09/09/16 第47回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録 第47回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 日時 平成21年9月16日(水) 10:00〜 場所 厚生労働省14階職業安定局第1会議室 ○清家部会長 定刻になりまして皆様おそろいでございますので、ただいまから第47回雇 用保険部会を開催いたします。本日の出欠状況ですが、野川委員、豊島委員、三木委員、坪 田委員がご欠席でございます。また、本日は坪田委員の代理といたしまして、日本商工会議 所の佐藤産業政策第二部副部長がご出席でございます。なお、事務局に異動がありまして、 篠崎課長補佐が着任されているとのことでございますのでご紹介いたします。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 よろしくお願いします。 ○清家部会長 また、本日は資料の関連で、職業能力開発局能力開発課の浅賀課長補佐に出 席いただいております。 ○浅賀職業能力課課長補佐 よろしくお願いします。 ○清家部会長 それでは議事に移ります。本日の議題は「雇用保険制度について」でござい ます。前回はさまざまな検討課題について幅広くご議論いただいたところですが、本日は、 まず「雇用保険制度の主要指標や財政運営状況」について事務局からご説明いただきまして、 その後に、1つ目の大きな検討課題であります「雇用保険の適用範囲」についてご議論いた だきたいと考えております。事務局から資料No.1と資料No.2についてご説明いただきたいと 思います。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 事務局より資料の説明をさせていただきます。それに先立ちま して資料の確認をお願いします。本日の資料は資料No.1から資料No.5まででございます。資 料No.1が「雇用保険制度の主要指標」。資料No.2が「財政運営関係資料」。資料No.3が「雇用 保険の適用範囲に係る論点」。資料No.4が「適用関係資料」。資料No.5が「緊急人材育成・就 職支援基金関係資料」。参考資料としまして、「平成22年度概算要求のポイント」というも のを添付しております。資料のほうはよろしいでしょうか。  それでは、資料No.1、資料No.2につきましてまとめて説明をさせていただきます。資料No.1 「雇用保険制度の主要指標」の1頁をお開きください。雇用保険制度の主要指標を説明する 前に、現在の雇用失業情勢についてご説明させていただきたいと思います。表題に「さらに 厳しさを増している」と書いてありますが、こちらの表を見ていただくと、いちばん右端で すが、平成21年7月の完全失業率が5.7%ということで、過去最高を記録しております。 完全失業者数も359万人ということで高水準でございます。  これにつきましては真ん中のほうを見ていただくと、従来の完全失業率の過去最高は 5.5%、平成14年6月、8月、平成15年4月に記録した5.5%が過去最高でした。それを 今回は更新をしているということでございます。そのもう少し右ですが、完全失業者数につ いての過去最高は平成15年4月の385万人となっております。  一方、右のいちばん下ですが、有効求人倍率については平成21年7月の有効求人倍率0.42 倍ということで、これも過去最低となっております。従前の過去最低が、左の下のほうです が、平成11年の5月、6月の0.46倍ということですので、それよりもさらに悪い数値とな っております。また、完全失業者数359万人となっておりますが、この内訳で申しますと、 資料にはありませんが、非自発的理由による離職者が163万人ということで、前年同月差 83万人増、これは9カ月連続です。また、自発的な理由による離職者も110万人というこ とで、前年同月差では10万人の増ということで、どちらも増えているというような内訳に なっております。そのほか、この資料の中で上のほうに丸をいくつか書いておりますが、少 しご紹介すると、ハローワークを訪れる事業主都合離職者(新規の求職者)は、前年同月比 88.9%ということで、仕事を求める方も大変多いという状況が続いております。1枚目の資 料は以上でございます。  2頁目をお開きください。そういった厳しい雇用失業情勢の中で、雇用保険の被保険者数 がどうなっているかという推移を示すものでございます。年度単位のものと、直近1年間は 月単位のものを示しております。年度で見ると、平成16年度以降3,450万人というところ から、右にありますが、対前年度比は若干ずつ増えてくるということです。平成20年度に ついても、全体としては前年比1.9%増の3,769万9,365人という状況になっております。 これを直近の1年間の月別で見ると、平成20年の前半までは景気も良かったということで、 被保険者数も順調に推移しております。その後、経済状況は悪くなりましたが、被保険者数 はその段階で減少に向かうということではなくて、平成21年の3月まで、対前年度比とし ては増加を続けておりました。それが、平成21年の4月以降については、微減ということ ではありますが、対前年度比4月であれば0.4%マイナス、5月は0.6%マイナス、6月は 0.7%マイナス、7月が0.7%マイナスということで若干減っておりまして、7月の状況とし ては被保険者数3,763万572人という状況になっております。景気の落ち込みで雇用者数 全体が減っているのに比べれば、被保険者数の落ち具合は低い状況になっているのではない かと考えております。  3頁をお開きください。こちらは受給者実人員の推移ということでございます。これも年 度と直近1年間月別に載せております。年度で見ると、平成16年が68万2,046人という 状況でしたが、平成19年度までは対前年度比減少ということで、受給者実人員は減少を続 けておりましたが、平成20年度は年度で60万6,686人、前年比7.1%の増ということで増 加に転じております。年間の月別で見ると、平成20年の8月までは受給者実人員は減少が 続いていたと。9月1カ月だけ増加でしたが、その後も11月までは対前年度比1.3%減とい うことで、傾向としては減少が続いておりました。しかしながら、12月以降については、 12月が対前年比9.5%増、1月が対前年度比14.1%増ということで、月を追うごとに前年比 も増え、増加基調に転じております。6月の受給者実人員が100万人の大台に入りまして 101万2,154人ということで、対前年度比も78.1%という高い水準にありました。7月は実 数としては対前月比約マイナス1万人の減ということですが、依然として100万1,375人 と高い水準ですし、前年比で見ると64.8%の増ということで、これも依然として高い水準 であるというふうに考えております。  4頁をお開きください。こちらは新たに受給資格を得た方、受給資格決定件数の推移でご ざいます。こちらも平成16年度以降は年度単位で見ると減少を続けていましたが、平成20 年度は220万7人、前年比16.1%ということで増加に転じました。これを月別に見ると、 こちらのほうは平成20年の9月以降、受給資格決定件数は対前年度比増加に転じておりま す。特に平成21年の1月以降については、対前年度比60%を超えるなど、高い水準で増え ておりました。6月も対前年度比38.5%増ということでしたが、7月は若干減って19万6,554 人、対前年度比25.4%ということで、若干減っているという状況でございます。  5頁をお開きください。こちらは平成21年に改正しました雇用保険法の施行状況を見て いただくための資料でございます。平成21年の改正についてはいくつか改正事項がありま すが、解雇等の有期契約の労働者については解雇等と同様の取扱いをするというような内容 の改正を行っております。それによって、労働契約が更新されなかったために離職した有期 契約者などについても、受給資格が得やすくなったり、また、給付日数が手厚くなるという ことがありましたが、そういった方々がどれぐらいいるかというものを見ているものです。 平成21年4月以降の受給資格決定件数を表わしていますが、4月が2万8,890人、5月が 2万3,321人、6月は若干減って1万5,433人、7月が1万5,902人、平成21年の4月か ら7月の累計で申し上げると、8万3,546人の方が新たに受給資格決定をされたというふう になっております。なお、本改正につきましては3月31日から施行されておりますので、 注の※ですが、31日の分も記載しております。3月31日の1日だけではありますが、受給 資格決定された方が2万159人という形になっております。  同じく改正事項で、特に再就職が困難な方については、個別に給付日数を60日間まで延 長できるという個別延長給付制度も施行されております。その施行状況ですが、4月が2万 2,165人、5月が4万5,484人、6月が5万1,612人、7月が5万9,454人、4月から7月 の累計で17万8,715人の方々が個別延長給付を受けられております。また、対象地域につ きましては、4月は29道府県でしたが、順次増えておりまして、7月の段階では34道府県 が地域指定をされております。これについても※で小さく書いておりますが、3月31日の 分を記載しております。3月31日の初回受給者数は1,708人となっております。以上で資 料No.1の説明を終わります。  続きまして、資料No.2「財政運営関係資料」をお開きください。1枚目、失業等給付関係 収支状況でございます。