09/07/30 第9回厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会議事録               厚生科学審議会疾病対策部会                第9回 難病対策委員会           日時:平成21年7月30日(木)14:00〜16:00           場所:厚生労働省省議室  中田課長補佐   ただいまから、厚生科学審議会疾病対策部会第9回難病対策委員会を開会いたします。  委員の皆様には、お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。  委員会開催に際しまして、上田健康局長より御挨拶申し上げます。  上田健康局長   健康局長の上田でございます。委員の皆様方におかれましては、大変御多忙の ところ、この厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会に御参集いただきまして、誠にありが とうございます。  さて、難病については、我々も鋭意様々な努力をしておりますが、難病研究に関する諸外国の 状況を御報告申し上げますと、EUでは、2002年から2006年までの第6期フレームワークにおい て、約2億ユーロ(約300億円)を希少疾患研究に配分していると聞いております。また、米国 では、NIHが、診断のつかない疾患に対するプログラムを開始すると聞いております。  このように、諸外国におきましても難病対策の拡充を図っております。我が国におきましても、 今年度は研究費が100億円に増えたということもあります。是非、この機会に難病対策を大きく 進展させることが必要ではないかと考えております。  このような観点から、皆様方におかれましては、前回に引き続き、専門的かつ大局的な見地か ら、貴重な御意見、御指導をいただきたいと考えております。  簡単ですが、改めてお願い申し上げまして御挨拶にかえさせていただきます。どうぞよろしく お願い申し上げます。  中田課長補佐  なお、上田健康局長におかれましては、公務のため途中退席させていただく予 定でございます。  今回、新しく委員になられた方が4名おりますので御紹介させていただきます。  まず、国立精神・神経センター病院長、葛原茂樹委員でございます。  葛原委員   葛原でございます。よろしくお願いします。  中田課長補佐   九州大学副学長、水田祥代委員でございます。  水田委員   水田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  中田課長補佐   東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科在宅ケア看護学教授、本田彰子委員でございます。  本田委員   本田でございます。よろしくお願いいたします。  中田課長補佐   川崎区役所保健福祉センター所長、益子まり委員でございます。  益子委員   益子でございます。よろしくお願いいたします。  中田課長補佐   続きまして、事務局の交代がありましたので御紹介させていただきます。  4月1日付けで着任いたしました藤村陽一課長補佐でございます。7月24日付けで着任いたし ました大竹輝臣課長補佐でございます。最後に私ですが、4月1日付けで着任いたしました中田 勝己でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日の委員の出席状況ですが、尾形委員、小幡委員、細川委員から欠席の連絡をいただいてお ります。  それでは、以降の議事進行につきまして、金澤委員長にお願いいたします。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  大変暑い中を、皆様、遠いところからもお集まりいただきまして誠にありがとうございました。  本日は第9回目の難病対策委員会ですが、第8回をいつ開催したかわからなくなったくらい昔 で、久々の委員会です。どうぞ御議論を十分になさっていただきたいと思います。  それでは、まず資料確認をお願いします。  中田課長補佐   それでは、資料の確認をさせていただきます。  まず、お手元に議事次第があります。おめくりいただきまして、委員名簿がございます。  続きまして、資料1は伊藤建雄委員からの提出資料ですが、「新たな難病対策特定疾患対策を 提案する」でございます。  続きまして、参考資料1「難治性疾患克服研究事業の概要」、参考資料2「平成21年度難治性 疾患克服研究事業採択課題一覧表」、参考資料3「平成21年度難治性疾患克服研究事業公募要項 の概要」、参考資料4「重症難病患者入院施設確保事業の概要」、参考資料5「経済危機対策 (平成21年4月10日)」、参考資料6「未承認医薬品等に関する対応について」、以上でござい ます。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  何か足りないものがありましたら、どうぞ声を上げてください。  それでは、第1議題ですが、「難病対策について」というタイトルです。まず、これに関して は、先ほども御紹介がありましたが、伊藤たてお委員から資料をいただいておりまして、30分以 内で御説明をいただきたいと考えております。  どうぞ、よろしく。  伊藤委員   日本難病疾病団体協議会の代表をしております伊藤と申します。  タイトルが大変大きいということですが、この三十数年、間もなく40年になろうとする日本の 難病対策も新たな展開が必要なのではないかということで、この数年間、各患者会で様々に議論 したり、勉強会を開いてきたことを、昨年提案いたしまして、1年間更にいろいろな患者会で議 論いたしまして、今年6月の私どもの総会でこれを正式に承認していただきました。  その正式な書類は、お手元の1ページ目から、縦版になっておりますが、横書きで「新たな難 病対策・特定疾患対策を提案する」ということで、5月31日付けでまとめたものが正式な文書で す。この文書を説明するためにこの資料を作成いたしました。  なお、「難病対策」と「特定疾患対策」を併記したのは、一般に難病対策と言われるものが行 政の末端になると特定疾患対策に、かなり狭い範囲に押し込められていることも現状です。しか し、その特定疾患対策も非常に大事なので、狭い意味での特定疾患治療研究事業というもの、あ るいは、難治性疾患克服研究事業と、更にもっと大きな枠での難病対策があるのではないかとい うことで、タイトルを「難病対策・特定疾患対策」と並べました。  皆様は専門家ですので、難病対策が始まったきっかけはそれぞれ御存知だと思いますが、私ど もの患者団体としては、大雑把ですが、このような受けとめ方をしているということをまず御説 明したいと思います。  なお、難病対策そのものをまとめられたものでは、疾病対策研究会で監修された「難病対策ガ イドブック」がよくまとまっているのではないかと思いますので、また御参考にしていただけれ ばと思います。  当時の様々なきっかけがあって、難病の定義もいろいろな提案が様々な先生方からされまして、 そういう中で、東京都をはじめ自治体の福祉施策の対象として、そして、患者からの声、家族か らの声がまとまっていって難病対策が始まったと考えております。本日のこの委員の中でも、佐 藤エミ子さんあるいは私が、難病対策の始まりのころからの状況をよく知っている、もう数少な くなった患者団体ではないかと思います。  私どもは、難病対策にかかわる活動を進めていく中で、4ページ目になりますが、難病の問題 というのは、「難病」という病気があるのではなくて、難病問題であろうと。これは、医学・医 療の問題だけではなくて、社会生活や福祉にかかわる問題である。しかし、一般的には、医学・ 医療のことに主に限られているようですけれども、この3つが一緒にならないと解決しない問題 だし、また、この3つの分野からそれぞれはじかれているところに難病問題があるのではないか と考えて活動をしてまいりました。  5ページ目になります。今年で37年になるわけですが、難病を取り巻く状況で全く変わらない ものもありますが、大きく変わったものもあると考えております。一つは、医学・医療の進歩・ 発展が大変大きくて、診断や治療は大幅な進歩を遂げたと患者としても実感しております。その ことによって、早期発見や生存率の向上などありますが、社会全体の高齢化などによって、患者 数が増加すると同時に、また新たな課題も生まれてきていると考えます。  更に、そういう中で、当時、難病といっても、特定疾患対策に指定された疾患しか私どもは目 にすることができませんでしたが、近年、急速にたくさんの病気の方々が、患者本人、御家族あ るいは支援の方々が声を上げられまして、難病というのは非常にたくさんあり多様化しているの だということが、社会的にも皆さんがよく目にするような状況になってきたかと思います。  社会の難病に対する認識の変化も大きくて、私どもが、患者会の活動を始めたころは、難病と いうと、社会の片隅に置かれるような、あるいは、世間をはばかるような様々な認識もあったか と思いますし、あるいは、そういうことを苦に自殺や心中をされたという方々のことも知ってい ますが、この「難病」という言葉に対する認識が大きく変化しまして、今ではさほど、社会には ばからなければならないような雰囲気はなくなってきているのではないか、そして、福祉の対象 としようとしている。身体障害者福祉法も次第に対象疾患が拡大され、そして、今、自立支援法 の中にも難病をどう取り入れるかということが大きな課題になっているような形で、一律に病気 だから福祉の対象にならないということではない時代に変わってきたと思います。  むしろ、医療保険制度が変わらないというか、患者負担が大きく増加しているのではないか。 そこに、患者や家族の様々な不安や困難があらわれているのではないかと考えます。昭和47年に 難病対策が始まったころ、例えば高齢者であれば医療費が無料であるとか、社会保険では本人は 10割給付で窓口負担がないとか、あるいは、社会保険の家族は2割負担などということがありま したし、高額療養費制度も限度額が3万円台でした。それが、この時代とともに、むしろ、保険 料は上がって、給付率が下がって、高額療養費の限度額が大きく上がっていく。そういう中で、 患者さんが長期にといいますか、生涯にわたった闘病生活をしなければならないというところに 様々な問題が出てきているのではないかと思います。  それは、医学・医療の部分の発展とはまた別に、本来、病気になってお金で困る、お金がない から治療を受けられない、病院に行けないということをなくしようということで始まった保険制 度、特に国民皆保険という制度はそういう精神に基づいていると思いますが、そうであったはず ですが、お金がない、大変だということも初期の難病対策の中では大きな問題でした。患者さん の経済的な支援もしようとして始まった制度ですが、本来、それは健康保険がどうあるべきかと いうことが背景にあったはずですが、健康保険制度はその問題については、改善の方向どころか、 むしろ、先ほど述べましたように、患者や家族の負担が大きくなっていく方向に進んできたので はないかと思います。  