09/09/28 第48回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録   第48回 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会          日時 平成21年9月28日(月)          17:00〜          場所 厚生労働省14階                        職業安定局第1会議室 ○清家部会長 ただいまから第48回雇用保険部会を開会します。本日の出欠状況でございますが、 野川委員、栗田委員がご欠席でございます。  それでは、早速議事に移ります。本日の議題は「雇用保険制度について」でございます。前回は、論 点のうち主に「雇用保険の適用範囲」についてご議論いただきましたが、本日も引き続き「雇用保険 の適用範囲」についてご議論いただくこととし、まず、前回のご議論でご指摘のあった適用拡大の効 果について事務局からご説明をいただいた後に、「マルチジョブホルダー」や「65歳以降への対応」な どについてご議論をいただきたいと思います。  それでは、まず事務局から、資料2についてご説明をいただきたいと思います。 ○篠崎雇用保険課長補佐 それでは、事務局より資料を説明させていただきます。初めに、お手元 の資料の確認をお願いします。配付資料は、本日5点ございます。まず、資料1が「雇用保険の適用 範囲に係る論点」で、先日出させていただいているものを参考で添付しております。資料2以降が、具 体的に説明させていただく部分です。資料2が「適用範囲拡大後の状況について」、資料3が「マル チジョブホルダー関係資料」、資料4が「高年齢雇用者関係資料」、資料5が「遡及適用関係資料」 となっています。お手元、よろしいでしょうか。  それでは、資料2から説明させていただきたいと思います。前回の部会において、平成21年4月の 適用要件の緩和の効果に関するご意見がございましたが、前回もご説明したように、なかなか緩和の 効果を正確に把握することはシステム上できないわけですが、なんらかの検討に資する資料が提出で きないかということで、今回の資料を用意させていただきました。  資料2の1枚目、「雇用保険被保険者数の推移」ですが、こちらの資料は、雇用保険被保険者数 のうち、一般被保険者数の推移を示したものですが、右端のほう、平成21年度4月以降については、 実数値と推計値を並べています。具体的には、過去の被保険者数と雇用者数の関係をベースとして 推計した被保険者数が下の青い線です。そして、4月以降の実際の被保険者数が上の赤い線です。 その差は、約70万〜110万人となっています。これが全て平成21年度改正の適用要件の緩和の効 果というわけではありませんが、トレンドと比べますと、実際の被保険者数が多いと推測できますので、 このうち一部は適用要件緩和の効果という見方もできるのではないかと考えています。  2枚目については、平成21年度の被保険者数の前年比を、雇用者数の前年比と被保険者数・被 保険者率の前年比との関係からみているものです。これによると、平成21年4月以降、上側の青い 棒グラフの被保険者率の前年比はプラスとなっていますが、このプラスの効果よりも下側、赤い棒グラ フの雇用者数の前年比マイナス効果が大きいことにより、青の実線の被保険者数が前年比マイナス となっていることが窺えます。資料2についての説明は以上です。 ○清家部会長 これは、前回お願いしていた効果がどれぐらい上がっているかについて、推計してい ただいたものです。何かご質問、ご意見ございますでしょうか。この横長の図は、いままでの実績を前 提に、被保険者数に関する関数を推計して、雇用者数が減った分だけ本来どのぐらい被保険者が減 ったかというのを出して、実数値がそれよりも上だということから、その部分が効果と言えるのではない かということですね。それが、大体70万〜110万人と推計される。2枚目のほうは、被保険者数が減っ ているのだけれども、それは主に雇用者数が減ったことのインパクトが大きくて、カバレッジの比率は むしろ高く、プラスのほうに出ているという解釈でよろしいですね。  何かご質問、ご意見ございますか。よろしいですか。では、一応効果があったという結果が出ている ということでよろしいでしょうか。いろいろな見方がありますが、一定の前提を置いて推計をやっていた だくと、効果がみられるということでよろしいでしょうか。  それでは、また何かご質問がありましたら、後でしていただくことにしまして、引き続き次の「マルチジ ョブホルダー」についての議論に移りたいと思いますが、事務局から資料3について、ご説明をいただ きたいと思います。 ○篠崎雇用保険課長補佐 それでは、資料3「マルチジョブホルダー関係資料」の1頁です。まず、 「マルチジョブホルダーに関する現状について」ですが、1つ目に現行の雇用保険の適用に関する取 扱いです。現行、「同時に2以上の雇用関係にある労働者については、当該2以上の雇用関係のう ち、当該労働者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける1の雇用関係についてのみ、被保険 者となる」という取扱いになっています。  現状の把握ということで、マルチジョブホルダーをどう把握するかなかなか難しいのですが、いくつか の統計・アンケート調査について報告することにより、現状把握をさせていただきたいと思います。  1つ目が現状把握の(1)、総務省の「就業構造基本調査」(平成19年)によりますと、本業も副業も 雇用者である労働者数の推移を取っています。これによると、1987年には雇用者数55万人でしたが、 2007年には約100万人が、本業も副業も雇用者である労働者となっています。これを雇用者全体に 占める割合でみますと、1987年に1.2%であったものが、2007年に1.8%になっています。  次に、本業も副業も雇用者である労働者数、約100万人の内訳をみますと、会社などの役員の方 が18.5%、正規の職員・従業員である方が25.4%、パートの方が23.5%、アルバイトの方が16.8%、 派遣社員が3.8%、契約社員が5.4%となっています。  続きまして、具体的にどういう働き方をしているかをみるためのものとして、(2)の「副業者の就労に 関する調査」(JILPT調査シリーズNo.55(2009年))よりご紹介をさせていただきたいと思います。説明 の前に、この調査が具体的にどのような方法で行われているかについてですが、調査対象としては、 楽天リサーチが保有する全国の約136万人の登録モニターのうち、モニター登録上の職種が、「公務 員・団体職員」、高校生以下の「学生」、「無職」、「その他」となっている者を除く18〜64歳の男女、 82万5,230人を対象といたしました。これについて、有効回収数は、調査対象82万5,230人にメー ルを送りまして、有効回答数が17万4,318人。