていただきたいと考えております。来年度も同じような計画を立てていき たいと思っております。  それから「講習会等の実施」ですけれども、一つは、学校の先生方、スクールカウンセラ ー、相談員の方々を中心とした「教師のための児童思春期精神保健講座」というものを年5 回、平日の夜に開催して、事例を出していただいて、コメントしたりミニレクチャーをする 会を開催しております。それから、県内医療関係者への研修を医師会委託事業として実施し ております。これも来年度も継続していく予定です。  それから「情報の提供と普及啓発」でございますけれども、ここがこれからの課題という ことになりますが、まず、今はこの拠点病院のいろいろな活動を知っていただくことにエネ ルギーを使っております。なかなかそこに苦労しているところですが、医療機関への情報提 供、それから心の相談会の情報提供を各関係機関へ行っております。そして、ホームページ によって、この事業についてお伝えしているところです。平成22年度は、もう少し踏み込 んでホームページ等で子どもの心の問題に関する情報提供を行っていきたいと考えており ます。  以上でございます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。静岡県における取組について、ご説明をいただきました。 総合的なディスカッションは、すべての府県の発表の後で行いたいと思いますけれども、こ の静岡県のご発表について、何かご質問・ご意見など、ございませんでしょうか。  どうぞ。 ○神尾委員  山崎先生、ご発表ありがとうございます。多彩な取組をしておられて、大変参考になるか と思いました。まずスタッフの構成について、人数や職種。これだけたくさんのことを通常 の業務も行いながらも可能なスタッフ構成を教えてください。  もう一つは、全国共通の問題である待機児童数ですが、先生のところでは短縮に成功され て2週間となった。どのような工夫が有効であったのかという点も教えてください。 ○山崎氏  二つのご質問に共通することは、どれだけマンパワーを確保するかということになると思 いますが、ただ今、こども病院の児童精神科部門は常勤5名、非常勤が2名、うち1名をこ の事業で緊急やいろいろなことのための枠として置いております。いつも医師は7名です。 新任職は4名がほぼ精神科専従です。それから、精神保健福祉司1名、作業療法士1名、看 護スタッフが多分21名、クラーク2名といった態勢でございます。  それまで実は私は県立の精神科の病院で児童精神科部門をやっていましたが、やはり成人 と両方やるとか、一般の診療をしながらやっていく中で、どうしても予約制で緊急事態に対 応しにくい状況になっていますので、今、何とか動ける人間を1人確保しているという形で、 かなり可能になってきているかなと思っています。前の病院にいたときは、1か月を守るた めには結局、自分の時間を削って雑用は全部夜に回すという形でやりくりしていたのですが、 今回、患者数は恐らく3〜4割増えていると思いますが、逆にそれぐらいの短縮になったと いうのが今のところの現状でございます。 ○柳澤座長  よろしいでしょうか。他に、ございませんか。  それでは、また後ほどディスカッションいただくとして、次に、三重県のご担当の方、よ ろしくお願いいたします。 ○山本氏  三重県の健康福祉部こども局の山本と申します。よろしくお願いします。 ○中島氏  三重県立小児心療センターあすなろ学園の中島と申します。よろしくお願いいたします。 ○山本氏  では、三重県の「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」の説明をさせていただきます。 三重県では小児心療センターあすなろ学園とともにこの拠点病院事業を進めてまいりまし た。まず、あすなろ学園の簡単な説明をさせていただきたいと思います。資料の順番が逆に なって申し訳ないのですが、6ページから始まる概要を見ていただきたいと思います。あす なろ学園は80床の定員を持っておりまして、第一種自閉症児施設で、児童精神科と入院児 が対象ですが、歯科、小児科ももっております。治療対象は発達障害、知的障害、情緒障害、 不登校児や被虐待児への治療、児童青年期等のあらゆる精神障害と心の問題を治療対象とし ています。  次のページですけれども「業務内容」としまして外来診療、入院治療、外来療育の中でも 幼児療育と学童療育とに分けて、グループ療育また親子療育、生活療育という形でやってお ります。もともとは、県立の精神病院の高茶屋病院の児童部門として外来療育を開始いたし ました。その後、第一種自閉症児施設として認可されて現在に至っております。  最初のページに戻っていただきまして、事業の内容です。平成21年度事業の概要ですけ れども、主に「診療支援・連携」と2点目に「研修事業」、3点目に「普及啓発・情報提供」 という形で、この3本柱でやっていきたいと思っております。まず、「診療支援・連携」で すけれども、1番目といたしまして「関係機関の個別事例に対する医療支援」です。県内に 5か所あります児童相談所のうちの3か所に定期的に、月3回ですが医師を派遣いたしまし て、相談業務を行っております。知的障害相談や性格行動障害、自閉症相談など、相談内容 また年齢等は多岐にわたっておりまして、児童相談業務に大きく関与していると思っており ます。  また、地域医療機関でのサテライトクリニックを開設しております。三重県は南北に長い 県でありますが、その中であすなろ学園は県の中央に位置しております。そこに定期的に通 う必要がある子どもも遠いのでなかなか通えない場合があります。その場合、特に南の方の 紀州の地域は交通機関も不便ですので、そちらの地域におきましてサテライトクリニックで 外来診療を実施しております。こちらは月3回です。2点目としまして、児童自立支援施設 のカンファレンスに対して、毎月医師を1名派遣しております。それから、特別支援学校に 対しても医師を派遣しております。  次に3ページの(2)ですけれども、教育・保健・福祉関係機関を集めて個別支援検討会を開 催しています。こちらは、外来通院中および入院中のケースについて、その子どもの個別の 関係機関、拠点病院の医師、ケースワーカーなどを交えて支援の方法を検討します。  (3)ですけれども、あすなろ学園の職員による保育現場巡回指導による早期支援の中で治療 が必要な子どもに対する医療支援ということですが、こちらは、あすなろ学園で「子どもの 発達総合支援室」をつくっておりまして、こちらが県内保育所や幼稚園を巡回指導していま す。ここでは保育現場において、発達障害などの診断を付ける前の気になる子どもを早い段 階で保育士さんたちが中心になって発見して、適切な支援を早めに行って、子どもたちの困 り感を少しでも解消してあげることを目的としています。その現場で指導や症例検討を行う ことで、保育士等が早期発見・早期支援のスキルを身に付けることも目的としております。 幼児期から就学期において、発達障害を含む気になる子どもに対する周りの支援が途切れて 困るということがよくありますので、市町において途切れのない支援システムを構築するよ うな支援も行っています。  そこで、治療が必要な子どもが出てくると思いますけれども、その子どもたちに対しては 医療的な支援を行うという役割も拠点病院で行っています。  (4)ですが、虐待等を受けた子どもの一時保護委託入院、(5)としまして、地域のクリニック から紹介を受けて診察したり、院内の症例検討会に小児科医に参加してもらったり等の医学 的支援を行っています。  次に「関係者研修」ですけれども、精神科医師や小児科医師に対しての研修としまして、 県内の病院からあすなろ学園での研修を受入れたり、それは1か月研修などいろいろな形で 受入れるのですけれども、長いものでは1か月、週1回という形での研修も受入れたり、見 学等も受入れています。  次に、保健師、保育士、教員等の研修ですけれども、これは先ほど申し上げましたように、 巡回指導の中でももちろんスキルを身に付けることができるのですけれども、気になる子ど もに対するより専門的なスキルを身に付けてもらうためには、なかなか短期間では難しいで すので、あすなろ学園に1年間来ていただいて、現場研修や学園内での症例検討会などに参 加していただいて診断がつく前の子どもたちを地域で支援するスキルを身に付けていただ くという研修も行っています。  3番目は「あすなろシンポジウム」を毎年開催しまして、子どもの心の諸問題に関して、 広く情報の提供を行います。今年度は不登校・ひきこもりを中心としたテーマとしまして、 医療・福祉・心理・教育の関係者や一般県民に対して講演をすることで啓発をしました。  今後の計画ですけれども、子どもの心の診療拠点病院として地域との連携をより一層深め ていきたいと思っておりますことと、平成22年度には、情緒障害児短期治療施設が三重県 にもできることになっておりますので、そちらとの連携も図っていきたいと思っております。  また、発達障害の関係ですけれども、あすなろ学園で療育プログラムというのも、もちろ ん病院などでやっているのですけれども、そのプログラムを地域にも一部移行して試験的に やっていって、市や町で小さな形であすなろ学園の機能が担えたら、あすなろ学園へ集中す る子どもたちも分散していけるのではないかと考えております。  以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。今、三重県における取組について、ご説明いただきまし た。何かご意見・ご質問はございませんでしょうか。  今日は時間がたっぷりありますので、ぜひ、活発なご議論をいただきたいと思います。ど うぞ。 ○神尾委員  ありがとうございました。先ほどの静岡県の山崎先生のご発表とも共通するのですけれど も、地域の保育現場に医師が出向いて、現場のスキルアップや、医療につなげやすいように 気づきを高めるために指導するといった取り組みをしていらっしゃいますよね。その事業の 目標は、現場の保育のリーダーを育て、さらにその方がリーダーとして他の保育士たちに指 導ができるといった、中・短期的な人材育成を狙っているのでしょうか。それとも、そうい ったある時点になれば現場に出ていく事業が終結するのではなく、ずっと連携活動として続 けていくといった種類の取り組みなのか、その辺を教えていただきたいのです。つまり、今 の緊急事態への短期的目標としての現場での人材育成に向けて本来は病院にいるべき医師 が定期的に現場に出向いているが、これぐらいになると頻度を減らしてもよい、あるいは撤 退してもよいとか、どの辺りを目標にされているのですか。 ○中島氏  今、ご質問いただいている保育園や幼稚園に対しての巡回指導については、主として常時 医師がついてという形ではなくて、むしろパラ・メディカル、例えば病院にいる保育士や教 員、看護師が巡回に行って、主に気になる子どもをまずチェックする仕方であったり、それ に対してのより具体的な指導方法を説明させていただく形で今はやっていて、長期的には今 DVDでチェックリストを作っているので、できれば個々の保育園で中心となるような方を つくっていただいて、徐々にそちらでやっていただけるようにと考えています。 ○柳澤座長  どうぞ。 ○澁谷委員  ありがとうございます。資料の3ページの下の(5)「家族統合を含む地域での医学的支援」 と書かれているところですが、ここで相手側の連携する医療機関が幾つか挙がっているので すが、これは家族統合を考えるという非常に難しいことをしていただくのに協力をしていた だく医療機関ということになるわけですね。それを考えると、相手方の医療機関は何か基準 や資格のようなものがあるのか。あるいは、拠点病院の研修を受けてもらわなければ駄目だ とか、そういう条件があるのか。どのようなところを選ばれるのか。ただ例えば主治医なら よいとか学校医ならばよいということで、やっているのか。学校医と主治医はまた別のこと もあるでしょうし、その辺の地域の医療機関との連携という辺りで、どうやって地域側の医 療機関の資質を確保しているのかを聞きたいのですが。 ○中島氏  はっきりした基準は設けていないのですけれども、ただ通常連携を取らせていただいてい るのは、以前私どもの病院に在籍されていた先生が地域でクリニックを開業されている方が 数名おられますので、そちらとの連携であったり、もう一つは三重県で「子どもの心の診療 医」の研修会を年に2回ほど行っているのですけれども、そちらに地域の精神科病院の先生 方で、児童精神科に興味のある先生がみえるので、お互いに連絡を取り合いながら、緊急例 であれば当院に入院という形で受入れたり、もしくは虐待例の場合で親御さんを診療しなけ ればいけないときには、そういう子どもの診療に対して理解のある先生にお願いしていくと いう形、もしくは新規の症例でなかなか子どもの病院で難しい場合は、そちらにつないでい くという形の連携を主に取っています。 ○澁谷委員  そうすると、それがリストのようになって一応ネットワークをつくるというか、連携をす る社会資源として認識されているということでしょうか。 ○中島氏  最初に申し上げたように、はっきりしたそういう基準とかリストという形ではなくて、そ ういう研究会をしているような感じの個人的なネットワークの中でという部分が、将来的に も正式なネットワークになればという感じで、現状ではさせていただいています。 ○澁谷委員  先生としては、将来的にそれをネットワークという形にもっていきたいという足掛かりと いう感じで考えているということですね。 ○中島氏  そうですね。その研究会というか研修会のようなものを。 ○柳澤座長  どうも、ありがとうございました。他に、ありますか。どうぞ。 ○丸山委員  プレゼンテーションをありがとうございます。最初の静岡県のプレゼンテーションとも関 連するのですが、児童相談所から病院に、いわゆる治療目的でお願いするケースは東京都の 場合でも20件を超えているのですが、この虐待を受けた子どもの一時保護委託の基準、そ れから静岡県の山崎先生のご説明の中に、いわゆる児童相談所と病院の間で精神福祉法、そ れから児童虐待法、児童福祉法と入院の根拠法令の理解の共有という部分で、病院側として の判断を教えていただきたいと思います。それから被虐待児童の一時保護委託のケースはど れぐらい現実的にあったのか。あとで教えていただきたいと思います。 ○中島氏  非常にその辺は難しいところなのかなと思います。ご質問をいただいて、非常に大事なと ころなのですが、入院を受けるか受けないかの基準というのは、当然ケースごとの危険度と いうか、子どもの危険度もしくは今出してきている症状の重篤性であったり、家庭の基盤の ことであったり、いろいろ考えていく中で考えないといけないことと、もう一つはどうして も病院側の状況として、入院病床の空きの状況等がありますので、一応私どもの場合は入院 を決めていく院内での会議がありまして、それに上げた中で児童相談所の嘱託医の先生にも 参加していただいて、そこで討論し合って、最終的には決定をしていく形になっています。 実際の一時保護委託という形は、今年度は実質その法令として精神科の病院の医療保護なり 入院なりという形と、もう一つ児童福祉法の措置もしくは契約という形等がある中で、どう しても一時保護にしなければいけないというケースはさほどなかったので、多分数例だった という、私も全例を把握していないのではっきり数字は言えないのですが、そういう形だっ たかと思います。 ○柳澤座長  静岡県の山崎先生。 ○山崎氏  とても大事な問題で、静岡県は一昨年にそれぞれの部門の病院局長、それから障害者支援 局長、福祉こども局の局長と私とで実際にどうしていこうかというミーティングをしまして、 精神科の病棟で入院を引き受ける以上は、精神保健福祉法上の入院形態を取らせていただく。 ただし、一時保護委託の場合も一時保護委託かつ例えば一時保護入院という形でやっていく ことと、問題は保護者をどうするかということで、これは担当の本庁の方々とも問い合わせ をしていますが、結論は出ていないのですが、特に一時保護委託28条による入所というあ る意味監護権を、その施設長なり児童相談所長がもっているケースについては、特に医療に ついて保護者が医療を受けることについて拒否しているケースに関しては、市町村長同意の 一時保護入院も選択肢として考えようということで大まかな話し合いをしているところで す。そこを今後は、今週の児童相談所との連絡協議会の中で具体的にこういう事例はこうし ていこうということを進めていこうと思っています。  現在は一時保護委託で入院しているケースはそんなに多くはありません。年間私どもの病 院でも本当に1、2件だと思います。それからいわゆる27条措置、28条措置中に医療保険 を使って入院されるケースが何件かあるという現状で、今後この三つの法律の埋まっていな いところをどうしていくのかを改正の時期にうまく盛り込んでいただけると、非常にありが たいと思っています。ちょうど幾つかの法律の見直しの時期が重なってくると思います。最 初は確か福祉の法律が先だと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思っています。 ○柳澤座長  大変重要な問題について、三重県、静岡県に状況をご説明いただきました。他にあります でしょうか。  もし、ないようでしたら、次に大阪府のご担当の方、報告をお願いします。 ○釘田氏  大阪府地域保健感染症課の釘田です。よろしくお願いします。 ○柴田氏  大阪府立精神医療センター・松心園医師の柴田です。今日はよろしくお願いします。大阪 府における事業展開ということで、まず大阪府立松心園についてご説明します。外来部門は 専属常勤医が5名、精神医療センター医師が2名、非常勤医4名の11名で現在外来部門に 当たっています。そこに書きましたように、精神保健福祉士、心理士、看護師、保育士、指 導員といった多職種が連携して治療に当たっています。また再診・初診とも待ち時間を最小 化するために完全予約制としています。数は平成20年度の外来初診者数が505名で、うち 発達障害確定診断が385名、残りの120名が枠外初診ということで、待てない方たちを枠 外という形で見ています。のべ外来受診者数は再診も含めて9,006名となっています。診断 主病名としては第1種自閉症児施設というところで、広汎性発達障害圏が9割を占めていま す。受診年齢のピークが5〜7歳、受診は18歳までとしています。隣に大阪府の基幹精神 科病院であります大阪府立精神医療センターがあり、そちらに思春期科がありますので、そ のように分けられています。残念なところですが、平成20年度末の確定初診待機者数は618 名で、現在のところ確定初診の待機としては約1年半の待機を生じているところです。  次に入院部門ですが、第1種自閉症児施設としての児童福祉法に準拠した部分と同時に精 神科病棟として精神保健福祉法に準拠した部分、二つの顔を持った入院病棟となっています。 完全閉鎖病棟として運用定数は25床です。先ほど申し上げたように、隣に思春期病棟があ りますので、就学前児童から主に小学生年齢の子どもが対象になっています。一部MRの ある中学生年齢の児も受け入れています。刀根山支援学校の院内分教室がありまして、病弱 時支援学校ですが教育の保障ができるようになっています。また子どもの状態に応じては、 地域の小中学校や、MRのある子どもに関しては寝屋川支援学校への通学も可能となってい ます。入院時の主な類型としてそこに三つ挙げていますが、まず学校・家庭適応が困難で、 生活破綻を来した広汎性発達障害圏内の子ども。それから障害受容の困難な家庭において被 虐待状況となった発達障害児。また保護者からの虐待によって精神科的治療を必要とする症 状を来した児ということで、3番の子どもに関しては次にありますように、大阪府の子ども 家庭センターと連携して入院治療を設定するケースが多くなっています。先ほどからもお話 が出ていますように、一時保護所を補完する医療型一時保護所として大阪府の中で機能して いる面があるかと思います。入院数ですが平成17〜20年度の入院はのべ170ケース。平均 年齢が9.2歳、男女比は4.15と男子がかなり高い比率になっています。被虐待率は42.4% です。診断的には自閉症圏が最多で57%になっています。入院治療も先ほど申し上げたよ うに、多職種でチーム医療として行っています。  次に拠点病院としての機能に話を移しますが、それまでも松心園の外来部門・入院部門と して専門的子どもの心の診療機関としての特別な外来機能を持っていたことを挙げますと、 一般医療機関からの重症例・難治例の紹介への対処、それから親御さんに対する外来ケア、 家族療法の実施をしていたことなどが挙げられると思います。それから、緊急入院診療機能 としては、適用は非常に慎重に選んでいますが、強度の問題行動を持った子どもの閉鎖病棟 入院が可能であること。それから神経性食欲不振等の医療ケアが必要な子どもの入院、虐待 を受けた子どもの一時保護委託入院などが挙げられると思います。このようなことから今回、 都道府県拠点病院として私ども松心園を選んでいただけたのではないかと思っています。  次に、大阪府における事業展開としては、そこに挙げました六つを考えています。まずは 大阪府庁での施策共同会議、2番目としては事業の普及・啓発のための活動、3番目として 子ども家庭センター・児童福祉施設とのネットワーク構築に関する活動。今、この3番目に 関して一番重点的に動いています。4番目は府下児童精神科関連医療機関のネットワーク構 築に関する活動。一応関連医療機関として20機関ほど挙げていまして、そちらとネットワ ークをとり、医療活動を行っています。それから発達障害児治療・療育のネットワーク構築 に関する活動。6番としては新たな治療技法・システムの開発に関する活動という六つの柱 で考えています。  