こちらにつきましては6年度分載せておりますが、真ん中の平成 20年度、これは決算が確定しました。収入につきましては、真ん中の所ですが、2兆2,896 億円、支出が1兆5,907億円、差引剰余が6,989億円ということで、平成20年度の積立金 残高は5兆5,821億円となっております。その1つ右ですが、平成21年度補正後予算とい うことで、平成21年度の補正も含めた収入が1兆6,665億円、支出が2兆4,618億円、差 引剰余は7,952億円のマイナスとなっておりまして、平成21年度の年度末の積立金の見込 みとしては4兆7,868億円になる見込みになっております。その1つ右ですが、平成22年 度の概算要求の数字ですが、収入が2兆3,495億円、支出は受給者数が若干増えていますの でこれまでよりも高めに見積っておりまして2兆9,174億円、差引剰余が5,680億円のマ イナス、積立金残高は4兆2,189億円となっております。この表につきましては、平成21 年度の収入は過去に比べて低くなっておりますが、これは保険料率を平成21年度に限り下 げるということで1,000分の8の料率になっていますので、収入が過去のところよりも低く なっております。平成22年度の概算要求については、保険料率についてはまた審議会で皆 様にご議論していただくことになっておりますが、とりあえず1年限りの1,000分の8、 1,000分の4マイナスというのは戻るということは前提にした上で、概算要求の段階では 1,000分の12という保険料率で見込んでおります。この料率につきましては、また後日、 皆様方にご議論していただくことになろうかと思っております。そういう意味で、平成22 年度の収入は平成21年度よりは増えて2兆3,495億円と見込んでおりますが、支出のほう は、平成21年度と比較していただければわかるように、約5,000億円ぐらい増えるのでは ないかと見込んでいるところでございます。  1頁おめくりください。こちらは雇用保険二事業の関係収支状況でございます。予算、決 算を並べておりますが、平成20年度の決算のほうからご説明いたします。平成20年度の 決算の所、収入が5,230億円に対しまして支出が5,649億円、差引剰余が419億円のマイ ナスということで、安定資金の残高は1兆260億円になっております。これにつきまして、 平成21年度は収入はほぼ同額の5,203億円、支出は1兆1,910億円、差引剰余がマイナス 6,708億円、安定資金の残高は3,552億円というふうに見込んでおります。この平成21年 度の支出につきましては雇用調整助成金等を約6,000億円要求しているということもあり まして、例年に比べて大きく1兆円を超える支出と見込んでおります。その右の平成22年 度要求ですが、収入はほぼ同様の5,143億円、支出が8,007億円、差引剰余が2,863億円 のマイナスと見込んでおります。結果としまして、平成20年度の安定資金の残高は689億 円まで減るというふうに見込んで概算要求を行っているところでございます。資料の説明は 以上です。 ○清家部会長 ただいまご説明いただきました雇用保険制度の主要指標及び財政運営状況 についてのこの資料No.1と資料No.2に基づいた事務局からのご説明につきまして、何かご質 問ご意見等がございますか。 ○古川委員 雇用保険二事業については、収支もなかなか厳しくなってきているようですが、 雇用失業情勢もまだまだ厳しいのが現実だと思います。それで、私たち連合は、構成組織か らいろいろ要望を踏まえて、今後、新しい政府が誕生した後に要請書を提出する予定になっ ております。雇用調整助成金も、労使でいろいろ工夫をしながら、みんな一生懸命書類を出 してやっているわけなのですから、この雇調金の拡充をはじめとした要請書を提出する予定 となっております。ですから、厚生労働省のほうも、是非、その財源の確保などについても 併せてご検討いただきたいと思います。意見です。 ○清家部会長 長谷川委員、どうぞ。 ○長谷川委員 いま古川委員が話したように、今回の雇用政策の中で非常に雇調金は効いて いるというふうに構成組織から報告を受けています。ただ、この雇用情勢はもっと厳しくな るだろうと見ているわけですが、そのときにこの二事業の積立金が見通しとしてどうなのか という、そこを心配しているのです。その場合、積立金が間に合えばいいのですが、間に合 わなかったときは何らかのことも考えなければいけない、検討しなければいけないのではな いかという、そういう心配をしています。構成組織に言わせると、雇調金の給付期間とか要 件とか、そういうものも少し見直してくれというような話もありますので、そのときにこの 積立金で賄うことができるのかどうなのか、この見通しは現時点でどう考えているのか、事 務局のほうでお聞かせ願いたいと思います。 ○清家部会長 では、お答えいただけますか。 ○坂口雇用保険課長 いまのご質問の点ですが、いまご説明しましたように、資料No.2の二 事業の関係収支のほうを説明したとおりでありまして、平成21年度の補正予算を組みまし たので今年度末で雇調金が6,000億強の補正を含めて6千数百億円組んでおりますが、それ がすべて使われるということだとして、平成21年度の安定資金残高が約3,500億円。平成 22年度は雇調金は3,000億円強という形で予算組みをして要求しておりますが、それもそ の結果でいくと689億円ということになるのが現状であります。いま長谷川委員からご指 摘があったとおり、雇調金が昨年度来のいろいろな雇用対策面でも非常に効果を有している ということも我々としても思っておりますし、いまのかような雇用情勢の中で雇用維持施策 をしっかりやるということも重要だと考えております。ただ、財源的に申しますと、さらに 雇調金がこの平成22年度の要求ベース以上にということになってまいりますと、実際上、 安定資金残高がかような状況となりますので、そこについては一定の財源の確保をしていか ないと、今の状況のままではなかなか厳しいということになるのではないかと考えておりま す。 ○清家部会長 長谷川委員、よろしいですか。 ○長谷川委員 今日はこのところで。 ○清家部会長 佐藤委員、どうぞ。 ○佐藤委員(代理) 1点、資料のことで質問をさせていただきたいのですが、資料No.1の 2頁の雇用保険被保険者について、先ほど推移をご説明いただきました。お話の中で、最後、 平成21年4月から7月にかけて、景気の影響で雇用者全体が減っているその減り方に比べ れば落ち込みは小さいというお話をいただいたのですが、お尋ねしたかったのは、4月から 法改正で雇用見込みが1年から6カ月に変更されましたが、これとの関係ではどのように分 析されているでしょうか。例えば、1年から6カ月に変更がなければこのぐらい数字が違っ ていたのではないかとか、ほかの言い方でも構わないのですが、雇用見込期間の変更とこの 実際に出てきた数字との関係について、何らかコメントをいただけることがあればお願いし ます。 ○清家部会長 事務局からお答えいただきます。 ○坂口雇用保険課長 いまの点ですが、この雇用見込みを短時間労働者の方について4月か ら適用基準の見直しをご指摘のとおり拡大したということですが、私ども、雇用保険のデー タ上、システム的にその部分の動向が取れないということもありまして、そこの部分だけに 限った被保険者の数の増減ということが集計できません。ということで、全体としてこの被 保険者の数の中でどういう状況かというのはなかなか分析しがたいわけですが、先ほども補 佐のほうから説明しましたとおり、分析についてはさらにもう少し工夫をしてみたいと思い ますが、全体の労調ベースの雇用者数の増減と比べると、そういった影響を加味した形でこ の被保険者数の減というのが押し止どまっているのではないかということが若干言えるの ではないかと思いますが、そこの点についてはさらに私どもも工夫をして分析を勉強してみ たいと思います。 ○清家部会長 ほかにはよろしいですか。それでは、また後ほどこの資料No.1と資料No.2に ついてのご質問があれば承りますが、次に、今日の本題かと思いますが、雇用保険の適用範 囲についての議論に移りたいと思います。そこで、この雇用保険の適用範囲について、事務 局から資料No.3以降に基づいてご説明いただきたいと思います。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 資料No.3から資料No.5について説明いたします。資料No.3「雇 用保険適用範囲に係る論点」をお開きください。論点につきましては1から3まで大きく提 示させていただいております。1が「カバーする非正規労働者の範囲」について、2が「マ ルチジョブホルダーへの対応」、3が「65歳以降への対処」というふうにしております。2 のマルチジョブホルダーと3の65歳以降への対処については本日は関係資料が用意できて いない部分がありますので、参考資料につきましては1のカバーする非正規労働者の範囲の ところについて関係資料を用意しております。これは後ほどご説明させていただきますが、 まずは論点のほうをまとめて説明させていただきます。  まず、1の「カバーする非正規労働者の範囲」ですが、1つ目の論点として、現行制度で 対象となっていない労働者はどのような労働者なのかと記載させていただいております。2 つ目が、短時間労働者等の適用に当たり、6カ月以上雇用見込みを必要としていることにつ いてどう考えるかということで、平成21年の改正の際にこの短時間労働者等の雇用見込み についてはこれまで1年以上となっていたものを6カ月以上というふうに変えておりますが、 これについてどう考えるかという論点です。