09/08/31 平成21年8月31日薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会資料 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成21年8月31日(月)  16:00〜 厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(13名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 庵 原 俊 昭、 守 殿 貞 夫、 清 水 秀 行、   竹 内 正 弘、 田 村 友 秀、 土 屋 友 房、 濱 口   功、    早 川 堯 夫、 前 崎 繁 文、 溝 口 昌 子、 山 添   康、   ◎吉 田 茂 昭  (注)◎部会長 ○部会長代理    他参考人3名    欠席委員(4名)   新 井 洋 由、○池 田 康 夫、  岡   慎 一、○堀 内 龍 也    3.行政機関出席者    岸 田 修 一(大臣官房審議官) 成 田 昌 稔(審査管理課長)、 森   和 彦(安全対策課長)、 豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 松 田   勉(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 平 山 佳 伸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 赤 川 治 郎(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開 催させていただきます。本日はお忙しい中御参集いただきまして、ありがとうございます。 現在のところ、当部会の委員数17名のうち11名の委員に御出席いただいておりますので、 定足数に達していることを御報告します。また、新井委員、池田委員、岡委員、堀内委員 より御欠席の御連絡をいただいております。飯沼委員、田村委員は後ほど遅れて来られる ということであろうかと思っております。  本日の審議事項、議題2に関して、参考人として独立行政法人国立病院機構三重病院名 誉院長の神谷齊先生をお呼びしております。また、その他の議題1に関して、参考人とし て群馬大学大学院医学系研究科の池康嘉先生、北里大学北里生命科学研究所の砂川慶介先 生をお呼びしております。  それでは、部会長、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 それでは、本日の審議に入ります。事務局から配付資料の確認と、審議事 項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委 員の名簿を配付しております。議事次第に記載している資料No.1〜10までをあらかじめ お送りしております。このほか、資料No.11「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、 資料No.12「専門委員リスト」、資料No.13「競合品目・競合企業リスト」を配付しておりま す。また、当日配付資料として、資料No.1-2、審議議題1に関する「予診表(案)及び説明 文書(案)」、資料No.3-2「正誤表」、資料No.10-2「申請会社の回答書に対する意見」を配 付しております。  続きまして、本日の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」について御報告し ます。競合品目選定理由については、資料No.13です。  1ページを御覧ください。本日の審議議題1「サーバリックス」に関しては、本剤の期 待される効能・効果は「子宮頸癌等の予防」で、本邦でこの同種の効能・効果として現在 承認申請中である1品目、具体的には万有製薬が申請しているワクチンを競合品目として 挙げております。  2ページです。審議議題2「プレベナー水性懸濁皮下注」です。この品目は「肺炎球菌 による侵襲性感染症の予防」の効能・効果を予定しているものです。本剤と同様の効能・ 効果を有している品目は現在ございませんが、「肺炎球菌による感染症の予防」を効能・ 効果としている「ニューモバックスNP」のみ国内で承認・販売されている同種・同効品 目であることから、この品目が競合品目として挙げられております。  3ページを御覧ください。審議議題3「ラスリテック」です。本剤については、同種の 効能・効果及び薬理作用を有する製剤が存在しないことから、競合品目はなしとされてお ります。  4ページを御覧ください。審議議題4「オゼックス」です。本剤は、肺炎及び中耳炎の 小児感染症において、薬剤耐性が問題になっているPISP、PRSP、BLNARなどの耐 性菌対策を目標に開発されたフルオロキノロンです。本剤と同様に薬剤耐性菌対策を目標 に開発された薬剤として、「クラバモックス小児用ドライシロップ」があります。また、 小児感染症の薬剤として汎用されている薬剤としてセフェム系薬剤が競合品目の候補に 挙げられております。以上のことから、これらについて売上高の多い順にメイアクト、フ ロモックス、セフゾン、バナンドライシロップなどがあることから、開発目的が同じ1品 目「クラバモックス」及び売上高上位2品目である「メイアクト」と「フロモックス小児 用細粒」を競合品目として挙げたということです。  5ページです。審議議題5「ベネフィクス静注用」です。本剤については、「血友病B (先天性血液凝固第IX因子欠乏症)患者における出血傾向の抑制」の効能・効果を予定して おり、遺伝子組換え型の血液凝固第IX因子製剤です。本品目とほぼ同様な効能・効果及び 作用機序を有するものとして、現在、人血液凝固第IX因子製剤としてこちらに掲げられて いる3品目が国内において承認されていることから、これら3品目を競合品目として選定 したということです。以上でございます。 ○吉田部会長 ただ今の事務局からの御説明について、特段の御意見、御質問はございま すか。  ないようですので、本部会の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」について は、皆様の御了解を得たものといたします。それでは、各委員からの申出状況について御 報告をお願いします。 ○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。議題1「サーバリックス」 については、退室委員はいらっしゃいません。議決には参加しない委員は竹内委員です。 議題2「プレベナー」については、退室委員、議決には参加しない委員ともにいらっしゃ いません。議題3「ラスリテック」については、退室委員はいらっしゃいません。議決に は参加しない委員は竹内委員です。議題4「オゼックス」については、退室委員はいらっ しゃいません。議決には参加しない委員は竹内委員、前崎委員です。議題5「ベネフィク ス」については、退室委員、議決には参加しない委員ともにいらっしゃいません。議題6 「生物学的製剤基準の一部改正」については、退室委員はいらっしゃいません。議決には 参加しない委員は竹内委員です。  なお、議題6については審議事項の議題1及び議題2に関連するものですので、各々一 緒に御審議いただければと思います。 ○吉田部会長 ありがとうございました。本日は審議事項が6議題、報告事項が3議題、 その他が1議題となっております。  それでは、議題1、資料No.6-2について、医薬品機構から概要の説明をお願いします。 ○機構 議題1、資料No.1、医薬品サーバリックスの製造販売承認の可否等につきまして、 医薬品医療機器総合機構より御説明します。  本剤は、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)16型及び18型の外殻を構成するたん 白質を、バキュロウイルス発現系を用いて昆虫細胞により産生させ、得られたウイルス様 粒子たん白質を新規有効成分とするワクチンです。アジュバントとして、アルミニウムの ほかにサルモネラ菌由来のリピドA誘導体であるモノホスホリルリピドAを含有してお ります。子宮頸癌の主な原因はHPVの感染とされておりますが、本剤は、主要な癌原性 ウイルスとして知られているHPV-16型及び18型をターゲットとする子宮頸癌の予防ワク チンとして開発されております。  本剤は、2009年8月時点で、欧州など96か国で承認を取得しております。現時点にお いて、本邦で既承認の類薬はなく、子宮頸癌予防対策の一つとしてHPVワクチンの臨床 使用を求める医療上の要望及び社会的関心が高まっております。このような背景を踏ま え、厚生労働省の指導により、国内臨床試験の終了を待たずに平成19年9月26日に本剤 の製造販売承認申請がなされております。国内臨床試験成績については、10歳〜15歳の 健康女性を対象としたHPV-046試験の総括報告書が□年□月□日付けで提出され、また、 20歳〜25歳の健康女性を対象とした国内主要試験であるHPV-032試験の中間解析結果が □年□月に提出されました。審査チームは、この中間解析の結果に基づきHPV-032試験の 評価を進め、□年□月□日付けで提出された最終総括報告書の内容と矛盾のないことを確 認しております。なお、本品目は、優先審査品目に指定されております。  本品目の専門協議では、資料No.12に示す先生方を専門委員として指名させていただい ております。  以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に御説明します。  本剤の有効性についてですが、HPVの感染から発癌に至るまでの期間が長期にわた り、その頻度も低く、真のエンドポイントである子宮頸癌の予防を指標とした臨床試験を 実施することは、現実的に困難であることから、海外で実施された主要な試験においては HPV-16/18型に起因する子宮頸癌の前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍、即ちCINのグレー ド2以上)の予防を主要評価項目として試験が実施されております。審査報告書45ペー ジ、表17にお示ししておりますが、本剤群に比べて対照群で前駆病変(表タイトルでは 「CIN2+」と記載)が多く認められ、HPV-16/18型に起因する前駆病変の予防に係るワクチ ンエフィカシー、表の一番上の行、右から2番目のカラムですが、97.9%信頼区間の下限 が0を上回り、本剤群と対照群との有意差が示され、本剤の有効性が確認されております。  本邦においては、HPV-16及び18型による6か月以上の持続感染を指標に試験が実施さ れました。審査報告書35ページの表4にお示ししているように、持続感染が認められた 例はいずれも対照群であり、ワクチンエフィカシーの99%信頼区間の下限は0を上回り、 有意差が認められております。  低年齢層を対象とした試験については、国内、海外ともに免疫原性が指標とされており ます。国内臨床試験において、審査報告書37ページ表7にお示ししているように、本剤 接種により、接種前の血清抗体の有無にかかわらず、自然感染時を大幅に上回る抗体価が 得られております。また、海外臨床試験成績から、本剤の接種により、少なくとも数年間 高い抗体価が維持されることが報告されております。なお、現時点においては追加接種の 要否については明らかになっておりません。