有効回答率としては21.1%となっています。調査の前 提として、メールで調査しているということを留意していただきながら見ていただければと思っていま す。  2頁、この調査によりますと、副業している人の割合は、「仕事は1つだけ(本業のみ)」の方が 91.9%ですので、残りの方、具体的には副業を1つ行っている方が6.4%、副業を2つ以上行っている 方が1.7%ということで、合計8.1%の方が副業していることになっています。  (2)は仕事をしている方の属性です。副業者(n=10,803)となっていますが、この約1万人のうち、男 性が45.6%、女性が54.4%となっていて、若干女性が多くなっていますが、特に大きな傾向はみられ ないのではないかと思っています。  3頁は、副業をしている方約1万人に、副業している理由を聞いたものです。いちばん多いのが、「収 入を増やしたいから」ということで52.7%となっています。その他に、「自分が活躍できる場を広げたい から」、「1つの仕事だけでは生活自体が営めないから」という回答が多くなっています。積極的に自己 の活躍の場を広げたいからという回答もみられる一方で、収入を増やしたいから、1つだけでは生活が 営めないからというものも、それぞれみられます。  4頁は副業の状況で、主たる副業をしている方がどういう就業形態であるかということです。左側が、 本業の就業形態の項目、右側が、その方が副業の際にはどういう就業形態かという項目となってい ます。これを見ますと、本業が正社員の方は、副業としてパート・アルバイトをしている方が33.0%、自 由業・フリーランス等をしている方が30.7%となっています。本業がパート・アルバイトの方は、副業とし て、網掛けの部分、パート・アルバイトをしている方が61.0%、自由業・フリーランスをしている方が 19.2%となっています。本業として数が多いのは、自営業主の1,706人となっていて、この方々の副業 形態は、パート・アルバイトが24.3%、網掛けの部分の自営業主が27.2%、自由業・フリーランスが 24.4%となっています。本業が自由業・フリーランスの方1,493人のうち、副業形態として最も多いもの は、右の網掛けの部分、自由業・フリーランスが56.6%となっています。このうち、マルチジョブホルダ ーということで言いますと、通常、両者雇用関係にあることが多いと思いますので、具体的には本業が 正社員、パート・アルバイトの方で、副業も雇用関係にあるところが、主としてマルチジョブホルダーの 対象になるのではないかと思っています。  5頁は、1ヶ月あたりの副業日数です。1ヶ月あたり5日〜10日未満の方が28.6%、5日未満の方 が25.2%と多くなっています。これを平均でみると、副業1つの方の平均副業日数が10.5日、副業2 つ以上の方も平均副業日数が10.7日で、大体7日〜10日ぐらいの平均日数を副業に費やしていま す。  次のグラフは、1日あたりの副業をする時間数です。いちばん多いのが、3〜5時間未満で33.7%、 次に多いのが5〜8時間未満で28.8%、3時間未満が19.2%となっています。これを平均でみますと、 大体4〜5時間の平均時間となっています。  6頁は、副業をしている人の本業の状況についてです。直近の月での本業の実労働日数を見ますと、 本業のみの方は副業をしておりませんので省略しまして、副業者のところを見ますと、20日−25日未 満が46.9%でいちばん多いのですが、10日未満、10日−15日未満、15日−20日未満の層も、当然、 本業のみの方に比べて多くなっています。副業者の内訳を見ますと、副業が1つの方よりも副業が2 つ以上の方のほうが、本業の稼働日数の少ない層が広くなっています。それだけ、副業しやすい、あ るいはしなければいけないという状況にあるのではないかと思っています。  次に、直近の週での本業の1日あたりの実労働時間です。副業者の所を見ますと、いちばん多いの は、8時間−10時間未満が31.7%、続いて5時間−8時間未満の方が29.4%となっています。  次に、いちばん下のところですが、副業のみのところを見ていただきますと、全体としては、副業者全 体(n=10,803)のところですが、5時間未満が15.6%、5〜8時間未満が29.4%、8〜10時間未満が 31.7%となっています。  次に、副業者の正社員、非正社員の内訳ですが、主な特徴として、正社員としては8〜10時間未 満が46.9%と多くなっているのに対して、非正社員、非雇用者は、5〜8時間未満の40.3%、31.6%の ところが多くなっている状況です。  7頁、「副業をしていることの本業勤め先への通知」というもので、自分が副業していることを本業の 勤め先へ通知しているかというものです。これについては、「知らせている」が31.7%、「正式な届け出 などはしていないが、上司や同僚は知っている」が28.6%、「知らせていない」が39.7%になっています。 本業において、副業すること、兼業について許可が要るのかといったことについては、特に聞いていま せんが、いずれにしても「知らせている」という方は31.7%しかいないという状況が見て取れると思って います。以上が資料の説明です。 ○清家部会長 ありがとうございました。「雇用保険の適用範囲に係る論点」ということで、前回は「1. カバーする非正規労働者の範囲」について主に議論をいたしまして、今日もこの関連の資料を説明し ていただいたわけですが、今日はその次の「マルチジョブホルダーへの対応」ということで、いまマルチ ジョブホルダーの人たちというのは、一体どういう人たちなのかというようなことについて、少し資料を 整理していただいたところでございます。  ただいまのご説明に関しましてのご意見、ご質問、あるいは、そもそもマルチジョブホルダーへの雇 用保険の適用の拡大についてのご意見でもかまいませんので、どなたからでもどうぞご発言をいただ きますようお願いいたします。  1つだけテクニカルな質問なのですが、資料3の1頁、「本業も副業も雇用者である労働者数」で、 「本業が雇用者であって、副業も雇用者の数」というのがあるのですが、会社などの役員とか正規の 職員、パート、アルバイトというのは、本業のステータスなのですか。本業も副業も雇用者である人のう ち、本業が会社の役員である人ということですか。それをマトリックスみたいにして表わすと、4頁の図 のようになってくるということなのですね。 ○篠崎雇用保険課長補佐 そうです。 ○清家部会長 わかりました。では、どうぞ。 ○林委員 つまらない質問なのですが、マルチジョブホルダーの5頁のところに、副業A、Bというのが あるのですが、この副業A、Bというのは、副業が1つの人と、副業が2つ以上の人という区別なので しょうか。 ○篠崎雇用保険課長補佐 すみません。副業が1つ以上の人というのは別の区分でございますので、 A、Bはまた違うものですが、いま手元に資料がないものですから、あとで確認をいたします。 ○清家部会長 それは後ほど確認させていただきます。 ○坂口雇用保険課長 また確認をしますけど、これは副業2つ以上の方で、副業2つが、Aという副 業とBという副業を持っておられて、それが2,236人の方で、2つ以上のうちのAという1つの副業の 分布がこう、Bというもう1つの副業の分布がこう、という趣旨だと思いますが、念のため確認はもう一 度したいと思います。 ○清家部会長 A、Bというのはどういう意味なのですか。 ○坂口雇用保険課長 本業があって副業1、副業2という2つ副業を持っていて、そのうちの1つが 5日とか、もう1つの副業が。 ○清家部会長 1つ目の副業がA、例えば2つ目の。 ○坂口雇用保険課長 お一人の方が本業と副業を2つ持っていて、そのうちの1つ目の副業が副業 Aで、同じ人が持っているもう1つの副業が副業B。 ○清家部会長 そういうことです。 ○坪田委員 AとBを書き分けて。 ○坂口雇用保険課長 そうですね。ただ、縦に同じ人かどうか。 ○清家部会長 2つだったらいいだろうけど、2つ以上は。 ○篠崎雇用保険課長補佐 副業が同じ人で2つ以上ですので、収入が多いほうをAとして答えても らって、収入が次に多いのがB、3つ目以降の労働時間は聞いていないということになっています。 ○清家部会長 林委員よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。古川委員、西馬委員、お願いし ます。 ○古川委員 いま資料を見させていただいて、マルチジョブホルダーについていろいろとわかったので すが、ただ、この資料だけだと私もどうしていいのか、なかなか分からないのです。マルチジョブホルダ ーの問題というのは、育児とか介護とか、そういうことによって短時間労働をどうしてもしなければなら ないという人たちを支援していこうと、それから、そういう人たちが生活保護に陥らないようにしようとい うことが発端ということなのではないかなと思いますので、もう少し具体的な方策というのを私たちは検 討していかなければならないのではないかなと思いました。 ○西馬委員 ちょっと基本的に認識が合っているかどうかの確認なのですが、資料3の1頁目の「現 状把握」というところです。マルチジョブホルダーの雇用者数ですが、1987年が55万人であったのが、 2007年には100万人を超えて2倍になってきている。こういう一直線で伸びてきているという認識でよ ろしいですよね。この中で、私が聞き漏らしたのかもしれないのですが、2007年102万9,000人の中で、 雇用保険に入っている人というのはどれぐらいいるのですか。 ○篠崎雇用保険課長補佐 このうちの数ということになると、それはわかりません。 ○坂口雇用保険課長 いま補佐が答えましたとおり、この「就業構造基本調査」のデータからは、そこ のところはわからないですね。あと、我々の適用の状況が被保険者と保険者の数しかわからないので、 細かなところはわからないというところが正直なところなのですが、後ろの(2)のJILPTの調査、先ほど 見ていただいた5頁、6頁辺りが副業の日数であったりとか時間、それから本業の日数であったり時 間ということで、特に6頁辺りで副業をお持ちの方の実労働日数とか、実労働時間辺りを見ていただ くと、1ヶ月に、副業をお持ちでも20日以上勤務されている方が46.9、22.0%とか、あるいは副業をお 持ちの方でも、実労働時間は週でいくと相当長い方が多いということになると、本業のほうで適用にな っておられる方は、相当程度おられるということは、こういったところからは窺われるのかなとは思って おります。 ○豊島委員 いま指摘されたところなのですが、1987年55万から、2007年100万を超えた、この倍 増しているこれ自体を、そもそも厚労省としてどうみているのか、なぜこうなったのかということを教えて もらいたいということ。  もう1つは、6頁のどの辺りが、例えばパーセンテージが多いとか少ないとか、そういうことに関心があ るのではなくて、6頁で言えばいちばん右側の端の12時間以上であったり、10〜12時間未満であっ たり、そういうところで労働をせざるを得ないというところにまず関心があるのであって、具体的な方策 を考えるときに、我々がどこに光を当てるべきかということが、いちばん肝心なところだと思うのです ね。  聞きたいのは、このマルチジョブホルダーと言われる皆さんの中で、どのぐらい主たる生計者、その 方が主に家庭を支えておられるのかということも関心があるし、その収入がどのぐらいなのかということ も関心があります。それぞれの労働期間といいますか、同じ会社に勤める期間ですよね、それがどのぐ らいなのか。例えば、いま既に雇用保険に加入する場合の制限があるわけですから、そことの関係で いま言われたように、相当数と言われる方が入っておられるのであれば、そこはそこで救済がされると いうふうに思うのですが、本当に我々がどこに光を当てて、どこに手を差し延べなければならないかと いうのが、ここではちょっとわからないのですよね。ここでわかるのは、全体の労働者数に占める割合 は1.8%で少ないのだなという程度のことなのですよ。ですから、その辺のところが何かあれば教えても らいたいと思うのです。 ○坂口雇用保険課長 なかなか難しいご質問なのですが、まず1点目の、1頁の本業も副業もお持ち のマルチジョブの方の全体像が増えてきているというのは、やはり全体としましては非正規の労働者 の率が増えているということが、やはりその一因なのだろうということかと思っておりますが、全体として 多様な働き方が増えているということとの兼ね合いも、併せて考えていく必要があるのだろうと思って おります。  もう1点のほうにつきましては、残念ながら今回のこの両調査では、いま豊島委員がおっしゃってい たところまでの分析はなかなか難しくて、先ほどの古川委員のご指摘も含めて窺われるという趣旨で いくと、やはり3頁の副業をされている理由のところで、ポジティブな理由もあるけれども、やはり収入で あったり、1つの仕事だけで生活自体が営めないという方もおられるということは、これまた事実だろう と思いますので、委員の方々にはそういった点、両面合わせてのご議論をいただければということでご ざいます。 ○清家部会長 おそらく、いまのようなのを本当にやろうとすると、「就業構造基本調査」の個票を手 に入れて、マルチジョブホルダーを取り出して、それの勤労所得か何かの項目を見るとかいうことをや らないと、難しいと思っています。 ○三木委員 関連して、これはあくまでも推測ということにしかならないわけですが、この2007年の数 字で1.8%、100万という数字は、おそらく今日の雇用情勢・経済情勢を含めると、更に増えているの ではないかということが推測されるのですね。そのことが多様な働き方というだけで、これは切られてし まうというのではなくて、やはりそこに焦点を当てて、どういう働き方が、どういう生活状況にあるのか、 経済状況にあるのか、そのことを含めて考えて不安を解消する。