09/08/28 第1回チーム医療の推進に関する検討会議事録 第1回 チーム医療の推進に関する検討会            日時 平成21年8月28日(金)               16:00〜18:00            場所 厚生労働省9階省議室 ○石川(義)補佐   ただいまより第1回チーム医療の推進に関する検討会を開催します。本日はご 多忙のところご参集いただきまして、ありがとうございます。  本日は第1回目の会合ですので、まず委員の皆様のご紹介をさせていただきま す。  ケアーズ白十字訪問看護ステーション代表取締役・所長の秋山正子委員です。  昭和大学医学部救急医学講座教授の有賀徹委員です。  東京医科歯科大学大学院教授の井上智子委員です。  癌とともに生きる会副会長の海辺陽子委員です。  国際医療福祉大学大学院教授の大熊由紀子委員です。  医療法人アスムス理事長の太田秀樹委員です。  日本助産師会会長の加藤尚美委員です。  日本赤十字看護大学教授の川嶋みどり委員です。  日本看護協会副会長の坂本すが委員です。  国立病院機構九州医療センター名誉院長の朔元則委員です。  政策研究大学院教授の島崎謙治委員です。  自治医科大学麻酔科学・集中治療医学講座教授の瀬尾憲正委員です。  東京大学大学院医学研究科教授の永井良三委員です。  全日本病院協会会長の西澤寛俊委員です。  日本医師会常任理事の羽生田俊委員です。  日本歯科医師会副会長の宮村一弘委員です。  日本薬剤師会副会長の山本信夫委員です。  東京大学大学院法学政治学研究科教授の山本隆司委員です。  亀田総合病院看護部長の竹股喜代子委員からはご欠席の連絡をいただいてい ます。  また本日は、慶應義塾大学教授の太田喜久子先生にチーム医療の推進に関す る話題提供をお願いしています。  続いて事務局の紹介をします。  医政局長の阿曽沼です。  医政局担当審議官の中尾です。  医政局総務課長の岩渕です。  医政局医事課長の杉野です。  医政局看護課長の野村です。  カメラ撮りはここまでとさせていただきます。カメラの皆様はご退室をお願 いします。  初めに医政局長からご挨拶を申し上げます。 ○阿曽沼医政局長  医政局長の阿曽沼です。本日はご多忙中のところご参集をいただきまして、 大変ありがとうございます。今回の検討会でございますが、どうしてこういう 検討会を設けたかということですが、最近、少子高齢化も進展し、また医療技 術も高度化、複雑化しておりますし、また地域での医師不足問題など、国民の 関心の高い医療の分野で取り巻く状況は厳しさを大変増しているところでござ います。そういう中で、また一方、医療サービスの質の向上を求める国民の声 も、年々強くなっているという現状がございます。  そういう現状を考えますと、患者や家族にとって、安全で質の高い医療を効 率的に提供するということを考えますと、各医療関係職種の方々がその専門性 をより発揮でき、チームで医療を行うという体制を整えていくことが、大変重 要ではないかというふうに考えております。  このため、今回今後の医療関係職種間の協働と言いますか、連携と言います か、その在り方を検討していただこうということで、厚生労働大臣の指示もあ りまして、大臣の下に検討会を設置するということにいたしました。今日、そ ういう趣旨で、皆様にお集まりいただいたということでございます。今後、委 員の皆様方におかれましては、医師、看護師をはじめ、その他の医療関係職種 も含めたチーム医療の推進について、現場の実情を勘案しながら、幅広い観点 からご議論を重ねていただきたいと考えております。平成21年度中にご意見を 取りまとめていただければ大変幸いであると思っておりますので、とりあえず 来年3月ぐらいを目途にご意見を取りまとめていただければと思っております。 そういうことでお集まりいただきましたが、忌憚なきご議論をいただきますよ うお願いをいたしまして、開会に当たりましてご挨拶に代えさせていただきま す。 ○石川(義)補佐  資料の確認をします。「配置図」と書いてあります座席表、そして本日の「議 事次第」です。資料1は「チーム医療の推進に関する検討会の開催要綱」です。 資料2は「チーム医療の推進に関する閣議決定等」の資料です。資料3は「看護 師が行う診療の補助について」と題した事務局提出資料です。資料4はチーム医 療の推進に関するヒアリングのため、太田喜久子先生から配付いただいている、 「医師と看護師との役割分担と連携の推進に関する研究」の資料です。なお、 参考として、研究報告書の冊子本体を、メインテーブルのみに席上配付資料と して置いております。  続いて、資料1の開催要綱をご覧ください。こちらで本検討会の趣旨等につい てご説明いたします。本検討の趣旨については、チーム医療を推進するため、 厚生労働大臣の下に有識者で構成される検討会を開催し、日本の実情に即した 医師と看護師等との協働・連携の在り方等について検討をお願いするものです。 検討課題としては、医師、看護師等の役割分担、看護師等の専門性の向上、そ の他、各医療関係職種の皆様による、チーム医療の推進に向けた課題について ご検討をお願いします。本検討会の構成員、また本日のヒアリングについては、 先ほどお名前をご紹介したとおりです。なお、本検討会の運営に関して、庶務 は厚生労働省医政局で行い、議事は公開とさせていただいています。  次に座長の選出に移ります。事務局としては、永井先生にお願いしてはどう かと存じますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○石川(義)補佐  それでは永井委員に座長をお願いしたいと思います。永井委員におかれまし ては、座長席にお移りいただきたいと思います。これより先は、永井座長に議 事の進行をお願いいたします。 ○永井座長  ただいま座長を仰せ付かりました東京大学の永井でございます。このチーム 医療の推進に関する検討会については、いろいろな考え方があろうかと思いま す。大事なのは、基本的な考え方で、どのような問題があるのか明らかにして、 現場のいろいろな問題を解決できるような形で意見の取りまとめを行いたいと 思いますので、委員の先生方にはご協力をお願いしたいと存じます。どうぞよ ろしくお願いいたします。  議事に入ります。本日の議事の進め方については議事次第をご覧ください。 初めに、チーム医療の推進に関する一連の閣議決定と、看護師が行う診療の補 助に関する現行制度について、まず事務局にご説明をお願いいたします。続い て、チーム医療の推進に関する話題提供として、慶應義塾大学教授の太田喜久 子先生にお話をお伺いいたします。最後に、チーム医療の推進について、委員 の皆様に自由にご討論いただく予定です。  まず、資料2と資料3について、事務局から概略をご説明いただきます。 ○石川(義)補佐  資料2、資料3と続けてご説明します。資料2をご覧ください。チーム医療の推 進に関する一連の閣議決定等についてご紹介します。まず1頁です。規制改革会 議の答申を受けて、昨年度末に閣議決定された「規制改革推進のための3か年計 画(再改定)」の文書です。この中で、医師と他の医療従事者の役割分担の推進 について言及がありまして、特に下から5行目以降ですが、「専門性を高めた新 しい職種(いわゆるナースプラクティショナーなど)の導入について、各医療 機関等の要望や実態等を踏まえ、その必要性を含め検討する」とされておりま す。  2頁です。本年5月の経済財政諮問会議において、内閣総理大臣より看護師の 役割の拡大についてご指示をいただいているところです。「厚生労働省におい て、専門家を集め、日本の実情に即して、どの範囲の業務を、どういう条件で 看護師に認めるか、具体的に検討していただきたい」とのご指示です。  3頁です。本年6月に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2009」、いわゆ る「骨太2009」です。この中で、先ほどの内閣総理大臣の指示を受けた形で、「医 師と看護師等の間の役割分担の見直し(専門看護師の業務拡大等)について、 専門家会議で検討を行い、平成21年度中に具体策を取りまとめる」ということ が明記されております。この専門家会議として、本検討会の参集をお願いし、 チーム医療の推進、あるいは各医療関係職種の協働・連携の在り方などについ てご検討いただくものです。  以上のほか、4頁です。ナースプラクティショナーについては、特区提案が出 されております。これについて、構造改革特区推進本部の評価・調査委員会で これを取り上げて調査審議を行っているところです。本年8月に特区の評価・調 査委員会が取りまとめた「ナースプラクティショナーの必要性に関する調査審 議の今後の進め方について」ですが、上の段の第3段落にあるように、本検討会 における検討状況などについて、年度末までに、厚生労働省から特区の評価・ 調査委員会に3回報告することになっております。資料2については以上です。  続いて資料3です。看護師の行う診療の補助を例に挙げながら、現行制度のご 紹介します。まず医師については、医師法第17条で、「医師でなければ、医業を なしてはならない」ことが規定されております。ここでいう「医業」ですが、 当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなけれ ば人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(「医行為」)を、 反復継続する意思をもって行うことと解しております。  一方、看護師については、保健師助産師看護師法第5条で、「傷病者若しくは じょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と規 定されております。