ですから、先ほど言いました私どもの考え方でいいますと、3つの分野があって、その欠落部 分であったとすれば、医学・医療の方はかなり努力されて埋められてきていますが、経済的な問 題にかかわる医療保険の方は、そこの穴を埋める努力をされてきたか。されてこなかった部分が 公費医療として難病対策で担ってきた、あるいは、小児慢性特定疾患治療研究事業というもので 担ってきた。そういう、年齢ごと、分野ごと、疾病ごとに、様々な対策が行われているものをパ ッチワークのように貼り合わせて何と今日まで来たというのが現状だと思います。  しかし、先日も国民健康保険の調査で明らかになりましたように、今、患者さんの負担あるい は国民健康保険の負担を調べるときは、年収200万円あるいは300万円という層を対象に子ども2 人と夫婦の4人家族を標準にして調査を行うという状況ですから、年収200万円くらいから300万 円くらいでも、保険料が年間で40万円あるいは50万円になるというような状況の中で、更に、病 気になれば3割の自己負担で、これが疾病構造も長期慢性化しているにもかかわらず、かなり高 いというか、実際に200万円くらいの年収だと月々8万円を超える限度額の医療費をずっと払い 続けることは極めて困難ですが、現実にそういう低所得でありながら、生きていくために必要な 治療のために高額な医療費を負担しているという疾病の方々がたくさんいることもまた事実です。  そういう意味で、医療や福祉、社会状況の谷間を埋めるものとして、難病対策は、当時は本当 に画期的な対策として始まって、様々成果を上げてきましたが、一方で、その背景となる点、土 台となる医療保険制度を改善していく努力がされてきたのだろうか。それは、厚生労働省だけで はなくて国民全体の課題でもありますし、国会の課題でもあると思います。その反省も見つつ、 この難病対策を見ていかなければならないのではないかと考えております。  7ページの2つ目に項目にもありますように、身体障害者福祉法は、わずかずつですが、内部 疾患として対象が拡大され、医療保険制度もその中に長期療養給付の対象疾患として3疾患、血 友病、後天性免疫不全症候群、透析を必要とする腎炎などを対象として、長期にわたる負担であ るということで、その負担額を特別に軽減する措置をされていますが、それもこの3疾患に限ら れています。そういう意味で、様々な矛盾が出てきて、そして、多くの病気が難病対策に入れて ほしいという声となっている今が、難病対策を根本から考える好機ではないかと思います。  そういう意味でも、今期の予算で研究費が急に、4倍の100億円になったこと、あるいは、11 疾患が、更に45疾患に追加されるということ、研究対象が増えてきたということなどが背景にあ るわけですが、これを年々、5つだ、6つだ、10だという形で増やしていって解決するのであろ うか。しかも、予算もずうっとそういう形で伸び続けていくのかというところもまた大いに疑問 です。  疾病対策課の岩崎課長の話によりますと、難病と言われるような病気あるいは希少疾病は5,0 00から7,000もあると常々おっしゃっているわけです。だとしたら、そういうものを、ある疾患 は対象とし、支援する。しかし、ある疾患は支援しないという不公平が今の日本の中で許される のだろうか。そういうことが、予算がないから幾つかの疾患だけは対象とするけれども、予算が ついたら少し増やしてもいいというような考え方で今後ともずっと進めていっていいのだろうか ということも考えていただかなければならない問題だと思っております。  そして、この高額医療費助成制度の金額でも明らかなように、8万円4,000円プラス医療費の 1%という金額を、1か月なら払える、2か月なら払えるかもしれません。でも、これも5年も 10年も、患者として生きていく限り、治療が必要とする限り払い続けていかなければならないと したら、今言われている難病だけではなくて、そういう長期慢性疾患はたくさんありますし、日 本の疾病構造自体が慢性疾患を中心に動いているという時代に、そうなっているときに、この金 額が本当に妥当性をもって認められる額なのかということもあわせて考えなければならないと思 います。  そういう意味で、我々も難病対策の今後のあり方を考えていきたいと思います。  8ページになりますが、先ほど言いました、難病対策に入れてほしいという家族団体の要望が 続々と、私どもにも寄せられておりますし、厚生労働省にも寄せられておりますし、各先生方の ところにも寄せられておりますし、地方議会にも、国会にも行っている。続々とそういう要望が 増えていることに対してどう対応していくのか。45の病気あるいは60の病気だけが対象だという ことで済ませていけるのかどうかということが非常に大きな課題になってくるのではないかと思 います。一時期ありましたように、予算がないので、新しい疾患を入れるためには、長年、対策 に入れてきている疾患で、多少何か変化があったような、あるいは、今後も患者数が増え続けて いくと思われる疾患については難病対策から外すというようなことで、患者団体は本当に大きな 衝撃を受けた時期がありました。結果としては病気の内容、本質ではなく、患者数が多いという だけでこの対策から外すことはできないということが明らかになったと思います。 それから、 もう1点問題があるのは、小児慢性特定疾患治療研究事業ですが、これは患者さんが二十歳を越 えて生存することができないと思っていたものが、それは背景があるのかどうか詳しくはわかり ませんが、今はかなり多くの病気、多くの患者さんたちが、二十歳を越えて生存します。この間 までは18歳まででしたが、今は二十歳の誕生日からその制度を利用することができなくなって、 3割の自己負担になります。子どものころから、あるいは、生まれたときから病気で、様々な困 難な中でやっとがんばって生きてきた子どもたちが、二十歳になったとたんに3割の医療費を払 わなければならない。そういう現実が目の前に、二十歳の誕生日に起きてくるわけです。これも 大きな課題です。  これも私どもはいろいろ交渉してきましたが、母子保健法の中では、これは成人になったら対 象にならないといいますし、単純に二十歳を越えたからといって難病対策に入れるものでもない ということで、どこに話を持っていけばいいのかということがずっと宙ぶらりんの状態に置かれ てきました。こういう方々の医療費の問題も同時に解決する方法を考えなければならない。予算 も限られているとすれば、これもどうするのかということも考えなければなりません。  と同時に、今、私どもが最も懸念しているのは、多くの国民が、保険料が高い、医療費の自己 負担が高すぎると言われている中で、幾つかの疾病だけ、あるいは、ごく少数の病気だけ、医療 費の助成をしてほしいというお願いをしても、果たして、多くの国民の理解が得られる状況かと いう問題もあります。そういう意味で、私どもは、幾つかの疾病だけの話ではなくて、今、日本 という社会の中で、本当に生涯の治療を必要とする病気になった場合にも安心して治療を継続す ることができる、自分たちが可能な範囲で負担することができる金額での自己負担というものが 背景になければ、難病対策も進まないだろう、理解されないという、むしろ、これは危機的な状 況も背景にはあるのではないかと考えました。  多くの患者・家族の方々の要望をずっと聞いてきましたが、ある程度集約されるのは、まず、 どの病気の方々、団体も、まず最初に病気の原因の究明と治療法の早期開発を願っているという ことが第一でした。その次に、医療費を払い続けることが困難である、非常に難しいという問題 がありますし、あるいは、地域に専門医がいないという問題、身体障害者と同じ福祉、社会的な 支援を望むという声なども多くなっているわけですが、ここら辺りの要望の内容、あるいは、ど ういう病気にどういう要望が多いのかということも、本来、難病対策の中で生活実態調査のよう なものもあわせて行っていかなければならないのではないかと考えます。  それで、昨年、伊藤私案という形で提起し、患者会の中でいろいろ議論してきました。その中 でのまとめとしては、難病対策は難治性疾患克服研究事業に特化して、すべての難病を対象に研 究を進めるということでいいのではないか。もちろん、医療費もいろいろなものが無料であった 方が良いわけですが、まず大事なのは、研究の対象疾患を増やすこと、そして、予算をそこに集 中してもいいから、一日も早い原因の究明と治療法の確立をということが変わらない共通の願い であると。これは、昭和47年にこの対策が始まってからもずっと変わらない第一番の願いであり ます。  2番目が、生涯にわたる医療費の負担の軽減は、保険医療制度の改善で行われるべきではない か。EU諸国並みにしていただきたい。高額療養費制度の中に長期療養給付制度を設け、更にこ れを拡大していくべきではないだろうか。小児慢性特定疾患の20歳問題も同時に解決への道筋を つけなければならない、生涯にわたって高額な医療費を必要とする多くの長期慢性疾患の問題も あわせて解決していかなければならない。  あるいは、今問題になっています、生涯医療を必要とする長期慢性疾患患者を対象に、高額療 養費制度の限度額を大幅に引き下げることも、今、緊急に必要な課題ではないだろうか。そのほ か様々な問題、生きていくための生活の面、福祉の面、様々な課題があるわけですが、そういう ものを整理していく、あるいは、つなげていくという形での難病対策基本法というものが必要で はないだろうかという提起をしております。  それから、身体障害者福祉だけではなくて、就学・就労・自立支援法のほかに介護保険などの 問題もありますが、私どもは従来、身体障害者福祉法の時代、自立支援法になっても、その中に 難病対策を入れるという提案には、むしろ、私どもはそれに賛成しないで来たわけです。それは なぜかというと、今のままの難病の定義で対策をされると、新たな差別、区別が生まれるからで す。そういう意味で、新しい「難病」という定義ができた場合には、自立支援法も利用できるも のにしていかなければならないと考えております。45疾患に限るとか、60疾患に限るという定義 の中で、「難病」がうかつにほかの制度の対象になると、それ以外の疾患の方々と、また新たな 差別が生じるところに大きな問題があると思います。  それから、近年、先生方の、これも前回の委員会で専門の先生方が発言しておられましたが、 難病の専門医を志す医学生が少なくなっているとか、そういう問題も起きてきますし、今の医療 制度の中では、本当に長期にわたる、難病患者が安心して治療を受けられるような医療体制、入 院体制にもなっていない。あるいは、在宅も非常に困難な状況にあることも一つの問題だと思い ますし、何よりも、地域医療が崩壊している中では、地域の患者さんたちが専門医療を受けるこ とができないという切実な課題も今は起きております。  そして、保健所が、統廃合があるからでしょうが、難病支援の一線から退きつつあります。一 方で、難病相談支援センターが47都道府県にできておりますが、この機能充実もまだまだです。 せっかくつくった相談支援センターを、更に機能を充実させ、強化していくということも課題で しょう。もう1点、ヨーロッパのことを説明しますと、その中にあるような患者会の社会的役割 も医療の中にきちんと位置付けていくべきではないか。これは、何人かの気の合った患者同士が 友の会、仲良しグループをつくって取り組んでいるというレベルの話ではないということにきち んと位置付けていかなければならない。  