09/09/01 第26回社会保障審議会少子化対策特別部会議事録 日時:2009年9月1日(火) 15:00〜17:10 場所:経済産業省別館 1014号会議室 出席者:  委員   大日向部会長、岩渕部会長代理、内海委員、大石委員、駒村委員   篠原委員、庄司委員、杉山委員、宮島委員、吉田委員  参考人(オブザーバー)   大阪市立大学生活科学部教授          山縣 文治 氏   社団法人日本経済団体連合会経済政策本部長   藤原 清明 氏(高尾委員代理)   三重県健康福祉部総括室長(こども分野)     速水 恒夫 氏(野呂委員代理)  事務局   伊岐雇用均等・児童家庭局長、香取審議官、田河総務課長   堀井調査官、杉上虐待防止対策室長、朝川少子化対策企画室長   定塚職業家庭両立課長、藤原家庭福祉課長、真野育成環境課長   依田児童手当管理室長、今里保育課長、宮嵜母子保健課長 議題:  次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について  ・放課後児童クラブについて 等 配付資料:  資料1-1   放課後児童クラブについて(2)  資料1-2   放課後児童クラブについて(2)(参考資料)  参考資料1  清原委員提出資料  参考資料2  放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)に係る実証的調査研究  参考資料3  平成22年度予算概算要求の概要  参考資料4  社会保障審議会少子化対策特別部会保育専門委員会開催概要  参考資料5  社会保障審議会少子化対策特別部会保育第一専門委員会委員名簿  参考資料6  社会保障審議会少子化対策特別部会保育第二専門委員会委員名簿 議事: ○大日向部会長  定刻になりましたので、ただ今から「第26回社会保障審議会少子化対策特別部会」を開 催いたします。委員の皆さま方には、ご多用のところをお集まりくださいましてありがとう ございます。  会議に先立ちまして、事務局より資料の確認と委員の出席状況に関して、報告をお願いい たします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、お手元に配布させていただいております資料の確認をさせていただきます。  まず、議事次第がございます。次に資料1-1としまして「放課後児童クラブについて(2)」 というもの、資料1‐2がその参考資料です。その下に参考資料1として三鷹市長の清原委 員から提出していただいたご意見、参考資料2としまして調査研究の束を用意しています。 参考資料3には、このたび概算要求をした関係で雇用均等・児童家庭局関係の概算要求の PR版の資料を付けています。今日は時間の関係もありますので説明を省略いたしますが、 ご参照いただければと思います。それから、参考資料4〜6が保育専門委員会設置について の資料でございます。こちらは、前回設置をさせていただくということでお話申し上げてお りましたが、この間設置をさせていただいて、第1回目をそれぞれ開催させていただいたと ころでございます。その関係の資料でございます。もし不足等がございましたら、事務局へ お声掛けいただければと思います。  委員の出席状況でございますが、本日は岩村委員、清原委員、佐藤委員、高尾委員、野呂 委員、山本委員から、都合により欠席とのご連絡をいただいております。内海委員が遅れて おられますが、ご出席と伺っております。なお、本日ご欠席の高尾委員の代理としまして、 社団法人日本経済団体連合会経済政策本部長の藤原清明参考人にご出席いただいておりま す。また、野呂委員の代理としまして、三重県健康福祉部総括室長の速水恒夫参考人にご出 席いただいております  ご出席いただいております委員の皆さま方は定足数を超えておりますので、会議は成立し ております。なお、本日、山縣委員におかれましては、私ども事務局の任期再任の手続き上 の問題から、大変申し訳ございませんが参考人としてご出席いただいております。以上でご ざいます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。  議事に入ります前に、本日ご欠席の委員の代理としてご出席くださっている方々のご出席 についてお諮りいたします。社団法人日本経済団体連合会の藤原清明参考人は高尾委員の代 理としてご出席くださっています。野呂委員の代理としてご出席くださっています三重県の 速水恒夫参考人のご出席について、ご異議はありませんか。 (「異議なし」の声あり) ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、議事に入りたいと思います。  本日はお手元の議事次第にありますように、放課後児童クラブについて事務局から説明を いただいた上で、皆さまにご議論をいただきたいと思います。  それでは、事務局から放課後児童クラブについての説明をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、ご説明いたします。資料1‐1と資料1‐2をご覧いただければと思います。 資料1‐1をお開きいただきまして、1ページ目は前回と同じ資料でございまして、第1次 報告で放課後児童クラブについてどのような内容でまとめられているかを整理したもので す。説明は省略させていただきます。  2ページ目でございます。「2.放課後の子ども対策の基本的視点について」としまして、 前回、池本参考人に当部会においでいただいてヒアリングをしたわけですが、そういったこ とも踏まえまして、放課後児童クラブという個別サービスに限定せずに、まず放課後対策全 般についての整理を総論的にしてみたものでございます。  一つ目の丸ですが、放課後の子ども対策としましては、大きく分けて二つの機能があるで あろうということで、一つは生活の場の確保という機能、もう一つは、遊びなどを通じて学 齢期の発達的特長を踏まえた必要な援助を行う機能。この二つがあるであろうということで す。  二つ目の丸は、現在、子どもを取り巻く環境はいろいろ厳しくなってきているということ で、例えば子どもの多様な活動や経験をする機会が減ってきているとか、あるいは地域、家 庭、いずれにおいても子育て機能、子育て力の低下が見られること、あるいは子ども集団の 形成が難しくなってきていること、あるいは不登校の問題など、子どもを取り巻く環境は厳 しいものになっていて、これらは共働き家庭の子どもかどうかにかかわらず、すべての子ど もを取り巻く環境として厳しくなってきているということでございます。  三つ目の丸は、現状は政策として放課後子どもプランを文部科学省と厚生労働省が共にや っているわけですが、その中で全児童を対象として、安全で健やかな活動場所の確保のため に放課後子ども教室を文部科学省の施策として行っているところです。※印の2行目にあり ますとおり、現状は放課後子ども教室については、箇所数は小学校区が約2万数千箇所ある ところ、まだ8千箇所に留まっているということ。あるいは、その開設日数もおしなべて、 平均しますと121日ということですので、長期休暇などにはなかなか対応できていない実 情もありますし、週当たりにしても必ずしも毎日開いているわけでもないという状況です。 厚生労働省の施策としては児童館というものもあるわけですが、こちらも箇所数としては 4,700箇所ということで、小学校区全体に行き渡っているという状況でもありませんし、地 域偏在もかなり見られるという状況でございます。  四つ目の丸は、前回のヒアリングでご説明いただきましたように、諸外国では格差の縮小、 あるいは社会的統合といったことを視野に入れながら、学校の学習との連携を図って、就労 家庭か否かにかかわらず、さまざまな活動の提供、あるいは親に対するサポートなどを行う ものとして放課後対策が推進されてきているという状況でございます。  こういったことを踏まえまして、就労家庭の子どもか否かにかかわらず、すべての子ども が身近で利用可能な一定の場所、あるいは共通のサービスの提供を充実していくことをまず 考えていく必要があるのではないか。さらに、新しい制度設計上もそのようなことを考慮し て制度的な位置付けを行うことも考えられるのではないかと整理しています。  この場合、そこにおけるサービスの内容としましては、安全な居場所づくりといったこと に加え、できれば多様な活動メニューの提供であるとか、異年齢児や地域住民との交流、家 庭との連携、親への支援、学校との連携といったものも地域の実情に応じて充実されていく ことが望ましいのではないかとしています。  次に、3ページ目をご覧いただきますと、そういう放課後対策全般についての整理をした 中で、特に就労家庭の子どもにつきましては、放課後に自らの希望により帰る場所がないと いう状況ですので、遊びなどを通じて支援をするという二つ目の機能以外に、一つ目の生活 の場の提供という機能の必要性があるという重要な要素がございます。したがって、前回、 委員からご指摘いただきましたとおり、家庭でもない、学校でもない第三の場所として、二 つの機能を併せて、特に生活の場の機能として一定の機能を提供する、確保することが必要 だということで、放課後児童クラブはそのようなサービスとして位置付けられるのではない かと整理したものでございます。  その上で、この放課後児童クラブについては、「小一の壁」といった指摘もございますし、 子どもが小学校に上がる段階で保護者が就業継続をしていく上でも大変重要なサービスで もありますし、近年の共働き世帯の増加、あるいは潜在需要の高まりといったことに対応で きるものとして、保育と同様に両立支援のサービスとして量的に拡充していくことが必要で あります。その際、サービスの内容につきましても、全児童への対策のサービスの内容の充 実なども踏まえて、併せてこちらの放課後児童クラブの内容も充実を図っていく必要がある のではないかと整理しています。  3ページ目の下に挙げておりますデータは、子どもの年齢に応じて母親の就業状況がどの ように変わっていくかというものですが、ちょうど小学校に上がる年齢の6歳のところを見 ていただきますと、一番左側の網掛けのところが正規の働き方で、次がパート・アルバイト ですけれども、全体として年齢を追うにしたがって母親の就業が増えてきているということ が見て取れますが、5・6歳のところを見ていただきますと、正規の働き方のところは若干 ではありますが減っていることが見て取れますので、こういったところでも「小一の壁」が 見て取れるのではないかと思います。  もう1枚おめくりいただいて、同様の別のデータですけれども、こちらは平成19年度の 内閣府のデータです。左側のグラフは、「理想の働き方」を聞いたものですけれども、右か ら二つ目の「子どもが小学生」という欄を見ていただきますと、理想の働き方として多く希 望が出ているのは、「短時間勤務」のところと「フルタイムだが残業のない仕事」といった ところが非常に高い割合として出ています。一方、右側のグラフの「現実の働き方」の回答 で右から二つ目の欄を見ていただきますと、現実には「働いていない」という人が過半数を 占めていますし、「パート・アルバイト」が4分の1くらいで、「正社員」は6.6%に留まっ ているということです。これは、働き方の側の問題もあるかと思いますが、この両立支援の サービスも、やはり充実していく必要があることが見て取れるデータだと思います。  5ページ目は、そういったことを踏まえて、今は「新待機児童ゼロ作戦」ということで、 保育の潜在需要対応でサービスを延ばしていくとともに、放課後児童クラブについても目標 を設定して、サービスの拡充を図っていくということを図示したものでございます。横軸が 子どもの年齢になっていまして、右側の小学校1〜3年生のところで、黄色いところが現在 提供できている割合で、19〜20%くらいです。これを60%まで引き上げていこうと。当然、 3〜5歳の保育のサービスのニーズも増えてきますので、それを踏まえながら、かつ「小一 の壁」を解消していくということを考えますと、約6割のサービス量が要るであろうという ことを目標にしています。これにつきましては、参考資料料の16ページを見ていただきま すと、現在、各自治体では後期の次世代行動計画作りをしていただいていますが、それに先 立って、昨年夏に100箇所ほどの自治体を抽出して、緊急的にニーズ調査を国の方でして みた結果でございまして、放課後児童クラブのニーズを見たものですが、この調査の結果を 見ても、真ん中の表は、年長の子どもを持っている家庭にアンケート調査をした結果で、放 課後児童クラブのニーズがどれぐらいあるかという潜在ニーズを調べてみたものですが、こ こで見ても53%くらいのニーズがあるということが把握されていますので、5〜6割くらい のニーズが潜在的にあるという状況でございます。  