雇用保険がどこまでそれを見るのか、 あるいは他の制度で見なければならないのか、そのことをしっかりとこの中でも議論をしていただけれ ばと。これは要望ですが、そこのところを通り一遍で片づけないで、少し深めていただければと思って おります。 ○長谷川委員 いま部会長先生からもおっしゃられたように、マルチジョブホルダーの働き方と収入を この調査から見るのは、非常に困難ではないかと思います。ただ、この雇用保険部会で何を議論した いかというと、マルチジョブホルダーに対して、雇用のセーフティーネットとしての雇用保険の適用をど う考えるかというときに、本業・副業よりも、副業・副業でやっている人たちが、どれぐらいの収入があっ て、雇用保険に入っているのかどうなのかというのが欲しいのだと思うのですね。  そもそも、このマルチジョブホルダーについての議論をするという背景は何かというと、どうもマルチジ ョブホルダーが増えているのではないかと、そのマルチジョブホルダーに対する雇用のセーフティーネッ トである雇用保険がどうも対象になっていないのではないかと、そういう議論から始まったのだと思うの です。そうすると、これをもう少し議論するには、もう少し調査が必要かなというふうに思いました。  今日の調査から少し見れば、87年から07年で約倍ぐらい増えているということは、何らかの形でそ の副業、要するにダブルジョブではなければいけないというような人たちが増えているのだなということ を読むことができる。それで、どういう働き方をしているかというと、本業が雇用者であって、副業も正 規の人というのは25.4なのだけれども、パートの23.5というのがどういう働き方をしているのかなという、 その分析が必要なのだろうなと思いました。  2頁から、やはり仕事は2つとか3つという人がある程度いるということもわかったのですが、今回は 特に、私などはずっとマルチジョブホルダーというのはシングルマザーの人が多いのかなと思っていた ら、男女比では同じぐらいで、もしかしたら日雇い派遣で働いている男性とか、そういう人たちが含まれ ているのではないかと思いました。でも、派遣が多いわけでもないので、なぜ男女比がそんなに差がな いのかというのは、これではよくわからないなと思いました。私はマルチジョブホルダーをここ何年かや ってきたのは、母子家庭のシングルマザーの人たちが仕事を2つとか3つとか掛け持ちしているという 話があったので、ずっと関心があったわけですが、調査からは読み込むことができないなと思いまし た。  あと、やはり収入を増やしたいからだということは、はっきりしたわけで、やはり生活のために働いてい るのだなというふうにも思っています。  この調査からはそういうことかなっていうことぐらいで、雇用保険の適用について議論する資料として は、少し不十分さがあるかなというふうに思いますが、これ以上調査をやるか、してほしいというかどう かは少し検討をしてみたいと思いますが、この資料だけでは不十分だなと感じました。ただ、副業をや っている人たちがいるという事実は明らかなので、この人たちに本当に雇用のセーフティーネットの雇 用保険が効いているのかどうかという、この調査は必要なのではないかなと思いました。 ○遠藤委員 委員の方々からご指摘がいくつもございましたように、私どもも今回の資料を見るかぎり においては、マルチジョブホルダーの方々の雇用保険の適用関係が、十分実態として見えてこないと いう状況があるかと思います。雇用保険の適用についてどの程度受けておられないのか、あるいは、 そういった方々がどのような働き方をされているのかということにつきましては、何らかの工夫が必要な のかもしれませんが、やはり実態をよく調べた上でないと、適用範囲に関する検討ができないのではな いだろうかと考えています。  また、資料の7頁を拝見しますと、副業を持っていて、本業の雇用主に対して知らせていないという 場合が約4割もあるわけですね。そうすると、実際に労働時間を把握する上で、このデータをどうやっ て読んでいくのかというようなところがやはりあるのかと思っております。  さらには、では、複数の雇用契約を持った労働者の方々の保険料をどういう形で設定していくのか、 それから徴収そのものをどういうふうに誰が行っていくのか等々、実務上の課題もいくつもあるかと思 っております。その辺のところの精査も、今後必要ではないかなと考えています。以上です。 ○長谷川委員 いま遠藤さんの言われたことはとても重要で、ただ、この「知らせていない」というのは、 ほとんどの企業は就業規則で副業禁止規定が結構入っているので、生活に困っている人たちは結構 言っていないのだと思うのですね。私も労働相談で当たったのは、週のうちに3日ぐらい働くという仕 事があるわけですが、3日ではとても生活ができないので、あとの2日間を会社に内緒で働いていたら、 それが発覚して解雇されたということなどが相談では意外と多いのです。いまこんなに景気が悪くて、 賃金カットをしているので、副業禁止規定の就業規則を改正しているところはあるのです。そういう意 味では知らせていないとか、上司は知っているけれども届けていないというのは、意外とそことの兼ね 合いがあるのだと思います。就業規則から副業をしてはならないとか、そういうのが削除されてくれば、 それはそれで「届けること」というふうにすれば、労働時間だとか、賃金などの把握はできるのではない かと思います。実際1と2と3とあったときに、どこかというのは、非常に複雑だなというふうには思いま す。これ、なぜかといったら、そういうことがあるのではないのという意見です。 ○遠藤委員 その辺について、どういう状況の中で副業が行われているのかという想定はできるかと 思います。一方で、就業規則なり服務規律の中で、副業をするということになってしまうと、例えば本 業の職務に専念できずに注意力が散漫になってしまい、場合によっては危険な労働環境下に自ら置 いてしまうといったようなところがあって、そもそも置いてある禁止規定です。やはりこの辺のところは一 辺倒の議論ではなくて、一方でそういう決まりがある中で副業が行われているのだというところをどう 見るのか、というような視点も持っておく必要があるかなと思います。 ○清家部会長 ほかにはよろしいでしょうか。マルチジョブホルダーの問題は、ご承知のとおり、本来2 つ合わせれば適用対象になるような人が適用対象にならないのはいかがなものかという見方がある 一方で、いま議論になっているように、では、2つの職場で働いている人の適用をどうするのかとか、あ るいはそもそも失業給付という場合、1つの職場から失業した人がもう1つで働き続けている場合、給 付を受ける対象になるかならないかというような技術的な難しい問題がありますので、できればその辺 も引き続き議論をするために、参考になるような資料等を可能な範囲でまた少し収集していただきた い。いま私は、このJILPTの調査とか、そういうもの以外にあまりいいものはないのではないかなという 気がしますが、可能であれば少し資料を引き続き収集していただく。