まず1番の大阪府庁での共同会議に関してですが、3回の施策共同会議を計画していまし て、年間3回大阪府と話し合いを重ねていくことを考えていますが、これがお互い忙しくし ていまして、なかなか実現が難しい状況で進んでいますので、今後この辺りを考えていきた いと思っています。  次のページの2番「事業の普及・啓発のための活動」ですが、まず平成21年度の事業計 画としてはその下にありますように、それぞれ対象を分けてセミナーの企画を考えていきた いと思っています。まずは一般医療機関への支援を目的としたもの。また、教育関連機関へ の支援を目的としたもの。保健・福祉関係者向けのセミナーなどを考えています。それから、 一般府民向けの講演の企画ということで、一般の府民の方々に広く私たちが普段している仕 事ですとか、子どもの児童精神科関係の講演ということで企画したいと思っています。また 児童虐待や発達障害、子どもの心の問題に関する一般啓発用のパンフレットを作成する予定 で今年度は当たりたいと思っています。  次のページですが、平成20年度の実績としては、まず9月にこちらの診療拠点事業を受 けさせていただいた記念講演として、あいち小児保健総合医療センターの杉山登志郎先生を お呼びして、「子ども虐待のために医療は何ができるか」ということで、900人あまりの聴 衆の方に来ていただいて、講演を行っていただくことができました。それから、府民公開講 座としては、松心園医師が「キレるこどもの理解について」ということで、府民公開講座を 行うことができました。随時松心園の普段の診療行為と合わせられるところもあるのですが、 待機患児に、先ほど1年半待ちの待機があると申し上げたのですが、待っていただいている 間に親御さんに対しての発達障害に対する講義、それから、学校や保健センターから松心園 医師に話をしてほしいという講演依頼が来たときにお受けするようにしています。  次に「子ども家庭センター・児童福祉施設とのネットワーク構築に関する活動」ですが、 先ほど申し上げたように今、これを一番の柱として事業を進めています。児童虐待への対処 のためのネットワークづくりを事業の中核に据えて展開するということで、現在医師・看護 師・精神保健福祉士・心理士・保育士からなる混成チームで医療巡回相談を実施しています。 事業としては、子ども家庭センタからケースを挙げていただきまして、ケースを挙げていた だく対象としてはそちらにありますように、乳児院・児童養護施設・知的障害児施設・重症 心身障害児・情緒障害短期治療施設、自立支援施設。大阪府の場合は約40か所このような 施設があるのですが、そちらの方から現在困っているケースを挙げてもらいまして、月1 回ワンクール6回のセッションですから、一つのケースに対して半年間をかけまして、月1 回ずつ、先ほど述べました混成チームがなるべくすべてそのチームが欠席することなく6 回通うということを前提に通わせてもらっています。なかなか子どもに対して「このように 子どもに対応したらよい」というよりは、どうしても施設の担当の先生方は非常に大変な子 どもを抱えて疲れたり、どのようにかかわったらよいのだろうというところで日々大変な活 動をされているので、どちらかというと施設スタッフを支援する形で今のところ事業を進め ています。平成20年度は始まったのが10月でしたので、年度をまたいだ形になったので すが、計6か所。児童養護施設が5か所と情緒障害短期治療施設1か所に対して、のべ36 回混成チームによる巡回相談を実施することができました。大体1回の相談が1時間半から 2時間の相談で行っています。平成20年度は医師の大阪府下子ども家庭センター・一時保 護所への出張相談業務をのべ回数42回行いました。  次の「府下児童精神科関連医療機関のネットワーク構築に関する活動」ですが、先ほど述 べましたように、約20機関の医療機関があります。平成21年度の事業計画としては、平 成20年度医療機関とのネットワーク構築という形で事業を推進することができなかったの ですが、平成21年度は医療機関とネットワークをとりまして、どちらかというと紹介シス テム、セカンドオピニオン外来を新設することですとか、松心園は先ほど申し上げたように 入院機関を持っている医療機関と位置付けられていますので、入院が必要な子どもに対して 医療を提供するという形で、ネットワーク構築を進めていきたいと思っています。また、虐 待例が関連医療機関にもいっているという話も聞いていますので、臨床実態について調査し たいと思っています。  平成20年度の実績としては、1年半の確定初診待ちがあると言いましたが、待てない症 例は枠外初診という形で、大体2週間から一月以内に枠外初診という形で、松心園に受診し ていただくという形を取りまして、平成20年度は113件の枠外初診を受けることができま した。また、医療・療育等検討委員会への出席を平成20年度は実施しています。  それから5番目は「発達障害児治療・療育のネットワーク構築に関する活動」ということ で、大阪府では既にアクト大阪(大阪府自閉症・発達障害支援センター)が既に巡回相談とい う形でいろいろな保育所や幼稚園に出向いて、療育に関しての指導巡回相談に当たっていた のですが、その活動の中で医療が必要な子どもをアクト大阪から紹介を受けて枠外初診で受 ける形になると思いますが、松心園でも医療機関としてその活動に参加するということを進 めていきたいと思っています。  また府下6か所に自閉症児療育拠点機関があるのですが、先ほどの児童養護施設に対する 巡回相談チームと同じようにチームをつくって、難治ケース療育への助言を行っていこうと 考えていますが、今のところまだ実施はできていません。また、将来的にはその6か所の自 閉症児療育拠点機関で療育に当たったケースの中で、困難ケースに対する特殊な療育を行っ てほしいという声も挙がっていますので、そちらの方に私どもの療育を展開していけばよい のではないかということで、平成20年度の実績としてその下に挙げていますが、ちょうど 平成25年度に私どもの松心園、それから精神医療センターの建物が立替えになりますので、 その建物立替えと同時に難治ケースに対する療育を行っていくということで、現在院内にど のような療育を行っていけばよいのかということで準備委員会を設置しまして、いろいろな 意見を出し合って、また6拠点からも意見をいただいて、どのような療育に対する助言や医 療活動ができるのかを考えていこうと思っています。それから難治ケースに対する関係者会 議が行われるところに私どもも主に医師が中心になるのですが、出向いて会議に参加してい ます。  次のページの6番は、「新たな治療技法・システムの開発に関する活動」ということで、新 たな治療技法にキャッチアップしていくために、先進的治療を行っている他の医療機関から 講師に来ていただいて講演をしていただいたり、私どもが出張して行って医療機関の見学を させていただいたりする研修を実施しております。また、子ども虐待への医療対応を進める ために、厚生科学研究虐待治療班と共同し、研究を進めさせていただいております。  次のページの平成20年度の実績としましては、職員と入院児童に対しまして「性教育の 中で伝える暴力」と題しまして4回の教育公演を実施することができました。子どもたちに わかる形で、何が良いのか何があまり良くないのかという形で性教育を行うことができまし た。また、職員の講演としましては、そこに挙げました3回、それぞれの先生をお呼びして 公演を行っていただくことができました。また、厚生科学研究虐待研究班として「松心園に おける被虐待児の入院治療」ということで研究班に参加して資料を作る活動に参加させてい ただきました。  また、最後ですが次のページです。出張研修といたしましては、そこに挙げますように埼 玉県立小児医療センター、国立成育医療センター、長崎カメリア大村共立医療センター、肥 前精神医療センター、豊田市子ども発達センターに、医師だけではなくて心理士・看護師・ 保母・指導員の多職種で伺わせていただきまして、出張研修を行うことができました。  以上です。 ○柳澤座長  ありがとうございました。ただ今の大阪府の取組につきまして、どなたかご意見・ご質問 はございますでしょうか。どうぞ。 ○南委員  ありがとうございました。1点伺いたいところがあるのですが、枠外で緊急で診ている例 と一般的に平均して1年半くらい待機してもらう、そこの境目ですが、これはどなたか医療 者が医療的に待ってもらえるかどうかという判断をしているのか、それとも単に親がもうこ れ以上は持ちこたえられないという、家庭の中での暴力とか、そういった素人目の判断なの か、そこを伺いたいのですが。 ○柴田氏  枠外初診はいろいろなところから、もちろん親からの話もありますし、子ども家庭センタ ーからの話もありますし、学校からもあります。いろいろな話をまずはケースワーカーが電 話で受けてくれるのですけれど、それをすべて医師に回してもらって、医師の判断でこのケ ースは待っていただくのは無理だろうという、どうしても早く診なくてはいけないケースは 枠外初診で、医師の判断で。もちろんどのケースもお電話いただいたところには直接医師が 電話をかけてお話しさせていただいているのですが、その上で、やはり今、確定初診で待っ ていただいている方と同じ条件下で待っていただくようにお願いする場合もありますが、大 抵は枠外児というか、急がなければいけないケースが多いので、確定初診に回していただく ケースは今のところ数的には30例に1例くらいとなっております。 ○南委員  お話だけ伺っていますと、これが全国的にも同じような状況なのかどうかわからないので すけれども、今のところ生命の危機に関する救急医療については国民が非常に関心を高めて いるわけです。こういう問題を抱えている子どもにとっての1年半というのは、はっきり言 うととてつもない期間ですから、これは命の救急と同じような次元でやはり考えていかなけ ればいけないと思いますけれども、医療的には1年半というのはいかがなのでしょうか。 ○柴田氏  1年半というのは私どもも何とかしたいと思います。それまで実はもう少し待っていただ いていたのを、やっと医師・心理士の数を拡充してもらい、1年半にできているのですが、 決して1年半に満足しているわけでもないです。ただ、大阪府の場合は、他に発達障害の子 どもに関しましては先ほど20の関連医療機関があると申し上げましたが、そちらで既に診 察を受けていらっしゃって、セカンド・オピニオン的に松心園で診断を受けたいという子ど もも含まれています。そのような事情をもう少しお汲み取りいただいて、ご理解いただけた らと思います。申し訳ございません。 ○柳澤座長  ありがとうございました。他に、ありますでしょうか。神尾委員どうぞ。 ○神尾委員  今の南委員とも関係するのですが、松心園はとても歴史が古く、入院施設があるので、以 前たいへんお世話になりました。このように歴史のあるところ施設が新しく対象を難治ケー スへと今、明確に転換を打ち出しておられて、これから取り組む方向が明確に見えました。 これは他の施設にも参考になると思います。そこで、外来機能ですが、大阪というと人口も 大きくニーズも大きい。