さらに、参考資料の29ページを見ていただきますと、「小一の壁」に関連してですが、 右側のグラフは平日の放課後児童クラブの終了時刻のデータでございますが、約半数が18 時までに閉所しているという状況でございます。保育所の方は最近は延長保育の取組が比較 的進んでおりますので、19〜20時までの預かりがかなり浸透してきておりますけれども、 小学校に入ると少し時間が短くなるという点も含めて、「小一の壁」ということが指摘され ている状況でございます。  資料1-1に戻っていただきまして、6ページ目からが個別の論点について触れているとこ ろでございます。まず3番目の「量的拡大について」ですが、こちらは前回事務局から資料 を用意して既に説明済みでございますが、簡単に振り返っていただきますと、下の(1)にあり ますように、量的拡大を考えていく上では、基盤整備をいかに進めていくかという視点と、 (2)にありますように、潜在需要に対応できるような給付設計、給付の仕組み、どのような制 度設計をしていくかという両面から考えていく必要があるということです。  そういった中で、7ページ目は、基盤整備を進めていく上でどのような制度的対応が考え られるかということで、一つ目の四角にありますとおり、実施主体である市町村に何らかの 責務を課していく必要があるのではないか。具体的には(1)として、提供体制の確保責務を法 律上課す仕組みが考えられるということ。(2)として、客観的に一定の基準を満たす事業者に ついては給付の対象とする仕組みを入れていってはどうかといったところが論点でござい ます。  1枚おめくりいただいて8ページ目ですけれども、量的拡大を図る上で給付設計をいかに していくかといった観点からは、一つ目の四角で問題提起しておりますのは、保育のように 個々人に対応する給付を行う仕組みも考えられますが、その場合は市町村が認定するという ことも考えられるわけですけれども、二つ目の四角にありますとおり、一方で年齢によって 求められるサービスの内容が異なったり、あるいは柔軟な利用を前提に置くことが適当と考 えられる側面もありますので、両者の兼ね合いを考えて、どのような給付設計をしていった ら良いかといった論点でございます。  9ページ以降は今回新しく書き下ろしているところでございますが、「4.質の確保につい て」でございます。まず一つ目が、いろいろな法令上の基準についてどうしていくかという 論点でございますが、現行制度は「第一次報告抜粋」の箱の欄外を見ていただきますと、法 令上の基準として考えられるのは運営基準、人員配置基準、設備基準といったものが考えら れるわけですが、現行は法令上の基準としては定めがないという状況になっています。代わ りにといいますか、平成19年度にガイドラインを作りまして、ここに挙げておりますよう な一定のものを望ましいものとして提示させていただいているということです。この具体的 な内容は参考資料の21ページ目にございますので、そちらをご覧いただきながら、次のペ ージの説明をお聞きいただければと思います。  本体資料の10ページと参考資料の21ページを併せてご覧いただきながらですが、本体 資料の10ページでは、放課後児童クラブについて、今は法令上の基準がないわけですけれ ども、一定の質を確保していくことを前提に考えれば、一定の基準を設定していく必要があ るのではないかと論点を提示しています。その際、設定した方が良いのではないかという留 意点、あるいは具体的な内容を考えていく上での留意点を幾つか整理していますが、一つは、 何よりも子どもの安全の確保が図られるような基準である必要があるということ。二つ目は、 サービスの内容の充実といったことを考えていく必要がありますが、それらも踏まえる必要 があるということ。三つ目は、前回の部会でもご議論がございましたが、このサービスは放 課後だけに留まらず、土曜日や夏休みなどにも対応しているものですので、子どもが長時間 を過ごす生活の場という性格がありますので、そういったことも踏まえた施設の基準や人員 配置の基準を考えていく必要がある。さらには、養育基盤の弱い子どもや障害児も利用が想 定されますので、それらも含めて考えていく必要があるということ。四つ目は、これも前回 の部会でご議論がありましたが、指導員がサービスの責任者も兼ねながら担い手になってい るという実情がありますので、そういうことも踏まえながら考える必要があるということ。 五つ目は、現在、我が国では放課後児童クラブの大規模化が問題になっていますが、諸外国 の例を見ますと、一定のグループ単位、例えば30〜40人を一つのグループ単位として考え る、あるいは子ども何人に対して職員を1人付けるという人員基準を設けている例が多く見 られたところでございます。七つ目は、そういう設備や施設や人員の基準以外にも保護者と のかかわりをクラブとしてどう持っていくか。あるいは学校教育、保育園、幼稚園、地域と の連携、そのような運営上の遵守事項といった基準も考えていく必要があるのではないかと いうことでございます。  一方で、基準を設定するにしても現状から見て留意点があるだろうということで、三つ書 いております。一つは、実施場所はご案内のとおり学校内が5割になっておりまして、設備 基準を仮に設けたとして、その内容によってはハードルが高すぎて、既にやっている放課後 児童クラブが対象にならないということになってしまう可能性もあるということ。二つ目は、 都市部と地方とでは子どもを取り巻いている環境や活用可能な社会資源、就労状況といった ものに差異がありますので、放課後児童クラブに求められる内容、ひいてはそういった基準 についても異なることが考えられますので、もし全国統一的な基準を考えるのであれば、比 較的緩やかな基準を設定する必要があるのではないかということ。三つ目は、現状において 多様な運営形態がございます。これは歴史的なこともありまして、保護者のグループで運営 しているものも結構ありますので、それらを包含していく必要があるということ。さらに、 自治体間においても差異があり、それも包含する必要があるということ。これら3点の留意 点を踏まえますと、基準を設定するに当たって厳しい基準に設定してしまうと、放課後児童 クラブの今の事業の実態に合わない側面があるという留意点でございます。最後の丸は、い ずれにしましても具体的にどのような基準を設定していくかは、今決める必要もありません ので、今後、検討を深めていくということで、現在の人員配置の実態なども十分把握させて いただきながら、今後、検討を進めていくということでございます。  次に11ページ目ですが、質の確保の2番目で「担い手の質の確保」についてでございま す。箱の欄外のところを見ていただきますと、現行制度がどうなっているかということです が、放課後の児童指導員につきましては、現在、法令上の要件は設けられていないという状 況でございます。一方で、先ほど見ていただいたガイドラインでは、保育士、幼稚園教諭、 その他の教諭、小学校の先生などですが、そういった人たちが適当で望ましいということを 示しています。さらに、実際に放課後児童指導員として現場にいらっしゃる方々の現任研修 につきましても、特段、定まった研修プログラムがあるという状況にはないというのが現状 でございます。右下のグラフはどのような人が担い手となっているかを実際に見たものです が、約3分の1が保育士や幼稚園教諭、2割くらいが小学校の先生などで、一番右側にあり ますように、約3割が資格を持っていないという状況でございます。一つ目の丸ですけれど も、そういう状況ではありますが、放課後児童クラブは就学前の保育所と違って、学校に入 った後の学童期という発達段階に応じた対応が求められるということ。さらには、家庭でも 学校でもない第三の場所として、生活の場として遊び等の多様な活動の提供が求められると いうこと。また、障害などさまざまな困難を抱える子ども、保護者への対応も求められると いったことを考慮する必要があるということでございます。これらを踏まえて、担い手の質 を確保する観点から、まずは研修の充実を図っていく必要があるのではないかということで、 現在3割いる無資格者に対する研修の充実や有資格者も含めて放課後児童クラブに特化し た現任研修も含めた研修強化の必要性としています。もう一つ、放課後児童クラブにおける 多様な体験活動を充実する観点からは、コアの指導員とは別に、地域ボランティアや定年退 職者など多様な人材の参画を求めていくということも必要ではないかと論点を提示してい ます。  1枚おめくりいただきまして、「5.人材確保について」の一つ目の丸ですけれども、放課 後児童指導員につきましては、前のページで見ていただきましたように、一定の質が確保さ れた人材の確保が必要です。さらに、比較的短期間で辞められる指導員が多いという状況が ありますので、継続的な就労が可能なようにしていく必要もあります。そのためには何より もやはり職員の処遇改善が必要であろうということです。一方で、現状の職員の処遇につい ては、現行の国の補助基準額と放課後児童クラブの運営に掛かる費用の実態には、乖離があ る状況です。そういったこともあり、指導員の処遇は厳しい状況にあります。関連の資料は、 参考資料の35〜37ページ辺りですが、35ページには国の補助基準単価が挙がっておりま す。36〜37ページは実際の指導員の処遇について見たものです。ご参照ください。  本体資料の12ページの一番下の四角ですが、そういったことから処遇改善を図っていく 必要があるわけですが、このためには財源の確保が前提条件になってきます。前提条件とし ながらも、処遇改善を図ることを前提とした運営費といったものを確保していくことが課題 であるとしています。  次に、13ページ目「6.利用方式、利用者負担について」でございます。13ページは利用 方式についてですけれども、現行の仕組みは(1)にありますとおり、保育所のように市町村に 申し込んで市町村が「保育に欠ける認定」をして委託をするという仕組みにはなっていませ ん。市町村を介して申し込む方式もありますし、運営主体に直接申し込む方式もあって、こ れは自治体ごとに異なるという状況でございます。さらに、(2)にありますとおり、要件であ ります就労家庭か否かの確認についても、統一的なルールは特段定められていない状況でご ざいます。  この新しい制度でどうしていくかということでございますが、一つ目の四角にありますが、 放課後児童クラブを利用できる児童の範囲につきまして、何らか整理していく必要があるだ ろうということ。さらにその整理に則って、利用できる児童かどうかの確認を行う仕組みを 設ける必要があるだろうと。ただし、利用者の利便性といったことも考慮する必要がありま すので、比較的緩やかな形での仕組み作りといった要請もありますので、そういったことを 含めて今後その仕組みを考えていく必要があるとしています。  二つ目の四角は、現状、サービスの申込者数も把握できていない市町村もあります。これ は、直接申込むような場合には、必ずしも市町村が把握していない場合もあります。そうす ると、待機児童の数も把握できていないということになるわけですが、そういったことは制 度的に見直していく必要があるのではないかとしています。  1枚おめくりいただいて、次は「利用者負担」についてでございます。現行の仕組みは一 つ目のポツに書いていますが、国庫補助の積算上のものとして、参考資料の35ページの図 にありますとおり、2分の1を利用者負担とするということを前提に国の補助金の積算がさ れています。実際には、各自治体がそれぞれご判断されて設定していまして、統一的なルー ルはないのが今の実状でございます。実態は、参考資料の38ページ目に、どれぐらいの利 用者負担なのかというものが付いていまして、二つ調査がございますけれども、全国学童保 育連絡協議会の方の調査でいきますと、1万円未満のところが多いという状況でしょうか。 右側の厚生労働省の、少し古いですけれど平成13年の調査を見ても、大体1万円未満のと ころが大勢を占めているという状況でございます。  本体資料に戻っていただいて、二つ目のポツですが、これは前回も議論がございましたが、 特に民営施設の場合は、所得把握の困難さなどから低所得者に対する配慮といったことも行 えないということで行っていない場合もあるという状況です。