今もまだ、国内でも幾つかの医系の大学あるいは看護系の大学では、患者の代表あるいは患者 会の人、患者家族を招いて講義を担当してもらっているというところもありますが、それも非常 に少なくなってきているという中で、きちんと位置付けも必要です。  あとは、こういう形で難病対策も進化しなければならないと考えています。そして、14ページ 以降には、こういうことを提起しているのだということも書いてあります。これも、先ほど言っ たことを更にまとめたものです。  世界ではどうなっているかということを17ページ以降に資料を用意しましたので、若干説明い たします。  18ページですが、先ほどの局長のお話にもありましたように、EUでも希少疾病対策を始めま した。日本の難病対策は世界でも特異なものだと言われてきましたけれども、それは、EUの場 合は、そもそも医療費が無料であるか、非常に低額だということであって、日本のように、医療 費の面倒も見るという難病対策をつくる必要がなかったからではないか。そういうEUが希少疾 病対策を取り上げ始めた。アメリカも、それは間もなく進めていくということになりますと、む しろ、日本が研究や対策では後れてしまう可能性が大きいかと思います。先ほどのEUの希少疾 病対策では、ある国会議員の方が、国立国会図書館にお願いして調べてもらったものを、私ども が一部利用させてもらっているのですが、1999年から、遺伝病を含む希少疾病に関するコミュニ ティアクションプログラムというものをつくられた。それで、2003年から2008年にEU公衆衛生 プログラムをつくられ、2008年から2013年度で新公衆衛生プログラムをつくられた。そのプログ ラムの中身は大きく6つに分かれまして、一つは、既存の希少疾病情報ネットワークを利用した 情報交換、2番目が患者、ボランティア、専門家による情報交換。これには必ず、まず当事者で ある患者が出てくる、ボランティアが出てくる、そして専門家が出てくる。日本は、ともすれば 有識者懇談会という形で、専門家だけで情報交換をしていこうとしますが、そうではなくて、ま ずここに当事者である患者、ボランティアを入れて、総合的に進めていこうではないかという姿 勢を我々は大変評価しております。  3番目に、保健指標の定義づけと疫学データの更新。4番目に、第2回欧州希少疾病会議を20 07年に開催したそうです。5番目に、欧州希少疾病レファレンスセンターの構想。これがどうい う具合になっていくのかは調べてみたいと思っています。  そして、6番目に「患者団体への支援」とあります。日本では、患者団体というのは、自分た ちが会費を出して、病気を持ちながら、仕事を持ちながら、家庭を持ちながら、その中で、何と か細々とやってきている、かなり無理をしてやってきているというのが実態ですが、これは、こ のプログラムとして支援をしていくことを明確にうたっているところが、さすがヨーロッパかと 思います。  ちなみに、OECD諸国の医療費負担の事例としてここに幾つか挙げました。すべての国が医 療費が無料ではありませんが、少なくとも、かなり低額であろうと思います。  ポルトガルでは、通院・入院・薬剤の負担がありません。  ベルギーも同じです。  カナダでは、通院・入院負担がなくて、一部の薬剤のみ負担があります。  オーストリアも同じくですが、薬代の負担はあるが、低所得者は免除されます。  イギリスは、通院・入院・薬剤の負担はありませんが、児童・妊婦・高齢者・低所得者は負担 免除ということで、多分、保険の方が免除になるのだと思います。  デンマークでは、通院・入院の負担なし。薬が3〜5割負担ですが、労働者は負担免除です。 これは余り詳しくは調べていないのですが、負担があった場合でも、後ほど還付されるという制 度がありますので、そこのところも調べてまいりたいと思います。  ギリシャでは、通院・入院負担がなく、薬剤が2.5割負担。  スペインも同じくで、薬剤が4割負担。慢性の疾患と指定される疾患は1割負担。年金者・施 設入所者の負担は免除。  イタリアも同じですが、検査の一部負担がある場合があります。薬の一部負担、低所得者・障 害者は負担免除で、保険料も負担がありません。  オランダでは、通院・入院の負担がなく、長期入院と形成の場合の一部負担はありますが、薬 剤の負担はなし。それから、1年を超える入院については全く負担なし。  ドイツでは、通院・入院負担なしで、入院が14日までが定額負担で、以降はなし。薬剤定額負 担、低所得者・障害者は負担免除で保険料も免除されます。18歳未満の保険料は負担がありませ ん。  アイルランドでは、通院・入院の負担なし。入院定額負担、薬剤の定額負担、労働者は保険料 負担なし。  フランスでは、通院の75%が償還されます。入院は20%。これは30日以内だけで、31日を超 えると負担がなくなります。プラス、薬剤は償還されます。長期入院と指定する30疾病は負担が ない。  このようなことが、法研で出されている「欧米諸国の医療保障」というものを見て調べました。 詳しくはこれにもっとたくさん載っていますので、こういうことも研究してまいりたいと思いま す。  その上で難病対策というものを考えていただければありがたいかと思いますし、長くこの難病 対策が続く必要もありますし、また、多くの患者さんの今のいろいろな苦しみを考えると、5年、 10年後に結論を出すという話ではなくて、今、できるだけ急いでいただきたいし、急にはできな いでしょうから、少なくとも、その論議をしている間、現行の難病対策を拡充し、多くの患者さ んの負担を少なくし、研究も進めていただきたいというお願いを、私どもはこれから各方面にし ていくということになりましたので、今後ともよろしくお願いいたします。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  大変まとまったお話をしていただきました。恐らく、皆さん方からいろいろな御意見もあろう かと思いますが、まずは御質問をいただきたいと思います。話があった内容で、ここが少しわか りにくいからもう一回というような、そういう御質問をまずいただきたいと思いますが、いかが でしょうか。  大体おわかりいただけましたでしょうか。  それでは、御意見をいただくことにいたしましょうか。あるいは、途中で思いつかれて質問に なっても構いませんから、どうぞ。  山本委員   今、伊藤委員がおっしゃったことについては、全くそのとおりだと思いますが、少し立場を変 えて、医療側というか、特に私は免疫が関係する難病の担当で、自己免疫疾患とかリウマチ性疾 患などですので、神経や血液などについては必ずしも適切ではないかもしれませんが、そこにつ いての立場から少しお話させていただきます。  今、伊藤委員がおっしゃったことはもちろんそうですが、医療側から見ると、医療崩壊という 言葉で言われているとおり、今、医療システムがかなり危機的な状態で、そのために、実際には 病院財政の健全化とか、その辺がかなり強く病院の各診療医にかかってきています。その中で、 病院の収入をよくするために今どういうことが行われているかというと、数をたくさんこなすと いうと語弊があるかもしれませんが、ルーチンというとおかしいかもしれませんが、そういう病 気を診る医師がかなり尊重されて、そういう医師の数が増えています。難病の患者さんというの は慢性疾患が多いので、必ずしも病院の収益にならないと言われる病院のトップもいらっしゃる くらいです。そうすると、そういう部門の士気がまず落ちます。何を言いたいかというと、小児 科や産婦人科、救急だけではないぞと。難病を担当している医師も、今、結構疲弊しているとい うことです。  前回も私が申し上げたと思いますが、難病研究を推進する若い医師が少し減っているというこ ともそうですが、それよりも前に、患者さんを拝見する医師数が増えていく状況ではないことも 知っていただきたいと思います。  もう少し端的に言いますと、今、免疫内科やリウマチ科、リウマチ膠原病科などの科が、10年 前に増えたのですが、それ以降、機関病院、各国立大学病院、私立大学病院などで、もうそれ以 上増えていないです。恐らく、減っていく方向にあるのではないかと思います。それは要するに、 病院の収益に必ずしも貢献しないからということだと思います。  そういう現状を、ここで全部解決しろというのは難しいですが、今の日本の現状として、こう いうところにも問題があることを認識していただきたいと思います。  以上です。  金澤委員長   ありがとうございました。御自分の班の御経験からのお話をいただきました。  班を率いたことがある方の御意見は、ほかにいかがでしょうか。木村先生、葛原先生などは班 を率いたことがおありなのではないでしょうか。  葛原委員   葛原です。私は、神経変性疾患の研究班ということで、神経難病全体を束ねた班に6年間携わ っていましたが、その経験と、今、伊藤委員がおっしゃったことも含めて一つ、二つ申し上げま す。  まず、特定の病気だけが厚遇されて、ほかは無視されていることを、私も実感いたしました。 特定疾患になっているがゆえに、例えば研究費という名目で、実は医療費が9割を占めていると 思いますが、そういう状況で、そういう方に関しては医療費が免除になるけれども、症状はよく 似ていてもっと重いけど特定疾患には指定されていないということで、全く医療費免除の対象に ならない。場合によっては、似ているから別の病名で何とか救い上げたというようなことも皆さ んしていらっしゃると思います。最近、特定疾患数はだんだん増えてきてはいますが、やはり特 定の病気だけを難病に指定することは、病気の中に差別をつくるという点で私は反対で、その点 では伊藤委員の御意見に全面的に賛成いたします。  それから、こういう難病の医療費を医療保険の中に組み込む必要性も、そのとおりだと思いま す。例えば、難病の対策費が100億円出ているとすると、実際の研究費は10億円くらいで、90 億円は医療費の方に流れているのが現状だと思いますので、研究対策といっても、全額が真の研 究費になっているわけではないということがあると思います。ですから、本当に研究費を研究費 として使うためには、難病の対策費というか、研究費と医療費がごっちゃになるような形のこと は望ましくないと思います。  そうしますと、最後に伊藤委員がおっしゃっていたような、では、医療費をどうするかという ことにかかわるわけで、私は最近、難病と、難病ではない病気を診ていると、病気によって差別 するというのはおかしいのではないかという気もしました。別に難病ではなくても、きちんとし た対応を、今後は日本の医療の仕組み中で考えるべきであると思います。  最後に資料として出されましたが、EUやカナダを見ると、例えば40代の人が病気になっても 医療費の負担はないわけですね。別に難病だけではないわけです。国民は、誰であっても、何歳 であっても、どんな病気であっても、病気になれば、ヨーロッパやカナダでは、自己負担なしに 治療を受けられているわけで、そういう制度が同じくらいの経済力を持っている日本でつくれな いはずはないと思います。  ただし、その場合には、医療を受ける側も、特に、私などのように医療者の側から見ると、患 者さんの病院や医療資源の使い方を日本はもう一度考えなければいけない面があると思います。 そこに取り組まない限りは医療崩壊は進む一方だろうと思います。  