場合によると、その事例等を少し 調査していただく、ということもあるのかなとは思いますが、よろしいでしょうか。  ○豊島委員 いま最後に言われた具体的事例というのは、わりと考えやすいと思いますということだけ 申し上げたいと思います。雇用保険の対象になっていないということと、マルチジョブホルダーでいま長 谷川委員が言われたような、いくつかの仕事を持っている場合、どう考えるかというのはあるかと思い ます。 ○清家部会長 では、よろしいでしょうか。それでは、もう1つ今日は議論をしなければいけない論点 がございます。それは「65歳以降への対応」についてでございます。これについては事務局から資料4 に基づいてご説明をお願いいたします。 ○篠崎雇用保険課長補佐 資料4の1頁です。まず、現行の雇用保険制度における高齢者の取扱 いについて現状を説明しております。  まず「経緯」ですが、昭和59年の雇用保険法改正により高年齢求職者給付金制度を創設する以 前につきましては、雇用保険制度においては高齢者について別段の取扱いはなく、一律に被保険者 というふうな取扱いをしておりました。これが59年の雇用保険法の改正で変更されます。  背景としましては、人口の高齢化で65歳以上の高年齢労働者の増加が予測される中で、65歳以 上の高齢者については、労働生活から引退する者が大半であるといったこと、また、働き方も短時間 就労等いろいろな働き方を希望している者が多いということで、特に65歳以降新たにフルタイムで普 通の勤務に就き、その後、離職したときにまたフルタイムで働くということは極めて少ないという実態に 即した制度設計にするために、高年齢求職者給付金制度が創設されたという経緯がございます。こ の結果としまして、65歳に達した日以後に雇用される者については、雇用保険法の適用除外とされ たところです。  その後、適用と直接は関係ございませんが、平成6年の雇用保険法改正で、高年齢雇用継続給 付制度が創設されまして、高齢者については「雇用の継続が困難となる状態」を「失業」に準じた職 業生活上の事故ととらえて、高年齢雇用継続給付制度が創設されました。  「現行の適用について」ですが、昭和59年の雇用保険法の改正を受けてということですが、65歳に 達した日以後に雇用される者については、法の適用除外とされています。それから、被保険者であっ て、同一の事業主の適用事業に65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日 において雇用されている者は高年齢継続被保険者とされております。64歳以上の高年齢労働者に ついては、保険料の納付及び負担を免除することとされています。  「現行の給付について」ですが、受給資格を満たす高年齢継続被保険者については、高年齢求職 者給付金が支給されることになっております。  具体的な受給資格は、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること。こ のような方に被保険者であった期間に応じてですが、1年以上の場合は50日分、1年未満の場合は 30日分が支給されることになっております。  高年齢雇用継続給付の概要ですが、こちらについては60歳時点に比べて賃金額が25%を超えて 低下した状態で雇用継続する高齢者については、高年齢雇用継続給付が支給されています。以上 が現状です。  2頁、65歳以降への雇用保険の適用を議論するに当たりまして、現行の高年齢者雇用に関する現 状について、資料を用意させていただきました。  まず「1.高齢者雇用に関する状況」。改正高年齢者雇用安定法による高年齢者雇用確保措置につ いては、平成25年度までに段階的に実施義務年齢が引き上げられているところです。  資料の4頁が高年齢者雇用確保措置の実施義務年齢です。上にありますように、こちらについては 段階的に引き上げられることになっていますが、(1)〜(3)、具体的には定年の引上げ、継続雇用制度 の導入、定年の定めの廃止と、いずれかの措置についてこれを実施することになっております。これに ついては一部下にありますように、特例が設けられていますが、最終的には、この特例も期間がなくな ることになっています。  2頁の○の2つ目です。特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢については、平成25年度に定 額部分が65歳に引き上げられる。また、報酬比例部分についても平成25年度から段階的に引上げ が始まり、平成37年度には65歳まで引き上げられるということで、具体的には資料の5頁です。  こちらは老齢厚生年金の支給開始年齢の引上げのスケジュールです。男性と女性で若干違いがあ りますが、平成25年度(2013年度)には特別支給の老齢厚生年金(定額部分)、グラフの60〜65歳 の下の部分ですが、これがだんだんなくなっていくことになっています。それから平成25年度以降、西 暦で2013年度以降につきましては、老齢厚生年金の報酬比齢部分についても、段階的に65歳に伸 びていくことになっています。  資料の2頁の○の3つ目、平成20年の雇用確保措置の実施済み企業の割合は96.2%に達して おり、実施状況は着実に進展をしております。  ○の4つ目ですが、この確保措置の内訳としては、85.4%の企業が継続雇用制度の導入を採用し ています。継続雇用制度の内訳として希望者全員を対象としている企業は38.6%となっています。  具体的には資料の6頁です。図表3-1が雇用確保措置を実施した企業の割合ですが、これにつき ましては、平成18〜20年、順調に割合が伸びています。これは301人以上規模、51〜300人規模、 共に伸びています。  図表の3-3、先ほど説明した具体的な確保措置の中身ですが、圧倒的に継続雇用制度の導入が 多く、その後に定年の引上げ、定年の定めの廃止というものが続いています。  3-4については、継続雇用制度の内訳ということで、希望者全員を対象としているものは平成18年 が39.1%、19年が38.8%、20年が38.6%となっておりまして、依然として基準設定・労使協定してい るもの、それから、就業規則により基準設定をしている企業が多いという状況になっています。  資料の2頁、続いて「65歳以降の雇用について」ということで、日本の状況を見るため、各国の男女 の労働力率をみますと、日本では「65歳以上」については、男性が29.4%、女性12.7%と他国と比べ て高い状況にあります。  具体的には資料の7頁、図表4です。いちばん上が日本でして、50代辺りについては、女性は若干 他国に比べて低いという部分もありますが、60〜64歳、それから65歳以上のところを見ていただきま すと、男性が29.4%、女性が12.7%ということで、諸外国に比べても高い労働力率になっているので はないかということがみて取れる資料です。  資料2頁に戻ります。