09/09/28 第4回第7次看護職員需給見通しに関する検討会議事録         第4回「第七次看護職員需給見通しに関する検討会」                     日時 平成21年9月28日(月)                        14:00〜                     場所 中央合同庁舎5号館共用第8会議室 ○茂田補佐 定刻となりましたので、ただいまより、第4回「第七次看護職員需給見通 しに関する検討会」を開催します。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中のところ、 本検討会にご出席いただき、誠にありがとうございます。今回、初めてご出席の委員を ご紹介させていただきます。学校法人吉田学園理事長の吉田松雄委員です。 ○吉田委員 吉田です。よろしくお願いします。 ○茂田補佐 なお、北澤委員、笹井委員、田中委員は本日、ご都合が付かないため欠席 です。また伏見委員の代理で、東京大学医学部付属病院国立学校病院データベースセン ターの小林さんにご出席いただいています。  続きまして、初めて本検討会に出席いたします審議官の中尾明弘をご紹介いたします。 7月24日付で事務局に人事異動がございました。医政局長が阿曽沼慎司に変わりました が、本日は所用により欠席となっています。また、今日、初めて出席している者をご紹 介させていただきます。保健医療調整官の野村知司です。  議事に先立ちまして、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第が1枚、資料 1は浅野委員の資料です。資料2が大久保委員の資料です。資料3-1、3-2が高砂委員の 資料です。資料がないとかございましたらお申し出ください。参考資料として看護職員 確保に対する概算要求関係の資料を付けています。これは8月末までの方針に基づいた もので、今後、概算要求について新たな政府の方針とその指示を待っている状況ですが、 一部ご説明しますと、両面印刷されている裏の3.離職の防止・再就業の支援というとこ ろで、本検討会に関係するところがあります。  この中で、赤字になっているところが新規もしくは拡充の資料ですが、いちばん上の 短時間正規雇用等看護職員の多様な勤務形態導入支援事業で、3億6,700万円の要求を しています。内容については看護職員の就労環境の整備を推進するため、短時間正規雇 用など多様な勤務形態の導入に対する支援ということです。その下が病院内保育所の運 営事業の拡充です。簡単ですがご説明させていただきました。それでは座長、議事の進 行をお願いします。 ○座長(尾形) 委員の皆様におかれましては、ご多用の中をご出席いただきまして誠 にありがとうございます。早速議事に入りたいと思います。本日は「看護職員確保対策」 について、3人の委員の方からお話を伺うことになっています。初めに財団法人三友堂 病院看護部長の浅野委員から、次に福井県済生会病院副院長・看護部長の大久保委員か ら、病院における看護職員確保対策について、まずお話を伺いたいと思います。それか ら質疑応答の後、次に社団法人南区医師協会南区メディカルセンター訪問看護ステーシ ョン、社団法人全国訪問看護事業協会理事の高砂委員から、訪問看護ステーションにお ける看護職員の確保対策について、ご紹介をいただきたいと考えています。まず短時間 正職員制度の導入等で、看護職員の定着について効果を上げていらっしゃるとお聞きし ている、三友堂病院の取組について、浅野委員から15分程度ということでご紹介をい ただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○浅野委員 三友堂病院の浅野と申します。NHKの大河ドラマ「天地人」の最終の舞 台となります米沢に当院はあります。その「天地人」ブームで米沢は観光客で非常に盛 り上がっています。今年1年だと思いますけれども、直江兼続が被っている愛の兜の実 物も米沢にありますので、是非、お越しいただきたいと思います。  「看護職員の確保定着への取り組み」ということですが、手厚い看護を目標とする看 護配置とするならば、当院はまだまだ看護職員は充足されていませんので、本当にあの 手、この手の対策を講じています。中でも昨年より導入した短時間正職員制度には、か なり力を入れているところでございますが、直江兼続の精神、愛と義をいただきまして、 (愛と義の短時間正職員制度)とサブタイトルを付けさせていただいています。では始 めさせていただきます。                  (スライド開始)  三友堂病院のご紹介を簡単にさせていただきます。当法人は6つの事業所を持ってい ます。まずはいちばん上ですが、当院です。急性期及び緩和病棟などの専門医療の役割 を持つ三友堂病院です。左下は回復期リハビリを目的にした三友堂リハビリセンターで す。その建物の中に、訪問看護ステーション、居宅介護支援センター、通所リハビリセ ンターの事業所が入っています。右側が三友堂病院の看護専門学校です。  三友堂病院は明治19年の創設です。123年の歴史があります。当院は「信頼と融和で 築こうよい病院」という理念を掲げていて、ただいまご説明したとおり、当院は急性期 及び緩和病棟などの専門医療を地域住民の皆様に提供しています。病床数は190床、診 療科数は19科、入院は10です。平成20年の平均在院日数が14.3日、病床稼働率は 85.8%、看護職員数190名、看護師配置は入院基本料10対1、看護単位は8単位、看護 師の平均年齢は35.5歳です。看護方式は固定チームナーシングをとっています。平成 10年に人事考課制度を導入しています。病院機能評価のVer5の認定は平成18年に取得 しています。基本の勤務形態は変則2交代制を敷いています。  当院のような田舎の地域密着型の民間病院は、平成18年の診療報酬の改定の影響を もろに受けました。7対1という手厚い看護への革新は本当に素晴らしいことなのです が、平成18年の離職率が16.7%で、これは過去最高でした。その中身を見ると、ここ には書いていませんけれども、大学病院などに転職した看護師は54.9%です。次いで結 婚・出産・育児・介護などライフイベントの理由が20%です。当院は看護学校も併設し ていますけれども、卒業生は都会の大きな病院や大学病院に就職してしまい、採用も平 成19年はたった8名と少なく、10対1をやっと取得していたような状況です。  ところが、短時間正職員制度導入もあってか、平成20年には4%まで離職率が改善し ています。そういうわけで離職多く、採用少ない看護師不足は非常に深刻で、せめてラ イフイベントなどの事情で退職させず、仕事と両立してもらう方法として導入したのが、 短時間正職員制度なわけです。ほかに新人確保対策、再就職対策、離職防止対策という ことで強化しています。その短時間正職員制度ですが、昨年2月、院長のGOサインと ともに、4月からのスタートに向けて、人事部と看護部のコラボレーションで急ピッチ な企画をしたのです。  短時間正職員とは何かですが、フルタイムを40時間としますと、正職員より労働時 間が短い正職員のことを言います。短時間正職員が法律上定義されているわけではなく、 事業所内で制度化したものですが、当病院は労働時間を週20時間以上の勤務と定め、 取り方の規定は全くなく、個々人で契約するというふうに定めました。しかも雇用期間 の定めがなく、賞与・退職金の支給、昇進・昇格、教育・訓練、社会保険、福利厚生の 適用など、正職員と同様にあります。  次に短時間正職員を導入することにより、期待できるメリットや目標を確認し合いま した。病院側の目標は何と言っても職員の定着、離職率の低下に尽きるわけです。短時 間正職員のメリットとしては育児と介護が両立できます。しかし、当院ではそれ以外で も自己啓発とかボランティア活動など、自己のライフスタイルに応じた多様な働き方が できます。すなわちワーク・ライフ・バランスの実現が図れるということです。  正職員と短時間正職員、それにパートタイマーの契約等々の相違を一覧表に示してい ます。比較していただければ正職員と短時間は全く何も相違はありません。福利厚生な んかは時間に比例するというものだけです。  給与算定の例ですが、短時間正職員の給与は、フルタイムの正職員の金額に短時間係 数、時間比例を乗じて算出するということですから、例えば1週間の勤務時間が24時 間であれば、24時間を正職員の勤務時間である40時間で割った数、0.6が短時間係数 です。当然のことですが、これはすべて全職員に公開しています。当院の試算では、週 20時間の勤務のパートを週20時間の短時間正職員に変更すると、年間74万7,818円の 人件費増にはなるのです。しかし、人材確保のための先行投資と思えば決して高くはな いという病院の考えです。  院長のGOサインから、わずか2カ月足らずで導入の準備が急ピッチで進んだわけで す。流れは資料を参照してください。4月1日には就業規則・給与規定変更のすべてを 労働基準監督署に届け出ています。  短時間正職員の人数は、医師1名を含め全体で18名います。全体の約1割弱の数に なっています。この一覧表は今年4月、新規で短時間正職員になった方です。全部で11 名いますが、平均年齢は41歳です。1人が両親の介護で、もう1人は大学院に行くため の受験勉強中という理由です。そのほかの8名は、まさしく育児の真っ最中という事情 です。  次のいちばん上の欄は、パートの方にも当然門戸を広げていますから、短時間正職員 に変更した方が5名います。