また、試験成績から、HPV-16、18型以外の HPV型に対する予防効果は不明であり、また、既に感染している場合の有効性は期待で きないと判断しております。  安全性については、審査報告書52ページよりお示ししておりますが、国内、海外とも 接種部位反応が顕著に認められております。しかし、これらの症状は一過性であり、忍容 可能と判断しております。また、全身症状については、現時点では特段、本剤に限って問 題となる事象は報告されておりません。  しかし、本剤はToll-like receptor4のリガンドであり、自然免疫応答の活性化への寄 与が知られる新規アジュバント成分であるモノホスホリルリピドAを含有すること、ま た、昆虫細胞をたん白質発現細胞として用いた本邦初の遺伝子組換え製剤であること等を 踏まえますと、特に慎重に安全性情報を収集し、適切に情報提供していくことが重要と考 えております。  製造販売後には、審査報告書65ページ中ほどにお示ししておりますが、日本人におけ る長期の有効性及び安全性に関連する情報収集のために、HPV-032試験の被験者を対象と した長期追跡調査の臨床試験としての実施が予定されております。また、1,000例を対象 に全3回接種の情報を収集する使用成績調査の実施が併せて予定されております。  以上のとおり、機構での審査の結果、効能・効果を「ヒトパピローマウイルス16型及 び18型感染に起因する子宮頸癌及びその前癌病変の予防」として本剤を承認して差し支 えないとの結論に達し、医薬品第二部会で審議されることが適当と判断しました。本剤は 新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年が適当と判断しております。ま た、原体、製剤とも劇薬に該当すると判断しております。本剤は、種としてはヒトから遠 いバキュロウイルス-昆虫細胞系を用いて製造されますが、このような発現系を用いて製 造される本邦初の医薬品であり、使用経験に基づくウイルス安全性担保に関する情報には 限界があることを踏まえ、生物由来製品とすることが適当と判断しております。薬事分科 会では審議を予定しております。  なお、本剤の承認に伴い、生物学的製剤基準の医薬品各条に「組換え沈降2価ヒトパピ ローマウイルス様粒子ワクチン(イラクサギンウワバ細胞由来)」を追加することになりま す。資料No.6-2に基準案をお示ししております。審議事項の議題6ではありますが、本剤 の承認の可否と併せて御議論いただければと思います。以上、御審議のほどよろしくお願 いいたします。 ○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見等 お願いします。 ○庵原委員 二点お聞きしたいのですが、ワクチンを3回打ったあとの昆虫細胞に対する 抗体は検出されなかったのかというのが一点です。というのは、昆虫細胞の安全性という 意味で、これを見るとそのようなデータがなかったような気がしたので、それが一点です。  それから、これはアジュバントに水酸化アルミとMPLが使われているのですが、MP Lだけのアジュバント効果が基礎データにはないのです。なぜ二つ加えなければいけなか ったのか、その辺の根拠みたいなものについてメーカー側から情報はありますでしょう か。この二点を教えて下さい。 ○機構 昆虫細胞に対する抗体については、ある程度検出はされております。しかし、本 剤の接種によって特段上がるとは、現時点で報告されておりません。一点目はそれでよろ しいでしょうか。 ○庵原委員 というのは、今、インフルエンザワクチンもバキュロ系で発現したものが日 本でも作られようとしています。そうしたときに、抗体が産生されたときにバキュロで発 現されたインフルエンザワクチンを打つと、さらに悪くなるのかならないのかとか。今後 バキュロ型で出てくるワクチンが増えると思いますので、これはこれでいいのですが、そ のほかのワクチンを打ったときに、これに対する抗体がさらに上積みされるのかどうか。 その辺りの情報は、やってみなければ分からないですね。 ○機構 おっしゃるとおり、その辺りはやってみないと分からないことかと思いますが、 少なくともサーバリックスを打っている時点で抗体の異常な上昇は見られていないとい うところです。  第二点のMPLの単独での検討ですが、少なくとも私どもで確認している中では、御覧 になったとおり常にMPLとアルミニウムと一緒の検討結果になっております。なぜ臨床 でMPL単独でやっていないのかという点については、今この時点では正確には分かりま せん。 ○庵原委員 もし情報があれば教えてください。というのは、MPLがTh1型で動いて、 水酸化アルミはTh2型で動きます。それを二つ混ぜることがどういう意味を持っている のか、そこが理解できないのです。 ○機構 実は、GSKとしては、正に御指摘いただいたTh1とTh2と両方の効果を意 図してMPLを配合しているという背景があります。 ○吉田部会長 ほかにございますか。 ○竹内委員 海外の有効性について教えていただきたいのですが、審査報告書45ページ の表17の見方ですが、審査報告書45ページでは中間解析をやるので、O'Brien-Fleming という方法でP値が0.021と0.039と設定されたと。ところが、表17ではP値が0.0001 と非常に有効性が出ているにもかかわらず、止めないで最終まで行ったという点を教えて いただきたいと思います。  もう一つは、本当に初めから中止することを想定されない場合に、どうしてこういうP 値を選んだのか。というのは、40ページの第II相試験では、同じようなバウンダリを使 いながら0.005、0.005で、最終的に0.046というやり方で計算しますので、もし自分が 統計としてこれに関わってきている場合には、もう少しP値を小さくして、止めなくして 後ろでというデザインをするので、どうしてこういうデザインをしたのかなということ と、会社側がやろうとされていることと少し矛盾しているのかなという点が疑問がありま したので、その辺りの経緯を教えていただけると助かります。 ○機構 なぜそのようなスケジュールにしたのかとか、その辺りは私どもも何度かGSK に問い合わせております。明確なこちらで納得できるような答えが得られていないのが実 情なのです。ただ、中間で見て、そこでやめなかったことについては、本剤の場合長期の 有効性・安全性が重要になってくる製剤だと考えておりますので、長期に追っていただく 分には良いのかと考えております。 ○吉田部会長 竹内先生、決定的な問題になりますか。 ○竹内委員 もし、これだけ差があった場合、倫理的にどうなのかなと。確実にワクチン の方が効いているにもかかわらず、トライアルをやり続けたということで議論されている のかなというのが疑問に思いました。有効的な面ではないのですが、倫理的にどうかなと。 ○吉田部会長 本来は有効中止でもよかったのではないかということですね。 ○竹内委員 はい。 ○濱口委員 一つ教えていただきたいのですが、このワクチンが実際に効いたか効いてい ないかを最終的に判断できるのは、がんができたかできないかということになってくる と、例えば10代の女性に接種したあとに、40代ぐらいにならないとはっきりとした効果 が判定できないということだろうと思うのです。そうしたときに、販売後の調査において もう少し明確に、10年後、20年後といったところまでフォローするような綿密な計画が 必要かなという気がするのです。そこはどうなっているのでしょうか。 ○機構 長期の有効性、安全性についてもですが、確認が必要な製剤という御指摘はその とおりだと考えております。実際にそういった調査・研究が可能であれば非常に有用だと 考えております。ただ、具体的にどのように進めていくかは、例えば先ほど御説明した長 期の追跡調査として実施する063試験は、2年間は追っていただくことになっているので すが、一方で竹内委員から御指摘があったように両方の効果を本当に示すとなると、プラ セボ群なりを置く必要が出てくるのかもしれませんし、そういったところでなかなか長期 にわたる試験は難しいと考えております。臨床研究のような形で実施されればよいと考え ておりますが、まだ具体化していないのが現状です。 ○溝口委員 血清抗体価の上昇が書かれていますが、細胞性免疫、CTLなどの上昇は海 外にデータがあるのでしょうか。 ○機構 どの試験でどの程度の項目ということは資料を確認しませんと明確にはお答え できませんが、少なくとも副次ですとか探索的に評価されております。 ○溝口委員 もう一つ、資料1-2に「子宮頸癌予防ワクチン接種をご希望の方へ」と書い てありますが、副作用がなくて、もしかしたら子宮頸癌を予防できるワクチンとなると、 女性にとって非常に有り難いものだと思いますが、これが許可された場合には、接種は定 期接種ではなくて、希望者だけということになるのでしょうか。 ○生物第二部長 現時点では任意の接種と考えております。 ○溝口委員 その場合、こういうものがあるという情報はどのような形で提供されます か。例えば産婦人科とか、10歳以上になると小児科、あるいは皮膚科もHPV-16の陰部感 染症を診る機会がありますので、関連しそうな医療機関に情報提供するのか、それともイ ンターネットみたいなもので一般市民に提供されるのか、その辺りも教えていただきたい のですが。 ○生物第二部長 現時点では、特段の方策はメーカーに確認しておりませんが、先生とし ては、臨床現場にそのような情報が行った方が有り難いという御指摘でしょうか。 ○溝口委員 はい。できれば臨床現場に情報を流していただきたいと思います。 ○生物第二部長 分かりました。メーカーの方にそのような御意見があったことをお伝え します。適切に情報提供がなされるように指導していきたいと思います。 ○吉田部会長 ほかにございますか。競合品目等の位置付けというか、本薬と競合品目の 使い分け、位置付けは何か言われているのですか。 ○機構 現時点では、類薬はまだ承認されていないこともあって、それが承認された時点 で検討していくことになるかと思います。 ○吉田部会長 ほかに御意見はございますか。 ○機構 清水委員からあらかじめ御質問をいただいておりますので、それについて御説明 します。一点目は、「広い年齢層への投与が考えられるということで、年齢に応じた説明 が必要ではないか」との御指摘をいただいております。そのように申請者とも調整してい くつもりです。  二点目として、審査報告書64ページで、接種回数の選択のところで112日目に3回目 の接種があり、0、1、6か月の接種スケジュールがその後設定されたことについて、「112 日目は6か月目」ではないということで御質問をいただいております。御指摘のとおり、 112日目は6か月目ではなく、審査報告書にお示しした002試験は、2回接種に加えて3 回目の接種をしたとき応答が増強することを確認した試験です。GSK社ではほかのワク チンを対象に、0、1、2か月と0、1、6か月で接種スケジュールの検討を行い、その 結果、0、1、6か月の接種スケジュールが選択されております。 ○溝口委員 先ほど情報提供をとお願いしましたが、これは20年後、経過を長く追わな いと本当の効果が分からないということで、もしかしたら会社は情報提供がしにくいのか もしれません。情報提供されるときは、その点も含めて情報提供していただきたいと思い ますので、よろしくお願いします。 ○機構 ありがとうございます。 ○早川委員 先ほど、バキュロウイルスを使ってそれに対する抗体が出ないかと、ほかの インフルエンザワクチンを使った場合にどうかというお話が出ましたが、要するに抗原に なる残存の宿主由来のものがあるとすれば、これはずっと精製してきていますので、精製 して一緒についてきたものが抗原になるとすれば抗原になると。また別の製品では別の精 製方法で、抗原は必ずしも同じではないのです。もちろん、やってみないと分からないと 言えば分からないのですが、普通に考えると、バキュロを使ったからといって、次も同じ ように抗原性が発揮されるかどうかというと、そうは言えないと。補足的に申し上げます。 ○吉田部会長 ありがとうございました。ほかにコメントはありませんか。  それでは、議決に入ります。なお、竹内委員におかれましては、利益相反に関する申出 に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認 及び改正を可としてよろしいでしょうか。  御異議がございませんので、承認及び改正を可とさせていただきます。なお、本剤は新 有効成分であり、かつ既存の類薬がありませんので、薬事分科会に上程し審議することと させていただきます。また、生物学的製剤基準の改正につきましては、薬事分科会に報告 とさせていただきます。ありがとうございました。  それでは、議題2に入ります。議題2、資料No.6-3について、医薬品機構から概要の説 明をお願いします。 ○機構 それでは、議題2、資料No.2、プレベナー水性懸濁皮下注の製造販売承認の可否 等について、医薬品医療機器総合機構より御説明します。  本剤は、肺炎球菌の莢膜血清型4、6B、9V、14、18C、19F及び23Fそれぞれの莢 膜ポリサッカライドと無毒性変異ジフテリア毒素の結合体を有効成分とする小児用ワク チンであり、今般、「肺炎球菌(血清型4、6B、9V、14、18C、19F及び23F)に対 する侵襲性感染症、肺炎、中耳炎の予防」を効能として申請されたものです。本剤は、優 先審査に指定されております。海外においては、現在90か国で承認を取得しており、米 国を初め35か国以上で定期接種に取り入れられております。  本剤の専門協議に御参加くださった専門委員は、参考人としてお越しいただいた神谷先 生を初め、資料No.12にお示ししている7名の委員です。  審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明します。  本剤の国内臨床試験としては、生後2〜6か月の健康乳幼児181例を対象とした臨床試 験が実施されております。有効性に関しては、WHOのTechnical Report Seriesにおい て、予防効果を検討した複数の臨床試験の情報に基づき、肺炎球菌結合型ワクチンの侵襲 性肺炎球菌感染症に対する予防効果に必要な血中IgG抗体濃度として0.35μg/mLとさ れており、審査報告書50ページ表23、51ページ表24に記載しておりますように、初回 接種後の血中IgG抗体濃度が0.35μg/mL以上となった被験者の割合は97〜100%、追 加接種後で98〜100%であり、侵襲性肺炎球菌感染症の予防効果が検証された海外臨床試 験(D118-P8試験)と特段の違いは認められないことから、国内においても侵襲性肺炎球菌 性感染症に対する予防効果が期待できると判断しました。中耳炎及び肺炎につきまして は、審査報告書55ページ下から6行目以降及び67ページ下から14行目以降に記載して おりますように、国内臨床試験で検討されたIgG抗体濃度から中耳炎及び肺炎の予防効 果を評価することは困難であること、中耳炎については国内外のワクチン含有血清型の分 布の違い、肺炎については海外臨床試験でも予防効果の検討を行うことが治験実施計画書 で規定されていない、また評価項目がキーオープン(開鍵)前後のどの時点であるかは不明 ですが、途中で変更される等適切な評価が行われていなかったこと等から、効能・効果に 中耳炎及び肺炎を加えるのは適切ではないと判断しております。  安全性につきましては、審査報告書51ページ下から7行目以降に記載しておりますよ うに、局所反応の発現率が高く、また全身反応は国内既承認の小児用ワクチンよりも高い 傾向が示唆されておりますが、重篤な有害事象・副反応はほとんどなく、本剤接種による 局所及び全身反応は忍容可能と判断しております。  用法・用量につきましては、審査報告書57ページ表26及び27に記載しておりますよ うに、国内臨床試験の結果から、日本人ではIgG抗体濃度が海外よりも高くなる可能性 が示唆されております。安全性につきましては、審査報告書58ページの表28及び29に 記載しておりますように、国内臨床試験ではIgG抗体濃度が高い場合に副反応の発現率 が上昇する傾向が示唆されており、国内で副反応の発現率が海外より高くなる可能性は否 定できません。しかし、有効性の観点からは、血清型6Bに対するIgG抗体濃度が海外 臨床試験と同程度であること、用量又は投与回数を減らすことにより、約2億ドーズに及 ぶ海外使用実績で得られているのと同程度の有効性が得られなくなる可能性が考えられ ること、国内臨床試験での有害事象及び副反応の転帰は良好であり、これまでアジア地域 においてほかの地域と異なる安全性の傾向は特段報告されていないことから、用法・用量 は海外と同じ接種用量及び標準接種スケジュールを設定することで差し支えないと考え ております。  一方、承認後にはDTPワクチンと本剤の同時接種が想定されますが、本剤とDTPワ クチンを同時接種した場合の安全性に関する情報は本邦では得られていないことも踏ま え、審査報告書63ページ3行目以降及び71ページ16行目以降に記載しておりますよう に、製造販売後調査において、本剤の実際の使用実態下での安全性情報をさらに収集する 必要があると考えております。具体的には、製造販売後調査は、特定使用成績調査として 1,000例を対象に全4回接種の情報を収集する予定とされております。  DTPワクチンと本剤の同時接種については、審査報告書60ページ下から9行目及び 70ページ14行目以降に記載しておりますように、製造販売後臨床試験を実施し、DTP ワクチンに含まれる各抗原について、同時接種による免疫応答への影響を検討することが 計画されております。  以上のとおり、機構での審査の結果、本剤は血清型4、6B、9V、14、18C、19F及 び23Fの肺炎球菌に対する侵襲性感染症の予防に対する有用性が期待できると判断し、 承認して差し支えないと判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再 審査期間を8年とし、劇薬及び生物由来製品に該当すると判断しております。  なお、本剤の承認に伴い、生物学的製剤基準の医薬品各条に「沈降7価肺炎球菌結合型 ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)」を追加することとなります。資料No.6-3に 基準案をお示ししております。審議事項の議題6ですが、本剤の承認の可否と併せて御議 論いただきたいと思います。御審議のほどよろしくお願いします。 ○吉田部会長 ありがとうございました。参考人の神谷先生、何かコメントなり補足等が ございますか。 ○神谷参考人 少しコメントをさせていただきます。ただ今、機構からお話がありました ように、この専門協議は7名の専門委員で全員出席のもとに行われました。審議の主要論 点としては、今お話のような臨床的な問題を中心に行ったのですが、効能・効果、安全性、 用法・用量、特に接種用量、接種スケジュール、筋肉内接種の問題、製造販売後のDTP ワクチンとの同時接種による影響、販売後調査の基本計画に加え、治験製剤と販売製剤で のキャリアたん白が少し変わっておりますので、そのことについても意見を求められまし た。今、機構からこの協議を踏まえた概略の説明がありましたので、ほぼそれで網羅され ておりますが、我々の専門協議で少し意見が割れた部分について追加をして報告をしま す。  一つは有効性の問題で、これは侵襲性肺炎球菌疾患(Invasive Pneumococcal Disease)、 IPDに対する有効性は世界的にも証明されていて、データ上も全く問題はないと思いま すが、企業からは肺炎と中耳炎の承認申請が出ておりました。こういう年齢の子供の肺炎 は起炎菌も非常に分かりにくいし、IgGが0.35μg/mLあればいいということになって おりますが、局所にはどれだけ行っているかも分からないということがあり、今までの報 告でもはっきり肺炎球菌に効いたという証拠がもう一つ足りないだろうということで、効 果は明確でないので疾患名として入れないことに賛成しました。  中耳炎についても、我が国でも重症中耳炎については、いわゆる鼓膜穿刺をして検体採 取し、コンタミのない取り方で採取したデータがあって、62.2%ぐらいの有効率が新しい データとして出ております。このときには、中耳炎は効果があるとしてもよいではないか という意見もありましたが、このワクチンの使用ということを考えると、IPDの罹患は どの子がかかるということは分かりませんので、このワクチンは小児全員が受けるべきワ クチンとしてこれから使われていくことになると思いますから、現時点で無理にこの二つ を入れなくても、全員が接種すればこのようなことも同時に解決するので、これについて は経過をしっかり見ていけば分かるであろうということになり、委員全員がそれで承諾を されました。  そのときに注文として、お手元に添付文書の2枚目の「海外臨床成績」というものがあ ります。日本ではまだ成績は少ないですがあります。海外臨床成績のデータに、このとき に委員から出された四つのレポートがあります。最近のレポートも参考文献として載せて ほしいとお願いしてあったのですが、それは今文献に加えていないので、私としては専門 協議の代表者の立場から、それを参考文献に加えていただきたいことをお願いしたいと思 います。  もう一点、専門協議の中で意見が分かれたことは、筋肉内注射の問題です。この添付文 書を見ると、「プレベナー水性懸濁皮下注」という名前になっております。外国製品は「プ レベナー」だけで、どうして日本だけ名前を変えるのかなと私は不思議に思っているので す。専門協議のときに機構から私たちに示された内容は、医師が必要と判断した場合には 筋肉内接種を行うことができるという案について検討しろということでした。その中で は、一部改変も含めて賛成という方が5名おられて、医師の判断では混乱するという意見 の方が2名おられました。したがって意見は分かれたわけですが、我が国では不活化ワク チンも生ワクチンも皮下注射となっております。しかし、御承知のように外国では日系人 が、あるいは日本人が外国にいた場合も含めて、不活化ワクチンは原則筋肉内注射として 受けております。皮下接種では局所反応が強いために、我が国では接種に慣れた先生とい うか、小児科医の中では「筋注」という言葉は使えないので、「皮下深く」という言い方 をして接種をするということで、実質は筋注に近いやり方で接種が行われているのが実情 だと思います。私の経験でも、そうやれば局所反応は非常に少ないと思っております。  今回この試験の中で、よく読むと書いてあるのですが、確かに局所反応は少ないけれど も、皮下に接種した場合の方が筋肉内に接種した場合よりも圧痛が少ないというデータが 出ております。圧痛が少ないということは、上から押さえてみたら痛みが少ないというこ とであって、これはやり方にもよるし、なかなか難しい。