次が、一週間の所定労働時間が20時間未満で ある労働者についてどう考えるかというように、現在は適用対象外となっている20時間未 満についてどう考えるかというような論点を提示しております。その次が、適用拡大した場 合において、適用対象となっても、離職したときに受給資格を得られない者(いわゆる掛け 捨てとなるケース)が生じるおそれがあることについてどう考えるか。また、次の論点とし ましては、適用拡大した場合において、離職と受給を繰り返す層が生じるおそれがあること について、どう考るか。最後の論点としましては、適用拡大した場合において、事業主の事 務負担や財政への影響について、どう考えるかということで、雇用保険の適用事務というこ とでは事業主の方に届出をしていただいたりする部分とか、保険料を差し引くというような 事務もありますので、そういったことをどう考えるか。また、雇用保険財政に与える影響が どうかということを論点に掲げております。  2番目の「マルチジョブホルダーへの対応」につきましては3つ掲げております。1つ目 は、同時に2以上の雇用関係にある労働者とはどのような労働者なのか。2つ目は、個々の 雇用関係においては適用対象とならない者について、一定の範囲で適用することはできるの か。仮に適用する場合、何をもって「失業」と判断するのか。3つ目は、適用に当たり、事 業主が労働者の他の事業所での労働時間を把握する必要があるが、そのようなことができる のか。以上のように記載しております。  3番目の「65歳以降への対処」ということですが、こちらも3つ掲げております。1つ目 は、高齢者雇用の現状との関係についてどう考えるか。2つ目は、年金支給開始年齢に達し た層を適用対象とすることについてどう考えるか。3つ目は、65歳以降の者を適用対象と することは、短時間勤務、臨時的雇用等の多様な働き方を選択する層を適用対象とすること になるが、これについてどう考えるかというように、議論の参考になるような論点を提示し ております。  それで、資料No.3と資料No.4を見比べながらご説明させていただきたいと思います。資料 No.4「適用関係資料」の1頁をお開きください。2つ目の論点で「短時間労働者等の適用に 当たり」としておりますが、現行の短時間労働者への雇用保険の適用基準、現行がどうなっ ているか、また、考え方がどういう考え方に基づくかというものを整理しております。まず、 「現行制度」ですが、いちばん上ですが、「短時間就労者(その者の1週間の所定労働時間 が、同一の適用事業に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間よりも短く、かつ 40時間未満である者をいう。)については、次のいずれにも該当するときに限り被保険者と 取り扱う」と書いておりまして、具体的にはイとロですが、1週間の所定労働時間が20時 間以上であること、また、反復継続して就労する。具体的には6カ月以上引き続き雇用され ることが見込まれるという者を判断基準として適用しているところでございます。  これの「考え方」です。文章に記載しておりますが、雇用保険は、自らの労働により賃金 を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定等を図る制度であります。その 趣旨に鑑み、保護の対象とする労働者を一定の者に限っております。また、次が一般的な保 険の趣旨ですが、一般に保険とは、同種類の偶発的な事故による危険にさらされている人々 がこの危険の分散を図るために保険集団を構成するものであるが、雇用保険制度においては この同種類の危険にさらされている人々の範囲を考慮し、上記の取扱いとしているというこ とで、具体的には上記にあるように、短時間労働者については所定労働時間が20時間以上、 また6カ月以上の雇用見込みというような要件を設定しております。  いちばん下の「強制適用としている理由」ということですが、これは入りたい人だけを任 意に入れるわけにはいかないということをご説明しているものでございます。失業リスクは 個人、産業、地域等で異なるため、仮に雇用保険を任意加入で運営すれば、失業リスクの高 い者のみが加入するという「逆選択」を引き起こし、保険制度として運営困難となる。した がって、強制保険として運営する必要があるというようなことで、強制適用としている理由 を記載しております。  2頁でございます。これはカバーする非正規労働者の範囲をどう考えるかというときに、 これまでの短時間労働者への適用範囲の変遷がどういうものであったかというものを整理 しております。昭和50年の段階においては、まず所定労働時間については通常の労働者の おおむね4分の3以上かつ22時間以上という要件、また、年収について52万円以上とい うものを設定しております。また、雇用期間については反復継続して就労する者であること。 これについては平成元年には通常の労働者のおおむね4分の3という要件を外しておりまし て、所定労働時間については22時間以上、年収については90万円以上、雇用期間につい ては1年以上の雇用見込みというように変更しております。次に、平成6年ですが、これに つきましては所定労働時間だけの変更ですが、これまで22時間以上を必要としていたもの を所定労働時間20時間以上というように変更しております。平成13年の改正ですが、こ れにつきましては年収要件を廃止する形になっております。平成21年の改正事項ですが、 こちらにつきましては所定労働時間の20時間以上というものは変更していませんが、これ まで雇用期間の見込みを1年以上の雇用見込みとなっていたものを6カ月以上の雇用見込み というように緩和をしております。  3頁ですが、雇用保険の適用基準ということで、どのような場合に適用になるかというも のを時間との関係で特に整理しているものでございます。主たる雇用関係における週所定労 働時間がどのようなものかによって仕分けをしております。40時間の場合については一般 の被保険者ということです。また、20から40時間未満でも、当該事業所の労働時間が例え ば38時間労働ということであれば、これは通常の労働者ですので一般被保険者ということ になります。  続きまして、通常の労働者よりも所定労働時間が短いか、または通常の労働者が存在しな い場合でございます。ですから、週所定労働時間が40時間の事業所であれば、例えば36 時間のパートタイムの方の場合にどう判断するかということで、その場合は6カ月以上の雇 用が見込まれる場合には一般被保険者、これが見込まれない場合については被保険者としな いという取扱いにしております。また、20時間未満の場合については適用除外としている ところです。  そのほか、下の枠囲みで「適用除外」と書いておりますが、これは法律上例えば65歳に 達した日以後新たに雇用される者であるとか、いくつか書いてありますが、6つの例があり ます。1つ目がいま申し上げた65歳に達した日以後新たに雇用される者。2つ目が短時間 労働者であって、季節的に雇用される者又は短期の雇用に就くことを常態としている者。3 番目としては日雇労働者であって、適用区域に居住し適用事業に雇用される等の要件に該当 しない者。4番目としては4カ月以内の期間を予定して行われる季節的業務に雇用される者。 5番目については船員保険の被保険者。6番目については国、都道府県、市町村等に正規職 員として雇用される者。こういう者は適用除外となっているところでございます。  4頁ですが、派遣労働者の適用基準ということで記載しております。これは登録型の派遣 労働者の適用基準ということでして、登録型の派遣労働者の場合はどのような者を被保険者 として取り扱うかというと、基本的に反復継続して就業するということですが、登録型の派 遣の場合は派遣期間が一定程度空くという場合がありますので、a.b.に記載してありますよ うに、派遣の雇用契約期間が2カ月以上の派遣就業の場合は1カ月程度の間隔で繰り返して 行っているということで、1カ月程度以内の間隔で空いた場合であってもそれは被保険者と する。また、b.の場合については1カ月以内の派遣就業を数日以内の間隔で繰り返して行う ことになっている者ということで、雇用期間が数日間途切れたとしても、それが反復継続さ れている場合には被保険者として取り扱うという扱いをしております。また、(2)にあります ように、1週間の所定労働時間20時間以上であるということも適用の要件としてはかけて いるところでございます。  5頁は、平成20年の雇用者の数を基に、どのような内訳になっているかというものを試 算したものでございます。一部統計調査ではわからない部分もありますので、そこは事務局 のほうで試算をして記載しているものもあるということで、全体として試算というふうに記 載しております。雇用者数は平成20年で5,539万人おりますが、上のほうにあるのは法律 上適用除外とされているような会社の役員、65歳以上の者、公務員等々が適用除外となっ ております。現在の雇用保険被保険者数は3,777万人となっております。その下ですが、週 20時間以上の雇用者が364万人ということですが、この中で6カ月以上1年未満の方と、 雇用期間6カ月未満の方がおります。6カ月以上1年未満の方は、平成21年の改正の際に 適用基準を拡大したことによって適用、雇用保険の被保険者となる層です。それに対して、 雇用期間6カ月未満はここでは255万人と試算しておりますが、この方々については現行 の基準では適用除外となっている方々です。資料の網掛の部分でございます。