これだけの医師を抱えていてもなお外来診療でニーズを十分に消化 できない状況はとてもよくわかるのですが、待機時間が長い。高次医療機関としてこれだけ 入院や療育に関してはケースを選んでいこうと取り組まれていますけれども、外来について は初診を除いても主として幼児ケースで年間8,500人ということは、単純計算すると1日 30人弱になるのです。しかも主診断がPDDで、定期通院というとまず主訴が何だろうかと か、もちろん合併でややこしいケースがあるのかもしれないのですけれども、実態はどうな のでしょう。その一方で、今後の外来機能の目標としてあらたな活動を通して、ニーズの掘 り起こしを図ってさらに紹介システムを開拓もされているので、ますます外来患者が増える ことが予想されます。となると双方向的に紹介システムをつくっていかない限り、いくら医 師を増やしていってもどんどん待機ケースは増える一方で構造的にこの問題は解決不能な のではないかと危惧します。ですから、外来のところは少し目標が明確ではない。頑張って いらっしゃるのはもちろん重々承知しているのですけれども、現状の8千何百人のどういう ケースに絞るのか、松心園が今後期待される外来機能の役割は何か。現在巡回指導されてい るクリニックに患者を紹介して、松心園はスーパーバイズなどに移行していくのか。そこの 方向性についてどのような予測をお持ちなのかお聞きしたいと思います。 ○柴田氏  神尾委員にご指摘いただいたとおり、再診をどうしていくかということをちょうど私ども も考えておりました。再診はいろいろなケースがあるのですが、やはり投薬治療が必要な例 などで1か月に1回薬を取りに来ていただいて、その薬の効果であるとか、薬を飲まないと なかなかコントロールできないような子どもの場合はやはり1か月に1回は少なくとも来 ていただかなければいけない。2週間に1回来てもらっている子どももいる中で、そういう 子どもと同じような形で親だけに来ていただいて最近の様子をお聞きするというようなケ ースが並存しておりますので、ちょうど神尾委員のご指摘のとおりに再診医療を見直すと、 もう少し高度医療機関としての医療行為ができるのではないかということを考えておりま して、その辺りをどうにかしなければいけない。ただ、実際に今来てくださっている患者を、 どこかに紹介してという形もなかなか難しいので、その辺りをまた私どもも考えていかなけ ればいけないとは思っておりますし、神尾委員のご指摘のとおり、今後高度医療機関を目指 すのであれば考えていかなければいけない。今、申し上げたように他の20の関連医療機関 との連携が、私どもも日ごろの医療行為で忙しいですし、他の医療機関もお忙しくされてい る中で、なかなか連携が取れないというか取りにくい状況をもう少し改善していかなければ いけないとは思っております。 ○柳澤座長  ありがとうございました。他に、ございますか。よろしいでしょうか。また後ほどディス カッションの時間を取りますので、そのときにお願いします。  それでは、次に長崎県の担当の方にお願いします。 ○中林氏  長崎県の障害福祉課からまいりました中林と申します。よろしくお願いいたします。長崎 県の取組につきまして、資料に基づきましてご説明したいと思います。長崎県の場合は、一 つの医療機関に拠点病院としての機能を担っていただくという方式ではなくて、四つの医療 機関による群を作っていただいて、そちらの方で拠点病院的な機能を持って事業を推進して いただくという方法を取っております。その四つの病院につきましては、それぞれ県内には 子どもの心の診療を行っている医療機関はたくさんありますが、そのうち特徴がある病院と いうことで四つを選び出して、四つの病院でやっていただいております。  本日お配りさせていただきましたポンチ絵をご覧いただければと思います。まず拠点の病 院群といたしまして、こちらのポンチ絵の上の方に書いています四つの病院群のうち、「長 崎県こども医療福祉センター」につきましては、県立の病院になっております。こちらの病 院は自閉症・発達障害支援センターを併設しておりまして、てんかんや発達障害、心身症の 児童に対する治療を専門として行っている医療機関になっております。  それから「長崎大学病院」と書いてありますが、大学病院はご存じのとおり研究科や教育 施設が充実しておりますし、また合併症や希少事例、特殊事例に対する高度な総合医療が提 供されるということで大学病院に入っていただいております。また、左下の「長崎県精神医 療センター」は県立の単科の精神科の病院でございます。こちらにつきましては、主に中学 生以上の思春期の患者や、重度の行動障害を有します児童の治療に当たられているというこ とで入っていただいております。また、精神医療センターにつきましては、精神科の救急医 療施設ということで夜間や休日の緊急対応も行われ、高度な精神科の医療が行われていると いうことで参画していただいております。  左上の「カメリア大村共立病院」につきましては、四つの病院のうち唯一民間の病院に入 っていただいております。こちらは児童思春期病棟をお持ちで、また情緒障害児の短期治療 施設や被虐待児の機能不全家庭で育った児童の情緒や行動の障害を含めた部分につきまし ても診られる関連法人が運営されている施設もございますので、こちらに入っていただきま して、この四つの病院で群を作っていただいています。またカメリア大村共立病院は、先ほ どの県立の精神医療センターに比べまして、小学生以下の低学年の方を診られているという 特徴を持っているということで、この四つの病院ということで事業を進めていただいており ます。またポンチ絵の下の方に書いてあります「子どもの心の診療拠点病院連絡協議会」と いうものも設定させていただいております。こちらには先ほどの四つの病院に加えまして、 長崎こども・女性・障害者支援センターがメンバーとして入っております。この長崎こども・ 女性・障害者支援センターにつきましては、長崎県が運営しております出先機関になってお りまして、児童相談所、婦人相談所、精神保健福祉センター等の五つの機関が統合された一 つのセンターということで運営されております。そちらに連絡協議会のメンバーに加わって いただき、また長崎大学大学院からもご参加いただきまして連絡協議会という組織となって おります。また、この事業に関しましては、こちらの連絡協議会がすべて運営をつかさどる ということで、この連絡協議会の中で物事を決めていただいて事業の展開を行っているとい う形になっております。こちらの連絡協議会の事務局は大学病院に設置し、そちらでお願い するということになっております。また、その下の方に書いてあります「長崎子どもの心の 診療研究会」は、先ほどの部分すべてを包括した上に、県内にございます他の医療機関やそ れぞれの医療に関する機関等に入っていただき研究会を組織していただくということと、そ の事務局につきましては大学院でつかさどっていただいて、そちらで運営していただくとい う組織体制になっております。併せて、県内地域の福祉・教育・療育機関関係を統合した部 分での事業展開でこの事業を進めるということで今、事業を行っているところでございます。  続きまして、事業の内容をご説明したいと思います。事業内容につきましては、まず「子 どもの心の診療支援(連携)事業」ですが、「専用窓口の運営」といたしましては、四つの病 院がそれぞれ相談を受けることになりますので、四つの病院それぞれできちんとした対応が できる担当者を定めて受付をし、該当しない案件についてはきちんと対応できる病院につな いでいくということで運営を図っております。また、次の「合同カンファランス、スタッフ 学習会」につきましては、これは運営協議会を組織している医師を含めた医療スタッフ関係 の勉強会・学習会ということで、年2回開催しようということで企画されているものです。 平成21年度につきましては9月6日に、以下のような内容に基づきまして既に1回、学習 会・研究会、カンファランスが行われているところでございます。「連絡協議会の開催」に つきましては、先ほど申しましたように連絡協議会が要となる協議会になっているものです。 実はこの事業につきましては平成20年11月から実施しておりまして、具体的な事業が動 き出したのはほとんど本年度に入ってからということになるのですが、一応平成20年度に つきましては3回開催し、平成21年度につきましては今のところ3回開催され、運営内容 につきましていろいろな協議がなされています。それと申し送れましたが連絡協議会に入っ ていただいていますメンバーといたしましては、先ほどの病院・医療機関の院長・副院長、 大学でしたら教授・准教授に協議会の中に入っていただきまして、ほとんどのことはその中 で決定されていくという形で運営がなされているところでございます。子どもの心の診療研 究会につきましては、一応合同カンファランスをスタッフの学習会と併せて開催するという ことで、まだ今年度に入って特段これという実施は行われていないところです。また、当初 の予定にはなかったのですけれども、研究事業といたしまして、長崎大学病院が中心となり 「中学生のサイコーシス体験の分子遺伝学的検討に関する研究」を行いたいということをこ の協議会の中で諮り、大学の倫理委員会の承諾を得られれば実施しようということで、承諾 されていると伺っております。  続きまして「子どもの心の診療関係者研究事業」につきまして、長崎県の場合は(1)〜(5)の 五つの種類の研修を実施する予定にしております。1番目の「専門医養成研修」につきまし ては、長崎大学病院の研修にリンクした専門医の養成を行おうということで取り組んでいる 事業でございます。こちらの事業につきましてはもう一つ、ポンチ絵ではなくてパンフレッ トの白黒の両面刷りのものをお配りしておりますので、こちらをご覧いただければと思いま す。これは実は二つ折になっておりまして、既に大学院で全国に募集をかけられたときのパ ンフレットのコピーになっております。窓口といたしましては、先生が子どもを抱いている 写真の右側ですけれども、「長崎大学病院 医師育成キャリア支援室」というところが直接 窓口で、こちらの方で募集をかけて、もし応募があれば平成22年度4月からの養成コース の実施ということで今、企画準備がされているところです。続きまして2番目の「学校医・ かかりつけ医研修」、3番目の「メディカルスタッフ研修」、4番目の「教職員研修」、5番目 の「行政職員・地域ケアワーカー研修」につきましては、下の方になりますが、案といたし まして今年度は若干遅い時期になりますが来年2月28日に、こちらに書いておりますよう に4時間程度を使った研修会を実施しようということで、もう会場も押さえて準備をしてい るところでございます。また、これは今年度行う予定ですが、昨年度は3月19日に行政職 員と地域ケアワーカー研修ということで、これは11月にこの事業が始まって日にちが短か ったということがございまして、ぎりぎり3月に1回研修会を開けたという形で研修を行っ ております。