英語で言うと「Tenderness」と いうことになると思います。その比較が難しいデータだと思いますが、そういう意味でこ れは皮下注にすることになったのではないかと思いますが、そのときにはその点について の協議は余りしておりません。  したがって、名前とか、外国に行ったときに同じワクチンを接種されながら日本で接種 したワクチンは違う名前だったということになり、かえって混乱するので、例えば最近承 認されたHibワクチンでも日本と外国との名前が違っておりませんし、そういう意味で 薬剤名をどうしてこのようにするのか、専門協議のあとでこれを見せていただいて、私は 疑問に思っております。  確かに、協議でも臨床医は混乱するという意見もありましたが、接種は小児科医は非常 に訓練して慣れていて、現にHibとDPTを皮下深く打っておられる方もたくさんいら っしゃるわけですが、何ら混乱もありませんし、異常はありません。専門協議ではそのよ うになっておりましたが、最終案は少し違っておりますので、これについてはこの会議の 委員の先生方で御検討いただいて、善処していただければ有り難いと思っております。 ○吉田部会長 ありがとうございました。今の水性懸濁うんぬんに関して、機構から何か 追加説明はありますか。 ○機構 本剤の販売名について、医薬品の医療事故防止等のためにこのような販売名を付 けるという通知が出ておりますが、これまでワクチンにはその通知が適用されていません でした。今般、安全対策課の指導によって、今後はワクチンもその通知に倣って名称を付 けるということで、本剤は「プレベナー水性懸濁皮下注」という名称になったという経緯 があります。 ○吉田部会長 よろしいですか。それでは、委員の先生方からのコメントをお願いします。 ○庵原委員 このワクチンは添付文書どおりならば、結局皮下注しか駄目という解釈にな るわけですか。先ほどの神谷先生のコメントで、どちらでもいいという文書があったのが、 この添付文書では皮下注にしかなっていないのです。そうすると皮下注でないと駄目だと いう解釈になるわけです。その辺の確認をしたいのですが。 ○機構 添付文書上は皮下注に限定した形になっております。機構でも、海外データも踏 まえて筋注を入れるか入れないかというところは議論しており、専門協議でもそのように お聞きしました。専門協議の議論、国内で多くのワクチンが皮下接種されている現状、国 内臨床試験では皮下接種しかされていないこと、また、国内臨床試験では免疫原性が非常 に高かったわけですが、投与経路の違いが本剤の有効性及び安全性に及ぼす影響も現時点 では必ずしも明確ではないことも踏まえて、現時点では皮下注にすることが適切ではない かという結論に至りました。 ○庵原委員 追加なのですが、先ほど審議したサーバリックスは、たしか筋注になってい ると思うのです。ということは、今後新しく申請したワクチンが筋注になる傾向があるわ けです。そうすると、このワクチンも筋注も認めておくことが、今後の流れとして考えて いいと思うのですが、いかがですか。 ○機構 サーバリックスは、もともと本邦でも筋注で開発が進められており、すべての臨 床試験は筋注で実施されています。アクトヒブも本剤も国内臨床試験は皮下注のみで実施 されており、本邦では、皮下注として開発されております。現在開発中のワクチンについ ては、筋注で開発されているものも幾つかあるという状況だと把握しております。 ○吉田部会長 要するに、この件については開発側が最初にどちらに設定するかによって 決まってくるということですか。ワクチンだからということではなくて。 ○機構 ワクチンだからということではありませんが、まずは国内でどのようなデータが 得られているかということはあると思います。ただ、専門協議においても、本剤だけでは なくワクチン全体の話として、海外では筋注が一般的であるという現状もありますので、 今後本邦でも筋注をどうするのかという議論は進めていくべきではないかというお話を いただいております。 ○吉田部会長 よろしいですか。ほかにコメントはございますか。神谷先生からのコメン トにあった新しいデータを追加してほしいということは、一応了解されているのでしょう か。 ○機構 その点に関しては、今後検討させていただきたいと思います。 ○吉田部会長 ただ、予防が効能になっているので、書いても書かなくても結果的には予 防されてしまうかもしれない。そういうことですね。 ○機構 そうですね。本剤を接種する第一の目的としては、侵襲性感染症の予防というと ころが大きいと思いますので、その点で広く接種されるべきであろうというのは神谷先生 のお話どおりです。接種することによって、中耳炎等も予防されるかもしれないというと ころはあると思います。 ○吉田部会長 そういう使われ方だから、余りこだわっても仕方がないのかもしれません が。ほかに御意見はございませんか。 ○機構 清水先生から事前に御指摘をいただいておりますので、答えさせていただきま す。二ついただいておりますが、一点目として、「添付文書の接種スケジュールが読み取 りにくいのではないか。米国の添付文書のように表にするなどの工夫が必要ではないか」 という御指摘をいただいております。本剤の接種スケジュールの記載は、これまでに承認 された幾つかのワクチンの記載方法に合わせたものなのですが、予診表などほかの資材に おいて分かりやすく情報提供することを検討するよう、申請者に伝えておきたいと考えて おります。  二点目として、「1〜3回目の接種を『初回接種』と呼び、4回目以降を『追加接種』 と呼んでいる。理解しづらいので何らかの工夫が必要では」との御指摘をいただいており ます。これに関しては、DTPワクチンなどの定期接種ワクチンを初めとして「初回免疫」 「追加免疫」という同様な呼び方をしており、初回、追加という分け方自体は予防接種に おいては一般的に受け入れられている呼び方であろうと考えております。 ○吉田部会長 他にご意見はございますか。ないようですので議決に入ります。参考人の 神谷先生、ありがとうございました。御退席いただきたいと思います。 ── 神谷参考人退席 ── ○吉田部会長 なお、竹内委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、 議題6の一部改正については議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題に つきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。また、本議題について生物学的製剤基 準の一部改正を可としてよろしいでしょうか。  御異議がないということですので、承認及び改正を可とさせていただきます。なお、本 剤は新有効成分であり、かつ既存の類薬がありませんので、薬事分科会に上程し、審議す ることとさせていただきます。また、生物学的製剤基準の改正につきましては、薬事分科 会に報告とさせていただきます。  議題3に入ります。議題3について、医薬品機構から御説明をお願いします。 ○機構 議題3、資料No.3、医薬品ラスリテック点滴静注用1.5mg、同7.5mgの製造販売 承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明します。  本剤の有効成分であるラスブリカーゼは、遺伝子組換えの尿酸オキシダーゼであり、尿 酸を水溶性の高いアラントインに変換し、腎臓から排出させることによって高尿酸血症を 改善すると考えられています。  がん化学療法施行中の悪性腫瘍患者では、腫瘍の急速な破壊に伴い、細胞内の核酸、カ リウム、リン酸等が血中に大量に放出され、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン酸血症 等を初めとする、腫瘍崩壊症候群が認められることがあります。  尿酸は通常、腎臓から排泄されますが、多量に産生された場合、十分排泄できず析出す ることがあるため、がん化学療法により高尿酸血症に至った患者の一部では腎機能障害や 急性腎不全が発現し、致命的な経過をたどることがあります。  がん化学療法に伴う高尿酸血症に対しては、通常、アロプリノールの投与、大量輸液、 尿のアルカリ化等の支持療法が行われますが、現在の支持療法では血中尿酸値が管理でき ない患者も存在します。  本剤は、現在の支持療法では血中尿酸値の管理が困難と予想される患者におけるがん化 学療法に伴う高尿酸血症に対して有効性を示す薬剤として申請されました。  本剤は、海外においては55の国又は地域で承認されています。  本剤の専門協議に御参加くださった専門委員は、資料No.12にございますとおり10名の 委員です。  品質、毒性、薬理、ADMEについて大きな問題は認められませんでした。  主な臨床試験成績としては、海外で実施された一つの第III相試験と、国内外で実施され た四つの第II相試験が提出されました。  有効性については、審査報告書40ページ11行目以降、45ページ10行目以降に示すよ うに、海外第III相試験の結果、白血病又はリンパ腫の患者に本剤を投与した場合に、アロ プリノール投与に比べて、投与後96時間までの血漿中尿酸濃度のAUCが低値を示し、 また、国内外の第II相試験においても、本薬投与により血中尿酸値が管理可能であったこ とから、本剤の有効性が示されたと判断いたしました。  安全性については、審査報告書50ページ5行目以降に示すように、本薬の使用におい て注意すべき有害事象として、過敏症、溶血反応が認められており、国内臨床試験におい ても海外臨床試験と同様の事象が発現しています。  本剤は抗悪性腫瘍剤と必ず併用されることから、これらの有害事象は緊急時に十分対応 できる医療施設において、がん化学療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置に より対応可能と判断しております。しかし、本剤の日本人における検討症例は限られてい ることから、審査報告書85ページ6行目以降に示すように、製造販売後の調査において 安全性情報を収集し、医療現場に情報を提供する必要があると判断しております。  以上のような審査の結果、機構は「がん化学療法に伴う高尿酸血症」を効能・効果とし て、本剤を承認することが可能と判断しました。  本剤は、新有効成分含有医薬品であり、再審査期間を8年とすることが適当であり、原 体及び製剤は劇薬に該当すると判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品 のいずれにも該当しないと判断しました。  なお、劇薬又は毒薬の該当性について、先般送付しました資料No.3の審査報告書に誤記 が認められましたので、本日机上に配付いたしました資料No.3-2のとおり訂正いたします。  また、清水委員より事前に御質問いただいている点について、ここで説明させていただ きます。四点ありますが、一点目は審査報告書62〜63ページにかけてです。「月齢が24 か月以下の患者に対して、本剤の希釈液量を50mLから10mLへ減らすことができるという 設定に関して、30分かけて点滴静注する本剤においては余り意味がないのではないか」 という御指摘をいただいております。該当する月齢の症例に関しては、細胞外液量の絶対 量も少ないことと、本剤は抗がん剤が併用されますので、他剤での薬液の量ということも 考えると、全体としてボリュームを下げることに関しては一定の意義があるのではない か。