そのほかにも、 週20時間未満の雇用者、また、昼間学生アルバイトの方については適用除外としていると ころです。これは全体像を見ていただく、また、雇用期間6カ月未満の方がどのような層な のかということを見ていただくための資料でございます。  6頁は、現在、6カ月以上の雇用見込みを必要としておりますが、6カ月以上の雇用見込 みがどのようなものなのかということを整理しているものでございます。いちばん上、当然 でございますが、雇用の期間の定めがなく雇用される場合は適用される。また、6カ月以上 の期間を定めた雇用契約を結んでいる場合、例えば6カ月契約といったものの場合は、6カ 月以上の雇用見込みが当然ありますので、これは適用される。また、単に雇用契約が6カ月 以上そもそもなくても適用されるというのが3つ目の例です。これは3カ月契約を更新する というケースでありまして、雇用契約において更新規定がある場合については、3カ月契約 が2回繰り返されるということも含めまして6カ月以上の雇用見込みというふうに判断され ますので、これは適用されます。また、4つ目の例ですが、雇入れの目的、当該事業所にお いて同様の雇用契約に基づき雇用されている者の過去の就労実績等からみて、契約を更新し、 6カ月以上雇用されることが見込まれる場合ということで、契約上明確に更新というふうに なっていなくても、事業所の実績から見て当該事業所のパートタイム労働者の方が更新され ているのが通常という場合は、これは6カ月以上の雇用見込みがあるというふうに判断して 適用するということです。また、最後のいちばん下の例ですが、これは雇入れ後6カ月以上 引き続き雇用された場合(その後6カ月以内に離職することが確実である場合を除く)とい うことですが、結果として3カ月契約とかを更新して6カ月以上となった場合について、ま たその後も続くであろうということがあれば、その6カ月経過した段階から適用していただ くことになっているということのご説明でございます。  7頁です。論点の中で、6カ月以上の雇用見込みを必要としていることについてどう考え るかというふうに提示しておりますが、例えば6カ月未満の雇用見込みを適用対象とした場 合に、雇用保険の受給につながらないケースとつながるケースについて、イメージというこ とでつくらせていただいております。いちばん上の枠囲みですが、雇用保険の基本手当の受 給資格要件について確認的に書いております。雇用保険の受給資格につきましては、一般の 被保険者の場合については、原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12 カ月以上あることが必要ということで、2年のうち1年以上の被保険者期間が必要となって おります。これが原則ですが、解雇等の離職、また、希望したにもかかわらず契約が更新さ れなかった方、そういった方々につきましては離職の日以前1年間に被保険者期間が通算し て6カ月以上あればよいということで、通常の場合は2年のうち12カ月ですが、解雇・倒 産等の場合については1年のうち6カ月以上の被保険者期間があればよいというような仕組 みになっております。  いくつか例を記載しておりますが、1つ目の例が、6カ月に満たない期間で一度だけ被保 険者になる場合ということで、1年の間に、たまたまというか、2カ月間だけ働くようなケ ースについては受給につながらない。また、2つ目のケースでは、同じく1年間に通算して 6カ月に満たないケースですが、1年間に2カ月契約・2カ月契約をばらばらと期間を空け てこのように取っている場合、これは通算4カ月ですので受給につながらないというケース です。その次のケースは、2カ月契約が1年の間に3回あるケースということで、2カ月契 約・2カ月契約・2カ月契約で、その離職の際に契約の更新が予定されていた場合でそれが 契約更新に至らなかった、いわゆる特定理由離職の場合ですが、この場合については通算6 カ月になりますので受給につながるというケースです。いちばん下のケースが、自己都合の 場合でももらえるケースということで記載しております。これは1年ではなくて2年間とい うことになっておりますが、2年間に例としては3カ月契約を4回としておりますが、2年 のうちに3カ月契約を4回行って働いた場合はトータルで12カ月という形になりますので、 自己都合の場合であっても受給につながるというケースです。雇用見込みを6カ月未満に拡 大した場合も、雇用保険の受給につながるケース、つながらないケースがそれぞれあるだろ うということをお示ししているものでございます。  8頁ですが、こちらにつきましても、そもそも現行制度で対象となっていない労働者はど のような労働者なのかということがありますので、イメージをするために「週20時間以上 雇用者のうち、6カ月未満雇用見込みの者」のイメージということで4つほど記載しており ます。いろいろなパターンがあると思いますが、議論をしやすいようにということで事務局 で用意したものでございます。1つ目が、主たる生計者ではないが、配偶者とともに家計を 支えているパートということです。ただ、この配偶者とともに家計を支えているといっても いろいろな状況があるだろうということで、括弧内に書かせていただいていますが、主たる 生計者が収入が高い場合と高くない場合、配偶者とほぼ同等の収入を得ている場合などのさ まざまなケースがあろうということで、支えているといってもいろいろな意味合いがあるの ではないかということで例を書いております。例の2つ目は、親と同居し、職業的自立を目 指すフリーター等の若者ということです。これについても、当然、親の収入の状況がどうで あるかとか、いろいろなケースがあろうと思いますが、例示として書いております。例の3 ですが、自分で自由に使えるお金を得るために働くパート・アルバイトということで、1年 のうち3カ月だけ働くとか、そういったケースがあるのではないか。例の4ですが、これも 臨時的ということですが、たまたま短期間就労したが、普段仕事をしていない者ということ で、普段は仕事をしていないのですが、たまたま2カ月とか3カ月とか、その期間だけ就労 するというような方もいるのではないかということでイメージを記載しました。以上が適用 関係の資料でございます。  資料No.5につきましても、雇用保険の適用と関係する部分がありますので、まとめて説明 させていただきます。緊急人材育成・就職支援基金関係資料ということで資料No.5でござい ます。1頁ですが、これは緊急人材育成・就職支援基金事業の全体像です。趣旨としまして は、いちばん上の丸に書いてありますが、雇用保険を受給できない方、非正規の離職者であ るとか長期失業者などの方に対する新たなセーフティネットとして、3年間ということで期 限を限って基金を造成した上で、ハローワークが中心となって、職業訓練、再就職、生活へ の支援を総合的に実施するというものです。  ここに3つの例があります。1つ目が、職業訓練、訓練期間中の生活保障ということで、 具体的には職業訓練をした上で、その職業訓練を受講中の生活費を給付しようというもので す。3年間で35万人、また、訓練期間中の生活保障としては30万人を想定したものとなっ ております。訓練期間中どのぐらいの給付がされるかということについては、単身者につい ては月10万円、扶養家族を有する方については月12万円という給付になっております。  この事業につきましては7月以降順次事業を開始しております。具体的には7月15日か ら全国のハローワークで相談・受付を開始しております。また、7月29日には職業訓練に ついても順次開始しております。実績としましては、職業訓練の実績、訓練を受けられる枠 がどれぐらいあるかということですが、認定した訓練の定員で8,866人、約9,000人の訓練 枠が確保されております。また、受講者、これは予定者も含みますが、3,919人の方が訓練 の受講を予定している。また、訓練を受けるときの生活保障ということで、受給資格の認定 を申請された方については2,600件というようなことになっておりまして、これは9月8 日現在のものですが、順次スタートして開始をしているところでございます。  このほかにも、中小企業における雇用創出ということで、実習型の雇用・職場体験を通じ た雇入れの助成というものもやっております。また、3にあるような長期失業者の再就職支 援ということで、長期失業者や就職活動困難者に対する再就職支援、住居・生活支援も開始 しているところでございます。  いちばん上の緊急人材育成支援事業につきましては、詳しく説明させていただきますので 2頁をお開きください。緊急人材育成支援事業につきましては、訓練を確保して、そこで訓 練をしていただき、生活費を保障するものですが、いちばん上の四角にあるように、今回新 たに基金で育成を確保する部分のほかに、雇用保険二事業で従来やっている職業訓練という ものがありますので、そういったものも併せまして3年間で100万人を対象に職業訓練を 実施というふうになっております。また、基金では雇用保険を受給していない方に対する訓 練機会を35万人規模で確保する。そうしますと、雇用保険を受けておられない非受給者35 万人と15万人のうち、主たる生計者30万人には基金からの訓練中の生活費を給付すると いうようなことを想定したものになっております。  下が全体のイメージですが、3年間で100万人分の訓練機会を確保となっておりますが、 緊急人材育成支援事業で確保するものが約35万人ということで、具体的に中身としまして は(1)から(3)にありますが、再就職に必要なITスキル習得のための訓練、(2)としては新規成 長・雇用吸収分野、例えば医療、介護・福祉、IT、電気設備、農林水産等ですが、これに関 する基本能力習得のための長期訓練。