以上です。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  事実関係だけ、課長からどうぞ。  疾病対策課長   事実関係だけ申し上げますと、今、葛原委員から予算の話がありましたが、実際のピュアな研 究費で、今年度から100億円になりました。去年までは24億数千万円でしたが、今年から100億円 がピュアな研究費です。医療費ではありません。医療費はもともと国費で230億円ほど出ており ます。更にその倍、つまり700億円近くが医療費として、我が国では難病対策として使われてお ります。ですから、そう考えますと、葛原委員の比はわりと近くて、研究費1に対して医療費が 7という感じになろうかと思います。  葛原委員   私が言ったのは、100億円という数字のために混同されたかもしれませんが、私が特定疾患と いうか、神経難病の研究班に携わっていたころは、研究費とはいっても、その7割か8割が医療 費として使われていて、研究費はほんの一握りだったということで、今回の100億円とは全く別 ですので、誤解を与えましたら、そういうことです。  金澤委員長   ありがとうございます。  では、木村委員、どうぞ。  木村委員   ありがとうございます。今まで例数の極めて限られた難病をきちんと研究していこうというこ とで、患者の診療自己負担金を支援することによって、稀な疾患を、都道府県を越えて集め、研 究するということがこれまでは一つの目標だったと思います。ですから、その制度については大 きな役割があったと思うし、大きな成果を得たと思います。  ただ、伊藤委員からもお話がありましたが、これから難病対策というもの、あるいは難病の研 究の対策をそのままずっと持っていっていいかどうかということを、この審議会というか、この 難病対策委員会の中でもう少し検討することが必要だと考えております。患者さんの負担を軽減 する、あるいは、それを全くなくするということは、研究費として大切かもしれないけど、今、 葛原委員がおっしゃったように、別の意味で、医療費で分担できるもの、あるいは、それ以外の 生活支援対策の中で分担できるものがあると思います。このままデータベースを集めるために、 単なる一つの疾患、あるいは、限られた疾患を自己負担を外して集めていくことは、もうそろそ ろ考え方を変える必要があるのではないかという感じを抱いております。  もう一つは、医師不足というか、特に難病をよく診てくれる先生が非常に少ないというお話、 これは私たちも切実に感じております。ただ、これは、すぐに、良い対策はないと思います。や はり、今我々が持っている医療資源、専門医の数も含めて、これをどう有機的に活用していくか ということが大切であって、意図的に難病を診る機会を医師の中につくっていくとか、あるいは、 患者さんから要望があった場合、それにいかに応えられるような社会のシステムをつくっていく か、そういうことを研究の中で進めていって、今ある資源を最大限に利用して取り組むことが一 番ではないかと思います。これから専門の医師がどんどん増えるということはなかなか難しいこ とでしょうし、対策としても非常に難しいと思います。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  難病という場での話ではありますが、医療全体の問題でもあるわけで、その辺をどうぞ含めて お話をいただいて結構だと思います。  水田委員、どうぞ。  水田委員   私は初めてなので、どういうことなのかわからないので、私が感じていることだけを言わせて いただきます。  私は小児外科医ですので、難病というと、子どもの場合は胆道閉鎖症のことでずっと悩んでい ました。ですから、おっしゃるように、18歳まで、それから突然切られてしまって、その後は保 険が全然きかないというような状況です。そういう方に自己負担しなさいといっても、就職先も ありません。就職することもできないというのが現状でした。  もう一つは、普通の人が入れる生命保険などに加入することもできない。そういう病気の人は 入れないという状況で、それに対しては、親御さんたちが、胆道閉鎖症の親の会の人たちが一緒 になって、その人たちだけのための保険を、生命保険会社と話してつくったという経緯もありま す。ただし、今は、胆道閉鎖症の方々も、簡易職とか、そういうことができるようになって、お 金の面では大変ですが、子どもも産めるし、そういう普通の日常生活もできるようになってきて、 だんだんよくはなってきています。  伊藤先生は、37年間のいろいろな経過があるとおっしゃいましたが、今までどれくらいそうい う研究費を出したとか、そういう事実のファクトだけではなくて、それでどうなったかというよ うなデータをきちんとお示しいただけたらいいなと思います。そして、難病と言われるものも今 はどんどん変わってきているとおっしゃいましたが、確かにそうだと思います。今までは、難病 に対して、少し隠すような過程でもあったと思いますが、今はそうではなくて、それを出して、 社会的にみんなが受け入れるようなものになってこなければいけないわけですので、それでどう 変わってきたかということを示していただかないと、社会の方が受け入れられないのではないか と思います。それから、医学教育の中でも、そういう患者さんたちを接する機会がどんどん増え ていくのではないかと思います。そうすると、若いころから医学生がそういう病気を受け入れて、 そういう人たちのことを診ようと思うようになっていくのではないかと思います。有名なイガタ 先生の、「治せないけど、一緒にいやしていくことはできる」というお言葉がありましたが、そ ういう治療ができるようなお医者さんに教育することも大事ではないかと思っております。  今日は、良いお話でした。どうもありがとうございました。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。  小池委員   伊藤委員のこの難病対策の提案はなかなかわかりやすく、私もいろいろな面で参考になりまし た。今回の新しい100億円、こういう財政状況の下で一挙に4倍にするというのは一般の予算ル ールから見たときにまずありえないことで、大臣の強力なリーダーシップでされたのだと思いま すが、限られた財源の中で、恐らく、このために、ほかに被害を被った予算や事業があると思い ます。どこかを削らない限りは、こういう予算はなかなかできないという時代の中で、よくつく られたと思います。しかし、ある年に一挙に増やしたからといって、研究が急速に進むことは考 えられません。むしろ、多くのところはたくさんもらって、これをどう使うかということに頭を 悩ませるような結果になるだろうと思います。  先ほどから何人かの方から出ているように、こういう地道な研究に携わる研究者がなかなかい ない中で、どのように進めていくかということは大変なことだと思います。何年かに一回、非常 に進んだところは何らかの形で評価するような仕組みも是非つくって、せっかくついた予算が効 果的に使われるような仕組みを考えてほしいということが第1点です。  それから、自己負担の問題や、医療保障の問題を含めて社会保障全体が日本の場合はおかしく なっていることは確かで、それを再構築することが今回の選挙の争点にもなっています。とにか く、高齢化の進展とともに、健保組合をはじめいろいろなところが医療費の負担に耐えかねて、 今まで、いろいろな小手先の改革も含めて行われてきて、自己負担も2割が3割になって、恐ら く、保険料を払っておきながら、3割というのは限度だと思います。保険料を払っているのに、 これ以上、医療機関にかかったら4割とか5割の自己負担をしなければならないというのであれ ば、医療保障の名に値しないものになると思います。むしろ、3割負担を何とかもう少し軽減し てほしい。でも、それは基本的に、高齢化が進んでいく中で、トータルとして医療費をどういう 形でほかの社会保障や他の政策に使われる経費を、社会保障や医療の中に配分していくかという のは政治の問題であり、国民の選択だと思います。  いずれにしても、自己負担の問題は、難病の問題だけを取り上げて議論しても、そこは今いろ いろと議論されていて、我が国の医療保障をどういう形で設計することがいいのか、そのために 国民は、保険料なり消費税なり、お金がかかることは間違いないわけですから、その負担の財源 をどう確保するのかという議論なしに、もっと自己負担を減らせとか――公費負担医療という政 策医療で自己負担を軽減すると、限られた財源の中ですから公平性に欠けることになるのは確か だと思います。先ほどもありましたように、もっと大変な病気だけど公費負担医療の対象になっ ていない病気はたくさんあって、なぜ自分たちはこんな大変な思いをしているのに公費負担医療 の対象としての難病対策に入らないのかという議論は当然あると思います。そういう政策は公平 であるべきというのが一番ですが、それをどういう形で公費負担で担うのか、医療保険の中に取 り込むのか、医療保険の中に、特定疾病、高額医療費の負担を軽減する措置があるわけですが、 そこで対応していくかというのは、何が公平化ということをきちんと議論して入れていかないと、 いろいろなところで不満が出てくるだろうと思います。  以上です。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  それでは、内田委員、どうぞ。  内田委員   伊藤委員の御発言は大変すばらしいおまとめをいただいて、現状から今後の具体的な対策まで 含めてお話をいただいたと思います。  座長にお願いしたいのですが、ここで、今の医療崩壊とか、これからの日本の医療の先行きを 議論するのか、あるいは、今日はそういう場でよろしいのかどうかということをお示しいただけ ればと思います。  金澤委員長   先生のお話が始まる前に、ちょっとそこだけ。  先ほども少し申しましたが、全体の医療の行き先というか、イメージというか、それ抜きで語 れない部分だと思います。ですから、先生方の御意見の中心は難病に置いていただきたい。ただ し、ほかの部分の議論は避けなくても結構ですということが私のメッセージです。  どうぞ。  内田委員   私も医師会という立場で現場の先生方を代表するところでこの会議に参加させていただいてお ります。  今、いろいろな先生からの御指摘があったように、医療崩壊といいますか、医療現場では問題 が大きいということで、これはやはり、難病対策も含めて小手先の対応だけでは到底解決できる レベルではないと思っています。具体的には、医療制度も、医療保険制度も、医学の医師教育で も非常に厳しいことになっていると思っています。疲弊が限界に達してきているのではないかと。  保険制度の面で言えば、やはり財源確保の問題、自己負担が大きくなっているという、それに 伴う問題が大きいと思っていますし、これが、難病という、医療費もかかれば、生涯を通じて医 療を受けなければいけないという立場の方々に非常に厳しいものを強いているという現状がある かと思います。  今日お示しいただいたのは、欧米の制度がかなり進んでいて、自己負担も軽減されているし、 いろいろなところでシステムが整っているというお示しがありました。日本の場合は、限られた 財源の中での財政中立という立場から医療政策が常に推し進められてきました。