また、同法第31条第1項で、看護師でない者がこうした業を してはならない、また同法第37条で、「保健師、助産師、看護師又は准看護師は、 主治の医師又は歯科医師の指示があった場合を除くほか、医師又は歯科医師が 行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない」と 規定されております。さらに、一部の規定について、違反に対する罰則も定め られております。  ここで、医業あるいは医行為の範囲、療養上の世話又は診療の補助の範囲に ついては、法律や下位法令でがっちりと規定する形ではなく、解釈に委ねられ ていて、その範囲で一定の柔軟性を有しております。  2頁以降は、これらの解釈に関して、これまで発出された主な通知などの関係 部分を抜粋しております。例えば、医師又は歯科医師の指示の下に保健師、助 産師、看護師及び准看護師が行う静脈注謝ですが、(2)にあるとおり、昭和26年 には認められていませんでしたが、(4)・(5)にあるように、さまざまな環境の進 歩、向上により、平成14年には診療の補助行為の範疇として取り扱うものとさ れました。  また、(6)の平成19年12月の「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での 役割分担の推進について」の通知では、一定の条件の下で看護職員が行う薬剤 の投与量の調節、救急医療等における診療の優先順位の決定(トリアージ)な どについて、可能であることが明記されております。そのほか、医療関係職、 事務職員などの適切な役割分担の推進について幅広に規定しております。参考 として、(6)で紹介している通知について、その全文を4頁以降に収載しておりま す。以上です。 ○永井座長  ただいまの事務局の説明に対して、ご質問をお願いします。まず私から伺い ますが、医行為の範囲は解釈の問題であるということですが、そうすると、す べての医行為について、すべて解釈がされているのでしょうか、それとも慣例 で行われているのでしょうか。 ○石川(義)補佐  法律の条文上は、先ほどご紹介させていただいたところまでで、その範囲は 時代の進歩、医療技術の進歩あるいは教育内容の向上などに伴い変遷するもの であり、一概にどうであるということは申し上げづらいところでございます。 ○永井座長  ということは、かなり慣例で線引きが行われている部分も多いということで すか。 ○石川(義)補佐  はい。 ○永井座長  そのような状況は、外国でも同じことなのでしょうか。 ○杉野医事課長  諸外国の法令をつぶさに調べたわけではありませんが、おそらく同じような 状況だと思います。医学あるいは医療技術の進歩を前提にすると、あらかじめ 法令でリジッドに規定するのは難しいと思われますので、同様の法体系なり、 制度を前提に行われていると思われます。もちろん連邦制国家の場合は、各州 ごとに状況は違うかもしれませんが、大まかに言えば同じような状況にあると 理解しています。 ○永井座長  そういう状況は、医療技術の発展の歴史とかなり関係があると思います。新 しい医療技術というのは、医師が患者に対してテストケースとして初めは導入 されるでしょうから、その技術については、その後ずっと医師が担うことにな っていくのでしょう。そのような歴史との関係がかなりあると思います。歴史 的経緯や法律など、いろいろな問題がチーム医療の問題にはかかわってくると 考えて良いようです。もしあまりご質問がなければ、最後にフリーディスカッ ションの時間も用意されていますので、議事を進めます。  本日は慶應義塾大学の太田喜久子先生に、チーム医療の推進に関する話題提 供をお願いしていますので、太田先生にお話をお願いします。 ○太田喜久子先生  特別研究事業で実施させていただいた、医師と看護師との役割分担と連携の 推進に関する研究について概要を説明いたします。また、本日はファイルで全 文の報告書も委員の先生方には配っていただいておりますので、報告書も資料 と併せて見ていただきながら説明をさせていただきます。  この研究は、日本のさまざまな患者、家族にとって、安全で安心できる医療 を効率的に受けられるために、どのような医師、看護師による連携・協働が進 んでいるのか。その先行事例の調査を行いたい。さらに、その先行事例の適用 可能性なども検討していくことで、これからの医師、看護師間の役割分担の推 進に向けて具体的な事例を集めて、その資料とすることを目的として行いまし た。  報告書をご覧ください。目次の後ろに組織があります。このようなメンバー で行いまして、今日のこの検討会にも委員として出席されております井上先生、 坂本先生もメンバーでいらっしゃいました。先行事例を具体的に集めていくと いうことで、次の頁にはワーキンググループのメンバーがあるように、分担研 究者の先生方も、看護専門分野の先生方にお集まりいただきました。具体的に は、事例を集めていくためにワーキンググループを構成し、ヒアリングをし、 資料収集をしていきました。本文手前の組織の次には、全体にかかわる要旨も あるので、研究要旨もご覧いただけたらと思います。  具体的な専門分野としては、急性期、慢性期、がん、小児、精神、在宅、医 療過疎地域の看護、看護管理という8領域でした。PPTの資料にもありますが、 先行事例としては53事例を抽出しました。それぞれ専門分野ごとの件数につい ては、そこにあるとおりです。先行事例について、どのような経過で連携が推 進されていったかの背景、実施のプロセスはどのようなものだったのか、また 連携を進めた結果の効果はどうであったかの分析をいたしました。  スライド3ですが、8領域全体を通してまとめると、どのような種類の役割分 担・連携だったのかということで、11の特徴を持った先行事例を集めることが できました。1つは在宅看護領域において、事前指示・事前相談に基づいて対応 している事例、外来で慢性疾患患者に対して看護師による看護相談をしている 事例、救急外来での看護師によるトリアージ、初期の処置を行っている事例、 急変時の看護師による救命処置、鎮痛剤やインスリン等の薬剤の投与の調整を 行っている事例、検査、前処置、治療、入院等の説明を看護師が行っている事 例、CT、MR造影剤検査の医師、看護師、放射線技師等の役割分担が進んでいる 事例、看護師による周手術期の管理、麻酔導入後の麻酔の管理、僻地医療にお ける包括指示・相談に基づいた対応がスムーズにいっている事例、看護師が中 心となって行うベッドコントロールという内容に分類できました。  全体を通して、このような連携がスムーズにいくように進められた背景、要 因には、いくつか共通したものがありました。それをスライド4にまとめていま す。1つは患者数の増加、それにより治療も増え、それに対応できる医師が不足 し、医師による業務の負担が増している。診断や治療が遅れてしまう事態が常 態化していること。患者にとっては、待ち時間が長いことへのクレームが増し ているという診療の実態がありました。  片や、治療を標準化していくための現場における方策も取られていて、例え ば治療ガイドライン、クリニカルパス、プロトコールを確立させ、それを中で 浸透させ、自分たちの日頃の仕事に使うこと。それから、看護師の中に専門性 の高い看護実践のできる看護師が増えてきています。修士課程を修了したさま ざまな領域の専門看護師、6か月以上のコースの特定の分野の教育を受けた認定 看護師も増えてきて、そういう影響も見られております。その他、学会等での 特定領域の認定を受けた看護師が増えてきていることなども、このような連携 が推進してきている背景にはあると思われます。全部で11分野で50を超える事 例を抽出したのですが、この場では4つの例をスライドでお示しします。報告書 で、より具体的な事例の紹介をしていますので、その頁もお示ししながら概略 を説明いたします。  スライド5にあるのが、救急外来での看護師によるトリアージと初期対応です。 報告書の17頁から24頁です。400床ほどの病院の実践の場で、連携推進がなされ るにいたる背景としては、医師不足、全次型の救急外来をしているのですが、 来院される中でも軽症の患者が増えてきていることの影響で、重症の方への対 応が遅れることなど、効率的な救急での外来ができなくなってきている事態が ありました。医師のストレスも増してきます。そのような状況の中で、2004年 に、救急看護を専門とする認定看護師を外来に配置したという背景があります。  具体的には、救急外来に来る方のうち、独歩あるいは自家用車やタクシー等 で来院される方については、救急外来に24時間常時1名のトリアージ看護師を置 く体制を整え、そのナースによるトリアージを行います。さまざまな症状の聴 取・フィジカルアセスメントを行い、そのナースが外来に来た患者の状況を判 断します。非緊急、やや緊急、準緊急、緊急の4段階で分類していました。  非緊急あるいはやや緊急と判断された患者には、ロビーで順番を待ってもら います。その間はトリアージナースによる見守り・再アセスメントを行います。 その状況で帰宅をする人もあるそうです。準緊急、緊急と判断された場合は、 その初期の対応をナースが行います。内容としては、モニタリング・心電図12 誘導・止血処置・末梢静脈ラインの確保・簡易の血糖測定・四肢変形などがあ る場合には、アイシングとシーネ固定等を実施しているということです。緊急 と判断された患者は、救急医によっての診察等がなされていきます。  このようなトリアージ看護師というのは、その病院の中でも要件が備わって います。臨床経験3年以上、6か月以上の救急外来の経験、院内外問わずBLSコー スの受講、ACLSコースの受講、JPTECTM、ITLSコースなど、関連する教育研修を 受けていること、フィジカルアセスメント技術を持っていること、電話でのト リアージ能力技能も備えていること、これらの要件を持ち、さらに師長や係長 が適任と認めた者が、トリアージ看護師になるということでした。  このようなトリアージについては、それが妥当なのかどうかが問われるとこ ろですが、それについては、この救急外来の医師1名がトリアージ記録をもとに、 月1回すべてのケースの検証を行い、その検証会をもってフィードバックを行っ ているということでした。