真ん中のところは正職員から短時間正職員に変更した方で す。理由は育児と介護です。いちばん下の欄の3名は、昨年まで短時間だったのがフル の正職員になりました。それは育児もようやく目処がついて、フルでも大丈夫になった という理由で今年4月から変更しています。  先ほどご説明したとおり、短時間正職員の規定は週20時間以上ということですから、 労働時間を短縮したり労働日数を短縮したり、また両方を併用したりと、個々のニーズ に合わせて多様に設定できます。先ほどの表は見づらかったと思いますので、3人の方 の勤務を拡大すると、このようになります。病棟勤務のAさんは就業時間が9時から14 時、週5日の勤務、1日の労働時間は5時間ということで、週にすると25時間になるわ けです。外来勤務のBさんは8時半から13時までの勤務、週5日、1日労働時間4.5時 間ですので週は22.5時間です。手術室のCさんは8時半から17時半、週3日勤務で1 日労働時間は8時間、週にすると24時間ということで、みんな個々ばらばらの勤務で す。  新しくスタートを切った方への教育体制ですが、キャリア階層別教育プログラムに則 り教育します。その教育プログラムはキャリア別はラダーI、ラダーII、ラダーIII、ラ ダーIV、ラダーV、ラダーV2に分けています。その方のキャリアと経験などを加味し ながら、目標設定をどこに持っていくかが課題なのですが、当院は人事考課制度を導入 していますから、等級により課題を定めていきます。教育計画の中身は三友堂病院のホ ームページを是非ご覧いただきたいと思います。  現場教育は技術のチェック表というものがあり、コーチナースの指導を受けながら進 めていきますが、短時間正職員の方はいろいろな現場経験を経てきた方々なので、技術 修得は新卒の方より時間がかからないと申しますか、早いという強みは確かにあります。 この輪は新卒の方にも中途採用の方にも同じような連携で、新しいスタッフを支えます。  新採用の短時間正職員の方数名のスライドです。短時間という目印も区分けも一切あ りません。アンケート調査を行ってみたのですが、短時間正職員の方の声としては、待 遇面は正職員という保障なので、ほぼ90%以上の方が満足です。ワーク・ライフ・バラ ンスがかなり充実している。ただし、時間外研修がいろいろあるので、その時間外研修 に対する負担がかなり大きいということが問題です。スタッフの方の声は、日勤の層が 厚くなるのでケアが行き届くようになった、新卒の方より指導が大変楽だという声が聞 かれます。師長の声としては、同じ部所に短時間正職員が3名以上になると、勤務シフ トの計画がとても大変だという声が上がっています。ただし、正職員の時間外が明らか に減っています。有休取得率もかなりアップしています。ちなみに平成19年の有給取 得率は18.4%でしたが、去年の平成20年は32.6%までアップしています。あと師長さ ん方としては、研修を受けてほしいとか委員会活動もやってほしいという声も聞かれま す。これは短時間ドクターの第一号、緩和ケア科のドクターです。  話題は変わりますが、この1年間、看護協会をはじめ様々な雑誌、新聞などで取り上 げていただき、本当に戸惑い半分だったのですが感謝しています。これは日本経済新聞、 これは読売新聞、これは地方のNHKです。  次に新人確保対策として、どんなことをしているかですが、県内外の看護学校へ就職 説明の訪問に人事部と部長室で回っています。山形県主催で年3回あるのですが、看護 師などの職場説明会にも行っています。看護部を紹介したDVDは毎年変更しているの ですが、「よくござったなし」というようなDVDも作成して各看護学校に配布していま す。当院の三友堂看護学校への就職説明会、相談会は随時行っています。看護学校は特 待生制度、奨学金制度もあります。1日看護体験を随時受け入れています。あとは就職 祝い金です。就職しますと新人の方に10万円の準備金を給付しています。  再就職対策としては、これも県の委託ですけれども、再就職の支援看護技術修得者の 受け入れを随時行っています。去年は3名の方がそれで就職しています。もちろん1日 看護体験も随時受け入れています。短時間正職員の採用もしています。ホームページは 随時リニューアルしています。同じく就職祝い金10万円ですが、但し短時間正職の方 の場合は時間勤務の割合によりますので、そういう祝い金も時間で支給しています。  離職防止対策ですが、看護師は去年、待遇を全体的に見直しています。8%ぐらいの 昇給率見直しをしています。認定・専門看護師の取得支援制度も積極的に行っています。 糖尿病の認定ナースが1人いますし、がん性疼痛の研修会に現在1名行っています。平 成19年から院内のエキスパート制度を独自で作っています。感染、創傷、呼吸、乳が ん、救急など計14種もあります。現在、6名の方が院内のエキスパートです。3年ごと の更新制度をとっています。各種学会・教育・研修活動への参加奨励をしています。加 点評価制度で、改善提案、院内・外の講師、学会発表、論文投稿などに2千円〜10万円 の制度をとっています。ワーク・ライフ・バランスの支援、院内フィッシュを積極的に 推進しています。  フィッシュは最近、いろいろな病院で取り入れていますが、人を大切に思いやって、 仕事を楽しくしていくという哲学をコンセプトにしているフィッシュを、積極的に推進 しています。労働環境の調査、満足度調査を年1回しています。業務量調査は看護業務 の見直し・改善ということで、年2回行っています。これは虎ノ門のT・N・Sによる手 法で業務調査をしているのですが、看護師の役割がかなり多様化していますので、業務 密度の高まりから、看護師でなければならない業務に専念できるように、こういった調 査をやっています。そのことは他部門との連携とか、協働によるワークシェアも推進で きると思っています。具体的には去年、例えば入院患者さんの採血や血糖検査、ポータ ブルの心電図検査はすべて病棟の看護師がしていましたけれども、これを検査部の方に お願いして実際にやっていただいています。  看護師が行っていた病棟の事務処理、クラーク業務も、医事課よりローテーションを 実施して、病棟の事務処理をしてもらっています。病棟薬剤師業務として服薬指導、化 学療法の調剤を実施していますが、各病棟付けとするには、現在、薬剤師も不足してい るために今は無理なのですけれども、近い将来はリスク予防という観点から病棟所属も 計画にあります。こうした見直しは今後も行って、看護師がよりケアに専念でき、働き やすい環境にしていくことが重要になると思っています。これは宣伝用の広告でした。  今後の課題です。1つは、今後、ますます社会情勢が変わると予測されます。政権交 代しても同じだと思います。診療報酬もどのように変わるか。将来の見通しどころか明 日への保証も約束がないほど、特に地方の病院、当院のような田舎の病院は1つの企業 体ですから非常に厳しいです。看護師の供給といえば少子高齢化社会からくる18歳人 口の減少、大学志向に伴う看護師養成所の定員割れなどから、卒後1年の病院就業者数 は定員の71%にしかならないと言われています。つまり、これからの看護師確保対策の 定着のポイントは、現場から去る看護師を減らすにつきるということです。そのための 1つとして、看護職のニーズに応えられるような多様な勤務形態の方を積極的に受け入 れるための体制を、より強化することが大切だと思います。  看護職のニーズに応えられるようなということは、これから夜勤ナースが不足してき ますから、夜勤ナースの制度を考えたり、リリーフ体制をどんどん強化することも必要 になっていきます。去年の11月から夜勤ナース制度を導入したのですが、現在のところ、 たった2人でまだ効果としては上がっていません。  医療現場は常に医療事故と密接していて、非常にリスキーな環境にありますので、特 に安全に対する教育は重要となります。事故が不安という理由で退職に追い込まれるケ ースもあります。そういうことからも院内の教育体制全般の整備と充実を図ることは必 須になります。  ここには記載しませんでしたが、今後のもう1つの大きな課題は手厚い看護です。看 護師の配置を10対1ではなく、7対1を目指したいと強く思っています。看護部のホー ムページを是非ご覧いただきたいと思います。  最後に、ただいま放映中の「天地人」、直江兼続の死後200年、兼続の思想と政策を 受け継ぎ、米沢藩の再建を行った上杉鷹山公の名言、「なせば成る 為さねば成らぬ何事 も 成らぬは人の為さぬなりけり」の精神で、多様な人が多様な価値観で生きている現代 に、多様に働ける職場を提供できるように、これからも努力していきたいと思います。 本日はヒアリングという貴重なこの場を提供していただきまして、本当にありがとうご ざいます。以上で発表を終わります。 ○座長 短時間正職員制度の導入をはじめ、幅広い論点につきまして大変興味深いご発 表、ありがとうございました。ご質問のある方もいらっしゃるかと思いますが、先ほど 申し上げたとおり引き続き大久保委員にご発表いただき、その後、ご質問、ご意見等を まとめて伺いたいと思います。大久保委員からは、働き甲斐のある職場づくりを目標と して選べる勤務体制、子育て支援、キャリア支援などに取り組んでおられる福井県済生 会病院の取組について、15分程度でご発表をお願いできればと思います。大久保委員、 よろしくお願いします。 ○大久保委員 ご紹介いただきました大久保でございます。「看護職の定着に求められる もの」ということで、済生会病院の取組をご紹介したいと思います。  福井県済生会病院の概要ですが、理念は「患者さんの立場で考える」、創立は1941年 です。