(3)として上記の訓練の受入枠確保のためのコース設定、 講師育成、人材育成機関を支援というような事業があります。  下の雇用保険二事業は従来からやっている部分ですが、その中でも全体が65万人の訓練 ということですが、そのうちでも雇用保険受給者でない方のためにということで約15万人 の訓練枠を確保しようというもので、具体的には営業・販売、技術、経理等々さまざまな職 種・分野における訓練を想定しているものでございます。  これらの訓練を受けている間の生活費保障というものが右ですが、雇用保険非受給者のう ち、主たる生計者の方に生活費を保障しようというものです。具体的には、下にありますよ うに、単身者であれば10万円、扶養家族がいる方は12万円となっていますが、この給付 のほかに、もし希望する場合には貸付というものもあります。単身者は月5万円、扶養家族 を有する方は8万円ということで貸付制度も希望者にはあります。また、就職した場合には 貸付のうち5割を返還を免除するといったことでも、訓練中の生活を安定させようというも のでございます。  続きまして、スキーム図でございます。全体がどうなるかということですが、いちばん右 下に「求職者」があります。求職者はハローワークのほうから受講の勧奨を受けまして受講 することになっております。その受講については、どのような所が訓練を実施するかという のが、ここにありますように、専修各種学校、教育訓練企業、職業訓練法人、社会福祉法人、 事業主等々いろいろな機関を想定しておりまして、こういった訓練を実施していただこうと。 この訓練を求職者が受講した場合に、いちばん左上ですが、中央職業能力開発協会のほうか ら給付金が出るということで、具体的には先ほど申し上げた単身者であれば10万円、世帯 者であれば月12万円が支給されるというような仕組みになっております。その際、どのよ うな職業訓練を確保するかということも重要ですので、真ん中の欄ですが、中央職業能力開 発協会から一部委託ということで、職業訓練のコーディネートとか、また、どのような訓練 計画にするかというものの支援をするようなことを委託して訓練先を確保するというよう な仕組みになっております。  1頁おめくりください。こちらは今の訓練中の生活保障だけではなくて、失業保険をもら えない方に対するセーフティネットとして、どのようなものがあるかということを、少し網 羅的に記載しているものでございます。この「施策の概要」という所にありますが、点線の 右上の「失業給付」ということですが、失業給付をもらえる方は雇用保険をもらうでしょう ということですが、それが例えばもらえないような方への第2のセーフティネットをどうす るかというところが点線の枠内です。点線の枠の右上の「訓練・生活支援給付」というもの が先ほど申し上げた制度でございます。そのほかに、その左側ですが、「就職安定資金融資」 というもので、これは昨年来行っているもので、住居喪失者等に対して貸付をして就職につ なげていこうというもので、最大186万円という制度があります。その下の「住宅手当」 と書いてありますが、これは当面1年間の緊急措置ということで、制度としては本年の10 月からスタートするということですが、具体的には自治体のほうに補助をして実施していた だくことになりますので、そこの自治体の準備状況にもより順次スタートということになり ますが、住宅手当も当面1年間の緊急措置として設けられております。その右側の「貸付」 ですが、これは既存の制度で社会福祉協議会が窓口になって生活福祉資金を貸し付けるとい うような制度がありますが、これにつきましても、連帯保証人がなかなか確保できないため に、貸付が受けられないという方もいる等々のことがありましたので、これを抜本的に見直 しております。この見直しについては10月からスタートするということですが、例えば連 帯保証人がいない方については一定の利子を付けた上で貸付を行うとか、そういった形で対 応するというように聞いております。以上が雇用保険以外の第2のセーフティネットという ことですので、雇用保険を受給できない方にもこういったセーフティネットを利用して、活 用していただくことによって、再就職につなげていこうというような措置でございます。資 料の説明は以上でございます。 ○清家部会長 雇用保険の適用範囲について、資料No.3から資料No.5を中心にご説明いただ きましたが、ただいまのご説明に関しまして、あるいはこの雇用保険の適用範囲全般につい て、ご意見ご質問がありましたらよろしくお願いします。 ○遠藤委員 ただいまご説明いただきました資料について2点ほどお尋ねさせていただき たいと存じます。まず、資料No.4の6頁ですが、6カ月以上の雇用見込みということで、中 段以下、「短期の期間(6カ月未満)を定めて雇用される場合」として、いくつかのパター ンをお出しいただいていると理解しています。いちばん下の例ですが、3カ月契約で更新し て3カ月契約へ。そして、実績が出た時点でこの段階から適用というご説明であったと思い ます。実際の実務の中では、このパターンに限らず、更新した段階で、あるいは更新後しば らくしてといったような状況下の中で、適用基準を満たすような場合もあり得るのではない かと思います。その辺のところ、何か補足する説明があったらお聞かせいただきたいという ことが1点目です。  2点目なのですが、今度は資料No.5の基金関係です。1頁で、事業の開始そのものについ ては7月の15日からハローワークで相談・受付開始、29日から職業訓練順次開始というこ とであります。ここに「全国」と書いてありますが、文字どおり、これは限られた地域とい うことではなくて全国ということで理解してよろしいのですか。それから、次の実績のとこ ろで、訓練の認定済み定員が9,000弱いる中で、受講者が4,000人足らずということなので すが、ここの差の部分については待ちの方々というふうに理解してよろしいのかどうかとい うこと。そして、その方々がどのぐらい待つことが現段階で想定されているのか、さらには、 その待っている方々についてハローワークで何かフォローといったようなことの対応をさ れていらっしゃるのかどうかということをお尋ねさせていただきます。 ○清家部会長 資料No.4と資料No.5についてご質問がありましたが、事務局からお願いしま す。 ○澤口雇用保険課課長補佐 1点目の適用基準の所のご質問ですが、同じように契約をされ ている方が同じように更新をされて継続的に雇用されているなど、そういう実際の職場の雇 用実態も見させていただいた上で、継続的に雇用されるということであれば適用するという ことで運用させていただいております。 ○浅賀能力開発課課長補佐 2点目の基金関係ですが、緊急人材育成支援事業は全国で実施 しております。ただ、実際の訓練を実施するのが民間の専修各種学校であるとか企業である とか、そういう所でありますので地域差が若干ありまして、大都市のほうが学校が多いし多 く開設されているという状況はあります。  それから、実績のほうで、認定済み定員と受講者の差ということでよろしいでしょうか。 要は、開設されたコースの定員と。ですので、人気のあるコースがあったりとかそうでない 所があったり、地域的なものがあったり、あるいは今現在募集中の所も含んでおりますので、 そういったところで差が出てきております。 ○清家部会長 遠藤委員、よろしいですか。 ○遠藤委員 最後のところで、例えば人気のあるコースといったようなお話もあったと思う のですが、そういう場合には待ちということになるという理解でよろしいのでしょうか。人 気のあるコースで定員をオーバーしてしまっているようなケースが今あるのかないのか。 ○浅賀能力開発課課長補佐 人気のあるコースの場合ですと、そこが埋まってしまうとその 別なコースが設定されるのを待つということはあり得ます。 ○遠藤委員 その間については、特段、ハローワークのほうで何かフォローをするというよ うなことではなくて、当該本人がその状況を見つつタイミングが来たらまた応募すると、そ のようなことですか。 ○浅賀能力開発課課長補佐 ハローワークの職業相談の中でいろいろな支援策を行ってい るうちの1つですので、待つ場合もあるでしょうしほかのコースを紹介する場合もあるでし ょうし、そこはケース・バイ・ケースだとは思います。 ○清家部会長 古川委員、どうぞ。 ○古川委員 職業訓練のところなのですが、求職者がハローワークへ行って相談するわけな のですが、この求職者で認定されない人とか受講できない人というのはどういう人なのでし ょうか。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 いろいろなケースがあると思いますが、1つは、希望を尊重し つつも、その方が本当に訓練を受けることによって再就職につながるかという点も、キャリ アカウンセリングの中で出てくるだろうとは思います。また、実際、訓練の設定によっては、 例えばITとか、知識とか専門的知識が要求される場合に、一定の例えば希望者が多い場合 とかは選考試験などもあると思いますので、本人がついていけない場合はなかなか受講でき ないということもあるのかなと。あとは、本人が希望するコースがその地域にないというこ とも当然あろうかと思いますので、そういったミスマッチは一部は発生するのかなとは思っ ております。 ○古川委員 そういうミスマッチがなければ、希望した所の希望したコースを受講できるの ですか。