その具体的な結果は21頁になります。見過ごしがあ ったり、過大に評価することがないようにするのが大事なわけですが、アメリ カの過去の報告例と比較しても、そこの施設の見過ごしの割合は低いですし、 過大な評価も少ないということです。常に、月1回のフィードバックにより、や ったことに対する振り返りをするなどし、携わっているナースの判断能力も向 上し、さらに自信にもつながったということです。そして、かかわっている人 たちの情報の共有やサポート体制を取る役にもなっていたということです。ト リアージに関しては、マニュアルを判断基準として持っていまして、その施設 の中の取り決めに基づいて行われているということです。  効果としては、心臓カテーテル検査の必要な患者への検査実施までの時間が 非常に短縮されたり、緊急度の高い患者については医師が優先的に診察できる ようになったり、診療効率が上がったという事例でした。  次はスライド6の事例です。これは入院で、薬剤の投与・調整が事前指示の範 囲内でスムーズに行われるようになったという事例です。報告書は112頁から11 7頁です。これは小児の専門病院でした。それまで、薬物療法についてはかかわ る医師によって使用方法がさまざまで、事前指示があってもそれが医師とナー スの間でスムーズに機能しなかったり、医師によって違うということで、いろ いろと意見の相違などがあり、うまく機能していませんでした。それから、が んだけではなく、緩和ケアに関するシステムがないという背景がありました。  この病院においては、小児の専門の看護師がいて、緩和ケアチームをつくり ましょうという声を掛けて、緩和ケアのチームが編成されました。医師は、血 液・再生医療科、麻酔科、児童思春期精神科の3名、ナースは2、3名、薬剤師1 名から構成するチームが編成されました。  まず薬物療法に関するマニュアルを作成し、それをもとに医師の責任の範囲 で、事前指示書が作成されます。医師不在時には、小児科にいるナースが事前 指示の範囲内で、そのナースによる判断に基づき薬剤投与を行います。医師が いるときは、それを医師に確認しながら行います。対象となる小児は、がん性 疼痛や移植治療後、終末期、手術後などの痛みのある子どもと家族です。  看護師たちは、薬剤の効果を判断したり、医師への報告や相談を行い、アセ スメントシートを活用することで、医師もナースと共同で行った結果の評価を 行い、指示書の内容の修正を行っていたということです。このプロセスの中で、 小児専門看護師が看護師への教育的な支援を行い、看護師のアセスメント力を 向上するためにバックアップをし、医師と小児病棟のナースの相談に対応した り、その調整役を行うことによって、この連携をスムーズにしていくことがで きたということです。週に1回はカンファレンスを開催し、そこには薬剤師も入 り、ケースの振り返りなどを行っていたということです。この場合の看護師の 要件としては、該当する子どもの痛み、あるいは痛みが予測される子どものい る病棟の看護師全員です。ガイドラインとして、薬物療法のマニュアル、看護 のマニュアル、痛みのアセスメントシート、事前指示書などが作成できるよう にしていったということです。  このような連携の効果として、子どもの痛みをスムーズに緩和するようにな り、子どもと家族の満足感も高まりました。これまではナースが観察し、薬の 必要性を看護師なりに伝えていたのですが、十分には伝えきれないものがあり ました。それがアセスメントシートなどの活用によりきちんと伝えることがで きるようになり、医師とナースが実施したことを評価できるようになったとい うことでした。  次の事例はスライド7です。報告書の42頁から45頁です。慢性疾患の患者に対 する看護の相談外来で、この場合は特に糖尿病を持っている患者へのかかわり の事例です。この病院は糖尿病の専門医が不在です。手術等非常に多忙な外科 医などの場合は、ナースが指示を受けようとしても適時では指示を受けられな いことがありました。それでも指示を受けないといけないと思って連絡をする ことで、医師の業務が妨げられるということが起こっていました。この病院に おいては、糖尿病の外来での働きかけの前には、皮膚排泄ケアの認定看護師が いて、その施設の中では認定看護師の活動による変化も見られていたところで す。  ここでは、認定看護師が外来に来た患者の検査の必要性の予測、指示の依頼 を行っています。それを外科医であるB医師が、検査の指示の依頼を受けて、検 査の指示をします。それから、ナースが薬剤の処方の予測をして、処方の依頼 をします。例えばインスリンの単位・種類・投与法、デバイスの選択に関して 予測をして、それを受けてB医師が処方を指示します。そして、A看護師の行っ た検査あるいは薬剤の投与・調整について、各種対応の確認はB医師が随時行っ ていきます。そのようなことが行われていました。この看護師は、仕事をしな がら自分の実践力を高めていき、該当する糖尿病患者の看護外来、病棟での入 院患者への対応等、ある部署に限定した働きではなく、病院内で横断的な働き をしています。研修医との関係の中でも、A看護師が非常に大事な診断の根拠、 アセスメント判断など、医師へのコメントなども行っていました。A看護師とB 医師は非常に信頼関係ができていて、治療・看護など糖尿病の包括的な医療を 主導する人材として、A看護師に一任するというようなことでした。記録は必ず、 残る形での処方・検査指示などは医師が行い、最終的な責任の所在も医師とい うことでした。病院内ではこのようなことについて看護部長も支援し、A看護師 は看護スタッフに対しては、リソースナースとしての機能を果たしていたとい うことです。  効果としては、非常に満足度が高くなりました。それから、さまざまな、患 者、医師、看護師、組織的な効果が見られたということです。デメリットとし ては、看護師の勤務が非常に超過することがあります。課題としては、リスク のさまざまな体制など、取り決めをどのように明文化していくかということで す。  次の事例はスライド8です。これは在宅の訪問看護で、褥瘡ケアでの連携の様 子です。これは1ステーションにおけるというより、複数の訪問看護ステーショ ンでの事例をまとめたものです。報告書では193頁から194頁です。ナースが訪 問をし、褥瘡の状態についてアセスメントし、観察した内容をデジタルカメラ などで撮影したものを医師に送って情報提供し、このような処置、処方が必要 ではないかということを医師に提案することにより、皮膚科の医師などが提案 に基づいて処方することが行われています。場合によっては、デブリートマン の実施もナースによって行われていたという事例です。これがスムーズにいっ た背景としては、頻回に訪問しているナースだからこそ、このようなことが効 果的にできるということなどが見られました。  スライド9です。役割分担・連携をこのように進めていくことで、さまざまな 効果が見られます。まず、患者・利用者にとっては、満足度が改善し、検査・ 治療の待ち時間が少なくなりました。速やかに症状に対応ができ、異常の予防・ 早期発見、回復が促されました。在宅でも24時間安心できる。丁寧な相談がで きるということで、満足ということです。僻地においても同じです。  医師においては、本来業務の時間が増加し治療に専念でき、効率的な診療が できる。医師の超過勤務が減少し、負担感が少なくなったということです。ナ ースについては、職務満足感・やりがい感が向上し、特定の専門性の確立への やりがいなども見えたりしています。すぐに対応できるということでの心理的 負担感も少なくなったり、キャリアパスとして非常に大事な役割、高度実践の ロールモデルとなり、他のナースへの刺激になったこともありました。  組織の経営的な面から見たときには、医療収入の増加が期待できるのではな いかということです。患者数も増加してくるし、医師不足により診療を断るこ とも減少します。在院日数が減少したり、診断効率の向上など、効率的なサー ビスができます。例えばナースが行うことによる、人件費等の削減も場合によ ってはあるのではないか。地域において中核病院としての期待に応えられるこ ともあります。  このような連携を推進していくためには、スライド14にあるような大事なプ ロセスがあります。まずは組織内の合意形成をきちんと取っておくことです。 それから、質と安全を担保するために、リスク管理体制としてどうするのか。 協働する医師等との業務・実施体制の取り決め。どのような患者の場合にそれ を行うのか、どのようなナースであればそれができるのかという条件をあらか じめ設定したり、担当者の教育・訓練、専門看護師、認定看護師を雇用し、そ の活用を図ること。手順書・プロトコール等の作成です。業務の整理も含めて 行っていくことが、推進していくに当たって大事なのではないか。  この事例のヒアリングの結果を受けて、この中のいくつかの事例が実際に適 用することについてどうなのかを、現場の病院長、副院長、看護部長へのアン ケート調査の結果も載せています。要旨のところに簡単には書いてあるのです が、非常に高い回収率で、それぞれの立場の166名の方から回収することができ ました。条件が整えば、このような連携を導入したいという肯定的な85.7%と いう、非常に高いご回答がありました。 ○永井座長  ご質問をお願いします。 ○羽生田委員  個々の事例についてのお話でしたが、最初にあった救急外来の場合には、メ ディカルコントロール体制の中でこういった業務がされ、そして検証が行われ、 フィードバックが行われるという非常にいい形が認められます。  糖尿病の場合について、内科の糖尿病専門医がいなかったという話ですが、 担当医が外科の医師ということでした。内科の先生自体もいないのでしょうか。 それと、このプロトコールは、どこで誰がどう作って、この体制に持っていっ たのでしょうか。糖尿病認定看護師がすべてをやったということなのでしょう か。 ○太田喜久子先生  この糖尿病外来の事例については、糖尿病の専門の医師がいないという病院 の状況で、外科の医師であるB医師と、認定看護師であるA看護師との、現場で 看護師が力を付けていく体制を整えていったという経緯でした。ですから、課 題のところにも書きましたが、この事例に関しては、A看護師とB医師との関係 性、A看護師が判断力等も備えていかれたということで、うまくいっていたので はないかと思います。  その意味では、このA看護師以外の看護師に役割拡大をしていくためにはどう すればいいか。明文化されたプロトコールをどのように作っていくのか、リス クに対してどのように体制をとっていくのか、そのような組織としての在り方 が、この事例の場合はまだ課題になっていると思います。 ○羽生田委員  このA看護師とB医師とのコミュニケーションといったことは評価できると思 うのですが、この場合は糖尿病の療養中であって、手術のために入院した事例 ですよね。 ○太田喜久子先生  はい。 ○羽生田委員  そうしたときに、糖尿病の療養をしている主治医が必ずいるはずで、そこか らの療養中あるいは入院中の指示が必ずあるのではないかと思うのですが、そ れがこの中に1つも出てこないのです。その辺がベースとして、こういった指示 書なり、治療のプロトコールを作っていくということがあるのではないかと思 うのですが、そこが出てこないのです。通常であればそれがあるはずで、ある べきであると思うのですが、その点はいかがでしょうか。 ○太田喜久子先生  病院としては内科の医師はいるのですが、患者の多くが消化器、外科の患者 として、手術目的で入院してくるということで、外科の医師が主治医としてか かわっていたということです。 ○有賀委員  いまのご質問に関係あるかもしれませんが、全体像を教えてください。チー ム医療の推進という検討会の題名を考えると、チーム医療といったときにはナ ースやドクターだけではなくて、薬剤師、MSW、リハのスタッフがあります。チ ーム医療の推進という話を病院の中で議論すると、各職種の医療記録をどう一 元化するか、それを推進するためには、例えば電子カルテにするかとか。その ような話をすることでわかるように、チーム医療そのものというのは、チーム 医療をすることによって、患者にとってよりよい医療が展開できるだろうとい う話で、私たちはチーム医療のことを常に頭に入れて議論するわけです。  例えば私は救急センターの責任者をやっていますが、朝と夕方にカンファレ ンスをやるときには、ドクター、ナース、病棟の薬剤師、最近はMSWにも来ても らって、症例のカンファレンスをやるのです。そのようなことで、チーム医療 をイメージしているのです。  いま羽生田委員がご質問されたように、そもそもいたほうがいいチームの一 員が欠落しているかもしれない局面において、いまの例でいけば、内科のドク ターの代わりに、場合によってはナースが踏み込んできているのではないか。  そのようにみていくと、チーム医療の推進とは言うものの、資料を見ている と、ナーシングスタッフが局面によっては足りない医療資源の穴埋めをしてく れという形で話を進めることになるのかなという気がしないでもないのですが、 専門性の高いナースが現場において大変良いことをしてくれるという話は私も よく分かりますから、それはそれでいいのですが、チーム医療と言ったときに、 ナースやドクターだけでなくて、その他の職種もたくさんありますので、そこ はどうなってしまうのかなと。 ○永井座長  それは医師、看護師等の役割分担ということで最初にご説明があったわけで、 「等」の中にはすべて入ると理解しております。そういうことでよろしいので すか。ただ、まだ話の始まりですので、まず看護師に関する研究についてお伺 いしようという段階だと思います。 ○有賀委員  わかりました。 ○山本信夫委員  いまのご意見もそうなのですが。今回は話題提供ということで、看護師の方々 のことを中心に現在ある状況を確認しようということなので、それはそれでよ ろしいかと思うのです。先ほどの資料3の中にもありましたし、報告書本体のほ うでもそうです。9頁の7では薬剤の管理の範囲が明確に規定されています。  聞き漏らしていたら申し訳ないのでお伺いしたいのですが、資料4、パワーポ イントでいうと6頁に「入院における薬剤の投与・調節」というところがありま すが、その中でいろいろ条件が示されていますが、薬物療法には基準がありま せん。医師と看護師の意見に相違があった場合とか、緩和ケアに関する明確な システムがないという背景の中で薬剤の効果を判断することに関して、看護の 方々が議論されている。一方で、たまたま麻薬については薬剤師が確認と書い てあるのですが、ここで示されていることは効果の判断まで看護の方々がなさ っていると理解するのでしょうか。つまり、例えばガイドラインの様な基準が ないまま、医師がいなくて、見解に相違があって、そして薬の判断をするとな ると、薬剤師が全く抜きでと、非常に細かな範囲になって申し訳ないのですが、 そういう気がしますので、そこを教えていただきたいというのが1点です。  それと、永井座長がおっしゃったように、まだ取っかかりですから、個々の 問題等には入っていると理解はいたしますが、もしチーム医療と言うのであれ ば、まず全体の枠組みというものがどこかで議論されて、こういうものがあっ た上で個々にというのがないと、議論がダッチロールするような気がするので す。 ○永井座長  初めにそういう例を挙げていただいて、今まさに議論が深まってきているわ けです。何もないところで総論を議論しても、なかなか難しいだろうと思いま す。ですから、今日は太田先生においでいただいていると私は理解しています。 ○太田喜久子先生  スライド6の事例につきましては、薬剤師の方も最初から、例えばガイドライ ンを作成するときにも入っていらっしゃいます。ですから、報告書の114頁、さ まざまな役割分担、連携をどうしていったかというところにも書いてあります が、精神科のドクター、麻酔科の医師、薬剤師、看護局、そういう連携のもと にガイドラインを作成し、当然、お子さんたちの変化については、ナースはナ ースの立場で、日々の様子から起こってきている変化、症状コントロールの様 子などを見ているでしょうし、さまざまカンファレンスなどには薬剤師も入っ ていらっしゃいますので、それぞれの立場からの検討がなされているというこ とです。 ○永井座長  先ほどの糖尿病の例なのですが、外科医の先生が忙しい場合には、看護相談 の外来だけで患者が帰ることもあるということなのでしょうか。もちろん、後 で医師に確認はしているのだと思いますが、そういう看護相談外来の位置づけ がどうなっているか教えていただけますか。 ○太田喜久子先生  外来に通ってこられる方の状態は、必ず医師との連携の中で必要な指示ある いは確認を得ながらナースが行っています。看護外来の対象となる患者、ある 程度安定した方々、そのような状況の中での方々は、かなりナースが主体的に、 さまざまな生活の様子などを伺いながら判断しているところもあるかと思いま す。 ○永井座長  必ずしも医師とフェース・トゥー・フェースで会わなくてもよいということ ですか。 ○太田喜久子先生  そういう場合もあります。 ○西澤委員  いまの発表を聞きまして、現在の医師法あるいは保助看法の範囲内でここま でのことができるのだということで、私も非常に参考になった発表だと思いま す。ありがとうございました。ただ、いろいろな先生方からお話がありますと おり、糖尿病の事例だけは、それがこの範疇なのかという辺りは今後の議論の 題材になるのかなと思っています。医師から見ると、効果としては、医師の本 来業務の時間が増加するということになっているのですが、見方によっては、 医師の本来業務を一部代わりにやっているようにも見えなくはない。  ちょっと気になる文章があります。細かいところですが、報告書の44頁の下 に、医療機関経営への影響ということで、糖尿病専門医1名と同等の活動をして 成果を上げているのに、看護師1名として雇っているのであるから好影響だとい うふうな書き方、これはちょっと違うと思います。この辺りはどのように判断 したらよろしいのでしょうか。 ○太田喜久子先生  これはインタビューでお話いただいたものを中心にまとめたものです。先ほ ど、このような連携が推進されることによる医療機関の費用削減のところでも お話しましたように、ナースが役割、機能を果たすことができるのであれば、 その分医師としての人件費を使うことがない。ナースがその役割、機能を十分 にほかの医師との連携の中で行うのであれば、そういうことも病院にとっては 良い影響をもたらすのではないか、そういうお答えがあったということです。 ○永井座長  いまの西澤委員の、本来業務というのはどこで線を引くか。最初に私もお聞 きしたように、かなり解釈の問題があり、それが時代とともに変わってきてい る。そういう状況の中でどういうふうにこれから考えていくのか、それを議論 しましょうということだと思います。 ○井上委員  私もメンバーとして、特に急性期のほうで調査に関わったのですが、いまご 発言いただいた方がほとんど医師の先生です。観点としては、本来医師がすべ きところを医師不足とか、そういう状況でナースがしている。そのことを医師 の側から、医師法に抵触していないかどうかという厳しい目で見られているよ うに私は感じました。もちろん、そういう議論もあるとは思うのですが、イン スリンのことに関して申しますと、糖尿病専門医がいたとしても、手術を受け る患者さんにポイントごとに何回かコンサルトをするとは思うのですが、消化 器系の手術を受ける人が術前あるいは術後で食事がステップアップしていくよ うなときに、食事のことや運動のこと、そういう生活のところまで見つつイン スリンの量が細かく分かる、そういうナースの部分は是非活用してもらいたい と思うのです。それは医師法に触れるからという発想ではなくて、どういう部 分だったらナースの知恵とか知識が活用できるのかというところで見てくださ らないと。