また、希釈液量を10mLまで少なくした場合、薬液の濃度として高濃度になるわけで はないことと、これまでの使用経験から特に安全性に関して問題が認められていないこと から、この設定をしているところです。  二点目として、審査報告書61ページ、84ページの投与期間の設定ですが、「国内では 5日を超えた投与経験がないものの最大投与期間が7日となっている点については、何ら かの説明が必要」ということと、「少なくとも国内では5日を超えた投与経験はないとい うことを明記すべきではないか」という御指摘をいただいております。これについては審 査の中でも議論いたしまして、海外の試験成績で最大7日までの投与例が認められてお り、5日までの投与の症例と5日を超えた症例について安全性を比較したところ、5日を 超えた症例に特段の問題が認められていないことから、海外のIII相試験、主要な試験の設 定を採用しております。国内の成績については添付文書の臨床成績の項で、国内試験は5 日間の投与でなされた旨を記載しております。  三点目としては、添付文書の記載です。「溶解、希釈後の保存条件を欧米の添付文書と 同様に記載してほしい」とのことですが、2〜8℃で24時間以内に使用するという内容 を追記する方向で指示したいと思っております。  四点目は、「『調製のときに振とうさせないこと』というのを適用上の注意に追記する」 ということですが、この内容で指示したいと考えております。清水委員からの質問は以上 です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 委員の方々からの御質問、御意見をお願いいたします。本薬はたん白なの でアナフィラキシーが出ると書いてあるのですが、治験の成績を見ると、それほど厳しい 話は出てこないようです。この点については一応可能性だけの話なのですか、それとも繰 り返し使うことは基本的にしないというタイプの薬なのでしょうか。 ○機構 本剤については最大7日間の投与を一つの治療と考え、審査報告書では、「2コ ース以上の投与」と書いてあるように、2コース以上の投与は推奨しないと。抗体の発現、 過敏症、中和抗体の件もありますので、会社としても推奨できるデータもないというとこ ろで、原則は1回の治療機会のみと設定されております。 ○吉田部会長 そうすると、アロプリノールを使ってもうまくいかない、かなり重症の人 というか、大量の尿酸が溜まっているような人に、ワンショット的な感じで使われるので すか。 ○機構 そうですね。アロプリノールを含めた既存の治療で、尿酸値の管理ができないよ うな症例に対して使う薬剤に位置付けられております。 ○吉田部会長 ということは、使う医師も血液の専門の人たちで、しかも使われる状況は かなり限定的ということになるわけですか。 ○機構 本剤の主な投与対象としては、やはり造血器腫瘍の患者になるだろうと考えてお りますが、効能・効果の方では造血器腫瘍に限らず、原疾患によらない適用にすることを 考えております。 ○山添委員 この薬はチオール基を含み、酵素だということで少しお伺いしたいのです が、規格の際には、金属を含んでいるかどうかということを規格として取り入れているの でしょうか。 ○機構 すみません、もう一度御質問を解説していただけますか。 ○山添委員 本剤はチオール基を含んでいます。このような場合、金属と配位する可能性 があるのですが、成分規格のときに、金属の含有に対して何かの規格を設けているのかと いう質問です。 ○機構 本剤については設けておりません。 ○山添委員 というのは、先ほど希釈の話が少し出ていたと思いますが、例えば、どんな 溶液と希釈すると構造が変わって、配位して抗原性を持つとか持たないということをちょ っと懸念したものですから、それを伺いました。 ○吉田部会長 使い方としては別のラインで使うようにとの指示にはなっていますので、 他の金属のイオンと一緒になるということは余りないかもしれませんが、この点について 機構の方で何か分かりますか。 ○機構 本剤に関しては溶解液を添付しますので、それで希釈することになっておりま す。 ○吉田部会長 そのほか、何かあればお願いいたします。 ○溝口委員 先ほどの部会長の御発言にも関係するのですが、アナフィラキシーショック を起こした人について、海外にはデータがありそうですが、抗ラスブリカーゼ抗体陽性の 患者に起こったということが、もしはっきりしているなら、1ページの「使用上の注意」 に「安全性は確立していない」などという書き方ではなく、長期投与すると抗体ができて アナフィラキシーショックを起こす可能性があると書いた方が、危険がなくていいように 思いますが、いかがでしょうか。 ○機構 御指摘の点については、添付文書3ページの「その他の注意」の項で抗体の発現 とアレルギー症状の原因を書いております。 ○溝口委員 それは分かるのですが、白血病やリンパ腫などを治療していて現場は非常に 忙しいと思いますので、最初のページに書いていただいた方が親切ではないかと思いま す。もちろん、3ページの「その他の注意」にきちんと書かれてあるのは分かりますが、 その点はいかがでしょうか。 ○機構 アナフィラキシーの発現した原因は抗体の陽性例だけではないので、記載振りは 少し検討させていただきたいと思います。 ○溝口委員 分かりました。 ○吉田部会長 そのほか、何かあればお願いいたします。 ○守殿委員 教えていただきたいのですが、本剤は、痛風に対して使われているというこ とはあるのですか。 ○機構 それは臨床開発がされているかという御質問ですか。 ○守殿委員 尿酸値を下げるということなので、重症の痛風などに使われているというこ とはないのかを教えていただきたかったのです。 ○機構 今のところ、そういった情報は入ってきておりません。先ほどの話とも絡むので すが、この物に対する抗体ができてきてしまいますので、慢性的な痛風に使うということ は基本的には考えておりません。 ○吉田部会長 よろしいですか。そのほか、ご意見はございますか。ないようですので、 議決に入りたいと思います。なお、竹内委員におかれましては、利益相反に関する申出に 基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可と してよろしいでしょうか。  御異議がないようですので、承認を可とさせていただきます。なお、本剤は新有効成分 であり、かつ既存の類薬がありませんので、薬事分科会に上程し、審議することといたし ます。  次に議題4に入ります。医薬品機構から、議題4の概要の御説明をお願いいたします。 ○機構 議題4、資料番号No.4、医薬品オゼックス細粒小児用15%の製造販売承認の可 否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  トスフロキサシントシル酸塩水和物は、富山化学工業株式会社で開発されたフルオロキ ノロン系薬であり、国内では、錠剤が1990年に各種適応菌種及び適応感染症を効能・効 果として承認を取得し、成人の感染症に広く使用されています。海外では、韓国及びフィ リピンの2か国で承認を取得しております。  近年、小児感染症において、ペニシリン耐性肺炎球菌、β-lactamase非産生アンピシ リン耐性インフルエンザ菌等の薬剤耐性菌の分離頻度が高くなってきているため、医療現 場からは、特に肺炎及び中耳炎について耐性菌に効果のある経口薬としてフルオロキノロ ン系薬の使用が要望されております。  米国ではシプロフロキサシン(CPFX)が小児における複雑性尿路感染症、腎盂腎炎及 び吸入炭疽の適応症を有し、レボフロキサシン(LVFX)が小児吸入炭疽の適応を有して います。一方、日本においてはフルオロキノロン系薬として、唯一小児への適応を有する 薬剤としてノルフロキサシン(NFLX)がありますが、肺炎や中耳炎の適応症を有してお りません。  本剤は、小児の肺炎及び中耳炎の主な原因菌である肺炎球菌、インフルエンザ菌及びモ ラクセラ・カタラーリスに強い抗菌活性を有し、他のフルオロキノロン系薬で問題となっ ている幼若動物での関節への影響はCPFXやNFLXに比べ弱かったことから、小児に おいて入院治療に至る前に使用する外来治療薬の新たな選択肢として、近年増加傾向にあ る耐性菌にも効果が期待できると考え、申請者は、本剤の開発を行ったと説明しておりま す。  本品目に関する専門協議に際し、本剤の専門委員としては、資料No.12にあるとおり、 6名の委員を指名し、御意見を賜りました。  主な審査内容について簡単に説明いたします。臨床に関して、機構は、小児を対象に実 施した本剤の臨床試験は非対照試験ではあったものの、審査報告書21、22ページに記載 しているように、成人の承認用量のうち1回最大用量に相当する200mg投与と小児の1回 4mg/kg投与における曝露量は同程度であることから、PK/PDを考慮した上で、成人同 様に有効性が期待できると考えられること、また、審査報告書30、31ページに記載して あるように、小児肺炎試験及び小児中耳炎試験のいずれの試験においても主要評価項目に おいて一定の有効性が得られたことから、小児における中耳炎及び肺炎に対する本剤の有 効性は確認できたと判断いたしました。  安全性については、審査報告書27、29ページの表に記載しているように、小児肺炎試 験及び小児中耳炎試験で認められた有害事象はいずれも忍容可能であると考えるものの、 嘔吐については、本剤により嘔吐が誘発されている可能性も否定できないことから注意が 必要であり、製造販売後に引き続き情報収集を行う必要があると判断いたしました。  なお、審査報告書34ページに記載してあるように、他のフルオロキノロン系薬では、 小児における関節毒性が非臨床試験及び海外臨床試験において認められております。一 方、本剤では他のフルオロキノロン系薬のような比較臨床試験は実施されておらず、これ までの本剤の投与症例数は限られていることを踏まえると、今後本剤の使用により関節障 害が発現する可能性は否定できないと判断いたしました。本剤は、本邦においてフルオロ キノロン系薬として初めて小児の中耳炎及び肺炎等の効能・効果を取得するものであり、 小児に対する本剤の使用に際しては、関節毒性のリスクを医師が十分に認識した上で、他 の経口抗菌薬による治療効果が期待できない症例に対し、リスクとベネフィットを十分に 検討すべきであり、患者及びその家族に対しても、関節障害のリスクについて適切に情報 提供されるべきであると考えております。また、小児への投与症例数は限られていること から、本剤の安全性については、関節症状に関する情報を中心に引き続き積極的に収集を 行い、併せて適正使用に関する注意喚起を行う必要があると考えております。  以上のような審査を行った結果、機構は、本剤の有効性及び安全性は確認できたと考え、 審査報告書3ページの効能・効果、用法・用量にて承認して差し支えないと判断いたしま した。なお、用法・用量については、同一の有効成分を含有する既承認の錠剤と含量表示 を同一とするために、申請時の「トスフロキサシン」換算ではなく、「トスフロキサシン トシル酸塩水和物」換算としております。  本剤は、再審査期間については4年と設定することが適切であると判断しております。 また、原体及び製剤は毒薬及び劇薬に該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品にも 該当しないと判断しております。  なお、補足として説明いたしますが、清水委員より事前に質問を二点いただいておりま す。