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 基本的には、本人が希望し、また、それが再就職につながると いうことであれば、今の段階だと訓練枠があればということですが、受講できるような状況 にあるのではないかと思っております。 ○古川委員 例えば、長期失業で何年以上失業してとか、そういう要件はないわけですか。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 ありません。 ○清家部会長 長谷川委員、どうぞ。 ○長谷川委員 資料No.4の8頁、「週20時間以上の雇用者のうち、6カ月未満雇用見込みの 者」のイメージなのですが、これとこの資料の6頁の「6カ月以上の雇用見込み」と書いて あるのですが、本人はフルタイムで40時間働きたい、そして自分で自活したいという労働 者がいるのですが、使用者のほうが、労働保険とか社会保険の負担があるので、あえて細切 れな契約と労働時間を設定しているというケースは結構多いわけですね。そういう人という のは、「週20時間以上の雇用者のうち、6カ月未満雇用見込みの者」のイメージの所のこの 例の4までにはまらない、そういう労働者というのはいるのだと思うのです。それはマルチ ジョブホルダーとも関連するのですが、私がたまたま聞いたのは、働こうと思って職を探し ているときに、雇う方が日当たり5時間で3日、これは週15時間ですね。日当たり6時間 で3日、週18時間としている。なぜこんな面倒なことを言うのかなとずっと聞いていてみ たらば、要するに労働保険とか、いうものを払いたくないからと。また週20時間以上を超 えると雇用保険にも入れなければいけなくなるのでというので、そこを払わないように制度 設計しているわけですね。そういう人はどういう働き方をするかというと、2カ所で働くの だと思うのです。でも、本人は自立したい、自活したい、普通に暮らしたいという、そうい う労働者を今のこの雇用保険制度で救えないというところにこの問題があると思うのです。  このペーパーを見れば、雇用保険というのは、失業という事故に対するセーフティネット であるということはそのとおりだと思うのですが、制度設計はそうなのだけれども、しかし 雇用保険を払いたくない使用者の人には嫌な言い方で申し訳ないと思うのですが、雇用保険 の負担をしたくないから、あえてそういう働かせ方、そういう雇い方をするということにな っており、それに対してなかなかカバーできていないのだと思うのです。そうすると、もう 働く人は全部雇用保険に入れたらどうかと。働いたら全部雇用保険だと。雇用した人は全部 雇用保険だという、それ以外にないのかなというふうに思うのです。私の所は、組合は、働 く人すべてに雇用保険をカバーするべきだと言ったのは、労働相談をしているとそういう実 態にぶつかってしまって、「制度上は週20時間未満だから」とか「契約が2カ月とか3カ 月だからね、そうなんだよね」となってしまうのですね。  私は、去年の秋以降、年末の思い出したくもない日比谷の話が頭をよぎります。もうそろ そろ冬になり、寒くなってくるわけですが、あそこに来た人たちだけではなくて、全国でハ ローワークとか労働組合の労働相談とかNPOの労働相談に来た人たちの多くは雇用保険に 加入していなかったのです。連合が、今、失業者の生活実態調査をやっており、近々公表し ようと思っているのですが、雇用保険の適用範囲から漏れている人が本当に多かったという のがよくわかったのです。もう1つは、本人は正規だと言っているのだけれども雇用保険に 入っていなかったとか、そういう人がいたことに対して、雇用保険という制度はどのような 形でカバーすればいいのだろうか、セーフティネットとしてどのようにカバーすればいいの だろうかと思います。今日は事務局から論点メモを出されてきましたので、ここは労使がき っちりと議論しなければいけないかなと思います。  それと、この緊急人材育成・就職支援基金は始まったばかりで、まだ数字が出てこないの ですが、結構話題になっている制度なのです。雇用保険に入っていなかった人たちというの は大体非正規労働者が多いのですが、20時間未満とか6カ月の雇用見込みがなかったから 入っていなかったという、そういう非正規の人が多いのですが、特にその中でも派遣で働い た人たちというのは本当に能力開発されてきていなかったわけですね。能力開発されてこな いと、同じ作業の反復作業しかやってきていないから、スキルがなかなか身についていない のですが、いまここでやっている訓練メニューが、本当に妥当なのかどうなのかという検証 をする必要があるのではないかと思うのです。この間、ある公的施設、失業している人がい ちばん先に相談に行くという求職者支援センターやうちの労働相談などで聞くと、ITとか 営業とかという前段階の訓練なども必要だと言うのです。そういう意味では、訓練メニュー の開発を、もう少しいろいろな労働者を想定しながら、能力開発機構が頑張る必要があるの ではないかと私は思います。ここに来る労働者を、どういうふうに想定してどういうスキル を付けていくのかということを少し検証してみる必要があるのではないか。  もう1つ、この第2のセーフティネットと言われているこれですが、結局、ハローワーク に行っていろいろなカウンセリングを受けたけれども訓練メニューがない、自分とマッチン グするものがないとか、訓練はもう定員オーバーで、ITの所にみんな集中しているのだと 思うのですが、そこに行きつけなかったと。待ちだという人たちは、結局また放り出される ということになるが、本当にそれでいいのかと。そうだとすると、とにかくそういうハロー ワークに相談に行った人については60分のカウンセリングを何回かやって、マッチングす るような訓練を見つけてやって、訓練をさせて仕事を見つけてやるという、これを急いでや る必要がある。あとは、今は有効求人倍率も低いわけなのですから、就職しろといってもど こもないと言っているのです。だから、これは就労することが条件になってくるわけですが、 そんなこと言ったって働く所なんかないというのが事実なので、そういう意味では求職開拓 といったものを、もう少しきちんとやらなければいけないし、雇用の創出に対して手を打た ないと、訓練はしました、しかし就職する所はありませんということになります。連合の失 業者の生活の調査でもわかったのですが、面接に辿り着けないのだそうです。書類で終わり、 面接にも辿り着かないという、そういう人たちがどういう状況になっていくかというと、も う探すのも嫌だとか、本当にメンタルの問題を起こしているということも出てきたので、も う少しこの制度を早く動かすことが必要なのではないかと思います。  それと、今回のこの雇用保険の週20時間で雇用見込み6カ月未満の話をするときに、こ の第2のセーフティネットとセットで議論しないと、雇用保険だけ議論しても駄目なのだと 思うのです。そうすると、両方の議論を並行してやっていくことが必要なのかなと思います。  それから、これだけの失業者が出たのですが、その人たちが今どういう生活をしているか というと、配偶者に食べさせてもらっているとか、ほとんど親にすがって親に食べさせても らっているというのが出ているので、早くこの状況を改善することがとても重要ではないか。 何か、寒くなってきたのでそろそろ去年のような路上生活者も少しずつ出てきて相談に来て いるという話も聞いていますので、是非この検討を急ぐ必要があるのかなと思います。私は、 とにかく雇用保険でみんなカバーするということが原則だと思いますが、しかしそうは言っ ても難しいので、雇用保険とこの第2のセーフティネットを、どっちでどうカバーされるの かという話も並行的に議論していただければと思います。 ○清家部会長 いま最初と最後に言われたところが論点ということかと思いますが、この緊 急人材育成・就職支援基金、第2のセーフティネット、この辺について事務局からお答えで きる部分がありましたらお願いします。 ○浅賀能力開発課課長補佐 おっしゃるとおり、この事業の訓練の対象となる方は従来雇用 保険に入れなかったような方が多いと想定されますので、確かにスキルが身についていない 方が多いかと思います。そのため、従来の公共職業訓練と比べて、初歩的といいますか、パ ソコンの使い方的なものとか、社会人として働くための基本的な能力の習得といったような ところに力を入れております。それに加えて、新規成長分野等でそれぞれの分野で必要にな るような能力というのも実施しております。  それから、訓練メニュー、訓練実施機関の確保ですが、おっしゃるとおり、実際に訓練を する場がないとできませんので、訓練実施機関の確保等につきまして、委託先団体に委託し ておりまして、ここにおいて訓練実施機関に働きかけを行っているところです。始まったの が7月末ということで、事業開始当初であったというのと、8月は学校等休みの期間であっ たということでなかなか出てこなかったところもありますが、また精力的に働きかけて確保 に努めてまいりたいと思っております。 ○清家部会長 そうしましたら、いま長谷川委員から対象者の範囲についての問題提起等も ありましたが、それも含めて何かご意見やご質問がございますか。西馬委員、どうぞ。 ○西馬委員 今回のこの適用範囲の議論を、経済情勢が悪いということで失業率が非常に高 い、これに対する緊急避難的なことで考えるのか、それとも、この制度そのものを基本的に どうしていくかということで考えるのかによって、対策の打ち様がすごく変わってくると思 うので、その辺り、どうなのかというところをはっきりさせておく必要があると思っていま す。  