新しい制度でどう考えるかで すが、全国において何らかの統一的なルールの設定が必要ではないかと、一つ目では問題提 起しておりまして。二つ目は、その際、新たな制度体系の費用負担につきましては、社会全 体で重層的に支え合うということを前提にしていますが、そうしますと、公平性の確保の観 点から、一定の負担は求めることが適当であるということ。一方で、負担水準をその場合ど うしていくか。あるいはあまり高い負担水準ですと利用抑制に働くおそれがないかといった ことを考慮する必要があるということです。  一番下でございますが、仮に何らかの統一的な利用者負担のルールを定める場合には、例 えば低所得者世帯に配慮をする、多子世帯に配慮をする、そのように利用者負担を設定する 際には考慮するべき事項があると思いますので、そのようなものは何かという問題提起でご ざいます。  次に15ページ目で「7.財源・費用負担について」でございます。財源・費用負担につい ては、これは制度全体についてどうしていくかということが最終的には議論が必要でござい ますので、ここだけで議論ができるものではありませんが、放課後児童クラブについてまず 考えてみると、ということで書いています。新しい制度体系の費用負担は、社会全体で重層 的に支え合うことになっておりますが、放課後対策において、すべての子どもの健全育成を 保障していくということ、先ほど大きい2番で見ていただいたようなことです。あるいは放 課後児童クラブというサービスを確立した制度にしていくということ、あるいは実施責任を 果たす仕組みを強化するということ、サービス量を拡大するということなどを考えますと、 費用支弁あるいは財源保障といったことを強化していく必要があるのではないかというこ とが一つでございます。  二つ目は、現在、この放課後児童クラブについては、国からの補助金の財源は一般財源で はなく、事業主の拠出金を財源に行っています。このサービスは、小学校就学期の両立支援 としてのサービスという性格がありますし、現在の労働力の確保に資するという性格もあり ますが、今後量的な拡大などを図っていくためには、全体のパイを大きくしていく必要もあ りますので、そういったことも踏まえて一般財源との組み合わせなども考えていく必要があ るのではないかといった論点でございます。  最後に、大きい8番として「放課後子どもプランの推進について」でございますが、真ん 中辺りの丸のところでございます。現在は、厚生労働省がやっております「放課後児童クラ ブ」と、文部科学省の政策である全児童対策の「放課後こども教室」の関係は、両省でやっ ております「放課後子どもプラン」に基づいて、一体的あるいは連携して実施を推進してい きましょうということになっています。一つ目の四角でございますが、大きい2番で見てい ただきましたとおり、就労家庭の子どもか否かにかかわらず、すべての子どもが利用可能な 場所、サービスの充実をしていくことの重要性に鑑みますと、学校以外の場で行われる放課 後児童クラブ、例えば児童館でされているような児童クラブや学校でされている放課後児童 クラブも含めて、このクラブ事業と教室事業の一体的実施あるいは連携を強化していく必要 があるのではないかということが一つ。もう一つは、全児童対策と放課後児童クラブの二つ の関係を新しく整理していくことも考えられるのではないかとしています。二つ目の四角は、 この一体的あるいは連携した運営を行った場合においても、就労家庭の子どもに対するサー ビスとしては、生活の場の確保という機能が損なわれないようにする必要がございますので、 ここでは四つ留意点を書いています。一つは、仮に一体的実施をする場合にも、トータルと しての適切な指導員の配置が必要であるということ。二つ目は、就労家庭の子どもについて は、やはり開設日数、週当たりでいけば基本的には毎日開いている必要がありますし、夏休 みも開いている必要があるということ。あるいは、開設時間についても、先ほど見ていただ いたとおり、あまり早く終わってしまうと実際のニーズに合わないという問題があります。 三つ目は、出欠確認などをする必要があるということ。四つ目は、家庭との連絡あるいは情 報交換といったことも必要であるということでございます。  最後の論点につきまして、参考資料2をお開きいただきまして説明させていただければと 思います。現在、財団法人こども未来財団の調査研究事業で、「放課後児童クラブに係る実 証的調査研究」をやっていただいております。課題は二つありまして、一つは、今申し上げ た放課後こども教室と放課後児童クラブの一体的実施をすることについての調査研究が一 つ目のテーマでございます。二つ目は、調査概要の2番で書いてありますが適正規模に関す る調査研究です。今日ご説明するのはその1番の方でございます。既に大都市部を中心に「一 体的実施」をしている自治体の放課後対策がございますので、そちらの方、あるいは「連携 実施」をしている所にインタビューあるいは視察なども含めまして調査を実施しております。 研究員は下に書いてあるようなメンバーで、前回お越しいただいた柏女先生にも入っていた だいて研究していただいたものでございます。今回、8月に中間的な取りまとめをしていた だいておりまして、1枚おめくりいただいて2ページ目を見ていただきますと、一体的実施 と連携実施の状況につきましては、一体的実施をやっている数は604件ということで、全 体の小学校区でいきますと2.8%ぐらい、連携実施が5.6%ぐらいという状況でございます。 この調査では、一体的実施あるいは連携実施を行う上で、どのような課題が生じているかを 調べさせていただいて、特に3ページ目では、一体的実施をやっている場合の課題について、 インタビューや視察の結果を整理していただいております。これらの課題を踏まえまして、 4ページ目で「原則及び留意事項」をまとめていただいているところでございます。このう ち、特に留意すべき事項を見ていただくと、具体的には5ページ以降ですが、五つほど留意 事項が整理されております。一つは、適切な指導員の配置です。ニつ目は、専用のスペース の確保が挙がっております。三つ目は、出席確認などの安全確保。四つ目は、家庭との連絡 や情報交換。五つ目は、適切な時間帯でのおやつの提供ということです。先ほど見ていただ いた、事務局で用意させていただいたペーパーでいきますと、この(2)、(5)のところは具体 的に書いていませんが、そこのところについてはよくご議論いただければということでござ います。  私からの資料の説明は以上でございます。 ○大日向会長  ありがとうございました。以上、事務局からのご説明をいただきましたが、本日ご欠席の 清原委員から、本日の議論に関して文書でご意見の提出をいただいておりますので、こちら の方も事務局から報告をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  参考資料1を見ていただきますと、3枚ほどペーパーで意見を出していただいています。 ポイントと思われますところを少しご紹介いたしますと、まず大きい2番に対応します「基 本的視点」のところにつきましては、3行目で放課後子どもプランの推進は必要だとした上 で、下から4行目、したがっての段落です。「放課後児童クラブについては、その機能を維 持しつつ、量的、質的拡充を行うことが必要」として、その次の行の後半で、教室の事業等 ですけれども、「相互の特性を活かしながら連携していくありかたを作っていくことが現実 的ではないか」とされています。  大きい3番については、3行目の後半のところで、場所については小学校の敷地内が良い であろうと。さらに、上から5行目で「余裕教室よりも敷地内に単独の施設を設置するのが 理想的」であり、三鷹市もそういう方向で進めていますと。ただ、この点については、下か ら4行目で「地域事情に最適な取り組みを選択することが望ましい」という意見でございま す。  2ページ目でございますが、4番の「質の確保」については、まず指導員の質とその数が 最も重要なポイントであると。4行目から5行目にかけて、「保護者の満足度も異なるのも、 指導員の対応や取り組み方の差によるところが大きい」と。「研修制度や人員配置などの基 準づくりが必要である」ということ。特に、「発達障害等に対応できる人材の確保と養成は 急務である」とされています。その次の「とはいえ」という段落の2行目で「新たな有資格 者制度の導入というのは、一つの提案であるとは認識するが、現実的にはなかなか困難では ないかとも考えている」ということで、「研修制度の拡充等が現実的ではないか」というご 意見です。  大きい5番の「人材確保」につきましては、運営費の9割近くは人件費であるということ、 3行目のところで「国からの補助金は、実際にかかる人件費の15%程度である」というこ と。さらに、その2行下で「国の基準額を実態に合った形に見直していただきたい」という こと。最後の2行ですが「指導員が安定的に確保されれば、そのサポートとしての地域の人 材の導入もはかりやすくなる」ということでございます。  大きい6番につきましては、2行目のところで、「放課後児童クラブの安易な利用を避け るために、利用可能範囲を定め、利用対象世帯かどうかを書類等で確認することは必要であ る」と。対象でない子どもについては、「放課後子ども教室」のような取り組みで対応。利 用者負担については「収入状況や世帯状況等により一定の減額措置を講じる方法が現実的で はないか」ということです。  3枚目の大きな7番につきまして、財源については、最後のところで「国レベルでの財政 規模の拡大がまずは必要」とされております。  大きい8番は、2行目からですが「一体的に実施するよりも、それぞれ独立して実践を重 ねた方が良い」ということと、この段落の一番最後の行で「それぞれの特性を活かしながら 互いに連携していく方法が現実的」というご意見です。上から3段落目で課題として挙げら れていますのが「学校の校長をはじめとする教職員が、放課後児童クラブと放課後子ども教 室の両方への関心を持ち、関与することが必要であるし、放課後児童クラブの職員も、学校 や放課後子ども教室との連携に意欲的に臨むことが必要」であると、そのようなご意見をい ただいております。以上でございます。 ○大日向委員長  ありがとうございました。本日の説明は以上です。この放課後の子ども対策に関しまして は前回のヒアリング、そして本日の資料説明をいただきまして、この後17時ぐらいまでを 目標に、皆さまからご議論・ご意見をいただければと思います。放課後子ども対策は、子ど もの生活の場の確保、それから発達保障という点、さらには親の就労支援の観点からも大変 重要な問題だと思いますが、未整備の領域であるということで多くの課題を残していると思 います。これからご議論いただくに当たりまして、ざっくりとですが、まず最初に基本的視 点を確認し、その後量的拡大、それから質の確保、人材確保。そして、最後に利用方式や財 源・費用負担等という、このような流れで結構ですが、ご意見をいただければと思います。 それでは、どうぞ、どなたからでも結構です。よろしくお願いいたします。篠原委員、お願 いいたします。 ○篠原委員  ありがとうございます。資料1-1の2ページ目の基本的な視点についての部分ですけれど も、その自主性や社会性、創造性など、これまで以上に学齢期の発達支援としての機能が強 調されております。すべての子どもの健やかな発達への支援を強調するということで、社会 で子育てを支える必要性や学童保育の役割に関する理解が促進され、学校との連携が強化さ れるのであれば問題はないと思いますが、そのために両立支援というような、学童本来の目 的が薄れる、曖昧になるというようなことに若干危惧はあります。学童保育はやはり、就労 や継続就労といった両立支援を柱にしていくべきではないかということです。先ほどのデー タにもありましたれども、働いているのに子どもが放課後安心して暮らせる場所がない、安 心して子どもを預けられるような場所がないために働くことを諦める、そういった状況を回 避することがやはり必要ではないかと思います。そのためにも、もちろん、学童保育の質を 向上しながら量的拡大を図るということを、今回の改革の一義的な目的とすべきではないか と、まず意見を述べたいと思います。 ○大日向委員長  ありがとうございます。他に、いかかでしょうか。庄司委員、お願いいたします。 ○庄司委員  基本的視点のところを、前回私も意見を少し言わせていただいたのですけれども、今回、 やはり放課後児童クラブの特徴といいますか、本来的な機能、固有の機能というのは、どう いうものかということについては、もっと議論が進められるべきであると感じています。