また6番目の「定期相談会」につきましては、長崎県立こども医療福祉センタ ーと長崎精神医療センターにおいて、定期相談会を実施すると連絡協議会の中で決定されて おりますので、今後定期的な相談計画を立てて実施されると伺っています。  3番目の「普及啓発・情報提供事業」につきましては、啓発事業としましてパンフレット・ ホームページ作成等ということで、参考に1枚、カラー刷りのものをお持ちしています。「啓 発パンフレット作成、配布(21年度)」としておりますが、これは平成20年度の事業でござ います。昨年3月にこのカラー刷りのパンフレットを、以下に記載しておりますように約3 万部ほど配っております。配付した対象といたしましては、学校関係であれば教職員の数、 それと幼稚園・保育園でしたら保育士等の数を県の統計課で組織ごとに調べ、各1人に1 部渡るようにという考えでパンフレットを配っているところでございます。ホームページに つきましては、現在既に作成し、アップして運営しているところです。  以上です。 ○柳澤座長  ありがとうございました。ただ今の長崎県の取組についてのご発表に対して、ご意見やご 質問がございますでしょうか。  それでは、ここまで静岡県、三重県、大阪府、長崎県から、それぞれ取組についてご発表 いただいたわけですが、全体を通して何かご意見はございませんでしょうか。今までも個別 にご質問やご意見がございましたけれども、全体を通じて、あらためてもう一度ディスカッ ションがあれば承りたいと思います。どうでしょうか。 ○神尾委員  ご発表ありがとうございました。長崎県のように分散した病院を取りまとめて連携して拠 点にしようとしている取組や、歴史的に違う役目であった施設を母体として新たな命をとい う取組などいろいろな地域のご事情がある中で、私が先進的だという印象を受けたのは、静 岡県の新設の小規模の入院ユニットと外来についてのお話でした。専門外来として、教育と の連携を意識しているようですし、不登校や特別支援教育にうずもれている医療的ニーズを 持つ患者紹介が教育からもアクセスしやすいように新設されたのか、経緯について教えてい ただきたいです。 ○山崎氏  私自身は静岡県に赴任して10年あまりですけれども、やはり子どもの心の診療は一般の 身体診療と違っている。一般身体医療ですと、かかりつけの医師などを通して一次医療から 二次医療という流れがあると思いますけれども、やはりこの領域の場合には、普段子どもと つき合っている学校の先生方や保育士たちが大勢の子どもを見ている中で心配になって、親 と良い形で受診を進めていかれるというルートが非常に多いと思います。そういう意味で、 学校あるいは幼稚園・保育園と病院のルートというのはとても大事だろうと思っておりまし て、特に学校との連携にはずっと力を入れてきたところです。ただ、実は子ども病院に移っ てから地域医療支援病院ということになって、紹介率の問題がございまして、実は学校の先 生からの紹介がストレートに受けられなくなってしまいました。その辺が今はネックで、逆 に学校医の先生方や地域のかかりつけの医師に一次的に診ていただくようなシステムに変 えるチャンスにしていきたいと思っています。そうしていかないと、結局先ほど神尾委員の お話がありましたけれども、どこで返すか。結局返せる場所がなくて、これまで非常に困っ てきましたので、そういった意味でも一方では教育との連携も大事ですけれども、いわゆる 小児科の医師とかかかりつけの医師との連携というものも、やはり同じように力を入れてい かなければいけないと思っております。 ○柳澤座長  ありがとうございました。他に、ございますでしょうか。 ○神尾委員  もう1点だけ、山崎先生に。医師会からの委託事業もされていて、研修をされていますけ れども、今のお話と関係して、やはり医師会との連携は非常に重要だと思いますが、研修を される以外にも医師会と連携したご活動などのご予定はありますか。 ○山崎氏  これまでのことで言いますと、私自身が県の医師会の学校保健委員を拝命しておりまして、 実は県の医師会が子どもの心の相談医の登録制のシステムを手挙げ制で学校医の先生方を 中心に登録制を採っております。そういう中で、最終的に引き受ける形になっているのです が、その登録医の先生向けの研修会といった活動もこれまで拠点病院事業とは別にしてまい りました。これがやはり医師会も体制が変わると、少し事業の重さに変わるときにシフトし ていく部分もあるので、今年は静岡県には相互支援部という発達障害者支援センターの中に 「あいら」というクリニックを持った支援センターがあります。ここが今は中心となって、 医師会と連携をした事業を展開しているところです。 ○柳澤座長  ありがとうございました。他に、ございますか。どうぞ。 ○奥山委員  皆さま、ご発表ありがとうございました。静岡県は小児病院の中、それからあすなろ学園 と松心園は第一種自閉症児施設を持っている施設ということがあって、長崎県はいろいろな ところの連携というところで、それぞれの違いが見えて非常に興味深かく拝聴いたしました。 例えば第1種自閉症児施設でもともと自閉症用にできていたはずですが、どちらかというと 今は、虐待を受けた子どもであったり、発達障害を持っていて虐待を受けている子どもが、 かなり多くなっているようでございますが、そのことも含めて、先ほど丸山委員からご質問 が出たような問題も含めて、制度上の問題で、それぞれ皆さま何か子どもの心の問題をやる ときのネックになっているところというのは一体どういうところなのかを少しお教えいた だければと思います。  一番印象的だったのは、この事業のことを皆さまからお聞きしたときに、大体、事業をど こで所轄するのかがわからない。県の中で保健がやるのか福祉がやるのか、一体どこが子ど もの心を担うのかということすら決まっていないといいますか、押し付け合いになったり、 病院で勝手にやってほしいというような形になったりと、いろいろなことがあったとお聞き して、まだそういう段階なのかと思いました。そのようなことも含めて、何かネックになっ ているのは一体どこなのかということを、それぞれ教えていただければと思います。 ○柳澤座長  どの府県でも結構です。どうぞ。 ○山崎氏  静岡県は一番切実な問題ですけれども、子どもの心の診療の充実というときには、恐らく そういう子どもの心の診療に携わる人間をどれだけ育成するかということと、この事業がま さにそうですけれども、それを育成していくような拠点となるような医療機関を各都道府県 でどれだけつくっていけるかということになると思います。医療経済の問題でいいますと、 子どもの心の診療を行っている、特に入院治療という領域は非常に特殊で、専用のベッドを 持っている病院は全国に20か所ぐらいしかないのです。やはり臨床たるもの、まずは入院 患者をしっかり診られて、そして初めて外来に行くのが臨床のトレーニングの基本だと思い ますが、全くこの領域はできていません。  その大きな要因の一つに、やはり子どもの心の診療部門の入院の診療報酬が非常に低いと いうことがあります。さらに、今、全国の中のそういう病棟の構造としては、精神科の病院 の中にある病棟、総合病院の中にある病棟、そして私たちのように小児総合病院の中にある 病棟という三つの種類がありますが、最も診療報酬の低いのが、実はマンパワーも設備も一 番充実しているはずの小児総合病院の精神科病棟なのです。それはどうしてなのかといいま すと、精神科の単科の病院ですと小児科の常勤の医師がいて、ある一定の基準を満たします と、小児入院医療管理料4という2,100点プラス児童・思春期入院精神科の加算料650点 という2,750点を算定できます。そういうことが、小児科も精神科もそろっていて設備も身 体医学的にも十分に期待できる小児総合病院は、精神科病床であるが故に、小児入院医療管 理料3も4も算定できないというのが現状です。そうしますと、私たちは現実的に、精神科 の入院基本料の800点プラス精神科の加算の650点で、1450点という非常に低い診療報酬 だと思いますが、当然ものすごい不採算部門です。今、小児入院医療管理料の一番低い4 で2,100点で、これが3,000点に上がるという方向のようですけれども、その中で今後、各 自治体にそういう拠点病院ができていくというのは、非常に困難だろうと思います。いろい ろな方々に、その現状をぜひ理解していただいて、まず、そういう拠点病院をと思います。 拠点病院や公立病院といえども皆さま独立行政法人で採算性を問われていますので、やはり ある程度経済的に成り立つ、小児科と同等の診療報酬が保障されていかないと、なかなか今 後展開していくのは難しいだろうと思っていますし、私たち小児総合病院は、神奈川県と静 岡県で非常にピンチです。というのが、最も危機的な今の課題です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。子どもの心の診療、特に入院診療における診療報酬のこ とに話が及びましたが、それに関連したこと、あるいはその他のことでも何か。他の府県は、 どうですか。どうぞ。 ○奥山委員  今、入院の採算がピンチということが出ましたが、外来が採算が良いというわけでもない ということを付け加えておいた方がよいかと思いました。 ○山崎氏  もちろんです。 ○奥山委員  後でお話ししますけれども、外来の専門の病院の先生方にアンケートを取ってみると、初 診にかかる時間は大体60分です。それでも足りないと思っているドクターが非常に多い中 で、取れる点数は非常に低く設定されていますので、外来が良いというわけではないという ことも付け加えさせていただきたいと思います。 ○柳澤座長  今日ご発表いただいたことに関連した全般的なご意見・ご質問が、他にありますか。どう ぞ。 ○澁谷委員  啓発や情報提供の事業の中の所々にホームページというのが出てきているのですが、場合 によっては都道府県のホームページから入っていくタイプと、恐らく独自に自分のところの 病院でホームページを持って、そこでPRしているというケースなど、いろいろなものがあ ると思いますけれども、少しその辺を母親にといいますか、保護者の皆さまに簡単に見ても らえるというと、やはりホームページの力は非常に大きいと思います。なかなか都道府県の ホームページを開けるというよりは、やはり直接病院のホームページを開けるという方が、 アクセスしやすいのではないかと思いますけれども、ホームページで何か工夫していらっし ゃることがあれば、それぞれの啓発ということで教えていただきたいです。 ○柳澤座長  普及啓発に関連するところで、ホームページまたはそれへのアクセスなどに関して、今、 ご質問がありましたが、どうですか。 ○柴田氏  私どもの病院では、大阪府立精神医療センター全体のホームページの中に松心園のホーム ページも入れさせていただき、こういう子どもを診ていますという情報提供をしています。 それから、大阪府立精神医療センターのホームページの方に、子どものこういう困ったこと についてご相談くださいというようなことや、大人も含めて発達障害の人の特徴についての ようなホームページも作って、時々更新するようにしています。 ○柳澤座長  ありがとうございました。 ○山崎氏  非常に答えにくいのですが、静岡県立こども病院のホームページは、今のところはまだ正 直申し上げて、静岡県立こども病院の宣伝になっています。母親に見ていただいて、簡単な 子どもたちへのサポートのヒントになるような部分も少し作っていこうかということも今、 考えているのですけれども、それが本当にそこで終わってしまうことがよいのかどうかとい うことも少し悩んでいまして、どうしても一人一人違うものですから、そういう形の中身と いうのは少し難しいのではと思っていまして、むしろ逆に精神保健に携わる方々のために、 役に立つようなリーフレットなど、例えば災害のときに少し参考にしていただけるものなど を少し考えていこうかということと、私どものところのホームページにアクセスいただけれ ば、こういうことでお困りの場合には、静岡県の中のこういう地域でこういう所があります という情報提供のようなところを考えていくのが、一番無難かと私個人として考えていると ころです。 ○柳澤座長  ありがとうございました。まだ、他にいろいろとご質問やご意見があるかと思いますけれ ども、四つの府県からの実施事業についてのヒアリングは、この辺で終わりにさせていただ いて、次の議題に移りたいと思います。その間に、少し休憩を置きたいのですが、15時45 分に再開するということでよろしいですか。県から来ていただいた方に関しては、後はご退 席されてもよいですが、むしろぜひこのままいていただければ、その方がよいのではと思い ます。それでは、15時45分まで休憩します。 (休憩) ○柳澤座長  それでは、先ほど予告しました時間になりましたので、会議を再開したいと思います。こ こからは議題の2「事業評価・報告について」ということで、ご議論いただきたいと思いま す。「事業評価・報告について」を具体的に触れるのは、今回が初めてですので、皆さまか らざっくばらんに忌憚ないご意見を頂戴できればと思います。  それでは、まず議論のたたき台について、事務局からお願いします。 ○森岡課長補佐  それでは事務局から資料5、資料6、資料7に基づきまして、説明させていただきます。  まず資料5ですが、整備の推進事業は平成20年から3カ年のモデル事業ということで、 その後についてどのようにするかということが、今後検討するポイントかと思います。それ で、この推進事業を評価するためにアンケート調査を実施したいと考えています。アンケー ト調査の「目的」ですが、有識者会議の検討事項の一つであるこの事業の評価を行うため、 関係団体・関係者に対して、子どもの心の問題に関する事項についてアンケート調査を実施 することです。調査の種類ですが、大きく三つあり、「自治体調査」「医療機関調査」「患者 調査」を行いたいと考えています。1と2は、事務局から調査したいと考えていまして、厚 生労働科学研究費補助金子ども家庭総合研究事業の研究班に3番の患者調査を行っていた だく予定です。資料の「※2)、3)は」の後に記述していますが、2)は削除していただくよう お願いします。この調査結果については、次回の有識者会議での報告を予定しています。  それでは、資料6「自治体調査(案)」について説明させていただきます。この「目的」で すけれども、事業の評価・助言を行うため、「全国の子どもの心の問題への対応に関する状 況」「実施中の子どもの心診療拠点病院機構推進事業の内容等について明らかにする」とし ています。「対象」については、この調査は二つありまして、「調査(1)」の対象として47都 道府県の保健衛生部局を考えています。それから、「調査(2)」ですけれども、推進事業を実 施していただいている11都府県に伺いたいと考えています。「調査期間」は平成21年11 月〜12月を予定しています。「調査実施方法」ですが、母子保健課から郵送により実施する としています。また、メール等が使用できれば、そちらを使用することも検討しています。  次のページ、「調査(1)」の全国を対象とした子どもの心の診療の取組状況調査の質問事項 の設問のたたき台を説明させていただきます。問1から問8まであり、一つ一つ説明させて いただきます。問1ですが、「医療計画に、子どもの心の診療提供体制確保に関する記述は ありますか」ということで、医療法で、小児医療の確保について定めるよう規定されていま すが、その中に子どもの心の診療に関する記述があるかどうかを聞いています。また、これ に限らず、他の「健やか親子21」などに関する計画などがあると思いますけれども、そち らの計画に記述があるという場合は、その旨についても回答してくださいと、お聞きしたい と考えています。問2ですけれども、「子どもの心の問題について担当する部局は決まって いますか」で、もし決まっている場合は、その部局名についても伺いたいと考えています。 問3ですが「心の問題を有する子どもの入院治療機能もつ医療機関が整備されていますか。 もし整備されている場合は、該当するすべての医療機関名をお答えください」ということで、 心の問題を有する子どもの入院治療機能を持つ病院の有無を聞いています。問4は「子ども の心の問題への対応に関して、医療機関、保健所、児童相談所等との連携会議を開催してい ますか」ということで、医療と保健・福祉の連携についての設問です。次の3ページ目の設 問について、説明させていただきます。問5ですが、「心の問題を有する子どもの親や行政 関係者、学校関係者、医療関係者等の対応者からの相談及び支援体制が整備されていますか」 ということで、保護者やその子どもの心に対応する方への支援体制の整備の有無について聞 いています。問6は「日頃より、緊急対策を要する子どもの問題行動事例発生や災害・事件 の被害に遭った児の案件における医師等の派遣の準備を整えていますか」ということで、整 えていている場合は、詳細を記述してくださいという設問です。緊急対策を要するような子 どもの問題行動が発生したときや大きな災害が発生してPTSDなどが予想されるときに、 そのような対応について日ごろから備えているかどうかという質問です。問7は「子どもの 心の問題に関して、医療関係者、保健福祉関係機関の関係者に講習会を実施していますか」 ということで、子どもの心の問題の講習会についての質問です。それから問8は「子どもの 心の問題に関して、ホームページ、広報誌で普及啓発を行っていますか」ということで、普 及啓発に関する設問も加えさせていただいています。これを47都道府県に実施しまして、 推進事業を実施している県としていない県で、どのような違いが出るかというところを主に 調査したいと考えています。  次に、4ページ目の「調査(2)」で、推進事業を実施していただいている都府県に対して、 質問を予定しています。これについては、全21問あり、参考2の「母子保健医療対策等総 合支援事業実施要綱(抄)」というものがありますけれども、主にその実施要綱の(3)の(1)〜(3) を参考に設問を作成しました。問1から問3ですけれども、「地域の医療機関から相談を受 けた、様々な子どもの心の問題、児童虐待や発達障害の症例に対する診療支援について」を きいています。問1ですけれども、「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業の担当者(課長 補佐級以下)の人数を教えて下さい」で、たたき台としては課長補佐級以下を考えています が、今日は自治体の関係者もいらっしゃいますので、どのような聞き方をすれば効果的かと いうところをご意見いただければと思っています。それから、「2009年4月から9月までの 間に様々な子どもの心の問題、児童虐待や発達障害の症例に対する診療支援に関する相談を 受けましたか」ということで、今年の4月から9月の間の相談件数を問2と問3でお伺いす る予定です。それから、問4〜問6の質問ですが、地域の保健所や児童相談所等からの相談 を受けたさまざまな子どもの心の問題、児童虐待や発達障害の症例に対する医学的支援の内 容についておききしたいと考えています。その具体的な内容ですけれども、問4は「2009 年4月から9月の間に地域の保健福祉関係機関から様々な子どもの心の問題、児童虐待や発 達障害の症例に対する医学的支援に関する相談を受けましたか」ということで、相談の有無 と、相談の件数ということで、問4、問5で伺いたいと考えています。また、問6としてそ の相談された案件のうちの処遇困難例として連絡会等で共有・検討を行った事例はあったか どうかということもお聞きしたいと考えています。5ページ目は「緊急の対応を要する子ど もの心の問題行動事例等の発生時における医師等の派遣」ということで、問7から問9まで 設問を作りました。本年4月から9月までの間に、「緊急の対応を要する子どもの心の問題 行動事例の発生や災害・事件の被害に遭った児の案件等における医師等の派遣例はありまし たか」ということで、緊急の対応について実績を聞いています。また、問8で、あるという 場合は、派遣件数と派遣職種、差し支えなければ事例についても伺いたいと考えています。 問9ですけれども、派遣の依頼や相談を受けてから、派遣に至るまでに要した平均期間につ いてもお聞きしたいと考えています。次に、地域の保健福祉関係機関との連携会議の開催と いうことで、保健所や児童相談所との連携について聞いております。問10は「2009年4 月から9月の間に地域の保健福祉関係機関との連携会議を開催しましたか」ということで、 その有無と実績を問11も含めてきくことにしております。この質問事項によって、子ども の心の診療拠点病院機構推進事業の内容の実施状況を明らかにして、今後、もし事業など加 えていくような内容がありましたら、それを付け加えさせていただきたいと考えております。  6ページ目の(2)は「子どもの心の診療関係者研修事業の実施体制について」ということで、 問1〜4まであります。本年の4月から9月までの間に実地研修を実施したかどうかという ことで、その有無と実績を問1と問2でお聞きする予定です。問3は、地域の医療機関や保 健福祉関係機関の職員に対して講習会を開催したかということで、その有無と回数について お聞きする予定です。  それから(3)は「普及啓発・情報提供事業の実施体制について」ということで、問1は普及 啓発事業としてホームページを作成しているか。問2として、そのホームページの2009年 4月から9月までの間のアクセスはどの程度か。問3は、ポスターを作成した場合は配布先 と枚数。問4は「その他の普及啓発・情報提供事業で実施していることがあれば教えてくだ さい」ということで、普及啓発の実施状況についてお聞きする予定でございます。  (4)「その他」です。問1として「子どもの心の問題への対応に関して、独自の事業を実施 していることがあれば教えてください」ということで、独自事業についてお伺いする予定で す。