病床数466床、病床利用率94.2%、外来患者数1,250名/日です。平均在院日数 は13.2日、診療科22科、入院看護配置7対1、全職員数1,116名、うち看護部が606 名です。当院のビジョンは、「日本一の地域支援システムを構築する」ということです。 大きな取組ですが、ビジョンとして取り組んでいます。以下、その内容です。  看護職員の基礎データですが、昨年のものです。平均年齢は30.1歳、平均在職年数は 10.2年、離職率が7.8%、有給休暇消化率が52.3%、残業時間(1カ月平均)が7.1時 間、短時間正職員制度利用者が28名、夜勤免除制度利用者が48名、就学前有子率はパ ート31.8%、正職員26.9%です。  当院における看護職の離職状況ですが、平成16年が13%でどんどん伸び、ここから 個別の対応を開始しています。個別の対応をしていましたが個別には限界があり、平成 18年度から制度化を開始しました。それは短時間正職員制度であるとか夜勤免除制度で す。平成19年で離職率は8.3%に落ち平成20年度には7.8%に下がっています。ピンク の上の線は育児理由の退職者ですが、2人目、3人目の出産で退職しなければいけない 理由もあるようです。下の赤はパートへの移行者ですが、退職してパートに移行する者 も増えています。またパートから職員に変わる者も増えてきました。  当院での対策の概念図ですが、これは2年間、重点目標で取り組みました。「働き甲斐 のある職場づくり」に取り組み、これは病院全体の目標です。選べる勤務体制を考える ときに子育て支援に対応し、キャリア支援にも対応していくことを、同時に行っていか なければならないことが分かりました。この取組をして看護職の定着策の一環というこ とになりました。  定着への対策の内容は次のとおりです。選べる勤務体制について、まず短時間正職員 制度ですが、目的は育児・介護・体調不良などの職員に、家庭での役割を果たしながら 仕事も続けたいという人を支援することです。労働時間は本人の希望する時間帯としま したが、夜勤のみも可能としました。給与に関しては基本給の75%を支給、賞与はその 期間に応じて計算し支給するとしました。その他は正職員と同じ対応です。  短時間正職員制度の利用者の反応ですが、今月9月、制度を利用している27名に質 問紙による調査を行いました。その結果です。制度を選択した理由として、「育児時間が とれる」が74%でした。制度の必要度は78%が「非常に必要」と回答しています。ま た「この制度がないとパートになる」が59%、「退職」が22%でした。  短時間正職員制度の利用の満足度では、時間を有効に活用できることで気持に余裕が 出き、業務も自分に適して、育児と仕事のバランスがとれているという状況がうかがえ ます。ただ、「あまり適していない」と回答しているナースに関してみると、子供が2 人、3人、核家族というところが主な回答でした。  パートは1時間から可能ということで、自分の働ける時間帯で勤務することができ、 そのパート職員が地域で情報を伝えてくれることで、働くことを希望して来られる方が 増えました。ナースは口コミというか、メールでお互いに連絡を取り合っていることが 多いようです。またパートで働いてみて自分に合う病院であるかどうかを判断し、正職 員を希望する人も増えてきています。これらのことも看護職の確保定着につながりまし た。  夜勤免除制度に関してですが、目的は、家庭の事情や体調不良によって夜勤ができな い、あるいは夜勤回数を減らしてほしいという人に対し、勤務が続けられるように支援 することです。対象者は産前産後、育児・介護・体調不良・長期研修者です。夜勤回数 の公平性を考えて、回数に応じた手当をつけるように配慮しました。回数による手当を 以下のように付けています。  多様な勤務形態の導入前の勤務時間帯の状況の例ですが、縦の水色の部分が医療安全 上、注意が必要とされている時間帯です。  これは多様な勤務形態の導入後の状況の例です。水色の部分に人を厚く配置すること によって、医療安全上、必要とされている時間帯に厚い看護師の配置が可能になりまし た。  超過時間、パート看護職、退職率の推移です。平成20年度、超過時間は7.1時間です。 パートの看護職は78名、離職率は7.8%に訂正してください。パート職員が増えるに従 って超過時間、退職率も下がっている傾向が見えます。  多様な勤務体制の導入ポイントですが、1.は勤務時間4時間を1単位とした考え方で す。1週間・5日間勤務、1日・8時間労働=40時間を10単位、1日・6時間労働=30 時間を7.5単位とし、1週間に単位数をいろいろな組合せで勤務するという考え方です。 2.は業務内容の見直しですが、必要なケアが適切に提供される人員配置と引き継ぎの工 夫です。3.はスタッフの受け入れです。退職せずに短時間でも働き続けることで専門性 のキャリアが継続できることを啓蒙すること。またこれまでの固定観念を捨てる必要が あります。ポイントは副部長、師長の熱意と活気が必要です。 子育て支援ですが、院内保育所「ぽっかぽか園」をご紹介します。対象児は0歳児〜3 歳まで、定員は70名、今年5月に50名から70名に増員しました。職員はすべて病院 から出向になっています。看護師2名、准看護師パート1名を配置していることが心強 い点です。保育体制は365日24時間体制です。対応時間は残業・夜勤の時間帯も対応 しています。保育費は月額3万5,000円から2万円へ減額しました。これは福利厚生の 一環として行いました。利用率はほぼ98〜100%です。利用職種は看護職9割、コメデ ィカル・事務職・医師等です。  キャリア支援ですが、当院では認定看護師が14名活動しています。専門性の活用と して活動の場を、それぞれ専従として保証しました。看護外来では5名の認定看護師が 病院を縦断的、横断的に活動し、地域に対して活動を展開しています。彼女たちの活動 は医師業務を支援し、ほかの看護師の育成モデルにもなっています。  これは看護部の全体の教育図ですが、ベナーの理論を使って構成しています。ここで も認定看護師が自分のプログラムを持ち、すべてラダー形式になっています。それで活 動を展開しています。レベルIの新人のところで、新人看護師に1カ月フォローでグル ープワーク、3カ月フォローで面接、これは師長、教育副部長が行っています。6カ月 フォローでグループワークと臨床心理士の面接を行っています。このほかにも現場で師 長が年2回の面接を行います。  また病院全体としての研修ですが、救急看護応用編としてBLS、ACLSを展開してい ます。これは福井県済生会病院、NPO、AHA、ACLSセンターを去年立ち上げ、そこで 1次救命、2次救命、小児救命のインストラクターを育てています。これは職員の63% が既にBLSプロバイダーを修了しています。内容は医師をはじめ、事務職もすべて職員 に該当して講習を受け、認定を受けています。ここで例えば復職してきたナースが、当 院2年目で2次救命(ACLS)のインストラクターになり活動を行っています。これは1 次救命の研修教室の様子です。これは2次救命のトレーニングの様子です。これにはナ ースも入っています。ドクターもいます。MEもいます。  次に病院全体での研修ですが、5年目以上を対象としてリーダー研修を行っています。 この指導やファシリテーターは、職種や職員に関係なく行っています。職員がいろいろ な場で活躍できる機会と場があるということは、職員のモチベーションが上がり、定着 に結び付いていると思われます。  定着率向上のための改善策ですが、4ブロックチャートで表すと、効果が大きく実行 しやすいのは、「時間内に仕事が終わる」「諸手当のアップ」「ミスをした時のフォロー」 です。  時間内に仕事が終わらない理由として、以下のことが挙げられました。現在、一つひ とつの業務調整に取り組んでいるところです。  公平的な諸手当ということで、1、2に関しては対応したことですが、3、4、5につい ては福利厚生の一環です。  このような取組を行って、職員の満足度調査を行った結果をご紹介します。薄いピン クが平成19年度、ブルーが平成20年度です。それぞれの項目で上昇しています。  新人看護職定着に効果的対策として、新人ナース50名にブレーンストーミングでい ろいろ話合いをしていただきました。その内容を示しています。  次に2年目以上の看護職定着に有効的対策として、師長23名がブレーンストーミン グを行った内容です。新人看護職と重なっている点ですが、制度の7.新睦会行事は国内・ 海外旅行、そして家族同伴でいいですよという班があるということ。8.NO残業day、 環境の1.職員寮、3.SCU・ホスピスの存在、4.医療安全対策に取り組む組織環境がある、 これらが新人と2年目以上で全体的に重なっている部分でした。2年目以上の看護職の 定着の体制のところで、1.理念や方針の周知、2.選べる多様な勤務体制とあります。や はり働き出すと1、2が必要かなというところが見えます。  新採用者指導開始計画というのが挙がっています。それを次に説明します。これは当 院で新人教育の開始時期を表した表です。2002年から開始し、2006年度まではスムー ズに開始できていましたが、2007年目ごろから、この表には当てはまらない、どうして も逸脱するというか、開始時期をずらしていかなければいけないナースも現れています。  看護職の定着に効果的対策として、以下のとおりです。選べる勤務体制が1.2.3.と、 先ほどお話したとおりです。院内保育所は24時間体制が必要かと思われます。