今回の選挙も、 そこが争点になっているとはいえ、消費税の問題については先送りされています。新たな確固た る明確な財源の提示もないという中で話が進んでいると思っています。そこのところが担保され ればかなりの部分が解決されていくわけです。  この間、医師の不足や偏在についても様々な施策がとられています。また、教育・研究体制に ついては、先ほどお話がありましたように、100億円ということで大幅な増額があったというこ とで、今後、大きくその辺が進むのかなと思っていますが、一方では、基礎研究や、こういう希 少疾患に対する取組は、現場ではなかなか取り組む人がいないという不足の状態が続いているし、 そのうちに、指導する側も疲弊してくるのではないかということを非常に危惧しております。こ れは、大変だと言われている科はみんなそうです。救急にしても、外科にしても、余り話題にな っていなかったようなところでもそういう状況が進んできているということは、非常に深刻な状 況であると思っています。  今日のお話を伺っても、何よりも最初に解決すべきは、この問題の解決には何が必要なのかと いうことをしっかりとみんなで議論することが一番大事なことで、国民の皆さんにそこを認識し てもらう努力を、政治家を含めてしなければいけないだろうということを一番痛切に感じていま す。そこを避けてどうして日本の将来があるのかという気がしますし、医療の将来があるのかと いう気がしています。  私どもも、微力ながら、先生方と力をあわせてその辺のところの議論を進め、また、働きかけ るところには働きかけていかなければいけないと思っておりますので、この委員会の中で、そう いう何からの方向性を示すことができれば非常に良い機会になるかなと思っています。  金澤委員長   ありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。  佐藤委員   伊藤さんがまとめてくださったことはそのとおりですが、現場で私が感じていることは、先ほ ど水田先生がおっしゃられた胆道閉鎖症がありましたけど、37年間患者を見てまいりまして、自 己コントロールができるようになった疾患もたくさんあります。でも、高齢化社会になって、37 年という歳月は、10歳で発病したら47歳になっているわけで、今度は親の介護が大変です。親の 介護が大変になって、結婚していても、していなくても、親の面倒を見るときに、難病患者で、 何とか自己コントロールしながら見ているときに、今度は介護保険制度に関係してきます。家族 がいるから、これまでは手が足りないからということで介護サービスが受けられないとか、認定 を軽くされるとか、それは各地域によってそれぞれ異なりますが、過疎地に行けば行くほど大変 です。同時に、病院に通院することが、例えば御主人であったら奥さんが車を運転できる間は行 っていたけど、家で親の介護をしながら病院に連れていけないと。ましてや、医療がどんどん崩 壊していく中で、お医者さんがいなくなる。そういう問題が現実にあります。  ですから、変わってきたのは、昔は患者であった人が今は介護者の立場になって、それで倒れ てしまって、一家何人もの患者となり、日常生活が緊迫した状況にあるということです。私は、 新聞で一家心中の記事を見るたびに住所を調べて、あの人じゃないかしらと思うくらい緊張して います。ですから、難病と定められた病気だけを見るのではなくて、日本のこれからの医療、昔 もありましたけど、ゆりかごから墓場まで、医療や介護、暮らしをどう支えていくのか、系統的 施策が必要だと思います。  きのう、NHKだったと思いますが、がんの患者さんが、働こうにも職場が差別をすると言っ ていましたが、もう一つ雇用者側から見ると、例えば私たちのような小さな患者会であっても、 休まれる人の給料まで確保できません。どんなに気持ちがあっても、財政的にできません。それ は、一般の零細企業であってもそうだと思います。病気になって、いつ治るかわからない人にず っと給料を払い続けて、なおかつもう一人採用する事はできない。そこに触れない、NHKの放 送は一方的な言い方でした。常にマスコミは一方的な報道をしますが、雇用者側の問題もあると 思います。  そういうことも含めて、私は、これからの難病対策は、国民の医療の中で他の慢性疾患も含め、 社会福祉法の中でどこに位置付けていくのか再考の時だと思います。今は、がんの患者さんも、 この前まで4人に一人だと思っていたら、きのうは2人に一人とおっしゃっていましたから。そ れに、糖尿病患者が増える、何が増えるという中で、おかげさまで医学研究が進んで難病患者も、 小児慢性疾患も長生きするようになりましたけど、その後に来るのは介護です。しかし実状に反 し、療養型ベッドはどんどん減らされていきましたし。そういうものを見直して、どこを減らさ れたらどこにひずみが及んだか、それをもっときちんと、難病なら難病の場合は、どこにこの改 革の中で及んだか、そういうデータをきちんと出していただいて、今後の日本の社会保障と医療 はどうあるべきかを考えるステップにしていただきたいと思います。  金澤委員長   ありがとうございました。  ほかにどうぞ。  本田委員   私は、在宅の方で療養者の方々の支援をしている立場で少しお話しさせていただきたいと思い ます。  佐藤委員がおっしゃったように、療養型がなくなってくる中で、重症の患者さん、特に難病の 患者さんは行き場がなくなってくるということで、支援をしていく立場で考えると、医療費の負 担のことをありますが、医療として患者さんが払う分だけではなくて、生活をしていく中で負担 していかなければいけない部分が出てきて、介護保険や支援法などいろいろありますが、それが いくら整っても、実際に働く者がいなくなってきているのが現状で、訪問看護ステーションは、 当初の予定の半分までしか達成していません。9,000件と言っていましたが、今のところは5,000 件までしかありませんし、スタッフがどんどん辞めていくという状況にあります。  どういうところが負担かというと、やはり重症の患者さんが多くなってきている中で、いつ呼 び出されるかわからないということがありますので、そういうところもかなり負担だと思います が、負担があるところには、それなりの生活ができるようなシステムをつくっていくというとこ ろでの生活を保障するところがあれば、私たちもそれなりに育成していく気持ちになりますが、 そこまでなかなか行かないというのが現状です。  これからどんどん、施設から在宅という形になっていくと思いますので、その辺りのところの 受け皿としての仕組みをつくっていくことも、今後、原因を解明する研究だけではなくて、仕組 みづくりの研究も予算付けられた部分の中から少しは取り組んでいくことも必要ではないかと考 えております。  以上です。  金澤委員長   なるほどね。どうもありがとうございました。  ほかに。益子さん、どうぞ。  益子委員   私は、保健所長会の代表という形で出席していますので、保健所のお話をさせていただきたい と思います。  少しずれてしまうかもしれませんが、小児特定の話が出たので。多分、6〜7年前だと思いま すが、小児特定疾患の見直しがあって、かなり厳しくなってしまいました。私は今も審査をして いますが、例えば腎不全なども、クレアチンがこのくらいで、こうで、ああでと。ひどくならな いと申請が上げられないことになってしまっていますので、将来ある子どもが、予防に重点を置 いて考えている保健所としては非常につらい審査ですし、特に、将来のある子どもたちの芽をつ むようなことはどうなのでしょうか。常々、審査というか、そんなに厳しくしなければいけない のかというようなことを思っています。臨床の先生も、そういうところはかなり工夫して診断書 を書いていらっしゃるのが見えたりしている現状がありますので、考えていただければと思いま す。  難病からそれてしまいましたが。  金澤委員長   滅多なところでは余り言えませんから、どうぞおっしゃってください。大事なことですから。  ほかに御意見ありませんか。  佐藤委員   追加で一言だけ。  ヨーロッパ型のものが良い、海外の方が良いということが、必ずどこへ行ってもデータが出ま すが、日本とは税金が全く違うということを常に書いてほしいと思います。それを知らない人が 読むと、なぜ日本はと思ってしまう。だから、負担と給付を列記すべきだと思います。一方的な 情報だけでは、知らない人、今日、病気になった人は、オランダの税金がいくらか、スウェーデ ンの税金がいくらかなんてわからないで、自分の医療費を無料にしてくれと言うことになるんで すね。それは、日本国民全体のためにとってプラスにならないと思います。  金澤委員長   大変大事なポイントをありがとうございました。  伊藤さん、どうぞ。  伊藤委員   負担のことでは必ずそういう話になりますが、例えば、日本では、直接の税金、所 得税のほかに、例えば教育費がかかるとか、そのほかに私的に生命保険にかからなければならな いとか、医療保険も別にかかるとか、様々な負担があって、あるいは、病院でも、保険で診るほ かに自己負担があったりして、保険の仕組み外の負担もあったり、直接税のほかにたくさんの税 金――ヨーロッパでは税金の中に入っているものが、日本では税金とは言わない形で徴収されて いるものがたくさんあると思います。医療費の自己負担もその例だと思います。  ヨーロッパの場合は、税金以外に、例えば医療費の自己負担を徴収するとか、教育費がかかる とか、様々なことでの徴収をしていませんから、それを全部あわせて国民がどういう負担をして いるのかということが大事なのであって、日本は、税金のことを言わないで、ヨーロッパの特に 社会給付の良い面だけを言っているのは少し違うと思います。税金というのは、直接税だけでは なくて、様々な、自分たちが生きていくための――年金保険料もそうですね。だから、向こうは 税金として集めた中で医療保険も年金も賄うわけですが、日本は、健康保険は保険料、年金保険 料も保険、そして税金となっていますから、直接の税金と住民税のようなものと年金の保険料と 健康保険料と全部をあわせたら、日本もヨーロッパより多いくらいの税金を納めていることにな るという計算が大事かと思います。  内田委員   今の話でよろしいですか。  金澤委員長   どうぞ。  内田委員   患者さんの負担ということを考えると、自助、共助、公助というものがあります。 公助というのは、税金をどれだけ注ぎ込むかという話ですね。共助は保険制度です。自助という のは自己負担の部分に当たります。日本の場合は、この自己負担の割合が余りにも多い。社会的 に担保されていない負担が多すぎるので、患者さんという弱い立場の人の負担が大きくなってい るという問題があるということをおっしゃっているのだと思います。  金澤委員長   ありがとうございました。  ほかに。  佐藤委員   伊藤さんがおっしゃったことは、私はわかっていますけど、結局、国民に納得してもらうとい うことだったら、今、伊藤さんがおっしゃったようなことを全部付記しなければいけない。それ は政治問題だと思います。だから、それこそ今度選挙でどうなるのか、良い話がたくさん出てい ますが、そういうことも含めて、先ほど申し上げたように、国民全体の社会保障制度をどうする のかという中で位置付けて考えていだきたいということでした。