最初からナースの部分ではないのではないかという線引きがあると、 話が進まないのです。  それから、ここに出ている事例はほとんど全部臨床の現場で、不都合とか、 不具合とか、患者の苦痛とか、不満などに対して、多くが医師のほうから「こ れ、やってみないか」というような一声があってシステムが動き出して、やっ てみて、こういう形になっているのです。ある意味すぐ転用可能性、適用可能 性がある良い事例ばかりだと思うのですが、それ以外にも。というのは、この 調査は必ず医師とナースのペアに対してインタビューをすることが前提だった のです。ですから、ナースの側だけで人知れず苦労していたりとか、これは是 非ドクターに言いたいなとか、そういうものは事例にすら上がらなかった。ド クターの意識まで動かして少し動いているものに関して先駆的ということだっ たのです。ですからそれ以外のもの、スライドで言いますと、スライド12のナ ースの側の負担の2「心理的負担感の減少」で、患者・利用者の苦痛にすぐ対応 でき、待たせなくて済む。あるいは、すごく待たせている。逆に言うならば、 医師の外来やらオペやらの時間が取られて病棟になかなか来てくれない。無駄 な時間を、いらいらして待っているなどというのが本当は山ほどあるのですが、 そういうものは1つとしてこの事例に上がってきていないのです。そういう意味 で、最初に医事法の論議になってしまうと全然進まなくなると思うのです。も ちろん、先ほどの事例も、糖尿病専門の内科医がいれば解決する問題なのだろ うと思うのですが、今はそういう時代ではないということで議論を進めていた だければと思います。 ○西澤委員  勘違いされていると思いますが、私は、決して医師法あるいは保助看法を変 えるなと言っているのではなくて、少なくとも、今ある法律の中で私たちはや っているはずなのです。私も病院の経営者ですから、そこを踏み出すというこ とはしないように気をつけています。当然のことながら、それは法律違反です から。 ○井上委員  それは「踏み出し」の理解だろうと思います。 ○西澤委員  私は、その辺りをきちんとして、踏み出して結果的に法に触れることになっ たらよくないと言っているのであって、やるときはその辺りを注意してやるべ きだと。私が言った44頁の文章を、もう一度繰り返します。看護師が糖尿病専 門医1名と同等の活動、要するに医師の業務をやっていると読み取れる文章があ るので、それはどういうことかなということで質問しました。 ○井上委員  委員のご懸念はそのとおりだと思うのですが、この「成果」というものにも いろいろな解釈があると思うのです。診療報酬とか、そういうものに関して言 えば、それは確かに首を傾げるのかもしれませんが、もう少し広い解釈をして いただければと思うのです。 ○羽生田委員  私は今、医師法がどうのこうのということで言ったわけではなくて、糖尿病 の話にしても、スタートの話が全くないのです。ここに出てくる話以前にどう いう話がされてこういうシステムを作ったかというところが全くなく、いきな り看護師が検査の指示も、処方の指示も全部出して全てが行われた、ここから はそういうふうにとれるのです。その前に内科の主治医もいて、そこからは必 ず指示書が出ている。そして、外科のB医師とどういう議論をして、ではこうし ようという話は前もってあったはずという、その辺が抜けて説明されているの で、そこがまずいのです。全体的視野の中で見るのだったら、ここからこうい う話がスタートして、こういう経過でこうなって、こういう良い結果が得られ ましたという話だったらいいのですが、そうではなく、いきなりこういう話に なってしまうものですから、それ以前の話はなかったのかということになって しまうので私は心配をしているということです。 ○永井座長  少し議論を整理する必要があると思います。医師法とよく照らし合わせなが ら議論をする必要があると思うのです。医師法の「医行為」というものがかな り解釈の問題であり、危害を及ぼすおそれのある行為が医行為なのですが、こ れは医師の職分とか本来業務とか、そういう議論では必ずしもなくて、誰が担 うか非常にファジーである。しかし、医師法をよく見ながら議論しつつ、現行 の医師法の中でできることとできないことを整理して、必要があれば、ここの 検討会として何か法律改正を提案してもよろしいのだと思います。しかし、法 律をよく見ながら議論しないと、議論が空転する可能性がありますので、そこ はよろしくお願いしたいと思います。 ○海辺委員  だいぶお話が進んだ後で戻すような感じがあって恐縮なのですが、私は「チ ーム医療」の定義自体が曖昧かなと感じておりまして、ここの検討会でそれを しっかり定めるというのは、ワンクッション必要なのではないかと感じており ます。というのは、私は「癌とともに生きる会」で、がんのほうから出てきて いる者です。がんの拠点病院の指定要件の中には「チーム医療の推進」という ような言葉がもう入っております。そちらで言われていることは、いわゆる化 学療法ですとか手術療法、外科、あとは緩和ケアですとか麻酔ですとか放射線 であるとか。がんの場合は、治療の局面局面で、これだけやっておけばいいと いうようなことがないわけですから、各診療科をまたいでやる。当然その中に は、がん専門薬剤師の意見ですとか、がん専門ナースですとか、そういう方が 配置されている病院であれば、もちろんそういう方も加わる。そして患者本人 も加わって、それがチーム医療だという感じで捉えられている。それ自体も、 専門病院の先生に言ったら、私はそういう解釈はしていないとおっしゃるかも しれないのですが、そのような感じで成り立っているようなところがあります。  もちろん、病院の外側に出ていった患者さんをどうやってみんなでサポート するかという側面も大切ですので、ここで話し合う「チーム医療」というもの はきちんと定義した上で議論を進めていかないと、噛み合わなくなる可能性が 高いかなと思いました。  もう1点、私が事前に資料をいただいて思いましたことは、これからいろいろ と医療技術が進みますし、高齢化社会で高齢者も増えていく中では、医療のニ ーズがもっともっと高まるのに絶対担い手が足りないということが出てくるの で、そういうものをきちんとした資格を持った方々が担っていくというのは絶 対に避けられないと思うのです。ただ、心配なのは、既成事実がどんどん積み 上がって、地位や資格が定まらないままここまではしてよいことにしましょう というふうになってくることです。ナースプラクティショナーという言葉も実 際に資料の中に出ていますが、ナースプラクティショナーという言葉の定義も また曖昧なまま実務ばかりを押しつけられて、資格としてはきちんと確立して いないというようなことですと誰のためにもならないようなところがございま すの。  私の母はずっと闘病しておりましたので、患者家族としても権限を持った看 護職の誕生は望ましいと考えますが。例えば母が飲みづらくて大嫌いな薬があ ったのですが、この薬はこういう症状を緩和するために飲むんですという説明 を受けていても、その症状自体はもう軽くなってきたから、これは飲まなくて もいいかというようなことがありましたときに、「じゃあ、先生に聞いてみます ね」と看護師さんがおっしゃってくださっても、その先生が「ああ、あれは飲 まなくていいよ」というお話がくるまでにまる1日経過していたりする。そうい う感じになりますと、その薬は、まあ、その症状を抑えるためなんだから、よ かろうというようなことを専門ナースができるようになってくれれば、患者は 待たなくて済みます。そういう観点からも、将来的にそういう資格は絶対に確 立してほしいと私も思うのですが、ただ、そのためにはいろいろと積み上げて いかなければいけない部分があるだろうなと。 ○永井座長  今はまだ話の始まりです。NPのことも出ましたけれども、これから、どうい う概念であるか、何が必要であるか議論が必要です。特に、教育や研修の話に もなると思います。今日はフリーディスカッションで、皆さんがどういうとこ ろに問題を感じているか、それを紹介していただくという段階だと思います。 ○太田秀樹委員  資料4のNo.8「褥瘡ケアにおける医師と訪問看護師の連携」で感じたことがあ るのです。ちょっと現実的な話なのですけれども、訪問看護というのは、看護 師がエンパワーメントする身近なフィールドだと私は思っているのです。医療 行為の解釈の曖昧さがある中で、実はナースがデブリートマンをやっている、 ここにそう書いてあるのですが、在宅の現場では、現実にやっているのです。 何でナースがデブリートマンまでやるかというと、ここに書いてあるとおりで、 褥瘡に興味のある医師は少ない。そうすると、ミイラ化した壊死組織を取らな いと良くならないことをナースは分かっているので、要するに「何とか、患者 のために」という思いが先立てば、ついやってしまうわけです。上手にやれる 人はいっぱいいて、内科の先生よりも出血が少なかったりするのですが、では、 これは診療の補助なのかという判断を誰がどの場でやるのかということ、つま り手続きです。  褥瘡ケアにおける外科的処置は3つあるのです。膿瘍を切開して排膿するとい うことと、ミイラ化した壊死組織を除去すること、あとはポケットの開放です。 切開、排膿というと、明らかに正常な皮膚を切開して排膿するわけですから問 題がありそうなのだけれども、死んでしまった皮膚だから取ってもいいのでは ないか、ゴミだから取ろうという解釈もできるわけですが、それを一体誰がど こでやるのかということは、どうなのでしょうか。 ○永井座長  これも解釈の問題なのだろうと思うのです。 ○太田秀樹委員  だから、誰がどこでやるかです。 ○太田喜久子先生  いまの褥瘡ケアの内容は報告書の193頁から194頁に出させていただいている ものなのです。これはいわゆる外科的なデブリートマンというより、ラップ療 法などのことを行っているのです。