続きまして平成20年の「高年齢者雇用実態調査」によりますと、65歳以上の 定年年齢を定めている事業所は14.8%ということで、16年の調査時の8.3%よりは多くなっています。 また、65〜69歳の労働者を雇用している事業所数は26.9%となっていまして、これも平成16年の調 査時点の22.5%よりも多くなっています。また、70歳以上の労働者を雇用している事業所数の割合も 15.6%ということで、若干ではありますが、平成16年の調査時の13.1%よりも伸びています。高年齢 労働者の割合としては、65〜69歳の層が2.5%、これも平成16年調査時の1.9%より若干伸びてい ます。また、70歳以上の高年齢者の割合も1.0%ということで、若干伸びているという状況です。  資料の3頁については、「団塊世代の仕事と生活に関する意識調査」を紹介させていただきます。 具体的には資料の11頁です。グラフでご説明いたしますと、この調査によりますと、働きたい年齢とし ては、「63歳くらいまで」とする者が8.1%、いちばん多いものは「65歳くらいまで」というのが41.7%、 「68歳くらいまで」とする者が6.2%、「70歳くらいまで」が16.2%、「何歳になっても働きたい」とする者 が24.8%となっております。  資料の3頁にお戻りください。どのような理由で働くのかということで、「高年齢者就業実態調査」に よりまして、65歳以上の雇用者の主な就業理由を挙げています。これによりますと、「経済上の理由」 とする方がいちばん多く、男性では60.3%、女性が55.3%となっています。そのほか「いきがい、社会 参加のため」が男性11.8%、女性12.5%、「健康上の理由」が男性9.6%、女性9.3%、「頼まれたか ら、時間に余裕があるから」が男性12.1%、女性10.8%となっています。ただ、「経済上の理由」という のは65歳以上の方ですので、それぞれ中身はいろいろで、就業形態のデータはありませんでしたが、 例えば短時間就業を希望する方とかは、65歳層においては依然として多いのではないかと考えてい ます。資料の説明は以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。ただいま、65歳以降への適用の対応に関する資料をご説明 いただいたわけですが、ただいまのご説明の内容に関しましてでも、また、65歳以降への対処のあり 方に関してでも、どちらでも結構でございますので、ご意見、ご質問がございましたらお願いいたしま す。 ○豊島委員 資料の2頁、「高齢者雇用に関する現状について」のいちばん下の○の数字の変化を、 個人的にはあまり評価していないのでありまして、年金が改悪されて、そして働かざるを得なくなる労 働者が増えました。これはいかがなものかというのがまず1つ。  それから、年金が出るものですから、継続雇用をするときには賃金が低く抑えられて、いろいろ非正 規雇用が問題になっていますが、60歳を超えたところで非正規雇用は、同一労働・同一賃金の観点 からもいかがなものかと思っていまして、言いたい結論は、65歳以降の雇用というのは、自信があって 言っているわけではないのですが、これは雇用保険の守備範囲ではなくて年金の守備範囲であって、 65歳を超えてこれだけの人間が生活上の必要から働かざるを得ないという現状を、そもそも国として どう見るのかということがまず基本的な総括すべき点であって、雇用保険でどう見るかというのは、ちょ っと私自身の頭の中では馴染まないので、どこかの機会がありましたらまた、馴染むのだよということ を教えていただきたいと思います。 ○清家部会長 これは、事務局から何かお答えになりますか。 ○坂口雇用保険課長 いま豊島委員がおっしゃったとおり、そもそも、60歳代後半、65歳以上の方が 雇用就業の中でどう考えるかというのは、それは別途ご議論が必要だろうと思いますし、あるいは、年 金との関係の名においても、そういった議論が必要になってくるのだろうと思います。  雇用保険の関係においても、前々回もご説明しましたとおり、平成19年の制度見直しをしたときに、 雇用保険部会でもいくつかの今後の課題という中で、同じ資料の13頁の第3の「今後の課題」の(2) ですが、当部会としても、こういった問題についてどう対処するかということを、今後とも検討すべきで あるということもありました。いろいろな働き方についての意識もある中で、雇用保険の世界でも、この 65歳に達した日以降に雇用される方についての適用除外という問題についてどう考えるかということ をご議論いただければ、ということでご提示をしたということです。おっしゃるとおり、そもそも65歳以上 の雇用の問題について、どういう認識で考えるかというご議論も当然必要だろうと思いますので、そう いったところとの兼ね合いで考えると、なかなか一律にここだけで解決できないというご議論も、またそ れはご意見だと思いますので、そういったことも含めてご議論いただければと思います。 ○清家部会長 ほかに何か。 ○長谷川委員 11頁の図表8、これは非常に、我が国の高齢者の意識だなと思うのです。「65歳くら いまで」働きたいというのが41.7%、「70歳くらいまで」というのが16.2%、「何歳になっても」というのが 24.8%。それで、「70歳」と「何歳になっても」というのを足すと40.0%。そんなように見ていいのですよ ね。そうすると、「60歳くらいまで」働きたいという人が41%ぐらいで、それから、ある意味では「70歳くら いまで」働きたい、働いてもいいという人が40%いる。これはある意味では日本の特徴だと思うのです。 最近、私たち労働組合にも海外から、高齢者雇用についての意見交換を求められているのです。な んでそんなに高齢者のことを聞くのかと聞くと、日本の高齢者の就業意識は高い、参考にしたいという ことで、しょっちゅう来られているのですが、そういうのがこういうところに現われたのだなと思っていま す。  私は、この「何歳になっても働きたい」とか、「70歳くらいまで」働きたいというのは率直な意見だと思 うのです。どういう働き方をするかは別にして、そういう働く意欲というのはやはりあるのだろうなと思い ます。そのことと、雇用保険で議論する課題というのは、資料の1頁、現行の給付制度で、高年齢求 職者給付金と高年齢雇用継続給付制度があるわけですが、これをどう考えるかという、そのことを議 論したいのでしょう。これはなかなか難しい議論ですよね。私も、何歳まででも働きたい人は働けばい いと思うのです。私もきっと元気なうちは働き続けると思うのです。1週間働くか、それとも1日8時間 働くかは別にして。そのことと、雇用保険からこの2つの給付制度があるのですが、この現行給付制 度を何かいじるかという話は、すごく難しい。むしろ使用者のほうがいっぱい意見があるのではないか と思うのです。組合で言うと、高年齢求職者給付金というのは、やはりすごく関心が高くて、これは維 持してくれと。これはすごいのですね。自分はずっと働いてきたのだから、このぐらいはと。