例 えば今、保育所の保育については、ある意味で国民的な、広範な信頼を得るようになった結 果、働いていない母親たちからも「保育所に入れてもらえないか」という声が出るようにな っているわけです。これは、やはり非常に長い歴史の積み上げ、実績の結果だと思いますけ れども、そういうことと比べると、放課後児童クラブについては、やはり議論もまだまだ十 分ではなく、とりあえず留守家庭の子どもを安全に見ていてほしいというようなところまで で精いっぱいという状況があったと思います。制度的な保障も弱いために、この後の方で議 論になりますように、場所の問題もそうですが、何よりもそこの職員体制、特に職員に求め られる専門性というのが何であるのかという議論と、放課後児童クラブとは何かということ とは、非常に深くつながりがあると思います。  例えば、基本的視点の資料の2〜3ページですが、学校との連携というのが2ページの一 番最後の行に出ていますが、どちらかというと、位置付けがそれほど重くは書かれていない のです。実際に、子どもの学校での様子と放課後児童クラブでの様子が、どのようであるの かというのが、具体的に意見交換がなされたり、情報交換がなされたりしているかというと、 おそらくそういうところまではいっていないのではないか。私は、この辺をもっと重視して いく必要があるのではないかと感じています。  この「小一の壁」というのも、特に親にとっては子どもの発達が新しいステージに入ると いうことで、それだけでも不安なのですが。例えば、開設時間を見てもわかりますように、 保育園がそれまで毎日の保育等で対応してきたそこの部分が、放課後児童クラブには非常に 欠けているために、あとで振り返ったときに、保育園とは何と良い所だったのだろう、今ま で甘かったと。「保育園には注文ばかりつけて文句も言ってきたけれど、本当にありがたか った」という声が強いわけです。結局、「小一の壁」というのは、親が具体的に困るだけで はなく、やはりいろいろな不安がある。そして、特に留守家庭では、親が働いているために、 日中の様子、子どもとのかかわり方などを、それとなく様子を見たりりすることも非常に難 しいわけです。例えば学校で子どもがどのような状況にあるのかということと、放課後児童 クラブの中では子どもがどうなのかというのは、おそらく学校の先生が見ている見方と、そ れから放課後児童クラブの職員が見ている見方は違うと思います。ある子どもが、学校では こうだけれども、放課後児童クラブでは全然別の姿を見せているのか、あるいは、そのどち らにおいても、同じようにいろいろ問題を抱えているようなのか。そのようなところを、本 当にもっともっと重視して「スムーズな学童期への導入」ということについて、親を安心さ せるだけでなく、子どもの発達保障という観点からも、本当にここのところを重視し過ぎて もし過ぎることはないのではないかと私は思っております。  ですから、学校との連携も、2ページの真ん中から少し下の「諸外国においては」という ところで「学校(の学習)との連携」とあって、学校の連携というとお勉強のことのようにも 見えますけれども、むしろ、子どもの人格発達など全体を見ていくときに、やはり学校、家 庭そしてこの放課後児童クラブ、特に放課後児童クラブの職員が、自分たちの固有の役割と して、専門的な観点からこの時期の子どもを見ていくという、そういう位置付けをきちんと しませんと、後の議論の職員体制のところでも、なかなか常勤化しないだけでなく、専門性 も一体あるのかないのかというような、何となく子どもを見張っていればよいというような 状況に置かれてしまう。非常に古い段階では、保育所の保育士も、そういうふうに世間一般 からは見られて、子どもをお守りしているというぐらいに思われてきた可能性もありますけ れども、残念ながら、まだまだ今、放課後児童クラブ職員の専門性というところの議論が深 まらないのは、やはりこの放課後児童クラブそのものの固有の役割というのが、議論として 十分ではなかったからではないかと、私はそのように感じております。以上です。 ○大日向委員長  杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  ありがとうございます。庄司委員と意見的には本当に同じで、やはり今まで、放課後の子 どもはどのようにあるべきかというような、そもそも論のようなことを十分に議論してこな かったことを私はとても反省をしています。それがあって、その後に、全児童対策はどうだ とか、学童保育はどうだというようなことにいけるのではないかと自分の中では思っていま す。  例えば子どもが「今日は誰々ちゃんのおうちで遊びたい」、「明日は児童館に行きたい」、 「明後日はプールで泳ぎたい」、「その次の日はプレイパークで遊びたい」。公園に行ってみ たり、プレイパークに行ってみたりしたいと思うわけです。それは、親が働いていようが働 いていなかろうが、そうやって放課後というか学校を終わった後の時間を自分で組み立てて 自由に遊びたい、楽しみたい、たまには宿題もしたい、休みたいというのが多分子どものあ りようで。それを柏女先生たちがお書きになったところに書いてあるとおり、知的活動、友 人との種々の遊び、スポーツ等を通じた学力、それから社会性の発達。社会性の発達は、多 分、教室の中だけでは発達しないのではないかと思うわけです。1年生のときは教室だった かもしれないけれど、2年、3年になるにつれ、徐々にそのエリア・フィールドが広がって いくというのが、私の中のイメージとしてはそうではないかと思います。それは私のイメー ジであって、それをもっといろいろな方たちと議論を重ねていって、あるべき姿は本当はこ うだよね。囲い込みがよいのか、地域で子育てと私たちは繰り返し言っているけれども、そ れはただ言っているだけなのか。地域のおじさん・おばさんが、みんな学校に行って遊べば 地域で子育てなのか、そのような今まで避けてきたような議論まで実は1回やって、それか ら、では、どうするのというような話をしなければ、この問題は解決できないのではないか と思っています。  ただ、時間もないので、ここでやるのであれば、この流れの中で先に進めるためには、や はり学童のことは、両立支援や就労支援の意味も含めて議論も必要だということも認識して おります。以上です。 ○大日向委員長  ありがとうございます。大石委員、お願いいたします。 ○大石委員  基本的視点といたしまして、私が思うことは二つだけあります。第一に、3ページのグラ フにもありますが、小学校に入った時点で、親の6割から7割が働いているということを、 しっかりと踏まえておく必要があると思います。小学生の話をするとき、どうしても昔のノ スタルジックなイメージを元に、母親が家にいる状況が想定されることが多いようですが、 実際には、もう末子が6〜7歳の段階で、6割から7割の母親は仕事を持っている。ですか ら、小学校の低学年児童の家庭というのはそのようなものだということをまず踏まえておく 必要があると思います。  二つ目としましては、前回のヒアリングでもってきていただいたポスターなどにみられる ように今の学童に行っている子どもの状況は、非常に悲しいのですが、皆のいろいろな工夫 はあれども非常にミゼラブルな状態にあると思います。メガホンで指導員が声掛けをしない とどこにも伝わらない、そういう過密な状況がありますし、それからスタッフの人数的にも、 職員の専門性を問うような状態までいっていない。とにかく、大勢の子どもを統御しながら 何とかしなくてはいけない。小規模な学童でも、小規模なりに今度はスペースが狭い、遊び 場がないというようないろいろな問題がある。ですから、先進国としての子どもの居場所と して、この状況は非常にミゼラブルだと、何とかしなくてはいけないということを、まずス タンドポイントとして考えていきたいと思います。以上です。 ○大日向委員長  ありがとうございます。他にいかがですか。今までいただいた4名の方のご意見ですが、 この放課後の子ども対策は親の就労支援対策という点では、絶対的に欠かせない大事なもの ということは共通している。しかし、一方で、子どもの生活の場、発達の保障という観点か らは、果たして就学前の乳幼児の保育と違って、そもそも全児童対策と広げてよいのだろう か、子どもの生活空間をどこまで狭めることができるかというご意見もあったと思います。 また、さらには、質の未整備ということから考えても、直ちに全児童対策とは言い切れない 現状もあって、大変ミゼラブルだというご意見もあったと思います。こうした視点というこ とを、ある程度、まだここで確認はし切れないと思いますが、今のような四方のご意見をい ただいた上で、では量的な拡大をどこまですべきか。それに伴って、質のどこをどう整備す るか、それがそもそも論にもつながっていくと思いますので、そちらの方に少しご意見・ご 議論を移していただければと思います。また、視点の方にお戻りいただければということも 考えられますので、次は量的な拡大ということを、今の視点の議論を踏まえて、ご意見をい ただけますでしょうか。では速水参考人、お願いいたします。 ○速水参考人  ありがとうございます。速水です。こちらの10ページに「都市部と地方では子どもを取 り巻く環境やいろいろな社会資源が異なる」と書いていただいております。都市では確かに 需要が非常に大きくて対応するのが非常に大変な面があります。逆に私ども田舎といいます か、需要の少ない所では各市町に放課後児童クラブが一つもなくて、そういったサービスを 受けられないという問題もあります。また、今非常に過疎と過密が同時に進行しており、小 学校では児童数が減少してきて、一つの学校では児童クラブが維持できなくなってきており まして、幾つかの学校が合同して放課後児童クラブを設置するような所が出てきております。 そういったことが少子化の進行によりまして、これからますます増えてくるのではないかと 思っています。そういった所についても放課後児童クラブのサービスが受けられるような体 制や制度としていただくようにお願いさせていただきます。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他にいかがですか。山縣参考人、お願いいたします。 ○山縣参考人  視点等も絡めて意見を言わせていただきます。今の参考人の方と共通している部分がある のですが、保育のときと同様に過疎地のところが非常に気になっていまして、都市部におい ての深刻さは非常に重々承知しているつもりですけれども、同じような視点で一律の基準を 作ってしまいますと、過疎地においては、いわゆる就労支援型と全児童対策型を別々に展開 すると恐らく維持できない。小学校そのものが今確か全国規模で年間200箇所ぐらい減っ ているはずです。それは合併の影響も非常に大きかったと思いますけれども、昨年でもさら に200箇所ぐらい減っているはずです。そのように深刻な状況下にあっても、いわゆる50 人未満の小学校がかなり残っている。そのようなところも視野に入れるべきではないか。こ れは最後の8の「放課後子どもプランの推進について」のところで少し言おうと思ったので すけれども、やはり過疎地に対するまなざしもぜひ残しておきたいのが1点です。  さりとて、それを都市部ですべて共通にできるかというと、現実にはそれは難しいだろう と思っていますので、現実的には分けて考えざるを得ないと思います。幾つかのデータ、欠 席の清原委員のデータにもありましたけれども、学校というのは5割ぐらいが拠点になって いますけれども、私は学校は全児童対策型ではないかと思っています。というのは、恐らく 都市部で学校を使うと大規模になってしまって、いわゆるガイドラインに示す人数を守ると、 前回の例にもありましたけれども、学校に三つも四つもクラブを作る。これが指導員の体制 として適切かどうかというような話もありましたので、そうすると、都市部においては学校 も一つの資源であることは間違いないけれども、それ以外のものが拠点として活用できるよ うな仕組みを作らないと、恐らくこの大きな量には対応できないのではないかと感じていま す。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。確かに小学校は場所の選択の一つとしては適格かもしれません が、一方で私は学校が嫌いだったものですから、授業が終わってまたそこに残るのはつらい かな、そんな子どもはいないかしらと余計なことですが少し考えました。  他にいかがでしょうか。