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  では、南委員、どうぞ。  南委員   皆さんがそれぞれ御意見をおっしゃったので、私も。まとまらないのですが、今日の伊藤さん のお話で、37年というものがまとまって理解できました。ありがとうございました。恐らく、難 病対策として行政が始めた当時と今とでは、社会の事情が非常に違うということもありますでし ょうし、対策として行ってきたことの結果、先ほど水田先生もおっしゃいましたが、克服された 部分もあり、また、課題として残った部分もあるでしょうから、そこの整理といいますか、大雑 把でもいいのですが、行政としてどう対応して、どうなったのかという大くくりの整理が必要な のでは、という気がします。  その上でのことですが、いわゆる難病と、いわゆるではなく本当の難病、先ほど伊藤さんもお っしゃいましたが、制度が対象とする難病として指定されたものと、たとえ治療法は確立されて いても難易度の高い病気もあると思いますから、そうした本当の意味での難病と、それから、治 療法が確立され、ある程度一般医療の対象になって回復の途もきちんとある病気と、幾つかに区 分けできるだろうと思います。いずれも、患者さんが生活を障害され、困っているという点では、 確かに、病気の中に序列をつけるべきではないということはそのとおりであると思いますが、こ こで4倍もの増額がされたのはどういうことかというと、恐らくですが、治療法が確立されてい ない難しい病気をどうにかしようということではないかと思われます。そこは、増額された意図 というか、趣旨をきちんとくむような対策をとっていく必要があるだろうと思います。余りそれ を無視して、大雑把な使われ方をすると、それだけ増やしたことの本意に反するのではないかと 思います。  その上で、最終的に給付と負担という話になるのだろうと思いますが、確かに、日本の国民が 負担ということについて意識が乏しいことは間違いと思います。2割負担とか3割負担というけ れども、結局、残りの8割、7割もすべて保険料や税金の形で、国民が納めたものであるわけで すから、全部が国民の負担であるわけです。それをどう使うかという議論、つまり限られた公的 医療費をどのように配分するのかという議論が必要だと思います。  外国との比較の場合にも、ここでは非常にすっきりと出ていますが、保険が給付する部分の医 療は、例えばイギリスなどでも非常に制限されていると聞きます。例えば、何歳か以上の方の透 析は保険医療では一切行わないというようなことです。そういう現実があるわけですから、そこ は、佐藤さんがおっしゃるように、全部を透明にして国民に見せていく必要があるだろうと思い ます。  金澤委員長   どうもありがとうございました。大変大事な御指摘をいただきました。  課長、かつて、今まで37年間にわたって――当時は35年くらいではなかったかと思いますが、 患者さんの御協力の下に、いわゆる難病について皆さんが研究をしてきた成果がどうであったか のまとめをある程度したはずですよね。これはなかなか難しくて、卒業となると、外れるのかと。 難病指定が外されてしまうのかというような御懸念もあって、なかなかすっきりした形にはなり にくかったことを覚えています。  その辺に関して、何かコメントがありますか。  疾病対策課長   難病研究につきましては、特に国家予算を多く使うということで、私どももあちこちで説明し なければいけない機会が随分あります。まさに金澤委員がおっしゃいましたように、全体的な話 ではまとめにくいということがあります。それはなぜかというと、医療水準が上がっているので、 難病の研究をしたからそういうことが派生したのかどうかがわからないではないかという御指摘 は多々あります。  ただ、私どもは、先生方からいろいろ教えていただく中で、非常に画期的といいましょうか、 そういう治療法が幾つか開発されていて、例えば再生不良性貧血のサイトカイン療法はこの研究 費の中から出てきたものです。あと、ALSのメチルコバラミンの投与、あるいは、間質性肺炎 のサルコイドーシスなど、今では当たり前なステロイド療法のようなものも、すべてこの研究費 の中から出ております。  更に、難病研究そのものは価値がないのではないかという方も当然いらっしゃいます。この100 億円を獲得する過程でも非常に厳しい査定を受けて、プロの研究者の方から受けましたけど、そ の中でも私どもが申し上げているのは、例えば、今、肝臓の病気でよく使われているペグインタ ーフェロンのペグ技術というのは、インターフェロンを長期に体の中で効果的にもたせる技術で すが、これは難病研究の、ゴーシェ病という稀な疾患がありますが、その中から開発されており ますので、そういう意味では、難病研究というのは非常に価値があって、もちろん経済的にも貢 献するし、サイエンスにも貢献するということは、私どもはずっと言っております。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  ほかに御意見ございますか。  内田委員   先ほどから、財源の話と、今、医療の高度化という話もありましたが、この10年、医療費はほ とんど増えていません。これは、診療報酬が据え置きからダウンで、おまけに自己負担も上がっ ていますので、むしろ、公費負担の部分は多少減っているのではないかと思います。一方では、 医療の高度化と高齢化ということで、そちらにかかる費用は着実に増えています。実際には、こ れは、放っておくと、年間3%ほど増えると言われていますので、この10年の医療費の据え置き で、実質的には30%上乗せされるところが乗っていないと。従来の30兆円から、本来は40兆円く らいになっているべきところが、30兆円のままで日本の総医療費は推移しているという状況にあ ります。これが今の医療の現状、様々な課題を抱えている医療の現状をもたらしたと思っていま す。  それから、日本の医療のすばらしいところは、先ほど、南委員から、疾患に対する給付の話が ありましたが、ほとんどの効果が認められて、安全性が担保された医療に関しては保険に組み込 まれるこのシステムは本当にすばらしいものだと思っています。これが外されたとき、保険に乗 らない、要するに、税金や保険では助けてもらえないような医療が増えてくると、これは患者さ んにとって非常に厳しい話になってくると思います。その点を民間保険に持っていくというか、 これはオフィシャルではないので余り記録には残していただきたくないのですが、ある民間保険 のマネジメントに携わっている方が、日本の民間医療保険の市場は約4兆5,000億円で、そのう ち保険にかかっている人が病気になったときに戻されるお金は9,000億円であると。利益と内部 留保で2兆7,000億円ということを言っていました。残りの9,000億円は、管理費というか、会 社の運営に使うお金だと。要するに、2割しか戻っていない。これを考えると、国民皆保険制度 がいかにすぐれているか、よく御理解いただけると思います。  要するに、混合診療になり、民間保険を導入したときにはそういう状況になるんですよ、そう でない医療制度を望むのであれば、国民は、自分が病気で困ったときにどのくらい戻されてくる のか、保障されるのかということを考えて、皆保険制度の自己負担をもう少し上げるということ でも、保険料を上げる、税金を上げるということであっても、もう少しはそこのところが納得さ れるのではないかと思っています。  金澤委員長   大変大事な御指摘をいただきました。ありがとうございました。  伊藤委員   追加です。これは患者側の実感ですが、3割の自己負担といっても、例えば入院の場合などで も、制度が始まったころは、入院の食事代もすべて保険給付の対象でした。今は、食事代や居住 コストなどの様々なものを除いてネットで3割ですから、あわせると5割負担くらいになってい るのではないか。こういう現実もあります。  それから、病院にかかる経費も患者さんを非常に圧迫している。それは、難病対策というだけ ではなくて、他の制度の様々な支援も同時に考えていかなければ難しくて、難病対策イコール治 療・研究のことだけではないだろうということも、できるだけ議論していただきたいと思います。  それから、医療費といっても、今は何とか、食品会社の支援で安くなっているようですが、患 者さんの訴えを聞く中では、例えばフェニールケトンのような方々の特殊ミルクは、あれは薬か と。だけど、そういうものを摂らないと生きていくことができないとすれば、それは治療なのか、 単なる食事なのかということも整理しなければならないでしょう。それから、T型糖尿病のお子 さんたちのように、毎日注射をしなければならない。それも生きていくためにはずっと必要で、 生涯続けなければならないにもかかわらず、それは治療としてなのか、生活を支援するための福 祉としても考えられないのかということも考えていかなければならない。  そういうこともあわせて、私たちは、医療費や自己負担というものを考えなければならないと 思っています。部分ごとに切り離して、医療保険を対象とした自己負担というだけではなくて、 様々な負担と同時に、稼働能力の減少があるわけですから、それもあわせると負担感は何倍も大 きくなっていく。しかも、将来への希望があるかないかということも、生きていく上では大きな 要素だと思いますが、それがあるのか、ないのかということも考えなければならない。そういう 意味で、総合的な難病対策を考えときには、土俵を一つ大きくしなければいけないのではないか ということも、私どもはお願いしたいところです。  質問が一つあります。100億円というのは、あれはそのままずっと続くのでしょうか。  金澤委員長   それは、これから話が出てきますから。  ほかにいかがでしょうか。  山本委員   先ほど、保険制度の良い面というか、これは重要だと言われたことは、まさしくそうだと思い ます。ただ、その中の谷間というか、難病の患者さんが本来受けるべき治療薬が、残念ながら、 我が国は世界の後進国になっているということの現状は、やはり指摘したいと思います。  疾病対策課の方々も今がんばって情報収集されていると思いますが、日本以外の東南アジアの 国々も全部使える薬が、日本だけは使えないという薬が結構あります。そういうものは、保険の 一つの谷間です。我が国は今まで、保険の審査制度は、アジアでは非常に良いものを持っていた ということですが、それが今は裏目に出て、余りにもコンサバティブになりすぎて、厳しすぎて、 使える薬が使えないという現状が、この難病にもあることは指摘しておきたいと思います。  内田委員   それは、医薬品の審査・承認の話ですね。  山本委員   そうですが、難病を対象としたものがあるということです。  金澤委員長   どうもありがとうございました。まだまだ議論がいろいろとあることはよくわかりますが、御 報告事項がありますので、次に移らせていただきます。  議題2ですが、「その他」です。事務局から、少し長めの報告事項がありますので、どうぞ聞 いてください。  中田課長補佐   それでは、事務局から報告事項がございます。  参考資料1から6までありますので、あわせて御説明させていただきたいと思います。  まず、お手元の参考資料1を御覧いただきたいと思います。こちらは、「難治性疾患克服研究 事業の概要」です。