だから前回 の改正に対して、連合の中ですごく批判が起きたことは事実です。でも、現時点でこれをどう捉えるか というのはいろいろ意見はあると思いますが、おそらく、この制度は維持してくれと言うだろうなと思いま す。  その次に高年齢雇用継続給付金ですが、これはむしろ使用者のほうから聞きたい。私のほうよりも 使用者のほうがかえって関心が高いのではないかと思うのです。先ほどこちら側も言いましたが、継続 雇用のときの賃金設定が、高年齢者雇用継続給付金と年金の2階建てのところと、それと賃金と合 算して80〜85%で設定しているというのは、前回も言ったとおりなので、もしもこういう制度がなかった とするとその分だけ、15%を使用者は賃金を負担することになるという話になると思うのです。だから、 現行の85%を下げるというような話にはならないので、この辺は、私はむしろ使用者はどう考えている のか聞きたいなと思います。 ○清家部会長 使用者側、何かご意見ありますか。 ○西馬委員 まさにおっしゃっているとおりで、60歳以降の継続雇用の設定で、どういうような処遇に するかということであり、例えば私はJFEスチールですが、私の会社ですと、本人が60歳以降で受給 できる年金、それと、この高齢者雇用継続給付金、それと我々の会社から払う賃金を全部合算して、 60歳までの年収に対して何割にしましょうと、こういうような議論で設定してきております。非常に現実 的な問題として、2013年以降年金が出なくなると、当然のことながら労働組合側からは、定年延長と かではなくて、その部分は当然オンするのでしょうねと。同じ制度を維持した場合、雇用継続給付金も なくなるとそれもオンでしょうねと。こういうようなことで、順繰り順繰りに65歳までどんどん延びていくと いうことになってきますので、これは大きな問題です。年金はなくなる、高齢者雇用継続給付金もなく なるということになってくると、どうしていくかというのは、非常に頭の痛い問題であることは間違いあり ません。ということで使用者側としては、是非とも継続していただきたいというのが本音です。 ○清家部会長 ほかに何か。 ○古川委員 いまと同じなのですが、高年齢雇用継続給付金を段階的に廃止するというのが前の論 点で出ておりました。これは、ちょっと忘れてしまったのですが、財政的な問題で段階的に廃止すると いうことですか。 ○坂口雇用保険課長 実は、継続給付そのものの問題は次回にでもと思っていました。13頁の平成 19年の部会報告の(5)の所をご指摘だろうと思います。この書きぶりから見ると、先ほど補佐のほうか らご紹介しました高齢者雇用安定法の改正というのが、年金の支給開始年齢にあわせて段階的に、 雇用者の制度導入義務という形で、確保措置の義務づけをするということとの関係も踏まえながら、 全体として継続給付ということについてはこのような観点で、平成24年度までの措置とすることとして はいいかということを、この段階ではご議論されたのだろうと思っております。ですから、高齢者雇用安 定法の改正のスケジュール等も加味した上で、このようなご議論をされていたのかなと思っておりま す。 ○古川委員 以前は、雇用保険をもらうときは、60歳到達時の賃金で雇用保険の基本手当を計算 していましたよね。60歳以降の雇用保険を請求するときは、60歳到達時賃金証明というのをもらって 60歳のときの賃金、例えば61歳、62歳で退職しても、60歳のときの賃金をもとにして基本手当を計 算していたと思うのですが、それが廃止になって現行の賃金になったと思うのです。以前は60歳のと きの賃金で計算していたので年金と比べると、60歳のときの賃金をもとにした基本手当のほうが金額 が高かったので、みんなそちらを取ったと思うのです。今はそうではないので、基本手当と年金を比べ ると、どちらが高いかというと年金のほうが高かったりして、基本手当をもらわない人も、請求しない人 も出てくると思うのです。そうすると60歳以降、そういう人も出てくるので、どのくらいそれがいるかわか りませんが、それを比べて、今まで保険料を払っていたのに失業して、年金を取ったほうが高いから雇 用保険はもらわないと、そういう人も出てくるので、その割合はどのくらいになっているのかなと思うの ですが。 ○坂口雇用保険課長 いま直ちにはわからないです。申し訳ありません。 ○古川委員 そうすると、もらわない人もいるので、継続雇用給付を廃止する必要もないのではない かと思うのですが。 ○坂口雇用保険課長 今日のご議論も2つあって、65歳以降の対処の問題として、適用除外をどう するか、それとの裏腹で、先ほど長谷川委員もおっしゃった高齢求職者給付金一時金の扱いをどうす るかというグループが1つと、いま古川委員がおっしゃった、60歳時の賃金と比べた高年齢雇用継続 給付の扱いをするのかという部分と2つあろうかと思います。後者の実態の数字については我々いま 持ちあわせていなくて、また検討してみたいと思いますが、全体としてご議論の中では、今日は適用の 問題との関わりでということでご提示したものの、おっしゃるとおり給付との兼ね合いというのが、問題 としては十分あって、そういった点も含めてご議論いただかざるを得ないかなということで考えていま す。 ○清家部会長 ほかには何か。 ○西馬委員 先ほどのお話ですが、今度、年金受給開始が65歳からになりますと、一方で、70歳ま で現役世代を目指していくといったような議論があるようです。そのあたり、先ほど豊島委員がおっしゃ ったと思うのですが、全体、国のビジョンとしてどうしていくのかということです。例えば延長線上で年 金との関係で、65歳まではみんな働きましょう、65歳からは引退しましょうということでもまだ足りなくな って、65歳以降も働きましょうと。こういう世界を目指すのであれば、65歳以降も雇用保険の適用に するというのが自然の流れとして出てきますし、全体の流れとしてどうするのかというようなビジョンが ないと、雇用保険単独ではとても議論できないのではないかと思っております。 ○清家部会長 ほかにはよろしいですか。いま西馬委員が言われたような、少し前広な議論をしなが らこの問題を考えていくことが必要かと思いますので、これについてもまた何か新しい、いま出てきた議 論に資するような資料等ありましたら、事務局のほうで引き続き整理していただくということでよろしい ですか。 ○長谷川委員 2013年以降、2階の部分がなくなるわけですから、そうすると、この表で見るように、 2013年と2025年があるわけですが、そのときに、定年年齢をどう考えるか。いまの高齢者雇用促進 法だと3つを取ることになっていますよね。この2025年のときに、全部定年延長で65歳定年というよ うにするのか、それともそういうのはやめるのかで、いろいろな制度設計が違うと思うのです。だからこ こはやはり、いま先生がおっしゃったように大きなビジョンを描いて、雇用保険と年金というのをセットで 議論しないと、部分的なことをやってもなかなか納得できないのではないかと思いますね。