過疎地と都市部との問題。これは保育園の問題と同じように一つ の課題だと思います。それから、設置場所を学校との連携を大事にしつつ、学校以外の第三 の場所が地域の中にあってもよいのではないかというご意見もありました。「量の拡大につ いて」に関しては、「基盤整備について」のコーナーも含めて、ご意見を頂戴できればと思 います。宮島委員、お願いいたします。 ○宮島委員  では「基盤整備について」も含めて。皆さま恐らく今放課後児童クラブが全体には十分に 行き渡っていないことへの問題意識は共通で、それはどの地域においてもまず必ず必要なも のであるという認識は大体認識が固まっているのではないかと思います。すなわち、自治体 に対して、提供体制の確保の責任をきちんと法律上も示すということに関しては絶対に必要 なのではないかと思います。  それから、実際の運用としての基準ですけれども、やはり理想的というか、子どもにとっ てどんな環境がよいかを示す上でガイドラインも必要だと思います。一方で保育所と全く同 じような、かなり一律的な基準が必要かどうかということに関しては、先ほどもお話があり ましたが、小学校になると、子どもたちの自由度がかなり上がってくること、やりたいこと がいろいろとあること。それから、小学生の親になって思いますが、そもそも親が働いてい るか、働いていないかという境もとてもアバウトになると思います。というのは、やはり小 学校に上がると、子どもの手が離れるという気持ちから、定期的ではないけれどもパートと して時々お仕事を請け負う方や、NPO法人で活動を開始される方など、いろいろな方がい ますので、そもそも小学生の親をここからこちらは働いている、ここからこちらは働いてい ないと分断することが可能なのかなと思います。また先ほどのお話にもありますように、現 実にはパートやアルバイトも含め、小学校1年生の段階で7割ぐらいが働いているという現 状で、さらに環境が改善するということを考えますと、かなりの母親たちが働きに出たいと いうことになる可能性が高いのではないかと思います。そういうことを考えますと、まずも ちろん両立支援として親が帰ってくるまでの間をきちんとホールドしておく機能は十分に 確保した上で、それをものすごく厳密に分けるのではなく、子どもたちも親がどのような状 況であってもお互いが融合的に遊べるなど、それぞれの希望がかなうような状態にするよう な、同じ基準作りでも自由度の高い設計が必要なのかなと思います。全児童対策型との関係 についてはまた後ほどご意見申し上げたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。庄司委員、お願いいたします。 ○庄司委員  先ほど大日向部会長が、子どものころのことに触れて、学校が嫌いな子どもにとって夕方 まで学校にいるのはどうなのかということをおっしゃいましたので、そのことに勢いづけら れて、一言発言したいと思います。参考資料の20ページにあります「児童クラブの実施場 所に適切と思う場所」というアンケート結果は、少し勘違いを起こしかねないデータではな いかと私は思っています。というのは、「児童館等」は地域に児童館がない所ではこの選択 肢に丸を付ける人は非常に少ないのではないか。そうすると、現実的に児童館などを除けば、 それ以外の地域の所と学校とを比べた場合に学校、そして学校ならば余裕教室でよいのか、 それとも別途敷地内に何かあるほうがよいのか、そういう中の選択肢です。例えば東京都内 は児童館が非常に多いわけですから、そういうところを見ておりますと、私は部会長がおっ しゃったのと同じように、学校から出て少しほっとするのではないかと思います。大体「た だいま」「お帰りなさい」は、学校の中ではおかしいですよね。学校内で少し場所が変わっ ただけなのに、勉強が終わったから今度はここは「ただいま」の場所だというのは。ですか ら、このデータは、どういう聞き方をして、どういう地域でどういう結果が出ているかがわ かりませんので、前にもこのデータは参考で出ておりましたが、少しおかしいのではないか と思っておりました。  要するに私が言いたいのは単純にデータが誤解を招くということなのです。例えば東京都 でも私が住んでいる区などでは、今、児童館が児童館ではなくなり、「区民の広場」という 名称になって高齢者なども使えるように変わりました。先ほど山縣参考人がおっしゃったよ うに、全児童対策として区が方向転換をして、学校の中に放課後児童クラブを合体させるよ うになって、これまで児童館で放課後を過ごしていた子どももみんな学校で過ごす方向にな りました。この辺が良いのかどうなのかというようなことも相当議論に値することだと思い ますので、このデータは多くの人が児童館よりも学校がよいと思っているというように、何 となく誤解を与えかねないということで意見を言わせていただきました。 ○大日向部会長  ありがとうございます。今、庄司委員がお示しくださった20ページのこのデータは、隣 の審議官が保護者アンケートだとおっしゃって、子どもの意見は違うだろうと。何かおっし ゃいますか。 ○香取審議官  後で結構です。 ○大日向部会長  子どもの声というのを聞いたアンケートというのはないのでしょうね。子どもがどこで過 ごしたいか。では大石委員、お願いいたします。 ○大石委員  子どもの声、どこで過ごしたいかという回答ではないのですけれども、学童保育について の子どもの感想を聞いたアンケートは、何年か前に千代田区でなさっていたという記憶があ ります。  それから、すみません。ついでに発言してもよろしいでしょうか。私も宮島委員と全く同 感で、基盤整備につきましてはやはり責務という形にしていく必要があるのではないかと思 います。  それからまた、整備していけば保護者の就労がまた増える。経済学で言えば内生性という、 どちらが先かわからないような因果関係があるわけですけれども、やはり両立支援という観 点から、それも望ましいことだと考えるということになるのではないかと思います。以上で す。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他にいかがですか。杉山委員、お願いいたします。 ○杉山委員  ありがとうございます。恐らく放課後の子どもがどのように過ごすかという考え方につい ては、多様性がいろいろなところに出てきていて、いかに対応するかというのが一つのポイ ントとなります。基準も必要ですけれども、基準を満たしたらそれでオーケーというのでは なくて、それこそ本当に地域によって全然違って、自然の豊かな場所であれば、学校にいる よりは外に出て行って地域のおじさんやおばさんと畑仕事をしたり、その方が実は良かった りするかもしれない。そのような多様性も含めて考えたときに、どのような制度設計のよう な仕組みを作っていくのかというのがとても悩ましいのだろうと思いますが、一つは評価で 見るというか、こういう子ども像が良いというようなところで、とても難しいのはわかって いますが、それをどう見るかというような評価で見ていくというような落としどころの仕方 というのも一つあるのではないかと。私が申し上げたいのは、ポーズでよいとは全く思って いなくて、そのように地域の中で、いろいろな子どものやりたい気持ち、それから気まぐれ な気持ちも全部引っくるめて対応していこうと思ったら、相当高い専門性が必要だというこ とですから、その専門性は何なのかという議論も必要ですし、それはどうしたら育てられる のか、獲得できるのかということも必要だと。それに見合う給与の保障はどうするのかなど、 全部出てくるのだろうと思いますが、一度そういうことも考えて現実はどうなのかというと ころに戻っていったらよいのではないかと思っています。  例えば先ほどの庄司委員のお話も含むのですが、「放課後児童クラブについて(2)」の参考 資料の29ページに平日の終了時刻の状況は、18時までに終了するクラブが5割を超えてい る。それが17時になったらよいのか、保育園並みに夜遅くまで開いていて、子どもが晩ご 飯を食べ終わるまで開いているのが良い学童保育のあり方とは私は全く思っていませんの で、18時でよいのではないかと思います。その後は、もちろん多様な働き方をしている親 がおりますから、その人たちには個別に対応できるだけのいろいろな多様なサービスが必要 になってくるわけです。それを全部ここで議論して、学童保育はこうあるべきだというのは 全然現実に合っていないし、子どもの考え方というか、生き方にも合っていないと思います。 以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。ここまでの皆さまのご意見を伺っていますと、やはり保育園の量 的拡大とは全然質が違うのだろうという感想を持ちます。一方で親の生活も多様になってい て、他方で子どもの発達保障ということを考えますと、小学校1年のときは、やはり保育園 時代は19時ぐらいまできちんと守られていた子どもを、いきなり放置はできないけれども、 学年が進むにつれてある程度放牧してあげるようなことも必要ですし、悪さもできるような 空間も必要かもしれない。そう考えてきますと、量的整備というのは本当に多様です。地域 と都市部との差ももちろんありますが、子どもの発達段階に応じて、多様な柔軟な整備とい うことが必要。そうしますと、一律に提供体制確保責務を法律上課すなどということが難し くなってくるのかなというような気持ちもしていますが、皆さま、そのようなことでよろし いのでしょうか。なかなか難しいですね。  非常に専門性が問われる指導員を含めた放課後子ども対策にかかわる方々の専門性が非 常に大事だということの方にも少しご意見を移していただいて、量的拡大と併せたご検討を いただければと思います。質的な確保ということも、どうぞご意見をいただければと思いま す。速水参考人、お願いいたします。 ○速水参考人  ありがとうございます。私どもが放課後児童クラブを担当しておりますと、現場の方から よくお聞きしますのが、指導員を募集してもなかなか来てくれない。お越しいただいても割 と早く辞められて、なかなか大変だと聞きます。処遇が一番大きな問題だと思っております。 そして辞めていかれますので、私どもは毎年研修会を指導員がやっていますけれども、毎年 新しく新人の方がお見えになりまして、毎年同じような研修をしていかないといけないとい う問題もあります。やはり処遇の改善がされないと、なかなかそちらの知識も熟成されませ んし、職員の資質も上がっていかないという問題がありますので、まずは処遇の改善につい てここに書いていただいておりますけれども、しっかりとした制度にしていただきたいと思 っております。 ○大日向部会長  ありがとうございます。篠原委員、お願いいたします。 ○篠原委員  質の確保という部分ですけれども、清原委員からも意見が出ているのですけれども、ちょ うど11ページのところに研修の必要性という部分があります。やはり質を向上させるため にも非常に重要な部分だと思っております。前回までのいろいろな状況ということをヒアリ ングさせていただきますと、やはり人が少ないということもあると思いますけれども、非常 に忙しいということで、今の状況で「研修に行ってください」と言ったとしても、本当に研 修会に出席できるのかどうかという問題があると思うので、研修会に出席できるような形の、 出席しやすいような何かサポートも必要なのではないかと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他にいかがですか。大石委員、その次に杉山委員の順でお願いい たします。 ○大石委員  設置基準についてですが、先ほどのご説明の中で、何か設置基準を決めてしまうと今存在 している学童の中の幾つかはそれを満たさなくて違反していることになってしまうという ことがあったようです。確かに学童のサービスは多様な施設で多様に提供されていますが、 例えば学校内で行われる場合にはこのような形、自主グループで行われる場合にはこのよう な形というように、多少形態による基準を大まかに分けて設けるというようなことはできな いかと一つ思います。  もう一つは、質の確保と関連しまして、やはり職員の人員配置などを充実させてもらいた いところはあると思いますが、まず安全性の確保ができるのかといったことで、そこからし て脅かされている。出欠がはっきりとしない、あるいは家庭との連携を取ろうにも連絡ノー トを作る暇もない、読む暇もないなどというのがかなりの学童の実態かと思いますので、ま ず最低限のところの安全確保と家庭との連携・連絡といったところだけでも何とか少しずつ でも確保できるような体制づくりを進めていった方がよいのではないかと思います。