既に御存知かと思いますが、原因は不明で治療法が確立していない難病の中 でも、積極的に研究を推進する必要がある疾患につきまして、臨床調査研究分野、研究奨励分野、 横断的基盤研究分野、重点研究分野からなる研究を行っております。  研究内容につきましては、臨床調査研究分野は、ここにある@からCを満たす疾患について研 究しているところです。また、(2)ですが、平成21年度から創設した研究奨励分野で、(1) の臨床調査研究分野に含まれないものであって、その実態把握、診断基準の作成、疾患原因の確 立等を目指し、原則1年として研究を実施しております。  (3)ですが、「横断的基盤研究分野」については、横断的な病因・病態解明に関する研究、 社会医学的な研究を行うとともに、今年度から、生体試料の収集、提供の研究も進めております。  (4)につきましては「重点研究分野」ということで、(1)を対象とした疾患について、今 年度は、先端医療開発特区、いわゆるスーパー特区制度を活用した研究の推進を行っているとこ ろでございます。  ページをおめくりいただきますと、こちらは概念図です。中央の「臨床調査研究分野」では、 これまで130疾患を対象に研究を進めてまいりました。また、この中で、特定疾患治療研究事業 が45疾患あり、この疾患については医療費助成として患者の医療費負担の軽減を図る目的で設け られております。  平成21年度に研究奨励分野等が創設され、約100疾患を対象に研究を実施することとしており ます。  3ページ目です。「希少な難治性の疾患の数と研究事業について」です。大枠で囲っていると おり、希少な難治性の疾患については、資料によると概ね5,000から7,000と非常に多数の疾患が ある中で、これまでは、臨床調査研究分野の130疾患、その中には特定疾患治療研究事業の45疾 患を含めていますが、こうした研究をこれまで行ってきました。今後、研究奨励分野においては、 これまでは研究の対象とされてこなかった疾患について、その実態解明等を進めていくという意 味で、原則1年間を期間として研究を実施するということです。  金澤委員長   ちょっと待ってください。  先ほどの伊藤さんの御質問にはきちんと答えてくれるんですね。  疾病対策課長   難治性疾患克服研究事業の100億円については、通常の予算で確保しております。例えば補正 予算の問題はありませんので、基本的には続くはずだと思っておりますし、要望もしてまいりま す。ただ、先ほど、こんな予算がよく取れたなという小池委員からの御指摘がありましたが、厳 しい指摘は覚悟しておりますが、我々としては努力するつもりでございます。  金澤委員長   ありがとうございました。  では、続きをどうぞ。  中田課長補佐    続きまして、参考資料2を御説明させていただきます。こちらは、平成21年度の難治性疾患克 服研究事業の採択課題一覧表です。現在、三次公募分はまだ評価が終わっていませんので、ここ では、一次と二次公募分を取りまとめております。  まず、臨床調査研究分野です。これは130疾患の研究ですが、昨年どおり継続して研究を実施 しておりまして、ここにございますとおり、38の研究班で実施しております。  3ページ目は、重点研究分野、横断的基盤研究分野ですが、これまで研究を実施していただい ているものにつきましては、今年度も研究を継続しています。  4ページ目以降は、平成21年度に採択した研究課題です。C横断的基盤研究分野の生体試料等 の収集に関する研究につきましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、臨床調査研究分野の 疾患を対象にして、生体試料を収集していただく研究ということで、ここにある各研究班の先生 に収集をお願いしているところです。    6ページ目ですが、D横断的研究基盤研究分野の生体試料等の効率的提供に関する研究ですが、 先ほど申し上げました収集の研究班で収集した検体を今後どの様に効率的に提供していくのかと いうことにつきまして研究していただくものです。  続きまして、7ページ目ですが、E研究奨励分野の疾病の診断基準等作成のため奨励研究につ きまして8ページ目まで、37研究班で研究を進めることとしております。  9ページ目がF研究奨励分野の疾病の実態把握のための奨励研究ということで、E、Fをあわ せて研究奨励分野として研究を進めることとしております。  最後に、G研究奨励分野の未分類疾患の情報収集に関する研究につきましては、これまでは数 が少なく、研究のそ上にもなかなか上ってこなかった疾患について情報収集を進めていくという 観点から、研究を進めるというものです。  参考試料2については、以上です。  続きまして、参考試料3です。こちらは、平成21年度の厚生労働科学研究費補助金の難治性疾 患克服研究事業公募要項の概要です。 おめくりいただきまして2ページ目です。こちちらは、 先端医療開発特区(スーパー特区)採択課題を加速する研究ということにつきまして、その「新 規課題採択方針」にもありますとおり、難治性疾患の克服に向けて、重点研究分野において臨床 調査研究分野、いわゆる130疾患について画期的な診断・治療法の開発に関する研究を採択して いるものでございます。  こちらは、「(1)重点研究分野」の@にありますとおり、難治性疾患の画期的診断・治療法 の開発に関する研究として、画期的な治療法を開発するための臨床研究を積極的に採択するとい うことで、現在は公募を終了したところですので、今後、評価委員会の結果を待って研究が実施 されていくというものです。  3ページ目です。こちらは、難治性疾患克服研究事業の三次公募分について御紹介させていた だきます。申し上げました研究奨励分野につきましては、一次、二次公募で既に先ほど御紹介さ せていただいておりますが、それに加えて三次公募ということで追加で研究課題を公募しており ます。こちらは既に公募期間が終了しましたので、先ほどと同じく評価委員会で研究評価を行い、 その結果によって、研究を実施していただくというものでございます。  また、(1)横断的基盤研究分野として、生体試料等の効率的提供の方法に関する研究につい ても公募しておりました。  ページをおめくりいただきまして、6ページ目でございます。こちらは、これまで臨床調査研 究分野、いわゆる130疾患として研究を進めたもののリストで、ここにございますとおり、脊髄 小脳変性症からスモンまで、130疾患を対象に研究を取り組んできたところです。  8ページです。こちらは、これまで研究対象となっていなかった疾患を対象に今年度から研究 奨励分野で対象疾患としているものです。8ページ、9ページの疾患については、第一次、第二 次公募分をまとめたものですので、先ほど申し上げた第三次公募分が加わるとさらに疾患数が増 えていくのではないかと考えております。  参考試料3の説明については以上です。  続きまして、参考試料4です。こちらは、重症難病患者入院施設確保事業の概要です。これは 平成13年度から実施している事業ですが、事業の目的として、症状の悪化等の理由により、居宅 での療養が極めて困難な状況となり、入院治療が必要となった重症難病患者に対しまして、適時 に適切な入院施設の確保等が行えるよう、地域の医療機関の連携による難病医療体制の整備を図 ることを目的としてこの事業が実施されております。  事業の内容ですが、(3)にありますとおり、都道府県難病医療連絡協議会を設置していただ きまして、概ね二次医療圏ごとに1か所ずつの難病医療協力病院を指定し、そのうち原則として 1か所を難病医療拠点病院ということで、重症難病患者のための入院施設の確保を行うという事 業でございます。  2ページ目です。疾病対策課で当事業の実施状況を調査しましたので、その結果を御報告させ ていただきたいと思います。こちらは都道府県ごとにまとめさせていただきまして、 連絡協議会設置状況、拠点病院設置状況、協力病院設置状況をそれぞれまとめさせていただいて おります。それぞれの設置状況につきましては平成20年3月31日時点のデータで、連絡協議会の 設置状況については、一部の都道府県を除いて、概ね多くの都道府県で設置されております。ま た、拠点病院、協力病院につきましても、多くの都道府県では設置が済んでおりますが、設置の 数、また、設置していない都道府県もありまして、各都道府県のばらつきも見られているところ でございます。  参考試料4についての説明は以上です。  参考試料5です。これは、「経済危機対策(平成21年4月10日)」というもので、御存知かと 思いますが、緊急経済対策として補正予算の中で、今回、難病にかかわるものがございますので、 ここで御紹介させていただきたいと思います。  その内容としては、難病患者の医療費負担を軽減するため、現在、医療費助成の対象となって いない難病のうち、緊要性の高い疾患(11疾患その他)について医療費助成の対象に追加すると いうものでありまして、補正予算額は29億円となっております。  おめくりいただきまして、2ページ目ですが、難病のうち緊要性の高い疾患ということで、こ こでは、11疾患について具体名を列挙しております。  3ページ目は、特定疾患治療研究事業ということで、治療費助成の事業概要を参考までに添付 させていただいておりますので、御覧いただければと思います。  参考資料5は以上です。  続きまして、参考資料6です。こちちは、先ほど山本委員からも未承認薬のお話が出ましたが、 これは医薬食品局で対応しております未承認薬使用問題検討会の状況の御紹介と、また、新たな 取組がありますので、その紹介もあわせて行いたいと思います。  まず1ページ目ですが、未承認薬使用問題検討会が平成17年から検討会を開催しておりますが、 その目的としては、欧米諸国での承認状況、学会及び患者要望を定期的に把握して、その臨床上 の必要性と使用の妥当性を科学的に検証するということで検討しております。また、その結果を 未承認薬について確実な治療の実施につなげる、その使用機会の提供と安全確保を図ることを目 的としてこの検討会が開催されております。  2ページ目は、未承認薬使用問題検討会の検討状況ということで、本年3月の検討会資料から 抜粋した資料です。その時点での検討状況としては、全体で44の品目が検討されております。そ のうち、円グラフの左側の黒い20品目については、既に薬事承認済みで、残りはそれぞれ治験計 画等募集中等の対応を行っているというところでございます。  3ページ目以降は、先ほどご紹介した44品目はどういうものなのかを、一覧にしたリストです ので、参考までに添付させていただいております。  続きまして7ページ目です。こちらは、平成21年6月18日の厚生労働省医政局研究開発振興課 と医薬食品局審査管理課で行っております、医療上の必要性が高い未承認医薬品または適用の開 発の予後に関する意見募集というものです。こちらは、海外で認められている医薬品の中で、我 が国では承認されていない医薬品あるいは承認等された効能・効果または用法・用量が異なる医 薬品につきまして、医療上の必要性が高いものについて、若国の患者に早急に提供できるよう、 その開発を促進するという取組が行われております。その取組に当たりまして、各学会、患者団 体等から意見を募集しているというものでございます。  資料の最後になりますが、9ページ目を用いて説明させていただきたいと思います。  