だからこれ 以降、2013年とか2025年を考えた上での、全体的な制度設計の議論をする必要があるのではない かとは思います。そこは私も同じです。 ○清家部会長 ありがとうございました。それでは一応、ここのところの議論はここまでとして、次に、7 月の雇用保険部会でも事務局から話があったかと思いますが、遡及適用について事務局から説明を いただきたいと思います。 ○篠崎雇用保険課長補佐 資料5、「遡及適用関係資料」についてご説明させていただきます。この 遡及適用については先の通常国会において、遡及適用についての問題提起がされておりますので、 当部会でも課題として取り上げさせていただいております。  まず、現状の遡及適用の仕組みについて説明させていただきます。資料の1頁です。ここにあります ように「遡及適用の際、被保険者期間の計算に当たっては、被保険者資格の確認を行った日から2 年前までの期間が被保険者期間の計算の対象となります」ということで、具体的にはこの絵にあるよ うに、就職をして離職をする、本来であればこのすべての期間が被保険者期間になるわけですが、そ れが適用されていなかったという場合については、点線ですが、被保険者資格を確認した時点から2 年間までは遡ることができるということで、その遡った時点から離職までの期間、これを被保険者期間 として失業給付が支給されるという形になるものです。  次に、何が課題かと言いますと、例えば雇用保険料が天引きされていたけれども、雇用保険の資格 取得がハローワークに提出されていなかった場合に、いまご説明したように法令の規定に基づくと、2 年間までは遡及されるけれども、それ以前については遡及されないという結果になる。そうすると、事 業主がきちんと資格取得届を出していたならば受給することができた日数の給付が受けられない、と いうケースも生じるということが課題になっております。  これまで行政としてどういう対応を取ってきたか。もちろん法令に基づいて遡及適用が必要であれば、 これを適正に行うということは当然ですが、そもそも雇用保険の被保険者資格の取得の届出義務は 事業主が負っておりますので、こういったものを徹底させるという取組みをしてきております。  具体的には資料の3頁。これは「事業主の皆様へ」ということで事業主向けのリーフレットですが、雇 い入れている労働者の方々の「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」、 それから「雇用保険被保険者証」を、本人に渡してくださいという形で事業主に呼びかけるということ で、いろいろな事業主説明会や事業所訪問のときに、こういったことを事業主にも周知をするというの が1つあります。  それから資料の5頁。これは労働者向けに「被保険者の皆様へ」ということで、「雇用保険被保険者 資格取得等確認通知書」、「雇用保険被保険者証」はお持ちですかと、労働者自身に確認を訴える というものです。もし、それがどうなっているかわからない場合は、ハローワークに照会していただけれ ばその確認ができます、ということをリーフレット、それから、厚生労働省のホームページでも周知をし ております。  こういった取組みをしてはおりますが、遡及適用の現状と課題についてどう考えるかということを、当 部会の課題の1つに提起させていただきました。説明は以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。ただいま説明があった遡及適用の問題について、何かご質 問、ご意見がありますでしょうか。 ○長谷川委員 私のほうから意見です。1つは、2年がいいのかどうなのかということについては、少し 検討することが必要かなと思います。私も昨年の日比谷の派遣村で労働相談を行ったときに、こんな に厚い給料明細書を持ってきて、私は引かれていたのだという説明をした方がいました。でも、なんで 自分は雇用保険の失業給付が受けられないのかという相談がありました。そういう意味では、どのくら いの遡及適用がいいのかというのは、他の制度なんかも参考にして、1回は検討してみることが必要 ではないかと思います。  もう1つは、厚労省から今日、3頁とか5頁の、「雇用保険被保険者証」が交付されますと書いてあ るチラシが提出されていますが、私の近くにいる人でこれを持っている人はいなくて、誰が持っているの と聞いたら、事業主だと。そういう人がいっぱいだったので、意外とこれは周知されていない、これは本 当に周知されていない。これは意外と事業主が持っている、保管しているという話が多いのですが、こ ういう制度をどうやったら本当に、自分の権利ということで、年金手帳もそうでしたが、最近はみんな自 分の年金手帳、あれだけ騒がれたものだから、みんな確認するようになったわけですが、この被保険 者証については、もう少し何かしないと、自分が持っているという自覚は本当にないかもしれない。これ は意見で、だから、どうしたらいいかというのはもう少し検討が必要なのかなと思います。 ○三木委員 いま長谷川委員も言われましたが、実際に組合ができたときには、そういう問題は非常 に多く出てくるわけです。やはり事業主としてのきちんとした姿勢が必要です。保険証についても、実 際に天引きされているから、労働者というのはやはり安心するのですよね。入っているのだろうというこ とだけで、どう点検していいかというのはわからないのです。そのことを含めて問題が非常に多いという 関係。特に零細にいけばいくほど、そういう問題は起きるという状況です。労務管理や、十分な福利 厚生もやっていませんので、逆に言えばそこのところはできるだけ省こうという姿勢が非常に多い。そう いう傾向が見られるということを含めて、遡及の問題でも、2年で本当にいいのかというと、掛けている と思っていたのが、もう何年も掛けていなかったという傾向が非常にあるので、その点はやはり、きちん と遡って、どこまでやるのかというところも含めて、是非検討をお願いできればと。あるいはその保険証 についてもきちんと、本人に渡るようにどう徹底するのかと、やはりそこのところの議論は必要だと思い ます。 ○清家部会長 ほかに何かご意見ありますでしょうか。よろしいですか。  また、次回以降も議論してまいりますので、その中でも出てくるかと思います。本日のところはこのあ たりにさせていただきたいと思います。次回は給付の内容等についてご議論いただきたいと思います ので、事務局には資料を用意していただいて、その資料を参照しながら議論を進めてまいりたいと思 います。  次回の日程については、事務局において、改めて各委員にご連絡をお願いしたいと思います。  以上をもちまして、第48回雇用保険部会は終了いたします。  なお、本日の署名委員は雇用主代表は塩野委員、労働者代表は豊島委員にお願いいたします。 委員の皆様、お忙しいところをどうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係     03−5253−1111(内線5763)