先ほど長谷川委員から出ていた、あえて保険に入らないために短い雇用期間を定めて雇う とか、そういう問題というのは、長らく1年でやってきたのを今回は6カ月に短くしている わけですから、これは短くしたときにどういうことが起こっているのかというのを、先ほど 事務局からご説明がありましたが、それに対してどれぐらい雇用保険者が増えたとか、今ま であえて短い雇用期間を定めて継続的に雇っていたのを今回こういう改正をして徹底的に 指導したら、こういうのがありましたとか、そういうようなところは出てきているはずなの で、そこのところをきっちり分析した上で、次にどうするかというのを考えるべきだと私は 思っています。それを6カ月を3カ月にするとか、3カ月を2カ月でもいいのですが、その 辺のところはどこまで決め手になるのか。対象者の人数がありましたが、この想定されてい た109万人というのはどれだけ加入につながっているのかというようなところの分析はき ちんと押さえた上で議論をすべきではないかなと。先ほど出ていたすべての人を対象とする のであれば、これは全く考え方が変わってくると私は思っていて、例えば労災保険のように 全部加入にしますよと強制加入にすると、今度は自己都合で退職した人は極力支給しないと か、そういうようなこととか、いろいろな人が入ってくるので、例えば国の予算の入れ方を どうするかとか、非常に性格が変わってくると思いますので、これは慎重な議論が必要では ないかというふうに私は思っています。 ○清家部会長 遠藤委員、どうぞ。 ○遠藤委員 私どもも、現在の労働市場というものを踏まえるような形での広い意味でのセ ーフティネットをどう充実していくのかということも議論していく必要があると思ってい ます。先ほど来複数の委員の皆さんからご指摘がありましたように、今般の3月末における 改正法の影響あるいは効果みたいなものも、システム上の問題はあるということはおっしゃ いましたが、何とか工夫をいただいて、どうだったのかというようなことも十分踏まえる。 また一方、基金事業も、始まったばかりということではありますが、大変期待されている事 業でもありますので、こういったものの影響も踏まえる。そういう中で、労働市場全体とし てこのセーフティネットというものをどう考えていくのかということを議論の中で進めて いくことが重要ではないかと思っています。  その場合の視点として、基本的な考え方なのですが、現行加入されている被保険者との公 平性の兼ね合いをどう見ていくのかということとか、あるいは保険財政への影響がどう出て いくのかということ、さらには保険料負担が実際に新たに発生するわけですから、そういう ものをどう考えていくのかといったようなこと。それから、技術的な問題にはなりますが、 雇用保険の出入りがこれまでに比べたら頻繁になるというおそれはあるわけですから、そう いうものへの対応はどうなのか。実際に新たに適用範囲になった方々の給付水準をどうする のかといったようなところも含めて議論していく必要があるかと思っております。 ○清家部会長 長谷川委員、どうぞ。 ○長谷川委員 聞きたいのですが、一般被保険者の中で20時間から40時間未満の場合、6 カ月以上の雇用見込みという要件が入るわけですが、なぜ6カ月以上の雇用見込みという要 件があるのか、その理由は何なのかを教えてほしいです。この6カ月の雇用見込みというの は雇用保険法の本則に記載されているわけではないと思ったのですが、その辺を教えてほし いのです。 ○坂口雇用保険課長 いまのご質問の点ですが、資料No.4の1頁なり3頁に、短時間の方に ついて雇用見込みが6カ月以上にしているということですが、これはいまご指摘がありまし たように、法律で定めているものではなくて、要領、いわゆる行政通達で解釈として定めて いるというものです。その点については、資料No.4の説明で1頁の所でご説明しましたとお り、雇用保険というものが、賃金で生計を立てておられる労働者の方が失業というリスクが 発生したときに、労使を中心とする保険料負担者で皆で支えあうということなので、そうい う保険制度の考え方ということから、そのような解釈をしているということでございます。 ○長谷川委員 なぜ6カ月なのかがわからない。なぜ6カ月という雇用見込みがその運用の 中で、要するに雇用保険法の適用除外という法律記載事項ではなくて、運用で行われてきた のかということと、なぜ6カ月だったのか。今までは1年ですが、この間6カ月になりま したが、その1とか6という数字を弾き出したのはどういう理由なのかなと。 ○坂口雇用保険課長 この点については、昨年もご議論いただく中でこの短時間労働者の雇 用見込みが、従前1年以上の雇用見込みだったということについて、どういう形で適用基準 を見直すかという議論の際に、先ほどの資料4の中、あるいは論点の中でも、受給につなが るケース、つながらないケースということについても例示を出してご説明させていただきま したが、一定の基本手当の受給資格要件、いわゆる倒産・解雇等の非自発の方であっても、 離職の日以前に1年間通算して6カ月の被保険者期間が必要ということで、給付可能性と申 しますか、受給可能性がないような方についてまで、このリスク分散の集団に入れるかどう かということから考えるとということで、この受給資格要件の6カ月ということを勘案して、 今回、1年以上の雇用見込みを6カ月以上の雇用見込みに改めるという形で見直したという ことでございます。 ○清家部会長 いかがですか。 ○長谷川委員 まあ、わかりました。 ○岩村委員 どこまで合っているかよくわかりませんが、1つは、雇用保険というのがもと もと社会保険ということで、保険のメカニズムをある意味で転用して、そして失業時の一定 の所得保障を一定期間やりましょうという仕組みなのですね。ところが、保険のメカニズム は転用しているのですが、失業というのが極めてリスクマネジメントの難しいリスクという ところから、おそらく、ある意味で制度自体を保険というメカニズムを転用して運営してう まくやっていくためのいろいろな経験的な知恵があって、その1つが雇用期間の見込みなり 何なりというところに入ってきているのだろうというふうに私は推測しているのです。  あまり例が良くないのですが、生命保険の場合、ご承知のとおり、自殺は駄目なのです。 ただし、実際には、加入後1年か何かを過ぎた後の自殺については、生命保険金を出すとい うのが現在の運用なのです。それは、加入した直後に自殺されてしまったら、それを理由に 保険金を払ってしまうと保険が成り立たない、しかし1年後であればという、何か、保険を 運営していく上での知恵がそこにあるのだと思うのです。雇用保険の場合も、失業というリ スク自体は厳密に言うと偶発性があるものもあるのですが、ないものもあるので、そこのと ころのリスク管理をどうするかというところから、おそらく、少なくとも我が国の場合は、 時間の問題もありますけれども、雇用期間の問題というものを入れることによって、いわば、 保険のメカニズムを使って運営していく上での安定性を確保しようというふうに考えてい るのかなというようには思います。  だから、そこは非常に難しくて、今日のペーパーにも出てきましたが、例えば2カ月とい うような短期の雇用を考えたときには、反復継続性は全く予定されていないということだと、 最初からリスクが2カ月後に発生することがわかっているので、非常に極端に言うと、これ を保険に入れてしまうと保険財政自体、保険のメカニズム自体が動かなくなってしまうとい うことが起きてきてしまうということだと思うのです。さらに、こういう人たちも保険に入 れますよということになった途端に、実は、人々の行動自体が変わってしまうということが 起きるので、保険のメカニズムで運用すること自体がより難しくなる可能性が出てくる。そ こが、たぶん、この雇用保険という制度を設計し運営していく上でのいちばん難しいところ なのだろうと思うのです。偶発性のある失業というのはもちろんあるのですが、他方でそも そも偶発性がない、あらかじめ予定された失業というのもあったりする。しかし、それをむ やみに切り捨てるわけにもいかないので、どこまでカバーしましょうかという範囲の中で、 いわば、全体の制度の安定を維持しようとしている、そういうことなのかなというふうには 思っています。それが1年がいいのか6カ月がいいのか、あるいはもっと短いものがいいの かというのは、当然、制度運営の安定性との関係で見ていかざるを得ないと思うので、アプ リオリに決まっているものではないとは思います。ただ、ほかの医療保険などに比べると非 常に微妙な舵取りが要求される制度だなというふうには思っています。 ○清家部会長 栗田委員、どうぞ。 ○栗田委員 重複するかもしれないのですが、緊急人材育成・就職支援基金の制度そのもの というか、必要性は十分わかっていて、この間、非常に効果があったということなのですが、 この図が少しわかりづらいのは、この3頁に中央職業能力開発協会に基金を委託するような イメージがあるのですが、これまでやってきた能力開発とかアビリティガーデンとか、いろ いろなことの取組みをやってきて、この間、廃止したりしている事業があったりして、その やってきたこととこのイメージ図の関係がどうなっているのか。さらに、訓練を折角やって 就労の機会がないという、特に地域によってあるのですが、ここで捉えられている新規成 長・雇用吸収分野ということで、特に農業分野とかいろいろなところがあると思うのですが、 是非、そこら辺のところを充実させてもらいたいということをどうお考えなのか。  