以上で す。 ○大日向部会長  杉山委員、お願いいたします。 ○杉山委員  ありがとうございます。何度か児童員の職員向けの研修のような所の講師などをさせてい ただいて、現場のお話などを伺っていると、皆さまあまり明るくないというか、とても深刻 に悩んでいらっしゃることが多いと実感しているのです。それはやはり子どもを通して家庭 の姿が見えてしまって、そこの部分で何とかできないかと思うけれども、なかなか難しい。 保育園以上に親が出てこない。もちろん学校なので親がいつも出てくるのはおかしいのです が、それでもあまりにも親の姿が見えない。言ってみればネグレクト的な状況の中で、子ど もたちは学校、学童だけは行っているような状況も無きにしも非ずであろうということが伺 えるのです。こちらの資料の10ページにも書いてありますが、「養育基盤の弱い子どもや 障害児の利用が想定される」、そういう意味で家庭的に元気な母親や家族と元気な子どもと いう有り様ではなくて、何か少し気になる部分を持っている子どもであったり、家庭であっ たりというところに十分な目がいくソーシャルワーク的なものを求められるようになって きているのではないか。そういう子どもが1人いると、そこにとても時間と手間がかかって しまって、他の子どもたちに全然目が行かなくて学童が崩壊寸前など、そういうことも無き にしも非ずで、子どもたちが行かなくなってしまったなど、そうなってくることはままある わけですから、その辺にスキルがほしいと思っていらっしゃる方は相当いらっしゃるのでは ないかと思います。ですから、そこの部分にも十分対応できるようなことが必要です。それ は子どもに対してのケアはもちろんですけれども、家庭に対しても目がいったり、必要があ れば他の公的機関にもつなげられるなど、それこそ子育て支援でやってきたような部分を、 ここにもまたつなげていけることも必要なのではないかと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。先ほどの皆さまのご意見では、量の拡大は多様性ということ、子 どもの発達を考えた上でも多様な形態を大事にした量的拡大という皆さまからたくさんご 意見があったと思います。一方で形態が多様となりつつ、指導員の質をそれぞれ確保してい くということの最低基準は何かというと、少なくとも安全の確保ができる、あるいはその 方々が本当に安心して働ける雇用の安定性ということがあったと思います。  それから、何か地域で一極でその全部を見渡して監督などができる方々の質と、例えば多 様なところで大学生や高齢者やボランティアの方々が自由にかかわっていく質とは違って くるかと、ご意見を伺いながら感じたのですが、質の一律性ということもなかなかこの放課 後対策では言い切れない難しい問題があると思います。もう少しこの点に関してご意見があ れば頂戴したいと思います。山縣参考人、お願いいたします。 ○山縣参考人  先ほどの杉山委員の論点は非常に興味深いところですが、今の放課後児童クラブの指導員 については、児童厚生施設の児童の遊びを指導する者をベースにしたものを望ましいという ように恐らく置いておられる。これが11ページにあるものだと思います。そのことは結果 として、要は児童の遊びを指導する者ですから、いわゆるケアワーク的な要素を非常に重視 した人材を求めていることになっている。一方で、家庭の状況に対応する能力というのは、 流派によって違いますけれども、私の流派で言うといわゆるソーシャルワーク的な視点が必 要なのではないか。そこがベースの人たちをあまり配置する構造になっていない。たくさん 配置できないですから限界があるのですけれども、その辺はどちらを軸足にして置くのか。 プラス、あとは養成でカバーする、現任研修でカバーするしかないと思いますけれども、理 想を挙げたら児童指導員ですけれども、それはなかなか現実的には難しいだろうと思います。 そうしたときに、なおかつここに例示されているように、ケアワーク的要素というのが保育 士、幼稚園教諭というのが常に一番前に書かれるのが実態だと思います。現場がどうなって いるか私は正確には知りませんけれども、要は就学前の子どもたちを相当イメージしたよう なケアワークの要素が導入されていて、いわゆる小学生の遊びの広がりや友達関係の広がり など、そういうところに対応するベースに置いていないのではないだろうかと。そこを少し 工夫する。新たな資格を置きましょうということではなくて、現行の仕組みの中で少し変え ることはできないのだろうか。そういうところが一つの要素ではないかと思います。  それから、次のテーマに若干絡めて話しをさせてください。人材の確保に絡んでくるので すけれども、人材確保ができないから質が確保できないと連動しているような気がしていま す。そういう前提で考えたときに、児童館等を拠点にした人材確保であるならば、フルタイ ムワーカーをローテーション等によって確保できる可能性はあるけれども、放課後児童クラ ブの専任の者であるならば、いわゆる世の中にあるイメージの週40時間労働ができない体 制ですので、結局は大学生のアルバイト的な要素などになってしまっている。それをいわゆ る常勤労働者として位置付けるような付帯事業を付けていく方向で考えるのか、基本的には パートタイム労働なのだということなのか、その辺も私の中で今どちらが良いかはわかりま せんけれども、そことの関係がきっと質にもつながっているような気がします。 ○大日向部会長  ありがとうございます。ただ今、山縣参考人におっしゃっていただいた点は、質の問題を 考える上で示唆に富んだことだと思います。確かに保育士や幼稚園教諭というのは就学前の 子どもたちのケアをしてくださる方の資質ですよね。それを学童児に付言して現行制度が考 えられているところは再検討の余地があろうかと思います。他にいかがでしょうか。よろし いですか。  「利用方式、利用者負担について」の方にも少し移して、「財源・費用負担について」の 方にも議論を移してご意見をいただければと思います。そしてまた最後まで行ったところで 全体に戻っていただくということでいかがでしょうか。お手元の資料の6、7辺りで。駒村 委員だけはご意見がないのですが、ここの辺りではいかがですか。 ○駒村委員  皆さんのお話を聞いていて、まだそれぞれの項目について、頭が整理できない状態です。 先ほどの親の多様性、子どもの多様性、子どもの発達保障をしつつ専門性をという話になっ てくると、ものすごくレベルの高い専門性を逆に求められてしまうのではないか。そうなる と、研修くらいで本当に大丈夫かなという気持ちも一方で持ちながら、実は最初からうまく 整理しきれていない。この放課後の子育てについては、まだ議論は続くのでしょうか。1回 目ではヒアリングをして、今日詰めた議論が始まっていて、自分の中で、いろいろな話を聞 いていて整理しきれていないのです。多分利用方式については、そこも影響を与えて、今ま での議論がいったい政策として絵になった時に、具体的にどういう状態なのかが、整理でき ないので、今日はコメントを差し控えています。この後利用方式については、性格が利用方 式に影響を与えると思いますので、もう少し考えたいと思います。頭が整理しきれていない ので、今日は発言を控えておきます。すみません。 ○大日向部会長  それは駒村委員だけではなく、私をはじめとして大方の思いだと思いますが、室長、今後 の予定として、放課後対策はどういうスケジュールで議論がいくのでしょうか。 ○朝川少子化対策企画室長  この部会で取扱っていただくテーマが結構幅広くありますので、今回で放課後児童クラブ の議論は1回区切りをつけます。次回は病児・病後児を扱うつもりですが、それ以降も例え ば児童館を含めたすべての子育て家庭対策を扱ったり、折に触れ、近い分野に戻っていった りしますし、もう少し全体を見渡した議論をする会も何回か設けようと思っていますので、 そういった際にもまたご議論をいただければと考えています。 ○大日向部会長  というスケジュールのようですが、この問題に関して、何かがっちりとした制度体系が無 理なら、無理なのがなぜなのかを議論をしていただくと、そもそも論という大事な点にたど り着けると思いますので、揺れているところで結構ですので、あと30分ありますので、ご 意見をお出しください。宮島委員。 ○宮島委員  まさに制度になるとどうなるのかが、私の中でも整理がつかないのですが、子どもの様子 を見ていますと、まず一つのクラブにがっちりとした軸としての責任をもって、いろいろな ことをきちんとできる方は必要だと思います。その他の出入りする方に関しては、結構子ど もたちはいろいろな人が出入りすることを喜んでいて、例えば学生なのかわからないですが、 地域の人でサッカーが上手な人が時々来てくれるとか、小学校単位のクラブで地域との連携 があって地域の高齢者なども比較的近づきやすい状況ですと、いろいろな方に学ぶ機会を結 構子どもたちは喜んだりすると思います。職員としての専門性がある部分というのは絶対的 に必要だと思いますが、それ以外にかかわる人たちに関して、研修の機会は必要だと思いま すが、あまり資格要件を高くするよりは、それぞれの地域の方々や関心をもってくださる 方々が、それぞれの得意なことを子どもたちに伝えてくださる形が、非常に良いのかなと思 っています。 ○大日向部会長  ありがとうございます。内海委員、お願いします。 ○内海委員  杉山委員がおっしゃったことはとても大切なことだと思います。子どもたちは保育園と違 って同じ所ではなくて、いろいろなことをしたいわけです。ですから、もっと地域で、保育 所の延長の就労支援という確固とした軸は必要だと思いますが、その他の子どもたちも行っ ている子どもたちも、ともかく地域のいろいろな資源が子どもを巻き込む。例えば児童館だ けではなくて、図書館もあれば、いろいろなボランティアグループもある。そういう所に、 もっと子ども参加を呼びかけるような、地域ぐるみの次世代育成。企業の次世代育成ではな くて、地域ぐるみの子どもの居場所づくり。例えば川が流れている自然の豊かな田舎でも、 子どもたちは外で遊んでいないのです。文部科学省で子どもの放課後の調査をすると、ほと んど自宅にいてテレビ・ビデオを見ている。ほとんどです。体を動かしていない。外で自由 に遊べる。ちょっとサッカーボールを自由に蹴られる場所や川遊びが安全にできる場所など を全部つぶしてきた。それをもう1回子どもたちにどうやって返すのか。公園も年齢に合っ た自由な遊びができる、少し騒いだら「うるさい」と言われる所ではなくて、水も棒切れも、 駆け回れるような自由な土地を、人口何万の子どもがいたら、これぐらいのスペースは確保 しなければいけないとか、そういう子どもの居場所にもっと全体にお金をかける。図書室も 子どもが行きやすい、行ったら静かにしなければいけないではなくて、もっと司書がちゃん といて、子どもが本を選ぶときに言えるような人員が、指導員だけではなくて図書館にもそ ういう子どもへのまなざしを持った人を育てるとか、地域に博物館があれば子どもは無料で 自由に出入りできるとか、ヨーロッパ諸国は子どもは博物館は無料です。大人の半額ではな いのです。子どもにそういう伝統的な財産を渡すのだという意識で、子どもからお金を取ら ないとか。そうすると、子どもの居場所はかなり広がると思います。母親が家にいても今日 はここに行ってきますとか、そういう意味で多様なソースをもう少し増やして、子どもが自 分から選んで自分で時間をコントロールして、自分で仲間を探し、自分の趣味に合った所に アクセスできるような地域づくりが、一方ではどうしても必要だと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。大石委員、お願いします。 ○大石委員  いろいろなご意見を伺っていて、私たちはどうしても子どもに対してこういうふうになっ てほしいという夢がいろいろあるように思いますが、現実の問題として、例えば学童のグル ープがもう少し小規模であれば、やる気のある指導員だったら、今日は地域の図書館に行っ てみましょうとか、グループに分けていろいろな活動をさせることができるのだと思います。 しかし、今の現状として、何十人もの子どもを1人か2人くらいのスタッフでコントロール しながらやっていくしかないという状況に置かれると、個々の指導員の工夫とか、やってみ たいことを実現できるような人員体制に、そもそもなっていないというところがあります。 