それから問2は「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業で実施している事業以外に、 実施してほしい取組があれば教えてください」ということで、ご要望についても広くお受け したいと考えております。実態調査は以上です。  次に資料7の「医療機関調査(案)」について説明させていただきます。医療機関調査につ いても、子どもの心の診療拠点病院機構推進事業の評価を行うため、子どもの心の診療拠点 病院の事業内容について明らかにすることを目的としております。「対象」は、11都府県内 の子どもの心の診療拠点病院に対しまして調査を実施したいと考えております。「調査期間」 は自治体調査と同じ時期を考えておりまして、平成21年11〜12月を考えております。「調 査実施方法」は、主に調査票を郵送してのアンケート調査を考えておりますが、それ以外に いろいろな資料を収集して、事務局の方でまとめさせていただく方法も検討しております。  2ページ目にまいりまして、調査項目のたたき台として、主に六つの調査項目を考えてお ります。一つ目としては、診療科、病床数、医師数、看護師数などの病院の概要をお聞きす る予定です。二つ目として、担当科の外来診療の概要についておききすることを考えており ます。三つ目として、担当科の入院診療の概要ということで、入院患者への対応状況につい ておききしたいと考えております。四つ目は、担当科の通所事業概要ということで、通所事 業に対応する人員等についておききしたいと考えております。五つ目は、教育・研修等とい うことで、教育・研修の実施状況についてお聞きする予定です。それ以外に「その他」とし て、先ほどの自治体の調査と同じように、要望や提案等についてもおききしたいと考えてお ります。  以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。ただ今、ご説明いただいたのは、全国の都道府県あての アンケート調査、それから事業を実施している11の都道府県あての調査、この事業を実施 している子どもの心の診療拠点病院に関する調査について説明をいただきました。質問は後 ほどまとめて行いたいと思います。  続いて、奥山委員から「患者調査」についてのご説明、「患者ニーズに合った子どもの心 の診療体制の在り方およびその効果判定の方法に関する研究」についても説明をお願いいた します。 ○奥山委員  前回は本当に簡単に第1報をお話しさせていただいたのですけれども、第2報をお話しさ せていただいて、それに基づいた患者調査を今年も少しやって経過を見たいというところに ついて、お話しさせていただきたいと思います。  資料8をご覧ください。簡単にお話をするために、まず2ページをご覧ください。全国の 子どもの心の問題に関する専門病院ということで、北から南までいろいろとお願いして、ご 協力いただいて、質問紙による調査を行っております。  5ページをご覧ください。上の方に書いてありますように、専門の病院にお願いしまして、 その時期に来た患者さんに質問紙をお渡しいただきました。そして、ドクターにも患者さん に合わせられるような質問紙を1週間だけ全部の患者について記入していただきました。返 送いただきまして、1か月間全部の患者さんにお願いしまして、あとの2か月間は新患の方 だけに回答いただく方法で調査をいたしました。それに加えまして、16か所の病院のドク ターにそれぞれ登録いただきまして、Webアンケートという形でドクターから情報をいた だいております。  まず患者調査ですけれども、ここに書いてありますように、11月までで2,085件の回答 がありました。実は倫理委員の審査がたまっていて、2か月ぐらいかかった病院がありまし た。スタートが遅れたなど、いろいろな理由がありまして、遅れた分があります。最後の締 め切りまでの4,000件近い分に関しては調整中ですので、11月までにやった分の細かいと ころを少しお話しさせていただきたいと思います。平均年齢は大体12歳ぐらいです。男の 子の平均年齢が少し低いのは、男の子は小さいうちの問題が多くて、女の子は思春期の問題 が多いということが影響しているかと思います。  8ページにいきまして、年収に関してはやや低い範囲の方が多いのかもしれません。それ に加えまして、家族内での精神的問題が「あり」という方が3割に上るということは、かな り大きな特徴かもしれないと思っております。記入していただいたのは、母親が9割でした。  9ページをご覧ください。下の方の「受診までの経緯」としては、気付いたけれども、ど こに行けばよいのかわからずに「非常に困った」「やや困った」を合わせますと6割以上の 方になります。それから、気付いてからこの専門病院を受診するまでにどれぐらいかかった かというと、平均で約2.2年でした。ただ、「6か月以内」という方も35%いたということ です。その前にどこへ相談に行ったかというと、84%が他の所を経由して専門病院に来て いるのですけれども、経由した所は保健センター、病院の小児科、小児科クリニックという ことで、やはり小児科系が多いということになります。予約してからどれぐらいかかりまし たかということに関しては、1か月以内が5割でしたけれども、1年以上が8%ありました。 これはきき方が悪かったのかもしれません。予約までに時間がかかるということも、もしか したらあったかもしれないと反省しております。  次の10ページですけれども、専門病院を受診されたのは誰の勧めかということです。こ れは複数回答ですので、足すと100%を超えておりますけれども、3割が自分から受診、3 割が医療機関に勧められた。その3割は、保健所、児童家庭センター等ということになるの だろうと思います。  11ページをご覧ください。上の方を見ていただきますと、専門病院での診療に関しては、 非常に満足している、ある程度満足しているを合わせますと、4人に3人は満足していると いうことです。  実際に本当に良くなっているのかということですけれども、12ページの上をご覧くださ い。これは初診してからの時間はさまざまですので、初診からの時間によってどう違うかを、 また分析しなければいけませんが、初診時と現在の生活の困難度ということで見ますと、生 活の困難は5、6が高いわけですけれども、高い方が減ってきている、やはり良くなってき ているということで、受診により改善してきていると言えるのではないかと思います。  そのような意味で、まとめますと下の図になりまして、まず大体平均5歳で心の問題が気 になる、親が気付いたという段階で、60%以上の方が「どこに相談してよいのか困る」と いうことがあります。最終的には84%の方は小児科や保健センターを経由してくるわけで すけれども、子どもの心の専門病院に至る平均でその間2.2年です。受診した方は比較的満 足しているし、困難度は下がってきていると言えるのではないかと思います。  ここまでのところで医師による診断で最も多いのは広汎性発達障害で45%を占めており ました。  後は飛ばしまして、Webによる医師の調査の方をご説明したいと思います。17ページを ご覧ください。16施設にお願いしたのですけれども、プラス他の3施設を加えまして、19 施設で40名からの回答を得ております。専門は小児科の先生が45%、精神科医の先生が 55%で約半々ということになっております。年齢は平均43歳で、男性と女性が65%と35% ということです。専門経験年数は平均14年で、トレーニングを受けたのは国内の専門医療 機関が多いということでした。  その下が結果ですけれども、1週間で診ている患者数は初診が約3名、再診が約35名で す。初診の待機期間は一般的に2か月ぐらいの病院が多いということだろうと思います。紹 介受診の診療情報提供ですけれども、紹介元からいただいた情報が十分であると答えた方が 20%で、やはり不足している、あるいはどちらともいえないというのが結構多かったとい うことになります。  先ほどの話ですけれども、初診患者さんの診察時間は中央値で60分ということですので、 専門病院では割としっかりと時間をかけて初診を診ています。しかし、それでも不十分と答 えている方が35%おられるということです。これはやはり子どもとの面接だけでも30〜40 分かかりますし、親御さんから現在と過去の経歴を聞くだけでかなりかかるということが影 響していると思います。それに加えて、付き添って見えた学校の先生あるいは児童相談所の 方とお話しするとさらに時間がかかるということになりますので、やはり1人に時間がかか るということがかなり大変な状況にあるのだろうと察します。診療報酬ともかかわるかもし れませんけれども、非常に時間がかかるということは大きなポイントであると考えられます。  それから、不必要に専門機関を受診している。つまり割と軽いのに直接受診してしまった 方を経験しましたかということに関しては3割の方が経験していました。どういうことかと いうと、教育・保健現場からの過剰な紹介や、安定している発達障害の方が不安で来られる、 一過性で軽い症状の方が来られることがあったということです。  「他機関との連携」に関しては、連携に割かれた時間は1週間で平均2.3時間、中央値は 1.5時間ということです。下を見ますと、関係機関との連携を負担に思っている方が7割近 く、その理由として、やはり時間がかかる、経済的インセンティブがない中で連携していか なければならないということが書かれておりました。  この19か所は専門病院で、かなり教育にも携わっているはずの病院なのですけれども、 次の表を見て少し驚いたのですが、教育に費やす時間が1日に0.6時間です。つまり40分 ぐらいしか1日に教育に費やしていないということですので、やはりもう少し教育に費やす 時間を増やしていかないと研修になっていかないと思いました。自己研鑽などに関してはこ こに書いてあるとおりです。最も危機的かと思いますのは、全体として仕事の量がかなり多 い、あるいはバーンアウトの危険があるとまで答えた方が50%近くあるのです。一方で、 現在の職場に夢があるというのが75%ということで、非常に夢はあるけれども、忙しくて 大変という状況が浮き彫りになってきたかと思います。  「どのようにしたらもっと良い職場になると思いますか」ということに関しては、やはり 人数を確保してほしい。それから臨床心理士が1名しかいないといった、コメディカルスタ ッフをもっと増やしてほしいという意見が出ております。右側の方に幾つか意見が出ており ますので、参考にしていただければと思います。  患者調査と医師調査をまとめてみますと、この下の表のように、患者さんに対しては相談 できる機関が周知されていることが必要でしょうし、小児科あるいは保健を担う方々には専 門病院との連携の強化と、それから紹介するときにどのような形で紹介したらよいかという プロトコールなどがあるとよいと思っております。専門病院に関して一番重要なのは、やは り人員の確保ということかと思います。他の医療機関、他の保健あるいは福祉機関との連携 の強化によって負担を軽減し、先ほど逆紹介ということもありましたけれども、そのような システムの構築が必要だろうと。