キャリ ア支援では認定看護師の活動と人数、適材適所の勤務場所、個人別キャリアアップ面接 と目標管理、復職看護職には個別対応でのプログラム、ラダー研修+病院全体のプログ ラムなどです。業務整理では時間内に仕事が終えるための業務整理、そしてこれは業務 整理ではないのですが、メンタルサポートシステムも大変重要だと思われます。  看護職定着の今後の課題ですが、1.就学から低学年の児童の対応は、核家族のナース が夏休みで児童を見てくれる人がいないと言い出し、今後、対応して考えていかなけれ ばいけないと思っています。2.病児の対応は、今回、新型インフルエンザで院内保育所 がもしクローズになった場合、40名のナースが出勤困難になります。そのことを今後、 どういう対策をとったらいいか考えていかなければいけないと思っています。3.新人教 育では、技術指導の開始と到達する時期の検討、特にマーゲンゾンデ挿入、注射、輸血 に関しては患者に侵襲を及ぼす内容ですので、これの開始時期、到達時期を検討してい かなければいけないと考えます。4.個別のメンタルケアはこれまでなかったことです。 開始プログラムから落ちこぼれてくるメンバーになると思いますが、年に1〜2名、ど うしてもついていけないナースが出てきています。誰がメンタルケアを継続的にやるの か、臨床心理士に任せるわけにはいかないし師長も忙しい、どこで誰が対応するかとい うことが今後の課題だと思います。5.継続した業務整理、特に他職種との業務整理を今 後、ますます進めていきたいと考えています。  これは看護外来の認定看護師の5名です。生き生きと明るく、楽しく業務しています。 以上で発表を終わります。                 (スライド終了) ○座長 ありがとうございました。多様できめ細かい対応によって、退職率の顕著な低 下と一定の効果を上げておられる事例について、ご説明いただきました。それではただ いまの浅野委員、大久保委員のご発表につきまして何かご質問、あるいはこれらのご発 表を踏まえた今後の看護職員確保対策について、ご意見がございましたら承りたいと思 います。 ○神野委員 最初に、浅野委員のお話の中にあった夜勤専従の考え方について教えてい ただきたいと思います。いま20時間以上ということですので、例えば6時から10時ま で週5日間で20時間です。そういうワーク・ライフ・バランスもあり得るかと思いま すが、そうすると4週間で夜勤が80時間になってしまうということです。私は詳しく ないのですが、たしか72時間以内にしろという規定があると思いますけれども、その 辺との整合性をどうやってとるのかという質問です。  あと意見的になりますが、浅野委員のお話にも大久保委員のお話にも他職種との協働 というか、コラボレーションの話が出ています。今回は診療報酬の会ではありませんけ れども、7対1、10対1でも看護補助者をきちんと評価する仕組みが、今後の施策の中 に必要なのかなと思います。いまは7対1、10対1では看護補助者の加算が付いていな いと思いますが、その辺のところを付けてあげることで、もっともっと補助者の人数を 増やしていただくことが必要なのかなと思いました。  もう1点、意見になりますけれども、特に大久保委員のお話の中で保育園に看護師さ んがいるということで、これは大変素晴らしいことだと思います。いま立場を変えて自 分の病院のことを考えてみると、実は病児保育室を公のものとして設置していますが、 職員から大変喜ばれています。インフルエンザ、麻疹等で普通の保育園で預かれない子 供さんを病院の病児保育室で預かるということで、急な欠勤をしないで済むということ です。既に院内保育所に看護師さんを配置していますので、病児保育も対応していらっ しゃるのかなと思いますし、今後の意見とすれば、先ほど看護職員確保対策予算の概算 要求を示していただきましたが、こういうところに病児保育のことも今後、考えていた だきたいと思います。話が雑駁になりましたが、夜勤専従の話と看護補助の話と病児保 育の話と3つ、意見と質問をさせていただきました。 ○座長 ありがとうございました。浅野委員からどうぞ。 ○浅野委員 夜勤の短時間正職員も募集はしていますけれども、夜勤の短時間はいない のです。去年は夜勤専従希望者がいて、その3人の方は夜勤だけの専従です。それは月 144時間以内ということで何も問題なくクリアしています。短時間正職員が多くなるこ とによって、夜勤をする人がいなくなるという問題もかなり大きいと思っています。た だ、10対1での計算ですと、月の延べの夜勤時間数というのは決まっているのです。当 院は大体50床ずつで3つの病棟を、一般の救急として10対1で入院加算をとっている のです。そうすると、大体計算すると、月の延べの夜勤時間数の累計は4032時間で、 この時間数は大体固定しているのです。1日の平均患者数が140人ぐらいだと大体いい のですが、患者数が150人、160人以上に増えると、月延べの日勤の総時間数が当然、 かなり多くなるわけです。そうすると短時間正職員で、そこは十分に総時間数がクリア できるというメリットがあります。いまのところは時間上、そんなに不都合はなくクリ アできている状況です。あとは、とにかく補助者の加算をとっていませんので、今後の 政策としては看護補助者の加算もお願いしたいところだと思っています。  説明のところで不足していたのですが、当院は院内保育所が2年前まではあったので す。県の土地を借りていたものですから、県の土地を急遽返さなければならなくなり、 それで近くに院内の保育所を委託し、半額助成して24時間体制で夜勤者もそこに預け て、幸い院内保育をやっています。 ○座長 ありがとうございました。大久保委員、いかがでしょうか。 ○大久保委員 夜勤の時間は月に72時間以内というルールがあります。それで短時間 制度を使っている者で夜勤のみを利用している職員もいます。それは家に帰って介護を したいとか、育児のために夜勤だけがいいということが理由ですが、それも72時間以 内に収まっていますので、特に問題はないように思います。うまく枠組みを利用してい るということでいけているような気がします。  あと保育園に関してですが、病児保育にナースがいますので対応はしますけれども、 新型インフルエンザのように一気に感染してしまうことになった場合にどうするか。子 供が熱を出して急な休みが必要だという場合の対応に関しては、神野委員がおっしゃる ように何か支援とか対策費用が組み込まれていくと、いいのではないかと考えます。 ○座長 神野委員、よろしいですか。 ○神野委員 ありがとうございます。是非、病児保育のことも、これから次の話かなと 思います。もう1点、これから保育所が必要だという話で、先ほど米沢の話にもありま したけれども、実は私どもは能登半島の病院で、能登半島の新聞等で問題になっている のは、保育所に子供がいないという問題です。これは都会と全く逆です。保育所はいっ ぱいあるのですが、少子化のせいで子供がいない。私どもも昔、院内保育所を持ってい たのですが、地元の保育園が「頼むからやめてくれ、私たちのお客をとらないでほしい」 という話で、そういう地域もありますから、これから両極になっていくのではないかと 思われます。これは看護の話と違いますけれども、こういう時代でもあると思います。 ○大久保委員 いまのお話ですが、少子化でなかなか難しい。もう1つは、病院に余力 がないと院内保育はなかなか立ち上げられない面もあります。計算すると、10名の子供 を保育するのに人件費、設備、その他を考えると、1年間で1,200万円かかるので、そ れだけの投資ができるかということになります。保育をしなければいけない看護職に何 か手当を付ける方法も1つの手かなと思います、そういう手当も付けられるような支援 があるといいかなとも考えます。 ○座長 ありがとうございました。ほかの委員の方、いかがでしょうか。 ○吉田委員 いま、浅野委員と大久保委員の説明を聞きました。経営者的な発想から聞 きたいのですが、浅野委員の所では10対1、大久保委員の所は7対1を達成されている。 いまの7対1制度から見て、経営の内容まで聞いてはいけないのかどうか分かりません が、いわゆる7対1が達成されていない場合に診療報酬が低くなる。7対1を達成する といちばんいい条件のもとで経営ができる。実際に経営状態は、例えば浅野委員の所で 7対1になっていないところから、単年度収支とかそういったものの決算的な話をお聞 きしたいと思ったのですが、いかがですか。 ○座長 差し支えない範囲で結構です。 ○浅野委員 当院は財団法人という公益法人で、平成25年にはそれを見直しというこ とですから、いろいろ問題はあります。とりあえず6つの事業体で当院が赤字で厳しい ときは、リハビリセンターで何とか助けてもらってというところで、総体的な事業でや っていますけれども、やはり厳しいですね。毎年返済という額もありますし、あとは7 対1、とにかく手厚い看護というところ、また10対1だと1,300点ですよね。それ以上 になりますので、7対1を目指したい、ただ患者数もどんどん増えていますから、これ は困ったなと、DPCも導入していてなかなか看護師だけではやれない。全体的なところ の運営会議、経営会議等でかなり問題は山積しています。 ○座長 大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員 経営的なことですね。キャッシュフロー的に考えますと黒字でいってい ます。ただ、トモセラピーの導入とかいろいろ投資を多くしていますので、その返却を 考えますとなかなかきびしいというところです。