まずそこのところを確保していけば、おのずとそのあり方ももっと多様で、内容も充実して いくのではないかと思います。  それから、「多様なあり方」というところをあまりに言い過ぎますと、最低限のところが 確保されないという恐れもあるかと思います。働いている親からすると、子どもがどこにい るのか、今日学童に本当に行ったのかがわからないし、確認することができないわけです。 自分が見ることができなくても、その時にちゃんと子どもが来ている、来ていないの確認を してくれるということを最低限のこととして求めたいのですが、それも今はあまり保障され ていないというのが実態だと思います。  さらに、学童に行ったら行ったきりというケースは実はあまりないのではないかという こともあります。それぞれの子どもは習い事をしていたりして、今日は16時で帰るとか、 今日は学童に行かないでどこどこに行くとか。それでも、まずコアとして行ける所がはっき りしていれば、その後は親と子の話し合いで、「では今日は誰々の家に行く」という選択肢 は広がると思います。まずコアのところとして、今日はここへ来た、先ほど帰ったというと ころがはっきりわかる。そういったところをまず保障していくことが求められていると思い ます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。子どもの生活の場、発達保障として最低限、安全性や親が安心 して働けるためのコアを整えた上での多様な選択肢という2階建て、3階建てにしていけば、 おのずと基盤整備のあり方等が決まってくる、資格要件も決まってくるのではないかという 意見だったと思います。それに関連して利用者負担、利用方式というのも、そういう観点か らご意見がある程度まとまる可能性があると考えていましたが、いかがでしょうか。また利 用者負担や財源・費用負担に関しては、何もご意見をいただいていないと思いますので、こ の辺りに関して、どなたか。まだ今日ご発言のない吉田委員、よろしくお願いします。 ○吉田委員  大変難しい課題ですが、実は今ふと思い出していたのが、二月ほど前に、たまたまミュン ヘンに行ったときに「もぐらの家」という、要するに小学校を終わった後の子どもが、冒険 遊びをするかなり素晴らしい環境がありまして、日本ではないわけですから、いわゆる放課 後児童対策の要素もあるし、全くそうではない家庭の子どもも来て、かなりダイナミックな 遊びをし、ナイフやのこぎりを使って自分たちで家を造るということをやっていまして、全 く日本の放課後児童とは発想が違うなということを思いつつ、幾つか私の考えを申し上げた いと思います。  再三出ていますように、一つは「新待機児童ゼロ作戦」に見られるように、保育所よりも 圧倒的に量を増やさなければいけないというかなり大きな課題。一方で、質が認可保育所の 制度のようにかちっとしたものでない中で、どうやって質を上げるのかという量的にも質的 にもかなりファジーな中で、しかし求められるものがものすごくハードルが高いということ を痛感します。それだけに、財源がしっかり要るだろうと思いますが、今日の資料にもあり ますように、この放課後児童の財源というのは、事業主負担も実はあるわけです。私はよく わからないのですが、今回政権が変わって、もし子ども手当てが基本的に税財源だけでまか なわれてとなって児童手当がなくなると、児童手当の勘定がなくなって、こういった部分に まで影響してくるというのを、今後どのようにシミュレーションすればよいのかということ も含めて、財源がきちんと、まさに重層的な財源が担保されるような方向だけは、この部会 としてきちんと打ち出しておくべきだろうと思います。  それとともに、保育サービスと同じように、これも難しいのですが、スピード感を相当も っていかざるを得ないということも、恐らく確認をしておく必要があるだろうと。多様性に ついて申し上げると、基本的に小学校ということでしたが、部会長もおっしゃったように、 小学校の中にずっと閉じ込めるような発想でよいのかということで、実際に不登校の子ども が、小学校以外の児童館あるいは保育所併設の児童館で同じ小学生の友達ができて、ようや く友達ができたことで小学校の不登校が直って、小学校に行けるようになったという実例も ありますので、必ずしも小学校の中に放課後児童クラブを置くことが良いのかどうかという ことはあろうかと思います。あるいはドイツでは保育所に学童をくっつけた「ホルト」がむ しろ広がる傾向にありますので、もちろん小学校で放課後の居場所ということでも、施設的 に恵まれた数も多いということでよいのでしょうが、同時にいろいろな公立・私立の児童館 もありますし、保育所隣接型もあります。数は少ないのですが学校法人の幼稚園がやってい るケースもある。そういう意味の多様性はこれだけ量も必要であるということであれば、当 然必要だろうと思います。  同時に、保育所についてもいえますが、親が働いている、働いていないということで果た して子どもの関係性が分断されてよいのだろうかということで、素朴にそういう分断をしな い利用する子ども自体も多様なものを認めるような放課後児童対策であってほしいと思っ ています。特にこの資料にありますように、「家庭でもない、学校でもない、第三の場所」 ということであれば、なおさら親が働いている、働いていないということだけではない、も う少し幅広い子どもの関係性を許容するような対策であってほしいと思っています。とりあ えず、以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。今、吉田委員が起こしてくださった点 は大変重要だと私も考えています。今日の議論は放課後の子ども対策が非常にファジーで多 様性に富んでいるというご意見をたくさんいただきましたが、だからといって必要ではない ということでは絶対にないわけです。スピード感をもった量的な拡大が必要であることは今 までも前提としてご意見をいただいていると思います。だからこそ、しかし子どもの発達の 学童期ということを考えたら、多様性ということを非常に大事にした量の拡大、そのために は質も非常に専門性も含めて問われてくる。指導員の雇用の安定も非常に大事となると、こ れはファジーだから多様だから財源が回ってこなくてよいということは全くなくて、逆にこ の議論を進めて財源を確保する方向にこの部会では進めていきたいと考えています。まだ少 し時間がありますが、何かもう少し追加してご意見がある方。宮島委員、お願いします。 ○宮島委員  後半の方で、いわゆる文部科学省型の「放課後こども教室」と厚生労働省型と今並行して いる二つの型をどのように進めるべきかという記述がありますので、それについてご意見を 申し上げようと思います。  今のスピード感ということを考えましても、現状の児童館の役割はものすごく大切で、そ れも必要だと思っています。一方で、小学校の可能性というのはものすごくあると思います。 現実に小学校は数があるわけですし、みるみる必要な教室は減っているわけで、空いている 教室もありますので、例えば畳を敷くとかいろいろな形で、今ある資源としてどのように良 い形で利用していくかという視点がまず必要かと思います。個人的な意見になってしまいま すが、私の家がたまたま完全ないわゆる厚生労働省型から完全に全児童型の地域に引っ越し をしたので、両方を見た経験での素朴な感想を言いますと、まず全児童でないいわゆる学童 保育型は、ものすごくホールド感がありました。それは非常に良いことだと思いますし、親 の就労ということに関しても、まずそこからスタートしているという非常に良いところがあ ったと思いますが、一方で数が足りないせいもあって、ものすごく子どもにとって縛り感が ありました。週4日いかないなら退会というルールでしたし、かつ学校を使っていないとこ ろでは、どんどん人が増えて、学校のわきにたつプレハブにたくさんの子供がいるという状 況になっていまして、隣に小学校があるのに、小学校が全然使えないで雨の日はただのすし 詰めになっているという状況がどうにかならないものかと思っていました。少し時間が経っ ていますので、それよりも改善していると思いますが、学童だけで分離してやろうとすると、 ニーズの広がりに対応できない部分が出てくるのかなと思いました。後者の全児童型に関し ましては、当初は一人一人に対する対応がもしかしたら欠けるのかなという心配もあったの ですが、逆に開所日がたくさんあって、うちの近くの場合は19時までいられるのですが、 そういう所が確保されていますと、そこに親が働いている働いていないにかかわらず、いろ いろな子どもが参画できるというメリットはものすごくあると思いました。小学校の理解に もよるのですが、校庭開放とそのまま連携できていたり、体育館が使えたり、もし、具合が 悪い子は保健室が使えたり、学校で今ある施設をフルに活用できる形になりますと、かなり 子どもが活動できるスペースが広がり、放課後かなりいろいろなことができるというメリッ トが一つある。  繰り返しになりますが、子どもたちが親の就労と関係なく約束をしたり、今日は校庭開放 に行ってから放課後クラブに行こうということができるというメリットが非常にあると思 います。目先もちろん数が足りないわけですから、両立支援をまず重々視野に入れていくべ きだと思うのですが、向かっていく方向はこの二つの型の良いところの良いところ取りとい うのか、どの子どもも参加できるし、きちんと開所時間や開所の日数も確保されているとい う形を、最終的には目指していく方が良いと思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございます。山縣参考人、お願いします。 ○山縣参考人  全体に戻ってよいということなので。私は今の宮島委員の意見に全く同感で、私自身の子 どもも全児童型の所で育って、子ども同士の交流が非常に進んだという実感があります。一 方で、専用の施設も別にあったのですが、その子どもたちとは隣にいても遊べなかった。夏 休みでさえなかなか遊べないという子どもの関係があったというのが実感としてあります ので、現実路線として確保しないといけないというのは冒頭言ったとおりですが、将来的に は私は一体型を目指すべきではないかと今でも思っています。  一方、今発言したいのはそのことではなくて、少し話は違うのですが、4月以降保育現場 で一時保育から撤退する民間保育所が出てきて、自主事業化している所が幾つかあると聞い ています。その辺の実態はどれぐらい把握されているのかを私はわからないのですが、保育 制度の変化・改革によって、それが起こってしまったという現実があると思います。増えた 所も当然ありますが、撤退した所もあるという意味です。放課後問題についていうと、「小 学校で展開をしているので、うちは他は結構です」という形で、この放課後子どもプランが いわゆる民間の専用の放課後児童クラブをつぶしている部分があるように聞いています。こ れがどれぐらいあるか全くわかりませんが、つい最近行った民間の保育所も、小学校でやる のでということで、今年から自主事業に変わりました。要は、市が「予算がないので補助で きません」ということで自主事業になって、自園の卒業生ときょうだいがまだ保育園にいる 家庭についてのみ自主的に対応しますということを最近ある保育園で聞いてきたところで す。それがどうも一つや二つではなさそうです。私は全児童対策は非常に重要で賛成派です が、それをやっているからといって、市町村が他の選択肢を狭めていくことがないようにし なければいけないのではないかと言いたかったのです。 ○大日向部会長  杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  ありがとうございます。多分専門性にも絡んでくると思うのですが、この子を私は把握し ているというか、持っているというか、「見守る」というのは保育園くらいでよいと思うの ですが、見ているということを持っている人。何となく変な言い方ですが、それが私は専門 性だと思っていて、例えばいろいろな議論をこの間もいろいろな人としてきたのですが、学 童にランドセルを置いてピアノ教室に行ってきて、ただいまと帰ってきて、家庭が帰れない のだったらそういうことができる場所である。行って帰るということを知っているという人 がいらっしゃればよいのではないか。その方は例えば学校との連携がきちんとできていて、 学校での様子から放課後から何となくわかっている。子どもの秘密は深堀りしない。全部私 は知っていてという、親とも全部話をしていてというのは、子どもは好きとは思えないので、 その辺りもきちんと配慮ができる方ということで、何が言いたかったかというと、学校は外 せないでしょうということです。