ステーションで眼科用のコッフェルを備え てそれを使う、この事例ではそういうことが行われていたのです。 ○太田秀樹委員  それをやってはいけないという話をしているのではなくて、これが診療の補 助であるという判断は誰がするのだろうということを私は言っているのです。 ○杉野医事課長  一般論としてお聞きいただきたいと思うのですが。例えば今日の資料でご紹 介をした静脈注射、これはもともと、医師法とか保助看法の規定を厚生労働省 が解釈をして、静脈注射は診療の補助には当たらない、これは医師しかできな いのであるという解釈を通知で示していたという時期がありました。しかしそ の後、実際には裁判の判決の中で、これは診療の補助に該当するという判断が 出て、それ以降さまざまな議論はあったわけですが、最終的に厚生労働省、つ まり国としても、これは診療の補助に該当するであろうというふうに判断を変 えていったという経緯をたどっております。その意味では、法律を所管してお ります厚生労働省がまず一義的には判断をしなければいけないのですが、場合 によってはそれを超えて司法の判断もあり得る。もっと言えば、その司法の判 断というのは、結局は医療界あるいは医学界の議論が前提となって判断をされ ていると思われます。言い換えますと、デブリートマンは診療の補助の範囲に 含まれ得るか、それが必要なのかどうか、あるいは、どういう条件の下であれ ばそれが診療の補助に含まれ得るのかといったようなことを、場合によっては この場でご議論いただければと考えております。 ○太田秀樹委員  現実的な話として、例えば、痰の吸引1つとっても、もう延々と議論している のですが、痰の吸引は医療行為だというような国は、そうはないと思うのです。 ですから、そういう些細なというと語弊があるけれども、そのようなことです ら何も決まらない中で、一体デブリートマンが医療行為かどうかというのが決 まるには何十年もかかるのではないかという気がするのです。 ○島崎委員  いまの質問との関係で事務局にお伺いしたいことがあります。資料3「看護師 が行う診療の補助について」の中に保助看法の37条がありますが、この条文の 解釈を聞かせていただきたい。というのは、この点は共通の認識にしておいた ほうがよいように思うからです。「保健師、助産師、看護師又は准看護師は」の 後に、歯科医師も含めて、主治医の指示があった場合を除くほか、かくかくし かじかをしてはいけないと書いてあるわけです。この「主治の医師又は歯科医 師の指示があった場合を除くほか」というのは、どこまでかかっていると解釈 するのでしょうか。つまり、「診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品につ いて指示をし」というところにかかっているのですか。それともその後の、「そ の他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行 為をしてはならない」というところまでかかっているのでしょうか。逆に言う と、もし、終わりのほうまでかかっているとすると、たとえば個別指示を行え ば、すべからく許されるという解釈になりますが、どういう解釈を実際にはと られているのでしょうか。 ○杉野医事課長  個別指示とは限らない、ということをまず申し上げておきます。これは主治 医、医師の指示があればということになっております。それが個別指示である か、あるいは包括指示であるかということは限定されておりませんで、とにか く医師の指示があればということになっております。それから、どこまでかか るのかですが、これは全体にかかっております。あくまでも例示として、診療 機械を使用するとか、医薬品を授与するとか、医薬品について指示をするとい う例が出ておりますが、これらを例示としながら、要は医師が行うのでなけれ ば危害を生じるおそれのある行為、つまり医行為をしてはならない。逆に言え ば、医師の指示があれば医行為をすることはできるという解釈になっておりま す。 ○瀬尾委員  結局有賀委員がおっしゃるように、「チーム医療とは」というところの定義を まずきちんとする。つまり、チーム医療として看護師の業務を拡大していくと いうことですから、その「チーム医療」とはどういうものであるかというとこ ろを定義しないと、いまのように、ではどこをと、細かくなってしまいます。 だから、チームとして治療方法を決めて、その範囲の中でこの行為はという形 にしないと。痰を取ったり、褥瘡のデブリートマンがどうかというのも、チー ム医療として褥瘡を治す。そういうものとしてチームとして関わっていく場合 に、そのときにナースはどういうことまでできるかということなのです。チー ム医療、これは今までなかった新しい定義ですよね。だから、ここでいちばん 重要なことは、チーム医療というのはどういうものであるかをみんなが共通し て持たないと。勝手にいろいろな解釈になりますと、それで全然駄目になるの ではないか。ということで、この初回は、とりあえずチーム医療というのはど ういうものであるかというのを皆さんがディスカッションなりをしていく。こ の委員会の中で、チーム医療というのはこういうものとして考える。そこから 薬剤師の人はどうするのかとか、ナースの人はどうするのかというのを考えな いと、行ったり来たりするのではないかと思います。 ○永井座長  とにかく今日はまだ始まりですので。 ○瀬尾委員  はい、そういう意味で。 ○川嶋委員  私は看護の立場から、いまのチーム医療とはという定義からスタートするこ ともいいのかなという気持はありますが、今日太田先生が、医師と看護師との 役割分担と連携の推進に関する研究ということで、1つのたたき台というか、考 えるきっかけを与えていただいたと思うのです。私はこの研究に関与していま せんが、太田先生の研究はとても膨大で、ご苦労の跡はよく分かるのですが、 率直に思ったことがあるのです。事例は53例あって、それぞれの領域で何例か ずつの事例が出ておりますけれども、これは決してモデルにはならないと思う のです。先ほど井上委員がおっしゃったように、たまたまその病院で組織的に 動いて、医師とナースとで、ではやりましょうということでやったことの例が 載っているにすぎない、という言葉を使ってはいけないかもしれませんが、私 はそのように受け止めました。ですから、こうなのだからやってもいいと短絡 的に持っていくのは少し危ないかなという感じがしております。と申しますの は、またチーム医療の定義に戻るかもしれませんが、看護師といっても、看護 師というのは准看護師もいますし、一体どの領域の看護師を言うのか。認定看 護師、専門看護師、その他今は、修士課程を卒業した人もいれば、専門学校の 卒業生もいます。いろいろな看護師がいる中で、医師と看護師と言っても非常 に難しいのです。そういうことも踏まえて考えていったときに、ここには単に 「医師と看護師」と出ているのですが、ちょっと。 ○永井座長  「看護師等」ですので、全部にかかっているのです。 ○川嶋委員  いや、違う、太田先生の研究のことを言っているのです。このチーム医療の 推進の検討会は「等」であることはよく理解していますけれども、たまたま今 日の研究のご発表は医師と看護師との役割分担ですから、当然2つの職種しか出 てこないのです。2つの職種の連携の在り方を皆さんで考えながら、チーム医療 というのは結局どういうことなのかなということを考えていけばいいのではな いかと私は思いました。座長がおっしゃるように、今日は初回ですから、最初 からあまり定義づけてしまっても。概念だけがあっても、なかなかうまくいか ない。また、概念を統一するまでにはすごい時間がかかるのではないかと思い まして、少し具体的な事象から入っていくことは、とても賛成だと思います。 ○永井座長  私もそう思います。「チーム医療」の定義を初回で決めようと言われても、こ れまた難しい問題です。まず事例の共有でもよろしいと思います。どういうと ころに、どういう問題があるのか。皆さんは「チーム医療」の概念をある程度 はお持ちだと思いますが、それをより明確にしていくという作業が続くのでは ないかと思います。 ○瀬尾委員  今後はナースの数も減ってくると言われています。今は医者が足りないから、 医者の業務をナースに移行しているわけですが、結局、ナースとしては業務が 増えてくるわけです。それで、今後もナースの数が足りないと言っているとき に、これが本当にできるのかというのは、どうなのですか。だから、単にチー ム医療というのを考えないと。医者がやっていた業務を今移行しているだけで、 ナースの業務が増えてきて、ナースが悲鳴をあげて辞めていくという懸念があ るのです。そこのところを気をつけてやらないと実際的には、という気がして います。 ○永井座長  それは当然だと思うのです。さらに、それはチームだけではなくて、地域医 療の問題にもなってくるのです。人手がよりインテンシブに必要になりますか ら、地域によっては看護師が足りなくなるということもあり得ます。ただ、今 日はとにかく、そういう問題点をお出しいただくということでご理解いただき たいのです。 ○太田喜久子先生  私は事例を中に挟みながら紹介させていただきましたが、今回の調査の中で は、各看護の専門分野で、全体としては53の事例の中から精選していって共通 する要素というものを抜き出していくという作業もしております。そして、1事 例1事例ということとは限らず、全体として役割の分担・連携が進めば、スライ ド9に載せたような、患者・利用者にとっての満足度効果、医師にとってのメリ ット、それから病院組織・医療組織が受ける経営上のメリット、それからナー ス自身にとってのメリットもあるということが全体として分かってきたのです。  もう1つ、これはスライド14でまとめましたが、組織内での合意・承認を得る プロセスをまず踏むこと、それから、連携をしていくための質と安全を担保す る仕組みをいかに確保していくかということです。リスク体制、それから教育・ 研修、それからプロトコールの作成等ここに書いてある7項目はかなり重要なこ となのです。