ただ、7対1体制をとりますと患者さ んが安心してお見えになるということで、あそこの病院に行くと看護師さんがいろいろ やってくれるということで、喜んでお見えになることは事実です。 ○吉田委員 こういう話を聞いたのは、7対1制度に偏った考え方が出てきております が、キャッシュフロー会計だけでは償却は入りませんから、実際には設備から何から減 価償却が入るわけです。そうなると、きちんとした計画が立たないと、結局看護師さん に、特に看護職のほうに影響が行くということがありますので、こういう失礼な聞き方 をしてしまいましたが。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。 ○菊池委員 どちらの病院も短時間正職員制度を導入することで定着率が良くなったと いうことだったかと思いますが、短時間正職員制度を採用することで、常勤に換算した ときの人数は増えたのか減ったのか、ナースの人件費はどうなったのか。また、もし仮 に増えたとしても病院経営全体としては、全体的な観点からサービスの質とか医療安全 の観点とかいろいろな観点から、そのことについてどのように考えていらっしゃるのか について伺いたいと思います。 ○座長 浅野委員、いかがでしょうか。 ○浅野委員 とても難しい質問ばかりでお答えできないですが、人件費等々は10対1 ギリギリというところで、常勤換算の数も平成19年はかなり厳しかったわけです。平 成20年から短時間正職員制度を導入して、先ほどもお話したように、パートから短時 間に切り替えると1人に人件費が74万7,800円ぐらい増にはなるけれど、とにかく人 が足りない、人がいない。人材を確保するためには、先行投資と思えばというところで す。いまのところは人件費等々も厳しいと思います。でも、それだけちゃんと常勤換算 で、数として今年は何とか十分賄っておりますので、将来を見通して、いまはトントン ではないかと思います。 ○大久保委員 人件費ですが、短時間制度雇用を入れたから多くなるとか少なくなると かはなく、同じ状況にあります。というのは、短時間は6時間ということで入れていま す。4時間にすると0.5という考えで変わってくると思いますが、6時間で75%の給料、 ボーナスを出して、あとの25%の部分はパートで補っているという考えをしております。 また、ナースが研修に出たり出張に出たり病欠で休んだりしますが、その補うところを パートで補うという考えをしており、人件費は大体48%を維持している状況です。です から、収支は特に人件費で変化はありません。 ○大熊委員 初歩的な質問ですが、短時間正職員制度はヨーロッパなどではずっと昔か ら当たり前のことです。そのことは新聞社にいたときも、その後も書いていたのですが、 日本にはなぜかなかなか広がらない。いまもこの2つの発表者の病院がニュースになる という珍しい存在です。日本ではどのようなことがあるので駄目なのかというのと、こ の2つの病院では誰がどう動いたのでこれができたのかという背景を教えていただけた らと思います。 ○浅野委員 初めは短時間受入れということではかなり抵抗があったと思います。長年 の慣例・慣習というか、看護師は夜勤出来て当然、みんなと同じような働き方ができな ければということで、パートの方はまた別個ですので、それで短時間であっても常勤は なかなか受け入れ難いということでは、10人師長がいますが全師長たちへ、まずはきち んと自分たちの気持ちを固めてからでなければということです。そのあと全職員に、ケ アワーカーもすべて入れると190名おりますので、その人たちに説明をしてということ です。日勤の層も厚くなりますし、ケアもかなり助かっている部分もあるということで、 結局常勤の方も例えば介護、これから学校を目指す、ボランティアをしたいというとき に、やがては自分も利用できるのだと、お互いさまだという職場風土というか、2年目 ですが、特にいまのところは支障がないかなと思っています。 ○大久保委員 なぜ短時間勤務制度ができたかですが、大きくは病院としての対策で、 重点目標で平成19年、平成20年と2年続けて目標が挙がったということだと思います。 私個人で考えますと、以前から夜勤ができないナースに対して「夜勤しなくていいよ」 と、個別対応をしてきたわけです。諸事情で半日しか働けないということで、「半日でい いですよ。じゃあ、給料は半分にしましょうね」というお互いの個別対応を、病院が働 き甲斐のある職場づくりをしようという目標を掲げたので、それを制度化していくこと ができたことにあると思います。あとは、スタッフの意識を変えていくことに力を入れ たという進み具合だと思います。 ○遠藤委員 両病院のシステムは大変すばらしいと思います。特に三友堂病院という伝 統ある病院の院長が頭のフレキシビリティを発揮して、よく舵を取ったと尊敬します。 実際問題、ヨーロッパやアメリカではフレックスタイム制が当たり前なのですが、日本 で何でできないかというと、日本はナースが女中代わりという時代がずっと続いて、と にかくナースが何でもやる、病院の汚れ事を全部やるということで、ナースが下の助手 を使って何かやるシステムがないので、できなかったのではないかと思います。  これからはどんどんフレックスタイム制が出てくると思うのですが、その場合の日本 での問題点としては、埼玉市立病院でもやむを得ず個別対応でフレックスタイム制を導 入したのですが、もろにぶつかってくるのは、フレックスタイムで働いているナースは ずるいと、「悪貨は良貨を駆逐する」というか、正規職員のモチベーションが下がってし まうのです。とにかくいちばん忙しくて、これからだというときに、「はい、さよなら」 と言って帰ってしまう。それでお金はもらっている。そういうところを病院のシステム としてきちんとやるという形にすればできるかなと思いますが、特に短期でフレックス でいくと、医者もそうですが、パートで行ったところであまり一生懸命やらないのです。 自分の病院では一生懸命やるのですが、パート先の病院ではとにかく時間を何とか頑張 って、時間がくると即帰ってしまう。常勤のナースは8時間も10時間も時間外を付け て一生懸命業務をこなしているけれど、フレックスタイムのナースは時間外はやらない で、すぐ帰ってしまう。そのような問題を解決しなくてはいけない。  あとはナースができる仕事に特化して、それ以外のものは事務職員にやらせる、薬局 にやらせる、中検技師にやらせる、医者にもやらせる。特に臨床研修医制度が入って、 いままで医者の仕事をナースがやっていたのを全部そちらへ戻すことができたので、看 護師の仕事を整理できる体制ができた。でも、それだけでは間に合わないと思うのです。 看護助手の制度を根付かせて、ナースが自分で指導して、手足となって動かせる職種を これから作っていかないと全体としてうまく回らないのではないかと思うのですが、い かがでしょうか。 ○浅野委員 もっともだと思います。セクショナリズムというか、各部署のそういうも のを取り外して、チームワークで連携して協働でやっていかなくてはならないという院 長のポリシーが強いので、全日病院の山形県の支部長をしていて、短時間正職員導入で はかなりうまくいっているという東京の病院を知って、うちは本当に人が足りなくて困 っていたものですから、やってみようと。それが切っ掛けになっているわけですが、い まのところは良好にいっています。 ○大久保委員 スライドの資料の12頁をご覧ください。4ブロックチャートが示してあ りますが、これは病院で「ワークアウト」という手法で定着をするためにどうしたらい いのだろうかということを話し合った結果が出ているものです。「ワークアウト」という のは、いろいろな職種の代表者が集まって、定着のためにはどうすればいいかという話 合いを進めていくのですが、その場で時間が来たらすぐ帰る、あの部署は遅くいるとい う話も全部出るわけです。お互い出し合って、お互いの職種で何ができるのか、何をし たらいいのかという話合いを垣根を超えてやることによって、専門性が理解できて不満 が出なくなる解決に持っていけるような気がします。専門職の相手の立場を十分理解し て、お互い何ができて何を返して何をすればいいかを話し合いながら明確にしていくプ ロセスも必要かなと感じております。 ○座長 遠藤委員、よろしいでしょうか。 ○遠藤委員 そうですね。特に問題点は、7対1看護を採用し、それと72時間制を組み 合わせると、リミティングファクターが夜勤なのです。夜勤にあわせて看護師を採用す ると昼間はだぶついてしまう。だから外来に回したりするのですが、昼間のナースは消 化し切れないのです。そこにまた昼間の希望者ばかりフレックスタイムで入ってくると あまりうまくいかないので、福井県済生会病院みたいにいちばん忙しい時間帯にフレッ クスタイムのナースを張り付けるようにすると、全体のモチベーションも上がってきて 良くなるのではないかと思うのですが、そういうプログラムを組む看護管理室の仕事は 相当大変ではないかと思います。 ○大久保委員 その点をどう考えたらいいかと考えて、先ほどもご説明しましたが、4 時間を1単位とした考え方にしました。それで1週間で10単位を消化するという考え 方で、若いナースは16時間働いて、あとは休みが長いほうがいいとかいろいろ希望を 出しますので、10単位をどう組み合わせて消化するかという考え方にしました。それで うまくスムーズに流れていると感じております。 ○座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それで は、お二方、本当にありがとうございました。  次に移ります。