一点目は、「なぜ15%の散剤であるのか」という質問です。既承認の錠剤の有効成 分は「トスフロキサシン」、「トスフロキサシントシル酸塩水和物」として投与量が設定 されておりました。しかし、細粒剤である本剤は、錠剤とは異なるトスフロキサシン換算 にて10%製剤の製剤設計がされ、申請されておりました。機構としては、広く医療現場 で使用されている既承認の錠剤と異なる有効成分の換算表示を行うことは、投与量を間違 えるなどの医療過誤を引き起こす一因になると考え、本剤と錠剤は同一の有効成分の換算 表示を行うことが必要であると判断いたしました。なお、専門協議においてこの点につい て専門委員の御意見を伺い、同意いただいております。その結果、本剤は錠剤と同じトス フロキサシン換算での含量表示に切り換え、15%製剤になったという経緯があります。  二点目の質問は、用法・用量の記載に関してです。「現行の添付文書の記載では、有効 成分の含量として1日12mg/kgと設定されていますが、製剤としての投与量の記載が必要 ではないか」という御指摘でした。先生の御指摘のように、散剤の場合、実際に計り取る 製剤の量で投与量を記載する場合もあるようです。ただし、抗菌薬の散剤の場合を幾つか 見てみたところ、添付文書上、有効成分の量のみで投与量を記載している場合も幾つかあ り、他の製剤における記載も参考にしながら、用法・用量における記載については再度検 討したいと思っております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○吉田部会長 委員の方々からの御質問、御意見をお願いいたします。 ○庵原委員 確認ですが、臨床研究で行われた4mgと6mgという数字と、添付文書の12mg を2回に分けるという、この数字の関連性についてです。4mgと6mgというのは力価で すか。12mgが剤形として実際に用いる量ですか。その辺の関連性を教えてください。 ○機構 治験で検討されたのは二つの用法・用量です。4mgの1日2回投与と6mgの1 日2回投与です。ただし、こちらの表記については、先ほど追加で説明したように、トス フロキサシン換算としての投与量でして、トスフロキサシントシル酸塩水和物換算にする と、それぞれ6mg1日2回、9mg1日2回となります。審査の中で検討した結果、高用量 である用法・用量については安全性上の懸念があること、有効性がさらに上回るような期 待ができないことから、トスフロキサシントシル酸塩水和物換算で、6mg1日2回投与の 用法・用量のみで承認することといたしました。したがって、添付文書に書いてある12mg を1日2回に分けてというのは、審査報告書に書いてある4mg1日2回投与に相当いたし ます。 ○吉田部会長 そのほか、何かあればお願いいたします。 ○前崎委員 フルオロキノロンは小児の場合はどうしても関節毒性があることから、これ まで薬が承認されてこなかったわけです。確かに、投与した直後の関節毒性はある程度見 られるのでしょうが、小児の場合は成長するという過程がありますので、長期の、いわゆ る関節毒性が実際に起こる可能性はないかということと、長期の関節毒性を販売後にどの ように調査していくかということについてはいかがでしょうか。 ○機構 治験の段階での本剤による関節障害に関する検討ですが、投与期間中の関節に重 点を置いた医師の詳細な観察が行われておりました。併せて治験後、投与1年後にフォロ ーアップとして、関節に異常のある患児がいれば、その患児のさらに詳細な医学的な関節 への検査も実施しておりまして、有害事象として痛み等はみられていたのですが、いずれ も短期間で消失するようなものであり、因果関係に関連性がなく、医学的には特に問題に なるような事象は認められておりませんでした。また、製造販売後については、治験と同 じく、投与1年後に関節に関する何らかの問題を呈している患児がいないかどうかを、ア ンケートという形にはなるのですが、まずは調査を行い、もし、そのような患児がいれば、 さらに専門の先生方に診ていただくという検討も考えております。今のところ、一応製造 販売後には700例規模の小児を対象とした調査を実施することを考えております。 ○前崎委員 細かいことで恐縮ですが、ペニシリン耐性肺炎球菌のことです。使用上の注 意には、いわゆるCLSIの基準でMIC4μg/mL以上のものに関しては使用の経験がない といった記載があり、適用菌種の中には括弧書きで、ペニシリン耐性肺炎球菌も含むとい う記載があります。専門家はすぐ分かるのでしょうが、パッと見たら、使用経験がないの に、なぜ適用菌種に入っているのかと見られがちなところもあります。この辺の表記につ いて、使用上の注意のCLSIの基準が現在の日本の適応症で必要かどうかということに ついてはいかがでしょうか。 ○機構 御指摘いただいた点については、治験を実施したときのCLSIでのペニシリン 耐性肺炎球菌の基準が、今年初めぐらいに変更になり、承認する際にどのように変更にな ったかを正しく伝えるにはどうしたらいいかをいろいろ議論した結果、このような記載に なったわけです。今のところは過渡期のような状況でして、従前の基準ですと、MICは 2μg/mL以上がPRSPですが、今回の治験で実際に分離された菌については2μg/mL までの菌種しか検討できていないので、より正確に情報を伝えることで、CLSIの基準 が変更になっていることに左右されない表記として、専門委員の意見もいろいろ聞きなが らこのような記載としたという経緯があります。 ○庵原委員 関節毒性の関係ですが、この治験は単回投与の治験ですね。実際の臨床現場 では複数回投与される可能性が出てくるのですが、それに関しては何か調査する予定等は ありますか。 ○機構 中耳炎等については繰り返し投与される症例も想定されるので、そのような症例 も含めて製造販売後調査ということを考えております。具体的に言うと、700例の調査を 予定しておりますが、単回投与例と、反復投与例を半数ずつ登録する調査を考えておりま す。 ○吉田部会長 リスクが知られているにもかかわらず、あえて投与しようというところが あるので、先生方が心配しているのは、「分かっていたのに、なぜこのようなことになっ たのだ」ということが後で起こらないように万全を期してほしいということだろうと思い ます。とにかく今の700人を当たるということと、単回投与だけでなく、繰り返しの患児 に対して調査を入れていくということでよろしいですか。そのほか、何かあればお願いい たします。御意見がないようですので、議決に入りたいと思います。なお、竹内委員、前 崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮願うこ とといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。  御異議がな いようですので、承認可として薬事分科会に報告とさせていただきます。  それでは最後の議題5に入ります。議題5について、医薬品機構から概要の説明をお願 いいたします。 ○機構 議題5、資料No.5、「医薬品ベネフィクス静注用250」他の製造販売承認の可否 等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  本剤は、遺伝子組換え血液凝固第IX因子製剤で、血友病B患者の血漿中第IX因子活性 を補うことにより、出血傾向を抑制する薬剤です。本剤は、製造工程中でCHO細胞由来 以外の動物由来原材料を使用していないことから、血漿由来製剤に比べて感染症リスクの 低減が見込まれております。本剤は、海外においては1997年に米国と欧州で承認されて 以来、現在までに48か国以上で承認されております。  次に、本剤開発の経緯について説明いたします。審査報告書7ページを御覧ください。 本剤は、本邦において、1996年に希少疾病用医薬品に指定された後、19□年から日本人 患者3例を対象にした国内臨床試験が行われ、既に実施されていた海外での臨床試験成績 と合わせて、19□年に承認申請が行われました。しかしながら、海外臨床試験に対して、 EMEAからGCP上の問題が指摘され、当時の審査センターは本剤の審査を中断し、ま た、日本人3例の成績のみでは有効性、安全性の評価が困難として、20□年に申請が取り 下げられたという経緯があります。  一方、本剤は米国、欧州においては、1997年に承認されており、GCP上の問題が発 覚した後も承認が維持されましたが、EMEAは追加の臨床試験の実施を要求し、企業は 試験結果を追加提出しております。このような経緯の中で、本邦では追加実施された海外 臨床試験成績と、前回の申請時に用いられた国内臨床試験成績をもって、再度2008年10 月に承認申請が行われたものです。なお、国内臨床試験及び追加実施された海外臨床試験 に対して、実施されたGCP調査の結果、試験の信頼性や評価に影響を及ぼすような問題 点は認められませんでした。  本剤の専門協議においては、資料No.12に示した8名の専門委員に御意見を賜りました。 以下、本剤の有効性、安全性等について説明いたします。  有効性については63ページの表4-32を御覧ください。評価資料において、出血エピソ ードに対する初回投与時の評価で著効又は有効と判定されたものが大部分を占めている こと、止血に要した本剤の投与回数は多くが1回又は2回であること等を総合的に判断 し、出血時の治療的投与における有効性は示されたと判断いたしました。  また、安全性については、審査報告書66〜68ページに記載していますが、臨床試験成 績から忍容可能と判断しております。特に、血友病治療においては問題となるインヒビタ ーについても、本剤の発現率が血漿由来製剤に比べて高いという結果は得られておりませ ん。なお、インヒビター、アレルギー様徴候等については、添付文書で注意喚起を行うと ともに、製造販売後調査において、引き続き情報収集することとしております。  本剤の効能・効果については、73ページと82ページに記載がありますが、提出された 臨床試験は血友病B患者を対象とした試験であること、また、本剤の欧米における効能・ 効果も血友病B患者を対象としていることから、「血友病B(先天性血液凝固第IX因子欠 乏症)患者における出血傾向の抑制」とすることが適当と判断いたしました。  用法・用量については、74〜76ページ及び82〜83ページに記載がありますが、国内臨 床試験において50IU/kgで有効性、安全性が認められていることから、初回用量を50IU/kg とし、次回以降は患者の状態や血液凝固第IX因子活性の上昇値に応じて適宜増減できる 形といたしました。なお、添付文書の用法・用量に関連する使用上の注意において、必要 投与量の計算式を記載しております。  以上、提出された臨床試験成績から、本剤の有効性及び安全性は認められるものの、国 内での治験症例は3例のみと非常に限られておりますので、専門委員の意見も踏まえて、 本剤を使用した全症例を対象に、目標症例数300例、登録期間5年の製造販売後調査を実 施することが適当と判断いたしました。製造販売後調査については、83ページに記載が あります。  以上の審査の結果、審査報告書5ページに示した承認条件を付した上で、承認して差し 支えないと判断いたしました。なお、本剤は、希少疾病用医薬品であることから、再審査 期間を10年とすることが適当であり、原体及び製剤は毒薬又は劇薬のいずれにも該当し ないと判断いたしました。