とにかくまず、どのような状況かという実態調査からはこ のようなことが浮き上がってきました。  今年度は、初診の患者さんがどのように各病院で変化してきているのかということに関し て、3か月ほど初診の患者の調査をさせていただこうと思っております。ただ、私どもの倫 理委員会を通して今度は各病院の倫理委員会を通すという作業がありますので、おおむね1 月ぐらいから調査がスタートできるかと考えております。  以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。事務局からは自治体向け、医療機関向けの調査をこれか らやるということで、その内容についてご説明いただきました。奥山委員からは患者調査に 関して厚生労働科学研究として行われた患者調査、またWebによる医師調査の結果につい て報告をいただきました。この事業評価あるいは報告についてご意見・ご質問はございませ んでしょうか。 ○奥山委員  自治体調査と医療機関調査に関してですが、かつて私も児童相談所の調査や一時保護所の 調査をさせていただいたことがあるのですけれども、やはり資料を集めるだけではなかなか 見えてこなくて、実際に行ってみることで見えてくる部分がかなりあると思っています。実 際に行ってヒアリングをしたり、状況を見たりすることも意味があると思います。ピックア ップしてでも、例えばある形の小児病院系や子どもの専門病院系、幾つかの所が連携してい るというものでも、1カ所ぐらいずつでも行って見てくるのもよいと思いますけれども、い かがでしょうか。 ○森岡課長補佐  事務局からお答えします。実地の調査ですけれども、必要ということであれば検討いたし ます。実施する施設をどうするか、実施するのはどのような方がよいのかということがあり、 今後検討する必要がありますので、奥山委員とご相談しながら、どのような施設に行くか、 どのような職員を派遣するか、どのようなことを聞いてくるかということをご相談しながら 決めていきたいと考えております。 ○柳澤座長  実地調査というご意見がありましたけれども、他にも事業を評価していく上で何をポイン トにするかということに関して、他にご意見があればぜひ伺いたいと思います。丸山委員、 どうぞ。 ○丸山委員  先ほどの三重県の話にも入っていましたけれども、病院のドクターがかなり忙しい中で巡 回指導をしていらしゃる。最終的に、この事業は病院の中において専門的機能を発揮され効 果的な事業と考えますが、人材育成をするか、普及啓発をするかと幾つかの柱があると思い ますけれども、このハウツーは専門領域であり、対象とする子どもに対する専門知識やある 意味での普及という部分でもあり大切と思います。私どもの治療科のドクターは3人おりま すが、乳児院は別ですけれども、児童養護施設には心の病を持った子どもがたくさんおりま して、施設職員も相談する所がない。なおかつ、山崎先生がおっしゃったように、本当に病 院にたどり着くまでに2年かかっているということからすると、この巡回指導事業を、やっ ているところがあるのならば、その調査も入れていただきたいと思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。他にありますか。では、神尾委員。 ○神尾委員  奥山委員の発表の中に、詳しい診療状況についてのWeb調査について、ぎりぎり限界ま で診療時間を使っている実情が報告されていましたが、この数字、例えば診療時間の中央値 が60分となっていますが、実際の診療を考えると、1人の医師が行う場合と、チームで親 の面接と子どもを並行している場合、また本診察の前にレジデントなどの予診を取る場合に も予診だけでも1時間くらいかかりますから、それらを含めた時間を反映できているなのか どうか。実態を把握するには、それらすべてを重要な人材を使った時間としてカウントされ る必要があると思います。  それから、子どもの場合は発達検査ルーティンとして行う必要があります。こうした検査 は時間がかかるものですけれども、非常に診療報酬が低く、あるいは報酬がない場合もあり ますけれども、ほぼルーティンで複数日に及んで実施されているという実情も踏まえて、そ の辺がもう少し反映されていればよいと思います。 ○柳澤座長  今のお話に関して、奥山委員どうでしょうか。 ○奥山委員  入っていないと思います。個人として使っている時間ということでお聞きしているので。 もし必要でしたら、例えば、それぞれのドクターがどのようなところに時間をかけているの かということをもう少し詳しくWebでお願いして調査することは、できなくはないと思い ます。Webだとそれほど時間がかからないで回収できるのかもしれないと思いますけれど も。もう少し考えさせてください。 ○柳澤座長  先ほど奥山委員も手を挙げていましたよね。 ○奥山委員  医療機関調査ですが、先ほど山崎先生からもありましたように、何らかの形で医療経済学 的なところを少し含めていただけたらと思います。どうしたらよいのかは非常に難しいので すが、どれぐらいの収益があってというようなところ、収支比率がわかればもちろん一番良 いのかもしれませんが、その辺りを何らかの形で組み込んでいただければと思います。 ○柳澤座長  事務局は、どうですか。 ○森岡課長補佐  モデル事業評価に必要不可欠なデータかどうか確認したいと思います。 ○柳澤座長  他にご意見・ご質問というよりも、今後の事業評価に関してご提案などありませんか。ど うぞ。 ○奥山委員  それぞれの自治体の拠点病院の病院側あるいは自治体側からのものはありますが、例えば その県全体で少なくとも虐待の子どもたちがどれぐらい通告をされているのかなどの傍証 といいますか、横の数字もついでにあると、最終的に分析するときに分析しやすいと思いま すので、よろしくお願いいたします。 ○柳澤座長  澁谷委員、何かありますか。 ○澁谷委員  子どもの拠点病院をやっている11か所には、この調査の(2)と医療に関しての2種類がい くわけですよね。これを見せていただくと、資料7の病院の方にいくものは割合と事務的な 数字が多いのですが、こちらの都道府県庁に聞いている自治体調査の(2)のような内容を本当 は病院に聞いてもらった方が病院の声が聞こえるのではないか。実際にやっている所の声が 聞けると思います。実際にその11病院に聞くのは非常に事務的な数字を入れたり、件数を 入れたりという感じなので、(2)と資料7をもう少し調整した方がよい気がするのですけれど も。病院に聞いてもよいような項目が(2)の中にもあると思いますが、その辺りはどうなので しょうか。 ○柳澤座長  今の質問に関して、どうでしょうか。 ○森岡課長補佐  そこにつきましては、医療機関調査についての説明をした資料7の2ページ目に調査項目 が六つ並んでいますが、一番下の「その他」に、他施設との連携事業や連携事業強化の取組 などを聞いておりますので、そこを膨らせて、自治体調査を削減する形で検討させていただ きたいと思います。 ○柳澤座長  今の澁谷委員からのご質問は、自治体を対象とした調査のうちの(2)と医療機関調査との関 係ですよね。内容の重複などといったことについて、どうでしょうかと。少し検討してみて ください。  どうぞ。 ○神尾委員  奥山委員のプレゼンテーションの18ページのところで、他機関との連携についての質問 に対して、多くの回答者がインセンティブがないと負担に感じているにもかかわらず多くの 時間を割かれているということがわかります。このご発表のタイトルにもありました「効果 判定の方法」とありましたが、連携の効果、とても判定が難しい性質のものだと思いますけ れど、効果がわかれば、実際に連携のために教育よりも2〜3倍の時間をかけてやっておら れる医師にはモチベーションが湧いてくるのではないかと思いますけれど、いかがでしょう か。 ○柳澤座長  奥山委員、どうでしょうか。 ○奥山委員  そのとおりだと思います。おっしゃるとおり、連携の効果を図るというのはなかなか難し いとは思います。多分アウトカムとしては、マッチングがよくなると言いますか、相談に行 って一番良い所に子どもが行ける状況ができれば、それが一番連携がよかったというアウト カムなのだろうと思います。先ほどの、必要のない方が高度の病院に来てしまう、あるいは、 ずっと長い間、非常に問題を抱えた方が入口の所でずっといるなど、そのようなことがなく なることが一番効果になると思っています。 ○神尾委員  そうすると、受診が不必要だという人の割合が減ったり、ドクターショッピングして転々 としていた方がダイレクトにつながるようになって時間が短縮されるなど、数字でも表せる かもしれませんね。またご検討ください。 ○柳澤座長  他に、ございませんでしょうか。どうぞ。 ○森岡課長補佐  事務局から説明し忘れていたのですけれども、中央拠点病院の方も、3年間のモデル事業 ということで評価が必要ですので、これまでヒアリングを実施しておりますので、主にその 資料を参考に報告書をまとめさせていただきたいと考えております。 ○柳澤座長  奥山委員、今のことは、よろしいですか。  他に何か、ご意見・ご提案はございませんでしょうか。  もし、ないようでしたら、まだ今日の予定時間は少し残されておりますけれど、会議を閉 じさせていただきたいと思います。  本日の議論の内容、またいただきましたご意見を踏まえて、アンケートの調査票をあらた めて作成し、各対象に対して調査を実施いたします。なお、調査票の内容については、今い ただいたたくさんのご意見を踏まえて、事務局が作成するわけですが、その際に、私と協議 をさせていただきたいと存じます。その上で、後日、委員の方々に情報提供することとした いと思います。そのようなことで調査を進めるということでよろしいでしょうか。  それでは、そのようにさせていただきます。  そのようなことで、引き続いて、厚生労働省それから都道府県拠点病院事業の実施主体で ある、今日ご発表いただいた四つの府県を含めた都道府県の各病院におかれましては、適切 にこの事業を推進していただきますようにお願いしたいと存じます。  他に何かございますでしょうか。もし、ないようでしたら、最後に事務局から何か連絡事 項がありますか。 ○森岡課長補佐  最後に、事務的なご連絡をさせていただきます。次回、第4回の会議は平成22年の1月 から3月の間で開催を予定しております。追って委員の皆さま方の日程調整をさせていただ きますので、よろしくお願いいたします。  以上です。ありがとうございました。 ○柳澤座長 それでは、これをもちまして、第3回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者 会議」を閉会させていただきたいと思います。長時間にわたり、ご協力いただきまして、ど うもありがとうございました。 ―― 了 ―― 事務局:厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課 電話:03−5253−1111(内線7939)