「訪問看護ステーションにおける取組み」ということで、高砂委員から ご発表をお願いします。訪問看護ステーションについては、病院とは異なるいろいろな 課題もあろうかということですので、この機会にご紹介いただければ幸いです。よろし くお願いします。 ○高砂委員 それでは、「在宅療養を支える訪問看護師の現状〜看護職員の確保対策〜」 についてお話します。本日は私どものステーションの状況と、訪問看護ステーションの 平均的な状況として神奈川県で実施したアンケートの結果をご報告したいと思います。  訪問看護の特色としては、1対1の看護を提供する、利用者のお家に伺って看護を提 供する、また提供する場がご自宅ですので、固まってあるわけではなく、地域によって はとても長い移動時間を利用して訪問する。少し差はあるかもしれませんが、人件比率 は大体70%とか80%、施設の投資というよりも、人そのものの投資ということが事業 の特徴になっているのではないかと思います。  訪問看護ステーションの全国的な現状としては、人材確保が困難で、1つの事業所が 4.2人ぐらいの看護師で、利用者の数が50人ぐらいです。訪問看護の1回の所要時間は 123分なのですが、お家に行っている時間が65分で、それ以外、医師に報告をしたりヘ ルパーやケアマネージャーに連絡をしたり、訪問の準備をしたりする滞在外時間が58 分です。医療保険と介護保険2つの制度で提供しているのですが、在宅医療の推進によ って、最近では3:7と医療保険の方が増えてきています。訪問看護の制度ができて18 年になりますが、最初は脳血管障害者の方や高齢者の大腿骨頸部骨折のような、慢性的 な療養者の方に対する訪問看護のシステムから始まっていると思うのですが、現在では ベビーちゃんからお年寄りまで、がんの末期の方や難病の方など、医療依存度の高い方 が増えてきています。  訪問看護ステーションとして看取り実施率は、1年間に9割のステーションが実施し ています。年間は5.67人、これは全国的な調査で、神奈川の調査では年間約12人とい うことで地域によって差があるようですが、看取りも行っています。全国の47.1%の市 町村に、訪問看護ステーションが設置されていない現状があります。  別紙の資料で付けた調査結果ですが、資料3-2「訪問看護ステーションにおける人材 確保・定着に関する実態調査」のご報告です。これは、先ほどの追加の資料の今年度の 看護職員の確保対策の中にも入っている「在宅医療・訪問看護推進支援事業」の中で行 われているものです。訪問看護ステーションは1つの事業所の規模が小さいので、神奈 川県とかステーションの設置者の集まりの中で行う調査の内容等を、それぞれの訪問看 護ステーションの内容ということで出しました。都道府県の調査としては、訪問看護ス テーションは病院と違って、何床とかそういうことが決まっているわけではなくて、そ れぞれのご相談をどれだけ看護師の気持ちで受けられるかという部分もあって、訪問看 護サービスの必要量、この内容は今後この委員会の中でもお出しいただいていくものだ と思いますが、一体在宅療養者がどれぐらいになって、ステーションがどれぐらい必要 で、どれぐらいの看護師がというのが、私たちにはなかなかわからない状況があります。 それぞれの都道府県等で訪問看護がどのようになっていくかが十分に示されていなかっ たり、訪問看護ステーションの経営が赤字になったり、廃止とか休止があって、その中 には病院の看護師の補充のほうが先行されるので、訪問看護ステーションが閉鎖されて いたり、サテライト事業所の整備や開設に伴う補助金等が検討されています。地域、関 係機関との連携推進のための研修の実施やケアチームづくりのための支援ということで、 いろいろな制度があっても十分に活用されていないところが全国的にはあるようです。  私どものステーションの現状としては、平成7年2月1日に開所して、人口20万人、 高齢化率20%ぐらいのときから在宅療養者が多いという見込みで、2.5人で始まるとこ ろを5人で始めたところがあります。看護師が現在19名、PT、OTが1名ずつという状 況です。実際利用者が170人で、1カ月1,000件を提供しているのですが、全国的には これだけの規模のステーションは1割にも満たないと聞いています。1カ月に利用者の 所には大体5.8回の訪問をしているのですが、月に2回しか行かない方から、月に40 回、お昼と夕方、胃瘻の注入を主として訪問する方まで、平均的な訪問看護というより も、利用者の多様性によって訪問回数も異なっています。訪問看護の内容としては、健 康管理、服薬管理、清潔の援助、創傷処置、機器の管理、介護者支援、他機関との連携 等があります。私どもは現在居宅介護支援事業所だけの併設、さまざまな訪問看護ステ ーションがあると思いますが、居宅介護支援事業所、ケアマネージャーとの併設になっ ています。  ここからが神奈川県の調査の報告書になります。訪問看護ステーションにおける看護 職員の充足状況は、充足している、不足しているということでは、約3割のステーショ ンでは「自分たちの事業所としては充足している」と答えていますが、7割の訪問看護 ステーションが「不足している」と答えています。これが看護職員の退職率なのですが、 とにかく1つの事業所の職員数が少ないので、1人辞めても退職率としては高い率にな ってしまいます。平成18年度、平成19年度の神奈川県の中での調査においては、退職 率が平成18年度は18.9%だったのが、平成19年度は21%になっています。常勤とし ては17.4%だったのが16.2%、反対に非常勤での退職率が20.3%から26.0%となって おります。  「訪問看護ステーションにおける人材確保・定着に関する実態調査」では、資料3-2 に詳しい調査票の内容等も付けておりますので、あとでご確認いただきたいと思います が、人が来ない、人が来ないと言っているだけではなく、私たちももっと何らかの努力 をしていかないといけないのではないか、まだまだ訪問看護とはどのようなものなのか というPRが十分ではないのではないかということで、訪問看護の魅力を伝えるとか、 働き続けられる職場づくりをどのように支援しているかを、具体的に伝えていく必要が あるのではないかと思っています。子育て支援、復職支援など看護職員の確保対策の強 化、管理・運営のサポートというところでは、管理職は管理だけをやっていればいいの ではなくて、実際にスタッフと同様訪問をしながら管理もしていかなければいけないと いうところでは、それぞれの事業所が管理・運営を考えるのではなくて、皆で共有でき るような何らかの必要性を考えています。連絡・相談窓口の設置というところでは、介 護保険制度ができてから、行政窓口が介護保険のほかのサービスと同じように、訪問看 護サービスの窓口になってしまっていて、医療制度における訪問看護の行政での窓口が とても見えにくくなっていて、どこに相談していいかわからない状況があります。制度 の改善においては、先ほど申し上げたように訪問看護制度ができて18年になり、その 対象者の変化や訪問看護の提供の状況の変化に対応できるような制度を一緒に考えてい きたいと思います。  実際、定着に関する課題というところでは、非常勤の方が多く、なかなか同一の仕事 に対する評価ができないというところで、定着に対する課題や労働条件に見合った雇用 条件の改善、訪問看護を実践する上でのスタッフの負担感ということでは、上の労働条 件に見合った雇用条件の改善としては、24時間を希望する利用者がとても増えています。 それに対して、スタッフが増やせない状況の中では、常勤だけでなく非常勤の方までが 24時間の対応をしなければいけない。常勤で24時間の対応ができればいいのですが、 24時間の対応がないというところで、非常勤であれば24時間の対応はしなくていい、 夜はゆっくりと家族と向き合えるという想定で入ってきたスタッフの方たちに、24時間 の対応をお願いしなければいけないということがあると言われています。  教育・研修体制の確立では、介護保険制度の中で、例えば情報の公表制度やある一定 期間の看護職、3年以上が何人ぐらいいるかによって、体制に加算を付けていただける ような制度になってきています。それをうまく活用して、スタッフのやり甲斐まで持っ ていけるといいのですが、規模が小さくてなかなか活用ができない状況から、慢性的な 忙しさから来る疲労感やストレス、1人で行かなければいけないので、少々腰痛があっ たとしてもエイ、ヤッとやってしまったり、施設よりもリフターや腰痛対策等が十分で はない在宅での現状があると言われています。  課題解決のために、管理者が必要と考えていることですが、これは県の報告書の中で は訪問看護師のやり甲斐を支える教育やサポートの体制づくりをどうしていくのか、働 きやすい環境・職場風土づくり、スタッフ・管理者の負担を軽減する体制づくり、ワー ク・ライフ・バランスが取れる職場体制づくり、給与等の改善と経営管理に関する工夫、 地域の他機関との連携等が必要だということで挙げられました。実際私どもがどのよう にしているかというと、随時募集、面接をしております。1人で訪問看護に行くという ところで、訪問看護の魅力は感じつつ、1人で行くことに対する不安が大きくて、夏ぐ らいから問合せが来るのです。実際いま病院で働いていて、訪問看護はやりたいのだけ れど、とても不安が大きいということで、半年間ぐらい付き合って、面接に来たり実際 の訪問看護に同行していただいたり、どれだけ1人で行くことに対するサポートをして いるかについて相談をメールとか電話とか、1人の看護師に来ていただくために半年ぐ らいかかって随時募集、随時面接、随時相談をやっています。  