また、本剤はCHO細胞を用いて産生されることから、生物由 来製品に該当すると判断いたしました。薬事分科会では審議を予定しております。御審議 のほど、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 委員の方々からの御質問、御意見をお願いいたします。清水先生からは何 かありませんでしたか。 ○機構 特にいただいておりません。 ○濱口委員 二点教えていただきたいと思います。このリコンビナント製剤とプラズマ由 来の第IX因子との違いですが、動物細胞を使って作られたリコンビナント製剤の場合、 おっしゃるようにウイルスの汚染がほとんどない可能性は非常に高いと思うのですが、効 果の面で言うと、どうでしょうか。プラズマ由来のものとほとんど変わりがないかどうか ということを教えていただきたいと思います。 ○機構 効果については血漿由来の第IX因子製剤に比べ、組換えの第IX因子製剤である 本剤では、回収率が約30%低いことが薬物動態のデータ等から示されておりますが、臨 床試験においては本剤を用いて用量設定が行われておりますので、臨床試験成績に基づい た用量を投与されることで特段の問題はないと考えております。 ○濱口委員 二点目として、こういった凝固因子製剤の場合のインヒビターというのは非 常に重要な問題だろうと思いますが、報告書に書かれてあったプラズマ由来のものだと6 %ぐらい、リコンビナントだと1.数%だということでした。限られた数の中からのデー タだと思うのですが、プラズマ由来のものは既に使われているわけでして、実際のところ、 この6%というのは妥当な数字と考えてよろしいのですか。 ○機構 プラズマ由来のインヒビター発現率についてですが、本邦において77の医療機 関を対象にし、1994年に実施されたレトロスペクティブな調査の結果は、血友病Bのイ ンヒビター発現率は約5.2%、症例数は22/422例といったことが報告されております。 今回の約6%は180数名の結果ですが、それと比較して、特に大きな差異はないと考えて おります。 ○吉田部会長 そのほか、何かあればお願いいたします。先天性に限るとしたのは、その ようなメカニズムからしか考えられないからだとは思うのですが、追随したわけではなく て、欧米と横並びにしたということですね。 ○機構 そうです。欧米の添付文書の効能・効果については「先天性」と記載されており ます。 ○吉田部会長 日本のデータは、結局3例そのままだったのですね。 ○機構 国内については3例で、先天性患者です。 ○吉田部会長 最初の3例がそのまま残って、外国の方の試験成績がまとまったので今回 申請したということのようです。 ○機構 そのとおりです。 ○吉田部会長 本来であればもっと前に承認されるはずのものであったということです ね。 ○機構 はい。 ○吉田部会長 分かりました。御意見がなければ、議決に入りたいと思います。本議題に つきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。  御異議がないようですので、承認を可として報告とさせていただきます。なお、本剤は 新有効成分であり、かつ既存の類薬がありませんので、薬事分科会に上程し、審議するこ とといたします。次に、報告事項をお願いいたします。 ○機構 報告事項の議題1「医薬品ゼローダ錠300並びにアバスチン点滴静注100mg/4 mL及び同点滴静注用400mg/16mL並びにエルプラット注射用50mg、同注射用100mg、同点 滴静注液50mg及び同点滴静注液100mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告 いたします。資料は7-1〜7-3です。  ゼローダ錠300は「手術不能又は再発乳癌」及び「結腸癌における術後補助化学療法」 を効能・効果として、アバスチン点滴静注用100mg/4mL及び同点滴静注用400mg/16mLは 「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」を効能・効果として、またエルプラット注 射用50mg、同注射用100mg、同点滴静注液50mg及び同点滴静注液100mgは「治癒切除不 能な進行・再発の結腸・直腸癌」及び「結腸癌における術後補助化学療法」を効能・効果 として、それぞれ承認されている抗悪性腫瘍剤です。  今般、中外製薬株式会社よりゼローダ錠の「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」 の効能・効果及び用法・用量の追加、アバスチン点滴静注用の用法・用量の追加、また株 式会社ヤクルト本社よりエルプラット注射用及び同点滴静注液の用法・用量を追加する製 造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構におけ る審査の結果、これらの医薬品を承認して差し支えないと判断いたしました。議題1につ いては以上です。 ○事務局 続きまして、議題2について御説明いたします。資料8を御覧ください。販売 名「デノシンカプセル250」、一般名「ガンシクロビル」、申請者「田辺三菱製薬株式会 社」の希少疾病用医薬品の指定解除について御報告いたします。  本剤は平成8年4月に希少疾病用医薬品に指定され、平成9年7月に承認されたエイズ における注射用ガンシクロビル等による初期療法で安定しているサイトメガロウイルス 網膜炎の維持療法などを効能・効果とする薬剤です。しかしながら、本剤は吸収性の問題 がありまして、通常1日12カプセルの服用が必要だった等から、平成16年11月に吸収 性を高めたプロドラッグである、一般名「バルガンシクロビル塩酸塩」、販売名「バリキ サ錠450mg」が承認されました。そのため、本剤からバリキサ錠450mgへの切替えが進め られ、本剤の承認整理が行われたことに併せて、今般、本剤の希少疾病用医薬品の指定解 除を行うものです。なお、本剤の販売中止に際しては、すべての納入医療機関に調査を行 い、問題がない旨の確認は行っております。以上、御報告いたします。  次に、資料9を御覧ください。報告事項3、医療用医薬品の承認条件解除について御説 明いたします。販売名「アイセントレス錠400mg」、一般名「ラルテグラビルカリウム」、 承認取得者「万有製薬株式会社」の承認条件解除について御報告いたします。  本剤は平成20年6月にHIV感染症の効能・効果で承認された薬剤です。承認申請時 にはEUの申請資料を基に審査が行われた結果、日本人における薬物動態に関する情報が 得られていないことなどから、1ページにある1〜3の承認条件が付帯された上で承認さ れました。  今般、申請者から日本人を対象とした薬物動態に関する試験結果が提出されたことか ら、医薬品医療機器総合機構において審査が行われました。3ページの「総合評価」を御 確認ください。審査の結果、日本人の健康成人における本剤の薬物動態は、これまでに得 られている外国人における薬物動態と大きく異ならないことを確認いたしました。そのた め、日本人の薬物動態について結果の報告等を求めた承認条件を解除することとし、3〜 4ページの下線部のとおり、変更することが適切であると判断いたしました。以上、御報 告いたします。 ○吉田部会長 大腸癌の世界的標準治療剤であるフォルフォックス+アバスチンに対応す る経口剤である「ゼローダ」「アバスチン」「エルプラット」、いわゆるゼロックス+ベ バシズマブといったものを使えるようにしたいということと、ガンシクロビルの薬の量が 多かったのが、代替品ができたということで製造中止にしたいということ。もう一つは承 認条件が整ったので、承認条件を変更したいという3件です。これらについて御質問等々 があればお願いいたします。特にございませんか。それでは、報告事項については御確認 いただいたということといたします。その他について事務局より説明をお願いいたしま す。 ○事務局 資料10に基づいて説明いたします。既に御案内のとおり、資料10-2を当日配 付しておりますので、あわせて御覧ください。「バンコマイシン塩酸塩」は、これまで内 服剤では散剤しか承認されていなかったのですが、溶時溶解のため使用に手間がかかると いうことで、新たに錠剤の開発が行われ、現在承認申請がなされているところです。本件 については耐性菌の問題に対する懸念があることから、日本感染症学会等5団体に、平成 20年7月に御意見を聴取したところです。聴取の結果、そのうち2団体から御意見をい ただきましたので、昨年8月に医薬品第二部会で御検討いただき、散剤と錠剤の同等性の 妥当性の問題や病院における適正使用に関する懸念等の御意見を頂戴いたしました。  今般、それに加えて日本細菌学会から新たな御意見をいただきましたので、御紹介した いと思います。資料14ページを御覧ください。日本細菌学会からの御意見は、要約する と以下のとおりです。ヒトの腸管のVREの選択的増加とVREによる院内感染の増加 は、バンコマイシンの使用量に比例する。日本においてはバンコマイシンの内服を容易に するバンコマイシン錠の認可については慎重であるべきである、という御意見を頂戴して おります。  また、錠剤の承認の前後に当たっては、32ページのとおり、以下のような提言をいた だいております。承認に際しては適用疾患の診断基準の厳密化を行うこと。併せて、バン コマイシンの散剤が適正使用されているかどうかの実態調査を行うこと。33ページを御 覧ください。申請企業の「病院でのバンコマイシンの適正使用のための情報活動の実績」 を提出すること。また、34ページでは、申請されたバンコマイシン錠について臨床効果、 抗菌活性、体内動態、副作用、腸内細菌に対する影響等のデータについて新規承認と同等 のデータを提出すること。また、承認後においては使用全例に対する情報収集と報告を義 務付けること。また、販売数量や病院におけるVREの保菌や感染状況の調査の定期的な 報告、病院の医師への適正使用確保のための情報提供を義務付けることといった提言をい ただいております。  なお、これらの提言については申請者より回答をいただいておりますので、65ページ を御覧ください。別紙5に載っている申請者は、これまでのバンコマイシン散剤における 適正使用確保や製造販売後調査の実績を説明しつつ、適正使用に関する調査や臨床試験の 実施、製造販売後の調査等、日本細菌学会の提言について基本的に賛同するとの回答をい ただいております。また、承認後の適正使用を担保し、製造販売後調査を契約した病院に しか販売しない等の対応策を提案しております。  69ページを御覧ください。別紙6に載っているのは別の申請者からの回答ですが、先 ほどの説明同様、これまでの企業における適正使用確保や製造販売後調査の実績を説明し ており、錠剤が承認された後については、散剤同様、感受性の調査や市販後調査等を行っ て対応すること。適切な施設での使用や適正使用の説明を行うことになるため、乱用され ることはないだろうとの回答をしております。  このような各申請者の対応を踏まえ、本部会の先生方にバンコマイシン錠の開発に当た っての御意見等を伺いたいと思いまして、今回御報告させていただきました。なお、これ らの申請者の回答について、日本細菌学会より資料10-2により、再度意見をいただいて いるところです。補足があれば、お願いいたします。 ○吉田部会長 要するに、ある企業から、バンコマイシンは散剤では使いにくいので錠剤 にしたいという申請があったときに、錠剤にすると今度は簡便に使われ過ぎるので耐性菌 の問題が出てくるのではないか、これにどのように対応したらいいのかということだろう と思います。