それともう1点は、雇用保険の適用範囲にかかる論点の資料No.3の部分で、今日は論点に なっているかどうかはわからないのですが、3番の65歳以降の対処ということが書いてあ るところについて、これから議論をしていくのは大いに期待しているところですが、その前 に、今の65歳までの高齢法ができて以降、今はどちらかというと定年制をとっている所は ほとんどなくて、実際には再雇用制度をとっている所が大部分なわけです。そのときに、今 回の改正の中では採用基準をもう少し客観的具体的に示しなさいということになり、具体的 に示したことによって、かえってそこから外れる人が今度は出てきて、実際には65歳まで 年金との関係も今の収入の空白期間が余儀なくされている人が発生してしまっているとい う現実がある中で、さらに65歳以降のこういう問題を論じるときにはここら辺の整理も少 し必要ではないかと思いますので、慎重に対応していただきたいと思います。 ○清家部会長 ただいまのご質問やご意見について事務局からお願いします。 ○浅賀能力開発課課長補佐 基金事業の関係で中央職業能力開発協会にやらせているので すが、おっしゃるとおり、訓練実施そのもの、例えば公共職業訓練とか、そのものをやって いたわけではないのですが、今回の基金事業におきましても、訓練を実施するのは民間の専 修各種学校であるとかいろいろな企業であるとか、そういった所にやっていただくというこ とと、それに係る事務的な作業、訓練実施計画の認定につきましても、どのような計画がい いのかというのは委託先団体でチェックいたしますし、そういう面では訓練に係る事務的な ものはこれまでもやってきたところですので、そういったところでこの協会に選んだという ことが1つ。それから、この協会が能開法に基づく組織で、厚生労働大臣の指揮監督が付く というところでこの協会に委託しているものでございます。 ○坂口雇用保険課長 いまの65歳の点については、先ほど論点をご提示させていただきま したが、今日は資料がご用意できておりませんので、次回にご議論いただくべく資料を用意 させていただきたいと思います。その上で、いま栗田委員がおっしゃったように、定年の引 上げのスケジュールと、その兼ね合いでいまご指摘がありました高齢者雇用安定法に基づく 雇用確保措置の進捗状況とか、実際にそれも100%ということではないですから、そういっ た背景とかと、高齢者の方がどういう理由あるいはどういう意識で働いておられるかという ことを勘案してご議論していただく必要があるし、先ほど岩村委員からありましたように、 全体にそういうこの保険のリスク集団としてどういう形で考えていくかということも必要 かと思いますので、そういう資料を次回にご用意させていただいてご議論していただきたい と思います。 ○清家部会長 岩村委員、どうぞ。 ○岩村委員 この緊急人材育成の所で、資料No.5の1頁に図を示していただいて、基金の事 業実施状況ということで、7,000億円ということでやっていただいているのですが、1点目 の質問としては、2番目の中小企業等における雇用創出の所が、事業開始が7月10日で、9 月8日現在の実績が開始者数が265人ということになっていて、しかし受理した求人数は 4,000近く、登録求職者数も4,000近くというのにかかわらず、開始者数が265というのは どういうことなのかということを教えていただきたい。  もう1点は、私の乏しい知識の中では、ヨーロッパなどもこういう訓練などをいろいろや っているのですが、職業訓練をやっただけでは実際の就職になかなか結び付かないというの は経験的に結構はっきりしてきている。したがって、なるべく研修なり実習という形で企業 の中に入り込ませて、そこで訓練と同時に実際の職業生活の訓練に入れ込んでいく。それが その後の就職に結び付けるのにはかなり有効だということは、ある程度言われているような 気がするのです。質問なのですが、緊急人材育成支援事業があって、訓練を一定期間受けて、 その後、今度は中小企業と雇用創出支援事業というところに移るというのが可能なのか。あ るいは、単に可能だというだけであって、そこまで制度設計上は考えていないという話なの か。というのは、人数にかなりのギャップがあるのですね。緊急人材育成支援事業のほうは 30万人オーダーなのですが、雇用創出支援事業は9万人オーダーという形になっていて、 かなり落差があるのですが、ここはそれぞれ別個の枠組みで考えたとか、あるいは中小企業 の実情等を考えてこういうことになったということなのか、その辺をご説明いただければと 思います。 ○宮川職業安定局総務課長 中小企業の雇用創出支援事業を大きくご説明申し上げると、こ れは実習期間6カ月、雇い入れてからですが、その期間の実習をやっていただく。その期間 には1人当たり月10万円を事業主に支払う。さらに、そこで実習期間終了後に正規の雇入 れをしていただいた場合には100万円をお支払いする。大きく言えばこういう枠組みです。 まず最初の質問の求人数、求職者数があるのに開始者数がこれだけというのは、これはまさ に普通の求人求職と同じようなものでありまして、それぞれの求人を当然出していただきま す。そして、当然のことながら、求職していただいている方が4,000人近くすでに出ている。 それをマッチングさせるのがハローワークの仕事でありまして、むやみやたらにとにかく押 し込めばいいとかいうことは、訓練以上に問題があるのです。つまり、要はそこに合った人 をきちんと紹介し、そこに合った人を送り込まないと、6カ月間やっていくと全然ものにも なりませんでした、あるいは本人の希望と全く合いませんでしたというのは、これは間違い の元ですので、ここはマッチングを慎重にやらなければならないけれども積極的にやってい くという成果が、まさにこの265人と。短期間の間にこれだけ出てきているという評価で はなかろうかと思っています。  それから、これと緊急人材育成支援事業、生活の保障が付いた訓練との関係ですが、事業 自身、特段リンクさせているわけではありませんが、これは全体として取り組んでおります ように、当然のことながら、訓練の中で終了してなかなかすぐには就職に結び付かないとい ったときの1つのツールとして、当然のことながら、中小企業にお願いする。折角ここまで 訓練を受けてこられた方がいるので、こういう形で実習で使っていただけないだろうか、と いう意味での強力なハローワークでの職業紹介のツールになるという意味で、ツールを用意 しているというものだと私どもは理解しております。したがって、この30万人全員がこの まま中小企業の雇用創出支援事業に行くという筋合のものでもないし、しかも、受入れ先は 中小企業に限定させていただいておりますので、これぐらいの数字を噛ませば両者相まって 雇用の実現、再就職の実現につながるのではなかろうかという形でセットしているものでご ざいます。 ○岩村委員 1点追加させていただきたいのですが、中小企業の雇用創出支援事業のほうで 受理求人数が4,000近くあるということで、地域的な問題もあるからあれなのですが、マッ チングの問題として考えたときに、このデータを例えば頭の中で考えると、この人材育成支 援事業のほうの訓練の振り分けなり、求職者個人に対するサジェスチョンなりにフィードバ ックするというようなことも考えられなくはないと思うのですが、そこまではやるほどの量 もないという感じなのか。そこはやっても大勢にはあまり影響がないと。 ○宮川職業安定局総務課長 というか、私どもは求人が4,000人で、これは4,000人にまだ とどまっているというのが正解だろうと。これからどんどん求人を開拓していく。その求人 に合うような形での訓練というのも是非とも拡大していきたいし、そのような形でのコーデ ィネートもお願いしたいというふうに考えております。まさに、これは事業全体として有機 的にやっていくべきものだと思っております。 ○清家部会長 ほかによろしいでしょうか。それでは、今日の議論はこのぐらいにしたいと 思います。皆さんから、例えば遠藤委員から冒頭にも適用範囲の拡大の効果はどのぐらいだ ったのだろうかとか、あるいは長谷川委員からも訓練の効果等についても見てほしいという、 そういう政策あるいは政策変更の効果を少し示してほしいというご要望がありましたので、 これから制度変革を考える際にもそれが重要な指標になると思いますから、統計等でとるの が難しい部分もあるかと思いますが、少し工夫をしていただいて、これまでの制度の変化と か政策の効果が、これはここだけの場でなくても、エビデンストベースの政策を進めるとい う意味でも重要かと思いますので、その辺、資料を少し工夫していただければというふうに 私のほうからもお願いいたします。  それでは、以上をもちまして本日のところの議論は終了したいと思いますが、このカバー する非正規労働者の範囲に関しましては、本日のご意見等も踏まえまして、改めてまたご議 論させていただきたいと思っております。また、次回は今日の資料No.3の所で、もうすでに 少し議論も出ましたけれども、マルチジョブホルダーや65歳以降への対応等の課題につき ましてもご議論いただきたいと思っておりますので、その点についても、先ほどすでにあり ましたが、事務局に資料を用意していただいて議論を進めてまいりたいと思っております。  次回の日程につきましては、事務局において改めて委員の皆様にご連絡させていただきた いと思っております。以上をもちまして第47回雇用保険部会を終了いたします。なお、本 日の署名委員は、雇用主代表は小林委員にお願いいたします。労働者代表は長谷川委員にお 願いいたします。それでは、委員の皆様、お忙しいところをどうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係     03−5253−1111(内線5763)