ただ、1人で行くからこそ組織の力がとても大事で、みんなで訪問看護を提供する、 みんなで利用者の希望をどうやってかなえるかということでは、毎月の全員参加のカン ファレンスがとても大事です。訪問看護の制度ができたときに、潜在看護師の、週に1 回とか週に2回とかさまざまなタイプの方のお仕事の状況を取り入れてきたのですが、 1人で行くからこそチームワークが必要で、週の半分ぐらいはお仕事をしていただけな いと、週に1回訪問に行くだけではチームとしてのその人のモチベーションがなかなか 持っていただけません。いまでも、3分の1が常勤で3分の2が非常勤なのですが、非 常勤の方は週に2.5日以上のお仕事をしていただけることを条件にしています。  研修計画の作成と目標達成支援というところでは、今年度から介護保険における体制 支援ができて、いままで研修計画は立ててはいたのですが、さらに制度に基づくものな ので個別に立てる。いままでは常勤だけ研修に行ったときの研修費の助成をしたのです が、今年度この制度ができて、非常勤の方に関しても研修助成を行うようにしました。 看護職はとてもまじめですので、早速個別の研修計画を立て、その研修計画を達成する ための研修を探し、自分でどんどん参加してくださるような状況で、半年も経たず、3 カ月ぐらいで今年度の研修予算をオーバーする状況になっています。さらに、目標達成 支援を考えていかなければいけないと思っています。  働きやすい環境づくりというところでは、私どものステーションで平均年齢が44で す。ただ、30歳の方から60歳の方までということで、40代の人しか来ないのではなく、 30代の方たちも入職してくださっている状況にあります。そういう意味では、1人目の お子さんを妊娠して1度産休を取り、また戻ってきてくれる。またお仕事をして、2人 目ができたら休みをもらうという状況が、1人、2人と定着できてきている。または育 休、産休を円滑に取れる状況の中で、お母様ががんになられて介護休暇を取りたいとい う方が見えたり、いろいろな状況の中で環境づくりがやっとうまくできるようになって きています。給与等の改善と経営管理に関する工夫に関しては、ここがまだ十分にでき ていないところで、お2人の発表を伺っていて、賞与等の条件までにはシステムづくり ができていないと感じております。  地域・他機関との連携においては、看護職の連携で質を上げるというところでは、そ れぞれの病院にいらっしゃる専門看護師等との連携がいま始まったところで、こういう ところを具体的にやっていくことによって、訪問看護ステーションの質の向上にも具体 的に関わっていけるといいかなと思っております。 ○座長 ありがとうございました。訪問看護ステーションの当面する課題、対応等につ いてご発表いただきました。ただいまの高砂委員のご説明について、何かご質問、ある いは今後の看護職員確保対策についてのご意見等がありましたらお伺いしたいと思いま す。 ○神野委員 私どもの地元のステーションも、看護師不足の悲鳴がいつも聞こえてきま す。病院も悲鳴を上げておりますが、ステーションはもっとひどいと伺っています。我々 病院は、連携ということでステーションに在宅をお願いして、ステーションにない部分 で私たちはOT・PT、訪問リハビリ、栄養指導、管理栄養士を在宅に回してステーショ ンと連携しようということでやっているのですが、いまのお話でもOT・PTも配置して いらっしゃいますね。いま介護福祉の業務の見直しのお話もありましたが、高砂委員か ら見られて、ただでさえ少ない訪問看護師を助けてくれるというか、業務をほかにやっ てもいいようないちばん頼りになる業種はどこになるのでしょうか。OT・PTなのか、 介護福祉士やヘルパーなのか、あるいは薬剤師、訪問薬剤師もありですね。訪問栄養士 もありだと思うのですが、いかがでしょうか。 ○高砂委員 看護職はさまざまな仕事をしておりますので、薬剤管理のところでは、薬 剤師さんが入ってきてくださる所では服薬管理が随分楽になってきています。OT・PT に関しても、リハビリを専門でやってくれることによって訪問看護の回数が減ったり、 一緒に効果を認め合えるというところでやり甲斐や安心感も増えてきていると思います。  お話の中でもご説明したように、間接時間が多いのは、ヘルパーさんは毎日入ってい らっしゃるのです。私たちは週に1回か2回しか行かないということでは、ヘルパーさ んたちにこんな状況になっているのでこういうときには連絡してほしいとか、ご家族に こういう説明をしているので、このようなことがあったら教えてほしいとか、そういう 意味では看護師がやっていたことをさまざまな専門の方にお願いできるように少しずつ なってきているのですが、そのための間接的な時間がいまとても多くなってきています。 そこを捻出するために、訪問看護で5時までに帰ってきても、5時から6時は大体あち こちに電話をして連携を取っている状況です。多くの方たちが在宅に参加してくださっ ている現状は出てきていると思います。 ○神野委員 何か一元的に管理できるようなシステムがあればいいのでしょうね。私ど もは訪問リハビリをやっていますが、赤字かもしれないけれど、ほかにやる人がいない から一生懸命やっていますので、よその業種の場合に報酬の問題も出てくるのかなと思 いました。 ○上泉委員 訪問看護ステーションでは、新卒看護職が就職することはほぼないと聞い ております。学生の中にも希望する者がいるのですが、そうしますと、新卒のときから 何かしら訪問看護ステーションでの仕事に向けてキャリアを積み上げていく、そんな仕 掛けが必要ではないかと思っています。病院などではかなり新卒者をターゲットに就職 活動ができるのですが、募集にしても非常に対象が広くなるような気がするのです。そ の辺は何か確保対策があるのかなというのが1つです。  もう1つ、先ほどの2つの病院の看護部長さんたちのご発表では、定着には認定看護 師や専門看護師といったキャリアアップのための研修制度がとても重要だというお話が ありました。今回も研修体制を整備するということがあったのですが、どんなことが訪 問看護ステーションのナースの場合にできるのか、その2点がお聞きしたいところです。 ○高砂委員 私も、お家に行ってご家族の生活とか、そういうところの相談まで受ける というところでは、最初訪問看護ステーションを始めたころ、新卒の方はそういうとこ ろまでご相談に乗れないのではないかということで、難しいのではないかと思っていま した。ただ、新卒者の人は無理だなどと言っていたら、2つの病院の婦長さん方の努力 のように、私たちもそのような方たちでも、本当に看護学生の実習でお越しになる方た ちは訪問看護がとても楽しいと、卒業してまたやりたいとおっしゃるのです。ところが、 病院に就職して必ず訪問看護に戻ってくるとおっしゃっていても、そこで切れてしまっ て、訪問看護には届かないということで、町でばったり会って「いまでも待っているの よ」と言うと、「もう看護師はやめました」などと言うことがあるのです。4人とか4.5 人とか、事業所が小さくて、プリセプターシップのような新卒を大事に育てていく環境 を作るのは、1つの事業所では難しいと思うのです。ただ、いくつかの事業所や何かの 状況で環境を整えることができれば、最初から訪問看護に就くのではなく、訪問看護も しながらそういう部分も育てていくということで、いま訪問看護ステーションの中でも 新卒者だから駄目というのではなくて、新卒者の方をどうやって大事に育てられるか、 育つ環境を作っていけるかも考えていかないといけないのかなと思っています。  キャリアアップに関しては、確かに訪問看護の認定看護師の実施機関も年々増えてい る状況で、少しずつ認定看護師が増えているのはとても喜ばしいことだと思っています。 認定看護師の研修機関に通っていただけるような環境をどうやって作っていくのかとか、 忙しくても看護師たちは研修が大好きですので、本当に研修によく行っているのです。 それぞれの個別の研修を特典として積み重ねていけるような新たな制度とか、そういう ものが目に見えるような形でキャリアアップになっていくと、そのようなことが実際の 訪問看護にも活かしていけるようになるのではないかと思っています。 ○菊池委員 確保対策関連で、資料の3頁ですが、メディカルセンターでは看護師が19 人いるということで、ステーションとしては規模の大きいほうかなと思います。充足状 況の上のほうで、充足している所が3割で、7割が不足している。確保できている所が3 割で、確保できていない所が7割というデータなのですが、メディカルセンターの場合 にはこの3割のほうに入っているのかなと思ったのです。もしそうだとしたら、確保で きている所とできていない所は何が違うのかというのが1つです。  もう1つ、その下の常勤退職率ですが、平成18年から平成19年にかけて常勤退職率 は下がって、非常勤は退職率が上がってしまったということですが、常勤退職率が下が ったのは対策的に何かがあったのか、5頁に出てきている対策の実際、この辺で効いて きた要因があるのか。何かこういう影響があってこうなったということがおわかりでし たら、お話いただければと思います。 ○高砂委員 ご質問ありがとうございます。3頁の上と下のデータは、資料3-2の報告 書の中から出しました。神奈川県の調査だったので、私が回答したのは「不足している」 というところでした。私としては、いま19人で14人の常勤換算なのですが、それでは もう少し長期の研修に出せるだけの人数が足りないと思っていて、認定看護師やそうい う研修会に出したいということで、あと1〜2名は今年度の計画の中には入れておりま すので、回答しました。  