こちらは、先ほどの未承認薬使用問題検討会から引き継いで行われる新たな取組ですが、まず、 大目的としては、承認のために必要な試験の有無、種類の検討などを行うというものです。今回、 各学会や患者団体から意見を募集するにあたり、未承認薬、適用外薬の条件として、欧米4か国 のいずれかの国で承認されているという前提があります。また、医療上、その必要性が高いもの については、ここにあります「(1)適応疾病の重篤性が次のいずれかに該当する場合」。具体 的には、生命の重大な影響がある疾患、病気の進行が不可逆的で日常生活に著しい影響を及ぼす 疾患、その他日常生活に著しい影響を及ぼす疾患。(2)にありますが、「医療上の有用性が次 のいずれかの場合」ということで、具体的には、既存の療法が国内にない、欧米の臨床試験にお いて有効性・安全性等が既存の療法と比べて明らかに優れている、また、欧米において標準的治 療法に位置付けられている。こうしたものについて、学会等においては科学的エビデンスに基づ く有効性・安全性の評価等もあわせて意見を募集しまして、そうした意見を、今後、設置予定の 有識者会議で検討し、今後、製薬企業等、審査ルートに乗るような後押しを行っていく取組が現 在なされております。  この取組が、各学会や患者団体等からの意見に基づいて行われるということでしたので、今回、 この場をお借りして御紹介させていただきました。  資料の説明は以上です。  金澤委員長   ありがとうございました。  先ほどの山本先生からの御意見も、こういう形でお返事をしたようですが、よろしいでしょう か。  御質問が主になるかもしれませんが、どうぞ。  小池委員   資料5の経済危機対策というのは、これは緊急雇用対策などと同じで、3年とか期 限が限られるものなのか、それも全く未確定なのか。要するに、45疾患に11疾患を新たに加わ るというのはすごいことだと思いますが、これは有期対策なのかどうかを確認させていただきた いと思います。  疾病対策課長   形式的には、もちろん補正ですので単年度です。ただ、この手のものを単年度で切ることは私 どもはできないと思っておりますので、これも先ほどと同じように予算要求を行っていくことを 考えております。  金澤委員長   ありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。御意見、御質問がございますか。  山本委員   ここの場で発言するのがいいのかどうかわかりませんが、特定疾患の調査票を毎年担当医が書 かなければいけないのですが、今の時期に集中していて、これは研究班の班員が複数名言ってい ることですが、一時期に集中すると、診療がかなり制限されて、その後、夜までずっと書かなけ ればいけない。できたら、誕生日ごとに分けるとか、もちろん、あるときに横断的に調べたいと いうことがあると思いますが、少し負担を分けるような調査票の回収の仕方があると、担当医が 随分楽になると思います。これから増えていくときに、その辺は少し御配慮いただけたらと思い ます。  金澤委員長   これについては、私たちも随分前に、書類が変わったときに、是非、誕生日にと言ったんです けどね。現実に、私も追いまくられていますが。  何かコメントありませんか。  疾病対策課長   申し訳ございません。これはどうも、かつて各県ごとにばらついていた時期があって、そのと きには今ほどではなかったと聞いております。今は、10月に合わせてしまったので、その副作用 が強くなったと聞いております。  金澤委員長   合わせることのメリットについては重々承知しておりますが、書かなければいけない方から見 ると、何もここで集中しなくてもいいのではないかというのは、確かにそうですよね。  疾病対策課長   内部で少し検討させていただきたいと思います。  金澤委員長   どうぞよろしく。  ほかにありますか。  葛原委員   今度また11疾患を加えるということで、今までの積み残しのようなものが入っているので、私 は皆さんの努力に感謝したいと思います。今年からは調査票が、今までよりは改善されています。 患者さんが書かなければいけないところ、例えば、いつ、どこの県で生まれたとかいうことは、 患者さんが記入するように変わっています。これ迄は我々には分からないのに、患者さんは白紙 のままで調査票を郵送で送ってくるようなことが多かったので、もう少し自覚を持っていただき たいと思っていました。  結局、難病に関する研究事業ということでお金を出しても、患者さんの方は、単に医療費の補 助をくれているという以上の意識はほとんどありません。ですから、こういうものは、従来から の研究事業も含めて、これは研究費の一環としてされているものだということをもう少し、各研 究班もアピールすべきだと思います。厚労省の方も、例えば患者情報の利用や検体の提供など、 お金を出して恩きせがましいことを言うのは本意ではないと思いますが、やはりそういうことで 患者さんも積極的にこの研究事業に参加してほしいというアピールをもう少ししていただければ、 我々も現場で取り組み易くなるのではないかと思います。その辺もよろしくお願いします。  金澤委員長   大変大事な御指摘をいただきました。ありがとうございます。  ほかに御意見ございますか。  伊藤委員   今のお話ですが、前に課長にもお話ししたことがありますが、患者さんが通っている病院は、 書類がいっぱい届くと、患者の所得も見ないという傾向があるものですから。そうではなくて、 難病対策はこうしている、こんなふうになっていると同時に、先ほどの先生方のお話にもあった ように、こういう成果があったということを、代表的なものでいいですから、わかりやすくして、 だから皆さんも一緒に参加というようなことでのポスターをつくってはどうかということを提案 してありましたが、ここでまた改めてもう一回しつこく提案していきたいと思います。  金澤委員長   ありがとうございました。 嫌な質問を一つします。29億円の補正で11疾患が加わったことは大変結構なことだと思います が、これはたしかオリジナルには、国と地方団体が折半のはずですよね。しかし、現実には、7 割、3割くらいで、国が3の方だったと思います。そういうことでこういう措置が行われたと。 地方行政はどうなりますか。  中田課長補佐   補正についてでしょうか。  金澤委員長  補正で補われた分、対象疾患は増えますからね。そういう意味です。  地方は支出が増えることになるのではないかという意味です。  疾病対策課長   地方負担についても、実は、私どもだけではなくて地方の負担がある補助金はたくさんありま す。今回の補正では、追加となる11疾患その他に、地方公共団体の財政支援策として「地域活 性化・経済危機対策臨時交付金」により、たしか合計で約1兆円だったと思いますが、それが地 方に配分されるような、地方向けに財政措置がなされたところです。今回の補正は非常に大規模 で、なおかつ地方のことを考えているものとなっています。  金澤委員長   それは一緒に言わなければいけないですよ。  水田委員   参考資料4の入院施設確保事業のところで、どういうわけか九州にはないところがあります。 佐賀県と沖縄県は、そういうものはバツ印ばかりですが、そういうところに対しては、厚労省か ら指導というか、そういうことはなさらないわけですか。  疾病対策課長   これはお願いの話なので、実は、県には個別にお願いしております。ほぼ10年たつ事業で、こ の資料は、実は、今回ここで初めてオープンにする資料ですが、団体の方からも、我が県ではど うなっているのか、他県と比べてどうなのかということを教えてくれという話がありまして、県 のご協力を得て作成したものです。県の間でばらつきがあります。例えば新潟県のように、400 を超える協力病院を確保している県がある一方、全然していない県があるということは、私ども として、大変大きな問題であると思っておりますので、これは県にももちろんお願いしますし、 いろいろなところで御指導申し上げなければいけないとは考えております。  金澤委員長   どうもありがとうございました。  ほかに御質問、御意見がございますか。  葛原委員   今の水田先生の御質問に関係しますが、拠点病院が決まらないというのは、県の側の努力の問 題ですか、それとも、指摘を受ける方の病院が主な問題でしょうか。  もう一つは、重症難病はかなり数があると思いますが、全部をまとめて拠点病院をつくってい るのか、それとも、疾患の幾つかをまとめてで構わないという形でやっているのでしょうか。  疾病対策課長   まず運用の話ですが、疾病については県によって随分ばらつきがあります。端的に非常に困っ ているのは神経難病のようなもので、神経難病をフォーカスに絞っている県が多くあります。協 力病院があるけれども、拠点病院がないというところは、県立病院の御協力が得られないという ことも場所によっては聞いていますし、そもそも要らないと。そういう機能がなくても県内の病 院が仲がいいので、そういうものは要らないというところもありまして、拠点病院については県 の独自性があるのかなと。ただ、協力病院が一つもないというのは大変大きな問題ではないかと 私どもは考えておりまして、患者さんの団体の方とお話ししても、何とかなりませんかというお 話をお伺いすることも多いので、そこは、何とか御協力いただけるように県に申し上げと思って おります。  葛原委員   実は、ここでバツ印がついているのは、私が今理事長を務めている日本神経学会の評議員が全 然いなくて、理事会が特別措置で拾い上げたような県が、例えば宮崎県、佐賀県、沖縄県辺りが そうなので、もしかしたらそういう専門医数が少ないという背景もあるのかなと推測した次第で す。協力という点は、各学会なども積極的に協力するように呼びかけることも必要だと思います。 私でできることは努力してみます。  疾病対策課長   是非よろしくお願いします。  金澤委員長   どうもありがとうございました。今日、会を開いた意味がありますね。  ほかに何か御意見ございますか。  大体御意見をいただいたようですので、御議論はここまでとさせていただきましょうか。  では、次回以降の予定について、事務局からどうぞ。  中田課長補佐   本日、委員の方々から様々な御意見をいただきましたので、今後とも定期的に委員会を開催し、 難病対策について御議論いただきたいと思っております。  具体的な日程につきましては、改めて事務局より日程調整のお願いをさせていただきますので、 どうぞよろしくお願いいたします。  以上でございます。  金澤委員長   どうもありがとうございました。これで、第9回目の難病対策委員会を終了させていただきま す。  御協力、感謝いたします。ありがとうございました。 以上                            ○照会先                             厚生労働省健康局疾病対策課                              tel 03−5253−1111                              fax 03−3593−6223                              担当:藤村・中田                               (内線 2351・2982)