本日、参考人としてお二人の先生方に来ていただいておりますので、まず、 群馬大学の池先生から何か補足すること、あるいはこのようなところが問題だということ があればお話いただきたいと思います。 ○池参考人 私ども細菌学会としては、今お話があったような提言をさせていただきまし た。申請会社の回答書に対する細菌学会としての意見も今回出させていただきました。バ ンコマイシン耐性菌に関しては、アメリカにおいては非常に深刻な問題になっておりま す。特に、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の院内感染は深刻です。これに関しては、 提言書でも一部引用しましたが、多くの報告があります。臓器移植等の重度易感染者に対 して感染したときに、MRSAよりも死亡率が高いとされています。VREによる重度易 感染者のVRE感染の治療が困難であることが考えられます。アメリカはVREが世界で 最も多く臨床分離される国で、年間臨床分離腸球菌の約15%、約80,000例の患者から分 離されています。日本はVREの分離は一般的ではありません。例えば、埼玉や京都地区 のいくつかの病院を除いてはほとんど分離されていません。米国でVREが増加した原因 は、臨床においてバンコマイシンが多用されたことによります。バンコマイシンの使用量 に比例して、VRE保菌者、あるいはVREの院内感染が増加するとされています。今回 のバンコマイシン錠剤の申請については、バンコマイシン錠剤の医療における必要度と、 それによる目的がはっきりしません。骨髄移植の患者さんなどを除くと、バンコマイシン の内服が適用になる疾患は、抗菌剤投与と関連した医原性の特殊な病気であり、あまり多 い疾患ではありません。MRSA腸炎は日本に特有の術後に起こる疾患でしたが、外科領 域の研究により今は非常に少なくなっています。例えば、私の大学で調査した限りにおい ても、MRSA腸炎は年間1例あるかないかです。それ位少ない疾患です。錠剤が承認販 売された場合、厳密な検査、確定診断のないまま、下痢患者にMRSA腸炎の診断名の下 に安易に使用される可能性が非常に高い。その危険性を細菌学会としては懸念いたしま す。 もう一つの適応疾患であるC.difficile腸炎も、抗生剤の内服と関連した疾患です。そ のため、MRSA腸炎が多い時にはC.difficile腸炎も多いという傾向があるようです。 C.difficile腸炎についても、厳密に言えば非常に少ない疾患です。それをなぜ錠剤にす ることによって使いやすさを目的として必要とするのかというのが一つの疑問です。この 疾患の現状と必要性について十分な調査が必要であるというのが、細菌学会の提言の趣旨 です。この疾患に対してバンコマイシン内服剤に代わるものがあるかと言いますと、「メ トロニダゾール」が錠剤としてあり、バンコマイシン散の飲めない患者に対しては、それ が使える状況にあります。ですから、バンコマイシンが唯一の治療薬ではありません。「メ トロニダゾール」については、意見書、資料10-2の8ページにございます。このような バンコマイシン内服が適応となる疾患が多いようでしたら、そのこと自体が大きな問題と 考えます。そのため、バンコマイシン内服錠使用承認前の取り扱いとして、バンコマイシ ン内服が適応となる疾患の現状と、内服錠の必要度、または必要性について、十分な調査 が必要であることを、細菌学会として提言させていただきました。 ○吉田部会長 アメリカで使用量が増えたというのは、カプセルか何かを使うようになっ て増えたということですか。 ○池参考人 はい。アメリカではカプセル状にしたことによって、使用量が明らかに増え たということはあります。それまでは散剤の注射剤が内服用として使用されていました が、内服の使用量としてはデータとして検索できません。ところが、カプセルの使用承認 以降は年々増加し、最初の1、2年から10年後には、使用量は約4倍になっています。 世界的に見てもドイツやその他の国においては、今でも内服用の飲みやすい剤形にしては 販売されていないようです。バンコマイシンが飲みやすい内服用剤形で承認されている国 は、世界的にもそれほど多くないと思われます。 ○吉田部会長 分かりました。砂川先生から何か追加はありませんか。 ○砂川参考人 去年お話したとおり、錠剤にすると、やはり安易に使われるのではないか ということを今心配しております。 ○吉田部会長 分かりました。本件については、この審議会でこう決めようとか、こうす べきだということを決定するというよりも、このような方向で開発したらいいのではない か、あるいはこういうやり方はやめた方がいいのではないかなどといった御意見を伺いた いというのが、どうも審査管理課の要請のようですので、自由なお立場でこの件に関して コメントをいただければと思います。委員の先生方のコメントを是非お願いしたいと思い ますが、どなたかございますか。 ○土屋委員 私は池先生の御意見に全面的に賛成です。我が国でこのような錠剤が本当に 必要かどうか、よく分からない段階で開発する必要があるだろうかと非常に疑問に思いま す。また、先生方がおっしゃるように、錠剤ができれば使用量が増えて、耐性菌がますま す増えるという状況が目に見えていると言ってよろしいと思います。ですから、私は非常 に疑問に感じるということでございます。 ○前崎委員 バンコマイシンは錠剤以外にも静注用製剤もあるわけですが、日本では化学 療法学会、感染症学会の方からの適正使用の手引等によって、臨床現場は適正使用に関し ては欧米よりもかなり進んだ考えを持っていると思います。もちろん、錠剤が出ることに よって汎用される可能性はありますが、むやみにそれをやめるというよりも、適正使用に ついて指導していくことも非常に大事ではないかと思います。 ○吉田部会長 二つ御意見をいただきましたが、そのほか、何かあればお願いいたします。 ○溝口委員 日本細菌学会が資料10-2に十分お書きになっていますし、先ほど池先生が おっしゃったとおりですが、利便性のみの目的で錠剤を増やすと、今までのデータから明 らかに死亡率の高いVREが増える可能性があると思います。いくら製薬会社が情報を提 供しても、3ページにも書かれてあるように、処方するのは医師で、医師の質や能力によ っていい加減なことが行われる可能性があるので、このようなものを許可すると危険が非 常に増すのではないかと思います。私は癌研に行っておりますが、そこで感じるのは、患 者というのは必要だと分かれば、命の引替えとしてきちんと薬は飲んでくれるものです。 苦いから、まずいから飲まないというのは、処方した医師の説明が足りないからだと思う のです。先ほどの説明あるいは資料10-2を読むと、将来、危険なVRE感染症を増加さ せるような可能性のあるものは開発しない方がいいと思います。 ○守殿委員 外科的な立場で言いますと、術後等で緊急的に用いたい場合があります。そ のようなときに本剤を用いることになりますが、メーカーサイドあるいは臨床医からの言 葉だと思いますが、現状では注射用散剤を溶解して使っていると不安定性があるというこ とで、現場が煩雑なとき、忙しいときにこのような錠剤があれば便利だという考え方はあ ると思います。そのような面から言うと、このような錠剤があってもいいかなと思います が、先ほどから話があるように、本剤が臨床応用されるに当たっては、極めて厳重な管理 が当然必要だと思いますが、そのようなことが可能なら検討してみてはどうかと思いま す。 ○清水委員 今、病院においては感染制御部等との関連で抗MRSA溶剤、あるいはカル バペネム第4世代のセフェムみたいなものは、感染制御の考え方から薬剤師も関与して、 届出制にするといった使い方で使用を管理する方法が一般的に行われていると思います。 そういったことは機能評価などでも求められていることだと思いますが、今般のバンコマ イシンの錠剤においては、病院での使用に加えて、開業医にとっても使いやすくなるとい うところで、複数の目で見る管理というものが担保できるかどうかが非常に問題になって くるのではないかと感じております。そういったことがきちんとできるような適正使用の 方針が確立されればよろしいかなとは思うのですが、やはり、実際問題としてはそこが一 番難しいところになるのではないかと感じております。 ○庵原委員 やはりVREのことは今後大変な問題になると思いますので、投与する側の 制限を何らか考える必要があるのではないかと思います。特に、対象疾患は移植された患 者など、何らかの免疫不全的な基礎疾患がある方の感染ですから、市中である感染症では ないと思われるのです。そうなると、先ほど清水委員が言われたように、何らかの感染制 御のところでレギュレートするというのが現実的な話ではないかと思います。 ○吉田部会長 たとえば、外科手術後の合併症でMRSA腸炎を起こすとかなり大変なこ とが起きますね。しかし、その状況というのは、一般にMRSA腸炎の感染がどんどん起 こるということではなく、患者さんの方にストレスがかかった状況とか免疫不全の状況が 準備されていて、そこに発症することによって重症化すると。その様な場合にこういった 薬が必要になってくるのだろうと思います。ですから、一般的な用途としては、それほど 頻繁に使われるわけではないので、先ほどからの先生方のお話にあるように、患者の教育 も含めて、きちんとした使い方をどうやって教育するかということに尽きるのだろうと思 います。飯沼委員はいかがですか。 ○飯沼委員 いろいろなリスクファクターがある人には要ると思いますが、先生方がおっ しゃるように、やはり、これは相当な条件を付けないと無理ではないかと思うので、条件 整備の方も並行して考えていただきたいと思います。 ○吉田部会長 竹内先生、田村先生、何かございますか。 ○田村委員 厳重な管理をして本当に必要な人だけにしっかり供給できれば、それが理想 的だと思うのですが、ちょっと現実を考えると難しいのではないかという気がします。 ○吉田部会長 そうですね。そのほか、御意見いかがでしょうか。 ○池参考人 提言書にも書きましたが、世界的に見ても、日本はVERが例外的に広まっ ていない国です。これは本当に幸運なことです。何とかこれを維持していただきたいとい うのが、私どものもう一つの基本的な背景にございます。日本のVERが少ない現状は、 対外的には厚生行政の成功だと言われております。 ○吉田部会長 それを壊してほしくないということですね。 ○池参考人 そのとおりです。 ○吉田部会長 分かりました。具体的な意見聴取ということで審査管理課からまた要請が 来るかもしれませんが、本日はこれぐらいでよろしいですか。 ○審査管理課長 先生方の御意見を踏まえまして、申請者の方といろいろと協議させてい ただきたいと思っております。 ○吉田部会長 分かりました。その他の事項については御確認いただいたことといたしま す。参考人の先生方、ありがとうございました。本日の議題は以上ですが、事務局から報 告があればお願いいたします。 ○事務局 次回の部会ですが、既に御案内のように、10月19日(月)午後4時から開催す る予定ですので、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 本日は遅くまでありがとうございました。以上で終了いたします。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 中山(内線2746)