報告書の状況においては、まだ実態調査でこの状況を詳しく分析できておりませんの で、充足している所と不足している所の差がどこにあるかは検討できておりません。今 日お配りした資料3-2の9頁が、今日資料として使った過去2年間の職員就業者状況、 資料が違っておりますので、ここももともと常勤数が少なくてなかなか常勤の人が辞め られない状況にあって、非常勤の人たちのほうがまだ辞められる状況だったのではない かというのは、この結果を見てみんなで話していたのですが、常勤の退職が止められて、 非常勤の退職者が増えたという評価ではなくて、常勤はそれでなくても人数が少ないの で、なかなか辞められない状況だったのではないかというのが私たちの検討でした。十 分なお返事ができなくてすみません。 ○菊池委員 常勤の方が責任感を感じて辞めるに辞められずに、そのまま残ってくださ っているということなのでしょうか。それにしても、本当に辞めざるを得なかったらそ れでも辞めるのではないかと思うので、残ってくださっていることの意味があるのかな と思ったのですが、ありがとうございました。 ○大熊委員 2枚目のスライドで、47.1%の市町村に訪問看護ステーションがないとい うことですが、これは患者の立場から言うととても心配というか、困ることです。また、 2.5人という規定が1人辞めると満たさなくなって、やむを得ず訪問看護ステーション が廃止になってしまうということも聞いています。1つの方策として2.5を緩和すると か、何か特別な条件を付けて、1人でも開業できるようなことはあり得ないのかという 話が出ています。  私も「物語介護保険」の連載を書くときに、2.5人という基準に何でなったのか調べ たところ、伊藤雅治さんが老人保健課長だったときに、訪問看護を始めようということ で訪ねた先の村松静子さんの所が、ちょうど2人+妊娠中の方で2.5人で、とにかくそれ で始めようと始めたという話を聞きました。また、介護保険が始まるときに、前々看護 協会長の見藤先生は、ほかのあらゆる専門職が1人で開業できるのに、ナースだけが1 人で開業できないのはどうしたものかと問題提起されたのが議事録にありました。確か に一人開業は非常に危なっかしいところはあるとは思いますし、高砂委員の所のような ことのほうがいいことはわかっているのですが、47%も訪問看護ステーションのない市 町村があることも心配です。どうやったらほかの職種のような一人開業でも、うまく他 職種や別なステーションと連絡を取りながらやり得るかについて、何かお考えがあるか お聞きしたいと思います。 ○高砂委員 47.1%の市町村に訪問看護ステーションがないということですが、たぶん 隣の市から行ったり、訪問看護ステーションの形態を取っていなくても病院から訪問看 護が提供されていたりということがあるので、この47.1%に関してはもう少し実態をち ゃんと調べないといけないと思っています。  2.5人のことに関しては、いま重度の方が多くなってきているので、訪問看護ステー ションをやっている私たち側としては、どう考えても1人では「今日私はしんどいから 行けないわ」と言えなくて、2.5は最低の数なのではないかと思います。ただ、2.5人の 訪問看護ステーションが何らかのことで0.5欠になったときに、どのようにするかの方 策であったり、サテライトという本店を持っていて支店を出すシステムがあるので、そ ういうものを活用して、支店では1人ということも考えられますので、1人がオーケー かどうかではなくて、訪問看護ステーションの多様化みたいな感じで模索していくこと は、地域格差に対応していくということで検討していければいいのではないかと思って います。 ○大熊委員 2.5のほうを固定しておいてサテライトにしてという解決法もあるし、1 人開業もありとして、でも連携があればいいというアプローチと2つあるかなと思うの で、またいずれお考えをお聞かせいただければと思います。 ○飯倉委員 在宅医療や在宅介護は、これからますます必要になってくると思います。 そういう意味では、訪問看護ステーションの役割は非常に重要だと認識しているのです が、ご報告の中にも、まず第1に人材確保が困難だというお話の中で、もちろん新卒な りの看護師の配置も少ないという話ですが、いわゆる潜在看護師とか、看護師の資格を 持ちながらも何らかの理由で臨床の現場を離れて、いまは臨床現場に携わっていないよ うな方の活用策として、例えば何年間か臨床現場を離れると、いきなり急性期病院に入 るのはどうだとか、あるいは最初にあったような短時間勤務みたいなところでの働き方 がいいとか、そういうことからすると訪問看護ステーションという意味では、ニーズと いうか働く場としてその選択肢の中に入ってくるのではないかという気がしているので す。その辺りの実態、あるいはもしそれがなかなかそういったところまで波及していか ないのであれば、何が問題になっているのか、その辺りお考えがあればお聞かせいただ きたいと思います。 ○高砂委員 ありがとうございます。私どものステーションは5人で始めて、ずっと仕 事をしていたのは私だけで、あとの4人は潜在看護師でした。子育て前ぐらいまでは看 護師として臨床経験が10年近くある方たちでしたので、潜在看護師たちをどうやって 訪問看護に行っても恐くないように、何が起こるかわからない、どんな処置をしてくる かわからないという状況だと不安が大きいと思うので、毎日毎日今日どんな所に行って どんなことをしてきたかということで最初にみんなで話し合って、訪問看護に対する不 安というか、もともと持っている技術ですので、ないことをするのではなくて、持って いることをどうやって安心してまた提供できるようになるかというところでは、サポー トをするためのシステムや時間を取らないとなかなかできないと思うのです。そこが人 数が少ない所で毎日訪問だけをこなす状況になると、たぶん不安を持ったまま1日が終 わり、不安にまた不安が重なりということになっていくので、支援ができるぐらいの環 境を作らないと、潜在看護師の活用というところまでいかないのかなと思います。  ただ、毎日訪問する人や1日に何回訪問する所とか、利用者の多様性の中ではそれぞ れの看護師の状況に応じた勤務の作成もできるように、規模が大きくなってくるとでき るところがあるので、ステーションの状況によって、例えば小さなステーションは規模 の大きなステーションに育ててもらうのをお願いするとか、ステーション全体で検討す ると少し検討できるのではないかと思っています。 ○遠藤委員 ドクターの支援はどうなっているのですか。病院では困ったらすぐそばに 医者がいるので、何でもすぐ聞けて安心なところがあると思うのですが、訪問看護の場 合にもドクターが一緒に行くと。私の地区ではドクターが在宅支援の病院をやっていて、 奥さんが訪問看護をやっていて、専用の車を用意して、ドクターとナースがセットでグ ルグル回っているのです。そういうのだと、安心して皆さん入ってくるのではないかと 思うのですが、ナースが1人で行って全部対応して帰ってくるのは本当に過酷な状況な ので、医者を何とかして引っ張り込まなければ駄目なのではないかと思うのです。 ○高砂委員 重度の方は、割と在宅支援診療所の先生や在宅を熱心にしてくださってい る先生が対応してくださることが多いので、行ったときの状況で、必要であれば先生た ちとも連絡は以前よりも取りやすくなってきていると思います。ただ、行って先生にと いうよりも、訪問看護が始まるときにどういうときに先生に連絡したらいいかとか、先 ほどの他職種と同じように事前に先生方とよく相談をして、先生の役割とか看護師の役 割を明確にして訪問看護をする必要があると思います。制度的には、医師と看護師と一 緒に行ってもどちらかしか算定できないとか、いろいろなことがあって、状況的には医 師と看護師が一緒に行かないといけないときがあると私たちは思っているのですが、制 度としては一緒に行けない状況もあって、どうしても傷の処置のことや先生と一緒に行 かなければいけないときには、私たちは制度外というか、自分たちのために訪問してい るという状況です。 ○遠藤委員 制度を変えないと駄目ですね。両方取れるようにする。 ○高砂委員 そうですね。とても状態の厳しい方が増えてきているので、それぞれの役 割が明確にあると思いますので、そういうことも必要になってきていると思っています。 ○座長 ありがとうございます。まだほかにもご質問、ご意見等あろうかと思いますが、 そろそろ時間ですので、本日はこの辺にしたいと思います。次回も引き続き看護職員の 確保対策についてご議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。浅野委 員、大久保委員、高砂委員におかれましては、大変貴重なご発表、現場の臨場感あるお 話、あるいは貴重なデータをお示しいただきまして誠にありがとうございました。今後 の検討において参考にさせていただきたいと思います。また、委員の皆様には活発にご 意見、ご質問を頂戴しましてありがとうございました。  それでは、次回以降の日程について事務局からご説明をお願いします。 ○茂田補佐 次回は、11月から12月ぐらいに確保対策について開催する予定です。詳 しくは別途日程調整をしますので、よろしくお願いします。 ○座長 それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省医政局看護課 代表 03-5253-1111 茂田(4166)、若林(2599)