これはこの研究の検討会の中でも再三ディスカッションし、この 要素をきちんと、プロセスも踏みながら行っていけば、随分スムーズな連携が 行っていけるのではないかということが分かってきました。 ○坂本委員  実は、私もこの研究に参加しておりました。いろいろな議論があると思いま すが、全体を通して1つだけ言えることは、各病院でいろいろな状況があったわ けです。そして、基本的には患者自身に、待たされたりして困っている状況が あったということがすべての事例に共通していると思います。それぞれの病院 でいろいろな問題があるかも分かりませんが、ドクターとナース、それから他 の職種も入っていると思いますが、それらの人たちが話し合って、もう、こう いうふうにせざるを得ないといいますか、何がいちばん患者にとってのサービ スかというところを考える。そして、先駆的という言葉がいいのかどうか分か りませんが、役割分担をきちんと決めてやっていたという事実であります。こ れは私たちがいちばん良い事例であるとかと言っているわけではなくて、事実 として起こってきたことを現場が受け止めて、それに対して何らかの対策をと ったという役割分担のところが、この研究の事実を抽出したということになる と思いますので、事実がなぜ起こったかというところも考えていただきたいと 思います。  それから、看護師がそのことをやりたいとか、看護師にとってよかったとか という問題ではなくて、外来等で見ているときにいちばん困っている患者に対 して、つまり手術中のドクターを待たなくてはいけないとか、いろいろな問題 に対して何とかしようということで動いたということも、いろいろな事例の中 には見受けられました。 ○朔委員  今日の議論をいろいろお聞きしていますと、結局、総論と各論が入り交じっ て出ているように思います。各論の場合は、各医療機関、地域によって事情が 違いますから、医師とナースの関係もいろいろ違うと思うのです。ですから、 各論をある程度話すのは分かりやすくていいのですが、最初にこの会議が目指 すゴールというものをある程度明確に示していただいたほうが、我々の考えを まとめていくのに良いのではないかと思います。この会議が目指しているゴー ルをもう少し明確に提示していただいた上で、議論をしていく方が効率的と思 います。 ○永井座長  それは最初に局長が少しお話になっておられたと思いますが、もう一回事務 局から確認していただけませんか。 ○杉野医事課長  事務局の立場として明確に、こういうゴールをというのはなかなか申し上げ にくいと思っております。チーム医療というテーマで、チーム医療をどう高め ていくかということを目指して、その具体的な方法をご検討いただきたいと思 っております。ただし、今日ご説明した中にも、看護師あるいはその他のコメ ディカルの役割の拡大ということが明確に、例えば内閣総理大臣の指示辺りで も出ておりますので、さまざまな医療職種の役割分担を、具体的にどういう条 件のもとに、どこまで拡大できるかということは是非含めてご議論いただきた いと思っておりますけれども、行き着く所はチーム医療の向上だと思っており ますので、例えば有賀委員からご指摘いただいた点、あるいは海辺委員から出 たご議論も含めて、さまざまな角度からチーム医療についてご議論をいただき たい、事務局としてはそう希望しております。 ○朔委員  この検討会でいろいろ意見が出されて妥当であるという結果になれば、はっ きり言えばNPを導入する線まで持っていくこともあり得るというぐらいのゴー ルは考えてよろしいのですか。 ○杉野医事課長  先ほどNPの定義が曖昧であるというご指摘もありましたので、にわかに「は い、そうです」とか「いいえ」とかとは申し上げにくいと思っておりますが、 別に私どもは、あらかじめ、ここまでの議論でお願いしますとか、これ以上先 の議論は困りますとか、そういったことは考えておりません。あくまでもチー ム医療の向上、あるいは各医療職種の役割分担の拡大、専門性の向上というこ とについて、法律上の枠組みもいずれ議論になると思いますが、それはそのと きに議論すればいいと思っておりますので、現場のニーズも含めてさまざまに 特段の制約なくご議論いただきたい。そのご議論の結論を、私どもはそのまま 受け止めるということかと存じます。 ○大熊委員  いまの杉野課長のお話を額面どおりに受け取ることにいたします。そうしま すと、今ちょうど、チーム医療推進協議会というものが出来つつあります。準 備会を2回終えて、いよいよ9月に発足するという段取りになっておりまして、 とりあえずは、病院内で活躍している職種、ですから薬剤師の中でも病院薬剤 師、それから作業療法士、視能訓練士、放射線技師、そういうのが動いている 最中ですので、「等」のところをあまり曖昧にしてNPに突っ走る前に、次回は、 この推進協議会の方などからヒアリングをされたらいいのではないかとご提案 を申し上げます。  先ほどのプレゼンの中の、役割分担を進める準備プロセスに必要なことはナ ースの職種で発見されたことですが、これはどの職種に当てはめても普遍性が あると思いながら伺っておりました。  今日、明日と、たまたま、ある学会が名古屋で開かれておりますが、そこに は5,000人ぐらいの人が集まるそうで、スピーチセラピスト、医師、看護師、栄 養士、歯医者、歯科衛生士等さまざまなものが今、日本の中で動き出しており ますので、そういう全体像をまず頭に入れながら話を進めてはどうかと思いま した。 ○永井座長  私自身もそういうふうに思っておりますが、今日は初日であって、まずは太 田先生のお話を伺っているのです。 ○羽生田委員  チーム医療を病院の中でと言いましたけれども、座長も言われたように、病 院の中だけではないのです。地域で、薬剤師あるいは歯科衛生士とのチーム医 療というものも存在しますので、これは病院に限った話ではないということを まず前提としていただきたいのです。  それから、チームですから、チームを作る場合には必ずキーマンが必要にな る。誰が責任をとるかというのは必ず必要になるという中で、いろいろな職種 が集まったときに、いろいろな職種の中で責任をとる立場にあるべき人、チー ムの中での責任者は医師であろう。患者1人に対してチームで医療を推進してい く場合には、誰かが責任者にならなければいけないという中では、医師が責任 者としてチームをリードしていくべきであろうという気がしています。  今日の報告の中で糖尿病のことを言いましたけれども、それ以外は、チーム 医療で医師が責任をとり、いわゆるメディカルコントロールの中にこういう組 織が作られているということを感じたのです。ただ、糖尿病だけはそれを感じ なかったものですから1つだけ言ったのですが、有賀委員や瀬尾委員は、新しい 職種で救急救命士という職種が出来たときに、これを推進していくいちばんの 根底は、メディカルコントロール。包括的なメディカルコントロールと直接的 なメディカルコントロールという中で、この業務を実際にどう動かし、どう検 証し、フィードバックしていくかという組織的な制度が出来て、それが稼働し つつあるわけです。それはチーム医療という中で最初に出来たシステムだと思 いますけれども、病院あるいは地域でこういったチーム医療をしていく場合に は、全部の職種が関係する中で誰が責任をとるかということは当然必要になる。 私は、今日のご発表の中でもそういうことを感じながら聞いていたのですが、 糖尿病だけについてはそれを感じなかったものですから指摘しましたが、そう いったことは病院の中であり、地域の中でも、チーム医療という考え方の根底 にそれを置くべきであろうと思っております。それが我々としての提案です。 ○太田喜久子先生  糖尿病の事例がかなり話題になっていたので補足させていただきたいと思う のです。報告書では43頁になりますが、この病院がこのような連携を推進する に至ったのは、糖尿病の専門医がいなかったからということは先ほど申しまし た。手術をする必要があって外科に入ってこられた方で糖尿病を持った方に対 して、外科医としての仕事に支障を来していた。その病院には、認定のナース として皮膚排泄ケアのナースがいて、かなり自立的活動を行っていた例があっ たので、43頁の「行った背景」、それから「準備状況」に書いてあるように、医 師のほうから、糖尿病に関してもナースがもっと役割を担ってもらえないかと いう働きかけがあったのです。それを受けて、では医師はどのようにナースに 対して役割を担うか。それはオンザジョブ・トレーニングということになるか と思いますが、地域の医師会の集会などにナースを同行し、その地域の糖尿病 の専門医の研修会にナースに参加してもらって、そこで必要な研修をしてもら って実践力を高めたという背景がございます。その上で、このような外来での、 あるいは病棟での活動を行って非常にスムーズにいった。そういうことですの で、その背景を補足させていただきます。 ○永井座長  これは1枚の絵で描かれていますので、ここに描かれていない問題がたくさん あるのだろうと思います。 ○海辺委員  また話を戻してしまうところがあるかもしれないのですが。先ほど羽生田委 員がおっしゃっていた、チームの中心は医師であるということ、日本の医療の いまの現状だと、そうかなという感じはあります。ただ、アメリカなどでは今、 チーム医療というのはごく当たり前のように言われておりまして、実際に実践 されていますが、そこのチーム医療の中心で自分の医療に責任を持っている人 は誰かというと、患者本人なのです。だから、「あなたに可能な医療の選択肢は これとこれとこれがあり、私は医師としてこれをお勧めします」と言うことは あっても、「私が医者だから、あなたにはこれだ」と言うことはない。その患者 は自分自身の責任において、「私もそれがいいと思うから、この医療をやります」 と決定しているのです。だからこそ「チーム医療」の定義が大事かなという感 じがすごくしたのですが。 ○永井座長  羽生田委員がおっしゃっているのは、医行為についてですね。 ○羽生田委員  いまのお話は、それはそれとして当然ある話です。中心は患者です。 ○島崎委員  今日の太田先生のお話は、私にとっては非常に勉強になりました。実態はい ろいろ進んでおり、現場では医療の実態に合わせていろいろ工夫をしながらや っているのだなということが感想です。これが第1点。  もう1つ思ったのは、チーム医療といっても、どの職種まで含めるかというこ ともさることながら、急性期の場面と慢性期の場面、さらに言えば、太田秀樹 委員が実践されているような在宅医療の場面のように、ディメンションによっ てその内容は相当違ってくるのではないかということです。  それから、先ほどあった指示の様態や責任体制、これも実際には結構微妙な ところがあり、具体的な個別指示から一般的な包括指示まで幅があり、さらに 言うと、もう少し独立性があるものも存在する。広い意味ではメディカルコン トロールに服しているのかもしれませんが、それぞれの職能がかなり独立性を 持って活動している場面もあり、正直に言えば、全部一括りにできるのかなと いう感じがいたします。  おそらくこの検討会で求められているのは、例えばこういう場面でどこまで やっていいのかとか、その場合の条件はというようなことを決めていくよりも、 こういう議論がどうして必要になってくるのか。もう少し言うと、社会情勢の 変化、つまり少子高齢化の進展や医療技術の革新、あるいは人材の確保の問題 も含めていろいろ変化している。例えば、専門分化が進んでいけば、その一方 でどうしても包括性が求められるようになる。そういう中でどういう方向を目 指していくのがよいのか。それから、それに対応してどういう教育システムや 責任管理体制を組むのが、患者や国民の立場にとってもベストなのか。そうい う方向で議論を進めていくべきではないかと思います。雑駁ですが、そのよう な感想を抱きました。 ○永井座長  最初に私も感じましたのは、基本的な考えをこの委員会で整理して、新しい 方向を打ち出せるかどうかが課題です。個別の医療技術について、すべてそれ が医療行為なのか、誰が担うべきかというのは、いくら時間があっても足りな いでしょう。ただ、大事な基本的な考え方を集約できればと思います。 ○山本信夫委員  いま座長がおっしゃったことを十分理解した上で、今日の話題提供には大変 参考になる事例があったと思うのです。まさに先駆的な事例を参考にしてチー ム医療の向上を図る、その議論を詰めていこうというのが永井座長のお考えと 理解しています。例えば、業務の拡大も含めて言えば、チームの中にどこまで の医療職種が入るのかという定義はもちろんあろうかと思うのですが、今日の 取っかかりの議論から始めて議論を進める中で、先ほど大熊委員からもご指摘 がありましたように、議論を進めながら、それぞれチーム医療のメンバーにな りそうな医療職種の現場で先駆的にやっている事例のようなものを聞いていく ということも必要なのではないかと思います。  先ほど来、本当は私が言わなくてはいけない薬剤師の話があちらこちらから 出てまいりまして、とても期待されているのかなと嬉しく思う反面、そうした 部分の報告をどこかでしていただいてもいいのかなという感じがします。冒頭 の資料3、事務局でおまとめになった資料の中にも「看護師が行うもの」とあり ます。今回は看護師のことですから、看護の業務にかかわることで構わないの だろうと思うのですが、今後は、それぞれの職種からヒアリングするというか、 業務内容や先進事例を聞いていくようなことがあっても議論が進むのではない かということで、是非そういう機会を持っていただきたいと思います。私ども は薬剤師ですが、今のところは医療機関の中の話ですが、地域でも当然そうし たチーム医療が起こっているわけです。特に太田委員の示されたように、在宅 になれば、まさにチームを組まなくては医療は進まないことになりますので、 そうした事例も含めて報告するような、あるいは知らせるような機会を是非持 っていただければと思います。 ○大熊委員  羽生田委員が誤解されたので補足します。私の頭にあるチーム医療というの は、社説でも度々、かかりつけ薬局をとか、家庭医をとかと書いてまいりまし たので、そこに入っているのですが、先ほどご紹介したチーム医療推進協議会 というものは、とりあえず、今年は病院で始め、来年から地域に広げる。そう いうことで「病院」という言葉を使いました。そして、ほとんど会長がそれぞ れ入っているという強力な会議のようです。 ○羽生田委員  誤解があったらお許しいただきたいと思いますが、薬剤師、特に病院薬剤師 と言われたので、病院に限ってのお話なのかなと思いました。いま島崎委員が 言われた、チーム医療は現場によって違うというのは当然のことです。そして、 どこまでできるかというのも、例えばデブリートマンの話が出ましたが、チー ム全体で、この看護師になら任せてもいいという判断ができる人が必ずいるわ けです。それをやっていくのがチーム医療ですから、そのチーム医療の中で、 これは駄目だと思ったら、医師が自分で行ってやるとか。それは当然レベルが 全部違うわけです。ですから、太田委員が在宅でやる場合に、すべて自分でで きるわけがない。当然いろいろな、看護師あるいは他の職種との付き合いの中 で、この人だったらどこまでできるかという判断をそれぞれされて指示を出す ということになる。それは現実だと思います。急性期のチーム医療、あるいは 在宅でのチーム医療、施設でのチーム医療というのはそれぞれ違うので、チー ムとしてどこまで、また、どうするかはチームで決めていく。しかし、医業に 対しての責任は医師にある。治療の方針等を決めるのは患者が中心であるとい うことは間違いないのですが、医療行為そのものを決めていくのに、責任者は 医師であるべきではないか、このように考えているのです。 ○太田秀樹委員  概ねそのとおりだと思うのですが、ケアとキュアとを考えると、キュアの医 療においては医師中心で全く問題はないと思うのです。ただ、ケアの領域に入 って、さらに看取りというような場面になってくると、チームの中心にナース がいていいと私は思うのです。在宅に限らず、適切な医療というのは場所を選 ばないわけですから、治癒が期待できるキュラティブな医療に関しては医者が 中心になるにしても、治せなくて看取りまでいってしまうところはナースが中 心になる。つまり、そういうふうに役割が多少違うという認識を持っていいの ではないかと思うのです。 ○永井座長  その辺もこれからの議論の中でだんだん認識を深めていったらよろしいので はないかと思います。なかなか一概にというのは難しいように思います。 ○坂本委員  いま責任の話をされているわけですが、この「責任」の概念も大変難しくて、 ナースは医師とチームを組んで医療を行い、それに対してすべて医師が責任を とるのかという話になると、そういうことはあり得ないと私は思っています。 では、何かあったときにドクターが全部責任をとれるのかといったら、実際に はとることができない。行った行為に関しては看護師が責任をとるべきだと思 うのです。そのあたりの問題、責任と、ある意味の包括的な指示に対しての裁 量等についても話し合っていかなくてはいけないのかなと思います。 ○永井座長  よろしいでしょうか。この会では、いろいろな方からいろいろな活動につい てお話を伺いながら議論のまとめをしていく必要があるかと思います。今日は 大体予定の時間になってきたのですが、まだ何かございますか。 ○太田喜久子先生  この調査結果をまとめていく中で、研究会でもいろいろな論議が盛んに行わ れ、ますます先駆的な連携推進を進めていくに当たって、3つぐらい課題が見え てきたかなということがありました。  1つは、今日の事例の中でもご紹介しましたけれども、看護職の中でスペシャ リスト、専門看護師あるいは認定看護師の育成がいま進んできておりますけれ ども、その教育の在り方をもっと、もっと拡充していくことが、今回の事例で もお示ししたように、現場を明らかに変えていく力になってきているので、そ れをもっと。例えば、1施設には必ず何人か認定看護師や専門看護師がいるとい うふうになっていくことが非常に相応しいのかなということです。  2番目は、今日の資料にもありましたが、平成19年の医政局長通知、関係職種 との役割分担の推進の通知が出されました。このことは、全国の現場において も、すごく影響力を持つものだったと思うのです。今回のこの委員会での検討 も様々されていく中で、例えばこの通知のような形での普及を図るために、そ のような示し方をしていくことが連携を促進することにつながるのではないか ということがあります。  3点目は、実際のこの53の事例ではかなり効果が見えてきたわけなのですが、 では、それを行ったナースがその組織の中でどのように評価されているか。例 えば、処遇などの面で何かナースに戻ってくるものがあるのかというと、そう いう例は1例もなかったのです。もちろん、やりがいは感じてやっているが、や ったことについて経済的にも評価されるような仕組みを是非作っていただきた いということ等が上がっております。よろしくお願いいたします。 ○永井座長  課題としてお聞きしておきたいと思います。今日はここまでの議論にしたい と思いますが、事務局から何かございますか。 ○杉野医事課長  次回の日程につきましては、改めて調整をしてご連絡を申し上げますので、 よろしくお願いいたします。 ○永井座長  次回はどなたかにお話を伺うということでよろしいですか。 ○杉野医事課長  今日も座長からございましたが、いろいろな方々をお呼びして、まずお話を 聞くということが必要だと思っておりますので、次回もそういう形でのご議論 をお願いしたいと思っております。 ○永井座長  本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。 ―― 了 ―― (照会先) 厚生労働省医政局医事課 石川義浩、石川典子 (代表)03−5253−1111(内線2564、内線2563)