それは場所として外せないだけではなくて、午前中から午 後まで、放課後になるまでは学校にいるわけですから、子どもがその後に行く場所ですので、 そういう意味では、学校とのどのような連携が必要なのかは、文部科学省ときちんと議論を して、そもそも論にもっていくということも時間はかかるかもしれませんが必要なことだろ うと思っています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。そろそろ時間も残り少なくなってまいりましたが、駒村委員、 お願いします。 ○駒村委員  あまりお金の話はしたくないのですが、お金の話も少し聞いておこうかというか、議論し ておかなければいけないと、先ほども触れられましたので、事務局にも根拠を含めて教えて もらいたいことがあります。参考資料の35ページを見て、こういう理解でよいかどうかで すが、運営費の負担は2分の1を保護者が負担することを想定してある。まず2分の1とい うのがどういう根拠であったのかを確認させていただいて、見方としては36〜70人の場合、 基準値が240万円ということであれば、親負担は120万円くらいであって、これは大体平 均50人で割ると2万円くらいであるという理解でよいのかということを確認させていただ いて、2万円というレベルなので実際の負担はこれもどう計算するかわかりませんけれども、 月額で考えていくのか年額で考えていくのか、その辺の数字のところもよくわかっていない のですが、これと実際の負担状況と比較して、この差額というのは実際には、自治体が出し ているという理解でよいのか。そもそも2分の1の負担というのが前提なのか。このサービ スの性格を考えてくると、この2分の1自体を動かすことが議論になり得るのかどうなのか を教えてもらいたいと思います。 ○大日向部会長  室長、お願いいたします ○朝川少子化対策企画室長  2分の1のところは、一般的にいろいろな子育て支援のサービスが、概ね利用者負担は2 分の1だということが基本に設計されていまして、実際に2分の1を取りなさいという設計 ではなくて、国の補助基準を決めるときの考え方ですが、実は保育所も今は大体利用者負担 が総じて4割くらいになっていますが、昔は5割くらいだったのです。それ以外のいろいろ な保育の周辺的なサービスメニューも保護者負担が大体2分の1くらいを前提に考えられ ていて、放課後児童クラブもそういった流れの中で、2分の1に設定されているということ だと思います。 ○真野育成環境課長  この制度は保護者からお金を「取ってもよい」という形で書いてあるのですが、「取れ」 とは書いていなくて、この2分の1も予算上の積算で2分の1にしている。先ほど朝川少子 化対策企画室長が申し上げたとおりですが、予算上で2分の1にしておりますので、そこは 財政当局の折衝の中で変えていくことは可能だと思います。  それと基準額ですが、ここで例として242万円という基準額を出していますが、基本的 にこれの事業費が約500万円ということです。この基準額というのは、公費部分で国と県 と市町村が3分の1ずつを持っていまして、そのトータルが公費分が242万円で、全体の 事業を運営するときは500万円を想定しています。500万円ですと、保護者1人当たり、 40人だとしますと約5,000円です。それが実態として約1,000万円かかっている。実態と の乖離があるということで、いろいろな調査でも全体が約1,000万円かかっていると出てい ます。そうなりますと、月1万円ということになりますが、よろしいですか。 ○大日向部会長  駒村委員は、今の回答でよろしいですか。 ○駒村委員  わかりました。想定しているものが1万円ということがわかればよいのですが。  あともう一つ、2分の1というのは特段こだわる必要はない、予算上の措置ということで ないといえばないのですが、2分の1というところにこだわるかどうかということが一つ悩 ましかったところと、ユニバーサルなサービスという、非常に広く保障をしていくならば、 なるべく負担を小さくすべきではないか。お金があるかないかで利用アクセスに差がつくよ うなことはなるべくないような工夫をしなければいけない。要するに、これは全体のサービ スの位置付けにかかわる話だなと思って、確認のために聞かせていただきました。ありがと うございました。 ○大日向部会長  吉田委員、お願いいたします。 ○吉田委員  とりあえず今回でいったん区切りということですので、一つだけお話ししておきます。基 準の問題ですが、資料では何らかの基準は必要だろうというニュアンスで、私も基準は必要 だと思います。例えばいわゆる保育所をはじめとした認可施設を認可するときのような、要 は外形的な事前規制というと言い過ぎかもしれませんが、そういう最低基準としての認可基 準ではなく、認定こども園というのは例えば幼稚園だろうと保育園だろうと認可外施設だろ うと総合的な機能を持っていれば機能認定をするということですから、認可施設に対する基 準のあり方と認定こども園に対する基準のあり方はそういう意味では少し違う。そういう点 から言うと、この放課後児童クラブの問題については認可的な発想の基準ではなくて、本来 の子ども環境としてどうあったらよいのかということを良い意味で少しファジーに許容で きるような、しかし最低限の安全や、あまり過密な空間でないなど、もうこれ以上絶対に処 遇環境を下げてはされてはいけないということは押さえつつも、機能に着目した基準をうま く設定していただく発想があればよいのかなと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。そろそろ時間も尽きておりますが、ここで香取審議官から、お 願いいたします。 ○香取審議官  本日は大変良い議論をしていただきまして、ありがとうございました。冒頭に事務局から ご説明しましたように、また委員のご発言にもありましたように、放課後児童クラブは、制 度的にも認可保育所等と比べて発足が遅れたということもありますし、法制的な位置付けそ の他も必ずしも十分ではない。前回の改正でようやく法的に位置付けたものなので、実はま だまだ議論すべきこと、位置付けなければいけないことが多分たくさんあると思っておりま して、本日は今後の新しい制度設計をしていく上でも非常に参考になるご議論がいただけた のではないかと思います。我々は最後には制度の形を考えていかなければいけないので、あ る程度議論を整理していくことが必要なのだろうと思っております。この話はこれからまた いろいろな場面で議論していかなければいけないと思っておりますが、恐らく一つは今日も ご議論がありましたが、まずいわゆる全児童対策といいますか、放課後の子どもの居場所、 生活の場をどのように考えるか。これは言ってみれば、広い意味での、親の就労うんぬんと は関係のない子どもの発達をどのように保障するかということです。この議論ではお話があ りましたように、子どもはこの年齢になりますと、さまざまな自主的な活動もしますので、 何か一つのサービスでそれをすべて構成することは恐らくできないので、そうすると現在で もあるさまざまなサービス、児童館やプレイパークあるいは学校のさまざまなクラブ活動な ど、そういったもの全体としてどのようにカバーするのか。子どもはこの年齢になりますと、 自分で放課後の時間の使い方を選ぶということがあり得ますので、そういうことも考慮する 必要があるのではないかと思います。  他方で、これも委員のご発言にありましたように、全体の6割ないし7割の家庭は、親が 就労する前提で、家庭に親がいないという前提での放課後の時間の過ごし方という意味で両 立支援としての放課後児童クラブの位置付けが要るということです。放課後児童クラブは、 全児童対策といいますか、放課後の居場所という意味では、全体のサービスの一つを担うわ けですけれども、恐らくかなり大きい部分を担う、あるいは今後とも担っていくということ になっていくのではないかと思います。その意味で、単に居場所づくりということではなく、 先ほど子どもをホールドするというお話がありましたが、どうしても親側からすると、いわ ば保育園の延長で確実に子どもをホールドしてほしいという部分がありますが、他方で子ど もの主体性や自主的な発達というものを幼稚園や保育園とは違った意味で考えていかなけ ればいけないという問題があるのではないかと思います。このことは制度的に何をどのよう に保障していくのかというシステムというか、体系で考えるというように、我々として翻訳 し直して考えるという作業が必要なので、その辺は今日のご議論を踏まえながら少し整理を して、あらためてまたさまざまなご提案をしていきたいと思います。  もう一つは、職員の質の問題や処遇の問題がありました。この問題は実は今日はあまり出 ませんでしたが、これは事業主体をどのように考えるか。少し硬い言葉で言うと、雇用管理 や働いている人のキャリアパスなど、多分そういう視点でのアプローチがもう一つ必要なの ではないかと思います。この問題は福祉施設の職員あるいは介護の職員等々、福祉に従事す る人たち全体に共通する課題ということで、そういう観点でのアプローチというものも考え ていかなければいけないのではないかと思っております。  それから、費用負担のお話ですけれども、今日は先ほどこれも事務局からお話しいたしま したが、保育の世界といいますか、保育所も含めてですが、2分の1が公費、2分の1が利 用者負担。その2分の1の利用者負担を0円から全額徴収までの応能負担で取るというのが オーソドックスなスタイルになっております。学童クラブは予算で措置をしてやってきたと いうこともあって、2分の1公費、2分の1利用者負担というところは一応決まっているわ けですが、予算措置ということもあり、議論にもありましたように、実際の費用との乖離の 問題や、その2分の1の取り方も、かなり自治体の判断にに任せていますので、定率で何千 円という取り方をしている所もあれば、段階的に取っている所もあれば、おやつ代程度しか 取らない所もあるということで、これもバラバラということになります。これから新しいシ ステムを考えていく上で、これは保育所を含めてですが、そもそも利用者負担をどのような 哲学で、どのような考え方で取ることにするのか。あるいは公費といわれている部分につい て、どのような財源を考えるのか。今はたまさか、児童手当特別会計のお金、実際には企業 負担の財源を使ってこの事業をやっているわけです。それと地方負担の組み合わせになって いるわけですが、全体として、次世代支援全体の財源をそれぞれのサービスの機能あるいは 役割との関係で、どのような財源を考えるかというのは、全体の財源構成の中でやはりこれ は考えていくことが必要なのではないかと思っております。この学童クラブだけの問題では 解決できない問題も含めて、我々としても今日のご議論を参考に議論を整理して、あらため てまた皆さま方にお諮りするということを考えております。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今、香取審議官には今日の皆さまのご議論を大変的確にお まとめくださいましたことを感謝いたします。  今日の各委員のご意見は、これ1本に絞るというよりは、揺れた意見が多かったと思いま す。それだけこの放課後対策は幅が広くて、また深いテーマだということを再確認できたと 思います。ファジーな部分をたくさん残しながら、それを制度体系に落としてくださるとい うことも、今、香取審議官からお言葉をいただきました。大変難しい作業をお願いすること になって恐縮でございますが、制度体系に落としていただいたものを基に、この放課後対策 に関してはもう一度ご議論の場を設けたいと思いますので、今日はこの辺りとさせていただ きたいと思います。  次回の日程につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は誠にありがとうございました。次回の日程につきましては、9月30日水曜日の17 時から厚生労働省9階省議室で予定しております。引き続き、新たな制度体系の設計につい てご議論いただきたいと考えております。今のところ、病児・病後児をテーマにしたいと思 っています。お忙しいところ恐縮でございますが、ご出席いただきますようよろしくお願い いたします。 ○大日向部会長  それでは本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省  雇用均等・児童家庭局総務課  少子化対策企画室  (内線7944)